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1973-06-14 第71回国会 参議院 商工委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十四日(木曜日)    午前十時十五分開会     —————————————    委員の異動  六月八日     辞任         補欠選任      黒柳  明君     藤原 房雄君  六月十二日     辞任         補欠選任      藤原 房雄君     峯山 昭範君  六月十三日     辞任         補欠選任      峯山 昭範君     黒柳  明君  六月十四日    辞任          補欠選任     安田 隆明君      木島 義夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         佐田 一郎君     理 事                 大谷藤之助君                 若林 正武君                 阿具根 登君                 藤井 恒男君     委 員                 植木 光教君                 剱木 亨弘君                 林田悠紀夫君                 細川 護煕君                 安田 隆明君                 小野  明君                 藤田  進君                 中尾 辰義君                 須藤 五郎君    衆議院議員        修正案提出者   田中 六助君    国務大臣        通商産業大臣   中曽根康弘君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       小坂善太郎君    政府委員        経済企画政務次        官        橋口  隆君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        通商産業政務次        官        矢野  登君        通商産業省公害        保安局長     青木 慎三君        通商産業省化学        工業局長     齋藤 太一君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        環境庁企画調整        局企画調整課長  三喜田龍次君        環境庁水質保全        局水質管理課長  山村 勝美君        環境庁水質保全        局土壌農薬課長  松山 良三君        厚生省環境衛生        局水道課長    国川 建二君        厚生省環境衛生        局食品衛生課長  三浦 大助君        農林省農蚕園芸        局審議官     須賀  博君        農林水産技術会        議事務局研究総        務官       富樫  洋君        食糧庁業務部長  志村 光雄君        水産庁調査研究        部長       松下 友成君        通商産業省公害        保安局公害防止        指導課長     松村 克之君        通商産業省重工        業局電子機器電        機課長      藤本 和男君     —————————————   本日の会議に付した案件総合研究開発機構法案内閣提出衆議院送  付) ○化学物質審査及び製造等規制に関する法律  案(内閣提出)     —————————————
  2. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  この際、御報告いたします。  先般、本委員会において決定されました、常磐炭砿株式会社西部炭鉱における坑内火災事故実情調査のための委員派遣は、都合により取りとめといたしました。御了承をお願いいたします。     —————————————
  3. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 次に、総合研究開発機構法案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。小坂経済企画庁長官
  4. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいま議題となりました総合研究開発機構法案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  今日の経済社会は、環境問題、都市問題をはじめ、複雑かつ、広範な諸問題に直面しております。戦後、国民のたゆまざる努力によって驚異的な経済成長を遂げたわが国が、今後、一そうの発展をはかり、国民生活の向上を期するためには、わが国が直面するこれらの広範な諸問題を解明し、新たな方途を探究することが必要であります。わが国は、社会科学自然科学等の個々の学問分野においては、世界的な水準にあると考えられますが、複雑かつ、広範な現代社会の諸問題を解明するため、これら諸科学における専門知識を結集して行なわれることが必要な総合的な研究開発については、まだその緒についたばかりであります。  近年、民間において、こうした大きな課題総合的に解明するための新しい手法の研究を行なう組織が生まれてきております。また、政府といたしましても、かねてから、関係各省庁におけるこの種の調査研究等を強力に実施してきたところでありますが、多領域にわたる総合的な研究開発を効率的に実施するための体制の不備、研究開発のための資金や人材の養成不足、良好な研究環境に恵まれないこと等総合的な研究開発体制は必ずしも十分であるとはいえません。  この法律案は、このような現状にかんがみ、現代社会の広範な諸問題を全国民的な課題として取り上げ、民間研究機関の活用及び助成をはかりつ、自主的な立場から、総合的な研究開発を推進する機関として、総合研究開発機構設立しようとするものであります。  次に、この法案の要旨について御説明申し上げます。  まず第一に、総合研究開発機構設立につきましては、総合的な研究開発について識見を有する者が発起人となって、内閣総理大臣設立認可申請を行なうものとし、内閣総理大臣は、その申請内容が一定の要件に適合すると認めるときは、一を限り、設立認可することとなっております。  第二に、総合研究開発機構資本金は、官民の出資によって構成されることとなっており、政府は、昭和四十八年度予算におきまして三十億円の出資を計上しております。  第三に、総合研究開発機構役員について規定し、その選任には内閣総理大臣認可を要することといたしております。また、事業計画等機構運営に関する重要事項審議する機関として、研究評議会を置くこととしております。  第四に、総合研究開発機構の行なう業務は、次のとおりであります。  その一は、総合的な研究開発実施し、助成することであります。その二は、総合的な研究開発に関する情報収集、整理し、各方面の利用に供することであります。その三は、総合的な研究開発に関する研究者に対する研修及び総合的な研究開発企画調整に当たる者の養成を行なうことであります。その四は、研究施設その他の施設研究者利用に供することであります。さらに、他の研究機関との提携交流等業務を行なうこととしております。  その他、総合研究開発機構財務及び会計に関する規定機構に対する監督に関する規定等を定めるとともに、関係法律所要改正を行なうこととしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  なお、この法律案は、衆議院において一部修正されましたので申し添えます。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  5. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 次に、本案については、衆議院において修正が加えられておりますので、この際、衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員田中六助君から説明を聴取いたします。田中衆議院議員
  6. 田中六助

    衆議院議員田中六助君) この法律案はお手元に配付されておると思います。  総合研究開発機構法案衆議院における修正点につきまして、御説明申し上げます。  修正の第一点は、第一条の目的規定におきまして、この機構は、「平和の理念に基づき、」「民主的な運営の下に、」任務を遂行するとともに、「総合的な研究開発成果公開」すべきことを明文化いたしたことでございます。  なお、この修正に伴いまして、第十二条の設立認可要件に「民主的な運営」を加え、また、第二十三条の業務として「総合的な研究開発成果公開」を加えました。  第二点は、附則におきまして、政府は、本法の実施状況検討を加え、必要な措置を講ずるものとする旨の規定を新たに設けたことであります。  以上の修正は、この機構が本来の目的に沿って健全に運営されるとともに、時代の推移に応じて、常に国民の要請と期待にこたえ得る体制にあることを期する趣旨でございます。  何とぞよろしく御審議をお願い申し上げます。
  7. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 次に、補足説明を聴取いたします。宮崎総合経画局長
  8. 宮崎仁

    政府委員宮崎仁君) すでに提案理由において御説明がありました総合研究開発機構法案につきまして、その内容を逐条御説明申し上げます。  第一条は、総合研究開発機構目的を定めた規定でありまして、総合研究開発機構は、現代経済社会及び国民生活の諸問題の解明に寄与するため、広範な分野専門知識を結集して行なわれる総合的な研究開発実施及び助成等を行ない、もって国民の福祉の増進に資することを目的とするものであります。  なお本条については、衆議院において修正が行なわれており、本機構は、平和の理念に基づき、民主的な運営のもとに各般の業務を行なうとともに、総合的な研究開発成果公開することがこの法律目的に含まれることとされます。  第二条は、機構法人格を賦与することを明らかにし、第三条は、このような機構が一つのみ設立認可されることを定めた規定であります。  第四条は、機構資本金に関する規定であります。  第一項では、政府及び政府以外の者が共同して出資するものとし、第二項は、機構は、必要があると認めるときは、内閣総理大臣認可を受けて、増資をすることができるものとするものであります。第三項は、機構増資の際、政府は、予算の範囲内において、機構に追加出資できるものとするものであります。第四項から第六項までは、政府は、現物出資をすることができるものとする規定であります。  第五条は、持分の払い戻し及び自己取得等禁止、第六条は、政府以外の者が持ち分を譲渡することができるもの等を定めた規定であります。  第七条は、機構名称に関する定め及び機構でない者による同一の名称使用禁止する旨の規定であります。  第八条は、登記に関する規定であります。  第九条は、機構不法行為能力及び住所について民法の規定を準用する旨の規定であります。  第十条から第十四条までは、機構設立に関する規定であります。  機構設立するには、総合的な研究開発に関して識見を有する者十五人以上が発起人となり、機構に対する出資の募集の後、内閣総理大臣設立認可申請しなければならないものとし、内閣総理大臣は、認可申請設立の手続あるいは定款等が法令の規定に適合するかどうか等を審査して、これを認可しなければならないものとすることであります。  なお、十二条についても衆議院において修正がなされており、設立認可要件として、本機構事業運営が民主的に行なわれるものであることが明記されます。  第十五条から第二十二条までは、機構管理に関する規定であります。  定款記載事項役員及び職員等に関する規定であります。  機構に、役員として会長一人、理事長一人、理事五人以内、監事二人以内を置くこととし、理事のうち二人以内は非常勤としております。  なお、役員選任には内閣総理大臣認可を要することといたしております。  役員の職務及び権限につきましては、会長及び理事長代表権を有し、理事は、会長及び理事長を補佐して業務を掌理することとしております。  その他役員兼職禁止代表権の制限、役員及び職員の公務員たる性質に関する規定を設けております。  なお、第二十条で、機構に毎事業年度事業計画等運営に関する重要事項審議する機関として、識見を有する者二十五人以内で構成される研究評議会を置くこととしております。  第二十三条から第二十五条までは、業務に関る規定であります。  機構は、(1)総合的な研究開発実施及び助成(2)総合的な研究開発に関する情報収集整理び提供、(3)総合的な研究開発に関する研究者にする研修及び総合的な研究開発企画調整に当る者の養成、(4)総合的な研究開発に関する研究に対する研究施設その他の施設提供、(5)総合研究開発に関する研究機関との提携及び交流業務を行なうこととしております。  なお、第二十三条についても衆議院において修正がなされており、本機構業務に、総合的な研究開発成果公開が追加されました。  業務の開始前に業務方法書を作成し、内閣大臣認可を受けるものとしております。  また、国との関係についての規定を置き、国は、機構運営自主性を尊重するとともに、円滑な運営のための人的及び技術的援助について必要な配慮を加えるものとしております。  第二十六条から第三十三条は、財務及び会計関する規定であります。  機構事業年度は毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとし、内閣総理大臣よる予算等認可財務諸表の承認の規定を設けております。  また、機構は、内閣総理大臣認可を受けて長期及び短期の借り入れ金をすることができることととしております。  第三十四条及び第三十五条は、内閣総理大臣よる機構に対する監督に関する規定であります。  第三十六条は、出資者原簿について定め、第三十七条は、機構の解散について、別に法律で定めること等を規定したものであります。  第三十八条において、内閣総理大臣は、政令で定めるところにより、この法律規定によるその権限の一部を経済企画庁長官に委任することができるものとし、第三十九条において、内閣総理大臣は、その権限行使にあたり財務等に関しては大蔵大臣事業計画等に関しては関係行政機関の長に協議することとしております。  第四十条及び第四十一条は、罰則に関する規定であります。  最後に、附則において地方税法所得税法法人税法及び経済企画庁設置法につき所要改正を行なうこととしております。  この附則についても、衆議院において修正がなされており、第四条として、政府は、総合的な研究開発に関する内外の事情の推移に応じ、この法律実施状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる旨の規定が加えられました。  以上、この法律案につきまして補足して御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  9. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 以上で説明の聴取は終わります。  本案に対する質疑は後日に譲ります。
  10. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 次に、中曽根通産大臣から発言を求められております。この際、発言を許します。中曽根通産大臣
  11. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先般来、私の不用意な発言によりまして混乱を起こし、御迷惑をおかけいたしました。つつしんで遺憾の意を表します。以後注意いたします。
  12. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 阿具根君。
  13. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、大臣発言の問題について触れる考えはありません。きのうも本会議でやりましたし、また内閣委でもあると思うんですが、私はその問題でなくて、当日は当委員会も開催いたす予定で、しかも先議案件を行なうことになっておったはずでございます。それをどうして内閣委に行かれましたか。大臣だけの責任ではないと思います、われわれも責任があると思いますけれども、先議案件がかかっておる当商工委員会で、理事会で決定されたものを出席もなさらず内閣出席された。ということは、先議案件はわれわれは最も急がなければ、衆議院に送付しなければならない義務がございます。だから、一番最初にこれを掲げてやっておるのに、大臣みずからが商工委員会には参加されない、そして、この商工委員会流会しなければならなかった。こういうことで、私は、この前から審議に入っておりますこの先議案件について、大臣がそれほど熱意がないのであるならば、われわれが熱意を持ってここでやる必要はないんじゃないか。  率直に申し上げるならば、先議案件が出ておるところに大臣は率先して説明してもらわなければならぬ、質問を受けてもらわなければならぬ、私はこう思うのです。それを、親委員会商工委員会で決定されて、しかもその日、朝から審議するようになっておるのに出席されない、そしてこれが流会になった、質問もできなかった。そういう考え方が私はどうしても納得できないんです。だから、まあ大臣答弁を求めようとは思いません。これは理事会責任でもあります、与党の責任でも十分あると思うのです。先議案件をただ一件持っておる私たちが、またほかに上がってきた法案もございますが。先議案件に対してそういうお考えならば、私は協力する考えは持ちません。どうして商工委員会流会させてまで他の委員会に出なければならなかったのか、私は非常な疑問を持って今後の運営に携わっていきたい、かように思います。  一言申し上げておきます。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先般、商工委員会出席できなかったことをまことに遺憾に存じますが、私も当日の朝は、商工委員会に出るものだと思いましてこちらへ参りまして、二十分ばかりここで待機しておったのでございます。しかし、内閣委員会のほうに出ろという話を承りまして、皆さま方にごあいさつしてからそちらへ参りたいと思っておりましたら、理事会がおそくなりまして、内閣委員会のほうから催促がまいりまして、そちらへ伺った次第でございまして、当委員会流会になったことはまことに遺憾でございました。     —————————————
  15. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) それでは、化学物質審査及び製造等規制に関する法律案議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  16. 中尾辰義

    中尾辰義君 最初通産大臣にお伺いをいたしますが、過日の水産庁調査による魚介類PCB汚染、さらには東京都の東京湾魚介類汚染調査、なお、有明湾における水銀のたれ流しによる第三水俣病の発生、こういったような非常にショッキングな発表が次々とありまして、漁民をはじめ消費者に大きな衝撃を与えておるわけであります。全く日本列島食品汚染というような状態でありまして、何を食べていいのか、非常に心配をされておるわけであります。そのもともとの公害発生源は、これは企業側でありまして、その企業監督の任に当たる所管大臣中曽根大臣といたしまして、どのようにこの責任を受けとめていらっしゃるのか、まず、冒頭に私はお伺いしたいと思います。
  17. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) PCB処理につきまして反省いたしますと、政府の手の打ち方が後手であったということを痛感いたしております。全国的にこの被害の徴候が出てまいりまして、特に魚介類等においてその様相が出てまいりまして、全国的規模においてその汚染源と疑われるようなものについて徹底的に究明いたしまして、その原因である物質処理について、早く適正な措置をしなければならぬと思います。関係各省とも相談をして、水銀及びPCB対策各省会議をつくりまして、本日から発足いたしまして、その総合的な対策を開始したところでございます。  一番大事なところは、発生源を早く突きとめるということ、それからどの程度そういう物質が流出したかを把握するということ、それがどういうふうに分布しているかということを掌握するとと、それから、再びそういうようなものを出さないような措置をいかに講じているか、また講ずるかということ、それから、被害を受けた方々に対するいろいろな救護措置保健措置、あるいは生業問題に関する措置等総合的に至急やらなければならぬと思っております。
  18. 中尾辰義

    中尾辰義君 先般の当委員会における要求によりまして、あなたのほうで、このPCB汚染水域関係府県におけるPCB使用工場リスト、三百三十八工場、これを発表なさったわけでありますけれども、これは水産庁環境庁あるいは各都道府県にも参考資料として送られたと、こういうことであります。私はただいまの答弁を聞きまして、相当今度は通産省も真剣に取り組んでいくであろうとは思っておりますけれども、昨年の十二月も通産省環境庁、建設省、水産庁等におきましてかなり広範囲な調査PCBに関する工場等に関する公共水域等水質あるいはヘドロ底質等も検査をされておるわけですね。また、ここに資料も持っておりますけれども、これでも相当出ておるわけです。PCB取り扱い工場、これは九十一カ所の調査場所が出ております。  おもなところは、水質東京都の不二研究所、これは〇・四三PPM、あるいはヘドロのほうでは静岡の共和電器が八万二六OOPPM、あるいは東京都の帝国コンデンサーが一万八〇〇PPM、滋賀県草津市の日本コンデンサが七七〇〇PPMこういうふうに調査も出ておるわけです。その後あなたのほうで、これは調査はけっこうですよ、また原因究明もやってもらわなければなりませんが、調査はいいけれども、要は、あなた方のほうでどういうふうに公害を防止するために取り組んでいくのか。いままでは非常におくれてきているんですよ。もう調査も何回もやっておるんですね。そしてほぼ想像もついておるわけであります。ですから、この調査結果に基づいて通産省のほうでも対策を講じていらっしゃるはずですが、その後どういうような対策を今日までとっておいでになったのか、その辺お伺いしたいと思います。
  19. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) 昨年の十二月に発表しました調査の結果は、ただいま御指摘のとおりでございますが、その調査結果に基づきまして、私どものほうでとりました指導につきまして御説明申し上げます。  この調査を踏まえまして、PCBを過去に使用したことのある全工場について次のような指導を行なったわけでございます。第一番目は、工場汚染状況を各企業調査し、その汚染の実態を十分把握するようにという指示をいたしたわけでございます。  それから第二番目は、排水からPCBが検出された場合、及び底泥から高濃度PCBが検出された場合には、現在PCB使用している工場につきましては、早急にPCB使用を中止させるということでございます。それを実施に移すことが困難な場合には、活性炭処理装置等処理装置を早急に設置させまして、PCB排出防止に万全を期することにいたしております。  第三番目は、底泥から一〇〇PPM以上の高濃度汚染が検出された工場につきましては、工場内の水路の清掃、土壌の置きかえ等を行ないまして、汚染されたものを地下水と遮断された状態で埋め立てるというような指示をいたしております。  それから、現在なお熱媒体PCB使用している工場については、PCBの漏洩のないように十分管理を徹底させますと同時に、昭和四十八年、すなわちことしの十二月までにそのPCBの転換を行なわせるという指導をいたしております。  それからさらに、故紙再生工場につきましては、従来進めてきたとおり、原料故紙からのPCBを含む感圧紙の分別をさらに徹底させるというような指導をその後行なっておるわけでございます。
  20. 中尾辰義

