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政府委員(
松永信雄君) 法律技術的な問題が含まれておりますので、私からお答え申し上げます。御
指摘がございました二十総会の国連憲章の
改正は、一九六五年に行なわれました憲章第百九条の
改正でございますが、これにつきましては、もう御
指摘のごとく国会に提出いたしませんで発効を見ております。なぜ国会に提出して
承認を
求めなかったかという
理由につきましては、前回も若干申し上げましたけれども、この
改正はその二年前に行なわれました憲章
改正の際に当然に技術的、論理的な当然の帰結として行なわれるべきであった
改正を、国連事務局のミスによりまして
改正漏れとなっていたもの、それを六五年に拾ったものでございます。内容がそういうものでございまして、
わが国として当然その
改正の発効につき異論があったわけじゃございませんけれども、その
改正について、積極的に批准の意思表示をすることについて
政府として重要性を認めなかったということがそのおもな
理由でございます。で、なぜそういうことになるのかということを申し上げますと、国連憲章の第百八条の場合のごとく、三分の二の
加盟国が受諾したときにすべての
加盟国について
効力を
発生するという仕組みになっております
改正の場合におきましては、
加盟国による批准ないし受諾の行為というものは、三分の二カ国に達するまでは、その
改正が発効いたしますために必要な要件としての法律的な性格を持つわけでございます。しかし、
改正が一たん発効いたしますと、これは
わが国につきましても、最終的な拘束力を持つということとなり、したがいまして、
条約締結ということについて、法律的な効果を持たせるとすれば、それ以後の受諾ないし批准というものは法律的には意味のない行為ということになるわけでございます。したがいまして、このような仕組みを持っております国連憲章については、一部の国が受諾ないし批准の手続をとらないということを予想しているということは申せるかと思います。他方、批准ないし受諾という手続、すなわち、
条約締結の
一つの
段階でございますが、行為は、行政権の作用に属するものでございます。したがいまして、このようなことから、
政府としまして憲章の
改正について、その
締結手続をとらなかったという場合において、憲章上の義務を怠ったということはいえないのではなかろうかというふうに考えます。
そこで、それではどういう場合に国会の
承認を
求めるのか、あるいは
求めないのか、その
基準はどういうことかということが次に問題になるかと存じます。これにつきましては、たとえば憲章
改正が総会で採択されます際に、その
改正に反対であるというような態度をとった場合、あるいはその内容について反対ではなくても、特に大きな関心を
わが国として持たなかったもの、あるいはその
改正について積極的な意思表示をする必要性を認めなかったもの、こういうものは、国会に提出して
承認を
求めないという場合があるかと存じます。
他方、国会に、じゃ提出すべき
改正の内容は何か、どういうものであろうかということを考えますと、国連憲章の本質的な部分と申しますか、基本的な事柄、たとえば安保常任理事国の数や構成を変更するような
改正、あるいは安保理事会の権限を修正するような
改正、そういったような、国の基本的な事柄にかかわる
改正、これは当然国会に提出いたしまして、その諾否につき、国会の
承認を仰ぐという手続をとるべきであろうかと思います。
また、今回の
改正、先般御
承認を得ました
改正の場合のごとく、経済社会理事会の構成国が非常に増加するということによって、主として開発途上国の意思を経済社会理事会に大きく反映させるというような
改正につきましては、これを積極的に批准するということについて
政府として重要性を認めた、こういうことであろうかと存じます。