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政府委員(
横田陽吉君) まず、この積み立て金の管理運用の問題につきまして、被
保険者の入った機関をつくってそこでやるべきであるという御意見でございますが、現在は御
承知のように資金運用部に預託いたしまして、それで運用は資金運用部に一切まかせておるわけでございます。ただ問題は零細な被
保険者なり事業主からの拠出金でもって構成された積み立て金でございますから、これが全く被
保険者なり事業主の福祉に
関係のない分野にただ単なる国家資金として運用されるということは非常に問題でございますので、したがって、被
保険者なり事業主の福祉というものに非常に密接な関連のある分野にできるだけ集中的にこの積み立て金は運用すべきであると、こういうことでございまして、よく御答弁の際申し上げるわけでございますが、いろいろ病院でございますとか、療養所でございますとか、そういった資金の運用区分上の分類によるいわゆる「(1)〜(6)」分類というものに八五%は運用すると、そういうふうなことに従来からいたしておりますと同時に、被
保険者に対する直接的な福祉還元の問題といたしまして、いわゆる還元融資というものを行なっております。それで、これは従来のルールから申しますと、当該年度において純粋にふえました預託金の増加額の四分の一をこれに充てるということで保育所でございますとか、老人ホームでございますとか、そういったものの財源にこれを使っておりましたが、四十八年度からはこれを三分の一に引き上げております。それで正確な数字はいまちょっとすぐ出ませんですが、四十七年度の還元融資の
金額が三千数百億でございましたが、それで三分の一に引き上げることによりまして、五千七百億円程度に相当大幅にふやしております。
それから、運用全般の問題につきましては、資金運用部に資金運用審議会というのがございまして、そこの
委員は七名の
委員でもって組織されておりますが、その中にはこちらの社会保険審議会の
委員の方でございますとか、あるいは
国民年金審議会の
委員の方がそちらの審議会の
委員にも入っていただくというようなことで、実際の構成から申しますと、特に今回改選にあたってなおそういう色彩を強めたのでございますが、この
年金サイドの意向が十分に反映するような、そういった人的構成になっておりますし、また役所サイドでは私がその専門
委員に入って、いろいろその運用の問題については意見を述べるようなしかけにもなっております。ただ、問題はそれだけではなくて、被
保険者の福祉のためにどうするこうするという問題について、さらに御意向が十分に反映するような
仕組みを
厚生省部内で考えるべきであるという
大臣の御意図もございますので、それらの点について、さらにどのようなしかけのものをつくって意向反映の道を講ずるか、目下
検討いたしております。
それからもう
一つは、スライド問題にからみまして、財政方式の問題を御
指摘いただいたわけでございますが、実は賦課方式にしないから
物価スライドにとどまった、こういうことを、ままそういった御意見を承りますが、決してそういうことはないわけでございます。
物価スライドにいたしましたのは、要するに、
厚生年金、
国民年金を通じてのスライド制ということになりますと、単純に賃金というものをとることにも非常に問題がございますし、それからまた、
厚生年金の
制度の中だけを考えましても、大企業と中小企業との間では賃金のはね上がり方が非常に違うとか、あるいはまた業種、職種によって非常にその差があり過ぎるとか、いろいろな問題がございますので、それからもう
一つは先ほ
どもちょっと申しましたように初めて動く
年金制度を導入するわけでございますので、少なくとも実質的な
価値の目減りだけは十分に防ぐような方式を講じなくてはならない。しかもそれが一々
法律をつくって云々ということであったんではタイムリーにそれが行なわれないというようなことから、自動的に
実質価値が
維持されるようなそういった方式をとるということにいたしましたので、それらの点を考えますとやはり
物価スライドというふうなやり方以上にはなかなか出られないということでございます。ただ、先ほど先生の御
指摘にもございましたように、いわゆる財政再
計算期というものが少なくとも五年に一回はなされなければならないと
法律に明定してございますし、そういった機会に全面的な
政策改定を
年金給付水準について行なっておることは過去の例に徴しても明らかでございますので、したがって、それはそれとして将来とも行なう。それから先ほど
大臣の御答弁にもございましたように、相当賃金なり生活
水準の変動が激しいような場合には、
法律的には少なくとも五年に一回の財政再
計算期に際して
政策改定を行なうということでございますが、これをある程度繰り上げるということも実際問題としてはあり得るというようなことでございます。
それからもう
一つは、
物価スライドの際に、消費者物価の上がり方が、この御提案申し上げております
法律では、前年度におきまして五%以上がった場合には、その上がった分だけスライドアップをするようなしかけになっておりますが、これが相当五%を上回って大幅に消費者物価が上がった場合に、それを一体どのような方法でもって償却をするか。要するに、問題は
保険料で全部それをカバーするのか、あるいは何らかの、インフレ
政府責任論という
ことばもあるようでございますが、そういった観点からある程度の国のてこ入れもするのかどうかという問題、この点につきましては今回の
改正の際にはそういったスライド財源というものは
保険料でもってカバーをするという考え方をとっております。ただしかし、そうは申しましてもそのことによって給付
金額が上がりますと
厚生年金につきましては二割の国庫負担がございますから、したがって、上がった分だけその二割の
金額が実質的には引き上がってくるということはございますが、ただ問題は、スライド財源そのものを国庫負担でもってどうするこうするという問題の
一つといたしまして、いま御
指摘のような五%を相当上回った場合は、少なくともその上回った分だけは何とか考慮すべきではないか、これは非常に貴重な御意見だと思いますので、私
どもも十分その御意見を承りまして、具体的にスライドをいたします際には
検討いたしたいと思いますが、それで、御提案申し上げておりますこの
法律の
内容から申しますと、実は、そういった問題をあまり強く意識はしておりませんで、スライド財源は
保険料で償却をする、こういったたてまえをとっているということも合わせて御報告申し上げておきます。