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1973-06-05 第71回国会 参議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月五日(火曜日)    午後一時六分開会     —————————————    委員異動  四月二十五日     辞任         補欠選任      初村滝一郎君     山崎 五郎君  五月六日   委員津島文治君は逝去された。  五月八日     辞任         補欠選任      船田  譲君     上田  稔君  五月九日     辞任         補欠選任      上田  稔君     船田  譲君  五月十八日     補欠選任        徳永 正利君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤田 正明君     理 事                 嶋崎  均君                 土屋 義彦君                 野々山一三君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 伊藤 五郎君                 河本嘉久蔵君                 柴田  栄君                 徳永 正利君                 中西 一郎君                 船田  譲君                 竹田 四郎君                 戸田 菊雄君                 野末 和彦君    国務大臣        大 蔵 大 臣  愛知 揆一君    政府委員        大蔵政務次官   山本敬三郎君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        大蔵省国際金融        局長       林  大造君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        通商産業省企業        局商務第二課長  荒尾 保一君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○アフリカ開発基金への参加に伴う措置に関する  法律案内閣提出衆議院送付) ○中小企業金融制度整備改善のための相互銀行  法、信用金庫法等の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月二十五日、初村瀧一郎君が委員辞任され、その補欠として山崎五郎君が選任をされ、また、去る五月六日、津島文治君が逝去されましたことに伴う同君の補欠として、同月十八日、徳永正利君が選任をされました。     —————————————
  3. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  中小企業金融制度整備改善のための相互銀行法信用金庫法等の一部を改正する法律案審査のため、参考人出席を求め、意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
  6. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 次に、アフリカ開発基金への参加に伴う措置に関する法律案中小企業金融制度整備改善のための相互銀行法信用金庫法等の一部を改正する法律案、以上二案を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。愛知大蔵大臣
  7. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま議題となりましたアフリカ開発基金への参加に伴う措置に関する法律案並びに中小企業金融制度整備改善のための相互銀行法信用金庫法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、アフリカ開発基金への参加に伴う措置に関する法律案について御説明いたします。  この法律案は、別途国会の御承認をお願いいたしておりますアフリカ開発基金設立する協定に基づきまして、わが国アフリカ開発基金参加することに伴い必要な措置を規定することを目的とするものであります。  アフリカ諸国は、一九六四年にアフリカ開発銀行設立いたしましたが、同銀行は、通常の貸し付け条件による融資を行なっておりますので、緩和された条件による融資を必要とする国に対する融資活動には制約があります。このため、新たに先進国参加を得て、アフリカ開発基金設立されることとなりました。  この基金は、既存のアフリカ開発銀行活動を援助し、緩和された条件による融資を行なうことにより、アフリカ諸国の経済的・社会的開発に貢献しようというものであります。  政府といたしましては、本基金への参加が、アフリカ諸国の経済的・社会的開発に資するとともに、これら諸国日本との間の友好関係の増進にも、大きな貢献をするとの観点から、設立当初からこれに参加するとの方針をとり、本基金設立協定に署名した次第であります。  同協定には、アフリカ開発銀行のほか、わが国を含め十五カ国がすでに署名を了しております。  次に、この法律案の概要について申し上げます。  まず、政府は、同基金に対し、協定に規定する計算単位による千五百万計算単位に相当する金額範囲内において、本邦通貨により出資することができることといたしております。  次に、基金への出資は、協定により国債の交付によって行なうことが認められておりますので、この国債発行権限政府に付与するとともに、その発行条件償還等に関して必要な事項を定めております。  なお、基金が保有する本邦通貨その他の資産の寄託所として、日本銀行を指定することといたしております。  次に、中小企業金融制度整備改善のための相互銀行法信用金庫法等の一部を改正する法律案について御説明いたします。  民間中小企業金融専門機関であります相互銀行信用金庫及び信用協同組合の諸制度につきましては、昭和四十三年に基本的な改正が行なわれたところでありますが、その後における中小企業業務国際化の進展、労働力不足に対処する中小企業資本装備率上昇、さらには金融サービスに対する社会的要請多様化など、情勢の変化は著しいものがあり、これに対処いたしまして、中小企業金融制度整備改善を行なうことが必要となっております。  以上の理由から、相互銀行信用金庫及び信用協同組合の諸制度につきまして、それぞれの法律に所要の改正を行なう必要があると考え、先般、金融制度調査会にはかりましたところ、中小企業金融制度整備に関する答申を得たのであります。今回の制度改正は、この答申に基づくものであります。  以下、この法律案内容につきまして、その大要を御説明申し上げます。  第一に、相互銀行法改正につきましては、相互銀行外国為替取引を行なうことができるようにするとともに、相互銀行の同一人に対する融資限度を、その銀行自己資本の額の百分の十に相当する金額から、百分の二十に相当する金額とすることによって取引者需要に応ずることとしております。  第二に、信用金庫法改正につきましては、まず、信用金庫会員資格のうち、資本または出資の額の限度を、中小企業の実態に即し、現行の一億円から二億円に引き上げることとしております。  このほか、信用金庫連合会業務に、会員である信用金庫以外の者からの預金受け入れ有価証券払込金受け入れ等の取扱い及び公庫等業務代理を加えることにより、信用金庫取引者に対する金融サービスの拡充に資するとともに、同連合会専任役員の数をふやすこととしております。  第三に、信用協同組合につきましては、中小企業等協同組合法改正し、信用協同組合等が行なうことができる業務代理範囲を拡大して、組合員等の利便に資することとしておりますほか、信用協同組合が、組合員資金需要に応ずるため、その組合預金及び定期積金の総額の百分の二十を限度として、員外預金受け入れることができることといたしております。また、これに伴い、協同組合による金融事業に関する法律改正し、都道府県知事からの要請があった場合には、大蔵大臣信用協同組合の検査を行なうことができることとしております。  以上、アフリカ開発基金への参加に伴う措置に関する法律案外一法律案につきまして、その提案理由内容を申し述べました。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申しげます。
  8. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 以上で趣旨説明は終了いたしました。  なお、先ほど御決定をいただきました参考人のうち、本日は、日本銀行総裁佐々木直君の御出席を願っております。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 三十分程度でありますから、おおむね五点にしぼって質問してまいりたいと思います。  その第一点は、通貨状況についてでありますけれども、最近、非常な異常増発傾向が続いておるわけですね。それで、日銀平均発行高、四十七年、八年の対前年で見ますると、四十七年の十月が二一・九%、十一月は二二・二%、十二月が二三・七%、四十八年一月以降を見ますると、一月が二六・二%、二月が二六%、三月が二七・三%、四月が二七・五%、いわゆる対前年同月比でもって二〇%以上が三カ月以上ないし七カ月ぐらい続騰続騰を重ねているのですね。だから、一応、四十七年の予算から景気成長体制をいろいろ勘案をして補正予算を組んで、当初七・二%の上昇率できたのが一〇%をこえて、景気の立ち直りは直ったわけですね。そういう状況の中で、四十八年に入ってこのような続騰傾向にあるということなんですけれども、それで、この日銀のほうではいま公定歩合引き上げ、あるいは預金準備率の強化、あるいは窓口規制等々、各般の金融政策をやっているのですけれども、一貫して平均発行高においては続騰傾向にある。これは一体どういうところにあるのか、まず、その辺の見解総裁からお伺いをしたい。
  10. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま御指摘がありましたように、日本銀行券流通高は非常にふえておりまして、ごく最近終わりました五月の数字でも、二七・九という平均発行残高伸びをいたしております。今度の景気回復にあたりまして、現金通貨増加がいつもの景気回復のときに比べて高かったということ、これをまあどういうふうに理解するか、いろいろ見方があろうかと思いますけれども、結局、銀行券というものが一番使われますのは、個人の所得、それから個人消費と結びついておりまして、これはただ傾向的に見てのことでございますが、百貨店売り上げ高伸びと、日銀券伸びとが非常によく似ておるのがいままでの傾向でございました。最近の百貨店売り上げ伸びが前年同期比二七、八%、多い月には三〇%近くになっております。そういうようなことがこれを一つあらわしているのではないかと思うのでございます。  しかしながら、この伸び率は非常に高いわけでございまして、これをもう少し早く引きおろさなければならないということで、まあことしの初めからいろいろ金融引き締め政策を加えてきておるのでございますが、ただ、銀行券発行につきましては、日本銀行窓口銀行券がほしいと言ってこられたそこの段階では、これはコントロールができません。この銀行券動きに対しましては、金融政策全体の効果が浸透してきて初めて数字の上に影響があらわれてくる。こういうふうな性格のものでございます。したがって、私どもは、先般来重ねてまいりました金融引き締め政策によりまして、やがてこの高い伸びが落ちついてくるものと期待しております。ただ、しかし、ことしの賃上げ率が非常に高くなりまして、目先この六月のボーナスの支払い金額は相当多額にのぼる見込みでございます。そういう点から考えますと、当面すぐ引き締め政策効果現金需要の上に及んでくるということは、あるいは少しおくれるかという感じがいたしますけれども、総体として見ました場合に、金融引き締め政策効果は、やがて銀行券発行高の上に出てくるものと、こう考えておるのでございます。
  11. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 まあ金融引き締め政策が即効的な役割りはあまり期待できない。従来の政府の主張でいくならば、約一年見当はかかるだろう、こういう言い方があったのですね。やはり総裁もいま公定歩合い引き上げなり、あるいは預金準備率の強化なり、窓口規制をやっても、即効的な効果はないから、そうすると四十九年度以降あたりにおおむね効果というものがあらわれる、こういう見解でしょうか。
  12. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 四十九年度まではかからないと思います。少なくとも半年ぐらいたてば、効果はだんだん出てくるものだというふうに思っております。
  13. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 まあこれも私はちょっと異例だと思うのですけれども、五月三十日に、ごく最近公定歩合い引き上げをやりましたね。それから前には四月二日です。だから一カ月のうちに二回の公定歩合い引き上げをやっておるのですね、おおむね一カ月の期間で。それから六月十六日から預金準備率引き上げることにしている。さらに窓口規制の通達を銀行局から出しておる。こういうことをやられておる。こういった、いわば一般的金融引き締め政策をやっておるわけですけれども、このねらいは、おそらく政府言明によれば、物価抑制だと、ここに中心を置いていることは私間違いないと思うんですね。しかし物価は、しからば、そういう金融政策を打っても下がっておるかということになると、ますますこれは卸売り物価にしても、消費者物価にしても引き上げられている。たとえば東京消費者物価の前年比でいろいろ比較をしてみますると、四十八年の対四十七年比で、一月六・八%、二月が七・三%、三月が九%ですね。四月が一〇・一%。この対前年比で卸売り物価を見ますると、一月が七・六%、それから二月が九・二%、三月が一一%ですね、四月になって一一・四%、一〇%をはるかにこえちゃう、こういう状況ですね。これは東京都ですけれども、いずれも。こういう状況で、政府が、金融引き締め政策によって、物価抑制するというねらいを中心に置いてやっているんだけれども、一向に物価にも効果が波及しない。だから、これは一般のこういった金融政策では物価抑制というものはできないんじゃないか、こういう考えを持つんですけれども、一体総裁としてはこれらに対してどういう考えを持っておられるのか、その点をお聞かせいただきたい。
  14. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 最近の物価上昇原因には、海外原因国内原因二つあろうかと思います。最近、食料品価格等中心にいたしまして、世界的に非常に物価が上がっております。ロイターの指数によりましても、九〇〇をこすという状態でございますから、原材料を海外に仰いでおります日本としては、その影響を相当強く受けていることは事実だと思います。しかしながら、国内におきまして、最近の急激な経済の拡張から需要が増大し、生産もふえてはおりますけれども、そのバランスがやっぱり需要のほうが強いということから、これが物価上昇につながっておると思います。したがいまして、先般来、先ほども申し上げましたように、金融引き締め政策を随時重ねてきておるのでございますが、ただいまお話がございました四月二日の公定歩合引き上げの直後の状況を見ますと、卸売り物価は上旬中〇・一%、中旬中〇・一と、二旬ほど続けてマイナスになりました。ずいぶん長い間続きました上昇が、公定歩合引き上げによりまして直接的な影響を受けたと見られます。で、これは相当、それまでの物価上昇原因の中に、国内における投機的な動きが働いておりました。その投機的なものに対しては、公定歩合の〇・七五という引き上げが心理的な効果を及ぼしたと思っております。しかしながら、残念なことではありますが、四月の下旬からまた上がり始めまして、四月全体としては、前ほどではございませんけれども、卸売り物価上昇を見ました。  こういうような物価動きを見ますと、やはりここで総需要抑制することによって、需給均衡回復をはからなければならない。たとえば鉄の例などを見ますと、鉄の生産などは、前年に比べまして二〇%以上、二五%近く増産になっております。そういう大きな増産があるにもかかわらず鉄の価格が強いということは、需要がいかに前年同期に比べて大幅に増大しているかということを示すものであります。セメントその他につきましても同様な現象がうかがえます。したがいまして、今度、五月の末に公定歩合をさらに追っかけて〇・五上げましたことは、総需要を押えることによりまして需給均衡をはかる、回復をはかるという目的をはっきり表に出しまして、そこを通じて物価の安定を期待すると、こういうふうな意図をはっきり持っておる次第でございます。今後それがどういうふうな時間的なズレで効果を及ぼしてまいりますか、われわれとしては、なお今後の推移をよく見てまいりたいと、こう考えておるのでございます。
  15. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 非常に抽象的な答弁で、総需要均衡、まあしかし一面、確かにいま言った金融引き締め政策でそういうところに持っていこうという意欲的な問題は考えられるのですけれども、私はやはりもう一つ個別資金のいわゆる抑制体制というものは必要ではないだろうか。たとえば商社ですね。投機、買い占め、こういうものが非常に横行して、あるいは株——株は最近やや鎮静化のほうに向かっていると、こう言われているのですけれども、そういう部面がございます。あるいはこの土地ですね。何と言っても、こういう投機はまだ衰えていない。あるいは自動車なんかは最近は売れ行きがよくて困っているということですね。あるいは建築関係等々の各種業種をずっと見た場合に、やはり一貫して、まだ投機体制というものがまだ盛んに行なわれている。こういう部面金融体制抑制というものを個別的にびしびしやっていかないと、私は、いま目ざすような物価抑制体制にいかないのじゃないか、この辺の金融引き締め体制というものをひとつどうするのか。  それからもう一つは、四十八年の今回の予算、あるいは財政、こういうものに誤りはなかったのかということで、われわれは十分指摘をしてきたと思うのです。いわゆる俗称、言い方としては、大型インフレ予算だからこれをもっと縮小しなさい。景気は立ち直る。ここでさらに財政的に刺激を与えるようなことは、よりインフレを促進していくことになっていくからということで、いろいろ主張したのですが、それは押し切られたというかっこうになるわけでありますが、現実にいまそういう状況がきているんじゃないかと私は思うのですけれども、こういう点については、日銀総裁自身予算編成時であったか、そのあとであったか、ちょっといま記憶にありませんが、とにかくいま言った趣旨のようなことを総裁自身として言明をされた。そうだとするならば、私はむしろ閣議決定をした今年度予算財政方針、こういうものよりかは、総裁が判断した、そういう判断のほうが、むしろ私は適切であったのじゃないか、こういうように考えるのですけれども、その辺の二つの問題については総裁としてどのようなお考えを持つか、お聞かせいただきたいと思います。
