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1973-06-28 第71回国会 参議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十八日(木曜日)    午前十時七分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 木内 四郎君                 佐藤 一郎君                 田  英夫君     委 員                          杉原 荒太君                 八木 一郎君                 矢野  登君                 山本 利壽君                 羽生 三七君                 森 元治郎君                 渋谷 邦彦君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省条約局外        務参事官     松永 信雄君        外務省国際連合        局長       影井 梅夫君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        外務省経済局次        長        西田 誠哉君        大蔵省関税局輸        入課長      大槻 章雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関  条約ATA条約)の締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○職業用具の一時輸入に関する通関条約締結に  ついて承認を求めるの件(内閣提出衆議院送  付) ○展覧会見本市会議その他これらに類する催  しにおいて展示され又は使用される物品輸入  に対する便益に関する通関条約締結について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査  (南北朝鮮国連加盟問題に関する件)  (韓国における日本人の保護問題に関する件)  (南ベトナム臨時革命政府要人の入国問題に関  する件)  (南ベトナムに対する経済協力に関する件)  (南ベトナム沖石油開発への入札に関する件)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約ATA条約)の締結について承認を求めるの件  職業用具の一時輸入に関する通関条約締結について承認を求めるの件  展覧会見本市会議その他これらに類する催しにおいて展示され又は使用される物品輸入に対する便益に関する通関条約締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)  以上三件を便宜一括して議題といたします。  三件につきましては、六月二十一日の委員会において趣旨説明及び補足説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 田英夫

    田英夫君 このATA条約をはじめ三件の問題は、非常に技術的といいますか、こまかな技術的な問題を中心にしたものなので、質疑というよりも、前回大臣から御説明いただき、また、松永参事官から補足説明をいただいたわけですけれどもさらに詳しい内容問題点を御説明いただきたいというふうに思います。むしろ、私の質疑というよりも、専門担当の方から技術的なことの問題点を御説明いただきたいと思うのです。時間二、三十分という形で御説明をいただいて、それによってまた私のほうで問題点を掘り下げるというふうにしたいと思うのですが、担当の方からどうぞ。
  4. 西田誠哉

    説明員西田誠哉君) ただいま田先生から御要望がございましたので、私から簡単にただいま御審議願っております三つ条約につきまして、その概要を御説明いたしたいと思います。  まず第一に、物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約通称ATA管理条約と申しておりますが、この条約は、関税協力理事会、実は、これにつきましては後ほど簡単に御説明したいと思いますが、関税協力理事会におきまして一九六一年十二月に採択されたものでございまして、六三年七月三十日に効力を発生いたしております。その締約国の数は、現在でイギリスアメリカフランス等三十二カ国でございます。  この条約目的は、一時輸入される物品に関しまして通関書類として、及び、一時輸入条件が守られない場合に納付しなければならない輸入税等担保として機能するための国際的な通関手帳、以下ATAカルネと呼ばせていただきたいと思いますが、このATAカルネ制度を採用いたすことによりまして、一時輸入に関する通関手続を簡素化することを目的としておるわけでございます。なお、ATAと申しますのは、一時輸入を申します英語のテンポラリ・アドミッション、それからフランス語のアドミッション・テンポレート、この頭文字を組み合わせてATAということになっておるわけでございます。  このATAカルネを使用することができます物品といたしましては、まず第一に本日御審議いただいております職業用具通関条約、それからこれも御審議いただいております展覧会用物品通関条約により一時輸入を認められる物品、これがまず第一でございます。それからその次に、他の一時輸入に関する条約及び国内法令によりまして一時輸入が認められる物品、これが第二番目でございます。それから、三番目に保税運送が認められる物品、この三つのグループのものを対象にいたしまして使用することができるということになっておるわけでございます。  このATAカルネ発給する団体発給団体と申しておりますが、この発給団体及びATAカルネに基づきまして輸入税保証をする団体、これは保証団体と申しておりますが、この団体となるためには、締約国税関当局承認を必要とすることになっております。  この保証団体は、ATAカルネによりまして一時輸入された物品所定期間、これは原則としてカルネ有効期間でございます一年ということになっておりますが、この所定期間内に輸出されなかった場合または所定の用途以外に使用された場合には、輸入者と連帯いたしまして輸入税納付する義務を負うということになっております。  それから、各国保証団体を国際的にいかに組織するかということにつきましては、民間関係者が措置するということになっておりますが、このような国際保証組織といたしましては、現在のところ国際商業会議所が作成いたしました民間協定に基づいてつくられました国際保証組織がございます。わが国がこの条約に加盟いたしましたあと、この保証団体承認する際には、この国際保証組織に加入する団体というものを承認することになると思われる次第でございます。  次に、二番目に職業用具の一時輸入に関する通関条約について概略御説明いたします。  この条約ATAカルネ条約と同じく、関税協力理事会において一九六一年六月に採択され、六二年七月に効力を生じておるものでございますが、この締約国数は現在ATAカルネ条約と同じくフランスイギリスアメリカ等三十七カ国でございます。  この条約目的は、この附属書に定めてございますが、職業用具につきまして一時輸入を認めるということになっております。この一時輸入が認められる期間は六カ月ということになっております。この附属書に定めてございます職業用具といたしましては、大きく分けて三種類ございますが、まず第一に附属書Aに定められておりますのは、報道用具カメラであるとかタイプライター、それからこういった報道関係者のための職業用具、それからラジオ放送用具あるいはテレビ放送用具、これもやはり写真機であるとかあるいはいろんな録音装置であるとか、こういったラジオあるいはテレビ放送に関連した用具、これが附属書Aに規定する用具でございます。  それから第二に附属書Bに規定しておりますのは、映画撮影関係のための用具、つまりカメラであるとかあるいは照明用具その他映画撮影に必要な付属品、こういったものを職業用具というふうに規定しておるわけでございます。  それから三番目に附属書Cに書いてでございますのは、その他の職業用具ということでございまして、いろんな機械関係専門家が持ってまいります工具であるとか、各種の機器、それから医師あるいは学者、こういった方々が必要とされる専門的な用具、それから芸能人あるいは劇団の方々が必要とされる用具、こういったものが対象になっておる次第でございます。  それから第三番目に展覧会見本市会議その他これらに類する催しにおいて展示されまたは使用される物品輸入に対する便益に関する通関条約、これにつきましては、やはり先ほどの二つ条約と同じく関税協力理事会におきまして六一年六月に採択され、六二年七月に効力を生じておりますが、締約国数フランスイギリス等三十八カ国ということでございます。この条約目的は、表題にありますように、展覧会見本市、その他の会議、こういったものの催しにおきまして展示されまたは使用される物品について一時輸入、あるいは免税輸入を認めるということでございます。一時輸入が認められる物品というものは、催しにおきまして展示または実演に供される物品でありますが、この免税輸入が認められる物品と申しますのは、展示会その他におきまして使用いたします小型見本、こういったもので展示に関連して消費される物品、こういうものを考えております。一時輸入が認められます期間は六カ月でございます。催しの種類といたしましては、貿易、工業、農業または工芸展覧会見本市展示会、慈善のための展覧会あるいは会合、それから学問、芸術、工芸、スポーツ、宗教、こういったものを目的といたしました展覧会あるいは会合国際団体会合その他公的な性格を有する儀式等対象になるわけでございます。  最後に、この三つ条約を作成いたしました関税協力理事会につきまして簡単に御説明いたしますと、関税協力理事会は一九五〇年十二月にブラッセルで作成されました関税協力理事会を設立する条約によりまして設立されました国際機関でございます。この目的は、締約国間の関税制度の調和と統一をはかるということを目的としております。わが国は、一九六四年六月に加盟いたしまして、現在加盟国数は欧州、アジアアフリカの諸国、それからアメリカカナダ等七十カ国ということになっております。この関税協力理事会は、関税率表における物品分類のための品目表に関する条約わが国は六六年に加盟しておりますが、及び、税関における物品評価に関する条約わが国は、七二年九月に加入しております。この二つ条約統一的な解釈及び適用の確保、それから各国関税法制の研究、それから通関条約の作成、その他関税行政に関する幅広い活動を行なっておりますが、ことしの五月、京都におきましてこの関税協力理事会の総会が開かれたことはあるいは御高承のとおりかと思います。  以上で、簡単でございますが、説明を終わらしていただきます。
  5. 田英夫

