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1973-05-08 第71回国会 参議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年五月八日(火曜日)    午前十時十一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 佐藤 一郎君                 山本 利壽君                 田  英夫君     委 員                 岩動 道行君                 木内 四郎君                 杉原 荒太君                 八木 一郎君                 矢野  登君                 加藤シヅエ君                 小谷  守君                 羽生 三七君                 森 元治郎君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        外務大臣官房長  鹿取 泰衛君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省欧亜局長  大和田 渉君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省国際連合        局長       影井 梅夫君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査  (米国の新大西洋憲章構想に関する件)  (日中航空協定締結問題に関する件)  (北朝鮮のWHO加盟問題に関する件)  (ニクソン米大統領外交教書に関する件)  (日米間のミクロネシア協定に関する件)  (分裂国家との国交樹立問題に関する件)     —————————————   〔理事山本利壽委員長席に着く〕
  2. 山本利壽

    理事山本利壽君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  本日、平島委員長所用のため、私がかわって委員長の職務をつとめます。よろしくお願いいたします。  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案衆議院送付)を議題といたします。  本案につきましては、前回の委員会におきまして趣旨説明及び補足説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 外務大臣は連休の間、欧州三国御訪問でたいへんにお骨折りで御苦労さまでございました。  今日議題になっておりますことにつきまして、最初に伺いたいのでございますが、ただいま日本外貨がたいへんに、十分に蓄積されているというふうな状態でございますが、在外公館の中で、できるならば、これを家賃を払わないで、家屋並びに土地買収をして日本国の持ちものにしたほうが経済的にも非常にいいんではないかというお話を始終伺っておりますが、現在そういうような傾向を、この外貨の蓄積とにらみ合わせてそういう方向に進めていらっしゃるかどうか。また、この前の委員会から、自後どのくらい買収が進みましたか、その辺をまず承りたいと思います。
  4. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) 加藤先生指摘のとおり、私どもといたしましては、在外公館事務所公邸、さらにできれば館員宿舎国有化を従来進めておりまして、逐年その率を増加しているわけでございます。で、在来からの数字で御説明いたしますと、四十七年、昨年度の本来の予算では、事務所につきましては土地を二十五件、合計いたしましたこれは累積数字でございます。その結果一七・七%の国有化を完了したことになりますし、それから建物につきましては二十五件、これも一七・七%でございます。公邸につきましては五十件、比率で申しますと三五・四%でございます。それから公邸建物につきましては四十六件、比率で申しますと三二・六%でございます。  以上を平均いたしますと、大体二五・四%が昨年度の本来の予算国有化した率でございます。さらに昨年度におきましては、特に外貨累積ということも御考慮いただきまして、補正予算の中に在外公館国有化予算を入れていただきました。その結果、事務所につきましては三十三件、したがって、これは土地でございますが、二三・五%に達しました。建物は二十七件、一九・二%に達しました。公邸につきましては、合計が土地につきましては六十二件になりまして、四四・二%に達し、公邸建物につきましては五十三件、したがって、三七・八%に達したわけでございます。  以上を平均いたしますと、昨年度の補正予算手当をもちまして、大体国有化を三一・二%したということになるわけでございます。  ことしの予算、四十八年度の予算でどのくらいの国有化がさらに増加するかと申しますと、事務所につきましては三十三件が三十五件になる、したがって、二四・四%でございます。建物につきましては、二十七件が二十九件になる、二〇%でございます。公邸につきましては、さらに国有化の度合いを進めまして、六十二件が六十五件、これは土地でございます。四五%になります。それから建物は五十三件が五十八件になりまして四〇%ということになり、それを平均いたしますと三二・六%になる予定でございます。このうちで、お気づきのとおり、特に公邸につきましては国有化率はほかの事務所よりも進みまして、先ほど申しましたように、土地につきましては四五・四%、建物は四〇%となるわけでございます。
  5. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 在外公館がだんだん国有化されていくことはたいへんにけっこうな傾向だと思っておりますので、さらにまあ外貨が十分にあるという現状におきまして、これを進められることはたいへんにいいことだと思います。  次に伺いたいのは、せんだっての提案理由の御説明の中で承ったんでございますが、「日中国交正常化に伴い、取り急ぎ政令により設置いたしておりました在中華人民共和国日本国大使館法律規定」し、設置されたこと、この件なんでございますが、現在は中華人民共和国大使館は、かりにホテル住まいをしておられまして、近い将来にもと中華民国大使館あとに移るということなんでございますね。そうでございますか。
  6. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 中国側希望といたしまして、現在とりあえずホテル住まいでございますが、将来は麻布にありましたもと国民政府大使館あとへ移したいという希望を表明しておられるようであります。
  7. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そこで私が承りたいと思いますことは、こういうような外国在日大使館不動産所有権推移ということがどういうふうに行なわれるのか。一般のことは伺わなくてもよろしゅうございますが、この場合に、私の記憶に誤りなければ、今日のいわゆる台湾政府がいままで大使館として使っておられたところは、もと後藤新平さんの屋敷あとであったかと思います。それがどんなふうにして中華民国所有に移ったか。そしてそういう場合の不動産所有権がどういうふうに規定されていたか。そしてそれが今度中華人民共和国に移った場合の不動産としての法律的な手続というものはどういうふうに行なわれたのか、その説明を伺いたいんでございます。
  8. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 麻布にありました土地建物につきましては、古い時代のことは私は必ずしも承知いたしておりませんが、合法的に、しかもそれが不動産に、はっきり登記した形で昨年の日中国交正常化前までは、旧国民政府財産として登記されております。また、これの経緯について何ら疑義はなかったというふうに了解いたしておる次第であります。昨年の日中国交正常化ができました時点におきまして、日本政府といたしましては、この財産中国外交機能を行なうためのいわゆる外交財産でございますので、その中国正統代表する政府北京であるという法律的な決定になり、その結果、昨年の九月二十九日以降は、所有権といいますか、所有権もともと中国でございますが、その財産処分権等の件に関しましては、中華人民共和国政府がこれを処置できるものと、こういうふうに解釈された次第でございます。
  9. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういうふうに解釈されたということと、それからそういう不動産が、いままで持ち主であると持ち主は思っていただろうと思います。そういうものが別の持ち主に移譲されるという、そういう手続というのは、日本外交解釈がそうであれば、それだけでよろしいのでございますか。不動産としての移譲の手続というものはどういうことになるのですか。何もなくてよろしいのでございますか。
  10. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 法律的には現在不動産登記上は中華民国財産ということになっておりますが、この意味は中国財産ということでございまして、現在でも中華人民共和国政府処分できる財産であると。ただ、登記上の名義変更をしたいという先方希望がございまして、現在登記所のほうに対して、名義変更、それは中華民国から中華人民共和国財産という表示に書きかえる手続を進めておる次第でございます。
  11. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますと、不動産としての登記名義手続変更ということが行なわれるわけで、それがもう行なわれたのでございますか、まだでございますか。また、その場合に、普通の私有財産でございましたら、そういう場合には、必ず、前の所有者承諾なしにそういうことはできないことでございますが、こういうような場合には、それはどういうことになるのでございますか。
  12. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 手続は現在進行中でございまして、まだ完了いたしておりません。国有財産でございますので、その正当な所有権者がだれであるのかということに対する政府としての確認行為を行ないまして一その書類に基づきまして登記所のほうでは、申請があれば、これに対して名義変更手続を進めていく、こういう手順になっておるわけでございます。
  13. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 まだよくわからないのでございますが、そういうような場合には、前の名義の者に対しての承諾というものは全く要らないのでございますか。日本がこういうふうに解釈したというだけでよろしいのでございますか。
  14. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) これは日本が解釈したというだけではございませんので、日本台湾との外交関係がなくなっておるということで、中国正統代表する合法政府北京政府であるという決定になりました時点におきまして、中国国有財産はその正統政府がこれを処分できるということになるわけでございますから、中国国有財産でありました現在の土地建物につきまして、中国政府のほうがその所有権を持っておる、こういうことに相なるわけでございます。
  15. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 これがもし国交をなくした相手国との場合ということに限定いたしますならば、あるときにはそれが戦争で敵国というような関係になっていた場合もたくさんあったと思います。そういうような場合には、在外財産没収というようなこともあったと思うのです。今後の場合には、没収の形をやっぱりとるんじゃございませんか、そういうことは全然ないのでございますか。
  16. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 日本中国という国との国交はずっと続いておりますし、中国との関係に別に現時点においては戦争という問題はございませんので、ただ、その中国代表する主人公といいますか、法律上の代表者はだれかというと、共同声明が発せられた以降は、北京政府がその代表者である。したがいまして、その財産はその正統な主人が処分できるということになるわけでございます。御指摘の、戦争という場合でございますと、これは特定のある国と国との間で戦争状態が起こった場合に、これはどういう措置がとられるかというと、没収とか一時管理とか、ウイーン条約によりますと、管理するというような問題が起こるわけでございますが、それと現在の問題とは性格を異にいたしておると、かように思うわけでございます。
  17. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 いまの説明、何かもうちょっとはっきりしないところがあるようで、普通の常識でいえば、日本外交的なプロセスというものはそれでよろしいだろうと思いますけれども、前の持ち主意思疎通も何にもなしに、こうなったということで、不動産名称変更手続というようなことをやるというようなこと、そういうようなことはほかに例があるのでございますか。
  18. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 台湾関係について見ますと、具体的には二、三、フランスその他の同種の前例がございます。これは急遽、旧国民政府がその国との外交関係がなくなりまして、大使館を閉鎖いたしましたときに残していったわけでございますが、その国の政府は、これを新しく北京政府のほうに没収して渡した例もございますし、それからいろいろな手続をとって渡した例があるということは承知いたしております。現在のわが国における状態からいきますと、本来ならば昨年の日中国交正常化ができます前の時点で、その時点におきます所有権者処分権を持っておりました旧国民政府が、その事態推移を見て、この財産をその時点処分されるならば、これは可能であったわけでございますし、多くの場合には、旧国民政府が諸外国でそのような措置をとって、財産を全部整理して外交関係の新しい展開に備えていったというのが実情でございますが、わが国の場合には、何らかの理由でその措置がとられなかった。これは正式に、意思疎通という問題では、私たちといたしましては、友人として、処分される御希望があれば、処分されるのが適当であるというような考え方は、台湾のほうの人と連絡したこともございますけれども国交正常化ができます時点までには、何らの措置がとられなかった。そこで、その財産が放置されたままで、それが大使館が閉鎖されて引き揚げという事態になったわけでございます。法律的にいいますと、昨年の九月二十九日以降におきましては、中国財産として日本にあったものは、国有財産、特に外交上の機能を発揮する大使館というようなものは、その国の財産である限り、その国の正統処分権者が自分のものとして主張する場合には、これに引き渡さざるを得ないというのが国際通念上の一般処置であり、またこれがそういうものとして各国で取り扱われておるというふうに御了解いただきたいと思います。
  19. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 これは非常に特殊なケースだと思いまして、むしろ処分をされておいて、そして新しい持ち主にかわっていくということのほうがわかりがたいへんよろしいように思いますけれども、今回とられました処置というのは、何かそこのところで区切りがはっきりしないようなところがどうも残るように考えられるんでございますが、これ以上いま伺ってもしようがないと思いますから、このことにつきましてはこれ以上伺いません。  次に、通商代表部のことなんでございますが、共産主義の国は領事館というものを置かないで、通商代表部というものを持つものでございますか。
  20. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 共産主義国通商関係の処理にいたしましては通常、通商代表部というような形をとっている例が多いようでございますが、ただいまおっしゃいました領事事務ということになりますと、査証の発給とか、在留民の保護とか、その他一般の問題がございますので、通商代表部という概念領事事務という概念は必ずしも一致いたしませんので、領事事務を中心に行なうというものが必要な場合には領事館をつくったり、あるいは大使館の中に領事部を設置したりしてその仕事をしているわけでございまして、通商代表部はあくまで通商問題だけを処理するという形になっておるんではなかろうかと思います。
  21. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 通商代表部というものを置いておる国と、それからこちらは日本として通商代表部ではなくて総領事館領事館というものを持つわけでございますね。そういう場合には、そこの領事館に在勤する人員というものと、それから通商代表部に在勤する人員というものは、やはり交換している両方の国でバランスをとるというのが原則でございますか、それともそういうことはあまりかまわずに、互いの国の都合でもってやるかということと、そしてそうした場合に、外交官特権というものはどの範囲でもって認めていくのか、そういうことをちょっと伺いたいんです。
  22. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 現在、具体的にはっきりいたしておりますのはソ連との場合でございますけれども日本のほうには通商代表部という制度がございませんので、大使館及び領事館の中で領事事務及び通商事務を取り扱っておるわけでございます。共産圏のほうがそういう通商代表部という特殊な、国家貿易というものを踏まえての制度をとってくるわけでございますが、日本の場合には、ある場合には、民間の商社とか通商関係の業界がこれを取り扱っておる業務もその通商代表部で処理されておる、こういう形になっております。で、わが国のほうにはそういう制度がございませんので、体制の異なった国との間の話し合いになりまして、そういう通商代表部を置きますときには、その人数を何名にするか、そしてそのうちの外交特権を持っておる者はその代表者に限るとか、そういった詳細な規定を置きまして、これが非常に固い協定の形で結ばれて、そういう通商代表部活動しておるというのが現在ある代表部の姿である、かように御了解いただきたいと思います。
