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1973-11-28 第71回国会 参議院 決算委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十一月二十八日(水曜日)    午前十時三分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         田中寿美子君     理 事                 片山 正英君                 世耕 政隆君                 小谷  守君                 中尾 辰義君                 塚田 大願君     委 員                 河本嘉久蔵君                 寺下 岩蔵君                 二木 謙吾君                 片岡 勝治君                 杉山善太郎君                 鈴木  力君                 藤原 道子君                 村田 秀三君                 二宮 文造君                 栗林 卓司君                 野末 和彦君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山中 貞則君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        防衛政務次官   木野 晴夫君        防衛施設庁長官  田代 一正君        防衛施設庁施設        部長       平井 啓一君        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省アメリカ        局外務参事官   角谷  清君        外務省中近東ア        フリカ局長    田中 秀穂君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  松永 信雄君        大蔵省理財局国        有財産第二課長  川崎 昭典君        運輸省航空局長  寺井 久美君        会計検査院事務        総局第一局長   高橋 保司君        会計検査院事務        総局第二局長   柴崎 敏郎君    参考人        日本輸出入銀行        総裁       澄田  智君        海外経済協力基        金総裁      大来佐武郎君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和四十六年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十六年度特別会計歳入歳出決算昭和四十六年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十六  年度政府関係機関決算書内閣提出) ○昭和四十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書(内閣提出) ○昭和四十六年度国有財産無償貸付状況計算書  (内閣提出)     —————————————
  2. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和四十六年度決算外二件を議題とし、本日は外務省及び防衛庁決算について審査を行ないます。  午前中は、まず外務省決算につきまして審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。  議事の都合により、これら外務省決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれも口頭報告を省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) それでは、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 鈴木力

    鈴木力君 決算質疑に入る前に、まず大臣おめでとうございました、これからまたたいへんな任務だと思いますが。それで大平外務大臣もまた引き続き重要な任務につかれたということでありますが、最初に、どうも田中内閣になってからの外交政策といいますか外交の実態を私ども拝見しますと、何かすっきりしないといいますか納得できない面が非常にたくさんあるんです。それはどういうことかといいますと、総理みずから外務大臣も御一緒にされてのソ連との交渉をなさいました。  北方領土あるいは漁業権安全操業等交渉をされましたけれども、これもどうも私どもから見ますと、政府が言っているように、成果があがったというふうにはどうしても見られない。特にソ連での政府交渉の中に、北方領土なり漁業権なりそれぞれの主張をなさるということについては、私ども当然だと思いますけれども、それの中に、何かシベリア開発との取引で何かやろうというような、そういう形がどうも見えてならないと思います。  それから最近では中近東政策がいわゆる石油問題という形の変わったといいますか、質的に変わった形で表へ出てくる、そういたしますと日本外交方針をまた変更を加える。変更を加えますけれども、そのことについてどうも中近東の問題も対アラブ政策等もすっきりしたようにも見えておりません。何か事が起これはやり方を変えていき、何かにつっかかればまた曲がっていく、このことを見ただけでも将来どこへいくのかさっぱりわからんといったような、何かそういう感じがするんです。  ついでに申し上げますと、日中航空協定もまだ締結をされていない、大体日中の共同声明を拝見をいたしますと、詳しいことは申し上げませんけれども、少なくとも日中航空協定があの共同声明から見る限り、こんなに難航するとはどうしても思えない。そういたしますと、田中外交といいますか、大平外交田中内閣外交がこれもまた日中共同声明を出した時点と今日との間にどうも一つの矛盾があるのではないかというふうにも見られる。  また金大中事件につきましても、これもどこまでたってもすっきりしていない、こういうふうに、最近だけを拾ってみましても私は日本外交国民にも納得がされないし、他からも批判をされるというようなことが相当あるのじゃないかと思います。したがいまして、あと主題に入ります前に、まずいま申し上げた諸問題等につきましての外務大臣の御所見を先に伺っておきたい、こう思います。
  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本外交がどうもすっきりしないという御批判でございまして、私もある意味におきまして鈴木さんの御指摘につきましてすっきりしない面を否定できないと思っております。弁解ではございませんけれども世界全体がすっきりしないわけでございまするし、またわが国外交も内政と独立にあるわけじゃございませんで、国内世論国内的な要請との連関におきまして展開してまいらなければならぬものでございまして、一口に国内世論あるいは国内要請と申しますけれども、これもまた多岐にわたっておるわけでございまして、私どもがその中に処しまして、総体的に日本外交としての路線を可能な限り守ってまいりつつ、国際信用を可能な限りそこねないように国内的要請にもこたえてまいらなければならないし、変転する世界情勢に対応していかなければならんというたいへんむずかしい課題を背負っておるということもあわせてひとつ御理解を賜わりたいと思うのでございます。  最初対ソ外交でございます。総理の訪ソは、私ども日ソ善隣関係未来悠久にわたりまして維持してまいらなければならぬわけでございますので、できればできるだけ早い機会最高首脳の間で相知っていただき、相互の理解を深めていただく必要があると考えておりまして、成果について幻想を持つことなく、まず接触を持たれることが必要であると考えて、田中総理にお願いをいたしたわけでございます。しかし、総理が訪ソするとなりますと、国民の側に、懸案についての交渉が行なわれて成果を期待されることもまた当然のことであると考えておりまして、そのラインに沿いまして総理といたしましてもベストを尽くされる立場にあると思います。  そこで、懸案の領土問題がシベリア開発等の問題との間であるいはディールされたにおいがするというような御指摘でございましたけれども、私どもはそういうことはいたした覚えはないのであります。領土問題というのは本来わが国の固有の領土であるものをお返しいただきたいということでありまして、これには論理的に何ら代償を伴うものではないと思うのであります。経済協力案件というのは全然別個案件であると私ども考えておりまするし、ソ連側もまたそのように承知いたしておられると了解いたしております。したがって、もしそういう御理解があるとすれば、そうでないというように御理解を賜わりたいと思うのであります。  それから第二のアラブ政策中近東政策についてのお尋ねでございますが、中近東政策につきましても、わが国として基本政策を変えたわけではございませんで、一九六七年の国連決議二百四十二号の彫りの深い解釈を明確にいたしたということでございまして、中東紛争の早期かつ平和的な解決を促進する意味におきまして、わが国といたしましてはこの決議をこのように読むということを明らかにしたわけでございます。基本のこれまでの考え方をこの際さりげなく変えたという性質のものではないと御理解をいただきたいと思うのであります。  日中外交懸案でございまする航空協定についてのお尋ねでございます。この点は去年からすでに交渉を始めておるわけでございまして、日中両国におきましてこの問題について休息することなく、終始接触を持って解決への努力を傾けておるわけでございます。こういう問題を解決するにつきまして、われわれがよるべき基準は申すまでもなく日中共同声明でございまして、日中共同声明ワク組みをはずすようなことは考えられないことは申すまでもないことでございまして、このワク内におきましての解決でなければならぬということは、私ども十分心得てやってまいっておるつもりでございます。ただ問題は、日中航空協定上の問題ではなくて、事実上日台間にありまする現実航空往来というものをどういう態様において維持してまいるかということにつきまして、日本政府の側におきまして苦慮いたしておるのが現実でございます。これとても国の内外の十分な理解を得て解決をいたしたいと存じまして、これまた引き続き精力的に問題の処理に当たっておるわけでございまして、私どもといたしましてはできるだけ早い機会解決にこぎつけたいと念願いたしておるわけでございます。  たいへんむずかしい世界情勢でございまするし、世界全体が大きな地殻変動を経験いたしておる状態でございまして、こういう状態に処してわが国外交をどのように切り盛りしてまいりますか、たいへんむずかしい課題で、私どもの微力遠く及ばないわけでございますけれども、精一ぱい努力いたしまして、大きな誤りのないように処理いたしたいとせっかく努力いたしておりますので、今後御鞭撻と御支援をお願いいたしたいと思います。
  7. 鈴木力

    鈴木力君 いまのこの件はきょうの主題でもありませんけれども、どうしても私はいまの大臣の御説明でもなるほどというふうに納得できない面がまだあるのですね。若干申し上げますと、総理ソ連に行かれたから、これで北方領土が直ちに解決するとは、これはもちろんそうだれも思わなかったと思いますし、そう簡単な問題でないところに取り組まれたということは、これはそれなり評価をされてしかるべきだと、こう思うのですが、ただ、いま私はシベリア開発ということを申し上げましたけれども石油の問題がこう国民に問題が出てまいりますと、そうすると、ソ連に行ってチュメニ油田開発協力をするというようなことを盛んに言い回して、何となしにやってやる、金を出してやるというような態度日本側にあることは、相手国に対しては決して好感は持たれなかった、そういうような評価もあるように私どもは聞いてもおるのです。  これはよけいなことなんですけれども、どうも私は田中総理アメリカからヨーロッパ、ずっとお回りになられた、そのお回りになられたあと新聞記事等で見ますと、必ず金がついて回っておるわけですね。アメリカに行きましても、大学文化協力基金ですかに寄付をするということで、これは一ぺん決算委員会でも問題になりましたけれども、金をということになっておる。ヨーロッパに行っても、フランスに行っても、大学ですかに金を寄付をする、どこに行っても金をばらまいて歩くという印象を非常に与える。私は表現はきわめてまずいのですけれども、昔の物語に成り金大尽料亭遊びをして札をまいて、それを拾わせて満足をしておったというような昔話を、よく総理外国を歩くたびに思い出す。そうしますと、私みたいに柄の悪い見方をする者はそんなにたくさんはないと思いますけれども、やはり私はいわゆる経済アニマルというような形に、エコノミックアニマルというような、それがすべてに通用するという姿勢がもしあるとすれば、相当自己批判を私はすべきだとこう思うし、まあいま大臣が、たとえば開発と領土問題というのは全然別個の問題だ、そのとおりだと思います。そういう点を行動の面でもやっぱりはっきりとさしていただくことが国民納得をできるんではないかというふうに考えます。  それから日中航空協定にいたしましても、これはもう共同声明を出されたときから、日中が正常化されたときから、田中内閣の勇断として非常に評価も高かったわけでありますし、少なくともこの航空協定は非常に大きな国民の期待を持たれておるわけであります。これが共同声明を出したあとに、正常化したあとに一年過ぎてもまだ、いつごろどうやるというめどもついていない。むずかしいというお話はよくわかりますけれども、しかしむずかしいというのは、台湾処理がむずかしいということは、これは中国側にある事情じゃなしに、わが国のこちら側にある事情、そうすると、あの中国一つである、台湾中国一つの省であるということを確認をした以上、その確認に沿ってすっきりしていけばもうすっきりしていかなければならないと思うのであります。台湾のさまざまの問題が、わが国内にある。国論がそこの点について一致をしない。その現状に立ってこの日中航空協定の問題を処理しようとなさると、私はいつのことかめどがつかないだろう。したがって、いま大臣がおっしゃっておりましたけれども、いつごろにこれが、協定締結される見通しなのか、いまどういう状況なのか、一言だけお伺いをしたい、こう思います。  それから、ついでですからアラブ外交につきましても、確かに基本方針は変わっていない、もちろん変わったとおっしゃったらたいへんだと思いますから、変わっていないんだという御答弁は、私はそれで正しいと、こう思うのです。ただ問題は、二四二号の解釈を、それならなぜ出たときに解釈をはっきりしていなかったのか、少なくとも私がどう見るということのような小さな問題ではなしに、アラブ諸国にしても、今度出したような解釈日本側最初からその方針を持っておったとは見ていなかったというのが今度のアラブ側の硬化ということになったのじゃありませんか。そうすると、最初解釈をあいまいにしておいて、そしてどっちに行くか様子を見ておって、あと解釈をしようとすることではこれはどうも外交としては私はあまり適当なことじゃないし、だからすっきりしないということが、国内でもそういうふうな見方が出てくるのではないか。これはまあ、私はアラブの問題についてはそういう御批判を申し上げておきたい、こう思います。まあ実は、このあとからお伺いいたします金大中事件、それから日韓経済協力等ともあわせまして、やっぱり私はいままでに、この日米安保体制というものに、あまりにも少し寄り過ぎておって、中立外交という本来あるべき姿が少し薄れ過ぎておったのではないか、そういう点をやはり反省をする必要があるのではないかというふうに、私はそう思うのですけれども。そういう点から見ますと、たとえばアラブ問題にいたしましても、いまこの石油の問題がこういう状態になったからそこで解釈を出すんだと、これがまたちょっと私は、ほんとうにいま、じゃなしに、最初からやるべきだったと、こう思うのですけれども、同時にもう一つアラブ外交の問題で、たとえば在外公館定員を調べてみましても、どうもアラブ諸国は非常に手薄ではないかという感じがするんですね。どこに何人ということは、これはもう私はここで申し上げません。だが、他の地域と比べてきわめて手薄だ。しかし、アラブ外交というものは中近東全体を含めまして非常にいま重要な地位にあるし、重要な意義を持っている、そういう解釈を前から持っているとすると、そういうたとえば海外公館でも兼館といいますか、兼務といいますか、よその公館が兼務しているようなところをずっと置いておいて、そうしてあなたの国を尊重していますということを口で言ってみたところで、相手国わが国の誠意というものはそう理解はできないだろうと思う。そうすると私は一言で申し上げますと、先に申し上げたような一つ中立外交の本質から、何といっても安保ということをたてにとったアメリカに寄り過ぎておった、そういう批判外国からもされておったと思うのです。アラブ外交でもそうです。同時に、公館の職員の定数だけを見てもあまり重要視していなかったのではないか、そうして石油の問題が出てきてから、あわてて国連決議の二四二号、これの解釈をあらためて出すということではやはりこれは後手外交だ、こういうふうにも思うのですけれども、いまの、大臣に御答弁いただきたいのは、そういう問題と同時に在外公館手薄を、いまそれでいいとお考えになっているのか、あるいはここを少し手直しをお考えになっていらっしゃるのか。それから同時にせっかく石油という問題と、アラブ政府のまあ解釈なら解釈でもいいのですが、再度評議をいたしまして、今後の中近東外交見通しはどうなるのですか。つまりアラブのほうがいろんな反論があります。同時にイスラエルのほうから抗議がくる。アメリカ日本外交批判をする、こういう現象がすでに出ていると思いますけれども、こういう諸問題がいま出ている中での中近東外交、まあアラブ外交の将来の見通しというものはどういうふうになるのかひとつお伺いをいたしたい、こう思います。
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 総理大臣の回るところ、どうも金のにおいがするという御指摘でございますが、これはエコノミックアニマルというのは金を出して、それでもうのどから手が出るほど代償がほしいというようなふぜいをエコノミックアニマル的だというのだとぼくは思うのです。田中さんがやられたことは過去百年間米国並びヨーロッパにおきまして、わが国先進国から学術技術その他多くの知識を吸収さしていただいたわけでございますが、われわれはこの面においては相当一方交通的にフェーバーを受け通しであったと思うのであります。したがって、これに対しましてこの際若干日本といたしましても日本研究のために、あるいは日本語の研究のために出援を惜しまれなかった大学に対しまして、わずかながら返礼をするということは、私はむしろおそきに失っするきらいはありましても決して非難されるべきことではないと私は考えるわけでございますが、その点はひとつそういう意味で御了解をいただきたいと思うのでございます。  それから第二の日中航空協定締結の時期でございますが、先ほど申しましたように航空協定それ自体につきましては越えがたい大きな問題はほとんどないわけでございまして、本交渉に入りますとそう時間をかけずに妥結に至り得ると私は考えております。本交渉に入る前に先ほど申し上げました日台間の航行往来民間レベルにおきましてどういうやり方をやるかということが、片づけなければならない問題としてせっかくいま検討いたしておるわけでございます。しかし、これもいつまでもこういう停滞の形に置いておくつもりはないわけでございまして、きわめて近い機会政府の決断を求めなければならぬと、せっかく用意をいたしておるところでございます。それではいつかということでございますが、この具体的な時限をいま私から申し上げる段階にまで至っておりませんけれども、できるだけ早くやりたいということでせっかく努力いたしておることで御了承をいただきたいと思います。  それから、第三のアラブ外交でございますが、鈴木さん御指摘のように、アラブ外交——機構要員につきまして、たいへん不足であるという御指摘、私もそのとおり考えております。外務省政府の全体の機構の中の一つの部門を担当いたしておりまして、年々歳々の予算並びに定員折衝におきまして、財政当局にも特別の理解をいただいておりますものの、全体のバランスから申しまして、望むように多くいただけないことでございまして、これはある意味においてやむを得ないことと思うのでありまして、限られた要員と経費の中で最大限の外交機能を発揮することが私の責任であろうと考えております。しかし、御指摘のように、欧米外交力点を置かれて、たとえばアラブ外交等が相対的に閑却されたうらみがあるのじゃないかという御指摘はそのまま私も甘受をいたしたいと思うのでございまして、今後は、低開発圏後進開発圏外交というものはたいへん重大になってまいりまして、ひとりアラブばかりでなくて、そういう方面に力点を置いていかなければならぬと考えておりますが、これは、いま石油問題という緊切な問題が出てきたからということではなくて、やはり根っこからほんとう意味信頼と友好を根底から固めていくじみち努力がまず大事だと思うのであります。  それから、石油政策から出ると申しますよりは、その地域開発のために、わが国が何ができるか、何ができないかという点をよくはかりまして、その地域開発の計画に沿って、日本としてやるべきことを着実にやってまいるという、時間をかけた努力が結局におい理解を深めてまいるものでございますので、そういう意味で十分の時間と精力をかけて、本格的に理解信頼を深めてまいるという方向で今後のアラブ外交等に処していかなければならぬと考えておるものでございます。  それから、今度の中近東政策を、いまごろになって二四二号の解釈を明確にするなんていうことはややどろなわ式のにおいがするじゃないかという御指摘でございます。本来二四二号というものは国連で満場一致できまったものでございまして、紛争当事国の間におきましても、その読み方におきましてニュアンスの違いがあったわけでございまして、問題は紛争処理の問題でございまするし、当事国がそれに寄せておる解釈というものにつきましてはそれなりの背景があるわけでございますので、この解釈をどのように明確にしてまいるかということ自体紛争処理におきまして非常に大きなモメントになりかねないものでございまして、わが国といたしましては、そういう事情考えて、紛争状況当事国動き等を十分見ながら、それとベースを合わせながら、一歩前進したところがどこだろうかというような見当をつけながら、国連等におきましても決議の採択にあたりまして態度を漸次表明してまいったわけでございまして、今回の政府の決定は、この時期におきましてこういう態度を表明すべきでないかという判断をいたして発表いたしたものでございます。そういう意味で御理解を賜わればしあわせと思います。
  9. 鈴木力

    鈴木力君 あまり深入りするつもりはありませんけれども、少なくとも私がさきに申し上げましたように、大臣としてはきわめて不本意に聞こえるかもしれませんけれども、どこかの圧力でくるくる変わるというような印象を与えることは、これは内外にいい結果をもたらさないと、こう思います。いまおっしゃったような大臣のおことばのような姿勢を、行動でも具体的に今後一貫したものとして、理解できやすいような外交をひとつ今後続けていただきたいと、こう思います。これは御要望にとどめておきます。  次に、これも最近の外交ですっきりしない事件の一つだと思いますが、例の金大中事件ですね。去る十一月二日に韓国の金鍾泌総理日本においでになった。田中総理とも約束をされた。何となしに政治的に一件落着というような、そういう形に何かできたというふうに一応は伝えられておりますけれども、しかし、私どもから見ると、一件落着どころじゃなしに、あの事件が発生した当時と何ら条件は変わっていないじゃないか、こういうふうにも思われる。これは政府といたしましても、あのときに総理も、政治的には解決をしたけれども、しかし、この問題を明らかにすることで韓国側のほうの事件捜査、そういう経過の報告を期待するというようなことが、そういう趣旨のことが金鍾泌総理との間にも約束をされたというふうにも伺っております。日本政府もあれで事終われりということじゃなしに、事件の全貌を明らかにするという姿勢は変わっていないとも、こう思うのですけれども、しかし、十月の二日にそういう話し合いが政府間でなされてそれから今日までにどれだけの進展があったのでしょうか。新聞等も注意して見ておるつもりですけれども政府間の金大中事件解決に関する進展は、私はよくわからないんです。その間の事情を、まず御説明いただきたいと、こう思います。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 八月に起こりました金大中事件は、日韓間にまたがる不幸な国際刑事事件であったわけでございます。この事件は一つの国際的な刑事事件でございますので、刑事事件といたしまして捜査し、真相を究明いたしまして処理してまいることが当然の道行きだと思うのであります。したがって、両国の捜査当局におかれましても、現在なお捜査が進められておることと私は確信いたしております。一方、これは、国際的な事件でございますので、国際事件として見た場合に、これまでございましたこの種の国際的刑事事件というものがどういう姿におい外交的に処理されたかということ、あるいはアルゼンチンとイスラエルとの間で起こりましたアイヒマン事件、あるいはフランスとモロッコの間で行なわれましたベン・バルカ事件等の処理の経過も見てみますと、要するに、疑わしい者を出した国でこの問題について遺憾の意を表明するということ、今後こういうことを起こさないように万全の注意をいたしますということ、それから、関係者に対しまして厳正な処理が行なわれるというようなことが、これまでのこういう問題を処理する場合の慣例になっておるわけでございまして、私どもは、韓国側におかれて、こういう国際的な一つのクライテリアにまで踏み切っていただいて、国際的にも納得ができるような解決のところまでこないものかということのために、いろいろ外交折衝を続けてまいったわけでございますが、御案内のように、韓国政府におかれまして、九月から十月にかけまして、御承知のような措置がなされてまいったわけでございますので、そういう態度評価いたしまして、外交的な処理といたしましては、こういう事件は、これをもって一応の落着をつけようと、そういうことをいたしたわけでございます。しかし、前に戻りまして、これは一つの国際的刑事事件でございますので、捜査は続いておるわけでございますから、この捜査の結果につきましては、韓国側から、日本国民納得ができるような御報告を期待いたしておるわけでございますが、その後、韓国政府からまだ御報告に接していないわけでございますけれども、先方の捜査の状況によりまして、当方に御通報をいただけるものと私ども考えておりまするし、そういう了解になっておるわけでございます。
  11. 鈴木力

    鈴木力君 私が、この事件を特にきょう大臣に御説明をいただきたいというのは、私は、ものの言い方で解決すべき問題と、ものの言い方では解決しない問題とこうあると思うんです。で、これは捜査の問題と外交上の問題と二つあるから、しかも国際的に他に例もあることだから、そのように処理をすると、こうまあ大臣はおっしゃる。しかしたとえばいま——もう一つちょっとその前に伺ったほうがいいと思うんですが、遺憾の意を表明をする、今後こういう種類の事件を起こさない——それはわかります。一体、金鍾泌総理日本に来られて、遺憾の意を表明したと出ている。何が遺憾だったと表明したんですか。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) このような事件によりまして、日本政府国民に対してたいへん御迷惑をかけましたということに対して、遺憾の意を表明されたわけです。
  13. 鈴木力

