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1973-06-14 第71回国会 参議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十四日(木曜日)    午前十時四分開会     —————————————    委員異動  六月八日     辞任        補欠選任      船田  譲君     岩動 道行君      河本嘉久蔵君     今  春聴君      中西 一郎君     長谷川 仁君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 木内 四郎君                 田  英夫君     委 員                 岩動 道行君                 杉原 荒太君                 八木 一郎君                 矢野  登君                 加藤シヅエ君                 小谷  守君                 羽生 三七君                 森 元治郎君                 渋谷 邦彦君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        外務省欧亜局長  大和田 渉君        外務省中近東ア        フリカ局長    田中 秀穂君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省条約局外        務参事官     松永 信雄君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        環境庁水質保全        局企画課長    松田豊三郎君        外務大臣官房領        事移住部長    穂崎  巧君        外務省アメリカ        局外務参事官   角谷  清君     —————————————   本日の会議に付した案件国際労働機関憲章改正に関する文書締結に  ついて承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付) ○電離放射線からの労働者保護に関する条約  (第百十五号)の締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○機械防護に関する条約(第百十九号)の締結に  ついて承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付) ○国際情勢等に関する調査  (国連における朝鮮問題に関する件)  (欧州安全保障会議に関する件)  (ベトナム和平協定履行に関する共同声明に関  する件)  (日中間航空協定に関する件)  (沖繩米軍牧補給基地による海洋汚染に関す  る件)  (西アフリカ干ばつに対する援助に関する件)  (ラオスにおける邦人の身体、財産の保護に関  する件)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る六月七日、加藤進君が委員を辞任され、その補欠として星野力君が選任されました。  また翌八日、船田譲君、河本嘉久蔵君及び中西一郎君が委員を辞任され、その補欠として岩動道行君、今春聴君及び長谷川仁君が選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 国際労働機関憲章改正に関する文書締結について承認を求めるの件  電離放射線からの労働者保護に関する条約(第百十五号)の締結について承認を求めるの件  機械防護に関する条約(第百十九号)の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)  以上三件を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。大平外務大臣
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま議題となりました、国際労働機関憲章改正に関する文書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  一九七二年六月二十二日、国際労働機関の第五十七回総会は、同機関理事会構成員増加等内容とする国際労働機関憲章改正文書を採択いたしました。  国際労働機関理事会は、同機関運営に重要な役割りを果たしており、その構成につきましては、さきに一九六二年に改正が行なわれ、現在は四十八人で構成されております。今回の改正は、その後の加盟国増加に対応するために、理事会構成員現行の四十八人から五十六人に増加するもので、これに伴い政府を代表する理事現行の二十四人から二十八人に、使用者を代表する理事現行の十二人から十四人に、労働者を代表する理事現行の十二人から十四人にそれぞれ増加され、また、政府を代表する理事のうち主要産業国でない加盟国が任命する理事現行の十四人から十八人に増加されます。  この改正は、国際労働機関加盟国増加に対応し、その理事会構成員増加して同機関の円滑な運営をはかろうとするものでありまして、わが国がこの改正文書締結することは、同機関を通じて労働分野における国際協力を推進するために有益であると考えられます。  よって、ここに、この改正文書締結について御承認を求める次第であります。  次に、電離放射線からの労働者保護に関する条約(第百十五号)の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、一九六〇年に国際労働機関の第四十四回総会で採択されたものであります。その内容は、各種類の労働者につき、電離放射線最大許容線量等を、国内法令等によって定めること、放射線作業に直接従事する労働者に対し適切な指導、健康診断を行なうこと等、電離放射線による障害から労働者保護するための規則等について規定したものであります。  わが国におきましては、主として労働安全衛生法及び同法に基づく電離放射線障害防止規則等により、条約趣旨は充足されているところでありますが、この条約締結することは、わが国における労働安全衛生確保をはかる上からも、労働分野における国際協力を推進する上からも、有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、機械防護に関する条約(第百十九号)の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、一九六三年に国際労働機関の第四十七回総会で採択されたものであります。その内容は、適当な防護装置の施されていない機械の販売、使用等は、国内法令等によって禁止すること、危険を防止するため労働者を指導し、適切な作業環境を形成すること等防護されていない機械の危険から労働者保護するための規制等について規定したものであります。  わが国におきましては、主として労働安全衛生法及び同法に基づく労働安全衛生規則等により、条約趣旨は充足されているところでありますが、この条約締結することは、わが国における労働安全衛生確保をはかる上からも、また、労働分野における国際協力を推進する上からも、有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上三件につきまして、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 引き続き補足説明を聴取いたします。松永条約局参事官
  6. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) ただいま提案理由説明のございました三件につき、若干補足説明を申し上げます。  まず、国際労働機関憲章改正に関する文書でございますが、ILO理事会の定数は、昭和二十八年に三十二から四十に、また、昭和三十七年に四十から四十八に増加されましたが、本件改正により、これがさらに五十六に増加されるわけでございます。ILO理事会に対し、わが国は、現在、政府側及び労働者側がそれぞれ理事を、また、使用者側が副理事を出しております。なお、本件改正批准または受諾した国は、四月九日現在、二十九カ国でありますが、主要産業国五カ国を含む八十二カ国によって批准または受諾されたときに効力を生ずることとなっております。  次に、電離放射線からの労働者保護に関する条約(第百十五号)及び機械防護に関する条約(第百十九号)でございますが、これらは、最近ILOが重大な関心を示しております事業所内における労働環境安全衛生に関する条約であります。近年の科学技術の進展に伴い、わが国産業社会における電離放射線及び機械に起因する災害が年々増加するおそれがある状況にかんがみまして、わが国がこれら二条約批准することは、労働者の安全と健康の保護のため有意義と考える次第でございます。なお、わが国は、戦前に十四、戦後に十五、計二十九のILO条約批准しておりますが、これら二条約締結することによって、わが国ILO条約批准数は合計三十一になるわけであります。  以上でございます。
  7. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  8. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 国際情勢に関する調査議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 森元治郎

    森元治郎君 ちょっと短い時間に大臣に二つ、三つお伺いします。  一つは、中曽根王制発言外務省と、こういう題です。きのう参議院の本会議で私たち伺っていたのですが、どうもはっきりしない。田中さんはむやみに興奮ばかりしてしまって、大きい声して、耳に入らないような感じがあった。片方中曽根さんは、時間がなかった、外人にわかりやすく言いたいというような気持ちで、ああ言ってしまったんだと、はなはだ遺憾であるとおじぎしているんですね。片方では悪くないんだと、王制と言っても悪くないんだといったようなことを総理片方でどなるんですよ、一部の学者は、なんと言って。われわれの聞いているのは学者意見じゃない。内閣統一した意見を聞いているのに、ちぐはぐなことは夕刊お読みになればよくわかるのです。それの是非を私はいまここでやると言っても、これは数時間かかってもたいへんですから、法制局長官も来なければならないし、田中さんもいなくちゃならぬからやめるが、これをわれわれ国民はあらゆる新聞、ラジオ、テレビで読んで、良識のある人はそれぞれ穏当な解釈はとると思うんだが、外国にいる人、在外使臣たち、これがたいへん日本で大騒ぎになったんだが、王制と言い、そうじゃないと言い、通産大臣当人は遺憾だと言っているがどうなんでしょうということを、カクテルパーティだなんだというときに、いい話題ですよ、これは。そのときにずばり何とお答えになるのか。ただ、わが政府の方針は、いずれ外務省から送る官報を読めといっても、官報が到達するまでには、韓国はあした、きょう行くかもしれないけれども、地球の下のほうの南米あたりはいつ着くかわからない。役人だからなおさらおそい。となると、これはみんなかってな、外交官王制論をやると思うんだな。これはやはり通達する必要がおありになると思いますか、私はやるべきだと思うのです。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 外交ひとり政府、とりわけ外務省だけでやっておるわけではございませんで、各種の政府機関、国会、政党、民間の手によって多彩な関係がいろいろな場面で展開されておるわけでございまして、私といたしましては、全体として日本国民の力量が充実してまいりまして、日本国交を結んでおる国々との間の関係が信頼に基づいた円滑な姿において運営されることを希望するわけでございます。その場合のやりとりを、一々私どものほうでキャッチして、一つの規格にあてはめてまいるというようなことは、これは容易ならぬ仕事であると思うのであります。それぞれが、こいねがわくは、良識に沿ってやっていただくことを希望するわけでございます。いま森委員は、何か通達というようなものを在外公館等に出しまして、誤りなきを期するつもりがあるかどうかという御指摘でございますが、それぞれの国がそれぞれの選択によって体制を選択されておるわけでございまして、私どもとしてそういう選択された体制がどういうカテゴリーに属するものか、一応正確な理解を少なくとも外交に携わっておる専門的な職にある者は心得ておる必要があるように思うのでありまして、われわれはそういうことを一応みな心得ておるものと考えておりますけれども、なお、御指摘がございましたので、外務省で、あらためて、こういう問題が起こりましたことを契機にいたしまして、やるべきかどうかということにつきまして、もう少し検討さしていただきたいと思います。
  11. 森元治郎