    中尾辰義君 そういうような対策指導をなさったわけですが、その後どうなったのか、その辺を聞きたいのですよ。その対策がどのように実行されて、どの程度進んでおるのか。
  21. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) 以上のような結果の取りまとめは現在やっているところでございまして、全部の結果が出ておるわけではございませんが、たとえて言いますと、熱媒体使用しております取りかえば、大体八割くらいの工場で取りかえが完了しているように聞いております。それから個々の工場につきまして、底泥の置きかえその他のことが行なわれておりますが、全体を取りまとめた結果はまだ出ておりませんので、若干の個個の事実について承知している程度でございます。
  22. 中尾辰義

    中尾辰義君 それではお伺いしますが、今日までPCBはどのくらい生産をされ、またどのくらい輸入をされたのか、これは総量でけっこうでありますから。なお、現在PCBの在庫はどのくらいあるのか。それからPCBの回収状況はどういうようになっているのか。さらに、PCB工場管理状態はどうなっているのか。その辺を一括してお伺いしたいと思います。
  23. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) PCBは鐘淵化学が昭和二十九年から、三菱モンサントが昭和四十四年からわが国で生産を開始をいたしました。わが国PCBの製造を営んでおりましたのはこの二社てございます。昨年の六月に生産の中止を命じたわけでございますが、この間に両社で約五万九千トン生産が行なわれております。このほかに輸入が約手トンございましたので、供給された量としては、約六万トンが供給されたわけでございます。それが出荷された先はコンデンサー、トランス等の電気機器関係に約三万七千トン、熱媒体としまして約九千トン、ノンカーボン紙、感圧紙とも呼んでおりますが、この感圧紙向けに約五千トン、その他の開放系と申しますか、塗料でございますとか、インク、接着剤こういった関係に約三千トン出荷されまして、国内向けの出荷が合計約五万四千トンでございます。このほかに輸出が約五千トンございます。  で、回収状況でございますけれども、ただいま回収が進んでおりますのは熱媒体でございまして、現在までに約三千五百トン回収をいたしております。それから感圧紙関係では、紙の量にいたしまして千二、三百トン回収をいたしております。それからその他の開放系では、インクの量としまして六十一トン、それから塗料等の在庫として約十五トン、これが現在までの回収量でございます。なお、一番大口の電気機器関係はいわゆる閉鎖系と申しまして、密閉された容器の中に入っておりますので、現在はその使用の限りにおいては漏洩のおそれはないということで、一応耐用年数が尽きますときに計画的にこれの回収をはかる、こういう計画で、ただいま回収の母体となります機関を来月財団法人で設立する予定でございまして、トランス、コンデンサー約二十万個ございますけれども、これを今後数年間にわたりましい計画的に回収をしてまいりたい、かように考えております。
  24. 中尾辰義

    中尾辰義君 いま回収の機関となる母体を云々とおっしゃいましたが、これをもうちょっと詳しくおっしゃってください。どういうことですか。
  25. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) トランス、コンデンサー等の電気機器関係につきまして、電気機器メーカーを主体といたしまして、名称はまだ仮称でございますが、財団法人PCB処理協会といったようなものを設立をいたしまして、これは基金が一億円、それから競輪からの助成金一億円、合計二億円をもちましてトランス、コンデンサー関係の回収されたものの計画的な処理、つまり無害化して、たぶん焼却処理をすることになると思いますけれども、処理をすることを主体とした、目的とした機関でございます。
  26. 中尾辰義

    中尾辰義君 その処理処理施設ですね、いまもおっしゃいましたが、感圧紙が千二百トンですか、また液状のPCBも三千五百トン、こういうものは回収されておるわけですが、そういうのは現在どこに貯蔵してあるのか。そういうような感圧紙みたいのをどういうふうに処理なさるのか。そういうところはどうなっていますか。
  27. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 熱媒体から回収いたしました液状のPCBは、回収量がことしの四月末で約三千四百トンでございます。そのうち百三十五トンはすでに昨年、鐘淵化学の炉で焼却いたしております。残りが三千三百トンでございますが、これにつきましては、もともとのメーカーでございます鐘淵化学と三菱モンサントのタンク並びにドラムかんで現在保管をいたしております。で、大半がタンクに入っておりまして、ドラムかんのほうは回収されてまいりましたものを一定期間ごとにタンクに移しかえるということでございますので、その過渡的な移しかえまでの期間だけドラムかんで保管されておる、こういう形でございます。それから感圧紙につきましては、メーカーの倉庫に一般の紙と区別をいたしまして保管をいたしております。  で、これの処理でございますけれども、液状PCBにつきましては、鐘淵化学に現在年間六百トンの能力の焼却炉がございます。この炉で焼却をいたしまして、さらに、私どもとしましては千八百トンの能力の炉を増設をするように昨年の七月に会社に指示をいたしたのでございますが、その後、兵庫県当局からしばらく焼却を見合わしてほしい、こういう申し入れがございまして、ただいまのところずっとタンクに入れたまま保管しておるという状況でございます。県のそういった御指示がございました趣旨は、大気中でのPCBの基準がまだきまっていないので、大気に焼却のときに漏れるといけないからしばらく待ってほしい、こういうお話でございましたが、昨年暮れに、環境庁のほうで大気中のPCBの基準もきまりましたので、通産省としましては、なるべく早く焼却を再開させていただきたいというふうな申し入れを兵庫県のほうにいたしておるところでございます。  それから感圧紙につきましては、これは紙の裏にインクと一緒に溶剤としてPCBがカプセルに入れてくっつけてございますけれども、温度の関係で、PCBは千数百度の熱で燃やしませんと分解をいたしませんので、紙のほうはもっと焼却温度が低いということで、PCBだけ残るようなことになると困りますので、完全にこれを焼却する技術が非常にむずかしい点がございまして、現在、私どものほうの公害試験所で焼却技術の開発中でございまして、その技術が完成しましたら、現在保管中のものはその技術に即しまして焼却をいたしたい、こういうふうに考えております。
  28. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ具体的にお伺いしますが、琵琶湖は何といいましても近畿一千万の飲料水の水源であるということになっているわけですが、その周辺に、あなたのところのこの前の発表によりますと十二、三のPCB使用工場がある、こういうことでありましたが、その会社を公表を願いたい。それと、そういうような会社が通産省指導によって、今日どのようにPCB使用につきましてあるいは施設等、あるいは浄化装置ですか、そういうものが改良されてきたか、その点をお伺いします。
  29. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 琶琶湖のまわりにおきましては、使用工場は十一社十三工場であります。すなわち市金工業所、鐘紡、積水化学、中央合成、中国塗料、東洋カーボン、東洋紡績、東レ、日本コンデンサ、丸一繊維、三菱樹脂であります。なお、関西協和カーボンは東洋カーボンに合併されております。  これらの工場では、PCB熱媒体あるいはコンデンサー用に用いられておりました。しかし、各工場ではすでにPCB使用中止あるいは他の代替品に転換しておると聞いております。  具体的なこまかい点は局長から答弁させます。
  30. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) ただいま大臣から申し上げましたように、これは出荷いたしました鐘淵化学と三菱モンサントの出荷リストから拾った工場名でございますが、十一社十三工場でございます。主として熱媒体に使われておったのでございますけれども、昨年暮れに、閉鎖系でありますけれども、熱媒体も念のために全部非PCB系に転換するほうが望ましいと判断いたしまして、各工場に今年一ぱいに非PCB系の熱媒体に転換をするように指示をいたしまして、それに即しまして、この十三の工場におきましては全部現在では非PCB系に転換をするか、あるいはPCBを使わない熱交換関係の生産工程に切りかえをいたしております。
  31. 中尾辰義

    中尾辰義君 ちょっといま十三の工場が発表になったわけですけれども、これはいままでどのぐらいPCBを使っておったのか。それと、それからいまあなたのほうで代替品を熱媒体に使っていると、こういうことでありますけれども、代替品はどういうものが使われておるのか。それがまたほんとうに無害であるのか。はたしてその代替品が実験をされての結果なのか。あるいは急性毒性はないけれども、場合によっては慢性的な毒性があるかもしれないとか、その辺はどうなっているんですか。あなたのほうでもう実験の結果確証を握られて間違いないと、こういうことなのか。これは今度の特定化学物質法案とも関係がありますから、まあお伺いするわけです。
  32. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) この十三の工場の中で一番PCB使用量の多い工場は、日本コンデンサの草津工場と甲賀工場でございます。日本コンデンサ草津工場が二千四百六十八トン、甲賀工場が百六十トン使用をいたしております。ただこれはコンデンサーを製造しておる工場でございますので、そこの製品の中にPCBをコンデンサーの絶縁体として入れまして出荷をしておったという状況でございまして、熱媒体としての使用ではございません。このコンデンサー向けのPCBにつきましては、ただいま全部他の品種に転換をいたしまして、この石油系の芳香族炭化水素に切りかえをいたしております。それから、それ以外の工場は全部熱媒体として使用をしておったのでございますが、転換いたしました熱媒体としましては、大半のものがPCBが出現する前からございました鉱油系品ものに転換し、一部が化学的合成品でございます水素化トリフェニール、あるいはジベンゾールトルエンあるいはシリコンオイルと、こういったものに転換をいたしております。  これの安全性はどうかという御質問でございますが、炭化水素油は従来から長い間PCB出現前から使われておった熱媒体でございまして、いわば石油品一種でございまして、その分解性は石油並みでございますので、かりに環境に出ましても、環境で残留することはないというふうに考えております。またその他の化学的な合成品につきましても、PCBの場合には塩素がついておりますけれども、現在代替品として使われております化学的合成品は塩素がついておりませんで、そのために従来の化学的知見等から考えましても、大体自然界に出ました場合の分解性は灯油から転油の間ぐらいの分解性ではなかろうかというふうに考えておりまして、PCBのように環境で分解をしないで残って魚の体内に蓄積される、こういった懸念はまずないというふうに私ども見ております。  なお、本法が成立をいたしますと、これらの物質もいわゆる既存化学物質ということで、流通はそのまま認めますけれども、政府が一応安全性を審査することにいたしておりますが、ただいま申しましたようなことで、特定化学物質に該当するようなことにはまずなるまいというふうに考えております。
  33. 中尾辰義

    中尾辰義君 次に、漁業問題につきましてお伺いしますけれども、今回の水産庁調査では、魚介類については、食品衛生法で食用としては問題があるとされている三PPMをこえるものが、海産魚介類では全体のうち六%、淡水産魚介類で同じく九%。その中でひどいものは、別府湾の大分川河口のウナギが一三〇PPM、敦賀湾のボラが一一〇PPM、カレイ、スズキが一五PPM、こういったような数字が出ておるわけです。さらに、東京湾のほうも、東京都の調査でかなり魚介類汚染されておることが出ておるわけです。  水産庁のほうは、さっそく三PPM以上の魚介類の漁獲の自主規制、あるいは流通防止等を指導されておるわけですけれども、全国的といいますか、相当漁民の間に不安がありまして、一部には補償問題で漁民が実力行使に出ている、こういう事件がきのうあたりの新聞にも出ております。これは兵庫県高砂市の鐘淵化学工業、三菱製紙、ここでは漁民が両工場に押しかけて工場の排水口を土のうでせきとめる、こういった実力行使まで出ているような事件が起こっているわけですね。ですから水産庁は、こうした漁民に対する今回の補償問題をどのように考えていらっしゃるのか。新聞等の報ずるところによりましては、企業側のほうが自発的に補償する会社も出ておりますけれども、また一面、これはたとえば琵琶湖のごとき、どこが発生源なのか。発生源らしい工場通産省の発表であったけれども、責任のなすり合いみたいなことで、漁民としてはどこに交渉したらいいのか、いろんな問題が出ておるわけですが、この補償問題については水産庁はどのように対処していくのか、お伺いしたいです。
  34. 松下廉蔵

    説明員松下友成君) 水産庁といたしましては、今回のPCB汚染の発表によりまして、ただいま先生御指摘のとおり、漁業者をはじめとしまして、魚市場、漁業関係者等にも予想せぬような混乱が起こってまいりましたことにつきまして、深く反省をしておる次第でございます。これに伴う損害につきましては、現在、緊急措置といたしまして農林漁業金融公庫の沿岸漁業近代化資金の融資等を検討中でございますが、なお、これによってカバーできないものにつきましても、関係省庁とも十分協議しながら対処してまいりたいと、かように考えております。
  35. 中尾辰義

    中尾辰義君 農林漁業金融公庫のほうから一時的に融資と、こういうことになろうかと思いますが、これはまたこういうような考えもあろうかと思います。当然これは、企業監督が不十分であった政府責任にもよるわけでありますから、先ほど申し上げましたようないろんな実力行使等による問題が出てきておる。すみやかに解決しなきゃならない。全部が全部金でもって解決できる問題じゃありませんが、とりあえず、漁民の生活補償ということもあるわけでありますから、財政的に政府がこれを援助する。そうしておいて、あとで企業公害発生源がわかりましてからあらためて政府企業のほうに請求するとか、こういうようなことはどうですか。
  36. 松下廉蔵

    説明員松下友成君) 先生御指摘のとおり、汚染源を究明するのにはなお時日を要しますので、その間のつなぎの漁業者の融資対策その他につきましても、現在、関係省庁と検討を進めておるところでございます。
  37. 中尾辰義

    中尾辰義君 これは通産大臣、あなたは財政のほうは所管外か知れませんけれども、しかし、当の公害発生源側のほうでありますから御意見だけちょっとお伺いしたいのですが、どのようにお考えになっておりますか。
  38. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 兵庫県の例で見ますと、PCB補償基金というものをつくりまして、地方——県で二千万円、市町村で二千万円、関係企業で一億円、一億四千万円の補償基金を用意しているところもございます。熊本の今回のような場合、これは水銀のものでもございますけれども、これがために旅館がキャンセルされてしまうとか、あるいは魚屋さんが上がったりになって商売ができなくなったということもありまして、たしか県で七億円ぐらいの金を出して、会社に対して求償権を留保しながら、とりあえずの手当てをしているということをこの間県会議長からも聞きました。国としてもほっておけないもんですから、そういうような方策で何らかの措置を県と同調してやる必要があろう、こういうことで、環境庁長官にも私、相談いたしまして、そこで各省持ち寄ってその緊急対策をいま講じている最中でございまして、できるだけ御趣旨に沿ってやっていきたいと思います。
  39. 中尾辰義

    中尾辰義君 それから、漁民の考えにはいろいろ複雑な問題があろうかと思います。一部の漁民におきましては、これはもう金なんかで解決する問題ではないのだ、われわれは、漁民として非常にりっぱな魚をとってそして消費者に食べていただく、そこに生きがいというものがあるんじゃないか、金だけやればそれでいいと、こういうわけにはいかない、こういうようなことも起こっておるようでありますがね。ですから、補償の問題もそうでありますけれども、漁場をやはり早くもとの魚がとれるような状態にしなければならない、このほうが私は非常に大事だと思います。  そこで、対策もいろいろやっていらっしゃるでしょうが、このヘドロの問題ですがね。まあ駿河湾あたりはヘドロが相当にひどいです。琵琶湖あたりも製紙工場等ヘドロがあるわけです、瀬戸内海等にも。このヘドロ処理は一体どうおやりになっていくつもりか、これを通産省のほうにお伺いしたい。
  40. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) ヘドロ処理の問題は非常にむずかしい問題でございますが、通産省自身でできる問題ではないのでございまして、たとえばその地域が港湾であれば運輸省の所管になりますし、沿岸海域、河川であれば建設省の所管になるというような各省所管の問題がございますので、そういう関係各省にお願いして極力早くそういう問題の解決ができるように、私どもとしては協力を要請していく立場にございます。したがいまして、今後ともこういうものにつきましては、所管官庁のほうに要請をしてまいりたいというふうに考えております。
  41. 中尾辰義

    中尾辰義君 所管官庁のほうに要請をするというその辺が、それはこちらのほうで聞いておりますと、言い分はたくさんあるわけでしょう。大体企業側のほうでこれはまいた種ですから、当然その監督の立場にある通産省がもっと積極的に、悪かったと、そういう姿勢で臨まないと、それはもう単に所管官庁に要請してやるというような、そういうことではなかなか進まぬではないかと思うのですね。その点、今後これから政府日本列島の総点検をやって総合的な対策をおやりになると冒頭に答弁もありましたけれども、ぜひひとつこの問題はもう少し積極的に取り組んで、そして、漁民が安心して魚がとれるようにしていただきたいとお願いするわけです。  それからもう一つ、これは厚生省のほうですが、魚のPCBの暫定許容基準、これが一応出てはおりますが、甘過ぎるんじゃないかという批判もあります。また、魚を非常によく食べる地方ですね、漁民の方、あるいはまた妊産婦等、そういう方のためにはたしてこれでいいのか、さらにもっとこまかな許容基準をつくってはどうか、こう思うわけですが、その辺いかがですか。
  42. 三浦大助

    説明員(三浦大助君) ただいま魚のPCBの許容基準が甘過ぎないかという御質問ございましたけれども、昨年の八月に定めました暫定基準はかなりな安全率を見込んだ基準でございます。したがいまして、暫定基準が守れればこれは健康上心配はないというふうに私ども見ておるわけでございます。  なお、魚を多食する人たちにつきまして、これは調査会におきましてもやはり調査をする必要があるだろうということで、日本人の一日の平均の魚の摂取量はいま八十四グラムということになっておりますが、この暫定基準をきめる際には最大許容摂取量できめております。  なお、漁民等につきましては、かなり二百から三百も食べる人があるということを聞いておりますので、委員の先生方の中から、多食者については一度調査を早急にするようにということもございまして、私どもは、八県の約四千名の人たちを選びまして多食者調査を現在やっておるわけですが、これらにつきましては、健康診断と摂取状況は、全部調査を終わりまして、現在集計中でございます。今月末をめどに、この集計結果に基づいてもう一度この暫定基準との比較をしてみようということになっておるわけです。
  43. 中尾辰義

    中尾辰義君 時間がありませんから、次にひとつPCBによる米の汚染問題につきましてお伺いします。  最初に、米の汚染実態でありますが、PCBによる米の汚染実態については、去る十一日に東京都がまとめた「昭和四十七年度PCB総合調査」これによりますと、自主流通米、政府保管米二十検体の分析調査の結果、全検体からPCBが検出されております。茨城県産のトドロキワセは〇・〇四PPM、青森県産のレイメイなどは〇・〇二PPMという濃度が明らかになったわけでありますが、これは魚なんかに比較しますと比較的濃度が低いとも言えますけれども、しかし、この調査では、この検体の選定にあたって汚染源との関係が密接と思われる地域を選んだものではなかったんじゃないかと、このように思われるわけであります。その証拠には、公害委員会等でもたびたび問題になってまいりました滋賀県草津の日本コンデンサ、この周辺の水田から収穫された四十六年度の水稲玄米には一・三三PPMPCBが出ておるわけであります。こういうようなことを考えますと米のPCB汚染は、その汚染源を中心に東京都の調査結果をはるかに上回る濃度が出るのではないか、こういうふうに心配をしているわけであります。  そこで通産省は、このたび汚染源らしいPCB使用工場三百数カ所を発表になったわけでありますが、その工場の周辺の米の汚染実態、こういうものを調査してはどうかと思いますが、いかがでしょう、これは環境庁ですか。
  44. 松山良三

