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参考人(角坂
仁忠君) 御紹介いただきました千葉県
開発庁長の角坂でございます。私は元来土木屋でございまして、特に仕事の関係で港湾、河川等を専門にいたしておりましたので、三十五年間いわゆる
公有水面埋立法にごやっかいになったものでございまして、現場におきまして、あるいは
行政の監督の立場におきましても、あらゆる点におきまして公有水面の埋め立てに直接、間接に非常に多くタッチいたしております。特に
昭和四十年に私千葉県に参りまして、当時土木部長といたしまして、また現在、
昭和四十五年からでございますが
開発庁長——これは非常にわかりにくいかと思いますが、正式には千葉県総合開発事業
管理者ということでございまして、ここの中に臨海
土地造成事業、いわゆる埋め立て事業の特別会計がございまして、この
管理者で、実際上の責任者でございますが、そういう
意味におきまして、特に
東京湾を中心といたします、私が責任者でやっております大
規模な埋め立てに関連いたしまして、少しく意見を申し述べたいと思います。
本県はいろいろ現在でも大
規模にやっております。将来ともいろいろな角度からさらに埋め立て事業を推進していく所存でございます。この
現状あるいは将来につきまして少しく三十年代からの経緯を振り返ってみたいと思います。御承知と思いますが、千葉県は
昭和二十年代には川崎製鉄の誘致等によります一部の海面埋め立てがございましたけれ
ども、本格的に始まりましたのは
昭和三十二年の五井・市原
地区の工事からでございます。これはちょうど
昭和三十一年に県財政が非常に逼迫いたしまして、当時県庁職員の月給も払えないというような
状態でございました。なお、その当時、農漁村の次三男
対策が非常に県政の頭の痛い問題でございました。こういう問題に対処するために、三十一年でございます、千葉県産業振興三カ年
計画というものをつくりました。このときに初めて一千万坪の埋め立てをやって、ここに工業誘致をして県のこういうピンチを切り抜けようというのが当時の実情でございました。ちょうどそのころ、もう御承知と思います、ちょうど終戦によりまして非常に荒廃した
日本国の第一次と申しますか、いわゆる第一期の経済復興がようやく終わりましたのが
昭和三十年前後だったと思います。このときは国におきましてもやはり非常に問題がございまして、経済の自立とかあるいは完全雇用というものを
目標といたしまして、経済自立五カ年
計画が鳩山
内閣時代に発表されております。自来、新長期経済
計画とか、あるいは
国民所得倍増
計画等々、いろんなそういう
計画が出てまいりまして、
昭和四十五年の新経済社会発展
計画まで、その
時代時代の変化に応じましていろんな
計画が発表されております。こういう国の大きな
計画に基づきまして、県自体といたしましてもその
時代時代の要請に応じましていろいろな
計画が策定されております。
昭和三十七年に、いよいよ千葉県といたしましても本格的に総合開発
計画をつくるために、千葉県長期
計画というものを策定いたしまして、このころの一番の県政の問題でございました県民所得の向上とか、あるいは産業間、地域間の格差の是正あるいは社会福祉の拡充というものを柱といたしまして、
昭和六十年代におきます千葉県の理想的なあるべき姿というものを実は予想したわけでございます。こういう長期
計画におきまして埋め立て
計画も一万一千二百四十ヘクタール、約三千四百万坪というものが一応具体化されまして、そしてこの長期
計画をもとに
昭和三十九年に第一次の千葉県総合開発五カ年
計画が策定されたわけでございまして、もうこの当時すでに臨海開発といえとも将来
——三十年の前半にやってまいりましたように、重化学工業開発オンリーではなくて、やはり地域の特性によりまして、港湾、軽工業あるいは住宅、
公園というようなものを、開発を多角的にやっていこうという
方向が一部ではございますが思想として取り入れられております。
その後、県といたしまして
昭和四十二年に第二次五カ年
計画をつくりまして、
昭和四十四年に千葉県の新長期
計画を策定いたしたわけでございます。この四十四年はちょうど五月三十日に国におきまして新全国総合開発
計画が発表された年でございまして、この新長期
計画に基づきまして第三次五カ年
計画——これは
昭和四十五年から四十九年まででございます。これを策定いたしまして、ちょうどその前後におきまして、いわゆる地域格差とかあるいは産業構造のアンバランスあるいは
公害問題、交通問題、また住宅不足、生活環境の悪化というようないろいろな客観情勢がもろもろに出てまいりまして、こういう情勢に対処するために、開発の
方向も局地的じゃなくて、地域的に拡充するということと、量よりも質の充実を、多様化を求めようということで、この当時、臨海部の埋め立て
計画につきましては、一応、
面積的にはその
目標を一万五千ヘクタールというふうに立ててはおりましたけれ
ども、その
利用方法のパターンを、従来の工業中心からむしろ港湾とか住宅、業務、道路、
緑地あるいは
公園、再開発用地というものへと大きくその
利用パターンを転換いたしておる次第でございます。
このようにいたしまして、いろいろ御批判ございますが、千葉県はここ十数年来非常に目ざましい発展を続けておりまして、県民の生活も非常に上昇いたしております。かなり豊かになってまいっております。しかし一方におきましては、御案内のとおり、急激な千葉県への流入
人口の増加が中心となります非常に変化が急激であるために、水
資源の逼迫とか、あるいは交通混雑、あるいは生活環境施設の不足、また
公害問題、さらに現在一番頭の痛い多様的な
