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1973-06-18 第71回国会 参議院 決算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十八日(月曜日)    午前十時三分開会     —————————————    委員の異動  六月十八日     辞任         補欠選任      小野  明君     鶴園 哲夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         成瀬 幡治君     理 事                 片山 正英君                 世耕 政隆君                 渡辺一太郎君                 小谷  守君                 黒柳  明君                 塚田 大願君     委 員                 石本  茂君                 君  健男君                 小林 国司君                 佐藤 一郎君                 中村 登美君                 温水 三郎君                 松岡 克由君                 片岡 勝治君                 鈴木  力君                 鶴園 哲夫君                 藤原 道子君                 萩原幽香子君                 野末 和彦君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君    政府委員        内閣審議官    粟屋 敏信君        内閣法制局長官  吉國 一郎君        首都圏整備委員        会事務局長    小林 忠雄君        行政管理庁行政        監察局長     大田 宗利君        法務省民事局長  川島 一郎君        大蔵省主計局次        長        辻  敬一君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省理財局次        長        小幡 琢也君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省管理局長  安嶋  彌君     —————————————        会計検査院長   白木 康進君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        会計検査院事務        総局次長     鎌田 英夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十五年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十五年度特別会計歳入歳出決算昭和四十五年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十五  年度政府関係機関決算書(第六十八回国会内閣  提出) ○昭和四十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第六十八回国会内閣提出) ○昭和四十五年度国有財産無償貸付状況計算書  (第六十八回国会内閣提出)     —————————————
  2. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和四十五年度決算外二件を議題といたします。  本日は前回に引き続き、締めくくり総括質疑を行ないます。まず田中内閣総理大臣に対する質疑を行ないます。総理に対する質疑時間等につきましては、本日の理事会におきまして確認をし、御通告を申し上げたとおりであります。たいへん窮屈な時間でございますが、質疑をされる方並びに答弁をされる総理の御協力をお願いいたします。  それでは、まず私から総理にお尋ね申し上げます。  それは会計検査院待遇改善の問題でございますが、綱記を正す、いわゆる目付け役会計検査院中堅職員が五十五、六歳で定年退職をされます。年金で生活をするわけにはまいりませんから第二の人生、いわゆる天下りということになります。このことはたいへん悪いことだと思います。会計検査院人たちのよい職場をつくってあげる、そのことが何より大切と存じます。そこで、会計検査院皆さん定年延長を含めた待遇改善をしていただきたいというのが、当委員会全会一致の要望でございます。総理大臣の明快な御決意のほどを承りたいと存じます。
  3. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 会計検査院が非常に重要な職務であるということは御指摘のとおりでございますし、また政府もそのように理解をしております。普通五十歳を過ぎると定年制あるなしにかかわらず勧奨退職というようなことが実際に行なわれておりますし、会計検査院では五十五歳を待たずして五十歳前後で退職をされる人が多いという事実も承知をしております。まあ特に技術——会計監査という特別な技術的な任務もございますし、だれでもできるというものではないわけでございます。非常に職務が重要であるということで、待遇や身分や地位の問題に対して深刻に検討してやらなければならない問題であるということは理解をしております。ただ定年制というものが法定されておらないわけでございまして、検察官であるとか裁判官という特別な職を除いては定年制は事実七はないわけでございます。しかし会計検査院の諸君といえども六十、七十まで働けるものじゃないということになれば、第二の人生としてどういうふうな時期を選ぶかということもまた必然的に起こる問題だと思うんです。これは人事院の中でその職制、職務というものを考えながら待遇は考えてもらっておるわけでございますが、会計検査院というじみな仕事でありますから、この人を得るということ、人材を得るということ自体がむずかしい。そういうような現状に徴して積極的に国会でもお考えいただく、政府でも十分検討しなければならない問題である。諸外国で安定をした地位として職務に専念できるようなことをやっぱりどういうふうにやっているのかという問題もよく勉強しなければならない問題だと思います。で、検事や裁判官のように定年制をつくって、六十までとか六十五までとかというような制度がいいのか、その場合の身分的な保障はどうするのか、給与体系をどうするのかという問題もあるわけでございますから、人事院の御勉強に待ちながら、政府部内としても十分考えてまいりたい、こう考えております。人事院とか、それから公取とか、それからいまの会計検査院とか、何かもっと人事を交流できるような方法はないものかという感じもいたしております。政府部内でも、専門的な問題でございますが、勉強はしております。しかし、いずれにしても、これを現実的な問題として、いまこういたしますということをさだかに申し上げられないということでございます。人事院検討を待って政府勉強するということで御理解をいただきたい。
  4. 鈴木力

    鈴木力君 時間が非常に少ないので、いろいろお伺いしたいんですけれども、若干の問題にしぼってお伺いいたしますが、まず第一に、現在のこの日本情勢というのは、国民いらいら時代だといわれておる。その国民いらいら時代というのはたとえば公害でありますとか、老人病でありますとか、物価、インフレ、もうすべての問題が国民生活を納得させることができない、そういう情勢にあると思いますが、そのうちでも特に土地の問題、地価の問題がものすごく値上がりをしておる。そこで私は、まず総理にお伺いいたしたいのは、総理日本列島改造論を出しましてから、日本列島改造論地価を上げたといいますと、少し総理は気に食わないでしょうが、あの改造論を発表した時期から特に地価値上がりになっておる。この事実はお認めになりますか。
  5. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 地価値上がり日本列島との関係は私は直接ないと、こう考えております。
  6. 鈴木力

    鈴木力君 私が聞いておるのは、その関係をというと、総理はそうおっしゃるだろうが、時期的にいいまして、改造論を発表した時期から今日までの値上がりカーブが急に上がったということはお認めになりますか、こう聞いておる。日本列島改造じゃなく、時期的に一致している。それはどうですか。
  7. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あまり一致しているとは思いません。
  8. 鈴木力

    鈴木力君 それでは、この問題は、議論をいたしますと時間かかりますが、少なくとも総理は一致していると認めていない。であるけれども、時間をかけて申し上げると、もう統計の数字がはっきりしているわけでありますから、国民は全部そう思っておる。私もそう思っております。日本列島改造論が上げたというと言い過ぎになると思いますけれども、改造論を発表した時期から急に地価上昇カーブが上がっておる。この事実は私は動かせないと、こう思いますが、総理認めなくとも私はそう思ってこれからの御質問を申し上げるのです。  そこで、その前に総理が五月十四日でありますか、第一回の高等教育懇談会、新学園建設等調査会、これはまあ文部大臣諮問機関といいますか、懇談会調査会でありますけれども、総理が第一回目に出席をされて、非常に熱弁をふるわれたということが伝えられておる。伝えられるところによりますと、三分の二は総理の演説でありますか、御説明であった。非常に情熱を傾けていらっしゃるということはよくわかるんであります。そこで総理にお伺いいたしますが、その情熱を傾けていらっしゃる一体地方学園都市といいますか、新学園都市構想というものが一体これは何ものなんですか。どういう中身で何をねらったものであるかをお伺いいたしたいと思います。
  9. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま茅誠司先生等中心にして懇談会を設けておるわけでございます。この懇談会委員皆さんは、日本における学問、学園、戦後教育、裁前教育すべてにわたって広範な知識を持つ日本有識階級であることは申し上げるまでもありません。この方々に新しい教育環境等を含めてどうあるべきかということをいま御検討をいただいておるのでございます。その初会合でございますから、招集をした政府側の代表が政府がごあいさつを申し上げるということは当然でございまして、あいさつがなければおかしいということでございます。それは現状に徴して申し上げたわけでございますが、いま約九百の大学日本にはございますし、百八十万人の大学生がおるわけでございます。しかも昭和六十年を展望しまして、就学率等も考えると、もう六十万人の大学生及び大学院生等を含めて六十万人を収容する新しい大学施設が必要であるということはもう定説になっておるわけでございます。そうすると百八十万人プラス六十万人ということで二百四十万人ということでございます。そういうような展望に立って現状を見るときに、その九百、百八十万人に及ぶ大学はどういう環境にあるかというと、東京を含む政令指定都市にその六一%が集中しておるのでございまして、過度集中と言わざるを得ないのでございます。時間があればあとから資料を提供してもよろしゅうございますが、大学生でも地方にある大学生それから中堅都市における大学生大都市における大学生生活費というものがどのくらい違うかというと、約倍になっておるわけであります。地方大学大都市における経費、親の負担というものは約倍であります。三万円程度で済むものが六万円も支出しなければならないというような状態であることは事実でございますし、学校そのもの交通の過密とか都市過度集中という現象において非常に環境が荒らされておって、管理運営そのものができないという状態であることは事実でございます。そういう意味地方大学整備等も考えておりますし、そのほかに長いこと学者間で要請をされておったような学園都市というものの建設ということを考えなきゃならない。また高等教育そのものの国内における均衡ということも当然考えなきゃならないわけでございます。そういう意味で望む姿としては諸外国にあるように、学校中心にしたすばらしい環境で真に勉強してもらえるような環境を提供したいという政府の考え方を述べ、しかしこれは私たちの考えを押しつけるというのではございませんで、懇談会でしかるべく御検討いただければ幸いでございますと、こういうことを述べたわけでございます。いま私学等状況も全部検討いたしておりますが、いまの状態では理想的な教育環境整備をしていくことはとても不可能な状態であるということは事実であります。
  10. 鈴木力