    説明員(松山良三君) お答えをいたします。  環境庁としましては、四十七年におけるPCBの一斉点検の中で、土壌及び農作物の調査をいたしたのでございます。その結果によりますと、これは立毛中の米、玄米の調査結果でございますが、三十三検体の調査をいたしまして、最高が先生おっしゃいました滋賀県の一・三三でございますが、一PPM以上のPCBが検出されたものはその一検体だけでございます。〇・一一PPM以上一・〇未満のものが一検体、〇・〇一PPM以上〇・一〇PPMまでのものが五検体、あとの二十六検体は〇・〇一PPM以下、そういった結果が出ているわけでございます。  なお、御指摘の、滋賀県の日本コンデンサ周辺につきましては相当程度汚染が進んでおると、そういったこともございますので、同年に環境庁の補助金をもちまして、土壌と立毛中の米の詳細な調査を約七十五ヘクタールにつきまして行なったのでございます。それによりますと、土壌中の濃度が二一〇PPMのところがら玄米中のPCBの検出量は〇・〇八、八五PPM土壌のところの立毛中の玄米からは〇・〇二PPM、そういったような数字も出ているようなわけでございますが、土壌濃度に比較をいたしますとそれほど玄米の濃度は高くない、そういった結果のようでございます。なお、四十六年度の調査結果では、土壌PCBが一〇〇PPMという高いところでございました。そこのところの検体が一・三三PPMということであったわけでございます。そういうことでございますので、なお、現在こういった米の中のPCBの安全基準というようなものはまだございませんが、いずれにしましても、一度米から非常に高いPCBが検出されたということもございますので、この滋賀県の地域につきましては、なお今後とも土壌並びに米等のPCB調査は続けてまいりたい、かように考えておるのでございます。
  45. 中尾辰義

    中尾辰義君 次に、植物のPCBによる汚染経路、これについてお伺いしますが、米がPCB汚染されるものであることは、今回の東京都の調査でもわかったわけでありますが、この汚染経路についてはどのように理解されているのか、この点を明らかにしてもらいたいと思います。  また、去る六月十一日の読売新聞の報道によりますと、農林省は、ことしの初めから米など植物に対するPCB汚染についての緊急実験を進めていたが、このほど米は胚芽、落花生はほぼ全体にPCBが残留する、そういう事実が確認をされたわけです。米の汚染数値が比較的低いといっても、米の日常摂取量は魚とは比較にならないほど多く、四十六会計年度の食糧需給表では、一日当たり約二百五十五グラムにのぼっております。累積汚染の心配もありますので、米に関するこの緊急実験の結果、PCBによる土壌汚染度合いと玄米中の蓄積との関係、米の残留蓄積の量と蓄積場所等について、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
  46. 松山良三

    説明員(松山良三君) お答えをいたします。  先ほどもお答えをいたしましたが、PCBによりまする土壌汚染のはなはだしいと思われるところもございます。特に、滋賀県の日本コンデンサ工場の周辺地域等はそれに該当する地域でございますので、四十七年度に環境庁といたしまして、この地域の土壌中のPCBと、そこに立毛している玄米の中に含まれるPCBにつきまして調査をしたのでございます。  先ほど申し上げましたが、調査対象面積は約七十五ヘクタールで、十四点調査をいたしました。そのうちの特に土壌濃度が高い、土壌中に二一〇PPMPCBがあるところの立毛中の玄米は〇・〇八であった。なお、八五PPMPCBを含む土壌にはえておる米のPCB残留は〇・〇二であった。そういったことで、土壌濃度と、そこに立毛している米の濃度とを両方調査をいたしておるのでございます。なお、本年もそういった調査を続ける予定でございます。それから、全国的にも高いPCBが含まれるような土壌のところでは、現在休耕しているところは別といたしまして、休耕してないようなところでは、やはり土壌と米の両方をはかる、そういうような調査を今後とも続けてまいりたいと、かように考えておるのでございます。
  47. 富樫洋

    説明員(富樫洋君) ただいま農林省のほうでやっております試験について御質問がございましたわけですが、農林省といたしましては、昨年四十七年度におきまして、PCBと玄米との関係につきまして研究をいたしております。  それで、その結果の概要とその試験の模様を申し上げますと、実施をいたしましたのは埼玉県の鴻巣市にございます農事試験場でございます。その農事試験場内の土壌を使いまして、それに一〇PPM、一〇〇PPM、一〇〇〇PPMの三つのケースについて、PCBを含有混和いたしましてポット試験を実施いたしたわけでございます。  その結果を申し上げますと、成育過程におきましては、それぞれにおいて通常のものと差異を認めることができなかった、こういう状況でございます。それで、収穫されました玄米につきましてそのPCBの含有状況を申し上げますと、これも大体〇・〇二PPM、こういうことでございまして、土壌中のPCBの含有量と玄米中のPCBの含有量との相互関係を認めることはできない、こういうような試験結果になっているところでございます。  それから先生からお話がございました、胚芽中にPCBが高く蓄積しておるんではないか、こういう御指摘がございましたんですが、私どもは、残念ながら玄米中のどの部位にPCBが蓄積しているか、そこまで実は研究に手が伸びていない状況でございまして、四十八年度におきまして、これらを含めまして玄米に蓄積する過程をさらに追及してまいりたい、こういうことで計画しておる現状でございます。
  48. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ、米のPCB汚染に関する食品衛生法上の規格基準の設定のことでありますが、これは現在、食品中におきましてはPCB規制値は、魚介類、牛乳、肉類、卵類、容器包装のそれぞれについて暫定規制値が設定をされているわけです。ところが、米についてはまだ暫定基準ができていない。それで、これはどういうわけなのか、実験がむずかしいのか、技術的に困難なのかお伺いしたいのですが、さきの東京都の調査に関連をいたしまして、都は、独自に厚生省食品衛生調査会の答申をもとに試算を行なっておるわけであります。それによりますと、体重五十キロの成人が一日二百グラムの玄米を食べるとして、〇・一PPMの含有PCBなら安全であり、〇・〇四PPM程度ならまず安心と、まあこういうことを言っているように聞いているわけであります。  そこで、東京都のこのようなPCB汚染に対する積極的な姿勢に比べまして、国の対応は非常にこれはおくれておる。そこで、厚生省はこの都の試算についてどのように考えていらっしゃるのか。なお、米等の農産物についていつごろまでに規制基準を設けることができるのか。この際、明らかにしていただきたいと思います。こういうものはむずかしいでしょうけれども、なるべく早くしてもらわないと、汚染田で被害を受けておる農家の方々は非常に補償等の問題で当惑をしている、そういうことでお伺いしたいのです。
  49. 三浦大助

    説明員(三浦大助君) 米のPCBの許容基準のことでございますけれども、昨年の八月にPCBの暫定基準値をきめましたときに、一応、魚、これは汚染の主役でございますから、一番魚を重視いたしまして、魚、牛乳、乳製品、肉類、卵等について暫定規制値をきめたわけでございます。このときにおきましても、米と野菜についても早急にきめるべきではないかという御意見はあったわけです。当時、まだ米と野菜の実態というものがわかりませんでした。その後、私どもは全国からこれらのデータを集めまして、すでに食品衛生調査会のほうに米と野菜の基準をつくるべく諮問をしてございまして、来月上旬のPCB特別部会でこれをきめていただくという手順でいま作業を進めておるところでございます。  先ほどの東京都の見解でございますけれども、私ども昨年の許容基準をきめた際に、人体に一日二百五十マイクログラム以下にPCBの摂取を押えなければならないということでございまして、この中にまだ米と野菜の基準値をつくるべき許容量限度と申しますか、この分野が含まれて余裕をとってございます。で、現在の汚染の実態値等も勘案しまして早急にこれはきめるべく、いま作業を進めておるわけでございます。
  50. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、具体的に滋賀県の日本コンデンサ工業草津工場、その周辺のPCBによる汚染対策、これにつきましてお伺いしますけれども、日本コンデンサ工業草津工場の周辺の水田からとれた米から最高一・三三PPMPCBが検出された。これはもう新聞等でも報道されております。昨年四月十七日に滋賀県が明らかにし、滋賀県はこのため、工場周辺地区からとれました四十六年産米のうち政府買い上げ米、自主流通米として草津農協が当時保管していた米を、政府PCBの許容基準をきめるまでの間出荷停止措置をとった、そういうことを聞いているわけです。そこで、四十六年産米につきましては、これはいま申し上げたとおりですけれども、四十七年産米についてはどのような措置がとられたのか。それから、四十八年産米に関する対策はどういうふうになっているか、その辺を明らかにしてもらいたい。
  51. 志村光雄

    説明員(志村光雄君) いまの四十六年産は出荷停止をいたしておりますが、四十七年産、本年の米についてはどうなっておるかという御質問でございますが、四十七年産の草津市の汚染地域の米につきましては、二百七十トンを現在政府が買っておりまして、これは別配にして保管をしております。凍結をいたしております。四十八年産についてはどうするかという御質問でございますが、政府といたしましては、同じように政府買い入れをいたしていくということで対応いたしたいと思っております。
  52. 中尾辰義

    中尾辰義君 最後のほうがちょっと歯切れが悪かったんですがね、まあ、あとでお伺いします。  それで四十六年産の六百七十三トンの米が出荷停止となっているわけですけれども、その内訳は政府の買い上げ米が四百二十二トン、自主流通米が二百五十一トンとこのようにいわれておるわけです。この措置は県の判断に基づくものだと思われるのでありますが、この政府買い入れ米四百二十二トンに関しては、国は、当然この代金は決済されたと思いますけれども、どうなっているのか。どうしてこの汚染米穀の管理は現在どこで行なわれているのか。草津市の農協がいまでも保管しておるとすれば、政府の所有米の保管であるから倉庫の保管料は当然国が支払ってしかるべきだと、このように考えるわけでありますが、この辺の事実はどうなっているのか、明らかにしていただきたい。
  53. 志村光雄

    説明員(志村光雄君) お答えいたします。  四十六年産の四百二十二トンにつきましては政府が買っておりまして、これにつきましては草津農協の倉庫に保管をいたしております。これはまだ問題が未解決でございますので、さらに慎重を期す意味で、先ほど申し上げましたように凍結をいたしております。もちろん、政府が買っておりますので、保管料につきましては、規定の保管料を支払っているということでございます。
  54. 中尾辰義

    中尾辰義君 次に、このPCB汚染米の配給予定ですが、当然これは凍結をされておりますので、カドミの汚染米等と同様にまだ許容基準はきまっておりませんけれども、これは食糧には不適当ではないかと思います。そういうことでこれは配給のほうはどうされるのか。ずっと凍結されていかれるのか。将来こういったような米をどういうふうになさるのか、その辺をお伺いしたい。
  55. 志村光雄

    説明員(志村光雄君) 先ほども厚生省のほうからお話がありましたように、基準値が近くきまるようでございますし、厚生省の米についての安全基準値が定められました場合には、基準内の米は正常な米穀として配給に回してまいりたい。基準値をこえるものについては、また別途対策については考えてまいりたいというふうに考えております。
  56. 中尾辰義

    中尾辰義君 まあそれも魚と同じようなことであって、カドミの場合もそうでありましたけれども、農家のほうから見ますと、自分たちが精魂込めてつくった米がPCBにおかされて倉の中に保管されておると、これじゃ、やはり農民としては漁民と同じように生きがいというものが非常になくなる。そういうことで、今日までカドミ米におきましてもいろいろ問題があったわけですが、これからこのPCBによる汚染水田対策につきまてちょっとお伺いしたいんですが、この日コン工業草津工場工場廃液が流れる農業用水路周辺の水田は百二十四ヘクタールと聞いておるわけであります。県の調査ではPCBが多量に検出された約一キロの範囲内の水田三十ヘクタールについて、とりあえず四十八年の作付をやめ、休耕にするよう指導するとしていたが、今日までどのような経過になっているのか、その辺を明らかにしていただきたい。
  57. 須賀博

    説明員(須賀博君) お答えいたします。  休耕のお話でございますが、四十七年度におきましては、日本コンデンサの排水の影響を受けます水田の中でPCB汚染濃度の高いところ、そういうところを中心に休耕を行なわれたわけですが、県とか市の指導で休耕した面積が四十七年度では一二・二ヘクタールという数字になっております。四十八年度におきましては、農家の希望をとりましたところ、そのうち八・七ヘクタールを休耕したいということで、四十八年度におきましては、見込みとして八・七ヘクタールが休耕されるということでございます。
  58. 中尾辰義

    中尾辰義君 これは休耕すればそれでいいというわけにはいかないと思いますがね。最近、総理の発言からもうかがわれますように、休耕は四十八年度で打ち切る、そういうような公算が現在のところ非常に強いようでありますが、そうなりますと四十九年度以降、これらの地域は食用農産物以外の作物に転換する以外に農業を継続する方法がなくなってしまう、こういうことが考えられるわけですね。米をつくりたいけれどもつくれない。またつくってみてもあの辺の米はもう売れませんよ。昔は近江米として有名になりましたけれども、近ごろは日コン工場で非常に有名になっておりますから。で、こういう問題にどうお答えをされるつもりか、いかがですか。
  59. 須賀博

    説明員(須賀博君) 四十七年度休耕いたしました十二・二ヘクタールに対しましては、休耕奨励金が出ております。なお、四十八年度見込みの八・七ヘクタール分につきましては、これは県からの報告によりますと、生産農家と会社側との話し合いによりまして、やはり補償金が考えられる。大体十アール当たり七万ないし八万程度のものが考えられるという話を聞いております。なお、四十九年度以降につきましては、やはり休耕奨励金がなくなるわけですが、PCBの原則によりまして、こういうような補償措置ということが継続して行なわれるというふうに考えておるわけです。
  60. 中尾辰義

    中尾辰義君 そこで、PCBというのは、これは土壌汚染防止法は適用されていない、これが現状でありますが、この日コン草津工場汚染源とする農用地の土壌汚染については、環境庁が暫定的指導指針として設定をいたしました一〇〇PPMをはるかにこえる最高七八〇〇PPMにのぼるPCBが農業用水路近くの田やあぜの土から検出をされておるわけであります。ことしの四月十三日、これは現地の新聞でも、工場廃液のため池の近くの農業用水路からも一万六〇〇〇PPMPCBが検出された、このように報道されております。これらのこの土壌汚染に対しまして、この四月九日に、土壌の入れかえを含んだ損害賠償請求の訴えが大津の地方裁判所に提出された。これも御存じであろうと思います。しかし、これらの問題に関しては、被害者の自助努力によって解決をはかるのではなしに、農用地土壌汚染防止法における特定有害物質PCBを加えて、制度的にこの汚染農用地の復旧対策、再汚染防止対策実施するのが国の責任である、このように考えるわけでありますが、農用地土壌汚染防止法の政令を改正して、PCBを特定有害物質に指定する、そういうようなお考えはありませんか。いまのところかりにわからなくても、将来はどうなのか。あるいはただいま審議をいたしております特定化学物質法案等が通過いたしまして、PCBがそれに指定をされたような場合、そういうことを考えてお答え願いたいと思います。
  61. 松山良三

    説明員(松山良三君) お答えをいたします。  PCBは、これは人の健康をそこなうおそれのある農・畜産物を生産するおそれのある物質でございますので、先ほど厚生省から、米、野菜等の基準についてもいろいろ考えておられるというような御発言がございましたが、PCBの農作物にかかる安全基準ができましたならば、PCB土壌と作物との困果関係も考慮、検討をいたしまして、早急にPCB土壌汚染防止法による特定有害物質に指定をいたしまして、同時に、対策地域の指定要件を早急に定めるよう検討してまいりたい、かように考えております。
  62. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃこの問題、最後にお伺いしますが、ことしの一月、大津の地方裁判所から京都の衛生研究所の藤原博士に鑑定を依頼されまして、その結果、この日コン草津工場の周辺から一〇万PPMから一五万PPMPCBが検出された。御存じでありましょう。そこで、環境庁の定めているこの暫定指導指針では一〇〇PPM以上のPCBが検出された場合には工場の詳細調査指導を行なうことになっているわけですが、今後、この工場に対しまして、監督官庁の環境庁または通産省がどのように詳細な調査を行なって指導対策を講じていかれるのか。その点、特に私がこれを聞きますのは、非常に工場が高い濃度PCBを検出されておるわけでありますし、なおかつ、さっき申し上げましたように、琵琶湖の汚染が非常に進んでおる。この琵琶湖の水は、瀬田川を通りまして、宇治川を通って、淀川を通って、京阪神の水資源、こういうことになっておるわけですから、非常にこれは大切な問題であります。現地のほうも非常に頭を悩ましておる問題でありますので、特にお伺いをしたいと思います。
  63. 山村勝美

    説明員(山村勝美君) 御指摘の、水路の底の泥質の中に高い濃度PCBが含まれているというものに対する措置でございますが、とりあえず、一〇〇PPM以上の検出については、周辺の分布状態に関する詳細な調査を行なって、それを除去するように指導いたしております。  で、先ほど御指摘もございました草津の農業用水路等につきましては、すでにしゅんせつ、打ち込み等の作業が終わったというふうに報告を受けております。
  64. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 通産省のほうからも聞きますか。
  65. 中尾辰義

    中尾辰義君 ちょっといまのは途中で……。  要するに、草津工場から排水口を通って、ため池の中にためてあったんでしょう。そうして、排水口並びにそのため池をしゅんせつをしたと。しゅんせつをしたどろはどうなったのですか、ヘドロは。
  66. 藤本和男

