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1973-05-11 第71回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年五月十一日(金曜日)    午後一時十二分開会     —————————————    委員異動  三月二十八日     辞任         補欠選任      鈴木美枝子君     西村 関一君  五月十日     辞任         補欠選任      藤田  進君     工藤 良平君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大矢  正君     理 事                 金井 元彦君                 菅野 儀作君                 杉原 一雄君     委 員                 君  健男君                 田口長治郎君                 寺本 広作君                 原 文兵衛君                 加藤シヅエ君                 工藤 良平君                 西村 関一君                 小平 芳平君                 高山 恒雄君                 加藤  進君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君    政府委員        近畿圏整備本部        次長       石川 邦夫君        環境庁長官官房        長        城戸 謙次君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁大気保全        局長       山形 操六君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        農林大臣官房技        術審議官     遠藤 寛二君        食糧庁次長    森  重弘君        通商産業省公害        保安局長     青木 慎三君        通商産業省公害        保安局参事官   田中 芳秋君        通商産業省化学        工業局長     齋藤 太一君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        防衛庁装備局調        達補給管理官   友藤 一隆君        水産庁漁政部長  増満 二郎君        通商産業省公害        保安局公害防止        指導課長     松村 克之君        通商産業省重工        業局電子機器電        機課長      藤本 和男君        建設省都市局下        水道部下水道事        業課長      井前 勝人君        日本国有鉄道工        作局長      石沢 応彦君    参考人        水資源開発公団        理事       川崎 精一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○連合審査会に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (公害及び環境保全対策樹立に関する件)     —————————————
  2. 大矢正

    委員長大矢正君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、藤田進君が委員辞任され、その補欠として工藤良平君が選任されました。     —————————————
  3. 大矢正

    委員長大矢正君) 連合審査会に関する件についておはかりいたします。  港湾法等の一部を改正する法律案について運輸委員会に対し、また、化学物質審査及び製造等規制に関する法律案について商工委員会に対し、それぞれ連合審査会開会を申し入れることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  6. 大矢正

    委員長大矢正君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  本日の委員会参考人として水資源開発公団理事川崎精一君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 大矢正

    委員長大矢正君) 公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 西村関一

    西村関一君 まず近畿圏整備本部にお尋ねをいたします。  先国会におきまして審議をし、発足いたしました琵琶湖総合開発特別措置法実施にあたりまして、事業計画書なるものが出ております。これは、前国会において審議いたしました経過から相当な根本的な修正をし、また、附帯決議をつけてこの法律が成立したのでありますが、その修正及び附帯決議重点は、開発よりもまず水質回復をはかる、水質回復をはかるための積極的な計画をする、水質回復についての適切な考慮を払うということがあります。環境保全水質回復ということが、この修正及び附帯決議重点であったのであります。  しかし、この総合開発の初年度の計画書を見ますると、そういうことについての配慮が十分行なわれてない。環境保全琵琶湖の汚れておる水をこれ以上汚さないというだけじゃなくて、水質回復をはかるということについての措置が講ぜられてない。依然として開発優先というふうになっておるように思うのでございますか、この点についてどういうふうにお考えになっておられますか、近畿圏整備本部にお伺いをいたします。
  10. 石川邦夫

    政府委員石川邦夫君) お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のように、琵琶湖総合開発特別措置法の制定の過程にあたりまして、水質回復保全重点を置くべしというふうな御意見が非常にございました。附帯決議におきましてもその点は付されておるわけでございます。この計画をつくるにあたりましても、この点につきましては特に重点を置いて考えたのでございまして、基本方針におきまして、琵琶湖の恵まれた自然環境保全汚濁しつつある水質回復を図ることを基調とするということを、まず目標として明記いたしております。  そして、目標として水質保全回復を強調いたしまして、具体的には、まず何よりも水質保全上最も重要であります下水道事業重点的に取り上げて、これを早期実施するというふうな配慮をいたしておるわけでございます。  さらに、現在問題になっております富栄養化等に対しましては、新しい技術開発の伸展に応じまして、これが実用化をはかるというふうなことにいたしておるわけでございます。  また水質に関連いたしましては、法案修正がございました屎尿処理施設につきましても、これを計画の中に明記するというふうなことを考えております。  さらに自然保護地域公有化、これを積極的に取り上げ、自然景観保全等につとめるというふうな計画になっておるわけでございます。  さらに、湖辺の風致の形成に資するための自然公園事業あるいは都市公園事業、こういったものにつきましても十分な配慮を払うというふうなことになっておるわけでございますし、それから、非常に御議論ございました湖岸堤及び兼用道路建設、法線の決定等につきましては、地元住民の意向を十分に反映するとともに、琵琶湖自然環境をそこなわないように、水質汚濁防止でございますとか、あるいは水生動植物保護、こういったものに十分留意するというふうな計画になっておるわけでございます。  計画そのものは非常に長期のものでございまして大ワクのものでございますけれども実施にあたりましては、こういった点につきまして十分配慮をいたして実施してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  11. 西村関一

    西村関一君 それは、御答弁の趣旨はわかりますし、計画の中にそういう配慮がなされておるということも認めますが、作文だけであってはいけないと思うのです。実際に効果をあげなければ、それこそあとになって取り返しのつかない結果を招くと思うのであります。  皆さん近畿圏整備本部御存じですが、「琵琶湖の将来水質に関する調査報告書」なるもの、土木学会報告書が出ております。これをしさいに検討してみますると、十年余り後には、昭和六十年度になりますというと、このままでいくならば、琵琶湖には一匹の魚も住めないし一つの貝も生息できないというような、いわゆる死の湖になってしまうであろうということを警告しているのであります。こまかいことはいろいろ専門的なことがございますけれども、そういう警告を出しておるのであります。これだけが私は完ぺきだとは思いませんけれども、事実琵琶湖周辺に住んでいる住民の一人としての私の実感は、まさにそのようなことがあり得るという心配をしているのであります。  これに対して下水道の完備でありますとか、工場排水生活つまり屎尿処理の問題とかいう点に重点を置いてやっていくんだということでありますが、一体、屎尿処理につきましてはどういう計画でどれだけの成果が期待できるか。琵琶湖の水を、つまり汚染しないばかりか復元するということのために、具体的にどういう計画のもとにそういうことを考えておられるのか。
  12. 石川邦夫

    政府委員石川邦夫君) 個々の事業でございますので、私のほうは概括的なことでございますけれども、この計画におきましては、計画の前半、五十年度を目途といたしまして、約七十万人分の屎尿処理をできるような施設を設けるということで、三十億円程度計画を持っておるわけでございまして、できるだけ早期にこの屎尿処理の設備を完備させたいというふうな計画になっておるわけでございます。
  13. 西村関一

    西村関一君 具体的にお伺いいたしますが、広域下水道施設として、草津市の矢橋地区の湖上に人工島をつくって、そこへ処理場をつくるという計画が打ち出されております。住民反対がいまなお続いておることも御承知であります。これは、人工島をつくるということ自体琵琶湖水質汚染ということにつながってまいりますし、また同時に、その処理場の機能は一次処理、二次処理までしかやらない。三次処理もやらないでそのまま処理されたものが琵琶湖に流されるということになりますならば、どうして水質汚濁を防ぐことができましょうか。そういう点についてはどう考えておられますか。
  14. 石川邦夫

    政府委員石川邦夫君) 草津の沖に流域下水道終末処理場をつくるという計画が現在進んでおるわけでございます。これは御指摘のとおりでございます。  この点に対する住民反対と申しますのは、最初は草津地先にそういう処理場をつくるということに対して非常に住民反対が強かったわけでございます。したがいまして、これは県のほうがいろいろ地元の市町村あるいは住民と接触、説明をいたしまして、先ほど御指摘のように、沖合いに人工島をつくってそこで処理をするというふうなことになったのでございまして、この点については現在も反対運動は若干ありますけれども、県のほうもそのために特別の金を支出する、環境整備費を支出するというふうなことによりまして、おおむねおさまったというふうにわれわれ聞いております。  それから、確かに現在の計画では、二次処理を一応計画としておるわけでございますけれども、これは先ほど申し上げましたように、この琵琶湖総合開発計画全体の中で、下水道につきましては三次処理というふうな技術開発実用化される段階、これは現在建設者においてその実用化について検討中でございますが、これが実用化されました際には、これを十分取り入れていくというふうな計画になっておるわけでございますので、われわれとしてもこういった下水道につきましては、さらに高次の処理によりまして水質汚濁防止につとめたいというふうに考えておるわけでございます。
  15. 西村関一

    西村関一君 そんなことをしている間に、どんどんどんどん琵琶湖の水の汚染は広がって、深まっていくばかりじゃございませんですか。間に合わなくなってしまうんです。三次処理がいつできるか、それもまだ見当がついてない。そういうことでは琵琶湖の水の復元はおろか、現状維持さえもできないということは必至だと思うのであります。思い切った施策考える必要があるんじゃないかと思うのです。  たとえば、これは一つ考えだと思うのでありますけれども下水運河をつくる、つまり淀川水系全体の下水を一本にまとめて、それをずっと大阪湾のところまで引っぱっていって、その地先で海に流す前に完全な処理をする。金はかかりますけれども工場排水も何もかも一緒にして下水運河のようなものをつくって、それを大阪湾の出口のところまで持っていって、そこに科学の粋を集めた処理場をつくる。それは経営企業体も地方自治体も国も、みんなが一緒になってそういうものをつくろうということになるならば、できないことはないと思うのであります。そうすることによって、きたないものは一滴たりとも琵琶湖に流れさないということも私は一つ考えじゃないかと思うのであります。  これは、そういうことを言っている学者もあるのでございます。現にアメリカミシガン湖あたりもそういうことをやっている。ミシガン湖には一滴も下水汚水を流さないということで、そういう下水運河のようなものをつくってまとめているということが現にアメリカにおいても行なわれておるのでありまして、琵琶湖の水は下流一千万の人口をまかなうところの、生活に必要な生活用水でありますから、そういうものを、きたないものを流しておってそれを生活用水に使っておったのじゃ、これはどうなりますか。それこそ、いまでさえも京都水道は、くさい水、くさい水道ということが言われておる。これは琵琶湖の水の冨栄養化に原因がありますけれども、そういうことを考えますというと、抜本的な施策をしないと取り返しのつかないことになる。諏訪湖のような死の湖になってしまうという心配が、現に土木学会のようなところでさえもそういう警告を発しているのであります。  いま、人工島をつくって地元了解もとり得たと。確かに滋賀県会やら草津市会の了解をとり、地元反対運動をやっている人の幹部だけはあるいは条件闘争に切りかえたかもわかりません、地方議会は了承したかもわかりませんが、住民は納得しておりません。猛烈に反対しております。草津市長は、そういうことも心配の種になったのでございましょうか、病床に倒れておる。あとで質問をいたしますけれども日本コンデンサの問題も草津にございます。そういうことで、市長はもう倒れちゃっている。そういう現状でございまして、住民反対の火の手はおさまっていないのであります。  人工島をつくるということは、これは前国会審議の中で、人工島あるいは湖岸埋め立て湖面埋め立てはやらないということを当局は約束しているのでありまして、またぞろ人工島をつくって、人工島をつくるということ自体汚染につながりますし、二次処理しかできないものを琵琶湖に流すということは、それこそきたない水、けがれた水を下流に送るということになるのじゃありませんでしょうか。その点もう一度お考えを伺いたいと思います。
  16. 井前勝人

    説明員(井前勝人君) まず第一点の処理場用地関係でございますけれども処理場につきましては、約六十数ヘクタールという大規模用地を必要とするということから、内陸部に求めることは非常に困難だということで、一応湖面埋め立てということで計画が立てられてきているわけでございます。  それから第二点の、終末処理場自身のいろいろのかかえている問題につきましては、私どもも十分そういう終末処理場周辺環境汚染につながらないような技術的な指導をしていきたいと思っておるわけでございます。  それから、一番根本でございます三次処理技術開発でございますが、ただいま近畿圏のほうから説明がありましたように、私どもとしては、琵琶湖における窒素燐等環境基準設定等を見ながら、それと並行して技術開発は早急に進めるべきであるということで、現在、土木研究所あるいは直接多摩川流域下水道等で三次処理実用化についての実験開発を行なっておるわけでございまして、窒素、燐に関する環境基準設定と相まちまして、早急に実用化するような努力を現在重ねておるわけでございまして、近々その実用化めどはつくものというふうに考えておるわけでございます。
  17. 西村関一

    西村関一君 これは下水道事業課長、あなたは専門家ですから、欧米事情もよく承知しておられると思うのです。私の手元にあります報告書だけでも、アメリカにおける第三次下水処理研究施設、あるいは欧米下水道事情、あるいは欧米下水の汚泥の処理・処分の問題おそらくあなたの関係の部下の方だろうと思いますが、そういう研究をして、いろいろ報告を出しておられる。  琵琶湖総合開発特別措置法は画期的な法律として、試験的に、これは一つのテストとして今後の総合開発のあり方として注目されておる。そういうことでありますから、一千万下流住民生活用水を確保する上からも、琵琶湖下水処理の不完全な水を流すということは、極力これは避る努力をしなければならぬと思うのです。さっき私はミシガン湖の話をいたしましたが、なぜアメリカにおいてやっていることを日本でできないのか、また、やろうとしないのか。金がないとは言えないと思うのです、日本経済力においてアメリカに劣らないところまで伸びてきているのでありますから。そういうことを、あなた方のような専門家が思い切った具体的な案を出して、政府にこれをやるようにしてもらうことが必要ではないかと思うのであります。これはもうほうっておけない問題であると思うのです。その点、お考えはどうですか。
  18. 井前勝人

    説明員(井前勝人君) 下水処理技術開発、特に三次処理技術開発につきましては、私どもも数年前からその必要性を痛感しておりまして、それほど大規模ではございませんでしたけれども昭和四十六年度から下水道事業調査費という中で、土木研究所を主体といたしました技術開発研究をやっておるわけでございます。  そのパイロットプラントを、とりあえず横須賀市の下水処理場の中に、土木研究所と共同いたしまして、規模はそれほど大きくございませんけれども日量二百トン程度プラントを設置いたしまして、四十六、四十七、四十八年というふうに継続いたしまして、三次処理と申しましてもいろいろのプロセス組み合わせがございますので、まず窒素燐等の除去についてどうしたらいいか、あるいはその次の段階はさらに高度の浮遊物質を取る、そういういろいろのプロセス組み合わせがございますので、四十六年度から土木研究所研究を重ねておるわけでございます。  さらにまた並行いたしまして、京都市の下水道処理場の中に、これもパイロットプラントでございますけれども、ろ過による処理水高度化ということで、これもモデル実験をやっておるわけでございます。  さらに四十八年度から二カ年にわたりまして、多摩川流域下水道で実際規模に近い程度プラントをつくるということが予算で認められまして、四十八年四十九年、二カ年にわたりまして、約六億ほどの資金を投入いたしまして、五万五千人分を対象にした三次処理施設建設していこう、そうしてできるだけ早くこの実用化についてめどをつけたいというふうに考えておるわけでございます。
  19. 西村関一

