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1973-06-05 第71回国会 参議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月五日(火曜日)    午前十一時十九分開会     —————————————    委員異動  五月十日     辞任         補欠選任      森中 守義君     藤原 道子君  五月十八日     辞任          徳永 正利君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         矢山 有作君     理 事                 玉置 和郎君                 丸茂 重貞君                 大橋 和孝君                 小平 芳平君     委 員                 川野辺 静君                 君  健男君                 斎藤 十朗君                 高橋文五郎君                 橋本 繁蔵君                 山下 春江君                 須原 昭二君                 田中寿美子君                 藤原 道子君                 柏原 ヤス君                 中沢伊登子君                 小笠原貞子君    国務大臣        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君    政府委員        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省条約局長  高島 益郎君        厚生政務次官   山口 敏夫君        厚生大臣官房審        議官       柳瀬 孝吉君        厚生省公衆衛生        局長       加倉井駿一君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省社会局長  加藤 威二君        厚生省児童家庭        局長       穴山 徳夫君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        厚生省援護局長  高木  玄君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        総理府人事局参        事官       大林 勝臣君        行政管理庁行政        管理局管理官   中  庄二君        外務省アジア局        外務参事官    中江 要介君        文部省大学学術        局学術課長    七田 基弘君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度等に関する調査  (厚生行政基本施策に関する件) ○原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付)     —————————————
  2. 矢山有作

    委員長矢山有作君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。去る五月十八日、徳永正利君が委員辞任されました。     —————————————
  3. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 社会保障制度等に関する調査を議題とし、厚生行政基本施策について調査を進めます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 社労委員会ほんとうひさしぶりに開かれましたので、緊急に御質問をしたいことが二点ほどございます。お許しをいただいてぜひとも質問さしていただきたいと思います。  その第一は中医協の問題でございます。  診療側会長の不信任をして総会が渋滞をしましてから、もうすでに三週間になろうといたしております。この前の総会が開かれたのがたぶん五月の十八日だったかと思いますが、その後、支払い側委員である河原亮三郎委員辞表を出されました。その出された理由が、診療側関係会社の、つまり河原さんの会社の全製品をボイコットする、こういうようなことを全国医師会通達をしたので、責任やめざるを得なくなったとか伺っておりますが、こういうような手段を使われるということはこれは言論弾圧になります。この点を厚生大臣はどのように考えていらっしゃるか、まずお伺いをしたいと思います。そうしてここまで問題がこじれてまいりますと、もうすでに政治的解決よりほかに方法がなかろうかと思います。伺うところによりますと、昨夜は非公式に齋藤厚生大臣武見会長会談を持たれたようですが、その節どのようなお話になられたのか、またどのような方法によって今度のこれを解決なさろうとなさるのか、お伺いをしたいと思います。
  5. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先月の十五日でございますが、十五日に二号側委員——医療担当者側委員方々八人が連名で会長を信任しないというふうな文書を私あてに提出されまして以来今日まで、中央医療協議会機能が停止されておりますことはお述べになりましたとおりでございまして、私もまことに残念な事態であると考えております。実は昨年の暮れ以来、医師会側からスライド制を含む診療報酬改定が提出されまして、私もたびたび先般の予算委員会その他の委員会においても申し上げましたように、最近における賃金物価の上昇の動向にかんがみまして、できるだけ早い機会診療報酬改定お願いしたいということを述べてまいりましたが、円城寺会長にもその旨を伝え、できるだけ早く改定が実現するようにということでお願いをいたしておったわけでございますが、そうした審議過程においてそういうふうな事態が起こりましたことは非常に残念なことでございますが、厚生省の仕事を担当する私といたしましては一日も早くこの紛糾事態解決されまして、中央医療協議会が本来の機能を発揮し、一日も早く改定が行なわれる、こういうふうな事態が参りますために目下全力を尽くして努力をいたしておるところでございます。したがいまして、二号側のいろいろな言い分、一号側言い分、さまざま私はあると思います。そこで、そうした各側の意見について私がいま、とやかくの批判を加えることは私は事態解決するためにあまり好ましいことではない、かえって事態を混乱させる可能性もあるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございまして、各側の言い分についての私の批判、何と申しますか考え方というものを申し述べることはいましばらく控えさしていただきたい、かように考えておる次第でございます。なお、そうした紛糾過程においていまお述べになりました東芝製品のボイコットといったふうな事態発生をいたしたわけでございますが、これについてもいまのところ私のとやかくの意見を申し述べることを差し控えさしていただきたいと思いますが、一般的に言えることは、言論の自由はあくまでも尊重せらるべきものである、一般的な私はそういう基本的な信念を持っておることだけをお答えさしていただいて、それ以上のことはひとつ差し控えさしていただきたいと思いますが、今後正常な運営が確保されるようになりました暁には、こうした事態が二度と起こらないように努力をしていかなければならない、それがまた中医協に参加しておられる委員皆さん方のやはり御希望でもあろうかと思いますので、二度とこういう事態が起こらないように今後とも努力をいたしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  6. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 昨夜の非公式の会談内容は。
  7. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 昨夜非公式ではございますが、医師会武見会長とお目にかかりまして、事態をどうやって収拾するかというふうなことについてのいろいろな懇談をいたしたわけでございまして、どうしたらいい、ああしたらいいといったふうなことの具体的な話し合いはいたさずに終わっております。こうした事態については武見医師会長も憂慮されておる問題でございますから、これはもう医師会長支払い側両方とも真剣にいま苦慮しておる問題でございますので、きのうの午後は支払い側の一号側委員からのいろいろな申し入れも私も承りましたし、夜は医療担当者責任者である武見会長とも、何とか早く事態解決するにはどうすればいいだろうかということの非公式な、言うなれば、雑談的な懇談をしたところでございますが、何とか一日も早く解決したいというて苦慮し、目下真剣な努力をいたしておる最中でございますので、その点をどうか御理解いただきたいと思います。
  8. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 言論の自由というのは憲法で保障されておりますので、この言論弾圧になるような発言がまかり通るとしますと、これからのいろいろな審議会だの、いろんな場で発言相当制約をされてこざるを得ないようなことになる、そのたびに委員辞任をしなければならないというようなことにもしもなるとすれば、これは実にゆゆしい問題だと思いまして、私どもはこれを非常な関心を持って実は見守っているところでございますが、河原亮三郎委員に対する、その辞表でございますが、この点は大臣はどうしておられますか。このままですとまるで見殺しにしているような感じを受けるわけですけれども、まさか患者さんたちが団結をして、それならばということでストライキを起こすわけにもいきませんしね。いろいろないままでのいきさつも私ども思いをめぐらしますと、なかなかこれはたいへんな問題だと思いますので、その辺の解決の見通しがあるのかないのか、大臣には自信がおありになるのかどうか、その辺もう一ぺん御答弁いただきたい。
  9. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 河原委員は長いこと中央医療協議会委員として今日まで御苦労を願った方でございます。承りますと前々から中央医療協議会委員辞任したいということは漏らしておったようでございますが、今回あらためて辞表を提出されたわけでございます。そこで私どもといたしましては、せっかく長く御苦労願った委員のことでもございますから、できるだけこれはそのまま慰留をして残っていただくようにお願いしなければならないというわけで、本人が本省にお見えになりましたときにも当方の局長なり審議官からもよくお願いをいたしました。さらに、また日経連のほうにも出向きまして丁重に留任をしていただくようにお願いをいたしたのでございますが、辞意が非常にかたいものでございますから目下お預かりをいたしておる次第でございます。こういうふうな制度の仕組みは、御承知のようにこの方は日経連推薦で参っておりますので、日経連に対しましてもその旨を伝えてございます。後任推薦がありますれば、そういう辞意がかたければ発令をせざるを得ないでしょうが、どうか後任をお出しいただくということをお願いをいたしておりまして、日経連のほうにおいてその問題の後任をどうされるか、目下選考中であると承っておるわけでございまして、まだ発令はいたしておりません。
  10. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いまのお答えを伺っておりますと、河原さんは前々からやめたいという御意思があったということで、何かそれがずっと、今度やめるということで後任を云々という話ですけれども、直接やっぱりやめようと、こういうふうに非常に辞意をかたく持たれたのは、今度の東芝製品をもう買わないと、こういうようなことを全国医師会にも通達をしたと、そういう責任やめられると、辞表を出されたと、これがやっぱりほんとうの決意ではなかったのですか。
  11. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 前々からおやめになりたいという辞意を、ときどき保険局係官のほうに漏らしておったということでございますが、今回おやめになるにあたりまして、その最終の意思を決定されたのがどの辺でありますか、文書には書いてございません。
  12. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは大臣もたいへんお答えにくいようでございます。また、いろいろこれも今後の問題もあろうかと思いますので、これ以上は追及をすることを私も保留をいたしますけれどもほんとうにこういったような言論弾圧になるようなことがまかり通ることは、厳にやっぱりこれは慎しんでもらわなければならない、このように考えますので、そこら辺の政治解決大臣は早急に急いでいただきたい。要望いたしておきます。  それから、もう一つ緊急質問でございますが、それは第三の水俣病が出まして以来、国民はこの水銀PCBなどでお魚が非常に汚染をされているということには大きな衝撃を受けているわけでございます。それが、昨夜からけさのテレビ発表ではさらに大きな衝撃を受けたと思います。私もまたその一人でございますが、全国各地の魚の総水銀が五PPMだとか、メチル水銀が二PPMだというような報道がございました。これを見ておりますと、日本海の沿岸の魚はもう一切がっさい汚染されていると言っても過言ではなかろうかと思います。そういたしますと、私どもの毎晩の食卓に乗せられる魚、これがはたして食べてもいいものか、食べたらまた胎児性水俣病みたいなものが出るのかどうかということで、ずいぶん心配になるわけでございます。おそらく一億総汚染をされていると思います。そこで、私が一つ提案をしたいのは、一億総国民健康診査を早急にやる必要があるのではないのか。そして、しかもそれは全部国費で無料でやるべきである。これくらいのことをやっていただかなければ、昨夜来のテレビで非常に衝撃を受けたわれわれとしてはもうがまんがならない。まあこういうふうに考えるわけでございますので、その辺をどのように考えておられるかお答えをいただきたいのが一つ。  それから、もう一つは、もしもその魚が、いまとれている魚が許容量範囲内だ。こういうことがわかったとしても、それをやっぱり売られるのか、漁業を続けさせるものなのか、その辺を伺いたい。これが第二点。  それから、第三点は、そういったような水銀だのPCBだのいろんな海を汚染するような物質を流した企業に対して、どのような行政措置をおとりになるか。  もう一点は、海や川を浄化するのにどのような方法をとるか、御見解を承りたいと思います。  しかし、あそこの海の魚もだめ、こっちの川の魚もだめということで、これを発表したためにわれわれが衝撃を受けたということで、今後そういうものを発表しなくなるということは、さらに私ども心配でならないわけでございますから、その辺も十分発表をしていただいて、問題は国民の健康にあるわけですから、また第三水俣病みたいなものがあっちでもこっちでもに起こるようなことがあってはならないのですから、そこら辺の厚生行政ほんとうに真剣に取り組んでもらわなければならないと思いますが、以上の点についてお答えをいただきたいと思います。
  13. 浦田純一

    政府委員浦田純一君) 昨今、いわゆる第三の水俣病といった非常にショッキングな報道、並びに昨日から今朝にかけまして報道関係から報道されました魚介類PCBによる汚染状況、これはまことに先生のおっしゃるとおりだろうと思います。私どもはこれらの環境汚染の問題につきましては、環境庁中心になって各省庁の調整をとりながら対策を進めておるところでございますが、厚生省立場といたしましては、御指摘のように食品などを介しまして人体に摂取されるという機会を極力押さえていく。もちろん、その前に環境庁中心になりまして汚染状況をできるだけ明らかにしていくということが、これが一番根本であろうと思います。それで、これ以上環境汚染が進まないように防止策をとる。場合によりましてはPCBのように使用そのものを禁止するといったような措置がとられておるわけでございます。  それから、すでに環境に放出されました汚染物質、これらが食物などを介しまして人体に摂取されるという機会がふえてきたわけでございます。これらは、その摂取される量を極力押えるということで、将来起こるかもしれない健康上の障害を予防しなくちゃならないということでございます。  これに対しましては、PCBにつきましては昨年暫定規制量というものを設けて、一応の目安を立て、それ以上の汚染された魚介類は摂取しないように、これは各省庁にもお願いいたしまして、行政指導をしているところでございます。  今回の発表は、これに基づきまして、水産庁全国の特に問題があるであろうと思われております十四水域について調査をいたしましたものの発表でございます。  私どものほうでも、いままでに流通市場におきまする魚介類PCBを随時調査しておりまして、いままで調査したところでは六百十検体を調べておりますが、基準の三PPMをこえるものが九検体発見されております。これらにつきましては、その都度、水産庁また原産地のほうにその点を連絡いたしましてさらに精密な調査をし、流通市場に来ないように、消費者の方の口に入らないように措置を講じておるところでございます。  それから、水銀でございますが、これらは先ほどのいわゆる第三水俣病発生報告にさっそく厚生省のほうも環境庁のほうに協力いたしまして、現地等にも係官が参る。それから、さらに水銀摂取許容量について厚生省立場からどのように考えておるかということにつきまして、専門家方々お願いいたしまして、すでに昨日までに二回の会議を開きまして、水銀摂取許容量についての考え方を早急にきめていただきたいということで、現在進行中でございます。  御指摘健康調査でございますが、必要に応じましては私どもは、ことに多食者などの健康調査は欠かせないという専門家の御指摘もございまして、PCBにつきましてはすでに今年の一月から二月にかけまして全国地区、一地区五百名あて、合計四千人の方につきまして健康調査を実施いたしております。その内容調査事項健康診断でございまして、必要に応じましては肝機能血液、尿などのPCB含有量、それから皮膚症状末梢神経症状、ホルモン不調などについて調べております。  また、並行いたしまして栄養調査を、食物摂取状況等につきまして調査をいたしております。まだ結果は出ておりませんが、現在コンピューターを用いて集計中でございます。七月じゅうには委員会を開いてこの評価をお願いいたしたいと考えております。   〔委員長退席理事大橋和孝着席〕  水銀につきましては、これは環境庁のほうでもって中心健康調査等を進めておられますし、今回の有明町の問題につきましても、あらためてまたどのような調査をするかということが現在協議が進められているところでございますので、そちらのほうに厚生省立場からもできるだけ協力してまいりたいと考えております。  なお、これらの環境を通じまして汚染物質食物に入ってくる、それによる健康状態、健康への影響を調べるというこれらの調査でございますが、実は非常に高度の技術とそれから多額の費用、たとえば血液などの検査をいたしますのに実費で一件当たり二万円ほど要しておりますが、こういったようなこと等、それから時間を要します。そういったようなことで、いま直ちに全国民の方にこの調査をいたすということは技術的にはなかなかむずかしい問題がございます。しかしながら、私どもは保健所の窓口などを通じまして、一般の住民の方の健康相談といったような形でもって極力国民皆さまの不安を解消するように努力はさせてみたいと考えております。  なお、すべて環境汚染を通じまして起こってまいります健康上の問題については、環境庁あるいは関係の各省庁とも十分に連絡いたしまして、国民皆さま方の不安の解消には今後とも努力してまいりたいと思います。
  14. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 国民あってこその国家でございますから、それは何かどこかに症状が出てから健康診査をやったって、それはもうおそいはずですから、その点は相当なお金がかかっても、高度な技術がかかっても——もうこういうことが言われてから久しいんです。で、駿河湾でとれたハマチの奇形とか、いろんな問題ももうずいぶん前からの問題でございますから、その辺は相当のお金がかかっても、一億全部はやれないとすれば、その地区を八つにきめてやっているということですけれども、そうでないところの人でも、ぜひともやってほしいという要望があればこれをやるべきじゃないかと思いますが、その辺もひとつ厚生省としては、環境庁がどうの、どこがどうのということではなくて、国民の健康を一番大事にするべき厚生省でございますから、その点はぜひとも心がけていただきたいと思いますが、厚生大臣はどうお考えになりますか。
  15. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) PCBの問題につきましては、近年厚生省においてもそういう母乳の問題、あるいは魚をたくさん食べる方々、そういったことを中心にいろいろ検査をいたしておるわけでございます。もちろん全国民ということの御質問でございますが、全国民でも、まあ全部やらぬでも、必要のないところも私はあると思うんです。ですから、全国民と一律に考える必要はないと思いますが、そのおそれがある場合には、私はその範囲はできるだけ広げて、そして国民心配をあまりかけないようにすることは私は当然のつとめだと思います。今後とも情勢に応じまして、必要に応じ検診の範囲を広げていく、こういうふうに努力いたしたいと思います。
  16. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 くどいようですけれども、もう一点だけお伺いをしたいのは、これで一番被害を受けるのはやっぱり漁民だと思うんですね。そして漁民の方はせっかくとった魚がこういう発表になりますともう売れなくなる。操業はやめなくてはいけなくなる。あるいはそれでは補償は一体だれにどうしてやってもらうか。こういう問題だの、それからもう一つは、やっぱり海をきれいにする問題があろうかと思いますね。   〔理事大橋和孝退席委員長着席〕 それで漁民の人の中にも、どうしても健康診査をやってほしい、こういうふうに要望される方があるのですけれども、この漁民の人に対する政府としての取り扱いはどうやっておられるか。  それからもう一つは、もしもとってきた魚が非常に汚染をされていた、それはすぐに廃棄をするのか、どうしているのか、その点も伺っておきたいと思います。
  17. 浦田純一

    政府委員浦田純一君) このような汚染を起こしました企業側責任でございますが、ことに漁民の方に対して、そういった魚介類はまあ商売物としてはならないということで、廃棄その他の措置がとられるわけですが、その補償の問題でございますが、これは実は水産庁のほうにも十分に私どものほうから御意見を申し上げまして、水産庁のほうとしては汚染源が明らかな場合にはもちろん企業側責任をとらせる、こういう方針で臨むというふうに話を私どもとしては聞いております。現在、汚染源である企業がどのようになっておるのか、まだ私ども水産庁のほうから調査報告を受けておりませんので承知しておりませんが、昨年のPCBの全般の対策を進めるにあたりましては、そのように私どもは承っております。  それから許容量をこえた魚の処置でございますが、これはもちろん私ども廃棄させております。これはただいまは自主的な処分で、行政指導でございますけれども、先ほど申し上げました市場において発見いたしました九検体、これはいずれも廃棄処分にいたしております。  それから汚染されました環境、ことに海域の浄化の方法でございますが、これも公害という問題でございますので、環境庁のほうが責任を持ってその対策について目下いろいろと取りまとめ中でございます。結局ヘドロなどのしゅんせつとか、またそういったヘドロ処分といったようなことが問題になりますが、食品に及ぼす影響につきましては私どものほうにも意見を聞いてきておりますので、こういった立場から十分に協力し、これ以上汚染が進まないように、あるいは積極的に汚染度を減らすという方向でもって努力してまいりたいと考えております。
  18. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは、私は本来の質問に移らなければなりませんけれども、しかし、この海をきれいにする問題については、私は予算委員会のときにも相当この問題だけにしぼって質問をしているはずでございます。その後、一向にそのヘドロの処理についてどこでこうしたああしたというような話を耳にしておりませんので、今後は国民の健康を守る官庁である厚生省環境庁、あるいは水産庁、そういうところと緊密な連携をとりながら責任ある行政をやっていただきたいということを強く要望してこの問題に対する質問を終わっておきます。  それから、きょうは厚生大臣の所信表明に対する質問が本来の質問でございますけれども、どこででもよくいわれることばに、老人の生きがい——何かといえば老人に生きがいを与えるのだということをいわれますけれども厚生大臣はこの老人の生きがいとは一体どのようなことであるかということについてどのようにお考えになっていらっしゃるか、お答えをいただきたいと思います。
  19. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 老人の生きがい、まあ、ある意味からいうと非常にむずかしい、私、内容であり問題であると思いますが、やっぱり人それぞれの生き方にかかわる問題でございまして、政府が直接生きがいを与えるというふうな性質のものではこれはないことはもう御承知のとおりであります。  そこで実は先般、これは総理府で老後生活に関する世論調査というものをやったのがございます。それで老人の生きがいということについての調査でございますが、やっぱり非常に大きな問題は仕事に関すること。仕事、どんな軽い仕事でもやっぱりついて、その仕事に一生懸命やはり老後でも打ち込んでいきたい、こういう仕事の関心。それから趣味・娯楽、それから子供さんやお孫さんの成長を楽しみながら家庭生活の団らん、そういうことを望んでいると、こういうふうなことがあげられておるわけでございます。  そこで、私ども政府としてはこういうふうな老人の生きがいというものにつきまして、こういうふうな老人が生きがいを見い出すことのできるような機会に恵まれるように環境を整備してあげるということがやはり政府としての任務ではないか、こういうふうに考えておるわけでございまして、後にもいろいろ御意見がおありだと思いますが、そういう考え方に基づいていろいろな施策を講ずる、こういうふうにいたしておるような次第でございます。
  20. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いまおっしゃったとおり、老人個人だけで解決をする問題もあり、また、それだけではなかなか解決ができなくて、これは社会の力で老後を過ごしてもらうように環境を整備すると、こういうことがぜひとも必要だと私も思います。その中で、先ほど大臣お答えになりました第一に、仕事に関すること、つまり、いつまでもできることならば仕事を続けていきたい、こういうことが世論調査の中の第一だと、こうおっしゃったわけですけれども、それはやはり日本人というのはもともと勤労をしたいという国民でございますから、やはりそういうことになってこようかと思いますけれども、それについてはお年寄りはそう毎日毎日きめられた時間に仕事がなかなかこれからはできにくくなってくる、年をとってまいりますと。そこで、いま労働省が盛んに週休二日制を言っておるわけですけれども、老人には週休三日制ぐらいの仕事を考えてあげてしかるべきではなかろうか、こういうふうに私思いますが、この点はどうお考えになられるか。  それから、定年が過ぎてからまた何か新しい仕事につかれる方がたくさんあるわけですね。そういう方々に対して労働省のほうが職業訓練をやっておられる点もございます。こういう点について、老人の健康や老人の意欲やそういうものを厚生省はつかんでおいででございますから、これは労働省とも十分連携をとりながら、どういうところにつとめさせるようにしていただくのか、それに合ったような職業訓練をしていただきたい、こういうふうなことをお話しになられたことがおありになるかどうか、伺いたいと思います。
  21. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 老人の就労の問題でございますが、これにつきましては先生御指摘のとおり、労働省とそれから厚生省と両方で協力してやっております。労働省のほうは高齢者の就職の促進に関する特別の立法もいたしておりますし、それからまた、定年制の延長というようなことで対策を講じておりますが、厚生省におきましては、無料の就労あっせん事業、これを実施いたしております。これも非常に好評でございまして、こういうあっせん事業をやりたいという地方公共団体もたくさんございますので、現在四十七年度は四十六カ所でございますが、四十八年度は九十四カ所にふやして、そして積極的に働く意欲があり、また働くだけの体力を持っておられる方、そういう老人にはできるだけ就労のチャンスをつかんでいただくということで就労あっせん事業を拡大してまいりたいと思います。  ただ、先生御指摘のように、老人だけについて週休三日制ということは、これは制度としてつくるということはなかなかむずかしい面もあろうかと思いますが、できるだけそういう老人の体力、能力に合った職場のあっせん、こういうことで、したがって、給与等もあまり十分とはいえない場合が多いわけでございますが、とにかくそういった老人の体力、能力に合った仕事のあっせん、こういうものにつとめておるわけでございます。で、老人の職業についての訓練、これも労働省のほうで実施いたしております。現在、三十五ばかりの訓練校において高齢者の専門の訓練科を設置しておるということも聞いておりますが、こういう点につきましても労働省と十分連携をとって、とにかく働く意欲と能力のある老人は、できるだけそういう職場をあっせんするということにつとめてまいりたいと思います。
  22. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それから、老人の世論調査の中で、家庭だんらんの場を持ちたい、これは私も当然だと思います。昔は日本には家族制度というのがあって、たいへんみんな家族一緒に暮らしていたわけですけれども、家庭を団らんさせる、あるいは子供や孫と一緒に暮らすというのには、やはりこれは住宅問題が解決にならなければいまのような小住宅ではむしろ親子の間にトラブルの起こるほうが多いわけです。この点で昨日でしたか、新聞の発表を読みますと、老人ホームでは何畳かの広さが今度は確保される、たいへんこれはいいことでございますけれども、普通の家庭で親子がともに暮らすためには、あまりにいまの住宅事情はなっていないんではないか。それには、一がいにはそれは言えませんけれども、中には別居したほうがいいという人もございますけれども、いまのような2DKなんというような家では無理だし、そして老人と若い者との食事が違いますから、台所も一つでは無理だ、こういうようなことがいわれておりますので、その辺も厚生省だけが考えるんではなくて、建設省にもそういうことをどんどん発言をされて、連携をとって、老人が一緒に住めるような住宅問題に口ばしを入れていらっしゃるかどうか、その辺はいかがですか。
  23. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 老人の住宅問題でございますが、これはたとえば公営住宅につきましては、これは老人の世帯向けの特別のワクを建設省のほうでもとっております。で、この公営住宅につきましては、建設について必ず建設省のほうから協議がございますので、私どもといたしましては、ことに老人住宅、それから身体障害者のための住宅、こういうものについてワクをできるだけ広げてもらいたいという要望をいたしております。で、建設省も要望さえあれば、これはワクにこだわらないでできるだけ優先的に見ようということを言っております。実績は、これは申請の関係もありまして、必ずしも申請を削っているという例はあまりないようでございますが、申請がまだ比較的少ないということで、昭和四十七年度の実績を申し上げますと約千二百二十八戸、昭和四十六年度は約九百戸でございますから、だんだんふえておりますけれども、これは地方から申請が出れば建設省はそのワクにこだわらず優先的に回すということを言っております。  それから確かに老人のための部屋をつくると、これも老人にとりましては子供や孫に囲まれた生活というのが一番理想的であるということでございまして、そのためには老人の居室の整備資金の貸付制度、これを国民年金の特別融資で実施しております。これは四十七年度三億のワクでございましたが、四十八年はそれを八億にふやす。で、一件五十万円くらいでございますが、そういうことでこれも老人のための住宅の整備にこういう資金のあっせんをいたしております。  それからそのほかに、私どものほうでやっております世帯更生資金の貸付制度におきましても、老人の居室ということで、これは三十万円でございますが、なるべく優先的に貸し付ける、こういうような対策をやっているところでございます。
  24. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 わかりました。  それから、老人の生きがいではもう一つ問題があるのは年金の問題だと思います。今度年金については法律案も出ておりますので、私はいまここでは多くを触れたくないとは思いますけれども、今日のここまで繁栄した日本の社会を築いてきたのはいまの老人でございますから、当然その報酬を得ていいと思うんですね。そこで、老人の年金を学者などは一人やはり三万円が必要だ、で、夫婦で六万円の年金が必要だ、このように言われておりますし、私どもも老人年金というのはそれくらいは必要ではないかと思っているわけですが、いまここで取り上げたいのは老人の福祉年金でございます。この福祉年金がいま三千三百円で、この十月から五千円になるわけですけれども、去年の五月からことしの五月に至る間、物価が約一〇%、東京では一二%近く上がっているわけですね。大阪のほうは八・八%だとこの間新聞報道がされておりましたけれども、一年間でこれだけの物価上昇がある中で、十月から五千円に引き上げをしても、そのときにはおそらく三千三百円の値打ちに下がってしまうんではなかろうかと思います。その点で齋藤厚生大臣はもう少し早くさかのぼってこの老齢福祉年金を五千円にする意思はおありにならないかどうか。それから私どもに対しては八月十五日に人事院の勧告があるわけです。人事院の勧告がありますと、国会議員も、国家公務員も、地方公務員もそれぞれ十一月ごろにベースアップをした給料をいただくわけですけれども、そのときには、これもずいぶん地方公務員や国家公務員の長い戦いの中で四月にさかのぼって差額がいただけることになっております。ですから、五千円の老齢福祉年金を即刻支給せよといっても、それはあるいはいまはできませんというお答えが返ってくるかもしれませんけれども、それならば、何カ月かさかのぼってその差額をお渡しする意思がおありになるかならないか。私も、この間、本会議で年金の質問をいたしましたときには、すぐに一万円に老齢福祉年金を引き上げるように、こういうことをお願いをしたんですが、田中総理大臣からはそのお答えはございませんで、来年が七千五百円、その次が一万円と、こういうお答えしがなかったわけですけれども、これだけの物価高の中ですから、その点をその後お考えいただいたか、どういう御意思をお持ちかお答えをいただきたいと思います。
  25. 横田陽吉

