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○根本
委員長 これより会議を開きます。
まず、
理事の
補欠選任についておはかりいたします。
委員の異動によりまして、現在
理事が二名欠員となっておりますので、その
補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によりまして、
委員長において指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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○根本
委員長 御異議なしと認めます。よって、
辻原弘市君及び
山田太郎君を
理事に指名いたします。
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○根本
委員長 昭和四十八年度一般会計予算、昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
去る二日から審査を行なってまいりました分科会の審査は、昨日をもちまして全部終了いたしました。
この際、各分科会主査より、それぞれの分科会における審査の報告を求めます。まず、第一分科会主査臼井莊一君。
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○臼井
委員 第一分科会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
本分科会の審査の対象は、昭和四十八年度総予算中、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、総理府のうち経済企画庁を除く分、法務省所管及び他の分科会の所管以外の事項でありまして、去る三月二日より八日まで慎重に審査をいたしました。
審査は、各省庁当局より予算の説明を聴取した後に質疑を行ないました。
質疑者の数は延べ六十七名、質疑時間は約四十時間に及びましたが、各分科員の協力を得まして円滑に審査が行なわれました。
質疑の内容は、きわめて広範多岐にわたっておりますので、その詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここではその数点について報告することにとどめます。
まず皇室費の関係では、天皇の権能の問題、また国会の関係では、国会図書館への出版物収録状況、国会職員の待遇改善等、会計検査院の関係では、国費の投資効果と会計検査に関する質疑が行なわれました。
次に内閣、総理府の関係では、同和対策、林野行政に対する行政監察、不発弾の処理、
公正取引委員会の機能の拡大強化、北海道開発、沖繩開発金融公庫の問題その他について質疑がありました。
次に環境庁の関係では、公害損害賠償保障制度に関して、原因者負担に対する基本的な考え方、特に基金の一部を公費負担することは、被害者が間接的に費用を負担する結果にならないか。また、この制度はいつから発足させるつもりか。また、四十九年度以降は生業補償という問題に取り組むといわれるが、生業補償の概念はどうか等の質疑がありました。これに対しましては、この制度はあくまでも民事賠償の性格を持つものだから、費用は基本的には原因者負担とし、PPPの原則に触れるような公費負担はしない。しかし、因果関係が不明なものもあり、国や地方団体は住民の生活に対して責任を持っているので、一部は公費負担としたい。この制度は被害者あるいは遺家族の生活補償的な性格を持つ新しいものだが、他の国に類例がなく、認定の方法なども非常にむずかしいが、万難を排して提案し、四十九年度早早から実施したい。また生業補償は、もし公害なかりせば生じたであろう所得を対象にするのが適当ではないかと思うが、なお検討を要するとの答弁がありました。
以上のほか、瀬戸
内海の環境保全、むつ
小川原開発、中古車の排気ガス規制装置、水俣病問題、騒音公害、休廃止鉱山への調査団派遣等に関する質疑がありました。
なお分科員より、
田中内閣総理大臣が去る二月末に、建物の高さ制限を緩和して駐車場を設けることにしたらどうかとの建築基準法改正の検討を指示したという報道があるが、これは人権よりも経済を優先させるもので問題がある旨の発言がありました。
次に法務省所管では、登記所の統廃合の問題に関して、統廃合を機械的な基準で進めていくのでは、僻地の住民などは非常に迷惑する。住民の立場からいえば、むしろ登記事務の全部もしくは一部を市町村に移管してほしい。また、登記の様式、書式を変更して事務の簡素化、合理化をはかるべきではないかとの質疑がありました。これに対しては、登記所の適正配置の基準はきめてあるが、地元の反対を押し切ってまで統廃合を進めるつもりはない。登記事務はきわめて専門的なものであり、また個人の権利義務に重大な影響を与えるものなので、市町村への移管はなかなかむずかしい。また、事務の改善は漸次行なわれており、事務処理能力も何倍かに達しているのだが、さらに一そうの合理化を進めるよう研究したいとの答弁がありました。
以上のほか、別件逮捕、誤認逮捕等に対する人権擁護、家庭裁判所の審判内容の履行、名古屋高検の川口検事長の記者会見の内容、熊本刑務所及び筑紫少女苑の問題、ガードマンの労働争議介入、また裁判所の関係では、裁判官の思想、良心と適格性の問題に関して質疑がありました。
次に防衛庁の関係では、まず四次防の予算額が問題となり、見積もり額の四兆六千三百億円に、給与の引き上げ、物価の値上がりが織り込まれていないのはともかくとして、四次防の主要項目である装備品の調達予定額のうち、五十二年度以降にずれ込む分約四千億円を含んでいない。これは、四次防の経費を実際より小さく見せるだけでなく、五次防の先取りにもなる。こういうやり方は三次防の場合にも行なわれており、金額面の見積もりを全く無意味なものにしているので納得できないとの質疑がありました。これに対しては、四兆六千三百億円という数字は、四次防期間中の支出予定額であり、その期間以後の支出予定額は含んでいない。金額見積もりを契約ベースでとらえるということも考えられようが、これまでの計画はすべて実支出ベースで見積もられており、これは経済計画等とのバランスを見るためにも便利なやり方と思われるとの答弁がありました。
次に三沢、岩国等の米軍施設の問題に関して、米軍に提供した財産の実態が把握できないようでは、国有財産管理上も大きな問題である。三沢の場合は、従来も何回か米軍の手によって施設の改修が行なわれており、岩国の場合は、はたして既存の建物を取りこわすのかどうかもはっきりしていない。いずれにしろ、日本側の予算で米軍の施設の改修、改築を行なう根拠は全くないではないかとの質疑が行なわれましたが、これに対して、国有財産の台帳は、将来返還になった場合に整理することになっている。地位協定により日本側が財政負担すべきものは、施設の新規提供、追加提供及びこれに準ずるものとなっており、また、理論的には建物の新築提供もあり得ると解釈している。ただし、今回の三沢と岩国はあくまでも改修と改築であるとの答弁がありました。
なお地位協定の解釈について、二条一項(a)の「施設及び区域」に建物を含むのかどうか、同じく二条四(a)項にいう「一時的」とはどの程度の期間をさすのかという点に関して質疑があり、政府側の明確な見解を求める旨の発言がありました。
以上のほか、自衛隊員の募集と教育、関東計画に関連する諸基地の問題、芦屋及び三沢の射爆場、美保基地、赤坂プレスセンター、沖繩の基地労務者の諸問題、ドプラー航法装置の選定の問題、自衛隊機と全日空機の衝突に関する防衛庁の責任、岩国飛行場の沖合い移設に関する問題その他について質疑がありました。
質疑終了後、分科会の討論、採決は本
委員会に譲ることに決定いたしました。
以上、御報告いたします。(拍手)
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○黒金
委員 第二分科会の審査の経過及び結果を御報告いたします。
第二分科会の審査対象は、昭和四十八年度総予算中外務省、大蔵省及び文部省所管のものでありまして、去る三月二日より八日まで休日を除き六日間慎重に審査いたしました。
まず、各省ごとに予算の説明を聴取した後、質疑を行ないました。質疑者は延べ六十六名、質疑時間は約三十八時間余に及び、いずれも貴重な質疑応答で、分科員各位の御協力により円滑に審議を進めることができました。その詳細は会議録でごらんを願うこととし、ここでは簡単にその概要を報告することにとどめます。
まず外務省関係では、日ソ外交交渉にあたり、北方領土の返還を求める際、分科員から、これら地域を非武装中立地帯として考慮することも一案ではないか、また外相の訪ソ計画はどうなっているのかとの質疑があり、政府当局より、その提案もよいが、現在ソ連は、わが国との間では領土問題は解決済みであるとの態度をとっている、しかし平和条約の締結には積極的である、去年も訪ソしたし、今年も第二回の交渉をモスクワでやる予定であるから、今後一そう返還に努力したい旨の答弁がありました。
また、海洋法会議で、領海幅員、漁業専管区域に対する日本の態度をどのように主張するかとの質疑に対し、政府は、十二海里支持説が多数を占めるならば、わが国は三海里説にとらわれない、また、経済水域は十二海里説が成立しても沿岸国に有利な説が出てくると思うので、国益を考え、誤りのないようにやっていきたい旨の答弁がありました。
さらに、日ソ漁業交渉のあり方、ベトナム問題、在韓邦人の帰国措置、朝鮮民主主義人民共和国における見本市等の開設、日中国交回復のための準備措置、在外公館の国有化と邦人子弟の教育、海外経済援助、横須賀艦船修理部ドック返還と母港化問題、岩国、三沢米軍基地の調査、米軍の訓練空域、公海上の米軍演習場、沖繩米軍基地の整理縮小計画、VOA放送の邦人職員の処遇問題等々、多くの点について質疑が行なわれました。
次に大蔵省関係では、去る二月十四日わが国が変動為替相場制を採用して以来、三月二日、再度ヨーロッパの通貨情勢は重大な危機に直面し、わが国も同日、東京外国為替市場を閉鎖したのでありますが、これに関連して、多くの分科員より国際通貨危機に対する大蔵当局の考え方について質疑が行なわれ、政府当局からは、外国為替市場の閉鎖は不測の事態に対処するもので、ヨーロッパの情勢を見きわめながらできるだけ早い機会に市場再開の措置をとるとともに、変動相場制への復帰をはかりたい旨の答弁がありました。
また、分科員より、今回の通貨危機は、米国のドルと金の交換性のないことによるドルの信用低下に根本原因があるので、そのためにも、わが国は米国自体の努力を要求すべきではないかとの質疑があり、政府当局より、その基本的認識については同感であり、わが国も、国内的には経済の安定をはかり、国際的には通貨の安定を主張していきたい旨の答弁がありました。
さらに、過剰流動性対策、株式の時価発行、円対策、中小企業対策、資本自由化、日本銀行の為替差損の処理等、重要事項についての質疑が行なわれました。
税関係については、法人税の実効税率に対する大企業の税率は低く、給与所得者等と比較し不公平を招いている、法人税の改正を行なうべきではないかとの質疑があり、政府当局より、法人に対しては課税所得を拡大していくことが、法人重課の方向となるし、一方、特例措置なども積極的に排除している、四十九年度には、さらに実施を前提に検討を加えたい旨の答弁がありました。
その他、出かせぎ者の給与所得のあり方、妻の財産に対する課税、付加価値税、物品税の改定、教育費の非課税措置、酒税のあり方、登録税、入場税の減免措置、未成年者の給与所得の免税措置等々の質疑が行なわれました。
国有財産関係においては、財産管理の適正と都市等においては、公共的活用のための国有地払い下げの方針が述べられるとともに、特に復帰後の沖繩の国有財産については鋭意調査を進め、これが実態の把握につとめている旨の答弁がありました。
また、万博あと地の株式会社エキスポランドヘの貸し付け状況、国有財産貸付契約書及び米軍基地内の開拓財産についても、それぞれ質疑が行なわれました。
その他、貨幣法改正の検討、防衛庁調達品の値上がり問題、国民、厚生両年金の資産運用のあり方、米価問題、地方自治団体の超過負担の解消、海外移住事業団の移住者融資、同和対策の予算措置、生命保険のあり方、大阪国際空港周辺の移転補償、交通事故の保障限度、動物保護のための立法措置等々、多くの問題について熱心な質疑が行なわれました。
なお、国際通貨危機に対し、分科員より、円防衛に対する経済体制の論議を、全閣僚出席のもとに質疑するための機会を求める旨の要請があったことを付言いたします。
最後に、文部省関係では、養護学校の設置について、分科員から、学校教育法第七十四条で精神薄弱、肢体不自由、病弱児童生徒を就学させるため、都道府県において設置の義務が課されているのに、未設置県が四十七年五月現在、精神薄弱関係二十一県、病弱関係二十二県もあり、一方、四十六年度未就学児童生徒が三万七千二百人余りもいる現状は、憲法にいう教育の機会均等の面からも重大な問題であるとし、その原因はどこにあるのか、また、これが対策をどのようにするのか等の質疑が行なわれ、政府当局より、学校用地の取得難、隣接病院との関係などで遅延したと考えられるので、昭和四十七年度より七年間の整備計画により、これが推進につとめることとし、四十八年度までに未設置県を解消する、そのためにも学校施設、設備に対する国の補助率を二分の一から三分の二にすることとした旨の答弁がありました。
その他、私立医科大学の入学金問題、小中学校の統廃合問題、各種学校のあり方、同和対策の予算と文部行政への介入問題、私立小、中、高校、大学への助成措置、高校教職員の給与改善、教頭職の法制化、在外日本人学校への助成措置、学校医の処遇、幼児教育、医学教育のあり方、沖繩の教育格差是正の考え方、人口急増地域の学校問題、自治体の超過負担、学校の緑化事業、夜間中学校への助成措置、受験地獄の解消、看護婦教育の充実策、大学紛争と授業料値上げ等々の問題について、種々論議がかわされました。
さらに、埋蔵文化財について、最近の急速なる土地造成等により、佐賀県姫方遺跡及び静岡県伊場遺跡などについて保存問題が生じており、これが解決のため、政府当局に対し一そうの努力が要請され、あわせて、文化財保護法の改正の必要性が述べられました。
かくて、昨日質疑を終了し、分科会の討論、採決は本
委員会に譲ることに決定した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○倉成
委員 第三分科会における審査の経過及び結果を御報告申します。
本分科会の審査の対象は、昭和四十八年度総予算中厚生省、労働省及び自治省所管のものであります。
審査は、労働省、厚生省、自治省の順に、去る二日から八日まで日曜日を除く六日間にわたって慎重に行なわれ、各省当局から所管予算の説明を聴取した後、質疑を行ないました。
質疑者の数は、延べ六十六名、質疑時間は約三十八時間に及びましたが、各分科員の協力を得まして円滑に審査が行なわれました。
質疑応答の内容は、きわめて広範多岐にわたっておりますので、その詳細につきましては会議録に譲ることといたしまして、ここではその概要を簡単に申し上げます。
まず、労働省関係におきましては、週休二日制、定年延長、出かせぎ労働者対策、視覚障害者の新職種の拡大、身体障害者の雇用促進、金属鉱山の離職者対策、沖繩の離職者対策、職業病対策、失業対策事業の賃金、中小企業退職金共済制度、労働災害の防止、有給休暇に関する最高裁判決と行政指導、失業保険給付のあり方、公共職業安定所の統廃合、同和対策等の諸問題について質疑応答がありました。
これらの諸問題のうち、定年退職者に対する失業保険給付のあり方については、定年退職者に対して無条件で失業保険金を支給してもらいたいが、もしそれができないとすれば、失業保険金相当額を福祉施策として支給する特別給付金制度を創設してはどうかとの趣旨の質疑に対しまして、政府から、定年退職者に対して無条件で失業保険金を支給することは、現行法のたてまえからむずかしい。また、特別給付金を支給することは、事実上失業保険金の支給となるので、現行法のワク内では問題がある。しかし、現在中央職業安定審議会で失業保険の抜本改正の進め方について検討しているので、提案の件は、審議会で検討してもらうが、要は、定年退職者がスムーズに年金に移行できることが理想なので、定年延長を促進する方向で努力したい旨の答弁がありました。
また、スーパーマーケットのチェッカーに多発している職業病についての質疑に対しましては、政府から、問題の緊急性にかんがみ、三月末までに作業環境の改善や健康診断の実施等を中心とする当面の指導要領を通達して対策を講じたい。その指導要領の実施の効果を見ながら、さらに実態の調査を進め、専門家の研究成果を尊重して作業環境基準を作りたい旨の答弁がありました。
次に、厚生省関係におきましては、医薬分業、老人対策、老人医療無料化の実施に伴う問題、盲人対策、カネミ油症患者の救済措置、血友病、ハンセン氏病、水俣病、風土病、多発性硬化症などについての対策、精神障害者対策、酒害対策、予防接種事故の救済措置、じん炎ネフローゼ児対策、乳幼児の医療無料化、自治体病院の医師不足、無医地区の解消、国立大学付属病院の生活保護患者の診療拒否、保健所の整備、重症心身障害児施設の整備、保育所の整備、看護婦確保対策、生活保護基準の引き上げ、沖繩の医療供給体制の整備、年金の時効、アイヌ民族対策、引き揚げ者援護対策、プラスチック廃棄物処理対策、戦没者遺骨収集の促進、同和対策等の諸問題について質疑応答がありました。
これらの諸問題のうち、老人医療無料化の実施については、老人医療の無料化を理由に国民健康保険税を引き上げている町村があるが、国の政策の実施による医療費の増加分を保険税の形で住民に負担させることは間違っているのではないかとの趣旨の質疑に対しまして、政府から、老人医療無料化に伴って受診率が増加するということであれば、国民健康保険も保険システムであるから、最小限にとどめたいと思うが、保険税のほうにはね返ることは避けがたいことだと思う。しかし、来年度予算においては、急激な市町村の保険料負担を緩和するために、老人医療対策臨時調整補助金三十四億円を計上している。これで十分ではないかと思うが、実施の段階において非常な赤字が出るということであれば、その時点で処理したい旨の答弁がありました。
また、最近深刻化している看護婦の不足について、その対策がただされましたが、これに対しまして、政府から、看護婦確保の問題は、養成施設の定員や施設そのものをふやしてもなかなか解決しない。結局、潜在看護婦の活用や看護婦のリタイア防止、給与改善、夜間保育所等の問題を総合的に考えていかなければならないと思う。長期的には、経済社会基本計画に基づいて厚生省が担当する各論的な年次別計画の中で、この問題を医療供給体制の中の最重点事項として取り上げて、四十九年度予算要求をめどに看護婦確保対策を立てたい。特に、看護婦の給与改善については、八月ごろ出るであろう人事院勧告で大幅な引き上げがあるよう最善の努力をしたい旨の答弁がありました。
最後に、自治省関係におきましては、東京都特別区長公選制、寝たきり身体障害者等の選挙権の行使、表日本と裏日本の行政格差の解消、基地のある地方自治体の財政、人口急増地域財政対策、都市財源の充実、超過負担の解消、電気ガス税、料理飲食等消費税、地方公営交通事業の財政再建、公民館の整備、区画整
理事業に対する国の助成、自治体病院対策、奄美群島の振興開発、地方事務官制度、同和関係の各種の問題、警察行政のあり方、消防行政、国有財産をかかえる財政規模の小さい町村に対する施策等の諸問題について質疑応答がありました。
これらの諸問題のうち、寝たきり身体障害者等の選挙権の行使については、寝たきり身体障害者等に在宅投票を認めていないのは、憲法で保障されている参政権の剥奪ではないかとの趣旨の質疑に対しまして、政府から、寝たきり身体障害者等の在宅投票制度については、投票の秘密保持が重要であり、以前廃止された経緯もよく勘案していろいろと研究しているが、早急に検討して、合法的な手だてを見出し、期待に沿えるよう努力したい旨の答弁がありました。
また、料理飲食等消費税についての質疑に対しましては、政府から、料理飲食等消費税の特別徴収義務者に一定の交付金を出すことを、今後考える旨の答弁がありました。
質疑終了後、分科会の討論、採決は本
委員会に譲ることに決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○細田
委員 第四分科会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
本分科会の審査の対象は、昭和四十八年度総予算中経済企画庁、農林省及び通商産業省の所管分であります。
審査は、去る三月二日から昨八日まで、日曜日を除く六日間にわたって慎重に行なわれ、各省庁当局から所管予算の説明を聴取した後質疑を行ないました。
その間、質疑者は延べ六十六名、質疑時間は四十時間余に及びましたが、各分科員の御協力により、終始円満裏に推移いたしました。
質疑の内容は、きわめて広範多岐にわたりますので、その詳細は会議録に譲ることといたしまして、ここでは、簡単に要点のみを申し上げます。
まず、通商産業省所管について申し上げます。
石油資源の開発について、最近、各社の過当競争が問題となっているが、その対応策を誤ると、五年先、十年先の石油需給が問題となると思うが、海外資源開発についての国としての対策はどうかとの質疑に対し、政府は、国際市場でのこれからの米国の動向が大きな影響を持つことになろうが、わが国が石油資源を中近東に集中して求めるのは問題であり、これからは地域の開発も多元的にし、国際協調をはかりながら、公害対策上の配慮もあり、油とLNGとの問題、低硫黄石油の獲得等を重点的に考えており、業者の過当競争は避けるべきである旨の答弁がありました。
また、変動相場制移行下の中小企業金融の具体的対策をどうするかとの質疑に対して、政府は、今回は前回に引き続いて二回目でもあり、中小企業にとっては深刻なものがあり、市中金融機関に対して中小企業向けの貸し出しの円滑化の指導を行ない、政府系三金融機関に対しても、政府として第二回目の緊急融資を行なうべく目下準備中であるが、それまでの問、三機関から輸出関連企業に対しての融資を弾力的に行なうように通達を出している。また、支払い条件の問題等についても、中小企業庁、
公正取引委員会が一体となり、親企業のほうに下請代金の支払い悪化を来たさないように、厳重な通達も行なった等の答弁がありました。
以上のほか、商社の含み資産、時価発行株、商品取引、生糸の需給等の投機抑制問題、電力料金、火力発電所建設と公害問題、国内鉱山の位置づけ、鉱業政策のあり方、産炭地の鉱害復旧、休廃止鉱山の公害対策、航空機産業の振興と日本航空機製造の赤字問題、チュメニ油田開発等石油資源開発、電気器具等不良製品の出回り規制、百貨店法、日中貿易、船舶輸出、ICの自由化等の通商政策、大型プロジェクトのテーマの選択、産業構造のあり方、工業再配置問題、むつ
小川原の開発問題、インドネシア石油会社の設立問題、ゴルフ場乱開発の規制、繊維、紙、協同組合、沖繩の中小企業も含めた中小企業問題等の諸問題について質疑が行なわれました。
次に、経済企画庁所管関係では、国民経済計算を行なう経済企画庁としては、土地の値上がりを把握して、それをGNP計算の中に入れるべきだとの質疑に対し、政府は、従来のノーマルな経済状態では、GNPの伸びと土地の値上がりはパラレルであったが、現状では異常な土地投機もあり、土地の値上がりの実体は的確につかみにくく、当面は投機熱を冷やすこと、過剰流動性を吸収すること等、土地の値上がり抑制策を講じたい旨の答弁がありました。
物価問題については、四十七年度の卸売り物価の上昇を政府見通しのごとく二・二%に押えられるか、また、物価政策として総需要抑制策を考えるかとの質疑に対し、政府から、卸売り物価については、生糸、大豆、羊毛等の異常な高騰もあり、四十七年度の実績見込みで予想した範囲におさめることはなかなかむずかしく、また、総需要抑制策も検討すべき段階ではあろうが、不景気の中のインフレが一番心配である旨の答弁がありました。
以上のほか、予算編成の基礎となった経済見通しや物価の変化、過剰流動性対策、電力料金等公共料金問題、沖繩の物価問題、経済社会基本計画と福祉、むつ
小川原開発、利根水系の水資源開発、離島の水資源対策等の諸問題について質疑がありました。
最後に、農林省所管について申し上げます。
最近のミカン価格の暴落対策として、政府は三十万トンの市場隔離と金融策を講ずると言っているが、その具体的内容はどうか、また、ミカンの需給見通しは国産についてだけであるが、これは自由化は行なわないという意味かとの質疑に対し、政府から、三十万トンの市場隔離は、ジュース二十万トン、かん詰め十万トンを予定しているが、最近は値段の回復もあり、これからの市況等を見ながら弾力的に市場隔離を行なっていきたい。金融については、再生産資金の低利融資等のほか、県の行なう消費拡大、出荷調整、加工能力の拡大策等についても、自治省と協議の上、地方交付税で国がめんどうを見ることになっており、また、需給見通しは自由化をしないという立場でのものであるとの答弁がありました。
最近の木材の値上がり原因について、政府が木材の需給見通しを誤り、外材の輸入を抑制したためではないかとの質疑に対し、政府は、木材の値上がりは昨年九月ごろより激しくなったが、外材の輸入により国内林業に圧迫を来たさないようにとの四十六年の衆参両院の農林水産
委員会の決議なども勘案しながら、外材需給検討会の意見を聞く等、外材輸入の適正化につとめてきたが、輸入には数カ月もかかるというむずかしい問題等もあるが、目下輸入量の増大策など、緊急措置を講じている最中である旨の答弁がありました。
以上のほか、土地改良、基盤整備事業、農村工業導入法、沖繩における土地の買い占め問題、高浜入り干拓問題、カドミウム汚染米と野菜対策、指定野菜の需給計画と産地の拡大、農産物の自由化問題、ミカンの需給計画と生産に関する諸問題、沖繩の糖価安定策、農村の出かせぎ対策、木材の需給問題、造林、林道の整備、林野行政のあり方、国有林労務者の常勤化及び職業病対策、山村の過疎問題、家畜の飼料問題、乳価、牛の奇病対策、瀬戸
内海漁業と公害救済策、韓国ノリの輸入割り当て、水産加工業と公害、原発の温水と水産物への影響、農業技術の開発研究、農林水産業における同和対策予算などの諸問題について質疑がありました。
なお、生産法人が農地の買い上げを行ない得る現行農地法の運用のあり方と、商社等の米の買い占めに対する政府の対策が問題となりましたことを、特に申し上げておきます。
かくて、昨八日質疑を終了し、討論、採決は、先例により本
委員会に譲ることといたした次第でございます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○
前田(正)
委員 第五分科会について御報告申し上げます。
本分科会は、運輸省、郵政省及び建設省の所管でありまして、去る三月二日より三月八日まで、慎重に審査を行ないました。
まず、各省当局より所管予算の説明を聴取いたしました後質疑に入り、その間、質疑者は延べ七十三人、質疑時間は約三十八時間に及びましたが、各分科員の協力を得まして、円満に審査が行なわれました。
質疑の内容は、きわめて広範多岐にわたっておりますので、その詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここに簡単にその概要のみを申し上げます。
まず、運輸省関係について申し上げます。
過疎バス対策として、行政バスの免許を緩和すべきではないか。これに対しまして、運行管理や安全面からは有償運送条文が適当と思う、しかし、今後検討して、そのように指導していきたい旨の答弁がありました。
タクシーの相乗り制度の考え方についての質疑があり、能率的な観点からは乗り合いバスであるが、駅と団地等の場合は、検討すべきではないかと思う旨の答弁がありました。
海運問題について、チャーターバックは規制すべきではないかとの質疑に対し、海運界の現状を見ると、一がいに規制すべきではない。また、計画造船はいつまで続けるかとの質疑に対し、海運造船合理化審議会に、外航海運政策の見直しを検討していただいている旨の答弁がありました。
船舶職員法の一部改正案は、漁業者及び遊漁船等の実態から見て、五トン未満のうち小馬力の船舶については、その資格条件を軽減するよう修正すべきである旨の質疑があり、これに対し、問題が相当あるようであるので、あまり画一的にならないように検討してみたい旨の答弁がありました。
航空関係について、航空大学の卒業予定者の不採用者に対し、留年制の採用、就職のあっせんをすべきではないかとの問いに対し、適性を生かしてそれぞれあっせんする、留年制については、チャンスを与えるということで検討したい旨の答弁がありました。
また、新関西国際空港の必要性、騒音調査について質疑があり、自治体等からの要望が強く、最近の輸送量の増大等からして航空審議会に諮問した。騒音調査については、これからも必要に応じて納得を得るまで調査していきたい旨の答弁がありました。
日中航空協定と日台路線の質疑に対し、日台路線の問題は政府全体の問題であり、外務省が中心となって解決すべき問題と思う旨の答弁がありました。
国鉄関係については、新幹線建設の基本計画、建設計画はどのようになっているかとの問いに対し、調査段階で、将来の国民の意思を十分反映できるよう検討を進めている旨の答弁がありました。赤字線の存廃についての質疑があり、地域の将来性を考慮し、必要のあるものは、赤字線でも、政府の援助を得てできるだけ残したい旨の答弁がありました。
その他、大阪空港の騒音問題、米軍の訓練空域、リビア旅客機の撃墜事件、高知空港の拡充計画、那覇空港の整備、公営交通対策、バス、タクシー料金、地下鉄整備促進、私鉄の土地保有、海運会社の経営のあり方、第八若吉丸の海難事故、銚子沖の漁船のトラブルと海上保安庁の取り締まり、港湾運送事業法の改正、列島改造と港湾整備五カ年計画、沖繩の港湾整備、成田空港の開港見通し、公共事業(新幹線)の労務災害、煙害対策、身体障害者の交通安全と運賃割引、阿佐線の工事計画、城東貨物線の工事見通し、北海道新幹線計画、国鉄の黄害、牛乳の長距離輸送、新幹線公害と学校の移転、姫新線の合理化、両毛線の高架の現況、岩内線の認可、小海線にSLの運転、国鉄の労使紛争、宇品線の存廃、広島駅の手小荷物の民間委託、大牟田線の高架化、アジア縦貫鉄道計画、むつ
小川原湖の開発計画、東武鉄道の敷設認可、浅間山の地震対策などの諸問題について質疑応答がありました。
次に、郵政省関係について申し上げます。
PCB対策について、ノーカーボン紙の処理については、使用済みのもの、未使用のもの、それぞれ厳重に隔離して保管している、新ノーカーボン紙については、五月から順次カーボン紙にかえ、来年四月までに終わらせたい旨の答弁がありました。
日中海底ケーブルの敷設については、今度中国の逓信総
局長を招待するので、いろいろの場合を想定して検討している旨の答弁がありました。
電電公社の電話料金の間違い請求に対し、請求額が納得されない場合は、一定期間監査装置を置いて加入者にもメモをとってもらい照合する、間違いがあれば、過去の平均料金額に応じて返済する旨の答弁がありました。
また、NHKの未使用地の問題について、四十六年度末で百七十三万平方メートルあるが、大部分は電話局等の用地に利用する、使用見込みのないものは適正価格で売却、または公社が必要とする土地と交換する旨の答弁がありました。
その他、民放の難視聴対策、郵政省の小口貸し出しの周知徹底、PCB患者の追跡調査、年賀はがきの不経済性、全逓職員のバッジ問題、電話の自動化普及率、電電共済の日活あと地の購入などの諸問題について質疑応答がありました。
最後に、建設省所管について申し上げます。
まず、筑波学園都市の計画の見通しについては、五十年度内に研究機関の施設を完成し、移転計画は今月じゅうに決定した。下水道等は移転に先立って完成したい。また、区域周辺の市町村に対する財政的特別措置を講ずべきでないかとの問いに対し、都市開発区域に指定されているので、特別措置がある旨の答弁がありました。
人口急増地の財政援助についての問いに対し、学校については小中学校の用地費、建設費小学校の屋内体操場の負担率の引き上げを行ない、公団、公庫においてそれぞれについて条件の緩和をはかっている旨の答弁がありました。
住宅問題について、四十八年度の建設戸数が減少しているという問題に対し、公団の入居者に持ち家の要望が強いので、賃貸住宅と同じ程度の家賃の支払いで持てるよう、新しい制度をつくった。これで減少している分をカバーしている。賃貸住宅も希望者が多いので今後増していく。家賃は収入の何%が適当と思うかとの問いに対し、限界費用負担の中間報告で一五%から二五%とされている。公団は、一六%から二〇%を目標にして計画しているので合致している。調整区域内の用地を国等で買い上げるべきではないかとの問いに対し、住宅に適したものがあれば、現行関係法を十分活用し、積極的に取得していきたい旨の答弁がありました。
道路問題については、国土開発幹線網はどのような目標できめているのかとの問いに対し、国土の保全、産業立地、国民の利益をはかり、いずれの地点からも二時間程度で高速に乗り入れられるように計画している。なお、経済社会基本計画には一万キロとされているが、諸外国に追いつくため延ばす必要がある旨の答弁がありました。
本四架橋について、料金についての問いに対し、フェリー等の料金に時間的便宜、償還期間等を考慮し、供用開始前にきめたい。無料化については、通常償還を終えれば無料が原則であるが、維持費が多い場合はその分は徴収する。工事による海水の汚濁は、橋脚の掘さく等による汚濁を少なくするが、実験中であるので、その結果を待って対策を講じたい。さらに、自然の景観保持については、国立公園協会に依頼して研究をしていただいているが、橋自体が景観をよくするということもあるので、景観をそこなわないように、盛土の部分を緑化し、橋の形式そのものにも考慮して進めたい旨の答弁がありました。
下水道の整備については、下水道計画の見通しについての問いに対し、第三次計画に基づいて進めているが、公害防止達成等によりかなりの進捗を見ている。経済社会基本計画では、普及率四二%を目標としている。また、都市近郊農村の下水道も整備すべきではないかとの問いに対し、農村においても下水等の流入により被害があると思う。汚水を集めて処理するしかいたし方ないと思う。必要性は痛感するが、今後検討を進めたい旨の答弁がありました。
河川問題については、列島改造を見ると、水資源の広域利水の河川依存度を変えるべきではないかとの問いに対し、工業用水の伸びはそのままとっていない。生活用水は向上を踏まえたものであり、内容は検討していないが、大きな違いはないと思う。また、都市の生活用水は年々減少しているが、どう思うかとの問いに対し、生活、工業用水の安全基準は、首都圏の基本計画に基づいて計画を進めている。なお、生活用水は推定を上回り、工業用水については地下水対策も含まれている旨の答弁がありました。
建築資材の値上がりと対策については、木材は国有林の繰り上げ出荷、外材の緊急輸入、資材の代替利用等で対処したい。セメントは、業界に対し緊急生産体制の維持、緊急出荷を要請し、予算の執行に支障なきよう最善の努力をする旨の答弁がありました。
その他、ニュータウンの建設目的、同和対策、公営住宅の入居基準と家賃、工場あと地の有効利用、泉北高速自動車道の基本計画、市町村道の整備、国道一号線のバイパス計画、ダム災害対策、霞ヶ浦の開発と水質保全、都市河川の整備、河川管理とダム建設、河川法と管理員、渡良瀬遊水池のレジャー構想、治水事業計画、河川敷の有効利用、過疎対策と都市計画、東北縦貫自動車道の計画などの諸問題について質疑応答がありました。
なお、当分科会の討論、採決は、本
委員会に譲ることに決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○根本
委員長 以上をもちまして分科会主査の報告は終了いたしました。
————◇—————
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○根本
委員長 この際、当面する円対策、商品投機及び土地問題に関して質疑を行ないます。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
北山愛郎君。
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○
北山委員 私は、社会党を代表して、いま問題になっております円対策及び株式、土地、商品等の投機問題の基本問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。
七〇年代というのは激動の時代であるといわれておりますが、まさにそのとおりで、ことしはことに経済の変動というのは非常に激しいわけです。次から次へと全く予想しないような激しい変動が起きておりますが、こういう情勢に対して、政治家としての最も重要な役目というのは、その情勢に即応して、そして機動的にこの問題に対処するという政治姿勢が一番大事ではないかと思うのであります。言うならば、一番いい方法は、この変化というものをあらかじめ見通して、正しく見通して適切なる手を事前に打っていくということであって、それは言うならば中国の方式といいますか、諸葛孔明のやり方であります。これに対して中善の方法というのは、情勢即応のまことにドライなやり方で、機動的にやるということでありまして、これがいわゆるキッシンジャー方式とでもいうのでありましょう。ところが、残念ながら
田中方式というのはそのいずれにも当てはまらないわけであります。いかなる方式であるかということにつきましては、私はここでは特に触れませんが、遺憾ながらこの情勢に立ちおくれている、こういうふうな印象が非常に強いわけであります。
そこで、まず具体的に、本日、九日からパリで通貨会議が行なわれる。これは十五の通貨関係者が集まって開かれるまことに重要な会議だと私どもは思っております。アメリカからはシュルツ財務長官、ボルカー次官あるいはバーンズ連邦準備銀行の
理事長が出席するというような、ほんとうに当面の通貨問題の解決のだめには重要な会議だと思うのでありますが、その会議になぜ大蔵大臣が出席をしないのか、あるいはさせないのか、この点についてまずお尋ねをしておきたいのであります。
-
○愛知国務大臣 九日、すなわち時差の関係もございますが、日本時間でいいますときょうの晩から、御指摘の会議が開かれるわけでございます。同時に、しかし日本としては日本の国情、政情、あるいは経済問題というものが非常に大事なときでございますから、いろいろの点を総合判断いたしまして、特に国会においては最も大切な国政の御審議を願っておるときでありますから、代理としてその道の経験の深い者を派遣をいたしました。また日本銀行総裁も出席をいたしました。ただいまのところは、これで今回の会議につきましては日本としての立場が十分に表明され、また、これで各国も了解してくれておる次第でございます。
-
○
北山委員 これは私から言うまでもなく、今度の世界的な通貨不安ですね、その根っこは非常に深いのであります。ですから、円とドルとの関係でアメリカとの間の貿易の収支とか、そんなバランスをとればよろしいというようななまやさしいことで解決ができないということはわかり切った話なんです。ですから、政府も今度の施政演説では、積極的に国際通貨体制の新しい秩序づくりに進んで寄与していく、あるいは通貨体制の長期の安定の道を探るためにあらゆる手段を講ずる、こう言っているのです。ですから、いま当面する国内問題もいろいろありますけどれも、その中でも、やはり円の問題、国際通貨の問題は、非常に最重要な国民生活にも関係のある問題だと思うのです。それは国会の審議を尊重されるという気持ちは敬意を表しますけれども、起きてきたこの重要問題について、ことに、来たるべき二十カ国の蔵相会議を前にして外国の諸情勢というものを打診するという意味におきましても、やはり責任者である大蔵大臣が出席するのが当然じゃないかと思うのであります。しかも国会審議の面からしましても、すでに四十八年度の予算案は、暫定予算は必至だという情勢であります。ですから、国会を軽視してもかまわないというわけじゃありませんけれども、
田中内閣の中でも、何も大蔵大臣は一人しか資格者がいないというわけじゃないでしょう。そういうふうな問題の重要な会議に、一体だれを政府代表にして出すのですか。だれが正式の政府代表ですか。
-
○愛知国務大臣 私といたしましては、大蔵省顧問細見君を大蔵大臣の代理として派遣をいたしました。
-
○
北山委員 総理大臣どうですか。やはりこういう重要な問題は、アメリカあるいはヨーロッパの各国の考えも事前に聞いておく必要があるのではないでしょうか。ただ日本が独自で円の問題だけを考えるとか、あるいはアメリカとだけの問題を考えれば解決する問題じゃないですね。そういう点を見ますならば、やはりこの際大蔵大臣がパリ会議に、おそいのですけれども、行くべきではなかったのか。それを行かせなかったという総理のお考えを聞きたいのであります。
-
○
田中内閣総理大臣 非常に重要な会議でございますから、大蔵大臣を出張せしめようということも考えたわけでございます。ございますが、きのうまでは、きょう、あすは衆議院の総括締めくくりであるという考えでございました。そういう意味でございますから、二日間の締めくくり質問というようなときに、現職の大蔵大臣——二十カ国の蔵相会議も重要な時期でございますが、これは三月の末もございますので、今度大蔵大臣が行ったほうがいいのかなという考え方を持ちまして、考えたことは事実でございます。しかし、アメリカへ先に細見大蔵省顧問を出張せしめて、アメリカ側の意向も十分連絡をした結果、今度のヨーロッパの会議は、細見顧問並びに日銀総裁にも招聘状がございましたので、日銀総裁に出張してもらうということで国会に専念をしようということにいたしたわけでございますが、いま御指摘のとおり、非常にたいへんな問題であり、国民全体の利益を守らなければならぬ問題でもありますので、これからはひとつ率直に政府の意見も各党の皆さんにも申し上げ、御了解が得られるならば機動的に間違いのない措置をとってまいりたい、こう思います。
-
○
北山委員 この点あとでまた触れますけれども、総理また
