運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-02-05 第71回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月五日(月曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 根本龍太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小澤 太郎君    理事 田澤 吉郎君 理事 湊  徹郎君    理事 阪上安太郎君 理事 辻原 弘市君    理事 谷口善太郎君 理事 山田 太郎君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君       伊能繁次郎君    臼井 莊一君       大野 市郎君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       小平 久雄君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    塚原 俊郎君       灘尾 弘吉君    野田 卯一君       福田  一君    保利  茂君       細田 吉藏君    前田 正男君       松浦周太郎君    松野 頼三君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    大原  亨君       北山 愛郎君    小林  進君       田中 武夫君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    細谷 治嘉君       安井 吉典君    梅田  勝君       柴田 睦夫君    津金 佑近君       中路 雅弘君    岡本 富夫君       渡部 一郎君    安里積千代君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 櫻内 義雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         郵 政 大 臣 久野 忠治君         労 働 大 臣 加藤常太郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       江崎 真澄君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁長官官房         長       田代 一正君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         経済企画庁調査         局長      宮崎  勇君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省情報文化         局長      和田  力君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省児童家庭         局長      穴山 徳夫君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林省農林経済         局長      内村 良英君         農林省構造改善         局長      小沼  勇君         農林省農蚕園芸         局長      伊藤 俊三君         食糧庁長官   中野 和仁君         水産庁長官   荒勝  巖君         通商産業省企業         局長      山下 英明君         通商産業省公害         保安局長    青木 慎三君         通商産業省化学         工業局長    齋藤 太一君         工業技術院長  太田 暢人君         運輸省自動車局         長       小林 正興君         郵政省電波監理         局長      齋藤 義郎君         建設政務次官  松野 幸泰君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉田 泰夫君         建設省住宅局長 沢田 光英君         自治省財政局長 鎌田 要人君        自治省税務局長 佐々木喜久治君         消防庁長官   宮澤  弘君         消防庁次長   山田  滋君  委員外出席者         参  考  人         (日本放送協会         会長)     前田 義徳君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月五日  辞任         補欠選任   中島 武敏君     柴田 睦夫君   不破 哲三君     中路 雅弘君   矢野 絢也君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   柴田 睦夫君     中島 武敏君   中路 雅弘君     梅田  勝君   渡部 一郎君     矢野 絢也君同日  辞任         補欠選任   梅田  勝君     不破 哲三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これより会議を開きます。  昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。安井吉典君。
  3. 安井吉典

    安井委員 もう各論の段階ですから、前置きなしに入りたいと思います。初めに基地自治体の問題について取り上げたいと思います。  総理自衛隊立川移駐に際して、自衛隊が都心や都市近郊に集中することは好ましくない、こう述べたというふうに伝えられておりますが、そうですか。
  4. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そういう話ではなく、都市の中にある基地というものは、基地が設定をせられた当時から社会情勢も非常に変わってきておりますし、それから都市過度集中ということによって基地周辺住民との利害の問題もありますので、これから基地の様態というものを十分見きわめて、基地統合整理というような段階において、こういう実情も十分把握をして対処されなければならないという趣旨の私の考え方を述べたわけでございます。
  5. 安井吉典

    安井委員 現在なお、立川市と那覇市において自衛隊員に対する住民登録が保留されているという事態が起きています。これはいままでちょっと例のない問題であります。私は、これは本質的には平和を守る運動といいますか、そういうようなものから始まって、自衛隊そのもの違憲性はまだ明確にされてないではないかというふうなこともいわれる中で起きた問題だと思います。しかし、直接の原因は、立川並びに沖繩に対する自衛隊強制移駐という問題があると思います。立川の場合でも、立川市の市議会をはじめ多摩地区十八の市議会が全部反対決議をした。さらに都議会も反対決議。これを踏みにじって、夜陰に乗じ、ヘリコプターで文字どおり天下り移駐、このような乱暴な強行策住民自治体の激しい反発を招いたというものではないかと思います。だから、むしろ私は、いま起っている事態は、政府が、あるいは自民党が、人権無視けしからぬというふうに言われるが、こういう強行策をやったことが、こういうふうな事態を招いたものだというふうに思うわけです。  沖繩自衛隊の配備についても同様で、軍隊が全くなかった昔の平和な沖繩昭和十九年そこへ日本軍が駐とんした。だから米軍が上陸をして、激しい沖繩戦の結果、巻き添えになって実に二十万人の県民が死んでいる。日本軍に殺された人もいるわけです。そういうふうなあと、二十七年間の米軍支配が始まるが、それでもなおいまの県民感情の中には、米兵は憎い。しかし、それよりも日本軍のほうが憎い、こういうふうな心が残っています。そこへもってきての強行移駐であります。ですから、私は、同じように県民感情を無視した中で行なわれた移駐の結果、いまのような例のないような事態が起きており、これもやはり政府のいままでのやり方がこういうものを招いたのだ、やはりそういうものの反省がまず必要ではないかと思います。だから、たとえいまの登録の問題が処理できたって、こんなままでやっていたら、必ず新しい別な反対の戦いを誘発するにきまっていますよ。これは私ははっきり申し上げておきたい。  総理は、一月十九日に自衛隊高級幹部会同訓示をされて、新聞の伝えるところによりますと、基地問題が従来以上に複雑かつ困難になってきた。その適切な処理を誤ると、防衛の基盤をそこない、日米間あるいは国民自衛隊の間の協力関係に疎隔を生じかねないという訓示をなさったというふうに伝えられています。これは私どもの観点とはだいぶ違うのだけれども、しかし政府のこれまでの基地問題の扱いについて、その反省から出たことばではないか、そう思うのですが、いかかですか。
  6. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 防衛というものは国民全体の生命財産を守るという基本的な問題でございますから、これはどうしても最小限の防衛力が必要であるということは、動かすことのできない事実でございます。また、基地も提供しなければならないということも、厳然たる事実でございます。また、自衛隊防衛力が存在する限り、国内のいずこかに自衛隊基地が必要であることも事実でございます。しかし、そういう基本的な目標を達成する過程において、先ほども申し述べましたように、基地問題が非常に複雑になってきて、周辺住民との間に利害が対立する問題もあるし、また対立しないにしても、将来いろいろな問題が起こり得る可能性もあるわけであります。大目的を達成するためには、少なくとも周辺住民国民全体の支持と理解が得られるような努力当局は続けなければならぬことは、言うまでもないことでございます。基地問題というのは、いま社会的問題としてはたいへん大きな問題であります。その基地問題から、あなたがいま指摘をされたように、住民登録拒否というような深刻な問題さえも起っておるわけでございますから、これから防衛庁当局十分基地の問題に対しては勉強し、絶えず配慮し、その実をあげられたいという基本的な私の考え方を述べて、協力を求めたわ、けであります。
  7. 安井吉典

    安井委員 立川那覇も同じなんですが、米軍基地返還にあたって、まず自衛隊が先取りしてしまう。そういうところに、つまり、われわれの土地がいままで使われていた、それが戻ってきたら、われわれの手に戻るべきだというのを横取りされたという、そういう気持ちもあると思います。とりわけ、立川市においても那覇市においても、都市計画を立てるにしても、その基地の存在というものがネックになっている。これを痛いほど市民の人はよく知っているわけです。立川だって、駅をおりたらもうすぐ基地なんですからね、あの人口密集地帯に。那覇市などは、ごさごさ人家がかたまっていますが、あの市の全域の三分の一は基地なんですから。そこに人口三十万が住んでいる。  ですから、私はひとつ、これは総理に御提案したいのですが、日本列島改造論者である総理に、まず基地から列島改造を始めていただくべきではないかと思うのです。とにかく列島改造論で地価がどんどん上がっているが、幸いに基地だけは、あそこの値段は上がっていないように思うのですね。公共施設をやるにしても、あれはうまくいきますよ。ですから私は、ちょうどポスト・ベトナムという変換期にも来ていますし、自衛隊基地を含め、本土沖繩の全基地の洗い直しをいまこそやって、総合調整をやって、民間の利用計画平和利用計画を立てる。これは列島改造論の手始めにやっていただくべきことだと思うのですが、いかがですか。
  8. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 列島改造論が必要であるゆえんは、るる申し上げておるとおりでございますから、これは将来展望に立って推進をしていかなければならないと考えます。しかし、先ほど申し上げましたとおり、基地も必要であるということは、いまさら申し上げるまでもないのでございます。これは生命財産国民全体の問題であって、基本的な問題でございます。そういう意味で、安全保障条約を維持していくという考え方、また防衛力必要最小限度のものを整備していかなければならないという考え方に立っておるわけでございます。でありますから、基地に対しては、いつも御答弁を申し上げておりますように、日米の間で話し合いをしながら、そして基地整理統合を進めておる。この間の会議でも、十カ所の基地返還をされるということが、現に実行に移されつつあるわけでございます。この後も、基地の問題に対しては、いろいろな角度から検討し、基地整理統合、可能な限りの整理統合は、ひとつ協議をしてまいりたい、こう考えます。  なお、周辺住民との間の都市計画その他の問題に対して御提議がありましたが、こういう問題も、返ってくるというめどがついているものに対しては、都市計画の一環として整備計画を立てられるということは、しごく当然なことでございまして、基地の問題ということに対しては、社会的に国民理解が得られるように十分努力をしてまいりたいと考えます。
  9. 安井吉典

    安井委員 立川市は、米軍基地返還後のあと地利用計画もしっかりできて、道路計画もできている。そういうふうな状況にもあるようでありますが、いまおしまいにおっしゃったように、自治体が、米軍やあるいは自衛隊基地についてそれを都市計画区域に入れ、市民のための施設計画を進めようとするようなときに、政府調査測量等に積極的に御協力をなさるというふうに受けとめてよろしいわけですね。
  10. 増原恵吉

    増原国務大臣 基地に対する自治体等の必要な調査については、この立ち入り権のないものにつきましても、十分御協力をして支障のないようにいたす所存でございます。
  11. 安井吉典

    安井委員 それはたとえば建築基準法だとか消防法だとか、その他自治体が現地に立ち入って調査なり測量なりすべきようないろいろなケースがあると思います。それを全部含めて積極的な御協力を言明されたものだ、こういうふうに受けとめていいわけですね。
  12. 長坂強

    長坂政府委員 御質問の建築基準法建築主事による調査、そのほか住民登録関係調査とか、そういう地方自治団体といたしまして必要な事項につきましては、本土におきましても沖繩におきましても、私どもは所要の御便宜を、自衛隊施設につきましてはもちろん、自衛隊米軍との共同施設につきましても、米軍話し合いの上で便宜をお計らいするようにいたしております。
  13. 安井吉典

