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1973-08-28 第71回国会 参議院 外務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年八月二十八日(火曜日)    午前十時八分開会     ―――――――――――――    委員異動  七月二十六日     辞任         補欠選任      二木 謙吾君     岩動 道行君  八月二十三日     辞任         補欠選任      田  英夫君     杉山善太郎君      星野  力君     野坂 参三君  八月二十四日     辞任         補欠選任      杉山善太郎君     田  英夫君  八月二十七日     辞任         補欠選任      山崎 五郎君     長谷川 仁君      野坂 参三君     星野  力君  八月二十八日     辞任         補欠選任      森 元治郎君     西村 関一君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 木内 四郎君                 佐藤 一郎君                 八木 一郎君                 田  英夫君     委 員                 杉原 荒太君                 山本 利壽君                 加藤シヅエ君                 小谷  守君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 渋谷 邦彦君                 松下 正寿君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  松永 信雄君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        文部大臣官房人        事課長      望月哲太郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○国際情勢等に関する調査  (金大中事件に関する件)     ―――――――――――――
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る七月二十六日、二木謙吾君が委員辞任され、その補欠として岩動道行君が選任されました。  また、去る二十四日、杉山善太郎君が委員辞任され、その補欠として田英夫君が選任されました。  また、昨二十七日、山崎五郎君が委員辞任され、その補欠として長谷川仁君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  委員異動に伴い、理事一名が欠員となっておりますので、その補欠選任を行ないます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事田英夫君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 外務大臣に、ただいま非常に問題になっております韓国金大中氏の事件につきまして、外務当局がその後おとりになっていらっしゃいます態度、それがどういう御趣旨で、どういうふうな態度をおとりになっていらっしゃるのか承りたいと思うのでございますが、時間がございませんので、私、かいつまんで申し上げたいと思いますが、いままでの大臣のおとりになっていらっしゃいました態度は、非常に慎重な態度であったと思います。それは、もっともなことでございますけれども、その慎重さというのが、はたして結果によいことになるのか、あるいはその反対になるのかということを私は心配いたすわけでございます。  私は、この日韓の問題につきましては、ずいぶん古くからいろいろと深い関心を持ちまして、特に隣国ではございますし、三十数年にわたって日本が支配しておりました国、その国が独立をして全く対等な態度で、過去のような、一種の日本優越感を持つというような態度でなくて、ほんとう隣国としての友好関係を樹立していかなくちゃならない、その間に朝野のいろんな苦心があったと思います。  私も、参議院外務委員会に所属している者といたしましては、これに対しましてずいぶんと苦心を重ねまして、今日ここに昭和三十二年四月三十日の参議院外務委員会議事録をちょっともう一度持って読み返してみたのでございますが、その当時は、韓国と申しますと、韓国の方というのは、もう日本人に対してぬぐうことができないほどの冷たい憎悪の観念で満ち満ちておりました。それはまことにもっともなことでございまして、それを日本側としてはどうにかやわらげて、過去の植民地のような、支配したあの関係を少しも早く忘れてもらいたい、日本はこれからはそういう態度ではなくて、ほんとうの近隣の国として対等につき合っていきたいし、過去のいろいろ支配をしていた関係に対する償いもいろんな形で、精神的にも物質的にでもこれをあらわしていかなきゃならない、こういうふうにみんな考えたわけでございます。  そこで私は、その当時外務委員会で非常に問題になっておりました、韓国の方がどうしても日本に対して日韓会談を順調に進めることのできない障害になっておりました二つの点を、当時の内閣総理大臣外務大臣岸信介先生に質問をいたしました。それは、二つの点と申しますのは、一つは例の久保田発言でございます。これは正式の政府発言ではございませんけれども、やはり政府外務省久保田さんとしての発言でございましたから、非公式にほとんど政府がそういうふうに考えているように思われて、韓国の方にとっては非常にこれは侮辱的な、許すことのできない発言というふうにとられておりました。しかし日本人は、それほどにこれが悪い発言であるというふうには思っていなかった。けれども韓国は、もう非常に問題を解決するのにこれがデッドロックの一つになっておりましたので、私は、当時の岸総理大臣外務大臣に、久保田発言の撤回ということがまず一つ。  それからもう一つは、在外財産請求権、これは日本韓国にいろいろの、あそこにたくさん行って仕事をしたり居住していたりしていた時分の財産権というものを、いわゆる国際法上の権利その他に基づいてこれを請求するということは当然であるというふうに考えられた方もあったようでございまして、こういうような問題に対しても、これは実情、たびたびの戦争によって、もうその財産がどういう形で残っているかということも、あとをトレースすることもむずかしいような状態になっている、そういうようなことに特にこだわって、これが障害になって日韓関係感情がいつまでたってもほぐれないということは残念だから、これもひとつ善処していただきたい、この二つの点を私は取り上げまして当時の外務当局大臣に伺いました。  岸総理大臣は、これに対しまして、両方とも法律上の問題はいろいろあるとしても、この際、日韓の間の感情の問題をはっきりすることは非常に優先的に大事なことであると考えて、非公式であっても、この久保田発言というようなものが今日存在している以上は、これははっきりとそういうものは撤回したい、在外財産請求権問題もこれも考え直してみたいと、これは二つとも事実上撤回なさるという御答弁があって、この古い議事録に載っているわけでございます。こんなふうにいたしまして、政府あるいは民間、いろいろな交流関係の中で日韓関係をよき隣人としてのつき合いにまで戻そうという努力がずっとなされました。その後、いろいろの経過を経て、今日ではたいへんに日韓関係状態は表面よくなっていたようにみんな思っておりました。  そういうふうになときに、突如としてこういう金大中事件というのが起こりましたので、外務大臣としては、日本政府としてどういう態度をとったらいいのか、相手国をやたらに刺激をすることもできないし、事件真相がはっきりしていないことを何と言っていいかわからないし、また、日本国民感情をどういうふうにして満足させるような行動に出たらいいのか、これは事件真相がはっきりしていないだけに非常に外務当局としては御苦心のあるところだということは察せられます。しかし、いろいろの問題がどうも――外務大臣のいままでおとりになっていた態度というのはあまりにも一貫した方針が少しもなくて、ただ外部から見ているとたいへんに軟弱というようなもので、一つ方針というものがそこに一つも見られない、こういうことは私非常に残念に思うわけでございます。  二、三日前の新聞漫画にも、外務大臣が大きな氷嚢を頭に乗せていらっしゃいまして、いろいろなことを言われている、その中で盲目的だんまりというのがあったんですけれども、これは非常に漫画家というのはうまいことを言うもので、盲目的だんまりというのはうがっているじゃないかというふうに一般の人は思うわけでございます。  これは一つの例で、私まず伺いますが、日韓定期閣僚会議延期ということをどういうふうに日本向こうへ通告なすってこれを延期なすったか、その理由というものをどういうふうにおっしゃったのか、新聞などの報道を見ますと、まるで、田中総理訪ソをなさる、いろいろそういうようなこちらの事情があるので、頼まれてしかたがないから延期したんだといわんばかりのことを向こう側では発表していらっしゃるのです。こういうことが向こう発表があるということは、われわれ日本国民としてはずいぶんいいかげんなことを言うというふうにしかとれませんので、どういうふうにしてあの会議延期なさるという理由向こうへ通告なさったのか、ほんとう理由は何であったか、ここではっきりと承りたいと思います。     ―――――――――――――
  7. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、森元治郎君が委員辞任され、その補欠として西村関一君が選任されました。     ―――――――――――――
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日韓定期閣僚会議は九月の七日、八日開くということで合意を見まして、準備をいたしておったのでございます。ところが、不幸にしていま言及された事件が起きたのでありまして、経済閣僚会議を開くということは、ただ開くだけでなくて、やはり国民的な理解の中で開かれて、それにふさわしい成果を期待するのが筋道でございます。したがって、今日のようなこの事件がまだ解明の糸口にもついていない段階におきましてこれを開くことが、いま先生が御指摘された日韓両国関係から申しまして適当かどうか判断いたしまして、予定しておったのですから、開くべきであるという議論もありましょうし、こういう状態だから一時延期すべきでないかという意見もございまして、韓国政府にも内意をただしてみたわけでございます。まあ双方の判断といたしまして、この際としては一時延期したほうが適当ではないかということになりまして、そういう方向で延期に踏み切ったわけでございます。  しかし、延期となりますと、次にそれじゃいつまで延期するかという問題が当然出てくるわけでございまして、いま田中総理訪欧訪ソという外交案件もかかえておることでございまするし、そういった一連の外交行事というようなものを終えたあとで、できるだけ早い機会に開くことにしようじゃないかという了解のもとで延期することにいたしたわけでございます。言いかえれば、総理訪欧訪ソ外交案件があったからこれを延期したという筋道のものではないのであります。
  9. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 大臣の御答弁によりまして、日本総理都合によって延期したのではなくて、いまのこういう情勢の中で開くことが適当でないというのがほんとうの筋でございますね。それが今度向こう総理大臣が、向こうのある調査、野党の調査特別委員会発表では、日本総理大臣都合延期したと、こういうような発言があったと新聞には報道されておりますので、こういうような明らかな事実と違うような報道向こう政府当局がなさっているというようなことが新聞に伝わるのを私ども見ましてからも、非常に不愉快でございます。で、これは政府当局がそういう意味でなくて、こういう情勢の中では適当でないというのが正しいその理由であったということをここではっきりおっしゃっていただきましたから、あくまでもそういうことははっきりと問題を提起して、筋に従って経過をたどっていただきたいと私は希望いたします。  で、次に申し上げたい、外務大臣に伺いたいことは、韓国にもいろいろ政治事情がございましょうし、ことに三十八年度線を控えて北朝鮮というような国がある、こういう国との関連、そこからの絶えざる刺激というようなことに対して非常に深い関心を払っていかなければならない国情があるということは察せられますけれども日本国民として韓国といろいろ友好関係を続けていく、そして特にたいへんたくさんの経済援助をも惜しまないで、これからできるだけの援助をしていきたいというような態度を進めていく上には、日本国民納得のできるような政府である、政情であるということが非常にこれは大事ではないかと思います。国民納得できないような、まあ一口で言えば――違うかもしれませんけれども警察国家らしく、まるで情報部というようなものの力が非常に大きくて、口を開けばどんなことになるかわからないからみんな沈黙を守ってしまう、報道機関も非常に制約されているというような状態というものは、民主主義を非常に大切に思っている日本国民感情としては、これに対して非常に疑問を抱くわけでございます。そういう状態の中で、外務大臣が何か外務当局として向こうに対しておそるおそる事柄を進めていらっしゃるみたいな、まるでこちらが低姿勢向こうが高姿勢であるというようないままでの交渉のいきさつというようなものは、これは日本国民世論をだんだんと進めていく上にも、あんまりいいことではないというふうに私は考えているのでございますが、外務大臣は、いままでもそういう態度に対して、だんだん日本国民世論が反発していくということに対してどういう御所見をお持ちになりますか、それを伺いたいと思います。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 韓国ばかりでございませんで、外国とのおつき合いにつきましては、先生が先ほども御指摘されたとおり、対等平等な立場で公正な関係が維持発展されなけりゃならぬと考えております。外務当局といたしましては、常にそういう相手政府、国に対しまして最大限の敬意を払って対処してまいるのがわれわれの任務であろうと考えておるわけでございます。礼儀をもって接するということは、決してそれが主張すべきことを遠慮するとかしないとかいうことを意味しないのでありまして、むしろ正しい関係というのは、主張すべきことはちゃんと主張することにおいて初めて成り立つものと私は考えておるわけでございまして、外務当局といたしましては、そういう基本的な姿勢をくずしていないつもりでございますし、今後もくずすつもりはございません。  それから第二の問題でございますが、世界にはたくさんの国がありまして、いろいろな政治信条政治体制をとられておるわけでございます。で、これは政治学の理論から申しまして、いろいろ論評することは可能であろうと思うのでありまするけれども外交当局といたしましては、対等平等の立場でございますので、外国が選んだ政体というものにつきましては、それは外国が選んだ政体としてそれを尊重しなければならぬと思うのでありまして、それがいいの悪いのという論評する資格は少なくとも政府にはないのでございまして、政府はそういうことをすべきでないと私は考えておるわけでございます。ただ、私ども日本とその国との間がどこから見ても公正なものであるということを、何としても維持してまいりまして、国民理解を得なければならぬというように私は考えておるわけでございまして、本件の処理に当たりましても、そういう基本的な立場で対処いたしておるわけでございます。
