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1973-04-03 第71回国会 参議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月三日(火曜日)    午前十時十二分開会     —————————————    出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 山本 利壽君                 田  英夫君     委 員                 岩動 道行君                 木内 四郎君                 杉原 荒太君                 八木 一郎君                 矢野  登君                 小谷  守君                 羽生 三七君                 森 元治郎君                 渋谷 邦彦君                 松下 正寿君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省経済局長  宮崎 弘道君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省条約局外        務参事官     松永 信雄君        外務省国際連合        局長       影井 梅夫君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        大蔵省関税局輸        入課長      片山  充君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○千九百七十二年の国際ココア協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出) ○沖繩国際海洋博覧会政府代表設置に関する臨  時措置法案内閣提出衆議院送付) ○千九百六十一年の麻薬に関する単一条約改正  する議定書締結について承認を求めるの件  (内閣提出) ○国際情勢等に関する調査  (日中間の航空及び貿易協定等に関する件)  (北ベトナムとの接触に関する件)  (朝鮮問題に関する件)  (相模補給廠からの戦車搬出等に関する件)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) それでは、ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、千九百七十二年の国際ココア協定締結について承認を求めるの件(本院先議)を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。大平外務大臣
  3. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま議題となりました「千九百七十二年の国際ココア協定締結について承認を求めるの件」につきまして提案理由を御説明申し上げます。  この協定は、一九七二年九月から十月にかけてジュネーブで開催された国際連合ココア会議におきまして採択されました新たな国際商品協定でありまして、わが国を含む四十一カ国及び欧州経済共同体が署名いたしております。  この協定の主たる目的は、生産国がすべて開発途上国であり、また、短期的に著しい価格変動を示すことが多いカカオ豆価格を、生産国及び消費国協力によって安定せしめ、生産国輸出収入の安定及び増加に寄与することであります。  この協定につきましては、国際連合貿易開発会議開発途上国の一次産品問題解決のための国際協力代表的な一例であるとして再三にわたりその成立促進を決議しており、この協定締結いたしますことは、これらの決議にこたえて、開発途上にある生産国経済発展協力いたす見地から、また、消費国としてのわが国の立場を十分反映せしめる上で、その意義大なるものと考えられるものであります。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 引き続き、本案補足説明を聴取いたします。松永条約局参事官
  5. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) この協定につきまして簡単に補足説明をさせていただきます。  チョコレートのおもな原料として使用されますカカオ豆は、西アフリカ、中南米及びアジア太平洋地域にある開発途上国において生産されておりますが、特にガーナ、ナイジェリア、象牙海岸カメルーン等生産国にとっては、その輸出収入のかなりの部分を占める重要な産物となっております。  他方カカオ豆については、生産調整が困難であること、その収穫が天候に左右されやすいこと、需要の弾力性が低いこと等の特殊事情により、価格変動が激しく、このために生産国側の強い要望によって一九六三年から国際連合主催によるココア会議において商品協定の作成が検討されてきたものであります。  この協定は、輸出割り当て制度及び緩衝在庫制度の二つの方式を採用し、その運用によってカカオ豆価格を一定の価格帯範囲内に安定せしめることを目的としております。  わが国ココア輸入量は、ここ十年来、世界の総輸入量の約三・四%にとどまっておりますが、この協定締結いたしますことは、開発途上にある生産国に対するわが国の積極的な国際協力の姿勢を示すことになるほか、輸入国であるわが国にとりましても有益であると考えられるのであります。  以上であります。     —————————————
  6. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、沖繩国際海洋博覧会政府代表設置に関する臨時措置法案衆議院送付)を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。大平外務大臣
  7. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま議題となりました沖繩国際海洋博覧会政府代表設置に関する臨時措置法案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  昭和五十年に沖繩開催される予定の沖繩国際海洋博覧会につきましては、国際博覧会に関する条約第十五条の規定により、開催国は、政府代表する政府代表を指名することとなっておりますので、その任務重要性にかんがみまして、今回提案法律案のごとく、外務省に、特別職国家公務員たる「沖繩国際海洋博覧会政府代表」一人を置き、条約及び条約第八条の規定に基づく一般規則の定めるところにより、沖繩国際海洋博覧会に関して日本国政府代表し、その約束の履行を保障せしめることといたしております。この政府代表任務に関し必要な国内的措置につきましては、それぞれの関係各省庁の長が、これを処理することが適当でありますので、法案中にその旨を規定することとした次第であります。  また、本法案におきましては、政府代表俸給月額代表任免手続等について定めております。また、本法律案中には博覧会が終了した後、一年の期間を経過いたしますと失効する旨の規定を設けております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  8. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 引き続き、本案補足説明を聴取いたします。宮崎経済局長
  9. 宮崎弘道

