-
-
-
-
○
小柳勇君 本日は、
岡山県の中
鉄バスの問題について質問をいたします。
岡山県の中
鉄バス、これは
県下ほとんど独占的に大きな
占有率を持つ
バス事業を
経営しておりますが、いわゆる
春闘の時期に賃金問題の
交渉を
中心にして
ストライキが決行された。そのときに
ストライキを破るための
暴力行為もあった。その場合に、
団体交渉で和解のための
協約をしたが、それを一方的に破棄したというような
事件がありまして、私
ども調査に行ったのでありますが、そのときに、労使間の問題だけではなくて、
経営上に非常に欠陥があることが明らかになりました。たとえば、かってに欠行する、あるいは
検査要員が少ないために
バスの
検査が十分でない、したがって
ブレーキ装置などで非常に心配な点があるというようなことがわかりましたので、立ち会ってもらいました
広島陸運局長に対しまして、
立ち入り検査の要請な
どもして帰ったところであります。したがって、前半のほうでは
バス事業の
実態について質問いたしまして、後半のほうで基本的な
労働協約を締結しておきながら、一方的にこれを破棄しておる、こういうのが、現在なお
紛争を引き起こしておりますから、その問題を質問いたしたいと思います。
前置きは以上でありますが、そこで
運輸省に質問いたしますのは、まず
岡山の中
鉄バスの現在の
経営実態について御
報告を求めます。
-
-
○
小柳勇君 四、五年前、私この
バス会社を
調査に行ったことがあります。それは
枝線が
赤字であるからこれを
廃止じたいという、その
廃止に対し県民が非常に反対をした。また同時に
労働者の数を減らしたい、いわゆる
合理化でありますが、そういう
紛争がありましたので
調査に参ったことがあります。そのときに、
赤字線に対しましては国が少し
補助しなければなるまいということで、この中
鉄バス及び四国の高知県
バスに対しまして、同じような条件がありましたから、特に私も
委員会などで発言いたしまして、国の
援助、県の
援助がなされるように、
過疎地帯の
バス営業が成り立つようにという発言をいたしまして、その後、それが取り入れられて、この
バス会社に対しましても、国と県から
補助がなされておると思いますが、その
実態について御
報告を求めます。
-
-
○
小柳勇君 村といいますんですが、国と県はわかりますけれ
ども、あとの村というのはどういうことですか。
-
-
-
-
-
-
○
小柳勇君 このように、国や県や
市町村から
援助があって、
バス会社を
経営しておる。その
バス会社が、これはその一部、モデルですが、「急告」と書いて、「本日都合により左記の便を
欠便と致します」、そして停止すると。そしてこの便が欠行されてしまう。この広告を出すのはいいほうでして、もう黙って欠行するそうです。今日もなお欠行するそうです。こういう問題を
陸運局は掌握しておるのかどうか、お聞きいたします。
-
○
政府委員(
小林正興君) 先ほどの
免許キロの問題は、これは
路線の
廃止の問題でございまして、それ以外に
休止という
制度もあるわけでございます。
廃止は先ほど申し上げましたように、九二%程度に
路線の
キロが減っておりますが、一方
休止キロは、逆に四十三年ごろから漸次ふえておりまして、四十七年度の
実績では二百五十一
キロという
路線が
休止されておるわけでございます。この
休止は、当然
道路運送法で
休止の
許可を要することになっておりますので、私
どものほうで的確に把握いたしておるわけでございます。
なお、ただいま御
指摘の欠行の問題につきましては、設定された
ダイヤどおりに何らかの
事情があって当日たまたまある便が欠行されるというような場合でございまして、これについては、定められた
事業計画どおりに
運行するたてまえになっておりますものが、事実上ある便が欠行するという事実問題でございまして、そのつどつどは把握いたすことは不可能であるわけでございます。
-
○
小柳勇君 把握することは不可能といいましても、
調査しましたのを一々
資料を渡したらいいけれ
ども、毎日の欠行がこんなにあるんですよ。これ、紙に十枚ぐらいありますがね、全部きまった
ダイヤがありますね。これに対する欠行がこんなに一これは最近のだけですよ。一カ月ぐらいの統計をとりましてもこんなにあるんですよ。国や県や
市町村からこれだけの
援助を受けて
バスを営業しているものが、かってに、こんなに欠行するということは許せるのかどうかですね。この前に、
広島の
陸運局長も立ち会ってもらったかち、この
実態をひとつ十分に
調査しておいてくださいよと言ってあるが、
調査してあるのかどうか。
-
○
政府委員(
小林正興君) 先ほど申し上げましたのは、一件一件
欠便する際に、
陸運事務所に届け出とか、あるいは
許可とかという、そういう
制度はないわけでございますが、先ほど申し上げましたように、突然
バスの
運行ができないというような便が出たために、結果的にかなりの
欠便が出るということは各地であるわけでございますが、これについては、当然
法律のたてまえ上、
事業計画に定められた
運行ダイヤを
確保する
義務が
事業者にあるわけでございますので、私
どもといたしましては、そういった
欠便の
状況が非常に多いという場合には、当然特別に
調査をいたすわけでございます。
中
鉄バスにつきましても、ただいま御
指摘のように、
欠便が多いではないかということでございますが、先般も、四月の
労働争議に際しまして、そういった御
指摘が
関係方面からございましたので、急遽
調査をいたしたものは
手元にございます。これによりますと、御
指摘のとおりでございまして、本年四月四日から五月二十二日までの
調査によりますと、全体で二百六十一便欠行をいたしております。
-
○
小柳勇君 このりっぱな
時刻表というのがあります。これは公に告知してあるんですね。これも各区間の
時刻表をきれいに印刷して、そしてこれは全部公式にわかっております。これに乗るために乗客が行きます。かってにこんなにたくさんの
欠便をやられて、それで
バスに乗ることができない。こういうのが許せるんですか。
事業免許を与えて、公にこれだけの
時刻表を告知して、そして運転している公の
バス事業が、かってにこんな欠行をやるということについて許せぬが、何か
罰則——いま私、
道路運送法を見ようと思っているのですが、直接のいまあれがないようでありますが、
罰則は、どういう
罰則がありますか。
-
-
-
○
政府委員(
小林正興君) 先ほど申し上げましたこの二百六十一便の欠行の問題につきまして、その詳細について
調査をいたしたわけでございます。
それによりますと、現在、中
鉄バスは
岡山営業所ほか六
営業所、全体であるわけでございます。二百六十一便のうち、二百三、九便というほとんどのものは
総社営業所にかかる
運行系統でございまして、ほとんどがこの
営業所でございます。それからそれ以外に、
勝山営業所が十二便、それから
足守営業所が十便ということでございまして、
岡山あるいは津山、倉敷という三
営業所につきましては、
欠便は出ておらなかったわけでございます。
なお、二百六十一便のうち、五月四日に百一便という大量の
欠便が出ておったわけでございます。したがいまして、これらの点について中
鉄バス一般の問題というよりか、非常に各
営業所ごとに特殊な
事情がある、あるいはその時点におきまして
欠便が非常に大量に発生した日の
問題等、個別に
内容を
調査いたしたわけでございます。
まず五月四日の百一便の
欠便につきましては、四月二十七日の
労働争議の際に
傷害事件等が起こりまして、その余波がまだ引き続いておったようでございます。そういうようなことから、百一便につきましては、大量に
運転手の
勤務が
確保できなかったというようなことであったようでございます。あるいは
組合内部におきましていろいろな
状況があったようでございまして、実際問題として、当日の
勤務につき得なかったというように承知いたしております。それから、それ以外の、百一便を除いた以外のものは、一日当たりにいたしますと、少ない日で二便とか一便とかでございます。多くても十便前後というようなふうに毎日行なわれております。
これらにつきまして、
各日別に
調査をいたしたわけでございますが、それによりますと、ほとんどの場合、
乗務予定になっております
運転手、または車掌が
乗務直前に
欠勤届けを出すというような
事態のため、
予備運転手の手配が間に合わなかったというような場合がほとんどでございます。こういった
状況にかんがみまして、
実態調査の結果、先ほど申し上げました
改善命令というようなもののいわば前段階といたしまして、
事業計画を
確保するように直ちに
口頭で、中
鉄バスの
社長に対しまして、
欠便状況を解消するよう積極的に対処するような
指示をいたしたわけでございます。
その
内容といたしましては、今後
欠便状態がどういうふうに起こっているかということについて、なお
実態を的確に把握して
報告させるとともに、
交代運転手、
予備運転手の
確保ということに一そう全力をあげる、なお、これは非常にむずかしい問題でございますが、
労務管理、あるいは
運行管理といたしまして、
直前に
欠勤届けを出すというような
運行管理の
状態では、
欠便はとうていなくならないわけでございますので、そういった問題についての
管理の強化といいますか、こういった点について
指示をいたしております。
現在は、そういった
指示に基づきまして、四月から五月にかけての
状況よりかは若干
改善されてきておるようでございます。抜本的な対策としての
報告はいまだ聞いておりませんが、その
一つといたしまして、
貸し切り車を減らすということによって、
貸し切り運転手を
乗り合いバスのほうに回すというような具体的な措置については、すでに
報告をされておりまして、徐々に
改善されつつあるわけでございます。
-
○
小柳勇君 ちっとも
答弁になってないんですよ。これだけ公に
時刻表を発行して、たとえば
汽車に例をとりますと、
汽車の
時刻表はきまっている。駅に行きます。お客は待っている、ホームに。
列車が来ないならどれだけ社会問題として大きくなりましょうか。
バスだって同じですよ。はっきりこれだけ
時刻表を定めて、みなが待っている。この時間に行って待っている。かってに
欠便する、ただ一枚の紙を張っただけで
欠便するという、しかもそれに対して、私は五月十七日ですからね、
調査に行ったのは。
陸運事務所長もちゃんと私の目の前におって、それを調べてくださいよと言ってある。その後、なおはっきりした勧告もしてないようですね、
改善命令も出てないようだ。
口頭では言ったようでありまするが、はっきりした
改善命令が出ておるのかどうか、それが
一つ。
それから、その
実態を本省のほうに、あなたのほうに
広島の
陸運局長から
報告があったのかどうか、この二点についてはっきり
返事してください。
-
○
政府委員(
小林正興君)
実態調査をいたしまして、なおその
原因についても詳細に調べました結果、即刻
口頭による
指示をいたしたわけでございます。
なお、それによって、その後の
状況というようなことについて、現在引き続き
調査をいたしまして、必要によっては
改善命令ということは当然出さなければならぬと思っております。
-
-
○
政府委員(
小林正興君) 先ほどの
実態調査をいたしまして、
会社から正式に
報告をとっておるわけであります。なお、その
報告につきまして、
陸運局陸運事務所で
調査をいた、しまして、私
どもの
手元へ、
陸運局長から
報告を正式にとっております。
それからなお、先生御
指摘の
事業計画を
確保すべき問題について、これは御
指摘のとおり、前々申し上げますとおり、定められた
ダイヤというものを
確保すべきことが
バスの使命でございますし、当然
法律上
事業計画を
確保すべき
義務は
事業者にあるわけでございますので、この点について、私
どもはこれを的確に行なうように強制もし、また
指導もいたすわけでございます。
ただ
当該会社の場合に、先ほど触れましたが、
事故原因を詳細に調べますと、百一便を除きまして、残りの百数十便につきまして、毎日数便
欠便がなされているという点につきましては、
従業員が
直前に
欠勤届けを出す。したがって
予備運転手の
確保が十二分になされていない限り防ぎようがない、こういうような
状況でございますので、基本的には
予備運転手の数をふやすこと、またこれと並んで、そういった
直前に
欠勤届けを出すというような
管理体制、業務の
運営の
体制では、極端にたくさんの
予備乗務員を持てる場合は別といたしまして、
欠便は直らないというふうに判断されるわけでございます。なお、それ以外に
会社の内部的な問題につきましては、なかなか私
どもでもうかがい知れないようなむずかしい
労働状況あるいは
労務状況になっている点もあると思いますので、こういった点については、私
どもといたしましては、労使問題に介入しないという慎重な態度で臨まなければなりませんが、こういった
利用者保護の観点から
欠便をなくすということについて、最大限の努力をすべきことを
会社側に要請しておるわけでございます。
-
○
小柳勇君 この
公衆の損失といいましょうか、
損害の補償などについてはどう考えています。たとえば
バスに乗りたかったけれ
ども、
バスが欠行したから
タクシーで行ったと、そういう例がたくさんあると思うけれ
ども、かってに
補助運転手がいないから
欠便をいたしましたと、そんなことをするなと言いましたと、それだけで済まぬでしょう、問題は。
それでは具体的に言いますが、この国から
補助している
補助金あるいは
市町村が金を出しているこの金、これは
欠便のある間停止すべきであると思うが、どうですか。
-
○
政府委員(
小林正興君)
補助金は、国の場合はその
路線を維持するというようなことのために、本来ならば
廃止されるかもしれないというようなものについてこれを維持するために、特定の
路線を維持するための
補助金でございまして、直接
総社営業所にかかる
運行系統の
欠便と直接の
関係があるかどうかという点については、相当疑問があるのではないかと思います。
-
○
小柳勇君
路線だけを維持したって、
バスが動かなければ何にもならない。
バスを動かすための
補助金でしょう。
路線を維持するための
補助金じゃないでしょう。そんないいかげんな
答弁じゃだめですよ。
政務次官どうですか、聞いておって。これは全く、私の行きましたのは一ヵ月前ですよ。こんなにかってに
欠便をするというのに、
口頭で通知をいたしましたと、それからまだはっきり自信はない。
予備員が足りませんから
予備員をふやすように言いましたと、それではいままで受けた
公衆の
損害については一体だれが補償しましょう。それは国の
補助も県の
補助も
市町村の
補助も
路線を維持するためであって、
バスの
欠便は
関係ないなんて、そんな
答弁は通りませんよ。どうでしょうか。
-
○
政府委員(
佐藤文生君) この問題につきまして、四月の
春闘のまっ最中に私は
報告を受けました。ちょうど全国的に、私、
タクシー、
バス関係で、
利用者を
中心にものを考えていくという、そういう
経営に徹底しなければいろんな問題が起こってくるということをおそれまして、全国的にいろんな
調査を私個人で始めておりましたところが、もちろん
原局を通じて
調査をしましたが、御承知のとおりに北海道では、
タクシー問題でフローリアンが
小型であるか中型であるか、こういう問題で、いろいろ問題が非常に複雑な問題になりまして、
利用者に非常に迷惑をかけるということで、
利用者から見てこれは
小型であると、こう私は判断をいたしまして、
小型の
指導体制をとって、一応そういうことで
利用者を
中心に車種の決定、そういうものをすべきであるということを
指導いたした。
そうすると、たまたま九州では大分県の日田の
バス会社が、
経営者の能力が足らないというか、
時代の流れについていくことができなかったといっていいのでしょうか、
労務管理が不十分であったために、完全に
経営者のほうが
経営権を放棄するという、そうすれば働いておる
タクシー運転手は路頭に迷わなくちゃならない。
組合側が
自主運行を始める、こういう問題がまた起こる。たまたまそういう問題が起きておる最中に中
鉄バスのこの問題が起こりまして、非常に欠員が多い。国も県も
市町村も
補助金を出して
〔
委員長退席、
理事江藤智君着席〕
赤字路線を
確保しながら大衆にサービスしていくという、そういう態勢のまっ最中に
欠便が多い。その
欠便も一日何便か、非常に少ないならば、いろいろそのときそのときの
理由があるでしょうけれ
ども、連続して多数の
欠便が起こっておるというので、おかしいことだな、こう思っておりましたところ、
社会党の
皆さん方の
調査団がちょうど行かれまして、ひとつ
立ち入り検査したらどうだ、こういうような強い要求が現地の
陸運事務所にあったことの
報告を受けました。
そこで私は、いろんなそういう問題について、ひとつこれは
調査する必要があるんじゃないかということで、五月十五日に中
鉄バスの
神吉常務を
岡山の
陸運事務所に出頭を命じまして、そうして次の事項の
調査を命じました。
欠便が非常に多いということで、
社会党の
調査団も行って
実態を
調査しているんだ、したがって、その
欠便の
理由というものを明確に
陸運事務所に
報告してもらいたい。第二点は、定期点検整備の実施の
状況及び不良車の有無についても
指摘があったようだから、これもその
実態を
報告しなさい。この
調査命令に基づきまして、五月十六日——翌日、中
鉄バスの
社長の藤田
社長から
岡山陸運事務所長に次のとおりな回答がありました。相当数の
欠便があるが、その
理由としては、働いている
従業員の一身上の都合や組合の
委員会の出席とかあるいは第一、第二、両方の組合のいろんなトラブル等のために
欠便がやむを得ず出たんだと、こういう
報告が、一応翌日ありましたので、さらに五月の十六日、同日に
会社側の幹部を出頭せしめまして、
欠便の
状況なり乗務員の
確保の
状況についての細部の
報告を
陸運事務所でさせまして、完全
運行に努力するように勧告をし、警告を発しました。
五月二十三日に、引き続いて本社の実情
調査をいたしまして、
欠便の
実態、さらに総社線の
欠便状況についての
調査、それから
路線別の
調査、そういうものをやりまして、組合のトラブルによらない平常時において
欠便しておるような
実態が出てきましたので、これもおかしいじゃないか、平常時において
欠便したのは一体どういう
理由であるか、その
理由と、その対策、それから乗務員の、一体必要人員についてはどのくらい必要であるか、こういう
確保の
状況、こういう問題点につきまして、完全
運行ができるように厳重に
口頭によって警告しました。
五月二十四日、さらに
関係者を呼びまして、その実行可能であるかないかという点をさらに突っ込み、五月三十一日、事務所に再び呼び出しまして、全線の
欠便状況と、警告を発した数日間においてどういう処置をしたか、こういうところをさらに
命令を発しまして、その方策を実行せしめるように要請しました。
さらに六月七日に、事務所に呼び出しましたところ、先ほど自動車
局長が
報告いたしましたような
内容の各日にちごとにおけるところの
欠便と、それから各
営業所ごとにおけるところの
車両数と組合員数の明確なる
報告を持ってまいりまして、たとえば
岡山営業所では乗り合い、貸し切りの車が六十八両ある、組合員数は第一組合が五十一名、第二組合が五十六名、合わせて百七名
岡山営業所にはいますと、こういったように各
営業所ごとに
車両数と人員の配置の
報告をいたしまして、それから判断して、一体
欠便が出るような様相がないではないかと、一体どういうわけだ、こういうぐあい突っ込みましたところ、先ほど自動車
局長が言ったように、急にその日になって病気であるとか、そういうような
理由でもって
欠便せざるを得なかったというようなところが、だんだんと判明したところを追及してみるというと、第一組合と第二組合のトラブルが予想外に激しいと、普通われわれが考えていたような単なる二つの組合があって主義主張は異なっても毎日の
勤務状態においては正常な組合運動を行ないつつ
勤務しておるんだと、こう思っておったところが、予想外のトラブルがありまして、
春闘中第一組合に第二組合から再び再加入したのが六十名に及ぶというようなところも
原因いたしまして、これは
労務管理が完全に果たされてないと、これではなかなか完全なる
運行が、お客さんを
中心に
運行ができないんだということで、これはじっくりと
経営指導といいますか、
経営についての
改善命令というか、
改善指導というか、そういうことをやる必要があるということを判断いたしましたので、
陸運事務所長に、私のほうから
経営者に対していま少し近代的な
経営ができるように、具体的に
一つ一つのポイントを押えながら
経営の
指導をやるべきであるという指令を発しまして、現在続行中でございます。
ところが、いま先生の御
指摘のありましたとおりに、国なりあるいは県なり
市町村のそういった
補助金が出ておるわけであります。したがって
欠便によってお客さんに迷惑をかけているんだと、だからこれをひとつ一時停止したらどうか、あるいはそれだけの
補助金が出てるんだから
欠便した場合においてはお客さんに
損害賠償を払うべきだと、こういうお考え方もあると思いますけれ
ども、いましばらく、私は、こういう
実態でございますので、
経営者に対して
経営指導なり
改善命令を出しながら正常な
会社運営ができるように
指導していくのに時日をかしてほしいというのが現在の考え方でございます。
-
-
-
○
小柳勇君
政務次官の
報告非常に具体的だが自動車
局長は非常に抽象的だな、そんなもの知っておって
報告しているんならもう横着者だな、それ。もしそれも
答弁できないなら、おそらく
政務次官から自動車
局長に
命令がきているけどそこで
命令がストップして、現地にいっておらぬのじゃないかという疑いを持つんだが、どうですか自動車
局長。
-
○
政府委員(
小林正興君) 非常に抽象的に包括的に申し上げましてかえって失礼いたしましたが、特に
政務次官からお話がありましたように、
会社の内部的な問題で第一組合とかあるいは第二組合というような問題にわたる問題でございますので、私としましては、そういった問題については慎重に対処すべきものであるということでございまして、それ以外の問題については、御
指摘のとおり、当然私としましては、
政務次官に
報告した
内容については、それ以上に詳しい
資料を持っておるわけでございますので、労働
問題等にわたらない問題につきましては、私が抽象的にお答えするというようなことはあってならぬことでございますので、十分注意いたしたいと思います。
-
○
小柳勇君 第一組合、第二組合の
紛争はありましょうとも乗って運転するのは一人ですから、何も組合の
紛争が
バスの運転の中に影響するわけありません。
予備員が不足するというのが一番の大きな
原因でしょう。第一組合、第二組合の抗争などというものは
欠便の
理由にならぬですよ。
予備員さえおればちゃんとそれで乗っていけるわけですから。欠行して
予備員がおるのになお乗せなければこれはもちろん罪悪だけれ
ども。
そこで、この新聞によりますというと、現地の
陸運事務所長ももし場合によっては免許の取り消しなど処分をやると、免許取り消しの処分も検討する方針であると、こういうことまで記者会見で述べておられるようですけれ
ども、そのくらいのきつい態度で臨まなければ、この
予備員をふやして欠行しませんということはできないと思うがどうですか。これは
政務次官から聞きましょう、次官から。
-
○
政府委員(
佐藤文生君)
バス営業なり、あるいは
タクシー営業が道路交通法に違反して、そして大衆に御迷惑をかけているということが、私は恒常的に続いていけば、最後にやるべきことはやはり免許の取り消しということは当然でございます、それは。したがって東京でも
タクシー約三百社ぐらいございますけれ
ども、
タクシー業界が自主的に、御承知のとおり近代化センターをつくりまして、そうして業界自体でもって銀座とか新宿で
タクシーの乗り場をつくりまして、そこで乗車拒否とか不当運賃とか
暴力行為とかやるような
運転手さんがおった場合は、業界自体が取り締まりといいますか監督をいたしまして、毎月、各
会社のデータが出てきておるわけです。その三百社の中でワースト三十社、それからベスト三十社それぞれ選定をいたしまして、四半期ごとに思い切って発表することにいたしました、ことしの正月から。
そういうデータを見ましても、
経営者がしっかりして、そうして
労務管理がしっかりいって
経営と労働というものがしつかり密着したところの
経営の
実態を見るというと、非常によいサービスをして、正常な
運行をいたしております。ところが、これが何回もそのワーストの中に入っている
タクシー会社なんかを見ますというと、何回
改善命令を出し
指導をしても、どうも
タクシー業として大衆にサービスする、道路交通法による免許を得た正常な
経営をしていないという判断する
会社が、一年間四回あるいは二年間にかけて八回連続してワーストの中に入った場合においては、そういう措置も最終的に考えるべきであるという考え方を私は持っておるわけです。
したがって、こういったような
改善命令なり、あるいは
指導というものが四月ごろから急激に起こってまいりましたので、いましばらく時間をかしていただいて、最後に私はそういうことをやるべきであって、一挙に大衆の足を奪ってしまう——やはり公共的な面があるんでございますから、中
鉄バスの
経営者の今後のあり方をじっくりながめながら、最後にそういうことはやるべきであって、いましばらく時間をかしていただいて、
経営指導、こういうものに行政的にもっていきたい、こういうぐあいに考えておるわけであります。
-
○
小柳勇君
岡山の県会でも問題になっておるようです。六月八日の県会で、この
間引き運転というのが問題になっておるようでありますが、実はそういう問題がありますから、ここに
社長に参考人として来てもらって、どうしてそういうことをやるのか、今後どうするのかということを聞きたかった。ところが、自民党がこれに全部反対です、反対ですと言って、ついに
社長を参考人として呼ぶことができなかった。したがって次官にお願いしますが、直接次官は常務を呼んだのじゃありませんから、これだけの大きな問題でありますから、しかも国、県、
市町村がちゃんと
補助金も出しているような事業ですから、
社長を
運輸省に呼んで
実態を
調査して、今後一便でも欠行ならぬぞという厳命をするだけの措置をやるべきであると思うが、どうですか。
-
-
○
小柳勇君 それでは近いうちに、ひとつ本省に
社長を呼びつけて、
実態を
調査して、そして今後、一便でも欠行して大衆に迷惑をかけないように措置をして、
委員会に
報告してください。これはお願いしておきます。
次は、車両整備が不完全であるという告発がありました。私は車両
検査の
実態を全部ここに調書をとっております。各
営業所の
検査報告書をとっております。これによりますと、
検査要員が足らない。かつて優秀な
検査員がおられたようでありますが、その人をやめさせた、退職させた。したがって最近は事務——まあ、これは事務屋さんでもなれたらできるでしょうけれ
ども、専門屋さんでない人がやっているところもあるというような
報告がなされています。この車両の不備によりまして、もしもブレーキがきかないで事故でも起こったらたいへんでございます。そのブレーキ問題につきましても、いろいろ
調査したら、リアライニングが限度をこしまして二、三ミリになった、ほんとうに切れる寸前のものが十数件あった。これは組合のほうから直接
団体交渉の席に持っていきまして、
社長にも強く迫って、こういうことでどうするか、
運転手は危険でしょうがないということを言ったようでありますが、なお
検査要員不足のために、いまでも十分な
検査がなされておらぬという心配がある。その点も
立ち入り検査をして
報告を出しなさいと言ってあります。
報告しておりますか。
-
○
政府委員(
小林正興君) 先ほどの
欠便問題と並んで、第二の非常に大事な問題でございまして、整備不良車の対策でございます。先般の
欠便についての
実態調査、
指示という段階におきましては、車両の整備の問題についても
指示をいたしたわけでございます。また、私
どもとしましても、
報告に基づいて
内容を種々検討いたしましたが、その結果は、整備
管理者の選任、あるいは整備員の数等につきまして、一応形式的には整っておるという結果が出ておるわけでございます。
ただ、ただいま御
指摘のように、具体的に二台の車が十二カ月点検の際に、ブレーキパイプの腐食が発見されたということで、これの整備をした事実がございますので、私
どもといたしましては、点検整備の質を向上するといいますか、その密度をもっと強化するというような方向に、これまた強力に
指導していきたいと思っておるわけでございます。
-
○
小柳勇君 強力に
指導すると言っても、もうこれも一カ月になっておるのですけれ
ども、その後どういう
指導をされましたか。たとえば整備員をふやしたとか、あるいは不良個所をよけいに発見したとか、何か具体的に
指導された経過について御
報告願います。
-
○
政府委員(
小林正興君) 点検整備というのは、非常に技術的にこまかい点でございますので、非常に簡単に表面的な
検査を、点検をするというようなことだけでも、一応そのこと自体としては通ってしまうわけでございますが、事柄が安全に関する問題でございますので、点検の結果というようなものを、点検者が単に形式的に記録をしておくということだけでなくて、そういったものを整備
管理者のもとで厳重に把握いたしまして、整備
管理者がむしろ進んで毎日の仕業点検あるいは一ヵ月ごと、その他六カ月ごとの定期点検にあたって、
実態を整備
管理者のもとにおいて把握して、そして整備不良車の発見に早くつとめるというようなことについては、先ほどの
欠便と同様に、先般
会社の幹部を中央に呼んだ際にも、
欠便と並んでこの点について厳重に
指示してございます。
-
-
-
-
○
政府委員(
小林正興君)
実態調査という形で
関係者を招致いたしまして
調査を進めたわけでございます。立ち入りという正確の表現で、直接事業所に立ち入ってということについてはないかと思います。
-
○
小柳勇君 行政上たとえば
実態調査といってやられる——私
どもが立ち入り
調査を要請したのは、こういう具体的に整備要員の不足、ある
営業所では整備ができないから、整備工場のあるところに
バスを持っていって整備してまた帰ってくるようなそういうところもあるようですよ。
〔
理事江藤智君退席、
委員長着席〕
したがって、整備上危険だと思ったから——いわゆる行政監督上の
立ち入り検査というのと、ただ
実態調査をいたしましたのとは意味が違いますね。私
どもが、これは危険だから立ち入り
調査をしてくださいよと言ったのは、行政的な、悪いから
調査するという、そういう要請をしたわけです。そういう立ち入り
調査をやられたのかどうか。いま聞きますと、それをやっていないようですけれ
ども、やっていないならいない、どちらかをはっきりおっしゃってください。そうすると、私はまたこれからの質問が変わります。
-
-
○
小柳勇君
政務次官、これ非常に大事なことですけれ
ども、私
ども現地で
調査いたしまして、はっきりリアライニング二ミリ以下になって切れる寸前などという具体的な
調査を持っているわけですよ。したがって、これは危険だと思いましたから、立ち入り
調査をお願いした。もしも
バスがブレーキ故障のために故障して、人命に死傷事故あるいは傷害事故でもあったらたいへんですね。だから、前もって監督官庁としての責任をちゃんと果たしてもらいたいと思って要請したのですけれ
ども、私
どものその要請についてはこたえられないとしかいえないのですがね、過去やってないようですね、立ち入り
調査を。
そういうように、私
どもが具体的に、悪いから立ち入り
調査をしてくださいと言ったのを、なぜしないのですか。
-
○
政府委員(
佐藤文生君)
皆さん方がお行きになりまして、二台の
バスについて十二カ月の点検整備の際に、ブレーキパイプの腐食と、それからブレーキライニングが摩耗しているのだ、こういう御
指摘がありました。そこでそれをすぐ私は自動車
局長から
報告を受けまして、他の
バスはどうなっているのだ、その後すぐやった結果を
報告してくれ、こう申しましたら、その二日後に、他の車両三十三台についても念のため点検したが、ブレーキライニングの摩耗しているものが一両発見されました、他の三十二台については異常がありません、こういう
報告を受けましたので、御
指摘があったあと、三十三台について点検をいたしたという
報告を受けております。
-
○
小柳勇君 ここに私
どもがずっと
調査した結論だけ言いますと、一カ月、三カ月、六カ月点検についても書類上には完全なるものにしてあるが、事実
関係では全くでたらめである、現在整備員数が約四十名総計おられるようでありますが、
営業所がたくさんありますから、そこに完全に配置してないようです。したがって、もう一度ここで、私が
委員会の席で正式に次官に要請をいたしますが、事故が発生してはなりませんから、事故が発生しない前に、もう一度車両点検が完全であるかどうかを、どこを
調査するということを言わないで、不時的に立ち入り
調査を依頼したいが、いかがですか。
-
○
政府委員(
佐藤文生君) 中
鉄バスの整備
体制は、いま先生言われたとおりに、整備員は四十四名の責任者がおって、二百二十三両の車両について各
営業所ごとに、
岡山、津山、勝山、足守、総社、倉敷、玉野、井原といったような営業ごとに整備
管理者がおる、名前まで
報告を私受けまして、整備員は四十四名である、こういうぐあいに私、
報告を受けておりますが、いま先生の御
指摘がありましたとおりに、この前カーフェリーで、絶対火災が起こらないという、中間定期
検査をして、その二十日後にオイルパイプに穴があいて、四百度に上がっている排気管の一部のところにそれが漏れて発火したらしいという、そういった中間定期
検査があっても、そういうようなことがあるという例を見たときに、私は、こういった車両の整備あるいはエンジンの整備、そういった問題については、こういう
会社の
経営の
実態を見たときに、私自身も懸念を非常に持っておりますので、
社長が参りましたときに、その点について、直接、整備点検の指令を出し、そうして
報告を受け、実際われわれが期待している以上に完全な整備が行なわれているかどうかについて確認をしてみたい、こういうぐあいに思っております。
-
○
小柳勇君 わかりました。
それでは、いまの欠行の問題と、それから車両点検の問題、二つの問題は質問終わりますが、そこで、結論として、
道路運送法上及び道路運送車両法上違反がある場合には、違反が起こった場合には、
運輸省としてはどのような措置をとるか、この
委員会に言明をしていただきたい。次官からお願いします。
-
○
政府委員(
佐藤文生君) こういったような違反がありましたときには、
運輸省としては、やはり行政
指導をやりながら、免許基準に従っておろしたその基準に従って大衆への輸送のサービスを完全にしていくという、行政
指導を徹底してやっていくということが第一だと思います。そうしてその
原因がだんだんとわかってまいりまして、
欠便が多いとか、あるいは事故が多いとか、
労務管理が不十分であるとか、そういうようないろんな
原因が浮きぼりされてきます。その第二の段階以後において、特に
労務管理の問題については、非常にむずかしい問題がございますので、しばらくの時間をかしていただいて、労使双方の話し合い、そういうものを基調に置きながら、当然、労使双方からの、いろんなこういう場合には
陸運事務所のほうに話がございますので、適正な判断のもとに行政
指導をすることをやはり第二段階では続けていく必要がある。第三段階に及びまして、どうしてもこれが御期待どおりの
バス営業なり
タクシー営業が
運行不可能である、
経営不可能であるという、そういう判断に立ち至るということはめったにないのでございますけれ
