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1973-03-05 第71回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月五日(月曜日)     午前十時九分開議  出席分科員    主査 臼井 莊一君       伊能繁次郎君    塩谷 一夫君       湊  徹郎君    楢崎弥之助君       馬場  昇君    横路 孝弘君       小川新一郎君    近江巳記夫君       谷口善太郎君    山田 太郎君    兼務 神門至馬夫君 兼務 田中 武夫君   兼務 細谷 治嘉君 兼務 米内山義一郎君    兼務 野間 友一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君  出席政府委員         公害等調整委員         会委員長    小澤 文雄君         公害等調整委員         会事務局長   川村 皓章君         環境庁長官官房         長       城戸 謙次君         環境庁長官官房         会計課長    稲本  年君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁自然保護         局長      首尾木 一君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 住田 正二君         労働省労働基準         局安全衛生部長 北川 俊夫君  分科員外出席者         環境庁自然保護         局鳥獣保護課長 仁賀 定三君         大蔵省主計局主         計官      海原 公輝君         厚生省環境衛生         局水道課長   国川 建二君         農林大臣官房審         議官      有松  晃君         通商産業省重工         業局自動車課長 中村 泰男君         運輸省自動車局         整備部長    景山  久君         運輸省航空局飛         行場部長    隅  健三君         建設省河川局水         政課長     伊藤 晴朗君         自治省税務局固         定資産税課長  小川  亮君     ————————————— 分科員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   北山 愛郎君     馬場  昇君   山田 太郎君     小川新一郎君 同日  辞任         補欠選任   馬場  昇君     横路 孝弘君   小川新一郎君     松本 忠助君 同日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     北山 愛郎君   松本 忠助君     大久保直彦君 同日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     近江巳記夫君 同日  辞任         補欠選任   近江巳記夫君     山田 太郎君 同日  第二分科員田中武夫君、野間友一君、第三分科  員細谷治嘉君、第四分科員神門至馬夫君及び米  内山義一郎君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計予算総理府所管(環  境庁関係)      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和四十八年度一般会計予算中、総理府所管を議題とし、環境庁に関する事項について政府から説明を求めます。三木環境庁長官
  3. 三木武夫

    三木国務大臣 昭和四十八年度の環境庁関係予算案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和四十八年度の総理府所管一般会計歳出予算のうち環境庁予算総額は、百十億四千九百三十一万四千円でありまして、これを前年度の歳出予算額八十一億七千十万二千円に比較いたしますと、二十八億七千九百二十一万二千円の増額となっております。  このほかに、建設省所管予算として計上されております国立公害研究所及び公害研修所施設整備経費がありますので、これを合わせますと、昭和四十八年度の環境庁関係予算は、百三十一億一千五百十六万六千円となり、前年度の環境庁関係予算に比べ、四十六億七千五百六万四千円の増額となっております。  なお、建設省所管予算官庁営繕国庫債務負担行為として、国立公害研究所にかかわるものが新たに十六億四千万円予定されております。  この予算案の詳細につきましては、別に配付しました「昭和四十八年度総理府所管一般会計環境庁予算案についての説明」のとおりでございますので、分科会各位のお許しを得て、説明を省略さしていただきたいと存じます。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  4. 臼井莊一

    臼井主査 この際、おはかりいたします。  ただいま三木環境庁長官から申し出がありました環境庁関係予算の残余の説明は省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 臼井莊一

    臼井主査 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————     〔三木国務大臣説明を省略した部分〕  次に、個々施策予算の重点について御説明いたします。  第一に、公害対策について申し上げます。  まず、大気汚染等防止対策及び水質汚濁防止対策につきましては、環境基準の設定のために所要の経費を計上いたし、計画的にこれを推進するとともに、排出基準排水基準をはじめ各種公害規制基準の一そうの強化をはかり、また、総量規制確立を検討するための経費都市型の大気汚染防止のための調査等経費のほか、自動車公害、振動、悪臭並びに航空機及び新幹線の騒音について対策確立のための調査を行なう等、五億三千六百八十一万円を計上いたしております。  このほか、地盤沈下及び廃棄物対策費に三千六百十万円、土壌汚染防止及び農薬対策費に一億二千九百六十七万円 をそれぞれ計上するなど、公害規制基準強化等経費として、総額七億二百五十八万円を計上いたしております。  また、公害監視設備整備費につきましては、地方公共団体監視測定体制及び地方公害研究所等分析体制の計画的な整備を一そう推進するため、補助金の大幅な増額をはかり、これが施策を一そう強化するとともに、新たに大規模発生源に対する常時監視体制整備費補助経費、新たな構想による国設大気測定網整備のための経費などを合わせ、十億八千四百十三万円を計上しており、前年度予算に比し大幅な増額となっております。  環境保全企画調整等経費については、開発に際しての環境アセスメント手法開発のための経費のほか、環境保全パイロットモデルの作成に必要な経費などのため、四千四百二十六万円を計上いたしております。  公害防止計画策定については、公害防止計画策定のための基礎調査を十地域において実施するほか、公害防止計画策定第一次地域について公害防止計画見直し調査を行なうなどのため、三千三百十九万円を計上いたしております。  公害健康被害救済対策については、医療手当の額の引き上げ、支給制限の緩和をはかるほか、地域指定拡大に要する経費を見込むなど制度の一そうの充実強化をはかるため、一億九千八百七十四万円を計上いたしております。  また、公害に係る被害者救済をはかるための損害賠償保障制度の創設のために各種調査を進める必要があり、このために必要な経費として九千四百二十六万円を計上いたしております。  公害防止事業団については、事業規模を七百三十億円に拡大するとともに、中小企業等公害防止施設整備を促進するため、金利の引き下げ、事業団業務範囲拡大を行なうこととし、これに伴う事務費等助成費を含め、九億五百十二万円を計上いたしております。  次に、公害防止等に関する調査研究推進のための経費については、科学的な調査及び試験研究を一そう推進するため、総額三十二億四千九百八万円を計上しております。  まず、国立試験研究機関等公害防止等試験研究費として二十二億九百八十万円 を環境庁において一括計上いたし、各省庁試験研究機関等公害防止に関する試験研究総合一的推進をはかることといたしております。  さらに、社会的に強い要請のあります光化学スモッグに係る調査研究については、東京湾周辺地域のほか、新たに大阪湾周辺地域対象地域に加えることとし、これに要する経費として一億八千二百四十八万円を計上いたしております。  広域水質汚濁総合調査については、瀬戸内海について補足調査を行なうとともに、新たに東京湾及び伊勢湾についても調査を実施することとし、また広域水域水質の常時監視に必要な水質監視ブイ試験設置のための経費を計上するなど、一億二百五十七万円を計上いたしております。  その他、健康被害自然保護大気汚染及び水質汚濁等に関する調査研究費として三億七千四百二十二万円を計上し、重点的な調査研究を進めることといたしております。  以上のほか、環境保全総合調査研究促進調整費として三億八千万円 を計上いたし、関係省庁の所管する各種環境保全関連する調査研究総合的な調整をはかることといたしております。  また、政府における公害等試験研究推進のための中核的な機関として、昭和四十八年度中に発足する予定国立公害研究所に必要な経費として、九千八百四十七万円を計上いたしております。  さらに、公害行政担当者研修を行なうため、昭和四十七年度中に発足する予定公害研修所に必要な経費として、二千四百三十六万円を計上いたしております。  以上、これらもろもろ施策に必要な公害対策費として、総額六十四億三千四百二十二万円を計上いたしております。  第二に、自然環境保護整備対策について申し上げます。  まず、自然環境保全対策については、わが国土の動植物、地形、地質等自然環境実態等について基礎調査を行なうほか、自然環境保全のための基本方針策定などのため、二億五千二百七万円を計上いたしております。  また、交付公債による民有地買い上げ制度により、自然環境を保全すべき民有地買い上げを行なうため、事業費総額を六十億円と予定いたし、このために必要な経費として三億三千九百十一万円を計上いたしております。  鳥獣保護行政については、新たに地方公共団体に対する野鳥の森の整備費補助を行なうほか、タンチョウの生息する湿原保護のための調査を行なうなど、これが施策を一そう強化することとし、一億三千四百八十万円を計上いたしております。  さらに、自然公園等施設整備につきましては、二十億八千八百八十四万円 を計上し、国立公園等整備をはかる等これまでの施策にあわせ、新たに国民休養地整備を行なうほか、国民休暇村の増設に着手することといたしております。  また、自然公園維持管理体制充実強化のために、管理事務所を二カ所増設するなど、自然公園等維持管理費として二億四千三百七十四万円を計上いたしております。  以上、これらもろもろ施策に必要な自然環境保護整備対策費として、総額三十億五千八百五十七万円を計上いたしております。  なお、このほか建設省所管予算として、国立公害研究所の四十八年度建設費として十六億四千百八十四万円、公害研修所の四十八年度建設費として四億二千四百万円がそれぞれ計上されております。  以上をもちまして昭和四十八年度の環境庁関係予算案説明を終わります。     —————————————
  6. 臼井莊一

    臼井主査 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中武夫君。
  7. 田中武夫

    田中(武)分科員 私は、去る二月の七日に総括質問で、若干の公害環境保全に関する問題を取り上げました。そして引き続き一般質問で、島本君があとを受けてやりましたが、その際に積み残したと申しますか、まだ十分に触れることのできなかった問題につきまして、時間の許す限り、公害問題について、あるいは環境保全について御質問いたしたいと存じます。  まず最初でございますが、公害の無過失賠償関連して公害賠償保障法案がもうまとまったやに承っておりますが、その要点を、簡単でけっこうです、御説明願いたいと存じます。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 この性格は、民事賠償性格を持っております。そして、PPP原則に従って、この基金を強制的に主として汚染者から徴収する。そして、それはいままでの特別措置法のように健康の被害ばかりでなしに、一つ生活補償的な性格、あるいはまた遺家族の生活補償的な性格を持たすものでございます。  これはまだまとまったという段階ではございませんが、できるだけ早く法案をまとめて、今国会に提出をしたいと考えております。
  9. 田中武夫

    田中(武)分科員 いまのお話ですと、はっきりとおっしゃらなかったのですが、PPP原則は貫くというか、その上に立ってということで、言外に一部公費負担ということが含まれているように伺いました。その公費負担について私は問題があると思うんです。なるほど、汚染原因一般生活活動から出るものもある。したがって、国、地方公共団体には公害被害者を敏速に救済する行政責任があるからということを一つの理由として、いわゆる公費負担と、こういうことも考えておられるようです。  そこで、公費負担内容というかあるいは割合といいますか、たとえば基金の中の何%ぐらいを国と地方公共団体がどのように分けるか。まだそこまで詰めがなければ、長官の腹の中と申しますか、大体こういうことだ、こういうことを伺いたいのです。  それからもう一つは、OECD経済協力開発機構が、御承知のようにPPP原則を打ち出しておる。そういたしますと、公害問題で公に法律公費負担ということをきめる場合は、こういういわゆるOECD等構想関連をして国際的な問題にまで発展するのではなかろうか。ことに、いわゆる国際通貨危機の時代を迎えて、日本国際競争力輸出、こういうことがいま問題になっておる。そういたしますと、そういったところに国が援助をする、これと関連して、なお通貨危機関連する日本輸出企業国際競争力、言いかえるならば株式会社日本といったような感じを与えるんじゃないか。そういう点についてはどのようなお考えでございましょうか。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 どれくらいの割合公費負担かということは、まだその結論を得ておりませんので、この席で申し上げる段階ではございませんが、しかし、いずれにしても言えることは、OECD等にあるPPP原則に触れるような公費負担は伴わない、こういうことでございます。
  11. 田中武夫

    田中(武)分科員 私はできるだけ——大もの長官ですからね、あなたがここで、大体何%ぐらいはというようなことぐらいは言っていただいてもいいんじゃないか。そして、そのうち何%を、あるいは何分の一を国、あるいは何分の一を地方公共団体だ、こういう構想ではないかと思うのですが、割合が言えるんじゃないですか。でなければ、ひとつ腹づもりとして、それは地方公共団体にもある程度と、こういうように言ってもらえなくては、引き下がるわけにはいかないわけなんですが——。私は、あくまでもPPP原則は貫く。しかし、たとえば中小企業等、あるいは生活環境からくる汚染というような問題については、他の方法をもってカバーをする。中小企業公害防止設備を、国の融資というか、あるいは公害防止事業団をしてつくらしめるとか、そういうことがいいのではなかろうかと思うのです。  なお、言いかえるならば、公費負担ということは、いわゆる税金なんです。そうすると、それは結局は一般庶民国民ということになる。この一般国民公害被害者である。だのに、被害者がその賠償について、間接的ではあるけれども負担をするという観念はいただきかねるんじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 国も地方公共団体も、国民生活に対しては責任を負うておるわけでございますから、PPP原則に触れるような限度公費負担考えてはおりませんけれども、その原則に触れない限度において公費負担をすることで、国、地方公共団体責任の一端は負うべきではないか。この損害賠償保障制度を円滑に育て上げていくためには、そういう考え方を持っておるものでございます。
  13. 田中武夫

    田中(武)分科員 ここで割合は幾らかとこれ以上迫っても、長官としては、腹がきまっておっても言いにくかろうと思いますので、これ以上のいじわるは申しません。しかし私は、やはり原則原則として貫く。しかし、いまおっしゃったようなこともわからぬことはない。同時に、現に公害被害を受けておる人は何とか救済しなければいけないという行政責任あるいは政府責任についても、私はもちろんそうでなくてはならぬと思うのです。だからこそ、無過失賠償あるいはそれに伴うところの補償ということをやかましく言っておるわけなんです。その辺のところは、三木さんですからうまくおやりになると思うのですが、国際的に批判の出るようなことだけは、あるいは国民がおかしいじゃないかというようなことだけは避けてもらいたい、それだけを要望いたしておきます。  次に、この賠償について、生業補償というようなこと、いわゆる法律は人命、健康ということですが、財産にも補償ということをやかましく言ってまいりました。生業補償的なものは考えなければならない、こういうことでございますけれども、この生業補償というのは一体どういうことをお考えになっておるのか。言うならば、もし公害なかりせば得たであろう所得補償する、その程度のものなのか、あるいはもっと突き進んだ観念を持っておられるのか、その辺のところがもう一つ、私は納得しかねる。  さらにもう一つ、先ほどもおっしゃいましたが、生活補償ということになると、この制度民事賠償責任の上に立つのか、社会保障的な観念かということで、前者であるとこの前も答弁せられ、いまもおっしゃいました。しかし、生活を何とかできるようにという程度考え方であるならば、社会保障的な観念ではないか、いわゆる罠事賠償責任という観念までいかないのじゃないか。  それからもう一つ問題になるのは、前にも、財産権侵害に対しては、積極的及び消極的被害に対しても賠償をすべきであるというように申しましたが、いま遺族云々ということも言われた。そういうことになりますと、それじゃ問題になろうと思いますけれども、慰謝料なんということについてはどのように考えられておりますか。慰謝料まで含むということについてはいかがでしょうか。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 前の予算委員会田中委員に私がお答えをしたのは、この制度は新しい制度なので、この国会法案を提出してこれを軌道に乗せたい、これが軌道に乗った後には、四十九年度から財産補償の問題とひとつ取り組んでみたいということを申し上げたわけでございます。  これは財産補償という内容については、今後損害賠償保障制度軌道に乗せて真剣に取り組むのでありますから、いまはっきりとこうだということは申す段階ではございませんが、私の心持ちの中にあるのは、そういう公害なかりせば生じたであろう、農作物にしてもあるいは漁業にしても、そういう所得に対して対象にすることが適当ではないかと考えておりますが、これは将来もう少し研究をしてみたいと思っておるのでございます。  また、社会保障的な性格というのには、損害賠償保障制度範囲が非常に広い。現在の特別措置法の場合は医療費だけに限られておるわけですからね。しかし医療費も、自己負担の分をやはり公費負担にしようというのですから、現在のものは全く社会保障的な性格でありますが、損害賠償保障制度はもう社会保障性格よりも、ずっと生活補償的な、損害により生ずる所得補償的な性格を帯びるものでございます。  田中(武)分科員まあ初めての制度、しかも外国にもあまり例のないものをつくろうとしておられるのですから、初めから完ぺきなものをわれわれも要求いたしません。しかし、将来の展望としてはそこまでいかなくてはならないし、なおまた水と空気、大気だけでなくて、公害基本法によるところの典型七公害等々にもその範囲を広げるべきである、こういうような主張もいたしておりますので、原則だけははっきりとしていただく。そうでないと、将来これを発展さすのにじゃまになるというような法律であってはならない、そのことだけを強く申しておきます。  なお、もう一つ問題になりますのは、その中に、いわゆる自動車排気ガス等についてはどう考えておられるのか。  これも私は、自動車排気ガス都市公害とでもいうか、しかしその公害源をつかむのに、一々自動車をとめてチェックするということもできない。そこで私は、これはむしろ他の方法によるチェック、言いかえるならば自動車を生産し、販売の段階において考える。ことに公害を出さない車、あるいは公害を出さないようなガソリンというか油、そして自動車生産等についても公害防止措置をとらす。アメリカのマスキー法ですか、そういうようなものとあわせ考える必要があるということが一つ。  もう一つ、これをへたに運用し、へたにやりますと、企業は、金をかけるというか拠出することによって公害に対する免罪符というか、もう税金を払っている——税金じゃございませんが、まあ払っておるんだからというような、公害に対する一つ免罪符、あるいは責任感を欠如とまではいかなくても、薄めるというような作用をさしてはならないと思う。その点を法制定にあたっては十分考えていただきたい。  この二点を要望し、御意見を承ります。
  15. 船後正道

    ○船後政府委員 現在、公害に係る健康被害につきまして損害賠償を保障する制度を検討いたしておるのでございますが、この場合、大気汚染によります健康被害考えますと、この大気汚染に対する寄与者といたしましては、マクロ的に自動車寄与率というものは無視し得ないのでございます。ところが、個別の発生源というふうに考えてまいりますと、個々自動車は非常に零細な発生源でございます。これを技術的にいかに捕捉するかという点につきましては、非常にむずかしい問題が山積いたしておりまして、この解決に目下検討いたしておるところでございます。  考え方といたしましては、やはりこの大気汚染に対する寄与ということをマクロ的に考えまして、自動車に対しましても、損害賠償を保障する制度の財源の負担を求めるべきである、かように考えておりますが、先ほど申しましたような技術的な難点がございますので、先生の御指摘のように、あるいはむしろ、個々自動車の製造あるいは自動車の燃料といったものに着目いたしまして負担を求めるという一つ考え方もあるわけでございます。これらの点につきましては早急に詰めるように、現在鋭意検討いたしておるところでございます。  それからなお、広くPPPとの関連につきましては、私どもは、やはりOECDで議論しておりますように、おおよそ環境汚染費用というものはコスト化しなければならない、これを製品価格の中に反映しなければならない、かように考えております。その手段といたしましては、現在日本では直接に排出を規制するという方法でございますので、それぞれの事業におきましては防除装置費用負担するという形でこのPPPが実現されておるわけでございますが、しかし、それのみでは必ずしも十分とは言えない。したがいまして、もとの製品価格コストを反映させる方法といたしましては、欧米あたりでは、間接税手法を用いまして負担を加重するというような手段があるわけでございます。これらを総合的に勘案いたしまして、いずれにせよ環境汚染費用というものがコストに確実に反映される。そしてそのような金は、先生指摘のように、免罪符にはならない、金さえ出せばそれで済むんだというものではなくて、むしろ汚染を減少させるというインセンチブになるような一つのシステム、これを考えねばならぬ、かように思っております。
  16. 田中武夫

    田中(武)分科員 こればかりで議論をしておるわけにはいきませんので、立法の構想段階においてよほど考えていただかねばならない二、三の点に触れたわけなんです。これが法案となって出てくると、これは国会で御審議を願うとおっしゃるけれども、大体法案になってしまうと、与党の諸君も実は腹では反対だけれども、せっかく政府が出してきたのだからというようなことで、まあまあ附帯決議ぐらいでというて、無理にでも通そうとするのが与党なんです。したがって、出る前にひとつ三木さんらしい構想をぴしゃっと織り込んで、将来への展望を明るくするような法案をつくっていただくことを特に要望いたしておきます。  次に移ります。  昔から太陽と水と空気、これは天が、あるいは神が人類にその貧富の差別なく与えられるというか、恵みであるといわれております。ところが、もうすでにこの太陽と水と空気——水と空気には、もういろいろと規制その他の問題がございます。太陽のほうも、言うまでもなく高度成長というか企業活動というか、等のために高層ビルが建つ。あるいは土地ブームの中でできるだけ狭い土地を有効に利用しようということで高層化する。そこで太陽、言いかえるならば、日照権と俗にいわれている問題が起こってまいります。  いま申しましたように、天が人類に与えたところの、あるいは天賦の恵みである。したがって、この日照ということについても、これはいわゆる天賦の人権である、このように私は考えます。したがって、憲法では二十五条に、具体的には申しませんが、健康で文化的なこれこれの生活を保障する、こういうような意味の人権規定がございます。また、人権に関する世界宣言の第八条には、何人といえども、憲法、法律により云々と、そして国内における裁判所の裁判を受ける権利を侵されないという意味のことが書いてございます。ところが、まだ日本では、この日照権が具体的な法による保護がございません。そこで、いま日照権ということが盛んに問題になっておりますが、これについて長官はどのように理解をしておられますか、お伺いいたします。
  17. 三木武夫

    三木国務大臣 田中委員が御指摘になったように、昨年度のストックホルムの国連の人間環境会議等においても、環境権という概念が世界的に非常に大きく取り上げられてきた。人間の尊厳、福祉を保つに足る環境のもとに生活することは、人間の基本的権利であるというような宣言もあります。御指摘のような憲法の条項にも、そういう一つのよき環境が保全されなければ、人間の健康で文化的な生活が保障されませんから、そういう一つ考え方関連を持つ憲法の条章を持っている。その中に日照権といいますか、太陽というものもよき環境の中に欠くべからざるものでございますから、これが環境権という形で、法律の概念としてはまだいろいろ検討を要しますが、政治の大きな方向としては、環境権というものは人間の生活の中にあるんだという考え方で、今後の政治というものはやっていかなければならぬ。  いま言われた太陽の問題もそうですが、これを具体的に法律的に規制するということになってくると、太陽と一口に言っても、その質の問題もあるでしょうし、また受忍限度の問題もあるでしょうし、一つの私法上の権利としてこれを規定するというのには、非常に検討を要すべき問題がある。田中委員法律の大家でございますから、そういう点でこれを具体的に私法上の権利としてする場合の困難さは、私が説明するまでもないわけです。したがって、この問題は大きな政治の指針というか、そういう問題として、政治を行なうにあたっては、常にそれを前提にしなければならぬ概念である。私法上の権利としてこれを設定するのには、まだ研究を要する問題が非常にある、こういうふうに考えております。
  18. 田中武夫

    田中(武)分科員 長官、答弁を先取りせられると困るのです。私は、順次議論を発展させて環境権に及ぶつもりだったわけです。法律の大家と言われたけれども、決して大家ではございません。私は趣味の法律といって、一つの趣味なんです。あとでこれを発展せしめて環境権というところへ理論的に持っていくつもりだったのですが、そうであろうとお察しになったか知らぬけれども、先取りせられると、どうもやりにくくなりますが、そこでちょっと話題をかえますけれども、これを三木さんにお伺いするのはどうかと思うのでですが、あえてお伺いいたします。  田中総理は、二月二十七日に金丸建設大臣に対して、建物の高さの制限をゆるめて一階を駐車場にするようにしたらどうかというようなことを指示せられたようであります。あるいは田中総理の真意を新聞等がそのまま伝えておるかどうか知りませんが、それを読む限り、日照権というような問題よりか車、ここに田中総理の一つ性格が出ておるんじゃないか。  一方、東京都では、この日照権の問題について、いろいろとたくさん切り抜きを持ってきておりますが、中には、都条例制定の直接請求権を求めるために署名運動が始まっておるというような状態である。あるいは名古屋においては、幼稚園の子供さんが原告というか告発者になって、マンションの建設に対して反対といいますか、等をしておるというようなものを、一々申しませんが、日照権ということが毎日のごとく新聞に出ております。それに対して東京都では、もうすでに、都心から車を締め出す方針で警視庁と話を進めておる。これは、光化学スモッグは冬はあまり出ないけれども、春から夏にかけてという、そういう対策も含めてでございましょう。さらに受忍限度の問題もひとつ議論をしたいと思っておりましたけれども、長官の口から受忍限度ということばが出ましたが、東京都ではこの受忍限度論を否定いたしまして、そして基本権として日照権を認める方向で都条例をつくる、そういう方向で動いておることも御承知のことだと思います。  ここに田中総理と美濃部さんの考え方、これは基本的に違うんだということになろうと思いますが、どうも田中総理は、何とか言いながらも、いわゆる人権よりか経済を優先さすという考え方がこの中に出ておるんじゃないか。これは副総理としての三木さんはここでは言いにくかろうと思いますが、三木さん、この件についてはどう思われますか。必ずしも田中総理の意思を直接聞いておられるわけでもないと思うのですが、新聞の報道を見た限りにおいてそう感じますが、どうでしょうか。
  19. 三木武夫