    政府委員宮崎弘道君) ただいまの提案理由説明につきまして、若干の補足説明をさせていただきます。  沖繩国際海洋博覧会は、国際博覧会に関する条約に基づく国際博覧会であります。この国際博覧会条約は、国際博覧会の乱立、無秩序な運営等による弊害を除去し、秩序のとれた効果的な博覧会開催目的として、一九二八年に締結されたものであり、現在、わが国を含む三十六の国が加盟いたしております。  国際博覧会条約加盟国は、この条約の適用を受ける博覧会には優先的に参加することとされており、したがいまして、沖繩国際海洋博覧会にも、条約加盟国参加を得やすくなっているわけであります。  他方条約加盟国たる博覧会主催国は、条約上、外交経路を通じて参加招請を行なうこと、博覧会用物品に対する一時免税輸入許可等義務を課されており、今回御審議願います政府代表の任命も、この条約上の義務一つであります。  すでに、昨年末から本年初めにかけまして、わが国と国交のある百四十カ国の政府及び三十四の国際機関に対し、外交経路を通じ沖繩国際海洋博覧会への参加招請を行ないました。今後できるだけ多くの国及び国際機関参加を確保し、沖繩国際海洋博覧会を意義あらしめるべく、各国及び国際機関への働きかけを強化いたしたいと考えており、加えて、国際博覧会事務局との連絡も従来以上に密接ひんぱんに行なう必要が生じてきており、今後沖繩国際海洋博覧会への開催準備が一段と本格化するに伴い、同博覧会に関し政府代表して行動する政府代表が全面的な活動を行なわなければならない時期に立ち至っております。  以上、簡単に本法律案提出の背景を御説明申し上げました。
  10. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  11. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、千九百六十一年の麻薬に関する単一条約改正する議定書締結について承認を求めるの件(本院先議)を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  12. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 最初に、厚生省にお尋ねをしたいんですが、現在の麻薬中毒患者実態について、概略でけっこうですから、御説明いただきたいと思います。
  13. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 昭和四十七年の麻薬中毒状況について申し上げますと、麻薬中毒につきましては、麻薬取締法に基づいて届け出義務が課せられておりますが、四十七年間の届け出のありました患者の数は、人員にして六十六名、そのうちで麻薬取締法に基づく措置入院をいたしました患者が二十一名、そういう数になっております。これは、昭和三十年代の後半以来、それまでしょうけつをきわめておりました麻薬取り締まりが進みまして、麻薬中毒者の数も大いに減少いたしておりまして、現在のところはその程度の数でとどまっておる状態でございます。
  14. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 申すまでもなく、最近、ベトナム帰りの米兵が沖繩あるいは岩国基地あたり相当多量とおぼしき麻薬搬入があるんではないか、まあそれに関連すれば、当然麻薬患者増加、こうしたことが、われわれしろうとでありますけれども、常識的に考えられる問題であり、また、特にいま申し上げたような、沖繩であるとか、岩国はそういう環境に置かれている。いまの数字ですと、たいへん激減していることはけっこうな傾向でありますけれども、その後全然ふえてないのか、そういう、いま申し上げたような関係のもとにあっても、ふえていないのか、その点、いかがですか。
  15. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) その点、ちょっと御説明が足りませんで恐縮でございましたが、御指摘のように、沖繩は、麻薬取り締まりにつきましても、復帰直後というような事情もございまして、かなり特殊な状態にあるわけでございます。いま申し上げました四十七年、これは暦年でございますが、年間の届け出通報人員六十六人のうちで、沖繩の分が三十六人、半分以上でございます。措置人院を受けました二十人のうちで沖繩が十三人、したがいまして、本土におきましては、先ほど申し上げましたように、逐年こういう数は減少いたしておりまして、麻薬犯罪が減っておるわけでございますが、今後の問題といたしまして——今後と申しますか、昨年の復帰以来沖繩に私ども重点を指向いたしまして麻薬取り締まりを進めておりますが、沖繩につきましては、先生指摘のとおり、今後さらに力を入れなければならない面が残っておると考えておる次第でございます。
  16. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま言われた患者実態は、沖繩そのほかという、きわめて限定的な場所のように感じるわけでございますが、最近のこの詳しい状況についてはわれわれもよく承知しておりません。ただ、いろいろな伝えられるその話を総合して、整理して判断いたしますと、少なくとも東京都において売人と称する人が千人は下らないだろう、こういうことがいわれております。まあ、実態的にどういうルートになっているかということになりますと、非常に微妙な問題になってきますので、ただ総体的な数字がそういうふうになっているということを、いわゆるその筋の経験者から聞いております。そうなりますと、売人が千人ということになりますと、それに伴う中毒患者というものは、やはり比例的に多いんではないかという疑問があるんですけれども、その辺の懸念はございませんか。
  17. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) ただいま御指摘の、特に暴力団関係などによる、こういう麻薬その他の習慣性薬物密造密売というような嫌疑が最近非常に指摘されておるわけでございますが、麻薬につきましては、ただいま申し上げましたように、相当成果があがってきておりまして、また、罰則等も三十年代に強化された関係もございまして、本土における麻薬犯罪というのは、私ども警察庁とも連絡をとりまして集計いたしましたところでも、相当減ってきております。ただ、暴力団資金源等に最近非常に問題になっておりますのは、同じく習慣性薬物でございますが、覚せい剤相当最近ふえてきておりまして、先生ただいま御指摘の、相当密売者がいるというようなお話がありますのは、あるいは覚せい剤を含めてのお話ではなかろうかと存じます。で、覚せい剤につきましても、実は昨年の法律改正によりまして、麻薬取締官司法警察権を持つというたてまえになっておりまして、このほうにつきましても、相当力を入れて検挙をはかっておるところでございますが、麻薬につきましては、いま先生が御心配いただきましたほどの数は、おそらく現在ではないんじゃなかろうか、さように心得ております。
  18. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 まことにけっこうな状況だろうと思うんですが、つい先日、NHKの報道番組を見ておりますと、韓国との交通がきわめて便利になった、そういう事態から、大量に輸入される、搬入される、そういうようなきざしがあるんではないかということの心配された報道がございました。近々、大型トラックも積めるようなフェリーが就航するという、あるいは現在の就航しているフェリー大型トラックも積めると。そうすると、その取り締まりといいますか、調査というものはますます難渋をきわめて、麻薬及びあるいはその他の覚せい剤等を含めた、そういった一連の薬の搬入というものがきわめて、調査をいたしましても、取り締まりをいたしましても、困難ではないかと、こういうことがたいへん近い将来のこととして憂えられておりますけれども、そういった問題についても、すでに厚生省当局情報も得られておるだろうと思いますし、どういう取り締まり対応策をお考えになっていらっしゃるのか、それはいかがでございますか。
  19. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) ただいま御指摘韓国との関係でございますが、いま先生の御質問のとおり、交通は非常に便利になっておりまして、連絡船もございますし、飛行機もある、フェリーもあるというようなことで、相当韓国から覚せい剤が輸入されておるという情報は私どもも入手いたしております。そのために、九州の地区麻薬取締官事務所の分室を小倉に置きまして、最初寄港地で、フェリー連絡船につきましては、税関あるいは警察庁海上保安庁等とも連絡をとりまして、できるだけそういったところで、まず水ぎわ作戦で押えるというような対策をとっております。で、覚せい剤につきましては、今後とも韓国からの密輸ということは相当考えられる線でございますので、力を入れていかなければならないと考えておりますが、麻薬——狭義麻薬につきましては韓国にはほとんど生産の実績はございませんので、現在のところ韓国からの密輸という線はきわめて少ないというふうに承知をいたしております。
  20. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 現在取り締まり機関としては、各省に相当たくさんまたがっているようでございますし、厚生省はじめ警察庁法務省外務省大蔵省、運輸省、海上保安庁ですか、こういった機構に分かれておりますと、実質的な成果をあげる場合には、特に国際関係のいろんな連携を緊密化して麻薬搬入等々の絶滅を期するという場合に、非常に機能的な働きができないんではないかという心配があるわけです。おそらくこういう機構が分かれているのは日本だけだというふうにわれわれは聞いておるんですけれども、この機能的な働きをより効果あらしめるために一元化するとか、そういうようなことは現在の段階としてはお考えになっていらっしゃいませんか。
  21. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 麻薬及びその周辺覚せい剤等も含めましてのいわゆる習慣性ある危険薬品、そういったものの取り締まりにつきましては、先ほど先生の御指摘がありましたが、現在暴力団関係資金源にしておるというような実態相当ございまして、そういう面ではやはり警察庁のような、大きな機動力組織力を持つ力が必要であるという面があるわけでございますが、反面、麻薬あるいは覚せい剤、特に覚せい剤密造というような問題になりますと、これは相当専門的な薬学上の知識によりまして、その覚せい剤原料段階から押えていく、あるいは麻薬鑑定等につきましては相当専門的知識を必要とするという面があるわけでございます。  それからもう一つは、御承知のように、麻薬あるいは覚せい剤は、これは正規に使いますと、医療上の薬物といたしまして、相当有効な不可欠な薬物であるというような意味で、麻薬につきましては麻薬取締法をもって厳格な規制を加えながら、医療機関においてこれが正規に使われるという道を保障しておるわけでございます。覚せい剤についても同様でございまして、そういったような意味正規麻薬の横流れを防ぐ、あるいは専門的な面で密造等に対する規制を強化するというような面におきましては、私ども厚生省薬務局におきます薬学上の専門家知識というのが非常に大きな効果を持ってくる。そういうような要素もあるわけでございまして、現在私ども勤務いたしております麻薬取締官は、相当部分が薬剤師の専門家でございます。そういうような面、あるいは御指摘税関あるいは海上保安庁、そういった面におきましては、特に密輸を防ぐという面におきましては、ほかの犯罪につきましても警察庁等協力して、それぞれの分野で力を入れて、水ぎわ作戦を立てるというような体制をとっておりまして、それぞれの守備範囲を守りながら密接な連絡をとって協力して行なっていくというのが今後ともやはり一番効率的な方法じゃなかろうかと存じます。ただ、御指摘のように、分散しております、権限が分かれておりますために、そのギャップをくぐられるというようなことになりますと、ゆゆしき問題でございますので、警察庁等とも常に密接な連絡をとりまして、すきのないような体制を今後ともとってまいりたい、そのように心得ております。
  22. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまの御説明ですと、現在のそれぞれのセクトがあっても、十分連携を緊密にしていけば、決して取り締まりにそごを来たす、そういうおそれは全くない、こう理解してよろしいわけですか。
  23. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) そう御理解いただきたいと存じます。また、そのように運営してまいりたいと考えます。
  24. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 昭和三十五年ごろだったと思うんですが、麻薬業者大物といわれた王漢勝ですか、あれ以後に李忠信というものが出て、この大物をとらえるときに取締官がたいへんな苦労をしたということをわれわれ聞いているわけですね。検察庁は、せっかくその家庭まで犠牲にしてそれで押えた。しかし、その背後関係をいろいろ問い詰めていくと、収賄があったのではないかというようなことから、せっかく真剣に勇気を持って取り組んだその取締官が、今度は逆に自分がとらわれの身になったという話があったと思う。あるいは、取締官自身がいつの間にかその情報を探るために深入りをいたしまして、自分自身麻薬中毒患者になったという、過去においてそういう忌まわしい問題がございました。いま激減しているその傾向を見れば、そういうようなことは二度と起こる気配もないだろうとは思いますけれども、やはり地道な、知られていない場所で非常に屈従に耐えながら戦っているそういう取締官、こうした人たちに対する生活の保障が、はたして完全に行なわれているものであるかどうか、非常に心配な面がございますね。麻薬ジーメンというと非常に聞こえがいいですけれども、実際には実態的には一般公務員と何ら変わりはないわけでしょう。あてがわれているような車にしても何にしても、大体まあ、おんぼろというとことばが過ぎるかもしれませんけれども、それで犯人を見失うというような場合等も懸念されるのじゃないか。やはり将来万全の措置を期するためには、そういう取締官自身の動きやすいように、また、やりやすいようにすることがやはり望ましいと思いますし、過去のそういうような実際あった問題を通じまして、取締官に対するそういう考え方といいますか、政府考え方はどんなふうに今後も継続的に行なわれていくのか、この辺はどういう考え方を持っていらっしゃるのでしょうか。
  25. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 御指摘のように麻薬取締官仕事、これは犯罪捜査に従事する職員はどの部局でも非常に御苦労が多いと思いますけれども、特に麻薬のような特殊な業務、先ほど申し上げましたように、一方では正規麻薬医療機関における横流しの防止というような行政的な業務も行ないますし、また、時といたしましては、御指摘のように、暴力団を相手にして相当危険な業務をやらなければならぬ。しかも、犯罪ルートが特殊でございますから、いろいろな面におきまして捜査でも法律すれすれのようなことも、危険をおかさなければならないというようないろんな苦労があるわけでございます。そのために、私どもといたしましては、一般公務員俸給に加えまして、麻薬取締官につきましては一二%の調整額を支給いたしまして、一般公務員よりは相当の優遇をはかっております。これは、警察官の給与と比較いたしまして大体調整のとれる、バランスのとれる額というふうな計算になっております。  それから自動車等活動費につきましても、ここ二、三年は、大体警察の増額の率に対応いたしまして活動費をふやすというようなことで、過去三十六年を起点にとってみまして、大体四十八年度で九倍くらいの額になっております。ただ、御指摘のように非常に困難な仕事でもあり、機動性を要することでございますから、いまの程度でもちろん十分だと考えているわけではございませんので、他の公安職員等給与、そういったものとのバランス考えながら、職務の特殊性に対応できるような、今後ともできるだけの処遇改善をはかりたいと考えております。
  26. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いずれにしても、今後絶滅を期していただきたいし、何ら報われないというような、禍根を残すような、そういう処遇だけは絶対避けてもらいたい、こう思いますね。  それから先ほど来からお話がございましたように、おそらく根絶をはかるきめ手の一つとして暴力団関係もございますけれども、この点について法務省の方もお見えになっているようですけれども、今後この麻薬あるいはその他広義意味覚せい剤を含めたこの麻薬、こうしたものをやはり完全になくすためにはどんな対応策考えていらっしゃるのか。また、そういう対応策ではたして根絶ができるものなのかどうなのか。その辺はどういうふうに御判断なさっていらっしゃるでしょうか。
  27. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 私どもの所管いたしております広義麻薬及びその周辺医薬品につきましては、いま御説明申し上げました麻薬取締法のほかに覚せい剤取締法、それから大麻取締法、それから麻薬の原材料でありますアヘンの国の専売を規定いたしましたあへん法、そういった法律があるわけでございます。で、それぞれの法律の条項に従いまして取り締まりを進めているわけでございますが、先ほど申し上げましたように、最近覚せい剤が非常に出回ってきておる。あるいは麻薬類の中でも新しい型の危険医薬品といたしましてLSD等幻覚剤、そういったものも登場いたしております。それから大麻が非常に青少年にびまんしておるというようないろんな要素があるわけでございまして、そのために、昨年麻薬取締法改正していただきまして、麻薬取り締まり官及び県に置かれております麻薬取り締まり員に対して、覚せい剤に関する使用偵察権を付与していただくというようなことで、危険医薬品を一括いたしまして、この捜査取り締まりの対象にするというような体制をとりまして進めておるわけでございますが、今後また御審議をお願いすることになろうかと思いますけれども、こういった危険医薬品につきましては、一般的に精神に作用いたします薬物全体を対象といたしまして、向精神薬の国際的な取り締まりに関する条約審議も進められておるわけでございまして、そういったものの動向等もにらみまして、これは非常に国際的な犯罪でございますので、私どもといたしましても外務省警察庁等連絡をとり、所要の法律的な手当てを遅滞なくとりまして取り締まりを進めたい、そのように考えております。
  28. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 現在、麻薬搬入ルートといいますか、国際ルートといいますか、これからも十分用心をしなければならない、そういう地域はどういう方面に集約される——といっても、いろんな所から、今日では飛行機の便もありますけれども外務省あたりはどんなふうにその点を判断しておりますか。
  29. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) これは、いままで私ども捜査取り締まり段階で得ました情報によりますと、麻薬のおもな仕出し地といたしましては、アヘンにつきましては香港、シンガポール、インド、マレーシア等、それからヘロインは香港とか南ベトナム、それからLSDは米国、フランス、大麻が米国、フィリピン、インド、韓国、カナダ等、これは相当たくさんの国から入ってきておるようでございます。  特にいま御指摘の狭義の麻薬ということになりますと、アヘンとヘイロンはほとんど東南アジアがおもな仕出し地でございまして、やはり私ども取り締まりの重点といたしましても、東南アジア方面を指向いたしまして目を光らせるということで、警察庁ともそういう御連絡をいたしながら進めておる次第でございます。
  30. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま御説明のあった主たる搬入先というのは、東南アジア地域に限られるようでありますけれども、実際に国際間の協力関係というものが理想的に得られるという見通しがございますか。
  31. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 現在御審議をいただいております条約改正におきましても、国際的な麻薬の統制ということも強化される方向にあるわけでございまして、これはまあ、私ども実情をよく存じませんが、ベトナムのほうも和平が訪れたというような状況でございまして、国際関係正常化に向かっておりますのと、それから各国におきましても、麻薬の弊害ということが非常に大きな問題になってきて、世界各国とも麻薬取り締まりということは力を入れるというような方向に向かっておりまして、その点、私ども所管しておりまして、外国の来客等がございましても、日本における麻薬取り締まりはどうか、自分たちもこうだというようなことで、非常に熱心な情報の交換も常にあるわけでございます。また、担当課長等も国際麻薬委員会に常時出席をいたしまして、情報連絡をいたしておりますので、今後の方向といたしましては、なかなかむずかしい問題ではございますが、少しずつこれは状況もよくなっていくものと、また、よくしていかなければならないものと考えております。
  32. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 特に心配されるのは、冒頭に申し上げたように、米軍が持ち帰るという、こういう問題がまだ残っているわけですね。この問題については、当然アメリカ側の協力あるいは米軍側の協力というものが得られなければならないと思いますが、その効果はあがっておりますか。
  33. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) いま申し上げましたような世界各国で麻薬の弊害が痛感されているといううちでも、特にアメリカにおきましては、これは御承知のように、麻薬の問題が非常に大きな社会問題になっておりまして、したがって私ども、ほかの面ではあまり接触がございませんが、麻薬に関する限り、米軍当局も非常な熱意を示しておりまして、私も昨年暮れに沖繩へ参りまして、沖繩の市の麻薬取り締まりの担当者あるいは司令官とも懇談してまいりましたが、向こうのものの言い方といたしましても、こういう米軍関係麻薬事犯があるということはアメリカ人としても非常に恥ずかしいことである。退役者なんかも含めてそういうことについては自分たちも全面的に協力したいというようなことで、実績を見ましても、軍からの通報によりまして、現に米軍にあるいは退役者が逮捕されておるというような事例もございまして、その点の協力関係につきましては、かなり実績があがっておると承知いたしております。
  34. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 けっこうです。
  35. 星野力

