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政府委員(
高木文雄君) 今回の
改正の焦点は、ただいま御
指摘のように、
課税最低限を大体五割上げるということにあるわけでございます。そういたしますと、大体どのぐらいの結果になるかということをいろいろな角度から見てみますと、
一つは、
課税案件がどのぐらいつまり減るかということが
一つの結果として出てくるわけでございますが、四十六年度の
課税状況で申しますと、これは四十七年はまだ進行中でございまして
数字がそろっておりませんから、四十六年度の
課税状況で申しますと、死亡者、なくなった方の数が約六十九万人。それに対して
相続税を納めていただいた計数は、被
相続人の数で二万六千人。したがって、どなたかに御不幸があった場合に、どの
程度の方に
相続税を納めていただいているかというと、その率はただいまの
割合から三・八%になっております。
ところが、その後四十七、四十八と
相続財産の評価額のほうがふえていきます
関係で、この三・八という
割合は、このまま放置いたしますれば
相当ふえるであろうということが予測されます。その予測値がどのくらいになるかということは、非常に申しわけないのでございますが、よく正確にわからない。その事情は、四十七年度の
税制改正におきまして、妻に対する
遺産分与が三千万円までであれば、それは非
課税になるという、かなり大規模の
改正が行なわれました
関係上、四十七年であの規定適用を働かして
相続税を納めないで済むような道を選ばれる方がどのぐらい出てくるかということが見当がつきませんものですから、よく正確には予測が非常につきにくい。従来の傾向とか、
土地の価格の上昇率で延ばしてみるわけにいかないわけでございますが、まあいろいろな推定を置きまして、四十八年度に大体五%弱ぐらいにいま申しました三・八がふえていく
可能性があるのではないか。それは、かなり
土地の価格の急上昇により
相続税評価額が上がっていくということの影響でありますので、それをスローダウンさせる必要があるということが言えるわけでございますが、今回お願いしております
改正が成立いたしますならば、その五%弱という
数字が大体四%になるかならぬか。つまり、先ほど申しました四十六年の三・八という率とほほ前後するところにおさまるのではないかというのが、
一つの目安でございます。
それから第二は、
相続税によりまして、いままで
相続税は本来
所得税の一種の清算という
意味を持っておりますから、
相続税を納めていただくということは、何らかの形において
財産の処分を余儀なくするという要素があるわけでございます。それば、ある
意味においては非常に困ることでございますが、また一面におきましては、所得の清算という
意味からいいますと、やむを得ないことであると思っておりますが、それにいたしましても、たとえば、現に夫婦で住んでおられる家を売らなくちゃならぬというようなところまでいっては非常に困る。あるいはまた農業のように
一定面積の農地があって初めて成立する場合に、それを売らなくちゃならぬということでは非常に困る。その辺が
一つの具体的なものが目安になるわけでございまして、過去におきましても、具体的なポイントをとりまして、たとえば東京でございますと、世田谷区とか杉並区とか板橋区というところの居住地を
一つとりまして、そういう地点で、まあまあいわば最小限度の宅地なり、最小限度の家屋なりを持っておられる場合に、その評価額から見てそれがどういうことになるかということを見てみまして、
相続税のために直ちに家を売らなきゃならぬという
関係になってはぐあいが悪いということで、私
どもが
税制調査会にもお示しをいたしましたが、そういう地点において、たとえば、五十坪
程度の
土地を持ち、二十坪
程度の家を持った場合に、幾らぐらいの評価になるか。それが過去の評価との
関係においてはどういう経過になるか。それから、同じ地点で七十坪
程度の
土地を持ち、三十坪
程度の家を持っている場合に、どのぐらいの評価になるかというような点を見まして、たとえば、都内の非常に
土地価格の高いところというような場所であれば、
相続税のためにそれを場合によっては処分していただかなきゃならぬことになってもやむを得ないかもしれないが、まあまあ大体通勤距離で都心から見で一時間前後の地点で、あまりいわばぜいたくでない家屋にお住まいのような場合にはそれが
課税にならぬ。しかもこれは、
制度でございますから、ことしだけでなくて、少なくともここ一、二年、二、二年は
課税にならぬというような目安を
一つ置きまして、チェックをしてみるということをやっております。
農地につきましては、宅地に介在している農地であるとかというものは別といたしまして、少なくとも純農地なり、あるいは中間農地なりにつきましては、かなりの面積を持っておられても、それが
課税にならぬということにならぬといけませんので、そういう点をチェックをいたしております。
で、まあ一応
課税最低限の改善幅は、今回御
提案申しましたように、五割アップということにするということに絶対的な
意味を持つものではございませんが、その結果どういうことになるかというチェックはいたしまして、まずまずこれならば、所得の一生清算という
意味も果たしながら、同時にまたそれが
相続人の生活基盤の破壊にならないようにという線に当たっているかどうかというチェックをしておるということでございます。