  16. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 第一点につきましては、もうすでにことしの初めぐらいから商社並びに不動産業者に対する貸し出しにつきましては、この二つを個別に取り上げまして、その両業種に対する都市銀行貸し出し増加額を押えてきております。このことは依然として今後も続けていくつもりでございまして、四−六においても行なわれておりますし、それからさらに七−九の窓口規制にあたりましても、この方針は続けていくつもりでございます。したがいまして、この二業種につきましては、金融引き締め影響がすでに相当あらわれてきておるものと見ております。  それから自動車の点でございますが、こういう全体的な金融引き締めの中におきまして、銀行が出します消費者ローン、この中に自動車を買うローンが入っております。住宅ローンにつきましては、住宅の確保という点から別途の考慮が必要だと思いますけれども、自動車ローン等消費者ローンは、全体の金融引き締め政策の中におきまして、当然引き締められてしかるべきものだと思います。ただ、自動車販売金融につきましては、買い手のほうの、いま申し上げました消費者ローンのほかに、生産者側で用意しております販売金融がございます。こちらのほうにつきましては「なかなか具体的に引き締めが届かないと申しますか、そういう各生産者ごとのいろいろな金融のしかたがございまして、これにつきましては、むしろ自動車割賦販売条件につきまして具体的な考慮が要るのではないかということで、いま関係御当局の中でいろいろ検討されておる状況だと思います。個別的な、いわゆる質的な金融調整というものは、重点を幾つか限って行ないませんと、なかなか実効があがらない性質のものでございまして、当面、いま申し上げましたようなところに重点を置いてやってまいりたいと思っております。  第二番目の財政の問題につきましては、かねがね私は福祉社会の建設という大きな目標がございますので、それで財政の負担が拡大する、この経緯は当然だと思いますけれども、その実行につきましては、よほど慎重であってほしいということを申してまいっております。したがいまして、ここまで景気回復してまいりました今日、四十八年度財政支出につきまして、その時期、その具体的な地域的な割り振り方法、そういうものについて物資の需給、あるいは労働力状況等考え実行」てもらいたいということを申しておりまして、政府のほうでも、それを受けて繰り延べを決定されたのであります。ただ、しかし、年度全体としての問題をどうするかということにつきましては、まだ四十八年度が始まりまして早々のことでもありますし、今後の景気推移を見てさらに検討をしていただきたいと思っております。
  17. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 消費者ローンなり、あるいは住宅ローン、こういうものは継続をしていくという御意思、だけれども、それは一面やはり抑制措置も加えなくちゃいかぬだろう、こういう見解に承ったんですけれども、どの程度一体この消費ローンなり、住宅ローンに対して抑制をしていく考えなのか、これはどうですか。
  18. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま私ことばが足りませんでしたが、住宅ローンにつきましては、これを特に押えるということは考えておりませんで、大体最近住宅ローンというのは急速にふえてきておりますので、一−三の増加額ぐらいのものは、やはり引き続いて出すのが適当ではないかと思っております。  それから、自動車ローン金額をどの程度にということは、ただいま具体的にはまだちょっと詰めておりません。
  19. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 従来の政府のやり方としては、景気上昇、そうしますと一面では国債削減をする。過日の大蔵大臣答弁ですと、二千三百有余の国債発行削減方式を打ち出している。そういうことになっているわけですけれども、今回は、年度当初の予算においては、一貫してやっぱり景気上昇でありながら、国債発行も二兆数千億、こういうことになっておるわけですね。これが非常に景気刺激財政大型も含めて、たいへんなインフレ促進という状況になっているんではないか、こういうふうに即断をするわけでありまするけれども、したがって、内容的には、愛知大蔵大臣が主張したように、一貫してやっぱり資源配分重点、それから国債発行の活用、こういうものが財政の根底に置かれて進められている、この姿がはたしていいのかどうか。ですから私たちは、いま予算が成立してわずか一カ月ぐらいしか実行していない段階で、直ちに補正を組んで縮小しろと言っても、これは聞き入れられる内容じゃないと思いますけれども、これは、しかし、当面いまのインフレ促進状況考えるならば、どこかの時期で、補正等組んで財政の縮小体制に入っていかなければいけないのではないか、こういうふうに考えるんですけれども、その辺の見解総裁はどのようなお考えを持っておりますか。
  20. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま御指摘のありました国債発行につきましては、いまの段階では、政府は、国債発行による資金の吸収という面に重点を置いて、年度の上半期に発行額をふやすという方法をとっておられる。それはいまの金融情勢から見て、私は適当だと思います。ただ年度間を通じての発行総額をどうするかということは、もう少し今後の経済の動きを見て決定されてしかるべきものだと思います。  それから、いまの補正の問題は、ただいまの時点におきましては、私自身まだ見当がついておりません。
  21. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 国際収支関係で若干伺っておきたいんですけれども、最近の外貨準備高の外貨の減少傾向がずっと続いているわけですね。これはやはり日銀統計で明らかなんですけれど、三月が九億四千二百万ドル程度減少している。それから四月に十二億九千百万ドル、それから五月で十億ドル、大体合わせて三十二億ドル程度減少している、このようにずうっと減っておるわけですけれども、これは従来政府が主張してきたように、貿易収支面で見るなら、輸出入の均衡体制、こういう中でこの外貨準備の減少体制というものをはかっていくというのが趣旨ではなかったかと思うんですね。ところが、この外貨準備だけがずっと一方的に減って、この貿易収支面で見ますると、そういう均衡体制というものはとられていないのですね。そうなると、何か政治的な判断で、七月に田中さんがアメリカへ行かれますから、いまこの日米貿易関係で非常に過熱状況になっている、こういうものをひとつ話し合いしやすいような、そういうところに焦点を置いて、どうも作為的かどうかわかりませんが、実質的な数字はそうなっているのですが、そういうにおいなしとしないですね。だから、この辺の判断を一体ひとつどうお持ちになっているのか、これをひとつお伺いしたい。大体この調子でいくと、私は、五月末で百五十億ドル台に下がるのじゃないか、こう思うのですね。  それで、これも日銀統計で明らかなんですが、最近非常に輸入物資の物価上昇がやはり——、さっきの物価の問題ちょっと触れようと思ったのですが、これは最近非常に上がっている。これも日銀統計で明らかです。大体輸入物資は一月が一二・九%上昇、それから二月が一一・五%、三月が一三・一%、四月が一一・七%、それから輸出のほうは対前年同月で比較してみまして、一月でプラス一・五、それから二月が一・九です。三月が二・八%、それから四月が三・九ですから、輸出のほうは、非常に低い。しかし、輸入のほうは、日本消費者物価卸売り物価の値上げと同等くらいの上昇率を見ているんです。これはおそらく国際全体がインフレ促進状況にあるから、それは日本国内体制問題ばかりでない、こう言うかもしれませんけれども、いずれにいたしましても、こういう輸入物価上昇というものがあって、日本物価対策からいけば、関税の引き下げその他をやって、何とか値下がりした分だけは、そのまま消費者にメリットがいくような方式を考えなくちゃいけない、流通体制を含めて。主張はしているんですけれども、この状況じゃ、全くこれは従来政府が主張してきたような状況には私はいかない、こういう問題についても総裁としては一体どういうお考えを持っておるのか、この辺のことをひとつお伺いしたい。  もう一つは、時間がありませんから、要約をしましてお伺いしたいのですけれども、一九七一年八月十五日、ニクソン・ショックのときに、これは国内各企業がたいへんなデメリット体制に追い込まれて損失をこうむった、したがって、差損補償問題をどうするか、いろいろなことがあったんですね。今回のこのドル・ショックの影響については、確かにこの輸出関連の中小企業あるいは農業、非鉄金属関係、こういうものに対しては相当な影響を与えておることは間違いありません。しかし、この大企業に対してはいささかも影響を与えてないんですね。それは何かというと、一つは、低賃金、それから苛酷な労働条件、それから近代的な工場設備、この改善等々、これでひとつささえていると思うのですね。この部面の改善措置は当面必要だろうと思うのです。  それからもう一つは、世界的な資本主義のインフレ促進という中において、いま非常に進められておるわけですけれども、従来一九七一年のあの状況と、今回のドル・ショック時における世界的な資本主義の景気状況というものは違うと思うのですね。非常に各国とも上昇部面に向かって好況期に入っている。しかし、インフレは一貫して各国ともやられているわけです。そういうやっぱり特徴的な点がありますけれども、そういうものに一つはささえられているのではないだろうか。もう一つは、不景気だと言われる非鉄金属のそういったものは、海外にも採掘や生産体制というものを持っていこう、事実上もう海外進出をはかっているわけです。残されたのは、中小企業と、それから労働者や、あるいは農業や、こういうものに全体のしわ寄せがきている。しかし、これの底上げを私はやらなくちゃいかぬと思うんですね。だから、こういう部面についての政策実行をどういうふうに一体金融面から考えられていったらいいのか、この辺をひとつ御見解としてお伺いしたい。  それから、私の調査でまいりますると、二月十四日にフロート制に移行しまして、それで、日本の円も、実質的に、実勢相場は大体二月の末現在でもって二百六十五円、一六・二一%と実質的に切り上げられた。これがおそらくナイロビ総会に、愛知大臣は、その辺までにはこの固定相場制を復活するだろうと、こういうことを言われておったのですが、おそらく私は不可能だろうと思う、いまの状況からいけば、固定相場制復帰というものは。しかし、そういう状況の中で、ますます私は、あの円切り上げの割合というものはもっとふえてくるんじゃないか。たとえば二百五十五円程度まで、言ってみれば、二〇%以上の円切り上げ体制というものに追い込まれる。こういうふうに考えるんですけれども、その辺の見通しについて、ひとつ御見解を伺いたいと思う。  それからもう一つは、けさの新聞にもちょっと出ておりましたけれども、ゴールドラッシュ、いわゆるEC通貨体制に対して、金の相場がべらぼうに値上がりしているんですね。百二十五ドルないし六ドルくらいまで値上がりしている。当時三十八ドルくらいでおったのが、ここ一年有半でもうとにかく三倍以上ないし四倍、ここまで金相場というものを引き上げておる。それが円に対しましても相当影響がくるんではないだろうかと、こういうふうに考えるんですけれども、それらの内容についてどういう判断をお持ちですか。  四点です。
  22. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 第一点は、外貨準備の減少の状況、事情につきましての御説明でございますが、ただいま御指摘がありましたように、三カ月間で三十二億ドルの外貨準備が減少いたしております。四月の段階で、季節調整済みの貿易収支の黒字がなお四億ドルもあるわけでございまして、そういう点から考えますと、こういうような大幅な外貨準備の減少は異様に感ぜられます。  これは、どうも、振り返って見ますと、去年の秋ぐらいからことしの二月にかけまして、国際通貨情勢の不安定から、日本の業界——それから外国の、対日取引をする人々もそうであったかと思いますが、日本の立場からいいますと、輸出急ぎ、輸入の繰り延べ、これは、一般的に申しますと、海外から受け取るものは早く受け取り、払うものはできるだけおそく払う、これは専門家のことばではリーズ・アンド・ラッグズと呼んでおりますけれども、それが意外に大規模に行なわれたのではないか。それが、二月から三月にかけましての国際通貨の変動、それから、それに伴いました主要国のフロート移行ということによる小康状態をきっかけといたしまして、そういう特殊な状態がほどけてきた、それが逆に直されてきた。その点で、輸出は落ち、また海外からの一般的な受け取りは減少し、輸入はふえ、海外に対する支払いもふえるという形で、今度の外貨準備の減少が出てきたと思います。  そのほかにありますのは、最近の日本のいろいろ企業の立場もございますし、それから外国からの資金需要もありまして、本邦資本の長期投資、これが増加してきております。この中には、ユーロダラーマーケットで外貨を調達して貸しておるものもございますので、表面的に、長期資本の流出が増大しているほどの影響は実態的にはございませんけれども、この両者が外貨準備の減少の理由になっておると思います。したがいまして、貿易収支の黒字がまだ四億ドルあるわけでございますので、ここで完全に黒字基調が直ったと見ますのには、そういう特殊な事情を考えますと、もう少し時間が要るのではなかろうか、こういうふうに思われます。ただ、アメリカとの貿易収支につきまして、黒字幅が非常に大幅に減っておることは、これは事実でございます。  それから次は、輸入品の価格が、当然これだけの大幅な円の切り上げがあった後において、それが低落して、国内物価上昇に鎮静の役割りを果たすべきである。その点は、確かに、われわれとしても非常に期待しておったんでございますが、現実には、主要な日本の輸入品の海外価格があまりに急速に上昇しましたために、それが消されております。この点は、しかし、各国の中央銀行でもいろいろ私ども話し合っておりますが、どうも、為替相場の変更が物価の引き下げに具体的に役立つということはなかなか現実に期待しにくい例が多いようでございまして、ドイツなどは、数回にわたりますマルクの切り上げによっても、やはり輸入品の価格はあまり下がっておらない。向こうが上げてくるということが事実のようでございます。  それから、第二次の円の切り上げが、日本国内にどういう影響を及ぼしたかという点でございますが、確かに、ちょっとお話がございましたように、最初のとき、第一次に比べますと、第二次の受け取り方は非常に冷静であったということが申し上げられるかと思います。たとえば新潟県の燕の洋食器の例でございますが、これは、第一次のときには、一時、全く壊滅的な影響を受けるんではないかと言っておりましたが、非常に苦労をして立ち直りましたが、第二次の場合には、そのときの経験を生かしまして、いろいろ、高級品への転換等々で、相当うまく切り抜けております。  それと、もう一つは、先ほど指摘がありましたように、海外におけるインフレ傾向から、海外物価高、そのために、日本の輸出品価格を向こうの通貨建てで上げることがわりあいに楽にできた。ですから、円の手取りの面ではあまりふえませんけれども、外貨手取りをふやすことによりまして円の手取りの減少を防いで、それによって企業としてのむずかしいところを切り抜けた、こういう点がございます。ただ、クリスマス電球のような、もうとうてい競争になりませんものは、国内の仕事に切りかえた。そういうことで今度の打撃をどうやら切り抜けてきておるように見ております。  それから、最後の金の問題でございますが、最近のドルの信用の動揺、これから起こります国際通貨の問題の特徴は、投機的な資金が特定の通貨に向かいませんで、金に向かっているということが特徴でございます。特定の通貨に向かいましたたとえばことしの二月のような場合には、マルクがたいへん買われてドルが売られたわけでございますが、その後にきめられました変動相場制、これの——変動相場制には、いい面も悪い面もあると思いますけれども、そのいい面が今度の動揺では発揮されて、要するに、投機をする者にとっては、相場がどう動くか見当がつかないという変動相場制は、なかなか投機がしにくいという面があるようでございます。それで、そういう資金が金市場に向かっておるのが現状でございます。  ところが、金の取引量というのは非常に限られておりまして、そこにまとまった金が入りますと、非常に値が飛ぶわけでございます。そういうことで、最近の全く意外な金価格上昇になっておると思いますが、いまの状況では、各国とも、金とそれぞれの国の通貨とを直接には結びつけておりませんので、この動きが非常に大きくはございますけれども、それが直ちに各国通貨に直接的な影響を及ぼすという事態ではない。ただ、私どもの心配しておりますのは、こういう特定の物資ではありますけれども、そういうものの値段が非常に大幅に上がるということ、またそれに非常にスペキュレーションが伴っているということは、世界的な商品価格に対して心理的な悪影響がある。その点はわれわれとしては警戒しなければいかぬのではないか、こう考えておるのでございます。
  23. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 五月の三十日に公定歩合引き上げが行なわれたわけです。六月の十六日から第三次の預金準備率引き上げが行なわれるということをおきめになったわけですが、こうした情勢の中で、本年度の下半期の景気動向というものは一体どうなるのか。この公定歩合引き上げの前の総裁の記者会見の談話等では、下期においても相変わらず強い景気上昇場面というものが出てくるだろう、こういうお話だったわけですが、今度の金融引き締め政策、これによってどう変わっていくのか、その辺のお話を承りたいと思います。
  24. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ことしの一月と三月に準備率の引き上げをいたしました。そのころは、先ほどもちょっと申し上げたのでありますが、国際通貨の問題がだいぶごたごたしておりまして、思い切った金融引き締め政策がとれなかったのでございましたが、それが一段落いたしましたので、四月の初めに公定歩合の〇・七五の引き上げ実行いたしました。そのころにすでにこういう強い引き締めをいたしますと、やはりあのころ使われたことばでございますが、景気のオーバーキルになる、それで下半期には景気がスローダウンするのではないかという意見がずいぶんございました。ところが、その四月の初めの公定歩合引き上げ後の推移を見ますと、先ほども申し上げましたけれども、一時卸売り物価がちょっと足踏みをした程度で、物価は依然として上がっておりますし、しかも、その後の企業の、たとえば収益がいいということ等々もございまして、五月に入りましてから日本銀行実行いたしました大企業並びに中小企業景気の観測、経済観測、その数字をまとめましたところが、五月十日現在で、将来に対して非常に強気の見込みでございました。それは売り上げにつきましても、生産につきましても、それからまた設備投資につきましても、相当今後増大するという見込みが出ております。したがいまして、私どもは、四月の初めのそういう引き締め政策後約一カ月余りたってこういう判断が行なわれているということは、経済の先行きが相当強い力を持ってのぼっていくということのあらわれであるというふうに考えましたので、五月の末の第二回目の公定歩合引き上げ並びに第三回目の準備率の引き上げ実行したわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、日本の経済は少なくとも年内は相当な勢いで上昇するものと思っております。しかしながら、いままで、昨年の暮れからことしの初めにかけましての実質経済成長率が一五%をこえておる現状でございますから、これはどうしても下げなければならぬ。そう下げる必要のためには、やはり景気上昇の早さが今後ある程度スローダウンすることはぜひなければ困るわけでございます。それはこのたびの政策のねらいでもあるわけでございますから、いまと全く同じ勢いで上昇するとは考えておりません。その効果が先ほどもどれくらい時間がかかるかというお話がございましたけれども、おそくともこの秋ぐらいからは経済成長率は一時現在よりはスローダウンするものと、こういうふうに期待をしておるものでございます。
  25. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 スローダウンするというのですが、先ほど具体的に五月段階で一五%というお話があったのですが、秋、六カ月後くらいのお話も先ほどありました。大体総裁はどのくらいのスピードを予想されておりますか。
  26. 佐々木直