    鈴木力君 どうもそこが私は大事だと思うんですね。すみませんでしたという場合には、何をしてすみませんでしたと、こういうことなんで、なんとなしに、いずれ自分の国民のだれかがやったことですから、すみません、御迷惑をかけました——それでは、どういう遺憾なのかのその中身はだれにもわからぬわけです。まあ田中総理と金鍾泌総理との間はわかっているかもしれません。あと日本国民もわからなければ、韓国の国民もわからない。これは私は外交上の処理をしたというふうにはどうしてもいただけない。少なくとも常識的に、とにかく金大中氏が日本から拉致をされていって、そして大阪かどこかへ車で行って、そこから大きな船に乗って韓国に行って自宅まで行ったという事件があったことは間違いない。そうすると、少なくともその監禁者がいるんですから、かりに韓国が遺憾の意を表するならば、関係者がどこからどこにどういう行動をとってこういうことになりましたと、だから日本政府に御迷惑をかけましたという遺憾の意なら、明らかにできると、こう思うのです。ところが、そこのところは伏せておいて、そして今後捜査の結果を連絡します、十一月二日にそういう約束をして帰ったものが、今日まで音さたもない。事件が十一月二日に起こったのなら、まだ捜査中ということも言えると思う。遺憾の意を表するという段階では、少なくともわかっておるはずです。日本側のほうからは、金東雲一等書記官が、もう指紋まではっきりしたと、それは韓国も認めざるを得ないというところまできているわけです。そこまできておって、政府間で政治的に、国際的な前例によるとかのことばを並べて、これで解決をしたということになったら、これはたいへんなことになると、こう思うんですね。  したがって私が伺いたいのは、今後このような事件を起こさない——これはあたりまえの話であって、起こしますなんということを言うなんということは、これは常識でも考えられませんから、したがって金鍾泌総理日本に来て、今後この種の事件を起こさないと言ってきましたから、たいへんな成果だなんということになれば——まあそうは大臣はおっしゃらなかったけれども、そんなことじゃ、これはもうあたりまえのことで、話にならぬわけです。何といっても、遺憾の意を表明をしたその中身が、だれとだれがどういうことをして、日本国内でどういう行動をとったかということだけははっきりしなければいけない。まあ主権の侵害かどうかという法律的な議論もありますけれども、私はそこまでいく前に、もっと常識的に、朝鮮問題、そういうものと日本との関係というようなものから考えてみても、これで処理をしたということにはどうにもならないと、こう思う。通報がないということを——それでは外務省はいつまで待っておるわけですか。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これが国際的刑事事件の処理にあたって、われわれが隔靴掻痒の思いをいたすところでございまして、先方は独立国でございまして、私どもが指示、命令するわけにはまいらないわけでございます。先方の誠意を信頼してまいるよりほかにないわけでございまして、先方が、わが方に通報をいたしますという約束をいたしておるので、いつまでに通報するという時限の約束はいたしていないわけでございますが、しかしながら、この事件が日韓双方の国民の重大な関心事であることは当然のことでございまして、そういうものの処理にあたりまして、韓国政府においてもそれなりの認識を持たれて御処理に当たっておられることと思うのでございまして、私といたしましては、韓国政府の誠意を期待いたしております。
  15. 鈴木力

    鈴木力君 しつこいようですけれどもね、私は、韓国の政府がこの金大中事件に今日までとってきた態度、これを政府はやっぱり誠意と見ているのですか。韓国の誠意を期待したいと、それはまあ大体そういうことになるだろうと思うのです。しかし、少なくとも、常識的に考えれば、誠意があれば、もう少し誠意のあらわしようがあると思うのですね、韓国に。私は、しかし、韓国の政府を不誠意呼ばわりをして、ここにけんかしろと言っているつもりはありませんよ。そういうつもりはありませんけれども、少なくともお互いが誠意を持ってやっているんだということを言うためには、その裏づけがもっとあってもいいだろうと思うのです。それが、相手が不誠意だときめつけてしまうことは、これは外交上からいっても、それから両国の親善の問題からいいましても好ましいことじゃありませんから、したがって私は、大臣にいましつこく申し上げているのは、不誠意呼ばわりをされるような状況をできるだけ早くなくするような努力ということがやっぱり——相手は独立国であるけれども、こちらも独立国なんです。当事者同士ですから、そういう方向に外交的に進める一つ任務があると、こう思うのです。  少なくとも、常識的に見ますと、まあいろいろ国家機関が関係したとか関係しないとか、いろんな議論があります。いまそんなことを蒸し返しておってもあまり意味がないと思いますし、だいぶ議論もされたところだ。ただ、私ども考えても、国民のだれが考えても、国の機関は関係をしていないと韓国の政府は言っておるでしょう。それなら、かりに、日本国内で刑事的な事件を起こしたと、その犯人がいるわけですから、国の機関でなくて個人であったら、それは日本側の捜査にもっともっと積極的に協力すべきじゃありませんか、これが国際間の常識でしょう。たとえば麻薬事件なり、あるいは強盗事件なりがあった場合に、海外に逃亡した、あるいはその国に逃げて帰った、その場合も国際的に警察が連絡して協力をしているじゃありませんか。国の機関でないというならそういうことができるはずです。国の機関というなら、国と国との間にどう処理するかということがあるはずです。何かわからないこととわからないことを結びつけて説明をしている。ますますわからなくなるのですね。  それと同時に、私は、これも外務大臣伺いたいのは、金大中氏が自由の身になった、これはみずから記者会見をやられて、アメリカのハーバード大学から留学の迎えも来ている。何かニュースを見ますと、ライシャワー氏がみずからも行かれて、早く来いと言っておられる。そして夫妻が旅券の手続をとられておる、今月の二十五日に出国をするような申請も出されておる。しかしそれが具体的には何ら進展していない。そうすると一体金大中氏がほんとうに自由の身になっているのかどうかということも——世間では、これは勘ぐって言うと、結局は閣僚会議を早くやるために一応そういう形をとっておいて、そして日韓閣僚会議をやって、経済協力のスケジュール、見通し、計画をつくりあげる、そのために一時金大中氏が解放されたのだ、こういう非常にうがったような見方さえいま出てきておる。もしそういう結果になるとすれば、いまの大臣のような御答弁でこのままのんべんだらりといくとすれば、そういうことに日本政府も手を貸したという評価を受けるだろう、批判を受けるだろうと思うのです。この間の事情についてはどうなんです。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 韓国側の誠意の問題でございますが、私といたしましては大統領の親書を携行の上、総理みずから来日されて遺憾の意を表明されて将来の約束をいたすということは、これは独立国といたしましては最大の誠意を示されたものと評価いたしておるわけでございます。御意見はございましょうけれども、私はそう受け取っております。  それから金大中氏の件でございますが、韓国政府日本政府に対しまして、この事件の被害者の立場にある金大中氏はこれまでのことについて別件で問題にするようなことはしない、出国も含めて自由を保障するということを言っておるわけでございます。で、そういう前提でこれからどのように金大中氏の御処理をされるのか、それはしばらく私どもはウオッチしたいと考えておるわけでございまして、出国も含めて自由は保障すると言われておる以上、その基本的な了解に私は狂いはないと信じておるわけでございます。いま、まだ出国をされていないようでございますが、それがどういう事情にあるのかつまびらかにいたしておりませんが、そういう基本的な了解を私どもは確信いたしておるわけでございます。
  17. 鈴木力

    鈴木力君 誠意、誠意を信頼すると、大臣が不誠意呼ばわりをできない気持ちはよくわかります。気持ちはよくわかりますけれども、私が言っておるのは、ほんとうに誠意ある信頼は、日本人的な常識で言えば、遺憾でありましたと言ってくる場合に、なおわが国のほうは捜査的に非常に壁に突き当たっておるわけです。ある程度の立証するものはつかんでおるけれども、手続的に、確認する手続のところが韓国側にいっておるわけです。そこのところを抜きにして、遺憾でございましたという、わざわざ来てくれたから誠意があるという形では、私はこの問題は解決するとは思いません。まあ先ほどそういう批判もあろうが、おまえは何と言おうともおれは誠意があると確信するのだとおっしゃったし、またそうおっしゃらなければ困ると私も思うのだけれども、しかしその誠意の裏づけというものは早く日本政府がやっぱりとる努力をしなければ、これは私は、だれか一人飛行機に乗って行ったり来たりすれば、それが誠意であって、それで片づいたということでは、事件の本質から言って片づかない。これは強く政府に御要望を申し上げておきたいと思うのです。諸外国にあった例として、関係者に対して処理、処分をする。これだってどういうことになったのやらさっぱりわからぬわけだ。そういうような形で迷惑をしているのは日本だけだ。その迷惑をしたものが遺憾の意を表されたことによって解消は何らしていないわけだ。少なくとも事件の全貌を、どこの責任でどうという問題は別問題としても、あの事件の全貌をはっきりできない日本であるというようなことであっては、これはわが国自体が、国民から政府自体信頼が起きないということになるわけだ。そういう意味で、軽々に、一件落着、これでおしまいという形にならないように……。しかも、十一月二日に来られてから今日まで何らの音さたもない。これだって私は誠意のうちに入らぬと思うのです。それから、今月の二十五日に金大中氏が、韓国を出るという日にちをつけて奥さんも旅券の手続をなさっていらっしゃる。これは間違いがない事実です。しかし、それがまだ、旅券が交付されていない、これも事実です。そうだとすると、金大中氏に対する、自由を保障する、外国に行くということも保障する、アメリカ側のほうではすでにもう待っておるというのに、それも実行されない。その理由がまたはっきりしていない。そういう状況だと思うのです。これは、早急にそういう点のせめて問い合わせぐらいするような気持ちは、私は日本政府にあってしかるべきだと思う。いつか来るだろうということを待って、これが誠意でございますと。そうすると日本語の誠意とは違った外務省の誠意ということばをまた新しく辞典につけ加えなければならなくなってくる。そういうことにならないようにひとつお願いしたいと、こう思います。  そこで、時間もあまり残りありませんから、さっき私が言いましたように、これは、おまえは少し勘ぐり過ぎるとおっしゃるかもしれません。少なくとも、さっきも言いましたように、金鍾泌総理日本に来て、政治的に一件落着と、こうなさったその目的は、日韓閣僚会議を早くやって、そして経済協力を具体化してそれに乗っけていきたい、そういう政治的な意図があるというふうに見ている人も相当多数ございます。私もそう見ます。そうだとすると、日韓閣僚会議というものが伝えられるようなスケジュールで進んでいくとすれば、これは、日本国民はこの事件を中心にしたいまの日韓関係というものに対しては、おそらくだれも信用しなくなるでしょう。したがって、いろいろ伝えられているだけで、これは政府のほうからはっきりまだ言明がありませんけれども、閣僚会議はどうなっているのですか。何か伝えられるところによりますと、十二月の十八、九あたりやるとか、いろんな情報が入っておりますけれども政府のお考えはどうですか。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 年内に持ちたいと考えまして、いませっかく準備をいたしておるわけでございます。どういう範囲にするか、どういう議題を考えるか、そういう点についていま検討をいたしておるところでございます。
  19. 鈴木力

    鈴木力君 そこで、私はもちろん本質的に言いますと、本来は金大中事件があった。だから経済協力はしないとか、あるいは閣僚会議は延期だとか、事件と直接的な相関関係というものは、本来はあるべきではないと、こう思います。しかし、ただ先に予定をされておった閣僚会議そのものが、やっぱり金大中事件というものを一つの契機にして延期されておったということは、間違いがない事実だと思う。これは政府側のほうもあの事件の最中にそういうことを表明をされています。したがって、私はまずさっき申し上げましたような理由で、私は金大中事件というものはまだ解決をしていない、そういう状況の中で閣僚会議を開くということは、きわめて遺憾だと、それこそ遺憾だと私は思います。もう少しこの事件が進展をして、そのあとにかりに開くにしても、そのあとに実現すべきだ、こう思いますけれども、御見解を承わりたい。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 事件は事件として、刑事事件の最終的な解決はできていないわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、外交的な問題といたしましては、このあたりで外交的な決着をつけようといたしたわけでございますので、われわれといたしましては、閣僚会議というものを考えても、国民的な御理解をいただけると思っております。ただ、しかし、この前予定いたしておりました閣僚会議を延期いたしました事情は、御案内のとおりでございまして、政府が何事をやるにつけましても、国民的な理解協力がなければ成果があがらないわけでございますので、こういう時期にどういう閣僚会議にすべきかという点については、十分周到な用意をもってかからなければならぬわけでございます。その点につきましては私どももできるだけ細心、周到な用意をいたしまして、国民的な理解を得られるような姿においてやってまいりたいと考えております。
  21. 鈴木力

    鈴木力君 関係国民理解がなければ経済協力なり、そういうものの効果がない、これは大臣もおっしゃる。私はそういう立場でいまこのことを申し上げているつもりです。大臣だって御存じのはずで、韓国の国民自体がこの金大中事件というものを、公式にどうこうという報道は、ああいう国柄でありますから少ないが、どう思っているのか、どういう状況であるかということは、御理解のとおりだと思うのですね。特に野党の国会での質問なんか、きびしい質問なんかには、それを一々持ち出しませんけれども、最近の学生の動き、これらについても経済協力に対する批判というものがそのうちに必ず出てくるわけです。そういう状況の中で、しかも金大中事件というものが韓国内では、まあ私が言うまでもありませんが、韓国の民主化につながる、そういうようにいま大衆がきわめて重要視しているわけであります。私どもも、日本側から見てもそう見える。そうして、今日までの経済協力というあり方に対しては、一つ一つは申し上げません。もう衆議院でも、本院でも、何べんか経済協力の具体的な事例が出されて、批判もなされておるわけですけれども、私はいまここで一つ一つ復習するつもりは毛頭ございませんけれども、少なくとも経済協力そのものが最初の目的と事実との間に大きなギャップがある。プラス面はあったと政府はいろいろ広告をしております。全然プラスがなしとは言いませんけれども、マイナスの面が非常にたくさん出ております。こういうことと合わせて、政治的に金大中事件解決をしたと大臣は強弁なさると、私はこう言いたいのですが、強弁なさるけれども、しかし、いやおうなしに金大中事件という問題は閣僚会議に巻き込まれたんです。あるいは閣僚会議金大中事件に巻き込まれたと、こう言ってもいい、本来は一緒にすべき問題じゃなくて、もちろんこの報復手段にどうとか、そういうものに使うべき問題じゃないけれども、好むと好まざるとにかかわらず事実は巻き込まれている。そうすると、この状況の中で閣僚会議を開くということは、私はきわめて悪い結果しか予想できないと、こう思う。したがって、もう一度申し上げますけれども、この事件がもっと真相がはっきりして、少なくとも、一〇〇%とは言わなくとも、相当部分が国民になるほどと納得できる段階まではやるべきでないと、こう思いますが、もう一ぺんこれは大臣の御見解を伺っておきたいと、こう思います。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 鈴木さんの御見解を伺っておりますと、相当御理解はいただいておりますけれども、相当御潔癖であられるようにも思うんでございまして、私はあなたのお考えが間違っておるとは全然思いません。問題は、冒頭にも申し上げましたように、この案件は国際的な事件であるということでございまして、国際的事件の持つ壁、制約というものから自由であり得ないわけでございます。そういうものの処理といたしまして、われわれは何を目安に考えたらいいかと申しますと、この種の国際的事件がどういう姿において国際慣例上処理されておるかということを見た場合に、それ以下の解決をやっておったのでは申しわけないと思うんでありまして、私どもはそういうぞんざいな解決はしたくないと考えて、せっかく苦慮いたしておったわけでございますが、今回外交的な落着を遂げるに至りました処置を御吟味いただきましてもおわかりになるとおり、他の国際的事件には決して劣らない相当きびしい解決に私はなっておると思うのでありまして、本来そういう国際事件としての壁、固有の壁があるわけでございますが、今度の外交処理というものはそういうものとして私は御理解をいただけるのではなかろうかというようにまず考えておるわけでございます。しかし、あなたのおっしゃるように、事件の解決までいたしていないわけでございまして、先方も日本国民納得のいくような御通報は申し上げるということでございまして、それはいずれ、向こうの誠意に期待いたしまして、御通報いただけると思っておるわけでございまして、これは刑事事件は刑事事件として、その論理に従がいまして今後われわれは処理していかなければならぬ課題と心得えておるわけでございます。  そこで閣僚会議というのは本来こういう事件とは関係なく——本質的には関係のないことだとあなたも御指摘されておるとおりでございますが、しかし、私どももそれかといって形式的にこういう外交的落着を見たからすぐさまこれを型どおり開きますというようには考えていないわけでございまして、こういう状況において開かしていただく閣僚会議のあるべき姿というものを十分検討いたしまして、国民理解をつなぐやり方において実行さしていただきたいと、いま鋭意検討を重ねておるわけでございまして、閣僚会議そのものの規模ももっとコンパクトなものといたしたいと思いまするし、また、実際、従来の閣僚会議の場において二国間の問題、あるいは二国間が共通の話題を持ついろいろな問題につきまして高いレベルから話し合うということが本来のあり方なんでございまして、そこで経済協力のプロジェクト・バイ・プロジェクトでやりとりをするなんということは、本来はできるだけそういうことは避けていくのが普通だと思うのでございまして、日米もそうなっておりますし、日豪、日華はみなそういうやり方でやっておるわけでございますので、日韓内でも私はできるだけそういう方向にもっていくように努力をしなければならぬ。で、若干の案件が、政府の経済協力案件があるわけでございますが、それは十分事務当局でこなさせた上で閣僚会議としてはそういうネゴシエーションの場にできるだけしないように配慮をしながら、いま大きな変革期でもございますので、いろいろな問題を両国ともフランクに話し合って理解を深めていくというような性格のものにできるだけもっていくというようにすることによって国民の御理解も得たいと、いませっかく考えておるところでございます。
  23. 鈴木力

    鈴木力君 これ以上申し上げても平行線だと思いますが、ただこれだけはひとつ大臣聞きおいていただきたい。さっきも私が申し上げましたように、まあ国際的に前例があるから解決をしたと、政治的解決をしたと、そうおっしゃるけれども、たとえばさっきあげられたアイヒマン事件にいたしましても、その状況がわからないままに片方が遺憾の意を表したから政治的落着をしたと私は思っていないんです。やっぱり両者が事件というものをある程度解明をしながらやっていくと、そういう協力姿勢があったと思う。今度の場合はなかった。ただ一ぺん、御迷惑をかけましたというだけであります。私はこれは新しい例じゃないかと、こう思います。これは私が言うことを聞いておいていただきたい。  それからもう一つは、閣僚会議に関係をしますとさきにも私が申し上げました、これはおまえが勘ぐり過ぎとあるいはおっしゃるかもしれないとさっき申し上げたのですが、この金大中氏を自由の身にしたという一つのことは、この事実は、結局は金大中氏をなお、形は解放した形にあっても、政府の中に一つの軟禁でもないが一応の見えざる拘束状況に置きまして、旅券も出さないというような、そういう中でまず閣僚会議を取りつける。そうして経済協力日本のほうから求める、導入をするんだ。会計年度はもう十二月でおしまいです。暦年でしょう。そういうことに対する韓国の政府側の一方的な一つ考え方がこういう進展になっていると、こういう見方が韓国の国民の中に、野党も含め、学生なり文化人なり、そういう人たちに相当強い見方が出てきておる。それから、私もそういう疑いを非常に濃厚に持ちます。そして同じ日本国民の中にもそろそろそう疑って見ている人たちが相当にある。だから、もし結果的に不幸にして私が言ったようなことになるとすれば、これは日本政府は重大な責任を負わなければいけない。したがって、そういうことにならないように、私が疑っていま申し上げたようなことが全くの事実と——事実といいますか、思い過ごしであったと、勘ぐり過ぎであったという結果ができるように政府は万全の手を打つべきであると、こういうことを申し上げて、これは聞いておいていただきたいと、こう思います。  そこで、時間があまりありませんが、閣僚会議をどうしてもお開きになる。期日はいつか伺いませんでしたが、もしそうだとすると、これは日韓経済情報等でもうすでにいろいろと伝えられております。韓国からもうさまざまな具体的な要求の案がまとまっておるというふうにも伝えられておる。そしてこれによりますと、すでにもう日本側との予備折衝が始まっておる、こう伝えられておりますけれども、それは事実ですか。
  24. 御巫清尚

    説明員(御巫清尚君) お答え申し上げます。  通常、この両国間の閣僚会議が行なわれます前に、特に事務的な打ち合わせを要します問題点につきましては約一カ月ぐらい前から事務的な打ち合わせを開始する例と過去においてなっております。で、今回におきましてもちょうど九月に開催される予定で八月のころにそういう事務的な打ち合わせを開始しようと思っておったところに不幸な事件が起こったわけでございますので、そのころに日本側からいろいろな韓国側に対しまして質問等を準備しておったわけでございますが、その質問等につきましての回答等を持ちまして先週韓国側のいわば実務者と申しておりますが、課長レベルぐらいの人間がわがほうにいろんな説明に参ったということはございます。ただし、これはいろんな情報等に伝えられておりますような具体的な案件の要求を持ってきたとか、そういうことではございません。ただ、従来過去の経緯からいたしまして、韓国側がこういう案件についておそらく要求を出すであろうという想像はすでにもう大体私どもも見当はついておりまして、たとえて申し上げますならば、例の浦項の総合製鉄所の第二期拡張工事につきましては、昨年の閣僚会議の際に韓国側から一億三千五百万ドルという数字をあげて要請が行なわれておりますし、また先般この事件のはるか前でございますが、韓国の要人が日本に来訪されました際にセメントの積み出し港の計画などについて御説明もございましたし、また韓国で現在力を入れております農業の近代化と申しますか、そういういわゆるセマウル運動と称するものに対しまして昨年も協力要請がございました。これは四カ年計画でございますので、これにつきましての協力要請もあろうかというようなかっこうで韓国側からの御要請がどんなようなかっこうになるであろうかというおおよその想像はつけてはございますが、先ほど申し上げましたように、現在までのところではいろいろなこまかい技術的な質問のやりとりをやっておるという段階でございます。
  25. 鈴木力

    鈴木力君 いまのうち、浦項の第二期計画の一億三千五百万ドルですか、第二期の要求が。伝えられるところによりますと、ことしこのうち四千五百万ドル分は中曽根通産大臣が輸出入銀行融資として融資をするということを約束をしたということが言われておりますけれども、これは事実ですか。これは輸出入銀行の総裁もおいでになっていらっしゃるはずですから御存じであれば伺いたいんですがね。
  26. 御巫清尚