    安井委員 とにかく自治体の中のことは、どこにどんな問題があるかということまで全部知っていなければ自治体の運営というのはできないわけですから、いつでも立ち入りが、調査ができるように——当然そうなっているものもあります。自衛隊なんかそうでしょうけれども米軍基地やあるいは共同使用基地などはなかなかすぐにはいかないものがありますから、それにはぜひ積極的に御協力政府としてやっていただくというふうに理解をするわけであります。  ただ、革新市長会二階堂官房長官に対して要望書を出した中に、安保条約地位協定の抜本的な再検討を要望するという一項目がございます。これに対する官房長官の返事は、諸外国の例に徴しても特に不都合があるとは考えないというふうな答えで、はねつけているわけであります。  しかし、ヨーロッパではNATO西独との間の西独駐留NATO軍地位に関する協定を補足する協定、これでは、基地に責任のある軍司令官等は、ドイツ代表及びそれによって指名された専門家に、基地への立ち入りを含めて、ドイツの権益を擁護するようなあらゆる相互の便宜を与えなければならないと、はっきり協定の中に書き込んでいるわけです。あるいはこの間横浜で起きた戦車通行の問題がございました。そういうような問題でも、このNATOの場合には、ドイツ道交法から除外される場合は、軍事上緊急の場合に限り公共の安全と秩序に十分な考慮を払うことを条件として許可すると、軍事上緊要な場合でもこういうふうな条件をつけてやっと許可をする。それ以外はもう道交法そのままだ、こういう姿勢が明確に書かれているわけです。トラブルが起きたら道路法の政令を改正してベトナムに送り込む、協力をするというふうな政府とはちょっと違うわけであります。だから私は、やはり地位協定の問題も、もう少しそのヨーロッパのあり方を見習うような形でアメリカ話し合いを進めるべきではないかと思うわけでありますが、この点どうでしょう。これは外務大臣ですか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 革新市長会の御主張に対しましては、先般政府のほうで御回答を申し上げてございます。すなわち、地位協定につきましては、諸外国の例に徴しましても特に不都合があるとは考えていないという考え方でございます。いま御指摘NATOの例でございますけれども、なるほどボン協定の五十三条に関する議定書第六項には、施設への立ち入りを含む援助が派遣国軍隊からドイツ当局に与えられるとございますけれども、同項は、さらにただし書きにおきまして「いかなる場合にも、軍事上の安全を考慮することを条件とする。」と規定されております。したがって、施設への立ち入りは、わが国の場合と実質的には同様、実体的には同様だと私ども考えておるわけでございまして、現在の地位協定が特に不都合であるというようには考えておりません。ただ問題は、こういう地位協定にいたしましても、その運用を適正に、適実にやってまいるということにつきましては鋭意努力してまいりたいと考えています。
  15. 安井吉典

    安井委員 これはちょっと理解の相違もあると思いますね。やはり沖繩の場合も、実に長い間の米軍支配の中にあったし、日本本土だって、安保体制そのものが見直しを迫られているというふうなそういう段階ですから、安保条約なり地位協定をいつまでもそのまま続けてほしいという意味で私は言うんじゃないですが、こういう転機に来かかったおりなんですから、安保神体論というふうなことばかりじゃなしに、もう少し、さわらぬ神ということじゃなしに、中に入って問題点を洗い直すという態度をお願いをしておきたいわけであります。  立川の場合に、一月二十三日の日米安保協議会で、三年間に立川基地全面返還がきまったわけですね。四十六年六月の国有財産審議会で、全面返還時点白紙還元という約束がなされたというふうに聞いています。地元のほうでは、日米返還を合意した時点白紙になるのだと、そしてまた立川への自衛隊移駐というのは暫定的なものだと地元政府は説明されている。そういうことになれば、今回の決定で直ちに自衛隊立川基地を使う根拠がなくなったのではないかと、こういうふうな主張をしているようでありますが、どうですか。
  16. 増原恵吉

    増原国務大臣 私どもではそういうふうには解釈をいたしておりません。現実に返還になりました際に、いわゆる白紙還元、あらためて協議をいたすというふうにこの問題は解釈し、取り扱いをいたしておる次第でございます。
  17. 安井吉典

    安井委員 どうもその辺は、いままでのお話し合いは大体スムーズにまいりましたけれども、ここでだいぶ大きく食い違ってしまいましたが、しかし、いずれにしても市民の強い要望ですから、すみやかに市民に戻してやる、そういう態度で今後とも臨んでいただくようにひとつお願いしておきます。  次に、沖繩のほうでありますが、私もついこの間沖繩に行ってまいりました。沖繩状況は、一口に言って、以前と変わったことは、パスポートが要らなくなったことと円が通用すること、それから中央からのお役人と商社の人たちがものすごくふえているということ、こういうことではないかと思います。しかし、米軍支配基地はほとんど変わってないし、でんと相変わらず大きなおしりを据えている、大小のトラブルもそっくりそのまま。その上、本土並みになったのは、インフレ、物価高、それから土地投機です。あの小さな島の中で今度は臨時国体とそれから海洋博が行なわれる。そのための膨大な社会資本投資が行なわれつつあり、これからも行なわれていく。物価と賃金のおそろしい値上がりが起きている。つまり日本列島全体的な状況沖繩ではもっと深刻にあらわれているということであります。土地の問題も、列島改造論のあふりもあって、海洋博の行なわれる本部では五〇%の土地はもう買い占められた。先島のあの景色のいいところの海岸線は、もうほとんどと言ってもいいですね、海岸線だけぐるっと全部買い占められています。私は、こういうふうな状況の中で、沖繩の問題は終わったというふうな理解に立っているということが大きな間違いで、やはりもっともっとあたたかな強力な取り組みを政府はしていただかなければならぬ、こう思って戻りました。  きょうは時間がありませんので、一々の問題はそれぞれ別な機会に譲りますが、総理にまとめて伺うとすれば、一つはやはり、先ほども御答弁がございましたけれども米軍基地縮小です。沖繩開発からいっても、都市計画からいっても、農村生活からいっても、基地縮小がなければもうどうにもならぬ。たとえば、北谷村で聞いた話ですが、米軍基地一隅に赤や青や黄色の旗がひらひら囲みの中でひるがえっている。例の中古車販売所です。基地一隅にそんなものまで置かれている。県民の目から見れば、強制使用法土地は取り上げられて、それが基地だといっているが、そこで中古車販売所までやっているというふうな事態で、これでいいのか、こんなものなら返してもらっていいのじゃないか一そういう気持ちは当然起きるわけであります。やはり政府は具体的な基地縮小計画を一日も早く示すべきだと思います。この間の十基地ぐらいじゃどうしようもないし、あの返還時点の目玉である那覇空港がまだ返らぬじゃないですか。まだ二年かかるわけでしょう、完全に戻ってくるまでには。具体的な縮小計画を示すべきであるということと、それからもう一つは、長い占領下の後遺症というものが深刻に残っている。ですから、長い間の投資不足の解消のためにも、思い切った社会資本の投入等が必要だと思う。基地縮小と、沖繩について今後強力にめんどうを見るということ、この二つについて総理のお考えを承っておきたいと思います。
  18. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 沖繩基地に対しましては、本土基地と同様に、これから日米間で話し合いをしながら可能な限り基地整理統合等をはかっていくべきであるという考え方は、いままで申し述べておるとおりでございます。それから、この間その一部として関東地区及び那覇周辺の特に要望の強いところの返還ということに合意を見たわけでございます。また、那覇空港につきましては、P3の嘉手納への移転等を含めて、いま実行をしつつあるわけでございます。いままで長いこと異民族の統治下にあったという沖繩県民感情はよく理解できるところでございます。それが沖繩本土復帰が行なわれて、今度は本土と同じように、沖繩基地はいままでの基地とは違うのだということにすぐ感情的に切りかえなさいといっても、それはなかなかむずかしいという事実も私は理解できるわけでございますが、先ほど述べたとおり、日米安全保障条約の必要性、また基地も必要である、そして基地の不合理性があるならばそれは是正してまいろうということでございますので、政府努力を続けますが、沖繩県民各位の理解をいただきたいと、こう考えております。  また、沖繩に対する経済復興や民生安定その他に対する社会資本の拡大は、本部における沖繩海洋博覧会、世界で最初の海洋博覧会を沖繩で開催をしようということ、これに付随をして、沖繩の経済復興や民生安定に資する社会資本の投下は大型に行なおうということで、現に予算を御審議いただいておるわけでございます。まあそういう意味で、沖繩の長い労苦に報いなければならないと、こういう基本的な姿勢でございます。
  19. 安井吉典

    安井委員 次に、自衛隊の編成の問題について疑問を生じてまいりましたので、これについて伺いたいと思います。特にそれは沖繩自衛隊配備状況を見ての印象から強いわけでありますが、沖繩配備の自衛隊はいかなる法的根拠によってなされたのか、それからまず伺います。
  20. 増原恵吉

    増原国務大臣 沖繩が復帰をしました以上、自衛隊によって沖繩を自衛、防衛をするという任務ができるわけでございまして、自衛隊法に定めるところに従いまして自衛隊沖繩における防衛に当たるわけでございます。しかるところ、防衛二法によりまして沖繩に配備すべき予定のものとして御審議を願いました法案は御決定を得ることができなかったわけでございまするが、そういうものとしての予算は成立をいたしておりまするので、予算の範囲内における防衛庁長官の権限としての本土内の人員のやりくりによりまして、必要限度の防衛のための自衛隊員沖繩に配備をいたした、こういう措置をとらしていただいたわけでございます。
  21. 安井吉典

    安井委員 沖繩の部隊は、頭に全部、臨時ということばがかぶさっているようです。陸上は臨時第一混成群、海のほうは臨時沖繩基地派遣隊、臨時沖繩航空隊、空は臨時八三航空隊、臨時沖繩警戒管制隊、臨時那覇基地隊、臨時那覇救難隊、これは臨時ということで、これはいつまでなんですか。臨時ですぐ帰るなら、登録などしなくてもいいんじゃないですか。
  22. 増原恵吉

    増原国務大臣 ただいま申し上げましたように、四十七年度中における防衛二法において定員の審議が未了に終わりましたために、復帰しました沖繩の自衛は自衛隊が担当すべきものとして、従来ありまする自衛隊員防衛庁長官の権限に基づいてやりくりをしてやったために、臨時という名前をつけました。今度提出をいたしまする四十八年度の法案におきましては、それぞれそうした問題を臨時でなくなりまするようにお願いしておるわけでございまして、どうぞ御協賛をいただくようにお願いをする次第でございます。
  23. 安井吉典

