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加藤シヅエ君
外務大臣の
答弁を伺っておりますと、
大臣が
国連に出られた場合の
態度というものが、この
金大中事件と、それから
国連において
日本がなすべきいろいろの
発言というようなことと
二つ別のものだというふうに、そういうたてまえに立っていらっしゃるというふうに聞こえるのでございますが、それは
外務大臣の主観としてそういう
考え方をおとりになるとしても、諸
外国の
客観的見方というものは、そんなふうに
二つに分けて
考えてくれるというわけにはいかないと思います。
日本の
外交というものが
主権の
侵害、明らかに
主権の
侵害であるというようなことをされても、そうしてその証拠が上がっていても、それが公権の介入であるかないかという
最後がまだはっきりしないというようなことを説明しながら、何にもはっきりした
態度を通さない。こちらからも
十分筋の通せる
解決ができるようなことになっているというふうに見られることでも、まだそこまでいってないというようなことで、時間を経過なさるというようなことを、諸
外国がどういうふうに見るかということ、決してこれはそれとこれとは全然別のことだというふうに見ないで、
日本の
外交全体というものが、非常に不明朗なものだという
印象を与えるということ、これは避けることはできないと思います。それは
日本が
経済大国になったというようなことになれば、
日本の
行動、
発言というものが、国際的に非常に重要になってまいります。そしていつも
日本は
自由主義陣営に立つというこのたてまえをはっきりおっしゃっていらっしゃる。ほかの
自由主義陣営というものは、
言論の自由を守るというようなことに対してどのくらいの
熱意をもって、そしてそういうものがもし侵されたというような事実がはっきりした場合には、それに対して
言論の自由を守るように、いろいろと声援をするというようなことがなされております。それは
金大中事件とは
関係ございませんけれ
ども、きのう、きょうの
新聞にも盛んに出ておりますのは、
ソ連の反
体制派弾圧の問題でございます。
大臣も御承知のように、
ソ連で反
体制というような呼び方をするのが正しいかどうか存じませんけれ
ども、やはり
科学者あるいは
文学者が自己の
信念に基づいて、表現の自由をやろうとした場合に、これに対して
政府権力が非常な
弾圧をしている。そうして単なる
弾圧だけではなくて、
精神病院に連れていって、いろいろの好ましからざる
行動をする一種の拷問というふうにも解釈されるような
事柄が起こっている。あるいは一方的に非常に重い罪を科して、
言論の自由を守ろうと思って、正直に
自分の
信念を吐露した
文学者、
科学者に対してびっくりするような重い刑を科しているというようなことが、海外からの電報で伝えられております。これに対しまして、いつも
日本が一緒に何か協力しているといわれている
アメリカでも、
ソ連のこういうようなことに対しては
世論が非常に激しく反発しておりますし、
米ソ科学協力関係というような、これは具体的な
一つの問題、これからいろいろ協力してやっていこうという、そういうような
立場にいる方が、
全米科学アカデミー協会というような名において、
ソ連の
科学者に対するこういう迫害を見るに忍びないと、こういうようなことをする
人たちとは協力して今後
仕事することができないというようなことをはっきり表明していらっしゃいます。
それから
米ソの
貿易の
拡大に対しても、
ミルズ米下院歳入委員長が
声明を発表して、こういうような
分子、
言論の自由を守ろうとした
分子を虐待するならば
米ソ貿易の
拡大に反対するというような、はっきりしたことを述べていらっしゃいます。これがいわゆる
自由主義陣営に立っている国の
立場、
やり方でございます。
ブラント首相なんかもはっきりとやはり
声明を出して、こういうような
ソ連とだんだんとこれから交流し、
友好を固めていこうという、そういうむずかしい
立場に立っていらっしゃりながらも、しかも、こういうような
言論の圧迫というものに対しては、これははなはだ遺憾であるということをはっきり
声明を発している。これがいわゆる
自由主義陣営に立っている国家の
やり方だと思います。これに対して
外務大臣、
日本も
自由主義陣営に立っているとおっしゃって、それで
日本はどれだけ
言論の自由というものを守る
熱意が
日本にあるのか。そうしてよその国でそれが侵されて、非常に不当な
弾圧を受けているような場合に対して、それに対して遺憾の意を表明するというようなことも何にもなさらないで、それで
国連にいらっしゃって、そうしてほんとうに信用ある
日本の
外交官だというふうに、
外務大臣だというふうに受け取られるのかどうか、その辺をどうお
考えになるのでございますか。