    ○星野力君 アメリカでマリファナ解禁が政治問題になっておるということを聞きますが、どうでしょうか、マリファナ。
  36. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) マリファナ、大麻につきましては、アメリカでそういうような動きがあるという情報は得ております。ただ、マリファナにつきましては、アメリカでも専門家の意見としてはやはりこれは危険な薬物であり、青少年のためにも自由にするということは問題があるんではないかという相当有力な意見もあるということを仄聞いたしております。
  37. 星野力

    ○星野力君 マリファナがアメリカでそういうような問題になっておるということは、事態が手をつけられないところへ近づいておるのではないか、そういう事情を反映しておると思うのでありますが、そういう風潮が日本にも影響してくるということが心配されるのですが、その点についてはどうお考えになっておりますか。
  38. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) いま申し上げましたように、アメリカにおきましても、有力な学者におきましては、マリファナは決して無害ではないという意見が強いわけでございまして、わが国におきましても、専門家の意見によりますと、麻酔有毒成分が中枢神経系統に作用する薬物でございまして、幻覚的な作用もあると、直接、間接の犯罪の原因になるというような説が大体通説でございます。国際的にもそのように認められておりまして、アメリカにそういう説があるのは、私も事情はよく存じませんが、非常に常用者がふえてきておる。まあ、ある情報によりますと、正確ではございませんが、常用しておる者が八百万人、ときどきのむ者も加えると二千四百万あるというようなうわさも聞いております。これは正確な情報とは申しかねるかもしれませんが、そのようにびまんしておるために取り締まりの面で非常に困難をしておるということは、私ども職員がアメリカへ出張いたしました際の報告でも聞いております。  で、日本におきましては、そのような大きな数でもございませんし、先ほど御答弁いたしましたような大麻取締法に基づく厳格な規制をいたしておりまして、日本の青少年の中でそのような大麻は無害であるというような説がそう広まっておるということは、いまのところはないと存じます。また、そういうようなことがもしあるとすれば、私どもも広報、周知徹底をはかりまして、そのような妄説をあらためていかなければいかぬと、そのように考えております。
  39. 星野力

    ○星野力君 このマリファナは、日本における常用数あるいは一時的な使用者はどのぐらいの数を踏んでおられますか。
  40. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 四十七年度で一応七百人ぐらいの数があがっております。
  41. 星野力

    ○星野力君 常用者ですか。
  42. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) これは大麻取締法違反によりまして逮捕した人員でございます。
  43. 星野力

    ○星野力君 沖繩における麻薬犯罪の実情を、ごくあらましでいいんですが、御説明願いたいと思います。
  44. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 沖繩につきましては、先ほど申し上げましたような、復帰後間もないというような特殊事情もございまして、先ほども説明いたしましたとおり、他府県に比べまして事犯が多くなっております。復帰の五月十五日から昭和四十七年末、十二月末日までに送検されました数が約二百五十名、これは麻薬取締法違反による送検でございます。これが他府県におきましては四十七年中に、年間を通じまして、千百名の送検でございますから、率といたしまして、かなり多い数と言わなければならないと思います。
  45. 星野力

    ○星野力君 この沖繩における麻薬というものが本土への麻薬の新らしい突破口になる危険があると思うんでありますが、その点はどうですか。
  46. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 確かに復帰後間もない、あるいは地理的な特殊な事情というようなことが重なりまして、現在沖繩におきましては、かなり麻薬犯罪が多いのは事実でございます。特に本土ではほとんど陰をひそめておりますヘロインの事犯が沖繩においてはなお見られるというような傾向もございまして、御指摘のような、それが他の府県に広がるというようなことになりますと、これはたいへんなことでございますので、私どもといたしましても、復帰と同時に沖繩麻薬取締官の事務所を設置いたしまして、これは他の地区におきましては大体においてブロック単位に事務所を置いておるわけでございますが、そのブロックの麻薬取締官事務所に相当するぐらいの規模のものを沖繩一県に集中をいたしまして、また県にも麻薬取締員を置くと、警察連絡をとりまして、相当強力な体制を整えております。  なお、実情によりまして、随時他の麻薬取締官事務所からも重点的に応援の人員を派遣いたしまして、とにかく沖繩において麻薬犯罪をたたくと、他の府県にびまんさせるようなことをしないようにということを重点にいたしまして指導いたしております。
  47. 星野力

    ○星野力君 沖繩麻薬の問題というのは、復帰後間もないということや、地理的な特殊な関係ということよりも、あすこにびっしり軍事基地があるという問題が一番大きな要素になると思いますが、本土においても、麻薬法令違反者の二〇%がアメリカ人であるということを聞いております。それらのアメリカ人がすべてアメリカ軍人ではないわけでありましょうが、日本の麻薬事情というものは、安保条約による米軍と基地の存在、そういう日米の特殊な結びつきが大きなかかわりを持っておるのではないかと思うんでありますが、時間の関係ありますからまとめてお聞きしますが、先ほどもアメリカ側の協力はうまくいっておる、こういうお話で、また他の当局者にお聞きしたところでも、アメリカの軍人軍属や家族の出入国にあたっての税関検査、あるいは米軍施設区域から入る米人の検査などはかなり厳重にやられておる、こういうふうに聞いております。しかし、この軍事郵便物を利用しての麻薬持ち込みの例も報告されておりますが、その辺はどういうふうになっておるのか。また、軍事貨物の検査はどういうふうにされておるか。それから、出入りの人間は検査しましても、入航する船舶あるいは飛行機そのものの検査はやられておらないと思うのであります。また、アメリカ人や貨物が基地の外に出るときの検査はどうなっておるか。その辺の事情を若干御報告願いたいと思います。
  48. 片山充