    説明員(藤本和男君) 日本コンデンサの排水路の先にため池がございましたが、これは、今年の一月にしゅんせつのため作業用地を取得いたしまして、四月に工場内に、いま先生御指摘のヘドロをきめられた法で固めまして、第二次汚染が起こらないような処理をしましたヘドロ工場内のコンクリート槽の中に入れるべく、コンクリート槽をつくったわけであります。で、五月にケミコライム法によりましてヘドロ処理いたしまして、この処理いたしましたヘドロを先ほど申し上げましたコンクリート槽の中に閉じ込めまして、二次汚染が起こらない形にいたしたわけでございます。
  67. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、さっきの総合的な調査の一つとして、私は、琵琶湖のほうはさっきも、何回も申し上げますけれども、近畿の水資源ということで、特に厳重にひとつ立ち入り検査等もやって、市民に、府民に安心ができるような対策を講じていただきたい、こう思うわけです。  それで、この水質の問題と飲料水として浄化する場合の水資源地のろ過装置の能力といいますか、それについて若干お伺いしたいと思うんですが、琵琶湖の水は、いままでお答えがありましたようにかなり、相当汚染をされているわけですが、それで水質の中にもPCBがあるんじゃないかと、昨年の琵琶湖総合開発法案審議の際には、たしか環境庁の発表でわずかであったけれども、PCBが琵琶湖の水の中にある、こういうような調査報告もありました。そこで特定の工場排水口、その周辺はかなり汚染をされているわけですが、この水を水源地におきましてろ過をした場合、ろ過をしてそれが水道を通りましてわれわれの口に入るわけですけれども、いまの急速ろ過方式といいますか、原水を沈砂池などでろ過をして薬品で滅菌する、こういうようなやり方ではたしてこのPCB、あるいはPCBに限らず重金属等のろ過はどういうふうになるのか、そこで完全にろ過されるのかどうか、その辺のところをちょっとお伺いしたいんですがね。
  68. 国川建二

    説明員(国川建二君) ただいまのPCBのろ過効果と申しますか、除去できるかどうかというお話でございますが、実は、これに関するデータと申しますのは非常に少ないわけでございます。先ほど来一般汚染のお話もございましたけれども、幸い、以前から私どもあるいは環境庁等で行なっております全国的な水道の原水、取水地点での水のPCB調査等におきましては、厚生省として定めております試験方法では検出できない程度のきわめて少ない量ということでございます。もちろん、分析方法が非常に進んでおりますから、特別な方法を行ないますればきわめてわずかな量が検出することができますけれども、現状はそういうことでございます。  したがいまして、そういう意味での試験データ等はわりあい少ないわけでございますけれども、幾つかの実験等によりますと、普通のろ過ではなくて活性炭等を用いますと、おおむね九〇%以上は除去できるのではないかというぐあいにいわれております。もっとも、非常に正確に申し上げますならば、除去率等はやはりその濃度等との関係もございますので、画一的には申し上げられませんけれども、数PPMとか、あるいは数十PPMという程度のオーダーのものでしたならば、九〇%以上は除去できるというように思っております。そういう意味で今後の浄化対策といいますか、という点につきましては活性炭等のろ過方法、そういったものの技術開発が今後一そう必要であろうというふうに考えております。
  69. 中尾辰義

    中尾辰義君 これは京都市水道労働組合、ここから報告書が出ておるのですが、「琵琶湖の水質汚濁の現況と問題点」、これなんか見ますとこういうふうに書いてあるのですね。「原水の浄化では現在の急速ろ過方式では、大腸菌などの滅菌はできても、PCBや界面活性剤などの化学物質の〃ろ過〃はほとんど不可能」である、こういうような報告書も出ておりますが、これからいろいろ検討もされるでしょう。それで現在、上水道の水質基準の要件、この中には全然PCBも入っておらないわけですね。こういう点は改正をしていく必要がないのか。必要があろうと思いますけれども、その点はいかがでしょう。
  70. 国川建二

    説明員(国川建二君) 水質基準は、水道法の省令で定めておりまして、項目で申し上げますならば二十七項目ございます。で、もちろんこういう基準につきましては、必要に応じて新しい項目をつけ加えるなり、あるいは基準値等を検討するということは過去におきましても行なってまいりましたけれども、ただいまのPCBに対しましては、汚染と申しますか、現状がほとんど——ほとんどと申しますか、検出されないような状態でありまするので、すべてを通じまして一般的に水質基準そのものを見直していきたいという気持ちは私どもも持っておりまして、ただいま生活環境審議会の水道部会の中に水質の専門委員会を設けまして、こういう環境汚染状態、あるいは分析技術の進歩等、そういうことを考慮いたしまして、委員会等の御意見を伺いながら基準の扱いを検討していきたいというふうに考えております。
  71. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ関連質問は長くなりましたけれども、終わりますが、あと時間が少しありますので、法案につきまして二、三お伺いをいたします。  まず、この第三条の「製造等の届出」の中で、ただし、試験研究のため新規化学物質の製造を行なう場合等はこの限りでないものとする、このようにあるわけですけれども、試験研究のための新規化学物質の製造を行なう場合はこの限りでない、ですから、試験研究の場合はこれは届け出も何もそういう必要はないわけですか。学者先生方等のために、この辺の規制は必要ないのか。考えようによりますと、こういうような抜け穴を通じましていろいろなことが出てくる。また、科学者が何をやらかすかわからない、そういうことも考えるわけですが、いかがですか。
  72. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 本法案の第三条におきまして、試験研究のための新規化学物質の製造あるいは輸入につきましては、事前届け出を免除いたしておりますが、そういうふうにいたしました理由は、試験研究の場合には、事業活動に使います場合に比べましてきわめて少量でございまして、環境汚染があまり考えられないということが第一点と、それから試験研究のものでございますと流通、使用されぬと、こういう事情がございますので、そういう意味での環境汚染が少ないというふうに考えまして、適用を除外することにいたしたわけでございます。で、問題となるケースとして考えられますのは、いわゆる実験プラントといったようなケースでございますけれども、これも非常に規模が小さく、かつ、稼働期間も限られておりますので、問題はないじゃないかとこういうふうに考えておるところでございます。
  73. 中尾辰義

    中尾辰義君 次に、この第三条の二項ですか、厚生大臣及び通商産業大臣は、前項の届出があったときは、遅滞なく、その届出書の写しを環境庁官に送付する」とある。ですから、環境庁官は届け出の写しだけもらうと、こういうことになるわけですが、これは業界との関係において比較的中立的な立場にある環境庁に、製造の届け出、審査権限を与えないということは、厚生省、通産省、業界の関係からも何となく釈然としないものがあるのですが、この点いかがですか。
  74. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 一応届け出がございました場合には、その審査はその事業を所官しております通商産業大臣、それから国民の健康を管理しておられます厚生大臣、両省で共同で審査をいたすことにいたしておりますけれども、同時に、環境汚染問題を所管しておられます環境庁にも十の写しを、申請案件すべてにつきまして環境庁官に送付することにいたしております。で、送付を受けられた環境庁におきましては、この書類を見て、第四条の第五項でございますけれども、必要があると考えられます場合には、厚生大臣及び通産大臣がこの届け出のありました新規化学物質の安全性について判定を行なうに際しまして、事前に厚生大臣及び通産大臣に必要な説明を求めまして、所要の意見を述べることができるということにいたしておりまして、こういうことによりまして、個々の案件の判定につきましても十分環境庁の御意見を反映できるようにいたしておるところでございます。
  75. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、環境庁長官と厚生大臣あるいは通産大臣と意見が食い違った場合にはどうなるのですか。
  76. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 十分に意見を調整をいたすことになろうかと存じますが、環境問題の所管であります環境庁の御意見は十分尊重して運営をしてまいりたいというように考えております。
  77. 中尾辰義

    中尾辰義君 じゃ、これで終わりますけれども、第十三条の「製品の輸入の制限」ここのところですね。「何人も、政令で定める製品で特定化学物質使用されているものを輸入してはならない。」とありますが、通産省では、現在まで製品として輸入をされた品目のPCBの実態、そういうものを的確に掌握されているかどうか。これが一つと、それから「特定化学物質を輸入しようとする者は、通商産業大臣の許可を受けなければならない。」こうありますけれども、これが製品の輸入となった場合、企業秘密ということで公開をされないというようなこともあろうかと思います。外国における企業秘密の定義、国内法における企業秘密の定義、こういったものにつきましてお伺いしたい。
  78. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 従来わが国に入ってきております各種の機器の中でのPCBが入っておるかどうかといったことの確認につきましては、ますので、いろいろな機器の中の、たとえば小さなコンデンサー等が内部に入っているといたしまして、その中の絶縁体がPCBであるか、それ以外の油——絶縁油であるかということを確認いたしますことはなかなか困難な実情にございます。そこで通産省としましては、昨年の三月に、日本機械輸入協会に対しまして、PCB入りの機器を輸入しないようにという自粛方を要請をいたしたわけでございますが、これを担保する方法といたしまして、現在、電気用品取締法に基づきまして、新しい型の電気用品が販売されます前には一ペん通産大臣の承認が必要ということになっております。その承認申請に製品の見本が出てまいりますけれども、それを私どものほうの電気用試験所で検査をいたします際に、PCBを検出する機器を各電気用品試験所に備えましてそこでチェックをする、こういった体制を現在とっておるところでございます。
  79. 中尾辰義

    中尾辰義君 それから第十五条ですね、これは「使用の届出」の中で、「特定化学物質を業として使用しようとする者」と。この場合の「業」ということですね、これは具体的にどのように理解してよろしいのか。それと、特定化学物質を使ってできた関連品に対しまして、これはこの表示の明記があるのかどうか。その点をお伺いしまして終わります。
  80. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) ここで使用者につきまして届け出義務を課しましたのは、「業として使用」する者に限るということにいたしたわけでございますが、「業として」と規定しておりますのは、特定化学物質を反復継続して繰り返し使用すると、こういう意味でございます。ただ一回限りの使用でございましても、事業者が行なう場合には継続反復の意思があるということで、「業として使用」するという解釈をとって差しつかえないのじゃないかというふうに考えております。
  81. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。      —————・—————    午後一時三十八分開会
  82. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  午前に引き続き化学物質審査及び製造等規制に関する法律案議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  83. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 最初に確認しておきたいんですが、一連の汚染問題に関して各省庁にそれぞれの所管が分かれておるわけですが、発生源調査に関する責任水産庁、排出基準については環境庁、最終的な問題処理に関しては通産省、人体にかかわる慢性毒性の問題は厚生省、漁民の補償救済にかかわる問題は水産庁のような形で問題処理が現在まで進められておるということについて間違いないかどうか、最初に確認したいと思います。
  84. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 大体先生のいま御指摘のとおりでございますが、問題処理の全般は通産省ということではございませんで、工場の生産工程等の変更その他工場内の、たとえば排水路等の清掃等工場内に関します問題につきましては通産省が担当いたします。
  85. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 なお、魚介類の漁獲についての規制あるいは禁止というようなことについては、現在、漁業法によっては不可能であるという点について、水産庁のほうで確認していただきたい。  それから、ただし厚生省による食品衛生法に基づいてこの漁獲についての規制禁止はやろうと思えば可能であるという点について、かように承知して間違いないかどうかですね。
  86. 松下廉蔵

    説明員松下友成君) 漁業法に基づきます漁獲の規制措置ができないという点でございますけれども、漁業法の三十四条、これは漁業権の制限または条件に関する項でございます。それから三十九条につきましては、公益上の必要に基づきます漁業権の変更その他の項がございますけれども、もともとこの漁業法と申しますのは、いわゆる水面の総合的な利用をはかりまして、生産力の発展をはかるというたてまえでつくられたものでございまして、現在問題になっておりますPCB水銀等の規制を行なうには適当でないと考えるわけでございます。
  87. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 食品衛生法の場合はどうですか。
  88. 三浦大助

    説明員(三浦大助君) 食品衛生法で現在の漁獲規制ができるかという御質問でございますが、現在、食品衛生法でPCB規制値が暫定基準となっておりまして、指導基準になっております。したがって、これは暫定基準をきめた段階で多食者とかあるいは乳幼児、妊婦、こういったものの影響を考えて、それらの調査が終わった段階でもう一度基準値を当たってみようと、こういうことになっているわけです。その段階で正式に規制値ということになりますと、これは食品衛生法の七条の基準、規格ということできまってくるわけでございます。現在のところ、指導基準ということでやっておるわけでございます。  なお、魚の問題につきましては、市場から以降の消費者に渡るまでの監視の過程は厚生省で監視をしております。実際問題として、こういう生鮮魚介類につきましては、PCBの収去をして検査値が出るまでに二日半から三日かかってしまいますので、どうしても市民の口に入ったあとに結果がわかるという事態になりますので、水産庁のほうに、こういうものは生産地対策が一番肝心だということで、生産地指導をお願いしてございます。
  89. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 そうしますと、現在問題になっておりますところの魚介類に関する漁業規制法ついては、漁業法あるいは食品衛生法いずれによってもこれを規制し得ない、とり得る措置としては自主規制——繊維じゃないけれども、自主規制によらざるを得ないというふうに承知せざるを得ないのだけれども、それで間違いないかどうか、所管の方からひとつお聞かせいただきたいと思います。
  90. 松下廉蔵

    説明員松下友成君) 現在の漁業法関係の法体系がそのようになっております。
  91. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 それじゃ逐次質問いたしますが、環境が破壊されたという結果は、現実の問題として人体に被害があらわれることによって問題にされておるというのが現在までの状況だと思うんです。環境破壊というものが実際、人体に影響をこうむってはじめて社会的な問題になる、これがいままでのわが国の実態だと私は認識しております。具体的に言うなら、水俣病が発生したのは二十年前、昭和二十八年、PCBが問題になったのが昭和四十三年、いずれもこれは人体に被害が起きて問題になっておるわけです。水俣病の原因となる有機水銀についても、規制というものが非常に手間どっておった。そういう点でいままた第二、第三の水俣病が発生しておるし、PCBの問題についても、現実に全国調査を行なったのが昨年の十二月。汚染地域が明確になったのは、むしろそれからかなり日がたったことしの五月、これが実態であろうと思うのだけれども、この種の有害化学物質による汚染、そして、それに伴う公害というものについて、その性質上非常に発生源の掌握が因難だということは、私もよく存ずるわけでございますが、それにしてもその対策というのがいかにもおそ過ぎる。あたかも人体実験をやっておるようなものだ。人体に被害が出なければ何ともならない。また人体に被害があっても、いまお聞きしたように漁獲を規制する法的措置がない、したがって、それは漁民による自主規制にゆだねなければならない。  かりに疑わしき水域というものがある程度明確になってきたとはいうものの、言うまでもなく、魚というのは近海を泳いでおるわけですから、居を定めておるわけではない。そうなってくると、慢性中毒というようなもの、これはわが国国民の健康、現在の国民の健康のみならず、遺伝などによって将来にわたる非常に大きな禍根になるというふうに私は思うのだけれども、その辺のところをわれわれの側から見て、国民から見て、いかにもやることなすことが後手後手過ぎるじゃないか。そうしてその間に取り返しのつかないような、人命にかかわるような、いまわしい事故が相次いでおこる。こういうことについて環境庁通産省としてどのように考えておるのか。また、この問題がこれほど社会問題になっておるときに、今後抜本的にどうしようとしておるのか、国民は、昨今の新聞紙上あるいはテレビ、ラジオの報道などを見て非常に戸惑っておる。自分自身の家庭の事情で申しても、毎日食膳に魚というのがあるのが、いまのところあたりまえなんです。日本人であれば。魚を買っていいものかどうなのか、あるいは買って、これを食って病気になったら一体どうなるのか。あるいは魚を卸す人たち、魚をとる人たちは、一体われわれの生活をどうするんだと、非常に困っておる問題です。この辺のことについてまず最初に、総括的に大臣並びに環境庁のお考えをお聞きしたいと思います。
  92. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) PCB並びに水銀等につきまして気のつくことがおそかったことは、まことに政府として反省しなければならぬところであろうと思います。しかもその気のつき方が、病人が出てきてからそれを発見したという点は、かなりの落ち度であると私らも思います。ただ、こういうような物質は初めて出てきたものでございますから、いままでの行政が惰性に流れていた結果でこういう結果を招来したと思いまして、今後は、新しい立法をいまお願いもしておりますし、そのほかにいまわかってないけれども、そういうような潜在的な病人がほかの物質によって起こりはしないか、こういう点も深甚な注意を持って、政府全体として監視していかなければならぬところであると思います。また、将来新しい物質、あるいは輸入物質等については、これは医薬品等も含めて厳重な監視を行ない、実験を行なって安全度を確認した上でなければそういうものを製造し、販売することは許せない。そういう点について政府の厳重な監視を必要とすると思います。
  93. 三喜田龍次

    説明員(三喜田龍次君) お答えいたします。  先生御指摘のように、PCBとか水銀による環境汚染を確かに未然に防止できなかったということは、政府全体の責任であると思います。一たん環境中に放出されてしまいましたこういう難分解性でしかも有害な物質は、それを原状に戻すことは非常に困難でありまして、いま問題となっているような事態を生じているわけでございますが、今後はこういうことのないように、新しい科学技術あるいは新しい化学物質の適用といいますか、実施につきましては、テクノロジーアセスメントと申しますか、利点と同時に、環境に対するマイナス面を十分に審査した上で実施に移さなければならないというふうに考えております。
  94. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 昨年十二月に、PCB汚染の実態調査をそれぞれ関係省庁で合同で行なったわけですが、このPCB汚染実態調査の結果というものについて、それぞれの省庁で自信を持ってこれは発表したものかどうか、そのところをひとつお伺いしたいと思います。これは環境庁水産庁通産省との合同で、もちろん運輸省、建設省も入っておった模様だけれども。——PCB汚染の問題です。
  95. 山村勝美

    説明員(山村勝美君) 環境庁が分担いたしました水質、底質調査の分でございますが、四十七年度にその状況の実態調査をいたしましたのは、PCB問題が非常に緊急であるということから、全国的にその汚染の概況をつかもうという趣旨で行なったものでございまして、その結果を見て本年度、より詳細な調査を行なうという計画のもとに行なったものでございます。したがいまして、本年度は、引き続き全国的な調査を継続するということでございます。  なお、その結果のデータにつきましては、分析方法も全国的に統一して行なっておりますので、信憑性は十分あると考えております。
  96. 松村克之

    説明員(松村克之君) お答えいたします。  通産省調査も、いま環境庁のほうからお話がございましたように、政府といたしまして一つのマスタープランのもとに行なったわけでございますが、通産省の分担いたしましたのは、PCBをかつて製造した工場または使用した工場について、PCB使用メーカーについては全数、感圧紙メーカーについても全数、あとコンデンサーメーカーあるいは熱媒体工場等についてはサンプル調査ということで行なったわけでございますが、分析につきましては、いま環境庁からもお話がありましたように、統一した分析方法ということで、専門の分析機関に委託いたしまして分析を行なっていただいたわけでございますので、その結果については正確なものであると、こういうふうに考えております。
  97. 松下廉蔵

