○藤井恒男君 問題はこれからでございますが、とにかく現状から近い将来を展望をするなら、繊維多国間協定問題については、日本は参加するか不参加するかの二者択一を迫られる。またかりに日本が参加する、不参加だということにかかわりなく、ことしの十月からは繊維の多国間交渉が進められていくということは私は確実であろうと思うんです。そうなったときに、どのような多国間協定の内容が織り込まれていくかということは、これはまだ先のことで不明でありますけれ
ども、しかし、私たちは現にLTAというもの、それから毛・化合繊の
日米協定という、われわれにとってみれば、日本にとってみればたいへん苦い経験を長い間持ってきておるし、それを背負った状態の中で多国間の包括的な取りきめということになると、これはたいへんな日本の繊維産業にとっての打撃になるというふうに思います。
現在の日本の繊維産業がLTAあるいは
日米繊維協定というようなものの中で、みずからの生くる道ということで輸出市場転換を執拗にはかっておるし、あるいは海外への
企業進出によって加工基地づくりを進めて国際分業というものをつくって、それによって日本の繊維産業というものをバランスさすということに努力しているさなかでございますけど、これに追い打ちがかかって多国間協定ということになっていくと、さらに急激な構造変化というものをしいられることになり、これは思っただけでももうぞっとすると、日本の繊維産業というものがばらばらになってしまうのではないだろうかという強い危惧を持ちます。いままで何度となく申し上げてきたことだから私繰り返すことを避けますが、われわれがやはりいままで持ち続けてきたところの
考え方というものをこの際くずすべきじゃないというふうに私は思うわけです。
一方、現にある一部では輸出市場のシェアを固定化して、そのことによって競争力の低下を補う、そして国内市場を防衛するほうが得だと、こういった
考えも出始めておるやに私聞きますけれ
ども、これは全く逆であって、やはり国際
協力、協調のもとに自由な貿易というものをはかっていくというわれわれの原則的な
考え方をこの際変節してはいけないというふうに思うわけです。そういった意味で、私、歯どめという意味じゃないけどお願いしておきたいんだけど、確かに繊維業界の中においては今度のLTAの問題あるいは
日米繊維協定の問題、今後の多国間協定の問題をめぐってその見詰め方と思惑に多少の違いがあるように私思います。したがって、ECにしてもあるいはその他の国にしても、ガットの場に出る限りにおいてはどの国といえ
ども官民協調の形で国益を重んじて出てきておるわけですね。
どちらかといえば、先ほど来
大臣も
局長も、よく
関係業界のみならず労使の
意見を十分徴して会議に臨むと言ってはおるものの、現にこのようなせっぱ詰まった状態の中でも、業界
一つとってみても微妙な違いがある、これはいなめないと思うのです。それは必ずしも全体の
意見をまとめたことにはならない、したがって、早急に私は
通産省雑貨局がイニシアチブをとってもいいと思うので、繊維業界なら繊維業界の統一したものの
考え方というものを設定すべきだ、その努力をやはりしなきゃいけないというふうに思うわけです。日本人的なやり方で、有無相通ずるということで、ある部落に対してはわかった、こっちの部落に対してもわかったという形で多国間協定の場に臨んでいけば、ふたを開いてみてみんなの思惑が違っておったということになるし、その意味におけるロスもあるし、損失も免れないわけですから、十分それははかっていただきたい。まず繊維産業界の意思の統一をはかるべきだ、その上に立って私は交渉に臨む作戦を練っていくべきであろうと思います。
同時に、その場合にはそこに働く労働者の
意見も十分徴すべきだ、労働者の側も公正労働
基準というものを国際化の形で設定していこうという考方を持っておるわけですから、広く門戸を開放して国際的な、適正な労働
基準というものを南北間にも、先進国、わが国の間にも
調整していこうというわけですから、閉塞的なものの
考え方じゃない、その辺のところもよく
考えて私は処置していただきたいと思います。
それから先ほ
ども申したことですが、くれぐれも
大臣並びに総理に注意しておいていただきたいことでございますが、かつてのニクソン・佐藤会談というような轍を踏まないようにやっていただきたい。何と言おうとも前回の
日米繊維交渉というのは、もう旧聞に属することになったからどこでも公になってしまったわけだけど、佐藤さんとニクソンとの間にやはりそれがどういう形であったにしろ約束がかわされ、それを田中総理が——
通産大臣が形をつけたということになっておるわけです。再び同じ轍を踏まないように、十分当局として注意していただきたいと思います。
その次の問題に移らしていただきますが、綿花の輸入を仰がなければならないわけですが、ブラジルが綿花の輸出を
規制するという
措置が出てまいりました。このことがわが国の綿紡績業界、ひいては繊維全体にどのような波及的な
効果を及ぼしておるか。また聞くところによれば、アメリカも、ブラジルがやればこれに追随するという動きもあるやに私聞いておるわけだけど、アメリカの場合、片っ方では繊維協定をやり、片っ方でまた綿花の輸出
規制をやるということになれば、これはもうまさに何をか言わんやということになるわけで、全く論理は一貫しないし、きわめてけしからぬ態度だというふうに思うわけです。よもやどんなに血迷ったといえ
どもアメリカはそういうばかなことはやらぬと思いますが、その辺の見通し、感触な
どもあればこの際聞かしておいていただきたい。