    森元治郎君 それは、それぞれ外交官良識に従ってやるだろうし、そういうことは外交官は心得ているだろうと言うが、たまたま大問題として野党こぞって違憲にあらずやということ、しかも外国との関係においては日本はそれではこれから王制君主国などという呼称などが入り乱れてまいると、聞いた日本人も変な気するし、公の場へ行ったとき、おかしなものになるので、私の言うのは、良識ある外交官といっても、要は政府の確固たる定義、野党より違憲にあらずやとの質問があったけれども、これに対して日本は、わが政府は、かくかく考えるものであると、したがって、しかるべき際には、しかるべくこれによってお答えしておけということがやっぱりあると、全世界の在外公館ぴしゃっとこう一定すると思うんですよ。だから、これは外務大臣を責めても無理なんですが、中曽根さんは至らなかったとあやまり、片一方は至らないことない、中曽根君の言うことはいいんだというような——速記録、はっきり、私持ってきませんが、総理見解、これは非常におかしいもんだと思うんですね。大ものの総理大臣だったらば、おれは憲法順守することにおいては何人にも負けないんだと言って一発でがんばればいいのに、つべこべチンピラ学者の議論なんか持ってきて、大きい声でやるもんだから話が混乱しちまうんですよ。これはやっぱり明快に出先に向かってやる。それは一つの定義づけにもなります、なるでしょう。ですから、そういうものが、やはりこの際、内閣においても、これを、かかる疑念を晴らす意味で、明快な線、文書、そういうものを、統一的な見解を用意されることを、これ閣議に提唱していただくほうがいいんじゃないか。単なるけんかのやりとりみたいなことで済んでしまわないようにと思うんです。  そこで、それ以上はやりませんが、私はしろうと中のしろうとですが、なぜこう問題起こるんだといって憲法の英文、フランス文を読んでみると、やっぱり憲法改正のときにエンペラーという字を使わないで、天皇という字を使ったほうが——日本天皇制ですという意味で、エンペラーというと、エンペラーは向こうからきたことばですから、それぞれの、エンペラー等の含んでいる意味が、それぞれの国によって解釈違ってくると思うんですね。だからこれだけ象徴天皇までスタートするなら、エンペラー天皇にしておいて、外国語に訳せばエンペラーということば、キング、そんなものがまざったもんだくらいの説明のほうがかえってよかったんじゃないか。天皇です、天皇。こんならば外国に向かって、天皇制と、イランのあれとも似ているところもある。天皇制でこれは済むんであって、王制というような、つたない、外国語の幼稚なわれわれの記憶でも、モナーキーと通常よく言いますね。モナーキーと言うと、君主制、制限された君主制、あるいは絶対君主制意味が非常に広い。そういう意味でやっぱりこれは天皇というふうにやったほうがよかったんじゃないかということを、私、個人的に考えるわけです。  そこで外交問題に移ります。  けさの新聞で、朝鮮金総理大平さんが、一時間以上にわたって、国連における朝鮮問題の、過去二回の総会でたな上げして論議しなかった、あの方式は得策でないんだということにお互い確認したようだと、非常に強い表現で報道をされている。この間の事情をひとつお聞きしたいと思います。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) きのう午後、韓国金国務総理と会談いたしましたことは事実でございます。その内容は二つありまして、一つ朝鮮半島をめぐる情勢につきまして意見交換をいたしたことが第一でございます。第二は、当面問題になっておりまする経済協力案件若干につきまして、先方から協力の要請があり、私のほうから検討を約したということでございます。  第一の、朝鮮半島をめぐるアジア情勢というものについての意見交換内容につきましては、微妙な段階でございますので、意見交換を遂げたということで、双方、外向きに発表しようじゃないかという打ち合わせをいたしたわけでございますので、いま、信義上、そういう情勢について意見交換を遂げたということで御了承いただきたいと思います。新聞は、それに対して憶測の記事を載せられておるようでございますが、前段申しましたようなことで御了承いただきたいと思います。
  13. 森元治郎

    森元治郎君 御了承はなかなかできないんでねこれは簡単には。これ、会談の内容をしゃべれったって、それは無理でありますが、すぐに、あと九月ですから、三カ月くらいあと国連総会迫っている。とすれば、しかも情勢が大きく変わっているときに、当然そのたな上げでいこうか、従来方式でいこうかどうかということも御相談になったことは確かでしょう、どうするかということはともかく国連対策
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 朝鮮半島をめぐる問題の中で、当面の国連問題があるわけでございまして、朝鮮問題という中に国連問題がなかったということを強弁するつもりはありません。
  15. 森元治郎

    森元治郎君 そういう表現は、、なかなかいい表現でね、大臣がよく使う表現だよ、そういう表現はね。やっぱり外務大臣やっているとそういうふうになるんだね。そうです……。  そこで、そんならもうこまかいこと聞きません。情勢一つ一つ伺いますが、朝鮮問題というのは要するに招請も、南北朝鮮——北朝鮮国連招請する問題と、実質的な問題と分けられるわけですね。招請については、初めからもう入れないほうのアメリカの力が、日本の力が強くて、ずっと入れないできたが、最後に、六〇年代になりまして、もし北朝鮮国連の権限、国連の権威というものを受け入れると、そんなら呼んでもいいという、譲歩したわけですが、北側は招請問題は内政干渉であると言ってこれを受け付けないできた。また、実質的な問題は、外国における国連軍の撤退をしろということ、それから国連朝鮮統一復興委員会——UNCURK、これをやめろというのが実質問題ですが、もうすでにWHO加盟を見てもわかるように、このアメリカ国連憲章尊重という条件を取り出したものは事実上無視されて否定されて、国連の仲間に入れてもいいんだということを国連加盟国が証明したんで、これは、事実上この主張は消え去ったと、力を持たないと思うんですが、この一点伺います。
  16. 影井梅夫

    政府委員影井梅夫君) 北鮮WHO加盟を認められたということは事実でございますが、これが国連そのものにおいてそのまま認められるということではないと。で、私どもこの北鮮WHOに認められたということをどのように評価するかということを、これからいろいろの事情を検討いたしまして、その評価をきめなければならないと考えている段階でございます。
  17. 森元治郎

    森元治郎君 まだ総会で本ぎまりにならないからと言うけれども、もう北朝鮮国連玄関口からどんどんどんどん奥の座敷に歩みつつあるところなんですよ。まだ総会議場まで歩を、時間がかかって、歩いてきている途中ですよね。だからこれはもう強制力がない。朝鮮復興委員会も民主的な、自主的な独立朝鮮をつくろうと、そして経済援助も、助けようというのは、もうすでに現実は何人も、国連にみんなが寄ってたかって後進国援助するような状態ではなく、りっぱな独立国として、それぞれ承認国韓国八十幾つになり、北朝鮮が四十幾つになり、しかも、生活水準も国力も見違えるほど充実してきている。しかも、この統一委員会は、実際に活動の場としては南側だけしか動けない。しかも、この統一委員会構成国、七つくらいでしたね、七カ国ね、そのうちもう二、三カ国は出ていっちゃった。もう統一復興委員会なんて国連でお世話しなくても、もう十分りっぱに立ち行ける状態で、これの解消ということは、叫ばずしても事実上活動停止状況だと私は判断するんですがね、どうでしょう、大臣
  18. 影井梅夫

    政府委員影井梅夫君) ただいまUNCURKにつきましての御指摘でございますが、UNCURKは、御指摘のとおりに、発足当初におきましては七カ国、そのうち二カ国が参加を取りやめまして、現在五カ国のメンバーから成り立っております。  その活動の現状でございますが、これはUNCURK規定に従いまして、随時会合を行なっておる。それからまた、UNCURKの設立の際の規定に従いまして、国連総会に対しまして、毎年UNCURK活動に関する報告書を提出しております。これはUNCURK規定が変わらない限り続けられていくものというふうに考えております。
  19. 森元治郎

    森元治郎君 それはその委員会があるから毎年同じような文章で、重ねればみんなぴったり字が合ってしまうみたいな文章を毎年つまらなさそうに報告書を書いているよね。ただ、実際問題としては、これはもう事実上活動の余地なく、単なる国連官僚的な作文を総会に送っているにすぎないと思うし、例の国連軍にしても、アメリカ軍隊だけが、初めは十五、六カ国くらいがいたけれども、とっくの昔に減っちゃって、アメリカ一国しかない。しかも、最近はまた兵力を若干減らして四万しかいない。しかも、アメリカ声明によれば、韓国政府からの申し入れ、あるいは国連のほうから、引くような条件ができましたというようなことであるならば私は引きますと、アメリカもそこまでおりてきている。こういうふうな、国連軍の主力であるアメリカUNCURK活動の事実上の停止、それから条件つき招請案はつぶれ去り、わずかに過去二回の総会招請案審議たな上げということできた。もうこの段階、この秋の国連総会では、大きく朝鮮問題は取り上げられて、平和裡に片づける段階に来ていると思う。したがって、日本韓国を説得し、同時招請案妨害をしない、せめて妨害をしない、これはやはりアジアの平和につながるだろうと思う。政府がよく頼みとするパートナーのアメリカでも、昨年でしたか、ロジャーズ長官が、北朝鮮を含むすべての関係国との関係改善をするといって、ずっとアメリカ北朝鮮に対して日本よりやわらかくなってきているのですね。ですから、一昨年の中国の国連加盟のときよりは自然な情勢が十分熟成しつつある。しかも、南北間では、多少の行き違いはあるにしても、両者は競争的な立場ながら統一という大きな目標を目ざして、争いをする関係には毛頭ないように見える。いまこそ日本がもたもたしないで、決然たる、き然たる態度朝鮮問題にとられることがわが国にとってもアジアにとっても大事なことだと思うので、大臣の御答弁をいただきます。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 朝鮮問題の一番背骨になる問題は、朝鮮半島における平和と安定に向かって南北の両政府がいみじくも自主的、平和的な話し合いを始めておるところに見られますように、南北政権がまずどういう態度でこれから当たってまいるかということが肝心の軸だと思っております。われわれはそれを尊重しなければならぬと考えております。  で、国連問題につきましても、この両政権がこういう状況のもとでどのように今後対処してまいるかということは、手続問題、実態問題含めて非常に大事なかぎになるのではないかと思っておるわけでございます。わが国は、韓国といま国交があり、接触があるわけでございますので、まず韓国側がどのように考えられておるのかということをたださなければならぬ立場にあるわけでございます。森先生の言われたような事態について、まず、南北政権がどうこれに取り組んでいくつもりかというような点を明らかにしてまいるということが当面の仕事であり、あわせて、関係各国の動向というようなものも注視を怠ってはならぬと考えております。申すまでもなく、わが国朝鮮政策というのは、世界のいずれの国よりも重大性の度合いが大きいと思っておりますし、また、世界が注視しておる問題でもございますので、私どもとしては、まず、朝鮮半島の両政権態度関係各国の動向等をまず十分見きわめながら、秋の国連対策ばかりでなく、いろいろな問題について、わが国立場で誤りなきを期したいと私は考えておるわけでございます。
  21. 森元治郎

