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1973-08-23 第71回国会 参議院 運輸委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年八月二十三日(木曜日)    午後一時三十九分開会     —————————————    委員異動  七月二十日     辞任         補欠選任      杉山善太郎君     伊部  真君  七月二十六日     辞任         補欠選任      高橋 邦雄君     岩本 政一君      梶木 又三君     橘  直治君  八月二十三日     辞任         補欠選任      岩本 政一君     中村 禎二君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         長田 裕二君     理 事                 江藤  智君                 木村 睦男君                 山崎 竜男君                 小柳  勇君     委 員                 岡本  悟君                 黒住 忠行君                 橘  直治君                 中村 禎二君                 松平 勇雄君                 加瀬  完君                 瀬谷 英行君                 森中 守義君                 阿部 憲一君                 三木 忠雄君                 田渕 哲也君    国務大臣        運 輸 大 臣  新谷寅三郎君    政府委員        経済企画庁物価        局長       小島 英敏君        運輸大臣官房長  薗村 泰彦君        運輸大臣官房審        議官       原田昇左右君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  住田 正二君        運輸省航空局次        長        寺井 久美君    事務局側        常任委員会専門        員        池部 幸雄君    説明員        日本国有鉄道総        裁        磯崎  叡君        日本国有鉄道理        事        原岡 幸吉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進  特別措置法の一部を改正する法律案について     —————————————
  2. 長田裕二

    委員長長田裕二君) ただいまから運輸委員会開会いたします。  この際、一言申し上げます。  先般の国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案審議に際して生じました混乱につきましては、委員長といたしまして、まことに遺憾に存ずる次第であります。今後、委員会運営については、五月三十日の各党間の申し合わせを順守いたします。  先ほどの理事会におきまして、今後の本委員会運営について協議いたしました結果、国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案については、本委員会において質疑を続行することになりました。     —————————————
  3. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 委員異動について御報告いたします。  杉山善太郎君、高橋邦雄君、梶木又三君が委員辞任され、その補欠として伊部真君、岩本政一君、橘直治君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  4. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案について質疑を行ないます。  順次発言を許します。
  5. 森中守義

    森中守義君 いまの委員長の、どういう意味合いのものかわかりませんがね、少しお尋ねしたいし、意見を申し述べたい。  まず理事会権威の問題ですが、七月の十七日の朝から理事会が開かれておる。その間に現地視察及び連合審査などが決定をされておる。ところが、木村君の緊急動議なのかどうか知りませんけれども、全部これは御破算になってしまった。一体、委員会運営というものは、一言の緊急動議できまっていいものですか。そういう理事会なら、やめてもらいたい。大体、理事会をどう心得ているのですか。委員会運営を総括をし取りまとめていくのが理事会だと私は思う。野党理事の存在をどう思いますか。きょうの委員会でも、そういう理事会権威がじゅうりんをされた状態理事会できめて、何が委員会運営ですか。困る、それでは。その辺をまず委員長から答弁を求めたい。
  6. 長田裕二

    委員長長田裕二君) ただいまの森中委員の御発言の、内容の問題につきまして、それが問題になりまして、相当の日時をかけまして各党間でいろいろ話し合いが持たれ、その間、自民党からも、いろいろそれに関連しての意見表明等がありましたことは、御存じのとおりでございます。議長も入られましてのいろいろな話し合いの結果、それにつきましての党としての考え方などは、それぞれ各党に申し上げてあるわけです。  この委員会につきましては、ただいま委員長から遺憾の意を表しました。そういうことを主といたしました事柄につきまして、遺憾の意を表し、今後の運営についての私の考え方もあわせて申し上げた次第でございますので、ひとつ御了承を願いたいと思います。
  7. 森中守義

    森中守義君 了承できません。これからは理事会できめないで全部委員会でやってもらいたい。そうしてくださいよ。  それから、いま一つ木村君が提案をされた質疑打ち切り云々ということですね。速記録は何もない。どういう意味であったのか。また一歩譲って、質疑打ち切りを出した意味合いは何なのか。記録では、質疑者は二人が終わり三人目に入ったと。質疑を打ち切るという意味合いをどういうように心得ておるか。本来ならば、これは委員長釈明の前ですよ、私どもが聞きたいのは。動議混乱を起こしたわけだから、その釈明はむしろ木村君がすべきだ。  まず私は、だから第二の問題として、動議を提出した木村君の当時の認識をまずここで釈明してもらいたい。
  8. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 森中委員のただいまの御発言ですが……。
  9. 森中守義

    森中守義君 だめだ。
  10. 長田裕二

    委員長長田裕二君) ちょうどただいまの御発言内容をも込めまして、先ほど申し上げましたような、各党間の話し合いが持たれましたし、私もその点も込めまして、遺憾の意を表しているわけですので、ここでまた木村委員から、それについての釈明を申し上げるということは私は差し控えたいと思いますので、ひとつ御了解願います。
  11. 森中守義

    森中守義君 動議を提出した本人の当時の認識というものが、この際述べられないと、委員長釈明で全部終わってくれ——そんなことでこっちのほうは終わるわけにいきませんよ。本人いるんだよそこに、当時の状況をどういったように判断をしておるか、これは当然本人から釈明をすべきですよ。委員長のそれだけではとうてい納得できない、釈明すべきだ。
  12. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 私は、木村委員緊急動議の問題などが、やはりそういうことも各党間の話し合い一つの重要な事柄である。また委員長がそれに基づいてとりました行動、そういうことも重要な内容、それぞれ、いままで時間をかけてやってまいりました各党間の話し合いの中心であり、私が先ほど見解を表明いたしました内容でもあると存じますので、ひとつその点は、先ほど申し上げましたようなことで御了承願いたいと思いますし、なお、もし必要がありますならば、今後理事会等におきまして、あるいはその他の何か機会を考えまして、さらにお話し合いなり何なりをしたいと思いますので、本日の委員会におきまして、木村委員からそれに対する釈明をするということは、委員長として差し控えさせたいと思いますので、ひとつ御了承いただきたい。(「委員長そのとおりだ」と呼ぶ者あり)
  13. 森中守義

    森中守義君 絶対に承知できない。自後そういうことを理事会で検討するとは何です。これから正常化入ろう、幕をあけようというんですよ。そういう重要な問題をそのまま放置しておいて、これでやってくれとは何です。本人が目の前にいるんだよ。しかもこの文言の中に、そういうことは全然触れられていない。私は木村君のことも含めてという、包括的な意味としてはわかるんですが、本人が目の前にいる、私にこれだけ言われているのだから、当人としては言いたいことがあるんじゃないですか、だめですよ、そういうことじゃ。釈明をあくまでも求める。理事会にまかせるじゃ困る。
  14. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 先ほど申しましたように、私はいまの御指摘の点は、各党間の話し合いのやはり重点的な内容でもあり、委員長が先ほど申し上げましたことの重要な部分でもあると思いますので、いろいろ御意見もあろうかと思いますが、その点は、ひとつ御了承願いまして、質疑の続行を委員長としてこれから取り進めたいというふうに思います。(「議事進行」と呼ぶ者あり)森中君御了承願いたいと思います。
  15. 森中守義

    森中守義君 この委員会混乱させたのは木村君ですよ。その背景に自民党というものがあったに違いない。けれども、直接のきっかけとなったのは、木村君の緊急動議混乱が起きたわけだから、それを委員長がこの釈明によって了承してくれと言っても了承できません。あくまでも木村君の釈明を求める。さもない限り委員会進行しません、だめだ。
  16. 長田裕二

    委員長長田裕二君) まあ……。
  17. 森中守義

    森中守義君 だめだよ。
  18. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 委員相互の間でいろいろ質問ないし答弁とか釈明とか、いろいろやるのも一つの行き方かと思いますけれども、いままでの党の間の話し合い、それからただいまの委員長表明いたしました遺憾の意等によりまして、ひとつこの際、御了承を願いたい。
  19. 森中守義

    森中守義君 了承できないです。幾ら言われても了承できないことはできません。いいですか、混乱原因をつくったのがその人なんだよ。当人混乱を起こしておいて、おそらく質疑打ち切りを出すには出すだけの理由があったんでしょう。ですから、その結果において混乱が起きた。その混乱を、これから正常化入ろうというのなら、疑点を残したまま、私ども釈然としないまま審議を継続するわけにはいきませんよ。何としてでもいかぬ。この公開の委員会でぐあいが悪いというなら、理事会でやりなさい。それは理事会にまかせる。しかし木村君の釈明がない限り、何人が質疑を行なおうと、そうはいきませんよ。絶対いかぬ。釈明はやらしたらいいんじゃないか。絶対だめだ。だめ。
  20. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 重ねて私から森中委員に申し上げますが、先ほど申し上げました、本日の質疑に入りまして、いまの御発言につきましては、さらに後刻理事等の間におきまして、よく話し合いをいたしまして、その扱い方、今後のやり方等相談をいたしたいと思いますので、どうぞひとつお願いします。
  21. 森中守義

    森中守義君 これはどうも、お話を聞いていると、七月十七日以前の委員長姿勢と全く変わっていませんよ。そう思いませんか、自分で。先急ぎばかりやっている。急ぐなら急ぐように、ひっかかっている問題を先に片づけなさいよ。片づけないで、先にやってくれ、あと理事会できめる、七月十七日以前の状態と変わらぬじゃないか。だめだ、そんなことは。絶対承知しません、これは。
  22. 長田裕二

    委員長長田裕二君) まあ確かに、いろいろな御意見も十分あると思います。それから、それぞれの立場で、もちろん森中委員には十分、あるいはその他の野党方々にも十分の御意見があろうと思います。与党の委員方々にもそれなりのまた考え方があろうと思いますが、それらを込めまして各党間の話し合いが持たれたというふうに私は思っております。  それから、そういう趣旨にものっとりまして、委員長から先ほど申し上げたわけですので、ひとつそういう点は御了承願いたいと思います。
  23. 森中守義

    森中守義君 せっかくの委員長お話だが、そういう細部の点までは、議運、国対等では議論されていない。その余のすべてのことには委員会の自主的な判断にまかせる、こういう決定ですよ。——そこまで私は承知しておりませんよ。しかるがゆえに、木村君が混乱原因をつくったんだから、その原因者について心境を聞こう、所見を述べよと、こういうのが何でいけない。何で先急ぎしなければならぬですか。先へ先へと行こうというその状態は、七月十七日以前の委員長姿勢とちっとも変わらない。何が反省、何が釈明ですか。やらせなさいよ。そのほうが先のためにかえっていいよ。あと理事会でやりたいなら、いまでもいい、待ちますよ、しばらく。少々の時間を急いで問題を残すよりも、いまこれから幕をあけようというならば、そのように問題があれば明らかにしてもらう……。
  24. 岡本悟

  25. 森中守義

    森中守義君 だめですよ、答弁、答えていない。答弁が済んでからだよ。
  26. 岡本悟

    岡本悟君 ただいま森中委員の御発言にもあったんですが、私どもは、委員長お話のように、もう二週間にもなんなんとする長い時間をかけまして、各党がそれぞれの立場からの主張はありましたけれども、この審議正常化につきましては、大乗的な見地から、あの合意項目をのんで、本日から審議を再開しようという、こういうことになったんでありますから、それぞれ各党不満はあると思いますが、とにかく審議正常化に応じたわけであります。しかも今朝来、理事懇あるいはこの委員会開会に先立っての理事会でも、田渕委員質問を始める、こういうことにきまったわけでありますので、すみやかに審議を始めてもらいたいと思います。それぞれ不満はあると思いますけれども、いまの森中委員の御発言のことよ含めて、すべてを含めて、あの事態の関係すべてを含めて、各党審議正常化についてほんとうに誠心誠意話し合ってまいりまして、そして審議正常化をはかろうということに、合意に到達したのでありますから、ひとつそこのところは、委員長の御判断によって進めていただきたいと思うのでございます。
  27. 加瀬完

    加瀬完君 議事進行について。  それはおかしいですよ。正常な審議入ろうという申し合わせをいたしまして、具体的な委員会運営については理事会十分打ち合わせをするということであったわけです。理事会の話を私ども承りました。しかし、そこで森中君のように、まだ委員長なり皆さん方の側の理事さんに伺わなければならないということがありまして質問しているわけですから、私ども審議をこじらしたり引き延ばそうという考えは毛頭ございませんが、理事会で話し合ったからここで理事報告はしなくてもいいというたてまえではないわけです。委員長の、失礼ですが、報告皆さん方に十分納得されておらないわけですから、もう一回休憩して理事会をやって、十分納得するような説明をしていただかなければならない。個人的なことを申し上げて恐縮ですが、私の質疑の途中で打ち切られているのです。いまお話を聞くと、田渕君がすぐ質問をするようになっておりますが、そのことは理事に私はお取り計らいはまかせてありますけれども、おまえのほうはこういう形であとになるから、おまえの質問はそれで終わったことではなくてあとでやるからとかなんとかいう話は、委員長からも自民党さんの理事からも何にも話していない。ですから、そういうきまったことを全部報告して、なるほどとうなづければわれわれのほうは何も質問をしませんよ。手続が私は不備だと思う。委員長のこの委員会に対する報告手続がまだ不備ですから、これをもう一回ひとつ打ち合わせて、十分納得するように御記明いただきたいと思うのです。それならば私どもは文句を言いません。いまのあれではしょうがない。
  28. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 われわれは審議を拒否しているわけじゃない。だから委員会に入っているわけです。その点は承知してもらいたい。ただ委員会を始めるにあたって、委員長から遺憾の意の表明がありました。しかし、それは七月中七日三時三十分のあのときの問題についての遺憾の意の表明だと思うのです。しかし、あのときのあの場面は、委員長がかってに強行採決したわけじゃないわけです。自民党木村委員のほうが火つけ役になっている。つけられたほうの委員長だけ釈明をして、つけたほうの木村委員のほうはそっちを向いて知らぬ顔をしているというわけにいかぬだろうというのが、森中委員から指摘をした事柄だと思うのです。だれが見てもこれは、あのときの強行採決役割りは二人だったと思う。火つけ役とそれから委員長と、こういうことになる。われわれの野党の責任じゃない。そうなると、委員長釈明をしたということは、自民党木村理事の分まであわせて釈明をしたというふうに理解をしていいのかどうかということになるのですけれども、そういうものじゃないと思うのです。これは委員長委員長であり、自民党自民党理事。これは、委員長木村理事の分を含めてというふうにはわれわれは聞いていない。だから委員長としては、あれはまずかった、遺憾であったということの表明があったことはわれわれは認めるけれども、じゃその火つけ役のほうはどうなんだという話が出れば、そちらのほうも何がしかの意思表示があってしかるべきじゃないかと、こう思いますね。これは無理のないところでしょう。無理のないところだろうと思うのです。そうでしょう。そうだというふうに認めたならば、そのようにやったらどうですか。そうすればスムーズに話は運ぶのだと思うのです。
  29. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 私が先ほど申し上げました遺憾表明は、この委員会運営木村委員動議問題等も込めたつもりであるわけですが、もしそういうふろにとれませんでしたら、あらためていまそういうものも込めまして遺憾の意を表したいわけですよ。御了察を願いたいと思います。
  30. 加瀬完

    加瀬完君 それは、委員長というのは院の役員ですね、木村理事自民党理事。院の役員委員長自民党の分を含めてということはおかしいです。あなたは動議が出たから動議に応じたわけでしょう。ですから、木村さんの側では、木村さんの側でやはり再びこういうことをしないならしない、あれはどうであったということの一応釈明があってしかるべきだ。それがここで釈明するのがまずいというならば委員長理事の間で十分打ち合わせをして、かわって委員長がその内容も含めて報告をしてくれるというなら私どもは一応わかります。委員長自民党理事釈明までここでするというのは、それは穏当を欠きますよ。
  31. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 加瀬委員にちょっと申し上げますが、先ほど田渕委員質問のことだけに触れてということがございましたが、今度は今後の質疑の行ない方等につきまして、何らここで委員長から表明がなかったという点は、ちょうど私がいま申したような趣旨にとってよろしゅうございますか。これからの質疑進め方や何かについての意見表明がない、委員長として、開かれた委員会の今後の進め方についての考え方が少し不十分だと、考え方表明が不十分だったと、そういうふうにとってよろしいわけですか。その問題を込めましてちょっと理事会で御相談いたしましょうか。
  32. 岡本悟

    岡本悟君 議事進行。  委員長、あれでしょう。慣例上、理事会できまったことを当日の委員会開会前に委員全部に一応報告されるように大体はなっていますね。で、きょうは、こういう予定審議を進めますと、こういうようなお話があるわけなんですが、それがなかったことについての御不満であったように、私は加瀬委員のお尋ねはそうであったんじゃないかと思うんです。ですから、委員長、それをお話しになったらどうなんですか。最初の開会のとき、予定についてのお話がなかったわけですから、いきなり釈明ということになりましたから、きょうの委員会はこういうふうにして進めたいと、前からのつながりがありますから、それをお話しになったらいいじゃございませんか。別にまたあらためて理事会をやるということでなしに、そのことを含めて理事会は御相談になったと思うのでありまして、それを御報告いただきたいと思います。
  33. 加瀬完

    加瀬完君 どういう内容理事会が開かれたか存じませんがね。理事会決定として委員長報告された内容には、森中委員指摘をしたり私のほうから伺ったような点は解明されておらなかった。要約して申し上げれば正常に返ったと。で、いままでの混乱については委員長として遺憾の意があった、遺憾でございましたという表明はあった。正常に返ったというならば、どういう形でこれから運営をしていくのか。質疑の途中で開いたわけですから、質疑を続行させていくということなのかどうなのか、それらのことも明快に表示されて、ただし、本日は理事会話し合いで、質疑の順序を変えて田渕君の質疑に移ります、こう決定いたしましたということならわかる。質疑を途中で打ち切られた私にどうするか、さっぱり話がなくて、いきなり田渕君の質疑では、じゃ私のほうはどうなりますかと伺わざるを得ない。ですから、結局、理事会で話が済んでおったというならば、理事会お話が十分われわれに理解されるような委員長は表現をしなかったわけだから、これをきちんとして、もう一回お話をしてくださったほうが進行上早いんじゃないですか。理事会話し合いが悪かったとかよかったということを言っているわけじゃない。説明を十分できるような内容に変えてお話をしてくれませんかと、こういうことです。
  34. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 速記をとめて。   〔午後二時五分速記中止〕   〔委員長退席理事山崎竜男着席〕   〔理事山崎竜男退席委員長着席〕   〔午後三時四分速記開始
  35. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 速記を起こして。  先ほど問題となりました点についての理事会の結果を申し上げます。  理事会におきましては、木村委員より遺憾の意の表明がありました。よって委員長といたしましては、その意も含めて遺憾の意を表したことを確認いたします。  次に、本日の質問につきましては、加瀬委員に振りかえて田渕委員が行なうことになりましたことをあわせて御報告申し上げます。
  36. 森中守義

    森中守義君 その理事会で遺憾の意の表明があったというのは、理事会でできてなぜ委員会でできない。どうしてできない。おかしいじゃないか。
  37. 長田裕二

    委員長長田裕二君) まあ、そのような話し合いにいたしましたので、ひとつ御了承願います。
  38. 森中守義

    森中守義君 了承できることとできないことがありますよ。理事会で遺憾の意の表明があって、なぜ委員会でできない。おかしい、そんなこと。もう一度正確に言ってくださいよ、理由をね。釈然としませんよ。理事会では遺憾の意の表明をしたが委員会ではできない。どういうことですか、それは。おかしいじゃないか。
  39. 長田裕二

    委員長長田裕二君) まあ、いろいろな点については、それぞれ考え方もありまして、一つ一つそれを分析して表明することが必ずしも委員会の私は円滑な運営に資するとは思いませんので、私が先ほど、まあ木村委員動議の点を含めてと申し上げましたが、十分その点が明確になっておらなかった点もありますので、理事会におきまして、その点をあらためて明確にしたわけでございます。
  40. 森中守義

    森中守義君 それはね、手続の問題でももちろんだけれども理事会で遺憾の意の表明があるならば、当然委員会であってもいいんじゃないですか。意味がわからない。なぜそれができないか。なぜ木村君が陳謝することが理事会ではできても委員会ではできないんですか。わけを言いなさいよ。その理由がはっきりすればそうだということになる場合もある。おかしいなという場合もあるだろうし、理由も言わないで、理事会でできるんだが委員会でできないんだという理由がはっきりしないじゃないか。はっきりしません。
  41. 長田裕二

