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1973-11-08 第71回国会 参議院 外務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十一月八日(木曜日)    午後一時三分開会     —————————————    委員異動  十一月八日     辞任         補欠選任      木内 四郎君     初村滝一郎君     —————————————   出席者は左のとおり     委員長         平島 敏夫君     理 事                 山本 利壽君                 田  英夫君     委 員                 岩動 道行君                 杉原 荒太君                 初村滝一郎君                 加藤シヅエ君                 羽生 三七君                 森 元治郎君                 渋谷 邦彦君                 松下 正寿君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁警備局長  山本 鎮彦君        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省欧亜局長  大和田 渉君        外務省中近東ア        フリカ局長    田中 秀穂君        外務省経済局長  宮崎 弘道君        外務省条約局長  松永 信雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○国際情勢等に関する調査  (日ソ共同声明欠落問題に関する件)  (第四次中東戦争による石油産出規制問題等に  関する件)  (金大中事件に関する件)  (日韓閣僚会議開催に関する件)  (北ベトナムとの国交樹立に関する件)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、木内四郎君が委員を辞任され、その補欠として、初村瀧一郎君が委員選任されました。
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) この際、理事補欠選任を行ないたいと思います。  ただいまの委員異動に伴い、理事一名が欠員となりましたので、その補欠選任を行ないます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  4. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認めます。  それでは理事山本利壽君を指名いたします。
  5. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 山本利壽

    山本利壽君 先般田中総理及び大平外務大臣ヨーロッパ三国及びソ連を訪問せられまして、各般にわたっていろいろな御努力をされたわけでございますが、その成果については、非常な成功であったという賛辞も各方面からございましたし、また領土問題にしても、あるいはシベリア開発等の経済問題にしても、何ら中身はないではないかというような批評もございました。けれども、その後、約一カ月間を経まして、内外のいろいろ新聞、雑誌その他の報道を見ますと、大体今度の総理及び外務大臣の訪欧及び訪ソ成功であった。そういう意味は、一つ一つのこまかい問題については、また明年からそれぞれの関係者によって、今後、平和条約締結を目途としての交渉が行なわれることであるからそれに期待することにして、いまから十一年前の池田総理ヨーロッパを訪問されたときの各国のその応対ぶり及びその成果等と比較すると格段の相違があった。日本が経済的に成長したこともあって、今後の国際場裏における日本考え方あるいは動向というものに対しては各国とも非常に注目をし、しかも総理外相を迎えるその態度においても非常な相違があった。このことはもう日本がこの国際場裏に立ち上がって、最近までは単にアメリカに追従して動いておると思われておったのに、いよいよ独自の歩みを始めたということを世界に印象づけた。こういう意味で、その成果を認める声が非常に多いわけでございます。  ところが、先般ソ連においてこの日ソの共同声明が発せられた。ところが、その声明文ロシア語テキスト日本文との間に相違があったということについて、これは各新聞も報じておりますし、外交的に申しますと、これは重大なる問題である。このことは与党、野党の問題ではなくして、今後日本が国際的に重きをなさんとする場合において、こういう手落ちがもしあったとすれば、これは大いに反省を求めなければならぬ問題であると考えますので、それでせっかくのこの総理外務大臣訪ソ成果を公にうたうべき重要な外交文書でなぜこういうことが起こったのか、またこれに対してわがほうの政府はどういう処置をとったのか、この場でひとつ外務大臣から詳細に御説明をいただきたいと思います。
  7. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日ソ共同声明露文テキストにおきまして、御指摘のように欠落個所が生ずるという不手ぎわが起こりましたことをたいへん遺憾に存じております。また、その他にも修辞上、公文相違がございまするし、双方の体制の違い等による相違点もございます。ただ、その実態につきましては、日ソ双方すべて異存がないところでございます。で、なぜそういうことになったかということでございますが、田中ブレジネフ会談最終会談が終わりましたのは総理一行が出発する日の午後一時でございました。共同声明を出すかどうかということが最終的にきまりましたのも、この最終会談においてでございました。したがって、その時点から日ソ双方起草委員共同声明の詰めを開始いたしまして、午後五時の調印までのわずかな時間内で作成を了したわけでございます。もちろん共同声明署名前に、露文テキストについて読み合わせを行なっております。その際相違点が発見されましたが、右につきまして、ソ連側起草委員責任者でございまするフィリュービン外務次官に当方から修正を求めました結果、ソ側修正することをお約束されました。ところが、翌十月十一日になりまして、プラウダ紙に発表されました共同声明文修正をしないままの形になっていましたので、直ちに新関大使を通じましてソ連外務省に申し入れましたところ、ソ連側は、取り急いだ事務上のミスであるから、日本語テキストが正しいことに同意する旨述べられたわけでございます。で、これを受けまして、さらにソ連側と折衝いたしました結果、安全操業部分欠落については、問題の重みにかんがみまして、別途新関大使フィリュービン外務次官との間の文書による内容の確認という方法でロシア語テキスト欠落を補ったわけでございます。その他の点につきましては、実質的に合意を見ている以上、あらためて補正する必要はないではないかというのが先方の返答でございました。で、もとより共同声明作成日ソ双方共同作業でございまして、わがほうといたしましては、相手方の立場もございまするし、共同声明性格、さらには今後の日ソ関係をも考慮いたしまして、文章上の形式的相違が残ることはたいへん残念でございますけれども、これ以上、それをあくまでも是正を求めるということを差し控えてまいりたいと判断しておる次第でございます。
  8. 山本利壽

    山本利壽君 非常に共同声明文をつくる際に、時間的制約があったという事情は国民は認めますけれども、時間がなかったから粗漏なものでよいという理屈には私はならないと思うわけですが、その際に、これは両国の、日本側でいえば田中総理及び大平外務大臣と、先方のほうでも、署名された方はその両方の国文で脱落個所があるということはもう了解しての調印でございますか。全然そういうことはなかった、知らなかったということでありましようか。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 田中総理と私は全然存じなかったわけでございます。先方コスイギングロムイコ両氏はよく存じませんけれども、おそらく、案ずるに、全然知らなかったと思います。何となれば、首脳会談起草委員を任命いたしまして、その起草委員に全権をまかしたわけでございまして、それでこれに署名いただきたいと持ってまいりましたのに署名したわけでございますから、われわれといたしましては、起草委員を全幅的に信頼しておったということでございます。
  10. 山本利壽

    山本利壽君 大臣としてはそうであろうと私ども想像するのでございますが、今日までまあ日本外交的にいろいろな国とこういう種類の声明文あるいは条約文というようなものをそれぞれ係官でつくったりしておるわけですが、いままでにこういう前例がございますでしょうか。
  11. 松永信雄

    説明員松永信雄君) 条約文の場合でございますと、私どもまあ非常に厳密な締結作成手続をとります。したがいまして、かりにも欠落があるとか誤りがあるということはないように、もう再三再四にわたりまして点検を行なった上で署名をしていただくという手続をとっております。  共同声明の場合には、条約文の場合と異なりまして、その法律的性格と申しますか、いわゆる国際約束としての法律的な文書ではないということから、そういう厳密な手続がとられておりません。しかし、だからといってこういう欠落が生じていいということではございませんで、できるだけ注意をしてまいるというのが当然でございます。  で、過去におきましてこういう先例が間々あるかという御質問でございますけれども、これは、まあ実は過去の例を全部調べたわけではございませんからはっきりと申し上げるわけにはいきませんけれども共同声明の場合には、ときたまにはそういうこともあるかとは存じます。しかし、そういう事例がそう始終起こり得るものであるというふうには考えておりません。
  12. 山本利壽

    山本利壽君 これはたまたまこの声明文内容に基づいてだと思いますけれども、先般櫻内農林大臣が漁業問題の交渉に行かれた際に、まだ向こうのほうのテキストは訂正されていなかったのではないかと、すでに訂正されておったけれどもイシコフ漁業相あたりが知らなかったのかもわかりませんけれども、まことにそこらで妙な手違いがあったということから、こういう文書作成について粗漏があってはならないということを強く国民が思っており、いろいろこういう際に外交的失態が起こるのではないかということを案じておりますから私はここでお伺いするわけでございますけれども事務的にわれわれが考える場合には、その調印するときにはこれこれのものが脱落個所があったということを相互の係官でこれは発見したと、そうしたら調印後においてはそれをすぐに訂正するという了解もあったわけでございますから、直ちに訂正してソ連側においては関係の各大臣またはそれぞれおもな人にはそれが渡っておるはずであり、またプラウダイズベスチャ等では共同声明文もすでに発表されておったのでしょうから、その文にはこの点が抜けていたということをあらためてソ連側は公表すべきであると思うのですが、そこら関係、大体どういうことになったわけでございましょうか。
  13. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日ソ双方で意見の違いがあるものを共同声明に載せたということであれば、事は重大だと思います。また、いま山本委員の仰せになるとおり、共同声明によって、その後の外交交渉支障を生じるということになっても事柄は非常に重要だと思うのでございます。本回のケースは、そのいずれでもないわけでございまして、櫻内さんが行かれて、訪ソ冒頭からイシコフ漁業相との間で安全操業交渉を開始しておるわけでございます。一面、伝えられておりますように、日ソ共同声明と並んで安全操業交渉が暗礁に乗り上げておるというような事実は全然ながかったわけでございまして、その点は一部に誤解があろうかと私は存じております。
  14. 山本利壽