  23. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それでは、たとえば日本とソビエト、この両国の間で通商代表部日本でいえば領事館総領事館、そういうものの人員というもののバランス、そして外交特権を持っている者とのバランスというのはどのようになっておりますか。
  24. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) まず大使館同士の間のバランスをとるというようにお互いに話し合って協定ができておりますし、それ以外にソ連のほうでは通商代表部というものをつくっておりますので、このうちの代表の長とそのアシスタントが外交特権を持った人間として認められる。それ以外の人は外交特権が必ずしも認められていない。その人数につきましては、その通商の状況に応じまして話し合っておりますが、大体正確な数字、私、所管でございませんので、ただいま記憶いたしておりませんが、何人かの人数がいまきめられておる。もちろんこれに見合いまして、これと直接関係がないわけでございますが、わが国の、ソ連のほうにおきますそういう通商活動がふさわしくできるようなわがほうの人数大使館以外の民間業者その他の人数というものが確保されておるという形になっておるものと私は了解いたしております。
  25. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 現在は、それでは大使館とか公使館とか、そういうもののワクの中に、通商代表部とか領事館とかというものの外交官特権を許されるもののワクというものは、全体を合計したものでいくんでございますね。
  26. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) ちょっと私の説明が足りなかったかと思いますが、大使館大使館の間では別に切り離してバランスをとって、それで通商代表部というのは特殊な制度としておでこになって、一応のワクがきめられて活動しておる。それに見合うものとして、わがほうの先方における通商活動をどういうふうに人数的に確保するかというのが、民間業者その他の問題として考えられておる、こういうことだろうと思います。
  27. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 その外交官特権を持っている館員数というものは、大体お互いに相談してきめるということは、つまり大体同じに置くということでございますね。それで同じに置くというような協定がきまっていて、現実の問題としては、日本中国の場合、日本ソ連の場合、現実の問題としてはどうなっておりますですか。
  28. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 中国わが国との場合におきましては、まだその通商代表部というはっきりした形にはなっておりませんので、現在大使館二つ相互に設置された。そこで過渡的でございますが、国交正常化前の時点におきまして、民間覚え書き事務所というものがいわゆる貿易関係をやっておったわけでございまして、これの協定が今年一ぱい有効である。その覚え書き協定に基づく覚え書き事務所というものが東京には置かれておるわけでございます。また同様に、わがほうの覚え書き事務所というものは北京に置かれておるわけでございます。これはしかし、貿易協定ができるというような段階におきましては吸収されていく、覚え書き協定というものはなくなっていく。したがいまして、それに基づく事務所というものも消えていく、こういう運命にあるかと了解するわけでございます。その後、通商代表部という形式の話になるのかならないのかは、今後中国側と話し合っていく問題であり、また、日本中国との間の互恵平等のバランスをとっていく問題として検討していかなきゃならない。現時点におきましては、通商代表部という形では動いておりませんので、東京におきます中国大使館と、それから恵比寿にあります覚え書き事務所というものが現在中国側代表機関として活動しておる、こういう姿になっております。
  29. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 通商の問題を含めた外交の問題の活動ということになりますと、必ずしも人数の多いばかりが活発な活動があるというふうにきめるわけにもいかないと思いますけれども、現在としては、たとえば日ソ間の場合五十五名がワクというふうに聞いておりますけれどもソ連日本に来ているのは、そのワク一ぱいの五十五名が在勤して、日本の在ソ大使館人数は、現在は三十四名というふうに聞いているんでございますが、そうなんでございますか。また、そういうふうに人員の相当なアンバランスがあるんでございますけれども、どういうわけで日本のほうはこんなに少なくて間に合わせていらっしゃるのか。その辺もちょっと説明していただきたい。
  30. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) 加藤先生指摘のとおり、日ソ間の大使館ワクといたしましては、そういうワクがございまして、ソ連側はそれをほとんど全部充当しておる。わがほうにおきましては、実際上の人員やりくり、それから定員問題等がありまして、それを完全には履行していない。しかしわれわれとしては、今後、これは在外公館全体の問題ですけれども、充実していきたい。その場合に、その在外公館全体がまだ少ない定員やりくりをやっている場合に、ソ連にだけ全部それを充当するわけにいきませんので、全体の在外公館の充当の過程において、ソ連も充実させるというふうな所存でございます。
  31. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 では別の問題に移りまして、ただいま議題になっておりますこの法律につきまして、在外勤務の方の子女教育費が今度考えられるということはたいへんけっこうなことだと思いますが、その任地における教育の、学校の選び方というのは、どういうふうにして選んで、そしてその費用というものをどういう基準によって計算をなさるのか、それをちょっと聞かしていただきたい。
  32. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) 子女教育手当をこの法律でお願いいたしました際に、私どもが考えましたまず子女教育という教育範囲でございますが、一つの考え方としては、わが国における義務教育範囲で押えるという考え方もあったわけでございますが、現在、わが国教育程度は非常に高くなりまして、実際問題といたしましては、ほとんどの家庭における子女小中学校のみでなく、高等学校までやっている家庭が多いわけでございます。そこで私どもが考えましたのは、六歳から十八歳までの在外におきます子女ということで、したがいまして、その学校につきましては小中学校高等学校教育費用手当するという考え方をとったわけでございます。で、各地におきますその高等学校、中学校、小学校授業料、それから教材費、それから補習費在外公館に訓令いたしまして集計したわけでございますが、もちろんアジア、北米、中南米、欧州太洋州、中近東、アフリカ、それぞれの地域におきまして多少の高い低いがあったわけでございますが、これを全部平均いたしまして、総額の平均をとりました。同時に本邦における教育費というものを、もし在外公館の職員が本邦にいたらば当然負うべき教育費というもののこの試算もなかなかむずかしいわけでございますけれども、大体それを計算いたしまして、その分を差し引いた額を大体月額一万二千円と踏んだわけでございます。そういう基準でこの子女教育手当予算要求もいたし、それからまたこの法律に掲げて制度化をいたしたいと考えているわけでございます。
  33. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今度外務大臣にお伺いいたします。  いま在外公館の問題についていろいろ伺っておりますけれども、その要旨は、在外公館における日本外交活動が十分であるようにということが基本でいろいろと考えられていることだと思うのでございますが、日本外交について、非常にいまは日本が世界から注目を浴びておりますし、日本の経済力が伸びると同時に、日本国に期待されるものもだんだんに大きく、かつ、重くなってまいりますので、この外交活動というものは非常にいよいよ重要になってまいるということは申すまでもないことでございます。そこで私が伺いたいことは、外交の一元化ということなんでございます。どういうふうに外交の問題を、経済活動通商活動といわゆる一般外交活動というものの、そこのけじめというものはどういうふうに見ていらっしゃるのでございますか。たとえば大平外務大臣がヨーロッパにおいでになっていろいろ重要な人物との接触をおはかりになって話し合いをしていらっしゃると、一方においては、中曾根通産大臣が石油外交とかいうのをまた一生懸命におやりになっていらっしゃる。こういうようなことは、ちょっと見ると外交が一元化されているのかいないのかというような疑問も起こってくるのではないかと思いますので、そこをどういうふうに考えていらっしゃるのか、説明していただきたいと思います。
  34. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 外交一元化ということはたいへん専門的な用語のようでございまして、実は私もどのようにこれを理解していいか、専門的に御説明申し上げる自信がないのでありますが、常識的に私はこう考えております。  いわゆる外交権というのは政府に属するということでございまして、その政府の中に外務省がございまして、政府の対外活動をとりまとめて、外に対して一本で対処するという姿を言うのではないかと思うんです。ところが、実際御指摘のように通産省にいたしましても農林省にいたしましても、とりわけ大蔵省の通貨外交というようなものは、実態的には外務省と申しますよりは、そういう所管の各省で御心配をいただきまして、最後のとりまとめを外務省が総括して当たるという仕組みに事実上なっておるわけでございまして、外務省としても各省の協力がなければできないわけでございますので、各省が活発に対外活動をやっていただくことは歓迎すべきことでございます。ただこれが、政府の方針が二途に出ないように、私どもとしては注意していかなければなりませんし、そのように事案十分注意をして、ユニフォームな姿で対外活動ができるように心がけておるつもりでございます。また外務省の中におきましても、在外公館には多くの各省の有能な方においでいただいておるわけでございまして、それぞれの専門に応じて、外務省の職員として仕事に当たっていただいて、そして自分たちのお里の役所とも十分の連携をとっていただくようにしておるわけでございます。したがって、機能的には非常に多採に展開されておりますけれども、最後に政府外交として統一がとれますように、外務省が責任を持ってとりまとめてまいるというようにつとめなければなりませんし、そういう配慮を私どもはいたしておるつもりでございます。
  35. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 外交の一元化ということをいまの大臣の御説明で伺っておりますと、所管のいろいろ事柄を持っている役所がやはりある程度の積極的な外交的な活動をして、最後の締めくくりを政府外交権を持っている外務省がやるというように承ったんでございますが、私は、そこで少し疑問を感じますのは、日ごろの外交活動というのは、各国に派遣されております在外公館の方々が、それぞれの持ち場において十分な情報をとって、これを本国に通報するという、その情報の収集ということが非常に大切なことだと私は思います。そのためにこの在外公館についてのいろいろな配慮が行なわれるわけだと思います。ところが、今日の日本外交活動がはたしてその任務を十分に果たしておりますかどうか、これは、はかる尺度というものはございませんから、やってるとかやってないとかいうことを一口できめることはできませんけれども、戦前のことを考えてみますと、まあ外務省はたいへんに消極的で、あまりに情報を集める活動が十分になされなくて、一方、参謀本部がたいへんなたくさんの予算をもって、人をたくさん外国に派遣して、情報の収集活動は参謀本部がやる。また、経済的な情報の収集は商社がやるというようなそんな形になっていて、日本外交というものが少しもほんとうの意味の一元化をしていなかったということが、ああいうような戦争というところにだんだん持ってくるような不幸なことが起こっていると思います。それはなぜかと言えば、商社なり——あるいは軍部はもちろん日本にはございませんけれども、商社にしても、自分の商業活動の利益ということをまず本位に考えて、そして情報を集めたり、あるいは対外的な折衝をしたりするわけで、外交の問題は、そういうような直接の利害関係よりも、国全体の利益、そして平和を維持する、それから日本国という経済大国になったこの国の対外に対する平和を維持するところの任務をほんとうに果たすことができているかどうかということの、この観点に立ってやるわけですから、同じ情報を集めたり、あるいは集まった情報に基づいて活動しても、そのやり方は違うと思います。  そこで、一つの例をもって外務大臣に伺いたいのは、先ごろございましたけど、ベネルックス三国から、日本の電気器具がたいへんにたくさんあちらのほうへ輸出されるので、これに対してはもう少し配慮してもらわなければ困るというような話があったと。ところが、これに対しては通産省のほうと何か折衝されて、何にも結論が出ないで、そのままになって日を過ごした。で、いよいよベネルックスのほうの三国ではもう待っていられないというので、非常に強硬な態度にまた出られたというようなことは、これは私はニュースで知り得たにすぎないことでございますから、その情報がどこまで当を得ているかどうかわかりません。けれども、これは一つの例でございまして、こういうようなことはどうして通産省と接触しているのか。通産省でもってどれだけの責任を持って、このベネルックスが言ってる、こんなにたくさん出してくれちゃ困るからもう少し考えてくれというようなことを言われたときに、これは商取ではなくて、外交の問題として取り上げられなくちゃならない。通産省という役所ともしそういうことを折衝して、そのままにして外務省が何もそこで発言をなさらなければ、あくまでも日本の商社の利益を代表したような折衝になってしまう。そこで、いま日本の場合には、経済大国としてのいろいろの問題が起こってきて、悪くすれば、日本が憎まれたり孤立をするような傾向に押しやられる。そこで外交というものの重要性というものが起こってくるので、どうも、大平外務大臣、もう少ししっかりと、全部をひっくるめた日本外交というものをおやりにならなくちゃいけないのじゃないか。このベネルックスとの交渉の経過についても御説明をいただいて、そうして将来の外交の一元化ということについてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、そこを聞かせていただきたいと思います。
  36. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) やっぱり御指摘のように、商社の活動はたいへん活発でございまして、また私どもとしても、商社が寒冷、瘴癘の地を問わず、たいへん御活動をいただいておりますことは、日本の商圏の拡張の意味から歓迎すべきことだと思っております。で、われわれといたしまして、商社活動が順調にまいりますようにお助けをせないかぬ立場にあると思うんでございます。けれども、いま御指摘いただきましたように、たとえばベネルックス三国からクレームが出てくる。これはベネルックス三国といたしましても、その背後にメーカーの利益があるわけでございまして、まず第一に、私ども日本とベネルックス三国の業者同士で利害の調整が納得ずくでつけば、それは一つの望ましい解決だと思うわけでございますが、事実そういう業者同士の話し合いを待ったわけでございますけれども、先鋭に対立したままで、容易に妥結の道が発見されなかったのでございます。そこで、所管の通産省の方々もわずらわし、また、先方政府も入りまして、いろいろ政府も参加した姿で話し合いを長い間続けたわけでございますけれども、不幸にいたしまして、どうしても折り合わない状況でございます。そこで、この間、私も参りまして、ベルギーだけと接触を一応したわけでございますけれども、いずれにせよ、こういう状況のもとで、一方的にあなたのほうが規制に踏み切るというようなことはやめてくれと、まあせっかくここまで精力的に話し合いを続けてきたわけでございますので、まだ断念するのは早いじゃないかと、もうこれ以上の話し合いはごめんだということで、一方的に規制に踏み切るというようなことのないように、御自重を求めてきたわけでございまして、先方もそういうことはいたさないように注意いたしましょうということでございますので、なお一そう努力を続けてみたいと考えておるわけでございます。で、経済関係におきましては、この種のことは間々あることでございまして、政府が有権的な措置を講じるまでにはずいぶんたんねんにいろんな過程を踏みしめてからでないと私はやるべきでないと思うんでございまして、もう少し努力してみる必要があるようにいま考えております。
  37. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私の質問はもうこれで終わりたいと思いますが、外務大臣に要望いたしておきたいことは、外交ということは、あくまでも外交それ自身の立場というものがあるわけでございまして、商社間の活動とはこれはまた違うもので、やはり国の一番基本のものが外交である。それはあくまでも一元化されていかなければやれないものでございますし、日本国全体の利益とそれから外国に対する日本国の信用ということを始終考えながら、ある場合には進み、ある場合には譲歩することもあるということは、外務大臣がこれをかじをおとりになる地位にいらっしゃる。それは私いままで拝見しておりますと、ややもすれば、いろいろなことに押されていて、ほんとうに日本国外国から期待されているような外交方針に必ずしも進んでいないことがあるのではないか、少し弱いのではないかというようなことも感じられますので、いま非常に重要な地位に日本が立っておりますから、この外交一元化して非常にバランスがとれて、そして日本国の持ち場というものを十分にやっているということを諸外国が認識してくれるような外交を推進してくださるように希望いたしまして、私の質問を終わります。
  38. 山本利壽