    西村関一君 下水処理につきましては、まだまだ質問したいのですが、時間がありません。  琵琶湖の水の汚染に関連をいたしまして、周辺化学工場、たとえばいま大きな問題になっております草津市の中にございます日本コンデンサ公害の問題、PCBと鉛とカドミウム、亜鉛の非常にきつい複合汚染が出ておる。こういうことで大きな問題になっていることは御存じのとおりでございます。この企業体は、この公害をなくしようとするならば企業自体が成り立たぬというようなジレンマに陥っておるということでありますが、これはいままですでにあるところの工場でありますけれども、これに対して、これはしかたがないと言ってほうっておいているわけではないですけれども通産省のほうでは、この問題に対してどういうふうに対処しておられますか。あるいは環境庁ではこれをどういうふうに見ておられますか。  また、時間がありませんから一緒に聞きますけれども米原町の地域内にございますところの日比野金属工業という会社がございます。これはアンチモンをつくる工場でありますが、全国の六、七割を生産するアンチモン製練工場であります。これが天野川という川を通じてこの工場汚水琵琶湖に流れておる。天野川のアユはもうとれなくなったという状態でございます。こういうことに対しまして、通産省もしくは環境庁ではどういうふうにこれを取り上げておられますか。
  20. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) まず、草津市にございます日本コンデンサ関係PCB鉛等汚染の事項でございますが、先生承知のとおり、PCBにつきましてはすでに日本コンデンサにおきましては使用を中止いたしておりますが、過去において操業いたしました結果、周辺が非常に汚染をされているわけでございます。  いろいろな調査がございますけれども、総合的にこれを調査をするということで、四十七年度におきまして、環境庁補助金によりまして周辺地域PCB鉛その他の汚染の実態の調査をいたしたわけでございます。その結果がまとまりまして、先般五月八日でございますか、発表されております。やはりPCB、それから特に鉛の汚染が相当進んでおるということが明らかでございまして、その他亜鉛等もございますが、問題はPCBと鉛ではあるまいかというふうに考えております。  そこで県当局といたしましては、環境庁とも相談をいたして現在対策といたしまして考えておりますのは、工場周辺沈でん池その他の用水路等ヘドロにつきましては、とりあえずPCB一〇〇PPM以上の汚染ヘドロにつきましては、これをしゅんせつをいたしまして処理をするということにいたしております。それから、周辺農地におきましてもPCB並びに鉛の汚染が進んでおりますので、農地におきましても相当程度汚染が進んでいるところにつきましては、工場費用負担のもとに排土いたしまして客土をするというような事業実施することとし、その準備を進めている次第でございます。  それから、米原町におきます日比野工業によるアンチモン汚染の問題でございますが、これは昭和四十二年から日比野工業が操業を開始いたしております。それによりまして周辺アンチモン汚染ということにつきまして、県並びに地方公共団体調査をいたした数字がございます。それによりますと、いろいろな数字が出ておりますけれども、大体〇・六PPMから二四PPMの間で工場排水がなされているということが明らかになったのでございます。周辺水質につきましては、大体最高が〇・〇〇五PPMということであったわけでございます。  現在アンチモンにつきましては、私ども排水につきましての排水基準並びに環境基準等設定をいたしたいというふうに考えておりますが、まだその設定に至っておりません。そこで県におきましては、県の独自の条例によりましてアンチモン排水規制することとし、昨年の十二月二十一日に公害防止条例によりまして、アンチモン排水につきましては〇・〇五PPMをこえてはならないというような条例設定をいたしたわけでございます。  現在これによりまして規制が行なわれておりますが、私どももさらに国といたしましても環境基準並びに排水基準設定を急ぎたい、かように考えておる次第でございます。
  21. 西村関一

    西村関一君 県としても国で規制をしてもらいたいという要望が強いわけでありますね。ぜひ早く規制しないと、これは全国に少ない企業体ですからそういうことになっているのだと思いますけれども琵琶湖の水にとりましては、また付近の住民生活にとりましては大きな問題であります。国の基準を早く出してもらいたいと要望いたしておきます。  最後に、水資源開発公団川崎理事がお見えになっております。以前たしか河川局長をしておられましたから、前の法案の審議のときにもいろいろごやっかいをかけましたが、きょうは御苦労さまです。  ちょっとこの際お伺いをいたしておきたいと思いますが、いまお聞き及びのとおり、水資源開発公団としては水の量を確保する、資源、水の量だけの問題が法律できめられておる分野でございますが、しかし、いま私がちょっと触れましたように、きたない水を下流に送っておったのじゃ、工業用水だけじゃございません、生活用水が非常に重要なウエートを占めておるのでございます。きたない水を下流に送っておったのじゃ、私は法律でそういうことは規制されてないといたしましても、これはやはり私は問題だと思うのです。もしそういうところで法律の不備があるならば、法律国会で改めていかなければならない。川崎さんとしてはどういうふうにお考えになっておられますか、この際御意見を承らせていただきたいと思います。
  22. 川崎精一

    参考人川崎精一君) お話のように、水資源というものにつきましては、やはり量と質と両方が備わってなければ本来の資源としての価値はないわけでございます。ただ、現在の制度でまいりますと、御承知のように、水資源開発という立場からまだ水質までをアプローチするような段階には、残念ながらなっていないことは事実でございます。それぞれの規制措置なり、あるいは三次処理の高度の開発だとか、あるいは回収水の処理とか、そういった面の研究が徐々に進んでおるということでございます。  したがって、私どもの立場といたしましても、そういった質まで改善するというような事業にまではちょっと立ち入れないわけでございますけれども、やはり質というのは非常に大事な問題でございますので、先ほどお話のございました、土木学会からいろいろ将来の水質展望の中間報告が出されておりますが、こういった調査をさらに完結するように、私どものほうも調査の応援もしてまいりたい。それから、この三月にやっと建設省から事業を引き継いだわけでございますが、琵琶湖の全域につきまして約四十八カ所ばかり定点をつくっております。こういったところで継続的に琵琶湖水質を今後とも調査観測を続けていく、そして水位がどのようになっているかというようなことで、それぞれのやはり行政部門で努力されることと思いますが、そういった意味での参考資料として、私どももできるだけ努力をしていきたいと思っております。  なお今後、水質に対する自動監視装置の強化だとか、あるいは琵琶湖の底質等の調査等も十分でございませんので、そういったことも私どもの手でできるだけ真剣にひとつ調査をしまして、今後の琵琶湖水質の改善というようなことにできるだけプラスになるように、私ども努力をしていきたいと考えておる次第でございます。
  23. 大矢正

