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1973-07-17 第71回国会 参議院 建設委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月十七日(火曜日)    午前十時十四分開会     —————————————    委員異動  七月十四日     辞任         補欠選任      上田  稔君     小林 国司君  七月十六日     辞任         補欠選任      小林 国司君     上田  稔君      松本 英一君     加藤シヅエ君  七月十七日     辞任         補欠選任      加藤シヅエ君     松本 英一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         野々山一三君     理 事                 大森 久司君                 竹内 藤男君                 山内 一郎君                 沢田 政治君     委 員                 上田  稔君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 中津井 真君                 中村 禎二君                 米田 正文君                 加藤シヅエ君                 田中  一君                 中村 英男君                 二宮 文造君                 高山 恒雄君                 春日 正一君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        建 設 大 臣  金丸  信君    政府委員        経済企画庁総合        開発局長     下河辺 淳君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        運輸省港湾局長  岡部  保君        建設大臣官房長  大津留 温君        建設省都市局長  吉田 泰夫君        建設省河川局長  松村 賢吉君        建設省河川局次        長        川田 陽吉君        建設省道路局長  菊池 三男君    事務局側        常任委員会専門        員        中島  博君    参考人        水資源開発公団        総裁       柴田 達夫君        水資源開発公団        理事       富所 強哉君        国土総合開発株        式会社社長    小川 栄一君        千葉県開発庁長  角坂 仁忠君        弁  護  士  仁藤  一君        川崎市港湾局長  半澤 督三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○都市緑地保全法案内閣提出衆議院送付) ○公有水面埋立法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○建設事業並びに建設計画に関する調査  (早明浦ダムの放水に関する件)     —————————————
  2. 野々山一三

    委員長野々山一三君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十二日鈴木強君が委員辞任され、その補欠として松本英一君が、また昨十六日、松本英一君が委員辞任され、その補欠として加藤シヅエ君がそれぞれ委員に選任されました。     —————————————
  3. 野々山一三

    委員長野々山一三君) 都市緑地保全法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。   〔委員長退席理事大森久司着席
  4. 高山恒雄

    高山恒雄君 現在の大都市における緑は年々減少してまさに危機的な状態にありますが、東京ではこのまま放任すればあと五十年で緑は全滅するんではないかとまでいわれております。今朝またテレビでも、小田原の青葉が、公害原因ではないかというので、ほとんど青葉のままで落ちておる、こういうことがいわれております。このことは、何といっても日本公害がまさに全土に広がっていると言っても過言でないと、こういうふうに考えます。特にアメリカの資源衛星のアーツから送られている写真の解説や赤外線の写真によって裏づけしておりますことが、全く科学技術庁としてもこの問題について今日までに発表いたしております。この壊滅的な状態にある都市の緑の実態をどのように政府としては掌握をし、かつまた、建設省としてはどういう基本的な対策で臨もうとしておられるのか。法案を見せていただいておっても、地方の自治体の条例よりもはるか後退したような案が提出されておるのではないか、こういうふうに考えておりますが、まず、この掌握されておる現状に対して大臣考え方をお聞きしたいと思います。
  5. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 御指摘のとおり、都会の緑というものは壊滅にひとしいような状態になっておることはだれしも認めるところであろうと思います。私もことに東京の緑というものを思いますと、人口工場等が密集いたしてまいりまして、また戦後の首都圏に集まる、あるいは首都に集まるこの人口あるいは工場、こういうようなものは空地というものを余すことなく利用するというようなことできょうの過密状態を来たしておる、こういうことになりますと、まさに都会はあるいは首都は死の都会と化しておるという感じがいたしておるわけでありまして、緑と人間との関係というものは不可分であり、また、これを切り離すことは絶対にできないものであるということを考えてみますと、緑のない都会というものは何とかしなくちゃならない、これが一つの大きな政治問題であってしかるべきだと私は思います。そういう意味で一木一草たりとも多く緑地を残すということが、あるいは造成するということが、きょうやらねばならぬ政治課題であろうと私考えておるわけでありまして、そういう意味で今後とも最善努力をして、緑をつくるということに、緑地をつくるということに懸命な努力をしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  6. 高山恒雄

    高山恒雄君 大臣、時間がないようですから集中してお伺いしたいのでありますが、今度の予算にしましてもわずか五千万円ですね。三分の一の補助ですから、それを合計しましても一億五千万ということになろうと思います。こういう予算日本の緑を守ることができるのかどうかというところに疑義をはさまざるを得ないのであります。したがって、やるからには、これは苗木の問題もございましょう。特にそういう点は重要な点だと思います。緑にしなくちゃいかぬいかぬと言いながら、実際問題として、さて実現するのにはどうしたらいいかということになると、国民全体が緑というものに深い関心を持ち、それに対応する姿勢ができてこなければいけない。それには政府がある程度のやっぱり努力をして、国民周知徹底させ、さらに国家の予算もある程度のことをしてやらなければいかぬのではないか。  もう一つは、指定はしても、つまりその指定に対する何らの処置も打ってない。そうして、指定されたままで放任しておくということになれば、結果的には、これは自然が失われる状態になるということは言うまでもないことだろうと私は思うのです。こういう予算面に対するその基本的な考え方として、大臣どうお考えになっておるのか、ある程度の助成をするとか、あるいは買い上げてしまうとか、そういう考え方は基本的にないのか、この点をひとつ、まずお聞きしておきたいと思うのです。
  7. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 御指摘のとおり、予算が五千万という予算ではまことに微々たるものである、こういうことで、私も全くそのとおりだと思います。まあ、なかなか政府予算獲得というものは、初年度というものはむずかしいものでありまして、ぜひ、私はこれでいいと思っておるわけじゃありませんが、今後この十倍あるいは二十倍、これをまず取っていくというようなことを考えて、できるだけひとつこの予算を確保しなければ、予算裏づけがなくては仕事ができません。そういう意味最善努力をして御期待に沿うようにいたしたいと思っておる次第でございます。
  8. 高山恒雄

    高山恒雄君 大臣、どうぞ御用がございましたら、御退席ください。  局長にお聞きしたいのですが、昨年の五月に発表された科学技術庁資源調査会で、高密度地域における資源利用とこの環境保全の調和に関する勧告がなされております。その中で、都市の中において確保すべき緑地面積あるいは特に自然状態に近い林地の必要な面積についての量的研究を進めることも強くいわれております。要望されているこの要望に、都市局長は、都市におけるこの緑地必要量をどれほどに見込んでおられるのか、まず、これをひとつ説明を願いたいと思います。  なお、続いて申し上げますが、都市公園必要量は、都市公園法施行令の第一条で「(住民一人当りの都市公園敷地面積標準)」が定められておりますが、これとの対比において、都市計画とその区域において保全すべき緑地面積標準を明らかにすべきだと考えます。あわせて御答弁願いたいと思うのです。
  9. 吉田泰夫

    政府委員吉田泰夫君) 昨年五月、御指摘のような科学技術庁資源調査会からの勧告が出されておりまして、これは要するに地球は有限であるという認識に立って、資源管理環境保全対策というものが人間産業経済活動福祉生活の原動力であると、いわばその認識から出発した対策、特に高密度の都市地域を重点に講じられなければならないということが指摘されておるわけでございますが、このことにつきましては、建設省としてもいろいろな方向で、特に首都、たとえば五十キロ圏の緑地の現況と、今後の必要な水準設定のための基礎的な調査を、四十七年度あるいは四十八年度にも行なっている次第でございます。そういった研究をいろいろやっておりますが、緑の必要量が、直接的な酸素の供給であるとか、大気汚染防止であるとか、騒音防止効果であるとか、こういった物理的なものばかりではなくして、そこに住む方々の精神面心理面効果というふうなものもありまして、なかなかまだ科学的に数量化して申し上げる段階にないことは遺憾であります。その点については、なお引き続き科学技術庁等とも連携をとりつつ、必要な資料をそろえて実施してまいりたいと、こう思います。  ところで、そういった科学的な裏づけによって確実に出た数字とは申せませんが、建設省におきましては長期的なビジョンとして、昭和六十年までに都市公園面積を一人当たり九平方メートルまで持っていきたいということを考えております。これは、先ほどお述べになりました都市公園法施行令による一人当たり六平方メートルの五割増しの数字でありまして、これは当時、同施行令設定当時、まだ緑化対策は思うにまかせなかった時代におきまして、最小限必要な面積ということで六平方メートルというものを考えました。その内訳は、児童公園とか近隣公園といった非常に身近なもので一人当たり三平方メートルぐらい、それから、それより大規模なまとまった広域的なものとして総合公園とか風致公園、運動公園のようなもので一人当たり三平米、合わせて六平米ということを考えたわけでございます。これを見直しまして、やはりそれでは足らないということで、長期構想の九平米というものを出しましたが、これが、私ども現在考えておる都市公園の施設として積極的に一般利用に開放する、公的な都市所有のもとに一般利用に供するという都市公園目標面積であります。  ところで、それだけでは足りないということから本法を提案さしていただいておりますが、本法による緑地保全地区、これは民有地のまま緑地を保全しようということでありまして、開発行為とか建築行為を厳重に知事の許可制にかけることによってそれを保全しよう、そのかわりに必要に応じ希望があれば買い取りを行なっていく、こういうかまえの法律でありまして、原則は民有地のままということであります。これにつきましても、およそ昭和六十年ごろまでには、現在、府県で、ざっと調べましたこの法律対象地域と目される全国約十五万ヘクタールというものを対象に逐次指定してまいりたい、そういう計画を持っております。これを人口で割りますと、一人当たり約十三平方メートルということになりますから、さきの都市公園の九平方メートルと合わせまして約二十二平方メートルになる。このほかにも、都市地域以外では森林区域であるとか、自然環境保全地域であるとか、自然公園区域であるとか、広大な面積がありますが、都市地域においては合わせて二十二平方メートル、単純に足し算すればそういうことになりますが、そういった数字を考えているわけでありまして、諸外国の都市における公園水準、各地によっていろいろありますが、ニューヨークは一人当たり十九平米であるとか、パリが五・八平米、ベルリンが二十四、ウィーンが十五、ロンドンが二十二平米というようなものと比べますと、都市公園面積としてはおおむね半分ぐらい、それから緑地保全地区も合わせますと、おおむね世界の主要都市公園緑地率にほぼ匹敵するということでありまして、いまのところそういう数字目標にいたしております。なお、科学技術庁とかあるいは建設省の科学的な調査によってより積極的な数字が出てまいりますれば、そういう方向にまた切りかえてまいりたい、こう考えております。
  10. 高山恒雄

    高山恒雄君 いまの説明を聞いておりますと、結局、理想的な計画だけは私はできておるのじゃないかと思います。これはあくまでも理想的なものであって、この法律からはそれを見出すことのできない法案ではないかというような気が私はしておるわけです。先ほども答弁されましたように、都市における排気ガス規制大気汚染原因となる工場、さらにこれのばい煙排出規制等公害対策の強化ですね、これらが伴わなければ、この点、都市における緑の行政なんというものは夢みたいなことではないかと、私はこう思うんです。特にこれは、この問題は政府も考えてはおられるでしょうけれども、私は、この緑の行政を担当する建設省としては、これは大臣見えましたら御答弁願いたいと思うんですが、閣議でこの問題をやっぱり強く要望を出すべきではないかと、私はこう思うんです。一度もこういう話を新聞報道でも聞いたことございません。私は樹木が枯れるというような今日の大気汚染ということは、人類が危ういと言っても過言でないと思うんです。こういう点をもっと真剣に政府としては取り上げて、根本的にやっぱりどういう施策を立てたらいいのかという基本がなければ——ただ法案で盛られた案を見ましても、東京等のここに条例がございますが、まさにこまかく出しております。苗木供給義務に至るまで、微に入り細に入りこの条例をつくっております。私はむしろ中央がこういう点まで入って日本緑化ということを考えていかなければ、お互い生存することすら危険であるというこの状態の基本的な打破はできないんじゃないか、こう思うんですが、大臣閣議でいつ取り上げてもらう用意があるかどうか、そこまで重要視、考えておられるのかどうかですね。
  11. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 御指摘のことにつきましては私も全く同感であります。積極的に、閣議あるいは公害審議会等があるわけでございますから、その場面で発言をいたし、御期待に沿うようにいたしたいと思っております。
  12. 高山恒雄

    高山恒雄君 特にこの法律都市における緑の全面的な保全策であるならば、都市における樹木保存する方策として、昭和三十七年の議員立法によって都市美観風致を維持するための樹木保存に関する法律ができたのですが、この法律による保存樹木指定状況等はどうなっているのか、指定状況はもうきまっておるのかどうなったのか、実効をあげておられるのか、この点をまずひとつお聞きしたい。
  13. 吉田泰夫

    政府委員吉田泰夫君) 昭和三十七年に、おっしゃいました樹木保存法制定されまして以来の指定状況は、四十六年三月三十一日現在で調査したところによりますと、十一市二町一村、合わせて十四市町村区域におきまして保存樹が百五十七件、保存樹林が三十七件、面積にして一六・四ヘクタールということになっております。なお、うち東京都につきましては保存樹が十九件、保存樹林が九件、一・三ヘクタールとなっております。
  14. 高山恒雄

    高山恒雄君 このいまの御報告を聞きますと、三十七年から今日まで十年たっておるのですが、これは努力した結果これしかできないというのですか、それとも——あまりにも少ないじゃありませんか、十一市町村ですか、あまりにも少ないと思うのですが、できないその理由はどういう点にあるのか、この点をひとつお聞きしたいと思います。
  15. 吉田泰夫

    政府委員吉田泰夫君) 確かに、おっしゃいますとおり非常に指定の進み方ははかばかしくございません。これにつきましては私どももそれなりの努力をしたつもりでございますが、結果から見ましても、おっしゃいましたように、その努力が非常に不足しておったということをおわびしなければならないと思います。しかしながら最近におきましては、先ほど先生もおっしゃいましたような各地方自治体におきましても条例制定あるいは事実上の緑化の推進、その予算措置等によりまして非常に緑に対する市民の要望にこたえるようなきめこまかな施策を続々とられつつあります。そういった世論というものをバックにこの機会においてさらに努力すれば、いままでのような、どちらかといえば緑というものが第二義的に考えられていた時代とはかなり違って指定も促進されるのではないかと思います。ただ私考えますのに、保存樹林につきましては、ある程度規模のものになれば本法案による緑地保全地区にまさに指定できるわけであります。緑地保全地区指定すれば樹木保存法による届け出とか一般的な管理の責任という程度にとどまらずして、厳重な許可制のもとに現状保存されるわけでありますから、そういった方向に向かう、つまり緑地保全法による緑地保全地区指定していくことも一案かと思います。  なお、そのような広がりを持たない、樹林をなさないような独立樹につきましては、これは現在の指定から見ても神社とかお寺にある大きなイチョウなりクスノキといった古木、名木でありますので、まだ対象とすべきものが多々あると思いますから、これにつきましては従前の法律をさらに活用いたしまして指定拡大につとめなければならないと思っております。   〔理事大森久司退席委員長着席
  16. 高山恒雄

    高山恒雄君 私は実効があがらないのは何の理由かということが聞きたいんですが、今後拡張されるというその熱意だけはよくわかりましたけれども、いままでに対して、十年間に実効があがってない理由は何なのかが聞きたかった。ことに樹木所有者に対して保存義務だけを押しつけるわけですね。国の補助樹木買い上げ制度が認められていないことによるものがございますね。それから、この法律を改正して樹木買い上げをやるとか、あるいは保存に必要な経費に対する国庫補助を行なうとかいうような、こういう点にやっぱり検討を加えるという考え方がなければ——これは大臣に先ほどお聞きしたんですけれども、時間がないということでしたから先にお聞きしたんですが、やっぱりそういう考え方政府になければ、これは幾ら言ってみてもただ指定されただけで、宝の持ちぐされで、さわれば影響がある、こういうことでは指定された人が迷惑するわけですね。やっぱり指定した限りにおいては政府も責任ある態度をとっていかないと、これは拡大し、かつまた、緑を保全するというようなことにならないと思うんですよ。そういうことをやる意思はほんとうにないのかと、大臣は考えておるとさっきおっしゃいましたけれども大臣あたりもそうですけれども、むしろ皆さん方法律なりあるいは予算獲得なりに、そういう考え方のもとに努力をしなければ成功しないと私は思うんです。まず局長考え方をお聞きしておきたい。
  17. 吉田泰夫

    政府委員吉田泰夫君) 現在でも市町村におきましては、こういった保存樹保存樹林対策として、薬剤の散布とかいった程度のことはやっているところがあるわけではありますが、さらにそれを国の補助対象にするかという問題につきましては、よく検討さしていただきたいと思います。特に、独立樹買い上げということは、主として神社とかお寺などに事例が多いんではありますが、買い上げましてもなかなか一本一本の木を公共団体の手でほんとうに維持管理できるか、やはりその本来の管理者が自分の管理している境内地の中で身近に管理されるということのほうがいいような気もしますので、やるとしても買い上げというようなことにはならないんじゃないかと思いますが、何らかの形で助成して、ただ保存義務だけを押しつけるということでなくて、何らかの方策を講じなければ、確かに、おっしゃるような本格的な指定拡大ということははかれない、そういう気がいたします。なおよく検討さしていただきたいと思います。
  18. 高山恒雄

    高山恒雄君 私は、樹木買い上げなんということは不可能だと、あなたおっしゃるように、私もそう思いますよ。けれどもお寺に歴史的な樹木がある、あるいは参道に大事な樹木が歴史的にあるんだというなら、その保存を一体だれがするかということですね。やっぱり管理者お寺が持つなら持つということになりますね。したがって、そういうものには何かの補助を出して、管理者に対する補助として維持さしたらいいではありませんか。私は一本あたりの木を政府買い上げなんという、そんなべらぼうな話はとてもできるものじゃないと思うんですよ。かりに、しかし政府が今回の緑地保全地区内の土地については買い上げ制度が認められると、こういうことになっておりますね。これはけっこうなことだと、ここは一歩前進したと、私はこう思っておるんですが、先ほど大臣に言ったように、土地買い上げ予算何ぽかといったら、五千万円ですわな。それは三分の一の補助ですから、それに地方自治体なりがして、大体一億五千万円の予算ですよ、これ。全国的に何が一体買えるかということになるんですがね。これは法律をつくって、いま初歩的な考え方だから、今回の土地買い上げについては予算が少なかったという、こういう答弁をされるかもしれません。けれども、私はさっき言ったように、基本的な緑地法律というのは十年前にできておるんですよ。そういうことで口に増し大気汚染排気ガス等による現実が、樹木保存さえむずかしい現状が進んできておる、その認識が足らないから、私は、今度の予算でもこの程度で濁しておられるのだと疑わざるを得ないんですよ、この点は。もっと誠意ある考え方を基本的にお持ちであるならば、私は、少なくとも三億や五億のやっぱり予算を組んで、そうして三分の一の補助をして、地方自治体に促進をさせるという、その姿勢がなければ、日本緑地なんというものは守れやしませんよ。こういうところに非常にわれわれは疑義をはさむ、いかなる法律をつくってもこれはだめだと、こういう観点に立たざるを得ないんですよ、この点どうですか。
  19. 吉田泰夫