    理事山本利壽君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。     —————————————
  39. 山本利壽

    理事山本利壽君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  40. 森元治郎

    ○森元治郎君 大臣、外務委員会あたりでの答弁はなかなかもやもやして、はっきりしないんだよ。海外に行くと、やっぱりゆったりされるせいか、パリで一日の日でしたか、記者会見をやって、それで先月二十三日のキッシンジャーが提唱した新しい大西洋憲章、これにたいへん大平さんが理解を示したような記事が大きく載っておるわけですね。これはキッシンジャーのほうから、あるいはアメリカ政府からこういう申し出があったんですか、あらかじめ。あるいは、ただ新聞記事を見て質問を受けて答えられたのか、その間の経緯。それからもし、キッシンジャーによれば、年内にそういうものの憲章に参加するんですか、そういう結成といいますか、年内にやりたいような期限もあるようなんです。そういうことも、通告受けているのかどうか、その点お伺いします。
  41. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) キッシンジャー氏の講演の大筋だけは、私出先で伺ったわけでございますが、フルテクストはいまだにまだ読んでいないわけでございます。内外の記者からの御質問がございましたので、私はフルテクストは読んでないけれども、私の承知しておる限りにおいては、言わんとするところは理解できると、それは大西洋憲章というタイトルを持った御講演であったようでございますけれども、こういう御講演を待つまでもなく、貿易、通貨、その他いろいろな問題で、すでにそのラインで日本も参加し、協力しておるわけでございますので、特に新しい御提言であるようには私には感じとれなかったわけでございまして、きわめて当然なことを言われておるような印象を私は受けたのであります。
  42. 森元治郎

