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1973-04-17 第71回国会 参議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月十七日(火曜日)    午前十時十四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 佐藤 一郎君                 山本 利壽君                 田  英夫君     委 員                 木内 四郎君                 杉原 荒太君                 矢野  登君                 加藤シヅエ君                 小谷  守君                 羽生 三七君                 渋谷 邦彦君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        防衛施設庁総務        部長       河路  康君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省条約局外        務参事官     松永 信雄君        外務省国際連合        局長       影井 梅夫君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        外務省経済局次        長        西田 誠哉君        大蔵省関税局輸        入課長      片山  充君        農林省畜産局牛        乳乳製品課長   佐野 宏哉君        運輸省航空局管        制保安部長    松本  操君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○千九百七十二年の国際ココア協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出) ○国際情勢等に関する調査  (北朝鮮のWHO加盟問題等に関する件)  (米韓合同演習に伴う在日米軍基地使用問題等  に関する件)  (日本における航空管制問題に関する件)  (在日米軍による事故の補償問題に関する件)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  千九百七十二年の国際ココア協定締結について承認を求めるの件(本院先議)を議題といたします。  本件につきましては、去る四月三日の委員会において趣旨説明及び補足説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 小谷守

    小谷守君 まず、最近におきまするココアの国際的な需給状況について御説明を願いたいと思います。また、国内での需給、流通の状況についても、概略の御説明を願いたいと思います。
  4. 西田誠哉

    説明員西田誠哉君) 国際的なココア需給状況ということでございますけれども、大体年間ココア生産量といたしましては、約百五十万トンございます。そのうちで国際市場に回っておりますのは約百三十万トンでございます。御承知のように、ココアと申しますのは、非常に木を植えましてから成長まで時間がかかると、しかも大体二十年から三十年間ココアがとれるという状況にございますために、非常に生産の幅というものが狭いという状況にございます。  最近の傾向を見ますと、若干投機的な買いというものもございました関係上、現在値段は約一ポンド当たり三十九セント程度で推移しておるというふうに承知しております。  それから、国内買い入れについての御質問でございますが、わが国は年によって若干相違がございますけれども、大体四万トン前後を毎年買い入れております。
  5. 小谷守

    小谷守君 この協定は、説明書によりますというと、開発途上にある生産国経済発展協力をすることと、また、消費国としてのわが国立場を十分反映させること、こういうふうにあるわけでありますが、私ども率直に、何か実際には商社等輸入業者利益擁護におもなねらいがあるのではなかろうか、これはかんぐりかもわかりませんけれども、そういう気持ちがしてなりません。  そこで伺いたいのは、この協定によって守られる国益というものは一体どういうものか、そういう点について少し伺っておきたい。
  6. 西田誠哉

    説明員西田誠哉君) ただいま先生から御指摘ございましたように、この協定説明書にもございますように、ココア生産国と申しますのはアフリカあるいは中南米、こういった後発国がほとんど大部分を占めておるわけでございます。たとえば、ガーナのごときは、外貨収入の七割近いものをこのココア輸出によって得ておるという状況でございます。しかも、このココアと申しますのは、天候その他のかげんによりまして、その年によって非常に生産に上下があるという状況にございますし、これによって値段が非常にフラクチュエートするということは、このココア輸出に依存しておりますこれら後進国外貨収入にも非常に影響があるという意味で、この価格の安定、それからこれは価格の安定を維持することによって適切な外貨収入を保持するということがまず第一点でございます。  それから第二点は、そういった国際価格を維持するということによりまして、消費国としての立場も保護するというのが第二点でございます。  このココア協定仕組みといたしましては、安定価格というのがございまして、最高三十二セント、それから最低二十三セントと、この中で操作をするという仕組みになっております。したがいまして、先ほど御説明いたしましたように、若干の、通常のヘッジ以外の買いというものが価格をつり上げておるという面も若干あるかと思いますけれども、このココア協定締結によりまして、こういったものをできるだけなくしていこうというのが一つの意図でございますし、むしろ価格を二十三セントないし三十二セントの幅に押えるということによって、こういった投機の対象的な活動をなくしていこうということでございますので、一部の人に利するという点はないと考えます。
  7. 小谷守

    小谷守君 協定の三十七条あるいは三十九条にうたっております緩衝在庫とはどういうものでありますか。食品協定緩衝在庫が設けられるのは初めてのことである、こういうふうに聞いておりますが、この緩衝在庫というシステムはどういう機能を持つものでありますか、具体的にひとつお願いいたします。
  8. 西田誠哉

    説明員西田誠哉君) 食品に関しまして緩衝在庫が設けられますのは、御指摘のとおり、これが最初でございます。  緩衝在庫機能といたしましては、各輸出国、これはおもな、一万トン以上輸出しております国が九ヵ国ございますが、この九ヵ国が年間輸出割り当てというものをこのココア理事会によって前もってきめてあるのが輸出割り当てでございますが、値段が二十九セント以下、国際市況が二十九セント以下に下がりましたときに、この緩衝在庫買いに入るということになっております。それで、さらに値段が下がりましたときに、徐々にその輸出割り当てを減らしていく。で、二十三セントないし二十四セントに低落いたしましたときは、その輸出割り当ての九〇%しか輸出を認めないということになっております。それでその輸出割り当てを減らした分、つまりこの分を緩衝在庫買い上げるということになっておるわけでございます。  それから徐々に価格が上昇いたしまして、三十一セントになりましたときに、この緩衝在庫が売りに入る。つまり価格上昇を鎮静化するために売りに出るわけでございます。それで値段が上限の三十二セントに達するか、あるいは在庫がなくなるまで売り続ける。こういうことによりまして、価格を二十三ないし三十二の間に維持していこうという仕組みになっておるわけでございます。
  9. 小谷守

    小谷守君 このココア価格形成は、ほとんど先物取引で行なわれておる。実取引はいまあなたのおっしゃったように百万トン程度。ところが、先物による、から取引は実際は七百万トン、こういうふうにいわれておるわけでありますが、このような投機的な取引の多い、したがって、価格の振幅が激しい食品について、緩衝在庫がはたして有効に機能するかどうか、その辺の見通しはどうでしょうか。
  10. 西田誠哉

    説明員西田誠哉君) 私どもといたしましては、いろいろと先生指摘のような御疑問もあるかと思いますけれども、やはりこの緩衝在庫によってそういった価格鎮静効果を非常に期待しているという次第でございます。  具体的に御説明いたしますと、緩衝在庫は一応最高限二十五万トン買い入れるということになっております。大体百二、三十万トンが一年間の国際的な取引でございますので、約二割近いものを緩衝在庫がかかえるということになりますので、まあ投機的な動きというものはこれによって相当程度防げるというふうに考えておる次第でございます。
  11. 小谷守

    小谷守君 これが有効に機能するためには、加盟輸出国加盟輸入国との緊密な連携協力が必要だと思うのでありますが、この協定で非常にいぶかしい点は、世界の最大の輸入国であるアメリカがこの協定に参加しないと、こういう意向のように伺うのであります。その理由はどういうことでございますか。
  12. 西田誠哉

    説明員西田誠哉君) 御指摘のように、アメリカは昨年の秋、ジュネーブで行なわれましたココア協定採択のための会議に終始出席いたしましたけれども、若干その協定できめられました安定価格、まあこれに問題ありということで、協定自体採択には反対しないけれども、署名できないということで、署名いたしませんでございました。で、私どもといたしましては、先生指摘のように、やはり輸入国輸出国双方共同してココア価格安定を維持していくということが必要だと思っておりますし、世界ココア取引輸入の約二五%を占めておりますアメリカというものが、やはりこの協定に入っていくということが必要だと考えておりますので、今後とも、アメリカがこの協定に参加するように勧奨していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  13. 小谷守

    小谷守君 アメリカがこの協定のらち外におってかって気ままにやるということでありますと、この協定の意図する効果は大きく減殺されると思うのであります。  そこで、以下は大臣に伺いますが、アメリカをこの協定に引き入れる確信はおありでございましょうか、大臣のお見通しを伺いたいと思います。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アメリカにも国内の事情がいろいろあるようでございまして、対国会関係の配慮もいろいろあるようでございまして、アメリカをして必ず参加させるというような自信はございませんけれども、いま政府委員から申し上げましたような趣旨で、私どもとしては引き続き努力はいたしたいと思います。
  15. 小谷守

    小谷守君 これは、世界の二割五分の大幅な輸入国でありますアメリカがこれに入らぬということについては、この協定効果を期待することが非常にむずかしいのじゃないか。まあ努力をするというおことばでありますが、うたわれておるような効果について疑念を持たざるを得ぬと思いますが、いかがでしょう。
  16. 西田誠哉

    説明員西田誠哉君) 確かに二五%のシェアを持っておりますアメリカが入らないという点は、私どもとしても非常に残念に思うわけでございますが、先ほどアメリカがかって気ままな動きをするのではないかという御指摘がございましたけれどもココア輸出国、この協定に入っております輸出国は、加盟国に優先的にココア輸出すると、それから加盟国に対しては非加盟国よりも有利な条件で取引すると、まあいろんな規定がございますし、それから非加盟国、つまりこの協定のアウトサイダーから買い入れる際には、その制限がございます。いろいろな点がございますので、この協定運営自体にとりましては特に支障はないというふうに考えておるわけでございます。
  17. 小谷守

    小谷守君 この協定できめられております価格は、先ほどあなたがお示しになったように、すべて今回のアメリカドル切り下げ以前の通貨単位で示されておる。これでいいのかどうか、是正措置を考えられておるのかどうか。それはいつやられるのか。
  18. 西田誠哉

    説明員西田誠哉君) 御指摘のように、この協定採択されましたのは昨年の十月でございます。その後、ことしの二月にアメリカドル切り下げ、その他国際通貨変動があったわけでございますが、こういった点をカバーするために、この協定には、アメリカドルあるいはイギリスのポンドの変動があった際には、理事会議長は、その調整のための適当な措置をとるということが書いてございます。したがいまして、まあこの協定が発効いたしまして、第一回理事会が開かれますのは十月以降と思いますけれども、その際に、これらの点につきまして、当然必要な調整措置と、具体的に申し上げれば、おそらく価格の改定ということが行なわれるというふうに考えられる次第でございます。
  19. 小谷守