田中内閣に対しても、野党は、われわれは、単に政府の責任だけを追及したりあげ足をとればそれで済むのだ、この場所で悪口を言えばそれでいいんだという姿勢はとっておらないのです。今度の問題でも政策の転換を求めているのです。予算を引っ込め、いまの経済政策というものを転換しろということでいずれ野党四党の意見が一致をして、政府に申し入れをする、あるいは予算の組みかえを要求するというのは、政府の失敗をただ追及すればいいということじゃないのですよ。このように政策を転換しなさいという要求なんですよ。ですから、そういう点を十分考えていただいて、やはり適時適切に、一番最初に申したように、キッシンジャー並みというわけにいかぬでしょうが、後手後手にならないような対策をすべてにわたってとっていただく必要がある、このように考えます。
そこで、パリ通貨会議等に政府はどういう方針で臨むつもりなのか。詳しくはお話がいただけないかと思いますけれども、少なくとも国際通貨の新しい秩序をつくるという以上は、八百億ドルにのぼる過剰ドルというものが世界じゅううろうろしている、こういうことがあっては通貨不安というものは解消しないわけです。それが明らかになっている。もう一つは、ドルの金交換性、これを回復しなければならないのではないか、こう思うのです。したがって政府としては、当面、今度の国際通貨問題の世界の国際会議に臨む態度としては、この二つのものをアメリカに要求する、あるいはその他の国にもこれを要求するということ、そういう方針で進むのが正しいのではないか、このように思うのですが、政府のお考え、基本的な方針を聞きたいのであります。
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○愛知国務大臣 非常に長期的な問題と、それから当面の問題と、まあこれはしいて分けて考えるわけではございませんが、やはりただいまのところは、当面何が日本として必要であるかということを中心に申し上げますと、ただいま御指摘もございましたが、やはりドルの交換性を回復するということが一つであると考えております。それからアメリカの資本の海外に出ていきますことを抑制するということが一つであると思います。それからもう一つは、現にアメリカが唯一の国際通貨といいますか、基準通貨になっておる関係もございますから、アメリカの経済政策に対して、たとえば金融政策等につきましても、ぎゅっと引き締める政策をとってもらわなければならない。この三つの考え方、これはおそらくは日本だけではございませんで、ヨーロッパ諸国あるいは関係の諸国も、そういう点においては、大体共通なアメリカに対して強い要望を持っておるに違いないと想像されるわけでございますが、日本としては基本的に、当面特にこういう点に重点を置いた主張をいたすべきである、かように考えております。
-
○
北山委員 ただいまの大蔵大臣の答弁を聞きまして感ずるのですが、アメリカの対外投資を抑制すべきである、これは当然だと思うのです。一方においてはドルをたれ流しながら、そして国際収支を赤字にしながら、一方においては相当膨大な対外投資をやっている。またある意味ではこれを促進しているというアメリカのやり方は、われわれ納得できないわけです。とするならば、私はやはり少なくとも、アメリカが日本に対して要求しておる資本の自由化というものは、これは認めるべきじゃないのじゃないか。政府は、アメリカの要望である資本の自由化、あるいは貿易の自由化、これをだんだん受け入れる方向でいっているようですが、少なくともアメリカの対外投資を抑制すべきであるとアメリカへ要求する以上は、アメリカの日本に対する資本の自由化の要求というものを無理にというか、こちらの都合を考えないでこれを受け入れるということは矛盾になるのではないか、こう思うのですが、アメリカの対日資本自由化はこれを拒否する、受け入れない、これが政府の方針である、こう考えていいのですね。
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○愛知国務大臣 ただいまもお断わりをいたしておきましたように、当面の措置としてアメリカに強く要請するところは、いま申しました三点が中心である。長期的にと申しますか、同時に基本的な日本の体制としては、やはり各国が開放経済で、そしてそれぞれ鎖国的にならないということが、日本のためでもあるし、また長期的に、基本的にはそれが望ましいことである、こういう角度から、私は、資本の自由化ということは日本としてはとるべき措置であろう、かように考える次第でございます。
-
○
北山委員 次に貿易の自由化ですが、これについては、いま問題になっているのは電子計算機と農産物のようですが、これについては、政府あるいは担当大臣は自由化は反対であると言うかと思うと、総理は自由化の方針であるというふうに伝えられるのですが、私は、いまもちょっとお話がありましたように、今日の通貨不安というものの一つの大きな原因はやはりアメリカ側にある。米ドルの側にある。としますならば、国内の経済、そういうものを犠牲にして、そして農産物あるいは電子計算機を含めまして、自由化をアメリカの要求に応じてどんどん受け入れていくというような、そういう方向は間違っておると思うのですが、総理大臣のお考えをお聞きしたいのであります。
-
○
田中内閣総理大臣 アメリカの問題だけではなく、日本は開放体制を進めなければならない国情にあることは、これはもう私が申し上げるまでもないのでございます。世界じゅうで一番、開放経済、拡大均衡、いわゆる域内に閉じ込もるような縮小均衡の方向をとられて困るのは日本だと思うわけでございます。そういう意味で、日本は新国際ラウンドの提唱もやっておるわけでございますし、いままでも自由化を促進してまいったわけでございます。また、国際的にも南北問題がいま世界最大の問題であり、真の人類の平和を守るためには、維持するためには、南北問題の解決以外にはないといわれておることも事実でございます。これは人類の流れというべきだと思うわけでございます。
これは申すまでもなく、一次産品の完全自由化、無関税主義を底流にしておるわけでございますから、これらの二つの問題を前提として考えるときには、どうしても日本も自由化を行なうという方向、これはもう国際的に宣言をしておる日本の方針でございますから、これは進めていかなければならぬと思います。しかし、日本の国内的な産業がこれに耐え得ないという状態では困りますので、しかるべき国内対策とあわせて自由化を漸進的に進めなければならないというふうに考えておるわけでございます。でありますので、万全な国内体制を前提とする自由化は既定方針どおり進めるということが内閣の考え方でもあり、世界に宣言をした日本の基本的な姿勢でもあるということだけは御理解を賜わりたい。ただ、これは何でもかんでもやって国内の混乱をもたらそうということではなく、自由化に対応する国内政策の万全な体制は当然とるべきものである、こう考えておるわけでございます。
-
○
北山委員 私はいまの時期に、いまお話しのような一般論を聞くために質問したわけじゃないのです。いま問題になっている農産物であるとか電算機についてどういう態度をとるのかということです。自由化拡大の方針をずっととってきて、そしていまや二十四品目までなってきた。もう相当に自由化したんじゃないですか。ことに農産物については、いま問題になっている大豆なり木材なり、あるいはその他家畜の飼料なり、そういうものが自由化をされて、そしてほとんど無関税で入ってくる、そういう結果として、日本の食糧、農産物の自給率というものがどんどん下がってくることからくる危険性というものは、いま国民が身にしみて感じているのですよ。とうふがいきなり七十円にも八十円にもなるという。気がついてみたらもう大半の大豆は外国産のものになっておった、これではいかぬということで、農林大臣はやはり農産物の自給率を上げると言っているのだ。自給率がもうカロリー計算でいえば四〇%まで下がっているといわれているのですよ。これ以上農産物をどんどんまた一般方針に従って自由化するのかどうか、私は具体的にそういうことを聞いているわけですよ、いままでの経過を踏まえて。原則的なことを聞いているのですよ。農産物の自由化、やりますか、やりませんか。
-
○
田中内閣総理大臣 農産物の一部に対しましても、国内体制が整い、生産者団体その他の理解が得られるならば、自由化を進めてまいろうという基本的な姿勢であります。
-
○
北山委員 これはもう、この
委員会でも、あるいは他の
委員会においても、農産物の自由化に対して農林大臣は、絶対にこれはやらない、こういう方針で答弁しているんですよ。総理はそのようなあいまいな答弁だ。これじゃどうにもならぬじゃないですか。もういませっぱ詰まった問題になってきているわけですよ。一般方針じゃないんです。一般方針でずっといままでやってきたでしょう。ほんの一部しか残っていないんです。しかも海外から、自由化によって、あるいは輸入をふやす方針によってどんどん農産物の輸入がふえて、いま日本が工業国の中でも食糧の海外依存度が一番高いというか、自給度が低い国になってきている。私は、この総括質問のときにいわゆる防衛問題をからめて質問した。いざそういうかりに戦場になった場合、外国から食糧が来なくなったら、国民の食糧はたちどころになくなるのじゃないか、これに対して何の備えがあると、こういうことを聞きました。そのときにもいいかげんな答弁で、何にも考えていないということが明らかにされたんですが、しかし、そういう事態にならなくても、どこかの国が不作になったとか、そうしてよけい食糧を買い付けたとかその他の事情で、いまのようにどんどん入ってくるものが来なくなったり、国民の食べるものが直ちに困ってくるというような、国民の食糧の安全保障という問題がいま問題になっているでしょう。そういう意味から、自給率というものを見直さなければならない、あるいは国内の農業それ自体に対する考え方を転換しなければならないというときなんですよ。そういういまの条件の中で総理は、一般論としてやはり農産物の自由化も考えていくなんてことを言っている。農林大臣は絶対にやらぬと言っている。どうなんです、一体。どっちがほんとうなんです。
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○櫻内国務大臣 総括質問の際にもお答え申し上げましたが、ただいま総理が申された一般的な方針、これについては、私もそのことを留意しておるわけであります。また、この自由化の問題につきまして、農産物に限らず、いまの一般的な方針の中で農林大臣も検討せよ、こう言われたことにつきましては、私もそれをお断わりする理由はないので検討はいたしております。
しかし、農林大臣の見通しはどうか、こういえば、それはきわめて困難であり、また農林大臣の職務上からいえば、ただいま総理も御指摘になりましたように、国内の検討する対応策が現にあるわけじゃないんですから、だからその段階において私が、農産物の自由化についてはそれは困難である、私としてはこれはできないというふうに申し上げるのは当然のことだと思うのであります。
-
○
北山委員 ほかの問題もありますから、私、先に進みますけれども、しかしこの農業の問題は、総理の日本列島改造論を見ましても、私どもは非常にそこに不安を感じるわけなんです。最近の大豆や、あるいは木材にしてもそうですし、家畜の飼料にしても、あるいは米にしても、小豆にしても、そういうものについて、むしろ消費者である国民のほうが国内農業に対する考え方が変わりつつあるんです。外国から安いものをどんどん幾らでも買えるという状態ではないのだ、やはり振り返ってみて、国内の農業というものを見直さなければならないというふうに消費者自身も考えてきているような情勢でしょう。そういうときに、私は、いまこそ日本の農業を立て直すという積極的な姿勢でこの問題の答弁がいただきたかったんですが、どうも総理は何か先入観にとらわれて、それをどこまでも守り通すことが政治であるなどというような考え方を持っていらっしゃる。それでは即時即応の政治はできないと思うのですね。ですから、この点は深く考えていただきたい。
それから次に、最近における日本の経済というのは、一言でいうならば、インフレとギャンブルの経済になっちゃった、株といわず、土地といわず。しかも、それがいろいろな主要な国民の生活必需品にまで波及をして、全く混乱状態であります。これはやはり
田中内閣、特に
田中内閣の昨年以来の経済政策の誤りというものが至るところに露呈してきている、そのあらわれであるというふうに考えるのです。
いままでの
田中さんの経済政策の問題点をひとつ指摘したいと思うのです。そして反省していただきたいと思うのですが、まず第一に、これは
田中さんが総理になる前ですが、通産大臣の当時に、去年の七月でございましたか、東京瓦斯の値上げを強行しましたね。私もあの当時通産省に行って、待ってくれ、消費者の意見も十分聞かないで、
佐藤内閣がやめるという末期に通産大臣がこれをきめていくのじゃなくてもっと慎重にやってもらいたい、こういうふうに要望したのですが、ついにこれを強行された。
田中さんが通産大臣で強行された。ところが、きょうの読売新聞を見ますというと、その東京瓦斯が一月期の決算において、ガスの不需要期にもかかわらず、料金値上げのおかげで税引き利益は前期の五倍強になった、役員賞与も二期ぶりで復活をした、四月からはさらに最低料金が値上げになるために、七月期ではさらに大幅な増収になるであろう、こういうふうにいっておるのです。去年の八月から実施をした平均二二・七%の料金のアップは、最低料金、下のほうに非常に重い料金の値上げだったのですが、その結果は何のことはない、この会社のガスの収益が前年同期に比べて百三十二億七千二百万円もふえている。百億円ももうけさしている。これは、必要やむを得ざる当然の、しかたがなくてあの料金を上げたんじゃなくて、結果としてはガス会社にもうけさせるための料金の引き上げではなかったのですか。私は当時から疑問に思っていたのです。結果はこのような決算になってあらわれているのです。あなた、その責任を感じなさい。
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○
田中内閣総理大臣 事務的な、また技術的なこまかい調査のもとに値上げ幅がきめられたわけでございまして、私は最終的な決裁者でありますから、その責任は私にあると思います。
これは二十九年でございましたか、三十五年でしたか、私もいま突然の質問でございますから、さだかにしておりませんが、とにかくガス料金の据え置きは非常に長いのであります。それで長いから上げるというのじゃありません。ガスや水道や電気料金は国民生活に最も影響の多いものでございますから、私も非常に慎重に考えたわけでございますが、ガスのパイプが戦後の荒廃の中で布設をされたものであるので、これらを、高圧ガスを送るというようなことで、かえなければならないというような新しい事業もあります。そして供給をしなければならないという供給面も非常にふえておる。しかもパイプラインその他の新しい需要もあるということで、私は査定の内容そのものはつまびらかにいたしませんが、公益事業局を中心にして、所定の手続を経て認可が行なわれたということでありまして、私は東京瓦斯の決算そのものはいま承知しておりませんが、一期、二期の決算によって、ガス料金の引き上げというものが妥当であったかどうかということは、これはそういう見方ではなく、これから東京都民に欠くことのできないガスが遺憾なく供給せられて、その安全が保障せられるかというところでございます。そういう面から長期的視野において評価さるべき問題だ、こう思うわけでございまして、私としては慎重な上にも慎重な配慮を行なった、こういう考えでございます。
-
○
北山委員 私はその当時から、こういう結果になるのじゃないかと思って、東京瓦斯会社の有価証券の報告書なんかを調べた。あんなに値上げをする必要はないと私は思いました。設備拡大なら、いろいろな借り入れ金その他でまかなえるのですよ。あんなに上げる必要はなかったのです。あなた、どんなことを言おうとも、結果としてはこんなことになっているじゃないですか。役員賞与が復活したり配当がふえたりすることじゃ、これは消費者は浮かばれませんよ。どういうふうな措置をいたしますか、これに対して。結果はこのようにあらわれているのですよ。あなたは慎重にやったと言うけれども、しかも私は、わざわざ通産省まで行って関係
局長に、慎重にやってくれ、消費者が反対しているんだから、そんなに急ぐ必要はないだろう、こう言ったにかかわらず、しゃにむにやったのですよ。ですからこれは大臣の責任ですよ。これはどういう始末をしますか。慎重にやったから責任はないというものじゃないですよ。どうですか。
-
○
田中内閣総理大臣 いま述べたとおりでございまして、長期的に見なければならない問題でありますし、電力とか水道とかガスというものは、これは国民生活に非常に密接な関係があるとともに、ガスは特に安全の保障が必要であります。地震があったらどうなるかという問題は、毎日われわれが考えておることでございまして、そういう問題も広範に評価すべき問題であって、一期、半期の決算の数字だけで論じられる問題ではありません。
-
○
北山委員 それならばなおさら、すぐに役員賞与を上げてみたり、そんな結果になったのじゃ、しようがないじゃないですか。長期的に見てガス会社の設備を改善するためにこの値上げを行なわれたなら、すぐにもうけが出て、配当がふえたり重役の賞与がふえたりするのじゃ、これはどうにもしようがないじゃないですか。そのために値上げした結果になっちゃう。これは一例ですよ。これは責任を感じてもらいたい。
それからもう一つ例として申し上げますが、たとえば鉄鋼ですね。鉄鋼の不況カルテルが去年の十二月まで続いた。ところが最近の経済紙の伝えるところによりますと、三月期における鉄鋼会社のもうけというのはばく大ですよ。新日本製鉄の三月期決算では、増収率が二四・八%、経常利益でもって四百九十億、まさに三倍半の増益率になっておるのですよ。六分配当を一割配当にするというのです。何のための不況カルテルか。こういういろいろな例がたくさんあると思うのです。
ですから、
田中さんのこの政治というのはやはり企業優先だ、こういわざるを得ないのですが、特に私は、予算や経済政策の基本問題として、去年の公定歩合の引き下げ——今度は公定歩合をまた上げるといっているのですが、あれはやらなくてもよかったのですよ。去年の上半期ですでに、日銀その他は、景気は回復の方向に進んでおると。ですから、さらにこれに追い打ちをかけるというか、公定歩合を下げて景気刺激する必要はなかったのだ。そしてさらに余分なことは、去年の十一月のあんな大型の補正予算を組んで景気を刺激する必要はなかったのだ。総理のねらいは、当時の施政方針演説にもありますし、今度の施政演説にもありますとおりに、去年の秋の補正予算、大型予算というのは、景気刺激を乗り越えて国際収支を改善しよう、これが目標だと言っているのです。今度の施政方針ではそれが失敗した、効果を出さなかったと言っているでしょう。そうしておいて今度の四十八年度の予算案は、まさに去年の補正予算と同じような型の、大型の景気刺激予算を組んでいる。日本列島改造予算を組んでいる。そうして、審議中に、まだ予算案が成立しないうちに、円の切り上げを回避するという目標がもう不可能になったんじゃないですか。ですから、今度の予算案の目的あるいは施政方針で言っている目標、その政策目標というのは達成できなくなったんじゃないですか。もう円は変動相場制だ、あるいはいま市場は閉鎖されておりますけれども、まだ正式の固定レートで切り上げていないのだと言うかもしれません。しかし、現実にはもう実質上の切り上げですね。施政方針の約束と、目標と、この今度の予算案のねらいというものは、前提というものは、おそらくくずれたんじゃないですか。ですから私どもは、政府は原案に固執しないで、この情勢の大きな変化に対応して、そして予算を組み直しなさい、こう言って要求しているのです。この点について、いままでの、去年以来の政策というものに誤りがなかったかどうか、いま申し上げたように、ことしの施政方針演説で総理自身が認めているのですからね。大型予算の補正予算を組んだけれども、その効果は出なかった。出なかったなら、今度の四十八年度の予算というのは新しい構想で組むべきなのです。それを同じような型で組んでいる。そこが政策の間違いの基本じゃないですか。根本じゃないですか。どうですか、総理。
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○
田中内閣総理大臣 すべての政策に誤りがなかったということを強調するほどではございませんが、政策の大筋は間違っておらないということは明確に申し上げたいと思います。
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○
北山委員 それだから、一番最初に申し上げたように、情勢即応の政治ができないということなのです。これは官僚の姿勢ですよ。
田中さんは官僚出身ではないけれども、しかし官僚の姿勢です。自分が出したものはどんなに言われてもこれを押し通す、間違ったと言わない、こういうやり方です。これはいままでの自民党の政治のやり方なのですが、それではいまの新しい政治に適応はできない。情勢の変化があれば、それに応じて政策をどんどん転換していく、転換していけるところにほんとうに政治の力があるわけなのです。硬直して、何が何でもただ形式的な、責任だけを追及されることをおそれて、そして機動性というか柔軟性というものを失っては、これでは、いまの世界の情勢をごらんなさい、アメリカの政策とか戦略戦術をごらんなさい、それじゃいけないと言うのです。だから最初に言ったように、われわれはただ政治の責任だけ追及しているのじゃないのです。ここで
田中さんが確かにこの点はいけなかった、あるいはわれわれがねらっておったものは達成できないから、この部分は直すのだと言うなら、私どもは
田中内閣をそれなりに評価しますよ。いまのような答弁では、私はやはり同じだな、
田中さんもやはり官僚のにおいがくっついてきた、こういわざるを得ないのですね。とにかくそういうことですが、私は誤ったとなかなかあなたは言わないでしょう。言いますか。
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○
田中内閣総理大臣 非常に経済の規模が大きくなっておりますから、右から左へすぱっとものが変わるというような、しかく簡単ではないということが一つございます。同時に、長期的見通しに立って、方向を誤ってはならないということを考えなければなりません。いま行なわんとする政策が、短期的にはどのような効果を発生し、長期的にはどのような結果を生むかという見通しを立てて進まなければならないということは当然だと思います。
もう一つは、開放体制下に向かっておりますから、自分の国よりもよその国の影響を受けるということがあるわけでありまして、これに対応していかなければならないという問題の二つに分けられるわけであります。
私は、あなたのいまの発言をすなおに、謙虚に反省をすれば、問題は二つあったと思います。
その一つは、昭和四十六年の下期、この前の平価調整を行なわなければならなかったときから、百億ドル近いドルが急激にふえたわけであります、四十七年の上期までの間に。これは御承知のとおり、四十六年の一月の外貨高四十五億ドルから一年間に百億ドルをこしたわけであります。そういう意味で、百億ドルも急激に一年間にふえたときに、裏づけになっておる円、これが企業の手元資金を非常に潤沢にしたわけでございまして、これがいろいろあばれたという御指摘があると思いますが、これらに対して何らかの措置をして吸い上げる必要があったという、金融政策に対する政府としての機動的な対策というものに対しては、万遺憾なかった、万全であったとは私は言えなかったろう、こういうことが一つあります。
もう一つは、対外的な問題に対処して国会に提案した対外経済調整法が、審議もいただけないで流産をしたということであります。この問題は、私たちは、政府に対する授権立法でありますから、この種の問題に対しては非常に謙虚に、しかも真剣に考えております。なるべく国会からの御発議がしかるべきだということで、この種の授権立法というような問題に対しては、いまの憲法のたてまえ上、いまの制度の上から、政府が何でも授権をお願いするということに対しては慎まなければならないんだということを前提にいたしておりますが、多少実態を述べて、何とかして通していただきたいという努力をもっと真剣に重ねるべきであったという問題を、第二点の問題としては考えております。
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○
北山委員 いろいろな考え方を述べられましたが、私は、そのほかに非常に基本的な問題があると思うのです。誤りがあると思うのです。それは、国際収支を改善するというか、均衡をはかる、言うならば輸出を押えて輸入をふやすというために、企業を対象にした景気刺激政策をとったことです。そうしておいて一番問題になる日本の商品の輸出競争力、いわゆる低コスト、低賃金で安い法人税、そういう中で、非常に競争力を持っている商品がある。その問題に手を触れないで、ただ国内全体の景気刺激をやれば、内需がふえて輸出が減るだろう、こんな大ざっぱな、従来のパターンのやり方、景気刺激政策をとって、今度のこの国際収支改善をやろうとした、それが無理筋というか、有効でないということなんです。ほんとうの日本の労働者の低賃金の上に立って、安いコストでつくられた商品が海外との競争力を持っていますから、一六・八八%の円の切り上げがあっても、その壁を乗り越えてさらに輸出を黒字にしていく、その力を持っている。その根本に触れないのですよ。この日本の低賃金につきましては、この予算
委員会でも日銀の統計その他でもってデータが出ています。論議されました。総理は聞いていたかどうかわかりませんが、たとえば先ほど言った新日本製鉄では、三月期は何倍もの増益になるといわれておりますが、これに対する法人税その他の課税の実効税率は一七・二%という非常な低さなんです。普通、法人税だけでも三六・七五%でしょう。それに地方税を加える。それが実際には新日本製鉄は一七・二%という非常に低い税金しか払っていない。おまけに人件費の売り上げに対する割合というのは一一・四%。それに比べてUSスチールは四六%で、売り上げ高に対する人件費の割合が非常に高いんです。そういうものと競争している。新日鉄が、そのように税金の上で恵まれ、低賃金の上に乗っかって、どんどん輸出を伸ばしていくというその構造ですね、日本の低賃金構造と、それから税金の上では大企業優先、優遇、あらゆる優遇措置を講じている、そういう租税構造、これが輸出の黒字をどんどん生み出しているんだ。それに手をつけないで、ただ公定歩合を下げてみたり、あるいは公共事業をふやしてそしてどんどん景気を刺激したり、そんな大ざっぱなことばかりやっておるから効果があがらないのですよ。それで、インフレで投機がひどくなってきたからというので、今度は預金準備率を上げて、そして金融引き締めにかかっている。その結果、困るのは中小企業ですよ、しわ寄せがいくのは。そういうやり方を変えなければならぬ。もう少し高度な、保守なら保守なりきりの、資本主義を守るなら守るなりきりの経済政策をとらなければだめなんですよ。
先ほど来、金融のお話、がちょっと出ましたが、私、非常に疑問に思っておるのは、日本に流れ込んだ百億ドル以上のドルから出てきた円資金というものが、諸悪の根源だ、投機の資金になっているというようなことを言いますが、そういう中で、日銀の貸し出しというものが去年一年でものすごくふえているんです。たしか去年の一月は七千五百億ばかり。それが去年の年末は二兆一千億こしているのですよ。二月末でも日銀の貸し出しが二兆円ですよ。単なるドルから生まれてきた円資金がだぶついているその上に、去年一年、金がだぶついているというのに、日銀の貸し出しを一兆三千億もふやすというのは、どういうわけですか。大蔵大臣、どうですか。
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○愛知国務大臣 昨年あるいは一昨年からの数字をあげての御意見でございますが、私もそういう点については、そういう事実の上に立って今年度の財政計画や金融政策を展開しておるつもりでございます。私は、分科会等でも申し上げましたから繰り返すことになるかもしれませんが、昨年、一昨年で、いわゆる外為からの円の資金が散布されたのが六兆円、これは事実そのとおり。ところが、たとえば昨年末あたりの状況を見ると、都市銀行を中心にしたいわゆる全国の主要金融機関の貸し出しの残高というものは、ほぼ七十兆円になっておる。それから一方で、法人の手元資金というものが、これはまあいろいろな基準のとり方がありますが、たとえば商品の売り上げ高と対比してみて、まず正常な場合は、〇・八とか〇・九というところでございましょうが、これが一・二七という程度になっておる。これは確かにふえている。しかし、何といっても、この金融の情勢というものは、貸し出しが非常に大きなウエートを占めている。ここを締めていかなければいけないというのが、現在のやり方であり、また財政計画の上におきましても、累次申し上げておりますが、こうした四十六、四十七年度の傾向から見て、現状に処するのには、相当程度の公債を出して、そして財政主導型に転換していかなければならない。
北山さんからいろいろ具体的の御提案はあるのですが、私は、個々の法人税の問題とかその他について、またあえて意見を申そうとは思いませんけれども、お考えの基本にしておられることは、私も基本的にはよく認識ができているつもりでございます。そして、こういう状況下で変動相場制というようなものになったらばこそ、なおさらもって、四十八年度予算で考えていたようなことは、一日もすみやかに施行していただくということが、これにますます対処するゆえんである。なぜかならば、四十八年度の財政計画というものは、輸出を押えて内需に転換するということも一つの大きな目的にしております。過剰流動資金というものに着目して、これを吸収して、国家目的に沿うようにしなければならないという基本的な考え方もとっておるわけです。そういうことを、変動相場制になったからこそなおさらもってこれを生かしていかなければならないという基本的な感覚は、全く御同様でございます。具体的な方法論については、私は
北山さんと意見が違いますが、基本的には同じような考え方を持っているわけです。
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○
北山委員 私の聞いているのは、そんな広範なことじゃないのです。そこまで発展させちゃ困るのですよ。それで意見が一致したなんておっしゃいますが、まことに迷惑な話なんです。
実はいま日銀が二月の末で二兆円以上の貸し出しをやっているでしょう。そして一方では、預金準備率で預金を吸い上げている。おかしいじゃないですか。日銀が歩積み両建てみたいなことをやっておられる。貸しておいて、その金を無利子で預かっておる。どうしてこんなことが起こるかというんですよ。貸し出しを減らしたらいいんじゃないですか。やはり日銀が貸し出しをふやしていかなければならぬ事情があるんです。だからおかしいんですよ。一方の手では、去年一年で一兆三千億も日銀の貸し出しをふやしておいて、一方では、いまお話のような理屈をつけて、今度は預金を凍結するなんていうのはまるっきり矛盾じゃないですか。一方で拍車をかけておいてブレーキ踏むというふうなもんです。
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○愛知国務大臣 これは過去のケースをごらんになってもおわかりと思いますけれども、政府からの払い超が非常に多い、それから外為からの先ほど申しましたが六兆になったというようなその状況のとき、ごらんいただけば、日銀の貸し出しが
一時ほとんどなくなったこともございます。これは金融の操作の問題でございまして、日銀の貸し出しというものが全然なくなるということはむしろ異常なことである。しかし、いま展開しております金融政策からいえば、日銀の貸し出しというものは当然収縮することは自然の勢いであると、かように考えます。
それから準備率の引き上げということは、要するに、資金の散布を押えるために一種の凍結措置を行なっているわけでございますから、これが貸し出しの減少に乗数効果を加えて相当な数量的な規制になりますし、そういう場合におきましては、日銀からの貸し出しというものも減ることは当然でございます。
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○
北山委員 とにかく方針と、実際やっていることが違うんですよ。違うふうなことをやっておるからおかしいんですよ。だから私は、預金準備率なんていうのはゼスチュアじゃないかと思うのですよ。金融引き締めをしているかのごとく、実は日銀の貸し出しはふえて、まだ二兆円からしてあるんですからね。去年の初めが七千五百億しかなかったものが、どんどんふえてきてこういうことになっておる。だから減ることもありますよ。だから私はかんぐっている。なぜかんぐっているかというと、おととしの為替差損、これでもって積み立て金はほとんどなくなってしまったでしょう。それを埋め合わせるためには、日銀の貸し出しを無理にやっているのかな、そうして金利をかせいでいるのかと私はかんぐりたくなるんですよ。天下の日本銀行がそんなことをしたんじゃいけないじゃないか。とにかく一方では、預金準備率でもって預金を無利子で吸い上げておいて、一方では貸し出している、こんなふうなちぐはぐなことをやっている。とにかくこういうような財政金融の政策の中で、国民は全くこれは迷惑をするのです。おそらく今度の予算をどうしても是が非でも通してもらいたい、こう言うんです。ところが、現実に国民のサイドから見ますと、政府が円切り上げを防止するという意味で、先ほど来言ったように、オーバーな景気刺激をとったためにものすごいインフレですよ。物価高ですよ。どんどん上がっているのですね。とても五・五%じゃ済まない。企画庁長官も何か分科会でそういうことを言ったようですが、済まない。その物価高に苦しめられる。それから円の切り上げがもう必至というか、現実にもう実質そうなっているのですから、そのために打撃を受ける。と同時に、政府の税制その他いわゆる高負担ですね。トリレンマということをよく愛知さんが言いましたが、国民はいまや三つの苦しみの中にこの予算で追い込まれている。物価高と円の切り上げと、もう一つは重税、高負担ですよ。
その税金の話をちょっとしたいのですが、政府は今度の予算で中央、地方を通じて四千六百億減税したと言うでしょう。ところが、その減税分を差っ引いても国と地方を通じて三兆二千億自然増を見込んでいるのですよ。特に私はその税の収入の問題でお尋ねしたいのは、源泉所得税でも五千億以上増収を見込んでおりますね。源泉所得税のいわゆる減税分三千百五十五億を差っ引いてもさらに五千八百六億の増収を見込んでいるのです。申告所得税が二千五百九十九億で、所得税だけで八千四百五億去年よりも税収がふえる見込みになっているのです。ところが、給与所得者の所得は、税収見積もりでは去年よりも一人当たり一五%ふえる、政府はこういうふうに見込んでおりますね。そうすれば、政府としても公務員に少なくとも一五%以上のベースアップは考えてやる。取るほうだけ一五%上がることに計算して、給与のほうは一五%考えておりますか、公務員給与を一五%以上上げることを。それだけは覚悟しておりますか、大蔵大臣。
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○愛知国務大臣 まず、いつも言うことですが、最低限が非常に上がっているということもお忘れなくお勘定の中に入れていただきたいと思います。
それから、本会議でも御質疑がございましたが、納税人員が昭和三十六年あたりと比べれば非常にふえているということは、それだけ所得が増加し、それだけ雇用の数もうんとふえて完全雇用になっているからでございますし、それから経済の見通しからいって今年度は税収の見積もりをしているわけでございますから、その中には相当の給与の増加を見ている。そうするとそれだけは、企業側がそれを予測しているかどうか、各企業別にどういう予測を立てているか、これはわかりません。しかし、全体の大数観察としての見通しに基づいた税収の見積もりをしておることはよく御承知のとおりでございます。
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○
北山委員 もちろん、減税で課税最低限が上がったというようなことを言いますが、しかし百十四万幾らですね。四人世帯で百十四万九千六十円ですか、そういう標準世帯の生計というのは一体どういうものかということは、総理府の家計調査をごらんになればわかるとおりで、四人世帯の食費が月に三万円ちょっとなんですよ。四人で一日に千円ですよ。そうすると一人当たり二首五十円ですね。一食当たり七、八十円にしかならないのです。それでやっていけるわけはないと私は思うのですが、あなたが課税最低限、ここまでは非課税にしたと称する四人世帯百十四万の人たちの食費というものは、全く切り詰めたやり方をしなければやっていけないのです。これはおそらく実際にはそうなっていないだろうと思うのですが、統計上はとにかくそうなっている。これではとても所得税なんか取れませんよ。そうじゃないですか。
私はこれは答弁は求めませんが、たとえば営業所得にしても一二%の増を見込んでおりますね。農業はおそらく所得なんかふえないと思うのですけれども、それでも五%の増を見込んでいるんです。ですから、減税だ減税だと言うけれども、いろいろな角度から、実際は去年よりも税その他のいろいろな負担が国民の上にのしかかってきている。おまけに国鉄の運賃が二千億ですね。それから健康保険が約一千億、保険料の掛け金分が差し引きしてふえるでしょう。年金だって、これもこの前言ったとおりです。厚生年金、国民年金で、今度の改定によって給付額がふえるよりも、掛け金の増というものは広範にすべての人が、たとえば国民年金であれば五百五十円の人は九百円にすぐなるのですから、これも吸い上げですよ。税金も吸い上げだ。国鉄の運賃、健康保険、年金、みんなそういう勤労者層からの吸い上げじゃないですか。だから国民は重税、高負担に苦しめられ、物価高では苦しめられ、円の切り上げではぶったたかれる。それで、おまけに税金の負担あるいは諸負担が高い。おまけにいま地方の自治体に聞きますと、もう国民健康保険も何割か上げなければならないと言っているのですよ。地方自治体もどんどん値上げをする。そういう予算なんですよ。それでもなおかつ、これを通せば事態がうまくいくと思っていますか。それでもなおかつ福祉重点の予算だといえますか。考え直したほうがいいのじゃないですか。考え直したほうがりっぱですよ。
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○愛知国務大臣 歳入、歳出の両面をごらんいただけば、歳出の面では、たとえば年金にいたしましてもその他の福祉関係にいたしましても、相当の増額が行なわれているということは御承知のとおりだと思います。
それから、私もお答えをしながらあえて論争をいどむなどという大それた考えは持っておりませんけれども、極端にいきますと、たとえば所得税についてもあるいは税収入全体についても四十七年度よりも総額を減らさなければならない、こういうふうな考え方にまで発展してくるのではないかと思いますが、そういうことは実際問題としてもあり得ないことであって、経済の規模も大きくなる、財政の規模も大きくなる、そして歳入の規模も大きくせざるを得ない、これが私は現実の姿だろうと思うのです。生活費との関係その他もいろいろ具体的に御指摘がございますが、それをだんだん押してまいりますと、結局昨年の税収入全体よりは今年のほうを減らさなければならない、それでなければ減税ではない、こういう議論になりかねないと思いますが、それでは予算の編成というものは前向きにやっていくことはできないのではなかろうかというのが私の考えでございます。
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○
北山委員 その財源の話はこれから申し上げます。
私は、総ワクを縮小しろなんということは言っていません。問題は、だれから税金を取るか、どういう階層から税金を取ってどの方面にそれを使うかということだと思うのです。総ワクだけの問題ではないのです。総ワクを縮小しろなんというようなことは言っていないのですよ。税金は取るべきところから遠慮しないで取るということなんです。
たとえば株の値上がり、これもこの
委員会でやりましたけれども、上場株式の時価総額を見ますと、四十七年末は総額で四十九兆五千四百八十一億です。これは一年前から比べまして二十六兆円ふえているのですね。最近は株も若干下がっておりますけれども、とにかく一年に二十兆円も株価が上がるのです。そこから出てくるキャピタルゲインあるいは評価益、こういうものに一体どういう税金をかけていますか。私から申し上げますが、個人の株式の譲渡益は原則としては非課税でしょう。いわゆる四十九回まではいいわけだ。二十万株という限界がありますから、それに触れさえしなければ、百万株売り買いしてもいいわけですよ。そして何億もぼろもうけしているのですよ。それには所得税はかけていないでしょう。原則として、いわゆるキャピタルゲインには税金をかけていない。
それから法人が受け取る配当は非課税ですね。いわゆる益金に計算しないというのです。これはどれだけありますか。私の計算を申し上げますと、四十六年度で全法人の配当額というものは一兆二千四百七十一億ある。そのうち配当額一億円以上というのが八千七百五十二件です。そうすると、その配当を個人の株主や会社に払うわけですね。この会社部分というのは、御承知のとおりいま株の六割以上あるいは三分の二くらいは法人持ちだといわれているのです。個人の株主の株ち株というのは三二%でしかない。大半は法人持ちなんですね。そういう割合で計算していきますと、これだけで大体二千億ぐらいは減税になっているのではないか、こういうふうに私はざっと推計しているのですが、大蔵省には計算がございますか。
それからもう一つは、いま個人の株主の譲渡益は非課税だが、これは一体どういうわけなんですか。これは直すべきじゃないんですか。
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○愛知国務大臣 現在の株式に対する課税の制度は、いま大体御指摘のとおりでございます。個人の株式の所得について、キャピタルゲインに課税するということ、あるいはいま五十回云々というようなお話、とにかく理論的な問題とそれから徴税技術上の問題とでなかなか捕捉できない。したがって、正確な統計も、いま法人の株式譲渡益がどれくらいあるであろうかということも、厳格な意味では公に数字を申し上げるような資料がございません。これらの点についてはいろいろ検討して、実情を掌握しなければならぬと思いますし、それから五十回云々ということも、これを何とか現状よりも適確に掌握して課税するようにしたいと思いますし、それから将来の問題として、これは相当、何と申しましょうか、きめこまかい検討、研究を必要とすると思います。
