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1973-02-20 第71回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十日(火曜日)     午前十一時三十三分開議  出席委員    委員長 根本龍太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小澤 太郎君    理事 仮谷 忠男君 理事 田澤 吉郎君    理事 湊  徹郎君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 谷口善太郎君    理事 山田 太郎君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君       伊能繁次郎君    臼井 莊一君       大野 市郎君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       小平 久雄君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       塚原 俊郎君    野田 卯一君       野原 正勝君    福田  一君       保利  茂君    細田 吉藏君       前田 正男君    松浦周太郎君       松野 頼三君    森山 欽司君       阿部 昭吾君    大原  亨君       北山 愛郎君    小林  進君       田中 武夫君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    平林  剛君       細谷 治嘉君    堀  昌雄君       村山 喜一君    安井 吉典君       荒木  宏君    津川 武一君       中島 武敏君    近江巳記夫君       岡本 富夫君    河村  勝君       小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 櫻内 義雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         郵 政 大 臣 久野 忠治君         労 働 大 臣 加藤常太郎君         建 設 大 臣 金丸  信君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       江崎 真澄君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         総理府人事局長 皆川 迪夫君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林大臣官房予         算課長     渡邉 文雄君         農林省農林経済         局長      内村 良英君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         食糧庁長官   中野 和仁君         林野庁長官   福田 省一君         通商産業省通商         局長      小松勇五郎君         通商産業省貿易         振興局長    増田  実君         通商産業省繊維         雑貨局長    齋藤 英雄君         中小企業庁長官 莊   清君         中小企業庁計画         部長      原山 義史君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員異動 二月二十日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     仮谷 忠男君   安宅 常彦君     平林  剛君   大原  亨君     堀  昌雄君   津金 佑近君     荒木  宏君   不破 哲三君     津川 武一君   矢野 絢也君     近江巳記夫君   安里積千代君     河村  勝君 同日  辞任         補欠選任   堀  昌雄君     村山 喜一君   荒木  宏君     津金 佑近君   津川 武一君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   村山 喜一君     大原  亨君 同日  理事小沢辰男君同日委員辞任につき、その補欠  として仮谷忠男君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 根本龍太郎

    根本委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動により、現在理事が一名欠員となっておりますので、これより補欠選任を行ないたいと存じまするが、これは先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 根本龍太郎

    根本委員長 御異議なしと認めます。  よって、仮谷忠男君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 根本龍太郎

    根本委員長 昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、内閣総理大臣から発言を求められております。これを許します。田中内閣総理大臣
  5. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政府は、円の切り上げ回避するためあらゆる努力を傾け、諸対策を進めてきましたが、諸般事情により変動相場制に移行する事態に至ったことは、まことに遺憾であります。  政府は、その責任を痛感し、変動相場制移行により国民生活に与える影響に深い関心を持ち、その対策に万全を期したいと存じます。  なお、これまで生産、輸出を推進してきたわが国の経済社会構造福祉中心型構造へ転換するため、努力を傾けたいと存じます。  また、特に中小企業対策等については、予算補正を含む所要措置を強力に講ずる所存であります。  なお、四十八年度予算については、引き続いて審議を願い、国会を通じて政府の所信を明らかにしたいと存じます。
  6. 根本龍太郎

    根本委員長 ただいまの総理大臣発言に対し、各党から質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  7. 堀昌雄

    堀委員 ただいま総理大臣がお述べになりました政府見解について、少しお伺いをしてまいりたいと思います。  いま総理大臣は、「政府は、円の切り上げ回避するためあらゆる努力を傾け諸対策を進めてきたが、諸般事情により変動相場制に移行する事態に至ったことはまことに遺憾であります。」こういうふうに実はお述べになりました。そこで、政府は円の切り上げ回避するためにあらゆる努力を傾けるということは、円の切り上げは望ましくないという政府の態度だと思いますが、この点をひとつはっきりさしていただきたいと思います。
  8. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 中小企業零細企業という特別な状態を持つ日本とすれば、これに対応するような状態をつくらなければならないということでありまして、円の切り上げというものが行なわれる前提には国内対策が十分必要である、こういう考え方を持っておるわけであります。
  9. 堀昌雄

    堀委員 そういたしますと、いまおっしゃった中小零細企業に対する円の切り上げに対応する状態をつくらなければならない。そういう準備をしなきゃならない。そうすると現在は、そういう対応する条件ができていないわけですね。
  10. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御承知のとおり、第一回目の多国間調整は一年二カ月前に行なわれたわけでございます。そのものに対しての施策諸般施策を行なってまいったわけでございます。御承知のとおり、法律をつくって、中小企業に対する税制上の問題、金融上の問題、財政上の問題等も行なったわけでございますし、信用補完問題等諸般のものを行ないました。行ないました結果、第一回目の円切り上げは何とか切り抜けたわけでございます。繊維など非常に悪いといっておったのが、史上最高の好況であるというような状態であったわけでございますから、一応成功はしておるわけでございます。しかもその後、自由化を迫られるというような問題もありましたので、自由化に対しても鋭意努力を続けておるわけでございますが、しかし農産品等自由化をしても必ずしも外貨の大量消費にはならないというような面からの意見もありますし、また自由化に対応できないというような実情もあります。そういう意味で、輸出抑制というためには、大型だといわれた補正予算もつくったわけでございます。  でありますので、中小零細企業に対しましてはそのようなこともやりながら、しかも、金融機関に要請をしたり、また手形の買い取りを円滑に行なったり、現時点で行政府ができる可能なものは、漸次行なっておるわけでございます。
  11. 堀昌雄

    堀委員 いま私が伺いましたのは、なぜ回避をしなきゃならぬかと伺ったわけです。政府は、円の切り上げ回避するためあらゆる努力を傾けるということは、回避をすることが目的なんですね。要するに、円切り上げというのは望ましくない、こういうことですねと伺ったら、中小零細企業に対応する状態をつくらなければならぬけれども、まだ十分でないとこうおっしゃったわけですが、そういう十分でない状態というのは、ほかにこれまでやりようはなかったのか。この前の本会議で自民党の前尾さんが御質問になって、一般には三月か四月には切り上げがあるだろうといわれていた、私も六、七月ごろには切り上げがあるだろうと思っていた、こういうふうに、実は与党前尾さんがお尋ねになっているわけですから、私は、与党の中のこういう方がそういう発言をなすったことは、与党の中にも切り上げは避けられないという考えがあった。それならば、いまさら実はここで——いまお述べになったのは、「とくに中小企業対策等については、予算補正を含む所要措置を強力に講ずる所存であります。」と、こうおっしゃっておるわけですね。すでに前尾さんは、予算の時期なんですから、予算編成のときにそういう切り上げを四十八年度に予想されておるような情勢ならば、補正予算をいま組まなければならないということは、私は論理が少しおかしいのじゃないか。当然ここでいま政府がお述べになった、「とくに中小企業対策等については、予算補正を含む所要措置を強力に講ずる」と、予想されておったのに、なおこういうのを講ずるというのは、これは、現在の予算というものが正しい予算でなかったということではないでしょうか。
  12. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 まあ議論をすればそういうことになるかもしれない。そういう御発言もあり得ることでありますが、あなたもよくおわかりのとおり、これは第一回の円の切り上げが行なわれて、切り上げ効果というものは二、三年かかるのだというのが常識でございます。それでまた一年ちょっとぐらいでもって切り上げをする、再調整をするようなことに対しては、お互いが避けなければいけないということで、私とニクソン大統領との話し合いでも、やはり両三年以内に基礎収支の均衡、GNPの一%以内に経常収支黒字幅を縮めるようにすることが精一ぱいですよ、だから日米間においても、貿易自由化を行なったりいろんな努力はしますけれども、急速にこの問題で解決するわけではないのですと、こう言っているわけです。  しかも、率直に申し上げますが、平価調整というよりも円の切り上げという問題に対しては、第一回の切り上げのときからもう議論されておったわけであります。民間学者評論家もまた新聞等も、切り上げを直ちにやるべきである、切り上げ回避をすべきであるといういろんな議論があったわけです。しかし、政府が円の切り上げ不可避であるというようなことが言い得るものであるかどうかは、これはもう私が言うまでもないことであります。切り上げ不可避である、それはいつだと言えば、もう飛び込みになってしまって、いまの日米貿易の赤字は倍になるかもわかりません。そういう意味で、公定歩合の引き上げとか引き下げの場合は別でありますが、円の引き上げの場合とか円平価調整とかというものに対して、政府が軽々にそういうものに対する所見を明らかにできないということは、おわかりいただけると思うのでございます。  しかし、自由化をやるにしてもいろいろな障害がございます。その意味で、対外経済調整法というのも国会提案をしたわけでありますが、成立を見なかったわけであります。そういうような状態から考えてみて、少なくとも輸入拡大ということに対しては努力をしなければいかぬし、少なくとも対米輸出やその他の輸出に対しても、これをセーブしなければならない。そのためには内需拡大しなければならないという考え方で、この間からも御指摘がございますが、五・五%でもって消費者物価を押えるのはむずかしいじゃないか、一〇・七%という経済成長の見通しは甘いじゃないかということを御発言がありましたように、確かに昭和四十七年度下期から急速な上昇過程に入っておりますから、このままに伸ばせば、確かに一三%、一四%というような状態になるかもしれません。しかし、そういう状態になった場合にはたいへんなことになると思いますので、四十八年度予算編成内需拡大ということをはかりながらも、やはり一〇・七%というような状態に押える、政策的努力によって押えなければならない。そうすることによって、平価調整というものに対してもできるだけ対応しなければならない、こういう考え方予算も組まれておるわけでございます。  そういう意味で、これからは私はたくさんあると思うのです。実際において、もうすでにオーストラリアも切り上げておりますし、また各国も切り上げるので、これからの開放経済下になると、私はいままでのようになかなか簡単にはいかないと思いますが、しかし、その中でも多国間で十分話し合いをして、できるだけ固定相場を守らなければいかぬ、守ろうということ、その過程において、将来理想的な基軸通貨というものを何に求めるか、また国際流動性を確保するためにどうするかというような問題は、お互いこれから国際的に協力をしながら理想的な開放体制に進む過程における一つの問題だ、こう理解をしております。
  13. 堀昌雄

    堀委員 私のお尋ねをしたことにひとつお答えをいただきたいのです。お尋ねをしないことをずいぶんたくさんいろいろおっしゃるのですが、私は与えられておる時間が二時間しかございません。私も時間を節約して効率的に審議を進めたいと思いますので、お尋ねをしておることだけお答えをいただきたいのです。  愛知大蔵大臣にお伺いをいたしますが、ある国会で、過去の国会ですよ。過去の国会予算案国会提案をされまして、今回はたしか予算案提案は二十六日でございましたか、それくらいだったと思いますが、提案されまして、そうしてきょうは二月二十日ですから、まだ一カ月たっていないわけですね。予算提案して一カ月以内に政府補正予算が必要だという提案をした例が過去にあるかどうか、ちょっと愛知大蔵大臣からお答えをいただきたい。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 前例はないと思います。
  15. 堀昌雄

    堀委員 私がいまお伺いをしておりますのは、そこの問題なんです。よろしゅうございますか、もう一回繰り返しますと、与党前尾さんの代表質問で、一般民間産業界なり学者皆さんは、三月、四月ごろには円の切り上げ不可避だと言っておられ、私も六月、七月ごろには円の切り上げが行なわれるであろうと思った、こうおっしゃっておるわけですね。私は、これは単に前尾さんの個人的見解ではなくて、代表質問で述べられておるわけでありますから、これは自由民主党見解だと考えておるわけであります。与党である自由民主党が、六月、七月に切り上げを予想しておるにもかかわらず、その切り上げの問題について全然触れない予算を出した、こうおっしゃっておるわけですね。そうして出して、いま直ちに、予算審議しておる最中に補正予算を組まなければならぬというのは、この予算が適当でないということを政府みずからお認めになったことじゃないのでしょうか。その点をはっきりしてください。
  16. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 四十七年度はまだ三月の末まであるわけでございます。いま予備費もございますし、これらの中小企業対策は、御承知のとおり金融、それからいまある法律をそのまま延長してもらうというようなことで、過去の対策をそのまま踏襲をすることで、相当な効果をあげ得ると思います。で、予備費がございますから、そういう意味皆さんの御意見で、中小機関とかいろいろなところへ繰り入れなければいかぬというような趣旨の問題等があれば、これは予備費でもまかなえると思うのです。思うのですが、少なくともこのような状態でございますから、必要があれば、国会でどうしてもこのような新しい施策を講じなければならないという御決意があれば、政府はこれに従わなければならないわけでございます。そういう事態の推移を十分見ながら私は対処しなければならない。その意味補正が必要であれば、補正も含めて万般の対策をいたします、こういう万全の対策を行なうということにウエートを置いての発言であることを理解していただきたい。
  17. 堀昌雄

    堀委員 いま総理がおっしゃったのは、四十七年度予算の話をおっしゃったわけですね。四十七年度は確かに三月まであります。いま私たちが審議をしておりますのは四十八年度予算なんです。よろしゅうございますか、四十八年度予算を一月二十六日に政府国会に提出をなすってまだ一カ月たたない。そのときに政府がいまの、「中小企業対策等」でありますから、対策だけでなくほかにもあるんだろうと思います。この「等」が何かというのはあとでもう一ぺんお伺いいたしますが、要するに、中小企業対策等については、予算補正を含む所要措置を講ずる、こういうふうにおっしゃておる以上、これは現在の予算が不十分な予算である、だから補正を組むというのが、日本語のことばから理解される論理ではないでしょうか。どうなんでしょうか、そこをはっきりしていただかないと。なぜ補正を組むのか、不十分だから補正を組むんじゃないですか。十分なら補正を組む必要ないんじゃないですか。どうなんですか。だから、そこで四十八年度予算は不十分なんですということを、きょう、いまあなたが公式に国民の前にお述べになったんじゃないですか、どうなんですか。そこをはっきりしてください。
  18. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いまの予算で不十分だとは考えておりません。おりませんが、固定相場にはまだ移っておらぬわけであります。固定相場に移ったその結果、四十八年度の予算ではどうにも足らないというような事態が起こればと、こういう質問はよく起こるわけであります。このような災害に対する予算だけでもって、大きな災害が起こったらどうするかという場合でございますと、そのときは予備費で対処いたします、予備費で足らない場合はどうするか、その場合は補正も当然考えます、こういうことでございまして、これはまだ固定に移っておらないわけでありまして、固定相場に移った場合、いろいろなこれからの施策を行なってまいります。まいります結果、どうしても補正措置が必要であるということになれば、ということでございますので、これは御理解いただけると思います。
  19. 堀昌雄

    堀委員 主計局長財政法予備費のところをちょっと一ぺん読んでください。
  20. 相澤英之

    相澤政府委員 財政法第二十四条、「予見し難い予算不足に充てるため、内閣は、予備費として相当と認める金額を、歳入歳出予算に計上することができる。」
  21. 堀昌雄

    堀委員 いま主計局長が読み上げましたように、予備費というのは予見しがたい予算不足に充てるために設けられておるのでありまして、いまあなたのおっしゃったように、いまこれはもうすでに——整理をしますが、変動相場制ということと固定相場の問題は、なるほど法律的表現としては、現在基準為替相場が三百八円であることは私も認めます。しかし、三百八円というのは経済行為の上ではもう過去のものになったわけですね。経済行為の上では現実にはフロートをしました。フロートをしておるということは、経済行為の中での適正な為替水準を求めるためにやっておるわけでありますから、いま適切な為替水準というものは、現在の輸入期でありますから輸出期とはやや情勢が違うかもわかりませんけれども、いま一六%台に切り上がった情勢になっておる。もうこれは固定相場として切り上げるという法律的な問題ではなくて、私どもが補正予算が必要かどうかは法律的に必要かどうかではなくて、予算というのは経済行為なのでありますから、経済行為に対応するために予算が組まれておる以上、これは変動相場制中であるから固定相場になったらというような話は通用しないのであります。だから、その点をまず正確に確認をした上で入りたいと思いますから、この点、愛知大蔵大臣、私が申しておることに間違いがあれば御指摘をいただきたいと思います。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お話の点は、一つ法律的、制度的な問題であり、一つ経済の問題である、こういうお尋ねでございますが、同時に予算の問題を含んでのお尋ねでございますから、そういうふうに理解してお答えをいたしたいと思います。  まず、四十八年度の予算について申し上げますと、現に変動為替相場をとっているわけでございますから、固定相場に、いついかなる状況でそこに決定をするかということはまだきめていない、また、現在はきめないところがよいところであると考えております。  そういう前提に立って考えますると、四十八年度の予算につきましては、これを現段階において修正をするとか補正をするとかいう段階ではございません。と申しますのは、本会議でも申し上げましたように、これには三つの観点があると思います。  一つは、歳入の見積もりでありますが、これは変動相場をとっております現在の状況で、かつ、これをいつまでの期間続けるか、それからいかなる状況において固定相場に返るか、あるいは現在のフロート中の実勢というものがどの辺に落ちつくであろうかということ等の、まだ流動的な要素がございますから、現段階において経済の年度を通ずる長い見通し、そしてそれに基づく税収入の見積もりを、現段階できめるということはできません。(堀委員「いや、私が聞いておることに答えてください」と呼ぶ)ですから、それを前提として申し上げました。大事なところでございますから、もうちょっとお答えをさしていただきたい。  それから、その次は歳出の問題でございますが、これは御案内のように、現在の状況におきましては歳出の執行には何ら支障がございません。その中には基準外国為替相場がきめられておるものもございますし、そうでないものもございますけれども、一言にして言えば、歳出の執行には何ら支障はございません。  それから第三が、まあ固定相場に移るようなことがありますような場合に、特に中小企業対策等について重要なことがございましたら、必要があれば予算補正ということも考えなければなるまい、こういうことを申しておるわけでございます。  それから第二の、また別の御質問ですが、四十七年度で予備費がどういうふうになるか。予備費等の活用もいたしまして、為替対策上、税制上、金融上、そしてさらに予備費の活用ということを考えるべきである、かように考えておりますが、予備費の支出についていま法律的な御疑問にも触れられたわけでありますけれども、四十六年度中のことと記憶いたしますが、たとえば繊維問題に対する緊急対策というものは、予備費の支出でまかなっておりますことは御承知のとおりでございます。
  23. 堀昌雄

    堀委員 四十六年度の話は、四十六年度の予算を組みましたときにはそういう状態は予見されていないのです。予見しがたい状態であったわけですね。私は四十七年度予算ではなくて、総理がこれまで、この前の私の質問に答えられたときにも、予備費が千五百億あります、これで中小企業対策をやれます、こうおっしゃっているわけですから、まだ会議録は私の手元にはありませんが、私はそう記憶しておりますから、そうすると、四十八年度予算というのはすでに予見されているわけですよ。現在はっきりわかっているわけでしょう。  その上で、私が伺っていることを少し整理をさしていただきたいのですが、まず私は、いまの歳入歳出の問題を触れているわけじゃありません。これからやりますけれども、触れていないのです。いまは、冒頭内閣総理大臣がお述べになった政府見解についてのところをただしておるわけです。政府見解として述べられて、その政府見解は、「政府は、円の切上げを回避するためあらゆる努力を傾け諸対策を進めてきたが、諸般事情により変動相場制に移行する事態に至ったことはまことに遺憾であります。」これはそのとおりですね。「遺憾であります。政府はその責任を痛感し」まあこれはあとで、この責任は一体どういう責任を痛感されておるか伺いますが、「変動相場制移行により国民生活に与える影響に深い関心をもちその対策に万全を期したいと存じます。」ですから、すでに変動相場制により国民生活に与える影響に深い関心を持たなければならぬ事態が起こっておるわけです、固定相場になろうとなるまいと。いま総理はそうおっしゃったわけですね。「なお、これまで生産、輸出を推進してきたわが国の経済社会構造福祉中心型構造へ転換するため努力を傾けます。」となりましたあとで、「また、とくに中小企業対策等については、予算補正を含む所要措置を強力に講ずる所存であります。」よろしゅうございますか、もう一ぺん整理をしますと、これまで過去に、予算審議中に、その予算に対する補正予算を組みますというようなことがあった事態はなかったでしょうと言ったら、大蔵大臣はなかったとお答えになっておる。じゃ私が、補正予算をこの四十八年度予算について、いま審議中に組まなければならぬということは、現在の予算案が適当でないから補正をするというふうに総理がおっしゃったのですから、おっしゃった以上、現在の予算が適当でないということでなければ、補正を組むというのはおかしいじゃありませんか。  だからここでは、「予算補正を含む所要措置を強力に講ずる所存であります。」こうお述べになりました。だからその点を、ほかの雑音は離して、その点に限って明快な御答弁をいただきたいのです。
  24. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほども申し上げましたとおり、四十八年度の予算は適正なものと考えております。これが一つです。  第二は、四十七年度の予算の執行の期間は、まだ三月三十一日まで四十日ばかりあるわけであります。この間にあらゆる努力をいたします。これはいまある法律を延ばしていただくとか、それから金融上の措置を行なうとか、手形の買い取りの弾力化をやるとかいろいろな問題があるわけです。そういう問題はやりますが、四十七年度の補正ということがどうしても必要であるというような事態になれば、ということでございまして、四十七年度の補正も含めてということを、まあこれだけ一週間も御論議をいただいておるわけでありますから、政府は可能な限り最大の努力を行なうという基本的な姿勢を明らかにしなければならぬわけであります。では、財政はどうするのかという問題になれば、財政に対しては補正措置も含めてあらゆる努力をいたしますということを申し上げるのが、政府としては正しい姿勢であるということでございます。  四十八年度の問題については、まだ予算審議中でございますし、われわれも四十八年度の展望に立って御審議をお願いしておるのでございますから、四十八年度の予算が不適当であるというような考え方で御審議をお願いしておるのではありません。
  25. 堀昌雄

    堀委員 まあいいです。たくさん問題がありますから、これだけでは時間がたちますからあれですけれども、私は、まあ国民の側から見ますと、いまあなたが最初にお述べになったことが、いまあなたのお話しのように、四十七年度の補正予算というふうには理解してないのです。これは四十八年度に補正を組まなければならぬという問題に理解をしておるわけです。  四十七年度は、よろしゅうございますか、要するに四十七年度は、予備費が千八百億あったわけですね。現在予備費の残は幾らありますか、現在時点における予備費の残。主計局長でけっこうです。
  26. 相澤英之

    相澤政府委員 二月十九日現在で、使用残額は二百八十五億七千二百万円であります。
  27. 堀昌雄

    堀委員 まだ二百八十五億あるそうですね。そうすると、いいですか、二百八十五億のいまの予備費というのが、過去の例では、これは予備費は予見しがたい費用の増額分に充てなければならぬわけですから、中小企業等だけにもしかりにこれだけ持っていったとしたら、あとこれは運営できるのですか、大蔵大臣。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはもう年度末までぎりぎりのところでございますから、こういう対策についてできるだけの配慮はいたしたいと思いますが、同時に、しかし四十日まだあるわけでございますから、多少の留保はしなければならないと思います。
  29. 相澤英之

    相澤政府委員 二月十九日現在におきます予備費の使用残は、先ほど申し上げましたとおり二百八十五億七千二百万円でございますが、まだ今後支出を予測されるものといたしまして、各種の義務的な経費の精算に伴う不足額、これは例年ございます。たとえば国民健康保険の助成費でございますとか、失業保険の負担金でありますとか、生活保護費の補助金でありますとか、そういうような今後支出を予定されております、見込まれておりますものもございます。そういうものの金額がどの程度になるか、これはなお今後それらの経費の精算の見込み等を待たなければ確定しないものでございますが、百億をこす数字になるというふうに思っております。
  30. 堀昌雄

    堀委員 私、いま総理がすりかえた御答弁をしていらっしゃいますから、そこで、からめ手から予備費の問題を触れておるわけですね。いまこの段階で、二月二十日ですから、年度内というのは一カ月しかないのです。一カ月しかないところで、四十七年度予算補正を含む所要措置を強力に講ずるということにならないのじゃないですか、現実問題として。おやりになるのですか、四十七年度予算については。では補正をやられるわけですね。どっちかお答えください。
  31. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 堀さん、万般の措置を講じます、その中に、必要があれば補正も考えます、こう言っておるのでありますから、すなおに受け取っていただきたい。そしていまの予備費でもってまかなえるものがあれば、まかなえればそれでもって済むわけでございます。補正は必要がなくなるわけであります。しかし、もっと三機関やいろいろなものに対して繰り入れをしなければならないということになれば、それは補正を必要とするわけであります。補正は、出資をするわけでありますので、これは四十七年度にもし、仮定の問題ですが、出資をしておけば、そのまま四十八年度にも引き続いて使われるわけでございまして、年度内に出資をすれば、四十八年度にも効力を発することは申すまでもないことであります。
  32. 堀昌雄

    堀委員 はっきり私のお尋ねに答えていただきたいのですね。私は、政府がこれをお述べになったから聞いているんですよ。よろしゅうございますか、要するに四十八年度の「予算補正を含む所要措置を強力に講ずる所存であります。」とはっきりここでおっしゃっているわけですからね。これだけはっきりいってあるのならば、四十七年度の補正なぞはあり得ないんですよ、いま現在のこの時点で。特に問題が「中小企業対策等」と、こうなっているわけですからね。だから、これは常識的に四十八年度の補正予算と理解するのが正しい理解なんです。  そこで、四十八年度の予算について、予算審議中に補正をやりますと政府が言う以上は、その補正をしなければならぬ分がいまの予算の中に足らないんだから、足らない分があるということは、予算が適当でないということではないですかと言うのは、だれが聞いても当然のことではないんでしょうか。だから私は、言を左右にしてそこを何とかごまかそうとなすっても、ごまかせないはっきりした事実が現在あるわけですから、私はその点は、総理もひとつ謙虚に率直にお答えをいただきたいと思うのです。  国際通貨を切り上げる、そんなことを早く言ったら投機が起きてたいへんなことになる。私もこうやって経済財政を専門にやっておりますから、よくわかっております。だから私は、そういうことを過去にお尋ねしたことはないんですね。この間の委員会でも、私は、いつ切り上げますか、幾らにしますかなんて聞いてないんですよ。あのときは、変動相場制になるのではありませんかということを聞いただけなんですね。ところが、こういうことは別として、いまの予算の問題というのは国民生活にたいへん密接な関係があることですから、明確な答弁をしていただかないと、前段の政府見解といまの答弁に食い違いがあるということでは、このままでは、私は、審議を続けることについてはいかがであろうかという気がしてなりません。
  33. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、堀さんの前の御質問に対しても同じことを答えているんです。あらゆる措置をいたします、そして補正も、必要であれば補正もいたします、こういうことにウエートを置いて御答弁をしておるわけでございまして、私は、この前の皆さんの御質問にも、あらゆる措置、その中で補正は含まぬのかと、こういうことが御質問に明確にあって答えておればよかったかもしれませんが、いずれにしても、政府がなさなければならない最大の措置ということになれば、金融だけでは済まないわけだと思います。私はそういう意味で、必要があれば補正措置も講じます。それは必要があれば四十七年度にも講じ得るわけでございます。ですから、四十七年度にも補正予算を講じ得る余地があるにもかかわらず、四十八年度の補正を組むということを前提にして話をしておるんだという御理解は、もう少し柔軟にお願いをしたい。
  34. 堀昌雄

    堀委員 総理は、御答弁ではそうおっしゃっているかもしれません。本日の委員会の再開の冒頭にお述べになった見解を、私はいまここで論議しておるわけですよ、政府見解として。私の質問に答弁でお答えになったんじゃないですよ。総理がみずから発言を求められて、そうして政府見解ですとおっしゃったことを私が伺っておる。その中には、必要があればと書いてないんですよ。いまおっしゃってないんです、それは。よろしゅうございますか、「また、とくに中小企業対策等については、予算補正を含む所要措置を強力に講ずる所存であります。」はっきりしているじゃありませんか。補正予算を組みますということを冒頭におっしゃって、補正の必要があれば、という話とは食い違うわけですから、ひとつ委員長、この問題が明確になるまで私は休憩をお願いしたいと思うのです。とんでもないですよ、この点は。ひど過ぎますよ、いまの答弁では。
  35. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は先ほど、御質問を、こうこうでございますかということを前提にしてお答えをいたしたわけでございます。したがって、四十八年について申しますならば、かりに固定相場に返る、レートがきまったというようなことのあとにおいて、中小企業対策等において必要があるならば、これは補正ということも含んで万全の対策を講ずる、こういうことを四十八年度については申し上げたわけでございます。
  36. 堀昌雄

    堀委員 私が質問してお答えいただいた話は、私はいま触れていないのですよ。政府見解をお述べになったことについて私が触れておるわけですから、だから、政府見解ならば政府見解としての責任のある御答弁をしていただかないことには、これは私は論議は前に進まないと思うのです。私は、これは決して言いがかりを言っているとか、無理なことを言っていないですよ。総理がおっしゃったことの論理を正しく理解をし、正しくお答えをいただきたいということを言っておるだけで、この日本語の文脈、文面から見て、この考え方というものは、補正予算を講じます、こういうことになっておるのですから、その点をさっきのように、必要があればというお話にすりかえられても、私はこれはそう簡単にそうでございますかと言うわけにはまいらないのです。
  37. 愛知揆一

    愛知国務大臣 万全な措置は、予算補正を含む万全の措置であって、予算補正ということの手続は要らないかもしれない、そういう含みも私は持っているものと思います。つまり、いま当面のところは、四十七年度中においても、中小企業対策ということについては、先ほど来申し上げておりますように、金融や税制や為替措置の上においても万般の措置を講じております。そして予備費の支出についても、できるだけのことをいたしたいと思っております。こういうことによりまして、予算補正というようなことは、日ぎりの関係もございますから、要らないでも済むかもしれません。こういうことも、よく御理解がいただけると思います。
  38. 堀昌雄