    小谷守君 けっこうです。
  20. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それでは、まず第一にお尋ねをして確認をしておきたいと思いますのは、現在ココア調製品というものが輸入自由化になっておる。一方乳製品については、輸入自由化は認められていないという問題がございまして、この調製品について国内酪農業者にとっても非常に微妙な反応があるわけですね。まず調製品の問題について、当局としてはどこまでを一体調製品というのか、それからどこまでを乳製品というのか。なぜそういうきわめてとてつもないことを申し上げるかというと、乳製品の中にきわめて微量ココアが混入されてもそれを調製品として扱われる。乳製品ではなくて調製品として扱われる。そういうところに問題がありますので、その辺の実体的な解釈のしかた、また、現状というものがどうなっているのか、これは農林省になりましょうかね、お答えをいただくのは。
  21. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) 先生指摘のとおり、ココア調製品は現在その輸入自由化されておりますが、これにどの程度ココアが入っておって、どの程度粉乳が入っておればココア調製品分類されるかという問題でございますが、これは実は現在のところ、ココアが少量でも混入されておればココア調整品分類されるということになっておりまして、現実には粉乳の割合が九〇%程度に達するものがココア調製品分類輸入されておるというのが実態でございます。
  22. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そうすると、極端なわれわれしろうとの判断で申し上げますんですがね、かりに乳製品が九九・九%、ココアの分量が〇・一%、これも微量ということができますね、表現の上では。それでもやはりココア調製品として扱うのかどうなのかという問題です。もっと極端な数字が出ないとも限らない。その辺は一体どういうふうにチェックがなされているのかという問題がございましょう。
  23. 片山充

    説明員片山充君) お尋ねの点は、非常にデリケートで、むずかしい問題であるわけでございますが、この基礎になっておりますBTN条約というのが実はございますけれどもBTN条約の公式の解釈といたしましては、ココアがあるかないかというのは、ココア存在が認識し得る程度にあれば、これはココアが入っておるのだということになっておりまして、あとはケース・バイ・ケース判断ということであろうかと思います。
  24. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ことばじりをつかまえて言うわけじゃありませんけれども、その認識し得る状態というのは、一体いかなることを言うのかということでしょうね。なぜ私がそれを言わなくちゃならぬかというと、実は陳情がきているわけです、酪農業者から。  それで、乳製品は先ほど申し上げたように、自由化されてない。それから合法的に自由化をどんどんやっているような形態になり得る可能性ということは、十分あり得るのじゃないか。そうした場合に、酪農業者の受けるショックは非常に大きい。つまり、安いものがどんどん入ってくるわけですから。そういうことでお尋ねをしているわけです。その点どうなっているのか。
  25. 片山充

    説明員片山充君) 先ほど農林省のほうからも御説明ございましたように、現実に入っておりますのは、一〇ないし一五、六%程度ココア含有量のものが多いようでございます。だんだん一一〇%前後のものがふえてきております。その程度のものでございますと、やはりココア存在をしておる、ココア調製品であるというふうに考えています。
  26. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 たくさんの量の商品について追跡調査をしながら、いまおっしゃったような分析の一つの標準といいますか、結果をもって調査をなさるということは、たいへんだろうと思うのですがね。しかし、不当な価格のつり上げ等々を最近非常に問題にされております状況を考えた場合に、やはりこの問題については明確化をはかる必要があるんではないのか。じゃ、一体常識的に何%混入されている場合を日本においては調製品とするのか。また、国際的常識においては何%混入されれば調製品としての判断がなされているのかということでございましょうね。ただ、いままでの慣例と申しますか、一〇%から一五%ぐらい入っていれば一応ココア調製品として認めるということだけではずいぶん根拠が浅いような感じがしてならないわけですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  27. 片山充

    説明員片山充君) 先ほど私が申し上げましたように、CCC——関税協力理事会という組織がございまして、そこでつくっておりますBTN条約と略称しておりますが、品目表に関する条約があるわけでございます。そこの運用のしかたは加盟各国——主要国がほとんど加盟しておりますけれども年間二回ないし三回ぐらい品目表委員会という会議をもちまして、そこで具体的なケースについて、各国いろいろ問題がありますものについては、議論をやっておるわけでございます。われわれ承知いたしておりますところでは、このココア含有量が幾らになったら、これをココアが入っておるものとすべきかということにつきましては、まだ議論がなされておりませんです。同様の、やや似た問題はあるわけでございますけれども、その幾つかについては、品目表委員会討議がされ、その結論が委員会の意見として公表されておる。オピニオンとかユニオンとか、いろいろ形態はございますけれども、そういうものがございますけれども、この問題については、まだ討議がなされておりませんで、したがって、国際的にも何%というはっきりした基準は出ていないというのが現状でございます。
  28. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 国際的にやはりある一定の基準というものを設けたほうがいいのかどうなのか。設けたほうが日本消費者にとっても非常に有利なのかどうなのか。また、そういう国々がほかにもあるのかどうなのか。そうした場合に、日本として、ブラッセルならブラッセル関税定率理事会ですか、そこに申し入れをして、そういうような会合を開いて調整をはかるというような考え、計画というものがないのかどうなのか。この点はどういうふうに推移しているのですか。
  29. 片山充

    説明員片山充君) この問題につきましては、あるいはすでに御議論があったかとも存じますけれども輸入制度輸入制限の問題でございます。私がいま説明をいたしましたのは、関税基礎になります品目表品目分類のための条約でございます。したがって、一つ考えられますことは、輸入公表できまっておりますのですけれども、そのきめ方を、この品目表によりますところの分類からある程度離れて規定をするという方法一つあろうかと思います。  それから、先生質問趣旨のように、わが国酪農に対する影響という観点からいたしますと、必ずしもこれを明確にいたしますことがその利益になるかどうか、若干疑問があるんではないかというふうに感じております。
  30. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いずれにしても、非常にあいまいな状態でありますと、調製品なのか、乳製品なのか。その品質、味覚、利用価値というような問題が、またいろいろ問題点になってくるおそれがあるんではないかと思いますが、この辺の判断行政指導というものはどういうふうになされているのですか、業界に対しても。
  31. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) 私どもといたしましても、乳製品にごく類似した御指摘のような商品が自由に輸入されておるという状態につきましては、決して無関心ではいられないわけでございまして、昨年ことにココア調製品輸入が大幅に増加いたしましたので、この商品のユーザーでありまチョコレート業界に対して自粛を求めるような話し合いをいたしました。その結果、チョコレート業界では、少なくとも昭和四十七年水準使用量を今後はふやさないように自粛をしたいという約束をしてもらっております。それで、ことしに入りましてから、まだ二ヵ月しかたっておりませんが、今後業界がこの約束を守ってくれるかどうかということを十分監視してまいりたいというふうに考えております。
  32. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 業界がそうした行政指導を十分守ってくれるかどうかという点については、今日までもいろいろ、この問題に限らずに、その不徹底というものが社会的にいろんな面で影響を与えているという事実を考えた場合に、はたしてその点の徹底というものがなされて、当局として考えておるような方向に向かっての行き方がなされるのかどうなのか。その点は自信がございますか。
  33. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) このココア調製品に混入されて輸入されております乳製品は、主として全粉乳といわれるものでございますが、四十七年につきましては、全粉乳国内生産というものは相当増産になりまして、また価格も、四十六年に比べますと、相当値上がりをしておるような実情でございます。それでございますので、少なくとも四十七年につきましては、四十七年水準程度輸入量国内の全粉乳需給関係に悪影響を与えたということはないだろうというふうに考えております。  それで、今後、その四十七年水準使用量を上回らないように自粛をするという約束を守ってくれるかどうかということは、一つ通関統計を見ておればよろしいわけでございますが、もう一つ方法として、チョコレート業界がほんとうに国産の全粉乳を使ってくれているかどうかということにつきまして、各社から報告を求めて、国産の全粉乳使用状況監視していきたいというふうに考えております。これは乳製品のメーカーのほうの話と突合いたしますと、そう、うそはつけないのではないかと考えておりますので、比較的有効にチェックできるであろうというふうに考えております。
  34. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それで、われわれ単純な疑問としてわいてくるのは、調製品として入ってくるそれが、ほとんど微量な、どちらかというと乳製品に近い、しかも価格は安いと、当然業界としては安い商品を確保する。これは常識でございましょう。その点、今度国内酪農業者にとっては、やり必然的に問題が起きないということはあり得ないだろう。その辺のチェックのしかたが、現在機能的に、また将来においても十分そういう監視体制というものが、いまおやりになっているというお話でございますけれども、相当抜け道があるんじゃないかという感じがするのですけれども、その点はだいじょうぶでございましょうか。
  35. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) この問題に私どもが憂慮の念をもちまして、業界に対して説得をしたり、監視をするということを始めましてから、率直に申し上げまして、必ずしも私ども十分な経験を持っておるわけではございませんので、万々だいじょうぶであるというふうに固いお約束を申し上げますことは若干ちゅうちょを感じますが、精一ぱい努力してまいりたいと考えております。
  36. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 で、今度われわれ消費者立場に立って考えた場合に、ひそやかに原料が安く購入されて、原価それ自体が安いにかかわらず、高い値段でもってその市場に放出されるということになりますと、結局われわれが高いものをいつも買わされて、どっかでその不当な利益をあげる者が出てきやしまいかということの心配が出てくるのですがね。ココアなんて非常に限定された、また非常に価格変動の激しい商品であるだけに、そういう可能性というものは十分考えられるのではないか。むしろこうした監視体制というものは、よりシャープにシビアにやっていかなければならないのじゃないかというふうに感ずるのですけれどもね。その点、いまの御答弁ではきわめて不安定な受け取り方を私どもするわけですけれども、さらにこの改善の方法というものは考えられないのでしょうか。
  37. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) チョコレート業界がこういう製品を輸入することによって暴利をむさぼるかどうかという問題ですが、その問題につきまして、まず第一に、現在のところチョコレート菓子の輸入自由化されておりまして、それで、チョコレート菓子の輸入というのはここのところかなりの伸び率で伸びてきておるというふうに承知をしております。したがいまして、国内業界が安い原料を入手しておるにもかかわらずこれを不当に高い値段で売るということは、輸入チョコレートとの関係からいって、おそらく簡単にそういうことができる状況ではないだろうというふうに判断をいたしておりますが、なお菓子業界の監督を担当しております食品流通局ともよく相談をいたしまして、御指摘のような事態のないように善処してまいりたいと考えております。
  38. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 まあ、いずれにしても、そういう疑問の発生は、乳製品調製品なのかというその原点に立ち戻ったところから発生するのじゃないかというふうに考えられるわけですね。先ほどちょっと触れましたけれども、いま農林省のほうとしてもブラッセルにおける関税定率表については非常に疑問である、これはもう当然調整する段階にきているはずだと、こういう御判断をお持ちになっているのですけれども、これをこの一、二年という非常に短い期間に改定の申し入れをするか、またそういうふうな機運に向かっているのかどうなのか、その可能性については、大蔵省が来ておれば大蔵省とあわせて御答弁いただきたいと思いますね。
  39. 片山充