    田英夫君 どうもありがとうございました。  続いて大蔵省のほうから。
  6. 大槻章雄

    説明員大槻章雄君) 大蔵省のほうからは、カルネの流れにつきまして御説明をいたしたいと思います。非常に技術的なことでございますので、チャートを利用させていただきまして御説明いたしたいと思います。  ただいま外務省のほうから、カルネ発給団体保証団体ということにつきましての御説明がございましたが、カルネ利用する人は、カルネ発給申請当該国、この場合は輸出国輸入国二つに分けてやっているわけでございますが、輸出国税関当局によって認可された発給団体申請をいたします。そしてカルネ発給を受けまして、それを輸出するときにはカルネ提示税関にいたすわけでございます。これが通常の場合の輸出申告に相当するわけでございまして、そこに所要の記入を受けまして、税関のほうといたしましては輸出証書を保管をし、それからカルネのほうには輸出控えというものが残っておるわけでございます。そして輸出許可を受けますとカルネ利用者に返還いたします。これが輸出申告に対する輸出許可ということになるわけでございます。そして五番目の輸出ということになるわけでございますが、これは輸入国側でございますけれども、そしてこれで輸入がありました場合には輸入者のほうでカルネ提示をその国の税関にいたします。これは通常の場合の輸入申告。それから、このカルネは再輸出条件としての免税一時輸入制度でございますので、再輸出免税申請通常の場合には担保の提供ということになるわけでございますが、これは先ほども外務省から御説明がありましたように、カルネ自体担保機能を果たすわけでございます。そして輸入証書税関のほうが保管し、それからカルネのほうには輸入控えというものが残っておるわけでございます。そして輸入許可をいたしますとカルネ利用者に返却いたすわけでございます。そこで商品見本等いろいろ取引をやっておるわけでございます。それで、さらに今度はもう  一度こちらに返ることになるわけでございますから、再輸出関係カルネ提示をやります。これもまたその国における輸出申告になるわけでございます。それから、輸出申告に対しまして許可をいたしますと、輸出許可ということでカルネを返却いたします。そのときには再輸出証税関が保管しておりまして、輸入したときに入ってきたものと、それから再輸出の場合のものとがはたして同一性の確認がどういうふうに行なわれるかということをそのときにチェックするということになるわけでございます。そして再輸出されます。今度は輸出側のほうにもう一度戻ってくるわけでございますが、カルネ提示をいたします。それは輸入申告であり再輸入免税申請ということでございます。再輸入といたしまして再輸入証税関のほうで保管しておりますので、最初に出たときの輸出証書とのチェックということで、そのものがほんとうに返っているかどうかということが確認できるわけでございます。それでカルネの返却をいたします。それで一応終わりますと、その利用者カルネ発給団体カルネを返却するということになるわけでございます。  以上御説明いたしましたことは、再輸出条件とする免税一時輸入がすべて無事に終わったという場合の状態でございますが、場合によっては条件違反ということで、たとえば再輸出期限内に再輸出が行なわれなかったというような場合があるわけでございますが、そういうときの保証がどういうことになるかというのがこの赤で書いている場合でございます。再輸出されない場合等がございますときには、関税納付請求税関輸入国保証団体にいたします。保証団体は、立てかえて関税納付をいたします。それで立てかえた分については輸出国のほうの発給団体に対して関税求償をし、そして関税請求額をこの保証団体に送るということによって保証関係はセットされることになるわけでございます。  最後に、ちょっと付け加えておきますと、カルネ発給申請のときには、国によっては担保利用者からとっている場合がございますので、そのときのいまのこの求償等関係最後保証のおさまりといたしましては、徴求している担保から最終的にはその分をこの発給団体がとって完結するということになるわけでございます。  したがいまして、以上のことをすべて総括して御説明申し上げますと、外務省からも御説明がありましたように、ATAカルネというのは、通関のための書類という機能を持っていると同時に、担保保証という意味機能と、両方持っているわけでございます。通関書類という場合には、通常こういう統一的なカルネを使わない場合には、その国、その国の輸出申告なり輸入申告なりをやるわけでございますけれどもカルネを使っている場合には、統一的なフォームでもってつくられているわけでございますから、事前にその最初輸出国の段階において記入をすることができるわけでございますから、相手国に行って初めて、その国の、たとえば輸入申告書フォームがどうであるとか、そういうことで戸惑うというようなこともないわけでございますし、それから担保の問題につきましても、税関から要求される場合でもその担保の先を、どこから調達するかとか、あるいはどういうふうにするかというようなことも、すべて事前にセットができるわけでございますから、そういう意味におきまして非常に国際的な交流という意味におきまして容易化され、しかも簡便化される、税関の実務的に見ましても非常に事務効率化にも役立つということでございます。
  7. 田英夫

    田英夫君 どうもありがとうございました。  いまの大蔵省の御説明の図面を、ごめんどうですが、プリントのような、ガリ版でけっこうですから、そういうもので資料として出していただけるといいと思うんですが、可能でしょうか。きょうでなくていいですから……。
  8. 大槻章雄

    説明員大槻章雄君) はい。
  9. 田英夫

    田英夫君 それから、若干、いまの御説明に対してお聞きしたいことがあるんですが、最初に、この三条約ともかなり以前に、十年ほど前に効力が発効しているわけですが、日本の場合はこれに加わるのが非常におそくなっているように思いますが、いまの御説明でも、これに入ることによってきわめてさまざまな便宜、便益があるにもかかわらず、なぜおくれたといいますか、いまになったのか、その点は何か事情がありますか。
  10. 西田誠哉

    説明員西田誠哉君) 先生指摘のとおりに、確かにこの条約が発効いたしましてから、もうすでに九年近くたっておるわけでございますが、当時、日本は、まだ、この関税協力理事会のメンバーでなかったという事情がございまして、むしろ日本といたしましては、この関税協力理事会に加盟すること、それから先ほどちょっと御説明いたしましたけれども、要するに物品分類のための品目表に関する条約、それから物品評価に関する条約、この三つ条約に入ることが先決であるというふうに考えられましたので、六四年にこれに加盟したわけでございますが、それから、もう一つ事情といたしましては、当時は、それほど見本市あるいはこういった、何と申しますか、職業用具を持ち込んでくるというケースもそれほど多くなかったわけでございますが、最近非常に日本の経済的な地位が上がるにつれまして、こういったカルネ利用いたしまして、もっと簡易通関あるいは免税通関をしてほしいという要望がいろんな国からくるということもございましたし、それから各種見本市、それから職業関係で持ち込むという要望もふえてきたと、こういうような事情がございましたほかに、実は、ことしの九月から新しいラウンドのための東京会議というのが行なわれることになっておりますが、ここにおきましても、こういった輸出入に伴ういろんな簡易化というものを促進しようというのが一つ問題点になっておると、まあこういった事情もございますので、今回まあこれに加入したいというふうに考えた次第でございます。
  11. 田英夫

    田英夫君 関税協力理事会、CCCですか、これがまあ七十カ国現在加盟しているというのに対して、日本もまあおくれたわけですけれども、大体この三つ条約とも三十数カ国、六、七ですね。これはやっぱりほぼ半分ぐらいしか入ってないというのは、やはりいま言われたような、あまりこれを利用する展覧会とか、そういう職業用具とかいうものの利用がないからということに考えていいわけですか。
  12. 西田誠哉

    説明員西田誠哉君) 先生指摘のように、この七十カ国のうち半分近いものがアジアアフリカ、あるいは中南米の国というような関係がございまして、三十何カ国と申しますのはヨーロッパ、アメリカそれからアジアの比較的先進国と言われるような国でございまして、まあこういった職業用具なりあるいは展覧会といった、あるいは見本市といったようなものの開かれる回数と申しますか、こういったものが比較的頻度の多い国が入っておるという事情があるように考えております。
  13. 田英夫

    田英夫君 具体的には、ATAカルネ発給する団体、それから保証団体、これは日本の場合には具体的にはどこになるのか。商工会議所あたりになるのか。これはどうですか。
  14. 大槻章雄

    説明員大槻章雄君) 発給団体保証団体の問題でございますが、これにつきまして、私どもATAカルネの実施に伴う関税法等特例に関する法律案というものをいま衆議院のほうで御検討いただいておるわけでございますが、これは大蔵大臣が認可することになるわけでございます。それで保証団体発給団体につきましては、先ほど外務省からの御説明にもありましたように、国際保証組織につきましての民間協定がございまして、それは一九六二年に国際商業会議所ICCが作成したものでございますが、結局ここに加盟しているICCチエーン発給保証の業務を行なうということに相なっておりますので、大蔵大臣が認可するのも、これも日本商工会議所関係会議所が認可されることになると、そういう予定でございます。まあいずれにいたしても、まだ申請はないわけでございまして、あれでございますが、方向としてはそういう方向で検討しておるわけでございます。
  15. 田英夫

    田英夫君 日本ではそのICCチエーンに入っているのは日本商工会議所という形で入っているわけですか。
  16. 大槻章雄

    説明員大槻章雄君) はい、入っております。
  17. 田英夫

    田英夫君 そうすると、商工会議所下部組織であれば発給団体になれるといいますか、つまり商工会議所の中央で出すんじゃなくて、その末端組織であっても出せるということになるのか。
  18. 大槻章雄

    説明員大槻章雄君) 連合体としての日本商工会議所か、あるいは各県にも商工会議所というのはあるわけでございますが、その辺、これから申請が出てきて、もちろん条約を御承認いただいて特例法を制定いたしましたあと申請が出てきて検討するということでございます。
  19. 田英夫

    田英夫君 けっこうです。
  20. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  21. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) これより国際情勢等に関する調査議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  22. 田英夫

    田英夫君 前回といいますか、先週、一週間前の本委員会で、韓国の問題について、現実に起こっている事態をお示しして伺ったわけですけれども、まああの問題、つまり日本人韓国官憲によって逮捕されて、しかも、その辺の事情にいろいろと疑問点が多いという問題をお尋ねしたわけですけれども、そういう背景を持つ中で、最近朝鮮半島をめぐって非常に活発な動きが出てきたわけです。  それで、北朝鮮金日成主席が二十三日にチェコの代表の歓迎演説をした中で非常に重要なことを提起をいたしましたが、その内容についても全貌が明らかになってきたわけです。非常に具体的な提案をしているわけですが、この金日成主席の二十三日の提案、つまり高麗連邦共和国をつくろうとか、国連には二つ朝鮮で加盟してはならないとか、こういう非常に具体的な提案をしてきているわけですけれども大平外務大臣はこの金日成提案をどういうふうに受け取っておられるわけですか。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 朝鮮半島における南北統一が実現されまして、統一された単一国家としての朝鮮国連に加盟するということができれば、もとよりこれはたいへんけっこうなことであると考えております。問題は、統一が早急にそういう姿において実現できるかどうかということが問題であると思うのでありますが、国連加盟という問題につきましても、南北の間には考え方が違っておるようでございますので、私どもとしては、かねがねから申し上げておりますように、南北の対話が具体的に進展をいたしまして、一つのまとまった方向が漸次出てまいりますことを期待いたしておるわけでございます。それ以上にまあ特別の感想はないわけでございます。
  24. 田英夫

