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1973-02-12 第71回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月十二日(月曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 根本龍太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小澤 太郎君    理事 小沢 辰男君 理事 田澤 吉郎君    理事 湊  徹郎君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 谷口善太郎君    理事 山田 太郎君       荒木萬壽夫君    伊能繁次郎君       臼井 莊一君    大野 市郎君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    小平 久雄君       正示啓次郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    塚原 俊郎君       灘尾 弘吉君    野田 卯一君       野原 正勝君    浜田 幸一君       保利  茂君    細田 吉藏君       松浦周太郎君    松野 頼三君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    北山 愛郎君       小林  進君    田中 武夫君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       細谷 治嘉君    堀  昌雄君       安井 吉典君    金子 満広君       寺前  巖君    中島 武敏君       岡本 富夫君    広沢 直樹君       小平  忠君    竹本 孫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 櫻内 義雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         郵 政 大 臣 久野 忠治君         労 働 大 臣 加藤常太郎君         建 設 大 臣 金丸  信君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       江崎 真澄君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         内閣総理大臣官         房審議室長   亘理  彰君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       田代 一正君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         防衛施設庁総務         部長      河路  康君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林省構造改善         局長      小沼  勇君         通商産業省貿易         振興局長    増田  実君         中小企業庁計画         部長      原山 義史君         郵政省電波監理         局長      齋藤 義郎君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省住宅局長 沢田 光英君        自治省税務局長 佐々木喜久治君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月十二日  辞任         補欠選任   前田 正男君     浜田 幸一君   大原  亨君     堀  昌雄君   津金 佑近君     金子 満広君   不破 哲三君     寺前  巖君   矢野 絢也君     広沢 直樹君   安里積千代君     竹本 孫一君 同日  辞任         補欠選任   浜田 幸一君     前田 正男君   堀  昌雄君     大原  亨君   金子 満広君     津金 佑近君   寺前  巖君     不破 哲三君   広沢 直樹君     矢野 絢也君   竹本 孫一君     安里積千代君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 根本龍太郎

    根本委員長 これより会議を開きます。  この際、議事について緊急理事会を開く必要がありますので、暫時休憩いたします。    午前十時四十八分休憩      ————◇—————    午後二時十六分開議
  3. 根本龍太郎

    根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、委員長から一言申し上げます。  平和時の防衛力限界の問題につき、種々理事会で御協議願ったのでありまするが、去る十日の理事会申し合わせにより、この際、内閣総理大臣発言を求めます。田中内閣総理大臣
  4. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ただいま委員長より、理事会申し合わせにより私に発言を求められましたので申し上げます。  防衛力限界について、政府が現段階において正式に決定することは考えておりません。  ついては、去る二月一日当委員会において防衛庁長官より申し上げた、平和時の防衛力についての説明並びにその資料は、この際撤回いたさせます。
  5. 根本龍太郎

    根本委員長 続いて、去る十日の寺前君の質疑に関し、中曽根通商産業大臣及び愛知大蔵大臣より発言を求められております。順次これを許します。中曽根通商産業大臣
  6. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 お尋ねの件、関係者につき調査しましたところ、三年以前の書類は原則として焼却している由でございまして、手元にもうないので調べることができない由でありました。  いずれにせよ、もし万一記載漏れというようなことがありましたら遺憾なことと思います。
  7. 根本龍太郎

  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一昨日、寺前君から御質問のありました永田雅一氏外七名によるヤマトコーポレーション外貨証券取得申請に関する問題につきましては、申請者代表者永田雅一より、次のとおりの文書を受領いたしました。      記   昭和四十一年五月十六日付の在ロサンゼルスのヤマトコーポレーション新規発行株式取得に関する外国為替管理法三十五条に基く許可申請に当り、田中角榮氏の名儀を借用し、同氏名儀委任状を提出しましたが、これは本人の全く関知しないところであります。    昭和四十八年二月十日                永田 雅一   大蔵大臣 愛知 揆一殿  このとおり、本件につきましては田中総理は何ら関与されておらないのでありますので、何とぞ御了承願い上げます。
  9. 根本龍太郎

    根本委員長 これより総括質疑を行ないます。  寺前君の保留分質疑を許します。寺前巖君。
  10. 寺前巖

    寺前委員 いま中曽根さんからのお話の返事は聞きました。私がこの前に質問をしたのは、昭和四十一年の五月三十一日二千万円、六月三十日八百万円という会費名目政治献金が出ているけれども、前後にそのような会費というものが出されていないのに、これが会費として常識考えることができるだろうか。だから、こういうような献金というのは、国民にとっても非常に暗いものを与えているから、反省する必要があるんじゃないかという問題提起としてこの問題は出しているのであって、したがって、中曽根さんのただいまの答弁では、これに対する反省としての答弁にはならない、私はそういうように思います。  なおもう一点、この前に提起しました問題として、昭和四十一年七月十二日に大映が寄付した三百万円が政治資金として、収支報告を見ても届け出がされてないという件に対して、帳簿が手元にないということと、もしもそうだったら遺憾ということだけでは、私はほんとうに解明されたことにならないと思うので、破産財団として公的に大映には管財人がおって総勘定元帳を持っていることですから、この際、委員長管財人上田久徳氏を参考人として呼んでいただいて、これに対する潔白をはっきりさせていただくよう、お取り扱い理事会でお願いしたいということを申し上げて、この件については終わりたいと思います。  次に、田中総理にお聞きしたいと思います。ただいま、永田雅一さんから大蔵大臣手元弁明書なるものが届いたということを聞かしていただきました。外為法為替管理は非常にきびしいものなんでしょう。かってに当時の前大蔵大臣であり自民党幹事長であった総理にこのようなことをしたとすれば、公的に重要な位置にあったあなたにとって、非常に重大なことだと私は思います。まして、今日一国の総理大臣になっておられる方の問題です。弁明書が出てきたということだけでは済む問題ではないと私は思うのです。  第一、昭和四十一年五月二十七日にヤマトコーポレーション株取得許可が出るときのいまの届け出報告でした。しかし、この永田さんがやった問題は、昭和四十五年四月十六日に、大蔵省の指導のもとで訂正の許可申請をやって許可を得ているという事実があります。さらにまた昭和四十六年一月八日に、外貨証券処分許可申請を出してその許可を受けている。つい最近のことです。三回も五年間にわたって同じことをやってきているということで、もしもこのままで済まされるというのだったら、総理、あなたの印鑑が使われている、名義が使われているということに対して、あなたは黙っておることができないのじゃないだろうか。総理がこの点についてはっきりした態度永田さんに対してとられなかったならば、お二人の関係は一体どういう関係なんだろうかということを、だれもがふしぎに思うでしょう。  総理、この永田さんがやられたということが事実だとするならば、これは三カ月から五年以下の罪となる私文書偽造、同行使罪、十年以下の刑になる詐欺罪、三年以下の罪となる外為法違反を三度にわたって行なったことになります。永田氏がかってにやったものならば、総理みずから告訴されて身の潔白を明らかにされるのは当然のことだと私は思うのですが、総理、一体この問題に対して、永田さんに対してどういう態度をとられるのか、お聞きしたいと思います。
  11. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 全く唐突にあなたの質問によってその事実を承知したわけでございまして、それだけでもはなはだ遺憾なことでございます。  たいへん御親切な御発言がございましたが、永田氏が無断で名前を借用したのだという事実は証明されました。これは、他の六人にもきっと同じことだったと思います。私は、そういうことで事実が判明すれば、公の立場にある私の関知しなかったことは証明されたという考えであります。  まあ永田氏とは長い友人でありますから、私がその事実だけをもって告訴をしてその非を責めるというようなことを、したほうがいいのか悪いのか、まだ私には判断がついておりません。まあ大体やらないということだと思います。そういうことを彼がやった事情が解明されればいいわけでございまして、私は友人の一人として、善意なものだったと思います。そんな悪意があってやったのだとは思いませんし、私はそれに関知をしておったわけではありませんし、何にもありませんから、いままだその問題に対しては、告訴をしてどうしなければならないというようなことは考えておりません。  しかし、大蔵省の調べで、こういうものはこまかいところまでは調査をしないでやっておるのだというようなことが常態のようでありますが、やはり印鑑をついて名前がちゃんと提示をされているということになれば、外為法許可の過程において、やはり将来の改善一つとして取り上げる問題だと思います。少なくとも、七人おったら七人に電話で照会するぐらいなことはなすべきだろう。私は、特に全然考えたこともない問題をここで突然指摘をされましたから、そういう立場からも、やはり窓口でもってやるにしても念を入れて、そういう書類が必要であるなら本人電話でただすぐらいな行政は必要だろう。これは、いま行政主管者としてそう考えておるのであります。
  12. 寺前巖

    寺前委員 いまの田中総理発言は、私はちっともはっきりしないのですね。友人だから善意に受け取って、告訴はやらないという趣旨のお話だったと思います。これでは疑惑は広がると私は思うのですね。とんでもないことが一方で行なわれていて、そうしてびっくりした、びっくりしながら、善意でやったから、友人だからと言うが、一体このお二人の間はどんな関係になっているのだろうか。まあなれ合いというのか、ツーツーというのか、政治資金と、とのような不法なことをやっていることがお互いに許し合われる関係、私はこれはどう見たって理解に苦しみます。  永田雅一氏がヤマトコーポレーション株取得者として出した名前には、このほかに河野洋平鈴木九平藤山勝彦萩原吉太郎平塚常次郎川島正次郎、そして田中さんと永田さんという八人になっておりますが、これらの人はみな著名な人ですから、もしもインチキしたとするならば、これはすぐにばれる話です。また、ばれたら著名な人だけに、その被害は大きい話だといわなければなりません。だから、こういう人たちを使ってこういうようなことがやられていたとするならば、一体これらの人と永田さんとの関係が全体としてもおかしな関係だ、世にもふしぎな話といわなければならないと私は思うのです。きわめて不可解な事件です。自民党と財界の結びつきがどうなっているのか、だれもがふしぎに思う話だと私は思うのです。田中総理がいまさっき言われた態度は、私にはちっとも理解できません。  大体大蔵省にとっても、この問題は、そういうようなインチキがやられているという事態のもとにおいて、先ほどこれは考えてみなければならぬ問題だと田中総理は言われたけれども、大蔵省としても責任がないのか、大蔵大臣についでにこれを聞いてみたいと思うのです。
  13. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この事態の真相は、先ほど申し上げたところで究明されて明らかになったわけでございまけれども、ただいま総理自身からもお話がありましたように、この種の認可等を処理するにあたりましては、いま一段と慎重な配慮、周到な行為が必要であったということを私もしみじみ感じましたので、今後の処理につきましては、周到な、万全な処置をいたしたいと思います。
  14. 寺前巖

    寺前委員 時間もあれでございますので、私は委員長に、まず第一に、先ほど中曽根大臣に対して、大映管財人上田久徳氏を呼んで、三百万円の寄贈の問題を解明するようお取り計らいを要求しましたので、もう一度申し上げておきたいと思います。  第二番目に、田中総理の問題に対してですが、永田氏との関係は一体どういうことになっているのか、疑惑は少しも解明されていない。この際、永田雅一氏を参考人として呼んでいただいて、なぜこのようなことをしたのか、その動機、どんな関係にあるのかということを、事実を徹底的に究明するために呼んでいただきたい。理事会においてこの点についても取り計らっていただきたいと思います。  以上二点、委員長に要求しますが、なおこの間、大蔵省がこの件にかんでいたことも事実でありますので、政府のとってきた措置についても重大な問題があります。今後反省するというだけでは、これは話になりません。この点についての責任をすみやかに明らかにされるよう政府に要求します。  また同時に、この質問最初に、政治資金のあり方について、わが党の主張を申し上げましたが、抜け道だらけの現行の政治資金規正法を抜本的に改正して、営利会社をはじめすべての団体からの政治献金の禁止、寄付は年間四十万円を限度として個人に限る、政党以外の政治資金収集団体の規制、営利会社交際費会費、その他の名目による事実上の政治献金を一切禁止する、などを骨子とする真の政治資金規正法を提案されることを強く要望して、田中総理自身が身の潔白を明らかにするように、いまのような態度では、友だちだからということで済まされる態度に対しては、国民はきびしく批判するであろうということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  15. 根本龍太郎

    根本委員長 寺前君に申し上げます。  ただいまの御要望の件は、後日理事会においてその取り扱いを協議することといたします。  これにて寺前君の質疑は終了いたしました。  次に、阪上安太郎君。
  16. 阪上安太郎

    阪上委員 私は、きょうは最初に、いま国際通貨問題でもって世界は荒れ狂うている、そういう状態であります。このことは、日本においても東京為替市場閉鎖されておる。またヨーロッパ、特に西独あたりでは、これがたいへんな問題となっている、苦慮しておる、こういうような状態であります。そしてこれらの諸国、主要国におきましても、御案内のように、それぞれ為替市場閉鎖いたしております。  そこで私、お聞きしたいのでありますけれども、こういった事態に立ち至るであろうというようなことにつきましては、わが社会党は前々から再三再四警告を発しておったのであります。これに対して総理は、これはきわめて重大な問題であり、そういう事態に入らないように努力をするという意味のこともおっしゃっておったし、同時に、そういったことになれば、総理としては重大な責任を感ずるのだというようなことも言っておられたわけであります。  そこで総理は、この問題がかような事態に至るまでに手を打たずして、今日のような状態になるまで傍観しておったということについての総理責任をどうお考えになっているか、このことをまずお伺いいたしたい。
  17. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 多国間通貨調整、非常にむずかしい問題を解決してから、まだ一年半の歳月を経ておらぬわけでございます。しかし、この平価調整が行なわれたときに、平価調整ほんとうの影響というものは、二年、三年たたなきゃ出てこないのだという常識に立って、しかもその後の国際収支改善ということに対しては、意を用いてまいったわけでございます。  一つには、輸出が強含みにずっと移行しておるというところに問題が一番あるわけでありますから、輸出内需転換をさせなければならないということが一つございます。もう一つは、輸入拡大ということになるわけでありますので、輸入拡大のために措置をしなければならない。  内需転換に対する第一の問題を解決するためには、昨年末、大き過ぎるではないかといわれながら、補正予算審議をお願いしたわけでございます。また輸入拡大につきましては、御承知のとおり二〇%一律的な関税の引き下げを行ないましたり、いろいろなことに努力をしておるわけでございます。  そういう意味で、通貨調整後今日に至るまで、政府は一貫して国際収支改善対策をとってまいったわけでございます。この間の御質問でも、今度の大きな予算は、これは表面的には福祉予算だというけれども、国際収支予算ではないか、こういう御質問をいただいておるように、ずっと国際収支改善のために努力をしてきたことは事実でございます。  日本現状を見るときに、外側からは強いといわれる一面があるとともに、世界に類例のない中小企業零細企業の多くの分野を持つわけでございまして、これが一年半、二年という間に二回も切り上げが行なわれるというようなことは耐えがたいことでありますから、これが排除のために精力的な努力を行なうということで今日まで来ておるわけでございます。  両院の審議を通じまして、平価調整が行なわれぬように努力をしておるというが、仮定の問題として行なわれたらどうするか、政治責任はどうするか、それは政治的に相当な責任だと思います、これは切り上げたくないということに対する熱意を表明したものでございます。公定歩合を上げないようにというのと同じように、いまでもその姿勢をとっておるわけでございまして、やはり政府責任者としては、耐えがたい情勢が存在する限り、これが回避に対して最善努力をする、また強い姿勢を明らかにすることによって平静を保たなければならない責務を有しておることは、私が申すまでもないわけでございまして、可能な限り最善努力を続けてまいろうという考えでございます。
  18. 阪上安太郎

    阪上委員 御答弁によりますと、政府はやはり円の再切り上げを回避するためにあらゆる努力をしてきた、しかしながら、今日の現状はなかなかそう甘いものではない、しかし総理としては極力、いまなおこれを回避していく努力をするんだ、こういうふうに私、承ったのです。それらの御答弁に対して、いろいろな観点から、問題はそう簡単なものではないということを私も承知いたしております。  そこで、いま東京為替市場閉鎖されております。これは一体いつ開くことになるのでしょうか。その見通しはどうでしょうか。
  19. 愛知揆一

    愛知国務大臣 土曜日に東京為替市場閉鎖いたしましたのは、当時御説明もいたしましたように、ヨーロッパ市場状況等が急激に乱調子と申しますか、状況を示しておる。ところが、週末の土曜日に市場が開かれるのは世界じゅうで東京だけである。こういう点から、日本としてもこの際閉じたほうが妥当であろう、こういう判断に立ちまして閉鎖をいたしました。それから本日は、御案内のようにヨーロッパ市場閉鎖いたしておりますから、引き続き閉鎖をいたしておるわけでございます。  政府といたしましては、こうした状況が平静に戻ることが望ましいと考えておりますから、すみやかにこういった状況が平静に戻って、なるべくすみやかに東京市場も開場できますように期待をいたしておるというのが、現状でございます。
  20. 阪上安太郎

    阪上委員 大蔵大臣の御答弁では、何か人ごとのような感じがするわけなんです。何かECの出方というものを見守りながら、それによって対処していきたい。わが国がみずからの主導性でもってこういった問題を積極的に解決していきたいというような考え方が、どうも出てきていないように思うわけなんです。だから、向こうの出方によっては開きもし、向こうのあり方によっては開かないんだというようにも私にはとれるんです。そして、総理の先ほどの答弁とあわせると、スミソニアン合意といいますか、これをいまの段階ではあくまでも堅持するんだ、こう言っておられるわけであります。そういうような判断であっては、いつ東京為替市場を再開するというようなことにはならないのじゃないか。  そこで、こまかいことは、またあとで専門のほうから関連で御質問することになっておりますが、ただ、総理、あるいは政府は経済見通しというものを誤っておったんじゃないかという感じがするわけですが、その点についてどうでしょうか。
  21. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 経済見通しは御提出申し上げたとおりでございまして、昨年から今年、われわれが思うよりも景気上昇過程にあるわけでございます。ある意味においては、もっと税収があるんじゃないか、税収があればもっと国債の発行を減らしてはどうかというような御議論もあるように、一〇・七%といったら実際はもっと行くというような感じもございましたが、そういうような情勢よりも、やはり政策的にコントロールを続けることによって、ことしは一〇%台、これからだんだん行って五年間を通じて九%台にコントロールをしなければならない。やはり全く民間の経済だけにまかしておけないような状態、それは国際収支改善の面から見てもそういう必要性があるわけでありますので、政策的コントロールを行なうという前提に立って経済見通しをつくっておるわけでございます。過去の線をそのまま自動的に引き直したということではないわけでありますので、政策いかんによってはゆとりがありますので、伸び過ぎるというものに対して少し押えぎみにしなければならない。皆さんのお気持ちからいえば、一〇%は高いようだ、九%ぐらいでいいんじゃないかというぐらいにお考えだろうと思いますが、政府は、いままでの情勢をそのまま引き伸ばしていくと、政策的に相当努力をして一〇%程度、それで消費者物価を五・五%に押えなければいかぬ、こういうことを申し上げておるわけでありますので、現在の実勢は少し高い方向にあるわけでございますが、これは政府が御提出をした経済見通しの線に合わせて政策的効果をあげたい、こう考えておるわけでございます。
  22. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで端的にお伺いいたしますが、いずれ東京為替市場は開かなければならぬときが来るでありましょう。そのときの開く場合の条件というものは当然あるはずでありますが、どんなものを考えられますか、ちょっと伺っておきたい。
  23. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど御批判もいただきましたけれども、外国の情勢をよく掌握するということがもちろん必要な条件でございます。同時に、日本としての国益を考えて処理しなければならぬことでございますけれども、国際的な情勢というものが流動的でありますし、予測がなかなか困難でございますから、どういう条件で再開するかというようなことは、いまのところまだ明確にする段階ではないように考えておるわけでございます。
  24. 阪上安太郎

    阪上委員 そうしますと、依然として情勢を見ながらということなんですが、私が先ほどお伺いいたしておるのは、開くときには必ず開くだけの条件が整わなければいけない、それは一体何かということを私は聞いておるのです。政府は何を考えておるかということなんです。その点を大蔵大臣もう一ぺんお答え願いたい。
  25. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、端的に申しますと、ヨーロッパ市場が落ちつきを回復するとき、その時期が一つのめどになろうかと考えております。
  26. 阪上安太郎

    阪上委員 そうすると、いまヨーロッパの主要各国が市場閉鎖している。そこにも再開する条件というものが整ってこなければならぬだろうと私は思うのですが、かりに変動為替、そういった形に入っていくといった場合に、これは仮定の問題ですからお答えしにくいでしょうが、日本はやはりこれに追随していくという考え方なんですか。それとも、先ほど私が言いましたように、そういう変動為替制とかあるいは二重為替制とかいうものと関係なく、田中さんの先ほどの説明では、他の方法でもってやはり徹底的に日本が主導権を握ってやっていくんだということであるのか、その点をもう少し明確にしてください。
  27. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ヨーロッパ市場が、ただいまお話がございましたが、変動相場になるか、二重市場制をとるか、あるいはそのほかのやり方になるか、いろいろの方法が考えられると思いますが、これはいずれも現在予測の域を出ないわけでございまして、それらを予測しながらいまわが国のやり方を断定的に申し上げる時期ではまだないと思うわけでございます。先ほど申し上げましたように、国際的な協調関係ということも大切でございますが、同時に、わが国としての自主的な立場というものを踏まえまして措置をいたすべきものかと、かように考えております。
  28. 阪上安太郎