ども、そういうこともあることも間々ありますので、そういうときには十二分に考慮いたしまして、伝家の宝刀である認可の取り消しということは、いままでかつてやったことはないようでございますが、しかし、ぎりぎりにそういうところまでいくかどうかという判断については、慎重に私はやはりやっていくべきである、公共性を持っている、足を
確保する問題でございますから、十分に慎重な配慮のもとに、そういうことについての判断をしながら、復元といいますか、正常な
経営に復元する努力というものを、時間をかけて続けていきたい、こういうぐあいに思っておる次第でございます。
-
○
小柳勇君 その点で一番大事なのは、いま県民、市民が心配しておられるのは、
陸運局及び
陸運事務所と
会社が癒着しておらぬか、監督官庁である
陸運事務所が、
運輸省の係長や課長さんが
会社にたとえば悪いところがあってもほとんど文句を言えぬのではないか、こういう声を聞きました。
直接私は、
陸運事務所長に「癒着している、あなた方は
会社べったりじゃないか」と言いましたら、「私は二月に赴任したばかりでございます」、「課長さんはどうか」と言いますと、「課長さんはほとんど変わっております」という話でございましたが、あの県民の皆さんの中に、もう
陸運事務所は
会社べったりだから先生方言うてもむだですよ、こういうことを言われた。これではほんとうの監督官庁の資格がないと思う、そういう声が出ては。だからその点、いま厳正な立場で
指導すると次官おっしゃいましたが、このの癒着などという批判が出ないように、そういう生活態度なり監督
指導なりが必要であると思うが、その点について、特にひとつ次官から発言していただきたい、いかがですか。
-
○
政府委員(
佐藤文生君) 新谷運輸大臣が昨年の年末に御就任になってから、新谷運輸大臣に私いろいろな意味において補佐をしておりますけれ
ども、陸海空にわたりまして
運輸省の立場というのは、やはり国民一人一人の足を守ること、それを
中心にものを考えるのだということを貫いていきたいということで、各局に向かって一人一人の市民を
中心にものを考えていく陸
運行政、これは貫いていきたい、こういうことで
指導していきたいと思っております。
-
○
小柳勇君 それでは労働省の次官がお見えになりましたから労使
関係について御質問いたします。
まず中
鉄バスの労使
関係について、特に
岡山県内における中
鉄バス、その
労働者は県内の
労働者に比べて待遇がよいのか悪いのか、まずそういう点から次官の見解をお聞きいたします。
-
○
政府委員(石黒
拓爾君) 県内のすべての
労働者の平均賃金というのは、
岡山県についてとっておりませんが、同種の
労働者ということで、交通
関係の者の労働条件と比較いたしますと、中鉄の平均賃金は六万三千八百五十九円、ことしの春でございますが、それに対して同じ
岡山県の備北
バスは六万六百十三円、
岡山電気が六万四千三百九十一円、それから井笠
バスが六万三千四百八十円ということで、ほかの交通機関の
会社に比べますと、大体中
鉄バスはまん中ぐらいという感じでございます。
-
○
小柳勇君 今日までの労使
関係、たとえば
春闘時あるいは年末というようなときの労使
関係については、労政局としてはどのように把握しておられますか。
-
○
政府委員(石黒
拓爾君) 中
鉄バスの
会社におきましては、
昭和四十二年六月の一時金闘争を機会に組合が分裂をいたしまして、中
鉄バス労組というのを結成いたしました。
それ以来、一企業の中に二つの組合があるということは、とかく労使
関係の不安定を呼び起こしがちなものでございますが、第一組合すなわち中鉄支部と、後に分裂した組合、すなわちいわゆる
バス労、その人数の比率は、分裂当時におきましては、中鉄支部が八百三十五に対して
バス労百二十七でございましたが、その後漸次
バス労の比重がふえまして、四十六年には中鉄支部より
バス労のほうの人数が多くなりました。ことしの春の闘争を通じまして、またこの勢いが逆転いたしまして、本年六月には中鉄支部が三百四十人に対して
バス労が百八十人というふうに中鉄支部のほうが、また過半数を占めるようになっております。
-
○
小柳勇君 そこで、去る五月四日の朝、第一組合のほうが
ストライキを中止したのに第二組合がかってに通告しないで
ストライキやってしまった。そのために相当の
欠便が起こっているわけです。この、いうならば違法ストですね、通告なしに。労調法の第七条に違反する行為だと、その点についてお調べになっていますか。
-
○
政府委員(石黒
拓爾君) 五月四日の
事件につきましては、
バス労側は身の安全が保証されないから、こわいので乗らなかったんだというふうに申しております。労調法によりまして、私
鉄バスは公営企業でございますから、十日前の予告が要る。したがって争議行為として乗務拒否したのであれば、これは労調法違反ということに相なります。その場合に、今回のケースが争議行為として組合ないしは争議団の意思決定に基づいて欠務したものであるか、自然発生的に個々人がたまたま多数、身の危険を感じて欠務したものであるかというような点につきましては、さらに事実を慎重に調べなければなりませんが、いずれにしても、この労調法違反の
事件につきましては、地労委の請求を待って論ずるということになっておりまして、判定機関は地労委でございまして、目下地労委で慎重審議中と承知いたしております。
-
○
小柳勇君 地労委がみずから発動して
実態を
調査して結論を出すのであるか、あるいは他の第三者から告訴を待って、告発を待って
調査する、いずれの道をとっておるんですか、いま。
-
○
政府委員(石黒
拓爾君) 地労委が労調法違反について告訴をするということにつきまして、地労委に何人かの申請が必要であるというような規定はございません。したがいまして、申請に基づいてこの権限を発動してもよろしゅうございますし、また職権をもって発動してもよろしい、どちらでもかまわないということであります。
-
○
小柳勇君 そうしますと、現状は地労委が発動して
実態を
調査中である、その結論の出るのを待っておる、こういう
実態でございますか。
-
-
○
小柳勇君 その場合、これは届け出た組合ですから、その組合が全員身の危険などという、これは個人なら身の危険を感じますけれ
ども、組合として、組合の意思として全部が出なかったというようなことは、これは私は違法ストだと思いますが、その場合に、普通ならば労働組合が届け出をしないまま
ストライキやれば、
会社側は
損害補償を請求することができるわけですね、組合に対して。それをしないならば、逆に今度は組合に対して特別なる恩恵を与える、いわゆる不当労働行為になる、そう判断いたしますが、それでいいですか。
-
○
政府委員(石黒
拓爾君) 前半は、先生の御
指摘のとおりでございまして、労調法違反の争議行為は労働組合として正当ならざる行為でございますから、刑事上の免責、民事上の免責もございません。したがって
損害賠償の請求もできるし、責任者の処分もできます。
後段の点につきましては、そういう違法な争議行為があった場合に、いかなる処分をするか、あるいはしないかということだけで、不当労働行為ということには直ちにならない。ただし二つの組合が並んでおって、両方が同じようなことをやったが、片方はそのままにしておいて、片方は罰するというような差別扱いをすれば、これは不当労働行為になると考えております。
-
○
小柳勇君 それでは同時でなくとも、たとえばある時期に、第二組合がやったと同じような行為が、次に第一組合からやられた場合、その場合、これは
損害補償できない、前にあったではないかといわれた場合には
損害補償できませんね。それでいいですか。
-
○
政府委員(石黒
拓爾君) 先生の御質問は、
バス労が労調違反であるという前提にお立ちのようでございます。私
どものほうは、まだそういう断定をいたしておるわけではございません。
しかし一般論といたしまして、先ほど申し上げましたように、二つの組合が同じようなことをしたのに、片方だけを罰し、片方のほうはそっとしておくというようなことは、一般に不当労働行為に相なります。ただし、いかなる処分、いかなる
損害賠償をするかというのは、そのときどきの
状況によりまして、また非常にいろいろな問題がございますから、時間的に相当離れた
事件について、それを全く同じに扱わなかったから不当労働行為であるというふうに即断はできない点があろうかと存じます。
-
○
小柳勇君 その問題は、地労委の結論が出てから、もう一回、結論を待って論議したいと思います。
もう
一つの問題が発生しております。それは
団体交渉によって確認書というものを取りかわした、そして両方が署名捺印いたしておりますから、いわゆる
労働協約と私
どもは判定いたします。
まず、その点についての確認は正しいかどうかですね、確認事項として労使双方が
団体交渉をやります。そして確認事項を五項目書く、そしてそれに署名捺印いたします。これは労働
紛争を解決するためのいわゆる
労働協約だと判断してよろしいですね。
-
○
政府委員(石黒
拓爾君) 実は、
労働協約の定義というのが非常にむずかしゅうございまして、一般的な労働条件等をきめたものは
労働協約であることは明らかでございます。今回の確認書というのは、個別の人事の問題について約束をしておるということで、この種のものを
労働協約と見るか、あるいは民法上の契約と見るかということにつきましては、非常に判定はむずかしいのじゃないかと思いますが、かりに
労働協約といたしましても、この種の約束ごとは、いわゆる規範的効力というものを持たない債務的部分に属するものでございますので、
法律上の効果といたしましては、どちらであっても同じじゃないかというふうに考えます。
-
○
小柳勇君 そこで、私は少し積極的な意見を持っておるのですが、労使
紛争する、その発端は
ストライキやっておった、ピケがある。ピケを十名ぐらい張っておりましたら二十名ぐらいで来てピケ破りをやってそこに暴力
事件が発生している。その暴力
事件が発生したものですから、これはたいへんだということになりました。そこでそれを解決するために、労使双方で
団体交渉やった。普通の人事問題じゃないですね。普通の人事問題じゃない。そのピケ破りという行為に対して、これはたいへんだということで
団体交渉に、そしてそれを覚え書きとしてここに五項目、それでこれを確認いたしました。
したがって私は、労働
紛争の解決の時点における確認事項である。しかも労使双方で署名捺印しておるから、
労働協約に準ずるものだと理解して、少しいまの労政
局長の意見も、積極的な意見を持っておるわけですけれ
ども、前提が少し変わりますと、さっきのまた意見が変わりますから、その点について、私の考えについてどうですか。
-
○
政府委員(石黒
拓爾君) 先生のおっしゃる考え方も、たいへんごもっともであると思います。しかし個別人事につきて、しかも一回限りやっちまえばそれで済んでしまうというのは、一般に
労働協約というのは継続的な労使
関係を規律するものでございますので、これが
労働協約とすぐいえるかどうかという点については、実は学者もそこまで突っ込んだ議論もいたしておりませんし、私
どももあまり突っ込んで勉強しておりませんで、必ず
協約になりますとか、あるいは絶対
協約になりませんとかいうふうには申し上げかねる。
ただし、これがかりに
協約であるとすると、民法上の契約との違いはどこにあるかと申しますと、これは債務的契約でございますから、いわゆる直律強行性はどっちみちない。
協約であるとすれば、期限の定めのない
協約であるから、九十日の予告をもって破棄できるという規定が動くかどうかという問題でございますが、これまた一回限りの行為で済んでしまうものでございますので、九十日の予告というものの適用があるかどうか、これははなはだ疑問でございます。
したがって
法律効果としましては、この場合、
協約でも契約でも同じ効果であろうと存じます。
協約になるかならぬかという高度な理論的な問題につきましては、ちょっともう少し勉強させていただきたいと思います。
-
○
小柳勇君 わかりました。
そこで私が、
協約とかりに呼んでいきまするが、これを一方的に破棄しておるわけです。いまおっしゃいましたように、期間を定めて
協約を破棄すること、これは労組法にもありますけれ
ども、締結いたしましたその二、三日後、あれは実は破棄しますよと、その
理由は何かといいますというと、それはあのときのきめ方は、
団体交渉で強迫観念をもってこれは調印したんですから、これはやめました。そういう一方的な破棄通告で前に調印したものを破棄した。そこにまた次の争いができたわけですね。だからいま言われた九十日間の予告をもって破棄するという、いわゆる労働慣行あるいは労働
関係法による取り扱いでないわけです。
事由がほかにまたあれば別です。たとえばあれは人事問題ですからもうやめました——何かいえば、また今度はそれじゃ人事
協約がどこかにあるのじゃないかとそれを探しますが、それがないわけです。こういうようなやり方がさっきおっしゃいました労使
関係の不信を生んで、そして
路線をかってに
欠便するというようなことにも発展しているわけです。
だから、そういう一方的に破棄するようなことが労使
関係として、労働
関係法は信義に立脚しておりますが、そういうことがかってにできるものであるかどうか。この点について、労政
局長の見解を聞きたい。
-
○
政府委員(石黒
拓爾君) 一般に労使間の
協約あるいは
協約でない契約でありましても、労使間で合意を見た事項というものをかりてに一方的に破棄できるものではございませんし、そういう行為は労使
関係の安定を乱すものでございます。
ただこの場合は、
会社側の主張によりますると、強迫に基づく合意であるからこれを破棄するんだというふうに申しております。強迫に基づく労使間の合意というものが破棄できるかどうかという点につきましては、裁判例は
昭和二十五年に一件あっただけでございまして、それも地裁でございます。これは破棄できる。強迫があれば破棄できるという裁判例がございます。それから学説におきましても、ほとんどの学者が強迫であれば破棄できるという説をなしております。したがってこれは通説であろうと存じますが、しかしその強迫というのは何であるかという点が非常に問題でございまして、たとえば
ストライキをぶたれるかもしれないといっておどかされた。
ストライキをやるぞとおどかされたというのは、これはもう労使
関係上当然強迫にはならないわけでございます。こういう労使間の合意に関する強迫の認定というのは、非常にむずかしいものがあろうかと存じております。
-
○
小柳勇君 その当時の
団体交渉の
実態をテープレコーダーなり、あるいは
会社、組合の両方からいろいろの意見を聴取いたしました。それでもちろん
団体交渉は御存じのように大きな声を出しますね。数時間の
団体交渉の後に、今度は労使が三名ずつトップ会談を別室でやっている。その席でずっと五項目をまとめまして、それを
会社の重役がその原橋を持っていって、タイプライターに打たして、そして
会社の紙にタイプを打って、それを今度は両方がサインして確認事項ができているわけです。したがって、いわゆる
団体交渉の席ではいろいろ意見が出たでしょう。しかし最後に確認事項五項目をまとめるときには、これは別室でトップが三人ずつ、組合が三役、
会社は
社長及びほかに重役二人、三名で話しまして、そしてその
会社のほうの重役の一人が別室に行って、そして自分のところの
会社の紙に自分のところのタイプライターで打たせまして、そして持ってきてこれていいか——それてよろしいということて、サインして捺印しているわけですね。そのような確認事項を、後日やれ実はたくさんの者からつるし上げられた中で
団体交渉をやったのだから、あれはやめた。一方的に破棄通告がきているわけです。それで御破算になったものですから、今度はそのあとの、一方的に破棄するのはけしからぬではないかということで、また今度は
紛争になりまして、それが
団体交渉の対象になりまして、それじゃまた
ストライキをやらなければ、これはもう
会社は聞かぬのだというようなことに発展しているわけです。そういうことですから強迫の問題も、それならここでひとつ書け、そして捺印せいと、それならひとつ事由になりますね。
ところがこれは、
団体交渉をばんばんやったあと、別室の静かなところで三役でまとめたのですから、強迫といっても、それは私は強迫ではないと思うのです。私がいま説明したような
事情については、労政
局長どう判断されますか。
-
○
政府委員(石黒
拓爾君) 先生がいま御
指摘になりましたような
状況では、強迫と認めるのはむずかしいのじゃないかというお説は、たいへんごもっともでございますが、私
どもは、第一にこういう
協約であれ契約であれ、労使間の合意というものの有効、無効を判定する権限は、労働省としては全くございません。
それから、また同時にこの問題の判定は、双方の言い分並びに証拠を収集し、非常に慎重に判定をしなければなりませんもので、労働省として、あの破棄は無効であるというふうに、ただいま申し上げるわけにいかないことは御了解いただきたいと存じます。ただ先ほ
ども申し上げましたように、労使間の合意というものは、これはよくよくの
事情がなければ、そんな破棄なんかすべきものではない。それから強迫の成立というもの、
ストライキの威迫というような問題は強迫にはならないので、労使間の合意における強迫というものの認定は、これは学説判例が具体的にございませんから、非常にむずかしゅうございますけれ
ども、これは裁判所その他しかるべき機関が有権的にしなければならないものであるというふうに考えます。
-
○
小柳勇君 この一方的に破棄された
労働者側として、労働組合として、これはどうしたら救済されると考えられますか。救済措置ですね。
-
○
政府委員(石黒
拓爾君) 純
法律的に申しますと、契約の有効確認の訴えを起こす、裁判所に認定してもらうというのが一番オーソドックスな方法でございます。しかし労使間の問題というのは、そういうすべてを裁判所だけで割り切るのは必ずしもいいとは限りませんで、労使の
団体交渉あるいは地労委の仲介というようなことで解決すれば、それまた望ましい解決方法であろうと思っております。
-
-
○
政府委員(石黒
拓爾君)
労働協約を破棄したことが不当であるということで
団体交渉をし、その主張を貫徹するための争議行為というものは、もちろん労調法等の手続等必要でございますけれ
ども、それはその限りにおいては違法な争議行為ではないと思います。
-
○
小柳勇君 その限りでは違法な
労働争議ではない、そういう判断ですね。わかりました。
それからいま
一つは、労働省としては裁判なり、あるいは地方労働
委員会なりがやるべきであってということでありますが、いわゆる労働省の労働行政
指導という面ではどのように働かれますか。もう少しふえんしますと、
ストライキというのは、やるよりもやらないほうがいいわけです。これは労使双方ともそうですね。したがって労働省としては、なるべくならば
ストライキをやらないように
指導するのが正しいと思います。労使双方
指導するのが正しいと思いますね。したがって労働省の立場としては、いや、見ておりますと、現地でやっているのを見ておりますだけでは、私は
指導といえぬのじゃないかと思う。労働省の存在意義が薄いのではないか。もっと積極的に
ストライキになりませんように、一日も早くこの問題を解決しましょうと、そういう積極的立場こそほしいのですが、いかがですか。
-
○
政府委員(石黒
拓爾君) まあ、たいへんつらいところでございまして、労働省というのは労使間の
紛争に介入する権限を持っておりません。そういう介入は労働
委員会が行なうということに相なっておる。しかしながら、同時に、労働法規が厳正に守られ、そして労使間が平和で安定的にあるということは、労働省としてきわめて望ましいことであるというふうに考えております。したがいまして、
状況によりましては、
紛争の平和的解決に陰ながらお手伝いをするということも、まま労働省としてはいたしておりますが、しかしたてまえは、あくまでも労使自身で、その仲介は労働
委員会というたてまえを、できるだけ貫きたいというふうに考えておる次第でございます。
今回の
事件につきましては、労使双方とも非常に強硬でございまして、私
どものような権限のない者がちょっと入る余地はないということと、それからもう
一つ、地労委で労調法違反、予告
義務違反の告発をするかどうかということが審議されておりまして、その結果が争議全体に非常に大きな影響を及ぼすであろうと考えておりますので、その結果を見ないうちに、何とも手の出しようもないということでございますので、目下の
状況では、たいへん心配しながら見守っておるという
状況でございます。
-
○
小柳勇君 見守っておられるのもいいですけれ
ども、ひとつ地労委などを積極的に
指導して、次にまた
ストライキなどによる
紛争解決の方法をとらないように、できれば話し合いによって解決してもらいたいと思うんです。その確認事項の中身はおっしゃるとおり、暴力
事件をなしたような首謀者あるいはピケ破りをなしたような首謀者を懲戒解雇するとか、あるいはある時期にやめさせるとか、そういう具体的なことですから、これが終われば問題は解決するのですが、その前に一方的に
労働協約を破棄するのはけしからぬという労働法的な
紛争があるものですから、したがって
事態がいよいよ混雑しますから、一日も早く解決するように、労働省としても努力してもらいたいと思います。
それから基準局のほうにもちょっと聞いておきたいが、労働基準法上、
立ち入り検査などおやりになったことがあるかどうか。もう何回もあそこの
会社と組合員は労使
紛争があっています。私も二回、もう前一回、今回一回行ったのでありますが、したがって、いままで基準局として労働基準法上の立ち入り
調査などをおやりになったことあるかどうか、お聞きいたします。
-
○
政府委員(渡邊健二君) 基準局といたしましては、基準法の監督をそれぞれ毎年計画的にやっておるわけでございますが、この中
鉄バスにつきましても四十年以降、ほとんど毎年一回は定期的に監督を実施いたしております。一、二年抜けた年はございますが、おおむね毎年実施いたしておりまして、今年も四月の十一日に定期の監督を実施したという
報告を受けておるわけでございます。
-
-
○
政府委員(渡邊健二君) 定期監督でございまして、特に申告に基づく監督ではない定期監督でございます。
-
○
小柳勇君 その定期監督の結果、他の職場に比べ、中
鉄バスの労働条件なり労働職場はいかがですか。
-
○
政府委員(渡邊健二君) 毎年の定期監督で一、二の違反条項を発見いたしております。今年の定期監督におきましても、女子の深夜業の問題が二名につき、それからそれに関する割り増し賃金の問題就業規則の変更届け出のなかった問題、健康診断について一部未実施があった
問題等々の違反を発見いたしまして、それについては
改善させるよう勧告をし、
改善方を求めておるわけでございます。
で、他の
バス会社と比べて違反が多いかどうかという問題でございますが、私
ども、自動車運転
関係につきましては、従来主として非常に問題がありましたハイタク、トラックなどが
中心でございまして、御承知の二・九通達な
ども、ああいう各
路線貨物だとか、あるいは一般の乗客運送のハイヤー、トラックなどを
中心にやっておったわけでございまして、特に従来は
バスについて全国一斉のをやっておりませんでしたが、いろいろ問題があると存じまして、ことし四月から六月の間をきめまして、全国で
バスの事業について一斉の監督をするように
指示をいたし、現在全国でその監督を実施しておるところでございまして、全国の
状況は、四月から六月までやっておりますので、それが終わりまして大体取りまとめをすることになると思いますので、中
鉄バス、いまの段階では、全国と比べて特に悪いかどうか、ちょっとまだ申し上げるところまでいっておらないわけでございます。
-
○
小柳勇君 さっき
運輸省の
報告によりますと
営業所で急に病気になって
欠勤届けを出すもんだから欠行するのですと、便を休むのですと、そういうお話がございました。
労働省としては、交通
労働者に対してはきびしい労働条件を
指示いたしておりますが、その労働条件の違反事項など、そういうものはございませんか。
-
○
政府委員(渡邊健二君) いわゆる二・九通達の対象になっておりますハイヤー、
タクシー、トラックにつきましては、毎年担当厳格な一斉監督を実施いたしておりまして、それの違反
状況等、毎年の数字は大体持っておりますけれ
ども、
バスにつきましては、従来はそういう一斉のやり方を特にとっておらなかったのでございまして、特にそういう
資料はございませんが、ことしにつきましては、先ほど申し上げましたように、四月から六月までということで、現在全国一斉に
バス事業について監督を行なわせておるところでございますので、その結果が出ますれば、大体の
状況がつかめるものと考えております。
-
○
小柳勇君
運輸政務次官に質問をいたします。
さっきから車両
関係あるいは
欠便の問題など質問し、いま労働
関係について質問をいたしました。労使
関係も非常に不信感が強いわけです。それがあらゆる面で出てくるわけですね。
たとえばピケの正当性などについても、もう少しあとでちょっとこの問題を労政
局長から聞きますけれ
ども、
ストライキやっておりますのを、
会社側が課長などが先頭に立ってこのピケ破りをやる。そういうものがさっきの確認書に発展しているわけです。これは
運輸政務次官には質問しませんでしたけれ
ども、それで今度、その確認書をつくりましたあと、ばっと一方的に破棄してきた。それがまた今度は
紛争の種になり、次に
ストライキにまた発展していくでしょう。そういうのを繰り返しておりますと、いつまででも労使間の正常化は保てません。近く
社長を
運輸省に呼ばれるようでありますが、車両の整備あるいは定員増と同時に、労使
関係についても一日も早く正常化するように、もっと組合とよく話し合って、
紛争を一日も早く解決するようにという勧告が必要ではないかと思うわけです。
したがって、
社長が参りましたときに、その問題についても、必要があれば、労働省から労政
局長でもひとつ立ち会ってもらって、よく話をしてもらいたいと思うが、この点いかがですか。
-
○
政府委員(
佐藤文生君) その話も、実は
春闘の経過
報告の中で聞いておりまして、一方的に破棄をしたと、それから発展してまた争議が起こっておると、こういうようなことも
報告を受けました。
私は、この
事件の
報告を受けまして、これは非常にむずかしいなと率直に感じまして、実は先般例を申し上げましたが、九州で起こった
タクシー会社の
経営者が、もうこれ以上
タクシーの
経営はできないんで、
経営権を放棄するから免許をひとつ取り消してもらいたいと、こういうことを福岡の
陸運局に言ってきたわけです。その際に、一体どうすべきかという問題がありまして、私としてはしばらく待ちなさいと、その地域における市民の足の
確保の
タクシーの台数と市民の数から考えて、一挙に認可を取り消すということになると市民の足が問題になる。その
実態を
調査しましたところが、組合が自主的に
運行して、市民の足を守るべく毎日運転をしておる。しかも、それも正当な料金でサービスもあまり悪くない。そういうような
実態が行なわれている。こういうときに、一体どうすべきかということで、労使双方から福岡の
陸運局長に交互にいろんな問題について話し合いがありましたが、その不信感はこれどころじゃございません。たいへんな不信感であります。
そこで相当な時間をかけまして、労使双方に行政的な
指導、具体的に申し上げますというと、市民を
中心にして安全性の
確保、それから混雑度の緩和に対する努力、それからサービス度の向上、それから自動車そのものの持っている公害との戦い、こういったようないろいろな問題を、逐次労使双方に行政
指導をいたしまして、ようやく
一つの方向を見出しまして、労使双方、市民の足を守る
体制に移行しつつ現在ございます。
私はその経験から見まして、幸い
社長を御要請によりまして
運輸省に再度招請いたしますので、労使
紛争の細部にわたってどうこうするという権限は
運輸省にございませんけれ
ども、免許をした事業でございますから、適正な免許基準、適正な料金というのが先ほど言った
バス経営の大きな四、五本の柱でございますから、そういう面から、
社長と十分お話をいたしまして、労使
紛争が一日も早く正常化するように、そういった面で行政
指導をしていく、また
社長と話してみたい、こう思っておる次第でございます。
-
○
小柳勇君 最後の問題です。一問残っておりましたから労政
局長に質問いたします。
ピケの排除の問題です。
ストライキしておりまして車が全部車庫に入っていましたから、十名ばかりの
運転手さんがピケを張っておった。ところが、そこに二十名ぐらい、課長などを先頭にピケ排除に来て、その自動車を出そうとしたものですから
紛争が起こったのでありますが、その場合に
会社側はこういう回答をしているわけです。これは組合に対して正式に文書で出ているんです。「正当なるピケは平和説得の範囲に限られており、
会社はこれに対しては干渉しておらず、不当なピケを排除するのは正当行為である。」
ストライキやっておるその
運転手さんたちが、自分たちの車が車庫に入っておるものですからそこの前におった。これをどけといってこの倍ぐらいの数でピケ破りに来た。これを正当行為としておる。そこからいろいろなまた問題が発生しているわけですけれ
ども、そういう問題に対して、
労働者が
ストライキのときに、特に交通
労働者が、車は大事ですから、いろいろ妨害が加えられないように、説得するためにおるわけです。それを排除するという行為を正当化する、そういうことは許せぬと思うんですが、この点について、いわゆるピケ排除の正当性、そういうものについての見解を聞いておきたいと思います。
-
○
政府委員(石黒
拓爾君)
ストライキの実効性を
確保するためにピケを張るということは、平和的説得である限り認められたことでございます。しかし同時に、
会社側の
管理者あるいは非組合員等が、そのピケの説得にもかかわらず就労をするということ、これもまた正当な対抗行為でございます。
問題は、それが平和的に行なわれればどうということございませんが、それが暴力的に行なわれた場合は、いずれの側でございましても暴力の行使は正当な行為ではございません。
そこで、ピケを排除するための実力行使というのにつきましても、その実力行使の程度の問題がございます。暴力をふるって追い散らかすというようなことは、許された自力救済の範囲を越えるものである。しかしながら、どの程度から上が許されない暴力であるかというような点につきましては、実は判例もかなりまちまちな点がございます。私
どもとしましては、平和的な説得、それから、まあ変なことばですが、平和的なピケライン突破ということは、双方とも正当であるけれ
ども、暴力の行使は双方とも許されないというふうに考えております。
-
○
小柳勇君 以上で私の質問を終わりますが、この中
鉄バスの問題は根が深い。したがって私
どもも努力いたしますが、
運輸省も労働省も、ひとつ積極的に、労使が早く信頼感を取り戻しまして、県民に迷惑をかけませんように、努力されることを希望いたしまして、質問を終わわります。
-
○
委員長(
長田裕二君) ほかに御発言もなければ、本件に対する本日の
調査はこの程度といたします。
午後一時まで休憩いたします。
午前十一時五十八分休憩
—————・—————
午後一時七分開会
-
-
○加瀬完君 私は、先般申し上げましたように、明原丸の
事件について。
一つ、明原丸による油被害の漁民要求について。二つ、海洋汚染防止法第四条等の適用について、特にオイルフェンスの問題について。三つ、明原丸の油流出量について。四つ、油の同一性の分析について。五つ、流出油の漂流経路について。六つ、
原因者の賠償責任について。以上の六点について、これからお伺いをいたしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
-
○
委員長(
長田裕二君) 当然用意をしていると思いますので、ひとつ質問を……。
-
○加瀬完君 お答えは運輸大臣、港湾
局長、
海上保安庁長官、水産庁それから法制局
関係の方に伺いますが、いらしておりますね。
-
-
○加瀬完君 それでは
昭和四十八年四月五日、千葉県漁業協同組合が木更津沖重油被害公判勝訴期成漁民大会というものを開いておりますが、御存じですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 日にちはよく存じませんが、この千葉県における油による汚染の被害問題について、ときどき
関係の漁民の方が大会を開いておられるということは存じておりますし、
報告も受けております。
-
○加瀬完君 それでは、その大会の趣旨が何であったか御存じですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 私
どもがお聞きしましたのは、
昭和四十六年の年末に起きました明原丸の問題について、明原丸が流したと思われる油が千葉県の木更津といいますか、あの方面の海岸に漂着をしたと考えられる、したがって、その辺の漁民の方が被害を受けたということについて、その賠償を
関係者に求めるように、現在訴訟が行なわれているわけでございますが、それについての、何といいますか、論議が行なわれたということも、おもな議題であるというふうに了解いたしております。
-
-
-
○加瀬完君 大会趣旨としてこういうことが述べられました。これはあとの審議に重要な根拠になりますので、冗漫でございますが、読み上げを許していただきます。
一昨年十二月四日、本県、奈良輪、牛込、金三漁協地先に侵入した重油は、被害漁民数千三百名余、被害のり棚二万棚余、被害金額八億円余というはかり知れざる空前の惨事をもたらした。
恰も年末をひかえ一葉の「のり」も摘採し得ない生産漁民は全く生活の糧を失い塗炭の窮状に陥し入れられたのである。
われわれ漁民は、これ迄しばしば重廃油の流失事故、産業廃棄物等の不法投棄による被害のため苦汗をなめさせられ泣き寝入りの憂き日に呻吟してきたのである。
この事実ば今や、内海、外海を問はず日本列島の周辺海域に瀰漫し、各所に漁場公害を招来し、国民各層の痛恨事となっている。
今回、本県の被害三漁協千三百名余の漁民は流失重油
事故原因の徹底究明、その責任所在の追求に敢然として起ちあがり、千葉地裁に対し、総額八億円余に及ぶ
損害賠償請求訴訟を提起したのである。
その間、
関係機関、全国漁民の支援のもとに訴訟手続きがすすめられるにつれ、
事件の元凶は明治海運株式
会社、東亜燃料工業株式
会社、東燃タンカー株式
会社並びに、明原丸船長北村太郎氏であることが確認せられるに至ったのに不拘、何等誠意ある態度を示さぬのみか、
原因回避の卑劣な姿勢を取りつづけているのである。われわれ漁民は、最早や、海洋汚染を惹き起す最大の元凶である石油関連企業に対し、断乎として斗い、
事件の勝訴確定まで一歩たりとも退くものではない。
よってここに、本県並びに全国漁民の総力を結集して、所期の目的を達成するため「木更津沖重油被害公判勝訴期成漁民大会」を開催するものである。
こう述べられております。
そこで水産庁に伺いますが、水産漁民は一葉のノリも摘採できなく塗炭の窮状におとしいれられたと申し述べておりますが、この実情はお認めになりますか。
-
○
説明員(前田優君) ちょうどノリの摘採の時期に当たります
関係もございまして、この先生御
指摘の事故によります被災につきましては、漁民の言うとおり、ほとんど収穫皆無であったというように県からも
報告を受けております。
-
○加瀬完君 海上保安庁に伺いますが、これまでしばしば重廃油の流出事故に苦汁をなめさせられてきた、こういっておりますが、この点はお認めになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 先般、先生から御質問がございましたときにお答えいたしましたが、全国各地におきまして、私
ども監視取り締まりをやっておりますが、この海洋汚染の、特に油による汚染の件数は非常に多いということでございます。東京湾地区におきましても、この前先生から御質問ございまして、そのとき
手元に