  11. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 外務大臣の申されました、外務当局として、他国政治体制がどういうような体制であるかということについてかれこれ論評するということはしないと、これはまことにごもっともなことでございまして、実在する国がどういう体制であるかということに関係なく、たとえば共産主義ソ連や中国とも、日本国交を進めていこうという態度でございますし、ことにソ連とは経済的ないろいろな協力関係をもさらに積極的に進めていこうという関係であって、これは国民がみんな納得するところだと思います。しかしそれを論評するのではなくて、たとえば日本の場合には政府として経済援助をするということでございますから、国民としてはやはり自分たちの税金がどういうところの国をどういうふうに援助して用いられておるかということに無関心でいるわけにはまいりませんです。で、それがどういう体制であろうとそこの国の御自由であるとは申しながら、そこに言論の自由というものが全く奪われているということ、そしてどういうことか内容はまだ判明しないにしても、そこの国の人が日本に来ていて、そして有無を言わさず暴力によって連れ去られてしまったというような、現実にそういうことがあったということに対しては、やはりそういうようなことをそれでもかまわないのだということはないのじゃないかと思います。別にそれに対して外務当局として批判とか、それをなじるとかいうようなことはできないかもしれませんけれども、やはりそういうことに対してはいろいろの手でもって、そういうことは賛成できないのだと、日本の国のように言論の自由を認めている民主主義国としては、お隣の国もそうであるはずだと思っていままで経済援助も進めてきたのじゃないかというような、そういう態度に出るということはこれは行き過ぎではないと思います。  それで、西独韓国人、その留学生が大量に蒸発してしまった事件に対して、これを西独がどういうふうに扱ったかということは、私ども新聞報道によって知ったのでございますけれども西独大統領は、いまの朴大統領が再選されたときには、とりあえず友好的な祝電を送った。しかし、それとほとんど同時に、留学生あるいは教授文化人、十数名が有無を言わさず拉致されてしまって本国に送り返されてしまったというような事件が起こったことに対しては、相当鋭くこれを追及して、そしてそういうことに対しては、はっきりした制裁を加えるというところまではいかないにしても、き然たる態度で、そういうやり方に対しては西独は決してそれを黙認するものではないという国の態度もはっきりと示していると思います。そのいきさつを見ましても、その問題に対してはっきりした解決がつくまではいろいろの強い態度に出て、結局は最後にその拉致された学生、教授たちが全部無事にまた西独に、もとのところまで戻された。そこで初めて西独は非常に安心してまた友好関係を回復した。そこまでは一時国交断絶も辞さないくらいの強い態度に出たということを聞いているのでございますけれども、私はそういう態度というものは、これはいまの場合すぐこれを当てはめよと言ってるわけではございませんけれども、やはり日本国民感情というものを――経済援助をする国なんで、ただ単におつき合いをしているというのとは意味が違う国でございますから、経済援助を続けていくならば、国民納得ができるような、言論を全く封殺してしまうような政治というものは日本では認めないというような、そういう表現というものが、やはり外交上の取引の中にもきびしいものがもう少しあらわれてほしい、私はこういうふうに思うのでございますけれども、それはいかがでございますか。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今度の事件の実相が究明されて、それでなお政府狐疑逡巡をして態度をあいまいにしておるというのでございますならば、幾らでもおしかりを受けるつもりでございます。けれども、いまこの不幸な事件解明にかかっておるわけでございまして、これが単なる一私人、一外国人私人としての日本における犯罪にとどまるのか、それとも政府官憲がこれに関与しておるのかどうかという、問題の核心はそこにあると思うのでございますけれども、そういった点についていま解明にかかっておるわけでございまして、私どもといたしましては、鋭意解明を急いで、真相を明らかにいたしまして、公正な解決をしないと国民に申しわけないと思っておるわけでございまして、いままさにそういうことの解明にかかっておるわけなんでございまして、政府態度を、いま何をぐずぐずしておるのだと、早く直載簡明な態度をとれと申しましても、まだ事件解明されていない段階でやりようがないわけでございますので、当面の政府任務は、事件それ自体を解明することを急がなけりゃならぬという点にいま一生懸命になっておるわけでございまして、その解明の手順が必ずしも私どもの期待どおり動いていないわけでございまして、非常に残念でございますけれども、これは先方協力も極力得まして、できるだけ早く解明を急ぎたいと、いま考えております。  それから第二点の、経済協力の問題でございまして、経済協力についてのわれわれの考え方でございますが、これは加藤先生も御異論がないと思いますけれども、私どもはこれをひもつき援助をいたしまして、これをてこにいたしまして先方受益国に対しまして政治的な意図を押しつけるというようなものであってはいけないと思っております。また、特定の政権維持培養、そのためになるようなもののために国民の大事な資源を使うということもいけないことと思っているんでありまして、われわれは、発展途上国、とりわけ隣国でもございまする韓国経済の自立、その安定、その平和に役立つようなプロジェクトにつきまして、先方から御要請があり、われわれのほうも検討いたしまして、それはそういう目的にかなうのではないかという判断をいたしまして、やるべきものはやっておるわけでございまして、そのことは今後も――それは韓国だけでございませんで、わが国の力量に応じたことは発展途上国に対してやってまいらにゃいかぬと考えておるわけでございます。こういうことをやっておるから、これから先われわれにいろいろな期待がかりにございましても、それを政府としてこうしなければならないんじゃないかというような御相談を申し上げるということ、政治的な注文をつけるということは、私はいかがかと考えております。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと関連。  いまの大臣の御答弁の中に、向こうの言うなりになった場合ならいざ知らず、いま努力中だからしばらく待ってくれ、こういうようなお話がございましたが、しかし韓国が、民主主義の片りんも認めようとしないと思われるほどの独裁政権であるのですから、おそらく金大中事件に対する取り調べについても、結論についてある程度の想像をすることは私はかたくないと思います。つまり、日本警察当局なり、あるいは日本国民の大多数が期待するような調査結果が得られるかどうかということになれば、私は必ずしもそれは期待しがたいものがあるというように推測されるわけです。その日本国民の大多数の感情なり、あるいは警察当局調査と、韓国政府発表する金大中事件のその捜査結果と完全に食い違った、その場合には、日本韓国調査そのものを正当として、他国のことであるからそれは尊重するという態度をおとりになるのかどうなのか、私はこれは非常に重要な問題だと思います。つまり日本方針韓国の説明とが、調査の結果とが食い違って、しかも、金大中氏が逮捕されて裁判にかけられるような事態が、別件逮捕のようなことで起こらぬという保障もない。その場合に、日本で起こったこの種の重大事件について、日本韓国当局の一方的な発表、それが全くわれわれの考えや日本の捜査当局の見解と食い違っておった場合に、それでも日本韓国調査結果であるならばそれはやむを得ないというのか、食い違いが起こった場合には一体日本政府としてはどうなさるのか、これをお尋ねいたします。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 本件は、申すまでもなく、日本国内で行なわれた犯罪なんでございます。日本政府といたしましては、これが単なる私人の犯罪であるか、あるいは官憲がかんだ犯罪であるか、いずれにいたしましても、これをちゃんと解明いたしまして処置しないと、公正な解決をやらないと、こういうことの再発を防止する上におきましても、やっぱり政府の責任は私は免れないと思うのでございます。したがって、日本政府としては、鋭意実相を究明して公正な解決をはからなければならぬと考えておるわけでございます。いままだその揣摩憶測の段階でございまして、政府判断する材料がまだ整っていないわけでございますので、いま羽生先生のお尋ねの件につきまして、こういう場合はこうする、こういう場合はこうするということをいま私がお答えする立場にないわけでございまして、まあとりあえずこれを究明させてくださいと、そしてその出てきた動かしがたいデータを基礎といたしまして政府判断させていただきたいと思うのでございまして、いまの場合、仮定の場合につきましてどうこうするというようなことは私として申し上げるのは少し軽率じゃなかろうかと考えておりますので、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  15. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 いま羽生さんの関連質問なさいましたのに対して大臣の御答弁を承りましたけれども、これは非常に大事な問題だと思うのでございます。それで、いまのように何にも日本政府としてははっきりした態度をおとりにならないでどんどんどんどん、ずるずるずるずる時間を経過してしまう。そのうちに日本世論も飽きてしまって、忘れてしまうだろう。そのころになって、日本国民が全然期待しないような、あるいは希望しないような、どんな判決を――向こうではたいへんに恐ろしい法律があるらしいですから、そんなことで、自分の国の法律で自分の国の者を処罰するんだというような態度に出られるというようなことがあった場合には、これは向こうの、よその国のことだけとして日本国民はとるわけにはいかないので、経済援助をしている隣の国の事柄としては、これはもう非常な重大な関心を持って、外務当局としてもそれに対してそういうものをそのままのみ込んでしまって認めるのか、あるいはそれに対して何か抗議でも申し込まなければならないのか、そのときになってずいぶんむずかしいお立場にお立ちになるんじゃないかと私は想像いたします。で、先ほど申し上げておりました西独政府の場合には、やはり確証がない場合でも、まあある程度日本の場合よりはもう少しいろいろな証拠があったと思います。それに対して一々政府韓国政府に抗議文をちゃんと出しております。日本ではまだ一回も抗議文らしいものを政府が出していらっしゃらないのです。ああいうような、人権をじゅうりんした、人間を、ここに来ている外国人を連れ去ってしまったというその事実を、だれがやったにしても、そういうことに対してだけでも、もっとはっきりした抗議文らしきものを政府は出すべきだと思います。それも一回もお出しにならない。そして向こうから御迷惑をかけましたなんというような手紙をもらうなんて、もうまことにこれは日本国民感情を侮辱していると思います。そういうようなことに対してもう少し、だんだんとはっきりした態度をとるべきだと私は思います。そういう線を、伏線を張ってお置きにならないと、いま羽生さんがおっしゃったような、そういう立場に立ったときに、政府はもっと困るんじゃないかと思います。外務大臣いかがでしょうか。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 重ねて申し上げるわけでございますが、私どもとしては、一体、事件真相の究明を急いでいるわけでございまして、それを踏まえた上で何をなすべきか、何をなすべきでないか、これは政府判断して国民納得のいく措置を講じなければならぬと考えておるわけでございまして、いままだそういう、どうやるということについて私ども判断の材料が整っていない段階でございますので、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  17. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 最後の質問でございますけれど、日本でこういうふうな国論が非常に沸騰していて、言論の自由が抹殺されるということに対しては、どういう政党に所属している者でも所属していない者でも、日本国民全体としてのこれは大きな憤りをみんなが持っているという、こういうことは現実でございます。それで、韓国新聞がいろいろ報道の統制というようなことで、政府の気に入らないことは一切書かせない。日本新聞でも気に入らないことを書いたら放逐してしまうというような強硬手段に訴えておりましても、今日はラジオというものがございまして、相当日本のこの強い世論向こうの心ある人には聞こえていると思います。特に韓国ではあまりにも圧制というような、言論の自由に対しての圧制というようなものが行なわれた場合には、学生の運動というものが立ち上がって、これが大きな結果をもたらすわけでございます。私はそれを特に期待しているとここで申すわけではございませんけれど、そういうようなことになる傾向は大いにあるのではないか。そしてそういうようなことは、結局、韓国の政情の不安という、大きな不安をここで起こすわけでございます。それは決して日本にとってもあまりいいことではございません。しかし、いまのような何でも情報部が高圧的に政治権力あるいは警察権力で抹殺するというやり方はとうてい日本人が耐えられることではございません。よその国のことであっても、そういうことは私ども日本人としては耐えられないことです。その辺の日本人の気持というものを十分におくみ取りの上で、もうちょっとはっきりした外交ルートを通じての対処をしていただいて、最後のときになってひどい苦境にお立ちにならないように、そうして間違った方針をきめなければならないようなことにならないように、ひとつ外務大臣の御善処をお願いいたしまして、私は質問を終わります。
  18. 田英夫