    政府委員(横田陽吉君) 数字の問題もからんでまいりますので、私からお答え申し上げます。  福祉年金の引き上げは、ただいま先生御指摘のように、三千三百円を十月から五千円に、実は福祉年金は、御承知のように、昭和三十四年に千円で発足いたしまして以来、大体、毎年百円ないし二百円の値上げであったわけでございますが、今年度は昨年度の千円の値上げという非常に当時としては大幅な値上げがございました。それに引き続きましての千七百円の値上げでございまして、それとあわせまして、特に最近の核家族化等の実態に即応いたしましての扶養義務者の所得制限を六百万円に大幅に引き上げる等、相当大幅な改善をいたしたわけでございます。そして、その結果、御承知のように、本年度予算の福祉年金につきましては二千億をこえるような巨大な金額になっております。  いま御意見のように、たとえばこれを四月にさかのぼって実施をすると、五千円の引き上げを実施をするというようなことになりますと、大まかな数字で申しますと、一カ月繰り上げることによりまして、さらに歳出の増が七十八億円になります。したがいまして、六ヵ月でございますと、大体、さらに四百七十億円の金額が必要であるというようなことでございます。そういったことがございますので、この実施期日の問題も含めまして、現在、御審議中の法律案内容になっておりますので、政府の案といたしましては、全額、税金でもって負担する制度でもございますので、これ以上、四百七十億円の金額をさらに上積みするようなことは、なかなか財政的に困難であるというふうに考えております。
  26. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 初めに申し上げましたように、今日の社会を築いてきたのはいまの老人である。だから、当然、その報酬を得てよいと考えられないかどうかと、それで四百七十億円必要だと、それはいまの予算ではなかなか無理だと言われますけれども、この間の新聞発表によりますと、今年度の税収の自然増、つまり取り過ぎたお金が六千四百億円あるというんでしょう。それの一割にも満たないんです。何とかしてこういうことができないかどうか。それから、そもそも年金というのが、考え方が少し私どもと違うかと思いますけれども、暮らしに足るお金が年金ということには考えられないんですか。三千三百円といえば、一日に百十円です。こんなことで今日の繁栄を築いてきたお年寄りに報いていいかどうか、その辺もう一ぺんお答えをいただきたいんですが、それは、私、齋藤厚生大臣お答えをいただきたいと思います。
  27. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 老齢福祉年金は、実は発足当時から、これは御意見は、私、おありだと思いますが、老後の生活を保障するという考え方で出発してない、こういうことなんです。これはもう御承知のように、国民年金の根本は拠出制年金にある。しかし、あの発足当時、これから保険料を納めていただくということは困難な年齢層にある方々につきましては、七十歳以上になりましたら老齢福祉年金を差し上げるようにしましよう。それはあの当時のことばでどういうことをいいましたか、老後生活に潤いを与える程度のものにしようということから実は出発しておるということをまず御理解いただきたいと思うんです。で、老後の生活を保障する年金というのは、いわゆる将来の五万円年金でございます。まあ事柄の性質がそういうことから出発をしており、しかもこの金は全額国費であると、国民の税金であるというふうなことであり、しかもまた御承知のように、福祉年金の増額は年々多少なりいたしてまいりました。けれども、それは全部十月実施で来ておるわけでございます。過去の御老人の方々、全部十月実施で来ておる、こういうふうな事情もございます。そういうふうなことを考え、しかもまたことしは去年に比べまして上がる額が千七百円突き上げるというふうなこともありましたので、そういうことを含んで十月実施ということで、まあ、先生にはいろいろ御意見おありだと思いますが、十月実施ということで参りまして、これをさかのぼって実施するということは困難であるというふうに、私は率直に、これはどうも御意見に同感を表するわけにまいりませんので、どうもこれだけはそういういろんな事情があって、そうなっているということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  28. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いまの三千三百円が老後の生活に潤いを与えているかどうかですね。一日百十円ですから、たばこ一つ買ったらおしまいになっちゃうわけです。その辺もいろいろ意見が違うわけですけれども、これはまたいずれ年金のときにもつと突っ込んでやらしていただきたいと思う。きょうは老人の生きがいということですから……。  もう一つ、落ちていることは、やっぱり老人が尊敬をされたいということ、尊敬をされなかったら、やっぱり老人は生きがいがないと思いますね。その辺を一体厚生省はどうお考えになっていらっしゃるか。私ども、よく中共や朝鮮から帰ってきた人の話を聞きますと、向こうではたいへん老人が尊敬をされ、敬愛をされている。だから、老人も自発的に奉仕をしている。朝早くから道に出て、道の清掃をやったりというふうなことを老人がやっておられる。こういう話を伺います。ですから、老人も生きがいを感じる中では、やっぱり自分も社会のお役に立っているんだ、社会活動ができているんだ、人のために、あるいは家族のために、社会のために何らか自分が役に立っていると、こういう気持ちを味わうこともまた一つの生きがいではなかろうか。そのためには、やっぱり老人が敬愛をされていなければならないと思います。この辺もひとつ心にぜひともとめておいていただきたいと思うわけですが、このように、いま、老人がわりあいに社会からはみ出しておかれますと、私は、精神的に中共や朝鮮から日本がいまに追い抜かれてしまう、こういう事態が来るのではないかということをたいへん憂慮を実はいたしております。ですから、この辺もひとつお考えをいただきながら、老人憲章をつくってほしい、つくるべきじゃないか、こういうふうに思いますが、老人憲章というものについてお考えになったことがおありになりますか。また、つくられるお考えを持っておられるかどうか、お答えいただきたいと思う。
  29. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 率直に申し上げますが、いまのところ、老人憲章という問題について検討したことはございませんが、そういうものがあったほうがいいという感じはいたしますけれども、問題は、実質的な政策をどんどん進めていくということが何より大事でございますので、さらに今後老人憲章というものをつくる必要があるかどうかということについては十分検討してみたいと思います。
  30. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それからもう時間がだいぶ進んでまいりましたけれども、寝たきり老人とか、あるいは一人暮らしの老人とか、老人ホーム、これも有料とか、軽費とか、無料とか、その無料の中にも特別養護老人ホームとか、一般の養護ホームがあるわけですけれども、これについてもいろいろ伺いたかったんですけれども、もう時間がありませんので、こういうところで、こういう人たちのためにホームヘルパーとか、老人のための話し相手とか、あるいは寝たきり老人のところで働いていてくださる方々、こういう方々がいろいろいらっしゃるわけですね。こういう人たちが、いまどれくらいあって、それがちゃんと充足をされているのかどうか。  特に週休二日制が提唱されてから、いろいろな職場でこれがいま採用されつつございますね。そうしますと、これの影響がどのようにこういうところで働いてくださる方々にあるかないか。この辺をひとつお答えをいただきたいと思うんです。
  31. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 老人の方々のために働いておられる人、一つはホームヘルパーでございますが、これは現在、老人のためのホームヘルパーは、四十八年度でございますが、七千六十人ということで、給与につきましても、四十七年度三万七千円でございましたのを四万五千円に引き上げたということで、人員は確かにこれではまだ不十分でございます。私どもは、少なくとも一万三千人ぐらいは最低必要であろうということで、年次計画で充足してまいりたいと思います。  それから、そのほか、施設に働いておられる方々、これも一応、児童の重度の身体障害児の施設については、先生も御承知のように、なかなかこれは、医療機関というような関係もございまして、看護婦さんやお医者さんが足りないということで非常に困っているという事実がございますが、いまのところ、老人ホームにつきましては、その近所の家庭の主婦その他の方々で手のすいている方が喜んで寮母になっていただいておるということで、いまのところ、老人ホームにつきましては、大体、特にそういった方々の人員が不足しているという事実はございません。  しかし、今後できるだけ老人ホームを増設していかなければならぬということでございますので、そのためには、われわれといたしましても、そういった施設に働く方々を今後とも確保しなければならぬ。そのためには、給与といったような面の引き上げももちろんでございますが、やはり、相当いまでも、寝たきり老人の施設等においては寮母さん方が重労働になっておりますので、できるだけ増員をはかるということで、そういった施設に働く方々の充足に遺憾のないように努力したいということで、特に四十八年度予算におきましては、人員の増ということに努力いたしました。これは老人ホームばかりじゃございませんで、施設全体でございますけれども、四十七年度は千九百人ぐらいの増員でございましたけれども、四十八年度は一万二千人の増員をはかる。これは臨時職員も含めてでございますけれども、今後とも、そういう意味で、なるべく施設に働く人たちの労働を緩和するということで、人員の増をはかってまいりたいというぐあいに考えております。
  32. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 給与の面で三万七千円から四万五千円に引き上げると。しかし、こういうところで働かれる人こそ、もっともっと優遇をすべきではなかろうかと思います。それでないと、入れものだけをたくさんつくろうとなさっても、厚生行政国民の善意におんぶしているようなかっこうでは、私、なかなか、これからの人員確保の問題などは望み薄になってくるのではなかろうかと思います。  それから、慢性的なそういうところで働く寮母さんとか看護婦さんとかの重労働、過労、こういったものがいろいろな事件を引き起こしております。その一つの、看護婦さんの例ですけれども、兵庫県の西宮の病院の事件がございましたね、笑気ガスとあれとをつなぎ間違ったというような。ああいうのも、これは慢性的な過労が原因だと思いますので、その辺で、もう少し私は、これは根本的にもっと考えていただかなければ、なかなか入れものだけつくっても人員は確保できない。そしてさらに、これからは老人がふえてまいりますから、その点の見通しをもっと早くつけて、もっと早く手を打っていただかなければならないのではなかろうかと思います。  この問題についても、われわれ女性議員が、ずいぶん何べんも何べんも、私も八年間ここにおらしていただいておりますけれども、もうこういう問題は、毎年ここで議論が繰り返されながら、なかなか解決していかないのが事実なんですね。その点を、ひとつさらに今後は考えていただかなければならないと思います。  特に最近は、産業のにない手として働く労働力の中で、婦人の労働力の占める割合が非常に大きくなってきましたし、重要でございます。すでに千百万人ぐらいの女性が働いているわけですけれども、その中の五二%ないしは五三%が既婚者ですね。ですから、この既婚者が働くとなると、そこに当然保育所だの乳児院というものの要望が高くなってまいります。こういうところでも、国公立が足りないものですから、民間に依存をしていることがたいへん多いと思います。その民間の施設で働いている人たち、こういう施設で働いている人たちのまたその待遇だの労働時間がたいへんこれは過重になっているわけでございますが、これから、厚生省としては、保育所をどのくらい建てられるのか。あるいは、それもやっぱり、国立、公立がなかなかできないので民間に依存をされるのか。その辺のお考えをお漏らしいただきたいと思います。
  33. 穴山徳夫

    政府委員(穴山徳夫君) 保育所の問題につきましては、いまお話しのように、最近女性の働かれる方が非常に多くなりまして、したがって保育所に対する需要というものは非常に増加しております。私どもは、ただいま、これは保育所だけではございませんで、社会福祉施設全般につきまして五カ年計画を策定いたしまして、現在三年目に入るわけでございます。五十年を最終年次にいたしまして、現在保育所は約百六十二万人が入れるようにということで計画を策定いたしまして、逐年整備をはかっているわけでありまして、大体、ほかの施設に比べますと、保育所の整備の進捗状況というのが一番現在ではいいわけでございます。その点では、比較的順調に進んでいるということがいえると思います。  それから、保育所の公私の問題でございますが、いま約一万五千ぐらい保育所がございますが、大体六割が公立で四割が私立でございます。これは、公立がいいか私立がいいかということにつきましては、私どもとして、現在、ここで、公立をこれから優先的にやるというようなところまでは結論が出ておりませんで、設置主体がどこがいいかということはまだこれからいろいろと検討しなければいけない問題であると思いますけれども、現在の傾向では、やはりいま六、四の割りでございますように、比較的公立の保育所がふえつつあるということはいえるんではないかと思います。  それから、いま、入れものをつくってもそこで働いてもらえる人がなければどうにもならぬということも、そのとおりでございます。先ほど社会局長からちょっと触れましたけれども、逐年、こういった社会福祉事業施設に従事する人の待遇改善というものについて、いろいろと努力をしているわけでございます。四十九年度予算の編成も近く迫るわけでございますけれども、四十八年度に引き続きまして、四十九年度以降につきましても、こういった面については大いに努力をしなければいけないというように考えております。
  34. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 民間の保育所で働いている人たち、こういう人たちは、措置費が不足をしているために非常勤とならざるを得ないというような陳情をいただいたことがございます。これは、正規の保母の半分しか手当が渡らない。非常勤なるがゆえに、ボーナスも昨年は四万円しか出してもらえなかった。しかし四万円もらえるところはまだいいほうで、パートだということのためにボーナスも出ないところもあるという、たいへん差別がついているという陳情をいただいたことがございます。子供には差別をなくするように教えたいのに、職員に差別がある。だから保母は大体一年ぐらいでやめていってしまうんだ、こういうような話を聞いたことがございますが、民間社会福祉施設で働く人を守る法律がいまできていないのでしょう。これはもう官尊民卑の思想だ、こういうふうに私どもは言っているわけですけれども、この民間福祉施設で働く人を守る法律をおつくりになる考えがおありになるかどうか。
  35. 穴山徳夫

    政府委員(穴山徳夫君) この問題はむしろ社会局長からお答えいただいたほうがいいかと思いますが、現在社会局にございます中央審議会で、社会福祉司というような制度について、いわゆる社会福祉に従事する人たちについての社会福祉司制度というものについて検討いたしているわけでございまして、私ども関係する、たとえば保育所の保母というような人たちにつきましても、この制度とどういうかかわり合いを持っていくかということについて、現在、両局と申しますか両審議会と申しますかが意見を交換しながらいろいろと検討を進めているところでございます。聞くところによりますとむずかしい問題がいろいろあるようでございますけれども、いまそういったような動きはあるわけでございます。
  36. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 期待をいたしておりますから、ひとつぜひとも早急に結論を出していただきたいと思います。  さらに、職員がたいへん少ないために、お正月休みというのも大体十二月の末ごろから順番でとられるわけです、正月休みを。ところが、もう最後の人になると二月の末ごろでなければ休みがとれない。これでは正月休みだか何だかわからないと。それからお盆休みもしかりでございます。もうお盆はとっくに済んでしまったような九月ごろになってから、やっと休みがとれた、こういうような話もございますので、その辺も十分厚生大臣は心にとめておいていただきたいと思います。それでなければ、この間のように島田療育園が一時間のストをやったり、あるいは高野山へ立てこもった全繊同盟の女性の問題もございます。だんだんこんな変なことになってまいりますので、ここら辺も十分厚生省のほうであらかじめ心しておいていただかなければならないかと思います。  それから、もう時間が来てしまいましたけれどももう一つ大臣の施政方針演説の中で問題になっていない問題ですけれども、もう一つぜひ重視をしておいていただきたい問題がございます。それは母子相談員の問題です。私、一昨日、実はこの母子相談員の人たちとの話があるということでそこに行ってまいりましたけれども、この母子相談員の人たちも、週に四日だけ働けばよろしい、一カ月十六日ぐらい働いてくださればよろしいということで、大体給料が三万三千円だと言っておりました。ところが、母子相談員が働かれるのは、普通にこうやって働くわけにいかないんです。おかあさんたちがつとめに出ておりますから、相談にあずかるときは夜が多いと。そういう夜に女性の方が行かれるときには、あるときにはやっぱり車も利用しなくちゃいけないときがあるし、眠たい目をこすってでも行かなくちゃいけないときがあるんですが、その人たちが三万三千円というと、これは生活保護費より低い額だ。衣食足ってこそ礼節があるのに、自分がおなかをすかしておいて、幾ら奉仕だとはいいながら、あるいは何だか県や厚生省のほうから紙一枚もらって名誉職みたいなことにされても、自分のおなかをすかしておいて人の相談でもないものだ。ですから、こういう人たちが、かわってほしいんだけれどもかわり手がない。で、だんだんやめていってしまう、こういうふうなことを言っておりました。ですから、その足らずまえは、四日間働けばいいんだから、あとの二日間はパートでも内職でも何でもやればいいじゃないかというような冷たいことばさえはかれることがあると。しかし、それでは、四日間出ていってあとの二日間は自分でパートに出てみたり、あるいは内職をしてみたりということではなかなかきつくって、そこまでしてでもその母子の相談になぜあずからなくちゃいけないかという、こういうようなことがたいへんそこで出てまいりました。この辺の問題についても、先ほどからの養老院の保母さんたち、あるいは施設で働かれる看護婦さんや、あるいは保母さんたち、民間福祉施設で働いていらっしゃる人たち、こういう人たちこそ、もっともっと優遇をしていただきませんと、日の当たる場所ではございませんので、普通の日の当たる、わりあいに楽なところで働いていらっしゃる人よりもさらにもっともっと心していただかなければ、私は、日本の福祉行政はこういうところからくずれていってしまうのではなかろうかと、たいへん——そういうことが杞憂であればしあわせだと思いますが、その点について大臣からのお答えをいただいて私の質問を終わらしていただきます。
  37. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほど来いろいろお述べになりました老人対策としてのホームヘルパーの問題、保育所の保母さんの問題、看護婦さんの問題、それから母子相談員の問題、私拝聴いたしましてそのとおりだと思います。私どもがどんなに多くの数の社会福祉施設をつくりましても、その施設を運営されるのはその人たちの人の力でございます。そこで、そういう人たちにほんとうに気持ちよくお手伝いしていただく——お手伝いというのもおかしいですが、気持ちよく働いていただくということが社会福祉施設の本来の機能を発揮させる根本である。私はもう同感でございます。今日まででもできるだけの努力はいたしてまいったつもりでございますが、御指摘のような点は、今後さらに一そう私ども心して努力をしていかなければならぬ問題でございますので、今後とも、そういうふうな面の、特に処遇の改善、勤務条件の改善、そういう方面に全力を尽くしてまいりたいと、こういう決意だけを申し上げましてお答えといたします。
  38. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 本調査につきましては、本日はこの程度にとどめます。  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      —————・—————    午後一時四十七分開会
  39. 矢山有作

    委員長矢山有作君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  40. 藤原道子

    藤原道子君 それでは、まず第一に、基本的事項についてお伺いしたいと思います。  戦争犠牲者に対して今後戦後処理方針はどうなっておるか。また一般戦災者で死傷者については救済措置を考えておいでになるのかどうか。最近になって外地の戦死者とか、負傷者とか、あるいは遺児などの問題が大きく取り上げられておりますが、これについてまずお伺いをします。
  41. 高木玄

    政府委員(高木玄君) お尋ねは、戦争犠牲者に対して戦後処理の方針がどうなっているかという問題だと思いますが、援護局の所管いたしておりまする戦後処理業務は、大別いたしますと、戦傷病者、つまり傷痍軍人の方々、あるいは戦没者の遺族に対しまする生活保障のいろいろな措置、それと旧軍関係の業務、この二つに大きく分けることができると思います。  私どもの局におきましては、戦傷病者なり戦没者等の援護につきましては、戦傷病者戦没者遺族等援護法なり、あるいは戦傷病者特別援護法なり、そうした立法に基づきまして、あるいは年金を支給し、あるいは療養の給付を行なう等援護の措置を講じてまいっております。しかしながら、戦後もう三十年近くたっておりますので、この戦傷病者なり遺族の方々も現在老齢化の傾向が顕著でございます。したがいまして、これらの方々に対する援護の必要性はますます高まっていくと思われますので、今後とも年金の内容充実、その他の援護措置の充実強化について努力してまいりたいと思います。  それからいま一つの旧軍関係の業務でございますが、これはもう戦後久しくたっておりますので、相当業務ははかどってまいっておりますけれども、なおかつ外地に多数のまだ遺骨が放置されたままになっておりますので、遺骨の収集につきましても今後まだなおかつ強力に進めなけりゃなりませんでしょうし、また、外地には三千五百名にのぼる未帰還者がまだ残っておられます。これらの方々の消息の究明なり、あるいは帰還の促進なり、そういった問題につきましても今後とも努力をいたしまして、これらの戦後処理業務をすみやかに完結させるよう、今後とも最善の努力を尽くしてまいりたいと、かように考えております。
  42. 藤原道子

    藤原道子君 何といっても戦後三十年近くたっていまだに今日の状態。そういうことを思うと、政府ではいつも今後努力いたしますという御答弁はいただいておる。けれども、それが実行されていないということで、国民がどういう気持ちでいるかということをお考えいただいて、真剣に進めてほしい。  そこで、原爆の被爆者の対策についても、これまでの経緯や今回の改正案を見ましても、十分な施策がなされているとはいえない。原爆被爆者の対策は、今後どのような方針のもとに、内容の改善、充実をはかる考えであろうか。私は衆議院の速記録も拝見いたしましたけれども、この点について真剣な御意見を聞かしてほしい。
  43. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 御指摘の原爆被爆者対策は、私どもといたしまして、国家補償的な立場からではございませんで、被爆者が原爆を受けましたことによりまして今日なお健康上あるいは精神上特別な状態に置かれているという立場から、社会保障制度の一環といたしまして、種々の施策の内容につきまして充実をはかると、こういう方針でいろいろの改善に取り組みたいと、かように考えております。
  44. 藤原道子

    藤原道子君 そこで、原爆被爆者の援護については、国家補償の理念で対策を考えるべきではないかということで、国会における法案の審議を通じてきょうまでわれわれは努力してきたはずなんです。絶えず論議された重要点であり、また原爆被爆者の願望としては当然のことと思われる。しかるに政府は、原爆被爆者に対する特別措置は社会保障の範疇で解決して、今回の改正案においても法の性格を依然として改めようとしていないのは理解ができない。御案内のように、四十四年、いわゆる桑原裁判、これによりまして、いろいろの意見はございますけれども、「引揚者に対する援護立法においてはすでに生活給付が法制度化されているが人類史上初めて受難し身を以て戦争終結の機縁を作った被爆者に対して国が補償責任を果すことが他の福祉制度との関連並びに現在の国の経済力からして困難なことであろうか。」、こういうことになっている。なぜ政府は国家補償立場で援護措置を講じようとしないのか、この点についてお伺いをしたい。四十四年の裁判ですね、これは。
  45. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 御指摘の問題につきまして、私どもといたしましては、現在の法律そのものが原子爆弾の放射線を浴びた被爆者の特殊性に着目いたしましていろいろ施策を講じておるわけでございまして、これは国家補償立場に立ってはおりません。したがいまして、もしこれを国家補償的な立場で援護をするということになりますと、他の戦災者との均衡もございまして、それを一挙に解決するということは非常に時日も経過いたしておりまして困難な現状にあるという認識に立ちまして、私どもといたしましては現行法の改善に重点を置きたい、かように考えておる次第でございます。
  46. 藤原道子

    藤原道子君 そこがおかしいんです。私は、戦争被害者の問題についても、もっと国がやらなければいけない。と同時に、国内があれだけの爆撃を受けた。それでけがした人がそのままになっている。と同時に、この原爆の被爆者は世界で初めて起こった犠牲者ですよ。あの原爆投下によって、これだけ大きな問題が起こったために戦争は終わったようなもので、非常に大きな犠牲者、世界じゅうにない日本の犠牲者なんだということになれば、当然国がこれを補償していってどこからも文句の出るはずはないと思う。それが何だかんだと言って、追い詰められると他の戦傷者が云々、こういうことでは原爆被爆者の問題は解決しない。これに対してもう一回お伺いをしたい。
  47. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 現在私ども所管いたしております立場といたしましては、やはり原子爆弾の被爆者という、放射線を浴びた特殊な立場だけを考慮するという立場をとらざるを得ないというふうに考えております。
  48. 藤原道子

    藤原道子君 考えておる——しっかりやってください、その点。  そこで伺いますが、被爆者の認定基準はどのようになっているか。一般被爆者と特別被爆者との区別を撤廃して、特別被爆者に統一すべきではないかと思いますが、これはどうですか。
  49. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 被爆者の区分でございますが、広島、長崎で原子爆弾が投下されました際に浴びた放射線量が被爆の区分によりまして違っております。したがいまして、その区分に従いまして一般被爆者と、特に放射線を多量に浴びた特別被爆者との区分をいたしております。一般被爆者につきましては被爆者健康手帳を交付いたしますし、特別被爆者につきましては特別被爆者健康手帳を交付いたします。その手続といたしましては、それぞれ本人が居住いたしております都道府県知事に申請をいたしましてその交付を受けることになっております。それを所持することによりまして、原爆医療法上の被爆者としての措置を受けることができるようになっております。
  50. 藤原道子

    藤原道子君 私は、地域で決定するというのはおかしいと思う。結局、風の方向もある、それから健康な人もあるし、それから病人の人もある。年寄りもある、子供もある。にもかかわらず地域内で規定をしておる。この点はぜひとも考えて、この特別被爆者と統一してやっていくべきだと私は考える。と同時に、原爆手帳の交付を受けている者が約三十四万人、その中で特別措置法の対象者はいろいろと制限があって、昭和四十八年度の予算では約七万二千人ですか、となっておるが、さらに大幅な緩和が必要ではないかと思うが、それに対してはどのように考えていますか。
  51. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 先ほどの区分のことでございますけれども、御承知のように放射線量は爆心地から遠ざかるに従いまして線量が減量いたしますので、したがいまして距離等の、あるいは地形等によりまして若干その取り扱いに区分が出てまいるかというふうに考えております。したがいまして、たとえば特別被爆者の場合には爆心地より三キロ以内に特に放射線量が多いということで特別被爆者というような範疇に入れる措置をとってございます。したがいまして、被爆をしました当時の状況によりまして、その措置がおのずから異なってきておるというふうに理解をいたしております。なお、被爆者に対します各種手当につきましては、昭和四十三年の特別措置法の制定以来、健康管理手当の支給対象の範囲の拡大や各種手当の支給におきます所得制限の緩和等いろいろの改善策を講じてまいったところでございますが、昭和四十八年度におきましても健康管理手当の支給対象の要件のうち、五十五歳以上を五十歳以上というふうに年齢を引き下げますとともに、各種手当の支給に際します所得制限の緩和をはかろうということでございます。なお、各種手当の支給条件につきましては、やはり今後とも先ほどお話がございましたように、被爆者の実態に合うように十分配慮してまいりたい、かように考えております。
  52. 藤原道子

    藤原道子君 この四十八年度の制限ですね、特別手当と健康管理手当がどれだけになっているのか。
  53. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 特別手当につきましては、従来一万円でございましたのを一万一千円に引き上げるとともに、所得制限の緩和といたしまして所得税額が四万八千四百円でございましたのを七万一千七十円に緩和いたしてございます。  それから医療手当につきましては、従来六千円でございましたのを七千円に引き上げてございます。  それから健康管理手当につきましては四千円を五千円に引き上げております。
  54. 藤原道子

    藤原道子君 これは、この前改正したのは何年ですか。
  55. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 四十七年でございます。
  56. 藤原道子

    藤原道子君 四十七年というと去年ですか。
  57. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) はい。
  58. 藤原道子

    藤原道子君 物価がどんどん上がっているときに、この引き上げ率を見て私は納得がいかない点があるわけなんです。どれだけ苦しんでいるかということを考えて、普通、健康な人ですらこの物価高で生活が圧迫されている。まして、この被爆者がどれだけ苦しい思いをしているかということを考えてもらいたい。  それで私は、今回の特別手当と健康管理手当、医療手当の額は増額されたけれども、介護手当は増額されていないが、どういうふうに考えるのか。
  59. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 介護手当につきましては四十七年におきましても実施いたしておりません。したがいまして、介護手当等につきましては、これはすでにその時点におきまして十分増額をされたという認識におきましてこの問題につきまして四十八年度におきましては増額をいたさなかったということでございます。
  60. 藤原道子

    藤原道子君 私も少し健康上の理由であまり勉強しておりませんので伺いますが、いま介護手当はどのくらいになっているか、いつきめたままになっておるのですか。
  61. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 介護手当は四十三年にきめまして一万円になっております。確かに先生おっしゃいますように、介護手当の必要性というものは非常に被爆者の方々の身近かな問題として、特に立ち居ふるまいの不自由なお方を介護するという点で増額をする必要は十分私どもも認めておるわけなんでございまして、ただ四十八年度におきましては非常にたくさんの対象者が給付されます健康管理手当、それから特別手当、医療手当というものの増額にまず重点を置きまして、介護手当も一緒にやりたかったわけでございますが、他のいろいろな類似の制度、たとえば公害病の認定患者に対する介護手当の問題とかあるいは生活保護の介護料の問題とか、いろいろなほかの諸制度との関連もございまして、四十八年度、今回は三手当の増額にとどめざるを得なかった事情があるわけでございますが、来年度以降介護手当の必要性は十分認めておりますので、その増額について十分努力してまいりたいと思っておるわけでございます。
  62. 藤原道子

    藤原道子君 四年か五年据え置きになっていますよね。大臣いろいろ金はかかる、わかります。けれども介護する人がどれだけ苦しいか。介護手当が四年も五年も据え置きである。今度いろいろ若干ながら改正があったにかかわらず、介護手当は放置されておる、これ、どうお考えになりますか。
  63. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 今年度の予算編成にあたりまして、いろいろ慎重に検討を加えたわけでございますが、特別手当の支給範囲の拡大とか、あるいはそのほかの手当の増額、そういう点に一応、あまり低かったものですから、そちらのほうに重点を置いたわけでございまして、介護手当のほうはこれはひとつ次の年度にといったふうな考え方もありまして、直接患者の方々がいただくもののほうに、健康管理手当、特別手当そちらのほうに比重を重くいたしたような次第でございます。しかし私も額は一万円でありましても、それが三、四年据え置かれておるということについては、必ずしも私も好ましいことであるとは考えておりませんので、明年度の問題として真剣に努力いたすことをお約束申し上げたいと思います。
  64. 藤原道子

    藤原道子君 いろいろ伺いたいのですが、時間をなるべくきょうは短くしてほしいということで……。持別手当、健康管理手当は法律によって手当の額が定められておりますが、介護手当、医療手当、葬祭料の額は政令で定められている。手当の額を法律事項と政令事項とに区別しておる理由はどういうものであるか、いずれかに統一すべきではないか。
  65. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 特別手当と健康管理手当につきましては、これはそれぞれの手当の対象になる方々の保健上の需要などに着目いたしまして、その被爆者の福祉をはかるために継続的な給付を行なおうというものでございますので、この継続的な給付という面からこれは法律事項として本質的にどの程度にすべきかということを法律で規定することが妥当じゃないかというふうな考え方に立っているものと思います。で、これに対しまして医療手当とか介護手当というのは、医療を要する時点、あるいは介護を要する時期という、その一時期にその状態がある場合に、その事由を生じたときにその出費を補てんするような意味で支給するものでございますので、その額につきましては、やはり政令に委任するということで定められているというふうに理解しておるわけでございます。
  66. 藤原道子

