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1973-11-09 第71回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十一月九日(金曜日)    午前十一時五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         森中 守義君     理 事                 金井 元彦君                 杉原 一雄君     委 員                 菅野 儀作君                 田口長治郎君                 原 文兵衛君                 安井  謙君                 加藤シヅエ君                 小平 芳平君                 沓脱タケ子君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        環境政務次官   坂本三十次君        環境庁長官官房        審議官      橋本 道夫君        環境庁企画調整        局長       城戸 謙次君        環境庁大気保全        局長       春日  斉君        環境庁水質保全        局長       森  整治君        厚生省環境衛生        局乳肉衛生課長  岡部 祥治君        厚生省医務局歯        科衛生課長    笹本正次郎君        通商産業大臣官        房参事官     高木 俊介君        通商産業省立地        公害局長     林 信太郎君        通商産業省基礎        産業局化学製品        課長       赤羽 信久君        労働省労働基準        局安全衛生部計        画課長      石田  均君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (派遣委員報告)  (化学工場周辺環境保全等に関する件)  (自然環境保全基本方針に関する件)  (公害及び環境保全対策樹立に関する件)     —————————————
  2. 森中守義

    委員長森中守義君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。  まず、先般本委員会が行ないました委員派遣について、派遣委員から報告を聴取いたします。杉原君。
  3. 杉原一雄

    杉原一雄君 森中委員長金井理事、君理事内田理事、沓脱委員と私は、去る十月十五日から十八日までの四日間、主として瀬戸内海地域公害発生状況とその対策について実情調査を行なうため、兵庫県、岡山県、山口県及び福岡県を視察いたしました。  十月十五日は兵庫県庁倉敷市役所倉敷市の松江公民館訪問、同公民館において松江地区集団移転問題について住民の切々たるなまの声を聞いてまいりました。  十月十六日は岩国市役所徳山市役所訪問東洋紡績岩国工場徳山ソーダ徳山工場を視察いたしました。  十月十七日は徳山湾洞海湾海水汚濁状況並びに八幡製鉄所戸畑工場を視察した後、福岡県庁訪問いたしました。  十月十八日は大牟田市役所訪問三井東圧化学大牟田工業所電気化学工業大牟田工場を視察いたしました。  以上が今回の調査の範囲の概要であります。  次に、今回の調査で問題と思われる七つの点を報告し、これに対する政府の善処を要望したいと思います。  第一は、倉敷松江地区集団移転の問題であります。  当地区は、水島臨海工業地帯東側に位置し、工業地帯王島山と呼ばれる丘を隔てて、丘の東側斜面から水田地帯に広がっております。王島山はかつて島でありましたが、幕末の嘉永五年に完成した福田新田により陸地となり、また南側昭和二十一年に着手された干拓によって陸地化されたものであります。  現在、松江地区は、東側南側石油化学工場に、西側は発電所製鉄工場に隣接しており、三方が工場地区に囲まれた状態となっております。松江地区地目別面積概要は、宅地約八ヘクタール、田畑約五十ヘクタール、山林、原野、雑種地約二十三ヘクタール、道路、水路、遊水地等約二十九ヘクタール、計百十ヘクタールとなっております。職業構成は、会社勤務農業貸し家等不動産経営複合世帯が七五%を占めております。  次に被害状況でありますが、倉敷市が独自で実施しております特定気道疾病認定患者数は全体で六百七名でありますが、そのうち四百名は水島地区患者であります。そのほか悪臭、騒音、工場爆発の不安、振動、閃光等生活環境の悪化が顕著であります。農業被害は、イグサ、ミカン、スイカ、稲作等に特に顕著に見られます。  集団移転に対する住民意思につきましては、当地区約二百六十世帯意思はほぼ全員移転の線で固まっております。集団移転の機は熟しているといえます。  当面する問題といたしましては、農地等の買い上げなど財政負担の面がネックになっておりますので、公害防止事業費事業者負担法適用による公害防止事業として集団移転事業を実施する必要があります。さらに、公害防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置法適用の面でも、最近のコンビナート事故多発等にかんがみ、政令を改正するなど前向きに検討する必要があります。  松江地区のほか、水島においては呼松、高島の両地区住民からも移転の希望が出されておりますが、両地区ともまだ全員意思が結集するに至っておりません。これらの個別移転に対しても何らかの措置が必要であります。  第二は、岩国湾PCB徳山湾水銀問題であります。  岩国湾につきましては、過去において東洋紡岩国工場から〇・五トンのPCBが流出したものと見られております。山口県と水産庁が共同発表した精密調査によりますと、イダ、ボラ、コノシロ、タナゴなどに暫定規制基準をこえる汚染魚が検出されております。  漁業補償といたしましては、東洋紡から周辺漁業組合及び仲買い人など八団体に総額約八億円が支払われているほか、岩国湾でとれた魚はすべて東洋紡が買い上げております。全魚種約五百トン、二億円にのぼっておりますが、現在もまだ毎日約四トン、四百万円相当の魚を東洋紡工場内につくられましたコンクリートピットに埋めるとともに、悪臭をとるためボイラーで焼却脱臭を行なっております。  工場内では現在はPCBは使用されておらず、すべてKSK330に切りかえられております。  ヘドロにつきましては、現在、東洋紡が港内の専用泊地内で、上から深さ約五十五センチまでのヘドロ約二万立方メートルを吸い込み方式でしゅんせつ中でありました。しゅんせつしたヘドロは、工場内に設けられたしゅんせつ池に入れ、海水PCBが検出されない状態にして再び海に戻しておりました。  地元からは、岩国湾ヘドロ調査を国が早急に実施すること、国のしゅんせつ基準一〇〇PPM以上を、九〇PPM以上とすることなどの要望が出されました。  次に徳山湾水銀問題であります。徳山湾には約六・五八トンの水銀が流出したと見られており、ヒイラギ、スズキに暫定規制値をこえるものが検出されております。現在は湾内での漁業自主規制により停止しております。漁業補償といたしましては、東洋曹達が四漁協徳山曹達が二漁協、両者合わせて六漁協約五百世帯に対しまして、毎日一世帯当たり一万円を支払っております。  徳山曹達徳山工場は、本年六月十六日より水銀を含む電解設備をクローズドシステム化しております。水銀法から隔膜法への転換完了は五十一年三月になるとのことでありましたが、できるだけ早い時期に転換が完了することが望まれます。水銀を含む塩水マッドにつきましては、二次公害の起こらないよう万全の対策が必要です。  徳山湾水銀問題の抜本的解決策水銀ヘドロを除去することであります。山口県の報告によりますと、上から深さ二十ないし三十センチの上層部分ヘドロ水銀が一番多く蓄積されております。政府としては、底質調査に万全を期するとともに、早急に除去基準を示し、二次公害の起こらないような安全な工法を開発する必要があります。  第三は、響灘海域埋め立て問題であります。  山口県の赤潮によるハマチなどの養殖被害の主たる原因は、福岡県側の響灘海域埋め立てであると山口県は主張しております。この問題につきましては、山口福岡両県は県際協議会を開いて調整に努力しておりますが、両県とも別々に実施した水質調査の結果を主張して譲らず、調整は難航しております。  すでに響灘地区において五百八十ヘクタールの埋め立て地を造成中でありますが、これから出される新規の公有水面埋め立て免許申請につきましては、瀬戸内海環境保全の見地から十分配慮する必要があります。  第四は、洞海湾ヘドロしゅんせつ問題であります。  北九州港管理組合は、洞海湾浄化対策の一環として四十七年度と四十八年度にわたり、水銀三〇PPM以上を含むヘドロ約三十五万立米しゅんせつ公害防止事業として進めております。現在、しゅんせつ汚泥を捨てる西八幡船だまりの締め切り工事が進行中であります。この事業費は十八億円でありますが、その負担割合事業者負担七一%、公共負担二九%となっております。  問題点といたしましては、まず第一に、二次公害防止に万全を期する必要があります。施行中のヘドロの二次拡散しゅんせつ池から余剰水として吐き出す海水中の有害物質拡散等に対しては、洞海湾の入口に監視体制をしき、常時監視をする必要があります。  しゅんせつすべきヘドロは約三百五十万立米あるといわれているが、第一次分はその十分の一の三十五万立米にすぎません。全体を何年計画で処理するのか、全体の年次計画を早急につくる必要があります。  水質につきましては、本年六月の県の上乗せ排出基準設定等によりCOD負荷量が減少しつつある結果、従来魚の住まなかった洞海湾に魚が住むようになっております。このため、洞海湾から出た魚が回遊して捕獲されるなどの危険性が生じております。  第五は、大牟田川のしゅんせつ等の問題であります。  現在、五十年八月を目途に、大牟田川流域の三井東圧ほか六工場共同排水処理施設が建設中であります。将来は企業大牟田川への排水を禁止するとのことであります。  ヘドロ処理につきましては、来年度から県の公害防止事業として、大牟田川にあっては、水銀等有害物質タール等を含むヘドロ約二万八千立米大牟田港にあっては水銀カドミウム等を含むヘドロ約五十四万七千立米目途としてしゅんせつを実施する等の計画が立てられております。まだ企業負担割合がきまってないそうでありますが、早急に計画を詰める必要があります。  しゅんせつに当っては、大牟田川河口のノリの養殖被害を及ぼさないよう万全を期すべきであります。  三井東圧化学大牟田工業所水銀排出量につきましては明確でありません。会社側に過去の記録が完備していないため、数値の上で県の説明と食い違っております。政府においてはその数値につき正確に把握すべきであります。  第六は、兵庫高砂市の鐘淵化学高砂工場でのPCB焼却問題であります。  同工場において約七千トンのPCBを焼却する計画であります。現在の技術では、全部焼却いたしますと、約十二キログラムのPCBが空中に出るものと推定されますため、焼却するのを県のほうで押えております。政府におきましては安全な焼却技術を一日も早く開発すべきであります。  第七は、瀬戸内海環境保全試験研究機関設置要望環境庁機構強化の問題であります。  瀬戸内海赤潮発生の解明、赤潮防止技術開発環境への影響を事前に評価する手法の開発など技術的な問題を一括して研究する国の機関設置に対して山口県等から強い要望が出されております。  また、瀬戸内海環境保全特別措置法が十一月二日から施行になった結果、COD負荷量を四十七年度の二分の一程度に減少させること、埋め立て許可等の面で関係府県調整を円滑に行なう必要がありますので、瀬戸内海地域に関する環境庁機構を一そう充実強化する必要があります。  以上、簡単でございますが、報告いたします。  なお、関係県、市から出されました要望書等を別途報告書として会議録末尾に掲載いたしたいと存じますので、委員長がよろしくお取り計らいくださるようお願いいたします。
  4. 森中守義

    委員長森中守義君) ただいま報告がございました杉原君から別途報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録末尾に掲載することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 森中守義

    委員長森中守義君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  6. 森中守義

    委員長森中守義君) 次に、化学工場周辺環境保全等に関する件について通商産業省当局から報告を聴取いたします。林局長
  7. 林信太郎

    説明員林信太郎君) 御報告を申し上げます。  最近、石油化学コンビナート等におきまして事故が続発し、付近住民をはじめ各方面に多大の不安と御迷惑をかけておりますことは、まことに申しわけなく存ずるところでございます。  通産省といたしましては、かねてから事故原因究明はもとより、鋭意事故防止のための対策をとってきたところでございますが、かかる状況にかんがみまして、後ほど御説明申し上げますように、全国通産局に都道府県の参加を得まして化学保安対策本部を緊急に設置し、全国約三千の化学石油工場安全点検を実施することといたしました。  本日は、最近におきます石油化学コンビナート等におきます主要な事故につきましてその概況を御説明いたしますとともに、通産省といたしましてとっております対策について御報告いたしたいと存じます。  まず、十月八日のチッソ石油化学事故について御説明申し上げます。  チッソ石油化学五井工場ポリプロピレン製造装置におきまして、停電事故発生し、このため緊急シャットダウンを行なっていたところ、第六プロピレン重合槽下部バルブが何らかの理由により開き、大量のガスが噴出し、午後十時七分ごろ着火爆発に至り、死亡四名、重軽傷者九名という大事故となりました。  また、事故原因究明につきましては、当省に設置いたしました事故調査委員会において調査中であり、近々結論が出る予定でありますが、事故原因といたしましては、誤操作が直接の原因と考えられております。  なお、本件事故につきましては、通産省といたしましては直ちに現場専門官派遣いたしますとともに、千葉県庁を通じまして同工場に対して、万全の保安対策が確立されるまでの間操業停止を命じた次第でございます。なお、会社といたしまして付近住民に対しますお見舞い等につきましても万全を期するよう、強力に指導いたしてまいりました。  次に、日本石油化学浮島工場事故について御説明申し上げます。  去る十月十八日、合成ゴム中間原料であるエチリデン・ノルボルネンの製造装置におきまして、冷却用コンプレッサー点検修理のためシャットダウンを行なっていましたところ、何らかの原因により反応槽内の圧力が上昇し、午後三時二十分ごろ原料ガスが漏洩し、着火火災となったものと推定されております。この事故におきまして従業員二名が死亡し、二名が負傷いたしております。  この事故につきまして、通産省といたしましては直ちに現場専門官派遣いたしますとともに、神奈川県庁を通じ、同装置につき操業停止を命じたところでございます。  なお、事故原因につきましては、現在なお究明中でございますが、一昨日、事故発生した反応槽に残留していましたガスの抜き取りを完了し、現在内容物を分析中であり、さらに十二日、槽を開放して詳細に検査を行ない、事故時の反応状況が解明され、事故原因の推定が可能になろうかと思います。  なお、本件事故について浮き彫りにされましたことは、新技術開発とそれに対する保安対策の問題でありまして、この問題につきましては、新設備運転が軌道に乗るまでの間は技術スタッフ運転を担当するなど当面の指導を行なっておりますが、なお抜本策につきましては、高圧ガス等保安審議会の場においても検討することといたしております。  最後に、信越化学工業直江津工場事故について御説明申し上げます。  十月二十八日午後三時三十分ごろ、塩化ビニールモノマー分留塔付近からモノマーガスが漏洩し、爆発火災に至り、火災は四十五時間継続し、三十日午後一時ごろ完全鎮火に至りました。  人的被害といたしましては死者一名、負傷十七名であり、特に今回の事故は、付近民家等第三者に対しましても被害を及ぼしたという意味におきまして、まことに遺憾にたえないところでございます。  通産省といたしましては、直ちに東京通産局長を長といたします調査団現地派遣いたしますとともに、新潟県を通じ全面的な操業停止を命じた次第でございます。  事故原因につきましては、当省に直ちに事故調査委員会を設け、私も同行いたしまして現地調査を行ない、その原因を鋭意調査中でございますが、塩化ビニール樹脂製造設備中のストレーナー、これは來雑物の除去装置でございますが、これの清掃作業中、通常不可とされております補助てこを使用してバルブ締め増しを行なったところ、バルブの一部が切損いたし、モノマーが噴出して着火爆発に至ったという見方が有力でございます。  また、私及び東京通産局長は、県庁頸城村村長上越市長訪問いたし、おわびを申し上げますと同時に善後策について所見を伺ってまいりました。  以上が最近におきます石油化学コンビナート等におきます事故概要でございます。  通産省といたしましては、このような一連事故に関しまして、事故企業責任者を直ちに招致し厳重な警告をいたしますとともに、被害者に対する十全の措置をとるよう指導いたしてまいっております。なお事後処理につきましても、本省専門官派遣、県・市町村等との緊密な連携等措置をとってまいりました次第でございます。  また、出光石油化学チッソ石油化学及び信越化学等事故につきましては、各界の権威者参加を得まして事故調査委員会設置し、事故原因究明改善措置の確立を進めておりますほか、事故絶滅を期するため、次のような防止対策を鋭意実施しております。  出光石油化学事故にかんがみ、全国エチレンセンターに対し、総点検を実施し、その結果を踏まえ、関係府県を通じて個々エチレンセンターについて保安管理体制強化教育訓練の充実、マニュアル類の整備、保安設備防消火設備の増強などの指示をいたしますとともに、それに沿って具体的な改善措置をとらせ、かつ報告させることといたしました。また、その他の企業に対しましても、出光石油化学事故原因について秘密にわたる諸事項につきましてもこれを公開させ、これを教訓として生かし、またエチレン点検の結果を参考として保安対策に万全を期するよう通達いたしました。  また、エチレンセンター保安距離につきましては、新増設の場合は高圧ガス設備から一般民家に接する境界線まで二百メートル以上、既設の場合は、原則として少なくとも高圧ガス設備から一般民家まで百五十メートル程度をとらせることとし、すでに所要の指導通達を行なっております。  去る十月十九日には、通産大臣化学石油関連業界首脳本省に招致し、増産よりも安全第一の基本的な考え方を再確認し、社長みずから安全対策陣頭指揮をとること、人材の投入など現場重視をはかることなどを直接指示するとともに、今後過失や怠慢により大きな事故を起こした企業については、新増設の場合に考慮していく旨を表明し、保安対策につき強い姿勢を示したところでございます。なお、このような大臣指示を受け、化学石油関連企業に対して直接事務次官名をもって、保安にかかわる改善措置を早急に樹立し、通産省あて文書報告するよう通達を出したところでございます。  去る十月下旬に実施されました高圧ガス危害予防週間におきましては、各コンビナートにおいて臨時に共同防災訓練の実施、緊急時を想定いたしました札掛け演習などを実施せしめたところでございます。  この際、保安確保に万全を期するため、全国通商産業局化学保安対策本部設置し、一般高圧ガスを製造する全事業所約三千に対し、百三十にわたります詳細な項目について安全点検を実施するとともに、これに沿って必要な改善指導を行なうことといたしました。また、この保安点検及び指導を有効かつ適切に実施するため、各通産局が外部の学識経験者等から構成いたします化学保安調査指導委員会設置することといたしました。  さらに、現在高圧ガス等審議会におきまして「今後の高圧ガス保安体制あり方」を審議しているところでございますが、コンビナートにおきます保安あり方に関しましては、同審議会の中に特別に設置されましたコンビナート保安分科会において集中的、専門的審議を行ない、コンビナート保安抜本対策について可及的すみやかに結論を得ることといたしているところでございます。
  8. 森中守義

    委員長森中守義君) ただいまの林立地公害局長事故報告に対し、それぞれ御発言があればお述べいただきたいと思います。  林局長、実はきょう事柄が非常に重要ですので大臣もしくは政務次官出席を求めたのです。これはあなたから特に伝えてほしいのですが、大臣出席できないという理由及び政務次官出席できないという理由は、いずれも私的な用のために委員会出席できない、こういう連絡を受けています。ですから、担当の局長説明あるいは報告を決してうとんじているというそういう受けとめ方はいたしませんけれども、やはり事情事情ですから、こういう事案を委員会から通告を受けた場合には、万難を排して大臣もしくは政務次官は、ことに政務次官は複数になっておるはずですから、いずれかの政務次官が必ず出席をされるように、この機会に特に通産省委員長から警告を発しておきます。
  9. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 関連して。これは要求をしたいのですが、いまの御報告はたいへん重要な報告なんですが、ああいう報告ではちょっと捕捉しがたいんです。ですから、文書にしてでも報告書をいただきたい。
  10. 森中守義

    委員長森中守義君) よろしゅうございますか。
  11. 林信太郎

    説明員林信太郎君) ただいま私が申し上げました御報告文書で提出する件でございますが、提出させていただきます。
  12. 森中守義

    委員長森中守義君) 私から二、三問承りますが、いまの御報告を聞いておりますと、十月八日のチッソの五井工場、十月十八日の日本石油、それから十月二十八日の信越化学工業直江津工場、この三件にとどまったようですね。しかし、私どもの手元に提出をされた報告からいっても、四十八年に入ってからだけでもあと十四件ある。十月に入ってからでも九件あります。こういうのはどうして報告しないのですか。内容を見れば人的な被害があったものを主として報告されたようにも見受けるのですが、しかし、人的の被害があるなしにかかわらず、世間を騒がせたという事実に変わりはない。当然、発生をした事故については報告されてしかるべきだと思うのですが、どういう意味ですか。
  13. 林信太郎

    説明員林信太郎君) 別途資料の「石油化学コンビナートにおける過去一年間の高圧ガス事故概要」という文書で、ごく概要を整理いたしております。したがいまして、このうちの、ただいま委員長から御指摘の死亡事故のございました分につきまして、時間の関係も判断いたしまして報告申し上げたつもりでございますが、もし必要でございますれば個々のことについて御説明申し上げる用意はございます。
  14. 森中守義