    阪上委員 巷間いわれておりますいろいろな学識経験者等の話によりましても、いろいろなことが考えられるが、変動為替制をとるというようなことが必然のようなことをいわれておる。これに対して、いまそこらの態度は明らかにできない、こういうことであります。私はこの段階では、いろいろな問題が国民の中にも国家の中にも起こってくるので、あまりしつこくは求めませんが、ただ、もしそういうことになれば予算にも影響してくるというようなことで、たいへん大きな問題が私は起こってくると思います。たまたまいま予算審議中なのでありまして、そういったことから関連いたしまして、たいへん大きな問題がここで発生するのじゃなかろうか、私はこういうように思っております。しかしながら、私が言いたいことは、ほんとう田中さんが、いまの段階でも何とか別途の方法でもってこれをやっていこうという考え方であるのか、それとも、この際責任をとらなければならぬけれども、そのことよりも大事なのはやはりわが国の国益の問題だという立場に立って、そうしてここまで来た以上は踏み切らなければならぬというような気持ちを持っておられるかどうか、この点をちょっと明らかにしていただきたい。これは総理から言ってください。
  29. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 平価調整というのは、大ざっぱに言って二つの面から要求されるわけであります。一つ日本輸出力が強過ぎる、各国と日本との間の貿易がアンバランスになる、これを正常なものにしなければならないということで第一回の平価調整が行なわれたわけでございます。その後日本はいろいろなくふうをして、みずからの国内体制の構造改善輸出中心というような政策から内需の振興へというふうな努力は続けられておるわけであります。でありますから、一つは国内政策がうまくいけば回避ができるわけでございます。その努力を続けておるわけであります。その意味において、日本の国内的な立場から見ると、平価調整を絶対に避けるべくこうして大きな予算も御審議をいただいておるのです、こう述べるのは当然な立場でございます。もう一つは、国際協調という面で他動的に日本が要請をされるという面がございます。それは、多国間で再調整を行ないたい、だから日本日本だけで独自の道を歩いていくのか、国際協調の基本路線でもって話し合いに応じてくれるのか、こういう問題は当然他動的に起こってくる要因があるわけでございます。  今度は、平価調整を行なうために、第二のスミソニアンにおいて行なわれたような会議の提唱はありません。また日本からもそういう提唱をしようというような考えはありません。ありませんが、その過程の一つの現象として、ヨーロッパであのような事件が起こったわけであります。突然のこととして、一月イタリアにおけるドル売り、それからスイスにおけるドルとの交換をしなくなった、第三は西ドイツの現状ということになっておるわけであります。で、これで、拡大ECのうちの四カ国、イギリスやフランス、西ドイツ、イタリアというような国々がいま相談をしておるわけであります。しかも、西ドイツは六十億ドルにも及ぶ大量のドル買いを行なって、まだマルクの切り上げ等は行なわない、変動相場制には移行しません、二重相場制もとりません、こう言っているわけですから、やはり国際協調という面は、確かに日本はあらゆる面で国際協調をしなければ生きていけない国でありますから、国際協調はせざるを得ない。しかし日本のいろいろな問題は、国益を守るという面からはいろいろやはり考えなければならないわけであります。そういう意味で、諸外国に先がけて日本がどうするかという問題ではないと思うのです。  これは新聞にも書いてありますとおり、多国間調整でも、いろいろな手練手管が使われて、かけ引きをやる。それで、自国が幾らかでも有利なように政治的な交渉の場である、こう言っておるとおり、なかなか各国の立場としてはいろいろな状態があるわけでございます。そういう動きの中で、国際協調の基本的路線の上に立っておるが、しかし自国の権益は守らなければいかぬ、国益は守らなければいかぬ、これは動かすことのできない現実でございます。そういう意味で、相手方の成り行きというものを見てやることが、無策で、何にもしないで、ただじんぜん日をむなしゅうしているわけじゃないのです。向こうの出方を見て、日本がどうこれに対処しなければならないかということを考えないで国益は守れないわけであります。そういう意味で、世界じゅうの情勢にいま情報網を張って、そして、日本がどう対処しなければならないか、日本にどういうふうな要請が来るのだろう、来るとすればどういうものだろう、それに対して日本はどう対処しなければならぬかということを考えなければならない状態にあるわけでございますので、これはヨーロッパ市場を全く考えないで日本が独自の状態に移るということは早計であります。
  30. 阪上安太郎

    阪上委員 スミソニアン体制が合意されて、いち早く英国はああいった状態で変動為替制に移行した。いまおっしゃったように、イタリアもその後そうであります。それからスイスというような形をずっとたどってきている。だから、スミソニアン体制というやつは、できてから一途に崩壊の道をたどってきている。それはここ一、二年の間によくわかることなんであります。私が言いたいのは、ドル問題というのは結局はやはりマルクや円の問題ではなかろうか。そういう円を持っておる日本が、あの状態を黙って今日まで見ておって、自分から何にも外交的に行動を起こさなかったというようなことについて、私はやはり少し軽く見ておったのじゃないかという感じがするわけであります。  そこで私は、これらの問題は、予算にも将来影響することが大きいだろうし、たいへんな問題だと思いますので、この際むしろ専門家である堀君から、この問題をさらに追及していただきたいと思います。どうぞ委員長、よろしくお願いします。
  31. 根本龍太郎

    根本委員長 堀昌雄君から関連質疑の申し出があります。これを許します。堀昌雄君。
  32. 堀昌雄

    ○堀委員 総理にお伺いをいたしますが、総理はかつて三年間大蔵大臣をおやりになって、私も三年間おつき合いをいたしました。その後通産大臣等もおやりになっておりますから、経済問題については、私は、総理大蔵、通産をおやりになった経過から見ても、十分いろいろなお考えを持っておいでになることと思いますので、ひとつ総理とだけで質問をやらせていただきますから、最初に御了承をいただきたいと思います。  そこで、まずお伺いをしたいのは、さっき愛知さんがお話しになりましたが、土曜日には一日だけということで実は市場閉鎖なさった。きょうは何もコメントがつかないで閉鎖になっておる、こう思うのですが、私はたいへん重大な事態だと思います。総理も重大だとお考えになっておると思いますが、いかがですか。
  33. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ちょっと私、先ほど言い足りなかったかもしれませんが、本日はやはり欧州市場閉鎖、それからアメリカ市場も休み、そういう状況でもございますから、こちらは休んだわけでございます。コメントとしてはそういうコメントを申しまして、昨晩発表いたした次第でございます。
  34. 堀昌雄

    ○堀委員 それは聞きました。しかし、きょう一日だけというコメントがついていないのですよ。きょうはよそが休みましたから休みました、こうなっておるわけです。あしたも休む、よそが休めば休むことになるわけです。きわめて事態は重大です。総理はいかがお考えになりましょうか。
  35. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、国際的なあのような激動があるわけであります。日本だけが開いておるということになれば、日本に対する相当な——為替管理機構は整備しておりますが、集中的に日本に売り浴びせが来ないという保障はないわけであります。これは大蔵省としては、市場の平静を保つために、市場閉鎖したり開いたりということは当然考えなければならないわけでありまして、その意味大蔵大臣にこれらの権限が与えられておるわけであります。  いまのヨーロッパ市場の動静というものは、日本にも直接影響がある問題でありますから、きょう開かなかったということは、これはヨーロッパ市場でさだかな見通しが立たないということでございまして、細見大蔵省顧問を昨晩出したというような事態でありますので、きょうは少なくとも閉鎖をしなければいかぬということであります。しかし、あしたはどうかといえば、これはまあ、きょうあしたの問題、これは大蔵大臣から答えるべき問題かもしれませんが、やはり結論が得られない状態なれば、これはあすも今日に引き続いでということもあると思います。  しかし、これは無制限に延ばせる問題でないということは、国民生活に影響しますし、中小の輸出業者その他に対して非常に大きな影響がありますので、これは軽々にその閉鎖の日をじんぜん延ばせるものではないということは事実でございます。とにかくそういう意味で、閉鎖をした上で、その結果、中小輸出企業等に大きな影響が出ないように、金融機関の協力等を求めて努力をしなければならないということ、そういうことだと思いますが、これは重要であることはもうほんとうに重要である、こう思っています。
  36. 堀昌雄

    ○堀委員 いま私、お伺いしていませんでしたが、あしたも締めることになるかもしれない、そうなるでしょう。なぜかというと、日本と欧州とは八時間の時差がありますから、いまのあなた方の話のように、欧州がやることを見てから日本がやるというなら、向こうがあけたあくる日でなければあけられないわけだから、向こうがきょう休んでいる以上、あしたはあけられるはずがないのですよ。重要だとおっしゃったですから、あとのこまかいことは時間を省きますが、たいへん重大な事態が動いている、私はこう思っているわけです。  そこで、じんぜん日を送るわけにはいかないとおっしゃいました。常識的には、市場閉鎖というのは一週間が限度だ、私は大体こう考えております。総理も大体そうだと思いますが、いかがでしょうか。
  37. 愛知揆一

    愛知国務大臣 大体、通例はさようなことであると思います。
  38. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いまどういう事態が起きているかといえば、西ドイツは何回も切り上げをさせられておるわけです。そうして、いまのシュミットという大蔵大臣は、前のシラー経済相とば違って、ともかく国益第一主義、協調よりも先に国益だ、こう考えていますから、いまがんとして、通貨調整に対するあらゆる手段を断わって、為替管理を強化するということで方針を変えていないわけです。向こうが方針を変えない限り、それでは日本も、いつまででもドイツが出る出方を見守るということですか。
  39. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、ドイツがたとえばどうするから、それに同じようなことをするという意味ではございませんで、ドイツを含めてヨーロッパ各国がどういう態度をとるか、あるいはそれをめぐる他国の動きがどういうふうな態度になるかというようなことは、十分見守っていかなければならないと思います。
  40. 堀昌雄

    ○堀委員 愛知さん、ときどきお話ですが、大体いまいろいろな抽象的なお話をなすっていますが、対応できる手段というのは、私は三つしかないと思うのですよ。特に西独の場合で話をしたいと思います。  フランスは、御承知のように二重相場制をずっとやっているわけですから、これはスミソニアンのある意味ではワク外にあるかっこうにすでになっているわけですね。イタリアがいまは二重相場制になりました。スイスフランは変動制ですね。イギリスは変動制ですね。いまベルギーも二重相場です。周辺の中で固定相場でいるのは西ドイツだけですからね。西ドイツがどうするかが欧州の事実的な問題じゃないですか。抽象論でなくて、少し具体的に詰めた話で御答弁をいただきたいのです。
  41. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは御指摘のような状況ですから、そう簡単にどうなるであろうかという予測は困難でございます。しかし、お話のような事実が存在しておるわけでございますから、そうして、しかし同時に、たとえばEC諸国はお互いの協調を保ちたいということもあるようでございますから、いま私は公に、この場合はこう、この場合はどうというようなことをこまかに申し上げることは控えたい。これは要するに、予測の域を出ないからでございます。
  42. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、もう一つお伺いをしておきますが、日本の場合にも、市場をあける場合には選択は三つしかありません。固定相場制でがんばる、変動相場制に移行する、あるいは二重相場制をとる。しかし日本の場合には、私は二重相場制をとる意味はないと思います、為替管理がきちんとしておりますから。だからその必要はない。選択は二つしかありません。固定相場でやるのか、変動相場にするのか、選択は二つです。  そこで総理にお伺いをしたいのですが、さっき総理は、阪上委員にこういう御答弁をしておられます。円の切り上げをしたくない、いまでもその姿勢で一貫したい、こういうふうにいまおっしゃいました。いまでもです。いまでもというのは、情勢が変わっておるということを総理も認識しておられるわけですね。お答えをいただきます。
  43. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は公の立場にございますから、少なくとも最終的な決定が行なわれない段階において、日本平価調整を行ない、切り上げを行なうような意思が少しでもあるというようなことは、公の立場マ国益を守る道ではないということは、御専門のあなたはよくおわかりのとおりでございまして、私にどういう角度からお話があっても、これはやはり他国のいろいろな情勢を見ながら、国益を守るために最善努力をいたします。すると平価調整考えておらぬのか、それは考えておりません、こういうことでございます。
  44. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、この場所で総理から、通貨調整をやるなどという答弁を求める気は毛頭ありません。私が伺っているのは、事実認識を伺っているわけです。いまでもそういうことをやるんだというのは、これまではあたりまえなんですよ。いまでもとおっしゃったことは、事態がたいへん困難な情勢になっておるから、それで、いまでも依然としてその姿勢を一貫していくんだ、こう言われたのでしょう。それならば、いまでもというのは、きわめて困難な状態にいまある、こういうことの表現だと私は思っておるわけですよ。だから、あなたが私に、通貨調整をやるとかというように答える必要はないのですよ、私も質問してないんだから。ただ、現状の事実認識がどういう形であるかということがいま大事なときですから、それを伺っておるわけです。
  45. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 西ドイツに起こった事態というものを深刻に考えております。そして日本も、この深刻な状態というものを見守らないで、直ちにどうするとかいうようなことを言ったり、日本が主導的な立場をとるというような事態にない、こういうふうに理解しております。
  46. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、西ドイツが深刻な立場という話をしてないのですよ、私は。西ドイツはたいへん迷惑しておると私は思います。深刻な立場は、日本が深刻な立場じゃないですか。それを答えてください。
  47. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そういう意味でお答えをしたはずでございますが、発言がまずかったのかもしれません。
  48. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、なぜそういう深刻な事態になってきたのか、この原因を伺いたいのです。
  49. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 報道機関の報ずるところを見ると、西ドイツに起こった現象も、目標は日本じゃないかと、そう言う自分たちもいろいろ責任があるにもかかわらず、日本がこれだけ努力をしておるにもかかわらず、日本の責に帰するような発言は望ましくない発言だと思っておりますが、そういうような世界各地における日本に対する評価もあるわけでございます。でありますから、日本ヨーロッパ事態を対岸の火事視はできないし、少なくとも国際協調の基本路線の上に立つ日本とすれば、真剣な立場でこれが趨勢を見守るということでございます。
  50. 堀昌雄

    ○堀委員 たいへん総理答弁は顧みて他を言う答弁で、私はまじめさに欠けているような気がするのです。なぜかといいますと、ことしの経済見通しで、政府は貿易収支の黒字を八十一億ドルになるという見通しを立てておるわけです。よろしゅうございますか。  四十六年からちょっと話を進めていきたいと思うのです。四十六年の実績見込みというのは、実は四十七年一月八日、昨年の一月八日にきめた経済見通しの中で、要するに四十六年度の実績見込みを経常収支を五十五億ドル、貿易収支を七十五億五千万ドル、こういうふうに見ておるわけです。よろしゅうございますか。それがこの間発表された四十六年度の実績では、この一月に貿易収支七十五億五千万ドルというのが八十四億二千万ドルに、八億七千二百万ドルふえておる。要するに一、二、三月しかないのですよ。一、二、三月だけで皆さんの政府の見通しは、貿易収支で八億ドルも違う、こういう現実の姿があるわけです。さらに四十七年度の当初見通しは、貿易収支を七十一億ドルの黒字だと見ていたわけです。ところが、今度の実績見込みでは八十九億五千万ドルになっておるわけです。大体、当初に見通しを立てて、あなた方が言う円対策をやっていながら、こんなにどんどん貿易収支だけで十八億五千万ドルも当初見通しと実績見込みが変わるというのは、何にも効果があがっていないということじゃないのですか、円対策が。どうでしょうか。
  51. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 円対策に対して努力をしておるということは認めるが、しかし事実の数字はそのようにならぬじゃないか。同じことを、いまあなたに言われているようなことを、アメリカにも言われているわけでございます。だから昨年の三十二億ドルを二十九億九千万ドルにするというように言っておったのが、あけてみたら四十一億ドルになる、こういう開きがあることは事実でございます。これを差し引きいたしますと十二億ドルも違う。そういうことでありますので、われわれが当初企図したような実効があがっておらないということは、それだけ日本が力があるんだということを外国人は述べておりますが、そうではなく、やはり内需に向けられないということで、やはり出血輸出の面もあるんだということで、われわれは現実的に出血しても輸出が行なわれているんじゃないか、そうでなければ中小企業零細企業が倒産をするような事態にはならないのであって、実勢というものは、正常な状態考えればもっと修正さるべきだ、こう外国との間にはわれわれは答えておるわけでありますが、現実的な数字の面から見ると、御指摘のように数字はわれわれが考えたよりももっと大きい。  だからことしの経済見通しに対しても、こんなことではいかぬ、もっと大きくなる、それは過去の例を引き伸ばしてみればもっとそうだということに対して、円平価の調整効果もこれからあらわれてくるのでございますから、そうはならないと信じております、こう答えておるわけでありますが、数字の上ではいま御指摘になったように、貿易収支を含めて国際収支そのものはあまり改善されておらない。しかし、改善の方向にあるという考えでおります。
  52. 堀昌雄

    ○堀委員 これが今度の問題のもとではないですか。要するに、総理がよく第二外為会計論なんというのをおっしゃって、外貨準備を減らしたらいいようなことをよくおっしゃるけれども、外貨準備を減らすことに問題があるんじゃなくて、要するに貿易収支を改善してもらいたいとアメリカが言っているわけです。改善しましょうと言っておられるわけでしょう。口では言ってもやってないということでしょう。これでは世界の人が、日本という国は自分のところのことばかり考えて、約束しても守らぬではないかということになっておるところに、この深刻な事態が起きておるんじゃないですか。私はこれは少なくとも政府責任があると思うんですよ、こういう事態に追い込まれているのは。これが数字の上でもだんだんと減ってきておる、円対策の効果があがっておるとアメリカに言えるだけのことを政府がしないから、今日の事態を招いておるんじゃないですか。私はそういう意味で——エバリーも言っています、無策だと。私も一昨日、党の申し入れ書をお渡しをいたしました。その中でも、あなた方がやるべきことをやっていない。  昨年の十月三十一日に、私は本会議の代表質問の中で、貿管令というものはごまかしだ、これまでの円対策は全部さいていない、輸出税を取りなさい、こう言って問題提起をしております。そうしたらあなたは、輸出税というものはもうやめたわけではないのだ、考えるけれども、それをやったあとで、三カ月か六カ月先にその幅で切り上げになったら困るからと、こういうことを言っておられましたが、まだ六カ月になってないですよ。三カ月くらいですね。事態はもうそこに来ているわけですよ。やるべき手段があるにもかかわらず、それをやらないで切り上げに追い込まれつつあるというのがいまの日本政府状態だとするならば、国民に対して私は重大な責任があると思うんですよ。総理、いかがですか。
  53. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本は、近く原則一〇〇%資本の自由化ということで、またお知恵も拝借したいということを考えております。それからもう一つは、物の自由化ということになるわけでございますが、三十三品目のうち二十六品目か二十七品目、農産品でございます。(堀委員「二十四」と呼ぶ)二十四農産品については、これは全部自由化しても五億ドルくらいしかならないということであって、なかなかむずかしい問題もございます。それからあとは、ICを含めて残りの工業製品に対する自由化を行なえというような問題、それからもう一つは、アメリカから輸入できるようにという輸入拡大というために、関税の引き下げということがあるわけであります。それなりの施策はやっていると思うのです。二〇%一律引き下げ、これは新しいジャパン・ラウンドの提唱をしておりますから、春になれば、また一律どのように引き下げるという問題は、国際的な議題になるわけであります。そういう意味で、二〇%引き下げたということも相当な努力をしたわけであります。中には、ある時期、関税率ゼロから現行税率までの間、一時委任をしていだたくような立法ができないかということで、いま党を中心に検討をいたしております。政府側でもそういうことも考えてみたわけでございますが、しかし法制上、なかなか問題もあるようでございます。また国会の御承諾を得られるかどうかという問題もございます。  日本はそれなりの努力をしてきたのでありまして、そういう問題に対しては、外国に対しても相当述べておるわけであります。EC等はセーフガードの問題等も持ち出しておりますが、これらは直接日本の貿易にも関係する問題でありますから、慎重に交渉を続けておる。ある意味においては、セーフガードの問題に対しても、お互いが二国間で話し合いをしなければならないような発言をしなければならないかもしらぬというところまで来ておるわけであります。貿管令も種目を拡大をして、誠意は見せておるわけであります。  だから、先ほど申しましたように、国内的には体制整備に努力を続けておりますが、これはいかんともなしがたい外圧というものもあるわけです、先ほども阪上さんに述べましたが。日本がいろいろ努力をしておっても、ドル対マルクの問題が出てきたわけでございまして、そういう意味で思わざる外国からの圧力というものもありますので、これは一様に、いままでやっておることがなすべきことをなしておらないのだということではないと思うのです。精力的に努力を続けてきたということは、お認めをいただきたいと思います。
  54. 堀昌雄

    ○堀委員 いまそれなりのことをやっているとか、誠意は見せているとかおっしゃっていますね。私も、何もしてないと言ってないのですよ。しかし、世の中では、やって効果がないのはやったことにならないんですよ。だから、いま効果がないということを私は数字の上で申し上げたわけです。効果のないことを幾らやっても、相手方が納得をするはずがないじゃないですか。立場を変えてみれば、もし相手国が、こうもやりました、ああもやりましたと言って実績があがらなければ、われわれは、田中さんだってけしからぬではないかと言いたくなるのは、これはあたりまえじゃないですか。ここに皆さん、問題があるわけですよ。それを、効果のあるようにやって、このような事態に追い込まれないようにするのが政府責任じゃないですか。違いますか。
  55. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国内的には、いま申し上げたどれ一つをとっても、議論の多い問題ばかりでございます。私が幾らやりたいと言っても、なかなか議論の多い問題であります。私は、堀さんも御承知のとおり、通産大臣に就任のときから国際経済調整法の必要性を述べておりますし、また、前の前の国会には御審議もわずらわしたわけでありますが、成案を得ることができなかった、審議にも入っていただけなかったというような問題、これは立場立場で国益を思う立場で御議論になった問題であって、政府としてはやはり努力はしてきたのです。私は最善努力をしてきたと思うのです。  しかし、今度の問題が起こったのは、日本対ドルの問題よりも、日本対ドルの問題には直接関係がなく、ドル対マルクの問題で火をふいてきたのだという問題をひとつお考えいただきたい。だから、そういうことで先ほども阪上さんに述べましたとおり、外からくる問題とそれから内の体制が整わないために起こり得る問題と、二つ原因があるのです。今度の問題は、外からきておるのだという問題をひとつ御理解賜わりたい。
  56. 堀昌雄

