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国務大臣(大平正芳君) いまるる難民救援につきまして御批判をいただいたわけでございます。塚田さん、たいへん潔癖でございまして、解放区、難民等につきまして、非常に歴然とした形態においてあるにかかわらず、それを顧みないで何か特定の政治目的に偏向した
処理がなされたかのような印象を受ける御批判があったのでございますが、申すまでもなく、ベトナムの地帯のことは私
どももよくわからないのでありまして、どこが解放区であり、どこがサイゴン
政府の支配地域であるのか、それは固定しておるのか、移動しておるのか、そこにおる人が一体解放勢力の信奉者であるのか、そうでないのか、それが判然としないところにベトナム自体の
性格というものがあるように思うのでありまして、あなたが言われるように、潔癖に問題が
処理できるような事態に早くなっていただかなければなりませんし、そうして公正な行政が行なわれるような事態を招来すべくわれわれといたしましても
協力しなければならぬと思うのでございます。
それから第二に、
日本政府の立場でございますが、
日本政府がなまの現場におきまして、あなたが言われるような区分をこの目で見定めた上で、大事なこれは税金でございますので、適正に救援目的に合致した
処理をするのが一番ベストだと思うのであります。けれ
ども硝煙の地でございまして、そういうことをやること自体が不可能でございまして、しからば、事態が平穏になりまして、また事態が明確になりまして、そういうことを
実行できるような段階になるまでそれでは人道的救援活動というものを一応御遠慮すべきかどうかという選択は、確かに
政府にあるわけでございますが、
政府といたしましても、そういう事態を前にいたしまして手をこまねいておるわけにもまいりませんで、何か手だてがないものかということを
考えた場合に、公正な立場で人道的な活動として国際的な成果を持っておる国際赤十字並びにその下部機構、そういったものを信頼してそれの能力の及ぶ
範囲でわれわれの意図を実現していただくということを選択したとしても、それは塚田さんにおかれましても御理解をいただける筋道であろうと思うのであります。
しかし第三に、しからばこの国際赤十字社というものが十分期待にこたえる能力を持っておるかどうかということでございます。人間がつくりました組織でございますので、間然するところなく
処理能力を持つということはたいへんむずかしいことだと思うのでありますが、こういう機関を御信頼して、そしてそれの救援活動に応分の拠出をするということにつきましては、あなたが言うように、完全ではございませんけれ
ども、
日本政府の選択といたしまして、それ以外にチョイスがあれば格別、そういうことをやりましても、あながち私は非難さるべき筋合いのものではなかろうと思っております。
第四の問題として、最後に御
指摘になりました。しかしながら大切な国費を拠出いたしておるわけでございますから、救援目的に合致したようにこれが充当されるように国際赤十字社を督励し、
問題点を
指摘して公正に配分ができますように
努力しなければならぬことは御
指摘のとおりでございまして、中間的にただいままでの難民救援運動というものについての御報告はちょうだいいたしておりますけれ
ども、今後一そうこの活動が公正にまいりますように実態に適した姿になるように万全の御
努力を願えますように、私
どもといたしましても国際赤十字社に御注意を喚起して、御
趣旨に沿いたいと
考えております。
第五番目に、事態はパリの新たな協定の締結によりまして、和平の定着の度合いが深まってまいりましたことは、御同慶にたえないわけでございまして、先ほど大森君からも申し上げましたとおり、この新たな協定もあわせて現協定とともに誠実に
実行されまして、事態が定着の方向に行ってまいりますことは、これからのわれわれの援助というものにつきまして明るい展望をもたらすと思うのでありまして、こういうこの協定の忠実な順守ということ、私
どももこれを尊重しなければなりませんし、またそれを踏まえた上で、それの平和の方向に定着してまいりますように、
日本政府といたしましても応分の
協力をいたしてまいりたいと
考えております。