    説明員片山充君) 先ほどから申し上げておりますように、一つはこれは輸入構造上の問題があるわけでございますが、われわれの関係のほうのBTNについて申し上げますと、幾つかこの種の問題がございますけれども、中でもココア分類につきましては、何か特別な扱いがなされておるようでございます。これはやはりヨーロッパを中心にいたします条約である関係もございまして、ヨーロッパにおける伝統的な取り扱いその他にも根があるようでございます。したがって、われわれの現在の感触だけを申し上げますと、これを基本的に、根本的に、ほかのものと同じような——まあ五〇%原則というものがほかのものにつきましてはあるわけでございますが、これと同じような扱いに組みかえるということになりますと、BTN上も相当複雑な修正を必要といたしますし、見通しとしては、必ずしも明るくないんではないかというふうに思っております。
  40. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そうなりますと、いつまでたっても乳製品あるいは調製品の問題、いま当局としても非常に苦慮されているこの問題の、判断と申しますか、なかなかつきにくいということになりますと、一体解決はどうなるんだろう。先ほど来から答弁を伺っておりましても、ココアという問題であればそう国民的にいま差し迫った問題でもなさそうなんで、あんまり積極的にこれと取り組むという姿勢も弱いんじゃないか。やはり、事、消費者に利用されている商品であるならば、当然根本的に、量の多少にかかわらず、考えていかなければなりませんでしょうし、やっぱりその点もう少しく詰めた答弁を私伺いたかったのですけれども、寄り寄り検討もされているんだろうと思いますけれども、どうしても疑問が残る、乳製品調製品の問題で。この辺がはっきりしないと、くどいようですけれども酪農業者にとっても非常に不安感を与える。この点、明確にやはりなさる必要がおありになるんじゃないか。しかも、大臣も来ておりませんから、最終的な政治判断というものは伺うわけにいきませんので、きょうのところはこの程度にしておきたいと思います。
  41. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。     —————————————
  42. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  43. 羽生三七

    ○羽生三七君 さきの日中国交樹立、それから米中の接近、それからベトナム和平等でアジアの緊張緩和が進んではおりますが、その中で、依然として今日問題なのは朝鮮半島であることは言うまでもない。先年来確かに朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北鮮と韓国との間に対話の糸口が開けましたが、しかし、残念ながら、これを南北両朝鮮の真の雪解けと見るのは、目下のところ困難ではないかと思います。  周知のように、南北両朝鮮はそれぞれ憲法を改正して、また、それぞれの国の地盤固めをしているのが今日の情勢であります。こういう情勢の中で、御承知のように、先般、スエーデン、フィンランド等が北朝鮮と国交を樹立して、すでに北朝鮮と国交樹立した国の数は十数ヵ国に及んでおることは御承知のとおりであります。ところで、そういう情勢にもかかわらず、いまも述べましたように、朝鮮半島にわれわれが待望するような真の雪解けが生れているかといえば、情勢は必ずしも進展しているとは言えないと思います。ここでわれわれが考えなければならぬことは、さきの米中接近や日中国交樹立が、中国の国連加盟という事実関係の上に立って進められたということであります。要するに両当事国——これは朝鮮半島の場合ですが、これは必ずしも朝鮮半島に限定されたことではありませんけれども、いまのこの場合で言えば、朝鮮半島についてでありますが、この当事国双方が直接的に、またかつ、すみやかに融和への道を切り開くことが困難な場合には、世界の国々が、融和や雪解けを実現しやすくするような方法で問題の解決に取り組み、あるいは必要なレールを敷く手助けをすることであると思います。つまり、関係各国がそういう融和なり雪解けが真に実現できるような、そういうための問題の取り組み、あるいはそれに必要なレールを敷くことにあると思います。その意味で、来月七日からジュネーブで開かれる国連の世界保健機関、WHOの総会の場合、この朝鮮民主主義人民共和国の申請にかかわる加盟要請にこたえることは、問題に対応する一つの道であると思います。これに対して日本はどういう方針をもって臨まれようとするのか。私は、これに積極的に支持を与えるべきだと思いますが、まず最初に、この問題についての御見解を承りたいと思います。
  44. 影井梅夫

    政府委員(影井梅夫君) 本件は、WHOの事業自体から見ますと、その性質上なるべく加盟国の数がふえるのが望ましい、そういう意味におきましては、北鮮がWHOのメンバーになるということは望ましいことである。これはWHOの事業自体から見ますとそういう感じがいたします。しかしながら、この際、北鮮がいずれかの国連の専門機関の加盟国としての地位を得るということは、そのまま、今度は政治問題ということになるわけでございます。ただいま先生指摘のとおりに、南北で話し合いが始まっておりますが、この話し合い、これを中心にいたしまして、これを阻害しないようにという意味からいたしまして、はたしてこの北鮮のWHO加盟が南北の話し合いに影響を与えないだろうかという観点からいたしまして、そのかね合いを目下慎重に検討しているという段階でございます。
  45. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまも述べましたように、日中国交樹立、米中接近、ベトナム和平等々、国際緊張緩和の諸条件が進展している中で、朝鮮半島の情勢は先ほど申し上げたとおりです。特に、さきの南北共同声明、そういう新しい事態にもかかわらず、真の意味の情勢が進展しているとは思えないのであります。しかもこのことは、日本を取り巻く平和的な国際環境を創造する上で、私は重要な問題であると思います。それだけに、朝鮮半島の問題をどう解決するかは、もし望ましい解決ができるならば、これは日本の平和への大きな私は前進になると思います。ところが、日本が今日まで、大臣すでに御承知のことでありますが、日本外交はお家芸みたいに国際情勢待ちでありますね。みずから積極的にイニシアチブをとって問題を切り開いていくというよりも、むしろ国際情勢を待つ。無難であると言えば無難かもしれませんが、しかしこういう姿勢ではたしていいのかどうか。みずからこのイニシアチブをとって、そして緊張緩和に貢献するような積極的な姿勢がいま望まれておるんではないか。これはWHOへの加盟申請問題についても、私は、検討なんてことじゃなくて、むしろ日本が積極的にこれに支援を与えるべき、いまそういう条件下に置かれておると思うんでありますが、これは大臣からひとつ御見解をいただきたいと思います。
  46. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ国連における朝鮮問題が、新たな問題性を持ってまいりましたことは、羽生さんが御指摘のように、この地帯をめぐるいわゆる緊張緩和への動きが出てまいりましたことと無関係でないと思います。で、今後、去年の国連総会におきましてもその気配が出てきておるわけでございまして、今年の秋の国連総会におきましても、この問題は、まあひとつの注目すべき問題になってくるだろうとわれわれも考えておるんでございます。そういうことは、われわれもよく理解できるんでございますが、WHOに参加するという問題としてだけ切り離して考えてみますと、本来、一体この機関が、非常に政治的なインパクトを持った問題を、まあお医者さんたちが集まってやっていくにはちょっと似つかわしい問題じゃないんじゃないかというような感じも正直にするわけでございまして、こういう問題を扱うのは扱う場所があるんじゃないか。東独、西独の場合でも、専門機関への加盟という問題は本場でやっておりまして、そういう経緯もありますので、さてこれどういうように取り扱ったらいいものかと思って、実はわれわれもいま苦心しておるところでございますが、ただ、日本の出方が確かに非常にきめ手になることも、またこれ事実なんでございます。それだけに、われわれとしては、内外にちゃんと納得がいくようなかまえで臨まなければならぬのじゃないかと思いまして、いまちょっと苦吟を重ねておるところでございますが。
  47. 羽生三七

    ○羽生三七君 日韓条約の際にわれわれが指摘した問題は、政府は近い国と仲よくすることは当然ではないかと、こういうことで日韓条約の際に説明されたわけですね。私どもがそれは当然であるが、近い一つの国と仲よくして、同じ近い他の国、まあこれ分裂を固定化する意味で言っているわけじゃないのですが、同じ近い他の国を疎外するのは、これは問題ではないかという立場で、私たちの主張を述べたわけです。また、日本が日米共同声明で朝鮮半島の問題に触れておるのも、それだけ日本が重要な関心を示しておるからだと思うんですね。そういう場合には、むしろ日本自身が積極的にその緊張緩和をし、緊張をほぐす役割りをやらなければならない立場や地理的条件に日本は置かれておるわけですね。それゆえにこそ、日米共同声明の中で、特に朝鮮半島の問題に触れておると思うのです。その触れることのよしあしは別ですよ。私は意見を異にしますが、触れておるということは、問題の重要性を認識しておると思う。それならば、それを一番地理的にも近い国にあり、いろいろな意味で日本なりアジアの平和と安全にかかわり合いのある立場にあるこの朝鮮問題、そして日本が、これを解決するために積極的な役割りを果たすことは、私は非常な重要な意味を持っておると思うし、また、果たさなければならないと思うのですね。そういう意味で、昨日ですか、韓国の外相と会談されたようですが、このWHO問題、何かお話し合いになったようですが、何か言質を与えられたようなことはあるんでしょうか。どういう方針でお話をなさったんでしょうか。
  48. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、この朝鮮半島の問題、大きく言って東北アジアと申しますか、と、日本との間柄というのは、東南アジアと日本の間柄に比べても、比べものにならないほどウエートを持った、分厚な関係になっておるわけでございます。だから、われわれの外交にとりまして、朝鮮半島の問題というのは非常に重大なんで、それだけに、日本の行動というのが大事になってくるわけでございますので、ヨーロッパ諸国は比較的手軽にやれるんですけれどもね、日本の場合、なかなかそう身軽でないという立場は御理解いただけると思うのでございます。それで、従来国会でも私申し上げておりますのは、朝鮮半島の問題を取り扱う場合に一番大事なことは、たまたま去年の七月四日に始められた南北の対話ということが、自主的な平和的な統一を目ざしてやっていくということで、同じテーブルについておるわけでございますので、これはたいへんわれわれは希望を託することの始まりだと考えておりまして、その点については羽生さんも御異存がないと思うのでございます。  その場合、この進展ぶりというようなものをじっくり見ながら、こちらの対応を考えていかねばいかぬと思っているんでございます。  きのう金外相が来られて、主として私はこの点をいろいろお尋ねを申し上げたわけでございます。まだ、その実質的な進展がないというわけですね。しかし、まあテーブルについて話し合って、また次、いつ、どこで開こうかというようなことが一応の結論として出ておるわけでございまして、実質的に見るべき進展がないわけなんだということでございます。したがって、この進展が手っとり早くないという状況は、私どもの朝鮮政策というようなものに対してたいへんやりにくい状況をつくっておるわけでございますので、いま、そういうことと関係なく、日本はこうやるんだ、こうやるんだという、言質を与えるような立場でないわけでございますので、主として先方の御意見を拝聴したというのが実相でございます。
  49. 羽生三七