    山本利壽君 その点を新聞紙上その他によって一般の国民誤解を受けておるわけでございますから、こういう場所で大臣から、それは誤解であって、その点においてはこの共同声明の字句の脱落というようなことは影響なかったということをこの場で明からにしていただいたことは、私は非常に外交的にけっこうなことだと思うわけでございます。  そこで、それぞれの国のことばというものはなかなか正確にこれは翻訳するということは、これ非常にむずかしいものであると思うんです。いろいろな微妙なことばに差異がありますから、これは係官において、いつの場合においても十分な注意が必要だと思うのでございますけれども、今度の場合においても、新聞紙上その他で承知しますところでは、その脱落個所安全操業に対する脱落個所だけでなしに、まだその他にもいろいろ疑問な点があるということを言われておりますが、そういう点はもう絶対にないものでございましょうか。あるとすれば、双方で十分なこれは打ち合わせが必要で、もし語句においても、そのことばの使用上についてもアンダスタンディングが、いまさら共同声明を書き直すわけにはいかないことはよくわかっておりますが、そこらの点が、これは外交的処置としては、そのこまかいところまでの了解事項というものが通ってなければ、将来また交渉の際にいろいろな蹉跌が起こるのではないか、かように思うわけでございますが、いま私の申しましたようなそんな個所はもう絶対なかったものか。どうもそれはこまかく言えばあると、あったからすでにそれは処置済みであるのか、今後その点についてはあらためて話し合いをしようとしておられるのか、そこらのところも承っておきたいと思います。
  15. 大和田渉

    説明員大和田渉君) 脱落個所は、先ほど大臣がお触れになりました安全操業の継続という問題以外にもございます。数ヵ所ございますが、そのいずれにつきましても、先方タイプミスというふうに考えていい内容でございますし、先方はそれを認めております。かつ、先方といたしましては、日本語の表現でいいんだということも認めております。したがいまして、今後安全操業の問題は、内容が重いので、これは交換公文を行ないまして補いましたわけでございますが、それ以外の問題につきましては、実態上の問題について双方が合意しておりますので、将来、事実上の支障は生じないというふうにわれわれ判断しております。
  16. 山本利壽

    山本利壽君 それだけの手順をすでにとっておられるという場合には、私たちもそれで了解をいたします。  また、ここで申し添えたいと思いますけれども、これは外交上の手続として今回のことは非常に重大である、だから責任問題を今後追及すべきだということばもこれは事実ございますけれども、これは両方の国のやったことであって、いままで私どもが聞いておりますところでは、どちらのミスかといえば、日本側のほうにはわりに責任が薄いのではないかというふうに現段階では私は考えるわけですが、ソ連側のほうの係官がいかなる処罰を受けたかというようなことで私はここでお尋ねしようとは思いません。ことに、他国のことでございますから、まだその点が明らかになっていないというようなことも聞いておりますから、ここで外務大臣のこの処罰の問題についてのいろんなことはお聞きしないと思いますけれども先方のほうにおもな責任があると考えられる場合に、先方が処分しないものをこちらだけがひとり処分するというようなこともこれは変なことでございますし、そこら大臣は十分にお考えになっていろいろ処置されたことと私は解釈しておりますけれども、この点については外務大臣はどのようにお考えになっておるでしょうか。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 不手ぎわがございましたことは隠しようもない事実でございます。ただ、これが実質的に国益をそこなうというものでなかったとはいえ、ミスをおかしたということは許されないことと思うのでございます。  そこで、もし違ったことを書いたとか、あるいは交渉上の支障になるものをそのまま入れたとかいうようなことでございますならば、責任を問わなければならぬわけでございますが、起草委員になりました諸君は、連日不眠不休で努力されておった方々でございまするし、当時の状況考えて同情すべき点は十分あると思います。ただしかし、冒頭に申しましたように、不手ぎわであることはもう間違いのないことでございますので、私といたしましても、不断に周到な注意力をもって公務にあたらなければいかぬことは当然でございまするので、関係諸君に対しまして厳重に注意をするということにいたしたわけでございます。
  18. 山本利壽

    山本利壽君 この問題については、外務大臣におかれましても遺憾の意を表明されましたし、各係官においても今後十分慎重に処理されることと思いますので、この問題については私本日はこの程度でおきまして、私のちょうだいしております時間がございますので、ここで第四次中東戦争に関する事項を一、二お伺いしたいと思うのでございます。  先般行なわれた停戦後の現在の状況はどういうぐあいになっておるかということをひとつ係の方から御説明をいただきたいと思います。
  19. 田中秀穂

    説明員田中秀穂君) 第四次の中東戦争は先月の六日に起こりまして、二十二日、国連安保理事会に、米ソ共同提案にかかります停戦決議が提案されました。それが採択をされて、一応停戦という状態になっております。この戦争の結果、シリア戦線におきましては、イスラエル軍が多少進出をいたしまして、その状況停戦。ただ、スエズ方面の戦闘におきましては、運河をはさみまして双方の軍隊が錯綜した状況になりまして、そのままの停戦ということでございまして、二十二日に停戦実施されましたが、その後、やはり小ぜり合いが続いておるようにわれわれ了解いたしております。その結果、エジプト側では、イスラエル軍停戦実施後に進出した地点からもとの二十二日現在の地点に戻れという主張をいたしております。これに対しましてイスラエル側は、それより先にエジプト側による捕虜の交換実施、これをまずやってくれというようなことを要求し合いまして、こうした双方の要求を受けまして、いろいろな和平のためのあっせんがただいま動いておるというふうに了解いたしております。一応停戦実施をされておるが、なお若干の小ぜり合いが続いておるというのが現状かと存じます。
  20. 山本利壽

    山本利壽君 それで、今回の戦争の場合の一つの特異な事柄は、アラブ諸国石油輸出を禁止したり、あるいは生産制限をしたり、急に石油の値上げをしたり、そういったようなことが今度の戦争にはからまっておる。現に、はっきりと石油輸出を禁止されておる国といいますか、アメリカオランダ等新聞に出ておったように思いますが、その他にもあるでしょうか。そして、今度のこの石油処置日本には一体どういうような影響を急に与えるものか、そこら関係をちょっと御説明をいただきたいと思います。
  21. 宮崎弘道

    説明員宮崎弘道君) 今度の中東紛争中に、産油諸国は、一方におきましては、原油公示価格の七〇%という大幅な引き上げを行ないますとともに、イスラエル紛争を有利に展開するために石油生産削減を段階的に強化しておるわけでございます。このアラブ石油輸出国は、十月十七日、石油生産削減に踏み切ることを決定いたしまして、九月の生産量基準としまして、一律生産削減を行なうと同時に、アメリカオランダ等への禁輸措置をあわせて行ないまして、相当生産及び輸出削減が現に実施されております。さらに、アラブ関係国の間におきまして、輸出先の国につきましていろいろとカテゴリーを設ける動きがございます。あるいは友好国、あるいは中立国敵対国等に分類するというような動きがございますが、十月十七日の、そのアラブ石油輸出国石油大臣会議では、友好国というのはアラブに対し友好かつ実質的な援助を行なってきた国とされておるようでございます。実際上の消費国を分類する際の統一基準のごときものがあるかどうかは、いまだ明らかにされておりません。その決定はまた各国が、各産油国が個別に行なうこととなっております上、かつまた、そのリストも公表をされておりませんので、必ずしも正確な状況は明らかでございません。いずれにいたしましても、わが国に対しましてはこのようなアラブ産油国生産及び輸出削減の結果、現実に石油が入ってまいります量の相当削減が予想されまして、それはまた日本経済にも相当影響を与えるんではないかと危惧いたしております。
  22. 山本利壽

