○国務大臣(田中
角榮君) 土地、特に、住宅地が非常に国民に要望されていることは御
指摘のとおりでございます。特に、住宅用地というのはどこで要求されておるかというと、大都市及び都市周辺でございます。それは、まま申し上げておりますように、
日本の総人口の三分の一が国土の一%というところに集中しておって、その集中がいまだ続いておるというところでございます。
もう
一つは、その過度集中の大都市も、世界に類例を見ない平面都市であるというところに問題がございます。ですから、私が都市政策大綱の中で述べました
一つの例をとりますと、昭和五十年度に、首都圏の人口は三千万人になると推定をせられる。これは昭和五十年度を展望したわけですが、四十五年度で三千百万人になっておるわけであります。この首都圏の標準世帯に公共用地を含めて、五十坪ずつの宅地を与えるとすると、三千七百平方キロになる。それは全関東平野の六二・五%、こう述べております。まさにそのとおりでございます。そういう結果、宅地が不足をしておるということは、これはもう言いようのない事実でございます。住宅というものは、戦後相当建てられております。おりますが、いつまでたっても千万戸近い住宅を必要としておるということは、過度集中の速度が進んでおるからだというべきでございましょう。そういう
意味で、平面都市を是認する限り、集中を是認しておる限り、宅地の需給
状態は逼迫してまいって、地価が上がってまいるわけでございます。
そこで
考えなければならないのは、憲法二十九条の解釈でございます。まあ新しく
考えるなら、よその国はどうしておるかといえばすぐわかるわけでございます。これは憲法二十九条のような私権は、そのまま私権、財産権は認めておりますが、所有権はこれを公共の用に供せしめておるわけでございます。これは
日本にもそういう法律がございます。三分の二の承諾があれば区画整理を強行することができるわけでございますし、公共の用地は、収用法によって収用ができるわけでございます。今度は、収用も公示と同時に代執行が行なえるような法律を用意しろというようなことでございまして、しかし、憲法二十九条にいう財産権を侵さないために、最終的法律の判断が示された場合には、収用者はこの判断に従わなければならない。いうまでもないことでありますが、法律に明文を置こうという
考え方で勉強を続けておるわけでございます。そういう
意味で、やっぱり二十九条の精神は守らなければならない。しかし、公共のために利用できる、憲法には同じ条文として公共のために、しかし、それは対価を払ってということを前提として書いてあるわけでございますが、対価を払わなくても、これは利用権は制限をすることができる。こういうことで、都市計画法や、区画整理法の改正案もいま勉強中でございますし、今度国会でもってお願いをしております市街化区域内の宅地並み
課税においては、いろいろな誘導政策をやっておりますが、ある時期がきて建てない場合には、その恩典を停止をすると同時に、代執行を行なう。こういう
制度を導入しておるわけでございまして、こうしなければ、既存市街地の改良はできない。これを最も的確にやっておりますのはハワイの不良街区改良法。これは明確に規定しておるわけでございまして、いまよりもいい住宅を提供して移れるようにしておいて、工事をした日から収用に応じない人は、どんどん収用価格が下がっていくという例もございますし、ニューヨークのマンハッタンの首の部分が、合理的に改造が行なわれておるという例に徴すれば、
日本もその道を選ばざるを得ない時期に到達をしておるという
意味のことを述べたわけでございます。
勤労者住宅に対しては、今度の公営住宅法の改正等によりまして、これは議員立法として私が各党の代表者になって
提案した法律でございますが、これは厚生住宅法、労働住宅法、公営住宅法を一本にして公営住宅法にしたわけでございまして、
労働者住宅の入居条件については、労働大臣に協議をしなければならない、厚生用のものは、厚生大臣に協議しなければならないというふうに現行法はなっているはずでございまして、これは低利長期という道をもっと推し進めることによってできるわけでございますが、それだけではなく、国土総合開発法の改正案というものを進めていく過程において、都会から出ていく人が一番困るのは、住宅の問題でございますので、やはり
労働者住宅というものが、工場用地より以上に低廉、合理的に供給をされなければならないというような
制度をつくるつもりでございます。
それから、使用権とはいかなるものかということに対しては、いま申し上げましたとおりでございまして、これは東京や大阪の道路の三分の二が区画整理によって無償で提供されておるという事実を