    委員長森中守義君) これは私ども長年ここにいまして、たとえば航空機事故であるとか、あるいは列車事故であるとか、一連の人命が損耗されたような事故あるいは社会的にきわめて重大な事故等につきましては、各省庁は必ずそれぞれの事案をきちんと整理しまして、文書によって報告してくるものですよ。ですから、いまの御説からい、きますと、その必要があるなしというのでなくて、メモを出してあるからいいじゃないかというようなことではちょっと委員会としては承知しがたい。それで、一連事故が十月から急速連続したというところに問題がある。その中を、人的な損耗があった三件だけをピックアップして報告されるというのは穏やかじゃないですよ。全部整理をして出された中で、この三件についてはことに口頭の報告が必要だという場合には、いまの話も通りますがね。どう考えてみても、通産省の連続する爆発事故に対する姿勢、国会に対する責任のとり方、適当とは思えません。よって、このことはあらためてもう一回、大臣もしくは政務次官出席を求めて詳細に報告を聞き直したいと思う。そのおつもりでおってもらいたいと思います。  それから、ちょっと内容として聞きますが、先ほどお述べになった調査委員会というのは、これが一体どういうことであるのか。  それから、それぞれの事案が、なるほど走り書きで事件の発生工場及び経過、結果というものが述べられていますが、この中で事件の真相が追及されて原因が確定したものは、十六件のうち五件だけが原因が確定したものとして報告されている。それから推定が五件、あとは目下調査中、こういったように分類されるんですね。これは、たとえば宇宙空間等で発生した事故のような場合、なかなか確定原因を追及することは困難だと言われておりますが、ある程度物理的に追及できる、原因の確定ができる私は可能性があると思う。それなのに、報告された中では推定でみな切られている。「思われる」というようなことなんですよ。この辺のところに、その調査をどういう段取りで調査されるのか、調査自体の責任の所在、こういうものがどうしても合点がいかない。そのくらい化学工場というものは、原因を突きとめることに推定でなければ結果が判明しないという、いいかげんなものですか。おそらく確定的な原因が追及されるのが正しいと思うのですけれども、どういうことですか。
  15. 林信太郎

    説明員林信太郎君) 初めに御指摘をいただきました文書によって報告する件、別途資料でお配りしております一件ごとに、文書で整理をして報告申し上げます。  それから調査委員会の点でございますが、事故原因を的確に科学的に究明するために各界の、たとえば化学、あるいは化学反応、あるいは装置、あるいは計装、あるいは保安体制、あるいは安全工学それから消防、こういった各方面の一流の専門家からなります調査委員会通産省が委嘱いたしまして、それが現地調査及び科学的なあるいは資料によります調査等を総合いたしまして、原因を徹底的に究明いたします。同時に、そういった事故防止するための万全の改善策についても検討いたします。そういう形のものとして調査委員会をつくっておるわけでございます。  ただし、調査委員会をつくらない事故が御指摘のようにございます。これにつきましては、実はこの高圧ガス取締法の許可権限は府県知事が持っております。で、府県知事のところで責任を持って原因追及をいたしますという県が幾つかございます。そういった場合には、私どもはそのやり方、あるいはスタッフ、工法等を聞きまして、これならばだいじょうぶという判断をいたしました場合に府県にまかせることにいたしております。そして必要に応じて本省あるいは本省が委嘱して専門家の協力を得る、こういう形にいたしております。  それから事故原因につきましての御指摘は、まことに委員長の御指摘のとおりでございまして、確定、推定、調査中というふうな形になっておりまして、これは府県からの報告を整理いたしまして、私のほうでそのままこういう記述をしたわけでございます。府県の段階でそういう形になったわけであります。  一体、推定とかあるいは相当な期日がたってなお調査中というふうないいかげんなことでいいのかという御指摘でございますが、いま委員長が御指摘のように、あくまで科学的に推定し得るものというふうに考えております。必要に応じまして本省が府県と相談の上で、各界の権威者の協力を得て確定的な原因追及になお努力をいたしたいというふうに考えております。
  16. 森中守義

    委員長森中守義君) それから高圧ガス等審議会というのがすでに設置されているのですね。これは法定審議会ですか。そこで、この高圧ガス等審議会というものが爆発工場の全体に当てはまる審議対象であるかどうかは私もつまびらかにわかりませんけれども、現存するこういう審議会が、保安、安全のためにどういう議論をやっているのですか。
  17. 林信太郎

    説明員林信太郎君) 第一点の審議会が法定かどうかでございますが、高圧ガス取締法に基づきます法定審議会でございます。  それからカバーする範囲が爆発全部かという御指摘でございますが、高圧ガス工場は全部対象になっております。これから漏れます大きな分野は消防法の対象になる分野でございます。  それから第三点の高圧ガス等の審議会におきます審議事項は、事故防止するための技術基準、それから設備間距離、保安体制、教育訓練、それから特に事故時の措置、それからコンビナートになりますと広域になりますので、広域共同防災組織、それから特に地震に対しましてどういう設計をするか、こういった事項が主要な検討項目でございます。
  18. 森中守義

    委員長森中守義君) できるならばこの委員のメンバー、それから単年度ごとに何回ぐらい、どういう案件を中心に審議会で議論をし、どういう答えを出しているのか、それが行政にどのように反映をしているのか、一連審議会内容をひとつ報告していただきたい。  それからさっきの説明で、大臣通達を出して報告書の提出を求めたと、こう言われるのだが、大臣通達の全文及び報告書がまとまったならば報告書の提出をしてもらいたい。よろしゅうございますか。
  19. 林信太郎

    説明員林信太郎君) 御指示のとおりいたします。
  20. 森中守義

    委員長森中守義君) それと、事故調査委員会というのをもう少し詳細に説明してください。
  21. 林信太郎

    説明員林信太郎君) ことしの七月七日の出光の事故が、御案内のように……。
  22. 森中守義

    委員長森中守義君) つまり、私が聞いているのは、通産省の中のこういう化学工場等の事故調査委員会というものば法定委員会なのか、あるいはそのつど事故発生のたびごとにつくるものなのか、恒常的につくるものなのか、その辺を聞きたい。
  23. 林信太郎

    説明員林信太郎君) 事故が起きましたそのつどつくるものでございます。
  24. 森中守義

    委員長森中守義君) そうすると、メンバーはそのつど委嘱をするのですか。
  25. 林信太郎

    説明員林信太郎君) そのとおりでございます。爆発事故の態様が非常に変わりますので、その態様に即したような形で適切な人選をいたしてメンバーを構成しております。
  26. 森中守義

    委員長森中守義君) 主としてどういう範囲から、たとえば専門家と言われても、大学の教授であるとか、あるいは通産省の担当官であるとか、どういう範囲から委員を選ぶのですか。
  27. 林信太郎

    説明員林信太郎君) ほとんど大部分大学の先生あるいは高圧ガス保安協会という特殊法人がございますそこの専門家、あるいは通産省に工業試験所が、技術関係の研究所、試験所がたくさんございます。そこにおきます専門家をメンバーにいたしております。企業からは入っておりません。
  28. 森中守義

    委員長森中守義君) それと、いま一つは操業停止ということがさつき言われておりますですね。これは原因究明されて確定するまで操業停止をやるのですか。それとも一定の時間経過して、原状回復したならば操業開始ということになるのですか。どういう措置をとるのか。
  29. 林信太郎

    説明員林信太郎君) 操業停止は、知事が事故がございますとかけるたてまえになっておりますが、緊急のときには通産大臣がかける場合もございます。したがいまして、ほとんどの最近の事故の場合には、先ほど御報告申し上げましたように、私どものほうの専門家あるいは通産局長等を出しております。で、現地に参りましてすぐ操業停止をかける、県のほうも担当部長とか課長が参りまして操業停止をかける、こういう形になっております。  それで、操業停止をどういう形で解除するかでございますけれども、あくまで事故原因究明され、それから安全が確実に確保されて、これならだいじょうぶだという段階で知事がやることになっております。その際、必要に応じまして本省指示を仰いでまいります。私ども事故が複雑であり改善事項が多岐にわたるようなケースにつきましては、ただいま問題になりました事故調査委員会の中立的な専門家の意見を伺って判断することにいたしております。
  30. 森中守義

    委員長森中守義君) それでは、この件につきましてはもっと法令の整備であるとかいろいろお尋ねしたいことがたくさんありますから、後刻もしくは後日に譲ることにいたしましょう。しかし、しばらく出席していてください。     —————————————
  31. 森中守義

    委員長森中守義君) 三木長官が見えましたので、この際、発言を求められておりますので、これを許します。三木長官。
  32. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 十月二十六日の閣議で自然環境保全基本方針を定めましたので、これは資料としてもお配りをしてございますが、この機会に基本方針の大綱を説明させていただきます。  一つには、自然環境保全基本方針は、自然環境保全法の第十二条に基づいて、日本全国の自然環境をどのように保全していくかについての基本的な構想と自然環境保全施策の基本的事項を定めるものであります。  二つには、第一部の基本構想においては、自然を構成する諸要素間のバランスを維持しなければならないとの観点から、必要に応じて人間活動をきびしく規制する方向で社会経済制度全般にわたる総合的な施策を展開しなければならないこととし、自然環境保全政策としては、将来に禍根を残すことのないよう先取り的なより積極的な姿勢で、残された自然を守るだけでなく、進んで自然環境を共有的資源として復元、整備していく必要があることを強調しております。  続いて、当面の施策としては、一つ、国土に存在する多様な自然を体系的に保全すること、二つ、大規模な開発にあたっては必要に応じた事前の環境影響調査を実施すること、三つ、自然環境保全にかかる研究調査を促進すること、四つ、環境教育を積極的に推進するとともに、自然に対する愛情とモラルの育成につとめること、五つ、自然環境保全の見地から野外レクリエーション政策の調整をはかる等を掲げているものであります。  第一部の結びとして、土地の持つ公共的性格の重視等について勇断を要すること、並びに自然の恵沢の享受と保全に関し、受益と負担の両面にわたっての社会的公正を確保しなければならないことを述べております。  第二部は、原生自然環境保全地域、自然環境保全地域及び都道府県自然環境保全地域の指定と保全施策、並びにこれらの地域と国立公園等他の自然環境の保全を目的とする法律に基づく地域との調整について、その基本的な事項を定めるものであります。     —————————————
  33. 森中守義

    委員長森中守義君) 次に、公害及び環境保全対策樹立に関する件を議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います。
  34. 小平芳平

    ○小平芳平君 この石油化学工場の件につきましては、委員長からあらためてまた大臣出席を求めてという御発言もございましたので、私もあらためてまた質問いたしたいと思います。  この際、一点だけ局長に伺っておきたいことは、先ほど来委員長が御指摘になったように、十月になってから多発していること、あるいはこうした多発していることを局長はきわめてまとめてやってしまっているというようなことが問題だと思うのです。あらためて大臣から出された通達文書で出していただけるということです。ただ速急に、私たちが最大の不安と思うことは、一体今後安全がほんとうにとられるのかどうか。一方では物不足ということがある。一方では量産よりも安全第一とさっき報告しておられましたが、結局町の声としては、市民の感覚としては、そういうような物不足等を理由とした生産が先行して、環境保全とか安全というようなことが二の次、三の次になっているのではないかということを感ずるのですが、これからはほんとうにだいじょうぶなのかどうか。いかがですか。
  35. 林信太郎

    説明員林信太郎君) ただいま小平先生から御指摘の点は、私どももかねてから深く注意をしておった点でございまして、ただいまの大臣が業界の首脳を集めてなさいました警告の中にも、冒頭に、生産増強よりも安全優位という方針、基本的な方針を明確に確認をしておられます。私ども省内あげまして、生産担当の局もございますけれども、何はともあれ安全が大前提であるというふうな趣旨で今後の通商産業政策全般を展開することにいたしております。したがいまして、先ほど大臣警告の中の一項にございましたように、過失だとかあるいは怠慢等によりまして大きな事故を起こしました企業につきましては、その新増設につきまして考慮する、場合によってはその削減とか延期だとかというふうないろいろな問題を考慮するぞということをはっきり表明された次第でございます。この一点によりましても、通産省あげまして、生産よりも安全に優位を置くという姿勢を明確に表明しておるのではなかろうかと存じておるところでございます。
  36. 小平芳平

    ○小平芳平君 その点についても、新増設のときには考慮するぞという、そういうことしかできないのですか。量産よりも安全が第一だということを一方で言いながら、新増設のときには考慮に入れるぞということ。そうすると、現に運転されているものの安全なり危険度というものはどうなんですか。
  37. 林信太郎

    説明員林信太郎君) ただいま私が申し上げました新増設の際に考慮するというのは、ごく一例でございまして、安全対策全体といたしましては、まず企業内におきます自主的な保安意識の高揚が第一でございます。そのためには社長が陣頭指揮で安全確保に万全の措置をとれという注意を大臣直接されております。その方法といたしまして、社長直属の安全対策本部を設けるとか、安全だけに限定した全生産のプロセスを点検するとか、あるいは安全だけを目的にした技術研究所をつくるとか、こういった措置を早急に考えるように指示がなされております。  さらに現場重視という点も強く強調しておられまして、これは事故が起きます形といたしましては、操作の過程で起きるわけでございますので、直接的には各操作に当たります職員の保安意識、あるいは事故時の場合の措置がきわめて重要なことになってくるわけでございます。特に最近、御指摘のような事故状況をずっと帰納的に見てみますと、停電とか、あるいは休日明けとか、あるいは修理だとか、あるいはシャットダウンしたあととか、あるいは再開いたします前とか、こういうふうに運転が通常でないときに事故が集中しておるような傾向が見られます。そういったときに、状況に対しまして特に重点的に火急に手当てをするような指導もやってまいっております。たとえば事務にあがった人をもう一ぺん現場に戻ってもらうとか、あるいは監督者、管理者がいま申し上げましたような状況が予想されますときに現場にずっと立ち会っているとか、それで仕事のプロセスを通じて一対一で安全確保の方法を教えるとか、こういった指導も強力にやっているところでございます。
  38. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、この件につきましてはまた資料御提出の上で続けたいと思います。  私は、最初に御質問いたしたいのは、渡良瀬川流域の土壌汚染についてであります。この点については環境庁が十月九日に発表されております。それで、この渡良瀬川流域の土壌汚染、その原因はどこかということは確定いたしましたか。
  39. 森整治

    説明員(森整治君) 先般行ないました渡良瀬川の水質調査等によりましても、ダムに堆積されております銅その他の物資が洪水等のときに攪拝されまして、相当降雨時に流出をしておるという結果が出ておりまして、それの負荷量等を調べてみますと、有越沢とか庚申川の堆積場を中心とする、そこに対する保全対策を必要とするということになっております。したがいまして、そういう点から考えまして、これらの地域に対します原因に基づくものというふうに判断をいたしたわけでございます。
  40. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、原因がわかれば、土壌汚染防止法による土壌改良の計画は、いつを目標に進めますか。
  41. 森整治

    説明員(森整治君) すでに先生も御承知のとおり、四十六年度にカドミウムの調査をいたしまして、カドミウムにつきましては、米の関係から四十七年度に対策地域としての指定を終わっております。それから銅につきましては、四十七年度と四十八年度に二回にわたりまして細密の調査をいたしておりまして、今年の末には、地域につきまして、銅にかかわります対策地域としての指定を行なう予定にしております。したがいまして、それが完了次第、四十九年度に土壌汚染防止法に基づく対策計画を立てまして対策事業を実施したいというふうに考えております。
  42. 小平芳平

    ○小平芳平君 四十八年度中にきめて、四十九年度から土壌改良にかかるということですか。
  43. 森整治

    説明員(森整治君) さようでございます。
  44. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうして、その費用負担はどういうふうになりますか。
  45. 森整治

    説明員(森整治君) これは事業者負担法の原則に基づきまして、今後、県において調整をされていくというふうに理解をしております。
  46. 小平芳平

    ○小平芳平君 環境庁なり農林省は、渡良瀬川流域のいまの休耕田を視察したことがありますか。三木長官にもお聞き願いたいのですが、一面の休耕田で、ただ草ぼうぼう、これではたんぼとして使えなくなってしまうというところで、ある農家ではサツマイモを植えてみた。ところが、そのサツマイモが何と奇形です。形を見ただけで、まるで市場に出せ得たものじゃないです。奇形でないものがとれたとしても、売りに出すわけにはいかない。やむを得ず家畜の飼料にでもする以外にないという、そういう状況がいまなお続いているわけです。  ですから、四十九年度というと、結局来年の田植えには間に合わないということですか。それから、県のほうがきめるということですが、早くきめて、この冬じゆうにでも土壌改良ができれば、来年からは耕作ができるじゃないですか。
  47. 森整治

    説明員(森整治君) まず対策地域を確定をいたしませんと事業に入れないわけでございます。それをとりあえず今年中に完了したい。それで直ちに来年度計画を立てて事業の実施に入りたいわけでございますけれども、遺憾ながら来年の水稲にはちょっと間に合わないと思います。しかし、できるだけ早く県を督促いたしまして、われわれとしては御主張のとおり、なるたけ早く土壌改良を実施したいという考え方には変わりございません。
  48. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほど来申しますように、来年度とか今年度とか、そう言っていないで、それは事務的な時間も必要でしょうけれども、現実問題、これはもうきのうやきょう始まった問題ではないわけですからね。  そこで、もう一つはっきり御答弁いただきたいことは、カドミ、銅というふうに分けて先ほど説明されましたが、結局、その原因は足尾銅山なんですか。
  49. 森整治

    説明員(森整治君) 従来の調査からいたしますと、そういうふうに考えざるを得ないと思います。
  50. 小平芳平

    ○小平芳平君 そんな、考えざるを得ないなんという遠回しな言い方ではなくて、率直に、これだけの膨大な調査をなさっているわけですから、見解をはっきり示し——見解をはっきり示さないことには次の計画ができないわけでしょう——土壌汚染に対する土地改良は私は一日も早く実施していただきたい。原因者がわかっていれば、そんなに時間がかかるわけはないじゃないですか。
  51. 森整治

    説明員(森整治君) 原因者ということでおくれているというよりも、やはりカドミの地域ですでに地域確定をしております。それも含めまして、銅の関連の地域も合わせて、今年中に地域を指定して、来年度計画を立てまして事業に入りたいという考え方でございます。
  52. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから次に、足尾町における指曲がり病といいますか、これも公明党をはじめ各党の告発等によって県が検診をされたようですが、率直に言って結果はどうなんですか。
  53. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま御質問のございました足尾町におきます指曲がり症の問題でございますが、本件につきましては、栃木県が今年一月、現地の水の調査及び住民の健康調査というものを行ないまして、井戸水については九カ所、住民につきましては受診者は百十四名という人数にとどまりましたが、問診、血圧、尿の検査、血液検査等をいたしまして、そのときの県の結果としては、指曲がり病は見当たらなかったというぐあいに、私ども県のほうに照会いたしましたが、そのような返答を県からは得ております。この指曲がり病につきましては、足尾以前のカドミウムの地域でも問題になったことがございますことを申し添えておきます。
  54. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうですか。県の調査によりますと、変形性関節症という方がずっとたくさん出ているじゃないですか。どうですか。
  55. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 私どもが県に照会をして得ました答えといたしましては、指曲がり病は見当たらないというぐあいに承っておりますが、先生のほうの資料がございましたらまた拝見させていただきまして、もう一度県のほうに照会いたしてみたいと思っております。
  56. 小平芳平

    ○小平芳平君 これはしかし、県がとっくに発表したものですから、環境庁が把握してないというのはおかしいですよ。  それから、指曲がり病はおりませんでしたという言うけれども、指曲がり病というのはどういう病気なんですか。指が曲がって痛がっている人はいるのです。これは御承知のように足尾町に限りません。福島県とか富山県とか、はたしてその原因が何かということで、県のほうでは少なくとも大気汚染や水質汚濁には関係なかろうというようなことを発表なさったこともあったのじゃないですか。それにしては、あまりにも特定地域に発生しているのは理由がつかないじゃないかということを私たちは言っているわけです。いかがです。
  57. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま御質問がございました件につきましては、一番最初群馬県の安中で問題になりました。安中のときには、指曲がり病という病気として考えられるかどうかということが一つの議論になりました。これにつきましては、いろいろ専門家の先生方が鑑別診断の委員会で議論をされましたのと——私の記憶がもしも間違っておればお許し願いたいと思いますが、たしか対照地域を調べまして、そうして指曲がり病の人がほかの地域にいるかどうかということを調べたことがございまして、指曲がり病といわれているものは、これは関節リューマチによって起こった指の関節の変形化、あるいは老人性の変化として、指を非常にひどく使う労働作業の人に起こる変形性の関節炎ではないかということでございました。  同様のケースの問題が、山形県の南陽市におきまして吉野川流域のカドミウムの汚染のときも問題になりまして、その地域におきましても、検診した者の中の二八%という人員にそれを認めたということがございました。また、福島の磐梯におきましてもございましたが、四十六年の一月に、そのような山形県のケース、福島、安中のケース等を全部あわせまして、鑑別診断研究班でこの議論がございまして、その結果、これはやはり慢性の関節リューマチによる関節の変形化あるいは変形性の関節症であるということで、カドミウムと関連をつけて考えることは適切ではないというような判断を受けておりますので、四十六年の研究によりまして、四十七年から新たにいたしておりますイタイイタイ病及びカドミウム中毒ということにおきます診断のグループの中におきましても、指曲がり病をこの中の診断基準としては取り入れておらないというのが現在までの実態でございます。
  58. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう説明は、もう何回も聞いてはおりますが、カドミウムに関係がないとしたら、それでは何が原因だということを調べたことがありますか。ただ老人性のものあるいは関節リューマチならば、ある地域に多発するのはおかしいですよ。  そういう点、ちょっとそれじゃ環境庁長官、時間の御都合があるそうですので、たとえば足尾町では、私はある本で大正の初年などは乳幼児の死亡が多かったということを読んだのです。そこで足尾町でこの大正初年のことを調べてみるとなりましても、それはもう五十数年も前のことでなかなか調べようもむずかしいですが、そういう点は皆さん政府や県がおやりになれば、調べようとすれば調べられるじゃないですか。私は龍蔵寺というお寺へ行って過去帳を見せてもらった。その本に出ている、大正時代に乳幼児の死亡が多かったということだけをたよりにしまして、それで大正時代の過去帳を見ますと確かに多いですね。  その付近で一番多いのは、大正九年一月二十九日には十人の方が過去帳に載っている。その大正九年一月二十九日になくなった十人の方は、過去帳ですから男女別、年齢、氏名しか出ておりませんが、あと戒名しかありませんが、それを見ますと、男子は三歳、八歳、二十一歳、二十二歳、三十八歳、女子は三歳、三歳、五歳、六歳、二十四歳、こういうことが大正九年一月二十九日の過去帳にあります。前の日の二十八日には、なくなった方が八人、二十七日には九人というふうに、きょうも八人、あしたも六人、その次も九人というふうに過去帳になくなった方が出ているわけです。その辺の背景としては、大正九年のころ、煙害問題安定期成会というものが町の有外者たちによって結成されたということも出ております。その当時はお寺の数はたしか六軒ぐらいあったのじゃないかと、このお寺の方は言っております。  こういうような、しかも六歳以下をとってみますと、確かに六歳以下が半数ぐらいになっております。ですから、そういう大正時代のことをいま調べてみても、私はある本の信憑性を確めようとして調べたのでありますが、やはり今日においても、指曲がり病一つをとりましても、あるいはかつて水俣病、イタイイタイ病もそうだつと思うのですよ、初めからわからなかったのですから。もう少し政府も県も本気になって取り組んでいただきたいと思いますが、いかがですか。
  59. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いろいろと過去帳まで調べられて、大正九年ですか、そのころの幼児の死亡率をおあげになりましたが、やはりこういう公害問題に対しては、御指摘のように何かこう用心深く考える必要があると思います。初めのちょっとした油断が大きな災害を招く原因にもなるわけです。そういう点でいろいろ調べてはおるようですけれども、十分に念を入れて、そういうその後の被害状態というものがどういうふうになっておるかということは、土壌の汚染ばかりでなしに健康も含めて一段と、事務的でなしに今後処理していくように気をつけてもらいたいと考えております。
  60. 小平芳平