    政府委員吉田泰夫君) まあ従来、この種の買い上げに対する国庫補助制度としては、歴史的風土保存特別地区と、首都圏近畿圏緑地保全特別地区と二つでございましたが、この二つ合わせて、非常に地区は限定されておるにもかかわらず数億の予算を計上しているわけであります。で、本法が成立いたしますと、これはそういう非常に限られた場所から解き放たれまして、全国的に指定ができるという制度になりますから、おそらくその対象になる面積も格段にふえるであろうということでありまして、御指摘のように、ことしの予算のような国費五千万円、買い上げ事業費、一応五千万円というようなもので、とうてい役に立たないことはそのとおりでございます。これは実はこの法律制定後、できるだけすみやかに施行するといたしましても、いろいろ周知徹底期間、準備の期間もありますので、法律上、六カ月以内で施行するということにいたしておりますことと、施行になってから個々の都市計画ごとに都道府県知事が計画を立てまして、逐次指定していくということでございますから、初年度は期間的にも非常に限られてくると思われます。したがいまして、面積的にも非常に限られてくるということで、私どもは、ことしの予算は平年度の少なくも十分の一であると、期間的に、及び指定そのものの進みぐあいが平年度の十分の一ぐらい、いよいよ走りだしたという程度のことであろう。したがいまして、明年度以降におきましては、これは少なくともことしの十倍ぐらいの予算獲得しなければならないということで、おっしゃるように、何億かまとまったものを用意したい。なお、それによって地方の実態を見まして、買い上げの要求が非常に多いようであればそれに即応していくし、あまりないようであれば、これ、そう予算もつける必要もないわけでありまするが、まあ全国的には初めての制度でありますので、その様子を見守るということも将来にわたっては考えるべきである、こう考えます。
  20. 高山恒雄

    高山恒雄君 その点は私とあんたの討論、問答の考え方の基本になろうかと思いますがね。やっぱり危機に迫っておるこの事態を一刻も早くやろうという考え方は、法律ができ予算が通過すれば、結果的には地方自治体はみんな検討するわけですよ、これは。五千万円では何もできないじゃないかというのと、これが五億にもなれば積極的に各自治体でやろうと、これは考え方が違うんですよね。だから、五千万円の予算で一応試験的にどういう希望を持っておるかというので次の予算を組むというのは消極的ですよ。やっぱり最初どんどん積極的に投げてみて、そして翌年、そのわりに地方自治体には響かないという考え方になれば翌年の予算を減らしゃいいんですよ。逆じゃありませんか。われわれはそう考える。それはなぜかというと、いかに日本は現在の公害に対して緑地が必要かというこの観点からも、先ほども繰り返し申しますが、人命にも危険を感ずるほど大気汚染しておるというこの事態をやっぱり政府みずからが、こういう面に対して重要視する姿勢がまず必要だ、この点は答弁は要りませんが、私はそう考えるのであります。  次にお聞きしたいんですが、都市緑地の中で街路樹の果たす役割りは非常に大きいと思うんです。そこで、全国の都市におけるこの街路樹の現状をまず説明してもらいたい。街路樹設置の基準があると思いますが、道路の付属物として街路樹の植樹、あるいは道路の新築、改築の事業費に対する国庫の助成の対象になっているかどうか。それから、一定規模以上の街路には必ず街路樹を植樹しなければならないというような道路構造令の中で、この街路樹設置の基準を明確にすべきではないかと、私はこう思うんです。また、排気ガス等公害に強い種類の樹木をある程度選択する、育成する必要があると思うんです。なお、そういう樹木の街路樹に対しての必要とする検討をされたのかどうかですね。もし、されておるならば説明をお願いしたいと思うんです。
  21. 吉田泰夫

    政府委員吉田泰夫君) まず、東京区部、大阪等の十大都市についての街路樹の設置状況を申し上げたいと思います。これは、道路の幅員あるいは歩道の設置のぐあい、街路樹を植えられる必要な幅があるかというようなことによって街路樹の設置可能延長というものを出しておりますが、これは約三千四百キロメートルでありまして、そのうちに実際に街路樹が設置されている延長が二千七百キロぐらいでありまして、街路樹の総数としては約四十二万本、したがって、一キロ当たり百五十本ほどの木が植わっていることになります。で、この街路樹の設置費に対しましては、道路の改築事業と同時に行なう場合にはこの補助対象にいたしております。これも徐々に補助対象にする道路の種類の範囲を広げてまいりましたが、ことしからは、最後に残っておりました地方道につきましてもそういった措置をするということで、以前から行なっておりました国道と合わせまして、すべての道路が補助対象になるというわけであります。  なお、道路構造令では、歩道に街路樹を設置する場合には、植樹帯の幅として一・五メートルを確保するとかいうようなことが書いてありますが、植樹の間隔等については定めはありません。しかしながら、実際に事業を執行いたします場合には、大体次の基準に従ってやっているわけであります。すなわち、既成市街地の中の街路幅員で十六メートル以上、あるいは歩道幅員で三メートル以上あります街路については原則として植樹をするんだということであります。それから植樹の間隔としては六メートルから十四メートルの範囲内で、これを標準として、あとは沿道の状況等考慮の上きめる。それから樹種の選定にあたっては、御指摘のとおり、公害とか日照とかそれから土質、こういったものに対する適応性、それから沿道環境との調和、あるいはその街路に特にふさわしいような、何か樹種の選定上の配慮、こういったものを考慮して定めると、こういうことにいたしております。  次に、公害に強い樹木というようなことについての調査をしたことがあるかということでございますが、いままで何回かそういったことに関連する調査を行なってまいりました。現在までの研究によりますと、個々の木の種類ごとにも、強いもの、やや強いもの、弱いものというようなものを分類しておりますが、一般的に申せば、常緑の広葉樹、これが抵抗性が強いわけであります。それに加えまして、落葉の広葉樹それから針葉樹、こういうものは大体抵抗性が低いと、こういうことになっております。今後とも樹種の選定につきましては、特に市街地の中ではそういった適当な樹種の選定にあやまちなきを期するとともに、必要な水が供給できるようなそういう植え方、及び適切な土壌、路盤の改良というものを行ないたいと思っております。
  22. 高山恒雄

    高山恒雄君 都市緑化に必要な苗木ですがね、最近大企業、商社等がやっぱりその苗木育成のための構想で、どんどん大阪宝塚地域においては買い占めをやっておるんではないかという懸念さえ出ておるんですが、したがって、いま苗木等はもうものすごい値上がりをしているわけですね。これは結果的には品不足ですよ。したがって、供給体制をどうするかということは最も大事だと私は思うんです。東京都等の条例の中でも特別にその項を設けて、都自体がそれに協力をして、そうして苗木の購入をして、あるいは地域にやらしてやるとか、こういうような行き方をしておるんだろうと私は思うんです。こういう苗木供給体制の現状についてどうなっておるのか、掌握しておられるのかどうかですね。たとえば近郊県の苗木の実態というものはある程度確保できておるのかどうか、買い占めの状態は具体的に出ておるのか、出てないのかですね、これは何としても検討する必要があると思うのです。とにかく大企業なり商社は何でもちょっとお金もうけになるなと思うことはすぐ先に先手を打つものですからね。結果的には、都がやろうとか、一般地域住民がやろうとしても、物が、苗木が手に入らぬというのが現状ですよ。この点についてはどうお考えになっておるかですね、お聞きしておきたいと思います。
  23. 吉田泰夫

    政府委員吉田泰夫君) 近年非常に大都市民を中心としました緑への渇望というものは高まっておりまして、そういうものを受けて各自治体でも非常に力を入れてくれておるわけでありますが、まあ、そういった需要というものをいち早く察知いたしまして、いろいろな業種のものがまあ緑化産業というか、苗木供給という事業に力を入れ出してきていることは御指摘のとおりであります。まあ、これが一時的には買い占めというような形にもあらわれていると思いますが、今後の旺盛な緑化のための需要というものを考えれば、適切な方策によって新しく苗木の植栽が行なわれ、供給量そのものが各種供給主体を通じてふえていくということがどうしても必要であります。買い占めそのものによって非常な暴騰を来たすというようなことは、これはまことに困るわけでありますが、そういう面についてもよく実態を調査する必要があると思いますが、建設省としては、樹種にもよりますけれども、おそらくは数年ぐらいすれば苗木は実際に供給に回るわけでありまして、しかも、その植えつけできる場所は相当広大にあるわけであります。転作その他も考えれば相当広大にありますし、多少の距離を輸送してくることを思えば、相当全国の山林地帯、これも供給源と考えられるわけであります。供給については林野庁というところが一番この問題に詳しいし、かつ、直接にそういった山林事業者を掌握しておられるわけでありますが、一方供給を受けた需要の側としては、これは建設省がその最大の需要者になるわけでありまして、道路に植える場合、あるいは公園に植える植樹、あるいは公団、公営住宅団地に植える樹木、そういった公的な樹木のほかに民間においても大いに個人あるいは協定等を結んで緑化をはかってもらいたいという意味から、こういった民間の個々の需要者に対する対策も講じなければならぬという立場にあるわけでございます。そういうことで、本年度間もなく発足を予定しております財団法人日本緑化センターというものを農林省と共管で設立することになっておりますが、これは緑化に関する技術の開発とか、なかんずく情報の収集、提供ということを通じまして、需要予測とそれに対応する供給対策というものを連関づけていこうというところに最大の任務を置いているわけでありまして、そのほか現実的な事業も行なうということを考えております。  なお、建設省としましては、各地方公共団体において次々と公営苗圃をみずから持たられ、あるいは委託苗圃をつくりまして、それで苗木の栽培をし、市民の希望に応じて配布するというような措置がとられておりまして、まことに時宜を得た必要な措置だと思いますので、何かくふういたしまして、こういった公営苗圃に対する国の助成というものをぜひ考えたい、まだ予算要求する前の段階でありますけれども、私としてはそういったところに非常に力を入れるということが最も適切ではないかと、それによって地方公共団体による公営苗圃あるいは委託苗圃というものも大幅に伸ばしてもらえるのじゃないか、こう考えておる次第でございます。
  24. 高山恒雄

    高山恒雄君 この緑化センターというものを発足させるということになっておりますが、農林省と密接な連絡をとりながらやっておるという御答弁ですが、国有林事業の一つとして、必要量の確保の苗木の育成事業をやるというようなことは相談に乗っておるのかどうか、あるいはまたこれはもう実施に移そうとしておられるのか。農林省の関係の方おられたらそれもお聞きしておきたいと思います。——来てないようだから、あんたでけっこうです。
  25. 吉田泰夫

    政府委員吉田泰夫君) いまのようなお話も私ども聞いておりまして、先ほどの供給側と需要側というような立場で両省相一致しなければ事は進みませんので、相談にもあずかっているわけであります。今後の国有林野行政の大きな方向として、いわば山にある木を都市部に、平地におろしてくるといいますか、その方策、それから輸送の問題から土の問題、いろいろあるわけですし、都市における需要される樹木と、国有林の、いままで木材としての観点にウエートを置かれたそういう木とが、必ずぴったり一致するとも限らぬわけですけれども、しかし都市に必要な樹種もかなりあるわけでありますから、そういったものに今後は力を入れてもらうとか、積極的に栽培してもらうとか、輸送の問題も含めましてともども研究いたしておる段階でございます。
  26. 高山恒雄

    高山恒雄君 これはひとつ、大臣が見えませんからね、私要望しておきますが、やっぱり現在、林野庁というのは材木値上がりで多少息をついたような形になっておりますが、いま地域でやっておりますものは植林用のものだけですね、ヒノキとか杉とか松とか、こういうものはたくさんやっておりますが、街路樹にひとしいような育成をやったということはあまり耳にもしておりませんし、少なくともやっぱり国の事業の一端として、これは農林省と打ち合わせをして、むしろ建設省が促進してつくってくれ、そういう必要量苗木の育成をやってくれ、こういうふうな農林大臣との相談で、ぜひ国がやっぱり手をつけると、こういうことをひとつ大臣にお話をしておいてください、大臣がきょうは見えませんから。これがなければ、先ほど十分なる掌握も皆さんされてないようでありますが、まさにあらゆる産業がいま苗木には大資本を投資して買い占めをやっておるんです、もう値上がることきまっておるんですから。至るところがそういう現状であります。私も知っておるのは数多くございますが、それをここで発表するのは必要ないと思いますが、少なくともそういう現状である限りにおいては、いかなる法律をつくってみても緑化はほど遠い、これは。いわゆる苗木が不足する、もう家庭用の庭苗木で一ぱいなんだ。したがって、街路樹とかあるいは地域の公園とか、そういうものに移動するのはなかなか困難だと、こういう情勢であるということを私は掌握をしておるわけですが、ぜひそういう面に対して建設省として積極的にやっていただくことを希望意見として申し上げておきます。大臣には、ぜひ、この農林省との打ち合わせの結果、苗木育成の事業をやっていただくことを切にお願いして、私の質問終わります。いまの答弁をひとつお願いします。
  27. 金丸信

    国務大臣金丸信君) ありがとうございました。
  28. 野々山一三

    委員長野々山一三君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  29. 野々山一三

    委員長野々山一三君) 速記をつけてください。
  30. 金丸信

    国務大臣金丸信君) お答えいたします。  公園緑地等に必要な苗木建設省も農林省と林野庁といろいろ話し合っているわけでございますが、今後とも引き続き、こういう緑地必要の時代でございますから、なお一そうの努力をして供給を全からしめるようにいたしたいと、こう考えております。
  31. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今日は臨時に当委員会に発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございました。どうしてもこの機会に金丸建設大臣に申し上げまして、はっきりしたよい答弁をいただかなくちゃならないと存じてこちらに参ったわけでございます。  問題は、伊勢神宮のところにございます伊勢道路の幅を広げる問題でございますが、これは自然保護の立場から非常に困る問題でございまして、これに対しては十分に建設大臣の御考慮をいただかなくちゃならない。そして直接の衝に当たっている県当局、それから道路公団、こういうところにも十分な御指示を与えていただかなくちゃならない問題でございます。せんだっては日光の太郎杉の問題で、あの問題は私栃木県の問題ではなくて、全国の日本人として心のふるさとであるあの日光の杉が、道路の拡張のために手をつけられるというようなことは耐えがたいことだと日本じゅうで思っていたわけでございます。幸い金丸建設大臣が聡明な決断をお下しになったと、そして、それに続きまして、長い間懸案になっておりました公判の決定もございまして、ああいう樹齢の高い日本の国の貴重な財宝ともいうべきものは、これは滅ぼすようなことがあってはならないという判断をお下しになって、そして続いて判決もそのようにたいへんにりっぱな判決がございました。それで、それに続いて県知事もそうだと、これ以上控訴はしないというようなことをおっしゃったわけでございます。  私が今日伊勢道路のことを問題にいたすんでございますが、それがやはりこういうような伊勢神宮の神宮林というようなものは、もう日本の歴史始まって以来の、聞くところによりますと持統天皇以来のりっぱなああいう神宮林というようなものができておりまして、やはり日本人全体の心のふるさとという意味で、こういうものを大切にしたいということは日本人ならだれでも考えておりますし、外国人が来た場合にも、最も誇るべき遺産の一つとしていつもこれを見てもらっているわけでございます。こういうような問題に対しまして、これがどういうふうにして保全されていくかという経過を見てまいりますと、こういうところに、元来なら国有林でございますから、そして神宮の神域というような、二重にこういうところは大切に自然のままを保護していかなきゃならないはずのところ、そこへもうすでに道路ができているわけでございます。この中には伊勢道路と呼ばれている道路が、国有林の、国立公園の中を通過しているわけでございます。そしてさらにそれの幅をもっと広げたい、幅を広げるということになれば、その樹齢の古い杉の木にも手をつける、それから公害は現在も非常にはなはだしいものがあるにもかかわらず、それ以上はなはだしくなる、こういうような問題でございます。  それで、ただいま議題になっております都市緑地保全法に直接これは関係しないかもしれませんけれども、非常に関連することを申し上げたいのでございます。それは、こういうような緑地の保全とか自然の保護とかいうような問題になってまいりますと、具体的には都道府県知事の許可ということがこの法律の中にも書かれているんでございますが、都道府県知事の許可だけでこういうものが左右されてはならないわけでございます。ついせんだって環境庁から出ました自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律というのが提出されまして、審議の結果、本会議でこれは全会一致で通過いたしている法律でございまして、みんなこういう法律の重要性を考えております。この自然公園法及び自然環境保全法の一部改正の法律の中にはどういう点を直したかと申しますと、三十日間の着手制限期間ということを新しくここに入れまして、届け出のあった行為を十分審査して、自然環境に悪影響を及ぼすおそれがあると認められた場合には、行為の着手前にその禁止、制限等の措置をとることができる、こういうふうにきめました。そして実質的には特別地域における許可制に準ずる規制をはかることとしたと、こういう法律でございます。  これは、このいま私が問題にしようと思っております伊勢道路の場合にも、特にこれは国立公園の中のことでございますから、やはりこれは自然公園のその観点からも、そして国の貴重な文化財を守るという立場からも、経済が優先すべきことではなくて、こういうものは一たび手をつけて滅ぼしたら再び返らない、復元というようなことを命令しても復元をできないこと、こういうような意味からも十分に慎重にこれを考えていただきまして、いまこれを拡張するというようなことに対しては、建設大臣は太郎杉の場合と同じように、これを、そういうことはしてはならないというはっきりした御判断を下していただきたいんです。もし、そういうことを下してくださいますならば、これは日本国民全体が双手を上げてそういう決定にはみんな支持をすることだと思います。  どうしてこういうような問題になっているかということを私いろいろ研究してみましたが、この自然の破壊ということは、最近の五、六年あるいは十年以内に非常にこれが激しく表にあらわれてまいりまして、それで、いまになってみんなが、こういうことでは困るというふうに注意をそちらに向けているわけでございます。ところが、この伊勢道路というようなものを国立公園の中にわざわざつくるなんということは、今日こういうようなことがもし申請されましたら、これはおそらく全然許可されないことだと思います。しかし、この道路は四十年八月から開通したと、こういうふうに報道されておりますから、その何年か前にこういうようなものが申請されて、その仕事に着手した。で、時間のズレ、四十八年から四十年と八年のズレがございますが、そのころでございましたら、やはりこういうところに道路をつけることはいいことだというふうに県当局も考えたでございましょうし、道路公団のほうでもそれをお取り上げになったでございましょう。ところが、その後、こういうものをつけてみて、どのくらいこれがひどい弊害を及ぼしているかということがはっきりとわかってきたわけでございます。今日その弊害がはっきりしてきたその時点において、さらにこの道路の幅を広げる、その弊害をさらに倍以上に大きくする、そうして、かけがえのない日本人の貴重な文化的遺産として考えている神宮林というようなものを滅ぼしていく、こういうことは、これは許されてはならないことだと私は思います。まずそういう問題の全体をつかんでの最初の質問に対して、大臣の御答弁をお願いいたします。
  32. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 最初、局長から答弁します。
  33. 吉田泰夫