    安井委員 編成の問題も私、疑義があるのですが、その前にちょっと伺っておきたいのは階級編成ですね。資料をもらいましたら、たとえば陸は九百七十六名行っているが、佐が四十一、尉九十一、准尉七、曹五百一、士は三百三十六。兵隊さんは三分の一で、下士官以上で三分の二ですね。海も空もみんなそうなんですよ。全国のほかの構成を見たら、そうなっていませんね。沖繩だけがどうして幹部候補生がものすごく大きい頭でっかちなのか。いま言ったのは陸です。空のほうはもちろんそうなっていますが、海もそうです。陸でさえこうなっているんですね。この頭でっかちであるという理由はどういうことですか。
  24. 増原恵吉

    増原国務大臣 防衛局長から御説明させたいと思います。
  25. 久保卓也

    ○久保政府委員 本土の部隊でありましても、陸の部隊は普通科の部隊が多い関係上、海、空に比、べますと士の階級が多い。海、空は曹あるいは幹部の数字が多いということになっております。  ところで、沖繩の場合には、陸海空を通じまして、本土の部隊よりもいわば専門的な部隊、技術的な部隊が多うございます。たとえば陸の場合、一千名をとりましても、その中の普通科、つまり士の多い部隊である普通科の中隊はわずか二個隊、あと支援整備隊あるいは施設の部隊というふうになっております。また、海にしましても空にしましてもそうでありますが、特に空の場合には、ナイキ、レーダーサイトあるいは航空の部隊といったように、非常に技術者集団的な性格が多い。これは沖繩に部隊を配備する場合に、本土よりもなるべく規模をしぼって、必要な機能を最小限に置こうという関係上、幹部及び曹の比率が本土よりも多くなっております。
  26. 安井吉典

    安井委員 沖繩派遣軍、どうも何か戦時派遣の軍隊で、兵隊さんを送ればいつでも猛烈な大きさにふくれ上がる可能性は残しているような、そういう印象を実は受けるのです。  この議論はもう少しあとにしまして、その編成の問題ですね。昨年防衛庁設置法改正法案が流れました。その中に政府は、沖繩に送る第一混成団、沖繩航空隊、南西航空混成団等を内訳にはっきり示しながら定員増加を国会に要求をしてきたわけです。しかし、それは流れてしまった、廃案になってしまった。つまり私どもは、それによって沖繩配備の重要な根拠までがくずれてしまったと思って行ってみたら、この第一混成団に当たる千人の人はもうすでに行って、きちっと駐とんしているわけですよ。住民登録を待っている。海のほうも、去年の提案は百五十八人だったが、すでに三百八十八人が行っている。空のほうは、去年の廃案になった提案のときは千二百四十六人だったが、もうすでに千二百九十九人が配置についている。みんな行っているのですよ。一体何の根拠で、国会がきめもしない人間なり組織なりが国会に無関係に沖繩に行ってしまったのか。住民登録の問題も人権無視だとおっしゃる人もいるが、しかし、実際は向こうへ行っているのは足のないやみ部隊じゃないですか。まぼろしの部隊かもしれませんね。その点どうですか。
  27. 増原恵吉

    増原国務大臣 先ほど申し上げましたように、沖繩に配備すべきものの定員としての法案は成立をしなかったのでございまするが、沖繩が復帰しました以上、沖繩自衛隊で自衛、防衛するという任務は自衛隊にはできてきたわけでございまするので、自衛隊としてありまする国内のもののやりくりをいたしまして、これによって最小限度のものの配備をいたした。このやりくりをいたすことは防衛庁長官の権限に認められておるということでございます。
  28. 安井吉典

    安井委員 そうすると、向こうへ行っている部隊の編成の根拠はどこにあるわけですか。だれが編成したのですか。
  29. 久保卓也

    ○久保政府委員 自衛隊法第二十三条によりまして、法律に書いてある部隊以外のものについては政令にゆだねられております。そして自衛隊法施行令第三十二条によりまして、施行令に書かれてあるもの以外については長官に委任されております。そこで、沖繩に派遣されておりまする現在の部隊については、いまの政令第三十二条の委任によりまして長官の権限に基づいて編成をいたしております。
  30. 安井吉典

    安井委員 これはもう私は最後に結論的に言おうと思ったんだが、いまの仕組みは法律できちっときめてあるはずだが、政令にゆだねられている、その政令でまた今度は総理府令による、さらに訓令と、みんな底抜けなんですよ。国会の議決というものは何にもならないのですよ。そういうばかげた仕組みになっている。それを利用したというのか。そういうふうな形でおやりになったということをいまはしなくもおっしゃったわけですね。そのとおりですか、防衛庁長官
  31. 増原恵吉

    増原国務大臣 御承知のとおり、基本としての定員は明確にこの国会の御承認を得、防衛二法によってきまるわけでございます。重要な組織は法律によってきまる。次の段階のものは政令によってきまる。その次の段階のものを防衛庁長官の定めるところによるというふうなことになっておるのでありまして、沖繩の場合は、新しく本土復帰という状態になりましたために、そうして沖繩に配備すべきものの定員の御協賛が得られなかったということで、従来ありまする法律規則の範囲内で、長官に許された権限の範囲内で、臨時の部隊を最小限配備いたした、このように御理解をいただきたいと思うのでございます。
  32. 安井吉典

    安井委員 今度の国会に政府防衛庁設置法の改正の中に南西航空混成団を法律で定めるという、別表に——本文の中にもありますけれども、南西航空混成団なるものを今度の国会に提案しておりますね、法律の中には書いてありますね。去年は提案してなかったが、今度は提案していますよ。しかし、提案しているが、この部隊はもう行っているのですよ。この国会に出てくる法案の中に、しかもわれわれまだ審議もしていませんよ。内閣委員会はこれが終わってからでなければ開かれぬでしょう。その法案の中に、南西航空混成団なるものはやっと国会でオーソライズされるわけです。しかし、実態は臨時の名前で向こうへ行っているのですよ。去年防衛庁は、移駐がまだきまらないうちに四次防先取りにも関連して物を送りましたよね。国会に指摘されてあわてて戻した。これは物どころじゃないでしょう、部隊ですからね。部隊の先取りというのは私は重大な問題だと思う。国会がきめるというのは、シビリアンコントロールの最高の機関は私は国会だと思う。その国会がきめないうちに向こうへ先取りして行ってしまっている。どうですか、これはやはりおかしくないですか。戻したらどうですか。総理、どうですか。
  33. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 陸において申し上げると、師団の設置等は法律によらなければならないということでございます。また、連隊等の問題は政令にゆだねられております。その他の問題に対して、もちろん法律事項であるような問題ではないわけでありますが、防衛庁長官の決定できるものはいわゆる政令事項よりも小さなものでなければならぬし、過去に法律できめられた範囲内の人員であり、防衛庁長官にゆだねられておる法律的根拠をもってなさなければならぬことは言うをまちません。  そういう意味で、できるならば将来沖繩で編成をしなければならないと政府が考えておる南西航空団のようなものに対しては、法律をもって御審議をいただいておるわけでございますし、その他政令にゆだねられておりますものは、これは閣議で決定をいたしておるわけでございます。それよりも小さなもの、すなわち過去に法律できめられておる範囲内のもの、その人員の範囲内において国内に移動できるようなものは、文民である防衛庁長官の権限においてなされるものでありまして、法律違反ということは全くないわけでございます。
  34. 安井吉典

    安井委員 もう少し問題を整理してみますと、これは去年の防衛庁設置法の改正法案のときの防衛庁からの説明書です。この説明書の中に、陸、海はおいて空だけにしますか、南西航空混成団等の沖繩配備に伴う増千二百四十六として御審議ください、法律の定員は空の総計で出ておりますけれども、その内訳はこうなんですと、はっきりお出しになった。ところが、これは通らなかった。総理はいま、はしなくも小さな部隊は長官限りでできると言ったが、なるほど小さな部隊ですよ。空で送られたのは臨時八三航空隊、これも長官限りでつくった。臨時沖繩警戒管制隊、臨時那覇基地隊、臨時那覇救援隊等小さな部隊をつくって送った。なるほどそれはできたのかもしれません。しかし、今度はもう一度あらためて防衛庁設置法をお出しになっている。その中には、またその南西航空団等の配備の定員が出て、それから今度はもう一本、自衛隊法の一部改正の中には、南西航空混成団はきちっと、これは師団ですよ、総理おっしゃられる師団だということで出てきた。なに、ばらばらで送った空の三つの部隊を合計すればそれになるわけですよ。人だけ送って一応ばらばらで送ったようなことにして、もう行っちゃってるじゃないですか。ただ国会に、師団にいたしますよということを今度の法律で出してきている、あとから。追認ですよ、それは。こういうふうな形で、文民統制などというのは、私はもうできる道理はないと思います。  これは、久保防衛局長もおられるけれども、久保・カーチス協定でしょう。久保・カーチス協定政府は手足を縛られてしまった。あの久保・カーチス協定によって、沖繩への配備のこまかいことまでみんなきめてしまった。これは条約レベルのものじゃないというふうにおっしゃったけれども、実際は条約と同じじゃないですか。いまの自衛隊法や防衛庁設置法というふうな国内法は、久保・カーチス協定のそのままに縛られてしまって、その範囲内で動いているということにすぎないじゃないですか。去年の沖繩協定からの問題のいろんな矛盾がいまになってこうやってあらわれていると思うのですよ。  やはり私はこれは、防衛庁設置法の改正法案がいま出ていますからね、あるいは自衛隊法の改正法案が出ていますよ、内閣委員会で。これはもう法律上の問題としてやらなければいかぬが、しかし、私はこれは予算にも関係があると思うから、ここで取り上げているわけでありますけれども、(「法案が通らなかったら永遠に臨時で置くのか」と呼ぶ者あり)いまうしろのほうから発言があるとおり、今度の国会だって法案が通るか通らぬかわかりませんよ、これは。いままで防衛庁設置法が一回で通ったためしがないんだから。あとどうなりますかね、これは。  ですから、これはやはり私は許すことのできない問題だということをひとつ指摘しておいて、これはもうあとの法律案審議等の場合に譲りたいと思いますが、ただ一つ、国家行政組織法と関連法の整理法案、これはいままで政府が毎年お出しになっているが、衆議院内閣委員会でいつも廃案で葬り去られているわけでありますが、この中に、自衛隊法を改正して、方面隊や師団も法律事項からはずして政令に移すという条項があるわけです。私はいまシビリアンコントロール、国会でもシビリアンコントロールを問題にしておりますけれども、それよりもっとひどいわけですよね。法律からはずして政令に移すというんですから。ですから、何回お出しになっても通らなかった。しかし、今度の国会では、国会への御提案は政府はなさらないようだというふうに聞いているわけでありますが、これは防衛庁ですか、行政管理庁長官ですか、ひとつお答えください。
  35. 福田赳夫