    森元治郎君 その両朝鮮に対していわゆる日本立場もただ単にまかせっ放しでなくて、両者が争いを一つでも少なくなるように配慮をしていく責任があると思う。日本は、中国とソ連に対しては積極的な外交に頭を悩ましつつ努力していますが、北朝鮮との関係についての頭を悩ましている様子が見えない。問題が起きたときにぽっと気がつくような、たいへん隣でありながら抜けている、努力が少し足りないということを外から見ていて感ぜられるんですが、いずれにせよ、朝鮮半島は従前と違って静ひつに向かい、平和へ大きく南北努力をしつつある現状であることは、大臣もお認めになると思うんですが、いかがですか。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりだと思います。
  23. 森元治郎

    森元治郎君 そこで一九六九年——昭和四十四年、例の有名な、悪名高い日米共同声明をこの際想起する必要があると思う。その第四条、国会でも盛んにやりました第四条では、佐藤さんとニクソン大統領は、「特に、朝鮮半島に依然として緊張状態が存在することに注目した。総理大臣は、朝鮮半島の平和維持のための国際連合の努力を高く評価し、韓国の安全は日本自身の安全にとつて緊要」であり、エッセンシャルということばを使っておるんですね。国連の努力を高く評価しというその努力の余地がないことは、先ほど来私が申し上げたとおり、自主的に復活し、政治的な安定を確保しつつあるし、大きな情勢は、朝鮮半島を依然として、もう緊張状態は六九年に比較して、今日はこの共同コミュニケに書かれたような状況でないことは、どなたも多言を要しないでわかると思うんですね。これは大臣のただいまの私に対する答弁でも、従来と違って平和の方向に向かっているということには御同感を得たので、こういう認識は、この際、文書となって日本を拘束している共同声明条約的性格すら持っている共同声明何となれば、この間の沖繩の返還協定にも、この共同声明文章が前文に書かれておるような次第ですから、この七月、日米会談の際に、こういう問題も当然取り扱われるだろうと思うので、その際に、かかる表現内容は大きく改められるべきものだと想像しますが、いかがでしょうか。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま私が申し上げられることは、来たるべき日米首脳会談でどういうお話が出るかまだわかりませんけれども朝鮮問題が議題になるといたしますならば、今日の事態を踏まえて、誤りない認識に立って対処したいと思います。
  25. 森元治郎

    森元治郎君 それは私の大体気持ちというか、御質問の趣旨に御賛同を得たように思うのですがそうとってよろしゅうございますね。強過ぎますか。
  26. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) よく拝聴いたしました。
  27. 森元治郎

    森元治郎君 私もう持ち時間がないから、一、二、これは簡単なことですが、来月三日からヘルシンキで開かれる全欧安保会議、安全保障協力会議、これにたくさんの外務大臣が出てきます。それで、ソ連との大きな集団安全保障を初め、東西の交流、これにオブザーバーを派遣して勉強させることは非常に今後のためによろしいと思うのですがね、入れてくれるかどうか、一国の承認だけではいかないでしょう。西ヨーロッパ側は、来て拝聴したければ来なさいというかもしれぬけれども、問題はソ連だと思う。ソ連も話しようによっては、だめだと言ったら、あんたは集団安全保障なんておれのほうに言ってきているんだが、どんなものであろうか、これのいい面、悪い面、研究する絶好のチャンスだからと言い訳をすれば、これは当然大事業ですから、ソ連は反対はしないと思う。しかるべきえらい人を派遣して、あの第二次大戦後の処理のしかた、同時に日ソ関係の調整にも大きな参考になると思うのですがね。懸案解決というのは領土問題ばかりではありませんからね。いろいろ問題、それにふさわしいような問題も、時間がないから言いませんが、あのヘルシンキの会議議題にはなっているんですね。しかもこれで一発できまるのではなく、これからそれぞれ委員会を開かれて、また持ち帰って来年か、ヘルシンキでやるでしょう。これはやはり緊密な連絡をとり勉強されることが、あなたがときどき言っている、キッシンジャーが唱えた新大西洋憲章などに関心を示すひまがあったならば、このヘルシンキの会議にオブザーバーでぜひとも参加することが大事なことだと思うんですね。それを聞いて終わりといたします。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘の欧州安全保障協力会議、欧州の安全保障に直接関係を持つ三十五カ国から構成されている。NATO加盟国が十五、ワルシャワ条約加盟国が七、中立ないし非同盟国が八、それからその他五というふうになっておりますが、全部欧州圏にある国々でございます。そしてこれら当事諸国は当初からオブザーバーの参加は認めない方針を明らかにいたしておりますしかしながら、いま森委員の御指摘のように、この会議が今後の国際情勢に重大な影響を与えるに違いないと思うわけでございますので、わが国といたしましても、この会議の準備段階から在外諸公館等を通じまして、情報の収集、分析につとめてまいったわけでございますが、今後も一そう精力的に情報の収集、分析につとめていかなければならぬと思っております。オブザーバーとして参加したらどうかという御意見でございますけれども、いまそういう道もないようでございますので、あらゆるチャンネルを通じまして情報の収集には遺憾のないようにいたしたいと思っております。
  29. 森元治郎

    森元治郎君 いまオブザーバーは入れないとありますがね。これは天下の大勢の説き方ですよ。大声疾呼し、おれを入れてやれぬのかというくらいの、割り込んでいって、たまにやってごらんなさいよ。おとなしくオブザーバー入れませんからと書いてあるから行かない。そんなことじゃ外交できませんよ、これ。欧州の平和関係というのは同時に東にも響きますからね、われわれのほうにも。われわれをはずしておいて何だと断固やれば、私は相談して、もう一ぺん、これは国連憲章でも何でもないんだから、集まって、親分連中がそうしようかと言えばそうなりますからね、これは。私は、関係大公使館を動員してこそこそこそこそ新聞記事などちょこちょこ人の話なんかかき集めないで、やはり会議場に行ってどんとしてすわるべきだと思うんです。努力をしてください。それだけです。終わります。
  30. 田英夫

    ○田英夫君 日本時間のきょう午前零時にパリでベトナム和平協定をさらに確認すると言いますか、十四項目の共同声明が調印されましたけれども、最初に大臣に、この和平協定がさらにはっきりと確認をされたというこの状況を、事態をどういうふうにお考えになるか。その判断を伺っておきたい。
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) パリ協定成立後ほぼ五カ月を経過いたしました時期におきまして、同協定各当事者が協定の確実な実施の方式について合意したことはきわめて意義があるものと考えるのであります。  十四項目についてその内容、これから詳細に吟味していかなければならぬと思いますけれども、協定の当事者が誠実に順守いたしまして和平を定着させることが基本であると感じます。したがって、これを機会に、南ベトナムの両当事者をはじめ、関係当事者がパリ協定の実施の促進に一そう努力されることを期待いたします。ただ、今回のこのコミュニケでは、一般に期待されておりましたようなカンボジアについての具体的な解決方法についてどうも触れられていないようでございます。パリ協定を確認するにとどまっておりますが、この地域におきましても、早急に話し合いが持たれることを私どもは念願しております。
  32. 田英夫

    ○田英夫君 これは新聞などの報道によりますと、南ベトナム政府、グエン・バン・チュー政府最後まで今回の十四項目の内容について抵抗したということのために調印がおくれた、こういうふうに言われておりますが、まあ私も事実だと思いますが、今回の十四項目の内容を私も新聞を通じて知るだけでありますが、この内容を見ますと、アメリカ並びに特に南ベトナム政府側にとっては従来の主張を大幅に曲げざるを得なくなっている、こういう状況で、むしろ臨時革命政府あるいは北ベトナム側の主張がほぼ通っている、こういうふうに考えざるを得ないわけで、何回かこの委員会でも申し上げましたように、はっきり申し上げて、外務省でお考えのような事態と南ベトナムにおける状況は違うのじゃないかということを申し上げてきたわけでありますけれども、今回のこの十四項目の内容をごらんになって、その点どういうふうにお考えになりますか。
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 各当事国の努力に敬意を表したいと思います。
  34. 田英夫

    ○田英夫君 ところで、南ベトナムの実情についてはまたあとで触れることにいたしますが、今回、いま大臣言われましたように、こういう確認ができまして、一月末の和平協定がさらに現実に実施されるという方向に一歩前進したわけでありますけれども、こういう事態の中で、かねてから大平外務大臣が言っておられました北ベトナムとの国交正常化の交渉の問題、これに対しては大きく一歩を踏み出すことができる状況になったというふうに考えられますが、政府はそういうふうにお考えになっているかどうか、この点をお伺いいたします。
  35. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) パリ協定実施に関するコミュニケ自体十分勉強しなければなりませんが、これが今後どのように展開してまいるか、その状況を確認いたしまして、しかるべき時期に、北越との交渉開始の手はずをととのえていきたいと考えております。
  36. 田英夫

    ○田英夫君 ずばり伺いますけれども、北ベトナムとの交渉については、時期ですね、いつごろ、場所どこで、どういう形で、つまり大使級会談というような形なのかどうかというようなこと、この点ずばり伺いたい。
  37. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まだいつ、どこでということを具体的にきめておりませんけれども、インドシナの状況が御承知のように流動的でございましたので、この成り行きをもっと見た上でと考えておったのですが、まあこれひとつ前進を見たわけでございまして、われわれとしては、いま申しましたように、この共同コミュニケの実施状況をしばらく拝見した上で、その手はずをひとつ考えてみたいと思っております。
  38. 田英夫