    ○堀委員 実はボルカー財務次官が八日ですか、まず日本に来ましたね。それから西独へ行っておるわけですよ。よろしゅうございますか、この問題、いま田中さんは何か西独に問題が起きて、日本へ飛び火をして、日本が被害者のような話をしておられますが、この報道が外国に行ったら、外国人、驚くでしょうね。西ドイツというのはたいへん気の毒な立場にあって、日本のためにいま犠牲をしいられておるわけです。これが西ドイツに伝わったときに、西ドイツ当局が一体どんな気持ちになるでしょうか。私は、国際協調を言われるのならば、率直に、やはり国際協調の立場の中でものを言っておかれなければならぬと思うのであります。  そこで、こういう事態になった重大な問題はそこにありますが、時間が制約をされておりますから、ともかくかりに通貨調整をいまやっても、また私は同じ情勢がくると思うのです。肝心なことを忘れておるわけですよ。貿易収支の改善というのは、さっきお話しになったように、輸入を自由化してもあるいはふえるのは十億ドルぐらい、そんなにふえるわけはありません。いま日本の景気は実質で一〇%台にきておるわけです。これ以上景気を拡大するわけにはいかないでしょう。これで内需をこれ以上に広げることはできませんよ。もう輸入は大体限界にきておるわけです。関税を減らしましょう、関税を減らしたって、物価は下がらないじゃないですか。流通関係が不十分なために、関税を下げたものはみんなマージンでとられてしまって、国民には安いものは一つもいっていない。そういう体質をそのままにしておいて関税を下げますといったって、関税を下げても輸入はふえないですよ。だから、それらの問題をなぜもっと早急に決断と実行でやらないのですか。やっていないじゃないですか。それが、私がさっき申し上げたデータにあらわれておるわけです。  私は、国際協調を言われるならば、やはり日本でやれることはやった上で外国にものを言うべきです。やれることがたくさん残っております。にもかかわらずやられていない。これは重大な総理責任だと私は思う。私は、何も切り上げになったら、そのことが総理責任だなどと思ってないですよ。切り上げに追い込まれるような情勢に至るまでやることをやっていないことの中に、総理大臣としての責任があるのじゃないでしょうか。私はこう考えますけれども、総理、いかがでしょう。
  57. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 やれることは一生懸命やっておるのです。先ほども述べたとおり、国会に議案を提出し、国会に予算審議をお願いし、あらゆることをやったわけであります。いま残っておる問題は、堀さんが述べられた中に、輸入の自由化をしても下がらない。確かに輸入組合のようなものをつくって、きちっとかんぬきを入れておるんじゃないかということで、私は、その意味でこの実態の調査も、追跡調査も行なわしておるんです。そして、現行法の中でどういうものがあるんだ、暴利の取締令がある、物価統制令があるということで、物価問題ということから考えて知恵がないのかということで、法制局やいろいろなところでいま調査もしてもらっておる。長いことかかって調査をしてもらっておるわけです。ですから、暴利取締令というようなものではなく、これは法制化す必要があるのか、一体暴利というのはどういうふうに限界をつくるのか、物統令というようなものに対してどういうふうに措置できるのかというような問題、長いこと検討は続けておるのです。  しかし、輸出の問題にしても輸入拡大の問題にしても、なかなかすべて政府考えたとおり順調にいっているとは私は思っておりません。思っておりませんが、外国からいろいろな指摘をされておるときに、ともかくこういうふうにこれからだんだんと効果があらわれるんです。ぶったところがはれるように、この膨大もない大きな経済が右左にいくわけはありません。だからそういう意味で、いままでは七%から九%、それが一〇%でいっている場合にはある程度は伸びるかもしれませんが、それはやはり正常な状態に向かっておると思います。だから、一−三月は輸入期でありますが、輸入も史上最高というような数字も出ておりますし、輸出も漸減傾向にある。そういう意味で、効果はこれから出るものだ、こういうことを私は強く各国の理解に訴えておるわけでありまして、全力をあげておるんだということだけは事実でございます。
  58. 堀昌雄

    ○堀委員 時間の制約がありますから、総理も私がこれだけ申し上げているから事の重大性、あなたのとるべき責任とは一体何なのかということはおわかりをいただいたと思いますから、次の問題に入ります。  経済企画庁長官にちょっとお伺いをいたしますが、あなたのほうで今度おきめになった、一月二十六日付の「昭和四十八年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」というのがございますね。これは通貨調整があると見込んでつくられておるのか、そういうものはないと考えた、そういう前提でつくられておるのか、どちらですか。
  59. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 一月の時点におきましては、政府としては通貨調整考えておらないということでございまして、そうした段階においてのものでございます。
  60. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、今度は「昭和四十八年度予算編成方針」これは四十八年一月六日の閣議決定でありますが、「昭和四十八年度の予算及び財政投融資計画は、以上の基本方針のもとに、「昭和四十八年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」にのっとり、下記により編成する。」こうなっておりますね。総理、これは私は何も仮定の事実で論議をするつもりはありませんけれども、今日事態がここまで切迫をしておりますと、あなたもさっきおっしゃったように、じんぜん日を送るわけにはいかない、市場をとめておいてそう長くすることは、中小企業その他にたいへん迷惑を与えるからできるだけ早く処置をしたい。愛知大蔵大臣も、市場閉鎖というのはまあまあ常識的には一週間程度だ、こういうふうにお話しになっていますから、今週の末には何らかの結論を出さなければなりません。その結論というのは、さっき私が申し上げたように、変動相場制に移行するのか、あるいは固定相場制を堅持をするのか、この二つです。しかし、固定相場制を堅持をする覚悟ならば、土曜日であろうと月曜日であろうと締める必要はなかったわけです。何らかの対応をしなければならないから、いままでの延長線上から何らか違う型に対応しなければならないから閉鎖をしたと考えるのです。これは論理の当然なんです。  そこで私は、そのことについて答弁を求める気はありませんが、しかし、そうなって行なわれることは変動相場制以外にはない、私はこう考えています。そうして、私だけではなくて、いまのエコノミストあるいは財界の関係者もそうせざるを得ないと見ておると私は思うのであります。まああなたの立場はいいです。立場がありますから私はそれには触れません。  そういう客観的事実の上に立って変動相場制に移行することは、いつの時期ということは別として、当然フロートが起こるわけですから、アメリカは特にダーティーフロートはいかぬぞ、こう言っておるわけです。ダーティーフロートをやるようなら輸入課徴金をかぶせるぞ、アメリカは盛んにこう言っていますね。私も、今度フロートをするときは、あまりダーティーフロートなんということをやらないほうがいいと思うのです。本式にフロートさせれば、だっと向こうが下がれば外貨は出ていくんですよ。だから、ここでなまじっか、また五%で介入、六%で介入、七%で介入というようなことをやれば、実際の円の力とドルの力のバランスがわかりません。だから、変動相場制というのは一種のテストケースなんだから、何も変動相場というのは短くする必要はないんですよ。二カ月でも三カ月でもいいのですから、そうして落ちつくところに落ちつく先を見ていく中で全体が調整できるというものだと私は変動相場制を考えています。だから、もうダーティーフロートというようなことは私はやめてもらいたいと思う、日本の国益を守るために。そして自然のところにきたときは、出るものは出ます。いまともかく動くぞと思って入ってきたわけだから、目的を達したものは出ていきますから、そこで自然な姿が出てくる、こういうことになると思うのですね。やがてどっちにしたってこれは切り上げは不可避だと私は考えているわけです。  そこで、変動相場制に移行するというのは、これは理論的な話で伺いますが、これは変動相場制に移行して、前の固定通貨に返れる見通しというものが理論的にあるかどうか、愛知大蔵大臣にお伺いいたします。
  61. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほど来しばしば申しておりますように、現在の立場におきましては、仮定の前提ということが…(堀委員「理論で言っておる」と呼ぶ)同時に理論的な前提としてお答えすることは、差し控えるべきものであると思います。私は、現在閉鎖されておるものをいつ開くか、どういう態度で開くかということについては、まだきめていないわけでございます。それには、いまお話しの理論的な、いろいろの立場の御説がございましたが、拝聴をしておりまして、それも一つの御意見だと思いますけれども、私として公の立場で、こういたしますということを申し上げる立場にはございません。
  62. 堀昌雄

    ○堀委員 じゃいいです。こっちで一方的にやりますが、変動相場制に移行することは切り上げにつながる、これは常識です。だから、もしこれから一週間先に変動相場制に変わるとするならば、切り上げになることは確定するわけだから、当然経済見通しは変わるでしょうね。企画庁長官どうですか。変動相場制に移行した場合には経済見通し、変えなきゃなりませんね。
  63. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 まだ変動相場制に移行しておりませんので、この段階においての言明を差し控えたいと思います。
  64. 堀昌雄

    ○堀委員 あなたは、よろしゅうございますか、大蔵大臣じゃないんですよ。私はいま通貨のことを聞いているわけじゃないんですよ。変動相場制になったら経済見通しは変わるでしょうね、こう聞いているんですよ。変動相場制になっていないから答えられないというのは答弁じゃないですよ。ちゃんと答弁してくださいよ、小坂さんともあろう者が。
  65. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 変動相場制になった場合には、これはいつまでもフロートしているわけじゃないと思いますから、新しい段階が出てくると思うのです。  そこで、政府としての態度といたしまして、この場で理論的にどうこうということは、やはり影響がある問題だと考えまするので、その点につきましては、そうした新しい段階が出るまでひとつ御猶予を願いたい、こう考えております。
  66. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、いま伺っているのは、国民生活に関係のある予算をわれわれ審議しているのです。よろしゅうございますか、この国民生活に関係のある予算の中で、皆さんはどんな予算を組んでおるかをちょっと具体的に申し上げておきましょう。  これから非常に問題になるのは中小企業の問題なんです。よろしゅうございますか、切り上げが起こったときに一番もろに受けるのは中小零細企業なんです。四十八年度予算というのは八百二億八千六百万円、中小企業対策の予算が組んであるわけです。四十七年は六百八十一億七千八百万円、四十六年五百七十九億七百万円、こうなっているわけです。伸び率を見ますと四十七年は四十六年に対して二〇・四%伸びているんですよ。ところが四十八年は前年に対して一七・八%しか伸ばしてない。中小企業対策というのは非常にここでなおざりになっているのです、ことしの予算というのはすでに。構成比を見ましても、四十七年の総予算に占める中小企業対策の予算は五・九%の構成比です。ことしは五・六%に下がっているのですよ。これが一般会計予算です。財政投融資を見ますと、これはことしは一兆二百五十億です。昨年は八千百三十七億、この伸び率は、昨年は前年に比べて二三・五%伸びておる、ことしは二一・六%しか伸びていない。いずれも昨年は中小企業にかなり予算をつけていたけれども、ことしは中小企業に対する予算はたいへん少ないんですよ。ことしの予算の伸び率は二四・六%でしょう。その中で一七・八%の伸びしかないために、構成比がこんなに、〇・三%も下がってきておる、こういう状態ですね。  こんな予算を組んでおいて、いまこのような重大な事態になっておるのにいまのような答弁をして、あなた方国民責任が負えると思いますか。国民はいまあなた方の言うような抽象的なことをいっているわけじゃないんですよ。あしたからどうなるかということを心配しているんじゃないですか。中小企業の諸君は前回の切り上げはかなり乗り越えられました。それは途中にいろいろとバッファーがあったから乗り越えられた。しかし、それはもう全部取り払われているわけです。今度かりに一〇%でも切り上げがあったとしたならば、日本の零細小企業はたいへんなことになるわけです。国民はおそらくこの審議を見守っておると思うのです。それに対してあなた方、責任のある答弁を少ししたらどうですか。私は、お互い政治家ですよ、国民責任を負っておるわけですから、ただこの場だけがつくろわれたらいいというような甘いものじゃないと思うのですけれども、総理いかがですか。
  67. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 前回の際は、中小企業ドル対策本部というものを党においても政府においてもつくりまして、それで適切な措置をとったと思うのでございます。しかし、あれは一六・八八がきまったその前後でございまして、今日はまだ土曜日だから市場閉鎖した。しかも、月曜日は西独の市場が締まっておるし、そういう段階でこちらも締めたらどうか、こういう段階でございますので、先ほどのようなことを申し上げておるわけでございます。もちろん、われわれ中小企業に対して非常な関心を持っておりまして、こういうことに対しては堀さん御心配と私どもの心配が変わらぬ程度に大きなものであると考えておりますので、それはそれとして十分なことを考慮したいと考えております。
  68. 堀昌雄

    ○堀委員 時間があれでございますから一応ここで終わりますが、この問題のもとは、われわれの国だけを責める必要はないと私は思うのです。アメリカに問題があります。アメリカが過剰ドルとそれからドルの金交換をやめておるという変則的な状態がこの根本にあることは、これは私はここで明らかにしておかなければなりません。一昨日の申し入れでも明らかにしておるところであります。しかしそれはそれとして、いまのニクソンのやっておるやり方に対しては、やはりわれわれもやることをやっておかなければならぬということもまた間違いのない事実でありますから、その問題に触れておるわけであります。経済見通しの変動相場制との関連における問題、今後の予算関係する問題については質問を留保をして、私の質問をここで終わります。
  69. 根本龍太郎

    根本委員長 国際通貨の問題について質疑の申し出があります。理事会申し合わせにより順次これを許します。金子満広君。
  70. 金子満広

    金子(満)委員 今回の通貨危機の問題、そして円対策の問題は、直接国民の生活そのものに重大な影響を与えるものであることは言うまでもないわけであります。市場閉鎖されている、あらゆる徴候から見て、再び円の切り上げが行なわれる、こういう情勢はもう避けられないんだということを考えるのは決して無理ではないと思うのです。  こういう中で、政府はこれまでも円対策が経済政策の最重点だ、こういうことを主張してまいりました。総理自身も、円切り上げの際には相当の責任をとるとまで公に言っておるわけであります。しかし今回の事態は、円対策そのものが全く破産していることを私は示しておると思うのです。いずれにしてもむずかしい問題であるとか、あるいは複雑であるとか、努力をするとか、諸外国の状態を見てからきめるとか、こういうことではもちろん問題が解決をしないだけでなくて、一つの事実だけはどんどん進行していきます。それは、再び円の切り上げに追い込まれていくというこの現実であります。  こうした中で、総理は、中小企業、特に輸出関連の中小企業がもろに犠牲を受け、大きな打撃を受けることは確実だと思いますが、こうした中で、根本的な対策はもちろんですが、緊急対策をどのように考えておるか、最初に伺いたいと思います。
  71. 愛知揆一

    愛知国務大臣 前提といたしまして、ただいま小坂企画庁長官からのお答えもありましたように、現在は市場閉鎖しておる状況でございまして、いつオープンをするか、どういう態度でオープンするかということはきめかねておるわけでございまして、これをいろいろの予測から予断をして、こうなったらこうであろうということについて申し上げるのには、いまがその時期でないと私は思います。同時に、中小企業対策ということにつきましては、政府としては十分の配慮を、この予算については先ほど堀さんからの御意見もございましたけれども、いろいろの面で十分の配慮をいたしておるつもりであると同時に、中小企業のことにつきましては、特に重点を置いているということを御理解いただきたいと思います。
  72. 金子満広

    金子(満)委員 よく意味がわからないのでありますが、今回の通貨危機の真の原因はどこにあるか、この点について端的に伺いたいと思います。
  73. 愛知揆一

    愛知国務大臣 端的に申し上げることは、事柄の性格上非常に端的には申し上げにくいと思います。これには日米の間でいえば貿易のアンバランスがなかなか広がりが解消しないということもその原因でございましょう。あるいはまたアメリカの、日本に対するだけでなく、ヨーロッパ諸国等に対する貿易上のアンバランスが広がりつつあるということも、やはり原因でございましょう。その他いろいろ世界的な原因があげられることと思います。
  74. 金子満広

    金子(満)委員 いまでは、今回の通貨危機の真の原因がアメリカにあるということは、もう世界周知の事実なんです。これが明確に言えない。御承知のように、アメリカは自分でどんどん赤字を拡大しておいて、これを他国の犠牲で乗り切ろう、こういうことを考えていることは明白です。特に、ドル危機の最大の原因がベトナムをはじめ、あの侵略戦争、そして海外軍事支出、これをどんどん増大させてきた、あるいはまた資本の対外進出、さらにインフレ政策を国内でもとっていること、これは明白だと思うのです。  ところが、アメリカは、自分が都合のいいように通貨体制をつくる、貿易体制を強める、日本に対しては輸入の完全な自由化を迫ってくる、そして日本から向こうに売るものに対しては、課徴金をかけるとか輸入制限をするとか、あるいは自主規制という問題まで出てくる。こういう状態は、いままでの経過からしてだれでも知っていることだと思うのです。このことを正しく見ないで円対策ということをやっても、それはまた次に同じことを繰り返すだけだ。  ここで総理に聞きたいわけですが、まず一つは、アメリカに対して自分の責任で解決をしろ、そして特にアジアに対する軍事支出をやめろ、そしてドルのたれ流しを規制する措置をとれ、こういうことを要求すべきだと思いますが、その点どうか。  もう一つは、円切り上げの圧力に対してこれを拒否する、輸入課徴金、当然これを拒否すべきだと私は思いますが、そういう点についてどのように考えているか、伺いたいと思います。
  75. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 かつてアメリカが輸入課徴金制度をとったわけでございますが、課徴金の早期撤廃を叫んだわけであります。要求したわけでございます。それから利子平衡税等の措置もとられましたが、これが日本に対する除外措置等を求めたわけでございます。また、日米経済閣僚会議及びサンクレメンテ会談等において、アメリカ自体のドルが強くならない限りにおいては、国際的な通貨の問題として安定をしないので、ドルの強化のために各般の施策をとられたい。それに対しては、アメリカが非常に給料が高い、賃金が高いというようなことが一つの原因だと思いますが、給与の安い、賃金の安い世界各地へ投資をして、アメリカ国内に対する投資というものが行なわれないということが、大きな一つの原因だと思います、そういう意味で、アメリカの直接海外投資というものに対して規制措置をとるべきであるということも強く意見として述べてあります。それから、アメリカは黙っておっても買ってくれるだろうというような過去の考えではなく、もっとやはり売り込みをしなければだめだ。日本へ来て売り込んでいる話を聞いていると、どこかのホテルにおって何日もおったけれどもだれも来なかったというようでは、これは売れないのはあたりまえじゃないか、もっと頭を下げなければだめだ、そして、この製品がこんなにいいのだということをやはり買い手市場が理解をするように努力をすべきである、こういういろいろなことを述べています。  とにかく、アメリカがドルを強くするために必要な措置というものはたくさんあるわけでございますから、まずドルの強化のためにアメリカが率先して各般の施策を進められたい、こういうことは強く要請しております。
  76. 金子満広

    金子(満)委員 アメリカの輸出振興の話を聞いているわけではありませんで、今回の通貨危機の原因がアメリカにある、アメリカの無謀なやり方にあるんだ、こういう中で総理も自国の利益ということを言うわけですから、そうした立場からわれわれはアメリカに厳重に、アメリカのドル危機はアメリカの責任で解決をすべきだ、そしてそれを日本の労働者や国民にしわ寄せをすることはもってのほかだ、こういう立場でアメリカ側に強力に主張すべきだということを私は申し上げているのであります。  そういう中で日本の国内の問題、特に政府の経済政策の責任の問題ですが、確かにドルがだぶついてきている、経済困難を引き起こしてきた、その原因が一体どこにあるんだろう。これは歴代の自由民主党の政府がとってきたアメリカ追従の経済政策、大企業本位の高度成長政策、そうして国民を犠牲にした、その犠牲の上で生産輸出第一主義をとってきた、ここに大きな原因があると思うのです。  賃金は、国際的に比較しても非常に安い状態である、これはすでに資料でも通産省で出ておるわけでありますが、六九年度でも日本の鉄鋼、この売り上げ高に対する人件費の割合は一一・四%、アメリカのUSスチールの場合には四六%だ、こういう状態であります。こういうような中で日本の労働者に対する低賃金、そしてまた国民全体に対する低福祉、さらには大企業の公害たれ流し、これを放置してきた経過はもはや明らかであります。  さらにその上に、大企業に対しては輸出の優遇税制をとってまいりました。私どもが調査をした中でも、たとえば四十六年、一昨年のこの税のまけてやった額について言うならば、この特権的な減税額というのは、たとえばトヨタ自動車については年間百三十四億円もやっておる、新日鉄に対しては六十四億円もしておる、こういうような優遇措置を講じてきている。  さらにまた大企業の輸出を促進するためには、日本の農民を犠牲にしてアメリカからどんどんそれを輸入する、こういうような状態も出ています。さらに輸出と国内の二重価格、これも通産省の資料でありますが、四十七年、たとえばカラーテレビ二十インチのものが、国内の小売りは十三万五千円だ。ところが輸出価格は六万五千円程度だ。こういうような形で国民の犠牲、そして中小企業の犠牲の上にどんどん輸出振興をやってきた、こうしてドルがだぶついてきた、こういうことは経過から見てはっきりしておると思うのです。  こういう中で、私は総理質問したいわけでありますが、これは大企業本位の経済政策を根本的に変えて、国民生活優先の方向に切りかえなければだめだ。特に赤字公債の発行など、インフレを助長する政策をやめること。国鉄の運賃をはじめ、公共料金の引き下げは当然やらなければならぬ。そして輸出関連の中小企業緊急融資はもちろんのことでありますが、税制の面においても減税、免税を行なっていく。そして円問題で、たとえば労働者の首切りとかあるいは賃下げ、こういうものは絶対に行なわない。むしろ賃金を引き上げて、そして新規採用を中止するような事態が起こる情勢も考えられるわけで、そういうことをとらない措置を厳格に行なうべきだ、このように考えますが、御回答を求めたいと思います。
  77. 愛知揆一