    鈴木力君 その構想の中に、当日総理が述べられたふうに、まあその規模は千五百ヘクタールから三千ヘクタール、千五百ヘクタールは私立を入れる、三千ヘクタールは国公立を入れると、こういうことも総理がごあいさつで述べられたというふうに伝えられております。同時に、新学園都市候補地調査がもうすでにできていると、こういうことを述べられたというふうに伝えられておりますが、その候補地はどこどこなんです。
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私学でもって本校を現在地に置きながら分校制度をとるというようなことになれば、これは千五百ヘクタール——約五百万坪程度のものが必要だと思いますと、新しい国際的な最高水準大学ということになれば、三千ヘクタールすなわち約千万坪程度のものが必要であろうと、一千万坪というのは筑波学園都市がちょうど一千万坪でございますと、そういう意味で申し上げたわけでございまして、まだ地域がどこであるというようなことは全然検討しておりません。ただ質問に対して答えましたのは、過去二十年くらいの間に全国行政都市いわゆる遷都が考えられておったこともございますし、現に予算には遷都に対する調査費がついておるわけでございます。遷都というのは、口で言ってもむずかしいが、行政機関だけ移したらどうかという議論も長いことございます。そういう意味で各省を通じまして国土総合開発法ができました昭和二十五年から航空測量やいろんなことをやって、全国的地域ということが、大体一千万坪から二千万坪程度のものがどういうところにあるのか、水がまたどういうふうに——水との関係というような問題は調べたものはあります。調べたものは大ざっぱなものでございますがございます。ございますが、そこが学園都市になるのか中核都市にしたほうがいいのかということは、これは地方の自治体がきめることでございまして、われわれがいまそれを述べるということではない。あなたが御指摘になったように私は関係がないと思っておりますが、どうもあの列島改造論を出すと地面が上がる、こんなときにここでもって何ヵ所かしゃべればまた上がるということになりますから、知っていても申し上げません。
  12. 鈴木力

    鈴木力君 いまの知っていても言わない、このことはあとで触れたいと思いますが、私はいま総理から伺いまして、ことばの上では非常にけっこうな面もある。しかし現実にこれをやっていきます場合に、ちょっともう少し慎重な研究というものが必要なのではないか。私はそう思いましたのは、いまやられておる筑波学園都市です。あの筑波学園都市そのものが進行中でありますけれども、これはもういろいろな問題をはらんでいる一つの標本みたいなものになってしまっている。まずいまの土地の値段から言いますと、これは総理にこまかいことをお伺いするのは失礼なんですけれども、だいぶ総理情熱を傾けていらっしゃって、せんだっては茨城県知事とも会われて、いろいろ周辺地区の国家の助成等も約束をされているというようなこともありますから、したがって総理に伺いますが、大体この筑波学園都市が設計をされて政府が買い上げを始めたことから今日までに地価値上がりの率はどの程度になっておりますか。これはできるだけ……、もう総理との時間三十分しかありませんから、知らないことなら知らなくてもけっこうですから……。
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 用地取得回収をやったころは昭和四十一年の十二月ごろからでございますが、一坪当たり——三・三平方メートル当たり千二百円ぐらいでもって買ったものでございます。いま周辺土地というものは幾らか値上がりをしておるということは考えられますが、そんなに値上がりをしておるというふうには考えません。
  14. 鈴木力

    鈴木力君 そんなに値上がりしていると考えませんと言いますけれども、盛んにこのごろ筑波学園都市土地の売りの広告が出ているんですね。私も数種類見ましたけれども、そのうちの一番安いのを見ますとさつきケ丘というのが出ている。これは筑波学園都市の一番の北端のほうで、環境からいえばあまりよいところではない。そこがもうすでに一坪で言いますと六万六千円ぐらいになっている。ところがその広告を見ると、私も広告の見方はしろうとでありますからよくわかりませんが、その六万六千円程度のものは一区画と、こうなっているんですね。あとの大部分の数字の出ている区画の多いところはもっと高いわけです。そうすると、それほどの値上がりではありませんと総理はおっしゃるけれども、たとえば畑で千二百五十円で買い上げた昭和四十一年ころから、もっとはじつこのほうがもうすでに五十倍をこえている。昭和四十一年から今日までに五十倍をこえておる。しかし、総理はその程度のことはびっくりしないわけですね。それほどの値上がりでもないという認識をしておる。そうすると、総理がいまおっしゃるびっくりするほどの値上がりというのは何倍ぐらいを言っているんですか。まずそれを聞いてから次の質問に入ります。
  15. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう議論をすれば、とても三十分や一時間で済むわけがございません。これは周辺地域、確かに駅ができ、インターチェンジができれば上がるということは、これは事実でございます。一番土地値上がりをしたのは昭和二十一年、二年から二十六年くらいまででございます。これはもう一挙に百倍ぐらいになっているわけでございますから。その後昭和二十九年ぐらいから年率一五%、一七%というようなものが続いてまいりました。四十六、七年になって一八%、二五%、三〇%というふうに上がってきておるわけでございます。そういう地域がございます。ですから、全国平均に見ての地価というものと、ある施設が行なわれた周辺地区というものが異なる状態であるということは、もうこれは一々地価に対して申し上げられないわけでございます。東京周辺地区でも、いまから十年前に町田あたりはいまの二十分の一ないし三十分の一で買えたものが三十倍、五十倍になっているわけでございますから、これはもう一律に答え得るわけにはいかぬことは申すまでもない。  それから、このいまの筑波学園都市周辺というのは、建設省に調査をさしてみたら、約三十社、六百三十ヘクタールぐらいの買収が済んでいるようであります。これは調べてみますと、関係六ヵ村二万八千五百ヘクタールの約二・二%というものが買い占められておる。まあ買い占められておるというのか、買われておるということでしょう。しかし、この内容もいまずっと調べておるのでございますが、住宅公団で千二百円で坪当たり買ったものが造成をすると二万五千円近くなるわけでございます。造成費そのものが坪二万円も二万五千円もかかるわけでございます。これは住宅公団がやって、そうであります。しかも、いま民間デベロッパーがやる場合には、公共用地の供出だけではなく学校までつくらなければ許可しない、こういうことでございますので、これはもうそういう計算を全部してみないと、地価がただ千二百円のものが六万円で売り出されておるという単純な計算でできるものではないわけでございます。ですから、私も衆議院で述べておりますように、最終的にはやっぱり土地を買わなければならない、うちを建てなければならないサラリーマンの負担になるのであるから、公共負担民間デベロッパーとの負担の限界というものを明確にすべきである、こういうことを述べておるのはそのような理由によるものでございます。
  16. 鈴木力

    鈴木力君 私は単純比較をしているつもりはありませんで、いま私が例に出したさつきケ丘というのは学校を建てる計画はないんです。そんな計画は何もないんです。この集落からいいましても、保育園を建てるほどの規模のものでもない。そういう小規模の業者のものがあちらにもこちらにも少しずつ食い込んで、そうしてかってにいま土地の売り出しに出ている。それを言っているわけです。ですから、決して単純比較どうこうと言うつもりはありません。高いところは、これは私は数字を直接確かめたわけじゃありません。現地の国に千二百五十五円で土地を売り渡した人たちがいま代替地をもらえないで困っている人たちも実はあるわけですが、そのこともあまり詳しくはきょうは言いませんけれども、その人たちの投書によりますと、自分たちがそのときに国に売り渡したその隣の土地ではすでにもう二十五万円になっている、坪で。そういうようなこと、もちろん学校が建つから、環境がよくなるから上がればそれでいいと総理はおっしゃるけれども、私はこの筑波研究学園都市建設計画の大綱というやつを最初の計画からのことを見たし、少なくとも政府意図と違っているんじゃないかということは言えると思います。だから、総理はいろいろなことをおっしゃるけれども、意図と違った現象はもうできておる。しかも、総理日本列島改造論でも述べられておりますけれども、個人住宅なんというのは四畳半に何人というようなのはもうだめなんだから、そういうことでなしにということを盛んに言われていらっしゃる。これはよく思いやりのあることばだと思って私どもはあれを拝見したんです。ところが、私がいま指摘をしたこの場所は二十坪単位から売りに出ている、土地が。そこへ建つうちは総理が描いておるこれからの住宅というようなものとおよそ違ったものです。そういうことがこういう学園都市なら学園都市ということを始めると、好むと好まざるとにかかわらず現実に出ているということなんです。  それから、時間がありませんから、簡単に私のほうから申し上げますが、まだまだ問題をはらんでおるわけです。たとえば周辺地区整備ということを先ほど総理がおっしゃった。これは確かに計画にはそういうことになっておる。しかし、たとえば茨城県の地元自体は何をやっているかといいますと、まだほとんど都市計画も進んでいないでしょう。そうして財源がない。牛久沼にオートレースをやって、それでもうけたやつをどうこうというようなことがあって、知事はそれをだめだと、これは私は岩上知事の見解は正しいと思いますけれども、そういう形で総理が、国が財源を出してめんどうを見てもやろう、こうおっしゃっているわけです。そこまでいかなければ、もう始めてから今日までに、国が手を出すまでには政府の望ましからざる方向にいっておったという現実は、これはお認めにならなければいけないと、こう思うんです。いかがですか。
  17. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは認めます。これはもう筑波学園都市をつくるときには、やはり法律が先行すべきだったと思うわけであります。法律ではなく、私が大蔵大臣のときでありますから、もう十年前にきめて、初めの五年間は、計画だ何だといって非常に時間がかかって、その間に幾ばくか土地値上がりになるような状態になって初めて青写真ができたということでございまして、しかも本格的な建設最終段階の三、四年であると、こういうところに問題があると思うんです。ですから、おそまきでございますが、今度は国土総合開発法を申しているわけです。あの法律案が通れば、すぐあの周辺特定地域に指定できるわけでございまして、移動も禁止できますし、開発計画も全部できますし、二十坪とか三十坪の小さなものはつくってはならないということも十分できるわけでございますから、おそまきでございましたその事実は認めますから、国税法はぜひ早く、成立に御協力のほどをお願いいたします。
  18. 鈴木力

