○春日正一君 手法の問題だとあなたは言われるけれども、私がさっきも言たように、とにかく
公団賃貸住宅の現在の数の、五十年になれば、約半分に当たるくらいなものが少なくとも
バラ売りの
対象になる。そういうことになれば、
賃貸住宅がそれだけ減っていくわけですから、これは
住宅政策の、さっき言った
賃貸と持ち家をどの比率でやっていくかというような問題の根本にかかる問題ですよ。しかも、その
意味では、単に手法の問題だなんて言って逃げられるような問題じゃないでしょう。大体、
公団住宅というのは、
土地収用法で
土地収用できる権限を持ったような——実際に収用したかしないかは別として、というような重要性を持った
建物です。それを、
賃貸住宅として建てたものを、ちょっとふところが豊かになったから十年たったら
払い下げますというようなふうに変えることを、単なる手法の問題として考えるところに私は問題があると思う。決して手法の問題じゃないと思うんですよ。私は時間がないから先へ進みますけれども、持ち家が人間の本能だとか、あるいは買う金ができてきたからというようなことを
賃貸住宅払い下げの
理由にすることは、これは妥当じゃないと思いますよ、さっき言ったように。むしろ
賃貸住宅の拡大の必要がいろいろの面から大きくなっている。たとえば
土地の事情からいっても、公営にしろ
公団にしろ、この三大
都市圏、特に首都圏では非常に
土地の入手が困難になって団地が建てられなくなってきている。あるいは地方自治体のいろいろな関係もありますけれども、そういうような状態になっている。だから、どんどん
払い下げたって、あとどんどん建てられるかといったら、そういう状態にないわけでしょう。そういう条件もある。しかも
住宅難は、さっきも言ったように深刻になってきておるし、あるいは労働力の流動化という面から見ても、
賃貸住宅というものが絶えず予備が準備されでなければ、労働者が
転勤するというような場合に、非常に困難を来たすというようなことにもなるんだし、それから
都市計画上からいっても、権利が零細化するということにまって、そこにスラムを固定さしてしまう、改造が困難になるというような問題が出てくる、それから投機の
対象にもなるというような問題もあるし、同時に、
バラ売りというようなことになれば、
管理上の問題も出てくるし、住民の自治というような問題も出てくる。これはさっき
公団総裁は、
公団もたくさん
住宅をかかえるようになって、
管理上、手一ぱいになってきたようなことを言ったけれども、そういう状態のもとで
バラ売りして、
管理がますます複雑になることが望ましいのかどうかということになれば、当然問題があると思う。私もその中の幾つかの問題について質問さしてもらいます。
そこで一つの問題は、こういうことが、先ほど
田中さんも言われたように、国会にはからずにやれるのかという問題ですね。これは
法律上の問題が一つあります。たとえば
公営住宅法第一条、
目的「
住宅に困窮する
低額所得者に対して低廉な家賃で
賃貸することにより、」云々と、安い
賃貸をつくるということで、所得の上限まできめて制限しているくらいなんです。
賃貸です。これの
払い下げを緩和するというような問題になってくると、これは重大な問題になってくる。二十四条では、だから
払い下げの場合には「
耐用年限の四分の一を経過した場合において特別の事由のあるときは、
建設大臣の承認を得て、」云々と、こうなって、例外として
払い下げが認められておって、公営というものはあくまで貸し家だと、しかも先ほど私の言ったように、自分で家を持てない
低額所得者に対して
公共体が行なうサービスとしての貸し家なんだというたてまえになっている。そういうものを恣意的にワクを広げて
払い下げをする、これはあとで時間があれば聞きますけれども、この通達の中身をどう考えているかという問題は、そういう問題もあるし、それから
住宅公団にしても「
住宅の不足の著しい
地域において、
住宅に困窮する
勤労者のために耐火性能を有する構造の集団
住宅及び宅地の大規模な
供給を行なう」、こうういうふうにし、業務の
範囲として「
住宅の
建設、
賃貸その他の
管理及び
譲渡を行なうこと。」になっています。これがずっと書いてあるから、あなたはさっき言ったように、
賃貸住宅を売り渡してもいいというふうに
解釈できるみたいに言っているけれども、そうじゃなくて、
住宅公団法の施行規則の中の十五条でいえば「
公団は、特別の必要があると認めるときは、
建設大臣の承認を得て、」「
譲渡することができる。」というふうに、やはりこれは例外行為として
賃貸住宅の
譲渡というのは規制されているんですよ。そういう
規定をきちんとしてあるものを、その
法律なり省令なりを動かす〃つまり国会にはかって変えていくということをせずに、一つの役所の判断でもってワクの伸び縮み、かってな
解釈ができるということになれば、これは法の権威を非常に低くすることになってしまう。そういう面で、これはあなた方が単純に都合がいいからどうのということでできるもんじゃない、これが一つある。
もう一つは、
公団の問題にしても、
住宅五カ年
計画にしても、
賃貸を何戸あるいは
分譲に何戸というような形で、やはり国会でも報告もされ、
審議もされて承認されておることですよ。それを途中でもっていきなり
バラ売りもけっこうというようなことでもって変えられてしまったらどうなるか。
公団の
総裁にお聞きしますけれども、そういう形で十年以上たったものをどんどん
払い下げていくということになれば、大体
東京都内のものは一番先にそういう状態になってきます、首都圏
周辺のものは、新しいものはだんだん遠くなっていますから。結局、理想的に
払い下げができた場合には
公団は都落ちをするということになると思うんですけれども、それが
公団の任務なり運命としてあり得るものだと考えておるのか、それとも、まさにこの
住宅難の
東京で、あるいは首都圏こういうところでこそ
住宅難緩和に役に立つのが
公団の任務だと考えておいでなのか、そこらどう考えていますか。