    政府委員吉田泰夫君) ちょっとこの法案緑地保全地区設定及びその許可についての市町村の意見の反映等について触れられましたので、一般的にお答え申し上げたいと思います。そのあとで、具体的な御指摘についてはそれぞれの局長から御答弁いたしたいと思いますが、緑地保全地区都市計画として定めるわけでありますので、その決定手続につきましては、都市計画一般の手続として必要な場合の公聴会とか、それから説明会の開催とか、決定以前に案を公告し、縦覧し、そうして住民とか利害関係人から意見書を提出してもらう、その意見書の提出があった場合には、その意見書の要旨を都市計画審議会にもかけまして、そこで学識経験者等をまじえた方々によってその意見書を処理する、つまり十分住民の意見を反映する手続がとられることになります。で、指定の際に知事は関係市町村の意見を聞くことになりますが、各市町村にも、これは法律に基づくものではありませんが、実際には市町村ごとにまた都市計画の審議会のようなものが設けられておりまして、ここにはかって市町村としての意見を固めると、こういうことになっているわけでございます。そうしてそれが設定そのものの手続でありますが、さらに許可につきましても、本法案では知事の許可権ということで、広域的な見地から一元的に判断して許可するということにいたしておりますけれども、従来も風致地区の運用など、実際には知事から市町村に意見を求めまして、その判断を徴した上で知事としての判断をする、こういう運用をいたしておる例が多いわけでありますから、本法におきましても、具体的な許可の手続については、市町村の意見を聞くというようなことで運用してまいりたいと思います。そういうことでございまして、たとえば前回、田中先生から御指摘のあった、風致景観というような要素は非常に主観的ではないかということもございましたが、そういう手続面によって十分地元の方の意見あるいは地元市町村の意見というものも反映されるようなことを行なっておりますので、制度全体の仕組みとしては、そういうふうに御理解いただきたいと存じます。
  34. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 伊勢道路につきましての具体的な計画を少し申し上げたいと思います。  いまのお話の伊勢道路と申しますのは、宇治山田から南のほうへ下がりまして英虞湾のほうへ行くところでございます。磯部へ行く県道でありますけれども、それの宇治山田を出たところと磯部へ入る峠のところに二カ所トンネルがございます。そのトンネルを有料道路でやり、そのまん中の神宮林の杉林の中、これは一般の公共の無料の道路でございます。  そこで、これは八月に道路公団から県の道路公社が引き継ぎまして、実はトンネル等につきましては、相当交通量が多くなりましたので、換気をしなければならない、それから磯部のほうの側は、勾配が非常にきつい勾配がございますので、登坂車線等もつけたいというようなことを計画しております。ただいま先生のお話の、伊勢の神宮林と称します杉林の中に通っております道路を拡幅しようという計画は、実は考え方としてはございます。ただ、これは昔の街道でありますので、線形と申しまする道路の形が非常に悪いのでわりあい事故が多いということから、しかも木材を搬送するような大きな車も通るというようなことから、ここを事故を起こしての血でよごすのはどうかということから、拡幅をしたらどうかという話があったようでございます。その後、神宮のほうといろいろと話しましたけれども、これはなかなかたいへんな問題だということで、現在のところは拡幅する計画は一応私どものほうは消えておるものと考えております。したがって、いますぐ拡幅するという計画はないというふうにお考えいただいてけっこうかと思います。ただ、先ほど申しましたように、トンネルにつきましては、これは換気をやらないと中がよごれますので換気をしたいということは、あるいは工事をやるかもわかりません。それからまた非常に事故が多発するところは、局部的に何かの手当てをしなければならないというところが出てくるかわかりませんけれども、ずっとそこを拡幅するという計画につきましては、ただいまお話しのように、非常に由緒あるところでございますので、慎重に考えたい、考えたいというより、いまのところはないというふうに考えていただいてけっこうかと思います。
  35. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 先生御指摘のとおり、太郎杉の問題にいたしましても伊勢の杉にいたしましても、これは由緒あるところであります。しかし、ここばかりでなくて、日本全国至るところにこういうところがあるわけでございますが、私はこういうものはできるだけ存続することを考えなくちゃいけない、こういうことを根本に考えております。そういう意味で、伊勢のただいまの道路の問題は、道路局長からお話がありましたように、これは伊勢神宮が反対ということで、大体つくらないというようなことでありますが、私も、杉まで切ってやらなくちゃならぬということでは、考えなくちゃならぬだろう、こう思います。そういう意味で、今後行政の面でも十分指導して、万遺憾のないように、ひとつこういうような大切な森が切られていかないような指導をしてまいりたい、こう考えております。
  36. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 いますぐこれを取り上げる気持ちは全然ないと、こういうことで、まあその点はやや安心をいたしましたんですけれども、それだけで私はこの問題がたいへん安心な状態になったとは思えないんでございます。それは、いま道路局長なんかの御発言の中にも、たいへん事故が多いと、そしてトンネルの中にもたいへん事故が多いと、そしてトンネルの中の空気がよごれるからそこに何かジェットファンというのですか、何ですか、換気のための施設をつくらなくちゃならないというようなことをおっしゃっていらっしゃるんでございますが、換気されたら、そのよごれた空気が外へ出てそれがどこへいくと思っていらっしゃるんですか。それは風の流れによって全部神宮にかかるようになっているわけなんです。自然がそういうふうになっているんです。ですから、そういうふうなところに換気扇をつくっちゃならないというような道路がそこに存在するということ、そのこと自体が大体無理でございます。これはさっき私が最初に申しましたように、四十年に初めてこの道路が開通した。そのときは神宮の司庁というのですか、神宮のほうのお役所のほうにももちろん意見を聞いていらっしゃいます。それで、そのときには一日平均最初は六百台ぐらいの自動車が通るというふうに神宮のほうでは聞いていらっしゃる。で、開通したときには千二百台通っているわけです。それが今日では六千台も通るようになった。それはもう自動車の数がふえますし、一般にレジャーとかなんとかいって出ることもだんだんふえましたし、あらゆる面からこれはもうここに道があればふえる一方で、そうすればトンネルの中の空気もよごれる。それならば、もうそういうところの道路は、国立公園の中でもございますし、かけがえのない国民的なこれは遺産でございますから、そういう危険にさらさない状態ほんとうは考えていただかなくちゃならないと思うわけでございます。  それで、最初にこういうものができたときには神宮当局としてもまさかこんなことになるとは、十年も先のことですからまあだれでもわからないと思います。今日になってみたら、ここに写真がございますけれども、もうこの国立公園の神宮域の中でこんなふうに排気ガスのために樹木が枯れ始めております。樹木が枯れ始めたというのは全部枯れて倒れるんじゃなくて、もう方々に枯れた状態が出ているということはやがては倒れると、こういうことなんですから、これはもうほんとうに危険信号でございます。そしてこれだけの道路ができているだけでも、ここに写真がございますけれども一般にマナーが悪いか、こんなにたくさんの飲料のあきびんがここに山積みにされて、そしてあき地がごみ捨て場に使われて、そして何かこれはもうわざわざここにあき地をつくっちゃって、そしてそこへごみを捨てに来る人もあると。そしてこういうような非常にマナーにはずれたことをする人たちがこの中に入り込んでいるということを神宮の営林部のほうでは非常に心配して、これをそそうのないように保存していかなきゃならないというので、神宮のほうの費用でパトロールを出しているそうでございますね、それは御存じなんでしょうね。それはだいぶ費用をかけてここへパトロールを出さないと、ぼやが年に二、三回ずつ起こっているという報告でございます。ですから、これは非常に危険で、こんなところでぼや起こして、そしてたいへんな山火事になったら、それこそ、こんなことは再びいたしませんなんて幾ら言ったってしようがないので、一度だって起こったらたいへんなことなんですから、そういうような危険にさらされているという現実もよっく認識していただかなければならないと思います。  それから、この中に入り込んでいってそこいらの植木をやたらに盗んでいく植木の盗難、それから石が盗まれるんです、この石の盗難。もうたいへんなんです、こういうことが。それをみんな神宮のほうの費用でもって負担をして、一生懸命パトロールしているけれども、よごされるのと盗まれるのが早くてとてもかなわぬと、こういう状態でございます。ですから、こういうところに大体道をつくったということが、もうこれは十年も前の話ですから、そのときのことをどうこう申しません。それから県のいろいろ審議会とか土地の意見を聞いたとかというようなそういう御説明がございますけれども、それはどこでもそうですけれども、そのときにはまだ理解が十分でなかったからこういうことになっているので、今日の状態は全然変わっておりますし、さっき申し上げました環境庁のほうで出した自然公園法及び自然環境保全法の一部の改正からいっても、こういうことは絶対にさせないばかりか、こういうような危険がたくさんある場合には、この道路を、もう幅を広げるんじゃなくて、そのトンネルも、そういう状態でこのまま置いておけば事故が起こるなんておっしゃるなら、この道路をやめて、もとの外から回ってくる道路のほうに変えてしまう、そのくらいのことをしていただかなくちゃならないと思うわけでございます。  これはいつでも便利のためにが優先するのか、それとも自然環境を保全することが優先するかという、こういう問題はあらゆる場合に起こっているわけでございます。そして県庁あるいは県議会というような方面では経済優先の考え方がいままではずっと強かった。いまはやや世論に耳を傾けて自然環境を保全しなければならないという意見に傾きかけておりますけれども、それでもやはり経済のほうをやや優先する傾きが多いわけでございます。それで、さっきおっしゃったトンネル二カ所、これが有料道路で、これでもって県の道路公社では、ここからたいへんな収入があるわけです。そういうようなものも勘定に入っているんじゃないかと思います。そういうような収入の問題にはかけがえのできないような、こういう大事な自然の環境、こういう国民的な遺産を守るためには、もうこの際、思い切って、この道路の幅を広げるの換気扇をつけるのという問題じゃなくて、もう一つ前の道のほうにこれを直して外のほうを——少し時間がかかりますけれども、外の道のほうに変えてしまう、中はもう自動車を相当程度制限するというようなことにまで徹底的に変えていただかなくちゃならないと私は思うのでございますが、いかがなもんでしょうか。
  37. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) ただいまのお話、拡幅することによります交通の増加というような問題につきましては、いまのお話のようにいろいろ問題があるかと思います。ただ現在あります道路で換気等につきましても、これは道路がある限り——ちょうどこの磯部とそれから伊勢を結んだこれが一番最短の道路になっているわけです。それで、これも従来から県道としてございました。その県道を一部有料でトンネルを掘ったということでございますので、それをとめてほかをやる、まあ、ほかをやることも一つの具体的な方法ではありますけれども、やはりネットワークでありますので、この道路を閉鎖するとかいうことはむずかしいかと思います。ただ換気をやりますのは、トンネルの中の空気がよごれて見通しが悪くなったり、あるいは渋滞が起こったときに気持ちが悪くなるということが出てまいりますので、そういうことがないように、換気は普通の大きなトンネルはみんなつけておりますので、やはりそういう安全のためには換気をつけなければならないだろう。それから、これを県が公団から引き取るについて、いまお話で、もうかるからという、得だからというようなことでございましたけれども、これは有料道路は償還が終われば無料になる前提でございますので、これは道路公団が持っておりましても県が持っておりましても同じことでございますので、償還が終われば無料になるわけでございます。そういうことで、確かに、そういう神域を通るというところに通過交通的な産業交通がどんどん入り込むことに問題がありますけれども、そういうたとえば石がなくなるとか、樹木がなくなるとか、あるいは火災が起きるということ、これは全国的にたいへん困る問題でございますけれども、おっしゃるとおり、運転する者のマナーでありますけれども、私どものほうも、道路管理者といたしましても十分パトロールをし、注意をいたしまして、そういうことがないような形でやっていきたいというふうに考えております。
  38. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 持ち時間が終わったそうでございますから、これで終わります。しかし、建設大臣としてもいまの答弁では私まだ決して十分に満足いたしませんので、さらにまた別の機会にいろいろと御相談を申し上げたいので、よろしくお願いをいたします。
  39. 野々山一三

    委員長野々山一三君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  都市緑地保全法案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  40. 野々山一三

    委員長野々山一三君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  41. 沢田政治

    ○沢田政治君 私は、ただいま可決されました都市緑地保全法案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党、第二院クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。    都市緑地保全法案に対する附帯決議案   政府本法施行にあたり自然環境の保全が急務であることにかんがみ、次の諸点について留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。  一、緑地保全地区土地の買入れに係る国庫補助率の大幅な引上げ及び予算枠の拡大を図るとともに、維持管理費に対する国庫補助について検討すること。  二、緑地保全地区の固定資産税の非課税及び譲渡税の特別控除額を引上げるよう検討すること。  三、都市計画法に基づく生産緑地制度の創設を図ること。  四、沖繩その他の島嶼、湖沼、海岸等の良好な自然環境が残されている地域の保全措置を積極的に行なうとともに、都市計画区域における公園緑地等の都市施設の整備並びに道路等公共用地の緑化を強力に推進すること。  五、地方自治団体の緑化事業に対し、国は助成措置を講ずるとともに、緑化協定制度の普及を図るため、苗木の交付等助成措置を検討すること。    右決議する。  以上であります。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げる次第であります。
  42. 野々山一三

    委員長野々山一三君) ただいま沢田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  沢田君提出の附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  43. 野々山一三

    委員長野々山一三君) 全会一致と認めます。よって、沢田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、金丸建設大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。金丸建設大臣
  44. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 本法案の御審議をお願いして以来、本委員会においては熱心な御討議をいただき、ただいま全会一致をもって議決されましたことを深く感謝申し上げます。審議中における委員各位の御高見につきまして、今後その趣旨を生かすようつとめるとともに、ただいま議決されました附帯決議につきましても、その趣旨を十分尊重し、今後の運用に万全を期して各位の御期待に沿うようにする所存でございます。  ここに、本法案の審議を終わるに際し、委員長はじめ委員各位の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表し、お礼のごあいさつといたします。ありがとうございました。
  45. 野々山一三

    委員長野々山一三君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 野々山一三

    委員長野々山一三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  47. 野々山一三

    委員長野々山一三君) 公有水面埋立法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  48. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 現行の公有水面埋立法は大正十年制定のかたかな文の法律でございまして、公有水面の埋め立てについて地方長官の免許制を中心とした手続法であります。今回の改正も、いろいろ大臣の提案理由説明、あるいは改正法律案要綱等によって見ましても、いろんな点で手続の改正がなされておりますけれども、その要点は、現行の埋め立ての免許、あるいは埋め立て地のその後の権利の移動、あるいは埋め立て地の用途並びに用途の変更につきまして、これを土地利用あるいは環境保全という観点から十分チェックをしていこうというものであって、従来の法律で十分対処できなかった点を社会情勢に従って対応できるようにしようというものであると思うわけでございますけれども、この改正案のほんとうのねらいを、ずばり言ってどういう点か、簡単にお答え願いたいと思います。
  49. 川田陽吉

    政府委員(川田陽吉君) お答え申し上げます。  基本方針はただいま竹内先生御指摘のとおりでございますが、いささか事務的にそのポイントをもう少し御説明申し上げますと、まず出願事項の手続の改正、すなわち埋め立てを行なおうとする人が願書を都道府県知事ないしは港湾管理者提出した際に、その出願事項を公告し、縦覧し、住民の意見書の提出の機会を与えるという、そういう手続面の改正が一つございます。  それから埋め立ての免許基準の改正がございます。今回の改正を必要とするに至った背景には、埋め立てそのものがある意味で利権的な売買の取引の対象になり、それを醸成するという傾向がございました。また環境保全上いろいろ悪影響も最近は相当発生するようになっております。そこで、そのような点につきまして法規的な改正を必要とした次第でございます。免許の基準を法定いたしまして、国土の利用上適正かつ合理的であること、それから、その埋め立てが環境の保全または災害の防止に十分配慮されたものであること、それから埋め立て地の用途が公害等の計画に違背しないこと、また、国または地方公共団体計画そのものに、地域計画等にかなっていることというような点、それから公共施設の配置が適正であるかどうかというような点、それから分譲を目的とする埋め立てについては、その出願人が公共団体ないしはそれに類似する団体であること……。
  50. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 要綱に書いてあることはいいですから。
  51. 川田陽吉

    政府委員(川田陽吉君) はい。というような点がおもな点でございます。大体要綱に書いてあるとおりでございまして、先生御指摘のとおりでございます。
  52. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 要するに、埋め立てを出願してきたときに、その埋め立ての出願に対して個々の処分にあたって、これをどういうふうにチェックしていくかという点の改正があっただけだと思うわけです。  そこで、その次にお尋ねしたいことは、そういうような個々の埋め立て免許があります前に、日本列島の水面、海面といったようなものを、どこをどういうふうに利用すべきかというその計画をつくっておくべきじゃないか、私はこう思うわけでございます。そういう意味都市計画やその他の国土計画の法制とは違って、この法律は個々の処分の是非論をしている。そういう意味で手続についても若干民衆参加の問題等が足りないというような点も、そういう個々の処分についての是非論からきているのじゃないかと思いますが、それは別といたしましても、土地利用計画としての埋め立ての計画、ここの水面はあるいは海面は埋め立てをしてもいいところだろうか、さらには、どういう用途の埋め立てならば許すのだろうかというような全体の計画——工場なら建てちゃいかぬけれども住宅ならいいとか、あるいは重化学工業の工場は困るとか、あるいは再開発の用地ならいいけれども重化学工業は困るとか、そういったような利用計画、あるいはこの水面の埋め立てば、たとえば響灘で問題になったように、潮流の関係でこの水域までしか認められないんだといったようなことが必要じゃないか。最近は技術や工法の進歩によって、運輸省港湾局のほうでも、相当規模の埋め立てでも環境を害さないで、水質を悪化させないで工業地等の埋め立てができるようになっていると聞いておりますけれども、それにしても、どこでも、どの規模でも工業用の埋め立てその他のものをやっていいというわけにはいかないんじゃないかと思うわけです。こういう埋め立て計画あるいは埋め立て地の利用計画というものがこの法律には定めてない。この点は土地利用計画、国土利用計画の観点からいっても必要じゃないか。また最近の新聞によりますと、大阪府では埋め立てを中止して工場がすでに買った分をお金を返して、そして大阪府が買い戻すというようなことをして埋め立てを中止しようというような記事も出ておりますが、これも大阪府の公害防止の観点からきまってきているんじゃないか。最近は私もよく知りませんが、総量規制というような観点から公害防止というものがきめられようとしている。こういう公害防止の観点からいっても、どこをどういうふうに埋め立てていくかということについての計画が必要じゃないか。  さらに言いますと、この免許基準におきまして、公共施設の配置、規模が適正なことということが書いてあります。個々の免許の基準におきまして、たとえば水の問題、この埋め立て地をやったならばどのくらい水が要るかと、その水に対してどういうふうにこの埋め立てば措置しているかというようなことは、個々の埋め立ての処分のときにはわからないんじゃないか。もっと広域的に考えていかなければならない問題じゃないか。あるいは排水の問題もそうじゃないかと思います。それから交通の問題も個々の埋め立て地の勝負では片づかない。もっと広域的な観点からした計画というものが、場合によっては府県の判断を越える計画というものが必要になってくるんじゃないか。こういう土地利用計画上、あるいは公害防止環境保全の観点、あるいは公共施設の整備という観点、こういうような点から埋め立て計画、埋め立て地利用計画というものが要ると思うんでございますが、この法律にはございませんが、一つお尋ねしたいのは、現在の法律でそういう計画というものが立てられるような法制にどっかでなっているか。それから二番目には、経済企画庁の開発局長お見えですが、新しい今度提案されております国土総合開発法の土地利用基本計画の中で、水面はあるいは入るのかもしれませんが、海面につきましての基本計画というものをつくるようになっているのかどうか。最後には、三番目には、そういうような法律がもしないとすれば、今後新しく埋め立て利用計画法というものが要るんじゃないかと思いますが、そういう点についてどういうふうにお考えになっているか、三点をお尋ねしたいわけです。
  53. 川田陽吉