    委員長長田裕二君) まあ、それについての考え方は、私はいろいろあろうと思います。そのようなおさめ方というものも十分あるわけでございますので、ひとつ御賢察を願いたいと思います。
  42. 森中守義

    森中守義君 御賢察申し上げるほどあまり頭がよくないので、歯に衣を着せないで、もう一度はっきりしてくださいよ。だめですよ。それは何と言っても、あの状態がどうして動議を出さなければならなかったか、その周辺をもう少しはっきりさしてください、いいことかどうか。  それと混乱におとしいれたのは木村君ですよ。だれが何と言っても木村君が最大の原因者ですよ。その原因を究明しないで、さあ委員会進めましょうというわけにはいきません。各党間の話し合い、おおむねしさいに私どもも知り尽くしているつもり。けれども委員会で相当な部分、必要とする部分についてはさらに追及を加えると、こういう約束になっているんですよ。だからそういう意味では、私どもは党間の話を了承している。それがここでなされなければ意味がありません。混乱におとしいれたただ一人の原因者、むろんそれは委員長も責任があるが、木村君がしなければもめごとは起きなかった。  ことに考えてみますと、言うまでもなく内閣及び文教とこの委員会は、七月十七日午後三時三十分の状態は同一じゃありませんよ。審議が進んでおるじゃないですか。しかも加瀬質問の一番重要な点に触れたところで質疑打ち切りとは何ですか。他の委員会と同様にこれを見ていいんですか。だからそういう意味で、委員会運営について、これからも効果的により充実した委員会にしようというならば、当然なこととして、木村君の責任を関わるべきですよ。本来なら辞任すべきだ、更迭すべきだ、私どもは不信を持っている。木村君がこの委員会にいる限り、いかなる理事会の協議が成立しても、はたしてそのとおりに進められるかどうかわからない。それがそうじゃありません、これからそういうことはないと言うならば、七月十七日、原因をつくった原因者によって、もう少し明快にその当時の事情というものを釈明されてしかるべきだと思う。まあそこまで理事会で議論されたかどうか知りませんけれども理事会で陳謝が行なわれた、遺憾の意が表明された、なぜ委員会でできないのです。まあしかし、それはせっかく委員長お話でもあるから一応おくといたしましょう。けれども速記録にちゃんと残っている。私は自今、この委員会運営木村君が存在をする限り、この問題については釈然としない状態で進んでいくということを御了承願っておきます。そういう意味了承しておきます。  したがって理事会で遺憾の意が表明された、陳謝が行なわれたということは、とりもなおさず委員会に対してもそうであるというように了承していいんですか。これはっきりしていただきたい。委員長
  43. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 委員長が先ほど委員会に対しましてはっきり申し上げましたとおり、そのような趣旨であります。  なお、理事の人選等についても御発言ございましたが、これは心境の吐露として承りますが、ひとつ委員会の今後の円滑な運営については、全委員方々に、ひとつ御協力を心からお願いいたします。
  44. 森中守義

    森中守義君 前段のことは一応そういうことで了承いたしましょう。  ただし木村君に対する解任決議案、不信任案、こういう取り扱いは私のほうは留保いたします。これからそういうこともあり得るということと、いま一つ理事会で遺憾の意が表明されたということは、悪かったということであろう。悪かったということは、加瀬質問というものは打ち切らるべき状態ではなかった。けれども、他の委員会の道連れになったのか、自民党か田中総理か知らぬけれども、強引に他の力によって押えつけられた。もって言うならば、野党・社会党の質問が打ち切らるべき状態じゃなかったというように、当然私は認識すべきだと思うんですが、そのとおりですね。
  45. 長田裕二

    委員長長田裕二君) そういうことも込めましての、先ほどの私の見解の表明です。  それでは質疑のある方はどうぞ。
  46. 田渕哲也

    田渕哲也君 七月十七日に強行採決で、加瀬委員質問中に質疑が打ち切られたわけでございますが、その後、各党話し合いで、その当時の時点に戻して質疑を続行するということでございますから、本来なら加瀬委員質疑を続けていただくところでございますけれども、私の今後の日程の関係で、加瀬委員にかわりまして各位のお許しを得て質疑をさせていただきたいと思います。  国鉄運賃値上げ法案並びにそれに関連する事項について質疑を行ないたいと思います。  まず第一に、運輸大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、今回提出されております国鉄運賃値上げ法案は、昨年、国会において審議をして、審議未了、廃案となった法案とほぼ同じであります。この審議の過程を通じて国鉄の運賃値上げ法、さらに国鉄の再建法、こういうものに関していろいろな論議がされました。また世論の反映というものも当然あってしかるべきだと思いますけれども、今回のこの両法案の内容を見てみますと、運賃値上げは全く昨年の廃案になった法案と同じであるし、また国鉄財政再建法にしましても、確かに助成の金額こそふえておりますけれども、基本的考え方において、それほどの前進があると思えません。この点、私は納得ができないのでありますけれども、まず冒頭に、この点について大臣の御見解をお伺いをしたいと思います。
  47. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 昨年のいわゆる廃案、これと今回提案しております案との違いでありますが、いま田渕委員お示しのとおりに、基本的な考え方は変わっているわけではございません。  ただ私どもは、昨年の衆参両院の論議を通じまして、非常に示唆せられるところが多かったと思います。そういった点及びこの国鉄の運賃の改定につきまして、賛否両論の世論があることもよく知っております。そういった点が、今度の提案した案の中にどう反映されておるかというお尋ねでございますが、われわれとしましては、そういった点につきまして、反省すべき点は十分に反省をし、改むべき点は改めたつもりでございます。  まあ一、二の例をあげてみますと、たとえば昨年の提案では、実は政府としての姿勢がはっきりしてないという御議論がございました。つまり昨年出しました案は、自民党と関係閣僚の間で合意した方針が基礎になっておりました。今度は、これを提案するにあたりまして、政府全体として責任を負うという意味で、閣議の了解を求めたわけでございます。これは非常に、昨年の国会の審議における委員の御意見を参酌して、こういうことにいたしました。  それから国鉄のこの会計の状況でありますが、経営状況はますます悪くなってくることは事実でございます。ことに、昨年提案いたしました案が通過いたしませんでしたので、結局、いわば値上げが見送りになったわけです。その結果は、実はこれをきわめて平面的に計算をいたしますと、もう少し値上げ幅を多くしないと間に合わないという事態になっておるのであります。これは詳しく申し上げませんでも御想像していただけるかと思います。で、しかしながら、そういう点につきましては、一方において政府の助成を強化いたしまして、昨年の案との比較をしていただきますとよくわかるんでありますが、たとえば財政援助につきまして、昨年出しました案では、大体二兆円ぐらい程度でありましたが、今度は鉄建公団に対するものを含めますと、四兆六千億円程度の財政援助をするというように、昨年における委員方々の御議論のあとを振り返りまして、反省すべき点は反省して、あとう限り政府の助成を強化したという事実がございます。  それから運賃の値上げ幅でありますが、先ほど申し上げたように、本来であれば、昨年と同じような考え方でいけば、もう少しこの上げ幅を多くしないと財政再建に非常に困難であるという事実があったんでありますけれども、これ以上値上げ幅を多くいたしますことは、物価の動向に対しましても悪い影響があるんじゃないかというようなことを考慮いたしまして、この点は昨年と同様に、とにかく実質一五%ということにいたしまして、他はいま申し上げたような政府の財政援助を強化する。あるいは国鉄の経営努力に待つというようなことでまかなおうというような方針をとったことも事実でございます。  その他、たとえば地方閑散線についての方針を若干変えました。これはいままでにも御説明を申し上げましたので、るる申し上げませんけれども、方針は変わりませんが、やり方につきまして、運輸大臣があらかじめ何千キロというふうに予定をいたしまして、一方的な考え方でこれを廃止するというようなことは、これは避けるべきである。代替輸送ができるところはそれでけっこうなんであります、方針は別に変わりませんけれども、やはり地元の最後の足だけは守るようにしなきゃいかぬということで、地方閑散線の処理につきましては、これは国会において御議論のあったところであります。そういった点を十分踏まえまして、この方針を若干変えたというようなことがございます。  いずれにいたしましても、基本的な考え方は変わっておりません。おりませんが、この国会の御論議及び世論の動向というものにつきましては、十分これに耳を傾けまして、反省すべき点は反省し、改むべき点は改めまして今回の提案をした。私どもはさように考えておる次第でございます。
  48. 田渕哲也

    田渕哲也君 私が申し上げたいはの、この基本的な考え方は変わっていないと言われますけれども、もともと国鉄の状態がこのような状態に追い込まれた基本的な原因に対する解明というものが、十分にされていなかったと思うのです。そして今回の案も、そういう面について昨年の案と比べてより深く突っ込んで検討することも根本的な対策、考え方を確立することもなしに、赤字が増大した分だけつじつまを合わせるために助成金額をふやした、こう見られてもしかたがないのではなかろうかと思います。したがって私は、今回の案について、非常に疑問点がたくさんあるのでありますけれども、以下順を追って、質問を通じてそれを解明していきたいというふうに考えております。  まず初めに、現在の国鉄の赤字は四十七年度末において一兆一千六百四十億円、天文学的数字の赤字であります。国鉄が独立採算制をとる以上は、独立採算企業としてはもうすでに破産しておる状態と言っても過言ではないと思います。まず初めに、このような事態を起こした責任がどこにあるのか、だれがその責任をとるべきか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  49. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 国鉄が今日のような状態になりましたことについての最終的な責任は運輸省にあると思います。一方では、経営については国鉄自身が経営努力をしたのだろうと思いますけれども、それが予定のとおりにいかなかったということにつきましては、国鉄にももちろん責任があると思います。しかし、これは両者が別のように考えられますけれども、これはほんとは一体として考えるべきでありまして、国鉄自身は政府の指導のもとに、政府の監督のもとに企業経営をやっているわけでありますから、やはり最終責任は運輸省にあるというように、私は了解をしておるのでございます。
  50. 田渕哲也

    田渕哲也君 国鉄のこの赤字を、国鉄からいただいたこの財務諸表の資料について見てみますと、単に最近始まったものではありません。昭和三十九年から継続的に赤字が続いております。こういうものに対していままで何ら適切な施策が打たれていないからだんだん赤字が増大してきたのではなかろうかと思うのです。しかも、この途中に運賃の値上げが行なわれております。昭和四十一年には旅客で三一・二%、貨物で一二・三%、四十四年は旅客で一五%、それぞれ値上げが行なわれたにかかわらず、赤字は依然として減っておりません。ふえ続けております。この恒常的な赤字の原因というものは一体どこにあるのか、この点について、お伺いをしたいと思います。
  51. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 国鉄が単年度赤字に転落いたしました昭和三十九年、その後累積赤字になりました昭和四十年前後から今日までのいろいろな趨勢を見てまいりまして、なぜその間にその赤字の解消ができなかったかという御質問だと思います。これは責任問題は一応別といたしまして、全般といたしまして企業そのものが非常に、百年たちまして大きな曲がり角に来ている、いままでの持っていた使命が非常に変わってきているというところに私は根本的に大きな原因があるというふうに考えます。それを具体的に申しますれば、たとえば収入の伸びがない、あるいは資本費の負担が多い、いろいろございますが、要はやはり企業全体の趨勢というものが非常に変わってきている、その変わってきている企業の趨勢自体を、また違った理由からそれを修正することができない、すなわち企業的に見てきたものと、それを企業として見られない部分とが非常に出てきた、問題はそこの点にあるのじゃないかというふうに考えます。個別な問題はまた後ほど御質問によってお答えいたします。
  52. 田渕哲也

    田渕哲也君 もう少し具体的に答えていただきたいと思うのです。収入が伸びずに経費がふえれぱ赤字になるのはあたりまえであって、それは赤字の原因の解明にはならないと思います。それから、世の中が変わるというのも、これもあたりまえですから、もう少し具体的に、赤字の原因というものをどう見ておられるか、お伺いをしたいと思います。
  53. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 収入が伸びないということは需要が減ってきている、需要の伸びが少ないということ。すなわち、なぜ需要の伸びが少ないか。これは独占機関でない、競争機関が非常にふえてきている以上、競争の面からいって輸送量の伸びが横ばいである、あるいはダウンカーブになる、そういう原因一つあると思います。これは、もちろん企業努力その他によって埋めなければならない面と、それから企業の持っている本質的な交通革命に対する脆弱さ、弱さというもの、そこに一つ原因があるという意味で、二つの原因が考えられるというふうに思います。もちろん人事費のアップそのものは、何も国鉄がよその企業より非常にたくさんの人件費のアップをしたわけでもないし、よそ並みのことしかやってないわけでございますので、本来の、日本のほかの企業ならば、その人件費のアップを収入の伸びその他でもって、あるいは企業の合理化によって吸収していく、その吸収が鉄道事業においては非常にできにくかったということが原因である。これは弁解ではございませんが、事実を申し上げますとそういうふうになると思います。     —————————————
  54. 長田裕二

    委員長長田裕二君) この際、委員異動について御報告いたします。  岩本政一君が委員辞任され、その補欠として中村禎二君が選任されました。     —————————————
  55. 田渕哲也

    田渕哲也君 いま言われたことを、私はその赤字の出ておる根本的な原因とは思わないわけです。やはり鉄道という一つの事業があって、それを健全に経営していくために当然とられなければならない施策がとられていない。特に私のほうで、この数字の表をずっと見た結果における分析を申し上げますと、まず赤字の原因の第一は資本費用の増大ではないかと思うんです。工事費がどんどんふえてくるにつれて借り入れ金がふえてきております。また、それに従って支払い利息がふえてきておる。こういうものの負担というものができなかった。それから第二点は何かと言うと、本来国鉄が独立採算企業としては負担しなくてもいいものを負担しておる、いわゆる公共負担あるいは赤字政治路線の問題、こういうものの負担というものが積み重なってきて赤字の原因になっておる。それから第三点としては、先ほども触れられましたように、情勢の変化というものに機敏に対応するだけの経営努力が不足しておった、このように考えられると思うんです。  まず第一の資本費用の増大について若干質問したいと思いますけれども、特に三十六年ごろから工事費が急激にふえてきております。この理由について、まずお伺いをしたいと思います。
  56. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 昭和三十年代になりましてから、国鉄のやりました設備投資、まず第一に、何と申しましても戦災復旧、老朽取りかえということをやりました。これが三十二年度からの第一次五カ年計画でございましたが、これは一応四年間で曲がりなりにもやったわけでございますが、昭和三十六年度からいま先生のおっしゃった急激に工事費がふえているこの理由は、ちょうど昭和三十年代の後半から非常に日本の経済が伸びまして、客貨とも非常に輸送の需要が強くなってくるというふうなこととからみまして、主として東海道新幹線の建設という問題あるいは明治以来ほうってあった主要幹線の複線電化というふうな大きなプロジェクト並びに主として東京付近の大都市通勤の根本的な改善——と申しますことは、そのころまでは電車の車両の数をふやすということで大都市通勤に対応してまいったものが、昭和三十年代の下半期になりまして、どうしても根本的に線路をふやさなければだめだという問題に立ち至りまして、昭和三十年代下期から、思い切って、東京付近の約数十年間放置してあった線路を複線化するというふうなことに着手したわけでございます。したがって昭和三十六年度からのいわゆる第二次五カ年計画というものの中には、いま申しました東海道新幹線の建設、主要幹線の複線電化、それから大都市通勤の根本的な改善、主としてこの三つを取り上げまして、第一次五カ年計画、すなわち三十二年から三十五年までの投資の約倍の投資に急激にふやしたわけでございます。三十六年度には運賃を上げていただきまして、まだそのころは非常にほかの交通機関の弱いときで、運賃はほとんど利用減などなしで計算をしていいぐらいの収入がございました。したがって、そういった収入に見合いながら三十六年度は工事費をふやす、それからその後の三十七年、三十八年ということにつきましても、徐々に工事費をふやしつつありましたけれども、収入の増加が三十六年度の増加をピークとして徐々に悪くなってまいったわけでございます。したがって、その辺から工事費がふえる、反面借り入れ金がふえる、こういう現象になったというふうに考えております。
  57. 田渕哲也

    田渕哲也君 工事費がふえた理由は、それぞれ必要性があって工事をされてふえたと思いますけれども、少なくとも経営のバランスという面から見た場合に、いろいろな問題を生じておることは事実なんですね。特に売り上げと工事費との対比で見ますと、いままでは大体三〇%前後であったものが昭和三十六年を契機にして四〇%から五〇%台というふうに、国鉄の収入能力から見て工事費が非常に大きくなってきておる、これがまず第一の問題点ではないかと思います。  それから第二の問題点は、その工事費と借り入れ金増加額との関係、これも本来なら一定のバランスというものがあるべきだと思いますけれども、三十八年までは工事費と借り入れ金の増加額との関係は大体二分の一以下ですね。工事費の半分程度のものが借り入れ金の増加になっておる。ところが三十九年以降は急激に借り入れ金がふえまして、大体工事費と借り入れ金の増加額とがほぼ見合っておる。いうならば、まるきり借金にたよって工事をやったというような傾向がこの表からはうかがわれるわけです。したがって、それに応じて今度利息の負担というものが非常に大きくなって、利息の負担の増加額と赤字の額というものが大体見合っておる、こういうものが一体何を物語っておるのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  58. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 全体の傾向は先生のおっしゃったとおりでございます。三十九年度ごろから収益力が悪くなる。一方、本来の一般企業ならばそういう収益力が悪くなってきたものに対する設備投資というものはほとんど考えない。考えるにしても老朽取りかえ、あるいは減価償却の程度の設備投資だということであるべきなのに、国鉄に課せられた公共的な使命という立場から収益状態とは別に、すなわち収支状態とは別にいわゆる投資問題というものが考えられなければいけなかったという点に、非常に大きな一つの企業としての矛盾があるわけでございます。  しからばその矛盾を解決するのは、これは当然出資ということでもってカバーすべきである、一般の民間会社が、もしかりに収支状態が悪くとも、どうしても設備投資をしなければいけない。その点、設備投資がいずれ将来にわたって利益をもたらすということならば、必ずこれは増資をして、そして増資によって設備投資をする、これが普通のやり方だと思います。もう御承知のとおりでございます。そのために私どもといたしましても、昭和四十年の当初以来、政府に対して非常に出資の御要求いたしました。国鉄の資本金は、御承知のとおり、政府以外は何ものも出せないということになっておりますので、やはり政府に出資をお願いする以外にないということで、昭和四十年代にいろいろな形で政府出資をお願いいたしました。初めは建設線を借金でやるのは困るという意味で、建設線の政府出資をお願いし、徐々に新幹線の一部の政府出資あるいは最後にはもう通勤だけでいいから、せめて政府出資をお願いしたいというふうに変わってまいっておりますけれども、相当強力に政府出資をお願いいたしましたが、実際実現いたしましたのは昭和四十四年度——四十年代の中期になって初めて実現した。しかし一方輸送要請はふえる一方でございましたので、その間をやむを得ず借金政策でもってやってきた、こういうことでございまして、その数字はいま先生のおっしゃったとおりでございます。  したがって私のほうから見ますれば、借り入れ金の利子負担というものが非常にふえてくる、割合から申しましても、昭和三十年代の前期にはほとんど一〇%以下であったものが、急激に一〇%になり、すぐ一〇%をこしてしまうというふうな形になりまして、非常に利子負担の影響が大きくなってきている。それを出資ができないならば、せめて利子補給をしてほしいというお願いをいたしました。これも昭和四十三年度から利子補給の一部が実現したわけでございますが、非常に私のほうの、自分でもって増資をすることもできなければ、自分でかせぎ出すこともできないというふうな現状である以上、どうしても政府にお願いせざるを得ない。その意味で、いままでのお願いの実現が若干テンポがおくれた、そのために財政状態も残念ながら悪くなった、それをカバーすべき国鉄自体の収入努力というものは相当いたしたつもりでございますが、競争機関の前に一部打ちひしがれてだめになってしまったというふうな実情でございます。非常にお恥ずかしい実態を率直に申しましたが、いま先生のお示しになった数字を裏から申し上げますと、そういうことになるというふうに思います。
  59. 田渕哲也