    三木国務大臣 田中総理から金丸建設大臣にどういう指示があったのか、私は聞いてはおりませんが、とにかく太陽というものは人間の生活に欠くべからざるものである以上は、建築の場合に、そういう日照権といわれておる中に含まれておる人間の生活環境を保全していくということについては、これはお互いに何らかの解決をしなければならぬ問題がその中にひそんでおる。ただ、しかし、全部日照権という名のもとに、建物はできるだけ低い建物がいいんだというようなことだけで単純に解決はできない。それをどういうふうな限度——地域的にもいろいろな差があるでしょうから、どういう限度でこの問題を解決するかということは、実際に大きな政治の課題だと私は思います。そういうことで、いかに人間の生活に太陽が必要かということを十分に考えない政治家は、だれも今日いるわけはないわけでございまして、そういう点では、人間よりも経済を重んじておるという考え方から田中総理の考え方が出発しておるとは私は思わない。そういうことでは政治はできませんからね。経済といったって、人間の福祉を目標にするための経済でありますから、すべての人間の営みは、人間の活動は、全部人間の福祉に結びつくわけですから、政治の主体は人間である、これはもう何人といえどもこの基本的な考え方、これからそれて政治をすることはできないと思っております。
  20. 田中武夫

    田中(武)分科員 主査にお願いしますが、この件につきましては、田中総理から直接その意思を聞きたい、考え方を聞きたいと思っておりますので、主査報告にとどめていただき、これは私がやるとかやらないとかは別として、総理に直接これを伺う、考え方を聞く機会を考えていただきたいと思います。いかがでしょう。主査報告の中に入れていただいて……。
  21. 臼井莊一

    臼井主査 田中君のいまのお申し出につきましては、主査報告にとどめて、できるだけ善処をいたします。
  22. 田中武夫

    田中(武)分科員 わかりました。お願いしておきまして、次に申します。  先ほども言ったように、私が順次理論的に展開しようとしておったところを先取りされたので、ちょっと言いにくくなったのですが、まとめて申し上げてみたいと思います。  まず、日照権、日当たりということが問題になったのは、御承知のように、民法の言うならば相隣権とでもいいますか、隣地に対する一つの通行権だとか、自然に水の流れるのを防いではならぬとかという、いわゆる民法上の相隣権といいますか、そういうのがあります。それによって、むやみに高いへいをつくってじゃまをする、そういうような場合には、これを権利乱用ということで裁判所等は片づけてきた。それがだんだんと発展してまいりまして、今日、いわゆる民法上の相隣権から日照権、すなわち生活環境という点へ発展をしてきたわけなんです。先ほど私、憲法なり人権宣言なりを例にあげましたが、これはあくまでも人権、個人なんです。  ところが、いまや個人でなくて、この問題は地域的に、あるいはある集団といいますか、多くの人たちに迷惑を与える、あるいは一つの町の一角というか、あるいは全体に対して日照、日当たりを妨げるというように集団化してきた。そこに日照権という——私はいままで憲法その他で個人的人権として申しましたが、それが集団的に、地域的に発展してきた。そうして一方、開発という問題と関連をいたしまして環境権という観念が出てきたと思うのです。  これは私は、一問一答をもって法律的に論議を進めていきたいと思っておったのですが、さすがに三木長官、私の腹の中を読んで先取りせられたのでこの程度にしますけれども、大体これが問題として出てきた順序はそういうことなんです。そうして、いまも、すでにこれもまた先取りのようなかっこうで、昨年のストックホルムにおける人間環境宣言の問題もあなた言われましたが、たぶんぼくが具体的に出すだろうと思われたと思うのです。そうして、日照権から環境権へ発展し、環境権についても具体的な法律ということに盛り込むことにはまだ云々というところまで答弁をしてもらったわけなんです。どうも頭のいい人にかかるとこっちが質問がしにくいというか、たぶんあの男のことだから、そういう順序でくるんじゃないかとお考えになったんだと思うのですがね。  そこで、今度は開発という関係から、いま開発関係三法案ですか四法案ですか、そこに環境庁長官の協議——いつか、協議は同意であるというようなことも言われたのですが、その中に住民参加の方法考える。前に私は公害の問題で、公害は起きればもうおしまいだ、出る前に公害源を押えるべきであるので、差止請求権ということを申しました。環境も一たん破壊せられると、もうもとへは戻りません。したがって、大型開発等々について住民参加の道を考える。やり方は、公聴会あるいは差止請求権にまで私は主張したいのです。しかし、少なくとも公聴会、そうして不服の申し立て等を終えて差止請求権まで発展さす、これは公害源に対する差止請求権について申し上げたかったのですが、あわせて環境開発についても同じような思想を考えるべきじゃないか、こういうように考えますが、いかがでしょう。
  23. 三木武夫

    三木国務大臣 各地で地域開発等も進んでおるわけでございますが、そういう場合に、地域開発の計画に対していろんな摩擦が起きておるということは、非常に残念だと私は思うのです。地域開発の主たる目的というものは、全体としての地域のレベルアップですから、まあ特別な人はともかく、大多数の地域住民が賛成する開発であるべきものであるはずであります。全体としてのレベルを上げていくのですから。それが賛成と反対とに分かれて、地域開発をめぐる地域社会の摩擦が激化しておるという状態というものは、開発の真の目的は何かという問題とも関連をして、非常に残念なことだと思うのであります。そういう意味から、田中委員の御指摘になりましたように、地域開発の場合には公聴会とか地域住民の意思を聞くということは、私はぜひ必要だと思います。全体として自分たちの水準がよくなろうというのに、賛否両論に分かれて、それが地域社会の平和を乱しておる現状というものは、これはやはり直さなければおかしいじゃないか、こう思うのでございます。そういう意味から、できるだけ地域住民の意向をくみ取った開発にするという意味において、公聴会的な地域住民の意思を聞くというような機会はぜひ持たなければいかぬと私は思っております。
  24. 田中武夫

    田中(武)分科員 公聴会というのは、一番最低の住民参加の方法なんです。いま長官がおっしゃったような開発ならばいいんですが、往々にしてそうでなくて、一部企業なりあるいはほかのというか、他の人たちのための開発であって、迷惑だけを自分たちが受ける、こういう開発が最近多いわけなんです。そこにいろんな問題が起こります。あとでそのような点についても触れたいと思っておりますが、その点についてひとつもう一度御答弁をいただくと同時に、時間の関係で次に申します。  実は、騒音問題についてもこれだけの用意をしておりまして、具体的に伺うつもりですが、もうすでに時間も残すところわずかになりましたので続けてまいりますけれども、いま騒音、振動が問題になっておることは御承知のとおりであります。ところが、騒音等につきましては、これは振動も含めてですけれども、騒音だけになっておりますけれども、建築基準法、道路交通法、道路運送車両法、公共用飛行場周辺における航空機騒音防止法、この法律については改正案が用意せられているようですけれども、あるいは防衛施設周辺整備法等と、いろいろな法律が出されております。  私は、実は法律内容を分析して、規制の方法等々でどうなっておるのか、あるいはそれらの法律で抜けている点があるではないかということを一つの表にして持ってまいっております。しかし、それを一々申し上げる時間もございませんが、ことに四十二年九月に公害対策基本法ができて、騒音ということを典型公害の中に入れました、いわゆる定義の中に。で、四十三年に衆参両院において騒音規制法が採決せられるにあたって、航空機や、ことに新幹線等について特別な附帯決議がなされております。その後これがどうなったのか。たとえば新幹線の列車の騒音、振動規制法だとか、あるいは高速自動車道路騒音あるいは振動規制とかといった法律の制定が必要ではないか、このようにも考えております。  それから、いろいろな、たとえばいま読み上げましたような、そのほかにもございますが、工業というか産業的な振動あるいは騒音、あるいは自動車、あるいは建築、あるいは何ということで、法律が別々にできておるのですが、その法律をもう一度洗い直して検討し直す必要があるんじゃないか。もちろん、自動車あるいは新幹線は運輸省だとか、あるいは建築については建設省だとかというような、役所のそれぞれ管轄がございましょう。しかし、事公害基本法という上に立って、これらの問題を総括的に統合的に規制をしていく、これは環境庁の仕事であろうと思う。ことに三木さんのような長官の時代にやらなければ、そうでない、失礼ですけれども陪食大臣のような場合はできません。いまこそ、副総理であり、大もの長官だと自他ともに許すあなたのもとにおいて、一。へんこれを洗い直す。それぞれ建設省なり運輸省なり等々からのかってなというか、自分たちのベースにおける主張等もありましょうが、それを押えて、騒音、振動についてはっきりした一つの線を出す。私は実はこまかく、この法律ではこの点が抜かっておる、この法律ではこの点が落ちておるというようなことを調べてきておりますが、時間がございませんからまたの機会に譲りますが、ただ、ひとつ大所高所に立って、これこそ環境庁の仕事であり、大もの長官のもとでなければできない問題であろうと思いますので、まとめてひとつ御答弁をお願いいたします。  同時に、もうすでに地方においては、神戸市のこときはこまかく市条例で、隣のうちに——ある新聞の見出しですが、ここにも持っておりますが、夫婦げんかまで、あまり大きい声でやって隣に迷惑をかけたらいかぬと、そうは書いておりませんが、テレビとか夫婦げんかの問題をも含めるような、アパート等における規制まで入れた条例がつくられつつあるわけなんですよ。いまこそひとつ振動、騒音、ことに新幹線、大型トラック、高速自動車道路等々について、基本的な考え方だけを伺っておきます。
  25. 三木武夫

    三木国務大臣 最近の都市化の進展あるいは交通輸送関係の高度化ということで、騒音の問題は生活環境を守る上において大問題になってきておるわけでございます。いま田中委員が御指摘になったように、騒音規制に関係しては基本法的には騒音規制法がありますが、しかし、特殊な騒音であるというので、新幹線とか航空機の障害というのは別になっておる。いろいろな法律に分かれておりますから、御指摘のように、こういう騒音問題がこれほど大きな問題になっておる今日、これは一ぺん洗い直してみて、騒音の防止の目的をより達成できるようにひとつやりたいと思います。われわれとしては環境基準をつくって、その基準によってこれは守られているかどうかということで、勧告をしたりいろいろやっておるわけで、そういう各省庁の連絡を緊密にするということでいままでやっておるわけでございますが、全般の騒音問題というものは重要な問題でありますので、洗い直してみたいと思っております。
  26. 田中武夫

    田中(武)分科員 あと五分のサインが出ましたので、最後にまとめて申し上げます。  実は二月七日の総括質問の際にも申し上げまして前向きの御答弁を得たわけですが、瀬戸内海の環境保全法の制定なんです。そのときに長官は、瀬戸内海は世界的にも優秀なというか有数な景勝の地である、いまにして対策を講じなければ瀬戸内海は永久に戻らない、もし現行法で瀬戸内海の浄化ができない場合は特別法も必要であろう、こういった意味の御答弁がございました。その後、十四日にですか、沿岸の知事等を集めて御意見を交換せられたようであります。また、すでに社会党をはじめ与党においても瀬戸内海環境保全特別措置法等々、仮称ですが、作業が進められております。あれから三週間ですかたっておるわけですが、その後どのように検討しておられるのか。瀬戸内海の環境保全に関する特別法の制定、富士山は日本のシンボルだからということで、富士山の環境保全法律がすでに用意せられております。それと同じような特別法をひとつ望みたい。しかも、先日申しましたからもう繰り返しませんが、瀬戸内海の実情はもう十分御承知のとおりである。ことに明石海峡等は、これはもう現在でも海上交通量がさばき切れない。海の銀座なんていわれておるわけです。したがって、そこあるいはもっと西のほうも、この前私は岡山−四国間の交通量をあげました。あるいはもっと西へ行って岩国あたりの問題も同じような交通量でありましょう。あるいはそれ以上かもしれません。あの付近にもたくさんのコンビナートがありますから。だから、何といっても、もう瀬戸内海はこれ以上埋め立ててはならないんだ、こういう上に立っておりますが、二点伺います。  瀬戸内海を埋めて国際空港をつくるというようなことはまさか考えられていないと思うのですが、そういうことが話題に出ております。この点につきましては、先日、運輸大臣等の御意見も伺いましたが、きょうは直接その責任といいますか、関係を持っておられる飛行場部長ですかに来ていただいております。  また、先日も問題になったんではなかろうかと思いますが、岩国基地を海上へ移そうということで、本年度予算に移転費として八百万円を計上しておられる。またこれをやるとするならば、一千億ないし一千五百億円の巨額な経費が見込まれておるということが新聞に出ておりますが、まさか岩国基地を瀬戸内海を埋め立ててそこへ移すというようなことも考えてはいないと思うのですが、そういったような意味の新聞報道がございます。瀬戸内海は、もうこれ以上埋める、そんなことは全然できる余地はございません。  したがって、新関西空港及び岩国基地の海上移転等について、これは防衛施設庁、防衛庁長官等に伺うべき性格でございましょうが、きょうは呼んでおりませんので、ひとつ環境保全あるいは公害という観点から、ことに瀬戸内海を十分御承知の長官から御意見を承るのと同時に、運輸省の政府委員からもひとつ御意見というか、考え方を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  27. 三木武夫

    三木国務大臣 御指摘のように、瀬戸内海の汚染は非常に深刻化しておるわけでございます。瀬戸内海は世界有数の自然環境に恵まれた地域でありますから、きれいな瀬戸内海にして次の時代に引き渡すという責任をわれわれ持っていると思う。そうした場合にやらなければならぬことは、瀬戸内海の汚染の実態というものを正確に把握して、汚染のメカニズムというものを解明して、一方においては工場等の排出基準強化したり、あるいは下水道の整備であるとか屎尿の処理、産業廃棄物の処理の整備であるとか、総合的な対策を必要とするわけですから、来年度から年次計画を立てて、瀬戸内海の浄化というものをこれから実施していきたいと考えておりますが、その場合に、いま御指摘のような、一つは特別立法の問題。これはあるいは現行法のもとでは、そういう瀬戸内海を大きく取り上げて急速に瀬戸内海の浄化をはかるのには、現行法では無理かもしらぬという気があるわけでございますので、そういう観点から特別立法についても検討を進めておる次第でございます。まだ結論は出ておりません。  また、埋め立てについては、原則的には新規の埋め立てはできるだけこれを抑制する。また、いままで埋め立てをやっておる工事中のものでも、その埋め立てた後における利用の方法については再検討を加えるくらいのきびしい態度が必要である。こういうふうに基本的には考えておりますが、関西空港の問題、岩国基地の問題、まだ具体化してはいないわけですから私は承知しておりませんが、事務当局あるいは運輸省が来ておれば運輸省から答弁をしてもらいたいと思います。
  28. 田中武夫

    田中(武)分科員 もう時間ですのであれですが、埋め立ててはならぬという観点からいえば、もうそういうことは許されないんだという高所に立っての環境庁長官の御意見を……。
  29. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほど申したように、基本的にはこれ以上の埋め立ては抑制すべきものである。しかし、やはりいろいろな場合もあると思いますよ。たとえば公害防止のために、あるいは公害防止施設などもある場合もあろうし、全部だめである、こう言い切ることもできないと思いますが、基本的には抑制をすべきものであるという考えでございます。
  30. 隅健三

    ○隅説明員 関西新空港につきましては、先生御存じのように、現在運輸省の航空審議会において、一年有半にわたりまして慎重に審議中でございます。ことに審議につきましては、大気汚染、騒音、海水汚濁等の環境保全を最も重要な要素として、慎重かつ総合的に検討を続けております。ことに瀬戸内海につきましては、このほか、先生さっき御指摘のように、海上交通の安全の問題あるいは漁業関係についても非常に重要な影響がございますので、この点特に慎重に検討を進めております。  いずれにいたしましても、審議会の答申が得られましたならば、この答申に基づきまして関係地方公共団体と納得のいくまでお話し合いを続けまして、関係地方公共団体の御了解を得て、それから後、位置を決定したいというふうに考えております。
  31. 田中武夫

    田中(武)分科員 どうもありがとうございました。少しもの足らぬが、あとに保留して、また別の機会に行ないます。
  32. 臼井莊一

    臼井主査 次に、米内山義一郎君。
  33. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 私は、昨年の九月に閣議口頭了解ということになっております青森県のむつ小川開発、これにかかわる環境問題について長官にお尋ねと申しますか、それよりはむしろお訴えするという気持ちで、きょう御説明申し上げたいと思っております。  すでに閣議で口頭了解ということでありまして、一部開発が、土地買収という部分だけが目下進んでおるわけであります。しかし、いまのような考え方開発というものが進められると、重大な結果を来たすと実は私ども考えているわけです。そういうわけで、私自身は住民の皆さんとともに、この開発は一応白紙撤回を求めよう、こういうふうな戦いを通して今度の総選挙もやりましたし、その結果、三年ぶりで国会の議席を回復してまいったものであります。  きょうの趣旨というものは、この開発を進める前に、むつ小川原の自然環境というものについて十分調査を尽くされ、客観的にあの自然環境というものを評価していただきたいということであります。  この訴えは、単に公害があるから、心配だからということではありません。こういうふうな形で国土が乱開発されていくならば、自然が破壊されるだけじゃなく、国民全体が破壊されるような気がしてならぬわけです。これは単にこの地域の問題じゃなくて、国家的な民族的な問題だ、私はそう考えております。したがって、開発を白紙に戻せということは、決して農本主義的な——私は農民運動家ですが、農本主義じゃありません。農村、漁村に工業は不要だという立場に立つものじゃないのですが、少なくとも、いまのような考え方ややり方で開発がゴリ押しに進められていくとすれば、国が考えている開発も失敗に終わらざるを得ない。その結果として地域住民は悲惨な目にあうことははっきりしている、こう確信するからであります。  経過を御説明する必要があると思いますから、簡単に申し上げますが、このむつ小川開発というものは、新全総が策定されたころから起きてきました。青森県知事がこの新全総というものに飛び乗りしたわけです。新全総の評価も定まらないうちにまっ先に名乗りをあげまして、これを上回る構想を県民に吹聴したわけです。  その理由もないわけではありません。青森県は、これまで重大な地域開発の問題として期待をかけたのがむつ製鉄の問題でした。あるいはあの地域の畑作振興のために取り上げられたサトウダイコン、ビートの事業でありましたが、この二つは壊滅した。その次には、二万二千ヘクタールの開田をやろうということに県民は期待をかけた。これもその後の米の事情で壊滅した。そこで、いまの県知事は、三選目の目玉商品として、新全総に便乗した巨大開発を政策にしたわけです。  最初はこういうことでした。向こう百年間は特に手を加えなくとも世界の経済競争にうちかっことのできるような近代的な工業開発内容としては石油、鉄、電力、アルミニウム、非鉄金属、さらには造船まで加えて、工業出荷額五兆円、つまり現在の愛知県並みの工業出荷額を想定した工業立地をしよう、こういうことでした。  ところが、それには県民の反発が起きるのはあたりまえであります。工業に三万ヘクタールの土地を提供して、地域の住民の四千戸を地区外に立ちのきしてもらいたいというふれ込みなんです。これは鹿島と比べたって、どこと比べてみたところで、比較するものはない。世界にもないのです。そういうことから住民運動が起きてきまして、そして、現在閣議の了解事項の対象になっておるのは、石油二百万バーレルです。石油化学四百万トン、火力発電一千万キロワットという第一次基本計画というものを政府に閣議了解を求めたわけです。しかし、これとても、二百万バーレルというのは、年に換算しますと、およそ一億キロリットルになる。四日市の五倍です。石油化学の四百万トンというのは、いまさら申し上げるまでもございませんが、日本の現在の総生産量を上回るのです。こうして公害がない、これが現在進められている開発内容なんです。そして、そのための用地五千五百ヘクタールについていま買収が始まっているわけですが、こういうふうな乱暴きわまりない開発構想を進めていくならば、どういうことが起きるか。  まず、そのために住民の犠牲というものは避けがたいものがあります。同時に六ケ所村というのは、三十二キロもある長い、大きな、人口の希薄な村ですけれども、この中心部に五千五百ヘクタールという線引きをかってにやったわけです。そうして、この地域は立ちのき地域だ、ここには掘り込み港湾をつくるということが、何らの対話もなしに、天下り的に発表されました。  一体、どんな大きい村でも、村の中心部に五千ヘクタール以上の工業地帯をつくられますと、まず第一に、その村の自治機能に重大な変革が生じます。鯨でも、こんなでかい穴をあけられると、これは死ぬだろうと思うわけですが、まずこういうふうに、開発というものは、自然破壊の前に、民主主義の破壊、人間の破壊から始まるわけです。  しかも、住民の弱点をねらって攻撃を加えてきております。住民は無知です。無知だから、大きいことならばいいことだ、世界にもないような規模の工業開発ということに、住民の中でも、その町村の中でも、半数近い人は賛成だという。半数の人は、これは損得の問題じゃなくて死に生きの問題だという反対の意思表示をしておる。その町村を包む周辺は、金になるからいいじゃないか、六ケ所さんには気の毒だが、こういうふうな、他人くたばれ、われ繁盛というような思想が、この開発を包んでいます。  一体、敵対的な関係にある場合には、敵の弱点をつくということはあるいは正攻法かもしれない。日本の国の政治家が、あるいはその地域の県知事が、自分を選んだ住民の弱点をねらって攻撃するということは、これはあり得ることですか。これを民主主義といえるものでしょうか。私は、こういう形で開発というものが進められるとするならば、自然が破壊されるのは当然だと思う。人間をも粗末にするような政治が、どうして自然や鳥獣を保護できるでしょう。こういうふうな進め方であります。  私は「日本列島改造論」というものを読んでみましたが、これを書いた人の相場はいまや米ドルよりも値下がりをしておるわけでして、これは問題にしません。だが、この内閣の中において政治家であると私が考えるのは、副総理である三木環境庁長官ただ一人だと言っても間違いないと思う。私はきょう、昔あった田中正造翁のような心境でお訴えするわけです。  この開発に賛成、反対ということは申し上げる時期ではございませんが、この環境というものは、単に私が生まれ育った、われわれが生まれ育ったから大事だというものじゃなくて、日本国民のために大事な環境であるということをお訴えするわけです。年一億キロリットルという油を運び込めば、太平洋といえどもあの海域が汚染されることはもう明白でしょう。しかも、この六ケ所村の正面の海岸というものは、サバとイカの沿岸近海漁業の日本最大の宝庫であります。これがどうそこなわれるか。さらに陸奥湾というものは、すでに東京湾も瀬戸内海も伊勢湾も、日本の内湾における漁業というものは壊滅し、魚族は住めない状態になっておるときに、数年前からホタテの人工的培養に成功しまして、この沿岸の全漁民は生まれてからないような喜びを感じながら、近いうちには生産額が百億になるという夢を抱いております。  それから、小川原湖を中心とする湖沼群です。こういうふうな湖沼群というものは、日本の地図の上にもございません。あったとしても、霞ヶ浦、北浦の湖沼群というものは、すでに都市開発、あるいは印旛沼の干拓、あるいは北浦のああいう鹿島開発関連によって死の湖になりつつあります。こういう中で、自然がそのままに保存されている湖沼群というものは、あれ一つしかございません。これはどう考えてみても、単なるたん白質の供給源としての、漁場としての湖水だけではなくて、国民的に大事な保養資源だと思います。  富士五湖のあたりへ行ってみましても、高速道路が通ったから便利だろうと思って行ってみましたが、日曜に行ってみると、行き来がならない。新宿まで二時間、座席指定という高速バスに乗ったら、自動車がふん詰まりして四時間もかかるしまつですし、河口湖なんというのも、モーターボートの廃油で湖の表面が全部被覆されている。ああいう状態では魚だって生きられないし、こういうふうに日本の自然というものが破壊されている。  しかし、いま週二日休まなければならぬというような情勢下、さらには高速道路も通る、新幹線も通るというときは、東京と青森の距離というものは、昔の芦ノ湖と東京の距離にしかすぎない。こういうのは、観光事業とかいうような考えよりも、国民保養の場として大事にする必要があるのではなかろうか。  ところが、青森県は、開発について自然保護という意見もないわけではないが、この開発ではそれはとりませんと、こう明言したことがあります。その理由はなぜかというと、観光事業なんというのは旅の資本家が旅の人を喜ばせてもうける産業だから、これがそのときの青森県官僚の説明だったのです。  また、この地域でわれわれは生まれてからいい空気ばかり吸うてきたが、ちっともしあわせにならぬ、少しぐらい空気がよごれてもしあわせになりたいという町村長もいるわけです。しかし、これは考えてみると、金持ちのむすこは金の大事さを知らないと同じように、恵まれた自然環境にあるからこういうばかなことを言うのでありまして、これは地方のそういう幼稚な町村長の見解で事を処理すべき筋合いのものでないということも明白でございます。  こういうふうなことで、小川原湖の持っている自然というものは、単に破壊されていないから大事だというだけではないのでありまして、非常に雄大な自然環境があって、たくさんの人がそこに保養のために集まっても、交通渋帯などを起こさないような広い環境があるということも重要視していただきたいと思いますし、また、最近のことでありますが、この地層の下には広範にわたって地下水があります。七百メートル掘りますと、おおよその場所では大量の温泉が噴出し出しております。こういうふうな日本国民、特に勤労国民にとっては宝庫ともいえる自然を包んでおるのがここです。  だが、おそらく「日本列島改造論」を書くような人の土建屋的発想の中には、こういうことは無視されるだろうと思います。私はそのことが心配でなりません。がゆえにこそ、私は三木大臣に、副総理に、ぜひともあの環境というものを客観的に評価していただきたい。しかる上に、この環境と調和のとれる工業開発と申しますか、なかなかむずかしいことでしょう、だが原則を明確にすれば決して危険がないわけです。いま確かに農業や漁業だけに依存していますから、所得から見た状態は貧しいといえるでしょう。だが、人間の幸、不幸というものは名目的な賃金だけであるかどうかというと、私は村にいて暮らしてきた、東京へ来て暮らす、イワシ一匹買ったって食欲がとまるような値段なんです。住民だって、この村は青森県で高校の進学率が一番低いといわれたって、昔と比べて考えるとしあわせだと思っています。県知事は私らを貧乏から救うというけれども、おらだって電気がまで飯をたくようにもなったし、電気冷蔵庫でさえとうちゃんの出かせぎで持っていると、こういうふうなんです。  こういうことを官僚などがかってに考えて進めようとしているのが、この開発の最も根本的な誤りです。県庁などはこう言います。この地域で稲をつくっても、一ヘクタール耕して経費を差し引いた残りは一ヘクタールで三十二万円にすぎない、だが、いまは高校新卒者でさえ月給三万円の時代なんだから、こういう地域に住む人々にぼちぼち農業から足を洗ったらどうか、こうおすすめしても不調法ではない時代に入った、という認識なんです。  そもそも商売から足を洗うということは、やくざなどがばくち打ちをやめるということと同じような差別感でこの開発を進めているのが、今日の自民党の政治だと私は思うのです。これは重大な問題です。こういうふうな連中が自然を保護しようとしたって、私はこれはうそだと思う。私は、したがって、公害の問題がおそろしいから開発がおそろしいと言うんじゃないんです。公害というものは技術の問題でしょう。経済の問題でしょう。環境を守るということは、環境保全開発を両立させるということは政治の課題でしょう。生きるか死ぬかの問題といえば極端ですが、人生の問題であり、民族の問題であり、哲学の問題だと私は思うのです。この観点がないことが今日取り返しのつかない日本の破壊を、自然破壊、環境破壊をもたらした根底だと思う。技術論争も大事です。だが、その根底をなすものは、政治家がこの問題に対する哲学観を明白にしてやることだと思うのです。  承っておりますと、対話が必要だと申しますが、うそを前提にして対話というものはできないんです。ごまかしを前提にして対話というものはできないんです。不可能なんです。  こういうふうな、地方の役人までがエコノミックアニマルの犬に成り下がっている事態に、ただこれを、開発はいいものだといって中央政府が一方的に指示するならば、部分的な公害の問題があるいは処理できても、国土の破壊というものは防げない。  だから私は、国家的観点に立ってこの戦いを、実は自分の生命をかけて戦って国会に再び戻ってきた者ですが、したがって、私は三木さんに、副総理に議論をしかける気持ちは毛頭ない。ただ、以上きわめて簡単なことですが、経過と実情を御説明してお訴えするわけであります。何とか長官の御見解の御表明をお願いしたいと思います。
  34. 三木武夫

