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田中内閣総理大臣 変動相場制に移ったということは、これから開放
経済を進めていきますといろいろな
事態が起こる可能性があるわけでございます。現にアメリカの
ドルの
切り下げだけではなく、オーストラリアでも
切り上げが行なわれておりますし、ヨーロッパの各国でも変動為替相場制は長いこと続けておるわけでございます。そういう
意味で、固定相場制でもってはっきりきまっているわけじゃないわけでありますから、これからもそういうものには対応していかなければならない立場にあるわけでございます。ですから、変動為替相場制に入った場合に、二つの問題をひとつしぼって考えていただきたいと思うのでございます。
一つは、歳入見積もりが変わらないかということでございますが、いま固定相場制に移っているわけではないので、どの程度
影響があるかどうかを見積もることはむずかしいということでございます。むずかしくても、大きく変動があるのじゃないかということがもう
一つ突っ込めばあるわけでありますが、
経済の見通しから考えてみますと、四十六年の暮れに第一回の一六・八八%の
切り上げをやりましたが、四十七
年度は予想外に
景気は上昇過程にあって、税収は思ったよりも確保されておるわけであります。それから、四十七
年度の下期の税収や下期の
経済見通しを見ますと相当高い
成長率で、一〇・七%という四十八
年度を通じての見通しは甘いのじゃないかという一般の世論もあるわけであります。しかし、それはいろいろな政策を行なうことによって、適時適切な施策を行なっていくことによって、一〇・七%で大体押えられると思います、そしてそれは将来に向かっては、
長期経済社会基本計画にあるように、九%、八%というようななだらかな推移をたどりながら、五カ
年間の平均
成長率をこのようにしてまいりたい、こういうことを言っているわけでございます。そうするためには、普通六%も七%にもなるのじゃないかといわれておった
物価も、五・五%に政策的には押えてまいります。こういうふうな見通しでおるのでございますから、いま変動為替相場制に移っても、強弁するのじゃありませんが、過去の例に徴してみても、また昨年下期の
経済の実勢を引き延ばしてみても、大体税収は確保できるのじゃないか。いまこれを改定しろと言っても、見通しはさだかにはできませんというのが第一であります。
第二には、では大きな欠陥が生ずるかどうか。四十年
不況のときに減収補てん債を出しただけであって、あとは税収というものに対してはずっと積み重ねてきておるわけでございます。そういうわけで、税収に対して欠陥を生じて
予算の執行が不可能になるようなことはないと思いますということが
一つの問題でございます。
もう
一つの問題は、
予算上の執行の問題でありますが、いま
大蔵大臣及び主計
局長が述べましたとおり、法律は固定レートでもって支払うことになっております。日銀からの実際の支払い額との差額は国庫に逆納付をすることになっております。これは
予算と決算と両方の面があるわけでありますから、決算において国損を来たすようなことはないわけであります。
要は、いま御
審議をいただいておるもので
予算執行が不可能になるかどうかという問題でございまして、これは執行は不可能にはなりません。執行は十分可能なわけであります、これは
ドル価格は切り下がっておるわけでございますから。これがうんと
切り上げられたという場合には、当初見込んでおった数量が購入できないという問題が起こりますけれども、今度の場合は
基準レートで支払いをしますけれども、これは国庫に逆納付されるので国損を来たさない。批難事項は受けないわけでございます。ところが、実際の直接買うものはどうかといえば、買えないというなら別でございますが、買うものは
基準レート以下で買えるわけでございますから、その額は不用に立つわけでございます。ですから、そういう問題は
予算執行上全然問題がない。
予算の
審議でもってお願いするのは、
予算執行が合理的に行なわれるかどうか、この
予算編成のときに
政府が企図した目的が達成できるかどうかということでございまして、しかも、国損を来たさないということでなければならぬわけでございます。これは国内の
景気変動、それから国外からの変化というものは、これから開放
体制になれば絶えず起こるわけでございますから、そういう
状態から考えて、適法に
予算は執行できるということでございまして、この二つの事実から考えて、この
予算を一日も早く通していただくことが、こういう
状態に対処する最も大きな問題である、こうお願いをしておるわけでございます。