    田渕哲也君 ただいま国鉄総裁が言われたように、本来出資によってやるべきものを全部借り入れ金にたよったという点の弊害が出てきておることは事実だと思います。いままでこの出資というものをしなかった理由はどこにあるのか、大臣にお伺いしたいと思います。
  60. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 別にこれは出資をすることが原則的にいいとか悪いとかという問題から出ているのじゃないと思うのです。初めから若干の出資はしているのですけれども、しかし、この出資によって設備の拡張費に充てるというようなたてまえをとらなかったということだと思います。このために、私は国鉄が今日のような財政状態になったことにつきましては、先ほども申し上げましたように、運輸省としましてもその点について、もっと各般の事情を勘案して、将来を考えればよかったなとは思います。率直に言って、そう思います。  しかし何しろ国鉄というものは電電公社と並びまして、公共企業体でございます。公共企業体で事業をやっておるのですから、できるだけ自分の力で企業経営をしていくというのが原則でございますから、そういうたてまえに立ちますと、この程度の助成をすれば、国鉄の財政は立ち直っていくのじゃないかというようなことを考えながら、今日まで来たと思うのです。しかし、そのほかに、出資の多い少ないとか、助成の多い少ないのほかに、非常に、先ほど国鉄総裁も申しましたように、輸送事情の変革があったわけです。そういったのが加わりまして、計画のようにはいかなかったということが結論だろうと思います。したがいまして、工事費をなぜふやさなかったのか、こういう御質問でございますが、これは原則として、あるいは考え方の基本的なものとして、出すのがいいとか悪いとかという問題ではもちろんこれはない、今日そういった点につきまして、十分将来を見て、反省をいたしまして、率直なことばで言うと、政府も反省をいたしまして、今度は思い切った出資もやり、助成もいたしまして、国鉄の努力と相まって財政再建に取り組む姿勢をつくろうというのが、今回の提案の趣旨でございまして、その点は、いままでのことはいままでのことといたしまして、こういった点について、十分な反省を加えて提案をしておるというように御理解をいただきたいと思います。
  61. 田渕哲也

    田渕哲也君 私はこれは非常に重要なことではないかと思うのです。やっぱり少なくとも独立採算制をとり、また国鉄の赤字の増大を問題にする以上は、必要な資本の調達について政府が考えなければこれは無理じゃないかと思うのです。だから公共事業だから出資でやっても借り入れ金でやっても、やるべきものはやらなければいかぬ、こういう考え方では独立採算制という非常にシビアな制度というものを維持できないのではなかろうかと思います。  赤字の原因も、数字で見る限りは、借り入れ金の増大と利子負担の増大というものが非常に大きな原因になっておるわけですね。だからこの基本的な姿勢を改めないで、国鉄の赤字を解消しようなんというのは、私はまず無理があるのではないかと思いますが、この点いかがですか。
  62. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) おっしゃることは、私もそういうことを認識しながらお答えをしたつもりなんですけれども、それならば極端に申しますと、工事費というものはすべて政府の出資でやれ、それから国鉄の今日まで財政悪化の原因になっておった利子、これは全額国でもってまかなえと、こういうようになりますと、これは再建には非常に楽になってくると思います。しかし先ほど申しましたように、やはり企業経営をしておるのですから、国鉄は国のそういう助成をもとにし適正な運賃のレートをきめまして、国鉄も努力をしながら進んでまいりますと、十カ年間にはこの財政再建ができるのだというめどをつけておるわけでございまして、これは右か左かという極端な議論ではなしに、政策としましては、国鉄が非常に公共性が強いものであるから、それに対しては国が当然一般会計から助成をしてしかるべきであるというような趣旨、それから、いままでにも公共的な負担を相当しておりますから、そういったものを取り返す意味において、助成もし、それから金利を下げるような方法もとるというようなことは、これは当然やるべきだということで、決して趣旨が、あなたと反対のことを言っておるわけではないのですが、それには政策的に考えますと、いろんな要素を勘案いたしまして、国鉄の財政再建に必要な措置だけは最小限度とろうとしておるということでございまして、私もおっしゃることはよくわかるのですけれども、今日出しておる趣旨は、そういうあなたのおっしゃったような趣旨を十分くんで提案をしておるということでございます。
  63. 田渕哲也

    田渕哲也君 私が言ってることと大臣が言っておられることと少し違いがあると思うのです。公共事業だから赤字が出るような仕事もやらなければならない。したがって赤字が出ないように政府が適当な助成をやる。ばく然とそういう考え方では私はやっぱりいけないのではないかと思うのですね。出すべきものは出す必要がある。出すべきでないものは出さなくてもいいわけですよ。そのけじめをはっきりすることが国鉄の独立採算制につながると思うのです。だから利子負担にしろ補助金にしろ、理由のないものをぼくは出す必要はないと思います。ただ理由のあるものはちゃんと出さなければならない。特にいま問題としておるこの出資金については、これだけ事業規模が拡大し工事費が増大しておるのに出資額がほとんど増加されていない、あるいは非常に微々たるものである。この辺に基本的な政府の国鉄に対する考え方の誤りがあるのではないか、この点をまず指摘しておるわけです。  だから新幹線をつくり、大都市の交通線をつくり、ばく大な投資が要るのに全部借り入れ金でやらしたところに赤字のまず一つ原因がある。これを反省されるならば、今度の再建計画では政府出資が一兆五千億ですか、十カ年間にやるという計画はされておりますけれども、私はこの金額にしたってこれで十分かどうか、非常に疑問だと思っておるわけです。十年間の工事費が約十兆五千億ですか、そのうちの一兆五千億を政府出資にすることではたして妥当なのかどうか。こういう考え方で適正な出資額は政府が出すという基本的な方針を確立しないと、幾らほかの面で努力をしても、この資本費用の増大によってどんどん赤字が出るということでは、これは政府としてやるべきことをやっていないのではないか。先ほど赤字の責任が運輸省にあると言われましたけれども、運輸省にあると言われるならば、この適正な出資額の確保ということをまず第一前提として確立をしてもらいたいと思います。いかがですか。
  64. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 先ほどお答えしましたのは、ちょっと御質問趣旨と食い違った点があるかもしれません。あらためて申し上げますが、根本は、おっしゃるように、たとえば新しいとの建設費が要る。これは公共のために必要なんだから当然その分は政府が出資すべきである、あるいは大都市の通勤通学輸送が非常に逼迫しておる。それに要する設備費というものは当然これは公共的なものであるから国が負担すべきである。いままでにもそういったことがあるが、そういった公共的な負担は国がやってしかるべきじゃないか。こういうように——あるいは地方閑散線についてもおっしゃらなかったけれども同じようなことが言えるでしょう。そういった個々の問題について一つ一つけじめをつけて、ここは補助をすべきである、ここは補助をすべからざるものであるというふうに分けて考えていったらどうかという御趣旨に受け取ったのですけれども、いまは。もしそうだとすると、そういったことを考えないで再建計画はできないのです。でございますから、私どものほうでは、そういった国鉄が当面しておるあらゆる問題をとらえまして、先般も申し上げましたが、全体として国鉄が十カ年間に再建計画ができ上がってそれが実行できるような助成措置を講じようということを提案しておるわけでございまして、おっしゃるようなことは、今度の提案の中には実質的には全部含まれておるのだ、私はそういうふうに考えておるわけでございます。  結果的に、ごらん願いましてもわかりますが、おそらく先生は、こういうような公共的な施設なんだから工事費に対して、政府が一体何%ぐらい支出するのが一番いいのだ、妥当なんだと、こういうことをおっしゃりたいんじゃなかろうかと思うのですけれども、そういうことでございますと、結果的に見ましても、国鉄のそういう公共的な事業についての、公共的な仕事についての政府の資本費の出し方というものは、決してほかのものには劣らないと思っております。というのは、大体工事費に対しまして、計算してみるとすぐわかるのですが、一五%ぐらいの出資をしておるわけです、今度の十カ年計画では。一五%です。これはほかのいろいろな公共事業と比べていただきますと、そんなに低いものではないということがわかるわけでございます。高速道路とか埠頭等に対しましても、あるいは道路公団に対しましても、資金コストが、実は国鉄の資金コスト実質三%と比べますと、最終資金コストが道路公団については六%なんですね。私はこういった点をごらんになると、結果的に見ても今度の再建十カ年計画というものは、ほかの公共事業に比しまして非常に低位にあるというふうには考えられないのでございます。やり方についてはいろいろございましょう。しかし今度提案しておりますのは、先ほど申し上げましたように、全体として総括的に、国鉄の財政が再建されるように、十カ年間で国鉄が自分の本来の機能を発揮できるようなところまで財政再建をしようというにはどうしたらよいかということで、総括的にこれを判断いたしまして、今度の提案をしているというように御理解をいただきたいと思います。
  65. 田渕哲也

    田渕哲也君 確かに全体を見れば包括的に考えるということになるわけですけれども、私はさらにそれを分析して、一つ一つについてお伺いをしておるわけです。だから公共負担の問題はまだいまのところ触れていないわけです。いま触れておる問題は、国鉄が事業を拡大する場合にその必要な資本というものを——もちろん借り入れ金にたよる部分もかなりあると思います、これは一般の企業でもあるわけですから。だから借り入れ金に依存するのが全然だめだということを言うつもりはありません。ただ、少なくとも自己資本の分は政府がめんどうを見て調達する義務があるのではなかろうか。民間のようにほかから増資して資本を持ってくるわけにはいかないわけでしょう、国鉄は。だから新幹線をつくるとか、大都市交通線をつくるとか、大きな事業をやる場合に、全部借り入れ金でなくて、そのうちの適正な額というものは自己資本として調達しなければならない。これは政府がめんどうを見なければだれがめんどうを見るかということなんです。  そういう面を考えてみますと、いままで政府はこの面について何もしなかった。まあ今後は一兆五千億とかなんとか言われておりますけれども、いままでは新幹線をつくっても全部借り入れ金でしょう。この点はいかがですか。
  66. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) どうも何もしなかったと言われると多少異論があります。結果として、非常な赤字を出しておる国鉄に対して配慮が十分でなかったということについては、先ほども申し上げましたように、これは私も別に異存はないんです。ただ、いまおっしゃったように、民間の企業と違いまして、借り入れ金といいましても、国鉄自身がかけ回って資金を集めているわけじゃございませんで、政府出資のほかに、今度も非常にはっきりしておりますけれども、財投で十カ年間に九兆何千億というようなものを予定しております。ですから、われわれのほうとしては、国鉄が一般の企業と同じように、公共性のない企業と同じように、自分の力で国鉄に資金調達をしてこいというようなことは、やらしておりませんし、また今後もやらそうとは思っておりません。その点では、私は国鉄は、予定された工事については、そういう資金をもとにして、これはやっていけると思っておりますし、それから内容について、そういうことをした結果、また大きな赤字を出すんじゃないかというようなもし御懸念があるとすると、これは先ほど申し上げましたように、そういうことのないように、出資とか、あるいは利子の補給とか、いろいろなものを合わせまして、そういう結果にならないようにという配慮を十分にしておるというふうに考えておるわけでございます。   〔委員長退席理事江藤智君着席
  67. 田渕哲也

    田渕哲也君 財投等で有利な融資をやってもらうこともけっこうですけれども、理屈として、やはりある程度のものは出資でまかなうということは筋が通ると思うんです。それだけのまた試算が国鉄にできるわけですから、その分国が出資をしても差しつかえがないと思うんです。今後については大体一五%ぐらいと言われましたけれども、やはり工事費に見合った適正な額は出資によってまかなうということをやっぱり堅持してもらわなければならないと思います。  それから、次に進みたいと思いますけれども、次は、先ほども触れられました公共負担であります。特に、公共負担の中で通勤通学定期の問題を取り上げたいと思いますけれども、これは現在割引がされております。法定割引限度というのは大体三カ月まで五〇%、六カ月は六〇%というふうになっておるわけですけれども、この割引率の根拠というものはあるわけですか。
  68. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) ただいま先生の御指摘のとおり、国有鉄道運賃法におきまして、いわゆる割引の法定限度があるわけでございます。これは運賃法が制定されました昭和二十三年当時の割引率の最高、最低率と申しますか、これを通勤定期で申し上げますと、割引率が最低が五〇%、最高八九%という割引率があったわけでございまして、そういった当時の五〇%という実情をしんしゃくして法文化が行なわれたというふうに聞いておりまして、御指摘のような詳しい根拠というようなものがないように承っております。
  69. 田渕哲也

    田渕哲也君 割引の趣旨というものはどういうものですか。
  70. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) いわゆる通学通勤定期の割引の性格でございますが、これにつきましては、いわゆる顧客を誘致するというような考え方、あるいは定期的にひんぱんに利用していただくという乗客の負担の軽減をはかるという趣旨から設けられたものだと、最初制定された当時はそうであったわけでございますが、現在におきましては、顧客誘致のための割引という性格はほとんどその実を失っておるのではないかと考えるわけでございます。特に通学定期というようなものにつきましては、教育の普及、奨励といったような、文教政策といったような配慮から、高い割引率が適用されておるわけでございますし、通勤につきましても、そういったやはり社会的な政策という意味が加味されてきたわけでございます。特に通勤定期につきましては、これが大半企業体において負担されるという実情もございまして、四十一年、特に四十三年におきまして割引率を改正して、今日に至っているという実情でございます。
  71. 田渕哲也

    田渕哲也君 国鉄の広報部が出しております「数字で見た国鉄」という資料がありますね。この中に過去十二年間の公共割引が八千億円という数字が出ておりますけれども、この八千億円というものは、これは法定以外の割引額のことですか。
  72. 原岡幸吉

    説明員原岡幸吉君) 法定限度以外の、それ以上の割引額でございます。
  73. 田渕哲也

    田渕哲也君 当然これは公共的な色彩が強いものだと思います。それでもしかりに、これも先ほど申し上げましたように、独立採算制をとる以上は、国鉄が負担すべきものではないと思います。そうすると、これで法定割引までは国鉄が負担するとしても、それ以外のものをもし国あるいは地方公共団体が負担しますと、八千億円というものか浮いてくるわけですね。いまの四十七年末の累積赤字は一兆一千億ですから、八千億円がもし国鉄の収入になったとすれば赤字がうんと減るわけです。それに先ほど言いましたように、政府出資が適正に行なわれて利子負担が軽減されておれば、一兆一千六百四十億円といっても、ほんとうは赤字はないのだと言ってもいいんじゃないかと思いますが、この点はいかがですか。
  74. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) ただいま、公共割引のまず内容でございますが、これには法律に基づきます通勤通学、こういったものもございます。あるいはそれ以外の、たとえて申し上げますと、学生割引のように、一種のやはり旅客誘致というような意味の加味されたものもございます。あるいは貨物に対するいわゆる政策割引あるいは新聞、雑誌等に対する割引、いろいろあるわけでございまして、過去の沿革に基づきまして、一律に公共割引と申し上げましても、その濃淡の度合いが違っておるわけでございます。私たちとしましては、急速にこれを是正するというわけにはまいりませんが、貨物につきまして、いわゆる二十五年以来ございました暫定割引あるいは四十一年以来できました特別割引につきましては、これを四十六年の十月と昨年の十月、二回に分けまして割引を全廃したという経過もございますが、これを先ほど申し上げました通勤割引の率の是正といったようなこととともに、漸次是正していくという方向でまいりますとともに、新しく、たとえば社会政策的あるいは文教政策的に今後出てくる問題につきましては、ひとつそれぞれの所管省において、広い意味からお考えいただきたいという立場でございます。  運輸省といたしまして、国鉄に対する助成でございますが、先ほど大臣が申しましたように、個々の項目につきまして、それをとらえて助成するという方策も確かに外国におきましてはあるわけでございますが、日本におきまして、今後さらに輸送力の増強あるいは改善をはかっていかなければいけないという日本の国鉄の特殊性からいたしまして、これを広く包括的に立て直していこう、あるいは工事費の金利を是正していこう、こういう幅広い意味から、国といたしまして政策をとってきたわけでございまして、しかも四十四年度の現行再建計画と比べまして、現在御審議いただいております案におきましては、従来ございませんでした出資というものも一兆五千億あるいは過去債務につきましても全債務にわたるといろふうに、あるいは工事費の金利負担も最初は六・五%という再建計画でございましたものを三・五%までにする、こういった幅広く全般的に助成していくという方策をとったわけでございます。
  75. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は去年の再建案も、今回の再建案も、一番重大な欠陥というのは、そういう非常に問題をあいまいにしたまま補助をふやしていこう、そういうところにあると思うのです。したがって、やはり国鉄経営に対する基本的な方針というものをはっきりしてやらないと、ばく然としたまま、とにかく補助金をふやしたり、融資をふやせばいいというような考え方では、私は独立採算制というものは維持できないと思うんですね。独立採算制というのは、一定の適正な条件のもとに経営努力をすることによって黒字になるということではないかと思うんです。全体を見て赤字になったから適当に補助をふやそうとかいうようなことでは、これは独立採算制じゃないと思うんですね。言うならば、政府の政策いかんで黒字か赤字かはきまるわけでしょう。こんな独立採算制というのはないと思うんです。  この再建案の一番問題点は、確かに四十四年の再建案、それから昨年の再建案、ことし出された再建案、工事費への利子補給にしましても、四十四年のときには十年間で九百五十六億円、昨年のやつが十年間で六千五百九十三億円、今回のやつは一兆五千億円、どんどん額だけはふえてきております。また、そのほかのものについてもそうです。どういう理由かわからぬけど、とにかく額だけどんどんふえてきておる。こういう調子では、この額の決定によって国鉄の収支というものは左右されるわけで、国鉄の経営努力というものとは無関係になると思うんです。そういう独立採算制というのは無意味じゃないかと思うんですが、いかがですか。
  76. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 独立採算制というものについての考え方の問題ですが、今日の国鉄は、基本的にはやはり公共企業体として独立採算制をとっておることは事実でございますけれども、それが今日ではくずれております。純粋な意味で独立採算制であるということは今日言えないと思うんです。これだけ、まあ額が少のうございましたけれども、いままで何年間も政府の助成を受けて、それによって経営を維持しておるんですから、その点においては、もう独立採算制を、正確な意味でですね、厳格な意味で独立採算制ということはできないと思います。  しかしながら、前段でおっしゃいましたように、何かいかにも、まあ悪いことばで言えば、出たとこ勝負で補助をしているじゃないかと、そんなことではほんとうに再建できるのかと、こういうような御質問の御趣旨だったと思いますけれども、そうではございませんで、国鉄が大いに企業努力をしてくれるということは、やっぱり大前提でございます。また、これはいま問題になるわけですけれども、利用者の方にも最小限度の負担をしてもらうということも必要だと思います。しかし、その前に、政府としましても、国鉄の経営状況を見て、このくらいの助成をしないと再建できないんだということを見まして、その再建に必要な、何しろ一般会計でございますから、税金から出すんですから、これも最小限度に食いとめなきゃならぬと思いますが、しかし再建に必要な助成は、これはもう惜しんではいけないということで今回のような提案をしておるということでございまして、国鉄の経営というものがいろんな面で、これは社会情勢、経済情勢の変化に応じ変でわってくることはこれは事実なんでございます。毎年毎年、単年度予算で、ここの線はよくなったからどうしようとか、この線は悪くなったからどうしようとかいうようなふうにやっておりましては、その年その年の分はできますが、国鉄がほんとうに財政を再建して機能を回復するというのには、それではほど遠いということで、法律にも書いてございますように、十カ年という長期でありますけれども、その長期間を見通して、その間に国鉄の財政を再建さして、何とかその機能を回復させようというように法律にも規定をしておるわけでございますから、十カ年計画という長期の再建計画ということを考えますと、いまおっしゃったようなのとは、少し考え方が違いまして、その期間内に国鉄も努力をし、そして利用者にもある程度の負担をしてもらいますけれども、政府もこれに必要な助成を惜しみなくしようというようなことで計画を立てておるわけでございまして、そのために独立採算制が失われたというような問題とは、ちょっとこれは問題のとらえ方が違うんじゃないかと思いますし、また、これは決してその場限りの思いつきでやっているというようなことではなしに、そういう将来十年間を見通しての計画を立てて、それにもうみんなが、政府も努力をするし、国鉄も努力をしよう、こういう姿勢であるということを御了解いただきたいのでございます。
  77. 田渕哲也

