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1973-03-06 第71回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月六日(火曜日)     午前十時一分開議  出席分科員    主査 臼井 莊一君       伊能繁次郎君    塩谷 一夫君       湊  徹郎君    井岡 大治君       楢崎弥之助君    藤田 高敏君       山田 耻目君    横山 利秋君       谷口善太郎君    瀬野栄次郎君       田中 昭二君    山田 太郎君    兼務 江藤 隆美君 兼務 田中 武夫君    兼務 吉田 法晴君 兼務 青柳 盛雄君    兼務 正森 成二君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         人事院総裁   佐藤 達夫君         警察庁刑事局長 関根 廣文君         警察庁刑事局保         安部長     斎藤 一郎君         法務大臣官房長 香川 保一君         法務大臣官房会         計課長     住吉 君彦君         法務大臣官房司         法法制調査部長 味村  治君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省矯正局長 長島  敦君         法務省人権擁護         局長      萩原 直三君         厚生省公衆衛生         局長      加倉井駿一君         自治大臣官房審         議官      近藤 隆之君  分科員外出席者         警察庁警備局警         備課長     室城 庸之君         法務総合研究所         研究第一部長  木村 榮作君         大蔵省主計局主         計官      海原 公輝君         大蔵省理財局国         有財産審査課長 勝川 欣哉君         労働省職業安定         局業務指導課長 加藤  孝君         最高裁判所事務         総長      安村 和雄君         最高裁判所事務         総局総務局長  田宮 重男君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         最高裁判所事務         総局経理局長  大内 恒夫君         最高裁判所事務         総局民事局長         (兼)行政局長 西村 宏一君         最高裁判所事務         総局刑事局長  牧  圭次君         最高裁判所事務         総局家庭局長  裾分 一立君     ————————————— 分科員の異動 三月六日  辞任         補欠選任   福田  一君     宮崎 茂一君   楢崎弥之助君     井岡 大治君   北山 愛郎君     佐藤 敬治君   山田 太郎君     瀬野栄次郎君 同日  辞任         補欠選任   宮崎 茂一君     福田  一君   井岡 大治君     横山 利秋君   佐藤 敬治君     北山 愛郎君   瀬野栄次郎君     田中 昭二君 同日  辞任         補欠選任   横山 利秋君     藤田 高敏君   田中 昭二君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     山田 耻目君   渡部 一郎君     山田 太郎君 同日  辞任         補欠選任   山田 耻目君     楢崎弥之助君 同日  第二分科員田中武夫君、青柳盛雄君、正森成二  君、第三分科員江藤隆美君及び吉田法晴君が本  分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計予算裁判所及び法務  省所管      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和四十八年度一般会計予算中、裁判所所管を議題とし、最高裁判所当局から説明を求めます。安村最高裁判所事務総長
  3. 安村和雄

    安村最高裁判所長官代理者 昭和四十八年度裁判所所管予定経費要求額について、説明申し上げます。  昭和四十八年度裁判所所管予定経費要求額の総額は、八百四十六億三千三百八十九万一千円でありまして、これを前年度予算額七百三十五億三千七百一万四千円に比較いたしますと、差し引き百十億九千六百八十七万七千円の増加となっております。これは、人件費において六十三億六百四十三万五千円、裁判費において三億二千六百六万九千円、最高裁判所庁舎新営費において二十九億八千八百三十三万円、下級裁判所営繕費において一億四百九十八万九千円、その他司法行政事務を行なうために必要な旅費、庁費等において十三億七千百五万四千円が増加した結果であります。  次に、昭和四十八年度予定経費要求額のうち、おもな事項について説明申し上げます。  まず、最高裁判所庁舎の新営に必要な経費であります。  最高裁判所庁舎の新営は、三年計画で行なわれておりますが、その最終年度分工事費及び事務費として七十一億八千二百二万七千円、新庁舎備品調度品等を新たに取りそろえるため、備品費として六億一千四百五十五万六千円、合計七十七億九千六百五十八万三千円を計上しております。  次は、人的機構充実のための経費であります。  特殊損害賠償事件等処理をはかるため、裁判所書記官四人、裁判所事務官三十人の増員に要する経費として二千八十四万四千円、地方裁判所交通刑事事件すなわち業務過失致死傷事件の適正迅速な処理をはかるため、判事補三人、裁判所事務官二十四人の増員に要する経費として一千九百九十一万四千円、家庭裁判所資質検査の強化をはかるため、家裁調査官十人の増員に要する経費として一千百十八万九千円、簡易裁判所民事事件特則すなわち口頭受理の活用をはかるため、簡易裁判所判事四人、裁判所書記官四人、裁判所事務官二十四人の増員に要する経費として二千六百五十九万六千円、家庭裁判所充実強化するため、専任の家庭裁判所長を置く庁の増設一庁に要する経費として百十七万九千円、合計七千九百七十二万二千円を計上しております。  次は、裁判運営能率化及び近代化に必要な経費であります。  庁用図書図書館図書充実をはかる等のため、裁判資料整備に要する経費一億七千百三十四万四千円、裁判事務能率化をはかるため、検証用自動車等整備に要する経費一億百九十九万六千円、電子計算機による事務機械化準備のため、研究開発に要する経費一千六十七万五千円、合計二億八千四百一万五千円を計上しております。  次は、公害訴訟処理に必要な経費であります。  公害訴訟を適正迅速に処理するため、協議会を開催する等に必要な経費二千七百二万八千円を計上しております。  次は、裁判官海外視察充実に必要な経費であります。  裁判官海外視察等に必要な経費一千八百九十一万五千円を計上しております。  次は、下級裁判所施設整備充実に必要な経費であります。  下級裁判所庁舎の新営、増築等に要する経費として裁判所庁舎の新営及び増築すなわち新規五十二庁、継続十六庁に必要な工事費及び事務費等四十九億五千二百三十三万七千円を計上しております。  次は、裁判費であります。国選弁護人の報酬及び日当を増額するに必要な経費として六千五百九十四万二千円、証人等日当を増額するに必要な経費として四百七十七万二千円、合計七千七十一万四千円を計上しております。  以上が昭和四十八年度裁判所所管予定経費要求額の大要であります。  よろしく御審議のほどをお願いいたします。
  4. 臼井莊一

    臼井主査 以上で説明は終わりました。     —————————————
  5. 臼井莊一

    臼井主査 質疑の申し出がありますので、これを許します。青柳盛雄君。
  6. 青柳盛雄

    青柳分科員 最高裁判所お尋ねをいたします。  いつも二月から三月になりますと、例年のようにいわゆる再任新任の季節がやってまいります。一昨日も、裁判独立を守る国民会議の代表の人たち最高裁を訪れまして、今年度における裁判官再任あるいは新任について申し入れをしたようでありますが、その趣旨は、思想あるいは団体加盟理由とする差別的な扱いはしてもらいたくない、それは裁判独立を侵すことになるから、ということのようでございます。これに対して裁判所側の御返事は、私は直接その場に立ち合っておりませんので、伝え聞くところでありますが、思想によって差別はしない、また特定団体に加盟しているというだけの理由によっては差別的な扱いはしない、そういう御回答があったということでございます。それに間違いございませんでしょうか。
  7. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
  8. 青柳盛雄

    青柳分科員 それでは一つ一つお尋ねいたしますが、思想によって差別をされないというのは、憲法第十四条の規定からいいましても当然のことでございまして、あえてこれを問題にすること自体がおかしいようなものでございますけれども、有名な石田最高裁判所長官の数年前の憲法記念日にあたっての談話の中に、はっきりした共産主義者などは裁判官としてふさわしいものではない、つまり裁判官としての資格に欠くるところがあるような、もちろん、それは法的に適格条項に抵触するという意味ではないようでありますけれども、いずれにしても好ましくないという、別なことばで言えば、共産主義という思想を持っていることがはっきりしている人間は、世間では裁判官としてふさわしい人間とは見ないんだという、そういう趣旨の話があります。つまり、思想によって裁判官は、ふさわしいことにもなるしまたふさわしくないということにもなるんだ、こういうお話でございます。  これは一般の人々がどういう考えを持ち、またどういう発言をされようと、それは全く自由でございますけれども最高裁判所長官という地位にあられる方が公式に表明された発言でございますので、一定社会的評価をされる内容のものだと思うのです。つまり、裁判所に職を奉ずる者は、これにどういう意味かにおいて制約を受けるでしょうし、また、一般世論もこれに動かされるということは明白でございます。そうなりますと、思想によって裁判官の任用について何らの影響は受けないんだということとこれが両立するかどうか、この点について、まずお尋ねをしたいと思うのです。  つまり、繰り返して申しますが、思想によっては再任とかあるいは新任とかいうことは何ら影響されないんだ、その人間がはっきりした共産主義者であっても、別に再任されることの妨げにはならないし、また、新しく採用されることについても妨げにならないんだ、こうはつきりおっしゃるのかどうか、これをお尋ねしたいと思うのです。
  9. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 憲法の七十六条三項は、裁判官は、独立して、良心に従い、憲法及び法律にのみ拘束されて裁判を行なうというふうに規定をいたしております。裁判官として独立して、その良心——ここでいう良心と申しますのは、客観的な良心というふうに考えられております。私どもそのように考えております。そういった良心に従って裁判のできる方であるならば、具体的にその方が抱いておられる考え思想といったようなものがどうであろうと、そのことが直ちに裁判官適格というものに影響するものではない、私どもはこのように考えております。
  10. 青柳盛雄

    青柳分科員 実は数日前の衆議院の法務委員会で、同僚の共産党の正森委員法務大臣に質問をいたしました際に、法務大臣は、思想というものと良心というものと大体同じようなものと理解をしておられたようでございました。なお、これは別な機会に田中法相によくお聞きしたいとは思っておりますけれども、いま矢口人事局長は、憲法にいわれる良心というのは客観的なものであると言われたので、それはまあ客観的なものでなければならないと思いますけれども、客観的であれ何であれ、憲法がいう良心というのは、思想つまりイデオロギーとは無関係ではないどころか、むしろ同じものであるような理解の御発言でございました。つまり、裁判官憲法法律にのみ従属し拘束され、そして独立して職務を行なうということの基本に思想があるんだ。つまり田中法相の見解では、思想の中には右に偏したものもあるし、左に偏したものもあり、そしていずれにも偏しない中正な中立なものもある。で、裁判官思想は、その中立のもの、中庸のものが一番いいんであって、左に偏したり右に偏するような思想を持っている者、そういう人の良心というものは、つまり右に偏した判決あるいは左に偏した判決をする結果になるんだ。いわゆる俗にいわれる偏向判決というものがあらわれてきて、これは圧倒的多数の中立考えを持っている国民の期待に沿うものではないというようなお考えのようでございました。  おそらく、法の運用憲法理解のしかたというようなものは、人間がやるわけでありますから、その人の思想のいかんによっては理解のしかたが違うし、したがってまた運用も異なってくる。だから、右に偏した人間憲法解釈は、中立の人の憲法解釈とは違うんだ。一つの例で言いますと、憲法第九条は、軍国主義を絶対に許さないというふうに、だれが読んでも読めるわけだけれども軍国主義者から見れば、これは違うんだ、外国から攻められてきたときには、自国の独立、主権を守るためには、これを防衛するための軍隊を持つこともできるし、また自衛のための戦争も禁止したものではないという、こういう解釈ができるんだ。これは軍国主義者考え方、つまり軍国主義的な思想を持っていればそういう解釈が出てくる。ところが、これに反して、平和主義的な考え方を持っている人から見れば、文字どおり、これは自衛軍隊といえども持つことはできないし、自衛のための戦争も放棄をしているのだ、こういうふうに読む以外にはない。それがほんとうに平和を守るのに役立つか役立たないかということは、その人の考え方によって違います。たとえば、ある党のように、非武装中立が完全に平和のために役立つのだという考え方を堅持していることもできるでしょう。しかし、また他の党になれば、いや、それは全く夢のような話であるという議論にもなります。  裁判官でも同じように、憲法理解のしかたは思想によって異なるということはあり得ると思うのであります。それが即良心ということであるならば、やはり思想によって裁判というものが、俗に偏向的な判断を基礎に持って偏向判決になるのではないか、こういう議論になってまいりまして、田中法務大臣はそういう意味において、まあ田中法務大臣程度人間では、その自分考え独立して、憲法法律を純粋に守っていく、つまり自分考えはこうだけれども解釈は別なんだ。もっとわかりやすいことばで言うならば、左に偏した考えを持っているけれども、そういう思想を持っているけれども憲法を中正の立場解釈し、法律も中正の立場運用する。事実認定もおそらくその思想を純粋化して、右のほうに都合のいいような解釈あるいは認定、左のほうに都合のいいような認定はしない。証拠の取捨判断ですね、これも中正に行なう。そういうことのできる人は非常に少ないのだという、そういう議論であったように思います。  これは、その席に矢口人事局長もたしかおられたと思いますので、あの御意見を聞いておられたと思いますけれども、このような議論最高裁判所のほうでは正しいものとお考えになるかどうか。  繰り返して申しますが、憲法にいう良心というのは、右にも偏しない、左にも偏しないというものでなければならないのだ、また、そういう思想の持ち主でなければ、裁判官としてはやはりふさわしくないのだという、思想を結局は問題にしているような議論だったと思いますが、ことばの上では、思想を問題にするとはおっしゃらなかった。つまり、中立考えを持った人がふさわしいのであって、左や右に偏した者はふさわしくないのだ、こういう考え方でございました。結局、思想を問題にしているとわれわれは解釈せざるを得ないのですが、このような変わった形でも、やはり一つの主張でございます。思想を問題にしないとは言いながら、実際は、右に偏したり、左に偏したりしている人間裁判官としてふさわしくないのだ。また別なことばで言えば、納得のいくような裁判をしてくれるという、まあ考え方を持っている人が国民大多数の好む裁判官である、こういうことのようでございましたが、この点どうお考えになるか、お答え願いたいと思うのです。
  11. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 過日の法務委員会における田中法務大臣の御発言の際には、私も拝聴をいたしておりました。大臣の御発言につきまして、いまここで私の感想を申し上げるということはいかがであろうかという気がいたしますので、その点は差し控えさしていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、憲法七十六条三項の良心というものはやはり客観的なものでございまして、そのような客観的な良心に従って裁判のできる方であるならば、私は、裁判官として十分の適格をお持ちになっておる方であると考えます。  ただ、もっとも裁判と申しますのは、それが具体的に行なわれるにあたりまして、客観的に中立、公正でなければいけないということと同時に、そういうふうに行なわれておるというふうに国民全体の方がごらんになっていただく、裁判をそういう意味で御信用いただくというものでなければいけないと、日ごろから考えているわけでございます。そういう点について疑惑を招くおそれがあるということになりますと、これはやはり裁判官としては十分考えて身を処していかなければいけない問題であろうと思います。私どもは、これをこれまで裁判官モラルの問題として、できるだけ公正、中立であるように、また、そう見えるようにしなければいけないということを申してきたわけでございます。しかし、それはあくまでモラルの問題でございまして、裁判官適格性の問題といたしましては、ただいまお答えを申し上げたように、客観的な良心というものによって裁判のできる方であるならば十分であろうと、このように考えております。
  12. 青柳盛雄

    青柳分科員 私の考えを簡単に申しますと、どのような思想を持っておりましても、憲法あるいは法律というものが厳然としてある以上、その解釈をかってにねじ曲げて、白いものとして規定されているものを黒いというふうに詭弁を弄して判断をする、そういうことがまかり通るということは考えられない。一定体制の中で裁判というものが行なわれる以上、その体制が変わらない限り、例をたとえて言うならば、いまの資本主義社会に適用している法律憲法、こういうものがある。その機構の中で共産主義者が動くという場合に、まさか、この資本主義体制の中で通用している法律自分の好きなように、共産主義的にねじ曲げて解釈運用をするというようなことが、その体制の中で通るはずがない。通らないように体制というものができているわけなんです。だから、そういうことができるのだ、あいつはにこにこした顔をして、憲法法律を守るような顔をしているけれども、腹の中はこれをぶちこわすつもりなんだから、何らかの形でぶちこわすようなことをやるんだろう、まあ、こういうふうな間違った考え功がまかり通ろうとしておりますけれども、これは全く正しくないことであることは言うまでもありません。  そこで、はしなくも、世間の人が見て公正、中立裁判をしているというふうに理解のできるような外形を整えなければいかぬ、実質はまさに中立、公正にやっているんだけれども、はたから見ればそうは見えないような、いわゆる虚構の「らしさ」ではなくて、真実をあらわすような外形をも整えることが裁判の場合は必要なんだ——これは裁判だけでなくとも、私はそういうことは必要だと思うのですが、そのことに先ほどもちょっと言及され、それはモラルの問題であると言われましたが、やはりこれも有名な岸事務総長談話で、政治的な色彩のある団体裁判官が加入しているということは、その裁判の公正を疑われる危険性がある、つまり公正らしさを持たないから好ましくないという趣旨お話がありました。これが、いわゆる青法協裁判官あるいは司法修習生再任しなかったり、あるいは採用しなかったりする重要な理由実質上なっておるのではないか。表面はそういうことはないと言われても、実際は、やはり青法協という団体政治的色彩がある、どちらかというと左翼的な色彩がある、こういう色彩のある団体裁判官あるいは裁判官となろうとする者が、所属している場合には、その人の行なう裁判は公正らしさを世間から疑われる、公正であることを疑われるという議論、したがってそれは好ましくないということになるような談話でございました。  これは、それより前に、朝日新聞や読売新聞あたりが社説を書いて、全く同趣旨議論一般に広めておった際でございまして、おそらくそういう、いわゆるマスコミに乗った発言であったかもしれないというふうに私は理解するのでありますが、それは単なる個人的な談話でないことは、この前申しました石田最高裁長官の場合と同じでありますけれども、その後の国会での最高裁責任者の答弁を聞いておりますと、青法協会員であるということだけでは差別はしない、それだけではというところにだいぶ重点があったようでございます。少なくとも私どもはそういうふうに理解しました。  そこで、だけではということを裏から解釈すれば青法協会員、つまり政治的色彩のある団体に加入しているということのみをもって採用あるいは再任を拒否するというのではない。ほかにある。ほかにはあるけれども、では青法協会員であるということは全然無関係かといえば、どうも無関係ではない。つまり、特定団体に入っていることは再任新任拒否原因の中に含まれるというふうに答弁されておるように思うわけです。そうなりますと、先ほどの、ことしの新任再任について、特定団体に加入しているということは差別理由にならない、つまり新任再任を拒否する理由にはしないというのと矛盾をするような感じもいたすわけでありますが、この点ひとつはっきりお答えを願いたいと思うのです。
  13. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、裁判官再任問題、あるいは新規採用の場合におきましても同様でございますが、その方が抱いておる思想信条もしくは特定団体に加入しておるということ、そういうことによって新任再任等につきまして差別をすることはしないということを申し上げたわけでございます。  ただいまお尋ねの、青法協会員であるということだけで差別をすることはいたしませんと、従来お答えいたしておるわけでございますが、それは、前にもこの点につきまして青柳委員にもお答えいたしたかと思っておりますが、元来、人事の問題は、こういう理由採用いたしませんとか、こういう理由採用いたしますとかいうふうに、理由を申し上げるべき性質のものではないと考えておるわけでございますが、あまりにも青法協会員という理由差別をしたのではないかというような御疑念が強うございますので、青法協会員であるというだけの理由でやったものではないということを、消極的に最少限度打ち消した。まあそういうことによって理由の一端を述べたということになるのかもしれませんが、あまりにも青法協会員であるということでやったんだというふうな御疑念がございましたので、それを打ち消すために申し上げたことでございまして、原則は、冒頭申し上げましたように、思想信条あるいは特定団体加入理由にして採否をきめるようなことは一切いたしておりませんし、今後もいたさないということでございます。
  14. 青柳盛雄

    青柳分科員 聞くところによりますと、明日あたり最高裁判所裁判官会議をお開きになって、十五期の裁判官再任請求といいますか、判事へ任官を希望する者の審査を行ない結論を出す、あるいは十四日に延びるかもしれないというような話があります。また今月の末ごろには、二十五期の司法修習生の中から判事補を希望している者に対する採否の決定をされるということだそうでございますが、一般的には、いま申しましたような思想信条あるいは特定団体加入、これが一応問題にされるのではないか。ただ十五期については、いままでマスコミあたりが情報としてとっておるところでは、再任を拒否される方とか、あるいは再任を辞退される方もなさそうでございますので、あまり問題はないかもしれませんけれども、二十五期の修習生の中からは、また引き続き何名かの新しい採用を断わられる者があるのではないか、こういうふうにうわさされておるわけです。昨年の場合もそういうことがありましたし、もちろんその前もありました。  ただ、一つだけお尋ねしておきたいのは、事を荒立てないという意味かどうか知りませんが、結果的には荒立てたことになるのですけれども、辞退を勧告するという、要するに新任希望を思いとどまらせるような工作が、事務総局から、あるいは教官を通じてなり行なわれるようなことが昨年もありましたけれども、そういうことが結果的には拒否になるということだと私は思いますので、そういうことがことしも行なわれる可能性があるのかないのか、それだけお尋ねしてやめにいたします。
  15. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 新任問題につきましては、まだ今日現在、いわゆる二回試験をやっておる最中でございまして、その試験が終わりまして、採用の面接をいたすわけでございます。その結果を総合いたしまして採否をおきめいただく段階でございます。今日において辞退を勧告するとかしないとかいうようなことは、まだ考える段階にも至っていないわけでございます。何とも具体的にはお答えのしようがございません。一般論といたしましては、ただいま青柳委員からお話しになりましたような、そういうことが好ましくないではないかということでございますれば、私ども昨年いたしましたようなことは一切いたさないで、客観的に出てきましたところによりまして、最高裁の十五人の裁判官の慎重な御協議によって採否をおきめいただくというふうに取り計らいたいと考えております。
  16. 青柳盛雄

    青柳分科員 終わります。
  17. 臼井莊一

    臼井主査 以上で裁判所所管の質疑は終了いたしました。     —————————————
  18. 臼井莊一

    臼井主査 次に、昭和四十八年度一般会計予算中、法務所管を議題とし、まず政府から説明を求めます。田中法務大臣
  19. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 昭和四十八年度法務所管予定経費要求の内容につきまして、大要を御説明申し上げます。  昭和四十八年度の予定経費要求額は千四百五十億九千二百三十八万三千円でございます。前年度予算額千二百九十七億八千六百九十万九千円と比較いたしますと、百五十三億五百四十七万四千円の増額となっております。  増減の詳細は別途の資料によりまして御承知を願いたいのでありますが、その内容を大別して御説明いたしますと、第一に、人件費関係の増百十二億二千五百四万二千円であります。これは、公務員給与ベースの改定等に伴う増額分、昇給等の原資としての職員基本給及び退職手当等の増額分がおもなものでございますが、そのほかに、副検事、法務事務官等七百二十四人の増員に要する人件費が含まれております。  ここで増員の内容について申し上げますと、交通事件、公安労働事件、公害犯罪等の増加に対処するとともに、公判審理の迅速化をはかるため、副検事五人、検察事務官百四十人、それから、登記事件、国の利害に関係のある争訟事件及び人権侵犯相談事件の増加に対処するため、法務事務官二百九十一人、なお、刑務所における看守の勤務条件の改善と医療体制充実をはかるため、看守百五十七人、看護士、これは婦人でございますが、十二人、なお、非行青少年対策を充実するため、少年院教官二十八人、少年鑑別所教官十七人、保護観察官二十二人、なお、出入国審査及び在留外国人管理業務の増加に対処するため、入国審査官二十一人、入国警備官三人、また、暴力主義的破壊活動に対する調査機能を充実するため、公安調査官二十七人、それから、司法試験事務の増加に対処するため、法務事務官一人となっております。  他方、昭和四十六年の閣議決定に基づく定員削減計画、これは第二次でございますが、これによる昭和四十八年度削減分として六百三十四人が減員されることになりますので、これを差し引きますと九十人の定員増加となるわけでございます。  第二に、一般事務費の増二十八億四千七百六十七万六千円であります。これは、事務量の増加に伴って増額されたもののほか、積算単価の是正、職員の執務環境の整備改善及び保護司実費弁償金の単価引き上げに伴う増額分等でございます。  第三に、営繕施設費の増十二億三千二百七十五万六千円であります。これは、法務合同庁舎等施設の新営費等が増額されたものであります。  次に、おもな事項の経費について概略を御説明申し上げます。  第一に、法務局、地方法務局において登記、供託、戸籍等の事務を処理するために要する経費として二十二億七千七百四十九万六千円、第二に、検察庁におきまして刑事事件を処理するための検察活動に直接要する経費として十一億七千四百二十二万四千円、第三に、拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院の被収容者の衣食、医療、作業等に要する経費として九十二億二千九百六十四万四千円、第四に、保護観察に付された少年等を更生せしむるための補導援護に要する経費として十八億三千八百九十四万三千円、第五に、出入国の審査、在日外国人の在留資格審査及び不法入国者等の護送、収容、送還等を行なうのに要する経費として二億一千六百八十五万七千円、なお、外国人登録法に基づき、在日外国人の登録及び指紋採取の事務を処理するために要する経費として三億五千二百五十二万二千円、第六に、公安調査庁において処理する破壊活動防止のための調査活動等に要する経費として十三億五千七百四十六万一千円、第七に、法務局、検査長などの庁舎及び刑務所、少年院等の収容施設の新営整備に要する経費として七十二億四千八百二十七万五千円が計上されております。  最後に、当省主管歳入予算につきまして一言御説明申し上げます。  昭和四十八年度法務省主管歳入予算額は五百十億二千五百一万六千円でありまして、前年度予算額三百四十九億八百二十万八千円と比較をいたしますと、百六十一億一千六百八十万八千円の増額となっております。  以上、法務省関係昭和四十八年度予算案につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  よろしく御審議を賜わりますようお願い申し上げます。
  20. 臼井莊一

    臼井主査 これにて説明は終わりました。     —————————————
  21. 臼井莊一

    臼井主査 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中武夫君。
  22. 田中武夫

    田中(武)分科員 きょうは私は、人身といいますか、人権といいますか、これがはたして守られておるかというような観点から、いろんな問題を取り上げて御意見を伺いたい、このように考えるわけでございます。  まず第一に、最近の世相と人権問題とでも申しますか、もう一々、具体的な事件については申し上げませんが、ここに二、三の新聞の切り抜きを持っておりますけれども、実の母親がめんどうを見るのはいやだというようなことで自分の子供を殺す、あるいはまた、内縁の夫が妻の連れ子を、ちょっとしたそそうをせっかんして死に至らしめる、こういったような事件は枚挙にいとまありません。かと思うと捨て子ラッシュでございます。  いまここに、東京都民生局の調べた都内における捨て子の、これも東京都民生局でわかっただけなんですが、四十五年度で六十七人、四十六年度が七十七人、そして四十七年度は十二月までにすでに九十名をこしております。ことしに入りましてからでも四人の子供を街頭に、そして二人をうちにというような捨て子事件がございました。それで父親は自殺未遂というような事件もございました。そうかと思うと、お年寄りやあるいは幼い子供が、これまた火事のあるごとに死んでおる。かと思うと、また孤独の老人が死後何日間も発見せられずに置かれたというようなこと、あるいは八十歳を過ぎる姉が死んだ、これまた七十歳をこえる妹が身体が自由でない、そのまくら元で何日間を過ごした、こういうような事件は、毎日のように新聞の社会面に出ております。まさに幼児と老人の残酷物語であり、受難の時代だと思います。これが経済大国日本の暗い一面であります。  そこで、人権擁護の立場にある法務大臣、一方においては経済大国、経済成長を誇っており、円が外に対しては強いといって批判を受けるような、この日本においてこういった暗い面がある。これには社会施設、社会保障の不十分というかお粗末等に大きな原因があろうと思いますが、きょうはそういうことを論議しようとは思いません。人権は守られておるのかという立場から、法務大臣、どのようにお考えになりますか。
  23. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 ただいまの御意見を総合いたしますと、人権の侵犯が容易ならざる状態に立ち至っておりますという感じがいたします。そこで、根本的対策といたしましては、何といたしましても国民全体に自由人権思想をしっかり高揚いたしますこと、これは、法務省が人権擁護局を持っております大事な任務の一つでございます。事あるたびごとに人権擁護の立場に立ちまして、自由人権思想の高揚ということにつとめてまいりまして、その精神が全国民に徹底していくということがその基本的対策の問題になろうと存じます。具体的な人権の侵犯問題につきましては、あるいは訴えを受け、あるいは親告を受け、あるいは職権を発動いたしまして、具体的な事案につきましては、あとう限り人権擁護につとめていかなければなりません。基本的問題としましては、自由人権思想をしっかり高揚して、国民にこれを認識していただくということに持っていかなければならぬもの、こう考える次第でございます。
  24. 田中武夫

    田中(武)分科員 私は、きょうは、実は国家権力あるいは国家公務員その他によって人権が侵されておるというような事件、問題をたくさんここに用意してきております。しかし、それを具体的に言う時間はございません。そこで、まず項目をあげて、言うならばきょうは総論的に申しまして、各論は予算委員会が終わったらまた法務委員会でも、差しかえて参りまして申し上げたいと思います。  その一つに、まず別件逮捕の問題がございます。  私は、いまここに戦後の別件逮捕が大問題となったような事件、たとえば古くは帝銀事件から免田、松川、あるいは仁保、狭山、そうしてまだ捜査中である三億円事件に至る十三件にわたる別件逮捕が問題になりました記録、並びにこのようにその担当弁護人のいろいろな報告をまとめたものを持ってきております。  この別件逮捕が捜査上便宜的に使われておるということは、きょうは警察庁も来ていただいておりますが、お認めになると思います。しかし、私はここで捜査についてとやかく申すわけではございませんけれども、よほど気をつけなければ、これが人権侵害になる。しかも乱用された別件逮捕は、人権侵害であるといいますか、あるいはそれに基づく自白の問題等につきまして、いろんな判例も出ております。現に捜査中の三億円事件を除きまして、一々申しませんが、十三件のうちで最終的に無罪が決定したのが八件、係争中のもの、狭山ですが、これが一件。そういたしますと、あと死刑を含めますが、有罪判決となったのはわずか三件ということです。それがなお今日尾を引いていろいろと再審請求等々で争われておる。かりに最終的に無罪になっても、青春期あるいは人生の大半を被告という極印を押されて人生を渡らねばならない運命に置かれた人たち、あるいはその身辺、ことに身内とか親戚とか等々の人たちが、どれほど迷惑というか世間を狭くして世渡りをしなくちゃならないか、これはよくおわかりだと思います。  もう憲法三十三条をあげるまでもなく、また刑事訴訟法二百十条以下をあげるまでもなく、現行犯以外は令状をもってしなければならないことは、もう法学博士の大臣でございますから十分御承知のとおりであります。憲法では、現行犯と資格ある裁判官の出す令状以外には逮捕できないことになっておる。それを刑事訟訴法では若干幅を広げまして、準現行犯、緊急逮捕というのがある。これも憲法上問題になっておる点なんです。そういうような点について、これはむしろお得意だと思いますが、ここで、その問題で刑事訴訟法と憲法の関係を私は議論をしようとは思いませんが、まず感じだけでよろしい、どのようにお考えになりますか。単に便宜的に別件逮捕が行なわれておる、そして憲法と刑事訴訟法との違い等についてのお考えをお伺いいたします。
  25. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 まず別件逮捕でございますが、別件逮捕の場合に、AならAという犯罪事件を取り調べております最中にB犯罪、C犯罪というものが自然に浮かんできた、こういう場合は問題はないと思いますが、先生のおことばで別件逮捕と仰せになるのは、大事件の証拠があがらない、そこで、それは見込みで小さい事件をとらえてこれで逮捕をする、そしてその小さい事件で調べ上げながら大きな事件をねらうという捜査のやり方、この捜査の立場から申しますと、たいへん苦心をして捜査に従事しておるということが言えるのでございますが、この場合の仰せになります別件逮捕というもののやり方は、よほどこれを考えなければならぬ。簡単にこれをどんどんやっていくということになりますと、それ自体が人権侵犯になるおそれがあるということでありますので、この捜査のやり方は深く反省を要するものであるという考え方でございます。  それから、先生仰せの緊急逮捕の問題でございますが、これは憲法三十三条には明白に、この形式の上からはぐあいが悪い。令状なくして人を逮捕する、許すべきことではないのです、憲法の明文では。しかるに、やむを得ざる重大事件があります場合においては、令状の準備のできるまで緊急逮捕を許すという条項が、御承知のように刑事訴訟法にございます。これは、本来の基本的人権の上からは許すべき筋のものではないのでありますけれども、許すべき筋のものでないということは憲法十一条によって明瞭に規定してあるところでございますが、またすぐその隣の憲法十二条の条文によりますと、右に与えてある基本的人権というものは公共の福祉のために制限されてもやむを得ないことがあるのだという意味規定憲法十二条にございますので、その憲法十二条の精神にのっとって、刑事訴訟法においては緊急逮捕、非常に重要な緊急を要する場合にこれを許すという意味規定があるわけでございます。それをよいことにして緊急逮捕、緊急逮捕とやったのでは、これまた別件逮捕の場合と同様に、先生御心配のごとくに、人権侵犯のおそれがどんどん出てくるということでありますので、そういう意味のやむを得ざる緊急逮捕をいたしました場合は可及的すみやかに令状の準備をする、そして成規の令状による逮捕に切りかえる、こういう努力をもっと深刻に捜査官がこれを考えてやっていくようにいたしませんと、人権侵犯が起こるおそれがある、こう反省をする次第でございます。
  26. 関根廣文

    ○関根政府委員 別件逮捕につきましては、ただいまお説がございましたとおり、私どものほうも同じ考えでございます。と申しますのは、別件逮捕は慎重にやらなければ人権侵犯になるということでございまして、大きな犯罪がある場合に、取るにも足りない小さな犯罪で身柄を拘束し、身柄拘束中ほとんど、小さな事件を調べないで大きな事件の調べに当たる。あるいは別件事件そのものにつきましては、起訴価値等がある事件でありましても、その後の勾留期間中、その調べをほとんど他の大事件に当てたというふうな調べ方、これを私どもは、やってはならない別件逮捕というふうに考えておりまして、そういうふうな捜査の手法はとるべきではないという考えでございます。
  27. 田中武夫

