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参考人(柴田達夫君) お尋ねがございましたので、私ども
実施機関として衝に当たっている立場で、お尋ねに対してお答えをいたしたいと思います。
各地で
ダムの建設工事に当たっておりますが、日とともにやはり非常に困難になっております。水没という問題もございますけれども、そこの
地域社会というものがいろいろの
意味におきまして打撃を受けるということがございますが、もう
一つやはり
社会的な公平と申しますか、そういうような
意味で、どうしても過疎地域にあるような
ダム周辺の
住民は、先ほどからも
大臣がお答えになっておりますように、水をもらう地域はその水で非常に繁栄するのだけれども、自分たちだけは犠牲になるのだという被害感情が非常に強い、こういう問題がやはり骨子になりまして、底流にありまして、
ダムの建設には
補償を——実際に着工いたしますまでの期間に
相当長年月を要するというのが実情でございます。このたび、この
法案の御提案によりまして、もしこういう
法律がございますれば、そのうちの、いま申し上げたような
水源地域に対しても、
一つの、先ほど来あめと仰せられておりますけれども、公平という立場から、従来は理屈だけで、取られる物件に損をさせないというのが
補償の理屈で、プラスさせようという理屈が
補償にはないわけです。もともとという対価を与えるということだけでございますが、今度はそれ以外に地域の繁栄というようなこと、あるいは
住民の
生活再建というようなことにも国がこういう
措置で配慮してくれるということは、何と申しましても、その
地域社会あるいは水没
住民に対しましては、あるいはその
地域社会を代表される知事さん、
地方公共団体の長の立場からは受け入れやすくなる、
ダムというものが非常にその地域の福祉をはかるということから受け入れやすくなるということはこれはもう確かなことでございまして、そういう基本的な
考え方の上におきましては、これはこういう
ダム等をつくっていきます上におきまして非常な前進に相なるものと
考えております。
ただ、先生もお話しになっておりますように、それが全部でなくて、そのむしろ前に、水没物件、あるいは
土地を取られる者に対する
補償の問題というものがあるわけでございまして、この
法案は、その
補償の問題そのものを解決しているものではなくて、
補償という、損をさせないということだけでは手当てができないいろいろな問題について、
整備事業というものをやって救済しよう、これの補助率もアップしよう、こういう
考えでございますが、先生が収用法を持ち出してお話しになっておりますのも私にはよくわかるわけでありまして、やはり
補償というものについても現在時代の進歩とともに必ずしも十分でない、実情に合わない、金で全部済むということじゃなくて、やはり現物でやりますとか、あるいは単なる、災害におきますれば災害復旧するだけ、もとどおりになればいいという、公共
補償などはそういうことでなくて、改良復旧が災害でありますように、効用を、機能をもとどおりにするということでなしに、ほかも進歩しているんだから、そういうときはさらに改良してやるとか、これは私の申し上げるのは
補償の
法律の問題というよりも
補償の
基準の問題が時代に合うように、もう少し被
補償者に時代に合うように有利にしていく必要があるのではなかろうかというような、
補償の基本問題というのは依然としてこの
法律以外に残ると思います。さらに、この
整備事業——まあ御審議がそこまでいっておりませんので、多くのことを申し上げることは慎みますが、
整備事業につきましても今後政令でいろいろお定めになるという
法律で明記のものもございます。そういう
段階におきまして、何と申しましても現在の
地域社会の
人たちの
環境、
生活再建というようなことに対しての欲求というものが非常に多様化しておるのが実情でございますのでいろいろとこまごまと要望がたくさんに出てまいる。非常に膨大な
地域社会なり
住民の再建に対する要望が出てくるのに対しまして、あとう限りのことをいろいろ
政府にもお願いし、公共団体も親身になって何とか解決して
補償の妥結までこぎつけているのが実情でございますので、この
法案の中におきましても、やれるだけのことをひとつ
整備事業で政令等でお取り上げいただいて、なおかつ、さらに残るような問題につきましては、やはりいろいろの
行政措置というものがこれでなくなるわけじゃなくて、やはり
行政の妙味によりまして適地、適応、その状況によりまして
政府がいろいろ公共団体と一体になって親切にめんどうを見ていく。ですから私の申し上げますことは、やはり
補償の問題が
一つある。しかし、被害感情に対して、
整備事業というようなことをやることによって受け入れやすくするということについては、これは基本的に非常な前進である。しかし、それ以外の
整備事業も多くしていただきたいし、
行政措置というものも、これだけやれば、
法律に書いてない、政令にないから何もあとはやらないんだということではまた行き詰まる点もあろうかと思いますので、そういう三拍子そろえましてまいりますならばさらに前進ができる。しかし一番大事な
ダムの大きなダメージ、
地域社会に対するダメージに対する救済と申しますか、受け入れをよくするということにつきましては非常な前進に相なる。
実施機関として苦労しているような立場としては、ぜひともこの
法律は成立さしていただくように御審議を賜わりたいものと思っておるような次第でございます。