それから法人の関係については、総括質問のときにもお答えをいたしましたが、そうすると
北山さんから、おまえはまだ法人擬制説をとっているのか、こういうわけで、現在までのところは政府としてはいわば法人擬制説といわれるような説をとっておったことは事実でございますが、私は公にも申しておりますように、法人税の加重ということについては検討する時期が来ている。四十九年度以降においては、いままでもいろいろ承ったような意見を大いに参考にいたしまして、きめこまかく、株式所得の問題を含め、あるいは税率の問題、あるいは一そう突っ込んだいわゆる特例措置の扱い方、そして反面におきまして勤労階級の所得税の軽減ということについて、真剣に、しかしやはり相当の時間をかしていただいて、将来、これは四十九年度以降において実現ができるようにただいまから——これはずいぶん時間がかかりますです。税制調査会というようなところもありますし、それから具体的に
北山さんの御議論に対してはやはり反論もある。それを、コンセンサスをつくり上げながら建設的なよい案をつくるのには相当の時間がかかりますので、その辺のところはよく御理解がいただけるものと思います。
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○
北山委員 これはもうコンセンサスもすぐできるんですよ。だれが考えたって、株の値上がりでぼろもうけしているやつには税金はほとんどかからないで、一生懸命働いている、学校出てまだ未成年者で、月に三万円ちょっとぐらいの月給をもらいますと、すぐに所得税なんかかかってくるんですよ。一生懸命やっている人たちには重い税金で、そして株だ何だといって何十兆円も、いままで一年間でも値上がりしたんですから、その間でもう何兆円、ばく大にもうけているのです。それには税金はかからないし、大蔵省も調査もしないというのです。いままでわれわれは待ってきたのです。もう待てないのですよ。
しかもこういうことは、国民に言ってごらんなさい、すぐにコンセンサスはできますよ。税制調査会なんかでコンセンサスを求めようとするからだめなんです。あんなものは
委員を全部入れかえて、財界代表なんかを入れかえて、
田中さん決断と勇気をもって、そしてこれを入れかえて、ほんとうに学者や専門家を中心とした税制の機関をつくってやればできるんですよ。こんなものはもう道理なんですからね。だれが考えたって、そんなことやっているかと疑うのです。
しかも決して新しい問題じゃないのです。私は、個人の受け取る配当所得、配当の税額控除の問題で、
田中さんが大蔵大臣のときにこの席でやったでしょう。あのときは幾らだったか、受け取り配当の非課税の最低限はたしか二百六十万ぐらいだったと思うのです。ことしは二百七十五万ですね。だから、何もしないで株を何千万も持っておって、その配当金が二百六十万あっても、そこまでは所得税一文もかけないという、そういうことは公平ですか不公平ですかと私はあなたに聞いたのです、大蔵大臣のときに。あなたが、これが公平だと言うなら、私は国民に対して、大蔵大臣はこう言っています、公平だと言っていますとこう言うから、どっちだか言いなさいと言ったら、どっちだとも言いませんでしたね。うまいこと逃げちゃった。しかし、その当時からずうっとの問題なんですよ。
いまギャンブルで、株もその一つですよ、ギャンブルでもうかって、そして会社も本業のほうをさておいて、土地や株の買い占めをむしろ本業よりもよけいやって、そちらのほうでもうけをよけい取っておる。こんなことじゃ、GNPが何%でございますと言ったって、私は日本の経済というものは腐ってきておると思う。働かないで、価値を生産しないでいる者がばく大な、何十兆円もぼろもうけをして、ほんとうに営々として働いて経済社会をささえている者が重い税金をかけられる、こんなばかげた話はないじゃないですか。これは
コンセンサスですよ。私はそのコンセンサスを代表して言っているんですよ。実行する気がありますか。総理どうですか、思い切って来年から。
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○愛知国務大臣 ただいまも抽象的には申し上げましたが、これはしかし
北山さんも御存じのことですから、先ほど申し上げましたように、こまかく論争をする気はございません。しかし、個人の株式の売買譲渡というようなことについては、これはちょっとお考えいただきましても、捕捉することは非常に困難です。そして、ことに理論上からいえば、評価益ということがいろいろいわれますけれども、さらに評価損ということもこれは税としては十分考えていかなければならないことでございます。年五十回ということは捕捉ができないだろうとおっしゃるとおりに、いろいろつとめておりますが、これすらもなかなかなかむずかしいのです。これは、たとえば株屋さんに電話をかけて、そして売買をするというようなことの実情であることは御承知のとおりで、これを、コンセンサスと言われましたけれども、感覚的には、おかしいぞ、何かやらなければなるまいというお考えは、私もよく理解ができますが、理論上からいい、あるいは徴税技術上からいい、だれがどうやってどういう機会に売買をし、そして評価損はどういうふうに見るかというようなことをお考えくだされば、御専門でありますだけに政府側の苦心しているところも御理解がいただけるものと私は思うわけでございますが、しかし、何とか名案はないであろうかということで、先ほど申し上げましたように、相当の時日をかけて冷静に適確に処理できるような方法を検討すべきである、かように考えておる次第でございます。
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○
北山委員 総理、この問題について、土地の問題もそうですが、とにかくいまのようなことじゃまじめに働く気が起こらなくなりますよ。だから、庶民は、土地も買えない株も買えない人は、しかたがないから競馬へ行って馬券を買うとか、それもできない場合には宝くじでがまんするとか、そういうもうみんなの気持が、この事実をほんとうに知ったなら、おこっちゃうですよ。
田中内閣吹っ飛んじゃうですよ、ほんとうに知ったなら。いま徴税技術の話がありましたが、やる気になれば技術は何ぼでもあるのです。もとやっておったじゃないですか。それをやめて、そして一万分の十五というような安い有価証券取引税に切りかえてしまった。一万分の十五ですよ。何十兆円だか知らぬが、その取引の間に、一年間にたった三百億の税金だ。今度はそれを、やはり悪いと思ったか、倍にして一万分の三十にやっと上げて、たった三百億とした。やる気がないんですよ。どうですか、ほんとうにやる気ありますか。ほんとうに道理に基づいた政治をやらなければ、こういうことなんですよ。
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○
田中内閣総理大臣 いつも問題になりますが、いまの株式の問題に対しては、これは評価益の場合を考えれば、評価損の場合も当然考えなければならないから、これを営業として今度、全然個人の問題ではなく考えざるを得ないのでございまして、それは現在の税制上非常にむずかしいということで、今度は有価証券取引税に対しては倍額にしたわけでありまして、私はこれもまた倍額にするという考え方は、これはとり得ることであると思います。そういうものの限界というものを越して、国民感情とかはもちろんありますが、やはり税体系の中で処理できるような合理的なものでなければならないと、こう思います。私は、そういう意味で有価証券取引税の税率を動かすということでもって、この問題は最も正しい処理のしかたである。これを、私がいま申し上げたように、益の場合も損の場合も全部ということになると、これはもう五十回でも百回でもそんな制限は要らぬわけでありますが、それはみんな株式売買業として全く観念を変えなければならぬということになりますから、そこらにはおのずから限界が存在する、こう思います。
しかし、私は、いまのシャウプ税制はずっと四半世紀にわたって存在をしてきたわけでありますが、直接税中心主義でありますから、財源を確保するには確かにいい制度でありますけれども、やはり国民の税に対する理解を得るということにはなかなかめんどうな問題がある、こう思います。私はそういう意味で、ある時期には所得税のウエートは変えなきゃいかぬのだろうということでございますが、そうするとすぐ間接税にウエートを移さなければならない。私が大蔵大臣当時御質問をいただいて、個人的に申し述べれば七〇対三〇の直接税と間接税をフィフティー・フィフティーぐらいにしたい、こういうことを述べたことを記憶しておりますが、私はやはり間接税という問題が逆進税制だというようなことでただ一言で片づけないで、もっと合理的な税負担というものを考えなければならないのではないか。そうでないと、徴税人口がふえるだけではなく徴税機構が膨大になってしまってもう限界に来ておるということと、税に対する国民の感情的不満というものが避けがたい。そういう意味で、何とかうまく、税というものはやはり財源として必要なのでありますから、国民に還元するのでありますから、そういう意味でもっと合理的なものというので、私は、皆さんの御理解や応援も得ながらガソリン税を目的税にいたしたときの議員立法の立法者の代表者でございます。あのときは反対がございましたが、いまにして考えれば、ガソリン税なかりせば、これはもう言うまでもないことでございます。第二の問題としてトン税を考えたわけでございます。
そういう意味で、今度の土地の取引に対してもそうでありますし、収入印紙税というものを増せば、いまの三千五百億は七千億になるわけでありますから、私はそういうような具体的な問題を一つずつ掘り下げて、そうしてやはり税制の中でなじむような状態で処理をすべきである、こう考えております。
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○
北山委員 いまの答弁、長々とやられましたが、私はそんなこと聞いていなかったのですよ。直接税と間接税だけの話をされているのですが、私はいわゆるキャピタルゲインとか資産課税あるいは法人の課税、これが非常に安いということを先ほど来言っているわけですよ。キャピタルゲイン、いわゆる自分が働かないで、価値を生産しないで——一体そのキャピタルゲインというのはどういう性格のものなんです。これはいつの世にもあると思いますけれども、土地の値上がりとか株の値上がりがものすごくこのように何十兆円にもなってきて、そこから出てくるもうけというのは、自分ではみずから価値を生産しないのです。一体このもうけというのは、国民経済計算上どういう性格を持つものですか。
経済企画庁長官。
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○小坂国務大臣 ただいまの問題は、一九五三年に国連でもって考え方を統一いたしておりまして、システム・オブ・ナショナル・アカウンツ、SNAという方式がございます。わが国でもさような方式に従ってやっておるわけでございますが、この価値を生まない、付加価値を生じない単なる財貨の移転だけであるというものは、国民経済的に見て所得と見ないということを合意しているわけでございます。これはノルマルな経済状態のもとにおける考え方でありまして、それはそれでいいと思いますけれども、最近のこの異常なる株式の移転あるいは土地の移転、それに伴って生ずる所得が非常に国民の連帯感をそこなうような影響を生
みつつあるという事態を、私ども正直にこれを見ながら、それに対する対応策を考えねばならないというように思っております。
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○
北山委員 その国連の方式に従って、そのようなキャピタルゲインというのは国民所得とは見ない。だけれども、これは現実には入ってくるのですよ。企画庁がGNP計算、国民所得計算をするときに、たとえば不動産業の法人所得だとか、そのようなものは現実に入ってくるのですよ。ほんとうは入らない、理論的には入れないはずのやつが計算上それこそ入ってくる。そうなれば、GNPはやはり水ぶくれしている、そういう問題がある。
それからもう一つは、そのようにこのキャピタルゲインというものを全然捨象した経済計算というものは、経済の実態からまるっきり離れてしまうのですよ。会社だって、いま本業のほうで得られる法人所得よりも、へたすると株の操作によるもうけのほうが大きいでしょう。それが経済の実態なんです。ところが、国民所得計算はさっぱりそれを反映していない。きれいごとばかり言っている。土地の値上がりは価値の生産じゃないから、価値を生まないから、ふえるわけじゃないからそれは計算除外しているのだ、そんなきれいごとで済まないのですよ。きれいごとだけで、いや何%ふえたなんというようなことを言ったって、現実の日本の経済はほんとうに深刻な、これは腐った経済ですよ。そしてキャピタルゲイン、土地の値上がりとかあるいは株の値上がりにしても、ほかの人が生み出した価値の上に、所得の上に便乗して貨幣所得だけとっていく。そんなものが大きくなったんじゃ、日本経済が正常な発展できないじゃないですか。人間の、国民の心理だけの問題じゃないのです。経済的に見たって、資本主義経済が腐朽化している状態なんです。だから、単なるインフレじゃなくして、私はギャンブル経済だと言う。この点をほんとうに真剣に、どんな政府であっても、企画庁なんか、実態を突っ込んでやるべきなんです。ところが、土地の値上がりだって何だって、さっぱり調査していないでしょう。
私、この前分科会で聞いた。力石さんの、一年間に土地の値上がりというのは三十兆円ぐらいだ、こう言っているのです。しかし、またある試算によりますと、和光証券の昭和四十六年度の株式上場企業千三百一社の土地所有状況を調べたそれによりますと、いわゆる含み資産ですね、帳簿価格で載っていますから、帳簿価格と時価との差額というものがこの千三百一社だけで五十八兆円あるという調査があるのです。それを素材にして全法人にこれを当てはめてみますというと、ある計算では百七十九兆四千億ある、全法人の含み資産ですね。それ以外に個人があるのですからね。ですから、土地の値上がりというのは、まことにこれは三百兆にもなるかもしれない。価値の生産をしないのですよ。価値を生まないこんな水ぶくれが何百兆もあるという経済なんです、いいですか。これと取っ組まなければいかないのじゃないですか。まず、この値上がりに対してさっぱり税金をかけていないでしょう、土地についても。
ですから、党としては去年の六十八国会で法人の土地再評価税というものをかけなさい、無理なことは言わない、時価評価でなくてもよろしい、固定資産の評価額まで帳簿価格を評価がえしなさい、それに対して五〇%の税金をかけなさい、個人に対しても、大地主に対しては、その増加分に対して応分の税金を取りなさい、その税金をもって都市計画あるいは住宅その他に使いなさい、半分は地方自治体に分配しましょう、これだけではぼくは足らないと思いますけれども、これこそ私は、いわゆる社会的な不公正を幾らかでも是正する一つの手段だと思う。これを去年から提言しているのだけれども、政府は何にも考えておらない。
もう一つは、四十四年のいわゆる土地税制、あれでもって五年以上の長期保有者が土地や家屋を売った場合には分離課税にして、安い税率をかけることにしたでしょう。ことしは一五%ですね。ところが、その結果として地価の抑制に役立ったかといえば、役立たない。なるほど売る者はふえたし、土地を売って、そして税金は安くなって、土地成り金はずっと長者番付の上のほうをだあっと占めた。減税にはなった。それらの人たちには非常な恩典になったけれども、買った者はだれかというと、大半が企業です。法人ですよ。直接の需要者じゃない。中間需要者だ。今日何の役にも立っていない。これで私の推計では、四十七年度一年でも五千億円くらい減税しているのですよ。政策減税をやっているのです。やっておるけれども、地価の抑制には何の役にも立たないでしょう。供給はなるほどふえる、効果はある。その地主にはぼろもうけをさせて、税金は軽くしてやっている。しかし地価抑制にはならない。買う者を、法人を野放しだから。だから去年から提言しているのは、そういう制度をいまやめてしまえというのではなくて、むしろそういう措置を適用するのは、実際に地方自治体とか、そういう公共用地に売った場合とか、あるいはほんとうにうちを建てるほんとうの需要者、そういう者に売った場合に限るのだ、それぐらいの改正はできないのですか、大蔵大臣。
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○愛知国務大臣 四十四年度のときの改正の評価についてお話がございましたが、ある程度の土地対策に成果はあがったと思いますけれども、しかし、そのあがり方の形が思わしくない状況であった。それでこれを政府としても考えまして、これももう前々からお話ししておるとおりでございますが、四十四年のときにさかのぼって、これを補完するという意味で今回の土地税制を考えたわけでございまして、これは申すまでもなく、法人の譲渡益と保有税と両建てで、そして四十四年のときの補完ということも考えてまいったわけでございます。この点についても具体的な対象、型については、いまも御提言がありましたように、政府の案とは違っておりますけれども、考え方の線としては、四十四年度の経験にかんがみて措置をいたしましたことは御理解いただけると思います。
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○
北山委員 私どもとしては、すでに去年から具体的な、いま申し上げたような、それ以外にもいろいろ提言している。これはまだ個人的な考え方ですけれども、もうすでに法人の全国的な土地の買い占めは済んでおるのだ。もう、いいところはみんなとっちゃっているのだというのが常識的になっていますね。そうしますと、いまさら法人の規制をしても、買っちゃったものはもうどうにもならないのじゃないかということにもなるわけです。
そこで、せめて四十四年度から法人の取得した土地の届け出をさせる。そして実態を捕捉しておいてあらためて持っている土地の開発計画を出さして、これを許可制にするということにして、言うならば、すでに大企業なんかが取得した土地の開発行為というものを規制することによって、それを公共の用に役立てるような措置はとれないものですか。これは建設大臣なりだれでもいいのですが。
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○小坂国務大臣 過去においての取引を届け出させることは困難かと思いますけれども、昭和四十四年一月以降の法人の土地の取得については、土地保有税等を通じて、あるいはまた実態の調査を建設省等にやっていただいて把握することができると思います。さらに、その土地をどう開発するかという開発の行為については、関係法令によって土地利用計画に即して規制することを考えておるわけでございます。
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○
北山委員 土地対策についてもう一点、この
委員会でも問題になりましたが、地価公示制度ですね。地価公示制度については、大蔵大臣自身もその効果について疑念を持っていらっしゃるようなんです。私も同感ですよ。地価の値上がりに順応して公示価格を何千円とか何万とか、地点において公示制度でただ公示していくというだけじゃ、これは何にもならないと思うのですね。それはこの前のNHKの売り渡しの値段、あれでも地価公示制度の無力さがまざまざと出ておるのです。が、それに今度の予算では予算を倍加して五十何億もこれを使おうとしておる。
私は、むしろ地価公示制度というものはやめて、標準地価を来年なり再来年なりに設定する。それは固定資産の評価額というものを一応の基準として標準地価というものを設定する。そのほうがむしろ現実的でいい。お話しのように技術的な面からしても、各一筆ごとの評価が出ておりますから、地価公示制というのは、ある地点地点についてその近所の土地ですから、強制力というか、ほんとうのその土地の評価になっていないのですね。だから固定資産の再評価というものが、この四十八年の一月一日現在で再評価されますから、それを基礎にして、これを標準地価として、これでひとつ地価というものを押えていく、そういうやり方をとるほうが合理的ではないかと思うのですが、担当の大臣からお答えを願いたいと思うのであります。
-
○
金丸国務大臣 お答えいたします。
地価公示制度は非常に効果がないというお話でございますが、民間の取引の上におきましても、あるいは公共の取引におきましても非常に役立っておると私は考えておりますが、ただ、まだこれが国民に定着しておらないということと、先生も御指摘のように、税制がいろいろ自治省の関係もあればあるいは大蔵省の関係もある、こういうことでございますから、これを一本にするということは好ましいことでありますし、政府もそれを一本にするということで考えておるわけでございますが、NHKの問題につきましては、これは全く論外でありまして、ことにその取引の関係は、いわゆる入札という関係にあったということも、御理解をいただきたいと私は思うわけでございます。
なお、この地価公示制度につきましては、最終的には全国に二十四、五万地点つくりたい、このように考えておるわけでございます。
-
○
北山委員 大蔵大臣は何かこの前
委員会で、この地価公示制度の効果にやはり問題があるというようなお考えだったようですが、どうですか。私は率直に言ってこれは役に立たないと思うのですよ。もう少しぴしっとしたものを、一筆一筆ごとの評価というものがかっちり出ていなければ、その近所の土地がこれだけだ、それを見習ってやろうなんといったって、いま言うように、NHKのように入札すれば、その価格を見て札を入れるわけじゃないのですから、何にもならないのですよ。また事実地価が上がればそれを変えて改定していく、時価順応型の地価公示じゃどうにもならないじゃないですか。地価を抑制し、標準化する力は何もないじゃないですか。そのために五十何億も使うということは、私はもったいないと思うのだ。大蔵大臣はどのように考えますか。
-
○愛知国務大臣 御案内のように、たとえば相続税の場合と、あるいは固定資産税の場合と、地価についての評定というか、鑑定といいますか、現実に評価が違っているわけでございます。これはもう現実が現状ではそうでございますから、そういったような点も勘考して、地価公示制度というものをぴしっとしたりっぱなものにしていかなければならない。そのために建設省でやられる仕事に対して協力をしよう、こう考えておるわけでございまして、従来の経験等をもとにいたしまして、地価公示制度というものは非常にむずかしいものであるということを、前回にも率直に申し上げたわけでございまして、政府としては、公示制度というものをつくれば、これは公の最も権威あるものとして、徴税の場合その他でも大いにこれが基礎になるように、そういうりっぱなものにしなければならない、こういうふうに考えております。
-
○
北山委員 いろいろな点に、株式とかあるいは土地とかに触れてまいりましたが、問題は、このような土地投機あるいは株の投機というものが非常な激しい勢いで、いわゆるギャンブル経済の実態、実相をあらわしておる。それが今度は商品にまで広がって、そして国民の生活必需品まで投機の対象になっているといういわゆるギャンブル経済、これの根源は、いままで申し上げたような株あるいは土地のキャピタルゲインを甘くしているということですよ。これを見のがしているということなんです。いわゆるばくちのもうけをそのまま見のがしちゃっている。しかもこのごろでは、そのほうが本業よりももうかるというわけです。しかも、政府はインフレ政策をとってくれるし、日本列島改造論で盛んに全国的に土地の値上がりも刺激してくれるし、だから、そういう根本の問題が原因になって、土地や株や商品のギャンブルがものすごく広がってきていると思うのです。だから、いろいろな方法があるけれども、一つは、税制の上でこのキャピタルゲインをはっきりと押えて、そこから遠慮なしに税金を取って、そして勤労所得税を中心とした大衆課税をやはり思い切って減税しろということを、社会党はこの国会で強く繰り返し繰り返し要求しているわけです。それが一つの柱です。
それから、税金のほかに国民の負担を軽くすること。この際、物価高で苦しめられている国民生活を守るためには、国鉄のいろいろな事情があるにもせよ、国鉄の運賃の値上げだとか、あるいは健康保険の保険料の値上げだとか、そういうものは思い切ってやめるということですよ。大衆に、働いている人たちにこれ以上負担をかけないということです。それから年金にしても、五万円年金というものは、言うならば名前だけ。いまは給付額が少なくて、すぐに五百五十円の掛け金が九百円に上がったり、それで厚生年金の掛け金が大幅に上がる。大衆からすれば、年金が改善されるといって、結局掛け金がよけい吸い取られるということなんです。そういう年金制度を思い切って直して、いわゆる賦課方式にして、いまのお年寄りたちに必要な年金をやるような思い切った手を打ってもらいたい。そういうことがすなわち、施政方針でも言っているような福祉優先への転換ではないでしょうか。
私が部分的に指摘したように、ことしの予算もまた大企業優先、ギャンブル擁護といいますか、そういうような金持ちや大法人に都合のいいような予算になっている。国民生活を軽視している。そういうものを、円切り上げの目標がはずれたいまとなっては、特にこの情勢の中では、発想を変えて、ほんとうに実質的に国民生活を守る、命と暮らしを守る予算に転換しろというのが社会党の要求です。野党の要求です。総理大臣にその転換をしろという要求を受け入れる気持ちがあるかどうか、くどいようですが、お尋ねをいたしておきたいのであります。
-
○
田中内閣総理大臣 社会資本を充実し、社会保障を拡充してまいりたいという基本的な姿勢は、前々申し上げておるとおりでございます。また、物価の抑制、国際収支の改善対策等々もこの予算をもって対処してまいりたいということでございまして、政府は、これからの五十二年までの長期経済社会基本計画も明らかにいたしておりますし、国会の御論議も十分拝聴しながら、年を追うてほめられるべく、また、将来の日本人にほんとうに残せるような制度やまた内容の拡充をはかってまいりたい、こう考えます。そのためには、とにかくこの法律案はいっときも早く実行できるように、御協力のほどを切にお願いいたします。
-
○
北山委員 情けない御答弁なんですが、このギャンブルが商品に広がって、大きく問題化している。今度は政府としても、暴利取り締まりですか、そういう立案化をされるというふうに伝えられておりますが、その内容等について若干御説明を願いたいと思うのであります。いつごろ提案されますか。
-
○小坂国務大臣 この問題については、与党と政府との間でいろいろ話をしておりましたが、結局、政府提案で国会の御審議を仰いで、これをできるだけ早期に決定していただこうということで、本日の閣議で決定いたしましたので、本日国会に提案したわけでございます。どうぞよろしく御審議の上、すみやかに御承認あらんことをお願いいたします。
-
○
北山委員 この商品取引の投機問題については、あとで
田中委員、同僚のほうからも質問があると思いますから、私は内容的には触れません。しかし、問題は、暴利取り締まりの法案を立法化すれば問題が片づくのではなくて、むしろ、基本的ないまの投機のネックというのは、いままでお話ししたような、政府の財政経済、金融政策にあるのだ。いわゆるギャンブルから生ずる所得というものを甘やかしている。あるいはそれに手をかしている。こういう根本の原因というものを除去するために、政府は当然の措置をとらなければならないというふうに私は考えるのであります。
最後に、米の問題を若干農林大臣にお尋ねをしたいのでありますが、農林省は、せんだってのこの
委員会における質疑から刺激されたのか、三月五日に、食糧事務所とか組合の業務監督、巡回指導、そして安い標準米は小売り店の店頭に必ず置くように指導するというような通達を指示をされたように聞いておるのですが、そのことについて農林大臣から御説明をいただきたいのであります。
-
○櫻内国務大臣 モチ米の需給の不足に関連いたしまして、米の流通秩序がかんばしくないのではないかということから、米を扱っております卸、小売りに対しまして、ただいま御指摘になったような指導をいたしたようなわけでございます。これは、いまの食管法の上におきまして、流通経路が正しく守られ、また、消費者に対しまして安心のできる表示等の方法を示しておるわけでございまするので、ねらいといたしましては、流通の秩序が維持されることと、消費者に対する安心のできる表示等の行なわれることを主眼として指導をいたしたものでございます。
-
○
北山委員 これはしかし、ふだんからやっていなきゃならぬ問題で、あらためて指示する問題じゃないのですよ。これは、食管法のあれから見てもそういう制度になっているので、こういう食管法、いまの巻たとえば標準米なら標準米の制度、そういうものを確実に行なわせるという常時の監督の責任があるので、その実態を農林省は、食糧庁はつかまえていなきゃならぬわけですよ。あらためて店頭に標準米を置くようになんというのは、その指示はおかしいじゃないですか。いままでどういうことをしてきたのですか。いままではどういう指示をし、どういう調査をし、どういう監督をしてきたのですか。
-
○櫻内国務大臣 米の流通の中に、御承知のような自主流通米がございます。そういうことから、標準米というものが当然店頭に置かれておらなければいけない、また、国民の多数も標準米を買っていただくもの、こういう前提で考えていくべきでありまするけれども、実態は、東京のような大消費地におきましては、標準米の売りさばき量というものは、いまはっきり記憶しておりませんが、二割程度ではないかと思うのであります。そして、この間もこの
委員会で
小林委員からきびしく御指摘がございましたが、標準米のある部分が混米として、平たく申し上げますれば、標準米よりも有利な価格で売れるような、そういう方法がとられておる。この方法については、実際上は、一方において自主流通米が認められておりまして、そして標準米が残っておる場合に、米屋の長い慣習上、混米というものを否定しておらないわけであります。それがどちらかというと、標準米が売れないからもう混米ばかりだ、こういうような傾向も多少生じておるのではないか。もしそういうことであってはいけない。今回、モチ米の問題から起こっての流通秩序の乱れの中にそういう傾向が認められまするので、そこで、あらためて店頭に必ず標準米は置くように、こういうような指示をいたしたわけであります。
-
○
北山委員 非常に正直な答弁なんですけれども、そういう事実を一体認めていいのですかな。政府米、政府が買ってそして売り払いをする米、それはやはり、一定の国の財政的な助成がトン当たり何万円とあるわけですね。一トン当たりどのくらい国の税金から出しているのですか。
-
○櫻内国務大臣 平均して四万三千円になります。
-
○
北山委員 トン当たり四万三千円も負担しておくという意味は、一つは生産者保護でもあるでしょう。しかし、一つは消費者の保護ですね。やはり家計に差しつかえないような、ある安い値段で一定量のものを、その扱ったものを、その値段で消費者に売ることを保障するために四万三千円税金から足しましたのでしょう。ところが、末端へ行ったら何%、東京であれば二〇%しかいかないとか、どうなっているのかさっぱりわからないのじゃないですか。一体、平均して何%が標準米になっているのですか。
-
○櫻内国務大臣 お話しのように、生産者には生産者米価を維持する。そして消費者には、主食のことでもございますから、ある程度低廉に手に渡るようにという趣旨でそういうような標準米制度を設けておるわけでございまするが、いまお話しの政府米の中で、銘柄米として出てきますものが、これが大体二四%でございます。それから、非銘柄米として出てくるものが四五%、その他が八%というわけでございますが、その中で、現在標準価格米として全国平均で流通しておりますのが三六%で、これが並み米として、十キロ当たり千五百九十六円の指導価格になっておるわけでございます。
-
○
北山委員 そうしますと、その数字というのはちゃんとした数字がつかめているのですか。その千五百九十六円というのは、四五%であるべきものが実際は三六ないし三七%である、こういう意味ですか。
-
○櫻内国務大臣 いまちょっと御説明が不十分でしたが、標準価格米が三六%並み米として流通している場合に、六二%が、これは米屋のことばでございますが、上米、中米として流通をしておるのでございまして、そのほかに徳用上米の二%ほどがございますが、この数字でおわかりのように、非銘柄米の一−四等の四五%の中が三六%平均して流通しておりますから、その中から、いまのパーセンテージの差だけ、四五から三六を引いた分だけがその他のウルチ米のほうへいっておる、こういうことでございます。
-
○
北山委員 この問題は
小林委員からもいろいろ追及をされましたが、非常に重要な問題だと思うのであります。たとえば、いまおっしゃったような銘柄米にしても、その産地あるいは生産者の名前まで小袋に書いたものをちゃんと渡しますよ、間違いありませんよ、というようなことを、かつて長谷川さんが農林大臣のときにはっきりと本会議で言われた。はたしてそのとおり実行されているのかどうか。とにかく、四万三千円金を出しているということは、末端の消費者のほうに確実にそれが届いていることを前提とするわけですから、先へいって格上げ米になったり、いろいろ混米になったりして、どれがどれだかわからぬというようなことでは、四万三千円わざわざ国費を出してやる意味がないのです。一体、食管法のたてまえからするならば、いわゆる配給価格があれば、配給価格から計算して売り払い価格を出すようなかっこうになっているのですよ。いま、実は変則なんですよ。食管法には、購入手帳であるとか、あるいは配給ということばがちゃんと第一条の「目的」にあるのですから。ところが、配給制度がなくなってしまった。それをどんどん自由販売の方向へ持っていくような時期ではないんじゃないかと思うのです。農林大臣が何でも米の備蓄制度を考えたいというようなことを言っておられるようですが、日本人の食べる主食というものを、単に外国からどんどん買ってくればいいんじゃなくて、米だけじゃありませんが、麦にしても何にしても、基本的な食糧というものを、国内で自給率を高めなければならないという状況に来ているわけだし、農林大臣もそのような考えを持っている時期ですから、食管制度というものは、ただゆるめて、そしてやがては自由販売にするという方向じゃない。むしろこれをもっともっと生かして、米以外のものについても政府がこれを備蓄するとか、そういうことが求められている情勢なんです。そういう意味において、私は、せっかく四万三千円を出しているいまの食管制度、それが末端においてどれがどれだかわからぬ、農林省もその実態がわからぬというようなことであってはならないと思うのですね。ですから、いまおっしゃったような数字その他につきましては、また他の
委員から総括等で質問があるかと思いますので、十分な資料をいただきたいと思います。
それから、さらにもう一つお尋ねをいたしますが、いまお話しした備蓄構想、それについて、農林大臣はどのように考えていますか。米あるいはその他主要食糧等の備蓄の構想です。
-
○櫻内国務大臣 お尋ねはたぶん、不足を予想されるような主たる食糧についての海外からのもののようにもちょっと察せられるのですが、一応その前提でいきますれば、そういうものにつきましては、急に買い付けて備蓄ということになると、それは国際価格に非常な影響が起こります。私どもが対応しなければなりませんのは、昨年のような、国際的に非常な不作である、そのために需給の逼迫があった、それに対応するようにあらかじめ、保存のきくようなものについてはある程度の備蓄が好もしい、そういうような機関を考えてみたいということを申し上げておるわけであります。
以上、お答え申し上げます。
-
○
北山委員 私どもが言っているのは、ただ海外の輸入食糧だけじゃなくて、国内産のものについてもやはり含めて備蓄問題を検討する必要がある。また、社会党として考えていることは、米についてももみで買い上げて、そうしてもみで貯蔵する。そうすれば長い間品質が落ちない。そうしてこれを循環的に消費していく。あるいは産地で精米をするとか、そうして精米された悪いくず米とか、そういう分は飼料化していくとか、そういうふうに、やはり国内の米というものを大事にする。これを、いままでのように、ちょっと余ったから減反だというのじゃなくて、農業を立てていくような形で解決をしなければならぬと考えております。
農業問題を議論する時間はございません。ただ、残念ながら、米もその他農産物も、まさにギャンブルの対象にすらなっている。とんでもない話だと思うのですね。やはり、国民の命というものを守るという立場からすれば、しかも、戦争とかそういうわけでなくても、最近FAOの
事務局長が来て政府にもすすめたようでありますけれども、やはり国内の農業に対して考え方を変える必要がある。これは自然保護という意味からしても必要である。何かしらいままでのように、第一次産業から第二次産業、第二次産業から第三次産業それがだんだんの発展過程である、近代化の過程であるというような一つのドグマを持ち歩いて、国内の農業はだんだん少なくなったほうがいいんだというような先入観を持っておる。これを私どもはこの際思い切って転換をしなければならぬと考えております。その点についても、社会党としては十二年前のあの農業基本法で、この席でもって大いにやり合った。政府案と社会党案をぶつけてやり合った。ああいうような状況と今日の国内の農業あるいは林業を含めまして、大きな転換の時期であると考えています。いずれこれはわれわれのほうの案をもって、そうして御要請をいたしたいと考えております。
時間が参りましたので、私の質問はこれで終わります。
-
○根本
委員長 これにて
北山君の質疑は終了いたしました。
————◇—————
-
○根本
委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。
本日午後の質疑の際、日本銀行副総裁の出席を求め、意見を徴したいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○根本
委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定しました。
午後二時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
午後零時五十六分休憩
————◇—————
午後二時四分
開議
-
○根本
委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。
田中武夫君。
-
○
田中(武)
委員 本日は通貨危機、商品投機等を中心に御質問をいたしますが、実は、中身はすでに
北山委員をはじめ、いろいろと論議せられた問題と重なるかもわかりませんし、あるいは愛知、中曽根両大臣には、他の場所で御所見を承った問題にも触れますので、おもに総理から御答弁をいただきたい。そういうことをまず申し上げておきます。
そこで、まずお伺いいたしますが、これももう何回もだれかが触れておると思いますけれども、通貨危機、一口にいわれておりますが、アメリカがドルの切り下げといいますか、行なう等々の問題があってから、これを含めてわずか一カ月問に二回にわたって主要な外国為替市場が各国において閉鎖せられるという実態は、異常中の異常であります。ずばり、この原因はどこにあるのか、総理にお伺いいたします。
-
○愛知国務大臣 担当でございますから、私から一応お答えいたします。
今回の通貨危機の発端は、ヨーロッパ各国通貨間の強弱についての思惑から生じたものでありますが、その根底は、米ドルが交換性を欠いておる、ドルに対する信認が低下していることにあったと思います。
さらに最近は投機的な短資移動が大規模になりまして、かつ非常に早く動くという問題がありまして、これが危機感をますます拡大していることを見のがすことはできないと思います。
-
○
田中(武)
委員 現在アメリカは八百億ドルにのぼる外債をかかえ込んでおる。さらに七百億ドルを上回るユーロダラーがあると言われております。これもだれかが触れたと思いますが、その一つの大きな原因は、アメリカ系の多国籍企業にあると思うのです。ところがアメリカは、このアメリカ系の多国籍企業、これを保護しておる。これに対してかつて中曽根通産大臣は批判をされたことがあります。それを実行に直ちに移しておるならばパンチがきいたと思うのですが、いまになるとただ単なる犬の遠ぼえにしか聞こえない、このように思いますが、それに対してひとつ総理と中曽根通産大臣の考え方をお伺いいたします。
-
○中曽根国務大臣 通貨の安定のためには、やはり基軸通貨の使命を果たしてきたドルが、世界的にも信認され、かつ安定するという、いろいろな保証的措置を講じてもらう必要があると思うのです。大蔵大臣のけさの話にありましたように、交換性を回復するということも一つの大きな要件です。アメリカ国内におけるインフレを終息させるということも大きな要件ですけれども、もう一つ、見のがすべからざることは、アメリカの資本が外国へどんどん流出しているということで、それは多国籍企業を通じていっているところです。今回のニクソン大統領の措置を見てみますと、この資本の外国流出についてはむしろ奨励するような感じの措置があるが、引き締めるという措置は入っておらぬのです。私はそれははなはだ遺憾である、そういうことを申し上げて、責任を持ってもらいたいということを発言したので、これは最近ECの諸国も同じような考えを持って、会議があればアメリカに対してその考えを伝えるというよしでありますが、日本政府も、おそらく細見顧問やその他の者がそういう考えは堂々と述べるであろう、そう思っております。
-
○
田中(武)
委員 あのね、述べるであろうじゃなしに、あなたがずばり、その批判は当たっておると私どもは思うのですね。ならばひとつ直接あなたがアメリカに対してものを申したらどうです。行動を起こしたらどうです。
-
○中曽根国務大臣 私は通産大臣でありまして、
