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倉成委員 福祉国家については、どちらかというと何でも入っているがっ
さい袋、この袋の中では、富山の袋のように万病にきくいろいろな処方せんが入っているというふうに受け取られがちでございますけれども、いろいろこの
概念規定や何かについてここで議論をする余裕はございません。しかし
福祉国家の特色として、第一は
失業、疾病、老齢、出産、死亡、その他予測のできる、またはあらかじめ予測のできない事故に対する最低の
生活保障の制度、すなわち
社会保障制度が相当の程度完備しておるということが、やはり
一つの条件になろうかと思いますし、二番目には、やはり
経済に対する政治の統制が進みまして
経済全般の民主化が行なわれておる、
政府がやはりある程度支配できる公的部門が相当程度存在するということ、いわば混合
経済と申しますか、そういうものが必要であろうかと思うわけでございまして、同時に第三の特色としては、これらの
福祉国家といわれる国々の特色としては、やはり強い労働組合があるということ、
議会制民主主義が安定しているということ、これは
国民の自由な、秘密の投票による選挙によって競争する複数政党の間から
政府を選び、それをまた一定の手続で平和的に更迭する統治の制度、こういうものがある。すなわち自由選挙、言論、集会、団結の自由というものが、やはりこの
福祉国家の制度の基本になっておると思うわけでございます。
こういうことから考えてまいりますと、
福祉国家の条件というのは、いろいろこういう要件を備えたものであろうかと思いますが、同時に、
一体世界にあるどういう国が
福祉国家として考えられるかということをいろいろ考えてまいりますと、これはなかなか、西ドイツであるとか、オランダであるとか、あるいはイギリスやスカンジナビアの諸国等は
福祉国家の範疇に属するだろうというふうに一般的にいわれておるわけでありますけれども、私はやはり
福祉国家という
概念が、いろいろと流動的である以上、諸外国の
福祉国家というものを無批判に受け入れる、外国にこういう制度があるから、
日本もやらなければならないというような単なる模倣ではなくして、やはり
日本の
社会にマッチしたいろいろな制度、あるいは
政策というものを考えていくことが大切であるというふうに考えるわけでございます。
しかし、これらの問題についていろいろ議論するよりも、むしろ具体的に
福祉の中身について議論をしたほうがよさそうでございますから、医療の問題、住宅、土地問題あるいは農業の問題、物価の問題、こういう問題に少し焦点をしぼって時間の許す限りで議論をいたしてみたいと思います。
まず第一に、医療の問題について考えてみたいと思うのであります。医療は、
国民の健康と
福祉をささえる大きな柱でありますけれども、どちらかというとこの医療の問題が、今日、健康保険法の改正が国会に提案されておるということもございまして、財政の面からのみ取り上げられる傾きがあることは、まことに残念でありまして、むしろ、やはりある
意味において
国民の
立場から、医療を受ける人の
立場から、
一体今日の医療にどういう問題があるかということを考えてみることが必要ではなかろうかと思うわけでありまして、
憲法第二十五条の健康な
生活というのも、やはりこういうことを
意味しておるのではなかろうかと思うのでございます。
それでは、今日の医療にどういう問題があるかということを、これは時間を節約するために私のほうから申し上げてみますと、おおむね四つの問題を考えております。
一つは、医療混雑の問題。三時間待って三分間の診療。いま東京都内の大病院に行ってみますと、待合室にたくさんの患者さんが待っておりまして、いらいらしながら自分の順番を待っておる。しかし、診察を受けると何分間で済んでしまう、ほんとうに見てもらったのだろうかという気持ちがずっと残っておるということでございます。またあまりに長く待たされるので、やはり時間の制約のあるサラリーマンは病院に行くことができないというのが、医療混雑の第一の問題でございます。
二番目の問題としては、救急医療の問題。休日、夜間等の診療が受けにくいということで、病院を回っているうちに死亡したという事件は、新聞の
社会面にあげられているのみならず、たくさんあるわけでございます。
それから第三の問題は、きょう特に取り上げたいと思っております無医地区の問題、離島、僻地等の医者のない地区の医療の問題。これらの地区の人たちは、厚生省の調べでは全国で三千地区という無医村があるわけでございますけれども、これらの地区は適切な治療を受けられない状態にある。衣食住と同じように
生活の基本条件であり、医療の保険料を払いましても、医者がいなければこれを受けることはできないわけであります。ある
意味において、これはほんとうに保険料を払っておるということが、その反対給付を受けられないわけでありますから、この問題はやはり私は真剣に考えていかなければならない問題であると思います。
それから四番目には、予防医療の立ちおくれの問題でありまして、健康を維持することが医療の最終目的であるはずでありますけれども、早期発見、早期治療が病気発見の、根絶の鉄則となっておるわけでございますけれども、世界
各国では予防医療に取り組みつつあるわけであります。
わが国も伝染病という点では、この予防というものはある程度進んでおりますけれども、成人病
対策あるいはその他の予防医学の点については、いろいろな点でまだおくれているということは、御
承知のとおりでございます。
この四つの私が取り上げました問題と、どうしてこういう医療混雑が起こってきたかという問題、これもまた時間を節約するため私から申し上げまして、いろいろまだ足らない点なり、御
意見があれば
厚生大臣からお答えいただきたいと思うのでございます。
これはやはり
一つには、医療のこういう混雑は、
国民の医療サービスヘのニーズが非常にたくさん起こってきたということが、こういう混雑が起こってくる
一つの大きな原因になっておるわけでございまして、
公害であるとかいろいろなことで新しい病気が出てくるということもございます。それから医者や医療奉仕者の施設が不足したり、また医者がおりましても、地域的に偏在をしておる。都会にはたくさん医師がおるけれども、離島、僻地には医者がいないということ。それから三番目には、医療サービスが非常に低生産性であるというか、もっともっとくふうすればもう少し生産性を高めることができるにかかわらず、低生産性の状態にある。したがって、医療のシステム化がなされていないということではなかろうか。非常にはしょって申し上げたわけでございますけれども、そういう問題が私はこういった医療の混雑その他の問題ができている原因であると思うのでございますけれども、結論から申しますと、医師を雑務から解放して医師の仕事に専念させる、あるいはコンピューターを中心とする情報処理技術、医用電子技術や映像伝送技術等を医療の必要と認められる
分野に活用してやれば、かなりの程度これらの問題は解決されるというふうに考えておるわけでございます。これがいわゆる医療のシステム化の課題であるというふうに思っておるわけでございますが、この医療のシステム化という問題について、後に僻地、離島の医療の現状と、この
対策についてお伺いをしたいと思いますけれども、基本的に
厚生大臣はどういうふうにお考えになっておるか、ひとつお伺いをしたいと思います。