    参考人佐々木直君) スピードと申しますと
  27. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その成長率ですね。
  28. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 率。
  29. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 率で大体どのくらいを想定されておるか。
  30. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 落ちつくところは、たとえば年度間といたしましては一一、二%ぐらいのところへ落ちついてほしいと思います。
  31. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 今度の公定歩合引き上げ、あるいは準備率の引き上げ、こういうことが、いままでのお話ですと、全体的な景気の行き過ぎ、景気の強気の上昇を全体として押えるというようなお話であったわけでありますけれども、今度の、先ほどの戸田委員に対する御答弁の中にも、金融政策というものは重点を限って、その重点に向けてやっていく必要がある、こういうお話もあったように承っているわけでありますが、今度の引き締め重点といいますか、それは一体どこを重点にするんですか、いろいろあろうと思う。   〔委員長退席、理事土屋義彦君着席〕 先ほど消費金融の問題もありました、あるいは大企業の中でも、たとえば投資の問題もありましょうし、あるいは在庫の問題もあるでしょうし、あるいは生産の問題もあるでしょうし、いろいろな目的というものが当然その中にあると思うわけですが、もう少しきめこまかに考えてみますと、一体どの部面に対して金融引き締め効果が最もあらわれることを望んでおられるか、こういう少しきめこまかい点で御説明いただきたいと思います。
  32. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 先ほどの御質問に対する私の答弁は、実は個別的な規制、そういうものをどういうふうにしてやっていくかという御質問に対してお答えしたわけでございまして、したがいまして、そのときには消費金融不動産業者に対する金融につきましては、個別的な業種別の規制をやっております。その業種別規制というのは、あまりいろいろの業種をたくさんやりますことは、実際のやり方としてはなかなかむずかしい、こういうふうな御説明をいたしたわけでございますが、金融政策、今回の引き締め政策重点ということでございますと、これはやはり総需要の中で、企業の投資需要に一番重点を置いて引き締めるべき性質のものと思います。この企業の投資の中には、企業の設備投資需要と企業の在庫投資需要二つございますが、この両者をともに押えていくということが、この金融引き締め重点と申すべきだと思います。
  33. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 企業を重点に押えていくというお話で、その点はよくわかったわけですが、どうも総裁の意見であるのか、あるいはマスコミがかってにそれを言っているのか、あるいは政府筋の話なのか、私よくわかりませんけれども、どうも最近の金融引き締めのねらいというのは、消費者を対象に、消費者、たとえば先ほどのお話の中にもボーナスがたいへん出るとか、あるいは新聞によっては、ことしの賃上げが二〇%近い大幅な賃上げであるので、消費景気というものが非常に大きくなってくるだろう。したがって、百貨店売り上げもそういうところにあらわれてくるのではなかろうか、そういうことで、消費景気抑制あるいはボーナスの引き締め、こうしたところに今度の引き締め重点があるいはあるのではないか、こういうような論説というものが盛んに出ております。いまのお話のような、企業の設備投資あるいは在庫投資という、私もそれが筋であろうと思います。しかし、どうも横へ、金融引き締め政策が全体として総裁の一番もとの意見とは別に、どうもその方向に新聞もその方向で書き、末端の銀行もそういう方向をとっておるような感じを私いろいろあちらこちらで末端であって感じを受けるわけです。どうもそういう方向にいくのではないかというような気がするんですが、その点について総裁としてどういうふうにお考えですか。
  34. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまのお話がございましたような、消費者の需要に対しまして、金融政策というものがどういう効果を持つかと考えますと、消費者に対して直接的な影響というものは、金融政策はなかなか及ばない性格のものだと思います。たとえば、ただいま例におとりになりましたボーナスのことなどでございますが、ボーナスは、結局基準になります賃金と、それに対して何カ月出すかということがきまりますと、それはそのとおりそれによって具体的に支払われるのでございまして、そのときの金融情勢がどうかということは、その額にはあまり影響はしないものだと思います。ただ、いままで引き締めをやりましたときに、影響として具体的に出ましたのは、たとえば十万円のボーナスを払いますのに、それを二度払いにするとか、それから一時社内預金にとめておいて、あとしばらくたってから払い戻させるとか、そういう金繰り上の影響引き締めによって出たことはございますが、総額が金融引き締め政策によって直接に影響を受けるという例はあまりなかったように思います。したがいまして、私どももそういうようないままでの経験から考えまして、金融引き締め政策重点というのは、やはり企業の投資態度に影響を及ぼすべき性質のものであり、全体としての経済の伸びがある程度落ちつくことによって、たとえばボーナスの率が変わってくるとかというようなことは、間接的にある程度時間をかけて起こる問題だと、直接的な金融政策のねらいにはなり得ないというふうに考えます。
  35. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 総裁のおっしゃることはそのとおりだと思うんですけれども、現実に金融の末端にいくと、たとえばあなたは先ほど住宅ローンについては一−三月の増加額ぐらいは出すべきだ、こういうふうに言っているんですが、末端にいっての住宅ローンというようなものは、これはそのとおりいってないんですね、現実には。たとえば住宅ローン限度額二千万円というふうに上げてあるんですけれども、実際に借りに行くときには、おまえの年収の二年半分だよと、こういうことになりますと、二千万円借りるという人はほとんどない。せいぜい四、五百万円程度しか借りてないというのが実態です。さらに、きょうも私ある人に言われたんですけれども、地主が、いま住んでいる借地ですね、これを売りたい金を貸してくれ、預金が、まあ五十万円が、ほんとうかどうか知りませんが、あるとすると、そんなものは預金じゃないよということで相手にしないわけですね。こういう実態があるわけです。あるいは銀行住宅ローンの申し込みに行けば、これは住宅専門の金利の高い金融会社にあっせんをする。こういうようなことで、実際に住宅ローンということで、金を借りれる人は、セカンドハウスをつくるための金を借りる、これは借りれる。ところが、実際に住宅に困った人が住宅ローンを利用しようとしても、これは借りれない。これ回っていきますと、竹田さん、住宅ローンというのはセカンドハウスを買うためのローンなのかという質問を私は受けました。そんなはずはない、そんなはずはないと言ったっても、セカンドハウスを持てる人は金を貸してくれる、それだけの担保能力もあるでしょうし、あるいは返済する能力もあると見られる。ところが、一般庶民の、住宅をほしい、何とかして貯金を積み立てて、そして住宅を持とうとするときには、土地も木材も上がっちゃって、実際手が届かない。そういう人には住宅ローンの利用というものはほとんどできないというのが実態ですよ。これは総裁御存じだろうと思うんです。だから総裁が、具体的に住宅ローンについては増加額、これは特に縮小はしないと言っても、現実の一番末端においては、住宅ローンというのは縮小してしまってるんですよ。これは一体日銀が、銀行関係が悪いのか、大蔵省が悪いのか、私どこが悪いのかよくわかりませんけれども、現実にはそうなんです。だから総裁が、金融政策引き締めの基本は、設備投資や、あるいは在庫投資、この両方を押えていくんだと、こういう方針でいても、銀行の末端は違うんです。この辺はどうお考えですか。どこに責任があると思いますか。   〔理事土屋義彦君退席、委員長着席〕
  36. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 私は、住宅ローン増加額が落ちているという事実はまだはっきり確かめておりません。総体として、いまの金融政策考え方からいいますと、住宅ローンでも、どんどんどんどんふえていくということでは、建設資材あるいは建設のための労力との、バランスがあまりこわれますから、これもほどほどにしてほしいということは申したことがございます。しかし、私は、一−三の増加額より四−六の増加額のほうが落ちているという事実はまだはっきり握っておりません。  ただ、この責任がどこにあるかということでございますけれども、各金融機関の貸し出しの実額を幾らにするというような具体的な数字による統制はいまやっておりませんので、われわれとしては、いわゆるモーラルスエージョンと申しますか、こういうふうにしてほしいという程度のことしか申されない現状でございまして、したがって、責任がどこにあるかということにつきましては、そういう体制になっておらないということが事実であるということだと思います。
  37. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 結局、その同じ住宅ローンが同じ程度落ちても、あるいは上がっても、現実にはその内容が違うんですね。セカンドハウス、サードハウスを持てる人は住宅ローンをどんどん利用できる。ほんとうに住宅が狭苦しいところは、少し広いところに移ろうという人には、住宅ローンが利用できない。利用できても、ごくわずかだ。とても、土地を買ったり、家を建てたりする金額は手に入らない。こういうことなんです。これは銀行局長、どこに責任があるんですか、こういうやり方をするのは。銀行局がそういう指導をしているんですか。あるいはそういうことを知っていても、銀行局はそれを注意をしないというのか。一体、どこにこの問題の監督責任といいますか、指導責任というものがあるんですか。これはひとつはっきりさしてほしい。
  38. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) ただいま総裁からお答えがございましたように、まず、現在の金融引き締め政策は、総量としての量を調整していく。そしてその重点が企業の設備投資を押えていく、こういう体制の中で、住宅金融、特に住宅ローンについては、できるだけ配慮を加えてほしいというのが現在の指導の大まかな方針でございます。で、その場合に、特に私のほうの大臣からも、たびたび金融関係にも機会あるごとに話しておりますが、セカンドハウスであるとか、あるいは不要不急のローンをできるだけ押えて、真に必要な住宅ローンにしてほしい、こういうようなことで指導はいたしております。  ただ、具体的に、幾らの金額を、どういう条件で貸すかということは、現在の体制では、金融の自主的な判断に待っているということでございます。ただ、政府金融機関として、住宅金融公庫などを利用していただく方には、できるだけ広く利用していただくという意味から、限度などが設けられておりますけれども、あるいは金利も指導しておりますが、いわば、民間金融機関の場合でございますと、これを画一的に扱うということはなかなか、やっても事実上はむずかしい話でございますし、またやること自身がいいかどうかということについては、幾多の問題もあろうかと思います。  ただ、今後の住宅ローンのあり方については、現在、金融制度調査会住宅金融部会、そういう住宅ローンに向けられるべき資金をできるだけ長期的な角度から確保していく、そういうものの量がふえていくというためには、いかにあるべきかということをいろいろ研究しているというのが実情でございます。
  39. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 銀行局長、あなたのその御答弁じゃ私は満足しないですよ。結局、余裕のある者は幾らでも建てられる、幾らでもいいと。一番苦しんでいるところに、何ら行かないわけですよ。いま金融政策引き締めろと、こう言って、そういう手は打たれつつあるんだけれども、これじゃ全然私は、その目的と実際の効果というものとは大いに違ったものになっている。適時適切なところに金融政策の手が及んでいかない、あるいは国の政策の手が及んでいかない。これはそのままに放置されるということは、ますますもって銀行の態度、こういうものに対する批判というものはますます高まるわけですね。いま申しました、五十万円は預金ではない、こう言う銀行の支店長に、その人はたいへん食ってかかっているんです。預金をほしいときには、十万円でも幾らでもありがとうございましたということで預金を預かるくせに、金を貸すときには、その人の預金が五十万円ぐらい預金じゃないと、貸す態度を全然見せない。こういうような銀行行政が続けられているということは、私はまことに残念だ。もう一回答弁を私は求めざるを得ないし、いまお答えができなければ、そうした形の銀行行政というものを私は是正してもらわなければ困ると思う。これは次官どうですか。政務次官に聞きます。
  40. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 多少私見にわたるかもしれませんが、日本住宅政策は、やっぱりナショナルミニマムをどうして満たすかということにはっきり方向が定まってないというところに、実は問題があるんじゃないかと思います。セカンドハウス等は、とりあえず政府がかかわるべき問題ではない。そうではなしに、やっぱり住宅困窮者に対して住宅をどうして政府の手で提供するようにしていくかというところに、日本住宅政策自体が、物の面においても、金の面においても、ほんとうには持たれていないという点があるんではないかというふうに反省をいたします。しかし、一方からいきますと、先ほど竹田委員の御質問にもありましたけれども、住宅ローン等を締める場合もあってやむを得ないのではないか。ということは、私たちのやっているいまの予算というのは、予算、財投、民間の経済見通しにいたしましても、すべてマネタリーのシステムだけとっている。そのためにセメントがなくなったり、木材がなくなったりして暴騰しているということでありますと、限られた世界の資源でもありますし、またそうセメント等が非常な増産ができる状況にもないとすれば、どっかのセクションで、物の需給でそういったものはある程度チェックしていくことのほうが、国民にはほんとうに幸せになるんではないかと、そういう点で私はやっぱり根本的にいろいろ考え直す面が多いように考えます。
  41. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がなくなるからこればかり議論しちゃいれませんけれども、日銀総裁は、住宅ローンは締めるつもりないと言っているんですよ。締めてないでしょう。しかし、現実には締まっているんですよ、下では。私はそれを問題にしているんです。それに対してあなたは余分にそらしたようなことを言って、住宅政策を、住宅融資を、あるいは住宅建築を、資材がないから締めることもあると。それは金融政策なり、国の政策が、住宅建築を締めるという方針であるならいいですよ。そうじゃないんですよ。住宅ローンは同じようにやっていくんだと、こう言っているのに、現実に下では締まっているわけですよ。だから、私はけしからぬと言っているんです。
  42. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) これは、金融機関を国家管理してない限り、強制力ではなかなかできない。事実上資金需給が非常に苦しいときになりますと、銀行はそういう場合があり得ると思うのです。それはいまのところでは、やっぱり大臣なり局長から通達を出したり、あるいは金融機関に協力を求めるというやり方以上には、事実上なかなかできないんじゃないかと思います。資金が余っているときならどんどん出すでしょうけれども、日銀のほうでぎゅんぎゅん締めてきますと、銀行の選択としては、従来の取引関係とか、そういったものを重視するというのは、それはもう行政でなるべく協力してもらうという手以上には、現状では出れないんじゃないかと、できるだけ行政的な配慮をするということに尽きると思います。
  43. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それなら、自動車の問題だって、何の問題だって同じですよ、そんなこと言うなら。冗談じゃないですよ。そんな答えでごまかされちゃかなわんですよ。
  44. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) ごまかしてない。
  45. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ごまかしてるでしょう、そんなもの。金融政策は、住宅ローンについては、これはいままでどおりだとこう言っているでしょう。それを下のほうの銀行の立場にあんたがなって、銀行というのも国家管理じゃないからといって言っているわけじゃないですか。そんなことであるならば、何も金融引き締めなんてわざわざと、住宅ローンには関係ございませんなどと、そんなことは言う必要ないわけですよ。ここにおいては、強者が強く、弱者が常に弱いという形しかないじゃないですか。そんなばかなことないですよ、いまの世の中で。金があるやつはそれじゃ何だってかってなことができるということじゃないですか。
  46. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) それは、たとえば大企業の金融引き締めていったときに、それが中小企業に波及するという場合、望ましいことではないけれども、あり得るわけです。金というのは糸目がついてないわけですから、どうしたってどこかで締めていきますと、そのしわがあちらこちらへ寄っていくということは、現実の問題として私は避け得ないと思います。そこで、金融機関に向かって、できるだけ竹田先生のおっしゃるようにひとつやってくれということを行政で協力を求めていくというのが、いまのやり得る限度内ではないかと思います。金には糸目がついてないですから、どうしてもしわはどっかに寄っていくんです。そのしわの寄せ方を、預金サイドを無視しないようにしてくださいということを、金融機関に協力を求めるという形以外に出ようはないのじゃないかと思います。
  47. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 非常に不満足です、そういうことでは。ここでだけそんなことを言ったって、下じゃやっていないのだ。とんでもないですよ。大蔵省の威令全然行なわれていないじゃないですか。まあ、その問題は、また次の機会に私はやりたいと思うのです。きょうはせっかく総裁がお見えになっているんですから、それはあとでゆっくりひとつ大蔵省なり、銀行局なりとやっていくつもりです。  そこで、総裁にお聞きするのですが、預金準備率を〇・二五%今度上げたわけです。私ども去年のこの大蔵委員会で、預金準備率を二〇%ぐらいの最高限度額をきめるために去年法律通したわけです。ところが、去年法律を通したことがちっとも預金準備率引き上げるという形で行なわれないわけですね。私どもは去年大蔵省の説明聞くと、四兆四千億もドルが入ってきて、円が散布される心配があるから一〇%じゃだめなんだ、二〇%の最高限度額にしなければどんなことになるかわからぬ、こういう説明を聞きました。ところが、今度やっておりますところの預金準備率、これ最高でも三、四%ですか、一兆円をこえる預金でも。一向に金融引き締めの役にこの預金準備率というものが大幅に役立っているとは私は思っていないわけです。まあ、ある雑誌によると、今度の預金準備率の〇・二五%も、日銀はお義理で上げたという評論も直ります。これは評論ですからまあいいです。こうしたことも、一体六月十六日よりなぜもっと前にこれをやらないのか。ほんとうに金融引き締める必要があるならば、これは早いほうが私はいいと思う。何で六月十六日に、しかも〇・二五%という——まああまりたいしたことは私はないと思うのです。総額でせいぜい二千億か二千五百億ぐらいの縮小になると思うのです。どうして六月十六日に〇・二五%という形で、その率で上げたのか、その辺の根拠を御説明いただきたい。
  48. 佐々木直