    委員長大矢正君) 大臣が二時以降でなければ出席できませんので、西村委員の質問は中断をいたしまして、ただいまから杉原君の質疑に入りたいと思います。
  24. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 きょうは、主題は南陽市のカドミ汚染の問題で質問をしたいわけですが、時間的にも若干こま切れになりますので、そうした論理的な質問にならないかと思いますのでお許しいただきたいと思います。  その前に、実はきのうの日本経済新聞だったと思いますが、たぶんこれは環境庁で立案、検討、実施をされるものだと思われるのでありますが、東京湾、伊勢湾の調査に入るということがニュースとして出ておったわけです。ニュースの性格として若干の欠ける点がございますが、ただそのニュースを基点にして若干お聞きしますけれども、第一点は、調査するところは全国至るところなんですけれども、それを東京湾、伊勢湾両湾に限られた点については、調査にあたっての想定があると思うのです。その想定はいかなる想定によって行なわれるかということです。  私なりに判断するならば、あるいは東京湾が、少なくとも六十年度には硫黄が百十三万八千トンぐらいになるであろう、四十三年の二倍ぐらい。あるいは日本全体の石油の使用量が六十年には八億キロリットルになるから、亜硫酸ガスが六十年には二千七百万トンになるというような大まかな想定等をした場合に、そこに東京湾、伊勢湾の汚染の問題が出るから、現に出ているから、そういうこと等についての実態の把握だと思うのです。  これを立案される側のそうした調査の想定をまず明らかにし、第二点として、日程ないしその結果についての処理、私たちがどのような期待を持てばいいのかどうか、その辺のところを、まだ立案の段階ですけれども実施はすでに五月下旬だということでございますので、ここで明確にできることがあれば明らかにしてほしい、こう思います。
  25. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 実は私、昨日の日本経済新聞を読んでおりませんので、どういう内容が書いてあったかわかりませんが、先生の御質問の、大気の関係は私ちょっと承知いたしておりませんが、水につきましては、実は四十七年度に瀬戸内海におきまして、瀬戸内海の総合実態調査をいたしたわけでございます。四十八年度は東京湾並びに伊勢湾におきまして、瀬戸内海と同様な調査をいたしたいというふうに考えておるのでございます。  五月の下旬にやりますのは第一回の調査でございまして、私どもは年四回、春、夏、秋、冬という年四回にわたりまして、東京湾、伊勢湾に六キロメッシュを引きまして、その交点において水質並びに一部につきまして底質の調査をし、また陸上におきましては、東京湾、伊勢湾に流入する河川の水質、水量、並びに東京湾、伊勢湾に流入する河川に排出している工場の排水質の実態等を調査をするということにいたしておるのでございます。  これらがまとまりますれば、大体東京湾、伊勢湾におきまして総合的な実態が明らかになりまして、私どもの期待をいたしております総量規制というものも実施の可能性が出てくるわけでございます。私どもは、瀬戸内海、東京湾、伊勢湾というように一般的に海水の交換が悪い地点におきましては非常に汚濁の進行が早いわけでございますので、できるだけ早く総量規制というような、実質的に総量規制になるような規制実施いたしたいと考えておりますが、その前提といたしまして調査実施するつもりでございます。
  26. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 これは環境庁独自の調査研究になるのか、相当大がかりな各官庁との横の連絡をとりながらおやりになるものかどうか。  同時に、いま総量規制ということでございますから、焦点はそこにしぼられていくのかと思いますけれども、私たちもかなり期待していいのじゃないかと思います。ただ、時期的に五月下旬だということなんだけれども、これは着手時点の話でございますので、たいへんひまがかかりましておくれましてということになると、いつこれが中間報告をいただけるかどうかわかりませんが、できればこの委員会等で中間報告をいただけるめど等があったらお示しいただきたいと思います。
  27. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 実は瀬戸内海におきまして同様の調査を昨年度いたしておりますが、この実施の方法は、関係各省が集まっております瀬戸内海汚濁対策推進会議というのがございまして、そこで御相談をしながら実は調査をいたしても既したわけでございます。東京湾、伊勢湾におきま存の各省のデータ等もございます。それらと、各省とも十分打ち合わせをいたしまして調査実施する予定でございます。  なお、結果でございますが、第一回の調査は五月の下旬に行ないますが、相当膨大な個所につきましての調査でございます。調査のデータを取りまとめるにあたりましてもまだ数カ月かかるわけでございますが、それらがまとまりましたならば御報告はいたしたい。問題は、四回やりまして、それを総合的に解析をするというのが主眼でございますが、中間的にデータがまとまりますれば御報告はさせていただきたいというように考えます。
  28. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それでは、期待しつつこの質問を終わります。  次に南陽市のカドミ汚染の問題でございますが、衆議院段階では、社会党の調査団の調査結果に基づいて相当量の質問をしているわけでございますので、私は内容的に同じことを繰り返したくないと思いますけれども、一応全貌がわからないと、お互いに相互理解しお互いの創意が集中できませんので、もうすでに衆議院の質問が過ぎてから三週間たちました。先月の四月二十日に衆議院の公害委員会で質問があったわけですけれども、そうなりますと関係省庁もかなり問題点を明らかにし、事後の処置もおとりになっていると期待しているわけです。  そこで、汚染の実情ですね、先般のわが党の島本虎三氏その他の人の問題提起からも再検討をされていると思いますから、要約して汚染現状です。  第一点として、農地汚染地域の分布状況は一体どうなんだ、どの範囲に広がっているか、いまつかんでおられる情報の中で。  第二点としては、農地以外、たとえば相当小高い丘がたくさんありますから、林地、なかんすぐずく吉野川、河川等の汚染の状況。  第三点は、南陽市の市長が特に私たちに訴えておりました点は、汚染源の問題ですが、犯人はだれかということを、通産省も来ていると思いますから、その点をまず明確にしていただきたいと思います。
  29. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) それでは簡単に現状等について御説明申し上げたいと思います。  南陽市の、特に吉野川流域の汚染の問題につきましては、昭和四十五年に農林省の調査が行なわれたのでございます。これは非常に概略の調査でございまして、調査地点は四点しか行なわれておりませんが、その結果、玄米中のカドミウムの量が一PPMをこえるものが一点出たわけでございます。  そこで、汚染のおそれありということで、四十六年度に環境庁補助金をもちまして吉野川流域の農用地につきまして六十点、面積で百五十ヘクタールだと思いますが、調査をいたしたわけでございます。問題は、そのときに県からの公表並びに私どもへの報告によりますと、一点についてだけ一PPM以上のカドミウムを含む玄米が発見されたというような報告があったのでございます。  ところが、その後、県、地元におきまして最近に至りまして問題が出まして、実は一点ではなかったのではないか、もう少し多い地点の玄米中に一PPM以上のカドミを含む米が発見されたのではあるまいかということがいわれまして、私ども県のほうに照会をいたしたところ、県からの中間的な報告でございますけれども調査方法、私どもが示しております土壌の細密調査の方法におきまして、ちょっと誤った調査方法をいたしておるというように私ども考えております。  と申しますのは、私どもは、農用地汚染防止法に基づきます地域指定等の前提といたしまして細密調査をするように県に指示をいたしたわけでございます。そのためには、私どもは二・五ヘクタールに一点の調査個所を設けまして、その地点の土壌並びに地上の立ち毛である稲の分析をするということにいたしておりますのを、県におきましては、土壌の調査をいたしましたけれども、立ち毛の稲につきましては、その周辺地区から産出されました米をもあわせて分析をいたしまして、その平均値として公表し報告をしたということが明らかになったわけでございます。  そういたしますと、私どもの指示いたしました方法とは違うわけでございまして、これによりまして土壌汚染防止法の手続に入るというわけにはまいらないということになったわけでございまして、私どもは先般も環境庁並びに関係省庁の合同の調査団を現地に派遣をいたしまして調査をいたしておりますけれども、農用地の土壌汚染防止対策といたしましては、やはり四十八年度にもう一度細密調査を行なわなければ、土壌汚染防止対策の手続に入るわけにはまいらないというふうに実は考えておるのでございます。  なお、周辺汚染状況につきましては、以上のような調査以外現在ございませんので、至急関係河川の水質並びに、さらに広い地域におきます土壌汚染の状況等を調査する必要があるというふうに考えております。  また、汚染源を明らかにするという意味合いからいたしましても、現在考えられておりますのは吉野鉱山、熊野鉱山、南沢鉱山、それから朱山鉱山ですか、四つぐらいの鉱山が考えられますが、それらの汚染のルート等も明らかにする必要があると考えておりまして、現在、県におきましてこれらの環境実態調査のやり方を検討さしております。私ども関係省庁と相談をいたしまして、県を指導いたしまして、なるべく早い機会に環境調査をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  30. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 そうしますと調査待ちということになると思いますが、汚染源は推定でもそれはいまのところ困難、そういうことになるのですか。あくまで手がたく調査の結果を待たないと汚染源はどこだということは断定できないのかどうか。その辺はあなたの領域を越えているのかもしれませんが、もし何でしたら通産の方にでも答弁をいただきたいと思いますが、どうでしょうかね。
  31. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 私ども結論を申し上げますと、こまかい環境調査をしなければ明らかにならないと思います。と申しますのは、先ほど申し上げましたように汚染源と考えられます鉱山が四つございます。そのうち現に稼働しているもの、すでに休止しているもの、廃止しているもの等もありますが、聞くところによりますと、この地域は非常に古い時代からいろいろ鉱物の採掘が行なわれているやに聞いております。そういたしますと、そういうような非常に古い廃坑からの汚水というものも考えられるわけでございまして、私どもはできるだけ早い機会にそのようなメカニズムを明らかにいたしたいと考えている次第でございます。
  32. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 ちょうど長官がおいでになったところなんですけれども、いま岡安局長から、四月の二十日に衆議院の公害対策特別委員会で社会党が調査いたしました吉野川流域のカドミ汚染の問題等について、若干の概括報告を実は受けておりました。  岡安局長の話の中で特に長官に確認をしていただきたいのは、その当時県がとった処置、たとえば平均値を出したことなど、これを島本氏に言わせれば行政数値だ、けしからぬということで、長官のほうからこのことについても十分調査を入れて確かめてみたいということであったのですが、いま岡安局長のほうから、先般合同調査団を出したと、こういうことなんですが、この点、四月の二十日からきょうに至るまで約三週間、その間長官として、いまの問題等を含めて南陽市のカドミ汚染対策問題について長官から各局に指示されたこと、あるいは通産当局に対してでも、いわゆる調整の立場から指示なさったことなどがあれば、骨組みだけ簡単にお聞きしたいと思います。
  33. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いきさつは杉原委員も御承知のように、いろいろないきさつが県との間にありまして、その点、遺憾な点もあったことは事実でございます。そういうので合同調査団を派遣をいたしたわけでございます。それは、この際地元民も非常に不安な気持ちにおちいっておるでしょうから、派遣をしようということを私が提議をしたわけでございます。  しかし、これは本格的な調査でございませんから、六月ごろから本格的な調査をやりたいと考えております。それを事務当局に対しても指示をいたしておる次第でございます。
  34. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 限られた時間でございますから、なおあと吉野川流域の鉱山、先ほど四つあげられたわけですが、現に稼動しているもの、廃鉱になっているもの、休鉱になっているもの、そうした私たちしろうとでも考えられる汚染源の問題等の点検について通産当局から実はお答えをいただきたいわけですが、差し迫った問題等もございますので、長官に他の問題で若干御質問していきたいと思います。  それは、きょうは十一日でございますから、九日十日、二日間、長官が、わが参議院における予算委員会あるいはこの委員会等を通じて長官の労をわずらわしたいという水俣の現地調査の問題でございますが、克明に新聞テレビ等で報道いたしておりますが、国会の権威にかけて長官の現地を視察なさった結果、いわゆる最高責任者としての行政的な判断、同時にまた現地で発表なさった、大体私の手に入ったものでは三項目ほどの現地に対する対策なり考え方を明示されたわけですが、重ねてこの点。繰り返しますと、つまり、長官がごらんになってこれはたいへんだったという情感的な訴えじゃなくて、もっと長官が常に持っておいでになる政治哲学の観点から、経済の仕組み、経営者のあり方、人間尊重の倫理の問題等、いろいろ含めて感じとられたこと、あわせて、三点か四点かしりませんが、現地に対して明らかに言明なさったことなど、ここでもう一度確認していきたいと思います。
  35. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 御指摘のように九日と十日、二日間にわたって水俣の現地を視察いたしたわけでございます。いろいろな報告は受けておりましたけれども、私の目で現地の患者の人々にも会い、また地元の人の意見も聞き、そういう現地の知識を得てこの対策に万全を期したいということで水俣をたずねたわけでございます。  最初に患者の人々、四軒でありましたけれども、その四軒の家に、患者の人たちがグループに分かれておりますから、そういうことで代表的な人々がみな集まって、患者の人々にも直接接しあるいはまた話も聞きまして、非常に感じましたことは、企業の責任はもとより、政治、行政に携る者として二度と再びこんな悲惨な人災を起こしてはならぬ。このために企業は、企業経営における安全性の確保に対しては非常な注意を払うことが今日の企業者の責任であるし、また政治、行政に携る者も、やはり将来どういう深刻な事態になるかということを見通しをして、そして厳重な環境の管理をしなければいかぬという、非常に責任感といいますか、自己の良心と責任感にむちを打たれる思いがいたしたわけでございます。  そして患者の訴えを聞きまして、一つの問題は、水俣病というものに対する治療の方法が確立してないということであります。しかし患者自身とすれば、なかなかいい治療の方法がないということはこれは救いのないことでありますから、熊本大学にも立ち寄りまして医学部の人々とも懇談をするし、また、水俣の現地においては水俣病院あるいは開業医の人々とも懇談をする機会があったわけですが、やはりみなの意見の中でわれわれが傾聴すべきだと思ったのは、治療すれば悪くなっていくのを食い止めることが可能である、また、ある程度の訓練を加えれば、自分の用事は自分で足せるようなところまでは回復の可能性を持っておるということを言っております。  そういう声をじかに聞きまして、研究・治療、社会復帰のためのリハビリテーションといいますか、そういう施設をできるだけ整備充実をしまして、何とか患者の苦痛を少しでも軽減するための努力をしなければならぬということを強く感じて、現地においても研究・治療あるいはリハビリテーション、こういうものを総合的に運営できるようなセンターというものをつくることが必要だと思うので、それを具体化するためにいろいろな経験を持っておる人たちの意見を聞くような委員会をつくって検討してみたいということを申したわけでございます。  もう一つの問題は、私も直接に水俣湾を船で視察をしたのですが、漁業組合の人たちもあるいは水俣市の代表的な人も船に同乗しまして、やはりヘドロを除去しないと、いますぐは汚染が起こっておるというような現象はありませんけれども、しかし永久に不安である、禍根が断たれないわけです。これを処理してもらいたいということを強く訴えておりました。  これはもっともなことであります。そういうことを考えて、運輸省の港湾局からも参事官を私は同道したのでございます。そして熊本県側の港湾関係の人たちも、むろん沢田知事もずっと私と行を共にしたわけですが、そういう港湾関係の人たちも一緒に来てもらって、船の上でいろいろいままでの研究段階というものの報告を聞いたわけです。  県は県として、A案、B案というようなヘドロ処理に対する研究埋め立てるということですが、埋め立てに対する案を持っておるようでありますが、しかし技術的には、県の技術陣営というのは弱体ですから、どうしても運輸省が技術的指導をしなければならぬので、私は、運輸省の港湾局長というものはこれは一番の責任者にする、実際の計画は県が立てるにしても、技術的指導というものは港湾局長が行なって、そして今年度の会計年度の終わりごろ、年明けてということになりますが、それぐらいの時期には埋め立て工事に着手ができるような、そういう目標でひとつ県と運輸省とでこの計画というものをまとめてもらいたいということを強く要請して、その目標でやってみましょうということであります。  ただしかし、そのときにわれわれが気をつけなければならぬのは、しゅんせつとか埋め立て等によって再びまた不知火海に対しての第二次汚染を起こししては、これはもう意味をなさなくなるわけでありますから、第二次汚染を起こさないような工法で、しかも工事中は厳重な監視体制のもとに、被害を与えないような監視のもとにやらなければならぬ。これは十分な前提になるわけですが、そういうことでヘドロ処理に当たることが必要である。地元も強くそれを要望しておった。  最後に、私は、患者の人たちも市民の人たち、市会議員の代表者も来ておったわけですから、どうも水俣は、いままでは患者の人たちと市民全体との間に何か感情のもつれみたいなものがあるんですね、チッソというものが圧倒的に大きな、明治四十年から根を張っておったわけですから。だから、チッソのための水俣であってはいけない、水俣のためのチッソでなければならぬわけですから、そこが、あまりにも長期にわたってチッソの持っておった、市民の中でも大部分はチッソの間接直接のいろいろな影響を受けているのでしょうから、だから水俣というものが再出発するためには、市民の人たちも何か患者の人たちを冷たい目で見るようなことがあったのでは水俣市は再建できないのじゃないか、あたたかくだきかかえて、患者と市民との間にある何か冷たい感情というものはこの際払拭して、患者も市民も一体になって新しい水俣の再出発をするということでなければ、これはもう水俣というものは、公害の水俣というイメージは払拭することはできない。だから、どうかそういう点でいままでのような水俣から、患者も市民も一緒になって水俣の再建をはかろうということに、ひとつ考え方をみなが切りかえてやろうではないか、これに対してはできるだけわれわれ、環境関係することばかりでなしに協力をしたいということを申したのでありますが、そういう考え方はもっともだということで、市会議員の代表者も、そういう考え方で水俣は再出発しようという、そういう機運を市民の間にできるだけ浸透さすような努力をするからといって、非常に誓われておったわけであります。  こういうことが、簡単ではございますが、私が現地を見、また、これから現地を見た上に立って水俣に対してとろうとする政策でございます。
  36. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 長官、一つ忘れておいでになると思いますが、新聞報道では第三点として潜在患者の問題、これは国費でめんどうをみるということですが、それはいいですね。
  37. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 失礼しました。  もう一つは、潜在患者というものの発見をしなければいかぬわけですが、水俣病患者がそのまま認定も受けずにおるということはいろいろな点で不利益をこうむるわけでありますから、これはもう一斉に広い範囲内で検診をやろうということでございます。そのことは、沢田知事にもそういうことをやってほしいということ、しかも、その地域に住んでおった人がよそに出ておるのがあるでしょう、大阪とか名古屋とか。こういうものに対しても検診をやるということを私は申したわけでございます。
  38. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それでは長官に要望しておきますが、先ほど長官がおいでにならないときに岡安局長のほうから、下旬には東京港、伊勢湾の調査をやるという計画を大体発表されたわけであります。このことについて、いま長官の水俣で発表された第二のヘドロ処理の問題、これとも非常に関連がございますので、東京湾、伊勢湾の調査の問題につきましては、事務当局の立案について長官も大きな目をあけて激励をして、できるだけ早くその結果が出て、つまりきれいな伊勢湾、すばらしい東京湾にバックするような行政努力をまずお願いしたいと思いますし、同時にまたヘドロ処理の問題は、これはテストケースというよりも、非常に大事な問題でございますので、とりあえずヘドロでべとべとしているのは田子の浦だと思うし、また私の県でも小矢部川の河口を利用した港がございますが、これもヘドロで非常にべとべとしておるわけです。そういうところは、いわゆる不知火湾のヘドロ処理が長官が期待するような方向で処理されると、そうした結果がかなり大きく影響するところがあると思われますので、長官も現地の言明でもあり、ひとつ精魂を尽くしてその成果があがるように御努力をいただきたい、こう思います。  私の質問はこれで終わります。
  39. 西村関一

    西村関一君 ただいま長官が水俣病の現地、不知火湾を御視察になりまして、切実にはだで受けとめてこられました実感のこもった御答弁がございました。私も長官の御答弁が、これから関係当局の協力によって日本の国策として実現することを期待するものであります。   〔委員長退席、理事杉原一雄君着席〕  ちょっと回りくどいような話をいたしますが、ベトナム民主共和国のホー・チ・ミン大統領がなくなります四カ月前に、まだ侵略者を撃退するのには十年かかるだろう、しかしわれわれは勝利する、勝利した暁においてはわれわれの国土を数倍美しい国土にしよう、ということを言い残して世を去っております。  ベトナムは、御承知のとおりあのような山も川も湖も海も、ものすごい破壊が行なわれました。しかし、これにも増してわれわれが心配いたしますのは、わが国土、日本の国土が、戦争によって破壊される以上に公害によって破壊される、環境破壊されるという速度が実に強まっているということであります。われわれの愛する祖国はものすごい荒廃に帰しつつあるということでございます。不知火湾の水俣病の実態はその一つでございます。のみならず、日本全国にわたって公害が蔓延しておる。私ども心配いたしますのは、核熱兵器の破壊による人類の破滅よりは、公害によるところの、環境破壊によるところの人類破滅の速度のほうが早いということでございまして、それだけに今世代におりまするわれわれとしての責任は、特に政治家である私どもの責任はお互いに重大だと思うのでございます。  山紫水明ということばがございますが、長官も不知火湾においでになりまして、その美しい自然の中で、どうしてこんなことが起こっておるのだろうかという感懐を漏らされたということを新聞で承知いたしました。事実、山紫水明の日本はもはやなくなっておるのであります。新しい、世界一美しい日本を取り返すことは、われわれ世代の者の大きな責任であると考えるのでございます。  そこで、私はこの公害の問題、環境破壊の問題をグローバルな立場でわが国は取り上げていかなければならないと思うのでございます。世界的な視野に立って取り上げていかなければならぬと思うのでございます。昨年六月、ストックホルムにおいて開かれました第一回国連環境会議の成果を、どのように長官はこれを評価しておいでになりましょうか。  この会議の席上、当時の環境庁長官である主席代表の大石長官は、わが国の公害の実情を率直に紹介せられました。世界の良識の前で率直に紹介をせられました。そうして前向きの姿勢を示されました。おそらく前長官にまさって現長官は、そのような姿勢をもって国際的な視野に立って、わが国の公害のまた環境破壊の現状を、世界の良識とともに解決をしていこうというお考えを持っていらっしゃると思うのでございますが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。  続いて、時間がございませんから一ぺんに伺っておきます。  第二回環境会議をわが国に誘致をしようということが決定されまして、昨年の国連総会におきましてもこのことが明らかにされました。この見通しはどうなっておるでございましょうか。  さらに、国連環境事務局は今後環境問題に関する国際協力を進めていく上において非常に重要な役割りを果たすと思うのでございますが、ケニアのナイロビに設置されるということがきまったと承知いたしております。この国連環境事務局に、わが国から有能な外交官あるいは専門家を一人でも多く派遣するということが私は必要だと思うの でございます。また、これを奨励し、エンカレッジしていく、予算的な措置もつけていく、これは内閣の副総理でおられますところの長官としても、そういう立場から施策を進めておいでになることは間違いないと私は信じておるのでございますが、まず、それだけのことをお聞きをいたします。
  40. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 西村議員の御指摘のように、昨年六月のストックホルムの会議というものは、とにかく人類全体にとって大きな教育的な政治的な意義を持ったと思う。それはどういうことかと言えば、世界は一つだという、やはり人類は共通の船に乗っておるということですね、そういうことに対して、非常に一つの大きなこれからの平和政策の中の基本理念になると私は思うのです、環境問題から入ることが。いろいろな軍事的な問題から入るよりも、環境問題から入っていくことが、平和理念としては一つの本物であるというような気がするくらいであります。そういう意味において、世界政治の上に与えた影響というものは非常に大きなものがある。  それは、海にしても空にしても一国だけではできないわけですから、どうしたって人類が一緒の、環境という共同の運命の船に乗り合わせておるという意識がなければ、地球は維持できないかもしれぬという未来すらも考えられるわけでありますから、そういう意味においてストックホルムの精神というものは、これから環境問題に対して国連の場で、いろいろ各国の調整をしようということも現実のものとなって生まれてきております。  いま御指摘の、ケニアにおける国連の環境の事務局が設けられて、先般も事務局長が参りましたから、少し日本からも高級のスタッフというものをとってもらいたいということを強く要請をしておりまして、そういうことで、この国際協力ということが大きく問題として浮かび上がっておる。  そういう意味からして、日本は、ありがたくないけれども公害先進国という汚名を持っておるわけです。実際水俣なんかを見て、これだけの深刻な、これだけの広範囲な公害問題を起こしておるという例は世界にもないですからね。こういう経験を単に日本だけの問題でなくして、人類全体の一つ日本の貴重な教訓というものを、われわれが貢献のできる面というものも非常に広い範囲に私はあると思いますから、そういう意味で第二回の国連人間環境会議も日本にぜひ招致したいのです。いま御承知のようにカナダとメキシコとが非常に希望しておりますが、事務局長も、第二回のホスト・カントリーとしては日本が一番適当だと思う、だから協力をしたいということを言っておりましたが、これはまだ国連の場でなければきまらぬわけでありますから、いま強く希望して、機会あるごとに働きかけておる。しかし、まだ国連では決定をされておらないわけでございます。もちろん、これは七六年ぐらいの予定ですから多少の時間がありますから。  そういうことで、今後は環境面からの国際協力というものは平和の一つの基礎になるのです。そういう点で今後、環境を通じての外交面というものも非常に出てくる。私にも招待が来ておるんですよ、ヨーロッパなんか。国会がありますからね、皆さんが、会期が延長になっても、国会中であっても行ってこいという御寛大な御処置が国会で出るならば私は行きたいと思う。それぐらいに国際的にも話をしようという空気が出てきておりますからね。これはそういう面で日本は国際的にも協力もしたり、貢献のできるものは貢献をする必要があると思います。  西村委員の御指摘のように私も考えておる次第でございます。
  41. 西村関一