    鈴木力君 国土総合開発法の点につきましては、これは機会をあらためまして、私のほうからも、だいぶ矛盾がありますから、いま総理があれでいいとおっしゃるけれども、私どもあれではますますいまのような現状を強化するというふうにも見ておりますから、これはあと機会に申し上げます。  そこで、私はこの筑波研究学園都市でありますが、これはもう構想じゃなしに現実にいま進んでいるわけであります。いま申し上げたような問題点がある。同時にその行き方、いままでの経過の中に、さっき私が申し上げましたけれども、たとえば土地を国が買い上げるわけであります、国の機関の場合に。その買い上げる場合のさきに申し上げました千二百五十五円とか、あるいは山林の場合には三・三平方メートルで千百六十七円、もちろんこのほかにも立木の補償とか農業補償はありましたけれども、こういう状態で売り渡した人たち——これはまあ総理にお伺いすることじゃありませんから、聞いておっていただきたいんです、こまかいことでありますから。この土地を収用いたしますときに、住宅公団の職員は念書まで農民に与えて、その土地を売らして、しかもこの基本方針の中にはあそこの農業の近代化、近代化農村をつくるということがありますから、その農業をやりたい人たちには代替地をやるんだという念書まで与えておって土地を取っておいて、いまだにその代替地を与えられていない人たちがまだぞろぞろいるんです。そういうようなことを繰り返しておって平和の学園都市と言っておるこの政府を、そういう国民から見ると、権力的な一人よがりの平和の学園都市としか見えないわけです。私に投書をよこしたある人は、少なくとも私は一億七千万円損をしましたという投書が来ておる、そういうような形に追い込んでおる、こういう始末をどうするかということも私は政府がやらなければいけないことだと思いますが、こう見ますと私はいまこのこまかいことはここまで総理御存じあってはたいへんだと思いますからきょうは御答弁いただかなくてもいいんですけれども、将来の問題にも引っかかりますからそれじゃひとり……。
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 何かをつくれば土地が上がると、周辺地域が上がるということはこれはもう当然のことでございます。十ヵ年、五ヵ年の交付公債で買い上げた鹿島工業港の周辺がどのくらい上がっておるかということはこれは私が申すまでもないことでございますし、まあ坪当たり六百円ないし七百円であったというようないまの東京国際空港というものがまあ反当たり百二十万円それ以上ということで買収されたわけでありますが、あの空港が稼働するようになると周辺地区はその売った地域の何倍にも高騰する、これはもう当然なことだと思うんです。でありますから、そこで憲法の精神を踏まえた法律に基づく適正な時価で収用したり買収したりしたものであっても、その後自分がその金で直ちに同じような条件の土地を買っておれば別でございますが、買えなかった人は非常に損をしたという感じを受けることは申すまでもないのでございます。そういう意味で対価を払えばいいんだといってもなかなか土地を買えない人もありますからやはり外国でやっているように、今度取り上げなきゃならない一番の施策はいまあなたが御指摘になったように、金でほしい者は金で払いますと、それから物でほしい者はちゃんとした物を与えますと、こういうことでなければこれからいま御指摘になったような問題を解決することはできないというので、今度の国土総合開発の中にはそういう趣旨のことがちゃんと書いてあります。ですから地方公共団体、県及び市町村や農協がレンタル制度をも加味しながら中心になってやろうと、そのためには当然換地、代替地制度と現金賠償というものとあわせて調整をとろうということにしておるわけでございまして、まあいまのあなたの問題はいまの公共用地の取得や新しいものを、ではやらないでいいのかといったらやらないわけにいかないわけです。駅をつくらないでいいのか、橋をかけないでいいのか、橋をかければ橋のなかったところよりも周辺地区が上がるにきまっております。そういう場合に土地増加税というような、利益を受ける人に増加税をかけるという議論があるが、どこから一体区分の線を引くのかといえば学問的にむずかしいというような問題があるわけでございまして、やっぱり現物給付、換地制度というものと現金賠償というものとのやっぱりあわせて考えるということでなければならないと、これはもう非常に当面する最も重要な問題の御指摘だと理解しております。
  20. 鈴木力

    鈴木力君 そのねばならないことはわかりますけれども、いまだに解決をされないあそこの住民がたくさんいるということ、まずそれを片づけることなんであって、大体私はこのあと少し申し上げたいと思うのは、政府の発想は、現状にあるいろんな矛盾というものにはふたをしてしまって遠い将来われわれが生きているときのことなのかどうかわからぬような話をそちらでやっておって、そうして国民を混乱さしておるというのが現実じゃないのか、私はそう思うんです。もし総理のいまのおことばがほんとうに本物であるならば、そうしたようなことがあるならば直ちにそれを何とかしょうと、まずそれが一番先に飛び出てこなければいけない。政府の機関が念書まで出しておいてそうしてやっておいてそれを実行してないという事実があれば——まあ総理は御存じなくてもいいんです、調べてみて善処するぐらいの答弁が一番先きに飛び出さなきゃいけないはずだ。ところが橋をかけて駅をつくれば土地が上がるのはあたりまえだ、つくらないところが上がっているから私は問題にしているんです。いかがですか、いまのその……。
  21. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公団がいかなる状況にあったにせよ念書まで入っておればその事項を約束どおり実行しなきゃならないということは当然のことでございまして、この間の事情は調査をいたします。ですからいま申し上げたように国総法というのはほんとうに必要なんですよ。だからそうしなきゃできないじゃありませんか。私はまじめに述べておるんですよ。そうすれば換地の問題も一切の土地値上がりも押えられると言っておるじゃありませんか。そうでなければ憲法で定めるように国会は唯一無二の立法府であると、議員立法をおやりになりゃいいんですよ。私はやっぱりこういう問題タイムリーにものを片づけないで私は国民の利益を守ることはできない、真剣に考えておるわけです。
  22. 鈴木力

    鈴木力君 もう時間がありませんから——そこで私は一番先に申し上げました新学園都市構想ですね、どういうものをつくるか、まだ審議会にかからなければはっきり言えないと、こうおっしゃる。しかし私は諮問機関自体にもほんとうは問題がある。あれは行政組織法からいいますと、私設のものであって結論を出してはいけないということを池田総理がきっちり答えている。これが政府の統一見解でありますから、それをもって結論を出させようとしているというところにも問題がありますが、きょうはその時間がありませんからその問題はおきまして、いまのような筑波の実情から、これを地方に広げていく、そういう場合の危険性というものを、私は将来総合開発法が通ればそれでいいと総理おっしゃるけれども、いまどういう状態になっているかということも総理は真剣に検討されるべきです。  実は青森県の十和田市ですか、十和田湖周辺ですか、あそこではもう新学園都市にここがなるんだという話が非常に伝わっておる。そして青森県知事も直ちにこれを知事としてもう誘致運動をするんだということを言っている模様なんです。おそらく今月中になりますか来月中になりますか、県議会でそのことが問題になるような情勢がもう出ておる。ところがあの十和田というところは御存じのように、日本でも有名な観光事業の大手の方がすでにあそこの観光バスをやっていらっしゃって相当の土地はもう獲得をされておる。そういう空気が非常に強くなっているのに新学園都市構想が出てまたこれに拍車をかけて、土地の買い占めとまではいきませんが、土地を買おう、持っている人は確保しよう、将来上がるんだということが盛んにあの辺の住民を迷わしておる。私はこの地価問題は総理がいつかの機会に、これは新聞でちょっと拝見したんですけれども、何か九州の霧島かどこかも適地だということを言ったということがいつか伝えられたことがあります。ぼつぼつそういうところが、まだはっきりしないんだとおっしゃるけれども、いつの間にやらそういう形で全国にもう新学園都市構想なるものが地価を上げなさい、買いなさいということが盛んに、おっしゃらなくてもそういう形にいまなっておる。私はそういう面でも、特にこの構想からいうとどうせいまあまり開発をされていない、自然の確保されている奥地だと思います。そういう地域にそういう刺激剤にいまなっているということは政府は私はきびしく反省をすべきだと思います。そういうことが土地のつり上げの一つの刺激剤になっているという点についてはやっぱり手を打たなきゃいけない。  それから基本的にいうとどんな大学をつくるかということも私は非常に問題があります。いま筑波大学が文教で非常に問題になっております。ああいうものをまた全国二十ヵ所ばらまくと、こういうことであっては、これはまた教育関係者を騒然とならせる。総理の非常にりっぱな構想現実は決して思うようでないものに帰する危険性がある。だから私はまず総理が六十万にふえるというそこに思いやりをやっていらっしゃることは非常によいと思います。現実にはまず何をすべきかというと、いま荒らされておる、荒らされておるというのはことばが悪いんですが、各県にあります国立大学ですね、たとえば私の郷里の岩手大学も法文学部をつくろうということを前から言ってきておる。しかしそれがまだできないんです。そういう形に、各地方大学に思い切って予算をつけて充実をしたらどうです。そうすると岩手県なり新潟県なりから東京に来る学生は地元の大学で相当に押えることができる。これはキャンバスも十分にあります。もう一つは質的にもっと国立大学を充実すべきなんです。駅弁大学なんという名前をつけられてそれを放置しておいたところに学生が東京に集まってくる一つの原因があるわけなんです。まずその点をはっきりとさして、そこでひとつ学生の地方分散をはかるとか、大学の均衡化をはかる。それから、その将来という構想を綿密に練られたらよかろう、そういうふうに思います。時間ですからこれでやめますけれども、総理の御見解を伺って御質問を終わります。
  23. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 地方大学を拡充するという方針はますます拡充してまいりたい。それから土地は先買いをするような人がありとせば、これはその人たちの利益が確保されるようにまだ全くきまっておらないし、適地は相当まだ数が多くございますから、買い占められたようなところに大学が行くというようなことはないと言ってもいいと思います。政府が考えておるものは公有地及び国有地を主体にして考えておるということを、大前提を持っておるということを申し上げておきます。  それからもう一つは、よしんばそういうようなものが一部含まれるとしても、国総法によって移動も禁止されますし、公共団体が買い取り請求権を持つということがございまして、価格に対してもみんな押えられるようになっております。今度の税制上高く売った者に対しては分離課税を適用されるわけでございますし、もう一つは、不動産業者等に対する非常に融資を強く抑制してまいっておりますから、そういう面で相当がんじがらめになってまいりますので、いままでのような状態地価が上がるというようなことを押え得るような万全な対策をとってまいりたいと、こう考えます。
  24. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 委員の異動について御報告いたします。ただいま、小野明君委員を辞任され、その補欠として!園哲夫君が選任されました。
  25. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は、総理が取り組んでおります政治課題の大きなテーマである都市政策、なかんずく国有地の問題、特に国家国務員宿舎の用地とからんでこの国有地のあり方というものにつきまして質問したいと思います。  まず大蔵省に数字だけ確認したいと思います、大蔵省いらっしゃいますか。——言いますよ、数字。四十七年九月一日現在、全国の公務員の数約百三万二千人、そのうち住宅不安定数三十三万三千人、充足数三十万三千人、不足数三万人。東京、公務員の数が約三十三万七千人、そのうち住宅不安定数十二万二千、充足数十一万五千、不足数七千、この数字間違っていないでしょう。イエスかノーでけっこうです。
  26. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 東京数字はまだ手元にございませんが、全国的な数字は間違っておりません。
  27. 黒柳明