    参考人佐々木直君) いまの御指摘の問題は、実は四兆四千億という多額の外為会計の払い超過があった四十六年度において、なぜ資金を吸収しなかったかという間間がまずあると思います。そのときには、実は為替相場というものをできるだけ安定して維持して、国の貿易の障害を起こしたくないという考え方が非常に強かったわけでございます。実は、戦後における日本の国際収支の問題のときには、いままではそれはみんな赤字で困ったわけでございますが、金融引き締め財政引き締め、そういうようなことによりまして調整をいたして、為替相場による調整ということはやらないで二十数年きたわけです。その考え方が続いておりましたので、あの四十六年度の時点において金融引き締めをやりますことは、さらに輸出をふやし輸入を減少させて黒字幅をさらに大きくすると、そういうことによって、さらにまた国際収支の黒字からくる国内流動性の増大を来たすということから、あのときにおいては金融引き締め政策がとれなかった。これは後世の批判をまたなければならない点だと思いますけれども。したがいまして、準備率の引き上げ実行いたしましたのは今年の一月からでございます。一月にまず準備率を一回上げましたが、御承知のように、二月に例の為替の動揺がございまして、それでドルの一〇%切り下げ、日本の変動相場制への移行ということで、円がドルに対して一五、六%の上昇になった。その影響日本の経済にどういうふうに出てくるかを見ておりましたが、それほど大きなものもないというので、三月の準備率の引き上げということをいたしました。したがって、この段階ではもう、何といいますか、為替の変動がありましたけれども、だんだん実は外為会計の払い超過は減ってきております。三月には、大幅な外貨の準備の減少から約三千億円の外為会計は揚げ超になっておるのでございます。その傾向は四月も五月も続いておる。ですから、金融引き締めに転じたときには、資金の需給のほうは逆に引き揚げ超過になって、かつての姿と全く逆になっておるというのが実情でございます。したがいまして、第三回目の預金準備率引き上げ、これは六月から実施ということでございますけれども、実は季節的な資金の需給の面を考えますと、外為会計の揚げ超も加わりまして六月、七月、八月の三カ月間で、三兆円をこえる資金の引き揚げがあるわけでございます。三兆円の不足を来たす金融市場を目の前にしておりましたので、今度の準備率の引き上げが小幅であって、約二千億円の吸収ということにとまったのが実情でございます。したがいまして、二〇%まで上げた限度を、どうしてそれだけ十分に使わないのかという御指摘ごもっともでございますけれども、現実に引き締め政策ができるときの状態が、それ以前と実態が変わってきておる。それでそういうことから、大幅な資金吸収ということが適当でないという判断が出てきたと、こういうことでございます。
  49. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まあ私は、日銀総裁金融政策の面ではまあまあよかった(笑声)と実は思うわけですよ、率直に言って。あなたがいつも、たとえば財政規模についても、その他の金融引き締め政策についても、むしろ最近のところはあなたのほうが先に発言をしている。政府のほうがそれにむしろずるずると機を失している、こういう事態だと思うんです。ですから、日銀側として、政府に比べれば早く警告もいままで出していただいていたし、そういう点では時宜に大体適したという御発言を私は総裁はなされていたと、この点では私は総裁の御見識を高く買っているつもりでございます。そういう意味で、私はむしろ今度のこの物価高あるいは景気の過熱この大きい原因政府にあると思うんです。一番大きい原因政府にあると思う。これを言いますと、大蔵大臣たいへん苦い顔をしますけれども、確かに数カ月そうした政策が私はおくれていると思います。それが今日の物価高あるいは景気の過熱、こうしたものを招いている、これは間違いないと思います。これについては、次官に聞いてもしようがありませんから、大蔵大臣にまた聞くつもりでありますけれども。  ところで、日銀窓口指導について、四−六の月については二兆三千二百億でしたかの金額だったわけだと思うのですが、まだ実際六月という月は入ったばかりでありますから、具体的にはどうなるかわかりませんけれども、七−九の窓口指導、これについては一体どんなふうにお考えになっておるのか。これは昨年同期に比べてどんなふうな形をお考えなのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  50. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま四−六の数字がまだ——六月の分がまだ固まっておりませんので、四−六がどういうふうになりますか、少なくとも四月、五月の実績を見ますと、大体四−六全体として各金融機関にお話ししておりますワクの中でおさまっております。六月の決算資金の需要がどの程度になりますか、これで六月が一番むずかしい月になろうかと思います。したがいまして、七−九をどうするかということは、六月の大体の見当がついてからきめなければならないと思うのでございまして、いまの段階では、数字的に申し上げることはまだ準備ができておりませんですが、ただ考え方といたしましては、四−六の前年同期比の減少率よりもやはり高い減少率になるものだというふうに一応の見通しを持っております。
  51. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いろいろな経済雑誌を読んでみますと、大体二〇%前後と、こういうふうにいっておりますが、四−六は一六%減ですか、まあ大体その辺と考えて——前後ですよ、二〇%と直接いうわけではない、その前後というふうに考えてよろしゅうございますか。
  52. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 数字のことはいま詰めておりますので、ちょっと私からははっきりなかなか申し上げかねるわけでございます。
  53. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それではその点は、四−六よりも高いという数字ですから、一六%より高いということでありますから、そんなに私の——世間一般でいわれているものとそんなに差異はなさそうな感じがいたします。  それから物価動向については、総裁どういうふうにお考えになっておりますか。これは、日銀の調査局で前に出された調査報告によりますと、卸売り物価消費者物価関係というのは、大体弾性値が三・三くらいだと、これは過去の統計を分析してそうなる。タイムラグが大体五カ月から九カ月ぐらいだと、こういうような、これは鈴木淑夫さんの論説だったと思いますけれども拝見を私したことがございますが、いま卸売り物価の動向というのは五月の上・中旬ですか、これはちょっと下がったと思うのですけれども、全体としてはやはり対前年同月比で一二%ぐらいですか、まあたいへん上がっているわけです。これがそのままいくとは私は思いませんけれども、若干は騰勢をにぶらせるということはあるとは思うのですけれども、しかし、現実に一二%これまで上がっているわけですね、昨年に比べまして。そうしますと、やはり消費者物価というものも、五月の東京都区部の統計によっても一一・六%ですか、前年同月比で上がっているわけですけれども、一体この夏から秋にかけての消費者物価の動向あるいは卸売り物価の動向というものは、一体どういうふうになっていくと総裁はお考えでございますか。
  54. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいままでの卸売り物価それから消費者物価の根強い上昇を見ますと、これが今後どういうふうに推移をいたしますか、見通しを立てることは非常にむずかしいと思います。いままで申し上げましたような、金融上の施策をいたしましたけれども、これが効果をあげますのにはある程度時間もかかりますでしょうし、したがいまして、目先これから秋までの物価情勢、これを見通しますことはなかなか困難ではございますが、やはりいまの海外物価の情勢それから国際通貨の問題がきわめて不安定であるということ、それから国内需要の強さ、そういうものから考えますと、まだここしばらくは上昇が続くんではないかという感じがいたします。ただ、実は卸売り物価上昇が、消費者物価上昇へつながりますタイムラグは、ただいま御指摘がありましたように、以前は相当長かったわけでございますが、今度の卸売り物価消費者物価上昇を見ますと、そのタイムラグが非常に縮まっているように思われます。この縮まっている理由がどこにあるかということでございますが、この点はやはりよく一般に申しておりますこのごろは物の値上げが通りやすくなったということばが使われますけれども、結局買い手がわりあいに物の価格上昇を、まあしかたがないといって受け入れ傾向が強い。これは商売人同士の話でございますけれども、そういう傾向が強い。これは結局は需要が非常に強いから、買い手がそういうふうに腰が弱くなるということであろうかと思います。したがって、ただいまの金融政策重点が、その総需要抑制、総需要の中でも、企業の資金需要抑制ということに置いておりますのは、そういう買い手の腰を、金を詰めることによって強くしたいということ、それによって物価上昇をとめたいという考え方からきております。したがって、今後の物価の見通しというお話でございますが、はなはだ遺憾でございますけれども、まだしばらく上昇が、多少穏やかにはもちろんなると思いますけれども続くのではないか、ある程度の具体的な物価安定の効果はもう少し時間がかかるんではないかという感じがいたします。
  55. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 こう物価が上がってきますと、まあ形の上では消費景気と、百貨店売り上げがふえると、こういう形、あるいは自動車ローンが非常に利用されてふえると、まあ自動車というのは、最近は注文しないとあるのは買えないということで、相当の、注文してから手に入るまでは時間がかかるということにまでなっているそうですが、私は、この問題は、おそらく、ただ消費者が金があるから物を買うんだという、そういう形の、普通の必要があるから買うんだという、いわゆる消費景気じゃ今度はないと思うんですね。一種の換物運動だと私は見てもいいと思うんです。金を持っていてためておいても、一年もすればもう一割減価してしまう、こんなことなら物にしておいたほうがいいと、まあ金選好が最近強くなったということも、私はそういうことであったろうし、絵画の問題もいろいろ問題はありましたけれども、絵画に走るというものも私はそういう問題点だったと思うんですね。ですから、そうした意味では、やはり早く物価の値上がり、いわゆる貨幣価値の下落という問題を早く何とか処置しない限りは、もう私は悪性インフレだと思うんですけれども、インフレ論というやつがなかなかいろいろむずかしいわけでありますから、インフレでないと言う人もある、インフレ的だと言う人もありますけれども、現実的には、私は、そうした消費景気というものは、貨幣価値が下落をしていくという換物運動に実はあると思うんですよ。そういう意味では、いまの総裁の発言というのは、まことに遺憾なような気がするわけです。たとえば、秋ごろまでには騰勢は今度は下り坂の方向に持っていくとかなんとかというくらいの立場で、通貨の安定の一番主役である日本銀行総裁として、もう少し確信を持ってもらわなければ困るんじゃないかと、まあ金融政策の限界ということを総裁はしばしば口にされているわけでありまして、まあ金融政策だけでは私も、全面的にいくというふうには思わないんですけれども、何かそういう点では非常にたよりがないわけですが、いまのところそれ以上の手は打てないと、何かほかに打つ手があるというのかどうなのか、金融政策に限らず、広い分野から経済関係の専門家としての総裁の御意見をこの際承っておきたいと思います。
  56. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいますでにもう六月でございますので、秋と申しましてもあと三カ月ぐらいしかございません。したがいまして、それほどまあゆっくり考えているわけではないのでございまして、この年初来とってまいりました金融引き締め政策効果、それからやっぱり最近の非常に増大しております輸入、こういうようなものは、やはり物価上昇を鈍らせるのに必ず役に立つものと私は信じております。ただ、その時期がいつかということにつきましては、まだいまここで責任のある時期の明示と申しますか、明言がなかなかむずかしい事態にあるということは御理解いただきたいと思います。  さらに今後手があるかという御質問でございますが、われわれとしては、もちろん今日までやってきましたことで十分だということは、いまの段階では申し上げられますけれども、今後の推移いかんによりましては、さらにいろいろ方策を考えなければならない、それだけの準備はやっておかなければいけないと思います。しかしながら、いまは、ごく最近公定歩合引き上げをやりましたから、いまここですぐ具体的なことをしなければならぬという段階ではないと思います。しかし、事ここで終わりだという感じで、いまのようなむずかしい事態を見ることは、これは決して適当ではないと、こう考えております。
  57. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いま総裁おっしゃられたことは、金融面の分野に限られておっしゃられたような気がしますけれども、いまこの段階になると、私は、金融面だけでいいとは思わないわけです。財政面からも景気の過熱ということを防ぎ、需要インフレを押えていくということが、私は、必要になってきていると思うんです。財政政策としていまやるべきこと、これを総裁としてどういうふうにお考えになりますか。
  58. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 先ほどもちょっと触れましたけれども、財政政策の面では、支出の繰り延べがきめられております。しかし、これは年度内の繰り延べでございまして、総体の年度計画が変わったわけではないわけでございます。で、はたしてこれがそれで十分なのか、景気を押える上で十分なのかどうかという問題は、今後の推移を見てまた考えてもらわなければならないと思いますけれども、ただ、いまの時点では、まだ新年度がスタートしてあまり日がたっておりませんので、それを具体的に議論することはまだ適当ではないかと思います。しかし、その問題はわれわれ非常に大事なこととして考えております。  それから資金面では、国債発行を繰り上げて実行しておられますが、これは適当であると思います。ただしかし、総額として国債発行額をどうするかということは、これはまた年度の後半になってまた判断が必要な点ではないかと、こういうふうに思われます。したがって、今後の財政の運営につきましては、かねがね申しておりますように、現在の物資の需給労働力の事情を考えて、その調整につきましては、絶えず実態を見ながら新しい事態に合ったやり方に変えていただく必要があると、こういうふうに思っております。
  59. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がなくなりましたからあと若干まとめてお聞きをしたいと思うんですが、最近新聞紙上に安定国債というものが非常に出ております。まあ具体的に安定国債をどういうふうにしていくのか、どういう部面にそれを販売していくのか、あるいはその資金はどういうふうに使っていくのか、こういう面があんまり明らかでないですからよくわからないわけですけれども、安定国債というものは、もしつくるとしたらどうあるべきかという点を一点お聞きをしたいと思います。  それから、中期預金ということが最近非常にいわれてまいりました。たとえば、住宅ローンの資金は長期に必要だからということでありますけれども、この中期預金については、長期信用関係を扱っている機関、あるいは中小金融機関というものと、都銀との間でこれはかなり確執のあるところであります。この中期預金というものは一体どうなのか、この点が第二点。  それから第三点は、預金利子の問題ですけれども、愛知大蔵大臣は、預金利子についてこれは引き上げるべきだと、こういう御発言を、この間もどこか旅先でおっしゃられたようでありますけれども、預金の金利については日銀総裁としてはどのようにお考えになっておりますか。  それから第四点でありますけれども、この財政金融政策の結果、今日のような事態を招いているというふうに私は思います。で、前に総裁は、日銀法の改正について改正すべきであると、こういうことをおっしゃられたわけでありますが、大蔵大臣は、これは二、三年かけてじっくり改正をすべきだと、こういうふうにお答えがあったわけでありますけれども、最近のように、消費者物価は上がり、先ほどの議論のように、消費者が犠牲を受けている、こういう事態の中で、日銀政策委員会の構成というものが問題ではないか。消費者を代表する政策委員というものの任命というものがないということは、今日のように消費者の発言権が大きくなった段階では、消費者団体のそうした財政金融政策に対する発言、特に金融政策に対する発言、そうしたものをいつまでも封じておくわけにはいかないわけです。たとえば、日銀政策委員に大蔵省出身者、大蔵省を代表する者、あるいは経企庁を代表する者、これはなるほど出すことができるように日銀法は規定してありますけれども、しかし、これは議決権がないわけです。でありますから、どうしても今度の日銀法の改正を早くして、やはり金融政策というものが、消費者物価にこれはやっぱりかなりの影響があるわけです。そういう意味では、消費者の代表を日銀政策委員の一員として加えていくような法律改正を、私はすべきだと思うんです。それでないと、むしろ、銀行というものと、一般消費者というものとの間にあつれきが今後起きてくるということも考えられるわけです。そういう日銀法の改善について、一体どのようにお考えになっているか。  以上の四点についてお答えをいただきまして、でき得ればそれで質問を終わりたいと思います。
  60. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 第一の安定国債の問題でございますが、実は私、この問題につきましてはまだ、いろいろ新聞などで目にはしておりますけれども、いよいよこういう考え方でやるんだという具体的な案はまだ存じておりません。ただ、ドイツの例などを見ますと、非金融機関、まあこれは主として個人とか、あるいは法人の一部だと思いますが、そういうところの余剰資金を吸い上げるという考え方、ですから、消化先は、そういう金融機関以外であり、しかも、そういうところの資金を誘い出すためには、条件をできるだけよくする。しかし、これはほかの投資物との関係がございますから、どの程度よくできるか、それはおのずから限界があろうかと思いますが、そうして、それによりまして得られました資金は、ドイツの場合などは、それを一応中央銀行に凍結するということが考えられております。景気の過熱を押え、資金の余剰をなくさせるという点からいうと、いまのような非金融機関——対象は非金融機関であり、条件はできるだけよいことが適当であり、かつ、資金は中央銀行へ凍結するのがいいか、いろいろ凍結のしかたはあるかと思いますが、凍結をすることが適当であると思います。そうしてその凍結されたものは、今度は、景気が、潮が変わりましたときにそれを使うという考え方がいいのではないか。これははなはだ抽象的でございますが、そう考えております。  それから、中期預金の問題でございますが、私は、預金者にできるだけ金融機関が金利の面で優遇するということは、たいへん大事なことだと思っております。前、国会でも私その趣旨答弁をしたことがございますが、そういうことで、金融機関のほうで、いまのような環境の中で、期間を延ばすことによって高い金利を払うことができるという判断、これがまた、ただいまの住宅ローンなどの資源にもなるということだと、この筋は、私けっこうだと思います。ただ、これが、中小企業金融機関にとりましては、資金コストの引き上げになりまして、収益面で圧迫になりますし、それからまた、長期金融機関——長期信用銀行並びに信託銀行でございますが、そういうところのいまやっております資金の集め方との競合もございます。したがいまして、私は、筋はたいへん賛成でございますが、そういうような調整はぜひ必要であって、その点をよく話し合いをしてもらいたいと、こう考えております。  それから第三番目の預金金利でございますけれども、先般−数年前でございますが、金融制度調査会で、預金金利にも弾力性を持たすべきだ、日本では貸し出し金利はわりあいひんぱんに動くけれども、預金金利というものが非常に固定しているというようなことについての検討がございまして、そうしてやはり預金金利もある程度の弾力性を持たすべきだ、それは貸し出し金利と全く同調する必要はないけれども、貸し出し金利が数回動いたときには、一回動くといったぐらいの弾力性はあってしかるべきだというお話になっております。この数回というところを何回と読みますか、そこに問題があるわけでございます。したがいまして、先般来、日本銀行が数次にわたりまして公定歩合を引き下げましたときには、最後の段階で初めて預金金利の引き下げをいたしました。しかし、今度上げますときには、いまの物価情勢もございますし、第一回目の引き上げですぐ預金金利を上げたのでございますが、第二回目のときには、今度は預金金利を上げませんでした。しかしながら、今後さらに公定歩合を上げ、貸し出し金利が上がっていくという過程においては、預金金利をどうするかということを十分検討しなければならない段階であろうかと思います。  それから、最後の日本銀行改正の問題でございますが、私は、このいまの法律昭和十七年という戦争が始まった直後に、総動員法などの影響のもとでつくられておるという点から、できるだけ早い機会にそういう点は修正しなければならないという考え方は今日でも持っております。しかし、いまそれじゃ、いまの法律では仕事ができないかというと、そうではなくて、これで法律的には仕事ができるわけでございますが、しかしながら、いまのような情勢でございますので、この法律改正にあたりましては、十分慎重に検討するという意味から、やはり昭和三十五年に金融制度調査会にかかっておりますが、もう一度金融制度調査会にかける必要があるのではないかと思っております。  政策委員の問題でございますけれども、これは昭和二十四年に政策委員ができたのでございますが、このときの、いわゆる任命委員と申しますか、国会の承認を得て任命されます委員は、法律では「金融業二関シ優レタル経験ト識見ヲ有スル者」ということで、あとはすべて商工業、農業という業界について「優レタル経験ト識見ヲ」、こういうふうになっておりまして、この任命委員は、各界の代表という趣旨では、法律の上ではございません。ただ、大蔵省と経済企画庁から来ておられる委員は、これは「代表スル」ということになっております。したがって、現在の任命委員で、いまのような消費者の問題等々は十分検討されておるとは思います。そういう経験を持っておるということと「代表スル」ということとは、私は意味が違うと思っておりますから、そういう意味では、各般の問題について十分検討を各委員とも行ない、その点についての意見を持っておられると思います。ただ、今後日本銀行法の改正をいたしますときには、いま御指摘のありました点などは十分参考として考えてまいりたいと思うわけでございます。
  61. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 先ほどの質問の中で、今回の金融引き締め重点といたしまして、総需要抑制ということはあるんだけれども、特には企業の設備投資、在庫投資の抑制にあるという趣旨のお答えがございました。これと、物価対策ということをからめて二、三お伺いしたいと思います。  これは、あるところで調べた資料によりますと、最近の卸売り物価上昇原因としまして、こういう数字が書いてございました。感じとして大体合っているかどうか、まずお伺いしたいと思うんですけれども、一つは、海外インフレ影響によるものが大体二〇%ぐらいである、それから、需給アンバランスによるものが四〇%ぐらい、コストプッシュとして見られるものが三〇%ぐらい、その他が一割として、大体このような要因で昨今の卸売り物価が上がってきているのではあるまいか、こういう数字がある調査でありましたけれども、感じとしていかがお考えですか。
  62. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 私、その数字は初めて伺いますんですが、どうもいまのパーセンテージ、それが感じとして合っているかどうか、ちょっと私もいまお答えができる用意がございませんですが、物資別で非常に影響が違っておるかと思いますので、それをただ算術平均することもなかなかむずかしいのじゃないかと思います。はなはだ申しわけありませんが、ちょっと私も自信のある答弁ができかねます。
  63. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それでは、そこの中の一部抜き出しまして、いわゆる品不足といいますか、需給の食い違いが卸売り物価上昇をささえている大きな柱である、これは一般的なこととして御異論ないと思います。そこで、需要を押える、この場合は、個人消費の場合が大きな比重を占めると思いますけれども、それについては金融政策は先ほどお答えのように、なかなか直接的な効果を及ぼすというわけにはいかない、と考えますと、いかに品不足を解消するために物をつくるか、いわばそこで設備投資はむしろ抑制ではなくて、促進のほうに働くべきではないか、こんな議論もこの部分ではできそうな気がするんです。たとえば、どんなものが品不足としてあげられるかと考えてみますと、ナフサが足りない。これは世界的なナフサ不足ということにあわせて、実は公害対策ということが片面ではあると思います。片方では、いま鋳物というのがなかなかつくれなくなりました。それがモーターが高くなる、あるいはひいては機械類が高くなる、こうなるわけですけれども、じゃなぜ鋳物がつくれないかといいますと、環境問題からいってなかなか操業できない。したがって、これを物をふやすということになりますと、環境対策、公害対策含めた設備投資をしなければいけない云々というぐあいになってくるわけです。その意味で、なるほど物価対策、総需要抑制とは言えるんですけれども、一歩需給バランスということに突っ込んで考えると、各論段階では実はこれはもっとふやせということが緊急の必要事になるんではないだろうか、この点はいかがお考えですか。
  64. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 確かに物の需要と供給のバランスを回復いたしますためには、供給をふやすのと、需要を押えるのと両面ございます。長い目で見ればやはり供給をふやすというところで解決しないと経済の成長が期待できないということで、やはりそういったような設備投資は成長のためには必要だと思います。ただ、何と申しましても、目先われわれにとって最も大事なことは、物価の安定でございます。したがって、これから設備をして、それによって生産力をふやすという段階をとっているひまがないと申さざるを得ないのでございます。御承知のように、設備投資というものは、それが生産力になりますまでは需要要因として働くものでございますから、そういうことを考えますと、当面はやはり需要抑制ということでなければならないと思います。しかも、いまの日本の持っております生産力というものは、ずいぶん国としては大きな生産力でございまして、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、鉄などでも去年に比べれば二十数%の増産になっております。一年間に二十数%の増産をしても、なお足りないというような状態の場合には、何と申しましても需要が行き過ぎであると考えざるを得ないのでありまして、そういう意味からいいまして、やはり当面は、総需要抑制するということに政策の重点を置かなければならない、こう考えております。
  65. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 目先の問題ということで、おことばをお借りしてもう一つ伺いますと、コストプッシュと言えるかどうか別にして、人手不足がやはりコストを引き上げ卸売り物価引き上げる大きな要因であることは、これは否定できない。人手不足はどうかといいますと、たとえば、六〇年代の後半の労働人口の伸び率というのは一・五%ぐらい、七一年から五年にかけては〇・七%、たいへん伸び率が低いわけです。しかも、なおかつ実質成長率は、先ほどもお答えのように、今年度を通しても一一から一二ぐらいにしてみたい。目先のことでこれだけ開くわけです。これを目先の問題として卸売り物価安定に資したいんだといいますと、実は目先の省力投資ということも必要になってくるんではないだろうか。日本全体の生産力はなるほど大きいとおっしゃったのですけれども、いわばその中身の質の問題が、この部分はこれから要る、この部分はちょっと足踏みしてもけっこうだということが同時に問われてくる。これはもうつくってしまったわけですから一応しかたがないとして、新しくつくるほうは、やはり重点的に各論的な見方と対策配置が必要なんじゃないか。これは目先の問題としてやっぱり必要であると思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。
  66. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまの点は御指摘のとおりだと思います。  設備投資が何もかもみないけないという言い方は適当でないんです。私がいま申し上げましたのは、生産をふやすため、要するに需給のバランスを回復する、そのためには生産をふやすんだ、その生産をふやすための設備投資をいまやられると、それが需要要因となってまた需給バランスの回復には非常に時間がかかって、当面はマイナスの面が出るというふうに申し上げたわけでございまして、いまの労働力の事情から申しますと、省力投資というものは企業としてどうしてもやらなければならぬ。特に中小企業の場合には、一そう大企業よりも労力の調達がむずかしゅうございますから、特に中小企業の省力投資というものについてはよくめんどうを見なければならないと思いますし、もう一つ、設備投資の例外といたしまして、公害防止のための設備投資、これはぜひやらなければなりません。そういうようなものは二つ特別なものとして考えなければならない。私どもは、いま考えられております四十八年度の設備投資計画の金額的な問題でございますが、その金額の中で、いまのような二つのものは十分調達し得るというふうに考えておるのでございまして、あの計画をさらにどんどん上回って設備投資が行なわれることは防ぎたい、こう考えておるのでございます。
  67. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いま考えられておる四十八年度の設備投資程度のものはできるようにしたい。と、おっしゃっている意味というのは、どうもよくわかるようでわからないのですけれども、たとえば、公害対策あるいは省力化投資ということでそれはするのだといっても、総裁のところでできる金融政策は総論的、画一的に一つの網をかけるしかない、選別ということはなかなか窓口規制とおっしゃってもむずかしいだろうと思う。そこの中で、いま出ておる、どういう設備計画を想定しておっしゃったのかわかりませんけれども、中には当然増産も入ればいろいろのものが入っておる。その程度のものは今度の公定歩合引き上げ、あるいは預金準備率引き上げを通しても一応できるんだということになると、いまの物価上昇に対して想定されておる状況というものは、いま以上にとにかく悪くはしないんだということに主たる主眼があるでしょうか。というのは、総需要抑制するとおっしゃいました主たるねらいは、設備投資を抑制するという、抑制ということばをお使いになったから伺うのですけれども、しかも、実際にふたをあけてみますと、いま四十八年度として各企業が計画しておる分くらいはやってもいい、そのいまのお答えと、抑制というものをもう少しかみ砕いて御説明いただきたいと思います。
  68. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまの企業の実態から申しますと、金融機関がそういう企業から資金の需要がありましたときに、これが省力のための投資である、自分のほうはどうしても労働者が集まらない。したがって、これだけの設備をしないと、いまの生産が続けられないというような訴えがありましたときには、金融機関はその企業の存続のためにやはりめんどうを見るものと思います。それからまた、公害防止のためのものは、やはり企業としてこういう計算でこういうことはどうしてもしなければならないという話があれば、私は、その企業が依然として公害をそのまま続けておっていいのだということで、金融機関が資金の供給を拒否する、そういう環境ではないと思います。したがって、そういうような設備投資については、金融機関からの資金の供給は行なわれるものというふうに考えております。ただ、いま金額の点での御質問でございますが、私が申し上げたのは、政府の見通しにおける昭和四十八年度の設備投資計画、あの程度のものは総体の資金の需給関係からいって行なわれても差しつかえないじゃないか。ただ、私どもが心配しておりますのは、実はいろいろの機関で、四十八年度の設備投資計画をいろいろ調査をいたします。その調査が、時がたちますに従って、どんどんふくらんでおるわけです。いまのような一番新しい数字では、政府の見通しを越えてしまうわけでございまして、そこまでいかれると、要するに企業の投資需要として強過ぎるということで、いまのようなことを押えていかなければならぬというふうに申し上げたのでございます。
  69. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうすると、繰り返して確認するようですけれども、政府数字というのは、しばらく前の条件を基礎にして考えてある数字をつくってある。ところが、各企業それぞれが、労働事情の問題あるいは昨今たいへん厳格になってまいりました公害対策を含めて、従来ではその対策では間に合わないからということで、ある設備投資計画を組んできた、これはあくまでも個別の問題だと思います。それと、その総ワクとの関係で、これは金額としてふくらんでいるからいけないんだと言えるのかどうか。なるほどそれは設備投資ということから言いますと、景気刺激要因があるからいけないんだとおっしゃるのかもしれませんけれども、個々に見た場合に、そのふくらむことがいけないんだと自信を持って言えるかしらという気がするんです。
  70. 佐々木直

