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説明員(春日斉君) この問題につきまして大気保全
局長が答えるのが適当かどうか、これは先生の御指摘にも関連するわけでございます。いずれにいたしましても、これはその花粉が大気に運ばれて、アレルゲンとなって、いわゆる花粉症になる、花粉ぜんそくを起こすことによって先生御心配のいろいろな諸問題、
公害としての考え方も出てくるわけでございましょうが、大気で伝播されるという
意味で大気保全
局長が一応お答えを申し上げます。
どのぐらいこの帰化植物であるセイタカアワダチソウがわが国に分布しているかということにつきまして、
環境庁としては必ずしもその分布
状態についてはつまびらかにいたしておりません。ただ、御承知でもございましょうが、このセイタカアワダチソウと申しますのはキク科植物でございます。キク科植物でぜんそくを非常に起こす花粉症の
原因となるものは、ブタクサがございます。ブタクサの兄弟でございます、このセイタカアワダチソウは。ブタクサもこれは帰化植物でございます。しかもこれは北米及びカナダにおきまして、非常にぜんそくの
原因として昔から研究がなされておるものでございまして、兄弟分であるセイタカアワダチソウにもアレルギーを起こす非常な強い力があるであろうことは、容易に推察できるところでございます。
ところで、わが国におきます花粉症あるいは花粉ぜんそく——花粉症と花粉ぜんそくとは違うのだそうでございますが、いずれにいたしましても植物の花粉によって起こるアレルギー性疾患を考えてみますると、一番多いものは何かと申しますと、実は杉でございます。杉は東京や横浜みたいな都会地にはないであろうとお考えかもしれませんが、杉の開花期には日本
全国は杉の花粉でおおわれていると言っても差しつかえないというのが、植物学者の見解でございます。で、杉の花粉による花粉症、花粉アレルギーというものが第一。それから第二番目が、これもやはりキク科植物でございますが、ヨモギ、これが第二番。ただし、杉は御承知のとおり北方には少のうございますから、人によればヨモギこそわが国における花粉アレルギーの第一位に推すべきものだと言う方もいらっしゃいます。それから第三番目がブタクサなんかであろうといわれております。
これは一九七〇年の国立相模原病院のアレルギーセンターの研究の結果でございますから、かなり権威があるものと思いますが、その段階では、まだセイタカアワダチソウの話は
報告されておりません。しかし、先ほどから申しておりますように花粉アレルギーを起こすであろうことは十分に推察もされ、最近におきましては、それによるアレルギーを起こした、ぜんそくを起こしたという症例も発表されておりますので、これにつきましては、今後とも私
どもは注目していかなければならないものと考えております。
現在、国立相模原病院の気道系アレルギー性疾患、要するにアレルギーによって起こるぜんそく
患者のうち、約一〇%が花粉によって起こっているといわれておりますが、先ほど言いましたように杉が絶対多数でございます。
そういった問題がございまして、私
ども、しからばこの帰化植物であるセイタカアワダチソウ
対策をいかにすべきかという問題になりますと、これはブタクサの場合と同じであろうと思います。もっとも帰化植物だから悪いと申しますと、日本の植物の大半は帰化植物だそうでございますから、五十年前か千年前かの違いだけでございまして、帰化植物が日本には非常に多いということは当然であろうと思いますが、いずれにいたしましても、好ましからざるこの帰化植物とどうやって私
どもが戦うかということは、これは
環境庁だ農林省だ、あるいは厚生省だと言わないで、ともかく
発生源の除去ということ、すなわち大都市周辺にある休閑地をまずなくするというようなことが、セイタカアワダチソウとかあるいはブタクサというように地下茎が非常に長くて強靱な植物に対しては必要であろう。そうしてその休閑地に対しては、とりあえず他の植物でカバーしてしまうというような方策も必要でございましょう。
ただし人為的な防除として人力で引き抜くというのは、これは非常にむずかしい問題だそうでございます。根が非常にあるわけでございますから。またカナダあたりでは、非常にブタクサの花粉症に悩まされているところでは、確かに国家的な規模で
対策もお考えになっているようでございます。その場合は無料で
化学薬剤などの応用によって防除しているというようなことがございますが、しからば、わが国ではどうしたら一番いいかと考えてみますると、前例はすでにございます。
たとえば、ブタクサが中心な考え方でございますが、習志野にこういう条例がございます。「あき地に繁茂した雑草等の除去に関する条例」ということがございまして、そのうち第五条を読んで見ますと、「除草等の命令」ということで「市長は、あき地が危険
状態にあると認めたときは、当該あき地の所有者または管理者に対して雑草または枯草の除草、その他の危険
状態の除去に必要な
措置を命令することができる。」こういうようなことでセイタカアワダチソウあるいはブタクサ等に対処しておられる、こういうようなことも聞いております。そのほか世田谷あたりでも、いわゆるブタクサ
公害と称していろいろな御
指導をなすっておるようでございますし、それから草加等でも「草加市空閑地等に繁茂した雑草類の除去に関する条例」というようなものもおつくりになっておるようでございます。こういった総合的な問題としてこの帰化植物
対策と申しますか、ブタクサを含めたセイタカアワダチソウ
対策というものをやらざるを得ないのではなかろうかと思っております。
ただ、先生最初御指摘になったように、セイタカアワダチソウだけが、これが花粉症のもとになる、アレルギー性ぜんそくのもとになるというものではございません。実は最初申しましたように杉の花粉とかヨモギの花粉というような、あまり知られてはいませんけれ
ども、こういったものが非常に大きな役割りをしている。それからセイタカアワダチソウもその一つである。こういうふうに御理解いただければ幸いでございます。