    ○黒柳明君 東京も間違っておりません。これは大蔵省から聞いた数字です。  そこで、総理ね、いまの住居不安定数三十三万三千、要するに百万の国家公務員のうち三十三万三千人ぐらいの方が宿舎を希望している。そのうち宿舎が、もう住んでいる人が三十万三千、充足率九一%。それを東京に当てはめると全公務員数三十三万七千のうち充足率が九四%、こういうわけであります。ところが、私が言うまでもなく、これは建設省の調べですが、全国住宅不安定世帯数——これは世帯ですよ。いまのは、人数ですよ。いいですね。世帯数が三百五十九万。首都圏が百三十四万と、こういうデータが出ておりますが、このデータ、非常にやっぱり住宅問題では何と私、お役人天国の様相を呈しているのではなかろうかと、こういう感じがしますが、総理どうですか、この数字だけの感じでは。
  28. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは確かに観念的に御指摘になればあなたのいま言うことも一つの見方でございます。しかし、公務員というのは国家が国民のために必要な制度として税金でまかなっておる制度でございます。そういう意味からいうと、昔は公務員には適切な職能によって全国至る所に定期異動を行なったわけでございまして、それは国政を行なうために必要なものであり、住宅を提供する、いわゆる官舎を提供するというのは、一つに、税金から月給を払うという趣旨に至るものでございます。そういう意味で、この充足率というものと一般国民住宅不足を同列に論ずるわけにはいかないということは、これはまあ理屈でございます。しかしながら、現実問題として国民住宅が不足なんじゃないか、そういう感じからいうと、まあ公務員というものは国設宿舎法ができた経緯もございますが、まあ一般よりも比較的に充足率が高いということは言えると思います。
  29. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は別に抽象的一般論を申し上げるつもりはないのです。これから個々に入ります、数字を具体的に。それから、昔はといったって、全部公務員の時代じゃありません。それじゃ公務員が税金でまかなわれるということで、いいことやりゃいいんです。悪いところだらけじゃないですか。もうここでの記事見てごらんなさい。公務員がそれこそ公僕たる使命を忘れておる状態が出つつある。これは絶えず私は指摘しております。そういう観点から見ると、やっぱりこの国家公務員だけの住宅問題というものについて特に気をつけなきゃならない。それは用地問題です。そこで私はさらに具体的に、この国家公務員が非常に住宅問題で便宜を与えられておる土地問題です。私は大蔵省を、たとえば一つ指摘しましょう。  これは大蔵本省、国税庁、関東財務局、東京国税局、東京税関、要するに関東周辺の大蔵省所管の土地所有。そのうちの宿舎用地、これが合計二百五十五万六千三百三十八平方米。その建物建坪二十八万六千六百五十八平方米。延べ坪七十八万四千六百七十一平方米。これも大蔵省にもらった資料です。まあ総理、そこにあるかと思いますけれども。このとおり。どうですか。この数字、何をお感じになりますか、総理
  30. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ国設宿舎法をつくって公務員に対して宿舎を与えようということは、これは戦後の状態で必要なものとして国会の議決を経てつくったものでございます。同じ時期から議員にも議員宿舎を与えようということになったわけでございまして、これはやっぱり職責の重要性というものと、特に議員も地方から来ておると二重生活になるということで、当然として宿舎を提供すべきであるということと同じように、公務員も地方に異動をさせるということと、まあこれから地方との人事交流というようなことを考えると、どうしても宿舎というものが必要である。私はいま御指摘になった数字が大蔵省所管一般財産として述べられたのか、国設宿舎法に基づく特別会計の財産として大蔵省以外の土地に対して述べられたのか、さだかにしませんが、こまかい問題、数字に関しては大蔵省から答弁させます。
  31. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間がないから……。この数字は間違っていませんね、いまの数字は。
  32. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは間違いないです。
  33. 黒柳明

    ○黒柳明君 いいですか。時間がありませんからね。これはもらった資料です、間違いないんです。総理の答弁ちょっと違ってたんです。この数字からそういうお答えを出すのはちょっととんちんかんじゃないか、失礼ですが。土地が二百五十万平方米あるわけですよ。建て坪が二十八万平方。延べにしても七十八万平方米。この土地の問題、これをどうお考えになりますか。公務員住宅、充足率はほとんど一〇〇%近いでしょう。それに対して用地が十分の一の建て坪っきやない。延べ坪にしたって七十八万。このバランスどうお考えですか。
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) わかりました。それは、それを立体化したらもっとあき地が出るじゃないかとかもっと公用地に使えないかとか、そういうきっと御趣旨だと思います。そういう意味から考えれば、土地の効率的利用ということは当然考えなきゃならない問題でございまして、いま検討いたしております。ただその中には物納でもって納めた古い大きな土地と古い建物をそのまま使っておるというような面もあるのです。年次によってだんだん建てかえていこうということであって、もっと効率的にその計画が全部済めば各省との問題やそれから地方公共団体との問題とかいろいろな問題を調整しなきゃならないということは、これはもう土地の効率的利用ということで、当然勉強しなきゃならない問題として勉強しております。
  35. 黒柳明

    ○黒柳明君 これからね、あわ食っていまやってんです、大蔵省にきょうお尋ねしたら。二百五十万平方米の広大な土地を持っておる。そのうちの、延べにしても七十八万平方米っきゃ建っていない。一方公務員の充足率は一〇〇%に近くなっておる。あいているじゃないですかというのですよ、土地が。関東だけ見ても、さらに私は東京数字をこの次言いますけれどもね。これは土地の効果的利用じゃないじゃないですか。だから総理のおっしゃっている、これからいまあわを食って、私が資料を要求して、これは高層にするんですよとかなんとかという発言に対して、質問をつくって総理の手元によこしたわけですよ。私は過去のことを言っているんです。いままでのことを言っているんです。これだけの土地の国有地、関東だけ見ても、しかも、私は東京の一つ一つまた指摘しますけれどもね。国家公務員住宅の充足率が非常に高い、反比例して土地が効果的に使われていないじゃないか。土地政策、公有地はあくまでも公共用地に使うんだ、これはもう何回も繰り返されていることですよ。土地政策の中の公有地、これはもうどうにでもなるんです、総理の考え方次第では、各省庁の考え次第では。それがあまりにも使われてなさ過ぎるじゃないですか、大蔵省所管の土地一つをとってみても。こういうことなんです。
  36. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 原則論としては、公有地は効率的に使われなければならないと、これはもう当然のことでありまして、御指摘どおりでございます。  ただ、一つ、相当慎重に考えておりますのは、公有地というものだけを、どんどんどんどんと住宅をつくって、不特定多数の人に抽せんによって提供するということを続けておると、過密化、スプロール化というのが進むので、公有地の効率的利用という大前提を踏んまえて土地の効率的利用は考えなければならないが、公有地の活用ということに対しては、都市改造という場合の代がえ地とか、応急収容者、移転しなければならない一時移転者の収容の建物をつくるとか、合同庁舎として利用するとか、いろんな問題がございまして、区や都の所有地や国の所有地や各省庁の所有地そのものに対しても、ひとつ実態を十分把握をして、長期的展望に立って、いま目の前にあるということだけではなく、長期的展望に立った合理的、効率的な利用を考えようという基本的な趣旨である。これは国会の附帯決議か何かにもあったと思われます。国有財産法か何かの改正のときにもあったわけでございまして、そういう意味で、東京湾の埋め立てというような問題も、量的にはうちが幾らでも建つじゃないかと言いながらも、東京都の改造という青写真ができない限り東京都の埋め立てを無条件でやってはならない、というような制限がなされておるわけでございまして、公有地は、ただ、あるものを使わせないという考えに出ずるものではないということは御理解いただきたい。
  37. 黒柳明

    ○黒柳明君 これからそういう計画をつくることはたいへんけっこう。いままでこれは遊んでいたんですよ、いままでこれだけの面積が。だから、あくまでも、国有地の効果的な利用法は行なわれてないということなんですよ。もう総理の答弁、何回も、これからのこと、こういう企画をつくるんだという前提っきゃ言ってないんです、基本原則。いままでこういう国有地が効果的な利用がされてないのをどうするのか、どう考えるのか、こう言っているんです。  さらに、それを東京に持ってきますと、千歳住宅——世田谷の船橋町にあります、土地面積は二千三百七十平方米、建坪三百三十七平方米、これは延べにしたって三百九十六平方米です。あき面積は二千三十三平方米、八六%あります。近所の人は、通称これをお化け屋敷と呼んでおる。国有地が、大蔵省の宿舎がお化け屋敷なんて、こんなみっとも悪い呼び方されて、どうですか、総理。杉並区成田西、これが千八百九十二、建坪は百八、延べにしても二百四、あいているのは千七百八十四、九四%があき面積ですよ。あるいは、宮代、二千、建坪面積は二百、あきが約千九百。  さらに各省庁でも、そういう、二千平方米ぐらい。都心のどまん中ですよ、しかもこれが七年の間、こういうふうに、国有地でありながらほっぽりっぱなしの状態にあるということを、これをどうするのか。あまりにもずさんな国有地の管理のしかたじゃないか。土地政策に対して前向きに検討している、一生懸命やっているとこう言いながら、足元にある国有地が、しかも東京のどまん中にある国家公務員用地の使い方が、あまりにもこれじゃ各省ともずさんではないかと、こういう点を指摘してんであって、これから高層化するとか、古いものを撤去するとか、こういうことを言ってんじゃないんです。あまりにもいままでの状態じゃでたらめ過ぎるじゃないか、これを認めますか。
  38. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) でたらめ過ぎるということを認めるわけにはまいりません。それなりの理由があって今日にきたことは、それはやっぱり真実はそう認定してもらわなければだめだと思うんです。  それは、先ほどもちょっと申し上げましたが、これは、物納した財産というのがありますので、そういう意味で、これをこわして新しく全部建て直すというのは、年次計画や予算の制約で、なかなか一挙に片づくもんじゃありません。そういう意味で、一つずつ年次計画の中に入れて片づけているわけでありますから、だから、ちょうどその年次計画にぶつからないものは、昔の物納のままでもって、広い屋敷でもって古いものをそのまま使っておると、こういうことからいうと、確かに、敷地面積に対する延べ面積の比率は九〇対一〇だという問題はあります。ありますが、これは個々にいろいろな問題がみなございます。これはあなたも御承知になって、そういうことを十分お調べの上でお述べになっておると思いますが、ただ、絶対的には土地が不足であるということを考えれば、これを、三つのものを一つに統合できるなら、あと残りの一つは公園にしたほうがいい、あとの一つは住宅公団が使ったほうがいい、あとはというような、そういう具体的な考え方に対して、都や区や各省の間にほんとうに合理的なものが詰められておるということは、ここで私もさだかには一つずつ申し上げられません。これらを一つずつ説明しろといえば、そのいままでなぜ放置してきた理由ということを申し上げますが、ただ、大蔵省が物納されたものだから、大蔵省の所管財産になっておるのだから、いつまででもそのままほっておくんだということはないわけでございますから、そういうことはひとつ御理解をいただきたいし、あなたがいま御指摘になったことを契機にして、大蔵省は、手持ちのものを、一体どういう計画があるのか、どういう理由でということは、調査をさせます。いずれにしても、御報告をさしてもけっこうです。
  39. 黒柳明