    説明員(御巫清尚君) 私からまずお答え申し上げますが、この浦項の製鉄所の第二期拡張工事につきましては、昨年の閣僚会議の際は、日本側といたしましてはさらに調査を行なった上で具体的な協力の内容をきめましょうということを返答しておるわけでございます。その後、例の事件が起きます直前でございましたが、なるべく早く拡張工事をやりたい、そのためには延べ払いというようなかっこうも考えてほしいというようなお話がございまして、つまり昨年の閣僚会議ではそういうような向こうの要請があって……
  27. 鈴木力

    鈴木力君 時間がありませんから、事実かどうかだけおっしゃっていただければいい。
  28. 御巫清尚

    説明員(御巫清尚君) 昨年でははっきりした約束になっておりませんでしたので、ことしの閣僚会議でもしきまるということが前提になった上でそれがきまるならば、そういう延べ払いも考えましょうというようなふうに話し合いをしておるというのが現状でございます。
  29. 澄田智

    参考人(澄田智君) 輸出入銀行といたしましては、まだ具体的には一切聞いておりません。
  30. 鈴木力

    鈴木力君 いまの局長さんの御答弁でもすっきりしないんですね。はっきり言ってもらいたい。中曽根通産相がことしの夏に一億三千五百万ドルのうち四千五百万ドルを輸銀融資として約束をしたと、したがって、今度の閣僚会議では、韓国側では残る経済協力基金のほうの九千万ドルに焦点がしぼられる、そういうふうにもうすでに言われておるわけです。したがって、これが事実なのかどうか。そして四千五百万ドルは輸銀で、残る九千万ドルは基金、こういう形にもうすでにきまったと、こう伝えられておる。これはほんとうですか、うそですか。
  31. 御巫清尚

    説明員(御巫清尚君) そういう事実はございませんで、今度の閣僚会議でこの問題についての決着ができるということになったならば、その一部分について延べ払いというようなことが考えられるという程度のことでございまして、先ほど申し上げたとおりでございます。
  32. 鈴木力

    鈴木力君 これは、結果を見てこういうふうになったとすれば、事実ではないとおっしゃったことがうそになる。事実だったと、こういうことになりますよ。適当に言い回しをしても、そうなるとすれば、こうだということを言っておいて、片方では約束をしたが、国会では約束をしませんと言っても、あとでそのとおりの形をでっち上げると、結局はそういう行動があったと、私はそう解釈をしますということを申し上げて、別に局長うそを言ったとは決して言いませんから、ただ、答弁が非常にじょうずである、こう申し上げておく。  そこで、いろいろ伺いたいんですけれども、少なくとも私は、あまり時間がないのですけれども、韓国側のほうではもう相当な段取りができているということがどんどんどんどん伝えられている。しかも、去年の閣僚会議で決定して未実施の分なんかにつきましても、たとえば商品援助の第二次の五千万ドルですか、これは未実施でしょう。ところが、未実施であるけれども、経済協力基金のほうはその前の部分のまだ進行がおくれているから、とりあえず輸銀のほうの二千五百万ドルが先行する、そういう形までも伝えられておる。片や、大臣のほうは閣僚会議をやるとおっしゃったけれどもやり方については決して従来のやつをそのまま引き継ぐというようなそういうお考えではないようですね。さまざまな角度から検討をされているというふうに私はさっき伺ったわけです。そうすると、この食い違いというものも出てくる。  私がいまこれを申し上げたいのは、もう御答弁いただかなくてもいいんですけれども、すでにこうした形で韓国の政府日本政府との間に既成事実というのを先に積み上げてしまっている。それが経済協力の実態。そうしますと、閣僚会議なんていうのは、あとで追っかけていってこれを手続的に補完をする、こういうことであるとすれば、私はどうもこのやり方というものはあまり正しいやり方じゃないと思うのです。特に、時間がありませんけれども、今度の決算のこの委員会の対象になっております昭和四十六年度あたりから、ずうっとこう経過をたどってみますと、どうもそういうにおいがしていけない。したがって、私が大臣に申し上げておきたいのは、こういう、私が疑いを持つと、そうおっしゃっていただいてもけっこうですけれども、そういう疑わしいようなやり方というものはここらで断ち切るべきだ、やっぱりきっちりした手続をとって、そうしてやっていただきたいということです。  それから、これはちょっと伺いますが、何と読むんですか、墨湖港ですか、ボッコと読むのが正しいんですか、この計画があって、これは前からわが国のほうから調査団なんかも出しておる。ところが、大統領の一声で一ぺんにその計画が北坪——キタツボと読みますか、そこへ移っちゃった。そういうことが伝えられている。そうだとすると、一体日本の調査団というのはどういうことをしてきているのか。ここが適地だときめて、向こうも納得してきめたが、大統領の一声で別の場所に移した。何だかうしろがつかえるとか何とかいう理屈はついているみたいです。いままでの経済援助が大統領なりあるいは要人なりの政治資金なりあるいはさまざまのことにいろいろピンはねされたとかという疑いがいろいろと伝えられておるわけですね。そういう中にまたせっかく両国が閣僚会議で詰めて調査団を出して協力まできめて、それがきめたとたんに大統領の一声でまた一ぺんに変わる。それでも日本側は、それでけっこうでございますと、こう言うのですか。これもまた非常に疑いを持たれるようなことではないのか。計画というものはもう少し綿密にやるべきではないのか、こう思いますけれども、これも簡単にお答えをいただきたい。
  33. 御巫清尚

    説明員(御巫清尚君) 御指摘のようなことが若干ございまして、墨湖という港につきまして調査をしてほしいという話がございまして、調査団を出しました。その後にどういう国内事情があったか知りませんが、その墨湖というところから北坪という——韓国語でどういうふうに発音いたしますか、あれですが——場所に移したいという希望が出てまいりましたことは事実でございますが、それにつきまして、先ほど申し上げました事務的ないろいろな質問を出して、相手の返答を求めておるというのが現状でございまして、まだ何らこれにつきまして方針をきめた段階ではございません。
  34. 鈴木力

    鈴木力君 これはもう、あと時間がありませんから御要望だけ申し上げますが、同時にこれは外務大臣の所管じゃないと思いますけれども、民間の資本進出がございましょう。これもいろいろと批判をされておるわけですが、私はそのことは申し上げませんが、韓国に日本の企業がどんどんどんどん進出をする、その条件の一つに安い労働力ということがよく言われておるんですね。ところが、これもことしの九月十二日付の日韓経済情報というのがありますが、外国の企業と比べて日本の企業が一番安い、こう言われておる。パナマなんかは四万六千四百四十四ウォン、ところが二番目は西ドイツだと、こう書いてありますけれども日本の企業の平均は一万七千六百ウォンだと、こういう現状が報道をされております。詳しいことは申し上げませんけれども、しかし、こういう形で日本の企業が経済協力という一つの名のもとに、あるいは合弁という一つの名のもとにどんどんどんどん進出をしていく。決して私はこれも大臣がさっきおっしゃった両国の国民理解の上に立った経済協力なり、今後の企業のあり方ではないと、こう思うのです。したがって、ちょっと企業が進出していって賃金が安過ぎるというのを、外務大臣にどうしたというわけにもまいりませんけれども、しかし日韓の問題を処理する上においてはきわめて重要な一つの事実だと私は思うので、これは御指摘を申し上げておきます。適当な方法で、こういう問題については強力な指導をなすべきだ、こういうふうに申し上げておきたいと思います。  あと時間がございませんから、輸出入銀行の総裁にせっかくおいでいただきまして、それから経済協力基金の総裁にもせっかくおいでいただいたんですが、経済協力基金のほうに一つ伺いしたいのは、簡単にお伺いしますので簡単にお答いただければ幸いだと思いますけれども、さっき出ましたことしのこの閣僚会議にかかるべき諸議案のうちですね、商品援助の五千万ドルというもの、その第一次分が、基金から出ている実施が非常におくれているというふうに伝えられておりますけれども、その現状はどうなんですか。
  35. 大来佐武郎

    参考人(大来佐武郎君) この商品援助は七十七億円でございますが、ただいままでの貸し付け実行額は六十四億七千万円、八十四%になっております。当初、これは資本財の援助でございまして、多少向こう側の需要と合わないような面がおくれておりましたが、現在はかなり出ております。
  36. 鈴木力

    鈴木力君 同時にもう一つだけ伺いたいんですが、この商品援助ですね、商品援助というこの行為は、相手側のどこへどういう商品が入るのか、そういう調査は基金がなさるのですか、政府がなさるのですか。
  37. 御巫清尚

    説明員(御巫清尚君) 特に基金がやるとか政府がやるとかいうことをきめたことはございませんが、基金におきましても、政府におきましても、できるだけの手を尽くして実効が確保されるように努力を続けております。
  38. 鈴木力

    鈴木力君 それじゃ局長にお願いしておきますがね、この商品援助の中身についてちょいちょい資料要求みたいにお願いするんだけれども、出てきたためしがない。これは私自身がやったのもあるし、同僚がやったのもありますけれども、これはひとつ、あとでけっこうですけれども、昨年度の商品援助の、極力調査をなさっていらっしゃったその実態を、あとで資料として私のほうにお届けいただければたいへん幸いですが、これはお願いしておきます。  それから、あと時間ありませんが、輸出入銀行の総裁に二つだけお伺いしたいと思います。輸出入銀行のこれを見ますと、昭和四十六年度から急に不用額が非常に多く出ているということが目立つように私は見ます。したがって、その財政不用額が出てきた原因は何であったのかですね。それからこの不用額が繰り越しになりますというと、次の計画にどういう関係になっていくのか。これ実はこの前に大蔵大臣にお伺いをいたしましたけれども、この間の事情を簡単に御説明いただきたいと思います。  それからもう一つの問題は、インド借款の繰り延べの問題です。これは会計検査院の報告にも出ております。これは衆議院かどっかでも、たぶん  一ぺん質問があってお答えいただいたと思います。世界銀行が中心になりました債権国会議か何かで繰り延べをやられたと、こう言われておりますけれども、それからそこでそういう計画を立てて、輸出入銀行のほうがそれを実施をするわけでありますが、それと民間信用の、あれですか、民間債務の保証ですか、これもやられておるようでありますが、まあインドのいまのこの問題だけですね、そのいきさつをちょっと、さっき言った不用額が多くなって繰り越しが多くなっている。これが将来の計画とどういう関係にあるかという問題と、このインド借款の四十六年の繰り延べに対する処理について簡単に御説明をいただきたい。
  39. 澄田智

    参考人(澄田智君) 第一点のお尋ねの、四十六年度以降輸銀の貸し付けの面で年度中に貸し付けが出ないというような形になったという御指摘の点でございますが、この点につきましては、根本的には四十六年度以降いわゆる通貨不安が起こりまして円の切り上げの問題あるいは再切り上げが云々されるという、そういう段階におきまして、一方におきましては輸出契約が予定どおり出ない、したがって輸出金融が伸びない、こういうような事態が起こりました。他方におきまして輸銀の回収金でございますが、この回収金につきまして回収を急いでくると、通貨不安のリスクを避けるために返済を急いでくるということが行なわれまして、実はこれが非常に巨額にのぼったわけでございます。たとえば船の代金等が円建てでもってその船を出しておりますと、円が切り上げになるとそれだけよけいに負担がかかるということで返済を急いでくるということになりまして、その返済が入ってまいりますために輸銀資金の余裕が出たと、こういうことになったわけでございます。  で、結果的には四十六年度は八百億不用になった形になります、財投の予定のうちで。このうちいまの処理の問題でございますが、五百億につきましては翌年度、すなわち四十七年度の財投の計画に繰り延べ、繰り越しをされるということで、その財投としての資金運用部からの借り入れ並びに輸銀の貸し出し、両方とも四十七年度に繰り越されたと、こういうことになったわけでございます。それから三百億につきましては、これは不用といたしまして四十六年度としては切り捨てになりました。そういうふうに処理されました。  それから四十七年度でございますが、この年が実は非常に大きくなったわけでございますが、一番大きな原因はいまの返済が急がれたと、こういうことでございます。期限前返済でございます。その結果生じました不用額のうち七百五十億円は翌年度、すなわち本年度四十八年度に繰り越された。それから千四百五十億円は、これは四十七年度限りで財投計画としてはそれは切り捨てになった、こういう結果でございます。  それから第二点のインドの借款の繰り延べの問題でございますが、仰せのとおり世界銀行が主宰をいたしまして債権国会議を開きまして、そのワクの中で債権国各国が協調をいたしまして、それぞれこの期間内に債務の返済の到来をします分につきまして、これを繰り延べるということによってインドの対外債務負担を軽減するという措置が四十一年度からとられたわけでございます。で、輸出入銀行といたしましては、この債権国会議に基づいて日本の応分の割り当て額がきまりまして−繰り延べ額がきまりまして、それに基づいて政府間で交換公文が締結される、その交換公文が締結されましたときには、それに従いまして輸銀はインド政府との間で契約を改定いたしまして、従来の債務の期限を延期する、こういう措置をとってきた次第でございます。
  40. 鈴木力

    鈴木力君 もう時間がありませんが、どうも私はこれは総裁にということよりも外務大臣に申し上げておいて、あと機会にまたもう少し質問さしていただきたいとも思いますけれども、そういう仕組みの中にこういうふうに繰り延べをなさっていらっしゃるわけですが、その間にはやっぱり金利とコストの問題とか、あるいは計画と実態との大きな開きというものが何年も繰り返されていくという問題もあると思います。それからいまのインドの繰り延べの場合には、もう一年に六回もというようなことになってきますと、私はやっぱり別のあれで処理をするとか、これは政府として検討すべき余地がありはしないかと、実はそういう問題をもう少し大臣に伺おうと思ったんですけれども、時間がなくなりました。あと機会にそういう問題についても検討をさしていただきたいし、政府側のほうでも検討をしてみておいていただきたいと申し上げまして、終わります。
  41. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 先ほど経済協力局長鈴木委員から要求いたしました資料、出していただけますか。
  42. 御巫清尚

    説明員(御巫清尚君) はい。
  43. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 御提出いただけますね。
  44. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 中東問題で若干、時間ありませんけれども、お伺いします。  このアラブ石油問題に関しまして、政府は新しい中東政策を発表いたしましたわけですが、その後何らかの反応があったのかどうか、まずそれをお伺いしたいんです。というのも、けさちょっとNHKのテレビニュースでアラブ側日本に対する十二月からの石油の削減分を援和すると、こういうような報道をしているのをちらっと見たのですが、その辺のところを情報がありましたらお伺いしたいと思います。
  45. 田中秀穂

    説明員田中秀穂君) 去る二十二日に官房長官談話によりまして、日本の中東問題に関する安保決議二四二号、これの解釈を明らかにいたしました。その反応は、日本が従来とってまいりました中立的な態度というものから、さらに日本の立場を明確に打ち出したということで、アラブ各国が非常にそれを評価いたしております。けさのニュースに、アルジェリアのアルジェで開催されておりますアラブ首脳会談、その結果日本とフィリピンはアラブ石油禁輸政策による十二月の五%削減から除外されようという発表があったという新聞報道を私も聞いております。これはもう少しコンファームする必要があるかと思いますが、まあアラブ首脳会談でどのような内容の討議が行なわれましたか、これもまだつまびらかにされておりませんが、この会議においておそらくはアラブに対する、あるいは中東紛争に関しましてのアラブを支持するかどうかというようなことが論議されたかとも伝えられております。いずれにいたしましても、首脳会議の結果といたしましてこのような発表が行なわれたということは、新聞報道として承知いたしております。同じことでございますが、二階堂官房長官の二十二日の談話と申しますものはアラブの諸国から非常に評価されたというふうにわれわれは理解しております。
  46. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いまのアラブ首脳会議の結果を外務大臣はどうお考えになりますか、いまの情報につきまして。
  47. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 報道機関のニュースでございまして、コンファームさせていただきたいと思います。
  48. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 えらい簡単ですけれども、じゃあ外務省にはまだ入ってないんですか。その点どうです。
  49. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は、まだ入手いたしておりません。
  50. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まああれがあのとおりであろうかと私も思いますが、これは政府側の新しい中東政策がある程度アラブ側にも評価されたようにも思いますけれども、いずれにいたしましても十二月分の削減を緩和するという程度でありまして、今後の石油の危機は依然として続くわけであります。この点につきましていろいろと石油の資源外交等につきまして外務省の今日までとってきた態度そのものが非常に批判をされておるわけですがね。この点につきましては衆議院の内閣委員会におきましても、外務大臣はこれまでの中東不在外交が今回の危機を招いた一因であることを認めていらっしゃるようでございます。  そこで、先ほども質問がありましたが、先進国中心主義の外交姿勢を改めて今後いかれるのか。言うなれば日米安保条約を基調とした対米追随外交というようなものがいろいろと批判もされておるわけですが、その点今後どういうような外交方針でいかれるのか。その点をまず最初にお伺いしたいのですが。
  51. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先進国外交、あるいは開発途上国外交というように外交はさい然と分けることは私はできないと思うのであります。先進国との外交におきましても、後進開発国、あるいは開発途上国、そういう国々との間柄をどのようにしていくかということは非常に重大な課題なんでございまして、実は問題は一つだと思うのであります。したがって、外交といたしまして先進国に重点を置く云々というようなことではなくて、変革期にある世界状況に対応いたしまして、あらゆる局面の外交に対応して誤りない処置を講じなければいけないというのがわれわれの外交姿勢でなければならぬと考えております。しかし、そういう立場に立ちましても開発途上国に対しての外交的布陣というもの、それから外交努力というものは必ずしも十分でなかったことは反省しなければならぬと考えておりまして、そういう方面の充実には今後一そう力をいたさなければならないと考えております。
  52. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そういう答弁はお伺いしていますが、そうしますと、今度のアラブ寄りの新しい中東政策そのものは政府がこれまで言っている厳正中立の中立外交というものは、これはどうなっておるのか。今度の政策中立外交転換をされたのか。その辺のところをちょっとお伺いしておきたいと思うのですがね。
  53. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中立外交とか、あるいはアラブ寄りとかいうのは、いわば私どもがつくったことばではないのであります。私どもは先ほども説明申し上げましたように、二四二号というものの解釈を明確にしたということに御理解をいただきたいと思うのでございますが、その調子から申しましてアラブ側理解を示したというように世間は受け取っておるということは私もわかりますけれども、私どものとりました措置は、従来私どもが堅持しておりました二四二号というものをより明確に解釈面でいたしたというように御理解をいただきたいと思います。
  54. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それではお伺いしますが、これは三木外務大臣の答弁でありますが、一九六七年の中東六日間の戦争によりまして行なわれた国連での中東審議に関連いたしましてですが、三木外相はこうおっしゃっていますね。昭和四十二年六月六日、参議院外務委員会であります——こういう戦争、六日戦争において、日本はどちらの側に立って相手を非難するという立場ではなくて、厳正中立の立場を維持することによって紛争の早期解決努力するという立場で動いている。これは現時点においてばかりでなく、紛争解決に至る日本基本的立場でなければならない——こういうふうに言っていらっしゃるわけで、私はいまちょっとお伺いしたんですが、どのように考えておられますか。答弁は変わりませんか。
  55. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど鈴木先生の御質問にもお答え申し上げましたとおり、基本的な私どもの立場を踏まえた上で国連決議なるものの解釈を明確にいたしたわけでございまして、したがって三木外相当時の基本的な立場を離脱したというものではございません。
  56. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは、これはこの程度にいたしましょう。  そこで、さっきの質疑にもありましたが、いままであまり外務省としては重点を置いてなかったようなアラブ側外交対策につきまして、今後どういうような措置をおとりになるのか、具体的にその辺ひとつお伺いしたい。
  57. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 石油事情が、石油の需給関係が非常に切迫化してきたと、それで、われわれはこれに備えて措置するところがなければならぬということ、そういうことに狂奔しては外交の長期にわたる信用の上から申しましていかがかと思うのでありまして、やはり長きにわたって日本アラブ諸国との間の信頼と友好のきずなを強めてまいるということは対中近東政策基本でなければならぬと思うのであります。それから、事実、それらの国々と日本との間にもいろいろの経済的な問題、政治的な問題、あるいは国連等を通じての政治的な問題もございまするし、文化的な問題もあるわけでございまして、そういった問題の処理にあたりまして日本が精力的に努力——問題の処理に当たってまいるという、その姿勢を通じての信頼を深めてまいることが基本でなければならぬと考えております。問題を長期に見て、短期的なことでなくて、長期に踏まえた上で、着実に外交を進めてまいるということに終始しなければならぬと、私は考えております。
  58. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは技術協力といったような面につきましても、どうしても従来はアジアが中心であったわけですが、中近東に対しましてはほとんど行なわれておらないわけですね。そういうのはアラブ諸国から今日まで日本に対する要請がなかったからではなくて、たとえば一九七一年のファイサル・サウジアラビア国王が来日された際に     〔委員長退席、理事小谷守君着席〕 経済技術交流の申し入れがあったにもかかわらず現在まで放置されておると、そういうようなことですね。結局は日本側の熱意がなくて、要請があっても無視をされておったような状態ではなかったかと思うわけです。  そこでお伺いしたいんですが、いろいろと聞いておりますが、現在エジプトあるいはイラクはじめほとんどすべてのアラブの諸国からいろんな協力要請が来ておると、このようにも聞いておるわけですが、どういうような協力要請が来ておるのか、また、そういうものに対して今後どういうふうに取り組んでいくのか、その点をちょっとお伺いしておきたいと思います。
  59. 御巫清尚

    説明員(御巫清尚君) 各国からいろいろな要請があるようなふうに、いろんな情報が入ってきておりますが、政府政府というレベルで入ってきておりますものはほとんどございませんで、現在まで私どもがこの地域でやりました経済協力は、エジプトに対します商品援助一千万ドルと、シリアに対しまして、シリアのユーフラテス川の南岸地域のかんがい計画というものについての約束をいたしましたのと二件だけでございますが、その後いろんな情報は集めておりますけれども、正式に政府レベルで要請になっておるというようなものではなくて、各種の情報として伝わってきているというものがほとんど大部分でございます。
  60. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私が聞いているのは、たとえばエジプトのほうからはスエズ運河改修のための約四億ドルの円借款と、あるいはイラクのほうからは液化石油ガス製造工場、精油所、パイプラインの建設資金などとして約五億ドルの借款を要請しておる。この見返りとして十年間に石油一億トンを供給すると、そのほかサウジアラビア、シリア、ヨルダン、イエメン、アルジェリア、スーダン、リビア、イラン、そういうところから製鉄所、石油開発、液化天然ガス工場、石油精製、石油化学、道路、ダム、鉄道等の建設について、政府、民間ベースによる借款の供与、技術援助などの経済協力要請があるというふうに聞いておりますが、この点いかがですか。
  61. 御巫清尚