    藤原道子君 手当の額は法律にはスライド制が導入されていないが、厚生年金法や国民年金法と同様に自動スライドとすべきではないでしょうか、こういうことはどう考えておりますか。
  67. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 従来の原爆関係の特別手当その他の諸手当につきまして、これは昭和四十三年以後、四十七年まで引き上げを行なわなかったわけでございまして、四十七年に健康管理手当等につきまして引き上げを行なったわけでございます。四十八年度の今回の予算計上を機会といたしまして、私どももこれはその引き上げが、何年かにわたってまあ引き上げが行なわれないで、何年かぶりに行なわれるというようなことはどうも問題があるということで、ほかの福祉的な諸手当あるいは諸制度と同様にこれは毎年、いろいろな物価賃金の上昇その他を勘案いたしまして、毎年検討を加え、上げる必要がある場合には引き上げをはかっていくと、いわゆるスライドという概念とまあ全く一致するかどうかは別といたしまして、毎年検討して、毎年引き上げる必要があれば引き上げについて努力をしていくというふうな考え方に踏み切りたいというふうに考えておるわけでございます。
  68. 藤原道子

    藤原道子君 納得ができません。病院で扱う場合に、あなたの言うようにして扱ってくれますか、検討してもらいたい。  そこで、特別手当についてお伺いします。特別手当の性格をここで明確にしてほしい。昭和四十三年に特別措置法が制定されて以来据え置かれて、きょう初めて千円、わずか千円上がったんですね。昨今の賃金や物価上昇、生活水準から見て、引き上げ額があまりにも僅少ではないかと思いますが……。  それから特別手当と生活保護法との関係についても、生活保護制度では、特別手当の支給額の半額に相当する加算制度を設けているが、原爆被爆者の生活実態にかんがみ、特別手当全額を加算するのでなければ特別手当を設けた効果があがらないのではないか。  また、生活保護法にはいろいろの加算があるが、この機会に再検討すべきではないかと思いますが、以上についてお伺いをしたい。
  69. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 前段の特別手当の性格についてお答え申し上げます。  特別手当はいわゆる原爆症であるといたしまして、厚生大臣の認定を受けた負傷または疾病の状態にある者に対しまして支給されるものでございまして、その内容といたしましては、いわゆる原爆症患者の方々は原爆の影響を最も強く受けた者でございまして、健康上悪条件下に置かれております。したがいまして、原爆症の治療にあたりまして、栄養の補給あるいは通院、入院あるいは保健薬等のために特別の出費にあてるために支給されるものでございまして、療養の生活の安定をはかることを目的といたしております。  後段の問題につきましては、社会局長からお願いをいたしたいと思います。
  70. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 特別手当と生活保護法の関係でございますが、一応特別手当が原爆被爆者の生活上の援護というのを目的として支給されるということでございますので、生活保護——最低限度の生活維持をはかるところの生活保護法というものと趣旨が競合するということで、法律上も、「生活保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活維持のために活用することを要件として行なわれる。」という原則がございますので、結局収入として認定せざるを得ないわけでございます。しかし同時に原爆の被爆者というものは、一般の人たちと違って、さらに栄養補給その他の面で生活上必要な面もあるということで、一応収入の認定はいたしますけれども、別に放射線障害者加算というものを新たにつくりまして、そして五千円を加算するということにしたわけでございます。で、この五千円というのは、結局そういった栄養補給面、それから食料等も一般の人よりはさらに栄養の高いものが必要であろうというようなことを勘案した点。それから、その当時の加算と申しますか、それが大体二千円、三千円どまりでございました。したがって、まあこの放射線障害については、特に加算としては例外的な五千円ということで、一応五千円の加算にいたしたわけでございます。しかし、このたびこの特別手当の引き上げが行なわれたわけでございますので、この五千円の金額につきましては、さらに前向きで検討してみたいと思います。
  71. 藤原道子

    藤原道子君 私は、どうも納得がいかないんですけれどね。続いて健康管理手当にいたしましても、この性格をまず明らかにしてほしいんですが、健康管理手当には、対象者、年齢、疾病、所得制限等、いろいろの制限がかけられておる。これは被爆者の対策とはいえないんじゃないかと思う。  それから、健康管理手当を受けている者は特別手当を支給しない理由。両手当の性格が相違しているので、当然併給すべきではないかと思う。これは重ねて一つにして私は扱うべきではないかと、こう考えているんですが、それはどうなんでしょうか。
  72. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 健康管理手当の支給いたします趣旨といいますか、性格でございますが、これは原爆の影響に関連があると思われる病気にかかっている方が、日常十分に保健上の注意を払うことが必要なわけでございますので、その中でも特にみずから十分な保健措置を講ずることがなかなかむずかしいという対象、老齢者とかあるいは身体障害者、母子の状態にあるというような方々につきまして、   〔委員長退席理事大橋和孝着席〕 そういう療養生活の安定をはかるために健康管理手当というものを出しているのが趣旨でございます。  それで、これにいろいろな制限があるのはけしからぬじゃないかという御意見もあるわけでございますが、やはりこの制限の中でもいまのような老齢とかあるいは身体障害者というような制限を設けないで、そういうものを撤廃したらどうだという御意見も、これも一つの傾聴すべき御意見だとは思うんでございますが、現在の段階におきましては、これをむしろ緩和をしていくという面で努力をここ両三年来払ってきたわけでございまして、老齢の年齢を、いわゆる原爆の被爆者の方々は加齢現象と申しますか、いわゆる老化現象が早いというふうに一般にいわれておりますので、一般の場合六十五歳が老齢というふうに考えられておりましたものを、六十歳に引き下げ、五十五歳に引き下げ、さらに今回は五十歳にまで引き下げて対象範囲の拡大をはかったわけでございます。また、所得制限などにつきましても、撤廃をしろという御意見もございますが、これはやはり御自身で十分管理のできるような経済的な状態にある方は、これはまあ御自身でやっていただく。しかし、現在の、現行の所得制限というのはあまりにもきびしいじゃないかという御批判にはこれは当然こたえなければなりませんので、今回は大幅な所得制限の引き上げをはかったつもりでございます。  それから併給の問題につきまして、健康管理手当と特別手当、これを併給をしないのはおかしいじゃないかという御意見なんでございますが、これは特別手当を支給いたします趣旨が、これは原爆症の患者につきまして、健康上非常な悪条件に置かれておるわけでございますので、原爆症の治療にあたりまして栄養の補給とか通院、あるいは入退院、保健薬を購入するというための特別の出費にあてるために支給をしておるわけでございまして、これも目的とするところは療養生活の安定をはかるということが目的でございまして、濃淡の違いはございますが、特別手当、健康管理手当、それぞれ療養生活の安定をはかるという趣旨で出されておるわけでございまして、したがって趣旨から申しまして、これは、併給というのはちょっと問題がむずかしいわけでございまして、やはりどちらかの手当が支給されることによって療養生活の安定をはかるという目的を達するというふうに考えたいわけでございます。
  73. 藤原道子

    藤原道子君 私は、今度健康管理手当の年齢が五十歳まで下げられた、これはまあいままでから見ればいいと思うんです。この間、広島の病院へ行ったんです。その近くで病院に入りたいけれども、やはり、と言って、いろいろ話してみたらその人は来年四十五歳になる。ところが、ちょっと見たところが六十くらいに見えるのですね、びっくりいたしました。そういうことですから、原爆の愚者に対しては医療の場合、年齢の制限は撤廃したほうがいいんじゃないか、しみじみそのときに思ったのです。四十そこそこで六十以上に見える。これは広島でそうです。それから養老院というのですか、老人病院というのですか、それに入るのがずいぶんきびしいらしいのですね。年がいかなきゃ入れない。年齢がそこまで達しないから入れない。どれだけ苦労している人が多いかということは御承知なんでしょうね。ならば、それをどうするかということを、どう考えているかということを伺わしてほしい。
  74. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 原爆被爆者の医療につきましては、これは年齢の制限はないんでございまして、必要な医療につきましては全部公費でもって見るということになっておりますが、先生のおっしゃられましたのは、たぶん療養・医療を受けている場合に、健康管理手当をもらうのに年齢の制限に引っかかって五十歳以下の方がもらえないのはお気の毒ではないかと、こういう御趣旨だと思うんでございますが、これも実は来年度以降の問題といたしまして、私どもも検討しなければならないことだろうと考えておるんですが、まあ、年齢で制限をしているというのは、従来老齢であるからということがその考え方になっておったわけでございまして、それが六十五が六十になり、五十五になり五十になりまして、まあ四十五で老齢というのはなかなか、これちょっと常識的に非常にむずかしい問題だと思うんでございまして、今後、これを撤廃していくという考え方もございますし、あるいは年齢をさらに引き下げていくという考え方もあるわけでございまして、年齢の引き下げということを考える場合にも、いままでのような考え方の、老齢という考え方の導入では、なかなかこれは説得力が、むずかしいのでございますので、新たな角度からこの年齢の引き下げを考えられないものかということで、たとえばこの健康管理を行なうという場合に、ことし、新たな制度として、成人病の検査なんかにつきましては、新規施策といたしまして四十歳以上の主婦や、あるいは中小企業に携わる人たち、あるいは農民の方々の年一回の成人病の検診を無料で公費で行なうということを新制度として発足させることにしておるわけでございますが、そういうような点から考えますと、健康管理というようなことを考えるのは、必ずしも老齢ということで、五十歳とかいう層でとめなくてもいいんじゃないかというふうなことをいま考えておるわけでございまして、これは、いろいろとまた内容をよく検討いたしまして、さらに引き下げについても十分考慮をしていくようにしたいというふうに考えております。
  75. 藤原道子

    藤原道子君 あなたが言うとおり、私ちょっと頭が少しぼけかかったから混同しちゃったんですけれども、その老齢手当でなしに、原爆患者ならば年齢制限なしに原爆手当として見てやってほしいというのが私の願いなんです。それは確かにそういう検討もある。大臣そうですが。
  76. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 健康管理手当は、出発が老齢者ということから始まったわけでございますから、こう下げてきたわけでございます。しかし、おっしゃることも私はよく理解できますから、いま審議官が言われたように、もう一回年齢を下げるというやり方で解決するか、あるいはもう年齢を取っ払って解決するか、二つの方法があると思いますから、もう少し実態を調べまして、確かに原爆の方々は、加齢と申しますか、早く老化現象があらわれておりますから、年齢を引き下げるというやり方でだんだんやっていくか、あるいはもう年齢という制限を取っ払うか、この二つのうちの一つだと思いますので、もう少し実態を調べまして来年度の予算の際に十分検討いたしまして善処いたします。
  77. 藤原道子

    藤原道子君 私は、大臣に特にお願いしておきたいのです。やはり原爆患者に対しては年齢制限なしに、ぜひとも原爆患者に対する対策を立てていただきたいということを心からお願いをし、あなたの答弁を信じてまいりますから、お願いいたします。  その次に、医療手当の問題でお伺いをしたいと思うのでございます。まあ、医療手当は厚生大臣の認定患者である特別手当を受ける者だけであるが、健康管理手当を受ける者に対しては支給されない理由というものを伺いたい。
  78. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 医療手当につきましては、これはいわゆる原爆に起因する疾病にかかっている方、つまり直接原爆のために病気になっている、いわゆる原爆症にかかっている、非常に原爆の影響を最も強く受けている一番お気の毒な方々、こういう方々に、その医療につきまして、なかなかなおりもおそい、治療指針もなかなか確立されてないような病気、白血病その他いろんなむずかしい病気にかかって、長年不安な生活を送っているというような特殊な境遇にございます方々につきまして、医療に関連しまして慰安とか、あるいは教養の手段を与えるというようなことによりまして精神的な安定をはかっていく、不安感を除いて療養に専心していただく、そういうようなことによりまして医療上の効果の向上をはかると、こういう趣旨から支給をしておるわけなんでございまして、健康管理手当の場合とはちょっと受ける方々状況とは多少そこに違いがございますので、健康管理手当を受ける方々につきましては、これはいわゆる原爆の影響に関連のあると思われるような病気にかかっておられる方々にはすべて健康管理手当をお出しするというふうに、非常にまあどちらかといえばゆるやかな要件になっておるわけでございますので、したがって、対象者も六万数千人ございますわけでございまして、この医療手当の趣旨に基づきまして、これはやはり原爆症患者に差し上げるというふうな内容になっているわけでございます。
  79. 藤原道子

    藤原道子君 三十四万人からの原爆被爆者の中で、いま言われた六万何千人でしたか、その人たちが特別手当を受けられると、八疾病のある健康管理手当を受ける場合も当然これは医療手当を併給すべきじゃないかと思いますが、これはどうなんですか。やってるんですか、いろいろな病気持っている場合。
  80. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) やはり、その原爆被爆者の方々の状態に応じましていろいろな手当につきましても考慮を払っていくということで、やはり非常に重い状態あるいはお気の毒な状態になっているという方々につきましては、やはり特別手当だけではなくて、そういうむしろ療養生活の安定をはかるということにプラスをいたしまして精神的な安定もはかってもらうと、で、治療効果をあげていただくということ、どちらかといえば健康管理手当をもらう方々との間にやはりお気の毒な状況に応じて差をつけるといいますか、療養上の安定プラスアルファをいわゆる原爆症患者の方方には特別な考慮をはかりたい、こういう点で医療手当をプラスしておるわけでございます。
  81. 藤原道子

    藤原道子君 そう言われることは、なかなかいいことを言っていらっしゃる。ところが、それを調べるのがとてもきびしくて、あれに命令した、こっちに命令したといって、なかなか解決がおそいんですね。もし、あなたが真剣にお考えいただけるならば、この医療手当の問題についてはもっと真剣に考えてやってもらいたい。で、その各種手当はいろいろと制限があり、また手当の条件を複雑に分けられているんですよ。この際、再検討して整理する必要があるということを、この間、広島の病院でしみじみ、入院のできない人たち、こういう人たちと会ったときにいろいろ訴えを聞いてきましたので、あんまりひどい、あっちへやらせる、こっちへやらせるということでなしに、原爆対策をもっと真剣にやっていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。  特別手当を受けている者の医療はすべて公費負担であるが、健康管理手当を受けている者も同様な取り扱いとすべきではないかと思います。そうなっていますか、どうですか。
  82. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 特別手当を受けておられる方々の医療につきましては、これはいわゆる原爆症の患者でございまして、この医療費につきましては全部国費で見ておるわけでございまして、これに対しまして、いわゆる特別被爆者の方々の医療につきましては、やはり健康保険その他の保険制度で負担をしている部分を除きました一部負担といいますか、自己負担、この部分につきまして公費でこれを見る。全体としては被爆者の方は医療費は無料になるわけでございますが、負担の問題といたしましてそういう差があるわけでございます。これは医療の内容につきましては、別に変わりがあるわけではございませんけれども、原爆症の場合と、いわゆる原爆に関連のある疾病にかかっておられるとか、あるいは半径三キロ以内におられた方々というようなことで、その方々が医療にかかる場合には、これは交通事故で医療にかかろうが、かぜで医療にかかろうが、これはみんな医療費を見るわけでございまして、そういう面から申しまして、これは全部国費で見るというふうなちょっと性質には結びつけにくい。したがいまして、やはり一部負担の部分につきまして公費でこれを見ていく。結果的には御本人には無料でございますから、影響はないわけでございますが、まあ、その財源の支出のしかたにそういう差異があるわけでございます。
  83. 藤原道子

    藤原道子君 その点、非常に複雑になっているんです。だから、原爆被爆者の医療は社会保険を優先をし、残りの自己負担分については公費負担とすると、ところが原爆被爆者の置かれている実情にかんがみまして、原爆被爆者手帳、これによってすべて公費負担で見てやることは、できませんか。それについてはどうお考えになっていますか。
  84. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 被爆者には先ほど申し上げましたように、一般被爆者と特別被爆者とございまするわけでございます。それぞれにそれぞれの手帳が交付されておるわけでございます。で、特別被爆者につきましては、これは先ほど申し上げましたように、健保等の負担のはみ出した部分、いわゆる一部負担、自己負担という部分について公費でこれを見ていく、そういう手帳を持っておられる方にはそういういわゆる一般被爆者医療という医療費の支給を行なっているわけでございます。で、さらに、その特別被爆者の中でも認定患者、いわゆる原爆に直接起因する患者の方々につきましては、これは手帳には差はございません。特別被爆者の手帳を持っているわけでございますが、それぞれの個々の病気を、その申請に基づきまして認定をいたしまして、これが原爆に直接起因するという認定がありますれば、全部国費でこの医療費を見る。これは国費で医療費を見るなり公費で医療費を見るのは、被爆者の方の医療の負担には影響がないわけでございますが、手当のほうに関係がございまして、認定患者になりますと特別手当がもらえる、こういうしかけになっておるわけでございます。
  85. 藤原道子

    藤原道子君 私はそういう点で本人にとれば非常にむずかしいらしいんですね。これをもう少し、まあ一つの病気がある、しかしこれは原爆であろうか、原爆に関係がないであろうが、こういういつまでもごちゃごちゃごちゃごちゃしていないで、原爆を受けた人に対して、初めは何といいますか、白血病専門だった。だんだん違ってきているでしょう、このごろ。この基本を考えて、もっと決定的な対策を立ててほしい。いかがでございますか。
  86. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) おっしゃるお気持はよくわかるわけでございまして、原爆に、とにかくはっきりと関係があるという患者はいわゆる原爆症の方々でございますが、この方々だけを何か援助をするということだけでは、あまりにもこれは被爆者の実情を無視しているんじゃないかということで、これはもっとうんと広げにゃいかぬじゃないかという趣旨から、原爆症とは必ずしも断定できませんけれども、原爆に何らかの関係があるんではないかという患者さん方まで広げていこうということで、特別被爆者に対する医療の給付あるいは手当の給付というものを大幅に広げられたというふうな考え方だと思うんでございます。私ども、この特別被爆者もできるだけ、いろんな制限がまだございますので、こういう制限をはずすなり、あるいは緩和するなりしていきまして、範囲をもっと広げる方向につきまして今後とも努力をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  87. 藤原道子

    藤原道子君 とにかく戦争が終わってもう二十八年になるんですね。それでもって原爆を受けた被爆者に対してその対策はいままだぐずぐずしているようなことでは、はずかしくありませんか。真剣にこの点を進めていただきたいと思います。  そこで、原子爆弾による原爆被爆者の死亡者はどのくらいあるのか。いろいろと過去に発表されているが、公表数字はどれが正しいのか、この際、明確にしてもらいたい。
  88. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 御指摘のように、原爆によります死亡者の数は、機関によりまして異なった数字が発表されております。たとえば広島について申し上げますと、広島県知事が当時の内務省に報告いたしました死亡者数は四万六千九百二十四名、広島市における集計では八万四千三百一名、それから広島県の警察部で発表いたしました数字では十万一千五百六十一名というように、かなりの開きがございます。で、現在では、そのいずれが最も的確であるということは断定はできませんが、広島につきましては、県の警察部の発表いたしました十万一千五百六十一名が最も実態に近いのではないかというふうに考えられております。  また、長崎について申し上げますと、長崎県の調査によりますと四万九千二十二名という調査がございますが、これが一応妥当な数字というふうに考えております。
  89. 藤原道子

    藤原道子君 昭和四十年の被爆者実態調査状況について、部門的に中間報告発表されたにすぎない。まだ総合的な最終報告は公表されていないので、この際、政府の見解を明らかにしてもらいたい。  昭和五十年には被爆者の実態調査が行われることになっているそうですが、四十年における被爆者実態調査の結果に至るまで時間がかかり過ぎているようであります。この種の実態調査はすみやかに公表し、適切な被爆対策を樹立すべきであると思いますが、いかがでございますか。五十年の調査の際には死者の数、遺族の調査もあわせて行なうべきではないかと思いますが、いかがでございますか。
  90. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 昭和四十年に実施いたしました被爆者の実態調査内容につきましては、被爆者全体を対象とする基本調査と、サンプル調査によります健康調査、生活調査、その他入院調査というふうになっております。それで、その概要につきましては、昭和四十二年の二月に基本調査、それから四十二年の十一月には健康調査と生活調査の結果を公表いたしてございます。しかし、その他の調査につきましては、その調査にあたりまして十分その趣旨が徹底されなかった点も考えられますので、総合的な最終報告の形で取りまとめ発表することができなかったわけでございます。健康面及び生活面での調査結果を踏まえまして昭和四十三年には特別措置法が制定されたわけでございまして、被爆者対策の充実には大きな役割りを私どもは果たしておるというふうに考えております。  現在、昭和四十年度の被爆者の実態調査の結果にかんがみまして、昭和五十年に予定されております被爆者の実態調査につきましては、御指摘のような死亡者あるいは遺族の調査まで十分に把握できるかできないか、いろいろ技術的な面もあろうかと思いますが、御指摘のような事項につきまして、もし調査をできれば実施いたす考えでございますが、ただいま申し上げましたように、技術的に把握ができるかできないかというような現実の問題もございますので、その調査項目につきましては十分検討さしていただきたいと思っております。
  91. 藤原道子

    藤原道子君 なかなかたいへんなことはわかりますけれども、もう二十八年もたっているんですからね……。  そこで、「原爆医療審議会」の名称を「原爆援護審議会」に改めるお考えはないんでしょうか。また、現在の審議会委員に原爆被爆者関係団体の代表を選任するお考えはありますかどうですか、ちょっとお聞かせください。
  92. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 「原爆医療審議会」の名称を「援護審議会」に変えてはどうかという御意見でございますが、現在のところ、私どもの医療審議会におきましては医療部会のほかに福祉部会を設けておりまして、御趣旨のような問題につきまして、いろいろ福祉対策の充実等につきましては御意見を伺っておるところでございまして、現在の運営で私どもは一応こと足りるのではないかというふうに考えております。したがいまして、その福祉部会におきましても、すでに医学の専門家以外にも社会学あるいは経済学の分野から専門家にお入りいただいておりまして、また、被爆者の方々の要望に十分沿えるような委員の方にも加わっていただいておりますので、私どもといたしましては、現在のところ、冒頭に申し上げましたように名前の変更については検討いたしてございません。
  93. 藤原道子

    藤原道子君 それでは、いま申し上げました原爆医療審議会の名称をそのままにしていく、いまのやっている人もそのままにしていくと、これをさらに新人を入れて云々ということは考えていない、こういうことですか。
  94. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 原爆の医療だけの問題を取り上げて審議をするということだけでなくて、被爆者の福祉なり援護というようなことを総合的に審議をできるような審議会にすべきじゃないか、こういう御意見であると思うのでございますが、前々からそういう御意見も非常に強うございます。そこで、四十七年度におきまして、この医療審議会の中に福祉部会というのを新たに設けまして、そこに従来のお医者さんとか医療の専門家だけじゃなくて、社会学者あるいは経済学者、あるいは社会福祉関係専門家、あるいは広島、長崎等の現地の県、市等の直接の仕事に携わっている責任者方々、こういう方々を新たに委員として委嘱いたしまして、被爆者の福祉関係の問題一般につきまして討議、審議をしていただくように、新たにそういう部会を設けたわけでございます。これも、昨年度設けましてから、ひんぱんに会を開いていただきまして、いろいろ御意見もいただき、その線に沿って、尊重して、予算の要求の中にもそういうものを盛り込んでいくということをやってきたわけでございます。
  95. 藤原道子

    藤原道子君 時間がございませんので、被爆者の相談業務について四十八年度の予算要求にどのように努力されたかということの資料、——いまお答え願えますか、簡単に……。  もう一つ、治療技術の研究開発についてどのようなお考えを持っておいでになるか、二つあわせて。
  96. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 被爆者の方々の相談に応じるということは非常に重要なことでございまして、これは各県、市保健所等におきまして親切に被爆者の方々の御相談に応じていくように指導しておるところでございます。  そこで、四十八年度の予算におきましては、その指導の強化とともに、民間の相談員制度を設けたらどうかということで、そういう予算も要求したわけでございます。ところが、この民間の相談員制度につきましては、広島、長崎のいろいろな関係者の方々の中からも賛否両論がございまして、民間の方々に被爆者の相談をするということは、いわゆる秘密を打ち明けるようなことになりまして、その秘密がそういう面から漏れるということはなかなか好ましくないんじゃないかというふうな御批判もあったわけでございまして、そこでこれは、むしろ四十八年度は一応保留をいたしまして、四十九年度の予算の段階でもう一度よく検討し直そうというふうに考えまして、この予算につきましてはあえて主張を最後までしなかったわけでございます。
  97. 藤原道子

    藤原道子君 そこで、この点についても検討をぜひ進めてほしい。治療技術の問題、いまいろいろと問題が各地で主唱されているように伺っているし、また各方面からいろいろ陳情も来ているわけなんでございます。きょうは時間の関係でもう……。  そこで、もう一つ伺いますが、被爆者の子供とか孫に対する対策というふうなものはどうお考えでしょうか。結局被爆者の二世、いわゆる白血病、染色体の異常が出ているとか、あるいは被爆者の子及び孫に対する影響調査・研究、その措置等について、現在どのようにお考えになっておるか。実は、この間、被爆者の団体の会合へ行ったんですが、広島の被爆者がその後長崎で結婚した。その人も長崎の被爆者だった。その子供ができたけれども、二人続いてとんでもないお子さんだった。非常な悩みをしているということをいろいろ伺ったりしてきたんですが、そういうことに対していまどういうふうに政府としてはお考えになり、どのような調査をし、対策をお立てになっておりますか。
  98. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 御指摘の被爆二世の健康上の問題でございますが、私どもといたしまして、過去におきまして、この被爆者の二世の白血病の発生状況等につきましての調査をいたしてございます。しかしながら、その結果からは、現在のところ、全くほかの集団との差異はないというふうに結果が得られておりますけれども、しかしこの問題は非常に重要な問題でございまして、引き続き観察あるいは研究を続けなければならないというふうに考えております。特に染色体の異常の発生等、遺伝因子の問題にもし異常が認められるというようなことであれば非常に重大な問題でございまして、現在のところは、私どもといたしまして、そういう遺伝的な問題に影響がないという結論を、報告を得ておるわけでございまして、しかしながらこれはやはり社会的にも、御本人たちにとっても非常に重大な問題でございますので、慎重に取り扱っていかなければならないというふうに考えております。したがって、このいわゆる被爆者の二世の健康の問題につきましては、表立っての調査ということにつきましていろいろ御異論もある方々もございますし、その実施方法につきましては、いま申し上げましたように、非常に慎重に取り扱って今後とも引き続き観察、研究を続けてまいりたい、かように考えております。
  99. 藤原道子

    藤原道子君 私はもう時間が参りました。  過日、ABCCの問題の調査等にも行ってまいりまして、きょうその点を詳しく伺いたいと思いましたが、あとで須原さんがお伺いいたすそうですからこれは省略させていただきますが、昨年の五月二十三日に本委員会の附帯決議事項の中で述べているところである、放射能の影響や治療については、各省にまたがる研究機関及び民間医療機関が一元的に行ない得るように促進をはかること。という附帯決議事項について、その後どのようにこの附帯決議が実行されておるか。  それから原爆被爆者の収容施設の充実ですね。これがいま非常に少ないように私どもは考える。この件について、特別養護老人ホームは広島、長崎にあるが、これをもっとブロック別に設置すべきではないかと、いろいろ考えます。  また、沖縄の原爆被爆者援護対策、これもぜひ詳しく伺いたいと思いましたが、簡単に伺わせていただき、最後に韓国の被爆者に対する問題、これもいろいろと陳情が参っておりますけれども政府自体がどのようにお考えになっておいでになるか。二世、三世の問題、ABCCの問題、そうしてまた、せっかくわれわれがこの前、昨年五月二十三日、本委員会で附帯決議をしたけれども、その附帯決議についてどのように努力されておられるか、こういうことについて御答弁を伺いたい。大臣の御決意もあわせてお伺いをしたいと思います。
  100. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 昨年の本委員会において採択されました附帯決議の中の各省にまたがる研究機関を一元化したらどうか、すべきであるという問題につきまして、これは私どももその御意思を尊重いたしましていろいろと関係各省、特に科学技術庁、文部省、それからABCCの関係では外務省も関係がございますので、四省でひんぱんに御相談をいたしまして、特に昨年の十一月以降、ABCCとの関係もございますので、何回もお話し合いをいたしまして、これを一つの機関にする、機関的に一つにするということは、これはそれぞれの研究機関の成り立ってきたおい立ちから申しまして、あるいはその現在の活動の状況から申しましてむずかしいわけでございますが、これを有機的にあるいは相互に連携を保ち、調整をとり、研究成果をお互いに利用し合うというふうな意味でひんぱんにこのそれぞれの研究機関、これは内容的には厚生省関係では国立予防衛生研究所の支所である原子爆弾影響研究所でございますが、それと文部省の広島、長崎両大学の原爆の研究病院、それからそれぞれ広島、長崎にあります原爆病院がございます。それから放射線医学研究所、そういう各種の被爆に関係のある研究機関が今後密接に連携をとり合ってその成果を生かし連携を保っていこうということで完全に各省の意見が一致をいたしておりまして、そういう態勢をとっていきたいというふうに考えておるわけでございます。   〔理事大橋和孝退席委員長着席〕  それから、収容施設の問題につきましては、これは四十七年度におきましてそれぞれ広島、長崎に百床ずつふやしたわけでございますが、さらにそれ以上ふやす必要があるかどうかという点につきまして、これは敷地の問題あるいは予算の問題等もございまして、これは広島、長崎のそれぞれ県、市で御検討を願うことになっておりまして、検討の結果、さらにふやすことが必要だということでございますれば、私どももこれに御協力することにやぶさかでないわけでございます。現在検討をしていただいているわけでございます。  沖縄につきましても、これは沖縄復帰に伴いまして沖縄の本土化を行ないまして、特別措置法あるいは医療法につきましても、沖縄に全面的に適用いたしますと同時に、沖縄につきましては医療体制も非常に整っておらないというような面もありますので、本土からこの検診班を編成をして派遣をするというようなことも行なってまいっておるわけでございます。  韓国の被爆者につきましては、これは日本に在住する韓国の被爆者につきましては日本人と同様の措置、この法律の適用を行ないましてその援護を行なっておるわけでございます。ただ、韓国に在住している被爆者につきましては、国内法を韓国にまで適用するということはむずかしい問題でございますので、これは外交上の問題といたしまして、韓国政府側から何らかの日本政府に対するその協力方の申し出があればこれに御協力を申し上げることにやぶさかでないというふうな態度をとってまいっておるわけでございますので、これは海外技術事業団などを通じまして日本からお医者さんを韓国に派遣をするというようなこともいままでやってまいってきたわけでございますが、今後もできるだけのことを受けて立ってやっていきたいというふうに考えております。
  101. 藤原道子