    説明員(片山充君) お尋ねの第一点の軍事郵便物のほうでございますが、ただいまの米軍の軍事郵便の路線といたしましては、本土沖繩で二つのルートがあります。本土の場合には、空から入りますものは羽田の軍事郵便の、いうならば集配局に相当するものがありますが、そこを通しまして、それから海から参りますものは横浜に同じような施設がございます。沖繩の場合には、嘉手納と那覇の空港を通すルートと、それから那覇の同じく港を通しますルートと、この四つがあるわけでございます。それぞれにわれわれのほうの、税関のほうの組織といたしまして外郵出張所あるいは単なる出張所のようなものがございますが、それが分担をいたしまして審査、検査をいたしておるわけでございます。  やり方といたしましては、通常の郵便物につきましても、あるいは御案内かとも思いますが、輸入荷物につきましては、原則として輸入納税申告というものを出してもらう——輸入の場合でございますが——ことになっておりますが、郵便物につきましては、一般の郵便物につきましても、その申告という制度をとっておりませんので、郵政職員から提示されましたものにつきまして検査をして処理をしておると、課税の必要があるものにつきましては課税通知を……。
  49. 星野力

    ○星野力君 その点はそれでいいです。続けてください。
  50. 片山充

    説明員(片山充君) 賦課決定をしてやっております。それと同じようなことを、アメリカの軍事郵便物につきましてもやっておるわけでございます。  ただ、この路線上にあります公用の軍事郵便物につきましては、検査免除ということになっておりますので、これは検査いたしておりません。  それから通常の貨物についてのお尋ねが第二点であったと思いますが、これも地位協定あるいは地位協定の実施に伴います特例法にそれぞれ規定がございまして、公用に供しますものは免税にもなっておりますし、税関検査も免除になっております。その規定に従いまして処理をいたしておるわけでございます。
  51. 星野力

    ○星野力君 お聞きしてわかるのですが、要するに厳重に検査やられておられると言いますけれども、やっぱり手の及ばない、いわば水漏れになる部分があるのでありますから、その辺のところはやっぱり二重、三重に考えていかなけりゃならぬと思うわけであります。  次の問題をお聞きするのですが、厚生省の報告によりますと、医療関係麻薬の不正施用ですか、そういうことなど、医療、薬業関係者の違反というのが少なくないわけであります。ところで、在日米軍の病院、これはもちろん麻薬を扱っておるでありましょうが、そこでの麻薬管理はどうなっておるかということであります。どこどこの病院にどういう種類の麻薬がどれだけあって、それがどのような施用をされ、また不正事件があったかなかったか、そういうようなことをつかんでおられるか。
  52. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 米軍側の病院で施用しております麻薬につきましては、これは米軍のほうから十分な管理のもとに置かれるということを聞いておりまして、これはいま御説明もございましたが、麻薬取締法の適用外でございますので、私どもといたしましてどの病院に具体的に幾らという数は承知いたしておりませんが、ただ医療上に使われております間は、そういう米軍の協定に基づきます公務の執行でございますが、そういった米軍の病院から医療用の麻薬が不正に流れたということになりますと、これは公務外でございますから、私どもの立場から、麻薬取締法による対象ということで、捜査検挙ということをいたすわけでございます。
  53. 星野力

    ○星野力君 米軍病院から流れた事例はございますか。
  54. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) いままでのところは、米軍の横流れによる不正麻薬というのは承知いたしておりません。  ちょっと補足さしていただきます。盗難の例が昔あったそうでございますが、横流しをしたという事例はいままでのところ聞いておりません。
  55. 星野力

    ○星野力君 米軍の使用する麻薬類の輸入についてでありますが、これは当然麻薬取締法に定めてあるように、厚生大臣の免許を受けた業者が、そのつど大臣の許可を受けて輸入する、こうなるんだと思いますが、どうですか。
  56. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 先ほど御説明ございましたように、米軍につきましては麻薬取締法の適用がございません。したがいまして、厚生大臣の免許ないし許可を受けて使用するというたてまえになっておりません。
  57. 星野力

    ○星野力君 米軍が許可を受けずに輸入できると、こうなっておるわけですね、仕組みは。その法律的な根拠というものは、先ほども何かお話しあったようですが、もう一度おっしゃってください。
  58. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 外国軍隊につきましては、一般国際法上受け入れ国の法令の適用は排除されております。その関係国間の条約上の特別の規制がある場合は別でございますけれども、法令は一般的には適用されないということになっております。また、日本にあります米軍につきましては、いわゆる地位協定によりまして、施設・区域については、米国がその設定運営等につきまして管理権を第三条によって認められております。したがいまして、施設・区域内にあります米軍の病院等におきます麻薬の使用等については、日本の統制からはずされておるということになっております。
  59. 星野力

    ○星野力君 日本の何からはずされておるのですか。
  60. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 統制、管轄でございます。
  61. 星野力

    ○星野力君 統制、管轄一切はずされておる……。
  62. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 麻薬の米軍による使用につきまして、はずされております。ただ、先ほど薬務局長のほうからも御説明がございましたように、それが不正な使用、あるいは麻薬犯罪ということになってきますと、これは別の問題になります。
  63. 星野力

    ○星野力君 いま、地位協定に基づくと言われたのは、臨時特例法の第九条の「関税法第六十七条の規定による検査を行なわない。」と、そのことをさすんでしょうか。
  64. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 輸出入手続の検査その他の免除につきましては、先ほど大蔵省のほうから御説明申し上げたとおりだろうと思います。私がいま申し上げましたのは、米軍の病院等におきまして麻薬が使用されることについて、日本の法令が適用あるかという御質問でございましたので、それは適用がないということを申し上げたわけでございます。
  65. 星野力

    ○星野力君 くどいようですが、何によって適用がないんですか。
  66. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 先ほど申し上げましたように、一般国際法上、外国軍隊については接受国の法例の適用がないということでございます。
  67. 星野力

    ○星野力君 それはどういう国際条約ですか。
  68. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) それは国際条約と申しますか、一般国際法上の国際慣習法と言ってもいいかもしれません。
  69. 星野力

    ○星野力君 それならば、関税検査を行なわないということで、わざわざ地位協定に基づいてこういう規定をやる必要もないわけですか、在日米軍に対しては。
  70. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 輸出入等につきましては、いろいろ手続上の問題がございます。したがいまして、それはやはり地位協定ではっきりとこまかくいろいろ規定し、またそのために必要な特例法を定めているということであると思います。
  71. 星野力

    ○星野力君 そうしますと、日本におる米軍——一般に外国軍隊については、たとえば麻薬についての輸出入の申告ということがありますが、こういう手続も要らないということになりますか。
  72. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 輸入手続につきましては、先ほど大蔵省のほうから御説明がありましたように、米軍の公の使用のための輸入については申告の手続が免除されていると承知しております。
  73. 星野力

    ○星野力君 大蔵省にお聞きしますが、いまの免除はどういう協定なり法律なりによって免除されておるのですか。
  74. 片山充

    説明員(片山充君) 若干補足いたしますと、手続の免除ではございませんで、免税とそれからその検査の免除でございます。したがいまして、その米軍の公用に供されます物資につきましても、一定のフォームに基づきますところの輸入申告はございます。  免税とそれから検査の免除が規定してございますのは、地位協定のたしか十一条と、それを受けまして、地位協定の実施に伴う特例法の六条と九条に規定がございます。
  75. 星野力

    ○星野力君 検査をそのように免除をする規定があるわけですが、輸出入の申告も要らないという規定はどこにもないじゃないかと思うのですが……。
  76. 片山充

    説明員(片山充君) したがって、その規定のとおりに申告はとっております。
  77. 星野力

    ○星野力君 とっておりますか。
  78. 片山充

    説明員(片山充君) はい。
  79. 星野力

    ○星野力君 ちゃんと厚生大臣の免許を受けた業者からそういう手続をさしておるわけですか。
  80. 片山充

    説明員(片山充君) 地位協定並びにそれを実施いたします特例法で規定してありますのは、一定の条件がございますが、そのものについての検査の免除と免税でございますので、申告は米軍当局からございます。麻薬取締法との関係ではございませんで、われわれのほうでは関税法等の特例ということで取り扱っておるわけでございます。
  81. 星野力