田中委員から御質問がありましたから所見を申し上げましたが、外に対してそういう意見を述べるのは外務大臣とかあるいは大蔵大臣とかあるいは総理大臣の役目で、私の所掌ではないので遠慮しているわけであります。
-
○
田中(武)
委員 多国籍企業というのはいわば産業政策です。そこで、そういう立場にあるのは総理か云々ということですから総理に、それからもう一つあなたの管轄に入ると思うのですが、この危機の一つの原因、これはどうもよくわからぬけれども、多国籍企業のほかにいわゆる石油産地国といいますか、産油国の保有ドル、これが相当あると思うのですが、そういうことについて考えられたことがありますか。ことに一番多く原油を輸入しておる日本として、それと通貨危機との関係をお考えになったことがありますか。
-
○中曽根国務大臣 この点も、お答え申し上げましたように、いわゆるユーロダラーといわれているのは今日約八百億ドル以上あるといわれております。そのユーロダラーが何でできているかという推定の中に、これはアメリカの多国籍企業系の資金もございますし、あるいは共産圏が自由世界からものを買い付けるための、スイス銀行その他に預金している金もあるらしいといわれておりますし、また産油国が同じように石油の代価をヨーロッパの銀行に貯金しておって、それが活用される、そういうことが推定されております。私もそういう可能性はあると思っております。
-
○
田中(武)
委員 この件については私自体もまだはっきりとして、あるいは党の意見も聞いていないわけですが、国際経済専門家の中には、日本は西ドイツとともに二重相場制をとったらどうか。その考えは、投機的ないわゆる短期取引、ユーロダラー等々はいわゆるフロート制をとる、そして貿易を中心とする経常取引については固定相場制をとる、こういう考え方でございますが、そうすることによってユーロダラーを押えることができる、したがって多国籍企業の投資効率を下げるという動きをさすんじゃなかろうか、原因になるんじゃなかろうか、そういうように思うのですが、総理、二重相場制についてはどう考えます。
-
○愛知国務大臣 現在、御指摘のようにヨーロッパ各国でもいろいろの制度が行なわれておりまして、その中には二重市場制度をとっておる国もございますが、わが国の場合は、しばしば申し上げておりますように、為替管理が相当行き届いて行なわれておる。これは他国に例のないことでございますから、短期的な、投機的な、たとえばいまお話の多国籍企業等が相当保有していると想像されているようなものが実需以外で投機的に、意図的に流れ込んでくるというようなことは阻止することができる仕組みになっておりますから、現在の日本の制度におきましては、二重相場制度というものは考えなくともよろしいのではないか、こう考えております。
-
○
田中(武)
委員 いずれにせよ政府がアメリカペースで振り回されておる間に、先日ドルが一〇%切り下げられた。これだけでも十八億ドル以上のドルが紙くずとなったわけですね。それは日本国民が汗とあぶらで、また中小下請企業が、大企業と親企業といいますか、などの圧迫のもとにかせいできた外貨なんです。それが、手をこまねいてうろちょろしておる間に十八億ドルをこえるドルが、外貨が紙くずになってしまった。いわば国民の金を、政府がうろちょろしてはっきりとした政策を立てないままに、その間にそれだけ国民に損失を与えたということです。その責任をどう感じておるのか。
田中総理、これだけは総理から答えてもらいたい。あなた、内閣の首班者としてそれだけでも相当大きな責任を感ずべきである、こう私、思うのですが、いかがですか。
-
○
田中内閣総理大臣 確かに思想の上では御指摘のとおり、一〇%アメリカドルが切り下げられたわけでありますから、その意味では二百億ドルといえば二十億ドルに近い数字上の損失だということも言い得るわけでございますが、しかし、貿易を行なう場合に必要なものは外貨でございます。そのドルが一〇%切り下げられた価格で原材料などが輸入をされるわけでありますので、その意味では、外貨で有効に使われるということであれば、損失という面だけで議論ができないわけでございます。また、手持ちドルだけではなく日本の円価が一〇%自動的に切り上がったということになるわけでございますので、そういう意味ではいままでよりも安く品物が入るわけでございますので、これは両面から議論があるわけでございまして、いま御指摘になった一面からだけ、切り下げられた、日本の円平価が強くなったということで、それだけ数字上の損害が実質的な損害であるというふうには理解をしないのであります。
-
○
田中(武)
委員 そういうことだから困る。いまだにあなたは円出世論といいますか、そういう考え方を持っておられる。外に強く内に弱い円、これは後ほど触れますが、そこで、私は何回もかつてこの
委員会においてこの席から、金保有ということをやかましく言ったのであります。いま日本は、金の保有高はわずか八億ドル程度と聞いております。私は金を買え、こう言い続けてまいりました。その結果は、当時
佐藤総理、また大蔵大臣であった
福田さんもおられますし、水田元大蔵大臣も、ともに外貨準備高のうちの三分の一ぐらいは金で持ちたい、持つようにしたいと答えたのであります。ところが一面、ドルは子を生むが金は子を生まないとかなんとかいってやっておるうちに、一方では百九十億、二百億に近いじゃないですか、になっておるのに金保有はわずか八億。いわゆる先進国の中でこのような少量な金の保有国がほかにありますか。あったらどこだと言ってください。
-
○愛知国務大臣 ほかの外貨準備高の中の比率的には、日本は少ない国であると思います。一番少ないかと思います。正確に数字で御説明いたします。
-
○
田中(武)
委員 いや、そんなものは要らない。だからですね、こういうようにしてわれわれ野党が総括質問で皆さん方に質問をしておるが、あれは予算が通るまでのしんぼうだぐらいな気持ちで聞き流しておって、ほんとうにわれわれの意見をいれようとしないから困る。三分の一は必要だと言ったのですよ。少なくとも六、七十億ドルの金を持っていなければいけないわけなんですよ。しかし今日ではそれを買う道がありますか。一方においては核のかさといわれておるが、ドルに、アメリカにそれだけ義理立てしなければならない理由がどこにあるのか。少なくとも経済力においては大国日本だといっておるのでしょう。日本からいうならばアメリカからの輸入をもっとふやしてくれ、向こうからいうなら日本の輸出、これを制限する、これをいかにも権利か何かのように言われて、あなた方は唯々諾々とこれを受けておるじゃないですか。なぜ経済力を背景に堂々と主張ができないのです。
そこで時間の関係もありますから、私はまとめを申し上げたいと思いますが、アメリカに対して金保有量を高めそしてアメリカ自体の国際収支の改善をせよ、ドルと金の交換性を一日も早く復活させよ。また各国に対しては、IMFを通じてということになろうと思いますが、現在各国間で保有しておる金のアンバランス、これを外貨準備高に比例するような金保有に改めるように要求する。さらに、ドルだけでなくてマルクとかあるいはスイスフラン等の、いわばある程度ドルより強く安定をしておる国の外貨とかえるべきではないか。すなわちここで外貨政策、外貨外交の転換をはかるべきだと思います。そうでなければ国内には高く外国には安く、いわゆる出血輸出をしてきた、また超過勤務、低い賃金等々でがまんをしてかせいだ外貨が、それらの人たちはもちろんのこと、日本の責任にもならないのにどんどんと切り下げられていく。あなたの言をもってくるならば、円はそれだけ値打ちが上がったんだ、こういうことでしょうが、そういうことではないです。そうして、労働対策等を含め、あるいは下請代金等の改善、中小企業の体質の改善、構造の改善等をはかりつつ、日本の経済体制ないし産業構造の転換をいまこそなすべきであろうと思いますが、総理以下関係各大臣の所信を伺います。
-
○愛知国務大臣 前段が外貨政策というお話でしたから、私からまずお答えいたしますが、外貨政策ということばをお使いになりましたけれども、一つの具体的な御提案は、外貨準備にもっと金を多くしろ、それからマルクなどを入れよ、いままでアメリカにばかり遠慮していたではないか、こういうふうなお尋ねでございますが、アメリカに遠慮をして云々ということは私どもは全然考えておりません。ですからこそ先ほども申しましたように、長期的な対策と当面の対策と二つに分けて、午前中も
北山委員にお答えをいたしたわけですが、当面のところとしては、かくのごとき国際通貨不安において日本としてアメリカに要請しておるところは、一口にいえば交換性の回復ということであります。それから資本を流出することを規制してもらうことであります。それから一つは、何といっても基軸通貨に現実になっておるのですから、アメリカ自身の金融政策、この中には金利の問題も入りますが、こういった点を具体的に日本の政府の要請基本と考えて、現にこれは演説をしているだけではなくて、具体的にそういう態度で相対しておるわけでございます。おそらくは私の想像では、こういった考え方についてはヨーロッパ諸国も原則的には同じような考え方を持っているのではなかろうか、こういうふうに考えます。
それから、後段の点はしばしば申し上げておりますように、変動相場制になりました日本としては、ますますもってこの予算等に盛られている考え方というものが現下の日本に適切な考え方である、私はこういうふうに信じておる次第でございます。
-
○中曽根国務大臣 確かに御指摘のように、外貨の活用において十分ならざるところがあったと私たちも反省いたしております。この前対外経済関係調整法という法案を提案いたしましたが、これが成立もしないでこういうことにもなって、私らはああいう性格の法律をぜひとも成立さして、外貨を活用する道を開くべきであると考えております。
それから、外貨がこういうふうにたまる原因はどこにあるかということをまた考えてみまして、これはある意味においては国際的また国内的均衡という問題が一つございます。福祉水準をもっと上げる、あるいは週休二日制度を推進する、西欧並みの生活水準に持っていくということがやはり非常にキーポイントの一つであります。それと同時に、いままでの重化学工業型の国家から知識集約型、福祉型の国家に国策の基本をいま移動しつつあるところでありますが、これをますます推進いたしまして、いままでのような垂直的分業形態から先進国同士の完成品の交流をある程度考えた水平的分業の国に持っていく、そういう方向にまた進めていきたいと思います。
-
○
加藤国務大臣 賃金が過去十年くらい前は安過ぎたのでありますが、最近は世界でも一番上昇率が高くて、現在も低賃金かというと、私は欧米先進国に比較いたしましても決して低賃金でないということも言えます。これは低い高いはいろいろの対象がありますが、イタリアなり、もうフランス並みでありますので、現在ではこれは低賃金かどうかということは、なかなか判断がしにくいと思います。
以上のとおりであります。
-
○
田中(武)
委員 労働大臣、要は日本が今日のような状態になったことは、まあ産業構造にもあった。ことに中小企業の、そして労働者の犠牲の上にドルをためてきたと思うのです。まあ中小企業の問題についてはあとで触れますけれども、働き過ぎたということ。上昇率がいいって、もともと低いのですよ。だから週二日制の休み、休日二日制等も問題になっております。そういうことを含め、なお超過勤務で生活をささえておるというこの現実ですね。それは基本給が安いから超過勤務をやっておるのですよ。そういうようなことについて労働省としてどう考えておるのか、もう一回だけ伺います。
-
○
加藤国務大臣 お答えいたします。賃金に関連いたしましていろいろな待遇の改善、かような関係も、やはり日本の経済が成長するに伴って賃金もこれは上げなくちゃならぬのは当然であります。いま、はなはだおことばを返すようでありますが、まあ賃金が安いために、犠牲において日本の成長が伴った、そして円が強くなったという見方と、これはもういろいろな見方があるのであります。これも一つの要因でありますけれども、やはり国全体、国民全体の創意くふう。しからば現在の世界の情勢を見ますと、低賃金の国が貿易が大いに伸びておるかというと、反対の現象もありますので、しかし労働省としてはいろいろの改善のために努力いたしますことは、御趣旨を尊重いたしまして大いにやります。
-
○
田中(武)
委員 どうも波長が合わないようでございので……。ともかく今日に至った原因は、労働者とそして中小企業等々の、まあ犠牲というか苦労の上に、総理等の言う経済大国日本ができ上がった、そのことだけは確かでございます。先ほど来産業構造等々について申し上げておりますが、もうけっこうです。
総理、まとめて総理の考え方をお伺いいたします。
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○
田中内閣総理大臣 低賃金だといわれて先進各国から相当攻撃を受けたこともございますが、漸次改善に向かっておるということは事実でございます。それでこれからは、ほんとうに勤労者も国民も生産活用型の経済の中で、お互いに生活水準が上がっていかなければならないというような状態であり、またそれが可能な状態になりつつあることは、これはある意味においては御同慶にたえないといわなければいかぬと思うのです。ですから、あなたが労働者のあれだけでもってと言うけれども、それはやっぱり明治から百年の日本の教育水準の問題もありますし、日本人の持って生まれた勤勉性もありますし、しかも戦後のコンベヤー化とかオートメーション化とか機械化に対して、すばらしい速度でもって先進工業国に追いつき追い越してきたというような面があります。同時に、それだけではなく他動的な要因、相手の状態が非常にバランスを欠いたために日本が急速に地位が上がったという面もあるわけでございまして、この一番最後に申し上げる面は是正していかないと、これは長期的な展望に立って安定が続け得られないのであります。
なぜかというと、ちょうどいまから二年前、四十六年の一月の外貨準備高は四十五億ドルでありました。ですから、二年間の間に今日の状態になったのであって、これは二年間の間でもって日本の生産力が上がりコストがうんと下がったというのじゃない。これは他動的要因が非常に多いというのでありますから、そういう面もすなおに見詰めながら、日本としてはやはり成長活用型で、国民の生産力というものは国民に還元をされるというような体質に変えていかなければならないんだということだけは事実考えておりますし、そのような政策を強力に進めてまいりたい、こう考えます。
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○
田中(武)
委員 まだ不満ですが、どうもあなたとも波長の合わない点があるようですから……。
そこで円対策として第一次から第三次まで、私もここに資料を持っております。まあいろいろと閣議で決定、あるいは経済閣僚懇談会で決定しておられます。しかし、これが十分に行なわれておったのかどうか。もしおってこうなったとするならば、見通しが甘かったということになる。いや、見通しは誤ってなかったんだということであるならば、きめたことが十分実行せられていなかった。時間の関係もあるので、第一次から第三次までの円対策、たとえば八項目とか等々を持っております。一つ一つ伺いますのはやめますが、そのどっちかになるわけです。
さらに、いま中曽根さんもそうおっしゃったが、総理もたびたび言われていること、これははなはだ遺憾である。と申しますのは、対外経済関係調整特別措置法案、これが国会で廃案になったのがいかにも今日の状態を招いたがごとく総理やら通産大臣が何回もこれを繰り返すことは、政府の責任を国会に転嫁しようとするところの考え方である。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)いや、いまも中曽根さん言ったでしょう。どうなんです。そういう考え方を持っておられたら、たいへん何と申しますか、政府の無責任さをみずから暴露せられたものと思うのです。時間がないので一項目、一項目について質問はいたしませんが、まあそれも一項目であったと思います。しかしこのことを強調せられること、いまも言われました。総理も何回か言われました。そういうことは私は遺憾です。同時に、いま申しましたようにこれがすべて——これがというのは円対策が予定どおり実行していった結果、なおこうなったのか、あるいは予定どおり実行したけれども、なおこうなったのか。そうであるならば見通しが甘かった。そうなるのですが、どっちだと思っておりますか。
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○
田中内閣総理大臣 第一次から三次までの円対策の実行に対しては、精力的にやってきたつもりであります。しかし一つずついえば、指摘されれば、足らないところがあったといわれる面もあると思います。しかし、まあ円対策というものは国内的にもなかなか影響の及ぶ問題でありますので、そういう意味では、できるだけ円滑に摩擦が少ないようにというような意味で、自由化の問題一つ取り上げてみましても、また関税の問題一つ取り上げてみましても、必ずしも完ぺきであったということは申し上げられないわけでありますが、これはやはり政治の上でございますし、行政の上ではしさいな観察をしながら摩擦のないようにということであって、かぜだからルルの一びんも一ぺんに飲ませるということになればきくかもしれませんが、まああぶないから三つを六つ飲め、こういうところからいえば、それは不徹底であったということを指摘されるかもしれません。私も、そういうことはよく理解しておりますが、しかし日本の国内でやれるだけのことはやってきたということでございます。
ただ、政府としていわれるのは、外貨の直接貸しとか外貨をもっと有効に使えたんじゃないかというような面では多少じくじたるものもございます。これは率直に申し上げます。あとはもう外圧である。とにかく外国から、向こうが黙って一〇%下げてしまった。あのころは日本の専門家でも、もしものことがあってもまずアメリカにも引き下げを要求すべきだったという議論がおおよその議論だったわけですが、黙っておって向こうで一〇%下げたというのでありますから、そういう意味で変動相場制に移行せざるを得なかった事態には、アメリカの問題と、先ほど御指摘になったユーロダラーというもの短期資金が非常に投機的に動いてきている。今度の第二回目のこの問題は、アメリカは全然予期できなかった問題だと思います。そうでなければアメリカも西ドイツもあんな強いことを言わなかったと思うのです。もう絶対に変動相場制などにはいかぬ、こう言ったのが、これは予期し得なかった問題も起こったわけでございまして、とにかく手落ちのないように、いまからでもおそくない、これはもうずっと続く問題でありますから、誠意をもって対処してまいりたいと思います。
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○
田中(武)
委員 先ほど来、中小企業で大きな踏み台になってきた、こういうことを申しておるわけなんですが、今回のこのような通貨危機と申しますか、こういうことで、ことに中小企業を中心としたいろいろな商品といいますか、−商談が中断せられたりあるいは中止せられて、しかもまた幾ら働いても追っつかない。たとえばレートが二百六十円ないし二百五十円というようなところへくればこれはどうにもならぬ。たとえば、一つ一つあげると例は幾らでもございますが、クリスマス電球あるいは人造真珠、グローブ、ミット、めがね、ビニールあるいは繊維等々あります。これらに対してどういう措置を講じようとしておるのか。これに対して政府は、これも新聞の伝うるところによれば、三月十三日の閣議で緊急融資を二千億円用意する。これは国民、中小両公庫と商工中金ということになろうと思うのですが、これは当然当初の予算のワク外で二千億円という考え方ですかどうですか、その点が一点。
さらにもう一つは、前回の緊急融資の返済期がちょうど来ておるわけですね。これに対してどのような措置を講じようとしておられるのか。あるいは、もうやっていけない、転業するにも、たとえば奈良のグローブ、ミットですか、いわゆる野球用品等は家内工業ですから、転換の方法もないわけですね。そういうのに対してただ単に融資だけで事が済むのかどうか。そういう点についてどう考えておられるのか、お伺いいたします。
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○愛知国務大臣 全体の考え方で申し上げますと、これは一般質問や分科会の段階でも申し上げておりまたしが、緊急融資についてはもちろん別に新たに考えているわけでございます。貸し付けの規模としては二千億円以上を用意し、そしてそれに必要な、財投でいえば原資等につきましても十分見当をつけております。それから返済の猶予等につきましても、近代化資金、高度化資金等につきましても、前回同様返済猶予を行なうことを考えております。
それから考え方といたしましては、総体のワクももちろん必要でございますけれども、適宜の措置が行なわれることが必要でございますから、現在通産省が実態把握をやられて、その実態も逐次判明いたしておりますから、処置を要するものはどんどんやっていく。そして考え方としては、結果において総額がいつからいつまでにこうなったというふうにむしろ考えるべきものではなかろうか。しかし、財政当局としては所要の資金量についてはドアをあけて十分の用意をしておる、こういう体制を展開しているわけでございます。
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○
田中(武)
委員 この二千億円というのはワク外ですか、ワク内ですか。当初予算貸し付け総額一兆七千二百三十一億円ですか、そのうち投融資が八千五百八十一億ですか、このワク内で二千億円というのですか。ワク内ですか、ワク外ですか、どっちなんですか。
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○愛知国務大臣 それは正確にワク内、ワク外と区分が申し上げられない場合もありますが、要するに当面の輸出関連中小金融対策としてはこれだけの貸し付け規模のものを想定いたしております。同時に中小企業全体が、これは輸出関連だけでなく現下の状況においてはたいへん必要なことでございますから、そのワクということに拘泥しないで、新たにワク外的な考え方で当面の措置に当たるのが適当であろう、こう考えております。
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○
田中(武)
委員 ワク外、これだけはあとでまた触れますが、そういうことでしょう。
そこで、たとえばクリスマス用の電球業界だけをとってみましても、本年の輸出の見込みは五十億円、これは一ドル三百円で契約をしております。かりにレートが前回並みに二八・八ですか、一七%切り上げられたとするならば二百六十三円。そうしてその為替差損は約四億円になります。これらの補償は考えてやるのですか、やらないのですか。どうです。
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○中曽根国務大臣 クリスマス電球とかあるいはケミカルシューズとか、グローブとか、ミットとか縫製品とか、さまざまな痛手の報告がいま来ております。これらの問題につきましては滞貨融資、減産融資、あるいは転業したいという者に対しては事業団を通じて無利子に近い金を融資する、また通産省としてもその相談にあずかっていろいろ転換の指導をする、いろいろな態様が用意してございます。それらに応じて実行していくつもりでございます。
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○
田中(武)
委員 いろいろあげられましたが、いわゆるこれらの輸出品の産地というか、地場産業のこれからのあるべき姿をどう考えておられますか。同時に、政府は将来わが国の輸出構造をどのように考えておられますか。中曽根さんはビジョンに富む人だそうですから、ビジョンをひとつ示してください。
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○中曽根国務大臣 通産省では通産局を動員いたしまして実態調査をいたしました。現在までにわかっているところを見ますと、たとえば二百六十五円程度を基準にいたしますと、大阪の鏡の場合は輸出減少率が三三%くらい、
山口の竹すだれが四八%くらい、クリスマス電球が五〇%くらい、水産かん詰めが三四%くらい、縫製品、香川県の場合五〇%くらい、愛媛県とか沖繩になると三五%から三九%くらい、それから布帛玩具が三三%くらい、人造真珠が四二%、こういうふうにいろいろな反応がここへ出てきているわけでございます。
それで思いまするに、こういう円変動等によっていつも企業が採算できるかできないかという喫水線を浮いたり沈んだりしているものがあるわけです。こういうようなものは、この際思い切って別の業種に転換してもらうかあるいは新しい天地を見出していただく。たとえばクリスマス電球なんかは標示ランプになったり、あるいは一部燕の製品なんかは自動車のミラーになってもらったり、よく町かどに立っているまるいミラーがございますが、ああいうものになったり、あるいはある場合は韓国に進出いたしまして韓国の企業と提携して実行しているというのもございます。そういうようにいろいろ転換の方途を講じますが、どうしても無理だと思われるものは、この際その業種から新しい方向へ転換していただくように指導したらどうか。そのために必要ないろいろなめんどうは、政府としてもこの際思い切って見させてもらおう。前回いろいろ経験いたしまして、今回また経験いたしましたから、思い切ってそういうような構造転換の指導をしていきたい、そう思っております。
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○
田中(武)
委員 こればかりやっておられないので、次に入りますけれども、ただ融資だけではできないということだけは銘記しておいてもらいたい。たしか中小企業基本法にもそれに関連した規定はあったはずだと思います。それだけを申し上げておきます。
先ほどから実は待っておりました、日銀の総裁はおられませんので、副総裁見えておりますので、さっそくですが、日銀のほうへも含めてお伺いいたします。
前回、すなわち一昨年の場合、為替差損は四十億ドルだった。これを日銀の積み立て金で処理したわけですね。今回は今日時限においてどの程度、の為替差損があるのか、あるいはこれが一定の安定を保つまでになおどれほどの差損を必要とするのか、そういう点について、まず政府あるいは日銀にお伺いします。
さらにドルの買いささえ、これは日銀本来の業務として行なったのか、政府の委託によるものなのか。それから、これはたしか日銀法三十九条の一項、二項等に積み立て金という制度がございます。積み立て金でこういう為替差損を処理するとするならば、おそらく二項のほうではないかと思うのですが、そのような点、及び特別会計よりこの差損を埋めるというような考え方を持っておられるのか、こういう点について、ひとつ政府と日銀、双方にお伺いをいたします。
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○愛知国務大臣 御案内のように、外貨の保有については、日銀が保有している分と外為会計が保有しているものとございますが、日本銀行の保有分について評価損が起こりました場合の処理は、前回と同様にまず処理をすべきものと考えております。前回と同様ということは、利益あるいは積み立て金の取りくずしというようなことが前回同様の方式であり、これが制度としてもまともなやり方である、こう考えております。
それから、これは具体的な問題になりますけれども、現在は変動相場制をとっておりますので、その評価損を出しますのは、適当な時期に固定相場制度に返った場合に、基準外国為替相場というものがきめられたときにそのレートによって評価損を算出するのが具体的な場合の問題である。ただいまのところは変動相場制でございますから、基準相場がございませんから、現在、いついかなるレートで評価損を出すかということは考えておりません。
それからもう一つの外為のほうは、いま御質問にはないとおっしゃると思いますけれども、これはまたおのずから処理が違ってまいりますこと、御承知のとおりでございます。
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○河野参考人 お答えを申し上げます。
いま為替はフロートの状態にございますが、実質的にはある程度の切り上げになっております。現在日本銀行が保有いたしております海外資産は約五兆二千億でございます。そのうちには、円建てで世界銀行等に貸し付けておりますものがございますから、こういうものは御案内のように為替差損というものが起こりません。為替の関係で損益に影響を及ぼしてきます外貨資産は、そのうちで約四兆九千億でございます。
なお、先ほど大蔵大臣から申されましたとおり、前回の例に従って処理をするということになりますと、この外貨資産のうち、期限一年以上、一年をこえるものにつきましては、同じようにやるとすれば繰り延べ経理が行なわれることに相なります。いま一年以上、一年をこえる外貨資産、正確にはまたこれは移動いたすわけでございますけれども、それを差し引きますと、一年未満の短期外貨資産は約二兆円でございます。この二兆円に対してどういう相場で計算するかということは、先ほど大蔵大臣も申されましたとおり、現在は変動相場に移っております段階でございますので、従来の例に従いますと、基準為替相場がきまりました暁において、その基準為替相場に従って差損益というものが計算されることになるわけでございます。したがいまして、現在フロート中におきましては、その為替差損というものを正確に申し上げる材料を持っておりません。したがいまして、かりにどうしたらということは言えるかと思いますけれども、それ以上のことは申し上げられません。
それから第二の点のお尋ねの、外貨の買い入れ操作というものは日本銀行プロパーで行なっておるのか、あるいは政府が行なっておるのかという御質問でございますが、これは日本銀行といたしましては政府の代理人として、MOFの代理人として、MOFの指図に従って売買をいたしておるわけでございます。
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○
田中(武)
委員 ということは、主体は政府なんですね。主体は政府、その代理人としてやっておると、こういうことですね。
そこで、続いて政府、日銀にお伺いいたしますが、ここに私、持っておりますのは、きのうの毎日の記事です。「市場閉鎖をしり目に日銀、米軍ドルを優遇買い 一ドル=二百六十八円で」米軍の、これは軍属を含むのですが、多量のドルを交換しておる、こういうことが出ております。いままでは日米地位協定の十九条によって、日銀が米軍ドル売りの窓口を続けてきた。今日市場閉鎖しておるのになぜ米軍ドルだけを優遇買いしたのか。その理由には、一つは、たとえば基地日本人労働者に払う賃金等々というようなこともいっておりますが、この賃金というか、労働契約に基づくところの給料は円建てじゃないのですか。そうするならば、何もこういうことまでして多量にかえる必要はないと思うのです。ドルの値打ちが下がって切り下げたなら、それだけ多くのドルを持ってくればいいわけなんです。そうでなくともすでに問題になっております、たとえば岩国、三沢の件なんかとあわせまして、なぜそこまで日本がせねばならない義務があるのか。これは先ほどの御答弁によると、政府の指示に従って、というのですが、政府からそういう指示を受けてやられたのか、いかがですか。政府並びに日銀からお伺いします。
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○愛知国務大臣 従来の経緯を申しますと、米軍等に対しては、アメリカ合衆国軍隊の地位協定、あるいは地位協定に基づく日米協議
委員会議事録等の指示に基づいて、外為会計が軍用銀行施設、在日米側銀行の基地支店等を通じて相対取引によって円の売却、すなわちドルの買い取りを行なってきております。この売買に適用する相場は、一昨年八月までは基準外国為替相場を用いておりましたが、八月二十八日、円が変動相場制に移行してからは実勢相場を用いるととなって今日に至っております。実勢相場というのは、前日のインターバンク中心相場を使っておるのでございます。
それから市場閉鎖中の処理、これがいま御指摘のところだと思いますが、従来市場閉鎖中においても、米軍等の日本における諸経費の支払い、たとえば日本人従業者への給与の支払い、日本人業者への各種の支払い等に著しい支障を来たさないように、過去六カ月の平均所用資金日額を概算いたしまして、その限度内で円の売却を継続する、適用相場は市場閉鎖前の最も最近のインターバンクの中心相場をそれに用いておる、こういうことでやっております。
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○河野参考人 ただいま大蔵大臣から御説明のありましたとおり、私どもは幾らの相場でこれを売り買いするかということは、政府の御指示に従って、代理人として行なっております。
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○
田中(武)
委員 愛知さん、この記事を見た国民はどう感じます。そこまで日本はせなければいけないのですか、どうですか。そういう義務まであるのですか。どうなんです。円が強くてドルが弱くなればそれだけ多く持ってきて払ったらいいじゃないですか。なぜ国民の金の円をそんなところまで使わなくてはならぬかと、これは納得いきませんよ。そこまでしなければならぬ法的根拠を示してください。
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○愛知国務大臣 これは、いまも御説明いたしましたように、日本人の従業員等に払われるものでありますし、それから特に閉鎖中においてはその前日の一番最近の実勢レートの中心相場を適用しておって、そして閉鎖市場を開いた場合におきましてはそのときの最新レートによって清算をするということになっておりますこと、御承知のとおりかと思います。それから閉鎖中におきましては個人の顧客等に対し、あるいは中小企業等に対しましてもできるだけのことをやっておりますのは御承知のとおりです。インターバンクの取引を停止しておるわけでございますから。
それから根拠は何かと。私が承知しておりますのは地位協定、あるいは地位協定に基づく日米協議
委員会ですか、それの議事録というようなものもございますようですが、それが根拠になっておると承知いたしております。
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○
田中(武)
委員 ここでは時間の関係で行ないませんが、地位協定の、いま申しました十一条でしたか何条でしたかな、からいって、そういう解釈出てきますかな。(発言する者あり)いや、賃金を安くしたんじゃないのです。そのためにはアメリカ自体がドルをよけい持ってきたらいいんですよ。たくさん持ってきたらいいんです。そうじゃないですか。これは納得いきませんな。保留します。
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○林(大)政府
委員 一言問題点を整理する意味で申し上げますが、ドルが円に対して弱くなりますと、それだけよけいのドルを持ってこないと円は取得できないという、おっしゃるとおりにいたしているわけでございます。と申しますのは、昔は一ドル三百六十円でございました。それが一昨年の八月の二十八日にフロートいたしましてから実勢相場によったということでございます。したがいましてごく最近、フロー十直前までは一ドルで三百一円前後の円しか取得できない状況になっていたわけでございます。したがいまして、御趣旨のとおり円に対しましてドルが弱くなってまいりますれば、それだけ少ない円しか渡していないわけでございまして、したがいまして、何と申しますか、御趣旨のとおりになっているわけでございます。ちなみに、地位協定によりますと、米軍関係の方は日本の為替管理関係の規定を尊重されることになっておりまして、その趣旨にもよっているわけでございます。
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○
田中(武)
委員 だから、日本人労務者に対して円で払うんでしょう。それだけ多く持ってくればいいんですよ、ドルをね。それを持ってきておると言うんだが、一般に売り買いが閉鎖せられておるからかえる方法がない、こういうことでその前日、こういうことなんですが、そしてきまったときにはそこで清算すると、そういうことにちゃんとなっておるんですね。
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○林(大)政府
委員 市場閉鎖中の問題でございますが、市場閉鎖中におきましては、通常の銀行と顧客との間におきましては、その両当事者間の合意によりまして、確定レートで処理することもございますし、また仮仕切りをいたしまして、その仮仕切りした上で円を渡しまして、後ほど市場再開をしたときに清算をするという取りきめになっている例もございます。現在のところは軍との関係は後者の取りきめによっているわけでございまして、したがいまして、通常の顧客との間の一つの型によって処理されている、こういう次第でございます。
-
○
田中(武)
委員 どうも私にはまだすっきりしないのですがね。だから、これは保留します。
そして、法的根拠は地位協定十九条、これは法ではありません、行政協定です。そのもとは日米安全保障条約だと思います。そういうことでいいかどうかということはあらためて論議の場を持ちたいと思います。そして、ここで要求したいのは、そういうことで二百六十八円でかえたドルが幾ら、それから閉鎖が解かれたときに清算したときはどうであったかという資料を要求しておきます。そして適当な場所であらためて論議します。この程度でいかがですか。資料は出すね。
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○林(大)政府
委員 誤解を招くような答弁を申し上げていると申しわけないので補足いたしますが、閉鎖は今回が四回目でございまして、当初の際はそのような問題がないということで、第一回目は一日だけでございましたので、米軍との間の取引はいたしませんでした。二回目と三回目は四日と三日でございましたので、当事者間の合意でございますから、合意に従いまして、前日のレートというのが原則でございますが、前日のレートがはっきりいたしませんので、その補充をいたす合意をいろいろといたしております。たとえば六月のポンド危機のときには、前日のレートにより……(
田中(武)
委員「時間がないから資料だけ出すと言ったらいいんだ」と呼ぶ)はい、わかりました。それでは資料として提出いたします。
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○
田中(武)
委員 もう時間が来ているのだから、資料を求めると言ったから、そういう時点において幾らかえてどうなりましたという資料だけ出します、それだけでいいのですよ。
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○愛知国務大臣 一言申し上げておきたいと思いますのは、これは特にアメリカのためにどうしたということじゃなくて、実質的にはそれだけ払うのにはドルをたくさん持ってこなければならない、こういうわけでございます。それから日本の顧客に対し、あるいは旅行信用状等に対しやっております閉鎖中のやり方と、何ら変わることはございません。
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○
田中(武)
委員 だから資料を出してもらって、こちらもあらためて検討する。
そこで次へまいりますが、いま一つの大きな問題は、外には強く内には弱いというのが円の今日です。そこで商品投機がますます激しくなってくる。この問題を一々取り上げておりますと切りがございません。ちょっと二、三日の間の新聞のコピー、切り抜きでもこれだけあるわけなんです。それは一々取り上げませんが、そのような商品投機の原因が一体どこにあるのか。総理、いかがです。
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○中曽根国務大臣 いろいろ原因があると思いますが、一つの大きな要素としてはやはり品不足、それから海外の値上がり、それから国内における思惑心理の流行、そういうようなものが原因になっているんではないかと思います。
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○
田中(武)
委員 はたしてそうでしょうか。大豆が値上がりをしておる。ところがどんどん入ってきておるじゃありませんか。売り惜しみですよ。買い占めですよ。現に一億円の札束を持ってマグロを一隻分全部買ってしまった。材木なんかでも、大阪の南港とか岸
和田港等へ行くと通常の一・五倍原木が置いてあるそうですよ。水面が見えないほど、貯水池といいますか、そこにあるようですよ。そうでなくて、結局は円の価値が下がった。すなわちインフレである。インフレの原因は何か。ほかにもありましょうが、一番最たる原因は日本銀行券の乱発にあると思います。それを肯定しますか、いかがですか。