    藤原道子君 ちょっとすいませんが、大臣
  102. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほど来藤原委員からいろいろ御指摘をいただきました問題、たくさんあったわけでございますが、私どもほんとうにこうしたお気の毒な方々の援護のためには全力を尽くして当たっていかなければならぬと考えております。年々努力はいたしておりますが、いろいろやっぱり手当てが非常に入りくんでおったり、所得制限の問題とか、そのほかいろいろまだ十分でないと御指摘をいただいたような問題がたくさんあるわけでございます。私どももそういう点については実情に即して一歩一歩改善に努力をいたしてまいるようにいたしたいと考えておるような次第でございます。特に、今度昭和四十九年度の予算、編成もこの八月の末には概算の要求もしなければならぬことになっておりますので、ただいま御指摘いただきましたような問題について慎重に検討いたしまして、前向きに努力をいたしてまいりたいと、かように考えております。
  103. 藤原道子

    藤原道子君 これで終わりますがね、とにかく日本は世界で初めての被爆国なんです。いまでは原爆問題は国際的に大きな問題になっておる、日本の対策はずいぶん注目されているということもお考えになってください、もう二十八年たっていますからね。その間努力しました、努力しましたといっても、どう努力したかということね。それから病んでいる人たちの苦労ということをお考えいただいて、ぜひ至急によき対策をお立ていただきたいことをお願いして、時間がございませんので、これで終わります。
  104. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 初めに国家補償ということについてお尋ねしたいと思います。これは何回となく論議されたものでございます。原爆の被爆者たちを国家補償をもって救っていくべきだという意見でございます。これに対して政府は、その精神に立とうとしていない。そしていつも政府の答弁というのは、この一般戦災者とのつり合いということを引き合いに出して、国家補償を、特に原爆の被爆者にはできないと、こういうふうに答えていらっしゃいます。しかし、私はこの原爆を受けたという、こういう事実、これはほんとうにいままでにないことであり、またこれからもあってはならない人たちでございます。そういう人たちを一般戦災者と比べたりして、そして国家補償はできないというような逃げ口上はやめて、この被爆者の肉体的精神的な苦痛というものを深刻に受けとめて、それをどれだけ熱意を持って救済していくか、原爆の問題というものが国際的にも日本がこれを受けて立つ立場に立っている以上、しかも、戦争によって受けた被害である。戦争というものは国がやったことであって、これを国家補償しないということは私間違っていると。大臣もおかわりになったので、またかというような心でお聞きにならずに、新しい大臣、そして国際情勢もまた国の経済力も成長してきているのでございますので、前向きの御答弁をお願いいたします。
  105. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 原爆被爆者に対する援護を国家賠償的な考え方で立法したらどうかという御意見、私もたびたび承っておるところでございます。そこで法体系のたてまえから申しますと、国家賠償ということになりますと、国と何らかの特別な法律関係の存在しておる者に対して国家賠償を行なうというのが基本でございます。法体系の上からいうと、そういうたてまえになるわけであります。しかし、人類初めての原子爆弾による被爆、こういう方々の特殊性ということに着目いたしまして今日の法律ができておるわけでございまして、しかし、この法律は言うなれば、一般の社会保障的な体系の中に位置しておるものであることはいまお述べになりましたとおりでございます。しかし、私も実はこの問題については長いこと考えてきておるんですが、何か国家賠償といったふうな法体系と、一般社会福祉体系の中間程度に位置するものでないかと、実は私は前々から考えておるのでございます。そこでできることならば、私はよその委員会等においてもお答えをしてきておるのですが、従来のような国家賠償の法体系と一般の福祉体系との中間に私は位置づけて、何らかの法制ができないものであろうかということを、実は私自身悩み考えておるのでございます。私としてはまだ、いまのところ成案は得ておりませんが、何かしらやっぱりこういうふうな原爆という、先ほど来藤原委員からもお話がありましたように、人類初めての原爆であり、そして日本は平和憲法を選択して、将来とも戦争はやらないということを宣言した日本という立場も考えながら、何かその中間的な法体系の中でものを解決することはできないだろうかということを実は考えておるわけでございます。まだ成案を得るところまではいっておりませんが、何とかそういう考えでまとめることができないかということを苦慮しておるというのが私の現在の心境でございます。そうした気持ちだけ申し上げましてお答えといたす次第でございます。
  106. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 先ほどもちょっと問題に出ましたが、昭和四十四年以来、この委員会で附帯決議されて、原爆被爆者援護審議会というものをつくりなさいと、こういうことが提案されております。四十六年にも、四十七年にも毎回この原爆被爆者援護審議会という名前をちゃんとつけて、そして「生活保障を含む被爆者対策について根本的な改善を促進すること。」とうたわれているわけです。それに対して原爆医療審議会の中に福祉部会というものをそれにかわるものとしてつくっているわけです。私、これは非常に消極的だと、はっきり附帯決議で毎年原爆被爆者援護審議会というものを独立してつくりなさいといっているんですから、これをもうつくるべきだと思うんです。先ほどは福祉部会で十分やっているというような御答弁がありましたけれども、私は医療審議会にくっつけたようなこんな福祉部会というものはその趣旨を徹底する会としては弱いと思います。したがって、その運用面、そして実績がどれだけこの会によってあがっているかということを考えてみますと、非常に私はいいかげんなんじゃないか。先ほどいろいろ御意見を聞いて、そして予算の面にこれを反映しましたとおっしゃっておりますけれども、その反映された予算にしちゃあまりにも貧弱じゃないか。これでほんとうに生活保障を含む被爆者対策の根本問題が反映されているかどうか私は疑問だと思います。そういう点で特に援護審議会なんですから、ほんとうに援護のできる審議会にしていただきたい。いままでどういう審議をしてきたのか、そして予算に反映しましたとおっしゃいましたけれども、それは当然のことであって、それ以外に具体的にこういう点が前進していると、こういう点をもう少しお聞かせいただきたいと思います。
  107. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 「原爆医療審議会」の名称を「援護審議会」というふうに直すべきであるという御意見でございますが、私ども四十七年度におきまして名称につきましては御趣旨に沿っておらないかもしれませんが、実質的に審議する内容につきまして、あるいは審議する委員のメンバーを御希望のような審議内容審議できるような委員を拡充強化いたしまして、そこで積極的に原爆被爆者の福祉に関して必要な改善を要するような事項についての意見を御審議願ってきたわけでございまして、昨年度も発足早々でございますが、何回も御審議をいただきまして、その福祉部会のほうから上がってまいりました意見書というものが「原子爆弾被爆者の福祉に関し当面改善を要する事項に関する意見書」というふうなことでまとめられた内容のものが大臣にも御答申をいただきまして、その内容はいろいろと書いてございますが、省略いたしますが、全部それが予算的にも十分な裏打ちができたとは申しませんけれども、相当部分尊重いたしまして四十八年度予算の中にも盛り込んだつもりでございます。今後もひとつ活発な審議会の御審議お願いするようにしたいと思っておるわけでございます。
  108. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 予算に反映した以外にどんなことを実現させましたか。それを一つでもいいですからお聞かせいただきたいと思います。
  109. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) これはもう広島、長崎の大体非常に詳しい現地の行政の責任者から、それから現地のいろいろな患者をお手がけになっておられる原爆病院の院長からまず原爆関係では一流といいますか、一番よく知っておられる専門家方々のお集まりでございますので、そういう方方が随時御意見をかわされる内容というものは非常に貴重なものでございまして、私どもはその内容それぞれにつきまして大きい問題もありますし、個々のこまかい問題もときどきは出てくることもございますが、そういう点につきましても、それぞれ御意見を拝聴して実現に移しておるわけでございます。
  110. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 原爆被爆者に対する問題の解決は具体的にこういうふうにしてもらいたい、ああいうふうにしてもらいたい、いろいろ出ているわけですね。またこの委員会でも毎年具体的な問題が出て、これを検討します、検討しますといっていても検討されていないんですよ。審議会というのはただ意見だけ言って、そうして何にも結果を出さない、言いたいほうだいのことを言っているだけであってということになるんじゃないですか。そういう意味で、これだけは結果を出した、こういう意見を述べて、これがこういう結果に出たというものがやはり出てこなければならないと思うんですよ。この委員会だって私はそうじゃなきゃならないと思うのです。ですから、検討します、検討しますで毎回検討されていない。問題がそのまま持ち越されていますので、こういう原爆被爆者の審議会どもただ検討だけしているんじゃならないと思いますので、強く権威ある、そうして実績をあげる審議会にしていただきたいので申し上げたわけでございますので、ひとつ、これもどうか毎回附帯決議とされて出されておりますので、一そう内容を力のあるものにしていただきたいと思います。  次に、今回は特別手当、それから健康管理手当という手当がいろいろと増額されたわけですが、これについてお聞きしたいのですが、この健康管理手当の対象について、病名が八つあげられております。これはどういうわけでこういう八種類をきめたのか。どういうわけでというとちょっと通じないかもしれませんですけれども、八種類の病気をどういう考えできめたのかということをお聞きしたいわけです。
  111. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) この八種類の選定されましたときの記録等がございませんので推測になってはなはだ恐縮でございますけれども、たとえば造血機能とか肝臓機能その他細胞の増殖機能、こういう器官につきましては放射能の影響が非常に受けやすい器官でございまして、したがって、もし明らかに原爆に起因する疾病でない場合、もし造血機能の障害がありました場合には、これは原爆の影響に関連があるということから、その方々のいろいろの手当てにつきまして、援護につきまして考慮を払わなければならないという観点からおそらく選定されたんだろうというふうに推測いたしておる次第でございます。
  112. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そうしますと、この八種類の障害というのは放射能との因果関係がある障害だと、こういうふうに考えてきめたんだと、またそのとき記録がないからとおっしゃるならば、いまはそういう態度でこの八種類の病名というものを考えているんだと、よろしいでしょうか、これで。
  113. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 非常に放射能の影響を受けやすい器官でございますので、必ずしもそのかかっております病気が原爆と直接の関係がないということがわかりましても、しかしながらあるいは関連をする疾病ではないかという手落ちがあってはいけないということから、おそらくこの八つの疾患につきまして選定がなされたんだというふうに私どもは推測をいたしております。
  114. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 またもう一つ考え方として、この八種類の障害というものは大体からだの弱い人の病気が含まれてしまう、そういう範囲を取り上げていると、こう考えてもいいと思うんですね。それいかがでしょうか。
  115. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 非常に医学的な問題でございまして、むずかしい問題かと存じますけれども、必ずしもやはり虚弱ということだけに限定することばできないというふうに考えております。
  116. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこでこの対象者の問題はこの疾病でもってしぼっている。それから老齢者であること、身体障害者であること、母子家庭であるということでまたしぼっておりますが、この老齢者というものを対象にしているということが毎回やはり委員会で問題になっているわけですね。これは衆議院で坂口委員がやはり質問しております。これに対して大臣が、健康管理手当の支給条件に年齢制限があるということは理論的に考えてみるとやはりおかしな点もあったかなということを感じているので将来の問題として検討すると、こういうふうにおっしゃっております。それで、大臣が年齢制限は確かにおかしいというふうにお気づきになったということは一歩前進だと思いますが、それでは具体的にどういうふうに来年度の予算にこれを反映させるか、毎年検討、検討できておる問題ですので、もう検討はこの辺でよろしいのじゃないかと思うんですね。全部年齢をはずして健康管理手当を出したらいいんじゃないか、こういうふうに思います。いかがでしょうか。
  117. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) この問題につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、どうも今度の法改正で五十歳まで下げることにしておるわけでございますが、いろいろ議論してみますと、しかも被爆者は非常に老化現象が著しい方々ばかりでございます。そんなことから考えてみまして、どうもやはり年齢制限をやっているのはおかしいじゃないかという感じがするわけなんですが、そのやり方としては、先ほどもお答えいたしましたように一応五十歳としております。これは老齢ということから始まっておる制度でございましたので、そこで五十歳と、ことし御審議お願いしておるわけなんですが、それを四十歳といったふうに下げたやり方がいいのか、あるいはまたさらにもう全部撤廃しちゃったほうがというやり方のほうがいいのか、実はいま検討中でございます。これはまた検討というとほんとうにやる気があるのかなんといわれますが、これは間違いなくことしの八月の予算の概算要求までに全部撤廃するかあるいは五十を四十に下げるかというやり方がいいか、その二種類の方法があるわけでございますので、どちらかの方法を採用するようにひとつ結論を出すようにいたしたいと思います。筋からいうとどうも年齢で五十歳以上は、以下はというふうにやるのも筋が違うような私感じがしているものですから、そういうふうに衆議院でもお答えいたしたわけでございますが、いずれにせよどちらかの方式をとることにいたしまして、八月末までに必ず結論を出します。
  118. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 どうして検討しなければならないのですかね、これ。その出発が高齢者から始まった、これはわかりますよ。けれども、もうすでに高齢者は対象になって済んでいるのじゃないですか。五十歳以上は全部健康管理手当をもらう対象になっているのですから、今度はそれ以下をやるのでしょう。それを、それ以下をやるのに高齢なんということ考えなくたっていいのじゃないですか、老齢なんて。私はそういう頭でいると、出発が高齢から始まった、老齢だ、老齢だ——だったら老齢健康管理手当とつければいいじゃないですか——。そういう精神のものじゃないでしょう、これは。ですから五十歳までは段階的にいままでやってきたのですね、やむを得ず。ですからこの辺で、もう発想を変えて、老齢とか高齢なんということはもう片づいちゃったんですから、あとはこんな年齢制限なんということを撤廃すべきですよ。しかも、被爆者というのは人数がきまっているのじゃないですか。そんなにいないのじゃないですか。また、ふえっこないじゃないですか。そのわずかな被爆者を、そういうふうにまるでいびっているみたいなしぼり方をしないで、早く高齢から出発したとか老齢者なんというものを対象にしている発想をやめていただきたい。そういう頭をこの委員会やめていただきたいのですよ、大臣。そうして、あくまでも健康管理手当というのは被爆者全体に出すのが当然なんだ、けれども、予算がそれだけ取れない、取れなければやむを得ず最小限度の制限はして、それを一日も早く解決していくというならばわかりますけれども、年齢制限なんというものは、この健康管理手当にはおかしいです。それもやむを得ないとしても、これからは私は年齢制限は絶対とるべきだ、こういうふうに思います。検討ということは、やらないというふうに私、いつもとっているのですよね。逃げ口上なんです。これだけ年齢の問題は健康管理手当のガンとして指摘されてもいるし、大臣もおかしいとお気づきになったんですから、勇気をふるってこれを撤廃していただきたいと思うのです。いろいろ被爆者の救済の問題はありますけれども、これだけでもすっきりととってしまえば、あとは大蔵省に老齢なんということを抜きにした健康管理手当なんだから出してくれというふうにがんばればいいと思うのですね。老齢、老齢という発想で大蔵省に談判したら、どうですか、老齢は充実したぞと、満たされているんだから今年度は前年度と同じでいいなんていうふうにされないとも限らないんじゃないでしょうか。そういう点で年齢制限を、絶対にこれは取るべきだと、ひとつお願いします。
  119. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 非常に力強く御激励をいただきまして、まことに感謝にたえないところでございます。そこで、私は検討中というのは、そのやるかやらぬかはっきりしないような検討を申し上げているのではなかったはずでございます。すなわち全部年齢制限をやめてしまうか、あるいはいままでのいきさつもあるから、多少年齢ということも頭に描きながら、四十ぐらいまで下げるというやり方、その二つのうちの一つを必ずやるというわけですから逃げ口上ではない。これは御理解いただけると思うのでございます。そこで、どちらのやり方で進もうかということで考えておるところでございまして、まだ結論がそこまで出ていませんものですから検討と申し上げているので、私の検討は、二つのうちの一つの検討でございますから、先生のおっしゃったことは、十分私は理解いたしておるつもりでございます。ただどちらにするかという結論をいま言えといわれても、もうちょっとそこには、どちらにするかということで考えさせていただきたいという意味で申し上げておるわけですから、柏原委員の仰せになっておるお気持ち、私も理解しております。これは何とかしなき価、ならぬと、かように考えておる次第でございますから、いましばらくひとつ結論を申し上げるまでお待ちいただきたいと思います。
  120. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私の言っていることを理解しているとおっしゃっておりますけれども、私は理解されていると思っておりません。私は、健康管理手当は被爆者全体にあげるべきものだと、これを理解してくださっているんですね、それじゃあ。どうですか、その点は。
  121. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) そういう気持ちを理解しながら、方式として、どうやったらいいかということを考えておるわけでございます。
  122. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 「そういう気持ち」なんてばく然としないで、被爆者全部に出すべきものが健康管理手当だと、それを理解していただきたい。「そういう」なんてごまかさないで、大臣のことばではっきり反復言っていただきたいですよ、私。それは理解したと、やっぱり記録にちゃんととっておく必要がありますから……。
  123. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) おっしゃるとおり、柏原委員の仰せになる気持ちといいますか、主張は十分理解をいたしております。気持ちじゃなくて主張といたしておきますが、主張は十分理解しておりまして、それを実現するための方式として、どちらの方式で出すかという結論をいま申し上げるにはもう少し時間をかしていただきたいと、こういうことを申し上げているわけでございます。
  124. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それで、五十歳以下の八疾病の人数が、また推移でもけっこうですけれども、おわかりでしょうか。
  125. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 五十歳以上と五十歳以下の年齢による人数につきましては、健康管理手当につきましては、ちょっといま数字がはっきりしたあれがございませんが、大体五〇対五〇、五〇%ぐらいになっているわけでございます。五〇%でございます。それから一般被爆者のほうは三五%、平均すると四八%ということになっております。
  126. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 五十歳以下の八疾病を持っている被爆者の数です。それだけおっしゃっていただければいいんです。
  127. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 特定疾病の患者数がどのくらいあるかという御指摘だと思いますが、これは私ども調査いたしておりませんので、五十歳以下の階層につきましてつかんでおりません。
  128. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 こういうふうに、つかんでおりませんでは、私済まないと思うのですね。それはたいへんなことかもしれません。ですけれどもほんとうにやる気だったら、被爆者の数はきまっているのですから、その中の五十歳以下の八疾病の患者はこのぐらいだというくらいのことはわかっていなければならないと思うのですよ。そうして、その人たちを何年間で救うとか、そういうやっぱり計画が出ると思うのですね。五歳ずつ広げていった、五歳ぐらい広げればいいだろう、また五歳、また五歳なんていうふうにやっていないで、もう少し全体の数でつかんで、そうしてこれを何年間で解決する、被爆者の方たちで、一番赤ちゃんのときに被爆した人は、もう二十八歳になっているのです。そういう点で、もう少し真剣にこの五十歳以下の人の中で健康管理手当を受けさせたい人をどういうふうに掌握し、どういうふうに計画するかということを考えていただきたいと思うのですね。先ほど大臣は引き下げにするか、撤廃するか、引き下げといったってどういうふうに引き下げにするかまだはっきり考えてもいない。考えるその資料すら掌握していないというのじゃ私はならないと思いますね。いかがでしょうか。
  129. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 御指摘の八疾病につきまして、五十歳以下の階層の状況調査をしていないというおしかりでございますけれども、この調査、非常に私どもむずかしいというふうに考えております。たとえば造血機能の障害にいたしましても、その内容といたしましては、白血球の減少症とか、あるいは出血性素因、紫斑病、血小板減少症あるいは内分泌の機能障害にいたしましても、甲状腺の機能異常あるいは月経異常等非常に多岐にわたる症候がございまして、これを悉皆調査をいたしますことは、技術的にかなり困難なことでございまして、まあ大まかな推計をいたすといたしますと、厚生省が実施いたしております愚者調査等の数字を当てはめまして類推をする以外に方法はないかと思いますが、そういう類推方法でさらに施策が立てられるということでございますれば、そういう技法をもちましてやることもやぶさかではございません。
  130. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 その点、ただ引き下げるというばく然とした大臣お答えに対して、どうしても引き下げの方法でやるとしたら、やはり計画を立てて、何年後には全部解決していくというくらいのところまではできますですね。  それで病気の問題でもうちょっとお聞きしたいのですが、これは先月二十五日の朝八時のNHKのニュースで、原爆の病気のことについて発表がございました。これは広島原爆被爆者健康管理所が被爆と胃ガンの関係を明らかにするために、昭和三十九年から七年間にわたって約一万五千人余りの被爆者を対象に検診した結果が、被爆者は一般の人よりも胃ガンの発生率が二倍も高いということが明らかになったというニュースでございます。この胃ガンの認定を制限しているこの国のきびしい基準には問題があるということを、結論として指摘しているわけです。このニュースにあるとおり、胃ガンについて、政府はどういうふうにお考えになっているかお聞かせいただきたいと思います。
  131. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 原爆被爆と悪性新生物について、その因果関係が認められまして、認定疾患とされているものの中に、日本人に多い胃ガン、この関係がまだ十分に解明されているとは申せない現状でございます。しかしながら、特に胃ガンにつきまして、最近、多量の被爆を受けた方につきまして起因する可能性を否定できないという例がございます。したがいまして、今後といたしまして、やはりそういう点に着目いたしまして、この胃ガンの問題の取り扱いについては十分検討していかなければならない問題であろうというふうに私どもは考えております。
  132. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、健康管理手当を受ける際に医者から書いてもらう診断書についてでございますが、これはこの前の委員会で、私、質問しまして、これについて、場合によってはこれは削除することも検討したいというふうに答えが出ているわけですが、この検討はどういうふうにされましたでしょうか。
  133. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 御指摘のところでございますが、それはたしか放射能に関連あるかどうかという、医師が患者に対しまして設問をする事項だというふうに理解いたしますが、その問題につきましては、やはり医師の書きやすいように改めるべきだということで、私ども、至急、それは改正いたしたいというふうに考えております。
  134. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 削除するんですね。
  135. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 削除ということにつきましては、やはり法令上の問題がございますので、できないと思いますが、しかし医師が書きやすいように改めることにいたしたいと思います。
  136. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 欄はあのままであるけれども、この三つに分けるあの辺を直すというわけですね。
  137. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) そのとおりでございます。
  138. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 これはいつ直すように決定していただけるんでしょう。
  139. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 今回の法改正に伴います一連の改正手続の際に改めるつもりでございます。
  140. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それははっきりとお願いいたします。たいへん担当している人たちがこの問題を悩んでいて、そして削除する、または内容についてもっとやりやすくするというようなことに対して期待を持っていたらしいのですが、それっきりうわさだけだったというんで、ここではっきりとお聞きしたわけでございますので、ひとつよろしくお願いします。  それから健康管理手当のやはり手続ですが、この障害の種類によって一年と三年とにきめられておりますが、これもそのつど申請しないと継続できないという、そういう不合理があるわけなんです。原爆による放射能の特殊性というものから考えて、一年とか三年という期限はなくすべきだと、こういうふうに思います。それがどうしてもできないというならば、一年というのはあまりにも短いんじゃないかと、せめて五年とか七年とかというふうにできないかと、こう思いますが、いかがでしょうか。
  141. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 期間につきましては、これは厚生大臣が定めてございます。したがいまして、その病気の症状等によりましてその区分をつけるわけでございまして、たとえば造血機能障害に伴う疾病——これは貧血症を除いてございますが、それと循環器機能障害を伴う疾病につきましては三年、それから肝臓機能障害を伴う疾病、細胞増殖機能障害を伴う疾病、内分泌腺障害を伴う疾病、脳血管障害を伴う疾病、腎臓機能障害を伴う疾病、それと水晶体混濁による視機能障害を伴う疾病、これにつきましては一年と、こういうふうに症状によりまして健康管理の手当の支給要件に合うかどうかというチェックをいたすわけでございまして、おのずから期間の区別が出てきているわけでございますが、その問題につきましては、今後いろいろ検討すべき事項も含まれておると思いますので、この問題も私どもといたしましては、十分検討さしていただきたいと思っております。
  142. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 検討ということについて、また、くどいようでございますが、ほんとうに検討していただけますね。そしてその検討した結果はどういうふうにして発表していただけますか。
  143. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 御指摘のように、この手続が非常に煩瑣であるという面もございますので、専門家意見並びに福祉部会の方々の御意見伺いまして、直すべきはさっそく直したい、訂正いたしたい、かように考えております。
  144. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、外国人の被爆者の救済についてお聞きいたします。外国人の被爆者について、政府はその数及び実態をつかんでいらっしゃるかどうか、お伺いいたします。
  145. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 外国人の中でも、特に人数が多うございますのが韓国人でございますが、韓国の国内では、やはり被爆者団体というのが一応できておりまして、この被爆者の団体に登録している方の数は約六千三百名ということになっております。しかし、これは登録しておられる被爆者だけでございまして、登録しておられない、あちこちに散らばっている患者の数は推定で二万人ぐらいいるんじゃないかというふうなこともいわれておるわけでございます。あと、アメリカとか、フィリピンとか、それぞれいろいろなところにおられる方もありますが、これは数が少のうございます。大体アメリカで四百人ぐらいというようなことをいわれております。
  146. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 はっきりした数を掌握するということは非常に困難かもしれません。しかし、アメリカにも韓国にも広島、長崎で被爆した方々がいられるということは事実でございますね。特に韓国では、外国人被爆者の九割を占めていると、こういうふうにいわれております。これらの被爆者は、戦前、強制連行されたという歴史的経緯があります。これについて日本政府はそういうことで被爆した者をも含めて、一切の戦争による賠償責任は日韓条約で解決済みと、こういうふうに言うかもしれません。しかし、法律の上ではそうであっても、人間として、人道的に同じ悲惨な被爆者に対して何とかしてあげなければならないと、こう思います。そこで大臣はどういうふうにお考えか、まずお聞きしたいと思います。
  147. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 韓国におられる方につきまして、こちらでめんどうを見るということはできないわけでございますが、政府間のルートを通しまして、すなわち、韓国ならば韓国の政府と日本政府、そういう政府のルートを通して話し合いがありますれば、海外技術協力事業団というものを通しましてできるだけの援助をしなければならない、こういうふうに政府としては考えておるわけでございまして、こうした日本政府考え方は、韓国政府のほうにおいても十分理解しておるところであると、かように考えておる次第でございます。
  148. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 これをもう少し具体的にするならば、日本政府として具体的な案が考えられているかどうか、先ほど韓国からの申し入れがあるならば何らかの形で応ずることはやぶさかでないというような御答弁がございましたが、日本政府として具体的な方法を考えていらっしゃるかどうか、お願いいたします。
  149. 中江要介

    説明員(中江要介君) ただいま厚生大臣が御説明されましたことをさらに具体的に御認識いただきますために、ことしに入りましてから日本政府と韓政府の間でどういうふうに話し合いが行なわれておって、どういう方向を向いているかということを御説明さしていただきます。  まず、ことしの一月の二十六日に駐日韓国大使が外務大臣のところに参りまして、本件について韓国政府としては先ほど柏原先生がおっしゃいましたように、本件は人道的な問題であるので、日本政府としても人道的な見地から何らかの医療協力、たとえば在韓被爆者医療センターの建設というような、そういうことを考えてもらえないだろうかという話がございました。で、これは法律的には先ほど先生も御指摘のように非常に、日韓関係正常化のときに処理されているとはいえ、問題が人道的な側面の多い問題でございますので、政府といたしましてもいろいろと考慮しておるわけでございますが、ただいまの駐日韓国大使の申し入れに引き続きまして、二月の二十一日に韓国の保健社会部と申しますから、日本で申しますと厚生省に当たるかと思いますが、そこの沈という医政課長——医療行政の医政課長が外務省に参りまして、そして、その大使から外務大臣への申し入れをふえんした形で外務省の係官との間でいろいろ話をいたしました。そのときに、沈課長の言われますのには、韓国にある原爆症患者という人たちは主として慶尚南道という地域がございます。慶尚南道というところにかなり集中しておるので、その慶尚南道の中心都市、たとえば晋州というような町があるわけですが、そういうところに原爆医療センターを設立するというような形で具体的な処理を考えていってはどうかという話があったわけです。こういうふうにだんだん話が具体化しておりまして、それに対しまして、そういう医療センターの設立というのは人道的な措置としていきなり持っていくということも考えられないわけではありませんけれども、すでに日本と韓国との間には有償無償、いろいろの経済協力のワク組みができておりますので、そういうことであるならば、経済協力の一つのプロジェクトとして韓国側から強力に推進して持ち出していただくということが非常に役立つのではなかろうかと、つまりそういった医療センターの設置というものを韓国政府のほうから優先順位を高くして、具体的な経済協力案件として日本政府に御提案いただくならば、これは日本政府としても非常に具体化しやすいという説明をして、それを了解されて、いま韓国政府では御検討中だろうと思います。  それから、そのときにまた別な話といたしまして、日本は初めての、世界で最初の原爆被爆国として原爆医療については他国よりも進んでおるわけでございますので、そういう日本の原爆医療についてのいろいろな資料をできれば参考としていただきたいという要望。それから先ほど来厚生省のほうからもお話に出ておりますけれども専門家を韓国に派遣して、韓国における原爆医療の実態をよく調査していただきたい。そういうふうにすることによって韓国におられる不幸な原爆患者の方々のために日韓で、政府レベルで協力してやっていこうではないかという話がございまして、これに対しましても具体的にそういった調査団の派遣だとかあるいは資料の提供とかという要望があれば日本政府としてもできるだけ協力いたしましょう、こういう段階でいま終わっておる、こういう次第でございます。
  150. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ぜひそういう点、積極的にやっていただきたいと思います。  それにつけ加えまして、実際にアメリカヘも韓国へも日本の大学の学生やあるいは民間の医者が診療に出向いているわけです。こういうものに対して、まあ国としてこういった診療団に何らかの応援、援助、これを積極的にすべきではないか。そうして、でき得ればこの診療団を充実した規模にする。また、定期的に行なえるようにするという必要があると思いますが、この点はいかがでしょうか。大臣にお聞きしたいと思います。
  151. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 韓国に医師を派遣したりあるいは韓国からの医師を受け入れて日本で研修をするというようなことは、海外技術協力事業団などを通じて過去にもやった例がございますが、アメリカなんかの場合ではちょっと事情が違いまして、日本の医師がアメリカで医療行為をすることを認めておらないわけでございます。したがいまして、たとえば予研の原子爆弾影響研究所の所長がアメリカに行きまして——これは医師でございますが——行っても治療行為はできないわけでございまして、ただ見て若干のアドバイスをする程度のあれでございまして、アメリカの医師もそのかわり日本へ来ると医療行為はできないようになっております。そういう特殊な事情がございますが、韓国の場合にはこちらから医師が行ったり、向こうからの医師を受け入れたりするということを過去にやっておりまして、今後もそういう御要望が韓国側にございますればそれを受け入れるようにいたしたいというふうに思っております。
  152. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 最後に大臣お願いいたします。  この被爆者の問題はもう戦後二十八年、そして当時赤ちゃんであった方ももう青年になり、また青年であった人はもう五十になっておるわけです。まあ、こういう点で、ぜひこの援護対策というものを充実さしていただきたい。毎年毎年同じ審議が繰り返されることのないようにがんばっていただきたいと思います。大臣の御決意を一言お願いいたします。
  153. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 原爆被爆者の援護につきましては、私どもこれで十分だという考えは持っておりませんので、今後ともこれが充実強化のためには全力を尽くす考えでございます。
  154. 須原昭二