    ○星野力君 麻薬についても、米軍基地というのは治外法権のような扱いを受けておるように感ずるのですが、米人、特にアメリカ軍人の麻薬事犯が問題となっておる。米軍が日本における麻薬の基地だといわれておるようなこの際でありますから、政府法律を厳正にひとつ解釈して、対処してもらわなければいけないと思うのです。私、まだよく納得できないのでありますが、また別の機会にもっとお聞きすることになるかもしれません。  最後にひとつ、今度の議定書の元の麻薬単一条約ですね、あれに関連してお聞きするのですが、あの中に、米軍の施設・区域は単一条約でいっております「領域」に入るのかどうふという問題ですね。  あわせてお聞きしますが、単一条約の第十二条、第十九条で定めております「薬品需要量の見積り」を出すというあの中には、在日米軍の関係麻薬も含めて報告するということになっておるのでしょうか、どうでしょうか。
  82. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) この麻薬条約で申しております「領域」というものは、麻薬取締法の適用上領域とされているというものでございまして、これは第一条「定義」がございますが、その(y)項に、「「領域」とは、国の一部分であって、第三十一条に定める輸入証明書及び輸出許可書の制度の適用上個別の単位として取り扱われるものをいう。」、ということが書いてございます。ただいま御質問がありました施設・区域が入っているかどうかという点につきましては、御質問の趣旨が、施設・区域の中における麻薬の取り扱いについてこれは含まれるかという御趣旨かと思いますが、それにつきましては、先ほど申し上げましたように、米軍の使用します麻薬については、日本の法令は適用されておりませんので、これから除外されるということになると考えております。また、現に日本が報告等を出しております麻薬に関する統計その他には、米軍の使用する麻薬は含まれていないと承知いたしております。
  83. 星野力

    ○星野力君 端的に言いますと、米軍基地は日本の領域でないと、条約でいっておる領域ではないということでありますが、領域というのは、米軍のほうではテリトリーになっておると思いますが、日本の領土でないということ、ごく普通の常識から考えてみますと、麻薬に関しても日本の主権が放棄されてしまった、安保条約の何とといいますか、対米従属的な性格というのがはっきりこの麻薬の問題でもなってくるのではないか、そういうふうに考えるんですが、大臣そうじゃございませんか。
  84. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 施設・区域につきましては、全面的に日本の法令が排除されているというものではございません。その意味におきまして、日本の領域内でございます。先ほど申し上げましたのは、麻薬の統計の集計あるいは報告その他の適用上含まれないということを申し上げたわけでございます。
  85. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) いいんですか。
  86. 星野力

    ○星野力君 たいへんもの足りないんですけれども、時間が来ましたからこれで終わります。
  87. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  千九百六十一年の麻薬に関する単一条約改正する議定書締結について承認を求めるの件、これを問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  89. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  91. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 国際情勢等に関する調査議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言願います。
  92. 小谷守

    ○小谷守君 大臣にお伺いいたします。  外務大臣のたいへんな御苦労によって日中国交回復が実現をしたと、昨年秋、国交の正常化が実現をしてもう半年の時間が経過いたしました。先般は、それぞれ大使が着任し、あるいは赴任いたしました。これから日中関係は新しい段階を迎えるわけでありますが、それについて、この半年間の日中関係、これをやはり振り返ってみる必要があるのではなかろうか。率直に申し上げて、この半年間たいへんもどかしい半年であった。渋滞といいますか、停滞を続けておったのではないかという気持ちが今日国民の中には多いと思います。外務大臣は、昨年の九月以降今日まで半年間のこの推移というものについて、どういうふうにお考えになっておりますか。
  93. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 正常化後の日中関係の歩みはもどかしいものがあるのではないかと国民は見ておるんじゃないかという御意見でございます。私は実はそう考えておりませんので、一応満足すべきものと考えております。と申しますのは、日中間関係、これはこれから長きにわたる関係でございますので、いろいろの取りきめをこれからやってまいるにいたしましても、拙速であってはならぬと思うんでございます。十分双方がこなれた理解を持ってやらなければなりませんし、また、取りきめもつくりました以上は、それが有効に働くものでなければならぬと思います。したがって、日中間におきましては、各レベルにおいて、もっともっと深い理解が必要であろうと思うのでありまして、去年の十一月から十二月にかけまして、政府局長レベルのミッションを送りまして、先方の政府といろんな問題について意見交換を行なわしめたわけでございます。その間、感じ取りましたことは、日本も意外に中国を知らないんじゃないかと、中国もまた意外に日本を知らない、そういうことをわれわれは発見したわけでございまして、十分お互いに理解を深めた上でいろんな取りきめを着実にやってまいる手順を踏んでいってるわけでございまして、今日までの歩みは、決して渋滞あるいは停滞ということばで表現していただくようなものではないというように私は考えております。
  94. 小谷守

    ○小谷守君 外務大臣のお答えは、中国のことばで申しますと、いささか自画自賛のお答えのように思いますが、そこで具体問題について二、三お伺いいたします。  先般、航空協定の予備交渉が行なわれたようでありますが、これの進展の中身について、お差しつかえのない限り御発表願いたいと思います。
  95. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 航空協定につきましては、御案内のように、去年の十一月、当方の案を先方に提示いたしまして、二月になりまして先方の反応がございまして、両方のお考え、一応のドラフトができたものですから、第一に予備交渉団を出しまして、この案文の突き合わせをしてもらいたいということをお願いして、あらかたその仕事をやっていただいたわけでございます。完全に突き合わせが終わったところまできておりませんけれども、若干のワーディングは残っておりますけれども、しかし、これは私は非常に重大な支障になるようなものではないと思っております。  それから第二点は、付属表に路線の問題を書かにゃいかぬわけでございますが、その点について先方の考え方というものを一応聞いて帰っていただいたわけでございまして、したがって、この問題につきましては、私どものほうと運輸省の間でいま現にあらゆる角度から検討を進めておるわけでございます。  第三の問題は、日台路線の問題でございますが、日台路線は、御案内のように、日本政府と国民政府の間の交換公文は失効いたしておりますので、現在の運航は会社同士の契約でやっておるわけでございますので、今度われわれが結ぼうとする日中航空協定上の問題ではないわけでございまして、今後も引き続き事実上の民間レベルのお約束でやっていただくよりほかに道はないわけでございます。しかしながら、これはやはり日中関係というものを十分踏まえた上でやらなければならぬわけでございますので、そういうことについて先方の感触というようなものも、一応予備交渉団が感じ取ってこられたわけでございます。  で、この問題につきましては、日本政府が日台間の実務関係をどういう節度において維持してまいるかという、この決心をせにゃならぬわけでございますので、そういう感触も参考にしながら、これまた外務、運輸両省の間でこれから協議を進めていかにゃいかぬと考えておるわけでございまして、いまようやくそういう政府部内の打ち合わせが、検討が始まったところでございます。
  96. 小谷守

    ○小谷守君 航空協定のやはり一番大きな困難点は、台湾航路の問題であろうと思います。いま大臣は、これは会社間の問題であるというふうな、事もなげなお答えでありますけれども、実際はこれはいま日航が週三十七便の就航をしておりますけれども、すべてこれは政府の認可した路線であり、政府の認可した便数であります。中華航空と称する台湾機の日本乗り入れについても同様であります。決して会社間がしかるべくやっておるという企業間の問題ではもちろんないわけです。  そこで、この予備交渉の中で台湾航路の問題、これに対する、いま感触というおことばがありましたが、その感触の内容は、中身はどういうことでございましたか、お差しつかえがなければ御発表願いたいと思います。
  97. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまわれわれが結ぼうとするのは、日中間の航空協定なんでございます。つまり北京政府と東京政府の間の航空協定なんでございます。で、それに必要にして十分な規定を盛らなければならぬわけなんでございます。あなたがいま御指摘の日台航路という問題はそこに乗らないわけなんです。だから私は民間の実務上の関係だと申し上げておるわけなんで、それ以外に日台間の実務関係を続けていく実は道がないわけなんでございまして、東京−北京の間でこれをどうするかというて、先方もこれでいいというお立場でもないわけでございますので、私どもといたしましては、日中の関係をそこなわない範囲内において、事実上の関係は維持したいと希望しておるということなんでございまして、それに対して北京側がどこまで御理解をいただけるかということが、この問題の本質だと思うんでございます。で、私ども考えておりますことは、そういう考え方に立ちまして、どういう方法でこれを維持してまいるか、そして先方のまあ暗黙の理解を得られるようなものにしなければなるまいと考えておるんで、まことにはっきりしないんでございますけれども、まあはっきりしない現実なんでございます。
  98. 小谷守

    ○小谷守君 私は、大臣、北京に大使館が開設されたとき、あそこの看板ですね、写真で見ましたが、あれは大臣が筆をとられたようであります。なかなかりっぱな書体だと思うんです。私は、あれは借書で、借書で一点一画ゆるがせにせずに書かれた点に非常に感銘を受けましたが、そのとおり、やはり折り目正しい外交をやってもらいたいということをあのとき直感いたしました。そこで私は、劈頭に、この六カ月間、日中問題はむしろ渋滞をしておるんではないかという失礼なことを申し上げましたけれども、その根本は、昨年九月の共同宣言、これを折り目正しく誠実に実行しようというところの気がまえがだんだん希薄になってきておるのではないか。あれほど国民的合意の高い外交は過去なかったと思う。そういうことを背景にしたあなた方の御苦労であったと思うのでありますけれども、しかし、日がたつにつれて、あなたはだんだんくずし書きをお始めになった。看板は借書でお書きになったけれども、目下のところたいへんなくずし書きをお始めになっておるのではないか。そこに中国のぬぐいがたい不信感がきざしておるのではないか、そういう点を心配いたしますが、いかがでございましょうか。
  99. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、あの共同声明に盛られた精神、うたわれた規定を踏まえた上で、これを絶対に踏みはずしちゃいかないと思うのです。あなたの言われるように、それが信頼の基礎でございますから、厘毫もそれを侵すことのないようにやってまいるのが私の責任であろうと思っておるわけでございます。私はどういう御評価があるかは存じませんけれども、いま小谷さんの言われた気持ちを厘毫もそこなうというようなことは絶対にしないという決心で当たっております。
  100. 小谷守