    ○田英夫君 この夏じゅうにも始められると考えてよろしゅうございますか。
  39. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そう、いま申しましたように、いつということをまだきめておりませんので、お答え申し上げる、いつ、どこでというところまでまだきめていないけれども、まあしかるべき時期と申しましたが、われわれとしては、当面の状況を一応見定めた上で考えてみたいと、特におくらすというようなつもりはないのです。
  40. 田英夫

    ○田英夫君 私は、やや新聞記者的質問をしているわけですけれども、それは決して興味本位で伺っているのじゃなくて、まあベトナム和平というたいへん喜ばしい事態が実現をしている中で、特に日本が持っている経済力との関係もありまして、ベトナムとの国交正常化というものができるだけ早い機会に、しかも非常にいい方法でできることを望みますので実は伺うわけですが、そういういい方向にということが実りますためにも、さきに三宅前南東アジア第一課長をハノイに派遣されたわけですけれども、今回は、当然もっと、何といいますか、大使級というような形になると思われますが、これもそう考えてよろしゅうございますか。
  41. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その手はずでございますが、いつ、どこで、どういうレベルで、ということをよりより考えていかなきゃいかぬと思っておりますが、まだきめておりません。
  42. 田英夫

    ○田英夫君 これもたいへんうがった質問かもしれませんが、三宅前課長は今回ジュネーブへ転勤されたようであります。ということは、あれだけ深くベトナム問題を外務省の中で担当し、しかも、北ベトナムに二回にわたって行かれて、人間関係といいますか、ベトナム問題については、外務省の中ではもちろん最も具体的に勉強しておられた三宅課長が、この時期に、いま交渉が始まろうというこの時期にかわられたということは、ちょっと常識では奇異なんですが、逆に考えれば、ジュネーブというところが舞台になる前提だと、こういうふうにも考えられないこともないのですが、それはいささかうがち過ぎですか。
  43. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まだ場所等につきましては、これから考えさしていただきます。
  44. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、交渉の姿勢といいますか、内容という重要な問題になってくるわけですけれども、まあはっきり申し上げて、三宅課長が帰られてからの報告も含めて、あるいはこの委員会における大臣の御答弁を、従来の御答弁を聞いておりまして、国交正常化への道を非常に私は甘く考えられているのじゃないだろうか、こういうふうに考えられてならないのでありますが、案の定と申しますか、ここに星野さんもおられますけれども、社会党の西村関一議員も加わりまして、先日、国会議員の方数人がハノイに行かれた結果を、私も西村さんから詳しく話を聞いておりますけれども、チュオン・チン国会常任委員会議長などと会われた会談の結果、一つは、日本政府の従来のベトナム戦争に対する対米協力の問題について批判をされたということ、さらに、南ベトナム臨時革命政府に対する日本政府の姿勢がさだかでないということ、あるいは第二次世界大戦における日本の戦争責任という問題、対ベトナム戦争責任という問題が、サイゴン政権との協定で済んでしまっているというふうに日本政府は考えているようだけれども、そうは必ずしも言えないという、いわゆる戦争責任の問題、こういう点でかなりきびしい態度が示されたというふうに、私も西村さんなどから報告を聞いているわけであります。この点、従来、三宅課長が外交の専門家として向こうと接触をされてきたときの報告とやや違うように思いますけれども、その点はいかがですか。
  45. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 三宅君の報告でございますが、私どものほうで、ノンコミタルなベースであらゆる問題を一ぺんざっくばらんに話をしてくるようにという指示を与えて、そして国交問題につきましては、無条件なベースでひとつ日本としては希望しておる旨も伝えたわけでございますが、これに対しまして三宅君の報告は、先方が完全にイエスという立場でなかったということは、私も聞いておるわけでございます。したがって、いまあなたが言われた問題点、御指摘になりましたけれども、私どもも、別に手放しで楽観をいたしておるわけでは決してないし、三宅君の報告と大きな距離があるというようにも考えておりません。
  46. 田英夫

    ○田英夫君 これは繰り返して申し上げますけれども、ベトナムに和平が到来をしている中で、日本アジアの経済的に大きな力を持っている国としてベトナムの復興のために役に立つべきであるこれは日本国民としてそういうことを願っているという立場から主張しているわけですけれども、そういう中で、まず第一に今回はっきりと指摘されたこの戦争責任の問題、この点については、必ずしも賠償ということばは使っていないようでありますけれども、無償援助、こういうような形を北ベトナム側は望んでいるようでありますけれども、これに応ずるお考えがあるのかどうか。この点は、私自身も北ベトナムに行ってみて、戦争中の日本軍の行為というものの傷あとが、いまだに実は今回のベトナム戦争以前の問題として、ベトナムの人たちの心の中にはっきりと残っているわけであります。この点をどうお考えになるか、まず伺いたいと思います。
  47. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 戦争、第二次大戦とベトナムとの関係につきまして、もっぱら法的側面についてのみお答えさしていただきます。  戦争終結の措置につきましては、サンフランシスコ平和条約によりまして、全ベトナムを当時代表しました現在のサイゴン政府の——もちろん現在のサイゴン政府の前の政府でございますけれども、それとの間にサンフランシスコ条約に基づきます戦争終了の措置が終わりまして、そういう意味におきまして日本と全ベトナムとの関係は桑港条約によって法的には終わっているということでございます。この原則的立場に基づきまして、わが国と全ベトナムを代表するサイゴン政府との間に賠償協定を結びまして、この賠償が一九六五年に全部終了いたしております。そういう観点から申しますと、法的についてのみ申し上げますと、わが国と全ベトナムとの関係において、いわゆる戦争に基づく戦後措置という問題はすべて終了しているという立場でございまするけれども、もちろんこれはただいま田先生御指摘のとおり、実際上、北のほうに対しましてはわがほうの賠償がいっておらないということは事実でございますし、また、第二次大戦のつめあとが北のほうには実際上残っておって、それが実際上は解決されておらないという御指摘でございますけれども、その点につきましては、また全然法律の問題と別個の問題でして、政治的に処置しなければならない問題かと思います。
  48. 田英夫

    ○田英夫君 まあ条約局長おっしゃったとおり、まさに条約的、法律的な問題ではない事態にいまなっていると思います。また、条約を結びました相手も、全くいまかわってしまっていると考えざるを得ないし、同時に、ベトナム全土の実態というものは、今回のベトナム和平協定でアメリカさえもはっきり認めざるを得ない。つまり北ベトナムはもちろん、臨時革命政府というものの存在も認めざるを得ないという事態になってきている中で、いま北ベトナムと国交を正常化しようと、こういうことになってくれば、当然、無償援助という形まではっきり向こう側が示している以上は、これにこたえるべきだと思いますが、政府にそのお考えがあるかどうか、この点は政治的に判断をして外務大臣に伺いましょう。
  49. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) しかるべき時期に、北越との間に国交樹立の交渉をやる手はずをきめてまいらなければならぬと思いますが、そういった問題は、その場におきまして検討しなければならぬ問題だと思っております。
  50. 田英夫

    ○田英夫君 これは中国との国交正常化、いわゆる日中国交回復という場合には、中国はすでに大きな経済力、武力を持っていた、回復していたという状況もありますし、賠償という形のものが前面に出てこなかったわけでありますけれども、ベトナムの場合は、事態は非常に違うと思います。アメリカとの長い戦争という事態の中で、日本との戦争の結末をつけるいとまもなく、ああいう事態が続いてきたわけでありますから、当然向こう側は賠償的性格のものを望む。しかも、終戦当時には、ハノイ周辺だけで二百万人の人間が餓死をするという事態を日本軍の責任で発生をさせているというこの一つ、これはもうほんの一つの事例ですけれども、こういうことをベトナムの人たちは忘れていないわけであります。当然国交樹立の交渉の中の一つの大きな柱は、賠償的な問題をどうするか、これはあえて向こうの人は賠償ということばは使わない。これは意識的に使わないと思います。無償援助ということばを使う。したがって、しばしば行なわれますように、無償援助と有償の援助をからみ合わせるというような形が実際的にはとられるかもしれませんが、この点重ねて伺いますが、そうしたあえて向こうが賠償ということばを使わないというところまで現在配慮している状況の中で、日本政府はこれにこたえる意向があるかどうか、この点伺いたい。
  51. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府の方針といたしまして、いままで国会を通じて申し上げておりますことは、インドシナ援助につきましては、全ベトナムを対象として考えてまいりたい。  第二には、受け入れ国側の考え方をよく聞いた上で、どういう方式によるか、それを検討しなければなるまいということを申し上げておるわけでございまして、いま御指摘のような問題、具体的にどういうような御提示が先方からございますかわかりませんが、それが提示された段階で検討すべき問題だと思っております。
  52. 田英夫