    ○小平芳平君 長官がそう言うわけですから、私たちもやってみます。大正九年を調べるだけではなくて、現に苦しんでいる人がいるのですから。じゃ、その周辺に何があるか。鉱山があるか、製錬所があるか。あるいはそういう製錬所周辺とほかの地域との比較にしましても、審議官は先ほど結論が出たからみたいにおっしゃるけれど、私は結論が出たからそれでいいんだと思っていないわけです。そうじゃないですか。
  61. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 先ほどの私のお答えのしかたが不十分だったかと思いますが、私は、病気としては非常に重大な問題であるというぐあいに思っております。問題点といたしまして、慢性の中毒の非常にはっきりしないケースと老人性の変化との境目の問題がいま非常に問題になってきております。これはカドミウムとイタイイタイ病の問題と、慢性のじん臓の障害というような問題もほかに一例ほどございます。現在非常に論争になっております第三水俣病かいなかという論争も、そのような性質も中に含んでおるというぐあいに私どもは考えております。そういう点におきまして、来年度私どものほうで環境保健局という要求をいたしておりますのは、やはり健康という問題につきまして総合的に取り組む必要があるというぐあいに私ども考えておりますので、その中で、先生の御指摘のございました、これは公害病だ、これはそうじゃないという角度の扱い方よりも、もう少し健康全体として問題を見て、そして分けられるものと分けられないもの、分けられないものをどうするかというような形で私たちは問題を処理すべきであるということを考えておりますので、その点よろしくお願いいたします。
  62. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは長官の御都合もありますので、田子の浦のヘドロ処理につきまして、何回も長官の御意見も伺ってまいりましたが、近く第三次処理ということで七十万トンですか、処理に入ろうということなんだそうです、計画としましては。  長官の御意見を伺う前に、運輸省かあるいは環境庁から、田子の浦ですでにやった、あるいはやりつつあるヘドロ処理の方法と、それから九州の洞海湾計画しているヘドロ処理の方法と、どういう点が違いますか。簡単に説明してください。
  63. 森整治

    説明員(森整治君) 田子の浦のヘドロしゅんせつ工事につきましては、カッターつきのポンプを用いましてしゅんせつを行なっております。これにつきましては静岡県で、カッターを用いない場合と比較の実験を行なった結果、そういうことで採用しているということでございますが、理由は、ヘドロの濃度を均質にしまして、消石灰等の薬品を入れていることが効果的にできる。それによって硫化水素ガス発生防止できるということのためにカッターを使っておるようでございます。そのために拡散されます問題がございますが、四千馬力の強力なポンプで迅速に吸い込むということで、その拡散防止するという判断をしたということでございます。それにつきまして、もちろん監視点を設けまして監視を行なっているというのが田子の浦のケースでございます。  それから洞海湾につきましては、しゅんせつ土の捨て場が近いということが一つ、それからもう一つ、ヘドロが比較的しまっておるということで、グラブのしゅんせつが最も効果的な工法ということでそういうやり方をやっておるようでございます。ただ、そうは申しましても、洞海湾のあそこの橋の近くの湾口に近接した部分では、グラブからあふれる水によって湾外が汚染されるという可能性がございますので、湾口付近では鉄製のワク型を埋めまして、その囲いの中でグラブによるしゅんせつを行なっているということでございます。  それぞれ違う工法をとっておるわけでございますけれども、その地域地域に応じましたやり方であるというふうに判断をいたしておりまして、もちろん、それで二次公害発生するというおそれはないというふうに環境庁としては考えておるわけでございます。
  64. 小平芳平

    ○小平芳平君 三木長官、どうも局長に質疑しましても、結論はそういうことかもしれません、幾ら私が説明しましても。ただ単純に考えまして、田子の浦の場合はカッターでかき回すわけです。そして、もう見るに耐えられないようなヘドロがぶかぶか浮き出すわけです。それをポンプで富士川河川敷へ持っていこうというわけです。ところが、洞海湾の場合は鉄ワクで囲うわけでしょう。鉄ワクで囲って、そして改良グラブとかいうのでかき出して、埋め立て地へ持っていく。あふれる水も処理をして流すというふうに、同じ日本の国の政府がやる事業がどうしてそういうふうに違うかということが、非常に納得できないことなんです。  ですから、汚染物はその汚染地で処理するということが私は原則であるべきだと思うのです、汚染物は汚染地で処理しようということが。それだけ洞海湾の場合は、ずいぶん長年かかって研究された結果だと伺っておりますがね。しかも広さから言ったって、田子の浦港なんというのは問題にならないほど狭いわけです。そこでかき回すわけです。そこで、第二次汚染の監視と言いますが、じゃ港でPCB監視をやっていますか。やってないじゃないですか。そういうように、静岡県のほうが先に手をつけたから、そこまで検討が進まないうちに手をつけちゃった、いろいろな濁りの状況とか港の機能の問題とかで。ところが、あの田子の浦のケースの二の舞いを踏んじゃいけないぞということで、洞海湾その他では、新たな研究をやったその成果に基づいて実は工事計画を組んでいるというのが実情なんです。ですから長官、その辺ひとつよくお考えいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  65. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) このヘドロの処理というものはまだ技術開発といいますか、そういう点で研究の余地がたくさんに私はあると思うのです。これから全国的にヘドロの処理を、ある基準をこえるものは全国的に処理したいと思っておるのですから、その工法というものは、よほどやはり第二次汚染を起こさないような工法を考える必要があるわけであります。そういう点で、田子の浦の処理というものよりも洞海湾の処理のほうが進んでおるというお話でございましたが、これからの問題もございますから、ヘドロの処理は全国的にやるわけですから、これは十分ヘドロ処理の工法についてはわれわれとしても真剣に検討をいたして、全国的な環境調査の結果、ある基準をこえたものはみな取るのですから、これは単に田子の浦だけの問題でなくなるわけですから、いろいろ御指摘の点も踏まえて十分な検討をいたすことをお約束いたします。
  66. 森中守義

    委員長森中守義君) ちょっと長官、いまの点ですが、これはもともと運輸省が主務官庁じゃないですか。それで、いま田子の浦あるいは洞海湾の話が出ましたが、熊本の水俣でもやはりこれがある。これをできるだけ早く政府一体のものとしてどういう工法でやるのか。少なくとも国際的にもいまだこういう処理方式というものが確立していないですね。だから、まずこれを各省庁が早く一元的に一番安全な方法、合理的な方法という工法上の確定を行なう。しかも実施官庁は運輸省でしょう。そういう連絡機能というものをこの際急がないと間に合いませんよ。四十九年度予算の中でどれとどれをやると、こう言っていましても、実施方法というものがそれぞれ違ったのじゃ話にならぬと思うのです。これはひとつ課題として、できるだけ早急に政府の統一的な一元的なやり方をきめてもらいたいと思うのですね。ぜひそういったようなことを長官が中心になられて、実施官庁は運輸省でありましても、環境保全という立場からやはり三木長官の動きが一番大事だと思いますから、お願いしておきたい。
  67. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私もその必要を感じているのです。近く発表することになると思いますが、水質調査をしました結果、全国的にヘドロの処理をしなければならぬという個所が出てきておるわけです。そういうことで、それを各地域地域によって特殊な条件もありますから一律ということではいかないのかもしれぬけれども、その一つ一つの個所についてどういうふうな工法でヘドロの処理をするかということは、それは単に運輸省ばかりでなしに、建設省も関連するところがありますし、環境庁環境の保全という点からして重大な関心を持たざるを得ませんから、委員長の御指摘のように、関係各自でこれは十分連絡の会議を持ちまして、個々の個所についてその工法については検討をするような手続をとりたいと思っております。
  68. 森中守義

    委員長森中守義君) 本件に対する午前中の調査はこの程度とし、午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      —————・—————    午後一時五十分開会   〔理事杉原一雄委員長席に着く〕
  69. 杉原一雄

    理事杉原一雄君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  70. 小平芳平

    ○小平芳平君 午前中に足尾町のことについて質問をいたしておりましたが、私たちも私たちなりに、過去帳のことをさっきお話しいたしましたが、現時点においていろいろな健康被害を訴えている人を調査してみますと、非常に元従業員という方が多いのです。元従業員でいらっしゃった方で、それが職業上に基づく健康被害ならば労災補償が当然考えられなくてはならないわけです。そういう点、労働省では何か調査しておられますか。
  71. 石田均

    説明員(石田均君) お答え申し上げます。  私どもといたしますと、じん肺の関係が非常に問題があるわけでございますけれども、足尾銅山につきましては、閉山に際しまして二月十二日から二月二十四日までの間、四百三十三名について健康診断を実施いたしております。その結果、じん肺法に基づきます健康管理区分というのがあるわけでございますけれども、管理一であるじん肺の有所見者が二百五十七名、管理二の者が三十二名、管理三の者が一名、かような結果が出ております。
  72. 小平芳平

    ○小平芳平君 製錬所のほうはどうですか、製錬所はいまなお動いているわけですか。製錬所関係で、そうした粉じん以外にも有毒ガス等の関係は。
  73. 石田均

    説明員(石田均君) その辺は、私どもとしてはまだ的確に把握をいたしておりません。
  74. 小平芳平

    ○小平芳平君 おそらくそうだろうと思います、元従業員の方で労働省のほうから積極的な調査があったという話は、全然出ておりませんから。したがいまして、きょうはこれ以上申し上げませんから、ひとつ足尾に限らず、そうした製錬所、鉱山等の場合は過去の従業員の追跡調査を行なっていただきたい。さしあたって私たちがわかっている範囲でも相当数にのほりますから、ぜひ行なっていただきたい。これはよろしゅうございますか。
  75. 石田均

    説明員(石田均君) 私どもも労働者の健康管理ということにつきましては非常に関心を持っておりますし、これは重要な問題として考えていきたいと存じます。私どもも、行政の主体的能力の関係もございますけれども、御趣旨を体しましてできるだけ調べさせていただきたいと存じます。
  76. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、私は振動について質問をいたします。  公害対策基本法では振動を典型公害としておきながら、いまなお振動に限って何の規制もない。騒音についての規制はあっても、振動は騒音に伴う振動もあるし、また地盤等の関係で、私が詳しく説明をいたしますが、そういう振動もあります。環境庁としてはどの程度の将来の計画を持っておられるか、お示しいただきたい。
  77. 春日斉

    説明員(春日斉君) ただいま御指摘がございましたように、振動は典型七公害の一つでありながら、いまだに規制をしていないという事実がございます。最近都市のスプロール化と申しますか、とりわけ住宅と町工場との混在状態とか、あるいは工場の機械施設が非常に大型化した、あるいは建設工事がきわめて大型かつ増加してきた、またモータリゼーションの増加に伴っていろいろ問題が出てまいりました。これに対応いたしまして振動規制というものが国の立場で行なわれていないがために、対応するためには地方公共団体が公害防止条例というかっこうで、振動に関する規制を幾つか実施しております。すべての県ではございませんけれども、しております。  そこで、問題になってまいりますのは、実は国ができなかったのには幾つかの理由があるわけでございますが、たとえば振動の評価単位、あるいは規制の基準、規制の内容、あるいは測定方法というようなものがなかなか学問的にも一致しないというようなことがございました。これが一つの難点なんでございますが、そのまま地方公共団体の条例は反映いたしまして、かなりばらばらな内容になっておる。これは私もよく存じておるわけでございます。  したがいまして、こういった情勢を踏まえまして、環境庁といたしましては、本年六月から専門家による調査委員会と申しますか、振動の規制の検討委員会というようなものを設けまして、かなりエネルギッシュに検討を加えてきておりました。なお昨年度、四十七年度でございますが、振動に関する基礎的な総合調査も行なっております。そうして四十八年度は、いま申しましたような一つの検討委員会をつくり、さらに実態調査等を現在行なっておるところでございます。それから単なる調査研究ばかりではございませんで、振動公害防止のための法制化のいろいろの問題まで取り組んでおるつもりでございます。  したがいまして、いつ振動規制を行なうかというお尋ねでございますが、できる限り早い機会に振動規制法というものを考えてまいりたいと思っております。
  78. 小平芳平

    ○小平芳平君 四十八年三月に振動公害に対する調査研究報告書が提出されておりますね。それ以上に何を研究するのですか。
  79. 春日斉

    説明員(春日斉君) 振動発生施設等の実態調査、それから実は冒頭にも申し上げましたけれども、振動については規制の基準と申しますか、あるいは振動の評価基準と申しますか、そういった基本的なものが実は学界の問題ともなっておりまして、きまっていないわけです。たとえば騒音でございますとホン一本でいけるわけでございます。あとで御指摘もございましようけれども、振動の評価基準と申しますのは現在二つあるわけでございます。二つはデシベルで行なうところの方法、一つはスピード、加速度、これによって評価する方法と二つあります。こういったものを、いかにいいものを取り上げるかというような検討を現在もいたしております。それから振動の生理的影響に関する研究、これは本年から来年にかけて二年間のつもりで始めております。
  80. 小平芳平

    ○小平芳平君 生理的影響はこれから二年もかかるのですか。もう少し早く——それはそういう技術的な違いがあるがゆえに各都府県における条例もまちまちですね。これは先ほど局長がおっしゃったように、はっきりした基準を示して独自の条例による規制をするか、あるいは行政上の指導基準を設けるもの、あるいは数値を示さないで規制を行なっているものというふうにまちまちのように見られます。まさしく、市民生活は絶え間ない振動に脅かされているという実態。で、国の規制を待ち切れないで県があるいは市等がやらざるを得ないという実態。ですから、もっとこう一つの展望を示すわけにはいきませんか。
  81. 春日斉

    説明員(春日斉君) 先生御指摘のとおり、現在各都道府県で振動規制を待ち切れないで行なっているという実情、これはそのとおりでございまして、本年四月現在、四十七都道府県のうち二十三の都道府県が条例で規制をいたしており、そして六県が現在検討中ということでございます。  そして、ただその内容は、これも御指摘になったことと重複するわけでございますけれども、規制対象で考えてみますと、工場振動を対象としているものは実は二十三都道府県、建設振動を対象としているものはわずかに九都道府県、いわんや自動車振動を対象としているのはわずか一県、兵庫県のみでございます。こういうような問題がございます。それから規制基準について見ますと、十四府県が規制基準値を設定しておりますが、残りの九府県は訓示規定にとどまっております。訓示規定と申しますのは、たとえて申しますと茨城県の公害防止条例のように、振動の基準を「振動の基準は、人に不快感を与える等によりその生活を妨げ、又は物に被害を与えることがないと認められる程度のものとする。」という抽象論に終わっている。こういった県が青森とか宮城県、山形県等にもあるわけでございます。現実的には訓示規定にすぎないというような問題がございます。  では一番条例としてしっかりしたところはどこかと申しますと、二つあげれば東京と大阪でございましょうが、実は東京と大阪とは、先ほども申しましたように測定基準が全く違っておるということがございます。たとえて申しますと東京都の場合は、これは新潟、和歌山県もそうなんでございますが、振動レベル、デシベルという単位を使っております。ところが大阪府は、神奈川県、愛知県もそうなんでございますが、先ほども言いましたように振動速度でやっておるということでございます。それからまた基準の区分として地域別の区分、これもまちまちでございます。たとえば時間帯の分け方も騒音規制法にまねてやっていらっしゃる県もあれば、もっと簡単になすっているところもあります。それから規制基準の適用地点というものがまた個々ばらばら、まあこれはいろいろの問題があるわけでございますが、それから上下振動とか水平振動、この両方とも適用しているところもあれば水平振動はあまり見てないところもある。こういうふうにいろいろございます。また振動値の決定方法についてもいろいろあるということで、確かに先生の御指摘のように、あるいはわれわれも常々考えておりますように、これは国として一本化すべきである。そういう意味で、できるだけ早く振動規制法というものを私どもは提案し御審議を願いたいと、かように考えておるわけでございます。
  82. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから二つの例をあげますと、いま局長の御説明なさったことと同じですけれども、新幹線のそばの家なんか、たいへんな振動ですよね。それがもう夜となく昼となく振動を受ける。  それからもう一つ工場のほうでは、たくさんありますけれども、金沢市の神宮寺町、ここはこの地域特有の箔団地というのがある。箔工場があります。この箔工場から起きる騒音と振動。特に神宮寺というところは、前はレンコン田だった。そのレンコン田だったという軟弱な地盤ということがもう一つ重なりまして、騒音の上に、絶えずゆれ続ける。それで騒音のほうは、まだ発生源のほうでも外へ音が漏れないようなくふうがある程度はできる。また住民のほうでもサッシ窓等によってある程度音を防ごうというくふうができる。しかし、この軟弱な地盤のところを伝わってくる振動は防ぎようがないわけです。  そういうふうに、交通振動にしても工場振動にしても悩まされ続けているわけです。ですから、早くその規制を国として、先ほどのこまかく御説明いただくのはけっこうですが、国としてどうする。なるべく早くといいますが、次の国会なら次の国会までに目標をきめて規制法を出しますというふうな、そういう目標を早く国がきめるべきものだと思いますが、いかがですか。
  83. 春日斉

    説明員(春日斉君) 次の通常国会を目途として現在検討中でございます。
  84. 小平芳平

    ○小平芳平君 その場合、いま例をあげました製箔工場による振動、軟弱な地盤ですね、そういう場合が一つと、それから各地に見られる新幹線等の交通騒音、交通振動というものをどういうふうにしたらいいと思いますか。
  85. 春日斉

    説明員(春日斉君) 騒音と振動というのは非常に関連があるし、それから一口に騒音振動と言われるぐらいでございますが、実は考えてみますとかなりの違いがあります。一つは、音と申しますのは耳で聞くわけでございますが、振動は実は全身で感ずるという基本的な問題、それからその全身で聞くというのは、皮膚でも振動を受けるし、あるいは骨でも受ける、あるいは内臓でも受けるというような複雑な、何と申しますか振動に対する感覚がございますので、これは騒音防止法の中でそのまま拡大解釈するというようなかっこうでは不可能であると思っております。したがいまして、私どもはやはり典型七公害の一つとして単独立法をしてまいりたいと考えております。  ただ、先生が御指摘になったように、家屋の問題を考えてみますと、音は大気を伝わるわけでございますから確かに防音壁で防ぐことも可能でございましょう。あるいは防音の窓で少なくとも十ホンぐらいは簡単に落とすことは可能でございます。しかし振動の場合は、ことに地盤が軟弱であるとか、あるいは建物が木造でやわな場合は共鳴をいたしまして、むしろ増幅するという特殊な作用がございます。したがいまして、屋外と屋内とで、騒音ならば十ホンぐらい落ちるにもかかわらず、振動の場合は逆に二倍、三倍、場合によっては五倍、十倍となる場合がある。しかも空気を伝わらないで地盤を伝わってまいりますので、そう簡単に防音壁というような壁による防止がむずかしい。そういうことで、私ども振動の場合は、何と申しましても振動源の規制ということが第一になろうかと思います。  それから振動伝播をいかにして断つかということで、これは交通騒音あるいは軌道騒音に言えることでございますが、道路その他の軌道の整備でございますとかあるいは管理、これが基本的な問題になっていこうかと思っております。それから騒音以上に振動の場合は土地利用と申しますか、できるだけ振動源から離して減衰をさせる、これが非常に大切なものではないかと考えております。  具体的にはいろいろ検討もし研究もいたしておりますので、時間がございませんから一々は申し上げませんけれども、ただ騒音に比べても決してやさしくはない、非常にむずかしい点を持っておることは私事実だと思っております。
  86. 小平芳平