    ○小谷守君 共同声明には、台湾は中国の不可分の領土である、と確認をされておるわけです。しかし、台湾との事実上の関係をそう簡単になかなか振り切れるものではないという事情もございましょう、私どもも理解できます。しかし、だからといって、それをずるずる、その事実関係をそのままで過ごしていいというものではないと思います。具体問題を申し上げますと、この台湾航路の問題にいたしましても、現在の週三十七便、これを漸減していくというぐらいな誠意があって初めて航空協定は打開できるのではありませんか。それをそのまま、中華航空と称する台湾機の週二十一便もそのまま、すべて従来台湾との関係は固定したままで、そして中国ともしかるべくやっていこうというふうなずるいかまえで、将来、日中関係うまくいくはずないと思います。私はその点を、大臣は厘毫もこの共同声明の趣旨をゆがめることがないというふうにおっしゃいますけれども、その辺に大きなくずし書きが行なわれておる、この点を心配するのでありますが、いかがでありますか。
  101. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 毛頭そういうことを考えていないわけなんです。あなたのおっしゃるとおりの精神でやっておるわけでございます。北京のほうも、日台関係が実務上、たいへん各方面にわたって濃密な関係があるということは承知されておると思います。そして日本政府ができるだけこれを維持したいという希望を持っておることも先方は御理解いただけておると私は思うのでございます。問題は、あなたのおことばにありましたように、それをいい気になって、こちらが図に乗ってはいけないということでございまして、そこにおのずから節度がなければならぬと私は考えておるわけでございまして、今度どういうようなことにいたしますか、目下いろいろ関係者の間で勉強をいたしておるところでございますので、まあしばらく時間の余裕をかしていただきたいと思いますが、日中の信頼、基本の信頼関係をそこねるようなことは絶対に私はいたさない、そういう決意で当たっております。
  102. 小谷守

    ○小谷守君 大臣の仰せになりましたことは、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。今日まで続けておる台湾との事実上の関係、これは各般にわたって漸次縮小していくのだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか、そういう御方針であるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  103. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日中の信頼関係、新しく結ばれました正常化された関係、共同声明が指向する関係というものをそこねないようにやるのだというように御理解をいただきたいと思います。
  104. 小谷守

    ○小谷守君 これは仄聞でありますが、たとえば日本航空が台湾航路の七便削減案を出した、ところが、外務省がその儀に及ばぬということで反対もある、こういうことが今日流布されております。そういう事実はございますか。
  105. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういうことは全然承知しておりません。
  106. 小谷守

    ○小谷守君 次に、貿易協定について伺いたいと思いますが、これまた共同声明の趣旨にのっとるところの互恵平等の原則を踏まえて御苦労を願わなければならぬことだと思うのであります。すでに西ドイツは一方的に最恵国待遇を実行したと聞いております。米国も連絡事務所の設置に合わせて同様措置をとるものと仄聞をしております。日本は、依然として中国産品に対するところの差別的な関税を撤廃しようとしない。先般、一部の品目について減免措置がとられましたけれども、これはむしろ日本の国内商品市況の対策、国内の物価対策としてとられたのであって、原則を踏まえたものではない、このように申し上げざるを得ませんが、こういう点についてのお考えはどうでございますか。
  107. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 貿易協定の問題につきましては、十一月から十二月にかけて派遣いたしました政府ミッション、とりわけ通産省から多くの方をお願いいたしたわけでございまして、商取引のやり方、それから経済行政のメカニズム、そういったことは十分先方にも御説明申し上げ、先方も非常に理解を深めたということで、このミッションの仕事を非常に多とされております。いま、そういう貿易協定締結の前提になる双方の事情を検討いたしておるというのがいまの段階でございます。したがって私は、冒頭にも申し上げましたように、十分の理解、こなれた理解の上に立って、ワーカブルというか、よく機能を発揮し得る協定をつくり上げにゃいかぬと思いまして、拙速はいけないということを事務当局にも指示いたしておるわけでございます。そういう方向で、着実に準備の勉強は進んでおると承知いたしております。  それからいま言われた関税の最恵国約款の問題でございますが、これは日中双方に何ら不信はないわけでございまして、お互いの関税制度から申しまして、双方とも最恵国約款を適用いたしていないわけでございます。これは相互主義に基づきましてやるたてまえになっておりますので、その点につきましては、双方ともよく理解し合っておるわけでございまして、貿易協定締結するときにちゃんとしようということで、双方内々合意いたしておるわけでございますから、私はその点心配はしていない。先方がそれに対して日本に不満を持っておるというようなことは少しもございませんから、その点は御理解をいただきたいと思います。
  108. 小谷守

    ○小谷守君 これまた先般新聞で承知をした点でありますが、ソ連に対する問題、シベリア開発の協力の問題、とりわけチュメニ油田の開発の問題これに触れて中国がかなりきびしい声明を出したと、日本側から言えばむしろ神経質過ぎる声明が出されたというふうに承知しておりますが、これについては十分な説明をされたのでありますか、先方は納得したのでございましょうか、こういう点はいかがでございましょう。
  109. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 結論から申しますと、そういうことは政府間で特にとりたてて話題にいたしていないわけでございます。シベリア資源開発問題、これ、若干の大きなプロジェクトがございますけれども、これは目下の段階、まだ民間の当事者とソ連の関係当局の間で御相談が行なわれておる段階でございまして、政府が取り上げて検討しておるという段階ではないわけでございますので、私どもまだこの問題につきまして、中国ばかりでなく、その他の国々に対しまして、政府が云々すべき段階では私はないと考えております。
  110. 小谷守

    ○小谷守君 これはまあそれにしても、やはり周到な説得がやるとすれば必要だと思います。そういう点については、周到な御配慮が望ましいと思います。  次の問題でありますが、大臣はフランスにおいでになるんですか。
  111. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 閣議をはじめ、各方面の御了解を得られれば、この連休を利用さしていただきまして、第十回の日仏外相定期協議というものをやらしていただきたいと考えております。
  112. 小谷守

    ○小谷守君 前回のこの委員会で北ベトナムに対する——ベトナム民主共和国に対する国交樹立についてかなり前向きの御見解を承ったわけでありますが、私は外務大臣がパリにおいでになる機会に、ぜひ北ベトナム側との接触をお持ちになることが望ましいのではないか。北ベトナムとの接触と言えば、はやりことばのように三宅課長をやってサウンドさせるのだというふうなことばかり繰り返して、まだそれもなかなか実現の運びになってないようですが、大臣がパリにおいでになるということであるならば、私はいい機会だと思うのであります。先方と十分な接触をはかられることが望ましいと思いますが、その御用意はございましょうか。
  113. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) フランスに参りますと、この定期協議では当然でございますが、拡大ECのあり方とか、それから欧州安全保障協力会議等を中心にいたしました欧州情勢、それから、いま御指摘のベトナム和平後のアジア情勢、それから、わが国の対欧輸出急増問題、そういった問題について日仏間で隔意のないひとつ懇談をいたしたいと思っておるわけでございまして、それが主たる任務でございます。  で、北越との接触問題でございますが、結論から申しますと、パリで、いまの段階で私はそれを考えていないわけでございます。と申しますのは、今月、遠からず三宅君を派遣し、先方も受け入れるという意思を御表明いただいておりますので、この段階におきましては、南越といろいろ関係を取り結んでまいりました日本の立場もございますので、一ぺん前提抜きで北越側と意見交換をしていただきたいと、そしてその報告を待ちまして、第二段といたしまして、日本として北越に対してどうするかということを考えさしてもらいたいと思っておるのでございまして、まず三宅君を派遣するというのがいま私どもの立場でございます。したがって、パリで接触するということは、いまのところ私は考えていないわけです。
  114. 小谷守

    ○小谷守君 これは大臣、あまりとらわれる必要はないのではございませんか。むしろ機会があれば進んで接触を持つと、そういう姿勢で柔軟におやりになったらどうですか。また、三宅課長が行くからということで——何も三宅課長が軽いというわけではありませんけれども、国交問題の接触ないしは復興援助の問題にいたしましても、そのクラスでいろいろな問題の進展は私はむずかしいのではないか。パリで大臣みずから北側の要人と接触をされる場があってもいいのではないか。いかがですか。
  115. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 三宅君の北越訪問がまず皮切りでございまして、それからあとどのように段取りをつけてまいりますか、われわれが考えなければいかぬ問題と心得ているわけでございまして、三宅君をもって足れりとするというつもりは毛頭ないわけでございます。一応まずそれをやらしていただきたいと考えておりまして、いまのところ、私は接触を持とうという考えはないわけでございますが、小谷さんの御意見というものは十分私ども拝聴してまいりたいと思います。
  116. 小谷守

    ○小谷守君 最後に朝鮮の問題について伺いたいわけでありますが、何回かこの委員会でも話題になったと思いますけれども、朝鮮民主主義人民共和国に対する外務大臣の姿勢は依然としてかたくななように思いますが、まず非常に政府が肩入れをして信頼をしていらっしゃる韓国の最近の政情については、どういう認識と評価をお持ちになっておりますか。
  117. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 昨年の十月以降、韓国政府がとられました新憲法の制定その他一連の措置でございますが、これには当然のこととして私の政治家としていろいろ意見はあるわけでございますけれども、いわばこれは基本的な韓国の国内措置でございますので、私の立場で公の席でコメントすることは遠慮をいたしたいと思います。ただ、韓国としては、北朝側と対話を進めておる状況にありまするし、米中の接近も実現し、日中の正常化もできたというような国際情勢を踏まえた上で、南北の対話を進めていくにあたりまして、国内体制を整備強化させる必要を感じたので、こうやったということは、当時、丁一権氏が東京に参りまして、前後の今度とった措置説明とあわせて、韓国側の考え方というものを説明して帰られた経緯がございます。そういう経緯があったということだけを御報告申し上げさしていただきたいと思います。
  118. 小谷守