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○愛知国務大臣 根本の問題になりますと、変動相場制というようなことになれば、理論上はインフレにはならないでデフレ的になるのが理論上の問題でございます。ところで、いま御指摘のような状況はいろいろの原因がございましょうが、たとえばインフレマインドとか換物的な気持ちであるとかありましょうが、経済的に見ればやはり資金が偏在しているということにある。これがいわゆる過剰流動性の問題である。ところが、過剰流動性の資金の封殺の方法は、よくいわれますが、ドイツのようなやり方をするのも一つでございましょう。しかし、ドイツの場合は日本のように為替管理法が徹底しておりませんから、いわゆる投機的な資金が乱入することを防ぎ得ない。そこでバール・デポーというような強制預金預託制度というものをとっている。日本のような場合には、これをやることは不適当でございます。やはりこれは資金全体の流れ、それから比重ということを考えて、圧倒的に多い要するに銀行からの貸し出しというものを封鎖といいますか、規制していくことが最も量的にも、あるいは目的的にも企業を規制することになる。そこから、たとえば商社等の手元過剰資金といわれますが、過剰資金というものはどういうふうに算定すべきものであるか。たとえば年間の商品の売り上げ高に対して持っている手元資金が、現在は一・二幾らというような数字でございますし、正常の場合はこれが〇・七がいいか、八がいいか、九がいいか、いろいろの説がございますが、その総量というものは、全体の金融機関からの貸し出しが七十兆というような程度の問題に比べますと量的にもこれは少ないわけですから、そこでこれを締め出して不当なところに入らないようにするのには、商社等に対する金融の引き締めということが最も効果があがることであるということで、累次いろいろの対策を講じておりますわけで、これらは長くなりますから省略いたします。
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○
田中(武)
委員 私は、いわゆる日銀券と申しますか、これがだぶついておるということ、これは日銀のほうにも原因があると思うのです、戦前の古い日銀法に。時間の関係がありますから、この点についてはあまり多くの時間をとりませんけれども、限度額を大蔵大臣がきめる、この限度額を越えて日銀が発行した場合、十五日までは自由なんですね。十六日目からは年三分の発行税をかけるという仕組みになっている。それを何回か越えておる。きのうの夕刊を見るとことしの限度額を越えていないようですが、それに近い数字になっている。そういう点。さらに、この発行税が税金か、租税かどうか。租税ならば憲法八十四条の租税法定主義との関係等々について触れたかったのですが、時間の関係でこれだけの資料は割愛をいたします。したがって、たしか印刷代は一万円札が一枚十三円三銭ですか、それをどんどんと増発するところにあると思うのです。もっと日銀自体が、限度額が本年度では六兆七千億円だからということでなくて、これはむしろ日銀券を発行するということを締めることによって、インフレの、あるいは商品投機の原因の大きな一つの部分を押えることができるのじゃないか、私はこのようにも考えるし、そのもとは日銀法にもあると思いますが、まとめてけっこうです、簡単に……。
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○愛知国務大臣 なるべく簡単に申し上げたいと思います。一つは、現在は管理通貨制度でございます。それから大体世界的に管理通貨制度であって、中央銀行券の発券に対して禁止的な制限というような制度を置いているところはございません。しからば日本銀行の場合はどうかと申しますと、いまの六兆七千億円というのは大蔵大臣が年に大体一回きめて設定しているものでございますが、同時に、政府が貨幣数量説をとっているわけではございませんで、これはそれ以上発行してはいけないということを示しているものではございません。大体の年間の経済情勢などを見通しまして、そしてこの辺のところが十五日もこえるようであります場合はやや大きそうだというところで、日本銀行法による限外発行税の制度があるわけでございます。
限外発行税の制度、これは税であるか税でないか——税という名前がついているから税なんだ、そうすれば憲法に違反するではないか、こういう御説だと思いますけれども、日本銀行法によりまして、こういう制度の限外発行税の税率については大蔵大臣、がきめるということになっておりますから、こういう特殊の、税という名前は使われてはありますけれども、特殊のものでございますから、これは行政権のほうに移譲されているもの、同時に、したがって憲法に違反するものではない、これが政府の見解でございます。
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○
田中(武)
委員 論争を避けましょう。またの機会にいたしましょう。しかし、決算書にはやはり租税として歳入のほうへ入っておるのですよ、この発行税は。まあ、これはなにしましょう。
それから、商品買い占めあるいは隠匿の実情にはいろいろあります。しかし、一言でこれを申しましたならば、通産大臣、通産省がやる気になれば、もっと行政指導でやれるのです。通産省設置法あるいはそれを受けての省令、組織令。同じことが農林省でもいえます。やっていないからです。そのことだけを指摘します。
先日、事務次官が貿易協会を集めて協力を依頼したとか、あるいはまた、きのうからですか、商社の特別調査班を出すとか、これはおそ過ぎると思うのですが、そういうことをほんとうにやろうと思ったら現在の法律でもやれるのです。いわゆる設置法とそれに基づく何々省組織令ですね。一一ぼくは条文を調べてきておりますが、時間の関係でやめます。やる気があるのかないのか、それだけ聞きます。と同時に、いま言っておりますように、きのうの調査の結果はどうでしたか。
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○中曽根国務大臣 一生懸命やろうと思っております。
まず、きのうは、約一週間前から私が指示いたしましていろいろ商社に直接調査を入れる準備を万端整わせまして、調査表を六大商社を呼んで渡して、そしていろいろ報告すべき内容について指示したわけです。それに基づいて、来週事情聴取で、一々プロジェクトチームを派遣しまして中身を見たいと思っております。
それからきょう、需給協議会というものをつくろうと思いまして、品不足の品物について需要者と供給者とその間に通産省が立って、中央においては
局長がこれを主管し、地方においては通産
局長が司会して、次にあげますような塩ビパイプ、セメント、石膏ボード、繊維板、段ボール、それから繊維、とりあえずまずこの品目について需要者と供給者を集めまして、通産省がその間に立って需給関係の懇談をやらせます。それでどこにネックがあるかということをよく検討して、省が責任をもってそのネックになっているところをつっついて流通を円滑にしていくし、また思惑の精神をこれで消していく、そういうことを実行いたします。
こういうことでいろいろ調査をやり、需給調整をやりながら、いずれあの法律ができるでしょうから、あの法律には罰則もありますから、あれは伝家の宝刀みたいになったほうがいいと思っていますけれども、いざという場合にはあの罰則も適用して実態調査を明らかにする、そして必要な措置を講ずる、そういう強い態度で臨むように、いま、しております。
-
○
田中(武)
委員 次に、不況カルテル、そして管理価格等に触れたいと思ったのですが、時間の関係でもう一言だけ申し上げておきます。たとえば鉄鋼大手の六社の不況カルテル、半年たってこれを延長した。しかし、不況カルテルを認めた当時、その大手の商品は八〇%までがいわゆる長期契約、普通市場値の行なわれておるのは二〇%程度、そういうふうに不況カルテルの要因が、認める必要があったのかどうか。あるいはこれを延長した六カ月後にはもうそれらの事態はなくなっておった。しかも、今日これら鉄鋼大手は株価はすでに三倍以上になっております。これらを見ても、結局、不況カルテルはその企業を保護したというか、もうけさしたというか、それらに対して公取
委員会としてはどう考えておるのか。さらに、今日の状態が公正な取引だとは考えられぬ。そこで、独禁法の四十五条の職権による調査あるいはその他のことを行なうべき時期ではないかと思う。まさに二条七項のそれぞれの各号からいって、独禁法二条七項の公正取引から見て不公正であると私ども思っておりますが、一々条文の論争はやめましょう、時間の関係がありますから。この際、公取委としてはどう考えておるのか、それだけをお伺いしておきます。
-
○
高橋(俊)政府
委員 簡単にお答え申しますが、鉄鋼の不況カルテルは中途で、つまり昨年の七月以降六カ月間延長を認められましたが、これはその当時の状況からいって、完全にこれは不況カルテルの認可要件を満たしておった、こういうふうに判断されます。しかし、最後の段階においてじゃどうであったかといえば、これは市中価格等の非常な騰貴が伴いまして、ですから、それを含めて非難があるのでございますが、メーカー価格は少しも動いていない。ただ、稼働率が高くなっておりますから、その段階においては、高炉メーカーについては少なくとも不況要件を満たしていなかった。したがいまして、十二月で打ち切りとしたわけでございます。
もう一つの御質問は、おそらく商品投機についてだろうと思いますが、商品投機について不公正な取引方法であるかどうか。ところが、不公正な取引方法は、単純に一つのことばとしてあるのじゃありませんで、その次に、何をもって不公正な取引方法と言うかということが列挙してございます。また、その中に「不当な対価をもつて」というのがありますが……(
田中(武)
委員「たとえば地位の利用だとか」と呼ぶ)優越的な地位の乱用ということでございますが、それには該当しないと思います。これは、非常に優越的な地位にあるものが、自分よりもはるかに力の劣る企業に対して不当な条件で取引をする、こういうものをさすのでございまして、そのほかには「不当な対価」ですが、この「不当な対価」というものは告示のほうに今度は明記してありまして、一種のダンピング行為によって相手事業者を倒すような方法、あるいは逆ダンピングと申しまして、原料その他を非常に高い価格で買い占める、そして他の事業者の事業活動を排除することをねらいとした行為が不公正な取引方法にあげられておるのでございまして、たまたま幾つかの商社等が買い占め行為を行なったとしましても、その間に共謀等の事実がないといたしますと、四十六条による職権といいますか、職権による審尋その他立ち入り検査等はちょっとむずかしいと考えております。
-
○
田中(武)
委員 要はやる気がないからですよ。独禁法についての論議はまたの機会に譲ります。ただ、二条の七項に該当する行為である。したがって、四十五条の職権調査その他行なうべき時期であると私は解釈します。
それから投機防止法というのですか、あるいは不当買い占め、売り惜しみ規制法というのか、何かこれを出されるようですが、これについても論議をしたかった。社会党も同じことをねらった法案を用意しております。しかし、それはそのときにまた行なうことにいたしたいと思いますが、要はやる気があるのかないのかということです。法律をつくっても、行政的にこれをやる気がなければ空文化してしまうわけです。やる気があるのかないのかということ。
そして、きょうは一つの大きな論議をしたかったのですが、商品取引所法につきまして、商品取引の前提となる条件は今日備えていない、したがって商品取引所法を、私は廃止論ですが、それは別として、上場商品の洗い直し、あるいはまた、商品取引所法自体を大幅にひとつ改正する必要がある。これは本会議の緊急質問でも総理はお認めになったようですが、どのように考えておられるか、この点をお伺いします。総理、あなたが本会議で答弁したやつなんだから……。
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○中曽根国務大臣 物資の買い占め、売り惜しみ等に対する調査、勧告処理は徹底的にやるつもりでおります。
それから第二に、商品取引所の問題につきましては、今日の実態は御指摘になっておるようなところもあります。したがって、今日の状態をそのまま許すことはできません。ある程度の改革なりあるいは規制が必要ではないかということも一面考えておりますが、現在、産業構造審議会の流通部会において、商品取引所をどうするかということを検討中でございますので、その答申を待ちまして必要な改革を加えたいと思います。
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○
田中(武)
委員 最後に、実は、あなたと、あるいは総理と、商品取引所必要なりやいなやを論争するつもりでおったのです。ところが、きょうは時間を守れと、いつも守っておりますけれども、特にやかましく言われたので、結論だけ申し上げます。
田中総理、たいへん失礼な言い方ですが、これはあなたの性格にもよるのではないかと思うのですが、どうも経済政策が思いつきであり、場当たり的だと思うのです。そこで、予算は国民の予算でなくてはならぬ、と同時に国民が信頼する予算でなくてはならぬと思うのです。ところが、すでにもう暫定予算を組まねばならぬということは必至なんですね。ならば、ある程度の期間の暫定予算をまず出してまいりまして、そして根本的に、もうすでにあなた方自体が、この前、堀君の質問等々で、予備費やあるいは補正だとかいうことを口にしておるし、もうどこでもそうなっておるし、もうこの状態の中では補正が必要である、これははっきりしておるのです。したがって、相当長い暫定予算を出し、その間にもう一度予算を編成し直すつもりはあるかないか、その点だけをお伺いいたしまして、同時に、まあ見通しが甘かったというか、そのことについて私は内閣の責任を追及したい。最後は総辞職せよと迫ろうと思っておりましたが、この辺のところでちょうど時間となりましたので終わりますが、どうぞ。
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○
田中内閣総理大臣 事態に対処して遺憾なき体制をとらなければならぬことは申すまでもないことでございまして、政府は懸命な努力を続けてまいりたい、こう考えるわけでございます。
四十八年度総予算につきましては、本会議また当
委員会を通じましてたびたび要請を申し上げておりますように、これが一日いっときでも早く成立をすることを心からこいねがっておるわけでございまして、いまから暫定予算などという考えを政府は持っていないわけでございますから、これは緊急の問題でございますので、ひとつどうぞ御協力のほどをぜひお願いいたします。
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○
田中(武)
委員 それでは終わります。不満ですけれどもね。
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-
○
増本委員 日本共産党・革新共同の
増本でございます。
御承知のように、二月の十三日にアメリカがドルを一〇%切り下げて、わが国が変動相場制に移行いたしました。そのとき総理は何とおっしゃたかといいますと、はっきりと、アメリカが一〇%切り下げたことは評価をする、そして円が実質的な切り上げとなったことは遺憾であり責任を感ずる、こういうようにおっしゃいました。しかし、事態はそう甘くはなかったわけであります。これは当然のことであると私は思います。これまでにもたびたび、これまでの自由民主党の政治がアメリカのドル防衛政策に協力をし、大企業の生産第一、輸出第一主義に立って積極的にその施策を進めたというところに、今回の再び深刻な事態を招いた原因があるということは明らかであると思うのです。政府はあれやこれやのことをおっしゃいますけれども、またここで二週間足らずの間に為替市場を閉鎖するというような事態になって、国民がさらに深刻な状態になり、国民に新たな重大な打撃を与えているというこの事態に対して、今日現在のこの段階において、どのように責任を感じ、そしてまた対策をとられようとしているか、このことをまずお伺いしたいと思います。
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○
田中内閣総理大臣 前に申し上げましたとおり、ヨーロッパにおけるドル不安から端を発しまして、為替変動相場制に移行せざるを得なかったわけでございまして、為替変動制の中で各国の動き等を見詰めつつあるわけでございまして、事態の推移を見守りつつ遺憾なきを期するということが現在の日本の立場でございます。
これはわが国だけの考え方でどうなるわけではないわけでございます。この前ヨーロッパにおいては、アメリカを含めて、アメリカが一〇%切り下げたということで一応安定したとみんな見たわけでございますが、わずか二週間たってまたあのような問題が惹起しておるわけでございますから、やはり国際的には、国際通貨の安定、基軸通貨をどうするのかというような問題に真剣に取り組んでいかなければならない状態である、こう思うわけでございます。
なお、国内体制としては、国際収支の均衡がとれるような諸般の政策をこれからも引き続いて採用してまいるということだと思います。
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○
増本委員 今日の新たなこの深刻な事態が、ヨーロッパを中心にしたドル不信が深まった結果だ、また、ユーロダラーがあばれ回っている、これも原因だ、こういうようにおっしゃるわけですけれども、こんな対岸の火事を論評するような態度では、総理みずからがおっしゃっているような、根本的な転換とか発想の転換というものをはかれないのは当然だと私は思うのです。今回の現象だけを見れば、それはいろいろいえると思います。しかし本質的な問題は、ドルの低下によって日本の円が重大な影響を受け、国民の生活や経営がそのたびに打撃を受ける。国民は、自分のさいふからお札を出して、国内ではこんなに弱いのに何で国外では円が強いのか、みんなふしぎに思っている。それは、今日まで自民党政府がとってきた、国民には低福祉高負担の政策、大企業には国民を犠牲にした輸出競争力、それをほんとうに至上と考える政策の結果だといわざるを得ないと思うのです。一体政府は、ほんとうにいまこの時点で、二月にフロートを採用し、そしてまた今日為替市場が閉鎖するというような混乱が起きている、これに対して、いまおっしゃたような、遺漏なきを期するとか万全の対策をとるというようなことでなしに、具体的にそれでは、いまこういう手を打つとおっしゃるようなものがあるのだったら、はっきりとこの場で出していただきたい、こういうように思います。ほんとうにその解決法をはっきりお示しいただきたいと私は思うのです。
-
○愛知国務大臣 二月の十四日から変動相場制度に移ったということは、アメリカのドルの切り下げというような事態に対応する日本としての自主的な政策でございます。それから、その当時からすれば、客観的にごらんになりましても、アメリカにしても、あるいはヨーロッパ各国にいたしましても、またその次にこうしたような、フランクフルトの市場を中心にするような激動が相次いで起こるということは、だれもが想像もできなかったような、要するに世界的に流動がきわめて激しい状態である、まことにこれは困ったことでございます。それに対しては、それぞれの国がおのずから、それぞれの国情において国益を守って緊急的に対処しなければならないのは当然でございます。政府としては、そういう角度に立ちまして、まず緊急的にヨーロッパ全体が為替市場を閉鎖するというようなときに、ただひとり日本だけが開場しているというようなことはいかがであろうか、これはどなたがお考えになりましても当然の帰結ではないかと思います。そして今日から関係国蔵相会議も開かれているわけでございますが、けさほど来言っておりますように、国際通貨の問題は、長期的な対策と当面の対策と、私はやはりどうしても両面からいかなければならない。
当面の対策としては、日本としては、こうした蔵相会議、あるいは近く開かれる二十カ国蔵相会議、あらゆる場におきまして、米ドルの交換性の回復、アメリカからの資本流出の抑制、それから米国の金融政策の転換、これはアメリカの国内政策の運営にあたって、国際収支の節度を維持するような角度からのアメリカの金融政策の展開、この三点を中心にした日本としての要請を展開しているわけでございます。先ほど申しましたように、こうした基本的な日本の考え方は、おそらくヨーロッパ主要国においても、私はほぼ同様の考え方を持っているに違いないと思います。そしてその米ドルの交換性の回復の問題にいたしましても、いろいろバリエーションがある。そして各国それぞれの希望や対策があると思います。しかし、基本的にはこれをねらって米国に大いに国際的な協力を求めなければならない。
長期的には、これは日本はもちろんでございますけれども、基準通貨が国際的に米ドル一つになっていること自身の改善ということを含めて、やはり本格的な米ドルの金兌換性の回復というようなことができればいいし、さもなければSDRの建設的な改善策とかいろいろの方法があると思いますが、これらの点については、すでに日本政府としても一つの考え方を打ち出しておるわけでございます。長期的な対策としては、その方向に向かってできるだけ、いま申しましたが、二十カ国会議等を通じて強力に、多少の時間はかかるでありましょうけれども、忍耐強く努力を展開していきたい、かように考えておるわけでございます。
それから国内的の日本としての対策は、私は、何と申しましても三次にわたる円対策の基本をあくまで貫いて、これを具体的に実施していくことである。その中には、先ほども申しましたが、変動為替相場というようなことに移行するような、こういう状況下においては、ますます輸出偏重というようなことをとらないで財政主導型で切りかえていく政策、これは四十八年度予算にその切りかえが考えられているわけですから、これをとにかくすみやかに実行に移していただきたい。きわめて簡単でございますが、大筋はそういう考え方でおる次第でございます。
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○
増本委員 いま大臣は、変動相場制にしないでそのまま固定制を維持していくのはいかがかと思うと言う。私はそんなことを聞いているんじゃないです。それをそのまま続けていたら、いまごろ
田中内閣なんというのはこの世に存在しないと思うのです。もうこれだけ何次にもわたる問題が起きて、そしてあの二月十四日の段階では、総理も、そして閣僚の皆さんが、こういう事態になったのは遺憾だ、責任を感ずる、そしてそのためには万全の対策をとるというようにおっしゃっていました。
それでは具体的に伺いますけれども、輸出関連業者の実態についてすぐ調査をする、そして手を打つというようにおっしゃっていながら、愛知大蔵大臣のせんだっての大蔵
委員会での答弁によりますと、今週中に各財務局から資料を寄せて実態の調査が全部終わる。そうすると、手を打つのは来週からだ、こういう状態ですし、結局、緊急対策すら現実にはやられていない、こういうようにいわざるを得ないわけですね。なるほど財投を含めて二千億円の融資が準備されているというようにおっしゃるけれども、お伺いしますが、たとえば通産局を通じてそれぞれの輸出関連産業について実態を調査されたときに、いろんな要求が出たと思うのです。金融の要求もあるし、為替差損を補償してくれという要求もあります。こういう要求で、たとえば金融の要求を合計すると、一体各関連業者は幾らの融資をしてくれということになるのか、これまで実際につかんでおいでになるのかですね。あるいは財務局では、どういう業者の要求をつかまれて、そしてその総額はどのぐらいになるというように判断をされておられるのか、その調査の結果を明らかにしていただきたいと思うのです。
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○中曽根国務大臣 各通産局を通じまして、全国の輸出関連中小企業について当たりまして、概算の数字はおおむね出てまいりました。そこで、いま内面的に具体的な計数について大蔵省と話し合っているところでございまして、たぶん来週ぐらいには表にできると思いますが、まだ内面的にやっているところでございまして、しばらく御猶予を願いたいと思います。
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○
増本委員 それでは、財投と予備費を含めて二千億円で足りるのかどうかということすら、実際にはおわかりになっていないことになるんじゃないですか。いかがですか。
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○愛知国務大臣 これはこういうことをお考えいただきたいのです。財投、それから一般会計の予備費、それ以外に一般の金融機関に対して、二月十四日以来行政的に指導措置をいたしておる。それから先ほど来も言っておりますように、金融の圧倒的に大きなシェアからいえば普通金融機関、この中には中小零細金融機関もあるわけですが、そういうところはもうすでに動き出しているわけです。
それから考え方として、今度政府のとっている立場は、たとえば財投については、原資の見込みなども、年度末ですから相当はっきりいたしました。この点は幸いに原資の伸びが非常によろしいわけです。そこで、財投で政府関係三金融機関を動員して、貸し付け規模としては二千億はいますぐにでもできますよ、こういうドアをあけているわけです。したがって、特に民間の金融機関等では、もうすでに融資が始まったところもあると思いますし、あるいは三金融機関でもやっているものもあろうかと思います。そして、この全体の総額が幾らということよりは、適切な措置を次々に打っていく、この緊急性のほうが私は大切だと思っている。考え方として、姿勢としてはそういうやり方でやっておりますことは、まあ前回の例もございますし、適時適切な機動性が必要だということを痛切に感じながら、これは調査ではございませんから、まとめて何々が何千億ございましたと数字で発表してみても、これは実効のあがるものではございません。きめこまかく実効があがるように措置することのほうがより大切である、こういう感覚で政府としては動いているつもりでございます。
-
○
増本委員 緊急性ということをおっしゃるわけですけれども、当の大蔵大臣の所管されていらっしやる財務局の調査も、たしか大臣の御答弁では、今週中に調査をして、そしてその結果がまとまる、こういうお話だったと思うのですよ。大蔵大臣、それじゃその点はいかがなんですか。
-
○愛知国務大臣 実態把握ということが一方においてたいへん必要であることは申すまでもございませんから、調査は調査で非常に急いでいるわけで、そしてこれは主として通産省が大馬力をかけてやっていらっしゃる。財務局は補完的にお手伝いをしているわけです。それから大蔵省として、通産
局長会議に次いで全国の財務
局長を招集いたしまして、臨時の財務
局長会議も開催しておる。もちろん調査も大切です。これも急がなければなりません。同時に実際の措置もあわせてというか、もっと緊急性をもって対処していきたい、これが政府の姿勢なんでございます。
-
○
増本委員 たとえば横浜のスカーフの製造業者、これはついきのうの段階でも依然として金融の問題で解決がつかないのですよ。これはもう何回もこの
委員会でも取り上げられたと思いますけれども、いままで年商百五十億円もあったものが、四十六年の円の切り上げで七十億円ぐらいの商いにしかならなくなってしまった。そこへ今度のフロートでたいへんな打撃をいま受けている。前回の打撃によって、この業者たちは合計二億七千万円ぐらいの融資を受けたんですが、そのときにもうすでに土地や建物は全部抵当に入れてしまった。今度借りようと思ってももう借りる担保も保証もない。だから無担保で、同業組合全体が連帯保証をして、そして個々の人間が借りるような、こういう制度でひとつ運用してくれ、こういうように関係の機関と折衝をしていますけれども、これすら一つ解決できない。だから、おやりになっている、なっているとおっしゃるけれども、この
委員会やあるいは商工
委員会やその他関係の
委員会で出された問題について、実際には手を打っていらっしゃらない一緊急性ということを強調されながら、依然としてまだまだ不十分だというふうにいわざるを得ないと思うのです。
ここでひとつ総理にお答えいただきたいのですけれども、こういう国民の苦しみは十分御理解いただけるのかどうか。そしてそれに対して政府としてほんとうに責任をもって対処してやっていただけるということをお約束できるのかどうか、この点を再度ひとつお答えいただきたいと思います。
-
○
田中内閣総理大臣 四十六年には第一回の円平価の調整があったわけでございます。そしてそれに対しては、中小企業対策も万全の対策を行なったわけでございます。こんなのでいいのかと、こう言ったけれども、結果的に見ましたら、繊維をはじめたいへんよくいったわけでございまして、良好な成績を得たということはみんな認めておるわけでございます。まあしかしたいへん苦労されたことは、これはもう私もたいへん御苦労だったと思います。
今度は二回目のことでございますし、まだ制度上残っておるものもありますから、期限の来ているものは期限の延長をすればいいわけでありますし、だから返済期限の延長とか徴税猶予とか、いろいろなものに対しては矢つぎばやに措置をしておるわけでございます。あとは、契約ができないような場合は因るので、契約ができるように金融上の措置をしてやらなければならないという問題が一つ残っております。
もう一つは、たな上げ等で再建をやったり、協業化をやったり、合理化を進めるための構造改善やその他の問題に対しても万般の措置を講じなければならないということがあります。どうしてももう輸出企業として成り立たないというものに対しては、転業資金やその他の手当てをしなければならないということでございまして、これらの問題に対しては、政府は遺憾なき政策を遂行してまいろうということでございます。
-
○
増本委員 たとえば、外貨の預託を緊急に政府が一億ドルなすったけれども、それも結局すぐなくなってしまって、新たに五千万ドル追加される、これももうすぐなくなってしまう、こういう実態だったわけですね。そこで今度市場が閉鎖されて、一体業者はどうしたらいいかわからぬ、こういう状態というのがあらわれているわけですよ。ぜひこの点については、やはり総理として、今日までもこういう事態になったのは遺憾だ、責任を感ずるというようにおっしゃったんだから、言行を一致させてやっていただきたいというように思います。
先ほど愛知大蔵大臣が、今度のパリでの会議、これについて政府のとられるあるいは主張される内容、長期政策を含めてお話がありましたけれども、一体この会議がどういう性格の会議であるかというと、これは非常にあいまいだというようにいわざるを得ないと思うのですね。IMF総会が開かれてからだってまだ半年たっただけ、いろいろな改革案が出たけれども、結局これというきめ手が何もなかった。そこで十カ国蔵相会議を拡大してやるということになったわけですが、ECが共同フロートに移行する決定をするのに立ち会うだけなのかというとそうでもない。それではIMFの正規の会議かというと、それも非常にあいまいである。もう一度、日本がこの会議に臨む方針や態度はどういう点なのか、どういう態度で国民の利益を守るために活動されるのかということを、はっきりとお答えいただきたいというように思います。
-
○愛知国務大臣 先ほど来はっきりと申し上げているつもりでございます。同時に、この会議がどういう性格のものであるかということをおっしゃっておるわけでありますが、これはやはり今回のこの突如としてまた起こりましたヨーロッパの問題に端を発しているわけですから、先ほど来私が、しいて申せば長期と当面の対策とあるというふうに申しましたが、特に緊急を要するヨーロッパとしての措置を必要としておる会議である、こう観念してよろしいのではないかと思います。
したがって、初めはECの政府筋が集まって相談をする、そしてそれに主要国の参加も求めるというふうに伝えられておりましたが、形式的にはいわゆるG10が中心になったような形で、G10の現在の議長であるフランスの蔵相から招請が出されるということになりましたが、同時にC20の現在の議長であるところのインドネシアにも招請が行った、それから主要国の中央銀行総裁にも招請が出された。まあこの形式はいままでにはあまりなかった形式でございますから、それだけにやはり事態の緊急性といいますか、あるいは多様性といいますか、そういうことも感ぜられるという点では、私もそういうあなたのおっしゃるような観察もできるかと思います。
しかし、いずれにいたしましても、日本は日本としての主張がありますし、かねがねこれは将来の国際通貨制度がかくあるべきであるということの主張もずっとしておりますし、それから、何といっても世界が一つになりかかっているような状況でございますから、そういったヨーロッパが中心であるけれども、やはりアメリカに対するドルの処理ということについては、ヨーロッパ各国でも非常にこれは深い関心と考え方を持っているはずでございますから、そういう雰囲気の中に日本が参加をして、そして日本の主張を持ちながらこういう機会にいろいろの動き、アクションをとるということは、先ほど申しましたように、すぐ次いでこの二十六、七日には、今度はワシントンでC20の正式会議がございますから、こういうふうに次々といろいろの場が展開されるわけでございますから、そういうところに絶えずフォローし、そして本舞台というか、本来のもっとも日本としての活動しやすい場所において最も有効な活動をするということが、日本としてとるべき態度である、私はこういうふうに考えております。
-
○
増本委員 どうもまだはっきりしませんね。たとえばアメリカがことしの一月三十一日に大統領の経済諮問
委員会の年次経済報告の付属資料として国際通貨制度の改革案を発表していますね。御承知だと思うのです。金やSDR、IMFポジションの総供給量を第一次準備の総量として、これを基準水準と定めて、それに上限警報点とか上限点とかあるいは下のほうに下限警報点とか下限点を置いて、オーバーすると課徴金を取るなどの制裁をしたり、下のほうの、特に一番可能性のありそうなアメリカなんかの場合には、信用供与を停止するというような制裁措置しかとられていない。じゃこういう制度ができれば、あるいはそれとのかね合いで金の交換性が回復できるのかというと、それは何か非常に先のほうにずっと持っていかれる、こういう提案が出されて、これの根回しということも新聞などの報道でもいわれているわけですけれども、こういうアメリカの提案や言い分に対して、政府はどういう態度をおとりになりますか。
-
○愛知国務大臣 ですから、先ほど来申しておりますように、日本としてはアメリカの諮問
委員会の一つの案もあるし、あるいはそのほかにも何々案といわれるようなものもあるし、あるいはIMFでこういうことはどうだろうかといういろいろの考え方があるけれども、日本も、もちろんそのいまおあげになったような案には賛成のところもあるかもしれませんが、反対のところもある。各国それぞれ目的によりあるいはタイミングにより、非常なバリエーションがあるわけですね。日本としては、先ほど申しましたように、ドルが交換性を回復してくれなければ困るぞ、これにもバリエーションがあります。いろいろな方法が考えられると思います。それから資本の流通といいますか、出ていくことは規制しなければ困るぞ、それから国内の、アメリカの金融政策がやはり国際的な協調ということを旨にしたところの金融政策を展開してくれなければ、もうたいへんなことになるぞということも指摘し、かつ主張しているわけです。基本は私はここに尽きると思うのです。そこからいろいろの方法論が私はあり得ると思いますが、これを各国協力し合いながら、アメリカも含めて、そして最も好ましいところへ落ちつけようという努力が展開されてもおるが、さらに日本としても一生懸命にやらなければならないということが現状であると思います。
ただその中には、とにかく当面緊急に措置しなければならぬことと、それから多少時間はかかっても将来に長く安定できるようにという建設的な努力や成案と、まあこれはやはり二つに分けて考えざるを得ないのではなかろうか。これは日本がどうというのじゃなくて、全体のグローバルの動きを観察いたしますと、そういうふうな感じが私にするわけで、これを率直に申し上げておるわけでございます。
-
○
増本委員 たとえばあなたのお話だと、結局、各国のいろいろな主張の中で日本はどういう態度でそれに臨むかといっても、いろいろバリエーションがあるから、それはそういう全体の状態の中で落ちつくところにきまっていく、あるいはきめていく、こういうことだけで、これではほんとうに、いつもドルのたれ流しによって日本がまたこういうような状態になる。そのたびに円の切り上げをさせられて、国民が犠牲を負うということの万々の繰り返しにならざるを得ないと思うのです。大臣は、その会議に臨まれる日本の具体的な方針をあまりはっきりおっしゃらないので、一点だけ時間がないので伺いますが、たとえば金の交換性は要求されるのですか、どうですか。
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○愛知国務大臣 ですから、いまくどく申し上げているように、ドルの交換性というのが回復されなければならないということは第一に必要なことであります。ただ、その方法論やタイミングにはいろいろなバリエーションがありましょう。そしてこれは日本が日米だけの交渉でできるとか、それから日本がドイツだけとの間で、がんばれがんばれと言われてがんばるようなやり方だけで解決のできないような国際通貨の問題である。そしてやはりこれから、いろいろのほんとうに真剣な話し合いが行なわれるというときに、そうしたほかの状況も捕捉しないで、そしてこうであろうこうであろうというようなことで冷静さを失ってはならない、国益を守るゆえんではないと、私はかように思います。
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○
増本委員 結局、全体の中で日本がいまのような状態でいけば、また円の再切り上げどころか、万たびその影響と被害を受けるということにならざるを得ないと思うのです。
こういう状態に追い込まれていく原因の一つは、先般来いつも指摘されている、一つは低賃金と低福祉のいまの国民生活の実態にある、これを今日まで放置してきたやはり自民党・政府の責任である、こういうようにいわざるを得ないと思うのです。政府は、この労働者の賃金を引き上げろというように言いますと、それは労使間の問題だから政府としては直接介入しない、こういうようにおっしゃいますね。だけれども、政府自身が、たとえば最低賃金制の問題にしたって、いまの実態から見て一体どうなのか。その上、労働者が賃金の引き上げをやる、労働条件の改善を要求して戦う武器であり、憲法二十八条にもはっきりと保障されているストライキの権利すら剥奪をしてそれを回復しようとしない。いわばいまの政府の低賃金の政策に、大きな鉛のおもりを二つも三つもくっつけて、腰にゆわえつけて低賃金という大きな深い水の底へ沈めているのと同じような政策をとっていると思うのですけれどもね。そういう点で、一体いまの状態について、労働者の賃金を大幅に引き上げて、そして内需を大幅にふやす、そういうような政策に根本的にほんとうに転換する、こういう御意思があるかどうかお伺いしたいと思うのです。
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○
田中内閣総理大臣 賃金の前に一つ申し上げますが、国際流動性を確保しなければならないドルが、基軸通貨としての使命を回復することが一番望ましいことでございますが、しかし、できなければ何らかの方法も考えなければならないわけでございます。そうしなければどうなるかといえば、国際的に縮小均衡の道をたどらざるを得ないわけでございます。縮小均衡の道をたどれば、一体地球上の平和が維持できるのかどうか。これはまた言うまでもないことでございまして、経済問題だけではなく、これはほんとうに重要な問題である。そうしなければ南北問題そのものも解決できないわけでございます。でありますから、どうしても拡大均衡をはからなければならない、新国際ラウンドを推進しなければならないということが叫ばれておるわけでありまして、その意味において国際通貨の安定、現に基軸通貨であるドルの安定というものが望ましいということでもって、お互いが努力を続けておるわけであります。
これはきのうきょう始まった問題ではなく、三十九年の東京総会をスタートにしてSDRの制度ができて、さんざん努力をしてきたはずでありますが、十年後にはまたこんな問題が起こってきたわけでございます。その影響は日本だけが受けるのではなく、アメリカが一〇%切り下げたらお隣の中国の元も一〇%自動的に切り上げた、またソ連も自動的に一〇%切り上げたということでございまして、これは影響を受けない国はないわけでございます。でありますから、なるべく固定相場でやれるような状態が望ましい。そのためには、われわれ黒字国は国際収支の均衡が保てるような状態をつくらなければなりませんし、赤字国はみずからのドル価値の維持ができるようにしなければならない、こう思うのです。しかし、先ほどあなたが指摘いたしました金交換性をやりなさい、こう言っても、私はすぐにできないと思うのです。そうすればいろんな、十カ国、二十カ国、IMF総会そのものでもって、じゃどれだけのものに対して、どういう状態において金の交換性を回復するかというような問題は、これはある時期に、一つの問題として解決されると私は思うのです。
それと、私はアメリカの経済というものは、いまのドルに象徴されているようなものではないと思うのです。これはやはり相当経済の力は強い、こういう感じでございます。ですから、そういう意味で、長期的展望とそれから具体的にいま起きておる問題とやはり区別をして、まず具体的な問題の解決に全力を傾ける、こういうことでなければならない、こう思って、いまヨーロッパの会議が行なわれておるわけでございますから、日本も各国の意向を見るためにも出席をしなければなりませんし、この会議でもって結論が出るわけじゃないと思うのです。どうしてもこの次、三月末の二十カ国蔵相会議に引き継がれて、まだまだ長い間いろんなお互いの協力や努力が続けられて、共通目的であるところの拡大均衡というものを確保するために努力が続けられていくわけでございます。