    ○黒柳明君 個々に問題があるところも幾らもあるんです。これはまた大蔵省やりますと時間がありませんからね、それじゃこういうようにしますから。総理大臣、要するに地方公共団体に公共用地としてこれは使わすことは基本原則ですね。もし地元の区で、当然、保育園、幼稚園を建てたい、児童公園をつくりたい、いろいろな要望がある。土地がない、問題の。これは、地方公共団体で、これを何とか使わしてもらいたい。地方公共団体と大蔵省、あるいは所管の各省庁と合致する点があったら、これをどんどん地方公共団体に使わせる、そういう方針を、総理、ここで述べていただけませんか。
  40. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 無原則に地方公共団体等に使わせるということは述べられませんが……。
  41. 黒柳明

    ○黒柳明君 無原則じゃない。
  42. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは各省庁にも計画がございますし、国民のために利便を提供することでございますから、都や区、地方公共団体との間に話し合いをする、これはもう全く望ましいことでございます。  私は、この間一つの例がございましてね、消防署を建てかえるのに、ちょっとした、もう少し拡大してくれないかと言ったけれども、なかなか省庁間の話がつかないで、そのまま拡大しないで消防署を建てたという例を知っております。まあ私自身が知っておるんだから、黒柳さんが言われようとすることもよくわかるわけですよ。そういうことのないように、これはひとつ、各省庁、地元の公共団体等十分連絡をして、公共の用に、国民の利便に供し得るような効率的な土地の利用ということは考えてまいりたい。
  43. 黒柳明

    ○黒柳明君 もうこれは、総理大臣、そういう前向きな——前向きといっても一〇〇%じゃありませんけれども、各区、各市町村では非常にそれを望んでいる。  私は、一つ一つ、これを今度は大蔵省に聞き、あるいは郵政省に聞き、地元公共団体としてどういう用地の使用のしかたがあるか、いま都内全部総点検して、各一つ一つ結び合わせる努力をやっているのですよ。私がそんなことをやる必要はない。総理大臣がいまの発言を前向きに大蔵省に指示して、こういうむだな使い方をですね、どんどんどんどん地方公共団体に払い下げる、使わせる、その前提どおりにやっていただきたい。  なぜ私はこう言うかというと、最後に、まだ国有地の払い下げの方法がおかしいのです。先般もNHKの問題、あるいは第一勧銀の問題、あったと思うんですが、どうですか総理大臣、最近、大口な土地が不動産業者に払い下げられるなんということは、おかしいと思うか思わないか。どうですか。もう時間がありませんから、国有地です、不動産業者に払い下げる、つい最近。これはどうですか、正当だと思いますか、こういう問題。
  44. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、そういう実態的な例を知りませんから述べられないんですが、国有地、いままでは、国会の論議を見ておりましても、ずっと、その時代によって違ってきているわけです。これは、国有地というものは国民の財産だから一円でも高く売らなければいかぬということでございました。ところが、その後、ものを売るときには高く、それから公共の工事を発注するときには安く、こういうことでございましたが、あんまり安過ぎちゃいかぬのでロワーリミットをつくろうというのが国会議論されたわけです。同時に、ものを高く売るということになると、政府のものさえ高いんだから民間のやつがなお高くなるのはあたりまえであるという、地価を押し上げるということになるので、政府が、公共用地の売り払いに対しては、高い安いというよりも、公共的使命に使えるかどうかということにウエートを置かなければならぬというふうに、国会議論もずっと変わってきておることは事実でございます。だから、そういう意味で、まあこれからはやっぱり政府が要らないものならこれは地方公共団体へ、地方公共団体よりもっと効率的に社会的に使えるものなら他の法人にというような意味で、やっぱり内容、質というものが非常に問題になってきたということはよく理解できます。不動産業者に払い下げたという例は私は承知しておりませんが……。
  45. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、そういうケースがあったらどう思いますか、こう聞いておるのです。
  46. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 内容を知らないで——それは政府がやみくもに払い下げたわけではないのです。そういう内容を知らないで、それはおかしいと思いますと答えれば、私の答え自身がおかしくなるわけです。
  47. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは大蔵省からもらった資料。不動産業者に払い下げたのがありますよ。四十七年の十一月までの資料ですよ。
  48. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どこですか。
  49. 黒柳明

    ○黒柳明君 あげましょう。総理見てください。こんな不動産業者に宅地分譲用に払い上げるのは、これはおかしいじゃないですか。(資料を手渡す)
  50. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは大蔵委員会でもって十分問題になり、農林委員会でも問題になっておる例の明治初年からの畦畔地というんで、あぜとか、それから昔の国有の下水とか、道路の廃道になったものとか、それから一つの区画の中において物納されたものが点在をしておるので、区画整理を行なう場合にはこれはどうしてもその関係権利者に払い下げる以外にない、いわゆる縁故払い下げというようなもののようでありまして、一括して不動産業——契約全額一億六千八百万円というものの内訳は、これはこまがいものの累計であるというようなものであって、不動産業者に高かったから払い下げたというものではないようであります。
  51. 黒柳明

    ○黒柳明君 ともかく、不動産業者に払い下げ、それを宅地分譲用として売られるなんということはおかしいですよ、国有財産のあり方として。これだけ言っておきます、おかしいですよ。
  52. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは間違えると困るので、これは明確にしておきますが、そういうことはあるんですよ。絶対に売っちゃいかぬというわけにはいかぬのです。それはなぜかというと、公図が非常に合わないところがあるのです。これは公図が合わないところがあるし、延びもあります。そういう中に、物納したようなもので、一括物納などで小さいものが中に国有地として点在しているものがあるわけです。
  53. 黒柳明

    ○黒柳明君 三万平方米ですよ。全部一括ですよ、これは。そんなにばらばらじゃありません。統制しております。
  54. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、だから、そういうものがありますから、ですからそういうものまで払い下げてはならないというわけにはまいらぬわけです。
  55. 黒柳明