    愛知国務大臣 総理から御答弁のある前に、前前から申しておりますが、今回の四十八年度予算にいたしましても、ただいまお触れになりましたような従来の輸出振興というものを抑制をする、内需に向ける、内需中心にする、そうして福祉国家建設に向けていくというような、この財政を通して資源の配分を直していこうということに重点がありますことは、いずれの状況下にありましても、私は非常に必要なことだと思います。また大法人、大企業等、税の関係ということにいたしましても、課税所得の拡大をはかることによって、相当の法人に対する重課を今回も計画をいたしておるわけでございまして、お話しになることの相当の部分のところについては、私どもの考え方の基本的な考え方が取り上げられているというふうに御理解をいただいてしかるべきではなかろうか、こういうふうに考えるものでございます。
  78. 金子満広

    金子(満)委員 そういうことがやられていないということを私は理解します。それは先ほども具体的に数字で申し上げたとおりでありますが、そういうことをいま愛知さんおっしゃいますけれども、具体的な事実、そして経過、こういうものからして、輸出を振興する、輸出を第一に行なってきた、そういう体制が高度成長の中で貫かれてきたことだけは明らかであります。こういうことが、今日の危機をもたらしているということを申し上げておきたいと思うのです。  そこで、先ほども議論がありましたが、経済見通しというものがどういうようになってきているか、これは狂ってきていることは事実です。これは否定してもだめであります。経済成長率が来年度どうなるか、これも狂ってくることは明らかであります。そういう中で、経済見通しが狂い、そして経済成長率も狂ってくる中で、一体四十八年度の予算案というものとの関連でこれがどんなことになるだろう。実質成長率一〇・七%だ、消費者物価の値上げは来年度は五・五%だ、これがそのまま言えるかどうか。そのままであるということは、断言を皆さんもできないと思います。  こうした中で、たとえば法人税や所得税という歳入面でどのようにマイナスが生まれてくるか。まさかプラスが生まれるだろうということをおっしゃる方はないと思う。こういう中で今度は農産物や農業に対するいろいろの対策を立てなければならぬ。あるいは輸出関連産業の問題も、中小企業でそうでありますが、この緊急対策。地方財政が大幅な収入減、これも予想できること。  こういう措置考えたときに、もし円の切り上げあるいは変動相場制をとった場合には、当然予算策定の基礎が狂ってくるわけでありますから、そういう点で来年度予算について再検討することが私は必要だ、このように思いますが、その点いかがですか。
  79. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現状におきましては、先ほど来申しておりますように、通貨の調整ということを現在考えておるわけではございませんから、その点から申しましても、予算の基礎というものに狂いが生じているということはございません。  それから、先ほどもちょっと言及いたしましたが、いかなる条件下にございましても、私は決してそう思いませんが、いわゆる相当大規模な予算で、福祉国家の建設を中心にした考え方というものが、今日の日本においては最も必要な施策でございまして、いずれの条件下におきましても、これを中心に一日もゆるがせにできない国民生活に密接な関係のある予算の執行ということ、編成が終わりその執行が始まるということが最も大切なことである、かように考えるわけでございます。  経済の見通しあるいは税収入の問題等は、これは状況がかりに円調節というようなことがなくとも、状況の変化によりましては、見通しは四半期ごとその他で変えていくのが私は当然の姿ではなかろうか、かように考えるわけでございます。
  80. 金子満広

    金子(満)委員 最後に、新しい事態が生まれた場合、それに即応して予算の再検討、これを求めて質問を終わりたいと思います。
  81. 根本龍太郎

    根本委員長 次に、広沢直樹君。
  82. 広沢直樹

    広沢委員 まず、大蔵大臣にお伺いしたいわけでありますが、報ずるところによりますと、すでに大蔵省と日銀の間では、今日の通貨危機の収拾段階としては、いずれ変動相場制への移行、結局は最低一〇%の再切り上げを余儀なくされてもやむを得ないのではないか、さらに、円の単独切り上げを避けて、あくまでも主要五カ国、いわゆる日、米、西独、それからフランス、英国の多角的調整の一環として行なうべきではないか、その場合、円の切り上げだけではなくて、やはりドルの切り下げということも前回と同じように考えられるべきではないか、こういうようなお話があるということが報ぜられておりますが、この点についてまずお伺いしておきたいと思います。
  83. 愛知揆一

    愛知国務大臣 こういうヨーロッパを中心にする不安定な状況下におきましては、いろいろの説がいろいろの観測として流れておるわけでございますが、政府といたしましては、当委員会で本日も各党の代表の方々から御質問があってお答えいたしておりますように、ヨーロッパ等の状況を見守りながら、なるべくすみやかに閉鎖は解除したいという気持ちは持っておりますけれども、いかなる体制でこれを解除するかということについてはまだきめておりません。  したがいまして、それからあとのことを、いろいろの予測に基づいてこうこうなるであろう、こうしたいということは、何らいまのところ考えておらぬわけでございまして、その点は御了解をいただきたいと思います。
  84. 広沢直樹

    広沢委員 前もっていろいろな問題について話していい場合あるいは悪い場合ということも、交渉の段階ですから起こってくることはわかっております。しかしながら、こういう通貨危機の段階において、やはり緊迫した中でこれに対応する考え方というものは、持っていなければならないことは事実です。  先ほどからいろいろ指摘がありましたように、向こうの出方によってあらためてそこで考えるというよりも、今日の通貨危機をもたらしてきた経過ということは十分おわかりのはずであります。したがって、これからどういう形でこの収拾がつけられるか、またある場合においては、いま大臣がおっしゃったように、希望としては平静に戻ることを期待していると言います。またある場合においては、これは変動相場制にもう移行しなければならない段階にも追い込まれるかもわかりません。どちらにしても、これに対する対応ということを考えてみなければいけない。国際間のいろいろな交渉ごとについては言えない場合もありましょうけれども、国内の体制においてはこれを明確に考えて、前もってその手段というものを打たなければならないと思うわけです。  そこで、もう一点お伺いしますが、先ほどもお話がありましたように、通貨危機の問題については国際協調の精神で多国間で協議して解決すべきだ、これは先ほど総理からもお話がありました。わが国から積極的にこういう国際会議の提唱をする考えはない、これはきのうの談話で大蔵大臣が申しております。しかしながら、すでにアメリカはもとより、あるいは西独にしてもイギリスにしても、この三国間でもやはり国際会議を開くべきだという意見がありますし、当然そういうことになりますれば申し入れがあると思いますが、それに対してはどういうふうに対処なさるおつもりでしょうか。
  85. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この種の問題は、スミソニアン体制との関連もございますし、できるだけ国際間の協調ということで多角的に行なわるべき筋合いのものであろうと私も考えます。しかし同時に、それぞれの国にはそれぞれの国の立場があり、日本としては自主的な、日本の国益を踏まえた態度で解決をすべきものである、かように考えておる次第でございます。  現在のところは、御案内のように、主としてEC間におきましては沿革もございますし、EC主要国の間では蔵相会議も持たれておりますけれども、それらの線から日本に呼びかけがあるわけでもございませんし、したがって、また当方から多数の国々に対しまして呼びかけをしているというような事実はございませんし、またただいまのところ、当方からさような積極的な呼びかけをするということも、現在のところは考えておりません。ただ、いろいろ連絡と申しますか、情報収集と申しますか、こういうことは必要でございますから、専門家を政府からとりあえずヨーロッパに派遣いたしておりますことは御承知のとおりでございます。
  86. 広沢直樹

    広沢委員 そこで、またあらためてお伺いしたいわけですが、先ほどからこの通貨不安の原因については、マルクの危機の問題が出てまいりましたし、それからまたわが国の貿易収支、日米間の貿易収支の不均衡の問題が出てきておりますが、具体的に、先ほどのいろいろな答弁を聞いておりまして、実際にどう考えているのか、この今回の通貨不安の原因は一体どういうふうにとらえているのか、この点がまだあいまいであろうと思うのです。  この間エバリー特使がやってこられて、とにかく日米間のこの貿易の不均衡というものが大きな問題であるということを指摘しておりますし、またスミソニアン体制の中においても、やはりそのことが問題になってきておったわけです。また、日米会談の中でもその点については、ドルを、いかにして黒字を減らすかということについて、総理もそのことをお話しなさっていらっしゃる。そういうような体制で、一体ほかに原因があるのだと考えているのか、あるいは、いまわが国にもそういう大きな原因を持っているのだというふうに認識されているのか、この通貨不安の原因について、もう一ぺんあらためてお伺いしておきたいと思います。
  87. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほど申しましたように、一口ではなかなか御説明申し上げることは困難でございますが、日本がかなりの話題の中心になっていることは否定ができないわけでございまして、アメリカだけとの関係ではございませんで、ヨーロッパ諸国等におきましても、日本の実力がありますだけに、強国は風に当たられぐあいが大きい、非常な変なたとえかもしれませんが、そういうことが率直に言えるかと思います。しかし同時に、最近の傾向としては、アメリカがベトナム戦争が終結すれば、ドルの信認は国際的に非常に回復するであろう、これはきわめて世界的な常識であったと思うのでありますけれども、それがさほどでない。長期的に見れば、アメリカの経済力というものはかなり高く評価できるはずだけれども、さしむきのところは信認の回復がさほどでない。あるいはヨーロッパ諸国に対しまする貿易収支じりも、だいぶアメリカの赤字がふえておりますことは数字が物語っております。  そういう点で、アメリカのビヘービアというものもかなりの話題になっているのではないかということも想像いたされるわけでございます。また、ヨーロッパの諸国それぞれもそれぞれの問題を内包いたしておりますから、一がいに、こうした世界的な通貨不安が起こったのはどこに原因があるか、その最大のものはどこであるかということを、科学的にあるいは順位をつけて申し上げるというようなことは、これはきわめて困難であると考えます。
  88. 広沢直樹

    広沢委員 とにかくスミソニアン体制のときにおいては、当面の調整を整えた。あとの通商的な関係、これが根本的な原因であろうと思われますが、その不均衡是正については、それぞれ努力するというような体制で出発しているわけでして、まあこれは暫定的といったら語弊があるかもしれませんけれども、将来において、そのスミソニアン体制ができ上がったあとでも、さらに再切り上げがあるんじゃないかという議論は、今日までずっと続いてきたわけです。したがって、それに対して先ほど総理も、確かにわが国としては、ドルを減らし、国際均衡を保っていくためには努力をやってきた、こういうように御答弁なさいましたけれども、確かに具体的な効果があらわれないがゆえに、今回もまたこういう通貨不安を巻き起こしてきたんじゃないか。  そこで、いまこのままでいけば、そういうふうに変動相場制の方向へ移行せざるを得ないような方向に進むのではないかと思われます。しかし、何としてもこれを避けるという先ほどの考え方に立つならば、今日までやってきた通商関係におけるいわゆる輸出輸入関係のそれぞれの対策が、十分な効果をあげ得ていないではないか。ならば、わが国として努力するとすれば、現在以上に何らかの努力をしていかなければないはずです。先ほど言ったように、通貨調整は効果的な問題から考えると二、三年はかかる、こうおっしゃっておられますけれども、そういうような体制の中では今日解決ができない問題であって、当面、先ほどお話があったように、変動相場制に移らざるを得ないか、あるいは固定相場制でいくかという一つの岐路に立っているわけでありますから、先ほどのお話のように、願わくは現在の体制のままでいきたいというならば、今後の輸出輸入関係、通商政策については、大きく何かここに手を打っていかなければ、いま打っている手で十分であるということは考えられないわけでありますが、総理大臣とそれから通産大臣にお伺いしておきたいと思います。
  89. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 当面の問題については、大蔵大臣やあるいは企画庁長官がお考えを述べたとおりでございますけれども、われわれ通産省といたしましては、一番のポイントは貿易バランスの問題があるわけでございます。この貿易バランスを常に回復しておくという努力を、今後いかなる事態においても営々として努力していくべきではないかと思います。そのことがやはり世界経済の安定を増すゆえんでありまして、このためには、われわれが努力しなければならぬ部分もございますけれども、赤字国も大いに責任を感じてやっていただかなければならぬこともあるはずでございます。  こういうような不安定が生まれた原因を、この際国際的にもよく究明して、こういうことが重なって起きないように、各国が注意し合って安定的な体系をつくり上げるように、私たちは努力すべきであると思います。  われわれ、また通産省として対策すべきことには、総理からもいろいろいままで指示されまして、関税の制度であるとかあるいは貿管令の発動であるとか、いろいろ努力したところでありますけれども、しかし、こういう新しい事態にかんがみまして、もう一回われわれの立場を再検討してみまして、日本として行くべき正しい道を私たちとして探り当てていきたいと思います。  それから、やはりこういう事態になりますと、中小企業の方面でかなり不安を感じている向きもあると思いますので、それらの方々に不安を与えないように、われわれとしては万全の措置を用意しなければならぬと思います。
  90. 広沢直樹

    広沢委員 時間がありませんけれども、いま私がお話ししたことは、通産大臣、これは確かにいままで貿管令の発動とかあるいは関税の二〇%引き下げだとか、それぞれ努力はしているということはそれはわかります。しかしながら、先日来日したエバリー代表の話によっても、日本の対米輸出がかりに一〇%にとどまり、米国の対日輸出が二〇%に伸びても、一九七三年のいわゆる貿易収支はやはり大きな黒字が残るではないか、向こうの言い分もありますけれども。そういうふうに現在のままではやはり解決されないということは、この一年半の体制の中で現実の問題として取り上げられているわけです。したがって、それに対してアメリカとしては輸入課徴金の問題を持ち出してきている。したがって、輸出税の問題についても、これはわが党は抜本的な対策を打つべきだとして提案しているわけでありますけれども、それに対して現在のままであれば、いま指摘申し上げたとおり、これは変わらないと思います。今後検討したいとおっしゃるならば、どういうふうにするか、具体的な、もう一歩踏み出した手を打っていかなければいけないんじゃないか。これが変動相場制のいろいろな面に影響してくると先ほど言いますが、これはやはり国内の通商体制の中で考えるべきことであります。  時間がありませんので、そのような御答弁はあとからいただくこととして、続けて伺いますけれども、もう一点は、いま変動相場制になるかどうかということは確かに疑問があります。しかしながら、過去の苦い経験の上から、やはり事前に対策を打っておかなければならない。そのために、中小企業対策としては、前回おとりになったような、いわゆる緊急融資の体制だとか、あるいは中小企業の手形買い取り制度だとか、また、いわゆる先物予約制度の導入だとか、こういう具体的な手は必ずお考えになるのか。あるいはまた通産大臣は、もしもフロートした場合においては、貿易管理令を取りやめるのだということをおっしゃっておられますけれども、そういうことになった場合のかけ込み輸出という問題で、一つ前回も大きな問題になっておりましたが、こういう問題はどう考えているのか。  さらに、これは大蔵大臣にお伺いしておきたいと思うのですけれども、いわゆるいまの変動相場制にならない段階でこういう議論をするのはおかしいではないかということから、先ほどは明確なお答えを避けておられましたけれども、やはり、予算の問題あるいは経済見通しの狂いという問題は、経済企画庁長官のお話しにあるとおり、当初は立てられていない。そういう通貨危機に対して対応する見通しを立てていなかったということになれば、かりにそういう事態が生じた場合においては、国内体制の中でどうするかということは、当然考えておかなければならないのであって、それが国際間の交渉の中でフロートするのか、あるいは固定相場制へいくのかということ、それは国際間の交渉ですから、なるかならないかわからぬかもわかりません。また、いまは言えないかもしれません。しかし、いまそういう前提に立っていない見通しは、そうなった場合においては、やはり予算をもう一ぺん考え直す、あるいはまた経済見通しを変える、こういうことになるのは当然であろうと思います。  以上の質問を申し上げまして、御答弁をいただいて終わりにしたいと思います。
  91. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まず、政府といたしましては、あらゆる事態に対応して有効な対策をびしびしとってまいって、中小企業の皆さんには不安や心配をかけないようにお約束をいたします。  第二番目に、輸出のバランスの問題でございますが、たとえば今度のような場合は、ドイツにまず起きて、それが日本に波及して不安定が出てきたということで、必ずしも日本のみの責任によるものではなくして、むしろドイツのほうから波及してきたということがあって、外国の影響を受けてこういう事態が起きるということもあるわけです。そういうことを考えてみますと、日本のような国は貿易立国の国でございますから、輸出精神というものが鈍ったり、あるいは輸出というものが罪悪であるというふうにとられたら、私はたいへんなことになるだろうと思うのです。だから、輸出輸出でやはりどんどんやっていただく。しかし輸入もふやしてもらう。つまり、輸出が罪悪というよりも輸入が少ないことをわれわれは考えなければならない。そういう意味拡大均衡という精神に沿ってわれわれは事態改善していくべきではないか。そういう点において、今後ともさらにわれわれは研さんしていきたいと考えておるわけでございます。
  92. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現在御審議を願っております四十八年度予算というのは、従来から考えました日本の新しい進路を表現するものであって、しかも、これが円対策と直接関係のあるものであり、国民生活に一日も欠くことのできない重大なものであると私は思いますから、今回の予算については、私は、いかなる場合におきましても最善のものであると考えておるわけでございます。いかなる条件のもとにおきましても最善のものと考えております。  それから、経済見通し等につきましては、先ほども申しましたように、今回のような問題は別といたしましても、経済は生きものでございますから、たとえば四半期ごととか随時その見通しに修正を加えていくということ、これは当然のことではなかろうか、こういうふうに考える次第でございます。
  93. 広沢直樹

    広沢委員 答弁漏れがございますから、一言だけ。  通産大臣、先ほど輸出税についてはどう考えるかというお伺いをしたのですが、御承知のように、輸出を振興しなければならぬときには、輸出振興税制の特別減税をやっているわけです。したがって、ある程度セーブしなければならないという場合においては、それにかわる特別処置でもけっこうですが、輸出税というものを考えるのは当然のことではないかと思うわけですよ。輸出を全部押えてしまえばいい、そんなことでは大きな不況になってたいへんなことになります。決してそういう意味で言っておるわけじゃありません。その点、お答えいただきたい。
  94. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり日本のような国の場合には、輸出に対するある課徴的な措置を講ずるよりも、輸入に対する奨励措置を大幅にとるほうが賢明だろうと思います。
  95. 根本龍太郎

    根本委員長 次に、竹本孫一君。
  96. 竹本孫一

    竹本委員 きょうは、緊急の問題としての、円の再切り上げを含む重要なる通貨危機の問題での特別審議であります。政府のいままでの答弁を承っておりますと、円の切り上げあるいはドルの危機というものは、何だかきわめて突然に降ってわいたような御答弁でございますけれども、これははなはだ遺憾である。現に私は、前の大蔵大臣の植木さんに、大蔵委員会においてではありますけれども、前後三回にわたって、円の再切り上げは必ずやらなければならないようになると思うがどうだということを聞いております。そして、まじめな植木さんは、主観的には円の再切り上げはないように、重大なる決意と熱意をもって当たりますと、こういう答弁をされた。主観的には重大なる決意と熱意であるけれども、客観的にはどうなるかわからないという意味も含んでおったようでありますが、しかし、少なくともそれだけ大臣はまじめに答弁をしておられた。しかも、それは植木大蔵大臣のころであって、決してきょうやきのうの問題ではない。だから私は、政府がこの円の問題やドルの問題が急に天から降ってわいたような答弁をされるということははなはだ遺憾である。われわれはすでに植木さんに、三回も質問をしておるということも前提にして御議論をいただきたいと思います。  第一は、総理大臣は、さきの施政方針演説では、あらゆる努力を払って円の再切り上げを回避したいと御答弁になっておる。言明されておる。そこで、あらゆる努力という問題の意味なんですけれども、われわれが常識的に考えれば、あらゆる努力というのは全力投球である、力の限り、知恵の限りを振りしぼって円対策を講ずる、あらゆる政策は全部出し切っていくのだ、こういうふうに受け取るわけであります。  ところが、政府の施策というのは、御承知のように第一次、第二次、第三次円対策というので、あらゆる努力、全力投球が次から次へ追補増訂されて出てきた。それでは前のやつはあらゆる努力ではなかったのかということになるわけです。これはちょうど四次防の問題と同じで、四次防の次には五次防が出てくるということで、国会でも重大な議論が起こったわけでございますけれども、  一体円対策は、第三次円対策の次に第四次円対策が出てくる見通しがあるのか出てこないのか、円防衛の限界はどの辺にあるかということをひとつ聞いてみたい。
  97. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ただいま御審議をいただいておる予算も円対策じゃないか、こう言われておるわけでございますけれども、三つの重点項目の  一つになっておるわけでございまして、輸出内需へ振り向けるという一つの目的を持ったものでございます。  それから、これから一体どうなのかということですが、国際収支改善の対策に対してはいろいろ考えていかなければならないと思います。そういう意味で、先ほど堀さんにも答えましたが、資本の自由化とかできるものの自由化、それから関税の引き下げというような問題も十分考えなければならない、こう思っておるわけでございます。
  98. 竹本孫一

