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中路委員 いまの環境基準と排出基準の問題を中心に、
一つ二つ御質問したいのです。
総理は施政方針演説の中で、さきの総選挙を通じて、国民の政治に対する不満を痛いほど感じたというお話をされておるわけですが、先ほど御答弁にあった、国の環境基準が骨抜きになったとか実情に合わないものをきめたのではなくて、いまでは最高水準で
考えたんだという御答弁がありましたけれども、私は、時間がありませんから、
一つの例で、大気汚染だけで、私の住んでいる川崎のことでお話ししますと、御存じのように川崎は公害の認定地域、国の指定地域に南部のほうはなっているわけですね。この四十六年度の指定地域になっている地域、四十七年度もそうですが、この二年間の年間の平均濃度を見ますと、たとえば大師だとか、川崎の中央地区、みんな指定地域ですが、すべて〇・〇五という国の基準に到達しているわけですね。人間の健康を守るということで公害防止の法律がきめられている、それに基づいて国の公害の環境基準がきめられているわけですが、一方でその環境基準を達成している地域が、同じ国の公害病認定患者の指定地域になっている、これは全く私は矛盾することだと思うのです。
今週の月曜日のNHKのテレビのニュースのときでも、このことが問題になって、川崎の住民の人
たちが、いまのこの中でもどんなに公害でひどい
状態になっているかということを訴えている。そのときにニュースで、数字で国の環境基準は〇・〇五だということが出て、現にそういうふうに近くなっている。そこでこれだけ苦しんでいるわけですから、私は国の環境基準がいかに実情に合わないか。環境基準に到達しているところで、現に認定患者の指定地域にしているわけです。そこでは現に、一番新しい資料で、ことしの一月三十日現在で千四百四十名の認定患者がいるわけです。市の医師会の調べでもこの十倍近く、約一万二千人の
対象患者がいるだろうといわれている地域なんです。それから見ても、いまの国の公害の環境基準が骨抜きどころか、実情に合わないどころか、全く矛盾しているということは、私ははっきりしていると思う。
もう
一つは、
総理の総量規制を導入するようにというお話がありましたけれども、いまのやられている排出口での規制ですね、排出基準での規制でいいますと、川崎の場合をとってみると、ことしの一月一日からKの値が六・四二の規制ですから、全国では一番規制のきびしい地域です。そこで
考えてみても、四十六年度の一年間に亜硫酸ガスの排出実績が約八万八千トンです。ここでいま国のきめている排出規制でとってみた場合に、実際の全体の許容排出量はどのくらいになるか、九五%を占める四十二工場全部合計しますと十九万トンになるわけですね。現在の実績の二・三倍出してもまだ許容の中に入るわけです、いまの国の規制基準では。いまでさえこれだけ、千四百人の公害病認定患者がいる。それで亜硫酸ガスをさらに倍以上出しても国の基準にはまだ抵触しないんだ、こういう全くちぐはぐな
状態が起きているわけですから、いかに人間の健康を守るということで公害対策をやっているんだといっても、この行政を見ても全く逆に手を縛っている。だから川崎のような地方自治体では独自に公害防止条例をきめて、地域別の総量規制をやっているわけですね。
しかし、いま中島
委員が言ったように、国の法令と地方の条例の場合に、この国の法律に基づいてそのワクでやられるわけですから、法的な体系ではいま問題が残るわけです。だから私は、国の基準をもっときびしくきめるとともに、それを行政指導じゃなくて、やはり拘束力を持った基準としてきめる、それに基づいて総量規制の方式を、国の方式としてもはっきり採用するということの規制をやらなければ、実際にこういう公害多発の地域の行政というものは成り立たないと思うのですね。そういう点で、地域ではもうそういう総量規制をやっているところがいまふえてきているわけですから、公害問題では国のこういう行政が一番おくれているわけですから、公害の特にひどいところでは、この問題を国の方式としても採用するということを、私は、はっきりとここで御答弁をお願いしたい。
もう
一つ補足しますと、さっき、窒素酸化物が技術的にまだ非常に困難だとおっしゃいましたけれども、たとえば、同じ川崎で見ても、川崎で出される燃焼過程からの窒素酸化物は、市の推計で約五万トンから七万トンに達するといわれています。そうしますと、亜硫酸ガスのトン数とほぼ同じぐらい、匹敵するぐらいの窒素酸化物が出ている。しかも、これが光化学スモッグやいろいろな大きな要因になっているといわれているわけですから、やはりこれも規制の
対象にして減少させるということもここではっきりしなければ、大気汚染の問題
一つとってみても、全くこれは規制にならないのですね、いまやっていることは。これは最高水準を集めて
考えた案だと言われますけれども、私は、こういう点では地方自治体のほうがよほど苦労していると思うのです。川崎では独自に、そういうために監視センターもたくさんつくりました。四十七年度の予算で、市の予算の中で、公害対策の予算は八億円使っているのです。これに対して国が幾ら補助を出したか、支出したか。八百万円しか出していないのですよ。一%しか金を出してないのです。いまの法令のワクの中の施設にしか出さないというわけです。硫黄酸化物もそういう調査をやるとすれば、いろいろ調査の施設も必要でしょう。そういう問題について国がもっと
施策をやれば、金も出せば、こういう問題の研究も進むわけですね。こういう点で、いま中島
委員が質問しまして、これから研究していくのだ、努力するのだと言われているわけですけれども、こういう点の不備ないまの公害
関係の法案を、大気汚染だけについて質問しましたけれども、改正をして、不備を直して、また行政指導だけじゃなくて、法的な拘束力を持った
一つの方向として、いま
総理が言われた点をはっきりと公害行政の中で確立していくということを、私はここで言ってもらいたいというように思うのですが、どうですか。