資料がございませんでしたので、お答えできませんでしたが、本日
資料を持っておりますのでお答えいたしますと、東京湾における海洋汚染
関係の法令違反を私
どもが検挙した件数を申し上げます。
四十七年は海洋汚染防止法九十三件、そのほか港則法違反、廃棄物処理法違反、水質汚濁防止法違反合わせまして、九十三件を含む百五十一件というものがございますので、相当の被害があるということは、私
どもよく認識をいたしております。
-
○加瀬完君 この重廃油の流出事故に苦汁をなめさせられてきたといっておりますが、いまの四十七年の九十三件のうち油の流出は何件でありましたか。それに対して油被害に対する摘発は何件ということになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) ただいまのお尋ねでございますが、海洋汚染防止法が九十三件でございまして、この中で油が何件かということはちょっと
手元に
資料を持っておりませんが、このほかにも、ただいま百五十一件と申し上げました港則法違反等の中にも、油によるものがあると思われますので、油と油でないものという比較はちょっとただいま
手元に持っておりませんが、この中の数字、相当大きな部分が油であろうというふうに考えます。
-
○加瀬完君 油は四十七年は三百二十四件ですね。油以外のものは十一件。油以外のものの被害は一部分のもの、部分的な被害でありますけれ
ども、油というのは部分的ではなくて広い面積で、生活上は非常に大きな
損害を与えられておるわけであります。で、検挙したものがかりに三百何件のうちの九十三件としても、それでは先ほど申し上げましたようなノリの被害に対する賠償責任が明確になったものは何件ありますか。これは水産庁のほうが担当かもしれませんので、水産庁に伺います。
-
○
説明員(前田優君) お答えいたします。
四十六年に東京湾……。
-
○加瀬完君 東京湾でけっこうです。
-
○
説明員(前田優君) 東京湾でノリの被害がございましたのが、私
どものほうでは逆に被害額か広見てまいりますもんですから、三件ございまして、
一つはこの明原丸らしいと推定されております
事件、それから館山市地先の入渠中の奏王丸という船から流出されましたのが一件、それから富津市地先に一件ございました。三件のうち明確になりましたのは、いま申し上げました館山市地先の一件でございます。
-
○加瀬完君 そういう認識ですから困るんですね。海上保安庁の統計によりますと、四十六年は油が二百五十八件、その他が一件、四十七年はさっき申し上げましたとおり三百二十四件が油、油以外のものが十一件、これだけのものが出ておりますのに、三件という取り扱いはどういうことですか。それは
損害賠償請求したものが三件ということならわかります。
損害賠償を請求したくても
原因者がわかりませんからどうにもならないで三百余件というものは泣き寝入りになっているわけですね。それを苦汁をなめさせられたと、あるいは泣き寝入りを繰り返させられたと漁民は言っておる。
もう一回聞きますが、あなたの三件というのは
損害賠償の相手方がわかって
損害賠償を請求したものが三件でしょう。
損害賠償を請求できない、それでは件数が何件ありますか。
-
○
説明員(前田優君) お答えいたします。
海上保安庁のほうの数字は、要するに油が流れたということを視認できた数字かと思うわけでございます。私
どもいま御説明申し上げましたのは、要するに被害漁業者が県にこれだけの被害がございましたというふうに
報告があったものが三件でございまして、このうち
原因者が不明な、いわゆる富津地先だと申し上げましたのは、これは完全に不明でございます。
なおつけ加えさしていただきますと、いわゆるノリの時期でございますと、わりあいに被害額が出やすいんでございますけれ
ども、ノリの時期をはずしまして、いわゆる純粋の魚の時期になりますと、油が流れましても油くさい、いわゆる異臭魚の被害がどれだけかということは非常に判断がむずかしいわけでございます。そういう
関係から、県に被害額としてあがってこないのではなかろうかと、そのように考えております。
-
○加瀬完君 先ほど私が申し上げました、四十七年の三百二十四件というのは、これは海上保安庁の
調査です。漁民大会で、これまでしばしば重廃油の流出事故に苦汁をなめさせられてきたといっておりますが、あなたのおっしゃるように、ノリにも魚にも何にも被害のないものを、苦汁をなめさせられてきたと漁民が言うはずはないんです。漁民が言うのは、ノリがあってノリがもう売り物にならなくなった、魚がもうよごれて売り物にならなくなったと、こういう実際の被害に対して苦汁をなめさせられてきたと、こう言っているわけです。騒ぎは、三百二十四件もありましても、流れた油は確認できますけれ
ども、だれが流したという確認がほとんどできないので、油汚染があったというのが新聞の片すみに出るくらいで過ごされておりますから、
原因者がはっきりしないので、まことに生活上苦痛に耐えないというのが、この大会の説明の
内容でありますが、そこでこの大会では、こういう決議が行なわれておりますけれ
ども、御存じですか。大会の趣旨とダブるところはやめます。
この暴挙に激怒するとともに、取締り当局の責任の所在を追究、元凶である加害者の
原因究明に、断乎として立ち上がり、十二月二十二日「のり漁場油被害抗議、千葉県漁民大会」を開催し、海に生きるものとして当然の主張を決議し、
関係方面に強く抗議した。
然るに、その後
原因追究が進むにつれ、元凶は、明治海運株式
会社、東亜燃料工業株式
会社、東燃タンカー株式
会社、並びに明原丸船長の四者であることが判明せるに不拘、悲歎にくれる被害漁民の窮状をよそに、括として、誠意ある態度を示さぬのみか、
原因回避の卑劣な姿勢を取りつづけている。
われ等は最早や、海域汚染の元凶である石油関連企業に対して一歩たりとも退くものではない。
今や本県漁民並びに全国
関係漁民ば深い連帯感のもとに、強固にその意志を結集し、海域汚染を招来するすべての公害問題に、果敢に対決することを、本大会において再確認した。
われわれは、本県並びに全国の同志である漁民と、公害による環境破壊に抗議する国民各層の暖かい支援を確信し、この斗争をかちとるため、本大会の名において次のことを決議する。
一、木更津沖のり重油被害
事件の
損害賠償請求訴訟において、加害者である、明治海運株式
会社、東亜燃料工業株式
会社、東燃タンカー株式
会社、並びに明原丸船長の賠償責任を徹底的に追究し、その誠意なき卑劣な態度を断乎糾弾するとともに、本裁判の絶対勝訴を期し、総力を挙げて闘う。
二、故意並びに過失を問わず、重廃油、産業廃棄物の海洋投棄に対する徹底的取締りと
原因の究明、並びにその被害の補償措置について、国及び県は完全にして早急なる実施を行なうこと。
右決議する。
こうあります。その油による汚染被害があったことはお認めになると思いますが、これはお認めになりますね。——よろしゅうございますか。水産庁。
-
○
説明員(前田優君) それは承知いたしております。
-
○加瀬完君 その被害額は八億、一戸平均にすると六十二万円に相当するということもお認めになりますか。
-
○
説明員(前田優君) 約八億ということでございまして、正確には県からの
報告によりますと七億九千万というふうに聞いております。
-
○加瀬完君 そうすると、被害者一戸当たりといいますか、漁民一人当たりにしますと六十二万円になります。この海域汚染の
原因が石油関連企業であることはお認めになりますか。油であることはお認めになりますね。
-
○
説明員(前田優君) そのように私
ども考えております。
-
○加瀬完君 にもかかわらず、賠償責任ははっきりしておらないということもお認めになりますね。
-
○
説明員(前田優君) 漁業者並びに千葉県側からの
報告によりますと、ただいま先生のおっしゃったように、四つの責任者が存在するというふうに
報告を受けておりますが、ただ私
どもは取り締まり当局ではございませんので、そこのところまで明確にお答えはいたしかねます。
-
○加瀬完君 いや、賠償責任者がだれであるかということではなくて、賠償要求をしておりますけれ
ども、賠償が成立しておらない。そういう
状態であることはお認めでしょう。
-
○
説明員(前田優君) おっしゃるとおりでございます。
-
○加瀬完君 それでは、先ほど申し上げましたこの漁民側の言う加害者と称するものが、自分のところから油が出たのかどうかということを誠意をもって解決しようとつとめているかどうかの点については、これは海上保安庁でもけっこうです。誠意をもって一応の疑いを晴らそうと努力しているとお認めになりますか。——わかりにくいようですからもう一回言います。漁民側が、おまえが油を流した
原因者じゃないかと追及している方々が、もしや自分のほうの油ではないかという立場で、誠意をもって漁民の疑いを晴らすべく努力している、あるいは賠償責任に応ずべく誠意を尽くしていると、こういう
状況でございますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) ただいまの先生の御質問、私
どもの立場から見ますと、非常に何といいますか、簡明にお答えするということはむずかしい
状況にあると思います。
ただ、私
どもの認識をはっきり申し上げますと、この四十六年の十二月に、川崎の扇島のシーバースにおいて、おっしゃるように明治海運の船が油を、燃料用に積み込み中に油を流したということははっきりいたしております。したがいまして、私
ども取り締まり官庁として、その油を流した船の当該責任者を含めて、その刑事責任を問うということで、検察庁に送検をいたしております。
それからもう
一つ、先生のただいま御
指摘のように、その対岸と申しますか、東京湾を隔てた対岸の三つの漁業組合、金田、牛込、奈良輪ですか、この三つの漁業組合の地先水面に油が流れついて、その油によって、ただいま先生がおっしゃったような被害があったというようなことは、これは私
どもも聞いております。それはそのとおりであろうと思います。
そこで私
どもとしては、一方、いま申し上げましたように、油を流した者を、海洋汚染防止法——当時は一部海水油濁防止法であった、根拠法令が。そういう法的技術的な問題はありますが、ともかく違反
事件として送致をして、これをいま裁判に待っておるところでございます。
それから問題は、その両者の結びつきということで……
-
○加瀬完君 それはあとで聞きます。
-
○
政府委員(野村一彦君) はい。
ですから、私
どもはそういう認識を持っておりまして、ただいま、端的に申し上げますと、両者の主張が対立をしているというふうに聞いております。
-
○加瀬完君 水産庁に重ねて伺いますが、刑事責任を海上保安庁が追及していることはよくわかりました。
私が伺いますのは、刑事責任があるかないかというのも、係争中でありますから結論はあとでしょう。少なくとも、この油被害というものに対して、おまえのほうが流したんじゃないかと
指摘される四社が、誠意をもって解決するという態度にあるかどうか、これは当然民事の問題になりましょう。現在水産庁の把握している
状態では、その四社が、漁民側の被害に対して十分誠意を尽くして解決しようという態度にあるかないかということだけおっしゃっていただければけっこうです。
-
○
説明員(前田優君) 現在、民事で争っている最中でございますが、現在まで二回の公判が開かれているわけです。
その中での
会社側の態度は、漁業者側から言わせますと、満足すべきものどころか、逆にいいますと、お互いの主張が対立したままの
状態であると、そのように聞いておるわけでございます。
-
○加瀬完君 そこで漁民側は、故意並びに過失を問わず、重廃油、産業廃棄物の海洋投棄に対する徹底的取り締まりと
原因の究明というものを要求しておりますが、この要求に対しては、海上保安庁はどうお受け取りになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 前回も先生の御質問にございましたように、私
ども、海洋汚染防止法の海上における励行及びその違反の取り締まりということについて、いろいろ力をいたしておるわけでございますが、従来非常にその点手薄であったということを痛感いたしております。しかしながら、現在においては、私
どもの最も重要な任務として、その人員の増強、それから機材の整備、それから取り締まり方法の効率化というようなことを、特に東京湾、伊勢湾、瀬戸内海というような汚染の激しい地域におきましては、これを強力に進めるということでやっておりまして、二年前に比べますれば、かなり私
どもの監視取り締まりの能力というものは増強したというふうに考えますが、まだこれでもって十分ではございませんので、さらにこの点は今後努力をいたしたいと思っておりますが、私
どもの海上における法令の励行及び取り締まりという任務の中で、海洋の汚染の問題は、海上における交通安全の問題と並んで、私
どもの二つの大きな柱として、全力をあげて今後ともやるつもりでございます。
-
○加瀬完君 それでは、要求スローガンに、「油の不法投棄を厳重に取締りその責任所在を糾弾せよ!!」という項目がございますが、こういう要求は、漁民の横車というようにはお思いにならないと解してよろしゅうございますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 海洋汚染防止法の違反が行なわれるということは、これは許されるべきことではございませんので、それを取り締まるということは、私
ども当然でございますし、また被害を受けられた漁民の考えはよくわかるわけでございます。したがって、それは横車とかなんとかということは毛頭考えておりません。
ただ、前も申し上げましたように、私
どもの力だけではなかなか監視の目が行き届かない面がありますので、それは一般の海洋汚染の防止のモニターとか、そういう
関係の一般の方々の御協力を得て、情報も提供していただくとか、いろんなことで、私
どもの取り締まりを続けたいと思っておりますので、そういう理解で今後とも進めたいと思っております。
-
○加瀬完君 重ねて恐縮ですが、東京湾だけで見ると、油と、油以外による海洋汚染の数は、四十二年が油が四十六、その他がゼロ、四十三年は油が六十七、その他が一、四十四年は五十一対ゼロ、四十五年は四十九対七、四十六年は、先ほどと申し上げましたとおり、二百五十八対一、四十七年は三百二十四対十一、これは海上保安庁の発表した数字であります。
いま四十五、四十六、四十七、三年間だけを見ますと、四十五年の四十九件に対し、二百五十八件、三百二十四件と、油だけを見ても、こういうようになっていますね。そうすると、四十五年、四十六年、四十七年の汚染増加率は五・二倍、六・五倍ということになります。これはお認めになりますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) お示しの数字は、そのとおりであると思います。
-
○加瀬完君 そして、ほとんどが賠償責任ということは未解決のままであります。そうなりますと、処理施設がいろいろ問題になっておりますが、処理施設以前に、公害行政の取り締まり態度あるいは監視態度というものにどこか欠陥があるとはお考えになりませんか。
くどいようでありますが、四十五、四十六、四十七年で比べますと、五・二倍、六・五倍と汚染件数が増加をしているわけであります。これは施設の問題じゃないじゃないか。その前に、監視なり、あるいは取り締まりなりに欠陥がある、こう考えられがちでありますが、これは海上保安庁がサボっているとは申しません。組織、施設その他、予算上の不備で取り締まれないということもありましょう。いずれにしても、取り締まりに欠陥があると、こう客観的には判断できると思いますが、この点はいかがでしょう。
-
○
政府委員(野村一彦君) ただいま先生の御
指摘の点でございますが、私
どもも、前回申し上げましたように、四十七年における全国的な海洋汚染の発生
状況を見ますと、東京湾の場合はそれが非常に象徴的にあらわれておるわけでございますけれ
ども、四十七年は、四十六年の一・四倍、四十五年の五・二倍、これは全国的ですが、こういう数字になっております。この
原因は、汚染というものが客観的に非常に進んでいるということと、それから私
どもの監視取り締まり
体制が以前よりは充実してきた、つまり汚染の件数もふえておる、またそれを摘発する
体制も進んでおるということでございまして、その監視取り締まりの
体制を、私
ども今後さらに強化しなければなりませんが、それ以前の、防止ということにもっと力を注がたければならない。これは私
どもだけでできることではございませんが、全般的な施策として、そういうふうに考えるわけでございまして、監視取り締まりの
体制の強化は、当然私
ども今後とも強力にやらなければならないと思っております。
-
○加瀬完君 監視なり取り締まりの目的は、油汚染がなくなることでしょう。しかし検挙数が多くなったからといって、油取り締まりは検挙数の多いだけふえたかもしれませんけれ
ども、油の流れている件数も、同じにふえているんですね。ですから、第一目的であります汚染の防止ということには、これはあんまり効果がないと、悪いけれ
ども、そう判断せざるを得ない。四十二年に比べて、全国的に見ても、四十二年は百四十九件、油濁防止法ができてからですかね、これは。四十七年は二千二百八十三件、十五倍にふえていますね。
先ほどの決議をした漁民でありませんが、漁民の望むことは、検挙数をふやしてもらうことではなくて、こういう油被害のないことですよ。少なくも、十五倍も全国的にふえているということになりましては、対策にどこか欠陥があると、こう考えざるを得ないのでございますが、皆さんは検挙数のふえることが成積をあげたことになりますけれ
ども、もう
一つ先のというか、その根本的な油汚染をなくするということについては、これは何にも解決していないということになりますが、この点はどうお考えでございますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 先生のおっしゃるように、すでに汚染が発生してこれを検挙するということよりも、むしろ汚染が発生しないように事前にこれを防止するということが根本であるということは、全くそのとおりでございます。
そこで、私
どもといたしましては、まず油を運ぶ船、あるいは製油をする陸上の製油施設あるいはそれを船に運送を依頼する荷主、そういう人々が完全な油の
管理をして、そしてそれによって油が不法に流出しないようにする、いわゆる一般の犯罪でいいますと防犯ということでございますが、海洋汚染防止法の場合におきましても、防止をするということに力を注がなければならない。私
どもも、一方では取り締まり官庁として、すでに油が流れた場合に取り締まりをいたしますが、それより以前の問題として、これは
関係各方面にお願いをして、むしろ私
どもから、そういう油の汚染が起こらないように事前の防止をするということをもっと徹底してやっていただきたいということで、全く先生のおっしゃるような防止というものが一番大事であるということを痛感いたしております。
-
○加瀬完君 私は取り締まりが無力、無自覚だと思うんですよ。具体的に
指摘をして御回答を求めてまいります。
いま問題になっておりますこの汚染は、結局元凶は明原丸だといわれている。そこで明原丸
事件に限っていまの点を伺ってまいりますが、明原丸
事件について、衆議院で本問題が質問をされましたところ、係争中の事案であるということで、一切
答弁がございませんでしたと聞いております。係争
関係のことを聞くなら、
内容によっては
答弁が差し控えられることは当然でございますけれ
ども、海上保安庁の
調査事項を聞いてまで、係争中の問題に
関係あるといって答えられないことは不当だと思いますが、この点はどうですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 衆議院の
運輸委員会におきまする御質問の中で、この明原丸のことに触れて御質問がございました。そのときは、この明原丸の問題はその後どうなっているかという御質問でございましたので、私のほうは、刑事及び民事、現在二つの案件としてそれぞれ裁判に付せられております、いま裁判が進行中でございますということを申し上げたわけでございます。
一般的に申し上げますと、現に裁判所において審理が行なわれておりますところの事案につきまして、その裁判の
内容に触れる、あるいは
内容の判断に影響があるであろうというようなことについて、御
答弁いたしますことは、非常にまあ微妙な問題でございますので、私
どもとしてもなかなかむずかしい。ただ、客観的な事実等につきまして、明白な問題あるいはいろいろの
状況におきまして裁判に影響のないような一般的な
調査、そういう問題についてはお答えできるというふうに思うわけでございます。
-
○加瀬完君 そうすると、明原丸の
調査の事実
関係については答えられると解してよろしゅうございますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 私
どもの判断でできるだけお答えをいたしますが、お答えできない部門については、そのつど御了承を得たいと思います。
-
○加瀬完君 私のこれからの質問は、先ほどの、大会や決議で漁民がいっておりますように、海上保安庁に対する、失礼ですが、非常な不信の念がある。したがいまして、海上保安庁は、公正、妥当に、漁民の側に立っても取り調べや
調査を進めているんだということを、この国会を通じて、不信を持つ漁民に答えてもらいたい、そう思いますが、そういう筋合いはお認めになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 海上保安庁は、何といいますか、取り締まり機関として法の公正なる、厳正なる励行ということを任務とする役所でございますので、私
どもそういう観点から取り締まりをやっておるわけでございまして、したがいまして、あくまでも厳正、公平にやるということにおいて、漁民の方から見ても十分御期待にこたえることができると思います。
-
○加瀬完君 では、先ほ
ども御
指摘がございました扇島シーバースにおける燃料搭載経過について伺えば、お答えになられますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) できるだけお答えいたします。
-
○加瀬完君 私は運輸の
調査室を通して次のような点を聞きましたけれ
ども、お答えを断わられた。明原丸
事件の
関係についてお答えをいただきたい点の
一つは、船長の給油時間にいたかいないかの在否、それから四十六年十二月一日三時四十分ごろ右舷タンクから油の流出があったかなかったか、それからおおよその流出時間、ペルシャ湾までの追跡
調査の結果、ゼネラル丸、第二常盤丸の給油量、四十六年十二月一日以後の給油船。ペルシャ湾の追跡
調査の結果は、あるいはお答えになられないかと思いましたが、全部一から六まで海上保安庁警備救難部海上公害課扱いとして、これは係争中のものだから、答えができない、こういう御回答でありました。
理由は何ですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 先生から事前に
調査室を通じまして、いまお話しのような
調査の御依頼、回答をほしいという御要求のあったことは存じております。いまここで先生といろいろ御質疑を通じてお答えいたしましたように、いまの御質問について、この席でお答えできる範囲のことはできるだけお答えしたいと思います。
まず第一点で申し上げます。
-
○加瀬完君 いや、なぜ答えられなかったかということです。それだけ大づかみにおっしゃってくださればけっこうです。
-
○
政府委員(野村一彦君) これは私
ども申し上げましたように、民事
事件につきましては、私
ども法的に関与すべきでない。被害者と、被害者が加害者と考えておられる方々との間の問題でございまして、私
どもは取り締まり機関として、いわば民事不介入の原則という立場から、これに予断を与えるような態度をとることは適当でないというふうに考えましたのと、それから刑事
事件につきましては、私
どもも取り調べをいたしまして、そして検察庁から裁判所にいま書類が行って審理が行なわれております。
したがいまして、その裁判所の裁判の結果ということは、私
どもの捜査の結果についても判断が下されるわけであります。私
どもの捜査が適当であったとか、なかったとか、不足であったとか行き過ぎであったとか、間違っておったとかという判断がなされるわけです。そういう意味で、私
どもも取り締まり機関として試験台に乗っているわけであります。そういう途中で、私
どもの意見を申し上げるということ、特に先ほど申し上げましたような国会という権威のある場におきまして、私
どもの判断をまじえたような御回答を申し上げるということは、やはり裁判というものに何らかの影響を及ぼすのではないかということから、生生のあらかじめの御質問に対して文書でお答えするということは適当でないと思ったわけでございますが、ここで御質問があれば、先ほど申し上げましたようなことで、私
どもとしてできるだけのお答えをいたしたいと、かように思っております。
-
○加瀬完君 私が伺ったのは、予想に対する判断を求めているわけではございません。
調査の事由
関係を伺っているわけであります。具体的にはあとで質問をしますときに、それではお答えをいただきます。
海上保安庁は刑事責任を追及、告発したわけですから、告発の
理由は国民の前に明らかにされてもいいわけですね。あなたのほうと石油
関係企業が民事訴訟しているわけじゃない。海上保安庁として、これは防止法の違反だといって告発をしたわけですから、どういうことで告発をしたかということは、これは明らかにされていいことだと思いますが、その告発の
理由も明らかにしてはいけないことになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 被疑者がこれこれの違反でもってこれを検察庁に私
どもが送致をしたということ、これは何ら私
ども隠すことはございません。
-
○加瀬完君 民事訴訟にしても不介入でありますから、海上保安庁としての見方はこうだと、
調査の
内容はこうだということは聞かれて答えても一向差しつかえないものではございませんか。
-
○
政府委員(野村一彦君) その点が、実は非常に私はむずかしいことだと思います。これはまた、後ほど先生から御質問があるかと思いますが、本件の民事訴訟の主眼点は先ほど申し上げましたように、また水産庁のほうからも
答弁がありましたように、被害者の方の主張と、それから被害者が加害者と称しておられる方の主張とが、裁判においていわばまっこうから対立しているわけでございます。
したがいまして、その点について、私
どもなりの見方ということを、民事に影響を与えるようなことになりますので、意見を申し上げることを差し控えたいと思います。それは刑事
事件について御質問があってお答えすることとは、一応私
ども別個のことだと考えますので、特に一般の警察においてもそうであろうと思いますが、いわゆる純粋の民事
事件におきまして、取り締まり機関がその両者の係争点について、何か判断の材料になるというような意見を述べるということは、やっぱり通常やっておりませんので、そういう意味で私
どもも民事問題については、私
どもの立場を申し上げるということはやはり差し控えさしていただきたいと思います。
-
○加瀬完君 しかし、あなた方は法廷で民事訴訟の証人に呼ばれたら、これを拒否するわけにはいかないでしょう。海上保安庁の取り締まりとして、事実
調査をした場合、どういう事実
調査があったか、こういう証人申請をされれば、あなた方は答えないわけにはいかないでしょう。
-
○
政府委員(野村一彦君) おっしゃるように、法廷から証人申請の要求がありますれば、その当該の人物が宣誓をして良心に従って答える、こういうことになると思います。
-
○加瀬完君 ですから、民事訴訟の一方のほうに有利なような証言をしてくれというなら、あなたは拒否されたってやむを得ないでしょう。しかし事実
関係どうだと聞かれたら、刑事問題であろうが民事問題であろうが、事実
関係こうだと答えられないはずはないでしょう。たとえば海洋汚染防止法の四条の違反にはなっていませんかと尋ねられたら、四条違反があったかなかったかということは、あなたがそれを、これは民事訴訟に
関係があるからといって拒否する
理由になりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) いまの具体的な御質問に対しては、これはもちろん、そういうことは違反であったかなかったかという、
法律のある条項に対する違反であるかないかということは、これは具体的な場合についてお答えできると思います。
-
○加瀬完君 むしろ、どういう工作を被告側がしようとも——民事の場合ですよ、民事の場合の被告側がしようとも、海上保安庁としての取り調べの
調査の結果はこうだというものを、はっきり明示することが、これは取り締まりの目的でもあるし、さらに取り締まりも不徹底なら、
原因の究明もさらにやっていないという漁民の不信を、そうではないという証拠をあげることにもなるでしょう。そういう態度をとって悪い
理由は何もないじゃないですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 私
ども刑事
事件といいますか、海洋汚染防止法違反容疑があったということは事実でございますので、またそれは検察庁に送致をいたしておりますので、その件について、いろいろと私
どもが送致いたしました過程において、取り調べをした事実、これは刑事裁判の進行につれて明らかになると思いますので、その点については、私
どもは当然、自分たちのそれぞれの取り調べ官が信念を——取り調べに従って、これをたとえば法廷等でいろいろと証言を求められたならば、そこでお答えするということになると思います。まあ、それは民事
事件に関連してどういうふうに取り上げられるか、これはまた、私は別な問題であろうと思います。
-
○加瀬完君 そうすると、船長が給油時にいたかいないかということはお答えになれますか。
第二番目には、ゼネラル丸などの給油量を明瞭にすることはお答えになれますか。
第三には、ペルシャ湾の追跡
調査の結果は御
報告いただけますか。
第四は、油の流出
状況を
報告することは当然船の
義務でもありますから、その流出
状況を聞かれたことに対して、われわれに答えることも、また海上保安庁の
義務だと思いますが、これまでもお拒みになりますか。
内容はおっしゃらなくてもけっこうです。答えられるか答えられないか、それだけお答えください。
-
○
政府委員(野村一彦君) ある程度お答えできます。
-
○加瀬完君 海洋汚染防止法の第四条には、「何人も、海域において、船舶から油を排出してはならない。」そしてその例外として、「船舶の安全を
確保」でありますとか、「船舶の損傷その他やむを得ない
原因」というようなことがあげられておりますね。
そうすると、明原丸の場合、特殊
事情は認められたのか。すなわち第四条の船舶からの油の排出の禁止事項は免じられていると
状況判断をしたのか。この点はどうでしょう。
-
○
政府委員(野村一彦君) ただいまの先生の御質問ですが、実はこの海洋汚染防止法の完全施行になりましたのは昨年の六月二十五日以降でございまして、ちょっと
法律の条項が違います。したがいまして、ただいまの御質問に正確にお答えできませんが、要するに明原丸が油を流しましたのは、当時の油濁防止法あるいは部分的に施行されでおりました海洋汚染防止法の違反である、つまり例外規定として認められているものではないということは、はっきり申し上げられます。
-
○加瀬完君 では、大量の油が排出された場合の防除措置は当然適用されることになりますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) 適用されることになります。
-
○加瀬完君 ここでいう大量とはどの程度以上をさすのですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 百リッター以上の油をさします。
-
○加瀬完君 それでは三十九条も明原丸には適用されますか。
-
-
-
○
政府委員(野村一彦君)
海上保安庁長官の汚染防止
義務という御質問でございますが、ただいまお答えいたしましたように、三十九条で大量の油の排出があったときには、つまり「前条第一項各号に掲げる者は、」と書いてございますように、つまりその
原因者が油を防除するということが一番の責任でございます。またそれでもって不十分な場合には、
海上保安庁長官は
運輸省令の定めるところによって防除をする。あるいは他の適当なものに防除させるという規定が三十九条の二項、三項に書いてあるわけでございますので、まず大量の油が流れた場合には、その油を流した
原因者と申しますか、その責任者が防除をするということが第一義的な
義務であって、そして応急の措置として海上保安庁もその油の防除をやるということが書いてあるわけでございます。
-
○加瀬完君 四十五条の海洋の汚染
状況の監視の
義務というのは、これは海上保安庁の長官にあるんでしょう。そうではありませんか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 四十五条の海洋汚染の監視の
状況については、当然法文は
海上保安庁長官となっておりますが、これは海上保安庁そのものの任務として監視をしなければならないということでございます。
-
○加瀬完君 この「
海上保安庁長官は、本邦の沿岸海域における海洋の汚染
状況について、必要な監視を行なわなければならない。」、その二項は、「
海上保安庁長官は、著しい海洋の汚染があると認めるときは、その汚染の
状況について、当該汚染海域を地先水面とする地方公共団体の長に通知するものとする。」とありますね。したがって、明原丸の場合も、一項も二項も
海上保安庁長官の
義務としてこれは適用されることは当然ですね。
そうすると、八億円もの被害が出るまで監視が怠られていたということに明原丸の場合なりませんか。これが一点。
それから千葉県知事に、何年何月の何時に海洋汚染の
状況を
報告をされましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) まず第一点からお答えいたします。
四十五条の第一項は、海上保安庁が常時海洋汚染の
状況について監視をしなければならないという、これは海上保安庁の職務を規定をしたものでございます。したがいまして、一般的に海上保安庁法で海上保安庁の業務は書いてございまして、その中に海上における法令の励行、あるいは犯罪の捜査ということが書いてございますが、それをいわば特にここで強調をしたということで、これは海上保安庁の業務としてあるわけでございますから、当然監視をしなければならないということでございます。
それから、この明原丸の油の
事件につきまして、これは具体的に油が流れましたのは川崎のシーバースでございます。その被害と目される、いわゆる被害地域と考えられるところが、千葉県のさっき言いました三漁協のところでございまして、これは言うなれば、ここにあります当該汚染海域を地先水面とする地方公共団体の長に通知するということで、この油が流れました当初におきましては、川崎で流れたという
状況であり、そしてこれは、いまから考えますと非常に不十分であったわけでございますが、防除措置を行なったということで、川崎のほうには連絡をしておりますけれ
ども、その直後には千葉県には連絡されなかった。もちろん、十二月四日でございますか、三日でございますか、これは私
どものほうの千葉海上保安部と千葉県とが連絡をしておりますので、二、三日後には連絡はされておりますが、直後にはこの千葉県のほうには連絡をされなかったという事実があったようでございます。
-
○加瀬完君 こまかい点はあとで聞きますが、十二月の一日の早朝に油は流出をいたしたわけですね。それが四日ごろ千葉県側に漂流してノリ被害を与えた。これは東京湾を流れてきて、これはそうだかそうでないかということもまた係争の問題になりますが、少なくとも東京湾のどっかで流れた油が木更津に着いたことは間違いない。油の監視というのは海上保安庁の責任だということなら、三日も四日も油が流れているのを気がつきませんでしたでは済まないわけです。それで被害が出ておるわけですから。