    田英夫君 大臣の時間が制限があるようですから、問題点がたくさんありますが、まず、現在この問題についての一番大切なことは、連れ去られた金大中氏を日本に返させるという、このことが当面の最も緊急な問題だと思うのですが、いままでに政府はこの問題について韓国政府に申し入れをされたようでありますけれども、どのような態度でどういう申し入れをされたのか、この問題についてまずお答えいただきたいと思います。
  19. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 金大中氏がソウルの自宅で発見された次日の十四日、法眼次官から駐日韓国の李大使に対しまして、韓国のほうの調査結果を随時迅速に連絡することと並びまして、金大中、梁一東両氏がわがほうの捜査に協力するために早期に来日することを要請いたしまして、同日さらに駐韓後宮大使に対しましても訓令をいたしまして、尹外務次官に、十五日、申し入れをしてございます。これに対しまして、韓国側の回答につきましては、十七日でございますが、非外務次官から後宮大使に対しまして回答がございまして、本事件の捜査の経過につきましては日本側へ随時通報いたしますということと、同時に、金大中と梁一東両氏の渡日につきましては、現在調査中であるので不可能であるという回答がございました。しかし、わがほうといたしましては、その後も続けまして東京及びソウルと両方におきましてわがほうの捜査のために金大中、梁一東両氏の渡日は絶対に必要であるという立場から、再三再四日本へ渡日を要請いたしております。
  20. 田英夫