    福田国務大臣 国家行政組織法の改正案は今国会に提案するつもりでございます。ただ、従来これと関連して出しておりました関連法律の整理に関する法律案、これは今回は提案をしない、そういうふうな考えでございます。したがいまして、いま御指摘自衛隊の関連の事項はこの関係では起こってこない、かように御了承願います。
  36. 安井吉典

    安井委員 この問題は、ですから、あとに残します。  次に、この委員会でずっとこの間うちから問題になっております平和時の防衛力に関する問題であります。いつも大ぜいの諸君からいろんな角度からお触れになっていますから、私はいままでお触れになったようなことはきょうは重複を避けます。そしていままでお触れになってないような点に論議を進めていきたいと思うのでありますが、実は昨年の第七十国会の予算委員会で、十一月の七日、私は増原長官に、四次防をきめてから防衛力の限界を示すというのは順序があべこべじゃないか、防衛力の限界になるものが先に出て、それから四次防、というのが筋ではないのか、こういうことでお尋ねをしたら、長官は御答弁をされたわけでありますが、さあ、その御答弁は、私もきょう速記録を持っているつもりですが、あの速記録の約一ページにわたる長々とした御答弁がありました。その中身は何だかよくわからないのですが、しかし、最後に「数量で限界をお示しをいたしたい」こういう一言だけはきちっと残っているわけであります。だから私は、平和時の防衛力の限界というようなものが、今度何らかの形で示されるものだと思っていたわけであります、政府の見解として。  ところが、二月一日、北山委員の質問に答える形で増原長官が発言をされた。その要旨のプリントがここにあります。皆さんこれをいただきました。そしてここでも、防衛力の限界はどうだ。これは防衛力の限界に関する書類だと思って、みんな発言にはそう言っておりますよ。新聞もテレビも見出しとしては、「防衛力の限界」と、こうなっておりますけれども、念のためにこれを読み返してみたら、限界ということばは一つもないのです、これは。初めから終わりまで限界ということばは一つもありません。平和時の防衛力はこうこうでなければならぬということは書いてあります。それから一番最後に、「防衛力整備のめどとしては」という、「めど」ということばが最後にこう出てきているわけであります。だから、これは限界じゃないですね、見解ですね。限界ではなしに、濁りのないほうの見解ですよ。それだけのものではないかと思うのですが、そこでひとつ長官に伺いたいのは、その限界というのとめどというのはどう違うですか。
  37. 増原恵吉

    増原国務大臣 先般のお答えの際にも申し上げましたと思うのでございまするが、平和時の防衛力の限界ということばで総理から研究をしてみろという指示がありまして、防衛庁として勉強を始めたわけでございます。そうして今度お答えをしまする際に、限界ということばを使わないで、あるいはめどというふうなことばを使っておりまするが、これは私どもとしては、防衛力の限界というのは、憲法上の防衛力の限界ということばがいままでもしばしば使われておりまして、限界ということばは、やはり日本においては、日本のいわゆる平和憲法の限界というふうなことばに使うことが一番いいのではないか。平和時における防衛力の問題につきましては、私どもはめどと申しましてもこれはいわゆる限界の意味でございまして、何かふわふわしたものをお示しするというつもりはございません。  ただ、平和時ということばをつけなければなりませんので、平和時の意味を申し上げる中で、何と申しますか、いろいろの前提が出てきておるということで、いま安井委員の仰せになったような御疑問が出たと思いまするが、めどということばは、読みかえれば限界というふうにお読みいただいて差しつかえない、それはしかし、平和時という条件をかぶっておる、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  38. 安井吉典

    安井委員 上限という意味ですか。
  39. 増原恵吉

    増原国務大臣 ちょっと、ジョウゲンという意味がよくわかりません。(安井委員「上に限る」と呼ぶ)上限ということばは私どもあまり使っておりませんが、これは限界という意はいわゆる上限ではないかと思いますが、そういう意味に御理解をいただいて差しつかえないもので、それに平和時という条件が頭にかぶっておる、こういうことでございます。
  40. 安井吉典

    安井委員 まあ、ひとつ伺っておきましょう。  ただ、この全体の書き方からいえば、平和時というものが大体非常に流動的なものだというふうに印象づけられています、この中は。国際情勢によるというのですから、その国際情勢は流動的だとまたあとで書いてあるわけですから。だから、その条件とおっしゃるけれども、その条件そのものは非常に流動的だということに言ってしまえばなるわけですよ。そういう中で限界とおっしゃったって、結局、最終的には条件は変わるのだし、この条件のときはそうだったが、条件がちょっと変わったから、もう限界はさらに下がることはあまりなさそうですね、おそらく上がることばかりであって。だから上限ではなしに、これは下限になってしまって、これだけは増強するのですよというそういう意思に最終的になってしまうおそれがあるという点だけひとつ指摘しておきます。  それからまた量の問題は、一応書いてあるのに、これはあとで触れることにしても、質の問題が全く触れられてないのは意味ないじゃないか。質でどうでもなるじゃないか。いまだって飛行機の数はどんどん減っているのですよ。防衛計画が年度を経るに従って減っているわけですよ。減っていても文句が出ないのは、質がものすごく向上しているということで、量を質でカバーしているという、そういう現状があるわけですよ。だからほんとうのことをいうと、量だけではなしに、質の問題までそれこそ限界を明示することができるかどうかわかりませんが、そういうところまでいかなければ意味がないということも、これもこの間うち指摘がありましたから、触れません。  私はきょうこの中で二点だけ触れておきたいと思いますのは、この見解の中の「「平和時」の防衛力の果たす意義については、まず、日米安保体制とあいまって、国際関係の安定に寄与するとともに、」ということばがどうも引っかかるわけです。これはどうも憲法第九条第二項のわが国が保持してはいけないとしている戦力、これについて政府はいままでいろいろ見解を出しておられましたが、その見解をどうも逸脱するものではないか。これは昨年、参議院の予算委員会でわが党の上田哲議員が質問をして、それに対して政府は戦力についての統一見解を出しています、その統一見解をも大きく越えるものではないかというふうな感じがする。さらにまた、自衛隊法の三条の、自衛隊の任務規定がありますが、「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務と」する、こうある規定ですね。専守防衛ということばを防衛庁はよくお使いになるわけでありますが、そういうところからこれはどうも逸脱するというふうな感じを受けるわけでありますが、その点いかがですか、長官。
  41. 増原恵吉

    増原国務大臣 防衛庁の立場としてのお答えを申し上げますると、このような平和時の防衛力、自衛力が整備をされますることは、申し上げたように、一面においては日米安保体制が有効に維持されるということにもなる。日米安保体制が有効に維持されるということは、平和時の防衛力のいわゆる限界、めどの一つの前提にもなっておるわけでございます。  そういうことと相関連しまして、今度の国会で総理及び外務大臣からも申されておりますように、現在の国際の緊張が緩和され、好ましい方向に向かっておるのは、それぞれの平和、安全維持のワク組みがりっぱに——りっぱにといいますか、維持されておるということにかかっておる。日米安保体制も、そういうワク組みの一つであるというふうに御説明になっておるわけでございまして、わが自衛隊が相応の自衛力の整備をいたし、日米安保条約が有効に維持されるというふうなことは、ひいてわが国の平和の維持に貢献するという、この間接的な意味を申したわけでございまして、いま安井委員のお述べになりました自衛隊法に規定しておりまする「自衛隊の任務」、わが国の安全と独立、平和を守り、直接及び間接の侵略に対してわが国を防衛するという意味は少しも逸脱をいたしておるつもりはないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  42. 安井吉典

    安井委員 だけれども、その憲法の九条の規定もありますね。国際紛争にわれわれは武力ではかかわらないということは、はっきり明示があるでしょう、憲法九条に。そして、ここに国際関係の安定に寄与する、日本自衛隊が国際関係の安定に寄与するという規定、これはおかしいじゃないですか。憲法のどこにこれが読み取れますか。いまお読みになった自衛隊法の「任務」の中に、国際関係の安定に寄与する、こういう意味合いがどこにも読み取れないような気が私はするわけです。外国軍隊なら別ですよ。外国軍隊は第九条なんというものはないわけですから。こっちのほうは自衛力なんですからね。憲法の中の前文や九条、そのどこをつついてみたって、国際関係の安定に寄与する自衛隊、そういうようなものは考えられないじゃないですか。防衛庁のお立場では、こういうのはおかしいと思うのですよ。どうですか。あるいは総理どうですか。
  43. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本防衛力が憲法で限定をする範囲内でなければならない、それはもう当然言うをまちません。しかも、最小限の国民の負担でつくらるべきものであるということもまた論をまたないところでございます。また、憲法の明定するとおり、国際紛争を武力で解決しないということは、これはもう当然のことでございます。  私が防衛庁当局から説明をいただいたときのこの条文に対する見解は、このような状態において自衛力を整備をしていけば、日本の現時点における状態、俗に考える平和時は維持せられます、日本が現状のように平和な状態が維持できれば、すなわち周辺国際環境に好影響を与え、すなわち国際的安全にも間接的に寄与する、こういう考え方でこれを挿入したのでございます、ということでございまして、憲法でいう基本的原則の範囲内であるということにはいささかも間違いはありません。
  44. 安井吉典

    安井委員 これは、この間総理大臣は、参議院の占部君の本会議質問に対して、日本の自衛力は安保とバランスといいますか、安保が変われば自衛力も変わるというふうな御答弁をされて、あとで憲法がというふうに言い直されたが、あれも新しい見解だと思ったが、私は、国際関係の安定に寄与する自衛隊というのも、これも新しい見解じゃないかと思う。これは重大な問題だと思いますよ。きょうこれは、結論を出す時期じゃなしに、最後ば委員長のところに預かりになっているそうですから、私は問題点だけ指摘しておきます。  もう一つ、この数字の検討の中から気づくわけでありますが、海上自衛隊を四次防よりも大幅に増強するような数字が示されています。特にこの間も防衛局長から御説明があったようでありますが、対潜掃討部隊を発足させるのですか。
  45. 久保卓也