    ○羽生三七君 先ほども申し述べましたように、つまり、そういう対話という情勢が生まれたにもかかわらず、必ずしも望ましいようには進展していないと。そうであれば、これは必ずしも朝鮮半島の問題に限らず、この種の情勢に置かれておる国々は、過去の経過に徴して見ても非常にむずかしいことがあるわけですね。それを解きほぐしていくのは、私はむしろ周辺諸国の責任であると思うんです。むしろやりやすいようにレールを敷くことに手助けをする。内政に干渉する意味じゃないですよ。そういう意味で手助けをしていく。たとえば、先ほど申し述べましたが、日本の中国との国交正常化、アメリカとの、米中の接近ですね。これも結局、日本は重要事項指定の当事国などになって、逆の立場をとっておりながらも、結局国連における中国加盟決定という国際情勢にささえられて日本は踏み切ったわけですね。ですから、そういう国際情勢をつくり上げていくということが非常に私は重要な問題だと思う。先ほど、WHOと国連総会等と大臣は別個のものとして御発言がありましたが、しかし、今度の北朝鮮が加盟申請をしておることが、同時に、私は国連の加盟申請につながる問題だと思うんです。そういう形で私はむしろそういうことを展望しながら、WHOへの加盟を申請しておると思う。そうでありますから、従来のように、すでに中国の国連加盟問題で日本が経験したことなのですから、そういう経験を踏まえて、いわゆるお家芸の国際情勢待ちを一てきして、積極的に今度はWHOへの北朝鮮の加盟を私は支持すべきではないかと、こう思うんですが、重ねてお伺いいたします。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あなたの言われることもよく理解できるんです。まあ、南北の対話がそう実質的な進展をしない、それじゃ外回りからだんだんそういう空気を醸成していきゃいいじゃないかということも、私は一つの道だと思います。けれども、南北朝鮮が対話を始めて、われわれは、当事者同士で自主的な、そして平和的な統一の方向をひとつ模索しようじゃないかということを始めておるわけでございまして、まず、しばらくこの成り行きを見て、そういう、それが行なわれてまだ一年たっていないわけでございますけれども、もう少しこの成行きを見て、国連その他のアクションというのはとってもおそくはないんじゃないかという見方も、また一面理解ができるわけなんでございまして、韓国の御主張は、まあ去年もそうでございましたし、ことしも、まあこのわれわれのいま、先ほど始めておる状況をもう少し見てくれぬかと、何もかたくななことでなくて、あとのほうの態度が望ましいということを、日本ばかりでなく、関係国にも求めておるようでございまして、それも私は理解できないことではないと思うんでございます。で、そういうどちらにウエートを置いて考えるかという問題と、それからもう一つ、WHOというようなところでこういう問題、そういう政治的なインパクトを持った問題を取り扱うのが是か非かというような問題とございまして、どうすべえということで、まあこれ、苦患しておるんですよ、いま。しかし、WHOの期日も迫りましたので、あまりぐずぐずもしておれないわけでございますけれども、ぎりぎりまでひとつわれわれ考えてみようじゃないかということでおるわけでございますが、いずれにせよ、内外に御納得のいくような措置をやらぬといかぬと思って、検討を進めておるところでございます。
  51. 羽生三七

    ○羽生三七君 この日本と朝鮮との戦前の関係を想起する場合に、戦後、日本が果たさなければならぬ役割りは、韓国に限定された問題ではないと思いますね。全朝鮮に及ぶべきであると思う。だから、そういう意味で、私は全朝鮮に責任が日本は非常にあると思うんですね。ですから、韓国との関係だけを考えて、まあいろいろいま大臣の苦心のほども言われましたけれども、しかし、ウエートはやはり依然として韓国のことを考えてものを言われておると思いますが、やはり私は全朝鮮という立場で考えるべきだと。その場合には、来月、WHOの会議が開かれた場合に、積極的にわれわれは北鮮の加盟を支持すべきであると思うけれども一つのこれは最小限の要求として、少なくとも反対すべきではない。これはどういう形をとるのか、投票なのかどうか、その辺私、採決の方法はよく知りませんけれども、少なくとも日本は反対すべきではない。この点はひとつぜひ明確にしていただきたいと思うのです。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのことをいま一生懸命で考えておるところなんです。
  53. 影井梅夫

    政府委員(影井梅夫君) おそらくこのWHO総会におきます手続は、現在予想されますところでは、最初にこの北鮮の加盟問題につきまして、一年間審議延期という案が出まして、それについての表決が行なわれるものというふうに考えております。
  54. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、審議延期には日本は賛成することになるんですか。いやそれは、事実上、審議延期ということは、たな上げということです、これは。また、前の国連総会における中国問題のたな上げと同じ役割りを日本が北朝鮮——朝鮮民主主義人民共和国に対して果たすことになりかねないし、国連で条件が変わると日本がそれに同調するというようなことは、私は望ましい外交の姿勢ではないと思う。やはり明確に採決で分かれる場合がある場合には、今度の総会でやはり問題を議題として討議することに積極的に日本は賛成すべきだと思うんですが、いかがでしょう。
  55. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあその点が問題なんでして、つまり、いま南北の対話が始まっておる、そう実質的な進展は見ないんだけども、せっかくそういう場が持たれておる段階で、国連がいまの段階で介入というか、これに関与すると、あるいは影響を与えるというようなことが是か非かという問題になるんじゃないかと、そこで、まあずいぶんわれわれも苦心しているところでございますが、いまのような決議案が出た場合に、その問題と、それからWHOでそういう問題が取り扱われていい場所かどうかという点と、あわせて考えておるところでございます。
  56. 羽生三七

    ○羽生三七君 どうもこれ、まあ同じことを何回でも繰り返すことになりますので、この問題はこれでやめておきますけれども、私は、積極的な姿勢で、支援の姿勢で臨まれることを強く要望しておきます。  それから次に、ASPACに対して日本は今後どういう方針で臨まれるのか。ASPAC結成当時と今日とでは、客観情勢が全く変わっておるし、それから加盟当事国自身がこのASPACに対してもうすでに過去のような意義は認めておらない。存在価値を認めておらない。そういう状況のもとで、日本は今後この問題にどう対処しようとされるのか。この問題も、きのう韓国の外相と話し合われたようですので、この機会に伺っておきたいと思います。
  57. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) かねがね国会で私が表明してまいりましたのは、ASPACというのは、加盟国の自発的な集まりであるという意味で、日本もそのメンバーの一国であるにすぎないわけで、ASPACをどうするというようなことを日本立場で申し上げるのはいかがかと思いまして、メンバー各国のコンセンサスが得られる方向を見定めたいという趣旨のことでまいったわけでございます。で、いま御指摘のように、各国状況、この間のバンコクの会議も、次に会議を開くことがきまらなかったということでございまして、この段階で会議を開くというようなことに対しましては、私ども消極的でございます。それで、そういうことで推移していきまして、将来これはどういう始末になりますか、それともこれにかわるものをまたみんなで模索していくのかどうかということにつきまして、確たる展望はいま持っていないわけでございますが、いまの状況は、少なくともASPACの会議を開くべき状況ではないということを各国にも申し上げておるわけでございまして、で、各国もそういうことについては、どうしても開くんだと、そういう空気でもないように私どもは承知しております。
  58. 羽生三七