    ○須原昭二君 私は原爆被爆者に対する特別措置に対して、関連をして、とりわけ幾たびか国会の論議を通じて問題になっておりますアメリカの原子爆弾傷害調査委員会、いわゆるABCCの問題についてひとつお尋ねをいたしたいと思うのです。ただし、時間の制限がございますから、どうぞひとつ、政府の皆さんにお願いをいたしますが、要を得た簡潔な御答弁をお願いいたしたいと思います。特に八月の六日、八月の九日、原爆記念日が——きょうは五日でございますから、二ヵ月の後には二十八周年の記念日を迎えるわけです。いまなおこのABCCの問題を見るたびに、私は二十七年に日本が独立して以来なお占領行政が延長されている、あるいは屈辱的なものである、そういう点を常々感じておるわけでありますが、米国の占領政策が二十七年の講和条約が結ばれて解かれた後、ABCCがわが国において調査活動を続けてきておるわけでありますけれども、はたしてABCCの設置の法的根拠あるいは法的な地位は何であるかということを、簡明にひとつ大臣からまず御答弁をいただきたいと思います。
  155. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 御答弁申し上げます。  ABCCは、一九四六年十一月の二十六日付で、米国大統領の命令に基づき、米国政府の機関たる米国原子力委員会と米国学士院との契約に基づいて設立されたものでございます。
  156. 須原昭二

    ○須原昭二君 きわめて抽象的でありまして、明確な法的な根拠あるいは法的な地位ということに相なりません。したがって、具体的な一つ一つの問題点をあらわしながら、この問題点をさらに具体的にお尋ねをいたしてまいりたいと思います。  まず最初に、いまもお話がございましたように、アメリカ大統領、そして原子力委員会、さらに学士院との契約に基づいて設置がなされておるということは、アメリカのことであって、日本における法的な地位はどういうことなのか、あるいは法的な根拠はどうであるかということを私はお尋ねしておるのであります。  しかも、特に厚生大臣は、あなたの指揮下にあるところの、あの現地におけるところの広島、長崎、この予防研の支所長が厚生省の所管であります。大臣お答えになりませんけれども、この地位がわからなくて折衝されておるのかどうか。非常に私は疑問だと思うわけであります。  さらに私は質問を続けてまいりますが、ことしの四月二日、外務省は、広島、長崎のABCCの資格を、在日アメリカ大使館の付属機関から一般のアメリカ政府機関に切りかえる口上書をアメリカ側に伝達されておると聞いております。聞いておると同時に、私はここにすでに資料を持ってきておりますから、やったことは間違いはございません。この新しい口上書と、昭和二十七年十月二十二日の古い口上書、この二つを私はここに持ってきておりまするけれども、その差異についてまずお尋ねをいたしたいわけです。どういうところが違っておるのか。この点について御答弁をいただきたい。
  157. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 昭和二十七年十月二十二日に日米間でかわされました口上書によりまして、日本側は、米国のABCCに対しまして、在日米国大使館の付属機関としての地位を認めたわけでございまするけれども、ABCCの行なっております業務の内容等にかんがみまして、アメリカの大使館の付属機関としての地位をそのまま認める、継続させるということについて若干の問題を見出しましたので、ことしの四月の二日付をもちまして、日米間で新しい口上書を交換いたしました。  ABCCに対しましては、米国の政府機関としての地位を引き続き認める。こういうことにいたしたわけでございまして、ことしの四月の新しい口上書によりまして、米国大使館の付属機関としての地位は失われることにいたしたわけでございます。
  158. 須原昭二

    ○須原昭二君 要約をいたしますと、二つ。すなわちアメリカ大使館の付属機関でなくなった、したがってアメリカの政府機関の出先である、これが一つ。したがって外交官としての取り扱いはなくなった、こういうことですね。  いま一つは、ABCCの活動をさらに継続をすることを認めたわけですね。間違いありませんね。
  159. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 二点御指摘でございましたけれども、そのとおりでございます。
  160. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういたしますと、古い口上書に盛られておるところの項目は、生きておるということになりますね。
  161. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 昭和二十七年の口上書によりましてABCCに認めました、米国の在日大使館の付属機関としての地位は失わしめたわけでございます。
  162. 須原昭二

    ○須原昭二君 何だか、そのほかのことじゃ変わってないように私は承ります。  したがいまして、古い口上書の問題点について、生きておるという点について、私は質疑をいたしたいわけですが、古い口上書によりますと、「もつ。ばら米国資金によって運営され、日本側当局の密接な協力のもとに相互利益になる二つとないきわめて重要な学術的科学的事業に従事している同委員会機能」、こう書いてあるわけです。そういたしますと、率直に申し上げますが、この「もっぱら米国資金によって運営され、」ということは、運営の実質的な主導権がアメリカ側にあるという意味なのか。財政的負担のみを意味しているのか。その政府の統一見解。  さらにまた、「日本側当局との密接な協力のもとに相互に利益をもたらす」と書いてありまするが、アメリカ側にもたらす利益と、日本側にもたらす利益と、それぞれ私はあると思うんです。これはどういうふうに御理解をいただいておるんですか。この点が二番目。  三番目は、「二つとないきわめて重要な学術的科学的事業に従事している同委員会機能」、こういう機能という問題が二つとないということは、被爆国は日本だけ、すなわち広島、長崎しかないんですから、二つとないということはよくわかる。「きわめて重要な」という問題について私は問題にいたしたいわけでありますが、これは、アメリカにとって、軍事的核戦略上の意義が抽象的にこの中に含まれておるのではないかと思うんですが、以上主点についての見解をお尋ねをいたしたい。
  163. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 二十七年の口上書の中に、御指摘のとおり、ABCCが合衆国資金によって運営され、日本側当局との密接な協力のもとに相互に利益をもたらす科学的事業に従事するという委員会機能をうたっているわけでございまするけれども、昭和二十七年以来このような形で運営されてまいりましたABCCの事業の内容につきまして、今日的な状況から考えまして、日本側といたしましては、新しい口上書のもとに、大使館の付属機関としてではなくして、米国の政府機関の出先として行なっておりますこのABCCの事業につきましては、かねて、きわめて独自なまた貴重な学術研究が行なわれている意味におきましてこれに協力いたしてまいってきておりまするけれども、運営に伴いまする機構上の問題あるいは財政上の問題、そういうものが出てまいりましたので、昨年の秋以来米側といろんな形で折衝してまいりまして、四月の末にもこのための日米間の会議が持たれたわけでございます。したがいまして、今後の問題といたしましては、日米間でこの科学的な事業にいかなる機構をもって当たることがよろしいか、それに関連いたしまして、日米間の財政負担をどういうふうに考えるかということが当面の問題になっているわけでございます。
  164. 須原昭二

    ○須原昭二君 その日米間の交渉の問題については、後ほど私のほうから指摘をいたします。  ただ、問題は、私が言っていることは、いまおたくは繰り返して申されておりますけれども、アメリカ大使館の付属機関からアメリカの政府機関に変わったんだと、こういうことだけであって、あとのことについては私は古い口上書が生きておる、こういうふうに思います。ですから、その古い口上書が生きておるかどうか、死んでおるのか生きておるのか、この点を私は聞いているわけなんです。  それから、学術的な問題点については、抽象的で、戦略的な問題があるのかないのか、明確にお答えをいただきたい。
  165. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) いま先生が御指摘の、古い口上書の内容という点でございますが、私どもといたしましては、研究成果については日米合同委員会の形で発表する、こういうことを御指摘だろうと思いますが、そのことにつきましては、引き続き、やはり日本並びに米国も対等の立場で研究成果を発表するということにつきましては変わっていないというふうに理解をいたしております。
  166. 須原昭二

    ○須原昭二君 答弁になっていないんですよ。そんなことを私は言っているんじゃないんです。きわめて、今日このABCCというものがもっぱらアメリカ側の資金によって運営されるとか、あるいは相互に利益をもたらすというけれども、その相互に利益というのはアメリカにとって何の利益なのか。あるいは日本にとって何の利益になるのか。この点を私は具体的に聞いているわけです。この口上書の古い部分について、残っているのか、残ってないのか。死んだのか、死文であるのか、その点を聞いているんですが、私の質問からどうも方向をはずして答弁をされているわけです。——こういうことになるとどうしても時間が延長してしまいますから、委員長、よろしくお願いいたします。
  167. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 委員長のほうからちょっと一言申し上げますが、須原君の質疑というものはおそらくこういうことじゃないんですか。一九五二年十月二十二日にかわされた口上書ですね。その後段の部分、「大使館は、この機会に、専ら合衆国資金によって運営され、日本側当局との密接な協力のもとに相互に利益をもたらす独得かつ高度に重要な科学的事業に従事している同委員会機能に対する日本国政府の厚意的な配慮並びに理解に対して、謝意を表明する。」と、こうなっておりますから、この部分は依然として生きておるんですかということじゃないんですか、一口に言ってしまえば。
  168. 須原昭二

    ○須原昭二君 そうです、そのとおりです。
  169. 矢山有作

    委員長矢山有作君) その点どうなんですか。
  170. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 委員長指摘のとおりのことでございまして、この部分は生きております。
  171. 須原昭二

    ○須原昭二君 それは重大な発言でございますから、よく御銘記をしていただきたいと思います。  そこで、このABCCの問題が幾たびか国会で論議がなされておるわけであります。それで、かつ、そういう国会の中におけるところのいろいろな討論の中でこれがまだ解決されないままに交換をされておる。日本が、昭和二十七年独立して、占領行政が取り払われたにもかかわらず、加害者であるアメリカが被害者である日本の原爆被災地に居すわって、しかも一片の紙きれ同様の口上書によってABCCの調査研究が継続されてきておる。ここに問題があるわけです。いま委員長のお取り計らいでこの問題は生きておるということがはっきりしたわけでありますが、この点を認められれば、当然私が言ったことになると思います。一体この口上書なるものはいかなるものか。私はこの口上書なるものの法的な性格をひとつ局長から御答弁をいただきたいと思います。
  172. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 口上書と申しますのは、通常外務省と在外公館、つまり大使館との間にいろいろなやりとりがございまして、そのやりとりの内容文書で確認する場合に使われる非常に広い用途を持ったものでございます。  本件の口上書は、その中で、特に外務省が政府を代表して、この外務省と米国大使館との間の口頭の了解をこの文書によって確認するという性質のものでございまして、これ以外にも、たとえばいろいろ便宜供与を求める口上書とか、これに対してどういう態度をとるかということを答える口上書とか、いろいろ非常に範囲は広うございますけれども、本件口上書は、そのうちで、特に日米間の、つまり外務省と大使館との間の了解を文書にとどめたものということでございまして、なぜ、こういうことができるかと申しますと、これは外務省が外務省に与えられた国内法上の権限に基づきまして、その権限の範囲内で外交案件の処理としてなされたものでございまして、新たな約束を、つまり法律行為に準ずるような行為として外務省が新たな約束を米国との間にするという性質を持つことはできないわけでございます。
  173. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういたしますと、ますますこれはたいへんなことになるわけです。いまお話を聞いておりますと、ABCCは外務省と書面で、口上書というものは、今後仕事を継続さしてもらいたいと申し入れてきたら、外務省はまた口上書でまあ差しつかえございませんと、こういう御返答をしたというにほかならない、いわば御希望ならお仕事を続けてくださいと、こういうあいさつを言った程度のものではないか、こういうふうに私は解釈をしてもいいと思うのですが、特にお話がありましたお話の中に、便宜供与を与えるということを言われました。まさしくこのABCCはアメリカの意図に基づいて便宜を供与しておる、こういうふうに解釈してもいいですか。
  174. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 私が便宜供与と申しましたのはそういう意味で申したのではなくて、たとえば米国からだれか政府の役人が来るという場合に、日本の外務省に対しましてこういうような便宜を与えてくれないかということを申してくる場合に、別に口上書でもって言ってくるというふうなこともございましたので、そういう意味で申したわけでございます。一般に国際法上の問題でございますけれども、日本だけじゃなくて、外国の政府機関あるいは民間の機関その他の機関が自由に外国に駐在しまして、その政府の許可のもとにいろいろな活動をするということがございます。そういう意味で外務省といたしましてもアメリカのみならず、各種の政府機関あるいは準政府機関あるいは民間の機関を日本に置いて活動を認める趣旨の口上書をたくさん出しております。そういう場合に一定の条件をつけるというために使われる趣旨のものでございます。
  175. 須原昭二

    ○須原昭二君 いま私は一般論を言っているわけじゃないんですよ。ABCCという問題は、日本はけっこうだ、アメリカもけっこうだ、みんな異論なければ私は口上書のようなものでもいいと思うのです。しかしながらあれだけ国会で何度も大議論が戦わされているABCCの設置の問題について、今回もまた口上書で話し合うというような姿勢そのものに問題がある、政府はまさに従来の反省がない。同じ手続として同じことを再び繰り返しているにほかならないのではないか、ほんとう調査研究が必要ならば、先ほどどちらか言われました平等だというお話が言辞の中にありましたけれどもほんとうに両国間が平等でお互いの主体性を守りつつそういう形で両国間が明確にしてやるというなら、こういう口上書のような形でものごとを解決していくのではなくして、正式に二国間の協定をというような、そういう手続を私はとるべきだと思う。そういう点についての御見解はどうですか。
  176. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先生の御指摘のとおり、こういう政府機関の設置にあたりまして、協定を諦結するということは不可能なことではございません。しかし、私ども立場は協定を諦結しなくても、このような口上書によって十分措置し得るというのが政府の見解でございます。
  177. 須原昭二

    ○須原昭二君 言うまでもなく、ABCCは戦後間もない二十一年にアメリカ大統領トルーマンの命令で設置された、先ほど言われたとおりです。最初から米国の核戦略の一環として原爆の効果、もう歴史をひもといていただけばよくわかるように、長崎、広島に落としたその原爆の効果を確かめる調査としてアメリカ軍の軍隊がやったんです。そういう性格を持って発足をしたわけです。したがって、調査だけに重点が置かれて、治療はせずに被爆者をモルモット扱いしていたことに今日なお現地における被爆者はもちろんのこと、日本国民の中に大きな批判、反感というものがきわめて高いのです。こうした国民的な感情は非常に無視できない。このABCCの歴史的経過を見ると当然わかってくることであります。そういう問題が他面日本の国内にあって、ただ口上書のような口約束というような軽いあいさつ程度のあいさつ状で文書の交換というのは私は不適当である、したがって、今回の口上書はこれを無視している、なぜ政府はABCCの日本の移管を要求しないのか、私はその理由をひとつお尋ねをしたいと思うのです。
  178. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私は、このABCCと私ども厚生省の予研共同研究ということで始まっておるということを承知いたしております。それから昨年、共同研究につきまして米国側から日本側に対して相談をしたいという申し入れがございまして、厚生省としてはこうした研究の継続が必要である、こういう観点に立って折衝をいたしているような次第でございます。  そこで、先ほどいろいろお話のございました協定ということでございますが、研究の、相互研究をやろうということでございますから、私は外務省のことはよくわかりませんが、口上書でやって支障がないのではないかと思いますが、専門的なことは私は自信がありません。  そこで、私どもとしては、この共同研究を継続的に行なっていくということについては、必要であるという判定に立って、しかしながら、日本政府がこの共同研究については、日本の分については主体性を持つ、これは私は絶対に必要なことでなければならない、こういうことで、実はここにおります審議官が向こうと折衝しておるわけでございますが、いつも会うたびに私は主体性を確保するようなやり方で共同研究についての折衝をするようにということを常日ごろ言うておるわけでございまして、私どもは今後とも主体性を持ちながら共同研究は続けていく、こういう方針に考えておる次第でございます。
  179. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 委員長のほうから一つだけ外務省に御参考のためにお聞きしておきたいんですが、私、不勉強でよく知らないんでお教えをしていただきたいと思うんですが、外国の政府機関の性格を有するようなもの、あるいは大使館に付属する政府機関の職員の性格を有するような、そういうものを国内に設置することを認める場合、口上書によってやっておる例がたくさんあるとおっしゃいましたが、どういう例があるか、いまわかるならすぐ教えていただきたいし、いま直ちにわからないなら、そういうような外国の政府機関の設置を国内に口上書で認めた場合の実例というのをあげて、資料で御提出を願いたい。どちらでしょう。
  180. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) たとえばアメリカについて申しますと、アメリカの文化センター、それからトレード・センター、それからトラベル・サービス、これは旅行のあっせん機関でございますけれども、こういったものにつきまして、それぞれ口上書でもって日本設置を認めております。この内容は、要するに、どういう仕事をするかということについてはっきり確認した上で、その滞在及び活動を認めるという趣旨のものでございます。
  181. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 私は、こういうABCCのようなものの設置というものは、本来の性格からして交換公文等によって設置の取りきめをやられるというのが、私は普通の国際法上の慣行だろうと理解しております。しかしながら、それを口上書で設置を認めておるというところに敗戦直後のいろいろな問題もあったかと、いままでの論議を通じて推察をしておるわけです。しかしあなた方のほうではそれを依然として、こういうものの設置を口上書で認めるのが正しいという理解をしておられるのか。先ほど例が出たアメリカの観光局の出先事務所のようなものと同じような性格と理解しておられるのか。それとも、これは口上書ではまずいんだが、本来ならば交換公文的なものでやるべきだろうと思うんだけれども、まあ、いろいろな事情でできないとおっしゃるのか、その辺をひとつこの際明らかに教えておいてもらいたいと思うんです。
  182. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) このABCCが戦後最初に設置されましたときにどういう経緯でもって口上書によってやったかという事情については私全く存じませんけれども、先ほど御答弁申しましたとおり、このような非常に重要な、日本の国民の生活に重要な関係のあるものについて口上書でなくて協定によったらどうだという先ほどの御意見がございまして、そのようなことが差しつかえないことである、そういう方法によって設置することが十分可能であるという見解でございますけれども、口上書ではいけないという、口上書では不適当だということではないというのが、私どもの見解でございます。
  183. 須原昭二

    ○須原昭二君 ちょうど幸い私も尋ねようとした問題点が一つ出てきました。口上書の交換でアメリカ政府の出先機関として認めたものに、いまアメリカ政府の出先機関として実は米国商務省観光局東京事務所というやつがある。その口上書も私は手に入れておるわけですが、ここで政府が認めておるところですね、トラベル・サービス事務所はアメリカ大使館の一部を構成するものでないこと、一つ。二つ目には、トラベル・サービス事務所が扱う業務は民間関係者の利益と競争関係に立つごときものでないこと。営利団体でないということは、何をするんところなんですか。このトラベル・サービス事務所の設置に同意する条件にこういうふうに書いてある。電話番号を教えますと東京の(二一二)二四二四、丸ノ内の国際ビルの中にあるということです。一体、何をやるところですか。いま旅行あっせんというようなことをおっしゃいました。あっせん業務をやってはいかぬことになっている。何をやるんですか。ある意味では諜報機関だといううわさすら流れておりますが、こういうものを口上書によってやられるというものと、これは別問題ですよ。私たちはいま国会の内外を通じて、このABCCの問題については大きな議論がなされているにもかかわらず、その性格が、法的な性格がきわめてあいまいもこにされている。私は当然二国間協定、そういうもので結ぶか、それともやはり大臣が言うように、ほんとうに主体性をもってやっていくというならば、この際全面的に日本に移管をさせるべきだ、こういう点を私は強調しておるんですが、再度お尋ねをいたしておきたいと思います。
  184. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先生御指摘のトラベル・サービスにつきましては、これは米国の政府機関であるということでございますので、その関係から営利活動をしないということを確認したわけでございます。
  185. 須原昭二

    ○須原昭二君 何をやるんですか。
  186. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 一般に旅行の助成ということでございまして、わがほうも外国に国際観光振興会といったようなのがございまして、それの出先機関もたくさん方々に出ております。それも全く同じようなたてまえのものでございます。つまり営利活動をしないということでございます。
  187. 須原昭二

    ○須原昭二君 これは私は、それだけの答弁では納得ができません。したがって、口上書の交換に基づいて、いまお話がありました国内に設置されている、アメリカに限らずどこの国の出先機関でもけっこうでございますから、全部一覧表とその設置場所と、そしてどういうことをやっているのか、その点を詳細にひとつ資料提出を願いたい。この問題であまり時間をかけておりますと、本論がさかれますので、御了承いただきたいと思います。  そこで私は、先ほどの新しい口上書によりますと、アメリカ大使館の付属機関であったものがアメリカ政府の出先機関にすることになったと、この場合、はたしてABCCはアメリカ政府のどの機関の出先機関になるのですか。
  188. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 先ほど御答弁申し上げましたように、ABCCは、米国内におきましては原子力委員会と米国学士院との契約に基づいて設立されたものでございますので、そういう意味で大統領の直轄になる政府機関で、それの出先機関であると、こういうふうに考えておるわけでございます。
  189. 須原昭二

    ○須原昭二君 アメリカ大統領の直轄ですか。直轄機関ですか。明確にしてください、その点。
  190. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 私の先ほどの御答弁、ちょっと明確を欠きました。もう一回答弁のし直しをさせていただきますが、米国原子力委員会と米国学士院との契約に基づくものでございまして、その組織、職員等は米国学士院に属しております。
  191. 須原昭二

    ○須原昭二君 ここに図式を持ってきているんですが、アメリカ大統領の命令で原子力委員会がつくられて、これは政府機関ですよ。おたくがおっしゃる学士院というのは、学士院学術会議というのは民間法人ですよ。民間法人が、直接原子力委員会の契約に基づいて、その出先は現在学士院の学術会議、民間団体の出先機関としてABCCがあるわけです。それを政府機関とするということになれば、直接原子力委員会の直属になるのか、その点を明確にしていただきたいと思います。
  192. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 米国の学士院は、政府に対して科学及び技術上の勧告、及び援助を行ない、公共の利益のために科学的活動の進展をはかる非営利法人として一八六三年に議会の法令によって設置されたものでございますが、米国政府発行の米国政府機関便覧によりますと、準政府機関として記載されてございます。
  193. 須原昭二

    ○須原昭二君 準政府機関というあいまいもこな条件では私は答弁を了承しません。  そこで、私は、民間団体であればこそ、アメリカ大使館の付属機関としてわれわれは認めてきた。今度、政府の出先機関ということになれば、原子力委員会が直接のまた窓口になる。一歩譲って、原子力委員会の直属、またこの契約に基づいて学士院会議が準政府の機関であるとするならば、おたくが言っておられるところの原子力委員会と学士院学術会議とが結ばれておる契約書を私は明らかにすべきだと思います。この契約書を御存じですか。
  194. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) ABCCの設立に関しまする米国原子力委員会と学士院との間の契約は一九四八年の三月に締結されまして、その後数次にわたって更新が行なわれておりますけれども、現行の契約は一九七〇年十月一日から発効したものでございます。
  195. 須原昭二

    ○須原昭二君 契約の内容を知っておるかということなんです。  御案内のとおり、いま御指摘になったように、二十七年の古い口上書の有効期間中は、米国原子力委員会と学士院とがAT−49−1−GEN−72号という契約を結んでおる。そうでしょう。
  196. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 先ほど申し上げました一九四八年三月に締結されました契約書は、ただいま御指摘のとおりに、AT−49−1−GEN−72と、こういう番号でございます。
  197. 須原昭二

    ○須原昭二君 間違いございませんね。  その契約を明らかにしていただけませんか。
  198. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) この契約書、手元に私持っておりますが、これをいかがいたしましょうか。
  199. 須原昭二

    ○須原昭二君 内容を説明してください。
  200. 矢山有作

    委員長矢山有作君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  201. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 速記起こして。
  202. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 第一条には業務内容、第二条がサブコントラクト、第三条が業務の条件、第四条が費用の支払い、第五条が分割払い並びに前払い、第六条が財産の所有権並びに処分、第六条が紛争、第七条——、失礼しました第八条が紛争、第九条が情報の配付、第十条がパテント、第十一条が安全並びに事故の防止、第十二条が職務、第十三条が勤務時間、第十四条が差別防止、第十五条が職員に対する規律、第十六条が定義と、こういう内容でございます。
  203. 須原昭二

    ○須原昭二君 その項目を読まれただけでは内容がわからない。したがって、これはひとつ資料提出を願いたいと思います。これは特にこの国会の討論を通じても非公開にされてきた問題です。しかし、幸いにして四十六年八月六日、毎日新聞はこれを入手した、そして報道されております。ABCCの被爆調査はアメリカの防衛のためだといって暴露したことがあるのです。にもかかわらず、政府からはいままで出したことがないのです。  さらにもう一つ、現在の契約書があるわけです。一九七〇年に締結されたというAT(30−1)−72号と呼ばれる——依然非公開のままにこれまたあります。この内容を私は明らかにされたいと思います。特にこの問題は、契約については再三資料要求がなされておるのでありますが、幸いにも四十七年五月二十四日、衆議院科学技術委員会で橘外務省参事官がこのABCCは秘密の保持は取り除かれた、こういう答弁をされておりますから、当然秘密保持はないからこの際明らかにされたい。この後段に申し上げた現在の契約書、先ほど申しましたこのものは持っておられますか。
  204. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 七〇年の現在の契約書、私手元にいま持ち合わせてございません。また私の承知しておりますところでは、米側はこの契約書につきまして非公開と、こういうたてまえをとっているというふうに承知いたしております。
  205. 須原昭二

    ○須原昭二君 そこが問題です。なぜ非公開にするのですか。これを公開しなければこの論議は進みません。委員長のお取り計らいを願いたいと思います。秘密保持はないと言ったのでしょう、米側は非公開と言っても、——だから主体性が守られないのです。あくまでも占領下の行政がそのまま継続をされておる。アメリカに主権があって、日本は隷属下に、ABCCが置かれておる現状がここにあると思うのです。明らかにしてください。
  206. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) ただいま御指摘ございまする契約書は米国原子力委員会と米国学士院との間の契約でございまして、米国内部の契約でございますので、この点につきましては、私ども米側の意向を確かめませんと何とも御答弁できませんので、控えさしていただきたいと思います。
  207. 矢山有作

    委員長矢山有作君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  208. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 速記を起こして。
  209. 須原昭二

    ○須原昭二君 いまのお話を聞いておりまして、秘密だということは全く遺憾です。われわれ日本人として全く屈辱的ですよ。何としてもこの問題は明らかにしていただきたいと思います。したがって、この問題が外務省において明らかにされるまでこの問題点については保留をしたい。このようにひとつ委員長のほうでお取り計らいを願いたいと思います。
  210. 矢山有作

    委員長矢山有作君) じゃあ、その点答えてください。
  211. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 本日、この委員会におきまして、七〇年に締結されました米国原子力委員会と米国学士院との間の契約について明らかにしろと、こういう御注文でございますので、米側と、今日の御議論を踏まえまして米政府と話し合いをさしていただきたいと思います。
  212. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 厚生省におきましては、予研とABCCが共同研究をいたしておるたてまえでございますので、その事実が明らかになることを希望いたします。
  213. 須原昭二

    ○須原昭二君 もう一つ落としている。この契約の問題と出先機関、政府機関となったんですから政府機関はどの所管の出先機関になったのか、この点がまだ明確になっておりません。この点もあわせてひとつお尋ねをしたいんですが、いかがですか。
  214. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 先ほどの御答弁と繰り返しになる点がございましたらお許し願いたいと思いますが、米国政府の説明によりますと、大統領命令に基づいて米国の学士院が政府機関でありまする米国原子力委員会との契約のもとに実施しているものでございまして、その組織、職員等は学士院に属し、学士院の監督のもとに置かれている、それで学士院とは何だということになりますと、先ほど御答弁申し上げましたように、米国の政府機関の便覧によりますと準政府機関という扱いを受けている、こういうことでございます。
  215. 須原昭二