日本の問題は、低賃金といいますか、確かに低賃金だったと思うのです。私たちも七、八年ぐらい前でございますが、八千円の最低賃金を法律できめようといったときから考えると、いま考えれば今昔の感にたえないというくらいであったと思うのです。で、いままでは諸外国から低賃金というのが常にいわれておりましたが、そうではなく、日本は自由化を進めろ、こういうことがいま各国でいわれておって、日本の賃金水準に対してはそれほど指摘を受けないような状態になったことは、いまが水準以上でなくとも、少なくとも一〇%、一五%ずつというような状態でもってこれから五十二年まで、まあ六十年までとは言いませんが、五十二年まで、いま提出をしておる九%成長の経済社会基本計画を見れば、相当な高さでもって五年間いくわけでございますから、そうなれば五年後には倍になるという可能性もあります。そういう意味で、日本の賃金水準というものに対しては、少なくとも先が見えてきたということは言い得るわけでございます。あとは生活環境の整備とか、社会資本の不足を補うとか、全般的な社会保障制度を拡充するとかいう、いろいろな問題をあわせて行なっていくべきだと思うのでございまして、いま円ドル問題を目の前にして、賃金を倍にすればすべて片づくのだという問題じゃないのです。ですから、私はやはり、少なくともどんな主要工業国に比べても日本は完全雇用になった、完全雇用になっているというところに、自動的に賃金上昇の見通しがつくわけでございますから、アメリカにおいては五・五%、六%というような失業率を持ちながら賃金を上げなければならない、そのために鉄鋼生産はがた落ちになる、こういうこともあるわけでございますから、私は、賃金問題に対しても、これから今度の四十八年度の予算などを執行していけば、そういう過程において望ましい姿というものが出てくる。この賃金というのは、一時いわれた労働者というのではなく、国民のほとんどの、もう大半が、いわゆる給与所得者だということでございますので、国民のほとんど全体に影響を与えるものであるということであって、賃金問題に対しては、私は明るい見通しを持たなければいかぬし、また持てる状態だし、政府も、賃金問題で先進工業国やその他の国から文句を言われるような状態からはもう脱却したと思いますし、これからも、日本の給与所得者はほんとうにいいなあというような状態をつくることがこの内閣の使命だと、こう考えております。
-
○
増本委員 総理はそうおっしゃいますけれども、ではどうですか、たとえばきょうの閣議で、労働大臣にお伺いしますけれども、あなたはきょうの閣議で、この国鉄の労使間の争議についてのあっせんの見通しは、暗いというような趣旨の発言をされたというように聞いていますけれども、それは事実ですか。もしそうだとすれば、これはもうたいへん重大な問題だと思うのです。一方で労働者の賃金や待遇の改善をはかる、そしてあなた自身も先ほどの答弁で、努力をするというような趣旨のことを言われているわけですね。何も努力をしていない。このいま現実に起こっている重要な問題についてすらそういう状態ではないでしょうか。特にいまの国鉄の問題でいえば、たくさん事故が起き、そのために国鉄の労働者も、人命尊重とかあるいは保安確保というようなことを要求にして、国鉄と交渉をしているわけですね。そして、労働
委員会のほうもあっせんの打ち切りをした。こういうことでは、いまの国民のこういう困難な経済状態のもとでの苦しみのもとで、口ではいろいろなことをおっしゃっても、実際にはそれと反するような、努力をされていないのが事実であると思うのですが、その点についてひとつお伺いしたいと思うのです。
-
○
加藤国務大臣
増本委員にお答えいたしますが、
増本委員のいまお問いの閣議の報告でありますが、これはちょっと
増本委員が聞き違っておると思います。公労委のあっせんの問題を御報告いたしまして、そのときには公労委の方向が大体打ち切りと、こういうような情報もありましたので、なかなか困難だと、公労委のあっせんの御報告を閣議で申し上げましたので、今後の見通しについて、私が暗いと言ったという意味ではありません。
何といっても、国鉄の問題はこれはもう国民経済にも大いなる影響がある、ましてお客などはほんとうに困っておりますし、また物価の値上げの問題、これはもう国民の当面の課題でありますが、貨物などがどんどんと運休いたしますと物価の騰貴にも響く、こういう意味で重要な問題で、労働大臣といたしましては、主管官庁でありますから、不熱心で、そして暗い、こういうような気持ちは御報告したことはごうもありませんし、今後大いに努力いたしますことをお答えいたします。
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○
増本委員 社会保障、社会福祉の問題だって、今日のようにこれだけドルがだぶついてきたのに、社会保障の各部門でも事業主の財源の負担が非常に軽いという問題があると思うのですよ。そういう問題もあるし、そこへもってきて、税制の上でもあるいは金融の上でも、大企業に対しては非常に優遇措置がとられていますね。たとえば、大企業に対する租税特別措置法上の税制の優遇措置を見てみますと、四十五年度で、鉄鋼の大手五社で、減税額が三百四十四億円にものぼりますよ。自動車をとっても、たとえばトヨタ自動車一社だけで、四十六年の下期で三十八億五千万円、いろいろ準備金や特別償却などの手厚い手当てを受けています。こういう税制上の優遇措置はそのまま残していらっしゃる。これでは、輸出優先の経済から今度は福祉優先に転換をするというようにおっしゃっても、実際にはそうなっていないというようにいわざるを得ないと思うのですね。こういう租税特別措置などの大企業に対する優遇措置を廃止する、そして財源を豊かにして、それを当然国民の福祉のために使うというようにやってこそ、政策の根本的な転換がはかれるんだというように思うのですよ。これは総理の政治姿勢として、その点についてどうお考えになるか、お伺いしたいと思います。
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○
田中内閣総理大臣 いままで各種優遇措置があったことは事実でございます。それは、輸出をすることによって日本の国際競争力をつけなければならない、また、輸出が拡大して国際競争力がつかなければ国民の生活水準をレベルアップすることはできないという、日本の宿命的な問題解決のためにとられたものでございます。しかも、そういう措置をとってきたために、国際競争力が培養されてきたわけでございます。
率直に申し上げると、原材料を持たない日本が原材料を持つ国と同じ自由な市場で競争をしなければならぬというのが、過去も現在もあしたも、日本人の負うた宿命であります。だからそういう意味で、いろいろな政策的な努力を積み重ねてきたことは事実でありますが、しかし、その結果今日のような状態が築かれたわけでありますので、これらの特別措置の改廃というものに対しては、漸次これを改廃の方向に持っていこうということで、今年度も、平年度四百億以上の増収をはかるということにしておるわけであります。法人税そのものに対しても、四十九年度の財源計算をするときには、いまのままではなく新しい視野で考えなければならぬだろうということは、大蔵大臣も述べておるわけでございます。
ただ、ここで一つ申し上げるのは、やみくもにすぐすべてのものを廃止をするということや引き上げをするというのではなく、現在日本の企業が負っているものには大きな問題があります。それは、一つは公害の防除であります。もう一つは、いまあなたが言われるような、いわゆる給与だけではなく、やはり法人として整備をしなければならない施設その他いろいろなものがございます。いま、企業として負担すべきものがまだないかというような問題にもお触れになりましたが、そういう問題もあります。
それで、問題は給与という問題があるのですが、確かにいままでの状態がずっと続けば、給与というものはもうえらいことになると思うのです。少なくとも五年で倍になると思うのです。一〇%といえば十五年間で四倍になるわけでございますから。そういう計算になるわけでございますが、しかし、そういう状態がいつまで続くのかというと、私は必ずしもそうだと思いません。これはヨーロッパがコストインフレ的な状態になっているのは、結局、賃金上昇というものがもう生産性の中で吸収できないという面も否定できない面でございます。ですから、そういうようないろいろな面を、いま新しい方向を打ち出さなければならないという状態がたくさんありますので、少なくともこれから一年、四十九年度予算編成ぐらいにまでは、そういう諸般の問題をひとつ洗い直さなければならないというような考え方を、私自身も持っておるわけであります。
そういう中で、私はほんとうに近代的な望ましい日本の産業、企業——企業と一口に言いますけれども、その中には千差万別、転廃業を余儀なくされるような中小零細企業もあるわけでございますから、しかも、大企業と一口に言いますけれども、企業はもう麻のごとく結び合っておるわけでございますから、そういう意味で、中小企業や零細企業に及ぼす影響という部面もしさいに観察をしながら、遺憾なき結論を出さなければならない、このように考えております。
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○
増本委員 私は、いまのような円問題という深刻な事態が起きた大きな原因が、やはりこれまでの政府の大企業優先のやり方にあるわけですから、輸出や国際競争力を強める、そのために役立っている税制や金融政策はこれを改廃するということが、今回のこの国会でも、本会議でもあるいは当
委員会でも、総理やその他の閣僚がずっとおっしゃってきた転換に、ほんとうに忠実に正しくこたえる道だと思うのですよ。たとえば金融の問題をとったって、先ほどお話ししたように、輸出関連の中小企業に対しては、まだまだいま必要なお金が手が届かないというような状態にあるのに、片一方では、国民の税金が振り向けられるとか、あるいは国家の資金が振り向けられる。たとえば日本開発銀行において、海運関係だけで四十七年度で二六%も融資されていたり、輸出入銀行では、船舶だけで全体の貸し付け総額の四三%にもなっている。開発銀行法や輸出入銀行法を見たって、こういう大企業にだけ使わせるというようなことは書いてないわけですね。だけど、中小企業の人たちは、こういう安い利息のお金が使えたらというようにだれもが考えている。ところが、そういう方向に対しては、緊急性があるからやるんだやるんだというようにおっしゃるけれども、いままでお話ししたように、まだまだ手おくれだ。それでいて、こういう大企業に対しては厳然とした優遇政策が依然としてとられている。これを、今年度も若干の合理化機械等について手直しをされたとか、あるいは四十九年以降についても見直しをしていくということだけでは、毎年毎年やはりドルはたまり、そしてそのたびに国民は円の切り上げによってさらに大きな打撃を受けるということの繰り返しになると思うのです。そういう点で、一方では大企業にこういう優遇措置をとっているから、政府がおっしゃる過剰流動性が具体的に問題になっている。そしてインフレ政策と相まって、商品投機や土地の投機や、そういういろいろな事態が起こるのだと思うのですね。こういういまの大資本優遇の政策を転換させる、国民生活をほんとうに底上げして内需をふやしていくというのは、これは何もマルクス経済じゃなくて、皆さん方の経済学だって、国の需要をふやすことが、結局、いまの問題を解決することにつながるという点では、だれもが一致していることだと思うのですが、もう一度ひとつ総理の、ほんとうにいますぐ転換して予算を再検討する、洗い直すというようなことをお考えであるかどうか、お伺いしたいと思うのです。
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○
田中内閣総理大臣 毎度申し上げておりますとおり、いまの時点においては、いま御審議いただいております四十八年度の予算案を一日も早く通していただきたい、これは、国民はそれだけでも安心するのです。ほんとうにそういう意味で、これはもうぜひ通していただきたい、こういうことでございます。
それで、私も絶えず申し上げているのでございますが、こんなに円問題が大きくクローズアップしてきたのは、まるまる二年でございます。まるまる二年の中で、ほんとうに具体的になってきたのは一年であります。一年でございます。これは四十六年の八月だと思いますが、御承知のニクソンショックが行なわれたわけでございます。それで四十六年の十二月には多国間調整が行なわれました。多国間調整が行なわれたら、平価の調整というものはもう二、三年かかるんだ、どんなにしても一、二年かかるんだということで、お互いがみなそう考え、国際的世論もそうなっておったわけでございます。そういう意味で、第三次円対策まで政府としてはやってまいったわけでございます。
ところが、第一回の円平価の調整からわずかに一年二カ月、全くそれはアメリカが一〇%切り下げるという事態によって起こったわけでございます。その切り下げるということはどういうことかといいますと、ヨーロッパにおけるドル売りという唐突として起こったイタリア市場の混乱から今日に至っておるわけでございまして、しかもわずか二週間、三週間前には、もう西ドイツは据え置きである、もう固定相場を維持する、みんなほとんどのマスコミもそう報道したわけでごいざますが、唐突にしてまた第二のドル売りが起こって、市場閉鎖しなければならないような状態になったということでございまして、私は、方向としては、生産第一主義とか、それから重化学工業中心主義とか、輸出中心主義とか、そういうものから、いわゆる生活活用型へ、福祉増進型へと、こういうものに大きく転換しなければならない、四十八年度予算案はそれを意味するものでありますと、こう述べておるのでございますから、やはり十年も二十年も今日の状態が続いておるんではなく、少なくともこの二カ年間の状態を見れば、これは異常な国際的な状態という問題も、相当存在することをひとつ理解をしていただきたい。
われわれは、そういう流動する国際情勢の中で国益を守らなければならない。しかも、開放経済推進という大きな命題に対しては、日本として協力をすべきものは協力をしなければならない。それがまた、国際信義を守る道でもあるし、ひいては、日本の国益を守る道でもあるということで努力をしているわけでございまして、内政に対してできるだけ可能な限り最大の努力をして福祉優先型にしようということは、もう方向としては同じことです。ただ、いますぐやれということと、そういう方向で強力に進めてまいりますという違いだと思いますから、ひとつそのように理解をいただきたい。
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○
増本委員 総理は、この円問題が深刻になったのはここ二年ぐらいだ、こうおっしゃるわけですけれども、この二年の間のたとえば高度経済成長政策、これがもたらした結果だ。公害の問題だって、そうしてまた過剰流動性の問題だってそうだと思うのです。商品投機や土地投機、こういうものについても依然として政府はやはり手ぬるい。
この過剰流動性とそれから商品投機その他について、
委員長、
荒木委員のほうから関連質問があるそうなので、ひとつぜひお許しいただきたいと思うのです。
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○根本
委員長 荒木宏君から関連質疑の申し出があります。
増本君の持ち時間の範囲内でこれを許します。
荒木君。
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○
荒木(宏)
委員 関連でお尋ねをいたします
荒木でございます。
いま日本列島にはあらしが吹いていると、こういわれていますよ。投機というあらしの風が吹きまくっている。いいですか総理、しかもこれは、総理がいまの任務におつきになられて、日本列島の改造が進むにつれて、このあらしの風が強くなってきている。土地でしょう、それから材木でしょう、大豆でしょう、米でしょう、生糸でしょう、羊毛でしょう。そうしていままたガーゼのたいへんな値上がりが取りざたされています。この間私のところへ、私の選挙区の親しくしているお医者さんから連絡がありました。こんなにガーゼが値上がりしたら困る、患者さんの手術の成り行きもおちおち安心してやれないと言う。これはたいへんなことですよ、どうもこれは大きな商社が買い占めをしているということだけれども、国会で一体この問題を取り上げてもらえぬのか、こう言うてきましたが、この事態について総理は一体、どうお考えになっていますか。病人が、ガーゼの値段が上がって品物がないために、安心して手術もおちおち受けられぬというような事態が起こっている。これを一体どうお考えになっていますか。
-
○
田中内閣総理大臣 いろいろな商品に対して投機が行なわれておるとか、品不足が訴えられておるとかいうことは、はなはだ遺憾な状態である、こう考えます。そのために本日、買いだめ、売り惜しみ、暴利等の取り締まりを行なうための立法、普通ならば、これはとても政府が簡単に提案できるような法案ではないと思います。これはある意味の授権立法でもございますから、そういう意味では私は議員が立法されることが望ましいということで、自民党にもそういうことを要請しておったわけでありますが、政府の姿勢を明らかにするためにも政府が提案をすべきであるということで、本日国会に提案をいたしました。このような法律案を提案をしなければならないということ自体は非常に望ましくない姿でありますし、そういうことだけではなく、いまガーゼの問題一つ取り上げましても、これは生命にも関する問題でもありますし、正常な取引が行なわれるためには政府も全力をあげてやらなければならないし、国会でもそのような問題をお取り上げになる。これはもう当然国政調査権があるわけでございまして、政府は法律によらなければなかなかできないわけでございますし、現行法による行政指導というものを中心にしておりますが、これだけではなく、やはり法律を必要とするということで立法をお願いするわけでございますが、国会でもって政府にただすべきはただし、また政府に調査の要求があるならば政府はいたします。国会自身は、国政調査権の発動ということは、常にこれはお持ちになっている権限でございますから、これはおやりになって当然です。私も国会議員の一人でございまして、これはもう当然のことだと思うわけでございます。
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○
荒木(宏)
委員 いままことに遺憾だという御意見を伺いました。これはひとつはっきりさせましょう。遺憾だとおっしゃったのですが、こういう事態、売り惜しみ、買いだめというようなことについて、総理は、これは悪いことだ、よくないことだ、許されないことだというふうにお考えですか。そのことをひとつはっきりおっしゃっていただきたい。
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○
荒木(宏)
委員 そこでお尋ねしますが、国会の自主的な調査活動、これはまた後ほどお尋ねをいたします。先ほど伺いますと、きょう内閣のほうでは法案を閣議決定されて提出をなさるということで、私も新聞でその全文を見ました。ここに、きのうの日本経済新聞にその全文、内容が出ておりますけれども、これを見ますと、あなた、不当な投機、売り惜しみ、買い占めはよくないことだということは、ちっとも書いてないじゃないですか、これには。総理に伺いたいのですが、一体この法案のどこに売り惜しみ、買いだめは、これは社会的に悪であるということがはっきり出ておりますか。
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○
田中内閣総理大臣 その法律が何のために提案をされるのかという提案の理由をお考えになれば、もう当然のことであります。
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○
荒木(宏)
委員 総理、よろしいですか。これは最初、取締法というふうに私どもは聞いておりましたよ。取締法。それはいろいろ法案作成の過程で、名称でありますとか、内容でありますとか、これは変わりましょう。しかしあなた、ここへ出ているのは、これは防止法じゃないですか。これはよくないことだということについては、私どもは、はっきりとそのことはしてはいけませんと、まあこういうふうなのが法律上の、社会正義の立場からの対処だと承知をしておりますがね。人の物を取ってはいけない、窃盗してはいかぬということなら、それは犯罪だとはっきりきまっている。人を傷つけてはいかぬということになったら、そのことをどんぴしゃりと、そのことはしてはいかぬよとはっきりいうのがこれが筋の立った法律の処理だと思います。一体ここに売り惜しみ、買いだめはいけませんぞということがどこに書いてありますか。そのことを重ねてもう一度伺いたい。
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○
田中内閣総理大臣 経済は自由濶達で行なうことが最も望ましいという政策を経済政策の基本としておる政党からの出身者でございますし、その内閣でございますから、自由経済を前提といたしております。しかし社会正義を守るために、国民生活を守るためには、ある程度の行政介入はやむを得ないということで法律をつくるのでございますが、この種の立法に対しては、これはへたをすると、総動員法であるという批判も一部にはあります。(「そんなことを言うかい」と呼ぶ者あり)あります。しかも授権立法というものは、政府が提案すべきものではなく、憲法で定める国会議員の議員立法とすべきであるという有力な議論もありましたから、今日に至ったわけでございますが、これには立ち入り調査権があります。立ち入り調査権もあり、拒否をした者に対しては罰則もあります。法律というものは悪である、処罰をするということだけで法律があるわけはないのです。誘導しなければならない前段の法律体系もあります。教育の正常化、いわゆる大学臨時措置法には罰則はありません。罰則のないものは政令をもって足ると書いてあります。しかし、それは国会の意思を決定するというところに意義を認めておるのでありますから、そういうことは政府が何を企図しておるのか。現状に対して正常な経済活動を確保し、しかも国民に迷惑をかけないような状態を確保するためにこの立法の挙に出たということは、理解いただけると思います。
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○
荒木(宏)
委員 いまので
田中哲学というのが実にはっきりしたと思いますね。自由経済が本則だとおっしゃる。そうでしょう。私は投機を全部取り締まれと言っているんじゃないですよ。よく聞いてください。不当な投機はいけませんよと、こう言っているのです。総理、投機と不当な投機の違いがおわかりになりますか。私が申し上げているのは、投機というのは、広辞苑によりますと、まあそういう出典まで申すのもどうかと思いますが、将来の価格の変動を見越して、そして資金を投入して射幸的な利益を得ることだと、こうありますよ。それは全部いけないと、いまこの場でそう言っているんじゃないですよ。しかし、幾ら投機であっても、国民の皆さんにたいへんな迷惑をかけるような投機、先ほど私、例をあげましたね、小さい子供が手術を受けるのに、ガーゼがない。去年の秋は一反が百三十円ぐらいでしょう。いま幾らしていますか。三百円もしているじゃないですか。しかもあなた、病院が頼んでもなかなか入れてくれない。この間、私、聞きにいきますと、注文して一割しか入れてくれぬ、これどうですか、議員さん、とこういう話を聞きましたよ。そして、一体なぜそんなになっているのだと聞きますと、総合商社がはっきり入っていますと、関係の業者が言っていますよ。国民に、生命にすら、健康にすら影響を与えるような、こういう投機がやられている疑いがある。しかもそのことが、単に自然的な経済変動の価格差を利用するのじゃなくて、みずからの資金力にものをいわせて、価格形成を自分でやっているんですよ。市場を撹乱しているんですよ。ですから、やり方が不公正だ。結果が非常に重大だ。こういう不当な投機は、これは社会的な悪でしょう。あなたも先ほどお認めになった。悪いことは悪いとはっきり言うのが、これが世の中の筋道ですよ。罰則があるとおっしゃいますが、これは調べに行ったときの応対の態度でしょう。
だから、もう一度重ねて伺いますよ。あなたは、こういった幼い子供の生命にまで危険を及ぼすような商社の不当な投機活動、価格形成をみずからの手でゆがめるような、こういうふうな商社の投機活動を、これを、自由主義経済だから禁止の対象としなくともいい、そのことずばりですよ、そのこと、その行為自体を取り締まりの対象としなくともいいとおっしゃるのかどうか、はっきり伺いたい。
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-
○
荒木(宏)
委員 それはしかし、私が申している意味をもっとすなおに聞いていただきたい。私が言っているのは、わが党が、三月一日の衆議院の本会議で
小林議員が質問しましたよ、悪いことは悪いと正面から取り締まれと。そのことは悪いとあなたは認めていらっしゃる。しかも、自由主義経済を否定するものではない、あなたの意見も私の意見も、その限りでは一致しているんですよ。そういう経済体制は認める。しかし、そういう行為はよろしくありません、悪いことは悪いとはっきり言いましょう、ここまで一致しているんですよ。それでなぜ言えないのですか。どうしてそれで、国民の命を守ろうという責任のある態度が、ことばが総理の口から出ないのですか。もう一度、それ言ってください。
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○
田中内閣総理大臣 ちゃんと言っておるじゃありませんか。反社会的な行動は、どんな自由経済体制の中でも許されるものではない。公益優先であることはあたりまえであります。だから、自由経済というものは、法律や政府が介入すべきものではないのです。ないのですが、しかし、公取法が必要であるように、公益や国民の生命を守るために、反社会的行為を是正するためには立法もまたやむを得ない、こういうことで立法をちゃんとやっておるのです。しかし、大学の正常化に関する法律には罰則がないじゃありませんか。しかし、ちゃんと効果をあげていると私は思っておりますよ。今度は罰則があるでしょう。この罰則をとにかくもっと強くしろ。これは確かに、不当な行為をやれば、ある国では銃殺にするという、そういう法律を出している国もあるし、法律だけじゃなく、布令でやっているところもありますよ。そういう国があるじゃありませんか。現在の日本においては、少なくとも今日の段階においては立法を必要とするということで、売り惜しみ、買いだめ、将来の利益の上昇を見込むということよりも、それは暴利だというふうに考えて、それが反社会的な商行為であるという場合には、これに対して立法を必要として、政府が介入することもやむを得ない、こういう態度で国会に法案を提案したわけでございますから、こういう法律案は、ほんとうなら一日でも早くさっと通していただいて、そして実効があるか、あがらぬかということが私は非常に必要な問題だと思います。まじめにそう考えておるのです。ほんとうにその意味で、あなたは社会主義経済ということでもって、それは何でも……(
荒木(宏)
委員「そんなこと言っていないですよ」と呼ぶ)いや、まあまあ、そういうことが前提にあるかもしれませんが、しかし、私たちは、少なくともいまの状態において、今日提案をした法律をもって社会正義を守ろう、こういうことであります。
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○
荒木(宏)
委員 いま例として引かれた独占禁止法をもう一度よくごらんになってください。独占禁止法は、これは公取の担当者が調べに行ったときに断わったらいけませんよという罰則はありますよ。しかし、それだけじゃないですよ。独占禁止に触れるような行為そのものがいけませんと、罰則をちゃんとつけている。私はそのことを言っているのです。初めからおわかりでしょう。この防止法なるものは、調べに行ったときのことだけをきめて、売り惜しみ、買いだめそのもの自体についての禁止規定がありませんよ、こう言っているのです。これは法案が出ているのですから、だれが見たってはっきりしている。なぜ、総理が、独占禁止法の例をみずから引きながら、しかもその違いがはっきりしているにかかわらず、それほどまでに自由主義経済ということにこだわられるのか。これはもうはっきりしていると思うのですよ。そうでしまう。ここしばらくの間に、この取り締まりに当たるという主務官庁、これはおそらく通産省でしょう。あるいは大蔵省でしょう。あるいは関係の農林省とか、そういったところが考えられる。そこからどれだけの人が総合商社へ天下りしていますか。人事院で白書をちゃんと出している。
人事院の担当者もお見えですから、その点について伺いたいのですけれども、この三、四年の間に総合商社へ天下りをした主務官庁はどこが一番多いか。多いうち、三つほどあげてください。
-
○
中村(博)政府
委員 お答えいたします。
この三年間で、いわゆる営利企業への就職の承認をいたしました数は、おもなところをあげますと、四十四年、大蔵三十六、農林十七、通産三十。四十五年、大蔵四十二、農林二十、通産三十。四十六年、大蔵四十四、農林十八、通産十七、かように相なります。
-
○
荒木(宏)
委員 これではっきりするじゃありませんか。ますます疑惑が出てきますよ。大体、行こうとする官庁から天下りでそこへ行っている人が、関係の省庁が多いというのですよ。
それで、私が指摘しているのは、先ほど言われた私的独占の禁止の法律もそうですし、証券取引法もそうですし、不当な価格形成については、そのこと自体を処罰対象にしているのです。、何もわざわざ出かけていって、そこで一ぺんお役人が断わられたから行けませんと、そんな回りくどいことをしていないのです。この間から問題になっている協同飼料の例があるでしょう。時価発行するというのでうんと株をつり上げた。そういう市場撹乱の行為そのものがいけませんよ、こう言っている。だから、社会的な犯罪だ、悪だというふうに言われるのなら、今度の法案でもそのことをすべきじゃありませんか、私はこう言っているのです。ですから、今度の法案で、勧告だとか、公表だとか、こういう処置をおきめになっていますね。これをひとつ放出しなさい、それをひとつ売りなさい、こういう命令をするわけにいかぬのですか、総理。
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○
中村(博)政府
委員 お答えを補足させていただきます。
先ほど申し上げました承認件数は、これは、営利企業に承認したものの総数でございまして、この中で、商社に限りましては、大体この三年で五件くらいでございます。
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○小坂国務大臣 これは、いずれ法案を出して御説明した段階で申し上げることだと思いますが、いまお話がありましたから申し上げます。
多量の生活関連物資を保管しているものに対して法律の勧告ができるわけです。これはもうたくさん持っているから出しなさい、そのために困っている人がある、あなたの行為は反社会的だからやりなさい、こういう勧告ができるわけです。勧告に従わないものについては、商社だか何社だか知らぬが、これは従いませんよ、こういうことを公表するわけです。そして、政府の職員が立ち入り検査をすることができる旨の規定を置くわけでございます。
先ほどから独禁法との関係をおっしゃっていますが、独禁法の場合は共同行為ですね。価格をつり上げる共同行為があったということが明らかに認められるということが前提でございますが、これは単独にやっても、その結果、価格が異常な騰貴を来たすような行為をしているということが行政上認められるということになれば放出しなさい、こう言うこと、ができるわけでございまして、これは両面から責められるということになるでございましょう。
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○
荒木(宏)
委員 長官のほうは、横からお出ましになって見当はずれのお答えをしないでくださいよ。総理は、尋ねている意味はわかっておられると思うのだけれども、私が言っていますのは、勧告や公表は法案に書いてある。いまわざわざ長官に御説明願わなくてもちゃんと書いてある。しかし、これでは疑惑もあるし、内容が悪いんだから、みんなの心配を解消するためには命令にしたらどうですかと、これをお聞きしているのです。
-
○
田中内閣総理大臣 現時点においては、いま御提案をしておるものが一番いいと私は思っているのです。それは、ほかに方法がない場合は、これは別だと思うのです。これはほんとうに、戦時、統制令がございました。物統令に移ったわけでございますが、それは総動員法的なものは全部やめなさいということで、いま残っているのは、もう米の統制とか、日銀法とか、物統令しかないわけでありますが、あとは全部新憲法に切りかわったわけでございます。そういう意味で、方法のない場合は、これは相当荒っぽくてもやれたと思うのです。現にどうしても必要なもの、豆を買い占めた、アズキを買い占めたというなら、事業団をつくって入れることもできるのです、そういう対案ができるときには。しかし、やはりものには限界があると思うのです。ですから、それはちゃんと備蓄をすればいいということを皆さまときどき言われますが、そういう対案があるときには、自由経済下において、反社会的な行動というものに対して過酷な法律条件を適用するということよりも、やはり誘導政策を行なうということが正しいことだと私は考えております。そしてこれは、どこまでが不当であって、どこまでが買いだめであって、どこまでが売り惜しみであるということは、やはり基準をつくるにはむずかしいのです。やはり社会的な制裁を負うという、公表とか立ち入り検査とかということでもって、これは相当な効果をあげ得るものである。しかも、市場には底をついておるガーゼが倉庫に一ぱいあったじゃないかということでも、これはしかし、長い間病院との間に何年間の契約をしてあるのですというような事態、これはいろんな争いになるところがあると思うんです、法律的には。非常にむずかしい問題も起こると思うのです。そういうものに対して、悪なりと是認をして、これに対して体罰規定を置くとかいうことは、法制上もむずかしいのです。そんなことまでやらなきゃならなければ、事業団をつくって、政令でもって定める指定のものをちゃんと備蓄をするという方法も考えられるのであって、現時点においては、私は、この法律というものが望ましい、こういう考えでございます。
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○
荒木(宏)
委員 事態はそんなに甘いものじゃありませんよ。米をごらんなさい。モチ米なんか六十万トン、去年に比べて、ずっと一六%も減っているでしょう。そのあおりを受けて、ことしは二百万トンももうすでに買い占めたといわれていますよ。小麦だって、自給率はもう一〇%割っているじゃありませんか。世界的な食糧不足ということがいわれるときに、そういったような状態になって、ちょっとしたきっかけで、そしてすぐにばあっと、こう上がってくる。入れればいいなんて言われますがね。材木だって、アメリカでどんな評判を受けていますか。向こうへいって、もう不評判で、いま袋だたきじゃないですか。ですから、ほかに方法がいろいろあるからとおっしゃるけれども、しかし、その方法にしてみたって、大体、買い占めに回る資金の規制がこれまたほとんどやられていないでしょう。時価発行について大蔵省がどんどん認可していますけれども、それで不当株価の操作までやって、プレミアムをごっそりやって、あれがまた買い占め資金の一部に回っているという話じゃないですか。有価証券の譲渡益だって、四十六年から七年にかけて、一つの商社を見ただけで三億円から十倍以上にふえていますよ。一番典型的なのは丸紅ですよ。ですから、そういうところに規制をしないで、自由主義経済だとかなんとか言って、そしてこの程度の法律じゃ、これは国民は納得しませんよ。詳細についてはまた
委員会で伺いますけれども、しかし、はっきりとそのことは申し上げておきますよ。
そこで、この問題についてのわが党の主張は、すでに本会議で総理にも明らかに申し述べたとおりです。ですから、このいまの異常な事態の推移を、一国の総理として、ほんとうに真剣にその成り行きを見詰めて、そうしてとるべき手だては、それに必要ならほんとうにすぐにとる。ほかにいろいろあるからとか、いや自由主義経済だからとか、そんなことを言っている間にどんどんどんどん、次から次へと投機の対象になっている。豚肉でしょう、マグロでしょう。ほかの
委員さんからもお話がありました生糸の市場だって、あなた、閉鎖しているじゃないですか。そういうことですから、基本的な一番の根本原因についても、これはもう前の
委員会のときにも私は言いましたけれども、いまこそこの基本的な路線について再検討すべきときである、こういうふうに私どもは主張をしておるのです。
その根本的な原因について、そこでお尋ねをしますけれども、これは大蔵大臣に伺いますが、日銀券は昨年からことしにかけて増発をされておりますね。そして、日銀の貸し出しもまた御存じのように、一兆三千億ふえていますね。そうすると、この貸し出し増が、この日銀券の増発に関係がないと言い切れますか。
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○愛知国務大臣 これは、関係がないとは言えません。
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○
荒木(宏)
委員 この貸し出しのときに担保をおとりになりますね。その担保の中には国債も入っているのじゃありませんか。
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○愛知国務大臣 これは、御承知のように、金融操作として、いわゆる買いオペ、売りオペというようなときに、国債も対象になることは当然でございます。
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○
荒木(宏)
委員 いや、オペレーションじゃありませんよ。私の言っているのは、担保としておとりになっていますかと、こう聞いているのです。
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○愛知国務大臣 担保としてとることもございます。
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○
荒木(宏)
委員 いまのお話のとおりだとすれば、公債を発行する、発行された公債の市中消化とかおっしゃっているけれども、大体、市中銀行がそいつを担保に持ち込んでくる、貸し出しはどんどんふえてくる、銀行券は増発されている。どうですか、これは物価に悪い影響を与えるのじゃありませんか。
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○愛知国務大臣 金融操作あるいは日銀の貸し出しというようなことは、全般の金融操作の中で、政策の中で行なわれることでございますから、現在のように預金準備率を二度にわたっても引き上げるというような金融規制策を行なっておりますときには、当然、日銀からの貸し出しというようなことは、これは収縮するのが普通のやり方でございます。
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○
荒木(宏)
委員 しかし、収縮していないじゃないですか。準備率の引き上げは、これは関所のかきねを高くするだけのことでしょう。私が伺っているのは、通貨の流れですよ。市中で消化するから安心だとおっしゃるけれども、それは市中銀行からどんどん市場を流れるのじゃなくて、またぞろそれがもう一ぺん日銀に帰ってくるじゃありませんか。そうして、公債を担保にとることは、これは絶対やめませんよと、七一年の三月の二十二日の参議院の予算
委員会で日銀総裁はおっしゃっている。ですから、どんどん出ている公債は、そいつは銀行を通って、そのふところでしばらくあったまるかしれませんが、そいつはまた帰ってくるじゃないですか。二兆三千四百億の大型公債を出すというのは、それはそのまま再び日銀の金庫に戻ってきて、通貨の増発と関係がないと言い切れますか。
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○愛知国務大臣 これは理論的に言えば、関係がないとは言えません。しかし、それは政策の問題でありまして、今回の予算編成においても、しばしば言っておりますように、公債を出すことは、むしろ市中の過剰資金を吸収するということの一つの適切な方法でありますから、市中消化の原則をはっきり守って、そうしてこれを吸収する。そうして、国債が担保になったりすることは、これは根からして慎むべきやり方、これは政策の問題でございます。その政策は、当然基本の考え方に即してやるべきものであります。同時に、公債というものはそのときの金融市場の繁閑に応じて、買いオペ、売りオペということも公債が手段として使われることは、これも当然のことであります。たとえば国庫と民間の資金との間に散超、払い超というような状況がしょっちゅう起こっておりますが、そのときの繁閑に応じたオペレーションとしてやりますことは、これはもう当然のことでございます。
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○
荒木(宏)
委員 それは大臣がおっしゃらなくても、政策の問題と金の流れは、これはもういわば半ば常識でしょう。私が言っていますのは、理論的には関連を否定できないということをお認めになった。しかも、理論的にはお認めになって、現実の政策はどうか。売りオペをやったって、まだ増発しているのですよ。それでまだ貸し出しがふえているじゃありませんか。あなたはいろいろおっしゃるけれども、昨年は公定歩合も引き下げたでしょう。ですから、今度は幾ら市中消化とか、そういうことは言ったって、それはまず第一関門が市中銀行であるというだけのことであって、あと再びそのカレンシーが戻ってくる歯どめは何もないじゃないですか。現に、その証拠に、物価はどんどん上がっているじゃないですか。そして、三和銀行の調査によっても、七兆五千億の過剰流動性があるということをはっきり言っているじゃありませんか。このような大型公債を、いまの時期に二兆三千億をこえるような公債を発行することはインフレ政策を進めることにほかならない。総理はいかがですか。