    西村関一君 私は長官が外務大臣であられるときに、まだ外務省では環境外交ということが十分考えられていなかった時代から私はこの点を指摘したものでございます。御承知のとおりだと思うのでございます。  このポスト・ストックホルム会議、今後の課題は、私は海洋汚染問題だと思うのでございます。特に、わが国は周囲海をめぐらしておる環境でございますから、わが国はもちろん、アジアの地域におきまする海洋汚染の実態を正しく把握する、そういう調査すらまだできていない。つまり海洋汚染のモニター、そういうものが必要だと思うのでございます。国連の機関の中にこういうものをつくっていこうということ。これは海洋汚染、大気汚染などを国際的に把握する上において非常に大事な働きをする機関になると思うのでございます。  アジア地域あるいは汎太平洋地域を対象とした国連環境センター、そういうようなものをつくるためにわが国がイニシアティブをとるというお考えはないでしょうか。経済連や地方団体やあるいは地方自治体などでもこのような構想を提唱しているところもあるのでございます。これをやはりエンカレッジしていくということが必要ではないかと思うのでございますが、いかがでございますか。
  42. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 海洋調査については、日本及び西太平洋の地域は、気象庁が中心になって海洋の調査をやっておるので、近海は海上保安庁がやっておるわけでございます。しかし、御指摘のようにまだこの調査というものは本格的な海洋調査としては不十分ですから、今後海洋の汚染ということは大きな国際問題になることは御指摘のとおりですから、この調査というものはもっと総合的に調査を推進していく必要があると思います。  また、国連の人間環境会議の勧告に基づいて、国連の場において海洋汚染地域モニタリングセンターというものを設置しようということになっているわけです。そういう場合に、アジア地区においては相当日本が貢献のできるものもありますから、積極的にこの国際協力に取り組んでいきたいと思っておりますが、まだ国連の地域モニタリングセンターというものの設置というものが具体化しておりませんが、そういう場合には日本として積極的に協力をしていきたいと考えております。
  43. 西村関一

    西村関一君 時間がまいりましたので、私は一言長官に申し上げてお考えを願いたいと思う。  それは、先ほど長官がおいでになりまする前に、琵琶湖の水の汚染の問題、それこそ山紫水明どころじゃございません、十年を待たずして琵琶湖は死の湖になる、第二の水俣になるという危険が出ておるのであります。瀬田のシジミは、もはや枯れて死んでしまって取れません。ほかのところで取れます琵琶湖のシジミは、奇型シジミが非常に多くなっております。また琵琶湖のフナ、名産でございますフナも奇型魚がだんだんふえてきております。魚や貝にこういう現象が出てくるということは、この水によって生活しているところの滋賀県の、母なる琵琶湖の水によって生活しているところの滋賀県の住民及びその下流一千万の住民の人体に及ぼすところの影響は、いまのうちに手を打たないと、はかり知ることのできないようなおそろしいことになる、第二の水俣になるという心配があるのでございます。  私は、もう長官に御答弁をいただく時間がございませんので、それらのこと、おいでになりまする前に担当各関係の部局の方々にお伺いいたしました点、長官におかれましても、琵琶湖の水の復元、琵琶湖の水の汚染をなくするということが琵琶湖総合開発特別措置法の根本になっている、そういうことを頭に入れていただいて、今後、たとえば国定公園法によりますところの特定指定地域を広げる、琵琶湖の全体をそれに当てるとか、何らかの規制をする、何らかの方法を講ずるということをお考えを願いたい。私は、きょうは時間がございませんけれども、あらためて細部にわたって次の機会に御質問をいたしますから、一応、御答弁は要りませんけれども、お考えのうちに入れておいていただきたい。  以上でもって質問を終わります。
  44. 工藤良平

    工藤良平君 たいへん短い時間でありますから、全体的に質問する時間がなくて残念ですけれども、後ほど局長に詳細な点についてお聞きをいたしますが、まず大臣にお伺いをいたしたいと思いますのは、先日二十五日に衆議院の委員会におきまして、大分の二期計画の問題についていろいろ議論がございました。その議論の上に立って私はもう少し詰めてみたいと思いますので、御答弁をいただきたいと思います。  それは、昨年の十二月に中央公害対策審議会の防止計画部会から「特定地域における公害の未然防止の徹底の方策」ということで答申がなされておるようであります。これは前長官の要請に基づいて検討をなされたと聞いておるのでありますけれども、私は今後の公害行政の非常に貴重な答申だと思っておるのでありますが、この点について長官としての基本的な考え方をお伺いいたしたいと思います。
  45. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 十二月でしたか、中公審の、環境の許容される範囲内において開発を進めるべきだという趣旨、これは今後の開発の大きな指針になると私は考えておる次第でございます。
  46. 工藤良平

    工藤良平君 もう少し具体的にそれじゃお聞きをいたします。  この中で指摘されておることは、今日までの公害行政というものが非常にあと追い行政に終始している——もちろんこれは、公害そのものについて、全体的なそういう客観情勢があったと思いますけれども、いまそれを一生懸命になって解決をして、ほぼその見通しも出つつあるわけです。したがってこの指摘は、やはり今後の地域開発が、この反省を軽視して、依然経済性の追求というものに一生懸命になっておる、そういうことではいけないのではないか、地域の発展や所得の増大というものが得られても決して住民の福祉には結びつかない、こういうような現状があるんだと。その認識の上に立って、それではどうするのか、それはきわめてきびしい環境保全の水準を維持することだと、こういうことが明確にうたわれ、そのためにどうすればいいのかということが三、四点にわたって指摘をされておるわけであります。  これは私は今後の公害行政の基本的な問題だと思いますし、特に長官は昨日一昨日と現地を回りましてそのことを強く感じたと思いますが、公害行政というものは未然に防止をするということが大前提だ、そういう基本的な考え方に立つ必要があろうと、このように思いますから、その点については長官、私は聞くまでもないと思いますけれども、もう一度考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  47. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 御指摘のように、いままでは経済性の追求ということが開発の哲学であったわけです。もう、そういうことではやっていけない時代であることは明らかであります。政府も福祉追求ということに、しばしば言明しておるように方向を変えるということを言っておるわけでございます。  したがって、そういうことになりますと、環境保全ということに対しても一段ときびしい態度をとらざるを得ないことは言うまでもないわけです。それについて、御指摘のようにあとから追っかけていったのでは、これは十分な目的を達成できぬ場合も多いわけですから、したがって今後は、計画の当初から環境保全ということを頭に入れて、そして計画を立てる必要がある。環境庁長官もできるだけその基本計画の当初から参画することが好ましいと考えまして、いろんな開発に関連する法案の中に環境庁長官の協議権というものを確立をしたわけです。御指摘のとおりだと思います。
  48. 工藤良平

    工藤良平君 もう一点その点について。  いまお話がありましたように、新産都市計画が樹立されましたのはずいぶん以前でありますから、それ以降非常に大きな変化というものが出てきております。そういうものを踏まえてここに指摘をされておるわけでありますけれども、最高最新の防除技術をもってしても汚染防止できないときは、生産工程あるいは生産規模などを変更し、場合によっては開発そのものを中止すべきだと、きわめて明確に言い切っている部面があるわけであります。  私は、いまからつくろうという計画と違って、すでに計画が進んでいる地域につきましては、その見直し、それに対するきびしい対策というものが必要になってくるのではないか。その役割りをになう者は、これはたいへんきついことばかもわかりませんけれども環境庁がその任に当たらなければならないのではないか、そのような状態にきておるのではないかと思うのですが、その点についてはどうでしょうか。
  49. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 御指摘のように、いままでこういう環境基準とか排出基準というものはなかったわけですから、それをやっておるわけですから、やはり現実を全然無視するわけにはいかないわけですが、これをだんだんと強化していこうという傾向ですから、だから見直しがときどき必要になってくるわけです。いずれの場合においても、環境基準というものが、現実というものも頭に入れて相当ゆるやかな環境基準あとから考えればなっている場合もあるわけですから、今後そういうふうな排出基準などは、現地の実情にも即してこれを強化していく。強化していけば、いろんな今後の工場の増設というものが制約を受けることは当然でありますから、いま御指摘のようなことに相なることは当然だと思います。
  50. 工藤良平

    工藤良平君 それでは次に、ことし三月に、これまた中公審の企画部会から、環境破壊の七年後の姿ということで各県別の、現在の状態で開発プロジェクトで進めてまいりますと、全国的に各県ごとの状態はこういう状態になりますよという予測が出されております。  これは私のほうの関係ですけれども大分県は、現在まだそこまでいっていないのですけれども、これが五十五年には、大阪が飛び抜けて高いわけですけれども、大阪、東京、神奈川に次いで一番高いランクに汚染が拡大をされる、こういうような指摘が出されているわけでありますけれども、この点については長官御承知だと思いますが、いかがでございましょうか。
  51. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 現状でそのまま推移すればこういうことだということですが、その間、公害防止の技術の開発ということも頭に入れなければならない。現状ではいろんな公害に対しての規制公害防止のための規制というものは強化されていきますから、いやでもおうでも企業は公害防止の技術を開発せざるを得ない。また政府も、ものによったならば大きな一つ開発計画を立てて、公害防止のための技術開発をやるわけですから、そういうことを前提にして考えれば、現状でそのまま何年たてばということは、それは実情に即さない点があると思います。しかし、大きな警告として受け取らなければならぬわけでありますから、そういう点でわれわれとしても傾聴しなければならぬ一つの予測であると考えております。しかし、それにはいま言ったような問題等もあるから、そういう問題については一そうの今後開発に対する努力をしなければいかぬということでございます。
  52. 工藤良平

    工藤良平君 私は、これはもっとたくさんあると思いますけれども、二つの中公審の指摘を見ながら、今回出されました環境基準の見直し、これについては環境庁努力に対しまして敬意を表したいと思いますが、先日衆議院の委員会で論争いたしました内容を見てみますと、大分県の状態を調査をした担当者の報告によりますと、大気の関係についてはさほど進展はしていない、海水の汚濁についてはかなりきびしい状態になっているという議論がなされたようであります。  そこで私は、この見直しによりまして、現行一期計画のいわゆる現在の規模で判断をした場合に、この見直しの数値の中にはまるかどうか。この点については先般の報告の中では、もし見直しがあれば手直しをしなければいけないのではないかという御指摘もあったようでありますけれども、その点についてはどうでしょう。  時間がありませんから、あとでもし足らない点については局長とやりますけれども、長官のいるところですから、概略でけっこうです。
  53. 山形操六

    政府委員(山形操六君) それではごく簡単に、今回答申されました環境基準値に対する全国の都市の適合状況だけを申しますと、いろいろ比較する数字的にもちょっと問題はございますが、一応、年平均値で全国の二酸化硫黄による汚染の状況を見ますと、全般的に年々改善はされておりますが、今度の新しい基準値と比較してみますと、測定局を有する百七十七都市の約八〇%にあたる百四十三都市が不適合になるということが考えられます。したがって、この排出規制の強化をさらに一段とやらなければならないということでございます。
  54. 工藤良平

    工藤良平君 具体的に大分の場合に、私計算をしてみますと、現在十八の測定点がありますけれども、その測定点をとってみると、この環境基準にはまるのは四カ所だけで、あとは全部実はそれをオーバーをするという計算が出てくるようでありますが、概略申し上げましてそのように理解をしてよろしいでしょうか。
  55. 山形操六

    政府委員(山形操六君) 大分の場合で、測定のまた中身がちょっと違う点がありますけれども、一応自動測定記録、導電率法でやっております硫黄酸化物の測定、現在二十三カ所で行なわれておりますが、これの平均が昭和四十六年度で〇・〇一九PPMでございます。四十七年度、四月から十二月までの平均値でございますが、これが〇・〇一七PPMとなっております。  今回の答申されました環境基準値を年平均値にいたしますとほぼ〇・〇一七に相当いたします。したがって、四十七年度の平均値に一応その数字を当てはめますと合っておりますが、場所場所によって、確かに先生おっしゃるとおりに上に上がっているものも下回っているものもありますので、平均では新しい環境基準値に一応合っているということになります。
  56. 工藤良平

    工藤良平君 それは現状工場規模においてそういうことが言える。もちろんそれがさらに拡大をされてまいりますと、よほどきびしい規制を行なわなければ環境基準をはみ出るということは考えられるだろうと思いますし、また県の調査の結果を見ても、工場周辺が比較的下がって、遠距離に行った場合に数値が上がっているという傾向があります。これは煙突の関係とかそういうものだろうと思いますけれども、そうすると、かなり汚染は拡散をされておるようでありますけれども、その範囲は逆に広がっていると見なければならない。  そういう予測をしながら、私は大分県の場合に、一期計画のさらに施設の増加なりあるいは二期計画の問題については、これはきびしい再検討というものが必要になってくるのではないかと、このように思うのですが、その点についてはどうでしょうか。
  57. 山形操六