    田英夫君 この金大中氏の引き渡しという問題は、第一に日本側が捜査をするためにどうしても必要だという点があるわけですね。大臣、いま加藤委員の御質問に対してのお答えで、現在は事件解明をしている段階であると、解明を急いでこれができなければ日本政府としての態度がきまらないんだと、こういう意味のことをおっしゃったわけですけれども、いままさに加藤さんが言われたような意味から、もっとはっきりした態度日本政府が早急にとるべきだと思いますが、それをやるには事件解明しなくちゃいかぬと、こうおっしゃる。それならば、事件解明するためには金大中氏を一日も早く返してもらうと、こういう必要があるはずですね。ところが、いまのアジア局長の御答弁にもあるように、まことにただ言いっぱなしのような、そして向こうからだめだと言われたらそれっきりと、ただ一回の往復だけでこの問題が済まされている。ということからすると、解明をしなければならない、解明しなければ日本政府態度はきまらないと言いながら、その日本政府態度をきめるもとになる一番大切な金大中氏を返すという問題について全く手を打っていないというふうに言わざるを得ないと思います、一回だけの往復ですから。ほんとうにこれ解明をする気があるのかどうか、どうもほうっといたほうがよさそうだと、こういうふうにさえ私は思えるんですがいかがですか、大臣
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまもアジア局長から御答弁申し上げましたように、一回きり申し入れて、先方が捜査中であるから不可能であるという答えを得てそのままにしておるわけじゃ決してないんでございまして、再々にわたって申し入れておりますし、昨日もまた申し入れているわけでございまして、私どもはこれを断念するつもりはないわけでございます。ただ、金大中氏自身が韓国の法域の中に現におるわけでございますので、来日を求めるにつきましては、どうしても先方政府協力がなけりゃできないことでございますので、今後も精力的に、再々にわたって、しかも執拗に求めてまいるつもりです。
  22. 田英夫

