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1973-03-02 第71回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月二日(金曜日)    午後一時八分開会     —————————————    委員異動  十二月二十三日     辞任         補欠選任      栗林 卓司君     高山 恒雄君   一月十六日     辞任         補欠選任      矢野  登君     斎藤 寿夫君   一月二十七日     辞任         補欠選任      高田浩運君      君  健男君      伊部  真君     藤田  進君      占部 秀男君     西村 関一君     茜ヶ久保重光君     杉原 一雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大矢  正君     理 事                 金井 元彦君                 菅野 儀作君                 杉原 一雄君                 内田 善利君     委 員                 斎藤 寿夫君                 寺本 広作君                 林田悠紀夫君                 原 文兵衛君                 加藤シヅエ君                 小平 芳平君                 高山 恒雄君                 加藤  進君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君    政府委員        公害等調整委員        会委員長     小澤 文雄君        公害等調整委員        会事務局長    川村 皓章君        科学技術庁研究        調整局長     千葉  博君        環境政務次官   坂本三十次君        環境庁長官官房        長        城戸 謙次君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        環境庁大気保全        局長       山形 操六君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        厚生省公衆衛生        局長       加倉井駿一君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        農林大臣官房技        術審議官     遠藤 寛二君        水産庁次長    安福 数夫君        通商産業省公害        保安局長     青木 慎三君        通商産業省公害        保安局参事官   田中 芳秋君        通商産業省化学        工業局長     齋藤 太一君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        通商産業省重工        業局電子機器電        機課長      藤本 和男君        労働省労働基準        局補償課長    山口  全君    参考人        公害防止事業団        理事長      江口 俊男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (公害対策及び環境保全基本施策に関する件)  (昭和四十八年度環境庁関係予算に関する件)  (昭和四十八年度各省庁環境保全関係予算に  関する件)  (公害防止事業団事業及び予算に関する件)  (公害等調整委員会業務概況に関する件)  (公害及び環境保全対策樹立に関する件)     —————————————
  2. 大矢正

    委員長大矢正君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る一月十六日、矢野登君が委員辞任され、その補欠として斎藤寿夫君が選任されました。  また一月二十七日、伊部真君、茜ケ久保重光君及び高田浩運君が委員辞任され、その補欠として藤田進君、西村関一君、杉原一雄君及び君健男君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 大矢正

    委員長大矢正君) 理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動に伴い、当委員会理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認めます。  それでは理事杉原一雄君を指名いたします。     —————————————
  5. 大矢正

    委員長大矢正君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  本日の委員会参考人として公害防止事業団理事長江口俊男君の出席を求め、同事業団事業及び予算について説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 大矢正

    委員長大矢正君) 公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。  公害対策及び環境保全基本施策について、三木環境庁長官から所信を聴取いたします。三木環境庁長官
  8. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 今回、環境庁長官就任をいたしました三木でございます。よろしく御協力をお願いいたす次第でございます。  本日は、参議院における公害対策及び環境保全特別委員会の第一回の審議でございますので、この際、私の所信を申し述べたいと存じます。  わが国は、従来久しく経済成長を促進することを軸に内政の展開をはかり、その結果、所得水準も大幅な向上を示してまいりました。しかしながら、その反面、大気汚染水質汚濁等公害発生自然環境破壊が急速に激化し、国民の健康と生活環境が脅かされるという深刻な事態が発生しました。  今日、国民は、経済成長の成果を享受しながらも、いままで営々と追い求めてきたものがはたして何であったかに強い疑いを持ち始め、金銭であがなうことのできないきれいな空気と水、生き生きとした緑を求めております。国民の欲求に対する価値観は大きく変わってきております。  一国の文明の度合いは、その国が環境保全にどれほどの努力を傾注し、また、破壊された環境の復元にどれほどの能力を有し、熱意を示しているかにあると言っても過言ではないと考えております。私は、いまや、環境問題こそ政治の出発点であり、この問題の解決は、われわれに課せられた至上の命題であると確信いたしております。  率直に申し上げて、従来の環境行政は、公害発生し、自然の破壊が深刻になってからようやく対策を講じるという、いわゆるあと追い行政であったことは否定できません。しかし、一たび破壊によって失われた環境を再び回復することはきわめて困難なことであります。  われわれは、われわれの共通の資産である美しい国土、豊かな自然を破壊の手から未然防止し、これを次の世代に伝える責務があります。私は、このような基本的姿勢のもとに、環境行政の前進のために全力を傾ける覚悟でありますが、当面、次の事項に重点を指向し、所管行政の積極的な推進をはかってまいりたいと考えております。  まず、第一は、環境アセスメント確立であります。道路、港湾等各種公共事業実施及び地域開発について、その環境に及ぼす影響の内容及び程度、環境破壊未然防止策等について検討を行ない、これらの事業環境破壊をもたらさないと認められる場合に限り事業実施を認める制度、すなわち環境アセスメント確立をはかってまいりたいと考えております。  現在、国土全般にわたる計画的な地域開発推進されようとしておりますが、これにあたっては、さきに述べたような基本方針のもとで、厳正なチェックを行なってまいる所存であります。  また、環境破壊未然防止するためには、全国にわたって保存すべき地域を明らかにし、そこでは開発を認めないこととすることがぜひとも必要であります。このような視点から、私は、まず、動物の生息状況植物分布地形地質等自然環境を詳細に調査するとともに、これら自然環境改変状況を把握するという、いわば自然の国勢調査実施し、自然環境保全すべき地域指定推進して、美しく、かつ繊細にして変化に富んだわが国自然環境保全してまいりたいと考えております。  次に、公害発生未然防止するため、各種公害にかかる環境基準や、排出基準排水基準等設定見直し強化につとめるとともに、総量規制方式の導入をはかってまいりたいと考えております。  また、このような基準に基づいて、環境汚染度測定公害発生監視取り締まりを担当する地方公共団体に対しては、監視測定体制整備するための助成を一そう推進する所存であります。  現在、不幸にして公害により被害を受けられた方々が、相当数にのぼっていることも遺憾ながら事実であり、このような公害被害者救済に万全を期することは、最も緊急を要する課題であります。現在、公害にかかる健康被害救済に関する特別措置制度がありますが、この制度に基づく救済は必ずしも十分でないので、この制度にかえて、新たに公害被害者損害賠償を保障する制度を創設することとし、成案を得次第今国会に法律案を提出する予定であります。  公害対策推進するためには、調査及び試験研究を充実することが何よりも重要であります。このため、来年一月に筑波学園都市に、公害に関する中核的かつ総合的な試験研究機関として、国立公害研究所を設置することとしておりますが、この研究所は、国際的な水準をゆく設備能力を備えたものにしたいと考えております。  また、特に、広域水質汚濁問題に対処するため、瀬戸内海環境保全対策の一そうの推進をはかるとともに、新たに東京湾伊勢湾についても調査実施することといたしております。さらに、光化学スモッグPCB赤潮等の新しい公害に対する対策のための調査研究をなお一そう促進する所存であります。  昨年の国連人間環境会議で、わが国とセネガルの共同提案により、毎年六月五日を世界環境デーとすることが決定されました。わが国としては、この日を初日とする環境週間を設け、全国民的な運動を展開する予定でありますが、これに対する国民の御協力を切にお願いする次第であります。  以上、私の所信の一端を申し述べましたが、環境行政推進のために、今後とも本委員会及び委員各位の御支援、御協力を切にお願い申し上げる次第であります。  何とぞよろしくお願いいたします。
  9. 大矢正

    委員長大矢正君) 坂本環境政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。坂本環境政務次官
  10. 坂本三十次

    政府委員坂本三十次君) 一言ごあいさつを申し上げます。  このたび環境政務次官就任をいたしました坂本三十次でございます。委員各位の御指導を賜わりまして、職責を尽くしたいと思います。何とぞよろしくお願いをいたします。ごあいさつといたします。ありがとうございました。     —————————————
  11. 大矢正

    委員長大矢正君) 次に、昭和四十八年度環境庁関係予算及び昭和四十八年度各省庁環境予算について、順次説明を聴取いたします。城戸官房長
  12. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) 昭和四十八年度の環境庁関係予算案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和四十八年度の総理府所官一般会計歳出予算のうち、環境庁予算総額は百十億四千九百三十一万四千円でありまして、これを前年度の歳出予算額八十一億七千十万二千円に比較いたしますと、二十八億七千九百二十一万二千円の増額となっております。  このほかに建設省の所官予算として計上されております国立公害研究所及び公害研修所施設整備経費がありますので、これを合わせますと、昭和四十八年度の環境庁関係予算は百三十一億一千五百十六万六千円となり、前年度の環境庁関係予算に比べ、四十六億七千五百六万四千円の増加となっております。  なお、建設省所官予算官庁営繕国庫債務負担行為として、国立公害研究所にかかわるものが新たに十六億四千万円予定されております。  次に、個々の施策予算重点について御説明いたします。  第一に、公害対策について申し上げます。  まず、大気汚染防止対策及び水質汚濁防止対策につきましては、環境基準設定のために所要経費を計上いたし、計画的にこれを推進するとともに、排出基準排水基準をはじめ各種公害規制基準の一そうの強化をはかり、また、総量規制確立を検討するための経費都市型の大気汚染防止のための調査等経費のほか、自動車公害、振動、悪臭並に航空機及び新幹線の騒音について対策確立のための調査を行なう等、五億三千六百八十一万円を計上いたしております。  このほか、地盤沈下及び廃棄物対策費に三千六百十万円、土壌汚染防止及び農薬対策費に一億二千九百六十七万円をそれぞれ計上するなど、公害規制基準強化等経費として、総額七億二百五十八万円を計上いたしております。  また、公害監視設備整備費につきましては、地方公共団体監視測定体制及び地方公害研究所等分析体制の計画的な整備を一そう推進するため、補助金の大幅な増額をはかり、これが施策を一そう強化するとともに、新たに大規模発生源に対する常時監視体制整備費補助経費、新たな構想による国設大気測定網整備のための経費などを合わせ十億八千四百十三万円を計上しており、前年度予算に比し大幅な増額となっております。  環境保全企画調整等経費については、開発に際しての環境アセスメント手法開発のための経費ほか、環境保全パイロットモデルの作成に必要な経費などのため四千四百二十六万円を計上いたしております。  公害防止計画策定については、公害防止計画策定のための基礎調査を十地域において実施するほか、公害防止計画策定第一次地域について公害防止計画見直し調査を行なうなどのため三千三百十九万円を計上いたしております。  公害健康被害救済対策については、医療手当の額の引き上げ、支給制度の緩和をはかるほか、地域指定拡大に要する経費を見込むなど制度の一そうの充実強化をはかるため、一億九千八百七十四万円を計上いたしております。  また、公害にかかる被害者救済をはかるための損害賠償保障制度の創設のために各種調査を進める必要があり、このために必要な経費として九千四百二十六万円を計上いたしております。  公害防止事業団については、事業規模を七百三十億円に拡大するとともに、中小企業等公害防止施設整備を促進するため、金利の引き下げ、事業団業務範囲拡大を行なうこととし、これに伴う事務費等助成費を含め九億五百十二万円を計上いたしております。  次に、公害防止等に関する調査研究推進のための経費については、科学的な調査及び試験研究を一そう推進するため、総額三十二億四千九百八万円を計上しております。  まず、国立試験研究機関等公害防止等試験研究費として三十二億九百八十万円を環境庁において一括計上いたし、各省庁試験研究機関等公害防止に関する試験研究総合的推進をはかることといたしております。  さらに、社会的に強い要請のあります光化学スモッグにかかる調査研究については、東京湾周辺地域のほか、新たに大阪湾周辺地域対象地域に加えることとし、これに要する経費として一億八千二百四十八万円を計上いたしております。  広域水質汚濁総合調査については、瀬戸内海について補足調査を行なうとともに、新たに東京湾及び伊勢湾についても調査実施することとし、また広域水域水質の常時監視に必要な水質監視ブイ試験設置のための経費を計上するなど、一億二百五十七万円を計上いたしております。  そのほか、健康被害自然保護大気汚染及び水質汚濁等に関する調査研究費として三億七千四百二十二万円を計上し、重点的な調査研究を進めることといたしております。  以上のほか、環境保全総合調査研究促進調整費として三億八千万円を計上いたし、関係省庁の所管する各種環境保全に関連する調査研究の総合的な調整をはかることといたしております。  また、政府における公害等試験研究推進のための中核的な機関として、昭和四十八年度中に発足する予定国立公害研究所に必要な経費として九千八百四十七万円を計上いたしております。  さらに、公害行政担当者研修を行なうため、昭和四十七年度中に発足する予定公害研修所に必要な経費として二千四百三十六万円を計上いたしております。  以上、これらもろもろ施策に必要な公害対策費として、総額六十四億三千四百二十二万円を計上いたしております。  第二に、自然環境保護整備対策について申し上げます。  まず、自然環境保全対策については、わが国土の動植物、地形地質自然環境実態等について基礎調査を行なうほか、自然環境保全のための基本方針策定などのため二億五千二百七万円を計上いたしております。  また、交付公債による民有地買い上げ制度により、自然環境保全すべき民有地買い上げを行なうため、事業費総額を六十億円と予定いたし、このために必要な経費として三億三千九百十一万円を計上いたしております。  鳥獣保護行政については、新たに地方公共団体に対する野鳥の森の整備費補助を行なうほか、タンチョウの生息する湿原保護のための調査を行なうなど、これが施策を一そう強化することとし、一億三千四百八十万円を計上いたしております。  さらに、自然公園等施策整備につきましては二十億八千八百八十四万円を計上し、国立公園等整備をはかる等これまでの施策にあわせ、新たに国民林養地整備を行なうほか、国民休暇村の増設に着手することといたしております。  また、自然公園維持管理体制充実強化のために、管理事務所を二カ所増設するなど、自然公園等維持管理費として二億四千三百七十四万円を計上いたしております。  以上、これらもろもろ施策に必要な自然環境保護整備対策費として、総額三十億五千八百五十七万円を計上いたしております。  なお、このほか建設省所管予算として、国立公害研究所の四十八年度建設費として十六億四千百八十四万円、公害研修所の四十八年度建設費として四億二千四百万円がそれぞれ計上されております。  以上をもちまして、昭和四十八年度の環境庁関係予算案説明を終わります。よろしく御審議のほどお願いいたします。
  13. 大矢正