    ○黒柳明君 こんな一括した四万平方米のところをいま統制してますよ。ばらばらじゃありません。
  56. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どうぞひとつ——私のほうでもよく調べます。
  57. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 質問に先立ち総理に御了解を得ておきたいと存じます。時間の都合でお尋ねは一括していたしますので、御答弁は後ほどまとめて漏れなく総理からお願いをいたします。  私は、憲法二十四条の「婚姻は、」——「夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」というたてまえが、現実では税制上からも、法制上からもかなり差のあることを考え、この条文が生かされることを主張し続けてまいりました。ここで、まず初めに具体例を二点申し上げ、総理の御所見を承りたいと存じます。  その一点は、お手元に配付いたしました民法学者我妻先生の夫婦財産関係の抜粋を御紹介いたします。   贈与税についての不満、これは私が経験したことであるから、それを述べてみよう。   私の家の収入は、すべて妻が管理している。私は本を買ったり、その他小遣いに充てるために幾分かは貰うが、その他は妻が全部管理する。妻は生活費その他の経費に支出して余ったものは積み立てておく。それがある額に達したので、先年、真鶴にある別荘に建て増しをして、われわれ二人の最後の隠居場所を造った。妻は、それを自分の名義にしたいというので、私は喜んでそれに同意した。なぜ自分の名義にしたかったのか、改めて聞いても なかったが、彼女にしてみれば、財産を全部管理して積み立ててきた。管理方法もいろいろ考えて、少しでも有利にやってきたつもりだ。その金で、しかも自分の設計で家屋をつくったのだから、自分の名義にしたいという気持があったのだろうと推測した。   ところが、その家屋は私が妻に贈与したものだというので贈与税がかかってきた。私はむろん覚語していたことだが、妻にとってははなはだしく意外であったらしい。彼女には、夫から贈与を受けたという気持ちはない。夫の収入は、自分と共有の財産−共有という法律的な意識はなかったとしても、夫のものは妻のものであり、妻のものは夫のものである−という気持ちで、学問に専念する夫を煩わさずに自分の力で管理してきたのだ。その管理の延長が建物となった。なるほど自分の名義にしたが、それとて実質的には夫婦共有のものだと考えていたのだから、贈与というのははなはだ意外であったらしい。それで税務署と談判したらしいが、税務署は、例によって、一年にある一定の額までは夫から貰っても贈与税をかけない。その金を積んでおいて建物をつくったのなら、それにも税金をかけない。しかし、この家屋なら、過去二十年ぐらいにわたって毎年もらった額を積んでおいたことを貯金通張にでもよって証明しなければだめだ、といわれたので、ますます憤慨もし、あきれもした。   この妻の気持ちは、普通の人たちの偽わらない気持ちを示したものだと思う。  次の例は、先日私に持ち込まれた一主婦の討えでございます。   結婚当時無一物だった私たち夫婦は、私の親許から資金を借りて商売をはじめ、二人で夜を日についでかせいだおかげで、五年ほどの間にかなりの収益をあげ、そのお金で土地を買いました。勿論夫名義にしたわけです。最近になって私は夫と相談の上で、その土地の半分を私名義にしようと考え、親しい人に託したところ、二百三十万余りの贈与税がかかると云われてびっくりしました。二人で苦労して働いてつくった二人の財産がなぜ贈与になるのでしょうか。というものでございます。さきの我妻先生の奥さまの例、またこの主婦の討え、これは婦人ならずとも、普通一般民の気持ちだと思います。  そこで総理にお伺いをいたします。さきの二つの例からもおわかりいただけますように、婚姻継続中に二人で取得した財産は当然共有だと思いますが、いかがでございましょうか。  去る三月七日の本会議で、私は、「夫婦財産関係は特別な法体系で律すべきではないか」とお尋ねしたのに対し、田中法務大臣は、「結婚後二人でつくった財産は憲法上当然共有であると考える」という長年の私の主張に初めて理解する態度を示され、敬意と感謝をささげた次第でございますが、ここであらためて総理の御所見を承っておきたいと存じます。  また、二人でつくった財産の名義変更は自由であるべきで、贈与ではないと考えますが、いかがでございましょうか。  お尋ねの第三点は、相続税法、基本通達と四十六年七月の税制調査会の答申の中の見解についてお尋ねをいたします。相続税法基本通達では、離婚の場合は分与財産が妻の持ち分として非課税になっております にもかかわらず、さきの例で申し上げたとおり、婚姻継続中の場合は贈与として課税されます。このことについて私は昭和四十六年三月二十日の予算委員会でその不合理性を追及いたしました際、当時の福田大蔵大臣は民法の夫婦別産制に問題があると御答弁になりました。しかし、それに対して参考人として同席されておりました民法の大家、我妻先生は、何もかも民法に押しつけられては迷惑だ、税法を変えることで解決がつく旨述べられたのでございます。  また、税制調査会でも、四十六年七月の答申の中で、「基本的に相続税は世代をこえる場合に課税すれば足り、夫婦間の財産移転はすべて非課税にすべきである」との見解が出されております。これは四十六年三月の私の質問と、それに対する我妻先生の御答弁と同様な考えが、一般庶民の中にはうはいとしてわき上がってきた影響だと考えますが、いかがでございましょう。  私は、二人で取得した財産について、贈与税や相続税を取り立てる現在の税法は、明らかに国民感情にそぐわないものと考えるわけでございます。決断と実行の田中総理こそ、庶民の願いにこたえて、この不合理な税制を早急に政正をして、夫婦間の贈与税、相続税は廃止していただけると私は期待をいたしておりますが、御決意のほどを承りたいと存じます。  なお、こうした夫婦財産制の実態調査のため、国内はもちろん、外国制度も調べていただきたいわけでございますが、いままでの決算状況では費用の点でまことに不十分でございます。来年度の予算に十分な配慮をいただくことはもとより、今年度においても移流用による予算措置を講ずべきだと考えますが、いかがでございましょう。  私もここに妻の財産所有実態調査及び家計実態調査についての私案を持っております。すでに総理のお手元にもお届けを差し上げてございますので、政府においてこれらに積極的に取り組まれる際の参考に供していただければまことに幸甚でございます。  最後に、四十五年度における夫婦間の贈与税について、その内容、件数、額など詳細に承りたいのでございますが、時間がございませんので資料として御提出をお願い申し上げる次第でございます。  一潟千里にしゃべりまくってまいりましたが、総理の適切なあたたかい御答弁を期待いたします次第でございます。よろしくお願いをいたします。
  58. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も我妻先生の文章は読みましたし、あなたがいまお述べになられたことは、どこの家庭でも、国民全体が問題にしておる問題であるということはよく理解いたしております。  結論としては、法制上の問題——憲法上の問題とか、法制上の問題が一つございます。もう一つは、具体的に実情に合うように、国民感情が納得するような税制でもって処理するという問題があると思います。  法制上の問題というと、全くいまお述べになったような、私もあなたと同じ考えでございますが、そういう考えとは逆なようなことが、憲法上、だんだん判例として出ております。親子も別である、夫婦も別である、全く別であると。そういうことを言うから、子供は親を扶養しなくてもいいんだ——これはまあその意思がなけりゃしようがないでしょう。しかし、子供が殺人を犯して賠償金を払うときには親が払うわけでございます。そうすると、いまの税理論で言うと、それは子供に対する贈与になって、賠償金は払ってやった——人をひいた、相当な賠償を払わなきゃいけない、親はそのために半生をささげなきゃならぬかもしれません。その上になおせがれに対する贈与税まで課税されたんじゃこれはたいへんなことでありますが、そこらはまあやっと、子供が払わなければならない賠償金を親やきょうだいが払った場合、課税の対象にまでは現実的にはしておりません。理論的には贈与であるということでありますが、これはやっておりません。これは、親が子供に金を貸してそして利息を取っておるような書類があっても、実際は、利息は払わぬし、もうお貸しくだされじゃないかというようなことで、その金が特に株になったり家にしている場合は贈与税を課するというような、相当、具体的には調整が行なわれております。そういう意味で、制度上のたてまえから言うと夫婦別産制というのを夫婦間においてはとっておるわけでありますが、いまあなたが述べられたように、一つの店を経営して今日の中小企業や零細企業を興してくるということは、必ずしも男よりも奥さんのほうにうんとウエートがあるかもしれません。しかし、財産の名義は、全部、営業権を含めておやじさんの名前であると。少なくともこのつくった店が二人の店であるということはもう疑う余地もないわけでありますが、ただ、別産制をとっておって、初めから二分の一ずつ登記をしておらなかったということから言うと、我妻先生の奥さんが言われるような状態と同じような問題が中小企業・零細企業にはたくさん起こっております、ですから、そういう問題は、これはまあ審議会の決定を待つという、まあ制度上の問題はそうだと思うんです。そして、いまの税制上の問題は、三千万円の特別控除であるとか、均分相続制度の中でも妻が受ける額というものは非常に大きくなっておりますが、こういうものをもっと、いわゆる別産制をとっておっても、実情に合うように、夫婦共有の財産というものに対しては、贈与税の対象になるというような課税は、非課税限度額をうんと上げるとか、やっぱりそういうことでないと困ると思うんです。主人がなくなると小さなうちでも売らなければ財産税が払えないということでマンションに移らなきゃいかぬというのはたくさんある例で、ほとんどの例がそうであります。まあ、一定規模以上のものなら、妻が死ぬまでの間は——両方とも夫婦がこの世を去るまでのうちはそれは課税の対象にすべきでないと。これは、次の世代の、いわゆる長男とかむすことかに均分相続される場合でありますが、そうでない場合に課税対象にするのはおかしいという議論は、私自身も議論している問題でありますが、いずれにしても、気持ちはあなたと同じでございますし、これが国民大多数の考えであるということも理解をします。制度上の問題として別産制をとっておるというたてまえ上から考えると、すべてを贈与税の対象にしない、すべてを共有財産にすると踏み切るまでには、これは審議会の議を経て法制上の手続を行なわない限りむずかしいと思うのです。ただ、現実的救済手段としては、非課税限度をうんと上げるというようなことで当然解決をしていかなきゃならない問題であるということは私も理解をしておりますし、十分勉強いたしたい、こう思うわけでございます。
  59. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 まだちょっと時間がございます。  総理、私は、やはり国民感情に合ったように税法を改正するということが一番大事なことではなかろうか。いわゆる民法が改正できなければやれないという問題でもない。だから、税法でやれるところは、ひとつ、総理の決断と実行でやっていただきたいということをお願いしているわけでございますから、その点にしぼって、もう一度お答えをいただきたいと存じます。
  60. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この答弁書の中には三千万円ということは相当大きな金額でございますとか書いてございますが、そういうことではなく、数字や金額というものももちろん大切なことでありますが、やっぱり、名義の問題とか、二人でもって働いたものを——私が勤倹貯蓄をしたためにやっと真鶴に家を買えるようになったが、どうして私の名前にできないんですか、こういう感じであって、私は、税制上の非課税限度を上げるとかいろいろなことで救済できると思うんです。しかし、数字だけではなく、気持ちの上でどうもよくないということになれば、この限度までは、夫婦間における贈与というものは贈与とみなさないということでいいと思うのです。そして、両方がこの世を去るまでの相続税の特例を設けておけばいいわけでありますから、そういう問題に対しては国民感情が納得できるような方向で私自身も検討を続けてまいりたいということを申し上げます。
  61. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 田中法務大臣はそういう理解ある態度をお示しになって、これは共有であると、結婚してからつくった財産は共有であると、こういうふうにおっしゃいました。そしてまた、福田元蔵相からも積極的ないろいろいい御発言もいただいたわけでございます。ですから、田中総理も、ぜひどうぞ、ひとつ、こういった結婚後二人でつくったものは贈与税をとったりするのはおかしいんだと、相続ではないんだということを十分御理解をいただきまして、これは、税制調査会の答申のように、ぜひ、夫婦一緒になってつくったものは、財産の移転であってもこれは決して贈与ではないんだと、ここをしっかりと踏まえていたただきまして、税制改正、税法の整備に取り組んでいただきますことを強く要望をいたしまして質問を終わります。
  62. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) よく理解します。
  63. 塚田大願