    説明員松下友成君) 水産庁環境庁と協力いたしまして、全国的な意味でのPCB汚染魚の状態を把握するために、昨年、概況調査をいたしましたわけでございます。その結果を受けまして、なお、各県独自でされております調査結果等を勘案いたしまして、精密調査を本年から実施している状況でございます。先ほど環境庁のほうからお答えございましたように、昨年の調査というものは、全体の概況を把握するための調査というふうに理解しているわけでございます。
  98. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 環境庁、それから通産省水質並びにPCBの製造、使用工場調査はともかくとして、魚介類調査したのは水産庁ですね。このデータはいただきました。このデータを読んでみますと、たとえばフナなど一匹ないし二匹の調査によってシロと断定している個所がある。ところが、つい最近、東京都の調査では、水産庁が行なってシロと断定したものがクロになっておる。たとえば多摩川の河口のボラでは、十二月の調査では最高値が二PPM、平均値が一PPMであったものが、今回の都の調査ではこれをこえておるということになっておる。すし屋でよく食べるところのコハダ、コノシロなどについても、昨今の東京都庁の調査では九・六PPMの鉛が検出されておる。けさのラジオでも報道されておりましたが、東京のたしか中央卸売り市場にはコノシロは入れるなということを指示しておるというようなことでございます。このように十二月の調査では東京都も実施機関に含まれておったと私は思うんですが、それが発表された時点、その発表する機関によってシロがクロとなり、あるいは含まれておるところの濃度にも差異がある、一体どういうことであろうか。また、東京大田区の不二研究所の十二月の調査では、水質調査で〇・四三PPMであったのが、今度の都の調査では、同じ水質が四・九PPMが検出された。  こうなってまいりますと、これは水質検査は環境庁でございますが、それぞれの発表時限がわずかに違う間に、しかも同じ場所でこのような差異が生ずる。これを受ける国民の側から見れば、一体何が正しいんだ、さきに発表された環境庁あるいは水産庁のデータ法よればシロだ、安全だと言っておりながら、都が出せばだめだということになる。一体だいじょうぶなのかという疑惑になる。データを発表すればするほどいまの状態国民を不安におとしいれておるというふうに言わざるを得ないんです。先ほどのお話ですと、統一された書式に基づいて委託された機関調査をしたものであり、きわめて信憑度の高いものであるというふうなお話でございましたが、どちらが正しいのか、一体、国民は何を信用したらいいのかということになるわけなんで、この辺のところを明確にひとつ教えていただきたいと思います。
  99. 松下廉蔵

    説明員松下友成君) 昨年、全国百十水域につきまして、環境庁と共同いたしまして水産庁調査いたしたわけでございますが、これは、ただいま申し上げましたように、あくまで全国的な概況を把握するための実態調査でございます。この実態調査を踏まえまして、また、それぞれの地方公共団体で独自に調査を進めておられる点もございますので、そういった調査結果も勘案いたしまして、事前に精密調査の必要性につきまして関係の都道府県と協議をいたします。その結果に基づきまして、汚染が進んでいると認められます水域につきまして、合計で十四水域でございますが、今年の二月から三月にかけまして調査実施したものでございます。それが精密調査でございます。この調査にあたりまして、先ほども申し上げましたように、試料の採取個所の選定あるいは分析方法等につきましても関係の府県と十分打ち合わせをしたわけでございます。  この結果、PCBの暫定規制値——暫定基準をこえる水域、つまり三PPMをこえるものが二〇%以上含まれるものでございますが、これにつきましては早急に必要な措置を講ずるように県を指導してまいっているわけでございますが、なお、今回の精密調査汚染魚が検出されなかった水域につきましても、また、その後の都道府県におきます単独の調査で問題となりましたような水域も含めまして、今後も安全であるという結論が出ますまで、定期的にこの種の点検、調査を続けてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  100. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 先ほどちょっと申した不二研究所の水質の問題はどうですか。
  101. 松村克之

    説明員(松村克之君) お答えいたします。  不二研究所は、これは私どもが四十七年の七月にサンプルを取りまして分析したわけでございます。それで、その結果、先ほど先生からお話のございました十二月の発表ということになったわけでございます。そのときの値は〇・四三PPMということでございます。ほぼ同時期に東京都が——私、正確な日時を記憶しておりませんが、たしか四十七年の五月に行ないました場合には、〇・二PPMという一数字を記録しております。それから、その年の九月にやはり東京都が分析いたしました。そのときは〇・〇三PPMという数字であったというふうに伺っています。  それが最近、ことしになりまして、東京都が第三回目の分析を行なったときに、四・九PPMという非常に高い濃度が分析されたというふうに伺っております。したがいまして、前二回においては大体私どもの分析値と近い数字ということで、これにしても若干高いわけでございますから指導を続けてきたわけでございますけれども、今回の数字については、ちょっと私どももここの点については異常に高い数字であるというふうに思っておりまして、東京都が前に二回やりました数字とも非常に離れておりまして、私どもといたしましては、東京都とここの問題についてさっそく検討に入りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  102. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 結局、おたくで調査なさった時点、それがかりに四十七年の七月としても、およそ一年も経過しておらない。そういったとき、しかも、おたくが調査なさって〇・四三PPMというものを現実に把握されたあとも、まあいろいろな面でアドバイスもなさっておると思うんだけれども、東京都の調査が信憑性があるというんであれば、四・九というものがもうすでに発表されて、しかも四・九というものが発表される以前に調査のデータが出れば、私は何らかの方法で皆さん方はそのデータを承知されることと思うんだけれども、いままでそれを放置して、これからアクションを起こして東京都と調整するということはいかがなものであろうか。  これは東京都の調査のデータの誤りである、あるいはサンプリングが間違っておるというならともかくとして、現にこういう異常な数値が出ておる。しかも新聞に報道されておる。その前にもっと権威があるとわれわれはみなきゃならないおたくの調査結果では、もうはるかに低い数字しか出ておらぬ。これは私、いままですでにこの場にお見えになる前に、たとえば東京都の間違いであるとかいうことであれば、これは案外しあわせかもわからぬのだけれども、あるいは本当だったと、だから、しかるべき措置をとったという答えが返ってこなきゃいかぬのじゃないですか。これからひとつ調整するということはいかにも私は、よその機関でやった調査結果だからそれは別だよというような印象にしかとれないし、これを取り巻く問題があまりにも大きいがゆえに、これからどうしようと思っておられるのか、その点もう少し聞かしてもらいたいと思います。
  103. 松村克之

    説明員(松村克之君) 若干の私どもの対策がおくれているという点についてのおしかりはごもっともでありますが、若干弁解になりますけれども、東京都から私どものところに、こういう調査結果について何らか報告といいますか、連絡といいますか、そういうものがあるわけではないんでございます。これはむしろ環境庁のほうの御所管かと思いますが、私どもおりに触れていろんなこういうデータを、情報を集めるという、これは業務上そういう義務はございますけれども、制度としてはそういうふうになっているということで、こういう数字を把握いたしますことが若干おくれたという点については、今後は改めていきたいと思っております。
  104. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 それぞれの地方自治体において現在行なわれているところの水質土壌あるいは魚介類に対する調査というものは、それぞれの地方自治体がそれぞれの発想に基づいて、独自の研究手段で、独自の手法によって調査を行なっておるものなのかどうなのか。それと、中央官庁との関連性は全く断たれておるものかどうか。この辺について一ぺんあらためてお聞きしたいと思います。いまのお話だと、都はかってにそれをやっているのだ、だから都は報告する義務もない、ただ、中央官庁としては、いまわいわい騒いでおるから、ある程度データをとるというのは、これはまあ職務の一つとしてやっておるというお答えでしかないんですよ。しかし、現実にそこで生活しておる者からすれば、同じ日本人だと、そんな水産庁が何だ、環境庁が何だ、東京都が何だ、要は、その汚染源をはっきりしてくれ、どうしてくれるんだというところなんで、それは環境庁がやっておるか知りません、それは水産庁だから、それは東京都がやっておるのだからといって、一体そこに住んでおる人間をどうしてくれるんだということになりますね。これは。それはどうなんですか。いまの水産庁環境庁、全部調査はかっててんでんばらばらに全国でやっておるんですか。
  105. 山村勝美

    説明員(山村勝美君) PCB対策につきましては、すでに政府PCB対策推進本部をつくって、その中で各省分担をきめながら、総合調整しながら、全体計画として進めていくということでやっておるわけで、先ほどの問題につきましては、私個人的に考えますのは、排水の水質というのは若干ずつ、特にPCBオーダーでありますと、多少とも変動があり得るということでございますので、おそらく今後の調査において留意すべきことかと思いますが、排水の水質試験の回数を増加するとか、それを総合化して発表するような措置考えるとか、あるいはヘドロにつきましても、はかる地点によっておそらく違うと思いますので、地点数を増加するとかいうようなことを配慮しながら四十八年度の調査計画を立てていきたいと、そういうことを考えております。
  106. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 魚類はどうなんですか。
  107. 松下廉蔵

    説明員松下友成君) 魚介類につきましても、環境庁を中心にしてまとめられました統一基準に従いまして、この分析方法その他につきまして各県に指導をしておる状況でございます。ただし、この水産庁が行ないます調査に加えまして、各府県が独自の立場で調査されることは坊げないというふうに考えておるわけでございます。
  108. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 先ほど大臣も、きょうから新しい総合調整的な機能を発揮して問題処理に当たると言っておられたので、いままでのところ、あったことだからしょうがないと言えばそれまでだけれども、お聞きのように、われわれ国民から見ればきわめてこうばらばらな形でやっておるような印象にしかとれないし、お聞きしてもそういう形しか返ってこないわけです。しかるがゆえに、昨日も新聞で報道されたように、統一した機構を持とうとされたんだと私は思うのだけれども、これについては後ほどまた注文をつけたいと思うのです。  時間がありませんから先に進みますが、いま八府県のPCB使用工場の三百三十八工場のリストをいただいておるわけですが、このリストをもとに、汚染源を究明すべく、立ち入り調査を行なうということになっておるのだけれども、この疑わしきと目される三百三十八工場調査は具体的にどのような方法でやるのか。また、いま一番大切な問題は、汚染源を突きとめるということにしぼられるわけですが、その汚染源を具体的にいつごろになれば発表できる段階になるのか。新聞紙上などでは、大体八割ぐらいはわかっておるんだということがいつも載っていますね。だけれども、全部そろわなければ発表できないのかどうなのか。汚染源を突きとめて元せんを締める、それによって漁民に対する生活保障、そしてまた、そこから出るところの生活不安というものを補っていくということが大切だといわれておるときですから、具体的にこの汚染源というものがいつになったら発表できて万全の対策を打ち立てられるのか、その辺のところをお聞きしたいと思います。
  109. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 先般、水産庁から発表させられました魚介類汚染地域八水域が所在いたします府県にありますPCBを現在使用中、あるいはかって使用した工場三百三十八工場につきまして、通産省とそれから地方自治体の協力を得まして工場の立ち入り調査を行なうことにいたしましたが、この調査は、それぞれの工場におきますPCBの購入量、使用量、それから、できますれば環境中に排出されましたPCBの量、その工場におきます排水の処理状況、PCBの保管状況、あるいは今後のPCBから非PCBへの転換計画、こういうものを調査をする予定でございまして、ただいまのところでは来月の中旬までに調査を終了さしたい、こういうふうに考えております。この調査結果を自治体とも協力をいたしまして活用いたしまして、なるべく早く汚染源の究明をいたしたい、かように考えております。
  110. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 先ほども私ちょっと触れましたけれども、もうすでに東京、大阪の魚市場では汚染水域の魚は扱わないというような立場も出ておるし、現に、そういった水域では漁業規制というものを行政指導によって行なっておる。漁獲ができない漁民は、汚染源の発表ができないわけですから、それと疑わしき工場に詰め寄って直談判をやる。東洋紡のように、まあどうかわからぬけれども、とにかく、時価でその魚は全部買い取ろうというところもあれば、それはうちだけの問題じゃないぞ、はっきりするまでは何とも言えぬじゃないかと突っぱねるところもある。非常に険悪な空気が現地では起きておるわけです。また一方、ジャスコあたりは独自の汚染水域とおぼしきところを指定して、そこでの魚介類は扱わない、こういうことになっておる。スーパージャスコがゆれば、それに拮抗するスーパーは、同じようなスーパーとしての機能を生かすがゆえに措置をとることは明らかだと思う。そうなってくると、魚に一一レッテルを張っておるわけじゃないんですから、その周辺におる人の奥さん方は、一体何を求めたらいいんだということになるし、皆さん方の一歩一歩おくれた手の打ち方は、私はもう非常に大きな問題をかもしていくと思うんです。  したがって、この辺の問題について私はお伺いしたいわけだけれども、その際新聞の記事だからどれほど正しいかわかりませんが、水産庁で、先ほどもちよりと触れておられましたが、現在の暫定的な基準を設定した。その場合に三PPMときめたわけだけれども、そのときにこういうことを言っておられるわけです、経済的価値と医学的判断とをてんびんにかけてこの三PPMという基準をきめたんだと。これは厚生省の環境衛生局長が言っておるという記事が六月五日の朝日新聞に載っております。そうだとすると、暫定基準というものを設定したものの、それを設定に当たった方が経済的な価値と医学的判断とをてんびんにかけて限界値を暫定的にきめた、それが三PPMである。   〔委員長退席、理事若林正武君着席〕  一体これは国民にとってどう判断するものなのか。事生命にかかわる問題だし、いま申したように、それぞれこれをなりわいとしておる方たちはたいへんなショックを受けて、それぞれの問題を現地で起こしておるときに、私はこれはあまりにも不用意といったらなんですが、われわれから見れば腹立たしい表現になるわけなんで、そんななまやさしいものと違うぞということを言いたいわけなんだけれども、この辺についてお聞きしたいと思います。
  111. 三浦大助