    三木国務大臣 米内山委員から、むつ小川原の開発について、るる現地の模様等お聞かせを願ったわけでございますが、御承知のように、日本は西日本を中心にして開発されたわけです。北海道とか東北とかいう地方は、これはもう開発は非常に立ちおくれてきておるわけです。こういうことで、もう少し均衡のとれた開発をしようという政治の方向は誤ってはいないと思います。また、その場合に、環境の保全ということが、もう自然的な環境をそのままに置かなければ、手をつけてはいかぬのだということも現実的ではないと思います。  いまお話しのあったように、環境を保全しながら開発をするという、この両立をさすことを考えることが政治ではないかという米内山さんのお説、私も同様に考えておるわけでございます。したがって、この開発をする場合には、開発というのはもう即工場誘致という、そういうふうな考え方には私は賛成できないわけです。そこにはやはりたくさんの住民がおるわけですから、工場も誘致しなければならないし、住民の生活の水準、住民の生活の環境もその水準を高めていく。何か開発に、一点だけの点の開発としないで、面といいますか、その地域社会の全体としての水準を高めるという面の開発考えなければ、開発というものによって、地域社会というものの開発に対する受け入れ方が非常な分裂が起こってくるわけでございます。  そのためには、そういう計画を立てるときに、十分に環境と開発というものを両立させるところにやはり政治の英知があるんだという観念に徹して計画を立てる必要があるし、そういう立場に立って、やはり住民を十分に説得をする必要があると思います。その計画がそういう観念の上に立った計画ならば、説得をして理解を求める余地は私はあると思うのです。  みなやはり東北の地方の人たちが、現状のままでいいとは思ってないに違いない。もう少しやはりレベルアップしたいと考えておるのでしょうから、その事前の計画の中に、そういう考え方に基づいた計画であったならば、地方の理解を得られぬはずはない。特別な目的を持っておる人は別ですよ。しかし、そうでない場合は、やはり理解を得られるに違いない。もう少しやはり地域開発をする場合に、地方地域住民の理解と協力のもとに開発をやるという心がけというものに徹しなければ私はいかぬと思います。  むつ小川原の地域は、自然環境の上からいっても、砂丘あり、大小の湖沼あり、またその周辺にはなかなか植物とか鳥獣の豊かな生息の場所もあるし、あの湖沼をもとにして流れておる高瀬川の州などにはウズラその他の渡り鳥がやってくる場所もあり、自然の環境としては非常にやはりすぐれたものを持っておりますから、そういう環境を保全しながらやはり開発をやるという考え方に徹する必要がある。環境庁としても、あそこの下北半島国定公園の地域もございますし、そういう点からして、環境の保全をやりながら開発するということに対しては、積極的な態度で今後対処しでいきたいというふうに考えております。
  35. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 もうちょうど時間になりましたが、環境庁長官ないしは副総理として、常に閣議には責任を持っておられると思いますから、今後はこの問題についてはとくと細心の御注意、そうして長官も積極的にこの問題を、いまもおっしゃられたように、環境を破壊するような開発は許さないという姿勢で御尽力のほどを御要望申し上げて終わりたいと思います。ありがとうございました。
  36. 臼井莊一

    臼井主査 次に小川新一郎君。
  37. 小川新一郎

    小川(新)分科員 車の問題で環境庁長官にお尋ねいたします。  現在わが国の公害問題は多岐にわたっておりますが、特に私は車の問題が非常に大きなウエートを占めていると思います。環状七号線及び東京都内は言うに及ばず、いま非常にこの排気ガスの問題が、社会的問題をもう通り越して、政治的問題になっておることは言うまでもありませんが、アメリカのマスキー法では、一酸化炭素CO、炭化水素HCについては一九七五年から新車の規制基準も一九七〇年型車の十分の一以下といたしておりますし、窒素酸化物NOxについては一九七六年から一九七一年型車の実測値の十分の一以下と規制されております。わが国は今後の車の排気ガス規制をどのように進められていくのか、まず環境庁長官からお尋ねいたします。
  38. 三木武夫

    三木国務大臣 いま御指摘のように、わが国においても、昭和五十年、五十一年にかけて一酸化炭素あるいは炭化水素あるいは窒素酸化物、これを十分の一まで減らすということで、その方針のもとに面期的に自動車排気ガスを低減するという方向でこの問題を対処していきたいと考えております。
  39. 小川新一郎

    小川(新)分科員 現実には、もうそのようなエンジンないし率というものは開発されているのですか。
  40. 三木武夫

    三木国務大臣 最近に、東洋工業とか本田から、そういう低公害車というもので、アメリカの基準等も通過をしたという自動車日本において開発をされたということを聞いておりますので、環境庁でもこれをひとつ試乗してみようではないかということを私は事務当局に申してあるような次第でございます。
  41. 小川新一郎

    小川(新)分科員 中古車についてはどう考えられておるのでございますか。わが国では、一月八日の官報、運輸省令第一号によって、道路運送車両の保安基準を改正し、使用過程車、すなわち中古車については自動車排気ガス対策として、ことしの五月の一日から、点火時期制御方式または触媒反応方式の排出ガス減少装置を、運輸大臣の指定を受けたものを備えなければならない、運輸大臣の許可を受けて備えなければならないといわれておりますが、これははたして五月の一日から確実におやりになるのですか。
  42. 景山久

    ○景山説明員 お答えいたします。  いま先生お話しのように、ことしの一月の官報に出したとおりでございます。五月一日から、使用過程車につきまして、装置の備えつけあるいは調整といったものをすべての車に義務づけていくという方針でございまして、ただいま着々準備を進めているという段階でございますので、五月一日から十分間に合う、こういうふうに考えております。
  43. 小川新一郎

    小川(新)分科員 大臣、五月の一日というと、もうあと二カ月しかございませんが、現在中古車に取りつけられております公害規制のいろいろな装置というものは、一体その機能というものを環境庁とか運輸省で、政府でこれを試験したことがあるのですか。
  44. 景山久

    ○景山説明員 いま先生お話しの現在ありますものと、今般規制いたしましたものはちょっと違いがございまして、今般の規制は例の光化学スモッグ対策でございます。したがいまして、炭化水素と窒素酸化物、この二つに効果がある方式のものを採用するということでございます。それで、現在すでにと申しますか、出回っておりますものは、どちらかといいますと一酸化炭素対策、在来一酸化炭素につきましては、御承知のように数年前から規制もいたしてきておるところでございますが、そういった一酸化炭素にききますものが大部分であるというふうに聞いております。  なお、いま御質問の炭化水素あるいは窒素酸化物にききます装置につきましては、私どもが、申請に基づきましてそれを審査した上で承認をするということで、ただいまのところ三十四型式のものが指定になっておるところでございます。なお、今後も若干ふえるかと承知いたしております。
  45. 小川新一郎

    小川(新)分科員 現在のものは何の基準でたくさんの車につけられているかということなんです。東京都の公害条例でパスしたものはほとんどない。そういうパスしたものがほとんどないものを合格品として通産省が、売り出していることについては一体どのようにお考えになっているのですか。  委員長、私はこのあとで資料要求したいのでありますけれども、現在販売されておりますところの中古車の装置につけております触媒方式、前処理、あと処理のそういった機能を持つ公害防止の機械、これのメーカーの名前、単価、そしてどういう機能があるのかということの発表したデータを私要求したいのでございますが、お願いいたします。  東京都の発表によりますと、全然機能がないとはいいませんけれども、一酸化炭素が防げれば窒素酸化物が逆にふえる。窒素酸化物がふえれば一酸化炭素がふえる。こういった半製品、機能としてはもう半分以下のものがたくさんあるのですが、現在出回っている品物が、東京都の公害条例の基準、排気ガスのそういった基準に合格しているものは、では大体どれくらいあるのですか。
  46. 景山久

    ○景山説明員 既存のものにつきましては、私どものほうで一切指定などという行為はいたしておりません。それでございますので、東京都の基準に対しまして、現在ありますものがどの程度適合しているかどうかということは、残念ながらつまびらかにいたしておらないのが実情でございます。  なお、先般の一月八日の官報の規制、これは窒素酸化物と炭化水素の規制でございますので、このほうは私どもが責任をもちまして品物を指定していく、こういうことになっておりますので、既往についておりますものは、一切指定といった行為はいたしておりません。
  47. 小川新一郎

    小川(新)分科員 これは大臣、ぜひともお聞きしたいのですがね。いまのでは全然無責任な答弁ですね。  では、何のために、たくさんのこういった中古車にいろいろな機械を据えつけたか。現在どれくらいのそういった機械をつけているかというと、たった一社で七十万台もつけている会社があるのです。何にも、効果があるんだかないんだかわからないし、東京都で調べたら、全然機能が低下しているものを誇大広告される。ユーザー、われわれ一般消費者が、自動車に少しでも排気ガスを少なくしなければならないという、東京都に住んでいる人だったら東京都の公害防止条例がある。その基準に従うためにつけた。ところが、それがその効果がないからといって、責任チェックするところもないし、いま聞いたら、通産省では、そんなことは全然関知しないのだ、五月の一日からのやつはやるけれども、現在のやつにはわれ関せず。こういう行政の態度というものは、環境庁長官としてはどうお考えになっているのでしょうか。それでなくても、スモッグ対策だの何だのといって、いま公害がまるで差し迫った、私たちの環七ぜんそくとか、また四日市ぜんそく、市民の健康と生命を脅かしている状態を考えたときに、私はいまのような御答弁では、あまりにも無責任公害対策行政だと思うのでございますが、どこで一体こういうものをチェックし、だれが基準を定めるのか。ただいたずらにメーカーがもうけるだけであって、また五月一日からつけ直ししなければならないですね、いまつけているものがだめだということになれば。大臣、これはお考えいかがでございましょう。
  48. 三木武夫

    三木国務大臣 マスキー法も、これは新しく生産される車の規制でありますから、中古車の問題というものはやはりいろいろと問題を含んでおるわけでございまして、こういう点は各省と関連する点も多いですけれども、各省とこれは十分話し合って、中古車に対しても自動車排気ガス排出規制というものに対しては、できるだけ効果のあるような方法を今後講じてまいりたいと思います。  いま、いろいろ政府側の答弁を聞いてみても、この問題は各省と連絡をとって、何らかやはり効果をあげる施策を講じていかなければならぬ問題だという感を深くいたす次第でございます。
  49. 小川新一郎

    小川(新)分科員 そうすると、いままで出ております公害防止の市販されている数というものは、大体どれくらいつかんでいるのですか。
  50. 中村泰男

    ○中村説明員 お答え申し上げます。  先ほど運輸省の整備部長からお答えいたしましたが、従来市販されておりますものは、いわゆるCO規制、一酸化炭素規制が強化されたことに伴いまして、一酸化炭素を除去する装置というものはわりあいに市販されているようでございます。私ども市販されている正確な数等は現在承知しておりませんが、いわゆるCO対策というものはかなり売られているのではないかと思っております。  先ほど通産省が合格品として認定というふうなお話がございましたが、通産省として、これは合格品とか不合格とかいうことは一つもしておりません。
  51. 小川新一郎

    小川(新)分科員 そうすると、何にも基準がなくて、どこもチェックしないで、CO、一酸化炭素は絶対だいじょうぶだということを信じて、マイカーを持っている者は高いお金を出して、あなた一台どのくらいするか知っていますか。そういうものをつけないと、東京都公害防止条例にひっかかってしまいますよ。それを車にわざわざつけたけれども、効果はわからないのだ。一酸化炭素は確かに減ったけれども、窒素酸化物はふえてしまった。ほかのものはどんどん出たんだ。こんな無責任な車対策をやっているから、私は五月一日のことが心配だから聞いているのです。どこでチェックしていて、どうやって、規制に合わないものは販売を中止するとか、一体誇大広告であるのかないのかということも、点検もしないで、ただまかして、東京都で検査したら全部不合格品だというのです。こんなばかな話はないじゃないですか。
  52. 中村泰男

    ○中村説明員 お答え申し上げます。  確かに個々の装置の販売にあたりまして、特別のチェックをあらかじめ政府として、通産省として、していないという点につきましては御指摘のとおりでございますが、私どもも、いわゆるCO過程車に対する排気処理施設と申しますか、そういうものの必要性にかんがみまして、従来自転車検査協会という機関があったわけでございますが、これを車両検査協会という形に改めまして、機械工業振興資金を投入いたしまして、そういう装置についてのいわば性能評価をする機構を整備しております。現在その機構につきましては、五月からの規制に伴いますいろいろ評価につきまして忙殺されておりますけれども、こういう機関も使いまして、誇大広告その他との関係で問題があるものにつきましては、十分行政指導していきたい、こう思っております。
  53. 小川新一郎

    小川(新)分科員 大臣、こういう無責任なんです。  いま環境庁で、中古車に、どこの会社のどういう試験をパスしたものを、幾らの値段のものをつけているかということを、大臣もまさかこんな問題といって放置はできないと思いますが、御存じないと思います、こういう問題は急に唐突に私から言われても。だけれども、いま東京都が調べたところによりますと、ほとんどが不合格品なんです。不合格ということは、国で定めたり地方公共団体が定めた、どうしてもこれだけの基準に達しなければならないという性能が出ないものを、さも性能が出るやに思わせて、そして大量の品物が出ている。特にテスト商品の名前でガス・マイザー、補助剤含有空気流入式のマークIIベーパーインジェクター、これはアメリカの製品なんですけれども、APOのパワーアップということで、公害防止をうたって現在ネズミ講商法で七十万台も売りつけてしまった。  ところが、利用者からその効果について疑問があると東京都に問い合わせた。東京都が調査したのが、二月の一日に検査した。それ以後、疑問があるといって出したのが二月の十六日でございます。  七十万台も一社だけで、多額の、こういった五万円も六万円もする、高いのだと十万円もいたしますが、そういうのを売りつけて、だれもこれに対して注目している者がない。現在出ている公害防止の中古車に取りつけられている機械ですね。私たち専門でありませんから機械と申しますが、その機械は効果がない。  それをまた五月の一日からあらためて出る基準に合わせるためには、またまたそれを取りはずして、何百万台、何千万台あるか知りませんが、中古車に取りつけなければならない。こういうことは二重三重の、全く消費者不在の、ユーザー不在の、またマイカーを持っている人たち不在の公害行政であり、また大事な環境汚染に対してもいいかげんであったということの一つの証左じゃないかと思うのです。これは厳重に私はこの席をおかりして忠告したい。現在一体何万台取りつけたかもわからない。どこでチェックしたかもない。そんなことは知らないのだ。五月一日からのは別なのができるのだから、そのときになるまでかんべんしてくれ。それじゃ、いままでやってきたのは、みんなでたらめじゃないかということになってしまうでしょう。  これは私重ねて大臣、特に副総理までやられていらっしゃる三木先生のことでございますから、私は三木先生の発言が大きく公害対策に前進するものと思うて、この席をおかりして質問しているのでございますので、誠意ある御答弁をお願いいたします。
  54. 三木武夫

    三木国務大臣 私も中古車の問題というものはよく存じておらなかったわけでございますが、いろいろお話を承って、この問題は大気汚染にも重要な関係を持ちますので、各省関連することが多いわけでございますが、十分に注意を払って、ユーザーが費用のかかることですから、それが効果的に目的を達成できるように今後厳重に注意をいたしてまいります。
  55. 小川新一郎

    小川(新)分科員 この問題については、重大な問題でございますので、新聞、テレビ、ラジオ等できちっと発表していただきたいのです。そういたしませんと、これは五月一日からの大衆に対する協力を取りつけられません。一体どこの会社の製品はどうなんだ。いま買い占めの問題で大騒ぎしておりますね。商社の買い占めということで大騒ぎしておりますが、これは商社の買い占めを通り越しているのです、これは公害問題ですから。こういう問題で産業癒着の体質というものが問われてもしかたがないことでありますので、この問題についての決意を関係省のほうからひとつお尋ねしておきます。
  56. 景山久

    ○景山説明員 私どもといたしましても、この五月までにいたします光化学スモッグ対策の規制、装置をちゃんとつけていただくということにつきまして、こういった装置とは全く違いますものが町に、いま先生のお話しのような状態であるといいますことは、いま私どもの施策を進めてまいります上にも、先生のおっしゃるような問題点を発生させるというふうにも考えますので、五月からの装置の装着につきまして、このものならばいいのだという表示あるいはPR、こういったものにつきましてはきちんと進めていく所存でございますので、今後ともよろしくお願いいたしたいと思います。ありがとうございました。
  57. 小川新一郎

    小川(新)分科員 大臣お聞きになっておって、私これ以上追及はいたしませんが、本来だったら、国のデータと東京都の出したデータとを突き合わせて、一体何を基準にこういうものを売り出したかということについて、もっときびしく追及せねばなりません。しかし、五月一日からの新しい観点に立っての問題もございますので、私はこれが逆に大きく私たち大衆のマイカー、すべての中古車に対する公害防止装置をつけることがおくれることを私はおそれますので、この問題については厳重なる姿勢を貫き通していただきたいと思いまして、この問題はこれでとどめておきますが、どうかひとつよろしくお願いいたします。  第二点は、水の問題なんでございます。  東京都の多摩川、これは御存じのとおり私たち東京都民の水でございますが、水道の中から有機水銀、または出てはならない、人体に有害な機能を持った薬品、こういうものが検出された場合には、取水をとめることを考えていらっしゃいますか。
  58. 国川建二

    ○国川説明員 お答えいたします。  水道のいわゆる給水せんから出てくる水の中に毒物あるいはその他そういう検出されてはならないような水が、人体の健康に障害があるような水が、物質があるとすれば、直ちに必要な措置として、必要な場合には取水を停止するとかあるいは給水を停止する、そういう措置考える必要があると思っております。
  59. 小川新一郎

    小川(新)分科員 東京都のアイソトープ研究所の実験によって出ました多摩川、荒川、隅田川の水から、国の環境基準では検出されてはいけないことになっている水銀が多量に検出されたことが明らかにされておりますが、特に多摩川の場合、取水禁止の考えはありますか。
  60. 国川建二

    ○国川説明員 お答えいたします。  先日東京都のアイソトープの研究所で隅田川、荒川、多摩川の原水につきまして分析した数値が報道されておりますが、この水銀の試験方法は、現在、放射化分析という一つ研究開発途上の試験方法でございます。水道局で行なっております検査では、今日まで法で定められた試験方法に基づいては水銀は検出されておりません。したがいまして、もちろん給水栓水につきましても水銀は検出されていないのでございまして、現在アイソトープ研究所におきまして行ないました試験方法等につきまして、都のほうでも検討はいたしておる段階でございます。
  61. 小川新一郎

    小川(新)分科員 だんだん科学が進んでまいりますと、現実の機能よりもさらにすぐれた検出方法というものは検討されてまいります。そういたしますと、十年前、二十年前の試験方法では出なかったものが、現在の科学水準では検出されるようになってくる。これは日進月歩である科学の効果だと思うのです。ガス・マイザーとか、いま言った放射物質を使った東京都のアイソトープ研究所が研究した中に、絶対出てはならない水銀が四十倍も出た。これに対してはどういうふうに私たち国民は理解していいのかということになるのです。今後こういった新しい手法を用いたならば、もっともっと人体に有害なものが発見されてくるだろう。水俣や阿賀野川の例を引くまでもなく、水銀のおそろしさということは大臣もよく御存じだと思いますが、科学が進んだ現段階において、いままで用いられなかった手法を用いていくことこそが、私は行政の前向きな姿勢だと思うのです。それをおそれるあまりそれを用いないということになりますと、これは国民の健康、生命に重大な影響を与えます。特にカシンベック病などというような、いまだに原因がわからない病気が多摩川水源地帯に出たとか出ないとか取りざたされております。こういう問題について環境庁長官としては、重大な都民の健康と生命を守る多摩川の水の中から水銀が検出されたということについて、この東京都のアイソトープ研究所の試験方法を、これから国の試験方法として用いていくのか。また、用いれば出るし、いまの方法では出ないからといって、ないのじゃない、目には見えないけれども、無線という一つの電波というものはあります。アフリカの原住民に原子爆弾のことを言っても、その理法はわからなくても原子爆弾の理法というものは現存しております。テレビの理論がわからなくても現実にはテレビというものがあります。それと同じように、現在の検出方法では水銀や有機毒物劇物が検出されないとしても、もっと進んだ手法を用いればそれがあるということが発見された場合、環境庁長官としてはこれをどう扱われますか。
  62. 三木武夫