    田英夫君 韓国側の捜査状況を逐一報告をするということを後宮大使と尹外務次官との間の話し合いでまあ約束をしたと、こういうことがいわれているにもかかわらず、その後、韓国政府韓国側の捜査状況を全く伝えてこない、きのう手島参事官――書記官ですか、警察庁から行っておられる方のようですが、ソウルの大使館の手島さんが向こう側に五項目の申し入れをしたということがありますけれども、この辺のところにも全く向こう側の言いなりになって、ただ及び腰に申し入れをしているだけと、こういうふうに言われてもしかたがないと思うんです。そこでそういうことではなくて、はっきりと日本政府態度を持って外務次官なり外務政務次官なりという方を韓国に派遣されるおつもりはないかどうか、このくらいのことをしっかりとやるべきではないかと思いますがいかがですか。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 本件の真相解明のためには、田さんおっしゃるように、あらゆることをやらなきゃいかぬと考えておるわけでございまして、ただいままでの韓国政府協力につきまして、私ども決して満足いたしておるわけじゃないわけでございまして、今後先方の反応も見ながら、どういうことを考えなきゃならぬか、われわれとしては終始考慮をいたしておるところでございまして、具体的な方法と時期ということにつきましては、しばらくおまかせをいただきたいと思います。
  24. 田英夫

    田英夫君 私は、しばらくおまかせいただきたいと言われるわけですけれども、あまり待てないと思うんですよ。それはなぜかといえば、金大中さんというこれからの韓国政治の中で非常に大切な人がその命があぶないと、これは私はオーバーに言っているんではなくて、韓国の国家保安法第一条には、政府を僭称し、「僭称」というたいへんむずかしい字が使ってありますが、政府を僭称しまたは国家を変乱する目的で結社または集団を結成した者は次の区別に従って処罰する、首魁は死刑または無期懲役に処する、というのが国家保安法の第一条であります。つまり政府を僭称しというのは、たとえば金大中氏が日本に別の政府を、まあ亡命政府と言えるかどうかわかりませんが、そういうものをつくる計画をしていたのが発覚したというような報道が一部にありました。この辺は韓国政府の意向がにじみ出ているんじゃないかというふうに私は理解する、解釈するんですが、ということにこじつければ、そういう政府を僭称したと、その首魁は金大中さんだということで、これはやがて逮捕をし死刑――すでに軟禁状態にあるわけです。もうそうなれば金大中氏誘拐事件というようなものはどこかへすっ飛んじゃって、全然別の問題で向こうの官憲の手の中で金大中氏は死刑になっていくと、日本側はただあれよあれよとこれを見ているしか手はない、こういうふうになっていく可能性がきわめて濃厚だと思うから私は待てないと、急ぐ必要があるということを申し上げているんです。  まあいろいろ申し上げたいことはたくさんありますけれども、たとえばアメリカのほうは、これは何で帰ったかわかりませんけれども、ハビブ駐韓大使を本国へ帰国さしております。これはアメリカの新聞の言うことをこのままやれとは申し上げないけれども、クリスチャン・サイエンス・モニターが、日本は後宮大使の召還というような強硬態度を表明すべきではないかというような提案をしております。外国で客観的に見ていてさえ、民主主義の尺度ではなかった場合にはこういう提案が出てくるような事件だ。アメリカの中立的な新聞がこういうことを言っているということも決してこれはよそのことのことではなくて、一つの参考にすべきじゃないか、こういう感じがしますが、後宮大使を一時帰国させるというような計画はありませんか。
  25. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 言う意味は、おっしゃる意味は召還ということの意味のお尋ねでございますか。
  26. 田英夫

    田英夫君 これは同じ帰国にも二つ意味が当然あると思います。一つは、現在のこういう状況の中で、近い国とはいいながら、通信連絡では不十分だから直接大使を帰国さして、向こうの実情などを、あるいは政府方針を伝えるという連絡のためということと、抗議的な意味を込めた召還ということがありますけれども、私は前者でもけっこうだと思います。
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 前者につきましては、非常に間断ない連絡をとっておりますので、いま後宮大使に御帰京をいただくということを考えておりません。後者の問題になりますと、事柄はなかなか重大になりますので、事案の解明について検討を持たなければ踏み切るわけには私はまいらないと思います。
  28. 田英夫

    田英夫君 先ほど御質疑の中で出てきましたけれども、現在非常に大きな問題は、この事件韓国政府の機関が関与しているのかどうか、あるいはそれに関係をした者が関与しているのかどうか、これはほんとう韓国政府機関が関与しているということになれば、当然後宮大使の召還から、さらにもっと強い行動に出ざるを得なくなると思うのですけれども、私は、そういう日が来たときに、さっき加藤さんが言われたように、日本政府は非常に苦境に立つ、こういうことを考えますので、むしろ警告を申し上げているわけですが、その意味から、この委員会で、たしか六月だったと思いますが、私は韓国のCIAといわれる人たちの日本における活動の問題を御質問いたしましたけれども、その後も、先日の参議院の法務委員会で、在日韓国大使館その他におけるいわゆる在日韓国CIAのリストがわかるかどうか、少なくとも韓国大使館にいる人の中でだれがCIAの人であるかわかるか、そのリストを出してくれという資料要求をいたしました。衆議院の外務委員会でも、楢崎委員から重ねて要求をされたのに対して、きのうづけで外務省から回答をいただきました。これはまあ回答になってないわけです。要するに、現在の状況では、中央情報部員であった者の氏名及び人数を確認することができないと。法務委員会の席では、アジア局の中江参事官が、調べます、できますと、こういうお答えがあったと思います。これは確認できないのか、調べようとしてできないのか、あるいは、これから調べればわかるのか、この点はいかがですか。
  29. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) ただいまの御質問にお答えいたしますが、現時点においては、政府として確認できないというのが現状でございまして、私ども、この確認の努力をやめるということじゃ決してございません。これからも確認の努力をいたします。いたしますが、その結果確認できるということをいまお約束することはできないというのが現状でございます。
  30. 田英夫