    ○小平芳平君 まさしくいまお話しのように、この神宮寺の箔の工場周辺の方の中には、家を新築した、しかし夏に戸をはずしておいたら、九月の終わりに戸を入れようとしたが入らない、こういうのははっきりした物質的な財産的な被害です。ところが、夜勤の人がいた。夜勤で昼間帰ってもさっぱり眠れないために神経衰弱になって、からだをこわしてつとめをやめてしまったというようなことですね。それから、そこまでいかなくても、お客さんが来たとき一番困るというわけですよ、ふらふらふらふら揺れ通しなものですから。そういう非常に精神的なものをどう評価するか。かりに損害を出そうとしてましてもですね。したがって、局長がさっき述べられたように発生源を絶つことが一番の肝心です。かといって工場が、相当数の工場がすぐここから向こうへ引っ越すこともおそらくないでしょう。それなら住民が引っ越すか。住民としても、そこに住んでいるのにおいそれと引っ越すわけにいかない。そうすると、やはり早く国が規制の目標をきめて、いつまでに発生源を緩和できるか、あるいは工場が引っ越すか、住民が引っ越すか、早くそういう目標をきめていただきたいと思うのですよ。いかがですか。
  87. 春日斉

    説明員(春日斉君) おっしゃるとおりだと思います。ただし、現実的にはこれは非常にむずかしい問題を多々含むであろうということも容易に想定できるわけです。   〔理事杉原一雄君退席、委員長着席〕 たとえば発生源が、この金箔の製造工場のようにきわめて家内工業的な零細な企業、しかもこの神宮寺町のようにもともと、昭和十三、四年でございましたか、振動問題でわざわざハス田に疎開してきたわけでございますが、昭和十二年から十四年にかけて移転してきた。にもかかわらず、最近の土地不足になってまいりますと、その周辺に一般民家が建ってくる。これもやむを得ないことだと思います。決して悪いことじゃないと思いますが、そういたしますると、零細企業の金箔屋さんがはたしてPPPの原則によってすべて補償することができるか。これは不可能に近いことかもしれません。それからまた、もとのハス田のところに土地を求めて移動して家を建ててこられたのも庶民でございましょう。そう簡単に立ちのくこともできないということも事実でございます。この辺は私、実は振動規制法そのものばかりではございません、ありとあらゆる法律なりあるいは救済法なり、そういったことを考えて救う以外にはないのではないかと思います。さりとて、振動規制法というものができて、それに対して全く無意味であろう、こういうふうにはもちろん考えていないわけでございます。
  88. 小平芳平

    ○小平芳平君 三木長官、振動でいま非常に困っている地域があるわけです。いま局長説明していたのは箔の工場です。ですから、私が先ほど申しましたのは、その箔の工場による工場の振動と、それからもう一つは、たくさんありますけれども、たとえば新幹線のような交通の振動ということを申し上げていたわけですが、局長のほうでもだいぶ研究を進めていると言いますので、長官、ひとつぜひ次の国会を目ざして規制法を提出され、そして目標を早くきめまして、困った問題だ困った問題だといってすでに基本法ができて数年たってしまったわけですから、やっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  89. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 各地に御指摘のように振動に対してのいろんな苦情というものは持ち込まれるわけです。私もやはりこれに対する一つの目標がないと、やるといっても目標がないということになってくると、いろいろ取り締まっていく上においても目的を達成できませんから、次の通常国会には、これは一つの基準を必ず出したいという考えでございます。
  90. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは時間がもうわずかですので、厚生省の方ですね、静岡県の天竜川の流域で四十四年三月、浜松の保健所が子供の中に班状歯が多数発見されたという報告を聞きました。そこへ東京歯科大学上田喜一教授のもとの高江州助教授という方が現地へ行きまして、保健所でいろいろな調査をした上で指示をして、班状歯についてはこれこれしかじかのことをやりなさいと言って帰ったにもかかわらず、県はそれを、保健所は県へ報告しただろうと思うのですが、県は四十四年三月のものをただ隠しておいただけで、何ら上田研究室の御意見にあるいは指示にも従わなかったということは事実ですか。
  91. 笹本正次郎

    説明員笹本正次郎君) 私からお答え申し上げたいと思います。  浜松保健所が昭和四十三年に班状歯の調査をいたしましたことにつきましては、そのとおりでございまして、この中で、班状歯について一つの問題は、やはり班状歯というものは、歯ができるときに飲んだ水の中に弗素が、ある一定量含まれたときに歯の形成異常が起こってくる、これが班状歯だというふうに言われておるわけでございます。その場合には、現在までの定説として、必ずその地区では虫歯が非常に少ないという、この二点が指摘をされておるわけでございます。  今回の浜松の問題につきましては、四十四年にこの報告が発表されておりますけれども、この報告調査によりますと、確かに班状歯様の発育不全、形成異常が認められておるということでございますが、その当時飲んでおった水の中に弗素の量が、水道、簡易水道等を調べましても、少なくとも班状歯を起こすというふうな濃度のものは含まれておらないというふうな結果が一つございます。それからその後保健所等におきましても、この結果に基づきまして、第二の問題点の虫歯が少ないかどうかという点についてもフォローアップをされておるわけでございますけれども、その結果も、一般のもとに比べて必ずしも減少しておらない、むしろ普通非常にたくさん出ておるというふうなことでございます。したがいまして、私のほうも、四十三年に調べましたものがほんとうに班状歯かどうかという点については、まだ確認できないわけでございます。
  92. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は歯の衛生を聞いているのじゃなくて、県の行政なり国の行政について聞いているんですよ。まず、ことしの十月六日の静岡県議会で、公明党の西岡議員という方が班状歯の発生があったのかと言ったら、そういう事実はないと答弁しているんだね。ところが、今度は行政監察局かどこか、そっちから言われて動き出しているんでしょう。それは御説明のように、私はそのとき行かれた上田研究室の高江州助教授からも直接お話を聞きました。それで水を調べたら弗素が〇・二PPM以下であったと。したがってこの助教授は、過去の水も調べるべきだとか、あるいはその水源とか、あるいは全身症状、特にひどいと見られる人の全身症状とか、歯の表層に弗素があるかどうかも調べるべきだということを言ったというのに、そのままほったらかしておいて、保健所がそれを発見した、専門家はこういう意見を言った、しかし県はそのままほったらかして、最近になっても知らぬ顔していて、そして行政監察局かどこか、そっちから突つかれてようやく何かしようという、そういうことですか。
  93. 笹本正次郎

    説明員笹本正次郎君) 行政監察局のほうから指摘があったということについては、私ども実は県のほうへお聞きしたところではそういう事実はなかったというふうなことでございます。  それから上田先生のほうから、いろいろなその後のフォローアップについて指示があったという点につきましては、やはり先ほど申し上げました虫歯の関係という点から、保健所自体もその後の虫歯の羅患状況という点についてはいろいろな御努力をされて、資料収集等されたようでございます。そういう点から、浜松におきます班状歯というものについては、おそらく班状歯様の変化ということはあっても、班状歯そのものというふうなことの断定はむずかしいというふうにしたようでございます。  また、班状歯ができますのは、先ほど申し上げたように歯ができるときに影響があるわけでございまして、現在見て、現在の水を調べただけではやはり不十分でございます。これから起こってくるかどうかについては現在の水を調べることによって大きな意義がございますけれども、現在ある現象を見る場合には、それからさかのぼって歯ができる時期の年代の水を調べませんと出てこないという点から、この四十三年に調べました浜松地区の小中学生の歯ができる時期を逆算いたしますと、大体昭和三十年ごろからできてくるわけでございます。その当時の使われた水が弗素があったかどうかということでございます。これについては保健所でも調べまして、いわゆる班状歯を起こすような弗素の量が含まれておらないというふうな事実でございます。
  94. 小平芳平

    ○小平芳平君 あとは県でしっかり明らかにしてもらいますけれども、それなら、そんなに上田研究室で指示されたとおり県がすべてやって安心だというようなら、何を隠していたのですか。要するに、四十四年三月の段階でこれこれこういうことが必要ですよと言われた。そのとおりやって何ら疑いがなかったなら、何も隠す必要ないじゃないですか。そうでしょう。
  95. 笹本正次郎

    説明員笹本正次郎君) 私も、隠したということはいま全然考えておりませんで、四十四年のレポートも、当時おそらく関係方面には出ていたのじゃないかというふうに思われます。その後に保健所がこれに基づいて、くどいようでございますけれども、虫歯のフォローアップだとか水質の検査だとかというふうな点にやはり努力をされたわけでございまして、その結果、班状歯の疑いという、班状歯様の変化というものはありますけれども、これが班状歯というふうなことについての否定的な考え方ということになっているのじゃなかろうかというふうに思っております、別に隠すというふうなことではなくて。
  96. 小平芳平

    ○小平芳平君 十月の県会で、そういうことはないと言ったじゃないですか、衛生部長が。そのことを隠すと言うんですよ。——それはもういいから、また別の委員会でも取り上げたいと思いますが、要するに国の、厚生省なり環境庁なりのそういう子供の健康に取り組む姿勢について私は言っているんです。
  97. 杉原一雄

    杉原一雄君 第一点は、午前中通産省から報告を受けた化学工場爆発事件について若干の質問をすること。第二点は、きょう午後発表されたであろう水銀汚染の九水域調査の結果と、それに対する総合判断及び今後の対策について。第三点は、植物図鑑等では帰化植物という肩書きをつけたセイタカアワダチソウの問題について質問をしたいと思います。  第一点の化学工場爆発のことでございますが、先ほど簡単な説明が実はありましたけれども、十六件にわたるそれぞれに対する点検は時間の関係で許されませんから、ただ十五番目の十月二十八日、直江津における信越化学爆発事件について、ここに資料等もいただき説明も受けたわけでありますが、実はおととい上越市——直江津を含めた新しい市でありますが、議会の中の公害特別委員会において、竹中工場長が出席してこの爆発発生原因とか経過とか、その後の処置あるいは被害状況、こうした報告をしているわけですが、午前中の通産の局長報告とは、被害状況等についてさえ、特に人的被害についてさえもが数字の違いがあるわけですが、そちらからいただいた数字を訂正する意思がありますか。なければ、こちらのほうで工場長が言った数字を提示いたします。
  98. 高木俊介

    説明員(高木俊介君) 午前中、局長から御説明申しました人的被害につきまして、その後調べました数字につきまして訂正させていただきます。  局長説明及びお手元にお渡ししてございます資料につきましては、死亡一名、重傷四名、軽傷十三名、うち第三者六名というふうになっておりますけれども、本日、県及び会社から調べました結果は、死亡一名、三週間の重傷者四名、一カ月の重傷者二名、二カ月の重傷者二名と、重傷者は三週間の方も入れまして重傷者関係が八名というふうになっております。それから軽傷が九名でございまして、うち三名が社員でございます。なお、下請関係の方が一名入っております。それで四名が会社関係、そのほか第三者といたしまして五名入っております。なお、このほかに病院には通っておいでになりませんけれども、すり傷その他で六名という方が負傷しているというふうに県及び会社のほうから承りました。トータルで二十四名というようになっております。  なお物的被害につきまして申し上げますと、建屋で八千二百平米が焼けておりまして、焼失面積全部で一万八千平米になっております。なお、そのほかに公共的被害といたしまして、上越市の学校、合同庁舎その他七件に対しましてガラス窓の割れ、あるいはかわらの割れ、アルミサッシのこわれというようなものが上越市において七件、頸城村におきまして、国鉄でございますけれども、二件というふうになっております。なお、そのほかに民家関係でございますけれども、大体千五百メートル以内、あるいはそれをちょっと出たところもございますけれども、全部で六百四十四軒の世帯に御迷惑をかけたということが出ております。  また、農作物につきまして上越市で百二十七アール、頸城村で千四百七十四アール、これは今後いろいろ調査しなければならぬ点もございますけれども、一応届け出としまして、いま申し上げたような数字の農作物に被害があるのじゃなかろうかということが届けられております。  また、事故当時に国鉄の信越線の鉄道が四時間半ストップしておるのも事実でございます。
  99. 杉原一雄

    杉原一雄君 それは手違いということなのですか。向こうの発表が最初は小出しにしたという意味なのか。それは中央におってどういう判断をされるか。同時に、人の問題はこれはなかなか容易でございませんけれども、物的破損の問題は、富山でもかつて日本ゼオンの爆発があって、ぼくは現地を見ていろいろ工場の努力を見てまいりましたけれども、あわせていま問題は、あとを引く問題として、たとえば野菜は白菜その他かなり有害なものをかぶっているでしょう。そうしたもの等についての被害の実態と、それに対応する、どういうふうにそれを解決するかということなどについて、県あたりから報告がまいっておりますか。まいっておるとおらぬとにかかわらず、こちらから何か行政指導をすべきだ。その辺のところを手を打っているかどうか。それちょっと明らかにしてください。
  100. 高木俊介

    説明員(高木俊介君) 一番初めの問題でございますけれども、数字を小出しにしたということではございませんで、局長からお話しいたしましたのは、速報をベースにして書類をつくらせたものですから、ミスがあったことをおわびいたします。決して小出しするというような気持ちはございませんで、申しわけございませんでした。  なお、現地被害その他につきましてのことでございますけれども、けさほど局長からも話がございましたように、災害が起きまして局長現地へ行っております。県のほうあるいは市のほうにも村のほうにもお伺いいたしまして、一般市民の方へかけました迷惑に対しまして、これはできるだけ会社のほうで被害その他を十分調べた上で弁償その他、あと始末をしてくれよということも指示いたしておりますし、その後県のほうからも、こういう被害につきましてできるだけ会社指導するなりして善後策をとるようにいたしております。
  101. 杉原一雄

    杉原一雄君 竹中工場長が議会に行って、再開のめどの問題で質問があったものですから回答をしているわけです。その回答は、国、県、市、村、労働者、労働組合等とも十分相談をした上で最終的に判断をすると、こういう答えを議会でしているのですが、この点の、そちらの調査団の中間報告等によって再開のめど等がある程度時期的に確立されたかどうか。さもなければ、今後とももう少しということで点検なりその他の指示をしておいでになるのか。その辺の関係はどうなっておりますか。
  102. 高木俊介

    説明員(高木俊介君) 調査団が行きましたのが災害後二日目でございまして、先生方から現地を確認していただきまして、東京で第一回の——現地が第一回になりますと東京での会合は第二回になるわけでございますけれども、今月の十五日に第一回の、調査を第一回にしますと第二回目でありますけれども、第二回の会合をやろう、第三回を二十三日に実施しようということでございまして、現在は全工場をとめております。当然、災害を受けましたところと受けてない工場関係もあるのでございますけれども、こういう事故を起こしました以上、この事故原因その他を十分究明いたしまして、災害を受けてない工場にも当然改善しなくちゃならぬ点が出てくるのじゃなかろうかと思います。そういう点を指示いたした上で、事故を起こしてない工場関係の再開はいずれ県を通じて認めざるを得ぬと思いますけれども、現在のところ、いつここを再開さすというようなことはきめておりません。
  103. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは、きょう提出いただいた資料は十六件にわたる爆発事故の問題を提起されたわけですが、全部点検しているいとまがございませんけれども、おしなべてこれを整理して私なりに判断するならば、大体七つぐらいの問題提起をしていいのじゃないか。おのおのについて通産なり環境庁の見解を求めればいいわけですけれども、直ちにお答えをいただけないかもしれませんし、また時間的な問題もございますから、一応私のほうで七つの問題提起をしていきたいと思います。  第一点は、こうした石油化学コンビナートには何どきでも爆発するような危険な状況、たとえばタンクにしろ、あるいはパイプにしろ、至るところに燃え上がるようなものあるいは爆発するようなもの、そういうような条件が一ぱいあるということですね。しかも、それを配置する場合に能率第一主義だから、かなり設計の面では無理がかかっているのじゃないか。とりわけ日本の場合はヨーロッパ等と違って、そういう点では敷地面積が外国等に比べて四分の一程度だとも言われているわけですから、非常に無理な設計があるのではないか。その点が私第一点に指摘したいところです。  第二点は、住宅との距離の問題ですが、これは逐次立法化されて距離がだんだんと離されつつありますけれども、さっき午前のお話でも明らかなように、二百メートルあるいは百五十メートルというような話でもありますけれども、おしなべて今日の状況は、爆発の危険を持つ工場との間の距離が非常に短い。こういうところに大きな問題があるのではないか。だから、ここらあたりが今後の行政上の大きな具体的措置をする場合のねらいではないかと思います。  第三は、オートメ化をしているわけですから、かなり合理化ということが優先されているわけです。そういうことからして、私は労働運動をしてきた男ですから、労働者が常に首を切られ、合理化され、削減されているということと同時に、それだけならまだしもいいのでありますが、新しい工場ができると熟練工がそちらのほうへ回されて、現にその職場を守っておる人は、運転の質の必ずしもすぐれた状況ではない、悪くいえば低下している。こういう問題も日本的な合理化、いわゆる合理主義の結果から起こっているのじゃないか。これが第三点。  第四点は、企業の秘密主義あるいは現地の秘密主義、こういうことが総点検をする場合に、私たちが先般工場を回った場合でもかなり胸を広げて見せてくれたとは思いますけれども、従来ならばそうでない点があって、それがこうした問題を起こす大きな原因をつくっているのじゃないか。  五番目は、コンビナートという形における設備工場でもあります関係上、信越化学が全面ストップをしたとおっしゃいますけれども、ちょっとした爆発ぐらいでは、全面ストップして総点検をするというようなかまえに企業はなっていない。そこがやっぱり今日の工場設備状況等に関連するという点があって、従来ならば、何か操作ミスとかということでお茶を濁すというようなことですぐ作業が開始されていく。  第六には、コンビナート方式を採用されてかなり月日が経過して、大体このごろそろそろ設備等が更新の時期に向かっているのではないか。ところが、それを更新し点検するいとまがないくらいに、何といいますか需要が追い立てる関係上、従来、当然安全度を乗り越えた運転なり無理がかかってくる。それが今日の高度成長主義の一つのひずみではないだろうか。かなり意地悪な見方でありますが。  第七番目は、通産省が一生懸命取り締まりをする、あるいは信越化学へ飛んでいって事故調査委員会を開く、かなりスピードのある行動をとっておられるようでありますが、しかし、必ずしも私たちいままでの経過等から考えても、すっきりとした、しかも公害をなくする、爆発防止するという観点からの指導が敏速にかつまた適切にとられていないのではないだろうか。こういう点はマスコミ等もかなりきびしく指摘しているところでありますが、私もそのような感じがしてなりません。  こういう点を、午前の報告とあわせていまの説明等も加えながら、私いま感じたことでございますので、かなりその点はかってな総括でありますから、皆さんのほうから十分御点検をいただき、これにこたえるような努力をしていただきたいという希望を付して、いまのような意見を申し述べて実は第一点の問題についてば終わりたいと思うのですが、もしそちらのほうで、杉原おまえ何を言っているのかということで文句があったら言ってください。そのほうが非常にぼくには参考になりますから。
  104. 高木俊介

    説明員(高木俊介君) いま先生の御指摘のことはごもっともでございますので、御指摘の七項目につきましては十分検討いたしまして、資料を提出いたすようにいたします。
  105. 杉原一雄

    杉原一雄君 これはまことに突然で申しわけないのですけれども、けさ、私自炊をやっているものですから、食事をしながらテレビを見ておりましたら、突然ニュースに入ってきたのはフタル酸エステルの問題で、愛媛大学の立川助教授がこの問題を指摘されて、大気の中にあるいは水の中にこれが、濃度は薄いようだけれども、相当浸透している。だから、これはちょっと聞き落としたのだけれども、片瀬助手というのはたしか横浜かどこかの大学の助手だと思うのですが、医療器械あるいは食器など、これを媒体につくられたもの等については使用を禁止すべきであるという意見を付しておられるわけですが、これについて通産省が現在入手しておられる情報と、とりあえずの見解がありましたらお聞きしたいと思います。
  106. 赤羽信久

