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萩原幽香子君
質問に先立ち
総理に御了解を得ておきたいと存じます。時間の都合でお尋ねは一括していたしますので、御答弁は後ほどまとめて漏れなく
総理からお願いをいたします。
私は、憲法二十四条の「婚姻は、」
——「夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の
協力により、維持されなければならない。」というたてまえが、
現実では税制上からも、法制上からもかなり差のあることを考え、この条文が生かされることを主張し続けてまいりました。ここで、まず初めに具体例を二点申し上げ、
総理の御所見を承りたいと存じます。
その一点は、お手元に配付いたしました民法学者我妻先生の夫婦財産
関係の抜粋を御紹介いたします。
贈与税についての不満、これは私が経験したことであるから、それを述べてみよう。
私の家の収入は、すべて妻が管理している。私は本を買ったり、その他小遣いに充てるために幾分かは貰うが、その他は妻が全部管理する。妻は
生活費その他の経費に支出して余ったものは積み立てておく。それがある額に達したので、先年、真鶴にある別荘に建て増しをして、われわれ二人の最後の隠居場所を造った。妻は、それを自分の名義にしたいというので、私は喜んでそれに同意した。なぜ自分の名義にしたかったのか、改めて聞いても なかったが、彼女にしてみれば、財産を全部管理して積み立ててきた。管理方法もいろいろ考えて、少しでも有利にやってきたつもりだ。その金で、しかも自分の設計で家屋をつくったのだから、自分の名義にしたいという気持があったのだろうと推測した。
ところが、その家屋は私が妻に贈与したものだというので贈与税がかかってきた。私はむろん覚語していたことだが、妻にとってははなはだしく意外であったらしい。彼女には、夫から贈与を受けたという気持ちはない。夫の収入は、自分と共有の財産−共有という
法律的な意識はなかったとしても、夫のものは妻のものであり、妻のものは夫のものである−という気持ちで、学問に専念する夫を煩わさずに自分の力で管理してきたのだ。その管理の延長が建物となった。なるほど自分の名義にしたが、それとて実質的には夫婦共有のものだと考えていたのだから、贈与というのははなはだ意外であったらしい。それで税務署と談判したらしいが、税務署は、例によって、一年にある一定の額までは夫から貰っても贈与税をかけない。その金を積んでおいて建物をつくったのなら、それにも税金をかけない。しかし、この家屋なら、過去二十年ぐらいにわたって毎年もらった額を積んでおいたことを貯金通張にでもよって証明しなければだめだ、といわれたので、ますます憤慨もし、あきれもした。
この妻の気持ちは、普通の
人たちの偽わらない気持ちを示したものだと思う。
次の例は、先日私に持ち込まれた一主婦の討えでございます。
結婚当時無一物だった私
たち夫婦は、私の親許から資金を借りて商売をはじめ、二人で夜を日についでかせいだおかげで、五年ほどの間にかなりの収益をあげ、そのお金で
土地を買いました。勿論夫名義にしたわけです。最近になって私は夫と相談の上で、その
土地の半分を私名義にしようと考え、親しい人に託したところ、二百三十万余りの贈与税がかかると云われてびっくりしました。二人で苦労して働いてつくった二人の財産がなぜ贈与になるのでしょうか。というものでございます。さきの我妻先生の奥さまの例、またこの主婦の討え、これは婦人ならずとも、普通一般民の気持ちだと思います。
そこで
総理にお伺いをいたします。さきの二つの例からもおわかりいただけますように、婚姻継続中に二人で取得した財産は当然共有だと思いますが、いかがでございましょうか。
去る三月七日の本会議で、私は、「夫婦財産
関係は特別な法体系で律すべきではないか」とお尋ねしたのに対し、
田中法務大臣は、「結婚後二人でつくった財産は憲法上当然共有であると考える」という長年の私の主張に初めて
理解する態度を示され、敬意と感謝をささげた次第でございますが、ここであらためて
総理の御所見を承っておきたいと存じます。
また、二人でつくった財産の名義変更は自由であるべきで、贈与ではないと考えますが、いかがでございましょうか。
お尋ねの第三点は、相続税法、基本通達と四十六年七月の税制
調査会の答申の中の見解についてお尋ねをいたします。相続税法基本通達では、離婚の場合は分与財産が妻の持ち分として非課税になっております にもかかわらず、さきの例で申し上げたとおり、婚姻継続中の場合は贈与として課税されます。このことについて私は
昭和四十六年三月二十日の予算
委員会でその不合理性を追及いたしました際、当時の福田
大蔵大臣は民法の夫婦別産制に問題があると御答弁になりました。しかし、それに対して参考人として同席されておりました民法の大家、我妻先生は、何もかも民法に押しつけられては迷惑だ、税法を変えることで解決がつく旨述べられたのでございます。
また、税制
調査会でも、四十六年七月の答申の中で、「基本的に相続税は世代をこえる場合に課税すれば足り、夫婦間の財産移転はすべて非課税にすべきである」との見解が出されております。これは四十六年三月の私の
質問と、それに対する我妻先生の御答弁と同様な考えが、一般庶民の中にはうはいとしてわき上がってきた影響だと考えますが、いかがでございましょう。
私は、二人で取得した財産について、贈与税や相続税を取り立てる現在の税法は、明らかに
国民感情にそぐわないものと考えるわけでございます。決断と実行の
田中総理こそ、庶民の願いにこたえて、この不合理な税制を早急に政正をして、夫婦間の贈与税、相続税は廃止していただけると私は期待をいたしておりますが、御決意のほどを承りたいと存じます。
なお、こうした夫婦財産制の実態
調査のため、国内はもちろん、
外国の
制度も調べていただきたいわけでございますが、いままでの決算
状況では費用の点でまことに不十分でございます。来年度の予算に十分な配慮をいただくことはもとより、今年度においても移流用による予算措置を講ずべきだと考えますが、いかがでございましょう。
私もここに妻の財産所有実態
調査及び家計実態
調査についての私案を持っております。すでに
総理のお手元にもお届けを差し上げてございますので、
政府においてこれらに積極的に取り組まれる際の参考に供していただければまことに幸甚でございます。
最後に、四十五年度における夫婦間の贈与税について、その内容、件数、額など詳細に承りたいのでございますが、時間がございませんので資料として御
提出をお願い申し上げる次第でございます。
一潟千里にしゃべりまくってまいりましたが、
総理の適切なあたたかい御答弁を期待いたします次第でございます。よろしくお願いをいたします。