    参考人佐々木直君) その点は、政府見通しと申しますか、そういうものと具体的な仕事との間にどれだけ密接な関係があるかということだと思います。いまのような経済体制で仕事をしておりますと、見通しはやはり見通しでとどまりまして、現実に締めてみますと、その見通しと実績とがずいぶん違っている例がございます。ただ、一つのものの考え方といたしまして、われわれとしても、四十八年度に設備投資を全くしてはいけないとは考えていない、ただ、それがあまり大きな需要要因として働かれては困る、そうすると、どの辺が適当かという目安として何があるかと言われれば、いまの発表されておる政府の見通し程度のものならば、格別非常に強い需要要因とはならないんではないかと、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。したがって、年度が終わりまして、個々にいまお話がございましたような投資が行なわれたあとを振り返ってみますと、見通しと違っていることはこれは十分あり得るんじゃないかと思います。
  71. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 同じことをくどくお伺いするように思うかもしれませんけれども、そのおっしゃったような投資に対する規制をやったとして、卸売り物価にどういう影響が出てくると想定されておいでになるか。それは一応やってみてからの話ということになるんでしょうか。
  72. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 政府見通し程度の設備投資が行なわれたとして、それが物価にどの程度影響を与えるだろうかという御質問かと思いますけれども、ほかに、先ほども御指摘がありましたように、物価上昇の要因がございますので、いまの設備投資の面だけの影響がどれぐらいかということは、なかなか具体的にはつかみにくいのではございますけれども、私の持っております感じから言えば、見通しに組まれておる程度の設備投資であれば、設備投資需要物価上昇の要因にはあまりならないんではないかと、こういうふうに考えております。
  73. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それでは、もう一つ物価の問題で見方を変えてお伺いをしたいと思うんですけれども、いま品不足をどうするかという御質問をしたんですけれども、つくれるものはよろしいんですけれども、供給を増加できないもの、端的な例として土地をお考えいただいてもけっこうだと思います。絶対量として土地そのものをふやすということは、これはできない相談だ。そのときに、これは何も土地に限らないわけですけれども、そういったものの価格の安定をはかる、そのためにはどういう金融政策が必要だとお考えになりますか。もう少し申しますと、たとえば、住宅ローンというのも悩みの多い点だと思います。福祉政策ということを考えると、従来のワク以上には落とせない、これが最低だと当然お答えになりますでしょう。ところが、土地というのは限りがある。そう考えると、土地がどのような状態で、たとえば、宅地とすれば供給可能になるのか。そのテンポがどうなのかということと無関係住宅ローンのほうだけワクは据え置きますとはほんとうは言えないんです。しかも、土地、住宅に対する資金は住宅ローンだけかといえばそうではなくて、民間の私の企業がやっている住宅ローンもあれば、企業住宅の建設もあれば、民間資金の住宅建設もあれば、公的資金の建設もある、そういったものとの見合いで、実は供給に限りがあるものの物価というものは上がり下がりするわけです。そういったものを見た場合に、たとえば、住宅ローン一つをとってみて、簡単にはそれは従来より落とさないということだけで済むのかどうか、どういう金融政策の取り組みを供給に限りがあるものについてしたらいいのかどうか、御見解を伺いたいと思います。
  74. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 土地の問題は、金融問題だけではなかなか片づかないのでございまして、土地の供給をどうするか、確かに土地の絶対量は限られておりますけれども、しかしながら、今後住宅に充てられ得る土地がもう何もないわけではございません。それがどういう人の手にあるか、そういうものをどういうふうにすれば有効に、しかも、価格上昇をそう多く招かないでできるかということが、これが土地政策の非常に重要な点だと思います。御指摘のように、いまのような限りのある土地、それからまた限りのある労力、それからまた建設資材とても幾らでも供給ができるわけではございませんから、住宅ローンを幾らふやしてもいい、ふやせばバランスがとれるというものではないわけです。おのずからそこに一つの尺度が、節度があるべきだと思います。したがって、諸外国の例を見ましても、金融引き締めのときにはほとんどといってもいいように住宅金融を締めております。しかしながら、日本の場合には、民間金融機関の住宅ローンというものが始まりまして日が浅いわけでございまして、総体の金融機関の資金供給量の中で、住宅ローンの占めております率はまだ低いわけでございます。ただ最近の伸び率が非常に高い。ですから、この伸び率をいつまでも維持することは適当ではないと思いますが、しかし、いままで出しました程度のものは、出されたからといって、それが絶対的な資金量の面で非常に大きく土地の価格上昇になるほどのものではない、そういうふうに考えまして先ほどのように申しましたわけです。  したがって、一方において土地政策と申しますか、いままで、あるいは大企業が手当てをしましたような住宅適地、そういうものをどうしたら供給のほうへうまく回せるか、あるいはまた地方の公共団体等でいろいろ開発されているものもございますが、そういうものをどういうふうにすれば一般住宅の建設に利用できるのか、そういうような具体的な政策が一方で必ず必要だと、こういうふうに考えております。
  75. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 土地問題、都市政策、土地政策全般とのかかわり合いの問題であることは事実ですけれども、昨今のインフレムードをどうやって消すかということになると、地価の値上がりがもたらす心理的な効果は非常に大きいと思います。そこの中で、なるほど民間の金融機関の住宅ローンというのは、立ち上がって日浅いものがございます。いまの水準で十分ではなくて、もっと上げるべきだという議論すらあっていいんだろうと思います。ただ、それと地価の動きというものを考えますと、私の質問は、今後の金融政策として、個人消費に対して直接的な取り扱いというのは金融政策としてはなかなかむずかしいということになると、たとえば、住宅なら住宅の資金供給に対して、一元的な管理をいやでもしなければいけないのではないんだろうか。話をまた戻しますと、たとえば、省力投資にしても、公害投資にしても、総論ではなくて各論として抜き出した一元的な管理をしていかないといけないのではないんだろうか。省力投資は抜きにしまして、最後の質問として、住宅ローンに関連しながら、民間銀行住宅ローンだけではなくて、一般の土地、住宅に対する資金全部を一元的に管理し判断するような金融政策というのは今後必要ではないかと思うのですけれども、この点だけ御見解をお伺いして質問を終わります。
  76. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま御指摘のありました点は、確かに非常に大事な点だと思います。いま住宅金融というのは、政府関係金融機関、住宅金融公庫とかいろんなところで行なわれております。それから最近は、民間で住宅のための資金を供給する機関というものが数社できております。したがいまして、総体としての土地、それから建築資材、建築労力、そういうものと、一方資金サイドとしてはいろいろな金融機関がある。これをどういうつり合いを持たせるのかというような大きな立場に立った検討というものは御指摘のとおりたいへん大事だと思います。いまそれが完全にできているとは確かに申しかねますけれども、しかし、今後の住宅問題というのは、金融引き締めが進みますにつれ一そう問題となってくると思いますので、そういう方向でわれわれも今後検討しなければいかぬ、こう考えております。
  77. 多田省吾