    ○須原昭二君 非常にその点が契約書を知っておる以上、契約書の問題から言いますと、その点が非常にわれわれ理解ができないのです。ABCCがアメリカの政府機関になった以上、従来の政府機関と民間団体が取りかわした契約書はどうなるのか、この関連が出てくるわけです。ですからいま現地で見ますと、ABCCの広島、長崎の建物、調査研究備品はアメリカ原子力委員会の所属・所有財産になっている。研究と人事などは無形のものが学士院学術会議ということになっているわけです。きわめて現地においてもあいまいな実態になっておるわけです。ですから、どこの出先機関なのかはっきりしていただかなければなりません。したがってこれも契約書の内容と同じようにひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  216. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 委員長からひとつ申し上げますがね。いま大河原アメリカ局長の話を聞いておると、ABCCは米国の原子力委員会と米国学士院との間に契約が締結されてつくられた、こういうわけですね。それで準政府機関だというのでしょう。アメリカの機関としては準政府機関とみなされておるものが、口上書によって日本国内に設置をされるときにはアメリカ合衆国政府機関としての地位を与えられるわけですか。この点は私は非常に大きな矛盾があると思いますので、須原君の質疑にあわせてお聞きをしておきたいと思います。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  217. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 速記を起こして。
  218. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 昭和二十七年の口上書によりますと、米国大使館から外務省に対しまする口上書の中にこういうことが書いてございます。「大使館は、外務省に対し、同委員会と前記職員は、ここに明示される目的に関し、合衆国政府機関の性格及び大使館に付属する政府機関の職員の性格を有するものと見做されることを、通報する」と。これに関連いたしまして、本年四月の口上書におきまして外務省は、在日合衆国大使館に対しまして、「同委員会の本邦に設置された合衆国政府機関としての地位は引続き認めるものであるが、これを在本邦アメリカ合衆国大使館に付属する機関として引続き認めることはできない」、こういうことを通報したわけでございまして、経過的にはこのようなことがございます。  一方、アメリカ側におきましては、先ほど来御答弁申し上げておりまするように、大統領命令によりまして、米国の政府機関でありまする米国の原子力委員会と、準政府機関として扱われておりまする米国学士院との間の契約に基づいて設置されておると、こういう関係がありますために、政府といたしましては政府機関の出先機関としての扱いを行なっていると、こういうことでございます。
  219. 矢山有作

    委員長矢山有作君) それがおかしいじゃありませんか。アメリカはそのABCCになるものを準政府機関だと言っておるというんでしょう。アメリカ自体が準政府機関だと言っておるものを、口上書で国内に設置を認める場合に、あなた方はアメリカの政府機関として設置を認めたんですか。むしろ前の口上書のほうが「合衆国政府機関の性格」云々ということで、これのほうがぼけておるわけです。今度再確認した口上書のほうが「合衆国政府機関」としてピシャッと政府機関ということを決定づけてしまっておるわけです。向こうが準政府機関の扱いをしておるものを、口上書で国内に設置を認めるときに、アメリカ合衆国の政府機関として設置をなぜ認めなければならないのか。これが問題なんです。これが独立国の日本政府のやることかと言うんです。
  220. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) ABCC自体は、先ほど来申し上げましたように、契約に基づくものでございますが、日本にありまするABCCは、その組織及び職員等に関しましては学士院の監督のもとに置かれていると、こういう関係でございますので、政府機関としての扱いをいたしているということになるわけでございます。
  221. 須原昭二

    ○須原昭二君 いまの御答弁では私たちは了解できません。したがって、先ほどの契約書の内容、二つの契約書の内容と、出先機関の論議の問題点についてはもう一度統一見解を持って出てきていただきたいと思います。私は局長の御答弁は了解できません。外務大臣にひとつお出ましをいただいて、明確な統一見解を出していただきたい。その点を委員長のおとりなしをお願いいたしたい。
  222. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 大河原アメリカ局長、よろしいか。
  223. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 資料につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、新しい契約書については米側と鋭意話し合いをいたします。  ABCCの政府機関などの性格につきましてはただいま私が御答弁申し上げているとおりでございます。
  224. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 御答弁はいただきました。私もこの質問にかんでおるわけで、私自身も、大河原さんが残念ながら何を言っておられるのかよくわからぬ。国内にアメリカ合衆国政府の機関としての設置を認めた、口上書で。しかもアメリカが準政府機関だと、こう言っておる。ここの矛盾点は私にもわかりませんので、これは質問者もそう言っておりますから、あらためてあなた方でよく研究をされて、われわれがなるほどさようかというふうに納得のいくような御答弁をいただきたいと思います。
  225. 須原昭二

    ○須原昭二君 では、その問題はひとつあとへ残していただいて先へ進めたいと思うんです。ほんとうに貴重な時間をくだらない御答弁でほんとうに迷惑をいたしました。ひとつ今後お出ましをいただくときはきちんとした御答弁をしていただきたいと思います。  そこで進めていきますが、ABCCは先ほども申しましたように、そういう問題点がたくさんあるんです。疑惑に包まれておるんです。だから私はほんとう調査研究をするというなら完全に日本の主体性、日本政府に移管すべきであるという主張を続けておるわけです。したがって、そういう声はいまや国民の中にも非常に多くあるわけで、特に現地のABCCで働く日本人労働者は、自分たちは陰に陽に被爆者の遺体をあさって歩くハゲタカ的な行為だといって労働組合の組合員自身が言っている、こういう現実は皆さん御案内でないでしょうか。特に私たち社労委員会が昨年八月現地を調査いたしましたときに、被爆者の遺族のうち遺体をABCCに提供して解剖に応じた者は二千八百二十床、はっきりと解剖を拒否した者が三千九百九十八という非常に多いんです。連絡遅延、連絡不能で解剖できなかったものが四百九十四体あるという状態でありますけれども、ABCCがいわゆる遺体をくださいと言っていくと二〇%しか応じないんです。被爆者の遺体解剖については原爆病院や主治医から頼みますと四〇%集まってくる、それをABCCへ提供しているというのが現状なんです。このABCCにおけるところの日本の主体性は全くない、主権はアメリカにある、まさに日本は隷属下に置かれている現実を見るときに、どうしても私はその締結の内容というものを明らかにしなければならないし、かつまたアメリカのどの出先機関であるのか、この点は明確にしなければ論議が進みません。この点はひとつ銘記していただきたいと思うわけです。  そこでですね、こういう状態ですから、ABCCが設立されて今日まであの膨大な調査研究の結果の資料は最近わが党の上田哲君のその質問によって明らかにされた、あり場所がはっきりわかって返ってきましたけれども、いままでは一度も日本で公開をされておらないのです。どれだけの被爆者の治療に対して具体的に役立ってきたのか、これは厚生大臣御存じだと思いますから御答弁をいただきたいと思うんです。さらに原爆がいかに悲惨なものであるか、いかにおそろしいものであるかということを国民の前で一度でもPRしたことがありますか、この点を明確にしていただきたいと思います。この解剖拒否が、ABCCがやっておる解剖の要請にこたえる人が少ないということ、解剖拒否がいかに多いかという具体的な理由を厚生省はどうお考えになっておるのか、この点を明確にひとつお願いをしたいと思います。まさに私は被爆者をモルモットにするABCCを原爆の原点に残しておいて、依然として占領下におけるところの同じような活動をアメリカに許しておる、こういうところに問題があると思うんです。政府の無神経といいますか、政府の怠慢といいますか、まさにそう言っても私は過言でないと思うんですが、この公開の問題、あるいは治療にどのように具体的に役立っておるのか、さらにPRをしたことがあるのか、明確にひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  226. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) ABCCのいろんな研究についての資料の問題でございますが、このABCCができます以前の、終戦直後、アメリカから広島、長崎の原爆の影響について調査団が派遣されまして、いろいろな資料を集められたわけでございますが、この資料の扱いにつきまして、その資料が、当時その散逸を防ぐためということで、米国の病理学研究所のほうに持っていかれたわけでございます。これが昭和四十四年にその資料の一部が返されたわけでございますが、まだ相当の数の資料が残っているということを、先生御指摘のように、上田議員さんの御指摘もございまして、わがほうといたしましても、アメリカ側に対しまして残っている資料は全部返してくださいという要求をいたしまして、これがことしの五月の八日に返還されてまいったわけでございまして、これは当時こちらからアメリカに持ち帰られましたものの全部であるというふうに私どもは伺っておるわけでございます。今度は、そのあとの、ABCCがその研究をしたその研究の内容その他についてどうなっているんだ、これは隠されているんじゃないかということでございますが、これは、国立予防衛生研究所の支所が二十四年にできまして、これとの共同研究ということでございまして、それをずっと続けてやってきておるわけでございますが、その内容につきましては、これは、成果はすべて日米両国語によって原爆傷害調査委員会の年報という形で公表されておりまして、日本及びアメリカその他の国の医学会にも報告発表されておりまして、また専門誌等にも掲載されるなど、広く公表されておるところでございます。また大学とか図書館、専門研究者等の関係方面にも配付されて、貴重な参考資料として活用されておりまして、これは、その研究成果を米国が秘密にしているというふうなことにはなっておらないわけでございます。
  227. 須原昭二

    ○須原昭二君 そこで、上田哲議員が指摘をいたしました、四十六年十二月十六日、参議院の内閣委員会指摘されて、被爆資料、病理標本二百六十ポンド、アメリカの登録番号で言うならば一五八九三〇、おくればせながら先ほど、いま御答弁がありましたように、五月八日でしたか、返ってきた。全部返ってきたかどうかということを確認をされたかどうか、いつ確認をされたか、その報告はどうなっているんですか、それが一つ。  時間の関係がございますが、——そして、いま返ってきている分についてはどのように保管をされ、だれの所有となり、そして、私はこの際、原爆というものがいかにおそろしいものであり悲惨なものであるかということを国民に周知徹底をさせるためにも一般公開に踏み切るべきである、——一般公開に踏み切るべきだ、——この間公開したと言うけれども、それは限られた専門家だけに公開されただけであって、これを一般公開すべきだ、こういうふうに思いますが、その点の計画はどのようになっておるのか。  さらに、この資料の隠されて——隠されておったと言うといかぬですけれども、アメリカに持っていったところはワシントンのAFI、すなわち米軍の病理学研究所なんです。軍隊です。学術会議の出先機関というならばまだ話がわかる。しかし原子力委員会というものは日本の原子力委員会と違って平和的利用といま一つは核戦略の軍事的な問題と両面あることを忘れてはならぬと思うんです。そういう軍事的に利用されている現実をどのようにお考えになっておるのか、この際明確に御答弁を願いたいと思います。
  228. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 米側が持ち帰った資料が今度返還されたわけでございますが、これが持ち帰ったものの全部であるかどうかの確認はどうしたのだという御質問でございますが、これは米側が五月八日にこちらにその資料を送付してまいりまして、約二トンの品物、これは病理組織標本とか、スライドあるいはパラフィンにブロックされた書類でございますが、これを五月の八日に広島に移送いたしまして、そこで県、市の関係者あるいは原医研の責任者が立ち会いまして受け渡しを受けたわけですが、そのときに向こうからついてきました係官に念を押しまして、向こうの係官がこれで持ち帰ったものの資料は全部でございますという答弁を受けたわけでございます。  それから一般公開すべきじゃないかという問題につきましては、これは私ども広島で梱包を解きまして、それぞれ広島、長崎の原医研及び県、市にお引き渡しをいたしましておまかせをしたわけでございまして、この扱いにつきましては県、市、原医研の方々に御一任をしたわけでございます。
  229. 須原昭二

    ○須原昭二君 アメリカの、米軍の病理学研究所で言っておったという現実、そうしたものから考えますと、何といっても先ほどのABCCの契約書の内容等々明らかにしないと、ここで論議が続けられません。したがって、この点はまた保留にいたしたいと思います。  そこで私は、国内的な問題点だけを、もうだいぶん時間もきておりますから、国内的な問題点にのみ限ってひとつ行なって、あとは全部中止をしたいと思います。
  230. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 中止でなく、保留ですね。
  231. 須原昭二

    ○須原昭二君 保留して、あとは保留をしたい、きょうは。国内的な問題点だけにひとつ限って行なって、あとは全部保留をいたしたいと思います。  そこで、全部すべてがそこら辺にひっかかってくるものですから、これは何ともならぬですな。——基本の問題点がわかりませんから、きわめて質疑をするのに非常に困っているわけです。(「保留しておけ」と呼ぶ者あり)じゃ、国内的な問題点だけ二、三点に限ってわかるところだけひとつお尋ねをします。  昨年も、ことしも衆参社労委員会で、ABCCと国立予防研究所の協力関係について再検討するとともに、各省にまたがる研究機関並びに民間医療機関が放射能の影響や治療についての研究を一元的に行なうように促進をはかれと、こういう決議がなされていることは御案内でしょう。
  232. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 御指摘のとおりで私どももその線に沿いまして各方面と折衝を重ねております。
  233. 須原昭二

    ○須原昭二君 いつまで折衝されているのか、その辺が問題です。この決議について関係各省どのように尊重して努力されてきたか、いま抽象的な御説明だけでわれわれわかりません。したがって、厚生省の予防研究所あるいは科学技術庁の放射線医学総合研究所、文部省の所管になります広島大学、長崎大学の医学部におけるところの研究所、日赤の原爆病院等々多くの問題がありますが、いつまでにやるのか、この点を明確にしていただきたいと思うんです。現在われわれの知っている中では、調整をしておると言っておられますけれども、何もやっていないのではないか、何やら決議は決議で放任をされているようなきらいがありますが、その点はどうですか。
  234. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) これは関係各省で昨年の五月以降、日米関係の問題も含めまして各研究機関のあり方についても非常に論議が多かったわけでございますので、その後、科学技術庁、文部省、外務省、厚生省で何回も集まりまして御相談をいたしまして、そして十一月の中旬過ぎに関係各省の間で、先ほど先生のお話のございました文部省関係では広島大学及び長崎大学の原子爆弾放射能医学研究所あるいは医学研究施設、あるいは科学技術庁におきましては放射線医学総合研究所、それから日赤の原爆病院、それから私どもの予研の原子爆弾影響研究所、そういうところが従来ややもすれば連携を欠き、調整をとらないそれぞれの研究を別個にやっておったようなきらいもありますので、今後は密接にそういう機関が連携をとって協議組織をつくって、それでお互いの研究成果というものを生かして、お互いに活用していこう、それと同時に研究の、これは研究施設を一つにするというわけにはなかなか、いままでのそれぞれの研究所の経過からいいまして一つにするというわけにはいきませんけれども、そういう研究の総合的な連携調整というものをはかっていこうと、そのためのそういう機関をつくろうということに意見の一致を見たわけでございます。これは近いうちにそういう協議機関をつくるようにいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  235. 須原昭二

    ○須原昭二君 いま一つは、いまの答弁で私は了解できませんけれども、いま一つ決議があります。国立予防衛生研究所の業務は厚生省設置法十九条に規定されておりますけれども、直接原爆による放射能調査研究にはこれは関係がないんです。国会の附帯決議にもあるようにABCCとの国立予防研究所の協力関係について再検討すべきだ、こういうことが指摘をされておるんですが、両者の関係はどうなっております。
  236. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 厚生省設置法で第十九条に、これは非常に抽象的なんでございますが、「国立予防衛生研究所は、伝染病その他の特定疾病及び食品衛生に関し、」云々とありまして、特定疾病というところで読みまして、そこでその十九条の六項の4号で、「厚生大臣は、国立予防衛生研究所の事務を分掌させるため、所要の地に国立予防衛生研究所の支所を設けることができる。その名称、位置及び内部組織は、厚生省令で定める。」ということにいたしておりまして、内部省令で支所の名称及び位置は広島原子爆弾影響研究所、広島県広島市比治山、長崎原子爆弾影響研究所、長崎県長崎市桜馬場町というふうに法的根拠がなっておるわけでございます。
  237. 須原昭二

    ○須原昭二君 いまの御答弁を聞いておっても何か百日が一日のごときような感じがしてなりません。したがって厚生大臣、やはり国会で決議がされ、あるいは附帯決議があった問題についてどのように処置されようとしておいでか、決意だけを聞きたい。
  238. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ただいま審議官のほうからお答えいたしましたように、国立予防衛生研究所の支所が広島と長崎と、こういうことで共同研究に応じようということで今日まできていると思うんでございますが、御決議の趣旨は、これは私ども当然尊重しなければならないことでございますから、いろいろ問題がありまするならば、その問題の解決に当たるようにしなければならぬと、かように考えております。
  239. 須原昭二

    ○須原昭二君 これはひとつ、何度か国会で論議がなされておるところですから、明確に早くしていただきたい。何か前提がくずれておりますから、前提が何かさっぱりわかりませんから、暗中模索の質問になってしまわざるを得ないのです。まことに遺憾です。  そこで、今度は国立予防衛生研究所の広島、長崎支所の職員は国家公務員でありますか、どうですか。
  240. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 国家公務員でございます。
  241. 須原昭二

    ○須原昭二君 その職員数と所長以下どういう構成になっておりますか。
  242. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 所長それぞれ一名を含めまして三十二名おります。
  243. 須原昭二

    ○須原昭二君 そこで、国家公務員であるということになれば当然国家公務員法を順守しなくてはならぬと思います。国家公務員法六十三条給与の準則、百一条職務専念義務、百四条兼業などの規定がございますが、国家公務員が自己の公務に対して第三者から経済援助を受けていることについてABCCからここの予研の職員に対して金銭的な援助を受けているとしたらどういうことになりますか。
  244. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 国家公務員が給与を受けているほかに何らかの収入を得るという場合もいろいろとあるわけでございますが、雇用関係に基づいて別のところから収入を得るということはこれは禁じられておるわけでございます。ただ研究、たとえばいまのABCCの研究につきましてその研究に個人的に協力をするというようなことに基づいて協力の研究費を実費弁償その他の点でもらっているということはあり得ると思います。
  245. 須原昭二

    ○須原昭二君 これは内職ですね。どうですか。ABCCから内職をもらってその賃金をもらっているということですか。そういうことですか。御答弁がございませんから、私のほうから全部申し上げます、時間の関係であとの方に御迷惑がかかりますから。予研支所長ですね、広島の槙さんは二十五年間同じ地位にあって勤務をされている。長崎の所長さんであります永井さんは十六年間同じ立場にある。支所長として居坐っておられます。槇さんに至っては七十歳です。国家公務員に定年制云々という問題はございますけれども、七十歳で実はからだが悪くてあまり出勤に及びにならないようなことも聞いております。しかも研究職特一でありますから二十万円の給与を受けておる、甲号俸といいますか、頭打ちになっている。この両支所長に対してABCCから準所長手当として一時的ではないのですよ、毎月十五万円ずつ支給されている。これは内職ですか。毎月ですよ。この金額は本俸の四〇%に当たる高額なものですよ。微々たる謝礼の問題ではないのです。しかも予研の研究員は何らかの形でABCCよりいわゆる研究費という名目で毎月これまた経済援助を受けている。同様に平職員に至るまで行(一)の四等級以下ですらこれまた謝礼をもらっている。こういう経済的援助というものどうお考えになりますか。これはABCCに働く労働組合から予研支所の人事課で実際に調べた調査ではっきりしている。先ほども厚生省のあるお役人に会って聞きましたら最近六名くらいはもらわぬようになりました。全員もらっているということなんです。こういう事実をどうお考えになりますか。このように全職員がABCCから個人的に援助を受けているようでは、どんなにしても日米の対等はあり得ないし、厚生大臣が言うような日本の主体性というのは、この経済的な面からいっても何としても了解できません。総理府、行政管理庁、そして厚生大臣、それぞれの見解を私は承っておきたいと思うんですが、こんなばかげたことが進められているわけです。いま日本の官庁は、国の出先機関は土曜日お休みですか。週休二日制やっているのはここだけですよ。アメリカが、ABCCが週休二日制だからおれのところも週休二日制だといって、判こだけ押して全部休んでいるのじゃないですか。こういうでたらめなことを許しておいて日本の主体性が守られますか。厚生大臣の所見を承っておきたいと思います。
  246. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 実はこの問題につきましては、前々からいろいろ問題のあることも承知いたしております。そこで私どもは、何とか共同研究にいたしましても主体性を確保したような体制の中で研究を続けるということが絶対必要である、こういうふうに私どもは考えておるわけでございまして、昨年の十一月から日米間にこうした共同研究のやり方、運営について話し合いをしたいということで話し合いをいたしておるような次第でございます。そうした話し合いの中でいろいろ問題が出てくるでございましょうから、私どもはあくまでもABCCとの共同研究の運営にあたっての主体性を守るために、いま申し上げたような問題を含めて改めるようにしていかなければならない、かように考えておるわけでございます。したがって、日本政府において主体性を守るためには、従来のような、アメリカのほうが、ABCCのほうがたくさん予算を出し、日本はその十八分の一といったようなわずかな金で共同研究の主体性でございますなんということは私ら言えるものではない。したがって予算の増額をはかって主体性を確保するようにしなければならない、こういうふうな考え方でございまして、この運営の問題につきましては、概算要求までの間に向こうと十分話を詰めまして、こうした予算の面からもこの問題の解決に当たっていかなければならぬ、かように考えておる次第でございまして、その旨は審議官を通して向こうにも十分連絡させるようにいたしておるところでございます。
  247. 中庄二

    説明員(中庄二君) 行政管理庁としましては、御指摘のような実態について遺憾ながら承知しておりませんでしたが、来年度からは厳重な審査を行ないたい、こういうふうに考えております。
  248. 大林勝臣

    説明員(大林勝臣君) 事実内容がよくわかりませんけれども、御指摘のように国家公務員法第百四条では、報酬を得て、営利企業以外の事業に携わる場合には、内閣総理大臣及び所属庁の長の許可を要するということに相なっております。まあ職務の等級によりまして総理大臣まで参ることもありますれば、あるいは職務の等級によりましては所属庁の長官限りでその許可をするという取り扱いになっておりますが、その際にもいろいろ職務を、他の職務に携わることによりまして本来の職務に支障がある場合であるとか、あるいは許認可の関係でその他利害関係がある場合とか、あるいは公務員としての信用を傷つけるような場合、こういった場合には許可をしない取り扱いとなっております。
  249. 須原昭二

    ○須原昭二君 時間がないし、その前提がぼけておりますから、あまりきょうは論究はいたしませんけれども、ただ総理大臣または所管の長といいますと、厚生省の所管は厚生大臣ということになります。そうしたら毎月十五万円ずつもらっているということは、厚生大臣お認めになっているわけですか。
  250. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 実は、まことに申しわけございませんが、そういうような形式で研究費を協力という形で支給を受けているという事実はございます。私どもこれは好ましくないことであるということで、昨年来、日本の研究の自主性というものを大きく打ち出して、これはこの研究継続に際して自主性、あるいは主体性というものを確立していく上にはこういうところも含めて直していかなければいけない、こういうことで昨年から若干は是正するようなことをやってきたわけでございまして、先ほど先生おっしゃいましたように、前には全員受けておりましたけれども、だんだんと額が少なくなって……。
  251. 須原昭二

    ○須原昭二君 厚生大臣が認めたか認めないかということを聞いているのです。
  252. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) いま七人も未支給になってきているわけでございますが、これは今後そういう方向で、やはり日本政府もそのかわりその予算措置を講じて負担すべきものは負担すると、そのかわり発言権もきちんと持つと、その体制もきちんと整えて、やはり対等な立場で、というよりも、むしろ日本が主体性を持ってこの研究を進めていくというふうに今後やっていくようにいま早急に検討中でございますので、もう少々御猶予のほどお願いしたいと思います。
  253. 須原昭二

    ○須原昭二君 まさに、ほんとうにむちゃですよ。むちゃな答弁ですね。あなた自身が未支給だと言うでしょう。アメリカからもらえないという言い方じゃないですか、未支給とは。あなた自身のものの考え方がもうだめなんですよ。私は厚生大臣が認めたか認めぬかということを聞いているだけであって、ほかのことはしゃべらぬでもいいのだ。準所長手当として個々に渡されているのですよ。全員に渡されているのですよ。この問題もまさにこれは、このままで私は質問を下がるわけにいきません。いま総理府ですか、来年に考えますといったら、まだ今月も来月も再来月もずっともらうのですか。明確にすべきですよ、この際。全部辞退させないよ。それが約束できませんか、厚生大臣
  254. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) まあ、この問題については、もう少し考えさせていただきたいと思いますが、いずれにせよ、このようなことでは共同研究の主体性なんというものは私はないのだということを初めからやかましく言うておるわけでございまして、一日も早くこういうおかしな姿は改めさせるようにいたします。
  255. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 厚生大臣、考えさせていただきますということではなしに、須原君のお聞きしておるのは、そういうふうにABCCのほうから、端的に言うならば、アメリカのほうから、多額な金の支出を所長以下の日本側の職員が受けておる。そのことに対して成規の手続をとってちゃんと厚生大臣としては認めたのか認めないのか、また総理大臣が認めるべきものについては認めたのか認めないのか、その点をはっきりしてくれと、こう言っているのだと思うのです。
  256. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 全然認めていないとのことでございます。したがいまして、その実態をもう少し私にはっきりさせていただいて、そしてこれをどうするか善処いたします。
  257. 須原昭二