    山本利壽君 ではちょっと外務大臣にお尋ねをいたしますけれども、十一月六日、七日ごろの新聞紙上ではEC諸国、またそれとは別に日本政府も「アラブ寄り決定」したといったような、これは新聞見出しでございますから、政府責任を追及するわけではありませんけれども、「アラブ寄り決定」したという大きい見出しでこれは出ておるわけでございますけれども、感情的にいままでイスラエル寄りの人が日本人の中にはあったかもわかりませんけれども外交的には大体私は中立を守ってきたのではないかと思うのですが、アラブ寄り決定という記事が出るのは大体どういう内容のものであるか、全然これは、今回の処置に対して政府の見解を表明したわけであって特にアラブに寄ったわけではないということか、それともいまの石油関係等もあるから、これはアラブに寄らざるを得ないという現状にあるのか、この六日の閣議でございますか、そこらで話し合われましたこと、政府決定されましたことについて、外務大臣からの御説明を承りたいと思います。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国といたしましては、中東紛争が起こりました当初から国連決議されました二四二号という決議をベースにいたしまして中近東事態に対処してきたわけでございます。で、その態度はいまも変わっていないわけでございます。この二四二号という決議解釈をめぐりまして、わが国はこのように解釈するという積極的な解釈を示したことは従来なかったわけでございます。この前に私のところへアラブ側の十大使がそろっておいでいただきまして、日本側がもっと明確な態度を打ち出してもらいたいという趣旨の要望がございまして、これに対しまして私ども口上書を手渡しまして、日本政府としてはこの二四二号を軸に万事考えておるのである。なお日本としては、武力によって得た領土を永久に確保するということには絶対反対だと、領土を回復したいというあなた方の願望はよく理解しておると、それから国連あるいは国際赤十字等アラブ——この中近東紛争に関連して調停活動あるいは救援活動、そういうことをやることに対しての全幅的な援助はすると、そういう姿勢だということを説明をいたしたし、また現に、先般エジプト軍傷病兵救援対策として国際赤十字から要請がございましたのにも三百万スイスフランの拠出を実行いたしたわけでございまして、私どもとしては従来の態度を堅持しながら、事態の早急な解決を祈念しながら、そういった支援活動は鋭意やってきておるというのが現在の状況でございまして、この態度を堅持してまいらなければならぬと考えております。
  24. 山本利壽

    山本利壽君 二階堂官房長官外務大臣といろいろ話し合われた結果として記者会見をされた。そのことばの中に、「政府はパレスチナ問題の公正な解決を望んでおり、」——ここまではいいんですが、「パレスチナ人領土、存在など正当な権利回復を認める国連決議を支持することにも言及している。」と、こういう記事が出ておるんですが、パレスチナ人がいま主張しているのは、いまのイスラエルの国の全土も私は含んでおると思うんです。ところが、このほかの参考資料から言うと、パレスチナ人にも領土を与えてやるがよかろうという意味は、いまのイスラエル領土以外は、おそらくそれに接続したとこだと思うんですが、そういうところでパレスチナ人領土というものを新たにつくってやってはどうかという意味かと思うのですが、このパレスチナ人領土云々といったようなことが、この国際関係ですでに外相の手元に話し合いがあっておるのか、全然そういうことはなかったのか。聞くのは、この二階堂官房長官外務大臣といろいろ話し合った結果の記者会見での発言でありますから、これは一般国民も非常に興味のある問題だと思うのでお聞きしたいと思うんです。
  25. 田中秀穂

    説明員田中秀穂君) 六日にございました二階堂官房長官の談、この中にパレスチナの問題が触れられてございます。これはパレスチナ人領土と自決の権利を認めるという国連決議がございまして、わが国は七一年の国連総会以来この決議を継続して支持してきております。そういうわが国のパレスチナ問題に対する態度を官房長官も御表明に相なったんだというふうにわれわれは了解いたしております。
  26. 山本利壽

    山本利壽君 それでは私の与えられた時間がまいりましたので、またの機会に承ることにして、本日はこれで終わります。
  27. 田英夫

    ○田英夫君 私は、金大中事件問題に関連して質問いたします。  金大中事件は、去る十月二十六日に金大中氏がいわゆる自由になったという事態と、さらに十一月一日にいわゆる外交的な措置がとられて、金鍾泌首相が来日をし陳謝をするという報道があって、一般的には解決したと、こういうふうに言われているわけでありますけれども、私は、全く金大中事件解決をしていないと、こういうふうに考えるわけで、その立場からお聞きをいたしますが、今回のいわゆる解決をしたということが言われているのは、一つは金大中氏が自由になったじゃないか、もう一つは、いわゆる常識的に外交的に見た措置がとられたと、こういうふうに政府考えておられるようであります。  そこで最初にお聞きいたしますが、大平外務大臣は、きょう午前の衆議院の外務委員会で、このいわゆる解決を見た直後も金大中氏の再来日を求める措置を要請したと、こういうふうに受け取れる答弁をされたようでありますけれども、この点を確認をしておきたいと思います。いわゆる決着後も、あらためて金大中氏再来日を求める措置をとられたのかどうか、この点をお聞きいたします。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりです。
  29. 田英夫

    ○田英夫君 そうなりますと、外交的なルートを通して正式に金大中氏の再来日を求められた、それに対して韓国側から何の反応もないというふうに考えざるを得ないわけですが、現状はどういうことになりますか。回答待ちなのか、それとも韓国側がこれに対して応じないのか、この点はいかがですか。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 金大中氏につきましては、出国も含めて自由が保障されたというように承知いたしておるわけでございます。したがって、そういう韓国政府の意思が表明されたわけでございますから、それがどのように実行されてまいるか、それをいましばらくウォッチしたいと考えています。
  31. 田英夫

    ○田英夫君 実際に韓国政府が言っているように、ほんとうに自由になったならば、しかも日本政府から公式に再来日の要請があったならば、即座に再来日させましょう、こういう回答があってしかるべきだと思います。しかるに、すでにいわゆる決着があってからかなり日がたつ、再来日を要請されてから日がたつはずであるにもかかわらず何の回答もない。再来日を要請されたのは一体いつなのか、まずこのことを伺いたいと思います。
  32. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 金大中氏の出国を含めての自由の回復された直後でございます。
  33. 田英夫

    ○田英夫君 日付はわかりませんか。
  34. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 正確を期するために、いま即座に御返答できません。
  35. 田英夫

    ○田英夫君 できればどういう要請文であるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  36. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 私の記憶では、金大中氏は出国を含めて自由を回復したということでございますので、金大中氏自身の意思によって、出国する際には、日本側の捜査に協力するために立ち寄るようにしていただきたい、そういう要請でございます。
  37. 田英夫

    ○田英夫君 実は一昨日、ソウルの金大中氏に電話をかけまして直接話し合ったときに、金大中氏は日本に来ますかと私が聞きましたら、政府の許可があればぜひ立ち寄ってお礼を言いたいと思っています、という答えがありましたが、非常に慎重な応答ぶりが電話を通じて読み取れたのでありますが、そういうことからも、私は、現在の金大中氏がほんとうに自由であるかどうかということに対して、精神的にも肉体的にも自由であるかということに対して非常に疑いを持つわけでありますが、大平外務大臣は、午前の衆議院外務委員会で韓国政府は自由になったと言っているという答弁をしておられますが、私は非常に疑問を持っておりますが、捜査当局に伺いたいのですが、現在金大中氏は一応自由になったといわれているわけですから、そういう状況のもとで、捜査は依然として続いているはずですから、金大中氏から事情を聞くことは非常に重要なポイントになると思うので、自由になった金大中氏から事情聴取をする意思があるのかどうか、その点をまず伺いたいと思います。
  38. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 被害者である金大中氏から具体的に状況を聞きたいということは、前からのわれわれの希望であり、そのとおりでございます。
  39. 田英夫

    ○田英夫君 そうなりますと、外交ルートを通して再来日を要請しているわけでありますけれども、捜査はできる限り早く真相をきわめねばならない。すでに、ちょうどきょうで事件発生以来三ヵ月もたっているわけですから、当然一つの方法としてソウルに捜査官を派遣して、いまや自由になった金大中氏に会って事情を聞くということも可能なはずでありますけれども、そういう意思があるかどうか、その点はいかがでしょうか。
  40. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 先ほど外務省の局長からお話がありましたように、いまのところはぜひこちらへ来て、こちらで聞きたいということでやっておりますので、その結果を見てというふうに思っております。
  41. 田英夫