    田中(武)分科員 先ほど申しました、わずか私が拾った十三件のうちで、まだ捜査の続けられておる三億円を除いて十二件、うち有罪、死刑を含んで確定したのがわずか三件といった、その一つに、これは古い話ですが、帝銀事件がございます。ところがこの犯人ということで死刑の宣告を受けました平沢は、最高裁で死刑が確定したのが三十年、宮城刑務所に移されたのが二十五年、拘置日数九千日以上に上回っております。その間に、現在二月の十八日で八十一歳を迎えたわけであります。そして再審申請すること十六たび。この点などについても、これは人生の大半が刑務所において送られた。死刑判決を受けたらすぐに執行せよとは私は申しませんが、これには何か裏があるのじゃないかというようにだれも思っております。この十六回目の再審請求が四月ごろか、近く結論が出るやにも伺っておりますが、簡単でけっこうですから、このような点について法務大臣どうお考えになりますか。
  28. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 これは二十年近く——確かに確定をいたしましたのが昭和三十年かと存じます。したがって二十年近くも長引いておりますので、裏があるのではないかというふうにお考えになるのも無理はございませんが、これは裏はございません。長引いております理由は、先生十六回と仰せになりましたが、正確には十四回は再審でございます。それから三回は恩赦願いでございます。恩赦を入れますと十六、七回でございます。  それで、ちゃんと法律に明文がございまして、死刑は、判決が確定いたしましてから六カ月以内に法務大臣が判こを押さなければならぬということになっておりますけれども、ただしという条文がありまして、ただし恩赦の願いであるとか、再審の申し立てであるとか、非常上告の申し立てであるとかいうような救済方法を申し立てました場合は、その申し立て事件が結論の出るまでの期間は六カ月に算入せない、それは別だという規定になっておりますので、そういうことで延びておるのでございまして、一切裏はございません。  八十一歳にもなっております。大いに同情はいたしておりますが、しかし、同情と処刑は別のものでございますので、厳格なる態度で善処をする考えでございます。
  29. 田中武夫

    田中(武)分科員 それでは再審請求としては十何回目ですか、いま現に行なわれておるのは。
  30. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 十四回目です。
  31. 田中武夫

    田中(武)分科員 十四回目ですか。これはもう近く結論が出るようですが——これは期間はいいですかな、やめておきましょう。三権分立を基礎としてやかましく言っておる私ですから、ここでやめておきましょう。  それでは今度は、一番最近のまだ捜査中の三億円事件。五年以上たちました。その問に容疑者が八万八千人、情報提供というか、これが一万七千人、だがいまだに有力な手がかりがない。これは、名前はわかっておりますが、Kということにいたしましょう。このKという青年を、二年余り前のいわば日常のトラブルの域を出ないようなちょっとしたトラブルの問題を、脅迫事件として立件し、そうして脅迫罪ということで逮捕をいたしたのであります。ところが、明白なアリバイがあったので釈放せられた。お互いに常に法的にアリバイを立証できるような生活をしておるかといったら、そういうものではないと思います。もしかりに、不幸にしてその時間に明白なアリバイを立証することのできないような場合があったとするなら、これはたいへんではなかったか。もしこの青年が、そのことによって三億円事件の容疑者というか、重要参考人というか、と目されたというだけでどれだけの迷惑を受けたか。あるいは就職、結婚等々について親戚縁者がどれだけ被害を受けたか。言うならば人権侵害でございます。  このようなことについて、むしろこれは捜査の段階でございますので、警察庁当局へお伺いいたします。どう考えられるか。と同時に、時間的な問題がありますから、簡単でけっこうです、三億円事件の現状はどうか。捜査の秘密まで私は追及しようと思いませんから、その点を、簡単でけっこうですから御報告願いたいと思います。
  32. 関根廣文

    ○関根政府委員 三億円事件そのものにつきましては、すでに何年か前の事件でございますが、その詳しい状況については、お互いに了解しておるという前提でお答えを申したいと思うのでありますが、当時脅迫事件で、いま申されたKという被疑者を逮捕した、その逮捕した段階あるいは逮捕する直前から、新聞報道でKが三億円の被疑者であるかのごとき報道がなされまして、Kの人権の問題あるいは警察の逮捕のあり方という問題につきまして種々論議を呼んだものでございます。  当時の警察庁刑事局長は、新聞報道機関に答えまして、逮捕の原因となった脅迫事件は三億円事件の捜査過程で探知されたものであり、その逮捕そのものにつきまして、逮捕状の請求の可否につきましては議論の分かれておるところでございますけれども、具体的容疑は、鉄棒やほうちょうで人をおどかしたという事実があり、これは必ずしも軽微なものとは言えない、逮捕の要件を満たしておるものであるから、その限りにおいては違法な逮捕とは言えない、やむを得ないものである、というふうな見解を表明しております。  その後、この事件が検察庁で不起訴になりました。私はそういう点を総合いたしまして、現在から考えると違法性ということにつきましてはこれは容認できるといたしましても、逮捕の妥当性という点から考えますと、現在では妥当性を欠くものであるというふうに考えております。したがいまして、あのような、非常に国民の関心の中で新聞に報道したことがどうかこうかということが言われましたけれども、報道については、報道される危険性は多分にあるという影響力の大きい事件の捜査にあたりましては、やはり普通であれば違法であるとして逮捕できる事件でありましても、もっと慎重に検討をすべきであったんじゃなかろうかというふうに考えております。  その後の三億円の事件の捜査につきましては、現在なお多数の情報がございまして、警視庁におきましては専従班を置きまして捜査中でございまして、具体的に早急に検挙する、できるという材料があるというふうには聞いておりませんですけれども、さらに鋭意捜査をしておる状況でございます。
  33. 田中武夫

    田中(武)分科員 最初申しましたように、この点だけでも一時間ぐらいの論議をしたいのですが、総論的にきょうは行ないますので、答弁は議事録に残っておりますので、あらためてほかの場所でやります。  次に、やはり人権問題として考えられることに誤認逮捕、誤認手配というのがあります。最近警視庁が大失態を演じた。これは申し上げるまでもなくおわかりだと思いますが、全く別人を状況判断だけで全国手配をやった。新聞、テレビがこれを協力という意味において流した。ところが、全然別人であった。それに対して警視庁の刑事部長は、状況証拠としては十分であったが云々という談話とともに「取りあえず見舞い金を」と、こういうような談話が出ております。  この問題につきましても簡単に片づけるべき問題ではない。だが、これも総論的に申し上げるにとどめるということできょうはやっておりますので、こういうような誤認逮捕、具体的には最近起こった新聞の記事の見出しだけ見ても「別人をお茶の間手配」、「大失態軽率警視庁」、「証言だけで強盗犯に」といったような当時大きな見出しで新聞に出ております。これも大きな人権侵害であり、本人を含む身辺の人たちに大きな迷惑を与えた事件です。こういうような点について、人権という上に立ってどうお考えになるか、法務大臣及び警察庁の刑事局長さん、簡単でいいですからお答え願います。たくさんあるんです。考えられるすべてをあげていますから。持っていますから……。
  34. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 人権という立場から申しますと、まことに遺憾な事件である。申しにくいのでございますが、そう考えます。
  35. 関根廣文

    ○関根政府委員 申しわけございません事件でございます。ただ、私どもの見解を一吉申し述べさしていただきたいと思いますが、公開手配という捜査のやり方でございますが、被疑者の顔写真をポスター、テレビ等で一般に広く公開する(田中(武)分科員「いや、ぼくはそれは否定しているんじゃありませんよ。」と呼ぶ)そのしかたは非常に慎重を期さなければいけないという観点から努力しておりますが、間違い、ミスを犯したという点につきましては、全く申しわけございません。  ただ、状況証拠によるというふうにおっしゃられましたので、その点だけ一言説明をさせていただきたいと思うのでございますが、この事案は四十六年十二月二十四日の昼前に、西池袋の会社経営者の家に二人組の賊が押し入りまして、留守番中の奥さんにくだものナイフを突きつけて現金三十万円余りを奪ったという強盗事件であります。被害者の証言から、この犯人は被害者の会社でそれ以前約一年間働いておって、事件の三日ほど前にやめた男であるということがわかったわけでありまして、加害者についての面識は、この被害者の関係者は非常によく知っておるという点が一つございました。ところが、その男の住所や本名がわからないという状況でありましたので、写真による面割りの手法という捜査のやり方をやったわけでございます。写真を幾つか提示いたしまして、それから関係者すべてが、今度間違っていた男に間違いないという写真を指摘したということでありまして、関係者の証言という点につきましては全く一致した。  もう一つは、あとは警察の考え方でありますが、その男はかつて、元勤務先でこの事件と同じような手口の事件を行なったこと、間違われた男でありますが、この事件と同じような手口の事件を行なっておる。また、その男は北海道出身者であり、この事件の犯人も、北海道に行く金がないから北海道に行く金を出せと言って被害者を脅迫したということでありまして、そのほかに指紋とか遺留品からの確認はできませんでしたけれども、これを犯人であるというふうに断定して逮捕令状をとったということでございまして、私は、逮捕令状をとる疎明としては、通常この程度で十分であるというふうに判断いたします。  しかしながら、逮捕令状をとった被疑者の手配、しかも顔を出しての公開手配、この段階につきましてはもう一つ慎重を期して、本人に間違いないということを確認してその上で公開手配をすべきである、こういうふうに考えておりまして、その点につきましても、警視庁のほうにおきましては、関係者の責任を追及いたしまして内部処分はしておるという状況で、きびしく反省をいたしております。
  36. 田中武夫

    田中(武)分科員 状況証拠によって云々ということは、当時警視庁の刑事部長が言っておることを言ったわけですよ。新聞にその談話が出ておるわけです。しかし、論議は後日に譲ります。  次に考えられることは、刑務所、拘置所、留置場等において、はたして留置、拘置あるいは受刑者の人権が守られておるかどうか。私は、いまここに、例の一月一日に自殺をした森被告について云々しようとは思いません。しかしながら、これらのところは外部から遮断をせられているいわば密室であります。したがって、その当時の事情を世間というか、国民に十分に知らしめる必要がある。だが、ただ単に、看守が巡視をしたあとに起こった事件でありますだけでは事は済まないと思うのです。それがだれであれ、その自殺の理由が何であれ、国民が納得するような説明をすべきだと思うのです。  私は先ほど、逮捕の問題あるいは身柄拘束の問題等のいわゆる令状主義あるいは現行犯その他、こういうことで触れましたが、その身柄を拘束する一これは受刑者。判決があったのは別です。理由の二は、いわゆる被疑者あるいは拘置者、被告が、証拠隠滅、逃亡のおそれがある。住所不定等々が身柄拘束の要件であります。その中には、自殺のおそれがあるからということ、言いかえれば、それを保護するということも身柄拘束の一つ理由ではなかろうかと思うのです。そうでしょう。私は、いま拘置所や刑務所の中で、昔のいわゆる牢屋における牢名主のような者がおって、適当に始末するというようなことが行なわれておるとは決して思っておりません。しかし、締め殺したということではないにしても、自殺しやすいような状況に置くということは可能なんです。そうでしょう。これがどういう被告であり、しかもこれだけ騒がれた被告人ならば、事の真相を裁判を通じて国民に知らしめると同時に、あれだけの事件を起こした男ですから、世間に対してどれだけの反省をしておるのかどうかというようなことを、裁判所の法廷においてやるべきである、またやらすべきであった。ところが、自殺ということでうやむやに済んでしまうということは許されない。言うまでもなく、裁判を受ける権利を侵したともいえると思うのです。だと思うと、例の人質事件で一躍有名になった金嬉老は、静岡拘置所ではまるでマンション暮らしのようなことをやっておった。弁護人に出刃ぼうちょうを示すことによって事件が明るみに出た。しかし、これも下級看守が自殺をするということで、結局真相は発表せられないままにうやむやに終わっております。国民の知る権利に対する侵害ともいえると思います。  また最近、あり得べきことではないと思うのですが、鳥取の刑務所内で覚せい剤が持ち込まれて服用せられておったという事件が起きております。いまこの問題について追及をしようとは思っておりません。しかし、刑務所、拘置所、留置場における人権がはたして守られておるのか。守る上について関係者がどれだけの注意をし、あるいはそれだけの職責を果たしておるのかという点について、法務、警察、両方からひとつ、簡単でいいですが、御意見を伺いたい。
  37. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 仰せの諸件につきましては、人権の立場からもまことに遺憾なものと存じます。事情の詳しい矯正局長がおりますので、矯正局長からお答えさせます。
  38. 長島敦

    ○長島政府委員 簡単に申し上げます。  森の事件はたいへん申しわけないと存じます。これにつきまして、いまあらゆる対策をとっておりまして、一つは、物理的な自殺を容認するようなものをなくするということでございます。もう一つは、精神医学、心理学を利用いたしまして、人の動静から内心を知る、外から中を見るという手引きをいまつくっておるわけでございまして、これを看守さんに配りまして、動静から内心を見ていって、自殺のおそれがあるというものは特に注意していこうという対策をいまとろうとしております。  最後に、鳥取の事件でございますけれども、これはただいまでの捜査の結果、全く事実無根でございます。
  39. 田中武夫

    田中(武)分科員 事実はなかった。
  40. 長島敦

    ○長島政府委員 はい。
  41. 田中武夫

    田中(武)分科員 警察、留置場の件もありますが、これはいまから申し上げますことで、ついでに……。もう時間の関係で一つ一つはやめます。  勾留期間の延長の問題あるいはいわゆるガサ、捜索、押収、さらに、ちょっと来い、いわゆる任意同行、任意出頭、あるいは、これもついでに申し上げておきますが、最近、刑事を主体としたドラマが多いです。これはドラマであって、まさか実際にはそういうことはないと思うのですが、ドラマの面で、刑事が聞き込みのときに、正直に言いなさい、でなければ偽証罪になりますよ、こういったようなことがテレビの画面によく出ます。ところが、御承知のように刑法の百六十九条ですか、偽証罪は法律による宣誓をしたる証人ということが要件であります。したがって、その段階において偽証罪が成立するわけがございません。  いま申しましたような、これも一項目、一項目やるつもりだったのですが、時間の関係で並べましたけれども、これらの点につきましても、いわゆる令状主義がどこまで徹底しておるのか、あるいは人権、財産権の侵害に対してどれだけ留意をしているのか、簡単でけっこうですから法務、警察、双方から御意見を伺います。
  42. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 令状の切りかえ、任意出頭、同行というような問題につきましても、人権の立場からこれを十分セーブいたしまして取り扱わなければならぬもの、そうさしていきたいと考えております。
  43. 関根廣文

    ○関根政府委員 犯罪捜査の基本的な大きな基盤の一つに私ども適正捜査というものを置いておりまして、ただいま人権を尊重した捜査手続ということをお尋ねでございますけれども、そういったような人権をそこなわないような、法に定められました適正な手続による捜査、これを日本の警察は根幹としなければいけないという観点から、あらゆる法手続の面におきましての適正捜査、この問題につきましては、戦後犯罪捜査の基盤として強調してまいりました。十数年前に、逮捕権の適正運用ということで、逮捕権乱用についての問題をお互いに自粛自戒いたしてまいりまして、最近では、ただいま御指摘の任意同行あるいは別件逮捕あるいはその他の接見問題等につきましても、国民の批判にたえ得る正しい手続での捜査というものを根幹として進めてまいりたいという考えでやっております。
  44. 田中武夫

    田中(武)分科員 これも一つ一つやれば一時間かかります。だが、記録にとどめて、あとで一つ一つ他の場所でやりたいと思います。  次に考えられるのは長過ぎる裁判です。最近いわゆる高田事件で、最高裁が、長過ぎる裁判という——ことにこれは途中十五年間も審理中断というようなこともあった——判断を下しました。迅速な裁判を受ける権利、憲法三十七条、これは単なる抽象的なものではない、こういうのが最高裁判断であったと思います。その間、やはり被告という、身柄は拘束せられていなかったかもしれないけれども、極印を押され、重荷を負うて世の中を渡ってきたということですね。  これはむしろ最高裁のほうへお聞きするのがいいと思うのですが、こういう長過ぎる裁判憲法三十七条の迅速な裁判を受ける権利——たとえば最近参議院議員で連座制に引っかかるような事件がございました。有罪が出納責任者にありました。しかし、六年の任期はもうすでに終わろうとしておる。これはちゃんと法律では、いつまでに結論を出せということが公職選挙法にあったと思います。こう考えた場合に、いま高田事件について私は具体的に追及はいたしません。だが、長過ぎる裁判について最高裁考え方判断を伺いたいと思います。
  45. 牧圭次

    ○牧最高裁判所長官代理者 被告人が迅速な裁判を受けるということは、憲法上に保障された権利でございます。したがいまして、裁判所といたしましては、訴訟の遅延がないようにこれまでもいろいろ対策を考えてまいっておるわけでございますが、何ぶんにも裁判につきましては裁判所だけではございませんで、両当事者、検察官、弁護人の御協力を得て審理の促進をはからなければならないということになろうかと存じますので、それぞれ所管の方々とも御相談して、できるだけ迅速な裁判が保障できるように、運用の面で考えていきたいと思っております。
  46. 田中武夫

    田中(武)分科員 要は裁判官、いわゆる判事あるいは職員の不足等々にもあるのではなかろうかと思います。それから、事件途中で担当の判事等々が転勤する、そういう問題があると思います。だが、論議はあとへ残しましょう。もう時間があと十分ほどしかありませんので、まとめて申し上げます。  次に問題になるのは人体実験、これはいわゆる心臓移植などでいろいろ論議をせられました。そして、最近日本精神神経学会が二月二十四日の理事会で人体実験の原則ということを承認し、四月の名古屋での総会にこれをかけようとしておる。このこと自体は、いままでそういうことについてのルールがなかったのを、ひとつお医者さんみずからがつくろうということの評価はいたします。だがしかし、私は原則として人体実験をなすべきでない、このように考えております。  さらに、厚生省ですから厚生省関係で申しますと、外部と遮断せられておる場所に、一つは精神病院があります。いまの法のたてまえからいけば、そんなことはあり得ないと思いますが、小説等で私はそういうことを読んだことがございます。それはたとえば遺産相続等々にからみ、家族の一員と精神病院のお医者さんが相談をするならば、正常な人を精神病患者として精神病院へ収容することは現在では可能なのです。法律的にはそうなっております。たとえば失礼ですが田中さんなら田中さん、私でもけっこうです。たとえば配偶者なり、あるいはまたその親権者なりが、あるいは関係者が、医者と一緒になって合意して、ある日突然、友人等もあれはこのごろおかしいのだから、実はこうだというので、だれかを連れて行って精神病院へ連れて行こうとしたら——それはあばれるでしょう。あばれたら、ますますこれはおかしいということで、精神病院へ入れてしまう。精神病院はそういうことはないと思いますが、だが相手が精神異常者でありますから、どんなことが行なわれておるか。私が読みましたのはもう十年も前ですが、たしか「針の塔」というような名前の小説だったと思います。精神病院の内部を暴露したような推理小説がございましたが、これは小説ですから、いわゆるフィクションがついておると思うのです。しかし、警察その他のほかに手錠が許されておるのは精神病院です。等々から考えて、精神病院の中で何が行なわれておるのか、これ等も問題だと思います。  いまあげました事例は一つなんですが、それは法務大臣、ほんとうにある日突然、おまえは精神病患者だということで、お医者さんと家族のだれかが合意すればほうり込まれるのですよ。そういう点について、これはむしろ厚生省ですが、どのような監督をし、あるいは精神病院等に対して調査等を行なっておるのか。  次に自治省。国民背番号ということで問題になりまして国民総登録の問題です。一時問題になったが、最近ではちょっと下火になっておるが、どこかの自治体では実験的にやっておるとも聞いております。そうして、田中なら田中という人間の経歴、財産、既往症、親戚関係、ありとあらゆるものをコンピューターに記憶させておく。管理ということばは適当でないかもしれませんが、管理するというか、政府からいえば便利なやり方だと思いますが、国民からいえば常に政府から監視を受けておる、こういうことになります。そういう点でどうなっておるのか。  それから、もう時間がないので申し上げますが、刑事補償の点について、先ほど来申し上げておるようにいろいろと問題がある。そこで、きのうですか、刑事補償法等の改正案を出されたようですね。それに対して、社会党はその前に刑事補償法等の改正案を出しております。その違いは、まず政府が身柄拘束をした期間だけを考えておるのに対して、公訴を受けた、公訴を提起せられたときから、たとえ身柄は拘束せられなくとも、先ほど来言っておるように、被告という刻印を押されてその人生を渡ってきた人たちの迷惑、人権の侵害等々を、これは金で済む問題ではありません。やはり何らかの方法で考えるべきであるというのが違いの一点です。金額が、たとえば死刑執行後真犯人が出た場合に、政府案が五百万円というのを社会党は一千万円、あるいは政府案は一日二千二百円ですか、それに対して三千円までということばを使っていますが、そういう違い等々がございます。  そのような刑事補償の問題を含めて、もう時間の関係で参考までに申し上げますが、国家賠償請求事件を調べました。二十二年の国家賠償法成立以来四十五年までに、国家賠償請求事件が合わせて五百七十九件ございます。そのベストファイブといいますか、上位五省庁を見ますと、まず警察庁、警察関係が九十二件、検察庁関係が八十四件、裁判所関係が八十件、執行官関係、これも裁判所関係ということになるかもわかりませんが六十四件、案外、税務署が五十七件あります。税務署のやり方等でも人権侵害という点もたくさんあります。考えられるあらゆる人権侵害について、まだまだ用意をいたしておりますが、時間の都合でやめます。  これら固めていま質問しましたことに対して、それぞれの省庁から御答弁をいただきまして終わりたいと存じます。
  47. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 本日仰せをいただきました諸般の案件について、人権擁護の立場から十全の努力を重ねまして御期待に沿いたい、こう考えます。
  48. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 お答えいたします。  先般報道されました、御指摘の精神障害者の臨床実験に関する日本精神神経学会の理事会の提案につきましては、医学の進歩、医の倫理あるいは患者の人権につきまして、まことにもっともなことでございます。今後それぞれの立場につきまして検討すべき問題が非常にたくさん含まれております。したがいまして、私ども厚生省といたしましても、医療の立場から慎重に検討してまいりたい、かように考えております。  それから、御指摘の後段の問題でございますが、私どもといたしましては、特に精神障害者の人権につきまして格別の配慮が必要であるという立場から、毎年精神病院の職員等の研修会、これを実施いたすとともに、関係諸団体を通じましても、この人権問題につきましては慎重に取り扱うよう、絶えず指摘をしておるところでございます。
  49. 近藤隆之

    ○近藤(隆)政府委員 いわゆる国民総背番号制の問題につきましては、行政管理庁を中心といたしまして、昭和四十五年から関係各省が集まりましていろいろ研究しておりますけれども、現在の動向といたしましては、そういった国民に一連の総背番号をつけるというようなことではなくて、社会保険関係のコードの統一というものを中心にして検討していこうというようなことになっておると聞いております。  それからなお、先生の御指摘の個人の財産等につきましてコンピューター化しているというようなお話がございましたけれども、現在市町村におきまして、百六十五の市町村が住民基本台帳をコンピューター化しておりますけれども、そういったものについてコンピューターに入れておるということは、われわれの調査した限りではございません。
  50. 田中武夫

    田中(武)分科員 時間が超過してすみませんが、国民背番号ですね、これはよほど考えてやっていただかなければ、常に国民は政府から監視をされておる、一つ違えば大きな人権問題です。もう一度だけ答弁を願います。
  51. 近藤隆之

    ○近藤(隆)政府委員 先生のおっしゃいますとおり、この問題は、やり方によりましては人権侵害になる問題であろうと思っております。したがいまして、政府部内におきましても時間をかけて慎重に検討すべきことであろうと思っております。
  52. 田中武夫

    田中(武)分科員 終わります。
  53. 臼井莊一

    臼井主査 次に、井岡大治君。
  54. 井岡大治

    井岡分科員 時間が限られておりますし、私は一つの問題でございますから、大臣に簡潔にお尋ねをして、そして問題がありましたら別の機会に申し上げたいと思います。  まず、大臣お尋ねをいたしますのは、人権問題でございますが、家庭裁判制度がございますが、家庭裁判制度というものはどういう理由でおつくりになったか。私は、実際にはこの裁判制度が生かされておらない、こういうように思うわけです。したがって、これはどういう観点からあるいは視点からおつくりになったのか、この点をまずお聞きしたと思います。
  55. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 これは最高裁から申し上げるのが筋でございますが、概略を申し上げますと、家庭関係の事案を取り扱いますのは、一般裁判所でなくて、家庭的なムードのもとに運営されることが必要であろうということでこの制度ができました。自来相当な成績をあげて今日に至っておるのでございます。
  56. 井岡大治

    井岡分科員 これは私は裁判所だと思いますが、この案件は裁判所でなくて、現実に判決が出ている問題なんです。ところが、その判決を履行しない、そういう場合は当然私は行政になってくると思うのです。そういう意味から、単に家庭裁判制度というものは裁判所の制度だ、こういうように片づけるのには少し早計ではないかと思うのです。特に、最近の風潮から夫婦間における問題があります。あるいは交通事故による和解、調停、こういうことで裁判制度で問題を処理している、こういうものがたくさんあるわけです。それが現実に判決が下って履行されていない、こういうので、たいへんその問題が各所に起こっている。現に私のところに持っておいでになったものでも、交通関係で五件、家庭裁判関係で三件持ってきております。いずれもそれは、交通関係の問題は刑事事件として解決をして、あとの賠償の問題になっては、お互いそれはいろいろ問題があるけれども、ひとつ示談でやりなさい——示談でやるということは、刑事事件にかかわる問題は刑事事件として処罰をしてしまっておるわけですから、あとの示談というのはこれは民事事案だ、こういうように理解するのが私は常識だと思うのですが、この点どうですか。
  57. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 お説のとおりと存じます。
  58. 井岡大治

    井岡分科員 そうだとすると、大臣、単にこれは裁判所の問題だというわけにはまいらない。やはり行政の問題として考えていくべきではないか。判決が出たものですよ。出たものについてその履行がされていない。不履行だ。その場合にどういう処置がありますか。  たとえば、実はこの問題は、今度の選挙で引退をされました、名前は申し上げませんが、自民党の大幹部の方がかかわった事件であります。同時に、私はそれに引っぱり出されました。その事件は、夫婦間において争いがあったわけです。別居をした。一年半のうちに何回か家事裁判で行ないましたけれども、幾ら出頭命令を出しても出てこない。そのつど、ただいま何々先生が井岡と話をしておる最中ですから、それを待って私は判断をします、そのつど出てくるわけです。私はそういう話を聞いておらないのですが、その夫婦間に関係をしておった関係から私の名が出るのだろうと思うのですが、いつもそう出るわけです。そして、一回も出てこない。こういう場合法律は、正当な理由があれば出頭を拒んでもいい、出なくてもいいということになっておるから、それを悪用したのだろうと思うのですけれども、少なくともそういう場合は、裁判所は、家事裁判といえども、何回か出てこないというのであれば——これは裁判の問題になりますから、常識的に私だけが言ってとどめておきます。後にこの問題について別な機会にまたお尋ねをしたいと思うのですが、何回か井岡の名前を使っているわけですから、参考人なら参考人、あるいは証人なら証人として、おまはえ、この問題で何々氏と話をしているかどうか、こういうようなことをしないと——そのために、いたずらにこの裁判が一年半かかったわけです。そうして、最終的にはまだ夫婦が別れておらない。別居しておるのですから、何がしの金品を生活費として出しなさい、こういう判決が出たわけですが、これが一向に履行されないわけです。何とかこれは救う方法はありますか。
  59. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 井岡先生、それは家庭裁判所判決でございますか。家庭裁判所判決でございますと、履行がありませんと家庭裁判所に申請をしまして、履行を勧告していただく道がございます。もう一つは、履行命令、なぜ履行しないか、すみやかに履行せよという履行命令を出していただく道がございます。その履行命令に応じない場合は罰則もついておることでございますから、これは相当なきき目があるものと、こう思うのでございます。
  60. 井岡大治

    井岡分科員 ところが、これは弁護士がついていることですから、それをやっているわけなんです。やっているのですが、一向にきき目がない。どういうことなんですか。
  61. 川島一郎

    ○川島政府委員 扶養料の審判が下って——先ほど先生、判決とおっしゃいましたけれども家庭裁判所の場合には審判でございますので、扶養を命ずる審判であろうと思いますが、その審判が確定したにもかかわらず履行をしない、こういう場合におきましては、その審判は執行力ある債務名義と同一の効力を有するということになっておりまして、執行力のある債務名義と申しますものは、これに基づいて強制執行をすることができるわけでございます。したがって、その審判に基づきまして扶養義務者の財産を差し押えて換価する、いわゆる強制執行をすることができるわけでございます。  一般的にはそういうことでございますが、家庭事件の特殊性という点から、審判に対しましては、ただいま法務大臣お答えになりましたように、そういう強制執行の道を選ばないで、家庭裁判所に履行の勧告をしてくれという申し出をしたり、あるいは履行命令を出してくれという申し立てをすることができるということになっておりまして、こういう申し立てをいたしました場合には、家庭裁判所は事実を調査いたしまして、扶養義務者に対して履行をするようにという勧告をし、あるいはまた履行命令を発する、こういうことができることになっております。  したがいまして、要約して申し上げますと、その審判に基づきまして、相手方の財産に対して強制執行をして扶養料を取り立てるということもできますし、別の方法としては、履行の勧告あるいは履行命令の制度を利用することもできるようになっております。
  62. 井岡大治

    井岡分科員 よくわかりましたけれども、現実の問題は、これは弁護士がついておることですから、弁護士がすべてをやっているわけです。そして持ち込まれたが、あなたの名前が出ていることですからということで、弁護士から今度は私のほうに持ってこられた。こういう問題は、少なくとも行政の側にあるものとしては、勧告命令なりあるいは履行命令を申請をしているのだとすれば、行政の立場から、これが行なわれておるのか行なわれておらないのか、こういうことを追跡調査と申しますか、とにかくそういうことが行なわれないと、こういう事件ですから、おそらく四年か五年かかるでしょう。夫婦は別居しておる。もう約一年半余りになります。ようやくこの間おりた。そしてこれから本裁判をやるわけですが、本裁判をやってもなかなか片のつきそうな問題じゃありません。いま田中君が盛んに裁判を早くやれと言っておりましたけれども、実際問題としてはなかなかいきません。その間、離婚はされてないから結婚はできないわけですね。そうしてみずからの力で生きていかなければいけない。かぼそい女子が、しかもだれも身寄りがないというような場合は、これは場合によっては——その女子はいつも私のところに来ておりますから、何だかんだといって励ましております。励ましてはおりますけれども、時によっては悪の道に踏み入らないとも限らない。したがって、行政の側から追跡調査をするというような制度を設ける、そういうような気持ちはありませんか。
  63. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 井岡先生、これはたいへんむずかしい問題でございます。それで家裁が審判をした。裁判所判決をした。その審判、判決は、強制力があるといまも局長は言うのでありますが、事実はどうかというと、から判決であって何の効果もない。こういう事態があります場合に、それを追跡調査するというような仕事、将来の統計等の——重要なる法改正の資料として追跡調査をしてみるというような仕事は、やはり司法行政として裁判所がおやりになるのが筋でございます。しかし、先生仰せのことが私はよくわかりますのは、裁判所判決がから判決に終わるようなことがあってそのまま捨ておいてよいものか。この判決を執行するにかわるべき第二の執行制度というものがなければならぬのだということになりますと、そういう、制度としてつくることがいいか悪いかという問題になりますと、これは国会、立法府というものが考えて一向差しつかえがない。制度を考える。できた制度の運用に関するものについては裁判所がおやりになる。その制度をつくるということは国会が考えてよいこと、立法府が考えてよいことである、こういうふうに区別をして先生のおことば判断をしてお答えを申し上げるのでございますが、深く考えてみませんと、から判決に終わっておるといったようなことは、司法制度の上からは権威に関する重大問題ですね。よくわかる気持ちでございます。
  64. 井岡大治

    井岡分科員 いま大臣が言われたことは、私が最後にそれを言おうと思っておったことですが、大臣が先におっしゃいましたから、そのことは私は省きます。  ただ、いま言われたように、少なくとも法治国家で、判決がおりて、そしてそれが執行されない、そうしますと、法それ自体に国民の不信というものは高まってくるだろう、こう思うのです。行政をあずかっているものとしては、法治国である限り、法がわれわれの生活のバックボーンですから、そのバックボーンがゆるんでくるというようなことになっては、私はたいへんなことになると思うのです。そういう意味で、ぜひこの問題については考えていただきたいと思います。同時に、この問題は、いま勧告と不履行の問題をお教えいただいたわけですから、さらに私たちとしてはこれをやってまいりますけれども、少なくともこれは裁判に関する問題でありますから、ここで言おうとは思いませんけれども、これらが不履行があって、不履行に対する救済措置を要求している。これらの問題については、これは裁判所おりませんから言いませんが、私、裁判所も来てもらいたい、こう言っておったのですが、一ぺん研究します、こういうおたくさんのほうの話だったものですから、私はもうそれ以上言わなかったわけですが、別の機会に話をするとして、どうか、いま申し上げましたように、いわゆる行政のサイドから不履行の問題について救済をする措置、こういうものを考えていただきたい。このことを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  65. 臼井莊一

