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国務大臣(
愛知揆一君) まず、いろいろの点から申し上げなければならないと思いますけれ
ども、世上でよくいわれていることは、外為会計から円が非常に放出される。
昭和四十六年では四兆幾ら、四十七年では一兆幾ら、これが
過剰流動性の問題である。したがって、根元を押えるべきである。しかし、これは過去のことで、今日の
状況下においては、実需の輸出の手形はこれは買い取るのが当然でございます。またそれをしなければ、たとえば、輸出関連の中小企業を例にとりましても、そういう無理なことをやるべきではないと思います。
それから、たとえば、ドイツの例がよく持ち出されます。バール・デポというような
制度でございますが、その場合においては、ドイツにおける為替政策と、日本の政策とを比較しなければならないかと思いますが、ドイツの場合は為替管理がございません。そして、たとえば、ドルラッシュを浴びれば投機資金が乱入いたしますから、こういう場合におきましては、国内的にこれを根元から封殺するという必要もございましょうし、まあ、これから九日の蔵相会議以降、ドイツがどういう態度をとりますか、これはわかりませんけれ
ども、いままでのやり方としてはそういうことをやっております。日本の現状においては、少なくとも現状以降においてはさような
心配はない、為替管理が厳重に行なわれておりますから。それから、現状ではいわゆる変動相場でございますから、いわゆる不必要、あるいは限度以上のドル買いをやって、そこから円が不当に放出されるということはない、少なくとも
原則的にないということが言えると思います。
それから、したがって、ドイツのやりましたような根元で封殺する、外為から出てくる円を、たとえば、ドルを取得したものに対して、強制的に国債とか、あるいはもっと流動性のないような国債以上のものを強制して持たせるかというような方式は、その他いろいろの
観点から、日本ではとる必要もなければとるべきでない、こう
考えます。
それからその次は、
法人の手元資金ということがよく言われます。なるほど
法人の手元資金はここ数年来計表の上でもかなりふえております。しかし、それにもかかわらず、これと金融機関からの貸し
出し、そして手元資金を持っていると、相当潤沢であるというところにも、非常に多くの金が過去においては流れておりまして、したがって、そのマネーサプライの現状から申しますれば、商社に対してこれ以上の与信というか、金融を不必要に与える必要は絶対ないわけでございますから、そこでたとえば、大手十社とか二十社に対しましては、特に先ほど申しましたように、対象別に窓口規制を非常にきびしくしていく、限度を設けていく、あるいは日銀の買い入れ手形の種類別の規制まで組み込んでやっているわけでございます。ですから、先ほど申しましたように、この成果がどういうふうに形量、数量的になってくるかということを現状において数字でもって御
説明するようなまだ段階ではございませんし、
資料もまだありませんけれ
ども、というのは、その成果を上げるのには、ある程度の期間がかかりますから、いずれこれらの点は、現象的にも、あるいは数字的にも御
説明が逐次できるような状態になるということを私は確信いたしております。こういうわけで、やはり
法人の手元資金ということから見ても、あるいは外為との関係から見ましても、私は、やはり準備率
制度というものを背景にした、一口に言えば、目的的なきめのこまかいきびしい規制というものでいくのが日本的な一番よろしい政策ではないか。この
制度下におきましては、中小金融とか、あるいは農業関係とか、日本としては絶対に必要なものに対する金融はむしろ緩和しなければならぬ。四十八年度の予算案の中でも、
政府関係機関その他の中小企業、それから農林関係等は金利も安くすることをこの予算の中には御
提案をいたしておることは御承知のとおりだと思います。こういうふうな多様的なかつ日本的な
対策を講ずることが、変動相場制ということになったらますますもって必要なことである、私はこういうふうな
考え方を持っているわけでございます。
それからもう
一つは、
時価発行のこと。これも世上大きな問題になっておりますが、
時価発行ということは、まあ、いまさら申し上げるまでもございませんけれ
ども、資金調達の様式というものが多様化している現在、それから、そもそも企業というものが、自己資本を充実しなきゃならないという
観点から申しまして、
時価発行ということは、私は、本来適切なやり方だろうと思います。そして同時に、プレミアムというようなものについては、これは商法上の厳格な
規定があるわけでございますから、そうした基本法制のもとにおいて、これが適切に行なわれるならば、非常にけっこうなことなんでございますが、やはりこれが違法に行なわれたり、
法律にはあるいは触れないかもしれないけれ
ども、
ルールすれすれのように悪用されてプレミアムかせぎといいますか、そういうことだけに興味を持ち関心を持ったやり方での
時価発行というものはこれは絶対に阻止しなければならない。そこで、
時価発行の問題につきましては、先ほど
証券局長からも御
説明が一部ありましたけれ
ども、これに対しては適正に
時価発行ができるように、特に
指導なり、関係の
業界なり、あるいは
証券会社、発行
会社というようなところも、同時にこれは
ルールにきちっと従うような、いわんや商法等の
規定しているところにもちろん従うことは当然でございますが、こういう点については、いやが上にも
自粛をしてもらわなければならないということで
指導をいたしておるわけでございます。先ほど申しましたように、それにもかかわらず、ついに司直の手が出てくるというような事態ができましたことは、われわれとしてはほんとうに残念に思いますが、しかし、その反省の上に立ってますますきびしい監督をやっていかなければならない、こういうふうに
考えておるわけでございます。このプレミアムというものは、本来の趣旨のように、資本の充実
——商法も資本と同様に扱うべきものであるとしているわけでございますから、そういうような方向に行けば
時価発行というものは、私はむしろ適切な
措置である、こういうふうに
考えます。