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矢山有作君 いまおそらく御説明になったのは、四十八年八月の日本国有鉄道監査委員会の統計資料等をもとに、業務外死傷病の発生の問題なんかをお述べになったと思うのです。しかし業務外死傷病の発生の状況を見ておりますというと、これはあなた方のほうの統計なんですが、昭和四十年を一〇〇とした場合、四十七年では一一七になっていますね、件数にすると三万七千六百三十四、これはかなりなふえ方なんです。それに対してあなたのほうの説明で、いま休業日数は一人当たりにするとだんだん減ってきておる、こういうような説明があって、案外健康
状態が優良に保たれておるような印象を与える御答弁だったと思うのです。
しかし、これは私は、この数字の見方に問題があると思いますよ。というのは、業務外の死傷病発生件数はかなりふえておる。ところが反面、一日当たりの
労働者の休業日数は減っておる。これはむしろ病気にかかっても十分に休養し療養することができないような
状態に
国鉄労働者が追い込められておるから、一人当たりの休業日数が傷病件数の発生の増加に比べてそれほど大きくないんだと、こういうふうに私は実態を把握すべきだと思うのです。その実態の把握というのが、はたして正確にできておるならば、いまおっしゃったような説明には私はならぬと思う。業務上の死傷者数がむしろ漸減傾向にあると、かいつまんで言うと、そういうような意味の御発言だったと思います。これは私は、けっこうなことだと思います。それだけ
事故防止その他に努力されておるということになる。しかしながら、業務上そういうようなことに努力しておることがはね返って、
労働者に対する労働過重の
負担になって発病が多い、多いのに
労働者は休めない、こういうふうな関連をも持ってくるのではないか。こういうふうに考えたら、あなたが言われたほど、
国鉄労働者の健康
状態というのは優良な
状態に保持されておるとは言えない、こういうことについて、私はもう一度、あなた方のほうで、
国鉄労働者の健康の
状態というものを真剣に検討してみられる必要があるのじゃないかと思う。そういう立場から私は、いささか資料が古うございますので、どうかと思いますが、かいつまんで
国鉄労働者の健康の
状態というものについて触れてみたいと思うのです。
これは四十四年の五月に発行されました
国鉄労働組合の「月刊調査と資料」「レール」という四、五月合併号、ナンバーで言うとNo.九九、これに載っておるものであります。これはいささか統計が古うございますし、それからまたこういう調査というものは、統計の取り方あるいは調査をする場合の約束事その他によって多少の変動はあると思います。変動はあるけれ
ども、その調査によってみますと、大体、十人中七人が健康を害しておると、こういうふうに答えておるようですね。しかも四十一年当時の調査と四十三年の調査を比べてみますというと、これはむしろ健康を害しておるという者の数は広がってきておる。しかも、その健康を害しておるという人々は、どの年齢層にもあまり違わない割合で広がってきた、こういうような調査結果が発表されております。それから病気の
状態はどういうようなのかというと、一人で二つ以上の病名を持っておるのが
一般的である、そして多いのが胃腸病であるとか視力減退であるとか高血圧だと、こういうふうにいわれております。特に二十代で胃腸病を訴えておる者が非常に数が多い、七二%をこえておるようであります。これはは四十三年の十一月の調査でありますが、前回の四十一年の八月の調査に比べると、二十代で胃腸病を訴えた者が六七・六%、それが四十三年の十一月の調査では七二・四%というのですから、これは非常にふえていきつつある。この胃腸病の原因などというのは、非常な神経の緊張を伴うことによって起こるのだと、私は専門家ではありませんが、そういうふうに
一般的に聞かされております。こういう
状態で見ると、こうした年齢のいかんを問わず、特に二十代という若いところにまでも非常に健康に対する障害が起こっておるということが、この調査結果から言えるんではないかと思うのです。
それから
国鉄の
労働者の薬の常用
状態はどうかということを調べておりますが、
労働者の六〇%が薬を常用しておるという調査結果が出ております。これも常用している薬はどんな薬かというと、胃腸病が五二%近い、あとはビタミン剤を飲んでおるのが三八・七%それからトクホン類が二一・二%だとか、こういうように非常にたくさんの者が薬を常用しておる、そして特に二十代の胃腸薬常用者が非常に数が多い。これは二十代において胃腸病の症状を訴えている者が多いというのと符節を合わしておると思うわけであります。
それからさらに調査は、不健康者で医者通いをしておる者はどのくらいあるかということで調べておりますが、不健康者の四六・七%が医者通いをやっておる。先ほど言いましたように、
国鉄労働者の七〇%が健康
状態が悪いということを訴えておるわけでありますが、その中の半分近い者が医者にかかっておると、こういうふうに訴えておるわけであります。しかも、その医者にかかっておる者の
状態を見ますと、二十代にして二四・五%、三十代にして四七・一%、四十代にして五六・八%、五十代にして七六%というのですから、二十代という若さのときから非常に医者にかかっておる者が多いし、また五十歳以上になると、医者にかからないのがふしぎだと、こういうような現象が訴えられておるわけであります。
さらに、こういうようなおそるべき
国鉄労働者の健康破壊の直接的な原因は何だと思うかということに対して、調査対象の人々が言っておるのは、神経を使うと答えた者が五二・八%といわれております。食事時間が十分でないというのが四五%、睡眠時間が不規則だというのが四一・八%、夜間労働が多いというのが三三・五%、こういうふうになっております。勤務種別、年齢別それから業務機関別を問わないで、神経を使うと訴えておる人が一番多いということは、
国鉄の労働というものがいかに神経をすり減らすような労働、いわゆる神経労働になっておるかということを明白に示しておる結果ではないか、こういうふうに思うわけであります。
それから労働がきつくなり疲労が蓄積すると、いろいろ身体に障害が出るわけでありますが、その症状はどういうふうになっておるかということで調査をしておりますが、具体的な症状で、肩がこる、全身がだるい、頭が重いと訴えておる人が大
部分であります。こういうような
状態になっておる。いろいろ詳しく言うと、精神的な症状あるいは神経的な症状を訴えておる、そういうような
状態の調査も行なわれておりますが、そういう状況であります。
以上言いましたように、この調査の内容というものは、しさいに検討してみなければ、どの程度のものかということは、私も確実には申し上げることはできません。先ほど申し上げましたように、調査のやり方で数字も違ってくると思います。しかしながら、いずれにしても、これだけの調査が行なわれて、こういう結果が発表されておるということは、私はゆるがせにできない問題ではないかと、そういうふうに思うわけでありまして、そういう点から、
国鉄当局といたしましては、
労働者の健康
状態に対して、やはり徹底的に実態を調査し、それを把握していくということが必要なんではないか、こういうふうに思うんですが、その点どういうふうにお考えになっておりますか。