    委員長大矢正君) 次に船後企画調整局長
  14. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 各省庁昭和四十八年度環境保全関係予算概要について御説明いたします。  まず、歳出予算について御説明いたします。  昭和四十八年度における環境保全関係予算総額は、二千七百三十七億円となり、新年度の当初予算に比べ千四十四億円、六一・七%の増加となっております。  このうち一般会計分は二千五百十九億円と、前年度の当初予算に比べ九百三十九億円の増加となっており、各特別会計分は二百十八億円と、前年度の当初予算に比べ百五億円の増加となっております。  これを公害防止関係自然環境保全関係とに分けますと、公害防止関係予算は二千四百四十四億円、自然環境保全関係予算は二百九十三億円となっており、それぞれ前年度の当初予算に比べ、九百二十一億円、百二十三億円の増加となっております。  次に、各省庁別にその予算主要項目について御説明申し上げます。  第一に、総理府におきましては、公害等調整委員会経費として一億八千九百万円を計上しております。  警察庁におきましては、公害事犯取り締まりに万全を期すべく、これに必要な資器材指導等に要する経費六千九百万円を計上しております。  首都圏整備委員会におきましては、首都圏における広域的な排水計画等に関する調査及び近郊整備地帯の緑地の現況等調査を行なうこととし、調査費九百万円を計上しております。  北海道開発庁におきましては、下水道事業費補助公園事業費補助等北海道分として総額七十九億四千九百万円を計上しております。  防衛施設庁におきましては、防衛施設周辺整備等に関する法律に基づき、学校等防音工事助成、家屋の移転補償等を行なうこととし、これに必要な経費二百五億四千万円を計上しております。  経済企画庁におきましては、離島における下水道事業廃棄物処理施設整備事業等実施することとし、総額二億四千五百万円を計上しております。  科学技術庁におきましては、公害を起こさない新農薬創製開発をはじめとする各種調査研究実施することとし、所要経費五千七百万円を計上しております。  沖縄開発庁におきましては、沖縄における下水道事業廃棄物処理施設整備事業及び公園事業実施するほか、公害防止のための各種調査指導実施することとし、総額二十五億四千五百万円を計上しております。  環境庁関係予算につきましては別途御説明申し上げましたので、説明を省略させていただきます。  以上総理府関係予算を合計いたしますと、総額四百二十六億五千二百万円となります。  第二に、文部省におきましては、公立学校公害防止工事等補助につき大幅拡充をはかることとして十七億二千九百万円、さらに、少年の健康を守るとともに自然についての体験的学習を行なわしめることを目的とする少年自然の家の設置費用補助についても大幅拡充をはかることとして十億円、大気汚染地域公立小中学校児童生徒対象として、特別健康診断及び移動教室実施するとともに、学校環境の緑化を推進することにより児童生徒の健康の保持増進に資するための経費として三億八千八百万円を計上するほか、史跡等買い上げを行なうための史跡等買い上げ費三十億円を含め、総額七十二億五千七百万円を計上しております。  第三に、厚生省におきましては、近時における廃棄物発生量飛躍的増加処理困難化の実情にかんがみ、廃棄物処理施設整備計画に基づく補助を飛躍的に拡充することとし、百五十八億一千四百万円を計上しております。このほか、PCB対策として、各種疫学的実態調査等実施するための経費二千万円、浄水場排水処理施設整備四億五千九百万円、保健所の公害関係経費一億六百万円等を含め、総額百六十四億三千百万円を計上しております。  第四に、農林省におきましては、まず農業関係公害防止対策として、都市排水等による農業用水水質汚濁に対処するため水質障害対策費九億円、土壌に蓄積された重金属の排除等をはかるため公害防除特別土地改良事業費二億三百万円、畜産経営規模拡大をはかるとともに公害問題の解決に資するため、畜産団地造成事業十三億七千八百万円及び畜産経営環境整備事業費六億六千百万円、地盤沈下対策として新潟地域等特殊排水事業費十八億六千万円を計上する等の措置を講ずることとしております。  また、瀬戸内海赤潮対策等水産関係環境保全対策四億四千七百万円を計上しており、このほか農林水産業環境保全機能の解明その他公害関係試験研究強化農薬残留対策充実等をはかることとしており、これらを合わせて総額として八十億五千三百万円を計上しております。  第五に、通商産業省におきましては、まず、公害防止技術開発を強力に推進するため、重要技術研究開発費補助金について、新たに新技術企業化をその対象に加えることとするほか、従来からのクローズドプロセス技術等開発を進めることとして十五億六千万円を計上し、さらに大型工業技術研究開発費資源再生利用技術システム研究開発調査費等を大幅に拡充することとしております。  次に、公害未然防止のため、産業公害防止対策調査のための経費二億一千六百万円を計上するとともに、新たに内陸工業開発総合事前調査費として三千万円、環境汚染を経て人体に悪影響のある化学品についての安全性を確保するための対策として一億四千四百万円を計上しております。  また、鉱山による鉱害の防止により一そう推進するため、金属鉱物探鉱促進事業団を改組拡充して計画的に鉱害防止対策の促進をはかることとし、二億九千万円を計上するとともに、従来からの休廃止鉱山鉱害防止対策関係経費も七億四千五百万円と大幅に拡充することとしております。  このほか、地盤沈下防止対策工業用水道事業補助の飛躍的拡充をはかることとしており、これらを合わせて総額八十一億八千六百万円を計上しております。  第六に、運輸省におきましては、まず、海洋汚染防止対策として、海上公害事犯取り締まりを効果的に行なうための監視取り締まり体制の整備のための経費として一億一千四百万円、港湾における汚泥しゅんせつ事業補助に要する経費として八億四千七百万円を計上するほか、新たに海洋の清掃のための清掃船の建造、港湾内の廃棄物処理施設の整備等実施することとし、合わせて五十八億五千六百万円を計上することとしております。  また、空港周辺の騒音問題に対処するため、学校等公共施設の防音工事助成^家屋の移転補償等事業拡充をはかるとともに、新たに民家の防音工事に対する助成、大阪空港周辺整備機構(仮称)の設置による空港周辺の土地利用計画の策定、これに基づく緩衝緑地の造成等を実施することとし、百十億四千万円を計上することとしております。  このほか、自動車の低公害技術の開発等による自動車公害防止対策、観光レクリエーション地区の整備等自然環境保全対策推進することとしており、これらを合わせて総額百七十三億二千七百万円を計上しております。  第七に、労働省におきましては、労働環境整備の見地から各種専門技術指導を行なうため、有害環境改善推進費として四千二百万円を計上しております。  第八に、建設省におきましては、まず、下水道整備対策について、下水道整備五カ年計画を大幅に繰り上げ実施することとし、千四百六十六億三千五百万円を計上することとしたほか、下水道事業の円滑な実施をはかるため、下水道事業センター助成に必要な経費として二億八千万円を計上しております。  次に、都市における産業公害を緩和防止するための措置として実施している緩衝緑地整備事業拡充をはかることとし、二十二億円、地盤沈下に対処するため、高潮対策事業費につきましても所要予算を確保することとし、三十億六千万円をそれぞれ計上する等、各種公害防止事業拡充をはかることとしております。  自然環境保全関係施策としては、都市生活環境の改善をはかるため、公園事業費の飛躍的拡充をはかることとし、百七十二億八千三百万円を計上するとともに、大都市近郊の自然環境保全及び古都における歴史的風土の保存をはかるため、古都及び緑地保全事業として六億四千七百万円を計上しております。  以上の経費を中心といたしまして、建設省においては総額千七百三十七億五千二百万円を計上しております。  次に、公害防止関係財政投融資について御説明いたします。  昭和四十八年度における公害防止関係財政投融資は、全体として、事業規模または貸し付け規模において総額四千二百九十九億円を予定し、前年度の当初計画に比べて千六百六十七億円の増加となっております。  公害規制諸法の強化に伴い、民間企業等においては公害防除装置の設置等公害防止事業の飛躍的増大が必要となってきており、これを円滑に実施せしめるため、政府関係機関等の果たすべき役割りはきわめて重要であります。  まず、公害防止事業団におきましては、事業規模において七百三十億円と、前年度に比べて百四十億円の増加をはかるとともに、金利を引き下げることとし、さらに業務対象として、産業廃棄物の処理を行なうため地方公共団体が設立する公社等及び産業廃棄物処理業者を追加することとしております。  次に、日本開発銀行におきましては、貸し付け規模において六百五十億円と、前年度に比べて三百億円の増加をはかるとともに、金利を引き下げることとし、さらに工場立地法(仮称)の制定をまって、工場周辺地域環境整備を行なう事業を融資対象として追加することとしております。  さらに、中小企業金融公庫におきましては、貸し付け規模において百億円と、前年度に比べて二十億円の増加をはかることとしております。  国民金融公庫におきましては、貸し付け規模において、三十億円、農林漁業金融公庫におきましては、畜産経営環境保全施設に関し、貸し付け規模二十九億円を設けるほか、貸し付け条件の緩和をはかることとしております。  また、新たに、金属鉱物探鉱促進事業団におきまして、金属等の鉱山の鉱害防止工事に対し、長期低利資金の融資を行なうため十一億円の貸し付け規模を確保するとともに、日本私学振興財団におきましても、私立学校の防音工事等に関し四億円の貸し付け規模を予定しております。  このほか、地方公共団体の下水道整備、廃棄物処理施設整備等の事業推進することとし、地方債計画において二千七百四十五億円を予定しております。  最後に、公害防止関係の統制上の措置についてそのおもなものにつき御説明いたします。  まず、無振動鍛造機等の無公害化生産設備について、初年度三分の一の特別償却制度を創設するとともに、公害防止施設の特別償却制度について、対象となる施設の範囲を拡大し、さらに適用期限の到来する施設についてはその延長を行なうこととしております。  次に、公害防止準備金制度について、その適用対象業種を拡大するとともに、公害防止事業団から事業協同組合等が譲渡を受けた土地をその組合等から再譲渡により組合員等が取得する場合の登録免許税の税率の軽減措置について、適用期限を二年延長することとしております。  また、昭和五十年度に適用される運輸省が定める保安基準に適合する乗用自動車の開発普及を促進するため、低公害車の物品税について課税標準を昭和四十八年度は四分の一、昭和四十九年度上半期は八分の一相当額だけ減額することとしております。  さらに、ガス製造に供される燃焼用揮発油に対する揮発油税及び地方道路税を二年間免除することとしております。  以上をもちまして、各省庁昭和四十八年度環境保全関係予算の御説明を終ります。よろしく御審議のほどお願いいたします。     —————————————
  15. 大矢正

    委員長大矢正君) 次に、公害防止事業団事業及び予算について説明を聴取いたします。江口公害防止事業団理事長
  16. 江口俊男

    参考人江口俊男君) 公害防止事業団理事長でございます。  公害防止事業団事業概要につきまして御説明をいたします。  まず、公害防止事業のこれまでの実施状況につきましては、当事業団昭和四十年十月一日に設立されまして以来、昭和四十七年十二月三十一日現在まで、すなわち七年三カ月の間に、造成建設事業におきまして七十三件、約五百三十億円、貸付事業におきまして九百五十五件、約八百六十四億円、合計しますと千三百九十三億円に及ぶ事業を手がけてまいりました。  当事業団が行なっておりまする造成建設事業には、お手元にお配りをいたしておりまする資料の三枚目にございまするように、共同公害防止施設の設置、譲渡、共同利用建物の設置・譲渡、工場移転用地の造成・譲渡、共同福利施設の設置・譲渡、以上の四種類がございます。  共同公害防止施設に関しましては、三重県四日市の共同公害防止施設など十三件について建設業務の受託及び譲渡契約を結び、十五億円を投じ、すでに八件について完成譲渡いたしております。  共同利用建物につきましては、第一次ないし第四次の神戸ゴム工場アパートなど十一件、約六十四億円について契約をし、そのうち九件が完成をいたしております。  工場移転用地は、三十五件中二十七件がすでに完成しておりまして、事業費はおよそ二百二十億円に達しております。  また、公害発生するおそれが特に著しい地域に、工業地域と住居地域とを遮断するための、いわゆる緩衝緑地地帯を設ける共同福利施設では、市原、四日市、大阪泉北地区、第一期の赤穂地区及び徳山の五地区がすでに完成をいたしまして、現在、鹿島など八地区で工事を行なっております。この事業費は、総計約二百三十億円に達する見込みであります。  一方、貸付事業のほうでありますが、昭和四十一年度は十三件、二十四億円とわずかでございましたが、ここ数年来公害が大きな社会問題となるにしたがいまして、企業からの申し込みも殺到し、四十六年度は三百九十七件、約三百八十億円、四十七年度は十二月末までに二百四十八件、百九十三億円の貸付契約が行なわれ、一月末現在の貸付決定は三百九件、二百五十七億円に及んでおります。  次に、当事業団昭和四十八年度予算案について御説明申し上げます。  まず、事業費は、お配りしました資料の一枚目にございまするように、契約ベースで七百三十億円、その内訳は造成建設事業百八十億円、貸付事業五百五十億円であります。また、資金ベースでは六百九十二億円、財投資金借入額では五百七十億円であります。  また、公害防止施設の設置には多額の資金を必要とするのに、企業利益に直接には寄与しない設備投資であることをも勘案し、その設置を促進いたしまするために助成条件の緩和をはかる必要があると考えまして、資料の二枚目にありまするように、金利の引き下げが認められることとなりました。  すなわち、共同公害防止施設につきましては、中小企業及び地方公共団体の場合、これは建設事業の場合も貸付事業の場合も同様でございまするが、現在は当初三年間五%、四年目以降五・五%となっておりまするのを、当初三年間四・五%、四年目以降五%に引き下げる。大企業については、建設事業の場合も、昨年十月一日以降引き下げられました融資事業の場合と同様に、当初三年間六・七五%、四年目以降七%となっているのを当初三年間六・五%、四年目以降六・七%とすることとし、さらに、共同利用建物、工場移転用地、共同福利施設の建設事業及び公害防止施設に対する個別融資につきましては、中小企業及び地方公共団体の場合、現在六%となっておりまするのを五・五%に、大企業の場合七%となっておりまするのを六・七%に、それぞれ引き下げることになったわけであります。  さらに、事業団実施する事業のうち、共同福利施設いわゆる緩衝緑地の建設につきましては、その高度の公共性にかんがみまして、毎年補助金が交付されておりましたが、昭和四十八年度も二十二億円の国庫補助が行なわれることになっております。  以上のような事業量の増大に応じまして、それを遂行する事務費として、人員五名の増員分も含め九億四百万円の交付金予算となっております。  最後に、納付業務関係予算案につきましては、納付業務費約五億四千万円となっております。これは昭和四十四年十二月に公布されました公害に係る健康被害救済に関する特別措置法によりまして、公害病認定患者の救済に当てるため、事業団から県に納付する医療費等と事務費の総額でありまして、国からの交付金と公害対策協力財団の拠出金の合計額でございます。  以上が、簡単ではございますが、公害防止事業団事業及び四十八年度の予算案につきましての概況でございます。よろしく御審議をお願いいたします。     —————————————
  17. 大矢正

    委員長大矢正君) 次に、公害等調整委員会業務概況について説明を聴取いたします。小澤公害等調整委員会委員長
  18. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 公害等調整委員会委員長の小澤文雄でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  ただいまから公害等調整委員会が所掌しております公害紛争の処理に関する事務の概況につきまして、説明申し上げます。  事務の説明に入ります前に、まず、公害等調整委員会の設置の経緯につきまして説明申し上げます。  公害等調整委員会は、昨年の第六十八国会において制定されました公害等調整委員会設置法により、従前の中央公害審査委員会と土地調整委員会とが統合されまして、総理府の外局たる行政委員会として昨年七月一日から新しく発足いたしたものでございます。公害等調整委員会は、鉱業、採石業または砂利採取業と一般公益等との調整をはかるという従前の土地調整委員会の任務権限は持ちますが、そのほか、公害紛争処理法の定めるところにより公害にかかる被害に関する民事上の紛争につきまして調停、仲裁及び裁定を行なうとともに、地方公共団体が行なう公害に関する苦情の処理について指導等を行なうこととなっております。公害等調整委員会公害紛争処理に関する任務権限のうち、裁定を行なう権限は、当委員会の発足後三カ月を経過いたしました昨年九月三十日から新たにつけ加わったものでございまして、そのほかの任務は、いずれも、従前の中央公害審査委員会から当委員会が引き継いで行なうことになったものでございます。  続きまして、これらの事務の概況について説明申し上げます。  第一に、公害等調整委員会が行ないます公害紛争についての調停及び仲裁は、ともに、紛争解決の基礎を当事者の合意に求めるものでございますが、当委員会が管轄する公害紛争は、人の生命、健康に重大な被害を生ずる公害に関する紛争あるいは農作物や魚介類など人の生活に密接な関係を有する動植物に一億円以上の被害を生ずる公害に関する紛争、それから新幹線及び航空機の運行により生ずる騒音に関する紛争、それから被害地、加害地が二つ以上の都道府県の区域にまたがる公害に関する紛争などでございまして、いずれも、社会的に重大な影響を有し、かつ、広域的な見地から処理することが適当と考えられるものでございます。なお、当委員会の管轄に属しない、そのほかの比較的地域住民の日常生活に密着した公害に関する紛争につきましては、公害紛争処理法に基づいて全国の都道府県に設けております都道府県公害審査会等が行なう和解の仲介、調停及び仲裁の手続によって処理されております。  第二は、公害紛争についての裁定でございますが、これには、責任裁定と原因裁定の二種類がありまして、ともに訴訟手続に準じた慎重な手続によって紛争を処理することとなっております。まず、責任裁定と申しますのは、公害による被害について損害賠償に関する紛争が生じた場合に、被害者からの申請に基づいて、その相手方の損害賠償責任の有無及びその範囲について判断するものでございます。一方、原因裁定と申しますのは、公害紛争においてその解明が困難で、当事者間の争いの中心となることが多い自然的、事実的因果関係について、当事者からの申請に基づいて、その有無を明らかにする裁定でございます。いずれも公害紛争の特質を踏まえて設けられた制度でございまして、これらは先ほどの調停、仲裁とは違いまして、当事者間の合意を必要としないわけでございます。  第三の事務は、地方公共団体が行なう公害に関する苦情の処理について指導等を行なうことでございます。住民から申し立てられます公害に関する苦情の数は、その地域環境問題の指標的な意味を持つものでありますと同時に、また、公害苦情は公害紛争の前段階的な性格を有しているものでございますので、その適切な処理をはかることは、公害紛争の発生の事故防止という面におきまして、きわめて重要な機能を果たすものでございます。このような公害苦情の適正な処理の重要性にかんがみまして、公害紛争処理法においては、これに当たるべき地方公共団体の責務を明らかにし、公害苦情相談員の制度を定めておりますが、公害等調整委員会は、地方公共団体が行なう公害苦情の処理について指導、助言、協力等をすることとなっております。  次に、最近までの当委員会の事務処理概要を御説明申し上げます。  公害紛争の処理に関しましては、当委員会に係属したものは二十件でございまして、いずれも調停の申請であります。そのうち十件は、従前の中央公害審査委員会から引き継いだもので、残る十件が、公害等調整委員会の発足後申請されたものでございます。これら二十件の調停の申請を、公害事件別に見ますと、鹿児島湾における水質汚濁による真珠養殖不能事件一件、瀬戸内海の燧灘東部海域における水質汚濁による漁業被害事件一件、不知火海沿岸における水質汚濁によるいわゆる水俣病事件十四件、渡良瀬川沿岸における鉱毒による農業被害事件三件及び大阪国際空港周辺地域における騒音による生活環境被害事件一件でございまして、これらを通じ申請人の総数は約四千八百人の多数にのぼっております。これらのうち、紛争処理が終結いたしましたものは、燧灘東部海域における水質汚濁による漁業被害事件一件でございますが、この事件は、申請人約千四百人、相手方会社七十社という事件であり、昨年十月に、調停の申請以来約一年で、調停が成立いたしました。そのほかの事件は、目下、手続進行中でございます。  また、最近とりまとめを終わりました昭和四十六年度の全国の公害苦情の総件数は、約七万六千件となっておりまして、前年度に比べて約一九。パーセント増加しております。  次に引き続き、昭和四十八年度の公害等調整委員会予算案につきまして、その概要説明申し上げます。  昭和四十八年度の総理府所管一般会計予算のうち公害等調整委員会予算総額は、一億八千九百四十三万九千円でありまして、これを前年度の歳出予算額一億六千六百二万二千円と比較いたしますと、二千三百四十一万七千円の増額となっております。そのうちの重点項目は、公害の因果関係の解明に要する調査のうち、特に専門的、技術的要素の強いものを外部の研究機関に委託するための公害紛争調査経費、並びに公害苦情の処理について地方公共団体の職員に対する研修指導等実施するための公害苦情相談制度経費でございます。  以上が、公害等調整委員会が行なってまいりました公害紛争の処理に関する事務の概況及び昭和四十八年度の予算案の大要でございます。  なお、公害等調整委員会設置法第十七条に定められております昭和四十七年の所掌事務処理状況の報告書は、会計年度で取りまとめ、追って所定の手続を経てお手元にお届けいたしますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。     —————————————
  19. 大矢正