    三木国務大臣 水質の分析方法というものはいま研究開発の途上であるわけであります。今度の御指摘の多摩川の問題なども、東京都のアイソトープ研究所が放射線を利用した分析の結果、〇・〇〇五九PPMですかの水銀が検出されたということがいわれておるわけでありますが、これは今後は、国民の生命、健康に関係をする問題でありますから、新しい技術が開発をすれば、できるだけ正確に分析できるような技術というものは取り入れていくべきだと思いますが、何ぶんにもまだこれは新しい一つの分析の手法でありますので、そういう問題も十分検討を加えないと、すぐにという、右から左というわけのものでもないわけでございますので、積極的に新しい技術は取り入れるという態度を持ちながら、放射線利用の分析方法というものについては十分に検討をしてまいる考えでございます。
  63. 小川新一郎

    小川(新)分科員 大臣、十分に検討ということは、すみやかにアイソトープ研究所の職員のデータを取り寄せて、大臣みずから重大な水銀が出たということをお認めになっておるのですから、東京都民の飲み水の中から、出てはいけない水銀が出たということですから、これは重大問題です。いいかげんな問題として聞き流すわけにまいりませんので、重ねてお尋ねしますが、どのように具体的な処置をとられますか。
  64. 三木武夫

    三木国務大臣 水質の分析にこの手法を取り入れるかどうかということに対しては、専門家の研究にまつ必要があると思います。しかし、これは生命、健康に関係をする問題でありますので、この問題は、専門家の手によって十分に——一ぺん出たといわれておるデータについては、検討を加えますとともに、この分析方法について、これを今後採用するかどうかという問題については、専門家の研究にまちたいと思っております。
  65. 小川新一郎

    小川(新)分科員 時間がありませんから、私あまりくどく申しませんが、とにかく大事な問題です。一研究家にまかせておいていい問題ではありません。事実とすれば、たいへんな問題です。どうかひとつ前向きな姿勢でお願いしたいと思います。  時間がありませんから、最後に一問、読み上げてお尋ねいたしますが、尾瀬の問題です。日光国立公園の尾瀬地域は、昭和三十五年特別天然記念物保護地域に指定されております。世界に類を見ない高層湿原と静かな湖、高山植物の群落は多くの人々から愛されました。特に尾瀬−只見国際観光ルートが問題になっておりますが、新潟、福島県境に完成した奥只見ダムから尾瀬を経由して群馬県沼田市に通じる観光自動車道路のことでございます。この道路計画は昭和三十八年に打ち出され、その後着々と工事が進められてきましたが、四十六年七月、大石環境庁長官が現地視察された際、地元三県に路線変更を要請し、これを契機に自然公園審議会でも再度審議し、ついに昭和四十六年十一月に工事が中止になっております。しかし昨年十二月、突如として現在進めている工事、一ノ瀬−岩清水間、この国の認可と地方公共団体の認可があるので、これを始めましたが、一ノ瀬地区に駐車場をつくると発表したことは、工事中止の際に、大石環境庁長官に地元が工事中止の中身としてこれを要請しておきましたが、これがいつの間にか、一ノ瀬から岩清水の間は歩道としておいてくれということが、いま車道になって、自動車が岩清水まで入るようになってしまいました。この問題について、いま地元ではたいへんに心配しております。環境保全の立場からも重大な問題であり、前環境庁長官が中止を約束された場所であるにもかかわらず、国に許可を得たということの理由によってのみでまた華道がつくられて駐車場ができるということは、たいへんな環境破壊に通じると思いますが、副総理である環境庁長官、この問題をどう対処してくださるのか。地元民の反対である、要請であるこの問題について、十分御検討くだされると思いますが、お答えをいただいて、私の質問を終わらしていただきます。
  66. 三木武夫

    三木国務大臣 尾瀬の道路の問題については、自然環境の保護の見地から、群馬県に対して道路の延長工事はやめるようにという要請をしたわけでございます。この基本的な考え方というものは現在も変わっておりませんが、いま具体的になっておる問題については事務当局からお答えをいたします。
  67. 首尾木一

    首尾木政府委員 ただいまお尋ねのございました一ノ瀬から岩清水間でございますが、これは工事中止を指導いたしました際にすでにブルドーザーの入っておりました区間でございまして、岩清水間まではそのようなブルドーザーを入れたままで置いておきますと、土砂くずれ等がございますので、そこに石積みの工事でございますとか、あるいは緑化の工事でありますとか、そういうことをやっておるわけでございまして、そこを積極的に車道にするというような考え方は持っておらないわけでございます。したがいまして、車はやはり一ノ瀬に当時は駐車場を設けまして、そこで車をとめるといったような考え方でございましたので、そういうような点につきましては、今後群馬県等を十分指導いたしまして、方針といたしましては、先ほど長官からお話がございましたように、全然計画を変える方針はございませんので、当初の計画に基づいて進めたい、かように考えておるわけでございます。
  68. 小川新一郎

    小川(新)分科員 そういうわけで変更しないということなんですけれども、そのことによって尾瀬の湿原が荒らされることになってはたいへんなんです。どうか大臣、前後の御事情を踏まえられた上で、大石前環境庁長官の御意思を尊重なされて、ここにぜひとも国民に愛される尾瀬を守る立場に立った環境開発に立たれることをお願い申し上げておきます。  以上です。
  69. 臼井莊一

    臼井主査 次に、馬場昇君。
  70. 馬場昇

    馬場分科員 予算委員会一般質問で、わが党の細谷委員が水俣病の問題について質問をしたわけでございますが、私は重ねて水俣病の問題について質問をいたします。  最初に、長官に質問をいたしますが、水俣病の悲惨さ、その規模の大きさ、さらには企業の無責任さ、こういうことで水俣病は世界に類例のない公害だと私は思います。言うならば公害の原点ではないか、こういうぐあいに考えるわけでございますし、すでに大臣も御承知と思いますけれども、現在設定された患者だけで三百九十七名おります。そのうちで六十一名は死亡しております。申請者は続々出ておりますし、おそらくこの規模の大きさというのは、万単位で数えるほど被害者が出るのではないか、こういうぐあいにいわれておるわけでございます。その被害地域も熊本県、鹿児島県両県にわたりますし、不知火海全域にわたっておるわけでございますし、さらにその患者の悲惨さ、塗炭の苦しみというのは言語に絶するものがございます。ネコが狂い死にをいたしました。それと同じようなかっこうで人間が塗炭の苦しみをしながら狂い死にをしたわけです。当時は奇病だといわれながら、地域の人たちからつまはじきにされながら、日陰で苦しみながら死んでいった、こういう状況でございますし、頑健であった漁民の方々が、現在もう寝たきりで、毎日数十回となく来ますけいれんで苦しみ抜いておる、こういう状況もまだたくさんございます。さらに、生まれながらにして口がきけないんです。耳が聞えないんです。目が見えないんです。からだが動かないんです。そういう胎児性患者というのが一ぱいおります。人間が生まれながらにしておかあさんということばが言えないんですよ。そういう胎児性の患者というのがたくさんおるわけでございます。私はこういうことばを使いたくないんですけれども、ある人が本に書いておりました。その胎児性患者を見て、これはもう動物として生きているんじゃないんだ、植物的に生きているんだ。こういうような悲惨な表現であらわさなければならないような実態がございます。三木長官が、環境庁長官として公害の問題、環境の問題等を担当されるにあたって、この現地水俣のあの地域の患者の苦しみ、状態、これをまず見ることが大切だ。これを見ずして、現地を訪れずして、公害行政、環境行政を語る資格は私はないと思う。そういう意味におきまして、まず第一点に、長官は一日も早く水俣の現地に行って、この悲惨な状態を見て今後の行政に生かすべきだと思いますが、水俣現地を訪れられる気持ちはないかどうかということをお尋ねいたします。
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 私もいろいろな報道機関を通じてその悲惨さというものは承知をいたしておるつもりでございます。日本の代表的な公害水俣病というものに対しては、非常に心を痛めておるわけでございます。いつという予定はつけかねますが、いずれの日か水俣の現地へ私も参りまして、自分が直に被害の実態というものを知りたいと考えております。
  72. 馬場昇

    馬場分科員 水俣現地を訪れたいという長官の気持ちはわかったのですけれども、いまのお答えを聞きながら、いつとは言えないということでございましたが、私は一日も早く訪れることが長官としての初歩的な義務であろう、こういうぐあいに思います。いっとは言っても、日程もあることでございますが、いずれの機会じゃなしに、一日も早くというような気持ちがないかどうか、そのことを長官にお尋ねをいたします。
  73. 三木武夫

    三木国務大臣 いま国会中でもございますので、いつという日を予定はできないが、できるだけ近い機会にそういう機会を持ちたいという考えでございます。
  74. 馬場昇

    馬場分科員 次に、水俣病の患者、家族の人たちの苦しみの中の現在の最大の願いというのは、これはもう企業責任を追及したい。これも当然でございます。そうして補償も取りたい。生活苦に苦しんでいます生活をどうにか改善したいということも当然でございますが、何としてもこの病気からなおりたいというのが患者、家族の最大の願いなんですよ。これにつきまして、これはもう環境庁長官の権限ではないという御答弁もあるかもしれませんけれども、長官は副総理でもございますし、そういう立場から長官にお尋ねしたいのですが、先般、二月二十日の新聞に実はこういう見出しで記事が載っております。「水俣病繰返しません 少女の直訴 心打たれ、首相が返事」という記事が載っております。これは熊本県葦北郡芦北町大字女島というところの木下レイ子という、この方は認定患者でございますが、その長女の真由美ちゃんという、小学校の四年生ですけれども、このおかあさんは患者です。その隣の小崎君という十三歳になるのが胎児性の患者で、これはものも言えませんし歩くこともできないのです。この母親なり隣の友だちの苦しみを見かねて総理大臣に手紙を出したわけです。この木下レイ子さんという人は実は私の教え子でございます。そして、このうちにも私は最近行ってまいりました。この地域もずっと回ってみたんです。その真由美ちゃんの文章の中に、「チッソのような悪い会社をつくらないで下さい。おとなはどうしてこんな悪いことをするのでしょうか。世界中のお医者さんが一日でも早く治療法を研究して下さい」こういうぐあいに書いてあるわけです。新聞記事ですけれども、田中総理はこの記事を読みながら目に涙を浮かべんばかりにして返事を書いた、こういうぐあいに書いてございます。  私は、ここでお尋ねしたいのですけれども、総理大臣も、この小学校の生徒に約束をしました。政府責任で全力をあげて治療の方法を見つけてもらいたいと思うのです。この水俣病患者の治療法開発について、具体的にどういうお考えを持っておられるか。これは特に総理大臣が約束をいたしましたので、副総理という立場において御返事を願いたいと思います。
  75. 三木武夫

    三木国務大臣 水俣病の被害を受けられた方々は、補償の問題だけでは健康は回復しないわけでありますから、こういう気の毒な人々の長い将来にわたって治療という問題については、私も真剣に検討をしておる、どういう方法が一体いいであろうかと。この裁判の判決も近く出る予定になっておって、損害賠償のような問題はいずれ解決する日があるでしょう。しかし、あとに残された水俣病患者の人々の治療あるいは健康管理というものは、特別な配慮をしなければいかぬ。これはどういうふうな方法が一番いいであろうとかということを、私はいま検討をしておる最中でございます。何らかの結論を出さなければいかぬと考えております。
  76. 馬場昇

    馬場分科員 真由美ちゃんの、世界じゅうの学者と相談して、そして一日でも早く治療法を見つけてくれというこの心情というものには、ぜひ政府としてこたえていただきたい、こういうぐあいに思います。  次に、会社、現地、いろいろ問題があるのですけれども、チッソ会社、これは言うならば殺人を犯しておるわけです。傷害を犯しておるわけです。こう言っても私は過言ではないと思います。この世界じゅうに類例を見ないような犯罪を犯したチッソ会社が、私の見るところでは、全然責任を感じていないのみか、陰に陽にこの患者、家族を分裂させておる、そうして差別をしておる、こういう実情が現地にはございます。そしてまた、水俣の市長たちは、このチッソ会社と言うならば一体となり、うわさによりますと、水俣市役所はチッソ会社の総務部だ、こういうようなうわさをする人さえもおります。このチッソの動きに市役所が手をかしておる。そして、苦しんでおる患者を分裂支配しておる。御承知と思いますけれども、調停派という人たちもおります。裁判派という人たちもおります。自主交渉派という人たちもおります。中立的な人も現在おるわけです。なぜこういうぐあいに分裂させられ、そうして会社と市役所は、調停派だけに物心両面にわたって支援をしておるか。その他の者は差別をして見向きもしない。こういう情勢が実は現地にあるわけでございます。これは、私は水俣病だけの問題ではなしに、差別の問題、まさに社会的な問題だろう、こういうぐあいに思いますが、長官は、こういうチッソ会社の姿勢に対して、あるいは水俣市役所のとっておる姿勢に対して、行政の責任者として、チッソなりあるいは水俣市役所に対して何らかの指導の手を打つ気持ちはないか、こういうことをお尋ねいたします。
  77. 三木武夫

    三木国務大臣 私も水俣病の患者の方々から直接陳情を受けたこともございますが、あのような、日本で一番代表的な公害被害を受けて苦しんでおる人たちが、幾つかに分かれて交渉をしなければならぬ、これがもう一体になって対会社との問題解決ということになれば、もっと現状よりも解決がしやすい面も確かにあると思いますが、どのようにしてあんなに分裂したのか。いろいろないきさつがあると思いますが、私もその原因をこうだと言い切れるような——いろいろな説明を受けたのですが、この理由でこうなったんだとは、なかなか一口に言いにくい原因もあったようでありますが、今日となっては、それはチッソにしたところで、市役所にしても、この問題を早く国民の良識に従って解決をするということを考えているに違いない。この問題の解決をいつまでも遷延さすようなことを考えるということは、それは、今日の時代になってそういう考えを持つことは、とても常識では考えられませんから、いま私の頭にあることは、一日も早くこういう悲惨な状態を解決をして、そして補償問題は補償問題として片づけ、そして、この病気というものに対して最高の頭脳を動員して治療の方法を究明する、また将来にわたっての健康管理というものをできるだけしてあげて、その病気からくる不安というものを解消するために、市役所といわず、会社といわず、国といわず、一体になってこの問題と取り組みたいという心境で一ぱいでございます。
  78. 馬場昇

    馬場分科員 現地がたくさん分裂状態にあるということは、長官も心配はされておりますけれども、原因がわからないとおっしゃられるところが私は問題だろうと思います。事実、チッソが策動をしておるわけです。それに市役所が手をかしておるのですよ。こういう事実をあげればたくさんございます。  時間がありませんので例は申し上げませんけれども、ただ一つ申し上げますと、調停派の人にだけに物の面、心の面あわせて援助をしておるのですよ。苦しみは同じなんですよ。なぜ調停派にだけお金を出してやったり便宜をはかったりしてやっていて、そのほかの人たちにはしていないのですか。このことは正しいと思われますか。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 会社が差別をして、分裂をしたり分裂をさすために動いたり、分裂をした者に対して差別をしたりすることは、経営者のモラルとしては間違っていると私は思います。いままでもいろんな途中の生活の補給金のようなものを出しておりますが、そういう金は一様にみなに、調停派もあるいは自主交渉派にも渡されたと私は聞いておるわけですが、いろんな区別をしているんだというようには承知していないわけでございます。
  80. 馬場昇

    馬場分科員 具体的に言いますと、たとえば調停派が申請書を出す、その印紙代とかそういうものについて市長なんかが便宜をはかっているのです。そうしてまた、調停派の人たちがいろいろ水俣をあっちこっち回るのに、私が聞いたところでは、この交通費等は会社が出しておる。何かあるときに上京してくる。その費用等も市長なりその他が便宜をはかっておる。そういう事実がたくさんあるのです。ところが、その他の裁判派の人たちなり自主交渉派の人たちには、そういうことは一つもしていない。こういう事実は好ましくないと思われませんか。
  81. 三木武夫

    三木国務大臣 そういう事実があれば、好ましくないと思います。それは、公害病に苦しんでおる人たちには同様な取り扱いをすべきだと思います。
  82. 馬場昇

    馬場分科員 次に、十数年来あるいはもう三十数年来といわれておるのですけれども、長い苦しみの中で裁判も行なわれてきました。判決が三月の二十日に出る予定でございます。私は、この判決というのは、長い間の患者家族の苦しみにこたえるような判決であるだろうと思いますし、さらには、こういうことをしでかした企業責任を追及するというようなりっぱな判決が出るだろうと私は信じておりますが、これについていうならば、チッソは人を殺したわけです。生けるしかばねをつくり出したわけです。そうして、人間を塗炭の苦しみに追いやりながら、そしてまた現地水俣を混乱におとしいれております。チッソはほんとうに社会的な企業責任というものを一片でも感ずれば、あるいは人道的な責任ということを一片でも感ずれば、これ以上苦しみなり混乱を長引かせてはいけないと私は思います。そういう立場で、たとえチッソが敗訴をしたといっても私はもう控訴なんかすべきではない、こういうぐあいに考えますが、長官のこれに対する御見解を伺いたいと思います。
  83. 三木武夫

    三木国務大臣 私はこの問題を一日も早く解決をすべきである、そういう意味において、二十日に予定されておる裁判所の判決、あるいはいつ出るかわかりませんが、調停委員会も結論が出るでしょうから、こういう裁判所とか調停機関の調停であるとかそういうものが出た機会を、何とかそれを解決の機会としてとらえて、この問題を解決をすべきであるというふうに考えております。会社自体としても、これだけ社会の批判を受ければ、落ち着いて企業の経営にも当たっておれない心境でございましょうから、判決が出れば善処をするものと私は期待をいたしておるわけでございます。
  84. 馬場昇

    馬場分科員 長官の期待はわかったのですけれども、ここで企業の悪口を言おうと思いませんけれども、あそこのチッソ会社というのは、私もよく知っておりますが、常識でははかり知れないような態度をとります。そこで、控訴をすべきではないという私の見解に対しまして、長官は一日も早く解決したほうがよろしいという御答弁でございましたが、そのものずばり、控訴についてはどうお考えでありますか。
  85. 三木武夫

    三木国務大臣 控訴はどういうことになりますか、これは日本チッソ自身の持っておる判断にゆだねなければなりませんが、私の言うのは、この機会に、いままででもこれは解決がおそ過ぎた感じがある、その間にたくさんの人が上京されたり——だから判決が出る機会には、この問題を全面的に解決をするという態度が日本チッソとしても望ましいと私は思っております。
  86. 馬場昇

    馬場分科員 重ねてお尋ねいたしますが、長官の気持ちのほどはわかったのですが、まだそのものずばりの答えになっていないのですけれども、長官はチッソ企業に対しましても、これは決してチッソの自主性をそこなう云々という意味ではありませんし、患者の苦しみなり社会的な混乱というものから考えた場合、行政ベースとしてもチッソ会社に対して、控訴をしないように、早く解決するようにという働きかけをする意図はおありでしょうか。
  87. 三木武夫

    三木国務大臣 控訴というような法律上の問題については、会社の自主性というものにまたなければなりませんが、私が望んでおることは、日本チッソとしても、その判決が出れば、それを機会にこの問題を解決しようという態度が企業者としては好ましい態度であると考えております。
  88. 馬場昇

    馬場分科員 そういう態度でチッソ企業長官としてお働きかけになりますかどうか、お伺いします。
  89. 三木武夫

    三木国務大臣 そういう判決が出た場合とか調停の結果が出た場合には、やはりそういう基準に沿うてこの問題を解決するようにということは、会社に言うつもりであります。
  90. 馬場昇

    馬場分科員 判決は私は患者側が勝訴すると思いますけれども、もし万一そういうことがなかった場合、苦しんでおる患者側はどういう態度をとられるか、これは私は患者の自主性だろうと思いますし、企業側に対しては、社会的責任としてぜひそのようにお願いしたいと思います。  時間もありませんけれどももう一点。現在、長官も陳情なんか受けられて御承知と思いますけれども、いわゆる自主交渉派といわれる方々がチッソ会社に交渉を求めてすわり込んでおられますのは御承知のとおりと思います。私は、こういうものはやはり加害者と被害者が直接話し合いをして、そうして被害者が納得するところで解決をするというのが一つの筋だろう、こういうぐあいに考えておるわけでございます。そういう立場もございまして、前の前の長官ですか、大石長官のときには、熊本県の沢田知事と一緒になって、そうしてこの自主交渉派の人たちとチッソ企業の話し合いの場というのをあっせんをしていただいておりました。現在これが中断をしておるのです。三木長官は、この会社と自主交渉派の人たちとの交渉が持てるように、大石長官のようにあっせんをしていただくという気持ちはおありでしょうかどうでしょうか、お尋ねをいたします。
  91. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題は、会社側とまた自主交渉派側との話し合いができて解決できれば一番好ましい形だと思います。しかし、御承知のように、なかなか自主交渉派と会社側とが会って意見の一致を見ないということで、今日まで延びてきたわけでございまして、なかなか両者の解決というものは非常に困難なものを含んでいる。近く判決も出るというようなことも両者の頭の中にあるんでしょう。しかし私は、一たん自主交渉をやるということを両者ともにきめて始めておるんですから、話し合って、その間に新しい提案でもあれば、そういう機会をもって話し合う場をつくったらいいという考えで、その私の考え方は会社側にも伝えてある次第でございます。
  92. 馬場昇

    馬場分科員 解決の中身については、当事者があるわけでございますが、長官としては、そのテーブルをつくっていただく、そのごあっせんはぜひ必要ではないかと思うのですが、テーブルをつくることについての、大石長官がやられましたようなごあっせんというものをぜひやっていただきたいと思うのですけれども、これは早急にひとつやっていただきたいと思いますが、もう少しずばりお答え願いたいと思います。
  93. 三木武夫

    三木国務大臣 両者と熊本県知事が入っておるものですから、みながそういう合意に達すれば、そういうあっせんをすることの労をいとうものではございません。
  94. 馬場昇

    馬場分科員 次に、不知火海の浄化対策についてお尋ねしたいと思うのです。不知火海というのは、御承知のとおりに非常に美しい海ですが、現在はもうこの海は死んでおると言っても過言ではないと思います。実は私もここで育ちました。そしてこの不知火海が死んだだけでなしに、恐怖の海という形に現在なっております。私どもの調査では、昭和七年から昭和四十三年まで三十五年間に、水銀ヘドロの量というのは大体六百トンぐらい堆積をしておる、こういわれております。それから、この水俣チッソ会社の排水口の近所の海底には三メートルから四メートルの水銀ヘドロが現在堆積しておるのですよ。そうして、そういうこともございまして、そういう状況の中で永遠にあの不知火海は汚染され続けていきますし、事実昭和四十六年にも患者が発生しておるんですよ。そういう状況でございます。あそこは水銀だけじゃございませんで、砒素の問題、PCBの問題、こういう汚染があっておるのです。だから、一日も早くこの不知火海を生きた海にしなければならぬ。きれいな海にしなければならぬ。実はここは熊本県の県立公園にもなっているのですよ。そういう意味におきまして、もう一つの角度からいいますと、あそこでとれる魚というのは汚染されているのだといって売れないのですよ。売れても安いのですよ。漁民は塗炭の苦しみを受けております。そういう意味において、この不知火海の浄化対策をどういうぐあいにしておやりになるのかということをお尋ねします。
  95. 三木武夫

    三木国務大臣 不知火海域のヘドロの問題は、いま中央公害対策審議会の底質専門委員会という中で、水銀などのそういう物質が、水質あるいは動植物に与える影響というものを専門家の手によって検討を加えておる。これは三月末までに一応の結論を出すということになっておるわけですから、その結果を待ってヘドロの除去の基準というものもきめて、あるいは埋め立てる場合とか、しゅんせつする場合とか、いろいろな具体的な方法をきめたい。予算の上においても、四十八年度のいろいろな防止事業というものは用意をいたしておるわけでございます。
  96. 馬場昇