    ○羽生三七君 現在タイでASEAN諸国の外相会議が開かれておるようでありますが、この会議をASPACまたはSEATOにかわる会議として組織がえをしようという動きもあるようです。しかし、新聞報道で見る限りでは、中が非常に必ずしも統一されたものではない、いろいろな動きがあるようですが、これがSEATOとかあるいはASPACのような組織の再版を目ざすものならばともかく、完全な、真の意味の中立化を目ざす動きであるならば、私はこれはよその国の個々の集まりであるのですから、それにとやかく批評するとか、いいとか悪いとかいう立場ではありませんが、少なくとも、SEATO、ASPACの再版でない、真の中立化という意味での結合がさらに深められていくという情勢にあるならば、むしろこれは日本としては歓迎すべきものではないかと、こう考えるわけです。特に日本が一ちょっと理屈を申し上げて恐縮ですが、アジア諸国と真の平和友好関係を確立しなければならぬときに、率直に申し上げて、ベトナム戦争ではアメリカの基地としての役割りを果たしてきた。ですから、本来アジア諸国とほんとうに平和の関係を確立しなければならない日本が、この日米安保のゆえに、そのアジアの中のある特定の国をアメリカが攻撃する場合の基地を提供する役割りを果たしている。しかも、これが絶対この種のことが再発しないという保証はどこにもない。ですから、そういうことを考えた場合に、いままでのような形で日米安保を考えていいのか、あるいはほんとうの意味のアジアの真の安全保障というものはそもそもどういう形のものであるべきか、そういうことをいまのASEAN諸国の動き、あるいはASPACの将来をどうするかという問題等も含めて、まじめに私は検討しなければならぬところへきておると思うのです。きょう私は、そういう安保の本質論をやる意思はありません。時間もありませんし、そういう考えもいま、きょうは持っておりませんが、しかし、いずれにしても、ベトナム以後のこのアジアをどうすべきなのか、これはASPAC、いまのASEAN諸国の動きと関連して、日本としてもまじめに、こういう動きをよく見きわめながら、新しいほんとうの意味の平和の体制づくりに貢献するような構想を持ったり、動きをしなければならぬと思うのですね。そういう意味で、いまASPACに対しては積極的に会議をまた開こうという意思はないというお話でしたが、このASEAN諸国の動き等と関連して、お考えがあったら承りたいと思います。
  59. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ASEAN五ヵ国が、まあ中立的な道標をもって地域協力の実をあげていこうという動きを見せてきておりますことに対しては、従来からわが国としては好意的な態度で見守ってきたわけでございます。で、今後ASEAN五ヵ国にとどまらず、もっとそれが拡大して健全な歩みを展開してまいるということをわれわれは歓迎いたしておるわけでございまして、ASEAN各国が今後どうするかにつきましては、このASPACとの関連においてその性格を変えて、その拡大をもくろんでいるとは私ども承知していないわけでございまして、あなたが御指摘のような、当初の道標を堅持されて進んでいっているものと私どもは了解しておりますし、その限りにおいて、われわれも好意的にこれを見守っていかなければならぬと考えております。
  60. 羽生三七