    田英夫君 まあ、この金日成主席提案というのは、朴大統領が南北朝鮮の存在を事実上認めるような発言をした直後に、全く機を移さずといいますか、タイムリーに球を投げ返した感じで出てきたわけなんですけれども、しかも、その内容というのは、一見むしろ困難な情勢をつくり出すのじゃないか。いま大臣のお話の中に若干そういう感じをにおわしておられるわけですけれども、つまり南北の話し合いがなかなかいまうまく進んでいないということは、金日成主席も演説の中で認めていて、その上で、なおかつ連邦をつくろう、国連一つで入ろうということを言ったことは、二つで入るということならば国連参加ということは比較的容易かもしれない、容易であるという情勢が現在あるのに、一つで入ろう、二つではならない、こうはっきり言ったことは、従来ややその点外務省のお考えも、中国は一つの中国ということを非常にきびしく最後まで貫きましたけれども朝鮮の場合は、二つ朝鮮ということを北側も認めるのではないかというような解釈があったように思いますが、その点はいかがですか。
  25. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国連加盟という問題に限って申しまするならば、いま田さんおっしゃるとおり、南北の考えに大きな違いがあるわけでございますが、しかし、しさいに見ますと、国連において朝鮮問題が討議される場合は、南北ともテーブルについてまいることは、あえていとわないというところまできておるようでございます。したがって、私は、そういう大きな問題について、大きな意見の相違にもかかわらず、朝鮮問題に対するまずさしあたってのアプローチにおきましては、そういうところまでまいりましたことはけっこうなことではないかと思っております。
  26. 田英夫

    田英夫君 まさにいま大臣が言われたことを金日成主席はこの演説の中で言っているわけで、われわれは国連に北と南が別々に加盟してはならないと主張するものであると、こういうことを言ったあとで、しかし、国連加盟問題とは別に国連朝鮮に関する問題が上程され、討議される場合には、当然わが共和国代表が当事者としてそこに参加し発言すべきである、こういうことを演説しているわけですから、差し迫りましたことしの秋の国連総会で朝鮮問題が取り上げられて、そこで南北両代表を招請して朝鮮問題を討議する、こういう場面が起こることがきわめて現実の問題として想定されるわけですが、日本政府はこれにどういう態度をとられますか。
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 反対すべき理由はございません。
  28. 田英夫

    田英夫君 この点は、実は韓国の朴大統領も南北の存在を認める発言をしたわけですから、韓国側もこの国連南北が出ていって発言をするということはあの論理からすれば反対はしない、こういうことでことしの秋の国連総会では、南北代表が出ていって朝鮮問題を討議するという舞台が起こることは非常にあり得ることだと思いますが。  そこで問題になりますのは、朝鮮国連との関係をどうするか、具体的な問題になって、現に国連軍という名のアメリカ軍が韓国にいるわけですし、さらに国連朝鮮統一復興委員会というものがある。国連の中にある。当然北側の代表はこの国連軍の撤退といいますか、この金日成主席の演説によると国連軍の帽子を取るという表現をしているわけです。これも非常に微妙な表現だと思うわけです。在韓アメリカ軍から国連軍の帽子を取るという言い方をしているわけです。この問題と、朝鮮統一復興委員会の解体を要求すると思うんですが、これに対する日本政府の態度はどうですか。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) UNCURKの問題、国連軍の問題は、当然国連朝鮮問題が取り上げられる場合問題になるイシューであると考えて、それを回避するわけにはいけないだろうと考えております。しかし、具体的にどういう手順で進んでまいりますか、まださだかではございませんので、私どもとしては、まず、南北朝鮮がどういう態度で臨まれるのか、十分見きわめねばなりませんし、その他関係国の出方も十分見守って、わがほうの秋の国連対策というものを考えていきたいと思っておりますので、いま具体的にどうする、こうするというようなことをまだ申し上げられる段階ではございません。
  30. 田英夫

    田英夫君 国連における朝鮮問題については、従来は、いわゆるたな上げ方式というものに日本提案国に加わって積極的に動いてきたという、日本政府が。こういういきさつがある中で、実は、そういうことはとてもできる状態ではないということを韓国側も認めて、情勢の変化を認めざるを得なくなってきたと、こういうことだと思うのですけれどもそこでまた北側は、金日成主席提案という形で、一つ朝鮮でなければ加盟すべきではない、こういう新しい、新しいといいますか、基本的には変わっていないわけですけれども、この時点でこういう態度を実に明快に出してきた。こういうことになりますが、日本政府としては、朝鮮半島がいま二つに分かれている、南北に分かれているという事態をどういうように考えられるのか、韓国の朴大統領のこの間の発表によりますと、南北二つの政府があるということを固定化するといいますか、認めて、それを固定化するという感じがするわけです。これに対して金日成主席の演説というのは、これをまっこうから否定をする、こういう態度に実にはっきりしてきたわけですね。従来その辺がある意味であいまいだったのですが、実にはっきりしてきた。日本政府としてはこのいずれをおとりになるのか、また望まれるのか、この辺の感想を伺いたい。
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 韓国の朴声明というものも統一朝鮮というものを否認しているとは思いませんで、経過的なお考えを示したものと考えております。しかし、いま仰せのように、南北の間にそういう見解の相違が浮き彫りされてまいりましたこと自体が、南北の対話ということがたいへん容易ならない局面を迎えておると思うのでありまして、その順調な進展というものは早急に期待できるようには残念ながら思えないのであります。しかしながら、従来、朝鮮問題につきまして、両者の隔たりというものを考えますと、今日の時点の隔たりというのは従来よりは幅が狭まってきた。それだけの現実性と柔軟性を備えてきたように思うのでありまして、そういう決意をされたことは、われわれとしても歓迎いたしておるわけでございます。  朝鮮半島の問題は、何はさておきましても、南北朝鮮が、みずからおっしゃっておるように、自主的に平和的な話し合いの中で探求していかなければならぬ課題だと思うのでありまして、従来から私ども申し上げておりますとおり 南北の対話というものの実質的な進展というものを期待しながら見守ってまいらなければなりませんし、それをそこなうようなことのないように、十分気をつけていかなければならぬと考えております。
  32. 田英夫

    田英夫君 金日成主席提案した高麗連邦共和国という、名前まで考えて——まあ高麗というのは、かつて朝鮮の歴史の中で、朝鮮がしばしば分裂をして、三つの国に分かれていたり二つに分かれたりした中で、統一ができた、朝鮮半島一つの国家であったときの国名であるわけですね。それをわざわざ取り上げて、統一という中で高麗連邦共和国と、こう提案をしてきているわけです。率直のところ、現実問題としてすぐ右から左へできるかどうかということはきわめて困難だと思うし、金日成主席も認めているわけですけれども日本政府として、隣国の朝鮮半島を考えたときに、この提案はどう受け取っておられるのか。望ましいのか、そんなのはどうせ問題にならないという態度なのか、ここはいかがです。
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 田さんの御質問にしょっぱなにお答えいたしましたように、これは、そういうことができればたいへんけっこうなことだと考えております。  そして第二は、しかし、そういうことをやるのはどうしても南北の間に対話の実質的な進展がなければならぬことでございますので、両当事者とも真摯な話し合いを通じて実を結ぶような方向に着実な努力をされることを期待いたしておるわけでございまして、第三には、そういう対話の進展ということを阻害しないように、十分われわれは気をつけなければならぬと考えております。
  34. 田英夫

    田英夫君 いま、真摯な話し合いということばが大臣の口から出たわけですけれども、なかなかこの話し合いは困難な情勢にあるようですが、その困難な状況をつくり出している一つの大きな原因というのは、韓国政府側の態度にあるんじゃないだろうか。  去年の七月四日の南北共同声明というものを糸口にして話し合いが進められているわけですけれども、実際には進展をしていない。その一方で、昨年秋から、韓国側では、非常事態宣言から戒厳令というようなふうに、むしろ国内の事態を緊張させている。あるいは、先日ここで取り上げました北朝鮮スパイ事件というようなものをことしの春からは相次いで取り上げているというようなことで、意識的に緊張をつくり出しているように思うんですけれども、この辺、大臣はどういうふうに受け取っておられますか。
  35. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 南北それぞれ言い分があるんでございましょうし、それを私の立場で、裁判官みたいなことで、どちらがいい悪いなんというようなことを申し上げるのは、私の立場ではちょっとできないことでございますので、ごかんべんいただきたいと思います。
  36. 田英夫