    堀委員 もうそういう、何か事実わかっておることを長々とおっしゃっても、時間がむだだと思うんですね。いま万般の措置とおっしゃっていないんですよ。「とくに中小企業対策等については、予算補正を含む所要措置」です。「予算補正を含む所要措置」というのは、その「措置」の中には予算補正が入っているわけです。その予算補正の入った所要措置を「強力に講ずる」こういっておるのです。「強力に講ずる」というのは、日本語ではやりますということです。違いますか。「強力に講ずる」というのは、やりますということでしょう。ただ講ずるじゃなくて、「強力に講ずる」ということは、日本語としてはやりますということでしょう。総理の答弁をもう一回お願いします。
  39. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 所要措置を講じますという中で、金融措置その他でできない場合もございますから、そういう場合には補正予算も組むのかというような御意見が出てくるのは当然でございますから、必要があればというふうに御理解をいただきたい。しかもこれは、私は率直に申し上げれば、これだけとにかく国会を尊重して私はこういうことを言っているのです。国会でもって、各党でもってお話をして、政府に対する強い要請があれば、政府はこれにこたえなければなりません。国会の意思というものを尊重しなければなりません。そういう状態において、政府は誠意を持った発言をしておるわけでありますから。これは普通ならば、こういう問題があったら各党で御相談になって、そしてこういうものを政府はのめるかどうかという御折衝があるわけであります。しかし、そういう国会の御審議過程において、われわれも事態の重大さを痛感をしながら、各党にのんでいただけるような、理解をしていただけるような最善の誠意を尽くしたつもりでございます。  そういう意味で、私の冒頭の発言ということは御理解賜われば、政府補正予算を、四十七年度まだ四十日もあるわけでありますから、補正予算さえ組んでもいつでもやります、万全の措置を講じますという姿勢を国民の前に明らかにしておるわけでありますから、それはそれだけでもって理解をいただきたいと思います。
  40. 堀昌雄

    堀委員 いま総理は、何か各党のというお話がございました。それはそういう経過があったのかもわかりませんけれども、しかし、予算委員会という公式の場で政府見解としてお述べになる以上、その責任が総理にあることは間違いがないでしょう。経過のいかんに関係がないと思います。あなたが御発言になったことは間違いがないのです。だから、その間違いのない政府の最高責任者の発言について、私が事の道理を明らかにして伺っておるのに、うしろのほうで何かやってきたものだからおれは知らぬとおっしゃっても、そうはいかないですね。これは予算委員会における公式の論議の中で、政府見解として、発言を求められてお述べになったことを、私が国民の代表の立場でこのことについての疑義を伺うのは当然ではありませんか。それについてまた総理が明快なお答えをいただくのも、また当然のことではありませんか。あとの、各党の要請とかなんとかということは、私の承知しておるところではありません。これはいま私が予算委員として、国民を代表して、総理のお述べになったことに対して伺っておるのでありますから、その問題について、必要があればとはおっしゃっていないのです。万般の措置ともおっしゃっていないのです。何回も私が申し上げておるとおりでありますから、このものに正しくお答えをいただきたいと思うのであります。
  41. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 万全の措置を講じます、その中に補正予算の必要が入れば、その補正予算も考えます、ということを述べたわけでございます。おわかりになりますか。万般の処置を講じます、万全の措置を講じます、その中の一つとして補正予算という問題も列挙したわけでございますから、必要があれば——必要のないときに補正予算を組むわけがありません。必要があれば補正措置まで考えます。これは一ぺん国会でもって御審議をいただき、議決をしたものの修正案を出すわけでございますから、それはよほどのことがなければ補正予算ということにはならぬわけであります。そういう意味で、必要があれば、ほんとうに御要請もあったり、事態に対処できないということに対しては、補正予算も含めてということに御理解を賜わりたい。
  42. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと、それでは事態をはっきりさせるために、総理が最初にお述べになった補正予算を組むというのは、四十七年度の補正予算のことか、四十八年度の補正予算のことか、そのいずれかをちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  43. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、事務当局にも十分意向を徴したわけでございますが、中小企業というものに対する一般会計は、三機関の出資とかそういうものでございます。この間やったものも、六十何億か七十億程度のものでございます。そういう意味で、四十七年度の予備費でまかなえると思いますがということでございますが、「が」があるということになれば、四十七年度にもやらなければならぬのかなということで、四十七年度にやったら三月三十一日までに全部消費をするものかということを、ずっと個別に調査をいたしました。これは大体出資でございますから、出資は四十七年度にやっても、十分四十八年度、四十九年度にも使えるわけでございます。こういうことでございまして、そういう問題に対しては、各金融機関の内容とか経理の状態とか十分調査をいたしますということでありますから、私は、まだ四十日も五十日もあったわけですから、四十七年度にウエートを置いて申し上げたわけですし、四十八年度はまだ予測しがたいものでございますし、四十八年度に対しては、先ほど大蔵大臣が述べましたとおり、この予算案を一日も早く成立をさせていただくということで事態に対処もしてまいりますし、しかもこの予算は、国内的にも内需拡大して、そういうことによって国際収支対策の一助にもしたいということを考えておるわけでございますので、私が申し上げた考え方は、四十七年度にウエートを置いて申し上げておるわけでございます。
  44. 堀昌雄

    堀委員 ちょっとお伺いします。そうすると、四十七年度にウエートを置いてとおっしゃるのは、四十八年度も入るということなんですね。普通日本語のことばでは、四十七年度にウエートを置いてとおっしゃれば四十八年度にも関係がある、両方だと、こう理解してよろしゅうございますか。
  45. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、補正を必要とする事態が起こっても、四十七年度に補正をしておけば間に合いますという考え方をそのまま理解をしておるわけでございますが、四十八年度は、まだ固定相場制に移っておりませんし、四十八年度のその後の状態を予測するわけにはいかぬわけであります。ですから、いまの状態においては四十八年度というもので、しかし中小企業は、固定相場に移れば、いま考えるよりもっと深刻な状態が出てくるよと、こういうような立場で御質問になれば、先ほどお答えしましたように、それは災害が起こるかどうかと同じことでございますので、それは事態の推移を見て対処しなければならない。それは必要があれば、ほんとうに必要があればということになると思います。
  46. 堀昌雄

    堀委員 いまのお話を聞いておりまして、もう一ぺん整理したいのですけれども、固定相場になったら何か新しい事態が起こるのですか。大蔵大臣、よろしゅうございますか、いま変動相場制で一六%ぐらいになっておりますね。愛知大蔵大臣は、変動相場制は少し長いほうがいいだろうということをお述べになっておるわけですが、そのどちらにしても、いま私どもが基準為替相場をきちんとするためには、しばらくはこれでいけるものにしなければなりませんね、固定相場にかりに戻るとするならば。またぞろ動くものでは困りますからね。それでちゃんとフロートさしておって、これならだいじょうぶという見定めのあるところでやりたいというお考えだと私も理解するわけです。そのことを私は反対しておるわけではないのですね。しかしそれは、固定相場になるとかならないとかということは法律的手続でございまして、要するに省令か政令でそれを変えるだけのことでして、経済的実体は、すでに一六%の切り上げが起きておるわけですね。だから、どうもその点の御理解がないのか、固定相場になってから考えるという話は、一体、じゃ変動相場がこれから五カ月、六カ月続いていたら考えないのかということになるじゃありませんか。現実の経済行為としてはもう切り上げと同じ情勢が起こって、中小企業がいろいろ問題がきておる。しかし、固定相場に復帰をするまでは考えないのだ、これでは、いま前段でお話しになっておった、万全の措置ということにならないではありませんか。だから、ここでこればかりやっておってもしようがありませんから、この問題を保留をして次にいきますけれども、ともかく政府が所信をお述べになった中で、そういう不明確な所信を国民の前に述べていただくようなことでは、国民としては納得ができない、こういうことをちょっと申し上げて、次へ参ります。  そこで、この中ではいろいろなことをさらにお述べになっております。「これまで生産、輸出を推進してきたわが国の経済社会構造福祉中心型構造へ転換するため努力を傾けます。」こうおっしゃったわけですね。これはおそらく、最近御発表になった経済社会基本計画を実行することによってこういうふうにしたいという御趣旨だと私は理解をしておりますが、総理、いかがでございましょうか。
  47. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御指摘のとおり、長期経済計画の中には方向を明らかにしておるわけでございます。しかし、日本の構造そのものを変えていくということでありますから、そう手のひらを返すようにはまいらぬわけであります。その意味で、方向としては、答申にもございましたし、政府が決定した経済社会基本計画の中にも明らかにしておりますから、方向は間違いないと思いますが、ピッチを上げるためにはいろいろな施策をやはり考えなければならない、こう考えております。
  48. 堀昌雄

    堀委員 この経済社会基本計画について、実は二月十五日に日本社会党の竹田四郎議員が、参議院の本会議で小坂企画庁長官に質問をいたしました。その御答弁の一節に、こういうふうにお答えになっておるのであります。「経済社会基本計画というものを本年度を起点といたしまして五年後の姿を想定しておるわけでございますが、これにつきましては、経済の成長率を九%程度、それから消費者物価を大体四%台にして持っていきたいと、こういうことを言っているのでございまして、これを達しまするためには、財政的な、あるいは金融的な、あるいは貿易的な、また場合によっては為替という問題も出てくるかもしれぬということは想定しているわけでございますが、これを何%円を切り上げるというようなことは実は申しにくいのでございます。」こういうふうに小坂長官は御答弁になっておりますね。経済社会基本計画は、ですから、何%ということは言いにくいけれども織り込み済みだ、為替切り上げ、円の切り上げは織り込み済みだと御答弁になっていますね。  ちょっと確認をしたいのですが、このとおりだと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  49. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お手元にもあるようでございますが、この基本計画の三五ページに、「自由化の促進、輸出の適正化」をやる。しかも、「財政金融貿易為替政策の適切な運用」ということばがございます。こういうことばは、たとえば一四〇ページ、一五〇ページにそれぞれ、他に四カ所、合計五カ所出ております。この中では、あるいは政府財政金融政策ももちろん必要だ、ポリシーミックスとして必要だが、その中に貿易の政策も必要である、また為替という問題も経済の実勢に応じては必要であろう、こういうことをいっておるのでございまして、何かあのときは、たしか何%と言えと、それがないからというので再質問がございましたので、そういう御要求もありますが、この場で言うことは適当でありませんと、私は適当でありませんということばを使ったと思いますが、そうお答えした次第でございます。
  50. 堀昌雄

    堀委員 これは速記録から写しておりますから、私がいま読み上げましたのは間違いございません。  ですから、これはいまの「財政金融貿易為替政策の適切な運用をはかる。」ということは、そうすると為替政策というのは、為替切り上げというのは政策手段だと企画庁は考えておるわけですね。
  51. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 四十八年度から五年後を想定いたしまして考えまする場合に、為替というものは万古不易のものではございませんで、やはりその当時の経済財政状況によりまして、たとえば基礎的不均衡があるというふうに判断いたしたる場合には、これは動くということは考えてよろしいというふうに思っております。
  52. 堀昌雄

    堀委員 総理大臣にお伺いをいたします。実は四十七年度の経済白書に、為替政策の選択の問題がはっきり出ているわけです。たしかあれは十月ごろだったと思いますが、私は大蔵委員会で、当時の植木大蔵大臣と日銀の総裁にお越しをいただいて、これは閣議決定事項ですね、そうです。それでは為替政策というのは選択の可能性のある手段ですねと申しましたら、それは官僚が言っていることで、どうもおれらはそうは思わぬ、こういう話でございました。  そうすると、今日、これも閣議決定ですね。経済社会基本計画も閣議決定だと思いますから、いま小坂長官がおっしゃった為替政策というのは、選択の可能性のある政策なのかどうなのか、総理の現在のお考えを承りたいと思うのです。
  53. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ちょっと、私に関連がございますから、お許しを願います。  私は、為替というものは輸出入の基礎になっておりまするので、できれば現状を変更したくないというのが当然だと思うのでございます。しかし、日本は他の国とのつき合いもあるわけでございますし、他の国が円というものに対して、これはどうもいまの居どころが不適当である、こう思ってきた場合には、それによっていろいろとこちらの考えを変えるということは、やはり選択の問題としてあってよろしい、こう思っておるわけでございまして、総理のおっしゃいましたのは、こちらから、何としても為替政策をてこにして政策を考えることは、どうもしたくないというお気持ちでおっしゃったのだというふうに考えておるわけでございます。
  54. 堀昌雄

    堀委員 ちょっとここを読み上げます。文脈はそういうふうになっていないのです。「第四に、世界のなかにおける日本の立場を十分に考慮して、国家的見地から各層間の利害の調整を進め、わが国の対外均衡を早急に確保するなど、わが国経済社会の国際化のための施策を進めなければならない。とくに福祉社会の実現をめざしつつ内外均衡の同時達成をはかるためには、関税の引下げ、」これは政策手段ですね。「輸入および資本の自由化の促進、」これも政策手段です。「輸出の適正化等」これも政策手段です。「財政金融貿易為替政策の適切な運用をはかる。」前向きに書いてあるのです。いま小坂長官は、向こうからきたらそれを受けとめなければならない場合もあるという言い方をなさいましたが、ここはそうなっていないのです。前向きな政策として選択をします、適切に運用しますとなっているわけですから、これも閣議了解事項ですから、総理はどうお考えになっておるのか。——ちょっと待ってください小坂さん、私は総理に聞いているのですから。要するにこれはいま重要なことなんです。前段では、総理は、ともかく円の切り上げ回避をしたい、そういうためには全力をあげたい、そこで理由もおっしゃいました。こうこうこういう影響があるから困るのだ、それで回避をしたい、こうおっしゃっていましたね。だから、それは一つの考えですから、私はそれはそれとして理解をいたします。  しかし、今度のここに出ている考え方は、いまのようなことをやるためには、為替政策も選択手段の一つだから、よそがいろいろ言う前に、国益を守るためには自分のほうからやるのだ、こういう考え方がここに出ているわけですよ。だから、それについてはたいへんな開きがあります。前段で言われていることといまのこととは完全に対置をすることなのであります。片方はできるだけ避けたいというわけですから、消極的です。片方は積極的ですから。この点についての総理見解をここではっきり承っておきたいと思います。
  55. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 経済社会基本計画は、政府が諮問をして答申を受け、閣議了解をいたしたわけでございます。閣議決定ではなく閣議了解ということで、これから五十一年、五十二年というものの展望でございますから、決定をしてがんじがらめにできるものじゃありません。事態の推移に対応しながら読みかえたり、また数字を入れかえたりしなければならぬわけであります。三百八円に見ておるものが一体どうなるのかということになれば、計算もし直さなければならぬわけでありますし、そういう意味のものと御理解いただきたい。  それから為替問題に対しては、日本はIMFに加盟しましてから、国際通貨の安定、また国際機構の整備、基軸通貨というものを、いまドルからSDRに転換しておりますが、将来かかる固定的なものをつくりたいということで、為替変動ということで国内的に影響があまり起こらないようにしたいという考え方は、もう従前から述べておるとおりでございます。ですから、固定相場制の維持ということは強く主張しております。しかし、アメリカのように向こうから切り下げるという問題もございますし、またオーストラリアのように向こうから切り上げる。今度のドルの一〇%切り下げということになると、西ドイツマルクだけは据え置きのようなことを言っておりますが、まだ一、二%上げなければならぬのじゃないか。イギリスは二、三%下げなければいかぬだろうということが議論されているわけですが、これは決定するまでなかなかむずかしい問題でありますが、決定の段階までにはやはり多国間調整をしないと、日本もなかなか固定相場に踏み切るわけにはいかないという他動的な要因も相当ございます。  しかし、そこに書いてあるものをすなおに申し上げると、これからやはり合理的、完ぺきな国際通貨制度ができれば別でありますが、そうでないと、やはり動くと思うのです。動く場合に、日本だけが固定を主張できるかどうか。いままでは固定を推進する中心勢力になっております。おりますが、やはりある時期、これはまた仮定の問題になって恐縮でございますが、これは御理解いただけると思うのですが、そういう意味では、やはり為替政策というものが一つの手段として採用されなければならないときというものを、否定するわけにはまいらぬと私は思います。そうでないと国益が守れないという場合が出てくるわけでございます。これは、アメリカは二〇%も二五%も下げてということもございます。そういうことを仮定すれば、一つには手段として使わざるを得ない場合も私はあると思います。
  56. 堀昌雄

    堀委員 時間がありませんからそんなに詰めませんけれども、どうも使わざるを得ない場合があるということはやはり受け身なんですね。為替政策というのは、だから受け身の場合と積極的な場合がある。ここを流れておるのは、受け身でなくて積極的政策手段ととれるようになっているわけですね。だからその点はひとつ、こういうものが、せっかく企画庁の諸君がつくったものが閣議決定になる、国会における答弁は、それと違う答弁が出るというようなものを決定してもらっては私は困ると思うのです。やはり内閣が決定をしているわけですから、閣議決定した以上は責任を持ってもらわなければならない。  そこでこの中で、あといろいろ伺いますが、私、読んでいて非常に意外な感がいたしますのは、これの一六二ページにこういうことが出ているわけであります。「以上の要請にこたえて、産業政策は、第一に市場原理を基本としつつ、従来の輸出競争力の強化を主とする重化学工業化政策を見直す必要がある。このため、種々の産業関連の租税特別措置等の改廃合理化、政府金融機関の融資方針の転換を引き続き推進し、社会開発、公害防除、技術振興など新しい時代の要請に応じた分野への重点の移行をはかるとともに、輸出促進のための補助金等について基本的あり方を再検討し、極力整理する。」と、こうあるのです。大蔵大臣、いまこの中で述べられておる輸出促進のための補助金というのはどういうものがあるか、お答えをいただきたいと思います。
  57. 愛知揆一

    愛知国務大臣 輸出奨励のための、たとえば税制上の措置などは、やはり消極的な奨励策というところに含まれると思いますから、こういう点は、税制改正等についてもできるだけ取りやめるということを考えましたことは、御承知のとおりでございます。
  58. 堀昌雄

    堀委員 また答弁が違いますね。用語を正確にしてください。輸出奨励のための補助金と書いてあるのです。補助金というのは国が出しておる補助金のことですよ。税制のことは、ここで税制でまたいろいろ書いてあるのです。  それでは、企画庁長官どうなんですか。輸出奨励のための補助金とここに書いた以上、どういう補助金があるのか。ないものを閣議が決定したのならまた問題がありますよ。あるのなら答えてください。輸出奨励の補助金を極力整理する。極力整理をするということは、整理できないものもあるということですね。これだけ問題が深刻になっておるときに、輸出奨励のための補助金は極力整理するということは、まだ整理しきれないという問題もなお残るということだと思うので、この点明確にお答えください。
  59. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ちょっと私の答弁を補足させていただきたいと思いますが、私は、直接の助成金、補助金というものはないと思います。ただ、ジェトロというような組織に対する助成金というようなものはございますけれども、そこに指摘されているような性格のものはないのではなかろうかと思いますが、なお精査いたしますが、しかし同時に、税制の面においてさえもそういう点は考慮いたしておりますという気持ちを申し上げたつもりでございますから、御了解いただきたいと思います。
  60. 堀昌雄

    堀委員 小坂長官、いまの御答弁ですと、補助金はないということですね。ないというのに対して、ここに明快に補助金と書いてありますよ。ちょっとごらんください。「輸出促進のための補助金等について基本的あり方を再検討し、極力整理する。」だから、基本的あり方を再検討というのですから何かがあるのですよ。なければ再検討にならないでしょう。極力整理をする、これは何ですか。
  61. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 大蔵大臣お答えのとおりでございまして、しいて言えばジェトロの補助金というようなことですが、そこには「等」と書いてあるわけでございまして、「等」ということになると、輸出貿手の優遇措置であるとか、あるいは租税特別措置の中に含まれる輸出関連の優遇措置というようなことがあるだろうと思いますが、なお精査いたしましてお答えいたします。
  62. 堀昌雄

    堀委員 これちょっと、精査をするとか、そんな問題じゃないでしょう。私、何も字句をとらえて言っているわけじゃないんですよ。大体こんな時期に、いま出てきたものですからね、その中に、輸出奨励の補助金があって、それをひとつ基本的に再検討したり極力整理をしたりするようなものじゃないんですよ。もしあるとするならば、直ちにやめますと言うのがあたりまえじゃないですか。総理、いかがですか、それは。
  63. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま御指摘になれば、少しその原稿は早目に書いたものかもしれません。ですからいま出るものに、まだ補助金制度があるのかというような誤解を海外に与えるということだけでもマイナスだろうと思います。ですから、そういう意味では、これからでも輸出補助金というようなものがあれば整理をいたしますし、それから、そういう制度をつくるというようなことは絶対にしてはならないというふうに理解をいただきたい。
  64. 堀昌雄

    堀委員 そこで、社会福祉を中心に転換をしたいということをおっしゃったわけですが、この資料の中のデータを二、三見まして、実行可能なことかどうかわからない点が少しありますからひとつお尋ねをしたいんですが、昭和四十五年に日本の下水道の普及率は一六%でした、四十七年の実績見込みは一九%です、五十二年に四二%程度にしますと、ここはこうなっているわけです。四十八年度予算でいま政府が考えておる下水道の伸び率ですね、いまの形で見た伸び率はどうなっているのか。四十五年に一六%、四十七年実績見込みで一九%というのは、二年間で三%しか実はふえてないんです。ところが、今度は四十八年から五十二年までは、一九%から四二%に、二三%ふやすというんですよ、五年間に。考えられないことなんですね。そこで、初年度である四十八年度は下水道の普及率を、現在の予算では一体何%までに高まるような予算になっておるのかをお伺いしたい。
  65. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 現在の五カ年計画が二兆六千億、御承知のとおりでございますが、今度の公共投資配分では約五兆六千五百億ぐらい見込んでおります。したがって、伸び率としましては、ちょっといま正確な数字を持ち合わせておりませんが、三十数%、非常に高い伸び率を見込むということになるはずでございます。
  66. 堀昌雄

    堀委員 四十八年度予算についてどうなっておるか、主計局長から答弁をしてください。三〇%の伸び率になっていますか、下水道は。
  67. 相澤英之

    相澤政府委員 いまちょっと調べております。
  68. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま、私の手元に比率だけございますけれども、御参考までに……。  伸び率といたしましては、下水道五七・七%、昨年度に比べましてふやしております。
  69. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、このいまの四十八年に五七%前年比伸びておるというのなら、三〇%平均というのを上回りますからそれは可能だと思うんです。  そこで、お伺いをしたいのは社会保障の問題です。社会福祉、社会保障というのは中心の課題でありますから。いま日本の社会保障の予算中に占める構成比は一四・八%に今度なりました。昨年が一四・三%で、〇・五%構成比はふえました。そこで、それでは諸外国の予算の中に占める構成比というのを見ますと、一九七〇年ですがアメリカが二七%、イギリスが二八%程度ということになっておるわけであります。西ドイツが一六・一%、ベルギーが一六・六%、スウェーデンに至っては三一・二%というのが財政支出の中に占める社会保障関連支出、こうなっているわけですが、そこで社会保障を、いろいろ社会福祉中心とこう言っておられますけれども、一体日本が西欧とのギャップを埋めるためには今後何年かかるのでしょうか、厚生大臣、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  70. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 お答えを申し上げますが、振替所得と国民所得との比率は、現在たしかそれは六%程度であったと思いますが、五十二年で八・八の振替所得に高めよう、こういうことでございますが、五万円年金というものが成熟してまいり、社会福祉施設が、いま五年計画をつくっておりますが、それが整備されますと、ILOのつくっておりまする国民所得との比較において、はっきりした数字はいま記憶いたしておりませんが、五十二年度には世界各国に比べてそう劣らない国民所得に対して一三%程度じゃなかったかと思いますが、西欧諸国に比較いたしまして相当伸びていく、こういうふうに考えております。
  71. 堀昌雄

    堀委員 いま厚生大臣がお答えになったことは、実は私が承知をしておることとは著しく違うのです。ですから、いまお調べになってもう一回御答弁いただければいいですけれども、十年かかっても、現在の伸び率ですよ、よろしゅうございますか、いまの伸び率でいけば、十年かかっても西欧水準にはとても追いつかない、こういうのが実態だと私は承知をしておりますから、正確に、予算委員会ですから間違ったことのないように、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。  そこで、ことしの予算の問題の中で、個別の予算についての問題点を少し申し上げておかなければならないと思います。ことしの、いまの予算の中で、いまの社会保障関係費というのは〇・五%しか伸びていない。それから、一番そういう関係でよく伸びておるものは恩給関係費、これはたいへん伸びて二六・八%も実は伸びております。特に旧軍人遺族等恩給が二七・九%ということで、たいへん大きな伸びを示しておるわけであります。皆さんのほうでは、これも社会保障のうちだというようなお考えのようでありますけれども、ここらは本来の社会保障の項目には数えられていないところから見ても問題があろうかと思います。さらに、公共事業の関係費については、これはもう伸び率として三二・二%も伸びて、特に問題なのは、道路の整備のための費用がかなり多く組まれておるということに、私は問題があると思うのであります。実際にいま皆さんのほうで言っておられることの中には、生活環境の整備ということを言っておられます。皆さん努力をしておられることを認めないわけではないけれども、全体の中で、いまこの予算の持っておる生活環境整備の予算の支出のしかた、これらが、一体これで十分なのかどうかという点には大きな疑問があるわけです。  そこで、ちょっと主計局長お答えをいただきたいのですけれども、ことしの予算の中の自然増収分というのは約二兆五千億でありますが、当然増経費というのは、この予算では一体幾らなのかをお答えをいただきたい。
  72. 相澤英之

    相澤政府委員 四十八年度における当然増の経費の総額は一兆六千三百九十七億円でございまして、そのうちおもなものは、歳入の見積もりによって増減するもの、地方交付税交付金等でありますが、それが七千百五億円、国庫債務負担行為の歳出化及び継続費の歳出化によるものが四百九十五億円、給与改定を含む給与費の増加が二千八百六十七億円、その他の当然増が五千九百三十億円でございまして、これは社会保障、災害、恩給等による当然増でございます。
  73. 堀昌雄

    堀委員 国債費の当然増というのはないのですか。
  74. 相澤英之

    相澤政府委員 国債費の当然増は二千四百九十一億円でございます。
  75. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、その二千四百九十一億円はどこへ入るのですか。その他へ入るのですか。
  76. 相澤英之

    相澤政府委員 その二千四百九十一億円のうち、最初申し上げました歳入の見積もりによって増減するもののうちに、前年度の剰余金の二分の一に相当する国債費の増加、これが五百四十一億円含まれております。その二分の一の定率繰り入れを除きました国債費の当然増加が千九百五十億円でありまして、これは先ほど申し上げました、その他の当然増加五千九百三十億円のうちに含まれております。
  77. 堀昌雄

    堀委員 総理、いまお聞きになったように、自然増収が二兆五千億円、そこで約一兆六千億円というのは当然増経費ですから、政策費用には使えませんね。実際に使えるのは九千億やや切れるというのが、現在の二四・六%もの大型予算を組んで起きておる現象ですね。よろしゅうございますか、今度の予算というのが、総額で十四兆二千億というたいへん大きな予算が組まれておる中で、わずかに九千億しか政策手段に使われないといういまの財政のあり方を、総理はどう考えておられますか。
  78. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 財政の弾力性がだんだんと失われつつあるということは事実でありまして、これらの財政にメスを入れなければならぬということは長いこと考えてきたわけでございます。しかし、いまの日本の財政が、法律で大体きまっておるというものが一つございます。それは、いまの地方交付税の問題とか、それから給与はそのままもちろん平年度化されるわけでございますし、それから道路とかその他のものがみんな五カ年計画、十カ年計画という計画がつくられておりまして、全然硬直したものではありませんが、ある程度のものは予約されておるというような問題がございます。  そういう意味で、当然増経費を差し引きますと、弾力的に新規政策というものに回せるものが非常に少ないということは御指摘のとおりだと思います。特に新しい政策をやるときには、これは四半期別に十月一日実施とか一月一日実施とかということで、次年度になるとこれは当然増経費になってしまうわけであります。そういう意味で、九千億というものでも新しくスタートするものにそれが組まれれば次年度は非常に大きくなるわけでございますが、しかし、現在の状態において、御指摘のように財政の硬直性というものは否一定できないことだと思います。
  79. 堀昌雄

    堀委員 私がいまこの問題に触れておりますのは、要するに、いま政府が言われておる福祉中心の政策に転換をするのは、どうしても財政で転換の手段をはからなければ、ほうっておいたってできるわけではありません。この経済社会基本計画も実はそうしなければならないわけです。ところが、いまのように財政の硬直化が非常にきびしいということは、実際に言うはやすくして行なえないというのが私は現実の姿だと思っている−わけです。今度の予算についても、そのような意味では、今度の予算の増加分の中で一体何をどこへ持っていったかという寄与率を調べてみま…しても、社会保障関係費というのは、ことしの予算の伸びた分の中のわずかに一六・八%しか持っていっていない。そうして、大きなものとしてはさっきの公共事業の二四%とか、そういうものが非常に大きなウエートを占めておって、実際にはいまの社会福祉中心の予算に、かけ声はかけていても、なかなかならないような仕組みが財政の中に包含されておるということについては、私はやはり少し抜本的に考えなければならぬ問題だと思うのです。  予算関係を終わる前に、今日の審議状態からするならば、私はこの際暫定予算が必要になるのではないかと考えておりますが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  80. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほども申し上げましたように、四十八年度予算におきましては、私、政府側といたしましては、いかなる条件下におきましても、今日の状態においては、一日もすみやかに執行を始めることにいたしたいと、御審議について特にお願いをいたしておるわけでございますから、ただいまのところ暫定予算というような考えはなく、ひたすら政府としては誠意を尽くして御説明をいたしたい、国会の御審議を促進していただきたい、こういう態度でございます。  それから、前の御質問でちょっとなにでございますが、もう済んだことではございますけれども、総理の言われましたように、新しい政策を始めて、そして平年度化するというものが相当ございます。この点をひとつ御勘考いただきたいのでございまして、たとえば社会保障関係で申しましても、老人医療の無料化、それから福祉年金の大幅な改善、これなどは四十七年度で始めたものではございますが、平年度化するのは今年でございますから、本来ならこういうものは、あるいは当然増というよりは新規増に準ずるものと扱ってもいいのではないかと思います。  それからなお、そういうことは別にいたしまして、従来的区分けから申しましても、本年度のいわゆる政策増経費は一兆千七百六十七億円ということになっております。
  81. 堀昌雄