    政府委員(川田陽吉君) 第一の質問につきましてまずお答え申し上げますが、今回の改正も、公有水面埋立法は全く手続法という法律を変えることなく、その限りにおいて、現在生じている種々の不合理な状態を改善していくという考え方でやっております。  それから第三番目の、利用計画法ないしは事業法というような構想で考える必要があると思うが見解はどうかとのお尋ねでございますが、一部改正によって、一応の現実的な不備は補うこととしても、その先、やはりこういう、大正十年のかたかなの法律をいつまでも現代社会に通用させておくということについては、私どももできるだけやはり早い機会に全文改正をやらねばならないという気持ちでおります。したがいまして、その際には単に手続法にとどまることなく、利用計画ないしは規制についての具体的なビジョンが、あるいは利用についての具体的なビジョンがあらわれるような法律ということも含めて検討しなければならないと考えております。
  54. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 ちょっと企画庁、お願いします。
  55. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 第二番目の御質問にお答えいたします。  いま国会で御審議をいただいております新しい国土総合開発法案におきましては、土地利用基本計画の策定を知事にお願いしているわけでございますが、この土地利用基本計画におきましては、当該都道府県の区域について策定するという規定を設けておりまして、私どもといたしましては当然海面を含むというふうに考えております。土地利用区分は五つに分かれておりますが、都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域、自然保全地域と分かれておりますが、おそらく森林地域については海面を含むことはないかと思いますが、都市地域、農業地域、自然公園地域、自然保全地域、四つの地域については海面が含まれてくることが十分予想されるというふうに考えておりまして、法案によりますと、これらの地域区分をしたあとは、それぞれの法令によりまして開発行為規制をいたしますが、当然、都市計画法、公有水面埋立法、あるいは自然公園法等によりまして、新しい国土総合開発法の土地利用計画とリンクするという考え方でございますので、海面を含めて規制を強化してまいりたいという考え方でございます。
  56. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 国土総合開発法の土地利用計画、その地域区分の中で考えることもありましょうし、公共施設というような観点から港湾その他の計画の中に入ってくるかと思いますが、それがどの程度のこまかさで入ってくるのかいうことは、これからの問題かと思いますので、その点はそれで質問を終わりますけれども、さらに私は考えますと、個々ばらばらの埋め立て出願に対応して、出てきたものから許可をするという体制よりも、むしろ県や国が埋め立ての実施計画をつくりまして——たとえば宅地開発については、今度都市計画法で宅地開発予定区域というものを考えております。あるいは、それ以外でも、将来促進区域みたいなものを考えるというような都市計画審議会の答申がございますが、そういうように埋め立ての予定区域というようなものをつくって、それできちっとした計画を立てて——たとえば私の県は霞ケ浦でございますが、霞ケ浦でも各市町村でヨットハーバーをつくりたいとか、あるいはいろいろの施設、緑地、レクリエーション基地をつくりたいというような計画がばらばらに立っておりますが、現在は治水上の観点で個々の処分について判断を下しているにすぎない。そういうようなことではなくて、埋め立て予定区域というものを全体的につくって、そうして公共施設については思い切って国費を投入して、護岸なり堤防なりをしっかりつくる、そして内部は免許権者にやらせるにしても、一定期限にやらないときは公共団体が乗り出して積極的に埋め立てをする、もちろん公害防止あるいは土地利用あるいは環境保全の観点を入れた、そういうような積極的な施策が必要だと思います。そういう点についてどう考えているのか。  それから、いまの埋め立てば財政的に公共団体の赤字対策みたいになっておりまして、そのために工業用地をどんどん入れてくるという危険がございます。その際には予納方式で、あらかじめ企業から金を取って、そうして埋め立てをするというようなことをやっておりますが、横浜の本牧の場合には、マルク起債をして、そうして財源確保をしておいて、土地をつくってから売るという方式をとっております。最近の東京都では、東京都のある報告では、埋め立てをしたやつは譲渡をしないで賃貸したらどうかというような意見まで出ているわけであります。計画をつくってやっていくという積極的な施策についてのお尋ねと、それから、その実際のやり方について、今後どういう方向がいいかという点につきまして、建設省と運輸省のほうにお伺いしたいと思います。
  57. 川田陽吉

    政府委員(川田陽吉君) まあ積極的な埋め立てということになりますと、やはり公共団体が公共目的のためにする埋め立てということは、これはたいへんけっこうなことだと思います。また環境容量等の観点から、閉鎖海域等においては、湖水も含め、内水も含めまして、これはやはり全般的に抑制ということをたてまえとしていかなければいけませんし、一がいに言えないと思うわけでございますが、国土の積極的利用という意味から、可能性のある土地については、やはり日本の置かれた現状から埋め立てそのものを全く否定するという考えは必要はないというふうに考えております。公共団体が主体となって、埋め立てを行なう場合に問題になるのは、やはり先生御指摘のとおり、財源調達の方法でございまして、一般的な財源ないしは縁故債等で土地と直接結びつかない資金が集められ、そこでまず土地ができる、そうしてその土地が合理的な方法で配分され、合理的な価格で譲渡されるということですと、問題は非常に少なくなると考えております。また東京都がいろいろ最近おやりになっておられるような、土地の所有権は公共団体に保有したまま、使用だけを認めるという考え方も、これは十分検討に値するやり方だというふうに考えております。
  58. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ただいまの先生の御質問にお答えいたしますに先立って、若干、さきの御質問にお答えするようなかっこうになるかと存じますけれども、いわゆる埋め立ての計画的な問題、これについて私ども、これは私どもの所管いたしておりますのが港湾区域という一つの領域に限られておりますために、先生のおっしゃるような、もう少し広域的に考えなきゃいかぬというふうな点についてはいささか欠点があるわけでございますけれども、しかし、最近の考え方といたしましては、いわゆる公有水面埋め立てというもの、これが非常に貴重な水面になってきておりますので、いままでのように土地造成というものを、ただ単にいわゆる財政面であるとかあるいは工業の一つの誘致のためであるとか、そういうようなことでむやみやたらに認めるというのはいかがかと考えております。したがって、逆に、港湾計画というものを審議いたします際に、今回一部改正をお認めいただきました、成立を見ました港湾法の改正におきましても、いわゆる港湾計画計画手法と申しますか、この手続をいままで以上に整備をいたしたわけでございますが、重要港湾については必ず運輸大臣がきめました基本方針に基づきました各港湾管理者のおつくりになった計画というものを運輸大臣としてこれをチェックいたしまして、どうしてもこれは一部改正していただきたいというような点については改正を求めることができるようなことになっております。そういうようなことで、港湾の計画というものの中に一環として埋め立ての計画というものを計画的に考えていきたいということがまず第一点でございます。  それから、そういう際に、先ほども、積極的に埋め立てをむしろ財政的に援助するということまで考える必要があるんではなかろうかというような御質問がございましたが、これは私どもとしていままでの考え方から申しますと、先ほども先生お触れになりましたように、まあ赤字対策であるとか、あるいはこういう埋め立てをやることによって地方財政のプラスにしておるというようなことがあったことは事実でございます。したがって、いわゆる借金、起債、地方債によって実施をしておるというのが実情でございますが、現実の問題といたしまして、最近のように、たとえば、ごみ戦争の対策としてのいわゆる東京における夢の島のような埋め立て、あるいは大阪でもやはりやっております。そういうような廃棄物処理のための埋め立てということになりますと、これはほんとうに財政面上何かてこ入れをしなければならないということで、幸いに昭和四十八年度の予算からそういうものの護岸に対して財政面の補助をするという道が開けたわけでございます。  それから第三点で、いわゆる埋め立ての手法、あるいはどういう機関がやり、どういう方法でやったらいいかというような点については、ただいまの川田次長の御答弁に全く私賛成でございます。ただ、特に申し上げておきたいことは、東京都で、埋め立て地は売却しないで、譲渡しないで、むしろこれからは貸し付け方針でいくというふうに——いままでの条例では、東京都では全部売却しなければならないようになっておりましたが、これを貸し付けの体制にしていくということについては、少し長い目で見ました港湾管理者財政という意味から申しましても、私はこの点、非常にいい制度を始めてくれるんではなかろうかというような感じを持っておることをつけ加えまして御答弁とさせていただきます。
  59. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 これで質問を終わりますけれども、埋め立て計画、あるいは埋め立て地の利用計画、あるいはこれをどうやって財政的な裏づけをしてやっていくかということは、これからの国土利用を考えます場合に、全然もう埋め立てというのはいかぬのだというような思想でもいけないと思います。土地利用計画上、環境保全上、あるいは公共施設が十分足りるかどうか、水が足りるかどうかといったような観点から、やっぱりあらかじめ計画をつくって、そして十分住民の意見も聞いて、計画をセットして、そして個々の諸君の免許に入っていくと、そういうような体制がぜひとも必要だと思いますので、その方向でひとつ御努力をお願いしたいことを最後に御要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  60. 野々山一三

    委員長野々山一三君) それでは午後一時まで休憩いたします。    午後零時四分休憩      —————・—————    午後一時二十四分開会
  61. 野々山一三

    委員長野々山一三君) これより委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、公有水面埋立法の一部を改正する法律案の審査を行ないます。  お手元にお配りしてありますとおり、本日は参考人として四名の方々に御出席をいただいておりますので、まず最初に参考人の方々からそれぞれ御意見をお聞かせいただいた後、質疑に入りたいと存じます。  参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は御多忙中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。皆さま方から御意見をお聞かせいただき、本案審査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださいまするようお願い申し上げます。これより御意見をお伺いいたしますが、議事の都合上、御意見をお述べ願う時間はお一人十五分程度にお願いをいたしたいと思います。  それでは、小川参考人より順次御発言を願います。
  62. 小川栄一

    参考人(小川栄一君) 私の意見といたしましては、非常に土地の不足しているその間におきましては、埋め立て法の改正はもっと研究すべき余地が十分あるのであって、現状のままでとにかくスピーディーに土地利用を実行していただきたいと思っておるんであります。  その理由といたしましては、第一に土地と物価の関係でございますが、いずれも今日の政治社会において、政治経済において重要なことでありまして、土地の暴騰があらゆる物価の原因になっておるように思うのであります。岡山の児島湾に藤田農場というのが、藤田博三郎翁によっていまから七十年ぐらい前から着手されまして、終戦と同時に私が社長でありましたが、この土地を解放してもらいたいということで政府から特に要求されましたが、実は直営農場でございまして、解放する必要はないんだけれども、世の中がそうである以上は解放したい、しようじゃないかと。しかし、土地争い、水争いになっては困るので、なくなられた大野伴睦さんにお願いをして、海の中につくった水田一万町歩を解放するにつき、約四百万坪の水田用淡水湖をつくってもらいたいということをお願いしたところ、政府においてもこれを了承せられて分譲することになりました。そのときの土地価格は反当たり七百二十円、それから高いほうが九百円でございまして、現在その地方の土地価格を見ますると、反当たり七百万円から一千万円はしております。ということはですね、一万倍になったということ。したがいまして、二町歩もらった人は一億何千万円という財産を、あるいは二億円に近い財産を獲得したんでありますが、これをもらわなかった人、三千人のいわゆる地主と比較いたしますと、ほとんど比較にならぬほどの、つまり財産の差を来たしてしまった。今日、一番危険なことは、国の中にそのように財産を持っている人と持ってない人の差ができてしまったということは非常にぐあいが悪いことであります。  それにつけては、どうしても土地をふやさなくちゃならぬ。ところが、歴代の内閣は、土地が狭いという理由づけで住宅問題の失敗を弁解してきたようなかっこうになっておりますけれども、私どもに言わせるならば、いまの解放した一万町歩も、それから吉田総理がつくられた一万五千町歩の八郎潟の干拓も、すべてこれは大きい意味で言えば埋め立てでございまして、土地が不足するならば、高層建物を奨励するか、あるいは日本の海岸線を利用する、つまり世界で二番目に長い海岸線を利用する、埋め立て地というものを利用するか、いずれかの方法において土地を補充しない限り、みすみす暴騰していく土地を手放す百姓もないし、また金のある人間土地の思惑もせざるを得なくなる。こういうイタチごっこをしておられたんでは、土地を全然持ってない日本のサラリーマン、日本の労働者の大部分であるところのサラリーマンは、働けども働けども土地というものは永久に持つことができないという、日本に生まれながら、きわめて、つまり悲惨な状態に入っちまう。そこで私は、この世界で二番目のつまり海岸線を持っている日本、ことに埋め立ての必要である東京湾というものにこの二十年来いろいろな角度から経験をしてまいりました。それで、結果、現在でも埋め立てば、東京湾内におきましては坪二万五千円見当で埋め立てができます。非常にヘドロ地帯である場合には四万円ぐらいかかると思いますが、できます。そして、それをつまり半分を、五掛けを住宅地に原価で供給することが必要ではないか。一割だけは商業地として、これは相当高値で銀行その他マーケットに処分して、これによって公益事業をとにかく完備したらどんなものだろうかということを常に考えてまいっておるものでございます。  次に私の心配いたしますものは、埋め立てを公害というふうに解釈されておることであります。埋め立てば絶対に公害ではありません。私ども埋め立てにつき水質の研究をいろいろいたしました。その水質の研究の結果どういうことを発見したかと申しますと、自然の川で流れている間は非常に汚物といえども沈でんが少ないのですが、一たび海水につかりますと、金属性もろとも分解いたしまして、直ちに沈でんを始める。したがいまして、東京湾の中の二キロほどの間は、長い間の人口の増加によりまして、すべて沈でん物によってヘドロ地帯ができたのであります。このヘドロ地帯というものを征服するためには、簡単なことばで申しますれば、われわれの庭にあるごみを掘って埋めて、上に土をかぶせるということと同じように、いい砂をまじえてヘドロと一緒に埋め立てをしてヘドロ地帯を片づけてしまうということが一番大事なことだと思うのであります。しかるに、埋め立てをさえいわゆる公害であると言うているのは——私は近来の学者というものを全然信用することができない。学者の説によれば、油なんというものはもうなくなっちゃっているはずなんです。ところが、われわれは海底油田を開発することに成功した。そのことによって、まだ油は何百年もあるいは一千年以上も続くかもわからぬというようなことになっておりまして、デスクペーパーの上でなり上がった議論にばかりテレビ、ラジオはじめみんなが傾聴しておって、真剣に水質を検査したり、真剣にものをやってきた人間のことばはいま通用しない時代であるということは、まことに遺憾なことであると私は思うのであります。  その他、誤解されている点を申しますと、東京湾というものを三つに分けて、つまり外湾というものは、これは無尽蔵に大きな船が近づいてきて、油というような危険物は全部パイプで一定の場所へ輸送する。内湾は十万トン程度までの、とにかく鉄鉱石はじめその他の原料を入れる。奥湾は、一番東京に近い奥湾は、つまり千葉県とか川崎とかいうところは、それはもっと小さい船でやる。ということは、東京湾をそういうふうに三つに分けませんと、いまや東京湾のいわゆる船は世界で超弩級に困難をきわめておるわけですが、しかも東京都の港に十万トンの船が横づけになった場合、たった十トンのトラックでもって東京の都内を通るということになれば、ほとんど致命的に交通難におちいっちゃう。したがって、いみじくも東京都は六万トン以上の船が停泊できないような設備にしてある。そうして、そこに中央横断橋というものを設けなきゃならぬというわれわれの考え方はどういうところにあるかと申しますと、仙台、福島県、茨城県、千葉県の物資と、それから神奈川県や静岡県や名古屋の物資とを東京都を通らずに運びたい。東京都の交通をいかにして緩和するかということは、東京湾の埋め立てと一緒に考えなきゃならぬ問題なんだ。ところが、長いこと東京都の総合開発計画に司会者をつとめておった都知事さんが、突如として中央横断橋は不必要であるというようなことを言われるのは、われわれはあまりにも、とにかく政治家としての節操を疑いたくなる。東京湾の交通を緩和するという問題は、東京都にとってならありがたいことであるに間違いないし、東京湾の中で大きな船が十字架に動くようなことがあってはまことに危険千万であるから、東京湾の中の船の航路をすべてワンウエーにするための中央横断橋でありまして、すべて超弩級の交通を緩和せんとするところにあるのに、橋をかければ橋げたがつまり汚染であり、公害であると言われておりますが、水の汚染や公害は、陣内におけるところの工場がすべて自分の排せつ物を自分のコンクリートタンクで処理するという設備のないものは中止させればいい。また河川敷は公園以上に美しい河川敷にして、水の流れを美しくするならば、東京湾の水がどう流れようとも何も別に問題ないわけです。そういうような問題でも、何にも経験のないデスクプランの学者が言っていることに耳を傾けて政治が行なわれたり、テレビで大衆を迷わしたりしているような事実を私は非常にいかぬと思う。  それから第四に、これは最後の問題ですが、それならおまえは埋め立てをどういうやり方でしたいんだということは、いまわれわれの政治不信のことを申し上げましたけれども、実業界におきましても、総合商社のごときは商品を世界じゅうから集めて、われわれに安く分配してくれる、最小の手数料で分配してくれるものと予期しておったのに、資金があり余れば必ず思惑をする、不動産会社も、土地のない人のために分けるということを忘れて土地の思惑をしておる、株式屋も必ずしも正しくはないということになってまいりますると、経済界に対する不信も私は非常に多いのじゃないか。そういうときにこの日本に生まれて、このいまの、つまり土地のあるものとないものとの非常な大きな差をどうやって直そうとするならば、私はここに第三セクターの方式を利用したらどうだろうか。お役所の方々は、考え方は、私は非常にとにかく小さくてやりきれない方々だと思っております。それはなぜかといえば、自分のなわ張りの範囲内において予算を争った、その争った予算の範囲内において仕事をしようとするから、できるそばから間に合わない。これは第三セクターと一緒になって、手続や技術はお役所も共同につまり負担する。たとえば千葉県の問題でしたら、千葉県にはいま六十キロくらいとにかくバージンの土地が、埋め立てしないで残っている土地があります。これらを、つまり五千万坪の埋め立てをしたければ、第三セクターでやる場合に、千葉県の方々と実業界が結託して第三セクターをつくる、そうして実際の事務が、千葉県で長く埋め立てのことに従事してこられたお隣の角坂君やそういう方々が一連を引き受けて、これに参加されたらどうなんだと。土地をつくる場合には、お金を貸した人は金利をもらえばいい、工事に携わったものは工事費をもらえばいいんで、土地の思惑までされたんではこの土地の問題は片づかない。原価でもって、これは土地は、必ずつまり転々と、その持たざる人のための社会施設に利用されるということでなかったならば、政治に対しても経済に対しても大衆は不信感を持つに間違いない。  そのような状態の中でこの土地問題を解決するについては、私はいまの段階において、研究せられた範囲内において公有水面の規則を変えるということについては大反対であります。いかにして、つまりスピーディーに埋め立てを完成するかという問題に焦点を置くべきじゃないか。しかるに、いま政府内には六省会議とか九省会議というものがあります。その六省会議とか九省会議というのは、それぞれなわ張りの違う人たち、意見の違うグループだけがこれを議論しているから、いつまでたったってあなた意見が一致するはずがない。したがって、つまり必要なる公有水面埋め立ての認可を得ることも非常にむずかしいわけなんです。そういうような事柄をとにかくスムーズにするということが重要であると思いますと同時に、田中総理が列島改造論をおっしゃっていることに対し私は非常な賛成論者でありますけれども、まず段階としては、東京、大阪に集まった京阪神及び京浜間の過密というものは、これは生活権のためにやむを得ず集まっておるものでありますから、これを遠くに戻れといってみたり、郷里に帰れといってみたり、過密過疎を論じてみてもいまは間に合わないし、とにかくこれらの人々は東京湾を中心に、あるいは京阪神の、あるいは淀川、国立公園を中心に考えなきゃならぬ。幸いに名古屋地区はまだ過密になっておりませんが、アルプス系統の水がうんとある天龍川あり、木曽川川あり、長良川あり、揖斐川ありというようなものであって、これに対しては将来のことを考えてドレッジが能力の余っている範囲内においてここに来て働く、仕事にあぶれたら来て働く、そのかわり工事費は一割安いとか、そういうふうにしてみなが、つまり日本にある地勢と設備を利用して今日大問題になっている土地と物価の問題を解決せられるよう有力なる皆さまの御指導があることをお願いしたいために、私はあえて昨晩カナディアンロッキーの山からおりてまいりましたものでございますが、自分の愚見を申し上げに参った次第でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  63. 野々山一三