    田渕哲也君 私はそういう非常にばく然とした、根拠も何もなしに補助金をふやしたり、そういうもので国鉄の再建ができるというのはおかしいと思うんですね。それならば、初めから独立採算制をやめれば、放棄すればいいわけです。全部国がめんどうを見ればいいわけです。これ、再建案を比較してみると、いかにずさんであるかということがよくわかるわけです。四十四年の再建案では、工事費への利子補給は六・五%をこえる部分となっておったわけですね。三年後の四十七年——去年のやつは四・五%をこえる部分、平均でですよ。今回のは三・五%、どういう根拠でこういうふうになるのかわからないわけです。とにかく赤字、これじゃやっていけぬからどんどん減らそうということでしょう。これはどうせ来年か再来年になればまた変えて、三・五%の利子負担もできない、二・五%にしよう、こうなる可能性がいままでの傾向から見ればうかがわれるわけです。それから財政再建債への利子補給にしましても、四十四年の案では、十年間に一千五十三億円、これは利子補給ですね。去年の案では三千四百億円、ことしの案では、これが五千三百億円、全く無原則にどんどんどんどんふえていっておるような気がするわけです。これではイタチごっこで、いつまでたっても国鉄の再建なんて私はできないのではなかろうかというような気がします。  少なくとも独立採算制をとる以上は、その収支について、赤字になることについて、責任をとるということがなければ無意制だと思うんですね。赤字になっても黒字になっても、これは政府の助成額が少なかったからだとか、いろんなことで言いのがれができるようでは独立採算制の意味がないと思うんです。で、少なくとも現在の国鉄においては、経営の収支について、赤字になったことについて責任をとるというシステムがないと思うんですね。それはいかがですか。
  78. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 経営が悪くなったので責任をとるということは、これは法律上はもちろんございませんが、しかし、これは経営者としては当然その責任をとらなきやならぬと思います。その責任のとり方の問題だと私は思います。そういうような赤字になっておるんだから、これをどうしてその赤字を克服していくかということについて、あらゆる努力をし、実行可能な方法を次々に実行していくということが経営者としての第一の責任ではないかと思っております。その前に、いろいろ先ほど来おっしゃっていることでございますが、私は根本的には同じようなことを考えているんだと思うんですけれども、方法論として、田渕先生の言われるようなのとは必ずしもこれは一致しないんです。今度出しておりますのは、先ほど来繰り返して申し上げておりますように、社会情勢、経済情勢というようなのが、変動がありまして、個々の問題について言えば年ごとに違うだろうと思いますが、それを十年間を通じまして、できるだけ的確な材料をもとにしてその収支の予想をいたしまして、それで国鉄がとにかく無原則ではなしに、原則は国鉄がともかくその赤字から脱却するんだと、それにはどうしたらいいかということを考えて、あらゆる方面から、先ほど申し上げたような助成策を講じていく、その足りないところは運賃の改定によって補ってもらうということを考えておるということでございまして、これは、まあごく端的に言うと、工事費は何%政府が出資するのが当然であるとか、利子負担は三%なら三%にすべきであるというような原則を立てませんでも、国鉄が究極的に十カ年間でその赤字が克服されて、再建の見込みが立つということをめどにして政府は考えておるということでございますから、おっしゃるように、これは私は無原則ではないと考えております。そういうことを大原則として、それに必要な施策をあらゆる方面から講じておるんだというように御理解をいただきたいと思います。
  79. 田渕哲也

    田渕哲也君 私はその原則があるとは思えないわけです。なぜこういうことを言うかというと、運賃値上げをなぜやらなければならないか。それは国鉄がこれだけ赤字で困っているから運賃値上げをせぬといかぬ。その赤字の出ておる原因はどこにあるか。そういうことをずうっと考えていくと、それが、運賃値上げはこれだけはどうしても必要だという、その必然性につながらないわけですね。なぜなら、政府がもっとやるべきこともあるではないか。それから——もし独立採算制をとらないなら問題はないと思います。幾ら赤字が出てもそれはかまわないということなら、運賃を値上げしなくてもいいではないかということになるわけですけれども、運賃値上げの一つの根拠として、独立採算制をとっておる企業の当然の収入をまかなわなければならない、それがあるわけですね。独立採算制をとるというのは、やはり赤字、黒字について経営の努力あるいは経営の節度という面で一つの目安を持つということでしょう。公共事業ですから民間の企業とは違います。民間の企業のように利潤追求の目的でやることではない。しかし、それなら何のために独立採算制をとるかというと、経営が適正に行なわれるか行なわれないか、その一つの目安として独立採算制がとられると思うんですね。  ところがこの政府の助成にしても出資にしても、全然これが無原則で行なわれると、どこからどこまでが適正かわからなくなる。公共負担にしても、無原則に国鉄に押しつけられると。これだって独立採算制の基礎はもうすでにくずれておるわけです。だから私の申し上げたいのは、少なくとも国鉄の財政再建ということをやるならば、こういう点をはっきりしないといけないのではなかろうか。いままでのように、ずるずるやっておると、これはどこからどこまでが国鉄の責任で、どこからどこまでが政府の責任かけじめがつかない。それから、どこからどこまでが受益者負担で運賃値上げを当然かぶらなければならないかというけじめもないわけですね。それなら何も運賃値上げを二〇何%もしなくてもいいではないかという議論が出てきてもおかしくはないと思うんです。こういう点について全然はっきりしていない。  というのは、独立採算制をとりながら、その経営収支について責任を持つ人がいないということは、私は非常におかしいことではないかと思うんですが、これはいかがですか。
  80. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 収支について責任を持っているのは、これはやはり企業をやっておる国鉄だろうと思いますからね、国鉄の総裁としましては、そういったものを絶えず見ながら予算上求められておるような収入をあげるということについて、全力を尽くさなければならぬということは当然だろうと思うんです。  ただ、いま申し上げましたように、国鉄の今日の経営形態ですね、これは電電公社と同じように、公共企業体で独立採算制を原則にしているということは、いまのどの法制をごらんになってもよくわかると思います。そのとおりだと思います。独立採算制を基本にしておる。ただ独立採算制というのは、たとえば電電公社なんかでいいますと、非常に公共的な考え方で、どんないなかにあっても、どんな山間部でも電話をつけていくとか、電報をいつでも配達するんだというようなことをやっておりますけれども、しかし、それに対しては国の補助をしてないんです。ただ設備投資に対して財投を幾らか出すとか、借り入れ金のあっせんをするとかというようなことだけでしょう。しかし国鉄は、それではもう国鉄の再建はできないということでございますから、先ほど来るる申し上げておりますように、助成もするし、資金の融通についても、できるだけ長期、低利の資金をあっせんをし、しかも利子補給までして負担の増加を助けていこうというのでございまして、独立採算制を基本にしてはおりますけれども、純粋に学問的な意味で現状が独立採算制であるということは言い切れないような状況でございます。  で、ここのところは政府の政策問題でございまして、先ほどいろいろ公共負担等についておあげになりましたが、そういった点についても申し上げられることだと思いますけれども、それならば一体、運賃は公共性が強いんだから運賃なんか上げなくても国が全部負担したらいいじゃないか、こういうふうな極端な議論もこれは議論として起こり得るかもしれませんが、しかし国鉄の運賃、これはいかに公共料金でございましても、公共料金だからといって、コストがどんどん上がっていくのに、それに見合った運賃の改定をしないということになりますと、これはむしろ全体からいいますと、物価体系から見まして、かえって私は、逆に混乱するようなことになるのじゃないかと考えます。でございますから、公共料金ですからなるべく引き上げの率を低くする、それに必要な国鉄の経営に対する、赤字に対する補助というものは厚くするとかというふうな、あらゆる政策的な考慮をいたしまして、本来であれば、企業としては、もっと何倍かの改定をしないととてもやっていけないという状況でございますけれども、それを政策的に政府が考慮して、今度提案しているような運賃の引き上げで、これでひとつ利用者の方にもしんぼうしてもらいたいと、こう言っているわけでございますから、この点は政府の補助もなしにやっておる民間の会社のコスト、したがって、そのコストから出てくる価格というものとは、これは違って、多分に政策的な考慮が入っておるというように御理解いただきたいのであります。
  81. 田渕哲也

    田渕哲也君 私はいまの国鉄というのは、ちょっと一言で言うならば経営者不在であると思うのです。まあ一応形の上では国鉄総裁が経営の責任者ということになろうかと思いますけれども、ところが国鉄総裁は国鉄の赤字について責任をとれる立場じゃないと思うのですね。いまの一兆何千億の赤字が磯崎総裁の責任だとはだれも言えないでしょう。そういうところに非常に大きな問題点があると思うのですね。たとえば料金決定は、これは国会できめます。それから新線建設も総裁の権限じゃない。経営の基本的なことについての権限は、みな総裁からはずされているわけですね。言うならば管理者ではないかと思うのです、国鉄総裁というのは。そうすると、やっぱり国会に法律を提案し、あるいはいろんなことをきめる権限を持っているのはほとんど運輸大臣である。運輸大臣がほんとうは国鉄の真の経営者です。ところが運輸大臣は国鉄のことばかりにかかわるわけにいかないし、国鉄が赤字になっているから責任をとってやめたという運輸大臣もいないわけですね。こういうところで責任の所在が非常にぼかされておる。  それで私の一つ意見ですけれども、これはなぜこういうことになっているかというと、国鉄のような公共企業体は、公共性とそれからもう一つは独立採算制という矛盾する二つの要素を要請されておるわけです。この二つは矛盾するものですから、これはどこかで線をはっきり引かないと、どっちもあいまいになって責任の所在がぼやけてしまうと思うのです。私はこの二つの責任をやはり分離するのが一つの方法ではないかと思うのです。国鉄の持っている公共性というのは、言うならば政治責任だと思うのです。たとえば赤字路線——地方の足のないところに赤字路線を維持するというのはこれは政治責任なんです。あるいは通学定期の割引をするというのも政治責任である。あるいは食料品の物資を安く輸送するというのも政治責任である。こういう問題。独採制というのは私は経営責任だと思うのです。これをはっきり分離する必要があるのではなかろうか。現在は独採制をとっている国鉄に公共性の政治責任までおっかぶされておる。だから非常に不合理なことになっておる。こういう点があると思うのですが、ここで二つの責任を分離して、独立採算制の経営責任は国鉄総裁に負わせるべきではなかろうか。そのかわり政治責任は、これは政府が負うべきではなかろうかと思うんです。そうすると、赤字路線の問題にしても、国鉄の経営上、本来ならこういうところには引けないという路線でも、政治上必要があるならば政府が幾らかの補助を出そうと、だから引いてくれと、やってくれということを国鉄に頼むと、まあこういうことで政治責任と経営責任というものをはっきり分離しないと、せっかく独立採算制をとっても、その妙味は何もない。赤字がどんどんふえて、今度は政府が無原則にその穴埋めをするということにならざるを得ないと思うんです。この点について、やっぱり基本的に考え直す必要があるのではなかろうかと思いますけれども、どう考えられますか。
  82. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) これは根本的には、今日の公共企業体というものをどういうふうに見るかということに帰着するんだろうと思うんですね。国鉄は公共企業体でございますけれども、まあ非常に経済情勢が変わってまいりましたような事情もあり、それから先ほど来御指摘のような、非常に公共性がどんどんどんどん累加してくる、にもかかわらず政府がそれに対する配慮が足りなかったというような点も重なりまして、純粋の学問的な意味における独立採算制というものは今日とり得なくなってきたということがあるんだろうと思います。  しかし一般的な議論としましては、私はおっしゃるように、独立採算制というものと公共性というものとは相いれないものなんだというふうに私は考えないんです。この点は残念ですけれども意見が違うように思います。現に、これは先ほど来例を引きましたが、電電公社にしましても、あるいは公共企業体でございませんけれども、NHKのような経営にいたしましても、これは全部が全部公共的なものではないとは言えないんだろうと思います。非常に公共的なサービスをたくさんしておりますしね。しかし独立採算制をとっているわけです。これは私は、お互いに、学問的に言っても、また現実の問題にしても、どうしてもこれは相いれない要素なんだと、独立採算制というものと公共性というものは相いれないんだというふうには考えられないと思っておるわけでございます。   〔理事江藤智君退席委員長着席〕 しかし今日の国鉄については、その二つの、非常に強い公共性というものと、それから企業性というものを持っておることは事実でございますから、その二つの要素を十分に加味して仕事をさせるのには、現在の国鉄については、必ずしも自分の力だけではいかない部分が非常に多くなってきておる。したがって、この公共性を大いに発揮させる意味におきまして、国がめんどうを見ていかなきゃならぬというのは、これは当然だということになってくると思うんですが、この点は、あるいは私の聞きそこないだったかもしれませんが、あなたのおっしゃるのを聞きそこなったかもしれませんが、私は公共企業体というものをそういうふうにとらえるのが、日本のいまの制度下における現実であろうと思っております。もしまた、私の聞きそこないであれば、御質問くださればお答えいたします。
  83. 田渕哲也

    田渕哲也君 公共性と独算制とは全くすべてが違背するとは言いません。ある場合には公共性を持ちながら独算制の範囲内でやれる部分もあるかと思いますけれども、しかし相いれざる部分が出てくるということは事実だと思うんですね。これをあいまいにしておるところに私はいまの国鉄の非常に大きな問題点があると思うんです。これはぼかしておいたほうがほんとうは都合がいいと思うんですね、運輸大臣にしても国鉄総裁にしても、きわめて都合がいいんですよ。政治家はどんどん自分の選挙区に赤字路線を引く、国鉄総裁はその責任はないわけですから。それで赤字が国鉄につけが回る、今度はそのつけを国民に回すと。まあ非常に政治家のためにはうまくできているかもわかりませんけれども、私はやっぱり国鉄という非常に大きな企業体あるいは日本の経済の中に占めるウエートを考えた場合に、やっぱり国鉄というものがいかに合理的に効率的に経営されるかというのが、日本の国民経済に取ぼす影響が非常に大きいと思うんです。いまはこれがあいまいにされておるがために、新線建設にしても非常に納得のいかないようなかっこうで行なわれるし、それで国鉄の内部の経営努力にしましても非常に問題がある。  こういうところが、今日の国鉄を生んだ一つのガンではなかろうか、そう思うからこういうことを申し上げているわけで、だから単に数字上だけつじつまを合わして再建ができるという問題じゃなかろうと思うんです。だから国鉄の経営のあり方そのものについてメスを入れなければならない時期に来ておるのではなかろうか、まあこういう気がするから申し上げておるわけで、だから大臣が言うように、何でも包括的につじつまを合わせればいいわというような再建案では納得がいかないと思うんですがね。
  84. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) とにかく数字で、ただ結末を合わせているという趣旨ではございません。そういうような態度ではなしに、国鉄の再建につきましては、政府としては、ほんとうにあなたのおっしゃるように、最終責任は政府です、運輸大臣です。でございますから、その責任を感じて何とか国鉄の財政再建をして——財政再建をすること自体が目的じゃないのですけれども、結局財政再建をして、それによって国鉄が本来公共輸送機関として持っておる使命を遺憾なく発揮させるのにはどうしたらいいかということについて、つじつまを合わせるのでなく、真剣にこれ考えて、こういう提案をしておるのでございます。それについてもいろいろ御意見があると思います。あると思いますけれども、いまのところ私どもはこういう提案をいたしまして、とにかく利用者の御協力も得ることができれば、それによって十年先には国鉄が財政再建をして、その体質の改善もできて、国民の期待にこたえられるだろう、こういうことを真剣に考えてやっておるわけでございます。その点はおっしゃるように、そんなにこれをいいかげんに取り扱っておるという気持ちでは毛頭ございません。
  85. 田渕哲也

    田渕哲也君 ことばの上だけでそう言われますけれども、少なくともこの再建案を見る限りは、私は何ら理論的根拠がないと思うのですね。とにかく金額だけはどんどんふくらんでおるというような気がするわけです。これは何のために金額がふくらんできておるかというと、赤字がどんどんふえておるからつじつま合わせのために金額をふやしておるとしか考えられないわけです。だから、私は国鉄の体質そのものをやはり変えてもらわなければならない。やはり内部では、内部の経営努力というものは、一般の民間企業と同じように、やはり収支という面について、もっと責任がとれるような体制をつくるべきではなかろうか。そのためには政府は出すべきものは出す、出すべきでないものは出さない、そういう線をはっきり引くべきではなかろうかと思うのです。  それから新線建設その他にしましても、いまはだれの腹も痛まないから無責任に赤字新線がどんどんつくられるわけですよ。だから赤字新線をつくるならば、それに応じて、この線一本について政府は予算をどれだけ出すということを国鉄との間で話し合いをつけるべきじゃなかろうか。その予算を獲得するには今度は大蔵省を説得しなければならぬ。国会で審議しなければならぬ。そうすると、政治家も無責任な新線建設ができなくなる。こういう歯どめをどっかにつくらないと、いまのようなどこに責任があるかないかわからないような状態の中で赤字路線ができたり、あるいは国鉄内部のいろんな問題があったりするというのは、ちょっと値上げを強制される国民としては納得がいかないと思うのです。いかがですか、こういう点は。
  86. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) いろいろな方面からの御質問でございますから、十分お答えができないかもしれませんが、私は、先ほど申し上げましたように、今度の提案というものは、そんなに場当たりのものじゃないと思っているのです。これでとにかく短期間にはこれは再建できないんです。できないですから、法律にも書いてございますような十カ年という期間を予定いたしまして、その間にこういう方策をとれば国鉄の再建は可能である。国鉄の再建が可能であるということは、さっきもちょっと申し上げましたが、もっと具体的に申し上げると、これは方々でいろんな論文も出ておりますし、主張もされておりますように、国鉄が公共輸送機関として何をなすべきか、何が本来の一番の使命であるかというようなことを考えますと、やはり都市間の輸送でございますとか、大都市における通勤通学の輸送手段を確保することでありますとか、貨物についてはもっと大量な、定時性を持った、確実な輸送体系をつくることであるとか、そういったことについて、国鉄が今日まで努力はしておりますけれども、国民の要望からいうとほど遠い。これを早く回復さして国鉄のいわば体質改善をやって、そうして国民の要望にこたえさせようというのがねらいでございまして、そういう点を実現させるのには一体何をなすべきかということを真剣に考えて、今度の提案をしておる次第でございます。この点は繰り返し申し上げたようなことでございますから、これ以上は申し上げません。  それから赤字線の問題についてお触れになりましたが、この赤字線の問題も、これは制度がいいとか悪いとかということも、あるいは御質問にはございませんでしたが、関連しているのかもしれません。国鉄の関係の法律をお読みになりますと、政府がかってにそういったものをきめて、そしてやっているわけではなくて、やはりこれは国会の審議を経ているわけでございます。  その中で一番緊要であると思われる路線に対しまして、漸次これを実現さしておるというのが現状でございまして、ことに私はいまおっしゃった中でこれはごもっともであると思いますのは、この実行方法について、とにかく非常にたくさんの予定線がございますから、それにまんべんなくわずかな予算を配分していたんじゃ経済効果があがりませんから、経済効果のあがるような路線ですね、それが国土の開発にも地域住民の福祉にもつながっていくというようなものについて、特に重点的にこれは処理をしなければならぬという方針で臨んでおるわけでございまして、これはむしろそういう新線が絶対にいいとか悪いとかという問題ではなしに、それをどういうふうにして建設に持っていくかというその実行方法の問題についていろいろ御議論があるんじゃないかと思うんですが、これについてはいま申し上げたような方針で対処をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  87. 田渕哲也