    ○小谷守君 韓国の現状は、世界が見ておりますように、民主主義という、もう国柄ではないような状況が行なわれておるわけであります。ここでそういうことを議論しようとは思いませんが、そこでずばりお尋ねをするわけでありますけれども、北朝鮮の問題、朝鮮の南北問題はおそらくことしの国連総会でも大きな問題に相なると思います。日本政府の態度は依然として同じ姿勢で対処されるのか。北朝鮮の敵視政策といいますか、こういうものを継続される御所存であるのか。ことしはひとつ考え直そうと、こういうことでありますのか。最後にその点だけひとつ伺っておきます。
  119. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 結論から申しますと、それはまだきめていないのです。ことしの秋の国連総会の問題でございまして、私どもといたしましては、この問題につきまして、各方面の意向も十分聴取し、そしゃくしなければいかぬと考えておりますし、日本がその場合どうビヘーブすべきかということにつきましては、十分の検討がことしは要るのじゃないかと考えておりますので、目下鋭意検討中であるという意味にひとつ御了解いただきたいと思います。
  120. 小谷守

    ○小谷守君 かつて佐藤総理が、沖繩復帰がなければ日本の戦後は終わらぬということを言われましたが、私どもは、朝鮮との国交の正常化がなければ日本の戦後は終わらぬ、こういうように思います。昨年私は北朝鮮を訪問して金日成首相ともお会いしましたが、向こうのほうはたいへん柔軟な姿勢で日本との国交の正常化を希望している。日本だけがかたくなに日韓条約にとらわれ、韓国に義理立てをして、依然として白い目で朝鮮北半分を見詰めている。こういう不自然な状況、これは何としても私ども残念です。朝鮮問題については、さらにひとつ前向きで御検討願いたいし、秋に予定される国連総会でも十分ひとつお考えを願って、前向きに対処されるように希望したいと思います。
  121. 星野力

    ○星野力君 パリ協定締結されましてからも、本土あるいは沖繩から軍需品、兵器のたぐいが南ベトナムに送り出されておりますが、日本の安全、極東の平和と安全のために日本の施設・底域を提供するという安保条約から考えて、この事実をどういうように理解したらいいのか。
  122. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 従来政府は、ベトナムの問題は極東の平和と安全につきまして無関係の問題ではないというたてまえでまいったわけでございます。で、幸いに各当事国の努力で和平協定というものができ上がったわけでございますので、その上はこの和平協定というものが順守されて、そうしてかの地に平和が定着するようになることを日本政府としては願っておるわけでございます。したがって、かねがね政府が申し上げておりますとおり、これからの対ベトナムに関連する諸問題を取り扱う場合には、この和平協定というものを踏まえてわれわれはやらなければならぬと心得ておるということでございます。  したがって、いま星野さんの指摘された、弾薬を輸送する問題も、その和平協定に照らしまして、許されるものである限りにおきまして、われわれとしても特に異議を差しはさむべきものではないと思っております。
  123. 星野力

    ○星野力君 私、この安保条約のたてまえあるいはパリ協定を尊重するという日本政府の態度からしても、協定締結後にこういうふうに軍需品、兵器が送られておることはおかしいんじゃないかと、こうお聞きしておるんですが、もっと端的に、これが行なわれておる、今日の行なわれておる一体根拠といいますか、法的な、条約的な根拠、それをお聞きしておるわけです。
  124. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 法的、条約的根拠というのは、安保条約から申しますと、これは米軍の補給活動でございますので、安保条約上は別段差しつかえのないことなんでございます。問題があり得るとすれば、和平協定との関連において出てくると、私は理解しておるわけでございます。和平協定についての関連を米側に照会をいたしまして、米側といたしましては、まだ国際管理監視委員会が十分機能していない。二者合同委員会が最近ようやく三月二十九日にでき上がったということでございますが、これが十分機能いたしまして、和平協定七条二項に基づく一対一の入れかえというようなものがその監視下で行なわれれば問題はないわけでございます。いま十分機能していない段階だから、一体これはどうしたことかという疑問が日本国内においても起こるのは、私は無理ないと思うんです。で、そういう点を特にアメリカ側に問いただしたのでございますが、アメリカ側は何としても和平協定を守らなければならない。で、自分たちは国際管理監視委員会あるいは二者合同委員会というようなものが十分機能していなくても、これが機能する暁になって、十分これをクリアーするだけの用意をもって厳格に和平協定を尊重して処置いたしておりますということでございますので、私どもはアメリカ側の言明を信頼しておるというのがいまの姿勢でございます。
  125. 星野力

    ○星野力君 せっかく大臣の御発言ですけど、どうもこれはつじつまが合っておらないと思うんですね。南ベトナムから撤退していく米軍に、呉からダナンへ運ばれた弾薬だけにしましても、一万トンからのものですが、そんなものが必要なはずがありませんですよ、これは。  それからまた、後段の御説明、アメリカ側の言うことを信頼するんだと、こうおっしゃいますけれども、アメリカがそう言ったからそれを信頼するというだけのことでありまして、客観的にはどうしたって道理は合わないと思うんです。現にパリ協定ははっきり一対一の交換の場合以外には兵器弾薬を持ち込んではならないと、こう規定しておる。それに違反してやっておるわけでありまして、そのことはベトナム民主共和国も南の臨時革命政府も違反行為であるとして非難しておる。アメリカの違反行為であり、それに協力しておる日本はけしからぬという非難をやっておるような状態であります。まあこの問題はまた別の機会でさらにお聞きするかもしれませんが、今後はどうですか。アメリカ軍は全面的に撤退してしまいました。今後ああいうことが日本の本土あるいは沖繩の基地からやられるということはもうございませんか。
  126. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは私にわかりませんけれども、そういうことがありました場合、まあ和平協定との関連におきまして問題がなければ、安保条約上これを拒否する権能が日本にないわけでございますので、和平協定の関連におきまして問題がなければ私は差しつかえないものと考えております。
  127. 星野力

    ○星野力君 それは先ほども言われました一対一の兵器の交換、これは国際管理監視委員会でもそれを承認してやると、こういう場合に限ると思うのでありますが、それ以外のそういうことが、その種のことが行なわれては、これは一大事だと思いますので、政府としてもその点を十分配慮していただきたいと思うのです。  次に、米陸軍相模補給廠のその後の——その後と申しますのは、ことしに入ってからということでもよろしゅうございますが、作業状況、戦闘車両類などの搬出状況、これつかんでおられましたら、概略御答弁願いたいと思うのです。——ごく概略でいいですよ、私、通告してありませんでしたので。
  128. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御案内のように、修理済みの戦車二十二両は米国本土に搬出ということになりまして、すでに作業が始まっておると承知いたしております。それから幾つかの——四台でしたか五台でしたか、修理すべき車両の搬入が同時に行なわれたと承知いたしておるわけでございまして、戦車の修理機能というのは非常に縮小いたしました状況にあると承知しております。
  129. 星野力

    ○星野力君 戦闘車両類は新規には補給廠に持ち込まないという日米間の合意が成立しておったのではなかったでしょうか。
  130. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これはすでに御案内のように、閣議できめて、国会でも御報告申し上げまして、この原則としてということにいたしてあるわけでございまして、たとえば沖繩におりまする第三海兵隊でございますか、それが使用するものの修理でございますとか、そういうものがないとはいえないわけでございます。で、私は、まあ、それから今度の一対一の交換というような場合も考えまして、原則と、入れておかぬと世間にうそを言うことになりますからね、ちゃんとことわってあるわけでございまして、その点は、全然ないとは言い切れないと思いますけれども、戦車の修理機能というのはずいぶん縮小したと御承知願いたいと思います。
  131. 星野力

    ○星野力君 今度搬入されましたM48重戦車四台はどこから持ち込まれたものでしょうか。御存じの方ございませんか。
  132. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは沖繩の海兵隊戦車と承知しています。
  133. 星野力

    ○星野力君 大臣は、戦闘車両の補給修理部門が大きく縮小されたということを繰り返して言われておりますが、はたして正確でしょうか。その点はきょうでなくてもよろしゅうございますから、調べておいていただきたいと思うのです。私たちは、いろいろな雑部門は縮小されつつありますけれども、戦闘車両修理部門は逆に増員されておるというふうに聞いております。  そこで、一体あの相模補給廠というのはいつ閉鎖されるか、あるいは閉鎖されないまでも大幅に縮小されるのか、その辺の見通しおありでしたらお聞かせ願いたいと思うのです。
  134. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは正確に御報告しますけれども、昨年の十一月ですね、ベトナム和平成立後、これはまあ和平成立前に政府がきめたことでございますけれども、和平成立後においては、修理のための戦闘車両の新規の搬入は原則として停止され、また、ベトナム向けに搬出されることも原則としてなくなるということと、それから現存の戦闘車両の修理を終了した段階で同補給廠の修理機能は大幅に縮小するということが日米間で合意されたということを発表いたしたのでございまして、このラインで私ども処理いたしております。
  135. 星野力

    ○星野力君 そうされますと、現存の車両類の修理が終わった段階では、そこは閉鎖されるなり大幅に縮小されるなりということだと理解できるわけでありますが、先ほども申されますように、沖繩の海兵隊あるいは本土におる米軍のものだということで、次々に持ち込まれるということになると、なかなかこれは閉鎖ということにはならない理屈だろうと思いますが、現存のというのは、現に補給廠で手持ちの修理を要する車両類と、こういうことでございましょうか。
  136. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのように理解しています。
  137. 星野力