そういう点、私は四十五条の的確な
運営というものが、現状では行なわれておらなかったんじゃないかという疑いを持つわけです。あなた方が十分な把握をしなかったのがいいとか悪いとか言っているんじゃない。それは把握できないような条件に置かれていれば、どうするわけにもいかないんですけれ
ども、少なくも四十五条が的確に明原丸の
事件では適用されておらなかったということは、お認めにならざるを得ないと思いますが、この点はどうですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 現実に汚染があったわけでございますので、そういう意味においては、私
どもの監視が不十分であったということは、確かに現実の問題としてあると思います。
-
○加瀬完君 明原丸の場合、海洋汚染防止法にきめられておる措置が的確にとられておりますか。明原丸自身として海上保安庁その他に連絡をしたり通知をしたりしなければならないもろもろの油濁防止についての条件がありますね。こういう問題が瑕疵なくとり行なわれておりますか。
〔
委員長退席、
理事江藤智君着席〕
-
○
政府委員(野村一彦君) 一括して瑕疵なく行なわれておったかという御質問、なかなかお答えにくいわけでございますが、明原丸におきまして、油が流れまして、そして応急処理をしたという一連の過程を見てみますと、いろいろの点にまだ不備な点があった。あるいはまずい点があったということは言えると思います。それについて、具体的にどういう点かということについては、それぞれの場合によってまた違うわけでございますが、ともかく夜間に油が流れ出だしたということ自身が非常に不備であったわけでございますが、その後の処理等についても、いろいろと問題を残しておるというふうに考えます。
-
○加瀬完君 法制局いらしておると思いますから、この第四十七条の解釈について、まず御見解をお出しくださいませんか。
-
○
政府委員(別府正夫君) お答えします。
第四十七条の解釈ということでございましたが、第四十七条は一項から三項までいろいろ書いてあるわけでありますけれ
ども、特に加瀬
委員御
指摘のところはどこかということをおっしゃっていただきたいと思います。
-
○加瀬完君 全部言ってください。この一項、二項、三項の要点はどういうことだということをはっきり。
-
○
政府委員(別府正夫君) はい、読み上げながら簡単に申し上げます。
第四十七条は、「(
関係行政機関の協力)」という見出しがついておりまして、一項は、「運輸大臣は、この
法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、
関係行政機関の長又は
関係地方公共団体の長に対し、海洋の汚染の防止及び海洋環境の保全に関し、
資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。」という規定でございまして、この
法律の目的は、御存じのとおりに海洋汚染の防止、油あるいは廃棄物等による海洋汚染の防止でございますが、その目的を達成する必要があると認めるときに、先ほど読み上げました
関係行政機関、たとえば場合によっては農林省、通産省というような、あるいはその出先というようなもの。あるいは
関係地方公共団体の長、都道府県知事、
市町村長等に対して海洋汚染の防止、海洋環境の保全に関して
資料、情報の提供とか意見の開陳とか、それぞれ、それ専門と申しますか、議案に
関係する部局からの
資料の提出なり意見の開陳を求めることができるというのが第一項でございます。
第二項は、また読み上げますと、「
関係地方公共団体の長は、海洋の汚染の防止及び海洋環境の保全のため必要があると認めるときは、この
法律の施行に関し、運輸大臣に対し、意見を述べることができる。」、これは四十七条の、先ほど申しました一項のいわば逆の規定でございまして、
関係地方公共団体の長、たとえば都道府県知事、
市町村長等が海洋汚染の防止、海洋環境の保全という、この
法律の目的達成とほぼ似ているわけであります。この
法律の施行のために必要だというふうに考えた場合に、運輸大臣に対して意見を述べるという規定でございます。
第三項は、また読み上げますと、「農林大臣は、油又は廃棄物の排出により漁場の効用が著しく低下し、又は低下するおそれがあると認められるときは、運輸大臣に対し、この
法律の施行に関し、当該漁場及びその周辺海域における油又は廃棄物の排出の規制のための適切な措置を講ずることを要請することができる。」、これは農林大臣、主として海洋汚染防止でございますから、水産
関係の所管大臣と考えられると思いますが、油廃棄物の排出によって特に水産
関係、漁場の効用が著しく低下したり、低下するおそれがあるという場合に、いわば水産
関係の所管大臣として運輸大臣に対して、この
法律の施行、海洋の汚染の防止に関連して漁場周辺海域においての油廃棄物の排出を規制するように適切な措置を講ずるように、農林大臣に特に要請権を与えるという規定だというふうに考えております。
-
○加瀬完君 そこで、お説のとおりだとすると、その第二項、千葉県なり、神奈川県なりは油汚染についてはたびたび申し入れているはずですよ。それをどう受けとめて対策を講じたかというのが一点。
それから水産庁に伺いますが、「農林大臣は、油又は廃棄物の排出により漁場の効用が著しく低下し、又は低下するおそれがあると認められるときは、運輸大臣に対し、この
法律の施行に関し、当該漁場及びその周辺海域における油又は廃棄物の排出の規制のための適切な措置を講ずることを要請することができる。」とある。たびたび油汚染があったわけですから、少なくもノリ被害だけに対しても、農林大臣はどういう要請をしたのか。すなわち四十七条三項をどう適用したのか、いままでの経緯について、両者からお答えいただきたい。
-
○
説明員(前田優君) 水産庁といたしましては、先生前々から御
指摘のように、油汚染によりますところの漁場の被害が年々増加いたしつつあるわけでございます。したがいまして、取り締まりを厳重にやっていただきたいというようなこと等につきましては、絶えず農林省と
運輸省、特に海上保安庁との連絡が緊密に行なわれている
関係もございまして、おりに触れ、いろいろ御要望申し上げているところでございますが、なお水産庁といたしましては、逆に非常に不特定多数の船等からの油の排出が多うございます。漁業者に対する自衛手段の
一つといたしまして、いわゆるオイルフェンスとか、またば吸着剤、中和剤等の備蓄を
補助することによりましてこういう被害が少しでも減るような措置を
補助金の形で都道府県にいたしまして、沿岸の漁業者にそういう防除施設を備蓄させることによって、少しでも被害を減らしてまいりたい、そのような施策を講じているわけでございます。
-
○
政府委員(野村一彦君) 一般的に海洋汚染の防止あるいはその除去の問題について、いろいろと農林省、あるいは水産庁のほうから御要望がございますが、ただいま私
どもの、何といいますか、心にとめておりますものについては、具体的な事案についての、こう措置をしてほしいという御要望はちょっと的確に記憶しておりませんが、一般的に海洋汚染の防止について、あるいはこれと関連する海上交通の安全の
確保についての要望ということはしょっちゅうこれは事務的にも連絡ございますし、文書もいただいた記憶があると思います。
-
○加瀬完君 この四十七条は、
関係行政機関の協力という
内容ですね。一体、汚染防止について
関係行政機関の協力というのは十分に行なわれておりますかね。これは大臣がいないと悪いですけれ
ども、実務家の長官でもけっこうですよ、都道府県と海上保安庁、こういう
関係の緊密な連絡ということは、ここでは要請されていますね。特に漁場なり漁業なりに対しては、農林省と海上保安庁と、こういう
関係が規定されておりますね。さっき水産庁お答えになりましたが、お答えになりませんよ、そんなもの。
何百回も汚染されておって、具体的には救済の措置が何にも講じられないということで一体対策になりますか。せっかく
法律で四十七条というものができても、
関係官庁の連絡というものは何にもないでしょう。それでもいいとは四十七条読み取れないでしょう。だから法制局に御説明をいただいた。地方団体とも農林省とも連絡をしなければならないことになっている。農林省だって怠慢です。何にもやっていないとは言えないけれ
ども、
実績は何にも実ってはいない。今後これをどうしますか。
政務次官おるようですから、
政務次官にお答えをいただきます。もっと連絡を密にして、具体的に
関係協力機関での対策をお立てくださいますか、どうですか。
-
○
政府委員(
佐藤文生君) お答え申し上げます。
海上保安庁がみずから海洋の汚染の防除措置を講ずるのは、御承知のとおりに、緊急を要する場合でありまして、防除
義務者が防除措置を講せず、また防除
義務者の講ずる措置のみによっては海洋汚染を防止することば困難であるというふうに認めた場合、こういう場合が主たる目的であることは御承知のとおりであります。
そこで緊急性がない場合、あるいは
原因が不明な汚染、自然現象による汚染の場合、こういう場合が当然あるわけであります。そういう場合における汚染の防除措置というものを各省が連絡をとって十分やらなくちゃならないというところは、当然出てまいります。そこで海洋汚染防止事業は、このような汚染についても、防除措置を必要に応じて行なおうとするものでありまして、各省が十分な連絡をとりながら海上保安庁の緊急性以外においてでもできるような
体制をとっていこうということは、当然各省の横の連絡が必要であるということを、はお答えとして申し上げます。
-
○加瀬完君 それでは、あらためて
関係の都道府県から汚染防止についての要請がありましたら、十分考慮して要望にこたえられるような対策をお立ていただけると解してよろしゅうございますか。
-
○
政府委員(
佐藤文生君) 当然でございます。そういう連絡があれば、政府あげてその汚染防除対策をとるということは、当然の責務だと思います。
-
○加瀬完君 質問を進めます。
明原丸の重油流出
報告と、
報告を受けた川崎海保並びに三管等の
関係機関のとったその後の措置、これらは当然お答えをいただけると思いますが、よろしゅうございますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) お答えいたします。
明原丸の燃料油を補給しておりました十二月一日の早朝、油がこぼれたという
報告を受けまして、そうして、それを所轄いたしております川崎海上保安署は
関係の
事業者と一体となりまして、そこで明原丸の付近にオイルフェンスを張って、そうして油の防除をやったわけでございます。そうして油の防除をやって、一応明原丸の周辺における清掃と申しますか、そういう業務が終わりまして、そうしてそれを確認と申しますか、チェックしたわけでございますが、結果的にはチェックが不十分であったということは、いろいろなことから言えると思いますが、川崎海上保安署におきましては、第三管区及び中央にすみやかに
報告をしなかったというようなことがありまして、部内の連絡が必ずしもよくなかった、そういう事実はあるわけでございますが、油が流れて直後の一応の応急防除というものは、その
原因者と一緒になって防除したということでございます。
-
○加瀬完君 とにかく、明原丸のように、油を流出したとすれば、これは海洋汚染防止法の違反であることはお認めになりますね。
そこで、そういう違反事実を、早朝といいますがね、一日の何時何分に川崎海保に
報告があったのか、川崎海保は何時何分に三管に
報告をしたのか。それからもう
一つ、オイルフェンスは川崎海保が
報告を受けて現場に行って張ったのか、いまの御説明ではそのようにおっしゃられましたが、そう確認してよろしいか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 明原丸から川崎海上保安署に
報告がありましたのは十二月一日の六時五十分ごろだというふうに考えます。それで、その
報告の
内容は、バンカー中に油が流れたと、明原丸から油が流れたと、目下処理作業中であるということでございます。
そして、そのころ巡視艇の「たまかぜ」というのが比較的付近に待機しておりましたので、これを現場に派遣をいたしました。そして現場に行きましたところ、すでに現場のもう船
会社あるいはその油
会社におきましてその前から張ってあったオイルフェイスに加えて二本のオイルフェンスを張って作業をしておったというので、現場にその船が到着いたしまして指揮をした、こういうふうに理解をしております。
-
○加瀬完君 三管には何時です。
-
○
政府委員(野村一彦君) 三管区に対する
報告は、実は先ほど申し上げましたように非常におくれまして、——これは千葉におきまして問題が出ましてから三管区に
報告されたということで、十二月の四日ごろだと考えられます。
-
○加瀬完君 本事案の担当は川崎海保ですか、三管ですか、責任者は。
-
○
政府委員(野村一彦君) 事案の性質から見ますと、ただ扇島のバースの沖で油が流れたということだけでありますと、これは三管の下にあります横浜海上保安部のさらに下にございます川崎海保で単独に処理するかと思いますが、その後いま申し上げましたように、千葉におきましてこの油の問題が出まして、千葉と両方にまたがるということになりますと、これは両方を統括いたしております三管区が十二月四日以降統合といいますか、総合の本部を設けまして、対策本部を設けて指揮をしたということでございます。
-
○加瀬完君 油濁防止の
義務というのは海上保安庁にあるわけですからね。そうすると、
昭和四十六年の十二月一日の、これはおそいですけど六時五十分にとにかく川崎海保は通告を受けたわけですね。したがって、その油が流出をするとすれば三管区全体に影響するということは当然ですね。三管区の海域全体に影響すると予想されることは当然ですね。したがってこれは三管に連絡をするのが当然じゃないですか。十二月四日まで連絡をしなかったということは、少なくとも油濁防止法を確実に行なったとは言われないと思いますが、川崎海保にこの点の責任があるとお認めになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 海上保安庁全体として海洋汚染の防止のための監視をすべき責任があるということは仰せのとおりでございます。
で、私
どもはこれを受けまして、全国を十一管区に分けて管区本部というものがありまして、広域的な海上保安行政をやってるわけでございますが、さらにその管区本部の中に、先生御案内のように、各地に海上保安部というものがございまして、そしてそれが
一つの県、あるいは県を二つに分けまして
法律上の管轄区域を持っております。したがいまして、その管轄区域についての監視の責任は当該海上保安部が第一義的にあるわけでございます。したがいまして、本件について言いますと、横浜海上保安部の傘下にあります川崎海上保安署がやるべきことでありますが、いろいろあとになって考えてみますと、問題が非常に広がったということから、これをすみやかに上部機関に上げて上下左右の連絡をよくして、その事後処理を講ずべきであったということでございますので、その
報告及び事後処置については適切でなかったという点があるというふうに考えます。
-
○加瀬完君 いずれにしても明原丸から流れたとすれば、船舶から油が流出したとなりますと、その責任は油濁防止
管理者の責任ということになりますね。船から油が流れたとすれば、その船の油濁防止
管理者が責任者ということになりましょう、船においては。
-
○
政府委員(野村一彦君) その辺の
法律論はなかなかむずかしいと思います。船におきまするすべての業務を統括しておりますのは船長でございますので、もちろん船長の業務を分掌する意味において機関長がおりますし、それから航海長あるいは一等航海士という名前の者がおりまして、いろいろ責任を分掌しておりまして、この場合も、油濁防止
管理者という者が船長のほかにおったわけでございますが、その責任がどこまで追及されるべきかということは、個々の場合によって違うと思いますが、船の自体の最終責任者は船長だと、それから直接の責任者はその防止
管理者である、こういうふうに考えます。
-
○加瀬完君 油濁防止
管理者というものは第六条に規定されておりますね。「船舶所有者は、
運輸省令で定める船舶ごとに、当該船舶に乗り組む船舶職員のうちから、船長を補佐して船舶からの油の不適正な排出の防止に関する業務の
管理を行なわせるため、油濁防止
管理者を選任しなければならない。」とありますね。船長はもちろん責任者でございますが、この場合、船舶所有者は油濁防止
管理者を選任しておったのか。おったとすれば、その氏名はだれか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 油濁防止
管理者は一等航海士の三村という方が選任をされておりました。
-
○加瀬完君 そうすると選任はされておったわけですね。三村一等航海士が、そうすると明原丸の場合は油濁防止
管理者であったと、そういうことですね。
-
○
政府委員(野村一彦君) 一等航海士の三村さんが油濁防止
管理者に選任をされておりました。
-
○加瀬完君 それでは海上保安庁は、この油濁防止
管理者に対して、どういう
指導をいままでしておりましたか。あるいは油濁防止
管理者が守るべき規定として、どういう省令なり規則なりというものをつくっておりましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 油濁防止規程というものは、各船に、この
法律に基づきまして個別的に各船でつくるということになっておるわけでございますが、油濁防止規程というものをこの船も社内の規定によってつくられておったということでございます。油濁防止規程を定めるということにつきましては、これは海上保安庁が
指導するというよりは、むしろ
運輸省の本省のほうがそれぞれの出先を通じて
指導しておったと思いますが、油濁防止規程というものが社内の規定としてこの場合もつくられておりました。
-
○加瀬完君 それはそういうことでしょうな。港湾
局長いないかな。——いますか。じゃどうぞ港湾
局長が答えていい点は、御遠慮なく港湾
局長からお答えいただきます。
そこで、川崎海保及び三管のとった処置について伺いますが、先ほ
どもお話がございましたが、巡視艇「たまかぜ」を出向させましたね。これはどういう目的で船を出しましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 二つあるわけでございますが、
一つは先ほど来申し上げますように、油を流した場合に、現場の防除をするのは流した
原因者が当然責任を持つわけでございますけれ
ども、実際の場合といたしましては、
原因者はもちろん、その付近にある人員機材を動員して海上保安庁も一緒になって処理をするというのが実際の実情でございまするので、この場合にも「たまかぜ」が現場に行って、そして処理作業の
指導をするということと、それからとりあえずこういう油を流した責任者について、取り調べに着手するということであると思いますが、とりあえずは、現場作業の指揮連絡と申しますか、指揮調整と申しますか、そういうことをやるのが目的でございます。
-
○加瀬完君 「たまかぜ」が出向を命じられた時間はいつですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 出向を命じられた時期はわかりませんが、七時ごろ現場に到着しておるということを承知しております。
-
○加瀬完君 汚染防止法の四十二条は、この場合、どう実施をされましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 四十二条についての御質問でございますが、四十二条といいますのは、いわば最後の非常措置を書いてあるわけでございまして、どうしてもやむを得ない場合に「船舶を破壊し、当該排出された油を焼却するほか、当該排出された油のある現場附近の海域にある財産の処分をする」ということで、最後の手段でございまして、この規定によらずに、要するに
原因者である当該船舶あるいはそれに関連のある給油施設の
管理者、それと海上保安庁のいま言いました「たまかぜ」の乗組員が、一緒に流れている油を処理をするということをやったわけで、この場合は四十二条によってやったわけではございません。
-
○加瀬完君 四十二条はおっしゃるとおりでありますが、油の流出によって一般の漁民なり漁場なりの
損害が大きいということは、先ほど述べてきたとおりであります。
そうすると、そういう財産保護というものに対しまして、あるいは漁業権のような生活権の保護というものに対しまして、油濁防止というものには相当力を入れなければならないということは、これは海上保安庁もお認めになると思いますが。いかがですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 四十二条のような規定は、いわば最後の非常的な措置をやるための規定でございますので、これはめったに発動すべきではないし、またそうしばしばあるものではございませんが、これは私
どもの理解いたしておりますところでは、英仏海峡で起こりましたトリーキャニオン号
事件のときの教訓ということをくんで、そしてあの場合に英海軍でしたか、タンカーを爆破して処理をしたということがございますが、ああいうことが万一あった場合に、日本の場合においても、そういうことができるようにという含みでこういう規定があるのだと思いますが、私
どもはこれを待つまでもなく処理をするということのほうがより重要ではないかと思います。
—————————————
-
-
○加瀬完君 いや、私は四十二条を適用しろということを言っているわけじゃない。四十二条は
原因者の財産権を破壊しても汚染防止のためにはやむを得ないということでしょう。それならば、その船の財産権の破壊まで認めて汚染防止ということをするというなら、逆に汚染によって財産権なり生活権なりが破壊されることについての、汚染防止の強硬手段というのを当然とられていいじゃないか。と申しますのは、あとで聞きますけれ
ども、六時五十分ごろではないんですよね、油の流出をしたのは。それを
報告したのが六時五十分。「たまかぜ」はそれからさらに時間がたって七時ごろ。それで六時五十分川崎海保は
報告を受けたと言っておりますけれ
ども、船の側では三時三十分に
報告したという者もあれば、四時三十分に
報告をしたという者もいるんじゃありませんか。一体確実に、明原丸が油の流出を届け出たのは六時五十分なんですか、それとも三時三十分なんですか、四時三十分なんですか。これを聞きますというのは、六時五十分とすると、油は流出を発見したときから数時間流れていることになるんですよ。三時三十分としても相当の時間、それが六時五十分としたらもっと長い時間になる。保安庁長官は、三時三十分に川崎海保に
報告した、あるいは四時三十分に
報告したというお話は聞きませんか。これは六時五十分に
報告を受けたというふうに受け取って間違いないですね。
-
○
政府委員(野村一彦君) 私
どもが部内でいろいろ確認したところでは、いま申し上げました六時五十分ごろ明原丸から川崎海上保安署に
報告があったというふうに考えております。
-
○加瀬完君 それでは給油についての
報告は、どういう
報告を受けたんですか。開始の時間、中止の時間または終了の時間、それは何日何時何分という
報告を受けておりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 給油についての
報告でございますが、それは一番最初に給油を始めましたのは相当早い時間……
-
○加瀬完君 いいですよ、終わりだけでもけっこうです。
-
○
政府委員(野村一彦君) これは事後調べたわけでございまして、事前に給油の通報は受けることになっておりませんが、大体十一月の三十日の午前九時半ごろから始めまして、午後の五時ごろまでやったと、それでこれは五隻の船でやったと。ところがその後、少し海上がしけてきたので一たん中止をして、そうしてそのあとに午後五時ごろから始めまして十二月一日の四時二十分ごろまでやったと、それで最初の第一回目は五隻の給油船でやり、第二回目は四隻の給油船でやったということを事後
報告を受けております。
-
○加瀬完君 油の流出
状況の
報告は、明原丸の油濁防止
管理者からあったのですか。それとも、ほかの者からあったのですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 油の流出
状況の
報告ということですが、これはいろいろあるわけで、ございまして、もちろん、どのくらいの油が流れたかということは、やはり明原丸の現場の責任者からも聞いたと思います。その後、取り調べをしたいろいろな
関係者からも聞いておりますので、いろいろその時点によって違うと思います。また、これの記録も私
ども見ておりますが、
関係者のいろいろな人から流れた量についての話を聞いているということで、それが必ずしも一致していないという
状況でございます。
-
○加瀬完君 いや、私が伺いますのは、川崎海上保安署に油の流出を通告した者は明原丸の油濁防止
管理者か、それともほかの者かと。
-
○
政府委員(野村一彦君) 油濁防止
管理者である一等航海士が
報告をしたという、最初の
報告をしたというふうに聞いております。
-
○加瀬完君 念を押しますが、そうすると、三村一等航海士が明原丸の油濁防止
管理者として十二月一日の午前六時五十分ごろ、川崎海上保安署に明原丸の油の流出を
報告したと確認してよろしゅうございますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) 船長が
報告をすべきところ、船長にかわって三村一等航海士が
報告をしたというふうに、いまのおっしゃった時刻に
報告をしたというふうに聞いております。
-
○加瀬完君 そうすると、油の流出発見者はこの
管理者ですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 油の流出を発見した人は当直をしておりました平川という三等機関士であると思います。
-
○加瀬完君 そうすると、これはあとでも触れますけれ
ども、三等機関士が油の流出を認めて、それを油濁防止
管理者の三村一等航海士に
報告をして、その三村一等航海士から川崎海保に連絡があった、こういう順序になりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) おっしゃったような順序であろうと思います。
-
○加瀬完君 明治海運が明原丸の船舶所有者ですね。そして、この所有者が、そうすると三村一等航海士を油濁防止の責任者として任命したことになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 所有者が、私はこの点は確認しなければわかりませんが、私
どもの通常理解しておるところでは、所有者が直接任命したものではないと思います。と申しますのは、船舶における荷役の責任者は通常一等航海士が慣例的にどの船でもなっております。したがいまして、こういう場合でも一等航海士がなるという、おそらくこれは船の慣例でもありますし、おそらく
会社の内規でも、自動的にと申しますか、そういうことになっておると思いますが、その辺はちょっといまつまびらかにしませんが、おそらく
会社が直接任命したものではない。船長が内規によって指名したのか、あるいは恒例によって、慣例によって指名をしたのか、そういうことであろうと思います。
-
○加瀬完君 それでは明原丸の油濁防止
管理者の責任について聞きますが、油が漏れたとき、すなわち流出をされたとき、この一等航海士は船におりましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 船の中におったようであります。
-
○加瀬完君 おったようでは困るんですよ。おりましたか。それから船長はおりましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 船長はおりましたが、就寝中でございました。一等航海士は、ちょっとその点調べますが、おったはずでございます。
-
○加瀬完君 これは油濁防止責任者が船にいたかいないか、これはおたくのほうで調べていくときの一番重要な
一つのポイントだと思うのですよ。したがって聞いておるのですけれ
どもね。それでは給油の最終の船は第十五京丸ですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 再給油船の最後の船は第六太平丸であるというふうに理解しております。
-
○加瀬完君 第十五京丸が零時十五分から作業を始めて午前一時十分ごろ終了して帰るとき、残った船は太平丸とそれから明原丸だけと、シーバース付近の海上には。そう了解してよろしゅうございますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) 第六太平丸といいますのが、先ほど申し上げましたように二回に分けて給油をしたその最後のほうの給油のときのポンプ船といいますか、一番根っこの船になったわけでございます。で、その前に、この船が最後に給油する前が第十五京丸ということでございますから、おそらく第十五京丸が終われば、あとに残ったのは、明原丸はもちろんのこと、第六太平丸だけであろうというふうに思います。
-
○加瀬完君 それで第六太平丸からは油を漏らした事実ありますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 第六太平丸から油を漏らしたというふうなことは私
ども考えておりません。
-
○加瀬完君 第十五京丸が一時十分ごろ帰るときには油の流出された事実はなかったと、こう聞いておりますが、それはお認めになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) そのとおりであると思います。
-
○加瀬完君 それでは一時十分以後、しかも太平丸ではない。すると残りは明原丸。明原丸からどういう形か油が流れ出したと推定してよろしゅうございますね。
-
-
○加瀬完君 そこで給油船について伺いますが、鶴見輸送株式
会社と燃料積み込みの
関係はどういうことになっていますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) この燃料の積み込みにつきましては、積み荷役協定書というものを結びまして、そしてこの明原丸のほうと油を供給する
会社とが、この協定書に基づきまして油を補給しておるわけでございますが、鶴見輸送もこの油を補給する船に加わって補給をしておったということでございます。
-
○加瀬完君 それは違いませんか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 鶴見輸送がこの場合の元請的な立場になって一括引き受けてやっておったということでございます。
-
○加瀬完君
昭和四十六年十二月十五日、千葉県知事友納武人殿あての「明原丸洩油事故に関する御照会事項について」という回答がございましたが、御存じですか。
-
-
○加瀬完君 鶴見輸送株式
会社は照会事項四として、事故の
原因、すなわち流出事故の
原因及び一切の責任は明原丸側にあると、こう千葉県知事あてに証明書を寄せておるのですよ。これはお認めになりますか、この事実
関係は。海上保安庁もこの流出油の
原因者は明原丸であって、ほかの船ではないとお認めになっていらっしゃいますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) ただいま先生のおあげになりましたその書類ということとは直接
関係ございませんが、先ほど申し上げましたように、明原丸から油がこぼれたというふうに私
ども考えております。
-
○加瀬完君 鶴見輸送株式
会社への給油委嘱者はだれですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) これば東燃タンカーでありますか、東燃石油でありますか、その辺私
どもはわかりませんが、私
どもは、その船主と明原丸と、それから直接油を供給をした
会社ということを把握しておりまして、要求もとがどこであるかということはわかっておりません。
-
○加瀬完君 これはゼネラル海運株式
会社ということになってますね。疑えば責任の所在がわからないように、輸送
関係がなかなか入り組んでいるんですよ。それでおたくのほうで、そういう
調査をしてあるかどうかということを聞いたのです。給油委嘱者はゼネラル海運株式
会社ということになっておる。元請は鶴見輸送ですね。ところがC重油を出したところはこれは別の
会社ですね。それらについてはあとで触れますけれ
ども、そこでC重油を明原丸に積み込む
会社の責任者はだれという方でしたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 鶴見輸送の責任者は真野さんという人であるというふうに思います。
-
○加瀬完君 重ねて伺いますが、真野さんという方は、立ち会い人としてそこにおりましたね。それが一点。
それから油濁防止
管理者であります一等航海士は、給油のとき立ち会っておりましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) その真野さんは、給油のときに現場には立ち会っていなかったというふうに私
どもは聞いております。
それから船側では当直の三等機関士が補給の責任者として立ち会っておったというふうに聞いております。
-
○加瀬完君 海上保安庁としては明原丸の油濁防止責任には手落ちはなかったとお認めですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 油濁防止責任といいますと、船長、油濁防止
管理者、それから給油に立ち会いました機関士、いろいろあると思いますが、船側において現実に油がこぼれた、そしてこぼれたことはこれは法に照らして違法であるということでございますので、船として油をこぼしたことについての責任はあると、かように考えます。
-
○加瀬完君 油濁防止責任者であります船長なり一等航海士が確実に船にいたという証言がありますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 船長は船におって就寝をしておったということを、はっきり私
どもは把握いたしております。
-
○加瀬完君 平川三等機関士は、油が漏れたのを見つけて、それから一等航海士に
報告をしておりますか、船長に
報告をしていますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 平川機関士が油がこぼれているということを発見をして、就寝中の船長及び一等航海士に連絡をして、船の人を起こして防除作業をやったというふうに聞いております。
-
○加瀬完君 おたくのほうでとりました調書にそういう証言を平川三等機関士はなさっていらっしゃいますか。それではあらためて、こう伺いましょう。流出油を発見したのは平川三等機関士ですね。それからあと船長なり責任者なりにどんな方法でいつ連絡をし、その連絡をされた人たちがどういう措置をとりましたか、時間的に経過を追って御説明いただきます。
〔
理事江藤智君退席、
委員長着席〕
-
○
政府委員(野村一彦君) 平川機関士が油がこぼれているということを発見をして、そうして船内に就寝をしておった船長、一等航海士その他の船員を起こして、この防除作業にかかった。それでその防除作業といたしましては、冒頭申し上げましたように、この船の船尾部と船首部にはオイルフェンスが展張してありましたけれ