    説明員(御巫清尚君) 御指摘のようにそういったような情報は各種ございます。ただ、これが前に申し上げましたように政府レベルで正式に要請になってきているという形のものはごくわずかでございます。冒頭に御指摘になりましたスエズにつきましてもスエズ運河庁というものがございまして、     〔理事小谷守君退席、委員長着席〕 そこからそういう話が業者に対して行なわれているということは承知しておりますが、正式に政府レベルで話が出てきているという段階ではまだございません。
  62. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 では外務大臣、私がいま申し上げたようなことが正式には来ておらなくても、まあ今度の中東政策等の発表があったわけですが、今後、こういうような問題が来た場合はどういうふうに対処なさるんですか。
  63. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中尾さんが先ほども指摘になったように、わが国の場合、いままでの経済協力は東南アジアが圧倒的に多いわけでございまして、中近東、アフリカ、ラテンアメリカ等は手薄になっておりますことは御指摘のとおりでございます。それで中近東方面におきまして、わが国ヨーロッパ並みの協力を望むのも無理はないと思うのでありますけれども、東北アジア、東南アジアに近接しているわが国といたしまして、十分手が延びなかったことは御指摘のとおりでございまして、一つの問題は、わが国の経済協力能力の配分におきまして、今後この地域をどのように取り上げるかという一つ課題があると思います。  それから第二は条件でございますが、わが国はいままで資本の輸入国であり、それから経済協力の面におきましても他の先進国に比べまして比較的きびしい条件で対応せざるを得なかったわけでございますが、UNCTADその他からも、OECDその他からもわが国の援助条件のソフト化につきましてはいろいろ要請も出ておりますし、わが国としてもう少し先進国並みの条件というものまで踏み込まなければならなくなっておる状況考えにゃいかぬと思うのでございます。  第三の問題といたしまして、民間が……、非常に日本国民はバイタリティーに富んだ国民でございまして、世界第二位、いろいろなところでいろんな事業のもくろみにつきまして活発に情報の収集をいたしたり、あるいはもくろみに参加したりいたしておるわけでございますが、終局におきまして、結局これは最終的には政府資金が参加しないとものにならないというものでございます。また、それを予定してやっておるわけでございますので、いま、情報がいろいろあるようでございますが、それも結局政府レベルの話に最後にはなってくるという性格のものでございます。したがって、政府の責任が非常にそういう意味で重いわけでございます。  したがって、そういった問題につきまして、基本的なこのわれわれの姿勢をかまえてかからないと、から約束になったり、あるいは先方の失望を買ったりするおそれが私はあると思うのであります。したがって、一番大事なことは、三木副総理も言われておりますように、やはり約束したことは果たさなければならぬし、できないような約束はしちゃならぬというのは、これは国際信用基本でございまするので、今後これの取り組み方につきましては、そういった状況も十分踏まえた上でわれわれは対処していかなければならぬと思っております。  これからいろんな官民の間で接触が行なわれるでございましょうが、いま申し上げましたような点を十分念頭に置きまして、日本国際信用をそこなわないように、可能な限り努力していかなければならぬと考えておりまして、アラブ地域につきましてもそういう姿勢で対処してまいるべきものと考えております。
  64. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあそれはそれでいいですがね。  それからアラブ諸国における在外公館が、何か非常に貧弱であると、こういうようにも聞いております。たとえばアラビア語ができる大使は前のサウジアラビア大使の田村さん一人じゃないかというようなことを言っておりますが、一体アラビア語ができる大使クラスというのは何人ぐらいおるんですか。
  65. 田中秀穂

    説明員田中秀穂君) 大使クラスということになりますとちょっとむずかしいのでございますけれども、現在大使の中でアラビア語のできる方はおられません。ただ外務省におきましてはアラビア語を専門に勉強させて養成しております者が三十名近くおります。
  66. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 三十名いらっしゃるそうですけども、その三十名の中身が問題でありますが、どの程度できるかわかりませんが、いずれにいたしましてもこういったような問題が起こってからではおそいわけですけれども、今後はどういうふうに強力な外交陣を布陣していくのか、どういうふうに養成されていくのか、その点はいかがですか。
  67. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま局長のほうから説明がありましたようにアラビア語ばかりじゃなく、各国語採用の当初から指定いたしまして彫りの深い研修をいたしておるわけでございまして、いまの調子でまいりますならば実務で相当活発な対応ができるように私はなるものと思っております。しかしながら、鈴木先生の御質問にもありましたように、いまのアラブ外交陣営というのはまことに貧弱で御指摘のとおりなんでございまして、これをどのように拡大していくかと申しましても全く総定員の鉄鎖に縛られているわけでございまして、一人、二人をふやすことがもうたいへんないま苦労なんでございます。そこで鋭意努力し、また財政当局も比較的よくこれでも総体的には外交陣営の強化につきましては御理解いただいておりまするけれども、二十名とか三十名とかというところが精一ぱいのところでございまして、なかなか増員がその程度しか得られないわけでございます。先般ドイツへ参りましてドイツへ聞いてみますと、ドイツは七千名をこえた外交陣営を持っておるわけでございます。わが国は二千七百名なんでございまして、とてもこれそういう域までに達するなんというたらお月さんに行くようにこれは遠い話なんでございます。これはよっぽど大きな政治力が働かない限りこの陣容強化というのはむずかしいと思いますが、このワク組みの中でも精一ぱい努力いたしまして陣容の強化、機能の強化という点については配慮してまいるつもりでございますが、国会におかれましても全幅のひとつ御協力を願いたいと思います。
  68. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 あんた問題をすりかえて総定員法のワクがあるからでけぬようなことをおっしゃるけども田中内閣におけるあなたは大もののあれでしょう、大臣ですからね。それはやっぱりワクにおいてどうかするとか、その辺はひとつ考えてやってくださいよ。いまこういうような災いをもって幸いとなす、それは田中内閣それ自体、さらには外務省それ自体一つ見方をすればチャンスでもあるわけですからね。  それでそのことを強力にひとつお願いをして、この中東紛争にからんで、過日の二十五日、午後一時でしたか、在日米軍全体に警戒体制——アラート体制が命ぜられた。これは全世界の米軍のアラート体制の一環として在日米軍もこれに入ったものと思われますが、ところが、これが日本政府に正式に通告が全くなかった。日本へは非公式に一日おくれてまいりましたけれども、何ら事前通告がなかったという事件。これはもう御承知のとおりでありますが、これはいまの安保の問題というのは六二年の十月のケネディのキューバ封鎖、またこれから朝鮮でのフレブロ事件、偵察機の事件などありましたが、そのときでも事前通告があったわけですが、今回は事件が中東という非常に遠いところであるにもかかわらず、事前通告なしにアラート体制に入ったと、これはどうもわれわれとしては納得がいかぬわけでありまして、以前よりか日本の自主性、主体性というものがむしろ失なわれた状態になっているのじゃないか、こういうふうに思われるわけでありますが、この点いかがですか、外務大臣
  69. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま御指摘の点はデフコンという、つまり、ディフェンス・コンディションという措置のようでございまして、キューバ危機の際と同様に米側はわが国に対して御指摘のように事前協議を行なって、事前通報をいたしておりませんで、発令の翌日すなわち二十六日に在京大使官を通じまして中東をめぐる情勢の結果、昨日より米軍は警戒体制に置かれている旨の通報がございました。かかる場合に事前通報を行なうことは安保条約上の義務ではございませんけれども政府としては安保条約の趣旨に照らしまして、今後かかるケースが発生した場合におきましては事前通報を受けることが望ましいと考えておりまして、同日米国に対しまして、今回事前に通報がなかったことははなはだ遺憾である、今後は事前通報を行なうように申し入れた次第でございます。私ども調べましたところ、今回のデフコンの変動に際しまして、米国は西独や、英国など主要NATO加盟国に対しましても事前通報は行なわれていないと承知しております。従来、かかる場合に米国がそういう国に対しての事前通報を行なった例はないようでございます。事実を御報告申し上げます。
  70. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、一応米軍に申し入れをされたそうですが、外務大臣としてはこういう事前通告はないということに対してはどうお考えになるのですか。
  71. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまも御説明申しましたように、安保条約上の義務でありませんけれども安保条約の趣旨から申しまして、当然事前通報があってしかるべきものだと私は考えます。
  72. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それですから、安保条約は御承知のとおり極東の範囲の安全のためにというようなことでありますが、いまのような調子で中東で紛争が起こって、日本にアラート体制がしかれる——在日米軍にアラート体制がしかれるということになりますと、これは世界中どこでも紛争が起こっても、ちょいちょいこういうことをやられるのじゃないかと、こういうようなことになるわけですね。しかも私いま大臣がおっしゃった警戒体制というのは、これは新聞にも報道されておりますが、五つの段階があると。五つの段階がありまして、その中でデフコン、警戒度の高いほうから一、二、三、四、五と、こういうふうにあって、在日米軍は本土が四番目あるいはまた五番目だと、ところが、沖繩のほうは三ないし四であると。そうしますと、三のデフコン、この警戒体制というのはどういうふうになっているのかと、こう見てみますると、「領空侵犯に備える迎撃戦闘機が通常の二機から十機程度にふやされ、いつでも緊急発進できる体制で隊員には外出禁止令が出される状態であるといわれる。」と、こうなりますと、これはやはり単なる警戒体制じゃないかというように簡単にいかないと思いますね。これが実際普通の演習ならばともかく、実際実戦とつながっている警戒体制でありますから、もしか問題が拡大されたような場合、これはどうも大きな問題にならぬとも限りませんので、こういう点はいま単に申し入れをしたというだけにとどまらず、きちんとやはり何らかの取りきめをする必要があるのじゃないですか、この点はいかがですか。
  73. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 検討してみたいと思います。
  74. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃけっこうです。
  75. 塚田大願

    ○塚田大願君 私は、大臣に対韓経済援助の問題についてお伺いしたいと思います。  先ほどの論議の中で大臣は、第七回日韓閣僚会議は何とかやりたい、しかし、いろいろ国民納得を得なければいけないと、こういう趣旨のことをおっしゃいましたけれども、とにかく閣僚会議の準備もかなり進んでいるようでありますし、政府としてはそういう姿勢で臨まれようとしていることは明らかであります。  そこで、私どもは従来からも主張してまいりましたし、今月でもあらためて主張するわけでありますけれども、とにかくこの日韓閣僚会議は中止すべきである、また対韓経済援助も打ち切るべきである、こういう主張をしてまいりました。もちろんその理由といたしましては、第一には、先ほども論議が出ましたけれども金大中事件、これがほんとうに決着がついていない。外務大臣もこの間の、今月の八日の衆議院の外務委員会で、やはり金大中事件は未決着であるという趣旨の発言をされておるわけでありますから、これは今日常識だと思うわけであります。犯人もつかまっていない、金大中氏自身の自由ということも来日の問題がまだはっきりしていないというようなことから言いまして、外交上この問題が決着ついていない。まして日本の主権の問題につきましては大臣自身がおっしゃるように、この日本の主権侵害については未決着である、こうおっしゃっておる状態でありますから、第一にはこの問題があげられると思うわけです。  第二には、やはり対韓経済援助の中身であります。私どもが主張する第二の理由の中身は、この経済援助が政府に言わせれば、韓国の経済の発展のためである、韓国国民の民生の向上のためである、こういうきれいごとでやってこられたわけでありますけれども、しかし実態がそうでないということも、これ今日だんだん明らかになってきておる。国の内外におきまして相当対韓援助の問題が問題になってきておる。しかし韓国側はきょうの新聞によりましてもすでに今度の第七回日韓閣僚会議では四件、三億五百万ドルの要請をすでに出してきておる、検討しておる、こういう状態でございますけれども、しかし実際は、こういう膨大な経済援助が韓国の経済の発展、あるいは国民の民生向上のためにはなっておらない。むしろ経済が混乱をし、あるいは税金の収奪が非常に激しくなってきた。確かに一部の人たちはたいへんふところが肥えているかもしれないけれども国民全体としてはたいへんな状態になってきておるということがいろいろな立場から論議されておるわけであります。  そういう意味から、私どもはこの日韓閣僚会議は中止すべきである、対韓経済援助は打ち切るべきである、こういうふうに主張しているわけでありますが、特に私は対韓経済援助の問題について大臣の所信をはっきり聞いておきたいのですが、こういう状態でもなおかつこの対韓経済援助はおやりになろうとするのか。そしてまた、そのためには政府としてほんとうに対韓経済援助の実態というものがどういうふうなものなのかということについて確信を持っていらっしゃるのかどうか、やっぱりやらなければいけないと、経済援助をしなければいけないというふうにお考えなのかどうか、その辺をお聞きしたいと思うのです。金大中問題はもう先ほど論議されましたし、ここは決算委員会でございますから、経済の面についての大臣のお考えをまずお聞きしておきたいと思います。
  76. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府は従来金大中事件によりまして対韓政策基本を変えるつもりはないということは国会を通じて申し上げたとおりでございまして、金大中事件金大中事件として処理してまいり、対韓政策は対韓政策として推進してまいるべきものと心得ております。  それから、第二の問題でございますが、対韓経業協力の問題につきまして塚田先生からの御批判を承ったわけでございます。第一、私どもの経済協力はたびたび申し上げておるように、特定の政権擁護という趣旨でやっておるわけではなくて、その受益国の民生安定、経済自立を助けるという意味でやっておるわけでございまして、それぞれの国にはそれぞれの国が選んだ政府があるわけでございまして、それが経済の計画を立てておるわけでございまして、それに対しましてどういうプロジェクトについてどの程度日本といたしましてお手伝いができるかという目安をわれわれは考えながらいたしてまいっておるわけでございます。しかし、これとてもいつまでもだらだら考えておるわけではございませんで、韓国といたしましても経済の自立をできるだけ早く達成いたしまして、政府援助に期待しないで、みずからの経済の自立を確保できることを念願して長期計画を立てて努力をされておると承知いたしておるわけでございまして、今次第三次計画が満了いたしますまでの間に政府援助に期待することなくやっていけるようにいたしたいということは、去年の閣僚会議あとの共同コミュニケにもそういう意図が表明されておるわけでございます。日本といたしましてもできるだけそういうことが期待どおり実行されることを歓迎し、またそのためにこそわれわれといたしましても可能な限り御援助いたしたいと考えておるわけでございます。先ほど申しましたように、あくまでもこれは受益国側の自主的な計画をベースにしてやるよりほかに道はないわけでございまして、日本がこれはやる、これはやらないというようなことをかってにやるわけではなくて、どの国に対する経済協力も、その国の計画につきまして日本が是と信ずるプロジェクトについて、日本が可能な協力の限度を考えながらおつき合いをするというたてまえを、それは韓国ばかりでなく、どの国に対しましても体制のいかんを問わずわれわれはとっておるわけでございます。  それから、しかしながら、こういうことをやりましてそれが成果があるかどうか、それに対しまして塚田さんをはじめ多くの方から批判があることも私は重々承知いたしておるわけでございまして、そういう批判に目をおおうてひとりいくということを政府考えているわけでは決してございません。絶えず吟味を重ねてわが国の経済協力成果をあげることができますように、国民の疑惑を招くことのないように配慮してまいることは当然の政府の責任と考えております。  さらに、もっと言わせていただきますと、従来この日本の経済協力やり方といたしまして、まず第一にコミットメントという一応のそういう計画についてはこの程度の範囲内でひとつ協力考えましょうという約束をして、あと精査をいたしまして交換公文をつくって具体的に援助額を確定してまいって、それを輸銀なりあるいは経済協力基金のベースでディスバースメントの取りきめをいたすわけで、三段階になって行なわれておるわけでございます。したがって先ほど鈴木先生からもお話がありましたが、従来コミットしたものがまだ実行されていない面も確かにあるわけでございまして、したがって新しいコミットとがこう二重写しに出ておるような印象を受けられるのも無理ないと思うんでございまして、そういう実行上三段階で念査いたしまして正確を期しておるわけでございまして、そのあたりのやり方につきまして、これがいいか悪いかいろいろ批判もあるわけでございますけれども政府としてはできるだけ正確に具体的な事情を踏まえて念査の上やっておるものであるということの御理解はいただきたいと思います。
  77. 塚田大願

    ○塚田大願君 いま大臣は、日本の対韓援助は韓国経済の自立を助けるためにやっておるので、なるべく早くそういう韓国の経済が自立していくような方向で努力をしていると、こうおっしゃいました。しかし最近の経済援助の実態を見ますと、年々この額がむしろふえておるというのが実態ではないかと思うんです。だんだんどろ沼に入っておるという感じが非常に強いわけでありまして、そういう意味では大臣のいまおっしゃったきれいごととはだいぶ事実が違うんではないか。  それからもう一つは、最後におっしゃったプロジェクトに対しては正確で、しかも具体的な計画でこの仕事を援助しておるのだと、こうおっしゃいましたけれども、この点も私は必ずしもそうなっていないと、非常につかみ金的な大まかな援助のしかたをやっている。必ずしもプロジェクトを正確に、あるいはプラントにいたしましてもそうですけれども、正確にこの計画を検討して援助をしたというふうにはどうしても見えないわけで、そこでまあこういう抽象論では結着がつきませんから、私は十月十一日の当決算委員会におきまして、韓国アルミの問題について外務省その他にもお聞きしたわけであります。そしてそのときにこの決算委員会で、この韓国アルミの問題については韓国の国会で特別調査委員会が設置された、七〇年の七月十九日でありますけれども、この特別委員会が設置された。そしてまたその一カ月後にはこの特別委員会の報告書というのが提出をされた。したがって、この韓国アルミの問題についてはその資料をひとつ出してもらいたい、こういうふうに私が要求いたしましたら、水野外務次官が、いや実は外務省としましてもソウル大使館を通じて調査をしたけれども、韓国の報告では、そういうものはありませんと言われましたと、こういう答弁をされたわけですね。で、これは実に驚くべきことでありまして、実はこの韓国アルミの問題というのは韓国国会がひっくり返るほどの大騒ぎになった問題、どの新聞でももう一面トップに報道した問題です。ソウル大使館が知らなかったというのも、そもそもおかしいんです。しかし韓国の国会に聞いたけれどもなかったという返事だったからありませんという報告をするというのもずいぶんひどいことだと思うんです。  そこで、きょうはその点をはっきりまずひとつさせたいと思うんですが、ここに韓国の朝鮮日報がございます。で、これは七月十九日の朝鮮日報でございますが、ここには一面トップにこの韓国アルミの問題で国会で特別委員会ができたということがちゃんと書いてある。そこで私、これを持ってこの間水野次官にお会いしました、外務省お尋ねして。こういうのがあるんじゃないか、どうしてああいう答弁をしたんだ、いや、それは私も実はおかしいと思ったけれども、まあ事務局がそういうふうにメモをくれたから読み上げてしまったんですと、実はあったらしいですと、さっそくそれは訂正をいたしますと、まあこういうお話でございました。特別委員会が設置され、そして調査報告があったと、このことがはっきりしたわけでありまして、これは何も朝鮮日報だけではありません。東亜日報でもこれが載っておるんです。つまりこれは一流新聞です、韓国の。全部一面トップに載っておるんですね。それを外務省がごまかそうとしたというのはたいへん私はけしからぬことだと思うんです。またソウル大使館もそういう無責任な報告をしたということもけしからぬことだと思うんですが、とにかくこれは過ぎたことで、外務省も一応認められたことでございますから、これはこれ以上追及いたしませんけれども、まずその点を確認をしていただきたいと思うんです、こういうものがあるということですね。そしてこの間の答弁の誤りをひとつ訂正をしていただきたい、こういうふうに考えます。
  78. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) ただいま塚田先生御指摘のとおり、先般の決算委員会におきまして水野政務次官から、韓国の国会財政委員会行政室長の記憶に基づいての答弁を申し上げまして、それが事実に相違する点がはっきりいたしました。確かに日本大使館を通じまして調査しました結果、七〇年七月十八日の韓国国会本会議で与野党議員による特別委員会を構成する決議案が採択されました。同じ年の七月二十一日から八月十九日までの約三十日間調査を行ないまして、韓国アルミ、経済企画院、商工部、産業銀行等の関係者から事情を聴取したことが判明いたしました。調査の結論といたしましては、前回の決算委員会において御指摘のありましたような資金の不正流出という事実を信ずるに足る根拠はなかったというふうに聞いております。
  79. 塚田大願

    ○塚田大願君 そこで、その第二段階の問題です。不正がなかったということをいまも繰り返されたわけでありますけれども、しかしこれはもう非常に韓国の国会では大問題になりまして、私韓国の新聞をここにたくさん持っておる。朝鮮日報あるいは東亜日報、みんな一面トップです。ここではたいへんなことになっておりますので、その点をまずひとつここで紹介をしまして、さらにそのいまの答弁を訂正してもらいたいと思いますけれども、当時韓国国会でどういうふうにこの問題が問題になったかと申しますと、たとえばこれはやはり一九七〇年の七月二十日ごろの問題でありますけれども、とにかく韓国アルミが千三百四十八万ドルを日本から借款をしてアルミニウム工場をつくるということになった。しかし、実際に使われたのは七百五十六万ドルで援助費百三十四万ドルを加えても残りの四百五十七万ドルが海外に逃避をしたというふうに言われているわけです。私がこの間国会で追及いたしましたのも、数字が若干違いますけれども、大体そういうことでございます。やはり四百五十万ドルぐらいどこかへ消えてしまったということは韓国国会で堂々と論議をされておるんですね。これは新聞にも詳細に出ているのです。時間がありませんから、一々それを紹介するわけにいきませんけれども、特にここで私が問題にしたいと思うのは、このときにこういう問題が起きておるのです。これは野党議員が追及したのですけれども、韓国アルミの幹部が東京で輸出業者のトーメン、それからエンジニアリング・コンサルタントの昭電、この幹部と会って借款の二重契約をしたと、いいですか、二重契約をし、船積み書類を偽造したと、こういうことまで出ておるのです。そして四百五十七万ドルを、つまり浮かした四百五十七万ドルを三等分をしたと、この三社で。韓国アルミとトーメンと昭和電工が。そしてこの金で韓国アルミが東京や京都でこの社長さんが不動産を買い占めたとか何とかという話も出ておる。しかしまあこれは韓国のアルミのことですから別としましても、とにかくトーメンや昭電がこういう不正をやってこのごまかした金を三等分をした、特にまたトーメンは韓国アルミに借款を先貸しして借款利息の年五・七五%を無視して年二二%を取ったというようなことも、これも論議されておるんです。事は韓国の問題だったらわれわれは何も一々これに介入する必要はないでしょう。しかし日本の商社、そして日本の輸銀、そして日本政府が承認したこの借款がこういう形になったということになれば、これは日本政府としても私は黙っておるわけにはいかないんじゃないか。ところがこの間の質問のときに政府はどういう答弁をしたか。愛知大蔵大臣——愛知さんは今度おなくなりになってたいへんお気の毒だったと思うんですが、とにかくこのときの愛知大臣あるいは水野外務政務次官は異句同音に、とにかく事は韓国の問題でありますと、日本政府が関連しているのは日本の企業、商社、これに対して輸銀が相手にしてこれに信用を貸しておるんで、あとは当事者同士の話で事はうまくいっておるんですから、こういう答弁をされたんですね。日本は何も関係ないです、問題は韓国の問題だ、こういうふうにおっしゃったんですけれども、しかし、具体的に材料を見ると、みんな日本の商社が関係をしておる、いわば競合しているといってもいいんです。したがって、私は今日なおかつこのことは日本政府の責任ではないというふうにしらを切れる問題かどうか、この点について私はやはり海外経済協力に責任を持っていらっしゃる外務大臣がいらっしゃるんですからきょうは外務大臣からこの問題についてどういうふうに考えていらっしゃるか、それをお聞きしたいと思うんです。
  80. 澄田智