都市問題等、いろいろな問題を提起いたしております。そうしてまた、これは県民と申しますか、
国民全般の欲求でございます、それぞれの人の人生観というようなものが変化を見せてまいっておりまして、いままでの物質的な豊かさを求めるよりも、
人間らしいゆとりのある生活、あるいは自然へのあこがれというようなものがそのおもなもので、そういう表現であらわれておりまして、こういう背景をもとにいたしまして、千葉県では、さきに申し上げました第三次五カ年
計画は、当時「量的発展より質的充実」ということをキャッチフレーズにしたわけでございますが、これをさらに内面的に掘り下げまして「環境の保全と暮らしの向上」ということを最大の理念といたしまして、より豊かな自然と、それぞれ地域地域の特性を生かしました開発を進めまして、県民生活をより豊かにしていきたいということで、第三次五カ年
計画を三年で打ち切りまして、第四次総合五カ年
計画が本年の六月に発表されております。この新しい理念に基づきます第四次五カ年
計画の方針にのっとりまして、第三次五カ年
計画の、先ほど申しました一万五千余ヘクタールのいわゆる埋め立ての構想もさらに再検討いたしまして、その
規模を、わずかではございますが、一万三千余に縮小いたしまして、現在すでに着手いたしております、あるいは
計画中、将来にかけまして大体五つの大きな点を考えておるわけでございます。
現在、
東京都に近い浦安
地区でございますが、これは住宅地と倉庫をはじめといたします流通機能用地あるいは
都市再開発用地、それから市川でございますが、これは同じように住宅地、再開発用地、
緑地のほかに、いろいろ問題がございます野鳥保護のために一大人工干がたをつくるというような決意も固めておる次第でございます。船橋、習志野、市川にまたがります京葉
地区は、これは
東京湾内部におきます流通港湾といたしまして京葉港の
建設に関係いたしまして、現在、港湾とか、湾岸道路あるいは京葉線というふうな交通機能を一体といたしました流通業務
地区として着々整備中でございます。さらに長期的には、本県臨海部におきます一大流通基地として完成させたい、
緑地とか再開発用地もここに確保することは当然でございます。もう
一つは、いわゆる千葉海浜ニュータウンとして宣伝されております千葉西部
地区でございます。これも現在ニュータウン造成用地といたしましてすでに着手いたしております。今後新たに埋め立てに着手する予定でございます幕張
地区につきましては、住宅問題の不足もさることながら、先ほど申しましたように、非常に急激な
人口増加によります水
資源の逼迫その他もろもろの客観情勢に対応いたしまして、なお
首都圏整備
委員会等の御方針にものっとりまして、これを一部オフィスセンターといたしまして、新都心的な業務用地といたしたいというようなことで現在検討中でございます。と同時に、ここには一大海浜
公園をつくるというような
計画も考えておる次第でございます。なお富津につきましては、いろいろの御批判を受けておりますが、当初ここには新全総によりますいわゆる臨海装置型の産業誘致の予定でございましたが、こういう情勢に合わせまして、予定しておりました石油コンビナートの立地は全面的にこれを中止いたしまして、使うといたしますならば、良質燃料の
供給基地とか、あるいは鉄鋼、アルミ等の二次加工、建材、プレハブ等の住宅産業及び流通基地としての整備をはかるような考えで検討している次第でございます。
このようにいたしまして、現在千葉県の埋め立てば、その
時代時代の要請に応じまして総合的なマスタープランを十分練りまして、もちろん
公害問題、
環境保全等につきましては十分な意を用いながら、特に四十年後半になりましては、予定されました工業用地も、その立地につきましては無
公害工場を原則といたしまして、この選定に非常な苦心をいたして、あらゆる角度からこれを検討いたしまして立地をさしている次第でございます。小川
参考人からも御
発言のございましたように、最近、埋め立てイコール
公害発生の
原因というような意見もあるようでございます。私、八年有余、千葉県の全般的な開発に直接関係した体験からいたしますと、現在、環境整備の最大の事業といわれております下水道の大きな処理場が、現在の既成市街地とかあるいはその周辺ではほとんど絶望的というほど用地の取得は困難でございます。そのほか、
公園、道路あるいは
緑地等につきましても、なかなか現在の既成市街地に求めることは至難なわざでございます。こういう
状況と、また同時に、
公害源といわれておりますが、中小
工場等におきましては、住宅密集地の中にあるがために騒音その他で非常に苦情を受けている
工場がございます。これを、住宅地を遠く離れました埋め立て地等に集団的に移転いたしまして、この環境整備をすることによって、これは完全に無
公害工場になるというような事例もたくさんあるわけでございます。こうした目的のために、この公有水面の埋め立て地の
利用を新しい発想から考えてまいりますときには、別の観点からいたしますと、この埋め立て地の
利用方法によりましては、これ自体が自然保護に通じ、環境整備の目的に沿うものでないかと私は考えております。
以上述べました観点からいたしまして、今回、
公有水面埋立法一部改正が議題になっておりますが、国土
利用を合理的に考えまして、なおかつ、
計画に
あたりましては、
環境保全とか災害
防止に十分配慮をいたしまして、なお、公共施設の配置、
規模等適正であるものに限定いたしまして免許基準を明確化いたしておるようでございまして、その他、新しい
時代に適応した諸般の改正をするということでございますことは、時宜を得たものであると考えております。
以上私の所見を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)