    説明員(三浦大助君) ただいまの暫定規制値のきめ方に関しまして、新聞に、経済的な価値と医学的な判断を天びんにかけてという表現があったというお話でございますけれども、これはどういう発言をして、そのとおりに発言したものかどうか、私はその真偽のほどはわかりませんですが、ただこの暫定規制値をきめるときには、いきなり人体実験ができませんので、どうしてもこういうものは動物実験に頼らざるを得ません。これはかなり長い間の外国の実験をもとにし、また、日本でも不幸にしてカネミ油症というPCBの非常に不幸な事件があったわけです。それらの研究成果ももとにして、ともかく、人間が一日に一キログラム当たり〇・五ミリグラムという最大無作用量を基本に定めてございます。これをさらに百倍の安全率を掛けまして五マイクログラム・パーキログラム・パーデーと、したがって、非常に安全な限度でこの基準値の設定をスタートしておるわけです。そうしますと、五十キロの成人で、一日当たり二百五十マイクログラムまでなら百倍の安全率を見ても安全ですというこの根拠に立って各食品規制値を割り振ってございますので、経済的価値と医学的判断をてんびんにかけてというよりも、むしろ、人間が一日に摂取する最も安全な規制値をもとにして、現在の私ども国民の摂取量、それから各食品の摂取量、それから汚染の実態、こういうものを勘案して各食品に割り振ってきめたということでございまして、決してこの規制値がそういう経済的な価値と医学的な判断をてんびんにかけてということできめた規制値ではございません。きわめてこれは安全な数値であるという根拠に基づいてきめております。
  112. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これからの問題としてこれはずっと見守っていかなきゃいかぬし、後ほども述べたいと思うんだけれども、身体検査なども十分尽くしてやらなければならないと私思います。しかし、さきにもちょっと触れたのだけれども、現に強力な行政指導によって、漁獲規制というものが行なわれないまでも自主規制というものをやらしておる。それから、現に漁民が汚染水域でPCBを扱った経緯のある工場に押しかけて、その補償問題についていわば自主交渉ですね、自主交渉をやっておる。発生源政府も示してくれないからやり場がない。自分らも生活に困るから、疑わしいものを出したからそこに行ってとってこいと、こうなるわけなんです。  こうした場合に、先ほどお話のありましたように、汚染源というものが明確になってくればともかくとして、かりにそうでない場合、操業をしなきゃならない、あるいは地元との融和をはからなければならないということで漁民にかりに補償をすると、そして、そのあとは別にPCBをたれ流したわけでもないという状態が判明して世に明らかになる、こうなった場合に一体どうするのか。これはもう現実の問題が起きておるのです。   〔理事若林正武君退席、委員長着席〕 たとえば瀬田川流域でもそうだし、あるいは敦賀湾でもそうだし、岩国でもそうだ。いまのところ住民も騒ぐし、PCBというのは現に.いままで使った経緯がある。しかし、技術的にそれは管理しておる自信がある。だけれども、騒ぐという状態の中でどうしようもない。したがって、とりあえずそれじゃ出すものは出しておこう、しかし、あとでそれがシロになったときにその責任政府がとるのかどうか。これはどうなんですか。それは、そのときにクロと判定された汚染源に全部それを負荷するのか。そのことは政府が補償するのか、その辺の考え方を聞かしてもらいたいと思います。
  113. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 先生の御指摘のように、現在、漁獲を自主規制をしております漁民にとりましては非常に毎日の生活の問題でございますので、なるべくすみやかに補償が行なわれる必要があろうかと存じます。そういう意味合いで早く汚染源を究明をいたしまして、自治体の協力も得まして、汚染源が推定いたしましたならば企業指導いたしまして、積極的に前向きにこの補償交渉に応ずるように企業指導してまいりたい。かように考えております。  なお、その間のつなぎが非常に問題でございますが、これにつきましては、きょうも政府の水俣病等対策推進会議の討議が行なわれまして、休漁しております漁民に対する緊急融資の問題、また、それらの関連業者に対する融資の問題、これにつきましてなるべくすみやかに政府としましても結論を得まして、そういった融資を実行に移したい、かように考えておる次第でございます。  それから、一部におきまして漁民の申し出に応じて補償と申しますか、企業が自発的に魚を買い上げましたり、あるいは金を交付したりしておるところがございますけれども、これは企業数が少なくて汚染企業の特定がわりに容易な場合に企業側が自発的に行なっておるもののようでございます。いずれにしましても、これは企業が自発的に行なったことでございますので、後日汚染源が確定しました場合には、その汚染源との間の話し合い等があるいは必要かもしれませんが、企業としては、自己の企業工場の操業の必要上支払ったといったような経緯もございますので、この辺は完全にまた他の企業がそれを補償すべきかどうか、いろいろまだ話し合い等で解決されるべき余地が残っておる問題かと存じます。
  114. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは私は、もう少しきめこまかい指導をしてもらいたいと思うのですよ。というのは、漁民の側からすれば、汚染源というものを明確になさらぬわけでしょう。皆さんがいまだに。できないと。現にしてない。疑わしいところを見せて、そしてその補償は現地でやりなさいということは、これは漁民の側からすればにしきの御旗を持ったみたいな感じですよ。だからそれ行けということですよ。企業にしてみれば、これは全部の企業が私は悪とは決して思っていないんで、まじめにやっておるところもある。ところが、そういった側から見れば、企業は悪なりということになりますよ。そして責め立てられる。企業は悪という環境の中で責め立てられたら、企業が存立するという上から、ともかく何とかしのがなきゃならない。そこへもってきて、あなたが先ほど言われたように、それは自分の操業を維持するために自分が出した金なんだからまえの責任だと、だから他の企業がクロとなって、他の企業がそれを弁済をすることはいかがなものであろうかという意味の発言なんだけれども、事の本質は何かと言えば、私は政治の問題だと思いますよ。  やはりいままで放置してきた問題もありましょうし、また、早急にその汚染源というものを突きとめるということに手間ひまかけておる、あるいは漁業補償という措置も、まあ融資ということを考えるというものの、それは当座漁業ができないということについてのものであって、その人の生活をささえるものじゃないですね。本質的に。そうなってくると、いまのようなことは私は、不確かなデータというものをぱあっとばらまいて、そしてその場で起きる問題をその場で何とかこま切れにそっとふたをかぶせておるというふうな印象にしかとれないわけです。それでは私はあまりにも不親切だと思うんです。もうちょっときめのこまかい指導なり対策というものを講じてもらわなければ、現地におる者はたまったものじゃないというふうに思うんで、もう少し実のある答弁をしていただきたいと思うんです。
  115. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 先般発表いたしました工場のリストには、使用の量もあわせて記載いたしておりまして、たとえば、ただいま漁民が交渉に参っております工場は、その地区で最大の使用量を持っておった工場のようでございます。そういう意味で漁民はそちらに参ったんじゃないかと思いますが、いずれにいたしましても、御指摘のようになるべく早く汚染源を確定いたしまして、その汚染源相互の間でのそういった面の話し合いを、汚染の強度等に応じてできるだけ話し合いを進めることが必要かと存じますので、まず汚染源の究明のための現地調査を進めてまいりたい、かように考えております。
  116. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 こればかりやっておったら法案審議に入れないので、来週には公害との合同審査もあるようですから、そのときにまたあらためてお聞きしたいと思うわけですが、私、最後に汚染問題で申し上げたいのは、昨年十二月のPCB汚染実態調査に次いで、今度十四水域の精密検査結果が六月四日に発表されたんだけれども、八水域で基準をオーバーしておるのが海水で六%、淡水で九%という、たいへんショッキングな大きな見出しでPCB汚染が進んでおるという新聞記事に接したわけです。この記事を見て、漁業関係者もそして消費者もみんな安心するどころか、非常に不安を増したというふうに私は思います。  どうしてこんなことになったんだということを私ども思うわけですが、結局、先ほども申したように、調査というものがこま切れであるんじゃないだろうか。そして抜本的な対策というものがない。だから一つのものが出てもみんなが信用できない。あとからまた何が出てくるかわからぬというふうな不信感に包まれておるんだろうというふうに私は思う。だから、もう少し私は勇気を持って——いまあるいは七、八はわかっておるというこの汚染源なども、元せんを締めるという意味から、わかった地域からでもここはこうだ、汚染源はこうだった、だからこの点についてはこういう万全の措置をとった、だから一カ所でもいい、明らかにこういう措置がとれたんだぞという姿はやはり国民の前に示すことが必要だろう。そうすることが全国的な問題については解決の系口になるんじゃないだろうか。日本列島全体を一列に並べた形で全体を調査して、全体を通ずるところの調整措置を講じて、それを一挙にすぱっと出していこうというようなことでは問題が進まぬのじゃないだろうかという気がするんです。非常にむずかしいことかもわからぬけれども、そういう意味で、地域なら地域を限って先行せしめる、解決しやすいところから先行した形での解決手段を講じていくというようなことを一ぺんお考えになったらいかがなものであろうかと思います。  それから、先ほどの水質試験のおりにも申したことですが、半年過ぎればそこに含まれているところの数値が、濃度がもうずいぶん変わってしまうというような現実のデータが世に発表されておるわけですから、今後、調査というものはやっぱりある期間を置いて定期的に実施すべきじゃなかろうか。それから、調査にあたっても地方自治体が独自でいまやっておられるようですが、それを中央のほうである程度コントロールして、分析手法その他も統一して、そして全部が総合した形でこの調査というものを定期的にやれるものかどうか、その辺のことも十分考える必要があるだろうと思います。  それから魚介類の漁獲の問題について、現行法では漁業法、食品衛生法いずれをとっても問題にならないということでございますが、現実に濃度の濃い魚介類が発覚された地域における漁業規制というものを、先ほどどなたかから御指摘があったんだけれども、いわゆる現地主義に立って、市場から消費者への間じゃなくて、やっぱり現地で問題をとめるという意味から、法の改正なり、新たな法をつくる必要があるんじゃないだろうかという気がします。  それから、疑わしき地域においてはやっぱり思い切って全数ぐらいを対象にした身体検査というようなものもやるべきじゃないだろうか。ただ、漁業従事者あるいは魚を人よりもたくさん摂取しておる人をある程度抜き取って、サンプルとして取り上げてやるというんじゃなくて、現実にそこで生活しておる人たちに健康診断というようなものを実施してみる必要があるんじゃないだろうか。これは問題を大きく広げるという意味じゃなくて、人命にかかわる問題ですから、このぐらいのことをしても私はおそくないという気がしますので、以上の点、とりあえず今度の汚染問題に関することとして私の思いつきのままの考え方を申し述べたようなわけですが、このことについてひとつきょうは大臣お一人しかお見えじゃございませんので、お考えをお聞きしたいと思うわけです。
  117. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま御指摘になりました数点は、確かにごもっとものように思います。やはり発生源を確かめるといってもなかなか時間もかかることでございますから、その中のこれはとおぼしき急所を押えるということは一つの早いやり方であるように思いますし、また、健康診断あるいは魚介類の搬送等の問題についても、根元で処理するということも非常に大事であると思います。そういうような諸点は大体県庁も中心に行なっているわけでございますが、環境庁を中心にいたしまして、政府も一体になって県庁に負けない誠意と熱意を持って協力してやるべきである、このように思います。
  118. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 じゃ、法案に少し入りたいと思います。  この法案の中で、化学工業の進歩発展によって、今後どのような化学物質が世に出てくるかわからないというような状況の中にあるわけですが、新規の化学物質について安全性の審査、試験の結果というものが明らかに難分解性であり、毒性などがあって、環境を通じて人の健康に影響を与えるおそれがある、こういう化学物質を今度この法案によって特定化学物質ということにしておるわけですが、慢性毒性があるから特定化学物質として指定するということになっても、この許可制のもとで製造はやはり認めるわけだし、そして用途を限るといっても、現に使用を認めるということになるわけですね。そうなった場合に、環境汚染を防止するという意味から、先ほどもPCBじゃございませんが、元せんを締めろということが一番安易で完全なやり方なんですが、特定化学物質として指定しても、結果はその製造を認め、用途を限っても使用を認めるということになったとき、はたして環境汚染を防止するということができるのかどうか、まあこれを全面的に、そういった明らかに毒性があるというものそのものの使用を認めない、あるいは輸入を認めない、製造を認めないというところまでいくことは行き過ぎなのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  119. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 本法案では、第十四条におきまして、いわゆる特定化学物質ということで環境を汚染し、食物連鎖を経まして人の健康を害するおそれがある物質につきましては、政令で定める用途以外には使用をしてはならないという規定を置いておりますが、この考え方は、私どもたてまえとしては、特定化学物質に指定になりましたものについては原則として製造、使用をさせないというようなきびしい姿勢で臨んでまいりたいというふうに考えております。ただ、非常にそれが有用な物質でございまして、しかも他のもので代替ができないような、つまり代替品がないと、これは経済的な意味でございませんで、その性能、機能等の面で変わりはないと、しかもその特定の用途の場合は、環境汚染をおよそしないで使われ得る用途がある場合、そういう場合に限りまして、環境汚染のおそれがないという場合に限って、しかも代替品がない場合にこれを使うことを認めようと、こういう趣旨でございます。  たとえばPCBの例で申しますと、現在トランス——大型トランス等は密閉された容器に入れられて使われておりますので、そのままの形で使用する限りにおいては環境を汚染する懸念はないというふうに見られておりますが、問題は、きちんとこれが回収されまして無害化処理ができるかどうかという点にございます。したがいまして、かりに今後、PCBを本法によって有害物質の特定化学物質と指定しました場合に、トランスを用途として指定し得るかどうか、これは結局回収のめど、それから無害処理の方法、こういうものが必要でございまして、そういうふうに、単に使用中に環境を汚染しないだけでなくて、必ずそれが回収のメドがはっきりしておりまして、同時に、回収したあとそれを無害化して処理することが可能である、こういう、非常に限られた場合にだけ使用を認めようというふうに考えております。そういう意味で、たてまえとしては、もう特定化学物質になった場合は、使用、製造は非常にむずかしいというようなふうにむしろお考えいただいたほうがよろしいかと思います。
  120. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 化学物質についてこれからは事前審査制を採用していくわけなんだけれども、実際に試験をする化学品安全センターをはじめ、国立の試験所、研究所、こういったところが大体三カ月以内に結果を通知するということになると、これから数多くの新規の化学物質というのがどんどん出てくることは間違いないんだけれども、はたして可能であるかどうか、人的にもあるいは資金的にも、機能的にも。この辺、私も化学工場に籍を置いていた経緯から見て、ほんとうにだいじょうぶなんだろうかという気がするんだけれども、いかがなもんですか。
  121. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) この法案が施行になりますと、その後の、いわゆる新しい化学物質は全部製造前に政府に届け出まして、政府審査を受けることになります。  本法案の第四条では、届け出を受理しました日から三月以内に三つの区分をするようにいたしております。第一は無害であるというもの、第二は特定化学物質に該当するもの、第三はどちらとも判断がつかないもの、こういうことでございまして、まず、届け出を受理しますと、書面審査等によりまして三カ月以内に、ただいま申しましたようなシロかクロか灰色かというふるい分けをいたします。これは主として過去の得られました知見等から判断をして、審議会等で学者に集まっていただきまして、こういったふるい分けをしていただこうというふうに考えております。  問題は、この第三番目の灰色と申しますか、クロともシロともまだ書面審査では判断がつきかねる、こういうものにつきましては試験を実施をいたしまして、試験の結果によってそのシロクロを判断することになります。三カ月以内に結論を出しますのは、シロかクロか灰色かまででございまして、灰色ということになりました場合は試験に回りまして、試験をした場合の判定の期間についてはこの法律できめておりませんので、事実上かかった期間によって試験の成果が出てきた場合に判断をする、こういうことになろうかと存じます。  私ども考えておりますのは、まず第一次試験としての環境に出ました場合の分解性試験、それから蓄積性があるかどうかという試験、この二つの試験はおおむね二カ月前後で完了できると思っておりますので、あとの判定の期間を入れまして大体三カ月ぐらいでそこまでの判断はつくんじゃなかろうかと思っております。そういたしますと、申請届け出後大体六カ月で一次試験の判定結果は出るということになります。この分解性、それから蓄積性試験の結果、分解性が悪い、蓄積性も高いと、こういうことになりました場合は、さらに引き続きまして毒性試験を行なうことにいたしておりまして、毒性試験に回りますと、ものによりますけれども、結論が出るまでに一年から二年かかるんじゃないかと考えられますので、毒性試験まで回ったものについては、結論が出るのは届け出後相当期間後になるかと存じます。
  122. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 時間がきたのでございますが、あともう一、二問でやめますけれども、先般、消費生活用製品安全法というのができたわけです。その中には製品安全協会というものを設ける規定があったわけですが、今回、化学品安全センターに関する規定が設けられていない。この場合、化学品安全センターに対して、その業務が公正に運用できるような監督体制がとれるのかどうか。あるいはこのセンターが将来特殊法人に組織がえするようなことになるのかいなか、この辺のところをお聞きしたいと思います。  それから、いま一つ、軽工業生産技術審議会というのを改めて、化学品審議会というものを設けるようになったわけですが、そうなりますと、審議会の審議事項である「化学工業、雑貨工業及び土木建築材料工業における生産技術の向上及び製品の品質の改善に関する事項」、この中の化学工業に関するものについては新しい審議会で行なうとしても、雑貨工業に関する生産技術の向上、製品の品質の改善に関する事項などは別の審議会で審議することになるのか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  123. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 本法に基づきます、いわゆる申請届け出がございました新規化学物質の蓄積性あるいは分解性試験の大半を分担するものとしまして、私どもは化学品安全センターというものを民間の公益法人として設立をいたしたわけでございます。具体的には財団法人化学品検査協会というものに付置されたものとして、化学品安全センターというものが先月から発足をいたしております。これの監督は現行法で十分かという御質問でございますけれども、財団法人でございますので政府認可した機関でございますから、民法に基づきまして十分な監督が可能であるというふうに考えております。  なお、この機関を特殊法人化するような用意はないかという御質問でございますが、政府としましては極力特殊法人の整理をいたしまして、新たな特殊法人の設立の仰制を基本方針といたしておりますので、この機関につきましては、現在の財団法人という形で今後も存続するようにいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。  それから、審議会が従来の軽工業生産技術審議会から化学品審議会に、今度この法案によりまして、施行後は審議会の名前と行ないます所掌事務が変わるわけでございますけれども、これは、今度化学品審議会はいろいろこの法律に基づきます試験の方法の決定、それから判定の基準の作成、具体的な安全性の審査、あるいは特定化学物質の指定の前審査、用途の検討等々、非常に膨大な仕事がございますので、この際、この化学品の安全関係に主として力を注いでいただこうということで、化学品審議会というふうに衣がえをいたしたわけでございます。その結果、従来の審議会で担当いたしておりました雑貨工業、土木建築材料工業の関係につきましての従来行なっておりました審議会の事務、たとえば技術の向上でございますとか、製品の品質の改善とかこういった問題につきましては、必要に応じまして通産省に付置されております産業構造審議会に所要の部門を設けまして、そちらのほうに従来この審議会で行なっておりました雑貨、土木建築関係の仕事は移してまいる、かように考えております。
  124. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これでもうやめます。あと一、二問ありますが、もう須藤さんがお待ちだから、次の合同審査のときにして、終わります。
  125. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、安田明君委員辞任され、その補欠として木島義夫君が選任されました。
  126. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 中曽根さん、私たちは、この法案通産省も相当苦労してつくった法案だろうと思うし、内容的に言っても、私たちも一つの前進した法案だと思うので、不十分ではあっても賛成するという態度を持っておるんですよ。しかし、反対すれば反対してしまって、あとでどんなことが起ころうと、そら見たかと、それで済む問題だと思うのですが、賛成するとなるとよけいにこの法案審議に対しては私は責任を感ずる。委員長に言うているんだ。責任を感ずるわけですね。だから、一時間でこの法案審議を済ましてしまえということでは、なかなかむずかしい点があると思うのです。だから、私たちも十分審議は尽くしてまいりたい、こういうように考えております。  そこで私は、この法案を出してきた政府当局の基本的な態度といいますか、姿勢について、今後この法案が通ってどういうふうな態度をとっていくのか、こういうことについてまず大臣に少し質問しておきたいと思うのです。  これはたいへん古い話になってはなはだお気の毒に思うんですが、昭和四十五年の七月九日です。公害対策特別委員会の席上、時の通産大臣宮沢喜一君に、私は四エチルの問題について質問をしたことがあるんです。その当時、四エチルというこれは毒物だということは、よく世間的にも、学者の中でも問題がはっきりしておった時点ですね。ところがその時点に、東洋エチルという山口県にある工場、そこの田内五郎という常務がこういうことをしゃべっておったんです。政府が無鉛化するという意味は、無鉛化の方向に接近させていくということで、五年ぐらいでは全く鉛を除くようなことができるはずがない。わが社としては計画を変更する方針は全然ない。むしろ外国から輸入していたものを国内で生産するのだから国益に沿ったものと自負しておる。」こういうふうに常務が語っておったわけです。  そこで私は、このようなことを東洋エチルの田内常務が言っておるが、これらに対して通産省はどういう行政措置をやるのかという質問をしたわけです。ところがそれに対しまして宮沢喜一君は、認可につきましては私どもは取り消すつもりはございませんと、こういう答弁——これ長いですから、私は要所要所だけちょっと読みますがね。そうして私は、資本金を投入してつくって——新しい会社です、まだこれは。会社としても困ったことに追い込まれるではありませんかと、だからいまのうちにやめろと、こういう行政指導をなさったほうが私は適当だと思いますと、五年後も会社がなおその四エチル精製を続けるならば、そのときには断固としてその認可を取り消すという決意を持っていらっしゃるのですか、どうですかと、こう私は尋ねた。東洋エチルの四アルキル鉛生産計画は、当初一万八千トンだといわれております、そのうち一万四千トンを国内向けで処理する、残りの四千トンは韓国、台湾、東南アジア全域にこれを売る計画だと、こういうことが話の中に出ているわけですね。  そのとき通産大臣が、私がこういうことをやめろと言ったら、「外国がそこまで公害の問題を考えずに、あるいはわが国ほど公害の問題がやかましくなくて、なおアンチノック剤を入れたガソリンがほしいということでしたら、それを供給することは別断われわれとして非友好的なことでもありませんし、非人道的なことでもないと、こう考えるわけでございますから、要は、会社がなお将来輸出の需要があるかないかということをそれらの国の実情を考えて判断すればよろしいことではないかと思います。」こういうふうに答えている。それて私は、非人道的な行為ではないか、国際的にも問題がありやしないか、自分のところで毒だから製造はやめますと、そこまで言っているものを、外国が買うなら売るということでは、アヘンを外国に売るのと同じ精神だと思うんですね。買い手があるから売るんだと、こういうことは。それでは非友好的だと、こう私が質問しましたら、「これは兵器や武器のことではございませんから、突然悪もの呼ばわりされました四エチル鉛はかなり迷惑を感じておるだろうと思うのであります、」と、こういう答弁を宮沢君はしているんですよ。私は、日本の通産大臣としてははなはだ不見識な答弁だとそのとき思いましたから、その点は言っておきました。しかるに、やがて私が言ったように、この東洋エチルは操業できるばっかりに工事はできたが、操業は始めないでこれをやめてしまったということを私は聞いたんです。やめたことはけっこうでありますけれども、時の通産大臣がこういう不見識な答弁をしておったことに対して私ははなはだ遺憾だった。そこで中曽根通産大臣に伺うのですが、今後、こういう誤った態度はよもやおとりにならないだろうと思うんです。私の意見が正しかったのか、宮沢君の意見が正しかったのか、中曽根通産大臣はどういうふうに御判断になりますか。
