○田英夫君 この沢本さんかどういう――沢本さんの起訴状なるものは発表されておりませんが、容疑
内容というものは私
どもも一応手に入れておりますけれ
ども、実は先日の
委員会でも申し上げたとおり、ことしになってからだけでも十数件という在日
韓国人あるいは帰化された
日本人、そういう方が相次いで
韓国へ行って逮捕されている。こういう
事件が実は起きております。私はなぜこの
委員会でこういうことを繰り返し申し上げているかといえば、
韓国の
現状というものをよく知っていただきたいということなんですよ。そういう意味から、きょうはここで名前も申し上げられないし、詳しい
内容を申し上げられないのが残念でありますけれ
ども、一人の在日
韓国人の人が私のところをたずねてきて、相談を受けましたけれ
ども、これはまさにKCIAにスパイ容疑で逮捕されて、これは全くほかにあまり例のないことですけれ
ども、釈放されて帰ってきた人物であります。どういう取り扱いを受けたか詳しく聞きました。これは驚くべきことであります。もちろんこの人物は北朝鮮に行ったこともない。天地神明に誓って行ったことはない。そういう人物が
ソウルで用事を済まして飛行場から飛行機に乗ろうとしたところでKCIAに連行をされて拷問を受けております。もう初めから北へ行ったということを前提にして、どういう経路で行ったか言いなさいと、二日ぐらいおいて言わなかったら、そこから拷問が始まった。その詳しい
内容も聞きました。相次ぐ逮捕
事件というのはこの一つの例を見ても、そういう形で、結局釈放されなかった人はそのままその向こうの言われたとおりにならざるを得ない
状況で刑に服してしまっている、こういう
状況だと思わざるを得ないのでありますが、すでにこれも報道されていることですが、北海道大学の助手であった金喆佑という人がこの六月にやはり
韓国を訪問している最中に向こうで突然逮捕をされた。これも北朝鮮スパイということになっておりました。しかし、
韓国側が発表いたしました
内容並びに発表になっておりませんが、起訴状なるものを私も手に入れました。その起訴状を翻訳をしてもらって読んでみますと――読んでもらって、北海道大学のその金さんの周囲にいた人
たちに検討をしてもらったところが、そこにあがってくる容疑の日付にはいずれもアリバイがあります。これは
外務省のアジア局のお力添えで、現在そのアリバイなどの
資料を持って北海道大学の方が
ソウルについ数日前に渡られました。何とかしてこれを
韓国側に官憲に提示をして、あるいは弁護士の手から渡してもらってあかしを立てたい、こう願っていま
ソウルに行っておられますけれ
ども、この金さんのケースは
日本の国家公務員であるという点が特異な一つの特徴であります。この点については先日の
委員会で文部省の方にお尋ねをいたしましたけれ
ども、
政府の、文部省の金さんに対する取り扱いは私から言わせればきわめて冷たい。こういう
事情で逮捕をされていった人の給料を断ってしまうというようなことをやっておられるわけで、この点も残念でありますが、これはきょうは触れませんけれ
ども、こういう
事件も起きているし、さらに帰化した
日本人で夏谷進、こういう人物か――これは非常に最近です。七月の二十四日にやはり
ソウルで逮捕をされている。これも北朝鮮スパイという容疑であります。これが一番近いケースだと思います。あるいは、先日の
委員会でも
お話しした崔相龍という人物がやはりごく最近逮捕をされている。この人は東京大学の法学部を出た人で、すでに求刑が出ておりますが、懲役六年ということであります。しかし、容疑の
内容さえも発表になっていない、起訴状も発表になっていないので全くわからないのであります。おそらく東京大学に在学中に坂本義和教授のもとで
韓国における
アメリカ軍政の研究というのを博士論文としてまとめている。その結果でおそらくこれがひっかかったのではないかと、こう周囲の人
たちは見ているようでありますが、となれば、
日本の国立大学で公式に博士論文として教授の指導のもとに書いた論文が原因で逮捕されて懲役六年というようなことがあっていいのかどうか。
日本が国費をもって留学生を迎えて勉強をしていただいた。こういう留学生こそこれから将来の
日韓関係を正しく発展さしていくために非常に役立つ人
たちだと、そういう人
たちが相次いで、実は東大
関係だけでも――きょう名前をあげませんけれ
ども、あげることが実はできないんですけれ
ども、御
本人たちがこれが公表されることを恐れておりますから。東大その他大学留学生だけでも相当CIAに
調べられた人がいます。念のため申し上げると、現在東京大学だけでも
韓国の留学生は百十八人おられる。こういうことはまことにいいことだと思うんです。しかし、その人
たちがその留学中に書いた博士論文がもとで逮捕されるというようなことになるならば、安心して勉強もできない。しかも、これは
日本の国立大学でありますから、
政府は
責任を持たなければならない問題だと思います。こういう問題が相次いで起こっているというこの実態をひとつ
大平さんもよくお
考えをいただきたいという意味で、きょうはほんの二、三の例ですけれ
ども、申し上げたわけです。これからの
日韓関係を正しく発展さしていこうということについては、
大平さんも当然そう思っていらっしゃるし、私
どももそう思っているわけです。そういう中で、いまの朴政権がやっているようなやり方でいいのかどうか、そういう
政府を相手にしていていいのかどうか、ここのところが私
どもにとって非常に心配なわけです。この
金大中事件というのはそういう問題を大きく投げかけたと、こう思うんですが、そこできわめて具体的なことですが、やや仮定の問題になりますけれ
ども、時間がありませんので、ずばりお聞きいたしますが、
大平外務大臣は
金大中氏は帰ってくると、こういうふうにお思いになりますか。