    臼井主査 次に、青柳盛雄君。
  66. 青柳盛雄

    青柳分科員 法務大臣お尋ねをいたします。  私は、ことしの二月八日に新しく名古屋高等検察庁の検事長に就任をされた元公安調査庁長官川口光太郎氏の記者会見での発言を取り上げたいと思います。  毎日新聞の二月九日の記事によりますと、その記者会見で、川口名古屋高等検察庁の検事長はいろいろのことを述べられたようでありますけれども、私は、きょうは時間の関係で、その中の一つについて問題にしたいと思う。  それによりますと、「最近の公害事件では、動員される学者や弁護士に偏向した動きがあり、心配だ。たとえば青法協が四日市で集会を開くなど、地域の住民の運動が反体制運動に利用されている。それをどうするか考えてみたい。会社側の証人を採用しようとしない裁判所の姿勢もこれでいいのか、と思う。」  同様趣旨のことは、朝日新聞や中日新聞にも出ております。  また、時事通信によりますと、いまとあまり変わりありませんが、「企業の公害事件をみていると、弁護士や学者に偏向している人もみられた。これでは公害問題が反体制面に利用されている面があるのではないか。裁判所も会社側の証言を採用しなかった例もある。」  このような発言を堂々とやっておられるのですが、検察庁法第十六条第一項によりますと、「検事長、検事及び副検事の職は、法務大臣が、これを補する。」とありますので、この検事を名古屋高等検察庁の検事長に補されました法務大臣として、これについてどのようにお考えになられるか。これは、りっぱな検察官を適材適所で名古屋の高等検察庁に回されたと信じておられるのかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  67. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 おことばをいただいて恐縮に存じます。  この川口君は、二月二日に補任をいたしまして、七日に名古屋の高等検察庁に赴任をいたしまして、八日の記者会見の席で述べましたものであると存じます。中央紙にはこの談話が出なかったものでございますから——地方紙に出ておるようでございます。そこで私は、実は不都合なことでありますが、存じませんでした。気づきませんでしたところ、地方紙に出ておるということで、赤旗にも出ておるということで、これを知るようになりました。厳格にひとつ、どういう心境でどういう内容の発言をしたものか、発言の真意を調査をしろということを官房長に命じまして調査に入りましたところ、十四日の日付をもって私のところに私信をよこしまして、こういう心境で言うたのだということで、深く反省をいたしておりますという文書が私の手元に届きましたのでございます。  それによって本人の真意を知ったのでありますが、本人は、公害事件というものについては被害者の立場の人々の言い分を十分に聞くべきであるということは、その当時主張もしておるようでございますし、そう考えておったようでございます。ただ、それがいわゆる反体制運動というものとこんがらがるようなことがあっては、被害者の真意というものが誤解をされるおそれがあるのではないかということを、日ごろもいまも思いとして考えておるようでございます。その自分の思っておりますことを発言をいたしますのならば、その発言には筋を立てて発言の道があったであろうと思うのでありますが、つい口がすべって、ことば足らずでそういう誤解を招くようなことになった、これはまことに申しわけのないことである、深く反省をしておるという意味の文書が私に届いておりまして、そういうことは十分注意をしなければならぬではないかということを、次官を通じまして強く将来に対しまして注意を与えて、今日に及んでおるということでございます。
  68. 青柳盛雄

    青柳分科員 一志の法務大臣としての措置はお聞きいたしたわけでありますが、このような記者会見での発言がありましたので、公害問題に取り組んでおり、特に名古屋高等裁判所あるいは検察庁に対応する地域、たとえば富山のイタイイタイ病あるいは四日市のぜんそく公害、こういう関係の人々がたいへんに憤慨をされまして、その真相を確かめるために、これは公開の席上で述べられたことでありますので、公開の質問状によって真相を確かめるために、さっそく川口検事長に面会を求める、そして公開質問状を提出して回答を求めるということになったようでございます。新聞記事によりますと、二月の十三日に関係者が、いまこれから読み上げますような公開質問状を持って会見を申し入れたそうでございます。あいにくとその日は川口検事長は不在だということで、中嶋という次席検事を通じてこの質問状を提出して、一週間以内に答えをしてもらうように求めたそうでございます。その内容を記録にとどめる意味で、私はこれから読み上げます。     公開質問状   名古屋高検検事長として着任した川口光太郎氏は、去る二月八日着任後の初の記者会見で所信と抱負を述べ、威たけ高に驚くべき発言をしている。右発言は広範な問題にわたる重大な発言であるが、そのうち公害問題に関連する部分について公開質問をして明確な回答を求めるものである。     公開質問状   現在、公害問題は全国民的課題となっており、発生源企業に対する厳しい規制と取締りが焦眉の問題となっている反面、いわれのない被害の一方的受忍を強いられてきた住民達の多くが猶救済されず放置されている現状である。   日本国民の人権の回復と国家百年の大計のためにも公害反対の世論喚起と各分野における確乎たる施策の確立が益々要望されている現在、一地方の検察の責任者としての検事長の所信表明は驚くべき独断と偏見に満ち、一方的に検察が企業の側に立つと解釈されてもやむをえないような内容に終始している。   公害問題に深い関心をもち、様々な分野で活動している私達法律家も被害者住民も、今回の検事長発言を黙視することはできない。ここに厳重に抗議を表明するとともに、同発言の真意を正し、民意に問うため次のとおり公開質問状を提出するものである。期日を定め私達に対し直接明解な応答をなされるよう強く要望する。      記  一、検事長は、「一部で公害問題が反体制運動に利用されている」と言明している。一部とは何を指し、どのような事態をあげつらっているのか確答されたい。  二、また「最近の公害事件では動員される学者や弁護士に偏向した動きがあり心配だ」と述べている。どのような人物を指し何を偏向と公言しているのか具体的に責任ある回答を求める。  三、「青法協が四日市で集会を開くなど」と具体的な事実をあげ、そのことと「地域の住民運動が反体制運動に利用されている」という発言を結びつけている。確かに昭和四五年七月青年法律家協会弁護士学者合同部会は、全国の法曹や被害住民、学者とともに公害の現実を認識し被害者救済の法理論を前進させるため二日間にわたり交流集会を開催している。このことがどのように不当であり、どう検事長の所信と関係するのか、明確に答えられたい。  四、検事長は更に公害裁判そのものに関して「会社側の証人を採用しない裁判所の姿勢」に言及し批判しているが、具体的に如何なる訴訟の如何なる事例を問題にしているのか、事実に基づき釈明されたい。  五、右の四つの質問にかかわる深部の問題として、検察庁がそれらの問題にとやかく言及して問題視する権限の根拠如何。また、それらの歪曲した認識に基づき今后何をしようとするつもりなのか、明確に答えられたい。    昭和四八年二月一三日       四日市公害訴訟弁護団        右代表者団長 北村 利弥       富山イタイイタイ病弁護団        右代表者団長 正力喜之助       四日市公害患者の会        右代表者代表委員 加藤 光一        同        阪 紀一郎        同        谷田 博昭        同        小井 弓子        同        岡田 芳和       イタイイタイ病対策協議会        右代表者会長小松義久       青年法律家協会弁護士学者合同部会       名古屋支部        右代表者支部長 石川 康之       民主法律家協会名古屋支部        右代表者支部長 大脇 保彦       東海労働弁護団        右代表者常任幹事 安藤  巌       自由法曹団東海支部        右代表者支部長天野末治       民主主義科学者協会法律部会名古屋       支部        右代表者支部長 室井  力    名古屋高等検察庁検事長     川口光太郎殿 こういうものを出して回答を求めたのでありますが、なかなか回答をするという返事がないので、この関係者のほうから再々名古屋高検の係の者、たとえば中嶋次席検事などに電話をいたしまして、どうなったんだということで催促をいたしました結果、なお日にちは数日前に知らしてもらいたい、富山のイタイイタイ病の患者とかあるいは四日市ぜんそくの被害者とか、そういう人たちもその回答を聞く場合には参加したい、だからすぐ当日来いというようなことは困るというような申し入れもし、なお川口検事長のスケジュールをなるべく尊重して都合のよろしい日をいってくれということでやった結果が、二月二十三日の午後三時に来てもらいたいという連絡があった。  そこで、先ほど述べました公開質問状を出した多くの方々が出かけてまいりまして、検事長に会うために名古屋高等検察庁におもむいたわけであります。ところが、弁護団には会うけれども被害者には会わないとか、別な機会にしてもらいたいとかいうようなことをいって、最初は全員を通さなかったようでありますが、結局、交渉の結果全員がある部屋に通されて待っておりましたところ、次席と刑事部長という方があらわれまして、検事長は急用で岐阜へ何か人事問題で行った、直接お会いできないので、検事長が自分で書いた釈明書があるから代読をさせてもらいたい、これで回答にかえたいという申し入れがあったそうです。一同はあ然として、激しく抗議し、被害者は富山、四日市から来ている、人を呼んでおいて、急用でいないとは何事かと被害者が詰め寄る。こういうことで、結局結論的には、検事長は月並みな文書回答で問題を打ち切ろうとしている、あくまで直接回答を求め、事態を明らかにする必要があるということにこの関係者の人々は意見が一致して、そして直接本人から聞きたい、だから代読はお断わりする、岐阜におられる検事長に即刻電話し、きょう何時に帰庁するのか、また、きょう会えないとすればどの日がよいのか問い合わせてもらいたいと、要望したそうです。次席は部屋から出て、しばらくしてあらわれ、岐阜の検察庁に電話を入れたが連絡がつかない、検事長がきょう急用で出かけ、皆さんをすっぽかした形になったのは何とも申しわけないが、直接書かれたものもあるのだから、何とか私が読むところで了解してもらいたいと、繰り返して懇請したけれども、それは断わって、もう一度来るということで、その場ですわり込みもしないでみんな引き上げたわけでございます。  ところが三月二日になって、もちろんそれまでにも催促をしたのですが、先ほどの中嶋次席から電話があって、検事長はもう絶対直接会うことはしないという回答をしたというのであります。  いま、十四日に手紙を法務大臣によこして、反省をしているような態度を示したというのですが、それはあくまでも内部的なことであって、監督する立場大臣にそういう手紙を出されたこと自体、私は悪いとは申しませんけれども、それに引き比べて、このような不誠実な態度をとっていることに対して、法務大臣はどうお考えになりますか。
  69. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 私は、監督者といたしましてたいへん恐縮しております。  それで、先ほど来申し上げますように、本人の意図は、公害事件の被害者の真意が誤られないようにすべきものであるという善意の気持ちがあったことが真実だと、私に対する手紙からは読むのでございます。それにいたしましても、先生先ほどのおことばのとおり、ことばの足らぬところがあり、言い過ぎたところがある。その意味においては明らかな失言でございます。本人は失言ということを認めておるのかどうか存じませんが、私が公平に本人から参りました文書を見ますときに、これは舌足らずのところがあり、言い過ぎたところがある、言及せぬでよいところに言及をしておる、こういうところから見て、失言である、私はこう考えるのであります。真意はどこにあったにしても、とにかく失言であります以上は、公開質問状に対しては、文書の質問が来ておるわけでございますから、これに対しては誠心誠意を持ってお答えを申し上げる、真意はこうであったということのお答えを申し上げるように指導をしていきたい、こう思うのでございます。
  70. 青柳盛雄

    青柳分科員 文書で来たから文書で回答する、それも正確を期する意味において悪いことではありません。ですから、代読をさせるなどということをやる、あるいはその後もうお会いしない、文書が書いてあるのだからといったような、全く官僚的な態度が一体許されるかどうか。  実はこの関係者の方々から、切々たる手紙が私のほうに送られてきまして、ぜひこの問題は国会で、公害被害者の心情をよく理解した立場で扱ってもらいたい、こう言っておられます。当然だと思います。  たとえばイタイイタイ病の患者の方々など、私も何名かにお会いしたことがありますけれども、また報道などでも聞き知っておりますが、長い間、奇病であるということで、近所にもその病気であることを秘して、全く廃人同様になっておった。これはいなかのことでございますから、原因のわからない病気ということになれば、これは遺伝病であり、その家の非常な不名誉な、本人だけでなしに一家眷族の不名誉なことということにまで気を使って小さくなっている。そういう人たちが、一たび金もうけのためにはどんな有害物質をたれ流してもかまわないという、いわゆる産業公害の結果であったということを知って、非常な憤りを感ずる、にもかかわらず三井金属のほうでは、これに対して最初のうちは全く誠意を示さないばかりか、自分たちの責任ではないというような開き直りすらしておったわけであります。これは民事訴訟ですよ。何もその罪を追及するという刑事訴追ではなかったのですが、それでさえも反省しようとはしない。また、四日市ぜんそくの場合でも同じような状態。あの熊本の水俣病の場合などは、もう損害賠償をもらうなどということではがまんできない、会社の社長はじめその家族も、この無機水銀を飲んで、自分たちの苦しみはどんなにひどいものであったかを、自分自身の経験で知ってもらわなければ気がおさまらない。子供が弱いので、お魚をたくさん食べさせればじょうぶになるだろうかと思って、せっせと、親は食べず子供に食べさしたが、実はその魚が毒であった。そんな無惨なことはない。  とにかく、こういうことを数え上げれば、公害の被害者の心情、心境などというものは、これはとうてい被害者でない人々の想像することのできないほどの苦しみであると思うのです。だから、民事賠償だけではなしに、こういうことをやって恥じないような人は徹底的に取り締まって、二度と再びこういうことのないようにしてもらいたい。  そして、いわゆる公害罪というようなものも設けられるようになったわけでありますけれども、それは徹底的に検察庁によって摘発され取り締まられているかといえば、そうではない。そういう悪質な企業犯罪を野放しにしておきながら、そのことについてはほとんど論及しない。確かに中日新聞では、法務大臣がちょっとおっしゃられたように、被害者の意見も聞きたいというようなことを述べております。「公害問題は詳しくないので、これから勉強したい。一部で、公害問題は反体制運動に利用されているのではないか。被害者の意見をよく聴き、悪質なものはどんどん起訴し、経営者に反省を促す。」というようなことも言っておられるようでありますけれども、ウエートは、反体制運動に利用されるのだ、被害者が全く利用されている、被害者は反体制運動のだしに使われているのだというような、まことにおかっぴき的な考え方を述べている。  これについて心から反省するという態度がない限り、私は、当然のことながら検察官適格審査会の議にのぼるべき事案であろうと思うのです。法務大臣は、検察庁法第二十三条第二項第二号によりますと、法務大臣の請求によって随時審査を行なうということになっておりますので、請求をおやりになる気持ちがあるかどうか。まあ請求まではやろうと思わないけれども、とにかくもっとこれ以上進んで何か措置をとられるお気持ちがあるかどうか。時間がありませんので、それだけお尋ねして、私は、この問題はこれで取りやめたいと思います。
  71. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 たいへん申し上げにくいのでございますが、どうも部下のやりました失言でございますが、しかろうと思って調査を命じましたところ、次官を通じてしかりますまでに、十四日付で、まことに心より反省しておるという趣旨の読める文書による私信をよこしておるわけでございます。そういう事情にあって反省をしております者を、検適にこれを持ち出すというところまで私はやりにくいのでございますが、本人の心境が必ずしも被害者を無視する態度でなかったことは、一部の新聞にも談話の一端が出ておりますことでもございますので、口のすべったもの、また言い回しの足らざりしものという同情の判断をしてやりまして、今後は十分反省をさすことにつとめていきたい。いやしくもこの種のことを、根絶することができますように努力をしたい、こう考えておるのでございます。
  72. 青柳盛雄

    青柳分科員 実は先ほどの質問でやめておこうと思いましたけれども、依然として私の質問の趣旨が十分に御理解いただけないようでございますので、繰り返して申し上げますけれども、確かに十四日に、先を越したといいますか、調査を始める以前にわび状が入ってきたというようなお話でございますけれども、それは大臣に対するだけの話でありまして、先ほど長々と読み上げたり、申し上げましたように、三月二日現在、今日現在でも同じだと思いますけれども、会わないと言っている。この前は、急用ができて岐阜へ行かざるを得なくなった、二月二十二日という日を指定しておきながら、だめになったという。これはまさかペテンにかけるつもりで、その日は岐阜へ行くことはわかっておって、そしてみんな呼び寄せて、急用で行ったのだ、だから、すっぽかしたようになったけれども申しわけないと言うなら、それはうそであれほんとうであれ、うそならいけませんけれども、ほんとうならやむを得ないと思うのですが、三月二日にはもうお会いしないというのですから、そんな態度でいいのかと言うのです。これでは関係者だけでなしに、私どもも、そんな官僚的な、戦前の役人のような態度でいいのかどうか。民主主義の現在、自分のほうに間違いがあったら率直にどこへでも出ていってわびる、特に関係者に対しては心から陳謝をするという態度があっていいのじゃないか。それもできないでまだ検事長の職にだけはちゃんとがんばっているということが、私はよくないと思う。だから、大臣としてそういう指示をおやりになる気持ちがあるのかないのか、それをお尋ねしたい。
  73. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 とりあえず文書で、公開質問状と称する形式のものが来ておる様子でございますから、こういう事柄は、正確を期する意味で文書によって、誠心誠意を傾けて御回答をまず第一次に申し上げる、それで御理解をいただくような努力をする、こういうふうに指導をしてまいりたいと存じます。
  74. 青柳盛雄

    青柳分科員 どうも押し問答になりましたが、私も先ほど、そのことは言いました。文書は正確でよろしい。しかし、それを代読させるというのは何だ。関係者は全部自分で書いて、自分で持っていって、それを提出して回答を求めている。だから、相手方は、自分で文書を書いたのなら書いたでよろしい。それをやはり直接読み上げるなり、あるいは読んでくださいということで渡すなりすればよろしいのであって、何のために、会わないという、そういう官僚的な態度をとるのか、これを私は問題にしているのです。この点について、もうこれ以上だめ押しをしても何にもおっしゃられないと思いますからやめますけれども、おっしゃられるなら、どうぞひとつ……。
  75. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 くどいことでございますが、まず、文書で克明に自分の真意を御回答申し上げるということをやらしていただきたい。(青柳分科員「回答の方法だけひとつ」と呼ぶ)それは代表者をお招きをいたしまして、代表者に差し上げるという方法が一番礼儀と思いますが、礼儀正しい方法をとりたいと思います。
  76. 青柳盛雄

    青柳分科員 終わります。
  77. 臼井莊一

    臼井主査 次に、瀬野栄次郎君。
  78. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 熊本刑務所内における不正事件並びに綱紀粛正等について、法務大臣及び人事院総裁、各関係局長にお伺いする。  熊本刑務所は、実刑八年以上の者を収容している長期収容施設であり、本所及び四つの支所で六百名余の方が収容人員となっております。  法務大臣にまずお伺いいたしたいのでありますが、刑務所の収容者を使役する場合の作業収入については、賃金が国庫に入るものとそうでないものとがあるわけであります。念のために、まずこの点を明らかに御答弁いただきたい。
  79. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 詳しい局長がおりますので、おそれ入りますが、矯正局長から……。
  80. 長島敦

    ○長島政府委員 刑務作業の種類には四種類ございまして、そこの中の一つは物品製作と申しておりますが、これにつきましては、材料、それから生産に必要な経費その他を全部国が提供しておりまして、受刑者を使って製品をつくっております。その次に、委託加工あるいは労務提供というのがございますが、これは材料もしくは作業に必要な経費は全部業者が負担いたしまして、受刑者の労務を提供するという形でございます。あとございますのが、経理作業と申しまして、刑務所の内部の炊事でございますとか洗たくあるいは清掃作業その他刑務所の自営に必要な用務の作業でございます。さらに営繕作業というのがございますが、これは刑務所の新築、増築、改築、補修等を受刑者の力で行なうものでございます。ここのうちで経理作業と営繕作業につきましては、その作業に対して国に対する収益と申しますか、国に対する支払いはございません。そのほかの作業につきまして全部——経理作業、営繕作業につきましては国に対する支払いがございません。すべての作業につきまして、労務を提供いたしました受刑者に対しましては作業賞与金が支払われるわけでございます。
  81. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 そこで、時間の制約もあるので、問題提起の意味で申し上げてお尋ねいたしたいのでありますが、熊本刑務所東側外べいに沿った道路の東側に第一号豚舎から第五号豚舎が立ち並び、その他の倉庫が建っておるわけであります。このうち第三号豚舎の改造が、昭和四十七年一月六日から、日曜その他を除き二月三日までの十二日間、延べ人員四十八名の収容者を、作業命令なしで作業さしておる事実があるわけでございます。このことについて刑務所内の職員、収容者等の不満等があったので、刑務所を一月三十一日に管区から監察するということになったわけでありますが、その五日前の一月二十七日ごろ、この豚舎改造工事を作業命令第六十三号養豚舎補修工事として命令を出して、すでに工場から提出していた毎日の工場収容者の就業状況を記録した工場日報のうち、一月六日から一月十九日までの日報を破棄して、新しく最後に追加して書き改め、関係書類を整備したという事実でございます。  すなわち、実際は収容者一人一日六百円として、四十八人で二万八千八百円となるが、帳簿上賃金を支払ったのは一人六百円としながらも、毎日四人で分引きして三・二人とし十一日間としたので二万一千百二十円を支払い、差し引き七千六百八十円を不当利得し、国に損害をかけているというのであります。しかも、〇・二人を減ずるのは、八十分から百十分までの時間勤務をしなかった場合であるのでありますが、熊本市の郊外の元建軍飛行場付近に作業に行く場合でも往復一時間と見て〇・一人減としているのに、刑務所のへいのすぐそばにある作業をするのに〇・二人を減ずるということは間違いであり、こういったことが不明朗として不満を買っているわけであります。  さらに第一号並びに第二号豚舎改造も作業命令を出さずに、昭和四十六年十月七日から十二月二十一日まで延べ三十七日間中、延べ人員は不明であるが、推定百名前後と思われます。百名前後の収容者を作業に従事させておるというのでありますが、なぜ不明かといえば、作業命令が出されていないためにこのようにわからぬのであります。官舎を補修した形でただで作業をさせて、国に損害を与えているというのであります。  そこで、本件については、昨年九月一日、衆議院法務委員会の事情調査の際、本員も熊本地方裁判所においていろいろ事情を聞いたわけでありますが、また、そのあといろいろ指摘をしたところでありますけれども、この改造に要した材料等についても、その後聞くところによると国の材料を使っているものが多く、セメント六万円を使っただけで、あとはほとんど国の材料を使っている。もちろん古材等も使ったらしいのでありますが、この点も不明朗であります。  これはすでに一年前から、いろいろと法務省関係にも他のことで問題が出されたわけでありますので、十分承知だと思いますが、このことについてはいまだにはっきりしておりませんけれども、この二点について、どうなっておるか明らかにしていただきたい。
  82. 長島敦

    ○長島政府委員 ただいま御指摘の点でございますけれども、まだ完全な調査ができておりませんが、ただいままでにわかっておりますところによりますと、御指摘の豚舎の改築工事につきましては、昭和四十六年の十月上旬ごろから四十七年の一月下旬までにわたりまして四カ月間にぼつぼつとやっておった。大体多いときで七名、少ないときでは二、三名ということで、時間も、その他の営繕工事の手あきの時間を使って、一日二時間ないし三時間であった。そういうような形態でやっておりましたために、これについて成規の作業日報等をつくっておりませんで、営繕技官等の見積もりによりまして、改築の延べ坪数に対しての人工賃を計算したようでございます。御指摘のように人工賃を一人一日六百円という計算にいたしまして、合計金額二万一千百二十円が、この豚舎を持っております職員会から納入になっておるようでございます。  御指摘の豚舎に使いました材木等でございますが、当時官舎を取りこわしまして、そこから出た廃材の一部をそこに使った、三立方メートルでございますか、それを使ったというふうになっておりますが、一部の角材については、職員会のほうから角材を提供したというふうに聞いておるわけでございます。この点につきましては、なお詳細な調査をいたしたいと思っております。
  83. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 ただいま局長から報告がございましたが、調査が十分でないので、また今後詳細な調査をしてまいりたいということで、いまいろいろ内容等を聞きますと、成規の日誌等をつくっていないという答弁もございましたが、ここでこれをやっていると、これだけで一時間以上の論議になりますので、あとたくさんありますから、問題提起ということで、後日法務委員会等でこれの真相はまた新たに追及することにしまして、この点だけは申し上げておきますが、この調査にあたっては、いろいろ書類を改ざんする心配もあります。もちろん作業課保管による労務提供資料とか、四十六年度賃金計算書、同じく作業命令書、工場日報、日課表等、これらが関連があるわけでございますので、一つの帳簿を改ざんしても、全部に関係するわけですから、現在倉庫にしまってあるわけでございますので、よく調査して真相を明らかにして、不明朗な点をひとつ是正してもらいたい、こういうことを申し上げて、詳しいことについての論議は次回に譲ることにしまして、次の問題に入りたいと思います。  次に、熊本市京町拘置支所官舎建て増しの件でございますが、昭和四十六年七月三十一日から九月十六日までの問、延べ三十四日で延べ人員二百五名以上の収容者が使役されて、同官舎四戸に対し、それぞれ四・五畳ないし六畳の建て増しを行なっております。係技官が、国有財産である官舎の本建築には、無断でかってに出入り口等をつくることは禁ぜられている旨反対したところ、豚舎改造時と同じく、刑務所長が、おれが責任を持つからやれといって作業をさせておるのであります。もちろん、国有財産として登載してあれば適法行為といえるが、成規の手続がなされているかどうか、この点伺いたいのであります。  刑務所内の職員問の風評では、国有財産として登載してなく、四戸の入居者から後日それぞれ五千円の負担を徴収しているといわれておりまして、職員問の不信を買っております。また、この建て増しに使った材料等は、官舎を補修した形で行なっているので、国のものを使用しているということでございます。よって、国有財産台帳等、建て増し申請書及び登載があるのか。刑務所及び財務局の書類を調査すればわかることであるが、この点どのように調査しておられるか、明らかにしていただきたい。
  84. 長島敦

    ○長島政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、これはこの刑務所にございます、十坪宿舎と普通いわれているそうでございますが、たいへん狭い宿舎でございます。それに、昭和四十六年当時でございますけれども、あまり狭いということで、古材を利用いたしまして、仮設物という考え方で三坪ほど建物をふやしたということでございます。この一件当たりの費用は二十万円未満でございましたので、そういう意味で施設庁限りで、大臣の認可なくして二十万円未満の工事はできるという解釈のもとに、当時大臣の許可を得ないでやったようでございます。なお、これは仮設物というふうに考えておりましたので、仮設物台帳に登載をしておるようでございまして、国有財産台帳には登載されておりません。  なお、入居者から金員を徴収したという事実については、目下の調査のところではさような事実がないということになっておるのでございますが、この点につきましても、国有財産台帳の問題その他につきましてはなお調査をいたしたいと存じます。
  85. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 法務大臣、いま答弁があったことをお聞き取りいただいておると思います。こういつたことについて人事院総裁にもまたお伺いするわけでございますので、お聞き取りいただいておると思いますが、これまた、いろいろ論議すると時間がずいぶんかかります問題ですけれども、仮設住宅というのはどこまでが仮設住宅で、どこから本建築に属するものかという、これはまた、たいへんな問題でございますね。物価の騰貴が、何をもって騰貴とするかということが論議されると同じで、仮設住宅というのは普通移動ができて、簡単に取りこわしてすぐくっつけられるというものですけれども、同じ建物で同じようにつくったものを、仮設住宅だ、二十万円以下だから、いろいろおっしゃるけれども、これまた、ほんとうに不明朗な問題でございます。だれが見ても、これは本建築と同じなんです。これまた、論議していると時間がかかりますが、なお詳細については今後調べる。各戸から五千円いただいた件についても、そんな事実はないけれども、なお調べるというふうにおっしゃったし、仮設住宅であったから、二十万円以下だったから大臣の許可なしに云々、仮設物としての登載をしておるとかいうような答弁がございましたけれども、この点もまた、事実をよく調べていただきたいと思うのですね。国民の一番大事な三権の中の法務を預かっているそういった一番もとの職員のおるこういったものが、模範を示さなければならぬのに、こういったことが積もり積もって爆発するというようなかっこうになっているわけですから。私は、たくさん問題はあるけれども、はっきりして自信を持ったものだけを申し上げるわけで、金額の多い少ないじゃないわけですから。まだたくさんあります。そういったことで御処置いただきたい。  次の問題ですが、昭和四十七年九月五日に法務大臣あて熊本刑務所の大石部長から提起しております、石丸保安課長にかかる昭和四十三年十一月二十七日の加重逃走に関しての職権乱用の問題が提起されているわけですが、これについてはどういう処置をしておられるのか、この点、時間の関係もありますので簡潔にお答えいただきたい。
  86. 長島敦

    ○長島政府委員 この上申書につきましては、当時すみやかに福岡の矯正管区長に調査を命じまして、管区長から詳細な回答が参ったわけでございます。  この加重逃走の問題につきましては、本人が裁判所へ、検察庁でございますか、報告書を出すということで、本人名儀の報告書が出たわけでございますが、そこの記載の中に非常に主観的なことと申しますか、客観的な事実以外のことにわたって自分の感想その他が入っておりましたので、この保安課長がその部分を削除するようにということで削除して報告書として検察庁へ送ったというふうに承知しております。  検察庁では、本件の事件を調べました結果、起訴猶予処分ということで事件が落着しておるわけでございます。
  87. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 すでに起訴猶予として事件落着ということでありますけれども、実はこれについても、厳格に勤務についているこういった職員が、どうしてももやもや不満があるわけです。だから、あとで申し上げるような問題があるときに、こういうのが全部やはり出てくるわけですね。私も古いのを掘り出してどうというわけじゃないのですけれども、これもすでに去年の四十七年の九月五日に、法務大臣に職権乱用の処置をどうかということで問題を提起しておるわけでございますので、これらもやはりはっきりせねばいかぬ。明らかにいろいろ圧力をかけて書類を書き直させたというわけで、原簿もそれから書き直したものも、私は現に写しをもらっているわけですよ。こういったところは実にいろいろ問題なんですね。もしこれが逃げておったら、これは社会的にたいへんな問題だったと思う、警備が不十分だったということで。それがすぐつかまったので、これが事なきを得ておるからこういう処置を、事なかれ主義みたいな処置になっておりますけれども、こういう事件が多いとやはり所長の勤務成績にも影響するとかいろいろ問題があるものですから、なるべくそういったことは内輪内輪に済ましている。しかし、やはりそういったことが職員のまじめな人の不明朗さを積み上げていって、いつかはそういったことが何かの機会に爆発する、これではまずいと思うのです。  次に、ヤッパ密作の事件ということで、これも何も言いたくないけれども、あとあとの問題があるので、これもあえて申し上げるわけですけれども、収容所内では、いろいろな切り出しナイフとかいろいろなナイフをつくるにしても、当然許可を得て作業をするということになっております。また、つくる場合もありましょうけれども、原則としてはつくれないということになっている。それを結局、刑務所の中の職員がつくっていた。最後に収容所の方に仕上げをさせたという。あとで調書を見ると、これは三回くらい書き直して、結局鉛筆削りの小刀だった、こういうふうに言っているけれども、それには証人もたくさんおるし、そのときの本人が言った録音も実はとってあるわけですよ。実際には三十センチくらいの切り出しナイフなんですね。ヤッパなんですね。やすりをといだいわゆる切り出しナイフなんです。そういったものがもし囚人にでも渡っていて、また第二の事件でも発生したらたいへんなんですね。禁じられているんだけれども、事実それをやったわけですね。それも鉛筆削りの小刀というようなかっこうで報告が来ているというのですね。それもいろいろと関係者何人も知っていて、どうしてそんなものがはっきり上司に伝わらないか、そういうことは模範を示すべき職員がやらなければいかぬじゃないかということで、これなんかも——村島という主任がそういうことをしたわけですが、名前もはっきりしておるわけです。法務省にもちゃんと来ているわけですが、それがいまだに何とも職員の問に疑惑としてくすぶっておるというわけです。  この件について、時間の関係もありますので簡単に一それでは、知っておられるか。
  88. 長島敦