    堀委員 まあそれは、政府がいま暫定予算を組みますという話にはならぬでしょうが、いまの予算審議の動き方からするならば、私は暫定予算は必至だと思うのです。  そこで、同じ暫定予算を組むならば、この際、さっきだいぶいろいろ議論いたしましたけれども、その補正問題等を含めた先取りをした暫定予算というものを、三カ月ぐらいともかく組んで、十分な対策を盛り込んだ暫定予算を組んで、フロートをしておることですから、情勢を見ながら、その情勢を見る中で四十八年度予算というものをあらためて六月ごろに出し直してやるという処理をするならば、財政対策としては万全の措置ができるのではないか。経済の見通しが十分立った時点で問題を処理することが、総理の立場からして当然だ。それは、さっき補正問題を含めてだいぶ論議をいたしましたけれども、現在のこの予算が十分に対応し切れるというふうにわれわれは考えていませんから、暫定予算を組むという条件になるならば、当然そういう問題を考える必要があると私は思うのですが、そういう前向きのわれわれの考え方について、総理はどういうお考えでしょうか。
  82. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 とにかく、年度予算が一日もおくれない、四月一日にこれが執行できるということが、この事態における国民のためにも一番なることでございます。そういう意味で、政府側は、御審議に対しましては誠意をもって全力を尽くしてやりたいと思うのです。ですから、まだ四十日もあることでございますし、今後ぜひひとつ通していただきたい、ほんとうにそういうことです。一日おくれればおくれるだけ対策がおくれるわけでございますので、ぜひお願いをいたします。
  83. 堀昌雄

    堀委員 そこで、本来の国際収支問題にもう一回返って、最後に国際通貨体制の問題に触れたいのでありますけれども、一体、今度のこの経済社会基本計画の中で、これはすでにエバリーさんも指摘をしておったようでありますが、この計画の五十二年度の国際収支の見通しについて、非常にわれわれとしては、こういうことでいいのだろうかという感じがする点があるわけであります。  五十二年度の経済見通しは、輸出が五百五十六億ドル、輸入が四百三十二億ドル、貿易収支が百二十四億ドルの黒字になる、こういうふうになっているわけですね。そこで、経常収支が、まあいろいろありまして五十九億ドルの黒字で、それを、長期資本収支を海外援助等で五十九億ドルにおいて、そこで総合収支はゼロになるんだという見通しになっているわけであります。  そこで一体、百二十四億ドル黒字が起きるとするならば、まだこれ五年ぐらいの短い期間ですから、対米の黒字というのが一体どのぐらいになると経済企画庁は考えたのか、ちょっとお答えをいただきたい。
  84. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 数字は局長のほうから申し上げますが、この四十八年度の見通しは、御承知のように三百三十三億ドルの輸出で二百五十二億ドルの輸入になっております。これをできるだけ輸入をふやすといいましても、何といってもそのベースが違うものでございますから、なかなかふえていかない。そこで、いま御指摘のような百二十四億ドルという黒字が残るというのが出ておるわけで、これはアメリカ方面においてはかなりショッキングな数字であるというふうに思うわけでございます。  これをどうしていくかということでございまするが、やはり私どもとすれば輸入をふやすということに、しかもいまの経済の実態から考えますと、もう日本は原料の輸入国でないのじゃないか、やはり完成品の輸入をするということにいまの日本の貿易構造を変えていかなければならぬじゃないか、そういう方面に向かって努力することによって、対米の貿易も若干改善の方向に向かうのじゃないかというように思っているわけでございます。  数字は局長から申し上げます。
  85. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この見通しは、前の第三部の最初に断わってございますように、中期マクロモデルを使っての計算でございまして、したがいまして、これは国別、地域別に幾らという数字が出るようにはなっておりません。もちろんこの日米関係、非常に重要でございますから、計画全体を通じて収支の均衡の方向にできるだけ努力していくということは考えておりますが、アメリカとの関係が幾らということはないわけでございます。
  86. 堀昌雄

    堀委員 アメリカとの関係が幾らというのはないといっても、現在の四十七年度においては、大体九十億ドルぐらいの貿易収支の黒字になって、アメリカが日本との関係で受けるのが四十億ドルというふうに推定されておるわけですね。日本の黒字の半分に近いものが実はアメリカの貿易収支の赤字に立っておる、こういうことですね。これ、もし三分の一になったとしても、やはり四十億ドル、対米で貿易収支の赤字をアメリカに残すことになるわけですね。  だから私は、一体これで、いろいろ書いてありますけれども、政策努力をすることになるのかどうかという点が、私は非常に国際収支問題については疑問があるのです。やはり対米貿易を含めて貿易の伸び率をある程度スローにしない限り、輸入は、御承知のように、いま長官も原料輸入でないものにしたいとこうおっしゃいますけれども、現在日本の貿易構成というのは、原料が三二・五%、燃料二四・一%で、五六・六%というのが一九七一年の輸入構造の中身ですね。そこで、イギリスとか西ドイツとかフランスとかアメリカというのは、それらを合わせたものが、イギリスが二四・五、西ドイツが二〇・五、フランスが二四・五、アメリカが一六・〇というように、原料、燃料の輸入というのはウエートが非常に小さくて、大体が製品輸入、工業品の輸入になっていて、一番高いのがアメリカで約七〇%、フランスが六三・四、西ドイツが六〇・五、イギリスが五三・三、日本はわずか二八・六%しか工業品の輸入をしてない。こういう構造を変えたいといっても、そう簡単に変わるものじゃないと私は実は思っていますね。  だから、そこで、こういう構造だから、実は日本の場合には円を切り上げたところで、消費者に届くものがきわめて少ないということです。原料、燃料は現実にはどこかで吸収をされる仕組みになりますから、製造過程の中で吸収されてしまう仕組みになるから、これは国民に反映をしない。だから、切り上げをしてインフレに非常に抑制力があるとかいろんな議論がありますけれども、現実にこれだけ高いインフレ基調にいま乗っておるときに、切り上げをしたからといって、こういう輸入構造が改まらない限り、国民に対する影響というものはきわめてプラスは小さい、私はこういうふうな判断をしておるわけですけれども、ここをどうやって変えるかという問題に対する政府の考えがない限り、国際収支問題の一つの大きなネックが一つここにある。  さらにもう一つは、かねて代表質問等でも申し上げておりますけれども、対米貿易が依然として三〇%台にある。これも一向に改善されないわけですね。これも構造上非常に問題がある、私はこう考えておるわけですけれども、総理はこれらに対して——いろんなことが書いてありますよ。ともかく、そうするためには週休二日制をやるべきである、公害基準を高めて公害についてのいろんな費用を企業に持たせるべきである、その他いろいろけっこうなこと書いてありますね。しかし、実際どう行なわれるかということについては何の保証もない、こういうことなんです。だから、いまのそういう輸入構造の問題、輸出の構造の問題、これについて一ぺん総理からお答えをいただきたいと思います。
  87. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 重化学工業中心のものから知識集約的な産業に移っていかなけりゃならないということは、これは言っております。言っておりますし、実際、去年からことしを見てまいりますと、やはり産業界も、無制限に原料を輸入できないということで、知識集約的なものに転換をしなければならないという動きは確かにあります。ありますが、いま御指摘になったように、私は、急激に輸出が一体減るのかということで、輸出抑制ということは当然やっていかなきゃならないと思うのです。やらなければ先方から、セーフガードの問題や課徴金の問題やいろいろな問題が当然起こってくるわけでありますから、それは起こってこなければ転換できないというようなことではなく、やはり産業界でブロック別に新しい日本の産業構造はどうあるべきかということを、政府も強力に勉強したり指導したりしていかなければならないと思います。  もう一つは、すべての原材料を日本に持ち込むということよりも、現地でもって製品化するという問題は、相手国からだいぶ要求されておるわけであります。銅鉱を持っていかないで、カナダでもって製錬をしてくれとかいろんなことが要求されておるわけでありますから、そういう問題も十分考え、実行に移さなきゃならないと思います。  輸入の問題は、やはり輸入拡大ということをどうしてもやらなけりゃいかぬし、輸入拡大することによって消費者に反映をせしむるということでなければ恩恵はないわけでありますから、輸入拡大に対しては、資本の自由化や物の自由化や、それも進めなければならぬと思うのです。残っておる三十三品目、これは三年間で百二十から三十三になったわけでありまして、ほかの国でもいろんなことを二国間でやっておりますので、必ずしも私は日本の非自由化品目というものが多いとは思いませんが、しかし、これだけ攻撃を受けておるわけでありますし、しかも、それだけではなく、やはり日本は新ラウンドを推進しなければならないという特殊な状態にあります。そういう意味で、縮小均衡を絶対に求められないという日本でありますが、国内的な政策は考え方によってはあると思うのです。これは、大豆でも何でもいろんなものがございますが、これは政府機関をつくって国内産のものは買い上げておってもいいじゃないか。必要なときには放出をすればいい。不足払いをやるというような、いろいろな過去にやったものもありますから、そういう新しいものもやりながら、生活必需品やそういうものが国民に、フロートしたような場合には、それだけ安くなったんだということがやはり反映するようにしなきゃならぬと思うのです。  私は、やはり今度の円の変動相場制によっては、対米貿易とかいろいろなことを考えますと、一時は下がらぬかもしれません。なかなか国内に急激に転換できませんから、出血輸出というものもあるかもしれません。これは、出血輸出をしないようにあらゆる角度から検討しなければならぬと思いますが、しかし私は、どうしてもある時期はこのままの状態でいくのではないかと思うのです。しかし、年間を通じて考えると、対米貿易というものは、やはり今度の四十一億ドルないし四十二億ドルというものが、四十八年度の年間を通ずると、私がかって言った二十九億九千万ドル、向こうは一年たったら十九億九千万ドル、九億九千万ドルが望ましいと言いましたが、そんなにはならないような気がいたしますが、やはり相当程度バランスはとれるだろうというような感じがいたします。  だから、産業構造の改善というものに対しては、これから都市から地方に移っていくような場合がありますから、同じものの工場設備をやられては困るのです。そういう場合でも、日銀とか銀行ともいま話をしておりますが、やはり新しい方向の産業設備投資ということにしぼっていこうということで、選別融資もしょうという考えにもなっているわけであります。
  88. 堀昌雄

    堀委員 実は日本がこういう情勢に置かれて、私はいまのような程度のテンポの政策をとっておられたら、大体二年以内にまた切り上げになると思います。これはここではっきり予見ができる情勢があるわけですね。そういう予見ができる情勢になっておる一つの問題は、実は日本の側にもありますし、アメリカの側にも実はあるわけであります。  そこで、アメリカの側の問題についてちょっと申しておきますと、いまアメリカのドルというのは交換性がないわけです。ほかの準備資産に対して交換性を持たないドルというのは、言うなれば銀行でドルを印刷さえすれば幾らでもドルは印刷できて、そしてそれについての決済手段というのはほかにはないのだ、金ともかえない、他の準備資産ともかえないんだ、おまえたちはドルでドルだけを使えということになる以上、この問題は解決をしませんから、少なくとも、やはりアメリカのドルが何らかの準備資産との交換性を回復しない限り、私は切り上げの危険というのは、こっちがやるか向こうがやるかは別としても、引き続き起こってくる情勢だ、こう考えているわけです。  いま、それではSDRがあるではないかという話がありますけれども、このSDRというのは、その裏側に準備資産の裏づけがないわけです。各国がただ約束ごとで処理をしておるだけのことでありますから、約束ごとが何らかの形でくずれればこれはたいへんなことになるという性格であります。当然このようなものは実体資産とかあるいは金融資産の裏づけが準備資産としてない限り、それを安心して各国が使うということには私はならないと思う。  だから、そういうふうに考えてくると、まず、これからの国際会議に対して、日本政府としてはやはり二つの問題を要求しておく必要があると思います。大体、第二次大戦が起こる前の世界の貿易為替状態というのは、切り下げ競争をやり、保護貿易をやった結果が、実は第二次大戦になったというのが歴史的な経過であり、そういうことを繰り返さないためにブレトン・ウッズ体制というものが反省の上に設けられた。しかし、今日ブレトン・ウッズ体制がくずれて、方向はややもすれば第二次大戦の前の情勢に返りつつあるのではないかというのが、私は今日の国際経済の姿ではないかと思うのであります。  こういうことを、また切り下げ競争をやり、あるいは保護貿易をやるということは、これは基本的に国際協調の路線に沿わないわけでありますから、その国際協調を向こうが求めるのならば、こちら側も当然アメリカに対して、ドルの交換性、何も金にだけ交換性というのではありません。少なくともその他の準備通貨その他についての交換性が回復されるということでなければ、アメリカの国際収支の赤字の問題というのは解決をしない、こう思うのでありますけれども、総理のこの問題についてのお考えはいかがですか。
  89. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 基軸通貨であったドルが金との交換性を停止をしなければならなくなったということは、ドル価値を維持していくためのマイナス要因であるということは、もう御指摘のとおりでございます。  もう一つは、どうしてこういうことが一体起こるのかという問題でございますが、これはやはりアメリカのドルが強くならない限り起こるわけであります。どうして一体ドルが強くならぬのかというと、アメリカの資産を見てみてもわかるとおり、アメリカは一千四百億ドル以上も海外投資を行なっておるわけでございます。これはなぜ海外投資するのか。国内投資に向かないわけであります。国内投資そのものに対して向けるために利子平衡税制度などをとってみたんですが、利子平衡税をやめると同時に、ドルの切り下げを行なわなければならないようになっております。ですから、アメリカに対しても海外投資の規制とかいうことが考えられなければならない。しかも、アメリカには多量の失業者がおるんじゃないか。そういう意味で、海外投資を規制してアメリカ国内の投資をふやすべきだ。アメリカ人が自分の国に投資をしないからなかなか外国からも入っていかない、こういうことまで述べておるわけであります。しかし、賃金水準が非常に高いとかいろいろな問題で国内投資が行なわれない。そのために、失業率とか、インフレ問題とか、ドルの価値が下がるとかという問題が自動的に起こっておるわけです。  ただ、やはりいま御指摘があったように、四五年にIMF体制ができて、ある程度やってきたわけです。二十五年ぐらいやってきたわけです。それで十年前に、東京総会ですか、三十九年、ちょうど十年前であります三十九年の東京総会でSDRの制度が確立をしたわけでございますが、しかし、ドルが一体基軸通貨になり得るのか、また別な基軸通貨を考えなければいかぬのかというような問題は、これは先進工業国すべての問題でございます。これが片づかなければ、新国際ラウンドの推進も不可能になりますし、御指摘のように縮小均衡に向かい、第二次大戦前夜を招来しないという保証はないわけでありますから、一にかかって、国際機関をどうするか、基軸通貨をどうするか、やはりドル価値の維持、ドルの交換性の回復ということが一番、日本とか西ドイツとしては重要な問題として考えておるわけでございます。  ですから、これからの国際機構、それから国際通貨機構というものとあわせて新ラウンドを推進しながら、縮小均衡の方向に絶対に向かわないように、これは縮小均衡の方向に向かったら、完全に南北問題も成功しなくなるわけでございますし、日本のこうむる影響も非常に大きいということでありますので、二十カ国の蔵相会議等を中心にして、できるだけ合理的なものを早くつくるということを考えていきたい、こう思います。
  90. 堀昌雄

    堀委員 そこで、いまの当面の問題は、ドルが交換性を回復することが非常に重要ですけれども、一国通貨が、今日のような不均衡な段階で、それが基軸通貨であるということは、これはもうすでにそういうことを考えるべき時期は過ぎたと思うのです。やはり新しい準備通貨が創成をされて、それが、ちょっと私がさっき申したように、金その他の実体資産あるいは交換可能な各国通貨が裏づけになった、そういう背景のあるところの、裏づけのある新しい一つの通貨体制、基軸通貨というものを考えることのほうが、より現実的であると私は思います。  その際に、私は、今日の世界的な情勢から見て、社会主義国全部を含めて、IMFというものが新しいグローバルな体制になって、そのグローバルな体制の中でいまのような考え方が処理されることが、日本にとっても世界にとっても、今後の方向としてより正しいことになるのではないのか。われわれは今後、社会主義諸国との貿易を徐々にでも拡大をしていくことを通じて、対米貿易偏重を是正する以外に是正のしょうがないわけです。欧州へどっと行こうとしておりますけれども、これも実はたいへんな問題が起こるおそれがあるわけでありますから、やはり全般的に、平均的な貿易の広がりをつくるということ。日本は貿易がなければやっていけない国でありますから、そういう問題を考えるならば、私はこの際、新しい国際通貨基金というものは、中国その他すべて現在の社会主義国が国連加盟しておる今日、当然そういうものが考えられるべき段階に来ておる。日本政府はそれをまず、日中国交回復をした国として、さらにソ連との友好関係を持っておる国として、あるいは北ベトナムについても援助をしようというのであるならば、率先してひとつそういう問題提起をすべきであると思いますけれども、総理はいかがでしょうか。
  91. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 見識ある御提案だと思っております。国際通貨基金そのものが国連の下部機構でありますから、そうあるべきなんです。そうあるべきであるし、いままではそうすべく努力をしてきたわけでありますが、分担金を出さないとか、国連の上部機構には入るが経済機構には入らないとか、まあいろいろな取引、いろいろな政治的なかけ引きがあったと思うのです。  しかし私は、これからの国際通貨ということが五カ国だけでもってできるものでもないし、二十カ国だけで必ずできるものでもないと思うのです。この前やった多国間調整、歴史的な結論だといいながら開発途上国はひどくおこって、すべての参加を求むべきである、こういうこともあったわけでありますから、やはり国際通貨の新しい安定、これは金本位制に返れるというわけではないわけでありますし、新しい基軸通貨というのは全世界がこれを認め、この価値を維持していけるようなものでなければならないということでありますから、非常に貴重な提案だと考えております。
  92. 堀昌雄

    堀委員 最後に、今度の通貨問題のときに痛感したことで一つ申し上げておきたいことがあります。  それは、すでにこの前のときにも申し上げたけれども、日本の金融機関が一週間ずっとあけておるということはどうも適切を欠くと思います。通貨問題が起きたときに、欧米諸国全部土曜日が休みであるにもかかわらず、日本だけが現状で為替市場をあけておるなどということは、国際的な問題として適当でない。当然私は、まずすみやかに金融機関を含むこういう週休二日制の問題は、ごく急いでやるべき問題だと思うのです。この計画の中には、五年目までにはやろうなどというなまぬるいことをいっていますけれども、そんなことでは私はいまの基本的な問題の解決にならないと思います。私はこの際、単に金融機関だけでなく、官公庁を含めて、地方自治体等を含めて、政府はすみやかに検討をして、できれば今年中ぐらいに結論を出すくらいのかまえでこの問題を処理して、すみやかにひとつ週休二日制をこの年度内ぐらいに検討を終わるぐらいにすべきである、こう考えるわけでありますけれども、これについての総理見解を承って、私の質問を終わります。
  93. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政府も、週休二日というものは推進をするという基本的態度でやっておるわけでありますが、中小企業等の問題もございます。そういう意味で、いまの変動相場制に移ったというところでまた週休二日制と、いますぐなかなか解決はできないと思います。しかし、それに対してはいま堀さんの言われるように、銀行からやりなさい、また官庁からもと、これはわれわれも議論の中で、やるならば官庁からだというような議論もしております。おりますが、それには、いまの縦割り行政でもってどうも法律が多過ぎるとか、こういういろいろな法律に対しても、要らない法律、ほんとうに死文になっておるようなものがないのか、そういうものまで考えないと、なかなかすぐいま踏み切れないという問題がございます。  大企業や基幹産業等も隔週週休二日に入っております。だから為替市場などは、これはこの間も大蔵大臣述べましたとおり、土曜日には開かないというぐらいなことは、これは週休二日の第一歩としてやるべきだろう。これはどうも御納得がいかないあれもありますが、いまはこのような状態のときでございますので、慎重に事態をよく把握しなければならないと思っておりますが、週休二日というような方向に対しては、政府は進めていく考えでございます。
  94. 堀昌雄

    堀委員 いま私が申し上げておるのは、要するに過去の反省がなければ、ここに責任とかいろいろおっしゃっているわけですが、過去のやり方の反省の上に、これから前向きにものを処理しようということでなければなりませんね。それでなければならないとするならば、この際週休二日制——いま混乱が起きているときにすぐやれと私は言っておりません。少なくとも検討をこの一年間に終わるぐらいでなければ、ほうっておけば、五年目ぐらいになるかならないかまだわからないというのが日本の実態です。あなたも決断と実行と言うぐらいなら、これ一つぐらいここで決断と実行の答弁をしたらどうですか。一体検討をいつまでに終わるか、それだけひとつ答えてください。
  95. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いつまでに終わるということでなく、これはひとつ前向きで検討いたしておりますということで御理解いただきたい。そうでなくとも中小企業には、つとめておる人がやめていくというような事態もあるんです。そして、もう中小企業零細企業では若年労働者が雇えないというような事実もありますので、そういう事態承知をしながら、いますぐ結論を出します、こう言っても、なかなかむずかしい問題でございまして、とにかく御理解をいただきたい。
  96. 堀昌雄

    堀委員 いま総理がみずからお触れになったように、週休二日制のデータは、私も詳しく調べてみました。中小企業でやっておるところは、それによって人がたいへん来るようになっておる、こういうデータが現実に出ておるわけです。要するに、ある一つの慣習をそのまま維持しておることが、それがいまの中小企業のためなのか、週休二日制をきちんと全体としてやれる条件をつくりたときに、中小企業にも人が行くようになるのか、そこの発想の転換がなければ、私はこの通貨問題に対応することはできないと思うんですよ。これはただ一つの例です。そのほか公害の問題なりいろんな問題たくさんありますよ。たくさんありますけれども、せめてこれ一つぐらいは、欧米との関係でどうしても並べなきゃならぬところへ来ていると私は思うんですね。アメリカはすでにもう週休三日制に入ろうというところが出ておるという段階に、これでは問題があるわけですね。だから、ひとつ今年中には検討は終わると——いつからやるについては、話は多少弾力を残しましょう。今年中にひとつ政府は責任をもって検討を終わる、このぐらいの答弁をしてもいいんじゃないですか。この時期は、私はきわめて重要だと思います。あなたが、きょうの最初のあれで責任を感ずるとおっしゃっておるのなら、私はまあ時間の関係もあるから、もっといろいろ責任問題も伺おうと思ったけれども、それは途中でやめたわけです。それだけあなたにフェーバーを与えたんだから、ここでひとつそのぐらいを国民に約束していいんじゃないですか。
  97. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 週休二日制は推進をいたすということは、申し上げておるわけです。そのほかに社会保障の問題もありますし月給を上げなければならない問題もありますし、いろいろあるのです。私も週休二日で二日ぐらい勉強したい、そうすれば、もっとおほめにあずかるような仕事もできると思っておるのです。しかし実情がありますから、これはことしじゅうにどうかということよりも、やはり誠意をもって検討しておるということで、ひとつ御理解を賜わりたい。
  98. 堀昌雄

    堀委員 それでは、田中さんも私の方針を御存じだから、それじゃ何年たったらやるのですか。それをお答えください。三年先ですか、五年先ですか。何年たったら政府は決意をするのですか。そこだけお伺いしたい。
  99. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 何年たってからということになりますと、また食言にもなるとなんですし、そういうことではなく、こういう問題はお互いが十分実情を把握して、日本のために望ましい最上のものを得ていかなければならないわけでありますから、そういう意味で、何年たったらどうするかということではなく、ひとつ政府に対してはときどき御叱正を賜わって、そうしてひとつほんとうに国民の理解が得られるような状態を早くつくるように、政府も全力を傾けてまいりたいと思います。
  100. 堀昌雄

    堀委員 たいへん残念な答弁です。国民は、いま円の切り上げ等について政府のこれまでの施策が誤っておるということを考えておるわけです。そういうときに、国民に向かって、ひとつ田中内閣は、この際、今年中に検討を終わって、おそくも来年中にはこれを実施しますと、あなたがここで答弁をすれば、田中内閣というものが決断と実行をやるときがあるなとなるけれども、いままであなたが決断と実行をやったのは、中国問題といわゆる第四次防だけで、何もやらないじゃないですか。いまあなたの株がたいへん下がっておるというのは、何にもやらないから下がっておるわけだ。だから、少し私が、あなたの株の上がるチャンスをいまここで与えておるのに、それも断わるというようなことで、私は、あなたの政治家としての諸問題についてたいへん失望しました。まあせっかくひとつ、もう少し決断と実行の看板が泣かないように御努力をいただきたい。  終わります。
  101. 根本龍太郎

    根本委員長 これにて堀君の質疑は終了いたしました。  午後二時に再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時三十五分休憩      ————◇—————    午後二時七分開議
  102. 根本龍太郎

    根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。村山喜一君。
  103. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、総理が、今回の国際通貨の危機の問題をめぐりまして、本会議における質疑応答の中から、いろいろな発言をされておる、そのことについてまずお尋ねをしてみたいと思うのです。  それは昨年の秋の臨時国会におきまして、田中総理は円の再切り上げ回避できると思う、外圧で切り上げを迫られるような状況にはない、もし切り上げに追い込まれるような場合には、相当な政治責任が生ずるものというふうに断言をされました。今回の国会の施政方針演説の中で、円の再切り上げ回避のためにあらゆる努力をする、こういう言明をされてからわずか三週間後には、事実上の円の再切り上げに追い込まれる、こういう情勢になったわけであります。  この予算委員会におきましても、二月の十二日、そして十三日におきましては、私も愛知大蔵大臣に若干の質疑をいたしたのでありますが、十四日の衆議院本会議、あるいは十五日の参議院の本会議における総理の答弁を聞いておりますと、これは円の出世物語をしゃべっておられる。そして外圧に責任を転嫁して、円が切り下げになるよりも切り上げのほうがましだ、ドルの切り下げで円の価値は上がったんだから、これは喜ばしいことだ、こういうような旨のお話をされているわけであります。そこで私は、これはやはり政治責任を持つ総理として、この円の出世物語というものをいまでもあなたはそういうふうにお考えになっているのかどうかですね、その点についてまず第一点ただしておきたいと思うのです。  いま、やはり国民が率直に政治に対して批判をし、期待をしているものは、なぜ自分たちが使うこのお金が、値打ちがこんなに下がっているのだろうか、内には非常に弱い円が、なぜ外には強い円になっているのだろうか、こういうことをふしぎに考えているに違いないと思うのです。ですから、そういうような意味から、国民は一生懸命汗水たらして今日まで働いてきました。そして、週休二日制もまだ実施をされていない。低い賃金で超過労働をしいられながら、そして働いてきた。ところが、その中において公害が発生をする、過疎過密が生まれる、こういう状態の中で、消費者物価は年率六%近くも上昇をたどっているわけです。そういう生活環境の中で、なぜ円の値打ちはこんなに下がっているのに、外には強いのだろう、なぜその円の国内価格と対外的な価格の乖離が縮まるような姿の政治を政府はやろうとしないのだろうか、それを、そういう庶民の感情の中から、円の出世物語などということを聞かされても、これは国民はぴんと来ないのじゃないか、そういうように私は考えるのですが、やはり田中総理はそういう考え方国民にこの問題についての話をされるつもりであるのか、その点をまずお伺いしておきたいのです。
  104. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国際的に強い円が国内的になぜ弱いかということでございますが、この問題は、戦後まだ四半世紀余の歳月しか経ておらぬわけでございまして、外貨を持たなかった昭和二十年代の国民生活がどのような状態であったかは、もう申すまでもないことでございます。アメリカのドルを背景にしながら、ようやく貿易を再開した当時のインフレの高進、国民生活状態、これは私がもう申し上げるまでもないことでございます。その後、国際収支の天井も低い日本が、輸出推進の政策を推進したことによりまして、とにかく国際収支はようやく好転をし、この二、三年来日本の円が急速に強くなったということになったわけでございます。  国際通貨制度が確立をし、固定相場制が維持されていくことが望ましいことは、もう基本的に間違いはないわけでございますが、しかし、円が切り下がるほうが得なのか、切り上がるほうが得なのかといえば、これはやはり切り上がるほうが、比較論として有利であることは言うまでもないわけでございます。原材料を持たない日本が、原材料を海外から輸入し、これに国民的英知を加えて輸出をする、その対価として外貨がたまり、それが国力になってきたわけでございますから、そういう意味では日本の円価値が上がるということは、円価値が下がるということよりもいいわけであります。それは、いま切り下げなければならないアメリカのドルと、据え置きか切り上げなければならないような西ドイツのマルクを比較してみてもわかるとおりでございます。だから、そういうことで、海外から原材料を輸入しなければならない宿命下にある日本としては、外貨がたまること、また日本の円が強くなることは、国際競争力が強くなったということでございますから、それはそれなりに意義のあることであるし、いままでの政策はそれなりに効果を持ってきたものであるということは事実だと思います。  しかし、円がこれほどに高くなっておるにもかかわらず、国民生活はそれにマッチしておらぬじゃないかということは、先ほども申し上げたとおり、まだ円価値が非常に高くなったというのは二、三年来のことでございますし、日本の国際収支がよくなったということは、ほんとうにこの二、三年来でございます。おととしの一月には外貨準備高は四十五億ドルということでございまして、外資調達ということに専念しなければならないような状態だった。それからまる二年しかたっておらないということは、結論的に申し上げると、アメリカのドルが急速に下降線をたどったという結果、今日に至っておるということは、対米収支が非常に不均衡であるという事実に徴してもわかるわけでございます。しかし、これからはやはり国内的に、お互い国民が汗でかせぎ上げた国際競争力、またその蓄積というものが、国民生活に還元されなければならないということでございまして、これからは私は、やはり国民生活というもの中心に円が働くということになるものだと考えます。だから、外貨を持たない、国際競争力が非常によくない、弱いときは、社会保障も、国民生活の向上そのものも不可能でございましたが、今度は国際的にも求められておりますし、国内的にもなさなければならない事態がたくさんあるのでありますから、これらを十分調整をしながら国民に還元をするという施策を進めてまいりたい。今度は国民に還元をするという方向にウエートを置くことによって、外国との調和もとり得るという、二つの目標がちょうど合致をしておるのでございますから、国民がかせいだ、国民が集積をした円の力というものは、これからやはり国内向けにウエートを置いて使わるべきだ、こう考えておるわけでございます。
  105. 村山喜一