    ○須原昭二君 それは初めから、善処するといってもこれは毎月もらっているのですから、一ヵ月たつとまたちゃんと来るのですよ。それは厚生大臣、そういうことがあるから一般被爆者市民から見れば、予研の支所というものはABCCのカモフラージュであると。横、永井さんたちはアメリカと結託をして、——いいですか、アメリカと結託をして被爆者を食いものにしていると言われている。言われたってしかたがないのですよ。一刻も早くこれは明確にきちんとすべきです。したがってこういう人事の運営の実態というものを一掃しない限り私は日米の対等はあり得ないし、私はさっき冒頭申し上げましたこのABCCなるものの主権は依然としてアメリカにある、占領政策が今日なお続いておる、日本は隷属下に置かれておる、こういう標本ですよ。  私は多くの問題点をまだ指摘をしたいんですけれども、前提条件が外務省のほうがはっきりしませんから、この問題もすべて保留をいたしたいと思います。この問題点だけ最後に厚生大臣から御答弁をいただいて、後ほど機会委員長からお与えをいただいて質疑を続行さしていただきたい、こう要望申し上げて、質問を保留いたしたいと思います。
  258. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ただいまの御質問、まあかりに研究費を受けるにしても、こういうふうな月給みたいな形で受けることは絶対にいいことではございません。ですから、事態は一日も早く改めるようにいたしまして、その結果を御報告申し上げます。
  259. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 齋藤厚生大臣が四十分ごろにお出ましだそうでございますが、いまの須原委員の御質問を聞いておりまして、まことに何と申しますか、被爆者の人たちがほんとうに食いものになってるような感じを私どもも受けたわけですが、ここに一通の手紙を拝借をしてまいりました。それはこういう手紙でございます。「被爆者であるために、次女の結婚問題についてたいへん困難いたしております。九分どおり話が進んでおりましても、気がかりのあまり、ある病院や保健所に問い合わされますと、生まれくる三世は不幸な子供が生まれるかもしれないとのことで、破談になることが三度もありまして、とほうにくれています。娘も私の被爆者活動はやめてくれと泣きます。通院も当分やめて、からだの調子を見たらと、一、二月は通院しませんでしたが、三月からはたまりかねて通院いたしております。世間の目は冷たい。私の場合、就職問題についても冷たく、不採用の通知を手にすることも数度ありまして、原爆はにくらしい。」こういう手紙を私実は借りてきたんですけれども、いまの須原委員質問をいろいろ伺っておりまして、ほんとうにこんな手紙を書かなければならない被爆者の置かれている立場を考えるとまことに気の毒でならないわけでございます。  そこでお尋ねをいたしますが、いまのABCCからいただいている手当ですね、これはアメリカから手当を受けているのですけれども、そうすると、これに対する税金を払っているのでしょうか、払っていないのでしょうか、どうなんでしょうか。
  260. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 税金は払っておるそうでございます。
  261. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それは確かでございますか。
  262. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 確かでございます。
  263. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それならば続けて質問いたします。そういうような税金を払っていればそれでよろしいのですけれども、よく聞くところによりますと、外人から給料をいただいている人は、日本人から給料をいただいているのとは違って、それが一つの税金の盲点になっているということを私よく聞いているものですから、いまもその問題についてちょっと触れてみたわけでございます。  そこで、このたびのこの原子爆弾の被爆者に対する特別措置法の法律の改正では、特別手当を一万円から一万一千円にすることになっていますね。それから健康管理手当についても五十五歳から五十歳に引き上げるといいますか、引き下げるといいますか、そういうことになって月額四千円から五千円になったと、まあこれはおのおの千円ぐらいしか上がらないわけですね。ところが、私どもまだ十分よく調べてはおりませんけれども、あるいは恩給とか、特別児童扶養手当とか、先ほど午前中に私がちょっと触れておりました老齢福祉年金とか、こういうものはやっぱり相当大幅にベースアップしているわけですね、手当が上がっているわけです。それに、原爆のこの人たちだけはなぜこんなに低額しか上がらなかったのか。物価がこれだけ大幅に上がっているのに、それでなくても被爆者の人たちはしょっちゅうからだが悪くて普通の健康体のようには働けませんので、いただいているいろいろなものでまあ生活をささえてはおりますけれども、相当きつい生活でございます。その点はどうですか。
  264. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 特別手当につきましては、これはいわゆる原爆症にかかっておられる方の健康上悪条件に置かれております場合に、原爆症の治療にあたりまして、栄養の補給、あるいは通院、入退院、あるいは保健薬をお飲みになるための特別の出費という考え方でございまして、まあ生活の、生活費ということではなくて、むしろその上に加えられました療養生活の安定をはかるという趣旨でございまして、若干従来の生活給的な考え方が除かれておりますので、ほかの各種手当の引き上げという額には見合わないということになっております。
  265. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それにしてもあまり不公平な感じがするし、物価が、いままでにないぐらいの大幅な物価の値上げでしょう。ですから、これではあまり不公平ではなかろうかと、こういうふうに思うわけです。  それから健康管理手当の問題ですけれども、疾病にかかった人でないとこれはいただけないのですね。でも健康管理というならば、これは当然いついかなるときに病気におかされても、おかされるかもしれないので、健康に見えるときにもすでに手当を出すべきではなかろうか。特にこの健康管理手当をいただいている方は三十四人ですか、全国で。そうですね。この人たちにいよいよ疾病の名前がつくまでに少しこういう人たちに何とか見てやれないものかどうか、この三十四人の人には、もう与えられているのですね、与えられていない、どっちですかそれは。
  266. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 健康管理手当は特別被爆者であって、それで所得の制限が一応ございまして、その制限、それからいまの病気のいわゆる原爆に関連のある疾病にかかっているという条件、それから年齢の制限というものがございまして、まあ、その要件に該当している——あるいは四十八年度について考えますと、推定約六万九千人がそれに該当するというふうに推定されているわけでございます。
  267. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私がちょっと思い違いしました。そのようにいついかなるときに病気になるかもしれないのですね、被爆していますから。ですから、そういう人にも疾病にかかる前に支給することはできないのかどうか、それが一つ。  それから、八つの病気以外にはこの手当はいただけないのですね。その点で病名の拡大をもっとしたらどうですか。それは先ほども柏原先生がいろいろお聞きになっておられましたけれども、たとえばリューマチとか、それから外傷によりコルセットをやっていらっしゃる方も相当ふえているようですね。広島で外傷されて、それから病名はつかないけれども、ぶらぶらしているような病弱者もいらっしゃるわけです。先ほどのお話ではありませんけれども、胃ガンになる方が普通の人より三、四倍あると、こういう人もみんな八つの病気以外に病名の拡大をしていく考えはないかどうか。
  268. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 健康管理手当の支給対象の疾病でございますが、これはやはり原爆に関連があるということでございまして、人間の臓器のうち、特に放射能の影響を受けやすい器官につきまして、原爆の影響はないけれども、それと同じような類似の症状、あるいは疾病にかかっておられる方に特別被爆者のうちから健康管理手当を差し上げる、こういうことになっておりまして、やはり原爆の放射能に関連のある疾病ということになりますと、やはり現在の医学的常識から申し上げまして、放射能の影響を受けやすい器官に障害がある疾病ということに限定されてくると考えております。
  269. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私がいま質問しているのは、広島や長崎で原爆を受けてきた人にということなんです。だから、それは全然違う、よそにいた人でリューマチになったり、あるいはコルセットをしたりということを言っているわけじゃないんです。ですから、これはもう明らかに広島、長崎で原爆の洗礼を受けた人の、あるいはリューマチとか、コルセット使用者とか、胃ガンとか、それから病弱者とか、こういう人にも適用したらどうかと言っているわけですがね。その辺どうですか。
  270. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) これは非常に医学的な、専門的な事項でございますので、原爆医療審議会専門家方々の御意見も聞かなければいけないと思います。したがって、そういうリューマチその他が原爆に関連があるということの結論が得られれば、当然、健康管理手当の支給対象になろうかと思いますし、そこいらの非常に学問的な問題でございまして、私ども、専門的な立場にない者は軽々に論ずべき問題ではないというふうに考えておりますので、今後、原爆医療審議会の御意見を聞きたい、かように考えております。
  271. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 先ほどからしつこいくらいに柏原先生が検討、検討ということでなくて、はっきり答弁をしろと、こういうふうに迫っておられたわけですけれども、こういう問題も早急に審議会にかけて結論を出してあげませんと、もう原爆を受けてから二十八年でしょう。だんだん老齢化はしてくるし、五十歳に引き下げたとはいいながら、こういう方がたくさんいらっしゃるわけですから、その辺も早急にやっていただかなければならないと思います。  それから手帳をもらっている人ですね、手帳をもらいながら病院に行きますと、健康保険が優先するために手帳が生きていないことがしばしばあるようです。それはやっぱりお医者さまによっても違うようでございますけれどもね。だから、もう被爆者にしてみれば、健康保険と手帳と、二本立てではなくて、手帳さえ持っていればそれで一切やってもらうようにしてほしいと、こういうふうな要望もあるわけですけれども、その辺は検討したことがおありになりますか。
  272. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 手帳を持っております場合には、健保等の保険で支払った残りの一部負担部分につきましては、全部、公費で見るようになっております。ただ、手続的に、先生おっしゃいますのは、おそらく指定医療機関でないところにかかるような場合に、これは一ぺん支払いをいたしまして、その支払いの領収書を持って県のほうへ請求して、その料金を払い戻しといいますか、を受けると、そういうちょっとめんどうなことがある場合があるわけでございまして、おそらくそういうことをおっしゃっているんじゃないかと思います。
  273. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それはどうもそのようでございます。というのはお医者さんが二通のあれを書かなくてはいけないわけですね。ですから、それはいま御承知のとおりお医者さんは足りないし、老人医療の無料化で病人はたくさん見えるし、いろんなことで相当お医者さんのほうも繁雑でお困りのようなことも私ども聞いております。その辺で相当損をしていらっしゃる方もあるようでございます。ですから、それはいま家族国民健康保険なら七割給付ですね、そうするとあとの四割をこの被爆者の手帳で払ってもらえるわけですね。そこら辺がなかなか手続が煩瑣で困ると、そしてまあもう少し立ち入って言えばもっと詳しい資料を私持っているんですけれども、それを言っていいかどうかちょっとわからないんですが、実ははっきり言いますと社会保険に加入しているのが五〇%、国民健康保険に入っている人が三〇%、あとの残りの二〇%の人はその国民健康保険の支払いすら逡巡されて、実は国民皆保険といいながらなかなかそういう保険にも入り切れないという人もあるわけです。これは実際の話で私はあるところで調べてまいりました。そうすると手帳を持っていてもなかなかその健康管理手当金額そっちで払ってもらえない立場の人もいらっしゃるわけですよ。それ、ちょっと皆さんではおわかりにならないかと思いますけれどもね。私は事実調べてまいりました。ですから何とかしてその繁雑なことを避けてもうその手帳だけで何とかやってもらえないだろうかというのがずいぶん大きな要望になっておりました。その辺はまたお医者さんとのトラブルが起こるといけませんからあんまり深くは追及をしないでおきますけれども、それで失権をした人がありますね。たとえば転宅をしたりして変わった場合ですね。そういうときにもこれだけの書類を出さないといけないんです。いろんな書類あります。その書類も私みなもらってきました。そうすると、年をとってからだが少し悪いのに税金の証明書だの家族の扶養義務者の納税証明書だの、何とかかんとかみんなもらってきなさいというような通知があるわけです。そうするとやっぱり転居をしますと二、三カ月ついおっくうでせっかくの権利がいただけない人もある。もういよいよせっぱ詰まって手続をしてもらうときにはもう二、三カ月損をしている、こういう方もあるようでございますがね。それからまた申請をするときに証人が二人ずつ要る、あなたは確かに広島で原爆を受けられましたというその証人を二人ずつ書きなさいという紙もあるんです。そうしますともう二十八年もたったら私があのときにあそこで原爆にあってこういう病気になったんですというような証明をするような人を二人さがすのもなかなかむずかしいわけです。ですから何とか保証人といいますか、証人を一人ぐらいにしてもらえないかというような希望もございました。その辺はどうなんですか。
  274. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 最初の御質問でございますが、都道府県の区域を越えて別の府県へ行きますときにいろいろ手続がめんどうじゃないかということでございますが、これ一応現在の制度的にいろいろ住民登録その他の移動に伴って必要な申請の手続というものがあるわけでございまして、これが確かに煩頑なわけでございますので、できるだけ実務上これを簡素化できる面は簡素化していけないものかどうか、今後早急に検討したいと思います。  それから第二番目の御質問でございますが、被爆者手帳の交付にあたりまして証明をする人が従来は二人必要であるというふうなことであったわけでございますが、被爆以後現在もう二十八年もたっておりまして、なかなかその証明というものを複数の人にしてもらうというのはむずかしいという状況もございますので、証明方法といたしまして、当時の罹災証明書のほかに本人以外の方で確かにそういう被爆されたということの証明がはっきりできるような証明書であれば、一人でもいいというふうに手続上簡素化をはかっていくようにしたわけでございます。
  275. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは、もうそれはできているわけですね。  それから、次に今度、公営住宅の優先入居ができないかどうか。これは母子家庭や心身障害者などは公営住宅に優先的に入居できるワクがあるわけですね。ところが被爆者に対してはそういう権利がないようでございますね。それは御存じですか。
  276. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 被爆者という要因で、特に公営住宅に優先入居できるというような取り扱いはされていないというふうに理解しております。広島、長崎等においてもたくさんの被爆されておられる方がおるわけでございまして、まあ県営住宅あるいは市営住宅、県市がどういう取り扱いをするかということの問題になるかと思うのでございます。
  277. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 これは、建設省の住宅局から流してもらいますと、これは全部の人入れなさいといっているわけじゃないんです。たとえば神戸市なら神戸市で十戸くらいはそういうワクを取りなさい、あるいは京都でも十戸くらい取りなさい、こういうことを建設省の住宅局のほうから流してもらうと、優先入居ができるようでございます。ですから、その辺の努力はひとつしてあげてほしいと思います。  それからもう一つ、被爆者がかねてから、七、八年来の希望としていこいの家がほしい、こういうことは御承知でございましょうね。
  278. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) そういう御要望については承っております。
  279. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それは検討していこいの家をつくろうかという機運になっているのかどうか、どちらですか。
  280. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 現在、そういういこいの家を温泉地等につくっております。山口県の湯田の温泉なんかにはございますわけでございますが、そのほかの地域にはまだそういう保養所等をつくるという計画を聞いておりません。
  281. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それは島根県の有福温泉というところにもこういういこいの家みたいな温泉があるわけです。これはいま大はやりでしょう、働く婦人の家をつくるとかあるいは青少年センターをつくるとか、それは被爆者もあまり見捨てないで、被爆者のためにもこういうものをつくってあげるような方向で検討されてしかるべきだと思います。ぜひともそれも七、八年来の要望だと言っておりましたから、この被爆者の人のためにもそういうことを検討してあげてほしいのですが、いかがですか。
  282. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 最近は温泉地等あるいは保養所等で国民宿舎とかあるいは国民休暇村等の施設もたくさんふえて、低廉な料金で国民一般に保養の実をあげるような施設を提供しようというふうなことが非常に充実されてきているというふうな状況もございますので、そういう施設も大いに使っていただきたいというふうに思いますけれども、いまおっしゃいましたような問題につきましては県あるいは市ともよく御相談してみたいと思います。
  283. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それはいろんなところを使ってもらえばいいと言いますけれども、それがいまはレジャー時代ですからいろんな元気な人がどんどん先に申し込んで行っちゃうわけです。ですからせめてこういうものを被爆毛の太めにもつくってあげるべきだと思います。それはひとつ皆さんで検討していただきたいと思います。  それから、次に伺いたいのは被爆者の家庭訪診制度、これは厚生省のほうから昨年度予算を取ろうと考えられたんでしょう、それが削られてしまったんじゃないですか。
  284. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 訪診の予算要求は四十八年度はいたしておらないわけでございますが、相談員制度を、これは一応要求したわけでございますが、この相談員——民間の相談員という制度をぜひつくれという御意見と、ちょっといろいろな秘密保持の見地から民間の方々に相談業務をやってもらうのはちょっと困りものだという御意見もございまして、その辺の調整ができませんかったので、四十八年度は一応見送って、四十九年度までにその辺の調整なり、考え方の統一をはかって予算に乗せるか乗せないかということを検討していきたいというふうに考えております。
  285. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 被爆者の問題はいまおっしゃられたように、たいへん微妙なものでございます。ある一部では二世の健康診断をしてくれと、こういう要望が非常に強いかと思えば、そんなものをやられたらやっぱり結婚に差しつかえるからやめてほしいとか、いろいろむずかしい問題がこの被爆者の中にはあることを私どももよく承知をしているのですけれども、そうかといって、そうだから、こそっとしておこうということでは事は済まないと思いますね。そこら辺をやっぱりお互いに英知をしぼって、何とかこういう人たちに、やっぱり戦争の犠牲でございますからね、十分よい方法を考えてあげていただきたいと強く要望をしておきます。  そこで、最後に、もう一つ伺いしたいことは、葬祭料です。この葬祭料、今度上がっておりませんね。いま一万六千円でございますが、朝から何べんも言いますけれどもね、これだけの物価高で葬祭料が一万六千円で済むかどうかということです。これも要望としてはやっぱり四万円ぐらいをいただかなければ、とてもじゃない弔いもできないと、こういうふうなことを言っておられました。そこで、昨年の四月一日からことしの三月三十一日までに兵庫県で原爆のためになくなられた方が十九人ございます。そして、今度四月一日から六月三日まで、つい二、三日前ですが、この二ヵ月間でもうすでに四名も死亡をされているのです。ですからこういう現実もよくごらんをいただいて、そうして被爆者のためにもっともっと真剣に取り組んでいただいて、ただ健康管理手当を千円上げるのだとか、これくらいのことではなかなか済まない問題ですから、同じように戦争の犠牲になった人たちにはいろいろな手が差し伸べられていますけれども、まあ、この人たちに対してはわりあいに冷たい仕打ちしかしていただいていない。先ほどからのいろいろな皆さんの質問を聞いていて、八つの病気以外はなかなかこれも健康管理手当がいただけないということは放射能の影響を受けたということでなければ問題にしていないわけですね。だから究極はやっぱり援護法をつくらなければとてもじゃないけれどもこの人たちを助けていただけないのではないか。援護法の問題についてもずいぶん何べんも被爆者の方々からいろいろな、いままでにも強い要望があったのに、佐藤総理大臣は、わざわざ広島まで行って援護法はつくりませんというようなことをはっきり言ってこられた。今度は総理大臣もかわられましたから、その辺の検討はどうなっているか伺わしていただきたいと思います。
  286. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) まず、葬祭料の問題でございますが、これは四十七年度におきまして、一万円から一万六千円というように、一応率といたしましては六割増しということで、率的には大幅なアップだということでございますが、ところが、先生おっしゃいますように、じゃあ、現実に具体的な葬儀の費用とどういうあれがあるのかということになりますと、これはやはりもっと大幅に引き上げてやらなきゃならぬ種類の手当だと思うのでございます。そこで、四十八年度も一応要求はいたしましたけれども、いろいろほかにたくさん解決をしていかなきゃならぬような問題もかかえておりましたので、残念ながら四十八年度は葬祭料につきましては、引き上げができませんでしたが、来年度はぜひひとつ大幅な引き上げをはかってまいりたいと、こういうふうに考えております。
  287. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 援護法は……。
  288. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 援護法につきましては、これはなかなか軍人軍属というような、国と特別権力関係にあった人々が公務のために、その意思のいかんにかかわらず死亡したりけがをしたということと、それ以外の戦災を受けられた方々ということとの間のやはり問題が非常にむずかしい問題でございまして、確かに原爆の被爆を受けたということは非常に悲しい、悲惨な事実でございまして、この置かれた特別な事情というものはもちろん十分考慮しなければいけないというふうに考えるわけでございますが、それが国家補償というところまでつなげるのには、なかなかまだ一つむずかしい問題があるわけでございまして、私どもはその特別な事情というところに特に着目し、留意をいたしまして、今後とも大きく改善充実の策をはかっていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  289. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 その国家補償の問題については先ほどから藤原先生も柏原先生も盛んに言っておられましたので、いろいろなむずかしい点はあるかもしれませんけれども、もう二十八年もたって、これ以上さっき柏原先生言われたようにふえることはないわけでしょう。被爆をされた方の人数わかっているわけでしょう。ですから、ひとつその辺で援護法がつくれるように十分な検討と努力を要望しておきます。  それから先ほど十九名なくなった、つい最近また四名なくなったというのは、あれは神戸市の統計でございますから、これをつけ加えておきまして私の質問を終わらしていただきます。
  290. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 毎年繰り返されていることでございますし、きょうもまた朝から各委員によって繰り返されておりますこの原爆被爆者の問題については、被爆者自身が心がけが悪かったからではないし、あやまちをおかしたからではない。全く戦争を引き起こした者のために犠牲になられたのだということを根底にしっかり据えていただかなければ、いろいろな問題の解決にならないと思うんです。そういう立場からすれば、当然アメリカに対してすべての請求権を放棄したのである以上、国が責任をもって被爆者の方々の生活を見、そうして健康を守るための御努力をいただかなければならないはずなんです。御答弁のたびにいろいろと善処します、検討しますと、毎年少しずつよくしていっていらっしゃるようですけれども、全くこれは微々たるもので、二十八年たったいま大きな問題を残したままでいるのが現状でございます。そうして、こういう政治のあり方に対して被爆者自身がもう自分の手でどうしたらいいのだということから、ついに訴訟へ踏み切ったというのがいまの問題になって出てきていると思います。四月の十九日には桑原訴訟の判決がありました、すぐ控訴されました。また五月の十七日には広島県の石田先生が認定申請の却下処分取り消しを求める訴訟というのを起こさなければならないというような実情になっております。で、桑原訴訟の判決が出まして、その判決の中でこういうふうなことがいわれております。「被爆後二八年、被爆者が老令化の途をたどり減少していることは明らかなことである。少くとも被爆者のうち生活度の低落を余儀なくされている人に対しては原爆症の認定という医学の介入をまつまでもなく特別手当としての生活給付が与えられることを行政の立場で配慮されることが望ましい。」と、こういうふうにいわれているわけなんです。つまり、裁判の判決の中でも当然こういう人たちに対しては、認定云々以前に、生活度を低く落とさなくても済むようなあたたかい行政の立場というものをとってほしいといわれているわけでございます。こういう判決も出されているし、国の責任としてこれを真剣に考えるというようなお気持ちでもってほんとうにおやりになっていただけるのか。そうでなければ毎年むなしい質疑を繰り返していくだけだと、私はほんとうに残念に思うのです。だから最初に、いま申し上げました点についてのしっかりした考え方の基本をお伺いして次に進みたいと思います。
  291. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 桑原裁判判決におきまして、先生の申されたような内容のことが判決文に記述されていることはよく承知しておるわけでございます。これは一つの裁判官の御意見として私どもも受けとめていきたいと思います。  原子爆弾の被爆者の福祉対策につきましては、これが援護立法とかあるいは社会福祉立法というような区別の問題はともかくといたしまして、やはりその置かれている状況というものをよく理解いたしまして、今後とも被爆者の福祉を実質的に向上させるようにつとめてまいりたいというふうに存じております。
  292. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 大臣にもお伺いしたいと思いますが、このような裁判に踏み切るということは普通の人でも困難な仕事なのに、まして原爆被爆者というようなハンディを持った人たちが自分の生きるために踏み切らざるを得なかったということをお考えいただいて、御答弁をいただきたいと思うわけです。  あとで申しました、桑原さんに続いて広島県の石田先生という方が認定を却下されたということでいま問題になっているわけですけれども、もう大臣も御存じかと思いますけれども、この石田先生の場合には、白内障なんです。この白内障もお医者さんの診断にもより、また厚生省自身でも原爆症によるということを認めていらっしゃるわけなんですね。そして、いま点眼治療をしていらっゃる。しかし、治療をしているから認定をしてほしいと申請なさったときに、この治療では効果がない、だから手術する段階において申請しなさいということで認定が却下されているわけなんです。こういうことはまことに非人道的なことで、医療というものはやはり、これではっきり効果が出るとか出ないとかというのは結論を絶対的なものとして出すことはできないと思うんです。やはり進行する白内障を少しでもその進行をとどめて、そして見えるようになりたいというのが患者さんの希望だし、またお医者さんにしても当然これは治療が必要だといって治療をしているのが現状なんです。それに対して、早くめくらになれ、めくらになって手術する段階になったらやっとその認定について考えましょうというようなやり方なんですね。  こういうやり方を見ますと、原爆医療法の第七条の一項に、「厚生大臣は、原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し、又は疾病にかかり、現に医療を要する状態にある被爆者に対し、必要な医療の給付を行う。」となっているわけなんです。「現に医療を要する被爆者に対し、」ということになれば、この石田先生も、白内障を少しでも進行を食いとめるために、点眼などの治療をしていらっしゃるわけです。当然、「医療を要する」と書かれているこれに該当するんだと私は理解できるんですが、これを、手術する段階になってやっと認定の問題を考えようということなんです。いつから、この「現に医療を要する」と書かれていることが、「現に手術を要する」というふうに考えが変わっているのか。その辺のところをお答えいただきたいと思います。
  293. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 白内障は、ただいまお話がございましたように、進行段階におきます治療というものは、白内障そのものに対する効果が期待できないというのが、現在の医学的な常識でございます。したがいまして、白内障の手術ということに関しまして、これが、いわゆる原爆に起因する疾病の治療という、きわめて狭い解釈をとっておるということに対する御指摘だろうと思います。  しかしながら、この問題につきましては、私ども、原爆医療審議会の御答申に基づきまして、その御答申により厚生大臣が認定するという手続をとっておりますので、医療審議会の御意見がそういう御意見であるということを申し伝えざるを得ないと思います。
  294. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 現実に、白内障の方で認定されている人もほかにあるわけなんですね。そうしますと、白内障は効果がないというふうな審議会の決定というふうにおっしゃいましたけれども、やっぱり現実に白内障で認定されている人もいるし、また、これの専門に担当していらっしゃる方もお医者さんでございまして、そしてやっぱり治療するということをいまやっていらっしゃるわけなんですね。  そうすると、その決定というのは、一体どういう基準で、何が根拠になって、この石田先生の場合、却下と、目が見えなくなって手術するまでほっとけということになるんでございますか。   〔委員長退席理事大橋和孝着席
  295. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 白内障の治療と申しますか、これは、手術の段階におきまして医療ということになろうかと思います。したがいまして、手術ができる段階に至りますまでにはかなり長期間かかります。これは、硝子体の混濁が手術に適する状態になるまでかなりの時間を要するわけでございまして、その間は進行性のものでございまして、現在、ほかの目薬等の点眼では、それを阻止することもできません。したがいまして、それは、直接白内障に対する影響があるという認定ではございませんので、その手術の場合にはこれは原爆症として認定されるわけでございまして、その手術料が原爆症の医療ということになるわけでございます。
  296. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 大臣、いまのやりとりお聞きになって、どういうふうにお感じになりますでしょうか。白内障でも、手術するまで、ずっとどんどん見えなくなる。だから、見えなくなった時点で手術すればなおるんだというのと、それが非常に長い期間かかって見えなくなる。手術するまでの段階というのはいろいろ差がございますね。そして、その点眼したり、治療したり、また精神的に非常に充実した生活をしたりというような、患者さんの場合には同じような症状でも、そこにいろんな差が出てくるわけなんですね。そうすると、先ほども言ったように、この被爆者の方たちを少しでも励まして、少しでも目の見えるような期間を長くさせてあげて、少しでもあたたかい医療の手を差し伸べようとする、そういう、私が最初に言いましたような基本的な姿勢で考えていただけないか。これはもう見込みがないんだからめくらになんなさいと、そのときまでは全然この認定もしません、援助もしませんというような姿勢を、私はほんとうに残念に思うんです。  大臣、お聞きになっていて、どうでしょうか。目医者さんが治療しているという段階で、この点眼は医療でないと、手術が医療だというところで切り離されてくるという非常に冷酷な判断ということについて、私はちょっと疑問を持つし、こういう姿勢だからいまの原爆被爆者はいつまでたっても救われないんだと思うんですが、いかがでしょうか。
  297. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 小笠原委員の御質問、途中で入ってまいりまして全部承ったわけではございませんから、あるいは的が多少はずれているかもしれませんが、その点はお許しいただきたいと思いますが、原爆被爆者の医療については、私どもはできるだけあたたかい援護の手を差し伸べることが一番大事なことであると考えております。したがって、審議会等においていろいろ御審議をいただく場合においても、そうした気持ちを十分持っていただくことが第一でありますが、同時にまた、医学的な専門的な判断というものが私は絶対にこれ必要なことでありまして、厚生大臣としては、かってに、これは気の毒だからすぐ許したまえ、これはちょっとおもしろくないからやめたまえなんという恣意専断を許さるべきものではないと考えております。したがって私としては、基本的にはできるだけあたたかい気持ちで御審議をいただきたいと思いますが、同時にまた、専門の方々が判断をしたことに対して私がある程度の自由な気持ちでこれをくつがえすというわけにもいかない。その点は私は十分御理解をいただけると思います。  しかし、小笠原委員の仰せになりましたいまのお話、十分私も、ほんとにお気の毒な感じがいたします。しかし、さればといって、審議会の専門の方々がこうだということを、先生の御質問を承って、それじゃ即刻それ直したまえというわけにも私はいかないということだと思います。はなはだ、答弁になったようなならないようなことだったかもしれませんが、私はそういう考えを持っております。
  298. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私も科学的な判断を無視せよと言っているわけじゃございませんで、当然それは根拠になると思うんです。  あと、審議会の問題として、あとの質問に引き続いていきたいと思うんですけれども、簡単にお答えいただけばいいと思うんですけれども、それじゃ同じ白内障で、手術をしないけれども、いま点眼治療しているという方に認定が出ているということは、どういうことになっていますんでしょうか。   〔理事大橋和孝退席委員長着席
  299. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) そういうケースは非常にまれなケースではないかと思います。たとえば手術の適用がはっきりした段階におきまして点眼治療をやるという段階に至りますと、認定されたというケースじゃないかというふうに考えております。
  300. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 全然根拠薄いですね。  だから石田先生の場合も、手術すればいい、それまで待ちなさいというわけでしょう。そうしたら、いまと同じことになるんじゃないですか。手術の段階まで点眼しているということについては同じだと思うんですよ。
  301. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 石田さんのケースにつきましては、これは第一回の裁判が六月二十六日に実施される予定になっております。したがいまして、私ども、先ほど申し上げましたように、原爆医療審議会専門家の方の御意見に基づきまして措置をしたことでございまして、その後の問題等につきましては、やはり裁判所の判断におまかせするのが私ども立場といたしましては妥当だということになろうかと思います。ただ、一般的に申し上げまして、白内障の手術期の近くになりまして点眼等実施するということは、もうはっきり手術適用ということになった状態というふうに理解できると思います。
  302. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 これで時間あまりとっていられないので次に進んでいきますけれども、いままでお金特別措置法で出していただけなかったころには、その認定というのがいまから考えるとわりと楽だったわけですね。四十三年に特別措置法が施行されて、そうしてお金を現実に予算化されて出されるようになった段階から、非常に認定がきびしくなっているんです。  時間がございませんから私のほうで続けて申し上げますけれども、これも桑原裁判の証人尋問の記録に出ていたのを私読みました。お答えいただいているのは、当時厚生省の公衆衛生局企画課長さんの方がお答えになっていらっしゃる、福渡さんとおっしゃるのですか、お答えになっていらっしゃいますけれども、四十二年度まで、つまり特別措置お金が出される前までのときには、認定患者というのが大体八〇%だったと。審議会にかけずに大臣権限で認定される患者さんですね、それが八〇%だったと。四十三年度、この特別措置法が出されてからどれくらい認定されるのですかということを質問されたときに、六〇%だというお答えが出ております。これは厚生省のお役人さんが言っていらして、事実だと思います。そうしますと、四十二年と四十三年の認定申請の却下率はどれくらいになるかということを調べてお答えいただきますと、却下されるものは四十二年度は一七%しかなかったのに、四十三年度には三九%というふうに非常にふえているわけなんですね。こういうことから考えると、この認定というもののワクが非常にきびしくなった。それじゃ、その認定される経過ですね、その原爆医療審議会でどういうように審議されて、そうして認定するしないがきまるのかということをまた質問されています。そこでまたお答えになっているのですけれども、たとえば昭和四十三年度の四十七件のものが付託された場合を言っていらっしゃいます、大体一件当たり何分ぐらいの時間がかかるんですかと、「ケース・バイ・ケースでございますが、まあ平均して五、六分でございます。」と、五、六分しか審議されていないとはっきりお答えになっているわけなんですね。これは、患者自身にとっては、自分の命と健康、自分の一生を左右するようなたいへんな問題なのに、わずか五、六分で大体きめられる、非常に納得できない結果を生み出しているわけなんですね。こういうふうなやり方が、いまの認定のワクを狭め、納得できない非常におかしな結果を出しているというふうに私は考えられる。当然そういう結果になってくるだろうと思うわけですけれども、その点についてどうお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  303. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 御指摘の第一点でございますが、四十二年、四十三年の経過を申し上げますと、御指摘のように、四十二年は一七%が却下になっております。ところが四十三年度には三九%が却下になっております。ただしその実数を申し上げますと、四十二年度は申請件数が八十八件に対しまして認定が六十七件でございまして、却下が十五、それから照会が六ということになっておりますが、四十三年は御承知のように特別措置法の各種手当の支給の開始年次でございまして、この年の年間の申請件数が三百九十九件、それに対しまして認定件数が二百二十五件、したがいまして、先ほど御指摘のような三九%という却下率になっております。ところが、これが、あと年を追いましてそれぞれ却下率を申し上げますと、四十四年が三九・三、四十五年が四二・四、四十六年が三七・四、四十七年が二九・〇、大体若干の上がりはございましたけれども、次第に却下率は下がっておる傾向にございます。  それから一件当たりの審査時間が五分で、非常に短いではないか、こういう御指摘でございますが、審査件数とそれから開催時間とを平均的にお割りいただきますと、そういう結果になろうかと思いますが、実際はやはり必要のある事例につきましては、十分これは審議を尽くしておられまして、判断が困難なような場合には、さらに必要な事項や検討事項について照会する等の措置もとられておりまして、決して御指摘のようなきわめて短時間に審査をするというようなことはございませんで、明らかに原爆症というふうに認定されるものにつきましては、これは一応そういうものも含まれておりますので、御指摘のような審査時間を件数で割りますと、きわめて短いことになるというふうになろうかと思います。
  304. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 申請がふえたというような数字も、私見せていただいて承知しているわけなんです。申請がふえるというのは、当然手当が出るしということで、いままで黙っていた方も当然お申し出になったということだろうと思うんです。ただ、要はそれを機会にしてだんだんお金を出すようになってから認定がきびしくなったという事実、この事実はやっぱり私は否定できないんじゃないか、そう思うわけなんです。  そこで、認定の問題なんですけれども、いま充分時間を費やしたとおっしゃっていますけれども、患者さん本人にしても、またそれを証明してお出しになったお医者さんにしても全然納得されていない。納得できないのは一体何かといったら、認定の基準というものがあいまいではっきり知らされていないわけなんですね、一つの問題は。そこで一つ、「原爆放射線による白内障の認定基準に関する参考意見」というのが四十五年の五月十五日に出ておりますが、こういうような認定基準というようなものが数あるんでしょうか。あればそれを出していただきたいと、そう思うわけなんです。これ一つ私のほうの手に入りましたんですけれども、だから認定がどういう基準でされているかということに全然不審が出てくるわけなんですね。  それからもう一つは、認定する審議会そのものが、御存じのように非公開でございます。プライバシーの問題があるというような御説明があろうかと思いますけれども、本人が自分のことで聞きたい、本人が治療している先生だから信頼しているから聞いてもらいたいというような場合には、当然秘密といっても、本人のプライバシーを守るということであるならばこれを公開していただく。そうすれば、時間が短いとやら何とやらというような疑問を残さずに、認定が科学的で正確であるとおっしゃるならその証明にもなろうかと思うわけなんですね。だから、いま言ったように認定基準というものがあるのかないのか、あるならばそれを出していただきたい。そして審議会に本人または本人の同意した者の出席を認めるとか、その内容が納得できるようなそういう審議会にしていくのが当然ではないかと、私はそう思うのですけれどもいかがでございますか。
  305. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 原爆医療審議会審議に際しまして、認定基準があるかという御質問でございますが、私どもといたしましては審議会委員方々の御意見によりまして、認定基準を設定するということなしに個々の事例によって認定をしていただくというふうに取り扱ってきております。したがいまして一応の基準というものを設定することはやはりこれは原爆症の性格、性質上きわめて困難なものだろうというふうに考えております。  ただ、それからこれを公開したらどうかという御意見でございますが、個人の方にいろいろの状況をお聞きすることはございますけれども、その内容等の審議につきまして公開するということにつきましては、これは非常にやはり慎重を期さなければならぬ面もあろうかと思いますので、やはり従来どおり非公開を一応の原則とせざるを得ないというふうに考えております。
  306. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その慎重に考えたいというのは本人の将来にとって、本人自身のためになるかならないかということが基準になって慎重ということが考えられると思うのですね。こういうことが知れたら困るということを基準にされたら絶対に秘密になると思う。だから基本をどこに置くかといえば、被爆者自身のためにという、そういう姿勢で基準というものをきめられなければならない。とするならば、当然本人も聞きたいと、納得したいということであれば、非公開でなければならないという、そういうことはないと思うのです。  そこで、具体的にお伺いしますが、非公開でなければならないという根拠となる何か法的なものがあるのかないのかということです。  それから続いて、時間がないからいまの問題についてお伺いしますけれども、その状態を審議したとおっしゃいます。そしてまた患者や主治医の意見も聞くことは大事だというふうにただいまおっしゃったと思いますけれども、石田さんの場合について考えてみますと、全然本人も聞かれていないし、主治医も聞かれていないし、しかも三回にわたって申請が却下されているわけです。石田訴訟の訴状によれば、「被告厚生大臣が本件却下処分をなすにつき、その意見を聴取したとする原爆被爆者医療審議会審議では本件原告の認定申請の是非を判断するのに、原告や原告の主治医であり且つ原告が右認定申請書に添付した意見書及び診断書を作成した医師」、主治医ですね、その「意見を聴した形跡はまったくなく、その審議手続の秘密主義と不公平性は原爆医療法の立法趣旨からしても到底是認できるものではない」というふうにいっているわけなんですね。だから、せめてほんとうにどうなんだということでお聞きになったなら私もこう言いませんけれども、三回も申請されているのに本人の意見も聞かない、見るわけでもない。そして主治医といってもしろうとじゃございません。主治医ですから眼科の専門医、その専門医が、これはこういう治療でぜひ認定さしてほしいという主治医からも一度もお聞きになっていらっしゃらないわけなんですね。で、そういうところに審議会というものが決して被爆者のために立っているのではない、非常に政治的な判断のもとに認定が却下されるのではないかということが、勘ぐるわけじゃないけれども、勘ぐらざるを得ないような結果になっているわけなんですね。そういう点を考えると、当然聞くべきだし、非公開じゃなくて公開して納得できるようにするということが私は当然のことだと思うんです。いかがでございましょう。
  307. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 原爆医療審議会におきましては一応たてまえといたしまして書類審査を原則にしております。したがいまして、認定に際しまして審査に必要なできる限りの資料を本人あるいは主治医等から取り寄せまして審議をするということになっております。したがいまして御指摘のような石田さんの場合、その該当でなかったということで三回も審査を申請されたということだろうと思いますが、なお、審議会につきましては申請者本人の医学的な判断等につきましてもやはり当然論議されることでございまして、これは疾病の性質上から非公開にせざるを得ないような場合もあろうかと思います。したがって、先ほど御指摘の、個人の秘密ということもあわせまして、やはり非公開が原則であろうというふうに考えております。
  308. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その非公開にしなければならないというところの理由をもっとはっきり言ってください。
  309. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) いま申し上げましたように、御本人の医学的な判断をそこで論議しなければいけないということが一つでございます。  それからもう一つは、やはりこれは原爆症という性格上、やはり個人の秘密を守らなきゃいかぬということも第二の非公開にいたします原因であろうと思います。
  310. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 全然説得力ないですね。個人の秘密を守らなきゃなんないといって、本人はいいと言っているんですよ。本人が納得したいと言っているんですよ。理由にならないじゃないですか。そしてそれが疑惑を呼んでいるとすれば、そんなところで秘密にしないで公開なさるということは当然だと思う。だれでも入れろと言っているんじゃないですね。しかも一回じゃなくて二回も三回もやったけれども、ぱっと却下された、そして診断書類でなさるというけれども、その書類審査といったってさっき言ったように、平均すれば五、六分だと、その書類も数字で出てくるわけですね。じゃほんとうに臨床でしっかりずっと見てきた主治医というものの意見も聞きたいというところまでいっていれば、ある程度私は納得するけれども、そういうこともなさらないで、一ぺんの書類審査して、三回も却下した、そしてどうも納得できないというのに対して本人のプライバシー、秘密を守る、本人はいいと言っている、本人、いいと言っているのに守ってやる、守ってやるって、よけいなことをしなくてもいいじゃないですか。
  311. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) たとえばガンみたいな場合に、やはり医学的ないろいろ論議がされますので、そういう場合には当然これは個人の方に公開をするということははばからなければならないと思います。それから一応先ほど申し上げましたように書類審査が原則でございまして、それによって一応審査をいたしまして、まあ石田さんの場合のように三回繰り返し申請をされるというケースも出てくるわけでございますが、そういう不服のございますような場合には、やはり個人の方に来ていただきまして、御意見等も聴取した例もございます。したがいまして、おそらく石田さんの症状等につきまして、主治医の方の御意見等も、その書類の中におきまして記載されました事項につきまして、やはり現在の段階ではということで却下になったのだろうというふうに推測いたします。
  312. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 書類審査が原則だとおっしゃいましたけれども、原則というのは一体何のためにあるんですか。被爆者をほんとうに救済すると、被爆者を心休ませようという法の精神からいったら、原則というのは、そこに立ち返ってつくられなきゃならないのじゃないですか。簡単なケースのときには書類審査でもできると思いますけれども、こういうような場合、そうしてお医者さんもほんとうにはっきり聞かせてほしいという、もうこれは意見書というのをお書きになっていますけれども、ことばじゃ書き尽せないいろいろの問題があるわけです、お医者さんの立場からすれば。また本人にとっても、どうしても聞きたいというようなそういう立場を考えれば、書類審査が原則だとおっしゃるけれども、その原則はあくまで仕事を進めるための原則であって、被爆者の人権を尊重し、健康と命を守るという立場に立った原則じゃないと思うんです。そういう原則は原則と言えないんですよ。これはもう直ちにこんな原則やめてもらいたい。そうしてほかの場合、いろいろとあるかと思いますけれども、三回にわたって却下されているような、こういう特殊な場合に、当然その意見を徹そう、聞こうじゃないかというくらいの行政の姿勢がなければ、幾らうまいことおっしゃっても、全然被爆者の立場に立っていないと結果的には判断せざるを得ないわけなんです。大臣、いかがでございますか、私の申し上げているの無理でございましょうか。
  313. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私は、やっぱり医学の診断を大ぜいの先生方が議論なさるときには、非公開が望ましいことだと思います。しかしながら、いまお話のような、三回も申請をして却下される、これは具体的な例について言うわけじゃありませんが、そういうふうなときにはやはり審査会のほうも、どうしてこう三回も来るのでしょうと言うて、やはり本省に呼ぶのもたいへんならば、こちらから県を通して、こういう理由ですと親切に説明してあげるということは、私はけっこうだと思います。  私は、その具体的な問題を離れまして、審査というものはそういうふうにあることが望ましいというふうに私は思います。
  314. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 大臣、なかなかわかるじゃないですか。下のほうがわからないの、これは困るのですね、こういうことでは。だから、大臣も、当然のこと、そうおっしゃると思うのですね。だから、そういうところを原則原則と、ちょっとそれを行き過ぎたらしかられるのじゃないかなんて上向きじゃなくて、やはり厚生省のお役人としては、下向きになってほしいですね。被爆者の立場に立ってやってもらいたいと、そういうことでこの問題は、それじゃ当然何らかの形で意見も聞いてというようなことで納得できるような形にしてもらいたいし、また、今後、この審議会の秘密だというような原則も、弾力的なものとして、私はすべて明らかにしろと言っているのじゃないのです。こういう特殊な問題については、当然そういう弾力的なお考えでやっていただきたいということで御了解いただけますね。
  315. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 原則といたしまして書類審査ということを申し上げましたが、やはり異議申し立て、あるいは不服等のあります場合に、あるいは疑問のあります場合には、個人の御出席をいただきましていろいろ質問をしている場合もございます。したがって、原則は一応書類審査ではございますが、そういうケースもあるということは十分御理解いただきたいと思います。
  316. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ、そういうようなことで、弾力的に、積極的に考えていただくということで確認して、次に進みたいと思います。  先ほどからの大臣の御答弁の中で、健康管理手当などについても医療審議会の中の福祉部会には専門の方もいると、そうして現地の広島、長崎のそれぞれの担当関係者が入っているということで、その意見は非常に慎重に検討さしていただく材料として尊重したいというふうにお答えいただいたわけなんですけれども、昨年の十二月二日にこの福祉部会から意見書というのが三人の委員から出されていますけれども、もちろん御存じだと思いますが、それについてどういうふうにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  317. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 福祉部会に部会の委員の先生から「健康管理手当の支給制限に関する意見」というのが出されておりますことは承知いたしております。これもその福祉部会の中で全体の委員の先生方がこの意見を含めましていろいろ御討議の末、部会としての意見書をまとめられたんだろうと思います。
  318. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 答弁になってないんですよね。その意見書、三人の、これは広島市の衛生局次長さん、広島原爆病院の院長さん、広島県の衛生部長さんでいらっしゃいますね。この三人から具体的な意見書というのが出ているわけなんです。まだはっきり御理解になっていないようだから時間の関係で私のほうから申しますと、この福祉部会の三人の、しかも現地の担当者から出されています意見というのは、第一番目にはいま八つの疾病が制限されているわけですね。きょうもいろいろ御議論ございましたけれども、この八つの疾病制限を取りはずしてほしいと、そして呼吸器疾患の問題だとか、あと二つを入れてほしいというような御意見でございます。それから年齢制限、先ほどから出ておりました。この年齢制限をなくせという問題と、それから手当の支給最高限度の年度でございますね。この年度を撤廃してほしいということが具体的に三つの案として、この意見書に出ているわけなんです。これは当然審議会の福祉部会として、しかもこの現地の実際患者さんを見ていらっしゃる方たちが具体的な実情の中から専門的な立場でお出しになったと思うのです。当然それはもしも先ほど大臣はじめ皆さんが福祉部会という部会がございまして、それの意見は十分尊重していきますとお答えになったのがほんとうだとすれば、この意見を取り上げていただきたい。  その第一は、いままで八つだった障害に加えて呼吸機能障害、そして運動器機能障害というこの二つを加えてせめて十にしてほしい。それから「明らかに放射線の影響によるものでない疾病」以外の全疾患を該当とすることが適当だというふうに意見書では言われているわけなんです。当面具体的に出されましたこの二つの障害を新たに加えるべきだと思うんですが、そういうふうにやっていただけると思うんですが、どうでしょうか。
  319. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 御指摘の呼吸器機能障害、この中に慢性肺気腫、肺線維症、これと運動器機能障害、これに変型性脊椎症、これをお加えになっておられます。この問題につきましては福祉部会ではなくてむしろ医療部会で検討するということになっておりますので、その結論を待ちまして私どもは取り扱いを決定いたしたいと思っております。
  320. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それは大体いつごろ、それじゃ医療部会のほうでも御検討になるわけなんですか。
  321. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 七月の予定でございます。
  322. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 じゃ、そういうところでまた御審議くださると思いますけれども、やっぱりこの三人の方々が福祉部会としてお出しになった御意見も当然尊重して考慮していただきたいと思います。  それから二番目に出されておりますのが支給年齢についてでございます。先ほどからの答弁を聞いておりますと、全然もう根拠薄弱、怪しげになってきているわけなんですけれども、ことしは五十歳にしたと、去年は五十五歳だと、その前は六十歳だというふうに五年ずつきざみになっていますね。その五年ずつきざみにしてきているという根拠が全然ないんですね。もし老齢が根拠であるとすれば、それじゃ、六十歳が老齢の根拠であったのが五十五歳になったとすれば、なぜ五十五歳になったというか、その根拠というものはないわけでしょう。五十五歳から五十歳になったことしは一体何を根拠として五十歳にしたのかということになれば、全然根拠がないわけなんですね。これ、来年度、再来年度って、まあ、四十歳ぐらいまでは、さっき大臣、下げてもいいような話をなすっていらっしゃった。全然根拠ない。根拠といったら、何だといったら、政治的な根拠しかないと言わざるを得ないんですけれども、その辺は一体どういうふうになっていますんでしょうか。
  323. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 老齢ということにつきまして、加齢現象がどの程度及ぼすかということにつきまして、最初の段階では何も五歳下げるというんじゃなくて、もっと十歳なり十五歳なり下げてもらいたいということだったんですが、まあ一ぺんに下げられないということで五歳下げたと、それからまたその次の年にまた五歳下げて今度は五十歳ということで、まあ人生五十年というようなことで五十まで来ちゃったわけでございますが、これ以上は幾ら加齢現象といっても、老人というのを四十歳代でという根拠でこれから主張するということはむずかしいんじゃないかと。したがって、これはやはり別途の新しい観点なり角度からやはりひとつ引き下げをはかっていきたいと、究極的にはやはり撤廃ということも考えなければならぬことだと思いますけれども、オール・オア・ナッシングで、もうとにかく撤廃かいまのままかというのがいいのか、あるいは相当の根拠を持ってまずもう一度がたんと下げるのがいいのか、その辺のところをいま検討しておる次第でございます。
  324. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 全然だから根拠ってないんです。五つぐらいずつというのは、ちょっと数が都合がいいからという程度なわけですよね。もうすでに、いまおっしゃったように、その老齢だということの考え方からいえば、いま五十歳にしたというのは、その論点というのはもう無効になっちゃっていますよ、もう。だからこの考え方の根拠というのはくずれておりますね。そうすれば、やっぱり、私さっき言いましたように、医療審議会の科学的な診断というようなことを否定しないと言ったように、やはりこの問題についても私はばく然と言っているのじゃない、ばく然と撤廃しろと言っているのじゃないのですね。専門的なお医者さんなどの御意見をお聞きになったと思いますけれども、お医者さん自身がこの年齢制限というものに根拠がないというのです、医学的な問題からはね。そうすれば、医学的な問題から根拠がないとすれば、当然撤廃されるべきではないかという道しか残されていないわけなんです。それで年齢別に被爆者の、特別被爆者の数字というものを見てみますと、五十歳ですね、ことし五十歳以上の特別の被爆者の数は五〇・一%です。そうして四十九歳以下の方が四九・八七%ということになっているわけなんですね。だから五十歳を境にして老齢化の方も若い方も半々というのがいまの特別被爆者の方になっているわけなんですね。  そこで、やっぱりまた科学的な問題として考えてみなければならないと思いますのは、国立予防衛生研究所とABCCから「業績報告書7−71」というのが出ておりまして、これの中にも「少年期に原爆に被爆した者における癌」では、被爆少年のガンの発生率に非常に増加の傾向があるという事実を国立予防衛生研究所とABCCのほうで出されているわけですね。そうすると、少年期に被爆したという人たちもそのガンの発生が多いと、被爆時に十歳未満であった者は、白血病の著名な発生の増加のほか、被爆していない者よりもガンの発生率が高いというふうに、いままた繰り返して言いますけれども、言われていると。そうすると、被爆児十歳未満といえば現在は三十歳ないし三十八歳ということになるわけなんですね。そうすると、当然ガンにかかる率というものも多くなってくるということになるんです、これから言いますとね。そうすると、三十八歳の、十歳くらいでかかった者がガンにかかる率が多いと。しかしこれは、三十八歳だということになれば、全く今度四十歳まで下げてくだすっても、またこれは下がっていかなければならないということになるんですね。どっちころんでも、これは全く医学的にも根拠がない問題なんです。そこで、さっき大臣は、四十歳くらいまでに下げるか年齢制限をなくするかという二つのどっちかを検討すると言っていらっしゃいましたけれども、二つのどっちか検討するなんという根拠はもうないわけです、この発表の結果を見ても。そうしたら当然被爆者の皆さんが要望していらっしゃる五十歳なんというようなこと、四十歳まではいいだろうなんというあいまいなものではなくって、医学的、科学的な立場に立ってもこの年齢制限は全く根拠がない。とすれば、やはり年齢制限は撤廃して、そうしてほんとにそういう立場に立たれた被爆者の方を援助するということにならざるを得ないと、こういうふうに思います。もしそれができないとすれば、まさに政治的な判断からの制限だと言わざるを得ないと思うんです。これは広島や長崎県の知事や市長からもぜひ撤廃してくれと、患者さんもろとも要請書も出ているわけなんで、その辺のところをひとつ決断していただいて、これは撤廃しますという御返事をいただきたいと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  325. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これは先ほど来たびたびお答えをいたしておりますように、単なる検討ではなくして、撤廃をするか、あるいは従来のようなやり方で、年齢引き下げという形でこの問題を解決するか、どちらかだと私は思うんです。そのどちらかにするかということについては、私もそう横暴な大臣ではございませんから、よく審議会の福祉部会なりあるいは医療部会の御意見も十分承ります。こういうふうな部会においては、御承知のように、現地の方々、医療に従事された方方みんな入っているわけですから、そういう方々意見を聞くわけでございます。そういうふうなことで、八月の末には概算の要求をしなきゃなりませんから、七月、八月の間に決着をつけるようにいたしたいと思います。これはもう先ほど来衆議院でも私お答え申し上げましたが、年齢という制限をつけているのはどうもおかしいなあということははっきり言うているのです。言うているんですが、一気によその方々の御意見も聞かずに——せっかくつくっておる審議会の部会の方々意見も聞かずに、先生の仰せになることですから、即刻返事したいところでございますが、もうちょっと時間をおかしいただいて、どちらかに決着をつけるようにいたします。年齢を下げるときには、私は必ずしも四十歳にするなんということを言っているのじゃない、あるいはもっと下がるかもしれません。要するに、年齢引き下げという方式でいくか、あるいは全部やめちまうか、そのどちらかの方式で問題を解決したい、こういうことを私はお答えをいたしておる次第でございますから、もうしばらくどうか時間的余裕をお願い申し上げたいと思います。
  326. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 重ねて申し上げますけれども、だんだん年齢引き下げていくか、撤廃するかという二つを検討させてくれとおっしゃったわけですけれども、先ほどから私言ってましたのは、だんだん年齢を撤廃していくという根拠はもう論破されているわけですよ。そうでしょう。大体お医者さんが科学的に見ても、当時少年期に被爆した者は、こういうふうな状態でガンにかかる率も多いというふうに言われていれば、当時十歳だったらいま三十八歳だということになれば、これはどこで線を引くかということになれば、あとは被爆二世の問題も出てくるだろうし、これは線の引きようがないわけですよ。そうすれば、年次ということになれば、じゃ、来年幾つくらい減らすかという、それじゃこの根拠というものもなくなるわけなんですね。だから、そういうだんだんというようなことは全く根拠がないことなんですから、私の説明が悪かったのか、まだ御理解いただけないのがちょっと残念なんですけれども大臣が年齢制限あるのがおかしいじゃないかとお思いになったそのことがほんとうに正しいのですよ、大臣。だから自信を持ってやっていただきたいし、そうして福祉部会のほうからも、患者さんからも、各知事さんからも、年齢制限は撤廃してほしいという要請が出されているわけですから、大臣がそこはやっぱり指導性を発揮していただいて、だんだんなんという、そんなもうけちな考えや、政治的な判断というものに見られるようなことはなさらないで、年齢制限撤廃に向かってやるんだということは当然お答えいただけなければならないと、そう思うわけなんです。しばらく時間をかしてくれというふうにおっしゃいました。私、きょうがきょう結論を出せとは言えませんけれども、やはり患者さんの身になってみれば、これはもう自分の問題として深刻な問題でございますので、その辺のところを、大臣もう少し指導性を持ってやっていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  327. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほど来お答え申し上げておりますように、それぞれ専門の部会がありますので、専門の方々の御意見も十分承って結論を出すようにいたします。
  328. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 たいへん大臣おじょうずな答弁なさいますので困りますけれども、当然その福祉部会や審議会のほうからもそういう意見になると思いますので、ぜひ年齢制限の撤廃。それから時間がなくて言えませんが、先ほど来問題になっておりました給付の期限の一年、三年というような問題も同時に撤廃してほしいというふうに、この福祉部会の三人の先生方からは意見として上がっておりますので、これは尊重していただくということに御努力をいただきたいと思います。  それから、今度その他の問題に入りますんですけれども、医療費はただになっても、交通費とか何だとか、やっぱりそれなりの相当支出がございますし、健康でないということのために、生活もたいへん御苦労をなさっていらっしゃいます。そこで、その方たちが被爆者という特別な、特殊な問題の中で犠牲に置かれているものなんだから、そこは生きた行政として、保険料ですね、国保だとか、それから共済の保険料だとか、それから、いろいろそういったものの保険料でもせめて何とか援助してもらいたいというような意見もございますし、また、診断書でも五百円取られるというようなことも、これも何とか援助するというような具体的な少しずつ上がったといっても、千円程度の値上がりでは、もう物価でむしろマイナスみたいな結果になってしまいますわけですから、こういう文書料を国が支給するというような、こまかいところを考えていただいて、決してお金がないんじゃなくて、ちょっと使い方が、いまの使い方が間違っていますから、ちょっとそれを直していただければ、当然出せる金額でございますので、何とか考えていただけないかということをお伺いしたいと思うんです。
  329. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) いまの保険料の免除、あるいは減免措置を講ぜられないかという御質問でございますが、これは社会保険の原則からいいまして、やはり病気で治療を受けておりましても、保険料というものは払うたてまえになっておりまして、そこのところはそういう例外を設けるということはむずかしい問題じゃないかと思います。ただ、非常に生活にお困りになっているとか、あるいは非常に負担がむずかしいという場合には、これは実情に応じて国保等におきましては、保険料の減免措置というものも講ぜられるわけでございます。それから文書料につきましても、これはやはり申請をするための前段階のものでございまして、その結果、いわゆる被爆者としてのあれが受けられるか、受けられないかのまだ前段階の問題でございますので、そういう文書料というものを負担をするということは、これもなかなかちょっとむずかしい問題だと思うわけでございます。
  330. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いまの法体系だとか、いまの制度上では困難だということをおっしゃっておりますけれども、確かにめんどくさい問題があると思います、それを変えなければならないという場合にはね。しかし、一番初めに言いましたように、この原爆の被爆者というものは特殊な問題なんですね。だから、やはり特殊な場合に対応する措置としては特殊な措置をとらなければ、これは救済できないんですよ。特殊な問題なのにいまの一般的な制度法律でできませんというのではいつまでたってもできない。それがいままでの隘路になっていたわけなんですよね。しかも金額がどんどんもう倍に上がるとか三倍に上がるとかというような、もうそんなこまかいことを言わなくて済むような手当を出してくださるんならいいのだけれども、まことにささやかなものでございますから、やっぱりそういう困難であろうとも、初めに言いましたように、被爆者の立場に立ってのやっぱりあたたかい行政というものを、困難だけれども、それをするのがあなたたちの仕事じゃないですか、それをするのがね。困難だからできませんということで突っぱねられれば、ほんとうに日のの当たる日はないと思うのです。だからそういう意味で、困難だとおっしゃらないで考えていただきたい。予算というような問題も、それじゃそんな困難な問題はやめて、もっと支給額をふやそうというようにふやしていただいてもけっこうなわけですけれども、そういうようなほんとうに被爆者の方たちの立場に立った行政ということを考えていただきたいと思うんです。そういうことでその問題について大臣の御意見も伺って、時間がないので、あと最後一つだけお伺いしたいのですけれども、先日、アメリカからの被爆の資料が、原爆の資料が返ってまいりましたね。これはたいへん貴重な資料だと思うんです。これ再びこういうのをつくろうなんたってできるものじゃありませんし、こんなのできたらたいへんなことでございますね。そうすると、これはもうたくさんの人たちの血のあがないによって、まことに残念ながら出た資料でございますから、これはもう非常に貴重な資料として当然保管されて、人類のしあわせのためにプラスになる役割りを果たしてもらいたいというのが、私たちのかねて考えていたところでございます。しかし、いよいよ資料が返ってきたと、そのとき広島大学の原爆放射能医学研究所の所長の岡本教授が、はっきり言ってこの返還資料の保管についての責任に自信が持てないと、こう言っていらっしゃるわけなんですね。それでもまだ広島大学には標本センターがございますけれども、長崎大学にはそれすらもないと、こう言われているわけなんですね。こういうことから考えると、この資料を返してもらったことがよかったのか悪かったのかという結果になってしまいます。当面この資料を、少なくとも破損しないで保存するということのためには、どのくらいの予算が必要だとお考えになっていらっしゃるのか。この費用について、まあ、広島大学では当面の整理だけで約七百万円が必要だと言っていらっしゃるわけですね。そうすると、具体的には当面七百万円のお金、このお金を広島大学から要請されたときに、文部省のほうにもお聞きしたいと思うんですけれども、文部省のほうと協議して、この予算を出して、そうして、この資料を保存するということについて具体的にやらなきゃならないことですからね。やっていただけるのかどうかという点ですね。  それから続けて、もう最後になりましたからお伺いしますけれども、日本学術会議の第五十九回総会の決定で、原水爆被災資料センターの設置の勧告が政府に出されていると思うんです。これもそういう趣旨からいって当然の勧告だと思うんですけれども大臣がこの勧告についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるかということをまとめて最後にお伺いして終わりにしたいと思います。
  331. 七田基弘