    ○長島政府委員 ただいまの問題はたいへん遺憾な事件でございまして、この本人自身がつくりました約一カ月ぐらい後になりまして、これを自分で廃棄しておりますが、その後こういう事実がわかりましたので、昨年の六月六日付で保安課長が本人に対して厳重注意という処分をいたしまして、その事実を刑務所の功過簿に登載をしておる次第でございまして、本人は全く悪意はなかった、またすなおに事実を認めて、本人から手続書と申しますか始末書を提出したということで、かような処分をしたわけでございます。
  89. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 ヤッパ密作事件については以上御答弁のあったとおりのことでありますが、そのほか、時間の関係もございますので申し上げるのですが、刑務所の中には、全国ほとんどのところで養豚をやっている。熊本の刑務所の場合には白水会という会則がございまして、職務研究会の会則とあわせてこういった運営がなされております。この白水会の経理がずさんで、実に内容がはっきりしてない。もちろん、いろいろ交際費あるいは運営費その他使ったり、職員の福利厚生のためにあるということは十分承知しておりますし、このものが悪いとか養豚していかないということを言うわけではありません。養豚については最近相当世論がうるさくなってきて、公害問題等もあり、従来は畑のまん中だった刑務所が、だんだんベッドタウンの中に入ってきて、最近はきびしく批判を受けておる事実でありますので、だんだん縮小の傾向にあることも事実でありますが、これを直ちに廃止せよと私は言うわけではございませんけれども、これらの白水会、これはやはり刑務所の中にある収容者の残飯等使っていろいろ関係あるので、これらをあえて申し上げますわけでございますが、その白水会の支出のうち、接待費が非常に多額で不明朗で、職員間にいろいろ不満が多い。養豚のための飼料、残飯採取のために官用車を使ってガソリン代も払わぬ。すなわちそれは国費を使っていることになる。それから豚舎のふん尿が収容者用の浄化槽を通して処理されている。それから豚舎の電気水道料金も収容所のものと一緒になっていて、料金の区別が明確でない。最近は区別してメーターをつけたようにも聞いておりますが、数年前、こういったことで国会で問題になった経緯もありまして、それから少し手を加えたというふうにも聞いておりますけれども、こういつたことが明朗でない。いわゆる別な会計であらねばならぬものを国の費用によって払っていたということが、熊本刑務所の場合も従来あったわけです。  昨年五月ごろ、管区から豚の数を漸減するように言われて、総豚数を熊本刑務所の場合は百二十頭に押えるように通達があったわけですけれども、その後もこの石丸課長は種つけを命じて、売却しながらも毎月百八十頭ぐらいの飼育をして、収容者も、幽霊豚がおるなんということを盛んに収容所の中で言っているという不明朗な点がある。  それから次に、白水会事業の養豚の残飯集めに行ってぎっつり腰になった職員、特に名前は申しませんが、それを柔道練習中の負傷として三回も書類を書き直し、公傷認定をしている。  こういった事実がたくさんありまして、これまた職員の不信を買っているわけでございまして、これらは後日さっそく調査の上処置していただくとして、時間の制約等もございますので、法務大臣は以上のことをお聞きになって、これらについてどのように感じられるのか、これらに対して今後どういうように処置をしていこうと思われるか、ひとつ御見解を承りたい。
  90. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 いま先生お述べになりました、経理をはじめ作業のやり方その他すべてのやり方につきましては、もっと堅実に、筋を通して進めていくようにしなければならぬ。何ぶん刑務所という役所の中の施設の中の仕事でございますので、特に今後は留意をいたしまして、あやまちのなきように善処をしてまいりたいと存じます。
  91. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 ただいま法務大臣が言われたように、ぜひそういうふうにやっていただきたい。それと同時に、さっそくまた調査をしていただきたい。その結果によっては、またいろいろとお話を申し上げたいと思います。  次に、そういった事件によって熊本刑務所法務事務官看守部長の茂村智格氏は、昭和二十四年六月から同所に勤務しておるわけですが、昭和四十七年一月十二日付で、一、昭和四十六年十二月年末手当のうち、勤勉手当の差別支給の是正、二、申請者の職務上の意見上申に対し、人事権の乱用としか受け取れない報復的人事、威圧について行政指導を求めることについて、第一回の要求を行なっているのであります。  そこで、人事院総裁にお伺いするわけですが、言うまでもなく、公務員の行政に対する苦情、不服は、人事院の公平局に措置要求する以外にないのであり、本員が二月、人事院総裁並びに公平局長に電話で督促した際にも、当局は二月下旬には交付するように言っておったが、本行政措置要求以来一年二カ月になるけれども、いまだに判定書の交付がないため、その間、要求者である茂村智格ははなはだしい圧迫を受けております。また、現在の熊本刑務所長は、来たる三月十五日が定年退職ということで、秒刻みに入ったということで、それまでにこういった問題が起きないようにということで、いろいろと所内で取りざたされて、不明朗はなはだしいものがあります。人事院は故意に判定書の交付をおくらせているのではないかということで、これまた職員の不信を買っているゆえんであります。  本人にしてみればたいへんな苦痛であり、刑務所はただでさえ封建制が強いといわれ、しかも厳格な中で、先ほどから問題を提起したことでもわかるように、あのようなことはその一部であり、明確に言えるものだけをあげたのでございますが、その他にも種々取りざたされているわけでございまして、所内の不平不満は爆発寸前——少しオーバーな言い方でありますけれども——にあると言っても過言ではないのでございます。このような行政措置要求を出すということは、所内の不満を有している職員を代表して、綱紀粛正し、所内の明朗化のため、よほどの勇気がなくては、かつまた目に余る事実がなければ、簡単に出せないものだと思うのです。一説には、人事院総裁、また公平局長に直接に手紙を出せばということもありますが、そうしたなまやさしいことではこれが解決しないので、このような措置に出たのであります。  公平局の立場として、当然一日も早く判定書を交付すべきであるが、どうしておくれているのか、判定書はいつ交付するのか、この点、人事院総裁にお伺いしたい。
  92. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 お示しの案件がわがほうに提出されてあることは承知しております。ただ、不当に引き延ばしているのではないかというおことばがありました。これに対しては、われわれとしては、そういうことは絶対にございません。  たまたま予算委員会の席でございますから、予算委員会としての御理解、御同情も仰ぎたいと思うわけでございますけれども、御承知のように定員削減ということで、非常にまあ役所の機能発揮についてはわれわれ苦労しているわけでありますが、ただし、公平局については、その職務の重要性から、定員削減にもかかわらず、一人二人と、ちびちびした数字ではありますけれども、何とかふやしてまいりましたけれども、それが何と二十九人しかおらぬわけです。そして、その扱います件数と申しますと、御承知のように、いわゆる不当処分といわれる不利益処分の救済の請求、それから公務災害の補償についての不服の請求、それからいまお話になりました措置要求というようなものがございますが、不利益処分のごときは、毎年四、五千件という多くの人が不服を訴えてきている。この中には、不当に首切りをされたとか、非常に血のにじむような訴えがたくさんあるわけであります。そういうものをわれわれは、この二十九人でさばいていかなければならぬ。これは昼夜兼行でやっておりますが、しかし、御承知のように地方での案件については地方へ出かけて、そして審理をやることもございますし、あれやかやで非常に手詰まりを生じているということだけは、これは十分御同情をいただきたいと思うわけであります。  いまのお話の件については、私どもは結局、慎重を期する意味におきまして、たとえば不利益処分は当然でございますとして、措置要求の件につきましても、大体内部で五段階の階梯、階段を経て審理をいたしまして、最終的にわれわれ人事官が三人で、合議制のもとにこれの最後の判定をきめるということでございますので、非常に慎重を期しておるという点もございますけれども、いままでの例から申しまして、大体数カ月、早いもので六カ月、通常一年というようなのははなはだ残念なことではございますけれども先ほど申しました不利益処分の審査等も含めまして、そういうのが実績ということになっておりまして、われわれとしては少しでもこれを急がなければならぬ、しかしそれでもやはり慎重を欠いてはならぬというたてまえでやっておりますからして、おっしゃるように、何か非常にまごまごしているようではないかという御疑問を提起なさるのは当然だと思いますけれども、本件につきましては、出かけに、御質問があるということを伺っておりましたものですから、どういう調子だといって確かめてまいりましたところ、もう私ども人事官の手元へ近く出て、われわれが審議をする段階になるということを言っておりましたから、これはもう早い機会にお出しできるものと御了解いただいてよろしいと思います。
  93. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 時間が詰まってまいりましたので簡潔に申しますが、人事院総裁から、近く人事官のところへくるから早い機会に出すということでございますが、ぜひそうしてもらいたい。  ただ、刑務所長が三月十五日にやめるということで、それまでに出ないと、本人がまたずいぶん圧迫を受けるわけですけれども人事院のいろいろな立場はいま説明がございましたが、大体総裁もおっしゃったように数カ月、六カ月、通常で約一年というようなことを言われましたが、本件の場合は一年半にもなっているわけです。しかも、この行政措置要求の事実調査のため、公平局長のほうから人事院の事務官竹内博、同松下等の二名を調査担当者として、昭和四十七年二月二十一日及び二十二日の二日間、熊本刑務所において事実調査を行なっておるわけでございまして、それにもかかわらず、たいへんおくれているわけです。  時間がございませんので、この件についてもいろいろ、どういう調査を行なったかということを聞きたいのですが、それはまたいずれ後日に譲ることにして、さらにもう一点、第二回目の事案が生じたので、昭和四十七年十月二十二日、再び行政措置要求を茂村智格氏から提起しておりますが、その処置はどうなっているかということでございます。この件は法務省の矯正局に回っているというふうにその後聞いておるのですけれども、これまた、すでに四カ月が経過しております。ただいま人事院総裁の話でいけば、いまいろいろ審議して、相当同情してくれということでありますが、本人にしてみればたいへんな苦痛でございます。本人からも一月三十一日、再度公平局長に請求しておるわけですが、熊本刑務所に調査を指示されたのか。現在のように、超過勤務が除外され、出張がとめられ、またいろいろと圧迫を受けておられる本人にしてみれば、まさに報復的差別取り扱い、不当労働行為ということにもなろうかと思うのですが、この第二回目の要求については、これは矯正局長のほうだと思いますが、どうなっているか、ひとつ簡潔にお答えいただきたい。
  94. 長島敦

    ○長島政府委員 四十七年一月十二日付の行政措置要求のほかに、昨年の十月二十二日付で人事院に対し行政措置要求があったと承知しておりますが、その分につきましては、二月二十三日に人事院の公平局から矯正局のほうに回付されてまいりまして、目下調査中でございますが、その点は、先ほど申し上げましたヤッパ問題に関する事案であったというように承知しております。それ以外にございましたことは、私承知しておりません。
  95. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 時間が参りましたので、終わりますが、以上のような問題でございまして、先ほど法務大臣からも、いろいろと調査をして、今後またこれらについては対策を講じていくというお話がありました。こういった問題について不平不満があるために、人事院の公平局にこのような問題を提訴しておりますし、本人は相当、一年数カ月圧迫を受けております。また、矯正局のほうでも第二回措置要求の審査をしてもらうわけですが、急いでやってもらいたいと思うのです。  これらの問題について、最後に人事院総裁に、どうかひとつ——二十九名で、たいへん少ない手でいろいろ公平にやっておることは十分承知しておりますが、いろんな職員への圧迫、耐えがたいものがあるし、今後職員に明朗な勤務をさせていく、また刑務所内を厳正な中にも明朗な職場とするためにも、早く判定を出していただくということが大事でありますので、人事院総裁からもこのようなことについてはぜひひとつ早くやってもらうように、重ねてひとつ人事院総裁の御見解を承りたいのであります。
  96. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 十分了承いたしました。
  97. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 以上で質問を一応終わります。時間の制約もありましたので十分な論議ができませんが、この件に関する処理いかんによっては、さらに後日当法務委員会で質問することを留保いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  98. 臼井莊一

    臼井主査 この際、暫時休憩いたします。     午後一時二十二分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  99. 臼井莊一

    臼井主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。吉田法晴君。
  100. 吉田法晴

    吉田分科員 きょうは、法務大臣なり関係政府委員に、部落問題、法制的には同和問題といわれておりますが、これについてお尋ねをいたしたいと思います。  法務大臣、部落解放同盟なり、あるいは関係者、衆参両院、社会党を中心にして、この部落問題の根本的な解決のために努力してまいりました運動は、御承知のように、五十一年前に岡崎の公会堂で全国水平社結成大会をいたしました。ですから、御出身地はこの部落解放運動の発祥の地であります。  その努力が、数年前になりますけれども、同和対策審議会というものを政府につくってもらって、その答申が出ました。その答申を完全に実施させるためにということで、全国の部落のきょうだいや、あるいは民主団体、労働団体等も支援をして、これの完全実施の運動を全国的に起こしました。その結果、いま特別措置法というものができました。これは部落解放運動の歴史の中では初めてのことであります。政府と地方自治体の長とがこの部落問題を解決する責任を負う、こういうことになっております。  そこで、きょうは、人権擁護局もお持ちで、いわば憲法を守ると同時に、法律を守るために存在しております法務省の責任者以下関係者が、ほんとうにこの部落問題の根本的な解決のために御努力をしていただく決意と姿勢にあるかどうかということをお尋ねするわけでありますが、まず部落問題というものについて、特別措置法もございますが、大臣の所見を承りたいと思います。
  101. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 部落問題は、いろいろな方面からこれを見ることができるのでありますが、先生のおことばのように、私の立場からは、それが差別待遇につながることがあってはたいへんだ、こういう意味で、すべて国民は平等でなければならぬという憲法の条項にのっとりまして、差別なき国民相互の扱いという意味で、人権問題としてこの部落問題というものを誠心誠意取り扱っていきたいという考え方でございます。いやしくもそこで差別的な行ないがあると発見をいたしましたときには、人権擁護局が直ちに発動をいたしましてこれをとらえる、こういう考え方でございまして、人権擁護の立場から部落問題というものを取り扱って、憲法の精神に沿うていきたい、こういう考え方でございます。
  102. 吉田法晴

    吉田分科員 憲法のもと、差別があってはならぬ。いかなる理由によろうと、憲法信条、性別あるいは思想に関連をしても差別があってはならぬと書いてありますが、あってはならぬはずの身分差別がある。あるいは明治以来、太政官布告も出ました。しかし、それが実際には生きておる。そこで、それをなくするために政府が責任を持つ、こういうことになっておるわけであります。  あとで直接所管事項についてお尋ねをいたしますが、その前に一つ、これはいわば裁判事件になるかどうかという段階にございますが、この問から実はこれは地方行政委員会で、北九州小倉における少年の射殺事件を取り上げました。どろぼうに入るのをじっと見ておって、出てきたのを先回りして待ち伏せをしてつかまえようとした、そして拳銃を使って射殺をしたという事件であります。これは邸宅に入ったということでありますが、外から見える屋根の下——倉庫の中と報告されておりますが、倉庫の中ではございません。そしてとったのは、私が行って調べましたところが、井筒屋というデパートに納品をして返ってきた返品、不良品で返されたものを屋根の下にとりに入ったから、それを追いかけた。威嚇射撃を二発したけれども、なお依然として逃亡するからということで射殺をした。まあ言い分は、足から二メートル離れたところをねらったということでありますが、右の肩に当たって、貫通銃創で、なくなりました。  どうもその背後には、近所にどろぼうがしょっちゅう入る。どろぼうが多い。そのどろぼうに入る子供が部落の少年ではないのかということが、私は腹の底にあったのではなかろうかと思う。私が質問をしておりますと、うしろの与党の議員でさえ、それだけのこそどろぼうをつかまえるのにピストルを使わなければならぬかどうかということをささやかれました。常識だと思います。  それからもう一つ、いまこれは全国的に有名でありますけれども、狭山裁判という、埼玉県狭山における高等学校一年生の女の子を殺しました事件。金を取りに犯人が来たのです。それを警察が包囲をしておりましたけれども、逃がした。話をしたのですが、その問にわかっていたはずでありますけれども、逃がした。逃がしたということで、体面を保つためだと思いますけれども、部落の青年を捕えて自白をさせた。全国的にはたいへんな問題になっております。関係者と、それから全国で何十という県、それから市町村でいえば百をこすと思いますが、公正な裁判を求める決議が地方議会でなされております。国会では取り上げられたことがそうたくさんあるとは思いませんけれども……。この裏を考えますと、部落の青年だからそのくらいのことはするだろうということが基礎になっているように思います。  そこで問題は、あなたの関係するところからいいますと検察庁でありますけれども裁判にかかっておりますから、証拠の申請をしたり、昨年の九月に結審をして、十一月、裁判官が退官されるまでに結論を出す。ところがその問に、証拠その他、あるいは鑑定書等取り上げられませんでしたから、死刑の判決がまたなされるのではないかということで、たいへんな運動がなされました。あるいは決議がなされました。それで、退官する前に結論を出す。やってない人が無実の罪で死刑になるということは免れました。免れましたけれども、起訴をしたところには、さっきは警察官の態度でありますが、検察官なりあるいは担当関係者の中に、はたしてほんとうに政府が、あるいは公務員が、差別問題をなくするために全力をあげなければならぬという意識があったかどうかという点は、大いに疑問にするところがございます。法務大臣のこの具体的な問題についての御所見を承りたいと思います。
  103. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 まず、小倉の少年射殺事件でございます。  いやしくも、ただいまお示しのような、窃盗に入ることを目撃して、それが出てくるのを待って、追っかけてこれを射殺するというような少年犯人に対する扱いというものはよくない。少年というものは、申し上げるまでもないことでございますが、精神的にも肉体的にも完全に熟していないものである。そういうただいまお示しのような案件の場合には、むしろ侵入しようとする以前にこれを捕えて、改過遷善せしむべきもの、犯罪を犯すのを期待をして待っておって、出てくるやつを銃で撃つなどということは、もってのほかの行動である、こう考えるのでございます。  ただ、その場合に、先生がお考えいただいておりますように、はたして部落的差別観念でそういうことをやったものかどうかということは、ちょっと私では判断のいたしかねるところがございます。少年の扱い方としてはよくない。しかし、部落的な差別観念でやった行動であるかどうかということについては自信がございません。  それからもう一つの、二度目に仰せになりました狭山事件でございます。この事件は、先生に私からお答えことばとしてはたいへん申し上げにくいのでございますが、実は一審を終わりまして、不幸な一審が出まして、それに対しまして目下上訴をいたしまして、東京高等裁判所で事件が係属しておるという事件でございます。  この事件につきましては、原則として国会の論議はこれに触れることができませんので、どうだこうだということを申し上げることを差し控えるのでございます。  また、犯罪検挙の動機となりましたところに差別観念が伏在をしておったかどうかというようなことも、この事件全体に重大な関係があることと存じますので、これは触れることができないのであります。かりに、いやしくも仰せのように、この問題が差別的な観念から犯罪の検挙をしたものだなどということになりますならば、これはまことに間違った考え方による捜査でございます。犯罪の捜査にいたしましても、そういうあやまちをおかすべきものではない、こういうふうに考えるのでございますが、かりに差別的なものが伏在しておるといたしますならば、高等裁判所における公判廷においてこのことは明らかにされるものと思います。明らかにせよとか、明らかにすべきものでないとかいうことは、私が言及論断はできませんけれども、明らかにされて当然のものであると考えますので、裁判法廷においてこれを明白にし、全国民はこの姿を見て反省すべきは反省する、こういう差別待遇に対する反省があるべきものである、こう考えるのでございます。
  104. 吉田法晴

    吉田分科員 小倉の少年射殺事件について、ただいま田中法務大臣がおっしゃいましたことは、私は常識だと思います。入るのをじっと見ておって、どろぼうするのを待っておって、そしてそれで射殺をするというのは、おっしゃるように当を得たものではないと思います。  しかるに、この問題については、年末までに検証をされました検察局が、一月には結論を出すということでございましたけれども、今日に至るまで結論が出ておりません。私は常識的に考えてそうだと思う。そうだといたしますならば——それは私ども、処罰をせよとは言いません。しかしながら、その当否を、起訴をして裁判を仰ぐ、そういうものがあってしかるべきだと思うのですが、まだ今日そこまで至っていない。そういうところに、根に差別的な観念があったのではないかということを申し上げるわけです。  それからもう一つ、あとの分についても、裁判係属中だからその内容については言われぬというのは、おそらくそういう答弁があるだろうと思いました。しかし、前のことについても、あとのことについてもですが、事、検察官については、これは法務省の管轄内、そうしてその教育はおそらくなされておると思います。また、部落問題を根本的に解決をする、一切の差別をなくするために政府は責任を負うておるというならば、法務省の中でもそれだけの教育がなされておるべきはずだと思うのです。ところが、あとで例をあげますけれども、それが必ずしも十分行なわれておらぬ。そうしてそういうところに出てまいりますから、法務大臣に、具体的にこれらの問題について、あるいは検察官なりの啓蒙といいますか、あるいは指導というものは、法務大臣としてなさるべきではないか、こう思いますからお尋ねするわけであります。
  105. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 先ほど申し上げましたように、先生のお述べになったような差別的観念に立って捜査をやったものであるとするならば、これはよくない、これは反省すべきものであり、今後さようなことがあってはならぬということを私が申し上げておるのでございますが、事件は御承知のように目下捜査中で、まだ結論に至っておらない段階のようでございます。そういう段階にあるようでございますから、具体的にいろいろなことを申し上げることは差し控えておきたいと存じます。
  106. 吉田法晴

    吉田分科員 これは大臣ですから申し上げますけれども、昔の裁判は、旧憲法下における裁判は、天皇の名において行なわれました。ですから、それの批判は許しません、あるいは許されなかった。しかし、民主憲法のもとにおいて、主権が国民にあり、その国民の主権を裁判所が代行をする、こういうことになれば、私は、当然裁判についての批判というものもあってしかるべきだと思います。特にきょうは、検察官の態度について、あるいは思想について、特別措置法の精神に従うべく御指導があってしかるべきだと思いますから申し上げておるところであります。  小倉の事件については、常識的に考えると、大臣が言われたように、犯罪を待って、そしてそれを逮捕しようとする、逮捕をするためには、それこそ前向いて発砲したら、暗いところですから当たるかもしらぬという予見がおそらくあると思うのです。それからまた、抵抗をするとか——これは福岡県の拳銃や武器の使用についての規則を取り寄せられたらわかると思いますけれども、そういう場合に軽々に使っていいとは書いてありません。抵抗をするかあるいは凶悪犯罪として人身、生命に危険を及ぼすか、そういう具体的な例がなければ拳銃は使ってはならぬと書いてある。しかるに、逃げていく者は何をとったかということは、返品された不良品をとったという認識があるかどうかは知りませんけれども、これは駐在所の警官です。ですから、あなたが言われるように、それは事前に阻止すべきものであって、待って追っかける、そしてそれをピストルを使って死に至らしめるような逮捕の仕方をすべきではないということは、常識的に考えられます。それならば、それを起訴してくるというのは当然ではないかと思いますけれども、それがないのは、先ほど申し上げましたような差別観念以外にはないのではなかろうかということで、お尋ねをしておるわけです。  それから、あとの点についても、関係者の中からたくさんの死人が出ております。あるいは有力な容疑者と考えられる人についても自殺をした人が出ましたけれども、それらについても一切調べてない。それから、犯人を逃がしたということで警察の体面が先になっているかもしれませんけれども、その体面と権威の維持のために人が犠牲にされる、あるいは十分な証拠調べもできない。少なくとも裁判上で言えば、どういう心証を得られるか、あるいは裁判を進められるか、これは法務省の干渉し得るところではないでしょう。しかし、検察官の段階では少なくとも言い得るのではなかろうか。あるいは再審を求めるほどの有力な証拠が出てくれば、検察官はこれを調べるのは当然だと私は思うのです。そういうことがなかったら、予断と偏見に基づいて起訴がなされたということを申し上げておる。  時間がございませんから、それ以上詳しくやっているとそれで時間をとってしまいますから、このくらいにいたします。  ですから、このような点については、法務省の所管の中においても、法の精神が一切の差別がなくなるようにひとつ御指導と努力とを願いたい。  直接法務省に関係をいたしますものとして、この間法務省に参りました。一月三十日に解放同盟の代表や、あるいは関係市町村の者、特に法務省に参りました者は、大阪府、市、その他地方自治体の関係者が多かったようであります。そこで壬申戸籍は使わない、使わせないということで封印がされたようです。ところが、それはつくり変えて東京に集約されたわけではございません。現場で封印をされた。そこで地方に参りますと、町村役場に有力者が行くと、その有力者の言うことを拒むことができないという実情にあるのか、あるいは興信所や、あるいは探偵社等が、その封印されてあるはずの戸籍を見て、そのことが、せっかく結婚の合意ができたのに、これをこわすようなことがまだ起こっております。これは法務省でも明らかにいたしましたけれども、昨年の間にも何十件か起こり、そして大阪の市内のことだと思うのですけれども、三人も自殺をしたということがそこで言われておる。  ところが、その戸籍を再製することについては、予算がないということで拒否をされております。こういう点についてはどう考えられますか。
  107. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 民事局長からお答えをいたします。
  108. 川島一郎

    ○川島政府委員 壬申戸籍につきましては、先ほどお話にございましたように、封印を施しまして、これは別途保管いたしております。したがいまして、これにつきましては、閲覧の申請がございましても、外部には見せないという取り扱いにいたしております。  それから、先ほど御質問の中にございました改製の問題が起こっておりますのは、現在市町村に備えつけられております除籍簿の関係であろうかと思います。壬申戸籍につきましては、先ほど申し上げましたように、外部には見せないという取り扱いをいたしておりますが、いわゆる明治十九年の戸籍法の改正以後の戸籍につきましては、現在市町村に除籍として保存されておるわけでございます。これは壬申戸籍でございません。しかしながら、この戸籍につきましても族称の記載がございます。族称というのは、士族、平民、華族という三種類の区別でございます。この三種類の区別は、壬申戸籍において問題となりましたような新平民といったような文字は別段使われていないわけでございますが、現在はないものでございますので、これにつきましてもなるべく外部に見せないでほしいという要望が一部の地区から出ておるわけでございます。したがいまして、法務省といたしましては、このような除籍につきましては、たとえば謄抄本を出す場合には除籍の記載はしない。それからまた閲覧の場合に、市町村長が閲覧させることが適当でないと認める場合には閲覧をさせない、あるいはまた、族称欄の記載を墨で消したいという希望のある市町村に対しましては、墨で抹消するということを許可いたしております。このような状況でございますので、特にあらためてその改製を行なう必要はないのではないか、このように考えておる次第でございます。
  109. 吉田法晴

    吉田分科員 人権擁護局長も来ておられると思いますからお尋ねをいたしますが、法務省で折衝をいたしました際に、大阪市の事務官だと思いますけれども、全国でも同様な事件があることについては御存じでしょうか。
  110. 萩原直三

    ○萩原政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御質問のようなことが大阪で起こったということは聞いておりません。
  111. 吉田法晴

    吉田分科員 それは大阪だけではありませんけれども、大阪のことはあとで、話の出たくだりを要領速記しましたものを引き出してお尋ねをいたしますが、結婚の約束をした、あるいは事実結婚をした男女の仲で、差別的な思想から結婚が破談になったような、なま木を裂くような事件が起こった、あるいはその中から自殺をした者も出たというようなことは御存じございませんか。
  112. 萩原直三

    ○萩原政府委員 そのような事例は伺っております。
  113. 吉田法晴

    吉田分科員 そういう事例が依然として絶えないということを知っておるならば、大阪について、これはいま該当の個所をさがし出しますけれども、そういうこともあっただろうということは、市の担当者が言っておるのですから間違いないと思うのですが、それを否定されるのはどういう根拠に基づくものでしょうか。
  114. 萩原直三

    ○萩原政府委員 私どものほうにはまだそういうことの報告を受けていないという趣旨でございます。
  115. 吉田法晴

    吉田分科員 大阪でもそうですが、全国的に見てそういう事件があっても、それが人権擁護局ですか、地方の法務局の人権擁護部、あるいは人権擁護委員が皆さんの外郭的な機関として委嘱してありますが、そういう人権擁護委員なり法務局の人権擁護部から、あなたのところには来るようにはなっておりませんか。
  116. 萩原直三

    ○萩原政府委員 先ほどお話しの差別の問題は、人権擁護局としましては非常に重大な関心を持っておりまして、その差別の解消に極力つとめているところでございます。そのようなところから、そのような事例がある場合には必ずこちらにも報告をするようにというふうに指示しておりまして、地方法務局においてキャッチしました事実は、すべて私どものほうに報告が参っております。そして、そのような事例に対しては、できるだけ適切な処置を施すようにつとめております。
  117. 吉田法晴

    吉田分科員 時間がございませんので、具体的に法務省でのやりとり、特にさっきの戸籍の問題は、佐々木参議院議員や、あるいは衆議院でも八木委員その他から要望が出ておることだと思いますけれども先ほどの民事局長の答弁ではございませんが、やる気がない。そこで、全国的に部落問題についての、大臣が言われるような差別意識をなくすため、あるいは差別的な就職やあるいは結婚など基本的な問題についてなお依然として差別が残り、そしてほんとうの法の前における平等が保障されていない、それをどうするかということで、これはいま総理府にございますが、従来は厚生省でしたが、厚生省だけでなしに、各省において問題の解決のために、ほんとうに差別をなくするために努力を願っておる。それで人権問題は、これは法務省の当然の任務だと私は考えますが、これらの人権意識あるいは差別をなくするための啓発活動等は積極的にやられるべきだと思います。全くやられていないとは言いません、やられていないとは言いませんけれども、人権擁護局長が、あるいは関係者の民事局長が、先ほど来の答弁のように口では言っておられる。口では言っておられますけれども、人権擁護局長ではありませんけれども、にやにやしながら話を聞いておられる程度では、この問題は解決しません。根本的にひとつ決意を固め、予算も必要な経費については計上をしてやってもらいたいと思うのであります。  そこで、時間がありませんから具体的に申し上げます。部落差別による人権侵害事件に対する相談所を法務局単位に設けてもらいたい。  それから、日常広範に生起をする差別事件の解決に対処できるように、地方法務局に専任職員を配置してもらいたい。  このやりとりを見ますと、法務省の人権擁護局にも何人かの担当者はおられるようでありますけれども、これは本気ではなさそうであります。もっと本気で問題解決のために努力をしてもらわなければならぬと思いますが、それらの部内の啓発あるいは意思統一等はさらにお願いをするところでありますが、こういう地方法務局における専任職員と相談所の設置について、それから、除籍簿並びに戸籍原簿の差別悪用の責任を明らかにするとともに、その抜本再製のための予算を計上していただきたい。これは課長と折衝をいたしましたところでは、金額が大きいから何ら前向きの姿勢はなくて、局長にさえ会わせておりません。これは局長に相談をしたって、そういう予算を計上する気持ちがないから会わせる必要はない、会う必要はないと言われております。  それから最後に、部落差別を挑発をする興信所並びに探偵所の横行に対する規制の措置を、法的な規制を含めて講ぜられたいという要望がございますが、これらの点についてどう考えられるか。おそれ入りますけれども、一括して大臣なり関係局長から答弁を願いたいと思います。
  118. 萩原直三

    ○萩原政府委員 お答え申し上げます。  まず人員の点でございますけれども、われわれも人権擁護、ことに同和問題について専属的に仕事に当たり得る人権擁護機関の増員を関係各省にお願いいたしまして、本年度の予算では三名増員という予定になっております。  それから、各地方法務局に相談所を設置せよというお話の点も、できるだけわれわれも検討しておるのでございますけれども、すでに同和地区におきましては特設相談所を設けておりまして、人権擁護委員並びに地方法務局の職員が、ともにそのことに当たっておりまするし、さらに各法務局には常設の相談所がございまして、同和問題については特に意を払っております。非常に少ない人員ではございますけれども、われわれ法務省人権擁護局及びその下部組織としましては、全員をあげてその問題に取り組んでいるわけでございます。  それから、興信所の問題でございますけれども、これは先生すでに御承知のように、われわれ人権擁護局としましては、差別は許しがたい社会悪であるという意識を関係者に徹底的に植えつけるという啓蒙活動に重点を置いております。そして、すでに昭和四十五年に人権擁護局及び全国人権擁護委員連合会の連名で、各興信所、わかり得る興信所に対しまして、そのような差別事象を生ずるような取り調べはしないでいただきたいという要望を出しております。そのような啓蒙活動を通じて興信所の問題も漸次改善されていくことを希望しておるのでありまして、その性質から、法的規制を興信所に加えるということは考えておりません。
  119. 臼井莊一

    臼井主査 吉田君に申し上げますが、お約束の時間がまいりましたから、結論をひとつ。
  120. 吉田法晴

    吉田分科員 時間がございませんから、こまかいことについては触れませんが、最後に大臣から答弁を願いたいのは、おひざ元はいま申しましたけれども、これはこまかく具体的な事例をあげるわけにはまいりませんけれども差別事件が起こっておる。それから、あるいは結婚をしようとして、差別観念のためにさかれて、自殺をする者が年々絶えません。むしろ最近はふえているでしょう。それに対して法務省なり人権擁護局、その他を通じて、ほんとうになくそうと取り組んでおられる姿勢は、さっきの除籍簿の問題一つとって見ても、ありません。そして、各市町村は、これはやはり身近かにありますだけに、やはりやっております。  そこで、大阪など地方自治体で予算を計上をしてやっている除籍簿の再製でさえ、法務省としては、それを順次でもいいから予算に計上していこという姿勢すらない。ですから、口ではどんなに言われようとも、実際に問題を解決するために、差別を一切なくするために努力しておられるとは言えないのじゃないですか。  そこで具体的な例をあげましたけれども、これらの点は宿題で残しますが、ぜひひとつ法務大臣みずから局長を督励をして、予算を計上するなりあるいは活動するなり——地方法務局はやろうと思えば、私は誠意があれば金が足りなくてもやれると思うのです。それは市町村では、あるいは解放同盟と協力をしながら実際にやっております。あるいは金の使い方が一町村で何億ということにはなりますけれども、道路の舗装あるいは側溝、あるいは環境の整備をやはりやっております。苦労をしております。それに対する援助をすることは私は国としては当然だと思うのですが、積極的に国のほうから指導をし援助をするということが足りないで、市町村長から突き上げられて、突き上げられてもその除籍簿の再製のことについては乗り出そうとしないのが法務省ですから、私は大臣に質問をしておるわけであります。  きょうの時間が足りませんで、十分意を尽くしませんけれども、根本的な姿勢の転換のために大臣が骨を折ってくださることをお願いをしまして、質問を終わります。
  121. 臼井莊一