    ○羽生三七君 最後にもう一点だけ。  昨日、中国の廖承志氏を団長とする訪日代表団が来られたわけですが、おそらく外相も近く会談をされるんじゃないかと思いますが、もし今度の代表団と会談する場合に、外相として、まあ田中総理のことは別として、外相自身が日中問でこの代表団を迎えて、特にこれに主眼を置いて話し合いたいという問題は何でありましょうか。これを承って質問を終わります。
  61. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今度の廖承志氏の御来日は、多数の団体がお集まりになってお招きになったようでございます。しかし、政府として、廖承志氏のこれまでの役割り、今後の役割り、それからそのお立場等にかんがみまして、総理も私も会談のお話がございましたからお受けいたしまして、私は、明朝お目にかかることになっております。で、私としては、あの共同声明後、われわれがやらなけりゃならぬ仕事は、実務協定締結を急ぐこと、あるいは平和友好条約締結交渉に必要な十分の理解を進めてまいることでございますので、そういう相互理解という点についてきわめてフランクに話してみたいと考えておるわけでございまして、個々の案件については、事務的なお話をするつもりはないわけです。
  62. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 初めにお伺いしたいのは、去る三月三十一日から八日にかけて、韓国東南部だと記憶しておりますけれども、米韓両軍によるいわゆるゴールデンドラゴン73と呼と呼ばれる演習が行なわれた。今後も、あるいはしばしば行なわれる可能性もないとは言えないということを十分踏まえつつ確認をしておきたいと思うんでありますが、この演習には、本土の岩国基地は直接的に関係はなかったのでしょうか。
  63. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) ただいま御指摘のございました米韓合同演習——ゴールデンドラゴンと称せられておりますけれども、この演習に、岩国を含め本土の米軍施設は関与いたしておらないというふうに米側から聞いております。
  64. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 実際には、沖繩の基地から米第三ですか——海兵師団が主力になって参加をしている。特に、ヘリコプター部隊の場合には総結集をはかって沖繩から飛び立ったと、こういうふうにわれわれ理解しております。いまの局長の御答弁でありますと、本土は関係がなかったという米国側からの通知を受けているとおっしゃいましたけれども、そうしますと、沖繩を含めて、あるいは別なところから第三海兵師団というものが参加をしたのかということになりますけれども、その点はどうなっておりましょうか。
  65. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 今回の演習に参加いたしました米軍は、沖繩にあります第三海兵師団所属の約一個大隊程度の部隊でございまして、したがいまして、沖繩におりまする第三海兵師団の基幹部隊がこれに参加したという関係になるわけでございます。
  66. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そうすると、まあいま本土と沖繩というふうにお分けになったようでありますが、沖繩もすでに日本の領土でございますので、沖繩は全然らち外に置かれていると解釈するのか、当然沖繩の米軍基地というものは岩国と同じように見るべきではないのか、この辺の疑問はどういうふうに理解したらよろしいでしょうか。
  67. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 日本にありまする米軍の施設・区域を使用しての部隊の行動ということになりますので、その限りにおきましては、岩国であろうとあるいは沖繩であろうと、何ら変わりないわけでございますが、ただ事実関係におきまして、岩国の部隊は今度の演習には直接に関与しておらないということを申し上げたわけでございます。
  68. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 先ほど私ちょっと触れましたけれども日本の米軍基地におけるヘリコプター部隊の総結集ということになりますと、当然岩国も関係性を持ってくるんではないか、米軍のほうからそういう通告を受けたからそうだと言われてしまえばそれまでかもしれませんけれども、その具体的な事実関係については、政府としてはチェックはなさらなかったのですか。
  69. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 今回の演習につきまして、岩国の基地が使われているというふうな趣旨の新聞報道がございましたので、私どもといたしましては、米軍に対してその点を十分確かめましたところが、岩国の基地が今回の演習で、中継地なりあるいは経由地なり、そういうかっこうで使われたこともないし、岩国の海兵隊部隊がこれに参加した事実もないということを確認してまいったわけでございます。
  70. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 今回行なわれたその地域は、日本の領空、領海とは関係ございますか。
  71. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 演習が行なわれました場所は、韓国の東南部海岸沖合いというふうに承知いたしております。その限りにおきまして、この演習に日本の領空、領海は使われておらない、こういうように承知しております。
  72. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 単に東南部といっても、それはきわめて抽象的な言い方でありまして、その範囲なり明確に通報を受けていらっしゃるのですか。
  73. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 地理的な範囲につきまして明確な通報を受けておりませんが、韓国の東南部の海岸を使いまして上陸演習をやったものというように承知いたしております。
  74. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いつの場合でも日本政府としては、そういう問題については、いままでチェックもできなければ、なかなか立ち入り調査もできないといううらみがございました。しかも、領海、領空というのは非常に微妙な環境でございまして、あるいは日本の領空、領海というものを侵されているかもしれない。そうした場合にはどうするのか、これが一つ。  それからこの種の合同演習については、常に事前通告を受けているのかどうなのか、この点はどうでしょう。
  75. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 今回の演習の性格にかんがみまして、日本の領空、領海が使用されていないという米側の確認を、そのとおり私ども受け取っているわけでございます。  また、演習について事前通告があったかという御質問でございまするけれども、この点につきましては、事前の通告というものは受けておりませんでした。
  76. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 こうした合同演習については、当然米軍のいろいろな方針、政策というものがからみ合っておりますので、今後も引き続き、現状のままの体制が維持されていくとするならば、引き続きこの種の演習というものも行なわれるであろう、こういうように理解されます。そのために、先ほども話がございましたように、せっかくいまアジアの緊張緩和というものが前向きに進んでいるこの機会に、いたずらに刺激するようなこういうような行動というものは、はたして日本をはじめとする隣国に対して刺激を与えないかどうか。できることならば、その種の刺激を与えるような行動については、むしろ日本政府として米国側にきびしい姿勢で臨むことのほうがきわめて望ましい、このように判断されますけれども、その点、大平さんどうでございましょうか。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 渋谷先生も御承知のように、日本の施設・区域を提供して、アメリカがそれを使用する立場にあるわけでございまして、この場合、御案内の事前協議の申し合わせがございまして、日本の基地を、直接戦闘行動に出撃する場合に使うというようなことについて、日本政府と事前の協議をしなければならぬことになっておりますけれども、この場合、演習ということにつきましてでございますので、われわれとしては、安保条約上の観点からは、アメリカに対して、それについてとやかく言うべき立場にないことは御案内のとおりでございます。  第二に、しかし状況が、周囲の環境が緊張緩和に向かっておる段階で、そういうことが政治的に是か非かという、政治的な判断の問題になるわけでございまして、アメリカが聞くか聞かぬか、これは別にいたしまして、日本側がイニシアをとって、そういうことについて自重を求めるということをすべきかすべきでないかという問題になると思うのでございますが、その点、私は、あるいはあなたと少し意見が分かれるところじゃないかと思うんでございます。演習をするということ、軍隊を維持していく場合に、絶えず充実した訓練を積んでいくということは軍隊として当然のことでございますし、そのことが緊張緩和をささえるものか、あるいはこれをそこなうものかという判断の問題になろうかと思うんでございますが、私は、それぞれの軍隊が絶えず緊張した状態で充実した訓練をしておることが平和につながるものというように理解をするわけでございまして、そういうことをやることについて、日本側から申し入れて自重を促すつもりがあるかどうかと尋ねられると、私はそういうことをやるつもりはないと答えざるを得ないと思うのでございます。従来の安保論議でどうもその点がいつもかみ合わぬところになってくるんでございますけれども、私としてはそのように理解をしておるわけでございます。
  78. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 日中国交正常化が具体化されまして、国交回復が進んだわけでありますが、その時点で田中総理をはじめ、安保条約の本質論まで触れたたいへん激しいやりとりが前国会においても行なわれたことを記憶しております。そのときに、安保の問題については、なるほど条約としては存在するかもしれないけれども、実際問題としては、いま日中の関係が回復した状態を踏まえてみた場合に、将来形骸化、空洞化されていく、こういう御答弁が政府としてございました。けれども形骸化、空洞化という一言でおっしゃって、それが戦争誘発への引き金にはならない。なるほど、言われてみれば、そのとおりかもしれませんけれども、しかし、こうした具体的な事実問題が出てまいりますと、やはり安保というものは根強く生きていて、形骸化どころじゃない、空洞化どころじゃない、生き残っているのじゃないか。このことを考えた場合に、常に二律相反するような方向でこの安保というものは、常に、いま大平さんもおっしゃったように、かみ合わないままに今日まできている。その合同演習についても、北朝鮮との問題も回復してない状態、また、韓国と北朝鮮との二国間においても、停戦協定は結ばれたけれども、なおかつ平和協定が結ばれていない、こういう事態がございます。そうしたような一連の、日本あるいは朝鮮半島、中国を含めた最近の著しい環境の変化に伴って、はたして、そういうようないままでのやってきたようなことを踏襲しながら、米韓合同演習なんというものがはたして将来の緊張緩和に役立つであろうか。いまの御答弁ですと、まあ役立つようなお考え、御判断のようなお話でございましたけれども、むしろこれはマイナスの面に働くほうが非常に強いのじゃないかということを心配するわけです。むしろこの機会に、日本がイニシアチブをとりながら、積極的にその種のような刺激をやはり起こすような合同演習についてはやはり思いとどまってもらいたい。新しい情勢変革のもとに、日本としてもそれに即応できるような方向というものをおとりになることのほうが、より北朝鮮あるいは中国との関係改善の上でも役立つのではないだろうか、こういうように私ども判断するのでございますけれども、いかがなもんでございましょうか。その形骸化、空洞化という問題と常に二律相反する問題をこれからどういうふうに解決していくのかということを踏まえつつ、その問題を述べていただきたい。
  79. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私としては、安保体制が新たな緊張を生むと申しますか、安保体制が非常な緊張状態に入るなんていうことは、決して望んでいないわけでございます。しかし、安保条約は形骸としてでも維持したいなんていう、そんなぞんざいな考えは持っていないわけでございまして、安保条約、安保体制というのは、ちゃんとした、充実したものとして維持するが、しかし、それはアジアの緊張を呼ぶようなものでないことを望んでおるわけでございまして、ただあなたと私と分かれるのは、そういう存在そのものがもう緊張緩和の状態に逆行するのじゃないかという御判断でございますけれども、私はそうは考えないんで、そういうことが、新たな緊張を生まないためには、それが必要なんじゃないかというのが政府のとっている立場でございますので、もしこれをこういうものがなくてやっていけるような環境をそれじゃ決して望んでいないかというと、それは望んでいるわけでございます。ヨーロッパにおきましても、兵力の削減交渉がいろいろ取りざたされたり、それからどの国を見ましても、軍備の増強に非常に狂奔しているような空気でもございません。できたら、お互いに徐々に軍備の削減というような方向にもっていこうじゃないかという空気ができておるわけでございまして、こういう安保体制というようなものをどうしてやってまいるか、どのように今後措置してまいるかということにつきましては、より手がたく、用心深くやってまいらにゃならぬわけでございます。しかしそれは、現実に訓練もしない、演習もしない、そういうものであっていいかというと、私はそう思わぬのでございまして、軍隊である以上は、ちゃんと精強な軍隊であってほしいと思いますが、それが緊張緩和の状態を、そういうものとして保障してまいるものであってほしいと願っておるわけでございまして、最後の点が、どうもちょっとあなたの御認識と少し違うような感じがしますけれどもね。
  80. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 これは条約局長お尋ねしたほうがいいのかと思うんですが、合同演習の法的根拠ですがね。これは昭和四十七年四月の十三日に久保さんが衆議院の内閣委員会で答弁されてることを再現して申しますと、法的根拠がなければできないかというと、必ずしもそうではないというふうにおっしゃっておるわけですね、久保さんは。正確に読みますと、「法的根拠がなければやれないかというと、必ずしもそうではありませんで、やはり事実行為のようであります。」「日米安保条約の精神なり、あるいは政治的な立場から見ると、やはりそれは不適当であるという観点に立っております。」と、こういう答弁をなさっておるわけですね。ちょっと私もよく理解できないのですけれどもね。これは条約局長としてどのように判断されますか。
  81. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先ほど渋谷先生お尋ねの件は、韓国において在日米軍と韓国軍との合同演習をするという問題だったと思います。このほうは、日米安保条約第六条の趣旨に従いまして、先ほど大臣もるる御説明なされましたとおり、あの趣旨に沿う限りにおいて差しつかえないものである、つまり、安保条約のワク内のものであるというふうにわれわれは考えております。  それから、いま御指摘の四十七年四月十二日の久保局長の答弁に関連してでございまするけれども、この点は、御質問趣旨がそうではなくて、日本、米国、韓国等との合同演習をやることは法的にどうだという御質問に対しましての久保局長の答弁だったと思いまするけれども、その前にお答えしてありまするとおり、わが政府といたしましては、日本において、日本、米軍、韓国を加えた合同演習をするというようなことは毛頭考えられませんし、そういうことはきわめて不適当なものであるということで一貫しているように思います。したがいまして、久保局長の答弁の趣旨がどういうことかよくわかりませんけれども、要するに、自衛隊が韓国の軍隊と一緒になって訓練をするということは、われわれとしては全く想像できない事態ではないかと思います。
  82. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 したがって、いま久保さんいるわけじゃございませんから、これを問いただすことはできませんけれども、いずれにしても、合同演習というものは成り立つんだと、こういう結論になろうかと思いますが、願わくば、先ほど大平さんにお答えいただきましたように、多少認識の違いがあるかもしれませんけれども、やはりわれわれ心情的に刺激を誘発しないとは限らない、その保証は何にもない。こういう観点から見た場合に、やはり好ましいことではないだろう。しかも、場合によると、日本の領空、領海というものは侵犯されないとも限らないし、その保証も何にもない。ただ米国側の一方的な通告によって、ああそうですが、御無理ごもっとも、というのでは、あまりにも主権国家としてふがいないのではないだろうかということで、あらためてその問題をいま提起したわけなんでございますが、もうちょっとお尋ねしたいことがあるんです。  やはりこの問題に関連しまして、朝鮮戦争が停戦協定を結んで二十年も経過しているわけですが、その内容を見ますと、第五条第六十二項では、将来平和協定にかえることができるという、そういう意味のことが述べられておりますね。しかし、残念ながら、いまだに平和協定が結ばれていない。これはもちろん、あるいは出過ぎたことをする必要がないのではないかという見方がないとは言えないかもしれない。けれども、もうすでにベトナムの場合には平和協定が結ばれているというこの厳粛な事実を考えましたときに、日本としても、何とか早くニクソン大統領に進言するなり、側面的にお手伝いをしながら、一刻も早く平和協定締結できるという環境をつくるわけにいかないのかというふうに率直に考えられるのですけれども大平さんいかがなものでございましょうか。
  83. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 大臣の御答弁の前にちょっと法的な説明をさしていただきます。  朝鮮休戦協定——これは一九五三年にできました朝鮮休戦協定は、まさに文字どおり休戦協定でございまして、あくまでも最終の平和的解決を達成するまでの問の暫定的な取りきめであるというたてまえに立っております。したがいまして、ただいま渋谷先生指摘のとおり、第六十二項におきましては、将来「政治的手段による平和的解決のための適当な協定規定によって明確に取り替えられるまでは、」この休戦協定は効力を有する、そういう暫定的な性格をいまの第六十二項に明らかにしているものでございます。したがいまして、休戦の確保と同時に、休戦協定成立後は、当時者はこの将来の平和的解決ということに向かって努力するという趣旨が、この休戦協定の明文の中にあるわけでございまして、従来国際連合を中心といたしまして、そういうような趣旨に従って毎総会——最近はこの朝鮮問題は審議をしておりませんけれども、従来この休戦協定成立後は毎総会、この趣旨に従いまして早く平和的解決を達成するようにということで決議を採択しているのが現状でございます。
  84. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 大平さん、いかがでございましょう。
  85. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その「平和的解決」ということが、どういう形で、いつ展開されて、最終的にどういう結実をみるかという問題は、さだかにいまわかりませんけれども、南北朝鮮の間には、先ほど御議論がございましたように、南北の平和的統一を目ざしての対話が始まっておる。しかも、それは自主的にやりたいということで南北の話が始まっておるわけでございます。一方国際的には、国連が今後この朝鮮問題についてどういう動きを見せてまいりますか、少なくとも南北の対話が始まっておるからことしは延期しておこうじゃないかというのが、去年の国連総会の決議でございまして、ことしは、またあらためて問題になるわけでございます。日本としてしからばどうするかの問題でございますが、先ほども羽生先生のときにお答え申し上げましたとおり、朝鮮半島の問題というのは、非常に日本にとっては関心の濃い問題でございますと同時に、日本の行動というものは、ある意味において非常に国際的にも注視を浴びておる問題でございますので、この南北の対話の進展というものを十分見守っていかなければならないという立場一つございます。それから、国連におきまして、朝鮮問題を国連の場でどう取り上げるべきかという問題につきまして、南北の問題がちゃんとするまで待つべきか、それともその間、暫定的な何らかの前進をはかるべきか、そういった問題につきましては、ことしの国連総会の問題といたしましていまいろいろ検討しておるという状況でございます。
  86. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 最後に一点、これは確認しておきたいことですが、日中国交回復後、台湾条項については、われわれの受け取り方としては、自然消滅をした、またそういうニュアンスの答弁が繰り返されていままでにあったように記憶しております。韓国条項についてはいかがなものでしょうか。
  87. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 韓国条項とか台湾条項とかいうことばは安保条約にないわけでございまして、御案内の極東条項という姿においてはもとのままあるわけでございます。台湾周辺につきましては、日中両政府の理解といたしましては、平和的に処理される。したがって、安保条約の極東条項が存在いたしましても、それが働く余地がないというような状況の認識だというように御説明申し上げておるわけでございまして、極東条項が死滅したわけではない、あるわけでございますけれども、その働く余地がないんじゃないかというように考えておるわけでございます。韓国条項というか、その他の面については、従来のままの極東条項、従来のままわれわれは堅持しておるわけでございますので、さよう御理解をいただきたいと思います。
  88. 星野力

    ○星野力君 私、先日も予算分科会で、第三国が使用する武器、弾薬を日本の施設・区域を使って補給することが日米安保条約上許されるかどうかということを問題といたしました。私、あのときの大臣の御答弁には満足しておらないのでございますが、きょうは十一分間ですかの持ち時間、これは大問題でございまして、また中途はんぱで終わるおそれがあるので、後日に回したいと思います。ただその際に、相模補給廠から装甲輸送車やジープなどの戦闘車両類がカンボジアへ送られておる問題についてお聞きしたのであります。調べるとのことでございましたが、お調べになっておられるならば結果をお聞きしたいと思うのであります。
  89. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 先日の委員会で御質問ございまして、コメット号という輸送船が西独のハノーバー向けに出航し、途中サタヒップで装甲車、ジープ等をおろして、これをカンボジアへ持ち込んだと、こういう御指摘でございました。事実関係を調べてみましたところが、米側といたしましては、カンボジアに対してこのような車両をいかなる形であれ輸送した事実はない、こういうことを回答してまいりました。
  90. 星野力