    田渕哲也君 再建案が場当たり的ではないということを言われますけれども、私はどうしてもそれは納得できないわけです。  四十四年の再建案において財政補助ですか、財政措置で利子補給とかあるいは交付金とか補助とか含めて、そのときの案では今後十年間で二千億円の案が組まれておりました。それが三年たった四十七年の案では二兆円ですよ、三年間で十倍の補助をしなければならなくなっているわけですよ。十年間の計画が三年でくずれておるわけですよ。それから去年つくった案とことしつくった案と比べたら、もうすでにことしでは三兆六千二百億円、去年の五割増しの案をつくらなければならない。こういうものが十年計画——私は十年こういうものがもっかどうか疑問だと思っているわけです。だからこれを場当たり的と言わずして何と言えばいいんですか。三年たてば財政補助を十倍にしなければならない十年計画、去年つくった案をことしつくった案ではもうすでに五割増しにしなければならない、これこそ場当たり的の見本のようなものじゃないですか。
  88. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) これは前の四十四年の計画も決して場当たりでやったんじゃないと思いますし、昨年出しました案も場当たりではないと思います。それには改定をする理由がそれぞれあったと思います。それは先般来も申し上げましたが、必要であれば、四十四年の現行の再建計画案がなぜ改定されなければならないかという理由をお聞きくださればわかると思います。  そういうような説明はまたあとでさせますけれども、私たちはこの問題に取り組むのにただ場当たりでつじつまを合わせればいいんだというような気持ちは毛頭ございません。先ほど来るる申し上げましたとおりでございまして、これは国鉄の再建ができないと国民経済にも国民生活にも与える影響が非常に大きい。何とかして国鉄の財政再建をしてその本来の機能を取り返させるんだという決心をいたしまして、相当案も練り真剣な討議を経まして今日この提案をしておるわけでございまして、場当たりとおっしゃることはどうも私たち政府側としては受け取れません。
  89. 田渕哲也

    田渕哲也君 ことばではそう言われますけれども、事実で示してもらわないと困ると思うのですね。たとえば、今後、それなら今回出している案で十年間いって、国鉄財政を健全化させてもらいたいと思うのです。おそらくできないでしょう、途中でまた組みかえなければならなくなります。それは外部の物価の値上がりとか異常な変化があれば別ですよ、四十四年から今日まで物価の値上がりにしても何にしても大体予想された範囲内だと思うのですよ、それですらこうですからね。ですから私は幾らことばで言われても、この事実を見る限りは、そう思わざるを得ないと思います。  それから再建計画が非常にずさんだと思うのですけれども、昨年の案とことしの案と比べてもかなり変わっておりますね。それから収入の予測にしましても非常に違いがあります。一年たってこれだけの差が出てくるのは一体どういう点だろうか。  たとえば昨年の案とことしの案と比べてみますと、運輸収入で見ますと、運賃値上げの時期が一年ずつずれておりますから、それの影響のない年度をとって比べてみましても、四十九年では今回の案では収入は一兆五千億円ですか、ところが去年の案では一兆六千億円、差があります。五十二年でもやはり差がある。五十五年、これをとってみても非常に差が出ております。それから経費の面でも非常に差が出ている。この理由をお伺いしたいと思うのですがね。
  90. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 輸送量のほうは大体私のほうのいろいろな推定によっておりますので、私のほうから御説明いたましす。確かに、昨年の案とことしの案とでは、収入の基礎になる輸送量に相当大きな開きがございます。主としてこれは貨物のほうでございます。これはいろいろ理由がございますが、まず第一に、投資の規模が、御承知のとおりこの前の案と今度の案とでは、今度は十兆五千億ということで飛躍的にふえております。そのうちで一部稼働するものができる。たとえば新幹線にいたしましても、輸送量として見ますと、すでに昭和五十二年−五十四年にいま計画中のものは一応全部できるということになっております。これは貨物輸送に対して相当大きな影響になってくるということでございます。それからもう一つ、年次の違い、これはいま先生がおっしゃいました。これは数字的に比べればわかるわけでございまして、一年間ずれておりますので、その食い違いが出ております。それから貨物のほうのシェア、なかなか最終年次のシェアは非常にむずかしゅうございますけれども、一応いろいろ各方面の御意見を承りまして、現在の貨物のシェアは大体もうしばらくもう少し減っていく、しかし昭和五十二年ないし五十三年ごろからからまただんだんふえていく。これは自動車輸送の行き詰まり、あるいはその他労働事情等の問題、半面、国鉄のほうのコンテナ輸送あるいはフレートライナー輸送等の伸びということを見まして、五十三、四年ごろからまた逐次ふえていくというふうな見方をいたしております。最終年次におきまして、大体、日本全体の経済社会の基本計画を延ばした線に合わした数字にいたしております。  したがいまして、手前のほう、すなわち現在時点に近いほうはやはり急激によくなるということはない。設備投資にいたしましても、それが効果を発揮するには三年ないし五年、長いものは十年ぐらいかかるというふうなことでもって、手前のほうは非常に現実に即してかたく見る。それから中期から後期にかけましては、日本全体の経済フレームあるいはほかの交通機関との関連等を考えまして、全体の輸送量を出したわけでございまして、先生の御指摘の点の一番大きな違いは、貨物の輸送量の違いでございます。
  91. 田渕哲也

    田渕哲也君 それぞれ理由はあると思うのですが、昨年の案がその辺の予測がつかずにつくられたものか、昨年の案もそんなずさんにいいかげんにつくられたものではないと思うのです。そうすると、ことしの案も、考えたけれども、来年になればまた変わる可能性がある。こうなると、この十年計画というものがはたしてどれだけの意味を持つか疑問だと思うのですが、この点はいかがですか。
  92. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) やはり昨年の案と比較いたしまして、非常に変わりました一番大きな原因は投資の規模でございます。  すなわち昨年つくりました四十七年から五十六年度の案、これをつくりました時点では、どちらかと申しますれば、非常に鉄道の——たとえば新幹線一つとりましても、十年間に開業するのはいまやっております東北と上越だけであるというふうな見方をいたしております。しかし今度の案では、それ以外に現在調査中の五線も五十四年度には開業するというふうな非常に積極的な見方をいたしております。すなわち最近における日本全体の経済発展に即応して、燃料問題あるいは労働問題その他各方面からくる角度からして、やはり鉄道というものはもう一ぺんここで見直すのだというふうな角度でもって計画を練り直したために、しかもそれが投資規模ということで非常に具体化しております。その投資規模がそのまま輸送力になるというふうな見方をいたしておりますので、昨年と今年、一年違いではございますけれども、根本的な鉄道に対するかまえというものが違ってきたというふうなことも申せると思います。  しかし、これは一つの見方でございまして、私のほうも十年間の輸送量をぴたっと絶対これが間違いないとは申し上げられませんが、経済社会基本計画その他専門家のいろいろな経済フレームから見て、この程度は日本全体の伸びからいって鉄道が受け持たざるを得ない数量であるというふうに、輸送要請の立場から見ましてもそれほど大きなものではないというふうに考えているわけでございまして、この一、二年のいわゆる国内の経済発展の規模等も相当頭に入っている改定になっているわけでございます。
  93. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから四十四年の再建案がこう短期間に破綻した理由についてお伺いをしたいと思います。
  94. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 四十四年度再建案、これは現在から見ますと非常にスケールの小さいものでございまして、やはり何と申しましても、ちょうど四十四、五、六の人件費の伸び率が非常に高かった時代、御承知のとおり計算の基礎といたしましては大体年間八・五%というふうに見ておりましたが、実績は一三%以上で上回ったというふうなことで、四十四年から四十四、五、六と一番最近における——ことしは一応別といたしますと、一番ベースアップの急激にふえた年というのがたまたまこの年に当たりまして、その意味で人件費のアップが予想以上だったということと、それからもう一つは、先ほど御指摘の、われわれのほうの輸送量の伸びに対する見通しが非常に楽観的で甘かった、ことに貨物輸送はもっと伸ばすはずであったものが伸びなかったという点があると思います。したがって投資規模、投資の実績は大体計画どおりでございましたけれども、収入の伸び悩みが約二%、経費の増が約二%、両方差し引きいたしますと約四%の狂いでもって数千億の違いが出てきた、こういうことでございます。  まあいままで全体で私どものように一兆ぐらいの規模になりますと、一、二%の狂いはやむを得ないというふうにいわれておりますけれども、悪いほうに狂うというところに非常に問題があるわけでございまして、一、二%の狂いならば、いいほうの狂いと悪いほうの狂いと両方なければならない。それが両方とも、収入は減るほうの狂いだったし、経費はふえるほうの狂いだったというところに、やはり鉄道事業そのものに対するわれわれの行き方が非常に希望的な楽観的な見方があったことは率直にいなめない事実だと思います。  今度は、その点は非常に慎重に気をつけて、またベースアップの問題その他につきましても、いま考え得るいろいろな角度から検討いたしたつもりでございまして、その点は、いまの現計画すなわち四十四年からの計画につきましては、確かにちょうど鉄道そのものに対する非常に懐疑的な時代につくったものであったというふうに私率直に考えます。そういうような点が出てきているのではないかというふうに思いますので、その点は非常に申しわけなかったというふうに考えます。
  95. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は今回もまたその誤りを繰り返すおそれがあるのではないかと思いますが、それはどうですか。人件費、物件費の伸びはどう見ておられますか。
  96. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 人件費がことしは非常なものであったことは御承知のとおりでございますが、私どもの人件費の基礎になっております四十八年から五十二年までが一二・三%、それから五十三から五十七が一〇・三%、これは十年間の全体の伸び率でございます。ことしは確かに一五%以上という非常に大きな狂いを生じましたが、全体の日本の経済社会基本計画の筋から申しますと、大体この程度の伸びだということが日本全体の立場から一つのガイドポストとしてきめられておりますので、一応それをとったわけでございまして、今後、これが非常に、たとえばことしのように毎年毎年大幅なベースアップがほんとうにあるのかどうかということについても、ないとは申せませんし、あるとも言えない。結局そうなりますと、経済社会基本計画のように、まあ日本の良識が集まってつくったものを基準にする以外にないというふうに思っているわけでございます。  それから物件費のほうは、これもいままでずいぶん御議論がございまして、ことに最近の卸売り物価の伸び——どもは主として卸売り物価の影響でございまして、消費者物価はあまり影響はございませんが、卸売り物価の影響は決してないとは私思っておりません。特に土地の値上がり等の問題もいろいろございまして、いま考えております毎年三%程度のアップではとてもやれないのじゃないかという非常な御意見が先般来強うございましたが、最近の卸売り物価の内容等を相当精査しておりますけれども、まあいまのところ、私のほうでは政府もいろいろな角度から今後卸売り物価の抑制については努力されるというふうにも考えられますので、いままでの非常に値上がりのひどかった繊維製品、木材等はあまり影響がない。いま問題になっている非鉄金属等の銅とか、あるいは鉄とか、あるいは塩化ビニール等の問題につきましては、これは私はそう将来とも長くこういったものが続く情勢ではないというふうな角度から、現時点におきましては、いまの私のほうの値上がりで吸収できるというふうに考えております。  ただ、土地の問題につきましては、これもずいぶん御議論がございまして、確かに私どもいまいろいろ取得難でございますが、むしろ最近は土地の問題も少し落ちついてきたのじゃないかというふうな点もございます。現実に買ってみますと、ここ数カ月と半年前とはだいぶ違ってきているようにも思いますので、長期的に見て、現在の私のほうの計算いたしました物件費でもって一応吸収できるというたてまえで考えております。
  97. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから収入の見通しについても非常に疑問があるわけです。特に貨物の伸び率を非常に高く見ておると思うのですね。特に五十一年以降年率で一一・六%、こういう高い伸びが考えられるのかどうか、これは非常に疑問だと思いますけれども、いかがですか。
  98. 原岡幸吉

    説明員原岡幸吉君) その点につきましては、先ほど総裁から御答弁申し上げましたように、新幹線の、何といいますか、開通ができますと、その在来線を貨物輸送を主体に考えていく。その際、それを有効に生かして新しい貨物輸送をやっていきたい、こういう観点から一応考えているわけでございます。  具体的に申し上げますと、コンテナ輸送というものを一般の輸送をする場合の基本的な形として、マクロ的に物資の流動を見て、これでどの程度のその際における物資輸送の速さ、それから確実さ、あるい運賃というようなものを前提として考えた場合には、これだけのものがコンテナ輸送に吸収されるではなかろうか、こういう観点、それからその他きわめて具体的に、大量に流通する物資、これにつきましては、従来の実績から見まして、その時点における投資効果が十分発揮されたいわゆる物資別の適合輸送という形態でもって一つ一つ積み上げていく、こういうことを想定として考えましてやった場合に、先生御指摘のような数字になって、これは実現できると、このように考えているわけでございます。
  99. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから去年の再建案との比較で、政府助成と合理化努力と運賃増、三方一両損というようなことを言われるわけですけれども、これの比率がやっぱりかなり変わっておりますね。  去年は政府助成が全体の中の約二〇%、それから要員の縮減による節約が二二%、運賃改定が五八%、ことしの案では政府助成がふえて二七%、要員の縮減による節約が一七%、それから運賃値上げが五六%、このように負担割合が変わっておるわけです。  ということは、この負担割合の根拠というものはそれほど確としたものではないのではなかろうかと思いますが、どうですか。
  100. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) 御指摘のとおり、昨年とことしで違っておるわけでございますが、それの一つの大きな原因と申しますものは、いわゆる昨年の廃案におきましてさらに国鉄の赤字は増加したわけでございます。で先ほどちょっと話も出ましたわけでございますが、今回の再建案におきまして昨年を上回る運賃改定を行なうべきではないか、こういう議論もいろいろと検討したわけでございますが、物価の抑制、こういった大きな課題にかんがみまして、昨年と同じ率にこれを押えたということでございまして、したがいまして、この増収額と申しますものは昨年と大差ないわけでございます。  また国鉄の企業努力という点につきましても、それの大きな要因をなしております人件費の節減という面につきまして、五十三年度までに十一万人の人員縮減をするということを計画いたしておりますが、これもいわゆる退職者の不補充、こういう範囲にとどめておるわけでございまして、これもそう急速に拡大するというわけにはまいりません。国鉄といたしましては、いわゆる不用資産の売却という面におきましての企業努力という面はいたしておりますが、人件費という面におきましての節減ということはできないわけでございまして、それ以外のすべてのものにさらに財政助成を強化する、こういうことで再建計画を進めますために、先生の御指摘のように三者の負担割合というものが昨年の廃案に比べて変わってきているわけでございます。
  101. 田渕哲也

    田渕哲也君 そうしますと、この負担割合は確たる根拠がないものとするならば、もっと乗客負担、利用者負担というものは減らすことも可能なわけでしょう。
  102. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) 申し上げましたように、私どもは三本柱ということできたわけでございまして、いわゆる国鉄の企業努力あるいは政府の大幅な助成ということもございますが、ぎりぎりの最低限度といたしましていわゆる利用者に御負担いただく。いわゆる財政助成と申しますものも結局国民の税金によってまかなうものでございますので、交通機関、国鉄のようにいわゆる受益者というものが明確なものにつきましては、やはり受益者負担というものは、ぎりぎりに押えましても、ぜひこれはお願いしたいという最低限度という意味におきまして、昨年と同じものをお願いして御審議いただいておる、かような次第でございます。
  103. 田渕哲也

    田渕哲也君 受益者負担分が一番多くて五六%です。五六%が最低のぎりぎりだと言われることが納得いかないわけですね。もっとたとえば国の助成をふやすことも考えられないのだろうか。だから運賃の二三%、二四%アップというのは最低のぎりぎりだということは何ら根拠がないことではないかと思いますが、いかがですか。
  104. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) これは一番物価の安定いたしておりました昭和十一年に比べまして、他の物価、たとえて申しますと米価あるいは郵便料金あるいは電話料金その他散髪料とかいろんな諸物価を比較いたしました際に、国鉄の旅客運賃、貨物運賃ともにきわめて低位であることは先生御承知のとおりでございまして、これがぎりぎりのところでございまして、いわゆる物価への影響、こういった面も十分考えまして、また国鉄といたしましての効率という点も考えまして、一番ぎりぎりの線がただいま申しましたようなところでございます。
  105. 田渕哲也

    田渕哲也君 いま言われた昭和十一年ですか、これを基準にとるというのは私は非常にインチキだと思うのですね。なぜこの昭和十一年を基準にとらなければならないのか。昭和二十六年を基準にとれば、消費者物価指数と運賃というものはそれほど大きな開きがありません。だからこれは国鉄に非常に都合のいいようなところをとって、そういう数字を出しているとしか考えられないのですが。
  106. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) いわゆる年次のとり方によりまして、先生の御指摘のようないろいろと比率の問題があることは事実でございますが、いろんな物価の比較をいたします際に、いわゆる戦後のインフレの時期あるいは物価の変動の激しい時期、それと戦前一番、あるいは戦前戦後を通しまして一番物価の安定した時期というものを比較いたします際に、昭和十一年前後と申しますものは一番物価が安定しておった時期でございますので、その時点を基準にいたしましてすべてのものを比較したわけでございます。
  107. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、そんな昔の状態とだいぶやっぱり社会の情勢も変わってきておるわけです。だから比較をするなら、国鉄の経営、財政状態が健全であった一番近いところと比べるのが妥当じゃないかと思うのですね。昭和十一年といまとは社会の様相がまるっきり違います。だからそういうところの物価を持ち出してきて国鉄運賃が高くないというのは非常にインチキな論議だと思うのです。また、そういうものを持ち出さなければ二三%、二四%は最低ぎりぎりの線だということを納得づける根拠というものはないと思うんですよ。まあ言うならば政府のさじかげん一つで幾らでも融通ができるわけですね。こういう点はどうなんですか。
  108. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 昭和十一年というのをとるかとらぬかということですが、これは一つの参考だと思います。これは先生博学だから御承知だと思いますけれども、従来こういう比較をいたしますときに、われわれ昔よく使ったんですが、昭和十一年というのは基準年次だということで、いろんな統計指標ではよく使っておるのでございます。これは必ずしもわざわざこれをとってきて、それでこの運賃の値上がりの率がどうこうと、これを唯一の判断にしょうなんという考えはもちろんないんですけれども、物価のほうもそうでございますし、大体日本の経済が落ちついておって安定した成長を続けておった時代ということになるとこの辺だというのは一般に使われておることだから、とって御説明を申し上げただけのことでございます。  で戦後のいろいろの公共料金の比較をいたしましても、国鉄のほうは、これは数字を私は持っておりませんが、政府委員から御説明さしてもいいんですけれどもね、わりあいに国鉄のほうは他の公共料金と比べますと値上げ幅が少ないと思うんです。他の郵便料金でございますとか、あるいはいま政府委員が申しましたような認可料金等と比較いたしまして、国鉄運賃の改定は本来かくあるべきだというものよりも値上げ幅が小さかったんじゃないかと思うのですね。これはやっぱり政策的な問題が多かったと思うのです。旅客についてはもちろんのことでございますが、貨物につきましても、現在ではなくなっておりますが、いわゆる政策料金というようなもの、これが非常にふえてまいりまして、本来かくあるべきだという運賃体系がくずされておった。それを値上げをしようと思ってもなかなかできなかったというようなことが実際じゃなかったかと思います。  そういう点で、一五%というのが、これがどこから見ても、学問的に見てもコスト計算から考えても、これがもう絶対正しいんだというような、そういったものはおそらくないと思います。今後そういったコスト計算をやりまして、それならば旅客は幾らにすべきだ、貨物は幾らにすべきだというようなことになりますと、これはたいへんな数字になるおそれがあると思います。そういったことを避けます意味で昨年出しました案でも一五%であったのですが、その一五%が昨年ああいうふうに廃案になった結果、本来であれば二〇%以上も上げなきゃならぬというような状況であったにかかわらず、それは政府が助成を強化してその分を引き受けようということにいたしまして、一五%以上に改定率を高くすることは政策的に不適当であるというような観点から、これを押えたというようなことでありまして、一五%というのがどうしても学問的にも経営的にも絶対的に必要な数字であるというようなことは考えておりません。そういう政府の助成それから国鉄の企業努力、そういったものと比較勘案いたしまして、十カ年間に国鉄の財政を再建するのには一五%は少なくとも必要でございますというので、お願いをしておる次第でございます。
  109. 田渕哲也