ども、途中の部分にオイルフェンスの張ってないところがありましたので、そこでさらに船のオイルフェンスとそれから陸上のオイルフェンスを合わせまして、それぞれ二本ずつオイルフェンスの展張作業をした。それから油の防除作業に取りかかったというふうに私
ども考えています。
-
○加瀬完君 その給油の際、燃料の積み荷の際、船長は監督の
状態になくてよろしいんですか。
それから一等航海士の油濁防止責任者は、責任を遂行できるような
状態にいなくてもよろしいんですか。この船の場合、船長は就寝しておった。私は他の
資料はありますけれ
どもここでは触れません。
もう
一つ、一等航海士は三等機関士が給油の作業を実施しているときに、どこでどういう
指導をしていましたか、あるいは監視をしていましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) まず第一点の御質問でございますが、船長は、先ほどから申し上げますように、船内において就寝をしておったということでございます。それで船の全般的な最高の責任者は、申すまでもなく、航海科たると機関科たるとを問わず、船長が責任者でございます。
しかしながら、船長は船員法その他の規定によりまして、船長が特にみずから船を指揮しなければならない場合、その他在船
義務の場合、いろいろなことが規定してございますが、そういう荷役中におきましては、必ずしもみずからそれを指揮する必要はないといいますか、法的にその責任が問われるものかどうか、これは争いのあるところであると思いますが、一般的に航海当直がそれぞれ時間をきめて立つわけでございますが、この三等機関士が航海当直に当時立っておりまして、そうしてこの三等機関士が現場に立ち会って給油をしておった。したがって部内的には、船長からその給油の、何といいますか、実施についてもまかせられておったといいますか、当直士官としてまかせられておったというふうに思います。もちろんそのことと、だから船長が対外的に責任がないということではないわけで、それは別の問題でありますが、部内的には当直士官である三等機関士が責任をもってやっておったという
状況であると思います。
それから一等航海士につきましては、先ほど申し上げますように、船内で就寝をしておったと考えられます。これは前後の
事情からそういうふうに考えられますけれ
ども、その点確認しておりませんので、さらに調べますが、船内にあっておそらく就寝をしておったというふうに考えます。
-
○加瀬完君 油濁防止責任者が一等航海士ですか。であるとすれば、その者がどういう執務の
状態にあったかということは、重要な問題だと思う。いま四十六年十二月のことが、四十八年の六月になっても確認ができないというのはおかしいじゃないですか。しかしこれはおきましょう。
そこで、燃料油を積み込む際には風とか風浪とか、こういうものは防除
体制には
関係ないものとして考えなくてもいいということになっていますか。
もう一回言います。燃料油を積み込むような際に、風の強さとか、それから波ですね、風浪の高さとか、こういうものに対しての注意はございませんか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 先ほど申し上げましたように、九隻の船で二回にわたって燃料油を補給したわけでございますが、第一回を午後五時ごろ中止いたしましたのは、気象
状況の悪化ということで中止をいたしたわけでございます。したがいまして、一般的な心がまえといたしまして、当然小さな給油船でもって積むわけでございますので、気象海象の
状況を十分見て、そして気象海象の
状況が悪ければ積むのを一時中止するということは、当然、これはもう常識的にもそういう考慮を払ってやるべき問題であると思います。
-
○加瀬完君 それじゃ「たまかぜ」のとった措置について
報告をいただきます。
-
○
政府委員(野村一彦君) 「たまかぜ」は、先ほど申し上げましたように、七時ごろ現場に到着をいたしまして、そして現場の処理作業の
指摘をした、あわせて機関長や機関士等から油を漏らした
事情について聴取をしたということでございます。
-
○加瀬完君 「たまかぜ」ば漂流油を、いわゆる漏れて流れて海に浮かんでいる油を発見しなかったのか。発見できなかった
理由は何ですか。扇島シーバースのところへどこかから行ったんでしょう。その途中なり、あるいはシーバースの付近なりで漂流油を発見できるチャンスがあるはずですね。発見できなかったですか。発見できない
理由は何ですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 「たまかぜ」は、そういう現場に、こういう油が明原丸から流れたという
報告を受けて、そして急遽現場に行ったわけでございます。そしてそのときには現場においては、もうすでに先ほど申し上げたように、まだ不足をしておったオイルフェンスを張って、そして現場の人が油を除去しておった、そこに行ってそれを
指導をしたということでございますが、途中、現場に急行するという、夜中のこと——まあ夜中というか明けがたのことでございますし、おそらく現場に急行して、とりあえずその現場の
状態を確認をして所要の措置をとるということで、その辺の浮流油の捜索ということよりも、現場に急行するということを考えておったんじゃないかと思いますが、「たまかぜ」としては、とりあえず現場に行って、現場の作業指揮に当たる、処理に当たるということであったと思います。
-
○加瀬完君 夜中じゃないですね。六時五十分に川崎海保が
報告を受けて、それから「たまかぜ」を派遣したわけですから、少なくも七時過ぎですね。冬であっても七時過ぎになれば、もう視界は相当はっきりしていますよね。
当日の七時ごろは、相当風浪がありましたね。説明を加えますと、その前の晩も非常に風が強くて、一時給油ポンプを休んだでしょう。それでおくれたということですね。したがって朝になりましても相当の風浪があったと当時の観測記録はなっておるんじゃありませんか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 当日の扇島シーバース付近の風は、七時ごろですと北西の三メーターないし四メーターの風が吹いておったという記録が残っております。
-
○加瀬完君 三、四メーターの風というのは、さざ波が立ちますか、立ちませんか。
-
-
○加瀬完君 さざ波の立っているところでは、油のあるところと油のないところでは、これは一目瞭然ですね。これば海上保安庁でも御専門でありますから御確認でしょう。油の流れているところはさざ波があまり立たないんですよ、油のないところはさざ波が大きい、ですから一見してあそこに漂流油があるかどうかというのはわかるはずなんですよ。それが発見できなかったということですか、「たまかぜ」は汚濁防止のために日夜活動している船でしょう。したがって、油があるかないかは夜中ならとにかく朝ですから、もう明るいんですから。しかも風があって、さざ波があれば、さざ波の立っているところとさざ波の立たないところは一目瞭然ですから、あそこは油じゃないかなということはすぐ発見できる。にもかかわらず発見できなかったというのはおかしい。こういう疑問があるのですがね。しかも油は流れておった、シーバースだけでなくて、その付近にすでに七時か八時ころ。それで発見できなかったというのはどういうことでしょうか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 「たまかぜ」は、先ほど申し上げましたように、七時ごろ現場に行きまして、作業指揮をやったわけでございますが、八時四十分ごろ本船、つまり明原丸のそばを離れて、再び明原丸の周囲の約千メートル沖をずっと見て回って、そして九時十分ごろ基地である川崎に帰っております。
そういうことで、行くときにはその辺はおそらく急行いたしましたので、明原丸に急行したので、あまり現場付近を見ていないと思いますが、その後明原丸の周辺の千メートル沖ぐらいをずっと見て回っているということでございますので、これはその辺の
状況は見たわけでございますが、なぜそれを発見するに至らなかったかということは、こればわかりませんけれ
ども、結果として、その辺の周囲をかなり見て回ったけれ
ども、そういう油らしきものを発見しなかったということでございます。
-
○加瀬完君 これは御
調査を願いたいのでありますが、被害の漁業
関係の者は「たまかぜ」は漂流油を避けて通った、さざ波の立っておらないところを避けて通った、こう主張をいたしております。しかも三管に対しましても、その後でありましょうが、千葉海区の監視艇を入れなかった、こういう事実があります。これは事実であります。横浜海区にしろ、三管にしろ、油流出を徹底的に調べようということであれば、一番被害を受けている千葉海区の船が、監視艇が入っているのならば、共同で
原因究明に当たるのが当然じゃありませんか。ところが千葉海区の船は追い返された、川崎海保のほうに入れられなかった、こういう事実から推定するのかどうかは知りませんが、「たまかぜ」はどうしたって漂流油を発見しないはずはない、ことさらさざ波の立たないところをよけて通った、こう漁業
組合側は主張するわけです。そういう事実がなければけっこうですから、ひとつ「たまかぜ」の当時の責任者を十分お取り調べをいただきます。といいますのは、そういうことであったとすれば、これは保安庁のとった措置というのは、はなはだふに落ちないことになりますので、お取り調べいただけますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 当初は川崎沖の問題でございますので、川崎の海上保安署が
調査をし、その後千葉県においても問題が出たということで、両方を管轄しております三管区本部が統合の本部をつくって、そしてそれぞれ両者の業務をきめて指揮をしたということであると思います。したがいまして、同じ三管区の管内でございますので、両者の業務の分担ということはあったと思いますけれ
ども、そういう内部のいろいろの意思の不疎通ということはなかったと思います。ただ、「たまかぜ」が先ほど申し上げましたような行動をとったわけでございますが、これがどういう
理由でその浮流油を発見できなかったのか、その後またその当時の浮流油の
状態がどうであったかということを、あわせて
調査をいたしますけれ
ども、私
どもとして結果から見れば、これだけの油が流れておるのに発見できなかったというのは奇異な感がいたしますけれ
ども、決して「たまかぜ」が故意に私は監視を怠ったというふうには、実は考えないわけでございます。なおこの点
調査いたします。
-
○加瀬完君 そこで「たまかぜ」がオイルフェンスを張ったということでございますが、この明原丸といいますか、扇島シーバースにおけるオイルフェンスの
状態はどう把握されておりますか、当日の。
-
○
政府委員(野村一彦君) オイルフェンスの展張
状況でございますが、まず船首と船尾に二つのオイルフェンスを油がこほれ出す前に張っておったわけでございます。船首につきましては、約百五十メートルぐらいのオイルフェンスをこの接岸ドルフィンからぐるっと向こう側の船首の右舷のほうに張っております。それから船尾のほうにおきましても、同じく船尾にある接岸ドルフィンから二百メートルほどのオイルフェンスを船尾をぐるっと回って、ちょうど油が漏れたと推定される個所のところまで張っております。そういう
状況で、油がこぼれるまでばオイルフェンスを船首に百五十メートル、船尾に二百メートル張っておる、こういう
状況でございます。
-
○加瀬完君 オイルフェンスの展張の責任は、これは船長にありますか、それとも油濁防止
管理者にありますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 直接の責任は油濁防止
管理責任者といいますか、現実には同じでございますが、一等航海士でございまして、一等航海士が両方ともこの展張の指揮をいたしております。
-
○加瀬完君 法制局に伺いますが、商法に船長の職務責任に関する規定、七百五条、七百六条、七百七条というのがございますね。これは船長の職務責任の
内容を規定したものと考えてよろしゅうございますか。
-
○
政府委員(別府正夫君) お答え申し上げます。
船長の職務権限は、加瀬
委員御存じのとおりに、船員法で一応船長の職務権限が規定してあると同時に、民事法上と申しますか、責任が商法七百五条以下に規定してあるというふうに考えます。
-
○加瀬完君 この商法七百五条の二項の「船長ハ船舶所有者ノ指図ニ従ヒタルトキト錐モ船舶所有者以外ノ者ニ対シテハ前項ニ定メタル責任ヲ免ルルコトヲ得ス」、こうありますね。その「船舶所有者以外ノ者ニ対シテハ前項ニ定メタル責任ヲ免ルルコトヲ得ス」といいますのは、たとえばこの明原丸の場合、明原丸から油が流れて、その油の汚濁によって財産権の侵害があったということになれば、船長は民事責任を負わざるを得ないということに解してよろしゅうございますか。
-
○
政府委員(別府正夫君) お答え申し上げます。
七百五条の第二項は、第一項で「責を免ルルコトヲ得ス」ということで、責任を負う場合に、たとえば船舶所有者の指図に従ったときでも免責にならないんだということを規定しておるわけでございます。七百五条一項の責任を有するときには船舶所有者の指図に従っても責任を有するということになるというように解釈いたします。
-
○加瀬完君 七百六条の「海員カ其職務ヲ行フニ当タリ他人ニ
損害ヲ加ヘタル場合ニ於テ船長ハ監督ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ
損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス」とありますね。この免責
内容はどういうことになりますか、「監督ヲ怠ラサリシコトヲ証明スル」ということは、どういうことになりますか。
-
○
政府委員(別府正夫君) お答え申し上げます。
「監督ヲ怠ラサリシコトヲ証明スル」というのは、その事案事案によって変わってくることは当然考えられますので、一般的にどういうことかという御質問には、ややお答えしにくいわけでございますが、要するに監督を怠らなかったということが証明できれば免責になるということと考えざるを得ないと思います。
-
○加瀬完君 同じく七百七条に「船長カ已ムコトヲ得サル事由ニ困リテ自ラ船舶ヲ
指摘スルコト能ハサルトキハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外他人ヲ選任シテ自己ノ職務ヲ行ハシムルコトヲ得此場合ニ於テハ船長ハ其選任ニ付キ船舶所有者ニ対シテ其責任ニ任ス」、こうありますね。この「已ムコトヲ得サル事由」とは、どういうことですか。
-
○
政府委員(別府正夫君) やむを得ざる事由を商法の解釈としてどういうことを学説上いわれておるか、あるいは判例でどのようにきまっておるかということにつきましては、私いまここでお答えするだけの用意がございません。もし必要でございましたら調べまして御
答弁申し上げます。
-
○加瀬完君 監督の責任にありながら、しかも風浪が相当あって油流出の危険が予知されるにもかかわらず、就寝しておって監督の責めを他に転嫁したという場合は、これはやむを得ざる事由ということになりますか。
もう一回事実
関係を申し上げます。明原丸の船長が就寝をしておりまして、実際の指揮をとったのは三等機関士であります。その三等機関士のミスによって流出油が出ました。それが金に換算すれば八億円に及ぶものではないかという被害を与えたと推定されるわけであります。その推定が明瞭かどうかというのは裁判中でありますから、因果
関係はまだ明らかでありませんが、少なくとも推定をされる。油が流出したことは事実、しかもそれは三等機関士に責任をまかせっ放しにしておいた結果であるということも事実、三等機関士のミスということも明らかであります。
しかも相当その日は風浪があって、オイルフェンスなんかも、完全に船を巻くだけなかった、そういう
状態の中で就寝をして責任を免かれている。こういう
状態でもやむを得ざる事由によって就寝をしておったという解釈は成り立ちますか、いかがですか。
-
○
政府委員(別府正夫君) いま加瀬
委員御質問の第七百七条は「已ムコトヲ得サル事由に因りテ自ラ船舶ヲ指揮スルコト能ハサルトキハ」云々と書いてございますが、いまの明原丸の場合には、船長は在船をしておりましたので、特に七百七条の問題ではないのではないかと、こう考えます。
-
○加瀬完君 商法によると、「已ムコトヲ得サル事由に因リテ自ラ船舶ヲ指揮スルコト能ハサルトキ」というのは、死亡した場合や何かをさすのじゃないですか、くたびれていたから眠っていたということは、やむを得ない事由というので商法では認めていないんじゃないですか。
-
○
政府委員(別府正夫君) 御質問の趣旨がはっきりいたしませんのですが、七百七条は代船長を選任することができるということと、選任した場合「船長ハ其選任ニ付キ船舶所有者ニ対シテ其責に任ス」ということを書いてあるわけでございますので、ただいまの明原丸の場合には、特に代船長選任という
事態ではない。一般に船長が、先ほど保安庁長官のほうからも御説明申し上げましたように、常に細部にわたって全部自分で指揮監督するということが期待できない以上、それは若干オーバーだと思いますので、そういう場合に、その船のきまり、あるいは慣例に従って、一等航海士あるいは当直の三等機関士に業務をまかせるということは、十分考えられるというふうに考えます。
-
○加瀬完君 商法で「已ムコトヲ得サル事由ニ因リテ自ラ船舶ヲ指揮スルコト能ハザル」という条件は何ですか。
-
○
政府委員(別府正夫君) お答え申し上げます。
船員法の二十条で、いま加瀬
委員の御質問ございました「船長が死亡したとき、船舶を去ったとき、又はこれを指揮することができない場合において他人を選任しないときは、航海に従事する海員は、その職掌の順位に従って船長の職務を行なう。」と書いてあるわけでございますが、いまの場合には、明原丸の船長は在船して……
-
○加瀬完君 明原丸ではなくて、船員法でいう免責はどういう
内容か。——商法はわかりました。そこで船員法によって「船長カ已ムコトヲ得サル事由」ということで責任を免れるという
状態は、どういう
状態でありますか。私の聞いているところによると、船長が死亡したとか、こういう特殊の場合だというふうに限定されていると伺っておりますが、そうではございませんか。
-
○
政府委員(別府正夫君) ただいま加瀬
委員御質問の「己ムコトヲ得サル」云々というのは、ただいま私申し上げかけた二十条の場合ではなくて、ほかのところを御
指摘でございましょうか、申しわけございませんが、お教えいただけましたら……。
-
○加瀬完君 私もそんな
法律専門家じゃないから、詳しいことはわかりませんが、船員法による船長の免責というのは非常に厳格に規定されておって、商法七百七条に当たる
内容は、死亡等の場合以外は認められておらないというように聞いたんでありますが、そうではございませんか。
-
○
政府委員(別府正夫君) ただいまの御質問の規定を、たとえば船員法の十一条の在船
義務というふうに考えますれば、在船
義務として、「船長は、やむを得ない場合を除いて、自己に代わって船舶を指揮すべき者にその職務を委任した後でなければ、」——あとのほうは省略いたしますが、「船舶を去ってはならない」ということでございますので、たとえば船舶を去る場合には、いま申し上げましたように、「その職務を委任した後でなければ」——「やむを得ない場合を除いて」、「委任した後でなければ」という二重のかかりがかかっているわけでございまして、したがって、この場合には、船舶に在船しているわけでございますから、やむを得ない場合云々というような、たとえば十一条の規定が適用になるという場合ではないというふうに考えております。
-
○加瀬完君 船長の免責規定は、明原丸の場合は認められないと解してよろしゅうございますね。
-
○
政府委員(別府正夫君) 船長の免責規定が認められないと言われたのは、この場合、商法の免責規定なのか……
-
○加瀬完君 この場合は商法……。
-
○
政府委員(別府正夫君) ただいまお答えいたしました、船員法の十一条の在船
義務のような、公法上の
義務の場合と、それから先ほど先生お読みいただきました商法の七百五条、七百六条あるいは七百七条というような民事法上の規定の場合に、解釈を同一にしなければならないということは必ずしもないというふうに考えます。
-
○加瀬完君 そうすると、しばらく商法はおきましょう。
で、船員法の場合は、船長は就寝をしたまま、その任務を他にまかせると、こういう
状態は許されておりませんね、これは。どうでしょう。
-
○
政府委員(別府正夫君) お答え申し上げます。
就寝をしたまま任務を他の者にまかせるというようなことではなくて、現在問題になっておりますのは、先ほ
ども申し上げましたように、船長も就寝しなければならないわけでございますから、就寝中の船長の職務が、船内のいわば内規的なもの、あるいは慣例に従って、一等航海士あるいは当直の三等機関士にまかせられているという
状態があるということは当然考えられるのじゃなかろうかというふうに思っております。
-
○加瀬完君 この船員法の規定の中に、乗客の乗りおり、あるいは荷物の積みおろし、こういう場合に、船長の監督の責任がきめられておりますね。給油というのも、油のこれは荷積みですね。こういう油の荷積みのときに、船長が寝たきりで他の者に責任を転嫁していいという解釈が成り立つかどうか。
-
○
政府委員(別府正夫君) お答え申し上げます。
加瀬
委員御
指摘の、長年が荷物の陸揚げ、乗客の乗りおりのときに責任があると言われましたのは、いま急いで見たわけでございますが、船員法の、たとえば十一条の在船
義務のところには明確に書いてございますが、それ以外に船長が個々別々の、いわば具体的な、上陸、積み荷の揚げおろしというようなものについて、直接いわば責任を有するということが明確に規定してあるというところはないのではなかろうかというように思います。もし私の間違いでございましたら、御
指摘いただきたいと思います。
-
○加瀬完君 これは海上保安庁に伺いますが、燃料の荷積みなんかの場合、通例、船長は他の者に荷積みの監督を委任をして、明原丸の場合のように就寝してしまっていいという慣例で船が
運営をされておりましょうか。これは
法律問題でなくて、事実
関係。
-
○
政府委員(野村一彦君) 船長は、もちろん一船の責任者でございますから、船の運航、安全
管理、荷役、全般にわたって責任を有するわけでございますが、現実の問題といたしましては、船のいわゆるオフィサー、船舶職員にそれぞれの業務を分担さしておりまして、旅客の扱いとか、あるいは積み荷の扱いとか、そういうものについては、一等航海士が伝統的にそういう積み荷のいわゆる支店との連絡、代理店との連絡とか、そういう荷主との連絡とかいうようなことにつきましては、一等航海士が当たるというのが大部分の大型船の慣例でございます。
したがいまして、本件の場合のように、船長が必ず現場におって、そしてみずから指揮をするというようなことは、通例行なわれておりません。特に船員法におきましても、先ほど四部長が言われましたように、船長が船に在船をして、みずからその船舶を指揮しなければならない場合というのは書いてでございますが、それぞれの分掌によって部下の船舶職員に分掌させて対内的な業務をやらしておる。もちろん、そのことは船長が責任をとらないという意味ではなくて、その責任は、船長としての法的責任はとるわけでございますが、実際問題としては、それぞれの航海科とか機関科、あるいは航海科、機関科を通ずるその停泊当直あるいは航海当直の船舶職員に、実際問題として実務をゆだねているということが、普通の船舶の慣例であるというふうに理解をいたしております。
-
○加瀬完君 これは本質問題でありませんので簡単にしますが、少なくとも明原丸では、船長をワクの外に置いても、一等航海士がその任務を遂行しておったという
状態ではございませんね。
-
○
政府委員(野村一彦君) 先ほどの先生の御質問にまたお答えして、いまの御質問にもお答えすることになるわけですが、一等航海士も船長と同じく船内で就寝中であったということでございます。したがいまして、給油については、当直の士官である三等機関士がその実際上の責任者となって処理をしておったと、こういうことでございます。
-
○加瀬完君 それが妥当であるか妥当でないかは次に触れます。
オイルフェンスの展張の点について伺いますが、本改正案の主要目的に油防除剤の備えつけ
義務というものがあげられておりますね、こればだうですか。
-
-
○加瀬完君 油防除剤の
義務のうち、オイルフェンスはどういう地位にありますか。油防除剤の備えつけの
義務というのはきめられておりますけれ
ども、その場合、オイルフェンスというものはどう考えられておりますか。
-
○
政府委員(
原田昇左右君) 備えつけるべき資材の種類として、さしあたり考えられておりますのが、油の拡散を防止するためのオイルフェンス、油を乳化するための油処理剤、油を回収するための吸着剤などがございますが、今後技術開発の伸展に伴いまして、さらに有効な資材を追加してまいりたいと考えております。
-
○加瀬完君 ここではオイルフェンスだけを伺います。オイルフェンスの備えつけというものは、どう処置をされるように
指導をされておりますか。いままで
指導をされてきましたか。あるいは
指導をしておりますか。
-
○
政府委員(
原田昇左右君) オイルフェンスの備えつける量でございますが、たとえば船の長さの一・五倍ぐらいというようなことを考えております。これは今後省令できめるわけですが、これによって囲まれた油を防除するために必要な量の処理剤を
義務づけるというように考えております。
-
○加瀬完君 オイルフェンスというのは、船の長さ、船幅というんですか、船の幅、こういうものと当然
関係が出てまいりますね。船の長さ、船の幅、結局船の円周の一・五倍程度のものを備えつけろという
指導を行なっておることになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 現在
指導いたしておりますのは、船の船長の一・五倍ぐらいのものを備えつけるように
指導をいたしておるわけでございますが、
法律で今後備えつけの
義務がきまった場合にも、実際の
指導としては、いまやっておりますように、船長の一・五倍程度のものを備えつけるという現在のシステムを踏襲していくように
指導したいと思っております。
-
○加瀬完君 そうすると、完全なオイルフェンスの効果というものは船長の一・五倍あれば足りる、こういう前提ですか。
-
○
政府委員(
原田昇左右君) これは船舶及び施設の設置者等に
義務づけるわけでございますので、船舶については非常に場所も限られておることでございますので、一・五倍程度のものを備えさせるわけでございますが、陸上においては、またいろいろケースによって考えがあろうかと思います。それからさらに、そのほか
運輸省令で指定する場所に備えつけることもございますので、こういった船にあるものあるいは陸にあるもの等を応急の場合に総合的に活用する、こういうふうに考えていきたいと思います。
-
○加瀬完君 私がお答えをいただきたいのは、船の、たとえば、シーバース等におけるオイルフェンスの備えつけの場合だけでけっこうです。それを伺っております。
それと、このオイルフェンスの備えつけの
義務というものは船舶
管理者にあるのですか、それとも係留施設者にありますか、あるいは油保管施設の
管理者にありますか。そうしてシーバースのような場合、一・五倍ということでよろしい、こういうことで、
一つの基準というものをこれから
指導をしようとなさっていらっしゃいますか、それらの点について、お答えをいただきます。
-
○
政府委員(
原田昇左右君) 三十九条の二で対象となります設置者は、
運輸省令で定める船舶の所有者、それから船舶から陸揚げし、または船舶に積載する油で
運輸省令で定める量以上のものを保管することができる設置者、それから第三は、
運輸省令で定める船舶を係留することができる係留施設の
管理者ということになっております。
-
○加瀬完君 そうすると、扇島シーバースで給油作業中の明原丸、こういうことに限定をしますと、明原丸の流出油に対してオイルフェンスが張られたわけでございますが、この場合のオイルフェンスの
義務者はだれとだれになりますか。
-
○
政府委員(
原田昇左右君) ただいま申し上げましたのは、現在御提案申し上げておる
法律でございますので、先ほどの明原丸の例の具体的なケースにつきましては、海上保安庁のほうからお答えさしていただきます。
-
○加瀬完君 もう一回申しますよ。これからはっきりと
法律化されるオイルフェンスというのは、非常な重要な
義務になりますね。明原丸の場合、オイルフェンスというものは明原丸が
義務づけられておるのか、それともシーバースの施設の
管理者が
義務づけられておるのか、どういうようにあの場合は考えてよろしいのか、こういうことです。
-
○
政府委員(野村一彦君)
法律上の
義務といたしましては、明原丸のあの
事件が起こった場合には、施設の
管理者も、船もこのオイルフェンス等を備えつけなければならない
義務はございません。この
法律が成立いたしますれば、油の保管施設の設置者も係留施設の
管理者も、船舶の所有者も、
命令の定めるところによってオイルフェンス及び油処理剤を持つ
義務が生じてくる、こういうことでございます。
-
○加瀬完君 だからといって、明原丸の場合、オイルフェンスの備えつけの
義務がないからといって、流出油に対する責任がなかったということにはなりませんね。
あのころのあの場合、オイルフェンスというのは、任意に使われておったわけですか。ただシーバースの施設者なり、船の所有者なりが、善意をもってただオイルフェンスを用意しておったということにしかすぎないのですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 海上保安庁及び
運輸省の行政
指導でもって、その船舶所有者、それから油の施設の
管理者、係留施設の
管理者等に、できるだけ備えるように行政
指導をしておったということでございます。
-
○加瀬完君 行政
指導は行なわれておったんですね。その行政
指導の
内容は、やはり船長の一・五倍程度という
一つの基準が
指導されておったんですか、おらなかったんですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) その当時は、船長の一倍ないし一・五倍ということで、できるだけ一・五倍を持つべきだという
指導はいたしておりましたけれ
ども、中には船長もいろいろのものもあったと思います。一倍ないし一・五倍というふうに船舶使用者に対しては
指導をいたしております。
-
○加瀬完君 そこで明原丸の場合、このオイルフェンスはどう展張されたと推定をしておりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 先ほど申し上げましたように、船首に百五十メートル、船尾に二百メートルということで、その船尾と船首の中間部分については展張されていなかったわけでございます。
-
○加瀬完君 いずれにしても、明原丸の船長の一ないし一・五倍というものが行政
指導されておったわけでありますが、明原丸の船長は何メートルですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 三百二メーターであります。
-
○加瀬完君 船長の一・五倍では船を一周するわけにはいかないわけですね、オイルフェンスは、船長というと片側になるでしょう。それでいいですか、オイルフェンスの基準は。
-
○
政府委員(
原田昇左右君) この
法律によります省令で規定いたしますものは、船舶及び各施設から排出事故のうち発生する可能性が最も高いと考えられるものに対処するだけの量を考えておりまして、一応船舶については目下のところ一・五倍ぐらいで考えるとともに、陸揚げ施設、つまりシーバースにつきましては、船を全体ぐっと囲むと、一・五倍では全体を囲むわけにいきません。片側だけでございます。全体を囲むようなものを考えていきたいと考えます。
-
○加瀬完君 そうすると、明原丸の場合、扇島シーバースに備えつけられておりましたオイルフェンスの長さは何メートルですか。——時間がたちますから私のほうから言いますよ。扇島シーバースに備えつけられておりましたオイルフェンスは五百メートルですね。ところが明原丸は、さっき言ったように三百二メートル、幅が五十メートル。七百メートルなければ囲めませんね。そういう不完全なものであったということは、海上保安庁お認めになりますか。もう計算出ましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 船に備えるオイルフェンスの長さにつきましては、先ほどから申し上げますように、できるだけ、接岸をして、荷役等をやっている場合には、その係留施設、これは十分その船をカバーできるような長さのものが望ましい。それから応急の措置としては、これはもしタンクが全部破れてどんどん油が出るというような場合になれば、これはもうたいへんなことでございますが、一部のタンクが破損をする、あるいはあふれ出るというような場合は、必ずしも全長である必要はないというようなことから、先ほど申しましたような一倍ないし一・五倍という
指導をしておったわけでございます。
明原丸の場合は、これは処理の方法というものが必ずしも適当でなかったということでございますが、油が流れ出た場所に対して有効な張り方をすれば、当時明原丸が持っておったオイルフェンスでも、もちろん波風によって上を越えたとかくぐったとかということはあり得ることでしょうけれ
ども、その広がりとしては措置よろしきを得ればこなせたと思います。いずれにせよ、この明原丸の問題の起こりました当時はそういうことで、船自身もオイルフェンスを持っておったわけでございますけれ
ども、三百八十ほどのオイルフェンスを持っておったわけでございますが、これは大体船長の一・〇倍というものでございます。結果的には、これは十分効用しなかった、こういうことでございます。
-
○加瀬完君 さっき審
議官ですか、結局ああいうシーバースみたいなところでは全周といいますか、船を一回りできるようなオイルフェンスの準備が必要だ——そのとおりだと思うのです。オイルフェンスが余って油が出るということはありませんけれ
ども、足りなければ油の流出の危険が生ずるわけですから、これは一・〇とか一・五倍ということじゃなくて特に油の荷積みというような
状態が出現するところでは、オイルフェンスというものをもっと大幅に考えなければいけないと思います。
そこで、少くも明原丸の場合は、完全にオイルフェンスが張られてはおらなかったということはお認めになりますね。海上保安庁の
調査の結果でも、あなた方が
指導しておったとおりにシーバースなり、あるいは明原丸なりが、オイルフェンスというものの準備をしておらなかった、そのオイルフェンスの使い方いかんの前に、準備がなかったということはお認めになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 先ほど申し上げましたように、行政
指導として一倍ないし一・五倍、施設は別といたしまして船は一倍ないし一・五倍のオイルフェンスを持つように
指導しておりまして、この場合三百メートルの船長の船に対しまして、三百八十メートルですかのオイルフェンスを持っておったわけですから、長さとしては、私
どもの
指導以下ではなかった。ただ、まあその張り方の問題については問題はございます、そういう張り方の問題というよりは、これはやはりオイルフェンスよりも、その油の補給の操作の問題自身が、一番問題であったのではなかろうかというふうに考えます。
-
○加瀬完君 これはどういうふうに油が流れたかということが究明されなければ、オイルフェンスが責任か、油の運び方が責任かということは不明瞭ですけれ
どもね。少なくもオイルフェンスは張ったのですね。張って「たまかぜ」が行って、もう一回あいているところを張り足したわけですね。そのときにはすでに油が流れておった、こういうことになると、オイルフェンスの展張が完全であったということは認められませんね。オイルフェンスが張ってあっても油の流出というのは当然行なわれたわけですから、これはお認めになりましょう。