    馬場分科員 時間が来たという通告をいま受けました。少し残りましたけれども、要望を申し上げて終わりたいと思うのです。  ぜひ不知火海を一日も早く死の海から美しい海に浄化してもらいたい。さらに、そういうときには、現在さえも漁民の補償というものを要求したいわけですが、漁民の生活補償ということも十分考えてやっていただきたいと思います。  時間が来ましたので、公調委のほうにも質問を通告してありましたけれども、これは要望だけにとどめて終わりたいと思います。  現在公調委というのは、調停を申請しておる人からも、そうでない人からも、あるいは水俣葦北地域住民からも信用されておらないというのが現状でございます。信用されておらないという立場では調停はできないのではないか、こういうぐあいに考えるわけでございます。これは、詳しく言いますと、例の申請手続の問題その他の問題でこういう状態が出てきておるわけでございますが、そういう意味で信頼されるような手だけを考えていただきたいと思います。  さらに、公調委の姿勢としては、お互いに譲り合い、争いを円満に解決するのが公調委の任務だといっておられますが、私はこれではいけないと思うのです。あくまでも公調委というのは患者の側に立ち、患者を救済するという立場に立たなければならない。また、人の命と企業責任というものを、互譲の精神でという形では絶対に解決することはできない。あくまでも患者救済という立場で公調委を進めていただきたい、こういうぐあいに思います。  さらに公調委は、水俣病のいまの申請されておりますようなものは、公害紛争処理法の三十五条によって、命の値段をどうするとか、足して二で割るとかいう形では、やはり性質上調停をするのは適当でないということで調停ができないのではないか、こういうぐあいにも思います。そういう点についても十分御検討を加えていただきたい、こういうぐあいに思います。公調委も、企業責任というものを明らかにしなくて調停するわけですから、いやしくも企業責任を明らかにしなければ私は公害というものはなくならない、こういうぐあいに思います。  公調委のあり方につきましては、いずれまた機会をあらためて議論をいたしたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  97. 臼井莊一

    臼井主査 午後一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十七分休憩      ————◇—————     午後一時四十二分開議
  98. 臼井莊一

    臼井主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。横路孝弘君。
  99. 横路孝弘

    横路分科員 大雪山の道路問題について、最近、建設中止ということを言い切ってはおられないけれども、大体そういう方向に事態が非常に好転をしているようなんで、ただ私、この大雪山の問題いろいろ調べてみて、この環境庁の行政姿勢というものをやはりこれから将来の問題として考えてみなければならない点が一つ二つあるようなので、その辺を少しお尋ねをいたしてみたいと思うのです。  この問題の経過は大臣御存じだろうと思いますけれども、大石環境庁長官の時代に再検討ということになりまして、昨年の四十七年の八月十一日から十四日まで環境庁が道路予定地の現地調査を行なって、八月二十六日には小山長官が現地の視察を行なって、九月に入ってからルートの変更を条件として認めようというような環境庁のニュアンスに変わり、九月の十八日に北海道開発庁が新ルートを発表して、翌日環境庁がこれを認めたということですね。十月三十一日に自然公園審議会が開かれて保留になって現在に至っているわけなんですけれども、いまかけられているのを新ルート、その前のを旧ルートとすると、この旧ルートは一応調査をしたわけです。この新ルートについては何の調査もなしに、実は環境庁のほうで自然公園審議会のほうに諮問しているわけなんですけれども、その辺のところはどういう経過があったのか、これを初めにお答えをいただきたいと思います。
  100. 三木武夫

    三木国務大臣 全然調査なしというわけではありません。専門家とかあるいはまた職員などもいろいろ検討をしたと私は記憶しておりますが、事務当局から詳細に説明いたします。
  101. 首尾木一

    首尾木政府委員 ただいまお尋ねの新ルートといいますか、それにつきましての調査でございますが、旧ルートの調査につきましては、現地に行きまして調査をいたしたわけでございますが、その後あらためて変更したルートにつきましては、その際に現地に参りまして再調査はいたしておりません。しかしながら、それにつきましては、植生等の状況につきましてはすでに前調査の際の資料によっても判断のできることでございますし、また、その他の問題につきましても、地形等の問題につきましては一応航空写真等によりましての調査をいたしておるというようなこと。それからさらに、動植物等につきましては、前半の大雪の自然調査の学術的な資料に基づきまして判断をいたした、こういうのが経過でございます。
  102. 横路孝弘

    横路分科員 四十七年の八月十一日−十四日の現地調査には、北大農学部の伊藤浩司助教授、東大演習林長の高橋さんあるいは岩本教官、この王氏が現地の調査に参加をして、そうして小山長官あての八月十五日付の調査報告書を出しているわけです。この報告書は環境庁としてどのように扱ったんですか。
  103. 首尾木一

    首尾木政府委員 調査結果に基づきまして、森林帯内での問題点、それから森林限界以上における問題点ということで意見が出ておりまして、それは新ルートをあらためて考える際にそれによってまずいところを避けた、こういうことでございますが、なお先生のおっしゃっておりますのは、付帯意見に、「今後別ルートを考慮されるとしても、事前に十分なる科学調査が先行されるべきである。」こういうことが付帯意見につけられておるわけでございまして、この点についてどうかというお尋ねかと存じますが、この点につきましては、実は私どもまあ十分な科学調査という点につきまして、これはそれが十分であるかどうかといったようなことになりますと、いろいろ意見のあるところと考えておるわけでございますが、先ほど申し上げましたような見解に基づきまして、これを一応差しつかえなかろうといったような判断を下した、こういうことでございます。  なお、この付帯意見で述べておられますのは、実はその地域というものを、この種の道路をこのような地域につける際には、これは事前の調査にも二つの段階がございまして、一般的な大まかな意味での路線をきめる際の調査の問題と、それから具体的に路線をきめていく段階での調査、こういうものがあるわけでございまして、具体的に道路をきめていく際に、さらに自然に関する詳細な調査を行ないまして、問題のある地点についてはそれを避けていくというようなことを前提といたしまして、全体としての大まかな路線の決定については、特にあらためてその再調査を行なうということをいたさなかったわけでございます。
  104. 横路孝弘

    横路分科員 局長、そういうのを先行自白というんです。聞いてないことをちゃんと先回りしてお答えになったでしょう。そこに問題があるのですね。  大臣、いまのお答え聞いて何のことかわかりますか。実は、昨年の八月に現地調査をやったときに、専門家三人に頼んで調査に加わってもらったわけですよ。この人たちは大雪山の今度問題になっている——あまり地図が小さいので……。そこから見えると思いますがね。——この緑色のところがどうかということが諮問になったんです。今度変更になったのはこの赤いところですね。ここがトンネルになったわけなんですけれども、そのときに調査意見書を出しているわけです。その意見書は何かというと、この緑の、つまり旧ルートですね。このルートについてはいろいろの差しさわりがあるからだめですよ、結論はだめですよという結論なんです。それと同時に、付帯意見として「今後別ルートを考慮されるとしても、事前に十分なる科学調査が先行されるべきである。」という、そういう付帯意見をつけて出しているわけですよ。その付帯意見をいま尋ねないんで、先にべらべらお答えになりましたけれども、その意見を全く無視して、ぱっとこっちのルートならいいですよ。このルートに何の調査をやったかといったら何もやってないんですよ。どうやって道路をきめたのかといえば、航空写真をとって適当に、こうだというんで線を引いただけに実はすぎないのです。環境庁がやっていることというのは実はそういうことなんですね。だからわざわざ調査を頼んで調査報告書が出る。その調査報告書のこういう付帯意見を完全に握りつぶして、そしていまの答弁を聞いてみたって、一体——要するに何も調査していないわけでしょう。必要ないといったって、旧ルートについてはやっぱり心配があるから調査したわけですよ。変えるにあたってこの意見を聞かないで、だから、これは政治路線だといわれているわけですよ。そして、ぼっと自然公園審議会のほうに諮問をしたわけですよ。これはやっぱり行政の姿勢の問題として、こういう意見があるのにわざわざそれを握りつぶしをして、そして路線決定を——決定といいますか、環境庁のほうでいいだろうということで諮問に回す、この辺のところの姿勢というものはやはり改めてもらわなくちゃ。しかも、現実に大石環境庁長官のときに、尾瀬を含めて十の道路について再検討しよう、ところが、実際どうか。実際どうかというと、もうほとんど認められてしまっておるでしょう。それは一部中止になったり変更になったのはありますよ。しかし、大筋はほとんどそのままやられてしまっておるというのが環境庁の姿勢じゃないかと私は思うわけです。その辺のところ、大臣、どうですか、これは。
  105. 三木武夫

    三木国務大臣 大雪山の場合も、自然公園審議会の議に付しておるわけでございますから、そこで十分な検討を加えて、あるいは私はその中で全員というわけにはいかぬけれども、現地視察をしてもらいたいと思っておるわけです。したがって、環境庁の姿勢というお尋ねでございましたが、自然の環境は一ぺん破壊されるとあとへ戻らないわけでありますから、その先ほど読み上げられた趣旨にも沿うて、新しいルートについても専門家による十分な科学的な調査といいますか、そういう調査をしてでないと結論は出さない考えでございます。
  106. 横路孝弘

    横路分科員 自然保護自然環境をいかに守っていくかということですね。一たん破壊してしまうと、もうもとに戻すのはほほ不可能といっていいくらいでありまして、そんな意味でその道の専門家の、実際にこうやって現地に行って歩いて、環境庁で頼んで、そして調べてもらって、その調べてもらった人たちの意見を——いろいろ意見は出ているわけですね。その意見を参考にしない。実際に報告書を出した人たちに対して、じゃ、その後環境庁は旧ルートを認めるにあたってどうだ、こういうことですからこういうぐあいにしましたよというようなことの話でもしているかというと、全然何も——要するに調査だけ頼んで報告書だけもらって、あとはなしのつぶてでしょう。だから、私は——いまかかっている前の話なんですね。かかっている前の話で、その前の段階で、いまのルートをきめるにあたって、航空写真を見ながら適当に、この辺がよかろう、いまの新ルートよりこっちのほうがちょっとよかろうというような、その程度のことできめられるんじゃ、どうも非常にこれは困る。したがって、これからはいま長官が御答弁なさったように、事前に、いままでの国会の議論を聞いてみますと、何かともかく道路の建設を始めて、建設をやりながら調査をするんだみたいな国会答弁もあるわけですね。そうじやなくて、それをきめるかどうか、必要があるのかないのかというときに、やはり科学者の意見も十分聞いて、なおかつそれを生かしていく、こういう報告書が出て、都合が悪いからこれを握りつぶして、知らぬ、そしてかってにやられるんじゃ、この人たちだってわざわざ現地に入って三日間も——四日間ですか、一緒に回って、全くそれが生かされていないということでは、やはりこれはやり切れない気持ちになるのでありまして、その辺のところを大臣としても十分——あるいはこれはいま初めてのお話かもしれませんけれども、ひとつ十分行政のほうに注意し、監督をきちんとやってもらって、やはりこういう意見というのは十分これから生かされるような方向での環境行政というものをひとつやってもらいたいと思いますが、その辺、大臣からひとつ……。
  107. 三木武夫

    三木国務大臣 私もそのように考えておるわけです。ほかのものならば破壊してもまた復元できる場合があるかもしれませんが、自然の場合はなかなかそうはいかないわけですから、これはできるだけ慎重な態度をとることが行政の態度としてはよろしいという考えでありますから、そのように今後措置してまいりたいと考えております。
  108. 横路孝弘

    横路分科員 それからもう一つは、これも何か話を聞いてみますと、二日の参議院の公害対策及び環境保全委員会のほうでちょっと議論があったようなのですけれども、この自然公園審議会——十月三十一日の審議会の前に、環境庁のほうで相当な働きかけをしたわけでありまして、そのときの答弁によりますと、実は説明だというようなことで逃げておられるようですけれども、どうもそうじゃないようですね。鳥獣保護課長さん、来られておりますか。おられますか。——黒田さんという委員のところをたずねて、大雪山の道路についてあなたお話しになっているでしょう。環境庁のほうでこの大雪山のほうを担当したのは計画課のほうでしょう、自然公園審議会のほうの担当は。あなたのほうは直接の職務じゃないのに、のこのこ黒田さんという、鳥の専門の学者でありますが、そこに出かけていって、そうして、どうして大臣の顔を立ててほしいなんということで頼み込んでいるわけですか。それはだれの指示ですか。
  109. 仁賀定三

    ○仁賀説明員 お答えいたします。  私ども鳥獣行政をあずかっておりますが、黒田先生は鳥類の第一人者でございまして、この方面について、鳥獣関係で特に注意をせねばならぬ事案があるのかどうかというふうな点も私ども先生に御意見を聞き、かつ、私どもがその地域について一般的に考えておりますことについて先生の御意見を聞きに参った。また、先生についてその席上でいろいろ御懇談してまいったというのが実情でございます。
  110. 横路孝弘

    横路分科員 だれに頼まれたのですか。だれの指示ですかということです、質問の趣旨は。
  111. 仁賀定三

    ○仁賀説明員 局長と御相談いたしまして、鳥獣について黒田先生の御意見を聞きに参ったということでございます。
  112. 横路孝弘

    横路分科員 一つずつあげていくと、まあ大臣もこの前の二日の審議の経過で概略御存じだろうと思うのですけれども、局長だって簡単に説明に行っているだけじゃないんですね。二日も三日も、二回も三回も同じ人のところに何回も足を運んだり何かしながら、ともかく説得しておるわけですよ。それから、いまの課長さんだって、これは頼まれたわけなんでしょうけれども、要するに反対に来たのかと思ったら、そうじゃなくて、何とか賛成してくれという話だったというわけですよ。ほとんどの委員のところを回っているわけですね。そうすると、環境庁というものは一体何をするところだ。事情説明なんというものではなく、賛成してください、ある人のところに行ったら、あの先生とこの先生はもう十分御理解をしてもらった、だから先生も何とかそんなことを言わないで、こういう形でひとつ了解してくれみたいなそういう話ですから、これは事情説明じゃなくて完全な説得でしょう。環境庁というものは何で大雪山に道路を通さなければならない義理があるのか。小山長官が、新しいルートならいいだろうというふうな発言をされた。その発言を行政当局としてはバックアップしたかったのかもしれませんけれども、私は、やはりそういうことじゃなくて、環境庁というものができた経過にかんがみて、やはり自然保護をするのが皆さんのほうの役所の仕事なのですから、これはこれから将来も起き得る問題ですから、ただ単に説明に行ったということだけじゃない問題が実はあるわけですよ。そんな意味で、この辺についてもひとつ皆さんのほうで——中身はともかく、事情説明じゃなくて完全な説得工作をやっているわけですから、それがかえって委員の人たちから反発を買って、いまのような状態になっているということもある意味ではいえるのかもしれませんけれども、その辺の姿勢というものをやはり環境庁としてきちんと改めていってもらいたいというふうに思います。どうですか。
  113. 三木武夫

    三木国務大臣 審議会というものができているのは、審議会のメンバーの自由な判断を聞くというわけであります。役所の協力機関という、協力という、大きな意味では協力がありましょうが、役所の意見にそのまま従っていくということでは審議会の意味をなしませんから、自由な判断を求めるようにせなければならぬと思います。
  114. 横路孝弘

    横路分科員 それと違うことを現実にはやっているわけですから、その辺のところも十分ひとつこれから考え直していただきたいというように思うわけです。  つまり、これから百年、二百年先の日本のいまの自然というものをどうやって守っていくのかというような、非常に重大なことを皆さん方お仕事になさっているわけです。そこで、こういう形で役所のメンツみたいなもので、道路をつくるとかつくらないとかいうような大事なことがきめられたのでは困るわけですね、大雪山の自然を守るという意味で。ぜひその辺のところをひとつお考え直していただきたいと思うわけであります。  それからなおもう一つは、この審議会のメンバー、今度の四月から一新されるわけですけれども、これもやはりイエスマンばかりじゃなくて——いろいろお話があるようですね。あまりイエスマンばかりじゃ困るから、いまのメンバーを二人ほどたとえばイエスマンじゃないのを選んでみたら、どうもそうじゃなくて、イエスマンばかりだったみたいな話というのが、環境庁の中でささやかれているような状況ですから、やはりぜひ、自然保護のいろいろな市民団体というものは全国にいまずいぶんたくさんあるわけです。そういうあたりからも十分人を入れて、大きな立場から発言できる人を、ぜひこのメンバーに加えていただきたいというように要望するわけでありますが、その辺のところ、そろそろメンバーの人選も進んでいるやに話を聞いているわけなんですけれども、基本的にはどういう方向でお考えですか。
  115. 三木武夫

    三木国務大臣 今度できる審議会のメンバーは、できるだけ広い視野で委員の選任をいたしたい。いままだ具体的に結論は出ておりませんが、そういう考え方で委員を選びたいと思っています。
  116. 横路孝弘

    横路分科員 そのできるだけ広い範囲ということの中には、役所ベースばかりじゃなくて、国民のサイドですね、そういう運動をやっている市民サイドもひとつ含めてぜひお考えいただきたいと思うのですが、その辺まで含めるお考えがございますか。
  117. 三木武夫

    三木国務大臣 参議院でも私申したのですが、各政党においても、いろいろこの人は適当であるというようなアドバイスも受けたいと私は言っておるくらいですから、広く国民の層から委員の選任をいたしたいと思っております。
  118. 横路孝弘

    横路分科員 それは社会党としても、いまの大臣のお話ですから、じゃ、そのメンバー、どういうメンバーがいいのかというのは、意見を申し上げますから、ひとつぜひそれも入れていただきたいと思います。それはひとつ大臣、約束をしていただきます。  次に、北海道はあちこちで林道を含めてずいぶん最近道路がよくなってきているのですけれども、ところが、この道路をつくったあととか、つくる過程の中で、これは大雪山の問題はちょっと離れますけれども、自然破壊がひどいのですね。私、この写真を少し持ってきております。     〔横路分科員、写真を示す〕 知床林道、これは林道になりますが、ともかく——そこからごらんになれるでしょうか。もう道路をつくって、完全に破壊されて、そのあとそのままなんですね。それはひどいでしょう。それは知床林道ですよ。道路は上のほうにありますね。全部道路工事したどろ、砂をみんな投げて、そのままになっているわけですね。ひどいところなんか、全部道路をあれするのに山を削りますね。削ったあと、緑のペンキなんか塗ったくっているところもあるのですよ。草を植えることができないようなところは。その辺のところを環境庁として、事前の段階で十分話をする。もちろんそこでがっちりチェックをしてもらいたいのですけれども、現実には一つ一つきちっとチェックすることもなかなかむずかしいだろうけれども、そういう現実にいまつくられている道路、つくりつつある道路、そうしてそのように自然を破壊しているような道路について、これは環境庁としてもきちんと指導すべきじゃないかというように思います。札幌を中心にした中山峠あたりでも、これはひどいものでありまして、その辺のところをぜひひとつ何とか行政として考えていただきたいと思うのです。
  119. 三木武夫

    三木国務大臣 実際に自然環境の保護ということは、全国民的な理解と協力が要る。末端のいろいろな工事まで環境庁としてチェックするということは、実際問題として不可能ですから、みなが、やはり工事に携わる者全体が環境というものを保全しなければならぬという、何か国民の意識の中に環境保全という強い考え方が定着しないとなかなかむずかしい面がありますが、われわれとしてはいろいろな行政上の権限も持っているわけですから、その権限をフルに利用して、環境の保全というものは、ただ事前ばかりじゃなしに、事後においてもできる限りそういう立場に立って今後指導してまいりたいと考えております。
  120. 横路孝弘

    横路分科員 それはつまり、国民の側は、むしろ積極的に公害防止とか環境保全ということで、運動としていまたくさんあるわけですから、問題なのはやはり企業のほうと行政のほうだろうと思うのですね。この問題については、行政のほうでは具体的に何か方針をお持ちですか。
  121. 首尾木一

    首尾木政府委員 山岳道路で自然の破壊の問題が特に多いといったような事例がございますので、そういう点につきましては、私ども全般の方針といたしまして、やはり今後自然の破壊されやすいような山岳道路につきましては、すでに計画路線としてありますものも、全体として見直して、不必要なものはこれを廃止していくというような方向でいきたいと思っております。  なお、現に工事中のものあるいはこれから工事をするもの、そういったものにつきましては、これは許可をいたします際に十分条件をつけておるわけでございますが、その条件が守られてないというようなものが間々あるわけでございます。このようなものにつきましては、たとえば石鎚スカイライン等におきましてすでにそういったような問題がございまして、これについては、復元の措置というものをきびしく指導いたしまして、県のほうでそういったようなことをやったというような事例もございます。その他復元あるいは緑化、それからたとえば、土砂の崩壊等につきましては、土砂の搬出といったようなものにつきまして、全体として環境庁では強くそれを指導をするというようなことをやっておるわけでございます。どうしましても、やはり現実に道路がつきますと、その道路作業のときに、現場におきましては、そういう自然保護の配慮ということについての工事側についての意識というものがまだ十分に徹底をしておらないといったような点もあろうと思いますので、このような点につきましては、建設省あるいは都道府県等に対しまして、関係部局のほうからも十分その点について注意をするようにということを、目下関係方面を通じましてやっておるところでございます。
  122. 横路孝弘

    横路分科員 そうすると、一つ確認しておきますけれども、大雪山の現地調査ということになると、雪の問題がありますから、ことし雪は少ないといっても、やはり六月から七月ぐらいじゃないとちょっと無理だろうと思うのですけれども、大臣行かれて、あとメンバーもまだ見ておられないようですから、行って、その上で結論を出す。結論を出すといっても、これはいま形は審議会のほうにげたを預けた形になっているのでしょう。ほんとうはこれはやり直しをしなければならぬ。ですからさっき言ったように、初めの段階で少しいいかげんなところがあるわけなんで、やり直しをしなければならないと思うのですけれども、それがいろいろ手続的に無理だとすれば、そういう方向でぜひこの大雪山の問題、十分現地を見た上で結論を出していただきたい。その辺のとこうを十分に調査をされることをお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  123. 三木武夫

    三木国務大臣 私もそういう考え方でおります。
  124. 横路孝弘

    横路分科員 最後に一つ、新潟のトキの問題でちょっとお尋ねをしたいのですけれども、先月の末に、いまのトキの鳥獣保護区になっているその範囲の中に、佐渡石産という株式会社だろうと思うのですが、採石の許可を新潟県知事がこれを行なっている。その報告、来ていますか。
  125. 首尾木一

    首尾木政府委員 まだ報告を受けておりません。最近そのようなことがございますので、新潟県庁に対しまして、その間の事情を説明するようにということを指示をいたしておる段階でございます。
  126. 横路孝弘

    横路分科員 このトキぐらいある意味では法律的に二重、三重、四重に保護されている鳥というのはいないと思うのです。それだけ貴重な鳥ですね。それだけ保護されていながら、なおかつその保護区の中で採石を認めてしまうというのは一体どういう神経なんだろうか。そこからごらんになれるでしょうか。——この赤いところがトキがえさを取りにいったり、あるいはトキの巣が確認されているところですね。ちょっと図面が遠くてわかりずらいかもしれませんけれども、この辺にもえさを取りにいっている。そのまん中にこの採石場をこれから認めようというわけですね。これは二月二十七日に県のほうで認可をしているわけです。これだけ保護されていながら、なおかつこんなことを無神経にやるということになると、日本の姿勢というのは国際的に疑われるのじゃないかと思うのです。したがって、これは県のほうでおやりになったことでありますけれども、環境庁としても、この辺のところはひとつ十分お考えいただいて指導していただきたいと思います。そのことを申し上げて終わりにしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  127. 三木武夫

    三木国務大臣 いまも局長から御説明いたしましたように、県のほうに対して報告を求めておるというわけでございますから、この種の採石等もなかなか自然環境の破壊というものを伴ってきておる場合が多いですから、今後十分注意をいたします。
  128. 横路孝弘