    説明員(赤羽信久君) まだ直接その試験結果を入手してございませんけれども、新聞等によりまして間接的に得ました情報に基づきますと、空気の中にあります有機物をかき集めて分析した結果、一立方メートルの空気の中から多いところでは六マイクログラム、少なくて〇・五マイクログラム、平均二・一マイクログラムのフタル酸系統のエステルが発見されたということでございます。フタル酸系統のエステルはいろいろな種類のものがございますが、普通はフタル酸ジブチル、それからフタル酸ジオクチルというのが軟質塩化ビニール樹脂の可塑剤として使われておりまして、そのものがかなりの量を占めているようだという報告もつけ加えられております。  この量は、ボリューム分量の中に目方で示された表示でございますので、かりに概算いたしましてPPMであらわしてみますと、たぶん一万分の二PPM程度になるのじゃないか、二・一マイクログラム。非常に概算でございます。したがいまして、非常に微量なものを分析されたということでございます。この程度のものが空気中にあることに特別な問題はないかと思われます。
  107. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは第二点に移りますけれども、七日の日に厚生省環境衛生局が発表された九水域の魚の水銀汚染状況とあわせて、きょう水銀汚染調査検討委員会環境調査分科会(分科会長上田喜一氏)が、九水域の水銀にかかる環境調査の総合評価というのを発表されたはずだと思います。  そこで、きょうの発表を全部お聞きすることはとてもできるものではありますまい。ただ、一つは、きょうの発表を中心にしていくならば、九水域、そのうち二水域が除外されるかもしれませんけれども、シロ、クロの判断からいえば、まず、それはどうか。それでその除外された二水域について、今後どのような形で、午前中の委員長の質問もあったわけですが、ヘドロ処理の問題等を含めてですけれども、二水域の問題はどういうめどで将来指導し、かつ結果的には魚が全部食べられ、安心して漁獲ができる状況になるためへの手だて、段取り、そういうもの等がきょうは発表されていると思いますが、一応お伺いして、それから私の質問をもう一度続けていきたいと思います。
  108. 森整治

    説明員(森整治君) 氷見、魚津地区につきましては、当初八月三十一日に魚の問題につきまして、すでに安全であるということが議論になりました。それから十月十五日に一応委員会で審議いたしましたが、なお河川関係で未調査工場周辺の調査が若干まだ未完了であるということで、引き続き昨日、きょうにわたりまして議論があったわけでございます。  その結果でございますが、魚についてはもちろんまず問題はない。  水質調査でございますが、水質調査では、現行のJISの検定限界を若干こえますのが富山港で一検体あったということでございます。  それから底質につきましては、岩瀬運河、それから富岩運河、それから小矢部川につきまして相当汚れておるということで、早急に除去対策を講ずる必要があるということでございます。  その他、関係工場につきましては、それぞれ製造が中止されております。あるいはクローズド化を完了しておって汚染の心配はないということになっております。  それから廃棄物につきましても、それぞれ法律に従いまして適切に、廃棄物の処理及び製造に関する法律が適用になりましたのが四十六年九月でございますが、それ以降のものは適切に保管または処分されているので、まず問題はない。それ以外のものについては工場内あるいは工場外に保管埋設されておって、それぞれ浸透をしないように、そういうような措置が一応とられておるので問題はなかろうというようなことで、概括して申し上げますと、何といいますか、それほどひどいというほどではないのですが、ほかのものに比べまして、いまのような運河等でしゅんせつ等事業が必要で、環境を早く改善をする必要があるという結論になっております。
  109. 杉原一雄

    杉原一雄君 森局長、いまの説明もありがたいのですが、私が言ったことがちょっとことば足らずで、私は富山県人ですからいま二水域についてお答えいただいたわけですが、私はそういうことを意図していなかったので、九水域というのは、水銀問題が起こりましてから、三木長官が先頭で音頭をとって、全国の総点検ということで非常にがんばっていただきました。それが九水域なんです。しぼりにしぼって九なんですけれども、その九のうちの二つというのは、徳山と水俣を言っているのです。これはきょうのシロ、クロの段階ではクロなんです。漁獲をしていないわけです。その点をあとからひとつ御説明いただきたいと横に置いたわけなんです。  そこで七水域の問題ですね、きょうの時点で、厚生省の調査と合わせてそちらのシロ、クロの判断ですね、大まかに言って、ここにも私は厚生省から図表をもらいましたが、わからないのですけれども、公式の場で明らかにしてほしいわけですが、九つのうち七つはどうなったのか。シロとかクロとか、この図表を見ますと半クロというのがありますね、そういうような大まかなところをまず明らかにしていただきたい。それが一つです。そのあとでまた引き続き質問します。
  110. 森整治

    説明員(森整治君) たいへん失礼いたしました。  水銀調査の水域は、御指摘のとおり水俣湾、八代海、有明海、徳山地先、新居浜地先、水島地先、氷見地先、魚津地先、酒田港内ということで調査を行ったわけでございますが、八代海、有明海につきましては、魚介類についても、それから水質底質についてもまず現在問題はないということでございます。そういうことでございます。それから新居浜、水島、氷見、魚津につきましても同様、魚介類、水質底質、いずれの調査におきましても規制値を上回るものは検出されなかったということでございます。同じく、魚類の漁獲・販売は差しつかえないということでございます。  それから酒田港内でございますが、これにつきましては酒田港に水質底質につきまして規制値をこえる検体が発見をされておる。これはやはり酒田港内の底質に起因するあるいは懸濁したもの、あるいはプランクトン等からそういう反応が出た。原因につきましてはいろいろ判定しがたい問題があるようでございますが、いずれにいたしましても底質の除去の対策を必要とするという結論が出ておるわけでございます。  それから御指摘のように水俣湾、それから徳山地先につきましては、水俣湾につきましては魚介類で四種類の魚につきまして、それから徳山湾につきましては五種類の魚につきまして暫定規制値をこえる検体が出ておるという結果になっております。   〔委員長退席、理事金井元彦君着席〕 それから水質につきましては水俣湾でも検出しておりますが、徳山地先では規制値をこえるものは検出されておらない。底質につきましては、水俣湾につきまして御承知のように非常に悪い状態があるということでございます。それから徳山地先につきましても、工場とちょっと離れた地点でございますが、相当大きな地帯に、大きなというか離れた地点に底質の非常に除去基準をこえるものがあるということでございます。これらにつきましていずれも魚介類につきまして暫定規制値をこえておるわけでございますので、水俣湾につきましては一部といいますか、先ほど申しました四種類の魚に規制値をこえているものが、たしか十二検体のうちの四種類でございますが、こえておったものがございますが、御承知のように大規模なヘドロの除去工事も本年度中に開始するということでございますので、全面的に漁獲の自主規制をしたらいいのではないかという結論に達したわけでございます。それから徳山地先につきましては、先ほど申しました五種類につきまして漁獲の自主規制を必要とする。したがいまして、早急に具体的な地点をもう少し細密に調査をいたしまして、その除去対策を講ずる必要がある、こういう結論になっておるわけでございます。
  111. 杉原一雄

    杉原一雄君 非常に気がかりなことは、私はたくさんの新聞は見ておりませんが、こちらに来る汽車の中で見てきたのですけれども、きのうの「日経」は、この厚生省の七日発表、それに対してこういう表現をしているわけですね。「多食しない限り安全」と。宿舎に来て、けさ「朝日」を引つくり返したところが、どう書いているかというと「厚生省調査 日常食なら許容内」と書いてある。で、ただし書きがついているわけですよ。その辺のところ、水質保全局長の限界を越えるかもしれませんが、そうなれば厚生省の見解といいますか、どちらでもようございますが、このシロというものが出たけれどもただし書きがつくというところを、かなり微妙な表現になるわけですから、これは国民大衆に呼びかける立場から、「多食」ということはどれぐらいが多食なのか、それから「日常食」という意味はどういうことなのか、その辺のところを内部検討されたと思いますが、それを明確にしてください。
  112. 岡部祥治

    説明員(岡部祥治君) 問題九水域のうち、七水域は魚介類の調査結果を発表したわけでございますが、それらの総平均におきましては〇・〇八、あるいは水域によりましては〇・〇五という平均値でございます。したがいまして平均的な摂食状況からいきますと、さきに専門家会議の意見を聞いて定めました週間〇・一七ミリグラムというものに比べまして、十分な余裕があるわけでございます。したがいまして、通常の食生活におきましては何ら差しつかえがないという見解でございます。   〔理事金井元彦君退席、委員長着席〕
  113. 杉原一雄

    杉原一雄君 そこでもう一つ気がかりなのは、先ほど森さんが富山のことを心配してくれたのですが、私富山なんですけれども、きのうの新聞では、富山の市場に上がるバイが水銀が基準の四倍もあるという大見出しな報道が、県自体がそれを発表した。ただし、これにもただし書きがついておって「幼児・妊婦…食べないで」くださいと書いてある。これはいまのようなことでどういう見解に立たれるか。県の見解を支持していただけるのかどうか。特にバイは、私なんかバイは大好きなほうなんでしてね、あのずっときりきり回って一番最後のところ、最後のところが悪いのだそうですから、その辺のところを専門的な立場で、富山県民だけじゃなくして、他県の人が富山へ来てバイがおいしいと言って喜んで食べていかれますからね、どこを差し上げても申しわけございませんので、その辺の食べ方まで教えていただきたいと思うのです。
  114. 岡部祥治

    説明員(岡部祥治君) 実は、魚介類の水銀問題につきまして六月以降いろいろな調査をしたわけでございます。その中で、特に人工汚染と関係がないと思われるような深海性の魚介類に水銀を含有しておるものが見出されまして、これらにつきまして十月に専門家会議でいろいろ検討していただいたわけでございます。その結果、御指摘の越中バイ貝というものにつきましても、これは深海性のものでございまして、直接の工場汚染とは関係がない。なお、こういうものをしょっちゅう多量に食べるというようなものでもないということから、一応暫定規制値の対象外といたしたわけでございます。  それで、先ほど先生御指摘の富山県の調査結果によりますと、一応平均いたしましてトータル水銀が肉部におきまして〇・二八六、それから内臓部で〇・六二一というような数字が出ておりますが、特に内臓部分に水銀の濃度が高いような傾向がございます。したがいまして、これも先ほど申し上げましたように、一般的な魚介類の水銀値というものが〇・〇次の位でございますので、このバイ貝等につきましても、むちゃくちゃに多量に毎日連続して摂取しない限り差しつかえないものと考えております。
  115. 杉原一雄

    杉原一雄君 とにかく、きょうは分科会の調査の結果についての総合判断が出たわけですが、これは当然行政当局が、この判断に基づいて今後の行政指導指導計画等が進められることを信頼するわけですが、ただ心配するのは、九つのうち七つまでシロ、クロからいえばシロだ、あとは半クロだと、こういうようなきょうの判断になるわけですが、もうすでに先ばしったものから言わせればシロだ、これでいいんだというようなことで、国民の側がそれにほっとすることばわかるけれども企業の側がほっとしてしまって、長官みずからが閣議の中でがんばって、クローズドシステムの問題とか、隔膜法の問題とか、かなり困難の中である程度結論を出されたわけですから、そうした方向の努力が企業の側でサボられるということになりますと、心理的にこれがやはり危惧されるわけですから、その点について長官から再度きつい姿勢を表明していただくことが私大切じゃないかと思います。  それからもう一つは、厚生省の七日発表でありますが、新聞に伝えられる場合に最終報告という形で表現されているわけですが、私ちょっとうなずけないわけです。これは最終報告というとらえ方が、記者の判断に待つものか、当局の発表がそういう発表になっていたのかどうか、その辺のところ、それはもちろん問題水域さえ問題なければ、問題ないところは問題がないということになるわけですけれども、しかし、いついかなるとき、どういう状態から水銀が流れ出ないとも限りませんので、これは常に調査点検されるものだと思います。だから、企業に対するそうしたきちんとした姿勢を長官からお伺いし、かつまた厚生当局とすれば、今後この種の作業を当然のようになさるべきものだと判断するけれども、さればどうなのか。この二点について、この問題の締めくくりとして明らかにしておきたいと思います。
  116. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 九水域の水銀にかかる環境庁の総合評価というものは、発表前に私も報告を聞いたわけです。今後、私はこういう点について研究を各省に求めておるわけですが、これはやはりシロだという海域、七海域出たわけですか、これ一回でいいのだろうか、もう少し定期的に環境調査というものも今後、一回でもう安心したというのではなくして、やる必要があるのではないか。それからまた漁業者というものも、シロということが出ましたけれども、すでに相当な被害を受けて、いろいろなつなぎ資金を借りておる漁業組合もあるし、こういうものと漁業補償の問題というのは一体どう考えるか。もう一つは、ヘドロなんかは基準をこえておるところが何カ所かあるわけです。この除去というものを、どういうふうな工法によって除去していくべきかというような、発表はありましたけれども、問題というものはかなりいろいろ問題がある。こういうものを各省でひとつ研究をしまして、多少の研究の時間を置いて、私が出席をして推進会議を開きたいと思っておるわけです。まだこれは問題が相当にあるということでございます。
  117. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは第三の問題に移りますけれども、この問題ほどややこしい問題はないわけですが、私もほんとうは知らなかったわけですけれども、先月の十五日から十八日にわたる中国、九州の視察にまいった道中で見聞きした問題でありますが、セイタカアワダチソウの問題です。これは公害基本法も私ひっくり返して見ているのですが、これに対してどうひっかけて、だれが、どの官庁がこれを担当するか、このことも明らかにしていかなければならぬ問題だと思うのですが、具体的に私の受けたショックをまず最初に明らかにしていきます。  山口県を離れようとしたときに、山口県の公害局長が、杉原さん窓の外を見てください、あそこに黄色い花がと。背文が約一メートル五十ないし二メートルもある草でございますが、もう群生をしているわけですね。鉄道沿線あるいはあき地、山のがけ、至るところにある。これは私が実は知らなかったのであって、テレビ等では前からキャンペーンを張っていたようでありますが、それを見てびっくりすると同時に、局長説明を聞いてますますこれはどうかるか、たいへんなことだと。局長には東京で花火を上げるぞと言ってきたのですけれども、問題は、局長のぐちをこぼすのは、この問題をだれが責任をもって始末をつけるか、そのことが中央官庁へ来ても問題になってくるような気がいたします。  その草は、植物図鑑によると帰化植物セイタカアワダチソウと書いてある。帰化人の帰化であります。日本に在来あった草でないということなんです。でありますから、私も農民としてアメリカシロヒトリに非常にいじめられた一人であります。これは虫です。これはもうすごい繁殖力を持って、片端から木の葉をむしばんでしまうという、おそろしい、たくましい繁殖力と、そしてまたいま申し上げたように植物に対する加害者でありました。しかし、ことしあたりは私のいま住まいしている周辺を見ても、アメリカシロヒトリに侵されている木々はほとんど見当たりません。これは、農林省の指導によって農民が努力をして、あるいは自治体当局が努力して退治をしたからです。これも帰化植物でなくて帰化「虫」でしょう。  それで、いまのセイタカアワダチソウというのが、山口県なり福岡県、福岡へ行きましたらまた多いわけです。両方の公害担当局長にそのことをお話し、いままでどう処置してきたか、これからどうしようかということを話をいたしましたら、二人とも明確な答えは出ません。いやこれはあんた農林部の仕事じゃないか、いやこれは公害かなと。そうすると第一条を読まざるを得ぬことになってくるわけです。第一条と第二条の第二項を読んでみたわけですが、そんな理屈はいまここでやめましょう。なまの問題として、この植物に対する全国の分布状況は一体どうなっているか。いままでとられてきた行政指導ないし行政措置、それが何局にわたるか知りませんが、どうされてきたか。まずそれをお伺いしたいと思います。
  118. 春日斉

    説明員(春日斉君) この問題につきまして大気保全局長が答えるのが適当かどうか、これは先生の御指摘にも関連するわけでございます。いずれにいたしましても、これはその花粉が大気に運ばれて、アレルゲンとなって、いわゆる花粉症になる、花粉ぜんそくを起こすことによって先生御心配のいろいろな諸問題、公害としての考え方も出てくるわけでございましょうが、大気で伝播されるという意味で大気保全局長が一応お答えを申し上げます。  どのぐらいこの帰化植物であるセイタカアワダチソウがわが国に分布しているかということにつきまして、環境庁としては必ずしもその分布状態についてはつまびらかにいたしておりません。ただ、御承知でもございましょうが、このセイタカアワダチソウと申しますのはキク科植物でございます。キク科植物でぜんそくを非常に起こす花粉症の原因となるものは、ブタクサがございます。ブタクサの兄弟でございます、このセイタカアワダチソウは。ブタクサもこれは帰化植物でございます。しかもこれは北米及びカナダにおきまして、非常にぜんそくの原因として昔から研究がなされておるものでございまして、兄弟分であるセイタカアワダチソウにもアレルギーを起こす非常な強い力があるであろうことは、容易に推察できるところでございます。  ところで、わが国におきます花粉症あるいは花粉ぜんそく——花粉症と花粉ぜんそくとは違うのだそうでございますが、いずれにいたしましても植物の花粉によって起こるアレルギー性疾患を考えてみますると、一番多いものは何かと申しますと、実は杉でございます。杉は東京や横浜みたいな都会地にはないであろうとお考えかもしれませんが、杉の開花期には日本全国は杉の花粉でおおわれていると言っても差しつかえないというのが、植物学者の見解でございます。で、杉の花粉による花粉症、花粉アレルギーというものが第一。それから第二番目が、これもやはりキク科植物でございますが、ヨモギ、これが第二番。ただし、杉は御承知のとおり北方には少のうございますから、人によればヨモギこそわが国における花粉アレルギーの第一位に推すべきものだと言う方もいらっしゃいます。それから第三番目がブタクサなんかであろうといわれております。  これは一九七〇年の国立相模原病院のアレルギーセンターの研究の結果でございますから、かなり権威があるものと思いますが、その段階では、まだセイタカアワダチソウの話は報告されておりません。しかし、先ほどから申しておりますように花粉アレルギーを起こすであろうことは十分に推察もされ、最近におきましては、それによるアレルギーを起こした、ぜんそくを起こしたという症例も発表されておりますので、これにつきましては、今後とも私どもは注目していかなければならないものと考えております。  現在、国立相模原病院の気道系アレルギー性疾患、要するにアレルギーによって起こるぜんそく患者のうち、約一〇%が花粉によって起こっているといわれておりますが、先ほど言いましたように杉が絶対多数でございます。  そういった問題がございまして、私ども、しからばこの帰化植物であるセイタカアワダチソウ対策をいかにすべきかという問題になりますと、これはブタクサの場合と同じであろうと思います。もっとも帰化植物だから悪いと申しますと、日本の植物の大半は帰化植物だそうでございますから、五十年前か千年前かの違いだけでございまして、帰化植物が日本には非常に多いということは当然であろうと思いますが、いずれにいたしましても、好ましからざるこの帰化植物とどうやって私どもが戦うかということは、これは環境庁だ農林省だ、あるいは厚生省だと言わないで、ともかく発生源の除去ということ、すなわち大都市周辺にある休閑地をまずなくするというようなことが、セイタカアワダチソウとかあるいはブタクサというように地下茎が非常に長くて強靱な植物に対しては必要であろう。そうしてその休閑地に対しては、とりあえず他の植物でカバーしてしまうというような方策も必要でございましょう。  ただし人為的な防除として人力で引き抜くというのは、これは非常にむずかしい問題だそうでございます。根が非常にあるわけでございますから。またカナダあたりでは、非常にブタクサの花粉症に悩まされているところでは、確かに国家的な規模で対策もお考えになっているようでございます。その場合は無料で化学薬剤などの応用によって防除しているというようなことがございますが、しからば、わが国ではどうしたら一番いいかと考えてみますると、前例はすでにございます。  たとえば、ブタクサが中心な考え方でございますが、習志野にこういう条例がございます。「あき地に繁茂した雑草等の除去に関する条例」ということがございまして、そのうち第五条を読んで見ますと、「除草等の命令」ということで「市長は、あき地が危険状態にあると認めたときは、当該あき地の所有者または管理者に対して雑草または枯草の除草、その他の危険状態の除去に必要な措置を命令することができる。」こういうようなことでセイタカアワダチソウあるいはブタクサ等に対処しておられる、こういうようなことも聞いております。そのほか世田谷あたりでも、いわゆるブタクサ公害と称していろいろな御指導をなすっておるようでございますし、それから草加等でも「草加市空閑地等に繁茂した雑草類の除去に関する条例」というようなものもおつくりになっておるようでございます。こういった総合的な問題としてこの帰化植物対策と申しますか、ブタクサを含めたセイタカアワダチソウ対策というものをやらざるを得ないのではなかろうかと思っております。  ただ、先生最初御指摘になったように、セイタカアワダチソウだけが、これが花粉症のもとになる、アレルギー性ぜんそくのもとになるというものではございません。実は最初申しましたように杉の花粉とかヨモギの花粉というような、あまり知られてはいませんけれども、こういったものが非常に大きな役割りをしている。それからセイタカアワダチソウもその一つである。こういうふうに御理解いただければ幸いでございます。
  119. 杉原一雄