    委員長大矢正君) 本調査に関する質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  20. 杉原一雄

    杉原一雄君 いわゆる公害国会といわれた昭和四十五年の十二月、十四の公害関係立法が、われわれも相協力をして成立をしたわけですが、きょう質問するのは、その一つの、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律法律一三九号ですか、これがもうすでに二年有余、月日を経過しておりますので、どのように適用され、その適用の中から、いわゆるいま長官が申した自然を愛するとか、あるいは農用地の効率的適用の問題とか、そうしたさまざまな問題をその中から掘り出していきたいと思うのであります。  言うまでもなく法第一条には、その中に「農用地の土壌の特定有害物質による汚染の防止及び除去並びにその汚染に係る農用地の利用の合理化を図るために必要な措置を講ずることにより」云々と、こうあるわけであります。  最初に、そのような目的によって施行されたこの法律が、すでにいま申し上げたように二年有余を経過いたしておりますが、この法律の具体的な動きとして、第三条の「農用地土壌汚染対策地域指定」ということなどが仕事の初めになると思います。現在、法三条による指定地域の状況が一体どうなっているか、総括的な、つまりあらましの姿、概況をひとつまずもって報告をいただきたいと思います。
  21. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 農用地の土壌汚染防止法の施行状況でございますが、現在、この法律によりまして特定有害物質として指定されておりますのは、カドミウムと銅でございます。  まずカドミウムについて申し上げますと、昭和四十六年度におきまして、全国の百十七地域につきまして細密の調査を行なったわけでございますか、その結果、二十八地域からカドミウムを一PPM以上含む玄米が検出されたわけでございます。これらの地域につきましては、この法律によりまして地域指定が行なわれるというようなたてまえになっておりますが、現在までこの法律によりまして土壌汚染地域指定が行なわれましたのは、福島県磐梯地域など七地域でございます。それ以外の地域につきましては、現在、地域指定をすべく、各関係都道府県知事が作業を進めておるという段階でございます。  なお、この地域指定がなされまして、その次の段階におきましては対策計画が樹立されるわけでございます。その対策計画につきましては、現在二つの地域につきまして計画が樹立されております。その地域は、群馬県の碓氷川流域の地域、それから兵庫県の生野鉱山周辺地域、この二つでございます。   〔委員長退席、理事金井元彦君着席〕  それから次に銅でございますが、銅につきましては、先般、この法律に基づきます特定有害物質としての指定が行なわれ、それから対策地域指定基準が定まった段階でございますので、目下、その基準に従いまして、各都道府県知事が地域指定の準備をいたしておるという段階でございます。
  22. 杉原一雄

    杉原一雄君 そうしますと、最初のところでは、一PPM以上は百十七あったということですね。そのうち二十八にしぼられていったわけですが、その二十八以外のところは問題がない、このように軽く理解していいですか。
  23. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) これは四十六年度の調査結果でございます。御承知のとおり、土壌中のカドミウムの量と、それが玄米中に検出される関係は複雑でございまして、その年の天候その他いろいろの条件が変わりますと、吸収その他の状態が変わってまいります。そこで私どもは、四十七年度以降におきましても、引き続きこれらの地域並びにそれ以外の地域におきましても細密調査をいたさせておりますので、今後さらに、この二十八地域より以外に、一PPM以上のカドミウムが含まれる玄米を産出する地域というものがふえる可能性はあるというふうに考えております。
  24. 杉原一雄

    杉原一雄君 そうすると、いまの報告の中で百十七が二十八にしぼられて、いま局長の答弁では二十八以外のところもなおかつ、単純に言えば警戒警報中だというふうに理解をしていいと思いますが、そこで、二十八というのはどういうことなのか、いまの説明でははっきりした限界が理解できないのですけれども、二十八と、ただの七ですね、だんだんと詰められているわけです。最後は二でしょう。この辺の関係で、二十八ということはどういうことなのか、もう一度。
  25. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 申し上げますと、四十六年度の調査によりまして、玄米中のカドミウムの量が一PPM以上出たという地域の数が二十八でございまして、その二十八は、一応この法律に基づきます地域指定対象になり得るということになるわけでございます。  そこで、それらの二十八のうち、県がそれぞれ指定をしてまいりまして、現在までに、過去のデータをも含めまして、実は七つでございますけれども、それが地域指定ができました。それ以外につきましては、現在近く指定予定中の地域であるとか、この法律によらないで県単独で対策をすでに実行した地域であるとか、それから農用地以外に転用をした地域であるとか、現在休耕中の地域であるとか、いろいろ対策が分かれるわけでございますが、それぞれ必要に応じまして、この二十八地域のうち地域指定拡大をされていくというふうに考えております。
  26. 杉原一雄

    杉原一雄君 そうしますと、二十八の中に、先ほどしぼって七とおっしゃったけれども、七が八になり九になり十になるという可能性というのか、危険性がまだ存在している、こういうふうに理解していいわけですね。
  27. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) そのとおりでございます。
  28. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは次に、七が二になる段階ですが、二つは、いまおっしゃったように安中と生野ですが、いよいよ第三条による地域指定が県知事段階で確認され、環境庁でもそのことを裏打ちされたわけでしょうけれども、七引く二ですから、あと五ありますけれども、これは明らかに一PPM以上であることは環境庁も十分承知のことだと思うけれども、ただ、その五が、なぜ早く第三条のような線引きが行なわれないのか、その辺の事情。私は具体的なところも承知しているつもりだけれども、庁として把握しているところですね、あと五。その五はどういう事情で、いわゆるこの第三条のそれにきちっと線引きを完了していないのか。その辺の事情は、具体的に個所をお示しをいただいても、何も差しさわりのないことだから、お示しいただきたいと思います。
  29. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 先ほど申し上げましたように、七つの地域につきましては地域指定が完了いたしておりますので、その地域内の汚染状況によりまして具体的な対策計画が樹立される。対策計画の中には土地改良事業——土地改良事業の中にも客土もございますし、客土の方法につきましても、相当深い厚さの土を入れかえるもの、混層をするもの、それから土をどこから持ってくるとか、そういう具体的な事業計画を樹立しなければなりません。そういう事業計画の樹立のために、現在各県が検討を重ねているという状態でございまして、遠からずの間に、残りの五つの地域につきましては対策計画、これは県でできますと、環境庁長官並びに農林大臣の承認が要りますので、私どものほうに上がってくるというふうに考えております。
  30. 杉原一雄

    杉原一雄君 ちょっと私の理解が悪かったと思いますけれども、七つは線引きがきちんと終わっている。そういうことですね。
  31. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) はい。
  32. 杉原一雄

    杉原一雄君 そのうち二つだけは、いわゆる改良計画をつくってしまったという意味ですか。計画に入っているという意味ですか。どういうことですか、この辺は。
  33. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 対策計画ができまして、環境庁長官並びに農林大臣の承認を受けましたので、二つにつきましては実行の段階にこれから入るところということでございます。
  34. 杉原一雄

    杉原一雄君 そうしますと、二つは、ですに安中なり生野というのは明確になってきたわけですが、対策計画が進行中だと思いますけれども、いまこの場を通じて、あとの、これから対策計画を樹立しようというところもあるわけですから、そうしたところに対する指導行政の一つの見本といった意味もありますので、大体いま簡単におっしゃったようでけれども、生野なり安中で現在どういう形でいわゆる第五条の対策計画を立てているかという、計画の内容等について、もちろんそれぞれの連絡指導があると思いますけれども、簡単に、こういう方法とこういう方法とがあって、望ましい作業が進んでいるのだということなど、御披瀝いただければと思います。
  35. 遠藤寛二

    政府委員(遠藤寛二君) 碓氷川流域地域、群馬県の安中でございますが、それと生野の鉱山周辺地域でございますが、まず碓氷川の流域地域につきましては、対象となりました面積百二十三ヘクタールのうち、農用地として利用いたしますものが百十六ヘクタール。これは改良して農用地に使うことになります。それから農用地以外として利用するというもの、二ヘクタール。これは宅地にするということで転用をいたす計画になっております。合計百十八ヘクタール。あと、ちょっと差がございますのは、農道等耕地に関係のないところが含まれて指定に入っているためでございます。  それから、その改良のほうでございますが、改良の内容といたしましては、排土及び客土をやるという事業が一つございます。排土は大体十センチから二十センチの排土をいたしまして、十センチから三十センチの客土をする、これが一つの事業でございます。それとあわせまして土壌改良剤を加える。たとえば溶成燐肥、過燐酸石灰、珪カル、鶏ふん、こういったものを入れます。これは客土を入れまして土地がやせるものでございますから、それを補うという意味が非常にございますのと、もう一つは、カドミウムがアルカリ性に傾きますと溶解度が減りますので、その両方を兼ねた目的を持ってこういうことをいたしております。  それからもう一つ、再汚染防止対策といたしまして、用水路に昔から汚泥がたまっておりまして、その汚泥の中にカドミウムがございますので、それの除去。それから工場敷地がそばにあります。そこに積んでありますガラのようなものから雨水によって流れ出ることを警戒いたしまして、それの承水路をつくる、こういう事業。それから、そういったものがきくかどうか、汚染が今後起こらないようにするための、監視をするための監視田といいますか、観測田といいますか、そういうものを四カ所設ける。  こういったものが一つの碓氷川の計画でございまして、事業費といたしまして大体六億三千万でございます。この中身につきましては、四分の三は事業者負担でございまして、残りにつきまして、国と公共団体で大体負担をするということになっております。それから実施主体は、この場合、群馬県が事業主体になるということになっております。  生野のほうにつきましては、農用地利用いたしますのが二二・九六ヘクタール、農用地以外が七・五六ヘクタールでございまして、これの内訳は宅地が一・四八ヘクタール、これは町営住宅だそうでございます。それから工場用地、これは公害企業と関係ない新しい工場を誘致するための工場敷地にするのが四・九〇ヘクタール。それから杉の植林をいたしますのが一・一八ヘクタール。合わせまして三〇・五二ヘクタールが事業計画の対象になっております。  これも同様に客土、土壌改良剤の施用、それから再汚染の防止、この場合は、その辺の地質等の関係もございまして、いままでの水が再び流入しないように、水路のところで調整をいたしますゲートをつくる。これは頭首工ごとに、そういうものが入ってこないようなゲートをこしらえて水路を変えるというものと、それから先ほど申しました観測田を設ける、こういったようなことを事業計画といたしまして、事業費三億一千七百万。目下この事業費の負担につきましては、いま県の知事のところで御検討のようでございまして、まだきまっておりません。事業実施主体は兵庫県でございます。  以上が大体両方の計画の内容でございます。
  36. 杉原一雄

    杉原一雄君 いまの報告で大体わかったのですけれども、ただ、本来農用地でしたから、宅地その他の問題は別ですけれども、農用用地を農用地として、なかんずく米をつくっていたから米をつくるということになりますと、いまの報告の中では、排土客土、こういうことで三十センチとか言われておりますね。総額経費はわかりますけれども、大体そういうものは、作業をする場合に一坪に対してどれくらいの経費がかかりますか。
  37. 遠藤寛二

    政府委員(遠藤寛二君) ちょっといま内訳ごとに計算してございませんので、承水路その他の事業費を全部面積割りで割りました場合、十アール、これは一反でございますが、一反歩当たりで碓氷川の場合が五十四万三千円、生野の場合は百三十七万八千円ということになっております。
  38. 杉原一雄

    杉原一雄君 これは土地の事情もありましょうけれども、ずいぶん違うのですけれども、生野は丘陵地帯なんですか。どういうことでこんなに違うのですか。
  39. 遠藤寛二

    政府委員(遠藤寛二君) 生野の場合は、一つは客土を運ぶ場所の問題が一つございますのと、それからもう一つは、非常にざる田でございまして、水がどんどん抜けまして酸化状態になってしまいますものですから、その水が下へ抜けるのをとめますと、かなり還元状態になりまして、カドミウムの溶け方が変わってまいりますので、下のほうに床締め客土のようなことをやりまして、その上に普通の客土をするというかっこうになりますので、事業費が非常に高くなるわけであります。
  40. 杉原一雄

    杉原一雄君 先ほどの予算説明によりますと、環境保全関係予算についての説明環境庁ですが、これの九ページに「農林省におきましては」とありますね。この中に「土壌に蓄積された重金属の排除等をはかるため公害防除特別土地改良事業費二億三百万円」、これはいま集中的にこういう作業が進んでいる地域に投入されるものなのか、それとも各地域に、準備調査作業等にこれをばらまかれていくお金なのか。ちょっとその辺のところが見当つきませんが、それは一体、二億でわずかですけれども、これは事業費ですから、計画内容はどうなっているのですか。
  41. 遠藤寛二

    政府委員(遠藤寛二君) 掲げてあります予算の大部分につきましては、当初年次でございますので、全体実施計画を立てます計画費が主でございまして、事業費につきましては、計画が立ちましてあと、ということになります。  たとえば今年度の場合を例に引きますと、碓氷川の場合、本年度全体実施計画に使います金が五百二十五万円で、工事費は三千三百七十五万円、これは何年間かの年次計画でございまして、主力は明年度以降の事業になるというかっこうになるためでございます。それから生野鉱山につきましては、本年度事業着手と申しますけれども、全体の実施設計費五百二十五万円が計上されている、そういうことでございまして、当初年次につきましては、先ほど申しました地域全体の面積が直ちに直るという事業量の計算にはなっておらないわけでございます、この二億何がしという金につきましては。
  42. 杉原一雄

    杉原一雄君 まだたくさん具体的な改良計画が進められていないところがあるわけですから、いま幸いにして先進的に作業が進んでいる二つの地域があるわけですけれども、そうした地域指導等を進められる過程の中で、これからあとの地域、五地域その他あるわけですが、そうしたことに対して、環境庁としては、やはり客土方針をもってあくまで農用地として復元させるという方向に作業を進められるのか、さもなければ、あるいは転用の問題等もあるわけですから、その辺のところをやはりあくまで都道府県知事にげたを預けるというような態度を貫いていかれるのか。その辺のところ、きわめて簡単なことですけれども、はっきりしておいてください。
  43. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) これは土壌汚染防止法の第五条の「農用地土壌汚染対策計画」という条項の中にも書いてあることでございますが、やはり都道府県知事は当該関係農民の意思を尊重しながら、土地利用上の区分等を明らかにいたしまして、対策計画を立てるということになっております。したがって、現在農用地であるからといって、すべてそれを農用地にするということでなくて、これをやはり転用その他にすることもございましょうし、また現在の作目が水稲等でありましても、これを花卉その他の食用農作物以外のものにかえるということもございましょうし、それは関係農民と相談の上、都道府県知事が指導権を握りまして樹立していただくということにいたしたいと思っております。
  44. 杉原一雄

    杉原一雄君 先ほど来の説明の中で、一部、米づくりじゃないが、植林か何かということをおっしゃったと思いますが、それは何を植えつけたのか、報告はどうなっておりますか。
  45. 遠藤寛二

    政府委員(遠藤寛二君) 生野の計画になっておりますのは、杉の植林をするという計画になっております。
  46. 杉原一雄

    杉原一雄君 苗づくりですか。それとも、そこでいわゆる植林をしていくという永久的な計画なんですか。
  47. 遠藤寛二

    政府委員(遠藤寛二君) そこを杉林にするということでございまして、苗づくりではないわけでございます。
  48. 杉原一雄

    杉原一雄君 先ほどの局長の話だと、それは転用も可なり、植林も可なり、必ずしも稲作でなくてもよろしいと、こういう非常にゆるい態度のように思います。しかし地元民とすれば、やはりもとへ返してほしいという気持ちが非常に率直に出てきていると思います。そういう点は今後指導に当たる場合に、かなり心にとめてがんばっていただきたいと思いますが、先ほどの報告を見ますと、生野などは十アール百何十万、たいへんな経費がかかります。その辺のところ、かなりデリケートだろうと思いますけれども、今後のそうした指導にあたりまして、行政上十分の御配慮をいただきたいと思います。  ただ、ここで非常にやっかいな問題は、これは私の県にも二カ所あるわけですが、線引きした隣の隣接地、あぜ一本で隣合わせになるわけですが、それは米に一・〇PPM出なかったとか出たとか、そういうことによって区別されるわけですが、地域住民の気持ちから見れば、変わらぬじゃないか、また、米が減収じゃないか、あるいは稲の苗が黄色く変わって困るじゃないかというような話も出てくるわけですが、その辺の隣接のところに対する指導ですね、これをどういうふうにするか。  線引きの中へ入っていないから、それはそういうことはかまわぬじゃないか、しかたがない、法律がきびしいんだと、こういうことではねのけていけるものかどうか。その隣に田を持つ人たちにとっては非常に真剣な問題になっておりますので、いわゆる公害に対する今日までの長い運動の経過もあったからでありましょうけれども、何とかしてほしい、こういう声が出てきているわけですが、こうしたことに対して、それは汚染の度合いもありますけれども、しかし、全然ゼロなところでそういう提起は出てこないと思います。だから、そういったものに対して何かこう、県が主体になることだと思いますけれども、行政上めんどうをみてやる手だてがないのか。その辺のところ、おそらく陳情等もあったと思うが、検討された向きはございませんか。
  49. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) やはり土壌汚染防止法のたてまえからいきますと、この法律に乗りまして対策事業実施するのは、線引きをされた地域以内ということにならざるを得ないと思いますが、その周辺につきまして問題が全くないというわけではないことを私ども承知いたしております。  そこで、具体的に事業実施する場合におきましては、周辺の地域につきましても、あわせて事業実施をするというような方策を、これは事実問題としてなし得るように、農林省その他関係のところと相談をいたしております。ただ問題は、費用の負担区分その他非常に困難な問題が生ずるわけでございますけれども、その辺は地元の話し合いで処理をしていただくように、これはなかなか困難ではございますが、当該関係の知事にお願いをいたしているのが実情でございます。
  50. 杉原一雄