-
○
政府委員(野村一彦君) オイルフェンスは張ってございましたけれ
ども、いま申し上げましたように、船のほうから流れ出た油を有効にとめ得なかったということで、結果的には張り方がまずかったと申しますか、操作がまずかったと申しますか、そういうことだと思います。
-
○加瀬完君 それでオイルフェンスの末端、縛着部といいますか、これがどうなっていたと推定されますか。さっきも、長官の御説明では張り方がまずかったということを言われておった。張り方というのはどこがまずかったのですか。縛着部じゃないのですか。この点はどうですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) これもその当時の端末が、片一方の接岸ドルフィンから、特に船尾部二百メートルを張っているオイルフェンスの端末が、どこのところまでどういう
状態で届いておったかということにつきましては、私
どもの
調査でも、三者三様、場所がかなり違いまして、かりにA点、B点、C点としますと、三人の、これは記憶でございますが、端末がどこであったか、それがどのような
状態であったかということは、必ずしもはっきりいたしておりません。いずれにしろ、その端末はあるところにいって、こう切れておったわけですから、それから先は外の、一般に流れている海水部面と船の船体との間があいておったということでございます。
-
○加瀬完君 そこで、おたくのほうの
調査では、油が流れて甲板に出て、どういう形で海に流出したということになっていますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 右舷の一番タンクのマンホールから油が流れまして、そしてじょうご型といいますか、マンホールから外のほうに広がって、大体十メーターぐらいの幅に広がって、そこからブルワークと申しますか、船の手すりを越えて下に落ちたというふうに、大体私
ども考えております。
-
○加瀬完君 それから海に流れていく間には、オイルフェンスは張られておらなかったんですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) そこのところが、いま申し上げましたように、三者三様の話でございますので、オイルフェンスの端末が一番長いところまでいっておったという記憶の人は、何といいますか、油が下にたれておるところの、その外側までオイルフェンスの端末がいっておったという人もありますし、もっと手前のほうで切れておったという人もありまして、その辺ははっきりいたしておりません。
-
○加瀬完君 少なくとも、オイルフェンスが操作されたところを越えて油が流れ出したという推定はお認めになりますね。オイルフェンスが完全に張られていたか、あるいはオイルフェンスの縛着部であったかという見方はありましても、一応張られようとしたオイルフェンスの向こう側に油が流れ出したということはお認めになるんでしょう。
-
○
政府委員(野村一彦君) それはオイルフェンスの端末の先については油といいますか、海水そのものをせきとめる有効な手段がございませんでしたので、油がそこから先は、風、波によって流れたということはあり得るだろうと思います。
-
○加瀬完君 そこで、そのオイルフェンスが完全に張られておったかと、あるいはオイルフェンスを越えたのか。オイルフェンスの縛着部から流れ出したのか、それともそのすき間から流れ出したのかという、いろいろな見方があるというお話でございますが、燃料油搭載は、燃料油が多いのと長時間のため、機関部員が交代で行なったということですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 機関部員が交代ということでございませんで、先生の御質問は、立ち会った本船の、明原丸の機関部員はどうであったかという御質問だろうと思いますが、それば全時間にわたって立ち会っておったのは三等機関士の平川さんという人でございます。初めのほうは、その三等機関士の指揮下にあります操機長の、これも同じ名前ですが、平川さんという人が両方立ち会っておったわけでございます。ただその間、操機長のほうの平川さんは一日の午前二時ごろに、もう寝てよろしいということであって、その人は、その給油の持を場を離れて、自分の部屋へ帰って寝ておるようですから、それから先は三等機関士のほうの平川さんが一人でおったということでございます。
-
○加瀬完君 三十日の二十四時から一日の二時ごろまでが平川三等機関士の予定であった。ところが風浪が強かったりしたために、一時中止をしたり何かして若干延びた。平川三等機関士の監視をした時間はそういうことではありませんか。
そうすると、それ以後、四時ごろまで平川三等機関士は監視の役をしたとしても、三十日の二十四時前にも油の荷積みはあったのですね。そのときには平川さんではないわけですね。で、燃料油の搭載が、燃料油が多いため長時間かかったので機関部員が交代をしたと、こういうようにも聞いておるわけですが、そうすると何人もの者がやったわけですね。だれが何時から何時まで、だれが何時から何時までという明細はおわかりになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) いま申し上げましたように、三等機関士の平川さんと、操機長の平川さんの二人が、給油に全時間にわたって立会をしたわけですが、操機長の平川さんのほうは、一日の午前二時から先は就寝をしたということで、つまり三十日の九時三十分ごろからずっと両平川さんで立ち会いをしておった。その間三等機関士の平川さんのほうは当直士官でもありますので、機関室の当直停泊の
関係で、八時から十二時までの間そちらのほうに行っておった。だからそのときは操機長の平川さん一人で立ち会いをしておったようでありますが、その後またもとに戻ってきて両平川さんで立ち会いをして、そうして一日の午前二時から操機長の平川さんのほうが就寝をしたと、こういうように把握いたしております。
-
○加瀬完君 平川三等機関士は、三十日二十四時から
勤務をしたと言っていますね、そうじゃありませんか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 私
どもの把握したところでは、平川三等機関士は、十一月三十日の朝の九時半、つまり給油の開始のときからこれに立ち会っておる。ただし途中で、いま申し上げましたように、停泊当直に当たっておりましたので、停泊当直の任務も兼ねて、そのときには機関室のほうに行ったりして、またこちらにも帰ってきたということで、もっぱら給油に立ち会った時間は、この停泊当直の時間、十二時までの時間を除きまして平川操機長が眠ったあとも立ち会っておったというふうに、私
どもは把握しております。
-
○加瀬完君 そうすると、六千トン以上の給油を朝の九時から翌日の四時三十分ごろまで平川三等機関士は立ち会ったということになりますよ。そんな
勤務がありますか。徹夜で三十日の朝の九時から翌日の十二月一日の朝の少なくも四時半まで、この給油
関係の監視に当たったということになりますね。そういうべらぼうな
命令を出したのは一体だれですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) この船内の服務につきましては、船員法の規定がありますし、それからおそらく船主と船員との間の
労働協約によって
勤務の時間の割り振りをされておると思います。したがいまして、この機関室の当直についても、この間にやったわけでございますが、これはこの間そういう
勤務であったという私
どもの推定でございまして、これは具体的に船長がそういう時間の
勤務を命じたのかどうか、これは私
どももわかりません。
-
○加瀬完君 油濁防止
管理者は一等航海士ですね。一等航海士は大体寝ていた。油濁防止の責任のある者が寝ておって、朝の九時から翌日の朝の四時まで三等機関士に
勤務をさせると、こういうことになりますと、油濁防止
管理者の責任は果たされたということになりますか、この点はどうですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) いまの点については、油濁防止
管理者の責任、これは私
どもいろいろ問題があると思いますが、現実の
勤務の形態として、私
どもの
調査では、平川三等機関士がこういう
勤務をしておったということでございまして、もちろん一等航海士であります三村さんという責任
管理者、これはずっと寝ておったわけではございませんと思います。それば船内にあって、そしていわゆる当直
勤務についていなかったので、たとえば夕食後寝るとか、あるいはその時間にはそこの現場に行かなかったというようなことだろうと思いますが、いずれにしろ
管理責任者としての責任はあるわけでございますが、現実の立ち会いは三等機関士と、いま言いました操機長と、この二人が立ち会ってやったと、こういうふうに把握しております。
-
○加瀬完君 把握はそれでいいんですよ、把握が間違っているとは言わない。もう一人の平川さんは一時間寝たわけです。三等機関士の平川さんは朝の九時から翌日の四時までは起きておったわけだ。そうすると、油濁防止
管理者という
制度をつくったことは、油濁防止をあくまでも船の
管理者に責任を持たせようという趣旨でしょう。その人が風浪が強くて、風速もあってオイルフェンスを張って作業をしなければならないという
状態の中で、二十四時間
勤務という話はありますか。朝の九時から翌日の四時まで一人の人に監視
勤務をさせるというような
命令を一等航海士が出したとすれば、その一等航海士そのものが油濁防止法の精神にはずれることにはならないか、しかも自分は油濁防止
管理者です。ということを聞いているんですよ。それは船員法の十条かによりますと、甲板上の指揮という規定がありますね、船長の。それから在船
義務という規定もありますね。これを見ますと、「船長は、船舶が港を出入するとき、船舶が狭い水路を通過するときその他船舶に危険の虞があるときは甲板にあって自ら船舶を指揮しなければならない。」とありますね。これは確かに十条そのものではありませんね。しかし油が漏れるということは、
一つの、他に危険を及ぼす、少なくも旧油濁防止法あるいはこの海洋汚染防止法に違反する行為ですね。だから船長としては、そういう油の流出するという危険に対して責任がないとはいわれない。なぜかならば風浪も風速も強いというときですから。
しかし「船長は、やむを得ない場合を除いて、自己に代わって船舶を指揮すべき者にその職務を委任した後でなければ、荷物の船積及び旅客の乗込の時から荷物の陸揚及び旅客の上陸の時まで、自己の指揮する船舶を去ってはならない。」——「去つてはならない」ということは、船の中におれば寝ておってもいいということではなくて、任務を遂行しなければならないと、これは船員法からは当然解釈すべきことだと思うんです。明原丸の場合は、船長は寝ておったという、それからだれに委任をしたか、委任された一等航海士も任務にはついておらないということははっきりしている。そうすると、船に残って実質的に油濁
管理の責任をとった者はだれかということになると、正式には油濁責任者として任命された者は一人もいないということになる、こういう
状態であったことはお認めになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 先生の御質問、最初に言及されましたことにお答えしておきたいと思いますが、船長の在船
義務、それから甲板上の指揮ということは、先生がおっしゃったとおりでございますし、先ほど法政局の第四部長から答えられたことでございますが、それはつまり船長は、たとえばこれこれの場合には甲板上にあって船を指揮しなければならないという
義務でございまして、それ以外は甲板上にあって船を指揮しなくてもいいということですが、しかしもし事故があったときに、船長が船の操船について責任を免れるという意味ではないというふうに、私
どもも了解いたしております。
したがいまして、この場合に船長とか、あるいは一等航海士が内規によりまして就寝をしておったということでもって、油が船から漏れたということの責任を免れるものではない、現実にはだれがその当直をしておろうと、船内の職務の分掌によりまして、燃料の補給ということは機関科の仕事でございます。したがいまして、現実の問題としては、当直の割り振りによって三等機関士が業務に当たったと思いますが、それで手落ちがあって、外部の人に迷惑をかけた、あるいは違法な行為があったという場合に、船長は自分は就寝しておったから、あるいは一等航海士は自分は就寝しておったから、おれは仕事をしていなかったんだと、したがって責任はないということの意味ではないというふうに、私
どもは考えております。
-
○加瀬完君 その点よくわかりました。
在船して油濁
管理に当たっていた者は、結局その九時から翌日の四時までの間では、平川三等機関士だけということになりますね。そうお認めになりますか。他の平川さんというのがおりましたけれ
ども、これは一時から就寝したということになると、九時から実際油が流れ出した四時半なり四時なり、この間に責任者としておりましたのは三等機関士だけ、こう認めてよろしゅうございますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) いまの先生の御質問に対して別のお答えをいたしますと、油が漏れたであろうと推定される時刻の前後に、現場におった者は平川三等機関士一人であろうというふうに考えられます。
-
○加瀬完君 で、その平川三等機関士は朝の九時から
勤務をしていたと、こういうことですね。
-
-
○加瀬完君 それでは実況をもう少し伺いますが、途中風が吹いてきたりして搭載を一時とめた、こういうことですね、
状況は。
-
○
政府委員(野村一彦君) 十一月三十日の午後五時ごろ気象
状況の悪化によって打ち切って、それから二時間ほどたって午後七時ごろからまた再開をしたと、こういうことでございます。
-
○加瀬完君 ということは、途中風が吹いて、すなわち燃料搭載に支障があるほどの風が吹いたので一時給油を休んだ、こう考えてよろしゅうございますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) 給油船側から、気象
状況の悪化を
理由に一時作業の中止の申し出があったので、もっともなことだと判断をして、この作業を一時やめたと、こういうことでございます。
-
○加瀬完君 ですから給油をするには気象条件の変化があってまずいということで、すなわち給油を平常のとおりに行なうには、一条件の悪い風浪というものが生じたと見て休んだ、こういうことでしょう。
-
○
政府委員(野村一彦君) まあ大体そうであると思います。
-
○加瀬完君 だから言いかえれば、休まなきゃならないほどの風が吹いたということですね。
そこで搭載したタンクは三番タンク両舷、予備タンク両舷、最後は一番タンク両舷、こういうことですね。
-
○
政府委員(野村一彦君) 大体そのとおりでございます。
-
○加瀬完君 一番タンクの容量は三千トン、この三千トンに積み荷をした場合、積み荷量は確実に計測をしたわけですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) この積み荷の量が実はいろいろ問題でございまして、これは計測はやっております。ただしそのときの温度とか、いろいろあれが違いますので、精密にどういう量であるかということはなかなかむずかしいと思いますが、大体、タンクの容量については、各タンクとも、私
どものほうで
調査をして、これはもうよくわかっております。
-
○加瀬完君 それで、ときどきタンクの積み荷量をはかりまして、午前三時三十分ごろ搭載タンクの油の量を計測したところが、搭載予定量にだいぶ達していないと、こういう判断をして、おかしいと気がついたと聞いておりますが、そうですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 三等機関士の平川さんが、何といいますか、サウンディングバイプによって見たところ、まだ余裕がかなりあるというふうに判断をした、そして給油船のほうは何をしているんだということで督促をした、もっと早く全部入れろというふうな督促をしたというふうに、私
どもば承知いたしております。
-
○加瀬完君 だいぶ達していなかったというのは、計測したそうですが、どのくらい達していなかったと計測したんですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) それが、いろいろ正確な数字はなかなかわかりませんが、これはサウンディングバイブを入れて、何といいますか、気圧の
関係ではかるバイプに油が上がってくる、その上がり方がおそいと。もうこの辺で満ぱいになるはずだ、ところが見てみるとまだ余裕がある、おかしいじゃないかというふうに感じたということでございまして、その量がどのくらいかちょっと私
どもはわかりません。
-
○加瀬完君 そこで、しかしそういう
状態で、三等機関士は、これは送油をやめたのではないかというので、パージーに行ったんですね——と聞いておりますが、それで確かめましたら、油を送っているという答えで、もう一回引っ返してきて
状態を点検したと、こういうことですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) まだだいぶ余裕があるんじゃないか、おかしいと思って、その給油船のところに桟橋を伝って行った、そして現場に聞いてみたら、いや現場はちゃんと送っているということで、またもとに戻ってきたというふうに承知しております。
-
○加瀬完君 本船から油バージーの往復は何分ぐらいかかりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 大体百五十メーターぐらいだと思いますから、そんなに分数はかからないと思います。
-
○加瀬完君 話をして往復すると、十分ぐらいと考えてよろしゅうございますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) その辺がちょっと……。ただ普通に成年の男子の足でああいうところは、歩けばもう十分もかからないんじゃないかと思いますが、現実にどのくらいその場所を離れておったか、これはちょっとわかりません。
-
○加瀬完君 平川三等機関士は、往復何分くらいとおっしゃっておりませんか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 平川さんの記憶もこれはあんまりはっきりしないようですが、やっぱり十分もかかっていないような感触ではなかったかと思います。
-
○加瀬完君 油バージーの油の輸送力は、一分間どのくらいですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 三百五十トン程度であると承知しております。
-
○加瀬完君 そこで先ほど御説明の、一番タンクの右舷の出入り口より油が流れ出し甲板に出てきたのをその後発見したということですが、油の流出時間はどのくらいというように見ておられますか。
すなわち平川三等機関士が計測をして、だいぶ足りないからこれはバージーから油を送ってないじゃないかといって確かめた。そして帰ってきたら、いま言った、一番タンクの右舷のほうから油が流れ出していたと、こういうことですが、大体この間、油はどのくらいの時間流れ出したという御
調査ですか。御
調査ではおわかりになりましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 正確な時間はちょっといまわかりません。
-
○加瀬完君 港湾
局長に伺いますがね——これは長官ですかね、油の積み荷は、ほかのシーバース等では夜間に行なわれておりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 夜間に行なわれております。
-
○加瀬完君 千葉海区では、危険があるというので、夜間は禁じていますね。川崎では、いつでも平常、夜間に行なわれておったわけですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) これは荷役をいつやるかという問題であると思います、船側から見れば、あるいは給油側から見れば。私
どもは、一般的に、危険の防止ということで、荷役はもちろん航行中もいろいろやっておりますけれ
ども、特に給油か夜間にやってはいけないということを当時はいっていなかったわけでございますが、ただ、危険の防止のためにいろいろの点を配慮してやれということで、夜間にやることは好ましくないということはあるわけでございますけれ
ども、当時、夜間にやっていけないという、これはもう荷役の禁止というものは私
どもが
命令すべきものではございませんので、これは
会社の良識にまかせてやっておったという
状態であると思います。
-
○加瀬完君 それで給油責任者というのがあるわけですね。給油責任者というものは、こういう場合、立ち会わなくてもいいんですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) その問題は荷役の問題でございますので、私わかりません。給油の責任者が立ち会うかどうか、これは給油業者の側の問題ではなかろうかと思います。船側は、さっき申し上げましたような態勢でございます。
-
○加瀬完君 油の流出というのは、油の供給源があって、そしてこちらにその需要する受け入れ側の船があって、その途中で流れるか、船からいまのようにあふれるか、あるいは船が捨てるか、いろいろの
原因もありますが、油そのものについては、受け入れる船とそれから給油するほうの側と、当然これは責任があるわけですね。今度でも、給油する側の計算と、船のほうの計算と、油の量が一致しておらない。油濁防止という立場から考えれば、幾ら油を送ったかという、給油責任者の送った油の量というのが明確になったほうがよろしいではありませんか。
-
○
政府委員(野村一彦君) その点につきましては、積み荷役協定書というもので、供給者側とそれからその油を受ける船
会社との間で、それに基づいていろいろと、いわゆる商的なことばで言いますと、取引、売買、油の補給が行なわれているわけですから、当然、それに基づいてやられるという
一つの商行為として、その売り手と買い手の間でそういう確認がなされるはずだと思います。
-
○
委員長(
長田裕二君) 加瀬
委員に申し上げますが、前回に引き続くきょうの御質問で、相当時間も経過いたしましたので、そろそろ結論に近づいていただきたいと思います。
-
○加瀬完君 冗談じゃないよ。
-
-
○加瀬完君 私は、さっきちゃんと念を押した。これだけの点を聞きますと念を押した。まだ
一つも、半分も進んでいないんですよ。そんなに質問の制限するなら、やめますよ。——やめましょう、じゃ。あとは理事会で相談してください。
-
○
委員長(
長田裕二君) 近づいていただきたいと要望したわけです、要望です。
-
○加瀬完君 そんなら理事を通してやってくださいよ。そんなことを言うならやめますよ。やめましょうや。——理事会やってくださいよ。理事会やってくださいよ。理事会やるまでやめます。(「
委員長が要望するのはいいでしょう」と呼ぶ者あり)要望するのはけっこうですよ。そんなことは理事に言うべきだよ。理事呼んでやってくださいよ。(「理事がいないよ」と呼ぶ者あり)いるいないは私の責任じゃないよ。(「理事どこへ行っているかおわかりでしょう。」と呼ぶ者あり)
-
○
委員長(
長田裕二君) いや、私知らないんですよ。(「要望だからなるべく結論を急いでくださいよ。」と呼ぶ者あり)
-
○加瀬完君 それはやめろというような要望では受けられませんよ。
-
○
委員長(
長田裕二君) 結論に近づいていただきたいと要望したわけです。
-
○加瀬完君 近づいていますよ、だんだん。(「じゃやってください。」と呼ぶ者あり)
-
○加瀬完君 理事とよく打ち合わせてください。理事はきょう一日十分やってもいいということだから、私はやっているんだから。理事どこへ行った。
-
-
○加瀬完君 港湾
局長に伺いますが、オイルフェンスの備蓄
義務というのは今度はっきりしているわけでしょう。どうですか、これは。度の
法律ではこれははっきりしたわけですね。
そこで波の高さ、風の強さ、こういうものについてオイルフェンスはどうあるべきだという規定はないですか。
-
-
○加瀬完君 それでは、いままでのオイルフェンスの役に立たなかったことを何べんも繰り返すことと同じじゃないですか。オイルフェンスというものは、波の高さや風の強さというものに無制限に強いものじゃないですよ。したがって、こういう場合はどういうふうに張れとか、こういう場合はオイルフェンスはこうしなければならないとかという微細な
指導がなければオイルフェンスによって油濁防除ができるという条件が整いませんね。この点はどうですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) オイルフェンスの現状でございますが、大体円筒形の浮体にスカートをつけたもの、それからびょうぶ式のもの、円筒とびょうぶを併列したもの、こういう三つに分けまして分類するとございます。海上保安庁では大体浮体の径三十センチないし六十センチ以上のものを使ってありますので、今後こういうふうなものを使うように
指導したい。特にこういいました材質、それから規格等が区々でございますと、なかなかジョイント等がうまくいかないということで、いま申し上げましたようなものを使うように、これはこういう仕様とか、材質というものをこれは法令できめるわけではございませんが、
指導するということに、私
どももこれは
運輸省のやられるべきことでございますけれ
ども、その
指導を受けてやりたいと思っております。
-
○加瀬完君 波高が二メートル、それから風速は十メーターから十五メーター、潮流は二ノット、大体その程度を考えているんじゃないですか、一応行政
指導の基準として、オイルフェンスは。
-
○
政府委員(野村一彦君) 大体浮体の径が三十センチ以上のものでありますと、二十五センチ以上が水上に出ます。そして、その生地がネオプレーンまたはビニール帆布というものでありますと、大体十メートルぐらいの風に耐え得るものではなかろうかと、こういうふうに考えます。
-
○加瀬完君 そうすると、この間のような明原丸のような場合オイルフェンスの効果というのがなかなか期待できないわけですね。期待できなかった、事実において。だから新しいオイルフェンスというものについては、よっぽど厳格に基準をきめて施行するのでなかったら、オイルフェンスを持っていますというだけでは、油による汚染というものはあとを断たないと思うのですよ。これは意見でありますからやめますが、この程度のオイルフェンスではちょっと風が吹けば役に立たない、こういう意見が非常に強いんですけどね、一般には。これはどうお考えになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) いま申し上げましたように、オイルフェンスというものは、ある程度の改良というものが毎年行なわれておりますけれ
ども、やはりその風浪の
状態によって上を越えたり、下をくぐったりすることがございますので、常にオイルフェンスというものはそれで万全だということにはならないと思います。もちろん、その材質とか、構造等の仕様の改良については、これはもう絶えずくふうを加えなければならないが、オイルフェンスがあるから万全だということではございません。
-
○加瀬完君 明原丸の場合、オイルフェンスを越えてどうなったかという明確な説明が先ほどでは見られなかったわけですけどね。というのは、オイルフェンスというのは今度の
法律で
一つの大きな要件になってますから、そこで、オイルフェンスを張って、張ったオイルフェンスの上を越えたということであれば、オイルフェンスがいままでのオイルフェンスで油濁の防止になるかどうかという新しい問題が出てくる。いやオイルフェンスは効果があったんだと、オイルフェンスのないところで油が流れ出したんだというなら話がまた別だ。そこで、その辺をもう一回詳しく説明してくれませんか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 先ほど申し上げましたように、オイルフェンスの端末がどういう
状態になっておったかということについては、三者三様の話でございまして、正確な
状態はわかりません。したがいまして、種々の
状況からして油がオイルフェンスの外に流れたということは考えられるわけでございますが、それがオイルフェンスを越えたのか、あるいはオイルフェンスの端末の届かないところから流れたのか、その辺についてはわからないわけでございますが、いずれにしろ、この
事件が起こりましてもう一年半になるわけでございまして、私
どもは、これも
一つの教訓になりますが、ほかにもいろいろな教訓を経て、現場官庁として
運輸省の本省のほうに、先ほど申し上げましたようなオイルフェンスの規格の統一、それから設計とか仕様の
改善について、いろいろ要望もしておりますので、オイルフェンスはオイルフェンスとして絶えず改良をして、そしてなるべく効果があるものを官民ともに持つようにしなければならぬというふうに思っています。
それから本件の場合については、それがオイルフェンスのないところからいったのかどうか、その辺は非常に微妙な問題でございますが、現実の問題として、はっきりわかりません。
-
○加瀬完君 あなた方は調べたでしょう、平川三等機関士を。この場合の明原丸の最後の給油責任者ですか、監視しておった三等機関士に対して。その平川さんは、油がどう出たと陳述をしているんですよ。一番タンクの右側から油が流れ出して、甲板を越えて出たと言う。そこまで見たものなら、どういう形で外側へ出たかということを証言もされるはずだし、また一番正しい証言が平川三等機関士によって得られるはずだ。その平川三等機関士は何と言っているんですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) これは平川三等機関士だけの証言からは全貌が必ずしも正確にわからないわけでございます。それで、その給油をする側におりましたその施設の
管理者Aという人、それから実際にまたその現場に立ち会ったBという人、それから別のCという人、こういう人の話を聞きましても、先ほどから再三申し上げておりますように、オイルフェンスのあり方、つまり端末がどこまでいっておったかということは三者三様の話でありまして、どれが一番正確であるかということはわからないわけです。したがって、そのマンホールから油が流れて十メートルぐらいじょうご型になって、ここからこう油が下にたれたということまではわかっておりますが、そのたれたのとオイルフェンスとの
関係がどうなっておるかということは三者三様の話でございますし、したがって現実にどういうふうな
状態で油がそのオイルフェンスの外に出たのかということは、実はわかっておりません。
-
○加瀬完君 それでは、流れ出した油が二・七トンであるという証言をしているようでありますが、二・七トンという根拠は、どういうところにあると明原丸側はおっしゃっているんですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 流れ出た油についても、実は正確なトン数はわかっておりません。二・七トンという数字も新聞等に出ておりましたし、一昨年ですか、先生が当時の保安庁の須賀次長にいろいろと問いただされました数字を見ましても、二・七トンという数字が出ております。そのほかに二・五トンとか約二
キロとか——約二トンでございますが、そういう数字が出ておりますけれ
ども、二・七トンの出所というものは私
どもはっきりいたしておりません。
-
○加瀬完君 そうすると、流出がはっきりしなかったというのはどういう
理由ですか。いろいろあなた方は調書をとった。取り調べをした。いまAとかBとか言った。しかしながら、AとかBとかというものはどういう人ですか。平川三等機関士は朝の九時から翌日の四時まで
勤務していたことはわかった。もう一人の平川さんは一時に寝たというのだからこれはいなかった。そうすると、甲板上に立ち会ったAとかBとかというのはどういう立場の、どういう職務を持った人ですか。しかも平川三等機関士の証言以外に、見たのは三等機関士ですから、三等機関士の証言をくつがえすだけの証言が、AなりBなりから、どういうことでくつがえし得る証言だという御認定をあなた方は与えたんですか。その間の
事情がわかりませんので、御説明をいただきます。
-
○
政府委員(野村一彦君) こういうことは申し上げられると思います。つまり三等機関士の説明、それから、その当時は就寝しておりましたけれ
ども、あとで起きて現場に来ております一等航海士の説明、それから、その作業に従事しておった人たちのいろいろの話、そういうものを総合しますと、先ほど申し上げましたように、船尾のマンホールから油が流れた。そして船のブルワークといいますか、あれをくぐって下に落ちたということはわかっております。そしてその油が、当時オイルフェンスが張ってあったその外側と申しますか、そこに何ほどか出たということはわかっておりますけれ
ども、出た量がオイルフェンスとの
関係によってどういう経路で出たのか。くぐったのか越えたのか、あるいはオイルフェンスのないところから直接外へいったのか、そういうことは、その流れた量も含めてはっきりわからないと、これは
関係者の記憶をたどってみてもはっきりいたしておりませんし、符合いたしませんので、とにかく何がしかの油がオイルフェンスの外に出たと、それは落ちてから、船からこぼれてどういう経路で出たかということはわかりませんし、その量もわからない。それはいろんな人の話が食い違っておるからと、こういうことでございまして、ありていに私
どもの把握したことを申し上げております。
-
○加瀬完君 三等機関士の平川さんは甲板から流れ出した油がどうして海の外に出たと説明していらっしゃるのですか。ほかの者がどうこう言ったのじゃない。平川さんが何と取り調べに対して答えたのか聞いているのです。
-
○
政府委員(野村一彦君) 平川さんの話は、要するに油がマンホールからあふれまして、そしてそれが船の舷側ですか、それを越えて外に流れ出たということを言っておるようでございます。
-
○加瀬完君 舷側から落ちたところにオイルフェンスが張ってありますね。オイルフェンスは越えたのか越えないのか、その点については何と答えていますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) これは前回も、先生が公害
委員会におきまして、当時の須賀次官に御質問になっている点を、私は速記録を何回も読んだわけでございますが、先生がごらんになっている書類は、舷側とオイルフェンスというものについて、何といいますか誤解があるのではないか。私
どもが了解しているのは、三等機関士の供述は、明原丸の本船の端を越えて下にこぼれたということを言っておるので、下に張ってあるオイルフェンスそのものを越えたというふうに平川三等機関士は言っておるわけではないわけです。ですから、ここからこぼれてどうなったかということは、先ほどから再三申し上げますように、張ってあるオイルフェンスの端末がちょうどこぼれ落ちた場所とどういう
関係にあったかということがはっきりいたしておりませんので、オイルフェンスとの
関係でどういう経路をたどって油が外に出たかということは実はわからない。外に出たということはわかります。しかし、どういう経路でどのくらいのトン数の油が出たかということはわからないということでございます。
-
○加瀬完君 いや、私は油の量は次に問題にしますからここで問題にいたしません。また、何か私がある書類によって錯覚を起こしているとのことですが、私は書類のことは聞いていませんよ。平川三等機関士が何と答えたか、答えたとおりのことをあなた方に係争中の問題に
関係ない限りにおいて答えていただきたい。
