○杉原一雄君 二十日の日は判決があったわけですが、過ぐる二十三日にNHKで、あるお医者さんの告白を、ぽつりぽつりとおっしゃっていたのを耳にして実に感動いたしました。それは熊大の原田正純助教授です。この方は、何回か裁判所における証言台に立たれたということなんですが、証言に立ちながら、実にむなしい証言を繰り返してきたと。それは
一つの犯罪であり、殺人罪である。神経をおかす病は、解決はきわめて困難である。病気の大量生産をしているのだ。放置できぬ。診断、治療は
研究室から飛び出して、こんなことが起こらぬようにもっと大切な治療が必要ではないだろうかと。その
意味は、察するに、いま
長官がみずから
発言なさったように、
政治の責任、社会全体の大きな責任というふうに、原田助教授は私
たちを含めての
国民に訴えられたものだと実は思います。
なおかつ、四つの
公害裁判がいずれも
公害会社の敗北に終わったわけです。そのうちの
一つ、イタイイタイ病は私の出身県の富山に関することなんですけれ
ども、四つとも私は身を切られる思いで、この
運動あるいは結果を見守ってきた一人であります。
四大
公害訴訟で
公害会社が完全に敗北したというこの時点に立って、私
たちは、鈴木
委員が
指摘するとおり、高度成長政策、GNP第一主義等々の問題について、ひるがえって
検討を加える時期が来ているのではないか。ある人は、この判決の結果は、結局、資本が科学の知識あるいは
企業の秘密、さまざまな武器を利用して、武装してかまえたものであったけれ
ども、住民は、いま鈴木
委員がおっしゃったとおり、ほんとうに素手で立ち向かって戦い、かつ勝ったのであります。歴史的な意義づけから言えば、ベトナム戦争で
アメリカが負けたというこの今日時点の歴史的な現実と、意義においては同一であるというようなとらえ方をもしている人がおります。私はそういう認識に立つことはきわめて当を得ているように実は思います。
そういう判断と
考え方からして
長官にはまずお伺いしたいのは、あなたは
長官になられてからもうすでに相当の月日を
経過いたしました。
長官としてこの問題に直接笛をとって指示指令された、いわゆる行政指導なさったこと、最も顕著な事例は何と何とであったか。そしてまた、いまみずから、国会の進行過程等を見ながら現地におもむくということをおっしゃっておることは、他の
委員会においても
発言されたそうでありますが、そのことは非常に妥当だと思いますが、大体いつごろそれを実行に移されるか。なおまた、
公害・環境等の問題についての担当庁として、他の省庁に対して、
長官におなりになってからどのような働きかけをしておいでになったか。これはこまかいことはお聞きしません。顕著な事例がありましたらお聞きしたいと思います。
その次に、先年、一昨年だと思いますが、いわゆる
公害国会において十四の
法律、その後、悪臭防止法等を含めて
公害関係の
立法が形としてはかなり整うたと思います。しかし今度の判決、主文を見ましても、きわめて重大な問題提起をたくさんしております。責任の問題、無過失賠償責任の問題、あるいは時効の問題、あるいは協定無効の問題など、非常に多くの問題提起をしているわけです。この判決、司法の
権威においてなされたこの判決を、私
たちはもう一度あの
立法当時のことに振り返って、今日施行されている
法律の
内容等について総点検、
検討する必要があるのではないだろうか。私
たちはまだ不勉強です。社会党としては直ちにそのことについて、手分けをしながら各
立法について点検を行なうことを、きょうきめました。そういったことについて、
政府当局も四大訴訟判決の結果に基づいて、十幾つかの
公害立法について総点検をなさっていると思いますけれ
ども、なさっておらないとするならば、今後すみやかになす意思があるかどうか。これが第二の問題です。
第三の問題として、
通産省に
公害保安局がございます。私直接
関係のあったことで、全国に問題を起こしました
日本鉱業三日市製錬所、富山県の黒部にあるわけですが、ここからカドミを流しまして、汚染田、またはイタイイタイ病までいかなかったけれ
ども、かなりの被害を起こし、大きな問題になりました。しかし
通産省の
公害保安局が、いわゆる通産行政の
立場からきびしく監督し指導し、ときにはその
公害害発生部門だけ全面
ストップをかけて施設改善を命じました。結果的には、一昨年の八月ついに一〇〇%操業までこぎつけました。これには
企業側の反省、
企業側の約八億円投入した
公害防除施設等の設備があったので、結果的には、いま残された汚染田の処理だけが問題であって、すでに死の川と言われた川にはアユがあるいはフナが、さまざまな魚が泳いでおります。
そういう事実等から考えても、通産当局、行政当局が腹帯を締めて、こうした
公害発生の危険のある、なかんずく化学工業、そうした工業に対して行政指導を今日までもされたと思いますけれ
ども、ただ残念ながら、事水俣病に関する限りは、新聞論調はすべてといっていいくらいに行政当局の怠慢を
指摘しております。もしここで、ここは裁判所ではありませんけれ
ども、そうでないという行政指導の実績等があるならば、通産当局から明快に、大まかな年次とその指導の
内容、それがどういう結果になったか、こうしたことを実は明らかにしていただきたいと思います。
以上、関連でありますので質問をこれで終わります。