    ○久保政府委員 対潜掃討部隊と申しまするよりも、護衛隊群、現在四ありまするけれども、これにあと一隊を加えるべきかどうかということが、四ないし五群という意味合いになっております。そこでこの一群は、まだ発足させるということに決定はもちろんいたしておりません。今後の検討問題であるというふうに考えております。
  46. 安井吉典

    安井委員 この対潜掃討部隊、ハンターキラーというのは、ずいぶん問題のある部隊のようですね。平和時でもわが国の周辺海域、遠くは千海里も行くという、そういうような遊よくをして、アメリカの第七艦隊やあるいは日本の商船を護衛をする、ヘリ空母等も出動させるという、こういうふうな考え方の中から、例のマラッカ海峡防衛論という乱暴なのがありましたけれども、そういうようなものとも結びつくおそれもある。つまり、こういう危険な外洋進出部隊を編成するというふうなことがこの中にあるのなら、これはまさにいま議論していた、日本が持ってはいけない戦力ではないかと思います。  もう一度伺いますが、このハンターキラーは、いまの段階では考えてないということですね。
  47. 久保卓也

    ○久保政府委員 ハンターキラーの部隊という構想は従来ございます。そうしてまたハンターキラーとしての性格にふさわしいような編成を考えた時期もございます。しかし、現在私どもが第五群目として検討の対象になるものは、特殊な部隊ではありませんで、内航の二群、外航の二群と同じ編成にしたいというふうに考えております。したがいまして、特殊な対潜掃討部隊というふうな発想は適当ではないというふうに私どもは考えております。
  48. 安井吉典

    安井委員 もう一度伺いますが、平和時のこれは限界だというふうに長官おっしゃったけれども、この平和時の限界の中にはハンターキラーは入らない、つくらない、これはお約束できますね。
  49. 久保卓也

    ○久保政府委員 平和時の防衛力の、さっき上限とおっしゃいましたが、そのめどの中に四ないし五群、五群までは入る可能性はございます。しかし、それを特殊な編成の部隊としてのハンターキラー部隊という構想は持たないことにしたいと思っております。
  50. 安井吉典

    安井委員 その点は、おつくりにならないというお約束はされたようでありますけれども、しかし、全体的に四次防を上回る戦力内容というのは、これはもうどんなことがあっても、私どもこれは全野党が四次防は反対だったんですから、それをさらにオーバーするようなこういう危険な内容について、私どもは了解はできないと思います。  あとの段階で、楢崎委員からさらにもっと突っ込んだお話がありますから、私は問題点への追及はもう一つだけにしておきたいと思います。  このプリントに関連して一番不可解なのは、私はやはりどうも田中総理大臣の態度ではないかと思います。政府態度もそうです。この問題について一体どういうふうに政府としてお考えになっているのか、さっぱりわからぬ。防衛庁長官に伺いますが、これをおつくりになるときに各省に御相談されてますか。
  51. 増原恵吉

    増原国務大臣 これは総理大臣から防衛庁に、研究をしてみろという御指示に基づいてやりましたので、防衛庁内で研究をいたしました。断片的な意見として一つも各省に、何というか、話をしなかったというふうな、そういう厳格なものではございませんけれども、いわゆる各省の意見をお聞きするという、そういう態度はとらなかったということでございます。
  52. 安井吉典

    安井委員 大平外務大臣に伺いますが、防衛力の限界というと外交政策の上に一番大きな影響もあるわけでありますし、大平さんは国防会議の重要なメンバーでもあられるわけであります。防衛力の限界なんて永遠の課題だ、こういうふうにおっしゃったというふうな記事も新聞に出ていたわけでありますが、どうなんですか。この防衛庁の見解でけっこうなんですか。イエスかノーか、これをひとつお答えください。
  53. 大平正芳

    大平国務大臣 外交をあずかっておりまして感じますことは、防衛問題というものは、各国がたいへん慎重に扱っておるというようにまず感ずるのであります。  欧州各国におきましても、防衛費の計上につきまして、特にこれを大幅にふやしておるという傾向は見えませんけれども、これに大なたをふるっておるという傾向も見えないのでありまするし、これを削減していくにつきましても、欧州の例に見られるように、相互均衡削減交渉というようなものをいまからやろうというような、非常に用心深い態度をとっておるということが、まず私どもの頭に浮かぶわけでございます。  かねがね申し上げておりますように、今日の世界情勢が漸次対話の方向に向かってきておる背景といたしまして、この種のこういう各国の慎重な態度、それから既存の条約のワク組みというようなものがその背景にあって、徐々にではございますけれども、健全な方向が出てきておると判断しておるわけでございます。したがって、わが国の防衛力を考える場合におきましても、私どもは大幅な増強ということは望ましいとは考えておりませんけれども、これを軽々に削減するというようなことにつきましては、いかがなものだろうというように感じておるわけでございます。  問題は、いまあなたが問題にしておりますることでございますが、これはまだ国防会議に付議されて意見を求められたこともございませんので、この席で私の私的な見解を申し述べるということは不謹慎かと思います。
  54. 安井吉典

    安井委員 愛知大蔵大臣も、きのうのテレビでも、何か限界をつくることについてあまり賛成でないようなおっしゃり方をなされていたようでありますが、そうですか。特にこれは財政的にもあとあとまでずっとつながる問題でありますが、これについてお考えはどうですか。どうも大平さんの御答弁が少し長過ぎて、私の時間が少なくなりますので、端的にひとつお答えください。
  55. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 御指摘のとおり、財政当局といたしましても、その観点からだけ申しましても、非常にこれは重要な問題でございます。一口でいえば、必要最小限度に財政当局としては考えるべきものである、こう思っております。  それから、防衛庁長官が二月の一日でございましたか発表されました見解は、国防会議等でまだ説明を聴取はいたしておりません。それが実情でございます。
  56. 安井吉典

    安井委員 限界をつくるのは反対だというようにおっしゃったように記憶しておりますが、どうなんですか。
  57. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 非常にこれはむずかしい問題である。反対とかなんとかいうよりも、非常にむずかしい問題である、この限界というようなことを考えることは。これは私は正真正銘さように考えております。
  58. 安井吉典

    安井委員 中曽根通産大臣は、中曽根構想もおつくりになった防衛庁長官の御経験者ですが、これについてどうですか。
  59. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 防衛庁の案に対しまして、総理大臣がわかった、理解する、妥当と思う、そうおっしゃったことをわかったと私は理解いたします。
  60. 安井吉典

    安井委員 ほんとうは、この国防会議に列席されている皆さんの一人ずつのお考えを伺いたいのです、実は。特に会議の議長代理である三木副総理からも伺いたいわけでありますが、時間がちょっとかかりますので……。  私は、いまのこのお話の中から、田中内閣は一体どうなっているのか、こういうふうな気がするわけです。皆さん各国防会議の重要なメンバーの人も、ちっとも内容がわからない。重要な問題だというふうにみんなお逃げになる。むずかしい問題だと言って逃げられる。どなたも理解してないような問題にかかわらず、防衛庁長官が差し出した案に対して、まあ国会対策的なあれがあったのかどうか知りませんけれども、これを守ることが必要かつ妥当であると考えます、こう言ったでしょう。それからさらに、私が公の立場で言ったことですから、私が拘束されるのは当然だ、こうおっしゃった。さらに最後には、内閣の連帯責任制までおっしゃったはずであります。これはいまお話を伺ってみたら、連帯責任をとろうというのは、まあ中曽根さんはいまそういうふうな意味におっしゃいましたね。一体どうなっているのですか。これも連帯責任とまでは言いませんでしたね。わかったと言ったのですか。ですから、防衛庁が差し出したら、朝もらったやつがその昼過ぎになって、もうこれでけっこうです。それは防衛計画、長期計画なんて国の重大な問題ですよ。最大の課題ですよ。それには外交政策的な、財政政策的な、あるいは国防会議に列席されてない閣僚の皆さんの意見もやはり聞かなければいかぬでしょう。そういうものの中からこういうものはきまっていくべきですよ。それを差し出されたら、もう内閣の連帯責任まで入れてオーケーをなさるというふうなことは、私はいささか軽率に過ぎると思う。防衛の最高の責任者であり、内閣の首班ですからね。そういうような態度では私は困ると思うのでありますが、いかがですか。
  61. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、防衛庁に検討をしてもらうように依頼した当事者でございます。防衛庁は、非常にむずかしい問題でございますという前提を私に答弁をしております。しかし、せっかくの依頼でありますから、一つの条件を固定して、仮定をして考えて答案を出しましょう、答案を出すように努力をいたしまょう、こういうことでございました。この問題が報道され、衆参両院において議論をされたわけでございまして、その案が出されたら、これを国会で説明をするかということでございますから、当然説明をいたします、こういうことをお答えをしておるわけでございます。そして去る日の午前九時半に防衛庁長官から説明を聞いたわけでございます。十時からはすぐこの委員会で第一の質問になったわけでございます。私は、自分が求め、一つの仮定をつくり、それに対して答案を出したもの、しかも防衛庁長官は文民でもございますし、私の指名をした閣僚であります。でありますので、この案に対してどう考えるかというお求めに対しては、必要かつ妥当なものと思います、こう述べておるわけでございます。  この内容を見ても、先ほどから御指摘がございましたように、四次防に対してまだ議論が相当存在するにもかかわらず、四次防を上回るものもあるわけであります。そういう意味で私の真意をと問われれば、少なくとも私は、あの仮定した状態、想定した状態が守られる限りにおける、平和時における防衛力の上限——あなたは上限といま述べられましたが、やはり限界はあれ以内でなければならない。少なくとも私がお答えをした考えの前提になるものは、あれを越しても限界の中に入りますというようなことは、私が少なくとも必要かつ妥当であろうと述べましたゆえんのものは、やはりあれが最大、やはり上限であるということであって、あれよりももっと少なくならないかというようなことは、これから十分勉強していかなければならないものであって、その意味において、国防会議にかけ、閣議にかけ、政府の決定を待つようなものではないということを明確に申し上げておるわけでございます。ですから、あれをオーバーしたらたいへんであるということであって、あれと四次防との間の差額はどこまで詰められるのだろうというようなことに重点を置くべきだと思います。  もっと勉強した結果、四次防でいいのかというような議論も、これからほんとうに勉強の過程においては研究していかなければならない問題であって、国民の最低限の負担における防衛力、こういうことを前提に置いておるのでございますから、閣議にもかけず必要かつ妥当と思ったのはどういうことかといえば、あれよりも上回るというようなことは私は全然考えないし、もっと小さくできないのかというような問題に対しては、もっと専門的な勉強を続ける必要がある、こう考えておるわけでございます。
  62. 安井吉典