    ○多田省吾君 最初に、中期定期預金のことでお尋ねしたいと思います。  先ほど竹田委員からも御質問があったようでございますけれども、政府は、近くもう期間三年で、年利六・五%程度の中期定期預金の創設に踏み切る方針のようでございます。これに対して長銀、信銀等の長期金融機関が非常に反対しているわけです。政府としては、いろいろ報道等見ますと、金利を高くして貯蓄高をふやして大衆のふところに余っているところの金を吸収するんだと、そして過剰流動性の吸収と、住宅ローンを直結する目的預金だというようなことを言っているようでございますけれども、こういう創設の目的というものが、ほんとうに誤算にならないかどうかは非常に疑問だと思う。で、現在個人のふところに政府が言うように、金がたくさん余っているかどうか。名目水準の賃金は上がっていますけれども、物価が非常に上昇しておりますから、総理府の家計調査によっても預貯金が非常にできにくい状況でございます。また最近は、土地の値上がり等によって、住宅をつくるのを見合わせて、クーラーや車を買おうという態度に出ているわけでございますが、それをとめられるかどうかですね、こういう中期預金で。大蔵省が検討している金利はせいぜい年率六・五%の割りでございます。消費者物価が、東京でございますが一一・六%も一年間で上がっているわけでございます。そういう状況で、ほんとうにこの中期定期預金の創設の目的というものが達せられるかどうか、非常に私は疑問だと思うんです。  それで、都市銀行は熱心でございますけれども、信銀、長銀では貸付信託や金融債と競合するということで反対しているわけでございます。またいままでの経過を見ましても、金融制度調査会では、四十五年七月に一般民間金融機関のあり方についてという答申を出しましたが、中期預金の導入は検討に値すると述べておりますけれども、その場合においても、景気の、経済の動向とか、公社債市場の育成とか、あるいは各種金融機関の経営などに十分配意して、実施の方法についても、金利、期間などの面で考慮が必要であると、こういう答申を出しているわけですが、この実施上の問題点もすべて解決されているのかどうか。これも私は非常に疑問だと思うんです。で、この中期預金を創設いたしますと、わが国金融機関が非常に多角化、デパート化というものが進んで、とめられなくなるわけでございますが、そういった点で、日銀総裁はどのようにお考えになっているのか、これをまとめてひとつお伺いしたいと思います。
  78. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまお話がございました、三年で年六分五厘というような具体的なものは私まだ全然伺っておりません。まだそういうお話まで固まっておらないんじゃないかと思っておりますが、先ほども申し上げましたように、私は、金融機関が期間を延ばすというような条件があるかもしれませんが、とにかく高い金利を払うというのはけっこうだという私は考え方を持っております。したがって、高い金利の預金をつくるということに、原則的に反対すべきものではないと思うのでありますが、ただ、ただいま御指摘がありましたように、いろいろ金融機関にも種類がございますし、たとえば、同じ金融機関の中でもいろいろ立場の差もありますから、そういう点の意見調整が非常に大事であって、それを全然行なわないできめるということでは、全体の金融機関の今後の運営に非常に問題が残る。したがって、あくまでもそういうことの話し合いを十分された上で合意が得られれば私はけっこうなことだと、こう思っております。
  79. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま日銀総裁は、高い預金金利のものができれば望ましいことだとおっしゃいましたけれども、ことばじりをとらえるようでおそれ入りますが、今回の金融引き締め対策のときに、預金金利の引き上げをそれじゃなぜ見送られたかという点ですね、これはいかがでございますか。
  80. 佐々木直

