○国務大臣(
中曽根康弘君)
化学物質の審査及び
製造等の規制に関する
法律案につきまして、その提案
理由及び要旨を御
説明申し上げます。
御承知のように、PCBによる環境汚染及び被害の発生は、非常に大きな社会問題となりましたが、これは、従来の
化学物質の安全性に関する
考え方に再検討を加える必要のあることを痛感させるものでありました。すなわち、新しい
化学物質の開発と利用は、国民生活の充実に多大な寄与をなすものである反面、このような
化学物質の中には、その使用に際し、あるいは使用後の廃棄を通じて環境を汚染し、人の健康に被害を及ぼすおそれのあるものがあり、その防止体制の確立をはかる必要があることが明らかになったわけであります。
このような新しい人体汚染の形態は、化学工業の発展に伴い新たな
化学物質が年々生産されていることを考えるとき、単にPCBの問題としてのみではなく、
化学物質全般について安全性を確認する必要があること、そしてその結果問題とされた
化学物質について環境に放出されないよう、その製造、
輸入、使用及び消費にわたりクローズドシステムを確立する必要のあることを強く
認識させるものであります。
このような状況にかんがみ、昨年の国会におかれましても、早急にその対策を講ずるべきである旨の決議がなされたところであり、
政府といたしましては、昨年七月から、通商産業省に設置されております軽工業生産技術審議会に「
化学物質の安全確保対策のあり方」について審議をお願いし、慎重な検討をいただいたところであります。その結果、昨年十二月に、施策の
内容につき同審議会の答申を得ましたので、ここにその趣旨に沿って
化学物質の審査及び
製造等の規制に関する
法律案を提出することといたした次第であります。
次に、この
法律案の要旨を御
説明申し上げます。
第一は、新規
化学物質に関する審査及び規制であります。
これは、新規の
化学物質を制造し、または
輸入しようとする場合において、それについての事前審査制を採用し、その
化学物質がPCBに見られるように自然環境において分解しにくく、生物の体内に蓄積されやすいものであり、かつ、継続的に摂取される場合には人の健康をそこなうおそれがあるものであるかどうかを判定することとし、安全であるという判定結果が出るまでの間は、製造または
輸入を認めないこととしております。
第二は特定
化学物質の規制であります。
ただいま申し上げました難分解性等の性状を有し、かつ、人の健康をそこなうおそれがある
化学物質は、これを政令で特定
化学物質として指定し、その製造、使用等において環境汚染をもたらさないよう所要の規制を行なうこととしております。すなわち、特定
化学物質の製造及び
輸入については許可制とし、その使用についても、環境汚染を生ずるおそれがない一定の用途以外の使用は認めないこととするとともに、製造業者及び使用業者に対しては、その製造及び使用に関し、一定の技術上の基準を順守させることとしておりますほか、既存
化学物質が特定
化学物質に指定された際すでに出回っている当該
化学物質及びそれを使用した製品についてその回収をはかること等、環境の汚染の進行を防止するために必要な措置をとるべきことを命ずることができることとしております。
なお、既存
化学物質のうち、特定
化学物質の疑いの濃いものについては、特定
化学物質の指定に至らない間においても、その製造、
輸入または使用の制限に関し必要な勧告をすることができることとしております。
以上がこの
法律案の提案
理由及びその要旨でありますが、以上申し上げました
本法案に基づく施策は、PCB類似の性状を有する
化学物質による環境の汚染を未然に防止するために必要なものであり、既存の公害
関係法規等と相まって、
化学物質の安全性を確保する上できわめて重要な
役割りを果たすものであると考えております。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。