    安井委員 私が申し上げておるのは、これはたいした問題でなければいいんですよ。しかし、国防上の重要な問題じゃないんですかね。そうすれば、国防会議のあの法律の中に書いてあります「国防に関する重要事項」、こうありますが、それに入らぬのかな。ですから私は、少なくもこういうものをおきめになるとその項目に入ると思いますよ。それを、ほかの閣僚も何も知らないで、防衛庁長官が来たらこれでいいというふうな、そういう軽率な態度、それが私は問題ではないかと思う。あるいは、平和時の防衛力の限界なんて、そんなものはできっこありませんよ、と言いたそうな顔をしている閣僚も一ぱいいるし、そういう議論もずいぶんあるわけですよ。それをつくれとおっしゃった。何か変なものが出てきた。それをと、こう言うのかもしれませんけれども、私はそういうありようにおいてどうもふに落ちない。その点を私は申し上げておるわけです。
  63. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これを直ちに国防会議の議に付し、閣議で決定をしたら、これは軽率のそしりを免れないという御意見に当たるかもわかりませんが、これは、やはり答案を得て、しかもあまり勉強もできない過程において答弁をしたのでございますから、答弁をしたこと自体、あのときにはどこまでもがんばって答弁をすべきじゃなかったんだ、にもかかわらず答弁をしたから軽率であると言われれば、それは私もよく考えてみますが、いずれにしても私自身が、このようなむずかしい問題を、すぐ国防会議にかけるというような軽率なことに対しては歯どめをしたわけでございますから、そういうことはひとつ御了解願いたいと思います。
  64. 安井吉典

    安井委員 私は、国防会議にこれをそのままかけなさいと言っておるわけじゃありませんよ。そうじゃないですよ。こういう問題は、そんなに簡単に、総理大臣が簡単な引き受けをされるような問題と種類が違うのじゃないか、ほかの問題と違うのじゃないか。ですから、そういう取り組みの態度そのものを問題ではないか、こういうふうにいま申し上げておるわけです。これは、もちろん委員長のところに、中澤委員からげたが預けてあるわけですから、理事会のほうでさらに御検討ください。  ただ、私が申し上げたいのは、この防衛力の限界について重要な問題は、あくまで原点として平和憲法というものを押えなければいかぬということ、それから文民統制ということをきちっと位置づけなければならぬということ、平和憲法と文民統制、そういう原点に立っての対応というものが必要ではないかと、私は私なりに思うのです。どういうふうに委員長はさばかれるかわかりませんが、そういうことですから、きょうは私は問題点の提起だけにしておきます。  それからもう一つ、米軍基地再編成の費用負担の問題についてお尋ねをしてまいりたいと思うのでありますが、日米安保協議委員会において、日米双方の合意が一月の二十三日になされたわけであります。ここに私どもは、基地返還についてある程度の期待を寄せていたわけですが、われわれは、最終的にわれわれの期待は裏切られて、返還されたものは本土沖繩合わせて十カ所、二十七・三平方キロというふうに聞いております。しかも、これが完全返還されるまでにはこれから三年間かかる、こういうことのようであります。  私どもは、さらにこの協議委員会で、福田外務大臣が国会でしばしば約束をされておりました事前協議制度の洗い直しが果たされるかと思ったが、これも現状の確認ということで終わってしまった。また、関東計画など基地整理統合も、ニクソン・ドクトリンに沿って行ないと書いてあるわけで、したがって、整理統合して基地が少なくなったという理解よりも、むしろ新しい段階における米軍基地の強化、合理化だというふうに受け取れないわけでもありません。  こういう問題は別といたしまして、私がいまここで取り上げたいのは、米軍基地統合や移転に伴う多額の費用を日本側が約束したという点であります。いわゆる関東計画のために約二百二十億円かかるのだということが、この間ここで報告されました。それが四十八年度予算にも約三十六億円ぐらい計上されておるそうであります。それから那覇空港のP3対潜硝戒機を二年計画で嘉手納空軍基地に移す、そのために嘉手納の代替施設の提供、この辺まではまだわかるのですけれども、普天間飛行場は、初めは普天間にやるのだったが、あれはやめになったはずです。その普天間飛行場の改良工事にまで日本政府が負担をすることを約束をする。さらに岩国基地の老朽住宅の改修、これも負担をし、岩国のP3を三沢に移すための三沢基地の改修工事をやる。三沢のほうは、これも移転ですからあるいは筋は通るのかもしれませんけれども、岩国の老朽住宅の改築というようなことになると、これは地位協定を大幅にオーバーしておる問題になるのではないか。  大体、この間の計画において日本政府はどれぐらい負担をすることになるわけですか。そして、本年度の負担額はどれぐらいになりますか。これは大蔵大臣ですか、ちょっと伺います。
  65. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 四十八年度のただいま審議をお願いしております予算の中で、基地整理統合関係を全部くくってみますとこういうことになります。一般会計で申しますと十八億三千七百万円、特別会計で百九億一千二百万円、合計いたしまして百二十七億四千九百万円、その中に、いまおあげになりましたものも計上されてございます。
  66. 安井吉典

    安井委員 岩国の改修工事費は幾らですか。
  67. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 岩国と三沢の改築費の関係で、一般会計で十億円計上してございます。
  68. 安井吉典

    安井委員 これはあとで詳細な工事内容、金額、年次別の支払い額、支払いの方法等について資料をいただくようにお取り計らいをいただきたいと思います。これは委員長に。  次に、外務大臣に伺いたいわけでありますが、いま私が申し上げましたように、那覇から普天間に移すというのなら、普天間の飛行場の改修も当然必要であろうと思うのですが、普天間へ行かないわけですね。それにもかかわらず、普天間の費用をなぜ日本は持たなきゃいかぬのですか。
  69. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 沖繩返還交渉の当時に、那覇空港からP3を移転させることに関連いたしまして、P3の移転先として普天間が真剣に検討された段階がございます。しかしながら、その後、諸般の状況にかんがみて、普天間にP3を移転させるということは問題がある、こういう認識に立ちまして米側と種々折衝いたしました結果、今般、那覇空港に駐留いたしておりますP3は嘉手納飛行場へ移転させるということに合意ができました。その過程におきまして、かつてP3を普天間へ移す際におきましては、普天間にあります格納庫その他の施設が、既存のものが使えるという前提になっておったわけでございますけれども、嘉手納へP3を移すにつきましては、その点の関係がございまして、別途の手当てが必要である、こういうことになりましたわけでございますけれども那覇空港を完全に日本側に返還さして、米軍機が施設、区域としては那覇空港が使えないという状況になるわけでございまして、その関連におきまして嘉手納の飛行場の代替飛行場ということで普天間を使わさせる、こういうことに話がなったわけでございます。  そこで、普天間を嘉手納の代替飛行場として使わせるにあたりましては、普天間の滑走路その他の施設が、その要請にはこたえられないような状況でありますので、その程度の工事をいたすということに話がなったわけでございます。
  70. 安井吉典

    安井委員 もう少し聞きたいのですけれども、それより、岩国の費用をどういう理由で日本は負担しなければいけないんですか。
  71. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 岩国は、御承知のとおりに海兵隊が施設、区域として、駐留、使用いたしておりますけれども、海兵隊が岩国におきまして使用いたしております施設は、旧海軍時代以来のかなり老朽の施設がたくさんございます。したがいまして、米側からかねてよりこの老朽施設の改築、改造ということについて要請がありまして、この問題についてかねて検討いたしてきたわけでございますけれども、今回地位協定の規定に従いまして、これの改造、改修を日本側が引き受けたことにいたしたわけでございます。
  72. 安井吉典

    安井委員 地位協定の何条何項ですか。
  73. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定二十四条第二項の規定に従いまして、この改造、改築をいたすことにしたわけでございます。
  74. 安井吉典

    安井委員 これまでの政府のたてまえは、この法律の解釈についても、施設の新規提供、移転は日本側が負担するが、既存施設の維持、補修、改築は米軍が自分で負担をする、こういうふうにはっきりされていたはずですが、いかがですか。
  75. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定第二十四条第二項に、日本側が経費を負担すべきものといたしまして、施設、区域の新規の提供、それからすでに提供いたしております施設、区域の追加提供あるいは建物等追加して新築、こういうふうな内容が含まれているわけでございますけれども、岩国にあります施設は、先ほど答弁申し上げましたように、かなり老朽化いたしておりますので、その年数経過とともに、当初の提供目的を十分果たし得ないものが生じてきております。これに対しまして、建物等の改造、改築、改修という規定を踏まえまして、二十四条二項の規定に基づく提供ということをやっているわけでございます。
  76. 安井吉典

    安井委員 おかしいじゃないですか。改築はアメリカの負担だということにはっきりなっているでしょう。非常に古くなったから日本が負担するというのは筋が通らぬじゃないですか。
  77. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定第二十四条第一項に基づきまして米側が経費を負担いたしますものは、米軍の維持に伴う経費で、第二十四条第二項によりまして日本側が負担しないものと、こういうふうに規定いたされております。したがいまして、米軍日本側から提供を受けました施設、区域を使用するにあたりまして、たとえば小修理のようなものはこれは当然米側の負担といたしておりますし、従来そういうふうな取り扱いをいたしておりますけれども、今回岩国におきまして改造、改築ということを認めることにいたしましたのは、小修理の程度のようなものではなくして、かなり老朽化した施設の大々的な改造、改修でございますので、これは提供施設の目的に照らして、第二十四条二項の規定に従いまして措置するものでございます。
  78. 安井吉典

    安井委員 二十四条二項の拡大解釈ですね。いままでそういうふうにやっておりましたかね。  それから、もう一つ申し上げたいのは、もう米軍が来てからずいぶんになりますから、あちこちでそういう問題が起きて、どんなものでも、どんどんそういうふうに、いままでは米軍が当然負担するものまでもこちらが負担をするというふうな、そういう仕組みをつくったら、われわれの税金が幾らあっても足りませんよ。どうですか。
  79. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 御指摘のとおりに、いままでにそのような改造、改修という事例はございませんけれども、たまたまそういう事例がなかったわけでございまして、岩国のごとく旧海軍時代以来の施設を使っておりますものにつきましては、かなり耐用年数が長くなっておりますし、したがいまして、新たに改造、改修を二十四条二項の規定に基づいて措置する、こういうことでございまして、何ら地協定の規定に反するものとは考えておりません。
  80. 安井吉典