    参考人佐々木直君) これは、先ほども申し上げましたけれども、この前引き下げのときにはたしか六回引き下げて、最後の六回目に預金金利の引き下げを実施いたしました。今度は第二回目の公定歩合引き上げでございますが、今度預金金利を上げますと、今度は公定歩合が上がるときには必ず預金金利を上げるのかという原則論になるわけでございまして、その点は今度は、第二回目の貸し出し金利の上昇のときには、預金金利には触れないほうが適当だと、それほど公定歩合と結びつけるべきものではないという判断で、今度は預金金利は上げられなかったと思います。  それで、何回公定歩合が上がったときに、——まあ今回上がるということでの話でございますが、何回目に上げるかということは、今後検討の必要がある問題だと思います。
  81. 多田省吾

    ○多田省吾君 しかし、現在は金融機関は貸し出しを増しておりますし、非常にインフレが助長されております。そして金融機関も非常に高収益をあげているわけです。十七期連続の高収益なんというのは、もう近来にないことだと思うのです。ようやく国民の間にもそういう社会的責任というものを追及する声も起こっているわけでございます。ですから、いま日銀総裁は二回だけの公定歩合引き上げでは預金金利の引き上げはまだむずかしいというようなお答えでございました。何回ということもこれからの検討事項だとおっしゃいますけれども、私は、そういう過去に六回引き下げたからどうのこうの、あるいは今回二回だからどうのこうのというのではなくて、現在のやはり金融機関の状況、あるいはこういうインフレ助長のおりから、当然現在でも預金金利の引き上げをしてもよろしいのではないかと、こういう段階にきておるのではないかと思いますけれども、もう一回それひとつ、どういう状況になったときには、それじゃ預金金利の引き上げをなさるのか、もう一回それじゃ公定歩合引き上げたときになさるのかどうか、その辺もう少し詰めておっしゃってください。
  82. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 私の説明が足りませんでしたけれども、今度は第一回のときに預金金利を上げております。それで第二回目に上げなかったということでございます。それで第二回目に上げるということになりますと、今後公定歩合を上げるつど預金金利を上げるのかという基本的な問題をよほど詰めておきませんと、いろいろ問題があとに尾を引くことになるかと思います。したがいまして、今後もし公定歩合が上げられる場合に、預金金利をどうするかということは、今後の公定歩合引き上げの幅その他等々を考えて、そのときに十分検討しなければならない性質のものだと思います。  それから、預金金利と貸し出し金利との連動のしかたにつきましては、これは総体としていろいろ検討を必要とするものが多々あると思います。ただ金融機関のそろばんがいいから、収益がいいからということでこういう問題を判断しますと、こういう潮が逆になったときにまたむずかしい問題を生ずるおそれもございますし、したがいまして、今後の貸し出し金利と預金金利の連動の方式につきましては、十分今後検討が必要な問題であると、こう考えておるのでございます。
  83. 多田省吾

    ○多田省吾君 四月二日の公定歩合の第一次引き上げに続きまして、五月三十日に再引き上げをやったわけでございますが、年五・五%というのは、ようやく一昨年のニクソン・ショックの前の水準に戻ったわけでございます。ところが、海外の主要国と比較いたしますと、金利水準ではアメリカが六%、フランスが七・五%、イギリスが七・七五%、西ドイツは五月に入りましてから四日と三十日と二回立て続けに一%づつ引き上げまして、四月は五%でございましたが、五月末には七%になっておる。そういうふうにインフレ対策最優先という立場から、相当海外諸国では早目早目とやっておるようでありますが、わが国では、主要国の中でもまだ非常に低いと、それから、後手後手の公定歩合引き上げに終わっているのじゃないかと、このように思いますけれども、その点を日銀総裁はどのようにお考えですか。  それから、第三次の引き上げというものも当面考えていらっしゃるものかどうか。
  84. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 公定歩合の国際的な水準を比較いたしますと、確かに御指摘のように日本はいま低いほうでございます。ただ日本の場合には、どうもこれはいろいろ御批判があろうかと思いますが、公定歩合の動かし方がわりあいに幅が狭いと申しますか、いままでで低いのが四.二五、高いところで六・二五という辺が最近の記憶だったと思いますが、六・二五から下がってきた。わりあいに変動幅が小さい。ところがドイツでは、いまたとえば七%とおっしゃいますが、安いときは三%だったわけです。ドイツが三%のときには日本の金利が高過ぎると、だいぶ私どもも批判を受けたのでありますが、今度は日本が低過ぎるということになってしまって、そういう国の公定歩合の動かし方というものも一つあろうかと思います。したがいまして、いま国際的に比べてわりあい低いから、だからすぐ上げろというようなことは必ずしも適当ではないんではないかと思うんであります。ただ、いま国内における物価対策等々から、さらに公定歩合引き上げる必要があると判断したときに、国際水準から考え引き上げが不適当という判断が、いまの国際的な環境で出るかというと、それは幸いにしてない。そういう意味では、公定歩合引き上げる国際的に見た余裕というのは、まだ相当あるという、ことは申し上げられるかと思います。  第三次の公定歩合云々のお話でございましたけれども、先ほども御答弁申し上げましたように、実はもう一週間ほど前に実は上げたばかりでございまして、いまここで次の問題を議論するというのは非常に早うございます。二カ月足らずで上げたという前回と前々回の関係もございますし、われわれとしては十分情勢の推移を見て今後どうするかを考えていきたいと、こう考えております。
  85. 多田省吾

    ○多田省吾君 現在の日本インフレでございますが、OECDの三月のインフレ報告によりますと、先進諸国の中でイタリアと日本が最も重症であるという診断が下されております。昨年四月から一年間の消費者物価上昇率はトップのイタリアが九・五%、日本が八・四%、イギリスは八・二%、しかし、その他の国は西ドイツが六・九%、アメリカは四・七%と、非常に上位三位と四位以下は完全に開いているわけです。先ほども日銀総裁は、海外諸国も相当インフレが強まっているということをおっしゃっておりますけれども、これが四月、五月となりますと、日本だけがぐっと伸びまして、五月は、東京でございますが一一・六%と、私は、やはり世界最高になっていると思うんです。こういうインフレに対して、金融政策はいろいろ考えておられるようでございますが、その他の施策が全然私はなっていないと思うんです。日銀総裁としては、このインフレ退治のために、金融政策以外にどういうものを考えていらっしゃるのか、特に私は、この高度経済成長政策というものがまだまだ続いているんじゃないかと思うんです。それで、この経済成長を見ましても、OECDの主要国のGNPの実質の伸びは、日本を含めても一九七二年度が五・九%でございます。それから七三年で七・二五%、わが国インフレだ、インフレだと騒ぎながら、四十七年度の実質成長率が一一・五%というような、また瞬間風速は一七%というようなことも言われます。こういう高度経済成長政策を続けていて、インフレ対策といっても、これは何にもならない。まあそういう問題。それからその他金融政策以外にも、このインフレ対策というものが十分とられなければならないと思いますけれども、総裁のお考えをお聞きしたい。
  86. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまお話がございました、日本卸売り物価並びに消費者物価の国際的な比較、その点から申しますと、日本上昇率は非常に高うございまして、四月、五月の伸び率などは、確かに海外よりも強いと言わざるを得ない。この事実が私どもをして金融引き締めを追いかけ追いかけやる必要を感じた一番根本的な問題でございます。ぜひこれを何とかとめなきやならないと考えておりますが、ただいま御指摘がありましたように、金融政策だけではなかなかできない。総需要を押えるということによりまして、ただいまお話がありました経済成長率を押えるということもある程度は可能でございます。しかしながら、それだけではもちろん不足でございますから、政府の総合的な施策でも、もう高度成長という看板、それも一五とか一六とかいう実質成長率を期待するものではもうないと思う。やはり政府にとりましても、物価問題というのは最重要な問題だと思います。したがって、四月の十三日にきめられました物価総合対策、こういうものを、その中で金融政策は具体的に進んでおりますが、その他のものをぜひ具体的にできるだけすみやかにやってもらいたい、それを私どもとしては常々政策に対して希望しておる次第でございます。したがいまして、やはりこの際、金融政策もわれわれとしてはできるだけのことをやってまいりますが、国全体として物価の安定に全力をあげてもらいたいということを政府に要望しておるものでございます。
  87. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから私は、先ほど指摘しましたように、総裁は渋っておられるようでございますけれども、そういうことではなしに、預金金利の引き上げですね。それから財政支出の繰り延べ、これは若干やっているようでございますが、それから予算の減額修正とか、あるいは国鉄、電力料金などの公共料金の抑制とか、地価対策、それから寡占業界での製品原価の公開制度とか、こういったことも相当学者間において言われておるわけですね。そういったことを思い切って政府に進言するというようなお気持ちはございませんか。
  88. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま申し上げましたように、私としては金融政策のほかに総合的な対策が必要だと考えております。具体的にどういうことを進言するかは、私どもとしてそのときそのときの事情によって考えてまいりたい、こう考えております。
  89. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ具体的にそのときそのときとおっしゃいますけれども、じゃ現在どのようなことをお考えですか。私がいま申しましたような預金金利の引き上げとか、予算の減額修正とか、公共料金の抑制とか、寡占業界の製品原価の公開とか、こういったことの中で取り入れていいようなものは現在においてはございませんですか。
  90. 佐々木直

    参考人佐々木直君) いま預金金利の引き上げ考えておりません。公共料金の引き上げ、これをできるだけ押えてもらいたいという考え方は持っております。
  91. 多田省吾

    ○多田省吾君 公共料金の引き上げ抑制という問題でも、これから、いま法案としてかかっているのは国鉄運賃あるいは健保料金、まあその他これから問題になりそうなのは電力料金とか、その他ありますけれども、そういう具体的な問題ではいかがでございますか。
  92. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 具体的な問題につきましては、ただいま意見を申し上げる準備をいたしておりません。
  93. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、私はもう具体的な問題でもどんどん進言していただきたいと思いますけれども、預金準備率引き上げの問題と、それから中小企業対策について若干お尋ねしたいと思うんです。  公定歩合の再引き上げ金融引き締めの波をまともにかぶるのは中小零細企業でございます。これはいつもそうでございます。特に中小企業は、納税期のあとで手元流動資金が非常に行き詰っておりますし、円切り上げに続く公定歩合引き上げというダブルパンチを受けたわけでございますが、今後倒産に追い込まれる企業が続出する懸念が確かにございます。それでこういう引き締め政策になりますと、市中銀行からの融資を断わられたり、あるいは長期貸付金の返済を迫られる企業が増加すると思いますけれども、こういう中小企業に対する日銀当局の考え方はどうなのか。  それから、預金準備率引き上げでも、相互銀行信用金庫といった中小企業向けの金融機関まで含まれているわけでございますが、この点はどうお考えですか。
  94. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 御指摘がありましたように、金融引き締めのときに、中小企業というのは大企業に比べましてどうしても影響を受けやすいわけでございます。したがいまして、日本銀行といたしましては、今度金融引き締めに転じましたことしの初めに、支店長に対して通知を出しまして、各地におきまして中小企業金融については格別な配慮をいたすよう、それからまた地方には、地方の通産局長と、それから財務局長、それから日本銀行の支店長、この三者を中心とする会合ができております。そこで中小企業金融についての具体的な問題を取り上げ、その対策を検討するようになっております。そういうものを十分活用するようにというようなことで支店長に達しをいたしております。  それからまた金融政策の変更、たとえば、準備率の引き上げとか、公定歩合引き上げをいたしますときには、全銀協の会長を必ず私のところに来てもらいまして、引き締め趣旨を説明しますと同時に、中小企業金融についての配慮をお願いするというようなことで、できるだけの配慮はいたしているつもりでございます。  それから、預金準備率引き上げと、中小企融機関との関係でございますが、やはりその金融政策引き締め政策中心は大銀行であると思いますので、預金準備率引き上げも、毎回一兆円以上の預金を有します金融機関に特に上昇率を強くしております。それでいままでに三回準備率を引き上げましたけれども、第二回目のときには、相互銀行中小企業関係信用金庫につきましては、これを上昇のワクからはずしました。それから三回目は〇・二五という一番低い率を適用いたしましたが、そのときも、一兆円以上の金融機関には定期性の預金に〇・二五乗せるということで、中小企業金融機関とのバランスをとっております。したがいまして、そういう点については十分配慮は加えているつもりでございます。
  95. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後にお尋ねしたいのは、景気上昇が非常にいま急でございます。もし本年の秋口あたりまでこの景気上昇がとまらない場合には、これはたいへんなことになってしまうと思うんです。この悪性インフレというものは、もうますます重大になってくると思うんです。この前経企庁長官は、商社など不当利益をあげて大もうけしている企業には、さかのぼって法人所得に対して累進税率制度を適用すべきだというようなことを発言されているわけでございます。  それからもう一つ考えられるのは、補正予算を組んで、不要不急の公共事業予算の減額をするとか、あるいは年度途中ではありますけれども、法人企業の法人税を、いわゆる法人税法の改正で法人税をアップするとか、あるいは交際費課税の強化をはかるとか、こういう急いで対策を立てなければ、これはたいへんなことになると思うんですけれども、総裁としてはこういった緊急手段に対してはどのようないまお考えを持っておりますか。
  96. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまの御指摘がありましたような点については、確かに非常に全体の強い景気上昇の中におきまして検討に値する問題だと思います。しかしながら、先ほどから申し上げておりますように、年度が始まって間もなくのことでございますし、そういう検討はいまからやっておられてけっこうだと思いますが、その実行の時期がはたしていつが適当なのか、その点についてはもう少し模様を見る必要があるんじゃないかと、そういうふうに、私のほうからいますぐそういうようないろんな問題を具体的にやってほしいというふうに政府に進言する考え方はいま持っておりません。
  97. 野末和彦

    ○野末和彦君 ぼくのほうはぐっと俗っぽいことで、本来は、大蔵大臣にお聞きすることかもしれないのですけれども、ひとつ総裁にもお話をお聞きしたいと思いまして……。  最近のデパートあるいはスーパーが、もうけるためなら、もう何でもやっている。棺おけまで売っているわけですよ。葬式パックなんて言いましてね。それはいいんですがね。投機的商品を非常にきわどい方法で売っているデパートもあるわけですね。それで、ついに札束を売り出しましてね、札束を現金で。いや現金でということはないですね、現行通貨を。現行通貨を商品化しまして、これ百円札ですね。百円札千枚で十万円なんですよ。この十万円をデパートで買うと幾らですか、御存じですか。
  98. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 幾らか具体的な価格は知りませんけれども、相当なプレミアムをつけて売っているという話は聞いております。
  99. 野末和彦

    ○野末和彦君 十八万円なんですがね、現在。そうして、これどこですか、倉敷ですね。これは金沢、十八万円なわけですよ、この十万円が。それでですね、これが全国でもういろいろなところで売られているわけですがね。これ京都の新聞広告。これは仙台ですね。仙台が十六万円です。ちょっと古いですからね。これはチラシ、新聞広告にみな入ってくるのですよ。こういうのごらんになってくださいね。一応全部資料を、もちろんこれはほんの一部ですが、こういうように売られておりまして、相場を申し上げますと、この百円の、いわゆる未使用ピン札、ビニールパック——封印だけではない、ビニールパック、これが、一月は京都で十三万円で売っていたんです。で、毎月ウナギ登りに上がりましてね。三月が十六万円、四月が十七万円、五月から六月にかけて十八万円で、この間の日曜日は富山で十八万円。そこでですね、銀行に行くと、これは十万円ですよ。で、買いに行くと十八万円で、ここに一つあるんですよ。売りに行くと十二万円で買ってくれるのですよ。これは鹿児島ですがね。もちろん、ですから、銀行の額面と、売りに行ったときの金額と、買ったときとみな違うわけです。しかも、スーパー、デパートが、何と言っているかというと、広告には、投資向きと書いてありますですね、投資向き。あるいは値上がり必至と書いてあるのですよ。ということは、これ窓ロー窓口ではなくて、デパートの売り場で上がりますよと言うのです。もっと上がりますよと言って売っている。こうなると、現行通貨ですからね。どう考えても十万円以上しないのですが、何でこんなプレミアムがつくか、つき過ぎて、ただでさえお金の価値がなくなって信用できなくなっているなんというときに、現金に権威も信頼もなくなる。不信感がますますエスカレートしてくるというように私は考える。ましてデパート、スーパ一が投機化に使っているのですから。日銀としてはどういうふうに思いますか。
  100. 佐々木直