    臼井主査 次に、横山利秋君。
  122. 横山利秋

    横山分科員 いま人権問題が出ましたが、私もまたこれを別な角度で、ひとつ政府側の御意見を伺いたいと思います。  最初五分間ばかり、ぜひ聞いてもらいたい数字をあげます。  第一審において全部無罪となった人はどのくらいあるか、四十二年で八万三千三百五十九件の一審判決の中で四百十七人が全部無罪、無罪率は〇・五%。四十三年、八万一千百四件の判決人員のうち五百四十三人が無罪。四十四年、七万二千四百四件のうち四百七十五件。四十五年、七万一千七百五十四件のうち五百八十四件。四十六年、七万四千四百四十二件のうち四百四十八件。大体一年に四、五百人の人が一審において無罪になっています。この統計は二審、三審については出ておりませんが、少なくともこれを上回って、年々歳々四、五百人の人が無罪になっておるわけであります。  この起訴をされこれに到達するまでに、どのくらいの時間がかかるか。全部無罪事件の審理期間を見ますと、六カ月をこえる審理期間を要したものが全体の八四%、平均審理期間も二十四・六カ月。したがって、通常第一審事件平均の五・六カ月に比べると四・四倍の平均審理期間。これについては、弁護士も普通の場合と比べてずいぶん多い弁護士がついています。  この取調べ証人数を見ますと、証明なしを理由とする無罪人員三百七十六人について一人当たりの平均取り調べ証人数は十・七人。一般事件のそれが一・七人であるのに比べて、格段に多いとされています。  つまり、法廷で無罪になるということは容易なことではない。容易なことではないが、それでなおかつ年々歳々四、五百人の人が無罪になっておる。しかし、これは法廷において天下晴れて無罪なりという証明をもらったのでありますから、これはいいとしましょう。  もう一つ例を出します。つい数日前でありますが、愛知県警察においてこういうことがありました。四十五年六月、名古屋市昭和区天白町八事の名城大学で起きた学生の内ゲバ事件で、同町八事山田の中京大三年福島民雄君二十二歳がつかまり、同君と両親が、事件と関係がないのに機動隊員に暴行され誤認逮捕を受けたと、愛知県と県警本部長を相手どり名古屋地裁に損害賠償を求める訴訟を起こした。そして裁判長のすすめにおいて、和解について話がまとまった。ところが、警察の側で、あれは裁判長がやれと言ったからしかたがなかったのだという談話を発表したために、こわれた。その後、警察が本部長の決断によって、おわびと同時に和解が成立して、四十四万円の賠償金支払いがきまって、今度県議会に補正予算として上程される、こういうことであります。それで、このことの中に考えられるのは、愛知県の警察本部長が最後の段階において決断をしたことを、私は高く評価しておる。  今度は「犯罪白書」四十七年版、これを見ますと、裁判の無罪はきちんと出ています。ところが、検察側の統計におきまして、この一一五ページ、IIの4表、勾留被疑者の処分別人員を見ますと、不起訴二万二百六十七人、そのうち起訴猶予が一万六千七百二十人、嫌疑不十分が二千三百三十人、その他が千二百十七人となっておる。そして中止が二百四十六人。一体、警察が勾留をして、検察陣が起訴するか不起訴にするかということの判断の中に、勾留したけれども、調べの結果罪はないと判断をしたものがあるはずでありますが、この統計には何らそれらしいものが出てこないのであります。  同じく一一六ページの処理区分別被疑者の百分比を見ますと、ここでも不起訴の中の起訴猶予のほかにその他の二・八%というものがあるが、ここにも罪なくして勾留をした、これは間違いであったという数字、統計が少しも出ないのであります。同じく一一七ページ、処理区分別被疑者数を見ましても、同様なことが言える。  つまり、私が例として出しました愛知県警本部長の決断、これはいいほうであります。しかし、これらは例外でありまして、警察が勾留をして、そして検事が起訴するか不起訴にするかという段階では、間違って逮捕しましたということについて、何らの釈明も、何らの世間に対するおわびもないということなんであります。  およそ人が刑事訴追を受けるのは、その人の人生の最大の不幸である。罪なくして刑事訴追を受け、幸いに裁判において無罪となった場合でも、その人の受ける精神的、物質的損害はほとんど無限で、そのために人生の大半が失われることが多い。  ここに、著名事件で昨年一年の間に刑事補償額の決定を受けたものを調べてみますと、強盗殺人等被告事件、いわゆる有名な仁保事件、拘置日数五千百四十九日、およそ二十年近い拘置をして無罪。強盗殺人等被告事件、有名な八海事件、これが阿藤周平が四千八十九日、稲田実、二千七百八十一日、松崎孝義、二千九百二十日、久永隆一、二千九百二十日。吹田騒擾事件、これが拘置が二百四日。それから放火再審被告事件、金森事件、拘禁期間が三百八十八日。それから詐欺被告事件、佐々睦雄、拘置日数が九十三日。恐喝被告事件、沼島喜雄、二十二日。収賄被告事件、郷右近英治、拘置三十七日。収賄被告事件、柿崎利夫、四十二日。脅迫被告事件、青柳三喜夫、八日。詐欺被告事件、秋葉静衛、二十四日。公務執行妨害被告事件、新留勝、十四日。住居侵入被告事件、武林秋次、十三日。業務上横領被告事件、石井喜右衛門、四十一日。恐喝未遂被告事件、小関純一、二十七日。公選法違反被告事件、大口小太郎、二十日。公選法違反被告事件、上原信重、十六日。これらはすべて無罪になって、悪かったというわけで刑事補償法が適用されて、国庫からお金が拘置日数に応じて支出をされておる事案であります。  およそ二十年近いこの被告の心情を考えますときに、仁保事件の岡部保被告は六百六十九万円、一時金とすると高いようではありますが、二十年で年に三十万円ぐらいでしょうか、月にしたら二万円ぐらいでありましょうか。この間、人生のまさに大半を、あいつは人を殺したというらく印を押されて、全く人生を失ったと言ってもいい。裁判で無罪になるためには、どのくらいの悪戦苦闘、夜も日も寝られずにやっておったかということを考えますと、国が間違って起訴し、間違って勾留をした者に対する国の現在の補償のあり方というものについては、まことに寒心にたえぬと痛感をいたしておるわけであります。  こういう前提をまずお含みの上、私の質問に対してそれぞれお答えを願いたいと思います。  まず第一に、先ほど指摘いたしましたが、この犯罪白書の中に明瞭に見られますように、勾留被疑者の処分別人員等の中で、不起訴の段階において勾留したけれども間違いであったという項目がなぜ出てこないのかという点については、警察でございましょうか、どこからお答え願えますか。
  123. 木村榮作

    ○木村説明員 犯罪白書を刊行しております法務総合研究所立場から、関連事項についてお答え申し上げます。  御指摘のとおり昭和四十七年「犯罪白書」におきましては、裁判結果の無罪数は載せてございますが、勾留被疑者の処分別の中に、その犯罪の嫌疑が全くなかった場合、われわれの実務で申します嫌疑なしといったような数字はあがっておりません。  この一一五ページの表で申しますと、御指摘のとおり、その他の中に含まれてしまっておるわけでございます。ここでいわゆるその他と申しますのは、嫌疑なし、それから、これは全く証拠がないという場合でございます。それから、罪とならず、これはその証拠がかりにありましても、もともと犯罪にならないというような場合、それから刑事未成年、それから心神喪失、親告罪の告訴、告発請求の欠如、無効、取り消し、それから確定判決がある場合、大赦、刑の廃止、刑の免除、時効完成等々数多くの不起訴の理由があるわけでございます。  したがいまして、その他千二百十七名の中に嫌疑なしが含み込まれておるという点は御指摘のとおりでございます。  ただ、ここであげておりますのは、前ページの記述にもございますように、勾留された者が一体どのような処分を受けたかという概況を説明するために利用した資料でございますので、勾留の有無にかかわらず、全体の処分状況から不起訴の内訳を見るという場合は統計数字があるわけでございます。  御指摘の一一六ページの図表、一一七ページの表は、簡略にはしてございますけれども、検察統計自体からはこまかい数字をあげることはできるわけでございます。たとえて申しますと、道路交通法を除きますと嫌疑なしは二千三百九十五件、罪とならずというのが八百三十六件というような数字になっております。
  124. 横山利秋

    横山分科員 申すまでもなく、私は統計の取り方の問題を言っているわけではありません。少なくとも勾留をし、あるいは非勾留のもとでも、人を殺したのではないか、どろぼうをしたのではないかと疑いをかけて、そして勾留をし、あるいは警察で取り調べた人が間違いであったという点についての取り扱いに、きわめて人権を尊重しないところがある。だから、嫌疑なしと嫌疑不十分、起訴猶予と明らかにこれは違う問題であって、その他に扱われる筋合いの問題ではない。明らかにこれは間違いであったという点について、その間違いが年々歳々どういう状況であるかという点については別角度で統計をとるべきである。それは単に統計の問題でなくて心がまえの問題ではないか、こう私は強く指摘をしておきたいと思う。  そこで、いまお話によれば、警察からは嫌疑なしという数字はきちんと来るというのでありますが、警察におきまして嫌疑なしという場合に、勾留をした場合には被疑者補償規程というものがあるはずでありますが、この運営はどこでおやりでございますか。
  125. 安原美穂

    ○安原政府委員 検察庁におきまして、被疑者補償規程に基づきまして補償をいたしております。
  126. 横山利秋

    横山分科員 時間がないので、その詳細を承ることはできませんが、少なくとも、私が先年取り上げたときでもそうでありますが、実際は間違って逮捕した、勾留をした、たいへん申しわけなかったといって被疑者補償規程が適用されておる事例は、全国的にきわめて少ない。これだけの数字の嫌疑なしが出ておりながらきわめて少ないと承知をしております。  私もまだ調査不十分でありますが、愛知県県警が間違って勾留をした、逮捕をした場合における四十四万円を県議会へ補正予算で提案をするということにちょっと不可解な点があるのでありますが、これはなぜ被疑者補償規程の適用がされないのですか。御調査が済んでおりますか。
  127. 室城庸之

    室城説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の福島君の件につきましては、これは逮捕をいたしておりませんので、初めから被疑者としての扱いはなされておりません。ただ現場の、先ほど御指摘のいわゆる内ゲバがありました際に十五人の学生を検挙いたしまして、その被疑者を連行します途中において福島君が、それに加えて一人一緒に署まで連れていかれたということでございまして、福島君自身については当初から、警察としては被疑者扱いはいたしておりません。
  128. 横山利秋

    横山分科員 ことばの問題では逮捕ではないというけれども、被疑者の立場からいえば、機動隊員になぐられ、不当逮捕をされて警察へ連れていかれた、こういうことなのであります。それを法律用語でいうと逮捕である、逮捕でないと議論はあるでしょう。しかし、国民の側で言われますと、街頭でおまわりさんに警察に連れていかれたということは素朴に考えなければいかぬ。これは被疑者扱いをしていないから被疑者補償規程が適用できないというお立場ですか。もう一ぺん確認します。
  129. 室城庸之

    室城説明員 説明が足りなかったと思いますが、先ほど申し上げました後段の部分でございますが、四十四万という金額は、そのときに機動隊員から暴行を受けたという福島君側の言い分がございまして、それに対して警察としても、現場の状況などから警察公務の際に危害を与えたものというふうに判断いたしましたので、損害賠償という訴えに対して四十四万の補償をしたいということで、県議会に、けがに対するいわゆる損害賠償ということで金額を計上しておるということでございます。
  130. 横山利秋

    横山分科員 そういたしますと、被疑者ではない、傷を負わせた損害で出しておるということですね。  しかも、それは間違いであったと県警本部長談話が出ておるわけであります。「渡部正郎・同県警本部長は二日夕「警察としては原告が負傷、誤認逮捕と思われるような取扱いを警官から受けられたことについて、現場の警官の活動に適切を欠き遺憾な点があったことを反省、将来の教訓としたい。今後も早期に和解が成立するよう努力する。“成立すれば当然、上程を願うことになる」」、これが二日でありますから、すでに三日には和解が成立して、本部長がおわびをされたということなのであります。  そういたしますと、この事案は、いまの被疑者補償規程では救済がされない。こういうことは間々あることなんだけれども、そのたびに県議会は補正予算を組まなければいけない、いまの被疑者補償規程ではこういうふうに解釈をすべきですか。
  131. 安原美穂

    ○安原政府委員 お答えいたします。  横山委員御案内だと思いまするが、被疑者補償規程による被疑者補償は、抑留、拘禁を受けた者が検察庁でいわゆる不起訴処分になった、その不起訴処分が犯罪を犯していないと信ずるに足る相当の理由があるときに補償するということで、あくまでも刑事手続におきますところの補償でございまして、先ほどから聞いておりますと、先ほどの被害者は刑事事件の被疑者として検察庁に送致をされておらないことでございまするから、その観点において、また逮捕もされていないということから見ましても、被疑者補償の対象にはならない。と同時に、被疑者補償規程は、無過失責任と申しますか、いわゆる公権力の行使に当たりました者の故意、過失を問わないで、損害があったということで補償するということになっております関係で、先ほど来の警察当局からの御説明は、公務員の故意、過失を前提とした国家賠償法の訴訟事件としての処理であるということで、事柄がそういう意味では違うというふうに御理解願いたいと思います。
  132. 横山利秋

    横山分科員 事柄が違っても、私の問題を提起しておることにはお答えになっていないわけです。国家賠償法としての性格であるというのだけれども、要するにこの名城大学の学生のような問題は、被疑者として勾留をされた者の数よりも、現実的にはかなり庶民的に多いということは考えられなければなりません。そういう場合は、いまのお話では被疑者補償規程は適用されないのですから、そうするとこの損害賠償を請求された場合には、警察にはそういう予算は全然ない、だから一々県会で補正予算を組まなければならないのか、こういう問題を逆に提起しておる。そこのところに私は、警察が人権を具体的にどういうふうに尊重してやっておるのか、間違った場合、故意という場合もないではないと思うのでありますが、そういう場合における措置はいまないのですねと、こういうことになるわけです。
  133. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘のように、いまの警察の段階で、被疑者というか、犯罪の捜査の対象にならなかった、したがって刑事手続にのらなかったものにつきましては、現在の救済措置とすれば、国家賠償制度ということに相なるものと私は考えます。
  134. 横山利秋

    横山分科員 国家賠償の場合には、国家公務員あるいは地方公務員が故意ないしは過失であるということを立証しなければならぬ。そんな立証というのは、そんなに庶民の世界において具体的にうまくいくものではない。故意ないしは過失であるといなとにかかわらず、かかる名城大学のような問題は、随所に私はあると思うのです。そういう場合の救済措置はないのですねというだめを押しておるわけであります。今回は特殊な例である。まさに一つのモデルとして、県の議会に補正予算まで要求をしてやるということについては、たいへん県警本部長は英断をもって腹をきめたと私は思うのであります。一つの非常に大きなモデルだと私は思う。しかし、こういうことが一々補正予算を組まなければ、かかる問題について国民に対する補償ができないでは困る。被疑者補償規程があるなら、それ以前の庶民的な諸問題についてもそれらしい措置がなければならぬではないか、こう言っておるわけであります。勾留をされた被疑者としてであるならば、実績はほとんどないのでありますけれども、予算があるからいつでも発動できる。しかしそれ以前に、きわめて庶民的なかかる問題について何らの措置が恒常的にないということについていかがお考えであるか、こういうことを私は言おうとしている。この辺で法務大臣の御意見を伺いましょうか。大臣、どうですか。
  135. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 何か財源の措置を講じておくことができれば重畳なのでありますが、どうも現状から申しますと、そのつど補正予算の形式をとってもらう以外にないような心持ちがいたします。
  136. 横山利秋

    横山分科員 だから、どうしたらいいかと聞いているんです。何か知恵はないかと聞いているんです。ないならないでしょうがないということでは、国民に対する答弁になりませんよ。一々補正予算を組めということなんですか。
  137. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 いまの状況からは、補正予算でやっていただく以外によい知恵はない、こう申し上げておるのです。
  138. 横山利秋

    横山分科員 そんないまの状況の説明は、やり取りでわかったのです。だから、そういうようなことについては被疑者補償規程もあり、それ以前の広範な庶民的な問題があるのであるから、何かお考えになったらどうですか、こう言っているのです。わかっていて、あなたはとぼけているんじゃありますまいか。
  139. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 被疑者補償規程があることでございますから、大体、年間においてどれくらいの補償を必要とするかということは、予見ができないこともないわけでございますから、あらかじめの経費をあげていただくか、それができなければ、そのつど補正に組んでいただくということ以外には道がなかろう、こういうふうに申し上げておるのでございます。
  140. 横山利秋

    横山分科員 あなたはわかって言っておるんですか。被疑者補償規程とこの種の名城大事件のようなケースは、全然違うんですね。それはわかっておっしゃっておるんですね。こちらだけは制度がある、こちらは制度がないから補正予算を組まざるを得ぬということではいけないから、こちらも、何かの制度をつくって予算を計上しておいて、庶民的な問題に備える必要ではないかと提起をしておるんですよ。あなたは補正予算を組むよりしようがないと言うけれども、これは御答弁としては全く納得ができないのです。
  141. 関根廣文

    ○関根政府委員 事柄が警察段階の逮捕の問題でございますので、警察庁の刑事局長でございますが、お答えをいたしたいと思います。  警察の段階で誤逮捕または誤手配などをした場合の救済につきまして、被疑者補償規程が適用にならない、しかし、損害賠償的見地から国家賠償法による救済制度はある、しかし、これは故意、過失がなければ救済できない、そのほかはどうかということにつきましては、民事訴訟もございますが、これも制度としてはありますが、若干日時がかかりますので、適用事例は少ないと思います。  現実に国家賠償法の適用を受けまして、ここ数年間に賠償をいたしました事例は、四十五年十一月に、警視庁の誤手配で福島県が誤逮捕したことについて損害賠償請求の提訴があり、和解が成立して五十万円で解決したという事例が一つございますだけで、実際には国家賠償法の対象となる事件というものは非常に少ないわけでございます。それは手続がめんどうだから少ないんじゃないか、ほかに愛知県のような事例がたくさんあるんじゃないかというふうな御指摘につきましては、なるほど逮捕をして検察庁に送致をしない段階で釈放するという事案が年間若干ございます。そのものにつきましては、国家賠償法の適用を被疑者のほうが請求しないで、警察のほうで誤って誤逮捕したことは非常に申しわけない、これはミスである、誤手配したことは申しわけない、ミスであるということで、逮捕をされた人、あるいは公開手配をされて名誉を侵害され人権を侵害された人との間に話し合いを行ないまして、見舞金あるいは謝礼というふうなものを出して、それで納得されるというふうなことで、四十七年度にそういうふうに話し合いをして解決いたしましたのが、私のほうでは全国で六件ほど報告を受けております。  したがいしまて、一面、国家賠償法による救済、一面、このような話し合いによる救済ということで、現在、警察の段階におきましては、そういったような交渉で問題は解決されておるように私は理解しておるのであります。
  142. 横山利秋

    横山分科員 たいへん甘い御理解で、形式的な御答弁で、現場の実際の誤逮捕をされた者の実績、あるいはまた誤って勾留された者の心情、そういうものをほんとうにくみ取るならば、かかる数字ではないと思います。国家賠償法が、要するに国家公務員、地方公務員の故意ないしは過失の立証責任を、実際問題としてその請求人に負わしておるということからいって、その運営が決してお話しのようなものでないことは十分指摘をしておきたいし、重ねて、後日、問題を具体的に提起をしたいと思います。  時間がございませんので、最後に法務大臣にお伺いをしたいのでありますが、この種の問題につきまして、すでに御存じのように、政府は刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正する法案を準備をなさっておられるが、まだ国会に提案をされてない。そこで私は、積年の問題として、勾留をされた者にとっての金額も安いし、同時に勾留をされていない、しかしながら長年の裁判のためにその人生を失った者に対して補償の道を開けという提案をし、同時に、無罪の裁判確定までに要した被告、弁護人であった者の公判準備及び出頭に要する旅費、日当、宿泊料、弁護士報酬を補償しろという問題を提起をいたしておるのであります。  これにつきまして、聞くところによれば、法務大臣としてもしごくもっともだという御意見をお持ちのようでありますし、かつて本院におきまして、法務大臣が、前におつとめになりました当時に、私に対してもその善処を約されたことがあるのであります。政府は、伝えられるように、単に勾留または拘禁またはその他の勾留を受けた者に対してのみ金額を水増しするだけにとめられるのか、以上のような私の述べましたような点をも考慮いたしまして、非勾留のときにおきましてもこの際補償の道を開く用意があるのか、その辺をお伺いをいたしたいと思います。
  143. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 このたびの改正でございますが、この改正はただいま提案しております予算に出ておりますように、補償額の引き上げが行なわれるわけでございます。死刑につきましては三百万円を五百万円、懲役につきましては、身柄を拘束しております場合には、一日は六百円から千三百円という現行法を、六百円から二千二百円という金額の引き上げが行なわれるわけであります。このたびの改正は、この二つの金額の引き上げを中心といたしまして、とりあえず刑事補償法の改正を行なう以外にはなかろう、こういう方針で立案をしておるのでございます。  そこで、いまお話しの身柄不拘束の場合においても補償をすべきではないかというお説に対しましては、私はかねてよりこれは賛成でございます。拘束されておるとおらずとにかかわらず、程度の差は幾らかございましょうが、その名誉を回復してやり、苦痛を戻してやるという意味におきましては、私は何としてもこの刑事補償法によって賠償をしてやりたい、そうすべきものであるという考えを持っております。ところが、立法技術的に幾らか問題がありますのは、国家賠償法との関係でございます。国家賠償法の場合は、御承知のように、故意、過失が前提になります。裁判で無罪になった場合においては、故意、過失を問いません。こういう関係もありまして、両者の関係をいかに見るかという調整の問題も若干ございまして、早急にこのたびの改正の中にこれを追加織り込んでいくということが時間的にできないことが遺憾でございますが、とりあえず金額引き上げの点だけを改正にのぼせまして、追ってこの問題については、身柄不拘束の者についても無罪の場合は刑事補償法の適用ができますように苦心をしてみたい、こう考えておるわけでございます。
  144. 横山利秋

    横山分科員 いま、お話によれば、身柄不拘束のままの問題について、今後の検討事項だとおっしゃるわけでありますが、問題を提起してからもうすでに数年になっておるところでありまして、大臣があのときに誠意をもって御検討を約されたにかかわらず、また数年たって同じことをおっしゃるというのはたいへん遺憾だと思うのであります。  それからもう一つは、いまあやまって死刑にした場合には、三百万円を五百万円にするとおっしゃるのでありますが、しかし強制自賠、人をあやまって殺した場合における保険の強制自賠は五百万円ですね。国が、おまえは人殺しだといって罪を起訴し、長年たって、人を死刑にしてしまってから、実は間違っておったというて結局五百万円の見舞金を出すということですね。何か矛盾を感じませんか。国が間違って人を死刑にしてしまってから、えらい済みませんでしたというて五百万円と、保険の自賠が五百万円と、何か矛盾を感じませんか。私は——そんなことはそうあり得べきことではない。日本ではまだあまり例がないのでありますが、外国では著名な例が幾つもあります。せっかく引き上げるのだったら、形式的な引き上げでなくて、他の保険の実例をも考慮されて——実際に間違って死刑にしてしまった、その事の重大性から考えますと、五百万円ではもうお話にならぬ。やる気があるかないかという問題ではなくて、これは人の評価、ものの考え方の基本が違っているのじゃないか、私はそう思います。再検討されるように要望して、私の質問を終わります。
  145. 臼井莊一

    臼井主査 次に、田中昭二君。     〔主査退席、塩谷主査代理着席〕
  146. 田中昭二

    田中(昭)分科員 私は、きょうは法務省の管轄します施設、といいましても膨大なものがございますから、それをある程度範囲を縮めまして、全国にあります——少年少女が罪を犯しまして、その人たちが更生のために強制的な機関に入れられておる。いまからという幼い少年少女があやまって罪を犯し、そういう機関に入っております。これは、日本の将来を考えてみましても重大な問題であると思いますから、そういう関係の施設がいまどのような状態になっておりますか、どのように掌握しておられるだろうか、まずお尋ねしたいと思います。
  147. 長島敦

    ○長島政府委員 全国の少年院、あるいは少女苑でございますが、これを掌握いたしますのは、随時各庁からいろいろな報告が参ります、これによりまして承知いたしますのと、いろいろな会議がございまして、会議の際に上京してまいりますので、いろいろ聞いております。  特に施設の古さと申しますか、整備の状況については、別途本省の会計課とも協力いたしまして、詳細に調査をいたしておる次第でございます。
  148. 田中昭二

    田中(昭)分科員 どのように掌握しているのですか。
  149. 長島敦

    ○長島政府委員 たとえて申しますと、少年院、少女苑等で、最近までの間に整備済みになっております、いわば新築のりっぱな施設が三十カ庁に及んでおりまして、それから現在整備中が二つでございます。それから、四十八年度予算の中に計上してございますが、その分として改築いたしますのが四カ庁でございます。残りが未整備庁でございまして、この未整備庁の中には、昭和十六年とか十七年、十八年というようなころに建築されました古いのがございます。これを未整備庁のAと申しておりまして、最も早急に整備しなければならない庁が五カ庁ございます。その次に、戦後二十四年から二十九年にかけて建ちました庁が十八カ庁ございまして、これをB庁といっておりまして、第二次的の優先順位になっておる、このような状態でございます。
  150. 田中昭二

    田中(昭)分科員 いま御説明いただきましたように、三十カ庁くらい全国に少年、少女の施設がありまして、残っておるのが二十四くらいということでございますが、その中で早急にやるべきものが五つ、その次になるものが十八ということでございますが、私は、このAにランクされるもの、Bにランクされるものの状態も、おそらくそれぞれ違うと思うのです。  そこで、大臣、もう少し状況、背景を、説明とともに聞いてもらいたいと思いますが、この中にもおそらくこういうものがあるかと思いますが、いまあります施設の周辺が、昔は人家のないところだったのですけれども、最近の都市化現象の変化によりまして、たいへん環境変化を来たしております。そこで、昔は人里とある程度隔離されたようなところだったのが、現在は人家の中の密集地帯にあるような環境であれば、ここでいろいろな矯正指導をなさる上において困った問題が起きておるところが、当然この中にあるのではなかろうか。その辺のところをどのように掌握し、適切な処置がなされておるのか、具体的な例をあげながらひとつ説明していただきたいと思います。
  151. 長島敦

    ○長島政府委員 ただいま御指摘のように、従来市街地から少し離れたところにございましたような施設が、だんだん市街のまん中に位置するようになってきております。ことに刑務所につきましては、さような問題がずいぶんございまして、移転がずいぶんなされてきておるのは御承知のとおりでございます。少年院につきましては、いままで市街化区域に入ったというだけの理由で移転したというのはございませんですが、今後、先生の御指摘になりますように、そういった事情がますます進んでまいりますので、少年院がその場所にあることが、少年院の教育自体からいいましても望ましくないという環境の中にあるというような事態になってまいりますと、これは少年院としてもっとふさわしい環境へ移すことが必要になるというふうに考えておりまして、そういう目で今後いろいろな施設を見てまいりたいというふうに考えております。
  152. 田中昭二

    田中(昭)分科員 私はお答えがちょっとまだ納得できないのです。といいますのは、いま移転しなければならないと大体きめておる中にそういうものはないか、そういうものが当然あろうということは想像できますね。ところが、いまのお答えではそれはないというのです。いまから勉強しますというようなお答えがありました。そういうようなことでは実情の認識が甘いのではなかろうか、こう思いますが、これは私のほうからまた次に具体的事実を申し上げますから……。  それで、まず先ほどの、今後の計画に載っております五とか十八とかいう移転を考えなければならない少年、少女苑、それだけでいいのです。刑務所なんかはかまいません。私は福岡でございますが、そういうものが九州にございますか。
  153. 長島敦

    ○長島政府委員 九州の関係では、Bグループの中に筑紫少女苑が入っております。そのほか福岡の少年院等も古い部類に属しております。
  154. 田中昭二

    田中(昭)分科員 入っておりませんね。
  155. 長島敦

    ○長島政府委員 筑紫少女苑はBの中に入っております。それから福岡少年院もBの一番うしろに入っております。
  156. 田中昭二

    田中(昭)分科員 大臣、いまお答えいただいたところがたまたま入っていたのです。先ほどお答えでは、そういう環境変化によって移転しなければならないというのはないのだというようなお答えだった。ところが、私、具体的なことを申し上げるということを前置きしましたから、実はいまおっしゃったBランクに入っておる福岡の筑紫少女苑、これはまさにいま私が申し上げましたような状況にあるわけでありまして、大臣はお知りにならないと思いますけれども、その辺のところをもう少し申し上げてみますと、福岡地区の筑紫少女苑というのは十数年前から移転要求が起こっております。そういう環境変化によって起こるところの移転要求と別に、もう一つ筑紫少女苑は問題があるわけです。  そこでお尋ねしますが、この筑紫少女苑ができましたときの建物の構造といいますか、ものすごく古いものなんです。その辺のところを大臣も知ってもらいたいと思いますので、ひとつ言っていただきたいと思います。
  157. 長島敦

    ○長島政府委員 先ほど少しことばが足りませんで、間違って申し上げたのでございますけれども、未整備庁のA庁、B庁というのは整備を要するという意味でございまして、必ずしも移転を要するという意味ではございません。建築の更改と申しますか、いずれにしても新しく建築を要するというリストでございます。  その次に、ただいま御質問の点でございますが、筑紫少女苑は昭和二十四年の一月一日に、当時の財団法人福岡の保護協会の建物でございましたものを国が買い取ったものでございまして、当時は庁舎が一棟、寮舎一棟ということでございました。これにつきまして、その後一部建て増しをやっておりまして、現在持っております建物は全部で十一棟ございますが、一棟だけを除きまして、残りは全部木造の平屋建てでございます。一部コンクリートブロックの二階建ての寮舎がございますが、これはその後に建てられたものでございます。そういう状況でございます。
  158. 田中昭二

    田中(昭)分科員 私は具体的事実を指摘したのです。福岡の筑紫少女苑がどのくらいたった建物で、どういう古い建物の中でその少女たちが教育されているかということの背景説明のために求めたわけですよ。ですから、もう少しその辺、建物の構造なり、それから、いっその建築物ができたのか、前の財団法人から引き継いだとすれば、それをそのまま使っておるとすれば、それはいつ建てられたのか、そういう点をもう少しお答え願いたいと思います。
  159. 長島敦

    ○長島政府委員 保護協会の建物を買い取ったわけでございますけれども、これは昭和十三年に福岡の少年審判所ができましたときに、保護団体としてその建物が建ったものでございます。したがいまして、昭和十三年の建物がまだ残っておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、一部新しい建物ございますが、そういうのが残っております。
  160. 田中昭二

    田中(昭)分科員 大臣、お聞きのとおり、昭和十三年に建てた。十三年といいますと、もう第二次大戦は始まっておりまして、たいへんな——支那事変も始まっておる。とにかく戦時に入っておった。見てみますと、ほんとうに小さな角材でできておりまして、そういう建物の中に入っておる少女たちは、一生懸命お掃除をしながら、ほんとに危険さえあるような状態の中にいま住まっておるというのが実情でございます。私、拘泥するわけではありませんけれども、この少女苑の敷地の問題につきましては、建物の古いということ以外にまだ問題がございます。きょうそこまで入りますと時間が足りませんから、私、たいへんな問題があるということだけ言っておきますから、いずれ調査もしてもらいたい、こういうふうに思います。  次に、この少女苑の移転につきましては、まず地元の住民から——そういうふうに立て込んできました住宅街の中にあるそのいろんな環境、そこに通ります道路なんかも狭くて、いま特に一方通行にしております。そういうようなことで、地元住民から市議会のほうに、移転してくださいという請願が出ているのです。現場の少女苑の苑長さんもたいへんいろいろ御心配があったかと思いますが、私、昨年実はこの現場に、市会議員と一緒に同道いたしました。町内会の代表の方たちと一緒に行ったわけでございます。その辺について現場からの報告があっておるようでございますから、それをひとつここでお知らせ願いたいと思います。
  161. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 お尋ねの事項は詳細答弁させますが、先生からこの少女苑の問題について御質疑があるということを今朝承りましたので、私が、存じません、知りませんと言うわけにまいりませんので、責任上、その建物の内容、周囲の状況をよく知っておる者を呼びまして、詳細事情を、短い時間でありますけれども、調べました。その結果は、先生お説のように、立て込んだ場所でもある。どんどん高い建物が出てまいりますと、昔の三十数年前の建物でございますから、低い建物でございます。高いところから見おろされるような建物でもある。そういう状況のところに、少女苑を置いておくなどということはもってのほかだという、ありのままに申しますと、感じがいたします。そこで、地元の御要望もあり、適当なる移転先あるならば、適当なる移転先に移転をさせたい、こういう感じが強くしておるところでございます。移転先が適当なところがあることを希望するのでありますが、移転先あり次第に方針をきめさせたい、私はそういうふうに考えております。  先ほどお尋ねの件については、局長から詳細お答えを申し上げます。
  162. 長島敦

    ○長島政府委員 先生が筑紫少女苑においでいただきまして、御視察いただきましたその状況につきましては、昨年の九月二十七日に苑長から管区長に報告が出ておりまして、それが私どものほうに回ってきております。九月十九日に、先生をはじめといたしまして市会議員の方とかあるいはその近辺の町内会長の方とか、数名の方がおいでいただいたようでございます。  そのときのお話し合いの内容を概略申し上げますと、地元の方から、いろいろいま少女苑として環境が適当でなくなっている、あるいはまわりから少女苑が見おろせるような状態になっておって、いろいろと教育上も困ることがあるというような点とか、その他いろいろな点が指摘されております。苑長のほうからは、これに対しまして、そういった事情は非常によくわかるのであるけれども、ひとつ御協力をいただきたい点は、少女苑というような種類の施設はできるだけ町に近くありたい、そのことによって地域社会の皆さまの御協力が得やすくなるし、あるいは子供たちに会いに来る両親も面会が容易であるし、あるいはこれは職員のことでございますけれども、職員としてもあまり不便なところにまいりますと、りっぱな心理職とか、いろいろの専門職がいにくくなるというような点の希望があったようでございます。そういったようなお話し合いがあったという報告がまいっておるわけでございます。
  163. 田中昭二

    田中(昭)分科員 大臣のほうは、私が質問の要旨を申し上げておりまして、先に結論のことばお答えいただいたような気持ちがするのですが、いま報告がありましたことは、ちょっといま大臣お答えになったことと足らない点がある。それは指摘するまでもなく、大臣のお考えでは、そういうふうに見おろして、衆人の目に見えるようなところで少女たちを教育することはよくない、こういう考えでございますが、そのことについては、いまの苑長さんの報告にはあまり強く申し出はあっていない。逆に、教育環境がいい、そして職員も勤務するのに都合がいいのだ、こういう点が強調されている。ですから、こういうことは、現場と金をつけている本省との問に食い違いが出てきまして、いろいろな末端の問題がこんがらかって実現しない。それで、行政政府に対して不信を抱き、不満を抱き、いわゆる政治不信になる、こういうことは多々あると思うのです。いまの例がちょうどそのいい例です。  そこで、大臣は当然おわかりになっておると思いますが、いまおっしゃったように、少女苑が見おろされるところにある関係上、夏なんかになりますと、あけはなしておりますし、成育盛りの女の子を住家の人たちがいろいろ挑発するとか、また少女苑のほうから、夕方、町の近所の若い者に挑発をかけたとか、こういう問題がある。これはゆゆしき問題なんです。その辺の住民のおかあさん方も、少女苑がそういう状態でなければ、そういう問題での心配も要らないわけです。これはいま私が言いましたように、少女苑側からいわせれば、外部の人たち、住民の子供たちが挑発したと言う。しかし、そこに住んでおる住民の人たちからいえば、いや内部のほうから、女の子のほうが挑発したのだ、こういう問題になってきます。  これは当然苑長さんも認めております。この苑長さんは女性の苑長さんですが、私は会ってみましたが、人格的にもほんとうにりっぱな方です。りっぱな考え方を持っているのです。ところが、いま言うように、本省の考えておることと違うために、苑長さんはいまのような報告になってしまうのです。予算をください、どうかしてくださいということを言えない。そういうこともありまして、たいへんこれは困った問題が惹起していると苑長さんも言っておられました。まだ、脱走したとかそういうことも、刑事問題にまで発展するようなことも起こっておらないけれども、いまのように地域の人たちに御心配をかけておることは、これはお認めになりました。  ですから、こういうことになりますと、私は、罪を犯して、せっかくある期間隔離することによって更生していこうとするその少女たちが、そういう環境、そういう問題があるために、こういう状態で放置すれば、少女を矯正し指導する本来の目的を達せられないのではなかろうかと心配するのですが、大臣のお考えいかがでしょうか。
  164. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 まず、何といたしましても、この問題は、移転先の移転地が確保されるということが先決問題でございます。これを得ました上で、中央と出先の施設の責任者との問の意見の調整はたやすくできるものと思います。私は、お説のように、こういう場所に少女苑を置くことは感心せぬ、よりよい場所があるはずだという考えを持つのでございます。出先との意見は十分時を得て調整する考えでございます。
  165. 田中昭二