考えれば、これはもうそういうことを実行する以外にないわけでございます。ニューヨークの道路は、市街地面積の三五%でございますし、それからワシントンは四〇%でございますが、東京、大阪は一二・五%でございます。だからきょうも、四十何万台一カ月に車がふえておるといいますが、年間三百万台以上は確実にふえるわけでありまして、二千三百万の保有は、十年をまたずして、四千万台をこすということでございまして、十年たたないうちに、来年のいまごろは東京都内の通勤の速度は二分の一以下に落ちる、こういうことでございますから、そういう
意味において疎開をさせるのか、入ってこないようにするのか、しからざれば、道路を広げるのか、三階建てにするのかしなければならない。そういうことを税によってまかなうわけにはまいりませんので、土地の高度利用によって、公共用地は供出せしめる。先人がやったことをわれわれがいまこれだけ混乱しておる中でできないはずはない。こういう
考え方で諸般の政策を進めてまいろうということでございます。
それから、公益優先というものが日の目を見るようになったというのは、先ほど申し上げましたとおり、まあ何だかんだ言っても、土地の税も分離二〇%というようなことを自然とのんでいただけるようになっておりますし、普通ならたいへんなんですが、野党の皆さんには、これじゃ安過ぎるぞという御激励も受けておるわけでございまして、こういうような公益優先思想を貫くには、
一つのチャンスでもあるし、これはやっぱり推し進めていかなければならないということで、諸般の立法をいま御審議いただいておるということでございまして、これはほんとうに普通ならガソリン税を目的税にすることさえも、有料道路法の
制度をつくることも、憲法違反だと学者は言った時代もあったわけでございますから、
考えれば今昔の感にたえないわけであります。そういうような
状態でございまして、公益優先思想というものが法制上の日の目を見るようになったということを明確にしたわけでございます。
それから、借地、借家権、こういうものが二年間とか、三年間とかいうのは非常に問題がございます。そして借地権に対しての権利というものが幾らあるのか、地上権が幾らあるのか、借家権が幾らあるのか、これは判例はみんなまちまちであります。確かにそうなんです。土地というのは、御
承知のとおり、同じ番地の土地でも倍も三倍もするわけです。隣の人がもう一メーター隣地を買えれば十階建てが建つのに、いまの境界線のままで建てれば七階しか建たない。その場合は隣地は倍で買えという昔から法則がありますように、土地はなかなかしかく一律ではまいりません。そういうところに、戦後の混乱期において家賃統制令があったために借家もできなかったという面もございます。それを補なう
意味で公営住宅法によってカバーしてきたわけでございますが、今度はやはり都市改造を行なうというような場合ですね、職住の近接ということはどうしても必要でありますから、六時間、七時間働くのに三時間も住復かかるということでやれるわけはありません。ですから、そういう
意味で、どうしてもやっぱり若いときには借家でいくべきなんです。そうでなければ、工場の二階でも一番いいわけです。銀行は、銀行の上にアパートがあれば、上から下へおりるわけですから、上がるわけじゃないんですから、それは非常に合理的なんですが、立体化をはばんでおるためにできないわけです。そういう
意味で、やっぱり借家でないと
——結婚したときには小さい家でいい、子供ができたときにはB級に入りたい、子供が三人になったときにはCに入りたいという弾力性が全然
日本にないわけでございます。そういう
意味で、公営住宅法の活用をしながら、都市の中においては底地権、それから借家権、借地権というものの、できれば法制化を行ないたいという
考え方を持っておるわけですが、これは裁判の確定を待たずして行なえる土地
委員会制度が法制化されない限り、なかなかむずかしい問題でございます。そうでなければ、一坪地主の裁判でも受ければ十年間やれるわけですから、それで宅地の利用権が確保されるはずがありません。ですから、問題は、道路とか公共用地等、宅地という個人の所有するものを、時代の要請によって個人の所有する借地も、特に勤労者の借地は、戦時中は軍用だったんです。そういう
立場で、社会的な要請によって収用の対象になるようにウエートが上がっておるんだという解釈を行なえばできるわけでございますので、そういう
意味で、世論の理解を求めながら、だんだんと新法則を整えてまいりたい、こう述べておるのでございまして、これは私見ではなく、まあ一部私見でございますが、(笑声)しかし、これは公の
立場によって述べておるのでございますから、私自身も立法できるものから立法化を行ないたい、こういう
考え方でいませっかく勉強を続けております。