    田英夫君 外務省でおつくりになっている外交官リスト、ディプロマティックリストの中にも、韓国のところで、すでに私どもが知っている限りでも、何人かの人の名前が出てきているわけですね。したがって、外務省としてこれを努力されればできないはずはないと思うので、引き続きその努力をしていただきたいということをお願いをしておきます。  先日、衆議院の外務委員会で、楢崎委員から、一人の男の写真を示して、その人物がどういう人物であるかお調べいただきたいということを要求をされた。これは社会党の調査特別委員会に入った情報をもとにしたわけですけれども、それに対してどうやら、報道によると、その人物自身が、私は関係がないと言って出てきたのと、警察庁の発表で、関係がないということをきのうあたり発表されているようですけれども、この人物についてのお調べがわかっていればお答えいただきたいと思います。
  31. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先週土曜日、二十五日に、韓国側に対しましてその写真を手交いたし、大使館員のうちに該当者がいるかどうかを確認するよう求めました。それに対しまして、昨日月曜日、韓国側から、李泰薫一等書記官が写真の人物であるということを回答してまいりました。もっとも、韓国側は、この大使館員は事件に全く関係していないという旨を申し越しております。  なお、本人から、自分は事件関係がない、個人の資格で捜査に協力したいという申し出がございましたので、警視庁が本人につきまして事情聴取いたしましたところ、「自分は無関係である。当日は大使館の中で勤務していた。また、外交官ナンバーの四八五二という車は自分は使っていない。また、梁一東氏を羽田まで送りに行ったという事実もない。」ということでございまして、リュックサックを神田の店で買ったという事件につきましては、当時応対した神田の登山用具専門店「さかいや」の少年に同氏の写真を示したところ、似ていないということであったというふうに承知いたしております。
  32. 田英夫

    田英夫君 この問題についてはまたあらためてお聞きをする機会があると思いますが、これに関連をして、韓国の大使館から、本国からの訓令だということで、最近の日本における国会審議あるいは報道の中に、韓国政府機関が今度の事件に関与しているようにいわれているのは遺憾だというような抗議があった、こういうことでありますけれども、これは私はたいへん重大な問題だと思います。私の意見を申し上げるよりも、その委員会で質問をした楢崎弥之助さんが昨日談話を出しておられるので、それを読み上げてみますと、本件はまさに我が国の主権にかかわる重大問題である。したがって我が国の国権の最高機関である国会でその真相究明のため徹底した審議を行うことは国会の責任である。私は国政調査権にもとづき党に提供された確度の高い情報の真びょう性について国会を通じ日本政府調査を要求したのである。したがって今回の韓国大使館の抗議は、まったくすじ違いであるのみか、我が国の国会審議に対する不遜きわまる挑戦であり、内政に対する重大な干渉として逆に厳重な抗議の意を表する。我が国の政府韓国大使館の抗議申し入れをただちに撤回する様韓国側に措置すべきである。  私も全く同感でありますが、大臣韓国側に対して厳重に撤回を申し入れるという御意思があるかどうか伺いたい。
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず、その問題につきましては、韓国大使館が外務省に申し入れたことを正確に御報告申し上げて、それから外務省の見解を述べさせていただきたいと思います。
  34. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) この申し入れば、二十五日の午前、外務省中江アジア局参事官に対しまして、韓国大使館の李相振参事官が申し入れてきたものでございまして、その内容は口頭でございまして、要旨は次のようでございます。  最近、新聞記事や国会論議のうちに、いまだ捜査中の段階であるのに、韓国官憲が事件に介在したような議論が行なわれておる。さらに二十四日には、衆議院外務委員会で、韓国大使館員の写真を根拠もなしに提出し、あたかも大使館員が関与しているかのごとき疑惑を招いている現状に憂慮している。以上の次第にかんがみ、在日韓国大使館、総領事館、領事館のいずれの館員も事件には関係ないことを再確認したい。  こういうことでございまして、申し入れの趣旨は、抗議というものではございませんで、韓国大使館及びその他の総領事館、領事館等が本事件に関与していないということをもう一回再確認するという点に重点があったというように私ども承知いたしております。
  35. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま御報告申し上げたのが申し入れの趣旨でございまして、いま御説明がありましたとおり、韓国の大使館、総領事館、領事館には事件関係者はいないということに力点を置いた弁明であったと思いまして、国会の論議あるいはマスコミの報道自体をとらえて、それに対する抗議というように重大に取り扱うべき性質のもののようには私には受け取れないのでありまして、自分たちの館員の中にはそういう者はいないということを申し越したものと思います。もっとも、こういう段階でそういうことが行なわれたことが適切であったかどうかということにつきましては、私も意見はありますけれども、事柄自体、つまり国会審議自体に対する抗議、あるいはマスコミの報道自体に対する抗議という性質のもののようには受け取れないというのが私の感想でございます。
  36. 田英夫

    田英夫君 少し具体的なことを伺いたいのですが、金大中氏がソウルにあらわれてその直後に、当時は新聞記者会見を許されておりましたが、その中で、拉致されていくときに、大阪付近と思われる高速道路のインターチェンジに来たときに、同乗の男たちが、安、安いという字ですね、安もしくは安川の家へ行けと言っていたと、こういう発言がありますが、政府はこれについて、きょうは警察庁の方がおいでになっていないかもしれませんが、お調べになったかどうか。私のほうの調査では、神戸の韓国領事館の中に安という人がおりますけれども、安潤璟という、潤はサンズイの潤ですね。潤璟という人がいますが、こういう問題を政府のほうでお調べになっているかどうか。これは、向こうでの発言としては非常に重要なポイントですけれども
  37. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 外務省といたしましては、ただいま御質問の点について承知いたしておりません。
  38. 田英夫

    田英夫君 これは警察庁のほうに、捜査のほうでどういうふうにやっておられるかお聞きしたいところですが、おいでにならないようですから、それでは神戸の領事館に李台煕という人がいるかどうか。これは領事の名簿を当然お持ちでしょうからおわかりになると思いますが、李承晩の李に台湾の台、煕は朴正煕の熈です。
  39. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) たいへん申しわけありませんが、ただいまリストを持っておりませんので、後刻御返事いたします。
  40. 田英夫

    田英夫君 この李台煕という人は、先ほど加藤委員からお話がありました、例の一九六八年の西ドイツの大量蒸発事件のときに韓国CIAとして西ドイツに行った人物であります。これは本人も認めております。こういう人物が神戸の領事館に現にいるという、そして、安または安川という、金大中氏の発言関連をして安という人物が神戸の領事館にいるという情報がありますが、この点はぜひ政府のほうでお調べいただきたいということをお願いをしておきます。  さらに、この委員会で六月に、私は金大中氏の事件がまさか起こるとは思いませんでしたけれども韓国のCIAがわが国の中で活動しているということに関連をして、沢本三次という帰化した日本人、元韓国人、朝鮮から昭和十年に帰化をした人がスパイ容疑で逮捕されているという問題についてここで御質問をしたわけですけれども、今度金大中事件が起きましてから、そのような問題についてあらためて調べてみましたところが、リストにするとこれだけ膨大なものになるくらい、ちょっと端からあげていっても説明をすると、三、四十分かかりますから申し上げませんけれども、過去ほんの数年来、特にことしになってからだけでもずいぶん起きております。日本に在留をしている在日韓国人、あるいは日本で勉強をした韓国人でその後本国に帰国をした元日本留学生、あるいは日本に帰化をした帰化日本人、こういう人たちで相次いで逮捕されている人がたくさんいます。これを端から読んでいくとほんとに時間がかかりますが、その中には、新聞などでかつて非常に大きく報道された徐勝、俊植兄弟の問題、あるいは先ほど申しました沢本三次さんの問題、この沢本さんの問題については、関連をしましてこの委員会でも明らかにいたしましたが、沢本さんの共犯であると韓国側が五月三十日に発表をして指名手配をしたという、この人は純粋の日本人中村正雄という人がおりますが、この人のところに、在日韓国大使館の朴載京という一等書記官が自宅まであらわれて取り調べをしているという事実もこの委員会でかつて申し上げたはずであります。そしてそのときに、中江参事官に、朴載京という人はCIA出身ではないかどうかお調べいただきたいということをお願いをしてありますが、いまだにお答えがない。これはアジア局長、ぜひ近いうちに、ほんとうに近いうちにぜひお答えいただきたい、委員会の席でなくてけっこうですから、ということをお願いをしておきますが、そのほかに、ごく最近では、ことしの六月五日に金鉄佑という日本で勉強をした人が逮捕をされている。さらに六月二十九日、その直後にはその弟の金喆佑という人が逮捕をされている。この金喆佑という人は北海道大学の助手であります。国家公務員であります。文部省の方おいでになっておりますか。このことは御存じですね。
  41. 望月哲太郎