    杉原一雄君 それは、農林省のほうかどこかへお願いしてきた地域があると思いますが、隣接のところでは、線の外だから、いまのこの汚染防止法の適用がない。だがしかし、これは土地改良その他の適用によって何とか援助を御協力いただきたいという陳情が上がっていると思いますが、それは結論は聞いているのですけれども、それ以上一歩も出ないのか。ということは、局長がいま申したように、何か弾力性のあるような表現を実はとりましたけれども、それに寄りすがっていいのかどうか。土改法等によって何とか補助するとか、そういう点がほんとうにないのかあるのか。やっかいなことですけれども、もう一度お聞きしたいと思います。
  51. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) まあ正式の御返事ということになりますと、土壌汚染防止法によりましては措置しがたいわけでございます。  しかしながら、実際問題といたしまして、何か周辺の農家の方々の御要望に沿える道がないものかということを研究するように、知事にもお願いをし、また農林省とも相談をしているのでございますが、先ほど申し上げましたように、負担につきまして、土壌汚染防止法によりますと、当該地域内につきましては、汚染原因者である企業のほうの負担というものを相当部分導入することができますが、その地域以外につきましてはやはり問題がございますので、その辺、法律によらない措置として可能かどうか、これは検討をお願いしておるというのが実情でございます。
  52. 杉原一雄

    杉原一雄君 行政当局とすれば非常にやっかいなことでございまして、指定地域と、準ということばが当たるかどうか知れませんが、少なくとも、めくらめっぽうにわしのところも関係があるとは、だれも言わないと思います。その該当地域にいわば準ずるような地域等も、県当局とも話をして、改良しようとか汚染を排除しようという努力等について何か手だてがあるものならば、いまおっしゃったように今後御検討をしていただいて、住民のそうした願いにこたえていただくような努力をいただきたいと思うのでございます。  私は、大体質問しようと思った要点にかなり的確にお答えいただきましたから終わりたいと思いますが、ただ、先ほどの七つ、二十八、こうなるわけですから、その七つ、つまり七引く二ですから五ですが、それらの計画の出てくるめどですね、連絡等からある程度御判断いただいておると思いますが、その辺のところと、次に拡大すれば、あと二十一になりますね、そうしたもの等の見通し、てこ入れのあなた方の段取りですね。それはどういうふうになっているか、お聞きしたいと思います。
  53. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 現在のところ、今年度中には、ちょっと対策計画が出てくる様子はないようでございますが、四十八年度中には相当大部分のものが出てくるのではなかろうか。ただ、この七つの地域の中には、たとえば具体的に申し上げますと、渡良瀬川流域の地域というものがございまして、これは銅の指定とも関係が出てくる地域でございますので、そのほうの調査ともからみまして、若干おくれるかもしれないというようなことを私どもは考えておるわけでございます。
  54. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、昨年の十二月二十一日に政府が発表された、一連のPCB汚染についての実態調査について質問をいたします。  最初にヘドロの対策について質問をいたしますが、三木長官、特に、この発表によりますと、一〇〇PPMをこえるヘドロの個所が全国で二十八カ所ある。その二十八カ所の対策として、しゅんせつ、封じ込め等の対策推進することというふうな対策環境庁は発表しております。しかし、実際にはなかなかそのヘドロ処理の有効な方法がないではないか。一体どういう方法でこのヘドロ処理をやるか。PCBの汚染もあるし、あるいは水俣湾のような水銀のヘドロ汚染の地域もある。これを一体どうするのかということですね。  それで、いま実際に作業を始めているのが、この富士川河川敷で田子の浦港のヘドロ処理を始めております。この問題は水かけ論になっては困るわけですから、ぜひとも私は三木長官のはっきりした御答弁をいただきたいために、委員長にも特にお願いをして、黒板と河川敷の略図を用意してまいったわけです。  初めに、環境庁から、一体この一〇〇PPMをこえる二十八カ所については、しゅんせつ、封じ込め等の具体的処置をとれということを指示しておられますが、私がいま理解している範囲では、田子の浦だけが始めようとしておるのですが、第一次、第二次、第三次としてやってきておるのですが、そのほか、こうすればいいという方法がありますかどうか。ただこういう指示を流しただけで、具体的にこうすれば非常にいい方法だというものがありますかどうか。その辺をひとつ簡単にお答えいただきたい。
  55. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) まず、PCBによります底質の汚染につきまして、私どもの調査によりますと、一〇〇PPMをこえるようなPCBを含んでおります底質の地点は、工場排水直下におきましては十九地点、それから工場近接地域につきましては五地点、一般公共用水域では三地点という調査結果が出ております。  これにつきまして、どういう対策をしておるかというようなお話でございますが、なかなか先生のおっしゃるとおり、これらの対策はむずかしい点もございます。一般的には、しゅんせつ、封じ込めということで、それぞれ県を指導いたしまして、直接企業にさせたり、その他をやらしているわけでございます。  たとえば滋賀県の日本コンデンサにかかります公共用水域のPCB汚染底質につきましては、農業用水路等をしゅんせついたしまして、ため池に貯留をいたしております。このため池につきましては、すでに民間からの買収を終わっておりますので、このため池に貯留されましたPCB汚染汚泥を、化学薬品で固定をするという方法を現在検討いたしているのでございまして、まだ完了はいたしておりません。  それから静岡県の共和電器の関係のPCB汚染底質でございますが、これにつきましては、農業用水路並びに来光川の一部の底質をしゅうせつをいたしまして、工場内に密閉コンクリート槽を設けまして、これに封じ込めを行なっているということでございまして、これも、最終的なこれが処理であるかどうかという点は問題があろうかと思いますが、そういうような措置をいたしております。  それ以外のところにつきましても、現在、各都道府県が、一〇〇PPMをこえるPCBを含む汚泥の存在範囲といいますか、それを確定中でございまして、それがきまりますれば、それぞれしゅんせつ、封じ込め、その他の対策をするわけでございます。中には、どういう方法でしたほうがいいかということにつきまして、必ずしも確信を持たない府県がございますので、最近のうちに関係県の担当者を呼びまして、本庁のほうでも関係省庁合同でその対策につきましてヒヤリングをし、必要があれば指示をいたしたいと、かように考えておる状態でございます。
  56. 小平芳平

    ○小平芳平君 三木長官、田子の浦のヘドロ処理については、第一次処理のときには、当時の山中長官が、陸で発生したものは陸で処理するというのはいい考えだ、こういう発言をしたことが非常に力となって、ヘドロを富士川河川敷で、脱水と言ったって、そんな水なんかほとんど減りませんけれども、脱水して処理をするということになったわけです。それから第二次処理のときには、当時の大石長官が、PCBをヘドロが大量に含んでいるという新しい事実もあるので慎重にすべきだという私の発言に対して、大石長官は検討しますと言って、そのまま着工してしまっているのです。  ですから、今度第三次処理を県は計画をしておるのですが、三木長官はどう考えられますか。
  57. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 第二次処理については、私もいま、その結果が第二次公害の原因になってもいかぬという非常な関心をこれには持って、これは非常な監視を、河川敷の中に埋没しておるわけですから、そういう場合の常時の監視というものは厳重にしなければいかぬということを言っておるわけですが、現在のところは、第二次公害と称すべきような影響はないのです。ないというのは、結果的に見てそういうものはあらわれてきていないわけですけれども、御指摘のように、PCBなんかの分析法がまだやはり十分に研究の成果が上がっていないのです。そういう点で、この問題については、いままでは第二次公害と称すべきものの結果はあらわれてないようだけれども、十分に今後やはり監視をしていかなければならぬと考えております。
  58. 小平芳平

    ○小平芳平君 長官、第二次公害が起きてないという、そこにそもそも間違いがあるのです。そのことはこれから指摘をいたします。  第一、今度第三次処理を始めようというときに、悪臭で非常に地域住民は悩まされる。大迷惑を受ける。じゃ局長、悪臭に対する処理は、昨年に比べて今度の計画は何かしていますか、どうですか。
  59. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) これは作業中に発生いたします硫化水素ガスの結果、悪臭その他の問題が出るというように考えておりますが、これにつきましては、昨年の実行段階で確かに不手ぎわがあったと思います。もちろん、その不手ぎわの中には、天候が悪かったという点も加わっておりますけれども、田子ノ浦港から河川敷へ送る送泥といいますか、その能力と、河川敷におきます乾燥の能力というものが食い違いまして、完全に乾燥が行なわれないうちに次の新しい汚泥が送られてくるというようなこともございまして、硫化水素によります悪臭その他の被害が出たようでございますが、まだ詳細、第三次計画につきましては打ち合わせば済ませておりませんけれども、第二次計画の実施中、またその後におきましては、直ちに送泥計画その他につきましては、天候等も十分にらみ合わせまして、そごのないように指示をいたしております。
  60. 小平芳平

    ○小平芳平君 あれだけの広い河川敷へ、これから八十七万五千トンもヘドロを移動すれば、どうやったって、くさいにきまっているじゃないですか。河川敷のそばへ住んでみてごらんなさい。それを、食い違いだとか天候だとか、そんな食い違いや天候じゃないですよ。  それから次に、脱水というけれども、あまり水は減らなかったけれども、脱水後のものはどうしました。
  61. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 第二次計画におきまして、脱水後のヘドロが約十五万トン出たわけでございますが、これは、そのうち九万トンを河川敷の中に仮置きをする。それから二万四千トンにつきましては河川敷内に、ほかの土砂とまぜまして盛り土をいたしまして、運動場といいますか、それをつくる。残りの三万六千トンにつきましては、富士川と田子の浦の間の田子道路といいますか、その道路敷に使ったというように聞いております。
  62. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、覚え書きがあるんです。その覚え書きでは、知事と県漁連で覚え書きをかわした汚泥処理後の処置として、脱水をしたヘドロの残物を漁業に影響なきよう処置をするということ、それは要するに、これからまだ八十七万トンもやろうとしているのですが、河川敷へそのまま置けば、洪水が出たら海へ流れるにきまっているじゃないですか。それから浸透の、地下水の汚濁については次に申しますが、その河川敷は、かわかすだけで、ほかへ持っていくというはずだったのでしょう。それができなくなっただけでしょう。どうですか。
  63. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 当時の、作業を始める当初におきましては、河川敷内に運動公園のようなものをつくる敷地にする予定のヘドロは二万四千トンでございまして、それ以外のものは仮置きという状態で置かれておりましたけれども、その後、この残りにつきましても、河川敷内に公園をつくる敷地としてこれを処理をしておるものと聞いております。
  64. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、河川敷へそのまま置けば漁業に悪影響があるといけないから、ほかへ持っていくということなんですよ。それをやらないだけですよ。  それから観測の井戸を掘ったでしょう。観測の井戸は、最初にCODの汚濁が急上昇しているでしょう。それはどうですか。
  65. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) CODにつきましての、周辺の観測井五カ所におきます値についての報告は、いずれも県漁連と打ち合わせました限界値、一〇PPMをこえてはいないというふうに聞いております。
  66. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは、観測の井戸Aのほうですね。いま局長説明したのはAのほう。Bのほうは一〇〇をこえているのですよ。御存じですか。
  67. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) いま御質問のAの井戸Bの井戸というのは、ちょっと私、どれかということはよくわからないのでございますが、おそらく、いま先生のおっしゃった一〇〇PPMをこえているというのは、周辺の井戸ではなくて、乾燥または仮置きをいたしましたその場所に掘りました井戸のCODの計測値ではなかろうかというふうに考えますが。
  68. 小平芳平

    ○小平芳平君 いいです、局長、聞いてください。処理をする、乾燥させるという置き場のその近所に掘った井戸が、ここに書いてあるAです。近所といっても離れておりますけれども。要するにそこの地下水でしょう。  ここでヘドロを沈でんさせておいて、こういう離れたところへ井戸を掘って、その地下水がどういう結果を示しているかというと、初めのうちは〇・六三とか六八とか、一・七二PPMであった地下水が、それがヘドロ処理が始まった五月の一日、五日ごろ、集中豪雨があった。それから急にCODの汚濁が増して、五月八日で九・一八、それから六月まで分析を続けて、八ないし九PPM。要するに、ヘドロ処理を始める以前とヘドロ処理理を始めてから、このCODが十倍にはね上がっているということは、それだけ地下水に影響があったと見る以外にはないでしょう。どうですか。
  69. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) おっしゃるとおり、結局河川敷で乾燥させると申しますのは、水分を、天日によって蒸発する以外は地下へ浸透をさせるということがねらいでございますので、その地下の浸透水は、初めはもちろんよごれております。それが土壌の浄化その他によりましてだんだん希釈といいますか、汚染物質は少なくなるわけでございますので、若干はやはりよごれるかもしれませんが、私どもといたしましては、それが環境汚染といわれるような数値まで上がらないように、いろいろ乾燥方法等については十分注意するように、というふうに言っているわけでございます。
  70. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、地下水の環境基準は幾らですか。
  71. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) まだ地下水につきまして、CODがどれだけでなければならないかということはございませんが、先ほど申し上げましたように、県と県漁連との打ち合わせの段階では、一〇PPMをこえないということでやっておりますので、少なくともそれをこえないように措置をすべきだというふうに私ども考えております。
  72. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに環境基準によれば、一〇PPMというのは工業用水としても三級という、一番使えない水じゃないですか。地下水は普通きれいでしょう。常識で考えてきれいであるべき水、しかも初めは一PPM以下だったのだから、それが一〇PPM近くはね上がるということは、工業用水三級としてしか使えないということは、それだけの汚染があったのじゃないですか。そうでしょう。
  73. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) おっしゃるとおり、地下水を汚染をしてもいいということはございませんで、なるべくこれをきれいに保持すべきであるというふうに考えておりますが、これも観測井その他の場所につきましては、現在飲用等には使われておらないのでございまして、もしこれが、もちろん飲用等に使われている井戸にそのような影響があれば問題でございますが、主としてこれは、さらに下流を経まして漁業に影響があるかないかということで調査をし、監視をすることにいたしておりますので、少なくとも漁業のほうには影響はないというふうに私どもは考えております。
  74. 小平芳平

    ○小平芳平君 漁業にどういう影響があるか、あるいは地下水ですから、どこの井戸の地下水が汚染してくるか、地下水ですから、どこへどういうふうにその汚染が出てくるかわからないですからね。三木長官、そういうわけですよ、十倍にはね上がっているということですね。  それから次に、こうしたヘドロ処理をやったあと、結局ここで乾燥させたと。ほとんど乾燥しませんでしたけれども、要するに少し水の減ったものを今度は別の河川敷へ移して、そうして砂、ヘドロ、砂、ヘドロ、そこへ表土というふうにやったというふうな説明になっておりますが、実際はブルドーザーで土砂と一緒にひっくり返して積んであるだけですが、しかし説明はこういうふうにして、この観測井1という井戸は地下水へいっている。観測井2というこの井戸は、ヘドロの部分にも穴をあけ、地下水へも通じている。これは環境庁説明がこういう説明をされたから、ぼくはそのとおり書いてきたわけです。  そうすると、だれが考えても、局長、この井戸は2のほうがよごれるわけでしょう。ヘドロのほうへ穴があいているのだから。ところが、1のほうがよごれている井戸がある。それは御存じですか。これは、環境庁からきのうもらった資料にそう出ているじゃないですか。九月五日には、Hという井戸は1のほうが三九・五〇、2のほうが七・二。五倍もよごれているのです、1のほうが。それからEという井戸、Eという井戸は1のほうが五三・三〇PPM、2のほうが一四・七〇PPMA四倍もよごれているじゃないですか。こんなことをやっていて、二次公害がないなんて何で言えますか。どうですか。
  75. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) どうも先生のおっしゃるような数字になっているようでございます。ただ、ヘドロを堆積いたしました直下の井戸でございますので、どのような関係からそういう数字が出たのか、その辺ちょっと検討しないとお答えは……。
  76. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、そんなのんきなことを言っていて、いるようでありますと言ったって、これは環境庁からきのうもらった資料がそうなっている。ぼくは一目見て、これはおかしいと思うにきまっているじゃないですか。そういうことを何ら検討しないで、三木長官、二次公害がないなんて、もってのほかですよ。  それから次にPCBです。PCBは、こちらの井戸からは、要するに地下水ですね、こちらの地下水からは一・二、それから一・六PPBというPCBが出ている。それからこちらの井戸からは二PPBから八PPB検出されているですよ。それは去年のうちに検出されておりながら、なぜいままで黙っているのですか。これはどうですか。
  77. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) これは、CODもそうでございますが、PCB等につきましても、もっぱら私どものねらいは、周辺にどういう汚染が広がるか、それが一番問題でございますので、周辺の観測井の現状を明らかにするということと、あとはヘドロの中の井戸につきましては、関係といいますか、その関係を調べるためのものというふうに実は考えておりまして、私どものねらいは、周辺汚染というものに重点を置いて調べているというわけでございます。
  78. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうふうに、聞いたことに答えないで、別なことを言ったって答えにならないですよ。周辺も調べているし、この処理をしている中も調べているじゃないですか。そうでしょう。そういういまのようなCODが一五〇PPMとか、PCBが八PPBとか、わかっていながら、なぜいままで発表しないのですかと聞いているんですよ。
  79. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) これは、もちろん県に委託をいたしまして徴した調査結果でございます。   〔理事金井元彦君退席、委員長着席〕 私どもは、CODにつきましても漁連との約束の数値以下になっておりますし、PCBにつきましては、いま先生おっしゃったとおり、PPMに直しますと、周辺の井戸につきましては〇・〇〇一二PPM、それから〇・〇〇一六PPMということで、この程度の数値というものは、現在の分析方法からいたしますと信頼性を置けるような限界以下であるというふうに考えておりまして、県といたしましてもそのように扱ったのではなかろうかというふうに考えております。
  80. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうふうに言うだろうと思ったんだね。それは、工場排水の基準は〇・〇一PPMですね、要するに一〇PPBですね、工場排水の基準は。その工場排水の基準を、なぜこの地下水へ当てはめて、そういう答弁をするんですか。
  81. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) おっしゃるとおり、水の種類によりまして、分析方法、いろいろ変化をしなければならないわけでございます。ただ、私どもといたしまして、現在の行政指導上、どういう水質のものについてはどういう検査方法というふうに指示をいたしておりませんので、現在では、やむを得ず一般的な水につきましては一〇PPBというものを検出限界というふうに定めて指導いたしておりますので、その指導に従ったものであろうというふうに考えております。
  82. 小平芳平