    竹本委員 もう一回伺いますが、第四次の円対策は出てくるのでありますか、どうですかということを聞いておるのです。
  99. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 第四次と銘打って国会に御審議を願うというようなことになるかならないか、これは別でございますが、いずれにしても輸一入の拡大をはかり、貿易収支の改善という問題は、将来的にも長く考えていかなければならない問題でありますので、それらの問題に対しては、引き続き検討を続けておるわけでございます。
  100. 竹本孫一

    竹本委員 やはり、先ほど堀委員も大いに論議をされましたけれども、政府が、国内的な面から見ても努力を尽くすべき問題をいつも残しておるから、次々に第三次、第四次が出てくるのだし、また出てくる必要が出てくるのだ。やはりこの辺で腹をきめて、最後の、ほんとう意味の全力投球をやるべきであるということを、これは要望として私は申し上げておきたいと思います。  そこで、第二番目には、先ほど御議論になりました点でございますけれども、政府の経済見通し、これは一番重要な円の再切り上げ問題は前提にしていない、私はそう思うわけです。そういう御答弁もあった。大体、重要な問題はいつも政府の見通しの中には欠けておるのがまた特色ですが、この円の再切り上げが行なわれれば、単に中小企業だけではなくて、日本の産業、経済全体に重大なる影響があるということで、本日は特別の審議をやっておると思うのですね。したがいまして、円の再切り上げということは、日本の財政、経済の運営にほとんど致命的と言ってもいいような大きな影響を与えると思うからこそ、これだけの特別審議をやっておるのだ、かように思うのですが、今回の予算は、先ほども御答弁のありましたように、これは前提にしていないということである。前提にしていないで組んでおる。そうなりますと、実際問題として円の再切り上げに追い込まれる。私は、いま申し上げましたように、植木さんが大蔵大臣のときにすでにそれを何べんも指摘しておる。必ずありますよ、客観的に必ずきますよと指摘しておるのですが、今日においては、それを疑う人はほとんどだれもいない。そこで、大前提である円の再切り上げをしないという基盤がひっくり返った場合には、これはやはり政府予算は組みかえなければならぬ、再審議しなければならぬ、かように思うのですが、その点が一つ。  それからもう一つ総理にお伺いしたいのだけれども、これはなかなかむずかしい事情もあり、政府のお考えもわかるけれども、いまは仮定の問題について論議することは国益に反するということで、一切言明をされない。しかし、変動相場制になるのか、円の一〇%なら一〇%の再切り上げになるのか、これを前提にしないで、今日日本の経済の見通しや予算を論議するということはナンセンスである。したがって、先ほど来の大臣の答弁を静かに客観的に聞いておれば、政府答弁は、何だか変動相場制について、あるいは固定相場の切り上げについて、客観的に国際会議で結論が出るまでは、この予算審議はおあずけだということを求めておられるような発言でありますけれども、その点はどうであるか。この二つを伺いたい。
  101. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、現在そういう点については考えておりません。まだきめておることはございません。  それから、いずれの場合におきましても、四十八年度予算を御審議を願っておりますものは、一日もゆるがせにすべから、ざるものであって、国民生活に重要なかかわりのあるものである。しかも、その考えとしておるところは、現下の日本として切りかえなければならないところを考えの中心に置きまして、財政によって資源の配分を変えていきたい、こういうことを私は念願にいたしておるわけでございますから、いずれにいたしましても、これは政府としては最善考え方である、かように考えております。  なお、先ほど来これも申しておりますけれども、経済情勢の見通しというようなことにつきましては、たとえば四半期ごと、あるいは随時この見通しを変えるということは、生きものである経済については自然の考え方である、こういうふうに御理解いただいていいのではないかと思っております。
  102. 竹本孫一

    竹本委員 とにかく大前提が変わるのですから、その大前提を踏まえて組んだ予算が根底が変わるときに、予算はいかなる場合にも資源の再配分をねらっておりますというようなことは、御努力の点は私も評価しておりますし、わかりますが、しかし、政治の問題として現実の課題として考えれば、前提が変わっても変わらないでも予算はこれでいいんだ、これが最上のものだと言われるのは、それでは予算というものは客観情勢の推移とは無関係に組んでおるか、あるいは初めから調整インフレで組んでおるのかということになって、全く答弁側は矛盾しておると思うのですね。矛盾しておりませんか。予算というものは国際あるいは国内の経済情勢に立って編成するんだから、その情勢が変われば、予算の論じ方や組み方が変わるのがあたりまえだと思うけれども、変わらないでいいほど完全無欠なのか、月の世界予算みたいなものを別に組めるものであるかどうか、総理のお考えを伺いたい。
  103. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、もう率直に申し上げておるのでありますけれども、この四十八年度予算というものは、これが政府として考え得る最善のものであるとしばしば申し上げておりますとおりでございまして、これ以上申し上げることはございません。
  104. 竹本孫一

    竹本委員 われわれは、それは政府と意見が違いますけれども、かりに予算を編成された段階においては最上のものであったとしても、事情変更の原則ではないが、客観情勢が変われば、その予算の妥当性や必要性というものが変わるのがあたりまえで、変わらないという前提は全くわれわれは理解できない。総理の御意見を伺いたい。
  105. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 経済見通しの問題でございますから、私からちょっと申し上げたいと思いますが、昨年度の経済の成長は五・七であったわけでございます。ことしになって一〇二二、来年度が一〇…七というのが見通しでございますが、竹本さんよく御承知のように、われわれのこの市場経済、市場メカニズムというものを前提として組んでございます予算は、そのときの景気のいろいろな変動によりまして、予算の歳入見積もり等は変わるわけでございます。そういうものにつきまして、やはり補正予算をお願いしたりしておることはございます。  ところで、いまお話しの、円の国際的な価値が変わったら、国内的の予算は必然的に変わるべきものであるという御所論に対しましては、私はまだ少し問題があるように思うのでございます。ただ、私として申し上げておることは、いままだ市場閉鎖の段階である。その市場閉鎖も、国際的な市場閉鎖に従ってわが国が市場閉鎖をして様子を見るという段階でございますので、ここでもってさらにこの予算全体の組みかえがどうのこうのというのは、少し時期が早いのではないかということを申し上げる。  ただ問題は、このことによって中小企業、ことに輸出関連の中小企業等の打撃、あるいはそれに対する心配というものがありますということは、先ほどの堀さんの御指摘のとおりでございますので、そういうことがないようにいたしますということは、これは政府責任である。それは中曽根通産大臣からお話があったことであります。そういう点を考慮してやれば、いまここで、予算が変わるべきであるとか変わるべきものでないとかいう議論をすることは、まだちょっと早いのではないかというふうに私は考えております。
  106. 竹本孫一

    竹本委員 いま私が言っているところをひとつ詰めて申しますから、整理して答えてください。  市場閉鎖をして、これからどう変わっていくか、変動相場制になるのか、二重相場制になるのか、そしてドイツの動きがまたわれわれにどういうふうに影響をするのか、何にもわかりませんという答弁ならば、わからぬということを前提に審議はできないから、わかるまでは審議をやめろという議論になりますよということをぼくのほうがアドバイスしているのですよ。それが一つ。  それからもう一つは、市場メカニズムですから市場は動くのだ。その市場メカニズムであるからこそ、情勢が変われば前提が変わり、したがって予算に対する妥当性も、その当時ベストであっても、いまはまるっきり変わるじゃありませんかということを聞いているのだから、情勢の変化にかかわらず予算は常にベストなものであるなんて、そんなばかな議論が通りますか。
  107. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政府は、最善予算を組んだという自覚のもとに御審議をいただいておるわけでございます。  その中で二つ問題の御指摘がございますが、その一つは、平価調整等が行なわれた場合はどうなるかという問題が一つでございますが、これは、日本の平価が切り上げられた場合というふうに仮定をする場合が一つありますし、相手側が切り上げたり切り下げたりするという問題がございます。現に、豪州では平価の切り上げをやっておるわけであります。またほかの国では、イタリアやフランスでは二重価格制度をとっているわけであります。また、西ドイツが切り上げるか切り下げるかという問題もございます。ドルとの問題で、ドルを切り下げるかもしれませんし、またマルクが上がるのかもしれません。そういう問題は全く未定でございまして、そういう状態がきたからといって、予算をすべて組みかえなければならないということにはならない、こう思うのです。  それからもう一つの問題は、小坂経済企画庁長官から述べましたとおり、いろいろな場合を想定した場合、影響が起こるような部面があれば、これに対して政府は万全の施策をとらなければなりません。それは税制上どういうような対策を行なわなければならぬのか、金融上で済むのかという問題は、それは起こってからでないとなかなかわからないわけであります。いろいろなものを想定して、こういうものに対してどのような施策が付加されなければならないだろうかというようなことは事前に勉強できても、これでもって国会に御審議をいただくというようになれば、当然その事態を予測をし、万全な体制をとらなければならぬわけであります。  もう一つ残っておる問題は、経済見通しの問題でございますが、これは本会議でも、代表質問の中にもたくさん指摘されておりますが、一〇%というのは高いじゃないかという成長率の指摘はございます。もう一つは、五・五%という物価問題も見通しが甘いんじゃないかということを言われますが、それは政府も、いままでのような線を引きますと一〇・七%よりももっと高くなるというような感じになります。高くなるという感じになると、その物価が五・五%でおさまるかという問題になるわけでありまして、この物価五・五%に対しては、相当の政策的な調整を行なっていくつもりでございます。この予算執行において、五・五%に押えるべく最善努力をいたします、こういうことでございますから、前提になる経済見通しというものは、これはデフレ要因というような状態ではなく、経済はこのままにすればもう少し上昇カーブにあるというような見通しのときでございますので、もしもの場合、変動制の場合とか、相手が切り下げた場合とか、日本切り上げに追い込まれたような場合、これはデフレ要因になるわけでありますから、そういうものと実勢上の数字の上昇要因というものが、どの程度相殺されるのかという問題も残っているわけであります。  そういう意味で、そういう問題に対しては、政府事態の推移に十分注目をしながら対処を必要といたします、こういうことは申し上げられますが、予算をここで組みかえるといっても、不安定要素がたくさん存在するところでもって予算の問題に対して新しい考えをお示しするというような段階には、全くないということは理解いただきたい。
  108. 竹本孫一

    竹本委員 ただいまの御答弁の中で、経済の見通しと、それから予算のあり方の問題、あるいは直接の関連性の問題については、われわれ民社党としては、他の野党の皆さんとも十分相談して、もう少し相互の関連が深いものであり重大なものであるという認識に立って、さらに相談をしたいと思いますので、これ以上の論議はやめておきたいと思います。  それから、いま御答弁の中にちょっとありましたけれども、時間がありませんから、私まとめて二つほどここで質問を申し上げて終わりにしますが、一つはドルの問題です。ドルの切り下げもあるかもしれないという御答弁が、いまちょっと中にあったようですけれども、これは私に言わせますと、ドルの切り下げを日本は要求すべきであるというのが私の意見なんです。今日の問題の禍根は全部アメリカにあるのですよ。日本がいろいろ努力をしておられるが、確かにまだその努力が足らないと先ほどおしかりがいろいろと出ました。私も同感でありますけれども、しかし、やるべきことをやらないでおる一番の悪人は、一番の責任者はアメリカですよ。今度も予算は百二十六億赤字でしょう。軍事費は八百億ドルをこえているでしょう。海外援助はやめないのでしょう。海外投資もやめないのでしょう。そんなばかなことをして、アメリカのインフレを押えることがどうしてできますか。アメリカのインフレを押え得ないで、アメリカのドルがどうして安定しますか。さらにアメリカは、ドルの信認の問題からいうならば、金との交換性の問題についても真剣に取り組まなければならぬけれども、一度も取り組んだ様子が見えぬじゃないか。また、それに対して日本から一ぺんも抗議をしていないじゃないか。われわれはそこを問題にしているのですよ。世界で一番なまけ者で、今度はスイスのバーゼルの会議においては、列国の三つか四つの蔵相が集まったときにも、アメリカが一番なまけておる、けしからぬという議論が出たそうでありますけれども、そのことは、黒字国責任でしょっちゅう被告席にすわっておる日本が、やっぱりアメリカに向かって一ぺんくらい赤字国の責任を論及すべきである。一ぺんもやっていないじゃないか。私はその点を非常に残念に思うから、これは日本国民国民感情に即して言っている。アメリカこそが反省すべきだ。アメリカこそが国際通貨の責任をもう少し感ずべきだ。アメリカのなまけた、あるいはベトナムインフレのしりぬぐいを日本がやらなければならない義理はどこにもない。日本も反省すべきものは反省したらいいけれども、アメリカの反省をもう少し世界正義の上に立って要求すべきである。ドルはドルであるからドルである、私は予算委員会でいつか言ったことがあるが、アメリカは常にそんな勘定だ。  今度も、新しい通貨の国際会議を持とうという。これは持たなければならぬから持つのがいいですよ。しかし、その主導国にアメリカがなろうとしている。そして日本政府も、八日の晩にボルカーさんがやってきて、日本政府市場閉鎖をやったというのは近ごろにない勇断で、これはできがいいと思って初めてぼくはびっくりした、感心したんだが、あとから聞いてみれば、前の晩にボルカーさんと話したというか、おどかされたか知りませんけれども、とにかくそういう経過がある。  しかし、それにもかかわらず私が指摘したいことは、この行き詰まった国際通貨危機の再建について、みずから何にも反省しないアメリカが、また主導権を握って国際通貨の新たなる秩序をつくろうということは、全くこれはナンセンスである。そんな資格はありませんよ。裁判なら裁判官を忌避すべきだ。これが議長になって世界の主導権を握るとは何事か。まるで融通手形を出して倒産したインチキなやろうが、債権者会議の議長をやるようなものですよ、これは。こんなばかな話がありますか。アメリカにその資格がないということをもう少し日本は要求すべきである。私はその点についてひとつ伺いたい。日本総理としてアメリカに対して、もう少し言うべきことは言わなければ、決断も実行もないじゃないか。アメリカに向かって、もう少し強く言うべきことは言う。私は反米じゃありませんよ。しかし、アメリカの友人としての立場からいっても、アメリカにただすべきことはもう少したださなければ筋が通らぬ。その点についてドルの切り下げを要求する。日本ほんとうはここで堂々と要求すべきである。アメリカに対してもう少し強く出るべきである。これをひとつ伺いたい。  もう一つだけ、これは通産大臣に聞きたい。あなたは調整インフレとかなんとかむずかしい理論を説かれておったようであるけれども、それは別にして、中小企業に対して、円の再切り上げはあると言って指導してきたか、ないと言って指導してきたか、それを伺いたい。  大臣も行かれた新潟の、全国中小企業団体何とかいう全国大会というのがありましたですね。あのときに、私は帰りに、ある政府機関の責任者と飛行機が一緒でございまして、円の切り上げは必ずやらなければならなくなるが、君らは政府機関の関係者として、一体中小企業に対してどういう指導をしておるかと私は飛行機の中で聞いたんです。そうしたら、彼はきわめて良心的にこういう返事をした。政府は円の再切り上げは絶対やらないと言っておる、そして一生懸命努力しているから、おそらく再切り上げにはならないだろうけれども、経済の見通しというのはむずかしいから、場合によっては切り上げられる場合があるかもしれぬから、そういう場合があってもだいじょうぶなように、いまから準備をしておけよと言って私は指導しておる、こういう話をしてくれた。これは私は非常にまじめな、しかも中小企業に親切なやり方だと思うのです。そういう意味中曽根大臣に聞きたいが、一体中小企業に、あなたは円の再切り上げはあると言って指導してきたか、ないと言って指導してきたか、あるいは黙って何にも指導しないでやってきたか、その点を聞きたい。  それからもう一つ、ついでに関連して伺いますが、いま円の再切り上げをやられましたら、大企業はこれにこたえて対応する手を打っておるが、中小企業はあなたの指導を正直に信じて、何にも無防備ですよ。しかも能力がない。力がないから、円の再切り上げに耐える力は全然蓄積されていない。あるいは手は打っていない。現に今日は、政府はインフレではないなどと気のきいたことを言っていますけれども、インフレですよ。換物運動が起こって、たとえば中曽根大臣中小企業の人は機械を買おうと思っても買えないのですよ。知っていますか。モーターを買おうと思っても買えないのですよ。いまは値上がりを待って、商社が買い占めておるために買えないのですよ。だからモーター一つ買えない。鉄綱も買えない。何もやれないからもう中小企業は手をあげようとしている。それほど困っておるところに今度は円の再切り上げで、またコストダウンを要求されるということになれば、中小企業はもうどうにもならぬ。そういう窮状にあるということを御存じの上に指導しておられるのかどうか、その辺を伺って終わりにいたします。
  109. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中小企業に対しましてもあるいは産業界に対しましても、円の再切り上げは不退転の決意で回避する、そういうことを言ってまいりました。また中小企業に対しましては、円調整のいかんにかかわらず、きめのこまかい、しかもかなり強力な政策を今度の国会においてもいろいろ用意して、御審議願っておるところでございます。
  110. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本はアメリカに対しても強い要請をたび重ねて行なっております。それは、ドルの価値が下がるということは、それだけ、日本も大きなお得意さんでありますから、日本自体も困難な状態になるのであって、そういう意味で、ドルの価値維持に対しては具体的に政策を進められたい、キーカレンシーとしてのドルの金交換性をとめたということだけでも、これは国際的ドル不安というのはあるんだから、やはり金との交換性の回復を目標として、ドルが価値維持をはかるべく具体的な政策を進めなければだめなんだ、そういう意味では海外投資を規制すべきだ、これはもう去年、おととしの日米経済閣僚会議のときに、私はこれを強く求めたわけでございます。それだけでなくて、もっと具体的な問題もたくさん述べてありますが、その中には、鉄鋼の賃金アップの問題にまで触れております。そういうような状態をやっておって、そしてドルの価値維持ができるはずはないじゃないかということで、言い過ぎたといわれて報道されたこともありますが、そのくらいアメリカがなさなければならない責任というものに対してば要請もしておりますし、またドルがよくなることが日本のためにもつながっておる問題でありますので、看過し得ない状態として指摘をしております。
  111. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまの御質問の中にボルカー次官のお話が出ましたが、これは日にちからいいましても明らかでありますように、今回の東京市場閉鎖とは何ら関係ございません。
  112. 根本龍太郎

    根本委員長 次に、阪上安太郎君。
  113. 阪上安太郎

    阪上委員 一通り終わりまして、また私の質問に帰ってきたわけであります。  そこで、先刻来の国際通貨不安についての質問によりますと、円の再切り上げ回避の政府努力、これは一向にその効果があがっていない。それにさらに、これに対する肝心かなめのアメリカの反省も、これはない。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕 このような状態で移行いたしますならば、わが国の通貨調整、それが変動相場制をとるか、あるいは二重相場制をとるか、あるいはまた混合相場制をとるか、いろいろな行き方がありますが、結局はやはり円の再切り上げになっていく。私どもはこれは必至だ、こういう立場に立っております。  そこでわれわれ社会党は、今後とも事態の推移を見ながら、四十八年度の予算案、これの組みかえであるとかあるいは経済見通しの修正であるとか、そうしてさらにここまで追い込められた政府責任、これを追及していかなければならぬ、このように考えております。この場合その他の野党とも協議しながらやっていきたい、かように考えております。したがいまして、本日は一応この程度にいたしまして、私の次の質問に移りたい、このように考えております。  そこで、最初に私は、インドシナにおける日本人記者などの行くえ不明の事実がありますので、これに対する対策、これについてお伺いいたしたいと思います。外務大臣はこれらの事実を知っておられますか、お伺いいたします。
  114. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ただいま御質疑のございましたインドシナの戦乱に伴いまして行くえ不明になっておりまする邦人は七名でございまして、全部カンボジア地域にかかるものであると承知しております。
  115. 阪上安太郎