    ○森元治郎君 これに対して、大西洋憲章といっても昭和十六年の英米共同宣言がもとですね。死んでしまったような古くさい古典的なものを引っぱり出してきて、どうもニクソン外交、キッシンジャーのやり方、権謀術数、第二次大戦型というような感じを受けるんです。これ新聞報道によれば、通貨、貿易、安全保障も入る、そういうふうな問題に大平さんがあっさりと理解を示すのは少し早かったんじゃないか。もう少しよく伺ってからといって、記者の質問をはね返してもいいんじゃないか。イギリスは少しは好意的なようでありますが、フランスは、大平さんも話しておられるとおり、警戒的、私が引っかかると、ころは大平さんの談話が、アジアの問題はヨーロッパの協力なくしてはできないのだといったようなこと、そして協力ということは通貨問題、貿易、これも協力が必要なんだ。安全保障もまたこれは協力だということになれば、日米安保とNATOのつながり、あるいはそれよりもっとスケールの大きい参加国を持ったふわりとした何か反共体制のような形が浮かんでくるんですが、大平さんの談話から。非常にこれは重大な談話だと思うんです。大平さんはよくグローバルということばを外務委員会でお使いになるが、いつの間にかエコノミックアニマルが外交でも世界的に乗り出している。大西洋のことまで心配をするんだといったような感じを受けるんですが、その点はどうでしょうか。
  43. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 私は、先ほどお答え申し上げましたように、特別新しい御提案であるようには私は受けとめられなかったわけでございます。いまわれわれが当面しておる問題は、アメリカも、日本も、ヨーロッパも、通貨問題にせよ、貿易問題にせよ、あるいは環境問題にせよ、資源問題にせよ、いま、森先生の言われた非常にグローバルな規模を持っておる問題でございますので、これにアプローチしてまいりますのには、非常にマルチな方法、協力を必要とするわけでございますし、事実また、われわれはすでにそういう協力体制の中に入っておると思うんでございまして、したがって、このキッシンジャー講演というようなものが、特に新しい御提言であるようには受けとれなかったわけでございます。そういうグローバルな問題をかかえておるんだから、それに対して応分の協力をしていくのは当然だという意味でわれわれは関心も持ち、それなりの理解を持っているというわけでございます。
  44. 森元治郎

    ○森元治郎君 いまのようなやわらかい発言は、この新聞、私は二つくらいしか見ないのですけれども、受けないのですね。何か非常に乗り気になったような、アジアの問題はヨーロッパの協力なくしてはできないんだ。逆に言えば、ヨーロッパの問題はアジア、すなわちアジアの大国であるわが日本の協力なくしてはできないのだというような印象、これは記者との質疑応答の経過から見て非常に強く受けたんですよ。いま大臣は通貨と貿易とおっしゃいましたが、安全保障の問題はどうですか。アメリカの関係しているのはNATO、東のアジアでは安保条約がありますね。これはどういう協力関係になりますか。この二つの関係、NATOと日米安保条約の関係
  45. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) これはかねがね本委員会でも私がお答え申し上げておりますように、ヨーロッパにおきましては緊張緩和が相当まあ定着しつつある。そして、アジアにおきましても、そのきざしは幸いに見えかけてきた。  で、なぜこういう緊張緩和の零囲気が出てきたかというと、これは、その一つのささえは、既存の条約のワク組みがちゃんとしておるからじゃないかと、これは見方がいろいろあるでしょうけれども、私はそう感じる。  で、現にヨーロッパにおきましても、アジアよりも緊張緩和の定着の度合いが高いにかかわらず、既存のワク組みを、NATOにいたしましても、ワルシャワにいたしましても、変えようとはしていないじゃないかと。アジアの場合は、なおさらそういう意味では、安保条約というようなものは手軽にいじっちゃいけないのじゃないかというような考え方は、すでにこの委員会で私は御答弁申し上げたと思うのでございます。  関連性がどうあるかというと……。
  46. 森元治郎

    ○森元治郎君 関連づけるのかということです。
  47. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) NATOと安保条約がどういう関連を持っておるかと言われれば、特別に関連は、内在的関連はないのですけれども、こういう緊張緩和をもたらした基礎にはNATOがあり、安保条約があるんじゃないかという意味において、関連があるといえばある、そんな感じでございますがね。
  48. 森元治郎

    ○森元治郎君 その感じがどうも。私が伺いたいのは、NATOという一つの機構がありますね、日米安保条約もあるということ——大平さんの談話なんですよ、新聞記事の。一口にヨーロッパ、アメリカ、日本というけれども、そんなに地域的に分けて考える必要はないという記者会見の答弁があるのです。  そうしますると、単に日米といったって、日米じゃない。これは広がりはもうずっと広がって、グローバルにいくんで、それはNATOとも協力する——精神的か何かは知らぬが、いままでは西のほうのヨーロッパの端っこの安全保障の機構、東の端っこの機構であったものが、一口に地域的にそれを分けて考える必要はないというようなこと、それからヨーロッパの問題は日本の協力なくして片づかないというようなこと、アジアの問題は欧州の協力なくてはできないのだという、こういうことばを重ねて安保条約問題を見ると、何かNATOと日米安保がつながりを持つんだという感じがするんですが——これは談話ですよ、談話、パリの記者会見の談話。
  49. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) まあ、そういうところまで深く考えて私申し上げたわけじゃないのです。ただ、先ほど申しましたように、いま問題になっておる貿易問題も、通貨問題も、その他の問題も、非常にこう世界的規模を持ってきておるのじゃないか。その地域だけで処理ができるような問題ではないじゃないかという意味で、関連性を持っておるのじゃないか。安全保障を頭に置いて、NATOと安保条約はもうこういうように関連づけなければならぬのだというようには、私は申し上げたつもりはないのでございます。  それから、ヨーロッパの協力がないとアジアの問題は片づかぬというのは、私は前々から申し上げておることでございまして、アジアみたいな貧乏なところは、世界のやっぱり援助と祝福を受けなければやっていけないわけでございまして、とりわけ、ヨーロッパの協力というのは非常に大事だと思うわけでございまして、われわれはそのパイプになって、アジアのために働かにゃいかぬとさえ考えておるわけでございますので、そういうきわめて常識的なことを私は申し上げたつもりでございますが、およそ活字になりますと、その、なかなかニュアンスが出ませんで、あるいは誤解を招いたかもしれませんけれども、趣旨はそういう趣旨でございます。
  50. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、NATOと安保条約は関連づけるつもりはない。
  51. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) ええ。
  52. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうですね。記者会見ですから、やっぱりつり込まれて、欧州日本としっかり手をつないでいきましょうという気持ちが、少しおせじが過ぎたのが誤解のもとかとも思うのですが、ところで、キッシンジャーの言い方には、さしみのつまみたいに新大西洋憲章——大きらいなことばですが、それに日本も入れるというふうなことを言っているようですが、申し出があれば、大平さんは理解をするといち早く旗を上げているのですから、参加なり協力なりするのですか。
  53. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) これは、なぜキッシンジャーの演説のタイトルを大西洋チャーターだと言ったのか、私はわからぬのですけれども……。
  54. 森元治郎

    ○森元治郎君 そこを突っつけばいいのだよ。
  55. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) そこは、まあアメリカの持っておる価値観、それから目標、それから基本的利害というものが、欧州のそれとほとんど同一のものであるというような意味合いを言ったものかなというような感じもしないわけではないのです。  それで、それはそういう価値観、そういう利害関係、そういうものと日本がそれじゃかかわりがないかというと、これはあるわけでございまして、その限りにおいて、最終的には日本の参加も求めなければならぬなんというのは少しおかしいので、私から言わせれば、すでにもう先ほど申しましたように、貿易にしても、通貨にしても、もう一緒にやっておるじゃありませんかということを言いたいところなんでございまして、大西洋憲章というタイトルをつけられたから、ちょっと戸惑うのでございますけれども、おっしゃっておることをずっとかみ砕いていけば、どうという新しい御提案であるというようには、私にはどうも受け取れないのであります。
  56. 森元治郎

    ○森元治郎君 だから、戸惑うぐらいのやつを、理解を示すのは早いのですよ、大臣。大臣くらい慎重な方なんですから、タイトルがどうもおもしろくないし、戸惑って、しかも新しい提案でもなければ、そんなことはもうやっているじゃないかとへこう一言おっしゃって大きく出たほうが、事を起こさないのですが……。
  57. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) そのとおり申し上げたのですが……。
  58. 森元治郎

    ○森元治郎君 新聞にはそう出ていないね。
  59. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) それは、新聞のところまでは何か、責任は持てないのですけれども
  60. 森元治郎

    ○森元治郎君 いつもそれは新聞のせいにしてしまうのだけれども、これは一問一答ですから、わりに記者連中も落ちついてペンをとれるはずなんですよ。そこで、これはやはりこういうものに参加するとかなんとか提言があれば考慮しなければならぬ、これは大平さん御自分の独断ではできない。やっぱり政府として考えて返事をする段取りになるわけですね、段取りは。
  61. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 一応あれは演説がされて、おそらくことしじゅうには、大統領自身の訪欧というようなこともうわさされているようでございますから、漸次あの演説にうたわれたことが具体的にいろいろな姿をとってくるだろうと思うんです。私どもとしては、十分そういった点を今後勉強していかなければならぬし、それが明らかになるに従って、日本としてどう対応したらいいか、それは考えていくべきでないか、まあこれから一そう勉強してみたいと思っております。
  62. 森元治郎

    ○森元治郎君 私は、ニクソン大統領が外交教書でひどいことばというか、激しいことばで、政治的決意を持って、意識的努力によって日米経済関係を打開しないと同盟関係は引き裂かれるかもしれない、そういうような不信感のある親方が言い出すだろう新しい、しかも名前が古くさい、死んでしまった大西洋憲章などの呼びかけがあってもこれは参加すべきでないというのが、勉強するときにぜひこれを考えてもらいたいと思うんで、もう一回御返事をいただきます。
  63. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 最も、いま森先生の言われた経済面での対立が、政治関係全般にひびを入れることのないようにということがどうも日本の国内に大きな反響を呼んでいるようでございますけれども、この主張は何も日本だけに対して言われているわけじゃなくて、ヨーロッパに対しても同様な考え方が言われているわけでございまして、したがって、それを私はそう過度に受けとめるべきものではなかろうと考えております。むしろ、わが国がいま鋭意行なっておる貿易収支の改善策をよく理解していただければ、日本の立場と日本の努力というようなものは十分理解されるのではないかと考えておるわけでございまして、いまあなたのあげられた、日本だけに特にきびしく当たっておるというものでないと私は思いますけれども、いかがでしょうか。
  64. 森元治郎