    ○小平芳平君 そんな、環境庁局長が、水は何でも一〇PPBだなんて、とんでもない話じゃないですか。  厚生省、どうですか。厚生省は、水道は、検出限界というか、要するにPCBはないのがいいわけでしょう。あってはならないわけですが、そのPCBは、水道用水の場合はどういうふうに規制してますか。
  83. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 水道中のPCBの許容量でございますが、人体のPCB一日摂取許容量との関連で検討する必要がございますので、全国の主要な水道について、厚生省、あるいは地方自治体で独自にやられた検査もございますが、検査をいたしました結果では、水源の種類を問わずに、すべて不検出でございますけれども、本来、私どもといたしましては、水道水、飲料として使う水には、PCBは検出されてはならないといったたてまえで考えております。いま基準策定いたしてはおりません。
  84. 小平芳平

    ○小平芳平君 〇・五PPBということは環境庁でも厚生省でも全然そういうことは言っておりませんか。
  85. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 特定する物によっていろいろと信頼限界、あるいはその前の問題といたしましては分析方法が異なりますが、水道水についてのみ申し上げますと、私どもは、昭和四十六年度の科学技術庁特別研究促進調整費によりまして設置されましたPCB分析研究班が研究を行ないました、その結果、水中、これは透明な水でございますが、水中のPCBについては、五リットルの水にアセトンとノルマルヘキサンを用いまして抽出したものを濃縮後、ガスクロマトグラフィーを用いましてPCBを定量するという方法を、現時点では最も適切であるというふうに結論を出しました。  この方法によりますと、水の場合〇・〇五PPBまでは分析は可能でございます。しかしながら、用います試薬の純度あるいは測定機器の精度などから、やはり信頼し得る定量の限界としては、一けた上の〇・五PPBに置いたほうが適当であるというふうに結論が出ております。
  86. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで環境庁、この〇・〇一PPM、要するに一〇PPB、これは工場排水の基準ですよ、工場排水の。ですから水道は、いま厚生省の浦田局長が言われたように〇・五PPB、ほんとは〇・〇五までできるが、まあ〇・五にしたという発言をされておりますが、アメリカでは、魚を五PPMに押さえるためには、環境用水はどれだけでなくちゃならないか、これは計算の上からいえば〇・〇七PPBですね、アメリカのこの研究発表は。〇・〇七PPB、あるいは安全度を見て〇・〇一PPBまでも規制しなくてはならないのではなかろうかということが、アメリカ政府PCB合同対策本部の調査で発表されている。御存じですか、局長
  87. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) いま御指摘の、米国政府PCB基準の状況については、概略は承知いたしております。
  88. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで、同じくアメリカのハモンドさんという人の論文で、ニジマスは八PPBで死ぬ。小エビは、これはどういうエビか、まあ駿河湾はエビが盛んですが、一PPBで死ぬという研究発表もされている。そういうときに、その田子の浦で、富士川河川敷でヘドロ処理をやろうというときに、一〇PPBあたり以下なら、まず二次公害がないなんていう考えはもってのほかじゃないですか。どうですか、岡安局長
  89. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) おっしゃるとおり、私ども、まだ水質といたしまして、分析方法を示しまして限界数値等は示しておりません。おっしゃる、とおり〇・〇一というのは、工場排水の場合に、現在信頼性が置ける限界を示しまして、それを守るようにという指示をいたしておりまして、一般の公共用水域につきましては、おそらくはそれよりも低い数値になるべきであろうと思いますが、それらの測定をする方法というものを確立いたしておりませんので、指示をいたしておりません。  問題の観測井から出ましたPCBの値の問題でございますけれども、私どもの受けている報告によりますと、先生のおっしゃった〇・〇〇一二PPM、〇・〇〇二八PPMという観測がされましたものは、観測井の水でございます。周辺の民家の井戸六カ所につきまして、昨年の七月七日から十月十六日まで、毎月一回測定をいたしておるわけでございますが、それらはいずれも検出をされておらない、こういう報告を受けておりまするので、現状におきましては、周辺の汚染というものが、問題にする程度ではなかろうというふうに考えておるのでございます。
  90. 小平芳平

    ○小平芳平君 一・二あるいは一・六PPBのPCBは、さっき言ったようにあそこの井戸ですよ。観測井とはいいながら、ヘドロ処理場じゃないですよ。離れたところの地下水ですからね。それは、民家の井戸から検出されたら大ごとですよ。すぐ井戸の使用禁止、そういうことになるわけでしょう。  そこで三木長官、そういうように、いま私が示した数字は、全部これは県の数字を環境庁を通じていただいた数字だけなんです。しかし、一体この水はだれが採水しているか、これは局長御存じですか。だれが採水しているか。そういうような問題もあるけれども、時間の関係で、もうこれ以上できませんので、長官、そういう問題があるということを前提にして考えた場合に、幸いにして二次公害はなかったと。それで去年は三十二万トン、ことしは八十七万トン、約三倍にもなろうという大量のヘドロを、最初長官のおっしゃったようなことを前提にして推進されたら、これは大迷惑ですよ。もっと、時間は多少かかってもやむを得ないから、もう田子の浦だけじゃない、ほかにもそういうPCBや水銀や、全く始末の悪いヘドロがいっぱいあるわけですから、そう田子の浦だけ急いでみたってどうしようもないですよ。  それよりも、まず、いまの技術では、これならもう公害を将来に残すとか災いを将来に残すことはなかろうという、そういう全国的な研究、専門家による研究、これが先じゃないですか。それを、研究は中途はんぱにして、県から持ってきたデータだけでもこれだけの二次公害のデータを発表しておきながら、何でもかでもまた第三次着工をしようというのは、早まり過ぎているじゃないですか。まず悔いを将来に残さない、被害を将来に残さない、この対策、専門家による研究こそ、まっ先に大事なことだと思いますが、長官いかがですか。
  91. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 全くこのヘドロは、御指摘のようにヘドロの中にいろいろなものが含まれる可能性があるし、ヘドロが大量であるということで、この処置というものは、いろいろ皆が研究しなかったわけではない、知恵をしぼってああいうことにしたのでしょうけれども、国民の健康にも重大な影響がありますので、このヘドロの処置というものにはできる限り頭脳を動員して、国民に不安を与えないような処理の方法をするということに対しては、今後も積極的に研究を推進していきたいという考えでございます。
  92. 小平芳平

    ○小平芳平君 今後積極的に研究するということは、そう田子の浦だけあわてないということですね。
  93. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 小平委員も御存じのように、三次計画というのはまだ実施の段階ではないので、計画中でありますから、いろいろ御質問の趣旨も体して、三次計画の内容についてはよく検討をいたします。
  94. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから岡安局長、ちょっと確認しておきたいのですが、先ほど示したような観測井の、それは井戸の構造とかいろいろあるでしょう、いずれにしてもこれらの観測井は、工場排水と同じだ、一〇PPB以下なら問題ないんだというような見解は、環境庁はとってないわけでしょう。どうですか。その点はっきりしておいてください。
  95. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 実は先生も先ほど申されましたように、民家の井戸水からPCBが、たとえば水道の基準以上に出るようなことがあれば大問題でございます。ただ、私どもの観測井は、処理地より川下のほうでどのようなPCBの挙動があるかということを主にいたしまして観測をいたしておるわけでございます。もちろん、低ければ低いほどいいということに私ども考えておりまして、今後このような数値をできるだけ下げるような処理方法というものを、できるだけ早く採用するように、静岡にも指示をいたしたいと思っております。  ただ、一般的な御質問といたしまして考えれば私どもは、汚水の中にあるPCBを純粋に取り出す技術というものが確立しておらない現状におきましては、一般的に〇・〇一PPMというものが信頼性の限界だとするならば、それ以下の数値を示すわけにまいらないというふうに実は考えておるわけでございます。
  96. 小平芳平

    ○小平芳平君 何だかよくわからないんですがね。〇・〇一PPMは工場排水だ。工場排水の場合は、確かにそういう基準を昨年きめましたですよ。ところが、この観測井は、工場から流れてくる水じゃないんです。地下水ですよ。それが工場排水と同じで問題ないのだというようなことを前提に、長官が、これから検討しますと言われる場合、そういうことを前提じゃ何にもならない。よろしいですか。
  97. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 私が申し上げましたのは、その井戸の水が飲料に供されるという場合には、当然飲料水基準というものにつきまして評価しなければならないと思っておりますが、観測井の水、もちろん地下水には違いありませんけれども、飲料水以外の一般の公共用水域につきましての基準というものは、きめておらないということを申し上げたわけでございまして、〇・〇一というものは、指導基準では工場排水の基準でございますが、じゃ、それ以外の基準があるかといいますと、現在のところはないということも申し上げたわけでございます。
  98. 小平芳平

    ○小平芳平君 私の質問していることに答えてくれればいいんですよ。それは、基準がないことはわかってますよ、工場排水しかないことは。しかし、水道水はもっと厳格でなくちゃいけない。要するに、こういう説明をするんです。国の考えは、あの田子の浦の観測井は工場排水の基準でいいんだ、国がそういう方針だというふうな説明をした場合に、それは間違いです、国はそういうことをきめてはおりませんと、こういうことでしょう。どうですか。
  99. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 端的にお答えいたしますと、観測井の水が飲料用に供される場合には、飲料水としての基準に適合しなきゃならぬと思いますけれども、観測井は井戸水に違いございませんけれども、飲料に供する水ではないとするならば、一般公共用水の基準ということになるかと思います。そうしますと、一般公共用水の基準というのはきめておりませんので、〇・〇一PPM以下にその観測井の水を押えるようにしろということは、ちょっと言えないのではなかろうかというのが、まだ私の現在の考え方でございます。
  100. 小平芳平

    ○小平芳平君 言えない——。こういうことですか。  さっきぼくの言ったとおりでいいわけでしょう。国が、この観測井のPCBの限界は、それは工場排水と同じでいいのだということは、政府はきめておりませんねということです。
  101. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 繰り返すようでございますけれども、一般公共用水におきますPCBの含有量につきましては、政府はきめておりません。工場排水につきましては、〇・〇一PPMというふうに指導基準をきめております。しかし一般の、工場排水以外の公共用水、これは地下水を含むかと思いますけれども、その水の基準はきめておりません。他方、飲料に供される水の基準といいますか、それは私どもとしましては、水道用水につきましては厳重な配慮がなければならぬと思いますけれども、観測井は直接飲料に供せられるものではないものですから、私ども、何ぼでもそれはPCBが含まれてもいいというつもりはございませんけれども、じゃ〇・〇一PPMを何ぼ下げなきゃならないかという基準も現在私どもはないものですから、できるだけ下げるという指導はいたしたいと思いますけれども、どの基準をこえてはならぬということは、現在いえる段階ではないということを申し上げておるわけでございます。
  102. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに〇・〇一PPM以下でなくてはならない、工場排水と同じに扱うべきではないと、こういうことでしょう。——それならそういうふうに初めから言ってくれれば、一問で済んだのです。  それから三木長官、いろいろこれからもヘドロ処理が、田子の浦港だけで済むならまだしも、各地でこれからやらなくちゃいけないわけです。あれで、これはうまい方法だなんて環境庁が言うと、各地でまた地域の住民が大迷惑を受けることになるから、やかましく言っているわけですよ。ですから、先ほど来何回も申しましたように、こういう問題点を十分御検討いただきたい。長官さっきおっしゃるように、第三次処理はまだ工事にかかっているわけでもないし、地元も承知したわけでもありませんから、十分ひとつ第二次公害ということに注意をして、ただそこだけあわてるのじゃなくて、専門家による御検討をいただきたい。これはよろしゅうございますね。先ほどそういう御答弁をいただきましたから。  次は同じくPCBの問題ですけれども、科学技術庁の方おられますか。  科学技術庁から出されました労働衛生研究所に委託をされて発表されたこの特別研究ですね。この特別研究によりますと、問題が非常に多いですね。問題が非常に多いにもかかわらず、結論は、毒性はあまり心配ないという結論になっているのですね。こういう取り組みはきわめてよろしくないと思いますが、いかがですか。
  103. 千葉博

    政府委員(千葉博君) ただいま御指摘の点は、おそらく四十六年度の特別研究促進調整費で各方面にお願いしておりましたグループ研究の、そのうちの一つでございまして、おそらく労働省の労働衛生研究所のグループにお願いした研究だと思います。  それで、この結論でございますが、この結論によりますと、約九十九名、そのほかのものを入れますと全体で百三十一名について、七つの事業場におきまして、PCBを扱っていた方々の調査を行なった結果、内容は、血液とか尿の生化学的な検査、研究だと思いますが、それによりますと、血液中のPCBの濃度が〇・四ないし〇・九二PPMという、この辺のところで影響がいろいろ出始めてはおる。ただし、臨床的にはこれはたいして問題はないという結論に、この研究グループではなっております。  先生の御指摘は、臨床的にたいしたことないというのはおかしいのじゃないか、相当血液中にあるにもかかわらず、そう簡単に、臨床的にはたいしたことはないんだということ自体がおかしいと、こういうことだろうと私実は推定いたしますが、この点につきましては、実はこれが出てまいりましたのが、去年の六月に要点が出てきまして、詳細は十一月に出てきたわけでございます。  政府といたしましては、本件につきまして、また本件だけじゃございませんで、慢性毒性の問題は、それ以外に催奇性、奇形児が出てくるおそれもありそうだというのがここにも出ておりますが、これも含めまして、もう一段と研究をする必要があるんだということで、PCB全体につきましては、政府としては、昨年の五月の二十九日に、このPCB汚染の総合的な対策推進会議というのを設けまして、それで各分野分担をきめまして、それで対策推進するということをきめたわけです。  この研究のいろいろな成果をもとにしてその推進をすることになっておりまして、その中で、いまの先生の御指摘のような問題は、労働省でまたさらに続ける。それから慢性毒性の問題などにつきましては、さらに一段と研究を進めるということで、科学技術庁といたしましても特別研究促進調整費を八千数百万円出しまして、慢性毒性の問題につきましては、四千二百万円出しまして、関係各省にさらにその研究をいま進めていただいておる最中でございます。
  104. 小平芳平

    ○小平芳平君 時間がもう過ぎておりますので、科学技術庁三木長官に伺いますが、このPCBによるいろんな問題は、私がこんな限られた時間で提起できる範囲は、もうきわめてわずかな問題しか提起できませんでしたが、この労働衛生研究所の、PCB取り扱い事業場における従業員の健康調査、この報告を読んで非常に驚きもし腹立たしくも思うことは、一貫してこの報告は、PCBの毒性はあまり問題でないように見える、要するに、皮膚に症状が出ている、これは血液から行ったのじゃなくて直接PCBを手に触れたからだろうというふうな、とにかく問題はない問題はない、たいしたことはないで一貫している報告書である。  政府のそうした報告書を、これは第一線のPCBを研究していらっしゃる方、いま私が手にしているのは、京都の藤原邦達博士のあげられた問題点ですが、簡単にあげても八つ。八つの点から、そういう結論を下すのはおかしい、と。結局、毒性はあまり問題ないように見えるなんていうのはとんでもないことであって、問題が数多くあるから、今後の研究、あるいは今後の検診がきわめて大事であると、こうすべきでしょう。どうですか。
  105. 千葉博

    政府委員(千葉博君) 先生の御指摘のとおりでございまして、政府としては、先ほど申し上げましたように、PCB汚染の対策推進会議におきまして、さらにPCBの毒性その他について、これはきわめて問題であるとしていま推進しております。特に、いま申し上げました催奇性があるかどうか、それから発ガン性があるかどうか、それからBHCとかいうような農薬あたりとの複合で来た場合に、どういったような毒性が出るか、それからそれ以外にも、母子の健康にどんなような影響を及ぼすかというような点につきましては、さらにいま進めておりまして、この取り組み方は前向きに進めておるわけでございます。また近々、第二次の報告が出るかと思います。
  106. 小平芳平