    田中(昭)分科員 いまの大臣を受けて、局長、どういうふうにお考えになりますか。実際やる具体的なことを言ってくださいよ。
  166. 長島敦

    ○長島政府委員 大臣の仰せられましたように、少女苑自体といたしまして、その環境が非常に悪くなっているということでございますれば、ぜひこれは、もっと環境のいい場所へ移りたいということに当然なってまいるわけでございます。問題は、先生御承知のように、この施設の移転につきましては、最近、非常に誤解がございまして、何か移転しようとする先から非常な大きな反対運動等が各地で起こってまいるような実情でございまして、これは私どもの努力が足りませんわけで、もっと少女苑とか少年院とかの内容を皆さんに知っていただく必要があると思っております。そういう努力も積み重ねたいと思いますが、何と申しましても、私ども法務省として移転先を探して見つけてくるという能力がございませんので、私どもとしては、地元のほうで適当な場所をお見つけいただきまして御提示いただけると、また皆さんの御協力、御納得の上で移転ができますれば、たいへんありがたいというふうに思っておる次第でございます。
  167. 田中昭二

    田中(昭)分科員 もうはっきりきまっているのですよ。大臣は、そういうところはよくないから移転させたい、ところが、移転先が都合よくなければいけないというようなお話ですよ。それを実現するのがあなたたちじゃないですか。協力はしますよ。まず一言言いますと、そういう先ほどの報告にしましても、現場の実態を知らないであなたたちが土地を見つけたり、やれ、きらわれるからなんということを理由にして事を進めないから、問題になってくるのですよ。そうでしょう。ほんとうの実態を知って、話し合う者がちゃんとルールを持ってくるのであれば、一つも問題は起こらないはずなんですよ。  それでは、あなたが最初に答えた筑紫少女苑というのは、いまから整備しようとするもののBランクに入れるのはどういうことですか。全国の残っているもののそういう実情を全部出させれば、そして現場に行って聞いてくれば、全部現場の意見があなたたちの考えているようになってないと私は思われてしかたがない、この筑紫少女苑の問題から見て。ほんとうにくどいようですけれども、建物は古い、風紀上からいっていろいろな問題を起こしている、これは当然、少女苑として指導することにはよくない。そういう大前提があるわけですよ。反対されるからとか不便になるからというようなことで放置できない問題じゃないですか。それを放置してきてもう十数年たっている。ですから、地元との対立が一つも前進しないのです。  私は、この問題について、まだこの敷地の問題はよく調査できておりませんけれども、しかし、私は現地の人たちがうそを言っているとは思われない、いままでの実情から見て。それによりますと、大臣、いまのこの少女苑の土地は、敷地の問題でたいへんなことがあるのですよ。それは先ほど言いましたように、私は後日に譲っておきます。ですから、もう少し、いまの大臣の意向を受けて、あなたたちが、これはもうAランクでもBランクでもいいけれども、Aのランク以上にこの問題については真剣に取り組まなければならないと思うのですが、どうですか。もう一ぺん答えてください。
  168. 長島敦

    ○長島政府委員 全くおっしゃいますとうりで、私ども早急にこれは移転したいというふうに思っております。現地ともよく連絡をとりまして、また、地元の方々の御意向も十分に伺いまして、できる限り努力をいたしたいと存じております。
  169. 田中昭二

    田中(昭)分科員 それならば、この問題につきましては、一応大臣からお答えもあったように、移転するという方向で調査もしてもらわなければなりませんでしょうし、その問においては地元の協力も必要でございましょうし、私たちも地元の市町村に対しましてもこの意向は伝えてあります。ですから、法務省が積極的な態度になれば、私はそれなりに、地元住民とのいままでの問題が解決するのではなかろうか、こう思いますから、ぜひそういう方向でやってもらうということをきょうは御確認いただいて、この問題は終わります。  次にもう一つございますが、これは大蔵省のほうからまずお答え願いましょうか。  福岡に矯正管区が、一昨年でございましたか、移転いたしました。福岡矯正管区というのですか、移転いたしました、もとの矯正管区がありましたところの財産がどのようになっておるのか。また、矯正管区は新しく引っ越されたようでございますが、その問の国の財産との問題はどのようになっておりますか、お聞きいたしたいと思います。
  170. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 福岡矯正管区及び矯正研修所福岡支所は、四十六年三月三十一日に大蔵省に引き継がれまして、その代替施設が四十七年三月三十一日にできまして、そこへ四十七年四月十一日に同施設が移転いたしましたので、以後北九州財務局において管理しているという現状であります。
  171. 田中昭二

    田中(昭)分科員 管理しているというのですが、いつからどういう管理をしているのですか。あとの計画はどうなっているのですか。じっと持っておくのですか。
  172. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 先ほど申しました四十六年三月三十一日に法務省から引き継ぎを受けまして、国有財産整備特別会計の普通財産になりまして、以後、新庁舎ができます問は、これを福岡矯正管区等に使用承認していたわけでございます。先ほど申しましたように、四十七年四月十一日に移転したあとは、未利用のまま北九州財務局において管理しておりましたが、本年二月末に、福岡市から北九州財務局に対しまして、保育所及び児童相談所の敷地として買い受けたい旨申し出がありましたので、目下検討中であります。
  173. 田中昭二

    田中(昭)分科員 大臣、こういうふうに、いま申し上げました矯正管区の土地というのは、福岡市で一等地が天神町というところでございますが、そこにごく近いところに矯正管区があったわけです。そのことについていまお聞きしたわけでございますが、私は、土地の問題は、本気になって、この施設のほんとうの目的を達成するためにこうなければならない、こういう気持ちになれば、いままで持っておった土地のこともございますし、解決しますから、こまかいことでたいへん大臣に恐縮でございますが、どうかひとつそういう面については、いまの御答弁については十分責任をもってやっていただきますように、最後に御発言をいただきまして、この問題を終わりたいと思います。
  174. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 承知をいたしました。
  175. 塩谷一夫

    ○塩谷主査代理 次に、藤田高敏君。
  176. 藤田高敏

    藤田分科員 私は、最近、俗称ガードマンと称する者が労働争議に介入し、正当な労働運動に介入して、著しく労働者の労働基本権を侵害している問題について質問をいたしたいと思う。これはもう半年以来、昨年の国会でも取り上げられた問題でありますが、なかんずくその代表的な問題として、宮城県仙台市における本山製作所にかかわる問題、大阪の細川鉄工にかかわる問題、これを中心に質問をしたいと思うのでありますが、実はつい先日の三月二日、予算の第三分科会におきまして、この問題について少しく私自身が触れたわけであります。しかし、分科会の時間的な制約のために十分審議をする時間がなかったために、あらためてここで質問をするわけであります。  そこで、まず事の経緯というのは、労働省あるいは警察あるいは法務省、それぞれ関係当局は、事実経過については、国会でも何回となく問題になっていますから、十分よく承知をしている、こういう前提で質問をいたします。承知してないということであれば、幾らでも材料を持っていますから、私のほうから材料を提供する、こういうことで質問をいたしますが、そういう前提に立ってまずお尋ねをいたしたいのは、これは明らかに労働法を中心とする労働三法に違反することはもちろんでありますが、なかんずく職安法四十四条の違反であることは明確であると私は思うわけであります。また、そういうことであれば、労働省として当然これは行政的な措置としても、職安法の四十九条の二項によって、俗にいわれておる職権調査をやるべきであると考えるわけでありますが、そういう事実調査をしたかどうか。また、その職権事実調査の上に立って、四十四条の違反事実が結果として明らかになっているかどうか、このことをまずお尋ねをしたい。
  177. 加藤孝

    ○加藤説明員 この本山製作所の事件に関しましては、宮城県庁の職業安定課に指示をいたしまして、私どもとしての調査をしたわけでございまして、その結果、いま御指摘の職安法四十四条の違反の疑いが濃いということで、警察庁とも連絡をとり、その法的な判断は示しつつ、警察のほうにさらに具体的な調査についてお願いをしておる、こういう段階でございます。
  178. 藤田高敏

    藤田分科員 職安法違反の容疑が濃厚だということで、警察とも連絡をとり、その結論を急いでいる、こういうことでありますが、私は、この種の労働者の基本的権利に属する問題は、今日の憲法の基本的な部分にかかわる問題であるだけに、やはりその事実関係を明らかにしておきたいと思う。  そういう立場から重ねてお尋ねしますが、労働省は、この種の問題があれば刑事訴訟法の二百三十九条の二項によって、当然告発の手続をとるなり、あるいは警察に対して具体的な要請をしなければならぬという、そういう法的な関係に置かれていると思う。そういう、いま私が指摘した刑事訴訟法の二百三十九条の二項によってやっているものか、それとも別の法的根拠に基づいて、警察当局に対していわば職安法違反の調査を要請しているのかどうか。そのよりどころを明確にしてもらいたい。
  179. 加藤孝

    ○加藤説明員 現在やっておりますことは、私どもが調査いたしました段階で、はっきり違反であるという確認をするまでに至っておりませんので、さらに詳細な調査が必要である、こういうことで警察に対して具体的な捜査依頼をしておる、こういうことでございます。
  180. 藤田高敏

    藤田分科員 警察に対して捜査依頼をしておるようでありますが、二日の分科会でも保安部長のほうから、その調査を進めつつあるということでしたが、その調査段階はどの程度まで進行しておるのか、そうしていつごろまでに結論を出そうとしておるのか。これはもうこの問題が国会で取り上げられてから半年もたつのに、捜査をしておりますとか、しかけておりますとかいうようなことでは——実質的に労働者の基本権というものが日々侵害されておるわけですね。俗称暴力ガードマンというような、こういうものによって労働者の基本権が侵害をされておる。一方ではそういうふうに既成事実が進行しておるわけですから、私はこの種の問題についてはもっと迅速に、しかも的確な調査を行ない、そして結論を早く出すことが法益均衡の立場からいても当然の措置ではないかと思うのですが、いつごろまでに結論を出せる見通しなのか、そのあたりを含めて御答弁願いたい。
  181. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 本山製作所のガードマン介入のことにつきましては、いろいろ私どものほうで検討いたしまして、まず、昨年十一月一日から施行になりました警備業法の違反にならないかということでいろいろ検討したのでありますが、どうも残念ながら、脱法的な行為をまことに巧みにやっておりまして、法の趣旨からいって遺憾な事態が多いのでございますが、警備業法違反としてずばり問擬するような事実がなかなかつかめません。そこで、ただいまお尋ねがございました職業安定法違反の事実があるのではないか、特に十一月一日以前、法施行の前にそういう事態があるように私ども思いますので、特に職業安定法の中の四十四条、御承知だと思いますが、労働大臣の許可を得ないものが労働者の供給をしたという容疑でもって、過般来二十数名にわたる参考人を調べ、この前もお答えしたのですが、関係の方面にいろいろ事実関係を照会して、ようやくそういう疑いがあるという疎明ができまして捜索令状がとれましたので、実はけさ早朝に、特別防衛保障会社の本社、これは中央区の築地にございますが、そこと、それからそこの代表取締役をしておる高山弘憲ですか、そういう者、それから、これは前に警備業法に定める欠格条項があるので、法施行前に退職した元代表取締役である飯島勇という者、それから、同じく元同社の取締役である恩慈宗武という人の居宅と四カ所を捜索しまして、そうして御指摘の職業安定法の違反になる資料がないかということで強制捜査に移ったわけでございます。  その結果、かなりの押収物件、メモ等がございますが、一部重要な書類がもう隠滅されておったということもございますが、今後そういった資料を十分調べまして、できるだけ警察としての責務を果たすように努力をしたいと思っております。
  182. 藤田高敏

    藤田分科員 ようやくにして警察当局も強制捜査に踏み切る。これは私、きわめて政治的な言い方をして、ある意味では恐縮かもわかりませんけれども、やはりこの種の問題が国会で波状的というか、連続的に問題にされるということになると、労働省にしても、警察にしても、ようやくにして腰をあげるという、そういう態度が見えると私は思うのです。  これは社会的に、政治的に国会で問題になるとかならないとかいうことを越えて、憲法に抵触するような、国民の基本権にかかわる問題は、もっと警察は警察として独自の機能を積極的に発揮すべきじゃないか、こう思うわけであります。しかしながら、非常におそまきの感はありますけれども、きょうこの問題を取り上げるということがわかったせいかどうかわかりませんけれども、いずれにしても、問題の会社、その代表者、中心人物と目される者に対して強制捜査に踏み切ったことに対しては、私はこれは了承するものであります。  そこで私は、この強制捜査に踏み切ったということだけで、この現地における問題というものは解決するものでない。そうして、労使間の正常な状態が復元できるものでもない。問題は、強制捜査に踏み切っても、暴力ガードマンが今後暴力的な行為をしないという保証がない限り、現地における労働組合に対する基本権の侵害というものは排除されないわけです。そういう点で私は、この強制捜査に踏み切って、職安法違反だということで結論を出すことについて、これはもうたいへん大急ぎで結論を出す必要があると思うんですよ。そのためには、警察当局として具体的に何月何日というわけにはいかぬでしょうけれども、どの程度の日数で結論を出そうとしておるのか、お聞かせ願いたい。
  183. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 ただいま申し上げたようなことで、ようやくきょうになって捜索をしたのでたいへんおそかった、あるいは政治的に圧力がかからないとできないんだというおしかりでございますが、私ども、この種の事件はなかなか資料を入手するのに苦労しておりまして、言いわけがましくなりますが、あらゆる資料を何とかしてそろえて、そうしてできるだけ早い機会にやりたい。特に、御指摘を待つまでもなく、警備業法ができたからというので脱法的にこういうことをやられては、警備業法制定の趣旨も没却されますし、これは看過しておっては、今後本山製作所だけじゃない——特別防衛保障会社は、過去においてもだいぶんいろんなことをやっておりますが、今後も同じことを継続されては、まことに警察としても責務が果たせないというかたい信念のもとに、技術的にたいへん手間どつたということは、もう何とも言いわけになりませんが、誠心誠意ここまで持ってきたのでございます。  先ほどお尋ねのように、いつまでにということは、相手方もございますし、今後この関係者を呼び出して調べるというような手続を何回か繰り返して、法に定められた処罰の規定が実現できるように努力したい。いつまでということを明確にお答えできないのは残念でございますが、そういう覚悟でございます。
  184. 藤田高敏

    藤田分科員 それでは、大急ぎで結論を出すべく最大の努力をする、こういうことでよろしいかどうか。それと、労働省、警察当局は強制捜査に踏み切ったということは、労働省も警察庁当局も、それぞれの行政的な立場としては、職安法違反の疑いがある、こういう認識で統一されたことに間違いがないかどうか、その二点をお答え願いたいのと、時間の関係で質問を集中してやります。  それでは、少なくとも強制捜査に踏み切ったわけですから、いま私が質問しておる前提に立って強制捜査に踏み切ったと思うわけです。ところが、時間の関係でこまかく申し上げることはできませんが、今日、いまなおこの特別防衛保障会社に所属しておった職員が、いわゆるガードマンの職員が、あるときは仙台の本山製作所に顔を出す、あるときは大阪の細川鉄工に顔を出す。そうして、ごく最近では、東京の東村山市恩多町一ノ二四四ノ二、株式会社教育社社長高森圭介、ここへ顔を出している。いわば職安法違反だということで強制捜査に踏み切るような段階にまできておるのに、また一カ所だけでも問題があるものが、Aの会社からB、Bの会社からC、Cの会社からまたA、あるいはBという形で、渡り鳥ではないけれども、そういう形で職安法違反をやっておる事実が——私、ここに写真を持ってきておるのです。仙台の本山、それから細川あるいは教育社というところ、それぞれの会社に、たとえば川嶋という男、あるいはその他二、三写真を持ってきておりますが、首実検をしておる写真があるわけです。そういうことが事実行為として行なわれて、そうして労働争議や正当な労働運動に介入しておる。この事実を直ちに中止さす、そういう措置が行政的にも並行的に行なわれないと、一方で職安法違反だということで強制捜査に踏み切った、あるいは告訴、告発しましょうと言いながら、一方ではそういう形で労働者の権益が、あるいは労働組合の権益が侵害されるということでは、これはたいへんなことになると思うのです。その問題に対して適切な措置を講ずるべきだと思うのですが、行政当局の見解を聞かしてもらいたい。
  185. 加藤孝

    ○加藤説明員 労働省といたしましては、第一に御指摘のございました本山製作所に対する特別防衛保障会社の労基法違反容疑につきましては、まさに疑いがきわめて濃い、こういう前提で捜査をいたしたところでございまして、今後の捜査の具体的な結果を待ちまして、それについては警察当局とも十分相談をいたしまして必要な措置を講じたいと思います。  それから、二番目に御指摘のございました細川鉄工の関係でございますが……(藤田分科員「職安法違反としての結論を出しているんだな、労働省として。しっかりしろよ、労働法を守らなければならない労働省が。」と呼ぶ)さらに具体的な事実の集積をもちましてそこを明確にする、こういうことでございます。細川鉄工の関係につきましては、大阪府の職業安定当局を通じまして調査をいたしたわけでございまして、これに対しまして特別防衛保障会社のほうから派遣をされておったという事実は確認をいたしましたけれども、いま御指摘のように、細川、それから本山製作所、あるいはいまお示しの村山の教育社でございますか、これらにつきましては、私どものほうとしてはまだ確認をいたしてないところでございまして、先生御指摘のように、そういうことが事前に中止できることが望ましいことはよくわかるわけでございますが、それが具体的にどういう中止の形が可能か、さらにそれは検討させていただきたいと思います。
  186. 藤田高敏

    藤田分科員 先ほど質問したことに対する警察庁の見解を聞かせてもらいたいのと、その川嶋とか、あるいは名前を言いませんでしたが、金田とか宮迫とか、こういった者がいま言ったようにAからB、BからC、CからまたA社とか、そういう形でいわゆるガードマンとしての職員が動いておるわけなんですね。そういうことについては追跡調査をしなければいかぬと私は思うのです。労働組合の立場からこれだけのことができるのに、取り締まり当局が、検討するの、やれどうするのというようななまぬるいことを言って、労働者の権益が守れると思っておるんですか。私は労働省も実にけしからぬと思う。労働者の基本的な権益を守ることができないような労働省だったら、私はなしにしてしまったらいいと思うんだ。その点について警察当局は追跡調査をするのかどうか。この問題は、いま私が名前を言っただけではなくて、もうすでに国会でも出ておるはずですよね。それから正式に警察当局に抗議に行ったときにも、労働省に抗議に行ったときにも、このことは指摘しておるわけですよ。その後追跡調査をやったのかどうか、今後、いまの強制捜査に踏み切ったことと並行して追跡調査をやるかどうか、これをひとつ聞かせてもらいたい。
  187. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 先ほどお尋ねの、大急ぎでやるつもりかどうかということでございますが、これはできるだけ最短の時間でやりたいという決意でおります。  それから、職業安定法の違反になるということで労働省と話ができておるかということでございますが、警察といたしましては、職業安定法四十四条の違反の構成要件はどんなものであるかという法解釈の問題について、労働省に再三お尋ねをして、どれどれの要件があれば四十四条の違反が成り立つかということを幾たびも確認した上で、それを満たす事実があるかどうかという捜査を今度は警察が独自でやって、今日までたいへん時間がかかったのでございますが、一応の疎明資料を得た。あと、したがって、裁判の法廷でもって裁判官が納得していただけるだけの資料をつかむかどうかというのは、これからの私どもに課せられた責務でございます。  それから、先ほどお尋ねの、細川鉄工所へ行ったり、あるいは本山製作所へ行ったり、あるいは教育社へ行ったりということは、私ども、例の那珂湊市役所に雇われた時点から大いに追跡調査をしておるのでございますが、当時何ぶんにも警備業法というものがなかったものですから、警備業法の違反というとらえ方はできなかった。先ほど申し上げたように、警備業法が施行されますと、この連中はみんな——脱法行為というのはそこでございまして、これはと思う者は全部やめております。社長も交代しましたし、それから先ほど名をあげて御指摘のあった川嶋という者も会社をやめて、表面上は個人の資格であっちへ行きこっちへ行きしておる。そこであとは、そういうことはやめた飯島のさしがねで川嶋があっちへ行きこうちへ行きしておるのだということをうまく証拠立てまして、これはいずれもやめておりますから、形式上警備業法の違反になりませんので、したがって、結局また職業安定法の違反になるという責任の問い方をしていく。いろいろ法に触れるものがあれば、なるたけ法に触れる点を明確にして、いろんな観点からこういう者が騒動するということをなくするように努力したい、こう思っております。
  188. 藤田高敏

    藤田分科員 時間の関係で、そのことに関連して私は次の質問を行ないますが、警備業法の違反にならぬというのですけれども、これは巧妙にというよりも、むしろ悪質な脱法行為をやっておるというように私は思うのです。しかし、警備業法をすなおに解釈すれば、なるほど警備業法第三条の欠格事由、禁錮以上の刑に処せられた者はその役員になるとかということはできないことになっておりますが、これは会社をやめたから、この条項を当てはめて警備業法違反ということは、これはしろうとの解釈としてもなかなかむずかしいだろうと思う。しかし、八条に「警備業務実施の基本原則」がありますね。これは昨年、この警備業法が地方行政委員会を通して国会で成立をする過程において、われわれが一番問題にしたところなんです。いわゆる「警備業者及び警備員は、警備業務を行なうにあたっては、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意するとともに、他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない。」この後段で読み上げたところが、われわれが一番指摘をしておる問題点なんです。この点で、警備業務をやっておる個人にしろ、かつて警備業者としてやっておった者の中に事実行為として——これは形式上のことを言っているわけじゃない。職安法四十四条違反の問題も、きょうはそれだけ論議する時間がありませんけれども、四十四条違反の場合も、形式論を言うのであれば幾らでも抜け道があるのですよ。しかし、職安法四十四条というのは、実体論として労働判例の中にも、今回のような場合は明らかに職安法違反だという結論が出ておる。それと同じように、職安法違反とも関連をしてこれは明らかに警備業法八条の違反だということは言えると思うのです。  それに対する見解と、私の結論としては、それであれば第十五条に「営業の停止等」として、公安委員会はこういう法に違反する者に対しては、その「営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。」また「営業の廃止を命ずることができる。」これは私は警備業法制定の基本的なたてまえからいっても、このような脱法行為、悪質な警備業をやっておる者は、この法律の適用によって公安委員会が営業の停止もしくは廃止を命ずべきではないかと思うわけですが、どうでしょうか。この特別防衛保障株式会社は、いま保安部長が答弁をされた強制捜査に踏み切った会社です。これは現存しておるわけです。そして禁錮刑に処せられたりなんかした者はいま逃げを打っておりますけれども、この会社があるわけですから、こういうガードマン会社に対して、なぜ八条によって十五条の措置がとれないのか。とるべきだと思うのですが、どうでしょうか。
  189. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 警備業法の八条及び十四条、十五条について、法の趣旨はいまお尋ねのとおりでございますが、この法律は昨年の十一月一日から施行になっておりまして、それ以降における特別防衛保障株式会社の行為が、いまお話の八条なり十四条、十五条なりに触れるということになってまいりませんと都合が悪うございまして、法施行前の行為は適用がないわけですから、施行後において特別防衛保障会社が、あるいはそこの代表取締役が責任者でございますが、そういう者が先ほど来御指摘のようなことをやったという証拠をあげれば、これはずばり適用があるわけです。ところが、遺憾ながらこの社長の、実質社長である飯島、あるいは実力者である恩慈というのが、もう形式上はやめて、この会社と関係がないんだ——陰の黒幕になってやっておると私ども思いますが、そこのところの技術の拙劣さを御指摘になればこれは一言もございませんけれども、その連中が実質は陰の黒幕になって、この会社がやっておるのと同様にやっておるのだ、この会社がやっておるのだということを、公判廷で挙証できるということをしないと、警備業法の適用が実現がはかられない。これは、私ども先ほど来たびたびお尋ねのように、事実は一体になってやっておると思うのでございますが、とにかく法の適用から言うと、別法人のものが、何ら実在する飯島の責任を負う関係にならない。そこのところの結びつきを証拠でもってはっきりしないといけない。そこがなかなか、日記でも書いておればいいのですが、いつ指図をしてどうしてやっておるのかということの挙証がつきません。それは警察がへただという御指摘だと、まことにもう一言もございませんが、そういう努力をやってまいりたいと思っております。
  190. 藤田高敏

    藤田分科員 時間がありませんから、強く要求しておきたいと思いますが、そういう実態としてこの警備業法違反の事実がもう明らかであるという観点から、これはひとつ警察当局としてはそういう観点から調査を進めてほしい。これは要求しておきます。  最後に、私はこの問題に関連をして、昨年の十二月十二日、これが一番大きな負傷事件を起こした日であります。社会党の県議団がたすきをかけてその立場を明確にしておる者に対して、三カ月の重傷を負わすというような、そういう暴力事件をこのガードマンが引き起こしておる。そのとき以来の、その前後の関係というのは、どういうふうに積極的に暴力行為をやっておるかというのは、写真を見ただけでも、ガードマンが非常に能動的に暴力行為をやっておるということは明らかなんですよ。こういう暴力行為によって、今日われわれ労働組合の立場からいうと、かれこれ六百人から七百人の労働者が負傷しておるわけです。これは、私はこの問も言ったけれども、ベトナムのある部分における局地戦争の一週間か一カ月分くらいな負傷者を出しておるのです。  これだけの暴力行為が起こって、その暴力行為に対する取り締まり——警察は、地元の警察本部長は、この十二月十二日の暴力行為が起こったあとの県会で、暴力行為取り締まりに関する法律を適用してでもこの実態を明らかにしたい、ということを言われてからもう三カ月たっておる。ところがその後、この暴力行為に対して警察はどう積極的に取り組んだかということは、世間的に、社会的に明らかでないわけです。これは、いままでもなにしたように、ここの本山製作所の社長が、警察友の会とかの会長であるとか、防犯の会長をしておるとかいうことで、極端にいえば、本山製作所及びこのガードマン会社、それと警察の三者がぐるになってこういう暴力行為を許しておるのじゃないかという世間の批判が出るほど、この問題が地域における社会問題に発展してきておる。そのことに対して警察は、その後、これほど多くの負傷者を出したことに対して、警察自身の行政責任をどのように感じておるのかということについて、警察当局の責任ある見解を私は聞かしてもらいたい。これが一つ。  最後に、法務大臣お尋ねしますが、きょう私が質問したことだけでは、法務大臣にこの種の問題についてまで、事の経緯の一切を理解してそうして結論を出してほしいという要求は、いささか無理かもわからない。しかし、きょうのこの質問について、どういうことが出るかということについては、あらかじめ承知されていると思うのですよ。大体三十分ほどの時間でありますが、いま質問をしたような過程で、結果として六百人も七百人もの負傷者が出ておることについて、現地の検察当局は、検察としての適正な機能を発揮する社会的任務があると私は思う。そのことに対して、いままで検察当局が独自の立場で、人命の保護なり善良な市民の安全のために何らの対策なり措置を講じてないと思うのです。それに対する法務大臣の見解を私は聞かしてもらいたい。
  191. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 仙台本山製作所のガードマン介入事件のほうでございますが、今日現在で三十四件分、三十四人分と申し上げておきます。三十四人分が書類が送付されてきております。検察庁が受理をしております。あとはまだ警察の手で捜査中。受理をいたしました三十四件についても目下捜査をしておる。したがって、中身についてここで申し上げる自由がございませんが、まことに残念でありますが、これは厳正公平に、おそかれ早かれ私のところに出てくるのでございますから、厳正公平に捜査をする、結論を出す、こういう態度でございます。
  192. 藤田高敏

    藤田分科員 警察からの答弁もあとでやってもらいたいと思いますが、法務大臣として、もちろん警察から上がってきたものに対して厳正公平に結論を出すということは、これはもう当然のことだと思うのですよ。しかし、私がいま指摘したような、これだけの暴力事件が起こっているわけですからね。しかもそれが労働問題にかかわり合いをもって起こっておるわけであります。そういうことになれば、警察が動かなくとも、極端にいえば警察自身が一部——全部とは言いませんが、一部社会のひんしゅくを浴びておるわけですよ。警察は何をしておるんだという批判を浴びておるぐらいですから、そういう問題については、検察独自の社会的機能を発揮して、そうして善良な地域住民、国民の生命財産を保障する処置を、私は当然いままでにもつと積極的に講じるべきではなかったか、こう思うわけであります。そのことについての見解をひとつ聞かせてもらいたい。
  193. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 先ほどの私の数字でございます。三十四件、人名にいたしますと三十七名分となります。ちょっと申し上げておきます。  それから、警察が事件を送付する前に検察の手で断固処置ができぬかというおことばでございますが、事案によりますけれども、この事案は御承知のとおりなかなかどうして複雑をきわめておる事件でございます。(藤田分科員「そんなに複雑じゃない」と呼ぶ)いえいえ、なかなかに複雑。そうして三十四件、三十七名に及んですでに送付を受けておることでもございますし、これを慎重捜査をしておりますので、この捜査を受けました書類の捜査をいたしまして、内容等影響するところいかんによっては、独自の捜査方針に発展をすることもなしとしない。なしとしないが、まず何よりもの任務は、この三十四件、三十七名の捜査に全力をあげる、そういう態度がやはり一番状況としてよいのではないか。その受理をいたしました送検の書類を離れて独自の立場で捜査をするということは、本件の場合においてはどうも適当でないという感じがいたします。後捜査に中心を置きまして最善を尽くす、しかる上で善処をする、こう御承知おきをいただきます。
  194. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 本山製作所における不法事案は、先ほど負傷者の数からその規模を御指摘になったのでございますが、私どもが承知しておるところでは、昨年の四月から現在までに全体で三十三件の暴力事件が発生しておるというふうに承知しております。このうち、先ほど法務大臣からお答えがあったのですが、十四件について三十四人の被疑者を警察は捜査をして、そして仙台地検に送付しております。遺憾ながらまだ残りの十九件についてはなお捜査をして、その内容を明らかにしなければならぬと思っております。  それから、警察が今回の事件について、何か本山製作所と癒着して事件捜査がなかなかうまく進まないのじゃないかという御意見でございますが、一番問題になります本山製作所の社長が防犯協会の役員であった。これは十月の十七日に、黒松地区の防犯協会の顧問をしておりましたが、これを解任されております。それから友の会会長をしておったのでございますが、これも二月十四日辞任届を出しておる。いずれにしましても、こういう形の上にあって、そして警察が何か事件をいかにもかげんしたようにということになるのは、私どもとしてはまことに不本意なことでございまして、こういうことが原因で事件捜査がおくれておるというふうに批判を受けてはまことに残念なのでございますが、先ほど来申し上げておるように、私どもとしましては、あくまでこういうこととは無関係に警察の責務を遂行する努力をやってまいりたい。昨年の春以来、いろいろ経過を顧みますと、警察としても十分御批判を受け、そして反省すべき点が多々あるということを思っておりますので、そういう点については、今後も御期待に沿うように努力してまいりたいと思っております。
  195. 藤田高敏

    藤田分科員 これで終わりますが、保安部長もこの問題に対する一定の反省の上に立って、今後適正な警察としての捜査なり、あるいはこの問題に対処していきたいということが確認といいますか、態度表明がありましたから、そのことについては、私はそれ以上追及しようとも思いません。どうかそのまじめな反省の上に立って、この問題の的確な結論が早く出せるように、強くこれは警察当局に要求すると同時に、法務大臣にも要求をしておきたいことは、これは警察を含めてでありますが、最後にガードマン会社だけの職安法違反とか、あるいは実質的なガードマン法違反ということだけでなくて、今日ただいまの実態からいえば、本山製作所というこの会社自身が特別防衛保障会社との共同正犯による法律違反を起こしておるというこの事実を実体論として見きわめるように、捜査なりあるいは警察当局としての捜査の機能を発揮できるように、そうして適切な結論が出るような措置を講じてもらいたい。このことに対する見解を承って、質問を終わります。
  196. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 承知いたしました。
  197. 塩谷一夫