    ○田英夫君 そういうことですと、ちょっとこれは先走るかもしれませんけれども、従来、戦争が終わりましてからインドネシアとかビルマとかフィリピンとかいうところと賠償をやってまいりました。まさしくフィリピンなどの賠償問題は重光外務大臣の当時、私も取材で内容を勉強した記憶がありますけれども、この結果は、実はずばり言って、日本の企業に賠償という名のもとにもうけさした。日本国民の税金が結果的に相手国にダム一つ残すけれども、結果としては日本の企業に流れるという形で賠償という名の特需であったというふうに言わざるを得ない面が非常に強いと思いますが、この点はゆめあってはならない。特にベトナムの戦禍、さらにその上に戦禍を受けているベトナムに対してそういうことがあってはならないと思いますので、実は無償援助をお引き受けになる意思があるかどうかということを伺う中で、私はこのことを頭に置きながら伺っているわけですけれども、この点について、先走るようですけれども、しかし、いまここで政府の責任者である大臣からこの点についての姿勢を伺っておきたい。
  53. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 既往の日本の賠償についての御批判がございましたが、これとても、日本が一方的にやったわけではなくて、相手国政府と協定を結び、細目を同意の上で実行いたしたわけでございますので、一がいに日本政府を論難されるのは当たらないと私は思います。ただ、当時の日本と今日の日本というのは、経済的な力量において大きな発展を見ておるわけでございまして、経済協力全体につきまして質量ともに改善を施さなければならぬし、また、それを実行するだけの力を持ってきておるわけでございますので、そういう全体の経済協力の改善の方向というものは、われわれはあらゆる場合貫いていかねばならぬことと思うのであります。  北越の問題とそれとがどういうように関連してくるのか、私はいまさだかにわかりませんけれども、いかなる形であれ、日本が行なうであろう経済協力というものは、そういうラインに沿ったものでありたいと私は念願するものです。
  54. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つ国交樹立についての大きな問題点というのは、従来から言われていたとおり、臨時革命政府に対する姿勢、取り扱いの問題であると思いますが、この点は、従来からお話がありますが、重ねて伺いますけれども日本政府としては、この臨時革命政府の存在をお認めになるかどうか、まず、この点伺います。
  55. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど田さんの御指摘の中で、日本政府の臨時革命政府に対する態度が明確でないというお話でございましたが、きわめて明確なんでございます。臨時革命政府を認めるつもりはないということをもうたびたび申し上げておるわけなんでございまして、そしてそれはパリ協定違反でも何でもないので、それぞれの主権国家が選択すべき問題であって、臨時革命政府を認めている国もあれば、サイゴン政府を認めている国もあるわけで、あって差しつかえないわけでございますが、日本政府はサイゴン政府関係を結んでおるわけでございまして、臨時革命政府関係を持つつもりはないわけでございまして、たいへんかたくななようでございますけれども、明確にひとつお願いします。
  56. 田英夫

    ○田英夫君 ちょっと、ことばの遊戯みたいですけれども、私伺いましたのは、その臨時革命政府の存在をお認めになるかどうかというふうに伺っているのであって、臨時革命政府承認されるかどうかというふうに伺っているのではないのです。この点はいかがですか。
  57. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これはパリ協定の当事者になっておりますし、事実上の勢力としてありますことは、私ども否定するわけじゃないのでございまして、われわれが国交を結ぶかどうかということにつきまして、われわれはそういうつもりはないということにすぎないわけです。
  58. 田英夫

    ○田英夫君 そこで具体的な問題として、この前、予算委員会で、南ベトナムの臨時革命政府の人が、代表が、日本に入国をするという問題を御質問したわけですけれども、法務大臣からお答えがありましたが、現在さしあたって、まさしくその臨時革命政府の人間が入国を申請しつつあるわけですが、これの入国を、報道によると一両日中にもお認めになるというふうになっていますが、これはそのとおりですか。
  59. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 入管行政は、法務大臣の管轄でございまして、外務省といたしまして、法務省から御協議を受けましたので、外務省なりの意見は法務省に伝えてございまして、法務省の判断で決定されるものと期待しております。
  60. 田英夫

    ○田英夫君 これは入管行政については実態をよく知った上で御質問しているので、どうかあまりお役所的な答弁をなさらないでいただきたいんですが、その点は、外務省ともうきわめて密接に連絡をとりながらおきめになっているに相違ないわけですから、まあ法務大臣より先に言うわけにいかぬということもあるかもしれませんが、お認めになるというお答えだと判断していいですか。
  61. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 近く法務省からの御発表があることを期待いたしております。
  62. 田英夫

    ○田英夫君 これは技術的なことですけれども、北ベトナムの旅券を持っているから入れるのだ、こういうふうに言われておりますが、そのとおりですか。
  63. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ法務省の判断が出ましてからお願いしたいと思います。私ども意見は、先ほど申しましたように、法務省まで伝えてございますから、まあ法務省の判断の出ない前に、おれのほうは法務省にこう言っておいたということを外務委員会で申し上げるというのは、ちょっと非礼だと思いますので、ごかんべんをいただきたいと思います。
  64. 田英夫

    ○田英夫君 これは結論はもう一両日中に出ますか。
  65. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのように期待をいたしております。
  66. 田英夫

    ○田英夫君 これは実は南ベトナム臨時革命政府に対する政府の姿勢というものは、すでに外務大臣からしばしばここで表明をされ、いまもはっきりと言われたように、これを承認するつもりはないというふうに言っておられるわけですけれどもこの姿勢で、たとえば三宅課長が北ベトナムとずっと接触をした結果、そういう姿勢でも北ベトナムとの国交樹立は可能であるというふうに判断されておると、こう考えてよろしゅうございますか。
  67. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもの希望は、無条件のベースで国交樹立の運びを希望しておるということを伝えておるわけでございますが、それに対して先方は、よくわかったというところまで、まだ全部いっていないということは、先ほどお答え申し上げたとおりなんでございます。
  68. 田英夫

    ○田英夫君 私も重ねて申し上げますが、北ベトナムとの国交樹立を一日も早くやっていただいてそういう中で戦禍に荒されたベトナムの状況を早急に改善をするために、日本もいろいろな面で役に立つべきだと、こう思うので申し上げるわけですけれども、私はいまの政府のお考えで、グエン・バン・チュー政権を唯一の政権だという態度で、これだけを、南ではですね、前提にされて、臨時革命政府は認めない、こういう前提で話を進めようとなさることは、早急に国交樹立しようという方向の中では、かなり私は困難な事態ではないかと、こう心配するわけです。  さらに申し上げれば、今回の十四項目の共同声明というものの内容も、外務省の専門家が現地の情報もあわせて、きわめて冷静に分析をされるならば、そしてそれが結ばれた状況というものも、外務省の情報できわめて冷静に分析されるならば、南ベトナムにおける実態というものは、おのずから当然把握されるはずだと思う。しかし、さきに、インドシナ三国の大使をわざわざ東京にお呼びになって会議をやられたようでありますけれども、これも報道を通じてしか知る由がありませんけれども、それによると、南ベトナム駐在大使の報告は、かなり私どもの判断と違っているように思う。そういう状況判断の中で、北ベトナムとの国交樹立を進めようとなさっていても、これは私はしょせん無理ではないかと、こういうふうにあえて私申し上げざるを得ないので、この辺のところの外務省状況判断というものが、非常にアメリカ、サイドに片寄っている、グエン・バン・チュー政権サイドに片寄っている。情報自体が私は片寄っていると思う。これはここで申し上げてもしかたがないことかもしれませんけれども、そういう前提に立って北と国交樹立をしようと、こうおっしゃっても、そう簡単に通るものではない。これは私の意見として申し上げますけれども、その点だけ一つ申し上げて、時間がきましたので、私の質問終わります。
  69. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまの御意見に対して、一つだけ申し上げておきますけれども、カナダ、ヨーロッパ各国、最近、北越と外交関係を樹立することになりましたけれども、それらの国はサイゴン政府承認いたして、すでに国交を持っております。しかし、臨時革命政府国交は持っていない。けれども、北越政府との国交樹立には成功しておるという事実がございます。で、日本の場合どうかという問題は確かにあるわけでございますけれども、そういう事実があるということだけは御指摘申し上げておきます。
  70. 田英夫