    ○小平芳平君 三木長官、局長と簡単に結論的なことだけをやりとりしていたのですが、やはり政府の取り組む姿勢は、PCBは毒性はたいして問題はないという、そんな取り組み方ではもってのほかだ。そうじゃなくて、先ほど来指摘するような取り組みをしていただきたいと思いますが、最後に長官の御意見を承りたいこと。  それから厚生省に、これは結論だけでいいんですが、お米とか、いろいろな十二月二十一日の発表、たくさんあるから私は一ぱい質問したいことがありますが、できませんので、米の基準はつくられるかどうか、その一点だけお答えいただきたい。
  107. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いろんな角度から研究というものはされるべきだと思います。しかし、次々に新しい化学物質ができてくるんですね。これに対する政府の態度というものは、非常に疑いを持って慎重な態度をとらなければいけないと私は思います。  それから、これは労働省の労働衛生研究所ですか、この一つの研究の結果であっても、これはいろいろと検討の材料にはなっても、これを毒性がないと、私もこれ読んでおるわけではないのですけれども、そういう断定のもとにPCBの問題を片づけるというのは、政府の態度ではないということを申し上げておきます。
  108. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 米に残留するPCBの規制値についての設定でございますが、これは食品衛生調査会のほうに現在、検討をお願いしている段階でございます。なお、昭和四十七年度に調査費をいただきまして、米をはじめとして十数食品についてPCB汚染の状況を調査中でございます。  その結果を待って具体的な数字を計算していくことになろうかと思いますが、現在まで、都道府県が独自に調査した結果から見ますと、これは四十二例ほど報告されておりますが、例の滋賀県の草津市におきまする一・三PPM等、一部汚染の状況が報告されておりますが、約半数は不検出か痕跡程度ということでございまして、現段階において不安はないのではないかというふうに考えております。しかし、重大な問題でございますので、具体的な検討を食品衛生調査会のほうにお願いしておる段階でございます。
  109. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう一つ、通産省、せっかくお呼びしまして……。このPCBの回収はどうやっているか。モンサントとか、有料で回収をやっているのです。アメリカのモンサントは有料でやってないのに、日本のモンサントは有料でやっている。そうすると、PCBのような毒性の強い不良な、人類絶滅の危機を招くようなものをつくって、今度は販売しておいて回収するときは、逆にお金をとって回収するというのはもってのほかじゃないですか。それが一つ。  それからもう一つは、この螢光灯にもPCBが入っているのかどうか。それはどこで見分けるのか。そういう点をはっきりさせておかなければ、こうした廃棄物が環境に投げ出され、環境汚染が深まるばかりだと思いますから。  以上二点についてお答えいただきたい。
  110. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 回収PCB処理の費用をだれが持つべきかという問題でございますが、これにつきましてはいろいろな考え方があろうかと存じますけれども、一応産業廃棄物処理法等の考えによりますと、最終的にPCBを使用した者がその廃棄を責任を持ってやるということになろうかと存じますけれども、現実には廃棄の方法が非常にむずかしゅうございます。したがいまして、熱媒体等につきましては、全部もともとのメーカーでございます鐘淵化学あるいは三菱モンサント化成に全部返送いたしまして、そちらが持っております焼却炉で、無害にするべく焼却を現実にやっておる状況でございます。  その場合の費用の負担でございますけれども、現在鏡淵化学も三菱モンサントも、ドラムかん一本当たり一万円の費用を徴収いたしております。これは焼却の費用、それから受け入れましたPCBを、非常に大量になりましたので、タンクを建設したりいたしまして、タンクに入れております関係で、そういった保管費用等も含めての費用というふうに聞いておりますが、これにつきましては一万円が妥当かどうか、当事者の話し合いでこの費用はきめてもらうというふうな考え方で私どもはおります。  それから第二問のほうは、通産省の重工業局の所管でございますので、重工業局の課長がまいっておりますので、そちらのほうからお答えいたします。
  111. 藤本和男

    説明員(藤本和男君) PCB入りのコンデンサーの確認につきまして、過去にメーカーが生産したものについては、メーカーが専門的にきめます製造型式の表示がございますが、これを見ますと、PCBが入っているかどうかということはわかるわけでございますけれども、螢光灯の場合は、普通家庭に入っております百ボルトで使う螢光灯につきましては、PCB入りは全然使われておりません。それははっきりしております。ただ、ビルの場合等に二百ボルトなどでつけておりますものがあると思います。あるいはもっと高いものをつけておるところがあると思いますが、それには過去にPCB入りのコンデンサーが使われておったこともございます。
  112. 内田善利

    ○内田善利君 最初に、先ほど所信表明のありました中から、長官に一言お聞きしたいと思いますが、冒頭に、「わが国は、従来久しく経済成長を促進することを軸に内政の展開をはかり、その結果、所得水準も大幅な向上を示してまいりました。しかしながら、その反面、大気汚染水質汚濁等公害発生自然環境破壊が急速に激化し、国民の健康と生活環境が脅かされるという深刻な事態が発生しました。」と、このようにお認めになっておるわけです。  公害国会でもあのように法律がたくさんできました。にもかかわらず、環境庁も発足し今日に至っておりますが、いまだに公害がなくならない。このような、公害発生政策と私は言いたいのですけれども、公害発生政策、高度経済成長はこの辺で考えなければ公害はなくならないのじゃないか、このように思うのですけれども、環境庁長官としてどのようにこの点をお考えか、お聞きしたいと思います。
  113. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 経済成長を否定するということは、これはやはりこの日本の経済成長がとまってきたならば、いろんな問題が起こってくることは明らかである。しかし、その成長のあり方が、いままでのような設備投資と、その増大した供給力を輸出に向けていくという、この日本の成長のパターンに問題がある。今後は国内における国民生活の充実とか環境保全とか、そういうことに力を入れて、そうすれば立ちおくれておるいろんな社会資本の充実とか社会福祉政策の拡大であるとか、こういうふうなことが当然に起こってくるわけですから、そういうことによって内需を、いままで外に伸びておった日本の経済成長のパターンを、立ちおくれておるそういう方面の政策を充実することによって、内需を喚起して経済政策のパターンを考えることだと私は思います。  また政府も、そういうことをしばしば政府の方針として述べて、今年度の予算もそういう意図がこの予算の編成の中にあらわれておることは事実であります。だから、成長はいかぬという、否定でなくして、成長のパターンを変えなければいかぬというのが私の基本的考えでございます。
  114. 内田善利

    ○内田善利君 その成長のパターンですけれども、今後の課題であろうかと思いますが、これを通しまして、環境庁長官として今度三木副総理が長官になられたわけですから、環境行政に相当大転換があるのじゃないか、このように期待しておるわけですが、この内容を見まして、どうやったら公害防止することができるかということについて、いろいろ環境基準を変えるとか、排出基準を変えるとか、あるいは総量規制をするとかありますが、総量規制をするにしても、私はむずかしい問題が一ぱいあると思うのです。個々にこういったことをやるよりは、もう少し日本国全体の環境容量といいますか、そういった環境容量の限界、そういったものなどを詳しく調査して、はっきりした設定をした上で開発はすべきじゃないか、このように思うわけです。  濃度規制をやった結果、今度は総量規制をしなきゃならない。そういったことでは公害防止できない、このように思うわけですね。私はPPMの問題があるときに、総量規制をすべきである、このように二年前の予算委員会でもお願いしたわけですけれども、まだいまだに、総量規制をすべきである、こういう段階なんですね。非常にむずかしい問題があろうかと思いますけれども、そういうことでは公害はなくならない。  それと、公害発生対策ということも私はこの際長官にうたっていただきたかったのですが、それも出ていないようでございますし、公害発生対策、それと日本全国のあるいは地球の環境容量ということをもう少し考慮に入れるべきじゃないか、このように思うのですが、長官いかがでしょうか。
  115. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は環境庁長官予算編成の末期に就任をしたわけですが、やはりいま内田さんの言われるような、何か日本のこの環境保全というものについて、これだけの自然的な環境というものは保全しなければならぬという基礎的な調査が要るということで、予算を追加要求しまして、一年かかって環境保全の国勢調査をやろうと考えておるわけでございます。そういうことで、守るべき環境というものの一つの尺度というものを持ちたい。  これは、いま言われたような環境容量と、こういいましても、そういうふうな基礎的な調査研究という上に立たないと議論は抽象的になりますから、そういうことで何か環境庁というものが、公害の問題が起こったら、あとからその事後処理するために狂奔する役所ではなくして、やはりこの日本の国土計画というものの中に、その計画をする当初から環境保全ということがもう前提になって、国土開発の計画がなされるような政治の流れに変えていかなければならぬ。そういうことで今年度の予算、これで私も満足しておるわけじゃないのですが、そういう方向に今後の環境庁政というものを持っていきたいということで、今後施策を進めていきたいという考えでございます。
  116. 内田善利

    ○内田善利君 それでは私の本題の質問に入りますが、土呂久の亜砒酸公害に対する問題でございますが、すでに七名の方が、宮崎県では亜砒酸中毒による公害と認定されておるわけですが、現在、検診のときに三人漏れた、その方を含めて七人の第三次検診が行なわれておるわけですけれども、この点どのようになっておるのか、環境庁にお聞きしたいと思います。
  117. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま御指摘のようなことで、宮崎県当局でチェックする臨床的な調査もしておると思いますが、まだこちらのほうに、患者の認定というものを宮崎県はまだしていないわけですが、近く認定をするものだと考えております。
  118. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 宮崎県の土呂久の砒素中毒の問題でございますが、これは御承知のとおり、去る二月一日に地域指定と、公害病の指定をいたしたわけでございます。これによりまして、宮崎県では認定審査会、これを編成するわけでございまして、この人選も終わりまして、被害者の申請に基づき、認定を行なうということになるわけでございます。  それにつきましては、まず先般の検査によって慢性砒素中毒とされております七名の方、これが申請をされますと、これはもうおそらく審査会の審査の結果それぞれしかるべき認定があると思うのでございますが、なお、この七名の以外の方につきましても、第三次検診に回っている方、あるいは検査のされなかった方といったような方があるわけでございまして、これらの点につきましては、さらに精密検査を要する方は精密検査をやっておりますし、また一般的に土呂久地区の約二百七十名の住民の方々に引き続き健康診査をする、こういう計画を県は持っておりますので、それらの健康調査の結果、慢性砒素中毒の疑いのある方が出てまいりますと、今後はこの審査会でそれぞれ認定を追加していく、こういうことになるわけでございます。
  119. 内田善利

    ○内田善利君 その辺のところまでは私も知っておるわけですが、環境庁の砒素中毒の健康被害者の認定基準ですね。これは皮膚と鼻粘膜と頭髪の砒素、この外症だけを言っているわけですけれども、これでは外症がなくて内臓に疾患がある方々は救われないわけですけれども、この点はどのようにお考えですか。
  120. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 砒素による中毒は、職場における労働衛生の問題はかなり事例があるわけでございますが、一般の住民の方が環境汚染の結果健康被害が生じたということの判明いたしておりますのは、この宮崎県の土呂久地区の社会医学的調査報告のみでございます。  この社会医学的調査報告によりますと、土呂久鉱山の周辺におきまして、現在の知見で十分説明し得るというものは皮膚的所見のみである、こういう結果が出ておるわけでございます。もちろん、この調査報告におきましても、皮膚的所見のほかに、なお呼吸器の悪性腫瘍だとか、あるいは肝障害、血液変化、神経系の変化等が知られておりますので、こういったものにつきましては今後十分観察していく必要があるということは指摘いたしておりますけれども、ともかく前回の調査の結果出てまいりましたのが皮膚所見でございます。  したがいまして、私どもも今後いろいろな調査の結果を待って、そういった内臓関係のいろいろな認定基準というものをそろえてから、ひとつ認定条件をつくるという方法もあるわけでございますが、それでは現在判明しておる方々の救済問題がおくれるという問題がございます。そういうことで、先般はこの土呂久のデータをもとに、皮膚的な症状と鼻粘膜の症状ということを中心に認定条件をつくったわけでございます。もちろん、この問題は、今後も引き続きまして検討を進めるということになっておるわけでございます。
  121. 内田善利

    ○内田善利君 先般、二月の七、八日に名古屋大学の大橋先生が検診に行かれて、二十三人検診されて、ほとんど全員異常を認めておられるのですね。しかも内臓がほとんどなわけですが、こういったことなどで、外部症状だけでなくて内臓のほうも早く診断基準をきめて、私はこういった方々も早く救っていくべきであると、このように思うのですけれども、この点はどのように考えられておるのですか。  いまのお話ではこれからのことなんですが、どうも昨年でしたか、環境庁が一番最初に調査に行かれたその報告は、亜砒酸による公害の事実はないと思われるというような中間報告をいただいたわけですけれども、事実はこうして七人公認の状況になっておるわけです。さらに大橋先生の報告では、これは新聞報道ですけれども、診断に来られた二十三人全員が何らかの内臓疾患を訴えておったと、こういうことなんです。砒素中毒は潜伏期間も長いと聞いておりますし、症状も多様であると聞いておりますが、こういった観点から、皮膚症状だけじゃなくて、外部症状だけじゃなくて、内臓のほうも健康診断基準に入れるべきであると、このように思うのですけれども、どうなんでしょうか。
  122. 船後正道

    政府委員(船後正道君) この問題は、砒素による健康被害の検討委員会、砒素中毒の日本の権威といわれる方々に委嘱いたしまして、認定条件あるいは健康調査方法等の御検討をお願いしておるわけでございます。それが、先ほど申しましたような経緯で、土呂久のデータをもとに現在わかっておるという限りにおいて、皮膚的所見を中心に認定条件をつくったわけでありますが、これでもって万事終わりというものでは決してございません。先ほども申しておりますように、内臓的な障害というものも、この倉恒先生を委員長とする土呂久地区の報告書でも指摘されておるところでございますから、専門の先生方は当然問題の所在を御承知でございます。ですから、一般的な環境汚染による慢性砒素中毒において、どのような症状というものを砒素との関連において考えていくかという点は、引き続きこの委員会において早急に検討していただき、結論を得たいと、かように考えております。
  123. 内田善利

    ○内田善利君 私は、公害病というのは普通の一般の環境では発生しないと思うんですね。やはり異常な環境があったときに公害病というのは発生しておる。大正末期から戦前の、掘れよ掘れよと言って掘っていた、ああいう異常な、しかもあの亜砒酸の炉などは、いまでは考えられないような全く非人道的な掘さくが行なわれておった。そういう異常な環境から公害病が起こっておる。  だから、そういう異常な環境にあったということを認めて、その上で発生している公害病、そういう被害については、重い軽い、外部症状だ、内部症状だ、そういう区別はあり得ないと思うんですね。そういう環境にあって健康をそこねておる人は、当然私は救済していくという方向が、行政の立場の基本的な考え方でないか、このように思うんです。この点はいかがでしょうか、長官。
  124. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、認定の基準はいま御説明申し上げましたように、専門家が寄って基準をきめたわけですが、やはりこれは救済するということが目的ですから、したがって外部的な症状ばかりでなしに、内臓の変化等に対しても今後認定する場合に参考にするように、そういうふうなことをひとつ認定の基準の専門家の中に相談をしまして、そしてできる限り慢性砒素中毒患者に対して、そういうことが可能ならば、そういう方向で検討してもらうことにしたします。
  125. 内田善利

    ○内田善利君 それと、七人の方々は県のあっせんによりまして、仲介によりまして、住友金属から補償が出たわけですね。そういった七人の方々はもう公害病は認定にならないのだと、このように環境庁は言っておられるわけですが、もう補償がなされたから公害病には認定しないのだ、こういうことですか。
  126. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 特別措置法による公害病患者の認定と民事の救済の問題とは、これは全く関係はございません。したがいまして、土呂久におきましては、具体的には七名の方は鉱業権者である住友金属鉱山からそれぞれ補償と申しますか、平たく補償と申しますが、受けておられるわけでございます。しかし、申請がございますれば、これは当然特別措置法に従いまして、公害病の患者として認定する、こういうことになるわけでございます。ただ、そういった場合に、所定の給付がいくかどうかという点につきましては、これはまた損害賠償の内容との関連においてきまってくる問題でございます。
  127. 内田善利

    ○内田善利君 私は、公害病として認定した以上は、特別措置法によって救済の給付はすべきだと思うのです。それと企業の補償といいますかがなされるということは別問題じゃないか、このように思うのですけれども、その給付はやるのか、やらないのか、いま言われましたけれども、どうなんですか。
  128. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 救済法の法律の規定によりますと、公害被害に関連いたしまして加害者から損害賠償が行なわれまして、その損害賠償の中に、この特別措置法に基づく医療費あるいは医療手当の給付相当額の補償がありますれば、その部分につきましては、この特別措置法による給付と重複して支給しないという、二重支給禁止の規定がございます。  これは一般的な不当利得防止的な考え方のほかに、本来この公害による被害というものは原因者の責任において救済すべきである、それが実際問題として裁判その他に手間どってできないという点に着目された制度でございますから、当然、公平の原則と申しますか、あるいは費用負担の原則から申しまして、加害者の明らかとなったものは、加害者において医療費その他の給付を持つというのが私は筋ではないか、かように考え、そのように指導いたしておるところでございます。
  129. 内田善利