    委員長野々山一三君) ありがとうございました。  次に、角坂参考人にお願いいたします。
  64. 角坂仁忠

    参考人(角坂仁忠君) 御紹介いただきました千葉県開発庁長の角坂でございます。私は元来土木屋でございまして、特に仕事の関係で港湾、河川等を専門にいたしておりましたので、三十五年間いわゆる公有水面埋立法にごやっかいになったものでございまして、現場におきまして、あるいは行政の監督の立場におきましても、あらゆる点におきまして公有水面の埋め立てに直接、間接に非常に多くタッチいたしております。特に昭和四十年に私千葉県に参りまして、当時土木部長といたしまして、また現在、昭和四十五年からでございますが開発庁長——これは非常にわかりにくいかと思いますが、正式には千葉県総合開発事業管理者ということでございまして、ここの中に臨海土地造成事業、いわゆる埋め立て事業の特別会計がございまして、この管理者で、実際上の責任者でございますが、そういう意味におきまして、特に東京湾を中心といたします、私が責任者でやっております大規模な埋め立てに関連いたしまして、少しく意見を申し述べたいと思います。  本県はいろいろ現在でも大規模にやっております。将来ともいろいろな角度からさらに埋め立て事業を推進していく所存でございます。この現状あるいは将来につきまして少しく三十年代からの経緯を振り返ってみたいと思います。御承知と思いますが、千葉県は昭和二十年代には川崎製鉄の誘致等によります一部の海面埋め立てがございましたけれども、本格的に始まりましたのは昭和三十二年の五井・市原地区の工事からでございます。これはちょうど昭和三十一年に県財政が非常に逼迫いたしまして、当時県庁職員の月給も払えないというような状態でございました。なお、その当時、農漁村の次三男対策が非常に県政の頭の痛い問題でございました。こういう問題に対処するために、三十一年でございます、千葉県産業振興三カ年計画というものをつくりました。このときに初めて一千万坪の埋め立てをやって、ここに工業誘致をして県のこういうピンチを切り抜けようというのが当時の実情でございました。ちょうどそのころ、もう御承知と思います、ちょうど終戦によりまして非常に荒廃した日本国の第一次と申しますか、いわゆる第一期の経済復興がようやく終わりましたのが昭和三十年前後だったと思います。このときは国におきましてもやはり非常に問題がございまして、経済の自立とかあるいは完全雇用というものを目標といたしまして、経済自立五カ年計画が鳩山内閣時代に発表されております。自来、新長期経済計画とか、あるいは国民所得倍増計画等々、いろんなそういう計画が出てまいりまして、昭和四十五年の新経済社会発展計画まで、その時代時代の変化に応じましていろんな計画が発表されております。こういう国の大きな計画に基づきまして、県自体といたしましてもその時代時代の要請に応じましていろいろな計画が策定されております。  昭和三十七年に、いよいよ千葉県といたしましても本格的に総合開発計画をつくるために、千葉県長期計画というものを策定いたしまして、このころの一番の県政の問題でございました県民所得の向上とか、あるいは産業間、地域間の格差の是正あるいは社会福祉の拡充というものを柱といたしまして、昭和六十年代におきます千葉県の理想的なあるべき姿というものを実は予想したわけでございます。こういう長期計画におきまして埋め立て計画も一万一千二百四十ヘクタール、約三千四百万坪というものが一応具体化されまして、そしてこの長期計画をもとに昭和三十九年に第一次の千葉県総合開発五カ年計画が策定されたわけでございまして、もうこの当時すでに臨海開発といえとも将来——三十年の前半にやってまいりましたように、重化学工業開発オンリーではなくて、やはり地域の特性によりまして、港湾、軽工業あるいは住宅、公園というようなものを、開発を多角的にやっていこうという方向が一部ではございますが思想として取り入れられております。  その後、県といたしまして昭和四十二年に第二次五カ年計画をつくりまして、昭和四十四年に千葉県の新長期計画を策定いたしたわけでございます。この四十四年はちょうど五月三十日に国におきまして新全国総合開発計画が発表された年でございまして、この新長期計画に基づきまして第三次五カ年計画——これは昭和四十五年から四十九年まででございます。これを策定いたしまして、ちょうどその前後におきまして、いわゆる地域格差とかあるいは産業構造のアンバランスあるいは公害問題、交通問題、また住宅不足、生活環境の悪化というようないろいろな客観情勢がもろもろに出てまいりまして、こういう情勢に対処するために、開発の方向も局地的じゃなくて、地域的に拡充するということと、量よりも質の充実を、多様化を求めようということで、この当時、臨海部の埋め立て計画につきましては、一応、面積的にはその目標を一万五千ヘクタールというふうに立ててはおりましたけれども、その利用方法のパターンを、従来の工業中心からむしろ港湾とか住宅、業務、道路、緑地あるいは公園、再開発用地というものへと大きくその利用パターンを転換いたしておる次第でございます。  このようにいたしまして、いろいろ御批判ございますが、千葉県はここ十数年来非常に目ざましい発展を続けておりまして、県民の生活も非常に上昇いたしております。かなり豊かになってまいっております。しかし一方におきましては、御案内のとおり、急激な千葉県への流入人口の増加が中心となります非常に変化が急激であるために、水資源の逼迫とか、あるいは交通混雑、あるいは生活環境施設の不足、また公害問題、さらに現在一番頭の痛い多様的な都市問題等、いろいろな問題を提起いたしております。そうしてまた、これは県民と申しますか、国民全般の欲求でございます、それぞれの人の人生観というようなものが変化を見せてまいっておりまして、いままでの物質的な豊かさを求めるよりも、人間らしいゆとりのある生活、あるいは自然へのあこがれというようなものがそのおもなもので、そういう表現であらわれておりまして、こういう背景をもとにいたしまして、千葉県では、さきに申し上げました第三次五カ年計画は、当時「量的発展より質的充実」ということをキャッチフレーズにしたわけでございますが、これをさらに内面的に掘り下げまして「環境の保全と暮らしの向上」ということを最大の理念といたしまして、より豊かな自然と、それぞれ地域地域の特性を生かしました開発を進めまして、県民生活をより豊かにしていきたいということで、第三次五カ年計画を三年で打ち切りまして、第四次総合五カ年計画が本年の六月に発表されております。この新しい理念に基づきます第四次五カ年計画の方針にのっとりまして、第三次五カ年計画の、先ほど申しました一万五千余ヘクタールのいわゆる埋め立ての構想もさらに再検討いたしまして、その規模を、わずかではございますが、一万三千余に縮小いたしまして、現在すでに着手いたしております、あるいは計画中、将来にかけまして大体五つの大きな点を考えておるわけでございます。  現在、東京都に近い浦安地区でございますが、これは住宅地と倉庫をはじめといたします流通機能用地あるいは都市再開発用地、それから市川でございますが、これは同じように住宅地、再開発用地、緑地のほかに、いろいろ問題がございます野鳥保護のために一大人工干がたをつくるというような決意も固めておる次第でございます。船橋、習志野、市川にまたがります京葉地区は、これは東京湾内部におきます流通港湾といたしまして京葉港の建設に関係いたしまして、現在、港湾とか、湾岸道路あるいは京葉線というふうな交通機能を一体といたしました流通業務地区として着々整備中でございます。さらに長期的には、本県臨海部におきます一大流通基地として完成させたい、緑地とか再開発用地もここに確保することは当然でございます。もう一つは、いわゆる千葉海浜ニュータウンとして宣伝されております千葉西部地区でございます。これも現在ニュータウン造成用地といたしましてすでに着手いたしております。今後新たに埋め立てに着手する予定でございます幕張地区につきましては、住宅問題の不足もさることながら、先ほど申しましたように、非常に急激な人口増加によります水資源の逼迫その他もろもろの客観情勢に対応いたしまして、なお首都圏整備委員会等の御方針にものっとりまして、これを一部オフィスセンターといたしまして、新都心的な業務用地といたしたいというようなことで現在検討中でございます。と同時に、ここには一大海浜公園をつくるというような計画も考えておる次第でございます。なお富津につきましては、いろいろの御批判を受けておりますが、当初ここには新全総によりますいわゆる臨海装置型の産業誘致の予定でございましたが、こういう情勢に合わせまして、予定しておりました石油コンビナートの立地は全面的にこれを中止いたしまして、使うといたしますならば、良質燃料の供給基地とか、あるいは鉄鋼、アルミ等の二次加工、建材、プレハブ等の住宅産業及び流通基地としての整備をはかるような考えで検討している次第でございます。  このようにいたしまして、現在千葉県の埋め立てば、その時代時代の要請に応じまして総合的なマスタープランを十分練りまして、もちろん公害問題、環境保全等につきましては十分な意を用いながら、特に四十年後半になりましては、予定されました工業用地も、その立地につきましては無公害工場を原則といたしまして、この選定に非常な苦心をいたして、あらゆる角度からこれを検討いたしまして立地をさしている次第でございます。小川参考人からも御発言のございましたように、最近、埋め立てイコール公害発生の原因というような意見もあるようでございます。私、八年有余、千葉県の全般的な開発に直接関係した体験からいたしますと、現在、環境整備の最大の事業といわれております下水道の大きな処理場が、現在の既成市街地とかあるいはその周辺ではほとんど絶望的というほど用地の取得は困難でございます。そのほか、公園、道路あるいは緑地等につきましても、なかなか現在の既成市街地に求めることは至難なわざでございます。こういう状況と、また同時に、公害源といわれておりますが、中小工場等におきましては、住宅密集地の中にあるがために騒音その他で非常に苦情を受けている工場がございます。これを、住宅地を遠く離れました埋め立て地等に集団的に移転いたしまして、この環境整備をすることによって、これは完全に無公害工場になるというような事例もたくさんあるわけでございます。こうした目的のために、この公有水面の埋め立て地の利用を新しい発想から考えてまいりますときには、別の観点からいたしますと、この埋め立て地の利用方法によりましては、これ自体が自然保護に通じ、環境整備の目的に沿うものでないかと私は考えております。  以上述べました観点からいたしまして、今回、公有水面埋立法一部改正が議題になっておりますが、国土利用を合理的に考えまして、なおかつ、計画あたりましては、環境保全とか災害防止に十分配慮をいたしまして、なお、公共施設の配置、規模等適正であるものに限定いたしまして免許基準を明確化いたしておるようでございまして、その他、新しい時代に適応した諸般の改正をするということでございますことは、時宜を得たものであると考えております。  以上私の所見を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  65. 野々山一三

    委員長野々山一三君) ありがとうございました。  次に、仁藤参考人にお願いいたします。
  66. 仁藤一

    参考人(仁藤一君) おくれましてたいへん申しわけございませんでした。私は日本弁護士連合会の公害対策委員会の副委員長をいたしておりますが、この公有水面埋立法の一部を改正する法律案に対しましては、先ごろ日本弁護士連合会の名前で意見書をつくりまして各関係先にも御送付申し上げておりますので、日本弁護士連合会の意見はそれをお読み願いたいと思うわけでありますが、その意見に従いまして、今度の法律案に対する、主として法律上の問題点につきまして意見を申し上げたいと存じます。  まず、私どもの基本的な考え方といたしましては、公有水面埋立法は、埋め立てを規制するという見地から根本的な改正が行なわれるべきであって、一部改正といったような改正で済まされる問題ではないというふうに考えておるわけでございます。その理由は三つほどございます。  その第一は、現在の公有水面埋立法は大正十年に法律第五十七号として制定されたものでありますが、その目的は、いわゆる公共目的からの制限というものは設けてはおりますけれども、その基本的な性格といたしましては、既存の権利の存在による埋め立ての障害を除去いたしまして、埋め立て地の増大の必要性にこたえるということにあったわけであります。そうして戦後、国土の狭小に由来する用地難の解決の有力な方法といたしまして、海面埋め立てによる土地の造成の必要性が飛躍的に増大するに従いまして、その立法目的に沿う数次の改正が行なわれて今日に至っております。そしてこの法律によって埋め立てられた土地は広大な面積にのぼっておりますし、政府計画によれば、その傾向も今後一段と強化されようとしているかのように考えられます。しかし他方、最近では、埋め立て及び埋め立て地の利用による公害の発生、増加が深刻な公害を各地に引き起こし重大な社会問題となっておりますことは、あえて四日市市の例やあるいは徳山湾の例をあげるまでもなく、だれの目にも明らかなところでありまして、今日、全国各地に埋め立て及び埋め立て地の利用に関して地域住民の強い反対運動が展開されていることも御存じのとおりでございます。また海岸、河川などの埋め立てによって貴重な自然が失われ、これによる潮流、気象条件の変化などの生態系に及ぼす影響の深刻さが生態学者によって強く叫ばれておりまして、今後、従来のような安易な埋め立てが続行されるならば、われわれの生活環境に及ぼす弊害というものははかり知れないものがあろうと考えられます。こういうような見地から、現在の公有水面埋立法公害発生の大きな原因を除去するという観点から根本的な改正を加えられるべきであるというふうに考えます。それが第一点でございます。  第二点は、工業用地の造成というものは本来これを欲する企業者がみずからその費用で用地の造成を行なって、政府あるいは自治体は住民福祉の観点からこれを規制し監視していくというのがその役割りであろうかと考えられます。しかるに現在までの公有水面埋め立ての現況は、その大部分が地方自治体または政府の手によって率先して先行投資として行なわれておりまして、いわゆる事業主体が政府もしくは地方自治体というものになっておるわけでございます。これでは、いわゆる住民福祉の観点からの規制ということを求めることは非常に困難であろうかというふうに考えます。この点につきましては、埋め立ての免許に関する法構造と関連いたしまして後にまた申し上げたいと思います。  それから第三点といたしましては、この公有水面埋立法は大正十年に制定された法律でありまして、戦後の憲法あるいは行政法規の変遷やその後の学問の発展などを十分に吸収しておらないという意味でたいへん不備な法律であるというふうに考えられます。  以上の三点が、私ども公有水面埋立法の抜本的な改正ということを叫ぶ理由でございます。したがいまして、私どもといたしましてはこれらの不備を補って、いま申し上げました観点からする根本的な法律改正が至急に行なわれることを強く要望するものでありますが、この点についての意見は後日に譲ることにいたしまして、とりあえず今回の改正案について最小限度修正を必要とすると考えられる諸点について、以下、意見を述べることにいたしたいと思います。  まず、今次の改正案につきましては、埋め立てに関する利害関係上の地位を有する者あるいは権利者と呼ばれる者の保護の態様がきわめて不十分であるということが指摘できょうかと思います。いま申し上げましたような公有水面埋め立ての環境に及ぼす影響という点が重視せられた結果、今次の改正案に免許についての要件としてそれらの要件が加えられましたことは、私どもとしては一つの進歩として歓迎するところでありますけれども、しかしながら、そういう要件が加わったというだけで、それらを実質的に担保すべき手続規定というものがはなはだ不備であるということを指摘せざるを得ないと思います。  その第一点として、まず利害関係人に今次の改正案では意見書提出の機会が与えられておることになっておりますけれども、その意見書の提出につきましては、その意見書の取り扱いについて法律は何ら規定するところはございません。いわゆる縦覧、意見書の提出という従来しばしば用いられてきたきわめて実効性の乏しい手段を用意したにすぎません。意見書の取り扱いに関する規定が設けられておりませんから、意見書の採否はもっぱら知事の裁量にまかされているわけであります。しかし、この公有水面の埋め立てという行為の法律上の性格といたしましては、いわゆる埋め立て免許は国民の共有財産を一般に廉価で永久に特定の私人の所有にすることを認める行政処分でありまして、今日、海面特に沿岸はたいへん限られておるということ、あるいは一たん埋め立てると回復し得ない性質を有するものであるというような諸点を考え合わせますと、この免許にあたっては、当該水面に権利を有する者はもちろん、事実上の利害関係ある者の利害を慎重に考慮し、これらの者に十分免許の許否につき意見を述べる手続的保証がなされなければならないというふうに考えるわけでありますが、単に意見書の提出ということだけでは手続的にきわめて不備であるというふうに考えるわけであります。少なくとも、いま申し上げましたような法の性格に照らして、行政不服審査法に準じて口頭審理主義が採用さるべきは当然でありますし、さらに公聴会の開催の義務づけ、あるいは実質的資料の公開閲覧などの規定が準備さるべきであろうというふうに考えます。  次に、いわゆる免許の要件の存否それから利害関係人の意見の審理、それらについていわゆる知事の判断にまかされておるわけでありまして、これらの意見書の審理とか、あるいは埋め立て計画の環境に対する影響を調査、審理するための独立した審議機関というものを用意してございません。われわれは、こういういわゆる利害関係人の広い行政処分をなさるにあたりましては、それらの意見を十分に尊重するために、いわゆる免許権者とは独立した審議機関を設置いたしまして、意見書の審理あるいは環境に対する影響調査あるいは公聴会の主宰等の権限を与えて、さらに、その構成には地域住民の代表あるいは最も利害関係の密接な漁民の代表等の参加を義務づけるべきであるというふうに考えるわけでございます。  それから第三には、この改正案の第四条第一項第二号の改正によりまして、埋め立てが環境保全などにつき十分配慮せられたることが必要になるわけでありますけれども、そういう配慮がなされていないということを主張する地域住民が、いわゆる利害関係人として免許につき取り消し訴訟を提起し得る原告適格を持つことができるかどうかという点については、この改正案でも依然として立法上の解決がなされておらないわけでありまして、今後の解釈もしくは判例にゆだねられておるところであります。現在の最高裁判所の判例からいたしますと、地域住民にそれらの原告適格を認めることははなはだ困難であろうというふうに考えられますが、下級審判例の傾向といたしましては、あるいはそれらの原告適格を認める余地も十分に残されているというふうには考えるのでありますけれども、これらの解釈上の疑義を払拭する意味でも、立法的にこの問題を肯定的に解決すべきであるというふうに考えるわけであります。  次に、いわゆる権利者の範囲及び権利保護の手続について今度の改正案は何らの改正を準備いたしておりません。現在、公有水面埋立法によってその当該水面に権利を有する者とされておりますのは、いろいろございますけれども、そのうちで一番問題なのは漁業権者でございます。で、この漁業権者につきましても、当該埋め立ての水面に漁業権を有する者だけがその権利者とされているわけでありますけれども、公有水面の埋め立てによりまして漁業権に非常に大きな影響を受ける範囲というのは当該公有水面だけに限るわけではございませんので、一説によりますと、埋め立ての面積の約三倍の海面に影響があるというふうにもいわれております。で、それらの者、あるいは自由漁業の対象である海面を汚染されたために損害をこうむる漁民、あるいは当該埋め立てによって景観を失って旅館営業等が事実上営み得なくなるような者、あるいはイワシ等の漁業が、漁業権が消滅することによりまして、それらの加工製造業ができないといったような者たち、こういう者につきましては従来権利者としては取り扱われておらないわけでありますけれども、しかしながら、従来の埋め立ての実例を見ますと、影響補償といったようなこと、あるいは見舞い金といったような名目で若干の補償が行なわれているという事例もあるようでございます。これらの点につきまして、従来の慣行等も十分考慮して法律の改正をはかるべきである、これらの権利者を保護するよう改正をはかるべきであるというふうに考えられます。  それから法律第四条一項二号、三号によりまして免許をなし得る場合、すなわち権利者の同意がない場合でも、二号、三号の要件がありますと埋め立ての免許を与えることができることになっておりますけれども、それらの者につきましては補償についてだけ意見書提出の機会を与えておりまして、埋め立て免許について何らの法律上の救済手続を与えておりません。このことは、さきに松山地方裁判所の昭和四十三年七月二十三日の判決で憲法三十一条に違反する疑いがあるというふうに指摘され、多くの学者もこれに賛成をいたしている点でございまして、今度の改正法は現行法をそのまま踏襲して何らの改正をこの点についても意図していないということは、きわめて不当であろうというふうに考えられるのであります。少なくとも告知あるいは聴聞の制度を設けるなど、土地収用法に準じた取り扱いがぜひ考慮さるべきであるというふうに考えられます。  時間がなくなりましたので、以下はしょって申し上げますが、この今度の改正案におきましては埋め立て規制の機能が制度的に保障されておらないということが次に言えようかと思います。まず埋め立てにつきましてはその大部分が港湾管理者、すなわちその大部分が知事でございますが、その港湾管理者による埋め立て造成ということがわが国の公有水面埋め立ての大部分の事例でございますが、それの免許権者が知事である、しかも補償について協議がととのわない場合の裁定権者も知事である。こういういわゆる事業主体と免許権者と補償の裁定権者が事実上同一人格のもとに行なわれておるということは、埋め立て規制という観点からの制度的な保障というものが十分に行なわれるだろうということを期待することはたいへんむずかしいというふうに考えます。  次に、免許の要件につきましても、もう少しきめこまかな改正案が用意さるべきではないかというふうに思います。その一例を申し上げますと、埋め立てについての影響については免許の要件に加わったのでありますけれども、埋め立てのみでなく埋め立ての工法及び利用についても、あらかじめ免許の要件の中に加えるべきであるというふうに思いますし、漁業資源の保護の観点、あるいはこれは自然環境上の影響という点に入るかもしれませんが、自然景観の保全という点もいわゆる免許要件の中に加えるべきではないかというふうに思います。特にこの漁業資源の保護の観点は、今日、国民の重要なたん白源をなしております漁業、特に沿岸漁業の魚が汚染されて非常に大問題になっておる今日におきましては、かかる観点から十分な配慮が加えられるということがぜひ免許の要件として必要ではないかというふうに考える次第であります。  いろいろ申し上げたい点もありますが、時間が参りましたので、一応この程度にさしていただきたいと思います。御清聴を感謝いたします。
  67. 野々山一三