そこで一番タンクの右舷から出たか、それがどうして海に流れたかとおっしゃっていますかということを聞いているわけです。しかし、少し先に進みましょう。
そこで第三十八条には、「海洋施設その他の施設に関する事項」を油が排出した場合は、「直ちにもよりの海上保安庁の事務所に通報しなければならない。」とありますね。直ちに通報をしてはいませんね。これは明原丸の船長から
報告されたのじゃありませんね。一等航海士から
報告された。油の出た時間は、先ほ
どもおっしゃったように、平川さんが帰ってきたのは大体四時ごろですか、四時半ごろですか。それから六時五十分、この通報
関係で、少なくも油濁防止の責任というものを明原丸は果たしていたということになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) おっしゃるように、明原丸としての油を流したということ、しかも流した後の処置が適当でなかった、責任が大いにあるということで、私
どもはこれを刑事
事件として海洋汚染防止法違反で送致をしているわけでございまして、当然その明原丸の責任はあるというふうに考えます。
-
○加瀬完君 漁業
関係者は、明原丸側の調べられる者と、海上保安庁の調べる者との間に個人
関係が強くて、あれではほんとうの調書はとれない、こういう風評がもっぱらですよ。と申しますのは、明原丸の
事件で直接捜査または調書に当たった海保側の人と、調べられる側の者とを比べてみると、こういう疑問を被害者は持っている。明治海運は明原丸の
会社でありますね、その明治海運の吉田総務課長と明原丸の平見機関長、これを最初調べた人はだれですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) だれがだれを調べたか、ちょっとただいま
手元に
資料ございませんからわかりません。
-
○加瀬完君 時間の
関係で次に答えてもらえばいいですから、次の機会に。疑問点だけあげておきますから……。
三管の田村警備課長、海上保安庁の米沢静雄氏、この二人の方が調べておりますね。三管の田中本部長と明治海運の吉田総務課長は神戸商船の同窓でしょう。田村警備課長と田村氏とともに明原丸
事件の捜査に当たった米沢静雄氏、調べられる側の明原丸の平見機関長は清水の同窓でしょう。川崎海上保安署長の工藤友吉さん、警備救難部長の根本孝彦さん、救難課長の亀尾尚男さん、こういう方々はどういう立場でお働きになりましたか。海洋会というのがありますね。今回の取り調べで、同窓とか同期とか、海洋会のメンバーというものだけお互いに調べたり調べられたりしているんです。これでは公正な調べはできないと、こういう疑問が被害を受けた漁業
関係者にはあります。特に川崎海保と三管に対しましては、加害者の保護ばかりしておって被害者の救済や立場には非協力だ、すこぶる評判が悪いわけです。こういう
関係を次の機会に明瞭にしていただきます。
質問は先に進めますが、供述調書は司法警察官として海上保安官がとるということになりましょうね。
-
-
○加瀬完君 すると、その
内容や記載については司法警察官の責任が当然あると思いますが、よろしゅうございますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) 調書を、取り調べた司法警察職員が当然その責任をとるわけでございます。
-
○加瀬完君 そうすると、明原丸は海洋汚染防止法の三十九条の違反容疑というものはなかったのか、あるいはどう調べたのか、この点はどうですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 私
どもは、明原丸を調べまして、そして船長と、それから三等機関士と、それから
会社そのものと、これを法違反として検察庁に送致をしておるわけでございます。
-
○加瀬完君 三十九条はどうですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 当然三十九条違反を含むわけでございます。
-
○加瀬完君 それは三十九条の二項の「排出油の防除のため必要な措置」、これはとられなかったと認定をなさいますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 三十九条の2でございますか。
-
○加瀬完君 二項。
-
○
政府委員(野村一彦君) はい。三十九条の二項は、必要な措置が、十分とられなかったといいますか、措置をとるについて、十分な措置はとらなかったというふうに考えたわけでございます。
-
○加瀬完君 「前項に定める者が同項の規定による措置を講じた場合において、これらの者が講ずる措置のみによって確実に排出油の防除ができると認められるとき」と、あとのほうにありますが、こう解釈しましたか、解釈しませんか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 当庁司法警察職員の判断は三十九条の一項、つまり「防止並びに排出された油の除去のための応急措置を講じなければならない。」、その措置が適切でなかった、その
義務に違反をしたという判断で送検をいたしております。
-
○加瀬完君
昭和四十六年十二月一日午前四時ごろ、明原丸が川崎シーバースに接触、油荷揚げ中、明原丸で使用する燃料であるC重油搭載中、明原丸のタンクよりあふれ出た油があることは、これは確認しますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) 明原丸の油を積んでいるときに、何べんも申し上げますように、その船尾のマンホールから油がこぼれたということは、それは私
どもも確認をいたしております。
-
○加瀬完君 四時ごろと、こう言っていますけれ
ども、四時ごろというのは、発見したのが、いわゆる油の流れ出したのを発見したのが四時ごろなのか、それとも流出時刻が四時なのか、何時何分に流出をしたと推定されて、それを何時何分に発見したということになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 平川三等機関士が、どうも油が来ないではないかということで、そのポンプのところに行ってみて、そして帰って見たときにもうすでに油があふれておったというふうに私
どもは理解をいたしております。その時期が何時ごろであるかということは、これは本人のいろいろ記憶はあるわけでございますが、明らかではございませんで、大体そのポンプ船のところへ行って、そして百五十メートルぐらいの距離のところへ行って帰ってきた、そして見たところが、そのマンホールから油があふれておった、それの時刻については、大体推定的には四時より前ではないかというふうに考えられますけれ
ども、正確な時刻はわかりません。
-
○加瀬完君 正確な時刻がわかりませんと流出した油の量が狂ってくるわけですね。油の流出した時間が早ければ発見した時間との間の間隔が延びるわけですから量がふえるということになる。これを厳格に調べることば当然だと思いますがね。先ほ
ども出ましたけれ
ども、最後のタンクは一番タンクでしょう。それで積み荷量の測定をしたわけですね。そして油が少ないという、予想のとおり油が入っておらないと、こう推定をした。これは三時四十分ですか。時間は何時ですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 平川三等機関士の記憶では三時四十分ごろだと記憶しているように聞いております。
-
○加瀬完君 測層管の半径は何センチですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) ちょっと正確な寸法わかりません。
-
○加瀬完君 というのは、五センチか六センチと、こういわれていますね。それで、平川三等機関士は油の温度の
関係や気圧の
関係でその測層管に目盛りが上がってこなかったと、こう言うんでしょう。しかし半径六センチもあるものの測層管に、一体そのときのC重油の温度は何度ですか。気温は幾らですか。それが上がってこないなんということは考えられますか。このような
状況では、一体日常どういう作業をしておったかと疑われますよ。この間の十二月一日の扇島のシーバースに限らず、こんなようなことを、いいかげんなことを許しておったら、どこの船からまた油が出ないという保証はどこにもない。目盛りの役をしない。五センチも六センチもあるという管から、それから油が上がってこない、全然凍ちゃって目盛りの役をしない、温度が低くて上がってこない、こういうことが推定できますか。この点についてはどうお調べになりましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) この油のタンクの中にサウンディングパイプを入れて、そのサウンディングパイプで見るわけですね。そうすると、私、ちょっと物理の正確なことはわかりませんけれ
ども、要するにそのサウンディングパイプの中に油がこう上がってくる、その上がってくるのは外側のタンクに油がどの程度、たとえばある高さまで油が満たされておると思います。ある時間になれば、そのサウンディングパイプと同じ高さまで来るわけですね。ところが、下から上がってくるわけですから、それには温度なりいろいろの
状況があると思いますか、ある時間——時間といいますか、ある時刻たたないと、その外の、外周のタンクそのものの高さまではサウンディングパイプの中の油が来ない。それを見る見方によると思いさすけれ
ども、たまたま見たときにはまだだいぶサウンディングパイプの余力があった。したがってまだ外側の一般のタンクには油が充満されてないという判断を平川三等機関士はしたのではないかと思います。したがいまして正確にそれを読むと、あるいは多少あわてたのかもしれませんけれ
ども、ある程度時間をかけて見れば、外の油が満たされている高さとサウンディングパイプの中の油の高さが同じになるわけですから、それを即断をして、そしてまだそのサウンディングパイプの中に余裕があったから、まだ外の油も満ぱいになってないということで、あわててポンプ船のほうに行ったと、こういうことでありまして、私
どもはそのことを含めまして、その船側の措置というものは非常に手抜かりがあるし、不備であると思います。
したがって、この明原丸というものを海洋汚染防止法の違反ということで刑事
事件に付しているわけでございまして、先ほどからの先生の御質問を聞きますと、何か私
どもが船側に手落ちがないんだというふうに考えているように、先生とっておるんではないかと思います。決してそういうことはございませんので、私
どもは、これを違法として検察庁に送って処断を求めているわけでございますので、その点はひとつ御了察いただきたいと思います。
-
○加瀬完君 それは、
海上保安庁長官がそういうことをしていると、私は少しも考えておりません。しかし、この明原丸
事件が起こった前後、それから取り調べについてのいろいろの情報というものを外側から見ると、明原丸の取り調べに海上保安庁の出先が完全な対策をとっておったとは、私はいまでも思っておりません。それが証拠に、この事故のあとに、三管なり川崎海保には
異動があったでしょう。過失があると認めたから
異動が行なわれたんじゃないですか。しかしそれにはきょうは触れません。
いま長官は、少なくも平川三等機関士が測層管の扱いなり、不確実な見方をしたであろうということはお認めになった。そこで流出時が問題ですね。測層してだいぶ足りないと思った以前から油は出ていたということになりますが、一体流出を認めた時刻は何日の何時何分と結論を出したのですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 先ほどから、申し上げますように、本人の記憶のことでもございますし、正確な時間はわかりませんが、まだ油が送られてこないと、何をしておるのだということで、百五十メートルほどあるところのポンプ船のところに行った。そして十分、あるいはそれ以下、七、八分かと思いますが、それだけ経過してもとのところに戻ってきたら、もうそのときには油は漏れておったということでございまして、その時刻につきましては、本人の記憶ということもありましょうけれ
ども、これは正確な時刻はわかりませんが、本人が発見したのは、ポンプのところに一ぺん行って、そしてもとの持ち場に戻って、その戻ってきたときに発見した、こういうふうに私
ども考えております。
-
○加瀬完君 それでけっこうですよ。それじゃ、発見をしてポンプのところまで行って、バージーからまた帰ってきて流れ出ているのを確認したその間をかりに十分と想定をすると、油は幾ら流れたことに推定できますか。——だってわかるでしょう。一分間にバージーから幾ら油が送られるということをさっきおっしゃった。十分とすれば、最低どれくらいの油が送られたか。——送られた油が全部流れたかどうかは別として、送られた油が全部たまって流れたものだとすれば、大体の数は推定できるじゃないですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) パイプが一分間にどのくらいの油を送るかということはもちろんわかります。それからまた、かりに何分間あふれる時間があったかということはわかりますが、先ほどから申し上げますように、そのマンホールから直接海に油が流れたわけじゃございませんで、マンホールから船の甲板に流れて、そしてそれが広がって、そして船の舷側を越えて下に落ちているわけですから、それは正確な量というものはわからないわけでございますが、言い得ることは、三等機関士が船のところに帰ってきて、そしてあふれているのを見て、そして油が流れているというのを見てすぐ防除措置をかけるべく手配をしたということでございまして、したがって正確な量というものは、これはわかりません。
-
○加瀬完君 正確な量がわかりませんから、正確な量を推定するということが、この際必要でしょう。明原丸側が言っている二・七トンということだったら、ノリ被害なんかというものは起こりませんよ。起こったって一部分のものです。二・七トンではない、もっと多量に流れたろうというのがこの問題のきめ手でしょう。——それじゃああとで質問しますが、むしろとか防除剤とかいろいろありますが、その前に、とにかく流れ出した時間というものはどのくらいだというところからも推定できるのは当然じゃないですか。それがきめ手のような、きちんとしたものになるかならないかは別として、いま私が
指摘したような点からも、一応計数というものは推量できるはずですよ。
-
○
政府委員(野村一彦君) 私
どもは、再三申し上げるように、この明原丸側が油を流したという事実がございます。しかもその明原丸というものは海洋汚染防止法違反であるということで、これを検察庁に送致をしておるわけでございます。したがいまして、その違反の
状態は、先ほど先生からも御質問がございましてお答えいたしましたように、その防除
義務について欠けるところがあったということでございまして、何ほどの油を流したかという、その流れた油の量によってその相手の罪が大きくなったり小さくなったりするものではないわけですね。違法に油を流したということが確認されれば、私
どもとしては、取り締まり機関としては、その相手を海洋汚染防止違反として送検をするということで、もちろん何ほど油が流れたかということは
一つのファクターではございますけれ
ども、それはなかなか、いま申し上げましたように正確な量はわかりません。しかしそれによって違反が解消されるものでもなければどうというものでもありません。違反は違反でございますので、私
どもとしては、再三申し上げるような判断でもって、違反行為があったという認識に立っておるわけでございます。
-
○加瀬完君 水産庁はそれでいいですか。
-
○
説明員(前田優君) 水産庁といたしましては、まあ
原因者の究明というのは当然必要になるわけです。で、最近問題になっております水銀の問題にいたしましても、たとえばPCB等の問題にいたしましても、これは
原因者の究明の問題につきましては、
立ち入り検査権を持っております通産省当局に現実にやっていただくということになっております。やはり
立ち入り検査権を持っているところで
原因者の究明を行なわざるを得ないというふうに考えております。
-
○加瀬完君 これは油を流したか流さないかだけの刑事責任だけの究明では、
原因者の究明にはならないのです。幾ら油が流れたかということが確認されなければ、民事における補償対象にはならない、民事の
原因者にはならない。これは水産庁の責任ではありませんね。
原因者の究明というのは当然海上保安庁の責任です。ところが海上保安庁は油を流して刑事対象になればそれでいいということだけで、どれだけ被害を与えた油であるかということに対しては、さっぱり究明の焦点を合わせていない。そうでしょう。この問題でも、三トン流れたのか百トン流れたのか。三トンということでは問題にはならない。百トン流れたとしても、それが木更津の油であるかどうか、こういう解析の問題もあるでしょう。どうしてシーバースの油が木更津に流れてきたかという潮流
関係の究明も当然しなければならないでしょう。その次に民事責任ということになるでしょう。海上保安庁は海洋汚染防止法の油の
原因者だけを突き詰めればいいということではなくて、その油による被害者の救済もやっぱり当然の目的として考えなきゃならないことですよ。いまのような考え方でまいりますと、大量の油というのは
法律的にはさっきおっしゃったとおりです。そんな油流したって流さなくたって、ノリ被害にはひとつも
関係ないことだ。ところが、ノリ被害という、ほんとうの意味の大量の実質的な油が流れた、その
原因者はだれかということについては海上保安庁は調べない、そこまで。究明の第一目標にしておらない。これではだれのための海洋汚染防止法か。国民のサイドで海洋汚染の防止というものを考えてくれなければ困ると、私は冒頭に言ったはずだ。実質的には何も責任がない三等機関士が刑事罰で罰金か何か受けて、八億の
損害に対してはだれも、何も補償もしなければ責任者も出ない。こんな海上取り締まりなら、漁民側からすればやってもらわなくてもけっこうです。やってくれるなら、もう少し民事訴訟の裏づけになることまできちんときめてくださいよ。油濁防止の責任は海上保安庁にもあるわけです。まして今度、問題のシーバースについての油防止をどうするかということを主目的にして改正もするわけです。
ところが農林省が
指摘するように、被害者の救済については何にも力を尽くしていないじゃないですか。ただ結論を出したところは、明原丸からの油流出は、これは明原丸の三等機関士のミスであるということだけです。それだけでは解決にはなりませんよ。幾ら油を流したんだということは究明しないですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 先生の、千葉県の漁民の方々の被害について、これを何とか国として救済すべきであるという御意向、私
どももよくわかります。これは、そういうせっかく漁民が苦心して、いろいろ漁業をやっておられる、それが海洋の汚染によって被害を受けるということ、これはもうぜひ防止しなければならないことだと思います。
しかしながら私
どもは、何べんも申し上げますように、海上犯罪の捜査に当たる機関として、あるいは海洋の公害の防止、取り締まりに当たる機関としての責任を持っておるわけでございますが、いわゆる民事について、
損害賠償があった場合のその請求について、これは民事に不介入であると、これは
法律論としていいまして、不介入であるというのは、これは当然だと思います。たとえば陸上の警察でも、はなはだ恐縮でございますけれ
ども、たとえば民事
事件があった場合に、そのどちらかの一方が警察に、自分たちが被害者であるということを証明しろということを言われても、私は警察はやられるべきではないし、やっておられません。それと同じことだと思います。
ただ、ここでひとつ御了解いただきたいのは、何といいますか、私
どもとしては、そういう被害がある場合には、別の意味でそれだけの被害があったということを告発をしていただければ、これはその告発を受けて捜査をするということはできるわけです。ですから、あくまでも刑事
事件としてこれを取り上げて、その結果、被害と加害というものの因果
関係がはっきりすれば——よく網を切られた、何とか賠償してくれと私
どものほうに言ってこられますけれ
ども、これと同じケースで、これはあの人が網を切ったんだと、切って逃げたんだということを告発をしていただければ、私
ども司法警察職員として、告発を受けて被害者を呼んで
調査をして加害者を割り出すということをやるわけでございますけれ
ども、民事
事件としては私
ども実はとらえられない。
ですから、被害を受ければ、これはいろいろ海洋汚染防止法違反なり、あるいはこまかくいえば漁業調整規則違反かもわかりません、千葉県の。そういう問題として告発をするという手段があると思いますが、そうでないと、民事
事件に私
ども予断を与えるような、あるいは影響を与えるようなことはちょっと立場上できないと思いますので、その辺は御理解いただきたいと思います。
-
○加瀬完君 そういうことは聞いていませんよ。あなた方に民事の有利な材料を出せということは一向言っていない。汚濁防止の捜査というのはあなたのほうの責任だ。汚濁防止の責任もあなた方にある。それならば、ただ油を流して、刑事責任になりましたよ、汚濁防止の違反ですということだけでは、完全な究明をしたということにはならないではないか。幾ら油を流したということも明確にすべきではないか。こういうことを言っているわけです。
海上保安庁は、明原丸の油流出事故について、明原丸の当時の三等機関士、それから当時の明原丸船長並びに明治海運の三者を海洋汚染防止法違反容疑などで書類送検をして、横浜
地検の川崎支部が三等機関士だけを燃料重油を少なくとも約二・五
キロリットル以上流出させたとして、油濁防止法違反で起訴をしたと、こう新聞が報じていますが、しかし、あなたのほうの捜査は、流出した油が二・五トンということを認めているのか、あるいはこの流出した油が幾らであるかということを探索しなくていいか、こういうことを伺っているのですよ。
そういう正しい探索をすれば、それが最初に申し上げたように、漁民の千三百名の一人平均六十二万という
損害の賠償にもつながることであるので、
損害賠償の裏づけをあなたのほうで捜査をしろとは言わないけれ
ども、正しい捜査を進める限りは、何トン流したかということは当然問題になるのじゃないか。二・五トンと検察庁に言わせれば、はいさようでございますかと引っ込んでいていい問題かどうか、こういうことを言っているのだ。それで油の流出量というのをさっきから聞いているけれ
ども、これは刑事訴訟上はもう違反が成立したのだからあとは知りませんというようなお答えなので、それではいつまでたっても、油を流すやつらは、金を取られてぎゅっという目にあわない限りは、平気で油を流すことはとまらない。そういうことであれば、これは汚濁防止の精神にも反する、こういう立場で私は伺っているのですよ。どうですか、あなた方海上保安庁はそれでは何
キロリットル流したと見ているのですか。そんなことはいまさら調べる必要がないというお考なら、質問はまたほかのほうからしなければならない。どうですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 先ほど私が申し上げましたが、海上保安庁は、本件についていいますと、これを海洋汚染防止法として送検をしたと、それで能事終われりと決して考えているわけではございません。再三申し上げるように、私
どもは海洋における汚染の防止をするということ、これは海上保安庁だけでできることではございませんけれ
ども、防止をするということが第一義でございますので、さらにその装備の充実、人員の強化、その他をはかって防止をし、さらにまた取り締まって現場を押えるということは、当然これはやらなきゃならぬことでございます。そういうことでございますので、なお今後ともその点で努力をいたしたいと思います。
それから本件について申し上げますと、どれだけの油が流れたかということにつきましては、もちろん私
どももこれが把握できれば、一そう問題は解明をされると思います。ただ、その把握をする方法でございますけれ
ども、先生も御案内のように、いろいろな推計と申しますか、どれだけの油が流れ出たかということを推計する方法はございます。しかし現在までの時点でこれがきめ手だという推計はなかなかないわけです。たとえば先生が前須賀次長にお聞きになっている処理剤から逆算する方法とか、油送船の積み高とそれから実際に送ったと荷送り状でいっている数量のギャップとか、いろいろな方法はあると思いますが、それはあくまでも
一つの推定でございまして、残金ながら現状におきましては、どれだけの油が流れ出たかということの正確な数字というものをつかんでおりませんし、なかなかこれはつかむことけむずかしいと思います。
しかしながら、私のほうは、まあ何といいますか、二・七トンとか二・五トンとか二・三五トンとか、いろいろいわれておりますけれ
ども、それよりも多い油が流れ出たであろうということは、これは常識的にも推定できるわけです。しかし、その量がどれだけであるかということを自信をもって、あるいは確実な根拠をもってお答えできないということは、非常に残念でございますけれ
ども、そういう事実でございます。しかし、それだけのかなりの油を流しておると、そしてそれが海洋汚染防止法に違反するということでございまして、これでもって満足しているわけではございませんけれ
ども、そういう問題、なお、いろんな本件の教訓にかんがみまして、いろいろの今後の
改善策を考えたいと思っておるわけでございますので、その点は御了解いただきたいと思います。
-
○加瀬完君 了解できませんね。流された油は何
キロリットルかということで、これは被害者にとっては大きな問題だ。その究明をこれこれこういうふうにやりまして、大体推定こういうことになりますが、これ以上はなかなか確実な数字は出ませんという御説明なら、御苦労さまでございました、さようでございましょうと引っ込みますよ。しかし少なくも、あなたのほうが送検をした検察庁は、二・五トン以上というあいまいなことで、刑事的には要件は完成しますよ。被害者にとっては二・五
キロリットル以上ということでは困るんだ。二・五
キロリットルじゃありません、二・七
キロリットルじゃありませんというなら、一体いま、どういう計算をして幾らになったんだということをはっきりさしてもらわないと困るんです。その点ひとつ、さらに質問を続けてまいります。
汚染防止法には油記録簿というものを設定しなければならない規定がございますね。
-
-
○加瀬完君 船長は「油記録簿を船舶内に備え付けなければならない。」とありますね。「油濁防止
管理者は、当該船舶における油の排出その他油の取扱いに関する作業で
運輸省令で定めるものが行なわれたときは、そのつど、
運輸省令で定めるところにより、油記録簿への記載を行なわなければならない。」「船長は、油記録簿をその最後の記載をした日から二年間船舶内に保存しなければならない。」とありますね。ですから、油記録簿という
制度があるということは、入った油と出た油と、いわゆる油の汚濁というものを防ぐためのこれは規定でしょう。それならば明原丸においても、幾らの油が入って幾らの油が出たかということは、明瞭になっていなければならないはずですね。この油記録簿はどうなっていましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 明原丸の油記録簿は所持をいたしておりました。それから記入も行なわれていたようでございます。これは私
どもで確認いたしております。
-
○木村睦男君 議事進行。
開会のままでちょっと理事会を開きたいと思いますので、よろしくどうぞ。
-
-
-
○加瀬完君 明原丸の油記録簿には訂正または改ざんの事実はありませんでしたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) これは私
どもが取り調べをするときに、押収をして、仮還付をしておりますけれ
ども、格別改ざんとかなんとかいうことはないようです。
-
○加瀬完君 それでは、明原丸が流出したC重油はどの程度と推定をしましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君)
会社側の主張では、二・三五ロングトンと、こういう主張をいたしているようでございます。
-
○加瀬完君 港湾法で、いま明原丸だけやっていると、だから少し注意しろと理事から御注意をいただきましたけれ
ども、明原丸のこういう問題が解決しないようでは、港湾法もへったくれもないですよ。だからこの問題を取り上げているわけですよ。オイルフェンスにしろ、何にしろ、みんな港湾法の中にあるものじゃないですか。しかも港湾法を運用するのは港湾局だけれ
ども、海洋汚染防止法も合わせて出しているわけです。これは海上保安庁の責任でしょう。そうすれば海上保安庁のそのものの行政的なやり方というものに対しては、これはきびしくここで批判を加えて、注文つけておかなければならない問題だからやっているのですよ。それで中和剤の七百かん、むしろを千枚大体使ったということはお認めになりますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) 非常に先生、直截簡明な御質問なんで、イエスかノーかということは、なかなか答えにくいのですけれ
ども、七百かんということではなくて、私
どもが了解しているのでは、五百四十四かんとあと百かん相当、合わせて処理剤は六百四十四かんであろうということでございます。むしろについては全部で千三百五十枚と、こういうふうに了解いたしております。
-
○加瀬完君 そうすると、中和剤六百四十四かん、むしろ千三百枚、これだけを使うとすると、大体基準でやるとどのくらいの油の流出を防いだという推計ができますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) これも前回、当時の須賀次長に先生がいろいろ御質問になっておられる記録を読みまして、私
ども勉強したわけですが、その推計というのもなかなかむずかしゅうございまして、たとえば油処理剤でどれだけの油を処理するかということ、これは一番少ない場合はその五分の一とか、四分の一とかいうこともありますが、一番多い場合は、一対一、あるいは逆に一対一・五というふうに、よけいに油処理剤を使う場合も
状況によってはあるわけです。そういう問題。それからむしろとか、オイルキャッチャー——吸着剤、こういうものを使う場合、それから先生の御質問にはございませんでしたが、いわゆる作業船等でくみ上げる場合、それを油と水のまじり方がどうなっているか、吸着剤についたパーセントがどうかという、いろいろな推計をやりますと、
一つの推計といいますか、ごく荒っぽい推計は成り立ちますけれ
ども、たとえばこの前、先生が言われた六十何トンとかいう数字が出るのではないかという御質問を須賀君になさったようで、それはわれわれもいろいろフォローしてみましたのですけれ
ども、これは前提をどうとるかということによって、先ほど申し上げましたように、なかなかわかりませんが、いま申し上げましたように、処理剤六百四十四かん相当と、むしろ千三百五十枚を使って、かなりの油を回収したということはいえると思います。
-
○加瀬完君 大体油一トンの処理剤は何リットルとごらんになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) これも前回の先生の御質問にございましたように、場合によって違いまして、一番少ない場合は、大体対象になる油の五分の一の処理剤でいいというケースもございますけれ
ども、
状況によっては一対一、あるいは一対一・五というふうによけいにかえって処理剤を使うこともございますので、一がいには何トンの処理剤で何トンの油を処理するかということは、一律にはなかなか言えない
状況にございます。
-
○加瀬完君 一番条件の悪いときで計算して、一体一トンの油を処理するのに何リットル要りますか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 条件の悪いときと申しますか、一番使う場合は、やっぱり一トン処理する場合に一・五トン使うというようなことも
状況によってはあり得るということでございます。
-
○加瀬完君 大体油一トンは百五十リットルから二百リットルで処理をしているんじゃないですか、通常は。それで——まあこまかいことやめましょう。
あなたは二・七トンではないと言う。それは大体幾らと見ているんですか、いま。
-
○
政府委員(野村一彦君) 何べんも申し上げますように、処理剤を使用する場合には、その
状況によって、かえって処理剤を使用することによって二次公害が起こるような場合もあると、そういう場合は、きわめて処理剤の使用トン数を少なくして、五分の一程度でもって処理をするということもあるわけでございますので、一がいに申し上げられませんが、この場合の先生がおっしゃった二・七トンではないかという御質問、これも私
ども数字は新聞その他で、記録で見ておりますけれ
ども、その根拠についてはわかりませんので、私
どもとしては相当の油が流れ出たということで、具体的な数字はちょっと確信を持って言えない
状態でございます。
-
○加瀬完君 いや私は、少なくとも二・七トンではないとおっしゃったから、二・七トン程度ではないということをお認めになるだろうと、こう伺ったわけです。
これはお認めになりますか。現場では十二トン、十八トンという証言がある。ただし中和剤七百かんがほとんど使われ、むしろ千枚以上が使われているので、十二から十八トンという数字をはるかにこえた量が流出したものと見ている。三十トンという新聞発表については判明していないが、事実はその倍以上ではないかと疑われると、こういう証言がありますが、いかがですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) ただいま先生の御
指摘はどの書類かわかりませんが、前回の須賀君に御質問になったところでは……。
-
○加瀬完君 おかしいよ。いま聞いているんだからね。ずっと前の
答弁を言わないで、あなたの
答弁を聞いているんだから、あなた答えなさい。
-
○
政府委員(野村一彦君) いや、その書類の私は心当たりございませんが、どういう書類であるか、ちょっと教えていただきたいと思います。
-
○加瀬完君 あなたの内部から出た証言であります。こういう観測があなたのほうでは行なわれていたかいないか、それを伺えばいいんです。
-
○
政府委員(野村一彦君) この捜査の過程においてはいろいろな意見が出てきたと思いますので、先生の御
指摘のような意見も部内にあったかと思いますけれ
ども、これは最終的には何べんも申し上げますように、どれだけの油であるかということは、私
どもの部内では残念ながらつかんでおらない
状況でございます。
-
○加瀬完君 これはだれがおっしゃったかはあとで申し上げます。
明原丸の油流出事故について、二・七トンと
報告するようにと記されたメモが発見されたことはお認めになりますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) どこでそういうメモが発見されたのか、私
ども存じませんが、お教えいただきたいと思いますが。
-
○加瀬完君 ちょっと速記とめてください。
-
-
-
○加瀬完君 じゃもう一回聞き直します。
明原丸の油の流出の事故について二・七トンと
報告するようにと、明原丸
関係からそういう
指示をしたメモがおたくのほうで押収されているはずでありますが、これはお認めになりますか。
-
○
政府委員(野村一彦君)
会社のほうと、それから明原丸の船とのほうが打ち合わせをして、その数字について、まあこういうことでいこうという打ち合わせをしたメモが、私のほうで捜索をしたときに押収した中にあったということは知っております。ただ、それはおっしゃった数字とはちょっと違うようでございますが、いろいろな押収した物件の中にありまして、それは
一つの証拠書類として、現在裁判所のほうにいっておるものと思います。
-