    参考人(澄田智君) 外務大臣がお答えになる前に輸出入銀行の立場でお答えを申し上げたいと思います。  前回申し上げましたように、本件は延べ払い輸出の金融でございまして、日本の企業が相手方の企業と輸出入契約を締結する、その輸出入契約の内容につきましてこれが妥当かどうか、融資が的確であるかどうかという点についての審査をいたしまして、そして相手国政府、韓国政府の輸入の許可、それから日本政府の輸出の認証というような、そういった法的手続が十分完備しているかということを確認いたしまして、そしてさらにそれの輸出の物資が、機械、施設、そういったものが確実に船積みをされているかということで船積み書類等を確認いたしまして、その上で貸し出しの融資を実行いたしたわけでございます。さらに本件の場合は年産一万五千トンのアルミの電解の工場でございますが、その能力テストというのを現地でエンジニアリングのコンサルタントである昭和電工もいたしておる、そうして商業運転に入ったと、こういうようなことでありまして、そういった私どもの手続から見る限りにおきましては御指摘のようなことがあろうということはとうてい考えられないことでございます。現実にその輸出の内容等についても私どももそのときも十分審査をいたしましたし、その後この問題についてフォローいたしてみたわけでございますが、そういうことはとうてい考えられないと、かように存じております。
  81. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) せっかくの御質問でございますが、これはいま輸銀の総裁が御答弁申し上げましたように、延べ払い輸出信用の問題でございまして、私の所管の仕事ではないと思います。
  82. 塚田大願

    ○塚田大願君 外務大臣としては別に直接所管大臣ではありませんから御答弁は無理だと思うんですが、私が聞きたいのは、こういう経済援助のあり方というものをなおかつ今日続けようとしていらっしゃるから私は所信をお伺いしたわけでありまして、なければないでけっこうです。  そこで、まだいま輸銀の総裁のほうから、そんなことはとても考えられないとおっしゃるんですけれども、ところがこの問題についてははっきりした証人もおるんです。非常に明確な証人がおる。それは前の東京駐在の韓国アルミの購買責任者です。朴良洙という方です。この方が国会ではっきり証言をされておる。韓国アルミの援助物資を購買する責任者ですから非常に、一番よく知っておられるわけですけれども、この方がやはりいまのことを証言されておるわけでありまして、たとえば当初、韓国アルミ、トーメン、昭電の合意した予算書では七百七十万ドルになっていた。ところが政府はこれを千三百四十八万ドルとして承認してくれた。で、このうち技術援助費百三十四万ドルを除いて三百六十余万ドルが海外に流出した、こういうふうにはっきり言われている。またいまの船積み書類の偽造にいたしましても、機器材導入についての政府承認価格と送り状価格の間にははなはだしい差があり、会社の指示によって船積み書類を偽造、通関をしやすくした、こうも言っていらっしゃる。あるいは張という韓国アルミの社長は、この人に政府承認価格と船積み価格に差が出ないよう購入価格の偽造を指示した、こういうことも言っております。  さらに問題は、これは日本の問題になるのですが、借款先のトーメン側がこの船積み書類作成のためにこのような価格の事前調整を要請したと、トーメンから要請してきたというのですよ、この調整を、偽造するために。これも証言されている。そしてまた、借款資金の流出過程は知らないが、トーメン側がアメリカに送金した金額に対する利子支払の要求書も提出したことがあると、まあこういう種類のことですね。ですから、これだけの証拠がありますと、まあそれは知らぬ存ぜぬというわけにはいかぬのじゃないかと思うのですね。しかも大臣、韓国はいわば日本政府にとれば運命共同体だともいわれているほど大切な友好国、その韓国の国会でこれほど日本の企業の名前が上がって、この借款がこういう不正を含んでいるんだということが指摘されても、なおかつこれは知りませんと、契約書も何も、書類もちゃんと審査をしましたと。これでは私は済まないと思うんです、そんな形式的な答弁では。船積み書が偽造され、契約書が二重につくりかえられた、こういうことになると大問題。  ですから私はこの問題をやかましくこの前はお聞きしたわけです。しかも証人に立たれた方に対しては、これもその後の国会で問題になったのですけれども、とにかくこの韓国アルミの会社の幹部がこの証人に対して、おまえ、これ以上口をつぐまないとおまえ消してしまうぞと言ったとまで言われている。それは韓国の国会で問題になったのです。これほどのいわば大事件です。黒い霧です。ですから私は、この問題はいまの輸銀総裁の答弁のようにきれいごとで済ますわけにいかない。もう一度その船積み書類なりあるいは契約書なりを再審査してみる必要がある、徹底的に追及してみる必要がある。とにかく、事は国民の税金が半分近くどこかへ行くえ不明になる、千三百四十八万ドルの半分近いものが行くえ不明になり、蒸発をしたというんですから、それに一枚日本の商社、企業がからんでおるというんですから、これはやっぱり大問題であると思うので、その点ではもう一度輸銀総裁としてはそういう事態を明らかにする決意をお持ちかどうか、これをひとつお聞きしたいと思うんです。
  83. 澄田智

    参考人(澄田智君) 繰り返して申し上げるようなことではなはだ恐縮でございますが、輸出入の場合の契約書につきましてもわれわれ十分審査をいたしておるわけでございますし、両国政府それぞれの輸出及び輸入の承認、許可というような手続も踏まれておるわけでございます。  それからいま御指摘のように、なおもう一度その点について確認調査をするかどうかという点でございますが、先般塚田先生から御質問がございましたし、私どもも当時の記録等はその後もこれをしさいに調べたわけでございますが、輸出したものの内容あるいはその価額等の点についても特に疑義があるものとは思われないわけでございます。現実に、何よりもその工場自体が所期の内容、能力というものを持って動いて、そしてこれはずっと操業されたわけでございまして、そういうところから見ましても、いまおっしゃったようなことが韓国国会でいろいろ論議があったにいたしましても、現実にそういうことがあったというふうにはとうてい考えられない次第でございます。
  84. 塚田大願

    ○塚田大願君 外務大臣がお忙しいようでありますから、外務大臣に最後にこれは一つだけお聞きして、退席していただいてけっこうだと思うんですが、いまの韓国アルミの問題も一つでございますが、私はまだほかに材料をたくさん持っております。十何社、まあこれは企業の数ですが、そのうち輸銀の関係しているものが七社あるんですが、これがやっぱり資金の流用をやっておるというのでかなり韓国では問題になっております。ですから、何も韓国アルミのことだけではないので、まだまだ幾つもあると、こういうことです。それがみんな怪しい黒い霧に包まれているということになりますと、大臣、事は千三百四十八万ドルの韓国アルミだけではなくて、この日本の経済援助全体がやはり問題があるというふうにこれは推定して間違いはないと思うんです。そういう状態の中で、なおかつ第七回閣僚会議をお開きになって、三億ドルでありますか、四億ドルでありますか、それは金額はどうなるかわからぬけれども、とにかく膨大な援助を近くきめるということになると、私はもう大問題だと思うんですね、政治的に。ですから私は最初に申し上げましたように、こういう経済援助を打ち切るべきであると、日韓経済閣僚会議は中止すべきであると、こういうふうに主張するゆえんはそこにあるのであります。その点を最後にもう一度大臣にお聞きして、ひとつ大臣はお帰り願ってけっこうだと思います。
  85. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 重ねて恐縮でございますけれども、経済閣僚会議につきましてはいろんな御批判が経済協力についてあることは私も承知いたしておりまするし、そういう中で対韓経済協力というものが十分効果的に、かつ清潔に履行されて、国民の御納得がいくようなことでまいらなければならない、こういうことを十分戒めながら、今後進め方について十分配慮してまいりたいと考えております。ただ、塚田さんに御了解いただきたいのは、政府援助の問題をわれわれは取り扱っておるわけでございまして、民間の経済交流という問題についてプロジェクトごとにここで取り上げているわけじゃないというわけでございまして、これはわれわれの体制が自由な体制をとっておりまするので、これは民間の契約ベースで、ビジネスベースでやられておることでございまして、私どもが問題にいたしておりますのは、政府間の経済協力という狭い意味におきましての措置であると御承知を願いたいと思います。
  86. 塚田大願

    ○塚田大願君 まあ、いまの外務大臣の事務的答弁では、私納得しないんです。それはなるほど外務省海外経済協力というものは政府だけにしぼっているかもしれませんけれども、問題は、この輸銀にいたしましても何にしても、対外援助というのはやっぱり政府としての閣僚の一人として、私はお聞きしたかったわけでありますけれども、まあそれはまた次の機会でよろしゅうございましょう。  質問を続けたいと思いますが、先ほど輸銀のほうは、もうこれ以上やる必要はないというふうに言われておるのですけれども、そうなりますと、輸銀というのはどういう役割りを持っておるのか、何がやられてもちっともわからない、こういうことになっちまうんですけれども、そこでもう少しこの問題を詰めたいと思うのです。この間私の質問に対しまして輸銀の総裁がお答えになりました一万五千トンのアルミニウムの施設、これは四十三年六月から四十四年にかけて五十二回にわたって船積みが行なわれましたと、そして四十四年の九月にはプラントの組み立てが完了して、この工事の完了を、昭和電工が確認をし、業者がサインをいたしましたと、まあこういうふうにおっしゃっておるわけですね。ところが、この場合でも私は不可解に思ったのは、なるほど一万五千トンの生産設備は完了した、そして昭和電工が確認をして業者はサインをした。そこまではよろしい。しかし、じゃその設備の価格が一体どのくらいここでかかったのか。つまり千三百四十八万ドルでありますか、日本が、輸銀が融資をしたその分でちゃんとこの設備が完了したのかどうか。そのことについては一言も触れておらない。生産力は確かに生産施設としては完了した。しかしこれだけの金がちゃんとこの設備にかかっておりましたということは言っていらっしゃらない、この点が一つあいまいだということです。  それからもう一つ、私が資料を見まして感じたのは、これは外務省の経済協力局で出されました六九年八月の視察団の報告書であります。これは前回にも私これを引用いたしましたけれども、これを見ておりますと、この視察団が向こうに行かれまして、——六九年にいらしたのですね——そうして六九年の二月現在で輸入設備は六三%到着済みとのことであった、こういうふうにいっていらっしゃる、六三%。六九年の二月現在でですよ、昭和四十四年。これは外務省の報告に出ておるのですね。で六三%といいますと、金額にしましてちょうど先ほどから問題になりましたように約七百万ドルぐらいなんですね。そうすると私が指摘いたしました場合にもそうですけれども、七百五十万ドルぐらいですか、そうするとやっぱり残りが六百万ドルぐらいですね、そのまあここには出ていないわけです、外務省の報告には。六三%。ただこれは金額であるか、物の計算かそれははっきりしません。とにかく六三%という数字が出ておる。それからまた先ほど私が申しました韓国アルミの東京駐在の購買責任者の朴という方の証言も、やはりこの方が購入した物資は七百七十万ドルだと、こういうふうにおっしゃっておるので、みんなその数字は一致するのです。私が決してそのいいかげんなことを言ったのでないということは、こういう点でも証明されるわけですけれども、その点でですね、私はまだいまの輸銀総裁のこの答弁というのはたいへん不満足です。で、これはやっぱりこれからももっと追及もいたしますし、政府側でもこれはもっとはっきりさしてもらわなければならない問題だと考えております。まあこれは注文だけしておきましょう。もう答弁をお聞きしてもおそらくこういう勉強はしていらっしゃらないでしょうから、ひとつあとでもけっこうですから、意見があれば聞かしていただきたいと思います。  時間もなくなってまいりましたから、もう一つだけ私はここでお聞きしておきたいと思うのですけれども、これも韓国の新聞に出ておることですけれども、そうして大臣にもちょっとさっきお話ししましたけれども、この外資を導入しておる会社が、それを目的外に流用しておるということが韓国の政府で問題になっておるわけです。正確に言いますと、十月十九日経済企画院が国会財政委員会に提出した国政監査資料、ここに外資を導入した企業が三千万ドル目的外に流用をしておるということが問題になっておる。そうしてこのリストが出されております。これはリストは発表してお手元にもお配りしたと思うのですが、この発表を読みますと、十四社ということになっていますが、このリストの数からいうと十二社になっております。でこの十二社のうち輸銀が関係しておる会社が幾つあるかというと七つです。韓国電気冶金、韓国肥料、共栄化学、新興水産、極東海運、韓国電力、韓国化成、七つもこれに関係をしている。半分以上、十二社のうち。こういう会社がみんなその借りた金をほかに流用をしておる。これが政府の監査によって明らかになって問題になった。特にひどいのは新興水産、極東海運、これは輸銀が関係しておられる。これなんかは全額をほかの目的に流用をした。全額ですよ。一部ではない。これほどの極端な話というものはちょっと常識では考えられないことですね。でその流用の金額はどのくらいかというと、二千四百二十二万六千ドルです。ほかの十二社全体から言うと二千九百七十七万一千ドルでありますが、そのうちの二千四百二十二万六千ドル、まあいわば八一%です。それも日本からの借り入れたものがほとんどだと、こう申し上げていいわけであります。こういう事実があるはずです。ですから私は韓国アルミの問題を徹底的に、一つのいわば典型的な例として調べてみる必要があると考えたわけでありますけれども、とにかく調べれば調べるほど次から次へとこういう怪しげな問題が出てくる。はたしてこれでほんとう日本政府がおっしゃっているように、日本の経済協力、経済援助が韓国の経済のためになるのか、韓国の国民の民生安定に役立っておるのかという問題については非常に大きな疑問が残ると思うわけであります。その点で、時間も来ましたから私はこれで終わりますが、ひとつ輸銀の総裁から御答弁をいただきたいのですが、外務省経済協力局長もおられるんですから、局長からもひとつ御意見をお伺いしたいと思います。
  87. 澄田智

    参考人(澄田智君) ただいまお述べになりました七社に対する輸銀の関係でございますが、これはいずれも御指摘のとおり、七社につきましては延べ払い輸出、先ほどの韓国アルミと同様な形でございますが、日本の輸出業者が輸出をする、その輸出業者に対して延べ払い金融を行なっております。特にその中で御指摘がありました新興水産、それから極東海運でございますが、新興水産につきましては、これは詳細は時間がございませんので申し上げませんが、十五隻のトロール漁船の輸出でございます。そしてこのトロール漁船は現に輸出をされまして、ただし現在新興水産はその債権債務を譲渡してほかに移っておるという実態になっておるようでございますが、これは韓国水産開発公社というところではないかと思いますが、そこでこのトロール漁船は現にマグロ漁業に従事をしている。ただしそのうち一隻がこれは事故を起こしまして消失をしておりますが、それ以外については現在韓国漁業に従事をしているという次第でございまして、輸銀からの融資した資金が全部ほかに流用されているというような点につきましては、これは現にこの資金によって建造された船でございますのでそういうことはない、こういうふうに考えるわけでございます。それから極東海運も同様でございまして、これも船でございまして、鉱石専用船二隻を日本に発注いたしまして、これに対して輸銀の融資によって鉱石専用船を韓国に輸出をした、こういうことでございます。これは極東海運が現にこの鉱石運搬船をチャーターに出しまして、一つアメリカのベスレヘム・スチール社にチャーターに出した、それから一つはジャパンラインにチャーターに出した、これもいずれも運航されている。したがって資金が流用されているということは考えられない、こういうことでございます。  それから先ほどの点は私前回の答弁が不十分であったかも存じませんが、千三百四十八万六千九百六十七米ドルの内訳は、設備代金が千二百十四万一千二百八十九米ドル、それから技術援助料が百三十四万五千六百七十八米ドルということでございまして、その内容に当たるものが輸出され、船積みをされているという次第でございます。技術援助料はもちろんそのものでございませんので、船積みということはございませんが、そういう実態が現に出ている。それでそれが工場となって稼働され、能力が発揮されているということを前回申し上げた次第で、そういうものが出て初めてそうなるということでその点の説明が不十分であったかと存じます。  それから先ほどございました日韓経済協力に対する視察団の報告書でございますが、これは一九六九年二月現在で六三%、物が到着しているということでございますが、建設の予定は当初十月を予定しておりましたが、これが予想以上に順調にまいりまして、七月からはすでにテストを始めておって、八月に操業開始の予定である、九月に能力テストを行なったわけであります。したがいましてこの報告書の二月時点では六三%でございましたが、それから非常に順調に残りの設備資材が入りまして七月に組み立てが終わった。この報告書はその途中の段階で六三%という数字が出ている、こういうふうに承知をいたしております。
  88. 御巫清尚

    説明員(御巫清尚君) 先ほど来御指摘の問題は、大臣から御答弁申し上げましたように、直接私どもの所管の事項ではございませんが、御指摘のような流用とか、そういう問題がいろいろありますかどうか、事実をまず確認をする必要があると思いますので、そういう点今後とも努力を重ねて、もしかりにもそういう事実が確認されました上は私どもとしてもできるだけの手段をとりたいというふうに考えております。
  89. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 外務省についての質疑は、議事の都合により一時中断をし、午後から防衛庁質疑を行ないます。  それでは午後二時から再開することにして、暫時休憩いたします。    午後一時十七分休憩      —————・—————    午後二時八分開会
  90. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和四十六年度決算外二件を議題とし、防衛庁決算につきまして審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。  議事の都合により、これら防衛庁決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれも口頭報告を省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  92. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) これより質疑に入るわけでございますが、質疑に入る前に、山中防衛庁長官、木野防衛政務次官からそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。山中防衛庁長官
  93. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 今回の内閣改造で、また留任で現職のまま仕事を続行することを命ぜられました。いろいろ各党立場の違う複雑なポストでございますので、委員各位の御満足のいく仕事ができるかどうかわかりませんが、精一ぱい努力をしてまいりたいと存じます。よろしくお願します。
  94. 田中寿美子

  95. 木野晴夫

    説明員(木野晴夫君) このたび防衛政務次官を拝命いたしました木野晴夫でございます。諸先生方には何かとお世話になることが多いと存じますが、よろしくお願い申し上げます。
  96. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) それでは質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  97. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 山中長官には引き続き御苦労さんでございます。  私は防衛問題ということでありますけれども、これと不可分の関係にあります「ミッドウェー」の横須賀の母港化の問題についてこれを中心にして若干質問をしていきたいと思う一わけであります。この点については、すでに過般の国会において私からも本会議で質問をしたことがあるわけでありますが、この一体母港化というのはどういうことなのか、こういう点について質問をしたところが、きわめて簡単な答弁であったわけでありますけれども、しかし私どもはこの母港化がそう単純なものではない、そういう認識を持っておるわけでありますけれども政府の関係者としてはこれをどのように見ておられるのか、この際ひとつ所見をお聞かせ願いたいと思います。
  98. 角谷清