    阪上委員 この問題について、私はここに一つのメモを持っております。これはこれらの七名の方々の留守の方が、何とか早く捜査をして、そして事実を確かめていきたい、確認したい、こういうことでもって、インドシナ戦争による日本人不明者調査委員会、こういったものを実はつくっておられるわけであります。  それによりますと、一九七〇年四月から五月にかけて日本人記者七名と民間人一名、これがカンボジア領域、そこははっきりしていないのでありますが、領域あるいはベトナム、カンボジア国境、そういった地帯で取材中に行くえ不明になった、このうち記者一名の死亡が確認されておる、したがって、現在日本人七名の消息がわからないままにもう三年もたっておる、こういうことであります。   〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕 そうしてこれらの方々の趣旨を考えてみますと、去る一月二十七日に国際世論注視の中でベトナム和平協定がパリで調印された、したがって、われわれは長い間行くえ不明者の身辺をたいへん心配しておったけれども、ようやく何かこの事実を確認することができるような段階に来たのではなかろうか。したがって、これをひとつ世界に、あらゆる関係機関、赤十字その他を通じ、また特にやってもらいたいと思っておるのは、政府の手を通じてぜひこれを明らかにしてもらいたい、確認してもらいたい、こういうような趣旨のものであります。  そこで、私お伺いいたしたいのは、すでに大平外務大臣はこの事件については御存じのことでありますので、いままでにこれに対してどういう手を打ってこられたか、このことをまずお伺いいたしたいと思います。
  116. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ただいままで政府がやりましたことは、まず第一に、カンボジア大使館からカンボジア政府に対しまして邦人の捜索、情報提供を常時要請してまいりました。今回の和平協定成立に伴いまして、カンボジア大使館より同国政府に対して、あらためて行くえ不明邦人のリストをお渡しして、捜索協力について再度懇請いたしましたところ、先方の政府側から、最大の協力を惜しまない旨の約束がございました。それが第一でございます。  第二は、昨年の二月外務省の係官がハノイに参りました際、それから昨年の四月に北越の経済視察団が来日いたしましたおりに、行くえ不明邦人のリストを手渡しまして調査を依頼いたしました。先方のほうは、カンボジア王国の民族連合政府大使館を通じてその要望を伝える旨約束しました。  第三は、アメリカに対してでございますが、和平協定成立後直ちにベトナム和平協定の第八条に基づきまして、北越より提示されまする捕虜リストの中に邦人が含まれているかいなか、情報提供方を求めますとともに、今後とも邦人行くえ不明者の情報収集に協力方を申し出ました。その結果、北越内の民間抑留者は二十七名でございましたが、その中には日本人は含まれていない旨の回答がアメリカ側からございました。  第四の方法は国連に対してでございますが、一九七〇年の第二十五回国連総会の際に、ウ・タント事務総長に対しまして行くえ不明邦人の釈放のアピール発出方を要請いたしました。総長は国連総会のメンバーに、そういうアピールをしていただいたわけでございます。  最後に、国際赤十字委員会、ジュネーブにございます赤十字委員会に対しましても、事件後直ちに協力を依頼いたしたわけでございます。  これがいままでとりました措置でございますが、回答が現実にございましたのは、アメリカ側からの一部回答があったにすぎないわけでございます。しかし、今後もあらゆる機会、あらゆる方法で生存確認、救出に全力をあげてまいるつもりでございます。近くわがほう政府といたしましては、ハノイ側との接触を考えておりますので、その際あらためて調査を依頼する予定でございます。明晩は国連の事務総長ワルトハイム氏が東京に参りますので、事務総長に対しまして再度行くえ不明邦人の安否、捜索について、協力をあらためて申し入れるつもりでございます。
  117. 阪上安太郎

    阪上委員 非常に配慮をしていただいておるようであります。しかしながら、事態はこのように雪解けになってきておる段階に入っておりますので、いま少しく積極的な措置がとれるんではなかろうか、私はこのように思うわけであります。なおまたカンボジアからの回答によると、名簿の中にこれらの人々は入っていない、こういうことだということでありますが、しからば、解放戦線のベトナム側のほうにあるいは抑留されているという可能性もあるのではなかろうか、このように考えます。幸いこういう事態でございますので、ぜひひとついままで以上にくふうを願って、そして捜査を願いたい、こういうふうに思います。  この場合、私の私案でありますけれども、なおいまの段階では捜査隊を派遣するというような段階であるのかないのか、これをちょっと伺っておきたいと思います。
  118. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま和平取りきめの実行段階にあるわけでございまして、国際監視委員会のもとで軍事的な停戦が始まっておる段階でございまして、全土はそういう取りきめの実行に入ったばかりでございますので、いま、第三国の捜査隊を入れるという環境でないように私は思います。
  119. 阪上安太郎

    阪上委員 いまの段階ではっきりとそういうことは言い切れないだろうと私も思いますが、事の推移を見ながらできるだけ早く、外務省としてはそういった面も配慮しながらひとつ取り組んでいただきたい、このように私からお願いいたしまして、この質問は終わっておきたいと思います。  次に、田中総理大臣に伺います。そのことは何かといいますと、内閣の連帯責任であります。きょう総理から見解が出たのであります。いわゆる平時における国防力の限界についての見解が出ております。私は、その問題と関連するという考え方ではないのでありますが、一般論として、一体政府の連帯責任、これが非常に軽く見られておるのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけであります。  たとえば各省大臣あるいは国務大臣、これが一つの問題が出てまいりまして、政策上の問題であるならば、当然これは内閣が連帯責任を持たなければならぬ。ただ、そのことが不道徳なことであり、その各省大臣の個別的な責任を追及されるような性質のものであるならばこれは別として、ああいった形のものについて、ということは、きょう総理がここで発表されました見解あるいはその取り扱い、そういったことについては、私は当然、あの場合防衛庁長官だけの責任の問題ではなくして、むしろやはり内閣の連帯責任ではなかろうか、私はこういうように思うわけであります。  時間を省略する意味におきまして、たとえば佐藤内閣のときに、アメリカの大使館へへいを乗り越えて子供が乱入した。そのときに問題は、警視総監の責任というものを追及しないで、国家公安委員長に政治的責任を負わしてこれをやめさしたという例があります。そのほか、たとえばある大臣が急行列車をとめる、そういったときにその大臣の責任が追及されて、そしてやめるというような事態がありました。その他佐藤さんのときにもたくさんな大臣がやめていったわけでありますが、私はそういった場合において、事政策上の問題であるならば、当然内閣は連帯責任をとらなければいかぬ。ところが、大臣を首にしておいて内閣は責任ないんだ、あるいは内閣総理大臣責任をとらぬというようなものの考え方というものは、新しい憲法下においては非常に大きな誤りをおかしている、私はこういうように思うのであります。  わが国の政治の姿勢を正すためにおいても、各省大臣あるいは国務大臣が個別責任を追及されるという場合には、その人が非違行為を起こしたとか不道徳なことをやったとかという場合においてのみそういうことがあり得るのであって、内閣総総理大臣はこれを罷免する。しかし、政策上の問題等について発言があって、そのことが問題となった場合には、そのことの責任をとらなければならぬという場合には、当然内閣が連帯して責任をとるべきだ、私はこう思うのでありますが、内閣総理大臣考え方はいかがでありましょうか、伺いたいと思います。
  120. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 内閣が連帯して国会に責任を負わなければならない、それはもう当然の規定でございます。いま御指摘になりましたように、旧憲法時代と違いまして、旧憲法時代は各省大臣がみな独立をしておりまして、一人一人が輔弼の大任に任じておったわけでございます。総理大臣は内閣の一つの議長的な役割りでございましたから、一人の陸軍大臣が選出できないということになれば、宇垣内閣は成立できなかったわけでございますし、また閣議において罷免権がなかったわけでありますので、一人の大臣が反対すれば内閣は総辞職しなければならないということでございました。  新しい憲法になってからは、いま御指摘のような任免の権限を総理大臣に与えたわけでございます。しかし、与えましたけれども、これは御指摘のように、本人の個人的非違等に基づくものとか、そういうものにウェートを置かるべきでありましょう。内閣が連帯でもって責任を負うというのは、内閣の政策として明確に決定したもの、いわゆる法律手続によるもの、告示をされたもの、それから閣議の決定を経たものという手続が完備したものでございまして、各省大臣が調査を行なったり、研究をしたり、決定前の過程における案件というもので責任が負わされるということはないと思うのです。  その意味においては、国会においては、解任決議案の制度もございますし、国会において内閣不信任の決議の制度もございますので、国会は国民である、国会は国民意味しておるわけであります。主権者を意味しておるわけでございます。国会は国権の最高機関である。そういう意味で、国会に対して連帯して責任を負わなければならない、これはもう当然法律の定めるとおりであろうと思います。私はそのように考えております。
  121. 阪上安太郎

    阪上委員 明治憲法のときにも、各大臣はそれぞれ責任をもって、内閣総理大臣は内閣官制によって、憲法は別にそんなことをいっておりませんが、議長として取りまとめしておられたということなんでありますが、そのときでも、やはり多くの閣僚等の発言等について、内閣は、憲法には規定はないけれども、連帯責任をとっておられたということがよくあるわけであります。たくさんあります。そういうことを考えたときに、この憲法のもとにおいて、はっきりとやはり連帯責任というものをとるという考え方が強く出てまいりませんと、私は政治責任というものは守られていかないのじゃないかという感じがいたします。したがって、野党からもいろいろとそういう場合に、各省大臣の不信任案等が出てくることがあるのであります。よほどこれは注意しておかないといけないし、そういう場合にほんとう政治責任ということを連帯してとるのだという態度が、また政府側になければならないだろう、私はこういうふうに思うわけであります。  過般のような場合に、総理は、増原長官の言ったことは、提示したあの防衛力限界に対する見解というものは、これは政府の関知しないものである、こういうふうにおっしゃって、いまもそれは閣議を経てないからだ、こういうふうにおっしゃったわけなんであります。ああいうところは、今後よほど注意しなければいけないのじゃないか。少なくともこの国会のここでやはりあれだけの説明もしておるのでありますから、私はそういうことについて、一般論として、もっとしっかりと連帯責任政府はとっていくのだということでなくちゃいけないと思います。もともと新しい憲法がそういう態度をとったのは、これは言うまでもありません。しかし、明治憲法の中における閣僚というものは、自分の言ったことは自分で責任をとるけれども、ほかの閣僚が言っていることは知らないのだというような態度が多かった。だから、私はこういう形を憲法改正でとってきたのじゃないかと思っておるのです。  あまりこんなもので時間をとるわけにいきませんけれども、この間うちからの国会の中における、予算委員会におけるあの姿を見ておりますと、何か内閣連帯制というものに対する自覚が足りないのじゃないかという感じが非常に強いわけでありまして、この質問をしたわけであります。今後ともひとつ、あの問題につきましても、ああいったものを一つの例として、一般的に、政府はやはり国会に対して連帯責任をとるのだという、そういうあり方というものをいま少しく積極的に考えていただきたい、こういうように思うわけであります。このことを申し上げておきたいと思います。
  122. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 憲法、法令の定めるところによって対処しなければならぬことは言うをまちません。内閣は国会に対して連帯して責任をとるということは当然のことでございます。  一言、言わずもがなかもしれませんが、御発言がございましたから申し上げたいのですが、やはり国会でございますから、国会で御質問をいただくということになれば、政府は答え得る限り答えなければならないわけでございます。それはまだきまっておりませんからお答えできませんというのでは、国会にはちょっとならないと思うのです。だからそういう意味で、過程の問題に対しても何でもお答えをするという謙虚な前向きな姿が、私は国会を尊重するゆえんだと思います。  私が防衛庁長官に対してお願いをしたのは、やはり間々申し上げておりますとおり、国民の理解を深めるための一つの手段として、いろいろな角度から検討してください、検討はむずかしいのです、方程式がありませんということで、一時お断わりになったのですが、しかしとにかくできたら検討してください、これは各大臣にも言うわけであります。これは、いまでも鉄道運賃の値上げ法案を出さなければいかぬ、しかし、何とかいい方法があったらもう少し検討しなさいよ、案があったら出してください。これは健保の問題なども、前の国会に出たものをそのまま出したのではどうも理解を得られないからということも、各省大臣にしょっちゅう私は指示をしているわけです。そういう指示の中の一つであることは事実でございます。ときあたかもこの問題が防衛庁に関する問題であったということで報道されて、私が指示をしたという事実が報道されて、それが衆参両院においての質問になり、指示をしたか、指示をしました、それはできるのか、非常にむずかしいと言っておりますが、何とか勉強をしてみましょうということでございます。それはいつできるのかということでたたみ込まれてずっとまいったわけでございまして、そうしてそれができたら国会に報告をするかということでございますから、答案が出たら国会に報告をいたします、答案が出ました、出たそうだがどうだ、こういうことでやったわけでございまして、これが国会の御指示で処置をとったわけでございますが、こういうきまらないものを国会でしゃべったら全部責任になるのだということになりますと、閣議決定に至るまでの過程は全然お話はできないということにもなるわけであります。  そういう意味で、事防衛庁の問題としてウエートを置いてお考えになると、いろいろな御議論が生まれると思いますが、私は各省大臣に毎日のようにそういうことをやっているのです。ですから、私が許される範囲における指示や依頼は絶えずやっております。それが責任を果たすゆえんだと考えておるわけです。ですから、そういう意味で、これは連帯をして責任を負うという基本的原則、それも正しいことは明らかでございますが、事情によって御理解をいただきたい、こう思います。
  123. 阪上安太郎

    阪上委員 この問題につきましては、私はこう考えるのです。ああいう経緯で説明さすならば、内閣総理大臣としては、初めから、これはまだ政府の見解ではない、しかしながら、あなた方が出せ出せと、こう言うから、せっかく勉強を命じたので、答案ができておるから、これをひとつ説明いたさせましょうかということからやはり出発すべきでなかったか、私はこういうように思うのです。これはどうでしょうか、しつこいようですけれども。
  124. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そういう気持ちだったのです。それをあなたから御指摘を受けて、私もずっと衆参両院の審議を通じて間々申し上げておるのです。これは方程式がないのでむずかしいのです、できないのですというような否定的な問題に対しても、しかしながら勉強しなさいよ、こういうことで、参議院では、できないと思っておったのですが、防衛庁長官が何らかの答案をつくると答弁をしておりますから、じゃできるかもしれません、こういうことまで申し述べておるのですから。しかし、これからの発言は注意いたします。
  125. 阪上安太郎

    阪上委員 それでは次に、国有地あるいはまた公有地といったものの売り払い、そういったものについて若干お伺いしたいと思います。  その一つは、この間うちから多少問題になっておりますNHKあと地の売買契約、この問題なのでありますが、ああいうやり方は適当であると考えておられるかどうか、これは郵政大臣から伺いたいと思います。
  126. 久野忠治

    ○久野国務大臣 今回の、東京放送会館、いわゆるNHKあと地の売却問題につきましては、世論のきびしい批判があることは、私はよく承知をいたしております。何らかの法令上の定むるところによって措置すべき案はないかといろいろ検討をいたしてみたのではございますが、現在の放送法上の規定の上からいきますると、これを阻止する規定がないのでございます。私がこれに介入をしたり、またはこれに指揮命令をする権限がございませんので、現在のところ、これは商法上の立場から考えまするならば合法的な措置であった、かように解釈をいたしておる次第でございます。
  127. 阪上安太郎

    阪上委員 放送法によると、放送法第一条の二項、ここに、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること。」こういった意味のことが載っておるわけです。私はそのとおりだと思う。また三条で、「放送番組は、法律に定められる権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉されない。」私はそのとおりだと思う。ただ、なかなかむずかしい問題でありますけれども、日本放送協会の予算というものは、これは国会の承認を得る。だから四十七条にこういうところがございますね。一項でもって、「協会は、郵政大臣の認可を受けなければ、放送設備の全部又は一部を譲渡し、賃貸し、担保に供し、その運用を委託し、その他いかなる方法によるかを問わず、これを他人の支配に属させることができない。」こういうようにうたっておるわけです。ここでもやはりある程度経営の内容、そういったことについても、外部からの干渉を受けないように持っていこうという配慮が払われておる、こういうことだと思うのであります。そこで私やはり、こういった言論機関に対して外部から干渉するということ、あるいは権力で介入していくということは、決していいことではない。ただ、ここで考えなくちゃいけないのは、この中に、「放送設備の全部又は一部」こういううたい方をしております。こういったものについてはやはり外部から干渉しちゃいけないんだということをいっておりますが、それの売り渡しとか譲渡だとかいろいろなことについては、できるだけ外部から干渉するなということになっております。  そこで私は伺いたいのですが、あの売買契約の中にある土地を除いたところのあの建物、施設、これは三菱のほうでは非常に大きく見積もっておりまして、七十億円くらいを見積もっている。あれは一体放送施設なんですか、それともそうじゃないんですか。この点、郵政大臣から伺っておきたいと思う。
  128. 久野忠治

    ○久野国務大臣 放送法の四十七条の規定は、ただいま御指摘のとおりでございます。そこで、建物はその設備になるのかならないのかということでございますが、建物につきましては、これは設備にはなりません。明確にこのことは規定をいたしてあるわけでございます。
  129. 阪上安太郎

    阪上委員 そういたしますと、法的には瑕疵がないということだと思うわけであります。そこで問題は、社会的な立場に立って、法的には瑕疵がないけれども、ああいった高値でもって契約を結ぶ。いま日本列島は、田中さんじゃありませんけれども、土地問題でたいへん騒いでいる。ことにその中には地価問題が非常に大きなウエートをもって騒がれておる、こういうことなんでありますが、そういった場合に、何でもかんでもこういった公有地ないしその建物を高く売っていいということであっていいのかどうか。  で、私が調べたところによりますると、このほかに、ちょうど同じような時期、株式会社第一勧業銀行に対する国有財産売り払い契約というものがなされております。これは目と鼻のところにあるわけです。直線距離にして百メートルぐらいのところであります。これが、あのNHKの場合と比べて、土地の見積もり価格というものが非常に安く見積もられて払い下げをしておる、こういうことなんです。NHKの場合は約三千二百坪ということになっておりますが、いま申したやつは千六百坪であります。計算してまいりますると、大体坪当たり、NHKの場合は建物を除きまして八百八十万円、これが約四百万円ということになるわけなんでありますが、私は、ここのところで非常に何か納得できないものが出てくる、こういうことなんであります。  そこで私が言いたいのは、できるだけ高く売ったほうがいいんだという考え方なんですけれども、私は公有財産とか国有財産というものは、この場合、よほどのことがなければ、これは売却するようなことをしちゃいけない。いまわれわれは、土地国有論とはいいませんけれども、土地の公的管理ということを非常にやかましくいっておるわけであります。世論もまたその方向を向いておる。こういった場合に、できるだけ高く売ればいいという国有地や公有地の考え方、これは私は問題だと思う。内閣総理大臣は、こういった一つの例でありますけれども、一体、そういったものは払い下げないでもって利用さすという方向へ考える必要があるのではなかろうかと私は思うのであります。私らなんかの理論にいたしますると、土地はできるだけ利用はさすけれども、いま申したような、国有地や公有地を払い下げて所有権を譲渡するというような考え方は持つべきでないという考え方を持っておるわけなんです。でありまするので、できるだけ高く売るというような方針を堅持していまでもやっておられるのかどうか。これは、大蔵大臣それから郵政大臣から伺いたい、こういうふうに思います。
  130. 久野忠治

    ○久野国務大臣 経過について、一言だけ最初に申し上げさしていただきたいと存じます。  今回のNHKのあと地の処分につきましては、昭和四十五年の収支予算並びに事業計画、資金計画が国会で討議をされました。その際に、総合整備事業計画というものが発表されまして、国会においてこれが了承されたのであります。その事業計画の内容は、東京放送会館を売却したものによって、いわゆる代々木の放送センターの借金の穴埋めをこれでするという意味のものでございます。さようなこの国会で了承されました事項に基づきまして、東京放送会館を売却する方針がこのとききめられたわけでございまして、この方針に従って売却されたわけでございます。  以上が経過でございます。
  131. 愛知揆一

    愛知国務大臣 土地問題あるいは国土の総合的な効率のある利用ということから申しまして、都市及びその周辺に所在する未利用または転用可能な国有地につきましては、従来よりも一そう公用あるいは公共用の用途に優先的に充てたい、都市の再開発に関連なく民間へ処分することは、原則として行なわないという方針を今後とってまいりたいと考えております。ただ、売却をせずに、たとえば貸して使うということについては、たとえば公園とか緑地とかいう場合、あるいは公共団体がこれを使うという場合はけっこうかと思いますし、いろいろの便法もすでに講ぜられておるわけでございますけれども、借地権が永久的に保証されるようなかっこうになりますこともいかがか、そういうところにいろいろの考えなければならない問題もあろうかと思います。  なお、先ほどの第一勧業銀行の払い下げにつきましては御指摘のとおりでございまして、これはすでに決定をいたしました。
  132. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで、国有地、公有地の払い下げについては、先ほどから私は申し上げているのでございますけれども、東京都だってああいう場所はほしいんじゃないですか。そうなりますると、国有地の払い下げ、こういいましても、そういった点を配慮していくということがまず第一ではないか、私はこう思うわけであります。だから、高く売れということになりますと、そいつは実現しないのですよ。  聞くところによると、建設省がNHKのあの土地の売却に際して評価をしているわけなんですが、これは、たしか私の記憶では百五十億円くらいで評価した、こういうことになっております。そこでNHKでは、これを配慮いたしまして、大体これを敷き札程度に考えたのではなかろうか。それで二〇%増しの百八十億円というものを上限に持っていった。したがって、そこまでやるならば、これは会計法その他に基づきまして、当然その範囲内でもって処分すべきものであって、それをこえたものは失格ではないのか、私はこう思うのです。これは地方公共団体その他におきましても、私も長い間市長もやっておりましたけれども、最近の競争入札については敷き札を敷いて上限と下限を持ってくる、下限を割ったもの、上限を割ったものについては、これは不適格だということで、その範囲内で落としているわけなのです。何がために上限を置いたか、私ははなはだふしぎなのです。そしてそれをはるかに突破した価格で売り払われている、こういうことなのであります。もちろんその背後には、国会のほうにおいてできるだけ高く売れというような意思があったので、それをそこで応用したのじゃないかと思いますけれども、少なくとも上限を引いておいて、それを突破するような価格で売るということは適当でないと私は思う。この問題はどちらにお伺いしましょうか。久野大臣にちょっと伺ってみたいと思います。
  133. 久野忠治

