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須原昭二君 私の要望としては、やはり国家賠償の精神の上に立ってひとつぜひとも行なっていただきたいし、長い間待たしておるんですから、これは早急にひとつ
結論を出していただきたいと思うんです。
それに関連をして、私は
厚生大臣の認識をさらに高めていただくために若干この問題を指摘をしておきたいと思うんですが、現在医療の問題だけは取り扱われております。しかし、現実の原爆被爆者たちは身体的な困難、いわゆる医療の問題でございますが、そのほかに生活上の困難、精神的な被害、肉体的精神的なハンディキャップ、こういう四つの
問題点を背負っておって、その後著しい日本の
経済の繁栄のもとで、
戦争の傷あともあとかたもなく忘れ去った日本の
一般社会の情勢の中において、その中に摩擦が生じて数々の
問題点がその中で埋没しておるわけです。
政府はこの四つの基本的な困難な
障害者の生活の
実態をどのように掌握をされているのか。どのように、どの程度につかんでおられるかということは、非常に私は疑問です。だからこそ、二十何年間も置き去りになってきたのではないかと思うわけで、私はこの際、認識を改めていただくために、さらに具体的に
お話をしておきたいと思うんですが、身体的困難性の
問題点では、言うまでもありませんが、白血病、再生不良性貧血症、あるいは白内障、肝臓疾患、ガン等の多発、被爆時の胎児には小頭症ですか、小頭症患者、こういうものがたくさん発生しておるわけです。微量ながら、少ない量ではございますが、長期にわたって放射能の照射を受けた人々を中心に、いわゆる原爆ぶらぶら病といいますか、無力症候群の症状が起きてきている。疲れやすいとか、あるいは全身がだるいとか、めまいがするとか、あるいは頭が重いとかいうような症状の訴えが非常に多いわけです。今日大きな問題の
一つとしては、さらに被爆者の子供、孫、いわゆる二世、三世への影響などがあげられるわけです。
あるいはさらに第二番目の生活上の困難というものは、被災地域に住む住民にとっては、家族と地域社会の消滅であったのです。その後、被災地域への非被爆者、被爆をしていない
人たちの進出によって地域社会の再建が始まったが、この被災者が、被爆者が家族の再建、自己の再建はなかなか進まなかった経過があるわけです。
あるいは精神的な被害の中であげられる問題は、自己の崩壊と再建、これが中心課題であって、たとえばリフトンという人は、「死の内の生命」という中でこういうことをいっております。被害者は、まず外からの刺激に感じなくなる「心理的な締め出し」自分一人だけ生き残ったということから「罪意識」、さらに極端には「心理的麻痺症」、こういうものにおちいって、うつろな虚無の状態である「真空状態」をうろついている、こう指摘をしております。だから、近ごろの身近な人々の接触やあるいは日常性への追求などが誘因となって、やがてその「自己再建」をされ始めるが、しかしその道は非常に険しく、「自己再建」後も原爆体験によって生じた心理上のつめあとといいますか、傷痕は残り続けているんです。したがって、原爆は被爆者の心に深く「人間荒廃」の傷あとをいつまでも残しておるといって指摘をしておるわけです。
あるいは日本社会の摩擦の問題です。縁談だとか、あるいは就職だとか、家庭生活などの上の差別があるわけです。差別は初めこそは被爆者の身体上のハンディキャップに対する差別でありましたけれ
ども、現在では被爆者という名のもとの非
実態的な差別になって、集団総体への差別にまで進行しているわけです。
こういう原爆被災者の
実態を私は、
厚生省は認識を新たにしていただかなければならないと思います。そこで、被爆者がこの国家賠償を伴う立法措置の切実な要求は戦後一貫主張してきたのですが、こういう
実態を掌握をされておらない。こういう被爆者の
実態を
厚生省がつかんでおらないから、今日まで私は延びてきたのではないかと、こういうふうに思うわけです。戦後十二年目にして初めて制定された原子爆弾被爆者等の医療に関する法律、さらに原爆被災者特別
援護措置法という法律がございますけれ
ども、この法律が全く不十分です。原水爆被害者
援護法の制定の声が大きくなってきたのですから、いま
厚生大臣がおっしゃいますように、ぜひともひとつ早急に解決をしていただくように
お願いをいたしておきたいと思います。特にこの際、
厚生省も認識は持っているはずです、私がこんな
実態をこの席上でちょうちょうと言うまでもなく、このことはちゃんと握っているはずです。
一九六七年に、
厚生省は被爆者
実態調査を発表しておりますよ、そうですね。その中に、これによると被爆者は受診率が普通の人の二倍になっている。薬代は三・六倍になっている。医療費は二・三倍になっている。身体
障害率は三・八倍になっている。仕事についてない率は二・六倍になっている。日雇い労務者の率は一・五倍になっている。こういうことを
厚生省の厚生白書みずからが、
厚生省の被爆者
実態調査みずからがもう一九六七年に発表しているんですよ。みずから
政府が認めていることなんです。そういうふうに認めておきながら、今日なおずっとこの
問題点が、審議だ審議だ、
検討だ
検討だと言うことは、私たちはまさに
行政の怠慢と言わざるを得ないわけであります。私はあくまでもこれは、いま
検討をされるという
お話でございますが、
政府は、被害者の国家賠償の私は責任がある、無視できないものだと私は理解をいたします。ぜひともひとつ、今後この問題について早急に措置をされ、少なくとも来月の早々に長崎、広島の原爆記念日がやってくるわけですが、それまでに抜本的な意見を出していただきたい、この点についてあえてひとつあらためて
厚生大臣の
所見を承っておきたいと思います。