    田渕哲也君 それでは、次に、総合交通体系の問題について少しお伺いをしたいと思います。  総合交通体系と今回の再建計画の関連が全く明らかではない。総合交通体系による国鉄の役割り、位置づけというのがありますけれども、国鉄は都市間旅客輸送、中長距離大量貨物輸送並びに大都市通勤通学輸送に重点を置くべきであるということが「総合交通体系について」という文書の中に書いてあります。しかもそれの具体策としては、まず第一には新幹線の整備、第二は在来線の選択的整備、鉄道の特性に適合しない路線は自動車輸送に転換、第三点は新線建設の再検討、鉄道敷設法の再検討並びに運輸大臣が指示済みのものについても新線建設は再検討すべきだ、こういうことが書いてあります。  以上の指示が今回の再建案にあまり生かされていないように思いますけれども、この点はいかがですか。
  110. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 十年間の計画を具体的にあらわしてはおりません。おりませんが、われわれがこの国鉄の再建計画を立てます場合に、やはり一つの指針として考慮いたしましたのは、総合交通体系下における国鉄の位置づけであったことは事実でございます。  いま御指摘になりましたように、総合交通体系下における国鉄の機能を十分に発揮させるのには、いろいろの機能がありましょうが、まず重要視すべきものは都市間の旅客の輸送、大都市における通勤通学の輸送、それから中長距離における大量貨物輸送、こういったことに重点を置いて、国鉄が現在必ずしもこういった問題についての設備の整備ができておりませんから、先ほど来御指摘になりましたように、計画としてはもっと収入が上がるはずだというにかかわらず、収入がいつでも予算以下になりまして、いわば追っかけられたようなかっこうになって今日まできておる。それはなぜかといいますと、そういった方面における国鉄の設備投資が不足であった、今後急速にそういった設備を充実して、そして国鉄の本来の使命を全うさせるように持っていかなきゃならないということでございますから、十カ年計画におきましては、この新幹線をはじめ在来線の活用でありますとか、貨物輸送のシステム改善でありますとか、そういった問題についてひとつ思い切った改革をして収入を上げて国鉄の体質を改善するように努力をしようというねらいでございます。  最後にお触れになりました地方の在来線の問題、赤字線ですね、あるいは新線建設の問題でございますが、これにつきましても総合交通体系のいろいろのこれについての答申があったり、あるいはそれについての閣僚協の結論も出ておりますが、それと相反するものではないのでございます。  私どもは、国土開発それから地方の住民の福利を増進するというような意味におきまして、新線は絶対につくらないのだということではいけないと思います。やはり総合交通体系においても期待しておりますように、国鉄が全国の交通ネットワークの中核をなしておるのでありますから、そういった問題についても積極的に取り組ませる必要がある。しかし他の輸送手段つまり自動車輸送にかえるべきだ、またかえたほうが有利であるというようなものもないことはございませんから、そういったものについては積極的に、昨年申し上げたと同じような方向でこれを整理するものもございますし、そういった新線の建設につきましては見合わせたほうがいいという考えをもって今後この十年計画遂行の途上におきまして整理をしたり、あるいは必要な路線に経費を集中いたしまして計画を立てさしていかなきゃならぬ、そういうふうに思っておるんでありまして、総合交通体系と無関係ではないのでございます。その方向に向かって計画を進めておるというように御了解いただきたいのであります。
  111. 田渕哲也

    田渕哲也君 赤字線の問題についてはあとで触れたいと思いますけれども、まず初めに、四十五年の国鉄諮問委員会の「国鉄の経営をいかにすべきか」という意見書が出されております。その中に区分の問題、いわゆる幹線系線区と地方交通線、この二つの区分に分けて考えております。  それで幹線系線区というのは都市間旅客輸送、中長距離大量貨物輸送、大都市通勤通学輸送、いわゆる総合交通体系にいう鉄道の特性が発揮できる分野である。それから地方交通線というのは鉄道の特性が低下している部分である、こういう二つに分けてものを考えるという考え方が出されておりますけれども、この案について現在どう考えておられるかお伺いをしたいと思います。
  112. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) いまお示しくだすった四十五年度の案でございますが、これは先ほど先生がいわゆる責任分野を明らかにしろという御質問でございましたが、その問題とこの総合交通体系の問題と二つの問題を含んでいるわけでございます。私どもといたしましては、そこに示されました幹線系約一万キロでございますが、この幹線系一方キロは、これは鉄道というものの持っている物理的な技術的な性格からいって、もうあと百年くらいの間は鉄道というものが当然負担すべき分だ、したがって企業的に見てもそれが採算に合わなければいけない。それが採算に合わないようならば、すなわち大量輸送ができる長距離輸送ができる、そういうものが鉄道の企業として成り立たないならば、もう鉄道というものは本質的に企業として成り立ち得ないんだという企業の責任分野の問題と、それからいまの総合交通体系的に見た場合に、これは将来とも鉄道の分野であろうという見方と、こういう見方でもって幹線系ができたわけでございます。  残りの一万キロの地方交通線の中には、これは非常にニュアンスはたくさんございますが、一番下のものはもうソシアルミニマムとして、もうかろうがもうかるまいが、そんなことは別として維持しなければならない。それからまん中から上のほうは、まあまあしばらくの間はやっていけるけれども、道路の発達その他の関係からいって、そう長くは鉄道としてはキープできないものであるというふうな見方から、すなわち総合交通体系的な見方と企業の責任分野という見方と二つから、あの考え方が出たわけでございます。  したがって私どもといたしましても、将来ともあの考え方を変えるという意思はございません。あくまでも鉄道の現在やっております二万キロの中には、将来とも鉄道で当然やるべき輸送量を持っておる線区と、それから将来はもう輸送量的に見れば鉄道は要らない、あるいはいまは要ってもしばらくしたら要らなくなる、あるいは場所によっては将来そこに非常に大きな産業立地ができあるいは人口誘致ができれば別だけれども、そういう特殊なことがない限り、すなわち国土のよほどの再開発がない限り、鉄道としての命脈は尽きるだろうというものは二つあるということについては、いまも変わった考えを持っておりません。しかし御承知のとおり、最近のいわゆる国土総合再開発というふうな問題ともからみまして、私どものほうがあとのほうの一万キロに入れたものの中で、政府としてこの一万キロの中でも将来これは使うんだ、必ずそちらに産業を再配置する、あるいは人口の再配分をそっちにするんだという路線があるわけでございます。そういうところにつきましては、やはりいまはだめだけれども、将来は必ずよくなるからしばらく維持しなければいけないというものと、もうそういう政府の計画もなくて、いずれこれは鉄道というずうたいのでかいものは少し大き過ぎて過剰輸送力になるというものとございます。そういうふうに徐々に、私は、いまの二万キロの中で、いまの初めの幹線系の一万キロと、それから問題は残りの一万キロ、すなわち鉄道としての物理的な性格に必ずしも合っていないものについては、これは徐々に変わってまいると思います。その中で、将来ともソシアルミニマムとして維持しなければならないものと、それから鉄道を撤収するものと、両方が出てくるんじゃないかというふうに思いますが、その考え方はいまもって変わっておりませんし、そういう考え方でなくて、ただもう百年間つくったものは絶対にそのままでいいんだという考え方は、私はこれからの世の中では成り立たないというふうに思っております。その四十五年の考え方としては、今後とも十分一つの基準になる考え方として考えていかなければいけないというふうに思っております。
  113. 田渕哲也

    田渕哲也君 この四十五年の意見書にあるこの区分制による中で、幹線系線区に力を入れていく、拡充する、それから地方交通線区はやはり縮少の方向、これが私はこの総合交通体系に沿った国鉄のあり方だと思いますけれども、そういう考え方は現在も変わっていないということを確認していいわけですね。
  114. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 問題は、残りの幹線系でないほうの一万キロの問題だと思います。それを一がいに、将来とも全く要らないんだということも少し言い過ぎだと思いますが、その一万キロの中でいまの国土の再開発の面から見て、もう再開発の、何といいますか、再開発をする土地じゃないんだというところなどにあるものにつきましては、これは当然撤収しなければならないし、鉄道の使命は終わったというふうに思いますが、その中でも、すなわち残りの一万キロ、地方交通線の一万キロの中でも、将来ここは必ず産業なり人口がふえるんだというところについては、しばらくの経過を見た上で考えるというふうに、非常に地方交通線の一万キロのニュアンスは線別に違ってくるというふうに思います。一がいにこれは要らないとは申しませんが、鉄道の分野としては、幹線系とは若干性格の違った分野であるというふうに考えられます。
  115. 田渕哲也

    田渕哲也君 その辺に少し問題があると思うんですがね。  赤字線に対する考え方が、昨年の案と今回の案では、今回の案が非常に後退しております、赤字線撤去の方向がですね。それの理由はどうなんですか。
  116. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) 昨年御審議いただきました案におきましては、先生御指摘のとおり、いわゆるランニングコストにおきまして鉄道よりも自動車のほうが国民経済的に見て有利な線、これにつきましては運輸大臣が認定いたしまして五カ年間にこれを廃止する。で、その間は国が二分の一、地方が三分の一負担していくという再建案をもちまして国会の御審議をいただいたわけでございますが、両院におきまして、この問題につきましては、ずいぶんいろいろと御意見を承ったわけでございます。  で、一番大きなものは、やはり地元における足の確保という点について、運輸省が一方的にこれを認定して行なうということは、きわめて、いわゆる交通政策として、あるいは地元住民感情として問題である、こういった御審議をいただいたわけでございます。私たちも、いわば一方的にこれを認定し、一方的に五カ年間に強制的に廃止していくということにつきまして、国会の御審議を十分に体しまして、今回の案をつくるに際しましては、地元の住民との十分な意思の疎通あるいは代替交通機関の確保、こういうことを重ねていくということにいたしまして、私たちといたしましては、いわば鉄道としての使命を終えたものにつきましては、今後も積極的に廃止していくという方針には変わりはないわけでございますが、これを地元との話し合いもなしに一方的にきめつけていくということにつきましては反省いたしまして、今回はその案につきまして、あらためて地元との話し合いのなったものを進めていくというふうに方針を改めたわけでございます。
  117. 田渕哲也

    田渕哲也君 この赤字線の整備というのが、やっぱり国鉄の再建の中で非常に大きな問題だと思うのです。もちろんいままであがっている赤字線の問題だけ取り上げますと、金額というものはしれたものかもわかりませんけれども、基本的な考え方として、諸外国においても、やっぱりローカル線の思い切った整理というものが、鉄道再建の一環として行なわれておるわけです。それが去年からことしになって変わった理由は、一番大きなものは、やっぱり田中総理のいう日本列島改造論だと思います。改造論は改造論でいいとしまして、一番大きな問題点というのは、改造論に便乗して赤字線に対する再建方針というものが、整理方針というものがうやむやにされつつあると思わざるを得ないわけです。この点はいかがですか。
  118. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 日本列島改造論の問題ですが、これは田中総理が個人として書かれたものでございまして、それのある部分が、いま衆議院で審議を願っております新全総の法律案にある程度その趣旨が盛られていると思いますけれども、この赤字線の廃止がそれと関係があって、このためにやっているのだというようにお取りになっていると、これはそうではないと考えております。  ただ、その日本列島改造論が出ようと出まいと、やはり日本の全国を豊かにするためには、やはり地域の開発というものは絶えず行なわれなければならないということは事実でございますから、そういうためには現在は赤字でございましても、これを地方の開発に利用していくのだということは可能でございますから、そういった点を十分見きわめながら、この問題の処理に当たらなければならぬということは、これは運輸当局としては考えなければならぬ問題であると思います。  それから、赤字線だから廃止するというようなこと、これについて、私は非常に考えなければならぬと思っているのですが、経営から見ますとそのほうが楽に違いございませんけれども、一方からいいますと、国鉄というものは、交通機関の中で、ああいう法律を出して、先ほど来お示しのように、低利の出資もし、あらゆる援助をしていかなければならないという公共的な使命が強いものでございますから、採算がとれないからやめるのだというようには、簡単にはもちろんいかないと思います。将来そういった赤字に対しては、政府がどういうふうにめんどうを見ていくかという問題は残ります。しかし、これは先ほど申し上げたように、全般としてそういう赤字線の採算割れに対しましては、政府が全体として補助をし、それに対して援助を与えておるという態度をとっておるわけでございますが、それは別問題といたしまして、赤字だからやめるということじゃなしに、やはり一方からいうと、地域開発にも将来役立つであろう、またその地域住民が他に輸送手段を持っていないというふうなところは、どんなに赤字でありましても、その他の輸送手段が整えられますまでは維持していくのが当然だろうと思っておるわけでございます。しかし、そのために、たとえばいい道路ができた、自動車の輸送に切りかえることができるというのに、国鉄も運輸省もそういう事情があって、もう鉄道としての使命は終わったというようなものまで無理やりにそれを残していこうというような考えは毛頭ございませんで、この点は先ほど国鉄総裁が申しましたように、この点については、われわれも積極的に取り組んで他の輸送手段、それが確保されれば鉄道は廃止していくという方向で検討を進めていくということは言うまでもございません。  ただ、これについては、他の輸送手段と言いますけれども、ただ頭から運輸大臣としてはこう思うんだからこれでいいじゃないかというようにはまいりませんで、やはり地域住民の輸送問題についての希望なり期待なりというものを十分考えて、それに見合った輸送手段を確保して、その上でやめていくというようにしていかなきゃならぬということは言うまでもないのでございまして、そういう慎重な配慮をしながらこの問題に取り組んでいこうと、こういうことでございます。
  119. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は赤字線は何でもやめてしまえという主張をするつもりはありませんけれども、この赤字線というものに対する考え方をやっぱりこれまた明確にしておく必要があると思うんです。まあ総理大臣の答弁でもそうですが、運輸大臣の答弁でもそうでありますけれども、ナショナルミニマムの確保、これは国鉄に負わされた使命だというふうにもいわれます。しかし、このナショナルミニマムということを考えた場合、ナショナルミニマムとは何かというと、やっぱりすべての国民に保障される最低限の問題でしょう。そうすると、鉄道でそれを満たすということにそもそも私は無理があると思うんですね。鉄道線路が全国どこにも走っているわけじゃありません。いずれこれは不公平はどっかで起こっているわけですよ。鉄道がじかに利用できる人というのは全国民すべてじゃありませんね。できない人もいるわけです。それは放置されている地方もたくさんあるわけです。その中で片方がつくり片方がつくられない、そこに問題があると思うんですよ。だからナショナルミニマムを確保するために鉄道が必要だなんという論議は、私はほんとうはごまかしじゃないかと思うんです。  だからナショナルミニマムというのは、鉄道だけでそれを確保しようというのはそもそも無理なんです。それで、しかも現在は交通機関が非常に多様化されております。自動車もあればバスもあるし、あるいは航空機、船もあると、この多様化された全体の交通機関を総合的に考えて、できるだけ均等なナショナルミニマムというものを確保するというのが政治ではないかと思うんです。もともと鉄道は全国民に公平に利用されないですよ。そういう特性を持っておるわけですね。だからその鉄道だけによるナショナルミニマム論というのは誤りではなかろうかと思うんです。だからナショナルミニマムを確保するために鉄道が必要だなんというのは、特定の場所ではそれが言えても全般的にはそれは言えない問題である。そうなると、赤字線はどういうところに残し、あるいはどういうところに赤字新線をつくるのか、これを考える場合には一定の基準がなければならないと思うんですね。また、その場合の基準をつくる上においては、経済的効果、資源の有効配分、こういった考え方からそういう基準が出されなければならないと思うんです。  そこで、いままでいろいろな観点からそういえ基準がいわれております。四十三年の国鉄諮問委員会意見書では、特に鉄道と自動車の輸送コストの比較を行なっておるわけです。イコールフッティングの原則に立って試算すると、輸送密度、旅客で一日一キロ当たり一万五千人、貨物で二千トン、これがまあ一つの境界線、これ以下の線区では自動車が有利になる。これによると現在の鉄道営業キロのうち一万三千四百キロが鉄道の輸送分野である、あとのところは自動車輸送のほうが国民経済的には有利だと、こういう意見書の中に一つの試算があるわけですね。こういう基準というものについて、現在何か持っておられるのかどうか。赤字線を撤去する場合に、こういうものさしがあるのかどうか。それから新線建設の場合にこういうものさしを当てはめてやっておるのかどうか。この点についてお伺いをしたいと思います。
  120. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) ただいま先生の御指摘のものは、いわゆる国鉄の諮問委員会意見書、再建推進会議の意見書でございましたが、昨年再建計画におきまして考えましたものは、これの中からさらにランニングコスト、この比較におてのものを計上したわけでございます。  で、私たちとしましては、あくまでも、いわゆる赤字線というものの廃止の基準というものは、現在明確に運輸省として国鉄に指示しておるわけではございません。先ほど申しましたように、国鉄が地元の住民と話し合いをいたしまして、それを促進していくということでございますが、あくまでもやはり鉄道としての使命が終わった、国民経済的に見ても廃止するのが適当である、こういうものにつきまして、それはどういう点からと申しますと、やはりまずランニングコストという面から見るべきではないか。それからさらに並行路線の問題、あるいは冬期における雪害その他の問題、それからもう一つ大きなのは、やはり鉄道網という観点から申しまして、ある相当のキロ数のあるものは、やはりなかなか実際問題として自動車の代行はできないという鉄道網の形成、こういった面から今後の赤字線の廃止につきましても、そういったことがやはり基本的考え方じゃないか、かように考えます。  ただAB線につきましても、いわゆる地方開発あるいは将来の地域開発ということと同時に、鉄道網というものの形成という点、こういった全国的鉄道網の形成という面から重点的に建設を進めておる状態でございます。
  121. 田渕哲也

    田渕哲也君 去年の鉄道監督局の出された地方閑散線の認定基準ですね。これは現在でもまだ生きているわけですか。
  122. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) これは昨年法案が廃案になりましたために、それはお手元には案としてございまして、現在はそれはそのままになっておるような状態でございます。
  123. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから新線建設の場合にこういう基準があるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  124. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) 新線建設につきまして、別にそういった明確な基準はございませんが、先ほど大臣が申しましたように、重点的にこれを実施していくということでございまして、現在約五十線の新線がございますが、この中で一番重点を置いておりますものは、全国的な鉄道網の一環をなすというものにつきまして、これを重点的に、さらにすでに工事完成が間近になっている、こういったものにつきまして、従来以上に傾斜的に工事を促進いたしますとともに、現在約七線でございましたか、これは全然工事をいたしていないAB線もある次第でございます。
  125. 田渕哲也

    田渕哲也君 いままでの廃止線の実績についてお伺いしたいと思います。国鉄、私鉄、両方比較してお答えをいただきたいと思います。
  126. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) 国鉄の廃止の状況でございますが、昭和四十三年が三キロ、四十四年が十三キロ、四十五年が二十四・四キロ、四十六年が五十七・七キロ、四十七年が五十四・六キロでございます。これに対しまして、私鉄でございますが、四十三年が百五十八・四キロ、四十四年が百四十九・九キロ、四十五年が百五十五・二キロ、四十六年が百五十三・七キロ、四十七年が百四十四・四キロ、こういった実績でございます。
  127. 田渕哲也

    田渕哲也君 この私鉄と国鉄と比べた場合、特に地方交通線廃止の状況は私鉄が非常に多いと思います。これはなぜですか。
  128. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) これは一つは、国鉄は大世帯といいますか、一本でございますわけで、いわば経営の負担能力があるという問題もございます。いま申しました中小私鉄のほうはきわめて規模の小さいものでございまして、経営にたえ得ないという問題がございます。しかし一番やはり大きな問題は、中小私鉄はその営業路線が非常に短距離の、区間が短いものが多いわけでございまして、現在まで廃止してまいりましたものは、大体五キロ、十キロ、十七、八キロといったものでございまして、非常にバスへの代替が容易であるということも、やはり一つの大きな原因でございます。
  129. 田渕哲也

    田渕哲也君 確かに私鉄の場合は、そこだけで採算をとっておるから、採算がとれなくなればすぐやめてしまうと思いますね。国鉄の場合はそうじゃないと。ところが国鉄の場合に負担能力があるというのは非常に問題でして、一兆一千億の赤字があって負担能力があるというのはナンセンスだと思うのですね。  それから、国鉄は公共的な色彩が強いから赤字でもやらなければならない、私鉄は採算が合わなくなればやめてしまうということも考えられるわけです。ところが、その線を見てみると、どちらが公共性があるかという差は、私はなかなか出てこないと思うのですね。国鉄であろうが私鉄であろうが、それを足としている人にとっては同じ価値なんです。  そうすると、私鉄がどんどんやめてしまうのは問題ではなかろうか。国鉄の赤字線は温存されるのに、私鉄の赤字線はやめてしまうのは問題ではなかろうかと思います。この点はどうですか。
  130. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) 御指摘の問題、確かに重大な問題でございまして、過去五カ年間におきまして、中小私鉄が約百五十キロ前後の線を廃止してきたわけでございます。これは従来、おもに非常に距離の短い路線が主でございましたが、こういった傾向、これはいわば人件費の増大に対しまして、いわば自動車の、モータリゼーションということにより輸送量が激減しているというためでございます。しかし、こういった傾向が今後続くということは、地方におきます輸送の確保という問題からいたしましてゆゆしき問題でございまして、私たちとしましては、この中小私鉄に対する対策を、来年度といたしましてはその助成を非常に大きな問題といたしまして現在鋭意検討中でございます。
  131. 田渕哲也