    杉原一雄君 いま春日局長の答弁で、ぼくは最後は日米安保条約に持っていこうと思ったのですよ、アメリカからきたのだから。それはやめます。昔からきているのだと。ところがセイタカアワダチソウに関する限りは、これは明らかにアメリカ進駐ですよ、北米からきているのですよね。そのことはそれとしましても、ただ、いまの杉の木はそんなにあっちこっち飛んでいってふえていきませんが、これはものすごいのです。私が知らなかったという意味はそのことなんです。山口県や福岡県にあったからびっくりしたというだけでなしに、さて自分の県はどうかと思って、いまちょうど知事選挙をやっておるから車であちこち飛んで歩きますが、これまたあるのですね、この草が。ところどころ集団をなしております。どうしてここへきたのかと思うくらいなところへちゃんときております。特にぼくは日米安保条約反対のほうだから、今度は私の家の近くにきました。ぼくは敵がい心が旺盛なんです、やっつけてやろうと思うのだけれども、私が噴霧器を持って回って歩くわけにいかぬので、これはやはり行政当局として一本の線を明らかにして、いま局長が言ったように花粉症は杉の木がまだ上なのだと、そんなばか言うなというようなことにならぬように、それは厚生省ががちっとやるか、農林省がやるか、やはり環境庁が基本法のたてまえから、生活環境の保全のために立ち上がっていただきたいと思うのです。  それで、いま申し上げたような事情等もありますし、きょう実は官房長から来年度重点施策の予算要求の概要をいただいたわけですが、これによると、たとえば沖繩の海洋博覧会との関係があるわけですが、オニヒトデ駆除の対策援助というのが載っているわけなんです。もうすでに行政ベースにのせて、海の中のオニヒトデの問題をここに予算化されているわけなんです。これは積極的な姿勢なんです。しかし、おそらくこれは海洋博が頭にあるからあわてたのですね、金額では三千七百二十四万円ですか、そういうような予算を計上しておるわけです。これは先取りなんです。先取りか後手に回ったか知りませんが、ある程度積極性を示しているわけです。こういう積極性を示して、先ほどブタクサをおっしゃったけれども、ブタクサというのは実はどんな草か、ぼくはまだ目で確めておりませんのでわかりかねるわけですが、かりにブタクサも日本全国に分布しているとすれば、ともにこれを退治をするためにひとつ立ち上がっていただきたい。  こんな草の問題まで長官にしりを持っていくのはいやなんだけれども、長官が十分御理解いただいているかどうかわからぬものですからこの問題のしりを持っていかぬのですけれども、最終的には長官から決意表明をいただきたいと思うくらいなんです。というのは、たいへんなんですよ。あのアメリカシロヒトリでもそうなんです。実は行政官庁がまちまちの見解を述べてもらっては困るわけです。これはやっぱり取り組んでもらわなければならない。そういう意味で長官のところへ最後のしりを持っていきますから、用意しておってください。  これは、いま申したように繁殖力が非常に旺盛であるということを、私の家の近くまできているのを見て驚きました。とにかくじんあい処理場でじんあいを堆積して、その上に覆土をした。そこに柳を植えたりいろいろの木を植えたわけだけれども、そのどまん中へ、どうしてきたのか、セイタカアワダチソウが群生しているわけです。そんなところへくる理由がないわけですね。そういうところへきておるのを見ましても、これはたいへんな侵食力があるんだなと。植物図鑑では北米から侵入したと書いてあるんですよ。米軍の侵入と同じです。だから安保条約とぼくは言うんです。そういうことで、これは冗談ですけれども、アメリカシロヒトリが農民の努力でほぼ姿を消し始めていると同様に、これはひとつ大いに努力していただいて、いま局長はかなり学のあるところをおっしゃったから、つけ加えることは何にもないようですが、決意表明を長官からひとつ、こんなことまで長官に言わせるのは気の毒だけれども、やはり行政官庁がばらばらなことを言っておるようですから統一してほしい。公害対策基本法第一条並びに第二条第二項の精神に従って、人間が生活する生活環境の保全のためにどうあるべきかということから、ひとつ明らかにしていただきたい。そのことによって私の質問を終わります。
  120. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 安保条約とは関係はないとは思いますけれども、どうもやはりそういうふうな、在来のものでなくして外国からきたものに繁殖力が非常に強いものがある。また、それがぜんそくの原因になったりいろいろ健康被害にも関連する場合もありますから、これの影響力、ことにわれわれが注目しなければならぬのは、人間の健康などに対してどういう影響を持つかということは環境にも関係があるわけですから、いまどうやってこれを退治いたしますということをここで申し述べるだけの知識を私も持っておりませんが、どういうふうにこれに対処していくかということは十分に研究をすることにいたします。  われわれも実際目につくですよ。ことに地域的に九州地方が特に多いという——いま北陸のほうにそんなに多いとは知りませんでした。一番九州がひどいという話でありましたけれども、東海道でもわれわれでもずいぶん目につきますから、ことにちょっと空閑地みたいなところに非常に密集するのもありますから、これはひとつ研究をさせていただきたいということで御答弁といたします。
  121. 森中守義

    委員長森中守義君) 長官、ちょっと私から二、三問重要な点をお尋ねしておきますが、けさ実は中曽根さんが見えておりませんので十分意見を聞くことができませんでしたけれども一連工場爆発の問題で非常に気になるものですから、それで先ほど関係の現行法を少し調べてみましたけれども、たとえば火薬類取締法でありますとか、高圧ガス取締法あるいは液化石油ガス保安の確保及び取引の適正化に関する法律、鉱山保安法、労働災害防止団体法、それからガス事業法、こういったように幾つかの安全管理を規定をした法律があるんですね。しかし、今回こういったように三日おきあるいは連日のように爆発ということになりますと、なかなかこれはもうほうっておけぬ。そこで、いま私が示したような関係の現行法が、はたして現在の安全あるいは保安に役立っているものかどうか。もちろん、これをもう一回見直す時期にきていると私は思う。しかし、これを通産省に全部まかせ切っていいかどうか。  ですから私は、この際は環境庁があくまでも環境保全という観点から、工場の安全管理法というような、いわば安全管理の基本になるようなものを一ぺん検討してみたらどうだろうか、こういうふうに思うのです。もちろんこれは通産省がそういう任務を怠っているとは思いませんけれども、やはりこういうものを所掌するものとしては環境庁ではないかと思うのです。したがって、工場安全管理法というようなものを検討される意思はないのかどうか。いかがでしょう。
  122. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いま、御指摘のような工場安全管理法ですか、そういうものは考えておりませんけれども、先ほど杉原委員か七項目、化学工業に対してこういう点に問題があるのではないかという御指摘があったのですが、私も、いろんな取り締まり法規は委員長御指摘のようにたくさんありますけれども、いろいろ事故が起こってきての対策というよりも、何かこれだけひんぱんに化学工業に次々に事故が起こってくるということについては、通産省としても工場の行政の監督といいますか、地方の通産局も持っているんですからね、どうも需要の増大に伴って多少無理があるのではないか。杉原委員の御指摘のように、労務者も生産の量的な拡大のために多少技術的な訓練の面においても問題があるのではないか。そしてまた操業の面においても無理があるのではないか。こういうので、取り締まり法規のいろいろ御指摘のような問題もありますけれども、もう少し通産行政の企業に対する監督というものが、いま言ったような操業の無理、技術のいろんな訓練、こういう問題についてもっと通産省として、現地の地方通産局を通じて監督を強化する必要があると私は思うのです。  事故が起こってきてということになってくると、ことに先ほども問題になっておったように、工場と住宅地域というもの、ああいうことを考えても、今後の工場立地というものは相当きびしく規制する必要がある。ほとんども工場と住宅地帯というものが隣接しておるというようなことになれば、化学工業なんかの場合は非常に危険がありますからね。いろいろな点であの問題には、これからの通産行政あるいは環境保全行政の上に非常に軽視することのできない教訓があると思っております。  したがって、これは政府としても、一番工場の実態を把握しておるのは通産省ですから、これがやはり——量産といったところで、事故を起こせば量産も何もないんですからね。非常に健康に被害を与えるということで、しばらく工場は操業を停止しますしね、量産という上においてもマイナスになるわけですから。だから通産行政の今後というものは、ことに化学工業の場合は安全というものの確保が通産行政の中心にならないと、ほかの場合もそうですけれども、ことに化学工業の場合はちょっとしたミスによって非常な被害を起こす。ことに最近のミスというのは、初歩的なミスが多いところに非常に問題があると思うんですよ。やむを得ない事故というよりも、ちょっとバルブを締めるのを忘れたとか初歩的なミスが多いところに、これは企業監督の任に当たる通産省は、もう少し地方の通産局を通じて、企業の管理体制というものの注意をするということが一番大事だと思います。  いま委員長の御指摘になったいろんな法の点においても、それは不合理な点があればいま一ぺん洗い直してみる必要もありましょうが、やはり根本には私はそういう問題があるような気がいたしますが、取り締まり法規についても環境庁としても研究をいたします。
  123. 森中守義

    委員長森中守義君) それからもう一つ、先ほど発表された環境調査の総合評価の問題ですね。もちろん、これは権威ある人たちによって一応の判定が下されたわけですから、価の高いものとして受け取りたい。しかし、これはおそらくきょうの発表を機会に各界各方面にかなりの議論を呼ぶ、こういうことを私は一応想定していいと思うのです。  そこで、出された判定に至る経過の中に、委員の中の少数意見はなかったのか。これで全面的によろしいと、そういう意見でまとまったものか、あるいは単数もしくは複数の委員の中から、この総合判定には同意しかねるという少数意見はありませんでしたか。
  124. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私の報告を受けておるのは、全会一致である、少数意見なしと。これはやっぱりデータですからね。だから、私は先ほどの御答弁で申したように、これだけで終わらないで、これはデータに出たものによって、政治的な判断を加えていないわけですから少数意見は出ないことは当然だと思うのですが、これだけでもう全部終わったということではなくして、もう一度やはり問題のところは、ある時期を、次の時期はいつというふうにきめてするか、定期的にするか、これはもう一ぺん追跡調査をしたいと私は思っているのです。これはこれとして、出たデータに従ってこういう結果が出たものでありますから、これは当然に尊重をいたしますけれども、しかしなおあれだけ問題が起こった水域ですから、不安もありましょうから、もう一ぺんそういうふうな調査の機会を持ちたいと考えておるわけでございます。
  125. 森中守義

    委員長森中守義君) そうだとしますと、さらに継続的に追跡調査が行なわれるということであれば、それなりにまたその防止もできましょう。ただ、私が多少気になりますのは、せんだって参りましたところでたとえば大牟田川、これは三井東圧がおおむね四トンぐらい流していると、こう言っているんですね、推定として。それから日本合成が七トン。これはかなり古い時代からのもののようです。しかるに、魚介類あるいは水質についてはまあまあいいとしましても、底質が全然シロだというのがどういうものなのか、こういう疑問が、実際のたれ流しの状態からするとまっさらだとはどうも考えられない。が、判定の結果シロになっているんですね。これにも一つの疑問がある。  それから、多少沿革的にこういう政府機関調査の結果などを見ますと、どうもたとえば政治力あるいは財界の圧力に屈して委員が所説を曲げたのではないかという例も決して少なくない。しかも、先覚的といいますか、あるいは先駆的な良心的な学者によっていろんな問題が指摘をされる。そのことが一つの論点になって、賛否の議論がわき起こってきた過去の幾つかの先例もあるのですね。そういうことを考えますと、何も出されたものを変な意味合いで受けとめたというわけではございませんけれども、これがオールマイティというわけにはいかない。しかし長官は、いやこれからも継続的に追跡調査をやるんだと言われるから一応了としますが、具体的には過去の沿革の中にそういうものがあったというふうなことで、どうも私は、これがきょうを契機に新たな議論に発展していくのじゃないかというように考えるわけです。  それと、いま一つは、先ほど杉原君からもちょっと話がありましたように、どうも容疑をかけられていた企業原因者から解放される。それで在来介在していた幾つかの問題が、完全にこれが消滅する方向にいくのじゃないか。そうなると、漁業者であるとかあるいは関連の人たちがこうむった損失は一体どうなるのかというようなことも、非常にこれはこれから先の新たな大きな問題として提起されたような気がするんですね。こういうことを一体どういうように始末をつけられるおつもりなのか。  いま一つは、六月でしたか、暫定基準を厚生省がつくって、それが魚が食える食えないという議論に発展をしたわけですけれども、どうも次から次に政府の発表が変わってくる。さしずめ何を信頼していいのか。いやこれが総合的なものであり集約的なものだから、これを信頼してくれという、こういう政府の言いわけになるでしょうけれども、さて、そういうことで国民がすなおに受け取るかどうか、はなはだ疑問に思うのです。これは私の固有の見解ですけれども、へたをすると、これが一つの材料に使われて、水銀ないしはPCBに関する限りこれでもう一件落着だ、それで未処理のものについては、ヘドロの処理をやる、それの方式によって処理をしますということで、いわば世間への鎮静をこれではかるという、そういう政治的な意図に使われるのじゃないかというような非常にゆがんだ考え方なども持っても、一向、事環境に関する限りおかしくないと思うのですが、いかがですか。
  126. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私は、その調査の結果を発表することによってどういう社会的波紋を描こうとも、一切の調査には政治的な意図を含めてはならぬというのが私のきびしい方針です。それはもう、そのことをそのまま発表することによって企業においても政府のほうにおいてもどういうふうな影響を受けようとも、調査の結果をそのために政治的に曲げてはならぬというのが私の強い現在の方針でありますから、それはもう環境庁には徹底しておるんですよ。これには政治的意図はいささかも加わってはおらないわけであります。ただしかし、一回の調査でありますから、もう少しある時期には追跡調査といいますか、そういうものもしてみたい、念を入れてしたいとは思っておりますが、これには何ら政治的なそういう意図は含んでおらないということは、委員長もひとつ、委員長の発言は影響力を持ちますから、それはこのデータというものには御信頼を願いたいと思うのでございます。  ただしかし、いままで漁業者がいろいろ損害を受けておりますからね、暫定的な安全基準なんかの発表後において。こういうふうな問題については、漁業者のいままで受けた損害に対してどういうふうにこれを処理していくかということは、推進会議の議題として十分な検討を経て結論を出したいと考えておる次第でございます。
  127. 森中守義

    委員長森中守義君) これは大臣のそういう決意をもちろん否認はいたしません。しかし、政治といい国会といい、真実を追求する場所ですから、きょう出されたままのものですからしさいに検討もできませんし、これはひとつこれからかなり長期に検討を加えさせてもらいたいと思うのです。ただ、政治的な意図がない、そういうものを加える必要はないんだ、これはもう全くそのとおりだと思う。  それでもう一つ、ほんとうにそうなのかといいますのは、例の自然環境審議会、これが答申にあたっては一体どうであったのか。あの委員の中では、自然環境を破壊してはならぬということでかなり強い意見が出た。しかし、そのことが事務次官会議等によって、あまりにも影響があるからこれは出すな、これは出せというように選択をされたということなどが新聞に出ているのです。これなどはまことに文字どおり政治的な意図に基づいたものであって、正しい答申であったとは思わない。しかるに、そのことがきょう配付された基本方針、閣議決定として出ている。環境庁はあくまでも正義を守っていくのだ、こういうことなんですが、しかし、それに政治的な意図があったのか、なかったのかという判定については、新聞の報道による限り、どうも少しくあり過ぎだというようなことなので、これは長官の言われることを頭から否認はいたしませんが、やはり何とかには妥協があるというようなこともしばしば聞く話ですから、そういうことも頭の中に描きながら私はお尋ねしたわけで、しかし、きょうの出された評価については、これから大いに勉強させていただきたい。同時にまた、いろいろなこれから発生する問題については、長官の良心ある、善意ある御裁量をお願いしておきたい。
  128. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、私はたいへん限られた時間でございますので、さきの国会で成立を見ました公害健康被害補償法の内容について、いよいよ政令決定の段階になっておると思います。いろいろと気になるところがありますので、そういった点についてお伺いをしていきたいと思うわけです。約六十分にわたってその問題について詳細にお伺いをして、そうして長官の御見解をと思っていたのですけれども、お約束の時間がたいへん迫っているようでございますので、最初に焦点だけ長官の御意見をお伺いをいたしておきたいと思うわけです。  当然のことながら、これはさきの国会で御答弁をいただきましたそれぞれの観点というものが生かされて、政令に具体化がはかられていくであろうというふうに思うわけでございますが、詳細はあとでお伺いをすることにいたしまして、最初に、一番問題点であります指定地域の決定でございます。これについては、さきの国会の中でも言っておられますように、現行措置法の指定地域は当然組み入れる、地方公共団体がつなぎ措置をとっているところ、それ以外の汚染地域についても広範囲に見直していくというお立場が表明をされておるわけです。これについてお伺いをしておきたいと思いますのは、公害健康被害を受けておる患者についての補償を、いつまでに大体全国的な立場でやり上げるかという点が一点です。  それからもう一点は、補償の内容の具体問題でございますが、当然問題になってまいりますのは、障害補償の給付についてでございますけれども、給付の内容はいろいろございますが、障害補償についての、病状に応じてのランキングというものが当然問題になってくるわけです。そこで長官に端的にお答えをいただいておきたいと思いますのは、これは私はさきの国会でも申し上げておいたのですが、被害者がしろうとであっても納得のできる水準、そういうランクづけのきめ方が絶対に必要だということを申し上げたわけでございますが、そういった点について、ほんとうに被害者が納得のできるやり方というものを基本的におやりになるかどうかという点です  その点と、それから長官に特に午前中に報告がありました件でぜひ御意見をお伺いしておきたいと思いますのは、響灘の海域の埋め立て問題についてでございますけれども、私も現地視察に行ってみてたいへん心配をしたわけですが、報告書にも出ておりますように、山口県と福岡県の両県がそれぞれの調査を別々に実施して、見解の違いを主張して調整がたいへん困難を来たしておるというふうな状況になっておるわけです。これは両県が副知事サイドで調整の協議を進めておられるそうでございますけれども、私ども視察をした中身から見ますと、山口県の調査結果を伺いますと、洞海湾の入り口での汚染物質というのが、クラゲの分布で調査をした内容を見ますと、五一%は洞海湾の入り口のクラゲが山口県沿岸へ流れているということがはっきりと調査資料で出ているというふうな問題が、調査の結果として報告がございました。  そうして山口県では、県も、また県議会も、あげてこの響灘の埋め立てについてぜひとも政府として対処してもらいたいという強い陳情が出ておる次第です。その中で問題になっておりますのは、すでに埋め立て免許をとっている進行中のところも、いま工事をストップをしておるので赤潮はとまっているけれども、工事 やるとすぐに赤潮発生してくるというふうなことで、こういう陳情の中身が出ているわけです。「現在進行中の埋め立て工事及びしゅんせつと同海域の環境の汚染、汚濁並びに赤潮発生との因果関係が明確になり、それらの防止対策が確立されるまで、工事並びにしゅんせつを一時中止するよう行政指導を加えられたい。」二点目は「今後新たに認可申請しようとする計画については、白紙撤回の方向で再検討するよう指導を行なわれたい。」というふうな陳情か出ているわけです。  私は具体的な中身を聞いて、山口県側の調査資料と福岡県側の調査資料と調査の結果が違うということで、調整がきわめて難航している。しかも、具体的にその工事をストップしておる間は被害か起こらない。工事が進めば赤潮が起こるという実態がすでに出ているということであれば、両県の調整が困難であれば、当然これは環境庁として調査も行なうなり、あるいは一定の見解を明確にするなり、やることがきわめて大事な段階にきているのではないかというふうに思うわけです。その点についてが一点。  それからもう一つ、調査報告の中の問題の第一点、倉敷松江地区集団移転の問題でございます。これは現地へ参りましてたいへん驚いたのですけれども、まさに、よくこういうかっこうの工場立地が許されてきたなというふうに思いますが、二百六十所帯の松江地区の方々が、集団移転でも要請をする以外に道はないというふうにお考えになったのは当然だというふうに、現地へ行ってしみじみ感じました。長官も御承知だと思います。そこで、確かに加害企業の問題、これは加害責任というのは免れないと思いますけれども、あのような工場立地を許してきた政府あるいは県、市のそれぞれの行政責任というのは当然あろうというふうに思うわけです。そういう点で、これは本院でも請願書を採択をいたしておりますが、こういった点についての具体化をどこが中心になってやっていくか。私はやはり環境庁関係各省を取りまとめて、一日も早くその被害を受けている松江地区住民要望を満たしていくということが早急に必要ではないかというふうに痛感をしたわけです。  以上の四点について、長官の御見解を最初にお伺いをしておきたいというふうに思います。   〔委員長退席、小平芳平君着席〕
  129. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 最初にちょっと事務的に申し上げたいと思いますが、指定地域の点につきましては……。
  130. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 長官、時間は四時まででしょう。だから長官の御見解を伺って、あとで詳しく局長の御見解を伺いたいと思っているのです。総括的御見解でけっこうです。
  131. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 健康被害者の救済の制度は、九月の一日から実施したいと考えるわけでございます。そうして、その間に患者の認定とか地域指定という場合にも、委員会でいろいろ御答弁も申し上げました線に沿うて検討を加えて、できるだけ早くそういうものに対する方針をまとめていきたい。実施は九月一日からいたす考えでございます。  それから響灘の点については、これはやはり瀬戸内海環境保全法案というものも通過をいたしておるわけでありますから、新規の埋め立てについてはこの適用を受けることは当然でありますが、現在までのところ、福岡県と山口県との話し合い、なかなか調整がつかないようでありますが、環境庁としても、その埋め立てによる潮流の変化であるとか、その埋め立てによる、工場立地による水質の汚濁がどういうことであるかということは、両県の調整いかんにかかわらず、環境庁としても十分に環境の事前調査をいたさなければならぬわけでありますから、両県の話し合いは、これは地元で話し合いもつかないような事業というのはなかなか進んでいきませんから、調整をつける必要がありますが、それと、またわれわれとしても、そういうことばかりでなしに、環境庁自体の環境保全の見地からもこの問題に対する事前の調査というものはいたす所存でございます。しかし、これがどういう計画になっていくのかは、両方の話がつかないとこれからどういう埋め立て計画になっていくのかということが明らかになりませんから、関連はありますけれども、しかし環境庁としても、やはり独自の立場からこの問題に対する事前のアセスメントをいたすつもりでございます。   〔委員長代理小平芳平君退席、委員長着席〕  松江地区の問題、実際は、私先ほどの答弁の中にも言ったのですが、日本の工場と住宅というものを、私は環境庁としての地域開発の意見をいうときには非常にこの問題をきびしく取り上げるのです。それは工場が行ってしまってから、あそこの場合でも直接私ども参りましていろいろ話を聞きましたけれども移転といっても、その中で意見が、いやだという人もおりますし、全員というわけでもないわけです。移転する場合においてもどういう条件で移転するかということで、実際むずかしいですからね。今後やはり工場の立地のときに、これはもう非常にきびしく住宅と工場地帯というものを分離する計画を立てなければ問題がある。むずかしいと思いますが。  全国的に見ましてもそういう地域がありますので、これはどうしても地方の自治体が中心になってしないと、環境庁があちこち乗り出していって、集団移転というようないろいろ地方的な問題が複雑にからみ合っておる問題をわれわれが処理することはできませんが、われわれがやらなければならぬことは、今後の工場の立地というときに、事前に環境庁がきびしい態度で地域開発の場合に当たるということが、これから非常にわれわれに一つの責任があるという感じを強くいたした次第でございます。いまあるところは、これは地方自治体が中心になって案を立ててもらって、それに対してできるだけのわれわれが協力するということでないと、実際に問題は動かないという感じがいたすわけでございます。
  132. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは少しも前段の質疑をやっておりませんから、長官には具体的にわかっていただけないので、的確な御答弁をいただけないことはたいへん残念だと思っております。  そこで、私先ほど申し上げた中で答弁が一つ漏れておりますのは、公害健康被害補償法の中の障害補償費の支給のランクづけなんです。これは前の国会の委員会のときにも申し上げたのですけれども、専門的にたいへんむずかしいランクをつけて、しろうとである被害者の皆さん方が、自分がこのランクにされたということが納得できないということで、末端で紛争の種になるようなやり方というのはやってはならぬと思うという意見を申し上げたわけです。現にいまでも、つなぎ措置をやられている大阪でも、これは新聞等で御承知かとも思いますけれども、関西電力等の企業に対して直接交渉なども始まるというふうな状況が起こってきておりますから、そういう点で、少なくとも被害者が納得のできるランクづけ、そして少なくとも、もう少し言えば最低限いまのつなぎ措置を下回らないというふうな基本的な立場というものが、具体的な政令決定の中で生かされるかどうかという点なんです、問題は。
  133. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) ただいまの点、二点あると思います。  一つはランクそのものをどういうぐあいに区分をつくるかという点だと思うわけでございます。この点につきましては、十分いまやっております調査研究の成果を踏まえまして、中央公害対策審議会で専門的に審議をしていただいた上できめていこう、こう思っております。  次は、具体的に個々の方々につきましてどのランクに当てはめるかという問題でございまして、これは法律上は認定審査会の意見を聞いて知事なり市長がきめるということになっておりますが、その際、できるだけ主治医の判断ということも十分重んじていきたい、こう思っております。  なお、現在地方で独自にやっておられる制度との関係でございますが、これは私どものほうで、地方の制度より下回ったからこちらがその下回った分だけ上積みするというわけにまいりませんので、もし万一そういう事態がありました場合は、地方独自の制度として今後さらに上積み部分を続けていかれるかどうか、こういう問題として対処するほかない、こう思っております。
  134. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは城戸局長、いま御答弁になられた点は、私はこまかくお伺いする中身があるわけです。けれども、長官の時間のお約束が四時たとおっしゃったから、時間がないと思って、たいへん無理なお尋ねのしかたなんですけれども出席をいただけないということなのでやむを得ず無理なお聞きのしかたをしているのですよ。城戸局長の答弁はあとでゆっくり聞かしてもらいたい。だから、基本的な立場をはっきりしておいていただきたいと思うのですよ。
  135. 森中守義