    村山(喜)委員 一生懸命働きながら、GNPは確かに世界で二番目になった。そして今度ドルの一〇%切り下げで、なるほどドル換算をしたらGNPも、一人当たりの労働者のその価値も、上昇をすることは間違いない。しかし、それは名目上の上昇であって、内容的に中身が伴わなければ問題は解決をしないのだ、私はそういうふうに考えてもらわなければ、政治をやる総理の姿勢としてはおかしいじゃないかと思うのです。ですから、いまこれからやるのだ、われわれが卸売り物価を中心に経済力に力をつけてきて、そして外貨が年に六十億ドルも八十億ドルもたまるような状態をつくり出してきた、そして、今度の経済計画によりましても、来年度はやはり八十一億ドルは貿易収支の黒字があるのだ、そして経常収支では五十億ドル程度にとどめるのだというような計画でしょう。その中からドルが蓄積をされて百八十億ドルもたまり込んで、そういう状態の中で今度通貨の改定が迫られてきた。一〇%切り下げになったら、その分だけドルで蓄積をしておった価値というものは下がってしまう。だから、一夜明けてみたら一〇%分は、一割分はお金の値打ちが下がったことになる。それだけ損をしたわけでしょう。そういうようなことを考えていけば、国民の手に残ったのはドル紙幣という紙きれと、そして公害だけしか残っていないのじゃないか、国民の生活の上には公害や、その他いろいろな国民の資材が浪費をされて、そういうようなドルが蓄積をされたにすぎないのだ、こういうことになってしまう。  しかもその間に、そういう外貨が急激にふえてきましたので、過剰流動性になって、それを手にした資本家の諸君が、一年間に株価でも二倍に上昇したキャピタルゲインを自分の手に入れているでしょう。土地の値段はアメリカの十倍もするような状態になっている。しかも、その土地を取得したのはほとんどが法人だ、そういう形の中にあって、庶民は七十円もするようなとうふを食わされているわけですよ。  ですから、ここで大蔵大臣にお尋ねしますが、株価は一年間に二倍になったというけれども、幾らキャピタルゲインが生じているのですか。それはどういう人たちがその利益を手にしているわけですか、明らかにしてもらいたいと思います。
  106. 愛知揆一

    愛知国務大臣 株価の値上がりのキャピタルゲインが幾らかという御質問に対し、いま的確な数字を持っておりませんが、これはまたなかなか前提その他がございますから、的確な数字を申し上げるのに適しているかどうかもわからないと思います。と申しますのは、御承知のように証券市場におきましても、相場は相当の高下をいたしておりますし、そのどの辺をとって計算をしてみるかというようなところにも問題があると思います。さような点で、御所望のような数字ができるかどうか自信はございませんが、せっかくのお尋ねでございますから、何か考えてみたいと思います。
  107. 村山喜一

    村山(喜)委員 それはこの前資料として私がもらったんです。総理大臣、二十四兆円もキャピタルゲインを生じているんです。二倍になっていますよ。そしてそれはほとんど法人が、もういまでは会社が持ち合いのような形で株は持っている。個人株主の持ち株数は、その占有、シェアというものはずいぶん下がってきておる。そうして土地の売買利益もまた、宅地だけで十兆円ということがいわれております。そういう中にあって、この外貨の蓄積という問題が、国民には、ありがたくないという姿の中でとらえられているわけです。それを、あなたはやはり円の出世物語で、ドルが切り下げになったんだから喜ばしいんだ、そういう感覚では、やはり政治をやっていくことはできないんじゃないかと私は思うのです。  もう一つの問題は、やはり今度起こった問題は、その根本的なそういう変動を引き起こした張本人はアメリカなんだという考え方を、私はとってもらわなければいかぬのじゃないかと思うのです。今回の第二回目のニクソン・ショックというのは、アメリカが国際収支についての節度を守らなかった、貿易収支の黒字国に対して一方的にアクションを要求をしながら、自分は過剰ドルが生じている、そういうドルの処理をやっていない、そしてドル交換性の回復もみずからは努力をしないで、そして自国本位のドル本位政策を続けてきた、そこに根本的な原因があるんじゃありませんか。そういうような問題を考えますと、これは大蔵大臣、いま外国通貨当局が持っている公的ドルの総額と、それからアメリカが持っておる、それに対応する金貨の交換可能の数字をどういうふうに押えておいでになりますか。
  108. 林大造

    ○林(大)政府委員 お答え申し上げます。  世界の外貨の高を国際流動性という概念で掌握いたしておりますが、その一番最新の数字が一九七二年の十月末の数字でございます。その数字によりますと、世界全体で千五百八十九億ドルの総準備がございます。そのうち外貨が九百七十二億ドルでございまして、そのうち九月末の数字で申しますと、米国のドルの債務、公的な債務になっておりますものが六百億ドル、それから英ポンドその他が八十二億ドルで、残りの二百七十七億ドルはユーロダラー市場その他の外貨になっております。  それから、アメリカの持っております公的な準備でございますが、これは一九七二年十一月末の数字でございますが、合計で百三十三億ドルでございます。
  109. 村山喜一

    村山(喜)委員 スミソニアン協定が前回締結をされたころには、このドルが約三百億ドルといわれておりました。それがもう二倍にはね上がっておる。アメリカのそれに対応する金の支払い準備というものは百十億ドル程度しかない。そういうような状態にいまなってきているわけです。だから私は、やはりここで日本の政府がみずからの問題として今後においての円対策を講ずると同時に、いままでアメリカに対して、政府として、そういうドル本位制の政策を続けてきたその責任について、正すべきことを要求をされてきたかどうか、これについてお尋ねをします。
  110. 愛知揆一

    愛知国務大臣 午前中の御論議にもありましたように、アメリカが国際通貨の唯一の基準通貨になっている。その責任跡ら申しましても、アメリカのドルが金との兌換性が停止されておるし、それからその後のアメリカの国内対策あるいは国際的な対策というものが、二十カ国委員会等におきましても、いろいろの論議の対象になっていることは御承知のとおりでございます。  政府といたしましても、そうした多数国間の会議におきましても、あるいは日米間の接触におきましても、そういう点については大いに日本の主張すべきところを主張しておるわけでございます。一口に言えば、これはいわゆる黒字国の責任だけではなくて、赤字国の責任でもございますし、それからアメリカ自体の国内、国際的な政策の問題でもあって、たとえばインフレ政策というようなものを抑止するとか、あるいは海外に対する投資等についての抑制の措置が十分でないとかいうような点については、引き続きずっと日本側としても十分の主張はしておるわけでございますが、今回のドルの切り下げというようなことが行なわれましたのは、そういったようないろいろの環境から、あるいはアメリカとしてもこれは非常な大切なといいますか、緊急事態であるというような認識のもとにとられた措置であると思います。同時に今後の国際通貨、貿易の安定は、日本はもとよりのこと、ヨーロッパその他関係国の間でも非常に重大な関心事でございますから、あらためてそういうような点については十分の論議を尽くし、アメリカとしてとるべき措置も十分に考えてもらうように努力を新たにいたしたいと、こう考えております。
  111. 村山喜一

    村山(喜)委員 私がお尋ねしているのは、これからの問題じゃありません。いままでそういうような状態にあるのに、なぜ直そうという努力をするように要求をされなかったのかということを聞いているのです。要求されたんですか。
  112. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは要求とか、あるいは要請とかいうことよりも、やはり国際間の協調で、相ともによくなるようにしていかなければならぬ問題でございますから、政府としては、ただいま申しましたような態度でいままでもできるだけの努力はしてきたつもりでございますが、同時にまた、先方からすれば先方としての主張というか言い分もあるわけでございまして、これがやはり国際協調であると思います。したがって、円対策としては三次にわたって、日本側としてもやるべきことについては十分考えて、この推進をはかってきたことは御承知のとおりであります。
  113. 村山喜一

    村山(喜)委員 答弁になっていませんよ。あなたの言われるのは、これからの問題ばかり言われて、そういう節度ある行動をとるように、あなたが通貨外交をやるその責任者だとするならば、おやりになったんですか、ならないのですかと聞いているんだけれども、やったということを言われない以上は、やらなかったんだ、いままでは放置してきたんだ、こういうふうに思わざるを得ませんが、それでいいですか。
  114. 愛知揆一

    愛知国務大臣 必ずしも私がその当事者ではなかったわけでございますが、政府としては一貫してさような態度をとり、また、しばしば日米間におきましては、あらゆる機会においてさような主張というか、協議というのか、これが行なわれておりましたことは、私は相当御承知のところかと思います。
  115. 村山喜一

    村山(喜)委員 それはこれから詰めていきますから、その中でも、政府の通貨外交に対する自主性がないという具体的な例を指摘をしながらやってまいりますが、まあこういう中において田中総理は、円の価値が上がった、円が出世をしたんだからいいじゃないか、これで国民が納得をするというふうにお考えになっているんだろうか。私は先ほど総理の答弁を聞きながら、まことにまだ了解がいかぬわけですが、あなたが本会議で言われたことで、国民は、ああ田中さんが言うことは間違いないというふうに受けとめていると、あなたはまだいまでもお考えになっているのですか。そうでなければこういう際に、外には強いけれども内には弱い円になってしまった、この対外的な価格の評価と対内的な価格の評価の乖離を縮めていくようにやらなければならないんだということで、そういう円の出世物語は誤解を与えたんだということであるならば、誤解を与えないように国民の前に話をされる責任があるんじゃないかと思うのだけれども、これについてはどうですか。
  116. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 自国通貨というものが強くなるほうがいいのか弱くなるほうがいいのかといえば、これは強くなるほうがいいにきまっておるのです。  それで、国が発行しておる通貨というものは、国際的に何が一体裏づけなのか。ということは、これは財産が一つの裏づけであります。それは昔の兌換券のように、日本が保有しておる金は、これを国際的に兌換できたわけでありますから、日本の円は五円は五円として国際的に通用したわけであります。その後兌換券が廃止されて、兌換券が廃止をされた場合には、その裏づけになるものは何であったか、それは一つには国民の生産力であります。国民の生産力が、自分が生産をして自分が消費をしてしまう場合には、外国に対しての通貨の価値は維持できないことになるわけであります。第三には何かというと、外貨が裏づけになったわけであります。それは、外貨が裏づけでないときには一体円はどうであるかというと、三百六十円対一ドルでありましたが、当時の三百六十円は、これは六百円もありました。二百五、六十円という円の交換性もあったわけであります。そのまん中をとって三百六十円というドルレートがきまったことは、あなたも御存じのとおりでございます。その当時、外貨を持たなかった日本の円というものは、破局的なインフレ状態であったことも御承知でございます。  しかし、それがだんだんだんだんと国民の生産力が上がり、外貨が蓄積できるような状態になってきたときに、日本の円価値というものは安定をしてまいったわけでございます。それが今度は日本はどういうことかというと、外貨をもって外国から原材料を輸入してきて、これによって輸出をするということが日本の国力になっておるわけであります。国の財産になっておるわけであります。日本が、日本でもって米をつくり、日本が全部消費をしてしまえばそれは日本の国力も国民の財産も全然ふえないわけであります。お互い家族の間でもって賃金を払い合っておるようなものであって、それはますます円価値は下がるわけございます。  その意味においては、日本の円とドルとの価格が一〇%切り下げられた場合には、アメリカから物を買う場合には、原材料を買う場合には、少なくとも一〇%安く買えるわけでございますし、しかも、日本の品物を売る場合には一〇%高く売れるわけでありますから、外国に対しては円が強くなったことは、国力をふやすためにいいことであることは間違いありません。しかも、国内においては、外貨をためることだけにウエートを置いて、国内政策をやらなかったじゃないかというところに問題がありますから、それはこれからやれるようになります。これからやらなければならないと思います。  だから、先ほども議論がございましたように、五十二年までには、国民所得の六%の社会保障費を八・八に引き上げられます、実質引き上げられます。あとは残るのは何かというと、円平価の変動ということによって影響を受ける中小企業零細企業に対して万全の体制を行なうということであればですな、それはマイナス要因にはならない。ここはやっぱり明確に割り切っていただかなきやならぬと思うのであります。
  117. 村山喜一

    村山(喜)委員 総理発言を聞いており、ますと、これはもう円の切り上げはやったほうがいいのだ、そして国内での影響をできるだけ縮めるようにすればいいのだというふうにしか受け取れないのですよ。だから、あなたのたてまえは円の出世物語が本音であって、そして国内の調整はこれからやっていくのだ、そういう受けとめ方になっているような気がしてなりません。しかし、あなたの今日に至るまでの長い話を聞いておりましても、これ以上は論議が進みませんので……。  あなたのいまの発言は、対外的に輸入をする場合には、安い値で入ってくるのだからいいのだ、そしてあとの処置は、国内でそういうような悲劇が出たり、あるいはトラブルが出たりするようなのを調整をしながらやっていけばいいのだ、これでいいのですか。そういう受けとめ方をしてもいいのですか。いまの発言はそういうふうにしか受けとめることができませんよ。
  118. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 円価値が下がることがいいのか、上がることがいいのかといえば、これはもう……(「それは一般論を言っているのじゃないか」と呼ぶ者あり)一般論を言っているのです。(「そんな解説を聞いているのじゃない、施政の方針を聞いているのですよ」と呼ぶ者あり)そんなことないでしょう。それではもう一ぺん言うてください。
  119. 村山喜一

    村山(喜)委員 問題は、あなたは昨年の秋の国会では、円の再切り上げ回避できると思う。そして今度の国会でも、再切り上げ回避のためにあらゆる努力をするのだとおっしゃった。ところが、今度の本会議質問等で、円が切り下げられるよりも切り上げになったほうが好ましい、そしてこんなに円の価値が上がったのだから、ドルの切り下げで円の価値が上がったのだから、それは非常に喜ばしいことだ、そういうようなことを話をされたでしょう。それで、そういう政治の姿勢の中からは、この問題についての解決は、円対策は生まれてこないのじゃないですかということを私は言おうとしているわけです。
  120. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 二つの問題を別々に言っておるわけでございます。一つ一般論でございますし、一つ政府が当面する、日本が当面しておる問題を述べたわけでございます。  少なくとも、前に述べましたのは、平価調整という多国間における例のない平価調整が行なわれました。それは開放経済に移行しなければならない日本、しかも縮小均衡に移ってはならない日本、日本は貿易立国でございますから、海外から材料を輸入して、それに国民的英知を加えて輸出をするということだけで国富が増大をし、国民生活の向上が願えるわけであります。そういう意味からいって、国際的な協調をしなければならないということは言うまでもありません。もう一つは、協調の中の具体的な事実として、国際通貨が安定しなければならないということ、もう一つは、国際流動性を確保しなければならないということは事実でございます。そういう意味で、われわれはIMFに加盟をし、十カ国の蔵相会議の主要メンバーとして、国際通貨の安定に寄与し、貢献してまいったわけでございます。  それが第一回目の通貨の調整によって円平価切り上げられたわけございます。そのためにわれわれは、その影響を受ける中小企業零細企業に対しては当然の措置をしなければならなかったわけでございます。しかも、切り上げられてから、まだ一年もたたないような状態のときに再び通貨調整が行なわれるような状態になれば、対内、国内の産業体制がありますので、これが対策に万全を期します。それだけではなく、国際協調の立場から考えてみても、一つの原因が日本の国際収支のアンバランスにあるというのでありますから、だから自由化をはかり、それから国際収支対策を強力に進め、輸入拡大輸出内需に回すために、大きいといわれた補正予算審議さえもお願いをしておったわけであります。その意味において、私たちは第二の通貨調整というものが行なわれないように万全の対策をとっておりますと。そのときに、そんなことを言っても、半年もたたないうちにまた切り上げが行なわれるかもしらぬというような世論がございますが、この種の問題に対して、再び平価の切り上げは避けがたいなどということを言える立場にないことは、これは大蔵大臣や日銀総裁が、公定歩合の引き上げに対しては、そのときまで全然考えておりません——私はここで、考えておりませんという答弁をしてから直ちに特別発言を求めて、ただいま公定歩合が引き上げられましたということを申し上げたこともございます。これは私は、当然そういうことだと思います。切り上げるなどということを責任ある立場で言えば、これはもう日本にはドルの大量売りになることは当然であって、国益を守るゆえんではありません。そういう意味で、第二の平価調整を避けるために万全の体制をとっております、避けられると思いますと言うのは、政治的な立場上当然のことでございます。  第二の問題は、今度、そうは言いながらもまた、相手が切り下げたことによって実質的には、フロートすることは円が切り上げられたことではないかということに対して、切り上げが得なのか、切り下げるような状態が日本全体として得なのかということを比較してみるときには、切り下げよりも切り上げのほうが日本の国力が増すことを意味しておるのですという、別の次元の話を申し上げておるわけでございます。
  121. 村山喜一

    村山(喜)委員 一般論であなたと押し問答をやっておっても、これはしようがありません。  問題は、いままで金の裏づけのないドルがたまり過ぎてきた、そのたまり過ぎたものを何とかして減らさなければいかぬということで、四十八年度の経済見通しの中でも考えていらっしゃるでしょう。そしてそれを、国民のほうに資源を回していくとか、あるいは対外援助に使うとか、そういうようなことで外貨の保有高を減らしながらやっていくのだという政策をおとりになろうとしているわけでしょう。現在ある百八十億ドルは、来年度はどういうふうにしようということにしているのですか。
  122. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはしばしば申し上げますように、日本の輸出輸入についての一応の見通しを持って、輸出ももちろん伸びましょうが、輸入はできるだけ拡大して、その幅をできるだけ狭めていこう、こういう角度に立って考えてまいっておるわけでございます。
  123. 村山喜一

    村山(喜)委員 現在、日本の通貨当局が持っている外貨の内容は、どういうふうになっておりますか、保有高は。
  124. 林大造

    ○林(大)政府委員 お答え申し上げます。  一月末の外貨準備の残高は百七十八億五千六百万ドルでございます。そのうち、金が八億百万ドル、外貨が百五十九億九千万ドル、IMFのいわゆるゴールドトランシュが六億四百万ドル、SDRが四億六千百万ドルでございます。
  125. 村山喜一

    村山(喜)委員 このほかにアメリカ等の中期債、長期債、それから為替銀行に対する預託分がありますね。この中身はどうなっていますか。
  126. 林大造

    ○林(大)政府委員 お答え申し上げます。  外貨預託は、昨年の一月から十二月末まで一年間で約二十二億ドル預託をいたしました。この二十二億ドルの預託は、全部日本の国内の外国為替銀行に対する預託金でございまして、したがいまして、外貨準備の中には入らない金額でございます。外貨準備は対外的な資産を計上することにいたしております。
  127. 村山喜一

    村山(喜)委員 そのほかに、まだ中期債、長期債、債券関係が明らかにされておりません。それから、日銀が輸入ユーザンスの半分を貸すことによって、外国銀行からドルの借り入れを減らしている分がありますね。この分が幾らですか。
  128. 林大造

    ○林(大)政府委員 たいへん恐縮でございましたが、外貨預託の金額は二十八億ドルでございまして、ただいま申し上げました二十二億ドルは、昨年の一月から十二月までの輸入スワップの金額でございます。これは日本国内の外国為替銀行の間のスワップ取引に基づく金額でございまして、したがいまして、外貨準備という実質は一切備えておりません。  それから、お尋ねのございました中長期債等の購入額は、およそ十三億ドルでございます。
  129. 村山喜一

    村山(喜)委員 外貨保有高が、金の割合は率からいいますと年々減ってくる。そしてドルがたまって百七十八億五千六百万ドルある。そのほかに、そういうような含み的な外貨保有というものが四十一億ドル。まだそのほかにも若干のものがあるようでありますが、そういう外貨保有高を、今度は四十八年度ではどういうふうに持っていこうとしているのですか。その数字はどうなりますか。
  130. 愛知揆一

    愛知国務大臣 四十八年度の見通しといたしましては、四十八年度末の基礎収支を九億五千万ドルの黒字と想定をいたしまして、四十七年度末に比べるとかなりの縮小を見込んでいるわけでございます。しかし一方におきまして、短期の資本収支、それから為替銀行のポジションの推移等が見通しがたいのでありますので、外貨の増加がどのくらいになるのか見込むことはなかなか容易なことではございません。しかし、一応の計算といたしましては、四十八年度中におよそ三十二億五千万ドルの外貨の増加があるという想定をいたしておるわけでございます。
  131. 村山喜一

    村山(喜)委員 いまで大体公的な所有が二百二十億ドル、その次に来年度、いまのような経済運営をやっていくと、三十二億ドル余りさらにたまる。そういうふうな状態に持っていけばいくほど、また円の切り上げというものに迫られてくるということになりませんか。それを減らすような政策をとらなければ、今度のような状態がまたアメリカあたりから迫られてくる。こういう状態は繰り返してはならないわけですが、そういう外貨がたまる体質をそのまま続けていくということになっているじゃありませんか、その数字の上で見れば。
  132. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまも申しましたように、これは見通しといいますか、見込みの問題でございます。したがって、政策として外貨を減らしていくような政策をこれから織り込んで、この見込みとは違った姿になることも予想されるわけでございますけれども、一応の見通しが必要でございますから、いま申しましたように、総合収支とそれから為替銀行のポジションのうち輸入ユーザンスの関係とか、そのほかの見込みをそれぞれ立てまして、一応いま申しましたように三十二億五千万ドルという数字を見通しとして持っているわけでございます。
  133. 村山喜一

    村山(喜)委員 やはりそういう数字的なもので詰めてまいりますと、体質の転換をやるんだとまあ総理はおっしゃるけれども、具体的にはやはり依然として、外には強いけれども内には弱い、そういうような姿が四十八年度も継続をされようとしている。  その中において、この前中澤茂一議員のほうから質問がありましたように、前回の通貨調整によりまして日銀は四千五百八億円の為替評価の上における損害を受けた。外為会計では四千百十六億円の評価損になった。で、今度それを、評価損を処理できないので、四十七年度の分と合わせて四十八年度に繰り越しをやっているわけですね。そして今度また、いまの円のフロートされてからの実勢価格でもしレートが固定されたとしたならば、一兆円ぐらいの評価損が出ることは明らかです。日銀のほうだって、四千億ぐらいの赤字が出るんじゃなかろうかといわれております。そういう状態をこれから一体どういうふうに解決をしようとお考えになっているのか。  そして、そういうような評価損が出た場合には、これは明らかに国民の利益が現実にそこなわれたことになるんじゃないかと私は指摘をしたいのですが、そういうものに対して、これからどういう考え方で対処していかれるのですか。
  134. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日銀の関係は、あとでまた御必要なら申し上げることにいたしまして、前回の円の切り上げによって、いま具体的なお尋ねは、外為会計の関係かと思いますから、それを申し上げますと、四十六年十二月の通貨調整に伴って、四十六年度末において計上いたしました評価損は、四千百四十七億円でございます。そして、これは評価損として計上されておりまして、これは御案内のように、外為会計の特質から申しまして、評価損として計上しておきまして、その処理等については、特に処置を講じませんでも、長い目で評価益その他の関係もございまするし、それからこれは直接に国民経済との関係はございませんので、評価損として計上しておくことで足りるわけでございます。  それから日銀のほうにおきましては、御案内のように、説明も十分従来いたしておりますが、これは、たとえば評価損の処理につきましては、内部留保等の取りくずしによっても処理ができ得ることになっておるわけでございます。
  135. 村山喜一

    村山(喜)委員 日銀の詳しい数字はここに持っておりますが、内部留保をしたものがもう枯渇をして、今度新しくいまの実勢価格でこれが固定レートになるとした場合には、とてもじゃないけれども埋め合わせをすることはできないという状態にきておりますよ。そうして、そういう上から見て、四十五年度あたりは国庫に納付しておった資金が利益金として千四百億ぐらいあったものが、もう今度見込まれるのは五百億もないでしょう。今度そういうように切り上げになったら、今度はからっぽになって、日銀としては、これは国家政策の変更によるものだから、損害を国家のほうに要求をしなければならないという状態にきているんじゃありませんか。
  136. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日銀の場合におきましては、ただいま申しましたように、評価損等につきましては、十分日銀として処理し得る限度にとどまっております。それから外為会計のほうについては、ただいま申しましたとおりで、これはやはり再び固定相場に戻るというようなところになりますれば、基準の外国為替相場がきちっとなりますから、まあ将来の問題として、そのときにこれらの見込みを改定するということも必要になる場合もあろうと考えております。
  137. 村山喜一

    村山(喜)委員 この外為会計の評価益が出ることは、私は当分は考えられないと思うのです。それはなぜかというと、円の切り下げというのはしないわけですし、また円の切り下げになるような状態でもない。先ほど話が出ましたように、外貨はたまる一方だということになってくるわけですから、評価損はふえることはあっても減ることはない。では、運用益でこれを埋めることができるかどうか。運用益では埋めることはできないでしょう。そうなったら、いま外為証券を発行して、あるいは国庫余裕金をこれに移しがえをして、そして埋めるという手をやる。それだけでも足らない。一般会計からこれを充当するのですか、放置しておくのですか。
  138. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは一般会計から補てんするような種類の問題ではございません。先ほど申しましたように、国民経済と直接の関係はございません。外為会計としての評価損というものは、率直に申せば、このまま評価損として計上しておくというだけで、明確にしておくだけでもこと足りるわけでございますけれども、しかし、これの最終的な処理というようなことについては、長い目で処理を考えればよろしい問題でありまして、これが国損になるとか国民の負担になるとかいう性質の問題ではない、かように考えておる次第でございます。
  139. 村山喜一

    村山(喜)委員 それはおかしいんですよ。やはり資金勘定だからその評価損がふえ続けてくる、そして今度は運用益が一方には出るわけですから、そのまま資金勘定の中で相殺をする場合には、それらの特別立法なりをつくってやるという処理をしなければならない段階もあるわけです。国民には関係ない、これは資金勘定だから、そういうようなのは評価損として積み上げていけばいいんだという、そういう態度では私はよくないと思う。  そこでまず、予算との関連でこの点は確認をしておきたいと思います。外為会計の本年度の予算の中で、四十七年度に評価損として七億円余り出るようになっておりますね。そして四十八年度に繰り越しをするようになっていますが、そうするとこの評価損は、四十六年度に出たものに四十七年度分を追加して四十八年度に繰り越しをしているわけです。ここでお伺いをしておきますが、これは修正をする御意思はございませんか。
  140. 林大造

    ○林(大)政府委員 恐縮でございますが、先に事実関係を申し述べさせていただきます。  四十七年度に七億一千五百万円の評価損が立ちました。これはIMFに対する出資、これは十二億ドルのうち二五%相当分が金で、残りの七五%分が円で払い込まれているわけでございますが、この円の払い込み分につきまして、市場で円対ドルのレートが浮動いたしております。スミソニアン体制に移りましてから、セントラルレートの上下二・二五%の範囲で浮動いたしていたわけでございますが、それが浮動するたびごとに評価がえが行なわれるわけでございます。その評価がえが行なわれますもののうち、円の七五%分につきましては調整勘定というのに繰り入れられまして、適宜日本に対する仮払い金ないし仮受け金ということになって表示される。金出資分につきましては評価損益という形になるわけでございます。この四十七年度分の評価損は、最近時点までにおきまして判明いたしました。私どもレプレゼンタティブレートと申しておりますが、これが実勢相場でございます。実勢相場によりまして評価をいたしました金額が七億一千五百万円であるわけでございます。この金額は、随時四十七年度中においても変更されるわけでございますけれども、判明いたします最近のものをここにとりましたわけでございます。
  141. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから私が聞いているのは、外為会計の予算書を変更する意思はないと、大蔵大臣いまでもお考えになっていますかどうですかと聞いている。
  142. 愛知揆一

    愛知国務大臣 やはりこれは、基準外国相場がきちっときまりまして変更されるというような場合には、改定をする必要があろうかと思いますけれども、現在の価額につきましては改定する必要はない、予算等も変更する必要はないと、かように考えております。
  143. 村山喜一

    村山(喜)委員 いま予算書を審議しているわけです。そうすると、四十六年度の繰り越しはわかっている、そうして四十七年度の評価損も出てきた、それを四十八年度に繰り越しをいたします、こういうのが出ているわけです。そうするならば、四十七年度は予算の修正をしないでこのままでいくということをやはりお考えになっているんだということを確認をしておかなければ、審議はできないのですよ。だからその点を念を押して聞いているわけです。それは現在の情勢の上に立って変更する意思はないと、こういうように受け取っていいですね。
  144. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま御説明いたしましたとおり、結論としてそのとおりでございます。
  145. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで私は、このフロートの期間の問題について関連でなにするのですが、レートが変更をされたら、いまの実勢から見て一兆円の評価損が出ることは間違いありません。その一兆円の評価損が見込まれるということは大体四十七年度中にはあり得ない、予算の修正をしようとしないのですから。またやる意思もないのですから。そうなれば、四十八年度にはそういう固定レートに変わることはあり得るけれども、四十七年度中はやはり、おもしろい制度だ、しばらくフロートさして円の実勢を見てみたい、まあ大蔵大臣は言っていらっしゃるのですから、四十七年度中はいまの変動制のままでいかれるつもりですねということを、重ねてお尋ねしておきます。
  146. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現在この変動相場制度に立っておりますのは、一昨年十二月のスミソニアン体制以来の円対策というものの、これは計量的に数字は出ておりませんけれども、そういう性質のものでありますけれども、それなりに相当の効果をあげている。これを私どもは十分もっと見きわめていく必要があると思います。それらの考え方からいろいろ考えて、適当な期間この変動相場制というものが、今日の日本の置かれている立場から見て適当であろうと政府は考えておるわけでございますが、いつまでこれを続けるがいいかということを、これは現在政府としてはまだきめておりません。適当な期間これを継続することが適当であるということをきめておるわけでございますから、それから先の仮定の状況については、何ともお答えができないような状況でございます。
  147. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、いまは予算の修正はする意思はない、そうするならば、四十七年度中はこのままフロートさしておいて、そして田中総理も、単独切り上げは絶対に納得できない、国際会議でやるんだとおっしゃっているわけでしょう。だから国際会議というのは、二十カ国の蔵相会議、あるいはナイロビにおけるIMFの総会、そういうような国際会議というものを予定をしていらっしゃるわけでしょう。とするならば、いま四十七年度の予算審議じゃなくて、四十八年度の予算審議をやっている中で、四十七年の繰り越し評価損がこれだけ出る、それを四十八年度に持ち越すのだということで、これは動かさないのだとするならば、四十七年度中はやらないのだと、こういうふうに判断をしなければ予算審議の基礎がくずれるわけですから、そこの点は明確にしておってください。どうです。
  148. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私から念のため申し上げておきたいと思いますが、先ほど御説明いたしましたように、四十六年度に生じました評価損というものも、外為会計としてはそれを明確に評価損のところに掲記しておるわけでございます。そういうような状況で、その処理等についてはいろいろの御意見もございましょうが、いまこれを明確にしておくことをもって足れりとしておるくらいでございますから、一般論として、仮定論として、何か変動が起こりましても、それからよって来たるところの評価損がふえましても、その評価損というものをそのままにして繰り越していくということは適当な措置であるということも言えるわけでございまして、それとこれとの関連というものを、直接結びつけて考える必要はないのではないかと思います。
  149. 村山喜一