    田渕哲也君 私鉄についてそういう配慮をされるのはいいんですけれども、今度は逆に、私鉄にだけそういうものをやって国鉄の赤字線にしないというのは、これまた矛盾だと思うのですね。だからやっぱり地方交通線というものは、政府としては独特の、国鉄、私鉄を問わず、一貫した政策が必要ではなかろうかと思います。いまは赤字ローカル線の負担が、いわゆる黒字線に集まってくるとか、国鉄全般の運賃値上げにかかってくるわけですけれども、私は私鉄、国鉄、まあ公共性においてはそんな差がないもの、ナショナルミニマムというなら、国鉄を残すなら私鉄だって残さなければならない。そのためには補助を出さなければならない。とすると、国鉄の地方ローカル線にも、当然政府は特別の施策を考えて補助を出すべきではなかろうかと思うのですが、それはどうですか。
  132. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 国鉄のほうは、先ほど来何べんも申し上げていますが、この閑散線は維持してもらいたい。だからこの閑散線に対しては幾ら補助するんだというような個々の補助政策をとっておりません。全体といたしまして、そういった公共的な要望に沿った赤字線を背負っておりましては、それを維持するについて相当のマイナスになるでしょうから、経営面で。それに対しては全体としての、国鉄が成り立つように考えているということでございまして、国鉄のほうはほうってあるわけじゃございません。  ただ、この私鉄との関係、先ほど鉄監局長が御説明をいたしましたとおりでございますけれども、これもまあ非常に、御承知のように区間が短いのですね。ですから非常に経営能力も低いし、資本も少ないしというようなことで、これが赤字になってまいりますと、とうていその会社として成り立っていかないというので、やめたいという申し出をしておるのが現在でもたくさんございます。しかし、それに対しましては、一方では代替輸送のことを考えさしているわけです。これはまあ同じ会社がやはりバス輸送をやっておるようなものも中にはございますし、中にはそれをやめるのならいっそ地方公共団体があとの代替輸送をやろうというようなものもございます。そういったものに対しましては、代替輸送で、はたしてそれで地元の住民が要求するような輸送需要をまかなえるかどうかということを十分検討いたしまして、それに合うような輸送対策をとらしてやめさしておるというような、やめることを認可しておるというような例が多いのであります。しかし、どうもそれだけではいきませんので、少し四十九年度の予算につきましては、まだ申し上げるのは早いのですけれども、われわれの希望としましては、十分これは財務当局とも相談いたしまして、その経営が成り立たぬからやめるというようなものについては、できるだけ最小限必要な助成をしながら経営を維持さしていくというような方法も考えざるを得ないということで、いま案をつくりまして、その案を具体化するために検討をしておる最中でございまして、来年は何とかしてこれは実現したいと思っております。
  133. 田渕哲也

    田渕哲也君 私がこの問題に関連して申し上げたいことは、私鉄の場合は非常にシビアな形で経済効率が問題化されるわけですね、そういうことは経営上やむを得ない、いわゆる経済効率というものがすぐ経営にはね返ってくる。だから、すぐバスや自動車との選択が迫られるわけです。国鉄の場合は先ほど言われたように、非常に大きな世帯ですから、そこだけのそういう問題が出てきても全体で何とかカバーされている。こういうところから、個々の線についての経済効率の判断というものがルーズになってくるという面があると思うんです、逆説的に言うならばですね。  私は現在の国鉄の既存の赤字線にしても新設の赤字線にしても、大きな世帯の中だからこれぐらいのものはつくれるだろうというような、非常に安易なところから出てきている面があると思うんですよ。だから、先ほど基準の問題を申し上げたわけですけれども、やっぱり一定の基準をつくって、新線建設についてもその基準に適合しないものは認めないという方針を出さなければ、こういうルーズさというのはなかなかカバーされないのではなかろうか、この点について運輸大臣に特にお願いしたいと思いますが、大臣の御意見もお伺いしたいと思います。
  134. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 国鉄については、どうも赤字であっても、それを全体の大きな中だからこれをルーズに考えがちじゃないかというような御指摘でございますが、必ずしもそうじゃないと思います。先ほど申し上げましたように、赤字線、閑散線につきましては、地域住民の期待をあまりに踏みにじることのないように、代替輸送の可能なものはそれに置きかえるという努力は今後もいたしますし、現在もいたしております。しかし、どうしても国鉄の関与しておるそういう地方ローカル線というようなものは、相当距離も長いんですね、いまの私鉄と違って。で、これに代替輸送をさせようと思いましても、たとえば北海道のごとき、冬になると雪が降ってもう自動車の輸送はきかないのだというようなところもございますし、必ずしもそういうようなルーズな考えでやっているわけではないんですけれども、やはり国鉄が最後の足だけは確保してくれなけりゃ困るのだというような地域も若干ございまして、一般的にいって、条件からいうと国鉄も私鉄も同じじゃないか、私鉄のほうは簡単に許すけれども、国鉄のほうにはなかなかきびしいじゃないかというような御指摘があるのも、結果的には多少そういった点があるかもしれませんけれども、そこが公共機関として国鉄にもがんばってもらわなけりゃならぬところでございますし、政府も、この国鉄の努力に対しましては、先ほど申し上げましたように、全般的にこれを中に入れまして、そういったものを包含して国鉄に対する全般的な助成を考えていくということでございます。結果的に見ると、国鉄と私鉄とそんなに区別をして、財政的に国鉄に非常な圧迫を加えているという事実はないと考えております。
  135. 田渕哲也

    田渕哲也君 大臣はそう言われますけれども、現実的に新線建設がいかにでたらめかというようなのが資料で歴然と出ているわけです。たとえば自動車道路と並行しているところでも新線建設が進められておる。しかもその輸送効率といいますか、輸送量というのがきわめて低い。ここにも一つの例がありますけれども、廃止された線と新設された線と比べた場合に、新設された線のほうが輸送人員が低いという例もたくさんあります。  それから四十五年の諮問委員会意見書の中でも、そういう例が一ぱい指摘されているわけです。こういうものが指摘されながら、依然として新線建設が進んでおります。AB線ですね。しかも四十八年度の鉄建公団の予算では、このAB線の予算が非常にふえております。五〇%増。この辺を見ると、総合交通体系とか、あるいは諮問委員会意見書とか、そういう指摘考え方を全く無視してAB線をつくっておるとしか思えないわけですね。こういう点をやりながら、片一方で赤字だから運賃を上げてくれというのは、これまた納得のいかない一つの要素だろうと思うんですよ。いかがですか。
  136. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 新線建設の問題ですが、先ほど鉄監局長から大体の基本的な考え方というものは申し上げたとおりでございまして、国土全体の総合開発計画でございますとか地域開発、そういったものに関係があり、しかも国鉄の全国的な鉄道網というものに関連をして考えていってこれは必要であるというものについては認めてきた、また予定線に組み入れてきておるということは事実でございます。ただ、実際の運用のしかたでございますけれども、これは国会両院とも通っているんですから、予定線としてまだ非常にたくさんのものが残っておりますことは事実でございますが、それをどういうふうにこれは実際的に運用するのが、国土の開発にもあるいは国民の福利にもつながっていくかということだと思いますが、この点については、実は私は、いま関係の当局に対しまして、何とかして、わずかな予算でございますから、それをまんべんなく振りまいておったんじゃなかなか経済効率があがらないんですね。ですから、なるべく経済効率をあげるように、経済効果を早く発揮し得るように、必要なところには重点的に予算の配分をしたほうがいいじゃないかということを指示しておりまして、それに基づいて計画をいま立案をさしておる最中でございまして、過去において、あるいは結果的に見ますと、お話のような点があったかもしれません。これは率直に申し上げましてそういった点があったかもしれません。しかし、それではせっかくのAB線に対する、わずかな予算でございますが、それを配分するのに、ただ十年かかってもいい、十五年かかってもいいということでは、所期の効果をおさめることができないと思いますので、この点は、今度はひとつ思い切って重点的に配分するようにという方針でいま進めておりますので、その点は、相当これは是正される可能性があると思っております。
  137. 田渕哲也

    田渕哲也君 その運用の是正はともかくとして、この額がふえておるというのは納得いかないわけですよ。総合交通体系でいうなら、やっぱり地方AB線というのは縮小すべきなんです。縮小じゃなくて逆に増設しようとしているわけです。しかもその額をふやしておるというのは、これは納得いかない。  それから地方開発に資すると、そんな抽象的なことばで基準をつくったってだめだと思うんですね。どんなところに線路を敷いたって地方開発だという理屈はつけられますよ。だから先ほど申し上げたように、一定の輸送量とか経済効果とかの基準をつくってもらいたい。でないと政治力を持った有力代議士の地元にどんどん線路が敷かれるということになるわけですね。だから、その額がふえているのはどういうわけか納得いかない。これが第一点。  第二点として、客観的な数字で示される基準というものをつくってもらいたい。この点について、大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  138. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 額がふえておりますのは、いままで、先ほど申し上げたように、一つの路線を建設いたしますのに十年も十五年もかかっているということでは経済効果が発揮できない、先ほど申し上げたとおりでございます。そういう点を考えまして、必要なところには重点的に予算の配分ができるようにしようということで、結局十年も十五年も、ただ毎年毎年のわずかな予算をつけてやっているような態度はよくないから、少し思い切って予算をつけて、そして早く開通させることが適当である路線については早く開通させようというようなことで、予算をふやしてもらったわけでございます。  それから第二の点の、数字で示せとおっしゃいますけれど、数字で旅客何人以上あるいは貨物何トン以上運ぶのがよろしいんだというようなことを数字で示すということは、これは非常に困難だと思います。と申しますのは、先ほど申し上げましたように、今後における国土の開発でありますとか、あるいは地域の開発でありますとかいうようなことを考えながら、全国の国鉄のネットワークにつながるような路線として、将来働き得るものは新線として認めていくべきだという将来計画に対する配慮でございますから、いま現在、ここまで荷物がふえていればやったらいいじゃないか、現在ここまでの旅客の輸送需要があれば認めるべきだという数字的基準をもつでこの新線の建設基準というものをきめるということは、これは非常に困難であると思います。しかし、やっぱりあまりに非常識なものは認めることはできません。これはひとつ運輸大臣の責任においてやらしていただく以外にないだろうと思います。
  139. 田渕哲也

    田渕哲也君 どんな事業でもそうですけれども、設備投資をするというのは経営の基本的な問題なんです。鉄道の場合はどこに新線をつくるというのは経営の基本的な問題だと思いますね。そういう設備投資をするのに何の根拠もなくやられるというのは、そんなことやってたら国鉄が破産するのはあたりまえなんです。数字で示せないと言うけれども、大体ここに設備投資をすればどれだけのものができて、どれだけの収入があって、どれだけの利益があがると、こういう計画があって設備投資をするというのが常識なんです。それを数字で示せないと言われるのは納得いきませんが、じゃあいいかげんな当てずっぽうで線路をつくられるわけですか。
  140. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) あなたの御質問趣旨を誤解したかしれませんが、数字的な基準でもって建設をしろとおっしゃったからそう申し上げたのです。将来の計画を全部無視して、ただ線路を引っぱったりなんていうようなことはだれも考えておりません。やはり将来の、先ほど申し上げたような国土の開発でございますとか、地域の開発というものをにらみながら、そういう新線があれば、全国国鉄のネットワークにつながりながら、非常にこれは効率を発揮するであろうというようなところに新線の建設を認めていくという方針でございますから、将来の計画が全然なくて、ただ陳情があったらつけるというようなことは絶対にいたしません。
  141. 田渕哲也

    田渕哲也君 まあそう言われますけれども、いままでの新線建設の実績を見てみると、そういう結果になっておるじゃないですか。新しくできた線が廃止された線よりも営業係数がはるかに悪い、はるかに少ない人員しか運んでいない、ますます国鉄の赤字の元凶になっておる、こういう実績があるわけですね。こういうことをやっておられながら、今後はやりませんと口だけで言われても納得いかないわけです。だから今後新線をつくる場合にはこういう基準でつくりますとか、これ以外は許可しませんとか、こういうものをつくらなければ、私は大臣の立場としても困るんじゃないかと思うんですよ。たとえば総理大臣からつくってくれと頼まれれば、基準も何もなければみんなつくっちゃうでしょう。そういうことが私はいまの国鉄の経営上の大きな欠陥というものはあったと思うんですよ。それはいろんな理屈をつければつけられます。つけられますけれども、全般の国鉄の経営とか国民経済的な効率とかいうものをどっかで検討しなきゃならないと思うんですが、それが非常にずさんだと思うんです。  現在、鉄道建設審議会で新線建設については諮問しておりますけれども、この鉄道建設審議会の審議内容一つ見ても、実にずさんな審議をしているわけです。ここに一つの議事録がありますけれども、これは福岡から長崎までの新幹線を鉄道建設審議会にかけた議事録です。わずか一時間余りの間に長崎の新幹線を決定し、それからそのほかいろんな建議のことをこれできめているわけです。委員の中からこんなずさんな審議じゃ困るという指摘さえされておるわけですよ。こういう簡単に、ずさんにこの鉄道の新線がきめられるというのは、私は問題じゃないかと思いますが、どうなんですか。
  142. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) これは見方によっていろいろの御批評もあると思いますけれども、新線を建設いたします場合には、これはいま私が申し上げましたような趣旨を中心にいたしまして、運輸大臣の責任において決定をする以外にはないと思っております。  それから、もちろん運輸大臣も、これは私だけじゃございません、いままでもそうだったと思いますけれども、かって気ままにそれをやれるはずはないんでございまして、いまお示しになりましたような審議会等に諮問をして、これは各党の代表が出ておられますから、各党代表と十分相談しながら、しかも一方においては、鉄道建設についての十分な知識経験を持った有能な方が委員になっておられますから、そういった人の意見を聞きながら、御決定があった分につきまして、これを実行に移していくという方法をとっておりますので、私は制度としては、いまの制度は、そう田渕先生が非難をされるように、あまりにもずさんで、でたらめじゃないかとおっしゃるようなことではないと私は信じておるものでございます。
  143. 田渕哲也

    田渕哲也君 ところがこの議事録を読む限りにおいては、そういうことについてあまり突っ込んだ論議が行なわれていないわけです。  それから出されている諮問書ですか、これだって実に簡単で、これを読んだだけでは、ほんとうにこれは経済的に見て、これをつくるべきかつくるべきでないかなんて判断はとてもできないと思いますよ。しかも新幹線の問題だけについたら、これは三十分くらいのものでしょう。それで異議なしということですよ。それで委員の中から、こんな資料で、こんなずさんな審議できめるのは問題だという発言さえ出ております。まあ言うなら形式的に審議会にかけたというにすぎません。それなら一体、どこで国民経済的に見た経済効率とか、あるいは国鉄の経営上から見た問題が審議されておるのか、その点をお伺いをしたいと思います。
  144. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) 諮問は確かにそういった簡単な諮問でございますが、これにつきましては、その際に詳細な説明をいたしておるわけでございます。その説明の裏づけになりますものは、いわば将来の輸送量の策定あるいは経済効果、時間短縮、いろいろな面につきまして、これはそれぞれ専門の調査機関に調査を委嘱いたしまして、各方面から検討を重ねましたエキスを審議会におきまして御審議いただくという形でございまして、確かに審議会だけの時間で申しますと三時間ばかりのものでございますが、それの説明につきましては、詳細につきまして裏づけのあるものを提出いたしまして、そして御説明申し上げて御審議いただいておるという状況でございます。
  145. 田渕哲也

    田渕哲也君 まあそういうあらゆる面にわたって資料をつくって検討されておるなら、私は基準がつくれないはずはないと思うのですがね、新線建設について。だから大臣がそういう数字で基準をきめることができないと言われるのは、ちょっと理解できないと思います。それはいま何人乗るからいいとか悪いとか、そういう簡単なものでは当然ないと思いますけれども、何らかの形でそういう基準がないと歯どめがないわけでしょう。それで、どこでどういうかっこうで要らぬものがつくられているかわからないというのが現状でしょう。どこでそれをチェックするのですか。
  146. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) ただいま大臣が申しましたのは、明確な、いわゆる基準というものを法制化した、あるいは省令で定めるとかいう意味におきまして、明確な数字とか基準というものがないわけでございます。これはしかし、大臣が申し上げましたように、非常に数字だけで測定できないというような、たとえば開発効果あるいは将来の地域計画という問題がございまして、新幹線につきましても同様でございますが、AB線につきましても、いろいろな経済効果あるいは今後の社会発展の総合的計画あるいは地域計画というものをソフト面、ハード面、両方から、各面から検討いたしまして、諮問さしていただいているという状況でございます。したがいまして、相当その裏つけになります資料、具体的な数字というものは、客観的な数字はあるわけでございます。
  147. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから先ほどの鉄建公団の予算に戻りますけれども、できかかっているものは早くつくってしまおうというのも私は非常におかしいと思うんですね。大体これをつくれば赤字がさらにふえるというものを、なぜ促進されるのですか。
  148. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) そんな意味で言っているんじゃないんです。とにかくいままでの悪い回を見ますと、わずか二百億程度の予算を何十という線に分けまして、そして建設ができ上がりますのに十年も十五年もかかっているというようなのが多いんです。でございますから、私が申し上げたのは、そういうようなむだなことをするよりも、それを建設いたしました場合には、地域開発なり、先ほど申し上げたように国土の開発なりに役立ち得るというような線でございましょうかり、それを早く完成さして、経済効果があがるようにすべきだということを申し上げたわけでございます。それによって、すぐに国鉄として、それを運営いたしました場合に、黒字になるとは思いません。相当に赤字が出ると思います、運営した場合にですね。そういった点は先ほど申し上げましたように、国鉄の運営全体に対しまして、国としての助成の配慮をしておりますということを申し上げておるわけでございます。
  149. 田渕哲也

    田渕哲也君 次に、この「総合体系について」という冊子の中にあります、「競争原理を活用しつつ、交通機関の特性に応じた望ましい分担関係を実現するための諸方策を実施する。」こういうことがうたってあるわけですけれども、これは具体的にどういう方法でするのが、その辺のお考えかあればお伺いをしたいと思います。
  150. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) 御指摘のように、政府で決定いたしました総合交通体系に関する基本方針につきましては、交通機関の間の望ましい分担関係は、利用者の選好と交通機関の持つ特性を基礎としまして、これに社会的に見た諸制約を加味して求められると考えておるわけでございます。大都市交通の旅客輸送を例にとって御説明いたしますと、特に通勤通学輸送につきましては、高速鉄道バス等の大量公共機関を主体として、業務交通については自動車を主体としつつ大量公共交通機関をも活用する交通体系を確立すべきものとしております。このために、この方針で明らかにしておりますように、高速鉄道網の整備促進とか、バスの優先通行の確保等の諸施策を実施する必要があるわけでございますが、運輸省といたしましては、地下高速鉄道の、地下鉄に対する助成の強化、それから日本鉄道建設公団によります私鉄の都心乗り入れ工事、新線建設の制度の創設とか、あるいは地方公共団体の行ないますニュータウン建設線工事に対する補助制度の創設等をいたしております。  また高速鉄道の補完機関等としての役割りを果たしますバスについては、バス優先レーン、専用レーンの拡充を推進いたしておりまして、同時に大都市圏におきます新住宅地のバス路線の開設促進のための補助制度の創設等を行なっておるわけであります。
  151. 田渕哲也

    田渕哲也君 次に、貨物の赤字が三十九年ころから非常にひどくなっておるわけですね。この原因について、これは簡単に要点だけをお伺いしたいと思います。
  152. 原岡幸吉

