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国務大臣(
愛知揆一君) まず第一に、これは少し口はばったいことを申しますようで恐縮でありますけれ
ども、最近の国際通貨問題についての会議において、
一つの経済の秩序ある発展、いわゆるワン・ワールド・エコノミーということが終局のわれわれの目標でなければならない。そのためには、イデオロギーを越え、国境を越えて、全世界がそういうふうな
方向に進むことがわれわれの終局の
目的であるということを、まっ正面から切り出しておりますのは
日本だけでございます。このことは、いま戸田さんが第一段に御
指摘になり、かねての御主張であると思いますけれ
ども、まさにその
考え方でございます。
それからその次に、しかし同時に、現実の問題としては、ECや、あるいは米国や、あるいは
日本やと、自由世界の中では、もうすでに三大勢力であるということが、もうこれは自他ともに許すような
状況になっております。そのほかに、元の問題もございましょうし、コメコンの問題も御
指摘のとおりにございますが、やはり終局的には、地域的に
関係の深いところ、あるいはその他従来からの沿革などによって、相当のグループが、その
一つの世界の建設を目ざしながら、現実に相当の発展をしていくということは、私は、これは自然の成り行きでもあるし、あながちこれを否定することはできないと、こういうふうに考えるわけでございます。ただ、あくまでお互いの連絡、協調あるいは理解、支持ということが確保されなければ、将来ともに安定した世界経済の発展はできないと、こう思いますから、ますますそういったようなグループ同士の連携を緊密にしていかなければならない。まあ、国際通貨問題の組織などに対しましての発言力というようなものを、もっと強く確保したいということを私
ども考えておりますのも、そうした
考え方の
一つのあらわれであるわけでございます。
で、マルクにも御言及になりましたけれ
ども、これはやはりEC内のバランスをとって、共同フロートをするというために必要であった
措置でありまして、それなりにこれは理解ができるわけだと思います。
それから円は、一体、強いのか弱いのかと、外に対して強く、内に対して弱いと、これはよく言われることでございますけれ
ども、結局、これは、
日本国内の
物価の問題であると思います。したがって、やはり
政府としてはもちろんでございますけれ
ども、全力をあげて
物価の安定、ある
程度以上に上がらないというようにすることが、それすなわち、内外に対して円が安定するということであろうと思いますから、この
方向にできるだけの努力は、もちろん続けていかなければならないと考えます。
この点については、やはり国際通貨会議でも、われわれも主張を強くしておりますし、コンセンサスもできたわけでございますけれ
ども、それぞれの国が、国内のインフレ対策というようなものに、強力な努力をお互いに続けることである。これが非常に必要なことである。そして、いたずらに為替相場を切り下げるということで国際競争力を増すということや、あるいは実際上の実勢に沿わないような相場をつくって、それで保護主義的なやり方をやるということは、お互いにやめようではないかということが、コンセンサスとしてでき上がっておりますのは、これに関進した
考え方であると思います。
それから、ドルについてはどうするかということでございますけれ
ども、
日本としては、アメリカとの間の貿易・資本の
関係というものが他に比して圧倒的に多いわけでございますから、
日本としては、ドルの前途については、特に関心を深く持たざるを得ないわけです。基本的には、ドルがもっとしっかりしてくれればいいと、信認が回復されることが、
日本としても望ましいことだと思いますが、同時に、
日本といたしましては、ドルの活用ということを考えることが必要でもあり、またそれが結果において、いわゆるドル減らしということにも通ずることであると、こう考えるわけでございますが、これはなかなか、こういう
変動の多いときでございますから、的確に希望的な観測だけを申し上げるわけにまいりませんけれ
ども、一時、百九十億ドル台から二百億ドル台にというふうな
状況でありました
日本の外準は、三月末では百八十億ドル、そして今後また、ある
程度これが減少するという見込みも立てております。で、これは、言いかえればフロートしておる現状においての東京の為替市場の動向、あるいは事実上、現在の円の実勢相場というものが、スミソニアン以前に比べれば、相当に現実には切り上げられておりますが、そういった
影響が対外貿易の面においても、相当の効果というとおかしいかもしれませんが、その効果があらわれてきつつあるということも、同時に、反映しているわけでございますから、これ以上ドルというものが急速に、巨額に蓄積されるということはまずないと見通してよろしいのではないかと思います。
ただ、これは最近におけるドイツのマルク市場におけるような、まだ何と申しましても小康を得ている
状況でございますから、先ほどお断わりいたしましたように、的確に判断、見通しを申し上げることは早計であるかと思いますけれ
ども、まず、いまの
状況から見ますれば、そして大きな異変がなければ、こうした外準の
状況というものは、好ましい
方向に変化しつつあると、こう見ていただいていいのではないかと思いますけれ
ども、なお、今後とも適正な外貨準備ということを念頭に置きながら、そしてよくいわれることでございますが、多年、
国民の努力によって、正常な輸出活動によって蓄積いたしましたドルでございますから、これを
国民に還元をするということを常に頭に置きまして、有効適切にドルの活用ということをやはり考えていかなきゃならない。
それからもう
一つは、これはやはり非常に慎重な、また、周到な検討と、
関係の国々の理解と
協力が前提でありますけれ
ども、円というものの、やはり国際的な責任といいますか、その国際的な責任というものをわきまえてどういうふうに円というものが積極的な役割りを尽くすべきであるかというような点についても、これはいますぐの問題ではもちろんございませんけれ
ども、やはりいろいろの点から頭に置いて、常に勉強しておく必要があるのではないか、こういうふうに考えております。