    説明員(七田基弘君) 大学の件につきましてお答えいたします。  いま小笠原先生からお話がございましたように、私ども原爆医学標本センター、これは広島大学。それからもう一つ原爆医学資料センター、これは長崎大学でございます。いずれもまだ十分だとは思っておりません。この二つにつきましては、まあ大学と相談をいたしまして、順次少しずつ整備をしておるところでございますが、まあ、本年度——これは実は本年度になってから資料が返ってきたといういきさつもございましたので、あんまり多額は出せないかと思いますが、大学と相談しながら必要な運営費といいますか、は出していただくように考えております。  それからもう一つ、原爆医学資料センターのほうの建物にといいますか、それがまだないわけでございます。これは従来から長崎大学のほうと相談してきたわけでございますが、こういうような貴重な資料が返ってきたというようなこともございまして、長崎大学といま話を詰めておりますが、たぶん昭和四十九年度の予算では、長崎大学から正式にあれが出てくるのではないかというように思っております。それを見まして、また長崎大学と相談をしながらそれについての実現の措置をとっていきたいというように考えております。
  332. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 原爆被爆者について健健診断のための文書料という御質問ございましたが、これはやっぱりちょっと無理だと思っております。しかしこういうことは無理でございますが、被爆者の援護につきましてはやっぱり充実したあたたかい手を差し伸べるという基本方針、これをもとといたしまして今後とも努力をいたしたいと、かように考えております。
  333. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 学術会議の勧告をどう受けとられておるのでしょうか。
  334. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 国立の資料センターをつくったらどうかという学術会議からの勧告が出ていることについてのお尋ねでございますが、これは文部省とも十分相談をいたしまして、やっぱり貴重な資料でございますから、十分相談いたしたいと思います。
  335. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 本案につきましては、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。   午後七時六分散会      —————・—————