    安井委員 これはまさに地位協定の拡大解釈であり、地位協定そのものの変質だと私は思います。いまだかつてないことをいまおやりになるわけですからね。何かこうせざるを得ないような特別な事由がおありなんじゃないですか、政府には。外務大臣どうですか。
  81. 大平正芳

    大平国務大臣 安保条約の取りきめが、継続の時間的な要素をお考えいただきたいのでございますが、これが短時間であれば、安井さんおっしゃるとおりのことで、こういう事例は出てこないのでございますけれども、こう長くなってまいりますと、旧海軍施設というものが耐用年数を越えてきたというような事例が出てきたわけでございまして、これは、地位協定の拡大解釈というのではなくて、そういう施設が老朽化したという物理的な事実を踏まえての措置でございまして、そうしなければならないというのは、われわれがこの安保条約の継続期間中基地を提供しなければならぬ、しかもそれが使える状態において提供しなければならぬという責任を持っておるからでございまして、拡大解釈では決してございません。
  82. 安井吉典

    安井委員 このように筋の通らない負担までをアメリカにしいられるその裏には、沖繩返還協定の際に、政府アメリカと何か密約があったのではないか、そういう疑いが持たれています。そういう報道がずいぶん強く行なわれているわけでありますが、いかがですか。
  83. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことは承知いたしておりません。
  84. 安井吉典

    安井委員 新聞はあまりお読みにならぬとみえますね。(「スポーツ欄だけ」と呼ぶ者あり)スポーツ欄だけじゃなしに、政治欄もちょっとお読みいただきたいと思います。  いわれているのは、沖繩のあの返還協定に際して、日本アメリカに三億二千万ドルの支払いを約束した。協定第七条です。その三億二千万ドルのほかに、六千五百万ドル裏で約束があったのではないかということです。わかっていても知らないふりをされているのかもしれませんけれどもね。これも相当広がっている話ですよ。とにかくアメリカ側は、四億ドルぐらいの金をもらわなければ済まないということでがんばって、そして三億二千万ドルは表ではきめたが、裏では六千五百万ドル、これは地位協定に基づいて米軍基地の改良工事をやる際に、これで負担を日本は五年間やっていく、それで六千五百万ドルを三億二千万ドルに合わせて負担をすることで、約四億ドル近くのアピアランスをアメリカ側につくらせることができた。その履行をいま日本は迫られているのだというふうにいわれています。きょうは現外務大臣のほかに、前外務大臣も前々外務大臣もおられるわけです。協定の当事者の方もおられるわけでありますから、ひとつはっきりしたお答えをいただきたいと思います。どなたからでもけっこうです。
  85. 大平正芳

    大平国務大臣 その問題は、安井さんの初めての御指摘じゃなくて、前々から国会でそういう御指摘がありましたにつきまして、政府からすでにお答えしておるとおりでございまして、ランプサムで三億幾らのお支払いをする以外に特別の密約はないということを、政府がたびたび申し上げておるとおりでございまして、いま地位協定に基づきまして日本が支払うべきもの、あるいは追加提供すべきもの、そういったものの経費の見積もりの段階におきまして、いろいろな数字が出たことだと思いますけれども政府といたしまして、特別に六千五百万ドルを限って、仰せのような密約を持っておるというようなものではございません。
  86. 安井吉典

    安井委員 密約ということばが悪ければ予約といたします。そういう予約的なものがその段階であったのではないか、こういうことです。(「アメリカに対しては公約だよ」と呼ぶ者あり)アメリカのほうはちゃんと、アメリカの議会への報告書の中にはっきり書いてありますよ、六千五百万ドル。日本のほうは表に出ていないが、アメリカのほうはちゃんと表に出ています。  それで、いまおっしゃった、国会でも取り上げたという速記録を私も調べてみました。昨年の四月十二日に公明党の西中清委員、四月の十七日に——これは初めのほうは外務委員会、あとの四月十七日は外務・内閣両委員会の連合審査会、ここでは同じく公明党の中川嘉美委員が取り上げています。両委員とも今度落選されてしまって、おそらく今度予算の中に——この中にも、福田外務大臣も、これはいまじゃなしに、今度予算のときにやってくださいと言っていますよ。お二人がいられればここでやるんでしょうけれども、私かわってやります。これやると私も落ちるかもしれませんが、しかし、国民の大きな負担に響く問題ですから、これはどうしてもやりますよ。  この中において、同じこの問題の取り上げに対して、当時の吉野アメリカ局長は、「その点は何ら政府間の合意はございません。先ほど申し上げましたとおり、そのような形式のやりとりがございました。」形式的なやりとりがあったと言っていますよ、そのことは。これは福田さんもおられるけれども。この西中委員もそうですし、それから中川委員の同じ追及に対して福田外務大臣は、当時の外務大臣福田赳夫さんは、「その他いろいろなことを含めますと六千五百万ドルぐらいの金が整理縮小というようなことでかかりましょうかというようなことを軽く言った時期があります。しかし、これは日米間を拘束する約束とかなんとか、そういうことじゃ一切ありません」と、こういうお答えであります。つまり六千五百万ドルとちゃんと話が出ているんですね。そのことは否定されておりません。そして、こういうふうな御答弁でその場を逃げておられる、こういうことです。しかし問題なのは、この段階でも、われわれはここで沖繩国会をやりましたけれども、あの沖繩国会のときには一言もおっしゃらなかった。ところが、例の密約電報問題が出て、この問題が表に出てから初めて、とにかく六千五百万ドルという問題でそういう、福田さんの話によれば「軽く言った時期」、これがあったということだけは、この時点でやっと、追及されておっしゃっているわけです。  きょうは、その当時の福田外務大臣もおられるし、それから、このお話をおきめになったのは愛知・ロジャーズ会談です。その愛知さんは今度は大蔵大臣で、支払いをするほうの側に今度お立ちになった。一番このときの事情も御存じだと思いますし、今度のこの支払いは、当然払うべきなのかどうなのかということについての御判断も、財政の責任者という立場で下すべきお立場にあるわけであります。もう少しこの点について愛知大蔵大臣から伺いたいと思います。
  87. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この問題については、前国会、前々国会でもいろいろの場合に論議が出ておる問題でありますから、その点に触れて私はお答えいたしたいと思います。  実は沖繩返還協定の際に、御承知のように那覇の飛行場を全面返還ということは、いわゆる目玉として、当時の政府、そして交渉当事者の私としても、非常に努力をしたつもりでございます。それから、それに関連いたしまして、沖繩内の基地整理縮小ということにも非常な努力をいたしましたし、それから、たとえば具体的に言えば、牧港の住宅地域の返還ということについても、ぎりぎりのところまで折衝につとめたわけでございます。ところが、P3のほうは、せめて返還実現、つまり昨年五月十五日までにはおそくともどうかしてやってもらいたいというのが、最後の私どもの願いであったわけでございますけれども、遺憾ながらこれがいろいろの事情で今日までできないできておりますことは、非常に残念だと思いますが、このP3の那覇飛行場からの退去といいますか、これについていろいろと折衝しております間に、日本側としては、これだけではなくて、沖繩基地統合について、これだけあなた方のほうも熱心に主張をされている、アメリカ側としては、これは返還後の問題にもなりますけれども基地縮小統合にはできるだけ協力をしたいけれども地位協定によって、沖繩においてはいわゆる本土並みの条約、地位協定が適用されるわけでございますから、それによって、その当時からいえば将来の問題ですけれども返還統合については相当な金を、あなたのほうでも、つまり日本側でも協力をしてもらいたい。原則論の応酬はだいぶございましたが、これはしかし安保条約を堅持し、そして地位協定をしたがって順守し、なければならない日本としては、当然の立場でございます。これによって支払うべきものは、安保協議会を通して日米間の折衝をし、また日本側としては、財政当局の立場において、いわばケース・バイ・ケースに話を煮詰めてやるべきものである、この態度は、当然堅持して今日に至っておるわけでございます。  その間において、自分のほうの、つまりアメリカ側のほうの見方からいえば、基地返還統合というようなことについては、内部的にも反対が非常に強い。そして、それらの人たちをも含めて、その当時の現在の向こうさんの見積もりからすれば、六千五百万ドルというようなものが一応積算されるのである、こういう話は出ておったことは、いままで政府答弁しておるとおりでございます。しかし、いま申しましたような性質の問題でございますから、当時日米政府間の合意とか密約とか約束とかいうものは全然ございません。そういう経過でございます。  そうして今度は、ただいま大蔵大臣として答弁しろという仰せでございましたが、このP3移転問題については、その後関係当局努力によって今度は話が煮詰まってまいりましたが、四十七年度予算に三十八億余が計上されておって、これはまだ実行済みになっておりません。そのまま全額ただいま予算の上に計上されて用意されておりますので、これは、年度中に話がきまりますれば、予算の款項目には変更がございません、同じ目的のためでございますから、これを繰り越し使用の手続をとりまして、これは日米間の話が細目もまとまりましたならば繰り越し使用の手続をとって、そして四十八年度中に工事の実施にかかる、これが適当であろう、こう考えております。  ただ、これだけの問題にいたしましても、おそらく三十八億円では足りないだろうと想像いたされますが、工事能力その他から考えまして、そういう場合におきましては、四十九年度の予算の問題としてあらためて所定の日米間の協議、その後における日本側の財政当局考え方というものを十分煮詰めまして、四十九年度に処理をしたい。一方において沖繩海洋博の開催も迫っておりますから、そういう点をあわせて処理をいたしたい。これが本件についての全貌でございます。
  88. 安井吉典

    安井委員 私はそんなことを伺っているのじゃなしに、密約と言ったら腹を立てるかもしらぬが、予約というものはなかったのですか、完全な。六千五百万ドルというのは、アメリカ側ではっきりしているのですが、それを予約したということはなかったのですか。新聞の報道でも、外務省なり防衛庁の中では、今度のこの交渉で岩国のこれを持てということでアメリカ側が非常にきつくて、もうとってもかなわぬ、なぜそんな態度か、予約を理由に無理な注文をつけてくると、みんなぼやきながら今度のこの間の交渉をやっているのじゃないですか。大蔵省なり外務省なり、あるいは防衛施設庁でもいいですが、部内でそういう話は出ているんですよ。国民だけが何かつんぼさじきになっている。そういうふうな予約があったのか、なかったのか。愛知・ロジャーズ会談の中で、そういうお話を最終的にお詰めになりませんでしたか、六千五百万ドルという話はなかったのか、そういう予約をなさったかなさらないか、その点を一言、あったかないかだけをお答えください。
  89. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 愛知・ロジャーズ会談のときにも、先方が、自分のほうの見積もりからいえばそのくらいはかかるということであるという話は出ましたけれども、密約とか予約とか、「約」というのは両国政府間が約束をすることでございますが、そういう形の約束を私はいたしておりません。
  90. 安井吉典