    説明員望月哲太郎君) 承知しております。
  42. 田英夫

    田英夫君 そこで、まず金喆佑氏のことについて伺いますけれども、この人はいま申し上げたように国家公務員です。これに対して日本政府は、国家公務員である人物が韓国に旅行をしている最中に音信不通になってしまう、帰ってこない。そのまま欠勤状態になっているので給料も支払ってもらえない。家族は非常に困っているようであります。扶養手当だけはかろうじて出ているようでありますけれども、給料は支払っていない。これはおそらく給与法で、本人に特別の事情があって、たとえば自分のほうが悪いことをしていなくなっちゃったという場合には給料を払わないということはあるでしょうけれども、この場合には、全く本人の意思に反して、スパイ容疑で逮捕されているというこういう事態の中で、給料を払わないというのは非常に冷たいと思いますが、その辺の処置はどういうふうになっておりますか。
  43. 望月哲太郎

    説明員望月哲太郎君) ただいま御質問の件でございますけれども、北大の金助手は、六月四日から八日までの五日間、家事都合理由として年次休暇を申請をいたしまして、その後、先ほど先生おっしゃいましたように、金の兄がスパイ容疑で逮捕されたということもございまして、理学部の教授が心配されまして金助手の家族に事情を聞かれましたところ、所用でもって、韓国へ渡航したということが家族からお話がございました。  そこで、その後年次有給休暇が切れましたあとも金助手から音さたがないものでございますから、北大の理学部関係者が六月二十七日に、札幌の韓国領事館を尋ねまして捜索願いを出したところ、その後六月の二十九日、三十日の新聞に、金助手のスパイ容疑による逮捕が報道されたわけでございます。それで、そういうことでございまして、金助手が逮捕されております関係でずっと音信がとだえておりましたわけでございまして、有給休暇が六月八日で切れた後出勤いたしておりませんので、この点はやはり給与法に即しまして、出勤をいたさない場合におきましては、俸給につきましてはやはり支給をすることはできないわけでございまして、やむを得ずその点は欠勤扱いとして俸給を支給をいたしてないというのが現在までの状況でございます。なお、外国旅行につきましては、学長の承認を得て旅行をするのが定められておるところでございますけれども、その点については所要の手続が行なわれていないという事実はございます。
  44. 田英夫

    田英夫君 いまのお答えで、まあ政府ほんとうに冷たいと思います。これは基本的に、私も実は反省をしているのですけれども、この委員会で沢本三次さんの問題を取り上げたときに、私は、沢本さんが日本人じゃないか、法律的に帰化した日本人だ、その日本人韓国でそういう目にあってるのを日本政府は黙っているのですか、という意味で御質問をしたと記憶しております。これは私は、根本的に間違っている、そうじゃなくて、日本にいる外国人の安全は、それを保障するのは日本政府の義務である、この観点が最も基本的に大切なことじゃないか。特に日本にいる六十万の朝鮮の人、韓国の人は、二世、三世は別にして、もともとはその大部分が日本のあの侵略戦争の中で協力をするためにかり立てられて日本に強制的に連れてこられた、こういう過去のいきさつがあるわけですから、特にことさらにこの人たちの幸福と安全を日本政府は考える、重視する義務があると思います。われわれはそういう意味から申し上げるのです。  時間がなくなりましたからもう一つだけ実例を申し上げると、崔相龍という人がごく最近逮捕された。――サイは崔。ソウは危険の相、相模の国の相です。それからリュウは龍です。――この人は東京大学の大学院で博士号をとっている人で、その後東京大学の坂本義和教授のところで博士号をとった人でありますけれども、その人がやはりスパイ容疑で逮捕をされております。それによると――スパイ容疑というよりもこれは論文が問題になったのですね。東京大学の坂本教授のもとで博士論文を書いた。それが韓国の軍政についての論文であった。そして帰国したところが突然逮捕をされたということであります。こういうことになってくると、日本の国立大学で教授が責任を持って指導をして書いた論文がもとで韓国で逮捕をされるというようなことになれば、これは日本政府としても無関係ではないと思いますが、こういうことも起きておりますよ、大臣、いかがですか。こういうことをやる韓国政府というものをどういうふうにお考えになるか、最後に伺いたい。
  45. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず、そういう方々が日本を出国する場合にどういう態様であったか、それが私には判然としないのでありまして、そこに韓国の官憲の権力が日本の国内において働いておったということであると、これはたいへん事柄は重大だとまず感じます。それから、韓国に行かれてそれがどういう措置を受けるかということは、まあ韓国の問題といたしまして、私として論評すべき立場にはないわけでございますが、人道的な立場から申しましてたいへん遺憾なことだと思います。
  46. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと関連して。  いまの田委員の質問全体、先ほどの加藤委員の質問全体に対する外務当局の御答弁を聞いておりまして、いわゆる、あまり問題を追及して日韓親善がこわされては困るという考えがその底流にあるのじゃないかと思います。しかし私どもは、いまのような日韓親善が真の意味における親善とは考えておりません。真の実の意味日韓親善というものは、やはり日韓両国民の合意の成り立つような形での親善でなければならぬと思う。これは一部のつくられたような特定の指導者、あるいは一部の階層を中心とする独裁政権下の親善というものが真の親善を意味しないことは当然だと思います。そういう意味で、日韓の真の親善とはそもそもどのようなものなのか、あらためて私は問いただす必要があると思う。  さらに経済援助についても、経済協力についても、韓国政府日本のこの経済援助について国民に何らかのPRをしたことがあるか、ほとんどないようです。しかも、その結果が逆に反日を生むような場合すらある。一部には日本の政界筋についてずいぶんの疑惑も起こっておるようです。私はここにある新聞のコラム欄における記事を持っておりますが、ちょっとあまりこういう席で言うのは適当でないほどきびしい批判ですから、私はここでは申しません。  ですから、経済援助のあり方についても、あるいは日韓の真の意味の親善とはそもそもどういうものなのか、それら両方を含めて、日本外務省、あるいは日本政府として、洗い直し、問いただし、再検討する必要があるのじゃないかと思う。私はこれは根本的な問題だと思う。いまのようなことを続けていけば、私は今度の金大中事件についての結論もおおよそ想像することができる。そして先ほど田委員から質問があったような心配した事態が起こらぬという保障はない。だからそういう意味で、そういうことが起こらないように、もっと日本としては基本的な問題の処理、基本的な問題の解決のために、もっとき然たる態度をとって、日韓の真の意味の親善と経済援助のあり方について再検討していただきたいと私は思いますが、いかがですか。
  47. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 経済援助のあり方、それから正しい二国間関係のあり方、いつも公正で正しくなければならぬわけでございまして、不断に改善をしてまいる努力を重ねなけりゃならぬと思っております。しかしながら、こういう不幸な事件も起こったわけでございまして、こういう事件はすみやかに解明いたしまして、事実を踏まえた上で、正しいあり方は、二国間のあり方としてどういうあり方が正しいかということにつきましては、厳正に考えてまいりたいと思います。
  48. 田英夫