    ○内田善利君 そのことはまだ疑問が残りますけれども、一応そのままにします。  次に、土呂久の場合には複合汚染が考えられるのじゃないか。これも前々から言ってきたわけですけれども、銅とかアンチモンとかカドミウムとか、そういったものが廃水等を通して川に流れているわけです。それと流域の土壌汚染の問題、こういった問題が起こってくるわけですが、今度損害賠償法が成立すればこの問題は解決するかと思いますが、土壌汚染防止法という立場からも、土壌が相当砒素その他の重金属によって汚染されておるわけですけれども、こういった財産被害についてはどのようにお考えでしょうか。環境庁と農林省にお伺いしたいと思います。
  130. 遠藤寛二

    政府委員(遠藤寛二君) 先生のお話の土呂久その他、土呂久だけでございませんで、あちらこちら砒素の害というものが出ておりますが、当然これはまだ砒素がいわゆる土壌汚染防止法の特定有害物質に指定されておらない段階にございますので、その点でいろいろデータをそろえまして、基準を定め指定をしていただきまして、当然そういったものにつきまして、土壌汚染防止法を適用して改良対策実施すべきものだというふうに考えますけれども、私どものほうといたしましては、土呂久、笹ケ谷その他、何カ所かで現地試験圃場を設けまして、土壌・作物との関係、関連を求めます試験、あるいは土壌調査等を現在実施しているところでございます。
  131. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 土壌汚染防止法関係の砒素対策でございますが、現在砒素との関係が二つございまして、土壌中に砒素がある場合に、農作物中に砒素が含まれまして、それが人体に影響があるという面と、それから土壌中に砒素がありますと農作物の生育に障害を及ぼすという、二つの面がございますので、両面あわせましてその関係等を調査中でございます。できるだけ早く、この砒素につきましても土壌汚染防止法の特定有害物質に指定をいたしたいというふうに考えまして、作業をいたしておるような次第でございます。
  132. 内田善利

    ○内田善利君 鉱山保安監督局はお見えになっておりますか——。私は、こういった財産被害といいますか、こういうことについては、石炭のほうは非常に優遇されておるわけですね。ところが金属鉱山のほうは、皆無といっていいほどこういった被害についての救済がないわけですが、金属鉱山も石炭同様に、こういった救済について考えておられるのかどうか、お聞きしたいわけです。
  133. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) 金属鉱山の鉱害によります財産被害の問題につきましては、現行法では鉱業法の規定によりまして、鉱業権者が賠償の責任を負うという規定になっております。現在はそういうかっこうで処理されておるわけでございますが、今後の問題につきましては、被害者救済に関する新しい法的措置、あるいは土壌汚染防止法等の運用の面とあわせまして、いかにすべきかは総合的に検討していくべきものと考えております。ただいま現在では具体的な案を持っておりません。
  134. 内田善利

    ○内田善利君 まだお聞きしたいことはいっぱいあるわけですが、労働省にお聞きしますが、宮崎県の松尾鉱山の労災の問題ですけれども、第一次中間報告がありまして、それから昨年の七月にさらに検診があったわけですが、いまだに労災適用の認定の報告を受けていないのですけれども、一体どのようになっているのか。
  135. 山口全

    説明員(山口全君) 松尾鉱山につきましては、先生お話しのとおり、昨年第一次検診、さらにその結果によりまして第二次検診を行なったわけでございますが、その後、二次検診の結果につきまして、その評価分析を専門家にお願いしておりまして、ただいま最終報告が、ごく近く宮崎基準局長に提出されるというふうに聞いております。最終報告があり次第、宮崎労働基準局としては早急に措置を行なうように準備を進めております。  中間報告の結果によりますと、何らかの異常の認められた者は二十五名となっております。そのうち砒素中毒の疑いのある者が九名ございまして、十三名がじん肺症の疑い、さらに三名が亜硫酸ガスその他による影響というふうに報告されております。  具体的な補償につきましては、近く提出を見込まれます最終報告があり次第、早急に行なうこととなっております。
  136. 内田善利

    ○内田善利君 二十二年の九月以前の被害者、こういう人たちが金山の場合も非常に多いわけですが、また、この松尾鉱山の場合もそういった方々が非常に多いわけですが、これに対する救済対策ということがなくて、ことしは監察委託費として七千万円、補助をするようになったわけでしょうか。これができれば、二十二年以前の方々も救済ができる。戦時中のそれこそたいへんな中で働いて、ああいう悲惨な姿になっているわけですから、こういう人たちこそ国の責任において救済すべきであると、このように思うのですけれども、私は亜砒酸鉱山の場合も金山の場合も、この労災関係は、企業の責任はあるでしょうけれども、やはり国の責任として救済をすべきであると、このように思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  137. 山口全

    説明員(山口全君) 金鉱山の関係では、すでに元労働者、法施行前の労働者が二名入っております。松尾鉱山については、近く出る最終報告によりまして判明すると思いますが、もし松尾鉱山の元従業者について同様の被害者があれば、労働省としては、たてまえといたしまして労災保険法による補償を行なうことはできませんので、当時の事業主が現存する場合にはその事業主、さらに鉱業権を承継した方がおられればその事業者に、実効性のある救済を行なうよう行政指導することをたてまえにしています。  土呂久鉱山の場合には、先ほどもお話がありましたように、宮崎県知事のあっせんによりまして、七名の補償問題が話し合いが行なわれたように聞いておりますが、松尾鉱山につきましても、ただいま最終報告の結果を待ちつつ、鉱業権者であります日本鉱業に対して行政指導を行なっております。  なお、先生のお話の一般の休廃止鉱山に対する検診等援助対策については、お話がありました七千万ほどの予算が認められておりますので、これの具体的な施行、実施の方法について、ただいま慎重に検討しておるところでございます。まだ成案を得ておりません。
  138. 内田善利

    ○内田善利君 この松尾鉱山の場合もそうですけれども、土呂久の場合も、非常に検診がおくれまして、まだ非常に悲惨な姿にある方がたくさんいらっしゃるわけです。こういった鉱害被害者に、あるいは水俣の場合もそうですが、環境庁長官は会って激励される御意思があるのかどうか。この辺、伺っておきたいと思います。
  139. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 土呂久の状態なども私は報告を受けておるわけでございますから、現地の事情というものはある程度承知をいたしておるわけでございます。できるだけ早くこういう気の毒な方々の救済的な措置が迅速に行なわれることを期待をいたしておるわけでございますが、なおかつ、私に対していろいろ現地の方々がお話しの必要があるというときには、いつでもお目にかかることにいたします。
  140. 内田善利

    ○内田善利君 最後に、公害分析その他の薬品分析等の基本になる試薬の点について、前回小平委員からも質問があったわけですが、この公害を規制するための根本になる分析用の試薬品、これが最近、前々からもそうですが、品質上あるいは表示等の問題で問題になっているわけですが、今回そのための答申も出されまして、その法制化が期待されておるわけですけれども、今国会にこれを提出されるのかどうか。通産省に実情をお伺いしたいと思います。
  141. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 出回っております試薬が、表示と違いまして中身が違うものが入っておったとか、あるいは表示された品質よりやや低い品質のものが入っておったといったような例が若干ございまして、表示と中身を合致させるべき対策を講ずべきである、こういう声が強くなりまして、私どもとしましては、昨年七月に通産省の軽工業生産技術審議会という審議会に、試薬の表示の適正化対策いかんという諮問をいたしたのでございますが、昨年の十二月二十一日に答申をいただいたわけでございます。  この答申の骨子は試薬の表示と中身の一致義務を課しますとともに、表示の様式を統一するとか、製造業者につきまして登録制をしくとか、あるいは立ち入り検査等の権限を主務省に与えるとか、こういった所要の法的措置を講ずる必要があるという答申になっておりました。  私どもとしましては、この答申を踏まえまして、法制化のための検討を続けてまいったわけでございますけれども、以下述べますような問題点が若干ございまして、どういうふうにこれに対処してまいるか、まだ成案を得ていない段階でございます。  問題点と申しますのは、試薬の中身と外側の表示が一致しておるかどうかということを、たとえば抜き取り検査等で検査をいたしますためには、試薬の、その品質に応じました検査方法というものが確立がされておることが必要でございます。現在試薬が約二万ほど出回っておるといわれますけれども、そのうちで、現在JISによりましてその試薬の品質規格、それから検査方法が確立されておりますものは約七百種類でございます。  答申におきましては、この検査方法が確立している試薬を当面、法の規制の対象にいたしまして、そのほかのものにつきましては、漸次検査方法が確立されるに従って対象に加えていったらどうか、そういうふうに段階的にやっていったらどうかという答申になっております。  当面、法規制を加えるといたしますと、この七百品種を対象にする、こういうことになるわけでございますが、現在のJISが、大体一つ一つの試薬につきまして標準的なものにJISがきまっております。もしこの法規制を加えますと、今度は同じ指定の、規制の対象になりました品目につきまして、もっと高い品質の試薬であるというような表示をされますと、高い品質のものについては別の検査方法が必要になりますが、そのための検査方法がまだできていないとか、あるいはJISできまっております規格よりもやや低い規格のものを業者がつくりまして、これはJIS以外のものだというような表示をいたしますと、同じく検査方法がありませんために、その表示と中身が合致しておるかどうかの検査ができない。  こういう状況がございまして、七百品目を指定いたしましても、同一品目につきましても、さらに違った規格のものをつくられると規制が逃げられてしまう。こういう問題がございまして、この辺をどういうふうにしたらいいか、現在検討を続けておる段階でございまして、今国会への提案を、まだ断念いたしたというわけではございませんけれども、ただいまのところ法案提出の見通しがまだついていない段階でございます。
  142. 内田善利

    ○内田善利君 最後に。いずれにしてもこの問題は大事な問題だと思います。それで今後、国会に間に合わない場合は、どういう行政措置をすべきであるかということも大事な問題だと思います。行政措置によってでも、これは悪い試薬がよい試薬を駆逐することのないように、具体的な行政措置を講ずべきであると、このように思います。最後にこれをお聞きして終わりたいと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
  143. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) もし今国会に法案の提出ができなくなりました場合には、通産省としましては行政指導によりまして、法案のねらいとしておりましたところをできるだけ実現するようにいたしてまいりたいと考えておりまして、そのために、業界の協力を得まして、たとえば表示方式の統一の点につきましては、試薬の名称、品位、製造月日、あるいはロット番号とか、貯蔵上の注意とか、こういったものの表示様式、現在まちまちでございますけれども、表示様式の統一を行政指導してまいりたいと考えております。  それから二番目には、試薬メーカーの自社検査体制をチェックをいたしまして、それが整っております業者につきましては、優良事業者という認定制度を設けます一方、それが不十分なものにつきましては、さらに改善指導をいたしてまいりたいと思います。  それから、町に出回っております試薬を政府がアトランダムに買い上げまして、これを私どもの検査所で検査をいたしまして、不良品があります場合には、その業者の指導をいたしますとともに、もし優良事業者と認定されたものの製品にそういうものがありました場合は、認定を取り消すといったようなことをいたしたいと思います。  また、試薬メーカーの検査員につきまして、分析技術を中心とした講習会をひんぱんに開催をいたしたいと、こういうふうに考えておりまして、こういうことで試薬メーカーの検査体制の向上をはかりまして、その品質の改善と、それから表示と中身の一致を実際問題として促進してまいりたい、かように考えております。
  144. 加藤進

    加藤進君 私は、自然保護の問題について若干質問をしたいと思います。  長官は、先ほどの所信表明の中でこういうふうに述べられています。「従来の環境行政は、公害発生し、自然の破壊が深刻になってから対策を講じているという、いわゆるあと追い行政であったことは否定できない。こうした従来の環境行政についての反省を加えながら、これからは、自然破壊公害発生未然防止して、これを次の世代に伝える責務がある。このような基本姿勢のもとに今後の環境行政を全力を傾けて進めていきたい。」、こう言っておられます。けっこうだと思います。  そこでお聞きいたしますが、これは長官が就任された直後の記者会見で、やはり趣旨としては同様な内容の発言をされておるわけでございますけれども、今後いろいろな開発計画がさらに出てくるわけであるが、この開発計画についても、環境保全を第一とし最優先として、いやしくも環境を悪化破壊させるような開発計画はこれを認めない、こういう基本姿勢で取り組む、というふうに言っておられるわけでございますけれども、これは、先ほどの所信表明の趣旨もまさにこれと同じであるというふうに理解してもよろしゅうございましょうか。
  145. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は開発の否定論者ではないのです。やはり日本は片寄った開発をいままでされてきましたから、もう少し均衡のとれた国土の利用ということが必要である。したがって、開発は進めなければならぬ面があるが、その開発というものが、いま御指摘になったような、環境破壊して、そうして自然の環境破壊しながら開発を進めていくという、開発第一主義者ではないということであります。  環境開発というものとを両立をさすために、政治家というものは英知を働かさなければならぬと考えておるわけでございますから、したがって、今後開発をする場合においては、環境保全というものを前提にしながら開発を進めていくという心がけが必要である。いまもそう考え、所信においてもそのような趣旨を述べておる次第でございます。
  146. 加藤進

    加藤進君 それで一つ具体的な問題をお聞きしますけれども、鹿児島県の志布志の問題ですね。これはもう周知のように、日本で有数の美しい海岸を数キロにわたって埋め立てるという開発計画が出されてきまして、これに対しては環境庁は、大石長官の時期にも、小山長官の時期にも、これは国定公園であるから、その指定を解除してそのような埋め立て計画をやらせるわけにはいかない、こういう立場から、公園の指定解除については断固としてこれを拒否して今日まで来ておられるわけでございますけれども、三木長官になられまして最初の質問でございますから、この点も確かめておきたいのでございますが、志布志については、従来以上の自然保護の決意のもとで、公園の地域解除などということはさせない、こういう御決意と判断してよろしゅうございましょうか。
  147. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 志布志湾の開発については、鹿児島県側においてもいろんな総合的な見地から練り直しておるということで、いまは開発計画というものが具体的に出されておりませんから、そういうことになりますから、やはり自然の環境保全しながら開発しようということで再検討されておるのだと思いますので、おそらく開発には、そういう環境保全ということを前提にした開発計画が出てくるものと私は考えております。
  148. 加藤進

    加藤進君 一言確かめておかなくちゃならぬのは、これは環境庁権限として、自然公園地域指定については、解除し、あるいはこれを解除しないという権限があるわけです。したがって私は、環境庁長官に、そういう場合に自然公園地域指定を解除するなどということは考えていない、この程度のことは、私は決意としてはっきりさせていただきたいと思います。
  149. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 原則としては、自然公園の解除というものはそんなに簡単にできるものではない。これは自然公園というものに対しては、その自然的な環境を守っていこうというのが基本的な環境庁の態度です。だから、具体的な問題については、そういう計画が出てきた場合にわれわれがどうするということを申し上げることが適当であると思いますが、原則論としては、容易に自然公園を解除するようなことはしないつもりであるというのが、基本的なわれわれの立場でございます。
  150. 加藤進

    加藤進君 もう少し確かめたいと思いますけれども、時間の都合上、前へ進みます。  長官も所信表明で指摘されましたように、環境庁が今日とっておる自然保護の姿勢について、相当きびしい批判が行なわれています。  その一つのあらわれは、去る二月八日の日に、全国自然保護連合が四カ所にわたって各地で集会を開きました。東京、大阪、札幌、新潟で開いたわけでございますが、この自然保護連合の集会では何が問題になったかといえば、環境庁が、開発という名で今日至るところで行なわれておる自然破壊に対して、本来守るべき任務を果たしていない、このことがきびしく指摘されています。決議の中には「環境庁は住民の側に立つという本来の姿勢に立直って、日本の自然を守るべきである」ということがいわれています。こういう点で、全国自然保護連合という自然保護団体の総意を結集したところでございますから、こういう総意を代表するこのような決議、環境行政に対する批判について、長官はどのように受けとめられるのでありましょうか。
  151. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 決議についての私のコメントを求められたわけですが、私は環境庁環境行政が後退したなどとは、毛頭思っていないわけでございます。  環境庁という一つの官庁は、常に住民の側に立たなければ、住民の支持と理解を得なければ環境行政はできないわけです。自然環境を守るといっても、末端の開発までわれわれが行ってどうこうせよというものではないわけです。だから、みなが自然環境を守っていこうという国民的な理解、合意、それにささえられなければ環境保全環境行政はできるものではない。政府だけの力ではとてもできるものではありませんから、そういう意味で、各地域でいろんな会合が行なわれて、自然の環境を守ろうという国民の声が、非常にほうはいとして起こっておる傾向を私は喜ぶものであります。  しかし、その中にある、本来の姿に返れということは、そういうふうには考えていないわけでございます。このわれわれの姿勢というものを後退したとも思っておりませんし、そういうことをわれわれは今後とも、いま申したような態度で貫いていきたいという考えでございます。
  152. 加藤進

    加藤進君 それではさらに質問を続けますが、昨年の十月三十一日、自然公園審議会が開かれたはずであります。この審議会に環境庁が諮問をした自動車道路計画というのは、どんな計画なんでしょうか。
  153. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 国立公園でございます大雪山における道路と、同じく国立公園でございます妙高高原のルートの問題、その他あと四路線につきまして諮問をいたしたわけでございまして、いま冒頭申し上げました二つの路線につきましては、当該審議会の計画部会におきまして結論が保留をされて、今日に至っておるものでございます。
  154. 加藤進