    田英夫君 私がこの朝鮮問題に対して非常にある意味でしつこくお聞きしているのは、やはり日本にとって一番近い国であり、ここが平和であることが何といっても日本外交の中で一番大事なことであり、望ましいことであるに違いないわけですから、その意味で、私はもっと明快に日本政府が、むしろ日本国民の立場から態度を表明なさるべきじゃないだろうか、こういう感じが実はするわけです。  そこで、ずばり率直に伺いますけれども大平外務大臣は、いまの韓国の朴大統領政権の政治のやり方、これを、裁判官ということではなくて、批評家ということではなくて、日本外交をになう大平さんが、朝鮮半島の平和を望むというお立場から、いまのあのやり方をどう考えておられるか、そしてどうあるべきだとお思いになるか、その点はいかがですか。
  37. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 田さんが言われるように、わが国にとって、朝鮮半島の問題というのはたいへん重大な問題でございます。だからあなたは、日本政府は明快な態度をとって、内外に宣明してその推進に当たるということが望ましいのではないかという御主張のように拝聴するのでございますが、私は、あなたの気持ちはよくわかりますけれどもわが国のような立場に置かれた国といたしまして、そしていま南北の対話が進展中の中で、明快な態度をわが国がとることが、対話の進展にとって一体益するところがあるのか、それを阻害することになるのかということを非常に心配するわけでございまして、大事な立場であるだけに、いつもおしかりを受けているんですけれども、慎重な態度をとらざるを得ないということでございますので、後段の、いまの朴政権に対する論評というようなものも、一体こうあるべきだと、おまえ一ぺん意見を言ってみろということに対しましても、私の立場で明快な言明というものは差し控えさしていただきたいと思います。
  38. 田英夫

    田英夫君 その点はよくわかりますが、私、朴政権が、何といいますか、常識的な、あるいは民主的な範囲の中の政権であれば、私もこういう質問をしたりしないで済むと思うわけです。ところが、どう見ても、朴政権のやり方というものが民主主義というものの常識、軌道からはずれていると、こう思わざるを得ない。これは、私が私の主義主張と照らし合わして判断をしているんじゃなくて、きわめて常識的に客観的に見て、そう言わざるを得ないんじゃないだろうか、こう思うからお聞きしているわけです。  それじゃひとつ具体的に伺いますけれども韓国における朴政権に反対をする勢力の一つの柱であった——一昨年の大統領選挙で新民党から野党代表として立ちました金大中という人が日本に来ておりますけれども、現在はアメリカへ行っているようですがその後日本にまた戻ってくる、昨年あたりからしばしば日本に立ち寄っておりますが、大平外務大臣はお会いになったことがありますか。
  39. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まだお目にかかっておりません。
  40. 田英夫

    田英夫君 大平さんは外務大臣というお立場からさっきも態度を鮮明にすべきでないというふうに言われたその態度から出てくることかもしれませんけれども、金大中氏自身によれば、これは私直接会っての話ですけれども日本の自民党政府は非常に冷たいという不満を漏らしておるわけです。アメリカに行くと、アメリカの共和党であろうと民主党であろうと、外交に携わっている人、あるいはアジア問題に関心を持っている幹部の人たちが相次いで会って、韓国問題について熱心に意見を聞き、同時に朴政権は非常に民主的でないという批判を強くしている、こういう態度を実に明快に出してきている。民主主義というルールに照らしてあれはおかしいということをはっきり出してきている。これに比べて日本の自民党の人たちは非常にその辺があいまいである。これはもちろんアメリカ日本の国情、地理的な違い、韓国との関係というのは認めた上でこう言っているわけです。こういう韓国の朴政権に反対をする人たちについて、直接お会いすることが不可能であっても、この問題についてはどういうふうにお思いですか。
  41. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 申すまでもなく、朝鮮半島における状況については検討を怠ってはならぬことでございまして、それはわれわれも常に心がけていなければならぬことと思っております。いま金大中氏の話が出ましたが、私自身はまだお目にかかっていないのでございますけれども、多くの方にお目にかかられておるはずだと思うのでありまして、政府・自民党も含めてお目にかかる機会を持たれておると思うのであります。だから、絶えず状況の推移というものにつきまして研究を怠ってはならぬことと考えておりますが、政府の立場でこれにある種の評価を加えるということは、それは韓国ばかりでなく、いずれの国の場合におきましても、われわれは十分戒めてかからなければいかぬのではないかと考えております。
  42. 田英夫

    田英夫君 私は、何もいまの日本の自民党政権の立場、従来の日韓関係、そういう現実を無視して態度を変えなければいかぬということを要求といいますか迫っても、これは不可能だということはわかった上で申し上げるわけですけれども、いかにも朴政権というものの、特に昨年の平和統一についての話し合いが始まって以後の一方での態度というのがおかしい、民主主義に反する、こういうことはアメリカでも実は問題になっている。金大中氏がアメリカに行って朴政権反対の集会をやろうとしたところ、アメリカにいる韓国CIAがこれをじゃました。これはアメリカの新聞にも大きく出ておりますし、日本の新聞にもアメリカからの報道で大きく報道されておりました。そういう状態さえ起きていて、日本で考える以上にアメリカで朴政権批判というものが非常に強く出てきているわけですね。ところが、自民党の政府の皆さんは、なぜ最も近い国であるにもかかわらずそういう点に対して一切態度を表明されないのか、さらには、何か非常に遠慮をしておられる、ここが一つ気になるわけです。それどころか、むしろその朴政権ときわめて密接に接触をしておられる。これは外から見て、そういう状況であるアメリカあたりはもちろん、外から見て、アジアの国々からも見て、さらにはいわんやアジアの社会主義諸国から見ればなおさらのことです。一体日本の外交というのはどうなっているんだろう、こう思われるのは当然だと思う。つまり朴政権というのは通常の民主主義の範囲の中の政権であれば、私はほんとうに繰り返して申し上げますが、こんな質問する必要はないと思うのですけれども、重ねてお聞きしますけれども、朴政権のこういう問題についてどうお思いになりますか。
  43. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) お答えになるかどうかわかりませんけれども、たとえば先ほどあなたが言及されました金大中氏のことにつきましても、政府としてもお話は十分聞いて、私自身も報告を承っておるわけでございまして、私ども表向きのつき合いはつき合いとしてちゃんとやっておりますけれども、先ほど申しましたように、朝鮮半島の状況というものにつきましては、あらゆる角度から検討を怠らないようにしてまいりたいということでひとつ御理解をいただきたいと思います。
  44. 田英夫

    田英夫君 韓国政府との接触という意味で、そういう民主主義の常識から考えて私は非常に問題があると思う、その韓国政府との接触も、単に政治的な接触だけではなく、たとえば軍事的な接触も非常にはっきりしておると思います。たとえば三月から五月にかけて韓国の三軍の参謀総長、陸海空三軍の参謀総長が、偶然かどうかしりませんけれども、相次いで日本を訪問しておる、このことは外務大臣御存じですか。
  45. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのことは私伺っておりません。
  46. 田英夫

    田英夫君 これは私、外務大臣として無関係ではないはずだと思うんですけれども、防衛庁の幹部の方々にはこの三人とも相次いで会っておられる事実があります。韓国との外交、あるいはアジアの外交ということをになっておられる外務大臣としてこれを御存じないという——実際に御存じないとすれば非常に問題だと思うんですが、なぜあの朴政権のとあえて申し上げますが、その三軍の参謀総長が日本に相次いで二カ月ぐらいのうちにやってきて、少なくとも一週間以上滞在をして日本の防衛庁の幹部と話し合いをしておる。こういうことになってくると、さっきから申し上げておるように、民主主義の常識から考えて非常に問題があると、世界の民主主義の国々が考えておるそういう韓国と軍事的なそういうつき合いをしておる。これは何も私はつき合いをしちゃいかぬとは言いませんけれども、どう考えてもこの辺は問題があるのじゃないか。あるいは経済的な問題についても韓国政府と具体的にいろいろ話し合っておられることは、この間の金鍾泌首相の訪日の際のことで御質問したときも、具体的には詳しくは言われませんでしたけれども、具体的な話し合いがあったというふうに認めておられるわけで、非常に密接である。こういうことはいなめないと思う。ですから何もそうけんかを、右から左へいままでの態度を豹変して韓国政府とけんか状態になるということを求めているわけじゃありませんけれども、ことさらに、非常に世界からそういうふうに見られている韓国政府となぜそれほど密接にならなけりゃならないのか、ここのところが非常に理解に苦しむわけですよ。ですから、きょうは詳しく、しかもしつこく韓国政府に対する大平外務大臣のお考えを伺っているわけですけれども、これからもそういう状態をお変えになるつもりはないのかどうか、この点はいかがですか。
  47. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本と外国とのおつき合いというものは、まず第一にたいへん公明なものであって、第三国が見ましても十分理解ができるようなものでなけりゃならぬと思います。それから外交をやる場合に、実際こそこそと秘密にやるなんていうことは許されないわけでございますので、今後も私どもは公明なおつき合いをやってまいらなきゃならぬと思います。それから日本の力量、立場、そういうものをよく踏まえた上でやらなければならぬことでございまして、無原則に、無制限に思いつきでやるなんていうようなことは許されないことと考えておるわけでございます。そのあたりのかげんはよく心得て今後やっていくつもりでございまして、そういうことでなく、こういうこともあるじゃないか、こういうこともあるではないかということがございますならば、御遠慮なく御指摘をいただきたいものと私どもも考えておるわけでございまして、われわれ別に他意はないわけでございます。
  48. 田英夫