    田英夫君 時間がなくなりましたので、最後の質問です。  いまずっと御質問したように、実はこの一つのリストでもわかるように、韓国政府日本で現在もやり続けているということは、決して金大中事件だけではなくて、こういう人物を次々に逮捕していくという裏には、これはやはり日本の中でそうした情報を取っていなければとてもできない。論文一つにまで目を通す。現に、実は私のところにも、在日韓国人の皆さんからいろいろ御相談があります。とてもこわくて住んでいられないのだと、こういうことを言われるわけです。そのとおりだと思うのです。無理はないと思います。日本に住んでいて、何らかの形で連れていかれてしまって、そのまま逮捕です。近い将来にまたもっと具体的なそうした実例をお示しできると思いますけれども、平和国家であるとか、主権がどうだとか言っている中で、外国の人たちが、日本で平和に暮らそうとしている外国の人たちが、全く戦々恐々としていなければならないという状態をこの日本の中でつくり出しているということを政府はお忘れになっては困る。しかも、韓国の人は、さっき言いました歴史的ないきさつがあるわけです。そういう状態をお考えになったときに、この金大中事件もこのままただ真相がわからないから慎重にということでは済まない問題だと思います。そういう意味で、政府のもっとほんとうにき然とした堂々たる態度をお願いをして、質問を終わります。
  49. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回発生しました金大中事件、まあ一口に言うとまことに複雑怪奇といいますか、あるいは見方によっては起こるべくして起こった事件でもあるというような印象を強烈に受けざるを得ない。まことに残念でございます。いままでの質疑をずっと聞いておりまして、また、衆参法務委員会においての政府答弁も読んでみました。一体この事件というものが早期に解決できるものなのか、あるいは真相がある程度輪郭がはっきりしたときには、それに相当の時間がかかって、世論の対象からはずされてしまうような、そういうことにもなるのではないだろうかと、われわれはわれわれなりの判断と憶測で、こういう感じを持つわけでございます。なるほど政府といたしましても、先ほどの御答弁にもございますように、鋭意慎重に努力を重ねられておられることは私も否定はしません。しかし、いままでの報道された後宮大使の申し入れ等につきましても、はたして満足すべき回答が得られたかどうか、また、捜査当局が韓国側に対しての申し入れについても同様のことが私は言えるのだろうと思うのです。現状において日本が最も必要としている金大中氏自身が再び日本へ来てもらいたいという問題を中心として、今日までの捜査経過と申しますか、韓国側における捜査経過というものについても逐一御報告願いたいということを申し入れているはずです。しかし、それもおそらく満足すべき状態でないままに今日まで来ているんではないだろうかと考えられます。こうした、まあ現在捜査中というふうに一言で言われてしまえばそれまでかもしれませんが、少なくとも日韓という国際関係にまつわる問題であってみれば、これは日本政府として当然最も大きな最近にない重要な国際政治課題として取り組まなければならぬということは言うまでもございませんし、一体その真相究明のためには、いま政府で考えられていらっしゃるどういう点が明らかにされればいいのか、そしてその時期はどの辺をめどとしてやはりこれを詰めていかなければならないのか。やはり長引けば長引くほど人間の記憶というものも薄れてまいりましょうし、また客観情勢というものもいろいろ変化してまいりましょう。やはり事件のまだ新しい、そうしたときにいろいろな事実関係というものが行なわれてまいりませんと、おそらく政府としても満足すべき回答というものが得られないのではないか。そういう見通し等についてどういうふうに一体考えられ、さらにどういう手を、政府は執拗に繰り返し繰り返し何回もこれから韓国政府に厳重な申し入れを続けていくんだと、こういうふうにおっしゃっておられますけれども、しかし、ナシのつぶてであるかもしれない。そういういろいろなもろもろの情勢判断というものももちろん踏まえられた上で先ほどの御答弁をなされたのだと思うのですけれども、まあわれわれとしては、残念ですけれども、満足すべき御回答にはならないというふうに感ずるわけでございますが、その点政府として、今後の見通し等についてどういうふうにお考えになり、どういうまたさらに方法、対応策をとられていくのか、その点から伺っていきたいと思います。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 残念ながらいまの段階で明確なことを申し上げる段階にないわけでございまして、社会党のお三方からの御質問にもお答え申し上げましたように、事件解明にかかっておるということ、しかし、その解明がなかなか思うようにはかどらないことで焦慮を感じておるわけでございますが、しかし、これを解明しないでうやむやのうちに葬るなんということは絶対できないことでございますので、私どもといたしましてはできるだけ早く解明したい。で、確たる事実を踏まえた上で日本政府の対処の方針を打ち出さなければならぬと考えておりまして、先方政府に対しまして鋭意解明についての御協力を執拗に求めておるわけでございまして、事は御指摘のとおり日韓関係にからまる重大な問題でございますだけに、私といたしましては、先方もわれわれの要請にこたえて誠意のある反応を期待いたしておるわけでございます。先ほどもお願い申し上げましたように、いましばらく時間をかしていただきたいと考えます。
  51. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 真相究明にはいろいろな角度から追及されるのだろうと思いますが、やはりそうした中に、いま政府がこの点さえ明らかにされれば一切は解決するという一つの重要なキーポイントをお考えになっていらっしゃると思いますが、それはやはり金大中氏の再来日ということにしぼられるのだというふうに判断してよろしいのでしょうか。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 事は真相の究明でございまして、犯人が突きとめられ、そしてこの犯行について韓国の官憲が関与しているかいないか、そういうことが判明するということでございます。金大中氏は犯人ではないわけでございまして、捜査を、直接参考人として聞く、聞かなければいけないという捜査当局の御要請がございまして、そういうラインで先方政府協力方を求めておるわけでございます。大事なことは、金大中氏の再来日ということもさることながら、一番の問題は、犯人が明らかになり、これに権力が介入しているかしていないかということが判明することこそ問題の核心であると思います。
  53. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もうすでに二週間あまりを経過しているわけですが、いまだに犯人らしきものの追跡調査あるいは逮捕できたということも聞いておりません。初動捜査がおくれたという日本の基本的なそういう捜査のあり方を考えましたときに、はたして、もう時間の経過というものがわれわれの望むような犯人逮捕というようなことまでいきまして、真相究明に重要な役割りを果たすだけのそういう結果を見るかどうか、もう非常に疑問とせざるを得ないのはおそらく常識であろうかと私思いますね。いろいろ憶測、仮定、先ほども申されましたように、そういうことでわれわれは云々したくはございませんけれども、しかし、少なくともいままでのいろんな日本における捜査当局の捜査状況を総合いたしましても、ある程度の判断というものがおそらく政府としても掌握をされていらっしゃる。けれども、それが最終結論とならないというところに、韓国側の情報入手というものをいまお待ちになっていると、こういうことになるだろうと思うんです。その証拠には、衆議院の法務委員会で田中法務大臣が、私の第六感、国会答弁において第六感なんというその表現はあり得ないはずでございます。しかし、それを言わざるを得なかったということは、やはりそれなりの背景とそれなりの論拠があっておそらくあの発言になったんであろう。いわゆる何らかの、某国というような表現でもって、国家機関というものが介入していると認めざるを得ないというような発言であったように思います。その後、だいぶ突き上げがあったとかなんとかということも伝えられておりますけれども、こうして考えた場合に、常に、やはり日本政府としては、きわめてすぐれた捜査技術というものを持っているわけですから、しかも高く評価もされているわけですから、おそらくこの問題が、何かいろんなものが介在して、いま表面にそれが出せないんじゃないかという、そういう気もしてならないわけです。いまそれを直ちに出すことがきわめて穏当か不穏当か、日本の将来にとってプラスかマイナスかという問題になってきますと、これは非常に重要な意味を持ちますので、確証のないことは申すわけにまいりませんけれども、何かそこに非常に、私ども日本事件が起きているから現在に至るまでの状況を考えますと、何となくふに落ちない、ふに落ちないと申し上げたほうがよろしいんでしょうね、ふに落ちない。しろうとが考えても、ここはこういうふうになるべきじゃなかったかと、先ほども言われましたように、きょうは警察庁来ていませんから、あえて伺うわけにもいきませんけれども、そういう問題がずっと積み重なっちゃって、ついに後手を踏んで金大中氏は韓国へ行ってしまった。これはもう場合によると、極端なものの言い方をすると、永久に葬られてしまうんじゃないか、この事件は、というような心配もあるわけですけれども大平さんとしては、そういう心配はいささかもありませんというふうにお考えでございましょうか。
  54. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういうことになったらたいへんだと思うのでありまして、事態の究明を極力急いでまいりたいと思います。また、われわれのすぐれた捜査当局に対しまして全幅の信頼を置きながら、その要請に応じまして韓国側の協力も極力求めてまいって、解明を急ぎたいと思います。
  55. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回の事件が急速にクローズアップされてきたわけでありますが、これは韓国に限らないと思いますけれども、今回の事件を通しまして、今後の問題として申し上げたいわけでありますが、国家機関が日本国内において何らかの形で介入して犯罪を犯す、これは当然主権侵犯であることは言うまでもありませんが、たとえば準国家機関と申しますか、国家機関に使われてこういうような行動を起こした場合にはどうなるのか、いわゆる、あえて言うならば民間的な組織、あるいは民間団体、それが、表面的には純然たる国家機関ではありませんけれども、しかし実質的には国家機関と何らかのつながりを持って絶えず行動を起こしておるというような場合にはどういうことになるのかという問題ですね、おそらく広義に解釈をすれば、当然これも主権侵犯ということになるんではないだろうかというようなことも抱くわけでございますが、その点、どういうふうに解釈されていらっしゃるでしょうか。
  56. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 事態が解明されておりませんので、仮定の問題としてお答え申し上げることをお許し願いたいと存じます。  国際上の主権侵害は、一国の機関によって他国の主権を侵害するということは認められない国際不法行為であるということでございます。民間の団体または私人によって主権が侵害されるということは、国際法上は発生いたさないのでございます。ただ、御指摘の国家機関と命令的な関係にある私人等が行なった場合ということになりますとこれは、かりに今回の連行事件私人によって、しかし、国家機関の指示ないし指令によって行なわれたという場合は、当然、その国の政府が責任を負う、すなわち、国の機関が行なった行為と同じであると考えられると思います。
  57. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまの御答弁のとおり、今後、真相が明らかになることによって、いずれの場合でも日本の主権の侵犯ということになるかならないか、非常に大きな分かれ道になろうかと思います。こうした一連の問題というものが、いま突如として発生したわけではない。もうすでにアメリカにおいても、元国務長官をやられたロジャース氏がやはりきびしい口調で警告を発しておられる。ということは、これは日本を中心として、もう世界各国に韓国のあるいはCIA、CICの活動があるということが裏づけされるんではないかというふうに考えられるわけですが、その点については、外務省当局としてどういう判断をお持ちになっておりましょうか。
  58. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 捜査当局、警察当局から、KCIAの国内での活動がこういう形でこのように行なわれたということについての報告は、ただいままで受けておりません。
  59. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 受けていらっしゃらなければそれまでということになるんでしょうけれども、この情報化社会の時代に入りまして、やはりそういう情報というものは、根も葉もないようなことが社会問題として、あるいは国際問題として表面に出てくることはないだろうと私は思いますね。しかも非常に強力な組織網を持って、全世界的な機能を持ちながら諜報活動をはじめとするいろんな行動がなされているという、先ほども指摘されましたように、西ドイツにおける問題といい、あるいは米国において行なわれた何らかの問題といい、そういう関連がある。そうして考えた場合に、やはり日本においても相当長期にわたって、この種の問題点が表面にこそあらわれなかったかもしれませんけれども、行なわれてきたんじゃないか。で、私のところにも、まだ、こういうたくさんの資料があるんですけれども、きょうは時間が限定されておりますので申し上げられませんけれども、先ほど田委員からも指摘されておりますように、おもな事件だけでも私の手元には十五件あるんですよね、十五件。そうすると、もう一体日本の国というのはどういう形態になっているんだというような、まことに憤りと不満を感ずるわけです。ですから、そういう問題について全く受け取ってないというだけの考え方でいいのか、また、こういう問題が起こってから、あらためてこの種の問題を洗い直しながら事実関係というものを立証していくのか、それとも、やはりある程度、しかも東京は国際都市といわれる諜報活動が一番盛んな地域だといわれている、そういう評価がございます。そういうようなところに、まことにやりやすいという、世界各国から見ればきわめてやりやすい温床であるというような点も、これも常識として考えられるわけでございます。そうした場合に、一体政府としてそういう問題を事前にチェックをしながら、不幸な事態が起きないように常に心配りというものをすべきではないだろうかというのは当然過ぎるほど当然のぼくは考え方ではないか、こう思うんですけれども大平さん、その点についてはどのように一体お考えになっていらっしゃいますか。
  60. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、日本の主権の及ぶところ、外国の権力によって土足でじゅうりんされるというようなことが許されていいはずはないわけでございます。日本警察当局といたしましても最善を尽くしておると思うのであります。  今回、こういう不幸な事件が起きましたが、この事件解明というものをわれわれが急ぎ、その事実を十分掌握したいと願っているゆえんのものも、そういう不法事件日本の主権のもとにおいて行なわれることのないように、行なわれた場合にはちゃんとしたこういう措置がとられるということを内外にあかしを立てなければならぬ筋合いのものでございますので、本件の処理はそういう意味からも非常に重大な問題だと心得ております。
  61. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれおそかれ早かれ、まあおそかれのほうがどうも感じとしては受けとめやすいんですけれども、何らかの形で明らかになった、不幸にしてこれが国家機関のやはり侵犯するところであったということになって、日本の主権が侵害された――そうならないことを願いたいわけですけれども、どうも実情としてはどうなるかわからない。で、おそらく私の記憶に間違いなければ、大平さんの御発言として、そうしたことが明らかになった場合に、やはり政府としては重大な決意をされるという意味のことをおっしゃったように記憶をしておりますが、その重大な決意とは一体どういうことなんでございましょうか。やはりあかせませんか。
  62. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまの段階、重ねて申し上げて恐縮でございますけれども、まだ事態の解明がなされていないわけでございますので、私は、今日の段階において申し上げられることは、一般的、抽象的なことしか申し上げられないことをお許しをいただきたい、御了承をいただきたいと思います。いずれにしても事態の解明を通じて本件の公正な解決をしなければならぬと思うのでありまして、そうして、それを踏まえた上で内外に納得がいく公正な措置を政府としてはすべきであると私は思います。
  63. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 あと二点だけお伺いしておきたいのですが、一点は、すでに報道されておりますように、読売新聞社の記者の方が強制退去を命ぜられた。また支局が閉鎖を命ぜられた。この種の問題について政府はどのように判断をし、対策を講ぜられますか。
  64. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 事態の解明が行なわれていない段階、すなわち韓国の官憲が関与しているかしてないかがまだ判明していない段階でございまして、読売新聞の記事が真実を報道したものかどうか、そういうことがまだ事態の解明を通じて明らかでない段階におきまして支局の閉鎖をされるということは私はいかがかと思うのでありまして、閉鎖命令がありましたということを伺いまして、直ちに先方にその趣旨の申し入れをいたしまして、できるだけ早い支局の再開を希望する旨を申し入れておいたわけでございます。
  65. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 その点は日本の名誉にかけてもやはり強力に政府としても私は推進すべきであろうと判断します。それこそ執拗にやっていただきたいなという感じを抱くわけです。  それから第二点としては、先ほども質問の中にございましたけれども、実は私のところにもたいへん憂慮した韓国の方が来られました。それで、常に尾行がついているような不安感をぬぐい切れないという非常に心配された発言をしておりました。これまたたいへん不幸な事態だと私は思うんです。しかも、少なくとも日本の国に住んでいる限りは、日本の法律が適用され、その法の保護のもとに人命、財産というものは守られていかなければならない、これがもう基本だろうと私は思うんですね。にもかかわらず、先ほど私が申し上げたように、私の手元に十五件ある。これ以外にもたくさんあるというんですね。こういうようなことが今後続発するということになれば、一体日本の国家主権というものはどんなふうになるんだろうという、まことに前時代的な危惧の念をやはりぬぐい去れないという心情を私のみならず多くの方が持つであろうと思うんです。何が先進国かというようなあざけりさえ出てきはしまいかという今日の環境を考えた場合に、ただことばの上で重大だとか、非常にそれはもう遺憾なことだと言って済まされない。もう直ちにこの問題の根を、底流にあるいろんな問題を掘り下げながら、そういう方々の身辺というものについては、十分安心して日本で生活ができるという保証を与えるような環境にすることが非常に大事じゃないかと思うのでございます。  はしなくも今回こういう問題が表面化したことに関連して、いままであったいろんな問題がぞろぞろ出てきちゃっている、一体何だと、こういうふうになるわけでございますが、これは当然日本政府としても深刻にこれを受けとめて考えなければならない、もう一ぺんここで考え直さなければならない問題ではあるまいか、こう思いますけれども、十分な措置がこれからとられるかどうか、この点はいかがか。
  66. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり私もそう心得なければならぬと思います。
  67. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 では、きょうはこの程度でやめておきます。
  68. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 資料を要求いたしたいと思います。  日韓経済関係政府援助、民間の経済活動、全部詳しい資料を、具体的なものを提出していただきたい。なるべく早くしていただきたい。これを委員長にお願いいたします。
  69. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまの御要求、よろしゅうございますか。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  70. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 速記をつけて。  本調査に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午前十一時五十九分散会      ―――――・―――――