    ○田英夫君 その点は私もよく知っておりますけれども日本の場合とカナダといま違うとおっしゃったとおり、カナダその他の国は北ベトナムとの戦争責任、賠償の問題というような話は全く関係のないことでありますし、この点含めまして、同時にまた私も臨時革命政府承認しなければ北ベトナムとの国交が樹立できないなどということを申し上げているわけではありません。ただ、私の知る限りでは、外務省でお考えになっている南ベトナムの実態についての御理解というものが片寄っているんじゃないかということを私の意見として申し上げているわけであります。
  71. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最初に日中問題を少しお尋ねをいたします。  昨年九月、せっかく大望の日中国交回復が樹立されましてから、自来約十カ月に及ぶわけでございますけれども、その後、一番急がれなければならない実務協定も遅々として進まない。このままでいきますと、平和条約締結という基本問題もさらに先に延びる可能性が出てくるんではないかということを心配するわけであります。つい数日前も自民党の川崎氏が周恩来氏と会談をした際に、非常にそのことを心配される向きの発言が周総理からなされていることも伝えられております。とりわけ、航空協定をはじめとするその他の協定について、非常に早期実現を期待しておりながら、日本のほうからの反応がないということで当惑されているというか、何とか早く実現ができないもんだろうかという、そういう要望がなされたようであります。で、現在政府としても早急に解決のめどを立てなければならないという判断をお持ちになっておられると思いますし、そして何とか推進をはかろうとお考えになっているんじゃないかと、こう思われます。  そこで、今日までの経過、こまかいことは要りませんけれども、どうなっているのか、何が一体隘路になって、特に、いま申し上げた日中のいわゆる航空協定というものが進まないのかという問題を、まず最初に伺っておきたいと思います。
  72. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、実務協定の締結を急がなければならぬと政府も考えております。航空協定、海運協定、貿易協定、漁業協定等につきまして検討を進めておるわけでございますが、航空協定につきましては、去年の十一月にわがほうの案を先方に提示いたしまして、先方から対案が二月に届いたわけでございます。私の判断では、この航空協定自体は、日中間航空協定自体には格別重大な支障はないと判断いたしております。問題は、航空協定の問題ではなくて、台湾との間に事実上日台路線が維持されておるわけでございまして、日中間航空協定締結ということに関連いたしまして、日台路線というものをどういう態様で維持してまいるかということを、航空協定自体の問題ではございませんけれども、解決しておかなければならないと存じまして、そういうことについて技術的、行政的に諸般の問題点を詰めておるのがいまの状況でございます。このことは、日本政府がやらなければならぬ仕事でございまして、航空協定交渉とは一応別個の問題なんでございます。せっかく急ぎたいと考えております。  海運協定、貿易協定につきましては、双方の案をそれぞれ具体的に検討を進めておるわけでございまして、双方の理解もだんだん進んできておるわけでございます。具体的な交渉にそう手間どる問題点を含んでおるようには私は判断いたしておりません。  漁業協定につきましては、民間の漁業協定がこの六月二十二日に期限が切れるわけでございまして、本来ならば政府間協定で置きかえていくべきでございますけれども、双方相談いたしまして、今週から日中間の専門家の会議を開いておるわけでございますけれども、時間的に申しまして、六月二十二日までに政府案を練り上げるということはたいへん困難でございますので、その場合は、民間協定を暫定的に延長しておきまして、その期間に政府協定を急ぎたいと考えておるわけでございまして、私どもは鋭意各実務協定につきましての検討を進め、先方とも連絡をとってきておるわけでございまして、私どもの能力の足らぬために、期待される時点までにクリアできないということがございますならば、これは私どもの能力が足らぬことでございますが、私どもが努力を怠っているわけでは決してないということは申し上げさしていただきたいと思います。  それから、いま、漁業関係の日中の専門家会議を今週と申しましたが、来週の初めからでございます。
  73. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまの御答弁を伺っておりますと、日台路線の解決を前提としなければ航空協定というものが締結できないのか。また、日台路線の存続を認めつつ航空協定締結の可能性はあるのだという理解のしかたでいいのか、どちらでございましょうか。
  74. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは観念論でなくて、現実に日台路線を可能な限り維持してまいると、相当の輸送量になっておるわけでございます。日本の空港の物理的な制約から申しまして、日中協定に支障ないように、そういった点、ちゃんと処理しておかなければならぬという事実上の関係があるわけでございまして、前提とか条件とか、そういうたぐいのものではないのです。
  75. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、確認をしておきたいのでありますが、中国側としては、この日台航路の存続は認めつつ乗り入れを認めてもらうことはやぶさかではない、こういうふうに理解してよろしいのでございますか。
  76. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中国側の御意向を憶測することはたいへん僭越なんでございます。ただ、私どもといたしましては、国交正常化後といえども、日台間の事実上の関係というものは、国交正常化の精神をそこなわない範囲内において維持したいという希望を持って、事実上、貿易にせよ、航空にせよ、人の交流にせよ、いろいろやってきたわけでございまして、私が言えることは、その限りにおいて中国側が黙って理解を示してくれているというように考えております。
  77. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、むしろいまの御答弁から伺いますと、離着陸の機数が非常に多い。そのためにあるいは羽田を利用するか、その他の空港を利用するかという問題が必然的に起こるし、あるいは、日台路線についても、そのめどを立てながら、日中協定というものを結んで、両国間の航空機の乗り入れをしたほうがよろしいのではないだろうか、こういうふうに受けとられるようなお答えだったと思うんですが、はたしてその可能性があるのかどうなのか。たとえばすでに、政府側の試案かどうかわかりませんけれども、名古屋の小牧空港あたりがどうだろうかいうような話が爼上にのぼりましたときに、周辺の地域住民から猛烈な反対が起こりまして、私のところにも陳情が参りました。そういうような背景を考えた場合に、相当おくれてしまうのではないだろうか。一体いつになったら解決のめどが立つんだろうかという一つの疑問も、せっかく、鳴りもの入りというとたいへんことばが過ぎるかもしれませんけれども政府側としても日中国交回復については、その当時たいへん熱心な前向きの姿勢でお取り組みになったことは事実でございます。しかし、この十カ月を振り返ってみますと、何か火の消えたようになってしまいました。どう一体その後の国交回復への具体的な道しるべというものがいま開かれようとしているんだろうか。その一つの方途として日中航空協定などがあるわけです。また、そのほかの実務協定の取りきめというものもございましょう。中国側としては、周総理ことばを借りるまでもなく、早期実現をはかってもらいたいという、きわめて強い要望があった。やはりそれにこたえるのが日本としての責務ではないだろうか。こうなりますと、見込みはいつ一体協定が結ばれるのか、その時期はいつなんだ、これが一番問題になるんじゃないだろうか、こう思いますけれども、その辺のこれからの見通しはいかがなものなんでしょう。
  78. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど御答弁申し上げましたように、あらゆる各実務協定につきまして検討を進め、打ち合わせを進めているわけでございまして、決してなまけているわけではないのであります。  それから第二に、日本政府としても、それら実務協定の早期実現を、だれにも劣らず希求いたしておるわけでございまして、そのために努力をいたしておるわけでございます。いつそれじゃ完結するのかというお尋ねでございますが、なるべく早くいたしたいと思います。
  79. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 たいへん大平さんの御答弁、そつのない御答弁で、最近失言が続いておりますものですから、たいへん慎重に御答弁なさっておるのではないかと思うのですが、決して私はなまけているとか、努力をしないなんていう評価はいたしておりません。おやりになっていることは事実でございましょう。ただ、やはり新しい時代が日中間において開けようという段階を踏まえて、一つの見通しを持つ、これは早期というとたいへん抽象的な言い方で、おおむねいつごろということをやはり目途にしながらスケジュールを組んで御努力をなさるのが政府としての行き方ではないだろうかということで、あえてその時期をお尋ねしたわけでございます。重ねていかがなものでございましょうか。
  80. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は、私なりのめどを持ってやっておるわけでございますが、そういうことはいついつまでにやるぞというようなことを政府が国会の場を通じて言いますと、それにまたからまるいろいろの論議が出てまいるわけでございまして、たいへん不自由なんです。それで、精一ぱい、できるだけ早くやるんだというようなところで御信頼をいただくよりほかには私はないと思うのでございますが。
  81. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほど早期というふうにおっしゃられた。おそらくその早期という含みは、これから一年も二年もかかるものではない。おそらく今年中ぐらいには、あるいは今年の秋ぐらいには、こんなふうに判断してよろしいかと言っても御答弁は先ほどと同じようになりましょうか。
  82. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 常識的にひとつ考えていただきたいと思います。
  83. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 要するに、私どもが心配をしております日台路線や何かにからむ、そういう隘路はないと考えてよろしゅうございましょうか。全く別な日本国内の空港整備であるとか、そういうものに一切の問題点があるんだと、こう判断してよろしゅうございましょうか。
  84. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本の空港の物理的条件、行政的条件という、それから、そういう中で円滑な実施をやらなければいけない政府は責任を持っておると思うのでございまして、そういう点について検討を進めておると御理解をいただきたいと思います。日中間に問題があるわけではないのです。
  85. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 じゃあ次に移ります。  先日沖繩の浦添市が独自の立場で、周辺の海水の汚染状態調査した結果が知らされております、私たちが想像をしていた以上にたいへん風光明媚な沖繩が、もうきわめて加速度的に汚染されているという事実を知ったわけです。特に、その中心として調査された範囲は、牧港の米軍の補給基地これは米軍としてもおそらく極東随一と言われるくらいの強大な機能を持った基地だと言われております。結論から申し上げますと、いわゆる水質汚濁防止法に基づく許容量をはるかにこえておる実態が明らかにされたわけですね。この点について環境庁きょう見えておるようでありますので、簡単に、まずその経過について御報告をしていただきたいと思います。
  86. 角谷清

    説明員(角谷清君) 技術的なお話は環境庁のほうから御答弁いただくとしまして、ただいま先生御指摘の問題につきましては、そもそも公害問題基地公害と称せられておりますものにつきましては、政府といたしましても非常な関心を持っておりまして、昨年来、代表的な米軍の基地十九カ所、これは公明党のほうから御指摘をいただきましたものも全部含めまして、十九カ所につきまして、まず、手続といたしまして、米側に調査表を送付いたしまして、米側の回答を求めるという手はずをいたしました。この回答が本年の四月前後にほぼ出そろいまして、ただいまこれにつきまして、専門家におきましてチェックいたしておるところでございます。御指摘の牧港地区も、まさにこの十九カ所の一つでございまして、これも現在専門家がチェックいたしておるという段階でございます。なお、この十九カ所のうち五カ所は、これは海兵隊でございますが、これは海兵隊のほうで調査する能力もございません関係もございまして、日本側が直接調査するということになっておりまして、第一回目をもうすでに環境庁のほうでやられたはずでございます。したがいまして、この牧港の件につきましても、ただいま米側から返事がまいっておる。これを日本側でチェックしておる。この返事のチェックした結果によっては、さらに日本側において米側と話し合いの上、調査を進めるという手はずになっております。なお、現地におきましても、五月三十日に屋良知事とそれからメイプルス司令官、二人の間で会談をいたしまして、現地でも日本側とアメリカ側が共同で調査を始めるということになっておりますので、中央政府といたしましても、その現地の調査を勘案して、今後手続きを進めていきたい、こういうように考えております。
  87. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに、わが党としても独自の立場から昨年相当時間をかけて詳細に調査をいたしました。今回は、先ほど申し上げたように、沖繩の一市が独自の立場調査をなさった。その結論がほぼ共通した結果になっていることを、あるいはそれ以上の許容基準をはるかにこえている。その汚染の度合いが進んでいるということを知りまして、これは捨てておけないという判断を持つに至ったわけであります。環境庁のほうとしては、いまここで時間がありませんから、細部にわたることはあとで資料としていただければけっこうでございますので、おもないま汚染の状況は一体どういう物質によってよごされているかということを含めて御答弁をいただきます。
  88. 松田豊三郎