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○愛知国務大臣 通貨の発行高の問題、その他いろいろ総合的に関連しておりますが、通貨の発行高というものは、また預金通貨と合わせて見るのが至当であるかもしれません。そうして、その量は、よく指摘されておりますように、GNPの伸び方よりもだいぶ上位に位しておる。ですから、これに対しても相当警戒したやり方をしなければなりませんが、同時に、管理通貨制度のもとにおいて通貨の発行量を禁止的に抑制するというようなことは、どこの例を見ましても、そういうことはやっておりません。ただ、午前中も御議論がありましたように、通貨の発行量、日本銀行券の発行限度というものが定められているのも、これは禁止的とか制限的な政策の表現とは必ずしも言えませんけれども、やはり、全体の経済情勢を見て、十五日以上もこれが限外発行が続くようなことは適正でないという配慮から限外発行税制度というものも行なわれているわけでございますから、この運用等につきましては、常に十分配慮していかなければならないことだと思います。
それから、政策として適度の公債を出す、そして市中銀行にこれを持ってもらう、あるいはまた、市中消化の原則ということは、必ずしもこれは金融機関が保有するだけでなく、一般国民が持ってもらう。そういうこともまた一面において考えらるべき方法でございますが、これは、条件の問題や、あるいはそのほかの関係もございまして、なかなかむずかしいことではございますが、これについても、政府としては、いろいろくふうも検討もいたしておるわけであります。
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○
荒木(宏)
委員 大臣、私の申し上げたことをかってにすりかえないでくださいよ。私は、通貨の発行についていま直接に申し上げたんじゃないのです。公債を出しているのがそのことにつながるじゃないか、こう言っているのですよ。もっとはっきりしたことを申し上げましょう。もうほかの
委員さんからも再々指摘されていますが、外為会計からはどんどん出ていますよ。おととし、去年ともう五兆、六兆という金が出ている。しかも、GNPの成長率、これは名目をとったって一五・七%ですか、それよりもこの通貨の増発率が二九・六%になっている。数字のとりょうによっては二六・四%ともいいますけれども、いずれにしたって成長率をうんと上回っておる。実質をとれば九・四%でしょう。ですから、もう三倍ですよ。つまり、ことほどさようにいま、インフレ政策や大型予算やこの外為の問題などがあって、ずっと金がだぶついてきている一過剰流動性というふうなむずかしいことばでいろいろいわれておる点ですけれども、その点について先ほど来申し上げているこの商品投機、そこのところがつながっているじゃないか。これはもう皆さんから指摘されているとおりですよ。この点について、転換、転換とおっしゃるけれども、前の予算
委員会のときにも私は総理にお聞きしましたが、ほんとうに転換ということをお考えになってそれをやっておられるのか。私があのときにお聞きしましたら、絶対量がふえているからとおっしゃったでしょう。転換というのは、しかし、はっきりと比率を変えることだとあのときも申し上げたのですよ。その点、総理どうですか。
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○
田中内閣総理大臣 転換をする、流れを変えるということは、目標を変えて、そしてそういうところに流れを持っていくわけであります。これは一挙に流れが変わるべきものではないことは言うまでもないことであります。これだけとにかく拡大しておる日本経済、日本の現状を、その方向を流れを変えようというのは、輸出優先から成長活用型に変えてまいります、それから公害は公害除去の方向に、それから社会保障の拡大に、この国に生まれたことを真に喜び合えるような日本をつくるためにやりますと、こう言っておるのでございますから、流れは変わる。しかも、輸出入銀行は輸出金利が高くて、輸入金利は安くやっているわけでありますから、この流れを変えるために努力をしていることは事実なんです。だから、輸入も伸びているのです。しかし、輸出がすべて国内消費に回るほどまだ減っておりませんから、輸出は漸減傾向をたどっておりますが、依然として高水準にはございますが、輸入は非常に拡大をしております。きょうも経済閣僚会議がございましたが、一月末の数字を見ますと、非常に望ましい方向に進んでいることは事実でございます。
それで、公債問題でございますが、公債には二つの問題があるわけであります。いま西ドイツが考えたような、ドルが流入すれば、それに対して円が市中に散布されるから、そういうものは特別公債を出して引き揚げて、そしてそれを使わないでおればいいじゃないか、それは利息を国庫で払わなければならぬけれども、しかし、それは政策費として考えればいいんだという考え方が一つございます。しかし、そういう考え方が一つあると同時に、いま日本でそのような政策をとるようなことよりも、いろいろな窓口規制や、商社や企業の名前を明示をして貸し出し抑制を行なっておりますし、都市銀行に対しても非常に大きな抑制を行なっております。ただ、雑金融機関といわれるような機関とか、それから系統金融機関であるところの農協資金とかいうものも非常に大きい。しかしそれは、いまの変動相場制に移ったような状態下における中小企業金融にでもさわっては困るので、これらの問題に対してはよほど注意をしなければ引き締めを行なうべきでない、こういう考え方を持っているわけでありますから、流れを変えるために具体的な政策を行なってはおります。
それから、もう一つは国債でありますが、国債は、市中消化を原則として出しておるわけです。一部は資金運用部引き受けということもありますが、これは出してはおる。しかし、それはすぐ還流して日銀に入るじゃないかということですが、これは、日銀では窓口規制を行なったり、いろいろなことをやっているわけでありますから、いま大蔵大臣が述べましたとおり、そういう金融政策の中で、それが通貨の増発に結びつかないような状態でもって金融政策が適宜行なわれなければならないということであります。しかも、国債や何かがある意味において市中を流通することは、これは起債市場を大きくすることでございますし、開放経済下に対しては望ましいことであるし、材料がふえることであります。それがユーロダラーのようにあばれては困るのです。あばれないように日銀に還流して、それが全部日銀引き受けになるということでは困りますが、それは売りオペ、買いオペの材料として、金融調節手段の材料としてうまく使うということでありますから、私は、国債増発という、四十八年度予算の中に占める国債というものが、過剰流動性にプラスアルファをもたらすものだというようなことには絶対にしたくないし、絶対にしないということに努力をしなければならぬと思いますし、そうならぬと思います。そうならぬと思いますなどという中途はんぱなことばではなく、絶対にそうならないように金融政策をやってまいりたい、こう思います。
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○
荒木(宏)
委員 変わった変わったとおっしゃいますが、変わったのは何が変わったのですか。いままで振っていた輸出第一、それが今度は知識集約型、公害防除。振る旗の色が変わっただけでしょう。一番大事なことは、国民が一体どれだけの恩恵をこの政治によって受けるか、どれだけ生活がほんとうに豊かになるかということで、それは政治を変えなければだめでしょう。振る旗の色を変えたって何にもならぬですよ。一番大事なことは、総理、前のときも申し上げましたけれども、あなたがおっしゃったでんでいくと、私が言いましたように、産業基盤整備が八割で、もうこまかい数字はおきますが、生活関連が二割だ。それはちっとも変わっていない。八割、二割。だけれども、あなたは絶対的な数字がふえるからいいじゃないかとおっしゃった。それはふえますよ。八畳の部屋と二畳の部屋があって、もう一つ建て増して、また八畳と二畳とあって、国民は二部屋になりますけれども、依然として二畳のままでしょう。あなたのほうが今度は振る旗が変わって、公害防除だとか、あるいは知識集約とか、いろいろおっしゃっているけれども、結局のところは、大資本に向けて同じような比率のものがいっている。そうして国内で、労働者の生活水準を、スト権を奪って、低賃金で下げて、農民は自由化で苦しめて、中小業者は輸出関連でたいへんにつらい思いをしている。その構造を変えなければ、いまの外貨の点はいつまでたっても変わらない。あなた、輸入がふえているとおっしゃるけれども、それ以上に輸出は、百二十四億ドルも貿易収支の上での黒字を、五十二年に目ざしているのでしょう。ここの点をわが党は、はっきりと予算案に示された政治の性格として、これを変えなければだめですと、このことを申しているわけです。
きょうは、時間が来ましたからこれでおきますけれども、その点についてのほんとうに、商品投機の問題を中心にして、いまこそ再検討をもう一度心からやられることを申し上げて、私の質問を終わります。
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○
増本委員 時間になりましたので、まだ追及したい問題があるのですけれども、それはまた後日にさせていただきます。
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○
広沢委員 私は、まず最初に、今回の通貨不安を背景とした諸問題に対しまして、政府の見解を聞いておきたいと思います。
昨年来通貨不安を背景として、アメリカからエバリー通商特使あるいはボルカー財務次官、またこのたびはピーターソン特使が来日しております。その内容は、そのたびごとに明らかでありませんけれども、数日たちますと、やはり非常なショッキングな問題が起こってきております。
そこで、私はまずお伺いをしておきたいことは、去る七日の愛知・ピーターソンの会談で、国際通貨危機の原因がドルの不信にある、アメリカの国際収支の改善あるいはドルの交換性の回復、このめどについて、大蔵大臣はアメリカの態度をただしたというような報道がなされております。具体的な詳細なことはありませんが、この会談で、愛知大臣はどういう感触を受けられたのか。当然、まあこの市場閉鎖中に特使として突然やってこられたわけでありますから、こういう通貨調整のアメリカの協力、いろいろな問題がそこに出てきたと思うのです。それを受けて、その後においては細見顧問が欧州に行っております。したがって、アメリカとわが国との間においては、一応は日米両国は一致協力する、こういうふうにきめたということを大蔵大臣もおっしゃっておられるわけですが、その辺のところからまず伺いたいと思います。
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○愛知国務大臣 七日にピーターソン氏が参りまして、そうですね、一時間前後話をいたしました。ところが、ただいまお話がございましたが、この一行、相当の人数でございまして、かなり大ぜいの方と一緒に会ったわけですけれども、通貨不安の、ことに最近の状況が起こる前から国を出発して、ヨーロッパ数カ国をずっと回ってこられて、その帰途に東京に寄ったわけでございますから、そういう環境で会ったということを、まず第一に申し上げておきたいと思います。
それから、会いましたときに、まず、きょう来ましたのは、特定の問題について日本政府とネゴシエートすることでもないし、それからリクエストすることも持ってない、つまり要請するようなものはもちろん持っていないし、日本側から御要請があっても、これはネゴシエートするための権限を持って来たのではない、一般的な政治経済と申しますか、そういうことについての日本のいろいろの方と意見交換をしたいということで来たのであるということが最初の前提でございますから、そういう雰囲気でお聞き取りをいただきたいと思います。
それからその次に、特に言っておりましたのは、自分は御承知のように通貨問題については知識がありません、ですから、特に通貨問題というようなものについてあなたと意見を交換するというようなことが、自分として意図して来たのではない、こういうことでございました。それで、自由な意見交換の中には、私のほうからも、アメリカの最近の態度あるいはヨーロッパで受けた印象等を聞きながら、こちらの意図するところ、先ほど申しましたが、国際通貨の当面の危機を克服するためには、アメリカとしてやはり相当の決心で政策の転換をしてもらわなければ困るというような、私のかねがねの意図も含めまして、自由な意見の交換をいたしました。率直な意見を聞いてありがたいということは言っておりましたけれども、この通貨問題についてはその程度でございます。
その他は、一般的な状況、たとえばその中では、日本の現在の国会でどういうことが論議されているかというようなことも先方の質問の中にはございましたから、できるだけこういう点についてもフランクな意見を述べておきました。そのとおりでございます。
したがいまして、特に会談後に双方から発表することも何もないということで、特に打ち合わせなどもいたしませんでした。
以上でございます。
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○
広沢委員 いまの大蔵大臣のお話によりますと、別に通貨問題ということでは特にないというお話ですね。これだけで緊急に飛んできたというわけではなくで、それは確かに通産大臣にお会いになっておられるし、農林大臣にもお会いになっておられる。しかし、今日の情勢について、やはりこちらに特使としてやってこられるということになれば、この問題に対しても、それぞれ突っ込んだお話があったのではないか。特に、ちょうど欧州の会議に行くということで、細見顧問も政府との具体的な打ち合わせの上派遣されたというその直後でありますので、そういうような関係でお伺いしたわけですが、しかしその中で、通貨危機打開のために協力するということ、そしてまた、いまそういう最大の、自由化だとか問題になっている中で、通産大臣あるいは農林大臣もお会いになるということは、やはりその意図するところは、今日のそういうわが国の態度というものに対して、あるいはまたアメリカ側の態度というものに対して、全くお触れにならなかったということはあり得ない、こう考えるわけです。
そこで、先ほども申し上げたとおり、ボルカー財務次官が来られたときにも、あるいはその前エバリー特使が何回か来られたときにも、やはりその目的というのは、日米間のそういう貿易の関係やあるいは通貨不安を背景とした問題があって、その後において、必ずいま言うようなドルの不安が一そう激化してくるとか、あるいは市場閉鎖だとか、あるいはフロートだとか、こういう問題が起こってきているわけですね。ですから内容は、具体的にここでつまびらかにするというわけにいかぬのかもしれませんが、やはりそういう問題を話し合ったことについては、ある程度はっきりおっしゃるほうがいいのではないかと私は思います。
そこで、わが国を代表して細見顧問あるいは
稲村財務官がいま欧州へ行っているわけでありますが、わが国の基本的な姿勢というものもちらちら新聞には報道されておりますが、この新聞に報道されているとおりのような一つの考え方であるのかどうか、この基本的な考え方を伺いたい。
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○愛知国務大臣 基本的な姿勢として、当面この事態を収拾するためには、やはり何といってもドルの交換性の回復ということがどうしても必要である。それから、ともすると資本の流出を抑制することをやめるというふうにアメリカの態度がいわれておりますから、それは、この際そういうことはアメリカのためにもまた世界的にもいかぬことである。抑制をすべきである。それからもう一つは、これもアメリカの国内政策になりますけれども、特に金融政策の上で、国際的な協力ということを旨としたところの政策の切りかえとかくふうとかいうものが必要でありますよと、この三点が特に当面として、あらゆる機会にアメリカ側に態度の変更といいますか、政策の変更を促さなければならぬというのが、基本的なわれわれの態度でございます。
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○
広沢委員 新聞の報道に大きく出ておりますところによりますと、わが国の基本的な姿勢というのは、午前中にもお答えがあったようですが、いわゆるアメリカに対してはドルの信認を回復する、これは基本的な姿勢として当然のことであろうと思われますが、そのためには、わが国はいまとっております輸入、輸出、そういう自由化を積極的に、円対策も今後進めていく、これも当然わかっていることですし、さらに東京の外為市場が再開後においては、日銀の介入を避けて、対ドル二〇%以上の円高を覚悟する、これはいま非常に微妙な問題になっておるところでありますが、そういうふうに三項目として出ております。さらにドルの交換性の問題で、これはわが国とアメリカだけの問題じゃなくて、いまECでも、この辺はきびしいアメリカの反省を求める態度が出ております。
したがって、そういう問題の対立の中にあっては、調整役を買って出るんではなかろうか、これはそういうような意味合いで出ておるわけでありますが、こういうような何らかそこにいくためには、一つの基本姿勢というものを持っていなければならない。それが絶えず、われわれがこうやってお伺いすると、いま国際間の微妙な段階では、何も言えませんということが大体大蔵大臣のお答えなんですけれども、しかし、こういうふうに明確に政府の基本的態度ということで出ておるわけですが、その点は、いま抽象的で非常にわかりにくかったわけですが、いかがですか。
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○愛知国務大臣 私がいま申しましたのは、非常に具体的であると思います。特に当面のわがほうのとるべき態度としては、非常に基本的で具体的であると思います。
それから、いま新聞を御引用になりましたけれども、二〇%云々とか開場後どうするとかということは、私の申しましたことではございません。日本政府といたしましては、いま申しました三点を基本姿勢にいたしまして、そうして、何しろECといってもこれは複数の国々でございます。またアメリカはアメリカとしての別の立場があるわけでございますから、要は、わが国が自主的な立場を基本的に持っておって、そしてその目的が達成できるように最善の努力をするということであろうと思います。
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○
広沢委員 それでは、世界各国がアメリカに現在期待しているということは、いま大臣もおっしゃったような、ドルの交換性の回復、あるいはアメリカの経済節度の維持と資本流出の規制、あとこういった具体的な問題も新聞には発表されております。こういう中で、アメリカ自身がやはり具体的に世界に、こういうアメリカのとるべき態度というものを明確にすべきではないのか。そういうことによって、今度の通貨不安も鎮静化に向かうんじゃなかろうか。日本の国はフロートする、あるいは一応欧州の非常なドル売りというものも、日本のフロートによって鎮静化したかに見えたけれども、間もなくまた急激なああいうようなドル危機というものが起こってきた。結論的に言えば、これは再三いわれておりますように、アメリカのいわゆる国際収支の問題もありましょうし、基軸通貨であるアメリカ自身の一つ大きな問題をかかえているし、そして、その基軸通貨であるドルの交換性というものが全く失われている、そういうところに問題があるのじゃなかろうか。
ここで私は、アメリカに対して明確にやはりその点を指摘して、そして、それに対するそれぞれの国々が対応を考えることが、このドル不安というものを鎮静化していくことになるんではないかと思うのですが、いかがでしょう。
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○愛知国務大臣 ものの進め方として、一から十までこちらの意見というものをあらかじめ公表して、そしてびくともしない、何でも貫徹というやり方もございましょうし、それから相手がたくさんある場合でございますが、多数国間で協議をする場において、ことばは適当でないかもしれませんが、どういうふうなストラテジーを使うかというようなことは、やはりなかなか微妙な点もございます。基本的姿勢として、私は具体的に申し上げているつもりですけれども、交換性の回復、それから資本の規制、それからアメリカの国内の政策ではございますが、これに対するわれわれの要請というか、これは、かなり具体的なことは基本姿勢として打ち出しているわけでございます。そして、けさほど申しましたが、いろいろのバリエーションがございます、それぞれの項についても。それらについては、国際協力という場において、できるだけみんながまとまってコンセンサスができ上がるように建設的に努力をしてあげるということが、他国のためにもなることではないか、私はこう思います。
長期的には、もうすでにしばしば申し上げておりますように、二十カ国会議、C20というのが一応の中心の会議体に現在はなっておりますから、近くその全体会議もあるわけでございます。長期的な国際通貨の安定については、これまたやはりドルの交換性をまっ先に置いて、どうしてもそれがうまくいかないということであるならば、それにかわるSDRを中心の考え方とか、とにかく国際通貨の安定ということに対して積極的、建設的な努力をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございますが、これには若干の時日がかかるのではなかろうか、こんなふうに予想されます。
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○
広沢委員 もう二、三点、こういった問題について伺っておきたいのですが、アメリカの市場介入あるいはドルの信用回復、各国のドルの買いささえ、負担の軽減等に効果を与えて、そして国際通貨不安解決に、こういうことをやることは大きな役割りを果たすことになると思います。そういうふうな、アメリカが今回一〇%のドルを切り下げたというけれども、それだけではこの通貨不安は解決しないんだぞというのが今日の大きな問題になっているわけでして、ECにおいても、先ほど申し上げたようにきびしい態度を持っておりますし、特にわが国においても、いままで、出ていってそこで交渉してみなければわからないというのではなくて、アメリカに要請すべき問題はきびしくそれをきちっと言わなければならない。この通貨不安が起こってくるというのは、赤字国も責任がある、あるいは黒字国にも責任がある。国際均衡を保とうとすれば両方が努力をしなければならない。ですから、当然そうあってしかるべきだと思うわけです。
その場合、いずれ国際会議の中で、これは通貨調整というものがなされるわけですが、その場合も、これも報道によれば、アメリカ側としては相当具体的なことも何か考えなければいけないじゃないかということがちらちら出ております。そのアメリカが協力体制を今回もとるということになれば、マルクやあるいはフランは、そのまま固定相場じゃなくて変動相場制に移り、そしてまた当然何がしかの切り上げをしなければならなくなってくるであろう。その影響を受ければ、いまフロート中のわが国においても、より以上の切り上げを迫られることになるんではないか、こういうような懸念をされております。これに対してはどういうふうなお考えでしょうか。
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○愛知国務大臣 まず、アメリカが一〇%切り下げというようなことをやれば、ヨーロッパはいわゆるスタンドスティルでこれでおさまるか、これは欧米のみならず、世界的な観察であったと私は思います。ところがそうはいかなかったわけです。そしてなおかつ、ドルの不信認というものがずっと行なわれている。ですから、これに対処して緊急的にというか、当面の対策をやはりみんなが協力していかなければならない。
そこでいろいろ、こういう問題でございますから、やれ共同フロートであるとか、単独フロートであるとか、平価調整はどうなるであろうかとか、いろいろのうわさが流れております。それだけ世界じゅうの心配だからでございますけれども、これはそのために主としてヨーロッパ、ECの中で一つのコンセンサスをつくろうとして非常に努力がされたものと思いますが、そこだけでは名案が出ないということで、そしてアメリカも呼び、また日本にも、直接関係は薄いかもしらぬけれども招請状を出した、あるいはC20の議長国であるインドネシアにも招請状を出した、あるいは主要国の中央銀行総裁にも招請状を出したというのが今日の状況である、かように観察いたすわけでございます。
政府といたしましては、いま今回の問題に限っていえば、日本は直接にその渦中にあるというのとは多少違う立場のようにも思えますけれども、やはり先ほど申しましたように、こういう機会には、私自身は出られませんけれども、代理を出し、あるいは日銀総裁にも行ってもらいまして、よくそれらの状況を、実際上その雰囲気に接し、そして機をとらえて日本側としての、先ほど来申しております基本的な態度で、一つの役割りが果たし得るならばたいへんしあわせであると思います。
いずれにいたしましても、今月中には本体というか、C20の全体会議も開かれることが決定されておりますから、いずれそういうところに、将来としての問題についてはつながっていく場が十分あるであろう。何としても当面、とにかく平静化することについてヨーロッパが中心になり、アメリカが協力をして、そして当面の平静化ができることが非常に望ましいことである、かように考えておる次第であります。
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○
広沢委員 時間がありませんので、次には、いま市場閉鎖されております。これは開く時期というのをお伺いしても非常にむずかしい問題で、簡単にはお答えできないのかもしれませんが、これも報道によれば、西ドイツの市場は月曜日、十二日から開くのではないかという一つの報道がなされております。大蔵大臣はいままで、大体欧州の状況を見てからということで、実に今回の市場閉鎖は長引いておるわけであります。少なくともあしたから休みでありますから、月曜はどうなるかということが一つの問題点だろうと思うのですけれども、その場合、きょう九日に行なわれている十五カ国会議ですか、これはわずか一日ですから、具体的に今後の方向を探り出すということはむずかしいのじゃないか。そういうことになれば、勢いこれは月曜日ということになってくるわけでありますが、その場合に、あくまでもいままでとってきたような欧州の状況を見ながらお考えになっていくのか、あるいは今日の市場閉鎖が長引いたことにおいて、ますます甚大な被害を受けているこれらの中小企業、そういった問題を勘案して、単独でも情勢を見て開こうというお考えがあるのか、この点……。
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○愛知国務大臣 今回の閉鎖はヨーロッパの混乱、これが異常な状態でありますから、これを見据えないと、また同時に、これが不測の事態でこちらが余波をこうむることがあっては国益を害すると思いましたから、一時閉鎖をいたしたわけでございます。その原因が、あるいは理由がそういうことでございますから、やはりヨーロッパ市場の動向というものは十分見据えていきたいと考えております。
そして同時に、この閉鎖期間中においては、中小企業等の関係が、閉鎖期間中といえども、インターバンクが停止されておるわけでございますから、そこの範囲に及ばざるものについてはいろいろとくふうもありますので、中小企業関係の外貨の預託あるいはそれの取引が支障を受けることは当然ですが、できるだけその支障の程度を緩和するような措置は、現に講じておるつもりでございます。
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○
広沢委員 もう一点だけ。昨日シュルツ米財務長官がソ連に参りまして、そしてソ連のIMF加盟問題が一応取り上げられております。したがって、いま国際通貨改革が最大の問題になっているときでありますが、こういうことに対して大きな影響が出てくるのではないか。それで、大国のソ連のIMFの加盟は、現在の通貨体制にどういうような影響があるか。これはいまに始まった問題じゃなくて、すでに共産圏においてもルーマニアが入っておりますし、そういう見地から、これは簡単にお考えだけ伺っておきたい。簡単にお願いします。
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○愛知国務大臣 シュルツ財務長官は、米国政府の中で米ソ関係の仕事をかたわら担当しておるようでございまして、そういう仕事の関係から、モスクワに十一日ですか行くことになったというふうに承知いたしております。これがソ連のIMF加盟に関係があるのかないのか、情報はございません。
それから、IMFにソ連が加盟することについてどう思うかというお尋ねに対しては、IMFはIMFとしてのレギュレーションがあるわけでございます。そういうことに入る権利と入る義務と両方あるわけでございますから、たとえばIMFの規則によっていろいろな条件が課されておるわけで、その中には、たとえていえば、国内の経済事情などを一定のフォームでもってかなり詳細に報告をするとかといったようなことも含まれているわけでございます。そういったような関連で、ソ連自身としてどういうふうな態度をとられるのか、私もまだそこは情報を持っておりません。しかし、国際通貨の安定ということからいえば、有力な国が、そういった国際協力という立場を踏まえて積極的な態度に出てくることは、これは大いに歓迎してしかるべきことではないか、私はこう思っております。
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○
広沢委員 それでは次の問題として、スミソニアン体制以後においてわが国がとってきた対外経済政策の問題について逐一伺っておきたいと思います。
特に、黒字という問題がいろいろ国際間でも注目の的になってきておるわけでありますので、その点お伺いしておきたいのですが、わが国は、これは
佐藤内閣の時代からですけれども、そういうような通貨不安の中で経済の均衡を強く要請されてきた。そこで、まず第一次の円対策にしても第二次にしても、また第三次を打ち出した。しかしながら、やはりこれについてもそれだけの期待される効果というものがあがっていない。そもそもこういう問題をあわてて打ち出してくること自体がおそきに失したんじゃないか。ですから、この間もお話がありましたように、効果が出ずじまいのときにこういう問題が出てきたのだというような言い分もされておったようでありますけれども、やはりこういった問題も具体的に対策を立てない限りにおいては、円の切り上げの問題について今後どうなるかということについても、アメリカに対して態度を強く要請することも無理でありましょうし、また、そういう国際会議へ行った場合には、スミソニアン会議のときのように、やはり黒字国の責任であるということで、被告席に立たされてくるというようなことがあるんではないか。いわゆる外圧というものを是正することができない。ですからこの際思い切った、そういうふうな後手後手の対策ではなくて、産業構造、経済体制というものを思い切って変えていくということが必要じゃないんだろうかと思うわけですが、簡単に、時間もありませんので総理からお伺いしておきたい。
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○
田中内閣総理大臣 愛知大蔵大臣がUNCTADの会議に出まして、日本の開発途上国援助に対しては基本的な発言をしたわけであります。これはアメリカも、イギリスも、西ドイツもびっくりするような発言でございました。これは、あの当時〇・二三%であった政府間ベースの援助を、七〇年度末を目途として〇・七に引き上げたい、こういうことでありますから、非常に勇敢な、また日本の基本的な姿勢を明らかにしたわけでありまして、これを評価されたわけでございます。しかも、これを評価されただけでなく、日本もこれに対しては努力を続けていかなければならぬわけでありますが、去年は逆に少し下がったということもございますが、今度の予算その他でもって、四十八年度になりますと〇・三%をこすということであります。
そういう意味で、基本的には、いままで民間ベースの援助を中心にしておったものが、政府ベースのひもつきでない援助の拡大ということに踏み切ったわけでありまして、少しおそきに過ぎたんじゃないかということもございますが、しかし、ベトナムの復興問題もありますし、こういうことを契機にして、積極的な理解が得られるような体制を進めてまいりたい、こう考えます。
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○
広沢委員 対外経済政策のこういうような国内の体制というものを考えていかなければならないということで五項目、第三次円対策として出ております。しかしながら、この中に短期的なものとある程度長期的にわたらなければならないものが含まれておるわけであります。しかし、今日こういうような背景のもとに早急に対策を立てていかなければ一絶えずこういう国際会議の中において通貨調整をやる場合には、日本が被害というか、あるいは被告に立たされたようなそういうやり方をやってくる。今回の場合においても、いろいろうわさされているところによれば、もう二〇%以上の切り上げになるんじゃないかということさえも懸念される。その背景には、やはり黒字基調が相当強く続いているんじゃないかということが問題になっているわけでありますが、やはり短期的には輸出の適正な抑制というか、適度な抑制というものをやっていく仕組みというものをここに考えていかなきゃならないんじゃないか。そうでなければ、やはり今回の通貨調整においても、基本的な問題が解決しない以上は、安定的な立場に立つためには、まだまだ相当長い期間かかると私は思うわけですね。そのたびごとにこういう問題で日本が責められる、外圧を受けるというようなことはまずいんじゃないかと思います。
そこで通産大臣に伺いたいのですが、いま輸入の拡大だあるいは輸出の適正化だということがうたわれておりますけれども、いま申し上げたとおり、短期的な見方として輸出の適度な抑制というものをこの際考えるべきじゃないだろうか。いままでは、こういうふうに第一次、第二次、第三次も同じようにうたわれてきているわけです。しかしながら、それは具体的な功を奏さない、効果をあらわさない。実際にここに出されているだけで、十分なる効果をあげ得るということではないと思うのですね。今度円の再切り上げがあって、それの被害がどうなるだろうかということが心配されているわけであって、みずから輸出と輸入のバランスをとっていくためには、これだけの施策では十二分にとられていないということが、何回も対策を変えたということでも明らかであろうと思います。そういう意味において、今度輸出の面から考えてみれば、もう少し抑制する必要があるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
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○中曽根国務大臣 いままでの経験にかんがみまして、輸出については計画的な調整と申しますか、適度の抑制ということは確かに必要である。情勢の推移を見詰めつつ、政策を考えていきたいと思います。
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○
広沢委員 この輸出、輸入が均衡するという、これは当然のことなんですね。前回緊急質問を申し上げたときにも、通産大臣は、それは輸出の規制というよりも、抑制といいますか、そういうことよりも、輸入を拡大しなきゃならぬ、こういうふうにおっしゃっておられた。それはそのとおりですよ。そのとおりですが、いま申し上げたとおり、具体的には輸入の拡大、拡大というけれども、どれだけの実績があがっていくか、そこにも私は大きな問題があるんじゃないかと思います。確かにこれは一月から今日までは輸入量が非常に増加している。これは時期的な問題も手伝っているんじゃないかと思いますがね。そういうことから考えていきますと、輸入の拡大を具体的にどういうふうな対策を立ててやっていくのか、いかがでしょうか。
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○中曽根国務大臣 通貨調整によりまして、輸入が非常に利益を生むという情勢がいま醸成されつつあります。そういう面からも、輸入はおそらくだいぶふえていくだろうと思います。しかし、さらに輸入をふやすという意味において、関税政策であるとか、あるいは輸入金融に対する特別措置であるとか、あるいは積極的に輸入物件を日本が外国にさがして回る、そういうようなあらゆる方策を考えていきたいと思います。
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○
広沢委員 それは、具体的にはそういう金融処置やいろんなことはありますけれども、アメリカから日本に対して強い要求があるということは、やはり輸入の自由化ということを迫っておりますが、しかし現実にそれができるかどうか。
これは農林大臣に伺いたいのですが、農産物の自由化ですね。各歴代農林大臣は、もう今日では輸入の自由化はできないんだ。私もそうだと思います。国内の第一次産業の近代化、そしてまた基盤の体制ができない以上は、どこの国と比べてみましても、それぞれその国内事情の体制で、農産物に対しては非自由化品目として相当あるわけでありますから、私もそうだと思いますけれども、ただ輸入の拡大、拡大と言いながら、実際はこれはできないわけでしょう。いかがでしょうか。
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○櫻内国務大臣 農産物に関する輸入の拡大は、これは主として対米関係で申し上げてみますと、昨年の四月から十二月までの間で、前年度に比較して五〇%もよけいに輸入をしております。先ほど
広沢委員が大蔵大臣に、いろいろピーターソンのことの御質問がありましたが、その点では昨日私は、農林物資の輸入については非常に感謝するということを言われたようなわけでございます。
お話の残存輸入制限品のことにつきましては、これは総理のお話もあって現に検討はしておりまするが、何らの対策なく自由化をできるわけでもなし、また私の見通しとしては、農産物の自由化はきわめて困難である。しかし、全体的の農産物の輸入がすべてふやせないのかというならば、ただいま申し上げました対米関係だけを見ましても相当な量を日本側が買っておる、こういう事実を申し上げておきたいと思います。
-
○
広沢委員 もちろんそれは自由化した品目もありますから、それをふやすということはあるわけですが、しかしながら、現在非自由化の品目というのは、いまお話があったとおりこれはもうぎりぎりのところで無理であろう。
こういうふうに一つ一つ考えていきましても、たとえばこれは通産大臣、五十一年から電算機は自由化するのだということで対策を進めているということが、これもまた新聞に載っておりますけれども、それじゃその他の非自由化品目については、すぐにできるわけはないでしょう。これはいかがですか。
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○中曽根国務大臣 いまの電算機の問題については、まだ時期はきめたわけではございません。
いま、御質問の趣旨がよくわからなかったのでありますが、どういう意味でございますか。
-
○
広沢委員 いまの電算機をいろいろ検討しているけれども、その他の品目、工業品ですね、これをどう考えているか。
-
○中曽根国務大臣 一般品目、工業品目の自由化の問題は、大体自由化ができておりまして、七品目が工業製品で残っているだけです。しかし、電算機及びICがその中の巨砲をなすものであって、これももはやいままでのような聖域には置かないで、これを自由化するという方針のもとにいま具体策を研究しているところでございます。これは輸入の自由化と資本の自由化と両方含んでおります。そのほかのものについては、皮革とかそのほかは、日本の社会条件等もありまして、なかなかむずかしいところがございます。
もう一つの問題は、流通、小売りの自由化の問題がございます。この問題は、日本の中小企業の保護の問題ともからんで、今国会に百貨店法の改正をお願いしたいと思っておりますけれども、これらの問題ともからんで、いま慎重に考慮しているところでございます。
-
○
広沢委員 その他ここに資本の自由化ということがあがっておりますけれども、これを積極的に行なう、これは大蔵大臣もおっしゃっておられるわけですけれども、積極的に自由化を行なうとはいっても、やはりいろいろ限度があると思うのです。自由化ということは、確かにこれから進める、自由にしていかなければならぬということでしょうけれども、これだってやはりいろいろな問題があると思うのです。これを完全にフリーにしてしまうというわけにはいかぬはずです。諸外国からも、いろいろな資本の自由化の問題についても、非常に制限やあるいはきつい規定があるということがいわれておりますが、この点についてもいかがですか。
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○愛知国務大臣 資本の自由化につきましては、しばしば申し上げておりますように、外資審議会でただいま非常に御熱心に答申案を練っていただいておりますが、もう近くその答申がまとまると思いますが、まとまりましたならば、その線で実行いたしたいと考えております。
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○
広沢委員 ちょっと私が具体的に聞いていることに答えられない。外審のほうにということですけれども、それじゃ具体的に現在行なっている、行政ベースでチェックしていますね、これはどういう状況になっていますか。
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○愛知国務大臣 御案内のように既設のもの、新設のもの、それから比率、例外、いろいろございますから、簡単に申し上げられませんけれども、要するに外資審議会に御検討願っておりますのは、OECDの一つのモデルプランがあるわけでございますから、それを中心に一つの案をつくっていただくということがいま中心になっております。そういたしますと、こまかい点について、外資審議会は各方面の方々が参加しておられますから、いろいろの御意見があり、そして実際的に日本の実情を踏まえて、かつ、できるだけOECDのラインに近いものということで検討されておりますから、先ほど申し上げましたように、いま日切りを約束するわけにはまいりませんけれども、まあ四月になりましたならば案がまとまるかと考えております。