    ○田英夫君 これは勘ぐりかもしれませんけれども、まあ勘ぐりではなくて、ほんとうのところ、実は政府当局も、外務省も、捜査当局も、現在の金大中氏の状況のもとで、こちらから捜査官が行って事情を聞いても、真相を話せる状態にはないということを実は御存じだから、こちらから行くのではなくて、向こうから来日を求めてそこで話を聞きたい、こういうふうに考えておられると私は理解をします。そういう状況にあるというふうに、実は政府当局さえ考えておられるからこそ、こちらから捜査当局が向こうに行かれるということをしないで、再来日を求めているのだ。韓国の実情は、実は政府の御存じのとおりだ。いまや日本国民も、朴政権下の韓国の実情というものを、次第に実態を知りつつあるわけでありますが、そういう状況のもとでの現在の、今回の決着、こういうふうに言われているので、これは決着の二つの条件、つまり金大中氏が自由になったということと、外交的な措置がとられたということ。  そのうちのまず第一の金大中氏が自由であるという問題については、これはほんとうに自由になったとは言えないと、こう考えざるを得ないし、実は政府当局もそうお考えになっているということがその辺ににじみ出ている気がしてならないのでありますけれども。  そこで、捜査の問題に若干触れますけれども、韓国の金——首相は韓国議会の答弁で、日本の捜査は終わったというふうに言っているわけでありますけれども、これは事実でありますか。
  42. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 私のほうは、捜査のほうはこれまでどおりの方針で、これまでどおりの体制で現在継続中でございます。
  43. 田英夫

    ○田英夫君 大平外務大臣に伺いますが、そうなると、一国の総理大臣が一国の議会でうそを言ったことになりますが、大平外務大臣はそれをお認めになりますか。
  44. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) どのようにおっしゃったか、正確には存じませんけれども、日韓の間の了解では、日韓双方とも捜査は継続するとなっております。  金東雲氏につきましては、先方も容疑を認めて解職して、今後捜査して法によって処理するということになって、その結果はこちらに通報すると。金東雲氏に対する調査はおまかせ願いたいということに、韓国側におまかせ願いたいと、そういうことになっておるわけでございます。
  45. 田英夫

    ○田英夫君 これは私も報道を通じて知っているだけでありますけれども、金鍾泌首相の韓国議会における答弁というのは実は重大だと思います。つまり、今回のいわゆる決着がついたといわれている第二の柱は、外交的な措置がとられたということ。その内容は、まず第一に、金首相自身が来日をして陳謝をしたということ。そして、いま大平外務大臣が言われたような問題を含めて、具体的にかなり詳細に話し合いをしておられるようでありますけれども、そうした中で日本の捜査が終わったというようなことを公式の場で、しかもきわめて重要な場で一国の総理大臣が言われて、日本側としてはそのままでは済まされないことだと思いますが、この点はお確かめになる意思があるのかどうか。あるいは韓国側にそうした意味調査を要求される、真相を聞かれる、そういう意思があるかどうか伺います。
  46. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日韓の間の合意は、日韓双方とも捜査を継続するとなっておるわけでございまするし、日本の捜査当局も捜査を継続中でございますということでございますので、その点、日本政府を御信頼いただきたいと思います。
  47. 田英夫

    ○田英夫君 いまの外務大臣のお答えの中に、金東雲の捜査は韓国側にまかせるということを日韓両政府の間で了解したと、こういうお答えがありましたが、これも非常に重大だと思います。これは捜査当局としてそういうことを認めたのかどうか。金東雲は指紋が——これはもう国際的に捜査の常識として動かしがたい証拠である指紋です。しかも、この委員会で私がお聞きしたら、中島前参事官は、これはしろうとでも確認できるほどの確度の高い指紋であるというふうに言われた。こういう確固たる証拠を持っている日本の捜査当局が、この金東雲の捜査を韓国側に唯々諾々としてゆだねてしまったのかどうか。この点は警察庁、山本さんどうですか。
  48. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 私どもは、金東雲一等書記官の容疑については、相変わらず現在も捜査はいたしております。
  49. 田英夫

    ○田英夫君 その辺は外務大臣のおことばとだいぶ違うんですが、大平さんはいかがですか。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 金東雲氏につきまして、先方は容疑を認めて解職して、これから捜査して法的手続によって処理するというのが一つと、それからその捜査はわがほうにおまかせいただきたいということでございまして、したがって、韓国がお調べになるということは当然な話でございます。
  51. 田英夫

    ○田英夫君 それはちっとも当然ではないのであって、犯行自体は実は日本で行なわれたのであります。日本の捜査当局が捜査をするのが当然であり、その結果逮捕も日本ができるはずであります。この辺は非常に重要な問題だと思いますが、外務大臣はその点はどうお考えですか。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その捜査の結果につきましては、日本側に納得がいくような通報をいたしますと。で、そうしてくださいということになっております。
  53. 田英夫

    ○田英夫君 韓国側は国会の答弁でも、あるいは日本側に対する回答でも、韓国の議会の答弁でも、日本に対する回答でも、当初金東雲は白であると、事件に関係がないと言い張った。それが今回、犯人の一人であるというふうに認めたわけでありますが、この辺の白が黒に変わった事情について、今回のいわゆる決着の話し合いの中で韓国側からどのように説明があったか、ここで明らかにしていただきたいと思います。
  54. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その経過について詳しい報告はございませんが、韓国側が黒と認めたわけではないのでありまして、容疑を持っておると。したがって、これから捜査の上、法的手続で処理いたしますという言明でございます。
  55. 田英夫

    ○田英夫君 山本局長に伺いたいんですが、いま金東雲の捜査は引き続きやると、こういうお答えがありましたけれども、当然のこととして捜査当局は金東雲から直接事情を聞くと、こういうことを望まれているに違いないと思いますが、金大中氏の再来日の問題については、手続をとられたそうでありますが、要請をされたそうでありますけれども、金東雲の問題については、捜査当局としては今後どういうふうに取り扱われるおつもりか伺います。
  56. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 金東雲については、九月五日に任意出頭ということで、向こうのほうに要請しているわけですが、その後のいわば回答のような形で、容疑があってこれを取り調べて、その結果を通報すると、こういうまあ外交当局のお話がありました状況にかんがみて、誠意ある向こうの捜査の結果がくるまで、あらためて任意出頭をいまのところは直ちに求めないと、こういう態度でございます。
  57. 田英夫

    ○田英夫君 これは捜査のきめ手になる二人の人物について、きわめてあいまいな状況が続いていることは非常に遺憾でありますが、これは外務省に伺いたいんですが、金東雲は、今回まあ容疑があるということで解任をしたというか、辞職をした、免職にしたと、こういうふうに伝えられておりますが、これは在日大使館一等書記官という肩書きをはずされたのか、外交官でなくなったのか。そのいわゆる免職、解任といわれているものの内容は実際はどういうことですか。
  58. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 私ども承知しておりますのは、先月の二十三日付をもって在日韓国大使館一等書記官の身分を離れて韓国に、韓国政府に、離任したという通報を受けております。それが第一点。  それからその後捜査を、金東雲につきまして捜査をする必要上、その前提としまして退職したということを言っております。したがって、後者のほうの解職は、在京韓国大使館の身分変更という問題とは別個のものをいうふうに了解いたしております。
  59. 田英夫

    ○田英夫君 そうなりますと、外交特権を持った人物ではなくなったと理解をしてよろしいですか。
  60. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 先月二十三日の時点以降、外交特権は日本に関する限りないと思います。
  61. 田英夫

    ○田英夫君 そうなりますと、あらためて任意出頭を要求した場合に、外交権をかさにこれを拒否することはできない状況になったと考えてよろしいですか。
  62. 松永信雄

    説明員松永信雄君) そのとおり解釈いたしております。
  63. 田英夫

    ○田英夫君 日本と韓国との間には犯人引き渡しの条約がありますか、ないと理解してますか。
  64. 松永信雄

    説明員松永信雄君) 韓国との間には、そういう協定、取りきめは結ばれておりません。
  65. 田英夫

    ○田英夫君 そういう状況で、いまお聞きのような状況の中で、捜査当局としてはどうしてもこの金東雲から事情を聞く必要があると私も思いますが、先ほどは韓国側の捜査にまかせるというようなお答えがあったけれども、それではたして金大中事件解決ができるとお思いなのかどうか。実際にいま任意出頭を要求して、外交特権で拒否されない形の中で取り調べができるはずであります。そういうことを外務当局に要求され、外交ルートを通じて韓国に要求される意思はおありになるかどうか。
  66. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 先ほど御答弁申し上げましたように、向こうで誠意ある回答をよこすということでございますので、その回答の結果を見て態度をきめたいということでございます。
  67. 田英夫