    ○久野国務大臣 今回のNHKあと地の売却問題というのは、純然たる商法上の取引でございます。そこで、国会におきましても、公正にして厳正なる措置をせよということが了承されておるのでございますから、この国会の了承に従いまして、十五社を指名いたしまして競争入札が行なわれたのであります。しかもこれは公開で行なわれたのであります。その際に、上限を設けて云々というおことばがございましたが、上限も下限も何ら措置されていなかったのであります。  私の率直な感懐を申し上げまするならば、このようにNHKというのは公共的な性格を持った機関であるだけに、でき得る限り両者間において自制ある態度がほしかったという気持ちを私は持っておる一人でございます。このことをつけ加えさせていただく次第でございます。
  134. 阪上安太郎

    阪上委員 よくわかりました。しかし、そのことによって直ちに放送局に干渉するということであってはいけないだろうと私は思います。  ただ、私が強調したいのは、私の発言があまり適当でないかもしれませんけれども、やはり公共目的に使うような、そういう払い下げが第一義としてあるのじゃないか、それをやってもらいたいということなのです。それからいま一つは、そういう場合に何らかの正当な扱いを政府が要請するということは、これはできないことなのですか、どうでしょうか。それは直ちに干渉になるという考え方ですか、どうでしょう。
  135. 久野忠治

    ○久野国務大臣 現時点におきましては、法令上そういう干渉はできないわけでございます。ところが、御存じのとおり、一月の三十一日にNHKの事務当局から郵政省の事務当局に向かって案なるものが示されました。その案を私は説明を受けました。説明を受けただけでございまして、私自身はまだこれに対して何らの意見も発言もしていないというのが現在の段階でございます。
  136. 阪上安太郎

    阪上委員 そのNHKの売却計画、それは予算と無関係にあるものなのですか。
  137. 久野忠治

    ○久野国務大臣 私が説明を受けました内容の一部には、四十八年度のNHKの予算関係する部分があるわけでございます。今日まだNHKから予算説明を私は受けておりません。私としては、受けました際に判断をしてみたい、かように考えておる次第でございます。
  138. 阪上安太郎

    阪上委員 もうそれで私はやめたいと思います。  ただ一つ、これもそうなんでありますけれども、いろいろと世間から、もののわかった人、わからぬ人から批判もそれぞれあることと思いますが、そのためでもありましょうか、何か社会福祉事業にあの売却の一部を充当するというようなことを聞いたのでありますけれども、それはほんとうですか。そしてそのことは、いいことなのですか、悪いことなのですか。
  139. 久野忠治

    ○久野国務大臣 私が説明を受けました内容の一部に、ただいま御指摘のようなことばが出ておりますが、その意味は私は違うと思うのであります。内容も違うと思うのであります。社会福祉事業とか教育問題というのは、当然これはそれぞれの所管で措置すべき問題であると思うのであります。  そこで、この放送法上のたてまえからいきますると、第九条の二項の十にこのような規定があるのであります。「放送及びその受信の進歩発達に関し特に必要と認められる業務で郵政大臣の認可を受けたものを行うこと。」という規定があるのでございます。この項目を引用いたしまして、放送法上の放送の進歩発達に寄与したい、かような意味から、これを有効に何らかの措置を設けたい、かような考え方がNHK側の意向のようであります。私はその説明を受けただけでございます。
  140. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで、同じく放送法の三十九条に、「協会の収入は、第九条第一項及び第二項並びに第九条の二の業務の遂行以外の目的に支出してはならない。」こういうふうに規定が出ております。だから私は、いまの社会福祉事業けっこうですが、放送局がやる必要はないのじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。支出してはならないものを支出したということになればどうなるのですか、これは。
  141. 久野忠治

    ○久野国務大臣 私が説明を受けたところによりますと、ただいま御指摘のような社会福祉事業に支出するという内容のものではないように私は承っております。
  142. 阪上安太郎

    阪上委員 総理、こういうことなんです。したがって私は、こういったものについては、やはりきわめて厳正な態度で臨んでもらいたいということであります。もちろんやったことにつきましては違法ではない。しかし、いま言ったような、違法ではないけれども適当でないというようなものが含まれておるように私は思います。それこそ内閣が、あるいは監督責任者が、そういった点についてはやはり厳正な態度をもって臨んでもらいたい、こういうことでなくてはならぬと思います。別にこのことについて総理答弁を得ようとは思いません。もう当然のことだと私は思います。どうぞひとつ、そういった国有地、公有地の今後の売り払い等につきましては、いまわれわれが地価の値上がりを抑制しようとしておる段階でありますから、十分自粛してやらなければいけないものであったということを私は申し上げて、この質問は終わりたいと思います。
  143. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 NHKの問題はたいへんむずかしい問題でございます。全く違法性はない。違法性はないけれども、このような時節から考えると妥当性の問題がいわれるわけでございます。ですから将来の問題としては、いろいろ勉強しなければならない問題だと思います。  国費支弁に基づく支出によって物を買うときには最も安く、それから売るときには最も高く売る、安く売れば被疑事項として指摘をされるわけであります。ところが、東宮御所の一万円入札というのが行なわれてから、これは安過ぎるという問題が起こってまいったわけであります。そして今度はローアーリミットを設けて適正価格ということになった。適正価格は、御承知の九頭竜ダムの問題で、国会で大問題になりました。そうこうしているうちに、今度一番高いものというのが問題になってきておるわけであります。  これは税務署などでもって問題になるのは、どうも安く売り過ぎた、譲渡ではないかということをいつでもいわれるわけでありまして、そういう法制のたてまえになっておる。特にNHKは法律に基づく特殊法人でございますから、国家機関であります。そういう意味で少しでも高く売れる、そうすれば聴視料も値上げをしないで済むというような、ちょうど国益と同じような考え方で、公営的な立場で両院でもいろいろな示唆をされたのだと思います。しかし売ってみたら、NHKがびっくりするような値段で売れたということでございます。そういうびっくりするような値段ということでございますが、将来こういう問題が起こったらたいへんなので、やはり国有地の売り払いには公益優先ということでなければならぬ、売り払う場合でもよほど注意をしなければならないということを御指摘になりましたが、まあそういう新しい問題を提起をした一つのきっかけであろうと思います。  しかしこれは、最終的には四十八年度予算審議でもって国会でおきめいただけるわけであります。国会、国民の名においてこれをもう認めなければ、この契約も参ってしまうわけであります。一つの手段はまだ残されておるわけでございます。しかし政府が、所管大臣なり郵政大臣がこれに干渉するということになると、この放送法のたてまえ上からいっても、いろんな問題を惹起するおそれがありますので、非常に慎重にかまえておるわけであります。郵政大臣は、いままだ郵政省に対して年度予算の提出がないので、許可権の発動に至っておらないということでございますが、その段階で考えることも一つの段階でありますが、国会という問題がまだございます。そういう問題をずっと考えてみても、どうも現時点における妥当性という問題、世論を納得せしめないということはわかりますが、それかといって現行法が遡及できないということになれば、改正法律案をつくってもどうにもならぬわけでございます。そうすると、その一部のものをどういうものに使うのか、放送法が規定するNHK本来の目的であって、しかも世論が妥当とする問題にやはり支出をするというようなことが結論ではないだろうか。まだ過程の議論でございますから明確な御答弁はできませんが、いろんな問題を提起をしたことだと思います。
  144. 阪上安太郎

    阪上委員 いま総理がおっしゃった、なかなかむずかしいというのは、それはやはり全体的に考えてみたときには、土地利用計画、これができてないこと。それからいま一つは、地価の公示制、これは出発しておりますけれども、非常に個所が少なくて、とてもこれをオーソライズしていくことができないようないまの状態である。本来、公示価格というものが非常に厳格に守られていくような方向へこれがなっておりましたら、こういう問題も起こらなかったろう、こういうふうに他の側面からも考えることができます。  この問題につきまして、さらに、先ほどちょっと総理からお話がありましたように、受信料の問題ですか、これなどにつきましても、必ずしも高く売ってこれを処理するという方向ばかりが道でではなかろう。それだけが道じゃないと私は思うのです。まあ時間もございませんし、これはこの程度にとどめておきますが、しかも政府が干渉すべきではない、しかし国会の段階でなおチェックできるじゃないかというようなお話もありました。げたをこっちに預けられたような感じがいたしますが、しかしわれわれとしても、不当な干渉をしようとは決して思っておりません。  そこで次に、もう時間がなくなりまして、あと十分しかないわけなんでありますが、若干土地問題についてお尋ねいたしておきたいと思います。  これは長い長い懸案でありましたけれども、ようやくこの問題につきまして、国土総合開発というような観点から、政府予算のこの審議の段階でいろいろな問題を調整して踏み切ったようであります。そこで、この際私は、この国土総合開発、利用、これについて、政府の基本的な態度といいますか、基本的な考え方、これをひとつ伺っておきたい、このように思います。
  145. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いままで国土の利用というものに対しては、制限された地域に対しては各種の法律が存在をいたします。これは土地区画整理法にしろ都市計画法にしろ、また農地の整備の法律にしろいろんなものがございます。新産業都市建設促進法とかいろんな法律はございますが、国土の総合開発、総合利用という問題に対しては、具体的な問題として提起はされなかったわけでございます。昭和二十五年だと思いますが、現行の国土総合開発法ができただけでございまして、あの当時は、これは閣法になりましたけれども、いまと同じような議論が国会で行なわれまして、議員立法が主体でございました。国土総合開発法を議員立法するということはおかしいじゃないかということで、最終段階において閣法にすりかえたわけでございます。そういうような経緯を持ったからというのではありませんが、どうもその後、過密過疎の問題が起こるような状態になるまで、実体法として活動しなかったという事実は確かにございます。しかし、いつも申し上げておりますように、いま国土の一%の中に、東京中心の百キロ圏に三千百万人余が集中しておる。これは十五年ぐらいでもってこのぐらいになるだろうと思っておったのが、わずか五年、四十六年にはもうすでに三千百万人をこしておるという状態で、このままでいけば、もう過密の弊害ということは申すまでもないわけであります。そういう意味で、一体自然発生を是認をしておって公害問題が解決できるだろうかという問題が一つございます。  それからもう一つは、公共投資が可能であろうかということでございます。これは、キロ当たり七十五億円からやがて百億円になろうとする大阪、東京の地下鉄の建設を見れば明らかでございます。そこへ土地が非常に高騰してまいりまして、東京都を例にとりますと、東京都の道路を三階もしくは三倍にしなければニューヨークにはならないということは数字上明らかでございます。ニューヨークの市街地面積に対する道路面積の比率が三六%というのに、東京は一二・五%でありますから、三階か三倍にしなければいかぬ。ところがこの東京の地価で、収用権を全面的に発動するとしても、一体道路が三倍か三階にできるだろうかというような問題が起こっておるわけであります。そこへまいりましたのが通勤距離の拡大、平面都市が拡大をせられることによって、実働六時間ないし七時間の人が三時間も四時間もかかって通わなければならない、こういうような問題、住宅の不足等いろいろな問題が出てまいったわけでございます。  そういう意味で、やはり六十年とか六十五年展望の日本のあるべき姿というものを描いて、それで公害問題を除去したり、住宅問題を片づけたり、地価問題を片づけたり、そういう問題をするには、やはり供給をふやさなければいかぬ。供給をふやすということは、一%が一〇%になれば供給は十倍になる、こういう考え方で国土総合開発法の基本的な見直しを考えたい。ときあたかも新全総の改訂版を検討中でございました。そういうところへもってきて、生産第一主義から生活第一主義に全く方向転換をしなければならない、こういう一つのポイントに乗ったわけでございます。  そういう意味で、狭いながらも日本全体を考えれば、まだまだ六十年、八十年、今世紀末、もっともっと永久に日本の民族は続くわけでございますから、そういう意味で、いまにして国土の総合利用計画をつくらないと、やはり恣意による開発というものは利益追求であって、第二の東京をつくり、第二の名古屋をつくるということになるので、いまにして全国の総合利用計画をつくらなければならない、こういうことを考えたわけであります。  もう一つは、水の利用と、ちょうど一次産業人口がまだある意味においては減ると思います。そういう面からして、これが全部都市の過密に拍車をかけるような状態では困るので、ということで、全国の総合開発ということがよりよい日本をつくるために必要であろう。しかし、その基本的なものは生活第一主義であり、自然環境をあくまで、理想的な青写真をつくることによって守ろうということでございます。
  146. 阪上安太郎

    阪上委員 さてそこで、総理の御答弁、いままでの国土総合開発という概念からかなり飛躍といいますか、前進しておる、こう私、思います。そこで、いまおっしゃった生活環境、これの改善の基本的な姿勢でもっていくんだ。そうなりますると、GNP方式ではいけないということではないかと私は思うのです。いま世界各国でもやかましくいわれておる、あのいわゆるNNW方式ですか、こういったものを思い切って導入していかなければいけないのではないか。  そこで問題になるのは、NNWというやつができるかできぬかの問題なんでありますが、これは環境庁長官も御関係の深いことでありますが、あなたのそういう発想をお持ちであるかどうか、伺っておきたいと思うのです。
  147. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま総理答弁されたように、人間の活動には生産の場があり生活の場がある。この生産の場が生活の場を力で押しまくっていけば、それはもうそういう社会というものは真の繁栄も平和もないわけですから、どうしてもやはり生産活動、生活環境というものは均衡をとらなければいけない。だから、今後の開発は、やはり環境の保全ということは開発の前提である。その環境を破壊して開発しても、ねらうところが真の繁栄、真の平和というものをもたらすものでないですから、今後は、すべての開発はよき環境の保全を前提にする、こういうことが大原則だと私は思っています。
  148. 阪上安太郎

    阪上委員 よくわかりました。  そこで方法論なんであります。私は経済企画庁にお伺いしたいのですが、いまのような考え方で、それを基本にして国土の総合開発、今度は利用という一歩前進した形が出ておりますが、そのためには、NNWというようなところまでなかなか作業も早急には進みますまい。しかし、私は前々から企画庁に、これはぜひおやりなさい、これをやらなければだめですよ、それでなければ生活環境本位の開発はできませんよということを言ってきたのでありますが、一向これができ上がっていかない。作業はしているようなしていないような状態だと私は思うのであります。いまそれはどの程度にまで進んでおりますか。
  149. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 阪上先生の御注意もございまして、篠原博士という経済企画庁の研究所長が、ネット・ナショナル・ウエルフェアという考え方をだいぶ進めておるわけでございます。これは御承知のように、政府の財貨サービス購入の中から経常費を引いてしまって、教育費、福祉費、そうしたものをこう積み上げていく方式でございまして、さらに公害とかあるいは交通事故というのを引いて、それから主婦の家事労働、そういうようなものはまた入れていくというようなことなんでありますが、なかなかこの評価の基準が、実は主婦の家事労働一つとってみましても、あるいは住宅そのものの持つ価値にいたしましてもむずかしいということで、アメリカあたりは共同研究のような考え方を少し持っておりますが、どうも他の国にはなかなか及んでいかない。まあ日本独自のような考え方にいっているわけでございます。もう一つ、ソシアルインディケーターという考え方を研究いたしておりますが、いずれにいたしましても、この評価基準が国によっても違うということもございまして、なかなか困難でございます。  しかし、先般一応その中間的な発表をいたしまして、新聞等にも大きく取り上げられたわけでございますが、これをぜひひとつ集大成をしてまいりたい。篠原所長にも、私、非常に激励をいたしまして、ぜひこれは、日本から出た新しい国民福祉の計算方法というものを世界じゅうに広めようじゃないかということで激励しておるようなわけでございまして、ひとつせっかく努力したいと考えております。
  150. 阪上安太郎

    阪上委員 これはアメリカから出てくるとか、あるいはヨーロッパ各国からこんなものが出てくるとかということじゃなくして、いまの日本状態から見て、日本こそこれは率先してつくり上げていかなければならぬものじゃなかろうか、私はこういうように思うわけであります。  そこで、その標準でありますが、生活環境基準、ナショナルミニマムといいますか、これは総理の列島改造論にもそのことばが出ております。このナショナルミニマムをつくるのはどこでつくるかということ、これはやはり企画庁だと私は思うのでありますが、しかし、自治省とかあるいは建設省その他ともやはり連携をとっていかなきゃならぬ問題だ、私はこのように思いますが、自治大臣、なかなかそういうしっかりしたものができ上がらない段階においてもこのことは必要だと思う。自治省はこの作業をやってませんか。ナショナルミニマムをこうきめていこう、すなわち、全国の市町村の行政水準あるいはまた全国の市町村の生活水準、こういったものを、いまのようなアンバランスの形で置いておくということはこれはいけない、これは田中さんもそう言っておられて、それで過密過疎を是正しよう、こう言っているのですから、そうなりますと、そういった基本的なものをやはり一応つくり上げていく必要がある。そうして、そのナショナルミニマムの段階まではこれはもう全額国庫負担でやれ。しかし、各市町村にはそれぞれの事情もあるし、特徴も持っているのだから、そこでプラスアルファをしていくところもあるだろう。しかし、国民生活の最低基準、ナショナルミニマムというものをつくらないで、ああでもない、こうでもないといってやっておったってどうにもしようがない。ことに、あるべき行政水準などということになってきますと、いままではしょっちゅう大蔵省と自治省はけんかしておる。そういう問題をやはり早くきめていかなきゃいけない。その発想は私はおわかりだと思うのですが、これ、おやりになりますか。
  151. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘のように、これは十分検討をしなければならぬ問題だと思います。現在のところは、経済企画庁の指導を得ながら役所としての作業をしておる。主体は経済企画庁のほうでございます。
  152. 阪上安太郎

    阪上委員 ぜひひとつそのナショナルミニマムを確定してくださいよ。そうでなけりゃ、これは日本の国土総合開発事業なんというようなことは絵にかいたもちになってしまいますよ。それでまたそのことを確定することが、過密過疎を根本的に是正していく大きな役割りを果たすのじゃないか、私はこう思うわけでありまして、これはぜひひとつ——もうこれは何年たちますか。私がここに持っているのは、これは古い質問要項なんです。いつまでたってもこれが役に立つ、こういう状態なんです、これは。まだここ五年くらい役に立つのじゃないか、こういうふうに思うのですが、ぜひこれはひとつやっていただきたい。そしてそれは地方財政のあり方にも影響してきます。地方財政の総ワクの問題もここへ出てくるわけなんです。何かそういう方法でやっていただかぬと、予算編成の段階においてつかみ金取ろうというような根性でもってやり合いしているようなことでは、私はこれはだめだと思う。大蔵省だってそういうものに対して反駁をし、査定をしていくのならば、そのくらいのものを持ってなければ私はおかしいと思うのですよ。ぜひこれは、もう来年のときには必要ないようにしていただきたい、私はこう思います。  それと関連いたしまして、いま一つ、過密地帯におけるところの都市の再開発、この問題につきまして私はいままで地方制度調査会等でも発言してまいりました。ぜひこれをおやりなさい。いわゆるコミュニティーの再形成をやれ。いま団地へ入ったって、それから古い町でも、集団住宅のあるようなところで見ておりますと、全く住民意識を持たない市民というものが多いのです。そして大規模な住宅団地等におきましても、三階に住んでおる人と一番下に住んでいる人との間にそういった社会連帯がないわけなんです。よく世間でもって住民参加の政治などというようなことをいっておりますけれども、住民が政治に参加するためにもぜひコミュニティーのようなものが必要である、こう思うわけであります。もうそこには人口一万単位くらいでもって小学校が一つある、そのほかに老人施設は全部整っておる、子供の遊び場もある、スポーツ施設もある、ショッピングセンターもある、そういうふうにして託児所もあれば何もあるというような、ワンセットでもってきわめてコンパクトなそういうコミュニティーをつくっていかなければいけないと、私は日ごろ主張しているわけです。いまのようなばらばらな社会をそのまま放置しておいていいのかという問題があるわけであります。なるほど、市長とそれから市民との対話というような問題があります。これはぜひやらなければなりませんでしょう、行政上のあれで。しかし、その前に市民同士の対話の場所というものをわが国では与えていないのです。日常の生活を通じて、そして市民同士が対話をする、そういう場所づくりをやってやらぬと、幾ら市民に、住民に政治に参加せよといったって参加できようはずがないのです。だから私どもはこのコミュニティーをつくれ。  だから、都市におけるところの再開発は、それはなるほどバイパスも必要であるし、高速自動車道も通過道路として必要であるかもしれない。けれども、もっと大切なことは、いたずらに広域的な方向へ走らずに、もっと狭い範囲でもってほんとうに市民は生活しながらお互いが対話をし、その中から直接政治に参加していく、こういう場所づくりをしてやらぬと、幾ら直接参加の政治をやれといったってできっこない。特に私はこの場合、そういったコミュニティーを中心とした都市の再開発をやっていく。したがって、それは地域住民の連帯の場所であると同時に、都市の再開発をやる最小の単位だ、そのくらいの考え方で、今後この過密地帯におけるところの都市の再開発をやる。しかし、これはまた一方において過疎地帯における集落の問題とも関連してくる問題であって、たとえ人口が少なくても、農村においても、これはぜひやらなければならぬ問題だと私は思っておるわけなんです。  そこで、コミュニティーについて、自治省はいまこれを進めているわけでありますが、いまどの程度にこれが進められているか、将来の見通しはどうか、そして政府全体の中のこの総合利用計画の上にそれがどう位置しているかというようなことについて、あなたから伺っておきたいと思うのです。
  153. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御熱心な御意見、傾聴いたしました。  そこで、自治省としましては、この市民の対話の場と申しまするか、コミュニティーの形成については積極的に協力いたしております。ただ問題は、ちょうど四十六年から発足をしまして、現在モデル地区五十三カ所、こういうことになっておりまして、まだまだいまだしの感が強いわけでございます。それでいまお話がありましたように、これが市民の対話の場として非常に役立っておる。特に団地などでは、ちょっとした小さな集会所の起債を認めて協力したということから、毎週料理教室が開かれたり、そこでまた育児教室が開かれたり、非常に多角的、多面的に利用されて成果をあげておるわけであります。  ただ問題なのは、こういう対話の場面というものは、手をかして協力はしていくわけでありまするが、本来住民の自主性にまつべきものであるという考え方に立って、官庁主導型はとらない。実際それが望ましいと思います。そして研究会をつくりまして、ことしの後半期にその研究の成果を自治省としても十分聞きまして、そしてなおこれを積極的にどう手をかすか、そしてどう充実させていくかというような面に意を配って、充実強化につとめておるような次第でございます。
  154. 阪上安太郎