    説明員松田豊三郎君) いまの牧港についての調査の経緯は、外務省から御答弁のあったとおりでございますが、私どもそれ以上の資料は持ち合わせございませんが、浦添市の調査によりますと、特に環境基準と言いますか、国内法の基準をオーバーしておりますのは油分、これは非常に大きな数字で出てまいっております。その他酸性アルカリ性の度合いを示しますPH、それが値が高いということもございます。それからカドミウムが若干でございますが基準をオーバーしている。鉛がかなりオーバーした排水の水質であります。そういうふうな状況でございまして、その他のものにつきましては、発見されていないものも若干ございますが、主として油分が非常に高い、こういうことでございます。
  89. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 現在もその補給基地から一日二百数十トンの排水が流されておりますね。いま環境庁の御報告にもございましたように、鉛ははるかに許容基準をこえている。そのほかにカドミウム、PHも非常に高い濃度を示しているというような状況でありますと、これはまさしく捨てておけない。いままでおそらくこうしたことが返還前には心配されながらも、手がつけられなかったという実情ではなかったかと思うのですね。しかし、返還後本土復帰いたしましてからちょうど一年、このままにしておくというわけにはとうていまいらないと私は思うんです。しかも、その周辺地域は、聞くところによりますと、潮干狩りにたいへん適した地域だそうでございまして、もしカドミウムが貝を汚染してまいりますと、それを常用するその地域住民は必ずや近い将来にイタイイタイ病の発生を見るであろうという心配すらいまなされておるわけであります。こうした具体的な実態が、簡単な報告ではありますけれども大臣もお聞きになったとおりの状況が刻々とこれから拡大されようとしておるわけですね。決してこれは縮小されないと思うんです。そこで考えられることは、米軍との間に、これはおそらく外務省の仕事になるだろうと思いますので、早急にこの排水についての防護措置というものをとる必要にいま迫られてきておると、おそらくこれは沖繩県だけではとうていまかない切れない問題ではないだろうか、対処できない問題だろう、こう思われますので、大平さんとしては総合的にこうした新たな事実に対応するためには一体どういう考え方でもって米側と折衝し、こうした問題の起きないことを、事前にいわゆる防止する方法等について話し合いをし、具体的な措置を講じられるおつもりなのか。
  90. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま米軍から出てまいりましたデータをチェックいたしておる段階でございまして、その検討の結果に基づきまして何をなすべきか、何をなすべきでないかについて、政府側といたしまして判断をまとめまして、その解決にまず米側と協議をしなければならぬと思うのでございますが、その過程を見まして、政府として何をなすべきかということは考えてみたいと思います。
  91. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 けさも報道されておりましたけれども、原潜による放射能の影響というものは非常に大きいということが発見されております。この実態はどうなっておりますか、環境庁。
  92. 松田豊三郎

    説明員松田豊三郎君) 放射能の汚染につきましては、科学技術庁の所管になってございます。
  93. 角谷清

    説明員(角谷清君) ただいま先生御指摘の件につきましては、直ちに米側に照会いたしまして、まず事実関係の確認を行なうということに努力をしておるところでございます。
  94. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま大平さんからお話がございましたが、これは急がれなければならない問題でございますね。しかも、浦添市のごときは、先月から今月にかけて三回採水をいたしまして、そして現地の環境保全研究所ですか、これに持ち寄って調査を依頼したその結果が出されているわけです。それは環境庁でもおそらく掌握されておるだろうと思うんですが、もう事態は決して猶予できないという、そういうせっぱ詰まった事態に私は当面しておると思うんです。したがいまして、この問題はもう一刻を争う、そういう事態であることは十分お認めいただいたと思うのでございますので、できるだけ早い時期にこの結論をまとめて米側と折衝され、そうして具体的な防護措置をとっていただきたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  95. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 承知いたしました。
  96. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 時間がありませんから、もう一点だけ、最後にお伺いしておきたいと思います。  これは西アフリカ六カ国を襲っております干ばつによる飢餓状態についての日本援助のしかたでございますが、外務省としては、FAOから要請がありましたときに、緊急援助用予算のうちから四億円、百五十万ドル、これを支出しょうという腹づもりがおありになったようでありましたけれども、大蔵省と折衝した結果断わられたというふうな結論になって、結局今月の七日ですか、七日の期限切れには間に合わなかった。ところが、大蔵省に言わしてみれば、外務省からは公式に何らそういう要請は受けてない。しかも、主要国は緊急物資を現地に輸送したり、あるいは輸送機であるとかトラックであるとか、要するに必要なそういう物資を緊急援助している。あるいはお金でもって支援していると、こうことが伝えられております。しかも、GNP第二位なんていうことで、世界の注目を浴びております日本が、何ら、いままであまり関係が薄いとはいうものの、人道的な立場に立てば、当然、緊急にこの対策に対する措置というものが講じられてよかったのではないか、非常に残念でたまらないのですが、この実態はどうなっているか。これからそういう問題が起こったときに、政府としてはどういう姿勢でもって臨むのか。過去においては、去年でございましたか、あの中南米のマナグアに地震があったときにも、現地の邦人の意見を総合しますと、日本からの援助が非常におくれたということを残念がったことが伝えられておりました。もう何かこう、いつもそういう問題に対しては後手後手に回って、そうしてよくないエコノミックアニマルというような、そういうような極端な悪評だけを日本が甘受しなければならないというようなことでは、これからの外交を進めるにあたって、きわめてマイナスの面だけが残るのではないかということを心配するわけです。この点、どうなっているのか、それだけを伺っておきます。
  97. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) このサハラ周辺の国々の干ばつ状況、非常に事態が、これはまあ三、四年前から干ばつの傾向はあったわけでございますけれども、ことしの場合は数十年来見られないような程度のものでございまして、FAOがとりあえず信託基金を設けて、次の収穫期の種子の確保、あるいは井戸を掘る機材の提供、それから家畜の飼料の確保、そういったものに充当するために千五百万ドルの信託基金を設けることにしたから、日本政府もひとつ応分の拠出をという要請がございました。さっそくセネガルと象牙海岸の両大使館に指示いたしまして、実態の調査を依頼いたしましたが、なお、FAOからも補足の資料を求めまして検討いたしました結果、二億六千万円を支出する腹をきめまして、一昨日の閣議できめていただいたわけでございます。四億円要求したが、大蔵省からけられたというような経緯はございません。  それから、今度の日本の拠出の時期でございますが、四週間以内という一応の期間の要請があったことは事実でございますけれども、それは必ずしも厳格な期限というわけではございませんで、なるべく早くという趣旨のものとわれわれは了解いたしております。その証拠に、その信託基金に対する拠金の払い込みは日本が六番目になっておりまして、決して御指摘のようにおそくはないわけでございます。  金額でございますが、西独は政府が百六万ドル、民間が二十一万ドルで百二十七万ドルでございます。英国が七十五万ドルでございまして、わが国の拠出金額は決して見劣りのする金額ではないと承知いたしておるわけでございます。  ただ、政府の予算を使うわけでございますので、実態調査について、一応データを確認しておかなければならぬ事情もあり、各国の出方もバランスの上から見る必要がございますので、そういうことをやっておったわけでございまして、ことさらこれをおくれたものと私は思っていないわけでございます。しかし、仰せのように、タイムリーに、時期を失しないでこういう措置を講ずることが望ましいし、また望ましいことは申すまでもないことでございますので、今後、御指摘のように、こういうケースにあたりましては、外交機能を早急に動員いたしまして、早期の手当てができるように措置いたしたいと思います。
  98. 星野力

    星野力君 私は、先ごろ審議されました在外公館関係の法案に関連しまして、在外公館のあり方というようなことについて質問をしようと思っておりましたが、私の都合で質問の機会を失しましたので、ここで質問さしていただきたいと思います。  在外公館は、現地で日本政府を代表して、在留邦人や日本人旅行者の人権、生命、財産を保護する任務を帯びていると思うのでありますが、いかがでしょうか。
  99. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) 在外公館は、いま御指摘のありましたように、外国にありまして、日本人の生命、財産を保護する任務を持っております。
  100. 星野力

    星野力君 具体的な例をあげてお聞きしたいと思います。  ラオスのビエンチャンでは、日本人が身体や財産の危険にさらされたことが、私の知る限りでも何件かございます。私自身、ビエンチャンでは苦い経験をなめているのでありまして、一九七〇年四月以来は、不便を忍んでもビエンチャンには立ち寄らないことにしてきました。私、先週は、先ほどお話のありました社会党の西村議員などと御一緒いたしまして、ハノイに滞在いたしたのでありますが、今度も往復にビエンチャンに着陸したのでありますけれども、空港のロビーにもあがっていかないというように警戒いたしておりました。  私自身のことは申し上げないのでありますが、やめにいたしますが、同じく一九七〇年、少し古いところから始めますけれども、六月二十日に、ビエンチャンのランサン・ホテルに泊まっておりました日本電波ニュース社の記者が、白人を含む五人の現地官憲——白人というのは米人でありましょうが、これが、現地官憲と言っていいかどうかこれは問題だと思いますけれども、その人々によって、ホテルの部屋から携えておった荷物一切とともにどこかに連行された事件がありましたが、外務省ではそれについて御存じでしょうか。
  101. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) その事件は存じております。ただ、この事件が起こりまして、そのときに御一緒におられた方が大使館に通報されて、初めて知った次第でございます。
  102. 星野力

    星野力君 どういう理由で連行されたか、お調べになっておられると思いますが、説明していただきたいと思います。
  103. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) 私たちが一行の方から聞きましたところでは、石山記者がちょうどラオスを出てバンコクへ行く飛行機に乗られる直前に、さっきおっしゃいました七人のラオス官憲が入ってまいりまして、この部屋に爆弾があるとの情報があるのでやってきたと言って、石山記者のトランクを検査し、同時にバスルームに入りまして、そこで発見した紙包みを示して、同記者を携行品とともに連行したと、そのように聞いております。
  104. 星野力