    政府委員(山形操六君) 初めの御指摘の、煙突を高煙突にいたしましたので、確かに範囲が広がっておることは事実でございます。ただし、先生指摘のように遠い距離のところがどんどんと汚染がふえておるのではないかと考えられるという点に関しましては、数字的にこれを調べてみますと、一号埋め立て地の工場地帯から十五キロメートル離れておるところの測定点の四十五年、六年、七年というところの経年やっております場所で、たとえば竹中小学校というところに置いてありますところでは、年々これは減っております。ただし、上横瀬公民館あるいは植田小学校というところは、一時四十六年度高くなって、また四十七年度低くなるとか、あるいは横ばいになるとか、数字的には遠隔地の汚染濃度がどんどん上昇しておるという数字にはなってはございません。  しかし、先般の審議会から答申されまして近く設定予定をしております新環境基準と比較した場合には、これは確かに全般的に改善の要がございますので、私どもは新環境基準の維持達成のために排出規制の一そうの強化をはかっていく所存でございます。
  58. 工藤良平

    工藤良平君 時間がありませんから後ほどまた局長と詰めます。  そこで長官、さらにこの二期計画をもし実施をするといたしますならば、日本気象協会の福岡県本部が風向調査をいたしておりますけれども、それによりますと、南西の方向に向かって吹く風が三四%、これは海のほうから陸のほうに向かってということ、しかもこれは佐賀関方面から旧大分市内に向かって吹くような風になります。それから北西に向かっての風が二四%、北東が一七%。北西というのは、これは北西でありますから海に沿って流れていくということになります。そうすると、これは大体大分県の場合に陸からの風が非常に弱いと言われているわけでありますから、それが海のほうに一度出て、それが再び陸のほうに戻ってくるという可能性が非常に強いということが指摘をされておるわけでありますから、これはこの二期計画の膨大な企業が立地するということになりますと、私はいまからたいへんな心配が起こってくる。このことをひとつ長官も頭に入れて見ていただきたいということであります。  それともう一つは、これは海の汚染の問題ですけれども、海の汚染は、別府湾はたいへんひどくなっております。特に私は長官にお伺いいたしますが、基本的に公有水面埋め立ての場合に、これは臼杵の例があるわけでありますけれども、この際に非常に貴重なことは、ただ漁協の事務的なミスによって一応裁判が漁民の側に勝ったような印象を与えておるのでありますけれども、そうじゃなくて、私判決を読んでみますと、「免許を受ける者が一般私企業の場合、それがもたらす経済的利益の程度と、埋立でこうむる権利者の損害の程度とを計算するだけでなく、その地域住民生活環境に及ぼす影響を正確に掌握し、同時に国土の総合利用、国民経済上の見地も計算して、なおかつ客観的に容認される性質のものに限って免許するべきである」としておりますし、さらに、これは埋立免許権限を持つ一方で、埋立実施者となることの多い地方公共団体地域開発を旗印として行なう企業誘致策に対して警鐘を鳴らしているんだと、このような指摘も実はあるわけですね。  そうすると、私は、漁業権というものは本来漁業をやる者のために、それを守ってあげるためにあるものであって、売買するものでないという基本的な考え方を持っておるのですけれども、そういう観点に立ってものを考えた場合に、この前も議論になりましたけれども、八号地の佐賀関の埋め立てについては、別府湾の汚濁防止をし、さらに漁民の生活を守ってあげるという基本的な態度から、私は特に公有水面の埋め立てについて、認免権者である地方自治体がいわゆる実施施工者にもなって埋め立てをして、そうして企業に譲っていくという立場がありますから、そうすると、それはやはり規制をしていくものは、これまたさっきの話じゃありませんけれども環境庁が、公有水面埋め立ての場合に相当きびしい注文というものをつける必要があるのではないだろうかと、これは基本的にそう思うのですけれども、その点、時間がまいりましたから、この二つの点について長官の基本的な姿勢を伺って、後ほどまた局長と議論をしたいと思います。
  59. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 大分の場合は、新産業都市の第一期工事のときにも、昨年の暮れでしたか、これ以上環境汚染をしないということの条件で、そういう基本的な考え方で許されたわけですから、そういうので、今後、地方の公共団体あるいは民間企業が中心になって総合的な公害防止対策というものを立てる責任があるわけであります。したがって、この地域全体の環境目標の達成というものの見通しがあるわけで、そういうことを条件にされておるわけですから、その見通しが立たずに次々に計画を進めていくということは適当ではありませんので、いま佐賀関などもその中に含んでいるわけでありますが、第二期の計画の取り扱いに対しては、公害の未然防止の観点から慎重に検討するよう、県に対しても今後指導助言をしてまいりたいと考えております。
  60. 小平芳平

    ○小平芳平君 三木長官の先ほどの、水俣を視察されての御感想は、私も全く同じ感じを持つ点がございます。また、工藤委員の質問に対して三木長官は、従来の政府がとってきた経済性を第一にしたことについて反省を持ち、そして、開発には環境庁長官の協議をまずするような制度をつくるようにしたいというような御発言がございました。   〔理事杉原一雄君退席、理事菅野儀作君着席〕  やはり長官、従来のように技術とお金があれば高速道路でも高層建築でも幾らでも建てる、つくるという時代ではなくて、一本の道路あるいは一つのビルを建てるにしましても、そのことによって環境にどう影響するか、人間に、動物に、植物にどういう影響があらわれるか、そういうことをまず検討することが第一。とともに、また特に、その環境庁長官の発言も大事ですが、地域住民がそのことに対してどう受けとめるかという、そうした地域住民の意向を十分聞くべきであると、このように考えますが、いかがでしょうか。
  61. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 高層建築、私は一がいに悪いとは思っていないのです。それは場所によったら、この領土の狭いところですから高層建築化す必要があると思いますが、その場合には、いま御指摘のように、地域住民がそのために、日照権というものがやかましく言われておるわけですが、日当たりというものはこれは国民の基本的な権利と、法律的にはともかくも、一つの理念としてはそういうふうに定着しつつありますから、・そういうふうなことも考えながら、生活環境を害するというようなことはできるだけ避けるということが当然の責任だと思います。  地域住民の意向をただせというのは、それは環境の破壊を伴った場合に反対が起こるのですから、環境保全というものを考えろということと同じような意味だと思いますが、そういうことでお互いに、自分ばかりでなしに他人の環境に対しての、静かさを求めるということは日当たりを求めるということは万人共通の願いですから、これに対してできるだけの配慮をしていくということは、当然の責任だと私は思います。
  62. 小平芳平

    ○小平芳平君 日照権についてのお考えはよくわかりましたが、そこで、環境権ということを主張いたしまして、憲法に基づいて幸福を追求し、また現在北海道で訴訟が起きているわけですが、こうしたこの環境権については長官はどのようにお考えになられますか。要するに、日照権の場合と同じように考えてよろしいのじゃないでしょうか。幸福を追求する権利あるいは生活を守る権利、そういうことを基本としまして、人類社会のあるいは自分たちの祖先伝来の環境を守っていこうという、そういうことについてはどのように考えられますか。
  63. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私は、政治に携わる者は、環境権ありということで政治をやることは必要だと思うのです。それは一つの政治理念として考えたいのです。しかし法律の概念としては、環境を守るということを法概念として確立するのには、もう少しいろいろ裁判の判決等も必要でしょうし、これはまだこの段階としては非常に未熟な点があると思いますが、政治に携わる者は、環境権というものが基本的な人権としてあるんだという心がまえのもとに政治をやることは必要だと私は思います。   〔理事菅野儀作君退席、委員長着席〕
  64. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に私は具体的に、PCBによる環境破壊、あるいはPCBによる環境破壊の防止対策、こういう点についてお尋ねをいたしたいのであります。  初めに通産省から、いままでに私が質問いたしまして、PCBの総生産量、総輸入量というものを回答してきておりますが、若干訂正にもなっておりますので、この際ひとつ総生産量、総輸入量の、わが国におけるPCBの総合計をお答えいただきたい。
  65. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) PCBの生産は、総合計で約五万九千トン生産がされておりまして、なおそのほかに約一千トン輸入が行なわれております。合計いたしまして六万トンが国内で生産ないし輸入されるという形になっております。
  66. 小平芳平

    ○小平芳平君 その約六万トンのPCBは、用途別に、すでにノーカーボン紙みたいに環境に散ってしまったものと、それからトランス、コンデンサーのように回収可能なものというふうに分けて、あるいは家庭用電器などは回収がほとんどむずかしいわけですが、そういうように分けてお答えいただきたい。
  67. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 用途でございますけれども、一番大口が電気機器関係、トランス、コンデンサーのたぐいでございまして、約三万七千トン出荷されております。その次に多いのが熱媒体用でございまして、約九千トン出荷されております。それから感圧紙、いわゆるノンカーボン紙用に約五千トン出荷されておりまして、その他の用途といたしまして、塗料ですとか接着剤といったような開放系に約三千トン出荷されております。  これの合計が約五万四、五千トンになりますが、このほかに輸出が約五千トンございまして、合計いたしまして約六万トンになっております。  それから、国内に使われました五万五千トンの、その用途はただいま申し上げましたが、回収可能量でございますけれども、電気機器関係で約三万一千トン回収可能であろうというふうに見ております。  熱媒体用が、約九千トン出荷されました中で約六千トンは回収可能ではないかと、こういうふうに考えております。  それから感圧紙向けには約五千トン出荷されたわけでございますけれども、ただいまPCBを使いました感圧紙の紙量といたしまして五、六千トンが最終需要者の手元にあると推定されますので、それの回収を現在努力中でございますが、PCBの量にいたしますと、これは紙の中でのPCB含有量が、紙の目方によっても違いますけれども、二ないし七%でございますので、PCB量では二百トン内外が回収可能かと、こういうふうに考えております。その他の開放系の用途につきましては、若干回収が行なわれましたけれども、一般的に見ましてこの回収はきわめて困難かと考えております。  したがいまして、以上合計いたしますと、ただいま回収可能と見込んでおりますPCBの総量は約三万七千トンでございます。
  68. 小平芳平

    ○小平芳平君 三万七千トンが回収可能で、その五万五千トンとの差は回収不能ということですか。
  69. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) さようでございます。
  70. 小平芳平

    ○小平芳平君 現在の汚染は、主としてこの感圧紙、それから先ほどおっしゃった塗料等ですね。ですから、感圧紙と塗料と加えても八千トンですから、それでこれだけの環境汚染が問題化してきている。したがって、なおそれ以上の環境汚染がこれから始まるということになりますか。
  71. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) これまでの汚染は、感圧紙、それから開放系のほかに、熱媒体等が若干漏れまして排水等に流れ出たケースでございますとか、コンデンサー等を製造いたします際に排水等で若干流れ出た、こういったものも含まれておりまして、そういったものの蓄積によりまして汚染が起こっておるわけでございまして、感圧紙と開放系の回収不能なものだけでございませんで、PCBを使います製品の製造工程等での流れ出たものも若干あろうかと存じます。
  72. 小平芳平

    ○小平芳平君 それはもちろんありますが、その製造工程から流れ出したものが南極から北極まで行ったのじゃないでしょう。主としていままでの汚染というものはノーカーボン紙、それから塗料等の八千トンですね。いまのお答えによれば、あと一万トンというものが回収不能だというわけですね。ですから、さらに現状の倍以上の汚染のおそれがある、いまのままおけば。ですから、そこでもっと回収の方法を考えなくちゃいけないですね。そのとおりでしょう。どうですか。簡単にお答えください。
  73. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 熱媒体が、先ほど申し上げましたように九千トン出荷されまして、大体現在ございます熱媒体の、使われております熱媒体の場所は私どもも確認いたしておりまして、これは全量今年中に回収をいたしまして、別の熱媒体に切りかえるように現在指示をいたしておりますが、やはり二千トン近くはすでに漏れた等々で回収困難なものがあろうかと存じます。  それから電機関係につきましては、大型のコンデンサーあるいはトランスといったもので大体三万一千トンの回収を考えておりますが、この差につきましては、主として家庭電気製品、あるいはすでに輸出をいたしました機器関係の中に組み込まれて出ていったものが相当量あろうかと考えておりまして、そこら辺がきわめて回収困難かというふうに考えております。
  74. 小平芳平

    ○小平芳平君 回収の方法をもっと具体的に示してください。ちょっと時間がありませんので、これ以上言いませんから。  そこで、政府は衆議院の決議、「PCBの製造、新規使用を禁止し、例外的使用の際は」云々というこの決議、これについて「例外的使用」というのは、どこでどういうふうにきめているのですか。
  75. 藤本和男

    説明員(藤本和男君) 電機関係のトランス、コンデンサー等につきまして例外的使用を認めておりますのは、たとえばユーザーが非常に特定しておりまして……
  76. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうじゃない。どこでどういう範囲にきめたか。
  77. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 原則といたしまして、昨年の八月をもちましてPCBを機器類に使用することを禁止をしたわけでございますが、例外的に使用を認めるものといたしましては、たとえばトランス、コンデンサーのように閉鎖系でございまして外に使用中に漏れないというもので、なおかつ確実に回収がめどが立っておるもの、こういうものに限りまして使用を認めるということにいたしまして、そういった通牒を昨年の三月に各業界に出して実施させているところでございます。
  78. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、それは通産省局長がきめるのですか。こういうことは三木長官、環境庁長官がきめるのが筋じゃないですかね。PCB環境問題として提起されているんですが。
  79. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) このPCBを使用します機器に対するPCBの例外的使用の基本方針につきましては、環境庁に設けられておりますPCB対策本部、各関係省が寄りまして対策本部を設けておりますが、そこではかりまして基本方針の御了解をいただいて、それに基づきましてやっておるところでございます。
  80. 小平芳平

    ○小平芳平君 国鉄はPCBをどのくらい使っているか。手持ちがどのくらいあるか。いまのままでいかれるか。  それから防衛庁。防衛庁はアメリカの戦車、艦船、航空機等を使った場合、それには当然PCBが使われております。アメリカでは禁示しておりませんから。そういう場合、どうするか。国内産はPCBを、いま申しましたような艦船や飛行機にお使いになっているかどうか。その点はどうですか。
  81. 石沢応彦

    説明員(石沢応彦君) 現在、国鉄で使っておりますPCB量、これは車両関係が約九百トン、それから地上の設備関係約百トン、合計約千トンでございます。それで、将来の話になりますが、昨年の四月以降、地上のものにつきましては、新しいものは使わないように、そういうぐあいに処置をしております。それから車両関係の中で、コンデンサー類のようなもの、また螢光灯の安定器、これにもコンデンサーがついております。こういうようなものにつきましても、昨年の九月以降PCBを使用しないようにしておりますが、現在まだ研究中で残っておりますものに、大ものに車両のトランスというようなものがございます。  これにつきましても鋭意調査研究を進めてまいりまして、現在のところ、これはPCBに相当するような性能の油がなかなか見つからないということではございますが、一段ちょっと性能的には下がりますが、新しい油を使いまして、これはいままでの機械の装置のところに油をとりかえるというだけでは済みません。機械そのものまで設計変更して大型になります。なりますが、やむを得ないので、これを研究いたしまして、現在のところ試作ができまして、車両につけて三、四カ月の試験をやっております。もう少し様子を見まして、よろしいということになりますと、早ければこの下期くらいのものからPCBを使わないトランス、こういうものをつける、そういう予定にしております。
  82. 友藤一隆