    ○森元治郎君 そのとおりで、まあアメリカは、自分は、ニクソン第二期政権はだいぶやきもきして、ゆるんだたがを、安全保障でも貿易でもたがを引き締めていこうというようなつもりで負担、ことに自分ばかりに負担させないで、おまえたちもみんなアメリカの援助に対する負担をしろというようなことを言っているわけですから、大臣の言われることもわかりますけれども、この際は、ことさらに世界の平和維持の共通原則というような抽象論をとりたててこの機会にやるということは、私はソビエトその他に意外な疑惑を与える悪い動きになると思うんで、ぜひ参加は——慎重にではない、これには乗らぬほうが日本のため、世界のためだと思うんで御質問をしたわけであります。  私の持ち時間がないようだから急いで一つだけ。大きなことを言っているよりは、足元の日中航空協定どうしたんですか。もうあなた、東郷君では何ともならなくて、帰ってきてしまって、大臣にげたを預けられたでしょう、われわれ事務当局がやることはないと。これはもう大臣の大きな政治的決断の段階にきたように思うのですね。  そこで、事務当局でけっこうですから、両者の相違、この間終わって帰ってきた、あの時点の両者の行き違いをはっきりと簡単に言ってください。
  65. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) ことしの初めに予備折衝をやりまして、協定の案文自体といたしましてはかなり煮詰まってきておりまして、それ以外に関税その他の技術的な複雑な問題もからみ合っておるわけでございますが、そういった点はさらに外交チャンネルで進めてまいりまして、現在相当協定文自体としては煮詰まっておる状況でございます。ただこの問題は、協定文自体のほかに、その文書の中に出てこない問題といたしまして、日台間の現在事実上の関係として飛んでおります航空路線をどう取り扱うかという問題、それからこれは協定文の付属書に入ってくる問題でございますが、以遠権と申しまして、それぞれの国を通してその先の国へどういう姿で以遠権を確保するかという問題があるということでございます。これらの日台路線の問題及び以遠権の問題等に関しまして、東郷ミッションが最近参りまして、先方とさらに率直に意見の交換を行ないまして、これは、そこで合意を見るとか、あるいは妥結するという交渉ではなかった次第でございますが、相互に問題点をさらに認識し理解を深めてきたということでございます。現在、さらに現実的な処理方法としてどうするかということで、私たちは運輸省その他関係官庁と鋭意具体案を詰めておる段階でございます。
  66. 森元治郎

    ○森元治郎君 協定案文ができるといっても、一番大事なことがきまらないで、ほかのほうのこまかい第一条、第二条、幾らでもできるのですよ、私らしろうとだって、そんなものは。以遠権の問題だって、それはバンクーバーへ飛ぶとか、パキスタンへ行くとか、どこへ行くか、そんな以遠権なんて並べたけれどもそれは小さい問題で、やはり日台でしょう。これは日中の昨年の共同声明の精神に従って、その範囲内でこれを処理するという大原則が日本にあるはずなんですね、いつもそう答えておられますから。日中共同声明の線で、すなわち台湾をわれわれは捨てて北京を承認したというこの大原則、これに従って日台航路の問題はおのずから片づくところに片づくと思うので、相互に議論をして理解し合ったというのは、相互に向こうの言っている立場を知っただけで、これを了解し理解したわけではないので、これはパラレルになっていると思うのですね、大臣。台湾の飛行機が飛んでくる、このことは中国にとっては、ほかの実務の協定がどんどん進んでいくのに、肝心の台湾の存在をいつまでも維持し続けようという現実、それはたまらないと思うので、航空協定をまとめようと思えば、日中共同の線によって大なたをふるって解決すべき段階だと思うのです。私は、こまかい技術は要りませんから、大臣から、どうやって今後これをまとめていくか大方針を伺います。
  67. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 三月に予備交渉をやりまして、それからこの間東郷ミッションを派遣いたしまして、これからの問題は、いつ本交渉に移るかということだと思うんでございます。で、私としては、これ以上予備交渉を続けてまいるわけにいかぬだろうと考えておるわけでございまして、政府部内でよく問題を詰めまして、できるだけ早く本交渉に移れるような用意をしなければならぬと考えております。従来から申し上げてますとおり、あくまでも日中国交正常化の精神を踏まえた上で、双方の信頼と理解の上でやらなけりゃならぬわけでございまして、それと背馳しない範囲において日台間の輸送需要にどうこたえるかということを考えていくべきだと思うんでございます。せっかく部内で問題を整理いたしまして、なるべく早く木交渉に移りたいと私は考えております。
  68. 森元治郎

    ○森元治郎君 政府委員に伺いますが、もう少し外務委員会ですから、委員会にふさわしい、ふだん発表しないようなたねでもここへ出すのがほんとうなんだからね。記者会見のほうにばかり出しちゃだめなんで、外務委員会に出すべきなんで、ぎりぎりのこの日台間航空の問題は、どういう点をこちらが主張し、向こうは反対をしているか、具体的なやつをちょっと教えてください。
  69. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 実は詳細に……
  70. 森元治郎

    ○森元治郎君 ぎりぎりのところ。
  71. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 申し上げたいと思うのでありますけれども、何ぶん非常に微妙なところを、いまぎりぎりのところを詰め合っておりまして、これはちょうど交渉の今後の山にかかるところでございますので、その点に関しまして、ちょっと先方との話の次第もございますし、どういうふうな立場で、どこのところにひっかかっておるかというのは、いまの段階では差し控えさしていただきたいと、かように考える次第でございます。
  72. 森元治郎

    ○森元治郎君 もう中国のほうは態度、一枚板でぴんとしているからこれは問題ないので、こっち側だけが微妙なんでしょう。向こうは何にも微妙なことはないんでしょう。やめろと言うだけだ、簡単に言えばね、向こうは。だからこっちが微妙な段階なんで、もっと具体的に……。
  73. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 日台路線はやめろという、簡単に割り切った問題ではございませんので、日本側の立場も先方は理解いたしておりまして、現在、事実上運営されておる日台間の路線というものは、どのような態様で、どのような方法で、原則に合うように現実的解決をしていくかと。先方は原則論としてはいろいろ言っておりますが、具体的に、問題は現実的な解決、協定をつくって合意することでございますから、そこら辺にきますと、いろいろ先方も、ただいまおっしゃいましたように、ただ原則だけを言っておるというわけではございませんので、その辺のかね合いが、非常に微妙な交渉に入っていく点もございますので、現段階ではその具体的なポイントについて申し上げるのは差し控えさしていただきたい、かように思っておる次第でございます。
  74. 森元治郎

    ○森元治郎君 それではもうこれで時間、田さんに譲りますから。それじゃ御返事がないならば、返事があるように質問を用意してきて伺います——伺ったほうが便利かと思うのでね。私は、あなたの顔を立てて、向こうから積極的に言わせようと思って丁寧に聞いているんで、言わなけりゃ、なあに、あんた、そんなものはわけはないですよ、そんなものは。ずばずば——微妙でございますなんて言わせてるひまがないくらいにやりますよ、そりゃ。やっぱりここで、外務委員会で、ある程度といいますか、お互い知っている仲なんだから、むちゃ言うわけでもないんで、だから、どんどんやっぱりここで発表して、論議の対象にすることが外交だと思うんですよ、これは。それだけの御忠告を申し上げて終わります。
  75. 田英夫

    ○田英夫君 最初に、大臣に伺いたいのは、きのうからジュネーブで始まっておりますWHOの総会で、朝鮮の、いわゆる北朝鮮の加盟問題が半ばごろから審議されるということですが、報道されているところによると、韓国のたな上げ提案に日本代表は共同提案国になっているということが言われておりますけれども、実際にそのような指導をしておられるのかどうか、この点から伺っておきます。
  76. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いまお尋ねの件につきましては、従来からの本委員会におきましても、基本的な考え方を申し上げておりますとおり、現時点におきましては、せっかく南北両朝鮮が当事者間の対話を行なっておる最中でございますので、この際、WHOのような専門機関が、両者間の話し合いに影響を与えるがごとき決定を下すことは避けていただいたほうがよろしいのじゃないかと私どもは考えております。WHOへの東独の加盟申請が、過去四回にわたって審議が延期されているような事実もございまして、こういう問題は、やっぱり国連の総会できめるべきがしかるべき問題じゃないかと考えております。したがって、いま田さんの御質疑のとおりのような趣旨で私どもは対処さしていただきたいと思っております。ただし、これは北朝鮮を敵視するとか、それから北朝鮮がWHOに加盟するのをはばむとか、そういう意図を持ってやっておるわけじゃなくて、WHOでこういう問題をこの時点で取り扱うのは適当じゃないじゃないかという、われわれの考え方によるものでございますので、その辺、御理解をいただければしあわせと思います。
  77. 田英夫

    ○田英夫君 そうすると、共同提案国になるという方針だということですね。
  78. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) さようでございます。
  79. 田英夫

    ○田英夫君 例の中国の国連参加問題のときに、いわゆる重要事項指定方式の共同提案国に繰り返しなってきた中で、過去に、佐藤内閣当時ですけれども、非常に国際的に、いわば日本国民の立場からいえば、恥をかいたといいますか、残念な事態を招いてしまった記憶が新たでありますし、いま大臣御指摘の、お話しのような、国連総会でということがありましたけれども、WHOという機構が適当でないとおっしゃいましたけれども、さきの列国議会同盟会議、これはまさに議会人、政治家の集まりである機関で、北朝鮮の加盟が多数で認められている。こういう現実もありますし、同時に、日本と朝鮮との関係、特に過去の関係というようなものを含めて考えたときに、日本が、少なくとも韓国側の共同提案国になるということは非常に問題がある、こう思いますが、その方針をお変えになるつもりはありませんか。
  80. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いまお答え申し上げましたような理由で、この時点における判断といたしまして、加盟審議延期決議案に共同提案国として参加するということ、いろいろ考えた末、そうすべきじゃないかと考えておりますので、これを変えると、せっかくの御注意でございますけれども、これを変えるというつもりは、いまのところございません。
  81. 田英夫