    委員長森中守義君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  136. 森中守義

    委員長森中守義君) 速記を起こして。
  137. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは具体的にお伺いをいたしますとわかっていただけると思うので、少し具体的にお伺いをしたいと思います。特に公害健康被害補償法というのは、法案審議のときにも問題になりましたように、五十四項目にも及ぶ政令におもな内容がゆだねられているということで、十分具体的な審議あるいは論議というものはやれなかったと思うわけです。したがって、その本制度の中身というものを明らかにしていくというのは、政令をどういう角度で、どういう立場で具体化されるかというのが非常にいま重要だと考えているわけです。すでに補償法が法律として制定をされている段階でございますから、しかも政令も、もう具体的に準備が進められている段階だというふうに考えられますので、具体的にお伺いをしたいと思います。  まず最初にお伺いをしたいのは、補償法施行のための政令、この作業の準備状況、それから実施までの予定、そういうものを最初にお伺いしたいと思います。
  138. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) いま政令の準備状況ということでございますが、私どもとしましては、政令で具体的に書きます前に、給付関係、徴収関係を通じまして各種の調査をいまやっております。その大部分はもうすでにスタートしておりますが、中にはいまやっとスタートできる準備段階まできた、こういうものもございます。これができ上がりました上で中央公害対策審議会にはかって政令をきめるということでございますから、だいぶ時期的にあとになるわけでございます。  実施の時期が、大臣から申し上げましたように来年の九月一日ということを予定しておりますので、その以前に一般に周知する期間をとりまして政令を制定するわけでございまして、それまではむしろ現在は特に調査関係に一番力点を置いている、こういう状況でございます。具体的にどういう調査をどうだということは、御必要ございますれば後ほどお答えしたいと思います。
  139. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いま準備は次々に進んでいるだろうということは予測できるわけですけれども、その場合に、当然さきの国会での御答弁あるいは両院の附帯決議、そういったものが準備作業に踏まえられて進められていると考えられるわけですが、さきの国会で、私あるいは衆議院でのわが党の議員団の質問に対する長官並びに政府委員の皆さん方の御答弁、そういう点をおさらいをしてみたわけですけれども、基本的な態度として、補償法ができたからといって公害防止の施策を企業に対していささかも手控えするようなことは断じてない、まして、これによって企業の加害責任を免罪にするなどということは考えていない、中心的な任務というのは迅速かつ公正な保護をはかることである、この基本点に立って、不十分な点は今後是正をしていくということが基本的な態度として表明をされております。  また地域指定についても、現行措置法の指定地域は当然組み入れていく、それから地方公共団体がつなぎ措置をとっているところ、それ以外の汚染地域についても広範囲に見直していくという御答弁がなされております、また補償給付の水準は、考え方としては慰謝料を含んで、できるだけ高額になるように努力をする。それから補償給付と生活保護との関係については、公害被害者という特殊性にかんがみて、厚生省と打ち合わせて可能な方法を検討するというふうな御答弁などをいただいておると考えます。  準備段階では当然これが生かされていると思いますが、基本的にはどうなのか、その点をまず最初にお伺いをしたいと思います。
  140. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) これは当然、私ども国会で御答弁申し上げたりあるいは附帯決議にありますものは、十分これを尊重するというか、守ってまいりたいと思っているわけでございます。ただ、先ほどもお話ししましたように、現在ではまだ各種の調査をやっている時期でございまして、具体的にいま御指摘のようなものを考えてどういうレベルにきめるとか、あるいはそのほかのそれぞれの措置をきめる、こういう段階に至っていないわけでございまして、そういう考え方のもとに調査も客観的にできるだけ進めまして、早く資料を集めた上でそういう具体的な政令等の作成作業に入りたい、こう思っておるわけでございます。
  141. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そういう立場で、これは問題をしぼってお聞きをしたいと思っているわけですけれども、地域指定の問題でございますが、環境庁で考えている地域指定というのは、法律できめられているように、現在の臨時措置法の指定地域になっておるもの、それから洗い直して検討するもの、地方から指定地域にしてほしいという要望のあるもの、こういうふうな三つに大体分かれるのではないかと思いますが、それを一ぺん地域名で聞きたいと思っていたのですが、これは資料をいただきたいと思うのです。  きょう質疑に関係するので資料をいただきたいと御要望申し上げておいたのですけれども、資料が出てきておりませんので、時間があればお聞きしようと思っていたわけで、最初にちょっとそのことをお伺いしたい。
  142. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま御指摘のございました現行の特別措置法の地域を引き継ぐという点につきましては、これは法で定めるところでございますので、当然にこれを引き継ぎます。  それから次に、洗い直しという問題を御指摘でございましたが、この点につきましては前回の国会の議論で、川崎市の一部であるとか、あるいは尼崎市の一部であるとか、また三重県の楠町といったような、現在地域指定をしているところの横に隣接しておる、あるいは同じ市の中である、そこの中で非常にひどいところだけが指定されておって均衡を失するというような御指摘がございまして、この点の洗い直しにつきましては、九月二十八日に地方自治体に文書を出しまして、そしていままでの得られるだけのすべての過去のデータを出してくれということを申しまして、私どもその資料を求めてやっております。かなりのものが集まっております。また、それにつきまして現在データを中心とした話し合いも数次にわたっていたしております。  それからもう一つは要望のあるというところでございますが、具体的な例といたしますと、たとえば千葉であるとか、あるいは富山市というようなところ、これは従来地域指定には何らかかっておりません。しかしそのような要望が出ておって、すぐ横に隣接したところに地域指定の場所もないというようなことでございまして、そういうところには、これは私どもも書類でいろいろ照会をしておりますが、その中で千葉につきましてはいろいろ資料が出されてきておりますが、富山につきましては、まだ非常に資料として十分なものがほとんどないというような状態でございまして、まだほかのところほど検討ができないというような状態でございます。  そのほか、前回のときには名前が出ておりませんでしたが、地元として要望を持ってきているものといたしまして、吹田とか東大阪というようなものが中にございます。これはまず資料を見てみるという段階に現在とどまっておるということでございます。  一番大きな問題は、前回申し上げましたように、東京、大阪をいかが扱うかということでございます。これは数次にわたりまして、東京都の当局と大阪市の当局と話し合いをいたしまして、今月の末から来月の初めにはほぼ最終的に、どういうぐあいに進めるかについて話し合いがつくだろうというような観点にきておりますが、まだ最終の決定ということには至っておりません。
  143. 森中守義

    委員長森中守義君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  144. 森中守義

    委員長森中守義君) 速記を起こして。
  145. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、いま橋本審議官が御報告になりました点が、環境庁が地域指定を対象としての調査をしている地域でございますか。
  146. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 現在まだ調査をしている地域ではございません。いろいろ前回の国会で御指摘のあった点、あるいは私どものお答えした点に沿いまして、現在その自治体と折衝しておるという段階でございます。
  147. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、環境庁が現在地域指定を対象にして調査をしている地域、これはどこどこになるのか。それから現に環境庁のやっている、調査をしているのだと思いますから、その作業内容あるいは調査方法、それをちょっとお聞かせいただきたい。
  148. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 再度同じことを申し上げて恐縮でございますが、現在まだ調査そのものにはタッチをいたしておりません。地域指定そのものを明らかに頭に置いてやっておりますのは、一つ東京でございます、大阪でございます、尼崎あるいは川崎というようなところが、これは一番大きな重点に入っております。それから千葉が一つの問題として入ってきております。また楠町も入ってきております。ただ、吹田とか東大阪といいますようなものにつきましても、まず大阪市をはっきりさせていかなければならないということを考えて現在いたしておる段階でございます。ほかに富山、上越等につきましては、一応照会はいたしておりますが、まだ検討の材料としての十分なものが寄ってこないという段階でございますので、これは先ほど申し上げましたように、ごく近いうちに最終的に決定をして調査に踏み出したい、そんなように考えております。
  149. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いま手をつけているのは東京、大阪を中心にという御意見でございますが、先ほど長官は九月一日から実施するとおっしゃったわけですが、そうすると、九月一日までに、健康被害を受けていると思える地域全体のそういう調査というのは全部おやりになるのですか。いまは手をつけていないけれども、それまでには全部やるのですか。
  150. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 私、先生のおっしゃるようにできるだけ早くやっていきたいと思ってるわけでございますが、これやはり環境調査、それからDMRCによります慢性気管支炎の有症率調査、受療率調査をやられますためには、どうしてもスタッフの面からくる限界があるわけでございます。現に東京あたりは、もうこれは一年度では絶対やれないということでございますし、その辺のことも考えながら具体的にそれぞれの自治体と折衝してまいりたいと、こう思っているわけでございます。
  151. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、東京あたりでできないと言っておる理由というのは何ですか。
  152. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) この地域指定の問題に関しましては、線を引くということの問題がございますので、硫黄酸化物及び浮遊粉じんにつきまして、本来は一平方キロメートルぐらいのところでやっておりますが、少し荒くしても三平方キロメートルに一カ所ぐらいの測定点を設けてやっていくというような、この測定上の問題点が一つございます。しかし非常に大きな問題点は、いま局長が答弁いたしましたDMRCの面接調査によって住民の四十歳以上の方の調査をしていくという点におきまして、これは現在保健所も非常にほかの多くの仕事も持っておるわけでございます。そういう汚染調査と、特にこの面接調査の面から、東京都の特別区全体を一挙にやるということはなかなかむずかしい問題があるということが、東京都の衛生行政をやるものの立場からの一つのごく事務的な意見でございます。これは事務的な段階でのことで、まだ、きまったことではございませんが、そのような御意見を私ども承っておる、こういうことでございます。
  153. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃちょっとお伺いしますけど、そういう基礎調査の費用というのは、汚染地域をかかえている地方自治体が全部負担をするわけですか。
  154. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 今年度の予算によりまして、環境庁の中におきましては、損害賠償保障制度準備室の予算で六地域と、救済法の六地域というのを持っております。これは国の費用でやるということがたてまえになっております。で、地方自治体も、自分たちも費用をある程度持ってでもやるという意気込みでやっておることは事実でございますが、私どもは極力国の費用でカバーできるようにしてやっていきたいというぐあいに考えております。
  155. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 当然そうだろうと思うのですが、東京都がとてもやれないというふうにいわれておるというのは、これは人の面からですか、予算の面なんですか。その点はどちらなんですか。政府の資金で調査をやるというのに、東京都がやれないという隘路というのは一体何ですか。
  156. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 私どもの受け取っておりますところは、むしろ現地での実施体制の問題が一番むずかしい問題であるというぐあいに考えております。
  157. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、先ほど十二地域とおっしゃった四十八年度の予算の総額は幾らですか。これは損害賠償保障制度基礎調査費と書いてある二千二百二十七万三千円という金額なんですか。それ以上あるのですか。
  158. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) いまおっしゃったのが損害賠償保障制度基礎調査費のほうでございます。そのほかに、審議官から申し上げましたように、健康被害救済地域指定等基礎調査費、これは従来の特別措置法によります指定を進めてまいったものでございます。これが約千八百万円ございます。
  159. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、その千八百万円と二千二百万で約四千万円余り。その四千万円で十二地域というのは、大体対象人口はどのくらいですか。
  160. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) その点が、さっきからお話し申し上げておりますように、東京都なり大阪をどういう範囲で調査をするかということでおのずから違ってくるわけでございます。普通私どもがいままでやってまいりました小さなところですと、非常にわずかな金額でございますが、東京、大阪の場合は対象がおのずから大きくなるということで、まだその点は自治体と私どもの間で話し合っている、こういう段階でございます。
  161. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 話がよくわからないのですけれども、十二地域というのは、この一地域というのをたとえば大阪市なら大阪市を一地域、東京都を一地域というふうに見て十二地域というのですか。どういう考え方なのか、ちょっとよくわからないのです。
  162. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 予算でどういう算定をしているか、後ほどお答えいたしますが、いずれにしましてもこれは予算上、六地域、六地域で入っておりまして、毎年その執行面では具体的にはいろいろ違っておるわけでございます。六地域、六地域を全部東京なり大阪に充てるということも可能でございますし、そのほかのところに充てるということも可能でございまして、この辺は実行問題でございまして、予算上そうなっておるということを申し上げたわけでございます。
  163. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 だからわからないので、それなら四千万円で先ほど言われた基礎調査をするためには、対象人口というものがおよそなければ予算というのは出てこないと思うのですよ。だから、十二地域というのは、大体人口にしたらどのくらいのものを考えて四千万円というのが金額としてあるのだろうか、その辺が私どもによくわからないわけです。
  164. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 今年度の予算の積算の考え方としましては、大体四十ないし四十五平方キロメートルあたりの地域をやりたい、人口としては十五万前後の人口をもって大体一地域と考えておる、というような積算で要求をいたしておるということでございます。
  165. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、人口にいたしますと、十二地域と言うたら大体百八十万人あたりを対象人口として見ておられるわけですね。そうしますと、大阪市全体を一つとらえてみましても、だいぶ人口が減ったとは言いましても、二百九十万前後あります。西淀が該当地域になって十万引いたとしましても、二百七十万人台。そうすると大阪市だけ全部一つ調べるということになっても、この予算では間に合わないのじゃないですか。そんなことはないですか。ちょっとその辺の具体的なことがよくわからないのですけれども、足りるのか、足りないのか。  十二地域と言われると、私ども大阪も一地域、東京も一地域、川崎も尻崎も一地域というふうな考え方をしていたわけですけれども、いまのお話ではそうじゃないのでしょう、対象人口が百八十万人ということになりますと。そうしたら、基礎調査というのは一般的におやりになるのでよう、被害者らしいという人だけを引っぱり出しで百八十万人じゃないと思いますので、どういうやり方をやられるのですか。具体的に理解のできるようにお話をいただきませんと、いよいよ九月一日から実施段階に入ると言われておるのに、調査がうまくいくのかどうかという不安を感じるのですがね。
  166. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 私どもの従来の考え方、また前回の御審議のときにおきましてもお答えした考え方、あるいは御指摘のあった考え方ということでいきますと、最初は非常に狭くしぼっておりましたが、もう少し幅を持たせながら、いままでの極端によごれておるところよりも少し広い範囲内でとろう、しかしながら、その全部を一挙に、たとえば東京都の特別区が全部一挙にそれに入るかと言いますと、私どもの考えでは、全部が一挙になかなか入らないのではないかというような考え方を持っております。大阪市につきましても、やはり全大阪市を一挙にやるかということになりますと、私どもといたしましては、それは極端によごれたところよりも少し幅を広くとっていく、しかしながら全市に直ちに及ぶという考え方ではないというような考え方で議論をしておりまして、汚染の段階を、いまさっき申しましたその出された資料を中心としまして、過去の資料も全部寄せまして、この線を引くような議論をいたしておりますが、そこは地方自治体の事務当局としては非常にむずかしいところでございますので、まだその検討の最終結論には来ていない。しかしながら、ごく近くにはこれを決定をして、今年度の分はそれで執行をする。それから来年度はまた早々に調査費を要求いたすことになりますので、それによって来年度早々にやっていくというような考え方を持っておるわけでざざいます。
  167. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、これは予算が足らぬということになりますね。百八十万人が対象だということになれば、大阪と東京二つだけを見ても、公平に割っても九十万人ずつの対象人口ということになれば、これは汚染状況と全く合わないということになりそうな気がするのですがね。先ほど橋本審議官がおっしゃった、あちらこちらの地方自治体へ資料を出せと言うて要求をされたというふうなところ、それから地方自治体でやってもらいたいという要望の出ておる地域、それの総人口はどのくらいになりますか。
  168. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) いまの総人口、後ほど御報告しますが、私どもいま審議官から申し上げましたように、その全部を対象として必ずしもやるとは考えておりません。これは自治体自身で相当長年にわたります環境汚染のデータがありますし、有症率の調査等もなさっておるところもたくさんあるわけでございまして、そういうものを見ました上で、一つの市の問題のありそうなところを中心にやっていくわけでございまして、それが対象人口になるわけでございます。もちろん、そういうことでございますから、過去のデータで十分間に合えば、こちらのほうの調査はそれで充てるということもあり得るわけでございまして、そういう点を組み合わせて具体的にやりませんと、ちょっといまの計算だけではなかなかここで何ぼやっても合わないのじゃないかと、こう思うわけでございます。
  169. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 基本的に私のお尋ねしていることとそちらの答弁と話がかみ合わないのであれなんですけれども、もっと端的に申し上げますと、法律ができた段階では、少なくとも公害の健康被害を受けておるであろうと思える地域、そういう地域には全部これは洗い直して適用をきめていく。きめていかざるを得ないわけでしょう。しかも九月一日から実施しますと長官は先ほどお答えになっているわけですね。予算が百八十万人分だから、あっちへ回したりこっちへ回したりしますとか、そんなことでは話にならぬと思うのです。だから、九月一日から実施できるようにするためには、どの程度の予算が要って、概算要求ではそれはどのように御要求になっておるかということを聞かせてもらいたい。いまの四千万円では足らぬということだけははっきりしたわけです。
  170. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) いまの予算のお話でございますが、来年度の予算要求につきましては、現在まだいたしておりません。これは例の別法の問題が十分詰まってまいりました上で、あわせて要求するということに大蔵省とは話を詰めておるわけでございます。  それで、来年度その辺どのぐらいの予算になりますか、いまちょっとはっきりしたものを申し上げられませんが、私どもとしましては、先生おっしゃるように、できるだけ九月一日スタートの時点でそろえたいと思っております。しかし、これはどうしても過去のいろんなデータやなんかも見ながらこちらはやるわけでございまして、全くデータがないところを、いきなりこちらの非常に精緻な調査をやるということもまいりませんので、そういう意味での時間的なズレがある都市もだいぶできるわけでございまして、その辺はやはり具体的な問題でないかと思って、私どもいまそういうデータを自治体から持ってきてもらいまして、いろいろ検討しておる段階でございます。
  171. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 なかなかむずかしい内容のあることは私もわからないわけじゃないんですよ。しかし、新しい法律が制定をされて施行をされるという段階になりますと、被害を受けておる人たちがその法律の恩恵に当然浴さなければならないと思う。そういう立場で見ますと、予想される地域をいつまでにそれでは全部洗い直すというふうに考えておられるか、その点です。九月一日には全部そろわないかもしれないとおっしゃいましたね。それではいつまでにはそろうのかということ、それをお聞かせいただきたい。
  172. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) いつまでにそろうかということでございますが、私ども前の国会の御答弁では、九月にはともかくも現在の指定地域だけはそのまま当然新しい指定地域として政令で指定するわけでございます。そのほか、指定地域内外の見直しもやってみたいと、こういう御答弁をしておりますが、新しいところにつきましては、できるだけ努力しますけれども、そこで全部そろうということは非常に困難だということは御答弁申し上げておるわけでございます。私、実はその辺を不可能に近いのじゃないかと思っておりましたが、最近、過去のデータをいろいろ見ますと、相当そろっている都市もあるようでございますから、できるだけそういう御指摘もありましたような、過去のものを十分生かして、現在のレベルだけでなくて過去のデータを生かして広く拾ってまいりたいと、こう思っております。
  173. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、一〇〇%とはいかないけれども、過去の資料等の整っているところは、できるだけ九月一日にそろえられるように作業を進めていきたい、そういう予算も要求なさるということでございますか。
  174. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) それで、過去のデータがそろっているところで当然指定地域の対象になり得るような汚染レベルなり、あるいは調査があればその有症率レベルなりということが前提でございまして、それが非常に低いところでやるということはまいりませんので、その辺はデータを見た上で取捨選択をおのずからせざるを得ない、こう思っております。
  175. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がありませんから、あまり詳しくお聞きしませんけれども、少なくとも補償法ができて、公害被害者の迅速かつ公正な保護というのが立法の目的でもございますし、そういう点では、これは予算がないからできない、調査が進められないというふうなことは一切許されないというふうに思いますので、非常に重要な課題であろうと考えておる次第です。そこで政務次官に御出席をいただいておりますので、その点についての御決意をお伺いをいたしまして、その問題については終わりたいと思います。
  176. 坂本三十次