    ○星野力君 それに関連する問題もそれじゃ後日にいたすことにいたします。  きょうは、日本の航空管制権の問題についてまずお聞きしたいんですが、私も経験したことがあるんですが、四国の松山空港では、米軍岩国基地からの許可がなかなか出ないために民間機の出発がおくれる、着陸がおくれるということが非常にひんぱんにあるようであります。航空管制権というものが全面的に日本に移管されているわけではどうもないようでありますが、実情はどうなっておるかから、まず御説明願いたいと思います。
  91. 松本操

    説明員(松本操君) お答えいたします。  先生御承知と思いますが、航空管制というものは非常に大きく分けまして三種類ございます。まず、飛行場が存在いたします以上、飛行場におり、あるいは飛行場から出てまいります飛行機をどのように安全に出入りさせるか、これがまず第一の要件でございまして、これがいわゆる飛行場管制というふうに呼ばれているところでございます。その次に、空に上がってしまいました飛行機を安全に目的地に持っていく、これが実は管制の一番大事なところでございますが、この一番根本になる管制が航空路管制というふうに呼ばれておるものでございます。この航空路管制、飛行場管制のほかにもう一つ進入管制と呼ばれる管制がございます。この進入管制と申しますのは、航空路管制のほうで、ある飛行機に対し、ある高度をきめて出てよろしいという許可を出しました後に、一定の空域の中を通って、エアスペースの中を通りまして飛行機が、たとえば指示されました二万一千フィートとか三万一千フィートとかという高さに飛びついてまいります。飛行場を離陸いたしました直後、大体五マイルの半径を出ますと、進入管制の空域の中に入ってまいります。それから長い、短いはございますが、飛行場を中心といたしまして四十マイルから六十マイルくらいの間の空域の中で飛行機を徐々に上げてまいりまして、航空路管制のほうが指示いたしました一定の高度、一定の航空路に乗せていくわけでございます。逆にまた、飛行場におりたいという場合には、航空路管制のほうがまずおりてよろしいという許可を出します。次に、たとえば二万一千フィートを飛んでおります飛行機をいきなり地面におろせませんので、ただいま申し上げた進入管制というものがその間の中継ぎをいたしまして、徐々に高度を下げて、そうして最後の飛行場管制に渡して着陸させる。こういう仕組みになっております。  そこで、わが国の管制がどうなっておるかという点について御説明いたしますと、わが国におきまして空域を管制するすべての権限は一元的に運輸大臣に属しております。これは航空法の定めるところでございます。したがいまして、その航空管制の基本となっております航空路管制につきまして、沖繩を除きまして札幌、東京及び福岡の三つの管制部が、日本の本土はもとより、近辺の相当広範な空域を含めまして運輸大臣の指揮のもとに一元的な管制を行なっておる。沖繩につきましても、この管制を行ないます権限は沖繩の復帰とともにわが国政府に帰属しておるわけでございますが、この管制業務というものにはいろいろな設備が要りますので、その設備ができるまでは、とりあえず、実務的に米軍にやらしておるという状態でございます。進入管制につきましても、ほとんどの飛行場に対します進入管制は、ただいま申し上げました管制部が直接取り仕切っておりますけれども、たとえば東京空港、大阪空港のような大きな空港におきましては、これらの空港が管制部から空域を譲り受けまして、これらの飛行場の進入管制を飛行場管制と一体に扱っております。したがいまして、いまの先生の御質問のお答えを要約いたしますれば、わが国における航空管制の権限は運輸大臣に属し、かつ、実質的にこの管制というものはほとんどすべてが運輸大臣の指揮のもとに私どもの管制官によって行なわれておるというふうに原則的にはお答えしてよろしいかと存じます。
  92. 星野力

    ○星野力君 原則的にはそのようになっておるが、原則外のところが、たとえば進入管制についてはあるということでございますか。
  93. 松本操

    説明員(松本操君) はい、進入管制というものは、いまも御説明いたしましたように、飛行場から出入りした飛行機を一定の高度、一定の方向につけていくという中間的な段階のものでございます。そこで飛行場が非常に接近をしておりますような場合、あるいは滑走路の向きが互いに入り乱れておるといったような場合には、一定の限られた範囲の空域の中でこれらの飛行場から出たり入ったりいたします飛行機を間違いなく順序正しくさばいて、一定の高度、一定の方向に向けていかなければなりません。したがって、どこか一ヵ所でまとめて行なうということが航空安全の上から非常に望ましいということが申せます。したがいまして、進入管制というものが幾つかの空港を一括して行なっておるという例があるわけでございますが、その中には、先生いま御指摘のように、民間空港とそれから米軍の飛行場とが一緒の空域に近接して入っておるがために、米側に進入管制を事実上の行為としてまかせておるという例はございます。
  94. 星野力

    ○星野力君 そういう例は、松山の場合だけでございますか。
  95. 松本操

    説明員(松本操君) 内地におきましては、岩国にございます米軍の進入管制が岩国の近辺の空域の中に入っております松山空港の進入管制を一緒に行なっておるという例が一つございます。  それから沖繩におきましては、これは先生御承知と思いますが、現在嘉手納にございます進入管制機関が、嘉手納、普天間及び民間空港でございます那覇空港、これもまた三つの飛行場が非常に錯綜し、かつ、接近しておりますので、一括してここで一元的な管制を行なっております。
  96. 星野力

    ○星野力君 松山の場合は岩国のアメリカ軍の飛行機が発進して軍用航空路に入るまでに松山上空を通る、そういう航路があるためだといわれておりますが、そのために松山上空では民間機のパイロットは計器に頼るだけでは安心できない。自分の目で外界を注意しなければならないというふうに聞いております。こういう状態ですと民間機の発着がおくれる。これは実にひんぱんでございますね。その点も迷惑なんでありますが、こういうような有視界飛行をやって警戒しなけりゃならぬというような状態では、空中衝突の危険もこれはあるわけでございますが、こういう事態に対して、進入管制権の日本側への移管を急ぐとともに、そのためにもアメリカの軍用航空路を変更させるべきではないかと思います。大臣の御見解どうですか。こういう状況なんです、いまお答えになったような。
  97. 松本操

    説明員(松本操君) まず最初に、先生指摘がございました軍用航空路というものは、これはどの航空路を指して先生指摘になったのか、ちょっと私わかりかねる点もございますが、現在軍専用の航空路というものは、わが国には一本もございません。ただ松山というところは、御承知のように、瀬戸内海に面しておりまして、瀬戸内海のまん中を私どもグリーン4、グリーン5、つまり緑の4、緑の5と、こういうふうに呼んでおりますが、非常に重要な幹線航空路が通っております。たとえばグリーン4、緑の4と呼ばれております航空路は、東京から名古屋、大阪そして福岡へ参るという重要な幹線航空路でございます。したがいまして、非常にトラフィックも混んでおります。そういう意味で、これが軍用航空路ということでは全くございませんので、民間の非常に込んだいわば大通りのような航空路がここを通っておる。その真下に、あるいはこれに非常に接近いたしまして岩国、松山、広島、三つの飛行場があるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたような理由から、いままでは、広島の空港につきましても、岩国が一元的な進入管制を行なっておったわけでございますが、私どものほうで広島空港にはターミナルレーダーを設置いたしました。それとともに、必要な管制官の訓練及び配員を終わりました。このターミナルレーダーを活用いたしますことによって、広島空港におきます進入管制というものをいままでよりもさらに効率よくできるという技術的な見通しがはっきりいたしましたので、私ども岩国のほうと調整をとりまして、岩国の空域を一部削りまして、そのほかに新たに広島の専用の進入管制のための空域を設けまして、この三月二十九日から広島のほうは岩国の管制から分離をしたわけでございます。で、松山におきましては、現在、遺憾ながらまだそのような効果的な管制のなし得る施設であります空港ターミナルレーダーというものを備えておりませんことから、したがいまして、この空域の中の狭隘なところで秩序正しく出入りをさせるというためには、一元的な管制を続けたほうがよろしいのではないかという判断で、なお従前のとおり残っておるというわけでございます。  なお、第二点の御指摘の点について御説明を申し上げますると、米軍が現在行なっております事実上の管制業務というものは、国際民間航空条約——ICAO条約と通常呼ばれておりますが、この国際民間航空条約に基づきました基準に準拠して行なわれておるわけでございますので、軍特有の管制というふうなものでは全くございません。現に、航空法自身も、国際民間航空条約趣旨にのっとるということを航空法の第一条に掲げておることでございますので、安全に関する管制実務上の問題点につきましては、先生の御指摘なさったような危惧はないのではないかというふうに私ども考えております。
  98. 星野力

    ○星野力君 松山空港が発着がおくれる、これは実にひんぱんだと、私行くたびごとに経験するぐらいでございますが、それを調べたデータもあるようでありますが、発着がおくれて迷惑しているという事実。それからいまのままでは事故が起きる危険が存在するという事実はお認めになるかどうか。
  99. 松本操

