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参考人(柴田達夫君) 草木
ダムの大字草木横川部落の六戸の問題につきましてお尋ねがございました。この横川地区には二十五戸の戸数がございましたところですが、
水没該当戸数になりましたのが十九戸、そのうちで一戸はその横川の中に残りましたので、いまお話のございました六戸ともう一戸と合わせて七戸がこの横川に残るという形になっております。
補償当時この横川地区の六戸の方からは、少数残存者としての対策を講じてもらいたい、できるならこれは移転を認めてもらいたい、移転
補償を認めてもらいたい、こういう
要望がございました。少数残存者問題というのは
補償のときによくある、よく
要望が出る問題で、これをどういうふうに認めるかというのはたいへんむずかしい問題でございますが、先ほど来お話に出ているような
補償基準の
要綱によりまして、大体こういうような扱いになっております。それは
生活共同体がそこにある、そのうちの大部分が移転をしてしまって、ごく少数の者がそこに残ることになる。そうして、そのことによりまして
農地も失ったりあるいは
生活の
基礎になるようなことも失ってしまうために生業が維持できない、
生活ができないと、こういう——これは不可能になると書いてあるわけですが、そういう場合に移転
補償を認めるというふうに、少数残存者の部落はそのものが
水没でないものですから、そういう
基準になっております。
そこで本件でございますが、まあ六戸、合わせて七戸の者がそこにいるわけです。
水没外でございますので、
生活共同体から完全に分離して孤立するとは言いにくい。ことに、この
方々の
農地が非常に取られるというような程度が大きければ別でありますが、調べによりますと、この
方々は、六戸のうち農家が三軒、山林労務者が三軒でございます。
農地の
水没する割合が五%から一一%、二三%ということで、まあ取られ方も比較的少ないわけでございます。したがって、生業の維持ができないという状態ではない。
生活ができなくなるわけではない。問題は、
先生いま御
指摘になりましたように、その左岸を通っております国鉄の足尾線が全面
水没いたしまして、従来一キロぐらいのところにありました草木駅が廃止をされまして、右岸につけかえることによりまして国鉄がトンネルで通る、したがって、下流は神戸、それから上流は沢入というところまで、駅が遠くなると、こういうことで非常に交通上の不便を生ずるということがまあ一番条件が悪くなることでございます。そこで私
どものほうの対策としましては、移転
補償の
対象には、先ほど申し述べましたようなことでありませんので、居住条件を、できるだけひとつ不便ということを極力なくすようにしようということで、四つの事柄を
実施いたしたわけでございます。その
一つは、一番のものは、いまお尋ねにございました草木駅がなくなりますので、対岸の国道に出なければならない。そこは
水没地帯が、中に大きな貯水池ができますので、いまは百メートルそこそこのつり橋ですが、今度は三百六十メートルの橋をひとつかけてもらいたい、移転
補償が認められないならば、そこにひとつ橋をかけてもらいたいということが、これは草木
ダムの
公共補償の事柄として非常に重要な御
要望がございました。結局この橋をかけることにいたしまして、その六戸の
方々は橋を渡って対岸の国道に出ていただく。次はその国道に——駅がないわけですから草木駅の廃止に伴う
補償を六千万円、東村当局にいたしまして、村営のバスを運行してもらう、一日六往復のバスで通学なりあるいは町まで出る方に出ていただく、こういうことにいたしましたわけです。なお、左岸のほうは村道できわめて道が悪いのでございますが、この村道を直して拡幅をいたしまして、通ずるようにいたします。将来はここにバスも運行できるようになるのではなかろうかと考えます。
それからいま
一つ、横川地区に演習林、これは農工大の演習林の払い下げを、県、皆さん方の努力でお願いをいたしまして、そうして従来石材産業が営まれておりました、働く場所をそこにつくることができるようにいたしまして、山林労務者の
方々が、もし何ならばここの石材産業の労務者として働くことができるように、これも六千万円の支出をいたしておるわけでございます。そういう村道、それから演習林への
道路、それから草木橋、これは非常に大きな橋が必要になって
補償上一番問題点でございましたが、踏み切ることにいたしまして、まだかかっておりませんが、最後までには橋をかけることにいたしております。そういうようなことで移転
補償の
対象にはなりませんでしたけれ
ども、居住条件を極力よくするということで、残存の
方々あるいは間に入られた村当局ともお話し合いがつきまして、そういうことで、これから御不便は従来よりは増しますけれ
ども、できるだけ居住条件の改善につとめたい。この移転
補償と居住条件の改善の
公共補償の両方を並行してやるわけにはまいりません。いずれをとるかということになりますと、居住条件の改善のために
公共補償をやるというほうの道を選んだ次第でございます。