    ○塩谷主査代理 次に、山田耻目君
  198. 山田耻目

    山田(耻)分科員 きょうは法務所管の事柄だけに限りましてお尋ねいたしたいと思いますが、ちょうどきょう五時過ぎに岩国の基地調査の米軍認可が出ましたので、そちらに参りますので、聞きただす時間もないかと思いますから、残りました部分については、経緯なりその他資料でお願いいたしたいと思います。  田中総理におなりになります以前からもそうでございましたが、特に田中さんの日本列島改造論が出ましてから、土地買いが非常にひんぱんになってきました。そうした土地買いの傾向が強まっていく中で、不用地になっている国有地、こういうものの払い下げ運動というのが、かなり地方自治体の名をかりて業者と結託をして動いておる傾向が強まっております。  私、きょうは法務所管の国有地のこうした事件についてお尋ねをしたいわけでありますが、山口県の平生町、これは佐藤前総理の出身地の田布施とくっついておりますが、この平生町に昭和十八年、第二次世界大戦の中期以後、海軍潜水学校ができました。この海軍潜水学校をつくりますときに、その平生町田名の地域ですが、そこに約七十世帯の人が住んでおりました。この人たちを強制立ちのき、強制収用ということで、憲兵隊まで出向きまして、全く住民の意思とは違って強制的に収用されていった土地であります。補償の金額というのは国債であります。戦争が終わりまして、この国債はインフレの中で簡単に消えていったわけです。この地主の人たちが今日まで執念として燃やしておりますのは、先祖代々の伝わった墳墓の地であるから、どうかお返しを願いたい、こういう強い要求が出ております。  しかし、大東亜戦争が終わりまして、この国有財産である土地に法務省が少年院、今日の名称では新光学院と名づけておりますが、これが移りくることになりました。     〔塩谷主査代理退席、主査着席〕  ところが、戦争が終わったのでこの土地は返してもらえると思っておりました旧地主、地元民は、あまりありがたくない、少年犯罪を犯した人たちが何百人と収容されていく、こういうことでは、平和な部落にわれわれは安心して住めない、こういうことなどもありまして、珍しくあの地域にむしろ旗などが立ちまして、住民の抵抗がございました。しかし、結果としては、町のあっせん、法務省の強い意思、それに現地に書類が残っておるといわれておりますが、まだ私は見ておりませんけれども、この少年院が場所移転などをするときに不要になったら今度は旧地主にお返しをする、こういう約束ができ上がっていたと聞かされております。  ところが、今回この少年院である新光学院が場所移転をすることがきまったと伺っております。当然旧地主の皆さんは、今度こそ、祖先の地だ、返してほしいということで、平生町の町議会に請願書の提出をいたしました。それが昨年の七月ごろだったと思います。しかし、町議会はこの請願書を却下をいたしました。却下の理由としては、法務省に払い下げの手続をする方法がわからない。まあ地方自治体の政治家としては非常におかしい話ですけれども、そこらあたりが今日の日本の地方自治体政治の非常にゆがんだ側面を物語っていると思いますけれども、却下をいたしました。そうして、この平生町議会は町に払い下げの申請をしたと聞いております。  これがかいつまんで申し上げる法務所管の国有地払い下げをめぐる今日の問題点でありますが、一体、法務省は過去長い歴史的な経緯を踏まえて、こういう国有地に対しての払い下げの基準をどこに置いておるのか、それを伺いとうございます。
  199. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 国有地払い下げの問題でございますから会計課長から答弁をさせますが、ちょっと一口大事なことを申し上げますと、先生仰せの、この少年院の土地を払い下げる段階に、いまだ来ていない。移転の方針もきめていない。しかし、町にあることでございますから、将来移転ということが考えられぬことはございません。適当なる土地があれば、町の中に置くよりも移転が適当であるということにならぬとも限りませんが、そういう場合の払い下げはこういうふうにしてもらいたいという御意向であると、その限度においてはたいへんよく理解ができるという事情でございます。しかし、いままでの経過その他複雑な関係もございますので、会計課長からお答えを申し上げます。
  200. 住吉君彦

    ○住吉政府委員 ただいまお話がございました新光学院でございますが、この敷地が二十三万七千平方米ございます。したがいまして、ただいま移転という具体的な計画はございませんが、もし二十三万七千平米強の敷地の活用ということを考えますならば、現施設、新光学院のいろいろな施設が、平屋建てが主になってこの敷地内に散在しておりますので、これを集約立体化することによって、相当の残地といいますか、余裕地を生ずることができます。それを地元のほうで御活用になるという道は残されておると思います。  なお、国有地の払い下げにつきましては、これは行政財産から普通財産に管理がえをいたしまして、法務大臣から大蔵大臣のほうにそれを所管がえするわけでございます。財産の処分権は大蔵大臣にございます。ただ、従前の取り扱いを見てみますと、その国有地が当該地域の都市計画に基づいて公共の用に充てられるということになれば、大蔵省のほうでも、いろいろ関係機関と御協議の上、払い下げをされる方向で検討されることと思います。
  201. 山田耻目

    山田(耻)分科員 大臣は、払い下げするとも、移転をするその前提の条件もまだ定まっていないとおっしゃいますし、私はそのことばをそのとおり理解をしたいと思います。ただ、いま会計課長お話しになりましたように、ちょうどございます敷地は、そこの半島の根っこなんです。半島先に移るわけですね。ですから、会計課長がおっしゃっているように、かなりの部分が不要地になる。そういうことは、会計課長がおっしゃっていますように私たちも承知しているんです。ですから、旧地主の皆さんが、七十人全部がその該当者ではございません。ございませんけれども、そういう歴史的な経緯がありましたから、地主の皆さんは、この部落はおれたちの部落だったんだ、ここに祖先が眠っていたんだ、そこに墓もみなあったが、みんな掘り返して持って逃げたわけですから、だからここにみんなそろって帰りたいという、こういう念願があるのは私は日本人的な通念だと思うのです。ですから、いいますか、こういうものの払い下げを指して私は言っているわけです。  それから、要らなくなった土地に対しては、法務省から大蔵管財に返して大蔵大臣所管に移っていくことも私は承知をしておりますけれども、大蔵省に移っていきますと、その残留地が公有地として残されていくということが優先第一順位だと私も思います。ただ平生町は、その地域を工場指定地として県に申請をしたわけです。私はここらあたりにいろいろと癒着をする不純性が見える。だから、この地域は住宅地としての指定、この地域は工場予定地としての指定、そういう区画整理をしまして知事の認可を受けようとしておりましたけれども、いろいろと県会議員の中にも、これ以上地元感情を悪化させてはいけない、だからここは、工場予定地としていま認めないといって、一応その書類は突き返されておるようであります。  大臣、こういう事態でありまして、全然根も葉もない風説として私は申し上げていない。そういうふうな形で逐次住民感情の中には、片側では政治に対する不信感、片側では企業との癒着性、こういうものを指摘しながら、だんだんと民心というのは政治から離れていきます。私はこの問題を放置できないと思いまして、特に大臣のおことばをかりてそのままお受けいたしますけれども、私はやはり、こうした事案の進行の過程の中で、当然そういう歴史的経緯があるのだから、残余地については旧地主に戻してあげる、そして旧地主と町とが将来の町発展の計画の中でお互いに協議し合ってくれ、こういう立場をとっていくことが私は一番賢明な措置だろうと思うのです。旧地主の皆さんも東京に陳情にお見えになりましたし、前の法務委員会の委員長でありました松澤雄藏さんにも陳情書が渡されております。非常に熱心に問題を直視しておりますだけに、そのような場合に直面をしたら、町とお話ししなさいよ、旧地主に戻してあげられるように国としても配慮していただくように努力しますからと、こういう言い方はいたしております。ですから、いろいろと雑音が入りますけれども、私は現地の新光学院の責任者にお聞き願えたらよく事情がのみ込めるものと思いますので、そこらあたり判断、措置をお誤りにならないようにお願いをしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  202. 住吉君彦

    ○住吉政府委員 お説のようないろいろの因縁、背景があるようでございますので、ただいまお話のございましたとおり、十分現地院長とも協議をいたしますし、また地元の方々の御意向も承りまして、後日、ただいまお話の癒着とかなんとかいう紛議の種にならないように、慎重にその方向で考えてまいりたいと思います。
  203. 山田耻目

    山田(耻)分科員 時間がございませんからこれでやめますが、大臣、私は三年ばかり国会を留守にしておりまして、郷里に帰っていたのですが、昭和四十四年の予算委員会に、やはり同じ町に皇座山というのがございまして、国有地ですが、ここに、町長なり県会議員なり非常に著名な大政治家のめんどうを見ておられる人たちが、皇座山に放牧場をつくるということで国有地を借り受けて、国からの補助もいただいて、実際にはホテルをつくっていた、こういうことで、会計監査は補助金の指摘をして、引き揚げた事件がございました。やはりそうした一こま一こまが非常に住民に政治不信感を与えてきておりますから、私は、今度の問題については、特に大臣として、住民の意思は決して無理でないから、住民のその意思を尊重してやりたい、こういう意見だけぐらいはお聞きしたいと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  204. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 先生の仰せになりました住民の心持ち、またこの土地のいままでの経過、こういうものからは、まことにごもっともな言い分である、法規の許す限り、このごもっともな言い分に沿うような努力をすべきもの、いま直ちにということでなくとも、将来はこれをやるべきもの、こう考える次第でございます。
  205. 山田耻目

    山田(耻)分科員 以上で終わります。
  206. 臼井莊一

    臼井主査 次に、正森成二君。
  207. 正森成二

    ○正森分科員 法務大臣にお伺いいたしたいと思いますが、検察庁法の二十三条に検察官の適格審査会の項が載っております。それを見ますと、「検察官は、左の場合に、その適格に関し、検察官適格審査会の審査に付される。」ということで、三つきめてありまして、その二番目に、「法務大臣の請求により」というところがございます。  そこで、検察官が、請求するのもやむを得ないということになれば、法務大臣は請求されると思うのですが、最近三年間ぐらいの例でもけっこうですが、法務大臣がそういう意味での請求を検察官適格審査会になさったことがございますか、それをまず伺いたいと思います。
  208. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 お答えを申し上げます。  法制定以来一度もないそうでございます。
  209. 正森成二

    ○正森分科員 それはこの条項がいかに有名無実であるかということを示しておるので、必ずしも検察官がすべて優秀だということを示しておらないと私は思います。そのうしろの席にも、私の同期の優秀な検察官もおりますけれども……。しかし、一度もこの条項が発動されたことがないということは、若干問題ではないかというように思って、以下の質問をしたいと思います。  一度も発動されたことがないというと、これはお答えになりにくいかもしれませんが、同じ二十三条には、「検察官が心身の故障、職務上の非能率その他の事由に因りその職務を執るに適しないときは、」とこうなっておるわけですね。検察官でも心身の故障ということはあるでしょうし、非能率ということはあると思いますが、ここでいう「その他の事由に因り」というのは、発動したことがないから答えにくいかもしれませんが、どういう場合を想定しているのか。もしお答えになれれば答えていただきたい。
  210. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 その他の場合と申しますのは、まあ常識、条理で判断をしなければならぬと思いますが、第一は、やはり当然のことでありますけれども法律の専門的な知識、才能、能力というものがなければ検察官としては困る。それは突如なくなるものではありませんが、それに欠けるようになると欠格条項になってくるのではなかろうか。  それから、第二の大事な要件は、検察官の任務は、先生御存じのとおりに、公共の利益を代表する大事な任務がございます。公共の利益を代表するに足る人物、人材でなければならぬということも一つの要件にはなるのではないか。これが欠けるとやはりいけない。その他といわれることにはまるのではなかろうか。  もう一つは、検察官といえども特別の者ではございません。国家公務員でございます。国家公務務員としての行政官でございますから、国家公務員の行政官としましては、裁判官でもございませんので、行なう職務については、大臣以下の上司の指揮命令を受けて職務に精進する、こういう条件は、もう当然言わずと知れた、なければならぬ。これが第三の要件と思います。これに欠けましても、やはりその他という条項によって処置を受けるおそれがあるのではないか。思いつきでございますが、しかし、まあ、当然そういうふうに思うのでございます。
  211. 正森成二

    ○正森分科員 それでは伺いますが、私が法務委員会で三月二日にあなたに質問をしましたときに、速記録がまだできておりませんので、ことばのとおりではございませんけれども、公務員が裁判の内容について言うということは適切ではない、それは上訴によって争うべきことなんだ、こういう御発言がございました。ましてや、裁判の当事者である検察官においては、それは当然のことであろうというように思いますが、いかがですか。
  212. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 お説のとおりと考えます。  さらに、具体的に一口申し上げますと、具体的裁判判断事項というものは、もう裁判官良心に従って法律、命令に従う以外に従うものはないんだ、これを侵犯しちゃいけない。具体的裁判判断事項、それ以外のものは大いに論じてよいという判断を私は持っております。
  213. 正森成二

    ○正森分科員 もう一つ聞きますが、「その他の事由」の第二番目に、公共の利益を代表するものであるということを自覚しなければならない、こう大臣がおっしゃいましたが、公共の利益というのは、もちろんその土地の有力者だとかあるいは財界とか、そういう人の意見を聞いて職務を行なうということは、これは公共の利益の代表者だということはできないというように解釈いたしますが、答弁してください。
  214. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 そのとおりであると存じます。世の中の利益、一部特権階級と癒着する利益ではない、こういうふうに存じます。
  215. 正森成二

    ○正森分科員 それでは、いま「その他の事由」の三つのうち二つについて御答弁いただいたわけですが、かりにその二つの事由に当てはまるような検察官がいたとすれば、法務大臣としては検察官適格審査会に請求すべきである、少なくとも、請求するかどうかを考慮すべき検察官であると考えてよろしいか。
  216. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 抽象的な話でございますが、そういう適格上怪しいものだと考えるに至りましたときに、その不適格考えられる公務員の不適格と思われるに至った事情、状況というものをつぶさにひとつ手に入れて、手に乗せて判断をいたしました上でどうするかをきめたい。何も、場合によりましては、法律制定以来やったことがないからおれもやらぬのだという考え方ではございませんが、一がいに、そう判断のできるときは請求するということは申し上げかねますが、そういう場合もあり得る、こう御承知をいただきたい。
  217. 正森成二

    ○正森分科員 そういう場合もあり得るという御答弁でしたので、これから具体的に聞いてまいりたいと思います。  午前中あるいは十二時過ぎに、すでにわが党の青柳議員が御質問になったわけでございますけれども、川口光太郎名古屋高検の検事長がおります。この検事長が、公害事件について、民事事件についてまで云々されたということがございました。それについての青柳議員の質問に対してあなたは、二月十四日付で反省の意を手紙で言うてきておるというような答弁を青柳議員になされた由に承っております。それは間違いございませんか。
  218. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 そのとおりでございます。
  219. 正森成二

    ○正森分科員 その二月十四日のあなたに対する、遺憾の意を表明した川口光太郎検事長の手紙の内容は、公害裁判について云々したという点だけでございましたか、あるいはその他の点についても遺憾の意を表明しておりましたか。
  220. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 八日の日の記者会見でおしゃべりをいたしましたこと全体について、私にしかられたと思っております。全体について真意はこうであった、口がすべった、ことばが足らなかったという意味を言うてきております。
  221. 正森成二

    ○正森分科員 いまのお答の中ではしなくも明らかになったのですが、そうすると、二月十四日の手紙というのは、川口検事長が自発的に出したものではなしに、あなたがおしかりになったから、それに対する釈明として出したというように承ってよろしいか。
  222. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 八日の記者会見で行ないましたことを実は私は存じませなんだ。これは中央紙には一つも載らなかったものでございます。中央紙で載りましたのは赤旗だけの様子でございます。それで、中央紙に載らなかったものでありますから、私はついうかつでおりましたが、だんだんとそれが伝わってまいりましたので、どういうことをどういう場合で、何の必要があってそういうことをしゃべったのか調査しろ、ということを私が言うたものですから、勢い調査が行った。向こうはそれでわかったのでしょう。私のほうでは、調査をしてその上で何事かとしかるつもりでおりましたところ、私が、その調査をすると同時に、しかります準備をするまでに、十四日付をもって、申しわけがないということを言うてまいりました。そういう事情でございます。
  223. 正森成二

    ○正森分科員 そういう事情だそうですが、川口検事長の新聞記者との二月八日の会見では、けしからぬことをさまざま言っております。たとえばその一つをあげますと、「メーデー、辰野事件の無罪判決や高田事件の免訴など、裁判所の最近の行き方はこれでいいのか、と疑問を持つ。メーデー事件は実際の捜査に当たり、目の前で目撃した。事前の計画性は明らかなのに、裁判所はコマ切れでみるからあんなこと(無罪)になった。(裁判官の)法律家としての常識を疑う。」こう言っておるのです。これはまさに判断事項について非常に重大な発言をしておるというようにいわなければならないと思います。したがって、これはあなたがあげられた「その他の事由」のうちの一つ裁判所判断事項にとやかく言う。しかもそれを自分の茶の間かどこかで言うのじゃなしに、新聞記者諸君がいる前で、検事長として、公の職にある者としてやったということで、実に重大だと思いますが、それは少なくもあなたのいう「その他の事由」の一つに該当する。何も請求しなさいと言っているのじゃないのですよ。心配しないでいいですよ。「その他の事由」の一つに該当するということは間違いないですね。
  224. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 この発言は当を得ないと存じましたので、どういう真意でこれを言ったのかということを確かめてみますと、あなたは就任されてから印象的な事件としてはどんな事件が頭に残っておりますか、という記者団の質問があった。その質問に答えていろいろおしゃべりが続いたようでございます。そこで、メーデー事件にしても、高田事件にしても、大須事件にしても、本人は検察官としての上官でございますから、なるほど無罪になったこと、それに対して上告のできないことは無念である。また、高田事件についても免訴の判決があった。これは無罪につながる。手のつけようがない。これも残念である、無念である、こういうふうに考え、もう一つの大須事件などにつきましては、現に自分が責任を持たなければならぬ。名古屋高等検察庁が責任を持たなければならぬ名古屋高等裁判所に係属中の事件である。この事件については、ぜひこれは騒擾罪が成立をするということを確信を持っておるということを話しておるのです。そこで、真意はどこにあったのかと申しますと、残念だ、無念だ、なぜ上告をしないか、なぜ一体泣き寝入りをしなければならないかという理由、事情を述べることは、何も裁判所判断事項に関係はない。上告をせざる理由、上告をする理由、残念と思う理由を述べることは、一向差しつかえのないことで、裁判官判断事項とは関係のないことと私は思うのでございますが、とにかく、それを述べる述べ方が、ついことばがすべったということが真相であって、検察官として残念だ、承服いたしかねるという気持ちが胸の中にあったことは無理のないことでございますが、それがつい表に出て、そういうことばとなってきたということの事情を書いてきておるのでございます。私は、そうであったであろうと、こう思うのでございます。  そういう事情から、私がしかりますまでに反省の色を示して、文書によって反省の意を表明してきておるという状態から見ますると、そういう事情が明らかであります場合は、これをもって直ちに検察官として不適格である、これは請求するとかしないとかという態度に私が出るべきものではなかろう。これだけの事情で、反省をし、事前にわび状をよこしておるという事情でございますから、これをその上さらに請求をすると、こういう態度に私は出にくい、出る意思はない、こういう心境でございます。
  225. 正森成二

    ○正森分科員 いまの大臣の御説明を承っていると、川口という人物はますますけしからぬ男だというように思います。というのは、もし上告しないことが残念だ、無念だというのであれば、川口という男は、検事総長なり法務大臣なりに上告すべきであるという意見書を出しましたか。あるいはそれがいれられないなら、きれいさっぱり、おれはもう検察官なんかやめだ、弁護士になって意見を言うというような態度を示されましたか。そういうことはないでしょう。意見書を出しましたか。出せばその写しでもください。
  226. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 そういうことはかってござ  いません。
  227. 正森成二

    ○正森分科員 それならば、いやしくも公務員が、言おうと思えば言える意見、それを言わないで、そして、新聞記者に対してはうっぷん晴らしをする。言語道断の人物だというようにいわなければなりません。しかも法務大臣の、先ほど適格性一つの条項に、検察官というのは行政官でございますから、職務については大臣、上司の指揮命令を受けてやるんだ、こう言っておる。上告をしないということは、まさに上司の指揮命令権にほかならない。ところがそれには残念だ、無念だ、ほんとうは服したくなかったんだ、ということを公然と言い、しかも肝心の上司には自分の意見は言わない。ひきょう未練な男であるというように言わなければなりません。上にはこびへつらい、そして世間一般にはいい顔をする、こういう男が、公共の利益の代表者だとはとうてい言うことができないというように私は考えます。  さらにこの人物は、それだけではない、こういう重大な発言をしております。「三十年ぶりの名古屋だが、経済の大きな発展に目を見張っている。この地方の有力者、実力者、財界の指導者などの意見を十分聴いた上で検察活動をしていきたい。」こう言っておる。いつから検察官は公益の利益の代表者であることをやめ、その地域の有力者や財界の指導者の意見を聞いて検察活動をするようになったのか。それが検察官一体の原則のもとにおける現在の検察庁の方針なのかどうか。それならば人口の六〇%を占める勤労者は、決して検察官の活動を公共の利益の代表者の活動とは思わないでしょう。そういう重大な発言をしておる。この事実もまた、あなたが「その他の事由」に当たると先ほど明言されたばかりのことでございます。柔道でいえばわざありだ、わざありは二本重なれば一本になる。そういう事案だと思います。それについてのあなたの見解を伺いたい。
  228. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 判断——彼の申しましたと言われるその言動の判断のしかたでございましょう。そう折りたたんで言えば、そういう判断一つ判断でございましょう。私は、彼の述べました記者会見のことば全体を判断をいたしまして、以後十分に慎めと言ってしかるに値する。今後は反省をせしめるに値するものではあるが、検適に請求をするほどの事案とは考えない。私の見解はそうでございます。
  229. 正森成二

    ○正森分科員 いまの大臣の御答弁を伺って、検察官一体の原則というのはありがたいものだなあと、お互いにかばい合い、助け合い、そして、こういう不届きな発言をしているのをかばってやるということになるんだなあ。それで検察官はいいかもしれないが、迷惑をこうむるのは国民だ。いいですか、検察活動を「この地方の有力者、実力者、財界の指導者などの意見を十分聴いた上で」行なっていきたい、こう言っているんですよ。こういうことを言われたら、検察当局としては、検察官の面目を失墜することもはなはだしいということで、検察官が連袂して、かくのごとき男を辞職させろ、それでなければわれわれの面目にかかわると言っても正義の代表者としてはいいはずではありませんか。それをそういうことをせずに、全体の事情を考えてというようにかばわれる。全体の事情を考えれば、柔道のわざありどころじゃない、三つも四つもやっておる。公害の民事判決についてさえ、ああいう青柳委員が追及したようなけしからぬ発言をしているじゃありませんか、そういうことを考えると、私どもは、あなたのその御説明に対してとうてい釈然とすることはできないんです。しかも川口検事長は、まだあなたがしかりおかないのに、調査をした段階で、上にはすこぶる弱い人物らしく、二月十四日にはあなたのところへわび状か釈明書か知らぬけれども、出しておる。しかし、当該けしからぬことを言われた公害事件の患者やあるいはその関係者にはどういう態度をとっておるか。それについては青柳委員がすでに御説明になったところだと思います。会おうともしない。会うと約束しておったときに、用事があったと言ってすっぽかすということをやっておる。そうすると、彼が出した、遺憾の意を表明したというのは、上司に対してえらい御迷惑をかけたので申しわけないということであって、国民に対して、このような口がすべって、あなた方の権利を十分守るという立場から見て、隔たることが遠かったという点をおわびするという姿勢は、ごうも感じられない。あるのは上を向いておる目だけであって、国民のほうへは全然向いていない、こういうように言わなければなりません。そうではないでしょうか。
  230. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 そういう観察もできないことはないでしょう。
  231. 正森成二

    ○正森分科員 正当ですね、その観察は。
  232. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 ええ。しかし、この人は、あらゆる方面の意見をできるだけ聞くべきものだ——あなたのほうにニュースとして入っておりましょうが、検察は孤立すべきものでない、内外の情勢というものは聞くべきものなんだ、政治に左右されてはいけない意味において、政治とは別のものであるけれども、しかしまた、あらゆる社会の情勢を、国家内外の情勢を知らなければならぬということにおいては、検察もまた政治でなければならぬなどということもしゃべっておるのですね。その真意はよくわかるから、それをだれも問い詰めておるものはないのでありますけれども、そういうことを記者会見でもしゃべっておりますほど、あらゆる人の意見を聞かなければならないという意味のことを表現すれば、おしかりを受けることはないのですね。具体的に財界の一部、特権階級、独占資本の一部の人々といわれるような感じのすることばを使って、意見を聞かねばならぬなどと言うものだから、おまえはどっち向いておるのだというおしかりがあるわけでございます。ことばのへたな男で、もう少ししっかりしてもらわなければ困る。
  233. 正森成二

    ○正森分科員 非常に思いやりのあるおことばを承って、ますます検察官はいい職務だなあと思いましたが、ことばのへたな男、それでこういうことになったというので、なるほど二年十カ月も公安調査庁の長官をしておって、それでだいぶ人間が悪くなったのだなあ、そうして今度はこんな悪い男を、ことばのへたな男を公安調査庁長官に置いておいたのじゃ何をしゃべるかわからぬ、そこで名古屋にでも行かしてやれということで、心の中に若干ふんまんでもあって、こういう発言をしたのじゃないか。いまあなたの御答弁を伺っておって、つくづくそれが真相かなあというようにも思いましたが、二月十五日に検事総長が名古屋へ行っておられますね。そうして、とってつけたように、公害断固取り締まるという談話を発表して、公害事件関係についてよけいなことを言ったのを打ち消すようなことを言うておられます。そうして二月十六日には、検事総長に対する披露宴というか、そういうものがあったときに、検事長の発言は行き過ぎではないのかとの質問に、検事総長は、民事裁判に言及するなど行き過ぎである、よろしくと、こう言ったということが、名古屋の弁護士会会長にも行っておりましたから、公式に入っております。そうして二月十七日の午前には、検事総長が高検の検事長、地検の検事正を伴って名古屋の弁護士会の理事室を訪れて、前日の披露宴のお礼を言っております。ここでは二月八日の検事長発言については一切話が出なかったのですけれども、私どもが知っておる限りは、現職の検事総長が、日弁連ならいざ知らず、単位弁護士会にわざわざ足を運んだということは、歴史上前例のないことだそうでございます。あるいはあるのかもしれません。  私どもは、こういう点から見ても、検事総長が、二月十四日の彼から来た手紙、そういうようなものも踏まえて急遽十五日名古屋へおもむき、そうして十六、十七日と弁護士会関係の人に会って、それとなく、あまり騒ぎ立ててくれるなということでお願いに行ったのだというように受け取らざるを得ない前後の時間関係になっております。  そこで伺いたいが、検事総長が名古屋へ出張するについて、事前に大臣に、名古屋へ行きますが、川口にどういうように言いましょうかとか、そういう点について御相談がありましたか、あるいは相談はなかったけれども大臣から何か一言言われましたか、それを承りたい。
  234. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 検事総長——十五日に行っていますね。
  235. 正森成二

    ○正森分科員 行っています。
  236. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 十五日の旅行は、伊勢参宮ということで私がオーケーをずっと以前から、それは——十五日に急にきまったんじゃないのですね。偶然それは重なったのであろうと思います。伊勢参宮のために出張というように、私は記憶をしております。
  237. 正森成二

    ○正森分科員 伊勢参宮ならお伊勢さんに参って、そして天照大神に、公益の代表者でいろいろやるということを祈ればよかりそうなものを、わざわざ名古屋の弁護士会やそういうところへ行く。職務熱心といえばこれはまことに職務熱心だけれども、伊勢神宮へ行くときにわざわざ寄り道をしていくというところに、この川口氏の発言との関連性を見ざるを得ないのですね。  しかし、その点については、あなたは非常に同情ある発言ですからこのぐらいにしておきますが、川口光太郎という人物は、今度だけがうっかり口をすべらしたんじゃない。前科がある。それは彼が三鷹事件の立ち会い検事をやって、彼から言えば三鷹事件で敗れたわけですね。そのあと、東京地検の公判部の副部長時代に法律時報の第二十二巻第十号のアンケートに答えて、その中で文章として出しておる。これはうっかり発言をしたというようなものではないと思うんですね。  その中でもこういうことを言っておる。この点を少し読みますと、「三鷹事件公判の第一回から最終回まで引続き傍聴し私設陪審員ともいうべき立場にあった司法記者諸氏はみな、被告全員共同正犯の有罪判決があるものと信じていたと言っている。竹内単独犯の判決を言渡した鈴木裁判長とこの判決文の起草者荒川判事自らもまた、この事件は陪審裁判だったら全員有罪になっただろうと語っているのである。ここに新刑事訴訟法の運用について考えるべき問題がひそんでいると思う。」こう言っております。  これは司法記者諸氏の考え、そう言っておるというような伝聞あるいは鈴木裁判長や荒川判事が言っておるという伝聞という書き方になっておりますが、明らかに、キャリアシステムの裁判官でなく陪審制度だったら——日本はまだ賠審制度もとっておらないのに、そういう仮定に基づいて、有罪にできたんだ、おれが悪かったんじゃないんだ、残念無念だということをアンケートで言うておるものにほかなりません。三鷹事件は、御承知のように竹内単独犯で、すでに確定しております。そういう点から考えると、この人物は、ついうっかり口がすべるというのじゃなしに、しょっちゅうこういうことを言うておる、こういう人物だと考えなければならないと思うのです。  またさらに続けてこう言っております。「黙秘権が認められながら、犯意推定制度の欠けているため、捜査官はやむなく被疑者から供述を得ようとする。」いいですか、何か黙秘権があることが不足たらしいみたいに……。そして「やむなく被疑者から供述を得ようとする。」自白を強要することがやむを得ないかのように、法律家ならだれでもそうとれるようなことを言っておる。そして「科学的捜査の人的物的の極貧状態がこれに拍車する。」人的に貧困な状態であるということは、これは認める。川口のようなのが検事長でつとまっておるのだから。こういうことを言い、さらにこう言うておる。「勾留理由開示や第三九條の弁護人交通権が特種グループの犯罪について濫用されて捜査を制肘する。公判へ行けば裁判官は、被告人の自白になれて、自白のない場合の状況証拠による有罪認定に極めて臆病である。刑事弁護士界の道義も一般的に言って公共の福祉よりも被告人や自己自党の利益を先にしているようである。」こういうことを言い、最後に締めくくりとして、「政治経済状態が安定して犯罪が減少し、司法関係者」、いいですか、弁護士も裁判官も入るのですよ。「司法関係者と一般國民のレベルが更に向上すること、そして法規上若干の改正、これが新刑事訴訟法の効率的運用に絶対必要な條件であると考える。」こう言って締めくくっておる。  自分が捜査についてきわめて不妥当であったというようなことは一言も触れずに、責任を裁判官も含めた司法関係者のレベルの向上だとか法規を改正することだとか、そういうことにのみ求めている。こういうことを、うっかり口がすべったんじゃなしに、繰り返し考えたに違いない。アンケートの中で言っておるということは実に重大です。
  238. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 それは何年何月ですか。
  239. 正森成二

    ○正森分科員 昭和二十五年の十月だと思われます。法律時報第二十二巻第十号、ここにリコピーがあります。  そういう点を考えると、この川口光太郎という人物は、ついうっかり口がすべったというんじゃなしに、いつでも、自分が関与した裁判について有罪が言い渡されない場合には、責任を裁判官になすりつけ、あるいはキャリアシステムになすりつけ、司法関係者のレベルが低いということになすりつける、こういう人物だと言わなければならない。それが三つ子の魂百までで、その後二十数年を経た現在、また名古屋の高検検事長としてそういう新聞記者発言をさしたということにほかならないと思います。  こういうように見てまいると「幾ら田中法務大臣がきわめて寛大である、最近検察官になり手が少ないから、川口のような不徳な男でも一人でも置いてやろうというような気持ちはわかるけれども、情けも過ぎればかえってあだになり、検察官に対する国民の信頼を失うことになると私は思わざるを得ません。すでに名古屋の公害関係の弁護団やあるいは被害者は検察官適格審査会に職権を発動するために運動を起こすと言っております。武士の情けということばがあります。そういう運動によって検察官適格審査会にかかり、罷免を可とするというような結論を下されるよりも、泣いて馬謖を切るということであなたがお切りになるほうが、よほど武士の面目を保つのではありませんか。
  240. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 私は、彼の真意を書面により聞きまして、反省をしております態度を見まして、これ以上に責任を追及するという意図は持ちません。しかしながら、先生のただいま仰せになりました、そこに生きた資料もあることである。部下を見る目の重要参考資料として、えりを正して承わりたいと思います。
  241. 正森成二

    ○正森分科員 法務大臣が、十分反省をしていると言われましたが、手紙の上で法務大臣には反省しているかもしれません。しかし、反省しているかどうかは、本人が自分発言によって迷惑をかけた国民に対してどういう態度をとるかという実践によってこそ判断すべきだと思います。そういう点から言えば、二月十四日以来三月の現在に至るまで、この発言によって重大な侮辱を受けあるいは迷惑を受けた公害関係の人にも、依然として会おうとしておりません。このことは社会常識によれば、特殊世界である検察官の世界はいざ知らず、本人が何ら反省していないということにほかなりません。それどころか、上司には頭を下げるが国民は見下すという、そういうりっぱでない品性を依然として持ち続けておるということにほかならないということもまた、賢明な法務大臣が人物を見る上においてよくお考えになる必要があるということを申し上げておきます。  そこで、次の問題に移りますが、法務大臣は、確定判決があった場合に、あるいは検察官が有罪と信じておった事件について裁判所が無罪を言い渡したときに、無念だ、残念だ、あれは間違っておるんだというようなことを当該検察官が公の立場でいろいろ言うことを、好ましいと思っておられるか、それともそういうことは好ましくないと思っておられるか。先ほどの御答弁で伺いましたが、再度承りたい。
  242. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 検察官は公益を代表して、おのれの信念に基づいて、公判廷において攻撃、防御の技術を繰り返し、全知全能をしぼるのが検察官の仕事でございます。そういう経過を経た検察官が、自分の意図と違う判決が下された、しかし、この判決には一方においてたいへんに別の道理がある、自分考えはこうであるけれども、検察官としての自分の上司の考え方、命令を承ると上訴手続を踏めない、こういうことになったときに、ああ無念だ、残念だということは、私が検察官でも、どうもそう思わざるを得ない、人情の自然というものでなかろうかというように私は思う。何だ、このやろうは、というわけにはいかぬのではなかろうか。秩序は秩序、感情は感情、しかし粛然えりを正して、無念残念と思いながら、上司の決定に従って上告はしない、こういう態度をきめていくこと、りっぱなものではないでしょうか。
  243. 正森成二