    説明員(角谷清君) ただいま母港化につきまして御質問でございます。お答えさしていただきたいと思います。  米国政府は、その海軍の艦船の展開地域に近い外国に乗組員の家族を居住させるということによりまして、艦船の本国帰投回数、これを減じ、もってその艦船の効率的運用並びに国防費の節減節約ということをはかりまして、あわせて乗組員の家族との別居期間を短縮し、もってその志気の高揚をはかる、こういうような計画のもとにいわゆるこの母港化というものを実施いたしておるわけでございます。したがいまして、現在問題となっております「ミッドウエー」のいわゆる母港化というものもその一環として行なわれておるのでございまして、乗組員、家族を横須賀及びその周辺に居住させるということになったわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、これはあくまでもこの乗組員の家族対策だ、このように考えておるわけでございます。に行なわれてしかるべき方法だと思うわけでありますけれども、これは最近こういうことが日本だけではなくして、何か世界的には四カ所か五カ所設定する、こういうようなことであります。これはいわゆるニクソンドクトリンといわれるアメリカの戦略体制といいますか、そういうものと不可分のものではなかろうかと思うのです。単純に家族を横須賀に住まわせるということだけではなくして、そのもとはといえば、ニクソンドクトリンに基づく一つの戦略的な配置がえであろうと私は考えるわけであります。そういう何といいますかね、極東の戦略体制の上で一体どういう意味を持ってくるのか、この点についてもっとはっきりした答えをいただきたい。
  99. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 戦略体制の問題として私のほうから申し上げます。確かに、ただいま外務省から答弁いたしましたようなことが理由であろうと私も思います。しからばニクソンドクトリンと呼ばれておる一連の政策変更の中にそれは関係はないのかといわれると、やはりある意味では関係があるだろうと私も思います。ただニクソンドクトリンの全体の方向は、アメリカが各地で自由世界の憲兵的な役割りはしないのだ、それぞれの国で自分の地域はやってくれというような感じ印象が貫かれているわけでありますが、この場合は逆に母港化ということでありまして、したがって直接の要因としてはただいま外務省から答弁したようなことでありましようが、アメリカの上院の議論等を聞いておりますと、どうしても海外駐留米軍の経費削減というところに非常にほこ先が向けられておるようでありまして、したがって、国務省、ホワイトハウスとしても、そういう方向への経費削減の努力をしていることは間違いないと思います。戦略的には第七艦隊のこれは空母であることは間違いありませんが、第七艦隊の空母は「ミッドウエー」一隻だけではございませんし、「ミッドウエー」のみが母港化されたからろうと、第七艦隊全体としてはいままでどおりの状態であるけれども、そのうちの空母一隻について、ただいま外務省の言ったような要素も踏まえながら、もっぱら経費の節減という点をねらったものであろうと見ております。
  100. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 俗にいうニクソンドクトリンによりますれば、あらゆる紛争に敏速かつ効果的な反撃を行なう、そういう体制を通常兵力を各地に駐在させることによってその機能を果たさせるという従来の方針を大きく転換をして、陸軍を中心にする兵力を引き揚げまして、それぞれの国がある程度の自衛については義務分担をしろと、こういうように言われております。これは私もそのとおりだろうと思うわけです。しかしながら、表面上はそう言ってはおりますけれども、しかし、アメリカのこの極東の戦略体制というものを維持するあるいは従来のそうした戦力をニクソンドクトリンによって大きく減退をさせるわけにはまいらぬ。したがって、この地上通常兵力を引き揚げることの代替として海軍をあるいは海空を中心にしたそういう拠点をつくらなければならない。その一つの方法として「ミッドウエー」の母港化というものがとられたのではないかとわれわれは受け取るわけです。ちょっと政府考えておる点とこの点違うんですが、私の理解がそういうふうに理解されるわけですけれども、この点について見解を承りたいと思います。
  101. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) あるいはそういう見方も当たっていないという断言はできないかと思いますが、かといって、「ミッドウエー」一隻の母港化によって飛躍的に第七艦隊の極東の守備範囲における能力が増大するというふうにも考えられませんし、やっぱり私は予算のやりくり削減、そういうものから空母一隻の母港化というものを海軍のほうとしてはとらざるを得ないはめに陥ったのではないか、そういう気持ちで受け取っておりますし、     〔委員長退席、理事小谷守君着席〕 事実それによって私ども知り得る米の第七艦隊の極東戦略というものが変化をしておるということはちょっと見受けられないような気がいたします。
  102. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 地上兵力を削減するということは、一つの経済的な面からの要因というものは、そのとおりだろうと思うわけであります。しかし、だからといって、そのままの体制、つまり地上兵力を引き揚げることによって極東におけるアメリカの戦力に支障を来たしたのでは困ると、そういうところはアメリカとして当然考えているだろうと思うわけです。したがって、私はこの「ミッドウエー」の母港化ということは、単に「ミッドウエー」が横須賀を母港化したということだけではなくして、それに付随してアメリカの極東における戦略体制というものの質的な転換が同時に行なわれているのではないか、現に行なわれつつあるというふうに私どもは見るわけです。一つには、じゃ、何によってそれをカバーしていくかといえば、それは何といっても核戦略といいますか、その核体制というものを強化していくというこが今日の時点では当然考えられていくであろうことが一つ。  それからもう一つは、いま言ったような、この「ミッドウエー」の母港化を中心とするような通常の艦隊、そういうものを充実、強化させていくというふうに考えていきませんと、単にこの軍費の節約ということだけでこの点を理解するということには、われわれとしてはなかなか理解しにくいわけであります。そういたしますと、この「ミッドウエー」の母港化というのは、いまたまたま長官もちょっとおっしゃったように、横須賀のこの基地としての性格が従来よりは違ってきたというふうに、私どもは見るわけですが、この点はどういうふうにお考えになっていますか。
  103. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはもう確かに違ってきたことは間違いありませんし、一時は佐世保に移るんだと、こういうようなこと等がありまして、その当時は私、総務長官で、米軍の離職者対策の問題等で真剣に会合を開いてどう対応するか、大量の失業者が出るというようなことを心配いたしていましたら、急にまたそうしないんだという方針が途中で変わってきたりしまして、横須賀における米国の、主として海軍の存在というものが二転三転したわけでありますから、その結果「ミッドウエー」の母港化ということで、一応横須賀というものは定着化された母港となるということで、そういう角度からとらえるならば、従前の横須賀の母港化として「ミッドウエー」がはっきりしていなかった、「オクラホマシティ」その他だけであったということに比べては、質的に若干米側から見て横須賀の基地というものはあくまでも非常に重要な基地の一つとして見るでありましょうし、また私どもとしても横須賀というものは「ミッドウエー」が母港化されたことによって、全然変化がないということはやはり言えないと思いますし、それを受けて防衛施設庁等についても、受け入れその他については外務省との交渉の結果を踏まえていろいろ仕事が出てくるわけでありますから、やはりその点は変化がなかったとは言えない、私もそう思います。
  104. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 これは、このあと事前協議の問題について、もっと掘り下げていろいろお尋ねをしたいわけでありますけれども、常識的に考えて、基地の機能を縮小、整理していくというのが日本政府考え方であっただろうと思うわけであります。そういうことからすれば、明らかに基地の質的な変化、むしろこの基地の機能が強化されたというふうに常識的にとってもいいと思うわけですよね。ですから、この「ミッドウエー」の母港化ということは、単にその家族が横須賀に住むということだけではなくして、アメリカの戦略体制全体、そして横須賀の基地の機能というものが非常に強化されてきた、そういうふうに受け取るべきだろうと思うわけでありまして、そういう点でこの問題はたいへん重要な問題であろうというふうに私ども考えるわけであります。  そこで、これは従来の政府答弁をずっとこう見ますと、母港化の意味をですね、こういうふうに理解してよろしいかどうか、内容的には家族を住まわせるとか何とかということがありますけれども、母港化とは「ミッドウエー」が横須賀を根拠地にするということであります。あるいは本拠地、そういう意味なんだ、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  105. 角谷清

    説明員(角谷清君) 横須賀を根拠地とすると仰せられましたが、根拠地という、これは意味によっていろいろ違い得ると思うわけでございます。私どもといたしましてはこの軍事的な活動上の根拠地というような意味ではこれをとらえておらないのでございまして、その意味におきましては根拠地というわけにはまいらない、このように観念いたしているわけでございます。
  106. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 これはたいへん重大な答弁ですよ。「国会における防衛に関する論議」というこの調査室から出された資料に、従来の政府見解がいろいろ質疑応答の中に出てきたものがここに書かれているわけでありますけれども、いまの答弁とは全然違いますよ、これは。いいですか、それで。変更になったわけですか。ちょっとその点確めていただきたいと思います。
  107. 角谷清

    説明員(角谷清君) 母港ということばにつきましては、これはまあいろいろなふうに解釈できると思うわけでございまして、たとえば船舶の在籍港、登録港、あるいはその連絡の地点、あるいは活動上の本拠地というような意味にもなり得ると思うのでございますけれども、われわれといたしましてはそういう意味におきまして軍事的な活動上の本拠地という意味にはとらえていないわけでございます。
  108. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 それでは申し上げますけれども昭和四十四年四月二十四日参議院の外務委員会において「母港、根拠地、本拠地ということは全く同じか。」、こういう質問に対して東郷外務省アメリカ局長は、「同じと考えてよい。」、こういうふうにはっきり言っているのですよ。
  109. 角谷清

    説明員(角谷清君) その東郷アメリカ局長の御答弁は、まあその母港という意味が先ほど申し上げましたとおりいろいろ人によってとり得るという点におきまして、先ほど申し上げましたまあ活動上の本拠地という意味——私ちょっと東郷アメリカ局長の御答弁の全文をここに承知しておりませんけれども、活動上の本拠地というような意味で申し上げたのではないと存じております。
  110. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 これは事前協議の問題で非常に重大な用語なんですよ。本拠地か、根拠地かということと、単なる寄港か、活動の拠点かということ、その解釈によって、これから触れてみたいと思うわけでありますけれども、事前協議の対象になるのかならないのか、これは重大な問題なんですよ。  それではさらにいまの資料によりますと、昭和四十四年四月二十二日参議院の外務委員会の答弁ですね、これは。条約局長の答弁でありますが、つまり海軍の場合の、あるいは空軍も同じようなことが言えると思うわけでありますけれども、いわゆる配置、軍が配置された、陸軍の場合に非常に明確なんですよね、地上ですから、一定の地域に駐とんをするということですから、これは配置されたか配置されなかったか、こういうことが明確であるけれども、空軍、特に海軍の場合には非常に不明確である。したがって、その点のはっきりした根拠というものを明確にしていくことは、これは当然だろうと思うわけであります。こういう答弁をしているわけです。「配置の変更とは」、これは事前協議の第一項目にあるわけであります。「配置の変更とは、もともとこの交換公文自体が、施設・区域をどういうふうに使うかということから出てきたもので、施設・区域を本拠として駐留する場合というふうにずっと答弁しているわけで、したがって単なる寄港というか、ほかのところの本拠の船が入ってきた場合には配置の変更とは考えない。  空軍及び陸軍の場合はいわゆる駐留という形がはっきりする。しかし海軍の場合は、常にかたまっているということはほとんどないと考える——常識的にないと思うので、そこで本拠という観念を入れた。」、こういう、これは事前協議の解釈をめぐって、つまり海軍の場合には、配置をされたか、されないかというのは非常に判定がむずかしい。したがって、いま申し上げましたように、根拠地となるのか、本拠地となるのか。この場合、本拠ということばを政府は使っておるわけであります。したがって、本拠地となった場合には、それは配置されたのだ、こういうことなんですよね。したがって、もとに戻りまして、この母港化というのは、私の言う本拠地、根拠地、そういうことと全く同じだという従来の政府の見解はどうなのかということなんです、質問は。それはいまの答弁と違うわけですよ、いままでの政府考え方と。この点は明確にしておきませんと、私はこれからの質問を続けるわけにはまいりませんので、あらためてお答え願いたいと思います。
  111. 角谷清

    説明員(角谷清君) ただいま事前協議の対象となります観点におきましてお話がございましたが、事前協議の対象となります艦船の配置変更というものにつきましては、これは、一つわが国の施設・区域を活動上の本拠地として使用することが一つと、かつその規模が一機動部隊程度の場合をいうわけでございまして、ただいま問題となっております「ミッドウエー」の場合はこれに該当しないと、このように考えておるわけでございます。
  112. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 私が質問しているのは、そういうことを聞いているのではない。そういうことはこれから触れたいとは思いますけれども、それを聞いているのではないのですよ。従来のこの政府の答弁を見ると、ここに本がありますから、何でしたらどうぞごらんいただきたいと思うのです。私が聞いているのは、「ミッドウエー」が母港化をした、横須賀を母港にしたと、こういうことは、従来政府の答弁によれば「ミッドウエー」は横須賀を根拠地にした、本拠地にしたと、従来の政府の答弁からすればそういうふうに理解できるわけでありますけれども、この点を私は確認をしていきたいと思うのでこれを問うているわけなんです。あなたの答弁は従来の政府の答弁と違ってきていますから、たいへん私は重大だと、こういうことなんです。
  113. 角谷清

    説明員(角谷清君) その母港ということでございますから、これは実質的な意味におきまして、活動上の本拠地ということではなくして、この現在問題となっております「ミッドウエー」のいわゆる母港というものの実体的な性格というものは、これは活動上の根拠地というようなことではなくして、家族対策なり、あるいはその節約——米側におきまする費用の節約ということで横須賀に家族を展開させておるということでございます。
  114. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 ですから、従来の政府方針と違うのだ、今回は見解を改めたのだと言うのならいいですよ、それは。この点、委員長、ここに答弁が明確に文書に載っていますからね、「母港、根拠地、本拠地ということは全く同じか。」という質問に対して、「同じと考えてよい。」というふうに明確に載っているのですよ、ここに。だから、それはこっちが、これが間違っているのか、政府の見解が異なってきたのか、この点をはっきりしていただきたいと思うわけです。そのことを質問しているのです。
  115. 角谷清

    説明員(角谷清君) 私も、当時の東郷アメリカ局長の答弁の趣旨というものは、私が先ほど申し上げましたような趣旨に立って答弁されておると考えております。いろいろ母港とか活動上の根拠地とか、ことばの意味合いによりましていろいろ誤解なりむずかしい点が出てくると思いますけれども、実質におきましては私が先ほど申し上げましたようなことで御理解いただきたいと思うわけでございます。
  116. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 母港の定義、もう一つこういう答弁があるわけですよ。「例えば第七艦隊に属する艦艇でもアメリカ西海岸に一年のうち半年はいる。そこでは、いわゆるオーバーホールを行ない、その間そこに半年ぐらいいて、家族もそこにいるというようなことで、第七艦隊に属する艦艇の大部分は西海岸に母港を持っている。それから常に半年なら半年極東水域に回ってきて、そこで第七艦隊の指揮下に入る。いわゆる本拠地としている港、と考えている。」、つまり母港の定義というものがですね。そしてそのあと、繰り返して申し上げますけれども、根拠地と本拠地ということばと母港化とはそれじゃ同じかという質問に対して、「同じと考えてよい。」と、こういうことですから私が言っているのは無理ないと思いますよ、政府の答弁をそのまますなおに私は読み上げているわけですから。これが違っていると言うんならやむを得ないと思います。
  117. 角谷清

    説明員(角谷清君) 先ほどから私御答弁させていただきますとおり、実質におきましてはこの「ミッドウエー」のいわゆる母港化というものは、これは先ほど防衛庁長官からもお話がございましたとおり、主として費用の節約という点を含みましてこの日本へ、横須賀へ艦船を展開するという措置でございます。このことにつきましては、アメリカ側から本件の話が参りましたときにもそのような説明を受けておりますし、また、たとえばレアード前国防長官も、いわゆる一九七三会計年度の国防報告というものがございますけれども、ここにおきましてもこの母港化というものを説明いたしまして、この措置によりわれわれは平時において家族との離別という好ましからざる影響をこうむることなしに戦力水準をより有効に利用することが可能となるかもしれない、このように申しておりますし、そのほか、たとえばアメリカの海軍の機関誌でございますオールハンドというような雑誌にも同様な構想として説明してございまして、縮小された兵力水準をもって国家のコミットメントに応ずべき海軍の能力及び家族と離れて暮らす期間の短縮の二面というものがこのいわゆる母港化の重要な要素であるということを申しておるわけでございます。先ほどニクソンドクトリンのお話がございましたが、ニクソンドクトリンの一つの主要な点は、これは何もこの方面における軍備を増強するというようなことでは全然ございませんで、むしろその軍備はなるべくできれば関係国にできる部分は負担してもらう、しかしながらアメリカとしては条約上のコミットメントはこれは守るんだということでございまして、そういう観点から——しかしながらアメリカも費用を節減する必要に迫られている、こういう観点、動機から本件「ミッドウエー」を横須賀に持ってきたと、こういう次第でございまして、本件の考えというものは先ほど来申し上げておるとおりでございます。
  118. 小谷守

    ○理事(小谷守君) 速記をとめて。     〔速記中止〕
  119. 小谷守

    ○理事(小谷守君) 速記を起こして。
  120. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) ただいまの御指摘になられました東郷局長の答弁でございますが、これは、その当時、この速記録、いま私実はちょっとざっと読んだところでございますが、いわゆる艦隊の活動の本拠地としている港、それを母港と称することは可能であるという答弁だろうと存じます。で、現在政府が、「ミッドウエー」の横須賀母港化ということについて申し上げております御説明は、艦船の乗り組み員の家族、これが住んでいるという状態、それを母港と称するということだろうと思います。で、母港ということば自体は、法律的には実は必ずしも、すっきりした定義と申しますか、法律的な観念ではないんじゃないかと私は考えるわけでございます。したがいまして、何をもって母港と称するかということは、いわば俗称と申しますと恐縮でございますけれども、一般的に乗り組み員の家族が居住するという状態を母港と称すれば母港ということは言えるだろうと、それからその活動の本拠地として使用する場合、これを母港化という意味に使うならば、そういう意味にも使えるだろうという、母港ということば自身が、若干実は多義的なことばではなかろうかと、こう存ずるわけでございます。     〔理事小谷守君退席、委員長着席〕
  121. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 確かに、母港化ということばが、別に法律用語ではありませんから、いろいろ若干この解釈に幅があるということについて、私も否定しません。だから、いろいろ誤解があるから、いままで政府が非常に理論的に答弁をずっと続けているわけですよ。ですから、いまお手元に持っていきましたこの資料によっても、母港化とは何ぞやということについて、当時の外務省アメリカ局長が明確に答弁しておるわけであります。一定の期間いるということですよね。これは局長の答弁からすれば、一定の期間いる。ここでは一年のうち半年ぐらいはいるということですね。そこでいわゆるオーバーホールをやる、つまり艦船の修理なり何なりをそこでやるということ、それから家族もそこにいると、こういうようなものを母港というのだと、そして第七艦隊に属する艦艇の多くはアメリカの西海岸にそういう母港を持っているのだと、「いわゆる本拠地としている港」、これを母港というのだと非常にはっきり答弁しているわけでしょう。ですから、そういうことからすれば、「ミッドウエー」は、家族も呼ぶ、相当、三年間いるというのですから、西海岸に行かないで横須賀をまさに根拠地として拠点として三年間あそこにいる、あそこで修理をする、そして家族もあそこに住むということになりますれば、これは「ミッドウェー」は、当時外務省アメリカ局長がはっきり言ったように、本拠地とするということはすなおに出てくるんじゃないですか。政府が、母港化とは何ぞやという解釈でそういうことを言っているんです。この当時の解釈が違っているというなら、そこではっきり否定してください。それでなければ、ほんとうにこれ、もう少し先に進みたいんですけれども、全然先に進むわけにはまいりません。
  122. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 確かにいま先生が御指摘になられましたように、当時アメリカ局長は、「たとえば第七艦隊に属する艦艇でもアメリカ西海岸に一年のうち半年はおる。そこでは、いわゆるオーバーホールと申しますか、その聞そこに半年ぐらいおりまして、家族もそこにおるというようなことで、」云々ということを言っておられるわけでございます。これは、この前後の質問及び答弁の意味合いから申しますと、何が活動の本拠地であるかというような実体についての御質疑があって、こういう答弁が行なわれたのだろうと存じます。今回の「ミッドウエー」につきましては、私どもの了解しておりますところでは、「ミッドウエー」の、二ないし三年でございますか、活動しまして、またアメリカに戻って向こうでオーバーホールをするというような状態であるというふうに聞いているわけでございます。で、その「ミッドウェー」の活動の本拠地が横須賀ではないというふうに聞いておるわけでございますので、ここでもし政府委員が申し上げました本拠地としての母港というものと、今度の「ミッドウエー」のこの横須賀に母港という形で立ち寄るというものとは、実体が少し違うんじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。
  123. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 それは、個々の船一つ一つ取り上げれば、多少その港の果たす機能というものは、それは違うと思いますよ。しかし、総体的に見て——それじゃこういう質問をしましょうか。じゃ今度の「ミッドウエー」は、いままでの政府が答弁した、単なる寄港ですか、要するに政府は、寄港の場合には、これは事前協議の——もちろんほかに条件がありますよ、事前協議の対象には、いろんな条件が満たされて初めて事前協議の対象になるわけですけれども、寄港の場合には、  一機動部隊が来ようと、大艦隊が横須賀に来ようと、事前協議の対象にはならないんだという政府の答弁でしょう。それでは寄港と今度の「ミッドウエー」の母港化とどういうふうに違うのですか。これは単なる寄港ですか。そうじゃないでしょう。事前協議の対象の一つの条件が、今度は「ミッドウェー」の場合出てくるわけですよ。ほかに条件ありますよ、一つの条件が。そういう条件にするのを政府はおそれているわけでしょう。だから詭弁を弄しているわけじゃないですか、そういう。寄港とどういうふうに違うのですか。
  124. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 法律的に申し上げますと、配置でないという意味におきまして寄港と同じであると、すなわち、「ミッドウエー」だけの行動を基準にして考えますと、それは寄港と同じことであるということは言えるんじゃなかろうかと思います。
  125. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 だめですよ、そういう答弁じゃ全然。それじゃいままでの政府の見解とまるきり違うじゃありませんか。私どもは、いままで、母港化というのは本拠地にすることだと、そういう政府の答弁があるから、それをすなおに受け入れて、「ミッドウエー」の本拠地になったんだと、答弁をそういうふうに固執するなら、従来の方針を取り消してください。いかなる理由で取り消すのか、そういう点も明確にしなければ、これたいへんな問題ですよ。今度の「ミッドウエー」が単なる寄港だなんていうことはたいへんな問題ですよ。あなた方が固執する、家族だって住むんですよ、横須賀に、一千世帯。何でこれが単なる寄港ですか。あそこの艦船修理部で修理もするのです。しかも三年間もいるということです。それを寄港だなんてことと一緒にしたのでは、これはとても政府の答弁が、そうまちまちでくるくる変わるようじゃ、それはだめです。これは国民納得しません。
  126. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) そこで、実は先ほど申し上げたわけでございますけれども、今度のような「ミッドウェー」の横須賀の使用の状態を法律的にいえば、定義と申しますか、何と名づけたらいいかということについては、私どもも実は法律的にはそのものずばりという定義の仕方というものはないのじゃないかと思っているわけでございます。従来の御答弁でも申し上げておりますように、母港化ということ、母港ということば自身は多義的に使われることばでございまして、今度の「ミッドウェー」の横須賀の立ち寄り及び家族の居住の問題、そういう状態を母港化ということばで御説明申し上げているということであろうと存じます。
  127. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 だからそういう状態を根拠地というのでしょう、母港化ということばが法律用語でなければ。  それなら第七艦隊の旗艦の「オクラホマシティ」はどうなんですか。
  128. 角谷清

    説明員(角谷清君) これは「オクラホマシティ」は横須賀に入っております。
  129. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 何ですか。
  130. 角谷清

    説明員(角谷清君) 横須賀に入っております。
  131. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 いやいや、だから、そんなことはわかっていますよ。「オクラホマシティ」はそれでは横須賀を母港化にしていないのですか、これは。これは母港化なんですか。まだ一ぱいありますよ、一つ一つ私は聞いていきますから。従来母港化と言っているじゃありませんか、政府だって「オクラホマシティ」については。
  132. 角谷清

    説明員(角谷清君) これは「オクラホマシティ」は、家族も横須賀におりますし、「ミッドウエー」と同じような意味におきまして母港という、もし「ミッドウエー」を母港というようなことに称しますれば、「オクラホマシティ」も同様であろうと思います。
  133. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 従来政府は、「オクラホマシティ」については横須賀を母港にしているということは明確に答弁していますよ、根拠地にしている。これは旗艦ですからね、第七艦隊の。いいですね、そういうふうに理解して。第七艦隊の旗艦である巡洋艦「オクラホマシティ」については、横須賀を母港にしている。すなわちそれは従来の政府の答弁である、横須賀を根拠地にしているというふうに理解していいわけですね。これはいままでの政府の答弁ですよ。それも違うというならたいへんなことです。それと「ミッドウエー」と一体どういうふうに違うのですか。  ちょっと委員長、休憩してくれませんか。
  134. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 暫時休憩いたします    午後二時五十七分休憩      —————・—————    午後三時二分開会
  135. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) それでは、決算委員会を再開いたします。  ただいまの空母「ミッドウェー」の母港化の問題に関しての片岡委員の御質問に関して、外務省の統一見解をできるだけ早い機会に出していただくこと、それが出るまでは、その問題に関しての片岡委員の質問は留保しておきます。  次に、それ以外の問題で、それでは片岡委員にお願いいたします。
  136. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 それでは、「ミッドウェー」関係については、事前協議の問題、あるいは核の問題等でございますけれども、この際一括して、統一見解が出されましたあと質問さしていただきたいと思うわけであります。  次に、北富士に関連して、北富士の演習場問題について二、三お伺いしたいと思うわけであります。  北富士の演習場についてはいろいろないきさつ、経過がございまして、その中でひとつこの点をお伺いしたいと思います。ここには富士吉田市外二方村による恩賜県有財産保護組合、そういうものがございまして、現在この組合に対して国有地の払い下げというようなことが行なわれるやに聞いておりますけれども、この恩賜林保護組合と国有地の払い下げ問題について、経緯をお聞かせいただきたいと思うわけであります。
  137. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) いまお話しになりました二百十ヘクタールにかかる部分でございますが、これは国有地と民有地との境界設定のために時間を費やしました。しかし、十一月二十二日に民有地相互間の大体の境界設定というものが完了しましたので、すみやかにあとの処分は大蔵省の段階においてなされるものと思います。
  138. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 この恩賜林組合について過去こういうことがあったというふうに言われておりますけれども、事実かどうか。つまり、この恩賜林組合の所有にかかる土地については三百ヘクタールを富士急に売ったという過去そういう実績があった。さらに、現在、同じく富士急に対して十五ヘクタール貸し付けておるということがあるようでありますけれども、このことは事実ですね。
  139. 川崎昭典