    村山(喜)委員 それはおかしいですよ。あなた方が、適当な時期ということで日にちを明らかにされないその気持ちはわかりますが、しかし、日銀のいわゆる為替差損の問題にいたしましても、これはいつの時点でやるということになれば、国庫納付金が減ってくるわけですから、一般会計の収入の上において変動が起こり得るわけですよ。だから、四十七年度の現在の時点において、これは変更ありませんねということを確認をしておかなければ、四十八年度の歳入の見積もりができないわけです。だからそれと同じように、外為会計の評価損においても、レートの切りかえをしたら一兆円の評価損が出ることは明らかなんだから、それが予算書の上に載っていないということからいえば、少なくとも四十七年度は、これは三月まではフロートさしたままにしておくのだ、そして国際会議等において、適当な時期に四十八年度に入ってからやるのだというふうに受けとめていいじゃありませんか。そういうふうに受けとめなければ、予算審議の対象にならないじゃないですか。
  150. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この外為会計の貸借対照表でも計上してございますように、借方の四十七年度末の項は、繰越評価損という目につきましては、年度末の予定額ということで計上しておるわけでございます。したがいまして、この点に直接関連して、いま御指摘の問題について私が申し上げておりますように、直接の関係を持たずに予定額として計上されておるのでありますから、御了解がいただけるものと考えております。
  151. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは外為会計のこの貸借対照表の中で私は言うているわけですが、それにはやはり資金繰りが伴うわけですよ。帳面だけは合っておっても、それはどこから金を持ってきて——四千億余りが金が足らないのですから、短期証券を出して、それで穴埋めをしているわけです。そして評価損がこれだけ、七億出るのだ、だからこれは来年度に繰り越すのだ。ここで、今年度、四十七年度中にこれで評価がえをしたら、固定レートに変えたら、資産勘定してみると約一兆円の評価損が出ることは明らかなんです。それは単純に計算をしたってすぐ出てきます。その中で一兆円の評価損が出ることを予定をしたら、当然これは特別会計の歳入歳出のほうに影響が出ることは間違いないのですから、だから四十七年度はこのままでいかれるんですねと言ったら、このままでいくんだとおっしゃるから、じゃ四十七年度中は固定レートに変えるということはありませんねということを念を押して聞いているわけです。そうでないという説明はできないでしょう。
  152. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、四十七年度中にこの予算を変更するという必要は認めない、この点においては結論は同じでございます。しかし、それならば四十七年度中には平価の変更も何もないんだな、こう言われる点については、その点とこれとは直接の関係がございません、こう申し上げているわけございます。同時に、現在政府の立場としては、変動為替相場制度というものは適当の期間これは持続していくことが適当である、こういう態度をとっておりますということをあわせて申し上げているわけでございます。
  153. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは、変動するような返事ばかりされておったら、もう変動制度の中で予算審議もできませんよ。  これは日銀の差損についても言える。ことしの納付金は予定をしているのは幾らですか。二百九十六億でしょう。そうすると、本年度中においてもし固定レートに変わるとすれば、それは今度はまた評価がえを行なって計算をし直さなければならぬでしょう。評価損の見込みが出てきたら、今度は国庫納付金が減ってくるじゃありませんか。そうしたら予算書の国庫納付金の基礎がくずれてくることになる。それは歳入の基礎がそこで変更されることになるじゃありませんか。そういうことを変更しないんだと言うのだったら、四十七年度はこのままでいくんだということを意味しているんじゃないかと言っているのですよ。
  154. 愛知揆一

    愛知国務大臣 納付金のほうの関係につきましては、これはまた納付の時期とか決算の時期とかいろいろございます。その関係も考えなければならないと思います。  それから、要するに、くどいようでございますけれども、四十七年度中にこうした見積もりを変更する必要はない、これでいきますということを繰り返して申し上げておきたいと思います。同時に、変動制は適当な期間維持することが適当である、こういうわけでございます。
  155. 村山喜一

    村山(喜)委員 日銀の国庫納付金は、四十七年度の上期において二百九十六億を納めた。今度は、四十七年度の下期の利益については納付予定額が二百八億ですよ。で、もしこの時点において、四十七年度のいま下期ですから、ここでフロートから固定レートに変わるということになれば、今度は日銀の為替差損というものが必ず出てくるわけだ。それは相当なものが出てきますよ。そうすると、今度は納付金額が減るじゃありませんか。二百八億というのはゼロになる可能性はあるでしょう。そうなったら、歳入の上において明らかにもう減ることが予測をされることになるから、それはことしは変更ないとするならば、ことしはこのままでいくんだ、フロートは相当な期間というのは四十七年度についてはフロートをそのまま続けていくんだというふうに受けとめるよりほかにないじゃありませんか。
  156. 愛知揆一

    愛知国務大臣 歳入につきましては、これは歳入の見積もりでございますから、そういう点も御考慮に入れていただきたいと思います。歳入の見積もりが御審議の上議決の対象になるわけでございますし、私は、この歳入の見積もりを、現にこの時点で変更するつもりはございません。
  157. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは、歳入の見積もりというのは、的確に見積もっておかなくちゃいかぬ。それを政策によって変更をして、二百八億という日銀の国庫納付金がゼロになる可能性もあるわけですよ。それはあなた方の政策手段によってきまるわけでしょう。そういうようなものがあり得るとするならば、歳入の予定収入額から落としておかなくちゃいかぬ。ところがいまそれを落とす必要はないということは、これは、フロートは四十七年度中は続けていくんだ、こういうふうにわれわれは受けとめなければ審議ができないじゃありませんか。
  158. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは私も、村山さんの御意図といいますか、御質問の内容とするところは十分承知いたしておるつもりございます。同時に、私のお答えが歯切れが悪いのは、事柄の性質上、歯切れが悪い点もございます点を御了解いただきたいと思います。  要はこの見積もりは大事なんであります。見積もりは大切でございますが、この見積もりをただいま変更するつもりはございません。このことを御了解をいただきたいと思いますし、それから、フロートは適当の期間続けることが適当と思います、これでひとつ御了解をいただきたいと思います。
  159. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは、見積もりまでフロートしてしまったんじゃ、予算審議にならないんですよ。だから的確に押えて論議をしていくというかまえでなければならぬ。それは、そんなのはちっぽけな金だからいいというわけにいかぬでしょう。やはりあなた方がとられようという政策手段のいかんによって、それが歳入欠陥になったりどうなるかということがきまるわけですから、そこをやはりあなた方としては、この国会の論議の中で明確にしておくのが責任ですよ。
  160. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですから、ただいまの私の答弁をお聞き取りいただいたかと思いますけれども、私は、現段階におきまして、この見積もりは同時に非常に大事なものでございますが、これを変更する意図はございません。それと、一方におきまして、変動相場というものは適当な期間続けることが適当であると思っておりますと、こう申し上げておるわけでございます。歳入の見積もりについては、現在変更いたしませんということとあわせてお聞き取りいただければ、事柄の性質上、御理解がいただけると思います。
  161. 村山喜一

    村山(喜)委員 この問題は、まあ非常にむずかしい、中身の言いがたい問題もあることはよくわかります。しかしこの問題は、歳入欠陥、やはり当然減ってくるという予測の立て方をしなければならない段階に来ているんじゃないかと私は思うのです。そうでないと、あなたがフロートの時期については明確に言われないから、そういうような意味においてに、歳入欠陥があるというふうに見て、問題の処理をこれからに保留しておいて進めます。  そこで経済企画庁ですがここに二月の十五日の日の新聞を持ってきたんですが、貿易収支の黒字が十五億ドル縮小する、経済成長率は一・五%低下するだろう。これはドルが一〇%切り下げになって円が変動相場制度に移行したことに伴って、そういう見通しを経済企画庁が出されたというのでここに出ております。そういう数字をお出しになりましたか。
  162. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 数字は出しておりません。その新聞は、実は私もどこのですか存じませんけれども、この機会にちょっと申し上げておきたいと思いますことは、村山さん御承知のように、毎月、月例報告というのをやっておるわけですが、この一月の月例報告で見ますと、いろいろな数字が非常に強含みでございまして、一例をあげてみますと、生産で十—十二月を見ますと、前期の比が五・二%、前年同期の比が一二・三%。出荷で見ますと、これが五・四、一三・四。これらはいずれも七月−九月に比べまして非常に大幅に伸びておりまして、たとえば七月の生産で見ますと、前期の比が二・四、それが五・二になっておるわけです。それから前年同期の比が七・二、それが一二・三になっておる。あと省略いたしますが、そういうようなことで非常に強くなっておる。たとばえ機械受注などにいたしますと、七—九月では、前年同期の比が八・四%減になっておるのが、実に十—十二月で二六・八にふえておる。非常に実勢がふえておるので、こういう機会にドルの切り下げがあって、これが一〇%切り下げたというわけで、これが相対的に見れば円が一〇上がったということにもなるわけでございますので、そういう試算をしてみますと、これからあと、フロートのあとのレートがどうなるかということは別にいたしましても、こうした過熱に近いような状況にはむしろ調整的な意味がある、デフレ的な要因はそうした非常な上昇の中へ吸収されていくであろうというようなことは言ったことはございます。しかし、何か全体の見通しがこうなるであろうというようなことを言ったことは、公式にはございません。
  163. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは経済企画庁の内部から出た資料であることは間違いないようです。私もそのニュースソースを調べてみましたが、まあ不用意に出たかどうかは知りませんけれども、そういうような数字が出ていることは間違いない。  そこで、私がお尋ねしたいのは、 フロートに入っているわけですが、閣内の統一ができているんだろうかどうだろうか、この点について、大蔵大臣、通産大臣にお尋ねをしておきたいと思います。  それは、大蔵大臣の話を聞いておりますと、通貨と貿易が車の両輪だという立場に立って、金融引き締めはこれからも続けていくのだし、円対策は強力にやっていくのだ、こういう考え方であるようであります。ところが、通産大臣は二月の十三日の記者会見で、貿易管理令については原則としては廃止をするのだ、しかし、実情に即して適用の再検討をやるのだ、こういうような会見談話を発表しておるようであります。そうなると、貿管令につきましては、通産大臣は緩和、大蔵大臣はそれは困る、こういうような表現で発表されておりますが、一体、今後の経済運営の方向というものをどういうふうに進めていこうとしているのか、閣内における不統一はないのか、この点について確かめておきたいと思います。
  164. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 不統一はございません。私の談話は、まずいきさつを述べまして、貿易管理令を実施するときには、各業界別に懇談をいたしまして、もし将来フロートになるような場合にはこれは廃止する方針でやります、そういうことで実施をいたしました。ですから、筋からいえば廃止するというのが筋でございます。しかし今日の現段階において、内外の貿易、通貨情勢を見てもうしばらく考える要素がある、したがって現状を維持しながらもう少し内外の情勢を見ていきたいと思っております。それがいまの決心です。つまり、過去のいきさつと決心と二段階に分けて私が申し上げたのを、いきさつのほうを強調されてとられて、そういうふうに誤解を生んだのかもしれません。
  165. 村山喜一

    村山(喜)委員 まさに、そういうような受けとめ方ば誤解がされたというあなたの発言のニュアンスの中に、やはり通産ベースという考え方がある。円の問題はこれで済んだんだ、レートが固定レートに返ったときにはこれはすぐはずしてしまったほうがいいのだ、そういう考え方がやはり頭の中に残っているから、そういう誤解をされた受けとめ方をされるような発言になったのではなかろうかと私は思うのです。そうなってきたら、やはり前回の教訓を忘れるような形になってきて、またドルがたまるような体質が依然として続けられるということになるのではなかろうかと私は考えるわけです。  そういうような面から、時間がありませんが、これから非常にむずかしい段階に入ってくると思います。国内政策の転換をやる上においては、大きな障害も出てくるでしょうし、抵抗もありましょう。しかし、何かここでこの問題を契機にして、日本の経済の体質を変えていくのだという考え方を持っていかなければ、外貨はたまる、たまってはまた円の切り上げをさせられるというような形になってしまうことは、これは国民の利益をそこなうことだと思うのです。  そういうような意味において、総理、あなたのほうで、いまそういう発言もございましたが、今後の閣内の統一的な運営の方向というものを明確に示しておいていただきたいと思うのですが、どうですか。
  166. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 重要な問題でありますから、閣内不統一が起こらないように配慮をいたします。しかし、ものの決定の過程においていろいろな議論が起こるということは、これはもう慎重な結論を出すためには、各省でも過程においていろんな議論が出ることはひとつ御了承いただきたいと思います。しかし、きめるときには、連帯して内閣は責任を負うという基本的な路線は守ってまいります。
  167. 村山喜一

    村山(喜)委員 大蔵大臣、あなたが通貨外交の政策決定の主導役になるわけでしょうが、一連の今日までの経過を見てまいりますと、どうも日本政府は、通貨外交においてはまたアメリカの主導権のもとに追いまくられて、そして自分たちは手足を持たないで、きわめて貧弱な対応策しか示し得なかったのではないかという印象を私は受けるわけです。このことについて何か反省はございませんか。細見さんをわざわざヨーロッパまでやって、そして直接向こうのほうで折衝をさせなければならない。その返事を持ってきたものをもって判断を下す。ところが在外公館などもあるわけでしょう。そういうような状態の中にあって、今度はアメリカ側とヨーロッパ側との協議をそのままのみ込んでしまわなければならないような状態に追い詰められたという印象が、私の頭の中に非常に残るわけですが、もう少しこの通貨外交においての自主性を発揮していくためには、もっとしっかりしたそういう手足を持った状態をつくり上げる、情報不足を補うという状態をつくり上げるということが必要じゃないかと思うのですが、その辺について反省はございませんか。
  168. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いろいろ反省もあり、謙虚に各方面の御意見も受け入れて、これからもますます努力いたしたいと思っております。同時に、現在までのところでもかなりよく各国との連携はとれているつもりでございますが、これはこちらがどうこうというのではなくて、やはり何と申しましても日本の立場というものが国際的に非常に高まってきた、日本の言動というものが非常に影響力がある、このことを私は、同時に痛感いたしたわけでございまして、それだけに日本政府としての言動あるいは政策決定については、この上とも国民的な御支持をいただきながら、真剣に取り組んでいかなければならない、ひとり国内に対するだけでなくて、国際的な信頼性を確保するということが非常に大切なことである、私は率直にかように痛感いたしました。
  169. 村山喜一

    村山(喜)委員 これで終わりですが、予算審議の中において、いまフロートしている通貨の問題の中から、収入として予定をしているものが、いつ固定レートに変わるかというその期間の問題をめぐりましても、収入の予定をしているものが不安定な状態の中で論議をされる。こういうような状態がもう論議の過程の中で出てまいりました。そのことを考えますと、やはり政府が明確な姿勢を出さなければ、予算歳入見積もりに狂いがくる、歳出の面においてもまた狂いがくることは明らかであります。  そこで、明確にその点を詰めていったのですが相当の期間ということで、収入は収入、その期間についてははっきりと言えないということで逃げてしまいましたが、しかし、歳入を変更しないというたてまえに立つならば、四十七年度の予算のこの期間の中にあっては、三月の末までは固定レートにしないのだという受けとめ方をせざるを得ない。その点だけは明確にして私は今後の論議をしてまいりたいと思いますので、それだけを申し上げて質問を終わります。
  170. 根本龍太郎

    根本委員長 これにて村山君の質疑は終了いたしました。  次に、津川武一君。
  171. 津川武一

    津川委員 私は、日本共産党と革新共同を代表して、円をめぐる今回の事態に対して、総理の責任と事が起きたことの根本的原因について、若干の質問を行なってみたいと思います。  総理は、四十七年十一月九日の参議院の予算委員会で、「そういうことによって、少なくとも円の切り上げは避けるという決意でございます。しかしそう言っても避けられなかった場合どうするか。それは相当な政治責任が生ずる、こう思います。相当なものである、こう思います。」こう言明しております。これはどんな責任でございますか。
  172. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 間々申し上げておりますとおり、平価調整が行なわれてまだ間もないのでございますから、再び行なわれないように最善の努力をいたしますということが前提になっております。  そして、世にいろんな説がある状態でございましても、平価調整というような問題に対して、これを避けるという努力を続けるということ以外に、平価調整が行なわれるおそれがございますというようなことを述べられる立場にないということが第二でございます。  第三は、相当の政治責任と言いましたのは、万全の体制をとりつつある状態においてのことでございますから、しかし起こったらどうするかということに対してそう申し上げたわけでございまして、平価調整を避ける国内体制の整備に対するなみなみならぬ決意を表明したものとおとりをいただきたい、こう思います。しかし、そう申し述べておるわけでありますから、いまの状態においてはフロートがされておるような状態でございますので、国内的な体制に対しては万全な責任ある措置をとらなければならない、こう思っておるわけでございます。
  173. 津川武一

    津川委員 一国の総理として、相当な処置をとらなければならぬ、万全な対策を講ずるのは当然であります。だから相当な責任が生じた、それに対するあなたの答えと、こういうことでございますか。
  174. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 最善の努力をしなければならないという決意でございます。
  175. 津川武一

    津川委員 決意と責任はどう違うのです。
  176. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは公定歩合を引き上げるのか、こういうことに対して日銀総裁が、引き上げるつもりはごうもございません、こう答えるわけであります。私もそう答えておりました。参議院の予算委員会で、絶対に公定歩合を引き上げる考えはありません、こう言ってお答えをしたら、その次にすぐメモが参りまして、ただいま公定歩合が引き上げられましたというので、特別発言を求めて私は理解を求めたわけでございますが、こういう問題は、最後まで責任ある立場の人は言うべきではないんだ、それは理解する、こういうことで理解をいただきましたが、あのときは、そうであっても、もし切り上げたらどうするんだというようなたたみ込んだ御発言でございまして、それは相当な政治責任と申し上げたのは、事ほど事態が非常に重大なものでございますから、万全な体制をとらなければならない、その責任の重大さを痛感してそう表現をした、こう理解をしていただきたい。
  177. 津川武一

    津川委員 あなたの発言で、輸出関連の中小企業者は設備を広げて夜も寝ないで生産を上げた。それが今日この状態になった。あなたの言明を信じてですよ。それに対してあなたは責任はない、こういうわけですか。
  178. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは、いかなる事態が参りましても、政府は最善の施策を行ないまして影響がないようにしなければならないということを感じておりますし、またそういう施策は行なってまいりたい、こう考えます。
  179. 津川武一

    津川委員 あなたはどんな意味でも責任はとらない、負わない、こう聞こえるのですが、そうとっていいですか。
  180. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは先ほど申し上げました、なみなみならぬ決意を表明したものと御理解をいただきたい。しかし、この種の問題というものは、これは先ほども堀さんの御発言の中で、固定相場を維持しなければならないが、開放化、国際化というものが行なわれていくという過程においては、ある場合にはこれを間々、弾力的というのではありませんが、受け身の立場においても活用しなければならない種の問題でございます。そういう問題に対して私が述べることが何を意味するかということは、やはり私のいま置かれておる公的な立場において、国民に影響が及ばないように最善の努力をするということと同義語であるということをお考えいただきたい。これも私がそのときに、相当な政治責任だと思います、こう述べたことは、やはりいま責任の地位にありますから、その責任を、万全な責任を果たすということの決意の表明とおとりをいただきたいと思います。
  181. 津川武一

    津川委員 総理、あなたは一国の総理だ。自分の施策に対して決意表明して、円の切り上げ回避するためのなみなみならぬ努力の表明だ、こう言っているわけだ。政治は、総理の責任は、決意の表明じゃないのです。施策をやること、できた事態に対して必要な処理をとるということが、政治責任を明らかにするということが政治家の任務であって、ここで国民はあなたの決意を聞いても何にもならないですよ。国民はあなたの決意を聞いて何にも残してない。おこっていますよ。総理、これはどうなんです。
  182. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 例のない多国間調整をやったのです。そのあと施策を行ないました。行なった結果、相当の成績をあげておるじゃありませんか。しかもこれらの問題に対しては、切り上げ不可避だと思います、引き上げの方向にあると思います、こんなことば実際において言えるケースのものじゃないです。最善の努力を払うということでなければだめだと思うのです。  あなたもお医者さんとして、最善を尽くします、命をかけますとでも言うでしょう。しかし、それは全然別なことでなくなるということもある。これは外圧です。とにかくアメリカが突然切り下げたのです。そういう場合において、あなたもやはり同じことで、決意を述べられる、公人として決意を述べられる。私もそのためには、どんなに言われても、少なくとも、円平価調整なんという問題に対して、いささかでも予断を抱かせるようなことを言える立場にないということをよく理解していただいて、私の発言というものの限界をどういうふうに理解をしていただくかということは、理解いただけると思います。
  183. 津川武一

    津川委員 じゃ、総理から医者だということを指名されたので。医者は医学に基づいて事をやりますよ。あなたは一国の総理として、国の全部を背負っている政治というもので、行政というものでやらなければならない。そこには適当なごまかしがあってはいけない。国民をごまかすのもひどいですよ、あなたは。  そこでもう一回聞くが、あなたがきょう表明したこの見解、これがあなたのとる責任でございますか。あなたが責任を感じたと言って、きょうこうして表明したでしょう、遺憾だと言って。責任を痛切に感ずると、さらに予算案審議してください、こう言っている。この表明が、あなたの見解が、政府見解が、あなたがいま言ったすべての政治責任、こういう意味ですか。
  184. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは各党の御理解を得て、私が本日の段階において表明をしたものでございます。しかし、私の本件に対する責任というものは、これから毎日のように続けられていくべきでございまして、この影響がいささかでも中小企業零細企業に起こらないように最善の努力を最後まで続けるということが、私の責任だと思います。
  185. 津川武一

    津川委員 総理、何を考えているのですか。各党の承認を得たと言っていますけれども、これは私たち承認していませんよ。そういうことであなたは一国の行政をやってますの。どういうふうにしてそれを認識したか話してください。これをわれわれが承知したという認識を。
  186. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、共産党の皆さんも御承知になったのかと思っておりましたが、共産党だけは御承知になっておらないということであれば、各党は、全党はということは取り消してもけっこうですが、私は非常に深刻な立場で、少なくとも現在の事態に対処しなければならない政治責任ということを痛感をして、いっときでも早く皆さんから御審議をいただき、皆さんのお知恵も拝借しながら、国民的な結論を出したいということで申し上げたのでございます。
  187. 津川武一

    津川委員 その点で、総理、ついでに言っておきますけれども、私たちはこの状態をいいと承認していない。私たちが承認したのは、ここで、総理、各大臣に出席してもらって、徹底的に問題を審議するということは承認した。だから、これは間違いなく、あなたは一国の総理だから、事を処するときにはきちんと見てかかりなさいよ。私は総理に忠告したり説教したりするつもりはありませんけれども、いまの発言を聞いてびっくりした。  そこで、あなたがこの状態を遺憾に思っているという、こういう状態、責任を痛切に感じているというこの状態は、あなたがいままで盛んに言ってきた、正しかった、正しかったけれども、ほかの事情でこう変わってしまってしかたがなかった、このことに遺憾なのか、どちらに遺憾だと思っているのか、これを端的に言ってほしいのです。私はこれからたくさんの問答をあなたと繰り返しますが、これからのこと、先のことは、次に私どもの荒木委員でやります。したがって私は、ここに至った根本原因、根本責任を、あなたと一緒に話してみたいと思うのです。そこで、あなたの遺憾というのはどちらでございます。
  188. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 第一回の多国間調整が行なわれてまだ一年二カ月しかたたないわけであります。この平価調整の実際の効果というものは、一年ないし二年かかるともいわれておりますし、二年ないし三年かかるともいわれておるわけでございます。一年二カ月しかたたないというのに、アメリカ側の一〇%切り下げというような事態が起きたということ、しかもそれは国際通貨の制度上の安定も期さないうちにこういうものができたということは、これはやはり遺憾なことでございます。まかり間違うとこれは縮小均衡の道を選ばざるを得ないようになりますし、新しく提案をしておるジャパン・ラウンド、新国際ラウンドというものの審議にも影響があります。日本はほんとうに貿易をしなければ国民生活を上げていくことはできないような特殊な状態にありますので、どうしても保護貿易主義の台頭は押えなければならない、こういう考えでございます。そういうことからいうと、アメリカが切り下げればいやおうなしに、やはり実勢を見るために、また各国の状態の推移を見るためには、フロートせざるを得ない、こういうことに追い込まれるわけでございますので、そういう意味で遺憾であるということでございます。  もう一つは、やはり国内体制の問題、いろいろなことをやってきたつもりなんです。二〇%関税の引き下げもやりました。これはもうこの前の大型予算、これはインフレ予算じゃないかと言われるくらい言われても、あれだけの予算を御審議をいただきながら、輸出内需に切りかえるために努力をいたしました。そして四十八年度の予算案には、それをもう一歩進めようというような意欲的な状態でかかっておったにもかかわらず、唐突にこういうことが行なわれた。これはまあ少なくとも多国間調整にいくまでには相当な期間があったわけです。いままでも一年、一年半というものがあったにもかかわらず、とにかく日本というよりも西ドイツを中心にしてヨーロッパで行なわれた。しかし、どう考えても日本がこれに無策でおられるわけではありませんし、そういう意味でも、交渉をするような、調整を行なうような期間もなかったわけでありますし、そういう意味で、まだ中小企業やいろいろな零細企業に対する対策も、万全でございます、完ぺきでございますと言えるものではないと思うのです。日本人の気持ちの上でも、早くても夏だろう、秋にはあるかもしれぬ、こういうような態勢ということに対しても、やはり意図に幾ばくか反しておれば遺憾である、こういう考えでございます。
  189. 津川武一

    津川委員 あなたは施政方針演説でも、第三次円対策をやった、六千五百億円の補正予算を組んだ、その効果がまだあらわれてない、しかし私は、国際収支の、貿易収支の均衡をはかるために全力を尽くす、こう言っている。そう言っていて、いきなりああなっちゃった。その言っているときと、こうなったときにおいて、自分の責任態度、施策に変化はないように、私はいまあなたから聞き取ったのですが、同じですか、前と、状態が起きたいまと。
  190. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 起きないときでも、いかなることが起こっても影響が起こらないように、その心がけはいたしてまいりました。そのためには、この予算は大き過ぎるじゃないか、いまのこのような物価高のときに三兎を追うと言うけれども、三兎は三兎でもこれは国際収支対策じゃないか、こういうおしかりを受けるような予算さえ組まざるを得なかったわけでございます。しかも、四十七年の下期からの経済情勢から見ますと、一四%にも一五%にもなるという議論があるのに、  一〇・七%というのは低過ぎるじゃないか、しかし物価から見れば一〇・七%というのは高いじゃないかという御議論もあるわけでおります。  そういう中で、この予算を通じて政策を行なうことによってすべてのことに対処しなければならない、こういうふうに考えておったわけでございまして、それはいつ起こるかわからないというものに対してでも、万全な体制を期さなければならないという考えであったことは事実でございます。しかし、起こってしまったのが早かったですから、起こってからはますますこれは手きびしく一つずつ実態を把握して遺漏のないような政策を実行しなければならない、配慮をしなければならない、ますますその意を強くしておるわけでございます。
  191. 津川武一

    津川委員 あなたは、自分のとった国内政策にはどうやら間違いなかったような自信で、ほんとうにこの事態に対する批判も反省もないようですが、重ねてお伺いします。  これは二月十八日、NHKの政治討論会で愛知大蔵大臣が、変動相場制への移行だと思うのですが、これは国内政策の誤りではない、世界情勢のしからしめるところで、こういうときに適時適切に機敏な行動をとることが国益を守るための政治責任ではないだろうか、こう言っております。私たち必要なんでこれ、テープを起こしました。そうしたらこうです。ここで愛知大蔵大臣が、国内政策には誤りはなかった、こう言っている。あなたもこれと同じ考えですか。
  192. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国内政策に対しては、精力的に誠意をもって行なったわけでございます。三十三品目のうち十品目の自由化を行なおうということも考えました。考えましたが、しかし、それによって貿易収支というものが一体幾らかというと、全部でも五億ドルでしかない。しかも対米貿易の改善はほとんどできない。これはやはりクォータをふやすことによって対処すべきであるというようなこともございました。国内的にも避けがたい自由化もございますから、そういう意味では全力をあげなければならないということで各般の施策をやっておりますし、資本の自由化もいま進めつつございます。二〇%の一律関税引き下げを行ないましたが、いまなお他の品目に対しても、一部品目に対しても、関税定率法の改正案をお願いしているわけであります。現在まだ対外経済調整法のような、昔といっても昨年の国会には提案をしました。成案を得ませんでしたが、そういうことまで私たちはやったわけでございます。  これは、完ぺきであるかといえば、それはいばれるようなことはないと思うのです。それでもアメリカは、日本は足らぬ足らぬといっているのでございますし、へたをすると課徴金をかけるぞ、こういっているのでございますから、少なくとも課徴金制度などはやらないように、差別的な輸入制限はやらせないように、それでアメリカがなさなければならない責任は果たしてもらうようにという最善の努力をしておるわけでございまして、やはりあのテレビで述べれば、私も、完ぺきではないかもしらぬが、とにかく全力をあげたつもりでございます、こういう答えになると思います。
  193. 津川武一