    田英夫君 そこで前回、先週の委員会で取り上げました日本人韓国の官憲に逮捕されて、スパイ容疑で調べられているというこの具体的な問題について、最初に伺いたいのは、アジア局長、この前アジア局の中江参事官にお願いをしたんですけれども韓国の在日大使館に朴載京という一等書記官がいて、この人が日本人を取り調べている。日付も三月十日という日付がわかっております。これは現在逮捕されている沢本参二という日本人のやっている会社の重役であった人物ですが、御本人に迷惑が及ぶといけませんので、名前を私は前回委員会では出しておりませんけれども、この人のところへ朴載京という一等書記官があらわれて、三月十日です、調べていったという事実があるわけですが、この朴載京という人物が実際にどういう肩書きで在日大使館にいるのか、そしてその出身はどこなのか、つまり中央情報部の出身ではないかと思われるわけですが、そういう点をお調べいただきたいとお願いをしておいたんですが、わかっておられますか。
  49. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) 御指摘の朴載京という人が韓国大使館の一等書記官ということで外交団リストに載っておるわけでありますが、必ずしもその人の正確な経歴というものは私たちは詳細にいたしておりませんけれども、御指摘のような系統の人ではなかろうかという推測は持っておるわけでございます。
  50. 田英夫

    田英夫君 これは別に手だてがないわけじゃないと思うので、日本のソウル大使館でお調べいただいてもすぐわかることだと思いますし、この点は非常に重要なことだと思うのですよ。つまり日本の国内で、いかに外交特権を持っているといいながら、外国の官憲が日本人を取り調べるというような事態があったら重大な問題だと思います。そういうことを放置しておけば、やがて、かつて西ドイツであったように、韓国の官憲が直接日本から日本人を逮捕していくということが起こり得ないとも限らないし、今回の沢本参二逮捕事件についてもそういう疑いがかなり濃厚であります。前回委員会で明らかになったことは、いま申し上げた取り調べを受けたというもう一人の日本人に対して、韓国における報道では指名手配になっておる、こういうふうになっておりまして、その新聞も私、入手をいたしましたけれども日本の新聞にもそのことが出ております。ところが、前回委員会に出席をされた警察庁の国際刑事警察機構の担当の方は、日本の警察庁には何ら連絡がないというお答えでありました。ということになると、韓国の警察側は一方的に指名手配をしてどうするつもりなのか。ほんとうに逮捕するなら、指名手配をして逮捕するなら、当然国際刑事警察機構を通じて警察庁に連絡をした上で、日本の警察が逮捕をして、そして向こうへ引き渡すというのが国際ルールであるはずですが、この点はそのとおりでいいですか。
  51. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) 日本の国には日本の法律が厳然としてあるわけでございますから、その法令の範囲内でやらなければならないし、外国の人が、外交官といえども国際法上持っておる権限外のことを日本の国において行なうことは、われわれとしては認めるわけではございません。
  52. 田英夫

    田英夫君 当然のことだと思うのですけれども、私がこの公の国会の委員会の席で取り上げてお願いをしたにもかかわらず、その朴載京という人物が日本人をかってに取り調べたということも申し上げて、だからこの人物の出身、肩書きを提示をしてくれというふうにお願いをしたにもかかわらず、いまだにわかっていないということは、私は事の重大さを外務省が御認識になっていないのじゃないかというふうにさえ思わざるを得ないのですけれども、この点はいかがですか。
  53. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) 先生のお話ですと、取り調べということのように御発言でございますが、私たちの調べたところでは、取り調べということではもちろんないし、取り調べる権限も持っておりませんし、またそういう行為に及ぶならば、われわれとしては当然適当な措置をとらなければならないわけでございますが、ある情報収集といいますか、その許された範囲内において必要な活動を韓国政府もしくは韓国大使館の立場で行なったということであると、私たちはまあ了解しておるわけでございます。
  54. 田英夫

    田英夫君 これは解釈のしかたいかんで、おそらく私は韓国大使館並びに韓国政府側はこのことを問題にすると、そういういま吉田さんが言われたと同じような態度を表明するだろうと、私もそう推測をしていました。つまりこの一等書記官は、その日本の人のところへたずねて来て話をしているわけですね。ですから、それはただ会いに行ったんだ、こういう解釈を向こうはするだろうと思います。この辺は解釈なり言い方次第なんで、問題は、そういうことをどんどん拡大をされていって、日本韓国の官憲が日本人を逮捕するという事態が起こりかねないという、しかも韓国CIAというのは、現にそういうことを世界各地でやった前歴があるわけですよ。だから申し上げているわけです。一九六七年の西ドイツの事件というのは最も大きいから、前回そのことをここで、御存じでしょうけれども、御参考までに申し上げたわけです。これに対して大臣に伺いたいのですが、西ドイツ政府は非常に厳重な抗議をしております。今回の事件について、日本政府が日本人を保護するということを真剣にお考えになるならば、全貌をお調べになって、そして韓国政府に抗議をされるという、そういう行動に出られるべきだと思うのですけれども、お調べになっているかどうか、そして、その結果どういうことになっているか。すでに一週間を経過するわけですけれども、その後そういう動きをされたなら、ここでお示しいただきたいと思います。
  55. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) いまの韓国のほうで起訴されて裁判にかかっております沢本氏に関しましては、四月十三日に起訴され、五月三十日、ソウルで第一回の公判、六月二十日に第二回の公判、大体七月の上旬に第三回公判、結審になるのは、その後しかるべき時期においてなされるであろうということは承知しておるわけでございます。これはただ、韓国のほうの、韓国の統治下の中に入った日本人が、韓国の法令上問題になるということで先方が起訴しておるわけでございますが、これはものによりまして、たとえば外国人でも日本へ来て、それが麻薬患者で日本で犯罪を犯せば、日本の法令上これを処罰すると、あるいはスパイ容疑で日本でそういう活動を外国人が行なえばやはり日本の法令で処置すると、法令の根拠に基づいて処置されるということになるわけでございまして、ただ御指摘のような、日本人保護というような問題で、これが正確に法令的にのっとって取り扱われ、また裁判が公平に行なわれ、その弁護が十分できるような体制になっておるということを私たちは一番関心を持ち、またそういうこまかいところまで先方としばしば連絡はとっておる次第でございます。
  56. 田英夫

    田英夫君 前回もお示ししましたけれども韓国に反共法、国家保安法という法律があるわけですが、特にその反共法によると、北朝鮮に行っただけで罰を受ける、五年以下の徴役だと。さらにそれが北朝鮮の側の指示によった場合には死刑という刑まであるわけですが、そういう法律が日本人に適用されることが、今回はそうされているわけですが、そのこと自体をどう考えられるか、これは適用され得るのかどうか。
  57. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) それぞれの国に法体制があるわけでございまして、その法令の及ぶ範囲内に入っておる外国人は当然その法令に服するわけでございますが、韓国のいまの例でいきますと、刑法の九十八条のスパイ罪につきましては、明文の規定で、外国人の国外犯をも対象とするということになっておるわけでございます。反共法及び国家保安法に関しましては、明確な規定は、私たちいろいろ調査し、先方と打ち合わせしたところでは、明文はございませんが、韓国側の法令の解釈はそれができるんだと、こういうことになっておるということでございます。
  58. 田英夫

    田英夫君 そこに非常に問題があると思うのです。刑法は確かにそういう規定がありますが、反共法と国家保安法には規定はないにもかかわらず、韓国側は一方的に今回の沢本さんの場合に適用しているわけですね。これは明らかに、韓国内部できめるのはかってかもしれませんけれども、これを外国人に、特に日本人に適用されたらたいへんなことになるわけですよ。私も北朝鮮に行きました。ひょっとすると、その論理からいえば、北朝鮮に行った日本人はみんな五年以下の懲役にならなくちゃいけないのです、韓国にもし、のこのここれで行きましたらね。まあ日本にいるのを逮捕するかどうかわかりませんけれども、しかし沢本さんも日本にいて、たまたま商用で、別の用事で韓国へ行ったわけですからね。私も韓国に行かないとは限らない。日本人で北朝鮮に行った人はみんな逮捕されることになりますよ、この論理でいくと。そうじゃないですか。
  59. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) 北鮮へ行った日本人韓国へ行った場合に全部逮捕されるということには私はならない、また、そういうことは通常考えられないわけでございまして、この問題の案件は、北鮮としばしば連絡をとって、その連絡に基づいて、ある種の目的をもって今度韓国の中へ入り、韓国である活動をしたと、こういうことに対し、韓国政府がその自国の法令に照らして証拠固めをして起訴したということでございますので、そういう該当事例にならない場合には、ただ北鮮に行ったという日本人が、直ちに韓国国内へ行くことによって逮捕されるということは考えられない次第でございます。
  60. 田英夫

    田英夫君 しかしこれは、吉田さん御存じのとおり、法律、反共法の条文を読んでみると、北朝鮮に行ってスパイをしたら罪になると書いてあるのではないのですよ。そうでしょう。北朝鮮に行ったら罪になるのですからね。何か表現がおかしな表現で、そういう団体が支配している地域に行ったら罪になるのですからね。そこでスパイを強要され、スパイをやったら罪になるというのは、スパイは刑法のほうでやっているわけで、適用しているわけで、反共法は北朝鮮に行ったら罪になるのですからね。そんなのを日本人に適用されたらたまったものじゃないですよ。そうじゃないですか。
  61. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) ただいまの案件は、要するにスパイ容疑ということで起訴されているわけでございまして、先生のおっしゃるような、ある地区に日本人が行って、その日本人韓国に行ったら直ちに逮捕されるということとは別ではなかろうかと、その沢本氏の場合は、北に行ったこと自体がある種の目的であって、その関連においてまた韓国に何回か入ると、交互に双方に何回か出入国しておるというところからスパイ容疑の問題が出て、韓国のほうではその証拠固めをした上で起訴に踏み切ったと、こういうことになっておるわけでございます。
  62. 田英夫