    説明員友藤一隆君) お答えいたします。  自衛隊の現在保有いたしております装備品等でPCBを使用いたしておりますものは、通信機、レーダー、航法装置等の通信電子機器がおもなものでございます。これらはPCBを絶縁用といたしまして、コンデンサー、コイル、トランス等に使用いたしているわけでございますが、これらの機材は地上用のほか、航空機、戦車、車両、艦船等にも搭載をされているわけでございます。  なお、これらのPCBを使用いたしております通信電子機器は、現在約百四、五十種類程度と見込まれておりますが、この中には国産品のほか、お尋ねのように米国からの供与品、それから輸入品も含まれております。  それから艦船、車両、航空機等の油圧作動オイル等につきましては、防衛庁ではPCBを含んでおる作動油は使用いたしておりません。  それでPCBにつきまして、防衛庁の方針といたしましては、通産省のほうからも御指導がございまして、最近におけるようなPCB公害の実情にかんがみまして、国の御方針に従いまして極力PCBを使用している装備品は調達しない、調達を避けるということで方針を出しておりまして、やむを得ず使用いたす場合でございましても、PCBにつきましてはその旨の表示を行なわせまして、これを長官に報告させ、かつその管理について、それが放置されることがないよう十分に管理体制をとるという方針で現在進んでおります。今後調達いたしますものにつきましては、現在のところほとんどPCBでないものに代替が通信電子機器では可能でございますので、昨年暮れ以降の調達では、国産品につきましてはPCB使用のものは調達をいたしておりません。  それから輸入品につきましては、国産品と同様PCBの使用されたものをできるだけ避けるように指導いたしておりますが、将来PCBを代替するような機種であるとか代替品の開発がどうしても間に合わないというような場合には、やむを得ない場合には、厳重な管理のもとでごく少数のものを使用せざるを得ないものと考えておりますが、これについても今後十分管理をいたしますとともに、これの代替の開発について努力をいたしたいと、かように考えております。
  83. 小平芳平

    ○小平芳平君 三木長官にお尋ねしますが、通産省のほうでは先ほどのお答えのように、例外的な使用を認めるという答弁がありましたが、環境庁に設けられたPCB連絡会議ですか、そこで例外というものをきめるというお話ですか、三木長官、国内でPCBの生産をとめておりますから、行く行くなくなるわけですね。そうした場合には、これは国の方針として、輸入されるのか。  それからアメリカではPCBを禁示してないです。OECDの勧告でも全面禁止はしてないですが、コンピューターの場合のように、あるいは自衛隊の装備品のように、明らかにアメリカ製品はPCBを使っているという場合に、わが国では輸入もし使用もしていかれるか。これは別にいまの法律がこうじゃなくて、国の、政府の方針としてお答えいただけばいいと思うのです。
  84. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) これは代替品の研究をされておるわけですから、そして行く行くは例外的な使用も認めないような方向にいくし、輸入も考えてはいないのです。やはりこれにかわるものの研究開発というものを進めていきたいというのが政府の方針でございます。
  85. 小平芳平

    ○小平芳平君 そればわかりました。PCBそのものは輸入も考えておらない、したがって代替品を開発し、トランス、コンデンサーも例外としなくするというその基本的なお考えはわかりましたが、アメリカ製品では明らかにPCBを使っているのです。特にコンピュータ、エアコン、そういう大型電子機器、あるいは防衛庁から御発言のあったレーダー、そういうものは明らかにPCBを使っているのです。現状ではアメリカでは代替品はないというのです。それでPCBを使ってやっているのですが、わが国の基本方針としては、わが国で使わないくらいだから、アメリカ製品もPCBを使ったものは国内へ入れないという方針でいかれますか。
  86. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 通産省としては、PCBを使ってあるものはなるべく輸入しない指導を行なっておるようですが、今後そういう指導を徹底していくというのが方針でございます。
  87. 小平芳平

    ○小平芳平君 輸入しないように指導をしているということは、通産省、輸入しませんか。たとえば先ほど来何回も言うように、コンピュータならコンピュータがPCBを使われているということがはっきりしているなら、輸入は許可しないですか。
  88. 藤本和男

    説明員(藤本和男君) いま先生指摘のようにコンピュータには使われておりますが、たとえば日本IBMでございますけれども、私どものほうの行政指導を受けまして、極力PCBを使わないコンデンサーに切りかえるべく現在努力しておりまして、ことしの夏ごろにはそういう態勢が整うというふうな連絡を私ども受けております。
  89. 小平芳平

    ○小平芳平君 三木長官、こういう議論をされたわけですがね、工業国は少なくともOECDの勧告程度に歩調を合わせてほしい、要するに、日本だけが完全にPCBを締め出すと、そうすると非関税貿易障壁じゃないかと、したがって工業国はPCBに対する見解を統一してほしいというような議論もあるのですが、そういうような議論に対して、環境破壊との関係考えなくてはいけないわけですが、いかがでしょう。
  90. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) OECDのPCBに関する決定によりますと、先生指摘のように、今後ともやむを得ず使うものという中に小型コンデンサーというのが入っておりまして、小型のコンデンサーはPCBの使用量もごくわずかでございますし、ほかに代替品がなければこのまま使ってもやむを得ないのじゃないかというのがOECDでの決定でございます。  ただ、これにつきまして、日本政府としましては、小型コンデンサーもたとえば家庭用電気製品等の中に使われますので、これは一種の開放系と同じでありまして、なかなか家電関係は回収が困難でございますから、やはりこれも使わせないほうがよろしいということで、小型コンデンサー自体もOECDとして使わないようにきめてもらうようにむしろ主張をしたのでありますけれども、非常にPCBの性能と、それから小型関係では量が少ないということと、代替品が適当なものが少ないといういろいろな理由で、小型コンデンサー関係は今後も使ってもやむを得ないのじゃないかという、こういう一応のOECDとしての結論になっております。  ただ通産省としましては、ただいま申しましたように、家電関係は小型でございまして使用量が少ないですけれども、一切使わせないというふうに考えておりますし、それから電算機等々の小型のコンデンサーを使うものにつきましても、現在全部PCBでないコンデンサーに国産ものにつきましては切りかえをさせております。したがいまして、輸入の電算機につきましても、極力、日本の国内では使わせておりませんので、輸入ものにつきましても、国内の電算機がPCBを使わないで生産できるとすれば、輸入についてもPCBを使わないでほしいということで、PCB入りの電算機はなるべく輸入しないように指導をいたしておるところでございます。  先生の御指摘のように、公害防止と、貿易面でのノン・タリフ・バリアといいますか、非関税障壁と競合する問題でございまして、非常にむずかしい問題でございますが、基本的な方向としては、なるべくこういうPCB入りのものは輸入させないという基本方針でおるところでございます。
  91. 小平芳平

    ○小平芳平君 三木長官よろしいですか、いまの通産省のとおりで。したがって政府としては、この衆議院の決議どおり進めていくということでかろしいわけですね。  そうすると、これはPCBアメリカ、イギリスで生産しているただ一つの会社、モンサント社では、PCBを使わないエアコン、螢光灯、コンピュータというようなものは考えられないといっているのですが、これは単なる商売上のことであって、そういうPCBを使わないエアコン、コンデンサー、螢光灯、そういうものは考えられないといっているのですが、そんなことはないのですね。
  92. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) わが国でのエアコンあるいは螢光灯、その他家庭電器関係は全部、昨年の九月からはPCB入りは使わせないようにいたしまして、PCB入りでないコンデンサーに全部切りかえております。
  93. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう姿勢で取り組んでいただけばいいと思います。  次に、PCBとよく似たものでPCTというのがあるのですが、これはどうですか。
  94. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) PCTと申しますのは、PCBが、ビフェニールと申しましてフェニールが二つついたものをPCBと呼んでおりますが、PCTはトリフェニールと申しまして、フェニールが三つついたものでございます。  生産しておりましたメーカーも、鐘淵化学と三菱モンサントの二社でございまして、PCBをつくっておったメーカーと同じメーカーが過去数年間製造をしておったわけでございますが、その毒性についてはまだ不明な点が多いのでございますけれども、ただいま申しましたように構造が非常にPCBに似ておりますので、やはり毒性等について危険があるのではないか、こういうふうに考えまして、念のためにPCBと同様の措置をとることにいたしまして、生産・販売ともに昨年の六月で全部やめております。
  95. 小平芳平

    ○小平芳平君 それはよろしいんですがね、WHOの報告で、PCTの汚染が問題だという報告があるでしょう。
  96. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) WHOの報告、私まだちょっと見ておりませんですけれどもアメリカのモンサントが調べました毒性試験の数字は入手をいたしましたが、それによりますと、急性毒性等ではPCBの三分の一くらいの毒性といったような報告が出ております。
  97. 小平芳平

    ○小平芳平君 WHOの報告は、PCTの汚染が問題化した、それで人体や野性動物の体内に蓄積が始まった、川の水では両者同じくらい、人間の脂肪ではPCTが上回っているということが出ておりますがね。それはあとで調べておいてください。  では最後に三木長官、今度の化学物質審査及び製造等規制に関する法律案、これは通産省から出ているのですか。そういう点、環境庁がもう少し環境破壊を防ぐという点で、そうした化学物質規制についてももっと強い姿勢あるいは法律上の権限というものを持ってやっていただきたいと思うのです。そういう環境汚染通産省が行って調べてきているのじゃないんですから。そう思いますが、長官の御見解を承りたいと思います。
  98. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 御指摘の法案については、事前に厚生省と環境庁とがこれに参画しまして、通産省だけの意図でつくったものではないわけです。十分な合意に達してあの法律を出したものですから、環境保全という意図も法律の中には十分に組み入れられておるということが言えると思います。
  99. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、それはそのとおり新聞にも出ておりますが、通産省主体じゃなくて、環境庁主体でいっていただきたいということです。こうした環境を守るという点では、そういう行政面は環境庁中心でいくのが当然じゃないですか。
  100. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私どもも、いろんな縦割りの行政というものの不便というものを身にしみるほど感ずるのですが、やはりこの法律にしましても、化学物質を扱っておる省というものが、どうしてもいろんな点でその法案をつくる場合に、従来それを扱っておるわけですから、こういう形になるのですね。だから、その法案をつくるときに、環境庁とか厚生省も加わっていろいろ協議しながらやるということで、どうしても法律をつくる場合には、その物質を取り扱ってきている役所が法律をつくるというたてまえになっておるのですが、いろいろこういう点もあまりマンネリズムにとらわれないで考えてみる必要があると思いますけれども、従来のたてまえはそういうことになっておるということでございます。
  101. 加藤進

    加藤進君 長官が水俣の現地を尋ねられまして、つぶさに実情を調査された。きわめてけっこうなことだと思います。その中で報告一つ漏れておる点があるやに思いますが、それは水俣病の患者の方たちが今日どれほど生活上の苦労をしておられるか、何とか国の施策によって被害者の救済をしてほしい、こういう訴えがおそらくあったと思うのです。私も二回参りまして、二度ともそのことを強く聞いておるわけでございますが、その点に関しての簡潔な御報告と、この声にこたえる環境庁の長官の決意をひとつお伺いしたいと思います。
  102. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 患者の損害賠償については企業の責任を追及したいと思います。  私はきょうの報告でも申したのは、研究とか治療とか、あるいはまた社会復帰のためのいろんな訓練とか、こういう一つ施設に対してわれわれとして十分なできるだけのことはしなければいかないし、ヘドロ処理ということに対しても、これは永久にヘドロ処理されないということでは永久に禍根は断たれないわけですから、この処理にも当たらなければならぬが、いま言われた生活の補償というこの問題は、企業の責任において解決をしたいというわけであります。  まあ、大体解決をしたわけですよ。自主交渉派と訴訟派とが、人数にしたら五十名ぐらいですね、五十名ぐらいの人がまだ未解決なので、この点については誠意を持って交渉をして、できるだけ早く解決をするように努力することを会社にも私は言おうということを患者に約束したわけですが、しかし、いま言ったような生活の補償といいますか、損害賠償については、企業において責任を持ってもらいたいというのが基本的な考えでございますから、補償問題についてここで御報告はいたさなかった次第でございます。
  103. 加藤進

    加藤進君 若干、長官誤解しておられると思いますけれども、被害者の皆さんの生活というのは決して単に物的な生活問題だけではありません。ともかく長官も抱いてみられたと思いますけれども、十六歳のあの方が、ほんとうに赤ちゃんと同じような状態で成育をとめられている。その赤ちゃんを一日一昼夜抱っこしながら、とにかく生きていかなくてはならない。しかも病院にも通わなくてはならぬし介護もしなくてはならぬ。ということになると、どうしても個人の努力においてはこれは不可能である。  したがって、このために今日でも救済法があるわけでございますから、その救済法のたてまえによっても、できる限りの救済措置をとってほしい、たとえば、その中における各種の規定がありますけれども、その規定のワクをもっと広げていただけないものだろうかという訴えは、おそらく私は長官の耳にも入ったと思いますけれども、その点に関してお尋ねをしておるわけです。
  104. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) おそらく医療手当とか看護手当の問題だろうと思いますが、これは実際問題として看護手当なんかは少ない。いまの特別措置法などできめられておる金額は少ない。これは検討を必要とすると思いますが、そういう問題も含めて、会社との直接交渉の中にもそれは入っているわけですね、医療手当の問題も。そして、はりとかきゅうとか温泉ですか、そういう問題も解決を見ておる面があるわけですから、そういう問題については、われわれとしては現行制度のもとで給付が実情に沿わぬようなものは改善していかなければならぬけれども、本筋としてはやはり当事者間でそういう問題も話し合ってもらいたい、こういう考え方でございます。
  105. 加藤進

    加藤進君 私は水俣の問題に触れたわけでございますけれども、事柄は水俣だけの問題じゃございませんね。全国に、すでに措置法によって適用された人たちでも一万人をこえるわけです。しかもその数は、決してそれで十分ではないことは明らかでございますが、こういう状況にある患者に対して国がとるべき応急の措置としても、経過措置としても、今日の規定は決して十分とは言えない。このことを私たちは真剣に、今度の水俣における視察の中からもくみ取っていただけたと思うのです。その点の決意を、一言でよろしゅうございますからお話願いたい。
  106. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) これは、いまも私が申したように実情に沿わない面もある。十分な検討を加えたいと考えております。
  107. 加藤進

    加藤進君 そこで私は、硫黄酸化物をはじめとする大気汚染の問題について、はたして今日の救済法がどれほどいわば公害認定の患者に対しても及んでおるか、こういう点について一言申し上げたいと思いますけれども、硫黄酸化物による大気汚染の結果、起こっている症状が四種類、この四種類の範囲においては救済法を適用するけれども、四種類以外の症状ではこれは適用はできない。これはどういうわけでしょうか。
  108. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 大気汚染に基づく呼吸器系疾患で公害病として指定するものにつきましては、この特別措置法が発足いたしました当時、専門の先生方の御意見を聞いて、御指摘のとおり慢性気管支炎等四種類の疾病を定めたわけでございます。  これは主として慢性的な病気でなかなかなおりにくいという面に着目いたしておりまして、まだほかに急性の疾病があるではないか、あるいはまた慢性の系統の疾病でもほかにあるではないかというような問題は残っておるのが事実でございます。こういった点につきましては、やはり医学的専門的な検討を要する問題でございますから、引き続き検討いたしておるところでございます。
  109. 加藤進

