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国務大臣(
大平正芳君) 田さんの御主張になられることもわからぬわけではないのですが、ただこの事件の処理にあたりまして、これはどうしても両国にまたがった問題であるということは前々から御指摘申し上げてあったとおりでございまして、そして国際的な事件の
解決はどうしても両国の呼吸が合って協力が十分得られて
解決の実があがるわけでございますが、えてしてこの国際刑事事件というやつは
解決がなかなかむずかしいものであることもまたよく御
了解いただけると思うのでございまして、過去の数々の事件、事例に徴してもなかなか歯切れのいい
解決にはなっていないケースが多いのでありますが、私
どもさらばといって、いつまでもこれをこのままの状態でほうっておくというわけにもまいらぬと思うのでございまして、何か一体、これはどういう
解決であれば
国民が曲がりなりに御納得がいけるかという目安をひとつ見当つけなければいかぬと思います。そこで、国際的な事件として
考えた場合に、通常国際慣例上とられる措置というものが
考えられるわけでございますが、そういった点について
先方におかれてどこまで一体誠意をお示しいただけるのかという点についていろいろ検討を、努力を重ねてまいったわけでございますが、まず、金東雲氏の容疑を認めて捜査をする、そして法的に処理いたしますということがまず明らかにされたわけでございます。それから第二は、金大中氏につきましては自由が回復されたわけでございます。それから、
政府最高首脳からは深甚な遺憾の意が表明されて、将来にわたっての保障ともいうべき決意が述べられたわけでございまして、国際的なこの種の事件の処理につきまして一応とらるべき措置がとられたわけでございますので、本件につきまして刑事事件として今後なお捜査を続けるといたしましても、
外交的な処理はこのあたりで落着をつけてしかるべきじゃないかと判断したのでございます。それについてはいろいろな御批判があろうかと思うのでございますけれ
ども、主権侵害という問題になりますと、韓国がこれを認める以外にもう道はないわけでございます。その場合にとらるべき措置は、いまとられた措置の上に主権侵害であるということを認めますということだけが乗るわけでございまして、その他あらゆる措置は一切、普通の刑事事件といたしましては
相当きびしい措置がとられたわけでございますので、このあたりで
外交的決着をつけるという措置をとらせていただきましても大きく失投ではあるまいというように判断をいたしたのでございます。もちろんいろいろな御批判があろうと思いますけれ
ども、そう
考えたわけでございます。
それから閣僚
会議の問題でございますが、本来、この事件は八月八日に青天のへきれきのように起こった問題でございまして、刑事事件としてインデペンデントに
日本は
解決したいと
考えてきたんでございまして、対韓政策をこのために基本を変えるというような性質のものではないというように
政府の
態度は鮮明にしてまいったわけでございます。しかしながら、この問題が、あなたが御指摘のように、
日本の国内、韓国の国内に与えた衝撃というものは
相当な衝撃であったと思うのでございまして、私
どももそういう事実に目をおおっておるわけでは決してないわけでございまして、この処理にあたりましても、その点は終始頭に置きながら対処してまいったつもりでございます。閣僚
会議はいずれ開かなきゃいかぬと思いますが、こういう世論の
状況にあるということも十分踏まえた上で、私
どもは閣僚
会議だけでなくて、その他の対韓問題の処理につきましても、慎重に対処していきたいと
考えております。