    説明員(川崎昭典君) 大蔵省でございますが、ただいまの御質問にお答えしたいと思います。  三百ヘクタールとおっしゃいましたのは、ちょっと端数がついておりますけれども、私どものほうで調べました関係では、大正十五年に売り払ったことがあるという非常に古い話のようでございます。  それから十五ヘクタールでございますが、これは富士急行株式会社に現在遊園地の底地として貸し付けているという財産のようでございます。
  140. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 さらに三月末で富士急に対して六十ヘクタールの貸し付けの仮契約をやったということだそうでありますが、これも事実ですか。
  141. 川崎昭典

    説明員(川崎昭典君) これは三月末に六十ヘクタールを将来貸し付けようという議決をしたという事実があるようでございます。貸し付けは現在行なっていないということであります。恩賜林組合内部で議決したということでございます。
  142. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 そういう実績を持っておる恩賜林組合に対して、今回二百十ヘクタールをまたまた払い下げなければならないというのは一体どういうことでしょうか。
  143. 川崎昭典

    説明員(川崎昭典君) 払い下げをいたしますのは、正常化ということばを使っているかと思いますが、演習場の使用に関する正常化のためということと、富士周辺の整備のためと、この二つの大きな目的から林業整備事業に資するためと、そういうことになっております。
  144. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 ちょっと聞き取りにくかったのですが、演習場の整備ですか、正常化と、林業の整備ですか。演習場の正常化というのは、これと払い下げとどういう関係になるのですか。
  145. 川崎昭典

    説明員(川崎昭典君) ちょっと正確に申し上げておきますと、「本演習場の使用と、地元民生の安定とを両立させるため、山梨県及び演習場周辺地方公共団体に対し」云々と、そういうことになっております。
  146. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 説明をもっと誠実にやってください。
  147. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 もう一回すみませんがいまのことばを言ってくれませんか。
  148. 平井啓一

    説明員(平井啓一君) ただいまの二百十ヘクタールにつきましては、長年北富士演習場の使用問題をめぐりまして、地元との間に協議が続けられてきたわけでございますが、本年三月にようやく基本的な地元との了解点に達し、三月三十日に閣議了解を行ないました。その閣議了解におきまして、北富士演習場を今後自衛隊の管理する演習場に切りかえ、自衛隊及び米軍による使用についての正常化をはかるとともに、あわせて演習場の使用と周辺地域の発展とを両立させるために次のような措置をとるということで、いろいろ措置事項が掲げられているわけでございますが、その中に、この御質問の二百十ヘクタールにつきましては、地元の林業経営のために払い下げる、そういうことが閣議で了解されておるわけでございます。
  149. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 まあ一般的に林業経営をやるために適正規模の山を経営するというのは、私もその点はわかるわけでありますけれども、いままでの組合の実績からすると、まあ相当古い話ということかもしらぬけれども、相当広大な土地を他に売り払っているわけですよね。そしてまたいま聞くところによると、六十ヘクタールを富士急に貸し付けることを議決していると、おそらくこれは貸すでしょう。それから一方で国のほうからこうもらって、こっちのほうからどんどんやるというようなことでは、これは払い下げの趣旨に私は適さないと思うんですよ、これは。こういう点はどうなんですか。売るほうはもう勝手ですよと、一たん払い下げてしまえば売るほうはいいですよと。国有財産というのは国有の財産ですからね。
  150. 川崎昭典

    説明員(川崎昭典君) この国民地をかりに払い下げるとしました場合には用途指定という制度がございまして、林業のために何年間使えというふうに拘束をいたしますので、その土地の転売はできないということになるかと思います。しかしながら、みずから持っておる土地を売ることがあるじゃないかという御質問に対しましては、まあ法的拘束力はないわけでございますけれども、そういった実質転売に等しい効果があがるようなことはしないということで私どもは検討してまいりたいと考えておるわけでございます。
  151. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 現に今度二百十ヘクタールの払い下げについては、いまおっしゃるとおり私は条件をつけると思います。しかし、他の土地を売り払うということについては国は何らの条件を付するわけにはまいりませんよね、法律的に。これはもう組合といったって全くこれは私的な一つの所有権を持っているというふうに理解できますからね。そうでしょう。で、一方でこう払い下げるけれども、こっちのほうの土地を売っ払うなり、あるいは貸しつけるなり、しかも営利企業に対してね。どうもこの辺がわれわれとしては理解できない。そういう点について地元の方も相当大きな疑惑を持っているわけですよね。これはかまわないですか、六十ヘクタールは貸し付けても、あるいは売り払っても。
  152. 川崎昭典

    説明員(川崎昭典君) 恩賜林組合が議決したことでございまして、私どものほうから拘束をするということはできませんけれども、この六十ヘクタールはまだ返還になっていない地域も相当含まれておるようでございまして、まあ恩賜林組合の説明によりますと、この議決を実行する意思はないというふうに聞いております。
  153. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 意思がないで議決しますか。そんなこと小学生だって聞いたら笑いますよ。意思があるから議決したんでしょう。議決したということはそういう意思があるというふうに見るのが常識じゃないですか。
  154. 川崎昭典

    説明員(川崎昭典君) 私どものほうに特別の調査権限もございませんけれども、従来話し合って、伺ったところによりますと、当時はもちろん意思があったわけでございますが、現在はやはり国有財産の払い下げというものがいろいろむずかしい条件もあるし、いろいろ公の目的のためになされるものでございますから、国側の希望なり意見も十分尊重してやるというふうなお気持ちのようでございまして、この議決自体は実行するという気持ちが現在はないというふうに伺っております。
  155. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 私はこの二百十ヘクタールについては、あるいはそのものについての転売あるいは転貸ということは条件がつけられるかもしれませんけれども、それ以外の場所については、いまお答えのように、転売なり転貸をすることが可能になるわけであります。これはひっくるめて考えれば、国有地を払い下げたりしてそうして大きくなったけれども、ある部分はどんどん転売をするということになれば、これは国有地の払い下げという趣旨に私は反すると思います。ですから、すでにこの問題については、大蔵大臣に対して、慎重に対処すべきだというような申し入れも民間等から出されていると思います。いま十分調査をするということですから、今後の転売、いま行なわれようとする転売等については、これはもうひとつ厳重に調査をしていただきたい。もしそういうようなことがあるとするならば、これはもうとんでもないと、二百十ヘクタールの払い下げなんかしませんよと、こういうことでなければ払い下げの意味はなくなると思うんですよ。そういう点についてはひとつ調査をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  156. 川崎昭典

    説明員(川崎昭典君) ごもっともでございまして、私どもとしましても閣議了解の趣旨を、この土地を払い下げるから他は売ってもよろしいという趣旨には了解しておりませんので、先生がおっしゃるような趣旨で検討してまいりたいと考えております。
  157. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 それでは十分ひとつ検討をして万遺漏ないよう対処していただきたいと思うわけでありまして、その結果を何かの機会があればぜひ御報告をお願いしたいと思うわけであります。  さらに北富士演習場に関して、いままでのいきさつからいろいろとこの整備法を拡大解釈して補助金を出そうというようなことで、いろいろ関係市町村なり県、そして施設庁と話し合ったようでありますけれども、地元からの要求も非常に膨大なもののようでありますが、その状況をちょっと概要を御説明していただきたいと思います、本年度の整備法に基づく補助に関して。
  158. 平井啓一

    説明員(平井啓一君) ただいま御指摘の北富士演習場におきますところのいわゆる周辺整備事業と申しますのは、先ほど御答弁いたしました閣議了解の中にも、周辺対策を今後実施していくということで掲げられておるわけでございまして、昭和四十八年度は総額にいたしまして八億一千九百万、これは補助金の額でございますが、につきまして実施計画も先般きめまして、地元のほうに対してこれの補助金の内示を通達した次第でございまして、事業そのものはこれから実施される段階に入るわけでございます。
  159. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 先ほど私のほうもその資料を施設庁のほうからいただいたわけでありますけれども、一見しますと相当この事業量が拡大をされておるわけでありまして、非常に問題があるようなところが二、三散見されます。この整備法に基づく補助ということでありますけれども、これは相当いわば限定された事業に対して補助をすると、こういうのがそもそも法の趣旨であると、どういう項目に補助するという、いわば制限列挙的に並べておるわけでありますが、そこにはそう政治的な配慮といいますか、そういうものの余地はほとんどない、私はそういう方向でこの法の運用をはかるべきであろうと思うわけであります。これを見ますと、必ずしもその法の適用について厳正でないように、そういうものも見受けられるわけでありますが、これらについての見解を伺いたいと思います。
  160. 平井啓一

    説明員(平井啓一君) 本年度実施します八億一千九百万の事業につきましては、いずれも現在の防衛施設周辺整備法の第三条または第四条にのっとりまして、それぞれ自衛隊または米軍の行為、あるいは北富士演習場という防衛施設の運用によって生じますところの障害を防止し、あるいは障害を軽減し、またはその障害の緩和に資するために事業を行なうということで、いずれも現在の周辺整備法にのっとった事業として採択し、補助金を流しておりますので、御指摘のような点はなかろうと存じております。
  161. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 先ほどこの資料をもらったものですから、こまかくどういう施設でどういう内容なのか質問をして聞きたいと思うんですけれども、だいぶ時間も切迫しておりますので、これらの問題についてはさらに私のほうでも十分検討してまいりますが、たいへん問題のある補助のやり方だろうというふうに一見感ずるわけなんです。この問題についてはその程度で今後の機会を見てさらに質問をしたいと思うわけであります。  それでは最後に、今度の中東戦争を契機として石油危機の問題が非常に大きく浮かび上がってきたわけでありますけれども、これは石油危機という問題だけではなくして、いわば日本の経済構造そのものが非常に重大な局面にぶつかった、われわれからするならば、今日までの日本の経済政策、広くは日本の政治というものの破綻であるというふうに私どもは感ずるわけです。そういう経済的な問題について論議をする場ではありませんので、もうこれ以上触れませんが、いずれにしてもこの機会日本の路線というものを転換しなければならぬ——方法についていろいろあろうと思うわけでありますけれども、いずれにしても転換をしていかなければならない。それは一つには、非常に拡大されてきたこの経済構造、いわば消費中心、そういう非常に日本経済のふくらみといいますか、そういうものを転換をしていかなければならぬということであるわけであります。政府のほうでも新幹線をおくらせるとか、あるいは本州・四国の橋をかけるのをおくらせるとか、あるいは総需要を抑制するとか、そういうことがちらほら政策として検討されておるようであります。こういうふうに日本の大転換をしなければならぬ時期でありますので、当然この四次防について、あるいは今後の日本の防衛について拡大に拡大を続けてきた、そしてさらにこれを四次防という大きな計画に基づいて推進をしようとしている、これについて私は再検討する時期ではないか、端的に言うならば、この四次防についてこれを縮減するといいますか、そういう政策がとられて当然であろうと思うわけです。長官の見解を承りたいと思います。
  162. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 日本の、もともと資源がない国で、科学技術あるいは勤勉その他によって一応非常な経済大国のような形になっておりましたのが、一ぺんに石油問題でその脆弱性をさらけ出した。したがって、それに対応する策についていま政府側も通産、経企等の所管省として提案する法律をめぐって異例の閣僚懇談会を設けて、閣僚は連帯して内閣に、国会に責めを負う、すなわち国民に責めを負い得るような論議を展開しているわけでありますが、その基本的な問題は、外交あるいは経済担当閣僚という者からそれぞれ意見の述べられる機会もありましょうし、私はそこまで立ち入っては申しませんが、そこで問題になるのは、石油を限りあるものとしてとらえて、日本の場合においてどのようにそれを使っていくかという問題、すなわちどのように節約をし、相なるべくんば、国民の生活にはほぼ影響のないような状態においてそれがやっていけるような努力をしたいという気持ちが前提になければならぬと思うんであります。  そこで、防衛庁の問題としてとらえれば、一つは、総需要抑制の中のいまお話のありました四次防そのものをどうするかという問題と、一つには、各省庁で実行しておりますものに加えて、防衛庁自体が油を使う自衛隊というものを持っておりますから、庁用燃料その他についてもきびしい姿勢をとると同時に、独自の節約体制というものもとらなければならぬだろう、そういうことを二面から受けとめておるわけであります。かと言って、いま直ちにここで四次防を変えますとか、縮小しますとか言うにはまだ見通しが、十二月はどうなるかすらも、いまアラブの首脳会議の先行きの見通しがついていない。今度政府が議論しております前提も、一応十二月までは一〇%、一−三月に一五%減らされた場合に備蓄を四十日までで食いとめることを前提にしておりますが、しかし四十九年度に入って、四月以降の議論は実はデータ不足と申しますか、見込みが立てられないという状態にありますが、これが決して今日までのように、資源は無尽蔵に手に入り、そして安価ということは、もう今回の問題がなくとも、相当高価なものにつく資源ということに考えは変わっていくわけでありましょうが、そういうようなことを踏まえてどう政策を展開していったらいいのかという問題は、まだ現在のところ方向を定めるところに至っておりません。しかし、総需要を抑制しなければならぬということは、心理的にも具体的にも、この際政府が示さなければならない、まず率先してとるべき態度である、そう思うわけであります。でありますから、本四架橋の問題も、あるいは道路、鉄道等の全国の幹線網の問題にしても、あるいは治山治水、まあ下水道等はこれはむしろ充実の方向に向くべき社会資本投下だと、おくれている資本投下の急速な取り戻しという意味で別ワクになるかもしれませんが、港湾あるいは漁港、いろんな問題等を全部政府自身のなし得る総需要抑制というもの、産業政策以外に予算編成の際に臨む態度として考らなければならない時期に来ておると思うのです。したがって、大蔵大臣のほうからは——なき愛知さんもあるいはかわりました福田大蔵大臣も、八月末に要求予算を出したときの環境と今日は全くさま変わりしておるので、したがって要求予算の内容について点検をしてもらいたい、こういう要望があります。これは当然のことだと私どもは思います。したがって、四次防に関係いたします主として正面装備でございますが、そういう問題等がはたしてどのような総需要抑制の立場に沿い得ることができるかどうかについて検討はいたしておりますが、いまここで四次防を縮小するとか繰り延べるとか、あるいはやめますとかというところの結論まではまだ到達をしていない。現時点においては、一応各省庁の年次計画その他もございますし、それをにらみながら対応すべき策を講ずるという段階にあると考えます。
  163. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 時間がまいりましたので、いまの問題は今後さらにいろいろな角度から検討されるべきだろうと思うんですが、私は政府が経済政策を大きく転換をしていこうというときに、いやしかし、この四次防だけは別だということになれば、これはやっぱり軍事大国への道を歩んでいるのではないかということにもなりますし、政府の政治姿勢にもたいへんいま国民は不信感を持っていますから、何を言ったってだめじゃないかというような、そういう意味からもあらゆる角度からやっぱり四次防を、再検討ということになると皆さん大げさにとられるかもしらぬけれども、とにかく検討をし直してみるという、そういう政治姿勢が私は必要だろうと思うんです。答弁は求めません。そういう点でひとつ、来年は一兆円の防衛費だとか、そういうことまで言われておるわけでありますけれども、これを機会にひとつ、まさに危急存亡のとき、大げさに言えばそういう時期なんです。四次防についての再検討をぜひやって国民の期待に沿い得る政治姿勢政府みずから示すように、特に希望して私の質問を終わりたいと思います。
  164. 二宮文造

    ○二宮文造君 私、先月の本委員会で那覇空港の問題で若干お伺いしたんですが、当時関係各省の御出席の要求もしてございませんでした。そのために、明確を欠く点が多々出てまいりましたので、きょうはそれと米軍基地の問題で若干質問をさしていただきたい、こう思います。  最初に運輸省のほうにお伺いしたいんですが、那覇空港が運輸省の管理に入った時期並びに最近の一日の交通量といいますか、使用状態、それをひとつ御説明いただきたい。
  165. 寺井久美

    説明員(寺井久美君) 那覇空港は沖繩返還の時点と同時に運輸大臣の管轄する空港になっております。自来現在に至るまで運輸省航空局の出先として那覇空港事務所というのを置きまして空港の運営を行なっております。  それから第二点の使用状況でございますが、これは現在本土と沖繩の間の、われわれ本土線と言っておりますが、これが大体週に百五往復程度、それから沖繩島内間の線が九十四往復、それから国際線がございまして、これが大体十六往復程度になっております。このほかに米軍と自衛隊の航空機が使用いたしておりまして、おおむね民間機と軍用機の関係が四分六で軍関係のほうがやや多いか、月によってこれはでこぼこがございますが、大体半々程度というふうに考えております。
  166. 二宮文造

    ○二宮文造君 局長の答弁をふえんしますと、いただいた資料によりますと、一日の交通量が民間で百一、軍、これは米軍と自衛隊と両方含むんでしょうが、それで百四十二、合計二百四十三という、これは機数の数でしょうか、そういう数字になって、割合は民間のほうが四二%、軍関係が五八%、こういうような使用状況になっていると、資料をちょうだいしております。  そこでこのように、運輸省の所管の空港で民間とそれから米軍と自衛隊、これは三者が共同使用する、こういう異例な措置の中で那覇空港が使われているわけですが、ところでこの那覇空港の、局長が先ほど言いかけました緊急出動といいますか、消防車の出動、これがことしの一月から十月までに百三件と、こういうふうな報告をいただいているわけですが、このあらましを御説明いただきたい。
  167. 寺井久美

    説明員(寺井久美君) ただいま先生の御指摘のとおり、一月から十月まで百三件の出動回数になっておりますが、その内容につきまして申し上げますと、民間機が六件、自衛隊機が十九件、米軍機が七十八件というふうになっております。
  168. 二宮文造

    ○二宮文造君 この消防車の出動というのは、まあ羽田とか伊丹とかこういう国際空港、ああいう繁雑な空港を除いて、どうでしょうか、他の空港と比較して私は多いという印象を強く持つわけですが、データーによりますと、その点はどうでしょう。
  169. 寺井久美

    説明員(寺井久美君) ただいま御指摘のように、他の空港との比較、実は私ただいま手元に羽田と大阪の数を持っておりますが、他の空港は、もちろんこれよりもはるかに少のうございます。で、大阪の場合、ことしの一月から九月が大体九十二回、東京が百六十五回になっております。それから東京はことしは非常に多いんでございますが、昨年一年間で七十二回、したがいまして、これ年によりまして非常に一定いたしておりません。ただ、空港の規模等から考えますと、那覇空港のこの出動回数というのは、絶対数はあまり変わりませんけれども、相対的には非常に多いということになっております。
  170. 二宮文造

    ○二宮文造君 それでですね、先ほど局長は、伊丹とか羽田とかの例を引いていただきましたけれども、これはまあ民間ですね。そうしますと、民間の回数に当たるのは那覇は六件のわずか六%と、こういうことです。そしてその主たるものが、七十八件七六%が米軍によって惹起された事故によって消防車が出動したと、自衛隊が一八%と、こうなってきますと、この那覇空港の管理を運輸省がやっているわけですが、非常に私は問題が出てくるんじゃないか。航空機の事故というのは、こういう消防車の出動で終われば、まあ単にタイヤがパンクしたとか、あるいは計器が云々というようなところで終わればいいんですが、これはもう他に波及しますとたいへんな事故になる。そういうところから考えて、この三者使用というのが非常に問題の根源ではないか、こう考えます。で、運輸省としてこの三者使用の現状で管理上困っているというような状態じゃないんでしょうか。この点いかがです。
  171. 寺井久美

    説明員(寺井久美君) ただいま米軍、自衛隊、民間と、この三者の使用について問題はないかという御質問だと思いますが、もちろん民間航空だけのための空港であればそれにこしたことはないというふうにわれわれは考えておりますけれども現実問題といたしまして、自衛隊と共同使用している空港は他にもございますし、実際の運営上はそれほど大きな問題はなくて済んでおります。那覇空港の場合は米軍関係の飛行機が飛来いたしまして、これが非常に波がございます。この点わがほうとしては、まあ管制上の問題その他で問題が起こる可能性はなしといたしませんけれども基本的には運営の方法について関係者が協議いたしまして、一つの了解のもとにやっておりますので、さして大きな問題はないかと存じます。
  172. 二宮文造

    ○二宮文造君 ところがですね、米軍の那覇空港の使用状況等を現地で見ている人は危険きわまりないと、要するに滑走路を航空母艦の飛行甲板になぞらえて、そして演習をやっているというようなことで、見ていてもはらはらすると、あれがよく事故につながらないものだというふうな非常に危険だという見方が圧倒的です。そこで現在はまだ民間が百一というような四二%の使用状況なんですが、当節のちょっと影響で例の海洋博の実施が若干おくれるというふうなこともありましょうけれども、海洋博を前にしてやはり民間航空の増便ということは相当に考えなきゃならぬと思うんです。おそらく本土からの海洋博の参加者、観客というものは空路を利用する人がもうほとんどになりましょうし、そうすると運輸省としても増便の考え方、いわゆる客を送る増便の考え方もある程度資料としてはお持ちじゃないかと、こう思います。本土から渡る、それからまた先島から那覇へ入ってくる、こういうのも相当数の便になろうかと思いますが、それらは予想してどの程度に予想されていますか、現在とちょっと簡単に比較していただいて。
  173. 寺井久美

    説明員(寺井久美君) 現在の本土と沖繩間の航空の輸送能力と申しますか、これを座席数に換算いたしまして、一日当たり大体三千百席程度でございますが、現在海洋博関係で計画いたしております席数というものは一日当たり約七千三百席、したがいまして二倍強になるという見通しで対策を講じておりますが、この輸送力をどういうふうにして供給するかという点につきましては、現在の使用しているDC8の61あるいはボーイングの727等にかえまして、ボーイングの747SRあるいはロッキードの一〇一一という大型機に代替することによりまして、この輸送力を確保しようという計画になっております。また沖繩島内の輸送につきましては、現在就航いたしておりますYSを増機いたしまして便数をふやすというようなことを計画中でございます。  ただ、ここで一言申し上げておきたいのは、羽田の空港が非常にいま過密状態でございまして、なかなか増便できない状態にございます。したがいまして成田空港がそれまでに開港いたしておりまして、羽田に余力ができればより便数をふやすことができるという見込みでございます。
  174. 二宮文造