    ○田英夫君 たいへん残念なことですけれども、この点は見解の相違といいますか、政府の方針ということですから、この問題はこれ以上お聞きいたしませんが、次に、ちょうど大臣がヨーロッパに行っておられるときに、ニクソン大統領の外交教書が発表になりました。これに対するお考えは、帰国の際の記者会見で若干述べられているようでありますけれども、この内容、特に日本に対しては、ニクソン独特の、率直に言えば、どうかつと言えるような態度を打ち出してきているわけで、あらためてこの外務委員会の席で外交教書、特に日本に対するニクソン大統領の態度、これに対する日本外交の最高責任者としてお考えを伺っておきたいと思います。
  82. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) まあ第一に感じますことは、世界の政治、経済の構造が変化してまいったので、これに対応する方策も当然そういう変化を踏まえたものでなければならないという考え方が基調にあるようでございまして、それはいわば当然のことであるように私には思えます。  それから第二として、対日関係の部分では、米国のわが国に対する期待が繰り返されておりますけれども、当方としては、これを世界の政治、経済における日米両国の比重が高いことや、それから日米両国が当面している諸問題が世界的規模を持っており、関係諸国が協力し合ってこれらに対処する必要があるという意味に受け取って、理解できるのではないかと考えております。ただ、先ほど森先生の御質問にもありましたように、経済面での対立が政治関係全般にひびを入れるということにならないようにということでございますが、もちろん、これは日本だけに向けて行なわれた言い分ではないようでございまして、欧州諸国についても同じようなことをアメリカは言っておりますが、したがって、これを特に過度に受けとめる必要はないんじゃないか。現に、わが国の国際収支改善策、それから自由化の努力等によって対米関係は漸次好転をいたしておるわけでございます。その点は、十分アメリカ側としても、日本の立場、努力というものを認識すべきであろうと私どもは考えております。それから今後両国の関係を維持発展させていく上では、両国間に十分の意思疎通が必要である、互いに相手の気持ちを正しく理解して行なうことが不可欠であるということがこの外交教書の中で強調されておりますが、そのことは当然のことであろうと思います。  いずれにいたしましても、本教書はさらに十分検討いたしまして、今後の対米政策推進の参考にしなければならないと考えておりまして、相当こうかんなものでございますので、なお克明にひとつ勉強したいと考えております。とりあえずの感じといたしましては、いま申し上げましたような感じを持っております。
  83. 田英夫

    ○田英夫君 帰られたときの記者会見のときよりもだいぶ穏やかになったような印象を受けるわけですが、記者会見では、アメリカ、ニクソンの日本に対する認識はおくれていると、こういうことを言われたようですけれども、この意味は一体どういうことですか、おくれているということ。
  84. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いま申しましたように、去年からことしにかけての日本側の努力、そして、とりわけことしに入ってからの日米収支の改善の推移等についてアメリカがもっと理解を示すべきじゃなかろうかという意味のことを私は申し上げたのであります。同時に、日本の国民側も、まあ、ああ大国大国といわれても、まだ十分、自分の周辺にいろいろな問題を持っておりますから、実感が伴わない面があるのじゃなかろうかと。したがって、国の内外にわたってわれわれの、政府が申し上げているような新しい福祉政策を精力的に推進していくことによって対応していけば、内外の批判にもこたえ、要請にもこたえられるのじゃないかという趣旨でお答えしたわけでございます。
  85. 田英夫

    ○田英夫君 ニクソン大統領の言い方を率直に受け取れば、経済的な問題で日本が反省しないなら、安全保障で日本はたよっているようだけれども、それは協力せぬぞという、一種のどうかつがあると思いますけれども日米関係をさらに調整するためにもつと密接にということも言われているようですけれども、世界じゅうの国の関係の中で、これほど外交ルートその他を通じて接触のある関係というのは少ないと言っていいくらい、日米安保協議委員会とかさまざまのルートを通してその場があるにもかかわらず、ニクソン大統領がこういうことを、しかもきわめて具体的に言ったということは異例のことでもあるし、非常に注目しなければならぬことであると、こう思うのですけれども、この辺は、大臣、どういうふうにお考えですか。
  86. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、日米間は非常に濃密な関係にあるし、あらゆるレベルでの接触も非常にひんぱんでございます。そういう間断のない接触が行なわれておるにかかわらず、なおまだ理解が十分でないということは日米双方とも感じておると思うんでございます。いわゆるコミュニケーションギャップといいますか、そういうものはまだ埋め尽くされていないと思います。これはヨーロッパとアメリカの関係を考えると、何といっても、文明の伝統から申しまして、それからいろんな歴史の経過から申して、われわれのように努力しなくても十分意思疎通ができる間柄にあるようにぼくら思うわけでございますけれども日米間ではよほどの努力が双方まだ必要じゃないかという限りにおいては、私はここにもっともっと接触を深めようじゃないかということは賛成です。
  87. 田英夫

    ○田英夫君 どうも基本的な日本政府の対米姿勢というところに問題があるんじゃないかという気がしてならないわけです。つまりアメリカ側とのさまざまな接触、これ以上ありよう手がないというくらいさまざまな接触をしているにもかかわらず、たとえば天皇訪米という問題が、どういうふうなお考えかは別として、逆に向こうの疑惑といいますか、そういうものを買ってしまう結果になったというようなこともありますし、これは向こうと接触する場合には、何か非常にいいことを言っているんじゃないか、きちっと基本的なこっちの主張を言っていないんじゃないかという疑惑があるんですけれども、この問題は時間もありませんし……。  もう一つ具体的な問題で、日米関係についてお聞きしたいことがあるんですけれども、非常にこまかい問題といいますか、具体的なことなんですけれども、例のミクロネシアのある村長が、田中総理大臣とニクソン大統領にあてて、一種の公開質問状といえるような手紙を、書簡を送ったということば、これは現地の新聞に出ていたので私も知ったんですけれども、これは田中総理大臣あてですけれども、当然外務省の所管と思いますので、これは届いているかどうか、大臣はその内容を御存じかどうか伺っておきます。
  88. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 寡聞にして私はまだ存じませんが、調べてみます。
  89. 田英夫

    ○田英夫君 この問題は、きのう一、二の新聞に出ていたようですけれども、私がその現地の新聞から手に入れた質問の内容なので、実際政府で、村長さんからの手紙ですけれども、田中総理大臣あての手紙がどこかに行ってしまうということでは困るので、どこかにあると思いますが、私の手に入れたもので御紹介すると、これはトラック島の村長でアイザワススムという日系の人ですが、私が調べたところでは、この人は元プロ野球の選手で、毎日オリオンズから高橋ユニオンズに移籍して、ピッチャーで何勝何敗というような数字が出ておりましたけれども、そういうちょっと異色の人ですけれども、向こうの出身のようです。  その手紙によると、私はミクロネシアのトラック地区の住民ですと。現在トル村の村長をしていると。一九七二年トラック地区村長会議の議長をつとめたというような経歴を書いていて、要するに、この手紙というのは、太平洋戦争中にミクロネシア地域、いわゆるトラック、マーシャール、カロリンというような、あの辺の地域の住民が、日本軍のために、あるいはアメリカの攻撃のために非常に大きな損害を受けている、その実態も紹介をされているわけですが、その結果、あなた方両政府は、つまり田中首相とニクソンにあてておりますから、日米政府は、戦争賠償請求に対し、ミクロネシア住民に補償金一千万ドルを与えるという協定を結びました。この金額並びに配分の方法については、多くの正当な機関があるに違いありませんが、この協定の交渉中、私どもミクロネシア側には、選出された代表を通してすら——というのは、これは議会がありますから——何の相談もありませんでした。きめられているこの金額はきわめて不十分ですということがありまして、後段の部分は、戦争中、いかにミクロネシアの人たちが日本軍のためにひどい目にあったか。日本兵は強制的にトラックの人から家を取り上げ、占拠をし、トラックの男たちは追い払われ、妻たちは日本兵にあてがわれましたというような実態が綿々と書いてある手紙です。詳しくは申しませんけれども、そういう手紙が田中総理大臣あてに今年に入ってから届けられていることなんですが。  そこで問題なのは、一千万ドルの賠償金をというふうに書いてあるのは、おそらく四十四年の六十一国会で承認された太平洋諸島信託統治地域に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件というので、例の日本金にして十八億円を日米がそれぞれ拠出するという協定をさしているのだと思いますが、それで間違いありませんか。
  90. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) ただいま御指摘ありましたミクロネシアに対する問題につきましては、四十四年の六十一国会におきまして、十八億円の支出につきまして日米間の協定ができたということで国会の御承認を得まして、日米間の協定が最後的に成立したという経緯は確かにあるわけでございます。
  91. 田英夫

    ○田英夫君 これは十八億円ですから、両方で一千万ドルという計算になる。
  92. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 当時の協定は、日本側五百万ドル、米側五百万ドル、合計いたしまして一千万ドル。で、当時の日本円にいたしまして十八億円ということで国会の承認を得ております。
  93. 田英夫

    ○田英夫君 当時の速記録を拝見すると、衆参両外務委員会でかなり激しいといいますか、論議があったように拝見をしているのですけれども、当時ちょうどここにおいでの大河原局長、高島局長がやはり政府委員で、愛知外務大臣の当時ですが、答弁をしておられますけれども、高島さんの答弁の中で、この協定の根幹は、住民に対する同情の念を表明することである。二番目に、住民福祉のために日米政府が自発的に拠出をするのだ。三番目に、平和条約のいわゆる賠償の問題、これは賠償ではないという態度をとるんだと。こういうふうに言っておられるわけですけれども、いまの村長さんのほうは賠償というふうに理解をしている。これはつんぼさじきだったわけですから、自分たちにくるなら賠償だろうというふうに受け取っている。この辺に非常に問題があると思うのですが、大臣に伺いたいのは、わずか人口は十万人ということですけれども、日中共同声明をつくられた際にも、日中国交回復の際にも非常に問題になりました戦争中の日本の行為、そういうものに賠償金は払わないにしても、日中間も。それに対して謝罪の念をあらわすという姿勢の問題、これは迷惑をかけたというような発言があって問題になった御記憶もあると思いますが、ミクロネシアに対しては、いまだかってそういう態度がとられていないという点をどういうふうにお考えですか。
  94. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 四十四年六十一国会当時の審議の模様につきましては、ただいま田先生御指摘のとおりの経緯があったわけでございますけれども、ミクロネシアに対しましては、米側が戦後信託統治という形で施政権を行使いたしておりまして、日本側といたしましては、戦前の委任統治領以来のいろいろな住民との関係につきましては、平和条約締結におきまして対米請求権の放棄ということをいたしておりますし、当時政府委員が答弁いたしておりますように、この問題の処理にあたっては、賠償あるいは請求権の請求という形での法的な措置はむずかしい関係にありましたために、現地の住民の方々の戦争中のいろいろな苦難に対しまして見舞い金という形でこの問題を処理したい、こういうことで長年日米間で話し合いが行なわれました結果、信託統治領として施政を行使しておりまする米政府との間に日本政府協定を締結いたしまして、日本側として十八億円の見舞い金支出ということの合意を見たわけでございまして、日本側といたしましては、旧委任統治地域にありますこの住民の方々の戦争中あるいはそれ以前の日本に対する協力、あるいは苦難に対して深い同情の気持ちは持っておりますけれども、法的には、いまのような措置以上には出ることができない、こういう関係にありますために、いま申し上げましたような協定という形でこの問題の処理をはかったということになります。現地住民との関係におきましては、米政府は、現地にミクロネシア高等弁務官府を置いて施政に当たっておりますので、その高等弁務官府を通じまして米側は現地との関係の接触を持っておる、こういうかっこうになるわけでございまして、法的には、日本政府として直接この現地の方々と接触をとり得る状況にはない、こういうことであったのであります。
  95. 田英夫