    津川委員 国民が聞いておるの。私は国民を代表して言っておるの。あなたは返事をずらすの。それでやってきたの、あなたの政治をいままで。端的に愛知大蔵大臣は、国内政策には誤りなかったか、なかったと言っておる。あなたもこう思うかと言っておる。ちゃんと答えてください。
  194. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政府は全力投球をしてきたつもりでございます。
  195. 津川武一

    津川委員 私はそれを聞いていません。私は国民を代表しておるから、端的に答えていただきたい。  それじゃ、もう一回質問を繰り返します。変動相場制への移行は国内政策の誤りではない、これが愛知大蔵大臣の討論会における言明。あなたもこう思っていますか。あなたもこれと同じ態度をとりますか。
  196. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政策的には全力を傾けてまいったつもりでございます。
  197. 津川武一

    津川委員 委員長総理に忠告してください。私の問いに答えるように、端的に。
  198. 根本龍太郎

    根本委員長 委員長として忠告する筋のものではございません。どうぞ御審議を続けてください。
  199. 津川武一

    津川委員 田中総理、私の問いに、大蔵大臣と同じ意見であるかないか、これをイエスかノーかの二つのどちらかで答えていただきます。
  200. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 あなたの望むような表現だけで、それだけでもって答えるに適当でない場合もあります。正当でない場合もあります。その場合は、私が申し上げたとおり、政府は全力投球を続けてまいりました、誠意をもって事に当たってまいりました、これだけ言えば御了解いただけると思います。
  201. 津川武一

    津川委員 私は次の質問に移るつもりでいるのですが、あなたが国内政策で正しかったと言えば別な質問、正しくなかったら別の質問になるのですよ。だからあなたが答えなければだめだ。あなた答えてよ。何です、それは。
  202. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は懸命な努力をしてまいりました、こうお答えしておるのです。
  203. 津川武一

    津川委員 私は、あなたの努力をここで問題にするのじゃない。国内政策を問題にするからなのだ。これを答えていただきます。さあ総理、答えてください。
  204. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国内政策遂行にあたっては、誠意をもってやってまいりました。全力を尽くしてやってまいりました。
  205. 津川武一

    津川委員 だから、最初から私は言っておるではないか。これからあなたのやることをここで問題にしておるのではなくして、あなたの責任と、いままで何がここの原因になったか、あなたが答えないと私は質問ができない。国内政策が正しかったと言えば別な質問になるし、正しくなかったと言えば別の質問になる。二つ用意してきた。さあ答えてください。——あなたに聞いておるのじゃない。愛知さん、あなたに聞いておるのじゃない。
  206. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私の発言を問題にされておりますから、私からも念のためお答えいたします。  やはりいま総理が言われておるように、政府としては全力投球で、これがいい方針であるということで努力を大いに傾注してきた、そういう意味を申したつもりでございます。
  207. 津川武一

    津川委員 この責任を私はどうしても省くわけにいきませんので、これからも続けます。  そこで、それじゃ別な内容においてあなたの責任を問題にしてみるのと、今回の問題の根本的な原因を少し探ってみたいと思います。  そこで第二の問題ですが、日本はあなたが誇るように世界に類例のないほどの経済成長、しかもその成長のテンポが速い、輸出能力もふえた、企業も大きく伸びた、この原因は何だと思っています。
  208. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国民のたゆまない努力の集積だと考えます。
  209. 津川武一

    津川委員 何度も聞いたあなたの答えでございますが、私はそうくるだろうと思っていました。  そこで、国民のたゆまざる努力というのは何であったか。賃金が安いの、労働時間が長いの、労働が強化されておるの、密度が高いの、健康保険や厚生年金、それから失業保険や労災保険など、労働者が負担するものの率が高い。そこで、こういうたくさんの輸出能力を持って、それが外国を乱しておる根本原因だと私は思うのです。  そこで、一つだけ例をあげてみます。製品の中における労働者の賃金の比較。アメリカのUSスチール、百万円の鉄鋼を売ると労働者に払う賃金が四十六万円。日本の新日鉄は十一万四千円。アメリカは四十六万円。だから製品におけるコストが安くなって、これが企業が拡大したと同時に、いまアメリカに日本の輸出能力がふえた根本原因。ここを直さなければ、私は同じことを繰り返すと思うのですが、こういうことをすることによって、日本の経済もふえたし、輸出能力が、外国に入っていく能力がふえた、こういうふうに考えて、ここを直すことが根本対策だと思うのです。これはどうでございます。
  210. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 四分の一世紀前には、焼け果てて山河あり、ほんとうにこの一語に尽きるような状態でございました。戦前はどうかというと、千数百万の人間が海外に職を求めなければならないような状態でございました。戦いに敗れて、四つの島に閉じ込められて、ほんとうに食うに食なく、働くに職はなく、住むに家なしという状態でございました。しかも日本の宿命的な姿は、原材料を持たない日本でございます。原材料を海外から仰がなければならない日本が、原材料を持つ国と自由市場で競争をしなければならないという特殊な状態がございまして、私は戦後二十五年の日本人の復興の歴史は、世界の人類の中でやはり特筆大書さるべき一ページを築いたものだと考えております。  そういう中で、あなたが指摘されるような労働強化ということは私もあったと思います。それはILO条約の批准がおそくなったり、海外から指摘をされたり、日本は低賃金である、労働過重であるといわれたような面もあったわけでありますから、私はその事実を否定しません。私自身だって昔は労働者でありましたから。そういう意味で非常に安い賃金で苦労したこともあります。だから、そういう中で日本人が営々として今日を築いてまいったわけであります。  しかも、先ほど申し上げたように、四十六年の一月には外貨準備四十五億ドルでございましたが、それよりも五年前の四十年不況には、外貨準備高十七億ドルになって、最大の不況に見舞われたのでございます。それから数えても、IMFの八条国になってから日本はまだ八年間もたっておらないわけであります。そういう中で、ほんとうにこのような外貨準備が急増したということは、これはわずか過去二年間、ちょうど二年間であります。おととしの一月から二年間でございます。そこへもってきてアメリカが、ドル価値がどんどんと下がっていくというような状態で今日を招いたわけでございますが、日本は、しかしもう持たざる国ではないという立場から、おそまきながらでも社会保障の五カ年計画を進めましょうということで、この間きわめておるわけでございます。  そういう意味で私は、労働賃金というものも、いままで五%ないし六%の物価が上がり、しかし賃金は十何%上がったというようなことだけを言うことで足れりと思っておるのではありません。   〔委員長退席、田澤委員長代理着席〕 私は、先進工業国で、やはり卸売り物価というものがそれ以上に安定的であったことは、日本の労働者というものは非常に賢かった、日本の労働者に負うことが多いと思うのです。生産性を上回る賃金ということになれば、必ず卸売り物価で吸収できなくなるわけでありますから、日本はそういう意味で賃金と物価という面から、いろいろなことを言う人もありますが、私は、日本の戦後の生産、国際競争力というものを強固にしてきたものの中には、労働者にあずかって大きな力がある。だから、おそまきながらでもたいへんな人たちやそれから労働者、そういう人たちがほんとうにこの成長の結果というものを分配されるような、新しい日本というものをスタートさせなければならない、そういう基本的な考えに立っております。
  211. 津川武一

    津川委員 私は、そこの議論をするつもりではないのです。問題は、労働者の賃金が商品に占める割合が低いから輸出能力がふえていく、これをいままでやってきたことが、今回の事態を起こしたのじゃないかと思って聞いているのに、あなたは別なことを答えたから、私も少し反論せざるを得なくなります。  あの荒廃した山河の中に今日を築いたと言うけれども、この十年間、一九六一年に百円持っていた人が、アメリカじゃ今日七十四円のものが買える。イタリアでは六十六円のものが買える。西ドイツでは七十円のものが買える。とにかくそれでも、価値が下がりながらもこれだけのものを買っているのに、日本は五十六円ですよ。何で日本人の労働者をこんなに犠牲にするのか。  もう一つの問題は卸売り物価。あなたは卸売り物価が上がってこないからいいと言うけれども、卸売り物価をささえたものは何か、低賃金ですよ。製品のコストが安いから卸売り物価が動かないのです。それをあたかもあなたたちがいいことの指標にしているけれども、まさに逆なんです。このことは私、論争しません。あなたが言ったから返しておくだけです。  そこで、労働者の低賃金が今度の状態を生んだ原因ではありませんか。あなたは、低賃金だとはしなくも認めた。これが原因の一つじゃないか、こう私は聞いているのです。これに答えていただきます。
  212. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 低賃金であったという事実は認めますが、労働者の賃金が低かったということだけで、今日のような変動相場制不可避になったのだということではないと思う。もっと複雑なものがかみ合って今日になったのだということはおわかりだと思います。
  213. 津川武一

    津川委員 もう一つの問題は、それも一つの原因であるということを認める、こういう立場ですか。
  214. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 アメリカは、あれだけの鉄鋼生産をやっていた国が、賃金が上がり過ぎて、日本から鉄鋼をどんどん入れなければならないようになっております。だから、そういうことの反対の状態から見れば、これは賃金とか、労働者が働くとか、いろいろな問題はやはりその一つの原因というか、そういうこともあることと思いますよ。しかし、あなたの言う表現そのままでお答えできないということだけは御理解を……。私にも人格はあるのですから。
  215. 津川武一

    津川委員 もう一つ総理、いま非常に打撃を受けるのが輸出関連の中小企業。ここで働く中小企業の労働者の賃金というのは、あなたたちのほうの調べでも、日給千円から千百円の間というのが六十六万八千人おる。中小企業におけるパーセンテージが三〇・七%ですよ。もっとひどいのになってくると、九百円未満の人が百九万人いるの。だからこの賃金が企業を大きくした、この賃金が日本のいまの円ドルの危機の根本原因だ。率直にここのところで議論をかみ合わせないといけない。いままで出てきたことを私は問題にするというのはここなんです。先のことは聞きません。これが原因でなかったかどうか、聞いてみたいと思うのです。
  216. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 原因であったかといえば、一体何%寄与したのかということになるので、それは私にはわかりません。(津川委員「私もわかりませんよ」と呼ぶ)私もわかりませんよ。わかりませんが、そういうような低賃金でも営々と働いてくれる労働者諸君のおかげで日本の国際競争力も培養され、今日の繁栄も築かれたということは高く評価しております。
  217. 津川武一

    津川委員 労働者諸君のおかげということばはよろしい。その労働者諸君のその労働の実態は、この低賃金であったということを認めますか。
  218. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国際的な水準になるように、自民党は、また政府は懸命な努力を続けておるのでございます。
  219. 津川武一

    津川委員 もう一つ田中さん、あなたも労働者だと言うからわかっているでしょうが、健康保険、失業保険、厚生年金、災害保険、この負担ですよ。経営者と労働者が負担しておる。日本では一対一、フランスでは労働者が一、企業家が三・六倍。繰り返します。日本が一対一、フランスでは一対三・六、あなたの好きなアメリカは一対四・一倍。だからこれは当然企業家の責任なんです。ここにお金を使うか使わないかは、製品のコストの内容なんです。これに日本の企業というものが使わなかった。だから、浸透力が、外国のものを破壊する力が、企業の伸びる力が、ここのことを考えないから、あなたが予算案をあのまま審議してくださいという、責任をとらない態度になるわけなんです。私は根本のことはここにあると思う。あなたがこういうことを本気に考えるなら、私は責任をとった態度と認めるのだけれども、どうでございます、この状態に対して。これを一つの要素として、原因として考えませんか。労働大臣は要りません。厚生大臣は要りません。事実はこのとおりです。事実違うなら厚生大臣に答弁してもらいます。
  220. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 厚生大臣から答えます。
  221. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 お答え申し上げますが、社会保障のうちで労災は事業主が全額負担でございまして、そのほかの負担は労使折半ということが日本に合った慣行として今日まで成熟いたしておるのでございまして、そのことが、いまお述べになりましたような原因であるということには賛成いたしかねます。
  222. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 津川委員の御質問でありますが、失業保険は一対一でありますが、労災保険は使用者が全額持っております。以上。
  223. 津川武一

    津川委員 そこで総理、健康保険、厚生年金、これが労働者と経営者と一対一で払っている。アメリカは一対四・一倍、フランスは三・六倍このことの差が輸出強行できる一つの要素になっておる、こう私たちは思って問題の本質を考えているわけですが、あなたもこれはどうでございます。
  224. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 保険制度や社会保障制度は完ぺきなものにしなければならないという高い理想のもとに、一歩一歩前進を続けてまいっておるわけでございます。  その国その国にはやはり制度の発展する歴史があります。そういう意味で、それは日本の中でも、外国に比べてもいい面もあります。中には全部の保険を一つにするほうがいいじゃないか、黒字の出るところは別にして、赤字の多いところは公費負担でなければいかぬというようなものに対しても、制度は合理化されなければならないという御意見もございます。しかし、これは発展過程がみな違いますので、今日はこのような状態になっておりますが、世界に冠たる、ひとつ日本に合う最も理想的なものをつくろうという意欲に燃えておるわけでございまして、ただアメリカがどうだから直ちにこれをやるということは、その歴史の上から考えてもいろんな問題があると思います。   〔田澤委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、私は日本にとって最も適合する社会保障制度、保険制度というものの完成に対して努力をしてまいりたい、こう考えます。
  225. 津川武一

    津川委員 どうもあなたは不正直ですね。私が聞いて要求していることに答えない。社会保障に対する企業者の負担が少ないことが、日本の商品が国際市場で貿易収支を黒字たらしめている原因の一つじゃありませんか。
  226. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 どのぐらい原因になっておるのかわかりません。
  227. 津川武一

    津川委員 そういう考え方だから、あなたは責任などということを一枚の声明書みたいなものを読んで、そして予算案審議してくれ、こういう形で責任をとらない態度になってくる。私たち、根本の問題はこれからどうするかということになると、この過去がどうであったかということを、何が原因であったかということを突きとめることこそがあなたの責任だと思っているからこう言っている。  そこで、もう一つ聞きます。それじゃ、こういうふうに商品の中にコストとして上がるべき賃金、そういうふうな低社会保障で企業が負担することが少ないということに並んで、もう一つは企業家が負担する税金もこれは経費ですよ、商品の。この税金が法人課税の実効税率で日本が四五%、アメリカが五一%。こういう点で税の面でも企業というものは安い、優遇している。ここに根本の対策を検討、反省をすることこそ、あなたに責任がある、私はこういうふうに考えるのですが、これはどうです。
  228. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 税というものはやはり日本に適合するものにしたい、もっと合理的なものにしたい、税負担というものを低くしたいということで努力をしておるわけであります。その中でたった一つと言い得るかもわかりませんが、課税最低限は、アメリカを除いては、とにかく夫婦子二人ということでは百十四万九千円ということになりましたので、西欧諸国よりもよくなったわけであります。アメリカの税負担というのは非常に重いということはわかります。わかりますが、アメリカの税負担も重いけれどもその使用の中身にも、あの膨大もない軍事費があるわけでありますから、日本は軍事費が、軍事費というよりも防衛費が、アメリカに比べては微々たるものでございまして、これはもう非常に小さいものでありますので、アメリカが五一%だから日本も五〇%にしなければならぬということはないんです。やはり国民の税負担というものはなるべく軽くなければいかぬ。軽くあって合理的な投資が行なわれて、国民のためにならなければならぬというのが政治の要諦だと思うんです。  そういう意味で、何でもかんでも大きな軍備を持っている国と同じように税率を引き上げるということではなく、税の不均衡とかいろいろなものがあったり、所得税中心主義であって、どうもふところへ手を突っ込まれるような、そういう人権の面から見ても問題のあるようなものはもう少し知恵が出せないかということで、長いことかかって、もっと間接税のウエートを上げたいというようなこともありましたが、間接税制そのものは逆進税制だ、大衆課税になるというようなことがあるので、ガソリン税の引き上げとか、トン税とか、今度の証券取引税を倍増したり、それから交際費税を重課したり、今度の土地税制もそのとおりでございます。そういうものも加味しておるわけでございますので、そういう意味で、税制は税制調査会という専門家に審議をお願いしておるわけでありますので、政府も勉強し、国民皆さまの衆知も集め、税制調査会の専門家の御意見も聞きながら、完ぺきな税制をつくってまいりたい、こう思います。
  229. 津川武一

    津川委員 国民が求めているものは、総理、私がいまあなたに言っていることは、ほんとうの本質がどこにあるか、せっかくあなたをこの席に引っぱり出して問題を出すのだから、これからの根本対策が生まれるような討議をしたい。それに対してあなたはどうもじらす。逃げる。  結局、製品の中における賃金がアメリカと日本と同じだと問題なく非常に均衡した平等互恵でいけるわけ。企業家が負担する社会保障というものの負担が同じならいけるわけ。税金が同じならいけるわけなんです。要するに、根本はなぜこういう状態が起きたかということを聞いている。これに対してあなたはずらしていく。だからどういうことが出たか。円の切り下げより切り上げはいいということ、これ一体どういうことです。今度ドルの切り下げによって切り上げと同じ効果が出ている。中小企業はどんなことをしていますか。どんな目にあっていますか。このときに次元が違うからと言っている。中小企業者の人、国民の求めているものは円の切り上げでも切り下げでもない。安定した均衡なんだ。そこのところに、いま四苦八苦している人のところに、あなたは切り上げのほうがいい。あなたは今回の切り上げがいいと認めているわけですか。
  230. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 中小企業零細企業に影響が及ばないように万全の対策はとってまいります。  しかも、この切り下げか切り上げかという問題については、これは一般論として述べたわけであって、これは日本がどうしても固定相場制を維持しようということに努力をしておるわけです。  これはよくおわかりでしょう。努力はしておっても、アメリカがドルを一〇%切り下げたわけであります。これは日本にも影響はございますし、西ドイツにも影響はあるし、フランスにもイギリスにも全世界に影響はあるわけであります。そのためには、ソ連も中国も一〇%切り上げておるわけであります。これはもう避けがたい、相手のやることでございますので。そういう問題を考えるときに、しかし、日本と切り下げるようなアメリカの立場を比べれば、それは日本の、円を切り下げるよりもいまのような状態、言うなれば切り上げのほうが、国民的な利益を守ることでございますという一般論を述べたにすぎないのでありますから、それくらいのことは私はおわかりになっていただけると思うのです。
  231. 津川武一

    津川委員 総理、ドル切り下げ、現実には円切り上げと同じ状態になっておって、それで苦しんでいる人の前に、次元が違うからといって円の切り上げが切り下げよりもいいと言っている。国民に聞いてごらんなさいよ。国民が非常に健康な常識で困ると言っている。困ると言っていることを、ほかのものと比べてもいいと言っているのがあなたなんだ。実際外国、アメリカへ行ってみても東南アジアへ行ってみても、日本の円がなぜこんなに強いのか、そして国の中ではこんなに弱いのか、みんなふしぎがっている。これを聞きたい。この本質に対して、あなたは卸売り物価が上がらないからいいじゃないかと言っている。国民に聞いてごらんなさい。非常に健康な判断を持っている。卸売り物価が上がらないのと、円がこのとおり外に強いのは、そして内に弱いのは、低賃金、低所得、低社会福祉、労働強化、これだと言っている。汗水流して働いたものが円の切り上げによって、ドルの切り下げによって、またとられてしまう。国民は何と言っていると思いますか。日本は仏教の人が非常に多い。さいの川原で一生懸命石を積んだが、積んだたびごとにくずされていく。田中さん、あなたにまかしておくと同じことを繰り返して、このときに、あなたは切り上げのほうがいいと言っている。どうです、これは取り消しなさい。
  232. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 アメリカは切り下げる、必然的に円は切り上げということになります。どっちがいいかといえば、切り下げるドルよりも切り上げになる円のほうが国益を守っておることでございますし、国民全体からいえばプラスのことでございます。  それと、そのような状態が起こることによって影響を受ける中小企業零細企業に対しては万全の措置を行ないます、こう言っているのです。しかも、いままでの生産・輸出中心主義から福祉中心の社会形態へ切りかえてまいります、こう言うのでありまして、これは実際において円の価値が非常に弱く、そうして国際競争力もないような状態であっては、戦後二十九年までの姿はそのとおりでありますが、そのときには社会保障もできなかったわけでありますが、今度は、国民の汗と努力で集積をされたこれだけの円の力を持ったのでありますから、これからその力で国民生活の内容を豊かにいたします、社会福祉、福祉中心の政策に方向を転換いたします、こう言っているのでありまして、ないならばいいのですが、いま国民が働いてくれた定期預金がちゃんとあるのですよ。なくてやれるわけじゃないのですから、いままでは苦労してもらったけれども、これからはやります、それが国際収支の均衡を保つゆえんでもございますと、こう述べておるのでございますから、そこらは理解できると思います。
  233. 津川武一

    津川委員 総理、ほんとうに国民が、円が強くなるということは何を意味しているか、これは労働強化だと言っているのですよ。低賃金だと言っている。そこのところに一言半句の反省なしに、そういう予算を盛ったのを早く審議して通してください、問題が解決すると言っている。  そこで私、最後の問題は、もう一つは、あなたがはしなくも言った、アメリカがあまり外国に投資し過ぎる、もう一つの問題は戦争でお金を使い過ぎている、ベトナム侵略、これに日本が協力しておる、このことが向こうの側から、今度の円ドルの貿易収支の黒字をふやす原因になっている。あなたはこれをどう思うかと言って繰り返し繰り返しこの議場で聞いているけれども、国会で聞いているけれども、これにだけはふしぎに一言も答えてないのだが、これはどうです。アメリカの戦争政策が、日米貿易収支を、日本を黒字にしている原因、こう考えませんか。
  234. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 アメリカのドルが、ドル価値が維持できないで切り下げられるような状態になっておることははなはだ遺憾でございます。しかし、それはいま言ったように、あなたの言われるようなことがもう一つの原因かもしれません。私は、海外投資が千四、五百億ドルにもなっておるというのは大きな問題だと思うのです。これに対しては、とにかくなかなか投資禁止もできません。これは拡大均衡ということでやっているわけですからなかなかできないのでしょう。かつてアメリカモンローに閉じこもって非常にひんしゅくを買い、攻撃を受け、二次大戦のあと始末にまでかり出されなければならなかったという歴史的な事情から見ても、なかなかとめられないのかもしれませんが、しかし、やはり千四、五百億ドルの海外投資をやっておるということでは、アメリカの失業もなかなか解決しないと思うし、ドルも強くならぬと思うのですよ。  だから、そういう意味で、私は日米間の会談のときいつでも言っているのです。いやなことだと思いながら言っているのです。そしてアメリカから流出する資金に対しては利子平衡税などをかけてみたけれども、なかなか効果をあげておらぬ。どうして一体アメリカ人は多国籍企業に金を出しておって本国に投資しないのかというと、やはり賃金が高過ぎる、こういうことでございます。高いのはいいのだが、高過ぎるのはやはり問題があるんだな、このように考えております。
  235. 津川武一

    津川委員 これはアメリカが戦争したことが、今度の原因の一つだと認めたことはよろしい。それに佐藤内閣から田中内閣に、あなたに至っても協力しておる。このことも一つの原因だと思うのです。  このことを考えていただくと同時に、時間を省く意味でもう一つ言うと、あなたからはしなくも言われたアメリカの経済、私も今度医者に返りますが、こういう事態でドルが切り下げられてフロートに移ってから、三日三晩寝ないでアメリカの経済を診断してみましたよ。動脈硬化です、これは。この動脈硬化になっているアメリカの経済に、日本は技術で、資本で、貿易の率において、安保二条によってぴったり組みつけられている。しかも、この動脈硬化のアメリカがいつどうなるかわからない。だからこの円の切り上げは繰り返さなければならない、こういう状態なんです。この状態にくっついてきたことが今度の原因と思うのですが、どうです。
  236. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 何しろ、二十五年の歴史を顧みますと、アメリカを土台にして、無から有を生んでまいったわけでございます。戦後、アメリカのドルを背景にしなければ日本は国際決済もできなかったわけでございまして、アメリカにはたいへん世話になってまいりました。同時に、何しろ百四、五十億ドル、百六、七十億ドル年間往復の貿易があるわけであります。これは、日本のお得意としてはたいへんなお得意であります。  ただ、日本の品物がアメリカに輸出し過ぎて、それで片貿易になって、貿易収支が四十億ドル以上も日本が黒字だというところに問題があるわけであります。そういう意味で、アメリカのドルが強くなってくれて、アメリカにしっかりしてもらうということは日本の利益を守るためにもたいへん望ましいことでございます。アメリカとの片貿易がアメリカにウエートをかけておる。まあ三分の一、三〇%近い貿易でございますから、これはよそへ振り向けるとしたってなかなかむずかしい問題であります。そういう意味で、やはりアメリカに対する輸出をセーブするとともに、輸入拡大していかなければいかぬ。こういう考え方に立っておるわけですが、いずれにしても、アメリカというのは、どう考えてみてもやはりまだ底力はあります。  ですから、アメリカがほんとうに国際収支改善対策ということを思い切ってやってくれれば、私は、アメリカのドルというものが、キーカレンシーとしてのドルの地位が直ちに回復するとは思いませんが、私は、今日のような状態ではないと思うのです。まあ、ベトナム戦争が終息をしたということで、世界的にドルが強くなるぞというような風評がさっと立った事実を見ても、また、アメリカというものはやはり日本のお得意としては大きなものでありますから、アメリカの経済の立て直しやアメリカのドルが強くなるということに対しては、相当協力もし努力もしてまいりたい、こう思います。
  237. 津川武一

    津川委員 どうしてそんなに不正直なの。私は、こういうふうなアメリカの経済に、技術的に、資本的に、貿易の割合においてがっちり組み込められておったことがこういうことなのだ、そう思いませんかと聞いておるのに対して、アメリカのドルを弁護したり……。  これはいい。あとでまた私は締めくくりでもう一度この問題は繰り返すとして、あなたが繰り返し繰り返し言った対策について、私のほうの荒木委員からもう少し質問を展開してもらいます。
  238. 根本龍太郎

    根本委員長 荒木宏君より関連して質疑の申し出があります。津川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。荒木宏君。
  239. 荒木宏

    荒木(宏)委員 関連質問に入る前に一言申し上げたいのですが、前の円の大幅切り上げで、輸出関連の中小業者、農民はたいへんな打撃を受けました。労働者、下請業者も大きなしわ寄せを受けました。その被害はいまもまだ続いていますよ。いまもまだその被害はずっと続いておる。そこへ今回の事態が起こった。国民はたいへんに心配しています。大きな不安を持っています。そのこと自体が、いままであなた方がとり続けてきた政策が破綻しているということを、何よりもはっきり証明していると思います。  そこで私は、昭和四十八年の予算について総理にお伺いしたいが、先ほどの政府見解で、生産、輸出を推進する経済社会構造から福祉中心型構造に転換したと、こういう話があった。ほんとうに転換していますか。四十八年度予算を全体として見れば、私どもの見るところじゃ、決して転換していない。いろいろいじくっているところはありますよ。けれども、転換していないということについて、はっきりした証拠がある。  一月の末に、大蔵省から列島改造関連予算が発表されました。その中で、交通通信網、この部分と、それから工業再配置、それに地域開発、これを合せれば、四十七年は八一・九%でしょう。四十八年はどうです、八〇・二%でしょう。どっちも八割以上じゃないですか。そうして、生活関連、教育、福祉、このほうは四十七年が一八・一%今度は一九・八%。片や、どちらも八割以上ですよ。もう一方のほうは、どちらも二割以下。これじゃ転換と言えたものじゃないと思いますが、総理はどうですか。
  240. 愛知揆一

    愛知国務大臣 予算の問題ですから、私からお答えいたします。  まず第一に、いま列島改造の話がございましたが、これは四十八年度では、一般会計で一兆四千三百四十二億、これは四一・九%の増加になっております。それから、特別会計では二兆七百十六億、これは二三・六%。合計いたしまして、伸び率からいえば三〇・五%。ところが、その中身をよくごらんいただきますとわかりますが、たとえば公共事業費におきましても、一般会計だけでいっても、生活環境、これが四七%以上の増額、住宅で三五%、下水道で五七%、それから公園その他環境の整備ということになれば六七・八%。概略申し上げますれば、こういう点は、昨年度までの予算とは非常に大きな違いであると思います。  それから、前々から総括質問のときにも申し上げておりますように、予算の構成自体が、現下のような状況のときには、たとえば、これは共産党の方は御反対になって、赤字公債だと言っておられるけれども、過剰流動資金に着目をして、そうして建設公債を市中消化で出す。しかも、その比率は前年度よりも低い。そうして、これで吸収した資金で福祉国家建設への傾斜的なやり方を大いに押し出していこうということが、一般会計あるいは財投全体を通じての構成でございます。したがって、たとえば福祉関係にしても、振替支出というものが昨年度よりも多くなってきている。  こういう点をあげれば、いろいろの具体的なことが御説明できますけれども、確かに、四十七年度までの財政というものと性格が相当違ってきて、政府の意図というものが政策的に具体的にあらわれていると私は思います。
  241. 荒木宏