    横路分科員 終わります。
  129. 臼井莊一

    臼井主査 次に、近江巳記夫君。
  130. 近江巳記夫

    ○近江分科員 きょうは非常に限られた時間でもございますので、大阪空港を中心とした騒音問題、また時間がありましたら新幹線の騒音等について、お聞きしたいと思っております。  環境庁では、四十六年十二月二十八日に運輸大臣あてに、環境保全上緊急を要する航空機騒音対策について勧告をなさったわけであります。ところが、こうした勧告というものが非常に守られておらないという問題があるわけであります。時間とかそういうことについては守られたところもあるわけでありますが、たとえば、発着回数等におきましては全然減っておらない。したがって、夜このように十時ということになったわけでありますが、結局便数がそのように変わっておらないものですから、夜の十時前に集中をするというようないろいろな弊害も出ておりますし、あるいはまた八十五ホンをこえる場合は、防音上もできるだけ万全の体制を講じなければならぬ、こういうようにもなっておるわけですが、全然進んでないわけですね一長官からお出しになったそういう勧告が守られておらないということについて、長官としてはどういう考えをお持ちでございますか。
  131. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、勧告をいたしましたそのあと、深夜のほうの発着問題等、運輸省のほうにおいて十分こちらの言うとおりに聞いてもらった点はございます。ただ、総量といいますか、WECPNL八十五というものをきめましたものですから、先生指摘のように、ちょうど夕食時間どきに便数が重なるというような問題等が出てまいりました。こまかい点についていろいろと問題がございますので、なお、運輸省にその点について対策方いろいろ申し入れをしておる最中でございます。  そのほか、郵便機についても関係各省と相談をしておるところでありますが、総量的な押えをしますと、どうもそういう点が問題が出てまいりますので、いま環境基準をつくる準備をしておりますので、その環境基準ができます際においてまたこの種の問題について十分検討していこう、こういう態度でございます。
  132. 近江巳記夫

    ○近江分科員 少なくともこうした大臣の勧告というものについては、私は権威のあるものであると思いますし、住民も非常に期待をしておるわけであります。ところがそういう具体的な対策というものが、まあ個々的には若干実施しておるものもあるわけですけれども、全体として大きく前進していない。こういう点は、幾ら勧告を出しても守ってもらえなければどうしようもないわけです。ですから、その勧告の順守という点について、長官としてはどう考えておられるか、この点をひとつ長官にお聞きしたいと思うのです。
  133. 三木武夫

    三木国務大臣 勧告は守られなければ意味がないわけですから、勧告を出せば出しつばなしでなしに、やはりその後の状態も追跡して、どういうようになっておるかというものは絶えず実情を把握する必要があると思います。  いま局長からも申したように、航空機の環境基準というものについてはいま専門委員会で検討いたしておりますから、できるだけ早く環境基準を出してもらう。そういうことでないと、この間出しましたのは、緊急を要するということで暫定的な指針でありますので、今後は環境基準というしっかりしたものを出して、そして航空機騒音というものに対して対処をしてまいりたいと思っております。
  134. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それで、年度内に環境基準をお出しになるということは何回もお答えになっていらっしゃるわけですが、環境基準考え方というものは、やはりシビアにしなければ、これがゆるければどうしようもないわけです。そういう点で、この環境基準についてはでき得る限り住民サイドに立ってきびしくしてもらいたい、みんなそういう要望があるわけです。それについて、もちろん年度末の今月一ぱいということになっておるわけですが、長官としてはその環境基準設定にあたって、どういう決意で臨まれようとしておるのか、これについてお聞かせいただきたいと思います。
  135. 三木武夫

    三木国務大臣 伊丹なんかの場合は、飛行場をつくる場合の立地的な条件というものを今後考えなければいかぬと私は思うのですね。相当人口が集密しておる地帯に飛行場をつくるということは、騒音防止の上においてもなかなか障害がありますから、今後新しい空港をつくる場合には、それだけの立地的な条件というものを検討しないと、航空機の騒音というものはなかなか解消できない。しかし、伊丹はいますぐ移転というわけにはいかないわけですから、新空港ができるにしても、できるまでの間は少なくともやはり伊丹は利用しなければならぬわけでありますから、ああいう条件の悪い中で音源もこれは規制をしなければならぬし、この周辺の住宅に対してもこの騒音から守るための対策も講じなければならぬ、両々まっていかないと地元の人たちを騒音の被害から守ることはできませんので、そういう政策を併用しながら、騒音の被害をできるだけ最小限度に食いとめたいと思っております。しかしそのことは、非常に意味のないような環境基準ということではないので、やはり環境基準というものはきびしくきめて、そしてきめられた環境基準に合致するために、その対策等もあわせて併用して、その環境基準というものが守られていくようにしたいというのが私の基本的な考え方でございます。
  136. 近江巳記夫

    ○近江分科員 基本的に環境基準はきびしくするということをいまおっしゃったわけです。そういう点、今後、具体的に発表されるときも近いと思うのですが、その点は大いに期待をしておるわけであります。したがいまして、現実に関西にはあそこの空港しかない、そういう現状というものにひっぱられ過ぎないように、あくまでも住民の環境を守るという環境庁長官の本来のそういう使命に立たれて、そうして、シビアなそういう環境基準というものを設定をしていただきたい。これを特に要望しておきたいと思います。  それから、きょうは運輸省も来られておるわけでございますが、先ほど私が申し上げましたように、この時間が短縮になりまして、結局そういうように集中する時間帯というものが出てくる。こういう点から考えていきますと、当然時間帯がそのように短縮された以上は、飛行回数にしたって、私は減らすべきだと思うのです。いまだに四百四十便、そのうちジェット便はまあ二百六十便以下ということで押えておりますけれども、一向に減ろうとしておらない。こういうことは私は非常によくないと思うのです。ですから、まずそういう便数をそのように減らすべきである。またさらに夜間の飛行禁止時間ですね、いま十時ということになっておりますが、これをたとえ三十分でも一時間でも減らす、やはりそういう環境をあくまでも守るという姿勢が大事だと思うのです。運輸省はどう考えておりますか。
  137. 隅健三

    ○隅説明員 環境庁の基準に従いまして、われわれは午後十時から翌朝の午前七時までの間、夜間の郵便機を除きまして、発着を禁止いたしております。これは大阪国際空港においては厳重に守っておりまして、一分でも二分でも過ぎた場合には、全部禁止をいたしております。  いま先生指摘の九時から十時までの間に飛行機が集中するではないかというお話でございますけれども、大体九時から十時と、最後の一時間は受け入れの空港、すなわち、東京あるいは福岡のように限定をされまして、確かにジェット機の便数のほうがプロペラ機との割合では多いことは事実でございます。今後夜間の郵便機につきましても、郵政省の御協力を得まして、できるだけこれを少なくするようにいたしまして、また東京——大阪の便につきまして、今後いろいろの点について検討を加えていきたいというふうに考えております。
  138. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そういう抽象論では私納得できないのですよ。現実にいま四百四十便飛んでおるわけですが、ジェットが二百六十便、まあ大体二百五十便と思いますが、それをどのくらい減らしていく、そういう目標を立てておるのか。それは考えておりますか。郵便機を減らしていくのは、それはけっこうだと思うのです。だけれども、やはり一番困っておるのは、そういうジェットの便数あるいは総体のそういう回数、これなんですよ。これについてあなたは別に答弁してない。今後考えるというだけじゃだめですよ。
  139. 隅健三

    ○隅説明員 大阪の国際空港を発着するジェット、ことにジェット便だと思いますけれども、この点につきましては、これを減便に持っていきますためには、いろいろの対策総合されなければならないと思います。たとえば、現在エアバスと称します大型機の就航の問題がございますが、この点につきましては、地元の住民の皆さまの完全なる御了解をいただきまして、これを就航させた場合には相当の便数が減便になると思います。また、成田国際空港が開港しましたときには羽田の東京空港に若干の余力が出ますので、東京から九州あるいは四国に直行便を飛ばせまして、大阪におりる飛行機をできるだけ少なくいたします。こういたしまして、大阪の伊丹空港を離発着するジェット機をできるだけ少ない方向に、減便の方向に持っていきたいと思っております。  やはりこういう点、関西地区における航空需要というものは年々伸びてはきておりますけれども、現在ジェット機では、先生指摘のように二百六十便を最高限度として、それ以上の便数の増加を認めておりません。そういうことで、あらゆる方策をとりまして、大阪国際空港の騒音対策というものに処していきたいというふうに考えております。
  140. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そういう条件的なことで対策を立ててもらったら困ると思うのですよ。大型機につきましては、御承知のように大阪空港周辺というものは超過密なんですね。アパートであるとか文化住宅であるとか、おそらく人口密集度においては日本でも有数地帯だと私は思うのです。そういう危険性ということも考えておるかということ。この大型機にしたってこの前もどこかで事故を起こしていますね。そういう不安というものは絶えずあるわけですよ。そんな安易に大型機を乗り入れて、その交換条件として若干減らす、そういう案についてはこれは問題ですよ。そうじゃなくして、現在のそうした機種、そういう中においてもいかに減らすかということなんです。条件をそういうように拡大して引き合いに出すということは、私は賛成できないと思う。だから現在の機種の中で減らしていく。これは大事だと思うのです。この点についてもう一度答えてください。
  141. 隅健三

    ○隅説明員 いままでお答えいたしましたとおり、大阪におきます航空機の利用者というものはやはり相当強い勢いで増加をしております。これに対して、われわれといたしましても利用者の利便ということは一応は考えますけれども、また周辺の住民の皆さま方の騒音ということにつきましても、この対策は鋭意進めていかなければなりません。現在の機数あるいは現在の飛行機の中でどのように対処するかというお答えでございます。たとえば幹線でございます。東京−大阪便というものについて、われわれといたしましてもさらに検討を加える余地があるのではないかということを考えております。なおその他につきましてジェットあるいはプロペラの——プロペラ機の利用ができるところはプロペラ機の利用をしていくということで、騒音対策を行なっていきたいというふうに考えております。
  142. 近江巳記夫

    ○近江分科員 全体の回数を減らす、ジェット機のそういう回数を減らす、あるいはまた夜間の、朝の問題もありますが、特に夜間の時間をさらに短縮する、こういう課題に対して、ほんとうにこういう環境を守り、住民を守るという立場に立つならば、真剣にその課題に取り組んでもらわなければ困ると思うのですよ。いつも平行線をたどるようなことではいけないと思うのですね。やはり運輸省も真剣に考えるならば、また環境庁からもこういう勧告が出ているのです。勧告の中身だってあなたの頭の中に全部入っているはずですよ。そうでしょう。回数だってみな入っているじゃないですか。そういうことにおいて真剣に運輸省は受けとめて、一歩一歩前進しなければいかぬと思うのです。その点を十分実行できるようにやっていただきたいと思うのです。  それから特に勝部地区等におきましては、鼻血を出したり、非常にそういうような悪影響がたくさん出てきておるわけです。これは結局航空機騒音あるいは排気ガスのせいじゃないかといわれておるわけですけれども、そういう人体に対する影響があると本人の申し出があった場合は、国は、これを国の費用調査すると同時に、事実それが立証されたときは、政府はそれに対して責任を負って補償する、こういうことが大事だと思うのです。これについてはどう考えておりますか。
  143. 隅健三

    ○隅説明員 伊丹空港、特に豊中地区の周辺に住んでおります皆さま方の人体の影響の問題でございますが、この点につきましては、航空局といたしましても、慶応の柳沢先生に、大気汚染調査の実態調査をお願いをいたしました。あるいは四十七年の二月に、人体の影響調査を東大の大島先生であるとか岡田先生にお願いをしたことがございます。大阪におきましては、ことしの三月にまた予備調査をお願いしておりますが、最近までに、顕著なる問題といたしまして鼻血の問題がございました。  これは、先生十分御存じの、四十七年の秋ごろから、豊中市におきまして、幼児及び老人、婦人を中心といたしまして、鼻血がだいぶ出るということでございまして、これは阪大にお願いをいたしまして、鼻血の出る方全部、あるいは幼児、主婦の方たちを阪大で身体検査をしていただきました。また、十月には、成人の集団検診もお願いをいたしまして、この点については、航空局といたしましては、航空公害防止協会等を通じまして、できるだけの調査をいたしております。  この間につきまして、航空機騒音あるいは大気汚染、こういう症状が出られました場合との関係がつきました場合には、深くこれを善処していきたいと思います。ただいまは人体の調査をお願いをしておるということで、お申し出があった場合にはできるだけ御満足がいくように調査を進めております。
  144. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それから、この補償問題にしましても、地主とか家主だけの移転補償ということになっておるわけですが、借地借家人につきまして、自由に地主や家主の同意がなくとも移転できるような対策というものは、すみやかに講ずる必要があると思うのです。これについては、どう考えていますか。
  145. 隅健三

    ○隅説明員 移転補償の問題につきまして、先生指摘の借家人の問題が、ことに大阪空港の周辺では一番むずかしい問題でございます。法律的にもいろいろの問題がございます。そこで、われわれといたしましては、そのアパートなりの住居の方と一緒に移っていただいて、そこのアパートを撤去するというのが一番いいのではないかということで考えております。  四十八年度以降のわれわれの考えております騒音対策におきまして、やはり共同住宅と申しますか、公営のアパートを地方公共団体にお願いいたしまして、そこへそろってお移りをいただくというのが、一番実現可能性のあるものではないかというふうに考えております。  また、移転補償その他につきましての法律関係につきまして、四十九年度以降に、現在われわれもこの検討を進めておりますが、何らかの形でこの借家人の問題について一歩でも前進した対策をとりたいということで、鋭意検討中でございます。
  146. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そうすると、地方自治体のほうとは、そういう話を煮詰めているのですか。もう一度そこのところを具体的に話してください。
  147. 隅健三

    ○隅説明員 お答えいたします。  これは煮詰まったかというお話でございますけれども、われわれといたしましては、地方公共団体あるいは住宅公団のようなところにわれわれからの資金をお貸しいたしまして、それで御協力をいただく。われわれがただ頭を下げてお願いするというだけではなくて、われわれが大阪周辺機構に今度の四十八年度の予算で十五億円の無利子貸し付けをいたしますが、そのようにして資金的に御協力は申し上げるということで、できるだけ優先的にそのような共同住宅の活用をお願いしたいというふうに、目下地方公共団体とお話を続けておるところでございます。
  148. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それから移転補償地域拡大と、その制度の充実それからテレビ受信料、これの適正化、それから騒音防止電話の設置の拡大、こういう点についてはどう考えておりますか。
  149. 隅健三

    ○隅説明員 今度の法律改正をお願いをいたしております、これにおきまして、われわれといたしましては移転補償の区域を拡張するように計画をいたしております。  それから騒音電話の取りつけでございますが、この点につきましては、航空公害防止協力を通じまして毎年少しずつではございますが、台数をふやしております。この点についても、御要望の向きにつきましてはできるだけ応じるように、航空公害防止協会を指導いたしております。
  150. 近江巳記夫

    ○近江分科員 テレビ受信料が入っていないですよ。
  151. 隅健三

    ○隅説明員 テレビの受信料につきましても、予算的に昨年よりもだいぶふやしておりますし、この点につきまして、地元の皆さま方にも完全に満足をいただけるかどうかは別でございますけれども、いままでやっておりましたよりも相当地域拡大をいたす予定にいたしております。
  152. 近江巳記夫

    ○近江分科員 もう時間があまりありませんので、あと新幹線の問題についてちょっとお聞きをしたいと思いますが、この新幹線の暫定基準を環境庁は出しておるわけですが、これも非常に数値が高いわけです。こういう点、今年度末で正式なものをお出しになろうかと思うのですけれども、これをもっと環境を守るという立場で低くする、そういう基本的な考えについて一つはお聞きしたいと思うのです。  それから山陽新幹線と東海道新幹線、山陽新幹線の場合は一年以内に大体八十ホンにまで押えるだけの工事をする、それから東海道新幹線については今後三年間かかる、東海道新幹線の場合にはすでに走り出してからもう何年も苦しんできているわけです。ですから東海道新幹線も山陽新幹線と同じぐらいの期間、もっとそれ以上に速めてやるのが私は当然だと思うのです。山陽新幹線も一年もかかるということはかかり過ぎですし、もっと工事を短縮する対策を立てる必要がある、この二点について環境庁長官にお聞きしたいと思います。
  153. 三木武夫

    三木国務大臣 新幹線の問題は、新幹線をつくるときに、騒音対策というものが、これだけの大きなウエートを占めなかったときであります。これからつくっていく新幹線というものは、当然にいろいろな工事の上において相当ウエートを占めてくるわけでありますので、その一つの暫定基準というものは低いではないかというお話もいろいろあるわけですが、これはやはり時間をかさなければならぬ。それで、いま御承知のように、音源対策として防音壁の問題であるとか、あるいは車両あるいは線路の改良であるとか、あるいはまた被害対策としては、ひどい場合には民家の移転というものも伴って防音の施設をしておるわけでありますが、いまの基準というものを暫定基準で満足しておるわけではないので、いま航空機の環境基準というものが先になりますが、それが済めば新幹線の環境基準というものも取り組みたい。そのときには、相当やはりそのときの状態のもとで可能な範囲内においてきびしい基準を出して、その基準を中心として騒音防止施策を進めていこうと考えております。
  154. 住田正二

    ○住田政府委員 ただいまの御質問の第二の、東海道新幹線の騒音対策が三年かかるのは長いではないかという点についてお答え申し上げます。  山陽新幹線のほうは、初めから騒音対策ということでいろいろな配慮をいたしておったわけでございますが、それにもかかわらず、今回の勧告で八十ホンをこえるところがあるということで緊急の対策を講ずるわけでございますが、個所が非常に少ないということで、大体一年以内にでき上がるという見込みを立てております。それに対しまして東海道新幹線のほうは、残念ながら当初から騒音対策ということについてあまり配慮されてないということで、今回の環境庁の勧告を実施する場合には、相当の工事量になるわけでございます。  騒音対策の中身もいろいろございまして、無道床鉄げたを全部有道床鉄、げたにかえるとか、その他、現在の防音壁が非常に低いものを高くするとか、いろいろ工事があるわけでございます。御承知のように、新幹線の場合には昼間走っておりますので、夜間の新幹線の通らない時間をとらえて工事を進めるということになりますので、金を幾ら使いましても短期間にやるということが実際上不可能であるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、人家の多いところを先に取り上げまして、そういうところから解決して、大体三年以内には騒音対策を実施したいというように考えているわけでございます。
  155. 近江巳記夫

    ○近江分科員 もう時間がないから終わりますが、とにかく三年ということをおきめになっておられるわけですけれども、できる限りこの期間を短縮をしていく、しかも、そうした人口密集地から一日も早く工事を進めていく、もう特にこの点は要望しておきたいと思います。  また、環境庁長官におかれましても、そういう点については特段の監視をしていただいて、いろいろとまた指示をお願いしたいと思うのです。この点、環境庁長官の決意をお伺いして終わりたいと思います。
  156. 三木武夫

    三木国務大臣 最近騒音の被害というものは、非常に生活環境というものに対して障害を与えておりますから、御趣旨のような考え方でこの問題と対処してまいりたいと思います。
  157. 近江巳記夫

    ○近江分科員 終わります。
  158. 臼井莊一

  159. 神門至馬夫

    ○神門分科員 最初に環境庁長官にお尋ねをしてみたいと思いますが、先ほど他の分科会で、休廃止鉱山に係る鉱害の問題についていろいろと通産省に尋ねました。私は島根県の出身でありますが、三十二ぐらいの閉鎖鉱があります。その中で笹ケ谷鉱山は、非常に大規模でしかも環境基準以上の砒素あるいは食品基準以上のカドミ、こういうようなものが検出されまして、地域全般に大問題になり、国会でも四十五年以来この問題が取り上げられてきております。それで、ここでお願いをしたいことは、通産大臣にいま尋ねたのですが、通産省のほうとしてはその鉱害源に対して、四十八年度から直ちに根絶のための工事をひとつ着工しよう、こういうことが一つ非常にホットなニュースとしてきょうの分科会で答弁をもらいました。それで、そういうような緊迫した状況、大規模なものですから、ひとつ調査団を派遣するように中曽根大臣に国務大臣として要望したわけですが、それは環境庁の所管にかかわることで、環境庁長官にひとつ積極的に、いわゆる総合的な調査団の派遣については働きかけよう、こういうことをいま二十分前に約束をしたところなんです。これは、ずっと前から、すでに陳情という形で当該地元の町及び県のほうから上がっておると思いますが、この規模等につきましては、大規模のものでなくてもよろしいから、そのような地元としては画期的な鉱害源に対して、国の責任において工事を行なうというような状況が生まれてきました。そのほかにたくさん汚染農地の問題あるいは水の問題あるいは公害病の問題、こういう環境全般にかかわる問題がございますので、ここで長官としては、調査団をここに派遣をするようにしていただく意思はないか。していただきたいと思うが、どうですか。
  160. 三木武夫

    三木国務大臣 笹ケ谷鉱山については、昭和四十六年度から御承知のように調査をしておるわけです。今年度も引き続いて水質調査とか土壌の調査をやっておるわけです。これは近く調査の結果が出ることになっておりますから、この調査の結果を待って対策考えてみたい。必要があれば調査団の派遣も考えてみることにいたしますが、まず四十七年度の調査の結果を待ちたいと思っております。
  161. 神門至馬夫

    ○神門分科員 あのような大きな問題になりましたからいろいろと調査をなされておりますが、その結果によって、年を越して新しい年度になってから調査団を派遣をしてもらうように、まあ結果の問題についてはいろいろ数字が上がってくるわけですから、調査団を派遣するかどうかということについての基礎的なものについては変わらないと思うので、ひとつぜひともここで調査団を派遣する、こういうことを約束をしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  162. 三木武夫

    三木国務大臣 いま調査をしておりますから、その結果が四十七年度内に出るわけですから、そういうことも踏まえて、調査団の問題も検討するようにしたいと思います。
  163. 神門至馬夫