-
○
広沢委員 これはあいまいにお答えなさっていらっしゃいますけれども、やはり輸入を拡大するといっても限度があるわけですよ。いま申し上げておりましたように、農業に関してはどうしても自由化できないものもありますし、あるいは工業品についても、今後検討しなければならないものもある。あるいは資本の自由化といったって、野放しにやって外国資本に乗っ取られるというようなことは避けなければいけませんし、当然OECDの中においてもきめられていることですが、それぞれ制限があるわけですね。しかしながら、単にここに書いてあるように輸入の自由化をしていくのだといっても、現実の問題としては、それだけ輸入が増大していくかというとそうではない。やはり輸出基調でそれだけの黒字が累積されていくということになれば、何らかここに、どんどんかせいでいく企業に対して、輸出の抑制か、あるいはドル、黒字を減らすということについては、ある程度考えていかなければいけないのじゃないか。いままでの対策が功を奏しておるのであれば、いま言うように、黒字だ、何とかしなければならぬとかいうことでいろいろ苦慮することはないのじゃないか。ここにもう一つ、その基本的な考え方を直していくべきじゃないかと思うのですが、いかがですか、総理大臣。
〔
委員長退席、田澤
委員長代理着席〕
-
○
田中内閣総理大臣 ここで一つ申し上げたいのは、変動相場制に移ったということ自体はたいへん深刻な問題でございますが、私は、ある時期は輸出は減らないのじゃないか、そういう非常な不安があるわけであります。そこらが、外国との話し合いのときに、私はなるべく率直に言っておるつもりでございますが、こういう平価調整というような問題からあれすれば、長期的に見たらバランスはとれるのだ、しかし一時的な現象としては、これは減らないよりもかえって輸出がふえるというようなこともあり得ることである、そういうことはひとつよく理解をしておいてもらいたい。それを矢つぎばやにいろんなことを求められるということでは、なかなか事態の解決もできないし、お互いが理解し合えないので、そういうことはあらかじめ申し上げておきますというような一つの問題があるわけです。だからそこをつかれて、あなたも、輸出の抑制ということをはからなければならないのじゃないかということで、常識的には、変動制に移行すれば貿易管理令は廃止だというような通俗な話も、このごろ立ち消えになって、政府も貿管令は依然としてこれを維持していくのだということを述べているわけでありますから、無制限な輸出ということは、やはり短い時間であっても、それは半年や一年の時間であっても、いまでもきびしい批判があるわけでございますから、そういうことに対しては調整権を発動していかなければならないだろうということは、もうそのとおりだと思っております。
ただ、輸入の自由化というものに対しては、いま御指摘になったように、内容的に見ますと非常にむずかしいものがあります。ありますが、年度を限って何年から自由化をいたしますというような電算機のようなものもあります。そして五〇%原則であるものを一〇〇%原則にして、五〇%が原則であって一〇〇%は例外であるということよりも、一〇〇%が原則であるが、しかし例外はあるということもあり得るわけであります。これは、現実を無視してはやれませんから、お互いの理解を深めていかなければならぬ。そういう意味で、五〇%というのがいかにも障壁を設けているようでありますので、一〇〇%自由化ということを前提にしなければならないということは、もう不可避のような感じでございます。
しかし、外資審議会でいろいろ個別に検討いたしておりますから、これはさだかな結論を申し上げるわけにはまいりませんが、いずれにしても資本の自由化は一〇〇%が原則である、いま世界じゅうで日本が一番攻撃を受けているわけですから、そういう状態から考えても、やはりそういう方向にあるということは、率直に申し上げておかざるを得ないと思います。それから輸入の自由化、物の自由化に対しましては、これは工業製品ではもう幾つもありません。しかし農産物に対しましては、これは国内体制というものができるということ、それはいろんな政策があるわけでありますから、先ほどもちょっと述べましたが、国内体制がちゃんとできて、そして生産農民も理解が示せるというような状態をつくることが望ましいわけであります。これはどうしてもできないと言うわけにもまいりません。それでまた、非自由化品目が異常に国内で高騰しておるというような面もありますし、備蓄のためにも、いろいろな調整手段はあると思うのです。そういう意味で、あらゆる知恵をしぼって、国内が絶対反対である、これはもう全面的につぶれるのだというようなものを、政治の上で行なえるわけはないんでして、そこらは実情に即した対策ができて理解が得られ、国益を守るためにはというほどの自由化というのはやはりやるべきで、もう自由化はできないんだということを、ここで宣言をするわけにはまいりません。これは自由化は積極的に、困難があっても進めてまいりますということでございます。
-
○
広沢委員 ともかくアメリカからは、特に自由化というものを絶えず迫ってこられるわけですね。ですからやはりできるものはできる、できないものはできないということをこの際はっきりしなければ、努力してみるとか、そういうあいまいなことであれば、そのたびごとにこれは問題になってくるわけですね。そうすると、そのたびごとに、これに関連のある方々は不安になる。それでは、基本的に輸入の拡大をはかっていこう、あるいはどうこうしていこうといっても、やはりできるものとできないものとをはっきりしておかなければ計画も立たないのじゃないか、こう思うわけです。
そこで、私はやはり輸出を単なる適度に抑制ということばだけでは、具体的にわからないのじゃないか。ただ、いま企業がどんどん輸出をしてドルをかせいだ、それが国内では円にかわって過剰流動性の問題になってきた、こういうことで、あとから商品投機のことをいろいろお伺いしますけれども、そういう問題になってきているわけですね。ですから、そうではなくて、やはり企業あるいは輸出産業が幾らかの得た利益というものを、これを何割か押えるというよりも、かわりのものを輸入するということを義務づけるようにしてはどうなんだろうか。これは実際に企業ではやっております。本田技研が自動車を輸出して自転車を輸入しているというようなこともやっておりますけれども、そういうようなことを、企業みずからがかせいできた、あとの輸入の拡大だとかいろいろな処置は別の問題だ、かせぐほうだけはかせいだ、そしてその使い道がなくなれば、いま言うように投機のほうへ向いていくというような弊害を生ずるようでは、ここにも問題があるんじゃないかと思うのですよ。時間がありませんので、簡単にひとつお答えいただきたい。
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○
田中内閣総理大臣 輸出の量に対して輸入を割り当てるというわけにはまいりませんが、商社にはもう依頼してあります。商社もこのぐらい評判が悪いんだからね。実態はどうかわかりませんが、評判が悪いことは事実である。だから、少し値上がりをしているような、投機商品といわれるようなものを入れてやったらどうかというようなことを、私自身からも要請をしております。ですから、これはそういうことをやはり商社もやってもらう。
そしてもう一つは、円平価が上がっておるわけですし、向こうは下がっているわけですから、そこらが商売人のほんとうの腕の見せどころだと思うのです。あとはやはり輸入金融の金利を考えてやるとか、政府もただ懲罰的、処罰的なことばかり考えないで、いま国内において物価問題がたいへんになっておるんだし、そういう問題に対してもひとつ要請をしてまいるというような、これは行政指導で十分できると思いますので、行政指導や他のいろいろな施策をあわせてやれば、これは効果あるものだと思います。割り当てをするということまではどうなのか。通産大臣が割り当てをいたしますということであれば、私も賛成いたします。
-
○中曽根国務大臣 割り当てという問題はなかなか慎重を要する問題で、やはりある程度自由活動を行なわせるということがいいと思うのです。割り当てなんかをやりますと、またそれが利権の種になったりして、また新たなる問題を発生させるという危険性があります。
-
○
広沢委員 それはやり方だと思うのですがね。やはりそれくらいのことをやっていかなければ、単に輸出でどんどんかせいでくるほうはかせいでくる。あるいはいま言うように輸入の拡大といっても、それぞれの部門でできないこともありますし、一口に国内需要を喚起するといったって、そう簡単にできるわけはありません。ですから何かそこに、当面そういう問題を起こしているところに対する手を打たなければならないんじゃないか、こう思うわけです。
次には、いま短期的には輸出を適度に抑制してはどうかということをお話申し上げてきたのですが、長期的には、五項目の一つにありますとおり、やはり福祉へ転換させるということ、これは再三言ってきたわけです。われわれもいまに始まったことではない。いままで再三、経済構造を変えて福祉第一主義でやっていかなければならないということを主張してきたわけです。政府自身も、
田中総理の「日本列島改造論」の中にも、「成長が福祉を約束する」こういうふうにおっしゃっている。簡単にいえば、それだけの利益が上がってくれば、ほかのことは何でもできますよということをあなたはおっしゃっているんだろうと思うのです。それならば、今日なぜ、これだけの大きな企業に育ち、それだけのドルをかせいでくる、こういったものを吸い上げていく形をとらないか。福祉への条件というのは、大企業産業からその利益を吸い上げて、そっちへ回すということから始まるんじゃないかと思うのですよ。
ところが、そちらのほうはそのままにしておいて、そしてその問題は、いまさっき言った過剰流動性を生むような原因、あるいは投機に回るようなことをやっておきながら、福祉を充実しなければならぬということで、インフレの問題と兼ね合わせていろいろな問題を起こしながら財政規模を拡大する。先ほどもお話があったように、国債を大型に発行しで、これは福祉のためだからいたし方がないのだ、こういうやり方をやっていくから、トリレンマだというけれども、トリレンマは皆さんのほうでつくってしまっているのではないか、私にはこう思われるわけです。
したがって、やはりこの際法人税の基本税率を上げる、これは当然のことだろうと思います。あるいはまた社会保障もなかなか財源がなくていまできないのだ、こういうふうなことを言っております。それから減税についても同じことですし、あるいは週休二日制の問題やらあるいは労働者の賃金のアップの問題にしましても、これだってなかなかそうはいかない、こう言います。いま検討中でございます、あるいはその方向ではというようなことをおっしゃっているけれども、やるべきところにちゃんとやらないで、そういうようなことをやっていてはいつまでたっても長引くだけです。できないはずでしょう。やはり基本的に構造を改善する、福祉への転換をするということになれば、いままで重点的にやってきた、そういう輸出産業に力を入れあるいは企業を育成したのですから、それはあなたが約束されたとおり、それから法人税の形、いろいろな形で吸い上げたものをそちらへ回すということにすれば、いろいろなトリレンマ的な、財政が拡大してインフレになるんじゃないか、あるいは国際黒字がふえ過ぎて困るのではないかというような心配はなくなっていく、こう思うのです。これも時間がありませんので、ひとつ簡単に基本的な考え方をお答えいただきたい。
-
○
田中内閣総理大臣 成長活用型へ移そうということでいっておりまして、四十八年度の予算はそれを意味しているわけでございます。ただ、それでは少ないからもっとやりなさいというところでございますが、それはやはり国際的な情勢、日本の実態というものをずっと見ながら、そして私は、ことしよりも来年、来年よりも再来年、こういうことで着実に勇気を持ってやるべきだと思うのです。
今度の予算の中で、私は少なくともずっと長いこと予算にも関係してまいりましたが、社会保障に対する熱意というものは、国民は高く評価していただいていると思うのです。よくやりましたということは、私もちゃんとそういう激励もいただております。いままで、私たち自民党の代議士はあまり見たくないというような人たちでも、今度はほんとうにやはりやってくださった……(発言する者あり)ほんとうです。そういう姿勢なんです。ですからそういう意味で、私は少なくとも流れが変わっているということに対して、国民は理解もしておるし希望も持っておると思うのです。今度はこういう問題が矢つぎばやにまいりましたけれども、国際収支と社会保障というものはこれは一つのラインに乗ります。これは一つのラインに乗るのです。物価問題がある一だからそこで愛知大蔵大臣が物価問題について言いまして、きょうの夕刊に発表されると思いますが、一月の経済見通しを見ましても、やはり物価問題というものが一つの焦点になっておるということを考えますと、急速な方向転換ということもむずかしいわけでございますが、政府が基本路線に乗って、いわゆる成長活用型、福祉優先へと、こういう政策に向かっておるのだ、走り出しておるのだ、そういう事実をひとつ認識していただきまして、この予算はこれでとにかく早く通してやる、しかしその次はこれから考えなさい。私たちも、だから四十九年度には、やはり法人税の問題に対しても手をつけざるを得ないだろう、こういうことを皆さんにも申し上げておるわけであります。それは、公害の問題もあるしいろいろな問題がありますから、だから法人税は引き上げた、それよりももっと公害対策に対して税制上の優遇をしなきゃならぬというようなことはできないわけでありますから、そういうような問題も十分加味をしながら四十八年度予算をスタートさしたわけでありますので、その間の事情はひとつ御理解を賜わりたい。
-
○
広沢委員 この問題で、突っ込んだ議論はまだたくさんあるわけですけれども、とにかく
田中総理、あなたが常日ごろから言っている、「成長が福祉を約束する」というのですから、いまこういうふうなことについて、大きな企業あるいは商社がそれだけの余剰資金で、いわゆる国民のひんしゅくを買うようなことをやっているというような時期でありますから、それならば取れるところから取って、あるいはとれるべき問題はちゃんとそういうような処置をして、それを、福祉を約束するとあなたがおっしゃった具体的な構想というものを国民に示すべきだと思うのです。徐々にやっていますとか、そういうふうなことは言っています。それは絶えず福祉については力を入れるということは口では言っておるのですけれども、現実の問題としては、まるでカタツムリが歩んでいるみたいな感じしかない。目標がどこにどういうふうに設定されているかということも具体的に示されていない。その点はあなたがおっしゃったとおりですから、その構想をわかりやすく示されることを強く要望しておきます。
時間がありませんので、次は商品の投機の問題であります。いま商品投機につきましては法案をつくろう、こういうようなことで考えておるようでありますが、しかしながら、そういう体制をいまつくればどういう効果があるかということを、法案をつくってやる以上は一応想定してお考えになっていると思うのですが、基本的に、いままで野放しになっておったものを法律をつくって、そしてこれを規制していこうというからには、いまのこの状態をどこまで鎮静化してどうなるかということを想定して法律をつくるべきです。何かやっているから法律をつくらなければいかぬというものではないと思うのです。そこで、その見通しはどういうふうな考え方に立っておられるか、簡単にお答えいただきたい。
-
○小坂国務大臣 これは基本的には、行政指導を強化していくというのが本筋であると考えておりますが、行政指導を強化する反面、これを補完するものとして法律を用意いたしたわけでございます。どういう見通しかということでございますが、私どもは、これはひとつ実績をりっぱにあげて皆さまに御安心をいただきたい、そういう実績をあげたい、あげられる、かように思っておるわけでございます。
-
○田澤
委員長代理
近江巳記夫君から関連質疑の申し出があります。
広沢君の持ち時間の範囲内でこれを許します。近江君。
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○近江
委員 ただいま
広沢議員から商品投機の問題について質問したわけですが、最近の商品の投機というものは、土地あるいは証券からあらゆる生活物資に至るまでそういう傾向が出てきておるわけであります。国民生活の上からいきましていまたいへんな問題になってきておるわけであります。こういう問題につきまして、総理はどういうように認識をなさっているか、お伺いしたいと思います。
-
○
田中内閣総理大臣 これは、過剰流動性という一つのことばで片づけられておりますが、私はしかく簡単なものではないと思っております。それは確かに四十六年から四十七年にわたって、大きく外貨が蓄積をされたということで企業の手元資金が非常に潤沢になったので、そういう意味でいろいろな措置はとっておりますが、まだ一部企業の手元資金というものは、買った土地や買った品物を換金して営業資金をつくらなければならないというところまでは引き締まっておらないのではないか、こう思います。ですからそういう面に対しては、これから実態を捕捉しながら適切な金融政策を進めてまいるということが一つであります。
もう一つは、やはり商売上のモラルの問題だと思うのですが、これは外国において、日本人がすべてエコノミックアニマルだといわれているわけではないのです。やはり積極的にやり過ぎる。ここでもってひとつ中小から伸びようというような人たちの努力のし過ぎというようなものがあります。もう一つは、市場が小さいために動いている金の量というものは非常に大きいので、かつてのときよりも市場に対して影響を与えることは比較的に楽だ、やはりそういう体質があるのだと思います。だからいまも、きょう生糸の値段が非常に上がったというので、持ち回り閣議でもって一五%の関税を七・五%引き下げるということをいたしました。やはり証拠金を上げてもなかなか問題は片づかないということで、市場の構造や制度そのものにもいろいろメスを入れなければならぬわけであります。
〔田澤
委員長代理退席、
委員長着席〕
いずれにしても、まあ政府が法律さえつくろうということになっておりますし、国会ではそんななまぬるい法律ではだめだからという議論が、こうして毎日行なわれるわけでありますから、私はやはりこの法律が成立をして、政府の行政指導にあわせて本法の執行に待つということであれば相当な効果はあげられるし、それから商売をしておる人たち、経済人に自覚を促すということに対しては、政府もこれからひとつ善意と誠意とをもってひとつ説得をしてまいろう。望ましい自由企業。こんなことを続けておるとがんじからめになりますよということは事実でございますから、そういうような立場でひとつ十分理解を求めてまいりたい、こう思います。
-
○近江
委員 最近は、羊毛から毛糸あるいは綿糸、生糸、さらに食品のマグロの買い占めまで行なわれておると、そういうニュースが出ておりますが、マグロなどは一隻一億円ぐらいで買い占めてやっておる。あるいは北海道においてはタラコ、タラですね、これの買い占めをやっておる、こういうふうにもいわれております。あるいは大豆の暴騰によってとうふが値上がりした、こういうことで非常に主婦を苦しめたわけであります。また米等にも、そういう投機の手が伸びておるということもいわれております。あるいは木材の値上がり、これはもう異常なものであります。またきょうも朝刊に出ておりますが、ああいう苗木に至るまで買い占められておる。先ほども私のところに電話がありまして、セメントが非常に上がっておる。いままで三百円くらいのやつがいま六百円以上しておる。しかも左官屋さんとかそういう小口の人が一袋、二袋買うわけですが、一袋しか売ってくれないと言うのですね。小さな建材屋はもうみな締めておると言うのですよ。セメントの全流通の中で、大体二割が袋物であるということを聞いておりますが、やはり数だって少ないわけでしょう。ですから、それだって買い占めをやろうと思えばできないわけはないと思うのですね。しかし、そういうようなことも現実に起きてきております。あるいはこの問聞いた話は、この秋にむすめを嫁にやらなければならない。そうすると秋に花嫁衣装を買うとたいへんな値上がりになるらしい。だからもういま買わなければいけませんかとか、そういうように国民がみんな心配してきている。そういう状態に持ってきたというのは、これはやはり責任は大きいと私は思うのですね。ですから、総理は先ほど対策といいますか、根本的なその辺のことについてお話があったわけですけれども、こういう事態について国民がみな心配しているわけですから、やはり国民の気持ちの上に立って総理としてはやってもらわなければ困ると思うのです。このことをほんとうに異常事態として総理は受け取っていただいておりますか。
-
○
田中内閣総理大臣 昨年よりも物がたくさん輸入されておりながら、在庫がありながら、しかも売り出されておらないで市場が高騰しておるというようなこと、これはもう望ましい状態でないことは言うまでもないことであります。ですから、このような法律をつくらなければならないという状態になっておるわけでございますから、私は先ほども端的に申し上げましたが、一部の人たちがそういう商行為を続けるならば、ほんとうに自由な経済活動というものはがんじがらめになりますよ。日本の生産はそんなに低いんじゃないのです。外国が困るくらいに輸出ができておるのです。その輸出を内需に振り向けなければならないといってこれだけ努力をしておるのでございますから、それを買い占め、買いだめをするということになれば、これは解決の道というものは、やはりいま法律をつくるようになったり、政府が介入したり、もっと制度ががんじがらめになったり、輸入の自由化を行なったりということになるわけです。とにかくあれだけペーパー売買でもってどうにもならなかったカズノコが、自由化をしたら一ぺんに三分の一に下がったじゃありませんか。やはりそういう事実もこれはもうやむを得ないことなんです。
ですから、そういう問題に対しては、一つずつの問題に対して政府も非常な決意を持って臨んでおるわけでありまして、セメントに対してももうすでに二週間、三週間前から十分手配をして稼働率も上げておりますし、いま中国地方においてだけセメントの供給が少し詰まっておるというようなことがありますが、しかし、そういう問題に対しても業者にもフル稼働するようにということにいっておりますし、しかも、鉄も九千万トンまで下がったものを一億五百万トンまで生産を上げておるわけであります。そして、いまの鉄などはある意味においては非常に安かったわけでありまして、もう十五年前、二十年前の価格に近いところまで落ちて、それが高くなって、そして少し上がり過ぎて、いまトン当たり丸棒でもって三万七、八千円ですか。これを三万五千円以下に下げるためにはもっと増産してくれというくらいにやっておりますし、それがもしできないようなら別な工場の新設も認めざるを得ないんだ、このくらいにこまかくやっておるわけでありますので、私は目的は達成できるだろう、またしなければいかぬ、こういう考えです。
-
○中曽根国務大臣 ただいま御質問のセメントにつきましては、本日、
公正取引委員会はセメントの価格協定並びに販路協定の疑いでセメント協会及び日本セメント、小
野田セメント等十三社の本社を含む二十四カ所の立ち入り調査を実施いたしました。最近非常にセメントの需給がタイトになっておりますが、通産省といたしましてはこれを最重点項目の一つに入れまして、会社の社長を呼んでフル操業の指示、あるいは外需の内需への転換、あるいは災害等公共需要最優先、こういうようなことのためにいま全力を尽くしてやっております。けさ御説明申し上げました需給協議会もいよい発足いたしまして、通産省自体が乗り出して需給の円滑化をはかる予定でございますので、順次これは解決していくと思います。
-
○近江
委員 こういう商品を個別に見ていきますと、非常にいろいろな問題が出てくるわけです。たとえばここで羊毛や毛糸を例にとってみますと、総理も御承知だと思いますが、たとえば毛糸の場合、四十六年の十月に八百三十円であったのが、今年の三月におきましては三千円にきているわけですね。実に三・六倍の値上がりなんです。羊毛にしましても四十六年の十月にはキロ当たり百三十セント、ことしの一月には五百セント、三・八倍、こういう異常な暴騰を示しておるわけです。したがって、そういうことがどういう影響として出てくるか。こういう羊毛、毛糸等の値上がりというものは、たとえば毛織物業界の経営等を見ましても、特に一ノ宮周辺が非常に集中しておるわけですが、もう倒産寸前である。ほんとうにそういう状態にいま追い込まれてきておるわけです。このままでは黙っておれない、総決起するのだ、こういう声が充満しておるわけです。またさらに、こういうことが今度は消費者にどういう形で出てくるか。一般にいわれておることは、ことしの秋には洋服は五割以上上がるのだ、したがっていま買っておかなければだめだというような、先ほどの花嫁衣装と同じようにムードが一つあるわけですよ。そういうように影響というものは非常にたくさん大きな問題があるわけです。
この原因ですけれども、根本的な原因は過剰流動性の問題。また過剰流動性もどこから起きてきたか。時間があればどんどん入っていかなければならぬ問題でありますけれども、そういう過剰流動性をどこが使って投機をするか。いま一般にいわれておることは商社でしょう。たとえば羊毛等の値上げにつきましても、オーストラリア等においては日本の商社が全部吸い上げてきておる。オーストラリアの人はもうこれからは合繊を着なければならぬ、こんなことを言っておるのですよ。これは非常に極端な話だと私は思いますけれども、こういうような実態になってきておるわけです。ですからこういうことを見ますと、ほんとうに異常な事態だということがいえると思うのですね。それで、それじゃ商品がないのかといいますと、大手商社やそういうところの倉庫にはストックが相当あるわけですね。それをやはり現地の人は見ているわけですよ。ですから、あるものを出さない、そうして値が上がっていく、こういう状態が起きれば、江戸時代における米騒動、大正期における米騒動、これと同じような状態になるぞ、こういうようなことにいまなってきておるのです。これは一例を私はあげたわけですけれども、羊毛等につきまして、きょうは通産大臣も来られておりますし、こういう暴騰してきた原因というのは、一つの具体例として一体どういうところにあるのですか。
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○中曽根国務大臣 いろいろ原因はございますが、一つはやはり原産地のオーストラリアにおける減産、これは気候その他の条件から来ている問題。それからもう一つは、例のドルの切り下げの問題、そういう外的要因もございます。また、内的には一部の商社が取引所等を通じて投機をやったんではないかという疑いもございます。それから最近は天然繊維に対する嗜好が非常に高まってまいりまして、生糸にしても、羊毛にしても、天然繊維を国民が非常に手に入れたいという、そういう需要側からの変化もございます。そういういろいろな情勢がここに複合いたしまして、それが一部の投機筋に利用された、そういうこともあると思います。
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○近江
委員 そうした商社の投機等も一部にあるという、私はまだ非常に認識が甘いように思うのです。やはり、先ほど申し上げたように、倉庫にはそのようにストックがあるし、オーストラリア等においてはそういうように商社の買いあさりということは、これはもうみんな知っているわけですよ。ですから、こういうことについて、どうしていくかという問題ですけれども、今回、政府はこの立法措置を閣議で決定されたわけですが、われわれこの中身におきましても、まだまだ体系だって弱いし、あるいは命令権だって出ておりませんし、中身につきましても、もっとシビアにしなければいけないと思うのです。しかし、この法律がいまから衆議院で論議して、それからまた参議院へ回る、そういう事態の中で、刻々と投機が進んでいるわけですよ。法律ができるのを待てばいいか、そんなのんきなことでいいのですか。いまのこういう事態の推移についてどう思われますか。
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○中曽根国務大臣 法律を待つまでもなく、通産省は設置法に基づく一般権限によりまして、先般は商社の社長に集まってもらって協力を求めて、実態調査に協力するという言質を得て、それでこの間六大商社を呼び出しまして調査表を交付して、そしてその調査表に基づく報告をいま徴して、来週からは実際立ち入って実情を聴取する、そういう行動に移るはずです。
それからもう一つは、けさ御説明申し上げましたが、セメントそのほかの逼迫している物資について、本省の各原局の
局長、これが中央で需給協議会を品目別につくって、生産者、需要者両方集めて、そしてどこにネックがあるかいろいろ確かめます。それによって、一つ一つネックを解決していくようにやりたい。また地方においては、通産
局長が同じようにそういう特定商品について両方集めて、同じように流通を円滑化する、そういうことを開始いたします。それで、法律を待つまでもなく、われわれの権限でやり得る範囲の最大のことはやっていくつもりであります。
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○近江
委員 いま大臣は行政でやっていくとおっしゃったわけですが、今回、この新規立法ができるわけです。いままでも物統令の適用につきましてもいろいろ論議があったわけですが、この法律だって現実には生きているわけですね。あるいはまた、
公正取引委員会は独禁法に基づいてやっているわけですが、先ほどはセメントのそれについて調査を進めた、これは前向きに評価できると思いますけれども、しかし、そういう現行法の適用については、たとえば商品取引所等については生糸なんかは停止になったわけです。しかし、こういう問題につきましてももっと早く手が打てたと思うのですね。そういうように、現行法の適用につきまして非常に政府は手ぬるいと思うのですね。私は、国民の立場に立つならば、遠慮をすることはよくないと思うのですよ。それは、いろいろな情勢のそういう読みということは、それはあろうかと思いますけれども、総体に、そういう規制法につきましても、それをもって取り締まっていく、こういう姿勢が弱いと思うのです。総理はそう思われませんか。万全であったと思いますか。
-
○
田中内閣総理大臣 ことしの重点目標が、最重点ともいうべきものが物価問題でありますから、やはり物価の抑制ということに対しては全力をあげなければいかぬと同時に、物価の抑制よりもワクをはずれて、いわゆる買いだめ、売り惜しみ、暴利というものに対しては、これはやはり行政権の及ぶ限りスピーディーに合理的な措置をすべきであることはもう申すまでもありません。しかも、この新規立法に対しては、これはひとつぜひ早く通していただきたいと私は思うのです。そしてこれが、いろいろな議論はあると思います。あると思いますが、やはり通していただいて、それで実効があがらなければ政府を責めていただいてけっこうだと思うのです。そうすればもっと強い立法を必要とするようになるわけであります。そういう問題に対しましては、現行法の許す範囲内最大限の努力はいたします。いたしますと同時に、政府もこの種の立法を出さなければならないということ自体が、ほんとうにある意味では悲しいことだ、こう思っておるのです。ほんとうにそうなんです。なるほど外国で文句を言われるわけだなという、こういう感じもするのです。ですからそういう意味で、ほんとうにこの大目的が達成できるように、ぜひ御協力いただきたいと思います。
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○近江
委員 それはシビアな新規立法であれば一そういいわけですけれども、まあその辺が、これは繰り返しになりますのでやめますけれども、非常に弱いと私は思います。
それで、今回はその買い占め、売り惜しみ等のそれですけれども、商社法をつくれという、前に政府におきましてもそういう話もあったわけですが、そういうことについては考えておりませんか。いろいろな、そういう商社の倫理性といいますか、あらゆるそうい点も勘案した上での、それを含めたそういう商社法の制定というようなことにつきましてはどうですか。
-
○中曽根国務大臣 やはりその行為自体を取り締まることが大事なので、その商社という特殊の経営体自体を目すということは、なかなか把握が困難でありまして、いまそういう考えを持っておりません。
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○近江
委員 それからこの投機の問題を見ますと、確かに現物取引の高騰ということもありますけれども、相場でのつり上げということが相当やはりあるわけですね。たとえば生糸におきます四十八番双糸、これなんかは全体の二、三%でしょう。これで上場商品としてそこで値がつけられて全体に及ぼしてくる。こういうことでいいかということですね。人絹糸なんか一%でしょう。綿糸の四十番単糸にしましても全体の一割弱ですね。こういうものでそういう価格がきめられていく。だから、膨大な資金源を持っておれば、幾らだって、幾ら証拠金を上げられたって買い向かっていけばいいのですよ。そういうようなこともありますし、この商品取引所の問題についてはいろいろな論議があるわけですけれども、一つはそういう上場商品の洗い直し、あるいは現在市場のそういう存在意義自体問われるようなことにもなってきているわけですね。そういうことにつきまして、その上場商品の洗い直しあるいは市場の存在意義この二点についてどう思われるか、中曽根大臣、その次に総理にお願いしたいと思います。
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○中曽根国務大臣 上場商品の洗い直し、再検討ということは、目下産業構造審議会の流通部会でその問題は検討しておりますから、その答申を待ってわれわれも処理したいと思っております。
それから第二に、取引所廃止論云々という議論に対しては、やはり取引所というものは資本主義体制のもとにあって、商品の自由な流通を確保する大事な機能を持っておるのでございます。一つは建て値をつくるということ、もう一つはヘッジという意味で、長い期間における保険的要素がございます。この二つがなければ自由経済における商品流通は円滑にいかないわけです。そういう意味で、外国では取引所は非常に発達しておるわけですが、日本ではそれがあまり発達しきらない。そういうときに一部の者がこれを投機に使うという形になって、それが悪用されているというきらいがあります。しかしこれは、あくまでその投機や悪用されていることをためて、本来の、資本主義における重要な機能を果たすように育成すべきものであって、私たちはこれを積極的に育成していく、そういう方向に進めていきたいと思っております。
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○近江
委員 そういう価格の妥当性あるいはヘッジ、それは私たちもわかっておりますよ。わかっているけれども、いまのような、こういうような相場であって、こういう行き方であって、これが国民の共感を呼ぶことはできませんよ。そうでしょう。大臣だって健全な取引所のあり方ということを心がけておられるわけでしょう。しかしいまのような状態であれば、これは私が先ほど申し上げたようなそういう声が強くなってくるわけですよ。今後こういう取引所のあり方につきまして、総理としてはどういう姿勢で臨んでいくのですか。
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田中内閣総理大臣 取引所の制度が必要であるということは、いま通産大臣が述べたとおりでございますが、先ほども私、答弁しましたとおり非常に小さい。小さいところへもってきて、動く金の量が非常に大きくなりましたので、過去にも生糸の相場などでもって、全然問題がなかったわけではありません。ありませんが、しかし、ここ当分の問は取引所の機能はちゃんと果たされてきたわけです。ほんとうにこの一、二カ月間矢つぎばやにいろいろなものが次から次へと起こっておるわけでございますから、また、しかしその中で木材などについては値はずっともとに戻しております。あと残っておるのは合板の問題だけが残っておるわけでありまして、だんだん解決はしております。おりますが、やはり一部の投機筋の恣意によって取引所の機能そのものが失われるようなことは、これは政府としてもそのままにしておくわけにはまいりません。だからこれは会員の十分な自覚を促すとともに必要な措置はとってまいりたい、こう思います。
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○近江
委員 こうした投機の背景というものには過剰流動性の問題があるわけですが、これをいかに吸収していくかということは、金融政策からいろいろあるわけであります。
そこで、この預金準備率の引き上げについて大蔵大臣は一次、二次の措置をとられたわけですけれども、今後どう考えておられるかということですね。
それからもう一つ、企業の手元流動性を高くした一因に、金融の緩和によって銀行が貸し付け金の返済を受け付けない、そして企業に資金を寝かしてきた、こういうことも非常にあるわけです。こういうような問題は、一般的な金融引き締めの措置では対処できないと思うのです。やはり銀行に対するこういう指導監督の強化ということが非常に大事じゃないかと私は思うのですけれども、この二点につきまして大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
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○愛知国務大臣 預金準備率については、第二回の準備率の引き上げについては、すでに政府としては必要な措置をとってありますので、すみやかに実施の段階に移る次第でございます。そして今度第二回目をやりましたら、これは相当な効果があることと私は考えております。
それから銀行の態度で、これは私どももよく耳にするところで、返済に行ったら、もっと借りておいてくれ。こういうことはまことにおもしろからざることでございますし、それから前にも話をいたしましたが、現在やっております、たとえば商社別の手形の選別規制なんというのは相当なきびしいあれなんでありますけれども、それは銀行法の一般監督規定を根拠にやっておるわけでございまして、そのくらい強力に発動し得る法律を持っているわけでございますから、一般監督権あるいは検査権の発動といたしまして、さような事例が根絶されるように十分指導をやっていきたいと思っております。
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○近江
委員 時間がありませんからこれで終わりますが、あと一点だけ……。
証券市場の時価発行のプレミアムの増資の問題ですけれども、昨年だけでも六千七百億ということがいわれておるわけです。非常にこの辺のところが過剰流動性を生む大きな原因にもなっておると思うのですが、この問題に対して今後どういうように対処なさっていくか、大蔵大臣とそして最後に総理にお伺いして終わります。
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○愛知国務大臣 時価発行は企業の自己資本の充実という点からいって、ことに資金調達の様式が多様化してまいっておりますから、本来ならば適当なやり方であると思います。ことに時価発行をやりましたときのいわゆるプレミアムというようなものは、商法がもともと資本に準ずる扱いをしているくらいでございまして、これが法律に違反して使われるなんということはとんでもないことなんでありまして、私どもとしては証券行政の中心の一つとして適正に時価発行が行なわれるように、十分いままでも指導をし、そしてまた監督もやってきたつもりであったところへ、また証券会社に立ち入り検査もやっておりますやさきに、刑事上の責任を追及されるような事態が起こりましたことは、まことに遺憾なことだと思っておる次第でございます。
したがって、時価発行については、現にすでにやっておることで、たとえば金融規制の中でも、時価発行の増資についての金融の規制も厳重にやっているくらいで、証券行政だけではなくて金融行政のほうからも十分目を光らしていたのでありますけれども、こういう本来よかるべき制度が悪用される、あるいは法律すれすれじゃなくて、違法の疑いまで受けるような事態になりましたことは、ほんとうにこれは残念でもあり申しわけのないことでございますから、自今このやり方については適正に行なわれるよう、十二分の指導監督をいたしてまいりたいと思っております。
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広沢委員 いまの商品投機の問題ですが、やはり私は基本的には、過剰流動性だということですから、そのもとを握っているのは政府であり日銀なんですから、そこに何らかの適切な処置を欠いたところにこういう問題が起こってきていると思うのです。金融に対してはいまお話がありまして、これから調整をとっていかなければならぬと。外為会計の払い超にしても、これは何かここに一つの規制というか、円の交換規制、あるいは株式にある信用創造にあるように、預託金を積ましておいて動向を見てこれを払い出していくとか、何らかの処置を講じなければ、その出たあとのことに対して引き締めだの何だのとやっていくこと自体、農業者やら中小企業者やら、福祉を充実していかなければならない庶民金融にまで相対的に及ぶんですよ。一部もうけだそういう大きな企業のしりぬぐいを国民がしていかないようにしていくためにも、その基本的な政府の責任ある姿勢をこれからとっていただきたいと思います。
以上、時間ですから……。
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○根本
委員長 これにて
広沢君の質疑は終了いたしました。
次回は、明十日午前十時より開会いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後七時八分散会