    説明員(坂本三十次君) 救済法から補償法へと今度進むわけでありまするけれども、いま委員のお述べになりましたような、また私どもの申し上げておりまするように、やはり迅速公正な救済ということを基本姿勢にして考えますれば、地域指定その他につきましても、これはいままで以上救済に対して万全を尽くすという、前進的な姿勢でもって努力を進めてまいりたいと思っております。
  177. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 この補償法という法律ができまして考えるのですけれども、補償法案の審議のときにも参考人の方々もお述べになられましたけれども、本来補償を広げていくということが中心課題ではなくて、環境の回復ということが本来の目的だというふうにいわれていたと思うわけですが、法の実施という段階を迎えた現在では、地域指定の解除ということも当然お考えになっておられるのではないかと思いますが、どういう状態になったら地域指定の解除ができるというふうにお考えになっておられるか、御見解を伺っておきたいと思います。
  178. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 地域指定の解除の要件につきましては、基本的な考え方のみで、まだ具体的な条件等につきましてはこれからまだ数年、少なくとも四、五年かかるのではないかという感じがいたしますが、基本的にはまず汚染が下がっているということでございます。それからその次の問題は、新しく発生する患者の割合が、普通のところで見られる発生する患者の割合とあまり変わりがないというようなレベルになるのがほんとうではないかということでございます。そういう意味で、これは発病率になりますので、従来の有症とは異なっておるということでございます。  なお申し添えますが、地域指定が解除されても、そこにおります患者さん、前から給付を受けている患者さんたちは、指定が解除になっても、まだなおるまでの給付を受けるということにおいては当然でございます。
  179. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 一般的なことしかお考えになっていないだろうと思うのですけれども、新しい患者さんの発生が指定地域以外の地域とあまり変わらない状態というのは、新しい環境基準が設けられたわけですから、当然新しい環境基準の水準ということが考えられているのかどうか、その辺はどうですか。
  180. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 新しい環境基準の水準といいますのは、維持することが望ましい水準ということでございまして、私どもは新しい環境基準の水準そのものをもってその尺度とするというような考え方には必ずしも立っておりません。
  181. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それはたいへんなんで、そうしたら、どのくらいになったら解除するのですか。というのは、たとえば臨時措置法の関係の間でも、私大阪の西淀川に住んでおりますけれども、やはり一部の地域では、解除をしてもらったらどうだろうかという意見も出てくるわけです。というのは、それは公害がなくなったからそういう意見が出ているというのじゃなくて、その他のマイナス要因というのがずいぶんたくさん出てきますからね、それと比べればというふうなことになって、解除をしてもらいたいという要望などが出てくるわけです。したがって、どういう水準になれば解除を考えるかということは一つの重要な課題になっています。そこでお聞きをしているのですけれども、そうしますと、新しい環境基準は考えていない、それから前の環境基準の〇・〇五PPMではない、硫黄酸化物だけとりますとね。どの辺だったら考えられるか。
  182. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いまお答えいたしましたのは、必ずしもその水準を考えていないということでございまして、実際、発病が普通と同じようになると、実はその水準であったということになるかもしれません。あくまでも新発生が普通の場所のバックグラウンドと同じような水準になるということが、一番大きな尺度であるというように私どもは考えております。
  183. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 人体影響を中心に考えていくということですね。そうしますと、発病率が他の地域と同等になるということが解除要件になるとしますと、発病率が他の——他のといったって、それは環境が良好であると考えられる地域と比べて悪い地域というのは、全部そうするとこれは補償法の対象にせざるを得ないのじゃないですか。
  184. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 実は発病率をつかまえるというのは非常なたいへんな作業になるわけでございまして、そのために先ほど四、五年の年次はかかるであろうということを申したわけでございます。
  185. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、四、五年というのでは困るんですけれどね。解除の問題について特にお聞きをしましたのは、実際に法の施行で、全部疑わしい地域を洗い直すということについてできるだけ努力はするとおっしゃっておりますけれども、九月一日にはとてもそろいそうもないというふうにおっしゃっている。それで、どのくらいかかるのかと言うたら、四、五年だと、こうおっしゃった——それは四、五年じゃない。だから、いつまでかかるかということを聞いているわけです。その辺がどうもはっきりせぬから、せっかく法律ができたけれども、問題になっている地域は何とか乗せられるかもわからないけれども、自治体の能力等から見て独自の調査資料を十分持たないという地域は、汚染地域であっても漏れるおそれというのは非常に多いというふうに思うわけです、先ほどの御答弁などから伺いますと。大都市は一定の水準を持った調査資料を持っていると思いますが。だから、最低限政府がこれ以上の、もう全国的に見てこれ以上適用を拡大しなくてもよかろう、これで大体全部実施済みだというふうになるのは、大体いつごろをめどに置いておられるかと、いうことです。
  186. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) いま申し上げましたように、現在いろいろ自治体独自でやっておられるところ、そこで今度きめます一つの指定の判定基準に照らして、ほぼこれだったら指定を当然すべきだろうと思われるような地域については、当然私どもも基礎調査をやってまいりたいと思っているわけでございます。ところが、データが十分自治体なんかになくて、今後また新たにいろんな調査を自治体でやりながら要望が出てくるところもかなりあるのじゃないかと思います。そういうこともございますので、結果的にはやはり二年なり三年なり当然ふえていくと思います。これは結果的にふえると思います。しかしそれを三年後もふえるじゃないかとおっしゃっても、それをいまやるかといいますと、いまではそういうデータは十分ない。かりにやるとしますと、全国全部やらなきゃいかぬ。もうこれはとてもこの基礎調査ではやれないわけでございますので、そういう意味で結果的には大体三年ぐらいあとがピークか、あるいは場合によっては五年ぐらいあとがピークになるかもしれない。この辺はわからないのでございます。気持ちとしましては、いま少なくとも自治体から要望が出ているようなところでそういう可能性のあるところはどんどん拾っていきたい、こういうことでございます。
  187. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 お話を伺っていると、たいへん一面ではそういうかまえでいってくれるのかと、あるいは一面では不安が残るというふうに思うわけです率直に申し上げて。そこで本院の附帯決議にも、二番目の項に「地域の指定にあたっては、すべての公害患者が救済されるよう適正な指定を行ない、」というふうに述べておるわけですので、そういった附帯決議の精神あるいは法の目的等から言いましても、ぜひ積極的な立場で、これは調査がどうしてもできなくてあるいは過去のデータがなくてやれないというふうなところはやむを得ないと思いますけれども、少なくとも予算が足らなくてできないというふうなことは言ってもらっては困ると思うのですが、その点について最後に御見解を伺っておきたいと思います。
  188. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) それは全くそういう気持ちでおるわけでございまして、自治体独自の調査を十分生かす、場合によっては自治体も並行して独自の調査をやってもいい、こういうところもあるわけでございまして、そういう御相談を詰めました上で、なお調査予算で不十分な場合は庁内の既定予算の全体の中で検討していく、こういう考え方でございます。
  189. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 あと時間があまりありませんので、先ほど長官に申し上げたのですけれども、よくわかっていただけてなかった問題なので、障害補償費のランキングの問題について簡単にお伺いをしたいと思います。  これは先ほども申し上げたように、前の国会で申し上げたように、末端で被害者の中で紛争の種をつくらないように、しろうとでもわかるようなランキングをぜひつくるべきであるという見解を申し上げておいたのですけれども、政令を定めていく上でどういうものさしを準備して進めておられるか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  190. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) この障害の区分でございますが、先生の御意見のように、医学的に見た見解と、それに基づく判断と、また被害者がお受け取りになっておられる自分の程度というものがマッチしたものができるのが、一番理想的であると私どもも思っております。なるべくそういうものをいたしたいということは、私どもも一つの願望でございます。  その場合に、一つは主治医の意見を重んずるということが大きな問題でございまして、これは医学的な所見ということでございまして、主治医としてかなりな期間患者を診察され、またその症状等も詳しく観察されて、それによる医学的な所見というものは、これは客観的に主治医がだれに災いされることなくおっしゃるべき事柄であるというぐあいに考えております。その点をできるだけ詳しく聞かせていただこうということで、今回約千数百人のケースについて調べるということの点におきましては、主治医の御意見をできるだけ詳しく聞き取るということで、現在地元の行政当局のみならず、専門家も医師会の人も加えて数次にわたる話し合いをしておるところでございます。  それから第二番目が、客観的な検査の尺度ということでございまして、どうしても幾つかはできるだけ客観的な尺度がほしいということでございます。ただ、すべて得られるかどうかということはむずかしいポイントでございます。赤ちゃんを検査はできないというようなことがございますので、そういうところは無理だと思いますが、やはり肺機能の検査というようなものがかなり客観的なデータを提供できるというような区分につきましては、できるだけそれを生かしたいということでございます。  それからもう一つの問題は、どの程度労働能力の喪失また日常生活の困難度があるかということでございまして、成人につきましては、四日市判決の佐川鑑定書といいますものが、一つの裁判の基礎にもなったものとして前例があるわけでございますが、このほか、これではカバーされてない子供の問題というものがございますので、その問題につきまして現在小児科の先生と現地でおやりの方あるいは保健婦さん等と話を、いろいろ数次にわたって来ていただいて、相談をして、やはり別の区分を考えなければならないというぐあいにいたしております。なお、この佐川鑑定書の問題は一つの確固たる先例ではございますが、できるだけ国際的にも最善を期したいということで、あらゆる文献等も集めながら、現在その参考資料としていたしたいという努力をいたしております。
  191. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 たいへんむずかしい問題ですので、いろいろな角度からの検討をして尺度をきめたいという御見解、これは慎重を期していただきたいと思うのですが、ちょっと気になりますのは佐川鑑定書ですね、佐川鑑定書に対する御見解はどうですか。もう時間がありませんから、端的に。
  192. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 裁判の基礎となったこの非特異性の呼吸器系疾患、特に大気汚染に影響されたものの労働能力の喪失あるいは生活の困難度を示す上においてきわめて貴重な参考にすべきものであるというぐあいに考えております。ただ、子供のケースはあれに含まれておらないということ、非常に軽い人はこの中に含まれておらないというものをいかに扱うかは、私たちはこれから詰めなければならないと、こういうように考えております。
  193. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 佐川鑑定書というのは、おっしゃるとおり四日市判決の一つの指標になったものには違いありません。しかし、四日市判決の場合に、被告がそれでは佐川鑑定書に対してどういう見解を持っているかといいますと、たとえば、佐川鑑定についての見解というのはいろいろな角度で言われておりますが、東京の都立大学の清水教授によると、佐川鑑定はそもそも被告側の申し立てに基づいて提出されたものではあるが、その被告側自身が、その前提において鑑定委嘱の趣旨に沿わない、その結論のいかんを問わず全く無意味で本件証拠として採用の限りでないというふうなことの意見まで酷評している問題であるということで、問題点をたいへん大きく含んでいるというふうに思います。これは御承知でございますね。  さらに清水教授は、この佐川鑑定書についての問題点として、労働能力の喪失ということの意味づけが不明確であって、その肝心なところで資料不足や鑑定方式の制約を理由にして、じん肺法や身体障害者福祉法のいわば行政的な基準への依拠が行なわれており、原告側の指摘する発作状況の把握などにおいてその資料に不十分な点があり、鑑定人自身も労働能力の評価は容易でない旨を述べているにもかかわらず、結論として明確な喪失のランクづけが提示されているという矛盾を持っているというふうに指摘をされています。私も鑑定書は読ませていただきましたけれども環境庁の御見解はどうでございますか。
  194. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 清水先生は法律の先生としてそのような御意見をお持ちであるということは、一つのお立場であろうというぐあいに思っております。  ただ、一つの問題点は、先ほど申し上げましたように主治医の意見ということと、検査ということと、もう一つは労働能力あるいは日常生活の困難、この三つをどのような形でこの制度の中に、来年までに努力する範囲内で、かためられる範囲内できめるかというところに私どものむずかしい問題点もあり、非常に注意をすべき問題点でもあろうというぐあいに考えておりますので、全く患者さんの言うままの程度であればいいのだということになると、医学の診断というのもそこに生きてまいりませんし、検査というものも出てこないということで、やはりこの三つ、申しました医学、検査と、それから患者さん自身が実際感じておられることあるいはそれを横で患者さんとともに観察した所見、この三つの、どう言いますか、悪いことばで言えば妥協点というようなところの区分をつくらざるを得ないのではないかというぐあいに考えております。
  195. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 三つの観点が十分見ていただけるということであれば、これはたいへんけっこうだと思うのですけれども、特に私は佐川鑑定についての、これは裁判で引用されたものですから、それはそれなりのものとして当然環境庁は参考になさると思いますけれども、私どもから見ましても、確かに本人が固有の疾病で労働能力を喪失しておって、その場合に、社会復帰の場合にどれだけの程度の労働能力があるかというふうな判断をする場合には、たいへん適切な内容を持っているかもわからないと思う。しかし、補償法によるランキングの問題で労働能力の喪失度あるいは日常生活の困難度、そういうふうなものを考える場合には、本人固有の疾病じゃないわけですね。加害者による被害に基づいていろいろな障害が出てきているという立場ですから、全然条件が違うと思う。そういう点で少なくとも、これは患者だけの要求で言いなりにランクを決定せよというふうなことを私は申し上げておるのではない、少なくともたとえば本人の固有の疾病で片肺を摘出した、その場合に労働喪失度というのは何十%か、だからあなたの社会復帰後の仕事は何十%程度の仕事をしてよろしいというふうな判断とは、わけが違う。そういう立場をはっきりしておきませんと、佐川鑑定の見地というものは損害論、いわゆる損害補償をきめていくランキングの基本としては核心からはずれることになるのではないかという点を非常に心配をするわけです。  といいますのは、これは具体例をあげますとたいへんよくわかるのですけれども、たとえばぜんそく発作を起こして、チアノーゼを月に十回以上、二十回以上起こしても、労働能力喪失度ゼロだというふうなランクもあるのですね。私どもが通常考えておりますのは、夜中にぜんそく発作を起こして、あくる日に仕事ができるという条件がある場合でも、労働能力喪失度がゼロだなんてことはとても考えられない。月に一回起こしてもゼロではないというのが通常の被害者状況でございます。そういう点では、これは御参考にされるということでございますけれども、非常に観点というのは問題点が含まれておるし、また法理論からいわれても、損害補償法の核心とは離れている内容を含んでいるという点を特に指摘をしておきたいと思うのです。  そういった点を十分含んで、損害補償の区分をきめる場合に十分考えていただきたいというふうに思いますが、再度環境庁の御見解を伺っておきたいと思います。
  196. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま先生の御指摘の点は、私どもも十分頭に置いてかかるべき問題点であろうと思っております。佐川鑑定書の御意見というのは、主治医の御意見と、その検査の所見、この二つから導き出した労働能力、日常生活の困難度ということでございます。そういうことで第三番目の、先ほど私御説明いたしました労働能力の喪失度、日常生活の困難度ということにつきましてどのようなつかまえ方をするかということにつきましては、私ども調査研究の中でいま非常にその議論をいたしてやっておりますので、できるだけよいものをつくっていきたいというぐあいに思っております。
  197. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは特に五十四項目も政令事項があるわけですから、たくさんお聞きをしておきたい点があるわけですけれども、時間の制約があるので二点にしぼったわけです。特に損害補償の区分について慎重な配慮で対処していただきませんと、現実につなぎ措置として地方自治体で各所で実施をされていると、一定の水準がある。それが大幅に変化が起こるというふうなことが起こりますと、末端ではたいへんな混乱が起こる。同時にそれが、対企業との間でどんどん紛争が広がっていくというふうなことも考慮されるわけです。  そういう点で先ほど城戸局長は、いまの自治体がやっておるのよりも水準が、環境庁の今度の法律施行で大きく差が開いて不満が出た場合に、自治体がまた独自に上のせをおやりになったらよろしいというふうなことをおっしゃいましたけれども、それでは法を定めた意義というのは、全くこれは空文にひとしくなりますよ。その点はもっと明確にしておいてもらいたいと思う。せっかく法律ができたのですから、法律ができるのがおそ過ぎたから、待ち切れなくて地方自治体で独自のつなぎ措置を開始しているわけです。そういうことではこの法律の運用についてはきわめて法の精神からいっても妥当性を欠くというふうに思って、先ほどお伺いをしたのですけれども、その点についての御見解をお伺いしておきたい。
  198. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 私いま申し上げましたのは、一つの理屈を申し上げただけでございまして、具体的にそういうのはおそらくないだろう。ただ、私どものほうの給付の対象になっていない、公害病に起因しない死亡だとか、こういうものの給付は自治体独自でやっておるところがあるわけでございますが、こういうものは当然こちらの対象になりませんから、自治体のものがそのまま存続するかどうかということは自治体のほうでお考えいただく、こういうことでないかと思っております。
  199. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私が申し上げておるのはそういう特例の問題ではなくて、基本的なかまえの問題で申し上げておるわけですから、その点だけをはっきりしておいていただきたい。再度その点だけはっきりしておいてください。特殊例は別ですよ、特殊な例は別の問題として。
  200. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 申し上げましたように、具体的にあるかないかということですから調べますけれども、おそらくそういうものはないだろうと思うのです。私どもの考え方と非常にかけ離れておるような例というのは、そうないのじゃなかろうかと思っております。これは具体的にやりませんと、一般論ではちょっとできませんものですから。
  201. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、確信をもってお答えをいただいておけば終わりたいと思っているのですけれども。ないだろうというふうに言われますけれども、政令が定められてないのですから、私どもにしたらわからないわけですよ。それで佐川鑑定書を判定の基準に使うといわれたら、これは大きな差が出てくるであろうというふうに私どもは考えざるを得ない。だから申し上げているので、基本的な立場だけを明確にしていただければ、これはもうこの質疑は終わりたいと思います。
  202. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 私、全体のレベルのことを考えておりましたが、具体的にいま御指摘のランクづけに関連したことになりますと、確かにその辺いろいろあり得ると思います。現に四日市の場合は、暫定的な格づけをやって過去の分をやっておるわけで、そのあとの分につきましては今後きめるということになっておるわけでございまして、その辺、私どもできるだけ地方でいろいろお考えを持っておられればその辺も十分考慮をしてきめるということだけは申し上げますが、全く違わないようになるかどうかは、具体的な等級みたいなことになりますと非常にむずかしい分野でございますから、先生御指摘のお気持ちはよくわかりましたので、できるだけ努力してみたいと思います。
  203. 森中守義

    委員長森中守義君) 本件に関する本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時散会