    田英夫君 それは、今度の問題は刑法をあわせてひっかけてやっていますけれども韓国側が発表している起訴状によると、反共法、国家保安法違反も含めているわけでしょう。そうすると、その反共法というのは、スパイの問題は関係ないのですから、条文で。だから、その反共法を日本人に適用するということは、スパイという刑法の問題を除いても、反共法だけを適用しようとすれば、そのことを認めるなら、反共法を日本人に適用するということを日本側が認めるならば、それは北朝鮮に行ったということだけで処罰をするという法律なんですから、それを今度沢本さんの場合、刑法を適用したということは、向こうの取り調べでそれを認めるとしても、実際にはその裏づけはないようです。スパイをしてきたという裏づけは自供以外ないようです、私の調べた範囲では。西ドイツの場合も、北朝鮮に入ったという自供だけで、ついに最後までスパイをやったという裏づけは何もないままに二人を死刑にしております。そういうことをやっている韓国政府なんですよ。だから私、さっき前段で大臣に韓国政府のことを、まあ非常に民主主義のルールに反するということで申し上げたのですけれども、そういう韓国政府ですからね。刑法を取り除いて、刑法を適用しないで、反共法だけでも適用をするという態度を向こうがとるならば、日本人で北朝鮮に行った人は逮捕されるのですよ。そういう論理になるでしょう。今度はたまたまスパイ、七十八条ですか、九十八条ですか、刑法を適用している、スパイ罪を適用している。しかし、それを適用しないで反共法だけを適用するということだって向こうのかってだということになれば、日本人に反共法が適用されるということをこっちが認めちゃったら、北朝鮮に行った人は逮捕されますよ。そういう論理になりませんか。
  63. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) それぞれの主権国家には、それぞれの手続によって法体制ができておるわけであり、その有権的解釈はその国のしかるべき機関においてなされるわけで、私たちが有権的な解釈はちょっとやりにくいわけでございます。したがいまして、明確に、ただいま先生がおっしゃいましたように、北へ行った日本人が直ちに韓国に入れば反共法容疑になるのかどうか、先方の検察庁がある問題で起訴するということは、よほどのやはり証拠と理由があって、それに関連法令を適用して起訴に踏み切っておるということではないかと思うわけでございます。もちろん、現在におきましても、私たちは公判の成り行きを慎重に、詳細に見守っておりますし、先方ともさらに連絡は続けておるわけでございます。
  64. 田英夫

    田英夫君 この問題、これ以上お聞きしても出てこないと思うんですけれども、私がこの問題をある意味でしつこくお聞きしているのは、やはり外務省の大きな役割りの一つは、海外にいる日本人の保護ということだと思いますから、そういう意味で、現在、海外に日本人が非常に多く出ていく中で、外国の法律を外国で適用されて、しかもそれが非常に民主主義の常識から考えて不穏当のような法律を向こう側がかってに適用すると、こっちは黙って見ていなくちゃいかぬのだと、こういうことになってくると、この反共法なんというのは、ほんとうに日本人に適用されるということを認めてしまえばたいへんなことになるわけですね。ですから、今回の問題についても、その点はほんとうに政府が積極的に日本人を保護するということをお考えなら、向こうの検察側に、ソウル大使館を通じく 一体、反共法を適用しているのはどういう意味なんだと、こういうことを抗議の意味を含めて調査されるというくらいの態度をおとりになるのがあたりまえじゃないかと思います、私の常識からすれば。そういう点が非常に私はあいまいで、あえて申し上げるけれども、前歴のたくさんある、民主主義あるいは国際ルールを踏みにじるような、そういう前歴をたくさんやってきた韓国政府、そういうものを相手にして、いま外務省のとっていらっしゃる態度は、まことに日本人保護という立場からして甘いんじゃないかと、前回伺いませんでしたが、最後に外務大臣、ずっと前回、今日のやりとりをお聞きになって、この問題をどういうふうにお考えになるか、最後に一言お聞きします。
  65. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいままでの経過は、政府委員から御報告申し上げたとおりでございますが、問題の重点は、何と申しましても御指摘のように、日本人の保護ということに十全の対応をしてまいらなければならぬというのがわれわれの責任でございます。したがって、本件ばかりでなく、今後この種の問題につきましては、邦人の保護ということには十分な配慮を加えてまいるつもりでございます。
  66. 星野力

    ○星野力君 私も朝鮮の問題を少しお聞きしたいと思うのですが、二十二日、韓国の朴正煕大統領が、朝鮮の南と北がそれぞれ別個に国連に加盟することに反対しないということも含めて声明を発表されたのに対して、大平大臣は、その勇気に敬意を表するという歓迎の談話を発表されておられました。翌日、朝鮮民主主義人民共和国の金日成主席が単一国号での国連加盟提案をしたのに対しまして、先ほどの御発言では、そういうことができればけっこうだがと言われながらも、このほうはあまり歓迎されないような口ぶりにも聞こえました。まあできればということで、簡単にはできないぞということでしょうが、できないという点では、南北の同時加盟ということだって、これは北が反対しておる限りできないわけでありますから、その点では同じであります。大臣は朝鮮の二国加盟がよろしいのであって、単一加盟はあまり歓迎できない、こういうお考えなんでしょうか。
  67. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たびたび申し上げておりますように、朝鮮半島の平和と安定を願っておるわけでございまして、そのためには、南北の不幸な対立関係が対話の中で漸次氷解してまいりまして、着実な進展を見ることを期待いたしておるわけでございまして、国連対策の問題も両方が一致することが何より大事なことだと考えておるわけでございまして、両方が一致して平和と安定の方向に進んでまいりますことであれば、私どもは心から歓迎したいと思います。
  68. 星野力

    ○星野力君 今秋の国連総会で朝鮮問題が討議されるのは必至でありますが、昨年の総会に対して、大臣は、南北の対話が行なわれているのであるから、そういう際に国連でこの問題を討議するのはふさわしくないということで、一年間の朝鮮問題の討議のたな上げを共同提案されたわけでありますが、南北の対話が続いておるということでは、現在も続いております。ほとんど実りはないけれども対話は続いておる。政府のこれまでの論理からいいますと、今度もやはりたな上げ案に賛成する、共同提案国にもならなければならぬということになりますが、どうも御発言では、もう、たな上げを提案する考えはないようでありますが、これは韓国が反対しなくなったからということでありますか、変わられたのは。
  69. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど田先生の御質疑にもお答え申し上げましたように、南北とも対国連姿勢というものは、漸次、柔軟性を加えてきたように思うのでありまして、問題は、国連対策が重点ではなくて、南北の間でまとまることが大事なんで、そういう方向に両当事者とも進んでおるという状況でございますので、去年と様相はだいぶ変わってきておると私は考えております。
  70. 星野力

    ○星野力君 いまの答弁はそれとして了承しておきます。  朝鮮民主主義人民共和国との外交関係の樹立についてはどういうふうにお考えになっておるか。いつか私もお聞きしましたが、分裂国家の場合、ドイツについては、西ドイツの政府が東ドイツと外交関係を結ぶことに反対しなくなったし、ベトナムの場合はサイゴンの政府が反対しなくなったし、朝鮮の場合は韓国が反対しておるからということをたしかお述べになったと思うのです。その点でも、今度の朴声明は反対をしないという態度に変わってきたと思うのですが、そういう状況の中で朝鮮民主主義人民共和国との外交関係の樹立を進めるお考えがおありなのかどうか。
  71. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 東西ドイツの場合、北越、南越の場合、仰せのように、一方の当事者がかたくなに反対するというようなことでなくて、これを了解するという状況になってまいっておりますことは、東独や北越との国交樹立にあたりまして、われわれとしてはたいへんやりやすくなってまいったことは御指摘のとおりでございますが、また朝鮮半島の場合、そういう状況までまだ熟してきていないわけであります。せっかく維持してまいりました韓国関係もそこなわないで北朝鮮との関係も漸次改善していくという基本の姿勢で今日まできたわけでございますが、今後もその態度で対処してまいって、南北の対話の進展を通じまして、わが国が北朝鮮との国交を持つことについて踏み切りましても、南北に大きな異変を起こさない、むしろそれが平和と安定に役立つというふうな状況になってくれば、われわれけっこうであると考えておるわけでございますが、いまなお、いまはまだそういう状態にまで熟していないように考えておりますので、いま直ちにそういう運びにしてまいるつもりはないのであります。
  72. 星野力