    星野力君 私ども知っておることと大体一致いたしておりますが、官憲の人数の点なんかは多少違っておるようでありますけれども、その記者の泊まった部屋にプラスチック爆弾が発見されたという理由で連行されたのであります。官憲はいまおっしゃるように、荷物や部屋を調べ、バスルームから発見したといって洗たく石けんの大きいようなものだったそうでありますが、それをその記者に示して、プラスチック爆弾であると言って御丁寧にもベトナム民主共和国で発行されておるベトナム・クーリアという週刊誌でありますが、それに包んであったそうであります。その記者は、前日の夜、ハノイからビエンチャン空港に着いて、空港に出迎えた日本大使館の立ち会いで入国手続をしてランサン・ホテルに入っておったのであります。示されたプラスチック爆弾というものが現地の官憲が初めから持っておったというものであるということはこれは言うまでもないことであります。そういうようなことが一体許されていいのか。先ほどおっしゃるように、同行者がありました。向かいの部屋に二人泊まっておったのでありますが、その人々に連行されることを知らせることも許されずに連れていかれた、こういう無体な事件でありますが、外務省は大使館としてこの事件をどういうふうに処理されたか、お聞きしたいと思います。
  105. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) この事件につきましては、先ほど申し上げましたように、同行の方からそういう通報を得まして、大使館では直ちにラオス側と連絡をとったわけでございます。その際、ラオス側のほうでは石山記者がその日のうちにラオスから出国するならば身柄を釈放するという申し出がありましたので、大使館といたしましてそういう在外の邦人の生命、財産を保護するというたてまえから申しますと、いち早く出国するのが賢明であると、こういうことから、石山氏とも御相談しまして出国を——もともと出国されることになっておったのでありますけれども、この要請に応じまして同時に石山氏の身柄は釈放されたわけでございます。
  106. 星野力

    星野力君 この場合は同行者があったからよかったわけですね。同行者が、本人のいないこと、荷物のないことに気づいてホテルの事務所に聞いたら、どうも官憲が連れていったらしいということで、同時にいまおっしゃいましたように、日本大使館へ通報して調べていただいた、かけ合っていただいた。その結果、いまおっしゃるように、日本大使館が本日中の国外退去を保障することを条件に釈放した、いわば強制退去であります。まあ本人も早急に帰ることになっておりましたし、また、身辺を保護するという意味からそういう処置をとられたのはけっこうでございますが、これ自体が無体なやり方であります。日本人に対してなすべからざる扱いをやっておるわけでありますが、それに対して日本大使館が存在しながら、こういうひざ元でやられたということに対して、何らかの申し入れをラオス政府になさったかどうかお聞きしたい。
  107. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) 先ほど申し上げましたように、石山氏は身柄釈放されたわけでございますし、同時に、石山氏からそのときに伺ったところでは、所持品等も押収された事実はないということでございましたので、われわれといたしましては、これで万事済んだということで、特にその後、ラオス政府に対して申し入れはしておりません。
  108. 星野力

    星野力君 それではもう一つケースをお聞きしますが、これは当時新聞にも報道されたことでございます。同じ一九七〇年の十二月でありますが長野県の外科医師の船崎善三郎氏と京都の病院の薬局長である益田明典氏がハノイからビエンチャンに着きました。この人たちも日本大使館にお世話になったわけであります。ところが十二月五日のバンコク行き飛行機の座席が予約してあったはずなのに、座席がないということで乗れず、日本大使館員のすすめで対岸のタイ国のノンカイから汽車でバンコクへ行ったらいいだろうということで、そういうことにし、その大使館員に伴われてノンカイに入ったところを官憲に逮捕され、何日間か拘留され、ハノイから持参した文書や写真などを押収されたまま今日になっております。  この事件について ご存じのところをお答え願いたいと思います。
  109. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) いま御指摘のありました事件は、昭和四十五年十二月に船崎、益田というお二人の方が十二月五日北ベトナムのハノイからビエンチャンに立ち寄り、同地からバンコクへおもむく予定でありました。ところが、予約しておったと思われるラオス航空の塔乗を拒否されましてお二人は大使館へ参りまして、それで大使館の援助を求めたわけであります。そこで大使館のほうでは、ラオス航空のほうに電話で照会をいたしましたけれども、座席がないということを繰り返すのみで、何ら確かな返事はございません。そこで大使館のほうでは、お二人に、タイ航空なら翌日ある。そこで翌日の便でおいでになったらどうですか、こういうことを申し上げたわけですけれども、お二人はどうしてもその日にお立ちになりたいということで、大使館のほうへほかに交通機関はないのかというお尋ねがあったわけであります。  そこで大使館のほうでは、パスか汽車で行く道はあるが、汽車で行くとたいへんだ。時間もかかるというようなことでお話ししましたけれども、二人の人はすぐに立ちたいということで、その日に大使館の現地補助員がつきまして、ラオスからタイのノンカイへ出たわけでございます。先ほど大使館のほうですすめて汽車に乗せたと、こうおっしゃいましたけれども、これはいま申し上げましたように、お二人があくまでその日に立ちたいということで、汽車以外に交通機関がなかったので、それを利用されたわけでございます。  そこで、ノンカイに着きまして税関に行きましたところ、税関のほうで所持品検査をいたしまして、その結果、パスポートとか書物とか記録、フィルム等、衣類以外のすべての所持品を押収されまして、その押収された所持品が返ってくるまでホテルにとめ置かれたわけでございます。別に逮捕とか何とかということではございませんで、ホテルにおれと、こういうことでございました。しかし、十二月八日に、一部の、パスポートとかそれからカメラとかおみやげ品を返されまして出発が許されましたので、お二人は十二月八日にノンカイを立ちまして、汽車で十二月九日にバンコクへ帰ってまいりました。  以上が事件の概要でございます。
  110. 星野力

    星野力君 この件につきましては、私どもも当人たちについてかなり詳細に調査をいたしました。いまおっしゃることと若干違う点もあるわけであります。もちろん本人たちは早く帰りたいという希望を持っておりましたが、当の大使館員から汽車がよろしいということを、これまたかなり熱心にすすめられたことも事実のようでございます。いずれにしましても、日本大使館の館員が世話をし、案内しながら、こういうことになっておるのであります。どういうこれは善後措置をなされたのか。おそらくいまのお答えですと、別段この問題についてタイ政府に申し入れをなさったということでもないようでございます。私たち調査いたしますと、ラオス航空、座席がないといって断わったのでありますが、飛行機の空席はたくさんあったんです。このことは、その飛行機に乗った日本人の公式の場における証言も出ておるわけであります。だから、この事件は計画的なものではなかったかとさえ思われる。その計画に日本大使館が一枚加わっていたようにさえ見える事件なんであります。その点をよく考えていただきたいのであります。日本大使館員は赤坂勝美という人物で、現在も、私、先日ビエンチャンで確かめましたが、現在も大使館で働いておられる。まあいろいろこれは話題になる人物で、私、最近週刊文春五月十四日号にもその人物が出ているということを聞かされまして、ようやく手に入れたのでありますが、この週刊文春には辻政信氏——前に参議院議員であった辻政信氏が一九六一年四月、ビエンチャンから姿を消したまま今日に至っておりますが、あの問題を書いております。当時、バンコクの日本大使館の一等書記官であった伊藤知可士氏が辻氏に付き添ってバンコクからビエンチャンまで来た。その伊藤氏が去ったあと、辻氏と接触しておったのが、同じこの赤坂勝美、これによりますと赤坂ロップという名前になっておりますが、現にビエンチャンの大使館で働いておられる人、現地で雇用された人だと思いますが、この赤坂氏について、赤坂氏というのはどういう人物か、また、赤坂氏について辻政信氏のことをお調べになった——なっておられると思います、これは当然やっておられることと思いますが、調べられた事実があるのかどうか、辻氏とこの赤坂氏とのかかわり合いについて調査なさったかどうか、その辺のこと、簡単でよろしゅうございますから、御説明願いたいんです。
  111. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) 赤坂勝美は、現在ラオスの大使館の、日本大使館の現地補助員でございまして、もちろん外交官ではございません。大正九年生まれで、昭和三十九年一月に採用されまして、現在も引き続き勤務しております。本省から派遣された館員の監督を受けまして、庶務一般の便宜供与をやっております。  それからいま御質問のありました赤坂と辻議員の関係でございますが、これは私いま資料を持っておりませんし、かつて調査したかどうかも、私自身が、よく存じておりません。
  112. 星野力

    星野力君 もう一問。  辻政信氏は、この参議院の議員であって、行くえ不明になった人でありますから、これについてはいろんな関係から調査が行なわれたはずでありますし、当然外務省としても調査なさっておられるはずと私は思います。ことに、この辻政信氏に最後の時期において接触しておった人が、現に外務省の雇用した人間として働いておるのでありますから、この人について調査なさらないとしたらこれはおかしなことなんです。私はきょうは質問、もう時間がないからやめますが、どういう調査をなさったか、それをひとつ書類で私に出していただきたいと思います。それを拝見した上でまた検討をしてみたいと思っておりますから、お願いする次第であります。  私、ここで赤坂氏個人を問題にしているわけではないんです。ビエンチャンを中心にしまして、こういう事件がもうたくさん起きておるんです。私自身なんか、やはり飛行機が、座席があるにもかかわらず飛行機の座席がなくなったと、これは怪電話でそう言ってきまして、さらに確かめたら、あなたは乗れるのだということでありましたが、そういうことがあったり、街頭で襲われたり、いろいろの経験をいたしております。これでは——その善後措置。襲われたり、連れて行かれるのはしかたありませんけれども、それに対して今後そういう事態が起こらないような措置というものを日本大使館はやらなきゃいけない、現地の政府に対して。それがやられておらぬわけですよ。そういうことを私は問題にしておるわけであります。こういう状態でいいと思いますか。これでは日本人旅行者の身辺の安全は守られないと思うのでありますが、大平外務大臣、どういうふうにお考えになりますか。どう今後こういう問題に対して処置していったらいいとお思いになりますか。
  113. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、邦人の生命、財産の保護という重大な任務に欠くるところがあってはならぬと思われます。私どもといたしましては、与えられた要員、定員の中で最善を尽くしてまいりたいと思いますが、いま現地の大使館の状況を見ておりますと、たいへん手薄な面がございまして、御期待に沿い得ないでいる面がありはしないかと心配をいたしておるわけでございますが、一段と注意を喚起いたしまして、遺憾のないようにつとめてまいりたいと思います。
  114. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 時間がまいっておりますので……。
  115. 星野力

    星野力君 よろしゅうございます。これで打ち切ります。
  116. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本調査に対する質疑は、本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後零時二十七分散会      —————・—————