    委員長野々山一三君) 次に、半澤参考人にお願いいたします。
  68. 半澤督三

    参考人(半澤督三君) 私、川崎市港湾局長半澤督三でございます。昭和二十六年港湾法が制定されまして以来、私どもが港湾区域内におきます公有水面埋立法の免許事務を取り扱っておりますことから、現在審議されております公有水面埋立法の一部を改正する法律案に関しまして意見を述べさしていただきたいと存じます。  まず川崎市の現在までの埋め立て経過を簡単に紹介させていただきますと、古くは明治時代からすでに埋め立てが実施されておったわけでございます。すなわち、これを面積別に見ますと、明治時代には約二万五千平方メートル、大正時代に百五十八万三千平方メートル、昭和に入りまして、すでに竣工したもの一千百七十四万六千平方メートル及び現在造成中の埋め立てが七百十万平方メートルに及んでおります。率直に申し上げまして、確かに戦前及び戦後、昭和三十年の時代までは、現在、社会的な問題となっておりますところの環境保全といった公害に対する配慮が十分でなかったとは十分に考えられますが、われわれ地方公共団体などにおきましては、埋め立てを計画し免許を受けまして、ここに工業地帯を造成し地方公共団体の繁栄をはかっていたことは事実だろうと考えられる次第でございます。また、これは私どもだけの問題ではなくて、全国地方公共団体の共通した考え方であろうと推測いたしております。しかしながら、近年に至りまして、過去の埋め立てで造成されました土地からの環境破壊が大きくクローズアップされるようになりまして、特に臨海工業地帯から生ずる廃棄物等の処理が不完全であったことから、住民に対する影響が大きく、このような社会的な問題にまで発展した原因であろうと思われるのであります。そこで、今後の公有水面の埋め立てを実施するにつきましては、あらゆる角度から検討を加えなければならないと思います。いやしくも、この埋め立てが社会環境を悪化するようなことがあってはならないのでございます。  現在、私どもが川崎市で免許いたしております埋め立てに関しまして若干述べさせていただきますと、まず第一に、埋め立ての免許の基準についてでございますが、前に申し上げたとおり、この埋め立てが環境の破壊を伴うものであってはならないという条件、この判定はおのずからその埋め立ての用途から決定されるものでございまして、これを掘り下げて検討しなければならないと存じます。ここでちょっと御紹介させていただきますと、最近、昭和四十六年に私どもが免許を与えました鉄鋼業の埋め立て地造成でございますが、当該企業が鉄鋼製造業でございますことから環境の悪化が十分予想されますので、関係地方公共団体であるところの神奈川県、横浜市及び川崎市で埋立対策協議会を発足させました。そして種々の角度から慎重に検討を行ないまして、特に公害防止に関する問題につきましてはきびしい態度で臨み、また技術上不可能であるとまでいわれました公害防除施設等を県、両市において要請をいたしました。これを受けまして、企業においては風洞実験その他を行ないまして、そのとおり受け入れることになったのでございます。  これをまた確約するために県と両市と企業間で公害防止に関する協定を結んでおります。内容といたしましては、地域住民の健康を守ること、それから環境保全をはかることなどを骨子とし、おもな項目については、いまこれから申し上げるとおりでございますが、第一番目に、公害防止の理念といたしまして、県、両市及び企業は、公害による環境破壊の進行が人類に危機をもたらしつつあることを認識し、企業の生産活動によって発生する公害防止については、企業が重大な社会的責任を有するものであり、また地方公共団体は、これらの公害防除について住民保護の重い責務を持つものであることをそれぞれ認識し、公害の予防及び排除について最善努力を行なうことを約す。二つ目に、公害防止対策として、企業は、公害防止研究及び改善について不断の努力を傾けるものとし、また公害防止に関する技術の向上、燃料条件の改善等があった場合は、他の企業に先がけてその導入に努力するものとする。三つ目に、対策の実施としまして、次に掲げる事項を実施しようとするときは、あらかじめ県、両市に協議し実施するものとするとしまして、公害に関連する生産設備、公害防止設備の新設またはこれらの設備に変更を加えようとするものでございます。  一方、既存の工場の問題といたしましては、公害防止対策を策定させまして、大気汚染、粉じん、水質汚濁、騒音、悪臭、産業廃棄物、防災及び緑化の各項目について具体的に実施するよう指示しております。  これとまた並行いたしまして、川崎市におきましては現在、公共埠頭の造成を主体といたしましたシビル・ポート・アイランド、いわゆる市民のための港の建設を実施しております。この計画は、川崎港が七〇年代からさらに二十一世紀へ向かって飛躍的な発展を遂げるための、市民の手によって住みよい川崎市にするための施設と国際貿易港を建設しようとするものでございます。また同時に、過密化しておりますところの市街地の土地利用を有効にするための再開発用地を確保し、市内の住工混在の公害工場などの移転を容易にできるように配慮いたしております。この移転によりまして、住工ともに調和のとれた都市計画がはかられて、快適な居住地が再編できると思考いたしております。また、埋め立て計画の一環といたしまして、市民のいこいの場を確保し、青空と緑を楽しむリゾートパーク——海浜公園でごさいますが、それをつくり、同時に、近代港湾にふさわしい貿易センター、海洋博物館などを設けまして、従来の港の形態を一変しましたユニークな川崎港を誕生させようというものでございます。  次に、権利者に対する配慮でございますが、この問題もたいへん重要な問題でございまして、埋め立ての同意を得るにあたりましては、従来、幾たびとなく慎重に、徹夜までして交渉を行ないまして解決した経過がございます。特に漁業者の転業対策につきましては、真剣に検討した結果、現在は、権利の対象でありましたところの川崎漁業協同組合の組合員全員が一つの事業を団体で経営することに取り組みまして、順調に事業を運営いたしております。  このように、公有水面埋め立てに関する事務を直接担当しております私どもといたしましては、埋め立ての免許が社会的に及ぼす影響を慎重に考慮しながら、これに対処するための対策を講じるとともに、ひいては地域社会の発展をはかるべく今後とも鋭意努力してまいる所存でございます。  簡単でございますが、以上で終わらせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
  69. 野々山一三

    委員長野々山一三君) どうもありがとうございました。  以上をもちまして参考人の方々の御意見の開陳を終了いたします。  それでは、これより参考人の方々に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  70. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 川崎市の港湾局長の半澤さんに一、二お尋ねしたいと思います。  川崎の埋め立てにつきましては、いま御説明ございましたが、一つは、扇島地区日本鋼管の移転をやっている。これはなるほど市長さんがたいへん苦労されまして、公害の除去については地元と工場と詳細な協定を結ばれて移転をされたわけですけれども、川崎というのは、私横浜に住んでおりますから、あそこを毎日高速道路で通るわけです。東京以上に公害のひどいところです。ばい煙も上がっております。そういうところで、しかも首都圏の既成市街地になっていて、人口の分散、抑制をはからなきゃいかぬというところで、たとえ再配置的な、再開発的な意味であろうとも、あそこに、埋め立て地に日本鋼管を入れたということは、いまのお考えから言うと全く誤りではないか、工場を置いておくということ、これは財源問題で、工場があれば川崎市の財政は潤うわけでしょうから、その財源問題に主体を置きまして、そうして市内から工場移転するということを、市外に移すということを何かサボっているんじゃないかというような感じがするわけです。またさらに、いまのお話によりますと、これは千葉県も同じでございますけれども、再開発用地というものを取る、市内の工場をそこに集中的に移転をする、残ったあと地は公園緑地等に使われる、このこと自体は私はたいへんけっこうだと思いますが、むしろ工場の移転そのものは川崎市外に移転するということをもっと積極的にお考えになるべきではないか。工場の移転には、それはなるほどいろんな問題があると思います。たとえば、そのつとめておられる方が共かせぎである場合とか、あるいは下請の関係とか、あるいは商店街の関係とか、私はこの移転が簡単にできるとは思いませんけれども工場の移転につきまして積極的な、総合的な施策を市当局自身も考えていくべきではないかというふうに思うわけでございます。その点について半澤さんからひとつ明快なお話を聞きたいということが一点でございます。  もう一つは、仁藤さんにお尋ねをいたします。  ただいま知事が埋め立て免許権者であって、同時に、埋め立ての事業者の多くは知事である、しかも権限がいろいろ同一人格に集中していておかしいじゃないかというお話がございまして、私も、いままでの埋め立てが県の財政に寄与するような形で行なわれたということにつきまして反省をしなきゃならないと思っておるわけですが、しからば、先ほど参考人の来られる前に質問いたしたわけですが、埋め立て自体には、水の問題とかあるいは交通の問題とか、県だけではどうにもならない問題もございます。そういうことも当然考えていかなきゃならないとすれば、知事の権限を一定の重要のものについては国に引き上げて国がやるべきようにするというふうにお考えになるかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  71. 半澤督三

    参考人(半澤督三君) お答え申し上げます。  第一点の、市内から公害工場を他へ移したらどうかというお話でございますが、実はスクラップ・アンド・ビルド化するという京浜工業地帯長期展望研究会というものを県、横浜、両者で持っておりまして、この第一のリプレースがこの日本鋼管になったわけでございますが、日本鋼管といたしましても、非常にあそこに立地するということは採算ベースに実は合わないことではあったわけでございます。いろいろほかへ移そうかという話もあったわけでございますが、何せ日本鋼管発祥の地が川崎でございまして、したがいまして、もう二代、三代とわたってあそこに職員が住みついております。実は福山へもつくった例がございますが、福山へ職員をあちらに移動しようと思っても行かないといった前例もございまして、どうしてもやはり発祥の地でもあり、涙をのんで、採算ベースに合わないかもわからないけれども、やはりあそこに新しい埋め立て地をつくり、そこにおいて公害防除施設をつくり、そして、ここでもうやらざるを得ないということにだいぶ鋼管首脳部も再三苦慮したような話も実は聞いております。そして、やむを得ずあそこにしたといったような考え方でございます。また本市の方針といたしまして、公害工場を他へ移転させようという気持ちは実は全然ございません。いわゆる住工混在を除いて、いわゆる工場地帯あるいは住宅地帯を、たとえば産業道路に百メートルのグリーンベルトをつくりまして区別するなり、その他をしていこう。そうでございませんと、先ほど申し上げたように、やはり下請工場なりその他いろいろ川崎の住民、やはり川崎市内でないとそういった経営が成り立たないとか、いろいろそういった問題がございまして、他へ移るということはなかなかむずかしい。もちろん他に適地があるのは移っていく場合も実はございまして、人口もなかなかその点で足踏みしたときもございますが、いわゆる本市の方針としましては、工場を住工混在から、工場専用なら専用地区へ集めようという方針でいっております。以上です。
  72. 仁藤一

    参考人(仁藤一君) ただいまの御質問のうち、知事の権限を国に引き上げる考えがあるかという御質問でありますが、私はそういうふうには考えておりません。実を申し上げますと、現行法でも五十ヘクタールをこえる埋め立てに関しましては運輸大臣の許可を必要とすることになっておりまして、その意味で国のチェックは完全過ぎるほど完全であると言ってもよかろうかというふうに思います。私が申し上げましたのは、知事がその独自の権限に基づいて免許の要件を考える場合に、その要件が具備しているかどうかということについて公正な審議の機関を別に設けるべきである。特に補償の裁定権者につきましては知事の権限とすべきではなく、補償のための独立した裁定機関というものが必要であろう。それから免許をなすにあたって、いわゆる審議をすべき機関といたしましては、現在では港湾審議会というものがございますけれども、港湾審議会はいわゆる港湾関係の事業者が、主として港湾の維持管理と申しますか、そういう観点から行なっているわけでありまして、それとは別の、いわゆる環境アセスメントという観点からの審議会がぜひ必要であろうというふうに考えておるわけでございます。
  73. 沢田政治

    ○沢田政治君 まず最初に小川さんにお伺いしたいわけでありますが、小川さんの場合はまあ賛成という立場かと思いますが、埋め立てすぐ公害、害悪、これは悪である、こういうふうに即断することはこれはいかぬではないか、こうおっしゃられておりますが、私どもも菜っぱ一からげ、一寸たりといえども水面を埋めることは罪悪である、こういうように何というか片寄った感覚を持っているわけじゃない。要は、国民全体に対してメリットであったかデメリットのほうが多いかという判断の問題にかかってくると思います。それが国民全体のものであるならば、たとえばデメリットが四であってメリットが六であるならば、これは埋め立てもよしということにもある場合はこれはなるかもわかりません。そういう共通的な認識については、そう相違がないと思います。しかし、今日までの起こっておる現況を見るならば、これは国民に全然還元しなかったというわけじゃありませんが、ほとんど埋め立てられて企業行為をしておる。そうして、まあ企業はもうかるかもわかりませんが、大気汚染とか水質汚濁とかという、いまの社会問題を起こしているところに問題があるわけです。したがって小川さんの場合は、これからの埋め立てというものは、富の偏在も主張されましたが、土地を持たざる者に分けてやるんだと、一部の持っている者はどんどんそれで拡大していくということではもう許されない存在だと、こういうことを示唆しておると思いますが、私もそういう意味では賛成なわけです。あなたの真意はもっと別にあるかもわかりませんがね。私は、大工場の、公害をたれ流す工場をつくるために共有の財産である海を埋め立てるということについては、これはもういかぬと思いますね。したがって、もう今日まで日本も何千年もきておるわけですが、どだい一人の人間が三十五年も働いて土地を持たぬという時代は今日おいてなかったですよね。おそらく世界にもないと思うのです。これ異常な事態になっておると思うのですね。そういう意味で、環境も保全され、しかも、その造成された土地というものは、あなた原価ということを主張しましたが、原価で、ない者に分かち与える、こういう考えですから、あんたの場合、非常に善政も施しておると思うのですね。大島を開発して、あの地下水のない大島に地下水を発見してやるとか、あんたも、ところどころでそういう善政もやっているので、なかなか高邁な精神を持っていると感心しておるわけでありますが、そういう意味でのあんたは賛成と、こういう意味に解釈していいのかどうかですね。私は、あんたがそういうことを言うだろうとは思わなかったわけでありますが、そういう御意見を聞いて非常に参考になっているわけでありましたが、そういうように解釈していいのかどうかということです。  それから角坂さんには——これは角坂さんの千葉県は、埋め立てということになると非常に全国でも実績のある県であります。そういう意味でメリット、デメリットは、なかなかそろばんではじくような価値観では出てこないと思いますが、非常にデメリットも多いわけですね。人口がどんどん流入してくる、それに付帯して行政が追いつかぬ、学校とか道路とか水道とかですね。そういうものも出てきておると思うし、特に漁業補償ですね。これはある程度収益還元方式でやったかどうか、私はその具体的な補償の手法までわかりませんが、私これは正確に調査しておるわけじゃありませんが、漁業補償を受けた方々の——そのときはそれに相当するだろうというある観点からの補償をしたと思いますが、その後の生活保障ということになりますと、その人方が補償を受けたために従来以上の生活力がついておると、安定しておるというようには私は聞いておらぬわけです。そういうことで非常に困っておる人もあるし、身を持ちくずした人もあるし、そういうことを非常に巷間伝えられておるわけです。そういう意味で、今後の保障は、あんたは年間百万円くらいの漁獲があったから、まあ何年ということで、そういう金のみで補償するほうが、ほんとうに一番先住民である漁民というものの生活を金でかえることがいいのか、他に安定した就職をつけさせるほうがいいのか、千葉県全体としてのメリット、デメリット、そうして今日的な、金によって補償して、それで、はいさようならという方法がいいのかどうかですね。あなたの県の県民の、先住民の問題ですから、そういう方法がいいのかどうか、御参考までにお聞きしたいと思います。  それから仁藤さんにお伺いして——まあ仁藤さんとは私もどだい大体同じ見解でありますので、あまり聞くことはありません。が、ただ、いま同僚議員の方から、認可自治体と、これ施行自治体ですか、こういうものと同じじゃ、これ何にもきき目がないじゃないか、国にその何といいますかな、認可権を召し上げたらということであんた御答弁いただいたわけでありますが、私はやっぱり認可権の所在の問題じゃないと思うのです。認可をするまでのプロセスね、どういう手続、手段と認可要件をつけるかということを具体的に——あいまいな、つどつどの行政解釈じゃなく、具体的にやはり公害の場合と自然環境の場合、生活に及ぼす度合いがどうかと、その責任保障をどうするのかという、具体的なあらゆる角度から考えて法文的に間違いのないようなことを法制的に明確にする、それがね、私は先決要件だと思いますね。ただ単にいま魚をとっているところを、何というか一万平米埋め立てるから一万平米だけ——あなたは三倍ということを言いましたが、それは加工もありますし、流通業者もありますしね、そういうような及ぼす範囲というものをある程度法律で明確にする、行政解釈とか適当なことができないようにする。それがやっぱり先決だと思いますし、さらにはまた行政ということになると、どこまで住民の意思を吸収できるかどうかという今日的な行政の実態もあると思いますね。そういう意味では真に住民の意向をくみ得るやっぱり独立の機関で、たとえばそれを認可する場合、それを補償する場合、あなたも全く同じですが、それをやらなければ認可権の所在をどこに移したということだけでは片づかない一つの本質的な問題があるというように考えて、あなたも同感だと思いますが、その点をもう一回御答弁願いたい、御教授願いたいと思います。以上です。
  74. 小川栄一