    加藤進君 長官も同感だと思いますけれども、とにかく検討を要する重要な問題だと思うのです。四種類の疾病の症状以外のものを認定しないというようなことは、これは公害病患者そのものを見捨てることに結論的になる。救う道じゃない。公害の基本法にも示されておるように、公害病に対して、公害に対しては、疑わしいと思われるものは救済措置をとらなくてはならぬ。これは私は基本だと思うのです。この基本に照らして、このような制限を設けるということは現状において全く正しくない。この点において抜本的な私は改善をぜひお願いしたいと思うのです。  特にいま公害、とりわけ大気汚染の問題に関係していろいろな症状が発生していると思うのです。たとえば光化学スモッグ、これに基づく症状というものは、従来かつて経験されたことがない医学的な問題だと思います。したがって、ある時期にはこれは心理的な影響から起こっているなどというような説まで出たほどでございますが、しかし、症状が起こっておることは事実でございますから、これに対してもやはり被害者としての救済措置をとる、こういう方向に前進していただく必要があると思いますけれども、その点についての御見解はどうでしょうか。
  110. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いま公害に対しての救済については、これはまだわれわれとして最初のことでございますから、いろいろな点で改革を加えなければならぬ点もあるし、公害病というものの認定の範囲というものが、いま言われたスモッグなんかも入れるべきではないかと、いろいろ御意見があると思いますが、そういうことも、いろいろな公害被害の実情とも照らして、将来の検討をすべき課題だと思っております。
  111. 加藤進

    加藤進君 その点では、特に長官の所信表明にもありましたように、従来の公害行政というものがうしろ向きのあと追い行政だった、この点をきびしく反省して公害行政の前進をはかるというのが長官の決意だったと思います。  したがって、その意味では、救済法の病気の認定の問題もございますし、また損害補償あるいは救済補償の問題もありましょうし、同時に、私はここで時間の許す範囲内でお尋ねしたいのは、救済法が適用の範囲をきわめてきびしくきめている。全国で私の知る範囲では十地域だと思うのでございますけれども、その点は違うでしょうか。
  112. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 十地域でございます。
  113. 加藤進

    加藤進君 この十地域の範囲を一歩でも出ると、その適用はとめられる。しかし状況はといえば、大気汚染でございますから垣根はございません。したがって、その周囲にもそのような症状の起こることは当然のこと、これは常識的にわかることでございますけれども、にもかかわらず、認定地域がきわめて限られておるがために適用がされない。ここでも私は患者が見のがされている、被害が見のがされている、国の行政が及ばない、こういう状況があるわけでございますが、その点についての抜本的な改正を行なわなくてはならぬ時期にきておると、こう思いますけれども、長官、いかがでしょうか。
  114. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 御指摘のように、どこかで線を引こうという場合には、この公害問題に限らず、ほかの問題でもそういう不合理はありますね。その線を引いたところの前とうしろの人たちというのは、ほとんど差が狭まってくるわけです。しかしこれは、いろいろな病気が、公害による被害が非常にたくさん集中的に出る、あるいはまた地域汚染が著しい、そういういろいろな条件のもとに線を引いておるわけですが、今後損害賠償保障制度も行なわれるわけですから、こういう点というものは根本的には、公害の被害を救済し、あるいは損害賠償保障制度においては生活の補償的な性格も帯びるわけですから、そういう中へ入る人と入らない人というものの差もつくわけですから、将来のこれは研究課題にしたいと思っておるわけでございます。  いますぐ、世界にも類例のないような損害賠償保障制度をやるときに、あまりにも間口を広げてやるということは健全な発展にもなりませんから、まあ限られた形ではありますけれども出発をして、そしてこれを軌道に乗せて、いろんな不合理というものは是正していくようにすることが実際的だと、こう考えておる次第でございます。
  115. 加藤進

    加藤進君 私はこまかい質問はできませんから申し上げられませんけれども、ここに名古屋市の公害の大気汚染の地図があります。名古屋市内において公害認定の地域は南区、港区。しかもこれは全地域じゃございません。それから隣の東海市におきましても全地域指定にはなっておりません。ところが大気汚染の状況からいいますと、その南区、港区という認定地域、東海市の認定地域、この地域を含む大気汚染の状況は、何と名古屋の中央を貫いて北のほうまでいっております、北のほうまで。そうして北区において公害患者、とりわけ乳幼児の患者がどんどん発生しているという状況が報告されています。こういう現状があるのです。  これは名古屋だけの問題じゃないと思うのです。こういう現状環境行政の上でどういうふうに改善して救っていくか、これが私は前向きの姿勢だと思うのです。従来の規定は規定として、これを改善して公害患者のすべてに政治の光を当てる。これが私は一番大きな国の行政責任だと思うのです。その点でいまこの点を申し上げておる。このことをひとつ明確に御理解をいただきたいと思うのです。  特に、要求の出ておる問題の一つとして、四日市判決の行なわれましたあの四日市のすぐ隣の楠町の問題は、もう町長あげてその点の要求が出ておりますね。こういう問題を全国的に抜本的にすみやかに改善の努力を払う、こういう御決意だけはいただかないと、これは公害患者は黙っておりにくい、こういうふうに思いますから、その意味では長官の決意を一言お尋ねしたいと思います。
  116. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いま、これから提案をしようとしておる損害賠償保障制度を軌道にまず乗せる。その上でいろんな、地域指定の問題であるとか、あるいはまた範囲の問題であるとか、公害病というものの範囲の問題等については、これは十分な研究をいたしてまいりたいと思っております。
  117. 加藤進

    加藤進君 大体いつごろまでにそのめどが立つでしょうか。
  118. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) これは加藤さんとお約束して、間違ったらたいへんですからね、時間は約束はできません。まず、いまの損害賠償保障制度を軌道に乗せて、これはやっぱりたいへんな法案になりますからね、そうして、その上で十分な、いま御指摘のような問題等も研究、検討をいたします。それはただ研究研究と言ってじんぜんと日を延ばしていくというのではなくして、できるだけ積極的に研究はいたしますけれども、いつまでという約束はいたしかねるわけでございます。
  119. 加藤進

    加藤進君 残念ながら、可及的にということで私は理解しておきます。  それから生業補償について、とにかく物的補償についてはこれは当事者間で話し合って決定してほしいと、こういうことでございますけれども、実はそこにも非常に大きな問題があるわけで、たとえば瀬戸内海における赤潮に基づくハマチの斃死という問題について、じゃ一体どこが原因者なのか、どこが犯人なのかということがきめかねつつ今日被害は毎日のように起こっている、こういう状況が現にございますね。  それから数日前の新聞に報道されましたけれども、長野県の中野市においてカドミ汚染田ができました。カドミ汚染米が発生したわけでございます。この農民の諸君は、基準以下の準汚染米についてはこれは買い上げてもらえるからいい、しかし基準以上に汚染したものについては買い上げもしてもらえないし、これは放棄せよ、捨てよと言われている。この損害は一体だれが負うのか。そして、しかも一体このカドミの汚染の原因がどこにあるかもまだ十分に確定できない。こういう状況にあるときに、この補償というものはやってならぬわけでしょうか。この点をひとつはっきりお答え願いたいと思います。
  120. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) カドミの汚染米、いわゆる一PPM以上のカドミを含む米につきましては、食糧としてこれを販売その他をしてはならないということでございますので、食糧庁で買い上げるわけにもまいりませんし、販売もできないわけでございますが、したがって通常の場合には、汚染原因者がわかれば汚染原因者から補償をしてもらうということになるわけでございますが、長野県の場合、私ちょっと具体的な事例を存じあげておりませんけれども、かりに汚染原因者が不明のような場合には、現状といたしましては、これを補償してもらうという手段が現状ではないというのが実情でございます。
  121. 加藤進

    加藤進君 ですからね、三木長官、現場へ行ってほんとうにこの患者の苦しみの現状を見て来られて、どうしてもやらなくてはならぬといういろいろな課題が出たと思うのですけれども、そういう中に、なおかつ今日のような冷酷な公害行政が日々行なわれて、政治の手は被害者に届いていない、こういう実情も多々あるわけでございますから、こういう点については、この際、長官が深刻な印象を受けて来られたそのほとぼりのさめないうちに、ひとつ抜本的な手をぜひとも打ってもらいたいということを最後に注文いたしまして、私の質問を終わります。
  122. 工藤良平

    工藤良平君 それでは先ほどの続きをやりたいと思いますが、まず別府湾の海水の汚濁の問題について、これは環境庁水質保全局長にお聞きをいたしますけれども、これまた先般の衆議院の委員会で、海の汚れが非常にきびしい状態にあるという指摘がなされておるわけであります。私はことしの三月に県から資料をいただきまして、いろいろ見てみたわけですけれども、この前、県の説明によりますと非常に別府湾の汚染の状態はよくなりましたという報告を受けまして、資料もいただいて見たわけであります。  図面がありまして、この中に確かにA該当水域、B該当水域、C該当水域ということで分類をされておりまして、四十六年の八月から四十七年の九月までの図面が四つ出されておるわけでありますが、いろいろ検討してみました。確かにだんだんとA該当水域というのがふえているような図面になっておりますけれども、これを見ましたら、図面の作製をした調査の時期が非常に違うわけであります。たとえば一番C該当水域が多かった四十六年の八月というのは、八月は別府湾は特に海流の関係汚濁がひどくなるだろうと思うのです。一番少ないときの状態を見ますと三月の状態でありますから、こういう時期的な問題ですね。  それから測定点が、十三の測定点というように記録には出ておるわけでありますが、その十三の測定点程度で一体別府湾の汚濁の状態というのがはかれるのかということが一つ。それから調査の頻度ですね、一体どういう程度、一年何回ぐらい調査をしてるのだろうか、こういうようなことが疑問として出てまいりますので、そういう点を踏まえながら、環境庁のほうから別府湾の汚濁の状態について御説明いただきたいと思います。
  123. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 御指摘のとおり、大分県におきましては昭和四十六年の八月と十一月、それから四十七年の三月と九月、四回にわたりましてCODの測定をいたしております。先生指摘のとおり、別府湾におきましては季節によっても非常に汚濁程度が違います。この原因はプランクトンの発生によるのか、また瀬戸内海の他の部分からの汚濁水の流入によるのか、いろいろ問題があろうかと思いますので、やはり正確に水質が改善されているかどうかを判定するためには、同じような時期についてこれを比較をしなければならないというふうに考えております。  ただ、そういうような意味合いで四十六年の八月と四十七年の九月というような二つの時期の水質を比べてみますと、おおむねAまたはBに相当する水質になっておりまして、C類型に相当する海域は局部的であるというふうに言えます。必ずしも悪くなっているとは言えないというように数字的には出ております。  原因がやはり明らかでないとそういうことも言えないわけでございますけれども、私ども考えておりますのは、四十七年の六月から御承知のとおり水質汚濁防止法が全面的に適用になりました。その結果私どもの計算によりましても、汚濁負荷量は規制以前に比べまして三〇%程度は減少しているのではなかろうかというふうに考えておりますので、そのような影響がCODの水質の変化にあらわれておるというふうに実は考えておるわけでございます。
  124. 工藤良平

    工藤良平君 CODの変化については、いま御説明のようなことも私も大体わかるわけであります。従来、規制が非常にずさんと言いますと語弊がありますけれども、そういう状態でありましたけれども、かなりパルプあるいは住友の廃液等につきましても相当きびしい規制が行なわれましたので、そのような変化が出ておるということはわかるのです。  ただ、この前も衆議院でも瀬戸内海の赤潮の問題で全体的な質問は村山さんがやっておりますけれども、私、別府湾のこれは一漁協でありますけれども、大神、日出の地先における赤潮の状態を調査をしてみました。  これによりますと、大体四十七年の六月から十二月までの間に二十五回の赤潮が発生をしております。それから四十八年になりましてから、四十八年の一月から四月までの間にすでに十六回の赤潮が発生しているわけであります。非常に頻度が激しくなっております。それと同時に、赤潮の規模が、広さが拡大をしておるように私は思うわけです。たとえばことしの一月では、長さ二キロ、幅五百メートル、それから四月に入りまして、四月一日には四千メートルの長さにわたって幅が千メートル、それから九日には三千メートルで千メートル、それから十二日には二千メートルで千メートルというように非常に規模が拡大をし、頻度が激しくなってきている。  別府湾の水はきれいになったというのに、なぜそういう状態が起こるのだろうかという疑問が起こってくるわけでありまして、この点については特に漁協の皆さん方も別府湾の汚濁というのは非常に心配しておりますし、私もしょっちゅう、一カ月に三、四回は別府湾を船で往復いたしますから特に気がつくわけですけれども、真赤になった海水を船が押し分けて通るような光景がしばしばあるわけで、そういう意味から、一体それは何だろうかという疑問を持つのであります。  そこで、先ほど負荷量の変化の問題がございましたが、全体的な排水の量を見てみますと、四十四年以前が約三十万五千三百トンでありましたものが、四十五年の終わりには五十七万をちょっとこえるという状態であります。それが現在では、約百七十四、五万トンという水が一日に吐き出されておるというような計算が出ておるわけでありますけれども、これがさらに施設の増強によりまして、一期計画が、いわゆる企業が完全に予定の設備を完了したとき、さらには二期計画によって大分県の新産都市の計画が全部完了したときに、一体どういう状態になるのだろうかということを考えてみますと、やはり別府湾の排水規制というものは相当きびしいものにしなければいけないのではないかと思うのですが、その点についての御見解をいただきたいと思います。
  125. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いまお話しのとおり、時期によりまして大分地区におきます各企業の排水量は相当増加いたしております。したがって、第一期計画の地区におきましても今後施設が増強される、さらに二期計画地域について新設の工場が稼働をするということになりまして、規制がこのままであるならば、当然おっしゃるとおり何倍かの汚濁負荷がふえるということになるわけでございます。  私どもは、したがいまして第一期計画地区におきましても、施設の増強をする場合には、既存の施設につきましても相当量の負荷量のカットをしませんと汚濁負荷が増加いたしますので、私どもまだ詳しい計算はいたしておりませんけれども、少なくとも現状よりも水質を悪化させないというような考え方を持っておりますので、今後第一期計画地区におきます施設の増強、並びに第二期計画地域におきます工場の新設にあたりましては、既存の工場の削減と見合いまして、汚濁負荷量の増加を来たさないようなそういう規制が必要であるというふうに実は考えております。
  126. 工藤良平

    工藤良平君 それは現状規制程度で可能なのか。相当きびしい規制ということにならざるを得ないと思うのですが、その点についてはどうですか。
  127. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) それはお説のとおり、相当きびしい規制でなければその目標は達成できないというふうに考えております。
  128. 工藤良平