    阪上委員 これ、赤なんですね、もう。
  155. 根本龍太郎

    根本委員長 そうです。時間は経過しました。
  156. 阪上安太郎

    阪上委員 どうもすみません。それでいまちょっと……。自主的につくれ、そんなのはできっこありません。そこで金は政府から出して、国から出して、そしてちゃんと適当な施設をつくってやって、その運営は地方公共団体にまかせちゃいけないのであって、地域住民にまかせればそれでいいのです。そういうことを私ひとつ申し上げておきたいと思います。  時間が参りました。土地問題についてまだまだございますが、これはまあいずれ一般質問の中に譲ることにいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  157. 根本龍太郎

    根本委員長 これにて阪上君の質疑は終了いたしました。  次に、去る七日の楢崎弥之助君の保留分質疑を許します。楢崎弥之助君。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 一月二十三日、日米安保協議委員会が開かれたわけですが、それ以降、日米合同委員会は開かれましたか。
  159. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 日米合同委員会は、そのあと一回開かれております。
  160. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはいつ開かれて、どのような内容の協議であったか、議事録を明確にできますか。
  161. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先週の木曜日でございますから、二月の八日に日米合同委員会が開かれております。その合同委員会におきましては、地位協定の運用に関しまする件につきまして協議が行なわれておりますけれども、合同委員会の議事の内容につきましては、内容を申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
  162. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 岩国、三沢の問題は、細部の詰めがその合同委員会で行なわれましたか。
  163. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 岩国並びに三沢の問題については、二月八日の合同委員会に出ておりません。
  164. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 地位協定の二十五条、日米合同委員会の項であります。この一項によれば、安保条約の「目的の遂行に当たって使用するため必要とされる日本国内の施設及び区域を決定する協議機関として、任務を行なう。」この種の施設の提供、区域の提供、そういったものについての決定機関は合同委員会である。岩国、三沢に関する問題がその日の合同委員会にかかっていないとすれば、これはまだ決定されていないということになる。したがって、正式の決定機関で決定されていないものをどうしてあの予算に計上したのです。
  165. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 一月二十三日の日米安保協議委員会におきましては、岩国、三沢の件を含めまする基地の整理、統合につきまして日米間の合意を見ておりまして、その協議委員会の結果が発表いたされておりますけれども、先日のこの委員会におきましても政府側から御答弁申し上げておりますように、基本的な合意が協議委員会の場ででき上がったわけでございまして、細目の取りきめは今後日米間で折衝を重ねまして、その結論が出ました段階におきまして、合同委員会において最後的に決定を見るものでございます。  したがいまして、今回四十八年度予算で施設庁のほうから要求が出ておりますものは、先般来の日米間の事務的な折衝に基づきまして、岩国、三沢につきまして四十八年度中に処理を要し、また、わがほうとして事務能力から見て、その点ならば処理し得るということを概算いたしまして要求しているわけでございます。
  166. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だめです。私は先日の質問の中で、日米安保運用協議会なるものの性格について質問をした。その際に、これは決定機関であるかどうか、それを問題にいたしました。協議機関であると言う。ただ、その結果については、外務大臣も出ることだから責任を持たなければなりませんという程度の答弁であった。だから、安保運用協議会が今度新たにできた。その前には、合同委員会もあるし、日米安保協議委員会もあるし、あるいは日米事務レベル会議もある。たいへん混乱しているから、それを整理する必要があるというので私は指摘したはずです。そうして少なくとも地位協定の施設、区域に関する限りは、日米合同委員会が決定機関なんです。ちゃんと二十五条に書いてあるじゃありませんか。安保協議委員会は協議機関です。何を言っておるんですか。そういう正式の、法律に定められた正式の協議機関の決定を経ずして、それがきまったことになりますか。だめです、そういうことじゃ。
  167. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 安保条約の運用に関しまして日米安保協議委員会があり、また地位協定二十五条に基づきまする日米合同委員会があり、また別途今回、外務大臣とインガソル駐日米大使との間におきまして、安保運用協議会の設置ということが合意を見ましたことは、ただいま御指摘のとおりでございますけれども、安保運用協議会自体は、先日も外務大臣が御答弁いたしておりますように、日米間の調整、協議の場でございます。決定機関ではございません。合同委員会そのものは地位協定二十五条に基づきまして決定をする機関になってございます。  したがいまして、先ほど御答弁申し上げましたように、一月二十三日の第十四回日米安保協議委員会におきまして基地の整理、統合につきまして合意を見ましたのは、日米間の基本的な方向での合意でございまして、これをもとに今後具体的な細目の調整が行なわれることになるわけでございまして、政府といたしましては、那覇のP3等を嘉手納に移転させるという基本的な考えのもとに米側と折衝いたしまして、今回その移転に伴います三沢その他岩国の問題について、米側との間で基本的な方向をきめた。それに基づきまして今後具体的な細目をきめていくわけでございますから、今回の予算に……。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま答弁のとおり、単なる方向がきめられただけです。具体的な細部の決定は合同委員会でやらなくちゃいけない。そうして合同委員会の決定を経て初めて詰めが行なわれて、そうして予算の積算基礎ができていく。だめですよ、そういう正式機関が法的に定められておるのに、その決定を経ずして。そういうことではだめですよ。大臣、大臣、御答弁を要求します。
  169. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 御答弁をいたしておりますのは米側の見積もりの額でございまして、各事業の具体的な内容、経費等は、今後の日米間の細目折衝を経て、調整の上で確定することになるものでございまして、このような経緯を経まして昭和四十八年度予算案を策定する時期を迎えましたので、米側が特に早急な措置を要望しておりまする兵舎関係等の整備について、日本側の工事の消化能力、予算の都合、こういうものを総合的に勘案の上で、所要経費を予算案に計上するようにお願いしているわけでございます。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だめです、そういう答弁をだらだらしたのじゃ。正式機関があるじゃありませんか。決定機関ですよ。施設、区域に対する決定機関ですよ。そこで論議して初めて正式に決定されるんですよ。それからいろいろと積算基礎を詰めていくんですよ。だめです、そういう答弁じゃ。私、承服できません。だめです。——ちょっと待ちなさい。だめですよ。不勉強だ。まだ質問中ですよ。あなた、何をやっておるんだ。いいですか、特にこの外務省情報文化局発表の一月二十三日の安保協議委員会の文書で見ると、七のところに、「三沢飛行場における必要な施設は日本政府により提供される」提供問題です、これは。提供問題の決定機関は合同委員会じゃないですか。どうして方向をきめるだけの安保協議委員会できめただけで予算を計上するのですか。承服できませんよ、それは。大平大臣の御見解を伺いたい。
  171. 大平正芳

    ○大平国務大臣 もし合同委員会の決定を経ないで政府がやってしまうものでございましたならば、あなたのおしかりを甘受しなければならぬわけでございますけれども、政府は合同委員会を待たないでやろうなんというふらちな根性は毛頭持っていないのです。いま御説明申し上げましたとおり、この間の日米協議委員会におきましては方針をきめたことはあなたの御指摘のとおりでございまして、いまから日米間で問題を詰めまして、そして個々の施設の提供ということの具体的な事項が煮詰まりました段階で、合同委員会で正式にきめるわけでございます。  しからば、なぜ予算を要求したかということでございますが、そういうことを想定いたしまして、予算一つのエスティメーションでございますから、予算編成の時期が迫っておりましたので、工事能力その他を想定いたしまして、この程度のことはことしの予算にお願いすべきものと考えて、予算に積算いたしてございますけれども、要求いたしておりますけれども、これは楢崎さん御指摘のとおり、最終的にきまるのはあなたの御指摘のとおり、合同委員会できめて実施に移していくわけでございまして、その間に私は遺漏はないものと考えております。
  172. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま、はしなくも外務大臣がおっしゃったとおり、まさにこれはつかみ金である。何を根拠にしてわれわれは十億円が妥当であるという結論が出ますか。いいですか。この問題はちょっと置いておきますよ。  さらに、この七項ですね。七項は那覇空港の完全返還に関する問題。この項目の中に、那覇空港からP3が嘉手納に行く、嘉手納の施設の問題、さらに普天間の改良施設の問題、同時に、岩国からP3が三沢に行く、そして三沢に行くからその必要な施設の提供、これは那覇空港完全返還に関するワンパッケージの問題ですか。一つのセットになっているのですか、これは。
  173. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この前にも御説明申し上げたと思いますけれども、当初米軍と日本側で考えておりましたことは、那覇のP3を岩国に移し、岩国のP3を三沢に移すという、つまり一つのパッケージとして考えておった過程はあったわけでございます。しかし、この構想に対しましては地元からも、本土、沖繩を通じましてたいへん反対がございました。そして日本政府といたしましては、那覇空港というものを完全にシビライズしたいという考え方をこの際貫くことが、住民の希望にこたえる道であるし、また海洋博を控えた現状におきましてそうあるべきと考えまして、再度米側と交渉いたしまして、いまあなたが御指摘のように、那覇のP3を嘉手納に移すことに切りかえたわけでございまして、したがって、そこで問題は一応パッケージは消えておるわけでございます。  ただ、最初申し上げましたような経緯がございまして、これを米側に同意を求めるにあたりまして、たまたま岩国並びに三沢の件につきまして米側から要請があったわけでございますので、この全体の計画を米側に同意を求める上におきまして、米側から希望しておる岩国、三沢の提供問題というものをこの機会に考えたわけでございまして、パッケージにはなっておりませんけれども、米側の同意を得る時点におきまして、従来から問題になっておりましたことをこの際やっていこうというにすぎないわけでございます。したがって、パッケージではないけれども、そういう経緯はあったというように御理解をいただきたいと思います。
  174. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 なるたけ質問に簡便に答えてくださいね、三十分しか与えられてないのですから。時間を延ばしてもらうなら別だけれども。  そうしたら、逆に聞きますよ。岩国、三沢、この問題に関する十億ですね、これをもしわれわれが否決しても、その那覇の完全開放には影響を与えませんね。逆に聞きます。
  175. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御理解をいただきたいという希望を持っております。
  176. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だめですよ、わからないから聞いておるのですから。御理解いただきたいという答弁がありますか。どういう意味ですか、それは。
  177. 大平正芳

    ○大平国務大臣 つまり、那覇空港を完全返還を求めるということにいたしますにつきましては、日本だけが考えてもいけないので、米側の同意を得なければならない。同意を得る場合の一連の話し合いの中には、三沢、岩国の問題があるということでございますので、米側がすなおに御理解いただけるかいただけないか、それはわかりませんけれども、私といたしましては、せっかくこういう大事業をやろうとするときでございますので、否決されるなんということをおっしゃらずに、御理解をいただきたいと思います。
  178. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もう大体わかったでしょう。ワンパッケージでしょう、結果としては。そうでしょう。だから、との七の項目に全部いまの四つの問題を入れてあるのです。これは昨年の三月二十一日、予算委員会第二分科会、私の質問に対して当時の福田外務大臣——これは昨年の段階のほうはまだ玉突きであったわけです。はっきりしておった。それでもなお岩国、三沢の分については、当時の福田外務大臣は別個の問題として処理すると、あなた答弁されておる。だめですよ、いままたそういう答弁をしたのじゃ。  さらに一ぺんで聞いておきますよ。あなた方は、この岩国、三沢の問題について地位協定二十四条の二項を持ってこられた。そこでこれは念のために聞いておきます。この二十四条の二項は、「日本国は、第二条及び第三条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供し、」こうなっております。だからこの「合衆国に負担をかけないで」というところをあなた方は利用した。じゃ、「第二条及び第三条に定めるすべての施設」のまず三条からいきましょう。三条は、三条の一項、「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。」こうなっておりますね。このすべての措置をとる際の費用はどちらが見るようになっていますか。
  179. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定三条に基づきまして、米側が施設、区域内におきましてとります行動の経費は、米側の負担でございます。
  180. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そしたら、この地位協定の合意議事録がありますね、米側と確認し合った、解釈についての。この三条は、その米軍の維持の内容について、つまり米国がとることのできる措置、これを具体的にあげてあります。一項から六項まで、その二項に、「建物又はその他の工作物を移動し、それらに対し変更を加え、定着物を附加し、又は附加物を建てること及び補助施設とともに附加的な建物又はその他の工作物を構築すること」いまの答弁でいくと、米側の負担になるじゃありませんか。そうしたら、岩国は当然米側の負担になるじゃありませんか。これが二十四条の解釈なんですよ。それを、それではできないからわざわざあの先日発表された四十六年六月九日の愛知・ロジャーズ会談、電信文にあるとおり、リベラルな解釈によって拡大解釈をあなた方は約束した。そういうことじゃだめですよ。
  181. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定二十四条第二項によりまして、日本側が経費を負担すべきものを除く経費を第二十四条第一項によりまして米国側が負担するということになっておりまして、その経費負担の内容が、御指摘のように合意議事録の第三条の中でいろいろあがってございますけれども、そういうものを除きまして日本側が施設、区域を新規に提供すること、あるいは追加提供すること、あるいはこれに準ずるものといたしまして建造物、建物等の改築、改造、改修等を行なうことは、地位協定二十四条二項によって日本側の負担である、こういうふうに政府としては考えているわけでございます。
  182. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それがリベラルな解釈ですよ。実際にこの地位協定は詰めが行なわれていない。三十五年のあの安保国会で強行採決されたから。それでこの合意議事録も一緒にして、いままでの地位協定に対する二条、三条、二十四条の確定解釈、あるいは有権解釈とでも申しましょうか、これは国会の審議の中で答弁されたことが有権解釈になっておるのです。その中で、二条一項の施設の提供の中で「現存の設備」とあります。この現存の施設に関する質疑が行なわれておる。これは公明党の伊藤委員であります。このときに当時の山上施設庁長官はどう答えておるかというと、現存の設備というのはいまあるやつだ。したがって、米軍がこれから建てるやつはどうなるのか、米軍が入りました後においていろいろな備品をつくる、設備をつくる、家を建てる、これは、自分でやるのがいまたてまえになっておるということでございます。だから、有権解釈は、新築の場合は米軍が持つというのがいままでの解釈ですよ。だから、そういう解釈があったから、安井委員に御答弁になったとおり、大平大臣は、今度のようなケースは初めてだ、日本が持つケースは初めてだとおっしゃる。いままでだって、既存の昭和十六年からの建物だとおっしゃるから、いままで三十年もあのぜいたくな米軍が、これを補修しないでいままで使ったと思いますか。その補修は全部米軍がやってきたんだ。そして、いまになってその補修をあのリベラルな解釈によって日本側が持たざるを得なくなったんです。だから、このケースは初めてだと大平外務大臣はおっしゃったんです。だから、私はここで要求したい。  まず、決定機関である合同委員会の議を経ていない、この十億は、岩国、三沢の問題は。それが一つ。  さらに三条の合意議事録の解釈について、一から六まで、どの点は日本側が持つ、どの点は米側が持つ、一々区分けした統一見解を出してもらいたい。  それからさらに、全貌がわからないのですから、いわゆる一月二十三日にきめられた基地集約移転の全体計画及び予定必要経費の見積もりを、全体計画を明確に出してください。どうしてかというと、もうすでにこの春には第二次の米軍基地の集約化計画が出されるのです。いまこういう解釈を許したら、これから米軍基地が続く限り、やれ改築、やれ改築で、全部日本が負担しなければならない。これはたいへんな負担になりますよ。関東計画がすでに出ておるじゃありませんか。第二次はこの春に予定される。かつて旧行政協定の二十五条、これは軍備の負担という項目である。世にいうところの防衛分担金であります。そのとき一億五千万ドルという防衛分担金を日本が持つことになっておった。持ってきた。やっと三十五年の改定でこれが廃止されたんです。それなのにこういうことを許すならば、これは六千五百万ドルの約束どころか、日本の米軍基地が続く限り、一億五千万ドルをオーバーする金額になりますよ。数百億になるでしょう、私がちょっと見たところでも。こんなことは絶対に許さない。許せませんよ。だからいま要求した資料を出してください。私はその資料が出るまで保留します。
  183. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 三点御答弁させていただきます。  まず第一点は、合同委員会にかけるかという御質問でございますけれども、今後各施設の整理、統合の関連におきまして、こまかい細目……(楢崎委員「あなたの答弁は時間をつぶすものだ。私は資料を要求したのだから、資料が出るかどうかだけの返事をすればいいのだ」と呼ぶ)合同委員会の下部機関であります施設小委員会におきまして、細目を今後詰めてまいります。  それから第三条の問題につきましては、合意議事録にあがっております項目は、これらのことにつきまして米側は第三条の規定に基づいて措置をとることができるということでございまして、米側が三条に基づいて措置をとります場合には、当然米側の負担でございます。  それから全体の計画につきましては、関東計画につきまして約二百二十億円ということをいっておりますし、岩国、三沢につきまして十億円、そのほかのことにつきましては具体的な計画はまだございません。
  184. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 十億に関する限りは、こんなずさんなことで審議できませんよ。正式の機関を経ないやつが何で審議できるか。だめですよ。出直してください。合同委員会を開いて計画をりっぱにしてみせてください。そうしないと審議はできませんよ。  先ほど私は資料要求をしました。その点については保留をいたしまして、資料が出てきた段階で、おそらく理事会の話し合いでまた機会を与えていただくものとこのように確信をいたします。  それでもう一つ、では最後に聞いておきます。地位協定に関する問題として、非常にその地位協定がリベラルな解釈をやり過ぎる。八日にボルカー財務次官がお見えになりましたね。このボルカー財務次官は、けさの朝日新聞の報ずるところによりますと、軍用機で東京に着いた。そしてアメリカ大使館にヘリコプターで乗りつけた、そして第一公邸に入った。だから一緒に聞いておきます。どういう旅券でボルカー財務次官はお見えになったか、それが一つ。二番目に、東京とありましたが、どこに飛んでこられたのか、それが二番目。三番目に、その東京に着かれたところからヘリコプターでアメリカ大使館に来られたというが、そのヘリコプターはどのような種類であるか。米軍用のヘリコプターであるかどうか、これが三番目。そしてそれはどういう法的な根拠に基づいてそういうことができるのか、四番目。これを御回答いただきたい。
  185. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定第五条の規定によりますと、「合衆国及び合衆国以外の国の船舶及び航空機で、合衆国によって、合衆国のために又は合衆国の管理の下に公の目的で運航されるものは、入港料又は着陸料を課されないで日本国の港又は飛行場に出入することができる。」こういう規定でございます。
  186. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大使館が空港ですか。
  187. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ボルカー財務次官がアメリカの飛行機を使って横田へ来たというふうに承知いたしておりますけれども、横田からどういうヘリコプターに乗って、どこへ着陸したのかということについては、事実関係調査さしていただきたいと思います。
  188. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは重大な問題ですよ。日本の主権にかかわる問題だ。アメリカの飛行機が、あるいは軍用機が、かってに日本のあっちこっちに行けますか。何たることですか。こういうことの事実関係も調べないで、よく外務大臣は——お会いになったのでしょう、その日の夜四十分ほど。キッシンジャーに次ぐ忍者だという表現を新聞ではいわれておりましたが。
  189. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほど私、申し上げましたように、ヘリコプターの点につきましては、事実を確認いたしておりませんけれども、アメリカの大使館に着陸ということは、物理的にむずかしいかと存じます。おそらくあり得る形は、赤坂に、米軍に対しましてヘリコプターの施設ということで、施設、区域を提供いたしております。それを使ったものであろうというふうに推察いたします。
  190. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、重大な問題ですから、事実認定をすぐしてください。
  191. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 事実関係を直ちに調査いたします。
  192. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それまで質問を保留します。(「それでいいじゃないか」と呼ぶ者あり)五条二項と言ったのです。五条二項は、港かそれから飛行場しかないんです。五条二項と言ったんです、根拠を。飛行場ですかとだから聞いておるのです、大使館は。もし飛行場でなかったら根拠はないんだ、これは。かってにやっておる。こんなことは地位協定のリベラルな解釈でも出てこないのです、こういうことは。主権にかかわる問題だからはっきりしてください。
  193. 根本龍太郎

    根本委員長 楢崎君に申し上げます。  申し合わせの時間ははるかに経過しておりまするので、結論をお願いいたします。
  194. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 調査の結果を御報告いたします。  ボルカー財務次官は米国の飛行機で横田の飛行場へ着陸いたしまして、横田と大使館との間は自動車で往復いたしております。
  195. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、私もそれは知りません。ただ、日本の権威ある新聞である朝日新聞がそれを報道しておりますから、事実を確かめたのです。もし間違っておったら、これは重要問題になりますから。  では、先ほど申し上げたとおり保留をして、一応終わります。
  196. 根本龍太郎

    根本委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総括質疑は全部終了しました。  次回は、明十三日午前十時より開会し、一般質疑に入ります。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時十三分散会