    説明員(松本操君) 第一の点でございますが、松山空港、大体一週間に百便足らずの飛行機が出ております、出発をいたします。ということは、一日に大体十三便とか十四便とかいうぐらいの数字であろうかと思いますが、この程度の飛行機が松山空港を出てまいりますが、そのうち大体一便、あるいは場合によっては二便あるかないかというようなことであろうかと思いますが、これが岩国の管制空域の混雑のために出発の許可が多少おくれる。私どもは、遅延というものを考えます場合に、十分をこえるものから遅延と考える。十五分をこえます遅延につきましては相当の措置を要するというふうな考え方ですべて律しておるわけでございますが、松山空港におきますこの一日一便ないし二便の遅延というものは、十分まで至っておりません。平均して七、八分の遅延ということでございます。そのほかに、この十三ないし十四便の中で五、六便が四、五分の遅延をしております。この五、六便が四、五分の遅延をいたします理由は、松山空港というのが、先生も御承知のように、片側が山に囲まれ、一方が海に開いているという関係もございまして、飛行機が入ってまいります場合に、主として海側のほうから入てくる。山のほうへ離陸いたします場合はよくよくの場合でございまして、離陸もやはり海側のほうへつとめて離陸をさせるという措置をとっております関係上、松山空港自身から出発いたします飛行機をまず優先させるか、あるいは松山空港へおりてくる飛行機を優先させるかという管制技術上の問題がございます。通常の場合、着陸機を優先させるということでございますので、松山空港に着陸しようとしてまいります航空機が着陸し終わるまで出発便を待たせなければならないというようなことから、いま申し上げたように、一日十三、四便のうちの四、五便が四、五分程度のデレイを発生しているというふうに私ども承知しておりますが、この程度のデレイがさしたることがないとは決して申しません。しかしながら、非常に激しいデレイ、あるいは御指摘のございました岩国における何らかの問題のために積極的にデレイが起こっているというふうには私ども考えておりません。岩国の空域というものがもともと狭く、先ほども説明いたしましたように、その狭い空域の上に大通りが通っておるというふうなことから、ここへの飛行機の上げおろしということにはかなりむずかしい点がございます。そういう意味において、遺憾ながら現在はいま申し上げました程度の遅延が生じております。これはダイヤを調整する、その他によって、つとめて解消していくという方向に今後とも努力をしてまいりたいと考えております。  第二の、危険があるかないかという点につきましては、松山空港の出入は、一つのきまった形で出入りをさしております。ILS、計器着陸装置が海のほうへ向かって電波を出しておりますので、一たん松山空港のほうにその電波に乗っておりてくるというパターンをとっております。したがいまして、この進入の途中においてニアミスを発生するということは、航空路の関係その他からおそらく私はないのではないだろうかというふうに考えておりますが、万が一にも御指摘のようなことが生じてはたいへんなことでございますので、今後ともこの点については十分注意をしてまいりたいというふうに考えております。
  100. 星野力

    ○星野力君 松山空港事務所が三月十八日から一週間調べた結果ですと、一日十四便の出発機のうちの約半分が待機命令を受けて、最高二十分、こういうふうな一これは新聞報道でありますが、ことも出ております。松山空港にしましても、今後発着便がふえるということは当然予想されるんでありますが、そういう事情の中で現在のような状態、決してけっこうなわけではございません。広島でターミナルレーダーを設置しまして、岩国の一元的な管制からはずしたと同様なことを松山においても早急にやるべきではないかと思いますが、その準備はおありなのかどうか。また、あるとしましたらいつごろそれが実現するか、お聞きしたいと思います。
  101. 松本操

    説明員(松本操君) お答えいたします。私ども、御承知のように四十六年を初年度といたします第二次空港整備五ヵ年計画というものをいま着々実行中でございます。この第二次空港整備五ヵ年計画の計画の中には、松山空港に空港レーダーを設置するということが計画として載っております。ただ、空港レーダーを設置いたしますための一応の目安というものを私どもも持っておるわけでございます。いま先生指摘のとおり、現在の松山空港の交通量というものは、この空港レーダーを設置する基準に合うといえば合う、合わないといえば合わないといったような感覚でございますが、どのような形でトラフィックが、交通量が伸びていくかということをにらみ合わせ、さらに、先ほど来るる申し上げましたように、岩国の滑走路と松山の滑走路はくし刺しのような形で、わずか六十キロ足らずの距離に存在しているというようなことから、別個の管制にするほうがいいのか、あるいはどこかまた別の空港と一緒にいたしまして、新たな進入管制区を設けたほうがいいのかというふうな技術的な問題点もあるわけでございます。したがいまして、第二次空港整備五ヵ年計画の中には、一応このことを考えておりますが、さらに松山空港における現実のトラフィックの状況をよく調査をいたしまして、さらに将来の伸びをも推定をいたしまして、そしてそれに加うるに、これらの狭い空域の中において別個のレーダーターミナル管制をやることがよろしいかどうか、あるいは何かほかの空港とコンバインするほうがいいかどうかということも十分勘案いたしまして、松山空港における航空機の発着ということがよりスムーズに、かつ、十分に安全にできるように積極的に検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  102. 星野力

    ○星野力君 岩国と一元的なターミナル管制がいいかどうかを検討しておられると、こういうのでありますが、これは一元的な管制、悪いにきまっておるんですよ、これは。松山ではよく言われるんですが、岩国の米軍管制官のほうにはもう松山空港なんかという考えがあまり頭にはなくて、松山をほったらかして飲みに行ってしまったために飛行機がおりられなかった。これは事実かどうか知りませんが、そういうことさえ言われておる状態なんです。いまのお答えのままですと、松山は当面解決される見込みなさそうなんですから、これじゃどうも困ると思う。考え直してもらわぬといけないと思うのです。これは岩国の基地がなくなるのが一番いいのでありますけれども大臣、その辺どうですか、こんな状態でよろしいでしょうか。
  103. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私といたしましては、運輸省の専門家の処置を御信頼申し上げております。
  104. 星野力

    ○星野力君 私は、松山の問題は早期に解決してもらいたいということを強く申し上げておきます。  沖繩の航空路管制の業務は、五月十五日に日本側に移管されるのでしょうか、どうでしょう。
  105. 松本操

    説明員(松本操君) 先生も御承知のように、沖繩の返還に伴いまして、管制の業務、管制の権限は戻ってまいりましたが、先ほどもちょっと触れましたように、沖繩の航空路管制というものを私どもが引き継ぐためには、相応の設備とそれから管制官の訓練が必要でございますので、おそくも二年以内にこれを引き継ぐ。その二年以内の最後のターゲットが来年の五月十五日でございます。
  106. 星野力

    ○星野力君 来年……。
  107. 松本操

    説明員(松本操君) はい、ことしではございません。来年の五月十五日でございます。したがいまして、現在私ども鋭意設備を設けるとともに、管制官の訓練を行なっておりますので、私どもといたしましては、来年の五月十五日までに必ず引き継ぐようにいたしたいということを目標に努力してまいる所存でございます。
  108. 星野力

    ○星野力君 私この問題と、もう一つは、沖繩のブルー・ビーチ訓練所における日本の老婦人がM48型戦車に引き殺された問題をお聞きするつもりでございましたが、時間がまいったようでございますので、一問だけひとつ聞かしていただきたいと思います、それに関連しまして。  あの事件は沖繩の事件でございますが、沖繩だけの問題ではないわけであります。安保条約のある限り、米軍基地の存在する限り、本土でもこういう事件は発生しましたし、将来も発生する可能性は大いにあるわけであります。日本人が殺されて米軍のそれに対する責任が明らかになった場合の損害賠償はどうなるのかという問題でございますが、一九六四年六月二十三日の閣議決定によると、米軍から被害を受けて死亡した場合の賠償金及び見舞い金は一人三十万ないし百万円、こういうことがいわれておりますが、これは正確なことでございましょうか。
  109. 河路康

    政府委員河路康君) 先生指摘昭和三十九年、一九六四年の六月二十三日閣議決定、これは「合衆国軍隊等により損害を受けた者に対する賠償金及び見舞金の支給について」の閣議決定でございます。この閣議決定によって、新聞の報道は、見舞い金は一人三十万円から百万円となっているが、これは誤りでございまして、この閣議決定によりますと、「賠償金の支給基準は、防衛庁が行なう自衛隊に係る損害賠償について防衛庁長官が定めるものによるものとする。」というふうな閣議決定でございます。それで防衛庁が行なう、防衛庁が定めた賠償支給基準は簡単に御説明いたしますと、遺族の補償に対しては被害者が死亡した場合においてはその者が将来において得べかりし利益の喪失に対する賠償としてホフマン式計算方法によって算定した額を賠償するということで、これは先ほどおっしゃいました三十万円、百万円でなくて、その人の死亡後、得べかりし利益をホフマン式で計算した結果であるものですから、必ずしも百万にという限度はございません。このほかに、なくなられた方に対しては葬祭料それから慰謝料等が加算されるわけでございます。具体的の金額その他については、今後、御本人の収入その他、また、この事故が米軍の公務上の事故で、米軍の責任が明らかになれば地位協定十八条の五項によって賠償措置をするということでございます。
  110. 星野力

    ○星野力君 いまの方式ですと、たとえば今度の安富祖ウシさんですか、これは結論が米軍側に責任があるというふうになった場合に賠償される額というものはきわめてわずかではないかと思いますが、見当はいかがでございますか。
  111. 河路康

    政府委員河路康君) 先ほど申し上げましたいわゆるホフマン式計算方式によりまして遺族の賠償の額を計算してみますと、ちょっといま、まだ計算をしておりませんのでわかりませんけれども、そのほかに一般的に慰謝料、これが大体まあいろいろ本人の事情その他がございますので、私どもの計算では一応百十万から二百十万くらいの範囲をいまこのあれではきめております。そのほかに葬祭料として一人当たり二十万円平均、そういう金額が定められるわけで、ちょっと現在は正確な数字は申し上げられませんけれども、やはり少なくとも二、三百万円にはなるというふうに考えております。
  112. 星野力

    ○星野力君 最後。
  113. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) もう十分以上も経過しておりますが。
  114. 星野力

    ○星野力君 どうも恐縮です。問題がこう関連しますもので。  どちらにしてもこれはずいぶん安いものでありますが、こういう、閣議決定も、今週金曜に閣議があるのですが、できるだけ早い機会にこれは改正する必要があると思いますが、その前に一体これは日本が払うわけですか、米軍が払うのですか。
  115. 河路康

    政府委員河路康君) 日本側が一応払いまして、そのうち米側が七五%、日本側が二五%払うわけでございます。
  116. 星野力

    ○星野力君 その辺については、もっとお聞きしたいのでありますが、時間がないので、まあやめますけれども大臣に御答弁を求めませんけれども、どうも人間の命がばかに、こんな規定があるから、なおさらアメリカの軍人が日本人の生命を安く扱うともいえると思うのであります。ひとつよく考えていただきたいということだけ申し上げて終わります。
  117. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本調査に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後零時三十四分散会