  127. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 鉛の問題は、当時、柳町の交差点の問題等を機縁にいたしまして世論が喚起されて、公害問題としていろいろな手当てが講ぜられるようになってきた問題であったと思います。自来、政府は無鉛化の方向に努力してまいりまして、また業界も指導しまして、業界の中でもタクシーやその他が、鉛の一定量をオーバーするガソリンを入れてはいけないというので、自主的規制 監視機構までつくらせて実はやっておるわけでございます。ですから、方向としては先生のおっしゃる方向に行政措置は進んできておるわけでございまして、先生の御趣旨は生かされておるだろうと思います。  最近、ただ、あまり鉛を少なくしますと、自動車がエンストを起こして高速道路やその他で事故を起こす危険性がある、そういう問題がまた提起されまして、それじゃ、どの程度を許容量にすべきであるかという点で審議会でまた検討しておるところでございます。一般的に見まして、やはり人間の生命というものは国境を越えてとうといものでございますから、生命を尊重するという点については同じような基本的な観念に立ってやらなければならぬと思います。最近、石油たん白の問題が出まして、同じような類似な問題が出ましたが、国会側からの御要望や御注意もあって、われわれのほうもそういう措置をとっておるところでございます。外国なら要望があればどうでもいいと、そういう態度はやはり慎むべきであって、科学的に見て怪しいと思うものはこれを問題にして、そしてできるだけ安全な方向にこの問題を措置することが適当な態度ではないかと、そういうように思います。
  128. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあガソリンに鉛を加える問題ですね、通産大臣。鉛を加えないとスピードが出ないとか何とかいうことが言われております。しかし、その鉛を加えてスピードを出すことが第一義なのか。鉛を除いて、スピードはかりに落ちても鉛は使わないようにしていくことが、私はこれが人道的な立場だと思っておるのです。なお、人道的な立場に立つとおっしゃる大臣の口から、やはりスピードが出ないから鉛を加えなくちゃならぬというようなおことばを伺うのは残念だと思うのです。スピードが落ちても鉛を使われたくないという気持ちは、われわれ日本の国民はすべて持っておると思うのですね。鉛を使うならば、使ったその鉛が外に出て国民の健康をそこねることのないような設備をちゃんと整えて後、私は使うべきだと思うのです。しかし、まだそれができておりません、いまのところ。だから、それならばスピードが落ちても鉛を使うべきでないと、こう私は思いますが、大臣はどういうふうにお考えですか。
  129. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ガソリンの鉛の問題は、自来、新車については使用禁止をいたしまして、新車は無鉛化ガソリンになっているわけです。それで、約九百万台残っている中古車等はそういう装置がまだできておりませんものですから、急にガソリンの中の鉛の量を著しく減らすとエンストを起こしたりして、追突事故やその他が起こるというこういう別の面の心配もあって、いま審議会でいろいろ考慮しておるところであります。私は、どっちかといえば先生のお説に近いので、スピードは落としても人間の健康は守るべきである。そういう趣旨に賛成でございます。
  130. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私の説と同じだと大臣がおっしゃるならば、行政官としては通産行政の最高の立場にあるあなたの決意一つで私はそれが実現すると思うのですね。やはりこれは通産大臣、一刻を争って、それを通産大臣の意思で早く実現するように私は努力されたいと思うんですよ。あなたの努力が一年延びればその間に国民の健康がそれだけそこなわれると、こういう結果がくるのですから、この際、やはり国民第一主義に考えていらっしゃる通産大臣が英断をもってそれこそやはりやめろと、そして中古車があるならば、それは金がかかってもしかたがないから鉛を出さないような設備をすぐつけろと、こういうことを私はやはりやっていただきたいと思うんです。  そのときに私はこういうことも話したことがあるのですよ。自動車からの排気ガスに鉛を出さないようにまず国会が率先してやれ、だから国会の自動車は全部その装置をつけなさい、こういうことを私は議運で申しました。議運でも、それじゃやろうというんでやったはずですが、その結果は私まだ聞いておりません。政府関係の車、国会の車はまずその範をたれるべきだと、私はそのとき申したことがあるのですよ。ましてや通産大臣が私の意見と同じだと、人命が第一だとおっしゃってくださるならば、通産大臣、思い切ってこめ際ひとつやられたらいかがですか、みな喜びますよ。
  131. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府関係の車は装置をしまして、中古車でもできるだけそういうふうにしろと言って、措置は進んでおるはずです。それから、新車はもうすでに全部無鉛化になっておりますから、政府関係が購入しているものも民間のものもなくなってきておると思います。国会もたぶんやっていらっしゃるんではないかと思います。
  132. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私はなぜそういうことを前置きにするかといえば、最近、PCB水銀汚染やいろいろな問題で、日本国至るところにあらゆるものが水銀汚染PCB汚染でもういまや食べるものがないというほど、台所を預かる婦人たちは頭を痛めておるのが現状だと思うんですね。だから、一刻も早くそういう人たちに安心感を与えるということが私はやはりこの行政の責任であり、またそうするのが好ましいことだと思います。中曽根通産大臣、ほんとうにいまこの問題は深刻ですよ。だから思い切ってそこから始めていただきたい。そうでないと、四エチルのときに宮沢通産大臣があんなひどい答弁をなすっておるような政府の姿勢では、私は、この法案をつくってもこれは容易なことじゃないぞという心配があったものですから、あなたの意見をまず確めたわけなんです。だから、願わくば私たちの期待にこたえて、一日も早く鉛を使わない、あらゆる公害を除去するためにひとつ大いに努力していただきたいということを重ねてあなたに要請して、それで私は次の質問に入りたいと思います。いいですか、それで。
  133. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どうぞ。
  134. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ほかの委員の方々がPCBの問題や水銀の問題、いろいろなそういう問題についてずっと質問を二日にわたってされたように思いますので、私はできるだけそういう問題は避けて、この法案の条項についての質問を試みたいと、こういうふうに思っております。  まず、第一条について私は質問いたしますが一この法律案によりますと、新化学物質の性質について、「難分解性等の性状を有し、かつ、人の健康をそこなうおそれがある」かどうかを審査すると、これが目的だと、こういうふうになっております。そこで、分解性の難易の判定基準は一体何かという点です。  それから二番目は、ここに「等」という字が使ってあります、「難分解性等」と。この「等」の意味するものは一体何を意味しておるのかという点。  それからもう一つ、「性状を有し、かつ、人の健康をそこなうおそれがある」かどうかという、こういう「おそれ」ということばが使ってありますが、「おそれ」とはどのようなことをさしていらっしゃるのか、こういうことの三点ちょっと質問いたします。
  135. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) この法律考えております「難分解性」と申しますのは、こういった化学物質が環境に廃棄されました場合に、たとえばバクテリア等で通常のものは自然と消える、いわゆる生分解を起こしますけれども、それが分解をしにくくて環境に残るもの、こういうものを難分解性ということで呼んでおるわけでございますが、どの程度からを難分解性のものと判定をして危険物質のほうに入れるかという基準につきましては、現在も軽工業生産技術審議会の化学品部会で学者に集まっていただきましていろいろ検討中でございます。なお引き続き検討を続けてまいりたいと考えておりますが、試験の方法といたしましては、この化学物質をいわゆる活性汚泥の入っております中に入れまして、その活性汚泥の中のバクテリアの作用によってどの程度に一定期間内に分解するかという分解率を見まして、それが非常に分解度のいいもの、中等のもの、あるいは非常に分解性が悪いもの、こういった形に結果を分類してまいって、どの辺からを難分解性として有害と見るかということは、さらにその審議会等で検討してまいりたい、こう考えております。  それから、もう一つの「等」というところでございますけれども、これは蓄積性でございます。かりに環境に出まして分解性が悪い化学物質でございましても、それが魚等に蓄積されにくいものでございますと、食物連鎖等で人のからだに蓄積されるという懸念が薄いわけでございますので、分解性が悪い上にさらに魚等の体内に非常に蓄積されやすい物質であるかどうかという、こういう点をもう一つの判断の要素に考えております。具体的には魚を使いまして、一定期間いろいろな濃度化学物質を溶かした水の中で飼育をいたしまして、その一定期間後の魚の体内での蓄積度を見まして、その蓄積の高さによりまして有害かどうかの判断をいたしたいというふうに考えております。  それから、「人の健康をそこなうおそれ」という点でございますが、ただいま申しましたように、分解性が悪くて蓄積性が高いということになりますと、これは非常に、人の体内に食物連鎖で入りました場合に、もしそれが毒性があるものでございますと、人の健康をそこなうおそれがございます。そういう意味で、「人の健康をそこなうおそれ」と申しますのは、いわゆる慢性毒性を持っておるかどうかと、こういうものを試験によりまして判断をいたしまして、慢性毒性を有するようなものは特定化学物質に指定をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、「人の健康をそこなうおそれ」と申しますのは、ただいま申しましたように、その化学物質が人の体内に入りました場合に毒性を持っておるかどうかという、こういう意味でございます。
  136. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、重ねてお尋ねしますが、この審議会でいま審議中だと、それでは、その結論が出たらそれはさっそく公表なさるということでしょうか。
  137. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) こういった分解性あるいは蓄積性、あるいは人の健康をそこなうおそれのあるような毒性を判定しますために、申請がございました場合に試験を実施をいたしますけれども、その試験の方法等につきましては、この法律の第四条第四項によりまして、環境庁、厚生省、通産省で協議いたしまして、試験の項目、試験の方法といったようなものを省令で定めまして公表をいたすことにいたしております。で、その試験をやっていただきました場合に、その試験のデータを審議会にはかりまして、特定化学物質に該当するかしないかという判断をすることになりますけれども、その場合の判定の基準は、ただいま申しましたような点を総合的に判断することになろうかと思います。で、基準が総合判断ということになりますので、具体的なケースに即しましていろいろと判断されるということになりますと、非常にかっちりとした形式的な数字であらわすような基準ができますかどうか、むずかしい面がございます。したがいまして、公表できますかどうかにつきましても、さらに審議会で学者の方々に御検討いただいて検討いたしたいというふうに考えております。
  138. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 局長の話を聞いていると、何だか心もとないことのように私には聞こえるんですがね。そういう局長のような答弁国民が聞いたら、何だ、法律はつくってもたよりないんだなというような——どうぞ大臣いらっしゃって、できるだけ早く帰ってきてください。——そういうふうに受け取りますよ。先ほど藤井君も、企業責任ばかり問うて政府責任が問われてないじゃないかとおっしゃいましたが、もちろん、PCBについては企業責任も重大です。しかし、それをよく知りながら企業に対する行政指導をしてなかった政府責任も重大だと私は思うんですよ。これは政府並びに企業の重大責任であると思うのです。  ここに東洋紡の岩国のPCB汚染の問題がありますね、今度。実は、昨年六月にも通産局はちゃんと同工場を立ち入り調査しておるんですね。そのときにはPCB放流の事実を見のがしておるんですよ。そして問題はないと、こういうふうに結論を出しておる。ずさんな調査企業に対する甘やかしに地元から非難の声が上がっておりますと新聞は報道しておりますね。で、同工場では数年前までかなりの量のPCBを放流していた形跡があったために、昨年六月に通産局が立ち入り調査を行なったと、こういうことです。ところが、その立ち入り調査なるものが非常に簡単ずさんなもので、排水口二カ所のヘドロを採取して調べて基準以下だとして放置しておった、こういうことなんですね。で、その東洋紡の岩国工場では、昭和三十八年に〇・五トンのPCBをあやまって海へ流したことがあったというんです。昨年の調査のときはこれを見のがした、そして今度汚染発表で初めてこれが表面化したと、こういうことになっておるわけですね。こういう通産省の態度では、国民はほんとうに安心ができないと思うんですね。だから、この法律ができても通産省の姿勢がしゃんとした姿勢をとらない限り、政府当局が、企業にまかしてあるんだから企業責任だというふうに安易に考えるならばいかぬと思うんです。やはり企業責任でもあると同時に、より一そう私は政府責任が重いと思うんです、行政指導しないんだから。どうですか、その点は。いまのようなあなたの答弁を聞いているとはなはだ心もとないですよ。もっと積極的な姿勢を立てていただかぬと困ると思うんですが、どうですか。
  139. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) たとえば、いま審議会で議論されておりますところでは、分解性につきまして、分解性の悪いものをCグループ、分解性のいいものをAグループ、それから中等のものをBグループといたします三段階に分ける。それから蓄積性につきましても同じく三段階に分けると、こういたしますと、どこまでを合格とするか。A、A二つともAをとれば合格とするか、AとBの組み合わせなら合格とするか、B、Bはアウトとするかとか、その辺の議論がまだ非常に行なわれておりまして結論を得るに至っておりませんが、本法施行までにその結論を得たいと考えております。ただ、そういうことで非常に複雑でございまして、なかなか数字でもって何%ならいいかというような形にいかないんじゃないかというふうに考えますので、抽象的な判定基準はあるいは公表可能かと思いますけれども、具体的に一件一件にはめてすぐに答えが出るような基準になりますかどうか、もう少しいまの基準の作業を見てから検討したいというふうに考えております。
  140. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、軽工業生産技術審議会の答申をずっと読みました、詳しく。この精神は、私がいま言っているようなことをこの本は書いていると思うんですよ。だから、通産省としてもこれに十分こたえる姿勢をまず持たなきゃいけないと思うんですよ。まあ刑法じゃ疑わしきは罰せずということにはなっておりますけれども、疑わしきものはやめさすという、そこまで通産省が積極的な態度をとらないとこういう汚染はもうなくなりませんよ。そこを私は通産省に決意を求めておるわけなんです。それでなかったら、この法律をつくってもいろいろなことで披け穴もできてくるでしょうし、十分なことにはならぬと思う懸念が私の頭にあります。しかし、私はこの法律に賛成する立場だからそういうことのないように、せっかく私たちが賛成した法律が十分な成果をあげるようにしてもらいたいと思うんですね。それをするのが通産省じゃないですか。行政機関がやるんですよ。われわれがやるんじゃないでしょう。だからあなたたちの決意を私はここではっきりと求めておるわけなんですね。それが何だかあやふやなことで答弁されたんではどうも私は困るんですね。
  141. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) お話のように、この法律はそもそも今回のPCBの経験にかんがみまして、二度とこういう問題を起こしてはならないという反省に立ちまして、化学物質を全部製造前に審査をいたしまして、疑わしきものは製造させないと、こういう考え方で立法をいたしておるところでございます。したがいまして、判定基準も十分に厳重なシビアなものにいたしまして、およそ人の健康をそこなうおそれがあるものについては、特定化学物質として製造を原則としてさせないような規制を加えていく、こういうことでやってまいりたいというふうに考えております。
  142. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 「おそれ」というのは何でしょう。毒性とか催奇性、発ガン性、突然変異性などもこの「おそれ」の中に含まれておるわけですね、そうでしょう。
  143. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 先ほど慢性毒性と申しましたが、御指摘のように、同時に特殊毒性、たとえば発ガン性、催奇性、突然変異性といったようなものもこの毒性の中に入っておりまして、必要に応じましてそういう試験もいたしたいというふうに考えております。
  144. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 こういう問題がこの「おそれ」の中に含まれているんですから、おそれのあるもの、疑わしきものはもうできるだけ規制すると、こういう姿勢でいっていただきたいと思います。よろしゅうございますね。  それじゃ、次の質問に移りますが、委員長、まあこういうふうにずっときちっとやっていくとなかなか時間がかかるんです。私の質問だけでもこれは三時間ぐらいかかってしまいますよ。だからきょうやるところまでやりますが、また残ったら次の機会に質問を続けるということを確認しておいてください。−それじゃ、委員長が確認されましたから、そのつもりで質問いたします。  新化学物質について審査を行なう場合、だれがこれを行なうのか。国がその研究機関なり試験所なりで責任を持って行なうのか。いやしくも国が審査を行なう場合、メーカーの試験結果を信用して安易に結論を出すということがあってはならないと思います。政府には、国民の生命や健康にかかわる問題を、国民本位ではなく、大メーカーとなれ合ってずさんな審査をした実績があります。それはサリドマイドの例がはっきり私は示しておると思うんです。もうけることしか念頭にない大企業は、常に自己に都合のいいデータしか出さないものでございます。実例はたくさんあります、  たとえば水俣病原因説におけるチッソのやり口、第二水俣病問題における昭和電工の振りまいた農薬説など、公害問題における大企業の態度、それから原子力発電所や火力発電所をつくる場合、安全だといいながら実際には住民無視、安全性軽視の態度をとってきた電力会社の実績、中性洗剤の有害論争でも、有害という消費者側のデータに対して、大企業は無害だというデータを持ち出してきておる。そうしてこれまで政府当局は、企業秘密の保持とかいう名目で大企業に不利な事実を国民の目から隠してまいりました。それはチッソに問題が起こったとき、チッソに熊本大学の学者が入って、そうして調査をしたいと言ったときに、チッソはそれを拒否して、通産省の許可がなければだめだというようなことで立ち入り検査を拒否した例を私も聞いております。そういうふうに大企業に不利な事実を国民の目から隠してきた、大企業奉仕の行政を行なってきたことも、私は、国民はみな知っておることだと思うんです。それだけに今回の新化学物質審査をだれが、あるいはどこの機関が行なうのか、どういう立場でやるのか、これは重大なことだと思いますが、どうでございましょうか。
  145. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) シロかクロかの判定は、最終的には厚生大臣及び通商産業大臣がこの法律に基づいて決定をいたします。ただその前に、この法律に基づいてきます化学品審議会の分科会か何かの機構をつくりたいと考えておりますが、そこに専門の学者の方にお集まりいただきまして、もちろん、これは業界は入れませんで、学者だけにいたしたいと思っておりますが、そこで試験のデータ等を判定していただきまして、その審議会の結論を参考にしながら厚生大臣通産大臣とで決定をすると、そういうふうな仕組みを考えております。  それじゃ、試験はどこで実施するかという点でございますけれども、原則としまして、公正な第三者機関において行なわれました試験データをこの審議会にかけまして、そこで審議会の判定をいただいて、それを政府が受け取って決定をする、こういうふうなしかたを考えておるところでございます。
  146. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この分解性や蓄積性毒性などの試験を行なうにあたりまして、また、新化学物質審査を行なうにあたりまして、十分時間をかけ慎重に行なうべきだと私は思います。いやしくも、大メーカーの必要を優先させ、審査を短期間で不十分なまま済ませる、こういうようなことはあってはならないと私は思いますが、どうでございましょうか。
  147. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 試験の方法は、この法律に基づきまして環境庁と厚生省も通産省で試験の方法へ項目等をこまかくきめまして公表をいたします。その項目だけの試験はやっていただくことになりますので、大企業は簡単にとか、中小企業は詳しくとか、そういうことは考えておりません。この公表いたしました試験項目と試験の方法に従って、それを全部満たすだけの試験をやっていただこうというふうに考えております。
  148. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この審査をやる場合、もちろん、あなたのお答えのように、正確に、時間をかけてやるということだろうと思うんですが、審査の正確を期するためには、いろいろな試験を一カ所だけではなく二カ所以上の複数で私はやるべきではないかと思うんですね。そのほうが正確度が高くなると、こういうふうに考えております。そうすることが必要だと、私はそういうふうに思っておるんですが、政府当局ではどういうふうに考えていらっしゃいますか。一カ所だけで済ますということですか。同じ試験を複数のところでやって正確を期するということじゃないんですか。
  149. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) これからつくられます化学物質は、悉皆試験と申しますか、全部につきまして届け出義務を課しまして、過去の知見で安全であると認めがたいものについては全部この試験を課すことになりますので、一応たてまえとしては、試験は一回と申しますか、一カ所でやるということは考えておりませんけれども、その試験のデータにつきまして審議会におはかりしましたおりに、再度念を入れて試験をしたほうがいいというような審議会の御意見が出た場合には、再試験も考えたいも思っております。