    参考人(小川栄一君) 私が埋め立てに対して非常な関心を持ちましたのが——戦争に負けて帰ってきた兵隊さんの若い人はふるさとへ帰ろうとしない。また賠償金は払わなきゃならぬ。援助してくれるほうの勝利国は日本を工業国として育てて賠償金を返してもらおう。そういうような中で日本が今日ある程度経済大国といわれるようになったのは臨海工業地帯が生まれたからだと私は信じています。ですから、この臨海工業地帯が生まれる前はどうであったかと申しますと、戦後の、日本は原料はほとんどないんですが、最も大事な原料は御承知のように鉄と油なんですが、鉄は終戦直後におきましては日本に入ってくる現金平均値段はトン三千円。ところが、だんだん船が大きくなってきて四、五万トンになって二千円になりましたが、私はオーストラリアへ行って、年間三千万トンの原鉱石を積み出す港をこの砂漠地帯につくりましてからは、運賃は東京湾まで八百円になりました。つまり、現在日本の製鉄業の海外運賃は千円であります。出光丸が生まれるに及んでペルシャ湾の油は五百円で東京湾に入ってきます。つまり、かつては二千円であった油が現在は六百円平均になっている。つまり、この差がアメリカのピッツバークの鉄を追い越して日本の新日鉄が世界一のつまり製鉄国となり、同時に国際製鉄協会の会長にもなられましたが、私はこの辺で一応——とにかくここまで忙しかった、金にも忙しかった、生活にも苦しかったから、ある程度公害に対して掃除をすることを忘れていたかもわからぬ。しかし、これは内陸において従来からやっているものの堆積とは比較にならぬと思うんです。   〔委員長退席理事沢田政治着席〕 それらの、つまりアメリカの場合でしたら陸路でみな運んでまいりますから、一キロ大体、鉄道レールは三円以下になりませんから、千五百キロ運んでくれば四千五百円なのに対して、日本は平均とにかく鉄は一千円になったということは、日本の製鉄はニューヨークまで進出した、アメリカの世界三大自動車会社の薄板にまで入っていった。向こうはびっくりして、とにかく太平洋沿岸は全部あなたにまかせるからパナマ運河は通らぬでくれ。油は世界で一番安い運賃で入ってくるようになりましたから、日本の工業電力料は世界一安くなる。このことによってわれわれは、つまり今日のいわゆる経済というものはある程度できちゃう。その経済ができた以上はこの辺で反省をして、そして、つまり人口の半分以上が月給取りなんだから、この人たちのために土地を与える。かつて製鉄会社のために臨海工業地帯をつくったその能力を、今日は十万坪埋め立てる力を持っているのと同時に、護岸の研究をしていくならば、日本というものは私はすばらしい、とにかく公害なき——いわゆる護岸の技術によりますが、ない国にもなるんじゃないか。どうも私ども聞くところによると、実業界というものは何か金もうけのために朝から晩まであくせくしているように見えるようですけれども、私は今日流れているいろんな所得主義、つまり弁護士さんに言わせればとにかく国民を信用しない、何か法律家は税金でつまり監督しなければうまくいけない世の中だということが私は公害のもとであると。したがって現在において私は、これどうのこうのと言うだけの知識も資格もありませんが、自分の経験上、これを十分に研究なすって、根本は、政府国民を信用し、国民はその政府当局を引き受けた——これは野党がなるかもしらぬし、だれがなるか知りませんが——ものを信用して、お互いに信用の中でものを解決していくような世の中にするのが一番精神的にも公害なき世の中ではないだろうか。われわれはとにかく現在の収入でいえば七割五分税金取られておるんですから、別にだれがなったからどうこうということじゃなくて、とにかく月給取りというものの烏に一つ土地がない。重役になってもない人間はたくさんおります。そういうような世の中をまず常道にしていくことが、私はまずこの場合の一つの問題じゃないか。と同時に、生産力はこの辺で一応ストップさせて、そして今度は原料持っている国のためにいろんな技術を教えてあげて、そして自他ともに生きていかれるような信用のできるような世の中をつくるべきじゃないかということを皆さんに切にお願いするために私はしゃべっているようなわけでございまして、どうも法律的にはぴっといかぬのかもしれませんが、よろしくお願いします。
  75. 角坂仁忠

    参考人(角坂仁忠君) 二点ほど御質問ございまして、千葉県全体としてのメリット、デメリット、確かにおっしゃるように非常にむずかしい問題でございまして、過去におきます重化学工業専門の工場誘致につきましては、公害発生その他交通問題等、これは現在におきましてはデメリットの出ていることは率直に反省いたしております。しかし、これは別の面におきまして現在、千葉県も必死になりまして公害対策をやっておりますので、こういう面で解決していたわけでございますが、   〔理事沢田政治退席委員長着席〕 今後の埋め立てにつきましては、少なくとも公害発生等のデメリットは一切出さないという大方針のもとにやるわけでございまして、メリットといたしましては、先ほど私、千葉県の発展と申しましたが、確かに県民所得の向上あるいは県財政、市町村財政というものには非常にメリットになっております。これはてまえみそでございますが確信いたしておりまして、この点につきまして、また逆に、御指摘人口急増等のデメリットも確かに出ておりますが、県全般といたしまして、これは私、埋め立て事業を責任持ってやっている手前でございますが、全般的に比較しますと、デメリットはございますけれども、やはりメリットのほうが多かったと私は考えております。  それから次に漁業補償でございますが、御指摘のように千葉は昭和二十九年から始めております。一部、当時、三十年の初めにおきましては五井さまというような、実は料理屋等におきます非常にそういう評判が立ったほど、当時といたしましては相当多額な現金が入りましたために、そういうことがあったことも事実でございますし、そのためにやはりその生活等につきまして非常に不自由されている方があることも事実でございます。したがいまして県の漁業補償といたしましては、いわゆる電発方式というものをとっておりまして、これずっといまでも続けております。最近に至りまして特にそういう問題がございましたので、特に三十年中ごろは現金補償と同時に転業対策に重点を入れるべきだということで、県におきましても関係部会一緒になりまして転業対策委員会をつくりまして、現在までに転業対策——昨年まででございますが、約八千数百名の転業の希望者に対しまして現在約八割程度のごあっせんをいたしておりまして、まだ転業されない方もございますが、本年になりましても四つの漁業組合の補償交渉をいたしましたけれども、その席で知事も私も、とにかくこの金はひとつ使わないでおいてくれと、ひとつ共同で事業するなり、あるいは別の意味の生活再建で使ってくれということで、これだけを実はお願い申し上げて、最近になりましては、そういう意味で漁業組合長が中心になりまして、お互いに相寄りまして、その資金を集めまして、相当大きな事業会社を経営して成功している例もたくさんございます。そういう意味におきまして、全部が全部、従来の埋め立てによります漁業補償者が一〇〇%いいということは私は決して申し上げませんが、非常にいい人もおりますし、一部にはそういう悲惨な人もおるということも事実でございます。今後につきましては、もうほとんど漁業補償も終わりまして、残るのは数組合でございますが、最近におきましてはそういうこともございませんので、県も必死になりまして、あるいは関係市町村、漁業組合と共同いたしまして、むしろ現金補償はその資金といたしまして将来の生活再建に向けるように極力指導いたしておる次第でございます。  以上お答えいたします。
  76. 仁藤一

    参考人(仁藤一君) 先ほどの沢田先生の御意見、私と全く同意見でございます。私も知事に認可権があることがよくないということを申し上げているわけではございませんので、認可権は知事にあってけっこうであろうというふうに思います。ただしかし、その認可に至るまでの適正な法定手続というものが法に定められておらないということが問題であるということを申し上げているわけでございます。今日いわゆる大きな埋め立てにつきましては、地域住民の同意なくしては事実上不可能であるということは、これはもうわれわれの経験上も明らかなところでありますが、現在におきましては、それらの地域住民の意見をくみ上げる適正な手続というものがないために、力対力の関係で、それが事実上、力関係で決定していくといったような事態が各所に見られます。これは私ども法律家の立場からいたしますと、やはり困ることでありまして、それらを適正な手続でくみ上げていく、埋め立てによってデメリットを受ける地域住民の意見をどういうふうにしてくみ上げていくかということを法律上明らかにしておく必要があるであろうということを申し上げたいわけでございます。
  77. 田中一

    ○田中一君 角坂さんに伺いますが、私どもいままで千葉県の埋め立てというのは非常に特異な契約によって行なわれているというように聞いております。何年前になりますか、朝日興業で住宅公団等々と関連があって、当参議院におきましても、汚職があるのじゃなかろうかというような問題が相当喧伝されました。また調査もいたしたことがございます。そこで千葉が現在行なっておりますところの埋め立ての許可の要項としては、どういう契約を結んでおるか、それをひとつ。ケース・バイ・ケースでいろいろなものがあると思うのです。また最近、どっちみち許可権は知事が持っているにかかわらず、地元の市町村が埋め立てに対していろいろくちばしをいれているということも聞いております。その場合にも、いわゆる千葉方式と申しますか、おまえのほうで半分だけ市のほうへ寄付しろとか、何々を寄付しろとか、こういう条件でやっているそうでありますが、その先べんをつけた千葉県の行き方をひとつ。もしも、ことばばかりじゃなくてその資料もお出し願えれば非常に幸いだと思うのです。お願いいたします。
  78. 角坂仁忠

    参考人(角坂仁忠君) 実は差し上げる資料を持ってきておりませんので、一応もしあれならばあとで差し上げたいと思います。  お話ございましたように、千葉県は埋め立てにつきまして、いわゆる千葉方式といわれるものを実は採用しておりまして、実は三十年代の先ほど申しました五井地区につきましては予納分譲方式でございまして、あらかじめ立地いたします企業を選定いたしまして、事業費を積算いたしまして、その面積に見合うものをいわゆる企業者から工事の進捗に合わせまして予納していただくという方式で、市原地区はほとんどそれでやったわけでございます。これにつきましていろいろ御批判もございます。当時の千葉県といたしましては、先ほど申しましたように、一般、県の財政が極度に逼迫いたしておりまして、なおかつ、いろいろな事情でそういう工業開発に踏み切ったということで、現場のない知恵をしぼりまして一つの新しい方式を生み出したわけでございます。その後、そういういわゆる工業立地というものをだんだんやめまして、いわゆる一般の多目的な利用にいたしますのが、一つの例が千葉の中央地区でございまして、これはそういうふうに大工場を誘致いたしませんで、非常に不特定多数に分譲せざるを得ない、そういう埋め立てでございましたので、これがいわゆる出洲方式といわれます共同事業方式でございます。いまにして思えば、これだけ県の財政が力があり、あるいは国の制度等におきましていろいろな起債等が十分でございますれば、これは当然県でやったわけでございますけれども、やはり昭和三十八、九年でございます、非常に県の財政もそこまで及ばない、と同時に、当時といたしましては、いま思えば、いわゆる事業に対するメリットは出ておりますけれども、四十年前後のいわゆるなべ底の不景気の時分には、はたしてリスクがあるだろうという危機感が県の大勢を支配しておったわけでございます。そういう意味で、まさかの場合は県の危険を軽減しようという思想が動いていたことも事実でございまして、そういう意味で、いわゆる全体の事業費を県と民間デベロッパーと申しますか、民間事業で出し合いまして、最終的にでき上がった事業の収益をその比率で分けようといって始めたのが出洲方式でございまして、これはいろいろ事業といたしましては一応もうほとんど完了いたしておりまして、正直に申しまして、県も民間デベロッパーも、いわゆる普通にいわれます利潤をあげていることも事実でございます。その後、いまやっております京葉港というものにつきまして、やはりこれもそういう大きな工場誘致はいたしませんので、いわゆる非常に多くの不特定多数に分譲いたしますので、これも出洲方式と同じような方向をとっておりますが、最近の資金事情等、あるいはいろいろな埋め立て行政の面からいきまして、これをひとつ今後につきましては、県の資金が間に合うならば、県独自でやっていくべきであろうかという意見も出ておりまして、これは現在検討中でございます。大体あとは、一部につきましては、海浜ニュータウン等でございますが、これは全部先行投資を県がいたしまして、でき上がりましたときに個人の宅地分譲とかあるいは事務所分譲というものをやっている三つの方法をとっておるわけでございます。
  79. 田中一

    ○田中一君 関連してもう一つ。  そこで仁藤さんにちょっと伺いますが、いまのような行き方で、県はとにかく事業の許可権者です。これがたとえば三井不動産なら三井不動産に許可をする、この場合に、原価が幾らかかったか、原価が三万円かかれば三万円を除いて、そのうちのあと半分なら半分、三割なら三割の土地を売って県のほうによこせと、こういう行き方でしたね。あるいは委任してやらすから、そっちにもう一ぺんその値段の差金、原価にプラスアルファの幾らかのものをもって払い下げてやろう、住宅公団がその払い下げたものに対して、またそれを契約して買うという行き方を船橋だったかあの辺でやりましたね。そこで、いわゆる許可をする権限を持っている人が、平米でも坪でもどっちでもいいですが、二万円でできたものが、でき上がってみたら八万円も十万円もするとなれば、おい、分け前少しよこせよと、行政官の知事あるいは国の権利を代行している知事かどちらか、ちょっと性格はわかりませんけれども、カスリを取るというような印象を受けることがはたして正しい行政、正しい許可権者のあり方であろうかと、こう考えるわけです。こいつは、千葉方式というものを方々の地域でもやっておりますし、また、それから発展して、もう少し得な方法でやっている人もあります。何といっても地価の上昇ということによって千葉方式はますますエスカレートしているんです。三者なら三者が利益がある——二人が利益があるじゃないかと。困るのは国民だけなんです。地価が上がったということなんです。こういう方式でいま許可権者の問題を話していましたから、仁藤さんに一ぺん伺います。私の言うことが間違っておったら間違っておる、新しいこういう資料で、三つの方式のものを参考に提出するからというなら、それでけっこうでございますが。
  80. 角坂仁忠

    参考人(角坂仁忠君) 先ほど申しました、いま市がいろいろくちばしをいれているところがございます。これは埋め立てそのものではございませんで、いわゆる公共用地、まあ公園であるとか学校であるとかあるいは処理場をひとつうんとたくさん、極端にいえばただでとか、あるいはできるだけ安くということで埋め立て事業者であります私を責めているのが現状でございます。これはもう全部ございます。したがいまして、これはまあ埋め立ての理念も変えましたので、特に今後の埋め立てにつきましては約三割から四割の公共用地を確保するようなことでやっております。これは地元市町村はそういう関係でございます。  それから朝日興業と住宅公団、実は古い話でございまして、私直接タッチはいたしておりませんので、ここでよくわかりませんが、これは何かだいぶ——昭和二十何年か三十年のことでございますので、ちょっとその辺の事情つまびらかにいたしておりませんので……。  それからもう一つは、千葉県の場合は実は四十五年から制度が変わりまして、私が埋め立て事業の責任者でございまして、知事は免許権者でございますので、知事と私はけんかをいたしますけれども、これはもう県政全般についての御指示は受けますけれども、埋め立て地のいろんなものにつきましては免許権者と事業者とはっきり分かれております。それまでは臨海土地造成事業の管理者が知事であり、同時に免許権者が知事であると、知事が二つの人格を使い分けておりましたけれども、四十五年以後はその管理者のほうの責任を私がとっておりますので、その点は免許権者が会社と契約するというようなことは四十五年以降はございません。それだけ申し上げておきます。
  81. 仁藤一

    参考人(仁藤一君) 公有水面の埋め立てによって地方自治体がもうかるというお話でございますが、地方自治体公共団体でございますから、もうかった分は地域住民に還元するという、理念的にはそういうことになるのかと思いますけれども、しかし、やはり県の財政を豊かにするあるいは地方自治体の財政を豊かにするという観点から埋め立てというものが考えられますと、どうしてもいわゆる環境上の影響あるいは地域住民に与えるデメリットというものへの判断が甘くなるということは、これはいなめないことであろうというふうに考えます。したがいまして、そういった法律構造そのものがやはり一番問題であるというふうに私は考えます。
  82. 田中一

    ○田中一君 ちょっと、角坂さん、資料くれますかどうか……。
  83. 野々山一三

    委員長野々山一三君) 記録ちょっととめてください。   〔速記中止〕
  84. 野々山一三

    委員長野々山一三君) それでは記録を起こしてください。
  85. 二宮文造

    ○二宮文造君 私も角坂参考人にお伺いしたいんですが、結局、田中委員のお話を受けた質問になるんですが、私もう七、八年になりましょうか、浦安のオリエンタルランド、あの問題を県庁まで参りましていろいろ御説明も受けたんですが、正直なところ公有水面の埋め立てがこういう方式でやられていいもんだろうかと、もういまなら申しますけれども、率直にそう感じました。あのときのちょっと記憶をたどりながらお伺いするので、若干誤りがあるかもしれませんけれども、あの浦安のオリエンタルランドの埋め立てば建設大臣の認可をとって、県が、知事が、——そして知事は、県は全く手をおろさないで会社と契約をして、造成をしてください、造成をして公共用地をこれぐらいくださいと、あとはどこそこへ幾ら、新しい会社をつくりましたからね、その加盟会社、いわゆる資本参加の会社に何坪、何坪、何坪と、こういうふうに前もって、工事にかかる前に県とその会社との契約の段階で分譲がはっきりしてしまった。私はそれが千葉方式と当時理解をしたわけです。要するに埋め立て権は取るけれども、県としては一銭も金はかけない、そして企業にやってもらう、どうせ公共用地も必要ですから、公共用地分は県が保有すると、こういう式でこの東京湾の埋め立てをやっていくということは、いわゆる東京湾に面した千葉県のエゴではないかと——当時ですよ、そういうふうに私は感じました。また、まあ古い話ですから御記憶がないかもわかりませんけれども、この問題が巷間いろいろな話題をまいたことも事実です。いまその方式を改められて、先ほど三つの方式というふうなことを御説明になっておられましたけれども、すでに過去のことになりました。ですが、こういう方式が今後もやはり私は出てくるんではないか。ですから、そういう一つの経験を持たれた千葉県として、ああいう企業にまるっきり委託をしてしまう、こういう埋め立て方式というものが反省の段階に立っていかがなもんだろうかと、率直な御見解をお伺いしたい、こう思うのです。
  86. 角坂仁忠