    ○田英夫君 午前中の参議院の法務委員会で田中法務大臣が、今回の外交的な措置で一つの結果が出たということは評価する。しかし、その外交的な措置と捜査権の問題とを考えたときに、自分としては心配があるという意味の答弁をされているわけでありますけれども、私も全く同感なのであります。いまの外務当局、捜査当局のお答えを聞いておりまして、どうやら外交の前に捜査が埋没をしてしまっているという感じはぬぐうべくもない。日本の優秀な捜査当局が大きな努力を払って指紋をとり、さらに使用した車も劉横浜副領事の車であるということまで突きとめられたようでありますけれども、そういうものが全部外交という名のもとに埋没をしてしまって、うやむやのうちに葬り去られようとしている。こういうことでほんとうにいいのかどうか。今回のいわゆる決着というものは、日本と韓国のほんとうの関係を今後とも引き続き続けていく上でプラスになったのかどうかということを外交責任者としては考えていただかなければいかぬと思うんですが、私は今回のいわゆる決着というものは、日本と韓国の国民の立場からして全くマイナスであった、こう考えざるを得ないのであります。日本国民はもちろんのことでありますが、韓国の国民のほんとうの声は一体何なのかということを一度でも大平さんお考えになったことがあるのかどうか。御存じのとおり、あれだけひどい弾圧を受けている中で、ここ数日来韓国の学者、文化人、金芝河というような有名な詩人を含めて、朴政権のやり方に対して反対をする動きが高まっている。ソウル大学でも大邱大学でも学生が立ち上がっている。こういう状況の中で考えたときに、今回の決着というのは全く間違っている。なぜあんな形で解決だけを急がれたのか。午前の衆議院でも出ておりましたけれども、非常にふしぎであります。これは国民みんなが疑問に思っている。どうやらその最大の原因は、日韓閣僚会議を開くことが至上命令であった、こういわれてもしかたがないんじゃないかと思いますが、日韓閣僚会議はほんとうにお開きになるつもりなのかどうか、大平外務大臣いかがですか。
  68. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 年内に開くことにいたしまして、具体的な日取りはいま検討中でございます。
  69. 田英夫

    ○田英夫君 年内にということになりますと、政府・自民党は通常国会を繰り上げて開かれるという計画のようでありますが、そういう日程の中で、たいへん日程は詰まっていると思いますが、十二月中とかいうことになれば一体いつごろになるのか、大まかな計画はお持ちですか。
  70. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いろいろ事務的な準備、都合を考えにゃなりませんので、十一月はどうも無理じゃないかと考えておりまして、十二月にならざるを得ないじゃないかと思っておりますが、国会等との関連で、目下検討いたしているところでございます。
  71. 田英夫

    ○田英夫君 これは田中総理大臣大平外務大臣が、ほんとうにいまの状況の中で日韓閣僚会議を開けるとお思いになっているのかどうか、私は実にふしぎでしかたがないのであります。日本の人たちがまだ表に立ったそういう動きをしておりませんけれども、韓国では、すでに学生も学者も文化人も大きな動きをしている。日本の国内でも実は集会というような形では幾つかの集会が相次いで開かれてきております。こういう状況の中で、いま両国の世論を無視して、日韓閣僚会議をどうして開く必要があるのか。しかも年内にということは、どう考えても韓国の予算の関係で年内に開かなくちゃいかぬと。まさに朴政権の御都合のために両国の世論を踏みにじって開こうとしておられるとしか思えない。ほんとうにこれ、日韓閣僚会議をお開きになるのかどうかと私はいま聞いたわけでありますが、ふしぎでしかたがないのでありますが、この辺のところを大平さんはどういうふうに理解しておられるのか、考えておられるのか、お気持ちを伺っておきたいと思います。
  72. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 田さんの御主張になられることもわからぬわけではないのですが、ただこの事件の処理にあたりまして、これはどうしても両国にまたがった問題であるということは前々から御指摘申し上げてあったとおりでございまして、そして国際的な事件の解決はどうしても両国の呼吸が合って協力が十分得られて解決の実があがるわけでございますが、えてしてこの国際刑事事件というやつは解決がなかなかむずかしいものであることもまたよく御了解いただけると思うのでございまして、過去の数々の事件、事例に徴してもなかなか歯切れのいい解決にはなっていないケースが多いのでありますが、私どもさらばといって、いつまでもこれをこのままの状態でほうっておくというわけにもまいらぬと思うのでございまして、何か一体、これはどういう解決であれば国民が曲がりなりに御納得がいけるかという目安をひとつ見当つけなければいかぬと思います。そこで、国際的な事件として考えた場合に、通常国際慣例上とられる措置というものが考えられるわけでございますが、そういった点について先方におかれてどこまで一体誠意をお示しいただけるのかという点についていろいろ検討を、努力を重ねてまいったわけでございますが、まず、金東雲氏の容疑を認めて捜査をする、そして法的に処理いたしますということがまず明らかにされたわけでございます。それから第二は、金大中氏につきましては自由が回復されたわけでございます。それから、政府最高首脳からは深甚な遺憾の意が表明されて、将来にわたっての保障ともいうべき決意が述べられたわけでございまして、国際的なこの種の事件の処理につきまして一応とらるべき措置がとられたわけでございますので、本件につきまして刑事事件として今後なお捜査を続けるといたしましても、外交的な処理はこのあたりで落着をつけてしかるべきじゃないかと判断したのでございます。それについてはいろいろな御批判があろうかと思うのでございますけれども、主権侵害という問題になりますと、韓国がこれを認める以外にもう道はないわけでございます。その場合にとらるべき措置は、いまとられた措置の上に主権侵害であるということを認めますということだけが乗るわけでございまして、その他あらゆる措置は一切、普通の刑事事件といたしましては相当きびしい措置がとられたわけでございますので、このあたりで外交的決着をつけるという措置をとらせていただきましても大きく失投ではあるまいというように判断をいたしたのでございます。もちろんいろいろな御批判があろうと思いますけれども、そう考えたわけでございます。  それから閣僚会議の問題でございますが、本来、この事件は八月八日に青天のへきれきのように起こった問題でございまして、刑事事件としてインデペンデントに日本解決したいと考えてきたんでございまして、対韓政策をこのために基本を変えるというような性質のものではないというように政府態度は鮮明にしてまいったわけでございます。しかしながら、この問題が、あなたが御指摘のように、日本の国内、韓国の国内に与えた衝撃というものは相当な衝撃であったと思うのでございまして、私どももそういう事実に目をおおっておるわけでは決してないわけでございまして、この処理にあたりましても、その点は終始頭に置きながら対処してまいったつもりでございます。閣僚会議はいずれ開かなきゃいかぬと思いますが、こういう世論の状況にあるということも十分踏まえた上で、私どもは閣僚会議だけでなくて、その他の対韓問題の処理につきましても、慎重に対処していきたいと考えております。
  73. 田英夫

    ○田英夫君 いま外交的な措置は終わったというふうに言われましたけれども外交的な措置の中できわめて具体的な問題で欠落していると思われるのは読売新聞の問題ですが、読売新聞の記者が追放され、支局が閉鎖になっているという現状はいまだに何ら変わっていないと思いますが、今度のいわゆる決着の話し合いの中でこれが出たのかどうか、あるいはこの問題について何らかの要求をしておられるのか、この点はいかがですか。
  74. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この問題は、この事件が起こって読売新聞の追放が起こった直後申し入れたままになっておりまして、何らの返答を受けておりません。で、そのときのこちらの口上は、やっぱり主権侵犯という事実が判明しない段階においてこういう措置をとられるということに対してはいかがかと思うということで、すみやかに再開を望むということを言ってあるわけでございますが、この問題については、事態がまだずっと続いているわけで、先方は主権の侵害がないと言うし、こちらでも証拠がない、そういう姿で今度の外交的処理が行なわれておるわけでございまして、問題の根幹に触れた解明はまだ行なわれていないという状況なんでございますが、どのように判断されますか、これはこの事態においてどう処理するか、一ぺん私も考慮してみたいと考えておりますが、今度の本件の処理の柱としては、読売問題は取り上げてはいないのであります。
  75. 田英夫