    ○二宮文造君 ですから、その需要としては沖繩那覇空港の民間機が使用する需要というのは今後もますます増大をすると、そういう中にあっていまのような状態、いわゆる三者、米軍と自衛隊とそれから民間で共同使用していくというふうな状況がますます困難にもなってくるし、事故にもつながってくる、そういう心配がありますので、当然これは本土復帰の際に問題になりました米軍が完全に撤退をすると、那覇空港から。そういう問題に直接つながってくる重要な問題になろうと思います。それはまたあと外務省なりそれから防衛庁なりにお伺いするとして、とにかく非常に危険な状態にあるということを認識をいただきたい。  ちょっとこれに関連してわき道に入って恐縮なんですが、いま一言言いました先島です。この南西航空がいま独占路線といいますか、独占で経営をしておりますが、伝えられるところによると三五・一%の値上げの申請をしたというふうなことで、いま沖繩の先島の住民の皆さんは、八対二の割りで空路を使っている。もう海上は不便でしようがないからもう二割ぐらいの客にとまっている。八割ぐらいが南西航空を利用している、本島に渡りますのに。しかも、座席の利用率は八五%、まあ飛行機としては非常に何といいますか利用客の多い状態になっている。しかも、独占空路であまりサービスもよろしくない。ペイできているはずなのに三五・一%大幅な値上げをする。また、申請してそれが認められると先島の人は非常に困ると。希望としては、これはもう値上げはやめてもらいたい、また燃料税だとかそれからまた通行税ですか、そういうものの負担も、沖繩のそういう特殊な事情を勘案して、もしそのために値上げをしなければならないというのであればその点も政府のほうで考えてもらいたい、さらにはまた複数の会社によって経営をされていくということも好ましいのではないかというような、要するに三五・一%も値上げされちゃ困るということに焦点を当てて要望が出されております。これはもう沖繩の県庁もそうですし、それから離島の各市役所あるいは村役場の理事者連中もそう言っておりますし、住民もそう言っておりますし、南西航空を除いては全部あげて困るというふうな状態になっておりますが、この見通しをひとつお伺いしておきたい。
  175. 寺井久美

    説明員(寺井久美君) 南西航空の運賃値上げの申請は、八月三十一日に提出されております。御指摘のように、旅客運賃は平均三一・五%、貨物運賃約一%という内容になっておるのでございますが、現在この値上げ申請の内容につきまして事務的に検討をいたしております段階でございます。御指摘のように、値上げの理由の一つとして、燃料税が四十八年度から賦課されることになり、また航行援助料等が賦課される、これは本土においてはすでに実施されておるものでございますが、沖繩だけ実施時期をずらしておる制度でございます。あるいは人件費の値上がり等を理由にいたしております。値上げ幅が適切であるかどうかというのは、目下検討中でございますが、この南西航空は復帰前から運航いたしておりました会社でございまして、内地の制度と多少違う条件のもとにやっておりました関係もございまして、安全の確保という点でもう少し内地並みに手を打たなければならないという面もございます。また、輸送力を増強するというような点から、機材を手配し、かつ乗員の訓練を行なわなければならない、そういうコストアップといいますか、そういう要因が南西航空自体の中にございます。反面、沖繩の特に先島の方々から、運賃値上げは非常に不当であるという陳情もいろいろ受けておる現状でございまして、全体として運賃値上げというものが正当な理由から必要であるということになりました場合におきましても、何かこういう先島の住民の方々の足として活用されておるものでございますから、その辺は一般の運賃と異なったような何かの制度を考えたいということで、目下内部で検討いたしております状態でございます。
  176. 二宮文造

    ○二宮文造君 まあコストアップが当然これからの状況考えられるので、値上げの申請についていま審議をやっていると、慎重にやっていると、ただしある程度値上げをやむを得ないとした場合にも、現に、先ほども申し上げましたように、先島の住民の方の足ぐらいになっているようなこの航空路、しかもその運賃の値上げについては慎重にやると言うし、さらにまた値上げをしなければならぬ場合にも特別に先島の人たちには何かの制度を考えると、運賃割引の制度を考えるというふうに私、了解したわけですが、その点はそのように了解してよろしいですか。イエス、ノーだけでけっこうです。
  177. 寺井久美

    説明員(寺井久美君) そういう方向で検討いたしますからイエスでございます。
  178. 二宮文造

    ○二宮文造君 航空局けっこうです。  それで次に防衛庁へお伺いしたいのですが、外務省の方もいらっしゃると思いますが、非常に那覇空港が危険な状態にある。これは先ほどの消防車の出動調べの中でも数字がはっきりしたわけです。特に十月なんかは十七件も起きて、その中で十五件までが米軍が引き起こしているというような大きな数字が出ております。しかし那覇空港はいわゆる沖繩返還の目玉商品でして、復帰までに返還をするということだったわけです。その後代替施設云々ということで今日まで延びているわけですが、実質的な返還までの何といいますか、これからのスケジュールといいますか、いままでの経緯でもけっこう、ちょっと説明いただきたい。
  179. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはただいまお話のように、復帰と同時に当然運輸省の所管の空港に帰属し、そして米軍機はP3中心に一機もいなくなるということであったと私は確信しておりますが、その後米側の陸海空、マリン等の内部の意見の調整がはかどらず、また代替施設等について場所の問題等について普天間等、これが変更されたりなどいたしました。そのためにおくれてはおりますが、運輸省は遠慮しておりますけれども、遠慮してものを言ったと思うのですが、私は率直に言って那覇空港にこれ以上米軍機がいることはいけない、一刻も早くこれは移らなければいかぬのだと、いまが正常でない状態だというふうに思います。したがって、代替施設を大体嘉手納にすることにきまりましたので、それのリロケーション経費というものを来年度予算に最終的に計上しまして、四十九年度末にはそれが完成をして、三月末でそれが終わって、そして米軍機は全部嘉手納に移駐してもらうという計画を着実に、そして間違いなく実行する努力をしていきたいと考えております。
  180. 二宮文造

    ○二宮文造君 非常に明快な答弁をいただいたのですが、それにしてはあまりにも実質的な動きがスローテンポ過ぎると思うのです。というのは、いま大臣は来年度の予算と、こうおっしゃいましたけれども、経緯を——時間がありませんから私もほんとうにつけ焼き刃で勉強したことで、非常にざっぱくな考え方ですけれども、ことしの一月二十三日ですか、日米安全保障協議委員会十四回会合で大体のアウトラインが出た。それによりますと、米海軍及び海兵隊が那覇空港から移転する嘉手納の代替施設の提供、それからもう一つは、那覇空港の完全返還に関連して必要とされる普天間飛行場における改良措置ですか、それから那覇空軍・海軍補助施設の全施設のうち、大部分を嘉手納へ、そしてまた一部をこれは牧港ですか、牧港補給地区その他へ移転し、牧港の住宅地区の住宅二百戸を嘉手納飛行場へ移転することを原則とする。それが完了した場合に、那覇空軍・海軍補助施設の全域、それから牧港住宅地域の当該地区は、日本に返還されると、明確に方針が出されて、しかも四十八年度予算として三十八億が計上されている。にもかかわらず、一方にはこういう危険な状態がある。また、いま大臣が、いかぬという、こういう明確に日本政府姿勢を発表されたについては、この予算執行のぐあいがあまりにもスローテンポではないか。その間に航空事故が惹起されたらどうなるかということを私は心配するのですがね。いわゆる、三十八億の予算が計上され、今日までそれを主として施設庁が担当してやられているのだろうと思うのですが、どういう経過になっているのか。四十九年度末けっこうです。四十九年度末けっこうですが、一日でも早いほうがいいわけですよ。ですから作業が、予算執行がどんどん進みませんとなかなかたいへんなことになる。この辺はどうされているのか。事務的なことをお伺いしたい。
  181. 田代一正

    説明員(田代一正君) お答えいたします。  一月二十三日の安保協議委以来、わがほうといたしましては、御案内のとおり、三十八億というのは四十七年度予算でございます。
  182. 二宮文造

    ○二宮文造君 そうですね、失礼しました。
  183. 田代一正

    説明員(田代一正君) それを四十八年度に使うということで、実施工事の細目事項とか、あるいは優先順位ということで鋭意対米折衝を重ねてきたわけでございます。それが大体八月の末ぐらいにおおむねの向こうの考え方というものとこちらの考え方というものがある程度符合してきているということで、現在三十八億分について調査工事をやってみて、調査工事もほぼ終わりましたので、ことしの、まあ来月に入りましたら本格的にこの工事を始めるという段階になっております。そういうことで、非常にこういう工事は、一体に、スタートがなかなか向こうとこっちの関係で話がつかないのでございますけれども、そういう時期も過ぎてまいりました。あとは工事を一瀉千里に進めるという段階になっておるのではないか、かように考えております。そういうことで、四十八年度におきましては、四十七年度の繰り越し分の三十八億を消化いたします。さらに新年度には、現在これから大蔵省と折衝するわけですが……
  184. 二宮文造

    ○二宮文造君 要求は幾らしていますか。
  185. 田代一正

    説明員(田代一正君) これは、これから折衝するものですから相当な金額になる……
  186. 二宮文造

    ○二宮文造君 いままで出したやつは御破算にして……
  187. 田代一正

    説明員(田代一正君) 相当な金額になるということを申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ、いま先生の御指摘の中で実態との関係でございますが、日米安保協議委員会の決定事項は「日本政府によってとられる措置をまって那覇空港を日本に完全返還することに原則的に合意した。この措置は、米海軍及び海兵隊の航空機が那覇空港から移転する先の嘉手納飛行場における代替施設の提供並びに那覇空港の完全返還に関連して必要とされる普天間飛行場における改良措置を含む」ということは言っております。しかしこれはさっき御指摘がございましたけれども、たとえば牧港の住宅を移設するとか、あるいは那覇空軍・海軍施設の全施設を嘉手納へすべて移さなければならないということには必ずしもならない。いま申しましたように「嘉手納飛行場における代替施設の提供並びに那覇空港の完全返還に関連して必要とされる普天間飛行場における改良措置を含む」ということでございます。
  188. 二宮文造

    ○二宮文造君 最初の話でわかったつもりでいたんですが、詳しく聞いているとわからなくなっちゃった。  それでは、いま大臣がおっしゃった四十九年度末というのが完全返還の最終の時点と考えて、しかも先ほどからくどく言っている、いま危険な状態が横にあるわけです。それを一日も早く解消していきたいというのが本日の質問の趣旨なんです。ならば、いまいよいよ八月に調査工事に入って、向こうと合意して調査に入ったと、だからこれからまた仕事を始めますと、来年は膨大な予算も、相当大きな予算も計上されますということですが、頭に描いているこういうあえて実害といいましょうか、那覇空港の実害が軽減され始める時期は一体いつと、こう頭に置いて、工事もし、代替施設の作業も進めていくんですか。最終はわかりました。
  189. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) いまの三十八億は米側のほうが普天間飛行場に移ると、こういうことを言ったものですから、とりあえずは滑走路のかさ上げ工事に対してそれだけの金額を四十七年度予算に計上したということでありますが、それがいま田代防衛施設庁長官の申しましたように、嘉手納に変更になり、普天間のほうは補助施設、緊急の場合の着陸、そのために必要とする若干の滑走路のかさ上げというものが要ります、まあでこぼこならしぐらいの感じでありますが。したがって、三十八億もとても要りませんで、ほぼ四、五億でそれができるということであります。さらに、じゃどのように現在の那覇空港の状態が不正常であるかと、私が申しました。それを正常にするのはいつかというと、やはりこれは一月の日米安保協議委員会の見解に書いてありますように、完成をしたときに移る、すなわち滑走路も格納庫、それから地上との諸電子通信機材、その他も全部完備をしてからでないとなかなか移れないと、機体だけを移しても地上との連絡が特殊なP3でありますから一緒に移らなければならぬものがあります。また、一方、私どもとしては政治的に、この地区に移転することについては、直接やはりデメリットを受ける嘉手納村当局のことも考えてあげなければなりませんので、その移る場所について嘉手納村当局から希望を聴取しまして、第一、第二、第三項まで全部一緒に私どもの責任者を出しまして現地の調査もいたしました。向こう側も、米側も心よくそれに応じてくれたんでありますが、遺憾ながらなかなか嘉手納村が第一に希望されたような場所には移転が不可能であることは、最終的に嘉手納村もこれを認めざるを得ない事情がございまして、ようやくそれらの点で、ではサイレンサーをつけろとかいろいろな御要望がございまして、それらの点をようやく最近一応の御了解をいただく段階にもなりました。したがって、工事のほうは、ただいま田代が申しましたように、直ちに工事を開始いたします。そして、申し上げましたように、四十九年の三月末においてはそれを完成し、したがって、四月の一日には逆にいうと那覇空港には米軍機はいないという姿にできるということでございます。
  190. 二宮文造

    ○二宮文造君 それで、そのあと自衛隊との共同使用というのはどうなんでしょうか。
  191. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) この点は本土のほうでも自衛隊の飛行場を民間機が使用している共同使用の形態もありますし、また民間空港を自衛隊が使用させていただいておる例もそれぞれ数多く本土にもございます。したがって、自衛隊としては、ある程度の那覇空港の使用というものは、現在の使用の頻度においても、軍用機との共同、束にして言われたんですが、米側が四〇%、わがほうは一五・七%ぐらいでございます。したがって、その中であっても、われわれは一般のひんぱんな、これは国際航路を含めて離着陸のひんぱんな時間帯がきまっておりますから、その時間をなるべく避ける努力もしておりますし、今後やはり私どもとしてはこの点はお許しを願って日本人同士でありますから、若干の私どもが自省することによって民航をあくまでも優先するというたてまえの上からも共同使用を一部認めさしていただきたい。ほかに実は行く場所がないということであります。
  192. 二宮文造

    ○二宮文造君 その点については見解を異にしますが、触れません。  それから、今度は那覇の海軍・空軍の補助施設、これがやがて返還になりますね、代替施設が全部あれすると。これは一体自衛隊がまた使用するんでしょうか、それとも自衛隊はそれを使用する意図がないと、この中にはたしか民有地も相当数あると——三百六十万平米ですか、その中で民有地も相当数あると、こう聞いておりますが、この返還された補助施設ですね、海軍・空軍の。これはいま自衛隊としてはどうするお考えでしょう
  193. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) ほとんどが民有地であると言ってよろしいかと思います。したがって、わがほうが現在米側と共同使用をせざるを得ない建物、敷地等については御了解を得て、引き続き使用させてもらいたいものと思いますが、これはごく一部分でありますので、ほとんど大部分は全部個人地主の方に返還されるということになりま
  194. 二宮文造

    ○二宮文造君 では、那覇空港の問題はそういう作業を急いでいただいて、いわゆる危険な状態から早く米軍の撤去を作業していただきたいということ。  それで次に、基地全般の問題になりますが、もう大臣もよく御承知のとおり、沖繩の基地の態様は、現在でも大体沖繩本島の二三%、それから那覇市ではその一九%、これが米軍基地施設として使用されていると、屋良知事の言をかりますと、当時、屋良主席ですが、復帰になっても復帰前の態様とほとんど変わらぬと、沖繩としては、土地の利用計画ですか、土地利用の基本計画をつくりたいと、これは返還になったあとを頭に置いて、早くその利用の基本計画を策定しておきたい。また、軍用地の転用という問題についても見通しをつけたい。そういうことで、早くいわゆる米軍基地の整理統合、この作業を進めていただきたいということですが、それで、これはまあ外務省の答弁になるかもわかりませんが、ことしの六月十五日に約八件ばかり、一部、全部使用を含めて返還になりましたですね。で、その全体の、いわゆる安保協議委員会等を通じてこの基地問題についての返還を求める基本方針といいますか、をどこに置いて折衝をやっていくのか、またやってきたのか、これは非常に漠然とした抽象的な質問ですが、それをまず最初に伺ってから次の問題に入りたいと思います。
  195. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) もちろん、沖繩県庁の作成いたしました、基地がもしなかりせばという沖繩振興開発計画の青写真並びにそれぞれの基地ウエートの高い市町村が基地なかりせばと考えておられる振興計画の青写真、そういうものは私ども念頭に持ってやっておりますが、かといって、たとえば嘉手納空港を全部返還した場合の青写真等をすぐに実行せよと米側に迫るについては、これはどうもただ、ことばだけのことにかりにやったとしてもなりますので、私が一番よく知っております現地で、こういうところは現在は黙認耕作地、あるいは荒蕪地等で実際上施設提供をしていても、区域提供していても使用されていないし、将来とも米軍の、向こう側から見た機能というものに対して返還をされても影響はないじゃないかと思われる点を数多くピックアップいたしまして、そしてそれがなるべく、たとえば重点は北谷村、読谷村、嘉手納村というようなところに置かざるを得ない。それは当然行政区画の八割、七割、六割を基地に提供しておる市町村でありますから、そういうところを重点にし、また、県庁所在地である那覇市というものにおいて、牧港住宅地区のあの面積というものがどれだけの大きなウェートを、あるいはまた、今後の都市計画を阻害しているか等を念頭に置きながら、それらの点を個々に具体的に、アメリカ側も、こちらの指導者の諸君はあまりよく現地を知らない人もいますので、私どもの施設局に命じまして、あらゆる角度から返してもいい状態である証拠になるカラー写真を撮影させまして、いまそれを向こうに示して、外務省とともに折衝をしているところでありまして、見通しは、今回は相当な見通しを期待をしてもいいようなところまで話は詰まっておりますが、なおかつ私の合点のいかない、返さなければならないはずなのに、なぜ返さないのかという合点のいかない点が二、三カ所ございます。そこらについて若干私の要望をいれろということでいま押しておりますので、その点を解決をして、今回は沖繩の人々にほんとうに軍用地というものが返還をされたという実感が持てる面積、あるいは場所、そういうものにしたいと考えて、目下努力中であります。
  196. 二宮文造

    ○二宮文造君 そうすると、それが正式に協議されるのは来年一月の協議委員会と、大体その辺のめどを持ってよろしいですか、場所はあえて聞きませんが……。
  197. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはまあ外務省でいいんですが、相談ごとでありますけれども、私はなるべく年内に詰めてみたいと思っております。まあしかし、ことしは一月に一ぺん開いておりますので、そういうことから考えますと、あるいは一年たって来年の一月ということになるかもしれませんが、私は詰まればなるべく早く詰めて開いて、そこで最終的に一日も早く沖繩の方々に朗報としてお知らせしたいという気持ちで一ぱいでございます。
  198. 二宮文造

    ○二宮文造君 立ち入って伺いますが、面積としてはほぼどれぐらいというような考え、いま、ほぼ合意に達したような面積総計はどれぐらいというようなことも、まだちょっと……
  199. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) たいへんなめらかにしゃべってまいりましたけれども、ここらでブレーキをかけまして、そのことはちょっと現時点において申し上げられません。
  200. 二宮文造

    ○二宮文造君 わかりました。  それで次に、六月十五日に先ほどちょっと触れました八件ばかし一部ないし全部の返還がありましたボロー・ポイントの射撃場、これ六月三十日ですね。そういうふうに天願の通信所八件ほどありますが、これは一体返還された後どういうかっこうになりましたでしょうか。この八件についてお伺いしたい。民有地もあるし、国有地もあるようですね。
  201. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは大体が民有地でございます。したがって、これは返還をいたしましたことは、形の上で返還になったわけでありますけれども、民有地の地主の方が返還を受けたという事実は、自分の土地として境界が確定をして、そして自分の意思によってその土地から最大の収益をあげる努力、場合によっては農業あるいは商業、場合によっては土地そのものを自分が売ることも自由であります。そのようになったときに初めて地主の方には自分の手に戻ったという時点になるわけでありますから、現時点ではその境界作定、測量工事というのがたいへん難航いたしております。したがって、米軍等の測量撮影いたしました空襲前の沖繩戦以前の航空写真等を手がかりとしながら、あるいはまた本土において駆使されるあらゆる計器測量等の軌跡調査その他のことも踏まえながら、沖繩においてはこれをすみやかに境界確定を、最終的には県庁、市町村あるいは部落住民、関係地主の協力を得ないと、立ち会い、確認、合意、登記という手続をとらなければならぬものでありますから、これについては技術的にも資金的にも御援助申し上げ、そしてその間地主の人は自分のものになったのはいわば概念の上でなったんであって、自分のものになったためのメリットはないわけでありますから、大蔵省と予算折衝しておりますが——する予定で要求しておりますけれども、それが個人のものとして確定されるまでの間はそれ相当の、ほかのいわゆる提供施設の賃借料と同じ金額のいままでもらっておられたもの、そして上がった分は上がった分も含めて賃借料の見返りとしてそれを支払っていくつもりでございまして、確定まではそのようにして地主の方の不安を除きたいと考えます。
  202. 二宮文造

    ○二宮文造君 非常に手間がかかりませんで、お伺いするところまでちゃんと明快に答えていただきました。  それで最後ですが、この沖繩県にしましてもあるいはまた市町村にしましても、将来返還になる、ならないは別として、返還後直ちに転用もしたい、あるいはまた先ほど大臣が言われた振興計画、開発計画の一環としても使っていきたいというので、軍用地の中の、基地の中の立ち入り調査をやらしてもらいたい、ぜひそれを折衝し、立ち入り調査ができるように格段の努力をしてもらいたいという要望が非常に強いわけです。返還になるのは先としても、事前にそういうマスタープランみたいなものをつくるのに、どうしても立ち入り調査ができなければできないというようなこと、これらを含めて米軍の提供施設内の立ち入り調査、この実施を取り計らってもらいたいという意向が非常に強いわけですが、この点の見通しはどうですか。
  203. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは米軍の感触でありますが、やはりそれを拒否するということは、先ほどの公害調査等も認めたとおり考えられませんが、しかしやるものはだれかということについてはやはり国の段階でそれをやらないといけないのではないかという感触を持っておりますので、事実、調査できつつあるところもありますが、これからはなるべく早く実際上の調査というものを完了して、すぐに返らなくともそれが公簿、公図等がきちんと整備されるように、まず第一は返還されたところから確定でありますが、その次の作業はまさにそれであるというように考えております。
  204. 二宮文造

    ○二宮文造君 けっこうです。終わりました。疑中における外務省の統一見解がまだ出されておりませんので、本日これ以上質疑を続けることが不可能でございますから、これら外務省及び防衛庁質疑は、統一見解が示された後、理事会で協議決定の上、再び審査日を定めて質疑を続行することといたします。  次回の委員会は明二十九日午前十時から建設省関係を行なうこととし、本日はこれで散会いたします。    午後四時十五分散会      —————・—————