    ○塚田大願君 総理、去る六月十三日、当参議院の本会議におきまして、中曽根通産大臣の王制発言なるものをめぐって緊急質問が行なわれたことは御承知のとおりであります。さて、この緊急質問におきまして、わが党の岩間議員が、去る六月七日の衆議院の内閣委員会における総理の答弁について質問の議事録はすでにできておるわけでありますが、この内閣委員会におきまして、総理は、天皇の中立的立場は旧憲法時代から一貫しておると、こうはっきり述べられた。これについて質問いたしましたら、総理は、たいへん形相もすさまじく、いや、おれはそんなことを言ってはおらぬ、おれは、現行憲法時代のこと——現行憲法のことを言っておるのであって、それは問題のすりかえだ、こういうふうに言われたわけでありますが、これは今日この議事録を見れば私は明快だと思うんですね。総理はどうも予定質問に気をとられて本人の質問を十分聞いておられなかったのかとも思われるんですけれども、まあその辺、わかったわかったの角さんの早とちりだというふうにも見られないこともないけれども、しかし、やっぱり問題は非常に重大なんで、こういうごまかしを私は通すわけにはいかない、そう思うんです。ここであえて総理の答弁を、この衆議院内閣委員会における答弁を私読みます。まあ、前後ありますが一番肝心なところはこうです。「私たちは、旧憲法時代のことを思い出してもそうでありますが、お相撲をごらんになられても、天覧相撲が行なわれても、いずれが勝っても拍手もなされないという、非常に中立的なお立場であるということは、旧憲法時代から一貫しておるのであります。(発言する者あり)事実を申し述べておるのであります。」云々と、こういって総理は答弁をされたんです。ですから岩間議員はこのことを質問したんですよ。そしたら総理は、これは問題のすりかえだと、こう言われたけれども、これは非常に明確だと思うんです。そこで、私は総理質問するんですけれども、この問題のすりかえだという答弁は明らかに総理が間違えておられる。決して問題をすりかえたのではありません。岩間議員の質問もここにございます。岩間議員はこう言ったんですよ。「田中総理は、六月七日の衆議院内閣委員会で、天皇が国政に関与するようなことはなく、これは旧憲法時代から一貫していたという趣旨の答弁をしましたが、この発言はきわめて重大であります。」と、そして三点について質問をしておるんであります。ところが、あなたは問題のすりかえだと言ったんだが、その問題がすりかえでないということ、むしろ問題はあなたの答弁が間違っていたということをここで率直に認めて、それは訂正すべきではないかという点が一つ。  それからもう一つは、天皇の中立的立場は旧憲法時代から一貫しているところではっきり述べられている。これはやっぱりはっきり間違いであることはもう明白だと思うんですが、このあやまちを訂正して、取り消されるべきだと私は考えますが、この点について総理はどういうふうにお考えですか。答弁はひとつ簡潔にイエスかノーかでお答えいただきたい。
  64. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いみじくもいま塚田さん言われたとおり、「前後たくさんございますが」というところに問題があるんです。天皇陛下の問題に対しては旧憲法時代の問題を議論されておったんじゃありません。私が内閣委員会に呼び出しを受けた理由は、内奏の問題とか、内奏に関して増原前防衛庁長官が記者会見をした問題に対してでございます。しかも新憲法下における陛下がどのような御発言をなされたのか、あったのかないのか、こういう問題が主題で呼ばれたのでございまして、旧憲法時代の御前会議の話などが議題で私を呼んだわけじゃありません。そんなんなら法制局でも学者をお呼びになればいいのであって、私に内閣委員会に出頭して質問に答えよとの要請は、これは増原発言、その後の閣僚の内奏その他に対してただすということが議題であったことは、速記録の前段を見れば十分御理解ができることでございますが、旧憲法時代云々という問題は全然議題になっておらないものでございます。ですから私は前段には、国政に影響のあるような御発言をなされることは全くありませんと申したのでございまして、新憲法下におけることを説明したことは明白である。これはもう前提条件が旧憲法時代を通じての天皇のことを学問的に究明をするような趣旨に出ずるものでなかったということは、だれが見ても明白な事実でございます。  でもその次に旧憲法時代を思い出しても云々と申し上げたのは、これは天皇陛下が行なわれるいわゆる天覧相撲の話を例にいたしまして、天皇陛下のお人柄を説明したわけでございまして、天皇陛下が言われないか言われたかというようなことは君は立ち会ってないからわからないじゃないかということでございましたから、増原長官はこんなことは絶対なかったんですということで、職を賭してなかったことを証明せられたわけではありませんかと、まして旧憲法時代であっても陛下のお人柄は、拍手もなされなかったというお人柄を御紹介を申し上げて私は理解を求めたにすぎないものでございまして、このような過程における発言のその部分だけをとらえて、御前会議もあったじゃないかということになれば、それはもうすりかえであると、こういうふうに断ぜさるを得ないのは申すまでもありません。  私は、いまの萩原さんの御質問に対しても幾つか答えておりますが、その発言の過程においては結論と違うような、その部分だけを持ち出せば、ございます。そうじゃなく、それは一貫しておるものは何かというと、制度上、民法上の問題はありますが、国民感情というものはあなたが述べられたことと同じと思いますと、だから制度上やり得るものは、税制上の措置でございますから、税制上の措置で努力をいたしますと、こう言っているので、このまん中のその部分だけをとらえて、旧憲法時代も政治に対して一切関知をしなかったと私が述べたということは……
  65. 塚田大願

    ○塚田大願君 言ってるんだからしょうがない。
  66. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 言ってません。
  67. 塚田大願

    ○塚田大願君 言ってるじゃない……。
  68. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 速記録を十分お読みになれば、言っておりません。
  69. 塚田大願

    ○塚田大願君 もちろん内閣委員会のこの質疑が増原問題であることは、これは事実なんです。私、この議事録全部初めから終わりまで読んだ。もちろん増原問題、そして新憲法下の天皇の問題、これが論議されたことは事実だ。しかしながらこの肝心なところであなたはこう言ったんだから、旧憲法時代のことを思い出しても、天覧相撲が行なわれても——天覧相撲が行なわれ、天覧相撲に対して拍手をするかしないか、これはもう個人の自由です。拍手したって悪くはないんであります。スポーツなんだから。負けたって勝ったって拍手したっていい、おかしくはない、こんなよけいなことを言うことがそもそもおかしいんだけれども、しかしここで問題にわれわれがしたのは、要するに旧憲法時代から一貫しておると、非常に中立的なお立場であるということは旧憲法時代から一貫しておるのでありますと、天覧相撲という一つの事例をとらえた、あまりうまくない事例をとらえたけれども、とにかく旧憲法時代から一貫しておると、中立的な立場、これはこういうふうにはっきりここに議事録にまで出ておるものを、あなたはそれだったらここのところは間違ったんだと、言い違いなんだということを認めたらどうなんですか。そうすればすっきりするんです。簡単に答えなさい。
  70. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 認めません。あなたは御自分の意思だけでもって人にそんなことを強制しちゃいけませんよ。私が……
  71. 塚田大願

    ○塚田大願君 事実を言っているんだ。
  72. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私が事実を述べあなたの理解を求めるためにどのような例を述べようと、あたりまえじゃありませんか、そんなことは。どうして、これはあなたはその全文を持っておられるんでしょう。私は時間を持って読みますよ、ここでもって、公の席ですから。
  73. 塚田大願

    ○塚田大願君 おれがいま読んだよ。
  74. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 「憲法の定めるところ」——都合のいいところだけをお読みになっちゃいけませんよ。(笑声)「憲法の定めるところ、天皇は国政に対する権能を有されないということは申し上げるまでもないことでございまして、私も間々上奏も申し上げておりますし、いろいろ内政のことに対して御説明を申し上げておるわけでございますが、陛下が国政を左右される、国政に影響のあるような御発言をなされることは全くありません。しかし、政策に対して反対、賛成というような立場をおとりになるということは全くないということだけは、この際明確にいたしておきます。私たちは、旧憲法時代のことを思い出してもそうでありますが、お相撲をごらんになられても、天覧相撲が行なわれても、いずれが勝っても拍手もなされないという、非常に中立的なお立場であるということは、旧憲法時代から一貫しておるのであります。(発言する者あり)事実を申し述べておるのであります。でありますから、もちろん新憲法になって陛下がそのようなことをされるはずはないということは、私自身の経験に徴しても、憲法上も当然でありますし、事実の上においても信じておるのであります。」と、こう述べておるんですから、全文を一貫してとらえなければ、まん中だけをとらえてやることはすりかえると言わざるを得ないじゃありませんか。
  75. 塚田大願

    ○塚田大願君 もう時間が来たんだ。だから私はそんな前後のややこしいことを一々もう読まなかっただけの話で、しかし問題はやっぱりはっきりしているんだよ。あなたはどういう強弁をされようと、こう言ったことは事実なんだ。なるほど前後は新憲法のことを言っているかもしれない。しかしまん中でそういうことを言ったのだったら、これは明らかにあなた自身の論理が矛盾しているんだ、これを明確に解釈をしなければいけない。それを、一方的に自分の都合のいいところだけやっているじゃないか。筋違いだと言うのはとんでもないと思う。あなたの言われていることは明らかに詭弁だ。こういうことは通りませんよ。こんな矛盾したことを、しかも国会の場で言ったことをあなたは訂正しようともしない。  そこで私最後に、これ時間がないから詳しい質問はしませんけれども、質問したい。  一つは、やはりあなたの発想の中には、旧憲法と新憲法との天皇の地位というものが不変であるということをいわば前提にしている考え方というのがある。もっと言いかえれば、主権在民という今日の憲法の根本精神を否定する考え方だと私は思う。それから第二には、旧憲法下における天皇があの統治権の総攬者である、陸海軍の統帥権を持ち、そしてあの大戦を起こした、天皇の名においてあの第二次侵略戦争は行なわれたのですよ。そうでしょう。そして、日本人だけでも三百万、アジア人にどれだけの被害を与えたか。これは天皇の名において行なわれた。この旧憲法と新憲法の相違というものをあなたはほとんど無視されている。その点についてあなたはどういうふうにこの旧憲法と新憲法の相違を自覚しておられるか。新憲法に対する認識をどのようにしておられるか、その新憲法に対する感覚というものが全くずれているということを私どもは心配をするのです。これは小学生、中学生でも知っていることですけれども、あらためて総理大臣にお伺いして、私の質問を終わります。
  76. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は欽定憲法と新憲法の違いは十分理解をいたしておるつもりでございます。これは主権在君、主権在民の違いで、全く違うということは承知をいたしております。私は新憲法下第一回の国会に議席を持った議員でございまして、旧憲法時代に議席を持ったことはないのです。私は、そういう意味で、新憲法の思想というものに対しては理解をすること人後に落ちない、こう考えております。
  77. 野末和彦