    ○星野力君 韓国政府が、韓国政府と外交関係を持っておる国が朝鮮民主主義人民共和国と外交関係を持つことに反対しないというふうになってきたとすると、これは日本政府にとって一番大きな障害がなくなったことだと思うのですが、それでもなお北と外交関係を結んだ場合には、何か将来異常なことでも起きる可能性があると、そういうことが心配されるとか、何かそういう障害が残っておりますか、重ねてお聞きしますが。
  73. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 南北両当事者を承認しておる国が二十二すでに出てきたということのお話がこの間ございまして、御報告申し上げたとおりでございますが、その承認というのは一方的な承認でございますから、特別のその承認を受ける国の意思が働いていない場合も成り立ち得るわけでございますが、外交関係を設定するとなりますと、ソウルにも大使を置き、平壌にも大使を置くことを承認するということになってくると、これがだんだん本物になっていくと思うのでございまして、これからどういうように展開いたしますが、諸外国がどのような出方をしてまいるかという、そのあたりを十分私どもも見きわめていかなければならぬと思っておるのです。とりわけ日本の行動というものは非常に大事なことでございますので、そのあたりを十分見きわめた上で——問題は、朝鮮半島が平和と安定の方向に向かうことを促進しこそすれ、阻害するようなことがあってはいかぬわけでございますから、そのあたりを判断しながら、われわれとしては今後十分慎重に考えていきたいと思っております。
  74. 星野力

    ○星野力君 重ねてお聞きするのですが、先日は金鍾泌首相も来日して、大臣も会っておられる。どうなんですか、韓国政府は、日本朝鮮民主主義人民共和国とそういう外交関係を持つことに依然として反対しておるのですか。
  75. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 金国務総理と私がどういう話をしたかということを公の席上で話をする自由は私は持っていない、信義上お許しをいただきたいと思いますが、こういう内外の状況でございまして、どのようにお考えをされておるか、そういう点の御意見を伺ったことは事実でございます。それから、われわれはわれわれの見解も述べましたことも事実でございまして、まあそれ以上は御遠慮さしていただきたいと思うのであります。いま星野さんに申し上げましたとおり、われわれとしては、わが国がそういう新たな動きに出ることが朝鮮半島の平和と安定にとってどういう波紋が及ぶかという問題をよく見きわめながら今後考えていかなければいかぬと考えておるわけでございまして、具体的に韓国政府の、日本の北鮮に対する承認がどうのこうのというところにつきまして、どういう見解を持たれておるかというような点につきましては、ちょっと申しかねるわけでございます。
  76. 星野力

    ○星野力君 先日の朴正煕声明に関連した新聞報道などでも、韓国政府は日本その他の国が北と外交関係を結ぶことについては反対しないのだ、そういう方針になりつつあるということでありますが、その点どうも大臣ははっきりさせられない。どうも北との国交を樹立するということに対しては消極的なように受け取れるのですが、残念に思います。  この問題、さらに後の機会にお聞きすることにしまして、まだケリがついておりませんベトナムの問題について若干お聞きしたいと思います。  ベトナム民主共和国の指導者たち、まあ政府といってもいいと思いますが、彼らは日本とベトナムの国交交渉の問題として、日本南ベトナム共和国臨時革命政府を正当に扱うこと、正当に扱うことということばを使っておりました、それ以外のことばじゃないわけですから、正当に扱うことをあげております。それに関連して、前回も質問いたしましたが、日本政府が、大臣が臨時革命政府をどう見るかについてお聞きしたわけです。御答弁はたいへんわかりにくかったのでありますが、どういうことでしょうか。いまのところ、臨時革命政府を外交的に承認して外交関係を持つ考えはないけれども南ベトナムに臨時革命政府という一つの政府が存在しておるという事実は事実として認めるという、こういう結論でございましたでしょうか。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その表現の問題でございまして、つまり私が外務大臣として申し上げる場合には、一つの政治勢力があるということは言って差しつかえないと思うのでございますが、政府の立場で臨時革命政府あるいは政権ということになりますと、事は重大になってまいりますので、公の発言といたしまして政治勢力があるということ、そして、パリ協定の当事者であられるということ、それから南ベトナムの人民の今後の政治形態というのは三者構成の中で追求されていくべきものだという認識を持っておるわけでございまして、星野さんはどうしてもそれを政府と言えとか政権と言えというのだけれども、政府の立場では言えないということだけは、あなたひとつ御了承いただきたいと思います。
  78. 星野力

    ○星野力君 大臣自身が臨時革命政府ということばを使って発言しておられるわけでありまして、そしてまた、サイゴンの政府が南ベトナムの全部を支配しておるのではないということも認めておいでになる。この六月十三日の新しいパリの共同声明、あそこでも再確認され、現在その作業が進められておりますように、双方の支配地域というものを確定することになっております。支配地域というのは、あれは領土といっていいと思うのでありますが、そして、その地域に行政権を行使しておるのは、これはサイゴン政権じゃなしに臨時革命政府——支配地域、領土を持ち、その地域に行政権を行使しておる、こういうものを政府というのじゃないでしょうか。
  79. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) 技術的な点で一つお答えいたしますが、ただいま星野先生は支配地域を領土だというふうにおっしゃいましたけれども、この協定あるいはパリの共同コミュニケではテリトリーと、普通に言う領土ということばを長い議論の結果避けて、そういうことばを取らないということになって、エアリアズ・コントロールド・バイ・イーチ・オブ・ザ・ツー・サウス・ベトナミーズ・パーティーズということばになっておるというところを御理解いただきたいと思います。
  80. 星野力

    ○星野力君 では政治勢力とは一体何か。普通政治勢力といいますと、政党のような、一定の政治的な傾向を持ったところの集団をさすように思うのでありますが、臨時革命政府を政治勢力——南ベトナム解放民族戦線とか、民族民主平和勢力連合とか、これは政治勢力と言えるかもしれません。臨時革命政府を政治勢力といいますか。技術的なお答えでもよろしゅうございます。
  81. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) 大臣が先ほどお答えになりましたように、これは定義の問題だろうと思うのでございますが、パリ協定では臨時革命政府という名前で当事者になっておる、その事実はわれわれ十分認識しておる。したがって、今度法律の問題を離れまして、政治的にどういうことになっておるかといいますと、まさにそこに一つの勢力があって、ベトナムの問題というものは今日まで長く悲惨な歴史を続けてきたわけでございますが、これをどういうふうに定義するかということでございますが、南ベトナム人の中に二つの政府というのも、また、パリ協定からいいますと両方の当事者が話し合って将来の民族統一なり和解をやってくれということでございまして、そこに政府ということばを使うことの意味なり、あるいはどういうことなのか、多少はっきりしない点もございますが、一応政治的な判断としては、非常に大きい政治勢力があるということで差しつかえないのではなかろうか、かように考えるわけでございます。
  82. 星野力

    ○星野力君 先を急ぎますが、臨時革命政府の旅券で日本に入国を申請した場合にはこれを認めるのか認めないのか。先般問題になりましたことですけれども、田中法務大臣、それから大平外務大臣御自身の認めないのではないという御発言もあったと思います。これからの時点におきまして、そういう入国申請があった場合、これをお認めになりますか。
  83. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) 外国人の入国の問題は、法務省のほうでそういう旅券とか入国目的、滞在期間、滞在中の活動ということについて決定されるわけで、外務省のほうは、そういう外国人が日本にくることの外交上の考慮はどうであるかということについて協議を受けて意見を申し上げるという立場にあるわけでございます。したがいまして、具体的な事案が起こりました段階で、その事案をよく検討して判定せざるを得ないということで、一般的な基準なりといったようなものをいま申し上げるのは必ずしも適当でない、かように考える次第でございます。
  84. 星野力

    ○星野力君 そういうことじゃなしに、もう大臣はこの問題にコミットしておられるわけですね、先般の発言もありまして。あそこでは、あいまいな表現だけれども、田中法務大臣の発言を受けて、認めるんだ、少なくとも認めないのではないのだということを言っておられると思いますが、現在はどう理解したらいいか。あのとおりかどうか。大臣の口からお願いしたいと思います。
  85. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ、法律的、技術的なことは法務省のほうの所管でございますが、外交的な関連からは、われわれが意見を法務省に内内お伝えすることにいたしておりますが、私どもの気持ちといたしましては、いま現にサイゴン政府と国交を持っているわけでございまして、そういう中でベトナムの戦争が起こり、それが終息に至りましてパリ協定というものができてきた経緯を踏まえた上で、日本政府の認否という問題が外交的に見ましてまあ問題性を持たぬような姿において取り扱っていかなければならぬと考えておるわけでございます。だからいま吉田君が申し上げましたように、ケース・バイ・ケースで、そういう状況を踏まえて、外交的に支障のないようなことで私どもくふうをしていきたい、そういう方向で法務省にもお願いをしていきたいと考えております。
  86. 星野力

    ○星野力君 くふうしていくと言われるからには、前向きの姿勢で、ケース・バイ・ケースで対処する、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  87. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) なかなかしつこいですね。後向きというのはないんで、大体問題はみな前向きでやるわけです。その点はわれわれといたしまして、ことさらこれをはばもうとか何とかいうちゃちな根性はないわけでございまして、インドシナの復興、平和ということ、それからあの領域におきまして、各勢力の間で和解ができていくことが望ましいことでございますので、そういう状況を踏んまえてケース・バイ・ケース、弾力的は対処していきます。
  88. 星野力

    ○星野力君 その問題きょうはそれだけにしておきますが、五月二十日にサイゴン政権が経済再建八カ年計画というものを発表しましたが、一九七三年、ことしからスタートして、八〇年までの八カ年計画という、三段階に分けた計画でありますが、日本政府に対して、この計画について協力の要請というものがあったんでしょうか。
  89. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 日本政府に向かって、正式にこれに援助をしてほしいというような公式の要請はまだございません。
  90. 星野力