    ○神門分科員 それなら前向きで調査団の派遣について検討を加える、このように確認してよろしゅうございますか。
  164. 三木武夫

    三木国務大臣 前向きに検討いたします。
  165. 神門至馬夫

    ○神門分科員 それでは次に——先ほどは飛行機あるいは新幹線の騒音問題について、きわめて都市的な問題について話がありましたが、私は全国で最も過疎化のきびしい地域でのイノシシ公害あるいはサル公害というふうな問題について話をして、そして過疎の実態を知ってもらいたい、そしてこれらの対策考えていただきたい。きわめて変わった質問をしてみたいと思います。  四十二年度から国会に出ておりました島根県の過疎立法の問題が、これが超党派的に議員立法で四十五年に成立を見ました。私もその中心になってこの立法化をはかってきたわけです。それらの基準に伴って、いろいろといわれましたように、過疎、過密というものはまさに高度経済成長政策が生み落としました一卵性双生児であり、裏表の問題であって、そのような点を、両極のこの矛盾を何とかしなくちゃならぬ、こういうことから超党派的なこの過疎立法というものが生まれた。しかしその法律が生まれましたけれども、今日の状況では過疎化の方向というものはとまりません。そうして、はなやかに登場した日本列島改造論、その対象にも中核都市そのものはあっても、実際の問題としての過疎化に悩んでいる地方の問題としては何らスポットが当たっていないわけであります。  そういうような状況から見まして、過疎は現在全国で千四十八、全国市町村の三割に及んでおります。国土の四割が過疎地域、こういう中で、相も変わらず高度経済成長政策の中で、冷たく見捨てられておるわけであります。  特に最近、この過疎化を進めました原因としての木炭がだめになるとか、あるいは米価が抑制される、減反というものがさらにその後追い打ちをかけての過疎化が進んでおります。島根県内にありますところの過疎の激しい町村においては、この十年間で半分になっておる、そして二十年先には三人に一人が六十歳以上になるであろうといわれる日本の年齢構造、それがすでに、たとえば島根県の匹見町等においては、三分の一が六十歳以上というこういう状態になっておるわけであります。そういうように過疎問題というのが非常に深刻な状況を起こしておる。まさに環境の激変に伴うところの精神的なもの、あるいは生活様式すべて混乱を起こしておるわけであります。  こういうような中にあって、実はこのイノシシとサルがさらに人間を追い出すというような問題が出ております。先日もこのイノシシ公害というふうな問題については所管はどこだろうか、こういうふうに尋ねますと、東京ではイノシシというのは動物園にしかいない、こういうような認識ですが、島根県では国道を走っているという。こういうような地域の格差がございます。人間がいなくなって、イノシシが人間の住む地域まで進出してくる。そしてそのイノシシというのが、あるいはサルそのものがむしろ人間がおる家のまわりに来ます。もちろんその住宅のまわりに来ますと、人間自身が家の中に入って戸を締める、自由気ままに農作物を荒らす、こういうような問題があちこちに起こりまして、悲惨な過疎化現象の一要因になっているというこういう問題がございます。  これは新聞等で報じられたこともありますから、あるいは環境庁長官は熱心でありますから、御承知かと思います。そういうようなことは、こう話をしておりますと、笑い話のようでありますが、非常に当該地区の農民としては、まさに深刻な問題でありまして、やられてしまいますと、一年間の収穫は全部吹っ飛んでしまいます。そして夜行性の動物でありますから、待ち伏せをしてとろうとしてもなかなかとれない、こういうようないろいろな問題があるし、さらにこのイノシシをとるために、昨年島根県では二、三人の人間が死んだと思うのであります。鉄砲で待ち伏せしておる人をイノシシと間違えて相手を撃ち殺すというような問題すら起こっておるのであります。こういうような状態、あるいはこれはサルの問題にしても同じことでありますが、そこで、特に私が国会でこのような問題を出しますのは、先日、二十七日に、農協の代表団が来まして、ぜひともひとつ国会環境庁長官にこの話をしてくれ、それでその実態を政府のほうでも知っておってくれ、いまのように飛行機やら新幹線の問題は政治の舞台に出るけれども、こういう公害の問題はまさに消えいく集落の悲しみとしてしか話にのっておらぬ。こういうような非常に切実たる集団での県選出議員に対する陳情があったわけです。ですからそういう意味で、ここで特にお願いをしておきたいと思いますし、長官のお考え等を聞いておきたいと思うのでありますが、それらの舞台はもちろん海ばたではない。中国山脈の山沿いにずっと沿う山村部落の問題でございます。  そういうような状況の中で、もう背に腹はかえられませんから、そこらの地域の場合、特に農協が中心になって、イノシシのしっぽを持ってくると農協が千円出す、農業共済が千円出す、市役所が千円出して、計三千円をイノシシをとったというあかしのしっぽに払って奨励している、こういう事実も言っております。いかに深刻であるかということを御承知いただきたいと思うのであります。  そしてここで具体的に問題になってきますのは、そこに集まりました農民代表や農協の代表が言っておりましたことは、いまはイノシシの肉がもう売れないというわけです。夏はくさいし、冬でもみそだきというようなものも、もうかたくて、今日の現代人の口に合わない、こういうようなことで、それをとるためにはハンターに頼まなければいけない。いわゆる猟友会、狩猟会等に頼むのでありますが、なかなかいい顔をしないから、結局一日に三千円くらいの金を出してそれを雇わなければいけない。ところが雇ってようやく来てもらうためには、禁猟期間あるいは禁猟区域では狩猟許可を求めなくてはならない。その許可を得るのに、窓口がいろいろと機構改革等によってますます遠くなって、生活の苦しいこのようなしいたげられた農民自身が、その手間を省いて許可を求めに一日つぶしていかなくちゃならない、こういうことで、せっかく許可を得ても、二週間しかその狩猟期間がもらえないというわけです。そういうことで、またハンターを頼むとかいうような手続で一週間を過ぎてしまって一週間しかない。そういうことではとてもイノシシ退治というふうなものはできない、こういうことで、何とかひとつそういうような状況のところには、許可申請手続を簡素化するような方法はないものか。これはもちろん地方自治体にかかわる範囲の問題かとも思うのですが しかし法律に基づくものでありますから、環境庁長官は、おそらくこの島根県ほどではなしに、聞いてみますとあちこちで問題があるようであります。こういうような問題について、この行政の範囲内においてそのような手続を簡素化していく、簡単に取得できるというような措置を講ずる方法はないのか、あるいは二週間でなしに、もう少し現地の状況等を考えて許可期間というようなものを長くする、実効をもたらす期間にする、こういうようなものはないのか、まずこの二つについてお答え願いたいと思います。
  166. 首尾木一

    首尾木政府委員 有害鳥獣の駆除ということで都道府県知事が許可を行なうわけでございますが、ただいまその許可の実施につきましては、島根県の場合でございますと、県内に七カ所ございますが、総合事務所に権限を委任して、おろしておりまして、そこで許可を受けるということになっております。  それから期間の問題でございますが、ただいま先生二週間というようなお話でございましたけれども、これは鳥獣保護区のような場合には、あまりに期間が長くなりますと、他の鳥獣への影響といったようなことも考えられますので、一応期間を短縮するというような形でやっている場合が実際問題としてかなりあるのではないかというふうに考えておりますが、別段二週間に限っているわけではございませんので、そういったような点では、実情に即しましてこれをやっていくというようなことを私でも今後県に指導をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  167. 神門至馬夫

    ○神門分科員 農民としては、まさにそのような環境保全なり鳥獣を保護するというものが、綱吉の生類憐みの令というようなものにひとしいものだというぐらい生活に追われて考えておりますので、これはもちろん県のほうでもいろいろ考えておるでしょうけれども、この前上京してわざわざそのことを陳情する、あるいは農協大会でそれを報告するというような状況でありますので、環境庁のほうからも適切な指導をひとつお願いをしたいと思います。  それから冨山県等については、そのような問題について何か効率的な捕獲手段、捕獲器具というふうなものを考え出した者は、県が奨励金を出すというふうなことをやっておるようでありますが、この鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律というのは、むしろ器具を制限していこう、それらの鳥獣を守っていこうという立場での立法なんで、しかし、こういうようなもうすでに有害鳥獣になっているのですから、これらについては国がむしろそういうふうなものについて捕獲器具を積極的に考え出してくれないか。鉄砲ではいまのような悲惨な状態も出ておるのですし、こういうような要望もそこで切々と訴えておりましたが、これは環境庁の所管にかかわることとはちょっと違うのですが、いかがお考えですか、お尋ねしたいと思います。
  168. 首尾木一

    首尾木政府委員 お話にございましたように、むしろ環境庁といたしましては、捕獲の問題につきましては、従来のいわゆる残酷な形での捕獲の器具というものにつきましては、これを禁止をしていっておるというような状況でございます。なお、しかし今後の問題といたしまして、お話のような問題につきましては十分念頭に置きまして、鳥獣保護行政を進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  169. 神門至馬夫

    ○神門分科員 たとえば、具体的に私が申し上げましたような保護というような立場からの器具の使用ということだけでなしに、積極的にそれを捕獲するというような立場での行政指導をも配慮していく、こういうことでございますか、その辺を明確に……。
  170. 首尾木一

    首尾木政府委員 ただいま申し上げましたのは器具の点でございますけれども、私どもといたしましては、鳥獣保護行政は、やはり今日のわが国の自然環境の構成をしておるものといたしまして、鳥獣が非常に重要な役割りといいますか、地位を持っておりますので、鳥獣保護行政をさらに徹底をしてやっていきたいと考えておるわけでございますが、しかし、一方におきまして、そういったような有害鳥獣といいますか、そういうものによります農作等の被害の状況というものは、これを放置しておくことはできませんので、やはり鳥獣の保護と同時に鳥獣の管理といいますか、そういう問題につきまして、よく調整をとりながら行政を進める、かような考えに立っておるわけでございます。
  171. 神門至馬夫

    ○神門分科員 それでは、そういうふうなことをひとつ期待して、実情に合った行政措置をお願いをしておきたいと思います。  長官に最後に、私ちょっと前置きを長く申し上げましたが、ずっと過疎問題をほとんど手がけてきておりました私でありますが、こういうような実態は、いまは産業問題、生活問題というふうなことには触れませんが、十分御認識いただいて、過疎化対策について、ひとつ積極的な政府の指導なり措置を、あるいは経済的措置をしていただく、こういうような決意のほどをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  172. 三木武夫

    三木国務大臣 イノシシの話は私も聞いておったのですけれども、農家の方々が、そのために駆除の途中で犠牲者も出たというお話、初めて聞いたわけです。何か過密地帯と過疎地帯というものの極端な開きのお話の中にもよく出てきておる。日本も、もう少し均衡のとれた開発をしないといかないなあという感を深くしたわけでございます。  環境庁は鳥獣の保護という立場で、いまのお話はつかまえろという話で、駆除のお話であって、そういう面においては非常に特殊な例ですから、そういうので地域的特殊性がありますから、大幅に権限は知事に委譲してあるのですよ。知事がいろんな点で権限を弾力的に運営することは可能ですから、県とも連絡をとりまして、そしてそういう農家の農作物の被害等を少なくするような方法は講じていくようにしたい。しかし、御質問の根底にあるものは、過疎問題というものがそういう状態にあるのだということは、今後の国土開発の上において、われわれが頭に入れなければならぬ点だという感を深くいたしたわけでございます。
  173. 神門至馬夫

    ○神門分科員 それでは質問を終わりますが、いま私がこのようなイノシシ公害、サル公害の話を申し上げましたのは、長官がおっしゃるとおりに、日本のきわめて両極化をますます深めるような今日の政治経済そのものの根底をひとつ改めてもらう、こういう一つの例を申し上げたのでありますから、国務大臣としてよろしく今後の政治に反映させていただくようにお願いして質問を終わります。
  174. 臼井莊一

    臼井主査 次に野間友一君。
  175. 野間友一

    野間分科員 長官にまずお伺いしたいことは、去る二月の十四日の瀬戸内海環境保全の知事と市長会議、ここに出席されまして、十項目にわたる目標を提示されておりますけれども、これはもうのっぴきならぬところまで追い込められた今日、おそきに失するというふうに私は考えておりますけれども、それにしても、たとえば新規の埋め立てば当分やめる、事業が進行中のものも再検討する、あるいは工場の新増設には厳重な規制を加える。その他オイルタンカーの規制等々、十項目にわたって目標を示されておりますけれども、これは事実でございますか。
  176. 三木武夫

    三木国務大臣 私は瀬戸内海をきれいにしたいと思っておるのです。ああいういろいろなすぐれた自然環境を持っておるようなところは、日本国民財産として、これをきれいなものとしてわれわれの次の世代に受け継ぐ責任を持っておると私は考える。そのためには、これは環境庁で幾ら力んでみても、瀬戸内海の沿岸の地域の人たちが、ひとつ一緒に瀬戸内海をきれいにしようではないかという合意といいますか、熱意というか、そういうものができなければ目的を達成できない。ところが、瀬戸内海の沿岸の各県には、やはり南北問題みたいなものがあるのですよ。非常に開発の進んだ県もあれば、開発のおくれておる県もあって、したがって、開発のおくれておる県はもう少し開発をしたいという気持ちを持っておるわけですから、私が考えつく十項目ぐらいの、いま言ったような点について、沿岸の各県の合意が得られて、そうだ、いろいろ地方的な利害を越えて、そしてやろうということでなければ、これは実際問題として具体化されないから、こういう十項目について忌憚のない意見を聞きたいということで切り出したわけでございます。     〔主査退席、塩谷主査代理着席〕  そうでないと、いろいろ議論をいたしましても、何かその議論というものが宙に浮く可能性がありますので、具体的な問題の提示として私が十項目を出したことは事実でございます。
  177. 野間友一

    野間分科員 そうしますと、もう一度確認をいたしますけれども、今後瀬戸内海海岸の埋め立てはやめる、同時に、進行中の埋め立て計画を再検討する、このことについては、環境庁長官としてそういうふうに目標を示された、これは事実とお聞きしていいわけですね。
  178. 三木武夫

    三木国務大臣 埋め立てを全部やめるという——いろいろな埋め立てについても、必ずしも公害企業を誘致しない、公害防止のものも起こってくるでしょうし、全部ストップということは現実に沿わない面もありますが、少なくとも新規の埋め立てというものはこれを抑制する、こういう態度をとらなければならぬし、現に埋め立てておる地域についても、その土地の利用については再検討を加えるぐらいのそういう態度が必要であるという考え方は、私の変わらない考えでございます。
  179. 野間友一

    野間分科員 同時に、そのときに提起された中で、特に石油それから鉄それからパルプ、これなどを、公害発生型の企業の進出を厳重に規制する必要がある、こういうふうに述べられたと各社は報道しておりますけれども、これも事実ですね。
  180. 三木武夫

    三木国務大臣 いま御指摘のような企業は、公害が発生しやすい企業であることは事実でございます。
  181. 野間友一

    野間分科員 私がお聞きしているのは、特に石油、鉄、パルプなどをおあげになって、これら公害発生型の企業の進出を厳重に規制する必要がある、こういうふうに述べられたと報道がされておりますので、その点について事実かどうかお伺いしておるのです。
  182. 三木武夫

    三木国務大臣 一々企業の名前、種類をあげたかどうか私記憶していないのですけれども、いわゆる今後においての新しい工場誘致の場合には、いろいろ公害の発生しやすい企業というものは抑制することが好ましいという考え方を持っておるものですから、あるいは話の途中においてそういう問題に触れたのかもしれません。
  183. 野間友一

    野間分科員 長官も、いまあげた石油とか鉄鋼とかあるいはパルプ、これらが公害を発生する、そういう非常に国民からきらわれると申しますか、公害発生型の企業であることはお認めになりますね。
  184. 三木武夫

    三木国務大臣 そのように考えております。
  185. 野間友一

    野間分科員 それから、出席知事は十一知事、その中には大阪あるいは兵庫、大分、和歌山、こういうところの知事が出席しておるのは記録上明らかでありますけれども、さらに長官会議のときにあいさつされた中で、「日本の粗鋼生産の四三%、石油精製の四〇%が瀬戸内海で行われているという現実を直視しただけでも、」こういうあいさつの要旨を環境庁のほうから私ども入手したのですけれども、この粗鋼生産の四三%あるいは石油精製の四〇%、この中には和歌山の東亜燃料をはじめとする石油三社、鉄鋼でいいますと住友金属の和歌山製鉄所、これらが入っておることは事実ですね。
  186. 長岡安誠

    ○岡安政府委員 入っていると思います。
  187. 野間友一

    野間分科員 そこで、瀬戸内海とは・ということについてお聞きするわけですけれども、瀬戸内海については、漁業法の百九条に定義がございますけれども、これによりますと、百九条の二項でもって、「「瀬戸内海」とは、左に掲げる直線及び陸岸によって囲まれた海面をいう。」ここには三つございまして、一つは、「和歌山県紀伊日の御岬燈台から徳島県伊島及び前島を経て蒲生日御岬に至る直線」こういう法規がございますけれども、長官のおっしゃる瀬戸内海は、この漁業法百九条の瀬戸内海の範囲と同一だ、こういうふうにお聞きしていいわけでしょうか。
  188. 長岡安誠

    ○岡安政府委員 瀬戸内海とは何かというのは、それぞれ漁業法なら漁業法なりの目的でもって地域の限定がなされたというふうに考えております。私どもが瀬戸内海問題を調査研究する場合には、やはり環境の汚染という立場から調査研究対象にいたすわけでございますから、必ずしもその漁業法の規定します範囲とは直接の関係はないというふうに考えております。
  189. 野間友一

    野間分科員 そうしますと、先ほど聞きましたように、私がお聞きした粗鋼生産の四三%、あるいは石油精製の四〇%、この中には、和歌山の北中臨海工業地帯の石油三社、あるいは住友も入っておるわけです。ですから、当然長官としては、いま申し上げた漁業法にいう瀬戸内海の範囲、これらを前提として述べておられるというふうに考える以外にないと思うのですけれども、いかがですか。
  190. 長岡安誠

    ○岡安政府委員 先ほど長官のお話の中にございました粗鋼生産その他に占めます瀬戸内海の地位というものは、私どもはとりあえず関係のところの粗鋼生産なりその他の生産高をとりまして、日本全国において占める地位をあらわしたにすぎませんわけでして、今後瀬戸内海についていろいろの種類の対策を講ずる場合には、あらためてどの地域対策対象にするかというものはきめてまいりたい、かように考えておるわけでございます。     〔塩谷主査代理退席、主査着席〕
  191. 野間友一

    野間分科員 私がお聞きしておるのは、長官のあいさつの中で一応こういうパーセンテージが出ているわけですね。しかも、この中に、和歌山のいま申し上げた企業が入っているということになると、長官のあいさつの前提として、私が先ほど申し上げた漁業法の、和歌山の北中、これも含まなければ、この中に入らないので、長官はそういう前提であいさつをされたのじゃないか、こういうふうにお聞きしているので、長官お答え願いたいと思います。
  192. 三木武夫

    三木国務大臣 いろいろと線を地図の上で引いて話したわけではないのですが、瀬戸内海をとにかくきれいにしたいということで、それに対して重大な関連を持っておる地域は頭に入れた私の話であったことは、これは当然のことだと思います。
  193. 野間友一

    野間分科員 そこで、具体的に、和歌山の事情について多少お聞きしたいと思いますけれども、和歌山県のいわゆる北中、いま申し上げた住友金属の和歌山製鉄所、それから東亜燃料、丸善石油、それから富士興産、こういう石油精製工場、さらに関西電力の海南の火力発電所、まさに鉄鋼と石油、電力、これは国民公害企業として最もきらう、こういうものが密集しておるわけですね。そしてこれらの埋め立てのために、いまや美しい海岸美が全く破壊されておる。さらにその上に、住友金属では二百四十三万平米、それから丸善石油は百五十五万平米、その他具体的な数字はわかりませんけれども、これらと匹敵する埋め立てを東亜燃料がいま計画をしております。  そこで、住民の中で、こういうような埋め立ての被害をかぶっちゃ困る、生活環境あるいは自然環境が全く根底から破壊されてしまうということで、いま大きな反対運動が盛り上がっておりますけれども、長官の十四日のあいさつでの趣旨から考えまして、和歌山のこの種のいわゆる企業の埋め立てについても当然規制の対象になる、こう考えざるを得ないと思うのですけれども、いかがですか。
  194. 三木武夫

    三木国務大臣 瀬戸内海の問題については、いろいろ特別立法などの検討が各政党間にも行なわれておるし、われわれとしても瀬戸内海浄化のためにそういうものが必要なのかどうかということを検討しておることは事実であります。したがって、そういう場合には何らかの規制の措置というものが考えられるわけでありまして、現在の法制上においてはいろいろな審議会、港湾審議会等において埋め立ての問題などは検討されることになっておりますから、私の申したのは全般として瀬戸内海の浄化のためには埋め立てはできるだけ抑制することが好ましいと言ったわけでありまして、現在の法制のもとにおいてはここにおいて検討されるというたてまえになっておることは御承知のとおりでございます。
  195. 野間友一

    野間分科員 ですから、環境庁長官としては、先ほど申し上げたようにあいさつの趣旨あるいは提示された十項目の趣旨、これに従って各地方自治体が規制するのが望ましい、あるいは規制すべきだ、こういうふうに各社の新聞なりあるいは論調からうかがわれるわけなんで、そういう意味からいいまして、各地方自治体が審議会をつくってあれこれするのはそれとして、長官つまり政府としてはそういう方針でこれから臨まれる、こういうふうに理解するのは当然だと思うのですけれども、その点はどうですか。
  196. 三木武夫

    三木国務大臣 瀬戸内海、これを浄化しようとするならばそういう点にも触れざるを得ないという問題を提起したわけでありまして、これがいろいろな各方面のこういう問題についての理解あるいは合意が生まれて、そして規制ということの問題が具体化するわけであります。私としてはできるだけ抑制するという方針が好ましい、こう考えております。
  197. 野間友一

    野間分科員 さらに念のためにお聞きしますけれども、合意と申しますのは各地方自治体あるいは知事との合意という趣旨だと思うのですけれども、私がお伺いしたいのは、長官としては、いま申し上げたような方針で臨む、それに対して各知事あるいは市長との間に合意を生むことが大事なことだ、こういう趣旨で発言されておるわけですね。そうですね。
  198. 三木武夫

    三木国務大臣 私はこれは極力抑制することが好ましい、こういうことでありまして、個々の問題については具体的に手続を通じてこの問題は検討さるべきでしょうけれども、環境庁長官としては抑制することが好ましい、こういう立場でございます。
  199. 野間友一

    野間分科員 関連して建設省あるいは運輸省にお伺いしたいと思いますけれども、現在公有水面埋立法という法律があるわけですね。これはかなり古い法律で、しかも環境保全というものがこの法律をつくる時点にはあまり問題になっていなかった。企業の利益と申しますか、埋め立て者の利益という観点から、各漁業権者等の調和、調整という点がこの法律一つのポイントになっておるというふうに私は考えておるのですけれども、いま、長官もよく言われておりますけれども、まさに取り返しがつかない、そういう時代が到来した、いまにして環境保全しなければ将来とんでもないことになる、こういう前提で考えた場合に、いまの公有水面埋立法というものはかなり軽やかにと申しますか、かなり軽々に埋め立てができる、こういうようなことになっておるので、この点建設省あるいは運輸省、いま三木長官の発言にあるように、新規の埋め立ては規制する、あるいはいま進行中のものも再検討する、こういう方針との関連建設省あるいは運輸省はどういう方針をとられるか、その点についてお伺いしたいと思います。
  200. 伊藤晴朗

    ○伊藤説明員 公有水面埋立法の一部改正を今国会でお願いしたいと思いまして、共管省であります運輸省並びに建設省におきまして現在一応の案をつくりまして、関係省庁と協議中の段階でございます。  埋立法の改正の趣旨は、ただいま御指摘にもありましたように、最近の社会経済環境の変化に対応いたしまして、公有水面埋め立ての手続の適正化をはかりたいということから、免許基準を明確にいたしたい、かつ埋め立て地の処分等の規制を強化いたしたいという趣旨からでございますが、改正の項目といたしまして、一つは、埋め立ての申請がありました場合、その埋め立て計画の概要を縦覧公告をいたしまして——従来は、現行法は先ほど御指摘のように施行区域内の水面権利者の同意を得るというところだけが規定されておるわけでございますが、これを広く縦覧公告いたしまして、関係人からの意見の提出を求めまして慎重な手続をいたしたいという点。  それから二番目に、埋め立て免許の際の基準を明確にすることによりまして、公共公益的なものを優先することはもちろんでございますが、御指摘のような環境保全ないしは公害防止に支障のないようにするという基準を設けまして、埋め立ての手続を慎重にやりたい。  それからさらに、ただいま現行法では埋め立てられた土地につきましては特に条件をもって定めまして、かつ登記をした場合にのみその権利移転等について許可制がしかれておるわけでございますが、これをそういったものでなく、すべての埋め立て地につきまして同じような規制が行なわれるようにいたしたい。  それから最後に、追認制度の廃止でございます。これは、現行法上無断で埋め立てられた土地につきましても、原状回復が必要でないと思うときには免許権者は埋め立てを追認することができる制度になっておりますが、埋め立て行政の姿勢を正す、ないしは国民に埋め立てについての認識を新たにする意味で、この追認制度を廃止したいという方向で検討しておる次第でございます。  以上であります。
  201. 野間友一

    野間分科員 私がお聞きしたのは、この埋立法の関係とそれから長官の発言の趣旨に従って今後新たな埋め立ての規制並びに進行中のものの再検討、こういう点について、これは強力な行政指導をやらなければならぬ、こういう点についても質問したのですけれども、その点について答えていただきたいと思うのです。
  202. 伊藤晴朗

    ○伊藤説明員 公有水面の埋め立てにおいて、その審査にあたりまして公害防止自然環境の保全等の点から十分チェックをしていかなければいかぬ。これは現在も十分注意をしておるつもりでございますが、今後ともそういった方向に努力することは当然だと思いまして、公共の利益に寄与するもの以外は極力これを抑制いたしたい。特に公害の発生が予想され、または自然環境の保全に重大な支障のあるものについては埋め立てを認めないこととしたいという方向は、ただいま三木長官から御指摘がありましたとおりでございますし、その方向でやっております。特に瀬戸内海につきましては、環境庁が主体になりまして、瀬戸内海沿岸環境保全促進対策会議等でもそういう点についてチェックをすることといたしておるわけでございますが、埋立法そのものとの関係におきましては、埋立法が御承知のとおり海面を含むことはもちろんでございますが、内水面を含めまして、まあ水面を陸地とするための全国的な一般的な手続法という形でできておりますために、個々の海域におきます埋め立ての規制といいますか、禁止、制限といったようなところまで個別に書くことにはならぬかと思いますので、この埋立法の一部改正を機に、また十分そういった形の姿勢を正す方向での運用に努力いたしたい、かように考えております。
  203. 野間友一

    野間分科員 いままでも十分厳重に注意しておったという話がありましたけれども、そうであれば、今日のような大きな公害問題は生まれなかったはずなんです。したがって、いままでのような形で今後も続けるとすれば、これはとんでもない話なので、そういうようななまくらな返事は私は納得できないです。  さらに、公有水面埋立法の改正についていまお話がありましたけれども、もう一つぴっとこない。と申しますのは、いま海洋汚染が非常に広域化しているというような現状の中で、まだまだ改正しなければならぬポイントというのはたくさんあると思うのです。たとえば地元市町村会の意見を徴するという場合の地元ですね。これは利害のあると申しますか、影響を受ける市町村全部の意見を聞かなければならぬとかあるいは漁業権者の同意の問題についても、単に埋め立てをする水面に持っておる漁業権者の同意だけでなしに、これによって影響を受けるすべての漁業権者の同意を受けた上でと、こういうふうに規制をしなければ、いまの改正の方針では全く不十分だ、こういうふうに考えますけれども、その点についてさらに意見をお伺いしたいと思います。長官もひとつこの点について長官の意見も聞かしていただきたいと思うのです。
  204. 伊藤晴朗