    荒木(宏)委員 私が伺ったのは、総理が転換したというふうに言われたので、一体その転換は何だ、こう聞いたんですよ。それはなるほど、毎年予算というものは、ぴっちり定木ではかったように同じものじゃありませんよ。それは違うところがあるのはあたりまえですよ。しかし、転換と言う以上は、これは世間じゃ百八十度転換というでしょう。向きをきっちりと向け変える。いままで大資本のほうばかり向いておったのを、ほんとうに国民の福祉のほうに向け変える。一体今度の予算案で、そんなにはっきりと向け変えた予算項目がどこにあるか。一・七%の出入りじゃ、これは世間じゃズレといいましょうか、ブレるといいますかね、ハンドルが多少ブレただけのことじゃありませんか。転換というものはそんなものじゃないでしょう。  いま、大蔵大臣から伸び率の話がありましたから、これは質問外だけれども一言触れておきますよ。いま私が聞いておるのは、個々の項目を取り上げて、どれだけ伸びたかとか、そんなことじゃない。四十八年度予算全体として、この全体の姿が、一体国民のほうにはっきり向きを向け変えたのか、ほんとうに転換したのか、このことを聞いているのですよ。大蔵大臣は、あなたは、伸び率がふえたとかいろいろおっしゃるけれども、しかし、社会保障について言えば、振替所得という話もあったが、六六年には、ILOの統計で六・二%でしょう。西ドイツは二一・八%ですよ。フランスはどうです、一九・七%じゃないですか。イタリアはどうです、一八・七%でしょう。そんな状態で、多少ふえたからどうだなんて、それがおよそ転換と言えますか。総理、この点ははっきりと御返事いただきたい。
  242. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 四十八年度の予算は、御承知のとおり、この間答申を受け、政府決定をしました長期経済社会基本計画の第一年次として組んでございます。ですから、五カ年間の方向を見れば、新しい生活優先という理想に向かっての第一年次の予算であるということは、御理解いただけると思います。  それから、西欧諸国と同じような、比肩できるような制度はできましたけれども、中身はそのようなものでないことは事実でございます。しかし、これはなかなか一年にしてやれるものではないと思うのです。これは、フランスやイギリスなどは長い植民地からの収奪というものもありましたし、国民全体の蓄積もあったわけでございますが、日本は、先ほど申し上げたとおり、二十五年前はほんとうにどうしようもないような無から出発をしてきたわけでございますので、私は、いままでの努力が足りなかったと言われてもいいとは思いますが、これからは少なくともやれるような体制になってきたし、そうすることが日本の長期的な国際収支改善にもなり、また、国民が蓄積をした蓄積を有効適切に使えるものである。そして、開放経済に向かっていく日本の真の姿をそこに見出すことができるのだ。その一年次の予算として編成をしたわけでございますし、経済社会基本計画の中の初年度の数字には、大体合わしておるつもりでございます。
  243. 荒木宏

    荒木(宏)委員 長期計画の話はあとでまた伺いましょう。私がいま聞いておるのは四十八年度予算ですよ。いま国会審議をしてくださいといって提出されているのはこの予算ですが、一体、この予算の中のどの予算項目が転換になるのか。一ぺんにはいかないという話がありますが、しかし、それならそれで、これからだんだんやりますということになるのでしょう。あなたははっきりと転換とおっしゃったのだから、予算項目のどれが一体転換になるのか、ひとつ、項目で具体的にはっきりと示していただきたい。
  244. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一つの項目で百八十度転換というような性格のものでないことはよく御承知のとおりです。一般会計の予算を中心にして、特別会計から財投のすべてにわたりましての財政計画というものが、全体として福祉国家建設への道をたどり得るように転換をしたということであります。  具体的にそれをまず歳入の面から申しますれば、いろいろの御意見はすでに拝聴しておりますけれども、たとえば法人の税収入について言えば、税率には手をつけませんでしたけれども、課税所得の拡大ということには配慮をずいぶんいたしまして、いわゆる租税特例というものにはかなり大幅に手をつけて、法人の税負担が加重されるようになりました。また、固定資産税も相当な増徴になります。反面において所得税については、先ほども話が出ましたが、標準の家庭においては百十四万円というように最低限を上げました。これは昨年度に比べれば一〇・七%の上昇になる。これは、一面において消費者物価五・五%の上昇を見込んでおりますけれども、それよりははるかに幅の広いものである。歳入について一例を申し上げればさようなとおりであります。それから、物品税その他に及びますまで相当の改善を加えているつもりであります。そして先ほど申しましたように、公債をある程度出しまして市中消化をする、建設公債の意義を発揮させよう、こう考えているわけです。  歳出面につきましては、福祉関係の項目については相当の増額をいたしましたことは御承知のとおりでありますけれども、さらに、これも午前中の御審議にも質疑応答がありましたが、当然増が多いではないかというお話もありましたが、当然増の中には、すでに昨年度から発足をいたしておりまする福祉関係の予算の平年度化ということが相当ある。政策費の増加は一兆一千億余りになっておる。これの政策の基本というものは、福祉国家の建設ということが中心になっている。  概略申し上げますれば、そういう点で、総体的に一般会計においては政策の転換ということが織り込まれておるつもりであります。  財政投融資につきましては、これまた財政投融資の資金源の関係もあって、たとえば年金資金などについては、従来にないほど還元融資と申しますか、福祉関係にこれが投下されるようにということで、生活環境の整備その他福祉施設等について、なるべくこれが十分投下されるようなくふうをいたしたつもりでございます。  その他、関連する特別会計等におきましても、いろいろと政策の転換をはかりましたし、あとお話を申し上げれば、延々とこれは予算書全部につきまして申し上げなければなりませんが、いかようにでも御説明申し上げたいと思います。
  245. 荒木宏

    荒木(宏)委員 つまり、こういうことですね。いろいろと国民の不満が、要求がどんどんと高まってくるから、やむを得ず部分的に若干の手直しはしている。しかし、全体の姿として見て、列島改造予算の中で、交通通信網と地域開発、工場再配置、そしてそれと生活関連、教育、福祉、このバランスを変えました、こうはっきりと言えないのでしょう。いろいろ枝葉のことをごちゃごちゃと説明はなさったけれども、全体をつかまえて、これをはっきりと変えましたと、こういう説明は全くないですよ。  社会保障のこともおっしゃったけれども、社会保障費の今度の一般会計に占める比率は、昨年の一四・三%から一四・八%でしょう。わずかの〇・五しか変わっていないじゃないですか。先ほどの津川委員質問の中で再々出ましたが、低賃金、低福祉で競争力をどんどんつけて、それで外貨をためて、アメリカからまたぞろいろいろと押しつけられて、その切り上げのしわ寄せが国民にやってくる。これではいかぬということははっきりしているでしょう。ですから、それをこの際転換すると言うなら、再検討をほんとうにやったらどうですか。このことを、最高責任者としての総理にお聞きをしているのです。大蔵大臣に個々の予算の項目の説明を聞いているのではありません。全体としての政治姿勢のあり方、転換とおっしゃるのなら、はっきり全体の割り振りが変わっているということ、それが言えないなら再検討したらどうですか、こうお聞きしているのですが、総理はどうですか。
  246. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国民福祉中心の方向に向かって努力を続けていきたい、こういうことでございます。
  247. 荒木宏

    荒木(宏)委員 方向、将来という話が出ました。いいでしょう。  それでは、あなたがおっしゃる経済社会基本計画、これに関連して質問をしますが、これも道路、港湾、鉄道、そして航空、通信、これらを総合した部分は、五十二年で四一・五%じゃないですか。そして、それと対比をして、生活関連だとかあるいは文教だとかいうのは、これはどうです、二二・二%でしょう。四十五年の五月に新経済社会発展計画というのが出ましたね。あのときに同じ項目で割り振りをすれば、いまの部分の道路とか港湾とかいう部分が、これは四五・六%です。そして、生活関連とかあるいは文教、福祉という部分は、これは一九・五%です。どうですか、大体の比率は一対二で同じじゃないですか。だから、大資本向けの大きな土木工事をする部分、そして学校を建てたり、ほんとうに国民が必要としている生活関連、下水道、公園、そういったものについては、全体の比率はちっとも変わっていないじゃないですか。あなたが先ほどから再々おっしゃっているこの長期計画は、佐藤さんの時代のあの計画と、全体の姿が少しも変わっていない。この計画は、これでも転換と言えるのでしょうか。総理のはっきりした答弁を伺いたい。
  248. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 実数を申し上げますと、四十三年−四十七年の段階で、生活環境関係の構成比が二一%でございます。今度の基本計画では二二・二、交通、通信の場合が四四・四が四一・五、国土保全が六・二が六・五、農林漁業の六・〇が六・二で、その他が二二・四が二三・六ということでございまして、生活環境、交通、そういうものの増加率のほうが、国土保全、農林漁業よりふえておるわけでございます。  御質問の底にある、もっと大きな転換がないではないかという点は、そうだと思います。しかし、こうした大きな国の計画というものを変えていくこと、福祉優先を指向しておりますが、これは非常にドラスチックな形で単年度に変えますと、そこにはまた好ましからざる影響も出てまいりますわけでございまして、漸を追ってやっていく。しかしそれは、総理が言われましたように、非常に精力的に誠意をもってやっていくということでございます。
  249. 荒木宏

    荒木(宏)委員 いま経済企画庁長官は、全体の姿について変わりがないといえば、それはそのとおりだという趣旨の御発言があった。小さいところはありますよね。ちょっと待ってください…。
  250. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私は、ドラスチックなチェンジはない、こう言った。全体には、方向としては変化がある、しかし個々に、いままでこうなっていたものがこう変わってしまうということはないが、これは短期間には無理でございます、こう申し上げた。
  251. 荒木宏

    荒木(宏)委員 そのことの中に、総理が再々言われる転換ということの意味がはっきり出ているんじゃないでしょうか。国民は、転換といえば、いままで大資本のほうにばかりいっていた金が、今度は転換して自分たちのほうに来る、これはそう思いますよ。ところが、そんなことはとてもできないんだ、こういう話ですよ、いまの長官の話じゃ。  一体、いま田中内閣が出している長期計画、これ以外にはないでしょう。昭和五十二年まで出しているその計画が一番先まで見通しているのであって、そこから先はありませんよ、まだ聞いていないんだから。そうすると、現在田中内閣が出している、見通せる限りの一番先までいったってこの比率は変わらない。どうです。
  252. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 田中内閣として考えておりますのは、ほかに新全総の見直し、新全国総合開発計画、これの見直しという問題がございます。これは五十年から先十年間、さらに五十五年から六十五年までという問題も考えておるわけでございますが、そうなってまいりますと、非常に姿がはっきりしてまいるわけでございます。  四十八年と五十年の間はどうかということになりますと、いまの四十八年−五十二年の経済社会基本計画、それと重複する面もございますけれども、しかし、新全総の見直しでございますから、五十年に至る前もそれを見直してまいろうということでやっておるわけでございまして、そうなると非常に大きな姿の相違がございます。しかし私は、先ほど、非常に急激な変化をすることは、一方において混乱もあると申し上げましたけれども、実は、福祉を増進する、その財源は一体何から求めるかということを申し上げたいのでございますが、やはり、国家が計画を立てるにいたしましても、その財源を調整しなければなりません。財源を調整するのは、やはり経済のなだらかな安定的な成長というものが前提になってやるわけでございますので、したがいまして、そう急激な変化は無理でございます、こう言っているわけでございます。
  253. 荒木宏

    荒木(宏)委員 それ、いいですか。いま新全総という話が出ましたが、これこそ列島改造の中でも言われた、ますます大資本本位の重化学工業をうんと伸ばしていこうという計画でしょう。それが、きょうの初めの説明にはなかったから、その話には入りません。  先ほどから出ている長期計画、経済社会基本計画、これは社会保障についてはどうですか、八・八%といっている。これは四十七年に比べると、振替所得が三・五%の伸びでしょう。ところが、国民の取られるほうは税負担で三%、社会保険で二・七%、五・七%も取られることになっているじゃないですか。だから、あなた方のおっしゃる長期計画というものは、振替所得で三・五%はふえますけれども、それよりうんと多い五・七%取りますよと、こういう計画じゃありませんか。しかもそれは、先ほど言ったように、西ドイツやフランスやイタリアに比べたって半分以下の比率になっている。うんと低い上に、もらうよりも取られるほうが多い。これでは転換とは言えないのじゃないですか。この点について、総理のはっきりした見解伺いたい。
  254. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 振替所得、国民所得に対する社会保障費でございますから、国民所得は非常に大きくなってくるのであって、その大きくなったものの六%から八・八%にということでありますから、これは積極的な姿勢であるということは考えていただきたいと思います。  それから、振替所得が増大をするということと、それから負担もふえるじゃないかと言うけれども、負担は、この国民所得全体に対する六%が八・八%になることと、高福祉、高負担という面で徴収される額が小さいことはもう言うまでもないことでございまして、いまあなたが言うように、給付金額が大きくなるけれども、賦課される拠出金はそれよりも倍増するのだということでは全くないわけでございます。  しかも、いまの五十二年までに至る長期経済社会基本計画なるものは、これは計画経済ではありませんから、一つの目標数字として、五十二年まで官民の英知をしぼって答申をしてもらったわけでありまして、政府はこの答申には手をつけておりません。しかし、実際の予算額というものに対しては、これは年度年度の予算配分という段階において検討さるべきものでございます。いままで治水計画、道路計画、それから利水計画等々、五カ年、十カ年の計画がございましたが、五カ年計画は四カ年で完了するということで、すでに新計画に移っているものもございます。だから、この計画がそのまま年次割りで一切動かないものではないということは、過去の例に徴しても十分おわかりになると思います。  その場合に、じゃ、この数字よりも下がる場合があるのか。これは福祉中心の方向にいくというのでありますから、ふえても下がらないということは考えていただけると思います。大企業、大企業と言われますけれども、とにかく道路とか通信とか鉄道とかというもの、これは大衆そのもののものでございますし、道路計画というものが大資本のものであるというようなものではないわけであります。道路や鉄道が拡充されないで快適な生活環境が一体確保できるかという問題を考えれば、すぐわかるわけでございますし、国民が道路や交通網や通信網に対してどのくらい要望を強くしておるかということも、十分お考えになっていただきたいと思います。
  255. 荒木宏

    荒木(宏)委員 はっきり申し上げておきたいのですが、施政方針演説でも、こういういい計画がありますよ、これからこれでやっていきますよということで、まるでその計画がパラダイスであるかのようにおっしゃっておる。そこで、その計画は全体の姿として見ればちっとも姿が変わってないじゃないか、こういうことを言えば、それはそのとおりやるものではないとおっしゃる。しかし、今度の予算編成の基本方針という中に、経済運営の基本的態度という中には、はっきりこれの初年度としてやると、こう書いてあるでしょう。そこのところを追及して、ぐあいが悪くなると、いや、それはすぐには結びつかないのだ、こういうふうなことになる。  しかも、あれでしょう。いま道路の話が出ましたけれども、道路といったって、東名のような大資本向けのトラック輸送ばかりやっておるのもあれば、下町の道路もありますよ。下水道の完備の率にしても、公園その他の都市施設にしたって、日本はうんと低いじゃありませんか。東京なんか一人当たり公園は一・二平米ですよ。よく御存じのとおりでしょう。  しかも、この長期計画で最も看過しがたいのは、いまこんなに円の問題が取りざたされて、国際収支の問題が大問題になっているのに、五十二年には百二十四億ドルの黒字を貿易で出すという。前の新経済社会発展計画では七十八億ドルでしょう。五八%もふえているじゃないですか。ことしの見積もりの八十一億ドル、これから見たって五三%もふえているのですよ。いまのレートで換算すれば三兆八千億をこえるような、そんな金をこれからまたどんどん貿易をやって、いまのこの労働者の低賃金、低福祉でついている競争力でもってやっていく、こういうのでしょう。これじゃ転換とはとても言えないと思いますね。はっきりと遺憾の意を表明して、これはいかぬというのだから、思い切って再検討されたらどうですか。総理のはっきりした見解伺いたい。
  256. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 おっしゃるように、五十二年度の貿易収支は百二十四億ドルでございまするけれども、その他貿易外収支において五十七億円減るのであります。で、経常収支としては五十九億ドルでありまして、さらに長期資本収支、経済協力その他で五十九億ドルを出しまして、これは日本が東南アジアその他の発展途上国に対して大いに寄与していこうというわけでございまして、結局、基礎収支はゼロになるという考え方でございます。決しておっしゃるような、円の価値がどうにもならなくなるような、また切り上げを要請されるような、そういう形を想定しているわけではございません。
  257. 荒木宏

    荒木(宏)委員 どんどん貿易でかせいで、それを今度はいわゆる発展途上国のほうへ振り向けていこうという。国内の労働者や農民の生活のほうはどうなります。いま円の問題でみんなずいぶんと心配している。大阪に生野区というところがありまして、ここにレンズの業者がたくさんおりますが、前の四十六年のときに一ダース千五百円でしたよ、売り値が。いま千二百八十円にまで下がっている。前のときには百三業者が一億五千万円の金を借りたけれども、据え置き期間があって、それをいまから返さなければならぬのですよ。そこへ今度のこの事実上の円切り上げという問題が起こっている。  通産大臣にお伺いしたいが、こういう実情は通産省のほうでははっきりとつかんでおられますか。
  258. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 各地にいま係員を派遣してやっております。いまのレンズの件もある程度承知しております。
  259. 荒木宏

    荒木(宏)委員 これは大阪のレンズだけじゃありません。和泉の模造真珠もそうですよ。前のいわゆるドル・ショックのときには百五十業者がありましたが、それがいまや半分になっていますよ。今度の事実上の円切り上げで二割も値段が下がっている。金を借りようといったって利子を払わなければならぬのですから、借りに行った先で国民金融公庫の担当者が、この上また借りて返せますか、こういうふうに言っていますよ。通産省のほうではこういう現実、これは大阪だけじゃありません。東京にもあるし、静岡にもあるし、栃木県にもあるし、どこでもありますよ。そういうのに対して一体どういう対策を考えていますか。
  260. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 雑貨、繊維、機械、こういうところが一番大きな痛手を受けておるようです。それで二十一日から二十三日まで通産局長を招集いたしまして、いろいろいま現地で調べていることの報告を受けて、そうして各業種別、各地域別に具体的な手厚い政策を実行しているつもりでおります。特にケミカルシューズであるとか、いまのレンズであるとか、あるいはクリスマス電球であるとか、そういう雑貨類については粗漏のないようにいたしたいと思っております。
  261. 荒木宏

    荒木(宏)委員 もっとはっきりした具体的な内容を伺えぬと、とても承知できませんね。大阪府では二月の十四日、政府が変動幅の制限を取り払ってフロートにしたその次の日に、革新知事の黒田さんは四十億円の金を出しましたよ。口先でいろいろ言ったり紙きれを出したりしているのと違って、現実に金を出したのですよ。一体いままで通産省は、具体的にどういうことをやりましたか。二月十四日の本会議では、来週はすぐに局長会議を開いて実情をつかむ、一週間、二週間、三週間、情勢は刻々変化するから、直ちにそれをつかんで実施をいたしますと、こうおっしゃっている。いままでにどういうことをされたか、はっきりと伺いたい。
  262. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 直ちに実施した措置といたしまして、輸出関連中小企業の実態調査、これはいま係員を各地に派遣してやっておりますが、大体二十一日から二十三日までの通産局長会議に報告をさせて、今月中にその対策を地域別、業種別に綿密につくるつもりでおります。大体、フロートになりまして先行きの見通しが各業種ともつかないものですから、戸惑っておる向きがあるわけです。その戸惑いの状態自体もよく把握しておかなければいけない、こういうことで、その情勢に応じてこちらは手を打っている、こういうことでございます。  それから、二月十四日に各金融機関に対して指導いたしまして、政府関係金融機関、それから中小企業信用保険公庫、それから全国銀行協会連合会等に対しまして、特段の配慮をするように指示、または要請をいたしました。特に下請中小企業につきましては、必要に応じてひもつき融資をするように指示をいたしております。これを受けて全国銀行協会連合会は、二月十五日に傘下各機関に同様の趣旨を通達して徹底させております。  なお、大蔵省銀行局長から二月十五日に、同じような配慮を要請する指導をしております。  それから二月十四日には、下請企業に対するしわ寄せの回避といたしまして、下請代金支払遅延等防止法の強力な運用を行なわせるように、これは私と公取委員長の連名で指示をいたしまして、親事業者団体百三十二団体、中小企業団体等に通牒いたしました。  それから二月十三日は、納税猶予制度の活用の指導を申し入れいたしておりまして、二月十五日付で国税庁長官から、各国税局長に指導通牒が発せられております。地方税につきましても、二月十六日付で、自治省税務局長から各県に対して、同様の通牒が発せられております。  労務対策といたしましては、二月十五日に労働省が、都道府県、関連業界に対して、雇用安定のために、雇用失業者の早期把握、中高年齢者、パートタイマー等への配慮等について、産地懇談会等を活用するなどの措置によって、同じくこの対策を講じさせております。なお、ドル対策法に基づく求職手帳制度の積極的活用をはかるなどによって、離職を余儀なくされる者に対しては万全の措置を講ずるよう指示しております。  それから、為替取引円滑化措置としまして、本日閣議了解を得まして、為替予約制度について実施いたしました。これは、特に中小企業者におきまして、先物、直物等について、為替の不安定なところから非常に取引ををちゅうちょせざるを得ないという人たちのために円滑化をはかったことでございます。  以上が、いままでとった措置です。
  263. 荒木宏

    荒木(宏)委員 こういう言い方をしたらどうですかね。先ほど来伺ったところによると、いま調べておる、そしていろいろ紙に書いて通達を出しておる。ふところから出すものはないのですか。こんなに輸出関連業者がつぶれるかもしれぬというて心配しておるのに。どうですか、これ。
  264. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは要請がありましたら、直ちに出せるように手配はしてあるわけですから、要請があれば出す用意はしております。  ただ、中小企業者のほうで戸惑いぎみであって、まだ金を貸してくれと言ってこないところがかなりあるのです。それはもっともな話であります。そういう意味において、中小関係の業者が腹をきめてどういうレートで取引を自分のところはやろうか、そういう見定めをつけるように、いまいろいろ情報を与えたり助言をしたりするということをやっておるわけです。
  265. 荒木宏

    荒木(宏)委員 そういう戸惑いが生じておるのは一体だれの責任ですか。フロートにしているから戸惑いが生じているのでしょう。それじゃどうですかね、大阪では、先ほど言ったように四十億円出していますよ。そうすると、大阪ではためらいがなくて、すぐに業者がどんどん言っていく。ところが、肝心の通産省のところへは言っていかないということになるのですか。一体どういう姿勢で、だれのために、だれを守るための通産行政をやるのですか。
  266. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大阪も用意したのだし、われわれのほうも用意したのです。
  267. 荒木宏

    荒木(宏)委員 幾ら、何を用意したのですか。金額は幾ら、どういう形で用意したのですか。
  268. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 要求があればどしどし出すように指示してあります。それで要求があって足りない場合には、足りないときの措置もわれわれは考えております。
  269. 荒木宏

    荒木(宏)委員 二月十四日の本会議では、あなたは三百億円ということをおっしゃっておる。それは一体どういう金ですか。
  270. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 三百億という記憶はございませんが、われわれのほうは一般の銀行、それからそのほか政府関係の金融機関というものに対しまして、要望があれば直ちに特別の考慮を払って契約に応ずるようにということを指示しておるわけでございますから、来るのを待っておるわけであります。
  271. 荒木宏

    荒木(宏)委員 一週間前に本会議で答弁をなさったことに記憶がないとおっしゃるが、ここにある会議銀によれば、「小規模経営改善資金として事業規模で三百億円の資金を用意しております。」と、こういう話がある。これは今度の円対策の金だとおっしゃるのですか、よれとは全く別だというのですか。これは、円対策輸出関連業者が困っておる、一体どうするのだと、こう聞かれてこの答弁ですよ。
  272. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それはいろいろ政策を述べました中に、四十八年度分としてそういう用意もしております、そういう一つのエレメントとしてあげたのです。それは無担保、無保証で特に小規模零細企業に充てようとしておることであって、これもいずれ活用できるでしょう、そういう意味であります。
  273. 荒木宏

    荒木(宏)委員 無担保、無保証というのは、これは円対策とは別に出てきた予算でしょう。いま事あらためておっしゃるまでもなく、無担保、無保証は、大阪府でも京都府でも東京都でもみんなやっておりますよ。四十七年では全部で九十億円も出しておる。もしそれで、その無担保、無保証という、これが中小業者対策ですよといっておるのを今度の円対策に振り向ければ、それじゃ初めに用意したこの無担保、無保証の中小業者対策本来の金は、一体どうするのです。三百億円という一つしかない金を両方へ振り向けようというのですか。その点はどうですか。
  274. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いろいろ政策をあげました中に、こういうことも四十八年にはやります、これも活用できます、そういう意味で申し上げたのです。
  275. 荒木宏

    荒木(宏)委員 打ち出の小づちじゃないのですから、一つのものをあれにもこれにも使うという、そんなことじゃいまのこの輸出関連業者の苦しみ、ほんとうに心配しておる人たちは、国民承知しませんよ。通産大臣は、今度のこの事態で、二月十四日にいろいろと通達を出された、こういうことをおっしゃったけれども、その中に、深刻な影響がある、経営環境が非常にきびしい、こういうことをすべての通達の中でお使いになっておる。これは業績が悪化することを予想し、ほんとうに心配するという意味でおっしゃっておるのかどうか、重ねてその通達の真意を伺いたい。
  276. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 今度は二回目の切り上げという可能性がございますから、この前のときはある程度担保物件を持っておった中小企業も、あるいは今度はないのがあるかもしれぬ。それから、二回目になると上積みになって切り上げが行なわれるわけですから、その限界にある業者は非常な苦難を浴びるわけです。この前の苦労よりもさらに、一番上がったところからさらにまた上げなければならぬ、そういう苦しみがあるわけです。ですから、そういうところをよく見て遺漏のないようにやるように、こういう趣旨でやっておるわけです。
  277. 荒木宏

    荒木(宏)委員 ここで輸出関連の中小業者の人たちが受ける苦しみ、それに関連をして大蔵大臣にお尋ねをしたいと思いますが、今度の四十八年度の法人税の税収見積もり、申告法人所得の伸び率は二三・八%だと見込んでおられるが、これは間違いありませんか。
  278. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 おっしゃるとおり二三・八%でございます。
  279. 荒木宏

    荒木(宏)委員 大蔵大臣にお尋ねしたいが、これは長期の見積もりだというふうにおっしゃっておるけれども、税収は、これは確保しなければならぬというものなんでしょう、あなた方の立場では。
  280. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そのとおりでございます。
  281. 荒木宏

    荒木(宏)委員 この二三・八%というのは、この点は、これは総理にお伺いしたいけれども、四十五年は経済成長が一七・五%でした。それで法人税の伸び率が一九%余りになっておる。今度は一六・四%でありながら二三・八%、もう目一ぱいというか、うんと見込んでいる。どうです、先ほど来通産大臣がいろいろと述べられた、こういう中小業者や国民の業績悪化の現実があって、そしてこの歳入を目一ぱいに見ている見積もりどおり取っていく、こういうふうな政治姿勢でおられるのか。これは最高責任者として政治姿勢の問題として伺いたい。
  282. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 税収は主税局で計算をしておりますから、私はさだかなことは申し上げられませんが、しかし、一〇・七%の成長率というものは、四十七年の下期の状態から見ますと、相当もっと高くなるだろうという考え方がおおよその意見でございました。ことしの税収はまださだかなものにはなっておりませんが、ことしの自然増収も相当額見込まれるわけでございます。そういうものを引き延ばしてまいりますと、相当高い成長率になる。高い成長率になる場合にはどうなるかというと、物価も五・五%というような数字が必ずしも出てこないわけでございますから、相当効果的な政策というものを行なうということで、一〇・七%、物価は五・五%に押えます、押えるべく最善の努力をいたします、こう述べておるわけでございますから、変動相場制に移ったとしても、政府が企図しておる一〇・七%という成長率というもの、これはもうなかなかはっきりは申し上げられないのでございますが、私の立場で考えるときには、一〇%以上というような成長率は四十八年度年度間を通じては確保できるのではないか。確保できれば、税収、特にことしの下期の伸び率を見ておりますと、法人税の税収がうんと減るような状態にはないのではないか。もしありとすれば、それは四十九年度になるとがたっと落ちるかもしれませんが、そういう問題は、いまの予算を執行していく過程においては確保できるのではないかと、もうこれは質問でございますから、私がいまオウム返しに考えておることをそのまま述べたわけでございますが、補足することが必要であったりすれば、大蔵大臣からもう一ぺん述べます。
  283. 荒木宏

    荒木(宏)委員 総理の政治姿勢として伺っておるのですが、先ほど来の話では、通産大臣は、深刻な影響がある、経営環境は非常にきびしい、大蔵省の銀行局長も十分配慮せいという通達を出している、国税庁の長官も徴税緩和だとかあるいは減免措置をとる、こういう通達を出している。つまり、全体として打撃を受けるということを前提にして税金を取るのを猶予しよう、あるいはそれを先へ延ばそう、こういうふうなことを通達としてはしていると、こうおっしゃっている。あなたはいまの話だったら、予定どおりこれは取れるでしょう、こう言う。それでは、税金を減免するような措置を思い切ってとりますか。
  284. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 あなたが、そういう立場でもってお話をしておられるのだとは理解しなかったのです。四十八年度予算歳入の問題に対して御質問がございまして、特に歳入の中に占める法人税全般に対して、予定しておるものが確保できるかどうかということでございましたから、経済成長率は確保できるでしょうということを述べたわけでございます。これは中小企業に対する減免とか、徴収猶予とか、もう輸出関連中小企業に対しては当然行なわなければならない、こう考えております。ですから、もうすでにそういう措置をいたして通達をいたしておるわけであります。ですから、そういう意味ではその部分が減収に立つということ、これは当然かと思いますが、しかし、すべての法人税から見ますと、四十七年度の下期の状態を引き延ばしてまいりますと、それは変動為替相場制に移ったとしても、四十八年度間を通じての法人税収として計上しているものに対しては、常識的な見方として確保できるのではないか、こういうオウム返しの私の返事でございますということで、輸出関連中小企業に対する徴税強化を行なう、そんなことは考えておりませんから、そういうものではなく、予算全体の歳入の中に占める法人税が確保できるのか、このようなことではうんと減るのじゃないかということが、二段目の御質問にあるのじゃないかと思って私はそのままお答えしたわけでございますから、補足することがあれば大蔵大臣から答えます、こう述べておるわけであります。
  285. 荒木宏