    ○田英夫君 いま局長が言われたとおり、現実の情勢というのはアメリカの信託統治地域になっているということで、直接の接触は持てないということかもしれませんが、そこで先ほどの村長さんの書簡をお聞きしたわけで、十八億円を見舞い金として支払うことを、しかも国会の場では野党側から相当激しい批判があって、衆議院の場合には質疑打ち切りというような混乱のうちにこれが可決をされているという事態もあった。そういうものでミクロネシアの人たちに対する戦争責任というものをこれで済んだと言えるのかどうか、この点はぜひ大臣からお答えいただきたい。
  96. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 大臣のお答えの前に一言。  当時の審議の模様、私記憶いたしておりますけれども、もし私の記憶にして間違いがございませんならば、むしろ現地の住民の方々に非常に気の毒である。したがって、日本政府として何らかの形で同情の意を表することができるならば、むしろ積極的にそれをやるべきだという御議論があったように記憶いたしております。したがいまして、十八億円という金では決して多くはないかもしれないけれども、現地の住民の福祉に役立つように、経済協力の形が積極的に進められるならば非常にこれはけっこうなことであるという御議論が野党側からも出ておったように私記憶しております。
  97. 田英夫

    ○田英夫君 いま局長からそういう答えがありましたけれども、私もまあ当時は国会におりませんでしたけれども、速記録で見た限りでは、野党の基本的な態度は、そういうお金だけで始末をつけるということではなくて、戦争責任を謝罪をするという基本的な態度がないじゃないかというような基本的な態度であったというふうに私は受け取っております。  そういう中で、大臣にお聞きしたいのは、戦争の責任というものが、戦後三十年近くたつ今日、中国に対してはようやく昨年とにかく一つの終止符を打つことができたわけですけれども、人口が少ないとは言いながら、しかも、かつて日本が委任統治をしていたという地域の人たちからはっきりと不満が表明をされているというこの書簡の問題が、ことしになってから、ですから明らかに大平外務大臣のときですけれども、一村長さんからの書簡ということかもしれませんけれども、事の性質はきわめてその意味で大きいと思うにもかかわらず、大臣の耳にも入っていない。私は、事前にきょうこのことをお聞きすることをお話ししておけばお調べいただけたのかもしれませんけれども、大臣の耳にも入っていない。こういうことで、この手紙が行くえ不明であるというようなあり方自体にも私問題があると思うし、戦争責任ということに対する考え方、かつての審議のときに高島局長が、同情の念を表明するということがありますけれども、同時に、自発的に拠出するんだということを、これは政府委員並びに愛知外務大臣も繰り返して言っておられる。いかにも賠償を払うのじゃないぞと、こっちが自発的に何か見舞い金をやるのだぞという態度、こういうところに非常に問題があって、それがいま蒸し返されてきているのじゃないかと思います。この点、大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  98. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) たいへんうかつな話でして、私は、きょうあなたの御質問を伺うまで本件については存じなかったわけでございます。したがって、本件につきまして、その書簡はもとよりでございますけれども戦争責任との関連においてどのように考えたらいいか、ちょっと私に余裕を与えていただきたいと思います。
  99. 田英夫

    ○田英夫君 時間がありませんので、もう一つだけ具体的なことで、これは所管の局長からお答えいただきたいんですが、十八億円を出すことになっているわけですけれども、すでにこれは支払われたのか。このときの質疑によると、三カ年に分けて四十五年度予算から支払うと、しかも、それは労務並びに生産物というようなもので日本は拠出をするんだということになっていますが、これは実際に実行されていますか。
  100. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) ただいまの点につきましては、国会の御承認を得まして米側と協定を発足さしたわけでございますけれども、その後、米側の事情によりまして、米側の負担しますべき五百万ドルにつきまして米議会の承認がおくれておりましたために、その後若干時間が経過いたしましたけれども、先般日米間で細目取りきめの締結を見ましたので、四十七年度予算を最初といたしまして、具体的に今後三年間十八億円の支出を役務並びに生産物の形で行なうことになっております。  なお、先ほど御質問ございましたトラック島アイザワ村長からの公開書簡は総理のもとへ送られておりますけれども、目下この書簡の写しが外務省のほうへ移牒されてまいりまして、省内においてこれを現在検討中でございます。
  101. 田英夫

    ○田英夫君 当時の審議の中で、アメリカ側の予算支出の承認が得られないと支払いが延びるというようなことが言われておるわけですけれども、この辺にもアメリカ側の非常に無責任な態度が出ていると思いますし、日本のほうは国会で協定自体承認を求める、アメリカのほうは協定自体は政府の責任で結んで、予算の支出だけ議会の承認を求めるというような非常にアンバランスなやり方をとったところにも問題があって、そのために四十五年度から支払われるべきものが三年間も支払いが延びてしまったというここにも一つ問題があるし、さらに日本側から労務並びに生産物で拠出をするという、それが一体、すでに調査団が来て調べているようですけれども、しばしばあり得ることですけれども日本の企業の利益のためにその十八億円が使われるおそれが、かつてのビルマやフィリピンの賠償ではあったように思います。そういう点がこれはあってはならぬので、十八億円という金、国民の税金の中から支払われる金が日本の企業の利益に使われるというようなことがあってはならないので、こういう点をひとつ御注意いただきたいということを申し上げて、きょうはこの問題については質疑を終わることにします。
  102. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) ただいま最後に御指摘があった点でございまするけれども、この点につきましては、政府といたしましても、十八億円という多額の支出をいたします以上、これが現地の住民の方々の福祉に最も役立つ方向で使われるようにという趣旨で具体案を検討しているわけでございます。
  103. 星野力

    ○星野力君 いわゆる分裂国家に対する外交について、若干お聞きしたいと思います。  ベトナム民主共和国と国交樹立を目ざして政府間の話し合いが進められるものと理解してよろしゅうございますか。
  104. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) この間、係官をハノイに派遣いたしまして、北越側といろいろ隔意のない意見の交換を遂げてまいりまして、私どもとしては、当方には国交を樹立するのに格別の支障はないわけでございますが、先方がどのように考えておるかというような点につきまして、先方の意向をただしてまいったわけでございます。したがって、仰せのように、国交樹立を目ざして、今後なお話し合いを続けてまいらなければならないのじゃないかと思っております。
  105. 星野力

    ○星野力君 そうしますと、先方の意向ですか、先方に障害があるかもしれない、そういうものを打診するというような段階がまだ続きまして、正式に両国政府間の国交樹立を目ざす交渉というものはまだ若干先に延びる、こういうことになりましょうか。
  106. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 日本のほうといたしましては、これは無条件で国交回復に入るのがあるいは筋じゃないかというふうに考えておりますが、先方もいろいろ考えておられるようでありまして、今後早急に正式の折衝に入っていきたい、かような考えでおるわけでございます。
  107. 星野力

    ○星野力君 今後は、パリで相互の出先機関の間で話し合いが進められるものと、こう考えてよろしゅうございますね。
  108. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 一応パリは有力な候補地として、そういうところで双方の折衝を開始したいと、かように考えております。
  109. 星野力

    ○星野力君 よろしゅうございますが、次に、東ドイツとの国交樹立はいつごろになりますか。
  110. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 五月十五日にモスクワで国交樹立のための交換公文を署名される段取りになっております。
  111. 星野力

    ○星野力君 けっこうですが、そうなりますと、田中内閣になりましてから、いわゆる分裂国家に対するわが国政府の方針が変更されたと、こう受け取ってよろしいのでしょうか。佐藤内閣時代には、一貫して、分裂国家の一方を承認しておる国が他方を承認するということは、外交上の慣例としてあり得ないのだということを強調されてきた、主張されてきたのでありますが、そういう方針が変更されたと、こう考えてよろしゅうございますか。
  112. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) わが国外交方針といたしましては、あらゆる国と思想・体制・信条、そういったもののいかんにかかわらず交わりを結んでまいりたいということはかねがね持っておったわけでございますが、今日に至るまでそういう状況が熟しなかったわけでございますが、東独に関しましては、ようやく機が熟しまして、そういう段取りになったわけでございます。北越のほうにつきましては、いまそういう瀬踏みが行なわれておるということでございます。  方針が変わったというよりは、もともとあらゆる国と関係を取り結びたいという希望を持ちながら機が熟しなかったのが、だんだん熟してまいったというように御理解をいただきたいと思います。
  113. 星野力

    ○星野力君 大平大臣はそうおっしゃいますけれども、前内閣、それ以前もそうでございますが、前内閣時代においてすら、分裂国家の場合は違うのだということを繰り返し述べておられる。佐藤総理も、たとえば分裂国家の場合、外交慣例から、一方の国を承認したら他方の国と外交関係を樹立しないことになっておりますということを、これは、いまのは一九六五年の国会での発言でございますが、これだけじゃない、何回も私ここにメモを持っておりますが言っておられる。その点では、いま大臣がお述べになったことばとは政府の方針というものは違っておったと思うのですが、そうじゃないでしょうか。
  114. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) ざっくばらんに申しますと、たとえば西独の態度あるいは南越の態度、そういったものが、わが国が東独とあるいは国交を結ぶということに対して異議を差しはさむというようなことが、状況の変化においてなくなってきたということでございまして、前内閣の当時、まだそういう状況が生まれていなかったというにすぎないと思います。
  115. 星野力