○加瀬完君 明原丸の流出事故を二・七トンと
報告するよう
指示したメモが発見されたのは事実である。それ以上流出したという機関士の手帳も押収している、こういう私は証言をいただいております。それ以上流出したという機関士の手帳、これも押収されておりますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) 機関士の手帳というのは、私
ども聞いておりませんが。
-
○加瀬完君 これはありませんか。
-
○
政府委員(野村一彦君)
会社等捜索いたしまして、いろいろな書類を押収しておると思いますが、その中にいろいろな書類があると思いますが、先生のおっしゃる機関士の手帳というのが、日誌なのか、あるいは個人的なメモなのか、その点わかりませんが、ちょっといまたくさんのものを押収しているわけでございますから、その中にどういうものがあるか、ちょっとここではわかりません。
-
○加瀬完君 明原丸の油流出事故に対して、無線局を通じて明原丸と明治海運が交信した事実はありますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) そのような事実はあるようでございます。
-
○加瀬完君 それは流した油についての打ち合わせでありますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) そのことも入っておると思います。
-
○加瀬完君 それじゃそのメモの
指示者はだれですか。電信はだれがだれに打ちましたか。これは答えられなければ答えなくてもいい。事実がわかっていれば、わかっているけれど答えられないと答えてくれてもけっこうだ。
-
○
政府委員(野村一彦君) 私
どものほうで、この船及び明治海運の本社を捜索をいたしまして、そして必要と認められるような書類を押収をいたしております。それはいま先生のおっしゃったいろんなものを含むものでございますが、どういう書類をどういうふうに押収して、それがどうであるかということは、やはりちょっと、現時点で私の立場から申し上げかねるわけでございます。
-
○加瀬完君 それではけっこうです。しかし、それは整理して検察庁に送ったことは送ったんでしょうな。
-
○
政府委員(野村一彦君) 大体
関係の書類をまとめて検察庁に送っておるわけでございまして、それはまあ検察庁でどういうふうに処理されたのか、仮還付されているものもありますし、引き続き裁判所に送られたものもあると思います。
-
○加瀬完君 この二・七トンというのは、三十トンとか六十トンとかいろいろ風評があります。木更津沖の推定では約百トンの油が流れただろうと、こういう分析もございます。海上保安庁はペルシャ湾に追跡をしたわけですからね。ペルシャ湾での追跡で流出油と明原丸が積んでおったC重油、この同質かどうかの点、これらはある程度わかりましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 私
どもの捜査官がペルシャ湾に行きまして、そこで明原丸から油を持って帰っております。そしてその油につきまして、私
どもの試験研究センター等で
調査をいたしておるわけでございます。
-
-
○
政府委員(野村一彦君) これの
調査は、私のほうの試験研究センターでやるという方法もやりましたし、それから部外の第三者の学校の先生の権威者にお願いをするということもやっておりまして、
調査の結果、このC重油と千葉県の油との間に、まあ何といいますか、これもいろんな前提があるわけでございますけれ
ども、かなり類似性というものがあるということは大体認められますけれ
ども、それ以上の同一物であるとかないとかという断定をするようなわけにはまいっておりません。
-
○加瀬完君 明原丸の流出油について箱口令がしかれておった事実はお認めになりますね。おたくのほうではない、明治海運側で箱口令がしかれて、この二・七トンとかなんとかということについては一切言うな、こういう打ち合わせで、あなた方に接しておった事実はお認めになりますね。
-
○
政府委員(野村一彦君) 箱口令か何か知りませんけれ
ども、皆同じような数字を並べておったということは、私
どもの
調査したあれでございます。
-
○加瀬完君 明原丸が油の流出を、こういうふうに、極端に事実を隠蔽をしておりますのは、結局民事賠償の責任を回避するためとは推定されませんか。
-
○
政府委員(野村一彦君) まあその辺について、私
どもなかなか微妙だと思いますけれ
ども、これは刑事問題としてみても、やっぱり虚偽の通報、
報告をすることはできませんのが、いろんな点で正確な
報告をしてもらいたいということで、まあその
会社の態度については、私
どもも相当の問題を持っておると思います。
-
○加瀬完君 この本件の
調査にあたって、こういうふうに明原丸側は犯罪の隠蔽工作をしたわけですね。これらについては、検察側とどういうふうに御連絡をなさいましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) まあ私
ども、現場の職員が司法警察職員として取り調べをいたしまして、そして送致をするという場合には、刑事訴訟法の規定に従って、検察官の指揮を受けて業務をするわけでございますので、私
どもは検察官の
指示どおりに動いているわけでございまして、その点につきましては、何といいますか、検察官から
指示されたその
指示に従っていろいろ証拠を収集し、あるいは
調査をするということでございます。
-
○加瀬完君 海上保安庁としては、この燃料用重油流出事故に関し、明治海運らが流出量等について虚偽の
報告をし、また種々工作をしたという点は、これはお認めになったわけですね。
-
○
政府委員(野村一彦君) そういうことで、虚偽の通報ということで、私
どもは送致をしておるわけでございます。
-
○加瀬完君 証拠隠滅に対する追及はどのようになさいましたか。お宅のほうで。
-
○
政府委員(野村一彦君) それは、これからの裁判においていろいろと取り上げられることかと思います。
-
○加瀬完君 裁判において取り上げられることもありましょうけれ
ども、たとえば流出油の量、こういうものはおたくのほうで
調査をする当然対象ではありませんか。二・七トンというふうに口うらを合わせようという、そういう打ち合わせな
どもしてあるということであれば、二・七トン以上であることは明らかであります。それでは一体幾ら流したのかというのを、繰り返しますけれ
ども、追及しなければ、これはほんとうの意味での汚染防止にはならないわけですよ。向こうがいろいろ隠蔽工作しているのも、賠償
義務をのがれようとすることですから、これだけ流したことには間違いないということは、これは海上保安庁で突きとめてもらわなければならない。この点については、いろいろな向こうは工作をしているわけですから、こういう工作をしているという事実、そして工作をしているからには、流出油はこれだけであろうという突きとめ方というのはもっとやっていただいてよろしいじゃないですか。あなた方の当然の
義務じゃありませんか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 私
どもとしては、
事件が起こってからいろいろと捜査の範囲を広げて、三管本部が総合本部をつくって捜査をして、その間検察庁と連絡をとりながら、検察庁の
指示を受けていろいろ捜査をしたわけでございます。もちろん今後の裁判の進行過程において、またいろいろと
資料——
資料といいますか、
調査あるいは捜査の要求があれば、それをやるわけでございまして、現在、私
どもはまあ端的に申し上げますと、独自の立場で捜査をする立場に現在ございませんので、本件に関しましては。やはりそういう所要の検察側の指揮のもとにいろいろその証拠の収集等に当たるということでございますので、その点は検察側からの
指示を待つということになろうかと思います。
-
○加瀬完君 刑事責任者として平川三等機関士をどう処罰するかというのは検察なり裁判所の責任ですね。責任と言って悪ければ裁判所の管轄だ。しかしね、送検をする事実
関係について
調査をしたり捜査をしたりするのは、これは海上保安庁の責任ですね。二・五
キロリットル以上油を流したということで平川三等機関士は起訴されましたけれ
ども、あなた方が送検したのは平川三等機関士だけではありませんわね。特に、二・五
キロリットル以上油を流出しましたと、これは汚染防止法の違反ですといってあなた方のほうで訴えたわけではない。向こうが二・五
キロリットル以上と判断を下しただけです。ですから、
調査なり捜査の対象を、明原丸から少なくも六十トン前後の油が出たという確証をつかむかつかまないかはあなたのほうのこれは責任だ。それには
一つも触れてないじゃないですか。三等機関士が起訴されたらいいという問題じゃないでしょう、これは。これだけの被害を与えた、被害責任はあなたのほうが明確にするわけじゃないけれ
ども、これだけの被害が出たほどの大きな汚染問題ですね。しかしそれは二・五
キロリットル流しただけだと、あとの木更津沖のノリ被害の油は、これは
原因不明ですということでは、これは汚染防止ということにならないんじゃないですか。幾ら油が流れたんだということは、もっと突き詰めなければならないんじゃないか。同質の油ですということも言っているけれ
ども、近似と言っていますけれ
ども、それじゃなぜはっきりと、こういう解析の結果こういうことになりましたというのは
報告しないのか。あるいは潮流の
関係で川崎シーバースの油は十二月二日にはここへ上がります。十二月三日にはここへ上がります。十二月四日にはこうなります。風速は幾らです。風はどう吹いてます。で、ここを何時間行ったり来たりしてましたというような証明をして、のがれられないように海上保安庁がはっきりさせるならうなずけますが、そういう方法は何にも講じないじゃないですか。ただ、その油の出た川崎シーバースのところの問題だけ処理して、一番大きな油の被害の汚濁防止に対しては何にも手を打ってない。こんなことで海上保安庁が確実に職務を執行していると受け取れますか。私には受け取れません。なぜ一体、解析表を出さないんですか。それとも解析表は裁判所のほうに、検察庁のほうには出してありますか。
それから海流図その他についてのあなたのほうの
調査、木更津の油がC重油に間違いありませんという証拠を、全部検察庁に出してありますか。この点はどうですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) ただいまの先生の質問、非常にデリケートな問題でございますが、私
どものほうは、当日明原丸から油が流れた時点におきまする東京湾の海流、潮流、それから風の
状態、そういうものを調べております。
それからまた、油につきましては、千葉県の油と明原丸の油につきましては、私
どもの試験研究センターにありますところのガスクロマトグラフという機械にかけまして、油の成分の分折をやっております。これはいずれも
一つの証拠
資料として、検察庁を通じて裁判所のほうにいっておると思いますが、その
内容については、ただいま申し上げましたような
状況でございまして、それ以上のことはなかなか申し上げられないということを、御了解いただきたいと思います。
-
○加瀬完君 なるべく急ぎます。
六千四十四トン荷揚げをしたわけですね、明原丸へは。六千四十四トンは次の船で運んだことになりますね。第三十五豊重丸、第六明和丸、第五幸真丸、第八鶴浜丸、第二常盤丸、第二東興丸、第七ゼネラル丸、第十五京丸、第六太平丸。ところが、この荷揚げが東燃出荷量では六千四十四・三六六トンになっている。ところが立ち会い人のメモでは六千二百七十二トンになっている。この違いはどう調べましたか。といいますのは、入れた量とに食い違いがあると、それだけの油が一応流れたんじゃないかという推定も下せるので、この油の量は正確に合わなければならないはずですけれ
ども、立ち会い人は六千二百七十二トン、油を出したほうの東燃は六千四十四トンと言っている。この違いはどこからきているんですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 油をはかる方法には、先ほど申し上げましたように、陸上タンクから給油船に積み込む際に、流量計というはかりで測定をして、これをコンピューターで自動的に標準温度、すなわち摂氏十五度の量として補正した数値ではかる方法がございます。これはいわゆる積み荷の荷役協定書というその書類に、正式の数値として採用されるものがこれであります。これが六千四十四トン三六六という数字でございます。それからそのほかに給油船に積み込んだ後に、その給油船でタンク油重を測定して、それを何といいますか、JISの一定の換算表があるわけです。換算表により標準温度の量として補正をするはかり方があるわけでございまして、ただいま先生のおっしゃった六〇四四という数字は第一の流量計で測定し、温度十五度のときのコンピューターによってはかった数字、これがその荷役の協定書、これが取引のベースになる書類でございますが、この数字が六〇四四と、こういう数字でございます。
-
○加瀬完君 東燃、これはタンカーですか、東燃からの出荷量は六千四十四トン、これを運んだのが、先ほど話に出ました鶴見輸送株式
会社ですね。鶴見輸送株式
会社の立ち会い人は真野潤一さん、この真野潤一さんの立ち会い人としてのメモは六千二百七十二トンです。送る輸送
会社の立ち会い人がどうして送った油の量を書き間違えるのです。
もう一度申し上げますが、鶴見輸送株式
会社が荷受け人になって送っているのでしょう。その荷受け責任者は真野潤一さん。この真野潤一さんの立ち会い人としてのメモは六千二百七十二トン、東燃タンカーというのと明治海運あるいは明原丸というのは同じグループでしょう、みんな同じ
会社ですね。どっちを信用しますか。立ち会い人のメモというものは単なるメモですか。これは油の温度が違ったって何だって、二百三十二トンという違いがどうして出るのですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 先ほ
ども申し上げましたように、いわゆる商行為として売買される商売人間の数字というのは非常に厳格でございまして、何べんも申し上げますように、積み荷役協定書というものをベースにして、その協定書に確認した数字でやられるわけでございます。その数字が六〇四四という数字になっておるわけでございます。で、その真野さんのメモで六二七二という数字が出ておるという先生の御
指摘でございますが、実はその
原因については、私
どももいろいろ
調査をしたわけですが、その
調査で見ますと、真野さんの記憶違いか、あるいは書き違いでなかろうかと思われるのがございます。
それは具体的に申し上げますと、第七番目に運んだ第七ゼネラル丸の量ですが、これは総トン数三百二十一トンの船です。これで八百五十トン送ったという真野さんの記憶です。ところが常識的に考えまして、三百二十一総トンで八百五十トン送れるというのは、ちょっと常識的には考えられません。容量というものは総トンの一倍半か二倍くらいのものでございまして、三百二十一総トンの船が八百五十トン送ったということはちょっと考えられない。あるいはこれは八というのと五という数字との読み間違いか、記憶間違いか、書き間違いか何か知りませんが、そういうことがあるのではないかというふうに考えられますが、いずれにしろ、この商業ベースの取引においては、積み荷役協定書をもとにして代金の決済等も行なわれるものでありましょうし、私
どももそういう商慣習になっておると承知しておりますが、この数字の六二七二という数字と六〇四四という数字の相違は、あるいはそういう私がいま申し上げました書き違いか、読み違いか、何か知りませんが、五五五という数字と八五〇という数字の差ではなかろうかというふうに思います。
-
○加瀬完君 それは、協定書はお説のとおりですよ。協定書のとおりに油が積み込まれたという保証はどこにもないわけだ。正確に積み込まれた油の量というのは立ち会い人が一番正確だから。
それであなたはトン数で言いますけれ
ども、四百トンの船が九百八十トン、たとえば第十五京丸は四百十四トンなのに九百八十
キロリットルの油を積んでいるわけですよ。それで問題は、第二常盤丸と第七ゼネラル丸ということになりますよ。第七ゼネラル丸は、おっしゃるように五百五十五トン出荷したというのに対して八百五十トンと出ている。ところが常盤丸は五百七十トン送ったというのに対して五百七トンしか入らないと出ている。五百七十と五百七なら記入の間違いということもあるかもしれませんが、五百五十五という数字と八百五十という数字が記入の間違いということはおかしいですよ。記入の間違いか間違いでないかということは立ち会い人の真野潤一さんを呼んでお調べになりましたか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 真野さんを呼んで聞いたわけではございませんが、私
どもとしてはこの二つの、先生もおっしゃった第二常盤丸と第七ゼネラル丸の数字が食い違うということで、この八百五十と五百五十五という数字はどうもおかしいということで、真野さんを呼んで聞いたわけではございません。
-
○加瀬完君 先ほど二百三十二トンと言いましたが、結局、正確にいうと二百三十八
キロリットルの違いがありますね、二百三十八
キロリットル。第二常盤丸では五百七十
キロリットル入ったのに五百七
キロリットルと少なく見ているんですよ。ところが第七ゼネラル丸では五百五十五
キロリットルと言っているのに対して、立ち会い人は八百五十
キロリットルだと言っている。二百三十八
キロリットルの違いというのは、これが外に流れたか、中に残っているかでは大きな違いですね。当然真野さんもお呼びになって、あるいはお会いになって、どうしてメモと出荷量が違ったかということを
調査しなければおかしいじゃないですか。大体メモ違いだなんて、メモした者に対する侮辱だよ。十分
調査もしないで、あんたのメモ違いだろう、
会社のほうの出荷量が正しいと、
会社のほうは、おたくのような判定を下せば非常に有利になりますよ、訴訟上。二百三十八
キロリットル
会社がよけい積んだということになれば、それだけないんだから流れたということになる。
そうすれば
会社に非常に不利ですよ。公平じゃないじゃないですか。公正を保つというならば、立ち会い人を呼んできちんと聞いて、疑問になるところはただすべきじゃないか。どうしてたださなかったか。そういうところを、外側から見ればどうも海上保安庁の取り調べはおかしい、こういう疑惑を受けるわけですよ。
-
○
政府委員(野村一彦君) この取り調べの
状況でございますが、私
ども本庁におる者は全部の取り調べの書類に目を通しているわけじゃございませんので、先生のような具体的な御
指摘について全部完全な回答できないかと思いますが、ただ真野さん本人ではございませんけれ
ども、税関に出した
報告書、それから船主側の話を聞いても、八百五十という数字はおかしいという意見でございますので、そういう
報告を確認していることは、私は聞いておりますけれ
ども、私は全部の調書を目を通しているわけじゃございませんので、さらに詳細に調べれば、あるいは先生のような、真野さんの供述の食い違いと、常識的なトン数の給油量の違いというものはもっと出るかもわかりませんが、その点については、ちょっと私は判断のしようがございませんが、部内でいろいろ検討しているときに、部内の職員が、これは本庁の職員ですが、みんな一様に八百五十という数字はちょっとおかしいじゃないかというので、税関と船主のほうに確認した結果、五百五十、あるいは五百五十五という数字が出ておりますので、この点はまたさらに調べなければならぬと思います。
-
○加瀬完君 船主に確認したって、船主は自分に不利なんですからね。不利な
状況を言うはずないでしょう。海上保安庁の長官が怠慢だとか、やり方が悪いとかいうこと言っておりませんよ。しかし、あなたの部下は、保安官は、司法警察官として取り調べをするわけでしょう。そんなら疑問のあるところは徹底的に調べなければ公平を期するというわけにいかないじゃないですか。二百三十八
キロリットルの違いというのは大きな違いですよ。それを大体部内で検討したら、これは真野さんのメモが違っているだろうということで処理できる問題じゃないでしょう。司法警察官としての立場を確実に行なっていないということになるんじゃないですか。
これは言いたくありませんが、あなた方のおとりになった調書で、上司が見て、こんな調書で一体調書になるかという問題がありませんか。だから、汚濁防止は、
法律や施設をつくったってどうにもならない。もっと海上保安庁の末端が、司法警察官としての権能を持っているだけじゃなくて、能力を持たなければどうにもなりませんよ。二百三十八
キロリットルの違いというのは
一つも調べない、こういうことでは、私は御
答弁をうなずくわけにはまいりません。司法警察官というものが厳密に調べて、これ間違いないという調書なら、私は頭下げますよ。あなた方、海上保安庁の上部で現地の
調査もしなければ、本人を調べもしないで、これはおかしい、船主がこう言ったということで判断をするというようなやり方は許されることですか。あなた方のおっしゃるとおりかもしれませんよ、事実は。しかし、
調査にあたっては粗漏じゃないですか。そういう粗漏な
調査を押し問答しておったってどうにもなりませんから、私は、本日はこの程度で留保する。
-
-
○加瀬完君 答えられないのに質問したってしようがない。
-
○
政府委員(野村一彦君) ただいま先生の御質問に対してちょっと意を尽くさない点がございましたが、船主と言ったのは、その明原丸とかなんとかいう船主じゃなくて、一ぱい船主、油を元請の鶴見輸送に送って、そしてその代金をもらうべきその一ぱい船主が言っておるということでございますので、これが
一つと、これの言うことがすべてじゃございません、
一つと。それから税関に申告しているいわゆるボンド油というものの申告の量額、五百五十ということもありまして、私
ども本庁では五百五十という数字が確かではないかと思っておりますが、さらに現場を実際に取り調べをした司法警察職員が八百五十と五百五十との差異をその後どう追及したかということは、ただいま現在、私わかっておりませんので、それはさらに調べさしていただきたいということ。
それからもう
一つ、先生のいままでの御
指摘でございますが、私
ども取り締まり官庁として、決して、いままでやってきた捜査が万全である、全然捜査にまずいところがないということは申しかねると思います。それは、いろいろ防除
体制も当初手抜かりがあったし、捜査も不十分な点があったと思いますが、私
どもは、あくまでも事の真相を調べて、違法
事件は違法
事件として送致するということであって、被疑者になっております明治海運、その他のものをかばわなければならないという立場は毛頭ございませんので、その点については、ひとつ誤解のないように、私
どもの立場を御了解いただきたいと思います。
-
○加瀬完君 あなた方が、海上保安庁の中枢部でこの問題は処理すべき問題じゃないでしょう。出先の海上保安官が司法警察官として十分取り調べをした結果を、あなた方がどう判断するかは別だ。取り調べをしていないでしょう、二百三十八
キロリットルの違いというものを、真野さんなら真野さんという人を呼んで、第二常盤丸なら第二常盤丸を、第七ゼネラル丸なら第七ゼネラル丸を呼んで、正確にどっちの数字がいいかという検討はしていないでしょう。そういう手続を私は怠っていると言うんです。そういう手続が怠られていると言うんですよ。それをあなた方のほうでかってに判断して、大体それはほかの船主が間違いないと一ほかの船主は間違ってないですよ。九隻のうちの七隻は合っているんですよ。間違ってないといえますよ。自分が積んだ油でもないものを、五百五十
キロリットルか八百五十
キロリットル、これは八百五十
キロリットルは間違いで五百五十
キロリットルが正しいという証言をしたって、そんなもの信用なりますか。自分の積んでおった船の量ならわかる。人の船の量を言ったってそんなもの信用できますか。
だからまず、疑問があったら、それを下にもう一回おろして司法警察官としての
調査をさせるということが筋ではないか。言いたくはないけれ
ども、そのほかにもあなた方の
調査では、再
調査というのをさせていないでしょう。言われたものそのままで。
一つの調書の中にたくさんの疑問点がある。その疑問点を再度
調査していないでしょう。それはここでは具体的なことは申しません。それを言っているのですよ。それでは被害を受けた者は、海上保安庁が的確に私
どもの味方として立ち働いていただきましたという感触は受けられない。ですからいろいろ不平や不満というのが、あなた方に対して出てくる。これでは、私日本の役所として、国民の側から信頼されないということは非常に困る。言っているほうのことが理に合わないことなら、そんなものはどうでもいい。しかし
調査そのものに欠陥があるというなら、これはやはり十分尊重して、慎重に働ける場を与えなければならないわけですけれ
ども、働ける場を与えるなら、そこで十分働いてもらわなければ困る。
同じ司法警察官でも、警察の職員が現地でいろいろ
調査をするのに、おまえらの
調査要らない、これはこうきめようというきめ方ができますか。したとしても、それを適法であり、妥当な方法と考えられますか。再
調査をさせるというならわかりますけれ
ども、疑問を自分たちで判断をさせて
調査をさせない。こういうことでは筋が通らないじゃないですか。司法警察官としての役割りをどこも果たしているということにならないじゃないと私は思いますがね。
-
-
○加瀬完君 冗談じゃない。質問はあるのだよ、まだ。それなら質問するよ。何を言っているのだ。質問は保留しますと言ったじゃないか。そんなこと言うならやりますよ。
-
-
○加瀬完君 それでは五百五十
キロリットルしか出荷しなかったものが、どうして八百五十
キロリットルと記載されたのか、どう解釈したんですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) その辺は、先ほど申し上げましたように、推論の域を出ないわけでございますが、端的に申し上げますと、真野さんの話だけが八百五十ということになって、他の人は、先ほど言いました税関に提出された書類、それから第七ゼネラル丸を持っているその一ぱい船主ですね、第六太平丸を通じて油を給油して代金をもらうべき人、その人が五百五十五ということを言っているわけです。真野さんだけが八百五十だというので、何かのこれは間違いではないかということでございます。したがって先生のように、真野さん本人を呼んで確かめるというようなことが、一番確実だと思いますが、実はきのうもそういうことを考えたんですけれ
ども、ちょっと時間的な余裕がございませんでできません、ほかの税関に出された数字とかを調べて、真野さん以外はみんな五百五十とか五百五十五と言っておるということでございますので、これは真野さん本人を呼んで、これはまあ本庁よりもむしろ第三管区なり川崎海上保安署だと思いますが、そういうところに調べさせればこれはもっとはっきりすると思いますが、この点については、ただいままではちょっとそういう手当てございません。
-
○加瀬完君 ゼネラル丸の船主と言ったって、立ち会ったわけじゃないでしょう。船の船主が五百五十五トン積みましたと、八百五十トンではありませんという、何か証言の裏があるんですか。
-
○
委員長(
長田裕二君) 加瀬君に申し上げます。
内容に立ち入るつもりはありませんが、御質問の
内容に立ち入るつもりはありませんが、ただいまの御質問についての最終的な決定の場所はあるような感じもいたしますし、国会としても、国政
調査その他で、さらにまた御質問の場もあると思いますので、本件についての御質問は終了していただけませんか。
-
○加瀬完君 まだ残っていますよ。
まあ
答弁してくれ。
-
○
政府委員(野村一彦君) 再々申し上げますように真野さんの話、数字だけが八百五十であとはみな五百五十ないし五百五十五ということでございまして、この第七ゼネラル丸の船長もそう言っているわけです。それから税関に出した書類もそうでございますので、いまこの場で、何で八百五十ということになったのかということは調べるすべはございませんけれ
ども、ほかの数字がみな五百五十になっているということで、あるいは先生のおっしゃるように、それならなぜ真野さん本人に確かめないかとおっしゃればそれは確かにそうでございますので、それはまた真野さん本人に確かめる方法もあると思いますが、そういう
事情でございますので……。
-
○加瀬完君 だからあなた方は
会社側だといわれるんですよ。立ち会い人が八百五十
キロリットルと言っているなら、立ち会い人が間違いでないかどうかということを調べること先でしょう。船主なんかというのはお得意ですから、お得意が困るからこういうふうに口うらを合わせてくれと言えば、電報までやって、インド洋かどこか通っている船にまで打ち合わせをして隠蔽工作をしているという事実があるのです。雇用
関係のある船主と雇い主とが口うらを合わせるのはこれは当然ですよ。合わせ得ることが当然ですよ。
いずれにしても立ち会い人というものは重要な参考人でありますので、立ち会い人の意見も聞かないで一方的にどうこうというような調べをするということは、これは公平ではありませんよ。意見になりますから、あとは申し述べませんが、あなたのほうでは、
昭和四十六年十二月十五日付の千葉県知事友納武人あての鶴見輸送株式
会社横浜出張所の「明原丸洩油事故に関する御照会事項について(回答)」というもので、送油ポンプの能力、それからどの船がどれだけ給油をしたかというような一覧表が全部出ている。しかし給油時間が出ておらない。
千葉県側ですら、こういういろいろの
資料を取って、この給油量というものを調べておりますのに、そういう
調査をおたくのほうではしてないでしょう。
-
○
政府委員(野村一彦君) 給油量の
調査は先ほど申し上げましたように、私
どもとしては二つの計算の方法によって六〇四四という数字と、それから六〇七五という二つのトータル、二つの数字の
調査をいたしております。
-
○加瀬完君
資料をたくさん取ったかというんですよ。あなた方が判定しただけでしょう、
資料によって判定したんじゃないでしょう。繰り返すようですが、一番の重要な証拠は真野立ち会い人の供述ですよ。それ、とる気ないでしょう。だから、慎重に給油量について取り運んだと、いわゆる二・七
キロリットルではないと、相当量の油が出たんだろうから、その油は一体どのくらいだという究明に第一目標を置いてないということは明らかじゃないですか。
-
○
政府委員(野村一彦君) 再三申し上げますように、どのくらいの油が流れ出たかということは、これは非常にむずかしい問題でございますし、今後相当まあ長期にわたって調べなければならない問題だと思います。それを私
どもは、まあできる範囲でできるだけ努力しなきゃならないと思いますが、とにかく海上保安庁として、当時
事件が起こりまして、送致するまでにかなり日にちもたっておりますから、それを送致をして、そしてまた必要があればあとから追加をするというようなこともできたわけでございます、当時の
事情としては。また、いろいろ検察官等の
指示があればさらにあとで追訴するということもできるわけでございますが、そういうことで、できるだけの
調査はしますし、今後も、また必要に応じて検察官等の
指示があればやるわけでございますが、いまここで八百五十と五百五十の数字の違いということを明快に
答弁しろと言われましてもなかなかできませんので、その点は御了承いただきます。
-
○加瀬完君 初動
調査があなた方のほうでは怠られているんですよ。
事実
関係申し上げましょうか。東燃タンカーはどういう
会社ですか。事実
関係調べてあるでしょうね、お答えをいただきます。
-
○
政府委員(野村一彦君) 東燃タンカーは石油メーカーである東燃のいわゆる子
会社と申しますか、系列
会社であるというふうに承知しております。
-
○加瀬完君 これは東燃の一〇〇%子
会社ですね。ですから、東燃の都合の悪いようなことを東燃タンカーが証明することは不可能ですよ、これはね。
それでは、東燃タンカーは東燃のタンカーに関する一切の事務を行なっている
会社でしょう。しかも一〇〇%、資本は東燃ですね。明原丸はこの東燃タンカーとの間に十五カ年間の定期用船契約がある船でしょう。どうですか、これは。
-
○
政府委員(野村一彦君) 十五カ年の定期用船かどうか存じませんが、長期契約をもって東燃の油を運んでおるということは承知いたしております。
-
○加瀬完君 ずいぶんずさんじゃないですかね。東燃の物を運んだ明治海運が事故起こしてるんですよ。賠償責任は東燃にも及ぶかもしれないと予測される。東燃のタンカーのチャーター船である明原丸が、どうこれはつついたって東燃の不利なような証言をするはずないでしょう。こういう因果
関係というものをきめて、さきの電報云々も——まあ係争中のものですが、お答えいただかなければいただかなくてもけっこうです。
〔
委員長退席、
理事江藤智君着席〕
工作をしたのは明治海運だけじゃないでしょう、工作に乗っているのは。エッソも入っているんじゃないですか。東燃のさらに親
会社のエッソも入っているんじゃないですか。そうじゃありませんか。エッソの資本は半分アメリカです。
社長はだれですか、向こうじゃないですか、事実
関係言うと。民事の賠償責任も幾らか日本側が考えようとした事実はある。ところがエッソ側から押えられているんじゃないですか。だからよほど、
原因者の責任というものを明確に打ち出してもらえないとこの民事訴訟だって勝てないですよ。それが民事訴訟がなるかならないかの有力な判断を下すべき海上保安庁の
調査があいまいではどうにもなりませんよ。
こういう点で、先ほどから、私
どもは民事訴訟とか賠償責任に加担をしてくれと言っていない。事実
関係をはっきりきわめるのがこれは海上保安庁の責任だから事実
関係はっきりさしてくれ。流したのは明原丸だということはわかっている。じゃあ幾ら流したかということを、これだけ以上流したという推定を、はっきり出してくださいと言っても、それについてはさっぱり
返事がない。しかも二百三十八
キロリットルの違いというものは相当問題にしなければならないはずだのに、肝心かなめの証言もとっていない。警察が動くからとか検察庁の
指示があればということじゃないでしょう。汚濁防止の
実績がある。一体どの程度の油を流したかということを、推定だけじゃなくて把握は、これはおたくのほうの任務じゃありませんか。私も知っていますよ。海洋汚染防止法の一部分の問題を長々とやることは、これは当を得ていないかもしれませんけれ
ども、こういうところで声を大きくしてやらなくて、漁民の声をどこで一体発表できるんです。大会やったって、自民党の諸君も来ている、いろいろ政党の諸君来ている、激励はするよ。——根本的なこういう問題の解決はだれもやらないんです。それで海上保安庁は漁民のために海洋汚濁を徹底的に取り締まりますと言ったって、おかしなことを言うなと、こういう声になって返ってくる。それでは困りますから、もっとしっかりやってくださいとお願いしているんですよ。質問をやめろといえばいつでもやめる。
油は確実に、木更津の油と扇島のシーバースの油は同じです。十二月一日に流れ出した油は十二月四日木更津へ着きました、こうおっしゃってくれれば、あとは何も言いません。
〔
理事江藤智君退席、
委員長着席〕
-
○
委員長(
長田裕二君) 政府側に要望いたしますが、先ほどからの質問の中で、政府側としてなお考え、なお措置すべき事柄もあるのではないかというふうに考えますので、そういう点については、十分手を尽くしていただきたいと思います。要望いたします。
速記とめて。
〔午後六時二十分速記中止〕
〔午後六時三十二分速記開始〕
-
○
委員長(
長田裕二君) 速記を起こして。
本案に対する加瀬君の質疑は終了いたしました。
ほかに御発言もなければ、本案に対する本日の審査はこの程度といたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後六時三十三分散会
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