    工藤良平君 計画完了時点における排出量というのは一体どういう程度に見ておるのですか。一期計画完了時、さらに二期計画完了時。
  129. 松村克之

    説明員(松村克之君) お答えを申し上げます。  私どものほうで大分地区について、特に海域関係の事前調査をいたしましたのは昭和四十二年でございます。したがいまして、当時は調査方法自体も現状とは若干違っておりますし、また対象といたしました計画地帯が第一期計画を対象としてやったということでございますが、その場合に、報告書の中に記載してございますのは、現状のCODが二十ミトン、これを将来五十年の改善計画において四十一トンに計算しているわけであります。  ただ、これは四十二年の時点でございますが、その後、産業公害総合事前調査ではございませんけれども、昨年私どもがいわゆるコンビナート総点検ということで調査いたしました。その際、企業を指導いたしましてとりました数字を申し上げますと、四十七年が三十三・五トン、これに対しまして五十年の見込みを二十二・七トンというふうに計算しております。これは四十七年から五十年の間にこれだけ減少する理由といたしましては、特に石油化学及びパルプ工場の廃液の処理の改善指導を行なった結果と、こういうことでございます。  以上であります。
  130. 工藤良平

    工藤良平君 これは県の資料によりますと、企業ヒヤリングによる計画完了時点での既存企業の汚濁負荷量ということで資料が出されておりますけれども、その資料によりますと、排水量が一日に大体四百六十六千百トン出るという予測が出ておるようでありますけれども、現在が百七十万トンちょっとでありますから、そうするとかなりの排水量が出てくる、こういうようなことになるわけなんです。  そこで、もう一度環境庁のほうにお伺いし、これは水産庁に関係するわけですけれども、赤潮の発生というものがいろいろな要素がもちろんあるし、その原因がなかなかつかめないということでありますが、非常に近ごろ別府湾の海水の温度が上がっているわけですね。これが一つの原因ではないだろうかという疑いがぼちぼちかけられておるわけでありますけれども、この点はいま即断することはきわめて困難でありましょうけれども、そういった非常に想像もつかないような大きな排水量が出てくるということになりますと、やはり別府湾の全体的な調査というものを根本的にもう一ぺんやり直す必要があるのではないかという気がするのでありますけれども、その点について環境庁、どうでしょう。
  131. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 実は、別府湾につきましてはまだ現在環境基準設定されておりません。これは県が設定する水域でございますが、私ども県ともよく相談をいたしまして、なるべく早い機会に環境基準設定を行ないたいと思っております。そこで、従来の調査資料に基づきまして環境基準設定いたすわけでございますが、それで不足するような場合には、さらに補足調査を県にさせたいというふうに思っております。  赤潮につきましては、私ども調査によりましても最近非常な別府湾における赤潮の発生がふえておることもよく承知しておりますが、この原因が何であるかはちょっとすぐにわかりませんので、一般的に赤潮の原因究明をいたしておりますその一環といたしまして、できれば究明できたらというふうに実は考えております。
  132. 工藤良平

    工藤良平君 それと関連して通産省にお伺いいたしますけれども公害の総合事前調査ですね、これを昨年の暮れ実施をいたしておるようでありますが、先般の衆議院の委員会の御答弁の内容を見ますと、二期計画はその計算には入っていない、こういうことでございますが、この公害の総合事前調査というものは、二期計画を含めた、いまの新しい予測に基づいた事前調査というものをやる必要があるのではないかと思いますが、その点については通産省としてどのようにお考えでしょうか。
  133. 松村克之

    説明員(松村克之君) お答えいたします。  先日衆議院の島本先生の御質問にあたりまして、私、昨年の暮れに発表されました事前調査について御説明いたしたわけでございますけれども、その際非常にことばが足りませんで、いま御指摘のように、若干第二期計画についての取り扱いといいますか、ことばが足りなかったわけでございまして、たいへん申しわけないと恐縮いたしております。  この際、かいつまんで昨年行ないました報告の概要を申し上げますと、これは四十六年の八月に大分地区の大気汚染防止対策協議会というものを結成いたしまして、大分県、大分市等と調査いたしたわけでございますが、四十六年八月以降その作業を行なっておりまして、風洞実験、拡散実験等を行なったわけでございます。ただ、作業の途中におきまして、硫黄酸化物の環境基準の見直しということがスケジュールに入ってきたわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、これは新たに設定されるであろう環境基準目標といたしまして、これをやり直す必要があるということになったわけでございますが、しかしながら、現在立地している企業というようなものもあるわけでございますし、今回調査をやり直すといたしますと、また一年ほど期間がかかるわけでございますので、とりあえずこの際、既存の企業の一つの何と申しますか、指導の目安といたしまして、これを中間報告という形で報告したわけでございます。したがいまして、四十八年度つまり本年度はこれを継続いたしまして、新しい環境基準をもとにいたしました、つまり新しい環境基準を達成できるような計算と申しますか、調査を引き続いて県と協力いたしまして行なう予定でございます。  それで中間報告の中におきましては、そういうことで一応現在の環境基準めどといたしまして、ただ、相当な環境基準の見直しが行なわれるということを前提として、現状環境基準よりは相当低いレベルをねらってつくったわけでございますが、その際に、やはり第二期計画の進出企業というところから相当量の汚染質の排出が予想されるということでございます。したがいまして、その分を一応計算の中に入れておきませんと、既存企業の排出規制といいますか行政指導が、安全率といいますか、より甘いものになるということから、第二期の進出企業についても、一応これを県と相談いたしまして、その規模等を一つ設定いたしました。その計算に基づいて、そちらの汚染質の排出量を差し引きまして、その残りの分について既存企業の指導をする、こういうことでやったわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、先ほども申しましたように、新しい環境基準を対象といたしまして本年度にこれをもう一ぺんやりたい、こういう考えでございます。
  134. 工藤良平

    工藤良平君 そういたしますと、この実験の過程の中で、二期計画の問題については、現在県が予定をいたしております、たとえば六号地の昭和電工、九石をはじめとして、三井、三菱グループ、さらに八号地の昭和石油、こういうものを総体的にそれぞれの企業ごとに検討をしたと、こういうように考えたらいいのか、それとも全体的に引っくるめて、大体こういう程度の範囲内であろうと判断をして、差し引いて、一期計画の状態というものを見ようとしているのか、その点はどうでしょう。
  135. 松村克之

    説明員(松村克之君) お答えいたします。  実際の作業にあたりましては、第二期計画で進出するという企業、これは県のほうと十分御相談をしたわけでございますけれども、そういう企業の規模を想定いたしまして、個々にそれを積み上げて合計を出した、こういうことでございます。
  136. 工藤良平

    工藤良平君 それで、もう一つお伺いしますが、別府湾の海域関係、潮流、そのほかいろんな海水の温度なり、そういうような問題を含めて模型実験、これはやられたわけでございましょうか。
  137. 松村克之

    説明員(松村克之君) 四十二年の事前調査におきましては水理模型実験をやっているわけでございますが、ただ先ほどもちょっと申し上げましたように、四十二年の時点でございますので、別府湾全体といったようなことではございませんで、第一期計画地先海面を主として行なった、こういうことでございます。
  138. 工藤良平

    工藤良平君 そこで問題になりますのは、いま赤潮の発生が別府湾全体にわたっている。しかもそれは対岸の日出、大神の地先というのは全く反対側になるわけですけれども、その一帯が非常に赤潮の発生の地点になっているということからいたしましても、工業地帯の前面だけじゃなくて、別府湾全体に汚染が広がっているという状態から考えてみますと、新たな時点でこの模型実験等もやって、別府湾の海水というのはどういうような流れをし、また、一度よごれたらそれがどの程度滞留するのか、そういうことを考えてみなければ、特にこの別府湾というのが瀬戸内海の一つの門戸にもなってまいりますから、たいへん大きな問題だと私は思っておるわけであります。  そういう点を詳細に検討し、科学的にそれが立証される中で、私は全体的な排水規制なりそういうものが出てこなければならないという気がするのでありますけれども、この時点で、大気と同時に海の汚染についても再検討してみる必要があるのではないだろうか。予想外に汚濁が広がっているという気がいたしますので、この点についてはぜひ私はこの際検討する必要があるのではないかと思いますから、ひとつ局長がおりましたら、局長のほうからいただきたいと思います。
  139. 田中芳秋

    政府委員(田中芳秋君) 先ほど課長からお答えを申し上げましたように、大気関係につきまして昨年実施いたしました点、あるいは水につきまして四十二年に実施いたしました調査、いずれも新しい環境基準なり新しい問題を踏まえて、さらに詳細にやり直すと申しますか、再度調査をする必要があろうかというふうに考えております。
  140. 工藤良平

    工藤良平君 これは逆にまた戻ってきますけれども岡安局長にお伺いしますが、さっき別府湾の環境基準がまだできていない、こういうことでございますが、これは早急に決定させる必要があると思いますので、この点については県に対して大体いつごろをめどにぜひ達成をさせたいとか、そういうような目標はございますか。
  141. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これはもう間もなく設定するように、私ども県と相談いたしております。いま先生おっしゃるとおり別府湾、非常に季節的にも大幅な変化をいたしておりますので、その原因が必ずしも明らかでございません、しかし、それらの解明を待っていたのでは遅いであろうということで、私ども現状水質を少なくとも悪くしないし、さらにC海域といいますか、それは極力狭くするというような方針で県と現在相談いたしておりまして、そういう方向でなるべく早い機会に設定をいたしたい。もちろんメカニズムその他がわかれば、改定はそのときにするというふうに実は考えております。
  142. 工藤良平

    工藤良平君 通産省にお伺いいたしますが、いずれにいたしましても、この大分の工業地帯の問題については、大気それから水質汚濁等につきましてもたいへんきびしい状態にあるということは、もう再三各委員会でも言われてきておるわけでありますけれども、そういう意味合いから、この二期計画の、特に一期がさらに拡大をしたという想定の上に立って、二期計画のいま予定をされている企業の立地について、これまた相当きびしい規制をやる時期が到来をするのではないかと思うのでありますけれども、この点については県と企業との間にはそれぞれのお約束はあるようでありますけれども、それを規制をしていく通産省なりあるいは環境庁の任務というのは、さっき私は三木長官にも申し上げましたけれども、非常に重要になってくると思いますね。  ですから、これはすでにもう埋め立てが認可をされて、これから立地企業が入ってくるような状況になってまいりますから、それに対して、これは行き過ぎだ、規制をしなければならないというような状態が起こることが予想されますので、その点については通産省としてはどうなされるおつもりか、お聞きをいたしたい。
  143. 田中芳秋

    政府委員(田中芳秋君) 一期計画につきましても、まだ開発途上でございます。これらにつきましてはさらに拡大が予想されるところでございますが、こうしたコンビナートの地域につきましては、私ども先ほど御指摘ありました四日市の判決におきましても、国の立地行政に落ち度があったという指摘もあることを深く反省をし、再びいわば公害コンビナートというものをつくることのないように、慎重にやってまいりたいと考えております。  そのための具体的な方策といたしまして、先ほど申し上げております産業の公害を事前に防止するための調査、これにつきましては、実は従来は行政指導という形でやってまいりましたが、今後こういう環境保全をはっきり法律的に担保してまいりたいということから、工場立地法を実は今国会に提出をいたしまして、そして企業に対する指導、それから好ましくない企業に対します勧告措置法律上位置づける、こういうような形、そしてまたその過程におきまして、環境庁と十分連絡をしながら立地行政を進めてまいる、こういう体制をとることにいたしておるわけでございます。  こういう方向によりまして、先ほど来申し上げておりますように、この地域、要するに開発途上にありますコンビナート地域につきましての予防体制を十分確保してまいりたい、このように考えております。
  144. 工藤良平

    工藤良平君 工場立地法に基づいて予防的な措置をできるだけ講じるようにしていきたい、そういうようなことでございますが、その点は私はそういうことでいいと思います、ぜひそうやっていただきたいと思うのですが、ただ、すでに埋め立てが許可をされておる。埋め立てが許可をされておるということは、そこにある特定の企業が立地をするという条件のもとに埋め立てが許可をされた、このように理解をしてまいりますと、環境破壊という問題については矛盾をしてまいりますので、当然、たとえ埋め立てば許可されたとしても、それに立地する工場の内容なり、もろもろの条件については、なおそれは今後十分に規制をし、場合によってはその開発というものも中止をするということもあり得る、このように私は理解をしたいと思うのですが、そういうことでよろしゅうございますか。
  145. 田中芳秋

    政府委員(田中芳秋君) 御指摘の線に沿いまして企業を指導いたすつもりでございます。
  146. 大矢正

    委員長大矢正君) 工藤君、時間が来ておりますから。
  147. 工藤良平

    工藤良平君 はい、わかりました。  それでは最後に水産庁にお伺いいたしますが、時間が来ておりますから要点だけ。  八号地の埋め立ての問題について、すでに農林省は十分に承知と思いますけれども、漁民の皆さんが、いわゆる漁業権放棄のための三分の二の賛成を得なければ埋め立てができませんので、いま漁協がたいへんこの問題をめぐりまして、すでに総会を三回も開いて、その間にリコールも起こるというようなことになりまして、たいへん混乱をしているわけですが、このことによって一般的な漁協の運営というものが乱れておる。たとえば融資の問題等にいたしましても、組合員が融資を受けたいといたしましても、その仕事がほとんどできないという状態になっております。この混乱というものが、結局は漁業権を放棄するかしないかということで問題が発生をしているわけであります。  ところが、その漁業権の放棄というものは、漁民の皆さん方の問題として提起されたのではなくて、これを工業用地として使用したいという企業の要請、それを受けての地方自治体の、さっき私が申し上げましたけれども埋め立ての当事者となって県が進めておる、こういう状態から混乱が起こって、それが通常の漁協の運営にも影響してたいへん迷惑しているという状態でありますから、こういう問題については農林省としては、漁業権というものは売るものではなくて、やはり漁業をやる者のために、それを守るためにあるのだという観点に立つならば、行政指導というものはどうなければならないかということは私が申し上げるまでもないと思うのですけども、その点について基本的に農林省の立場を伺っておきたい。  これは農水委員会の場でもゆっくりまたあらかめて聞きたいと思いますけれども、きょうはその点だけを聞いておきたいと思います。
  148. 増満二郎

    説明員増満二郎君) お答え申し上げます。  埋め立てによりまして、魚の産卵場でございますとかあるいは稚魚の育成場が失われるという問題がございますし、それから、あるいは埋め立て工事によりまして土砂が流れる、それによりまして漁場の環境が悪化する、あるいは埋め立て後の企業活動に伴います排水で漁業条件が悪化するというようなことがございますと、漁業にとって非常に重要な問題でございます。したがいまして、水産庁といたしましては、開発事業実施にあたりましては、計画策定の段階関係漁業者とのコンセンサスと申しますか、よく納得いった上でなければその計画策定をしその実施をしないというような方向に従来からも指導してきておりますし、今後も指導してまいりたい、こういうふうに思っております。
  149. 工藤良平

    工藤良平君 たいへん不十分ですけれども、またこれは機会をあらためてやりますので、これで終わります。
  150. 大矢正

    委員長大矢正君) 本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時三十三分散会      —————・—————