○委員以外の議員(
塩出啓典君) ただいま議題となりました
海水淡水化法案につきまして、その提案理由並びに要旨を御説明申し上げます。
最近における
産業活動の拡大、
国民生活の高度化等を反映して、水の需要は増大の一途をたどっており、
産業活動が集中し、かつ人口が極度に密集している大都市地域では、水需要の増加は年率一〇%を上回るほどであります。ことに、工業集積が極限の状態に達している京浜、中京、阪神及び北九州の四大工業地帯では、水需給の逼迫は近い将来現実の問題となることは明らかであります。
全国的な
規模で水需給の逼迫が現実化するのは、
昭和五十年代の半ばころからであり、建設省が
昭和四十六年四月に発表した広域利水調査第一次報告書によれば、
昭和六十年において、全国で年間五十五億立メートルの水不足が生じ、中でも京浜京葉地域では、年間二十一億立メートル、京阪神地域では年間十九億立メートルの水不足が生ずると言われております。この予測はやや低く見積ったもので、これを上回ることも十分
考えられます。なお、すでに離島等の一部地域では、水不足は現実の事態となっております。したがいまして、この水不足問題に対して、有効な対策を講じないならば、
産業活動及び
国民生活の維持に重大な支障を来たすことは必至であります。
現在、各種用水の供給は、その大半を河川水に依存しておりますが、河川利用率の増大等から、その利用も限界に近づいており、また、今後のダム建設に著しい
コスト上昇が予想されることを
考えた場合、新たに河川以外に水の安定的かつ低廉な供給源の
確保をはかることがますます差し迫った
国民的な課題となってきております。
今日、新たな水の供給源として、最も現実的かつ有効なものとして期待されているのは、海水淡水化であり、もし海水から多量の、しかも低廉な水が安定的に供給されれば、水不足は一挙にして解決されることになるし、現在の技術水準から見て、それは実現可能なことであります。したがいまして、国は、積極的に海水淡水化技術の研究、開発を推進する必要があります。また同時に、
コスト軽減に役立つ火力並びに原子力発電所から安価なスチームを得る等の問題について、早急に対策を講ずる必要があります。
現在わが国では、工業技術院が主体となって、
昭和四十四年度から七カ年計画で、五十億円の予算で、日産百万トン、トン当たり
コスト三十円程度の
大型淡水化プラントの研究、開発が行なわれております。
欧米先進諸国においては、海水淡水化プラントの研究、開発は早くから着手されており、米国では一九五〇年の初めから政府が中心となって研究、開発を行ない、現在までに五百億円をこす資金を投じ、日産十九万トンの海水淡水化プラントの部分試作を行なうほどになっております。また、英、西独も同様に
大型プラントの研究、開発を急速に進めています。
しかるに、わが国の研究、開発はプラントの部分試作を行なうまでにも至らず、欧米先進諸国にかなりおくれをとっており、現在のこの研究、開発のテンポでは、水需給の逼迫が現実化する五十年代の中ごろにおける実用化はとうてい期待できません。
したがいまして、わが国としては、海水淡水化プラントの研究、開発について、現在の開発体制を拡充、強化するとともに、これを国の重要施策として一そう推進していく必要があります。
本
法律案は、こうした最近における海水淡水化プラントの研究、開発の重要性、緊急性、さらには開発体制の立ちおくれ等にかんがみ、海水淡水化プラントの研究、開発等を行なう機構を設け、海水淡水化の実用化を促進しようとするものであります。
次に本
法律案の内容につきまして、主要な点を御説明申し上げます。
第一に、この
法律は、海水淡水化技術の開発及び海水淡水化施設の設置等を促進することによって、上水道用水並びに工業用水の安定供給を
確保することを
目的とするものであります。
第二に、内閣総理
大臣は、海水淡水化振興のための基本計画を策定することであります。
第三は、総理府に海水淡水化審議会を置くことであります。
審議会は、会長及び委員十五名から構成され、基本計画の策定、
関係機関等との
調整等をその所掌事務とするものであります。
第四は、海水淡水化促進事業団を設置することであります。
事業団は、海水淡水化に必要な技術の開発及び施設の設置等を行なうことを
目的とするものであり、業務としては、海水淡水化に必要な技術の研究及び開発、海水淡水化施設の設置及び譲渡並びに設備の維持及び水道事
業者への供給等を主たる業務とするものであります。なお、事業団は、
通商産業大臣及び厚生
大臣の監督のもとに置かれることになっております。
以上、この
法律案の提案理由並びにその内容を御説明申し上げましたが、何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。