    ○田英夫君 あまり時間がなくなりましたが、ずっとお聞きしておりますと、要するに、今回政府が決着したと、こうおっしゃっているいわゆるお手打ちは、いわばやくざの手打ちみたいなもので、全く重要なものが欠落をしておるし、さらに一番大事なことは、民主主義の基本である国民の世論というものに根ざしていない。むしろこれをさかなでするような形で重要な部分が落ちたまま親分衆のお手打ちのような形で手が打たれたにすぎない。こんなことでは、むしろ今回のいわゆる決着というやり方は、後日に、今後の日韓関係に大きな禍根を残すと、こう言わざるを得ないので、この問題は歴史的に田中総理大臣大平外務大臣責任を負われなければならない日が来るのではないかということを私は申し上げざるを得ないと思います。  もう時間がありませんので、金大中事件はこのくらいにして、一つ伺っておきますが、いま来日しておりますいわゆる北ベトナム——ベトナム民主共和国のホアン・コク・ベト団長が昨日日本記者クラブでの記者会見の中で、日本の賠償問題が解決しない限り、またいわゆる日本戦争責任というものがはっきりしない限り、大使館を置いてもしかたがないではないか。それから臨時革命政府というものを日本が承認するかどうかということもはっきりさしてもらわなければならないという意味のことを言っております。実は、一昨日ホアン・コク・ベト氏と私も話をする機会がありましたときにも、同氏は同じことを私に言っておりました。この日本の賠償問題、戦争責任の問題、それから臨時革命政府の承認の問題、政府は従来北ベトナムとの国交樹立をして大使館をつくると、無条件であるというふうに言ってこられましたけれども、この点は政府の言われていることと違うようでありますが、この点外務大臣はどういうふうにお考えですか。
  76. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 北越と日本との間におきましては、国交樹立交渉がパリで行なわれたわけでございまして、国交を結ぶということは前提なしに、ノンコミッタルベースでやろうじゃないか。国交を持ったあとでもろもろの問題を話し合おうではないかということで双方は合意いたしまして、九月二十一日に国交が樹立いたしたわけでございます。その後、パリにおきまして先方との接触を重ねておるわけでございまして、すでにわがほうもハノイ向けの外交官を任命いたしまして、ビエンチャンに待機さしてあるわけでございます。われわれの理解しておるところでは、大使館を置く問題と、その後、いまあげられた賠償問題、PRG承認問題とはからませておるとは理解していないのであります。まあハノイにおけるロジスティックないろんな事情がございまして、先方から提供されるスペース、施設がどうと、そういう通知を受けるのを待っておるわけでございまして、その話がつかなければ大使館の設置に及ばぬというように私は理解していないんです。明日その方と私はお目にかかりますので、なお話を伺って、もし話題になれば伺ってみたいと思いますけれども、私はそう了解いたしております。  それから、日本政府の立場はたびたび申し上げておるとおり、賠償問題うしろ向きの賠償問題という問題はすでに済んだ問題であって、賠償問題として新たに取り上げる立場にないということと、それから南越においてはサイゴン政府を唯一合法政府として認めておる立場に日本政府がおるということを私は先方もよく承知されておると思うのでございます。先方がどういう意向を持たれておるか、これは先方の御意向でございまするからとやかく申しませんけれども日本政府の立場はそういう立場として先方には私は申し伝えてあるはずでございます。
  77. 田英夫

    ○田英夫君 時間がありませんから一つだけお聞きしておきますが、臨時革命政府の承認の問題は繰り返し今回のホアン・コク・ベト氏も言っておるわけで、これは大臣がいまお考えになっておるようなこととは違うと思います。アメリカがあのベトナム和平協定に調印したのも、これは事実上、南の臨時革命政府を認めているからこそ臨時革命政府と同時に調印をしたのだ、こういうふうに言っておりました。一昨日です。日本政府だけがどうして臨時革命政府を認めないのか、これはアメリカよりももっと劣る、こういう表現をしておりましたし、そうなりますと、いま社会党が招請をしている南ベトナム臨時革命政府の代表が来日を要請をして、しかも臨時革命政府の旅券で入りたいと言っておりますが、これをそのままお認めになる気があるかどうか、これは態度で示す一つの非常に重要な問題だと思いますが、これさえも認めないということになれば、非常に一つの障害が生まれると考えざるを得ませんが、この点はいかがでしょうか。
  78. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) パリ協定におきまして、臨時革命政府なるものがその当事者であるということは承知いたしております。しかしそのことのゆえをもちまして、だからその政府外交関係を持つという考えはないのです。いま申しましたように、南越におきましてはサイゴン政府を唯一合法の政府としてわれわれは認めておる立場から申しまして、残念ながらそういうことはできないわけでございますし、したがって、臨時革命政府の旅券をわれわれは認めてその入国を認めるというようなことは考えておりません。
  79. 田英夫

    ○田英夫君 その点は非常に大きな問題に発展をすると思いますが、アメリカが臨時革命政府も同時に調印をしたという、和平協定に調印をしたということで、北ベトナムはその点を評価といいますか、臨時革命政府アメリカも認めているというふうに受け取っているわけで、何もアメリカが臨時革命政府外交交渉外交関係を持ったとは理解をしていないわけでありまして、きわめて政治的に受け取っていると思います。その辺を、日本政府はそれさえも認めないということになればアメリカより劣ると、こう言われてもしかたないわけでありまして、その辺のところの御理解がいささか違うのじゃないか、これだけ申し上げて、時間が来たようでありますから終わります。
  80. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 金大中氏事件の解決については、大平さんはいままで一貫して筋の通った納得のいく解決をしたいということを繰り返し言明をされてまいりました。ところが、今回の外交的な折衝によって一応落着と、先ほどの御答弁の中にもございましたが、まことに歯切れの悪いというか、捜査当局のほうから見ましてもあと味の悪いという印象を残したようでございます。もちろん現在捜査は継続中である。日本側においても韓国側においてもそのような方法で進められている、まあこういうことでございます。しかし、いろんな客観的な要素というものを整理して総合して判断してみた場合に、これはもう当然今回の事件というものはあくまでも主権侵害に通ずる、これはもう黒と、こう断定せざるを得ない、そういうような雰囲気が非常に強いんではないかというふうに思うわけでございます。  で、大平さんがおっしゃっておった筋の通った納得のいく解決、私は今回の外交的な折衝によってそういう落着によってそうであったと、おそらく大平さん御自身としても心中穏やかでないものがおありになったんではないだろうか、こういうふうに私はいままでの御答弁、私に対する答弁を通じましても思わざるを得ないわけです。その点はどうでございますか。やっぱり筋が通っていますか。
  81. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず真相を究明し、内外納得のいく公正な解決をはからなければいけないのが私の任務であると思います。そのためにベストを尽くすのがわれわれの責任であると考えて今日までやってまいった次第でございます。  ただ、御案内のように、本件はたびたび申し上げるように二国間にまたがった問題でございまして、犯人は全部、もう被害者も全部他国に行ってしまっておるわけでございまして、したがって、この捜査というのはまことに隔靴掻痒の感があるわけでございまして、全幅的に先方の協力がなければ真相の究明、そして筋の通った解決をもたらしていくということはなかなか困難なんでございまして、日本側でできることはわれわれは最善を尽くしてまいったわけでございます。韓国側にも鋭意御協力を求めてまいったわけでございまして、今日までもたらされた成果は、国際的に見まして、この種の事件の処理のあり方といたしましては御納得がいけるラインまできたのではないかという判断をいたしまして、外交的な決着をつけてしかるべきではないかということにいたしたわけでございます。御批判はいろいろあろうと思いますけれども、この事件の性格から申しまして、御理解いただければたいへんしあわせと思います。
  82. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回、金首相が来日をされて陳謝をされた、その気持ちはわからないわけではございません。しかし、すでに金東雲氏のこの容疑が、先ほどの役職解任問題を通じましても濃厚というよりはそうではないかという断定に近い、こういう状況でございますね。そうすると、率直にいって、確かに主権侵害はしました、これからあらためて日韓の交流については友好なつながりを持っていただきたいと、またそうやりましょうと、こうしたほんとうは早急な話し合いによるその解決というものが一番実は望まれてならなかったわけですけれども、おそらくこのままでいきますとどこまでいっても平行線だと思うのですね。まだ容疑の段階だ。はたしてこれが決着つくまではということになると、相当時間がかかるのではないか。  で、この間警察庁の中島参事官の答弁によりましても、日本の場合の捜査のいままでの常識であれば、一週間あれば白か黒かわかると、こういうような答弁もあったわけです。ところが、もう一週間どころじゃないわけですね、相当の期間経過しておるわけです。何も私は韓国の捜査当局の能力がどうこうというふうに言っているわけじゃございませんけれども、ここに日韓という一つの壁があることも考慮の中に入れながら、今日までいろいろ納得してもらうための要素をつくっているんではないかということも考えられるわけであります。  したがいまして、こうした問題がすっきりするかしないかということは、なるほど考えようによっては非常にむずかしい問題かもしれません。ならば、せめて、大平さんがしばしばおっしゃったように、筋の通った、納得のいく、せめて日本国民に対してもそういう理解を与えるために、先ほども話がありました日韓閣僚会議というものは無期延期すべきではないか。一体、いまなぜ日韓閣僚会議をする必要があるのか。これは分離して考えることは、私は非常におかしいと思うんですね。やはりこうした問題の一つのつながりというものは並行的に、表裏一体として考えるべきではないかというふうに思うんですけれども、その点はやはり年内にはどうしてもおやりになって、今後とも経済援助というものを続けていかれるのかどうなのか。おそらく経済援助ということが非常に軸になるだろうと思うのです。しかし、韓国民の中には、もう日本からは経済援助してもらいたくないという世論があることも大平さん御自身は御存じのはずであります。そうしたような日韓の国民的な世論というものを十分考慮されて、お考えになっていただければ、この問題についてのことも、あるいは先に延ばすということも必要でございましょうし、その点もう一ぺん確認をしておきたいと思いますので、重ねて御答弁をお願いしたいと思います。
  83. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いろんな批判があろうかと思いますけれども外交的決着をつけたという段階におきまして、逆に日韓経済閣僚会議なるものを無期延期する理由がないわけです。われわれといたしましては、なるべく早くこれを開くというのが理の当然であろうと考えておりますが、しかし渋谷さん御指摘のように、日韓の国民世論というものを十分念頭に置いて事を運んでいかにゃいかぬわけでございますので、そういったものに周到な配慮を加えながら、本件の処理をやっていきたいと考えております。
  84. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 きょうはたいへん時間が少のうございますので、次の問題に移ります。  今回の石油危機、これは非常に日本にとっては深刻な事態でございますし、早急に日本側としても適切な手段を講じませんと、取り返しのつかないことになるんではないかという不安感が非常に増大してきております。この問題を考えますと、いままでの日本政府外交姿勢と申しますか、特にアラブ諸国に対するコミュニケーションギャップというものが非常に多かったんではないだろうかというふうに考えられるんでございますが、もう少しくアラブ諸国との密接な連帯感と申しますか、そういうような外交姿勢もございましたならば、もっと事前に適切な処置があるいは講じられたんではないだろうかというふうに、私どもはそういう印象を受けるんでございますが、まず、その点をお伺いしていきたいと思います。
  85. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 石油は、御案内のように、九九・七%日本は海外から仰いでおるわけでございますし、それが年々歳々増加いたしてきたわけでございまして、今日まで、これは商業的手段によりまして必要な分量を必要な時期に確保することができたわけでございまするので、いわば今後も商業的手段によって確保されるであろうという想定のもとで経済計画がいろいろ組み立てられておったことでございます。ところが、まあ産油国側ではすでに十分売却収入によって外貨はたまってきておりまするし、限りある資源を急に、急いで採掘して不安定な国際通貨にかえるというインセンティブをだんだん失っていくということも、中東紛争がなくても、やっぱり石油問題というのはもともと相当問題をはらんだ状況であったと思うのであります。ところが今度中東紛争が起きて、これが一つの政略的武器として使われるというようなことになりまして、たいへんなる状況に際会いたしましたわけでございます。申すまでもなく、そういう濃密な、わが国の産業の血液を仰いでおる国でございますので、政府といたしましても、産油国との外交につきましても気をつけておるつもりでございますけれども、国柄、風俗、習慣の違い、言語的制約その他から申しまして、いろいろギャップがありますことと、日本石油がメジャーを通じて大半は間接的に入ってきておるというような事情もございまして、あなたがおっしゃるように十分なコミュニケーションが維持されておったかといいますと、そうだと言い切れないものが私あると思うのでございます。で、これは中東紛争が今日あるからばかりでなく、今後の姿勢といたしましても、仰せのように、産油国の間等におきましての十分のこなされた理解の上に立った国交というものをどうして維持するかということについては最大限の努力を傾注しなければならぬものと私は考えておるわけでございます。
  86. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 アラブイスラエルの紛争というものは、今回で第四回目ではございましょうけれども、これは歴史的に見ますと相当もう長い間この民族的な感情対立というものが底流にあるわけでございまして、おそらく将来においてもこの種の紛争が再び起きないという保証もございませんでしょう。もう今回たまたまこうした紛争を通じまして石油資源にからむ政略的なそういう武器にアラブ側は強力にそれを利用しようと、こうなりますと、一体日本としては、言うまでもなく、そのエネルギー資源が非常に乏しい国でございますので、全面的に中近東の油にたよっているわけです。そうした場合に、将来の保証も含めていまの状態でほんとうにいいのかどうなのかという問題が一つございます。  それから、先ほどもお話が出ましたように、日本としては国連安保理の二四二号の決議に基づいてその実現方を早急に望みたいということを中心とした、軸にしたこの中立的な姿勢をくずさない。ところが、サウジアラビア等をはじめとする国々においては、むしろこの機会に、あるいはイスラエルと断交してまでもアラブ側日本側としては片寄るような政治姿勢を示してもらいたいというようなことも伝えられているわけです。これは早急にはなかなかたいへんな問題だと思います。けれども、何らかの形において今後の外交路線というものを、特にアラブ諸国について示さない限り、またまたそういう制裁的な措置を、報復的な措置を受けないということは言えないでありましょうし、その点についての将来の展望に立って今後一体アラブ諸国とどういう取り組み方をしていくのか、慎重にだけでは事が片づかない、こういうふうに感じられるわけでございますけれども、何か特段の、これからこの問題解決をめぐって政府としてはお考えになっておる向きがあるかどうか。
  87. 大平正芳