    説明員原岡幸吉君) 貨物の赤字が三十九年度以降非常に大きくなっているということでございますが、一番大きな原因は、何といっても収入がそれだけ伸びていない、輸送量が伸びないと、こういうことでございますが、その収入が伸びない、輸送量が伸びないと、これはその時点における輸送構造、経済構造という流通構造に対して国鉄の貨物輸送サービスが非常についていっていない、いい供給をしていない、サービス上よろしくないと、こういうことで非常に輸送量が低下している。それが大きな原因でございます。なぜそうなりましたかといいますと、そういういい輸送サービスをする供給を国鉄の貨物において十分投資をしてやっていけなかったと、こういうことが結果としてこのような赤字がふえてきておると、こういうかっこうになっておるわけでございます。
  153. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから貨物の赤字が非常にふえてきたのは、大体昭和四十年ごろからではないかと思います。三十九年ですか——ごろからではないかと思いますけれども、三十二年、三十六年の運賃値上げは大体旅客、貨物とも同じぐらい上がっております。ところが昭和四十年、貨物の赤字がふえてきてから以降、引上げは旅客が多くて貨物が少なくなっておる。四十四年は貨物は行なわれていない。この理由はどういうことですか。
  154. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) 四十一年につきまして、貨物運賃の改定率、これは一二・三%でございまして、旅客の改定率三二%に比べまして下回っているということも事実でございます。それから四十四年の改定時におきましては、貨物運賃の改定は見送っているということも御指摘のとおりでございます。で、貨物がどうしてこういう赤字にもかかわらず運賃改定を見送ったかということでございますが、いわゆる自動車の発達あるいは船舶の発達に対応いたしまして、鉄道の貨物輸送力というものが十分にこれに追随し得ない、いわば市場の独占性を失いまして、競争力というものが著しく弱小になっております国鉄の当時の貨物輸送の実情からいたしまして、引き上げを行なうということは、かえって貨物運賃収入の減少を招くおそれもあるということが大きな理由であったと承知いたしております。  もちろん、それ以外にも物価対策上あるいは零細生産者の保護、こういった面からの配慮ということがあったことも事実でございますが、やはり貨物の輸送力、競争力というものが、国鉄として十分、他の競争機関に耐え得なかったということが大きな理由でございます。
  155. 田渕哲也

    田渕哲也君 経企庁にお伺いしたいと思いますけれども、運賃値上げが消費者物価に及ぼす影響は、旅客で二三・二%で〇・三三八。それから貨物で二四・一%で〇・〇九二という数字が発表されております。これの計算のやり方ですね、どういう方法でやられたのか、お伺いしたいと思うのです。
  156. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) まず旅客でございますけれども、これは普通運賃につきましては、基準価格が現在第一地帯の賃率が四円二十銭でございますが、これが今度の案によりますと五円十銭になるわけでございまして、改定率が二一・四%でございます。この分につきましてはCPI上のウエートが一万分の百三十ということになっておるわけでございまして、このウエートをかけ合わせまして〇・二七八%という数字になるわけでございます。  そのほかに通勤定期につきましては、改定率が二五%でございまして、これのウエートが一万分の二十一でございます。これをかけ合わせました数字が〇・〇五三となっております。  それから通学定期につきましては、改定率が二二・二%、これのウエートが一万分の三でございまして、かけ合わせました数字が〇・〇〇七でございまして、この三つ、つまり〇・二七八と〇・〇五三、それから〇・〇〇七と三者を足しましたものが〇・三三八ということになるわけでございます。これが旅客に関するGPIの影響でございます。  それから貨物運賃につきましては、これは直接はこのCPIの構成品目になっておらないわけでございます。したがいまして、これは間接的にいわゆるはね返り計算上どのくらい影響するかということを推定するしかないわけでございまして、この場合に、ほかに方法がございませんので、いわゆる産業連関表を用いましてただいま先生おっしゃいました貨物の改定率二四・一%というものを入れてはね返り計算をいたしました場合の、結局コストがそれだけ上がるということになるわけでございますが、このコストの、貨物運賃の上昇分がすべて末端価格に転嫁されると仮定いたしまして計算いたしましたものが〇・〇九%に相なるわけでございます。
  157. 田渕哲也

    田渕哲也君 今回の貨物の値上げは、特に米とか麦とか生鮮食料品がまあ高いわけですね。平均の値上げ率より高いわけですが、そういう点もやっぱり加味されているわけですか。
  158. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) このCPI上の……、10表で入れます場合の計算は、ただいま申しました一般的な貨物値上げ率二四・一%ということで計算いたしますから、その中に含まれておるというふうに考えております。
  159. 田渕哲也

    田渕哲也君 これは貨物の消費者物価に対する寄与率が〇・〇九二というのは非常に過小だと思うのですね。波及効果とかはね返りを入れるともっと大きくなるような気がするわけですが、これは波及効果その他も入れてこういう数字になると解釈していいわけですか。
  160. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) いわゆる便乗値上げと申しますか、心理的な影響は計算に入りませんけれども、10表で計算する以上、直接に何と申しますか、コスト上昇にはね返る分は、はね返りが計算されているというふうに理解いたしております。
  161. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから国鉄運賃と私鉄運賃の関係が非常に密接だと思うのです。それで過去においても大体同時もしくは交互に上げてきております。それで現在、私鉄運賃の値上げ申請が出ておると思いますけれども、国鉄運賃がもし上がるならば、私鉄運賃の取り扱いはどうされるつもりか、お伺いしたいと思います。
  162. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) 私鉄のほうからは運賃値上げの申請が昨年から出ておることは事実でございますが、   〔委員長退席理事江藤智君着席〕 私鉄のほうは大手各社とも輸送力の増強のための設備投資に伴う資本費、人件費その他諸経費の増大によりまして、経営状況が非常に悪化しておることに起因しておるものでございます。  それで国鉄と私鉄の運賃の関係で、一方が上がれば必ず一方が上がるじゃないかと、こういうような推測があるんでございますけれども、運輸省としましては、私鉄運賃の改定は、それぞれの企業の収支状況でありますとか、輸送力の増強計画でありますとか、社内における合理化の努力が十分であるかどうかというようなことを勘案いたしまして決定をしなきゃならぬと思っておりまして、必ずしも相互の間に必然的な関係はないと思っております。目下、私鉄の運賃につきましては、各社別に具体的に調査を進めておる段階でございます。
  163. 田渕哲也

    田渕哲也君 ただ、私鉄運賃と国鉄運賃とはそれぞれ企業が違うわけでして、いまの料金決定方式というのは企業ごとの原価計算に基づいてされておりますね。ここからやっぱり矛盾が出てきておるわけで、たとえば同じ区間で私鉄、国鉄の間にすでに大きな差が出ております。こういう差がつくのは問題だと思うんですが、この点はどうなんですか。
  164. 新谷寅三郎

    ○国務大臣(新谷寅三郎君) その点は、現在でも若干そういう同じ区間で運賃の違うところが出てきておるのでございますが、それを高いほうにしわ寄せするということは運輸省としては考えてはおりませんで、それぞれ申請がございまして、それに基づいて各社に対しましてわれわれのほうで査定をし、   〔理事江藤智君退席委員長着席〕 そして認可をするわけでございますが、その際における各社との話し合いによりまして多少の差がありましても、それはそれで十分やっていける、経営上やっていけるというようなことのめどをつけましてやっておりますので、今後とも必ずしも国鉄の運賃にしわ寄せしていくというような必要はないのじゃないかと思っております。
  165. 田渕哲也

    田渕哲也君 ととろが通勤定期で比べた場合にも多少の差どころじゃないわけですね。今回国鉄が改定されれば大体私鉄のほうは同区間で半分ぐらいになるわけです。これを放置しておるというのは、どうしてもこれはおかしいのじゃないかと思いますが、どうですか。
  166. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) 国鉄と私鉄でいわゆる運賃制度が違っておりまして、先生が御指摘のように、相当遠距離の場合になりますと、国鉄に対しまして私鉄のほうが半額というような区間もあることは事実でございます。しかし私鉄自身の運賃制度が大体遠距離に行くほどぐっとアップ率が低くなっているという、過去からの運賃制度のいきさつがございまして、急にこれを両者調整するということは、私鉄自身のまたその線区におきます運賃制度の混乱を招くという問題もあるわけでございます。私たちとしましては、いわば両者競合区間におきまして、できるだけ旅客の配分を均等化していくという意味におきまして、これをならすということも一つの大きな問題であるということは、十分承知いたしておりますが、これはそういった過去の運賃制度の沿革がございまして、一挙に改めるというわけにいかない問題でございまして、従来も検討しておる問題でございますが、今後もこれは検討課題の一つの大きな問題であると考えております。
  167. 田渕哲也

    田渕哲也君 これは現在の運賃決定方式に非常に問題があると思います。いまは先ほど申し上げましたように、各企業ごとの原価計算による査定方式といわれておりますけれども、これは交通企業相互間の調整がとれず不合理な体系になりやすい。それからもう一点は企業経営が適正に行なわれることの保証が不十分である、こういう点が指摘されると思います。昨年運輸省において、こういう運賃のきめ方を改善するためにガイドポスト方式の検討がされたということが新聞記事で出ておりましたけれども、その後これはどうなっていますか。
  168. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) ガイドポスト方式については、こういうガイドポストのようなものを考えていけば、まあコストの上昇の状況が一目りょう然ではっきりわかるのではないかというような考え方がありまして、そういう実は検討もいたしておるわけでございますが、なおこれについては相当技術的方法について困難性が多々ございまして、一つ考え方であろうとは思いますが、もう少し時間をかけて、いろんな方面から検討を要する問題であろうと考えております。
  169. 田渕哲也

    田渕哲也君 物価安定政策会議が昨年公共料金政策のあり方というのを出しております。この中で、企業単位の原価主義の不合理を指摘しております。特に総合原価主義ですね、国鉄のとっておる総合原価主義は、先ほど申し上げました都市近郊の国鉄、私鉄の運賃格差というようなものを生むわけですね。国鉄の場合は、たとえば山手線でも京浜東北線でも黒字になっておりますけれども、ところが地方交通線の赤字分も込みで計算しなければならない。だから同区間における私鉄との運賃格差が出てくる、こういう不合理を生むわけですけれども、こういう点について、やはり何らかの改善がされなければ、どう考えても東京−小田原間では定期運賃が三分の一というような、非常に極端な例が出てくるわけですね。これについて何か改善策というものを考えないのか、お伺いをしたいと思います。
  170. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) 先生御指摘のように、各企業ごとの原価計算による運賃料金の算定方法というものを私どもはとっておるわけでございますが、各企業単位に適切な原価を償うように運賃料金を決定する方法は、同一企業に属します路線相互間について、いわゆる内部補助を可能にいたすわけでございます。たとえば国鉄が新幹線あるいは都市交通線で若干原価を上回る収入を得たもので地方の赤字を埋めるということが可能になるわけでございまして、企業経営のその場合のメリットといたしましては、企業経営の責任を明確化することによって企業経営の効率性確保に役立つとか、あるいは全国的な路線については、たとえば全国一律の料金を設定することによって、地方の社会的な公平を実現するとか、あるいは地方の開発の促進になるとか、そういったようないろいろなメリットがございます。そして結果として、当該企業に属します路線の運賃水準を、全体として、できる限り低位に安定させるという効果もあるわけでございます。  したがって、この企業単位の原価主義というのは、それなりにきわめて強い合理性を持つ運賃制度であろうと考えております。しかしながら、先生の御指摘のように、ある部分においてはかなりの企業格差というものが出てまいることはいなめない事実でございまして、そういった場合に、具体的に運賃の調整を行なう必要があるかどうかという点については、その地域の特性あるいは需要がきわめて片寄ってくると、それによってきわめて弊害が生ずるというような場合において調整をしなければならないんではないかと考えておりますが、現状においては、たとえば通勤定期等において、御指摘のような、似通った路線についてかなりの格差が生じてはおりますけれども、やはりその地域においては、利用者がそれでは安いほうの路線に片寄ってくるかというと、必ずしもそこまでは現在いかない。総合的に時間とか、いろいろな観点から考えまして、きわめて矛盾が生ずるという事態ではないとわれわれは考えております。しかしながら、この矛盾が非常に拡大するということであれば、私どもとしては、これを何らかの形で調整していくということを前向きに検討せざるを得ないのではないかと考えます。
  171. 田渕哲也

    田渕哲也君 それからこの物価安定政策会議の指摘の中で、開発利益の還元ということがいわれております。これは総合交通体系の中にも若干触れられておると思いますけれども、受益者負担ですね、利用者に料金という形で負担させるのは総費用から開発利益を差し引いた範囲内ですべきだという指摘があるわけですね、この点について、具体的にどう考えておられますか。
  172. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) 開発利益の還元については、確かにきわめて効果的な一つの手段であろうとわれわれは考えておりまして、その具体化について、いろいろ検討はいたしておるんでございますが、きわめて、この開発利益を一般的に還元制度を導入するということにつきましては、むずかしい問題がございます。したがって私どもとしては、さらに具体的にどういうように考えるかという点については、検討をなお要すると考えておりますし、また前向きに検討しなければならないと考えておりますが、しかしながら一般的に、何といいますか、開発利益の還元とは必ずしも申せませんけれども、具体的にたとえば多摩ニュータウンに乗り入れます私鉄につきまして、団地の開発者負担ということを制度として確立いたしておりますし、また団地バス等において団地造成者の負担といったような制度も考えております。これはいわゆるストレートに開発利益の還元とは申せませんが、広い意味の開発利益の還元と説明できないこともないんではないかと、こう考えております。  それから、なお一般的に申しますれば、たとえば国土開発のための新線建設とか、あるいは新しい都市交通線等におきますその地方の負担あるいは国土開発のための新線建設の場合に国が財政負担、一般会計で負担するというのは、広い意味で、何といいますか、その開発利益が社会全体にわたるということから、そういった負担をするという説明もできないわけではないわけでございまして、この開発者負担というものをきわめて狭義に解釈いたしますと、きわめて現在むずかしい問題がございますが、広義の開発者負担というものについてはすでにある程度そういう説明ができるような負担をいたしておると言ってもいいんではないかと考えております。
  173. 田渕哲也

    田渕哲也君 次に航空運賃の値上げ問題についてお伺いをしますが、昨年の七月の十五日に平均九・五%の値上げが行なわれました。それからことしの八月の十日に航空会社三社は平均二二・九%の値上げの申請をしております。これの値上げの理由について、まずお伺いをします。
  174. 寺井久美

    ○国務大臣(寺井久美君) 昨年の国内定期航空運賃の改定につきましては、昭和四十八年度から航行援助施設利用料、それから四十七年度から航空機燃料税が新たに航空会社に対して課せられることになったことに伴いまして、その負担増分に見合うものとして旅客平均九・五%、貨物平均八・六%の値上げが行なわれたわけでございます。今回の定期航空三社からの運賃値上げの申請につきましては、航空機燃料税の増徴分による負担一キロリットル当たり四十七年度は五千二百円、これが四十八年度には一万四百円、四十九年度以降一万三千円に増加されることになっております。この負担増分、それから諸物価の高騰、諸経費の増大等を理由といたしております。で、その理由の詳細等につきましては、申請者から十分説明を求めるなどして、目下調査検討中の段階でございます。
  175. 田渕哲也

    田渕哲也君 去年は九・五%の値上げですが、その理由としては、航空機燃料税が売り上げの三・八%、収入に対して三・八%ですね。それから航行援助施設利用料が、これまた総売り上げの四・一%、これだけ負担増になったわけですが、それが七・九%です。七・九%のこういうものの負担増に対して九・五%の値上げが去年は認められたわけです。ことしは航空機燃料税の値上げがどれだけふえるかというと、倍になるわけですから、三・八%ふえるだけですね。それで二二・九%というのは非常に大きな要求だと思いますけれども、去年の例からいうならば、値上げを認めるとしても、去年の九・五%も認める必要はないということになると思うんですが、この辺について、どう考えておられますか、お伺いしたいと思います。
  176. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) ただいま御指摘がありましたように、航行援助施設利用料と航空機燃料税の増分、これは実施されました時期と、それから値上げされました時期とのギャップがございまして、昨年度の値上げ率が平均九・五%、あるいは八・六%というふうになっております。ことしの場合、ただいま申し上げましたように、航空機燃料税の増徴による負担分だけをとりますと、これはそれほどのパーセンテージにはならないわけでございますが、航空会社の申請の理由といたしましては、諸物価の高騰、経費の増ということが理由に上がっております。これが適切であるかどうかという点につきましては、今後詳細に検討して処理をしたいというふうに考えております。
  177. 田渕哲也

    田渕哲也君 値上げは認められる予定ですか。
  178. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) 値上げにつきましては、それが合理的なものであれば、認めるべきであると思います。
  179. 田渕哲也

    田渕哲也君 去年九・五%の値上げをしたときに、来年度はその航空機燃料税の増額があるから、その分は認めるというような約束はされてないわけですか。
  180. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) 約束ということはいたしておりませんが、値上げするという考え方でございました。
  181. 田渕哲也

    田渕哲也君 そうすると、値上げする方向については間違いがないわけですね。
  182. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) さようでございます。
  183. 田渕哲也

    田渕哲也君 そうすると、来年度また上がるわけですけれども、来年もまた値上げするということですか。
  184. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) 来年度以降、一万三千円に燃料税は増加いたしますが、この分を含めまして本年度の値上げで解決いたしたいというふうに考えております。
  185. 田渕哲也

    田渕哲也君 現在、航空会社の業績はどうですか。
  186. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) 定期航空三社の四十七年度の業績と申しますか、日本航空につきましては、国際線と国内線と合わせまして百三十七億の経常利益がございます。これに特別損益を含めますと十九億の当時利益ということになります。全日空につきましては、二十億の経常利益がございまして、特別損益を含めますと、三十八億円の利益を計上することになります、東亜国内航空につきましては、四十七年度三十三億の欠損を計上しておりまして、前年度からの繰り越し欠損九億円を含めまして累積欠損が四十二億円になります。
  187. 田渕哲也

    田渕哲也君 これは航空会社の業績は、去年に比べて日本航空、全日空は非常に利益がふえておると思います。そうすると、この燃料税の引き上げ分はその中に吸収できないのかどうか。東亜国内航空は赤字ですけれども、これはまた別の要素があるんじゃないかと思うんですが、この点いかがですか。
  188. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) 数字、昨年度に比べまして本年度の業績は、御指摘のように、たいへん上向いております。ですが本年度のみをとりまして判断をするということよりも、来年度も含めまして、今後の輸送の動向その他を勘案して、最終的には判断しなければいけないというふうに考えております。
  189. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから航空会社の申請は、平均値上げ二二・九%で実収一五・二%を要請しておるわけですね。これが国鉄運賃値上げと非常に似たような数字になっておるわけですけれども、何かこれを合わしてきたような気がするわけです。したがって国鉄運賃値上げをすれば、やはり便乗値上げということになる可能性が非常に強いと思いますけれども、その辺はどうですか。
  190. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) 私どもは国鉄値上げの便乗というふうには考えておりませんで、発端は航行援助あるいは燃料税との関係で、どうしても値上げをしなければならない部分がございましたことと、それに合わせてコストアップというような問題がからんでおりまして、このコストアップの計算のしかた、その他がはたして適正であるかどうかにつきましては、目下検討中でございますが、国鉄運賃の値上げと必ずしもリンクしたものというふうには考えておりません。
  191. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから航空会社の言うように約二三%値上げをすれば、利用客が減って実収一五%になるというようなことは、現在の状況ではあまり考えられないのではないかと思います。それに国鉄運賃がさらに二十何%も上がれば、国鉄との比較においてもそう変わらないわけで、航空会社の言っているこの根拠自体が非常に薄弱ではないかと思いますけれども、どうですか。
  192. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) ただいま御指摘ございましたように、いま非常に航空機が込んでおります。したがいまして、運賃を値上げすることによっていわゆる運賃弾性値というものを考慮して、二三%の値上げが一五%程度になるということになっておりますけれども、はたしてそういうことであるかどうか、その計算が妥当であるかどうかにつきましては、さらに検討を進めたいというふうに考えます。
  193. 田渕哲也

    田渕哲也君 速記をとめてください。
  194. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 速記をとめて、   〔速記中止
  195. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 速記を起こして。  ほかに御発言もなければ、本日の質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十四分散会