    ○星野力君 まあ、中国の場合は、別に台湾がそういうふうに中華人民共和国政府外交関係を持つことに異議を差しはさまなかったわけではございませんので、若干性質が違うと思うのですけれども、大体条件が熟してきたから分裂国家の他方とも外交関係を樹立するということなら、この際、朝鮮民主主義人民共和国とも国交を樹立すべきではないかと思いますが、いかがですか。
  116. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) これは、たびたび申し上げておるように、南北の対話がいま進展をいたしておるようでございますので、それをもう少し見守らしていただきたいと思います。
  117. 星野力

    ○星野力君 先ほどは、WHO総会の問題で、南北の対話が進んでおる際であるから、この際は北朝鮮の加盟、統一のたな上げですか延期ですか、それに韓国と共同提案をなさる、提案国になるということを言われたわけですが、WHOなどでは、言ってみれば、これは人道的な国際機関であり、ここに朝鮮民主主義人民共和国が加入するということは、朝鮮民主主義人民共和国のためだけではなしに、世界人類のためにとっても歓迎すべきことである、こういう機関はすべての国に門戸開放されるべきものであると、こう思うんでありますが、それに対して実際反対に立つ、別に加入を妨害する考えはないということもおっしゃったですけれども、だれが見てもこれは事実において朝鮮民主主義人民共和国がWHOに加入するのを妨害する行為であると言わなきゃいけないと思うんです。朝鮮民主主義人民共和国はもちろん、もろもろの第三国もこれは日本の妨害行為と、こう見ると思うんであります。南北の対話が進んでおるからという政府理由づけというのは、どうも私は説得性がないと思うんでありますが、反対される理由ですね、WHOでよろしゅうございます、北が加入するのに反対される理由というものをもっと率直なことばで言ったらどういうことになりましょうか。
  118. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) あなたがおっしゃるように、WHOは政治機関ではなくて、公衆衛生の分野における国際協力を推進する機関でございます。あなたがおっしゃるとおり、原則的にできるだけ多くの国、地域が加入することが望ましいことは申すまでもないと思いまして、私どもはそうでないと言っているわけではないわけでございまして、ただ、WHO加盟申請という問題は、朝鮮統一という未解決の問題に直接関係を持つ政治問題でございまして、本来これは国連総会において行なわれるべきものであって、保健衛生関係の技術的な問題を討議されるWHO総会において御審議になるということは必ずしも適切でないんじゃないかということで、先ほど田先生の御質問にもお答えしておいたわけでございますが、ただ、それだけの理由なんです。
  119. 星野力

    ○星野力君 どこの国も敵視しない、朝鮮民主主義人民共和国に対しても敵視しているわけではないと、こう常々おっしゃるわけですけれども、WHOにおけるこういう日本の態度というものが北朝鮮を敵視しておると、こういうふうに先方から受け取られるわけでありますが、これは間違いない。今後いずれ国交を樹立していかなきゃいけない間柄であるにもかかわらず、こういうことが一つ一つ困難を生じさしていくことになると思うんであります。  大臣は先ほどの御発言でも、国際的な緊張緩和、これは既存の条約のワク組みがしっかりしておるからであると、だから安保条約などその他の条約というものは手軽にいじってはいけないというような御発言をなさっておられる。なるほど世界の秩序というのはいろいろの条約で形式化されておるんでありますが、大臣の言われるように、現状は動かさないほうがいい、こういうことではほんとうに効果のある外交というのはできるんでしょうか。もう一歩、二歩早く決断するような、そういう外交というのが必要じゃないか、日本はそういうところに来ているんではないかと感ずるわけであります。日本政府は現状を動かさない、そのほうがいいんだと、こうおっしゃるけれども、世界は動いております。朝鮮民主主義人民共和国を支持する国もふえてきております。日本政府が好むと好まないとにかかわらず、古いバランスというのはくずれていきつつあるのです。中国の場合もそうであります。ここにいただいておりますところの北東アジア課から出しておる「北朝鮮月報」というのがございます。第二号、昨年の九月号でございますが、この中に、「韓国・北朝鮮外交関係設定状況」というリストが載っております。これを見て数えてみましたら、昨年九月末現在で韓国に大使館を設置しておる国が四十カ国、それから朝鮮民主主義人民共和国に大使館を設置しておる国が三十一カ国というふうになっております。現在この数は変化してきておると思いますが、現在での数字はどうなっておりましょうか。
  120. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) ただいま先化のあげられました数字は、現実大使館を設置しておるという形でとらえられた数字だと思いますが、昨年からことしは若干それぞれの承認国がふえておりますが、昨年におきましてもほぼ近い数字で、現時点、今日で見ますと、韓国を承認をしております国は八十七カ国、北朝鮮を承認しております国は五十二カ国でございます。  そこで、ただいまの大使館を設置しておる国は四十カ国でございますが、昨年におきましても、兼任の大使の任命とか、あるいはただ外交関係だけをつくったという法制上の国交関係を持った国があったり、領事館だけをつくった国がある。そういうことで現実の実館を置いた国の数が四十であった、こういうことでございます。
  121. 星野力

    ○星野力君 私は、朝鮮民主主義人民共和国のほうは大使館を設置しておるところは三十一カ国、韓国のほうは四十カ国、それが現在どういうふうに変化しているかをお聞きしたのですが。
  122. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 大使館現実に設置しておる国は、韓国は現在四十一カ国でないかと思いますが、それから北朝鮮のほうは三十二カ国ぐらいになっておるはずでございます。ちょっとその実館を置いておる数は、私はここにリストを持ってきませんでしたので……。
  123. 星野力

    ○星野力君 きょうそういう数しかございませんでしたら、たとえば朝鮮民主主義人民共和国を最近承認することになりました。また、現実大使館を建てられて、旗が立っているかどうかは別問題といたしまして、マレイシアとかイランとかいうような国もございますし、そういう点では、先ほどおっしゃった承認五十二カ国というのもこれは正確ではないだろう、そういうのを含めればもっとふえるだろうと思います。新聞報道なんかでも、もっと多い数字が示されておりますし、それから大使館を設置しておる国も多くなって、私は、北欧五カ国、これはまだ全部が大使館を設置するという段階まで至っておらぬ。承認という段階もいっておらぬという国もあると思いますけれども、それらやマレイシアやイランを含めますと、大使館を設置しておる国は大体同数になってきておるのではないか、あるいはそれに近くなってきておるのではないか、そう思うのでありますが、数字あとでひとつまたお尋ねしたいこともありますからいただきたいと思いますが、お願いしておきます。
  124. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 北朝鮮を承認しておる国は全部で五十二カ国でございます。そのうちの兼任とか、あるいはただ法制上承認しただけで何らの措置をとっておらない国も含まれておるわけでございます。韓国のほうには承認しておる国が八十七カ国でありまして、そのうちには実館を置いて、大使館を置いておるのが四十何カ国ということでございます。それ以外に領事館大使館ではございませんが、領事館として設置しておる国が七カ国ばかりございますし、そういった形になっておる。北朝鮮の場合も現在承認はいたしましたが、まだ兼任とか、ただ承認したというだけで現実外交の実館を設置しておらない国があるわけでございます。
  125. 山本利壽

    理事山本利壽君) お願いしますが、大体時間が参りましたから。
  126. 星野力

    ○星野力君 ええ。  大使館を設置しておる国が、現在どうなっておるかということをお聞きしておりますので、たとえば兼任大使がおるとか何とかということじゃない。実館を設置をしておる国の数を、ひとつあとでお知らせ願いたいということを言っておるのでありますからして、ひとつそのように取り計らっていただきたいと思うのであります。  時間が参ったそうでありますから、あと一つだけ申し上げたいんですが、こういうふうに朝鮮の状態を考えましても、いままでの状態というものがだんだんくずれてきておるのであります。だから政府外交姿勢といいますか、待機主義、ひより見主義、あと追い主義などということばが、ジャーナリズムの上でも、こういう問題については使われておりますが、それでいいのかどうか。もちろんこれはいいことではないと思います。朝鮮民主主義人民共和国は、言うまでもなくこれは日本の隣国でございます。隣国との関係ぐらい、みずから打開していくべきであると、そういう立場に立って、朝鮮民主主義人民共和国との外交を進めていただきたい。何か情勢が外から動いてきたら、いやいやそれを追認していくと、それに調子を合わしていくということじゃなしに、アジアの隣国との外交ぐらいは自分の力で打開していく、自分の頭で打開していく、考えで打開していく、その方向で進めていただきたいということを申し上げるわけであります。大臣から御発言願いたいと思います。
  127. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、朝鮮半島の問題は、われわれにとって非常に重大でございます。世界のいずれの国と比較いたしましても、非常に重大であると思います。したがって、われわれといたしましては、われわれの頭で——あなたのおっしゃるとおり、われわれの頭で、この問題は慎重な上にも慎重に対処せにゃならぬと考えておるわけでございます。今後とも朝鮮半島の状況については注視を怠らず、わが国として、隣国といたしまして、最善の道を発見しながら進めてまいりたいと考えております。
  128. 星野力

    ○星野力君 ちょっと、簡単な問題ですが、この問題に関連しまして、朝鮮民主主義人民共和国は、遠くない時期に、相互に貿易事務所を設置するお考えは持っておられますか、あるいは事態はそういう運びとなっておるのか。北朝鮮との間に、相互に貿易事務所を設置なさる運びになっておりましょうか。
  129. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 政府レベルではございませんが、民間貿易団体のレベルで、日本と北朝鮮との間で貿易事務所を相互に設置しようかというような話し合いが行なわれておるということは承知いたしております。この事態がどういうふうに進むか、それによりまして、諸般の事情を十分考慮してから、関係各省と協議して、われわれの考えを定めていきたいと、かように考えております。
  130. 星野力

    ○星野力君 それは覚え書き——中国との間の覚え書き貿易事務所、ああいう性格のものというふうに考えてよろしゅうございますか。
  131. 吉田健三

    政府委員吉田健三君) 覚え書き事務所のような形になるかどうかも現時点でははっきりいたしませんし、覚え書き事務所は、御承知のような経緯があってできたわけでございますが、多少次元が違う話になるのじゃなかろうかというような感触を受けております。
  132. 星野力

    ○星野力君 じゃあどうも……。
  133. 山本利壽

    理事山本利壽君) 本調査に対する質疑は、本日はこの程度にし、これにて散会いたします。    午後零時三十五分散会      —————・—————