    ○伊藤説明員 まず関係する地域の市町村ないしは住民等についての意見をどういう形で聞くかということでございますが、先ほど御説明申し上げましたとおり、埋め立ての免許の申請が出ました場合、免許権者がこれを縦覧公告して広く意見を問うという方向を現在考えておるわけでございますが、これをさらに特定の市町村に個別に通知をして特に意見を求めるという点につきましては、その影響する限界がなかなか判定する上に非常にむずかしい点があるんじゃないかというふうに考えておるわけでございますが、今回、免許の基準の一つとしてその埋め立てが環境の保全または公害防止に支障がないものであることという条件を入れまして、先ほどは説明申し上げませんでしたが、さらにその技術的な細目基準を政令で定めるという方向にいたしますので、埋め立ての申請にあたりまして申請人のほうから環境の保全上支障ないことについての調査並びに報告を当然に提出させることになるのじゃなかろうか。それによって免許権者が審査をいたします過程でその種の配慮ができるんじゃないか、かように考えております。
  205. 野間友一

    野間分科員 さらにこの問題については突っ込んでお聞きしたいわけですけれども、時間がありませんので一応この問題についてのさらに質問を保留いたしまして、次にひとつ進めてみたいと思います。  次にお聞きしたいのは、たくさんあるわけですけれども、いわゆる亜硫酸ガス、硫黄酸化物、これがミカンなど農作物、これにどんな影響を与えるかというような点について環境庁あるいは農林省、ひとつ御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  206. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 環境庁のほうから先申し上げます。  私ども、大気保全関係のこの方面の調査研究でございますが、残念ながら環境庁はまず人体の被害の問題のほうにいま焦点を合わしておりますので、各地における硫黄酸化物によると思われるミカンあるいは農作物等の植物被害に関する問題に関しましては、その県においての調査研究等のデータを見せていただいておるのと、それから農林省のほうでこの問題取り扱っておりますので、そちらのほうの調査研究の検討を待っておる次第でございます。  御指摘の和歌山県におきます問題に関しましては、かつてミカンヘの影響の問題があって以来、県のほうでいろいろ調査しているということを聞いておりますが、低濃度における硫黄酸化物のミカンの直接的影響というのは非常にむずかしいので、県のほうの調査結果がまだはっきりと出ておりません。  あと農林省のほうからまたお答えいたします。
  207. 有松晃

    ○有松説明員 亜硫酸ガスによります農作物への被害でございますが、ミカンにつきましては、先ほど環境庁のほうから申されましたように、この地域におきます程度の濃度の亜硫酸ガスによりましては特別に被害があらわれていない。ただ、長期の被害があるかどうかという点については、なお県のほうで調査を続行しておりますので、その結果によってさらに対策考えたいと思います。
  208. 野間友一

    野間分科員 だから、これは予算委員会の中でも多少論議になったことは、農作物に対する生活環境、この規制の問題ですね、これがまだ着手されていない、ここに大きな私は問題があるのじゃないか。特にいま農林省の役人の話を聞いても、単に県の調査待ちというような程度で、積極的にこれが対策が全くなされていない。和歌山県の下津というところの農協に原田という技師がおられるんですけれども、この技師が非常にたんねんに調査されておるわけです。これによると、亜硫酸ガスがミカンの葉っぱの中、葉内の硫黄分蓄積を高める、葉の同化作用の減退、呼吸作用の増大、こういうことで生理的な変化を起こして、ミカンの樹勢が低下する。しかも硫黄分が七から八%になると落葉する。さらに被害の二つ目は、土壌の酸性化、このために燐酸やマグネシウム、これらが欠乏する。こういう点から、農薬投資ですね、こういうものがかつてのボルドー液に比べて非常に高くなった。下津関係でも十年間にボルドーに比べて約十億円、農薬に対する出費がかさんできておる、こういうことが具体的な調査並びに実験の結果、報告書も出ておりますけれども、こういうような民間と申しますか、農協の一人の技師が営々として黙々といろいろな調査をやっておるということ自体まだ国が知らないということは、とんでもない話だと思いますので、こういうような調査の結果を知っておるかどうか、影響が少ないなんてとんでもない話だと思うのですけれども、もう一度答弁願いたいと思います。
  209. 有松晃

    ○有松説明員 ただいま御指摘の和歌山県の農協におきます調査でございますが、私どものほう、国全般といたしまして、どの程度影響が——いままで特に影響があるような場合には取り上げておるわけでございますが、和歌山県におきます亜硫酸ガスのミカンに対する影響につきましては、先ほど申しましたように特別の被害は認められないということでございましたので、私どもは、県からは事情を聴取いたしておりますが、農協のただいまのお話につきましては、ただいままでは承知しておりませんでした。
  210. 野間友一

    野間分科員 最後に一点だけお聞きしたいと思います。  これは長官にお聞きしたいと思うのですけれども、いわゆる窒素酸化物ですね。光化学スモックがいま非常に大きな深刻な問題を提起しておりますけれども、この環境基準について、東京都あるいは大阪府これらが、たとえば東京の場合には昭和五十六年までに一時間値の二十四時間平均が〇・〇二PPM、大阪も同様の基準を設けるというふうに理解しておりますけれども、国としてこのような基準をいつから設置する用意があるのか。何か予算委員会の中では数カ月とかいうように長官、答えておられますけれども、この点についていまの考えをお聞きしたいと思います。
  211. 三木武夫

    三木国務大臣 窒素酸化物の問題は、いま中央公害対策審議会の専門部会で検討しておるわけです。その答申が出ますれば、その答申を尊重する上に立って、環境基準を出したいと考えております。しばらくもう少し——この間の予算委員会で数カ月と答えたわけですけれども、できる限り早急にきめたいということでわれわれも準備をいたしておるわけでございます。
  212. 野間友一

    野間分科員 最後に締めくくりとして、いろいろお聞きしましたけれども、一つは瀬戸内海の環境保全の問題、それからいま申し上げた窒素酸化物の規制の問題、これについてはほんとうにいまゆゆしき問題になっておりますので、環境庁長官、副総理でもありますけれども、ぜひきびしく、しかも早急にこれらをあなたの手で解決して、そして美しい緑の自然を奪い返す、健康を返す、こういう方向で全力をあげて努力すべきであるというふうに思いますので、長官の最後の発言をお願いしたいと思います。
  213. 三木武夫

    三木国務大臣 瀬戸内海についても、これは瀬戸内科医の浄化をはかりたいという強い熱意を持ってこの問題に取り組みたい、あるいは窒素酸化物については専門部会のほうでいま検討いたしておりますので、結論が出次第われわれとしても基準をきめたいと考えております。
  214. 臼井莊一

    臼井主査 次に、細谷治嘉君。
  215. 細谷治嘉

    細谷分科員 長官にお尋ねいたしますが、昨年の九月九日に前環境庁長官が四日市を訪れまして、公害患者たちの前で、公害患者の損害賠償保障制度を早急に確立したい、しかも、それを繰り上げて実施したい、こういうことを約束いたしました。続いて、昨年の十月二十八日に田中総理が所信表明の中で、「公害被害者に対する救済の実効を期するため、損害賠償保障制度の創設を進めてまいります。」ということを本会議を通じて国民に約束いたしました。そして、第七十一国会政府の提出予定法案として、公害損害賠償保障制度に関する法律案(仮称)というものが提案される予定になっております。この問題は公害問題に関して非常に重要な一つの柱でございますだけに、今度の国会に間違いなく出すのか出さないのか、この点をまずお尋ねしたいと思います。
  216. 三木武夫

    三木国務大臣 損害賠償保障制度は今国会に必ず提出をいたします。
  217. 細谷治嘉

    細谷分科員 かつて無過失賠償責任についての法律案が、総理の約束にもかかわらず二年間出す出すと言いながらほうり出されてまいりました。昨年の通常国会でようやく、不十分でありますけれども、無過失賠償責任制度に関する法律案が出て成立されたわけであります。いま環境庁長官は、必ず出します、こう言っておりましたが、念のために、私が想像するに、いろいろと各省間の調整等むずかしい問題がありますし、また技術的にもむずかしい問題がありますから、環境庁長官は大ものの大臣でありますけれども、出す出すと言っても、また無過失のあの二の舞いを演ずるのではないかという心配がございます。重ねてでございますけれども、万難を排して出すということをお約束できるかどうか、重ねてお尋ねいたします。
  218. 三木武夫

    三木国務大臣 いまお話しのように、実際にいろいろな場合にどのようにして認定するか、あるいは基準をきめるか、むずかしい問題をこの中には含んでおります。しかし、公害被害者を一日も早く救済をしたいということがわれわれの意図でございますから、これはいろいろな障害があると思いますよ、あるけれども、万難を排してこの国会に提出をしたいという決意でございます。
  219. 細谷治嘉

    細谷分科員 まあ、副総理である三木環境庁長官が、万難を排して出す決意である、こういうことでありますから、私も、副総理の面目にかけ、総理もすでに本会議を通じて国民に約束したことでありますから、ひとつ必ずやっていただきたい、これをまず申し上げておきたいと思います。  そこで、それでは出す内容は一体どういうものなのか。すでに公害に係る健康被害損害賠償保障制度について、損害賠償負担制度専門委員会の中間報告、こういうものが出ております。この中間報告にのっとったものなのか、あるいはもっと現在の公害に対応できる内容にしようとするのか、長官の御構想をひとつお尋ねしておきたいと思います。
  220. 三木武夫

    三木国務大臣 これは世界的に見ても前例のないような法案でありますから、なかなか理想的なものとしてはいきにくいと思いますが、しかし、こういう制度をつくって、そしてそういうものは、将来において不備な点はこれを改めて、そして健全な損害賠償保障制度として育っていくようにしたいと思っております。いま内容については事務当局で検討をいたしておりますが、現在の研究段階の、どういうことを考えておるかということは、この際事務当局から一応御説明を申し上げたいと思います。
  221. 細谷治嘉

    細谷分科員 事務当局からお答えするということでありますから、私が具体的に問題点をあげます。  第一点は、この制度をやっていくにあたっての基金であります。現在ございます公害健康被害救済制度というのは、いわゆる二、二方式、こういうもので、いってみますと加害者が五〇%、公費が五〇%、それで二、二方式といわれております。こういう方式であります。伝えられる通産省の考えというのは、もっと加害者のほうの負担を多くして四、一方式、こういうこともいわれております。OECD等では公害問題についてはPPP原則、こういうものにのっとるべきである、こういうことが主張されております。言ってみますと公害被害に対する責任は加害者である企業が一〇〇%負担すべきである、こういう原則であります。そのいずれをとっていくのか、専門委員会が出しましたこの中間報告はきわめてその点不明確であります。この点を具体的にお尋ねしておきます。
  222. 船後正道

    ○船後政府委員 新しい損害賠償を保障する制度費用負担の問題でございますが、基本的にはこの制度は、中間報告でも申しておりますように、やはり民事責任を踏まえた制度として構成すべきものと考えております。したがいまして、原因者の負担というものが中心になるわけでございます。ただ、財源をどのようにして集めるかということになりますと、かなり技術的にむずかしい問題がございます。他方またいわゆる非特異的疾患といわれる大気汚染系の疾患の認定条件等につきましても、医学的にむずかしい問題もございます。そういった点を踏まえまして、前回の中公審の中間報告では公費負担が必要であるとする意見と、あくまでも原因者の負担のみによるべきであるという説と、二つの説があったわけでございます。この点は非常に制度の基本にかかわる重要な問題でございますが、技術的な点の検討も踏まえながら現在その詰めを急いでおるところでございます。
  223. 細谷治嘉

    細谷分科員 長官にお尋ねいたしますけれども、いまの答弁もややあやふやなのです。確かに技術的にはむずかしい問題、固定発生源、移動蔵する発生源、そういうものに対してどういうふうに賦課していくか、こういう技術的な問題はございますけれども、原則としては原因者負担という、いわゆるPPP原則というものを貫かなければならぬと私は思います。そういう点で、この中間報告は明確にはありませんけれども、公費負担というのが一つの要件になっております。これは問題があるのであって、あくまでも原因者負担という原則を貫いていく、これが大切ではないかと思います。長官いかがですか。
  224. 三木武夫

    三木国務大臣 その基金の問題につきましては、やはり原則は原因者負担という原則でなければならぬと思いますが、しかしやはり住民に対しての生活責任も持っておるわけでありますから、公費負担も一部の公費負担はこれはあってしかるべきと思いますが、原則としては原因者負担である、OECDの決議等にあらわれておるような、そういう原則を、この損害賠償保障制度が根本からくつがえすものであってはならない、こう考えております。
  225. 細谷治嘉

    細谷分科員 原則としては原因者負担、こういうことでお答えいただきましたから、時間もありませんから、ぜひひとつその原則を貫いていただきたいということを強く要請をしておきたいと思います。  ところで、無過失賠償責任制度の際にも国会でたいへん大きな問題になりましたが、この場合には対象範囲として典型公害にすべきであるという意見があった。基本法に基づく典型公害です。けれどもとりあえず大気水質汚染とこの二つに限りました。したがって、いまの無過失賠償責任制度そのものもまだ完全な体系をなしておらない、こういうふうに私は思っております。この中間報告等を拝見いたしますと、いってみますと、これはもっと範囲を縮小いたしまして、大気汚染とそれによる健康被害、こういうことに限定をされております。こういう点で私はこの中間報告にもきわめて不満を感じております。さらに無過失賠償責任制度の際にも問題になりましたが、たとえば問題の、物件についての被害等はどうするのか、たとえば魚等の被害が起こった場合どうするのかとか、こういうようないろいろな問題が提起されました。私は、この場合、何といってもそういう被害者に対する原状回復するための努力、こういうものが重要なことであろうと思いますし、いま申し上げたような法の対象というものを、救済対象補償対象というものをやはり広げていく、少なくとも七つの典型公害には広げていく、さらには問題の薬品公害、食品公害、こういうものも大きな問題でありますから、そういうものにも適用をしていく、あるいは生業に対する補償あるいは財産に対する被害補償、こういうところまで広げていかなければ、根本的な救済にならないと思うのであります。先ほど長官おっしゃられたように、いろいろとむずかしい問題を含んで、各省との折衝もあるわけでありまして、一ぺんに理想的なものにはなかなか到達しにくいかと思うのでありますけれども、長官としてどういう構想でこの法律案を作成していくのか、その基本的態度は私が申し上げたようなことでなければならぬと思うのでありますが、その基本的態度をお伺いしておきたいと思います。
  226. 三木武夫

    三木国務大臣 この立法の趣旨は、被害者救済しようとするわけでありますから、範囲拡大するがいいし、あるいはまた、その補償対象健康被害だけでなしに財産被害等も考えるということが、この損害賠償保障制度の将来の方向だと思います。しかし何ぶんにもいまこのあんまり類例のない立法をやろうというわけですから、あんまり一ぺんに範囲拡大してそうしてやるということは、実際問題としてこの賠償保障制度というものを健全に育てていこうということには非常な障害が起こりますので、とりあえず大気汚染水質汚濁の健康被害に限ってこの問題を処理して、そしてこれを軌道に乗せて範囲拡大していくことが現実的なやり方であろうと考えておる次第でございます。
  227. 細谷治嘉

    細谷分科員 これについてはいろいろ議論を申し上げたいのでありますけれども、時間がありませんから、まあ長官は着実に具体的に一歩一歩前向きでやっていく、しかし、やはり将来の目標としては、公害による被害というものを補償していく、こういう基本的態度のようでありますから、ひとつ、それが最大限法案に織り込まれるように最大の努力をお願いしておきたいと思います。  そこで、今度のこの問題については、四十八年度予算の中には項目もとってありません。法律だけは出す、法案だけ出す、こういうことになってまいりますと、一体その法案はいつから実施しようとお考えになっているのか。小山前長官は、四十八年の十月ぐらいから実施したい、こういう意味のことを言っております。総理自体が所信表明で昨年の十月二十八日に、この制度を創設していくということでありますから、常識的にいきますと、これは四十八年の十月ぐらいから実施するというのがあたりまえであります。いろいろむずかしい技術的な問題もありますから、どうおくれてもこれはもう四十八年度の一月とか、あるいはおそくても四十九年の四月一日からはこの制度が具体的に発足を見なければならぬと思うのでありますけれども、長官、どうお考えになっておるか、これもひとつお尋ねしておきます。
  228. 三木武夫

    三木国務大臣 私は四十九年度からこれが実施できるようにしたいと考えて準備を進めておる次第でございます。
  229. 細谷治嘉

    細谷分科員 四十九年度の初めからですね。
  230. 三木武夫

    三木国務大臣 四月一日です。
  231. 細谷治嘉

    細谷分科員 四十九年度の四月一日、まあこういうことでありますから、そのためにもこれは今度この国会法律を出さなければだめ、こういうことになるわけでありますから、ひとつ格別の努力を要請しておきたいと思います。  時間がありませんから、先ほど三木長官が答えた公害についてのいわゆる原因者負担原則ということに関連して、ひとつ自治省にお尋ねしておきたいと思います。  公害がありますと、先ほど私が申し上げました財産、家屋等がいたむわけですね。そういうことで四日市等では、家屋のいわゆる評価をそのために一律に三%とか五%とか引いて減税をしております。一昨日の新聞によりますと、千葉市で、御承知のように川崎製鉄による大気汚染、こういうことによりまして、千葉市のA地区、B地区、C地区——C地区というのは普通の、汚染のないところ。A地区は一・八%、公害によって被害が加算される。B地区は〇・八%、被害によって家屋がいたんでおる。その分だけ評価を下げる。いわゆる評価を下げるということは減税であります。その減税をするという方針をきめたようであります。固定資産の評価にあたりましては、これは台風など天災によって家屋の価額が下がった場合に評価額を下げることができるわけであります。公害の場合にこういう形で評価額を一律に、ある地区は、A地区は——A地区というのは千葉市の場合には十一町あるそうですよ。それからB地区というのが十三町あるそうです。それを一律に二%というふうに下げて、減税をするということは、私は、固定資産の評価自体に問題がありますし、課税のやり方に問題がありますし、同時にいわゆるPPP原則ということからはずれておる。こういうことでは問題があるのではないか、こう思います。これについて自治省としてはどういう態度であるのか、どういう指導をしようとしておるのかお尋ねをいたします。
  232. 小川亮

    小川説明員 いまお話のありましたように、四日市では、評価の面でそれだけ減点しておりますし、また千葉市の場合、これはまだ案のようでございますが、いまおっしゃいましたように、A地区、B地区分けまして、それぞれ八十戸ばかり抽出調査をしまして、そうしてやはり損耗が普通の家屋より認められるということで減点したい、その中でA地区について二%ばかり減点したいという案を持っておるようでございます。これにつきましては現在の評価基準の中で、台風も一つの例になっておりますが、特別な損耗がある場合には個々の家屋についてその損耗の程度に応じて評価の減点ということが認められておりますので、評価上はそういうことで、特にこうしてはいけないということはないと思います。現実問題としてそういった損耗が認められるということで千葉市として考えておるようでございますが、まだ案でございまして、さらに具体的なことは承知しておりませんけれども、ほんとうにそういう損耗が認められるという場合には、評価でそれだけの減点をするということもやむを得ない場合もあり得るというふうに考えております。
  233. 細谷治嘉

    細谷分科員 これは先ほど環境庁長官も、公害問題というのは原因者負担というのが原則ということでありますね。たとえば、税というのは公平でなくちゃならぬ。原因者というものは明らかに大気汚染しておる会社、企業ですね。にもかかわらず市民の血税でそういうものを補っていくということは、これは原因者負担原則にそむくのではないか。たとえば工場等の誘致奨励条例の場合でも、あなたのほうの指導というのは税をまともに減税してはいかぬわけですよ。税は税として取って、それの何割か相当分というのを、条例で掲げたものを逆に奨励金として交付する、こういうやり方をやっておるわけでしょう。でありますから、この場合は固定資産の評価というものをそういう形で減税をしてやるのではなくて、どうしても市としてやらなければいかぬのならば、やって、そして市がかわって企業のほうに求償をしていく、こういう形をとらなければおかしいと思うのですよ。各地に公害があります。そういう形で原因者負担という原則をくずしていっているところに今日の公害問題というのが容易に解決しないことになってくる、こう私は思うのですよ。ですから、いまの答弁では納得できませんよ。
  234. 小川亮

    小川説明員 個人の家屋その他の損耗に対して、企業に対する損害賠償等別の問題はまたあるかと思いますけれども、固定資産税の評価という面からいきまして、現実の問題として損耗を受けて減価しておるという場合に評価の上でそれだけの減点をしていくということはいまの基準上も認められることでありまして、いま申し上げましたように、企業に対する賠償等についてはまた別の問題ではないかというふうに考えております。
  235. 細谷治嘉

    細谷分科員 ちょっと答弁にならないんですよ。これほどはっきりしているんですよ。一・八%減耗が余分に起こっている。B地区では〇・八%起こっているということがはっきりしているのですよ。個々じゃないですよ。公害による被害というものがきわめて数量的にあらわれているわけですよ。あらわれておらぬならしようがないですよ、原因者というのが。そして原因者がどの程度被害を与えているかということはわかっておらぬなら別として、わかっておるのですよ、一・八%であると。にもかかわらず、市がそれを減税していくということは誤りではないか。公害対策の、三木長官が言っておる基本姿勢に沿わないじゃないか、こういうことを私は指摘しているわけですよ。  長官、これは関係ないでしょうけれども、どうですか。これはあなたの原則と違うでしょう。はっきり一・八%違いがあるならば——金額は少ない。四日市は二百万だというのです。少ないけれども、やはり血税で補てんすることになるわけですよ。ですから、そういうものについてはやはりぴしゃっと数字がわかっているわけですから、原因者に対して求償をしていく、こういうことが必要じゃないかと思うのです。いかがでしょうか。
  236. 三木武夫

    三木国務大臣 どうも大気汚染の場合はいろいろ原因者というものの因果関係のむずかしさもありますが、そういうところに地方自治体がいろいろ住民の生活上の負担を軽減するということで入ってくるわけでございますから、どうも住民の生活に対して地方の自治体が責任を感ずる立場からこういう配慮が起こってきたのだと思うのですが、これがすぐに加害者がだれだとはっきりしておるような場合は、PPP原則というものを適用するのに非常にしやすいのですが、そういう面からの配慮から起こったものだと思います。しかし、とにかく世界がああいう原則をきめたのは、公害防止に対する企業の投資はコストの中に計算して入れることが公正な競争になるという一つ観念から生まれてきたわけでございますから、そういう大筋をゆるがすということになれば、これは国際的にもいろいろ問題を起こしますが、国民生活の安定というかいろいろな負担の軽減、こういうことについてこまかい配慮をするということが真向こうからPPP原則に非常にそむいたというふうにも考えられない面もあると思います。
  237. 細谷治嘉

    細谷分科員 時間がありませんが、新聞によりますと、千葉市の場合は二%引くところが五千戸だというのですよ。それから一%引くところが四千戸だというのです。合わせて九千戸ですね。これに対する国定資産税の減税を一律にやるわけですね。これは問題ですよ。調査によりますと、六十戸を抽出調査して、その結果によって一・八と〇・八いたんでおったから、繰り上げて二%と一%、四日市の場合は三%と二%、こういう減税をしておるわけです。私は長官が言った気持ちはわからぬでもありません。機械的に何でもということはありませんけれども、千葉市の場合はもうはっきりしている、四日市の場合も共同不法行為ということで裁判上もはっきりしているわけですよ。そうなってまいりますと、これはこんな小さな金額ではPPP原則なんというのもあまりにも機械的じゃないか、こういうことになるかもしれませんけれども、一カ所やりますと、どこでもかしこでもやります。そしてそれは長というのは、住民がかわいそうでありますから、何とかそれを救済しようとします。そういうことによって、原因者負担という原則じゃなくて、公費負担という原則になっていくところに問題がありますから、あえてこの点を質問申し上げたわけです。  それだけ申し上げて私の質問を終わっておきます。
  238. 臼井莊一

    臼井主査 これにて総理府所管環境庁に関する事項についての質疑は終了いたしました。  次回は、明六日午前十時より裁判所及び法務省所管について審査を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時十七分散会