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説明員(
磯崎叡君) 先ほど
先生から御
指摘がございました
新幹線の公害の問題でございますが、私はいろいろなことをいままで申し上げましたが、要するに私
どもといたしましては、新しい鉄道の
一つの哲学と申しますか、その哲学の中に公害対策がなければいけない、こういうことだと思います。実はほとんど、御審議の間、連日にわたって私
どもの幹部が全部こちらに参っております。そうして
先生方の公害に対する御意見等はなまで伺っております。国民の声としてなまで私
どもの幹部が全部伺っております。
そういう
意味で、私はこの公害問題というものは、単に国会の場で
論議されたというだけの問題ではなくて、私
どもの日常の仕事の中に完全に浸透しなければならないということは、もう幹部が全部からだでじかに感じておるというふうに私は思います。したがって、いままでとかくありがちだった公害問題を避けて通るというような気持ちは、私
どもの幹部には一人もいないということを断言してはばかりません。ただ公害対策は日進月歩でございます。そういう
意味で、以下ごく端的に申し上げますと、
国鉄だけでできるものと、
国鉄だけでできないものと二つに分けて考えられると思います。
国鉄だけでできるものは、これは
大臣おっしゃいました騒音の対策、振動の対策、これはわれわれのほうだけで何とでもできる問題で、またしなければいかぬ問題だと思います。たとえば単に出た音を防ぐという
意味の音響対策ではなくて、コンクリートの構造物自身から音を発しないように、あるいは振動の少ないような設計そのものをするという、コンクリートの柱一本立てるについても、そういうことから頭に置かなければ、なかなか、つくってしまった
あとの対策だけでは間に合わないというふうに思います。そういう
意味で、土木の技術者はたくさん来ておりますが、土木の技術者としてみれば、これからの鉄橋はもちろんのこと、鉄橋はつくらずコンクリート橋にする、こういう単純なことはもちろんのこと、その構造物を、コンストラクションの設計そのものについても、公害問題——騒音振動ということは初めから頭に置いてつくるという考えに、私は徐々になってきていると思います。
柱一本つくるにしましても、工事中の騒音はもちろんのこと、できた
あとの騒音振動等を初めから頭に置いて、どうしたらそういうものを減らせるということを頭に入れた設計をこれからやっていくというふうになると思います。
また
車両技術者にしてみれば、どうしたら
車両と線路の間の音を減らせるか、車の構造をどうするか、車体のカバーをどうするかということについても、やはりこれは従来の速度、安全性のほかに、環境との調和という角度から
車両そのものも考えなければならないという考え方になってきたと確信いたします。
また電気の技術者にいたしますれば、パンタグラフ
一つ、架線一本張るにいたしましても、単にいままでのように電力をどうしてスムーズに通すという角度以外に、どうしたら音を出さないで済むかということを当然考えるようになってきたと思います。私はそういう
意味で、まだ発展過程ではございますが、
国鉄のあらゆる技術の角度から、この問題に真剣に取り組む態勢というものは、少なくとも私の部内ではできたということを私は確信いたします。したがって今後はそれをどう推進していくか、どう実行していくかという問題になってくると思います。
もちろん、いろいろの技術の内容はまだまだ未開の分野が多うございます。たとえば現在明石の方面でやっております、騒音防止の
意味で、かきねをほとんど窓の高さまで持っていってしまう、そうして逆L字形に折り曲げるというような、思い切った構造の現在試験をやっておりますが、そういう考え方だとか、あるいは鉄橋を全部カバーしてしまう、トンネルでカバーしてしまうというふうな、いままでおよそ土木技術者の考えなかったようなことを、いま考えて試験をいたしておりますが、私はそういうものが全部成功するとは思いませんが、相当大きく成功するだろうと私は思っております。そういう基礎構造自身の
変化の問題が、今後必ず起こり得ると思います。これらは
国鉄として、今後、技術開発の面で処理いたしてまいりますし、また二十一世紀の鉄道をつくるには絶対必要なものだということを考えております。
こういう