    参考人佐々木直君) この問題は、御指摘のようにはなはだ困ったことでございまして、現在使っております通貨が、別の相場が立つということははなはだ不適当だと思います。ただ百円につきましては、ちょっと特殊な事情がございますので、一言御説明申し上げておきたいと思いますが、実は、百円札というものは、非常にふだんの小口の買いものに使われますもので、いたむことが非常に激しいわけでございます。したがって、世界のたいがいの国は、日本の百円に当たるくらいの通貨は、ほとんど全部コインにいたしております。札は使っておりません。特殊な国は別でありますが……。したがいまして、われわれのほうでも、数年前から百円の札は、もう新しく出すのはやめよう、全部コインに置きかえようということでやってまいりました。ところが、造幣局の能力に限界がございますので、一ぺんにやれないので、だんだん地方的に、まず東京とか大阪とかをコイン化し、それからだんだんほかの地方に及ぼしていくということで、九州とかほかの北海道とか——東北でございますか、そういうところが残っておる。それでだんだんこのお札をコインにかえるんだという方針がわかっておるものですから、やがてはお札が出なくなるだろう、そうなると値が出るだろうと、こういうことで今度のような特殊な事情が出てきた。したがって、私どもは、最初の予定を多少繰り上げまして、四月の末に新しい百円券を日本銀行の窓から出すことを取りやめまして、今後、したがって、ただいまお持ちのようなお札が、日本銀行の窓から出ることはない、そういう過渡期におきまして、いまたまたま一般的に非常に投機的な気分が強い中で、そういう特殊な現象が起こったと思われます。したがって、今後日がたつにつれまして、全く新しく出ないお札をどういうふうに評価するかという問題として残ってくるのではないかと思います。
  101. 野末和彦

    ○野末和彦君 困ったことで不適当であると、あるいは好ましくないと、これはだれでもがわかると思うんですがね。ただし、いわゆる日銀として、あるいは大蔵省のことなのかぼくわかりませんけれども、つまり何の警告もできないし、もちろん売買を中止させるなんということももう全然できないと、手の打ちようがないわけですか、じゃ。
  102. 佐々木直

    参考人佐々木直君) これはいろいろ検討いたしましたけれども、大蔵省とも相談いたしましたけれども、法律的には打つ手がないのでございます。
  103. 野末和彦

    ○野末和彦君 そうなりますと、通産省あたりでデパートとかスーパ一を一応監督する立場にあると、この通産省としては、こういうものは幾ら何でも現金を商品化して上がるぞ上がるぞという売り方はよろしくないというような意味で、きびしい警告など、これはできるわけでしょう。
  104. 荒尾保一

    説明員(荒尾保一君) ただいま日銀総裁から御回答ございましたように、この行為自身を違法と言うわけにはいかないかと思います。ただ、現に通用しております日本銀行券を、これは古銭とか、あるいは古紙幣とは違うわけでございますから、現に通用しておる紙幣を、堂々と商品と同じように売っていくということは、これは常識的に考えましても私どもおかしいことじゃないかと思います。実はたまたま、個人的なことでございますが、私そういう場を一回見たことがございまして、その百貨店に対しまして注意をしたことがございますが、残念ながらまだ全国の実態調査をいたしておりません。そういう実態を調査いたしました上で、商売のやり方としてはおかしいではないかという意味から、日本百貨店協会を通じまして、こうした行為については行き過ぎがないように十分自粛をするように指導をしてまいりたいと思います。  それから、スーパーにつきましては、やはり同じように行き過ぎを是正するよう指導いたしたいと思いますが、何ぶんにも全国にたくさんあるところでございますので、これも関係団体を通じまして、できるだけ末端までそうした趣旨が行き渡るように要請をいたしたいと、このように考える次第でございます。
  105. 野末和彦

    ○野末和彦君 私の調べで、何か日銀のほうで去年の暮れにですが、何か封を切って渡せというような指示を出したというようなことも聞いたんですが、総裁のお話ですと、四月末でもうこれは事実出してないと、しかし、去年の暮れの指示は何か封を切って窓口で渡したらこういうような投機化するような商品にならないだろうというような指示があったという話を聞きましたが、これはほんとうですか。
  106. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 私は、その点はつまびらかにしておりません。ただ、いまのお示しの封は、これは印刷局で封をいたしましたのを、日本銀行が受け取りまして、日本銀行がそれを全然手を加えないで出すものでございます。日本銀行から出します札には、印刷局から受け取りましたものを、そのまま出す場合と、それから、各金融機関から一ぺん日本銀行に入ってまいりまして、それを整理いたしまして、その中でもういたんだお札で再び使うのが適当でないものを抜き取りまして、使えるものをまた整理して、いまのように千枚の束にしたものを出すものと両方あるわけでございます。
  107. 野末和彦

    ○野末和彦君 そこで、じゃその売り場の実情をちょっとお話ししますと、これが価値があるんですよね、このビニールのパックが。まあ大体コレクションマニアというか、こういうものを扱う方はみんなそうなんですがね。この広告にもありますね、日銀封印つきとか、大蔵省印刷局封印つきとか、これが価値がある。この帯とか、ビニールのこれが価値がある。これが破られていれば非常に安い値段なんですよ。一束一万円になりましても、未使用ピン札、実に安いんですよ。そうすると、これそのものが価値あるとなると、これが手に入る人、これはだれだということになりましてね。まずお聞きしたいんですが、このビニールがついたままで、私が銀行へ行きまして一これはいま九州のほうの銀行にはあるんだそうですがね。わかりませんがね。とにかく銀行へ行って十万円を一万円出しまして、百円のピン札かえろと言った場合に、この形でもって出てくるかどうか、普通の人に、市中銀行でこれを出したかどうか、これが全然見当つかないんですが、どういうものなんでしょう、常識として。
  108. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 日本銀行の窓からわりあいに金額のまとまったお札を渡しますのは、金融機関だけでございます。個人に対しまして日本銀行がお金を払いますのは、国庫関係のものでございまして、それほど大口なものは普通はございません。したがいまして、そういうまとまったものが渡るのは、金融機関に渡るわけでございます。それで金融機関は、たとえば、自分の取引先の企業から、次の日の月給日にこれだけの現金が要るという要求がありますと、そのお札をみんなに分けるために、その取引先から、たとえば万円券が幾ら要ると、あるいは千円券が幾ら要ると、百円券が幾ら要るというような、種類別に要求を受け取りまして、それを整理して、日本銀行へ持ってきて、日本銀行からお札を持っていくわけでございます。したがって、その金融機関から、たとえば一回の給料の支払いが一億、二億というような企業は、金融機関からそういうようなお札を受け取るチャンスも十分あるわけでございます。
  109. 野末和彦

    ○野末和彦君 じゃ、銀行局長にお伺いしますが、窓口で、しろうとがこういうものを手に入れるということはまず考えられないことですか。
  110. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 百円札を千枚でございますか、そのままの形でということは私も銀行局長としてお答えするよりは、むしろ個人として考えてみても、非常に少ないケースじゃなかろうかと、かように考えております。
  111. 野末和彦

    ○野末和彦君 そうしますと、総裁がお答えになりましたが、大口というか、企業の場合ですね、少なくとも特定の人ですよね、こういうものが手に入るチャンスを持っているのは。そうすると、どう考えても市中銀行窓口では、こういうものを一般に出していないんだと、出してない金が、デパートのほうにはどんどん出ている、スーパーにもどんどん出ている、どうしてこういうことがあるかと、これ疑問になるわけですね、当然。少なくも普通の人間ではないだろうと、何か特殊の立場にある人間のみが手に入れる、しかもこれが無価値ならいいけれども、十万円をとにかく何らかで手に入れると、すぐ売りにもいける、しかも、デパートの店頭に並べばもっと値段が出ると——この間のプレミアムというのはどういうふうに分けて、どうやって——知りませんがね。これはどうなんでしょうね、銀行局長にも総裁にもお聞きしますが、何か特定の人間が、意図的にこれ動かしているんじゃないか、また動かすチャンスしか考えられないというふうに考えますが、もうけのために。こういうことは想像できますか。
  112. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 印刷局のそういう封をしましたものは、印刷局から幾らでも出てくるわけではございませんで、すでにもう遠からず百円券の新規発行はとめる予定でおりましたから、そうそうたくさん出ているとは思いません。したがいまして、それを、たとえば、俸給の支払い等に受け取った企業、あるいはその手前である程度支払い準備として金融機関がお札を持っておる、その中にもあるいは一部あったかと思いますが、それは金融機関それから企業、そういうような正当なルートで流れるお札の取り扱い者でございまして、これだけを、こういうものを特定の人間が特定の便宜で受け取るというような性質のものではないと思います。ただこのような広告が出てまいりますと、たまたまある企業が、自分のところの給料に払うために金融機関から受け取った場合に、その十万円を百円券で払わないで、たとえば、千円券で払って、そういうものを残しておくというくらいな知恵はこういうものを見ると出てくるのかもしれません。しかし、それは、要するに正当なルートで受け取ったお札の使い方でございますので、そこを非常に悪意で考えることも適当ではないのじゃないかと思います。
  113. 野末和彦

    ○野末和彦君 総裁は非常に人がよ過ぎるのじゃないか、あまりにも心がやさしいのじゃないかと思いますが、正当なルートで渡って、それを悪意に使う、その辺はわかりません。正当なルートで渡ったにしては出過ぎているのですよ。そこで問題なんで、大体一日に、この広告を出してやれば四十、五十は軽く売れる。しかも、スーパー、デパートでこんなに積まない。ウインドーの中に二、三束だけしか置いてない、そこがまた向こうのずるいところで。しかし、四十、五十は完全に売れるんです、これは間違いなく。あとでもし通産省がお調べになるなら——できるかどうか知りません、正直に答えるとは思いませんが、しかも、日本全国ですよ。どんどん売れて、その正当なルートで給料の中にこんなのがあったから、これはもうかりそうだからって、そんななまやさしいものじゃない。ぼくの調べでは、業者がもちろん入ってまして、デパートを借りて、あるいはスーパーを借りて、業者とデパートが組んで売っているわけですが、業者が集めたのですね、もちろん。この業者がブローカーを使っているのです。特定の人間をかなり使っているのですね、九州全域にわたって。この辺のことがぼくはいまはっきりしたことは言えないので、銀行局長お聞きしたいので、ことしの一月から四月までに、とにかくこのままの形で、市中銀行に渡っているわけですよ。これがどういうルートが、あるいはどういう方面へ流れていったんであろうかという、これはどうなんでしょう。お調べになればある程度わかりますか、事実が。
  114. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 日本銀行と相談して、おそらく——あまり私も非常にふなれで恐縮でございますが、封印に番号がついているのかついていないのか、その辺のところがあろうかと思いますが、日銀と相談をいたしまして、また私のほうの発券を担当しております理財局とも相談いたしまして、ひとつ調べてみることにいたしたいと思います。
  115. 野末和彦

    ○野末和彦君 時間なくなってきましたから簡単に、先のほうへ進むので、調査をお願いしたいことを言っておきます。  いまのは一応調査ができたら、もちろんやっていただきたいのですが、私の推測と、私の調査によりますと、市中銀行の内部の人間または関係者、あるいはこういう金を何らかのこね、あるいは力でもって動かせるという立場の人間が、意図的に札束を買い集めて、業者に渡していることは間違いないです。なぜならば、それ以前にもらった人が退蔵して、自分のうちに置いておいて、値が出たから売ったというケースとは全然違うんです。というのは、公募した、十二万円で買いますといってこれだけぱっとチラシ配ったり、ポスターをやったら来なかったのです、あんまり。二、三百しか来なかったのです、鹿児島の例で。ということは、退蔵はもうだめだ。特定のルートから集めなきゃだめだということになりまして、とにかくいまブローカーがいろいろ集めていることは確か。  それから五百円札も集め始めましたが、五百円札については、千枚一束にすると値が張るからちょっと右から左には売れぬだろうというので、いま研究中だそうですよ。そこで百円札だけに戻りますと、一つだけ気になることがあるんです。名古屋のデパートのポスター、チラシ、名古屋の場合、このポスターが、ハスとか市電ですか——市電なくなったかどうか知りませんが、その辺に張られたときに、翌日、翌々日のうちに好ましくないというので回収されたのですよ。こういう事実は御存じですか。総裁でもどなたでもけっこうですが。
  116. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) はなはだ申しわけございませんが、実はこれは私のほうの理財局の所管なものでございますので、私伝聞で申し上げますが、理財局の理財課長——財務局に理財課長というのがございまして、その辺で理財課長会議をいたしまして、そういう場合には、目についたときにはよく実情に応じてそれを取りやめさせるように指導しろという会議をしたことを私は聞いております。おそらくそういう趣旨でやったんではなかろうか、かように思います。
  117. 野末和彦

    ○野末和彦君 それでしたら、名古屋の場合のポスター回収されたという実情を、あとでまた調べていただいてお聞きしたいと思いますが、いずれにしましても、業者がいま買い集めておりまして、どんどん値段がつく。七月、来月ですね、来月は東京のデパートがやります、総裁。スーパーがやっていました。ついに東京がやる、東京の相場は幾らか、それはわかりません。とにかく相当な金を使って集めました。ですからぼくは、東京のデパートでまたこんなことをやるのは、やっぱりよくないと思うんで、やめさしたいという気持があるんですが、どうも法的には何らの手が打てないというような、非常に残念ですが、やはり流通、流通といいますか、出ていく行き方に非常に不明朗な疑問がたくさんあるわけなんですよ。どう考えても、しろうとはもちろん銀行ではもらえない。それから特定の人間といっても、総裁のおっしゃったように、何か給料もまとめて持っていった企業だとか、その程度のお話、そんなものじゃないルートがあるはずです。なくては集まらないんですよ、数が多いですから。  それで、ここでひとつお願いしておきますが、もう印刷中止になったし、値が出るということも、もうマニアはおそらく考えて、業者も抜け目なくやっているんですが、やはりどうでしょう、これひそかに業者、マニアの間でこう取引されているというならまだいいんですが、こう大々的になってきますと、朝刊のチラシ、車内刷り、いよいよ東京にまで出てくる。これはやっぱり何らか通産省や大蔵省が全部協議の上、もうやめさせるということを考えなくちゃいかぬと思うんですよ。好ましくないけれど、どうも違法じゃない、だからどうにもならぬ、そのうちなくなるでしょう、そんなことでは済まないくらいに、いまもう買い集めまして、買い集めが全部売れたらなくなるでしょうけれども、やっぱりああいうビニールに包まれた特殊な形で市場に流れる、この流れるルートに、不明朗なものをぼくは感じていますから、その辺も調査の上、どうでしょうかね、何らか各省全部連絡とり合った上で、これはやっぱり好ましくないから、何とかやめさせるように手を打とうということをきめていただけますか。
  118. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) ただいま伺って、実はほんとうにびっくりしたわけでありますが、大臣にも話しまして、厳重におっしゃるような、どういうルートで出ていったかという調査をすると同時に、少なくとも東京のデパートへ出ることは、どんなことをしても防がなくてはならない。ちっぽけなスーパーが、いかなる勧告やお願いを無視してやるという場合、これはやむを得ないとしても、少なくともデパートで売ることはとめなければいけない、そういうふうに努力してみたいと考えております。
  119. 野末和彦

    ○野末和彦君 それでは、売買の中止の警告というか勧告というか、それは厳重にやっていただくようにお願いをします。  それから、大蔵省日銀関係では、どういう経路で、どうも常識では考えられないように出ていっているが、これはどんな経路で市中銀行を出てデパートに渡るか、この辺のことが私のほうも調べておりますが、いまひとつはっきりしない点がありますから、できるだけ調べて、あとでまたひとつ教えていただきたいと思います。それだけをお願いしておきます。じゃ、終わります。
  120. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 日銀総裁には、参考人としてありがとうございました。  両案に対する本日の質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十八分散会