    荒木(宏)委員 お聞きしておる観点をひとつはっきりとつかんでいただきたいのですが、私が言っているのは、いま輸出関連業者や農民はこの問題で非常に不安にさらされております。そして今度の四十八年度予算を御審議いただきたいというて出しておられるものを見ると、去年からことしにかけて、税金が払えないから延ばしましょうというているのが五百八十五億あるという見積もりになっている。これは取れても取れぬでもいいというものではないでしょう。田中内閣としては、それは去年から繰り越しで五百八十五億は取りますよ、こうなっておる。ことしから来年にかけて繰り延べになるのが八百七十八億ある。そういうふうなことで、それだけはこれは繰り延べになりますが、それ以上、何ぼなとしましょうというようなものではないでしょう。だって、長期の見積もりとはいいながら、こいつは歳入財源として確保しなければならぬものとして出しておられるのだから。私が伺っているのは現実に打撃を受け、被害を受け、ほんとうに苦しんでいる人たちがたくさんある。そのことの手当ての必要も認めておられる。だとすれば、滞納や延納や減免やそういった措置はどんどんどんどんとっていかなければならぬでしょう、万全の措置とおっしゃっているのだから。とすれば、当然その限りでは税収の見積もりに狂いが出てくるのじゃないですか、その措置をとれば。そのことを政治姿勢の問題として伺っているのです。
  286. 愛知揆一

    愛知国務大臣 総理の御答弁で明白にお答えしていると思うのでありますけれども、税収の見積もりというのは、もういまさら申し上げるまでもないと思いますけれども、長い期間にわたって年度中の経済の動向を見て、そして税収入の見積もりをつくるわけでございます。その税収入の見積もりについては、ただいま見積もっておるものが適正なものであると考えておりますし、いまの時点でこの見積もりを変えるというようなデータはございません。  ところで、一方におきまして、ここにも持っておりますけれども、もうすでに今回の変動相場制移行に伴いまして、直ちに国税庁長官から管下各末端の第一線のところまで通牒を出しまして、今回の変動相場制移行につきまして影響を受ける中小企業等については、こうこうこういうふうな取り扱いをすべきであるということを詳しく通達をいたしております。これは、いわゆる万全の措置の中の一つでございますが、こういったような措置をとりましても税収の見積もりには関係なく、一方においては公正で法令に基づく徴税をきちっとやる、それから一面におきましては、現下の事態に対処して適切な税の行政上の配慮をする、これは両立するものでございまして、御心配はないと私は確信いたしております。
  287. 荒木宏

    荒木(宏)委員 歳入というものは、これはひとりでに入ってくるものじゃないでしょう。何か自然現象のようにおっしゃるけれども、あなた方のほうで歳入見積もりを出して、これだけはひとつ財源として取りますぞ、こうおっしゃっているのです。しかも、更正決定の分として八百三十四億、つまりどんなに申告があろうとも、そいつは見直して、そうして調べて八百三十四億取り立てますぞ、こうおっしゃっているのですよ。輸出関連業者がほんとうに苦しんで、そして何とかしてもらわなければならぬ、こう言っている。それはもっともな面があるというて通牒まで出しておるのに、更正決定まで出して八百三十四億取りますぞということが変わらぬとすれば、一体これはどういうことなんです。単に徴税技術だとか、あるいはその帳じりがどうなるかという問題ではありませんよ。いまこの時期に田中内閣の政治姿勢としてどういう態度をとるか、このことで総理見解を伺っているのです。
  288. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは、政治姿勢の問題でもあり、徴税行政上の問題でもあり、これはもうぴたっとしているわけでございまして、公正な税制の執行からいって、更正決定を求めて、そして重課することも、これは公正な措置ではございます。これはもう一般的に、法人であれば、各法人によって公正に調査をして、あるいは申告により、あるいはその他の方法によって税額をきめて、これを徴収するわけでございます。そして全体の見積もりといたしましては、御審議を願っている中に数字が出ておるわけでございますけれども、もちろん政府としては、この歳入は確保したいという気持ちを一方に持ちますけれども、これは自然に入ってくるものではもちろんございませんが、しかし非常に多数の法人、個人を相手に、しかも個別に申告を受け、あるいは審査をして決定するものでございますから、割り当てて見積もりをしたからといって、それを何でもかんでもぎりぎり取らなければならない、そういうやり方でないことは、これはもう、あなたのよく御承知のとおりのやり方をやっておるわけでございます。  したがいまして、現在の段階におきまして、一方においては、輸出関連産業で影響を受けるであろうところの中小の業界の方々に対してはできるだけの配慮をする、そして親切に十分その立場立場を尊重して、あらゆる措置について相談をしてやるようにという通牒を出している次第でございます。
  289. 荒木宏

    荒木(宏)委員 これは一体どういうことになりますか。減免や猶予の必要は認めている。一方、最初にこれだけは確保しようという数字ははっきりと出ている。あとで追い打ちをかけてまで取ろうという数字まで出ている。はっきり減るじゃありませんか。現実の扱いとして、減免や猶予をやれば、ほかから取ってこなければつじつまが合わぬでしょう。自然にわき出てきますか。そういういまのこの事態が、このフロート固定を待たなくても、現実にもう税収見積もりという点で狂いが出ている。このことは数字の上ではっきりしているじゃないですか。あなた方のなされた処置自体からもそのことが言える。そのことを言っているのですよ。だから総理が、いやそんなことはかまわぬ、初めにきめたとおりどんどん取っていくんだ、こうおっしゃるのか。それとも、そうじゃなくて——実際に減りますよ。それはやむを得ぬでしょう、だって事実なんだから。そうだとすれば、そういうことを認める政治姿勢に立つのか、このことを伺っているのです。
  290. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはもうよく御承知と思うのですけれども、いつも国会で御審議をいただきますときに、たとえば自然増収が非常に多いではないかという御指摘をしばしば受けることもございますが、見積もりに対しまして、きちんと各納税対象の法人あるいは個人等に対しまして正確に審査をして、そしてあがるところのものが実績として歳入になってくるわけでございまして、従来においては、見積もりよりも相当多い場合が多かったわけでございます。  それから現段階におきましては、何度も本会議でも申し上げますように、いま変動相場制に入ったからといって、これから年度を通じて、あとあとまでのところを正確にこの情勢を掌握して、そして現時点で税収入の見積もりを改定するということは、私は今日では不適当だと思います。それは、人為的な何か設定でも置いて、仮定的な数字をでっち上げることはできるかもしれませんけれども、私はそういうことはむしろ適切ではないと考えるわけでございます。
  291. 荒木宏

    荒木(宏)委員 それは、あなた方が税収見積もりというものをどういう立場に立ってやるか、ここの一番肝心なところをずらしているからですよ。国民の立場でやるんでしょう、税収見積もりというのは。国民が、労働者、農民、中小業者が、いまのこの事態で、これは困ったと言っている。そうすれば、その立場に立って見積もりをするとすれば、これは、それをくみましょうというのがほんとうでしょう。どういうところに落ちつくか、これはいろんな変動要因がありますよ。しかし、どっちにしたって、いまのままじゃいけないことはわかっているんだから。だとずれば、これは一たん引っ込めて、国民の立場、中小業者や労働者や農民の代表の意見も聞いて、そして再検討 しましょう、これが国民の立場に立った見積もりでしょう。それと離れた別の、一たん出したからそれでいくんだ、とにかく落ちつく先がわからぬからそのままでいくんだというのでは、この予算は一体だれの予算かと言いたくなる。どんなに言われたって、はっきりしているんですから。だって、減免措置をすると言うし、そういう事態が起こっておることもはっきりしている。  地方財政だってそうでしょう。地方交付税のほうに三分の一はね返る。こんなことはもうみんな知っている。地方譲与税もそうでしょう。地方税だってそうですよ。大阪府でも、どんどんそのことで実際にお金が要るというて、自治体だって困っているじゃありませんか。この前も大阪から自治体の労働者が、超過負担の問題も含めていまの事態で緊急な措置をしてほしいということで、市長さんや総務部長さんまで含めて一緒に陳情に来ましたよ。そのぐらいにいま地方自治体というのは財政的に困っておるでしょう。そこへ持ってきてこの事態。だから、出るほうでも、地方財政の問題で狂いが出る。入るほうでも、法人税でいま言ったような問題が起こってくる。関税だってそうですよ。  そういったことが現実に起こっていれば、当然再検討になるでしょう。だって基盤が狂っているんだから。いままでやってきた路線、もうそれじゃだめだということははっきりしている。転換、転換とおっしゃるけれども、ちっとも転換になってない。そのこともはっきりしている。いまここで出ている狂いを埋めるとすれば、これは税金で埋めるんですか。公債で埋めるんですか。そんなこともできぬでしょう。軍事費や列島改造費を削って、そうして再検討する、それが国民の立場に立ったほんとうの見積もりじゃありませんか。総理のはっきりした見解伺いたい。
  292. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 租税法定主義でございまして、税は法律によって徴収しておるわけでございます。しかも、長い実績と、特に経済見通しを立てながら、前年度の下期の実績、実情を考えながら十二月の末になって組むわけでございます。だから十一月、十月には組めないというので、やはり十二月末にならなければ正確なものが組めないということになっておるわけでございます。しかし、四十六年度でも同じことだったわけでございますが、中小企業零細企業に対して減免、徴収猶予をいたしました。今度もいたします、こういうことです。いたします。いたしますが、それは、中小輸出関連企業の納める税というものが法人税の大宗をなしておるわけじゃないわけであります。ですからそういう意味で、まず徴収猶予や減免の措置は通達もいたしましたし、やります。だから財源を得るために徴税強化はいたしません。はっきり申し上げておきます。徴税強化などいたしません。  そうすると減収が立つじゃないか、こういうのでございますが、いまの見通しで減収が立つか増収が出るのかということは、これは見積もることは非常にむずかしいことでございます。また中小企業そのものから、どれだけ減免措置をしてくださいという要求も、まだ出そろっておらないわけでございますし、そういうわけで非常にむずかしいのです。  そして、いままでずっとやってまいりましても、減収補てん債が立ったのは四十年にたった一回であります。これは減収補てん債で国会審議をいただきました。そういうことでございまして、四十六年度も徴収猶予や減免の措置がとれましたけれども、予算は執行できたわけでございますし、財源は確保できたわけでございますので、結局、いまの状態においては提出をしておる予算歳入で御審議をいただく以外にないし、それがほんとうに来年の三月ごろになって、それはとにかく一〇・七%が八%しかいかなかったじゃないかというような状態で減収補てん債という問題が起こるじゃないかといわれても、これは私はそういう意味に対しては、少なくとも四十七年度の下期の経済実勢を基礎にして引き延ばしてまいりますと、一〇%、一〇・七%という経済というものは維持できるのではないか、こういう私の考えでございます、こうすなおに述べておるのでございまして、中小企業零細企業に対する徴税強化などは絶対にいたしません。
  293. 荒木宏

    荒木(宏)委員 事実の認識が全く違いますね。神奈川県、ここであなた、スカーフの業者が同業界百三十二社、労働者が四万から五万おりますよ。もと百三十億円から百五十億円あった商いがいま九十二億円ですよ。栃木県の足利、ここの織物は、約四千の織物業者がおりますよ。従業員が十人前後の零細業者が大半ですけれども、前のドル・ショックのときに国内向けに転向して、いまはしかし一割程度の輸出になっていますけれども、今度のこの事態で、ほとんどなくなるだろうといわれている。静岡県のマグロのかん詰め業者も、これも輸出が六割でほとんどがアメリカ行きです。愛知県の瀬戸では陶磁器があるでしょう。幾らでもあるじゃないですか、こういうのは。愛媛県の今治のタオルは、おととしのドル・ショックで対米輸出は二割減りましたよ。そして余ったミシンの破砕すらまだ終わってないのですよ。東京の品川ではクリスマス電球、おととしのドル・ショックで単価が三割切り下げられました。売り上げは八割も下がっている。こういったことがどんどん起こっていて、そうしてそれについて減免の措置をする、これは先のことじゃないです、いまのことですよ。そうすれば、いまこの事態にあたって、補正だとか、いわんや予備費でまかないますというようなことが言えた道理じゃないでしょう、ほんとうにこの人たちの苦しみを救おうとすれば。思い切ってここで再検討して、そうして皆さん方の苦しみは一緒に解決しましょう、これが責任ある政治家としての態度でしょう。私はそのことをはっきりとあなたに申し上げておいて、そして私の関連質問を終わります。
  294. 津川武一

    津川委員 総理に再びお尋ねいたします。  この委員会における劈頭の所信表明で、「政府は、円の切上げを回避するためあらゆる努力を傾け諸対策を進めてきたが、諸般事情により変動相場制に移行する事態に至ったことはまことに遺憾であります。」こう言っておりますが、このあらゆる努力を傾けたという、このあらゆる努力の内容を少し説明していただきたいと思います。
  295. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは間々申し上げておりますとおり、関税の二〇%一律引き下げ、輸入ワクの拡大、それから大型補正予算の編成、今度の四十八年度の予算もまたその一環として考えておるものでございます。それから貿管令の発動、それから業者同士の輸出の自粛。輸入拡大のために、いままで輸出入銀行で、輸出に対しては安い金利で、輸入に対しては高い金利でございましたが、逆にいたしました、輸出は高く輸入は安く。それからドルの直接貸しを行なうようにいたしまして、相当程度のものが出ております。それから開発途上国に対する援助、質の改善、国際機関に対する出資、協力の増大。いろいろなことをやったわけでございますが、最後に残っておりますのは自由化、それから非関税障壁、それからもう一つは資本の自由化というのが残っておるわけです。  資本の自由化も相当やってまいったわけですけれども、最後に、五〇%を原則ではなく一〇〇%原則にしなければいかぬという問題をいま検討いたしております。関税も、いまのままではどうにもならぬのでというので、国会に関税定率法の改正案をいま御審議をいただいております。それから物の自由化。三十三品目残っておりますものを十品目ぐらい、こう言っておりますが、これは先ほども述べましたように、農産物は全部やっても五億ドルしかならない、どうしてもやはり国内的な措置が先だ、こういうことがございまして、この自由化は残っております。  非関税障壁に対しては、これは、ただ空港でもって持ち込んだドルを申告しなければいかぬ、申告しなくたっていいじゃないか。申告すれば、無条件に届け出だけだからといっても、届けるために三十分も待たなければいかぬ、こういうようなものがございますから、そういう非関税障壁も撤廃の方向に努力をしておる。これは日本としては相当な努力を続けてまいったわけでございます。
  296. 津川武一

    津川委員 あらゆる努力の中でまだ残っているものが一つある。一つと言われなかったけれども。それは農産物の自由化、これは要求されてくると思います。これは依然として、あなたも施政演説の中で言っていることを私も聞いておるが、守り抜くつもりでありますか。守り抜きますか。
  297. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これも南北問題の一番大きな問題でもございますし、主要工業国であるアメリカが農産物でもって日本や欧州とけんかしているというのもおかしいことでございますが、これは低開発国、工業国をいわず農産物が問題になっておるわけでございます。しかし農産物に対しては、いま申し上げたとおり、全部やっても五億ドルである。しかし、そのためにこうむる被害は相当大きいわけですから、結局、自由化をするとしても、これは、国の機関とか何かで全部国内産品は買い上げてやる、そして価格支持をちゃんとやる、そして自由化をする、そして安いものが台所へ届くようにします、その間に必要があればこれを放出するということなら考えられるかもしれませんが、いまただ国内対策をやるというだけで農産物、一次産品の自由化ができるのかどうか。これは、私も新潟県の出身でございますが、豪雪単作地帯では米以外つくれないという事実、そういうことを考えてみますと、これはやはり、よほど国内対策というものが完ぺきなものにならないとできないということでございまして、全然やらないということも対外的には言えないわけでございますが、やるにはやっても、農民そのものが理解をする、賛成ができるふうな体制というものが前提として考えられなければいかぬだろう、こう考えております。
  298. 津川武一

    津川委員 あなた、四十八年度の予算案審議をわれわれに提案した。そうしている中にアメリカのドル切り下げが起きた。そしてフロートに変えた。その日は十三日。その同じ日に経済社会基本計画を閣議で了解した。この中では、輸出を二百何ぼから五百何ぼにふやす。となればもっと輸出はふえる。均衡をとるとすれば、アメリカから農産物の輸入以外に非常にめんどうな問題が出てくる。かなりこれは均衡をとるためには一まあ私、大資本ということば使いましょう。独占でもいい。輸出をふやしていくとすれば、しかも貿易収支の均衡をとるとすれば輸入してこなければならぬ。そうすると、依然として輸出はふやしていく、そして農業は守れる、こういう確信があるわけですか。
  299. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 アメリカとの間には貿易バランスをとらなければいかぬと思います。私は、変動相場制に移行したということ、将来的な展望に立つと、日米間の貿易収支は、一時的な問題としては、輸出がいまよりもふえる場合があるかもしれません。ところが、一年間を通じてみたり、第二年目、三年目を展望するときに、日米貿易収支はうんと縮まると思います。とても年間四十億ドル、四十億ドル以上の逆調が続くなどと考えておりません。これはやはり輸出は相当な打撃を受ける、こう思います。
  300. 津川武一

    津川委員 輸出が打撃を受けて四十億ドルなどの出超が続かないと、こう言ったな、あなた。ところが、経済社会基本計画の五十二年度の出超が百二十四億ドル。これを、ドルで問題が起きた、ショックが起きた、フロートにした、その日にあなたたちは閣議で了解している。ここのところにほんとうに反省があるかという問題。  そこでこのことは、あなたのきょうの表明を見た。あらゆる努力を続けてきたと言った。だが今度は、対策に万全を期すると言う。努力を傾ける、強力な措置を講ずると言ったけれども、何が残っているかという問題なんだ。何が残っているか、あなたの処置の中で。あなたは、いままであらゆる努力をしてきたと言われる。あらゆる努力をしてきてここにきた。そして言っていることはやはり同じことだ。いままでと同じことをやるということしか書いていない。そうして、しかも五十二年には百二十四億ドルという出超。あなたは繰り返し繰り返し言った。あなたの施政方針演説を私はそらんじるほど読んでみた。貿易収支の黒字が困ると言っているんだが、この困る貿易収支の黒字を百二十四億ドルにするというあなたのこの姿勢は、やはり私は転換を必要と思うのだけれども、この点どうです、転換は必要でありませんか。
  301. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私も閣議決定をした者、閣議決定に署名をしながら少し考えたいと、考えてからサインしたわけでございます。私が一番最後にサインしなければならぬわけでございますから、これはまあサインをしたわけでございますが、そのときにしばし考えました。考えましたが、これは官民の衆知を集めた一つの力作である。そうして、いろいろな国際的な情勢も考えながら、成案を得たものでございます。しかも、この百二十四億ドルという貿易収支の黒字ということに対しては、あの答申を受ける日の総会でも議論がされました。それは、貿易も伸び、それから輸出も伸び、輸入も非常に伸びるんだ、そうして基礎収支をゼロにするという考え方でいっているわけであります。これはまあ一つの方向であろうということだけは理解ができましたので、政府案として、政府としてもこれを承認をしたわけでございます。  しかし、先ほどから述べておりますように、五十二年度ということを想定しておるわけでございますから、これは一つの方向を示したものでございます。経済見通しのごときものでございます。しかし、年々開放下になりますと、自分たちの問題だけではなく、よそから問題が起こるわけでございます。これは今度のドルが一方的に切り下げられたということと同じことでございまして、そういう場合、年度予算や年度の経済見通しはおのずからその時点において考えなければならないわけでございますから、あの閣議決定がちょうどフロートにいった十三日であったからというようなことで評価をされないで、あの官民の力作、日本においてはもう最上の人たちの英知を集めてつくったものでございますから、そういうものの中で一つの方向を国民に示して、そして訂正するところがあったり、いろいろ弾力的に考えなければならないことがあれば、年度予算の編成の状態とか施策を行なう場合に十分正して誤りなきを期してまいろうということでございまして、あの数字だけでもって輸出最優先の事態が全然変わっていないんだということではないことを理解をしていただきたい、こう思います。  それから輸出問題ですが、こちらはまだ当分国内体制が整わない、内需はそんなに急激にふえないということになりますと、どうしても輸出、ある意味で出血のようなものが起こっては困る、こう思いながら、輸出はそんなに急激に減らないのじゃないかというおそれを持っているわけです。しかし、相当なコントロールを行ないませんと、向こうが一〇%切り下げた上に、なお課徴金を一五%かけますぞということを言っているわけですから、こういうことは相手のことでございまして、これをやられようものならもう対米貿易ゼロになってしまう。極端に申し上げるとそういうこともあるわけでございますから、事態の推移に十分注意をしながら、理想的なほめられるような政治を前進してまいりたい、こう思います。
  302. 津川武一

    津川委員 そこで総理、十三日の日あなたがサインするとき——あなたはそういうことなんだな。一生懸命かかって貿易収支の黒字を少なくすると言う。ことし、四十七年度、あなたが言っているとおり八十九億ですね。これを少なくする、少なくするということをあなたは言ってきて、国民に公約して、しかもあなたのやる計画の中において、経済社会基本計画では、百二十四億ドルになるということにサインするところに、あなたの責任があると思う。きょう私にこう言われてからサイン取り消し——その時点だったらサインしてないと思う。これでやはり基本計画の政治的な修正、再検討、そのことが予算にも盛られているし、基本計画の再検討が絶対に私は必要と思いますが、この再検討はどうです。——いやいや、総理に聞いている、総理に。
  303. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 総理にしばしば考えさせた原案は私のほうが出したわけです。責任があります。  そこで、GNPとの関係も考えていただきたいのでありまして、いまお話のあった八十九億ドルの黒字は、今日のGNPに対する関係で申しますと三・四%。百二十四億ドルになるときにGNPの想定は百八十四兆円でございます。今日は百九兆八千億円。この百八十四兆円に対する百二十四億ドルというものは二・一%であるわけでございまして、非常に大きく下がっておるわけです。  そこで、わが国は輸出をしないでやっていけるかというふうに考えてみますと、これは輸出優先、成長優先という政策を大いに福祉優先に改めまするけれども、輸出は悪なりというようなことにはいかぬと思うのです。われわれ天然資源がない国でございまして、先ほどからも、いろいろ輸出業者の零細業者が困っておるお話がるるありまして、私もほんとうに胸にしみてお話を伺っておったわけでございまするけれども、そういう問題があるということを抜きにして経済社会の今後の基本計画は考えられないという点は、ひとつ御了解を願っておきたいと思うわけでございます。
  304. 津川武一

    津川委員 小坂長官とは商工委員会でゆっくりやりましょう。  そこで、総理がはしなくも、こういう状態でアメリカに一五%の課徴金をかけられる心配もあったから、ついうかつにサインしたというんですが、問題はそこなんです。ドルが切り下げられて各国に対する影響が同じような印象の答弁をはっきりしておるけれども、違う。日本が一番受ける。これはなぜかというと、技術も、それから資本も、それから貿易における率も、圧倒的に日本はアメリカに大きく影響されているんだな。ここのところがやはり考えていただかなきゃならぬ問題です。どうしても日本という国のあり方というものをここで再検討しなきゃならぬ。この根本に安保条約の第二条があることはわかっておるでしょう。あの一九六〇年に安保にああいうふうに入ってからいろんな問題が起きてきたということと、もう一つ、この点がどうしても日本の国を考えるについて転換をしなければならぬ、これが一つ。  もう一つ、あなたは一生懸命やると言う。アメリカの資本の自由化を促進する、自由化をやると言うでしょう。いまあなたたちがほしなくも言ったとおり、アメリカのドルがなぜ問題になるか、なぜドルが弱くなって円が強くなるか。これは、アメリカが外国に投資していって、そのためだ、こういっているんです。その投資の自由化をあなたたち認めて、推進するというのだから、やはりここで基本的な政策の転換が必要だと思いますが、どうです、総理
  305. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 資本の自由化はアメリカのためにやるんじゃないんです。日本のためにやるんです。日本が国際的孤児になっては困るんです。日本は拡大均衡主義でいかなきゃならないんです。これはどこの国よりもそうなんです。そういう意味で、縮小均衡の道を選んでは困るんです。ですから、新国際ラウンドを提唱しておるわけでございます。ですから、域内的にブロック化されることは、これは非常に日本が困るわけでございます。それは戦前のことを言うわけでもないんですが、ブロック経済が行われ、そして縮小均衡になった場合に日本がどのぐらい困るかということは、これはもうほんとうに言うまでもないのでございます。ですから、日本が原材料を開発途上国から輸入して、それで製品を開発途上国に全部やれないわけです。そうすればやはり、主要工業国との角突き合いは行なっても、日本の中級製品以上は主要工業国、ある一定水準以上の国に市場を求めなければならないということは、これはどうにもならぬ話であります。ですから日米間において、日米間の貿易のウエートが三〇%以上になっておるということ、それだからアメリカの影響を受けるのだというけれども、戦後は、はっきり言ってやはりアメリカとの貿易にささえられて今日の日本の繁栄の基礎をなしてきたことは、これは事実なんです。おおうべくもないんです。これは実際、アメリカに一五%の課徴金をかけられて対米貿易がストップする、これは日本の経済成長というのはゼロになるぐらいに、もうたいへんなことだと思うわけでございます。ですから、まだ、日米間の調整が行なわれていけば、そうして国際的に開放体制が維持されていけば、その中で中小企業零細企業や国内的な対策は十分できるのでありますから、そういうバランスというものをやはり考えて、角をためて牛を殺してしまうというような政策はとれないわけでございます。そういうことをひとつ理解していただきたい。
  306. 津川武一

    津川委員 総理、そこで私たちも、日本の貿易がふえて、中国だとかインドシナだとか朝鮮なんかに利益するような形の貿易は進めていかなければならない。これは平等互恵の立場で、外国に資本を輸出したりいろいろなことをするような体制でいくと、事がめんどうなんだ。総評が今度年金の問題でストライキをやると言っているでしょう。これは何を意味するか。国民の生産した、汗で苦労したものを年金という形で国民に取り返す。賃上げもそのとおり。そうすると私たちは、アメリカとも中国とも、どこの国とも心配のない貿易がやれる。それをあなたはいままで、アメリカがやってきたからといって、アメリカに十分依存してきた。だから一五%押しつけられておどかされる。この体制から抜け出さなければならぬ。ぼくはいま、三〇%前後持っておる輸出貿易をいきなり五%にしろなんて言っていませんよ。問題は、そこのところから抜け出す対策をあなたが打つか打たないか、自民党政権の本質がここにあるということを言っているわけです。それをへんてこな形でごまかさない。ここのところをもう一度明確に答弁していただきたい。
  307. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、いやしくもごまかしてはおりませんから、それはひとつちゃんと聞いてください。一生懸命やっているのです。  アメリカに三〇%もウエートが置かれておるということは、確かにアメリカの影響を受けやすい。そのために、もう過去十年間にわたって、輸出の多様化、輸入の多様化ということをやっておるわけです。石油などでも同じところからではだめなので、チュメニからも入れよう、ペルーからも入れよう、カナダからも入れようと、いろんなことを考えておるわけです。これは輸入もしかりでございます。輸出もそのとおりなんです。輸出もそのとおりでございますが、アメリカとの貿易があまりにも大きいということで、これを漸減して、その漸減分がどこへ一体いくのかということになりますと、それは一朝一夕に市場は開拓できるわけはありません。そうでなくても、もうイエロー・ヤンキーといわれたりエコノミック・アニマルといわれたりしておるわけでありますし、第一の円平価調整があったときには、もうヨーロッパが日本商品でもって洪水が起こるのじゃないかというような——まあヨーロッパの域内貿易に比べたら日本との輸出入は非常に小さいのです。小さいのですが、そのようにやはり拒否反応を起こすわけでございますから、やはり日本商品の優秀性というものと、長くお互いが交流を拡大していくということで、外交も通じながらやっていかなければならないので、そこはあなたも、三〇%をすぐ五%にできるものではないのだ、そんなことは考えていないということを聞いて私も安心したわけでありますが、それはやはり時間がかかるのだということで、ひとつ御協力のほどをお願いいたします。
  308. 津川武一

    津川委員 かりに三〇%でもいいですよ。私たちがアメリカと自由な平等互恵の立場にあるならばよろしいんです。この平等互恵の自由な立場でないものが安保の二条なんだ。だから安保の二条の再検討も——あなたは、はしなくも検討してみようと言った。安保の第二条も、安保も検討しなければならぬ。どうです、これは。
  309. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 安保は必要でありますし、検討する意思はありません。
  310. 根本龍太郎

    根本委員長 津川君に申し上げます。あなたの持ち時間はすでに過ぎておりますから、結論を急いでください。
  311. 津川武一

    津川委員 そこで私は、そういう再検討をなさないままに進んできた総理の責任というのは、かなり重大だと思います。この点は指摘しておきます。  そこで、再検討の方向を私たちここでひとつ提示してみます。  それは、このような情勢で、先ほど荒木委員も言ったように、歳入の面においても、歳出の面においても大きくくずれていくことは明らかなので、再検討は、四十八年度の予算を少し手直しする形でなく、決定的、徹底的な立場から検討する必要があると思います。  二つ目には、中小企業で働いている労働者、農業と農民、これを救おうとすれば、かなり大規模な検討というものが必要となってまいります。この点が必要だと思います。  そこで、第三の問題は、四次防の内容は削る。列島改造論の中で、企業拡大、先ほどの百二十四億になるようなものを削って、そこで処置をするということの内容が三つ目。  そうして、結局最後には、ほんとうに予算も、経済社会基本計画の再検討も含めるという、こういう再検討の意思があるかどうかを聞いて、質問を終わります。
  312. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 四十八年度予算案は、るる申し述べておりますとおり、一日も早く成立をして、国民に喜んでいただけるようなことに御協力を賜わりたいと思います。
  313. 根本龍太郎

    根本委員長 これにて津川君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  314. 根本龍太郎

    根本委員長 参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  明二十一日、近江巳記夫君の質疑の際、日本銀行総裁の出席を求め意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  315. 根本龍太郎

    根本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  316. 根本龍太郎

    根本委員長 この際、報告いたします。  公聴会の開会につきましては、二月十四日及び十五日の両日開会の予定でありましたが、諸般の都合により、来たる二十二日及び二十三日の両日開会することに、理事会の協議により変更いたしましたので、御報告いたします。  次回は、明二十一日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時十一分散会