    外務大臣大平正芳君) まず第一に、当面の紛争が解決されるということが第一のことであろうと思うのでございます。その場合に、日本は何ができるか、何ができないかをまずはかる必要があると思うのでございまして、われわれが旗を立てて飛び出していって何ができるかということを考えてみた場合に、日本の立場においては、まず国連あるいは国際機関がこの紛争の解決あるいはそれに伴う救援活動、そういうものを行なう場合に、全幅の支援をするという立場が私はひとつ貫かれなければならぬと考えております。  それから、現実にこの停戦実施を確保するという仕事は、力のある国でなければなかなかできないと思うのでございます。米ソ両国が現にそのために力をいたしておるわけでございますので、そういう国々に対しまして、日本は早期の解決を要請すると、強く要請すると、執拗に要請するということは、日本の立場としては私はやり得ることであると考えて、そのラインで精力的にやっておるわけでございます。  それから第二に、先ほどあなたに御答弁申し上げました石油問題というのは、しかし、この事態解決されてもあとまだ残る問題でございますので、この問題に対しましては、あなたの御指摘のとおり、日本外交一つの重要なテーマとして精力を傾注していかにゃいかぬ課題であると私は考えております。
  88. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほども経済局長が答弁されましたように、もうすでに伝えられておりますけれども、原油については七〇%以上上げようという、また輸出量も一〇%以上輸出量を落とそうと、これが今後エスカレートしないというこれまた保証がない。しかもだんだん備蓄量も減ってくる現状にかんがみて、日本としては一体どうすればいいのかというもう深刻な事態を招いているわけですね。よほど思い切った措置を講じない限り現状打開というものがはたして可能性があるんだろうかどうだろうかと。政府として特使の派遣等も考慮に入れておるようでございます。それを事務レベルの特使にするのか、あるいは閣僚級の特使にするのか、まあ検討中だということも伝えられておるようでありますけれども、これはもうおそらくあるいはキッシンジャーが十四日に来られて、そうしてそこであらためて大平さんがいろいなろ情報交換をおやりになるでしょう。そうした話を整理しながら、次の打つべき手というものをお考えになられるのではないかというふうに推測するわけでございますけれども相当これは時期を急がないと非常にたいへんなことになりはしまいかという、これはもう全般的に世論もそういうような方向に動いておりますしね、国連もけっこうでございますけれども、しかし、日本独自の立場で自主的な外交アラブ側に対するその展開というものがなされない限りその道が開けないんじゃないか。米ソに要請することもけっこうでございましょうけれども、独自の立場で何か道を切り開くその方途はないのかということを重ねて私はここで確認をしておきたいと思うのです。
  89. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 独自の立場でやって、しかもそれが全局の収拾に役立つということだったら何でもやらなきゃいかぬと思うのです。しかし、やってじゃまになることはやっちゃいかぬと思うのであります。それでアラブ側とも日本の実情を理解してもらい、そうしてコミュニケーションを充実してまいるということは、これは当然やらなきゃいかぬことでございまするし、紛争の終結について、現にいろいろなあっせん工作が行なわれておるようでございます。それを促進するようには、すでにわれわれは何回も繰り返し要請いたしておるわけでございますので、そのラインで鋭意つとめていかなければならぬと考えております。しかし同時に、国内対策としても、石油の問題につきましては相当長期の展望に立って、また経済構造をどのように維持してまいるか、雇用をどのように維持してまいるのか、根本的に問われている問題がたくさんあると思うんでございまして、これは国内官庁がいろいろ配慮していくべき問題であろうかと思います。
  90. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後に一つ大平さんがこの解決のためにアラブ現地に乗り込んで折衝をおやりになる現在お考えはございませんか。
  91. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま私としてはそういうことは考えておりません。先ほど申しましたように、この事態を収拾する能力のある国々の活動をエンカレッジしていくということに力点を置いてやっておるわけでございまして、日本政府みずからがそういう活動と独立にいまアクションを起こすということは、全局の処理について私は決して賢明ではないと考えております。
  92. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 高島アジア局長より発言を求められておりますので、これを許します。
  93. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 先ほど、田先生から御質問のございました金大中氏の来日についての申し出の日付でございますけれども、十月三十日でございます。
  94. 星野力