    参考人(角坂仁忠君) 浦安のオリエンタルランドにつきまして、もうかれこれ十何年になるわけでございまして、非常にいろいろな問題を起こしております。これは当時の経過といたしましては、当初浦安の、いろいろ過去にあったようでございますが、県が手を出しましたのは、例の江戸川、本州製紙の漁民騒動からでございまして、どうしても漁業補償をせざるを得ないという昭和三十六年だったと思いますが、そういうことになりまして、これはもう県といたしましては、その当時どうしようも手の出しようがないということで、あそこの漁業補償を払って埋め立てをしてもらうということのためにオリエンタルランドという会社をつくったように私も聞いております。調べでそうなっております。で、これは御承知のオリエンタルランドは新しい会社でございますが、これは全額、京成と三井の出資会社でございます。
  87. 二宮文造

    ○二宮文造君 朝日土地も入っていたでしょう。
  88. 角坂仁忠

    参考人(角坂仁忠君) 当時は何かいろいろあったようでございますが、現在はその二社でございます。まあ、いろいろ問題が起こりまして、最終的には、いま御指摘の、何か当時からどこへ何ぼやるというようなことはさまってないようでございますが、結局は現在は……。
  89. 二宮文造

    ○二宮文造君 契約書を私持っていますよ。
  90. 角坂仁忠

    参考人(角坂仁忠君) オリエンタルランドのいわゆる住宅用地につきましては三井と京成にやってもらうというような覚え書きはあるようでございますが、現在オリエンタルランド会社は遊園地そのものに全力投球して、住宅団地につきましては三井と京成あるいは一部ほかの会社もあるようでございますが、大まかなところは三井と京成がやるということになりまして、最近ようやく基本契約もできましたし、そういうことで一部、県が持っている土地もございますが、その後、県も一部資本を投下いたしまして、一部県有地としてやっておりますが、そういうものを合わせて全般的の計画策定につきましていろいろ御意見等も承りまして、地元市町村等とも相談いたしまして、ようやくオリエンタルが十何年ぶりかで当初の契約どおり住宅地並びに遊園地になるというような契約が最近まとまりまして、そういう意味におきまして今後のそういうものの経営状況は非常にむずかしいようでございますが、あそこへ、昔のグリーンベルトの指定地でありましたところを、いわゆる六十万ないし七十万坪のところに緑地を主といたしましたいわゆるオリエンタルランドをつくるというようなことで現在契約が進行中でございます。御指摘のように、いまとなりますと、いわゆる県が免許をとりまして会社にやらせるというのは、現時点ではとても考えないわけでございますけれども昭和三十六、七年としてはそういう事情もございまして、そういう分譲協定の契約をいたしましてやらせたということにつきましては、ほかの地区に例のない事業でございますので、その当時の関係者としては知事も前の知事でございますので、昔の歴史を振り返りながら、少なくとも今後の埋め立てにつきましては、私どもは厳正に処理しているつもりでございますが、そういう御批判を受けないように今後やるべき埋め立てにつきましては厳正な態度でやっていきたいと、かように思っております。
  91. 野々山一三

    委員長野々山一三君) 以上で参考人に対する質疑は終わります。  参考人の方々に一言お礼を申し上げます。本日は御多忙中の時間を長時間にわたって貴重な御意見をお述べいただきまして、ほんとうにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。     —————————————
  92. 野々山一三

    委員長野々山一三君) 次に、建設事業並びに建設計画に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は御発言を願います。
  93. 二宮文造

    ○二宮文造君 参考人の御意見を伺ったあとで少し時間がおそくなりますけれども、しばらく猶予いただきまして、地元では緊急の課題になっております早明浦ダムの放水の、発電放流の問題についてお伺いをしておきたいと思うわけです。  御承知のように、一級河川吉野川の上流に設置されました早明浦ダムの竣工によりまして、もうすでに湛水が行なわれ、そして一部発電が開始されまして、そのための放流が行なわれました。たしか四十七年、昨年から発電のための放流が行なわれたと思うんですが、そのころから吉野川が濁り始めた。そして昭和四十七年四月一日よりその濁度が非常に高くなってきた。濁りの度合いが高くなってきた、そしてまた昨年の七月には御承知のように集中豪雨がありまして、早明浦ダムの中に貯留されましたひどい濁水がそのまま放流されて下流地域で非常に困っている。こういう事態が発生をしているようでありますが、それらについて、早明浦下流の吉野川の濁度について現況等、水資源のほうからお伺いをしたいと思うんですが。
  94. 富所強哉

    参考人(富所強哉君) ただいまの御指摘がございました件につきましては、早明浦ダムの工事が進みまして、一昨年、昭和四十六年の十一月十九日から一部湛水を開始いたしまして、引き続きまして四十七年の二月七日、水位の上昇を待ちまして早明浦ダムと併設されました電源開発の発電所のほうで発電を開始いたしております。その後、大きな出水がございますと貯水池の水が濁りまして、濁りますと同時に、貯水池の水位が許可になりました標高二百七十九メートルという水位よりも上昇いたしました。これを許可水位二百七十九メーターまで下げますために極力ダムから放流いたすというような状況になりました。そのような状況の際におきましては、洪水のときにたまりました濁水がまだ清澄な水にならない状況において放流せざるを得ないというような事態が発生いたしまして、ことに先生からただいまお話ございましたように、昨年の七月、引き続きまして昨年の九月というような時期におきましては大きな洪水がございましたために、吉野川の水が下流にわたりまして相当程度汚濁いたしましたことはこれは事実でございますが、その後、貯水池の水につきましては時間の経過とともに土粒子が沈降いたしまして、発電所から放流される水も現在におきましてはほぼきれいな水になっていると承知いたしております。
  95. 二宮文造

    ○二宮文造君 それはたいへんな理解のしかたですよ。これは池田町が、もうずっと下流になります、その本山から出てきまして、それから湾曲して池田町のほうに来ますね、この池田町が最大の被害者なんです。池田町ないし山城町、これが最大の被害者だというので、昨年から克明に気象状況とそれから池田町における濁度——濁りの度数ですね、これを記録をしております。その前に、昨年までの状況は一体どうであったかといいますと、昭和四十三年、吉野川の表流水の水質検査、これは濁度一であった。これは徳島県の衛生研究所が、試験成績表というのを出しております。その日付は四十三年十一月五日、この時点では濁度一と、こういうあれが出ております。それが、早明浦が工事をし湛水をし発電の放流をし始めてからどうなったかといいますと、四十七年四月一日から四十八年六月三十日までの濁度調査をここでやっているわけです。で、ひどい高濁度と、ここに書いてありますけれども、ひどい濁度の持続日数は非常に長いこと続いている、これが問題だと。四十五年度は二〇PPM以上の日が一年のうちで二十日あった。五PPM以下の日が二百二十一日あった。これは四十五年度です。四十六年は二〇PPM以上の日が三十一日、そして五PPM以下の日が二百二十三日。それから四十七年度は四月から九月まで二〇PPM以上の日が六十三日、そして五PPM以下の日が五十二日。四分の一以下に減っているわけです。それから十月から三月まで、これは二〇PPM以上の日が二十八日、そして五PPM以下の日が十八日。ですから、いわゆる濁度五といいますか、その濁度五以下の日が早明浦の放流を開始してから四分の一以下に減った。さらに今度は二〇PPM以上の日にちが四倍から五倍になってきた、こういう現状なんです。だから、早明浦の水質はもう原状に回復しておりますという水資源説明、これはもしデータがあるならば見せていただきたいと思う。説明していただきたいと思う。ここにはもう毎日その日の気象状況と池田町における濁度、これを全部整理されております。たとえば、これは雨のあとですからね、たいへんだろうと思うんですけれども、六月を見ましょうか、六月一日、これはずうっと晴天の日ですが、ほとんど六、七、五・五以上、あるいはちょっと雨が降りますと一〇、一七、二二と、こういうふうに濁度を示しております。それから五月の二日を見ますと、雨後曇りという気象状況になっておりますが、これは一一〇〇PPM、さらに三日は曇りで五四、四日は曇り一時雨で三九、五日は晴れで四二、六日は晴れで三一、七日は曇りで二五、そして八日は雨で三〇から二三〇、翌日の九日は二二〇、十日の晴れの日は五〇、十一日の晴れの日は二八、十二日の晴れの日は八、十三日の曇り一時雨は六、十四日の晴れは七、十五日の晴れ後曇りは七と、この日はずうっとこういうふうに五度以上の濁度が持続されております。こういう実態になっているんですが、公団の場合はこれを理解されておりませんか。
  96. 富所強哉

    参考人(富所強哉君) ただいま先生のほうから非常に詳細にわたります御指摘がございまして、どうも恐縮いたしているわけでございますが、先ほど、ほぼ正常になっておりますというような趣旨のことを私が申し上げましたけれども、もとどおりになったとは必ずしも私申し上げかねるわけでございます。それで私のほうにおきましても、そのような問題がございましたときに、前からでございますが、特にあとにおきましては、本山におきまして主として観測をいたしておるわけでございます。六月におきまするところの本山におきまする観測値につきましては、ほぼ五PPM以下というような、五度以下というような状況になっております。
  97. 二宮文造

    ○二宮文造君 そうしますとね、地図があると一番わかるんですが、早明浦から出たところが本山です。それからずうっとあそこの大杉まで出て、それから左へ湾曲して穴内川、ここで穴内川と一緒になるわけです、支流と。それで、ずうっとおりていったところがいま言いました池田町です。ここでまた右へ大きくカーブして、いわゆる徳島湾のほうへまっすぐ出ていくわけですがね。そうすると、あなたのおっしゃる言い分にしますと、早明浦から出た本山では五PPM以下だと。よろしいですか。そして今度は、それからずうっと曲がって穴内川と一緒になって流れていった池田町では六とか七とか八とか一〇とか一一とかとなっているとすれば、これは早明浦の責任ではない、穴内川の責任だと、こういうようなおっしゃりはしませんけれども、そういうふうな受け取り方になるんですが、そう御理解ですか。
  98. 富所強哉

    参考人(富所強哉君) ただいま早明浦で濁っていないで池田で濁っているとすれば、それは穴内川のせいであるかという、理解であるかというお尋ねでございますけれども、私たち穴内川のほうまで調査いたしておりませんので何とも申し上げかねますけれども、ただ、池田のほうの話を聞きました場合に、早明浦ダムにおきます濁度よりも池田地点におきます濁度が高いというような数字も手に入れておりますので、その原因がどこにあるか、私たち実は判断に困っているわけでございますが、小さな支川等もいろいろ流れ込んでいることでもありますし、そのようなこともあったのじゃないかと。必ずしも穴内川と限定したわけじゃございませんけれども、そのように理解しておる次第でございます。
  99. 二宮文造

    ○二宮文造君 ここに昨年の九月十四日、池田町があまり納得いかなくて撮影したカラーの写真があります。これをごらんになりますと一目瞭然なんです。早明浦のほうから流れてくるのはまっ黄色です。穴内川からずうっと流れてくる水はほぼ正常な水が流れております。これ、ごらんになってください。これをごらんになってどうお考えになりますか。大臣にも見せてください。
  100. 富所強哉

    参考人(富所強哉君) 確かにおっしゃるとおりに、ただいまの写真を見せていただいたわけでございますが、当日は、九月に何号台風というような、よくつまびらかにいたしませんけれども、百二十ミリほどの降雨のありましたあとかと思われるわけでございます。百二十ミリほどの雨の降ったあとかと思われるわけでございます。
  101. 二宮文造

    ○二宮文造君 昨年の九月の十四日の撮影です、それは。それで、この日は、もう七日ごろからずうっと池田町では二五〇以上の濁度を示しております。それで、七日が雨二五〇、九月ですよ。それから八日が雨二五〇、九日が曇り二〇〇、十日が雨後曇り二五〇、そうして十一日が晴れ後曇り一七〇、十二日が晴れ二五〇、十三日が曇り二〇〇、十四日が曇り後雨二〇〇、十五日が曇り一五〇、こういう状態です。しかも、これでごらんになったらわかりますように、穴内川のほうはほとんど正常な水が流れておりますよ、雨のようであっても。こちらはもう全く濁水ですよ、早明浦のほうから来る流れのほうは。これはあながち早明浦のせいではございません、他の支流の関係だろうと私は思いますという公団側の答弁は、この写真がやっぱり承知しないと思うんです。
  102. 富所強哉

    参考人(富所強哉君) 先生ただいま御指摘ございましたように、私の先ほどの説明がちょっと間違っておった点があるかと思います。私の手元にただいまございます資料が数字の表でございませんので、非常にこまかいグラフでございますので、ちょっと表の読み違いがあったかと思います。穴内川の合流点におきまして、昨年の九月の十四日に撮影されました写真が非常に清濁異なっておるということにつきましては、そのとおりかと思います。と申しますのは、ただいま先生お話ございましたように、八日ごろから十日ごろにかけまして相当程度の降雨が上流にあったわけでございます。そのために貯水池の水位が上昇いたしますので、これをあまり高く上げないというような必要がありまして、ダムから相当程度の放流をいたしておりまして、そのためにそのような現象が出たわけでございまして、そのとおりでございます。その点まことに申しわけないわけでございます。  なお申し加えますならば、私、先ほど穴内川に限らず下流の支川の放流等によりまして、早明浦よりも池田のほうが濁度が高い場合も現実に出ておるようでございますると申し上げましたのは、最近の雨のない時点での話でございます。その点、御了解いただきたいと思います。
  103. 二宮文造

    ○二宮文造君 昭和四十三年、それ以降のあれがありませんから、四十三年の水質検査の例を——これは何も早明浦ができたら濁るであろうということを予測して池田町が水質検査をしたのじゃないのです。これは吉野川の表流水を池田町は水道に使っているわけです。だから水道として適正かどうかということで……。非常に気分の悪い中で私質問しますが、これはちょっとやっぱり地元の何十万という人の問題になります。ですから、これはなおざりにできません。簡便に言いますが、ポイントをつかんで御報告いただきたい。この表流水を水道に使っておるわけです。ですから、こういうふうに濁度が出てきますと、池田町はもう全く困るわけです。しかも御存じのように大歩危、小歩危の景観です。アユも相当数向こうにはおります。それらが全部だめになっちゃった。そしてあなたの説明では、雨が降った、洪水調節のために放流をする、これが一時的な現象のような説明ですが、そうではないのです。ダムにずっとごみが沈でんしてきます。底はうんと濁ってきます。その底のほうに、いわゆる底から三分の一のところに発電の取水口があるわけでしょう。濁った水を発電のために放流をしていくから早明浦の下流の水が濁るのじゃないですか。それをあなたのほうの出先がすでに認めているじゃありませんか。洪水調節のために水を出した、だから濁るんではなくて、発電の放水が下流へ影響を与えているということをおたく御存じなんだ。そうでしょう。何回も町からおたくのほうへ抗議も来、出先の人はそれで話し合いもし、さてどうするかというので、宮崎県の、九電の一ツ瀬ダム、ここへ池田町から視察にも行っている。そして九大ですか、九州大学の調査団の報告書ももらっている。それをまた持っておたくのほうへ抗議に、要望に行っているじゃありませんか。この点、どうでしょうか。
  104. 野々山一三

    委員長野々山一三君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  105. 野々山一三

    委員長野々山一三君) 記録を起こしてください。
  106. 二宮文造

    ○二宮文造君 これは総裁、取水口の底を水を取るのじゃなくて、表面水から取るように設計を変更するわけでしょう、工事を。この工事の発注をされましたか。それはどこへ契約をされましたか。そしてさらにそのために、それでもまだ変わらない場合が出てきますから、そうするとそれはペンディングにして、あとあとこの濁度の問題については公団が責任をもって下流の住民に迷惑をかけないようにする意思があるかどうか。それを、いわゆる現実に工事を発注したかどうかということを総裁にお伺いしたいことと、大臣、こういう状況になっておりますので、早明浦の放水、工法の問題、下流に対する迷惑の問題、これらを含めて大臣の答弁をいただいて、きょう私は非常に残念ですけれども、不正常な状態になりましたので、これ以上質問できません。答弁をいただいて終わります。
  107. 柴田達夫

    参考人(柴田達夫君) 先ほど来、早明浦ダムの濁水問題についてのお尋ねに対しまして、担当理事からお答えを申し上げておりますのでございますが、早明浦ダムがなかったときと、早明浦ダムができまして、そうして放水を始めましてからの水質、ことにその濁水の問題にお話のように著しい差異が出ておることは、私ども全く承知をいたしております。ダムがなければ、たとえ洪水が来まして濁水が流れましても、あっという間に流れてしまうのですが、いま先生お話がございましたように、その濁水をため込んで、そうして底のほうから放水をしていくのでございますから、非常に長い期間継続して濁水が出るということで、るるお話がございましたように、高知県あるいは徳島県、池田方面、非常な御陳情、御要望もございますし、また高知、徳島両県知事、議会からも、この早明浦ダムの濁水を防ぐようにという強い御要望がございまして、私ども十分承知をいたしておるところでございます。ダムをつくりまして、従来から非常にきれいであった、ことに非常にきれいであった吉野川の清流が非常に濁水を——昨年洪水が多かったとは申しながら、生じておるということはまことに遺憾なことでございまして、ダムをつくれば、こういうような吉野川の清流に対して環境をこわすことが起こるということはまことに私どもも遺憾に存ずることでございます。そういうことで、ただいまお話ございましたように、宮崎県の一ツ瀬ダム等のお話もございましたが、さっそく公団といたしましても、全国のダム等についての濁水の模様、あるいは建設省等の御意見、地元の実情等につきましても、学者あるいは過去の経験者等が研究いたしまして、結論といたしまして、ただいまお話がございましたように、また現地からの御要望がございましたように、これを解決するのにはどうしても表面取水の設備をするしかないという結論に到達いたしておりました。ダムは完成間近で、すでに発電のための一次湛水をやっているときでもございますが、幸いまだ完成しておりませんので、この間に何とかおくればせながら表面取水を追加してやりたいということでございまして、この点、発電のための放流、これは電発が発電所をやっておりますので、公団と電源開発株式会社の間で協議をいたしまして、さらにそれを所管しておられまするところの建設省と通産省の間におきましても、約半年前以来十分御協議をいただきまして、ようやくその解決策を見まして意見が一致いたしまして、ただいま手続中でございます。  お話がございました、この表面取水の発注をしたかというお尋ねにつきましては、ただいま表面取水の工事をするということにつきましての両省、両機関間の協定の文書が運ばれておるような段階でございまして、この夏には発注できる見通しでございます。表面取水の工事をいたしまする工期は、八月ごろから工事にかかりまして、年度内にこれはどうしても仕上げる、明年の三月末までには完成をいたすように鋭意努力をする考えでございます。発注はまだいたしておりませんが、契約の準備中まで来ておりますので、来月には発注をいたしたいというところまで来ておりますし、そういうことをすることにつきましては意見の一致を見ておりますことを御報告申し上げます。
  108. 金丸信

    国務大臣金丸信君) いま公団から御説明があったわけでございますが、上部取水ということでこの問題が解決すればけっこうでありますが、建設省といたしましては、なお十分綿密な調査をさせまして、その必要があれば、なおその措置を講ずるということで御理解いただきたいと思います。
  109. 野々山一三

    委員長野々山一三君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十分散会      —————・—————