    ○星野力君 非公式にでも、この計画について説明とか報告というものはあったでしょうか。
  91. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) この八カ年計画の公表と同時に、ベトナムの復興開発の援助を受け入れるための政府の中の機構というものが発表されまして、それを担当する大臣として向こうの閣僚の一人が指定されまして、そういった閣僚が個々にわが駐ベトナム大使のところに説明をしているということはございます。
  92. 星野力

    ○星野力君 日本政府は、これまでもしばしばサイゴン政権に対して経済援助を約束してきましたが、この八カ年計画に協力する考えはお持ちになっておるのかどうか。と申しますのは、グエン・バン・チュー大統領がこの計画を発表するにあたって、パリ協定は相手側の協定違反で全く役に立たない。いまやわれわれはみずからの力で確固たる平和をつくり出さなければならない。このためには経済の安定が必要であるというようなことを言っております。その目的、意図するところきわめてはっきりいたしております。パリ協定に逆行してサイゴン政権の延命をはかろうというようなねらい、非常にはっきりしておるのですが、こういうものに対して協力なさる考えなのかどうか、御質問申し上げます。
  93. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 経済援助を行ないますときには、それぞれ援助の相手国の国の持っております経済計画とか、そういったものを十分に検討して、わが国の独自の方針を立てて援助をやるわけでございまして、この八カ年計画もそういった意味では今後わが国がベトナムに対します援助をやるかどうか、これも問題があるかもしれませんが、援助を検討するにあたりましては十分に参考になる資料であるというふうには存じております。
  94. 星野力

    ○星野力君 少なくとも、いまの時点におきましてこの計画に協力するという態度を示すことは問題であるというふうにはお考えになりませんか。
  95. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) この計画に協力するということを申し上げているのではなくて、私どもが援助を行なうかどうか検討する際の一つの参考にいたしたいというふうに存じております。
  96. 星野力

    ○星野力君 パリ協定後サイゴン政権に対して新たな経済援助を約束したものがあるでしょうか。あるとしたらどういう性格の援助であるか。
  97. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 南越、サイゴンの近郊に戦争状態の結果生じました孤児に職業を与えるための職業訓練センターというものを建設中でございまして、これはわが政府のいわゆる無償資金協力という形で行なっているところでございますが、たまたま第二期の工事に間に合わせるために二月九日にそれに対しまして第二期工事用の資金を約束いたしましたという事実はございます。それ以外に、パリ協定以後に約束した援助は全くございません。
  98. 星野力

    ○星野力君 政府はこのベトナム、インドシナに対する援助について人道的な緊急援助とか、復興援助とか、いろいろ段階を分けておられると思いますが、いまお述べになったのは、人道的な緊急援助、こういう範疇に属するのですか。
  99. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 緊急という意味がどういうことを意味するかわかりませんが、戦争状態によって生じました孤児に職業訓練をしてあげようという計画は、だいぶ前からやってきておりました計画でございまして、それの建物の第二期工事に必要な資金を約束したということで、そういう意味では、必ずしも緊急という意味には当たらないと思いますが、人道的な援助であるというふうに承知しております。
  100. 星野力

    ○星野力君 協定以前に契約してあったいろいろの借款の約束がありますですね。カントウの火力発電所とか、サイゴンの電話施設とか、ダラト−カムラン間の送電線架設とか、ああいう援助はどうなっておりますか、借款は。
  101. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 星野先生指摘のように、円借款では三つございまして、カントウという場所におきます火力発電所の建設計画、これは一九七一年の九月に約束しております。それからサイゴン市内におきます電話網の拡充の計画、これが七二年の二月に約束しております。それからさらに昔に、いわゆる賠償協定というものの範疇でつくりましたダニムダムというものがございまして、そこに発電所がございますが、その発電所からの送電線をつくる計画、これにつきまして昨年の十一月に約束をしております。これにつきまして実行いたすわけでございますが、カントウ火力発電につきましては、若干金額がすでに貸し付けが行なわれておりますが、あと二つにつきましては、目下いろいろな調査等が行なわれている段階で、まだ貸し付けの実行は行なわれていないという状態になっております。
  102. 星野力

    ○星野力君 そうしますとカントウのほうはすでに金を出しておるけれどもあと二つはまだ出しておらないが、それは調査などで手間どっておるのであって、そういうものが済み次第これも金を出すということになりますか。
  103. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) そのとおりでございます。
  104. 星野力

    ○星野力君 政府はパリ協定を尊重すると、こういう立場を示しておられるのでありますから、パリ協定締結後の今日におきましては、この南ベトナムのもう一つの政府のほうが反対しておる。そういう反対を無視して、一方にだけ援助を与えるというようなことは許されなくなってきておるのではないかと思いますが、日本政府はサイゴンとは外交関係を持っておるとはいうものの、パリ協定以後の南ベトナムの現状というものを考えるならば、こういう援助、たとえ協定以前に約束はしてあっても今日まで実行されておらないようなものについては、よほど慎重に対処していく必要があるんではないかと思うのですが、大臣どうでしょうか。簡単でよろしゅうございますが。
  105. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本政府としては、インドシナ政策の推進にあたりましては、パリ協定を踏まえてやるということ、援助につきましては全ベトナムを対象として考えてまいるということを表明してまいっておりますことは御案内のとおりであります。ただ、その援助の問題につきまして、南越も北越もそれぞれの考え方があるようでございまして、帰一した計画というものは出ていないわけでございます。南越側は北越に日本が援助するということに反対はいたしていないわけでございまして、南越に対して日本が援助することに対しても同一民族の困窮した状態に対して、援助を差し伸べることに対して北越側に重大な反対があるとは私は考えていないわけでございまして、援助受け入れ側からの御提案を受けて、詳細に検討いたしまして、われわれの基本の方針に沿って考えてまいりたいと思っております。
  106. 星野力

    ○星野力君 時間だそうでございますから、まとめて申し上げますが、前回にお聞きしました石油鉱区の入札にしましても、南ベトナム二つの政府の一方が、外務大臣の声明まで出して反対しておる、それを否認しておる。そういうものを日本の場合は海洋石油開発という民間会社の形態ではありますけれども、事実は政府が出資しておる国策会社と言っていいような性質の会社だと思うのでありますが、そういうものが出かけていくなどというのは、これはもってのほかではないかと考えますし、南ベトナムのどさくさの中で利権獲得に出かける、こういう性質のものになりはしないかと思うのです。それからまた、米軍が撤退したあとのカムラン湾一帯に、三井物産が中心になって日本工業立地センター、それから例の日本工営、こういうところがかたらって大重化学工業地帯を建設する、その仕事を受け持つということがありますが、これについてどのように承知しておられるか。これも先ほど申しました八カ年計画の中に当然組み込まれておるものだと思いますが、その計画も石油精製化学が中心、パルプ工場などもつくるというふうにいわれております。日本でも立地が困難な産業です、石油精製にしましても、パルプにしましても。南ベトナムの需要に応ずるという面もそれは確かにあるでしょうけれども、それらの半製品を日本に持ってくることもこの三井物産などの計画の中には織り込まれているようであります。そういう面から見ますと、公害企業の輸出ということにもなるわけでありまして、これは一種のいわゆる新植民地主義とも言えると思うのでありますが、これは民間の会社が関係していることでありますけれども、政府の承認なしにやれることではないと思います。資金の問題を考えてもそうだろうと思うのでありますが、こういうことをやっておったら、長くベトナム人民の恨みを日本が買うことにもなると思うのであります。何も急いでやることはないではないかと思いますが、このカムラン湾の計画などについてはどのように承知しておられるか。急いでやることはないと私は思いますが、その辺についてどういうふうにお考えになっているか、お聞きしたいと思うんです。
  107. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 御指摘の計画につきましては、政府にはまだ全く連絡もございませんし、中身も全く存じておりません。
  108. 星野力

    ○星野力君 政府は全く知らないと言われると、これは取りつく島もないのですが、そういう計画があるということは、これは歴然としているのであるし、そういうものを推し進めていくということになると、また繰り返して言いますけれども、政府の関係なしにやれることではないと思うのですが、そういうようなことを急いで何もやる必要はちっともないわけですよ。政治的に見てこういう問題をどういうふうにお考えになるか、大臣。先ほど工業立地センターの問題も申し上げましたが、これはほんとうにどさくさに利権獲得に日本が出かけていくと、こういうふうに見られてもしかたのないようなやり方ですよ。
  109. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本は資源が乏しい国でございますので、これから先、外国に資源の安定供給を求めなければやっていけない国でございますので、そういうことがやれないということになりますと事は重大だと思いますが、星野さんのおっしゃるのはそういう意味ではなくて、現地の政治情勢をよく見きわめた上で、紛糾混乱、恨みを買うことのないように、という御趣旨と拝聴するわけでございまして、そういった点につきましては十分配慮を加えながら考えてまいらなければいかぬと思うのでございます。  それから各後進開発国などにおきまして立てられた計画について協力を求めてこられた場合、平和国家を追求してまいっておる日本といたしまして、そのプロジェクトによりまして応分の御協力を申し上げることがその国のためでもあり、平和のためでもあるというようなものでございますならば、これについてそれ相当の検討を加え、協力をしていくということもあわせて考えていかなければならないと思うのでありまして、われわれといたしまして、一がいにこういうのは一切だめだとかいう、いわばカテゴリカルな理解ではなくて、もっと彫りの深い理解を持ちながら対処してまいりたいと思っております。
  110. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本調査に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後零時十九分散会