    加藤進君 いま言われたのは六路線でございましたか、その路線の中で、大雪、妙高、霧降の三つは、従来環境庁が発足されて以来、自然破壊のおそれがあるとして今日まで承認されなかった路線ではなかったのか。それが、その後一年余りたって環境庁として認可に踏み切られたという理由は、どういう理由なのか。
  155. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) いずれも環境庁といたしまして事務的に調査をいたしまして、その十月三十一日に諮問を申し上げました路線につきましては、一応事務的には、通しても自然破壊といったような面ではおそれがないのではないかという考え方から、事務的に調査をいたしまして諮問を申し上げたわけでございまして、ただその点につきまして、大雪山の場合と妙高の路線につきましては非常に問題があるということで、審議会におきまして、なおこれは継続して検討すべきであるということでございまして、霧降につきましては、これはやはり調査をいたしまして、その結果について、審議会といたしましては支障ないというような御意見でそのときにきまったものでございます。
  156. 加藤進

    加藤進君 私の聞いておるところによりますと、霧降の認可につきましても、ほとんど論議らしい論議は行なわれなかったというふうに聞いています。それから大雪山あるいは妙高については、従来も、このような重要な自然環境破壊してまで道路をつくるというなら、われわれのところも当然のことながら道路をつくるのがあたりまえじゃないかというような陳情が、どんどんと環境庁に来ておるという話も聞いております。ですから、そのために、審議会の開かれる前日、十月三十日には全国二十一の自然保護団体が連名して、環境庁に反対の意見書を提出したということであります。  いま長官が言われたように、自然を守るということが地域住民の協力と理解なしにできない、こういうことなら、なぜ、このような声を無視してまで、審議会にあえてこのような道路計画を承認せよと求められるのか。この点を私はお聞きしたいと思います。
  157. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 先ほど申し上げましたように、当時私どもといたしましては、この問題になりました道路につきましては、過去にいろいろ経緯がございまして、それの調査をいたし、また、そのような過去の経緯も考えまして、一応審議会の御意見を承るというようなことに踏み切ったわけでございます。  私どもは全般の方針といたしまして、今後の問題として、山岳道路、山岳における観光道路というものにつきましては、全体的に抑制をするというような考え方に立っておるものでございまして、個々の具体的な路線につきましては、先ほど申し上げました点は、非常に長い懸案事項になっておりまして、一応の結論といいますか、事務的な意味での結論をつけまして審議会におはかりしたわけでございますが、当審議会におかれまして、大雪については特に強い反対の御意見も多く、また妙高の問題についても、なお検討すべきものが多いと、このようにされておりますので、私どもといたしましては、今後十分に審議会の議も尽くしていただきまして、これをどうしても無理やりに通すべきであるといったような考え方は、現在持っておらないわけでございます。
  158. 加藤進

    加藤進君 私も審議会の内情について若干お聞きしておりますけれども、この大雪、妙高の道路計画については、委員の大半が反対であるということは、事前に環境庁としてもわかっていたはずであります。しかも、環境庁自身が、道路計画をぜひ通してほしいというので、反対の委員の間を回って説得に行かれたというのでありますけれども、こういうことは環境庁本来の任務なんでしょうか。環境庁は本来、自然環境保全のために尽くすべきが任務であって、道路計画を実行していくために委員の説得に走り回るなどということは、私は環境庁設置法第三条にも違反するような懸念があると思いますが、その点はどうでしょうか。
  159. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 昨年、審議会の計画部会におはかりをする前に、事前にそのような路線の御説明に各委員のところをお回りをしたということは、事実でございます。その際に、私どもといたしましては原案をこのように考えたということを御説明を申し上げたのでございますが、それは、環境庁案に対してぜひこれをやっていただきたい、そのとおりにしていただきたい、こういうような趣旨でお回りをしたわけでございませんで、この路線につきましては、当時新聞報道等におきましても、これについてのいろいろな意見が出、また各方面からもいろいろの意見が出ておりまして、そのようなことに対して、各委員から御説明を求められたというような向きもございまして、そのような御説明に回ったわけでございます。  しかしながら、結果といたしまして、事前にそのような点につきまして原案についての説明に熱心なあまり、それがあたかも審議会にこの道路をどうしても通してほしいというようなふうにとられたということにつきましては、結果としてたいへん遺憾に考えておるわけでございます。
  160. 加藤進

    加藤進君 そういうことで、霧降高原の有料道路はとうとう審議会をパスしたわけでございますけれども、ともかく大雪山、妙高の自動車道路については、継続審議、保留ということに現在なっておるわけでございます。  そこで私は長官にぜひお願いしたいのは、この大雪山をはじめとする、審議会に諮問をしておる自動車道路について、その諮問を撤回して、そしてこの道路計画についてはむしろ環境庁として中止を進める、こういうことが基本的な姿勢ではないか、こう思いますけれども、長官の所信はいかがでしょう。
  161. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま御指摘のように、審議会でもいろんな角度から見て、これに対する反対の意見も多いというわけでございますから、そういう意見を尊重して、もう少しやはり慎重に検討しなければいけない。しかし、一たん諮問をしたものを、私はいま取り消してしまうという考えはございません。しかし、審議会の中でいろんな角度から反対の意見があるという場合に、これを押し切ってやるという考えはないのでありまして、皆かいろんな角度から——これは評価についていろんな角度があり得ると思いますよ。自然というものは現状に少しも変更を加えていかぬとも思っておりません。しかし、それは自然の環境、あるいは動植物との関連もありましょうし、鳥獣・植物の生息の関係もあろうし、その自然環境との関連もあろうし、いろんな角度からこれは検討されなけれ臓ならぬわけでありますから、したがって、審議会の中に強い反対意見があるということは、その意見というものは尊重して、これに対しての軽率な決定を下すべきものではないと、かように考えております。
  162. 加藤進

    加藤進君 なぜこの問題が世論の大きな問題になったかといえば、言うまでもなく、自然公園内においては少なくとも政府の権限が及ぶ。そういう自然公園内において、このような自然破壊が今日もなお続いている。こういういわば現状に対する非常に深い憂慮から発しておる問題だと思います。  したがって、いま、検討をするということでございますけれども、その検討にあたっても、ぜひとも地元の自然保護の団体あるいは大学関係の学者、専門家、こういう諸君の意見を十分に尊重して、この問題についての最終的な結論を出す、こういうことだけはお約束できると思いますが、その点はいかがでしょうか。
  163. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 広く地域住民の意向というものを参考にして、きめる場合にはそれも参考にする。広く地域住民と申し上げておきたいのでございます。
  164. 加藤進

    加藤進君 それに加えて、自然保護団体や学者はどうですか。
  165. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それも、広く国民の意向という、広く地域住民の意向という中には、これは有力な意向の中に入ることは当然でございます。
  166. 加藤進

    加藤進君 続いて、長野県の国定公園内で問題になっておりますビーナスライン、美ケ原の問題について質問します。  これは四十六年の十月に、大石元長官が西沢長野県知事と会談いたしまして、まず第一に、和田峠と扉峠の間は、登山道を横切るとか、あるいは尾根を伝うような道路ではいけないけれども、ともかく自然破壊が起こらないような十分な配慮をもって進めるなら、という保留条件のもとで部分的な着工が認められた、こういういきさつは御存じだと思います。  そこでお聞きしたいのは、この和田峠−扉峠間の、いわゆる自動車道路の工事そのものについてでありますけれども、これがはたして環境庁と長野県当局との会談のように、自然破壊が行なわれなくしてともかく今日進行していると、こういうふうに御認識されるのかどうか。
  167. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 長野県当局に対しましては、この道をつけることにつきまして、和田峠−扉峠間における自然破壊の問題が生じないようにということで、十分な指導といいますか、指示をいたしまして、これをやっておるわけでございます。  ただ、現実の工事の結果におきまして、なお、その道路の区間についての土砂の流出の問題でございますとか、そういったような問題があるということにつきまして、地元の自然保護団体のほうから強い指摘を受けておるところでございます。万一そのようなことがありますれば、それにつきましては、これを可及的に復元といいますか、措置をとらせる考え方であります。  目下その工事が、工事の進捗段階にありますので、特別にそいったような点については、新しい道を開きます場合には、どうしてもそのような工事の中間段階におきましては、印象的に破壊の印象が非常に強くなるということ、これはある程度避けられない問題もあるかと思うわけでございますが、しかし、今後の措置といたしましては、できるだけそのような破壊につきましてはこれを復元をし、りっぱな道路として完成をさせたいと、かように考えておるわけでございます。
  168. 加藤進

    加藤進君 事実が証明しておるわけで、私は、ことばよりも写真記録によりまして、いま長官にその現場をお見せしておるわけです。おそるべき自然破壊ですよ。しかもこれが、環境庁と長野県当局との間で、自然破壊はいたしませんという合意のもとで行なわれた工事が、このような状態だ。これははっきり見ておかなくちゃいかぬと思います。しかも、そこにありますけれども、登山道はこれを横切らないという、そういう約束までできておるにもかかわらず、登山道はもう無残にも分断されています。  こういう状態をこのまま許しておいて、そうして自然環境破壊につながらないような開発なら認めますと言われてみても、その開発が、結果においておそるべき状態であるということを、私はこの問題がはっきり示しておると思うのです。この点をひとつ、今後とも十分に長野県当局に対しても警告してもらいたいと思います。よろしゅうございますか。
  169. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 先生の御指摘になりました歩道との交錯の点でございますが、私どもが長野県から聞いておるところによりますと、現在、道路の工事をいたしますためのパイロット道路が歩道と交錯をしておるということでございますので、これは道路完成の際には、この交錯の問題というものは解決をするというふうに考えております。ただ、全体の問題といたしまして、御趣旨に沿いまして、十分自然破壊の最終的に起こらないような形でもってこの道路を完成させたいと、かように考えておるわけでございます。
  170. 加藤進

    加藤進君 それはパイロット道路だから、本物の道路をつくるときには修復しますとおっしゃいますけれども、こんなに立ち木はどんどん枯れていく、こんなにもう土壌は崩壊する、こういう状況で、修復なんていうのはおよそ考えられない。これは土壌の状況もここにはあります、非常に脆弱な土壌なんですから。こういう状況のもとで美ケ原線が、いまや新しく路線を広げていこうと、こういう問題になっておりますから、事柄は重大だということを申し上げたいのです。  そこで第二の問題ですけれども、扉峠−美ケ原間の問題については、昨年十月二十日に環境庁の見解も出され、十一月の十日には長野県側に通告されたようであります。この内容は、どのような内容でございましょうか。
  171. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 扉峠から王ケ頭へ抜けまして松本のほうへ入っていくというこの路線計画が、従前の、現在ございます八ケ兵中信国定公園の計画路線になっておるわけでございます。その路線につきまして、扉峠から美ケ原の台上に至る、茶臼山の付近を通りまして美ケ原に至る路線が稜線の上を通っておるわけでございますが、その稜線部分を通ることは、自然破壊が非常に多いというような見解から、そこについては通すべきでないという点が一点でございます。  それからもう一点は、美ケ原に台状の地域がございますが、その地域はレクリエーションの地帯といたしまして、いわば車が、自然探勝あるいは台上のレクリエーションの徒歩による利用というようなことを妨げるおそれがございますので、台上につきまして、王ケ頭を通っていく路線は適当でない、台上については通すべきでないというのが第二点でございます。
  172. 加藤進

    加藤進君 ともかく、尾根筋を通ってはならない、それからまた高原台地を通るのも認めがたい、これが環境庁の正式の見解でございますね。  そこで私は聞きますけれども、そのあと、長野県当局から新しい修正ルートなるものがつくられて、この承認を求めてきておるようでございますけれども、この修正されたルートについての環境庁の見解はどうですか。
  173. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 修正されましたルートにつきましては、環境庁といたしまして、いまだ結論を得ておりません。これにつきましては、従前の稜線を通るという問題は一応避けてございます。  それから台地上の問題でございますが、従前のように非常に長い区間を台地上を通すというような問題は避けられております。  しかしながら、この新しい路線につきましても、さらに地元における自然保護団体あるいは一部の学者等におきまして、なお、この路線は適当でないと、こういったような御議論もございますし、私どもとしましては、それらの意見をも聞き、また、私どもの調査の結果も照らし合わせまして、慎重に検討いたしておる段階でございます。
  174. 加藤進

    加藤進君 この修正ルートといわれるものが、環境庁がここは通ってはならないという高原台地を通る。山本小屋付近を経て巣栗林道に結ばれるのは、これは台地上通過ですね。こういうことがもうはっきりわかっておる以上、なぜ環境庁は、これについてさらに検討を要するなどということを言われるのでしょうか。これもまた従来の方針から言うなら許しがたい。これは当然出てくる結論ではないでしょうか。
  175. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 昨年、台地上につきまして、これを通過すべきでないというような結論を出しましたのは、従前の計画路線につきまして、稜線上のほかに、台地上は、先ほど申し上げましたように、特に徒歩利用等による利用の妨げに非常になる。車が通行することによりますそういう被害が大きいというような判断で行なったものでございまして、この台地上については全然これを通過することはできないのだという、そこまでの結論を必ずしも出したものではございません。しかし、新しい路線につきましては、したがいまして、山本小屋から七百メートルぐらいの区間か今度の案としてもなっておりますので、その七百メートルの区間に確かに検討すべき問題があるということは、これはまた事実でございますので、このような点についてはさらに具体的に、ここを通すべきでないか、あるいは通してもさしつかえはいのかということを検討する必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  176. 加藤進

    加藤進君 きわめてあいまいもことするような結論になってきそうでありますが、私は、だからこそ一番最初に、環境庁長官自身にその所信をただしたわけでございますが、今日、自然保護局事務当局自身は、いまのような答弁で、なおかつ修正ルートは認める余地があるなどというようなふうに受け取り得るような言質を言われたわけでございますけれども、私は、この美ケ原の修正ルートなるものが、十一月十七日、長野県の自然保護審議会においても、何ら実地の調査も科学的な検討もしないままで、強行採決と言われるような異常な手続で承認を得たものであるということを、私は忘れてはならないと思います。このために、委員の中に、辞任をせざるを得ないとして辞任され、また、審議会に抗議書まで出されておるという事態を私たちは重視しなくてはならぬと思うのです。  しかもこの修正ルートなるものについて、私たちは、ただ自然保護団体の言い分がこうだというだけではなしに、科学的な調査の結果がまとめられてまいっております。これは長野県の信州大学の生物学校室等々の実地調査の結果でございますけれども、この中にはきわめて重大な自然の宝が存在する、もしこのような修正ルートが山頂近くを通るということになれば、おそらくこの地域における自然の様相は一変するであろうという警告を発しておるわけでありまして、こういう見解については、すでに自然保護局としましても、現地に行かれて十分に学者の意見は聞いてきておられるはずだと思います。  そういう全体の結論として、自然保護局、いやむしろ環境庁自体が、このような修正ルートは認めがたいという立場を明確にしてもらうということが、いま必要ではないか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、長官、美ヶ原線はもうこれ以上、扉峠以降のところは建設は取りやめるべきである、こういう立場に立った長官あるいは環境庁の積極的な対処が必要だと思いますけれども、その点の御所見を承りたいと思います。
  177. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 加藤さん、きょうも美ケ原の沿道ですか、それを取り巻く町村の町村長が大挙して来られて、この道路を認めてほしい、こういう陳情がありました。それで私が言ったのは、やはり自然の環境というものは一ぺん破壊するとなかなかもとへ返ってこないので、この問題についてはきわめて慎重に——独断でもいきませんからね、私の。いろんな専門家の意見も徴して、これは慎重に検討して結論を出すので、陳情にたくさんみえて来られたけれども、これは、ノー、イエスというようなことを申し上げることはできない、やはり決定の前にいろいろ事前に私は言わないほうがいい、と。  ただ、申し上げることは、自然の環境というものは一ぺん破壊するとあとへ戻らないということですから、きわめて山岳地帯の道路については私は慎重論者なんですよ。しかし、いま言ったように、どの道路も、山岳地帯に道路をつけてはいけぬという、そういう否定はできないと思います。現実的でもないと思います。しかし、自然というものはこわされたらあとへ返らないというこの事態から考えて、私はきわめて慎重な態度で、山岳地帯の道路というもの、自動車道路というものに対しては決定を下そうとしておる、このことだけは申し上げておきたいと思います。
  178. 加藤進

    加藤進君 最後に一つ。いま長官が言われたように、自然は破壊されたら二度と取り返しがつかない貴重な宝だと、この点を大前提に置いて、ひとつ自然環境保全のために環境庁は努力してもらいたいと思います。  特に、私はきょうは世論ということばを使いませんけれども、環境庁の長官のほうにもいろいろ陳情がきておられるようでございますが、私のほうにも相当の陳情がまいってきております。これをどちらの側で受けとめるかという問題になりますけれども、「信州毎日」が昨年の十一月段階で調査されました世論調査によりますと、長野県の県民の世論の大半はこのような計画に反対である。それから地元周辺の地域住民の世論もまた、四割方反対の立場に立っている。こういうことを正確に数学的にあらわしています。  私は、この世論の動向はきわめて重要なことであって、その心とするものは、何をおいても自然環境保全でありますけれども、同時に、この美ケ原を水源とする、いわば生活水がここに源を発するという問題がきわめて重要になってきておるのでありまして、このような水源地、上水道の危険、飲み水の危険までわれわれに及ぼすような環境破壊は許しがたい、こういう立場で今日地域の住民が運動に立ち上がっておる。こういう点を認識されまして、ぜひとも、慎重はけっこうでございまして、悪い決断を早くするなどということはしない、慎重にいい決断をする、こういう立場でひとつ善処してもらいたい。  この点だけお願いして、私の質問を終わります。
  179. 大矢正

    委員長大矢正君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時五十六分散会      —————・—————