国鉄内部の問題としては、今後騒音だけに限らず、振動にいたしましても、テレビ障害にいたしましても、あらゆる分野でもって公害を減らす、そして八十ホンとかなんとかという形式的な問題でなしに、取り組み方の哲学として考えていくというふうな気持ちになっておることは、おかげさまで、今度の衆参両院の審議を通じまして、直接
先生方からいろいろ伺いましたので、非常にみんなの気分もその
方向になってきている。この際、これを
予算でもって裏づけしながら前進させていくということが、私
どもの仕事だというふうに思っております。
ただ
予算の先ほどの五百六十億と申しますのは、東京−岡山間だけでございまして、
あとは四兆八千億のほうに入っておりますので、これは約二千億ということで、これはごくラフな計算でございます。六百キロくらいの間で五百六十億でございますから、
金額としてはまあまあ相当なものではないかという、一応いま考え得る対策を講ずる
金額としては足りるもので、むしろ金の問題よりも、どれをしたらどれだけきくかということについて、まだ暗中模索の面があるということだけは率直に申し上げられますが、これは私は、私
どもの技術者は良心的に必ずやり遂げるという確信を持っております。
それから、そういう
国鉄内部だけでやらなければならない問題と、やはりどうしても外の方にお願いしなければならない問題、これは幸いに、鉄道の騒音公害と申しますのは、端的に申しますれば、美観とかその他を離れますれば、結局線路から住宅が離れればいいわけでございます。したがって、もちろんさっき
大臣がおっしゃいましたように、線路そのものをなるべく市街地につくらないということも
一つの方法でございますが、しかし
地元の御
要求は、なるべく市街地につくれという御
要求が大部分でございまして、そういたします場合には、やはり
地元との御協力によって、初めから都市計画でもって線路の位置をきめていただく、端的に申しますれば、両側二十メートルあればほとんど公害問題は消えてしまうわけでございます。そういう
意味で、現在北九州では両側十五メートルの道路のまん中に
新幹線を置く工事を現在いたしております。
こういうことが、私は、ただ
新幹線を来い来いとおっしゃるだけではなしに、来たらおれのほうではこれだけの協力をしてやるという市町村が相当最近出てきております。その
意味で、どうしても
地元あるいは都道府県あるいは
建設省の御協力を得まして、そして線路と住宅を離す、
距離を置くということによって、相当程度の公害が、いわゆる公害が除去されるというふうに思います。そういう
意味におきまして、私は今後とも
建設省その他にいろいろお願いいたすつもりでございますが、在来の東海道線、家の軒下を走っている
新幹線の問題につきましても、やはり根本はその問題に立ち返る時期が必ず来ると思います。結局ある程度の対策はやっても、これは根本的解決にならない。したがって相当幅の道路を両側につくるというふうな時代が必ずくると思います。
現に私
どもは名古屋の一地区では、ぜひそういうことをやってみたい。もちろんこれは強制収用はできません。すでに鉄道ができております。強制収用することでなしに、
地元の沿線の方の御協力を得まして、何メーターぐらいの近所の方はどっか適地をさがして移っていただくというふうなことについて、いろいろ補償するというふうな方法でもって根本解決をする以外にないと思っておりますが、やはり私
どもといたしましては、部外の力を拝借いたしまして、鉄道と民家を離す。どうしても市街地を通れという場所につきましては、やはり鉄道と民家を離す。そうでないところは市街地を通らないというロケーションそのもの、線路の選定そのものについて、初めから公害の少ないところ、そういうものを発生しないところを選んで通るということも考えなければならないと思います。そういう
意味で、今後のいわゆる
新幹線の誘致運動などにつきましても、十分公害問題とあわせ考えなければいけないというふうに思っておる次第でございます。
以上、いろいろ申し上げましたが、要はこの日弁連の御
指摘のとおり、私
どもとしては決して避けるつもりもございませんし、未来の鉄道の一番大事なことは、いままでなかったこの問題であるということを、胸に体しまして、この問題を具体的に処理してまいりたい。ただ、申しましたとおり、現在非常に発展過程の技術がたくさんございます。その
意味で、いますぐ一〇〇%のことをお答えができないのは残念でございますが、もうしばらく時をおかしくだされば、私は必ず
新幹線公害というものは相当程度減らし得るという信念をもって、今後みんなでやってまいるつもりでございます。