    ○星野力君 たとえば、日本の自衛隊に米軍から車両類が貸与されておる、これを取り戻して修理して送り出すというようなことはないでしょうか。——何でしたら、これまた別の機会にお聞きしますから、調べておいていただきたいと思うのです。  先ほど大臣は、M48重戦車を二十台ですか、二十数台ですか、送り出すようになったということを言われましたが、そのほかにもM113装甲兵員輸送車、あるいはジープ類、こういうものを送り出していることについては、外務省のほうには連絡ございませんか。
  138. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 右の、いま申しました二十二台のほか、今後搬出されるM48ですか、は、今後搬入される海兵隊戦車四台も含め計十一台と聞いております。また装甲車両については、なお数百台はあると承知しております。
  139. 星野力

    ○星野力君 ことしに入りましてからもM113装甲車両あるいはジープ、こういうものが相当大量にタイのサタヒップ、あるいはフィリピンのスビック湾を経由して、カンボジアの唯一の海港であるコンポンソムへ送られておるという情報に私接しております。事実と思いますが、事実としますと、これは安保協定違反であると私は思います。それだけでなしに、パリ協定の精神にも反するし、それに日本政府協力しておるということになるとこれは重大だと思うのでございますが、いかがでしょうか。
  140. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず、いまお触れになった事実関係を調べさせていただきます。それからでないと見解は申し上げられません。
  141. 星野力

    ○星野力君 ついでにお聞きしますが、米本国へそれらの車両類を持ち帰るというのはこれはいいとしまして、NATOにも行っておるという——前にございましたね、私は最近またやっぱりあるのじゃないかと思うのですが、そういう情報にも接しておりますが、これは安保違反、そうお考えになりませんか、仮定でもいいですよ、NATOに行っておる。
  142. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 昨年、この点が問題になりまして、参議院の内閣委員会等におきましても政府側からお答えしたつもりでございますけれども、この安保条約第六条に基づきます日本の施設・区域の使用につきましては二つの条件がございまして、米軍が使用する、それから使用の目的は  一般的に申しまして日本の安全及び極東の平和及び安全に寄与すると、この目的に合致するものであるというのが原則でございますけれども、NATOに、常時ではございませんで、たまたま在日米軍が集めております戦車等が、同じ米軍のNATOにいる米軍に対して転用されるということがありましても、そのこと自体が常時日本の施設・区域を使って行なわれるということではなくて、米軍の一つの軍需品あるいは兵器等の米軍内における転用の一つの形態であるという限りにおきまして、これはある程度認められるものではないかという見解を、たしか昨年政府側から申し上げました。私どもはその際に、このようなことが常時大量に行なわれるということであれば、もちろん施設・区域の使用の目的に反するわけでございますので、これは明らかに第六条の趣旨に反すると思いますけれども、そうでなくて、たまたま相模補給廠にある戦車がNATOにある米軍に一部転用されるということは、軍隊の特性といたしまして、そのような兵器がある基地からある基地へ移動するということは、その限度において許容されるのではないかということをたしかお答えしたつもりでございます。
  143. 星野力

    ○星野力君 このNATOの戦車修理という問題につきましては、大臣自身が昨年の九月でしたか、衆議院の建設委員会で日米安保の趣旨からはずれていないと強弁することはできないと、私写してきたんでございます。たいへん持って回った御答弁なさっていらっしゃる、のでもわかりますように、これは問題のある事柄でありますし、それがたまたまとおっしゃいますけれども、やはりずっと見ると継続的に行なわれておるという疑いもありますから、いずれにしても、相模補給廠の問題いろいろ問題を持っております。きょう、私、質問事項を詳細にお伝えしておらなかったので、お答えできないことが多いのでございますが、この問題は後日さらに御説明願いたいと思っております。  時間がはんぱになりましたから最後に一問だけ、一点お聞きしておきたいのでありますが、ベトナム戦争、インドシナ戦争では日本人の犠牲者も少なからず出ております。現に生死のわからない、行くえ不明者がジャーナリスト、カメラマンなどに少なくとも七人おるのであります。その人たちは、一九七〇年アメリカのカンボジア進攻作戦の際に行くえ不明になった人たちでありますが、その人たちの家族や関係者から政府に対して行くえ探求について依頼が出ているはずのことでありますが、それについて政府はどのような調査をなされたか、努力をなされたか、大臣、御承知なら報告していただきたいと思います。
  144. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アジア局長から……。
  145. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) 一九七〇年に、御指摘のように、カンボジアで八名の日本人ジャーナリストが行くえ不明になっておるわけでございますが、私たちといたしましては、これまであらゆる方法を通じてこの行くえ不明者の情報収集、捜査ということに可能な努力を続けてまいりました。これに関しましては、具体的には北ベトナム政府のほうにもパイプをつけて依頼いたしましたし、その他、国際機関のほう、それから今度の協定の捕虜交換のリストの中にどうなっておるかというようなことで、パリ協定段階におきましても、アメリカ政府その他関係筋に、日本人の行くえ不明者がどうなっておるのか、非常にわれわれとしては深刻な問題であるので頼んでおるわけでございますが、遺憾ながら現在までのところは、はっきりした返事がない。ただしかし、なお可能性が、生存しておるかもしらぬし、何らかのまた手がかりが得られるのではないかと思いまして、現在も鋭意努力中でございます。
  146. 星野力

    ○星野力君 これは日本国民の生死の問題でありますので、ひとつ真剣にやっていただかなければならないと思います。最近には一部、少なくとも一部の生存者があるのではないかというようなたよりも伝わってきておりますので、なおさらでございます。家族や関係者は自分たちだけの協力でその人たちの消息を求めて、今日までできるだけの努力をしてまいりました。ヨーロッパで南ベトナム臨時革命政府代表者と接触して依頼するなどということもやっておるそうでございますが、何といっても民間人の努力では限度があるのでございます。この問題では、カンボジア王国民族連合政府あるいはカンプチア民族統一戦線、それから南ベトナム臨時革命政府、こういうところとの協力が必要だと思いますし、北ベトナムだけでなしに、これらの政府あるいは統一戦線との接触も強めていく必要があるし、その点からも、とりあえず臨時革命政府との接触ということを急いでもらいたいと思うのでありますが、大臣いかがでございますか。
  147. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 臨時革命政府との接触問題につきましては、かねがね本院におきましても私から御答弁申し上げておるのでございますが、南越におきましては、サイゴン政府承認し外交関係を結んでおる手前、臨時革命政府政府間の関係を持つということは差し控えなければならぬと思っております。ただし、パリ協定におきまして、サイゴン政府も臨時革命政府もともどもこの協定の当事者でございまして、やがては両方が第三勢力を交えて和解評議会をつくって、南越の政治形態もつくらなければならぬという間柄にあるわけでございますので、日本がそういう外交関係を持っておりましても、サイゴン政府と革命政府との間の連絡というのは十分とり得ることが想定されるわけでございまして、また、そういう雰囲気ができてまいることが大事なことだと思うのでございまして、日本がそういう態度をとることによって特段に私は支障はないのではないかと、そのように考えております。
  148. 星野力

    ○星野力君 もう一問だけお願いしますが、大臣はいまのパリの両者会議の行くえを見守ってというところに持っていかれるんですね。そういうお答えですといろいろお聞きしたいことがあるんですが、残念ながらきょうはその時間もないそうでございますから、一点だけお聞きしますが、パリのあの会議の行くえを見なければできないということじゃないだろうと思うんです。私ちょっと国の名前をひとつ地理の練習のように言いますから聞いてください。フランス、イギリス、西ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、スイス、オーストリア、この二国は中立国ですね、さらに北欧諸国デンマーク、スエーデン、ノルウェー、フィンランド、アイスランド、これらの多くはパリ協定以後ベトナム民主共和国と外交関係を結び、あるいはその手続をいま進めておる国々でありますが、すべてこれは資本主義国であります。多くはNATO加盟国、しかもサイゴン政権を承認している国でもありますが、これらの国で南ベトナム臨時革命政府側の入国を拒否しておる国があるか、一切の接触を拒否している国があるかどうか、あったらひとつ指摘していただきたいと思います。
  149. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) いま先生指摘のような国々がどういうふうに取り扱っておるか、詳細に問い合わせておりますが、いままで得ました返事によりますと、申請のない国もだいぶあるようでございますが、慎重にケース・バイ・ケースで認定しておるというのがほとんどの国の態度でございます。
  150. 星野力

    ○星野力君 私の記憶では、全部の国に臨時革命政府の側から人が入っております。臨時革命政府に対する態度の改善、少なくともこの入国は認める程度の接触を保つということがベトナム民主共和国との外交関係を開く上での条件になっておるかどうか、それは私しりませんが、日本もベトナム民主共和国と外交関係を樹立しようというお考えなら、臨時革命政府に対してもその程度の理解ある態度というものは必要じゃないか、こう思うのでありますが、大臣にもう一度お考えを聞いて私の質問をやめます。
  151. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国によっては、受け入れておるところもあるという御指摘でございますが、どういう形で受け入れておるのか、どういう査証になっておるのか、私どもそのあたりよく究明しておりませんのでわかりかねるわけでございますが、私どものいまの態度は、ベトナム協定の当事者として臨時革命政府がその精神に沿っていろいろ処置されるということを希望いたしまするし、また、そういうラインで御相談がございますならば、それに対してこちらもそういうラインで検討しなければなるまいと考えておるわけでございまして、まだそこまでの確信がなかなか持てないものでございますので、この間、入国のお申し出がございました件につきましても、一応時期尚早ということで留保させていただいておるわけでございます。
  152. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本調査に関する質疑は本日はこの程度にし、これにて散会いたします。    午後零時二十九分散会      —————・—————