    ○星野力君 金大中氏事件についてお聞きします。  前にこの委員会で、私が、日韓両国政府が共謀して事件の真相をうやむやにしたまま、政治的解決の道を探っておるのではないかと質問しましたのに対して、外務大臣は、真実を明らかにすることに全力をあげる、それに基づいて国民の納得のいく解決をする、政治的解決などはやらないということを言われたのでありますが、結果は外務大臣のすべてのことばに反して、国民にとっては全く納得のいかない政治的解決がはかられたのであります。日本政府の発表によりますと、金東雲の犯罪関係を韓国政府は認めた。また、金鍾泌総理が来日して陳謝をしたということになっておりますけれど、韓国政府の言っておることはこれに反しております。金東雲は事件には介在していない、これは申法務長官の発言でありますが、金総理自身は、自分は陳謝使節として日本に行ったのではない、いわば隣人同士のあいさつに行ったのだと言っております。また、日本では警察の捜査を打ち切ることになったということも言っております。何が何だかさっぱりわからない。どっちかがこれはうそを言っておる。あるいは両方がうそを言っているのかもしれません。両国の政府がそれぞれの国民を愚弄して、反共政権同士のなれ合い的な解決をはかろうとしておる、こう言われてもいたし方ないと思うのでありますが、この問題について外務大臣の弁明をお聞きしたいのです。
  95. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) われわれは国民監視の中で仕事をやっておるわけでございます。一時国民を愚弄できても永久に愚弄できるはずはないのです。そんなふらちな考えでやっておりません。この事態をきわめて、公正な解決、納得のいく解決を求めてベストを尽くしてまいったわけでございまして、ただ、国際的な事件であるというゆえんをもちまして、たびたび申し上げましたように、捜査上、それから本件の処理上、いろいろな制約があるということも、また、あらわに国民に申し上げておるわけでございまして、そういう制約の中で国際的なものさしに照らしてここまで問題の処理がまいれば、まず御納得がいただけるのではないかという判断に基づいて、外交的には決着をやったわけでございまして、そういう意味で御理解をいただきたいと思います。
  96. 星野力

    ○星野力君 外交官の身分を持つ者を中心とした組織的な暴力によって日本から韓国に連れ去られた金大中氏は、韓国政府によって七十日間も自由を拘束され、取り調べまで受けたわけであります。この事実自体が今度の事件の性格をよく示しておると思います。金大中氏は一応拘束を解かれましたけれども、いわば半ば犯罪者の扱い、起訴猶予といいますか、執行猶予といいますか、そういうような状態に置かれておるのであり、政治家であるところの金大中氏に政治活動の自由はない、そういう状態だと思います。しかもこの、政府公認のテロがまかり通っておる韓国の状況では、生命の危険さえ依然として存在しておると言っていいと思いますが、日本政府がその生命身体の安全に責任を負っておった金大中氏が、韓国側の暴力によって日本から連れ去られた結果、こういう状態が生じているのであります。日本政府はその責任からしても、金大中氏の身柄について重大な考慮を払うべきであると思いますが、少なくとも金大中氏にすみやかな来日を要請する、また韓国政府に対して来日のための障害を取り除くように要求することが当然なすべきことではないかと思うのであります。聞くところによりますと、韓国政府は金大中氏を出国させない方針だと、日本政府もその点については了承しておる、こういうことまで言われております。そのことも考えられないことではない。うやむやの政治的解決をはかろうとしておるときに、金大中氏が国外に出て自由にしゃべったということになると、これはいろいろ差しつかえが起きてくるということも考えられますから、あるいはそういうことが話し合われておるというのも事実じゃないかとさえ想像されるのでありますが、政府はどうですか、金大中氏の来日実現のために真剣に努力するお考えがあるのかどうか、重ねてそのことをお聞きしておきたいと思います。
  97. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 金大中氏の人権問題というのは、この事件が出来して以来、問題の焦点の一つであると承知いたしまして、私どもも深甚な関心を持ち続けてまいったわけでございます。で、その結果、先般、韓国政府におきまして、出国を含めて同氏の自由は保障いたしますということに相なったわけでございますので、それを、言明を多といたしております。今後、その言明がどのように実行されるか、それは今後われわれ見守っていきたいと考えております。  それから第二に、先ほども捜査当局からもお話があり、私のほうからも答弁申し上げたとおり、日本に参りまして尋問に応じてもらいたい、質問に応じてもらいたいと、捜査に協力してもらいたいという要請はいたしておるわけでございまして、それはまだ実現するに至っておりませんが、自由を回復されて、出国も含めて自由を回復された今日でございますので、御本人の御意思にかかっておる問題ではないかと考えます。  国際的な事件といたしまして、この種事件でよく似た事件がモロッコとフランスの間で一九六五年に起こりました。モロッコの野党指導者のベン・バルカという人がフランスにおいて行くえ不明になって、フランスで主権侵害があるということで、モロッコ側と外交関係を断絶したことがございますが、しかし、その後モロッコ側は政府関係者の関与を一切否定し続けて、やがて外交関係はあとで和解の上、正常化いたしたわけでございますけれども、ベン・バルカ氏はいまなお行くえ不明であるというような始末になっておりますが、今回私どものとりました処置は、金大中氏がこういう状況のもとで市民としての自由を保障されるという状況にまでなったわけでございまして、それが誠実に実行されるならば、本件の解決の一環といたしまして、私は妥当な解決であったと考えております。
  98. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 時間がまいっておりますので……。
  99. 星野力

    ○星野力君 時間たって、十分しかない、時間おくれてからやったんだから。  金大中氏が拉致された原因はどこにあったとお思いになるか。朴政権反対運動をやった、朴政権に対する強い批判をやったということがあったと思うんでありますが、朴政権に対する批判の中でも金大中氏が最も強く批判しておったことの一つは、朴正煕ら一部の韓国の支配者が日本の経済援助を政権維持の重要なよりどころにし、それによって巨富を積み、その陰で韓国の民衆が犠牲にされ、韓国の経済は対日隷属の経済となっていることがあります。そういう朴政権批判、朴政権反対の行動が拉致の理由になっておると思いますが、いま朴政権に抗議する学生運動があの弾圧の中でも深く広がっておるのでありますが、あの学生運動の掲げておるスローガンの中にも、対日隷属化を即刻中止して民族独立経済体制を確行せよというのがあります。また多くの韓国国民の間でもそのことが言われておる。大臣は韓国に対する経済援助は特定の政権を育成するためのものではなしに、韓国民衆の福祉と繁栄のためと、こう言っておられましたが、事実は全く反しておると思うんであります。金大中事件の早期解決を一番日本の中で強く要望しておったのが、朴政権と組んで韓国への経済進出にやっきになっておりますところの日本の財界であると言われておるのもうなずけるところであります。少なくとも経済の面で見れば、韓国はすでに日本列島に組み込まれているといってもいいと思うんでありますが、対韓経済援助の基本方針、やり方について政府として反省し、改める考えはないかどうかをお聞きしたいと思います。
  100. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日韓経済協力問題につきましての批判がありますことは、私もよく承知いたしております。私は、韓国といたしましても、究極において健全な自立経済を打ち立てるという基本的な道標のもとに努力されておると思うんでございます。第三次五カ年計画が終わる段階までには政府ベースの援助を御遠慮して、経済の自立が達成できるような状態にもっていきたいということも先方政府から伺っておるわけでございまして、対日隷属とかいう姿でなくて、名誉ある独立国として健全な自立経済を打ち立てられることを希望いたしております。そのために、そういうことをもたらすために、われわれは先方の計画のワク内におきまして、われわれの選択に従いまして、健全なプロジェクトにつきましてしかるべくお手助けをするということもまた考えるべき仕事ではないかと思っておるわけでございます。特定の政権のこやしにする、あるいは特定の資本に奉仕するというような考えでは毛頭ないわけでございます。  また、このやり方につきましては、十分念査いたしまして、かりそめにも批判がないようにやってまいらにゃいかぬことは当然のことと考えております。
  101. 星野力

    ○星野力君 ごく短かい一問です。——  昨年の閣僚会議では、約束なされたのは経済援助一億七千万ドル、ことしはそれが三億五千万ドルとか四億ドル余りとかという、そういうことが報道なんかに出ておるんですが、ほんとうにそんなに出すつもりで検討なさっておられるんですか。
  102. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 三億ドルも四億ドルも政府援助をやる力は日本にございませんで、私ども日本のできる範囲内で、しかもそれが先方の経済自立に役立つという限界がどこかというような点につきましては、十分周到なスタディを通じて考えなければならぬと、せっかく検討をいたしております。
  103. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本調査に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後三時九分散会