  150. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 すると、審議会のメンバーが非常に重要な役割りをすることになるんですが、その審議会のメンバーはどういう人たちを予定していらっしゃるんですか。
  151. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 化学品審議会の構成メンバーでございますけれども、医学、化学、その他の各分野の専門の学識経験者、言論界、それから需要家、消費者代表、また業界代表、こういった各界の代表で構成をいたしたいと、こういうふうに考えておりますけれども、ただ、ただいまの試験結果の判定、あるいはそもそもの申請につきまして、過去の知見なりいろいろな文献等からの判定、こういうものをお願いします分科会等につきましては専門家だけの組織にしたいと、こういうふうに思っております。
  152. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私の考えでは、業界代表はやはり利益代表になりますから、だから業界代表などは入れないほうがいいと思うのですね。純然たる、ほんとうに権威ある科学者をもって構成するというのが私は好ましい形ではないかと思うんですが、なぜ業界代表を入れる必要があるんですか、そこに。
  153. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 個々の案件の具体的な判定につきましては業界代表は入れるつもりはございません。ただ、総体としての、この法律の施行に関しましての討議をするような総会的な場におきましては、需要家代表が入りますと同じ意味で、それぞれ業界の代表の方も化学工業を代表するという意味で、いろいろ製造規制その他も出てまいりますので、別に利益の擁護という意味じゃございませんが、化学業界の現実のいろんな知識を述べていただくと、こういう意味で業界代表も参画することは意味があるんじゃないか、こういうふうに思っております。
  154. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 くどいようですけれども、やはりこの法案は業界を監視し取り締まっていく目的を持っている法案ですよね、これは国民の立場に立って。そこへ業界代表を入れる必要はさらにないと思うんですよ、私は。業界代表が入ればろくなことは起こらないですよ。そういうものに業界代表を入れればおかしいことになりますよ。だから、やはり純然たる、業界も何のつながりもない良心的な科学者をもって構成する、それに対して、その中に国民の代表として消費者の代表を入れるということは、これは私は考えられることだと思うんですよね。業界代表は、この法案の対象になる人たちをこの審査の中へ入れるということはおかしいことじゃないですか。なぜ入れなきゃながぬ。入れないとやれないんですか、どうですか。
  155. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 個々の申請案件と申しますか、届け出案件の有害性、有毒性等を判定する会議には業界代表を入れるつもりはございません。ただ、総体としての化学品の安全問題を検討いたします総会的な場には、当然業界としても、業界がこの世に送り出しております製品についての安全性を確保するということは業界自体の責任でもございますし、そういう意味で、業界がどういうふうなこれまでの安全のための施策をもとっており、そういった点の実情を審議会で述べるということはそれなりに有効ではないかと考えております。  なお、この法案のモデルになっておりますアメリカの化学品の安全法におきましても、やはり審議会の構成メンバーには人数を限りまして、総体の四分の一以内ということで業界代表を加えるというような構成をとっておるようでございます。
  156. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 アメリカがどうだからもいうようなことは、何もかもアメリカに追従する必要はないことでございまして、アメリカのやっていることでもいいことばかりじゃない、悪いこともあるんですから、そんなものは問題にならないも思うんですね。われわれはやはり日本独自の考え方で進んだらいいと思うんですね。だから、どうしても政府がこれに業界代表を入れるというその趣旨が、どうも私には理解がむずかしいんですよ。業界代表を入れなくてもやれるものだ。だから、そんな疑いを持たれるような業界代表などはやめて、良心的な科学者、それもほんとうに被害を受ける被害者の立場にある国民、その代表を入れてこの法律が厳守されていくような、この精神が厳守されていくような立場で臨むのが一番好ましいことだと思います。あなたがそれでもやるというならば、これは対立した意見になりますが、私はあくまでもそれを主張しますよ。もう一ぺんあなたたちもその立場に立って私たちの言うことも検討して、それで再考してもらいたいと思います。どうですか。再考の余地なしですか。
  157. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 先生の御意見も十分わかるわけでございますけれども、審議会でございまして、審議会の意見は参考意見として政府が聴取いたしますけれども、審議会へ決定権をゆだねるわけではございません。なるべく審議会では各界の意見が述べられるほうが、この法律の公正な運用の意味におきましてそういうことが期し得るんじゃないかというふうに考えるわけでございまして、そのために専門家だけでございませんで、言論界それから需要家、消費者代表あるいは主婦の方と、そういった方々も加わっていただきまして広く御討議を願いたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、業界代表が入りましてもその数はきわめて少数になろうかと存じます。それから、先ほど来申し上げておりますように、個々の申請案件審査する分科会等には、一切業界代表は入れるつもりはございません。
  158. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、あなたの意見はやっぱり業界というものが、業界の利益というものが頭の中にこびりついておるために業界代表を入れないとまずいんじゃないかというような気持ちが通産当局にあるからそういうことになるも思うんですがね。それさえなければすっきりとしたものができるはずだったと思うんですよ、私はね。この論議、何回繰り返しても時間が迫るだけですから、私は通産省のその考え方は反対でございますと、そのことをはっきり申し上げておきます。  次の質問に移ります。  新化学物質が特定化学物質に指定されるにしろされないにしろ、その判断の基礎となる審査のデータはすべて国民の前に公表すべきであると思いますが、すべて公表なさいますか。
  159. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 試験のデータでございますけれども、これはこの審議会に提出をいたしまして、審議会の専門委員の方が検討される内部資料というふうに考えておりますので、特に公表することは考えてはおりません。ただ、この試験データは秘密にしておかなければならないという性質のものでもないと考えますので、専門家等でいろいろ研究その他のためにこれを知りたいという申し出があれば、資料を供覧するこもにはやぶさかではございません。
  160. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これは当然国民の前に公表すべきですよ。公表できないというならば、公表できない理由を述べてくださいよ。私たちはこの法律によって守られなきやならぬ立場にある国民ですよ。その国民の前に、この法律はこうこうこういうふうに運用されてこういうことになっておりますと、これこれのものを審査しましたと、その結果はこうでございますとなぜ発表しないんですか。発表して悪い理由がないじゃないですか、発表できないというならば、発表できない理由をはっきり言ってください。そこがもしもできない理由があるならば、はなはだおかしいことだと私は言わざるを得ないも思うんですよ。——あなた答えられないんだったら、大臣帰るまで待ちますよ。
  161. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 非常に多数にわたると存じますし、それから専門的なデータでございますので、一々これを全部公表するというのもいかがかと存じますけれども、ただいま申しましたように、秘密にしておきたいということを考えておるわけではございませんので、特に専門の方等で知りたいというお申し出がございましたら、供覧と申しますか、お見せするということにいたしたいと考えております。
  162. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ、国会議員が公表を要求したらどうしますか。
  163. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 提出いたしたいと思います。
  164. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 国会議員が要求したら提出する……。
  165. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) はい。
  166. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 国会議員に提出すれば一般の公開も同じですよ。国会議員に提出できて一般に公開できないというのは一体どういうことですか。
  167. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) ただいま申しましたように、非常にたくさんなデータになりますし、数も多うございますので、一々それを公表するという手続はとりませんけれども、御要望があればそのつどその御要望のあったものについて資料はお見せすると、こういうことでございます。
  168. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 忘れるといけませんから、私、いま要求しておきますよ。できたら全部私のところに資料をよこしてください。いいですか。答えておいてください。
  169. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 承知いたしました。
  170. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 資料全部よこしますね。
  171. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 承知いたしました。
  172. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それではその次にいきます。  法律案では、「これらの性状を有する化学物質の製造、輸入、使用等について必要な規制を行なう」とありますが、PCB類似物質は原則として使用を認めることを前提とする規制ではなく、禁止すべきではないかと、こういうように私は思いますが、どうでございますか。
  173. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 先生の御意見に全く同意見でございまして、私どもは、特定化学物質に該当するものが出まして指定します場合は、原則として使用はさせないようにいたしたいと、こういうふうに考えております。
  174. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 PCBの安全無害な処理方法は現在もまだ確立されていないと言えると思うのですね。この法律案では、処理方法の確立については何も触れておりませんが、新化学物質については、特定物質であってもなくても安全無害な処理方法を確立させることが私は必要だと思います。この処理方法が見つからない化学物質製造等は認めないこととすべきであると思います。そうでなければ、新たな化学物質による環境汚染を引き起こすことになると私は思うのです。処理方法の確立を条件づけるべきだと、こういうように私は思っておるのですが、どうでございましょうか。製造に至る前に、その処理方法をちゃんとしてから製造させるということですね。
  175. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) この特定化学物質と申しますものは、環境に出ました場合に分解性が悪く蓄積性が高いということで、環境に残留をいたしまして、魚等の食物連鎖を通じまして人の健康を害するおそれがある物質でございます。したがいまして、こういう物質使用させる場合には、第十四条に書いてございますように、他の物質では代替できないような非常に有効な用途がございまして、しかも環境の汚染をその使用によって生ずるおそれがないことというのが条件になっております。この使用に伴って環境の汚染を生ずるおそれがないということは、確実に回収をされまして、それが無害化処理されて産業廃棄物として最後に廃棄される、こういうことが必要なわけでございまして、そういう意味で、完全な無害の処理方法がないものは環境汚染のおそれがございますので使用はさせないということになろうかと存じます。
  176. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 使用でなく生産をさせないということが必要だと思うんですよ。
  177. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 製造は許可制になりますけれども、その場合に、十四条で「使用の制限」というところがございますが、結局、うまい無害化する処理方法がなければ最後に環境を汚染することになりますので、用途を特定できないとと、つまり、使わせる用途がきめられないということになります、そういうものにつきましては。ということは、用途がない形で特定化学物質の指定をいたしますと、それは製造しても一切販売できないということになりますから、結果的に製造する企業はなくなる、こういうように考えるわけでございまして、特定化学物質に指定いたしましたら、必ず何らかの用途を見つけて使用をさせ製造させるというようなふうに考えているわけではございません。大半のものについては、用途そのものを認めないために製造そのものも行なわれないと、こういう結果になろうかと思います。
  178. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そんな回りくどいことをせぬでも、処理方法が明確にならぬものは製造させないときめてしまえばいいじゃないですか。製造はさせるけれども、使用しないから製造はしないだろうというような、そんな二重手間なことは私は必要ないと思うのです。はっきりと製造させないというふうにきめたほうがいいんじゃないですか。例の「化学物質の安全確保対策のあり方」というこの本ですね、ここの七ページには、「第二は、化学物質が前記の特性を有するか否かの審査は、問題が起る前になされねばならないということである。これは、環境に放出された後、当該物質が問題を有するこもが判明してからでは、それに対処するために多大の困難があると考えられるからである。」と、こういうように書いていますが、この意思を厳守するためには、製造は認めるが使用は認めないもいうようなそんな二重手間のことをしないで、製造を認めないと、こういうふうにきちんとしたほうがすっきりしますよ。製造させること自体がむだなことですよ。
  179. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 法律の表現の問題でもあろうかと存じますけれども、第九条で許可の基準といたしまして、製造許可につきましては、需要に照らしてその設備が過大でないことという条件がございます。その需要が特定用途なしということにしました場合には需要がゼロでございますので、申請が出てまいりましても、一切許可はしない、こういうことになるわけでございまして、この許可基準からしましても、指定用途がない場合には一切許可はしないというふうな運用をいたすつもりでございまして、先生の御指摘のとおりの運用になろうかと存じます。
  180. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ぼくの言うような運営になるならば、ぼくの言うようにきちんと製造を禁止すると言ったほうがいいじゃないですか。何で製造は認めるのか。むだなことをさせるじゃないですか、それじゃ。使用禁止する、製造はかまいません。そんなばかなことをしなくてもいいじゃないですか。ちゃんときまったものができるまでは製造を認めません、こうなぜできないのですか、そこがおかしいんですよ。私は、ここは重要な論争のある点だと思う。——ちょうど大臣が来られた。中曽根さん、つくってもそれの処理のできないような毒物ですね。一例としてPCBをとれば、PCB処理はなかなかむずかしいんですね、いま。だから、そういう処理のできないものはつくることをやめたらどうですか、禁止したらどうですか、こう言うんだ私は。ところが局長の答えは、使用はさせません、使用禁止します、しかし、製造は禁止しません、使わなければしたがって製造しなくなりますからと、こういうことをおっしゃるんですがね。そんな使いもしないものを、使わさないものを製造させる必要はないというのが私の意見ですよ。そのほうがすっきりしていいじゃないですか、法案として。
  181. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 委員長……。
  182. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大臣に聞くよ。私は、大臣が見えたから大臣にわざわざ伺っているんじゃないですか。大臣の政治的な判断を聞こう。
  183. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 法文上は、禁止するもいう条文はないようでございますけれども、使用させないということは製造させないということに通ずるものと解釈して、御理解願いたいと思います。
  184. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 えらいくどいようですがね。法文上ないといったって、いまないのです、その法文は。だから、つくったらいいんですよ。使わないものを製造させる、わざわざつくらす必要はないじゃないですか。だから、そういうものはつくらさないというふうに製造禁止するのが一番すっきりしていいんですよ。そうすれば製造しないのだから、そういうものは世の中に出てこないんです、そうすれば国民に毒を与えないんですよ。使わさないといったって、製造したものがもし漏れたらどうするんですか、漏れたらやはり被害は受けるじゃないですか、国民が。だから、そういうものは一切つくらないということが一番私は正しいことだと思いますよ、漏れる場合があるのだから。
  185. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 第九条で、次の各号に適合していると認めるときでなければ許可してはならない、その第一号で、「製造の能力が当該特定化学物質の需要に照らして過大とならない」、使用が許可されなければゼロになるわけでありますから、当然、この第一号の適用によってこれは許可しないと。第九条第一項、最初の条文の「同項の許可をしてはならない。」と、これに該当するものと解釈していただきたいと思います。
  186. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それではこの第九条で製造してはならないと。
  187. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 許可しない。
  188. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 許可しない。許可制で許可をしないというから製造はしないことになると、こういう御意見ですね。
  189. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) はい。
  190. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 わかりました。  次の質問に移ります。  最近、千葉ニッコーのビフェニール混入事件がありましたが、既存化学物質について安全性の確認をできるだけ早く行なうことが私は必要だと思うんですが、いつまでにやってしまうお考えですか。
  191. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 私どもの調査では、大体既存化学物質が国産で約五千種類、輸入品が約二千種類、合計七千種類のものがございます。で、このうち非常に微量の生産のものはそう危険性は少ないと思いますが、年間百トン以上生産されているものが約二百種類でございます。この千二百種類の中で当面試験が必要ではなかろうかと思われますものが、推定では大体この三分の一ぐらいでございまして、約四百種類ぐらいは試験が必要であろうと、こういうふうに考えておりますが、この四百種類につきまして、まず非常に生産高の大きいもの、それから、たとえばPCB式に塩素がくっついておりますような、従来から分解しにくいといわれておりますような化学物質の範囲に属するもの、こういったものから先に手をつけまして、大体二年ないし三年でこの四百の試験を一わたり終わりたいと、こういうふうに考えております。
  192. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あれ一つでもいろいろ検討するのに三年も四年も時間がかかるのでしょう。いまおっしゃったように結論が出ないのでしょう、いろいろなもの。いまおっしゃったのはそういう意味じゃなかったのですか、年限がかかるのじゃないですか。
  193. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) まず、分解性と蓄積性試験をやりまして、その分解性、蓄積性の試験を大体二年ないし三年で四百種類のものにつきまして終わりたいと、こういうことでございまして、その結果、分解性も悪く蓄積性も高いということで毒性試験をやったほうがいいということになりますと、これは毒性試験だけで一年ないし二年かかろうかと思いますので、その数によりましてはややもう少し時間がかかると思います。
  194. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 だから、そういうやっかいなものと言えばおかしいですが、そんなものはもうつくらさないように早く処置をなさったほうがいいんですよ。そんなものが一ぺん出てくるとあとの処置に非常に困るのですからね、その点を私はさっきから言っている。そんなものはつくらさないというふうにすべきだと、こう思うのです。  もう時間がありませんから最後の一問で終わりますが、ここにある、政府が昨年十二月に出されました転工業生産技術審議会の答申ですね、「化学物質の安全確保対策のあり方」、この終わりのほうの二五ページに、留意しておる三点をあげておると思うのですね。  第一は、化学物質による環境汚染の問題ですね。第二は、新たな方策に対応する体制の整備、第三は、化学物質のデータの活用についてでありますが、これらの指摘に対する政府の対応策はどういうふうになっておるか、その点を伺っておきたい。
  195. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 第一の、人の健康にかかわる問題ではございませんけれども、化学物質によりまして環境を汚染する問題がございます。たとえば赤潮等、あるいは富栄養化の問題こういうものが化学物質の影響によりますものか、あるいは都市下水によりますものか、なかなかこういった問題は因果関係が複雑でございまして、まだまだいろいろ研究をすべき分野が残されておりますので、こういう問題につきましては引き続き検討を続けてまいりたいもいうことで、今回はとりあえず、人の健康を害するおそれのあるものについての取り締まりに、当面しぼったわけでありますけれども、引き続きこれは検討を続けてまいりたい、こういうふうに考えております。  それから第二の、本法を施行するにつきましての体制の整備、特に試験検査体制の充実の問題でございますが、今年度約一億五千万円の国の補助金を出しまして化学品安全センターの充実をはかったわけでございますけれども、私どもとしましては、さらに四十九年度以降大幅にこの予算の増額を大蔵省にお願いをしまして、こういった試験機関の充実整備をはかりたいと考えております。  それから最後に、この審査を通じましてだんだん審査のデータが積み重なってまいりますと、これは化学物質の毒性問題につきまして非常に貴重なデータになろうかと存じます。公害取り締まり関係あるいは労働安全衛生関係、その他もろもろにこの資料は非常に貴重な資料として役立つものと思いますので、そういった方面にこのデータを今後活用していただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  196. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) ほかに御発言がなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十七分散会      —————・—————