    ○正森分科員 私が言うておるのは、検察官が無念残念と胸やら腹をなでておるということを言うておるのではなしに、そういうことを公然と新聞に書き、発表しということをやるのがいいのかどうかということを聞いておるのです。  具体的に言いましょう。昭和四十五年の八月十二日の衆議院法務委員会における議事録があります。そこでわが党の青柳委員が質問しておられますが、松川事件に関与された辻という検察官がおります。刑事局長もされたことがあります。その人が東京新聞に「しかし松川事件に関しては、法務省は起訴後の立証段階で手落ちがあったとはいえ、元被告たちが犯人であるとの確信をいまも変えていない。」こう言っております。  これは無念残念の域をはるかに越え、裁判所において無罪であると決定された、確定してしまった人に対して、なおかつ検察官は、裁判所が何と言おうとどう言おうと——無念残念じゃないですよ。「犯人であるとの確信をいまも変えていない。」——一体何事か。それは、心の中で無念残念と思っておることとは全く異質のことである。それをしもあなたは、私が検察官の立場であってもそうしたであろうとあえて言われるのかどうか、その点を伺いたい。
  244. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 いま仰せになるようなことがかりにありましても、検察官の立場というものからいうと、そう非難をしちゃいかぬものじゃないでしょうか。具体的な裁判判断事項に関して、これがけしからぬと言うことはけしからぬ話であるが、おれの信念はこうなんだ、この主張は通すべきものであるという自分の法廷における主張を述べるということは、当事者の検察官としては一向差しつかえないのじゃないでしょうか。これは当事者でない一般の行政官がこれを言うたり、国会において裁判判断事項というものを言及する場合とは違うのですね。検察官という、裁判所と相対立をした訴訟関係者である。白昼公然、裁判法廷にあらわれて防御、攻撃ができる。白昼公然、裁判官の前で、何を仰せになるか、その判断は間違いだという攻撃、大いにやってよろしい。やるために刑事訴訟法があって、訴訟当事者、対等の者である、こういうことでございますから、当事者という立場を検察官が持っておる。これは他の人々と違うところで、検察官が上訴をする、控訴の理由、上告の理由を申し述べて、これは維持をしてみせる、たとえば大須事件についていえば、騒擾罪は成立をする、必ず確信がある、これはあくまでも維持するんだということを力を入れて論じたから、裁判を批判した、裁判を圧迫したというわけにはいかぬのではなかろうか。どういうわけでそういうことを言うてもいいのかというと、検察官だから、三権分立の中における憲法上の司法部の独立というものは、そういうふうに私は判断をしております。具体的裁判裁判官の行なう判断事項、こういうものに限り独立が許されるもの、法廷戦術の内容を言うことは一向差しつかえがない、こういうふうに私は考えております。
  245. 正森成二

    ○正森分科員 田中法務大臣は弁護士として私よりはるかに先輩ですし、その点では敬意を表しておる、思想的には別ですよ、ということは、法務委員会でも言いましたが、きわめて残念ながら、政治生活があまりにお長いので、弁護士としての感覚がやや純られたのか、私の質問について全く見当違いの答弁をしておられる。事件が進行中のときに、検察官が当事者として、これは有罪であると、あらゆる法に許された範囲内の努力をされるということは当然であるし、弁護人もこれを行ないます。しかし、いま私があげておる事例、大須事件だけはまだ係属中ですけれども、ほかは全部確定したものです。この辻刑事局長発言も、松川事件という確定してしまったものについてです。そういう確定してしまって、もう当事者としての地位はなくなっておるということについて、いやしくも国家公務員である検察官が、イタチの最後っぺのように、もう済んでしまったものについて、あれは有罪であると確信するというようなことを言うてもいいのか、私はこう聞いておるんです。
  246. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 それは差しつかえのないものと私は存じます。すでに裁判の確定したもの、判決の済んだもの、上訴の道のないもの、つまり、いえばきまったものについても、あの裁判の際における自分の主張はこういう主張であった、これはいまも確信をして正しいものと考えておる、しかし裁判上は通らなかったんだということは、確定事後において、これも当事者ならば一向言うて差しつかえのないものだ。どこが差しつかえるか。それは言うたからどうなるものじゃない。判決確定しておる。私は一向差しつかえのないもの、こう思います。
  247. 正森成二

    ○正森分科員 いまの法務大臣発言を聞いて、いや、日本の検察官というのはえらい人に指揮されているんだなというように私は思いましたが、そもそも裁判というものは、両当事者がいろいろ攻撃、防御の方法を尽くすけれども、その中で実体的真実がだんだんと訴訟法的に形成されるわけですけれども裁判官が法に基づく最終の法則に基づいて、民事の場合にはこれはこちらが勝ち、あちらが負け、あるいは刑事裁判の場合にはこれは疑わしきは被告人の利益なんだということで、ビヨンド・リーズナブル・ダウトといいますけれども、合理的な疑いが残らない以上にまで立証されなければ無罪だということになっておる。そうなれば、当事者である、国家権力を利用して逮捕し、捜索し、あらゆる権力を尽くす検察官としては、そうしてもなおかつ有罪にならなかったということになれば一自分のそういう捜査方法について反省し、そういうような人まで起訴すべきではなかったと思って初めて公益の代表者と言えるし、人間らしいと思える。アメリカなんかでは、無罪の者について日本のように三度まで最高裁へ行くというようなことは許されておらない。それはよく御存じのとおりです。そうだとすれば、最高裁まで行ってきまって、もう何年もたっておるものについて、いいや、あれは有罪だと確信しているんだということで、どうして、被告として何年も苦しんだ人の名誉を守ることができるでしょう。また、それは最高裁判所の、あるいは裁判所の権威を国家みずからが下げるものにほかならないというように私は思います。むしろ当事者である検察官だからこそ、そういう思い上がった態度をとってはならない。なぜなら、そういうことを言い続けるならば、国民は、検察庁というところはこわいところだな、最高裁判所が八海事件のように二度、三度繰り返して無罪としたものについても、あるいは松川事件のようなものについても、幾ら国家権力が無罪だと言い、それを確定しても、検察官はまだ執念深く、あれは有罪だったとこう思い、自分考えは間違っていないんだと思い続けている。法務大臣もそれはけっこうだと言っている。ずいぶんしぶとい役所だなということにならざるを得ません。  したがって、私は、もしあなたがその信念をお変えにならないなら、これはわずか一時間やそこらで論争しても片づくことではありませんけれども法務委員会で言ったように、あなたの健全な国民感情に合致するというような発言は、これは戦前のドイツのナチスの時代の考え方だ。ナチスではあの健全な国民感情、ダス・ゾウゲナンテ・ゲズンデ・フォルクス・エンプフィンゼンというのが結局はヒュラーの意思と一緒だということになって、裁判独立も侵害されていったのです。そういう危険性をあなたのお考えは持っているということを指摘しておきましたが、ここで、再度確定した判決についてまで、それについてとやかく言う権利があるんだ、それはむしろ当然なんだというお考えを承って、いよいよ今度の田中内閣というのは、実に国民にとって重大な関心を持たざるを得ない内閣だというように感じたことをつけ加えて、次の質問に移らしていただきます。ほかにメーデー事件だとか辰野事件についても、同じように各検察官がイタチの最後っぺのようなことを言うておられるという資料を持っておりますが、あなたのそういう発言がありましたので、時間がありませんから次の問題に移ります。そこで、私は監獄法の問題について若干伺いたいと思います。もう時間がありませんので、聞きたいと思っておったことをすべて聞くわけにはいきませんが、若干お伺いしたい。  昭和四十七年十二月三十日の読売新聞では、監獄法が「60年ぶり改正へ」ということで「早ければ四十八年前半にも法制審議会に部会を設け、同原案を示して改正実現のための審議を始める見通しとなった。」というように書いております。同様に昭和四十七年版の犯罪白書、これは私どもがいただいたものですが、その一五四ページから一五五ページにおいても、監獄法改正のため草案作成の作業を進め、現在検討が続けられている、こういつております。  この監獄法というのは、明治四十一年当時はなかなか進歩的なものだったようですけれども人間でも六十、七十になれば多少衰えてくる。田中法務大臣は別です。意気ますます盛んですが、やはり法律でも実情に適合しなくなる。そこで、施行規則だとかあるいは行刑累進処遇令とかいろいろなもので緩和はやっておりますけれども、それではなかなか追いつかないということから、やはり——今度のものは刑事施設法というのですか、そういうことで考えておられると思うのですけれども、それがいつごろ法制審議会にかかる予定であるか。それから、その法案については、われわれ法務委員などには、審議会にかかる前にいただけるものかどうか、それについてお答え願いたい。
  248. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 いつごろに完成するかということでございますが、昭和四十二年に私が法務省におりますときに、野党から質問が出まして、いま時分に監獄法、監獄とは何事だというお話がございまして、先生の御希望と同じことを仰せになりました。直ちにその質問のありましたその日の日付で矯正局内に改正委員会を設けました。ただいまではだんだんと進んでまいりまして、まだ矯正局の案をつくる段階でございますが、第三次改正案がようやくできまして、第四次改正案を目下検討しておるという事情でございます。  それで、大体改正要綱というものが法務省の手でできますには、矯正局内でつくりました要綱案を、これを法務省全体会議にかけまして法務省でつくった要綱というものにいたしまして、これを法制審議会にかけて御審議を願う。もうちゃんとした案を、一文字も違わないようにつくり上げてかけるか、要綱でかけるか、かけようはいろいろございますが、そういうふうにかけていきたい。ということから申しますと、法務省内の要綱ができますのが大体ことし一ぱいかかるのではなかろうか。  どうしてそんなにかかるのかということを一口申し上げないと得心がいかぬでしょうが、それは刑法の全面改正をただいまやっております。刑法の刑の種類等が最近の近代的なものに変わってくることになりますと、それを監獄法は受けて規定を設けなければならぬ。一口に申しますと、刑法の改正の法案の内容がわかりませんと監獄法の改正ができないという事情は確かにございます。  そういうところから、刑法の態度がきまるのが先、続いてこちらが追っかけてきまっていくということから申しますと、要綱ができますのが本年一ぱいはかかるのではなかろうか、そういう段階でございます。
  249. 正森成二

    ○正森分科員 監獄法の問題についてなお伺いたいと思いますが、その前に、予算の関係を見てみますと、被収容者食糧費の増額ということで、四十八年度は二十八億九千七百万円ですか、というような要求額が出ております。これについて若干伺いたいわけですが、同じ犯罪白書の昭和四十七年版ですが、それの一六九ページを見ますと、給養というところで「副食については、一日六〇〇カロリー以上を確保することが要求されており、一日の副食費は、昭和四六年度は、受刑者一人一日当たり四四・二五円」こうなっておる。いまどき四十四円二十五銭ではろくなものは食えないと思うのです。そこで、今度は四十七年あるいは四十八年とだんだんふえて、私が承っているところでは、心情安定なんとかいうのがあるのだそうですけれども、そういうものも含めてやると、成人の場合は今度は六十七円六十九銭くらいになるのですか、副食費がもう少し上がりますか。(長島政府委員「そのくらいに上がるということです」と呼ぶ)そのくらいに上がるということですけれども、成人についてはどのくらいで、少年についてはどのくらいか、おわかりならちょっと答えてください。
  250. 長島敦

    ○長島政府委員 概算で申しますと、成人につきまして平均十五円アップ、少年につきまして二十円アップということでございます。それで、副食につきましては刑務所が大体七十円、六十九円九十六銭というところへ副食代がまいりまして、少年院は八十一円七十八銭、鑑別所が八十五円五十一銭というふうに上がってくるわけでございます。
  251. 正森成二

    ○正森分科員 いずれにせよ、いかに罪を犯した者とはいえ、いまどきの世の中で七十円、八十円で一日を過ごすということは浮き世離れのしたものだ。そうして、自由民主党が今度の選挙でシンボルにお使いになったあのパンダなどは、動物園で一日にえらいお金を使っておるわけですね。それに比べて、幾らパンダは貴重であり人間はどこにもおるものであるとはいえ、また、罪を犯したものであるとはいえ、これはもう少し待遇はよくしてあげなければ、懲罰するだけじゃないのですから、行刑で改善させるためなんですから、そういう点について、予算案に賛成するわけではないですけれども、もっと上げてあげなければいけない点もあるのじゃないかということを、私は指摘しておきたいというように思うのです。  そして、時間の関係がありますのでさらに次の問題に移りますが、昭和四十六年十一月十一日に参議院の法務委員会で、佐々木静子委員が八海事件の関係について、広島の拘置所の問題についていろいろお聞きになっております。  私に与えられた時間があと十分足らずになりましたので、非常にかいつまんで申し上げますけれども、ここで、単独犯を主張したり多数犯を主張した吉岡晃なる人物が、単独犯を主張する上申書を再々当局に出した、それを約十八通差し押えておったということが起こりました。この速記録で見ますと、「四十三年の三月の二十八日に原田香留夫弁護士が、そして四十三年の四月一日に、これは数名の弁護士が、東京、大阪から広島の刑務所長に、吉岡に面会さしてほしいということを申し入れたわけでございます。」こうなっておる。その数名の弁護士の中に私が入っておるのです、八海事件の常任弁護人でしたから。  そこで申し上げるわけなんですけれども、当時、いろいろいきさつがございましたけれども、結核であるというようなことで、これは心情が安定しないとかいうようなことで、証拠保全にも出てこれないとかというような事情があったわけです。それを一つ一つ抜粋して引用するといいんですけれども、時間がありませんので省略をいたしますけれども、当時出てこないという理由として、四十三年の五月に外部の吉島病院の島という先生に来てもらったところが、右の上葉部に小さい空洞があるということであった。そこで長期間治療した結果、四十四年の九月九日に休養が解除されたんだということを言って、その理由が正当であるというように言っておるのですね。ところが佐々木静子委員は、この吉岡が仮釈放された、無期刑だったんですが、そのあとでレントゲンを写すと、空洞も全くなければ、肺結核の既応症は全くないということを医者が言っておるのですね。  これはほんとうだろうと思うのです。というのは、私は結核についてはいささか専門家で、大学時分に六年間結核で病気をしたのです。右の肺の上には空洞があります。左は全面的に侵潤があります。私のレンドゲンは、健康保持上、いまも少なくとも一年に一度はとっておりますが、完全になおって、こうやって田中大臣の貴重なお時間を拝借しておりますが、レントゲンをとるとまっ白です。空洞のあとは白く固まって、あとが残っております。結核とはそういうものです。  ところが、吉岡の場合には、これは藤原道子さん、お医者さんですね、この人も言っておられますけれども、そういう既応症があるという形跡はレントゲンでは全く認められないということを言っておるのですね。そしてそのときの速記録では、当時のレントゲンや診断書は保存されてあるはずでございますから、ぜひ資料として御提出を願いたいということで、当時の委員長の阿部憲一君が、それはそうお願いするということで終わっておるのです。私が調べた限りでは、それが提出されてどういうぐあいに問題にされたかということは、参議院の議事録ではないようです、あるいはあるのかもしれませんが。  そこで私が伺いたいわけですけれども、こういうように八海事件の阿藤周平被告、これは死刑の判決でしたが、それが無罪になりました。私も弁護人として非常にうれしかったわけですけれども、そういうことについて、無罪を立証するきめ手になると思われるような、いままで多数犯行を主張しておった者が、いいや、あれは間違えておった、申しわけない、自分が死刑になりたくないために道連れにしたんだけれども、ほんとうは単独犯だったんだ、こういうことを何回となく、十八通も出しておるのを、刑務所長がとどめておるというようなことはもってのほかだ。しかも、それを病気だとか、心情不安定だとかいうが、病気だというのはレントゲンの上ではこれは不十分、証明されておらないという形跡がある。  そこで、私は矯正局長に伺いたい。レントゲンや診断書をとってみた結果、それはどうであったか、それは国会にわかっておりますか。その点をまず伺いたい。
  252. 長島敦

    ○長島政府委員 どうもたいへん失礼いたしました。古いことでよくわかりませんです。
  253. 正森成二

    ○正森分科員 だからわざわざ私は、このことを聞くといって言うてあげたでしょう。
  254. 長島敦

    ○長島政府委員 レントゲンにつきましては、当時、矯正局へ取りまして見ておるそうでございます。それをまた現地の刑務所へ返したというふうに当局者は申しております。それからなお、当時の記録によりますと、本人が血たんを続けてあのころ吐いておったという記録があるそうでございます。
  255. 正森成二

    ○正森分科員 そういうことで結核を六年もやった者をごまかそうと思っても、それはごまかせない。レントゲンを一たん取り寄せたら、その判断の結果が、権威のある国立結核療養所とか東大の教授が見ればどうだったか、それを私は聞きたい。血たんが出ておったということは結核の証明にはならない。気管支に傷がある場合でも血たんは幾らでもあり得る。血沈が非常に高いということでも、あるいは血沈が少なくなったということでも、結核であるかどうかの診断にはならない。結核であるという診断は、レントゲンに影があり、かつ喀たん検査によって、塗沫検査もしくは培養検査によって結核菌が発見されるということが何よりのきめ手なんです。血たんの出る病気は幾らでもある。血たんが出るとか出ないとかいうことは、それは即結核とはならないということは、医者でなくても、私のような結核患者であった者でも常識なんです。それをそういうような答弁ですりかえるというようなことは許されません。私はこのことを聞くからと、共産党は事前にいろいろ言わないのだけれども、わざわざ、佐々木静子氏のお聞きになったことについて聞くのだということを事前に言っているでしょう。それに対してそんな不誠意な答弁しかできないということは何事です。
  256. 長島敦

    ○長島政府委員 まことに申しわけございませんが、実は御質問の趣旨を誤解いたしまして、あの問題に関連して監獄法改正でどういうふうに今後やるのかというふうにお聞きしたものでございますから、あの具体的な事件のことについては、その後の経過を十分調べてまいらなかったわけでございます。
  257. 正森成二

    ○正森分科員 調査なくして発言権なしというのは毛沢東のことばです。私どもは毛沢東のすべてを正しいとは思いませんけれども、しかし、事実を認識した上に立って、こういう誤りをおかさないためには監獄法をどのように改正すべきかという問題も起こってくるのです。私は、具体的事実を引いた上で監獄法のいろいろな問題点について伺いたい、こう思っておったところが、あなた方は事実も調べてこないということでは、もってのほかではありますんか。したがって、この問題についてはまた法務委員会で、私は法務委員ですから、とっくりとおつき合いをさせていただくということで、御準備願いたい。それは記憶にとどめておいていただきたい。そのときにはレントゲンをもう一ぺん取り寄せなさい。いいですか。答えなさい。
  258. 長島敦

    ○長島政府委員 現地に連絡いたしまして取り寄せるようにいたします。
  259. 正森成二

    ○正森分科員 時間が参りましたので、次の質問者の方もございますので約束は守りたいと思いますが、こういう問題が起こってくるのは——中途をはしょったので、結論だけになりますのでわかりにくいと思いますが、結局監獄法のもろもろの規定、信書の問題についていえば、監獄法の四十六条、四十七条というような点とか、いろいろな点に不備があるというところにやはり原因があるというように私は思います。  時間がありませんので、ほかにいろいろ用意していたことを言えないのが残念ですけれども、いずれ監獄法の問題は、改正のことが日程にのぼらなくても、国政調査の問題としても伺うことができますので、それは法務委員会で伺いたいというように思って、私の質問を、時間が参りましたのでやめさせていただきます。  ありがとうございました。
  260. 臼井莊一

    臼井主査 次に、江藤隆美君。
  261. 江藤隆美

    江藤分科員 この機会に、登記所の廃止統合問題についてお尋ねをし、またいろいろと御要望も申し上げておきたい、こう思います。  もう釈迦に説法でありますけれども、登記事務というのは住民に密着しておる、こういうことから、戦前この登記所をつくるときには、地元が土地を提供しあるいはまた建物を提供しておる。現に、最近になって、こうした国の事務施設等に対して地元負担をしてはならないという財政法の改正があっても、依然としてそれらのものが続けられておる面もあるということは、それだけにやはりこの事務が非常に大事だという歴史的な背景を持っておる、こういうことだろうと私は思います。  ところが、最近になりまして、いろいろと全国各県においても、市町村においても、この登記所が廃止される、こういうことが実は問題になりまして、特にこれは、便利のいいところではありませんで、全部便利の悪い、いわゆる過疎地域だ、こういうことになるわけであります。  そこで、四十年から五十年までに整理をされることだそうでありますが、大臣としてはこの方針についてどういうふうにお進めになるのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  262. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 仰せをいただきました登記所の統廃合問題は、四十七年に審議会に基準を諮問したのでございますが、その前年の四十六年度以降今日まで、引き続きずっと統廃合に苦労を重ねてきております。  大体の方針を申し上げますと、もともとこの登記所というものの出張所などができましたのは、住民の利便のためにサービスをよくするために出張所をつくったものなのでございますから、これを統廃合するといたしましても、統廃合には地元がどこまでも反対だと仰せになるものはやるべきものでない、事情をよく説明をして御了解をいただいて、そういう事情で今度できる新しい登記所が、サービスがよくなって仕事がてきぱきできるように、より以上によくなってくるならば承知をいたしましょうということで理解をしてくださる場合には統廃合を実現する、こういう方針で、地元の反対を押し切るな、押し切ってはならぬ、こういう方針を立てまして、目下各方面に御理解をいただき、御理解のいただけたものから順次統廃合を実施しておる、こういう事情でございます。  あまり詳細なことはわかりませんので、担当局長からお答えを申し上げます。
  263. 江藤隆美

    江藤分科員 廃止の基準はどういうことですか。
  264. 川島一郎

    ○川島政府委員 ただいま大臣からお話がございましたように、昨年の九月、民事行政審議会、これは法務大臣の諮問機関でございますが、そこで登記所の適正配置の基準というものを審議いたしまして、その審議の結果の答申が出ております。それを事務当局といたしましては尊重してやっておるわけでございますが、その基準は四つございまして、簡単に申し上げますと、第一は、一年間の登記甲号事件数が五千件に達しない登記所であって、その登記所を統合した場合に、受け入れ庁である登記所とその管轄区域内の各市町村の中心的地区との距離が一般の交通機関によって片道おおむね六十分程度以内にあるもの、これが第一の範疇でございます。それから第二は、事件数が二千件に達しない登記所であって、これを統合した場合に、受け入れ庁の登記所の所在地とその管内の市町村の中心的地区から受け入れ庁までの所要時間がおおむね九十分程度の範囲内にあるもの。それから第三は、交通至便の地域にある登記所、事件数が二万件をこえるものを除きまして、そういう登記所であって、受け入れ庁である登記所までの所要時間がおおむね三十分程度の範囲内にあるもの。四番目は同一市区町村内にある登記所、こういうことになっております。
  265. 江藤隆美

    江藤分科員 一番と二番の意味がどうもわからないのですが、どういうことですか。統合した、そうしたらここに市役所がある「前の、統合したところの市役所からここまで六十分以内ということですか、距離が。あなたたちはむずかしい説明をなさるから……。
  266. 川島一郎

    ○川島政府委員 ごくわかりやすく申し上げますと、五千件以下の登記所というのは、大体職員が二名いる登記所でございます。その二名いる登記所でありまして、いまの時間の関係は、その登記所と各市町村の中心的な地域との間の距離が六十分程度のものということでございます。市役所とかあるいは町の役場がありますところはおおむね中心的地区だと思いますが、そういう場合には、その役場から登記所までの距離が片道で六十分くらい……(江藤分科員「歩いてですか」と呼ぶ)いえ、通常の交通機関による片道所要時間が六十分以内ということでございます。
  267. 江藤隆美

    江藤分科員 私の宮崎あたりになりますと、バスの通っておるところには十分の一も家がなくて、あとの十分の九というのは上にあるのですよ。通常の交通機関という規定に当てはめますと車でしょう。ああいう過疎地帯になりますと、山の上ですから、歩く以外方法ないのです。そうすると、通常の交通機関というものさしでははかれないのですね。ですから、最近はだいぶんよくなってきましたけれども、ひどいところになると村内出張という制度がある。自分の村を回るのに一カ月かかる。村内出張です。役場から職員が出張旅費もらって出かけていく。そういう非常に便利の悪いところがある。だから、そういうものが統合されるということになるとたいへんな問題だ。こういうことですから、反対が起こってくるわけです。  私は、この審議会にかけられた内容も読ましていただきました。メンバーも見せていただきました。ほんとうの地方の実態を御存じになった方があまりお入りになっていないですね。だから議論というものが、法務省の皆さんの事務当局の案を中心にして別のところで議論された。法務省サイドに立っての議論であり、整理統合であって、住民サイドではない、そんな感じを私は持つのですよ。  ですから、これはもう大臣のおっしゃるように、どうしても地元の反対がある場合においては、ぜひひとつこれは思いとどまっていただきたい。私はいつまでも絶対いかぬということを言っているのじゃないです。これはよく、道路が便利になったんだからいいじゃないかと、こうおつしゃるけれども、そうはいかないのです。道路が便利になったといいましても、だんだん過疎化していくわけだから、バスがなくなってくるのですよ。そうすると、おやじさんが登記所に行くといったら、むすこが運転をするか、だれか隣近所に頼んで乗っけていってもらうかしないと……。道路がよくなった、だから統合していいではないかという理由にはならないのです、今度はバスがなくなるから。そうなると、今度はせがれに乗っけてもらうか隣近所に乗っけてもらうかする以外にない。ですから、非常に深刻な問題でありますので、これは党においても、登記所の問題についてはけさ小委員会を開催して、そしていよいよこの問題に取り組もうというときでありますから、これは役所の御意向もわかりますけれども、早急に地方のそういう実態というのもよく理解されて、無理押しをしないようにぜひお願いをしたい、こういうふうに思います。これは大臣、もう御答弁要りませんね。
  268. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 地元の反対を無理に押し切って統廃合を実現するような態度はとりません。
  269. 江藤隆美

    江藤分科員 それからもう一つ、私は将来の問題として、どうしても統合しなければならないということになったならば、いっそのことこういう地帯の登記事務というものは、町村業務に移管したらどうかという意見を持っておるのであります。これは法務当局は、非常に専門的なものだからなかなかむずかしい、全国画一的にやらなければならぬからむずかしいと、こうおつしゃいます。ですけれども、いなかの登記事務というのは土地だけなんです。会社だとか抵当権だとか、そんなものは実際問題としてないのです。よしんばあったら、私はそれこそ法務局でやったらいいと思うのです。分けたらいいと思う。法務局でそういうむずかしいものはやったらいい。土地、物件については、これは町村事務に移管するのも私は一つの方法ではないか、こう思うのですが、そういうことはできないものですか。
  270. 川島一郎

    ○川島政府委員 登記事務を市町村に移管したらどうかという御意見は、たまに伺うことがあるわけでございますが、私ども登記事務を取り扱いあるいは監督しておる立場から申しますと、ただいま土地だけというふうに仰せられましたけれども、その土地だけ、が非常にむずかしい問題が多いわけでございます。会社その他にももちろん問題はございますけれども、土地の権利関係というものは非常に複雑、錯綜しておりまして、あるいは抵当権の問題があり、あるいは裁判所からの差し押えその他の嘱託がありということで、その事務の処理一つ間違いますと、国民の権利義務の保護の上で非常に大きな差異を生じてくるということがございますので、私どもといたしましては、理由は詳しく申し上げませんけれども、これを市町村に移管するということは容易ならざることであるというふうに考えております。
  271. 江藤隆美

    江藤分科員 検討したことはありますか。積極的に検討されたことはありますか。土地、建物もありますね。私は、登記事務から、あるいはまた外人登録から印鑑証明の業務から町村にはあるのですから、どうしてもやれないという考え方はないと思うのですよ。これは非常に熟練を要するという説明もありますけれども、いまは町村役場だって大学を卒業した者がどんどん就職する時代ですから、これは法務局の人たちでなければ法律事務がやれないという性格のものじゃないと私は思うのです。ですから、専門的な内容についてはわかりませんけれども、直接こういう廃止の対象にされた町村が、それならばいっそのこと町村に移管してくれと、こういうのです。ですから、そういう人たちはやれる自信があるのです。また、あなたがおっしゃるようなそういう非常にややっこしい案件というものは、実際問題として少ない。だから、そんなものは法務局でやって、それで全体の管内を指導し監督したらいいじゃないか、こういうふうに思うのです。その点が一つ。  それからもう一つは、登記事務は非常に手続がややっこしい。どうして登記事務だけ、いま事務の簡素化、能率化、合理化ということがいわれる時代に、旧態依然として事務の合理化をなさらないのか、これがふしぎでならない。だから、登記所そのものを整理統合することも大事だけれども、私はその以前に、この登記事務の合理化というものをやる必要があると思う。漢用数字というのですか、あれでいまごろ書いてきわめて非能率。いまどんなむずかしい小切手だって、手形だって、もう全部算用数字で能率的に書こう、こういう時代に、それこそ機械化も事務の合理化もできないような漢用数字でいつまでもやっておるところに、私は、今日の登記事務の遅滞がある、おくれがある、それから事務の合理化のできない原因がある、そういうふうに思うのですけれども、根本的に一回改めたらどうなんですか。これは局長のほうでけっこうです。
  272. 川島一郎

    ○川島政府委員 まず最初に市町村移管の問題についてでございますが、実際の事務を取り扱ってみるとその複雑さというものがわかるわけでございますが、外部から見ておりますとそれほどに感じないという違いがあろうかと思います。現実に登記所の事務を取り扱っております者は、たとえば一人庁の所長でございましても、少なくとも十年近い経験を持つものでなければ安心してその事務をまかせられないというのが現状でございます。このような職員を養成するために、やはり大きな登記所がありまして、そこで事務に習熟した者が一人庁の所長となって回っている、こういう実情でございます。そういうことから考えまして、これを市町村に移管した場合に、その事務を取り扱う職員をいかにして養成するかというだけでも私はたいへんな問題だというふうに考えます。  それから、登記事務の能率化をもっとはかるべきではないかという点につきましては、私、仰せのとおりだと思います。ただ、いままで法務当局が事務改善に努力をしていなかったかと言われますと、その点につきましてはわれわれとしては非常に努力をしてきたつもりでございます。過去二十年の間、登記事務というものは、昔を知っている者から見ますと見違えるような変わり方でございます。帳簿が変わっておりますし、それから記載のしかたも変わっておりますし、それから謄抄本の交付事務に至りましては非常な能率化がはかられております。こういう能率化をはかったればこそ、登記事務がかつての十倍というような増加を示したにかかわらず現在処理されているというふうに思います。一、二、三といったような数字についてむずかしい字を書いているではないかという仰せでございますけれども、これは登記事務がそれだけ複雑、また間違いないように処理しなければならないという性質のものから来ておるのでございまして、これをたとえば横書きに改めるというようなことにいたしました場合には算用数字を使うということも考えられると思いますが、全国の登記簿をそういう形に改めるということは、それ自身たいへんな仕事でございます。将来の方向といたしましては、登記をコンピューターでやっていくというようなことも考えられますので、そういった点につきましても、現在まだ模索中ではございますけれども検討を行なっているという実情でございまして、われわれとしては十分われわれなりの努力をしているので、その点御了承いただきたいと思います。
  273. 江藤隆美

    江藤分科員 事務がたいへんむずかしいとおっしゃいます。それはむずかしいだろうと思うのです。私たちはしろうとですから、よそから見るだけですから。ひとっこれを参考に差し上げますから、検討してみてください。これは私の宮崎県の北郷町というところが部分林の登記事務をやっているんです。これは部分林権利処分願いです。そうしていろいろあるのです。これは同意書です。これは売買契約書です。売り渡し証書です。これは一件書類でつくってあるんですよ、部分林の登記事務を。これは一いなかの町が研究をしたんですよ。そしてこの特色は何だといいましたら、中学校、高校を出た人ならばだれでも書けるということです。だれでも書けて、そして部分林の登記事務ができる。売買から相続から何から全部できるということです。全部自分で書き込めばいい。ところが、私は全部が全部登記事務がこれと同じだとは申しませんけれども、いまの法務省のやっておられることは、それは十倍も事務が進むようになった、こういう御説明がありましたけれども、それはたいへんな御努力もあったと思うのです。しかし、もうこの時代には追いついていかないですね。ですから、一町村ですらそれくらいのことができるんですから、私は、やっぱり司法書士を使わなければ登記事務ができないような事務体制というものは改むべきだと思っているんです。私は、何も司法書士が不要だということではありません。ところが、どこの役場でも、どこの法務局のまわりでも、行ってごらんなさい。それは一ぱいです。それだけにたいへんな手間がかかるし、費用がかかっておるわけです。だから、統合になったりしましたら、今度はそういう俗にいう代書人を連れて町の登記事務をやりにいかなければいかぬのですよ。交通費から旅費、日当から、ちゃんとかかるようになってくるのです。だから住民の負担は重くなる。ですから、事務の改善といっても同じようにはいきませんでしょうけれども、やはりくふうをされて、だれでもが自分で手続ができる、そしてそれが正確を期せられる、そういうふうに改善に取り組んでいくべきだろう、私はこういうふうに思うのです。大臣、いかがでしょうか、ひとつ御感想をお聞かせください。
  274. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 サンプルを示しての御熱意のあるお話でございます。これをちょうだいいたしまして、十分、生きた資料として検討をいたしまして、御期待に沿いたいと思います。
  275. 江藤隆美

    江藤分科員 第一番の登記所の適正配置の問題、それから事務改善の問題、いろいろと困難もあるでしょうし、あるいはまた、いままでの長い慣習でやってきておるわけでありますから、正確を期するためにもなおかつ検討事項もあると思います。しかし、これからだんだん時代が大きく変わっていきますから、十分対処ができるようにひとつ善処方をお願いして、これで終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  276. 臼井莊一

    臼井主査 以上で法務所管の質疑は終了いたしました。  次回は明七日午前十時より開会し、総理府所管中、防衛庁関係についての審査を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十二分散会