    ○野末和彦君 総理もだいぶ興奮なさっているようで、ひとつのんびりとやりましょう。むずかしいこと全然わかりません。常識的なやさしいことをやります。  政府は週休二日制を推進するという基本態度だということを聞きましたが、小学校、中学校の場合もやはり週休二日ということでいくのか。そうとすれば実現のめどを大体何年度ぐらいにおいて検討中なのか、それをひとつ教えていただきたい。
  78. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 週休二日制というのは時代の要請、時代の流れというふうになっておりますので、政府もこれを推進する立場にございます。しかし週休二日制という問題を考えるときに、定年延長という問題もありますので、そういう問題をどうするかという問題もあわせて考えておるのが一つあります。  もう一つは学校の問題がございます。学校の問題は、まあ文部大臣はモデル校をつくって少しやってみようということでいま勉強しておりますが、これは国民的世論というものがまだ習熟しておりません。これは住宅問題が解決しないうちに学校の週休二日ができるのかという問題、一つあります。もっと社会施設や週休二日という二日間の子供の教育、社会教育というものができるような施設というものとマッチしないものというのはたいへんだと思います。一週間のうち二日休んだら五日間というのはほとんど忘れてしまうということもあります。そういう意味で週休二日というものを、考え方によっては週に土、日曜日休むということも週休二日だが、年間を通じて夏季休暇と冬季休暇の二週間を四週間にするというようなことも週休二日と実際は何ら違わないじゃないか、そういう国民の意思を十分ただしながら、子供の教育制度というものをマイナスに追い込まないようにしながら、そして合理的な結論を出したいというのが私の考えであります。
  79. 野末和彦

    ○野末和彦君 かなり総理大臣のほうが文部大臣よりもいろいろと実情がわかっていらっしゃるようで安心しましたけれども、この場合私が、言いたいことは、いまの都会の子供、特に都会の子供というのは、休みになりますと塾に行くか盛り場に行くかというような傾向が強くなっているのですよ。特に小中学生の場合の進学塾、これがいわばブームになってくるというのは、いわゆる学校もたよりにならない、学校に対する不信感が親の間にあるわけで、非常に憂うべきことだと思って週休二日を簡単に推進されては困るというつもりだったのです。  そこで母親の立場でいま考えますと、どうしても休みができたら進学塾に行かせたくなっちゃうのです。ところが進学塾というのがまた問題で、教育のあり方の根本にかかっているのですね、進学塾がはやっているのは。  で、ひとつお聞きしたいのですが、特に母親というのはなぜこうやって進学塾に子供を競って行かせようとしているのか、学校だけで十分じゃないか、その点どうお考えですか、なぜ行かせるのですか、塾へ。
  80. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは日本制度そのものが問題の根本になっているわけであります。学校というのは入学し、在学し、卒業することが目標ではなく、学問を修めることが主軸でなければならぬわけでございますが、日本学校に入る、有名校に入るということに、全神経をすり減らすほどの努力をするわけであります。これは試験制度をとっているということが問題だと思うのです。学校へ入ってからみんな勉強しないというのではありませんが、外国の学生というものは学校へ入るとなかなかたいへんである。ですから日本の学生がアメリカの学校へ行っても卒業するのはわずか四%、入学したことに意義があるということで、卒業はできないと、こういこうとがありますが、これはやっぱり卒業するということは勉強しなければ卒業できないということであって、入学することによる英才教育のような過去のしきたりがまだ残滓として残っているのだと私は思うのです。だから受験勉強しておって、去年の出題は全部こうだったと、ことしは大体こうだろうというふうに、そこまで覚え込んでおらなければ入学できないというやっぱり制度とか現実の問題が予備校へ通わせると。これは子供が好きだからお花にやるとか、子供が英語がばかに好きなんだ、——この子は非常にそろばんが好きだからそろばん塾にやるというのとは違って、もう二年も前から上級学校に入るための、入学試験にパスさせるための勉強ということの私は塾、これは意義がないとは思いませんよ、子供のとき覚えることはいいことだと思いますが、弊害も相当あると思います。
  81. 野末和彦

    ○野末和彦君 どうも総理の答弁が丁寧過ぎて、時間十分しかないので、丁寧過ぎてどうも中心からはずれていっちゃうんで困るのですが、要するに塾へ行かせるというのは総理のおっしゃったようなことなんで、簡単に言ってしまえば学歴がほしいわけですよ、勉強じゃなくて。学歴がほしいというのは、要するに学歴のほうがその人の努力や実力よりも幅をきかせているといういまの社会の風潮があるわけですよ、当然でしょう。だからいわゆるエリートコースへ将来乗せたいという親心で塾が繁盛する、これはあたりまえなんですが、学歴がやっぱり実力以上に幅をきかすというこの風潮、これはどう考えたって好ましくないわけで、総理もそう思うでしょう。
  82. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 学歴論をちょっと一分で言えといってもなかなか無理なんです。学歴というのはあるにしくはないんです。しかしそれは長い歴史の中から生まれてくるものであって、国民がどう評価するかということに帰結をするわけでございまして、学歴ということは学校を出たことを証することでありますから、学歴はないよりもあるにしくはない。ただ学歴があっても学問のないものは、これはますます社会を混乱せしむることでございますから、これはやっぱり改めなければならぬ。しかも自分が学歴があるにもかかわらず、社会がこれを迎えない、私を迎えない社会や政治が悪いんだというに至っては、これは学歴の弊害の面をあらわすだけのものでありまして、これらはやっぱり制度の問題というよりも、これは国民自体がやらなければならぬ。エジソンには学歴がなかったし、そんなことは枚挙にいとまのないほどあるわけでございます。そういうことは社会が、国民全体が評価をする問題であって、制度上の問題として政府が学歴は要らないんだ、卒業証書は要らないんだという制度をとるわけにもまいりませんし、一切博士や学士を国家試験にするんだということも、いますぐ早急に解決できる問題ではありませんし、ただ学歴というものはあるにしくはありませんが、学歴がその人を不幸にしておるというような、たまたまの例を見ると考えさせられる一面であると、こういうことでございます。
  83. 野末和彦

    ○野末和彦君 制度でどうしようなんて全然聞いてないんですよ。丁寧過ぎて困るんですよ。要するに学歴によって賃金に、それだけでですよ、学歴だけで賃金に格差があったり、あるいは就職する場合にも要するに指定校制度なんというのがあって、やっぱり大学を出ているとか、あるいはどこの学校に行っているか、すごくいまそれが問題になっているということを好ましいかどうかを総理にお聞きしているわけで、当然学歴と学問は違うとか、そういうことを言い出したらそれこそ一分じゃだめですよ。  私が考えるのは、要するに学歴偏重という社会、これがやっぱりいまの親たちにとって非常に困るので、もし実力が正しく評価されるような時代だったらば人間教育というものがもっと学校の場でできるんですよ。それをほっぽり出して学歴、学歴、いい学校、いい学校となるのは、やっぱり学歴偏重だということなんで、これは当然だと思うんですね。  そこでぼくは考えるのは、総理日本列島改造論のほうはだいぶ色あせてきましたから、やるべきことは、この教育の問題に限れば、これはむしろ劣等感改造のほうですよね、列島じゃなくて。(笑声)学歴がないゆえに非常に恵まれないという人、たくさんいるんですよ、世の中に。だからそういう人たちのコンプレックスを解消することのほうがむしろ先なんですよ。  ここでひとつ総理にお願いしたいんですよ。高級官僚を見ても、とにかくみんな東大出、これはいいですよ、東大出の中でまた競争して行く、悪いと言うんじゃないんですが、何しろ何か世の中で偉くなるのは総理を例外として全部学歴、こういうことではだめなんです。そういう悪風を打破するきっかけとして総理が、あなたができることがあるわけです。今度内閣を改造するときに、ひとつ学歴がないという意味じゃなくて、議員以外から大学なんか出てない、学歴なんかない、小学校しか、中学校しか出てないが、りっぱな人材である、そういう隠れた人材を発掘して、それで抜てきする、そういうようなことをやった場合は絶対世の中の考え方ががっと変わってくると思うんです。どうですか。今度の改造でね。(笑声)学歴のない大臣を議員以外から起用してみようという意思、気持ちありますか。
  84. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま内閣改造を考えておりませんので、改造した場合のことを申し上げることはできない。しかし、あなたが述べられるように、院外からという議論は前からあるんです。歴代内閣からあるんですが、憲法の定むるところ、その半数は国会議員でなければならない……。
  85. 野末和彦

    ○野末和彦君 一人でいい。
  86. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 半数は国会議員でなければならないという精神というものは、やはり国会議員を主軸に置いた議員内閣制をとっておるということがございますので、それは確かにあなたが言うように、一人でも閣外から入れれば人気がよくなるかもしれぬし、マスコミははやし立てるかもしれませんが、なかなか大臣になろうという方々も少ない、希望者もなかなかない。こういうことであります。あとは東大偏重とかいろいろなことがございましたが、制度として登用試験というのがございました。このごろ私学出の局長や次官もたくさんおりますし、だんだんと直されつつあるということは言えると思うのです。ただ上級公務員試験とか下級公務員試験とかいう制度上の問題がありまして、有資格者、特進、無資格者というように制度の中にはあるわけですが、民間の自由企業の中には何もないのです。何も学校出ていない人でも一千万も売れる名著作をやっておりますから、だから制度の中ではいろいろ国家機関とかそういうものには制度上の問題があって、これは学歴がやはり旧憲法時代から偏重である。これは公選になってきて議員に出てくれば、全く学歴も何も要らぬわけでございまして、そういう道は憲法上ちゃんと開かれております。ただ私は大ざっぱに言って、学歴というもう過去の一つの経歴さえあればところてん式にいくのだという社会制度というものはやはり国民はだんだんと是正していくと思います。
  87. 野末和彦

    ○野末和彦君 国民が是正する前に総理がそういうきっかけをつくれば一番いいとそう思って、制度どうこうじゃないのです。総理の気持ち姿勢の問題でお聞きしたいのです。話がはずれちゃって週休二日の話に戻れなくなりましたけれども、とにかく週休二日を検討するのに総理が非常に慎重であり、かなりいろいろわかっていらっしゃるようで安心しました。何でもかまわないから週休二日にすればいいとういのではありませんから、その点はよく考えた上で取り組んでいただきたい。きょうは時間が短いから、思い切ったことがやれなかったけれども、この次にまたやりましょう。
  88. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 渡辺君から質疑は取りやめるとの申し出がございました。  本日の総括質疑は一応この程度にとどめます。次回の委員会は明後二十日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十六分散会