    安井委員 どうも密約電報でも、現物が出ないとお答えをなさらないといういままでの政府態度だった。この前の、ここで取り上げられた密約電報問題だって、あの四百万ドルの問題でも、電報が、現物が出るまではもう逃げ回っておられた。現物が出たらあっさりお認めになって、あの電報はもう極秘電報じゃなくなっちゃった。私は、どうも国民の知る権利——国民は主権者なんですから、何でもかんでも政府は知らせるわけにはいかぬと思うが、しかしこれぐらいは、あとで経過ぐらい教えてもいいじゃないかというようなものまで、政府はひた隠しに隠している。それを書いた新聞記者が、それを正しく報道した人が、逮捕されて裁判にかけられて、その密約をしたとかしないとかで問題になった人は、それこそもうしゃあしゃあして、えらい地位でおられる。どうも私は、そういうことからもやり切れないような気持ちでありますが、やはり正確な事情というものはお知らせをいただいて、それによって——やむを得ないときはやむを得ないですよ、それは。やはりきちっと御相談をするという態度をぜひお願いをしておきたいわけであります。  おととしの六月九日のパリにおける愛知・ロジャーズ会談で、返還協定の内容について最後的なお話し合いをされました際に、この米軍基地の改良工事費は、これは日本地位協定からいえば、これをきちっと解釈すればなかなか負担できるようなものでないというふうな、そういうやりとりがなかったかどうか。そしてロジャーズ長官が、この六千五百万ドル、六十五ミリオンダラー、これの使い道についてリベラルな解釈を期待するという発言をしたのに対して、愛知外務大臣は、できる限りリベラルな解釈を保証する、こうおっしゃったことはありませんか。
  91. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま申しましたように、その六月九日のみならず、いろいろの交渉の経緯はございますけれども、将来、先ほど詳しく申し上げましたように、こちらとしては地位協定によってケース・バイ・ケースで取り上げるべき問題である、同時に、そういう場合になるべくよろしく頼みますと、まあ日本語で申せば——ちょっと肝心なことなんですが、日本語で申せば、向こうは、よろしくそういう場合に頼みますと言い、こちらが、これは今後の御相談で話を煮詰めてまいりましょう、こういうくだりは当然あるわけでございますが、六千五百万ドルということ自身について予約、「約」というようなことをしたことはございません。これは、当時は基地整理統合ということが、今日もそうですが、わがほうの非常な主張なんでありますから、それについて向こうとすれば、それには協力する、しかし日本側のほうも、日本側が安保条約により、地位協定によって出していただくべきお金等の相談については、できるだけよく計らってくれるように向こうはお願いをする、こちらは、そういうことはいたしましょう、これはもうそういうときの交渉の経過において、当然私はあり得ることであると思います。しかし、その後、先ほど詳しく申し上げましたように、P3の移転につきましても、今度は大蔵省の立場でございますから、十分財政当局としての立場を表明し、ケース・バイ・ケースに処理をいたしておる、こういう実情でございます。
  92. 根本龍太郎

    ○根本委員長 安井君に申し上げます。お約束の時間が経過しておりますから、結論をお急ぎください。
  93. 安井吉典

    安井委員 地位協定のより自由な解釈を保証するというふうなことのお話し合いがあることによって、いま財政負担の問題が起きてきているわけですよ。いまその予約ということ、あるいは密約じゃないといまおっしゃったけれども、そのときのお約束がいま生きてきてこういうふうな形になってきておるわけですね。これによっておそらくアメリカは、六千五百万ドルのあれをどうしても言うでしょう。ここの一月三十一日の在日米大使館筋の発言の中に書いてありますよ。六千五百万ドルは当然経費を負担すべきだという、それについて暗黙の了解があったことを示唆している、こういうふうに言っていますよ。向こうはちゃんとそう言っているのですから。私は、そういうふうなことがあったらなぜあのとき言わなかったか、三億二千万ドルのほかにこういう問題があるのですということをなぜおっしゃらなかったか、それが一つ。  それからもう一つは、たとえそういうふうなお約束があっても、それが表になっていればまた別ですけれども、そういうような中で、いま地位協定を大幅にゆるめるような拡大解釈をするような岩国の予算を、われわれは認めるわけにはまいりませんよ。そういうふうな内容をもう少し——先ほど資料の要求をしておりますけれども、その資料をもっとお見せいただきたい。どういうものをやるのか。これは、地位協定二十四条に、拡大解釈でなしにきちっと当てはまるものなのかどうなのかということを、私どもはもっとはっきり検討したい。それまでちょっとこの問題は、私、保留しておきます。  なお、北方領土の問題についてもお尋ねするつもりだったが、時間がなくなったので別な機会に譲ります。あとの予算委員会のどこかでやりたいと思いますが、お見通しはどうですか、それだけ一つ伺って終わります。
  94. 大平正芳

    大平国務大臣 その交渉は、去年の十月、第一回の交渉をやりまして、ことしあらためて第二回の交渉をやるという約束になっております。ただいままで先方の態度はたいへんかたい態度でございますが、その交渉に全然応じないという態度ではございません。
  95. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて安井君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時十四分休憩      ————◇—————    午後一時七分開議
  96. 根本龍太郎

    ○根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  総括質疑を続行いたします。阿部昭吾君。
  97. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私は、内政問題、特に、国民が生活と深いかかわりのある問題として関心を持っております土地対策の問題、あるいは列島改造論によって引き起こされたいまの混乱、崩壊しつつある農村社会を一体どうするのか、都市社会の行き詰まりは一体どうするのかという問題、そして議会制民主主義の根本である選挙制度、政治資金、政治の基本姿勢、こういった問題について御質問したいのであります。  総理は、新潟県、越後から出かせぎに来ておるのだ、こういうことをよく言われておるのでありますが、総理の郷里である農村の現状は一体どうか。たいへんな状況になっておるわけであります。この間岡山県の備中町という町に行ってまいりましたが、その町に参りましたところ、三つか四つぐらいの集落で、戸数が二百二十戸ぐらい、その中で、農地、山林原野、これを大体千七百ヘクタールぐらいを持っておる。これを丸紅飯田が、その八〇%の千四百ヘクタールを、三・三平米当たり百円平均で土地を全部買い占めよう、土地を安く提供さすかわりに、丸紅飯田がそこにいろいろな開発事業を行なう、ゴルフ場をつくる、あるいは観光牧場をつくる、農業大学をつくる、別荘地帯をつくる、そういう事業の中で、ここに就労の機会を、土地をただ同然の安い値段で提供したこの集落の皆さんに対して保証する、こういう条件で八〇%の土地を全部提供しなさい。そこで町当局が個々の農民に対して、この開発に対して同意を求め、賛否両論がありましたが、八〇%の千四百ヘクタールというこの山林原野、農地のうち、すでに八百ヘクタールの農地は丸紅飯田のものになっておるのである。土地を提供いたしましたこの地帯の農家は、いま四年ほどたっておるのでありますが、どういう状況が起こっておるか。全部出かせぎに出なきゃならぬ、就労の機会を保証されることはなかった、こういう状況が起こっておるのであります。これは岡山県の備中町だけに起こっておる現象ではなくて、民間デベロッパーという名の土地占領軍といわれるように、至る地域の農村にこういう土地の買い占めが、深く低く進められつつあるのである。  いま農村では、総理の郷里もそう、私の郷里もそうでありますが、専業農家というものが存在しないようになっておるのである。ほとんど全部が出かせぎあるいは兼業、こういう状態になってきました。あるいは、これらの農村地域でいま運行されておりますバス事業は、ほとんど赤字で成り立たない。あるいは小学校、中学校、これが生徒、児童の数がそろわない、二次、三次の統廃合をやらざるを得ないという現象が起こっております。あるいは、米は減反しなさいとおっしゃったわけであります。それならば、かわるべきものは一体何か、政府はこれに対して的確な、確たるものを示さずにずっと経過をしておる。私はここで、もうけさえすればよろしいといういままでの日本社会を律してまいりましたこの基本的な考え方が、再検討されるべき段階に来ておるということをはっきり示しておるのだと思います。  田中さんが総理大臣になったときに、素朴にこういう問題に対して、一つの確たる解明を与えるんじゃないかという期待を持ったことは事実なんであります。しかし、そうはならなかった。いま当面あらわれてまいりました問題は、田中さんの政策の中心であります列島改造、これを根幹としての土地の買い占め、地域社会の崩壊というものがどんどん進んでおる。都市のほうはどうか。田中さんはかつて都市政策大綱というものを、政府与党の中心的な立場にあって提示をされた。いま、全国の都市のどこに、当時田中さんが示されたような緑が確保をされ、快適な都市社会の条件というものが少しでもつくられつつあるか。どこにも見ることができない。これも、今回年末に行なわれました総選挙で、田中さんの人気は相当ブームを呼んでおるといわれておりましたのに、そうはならなかったという基盤ではなかったのだろうかと、こう私は思うのであります。  以下、私は問題をお尋ねしたいのでありますが、私のこういう概括的なものの見方、考え方、このあたりで、経済合理主義という名の大企業を優遇するこの政策を、根本的に転換しなければならないときに来たと思うのであります。その転換をしなければ、自民党政治そのものがやはり限界に来たということになるんじゃないかと思うのでありますが、総理の所感をまず冒頭お聞きしたい。
  98. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 現象の一つとして土地の買い占め等が行なわれておるということは、望ましくないことは言うまでもありません。そういう現象に対して、政府は諸般の施策を進めておるわけでございます。融資の抑制をはかったり、また、これから新しい法律を御審議いただいて、これから、自分が安く手に入れたものが高くなるというような望みを持っておる者の不当な利得を押えるよう措置をする税制をつくったり、最も大きいのは、ここは自分で、みずからの意思によって開発が立てられると思っておるものを特定地域に指定すれば、それは公共の用を中心にしたもの、その計画に沿ったものでなければこれを使用できないというような制限を行なうべく、いま法律を立案中でございます。自分で将来宅地にしようとして買っても、そこが緑地帯に指定をされるということになれば、これは建物は建たなくなるわけであります。建物が建たなくなれば、予想するような不当な利得を得ることはできません。そういう国土の利用法を土台にしまして、いろいろな施策を講じようとしておるのでございます。  私は、今度の施策を行なうことによって、土地に対する一つの限界というものは求められるのではないかという感じでございます。法律が出されない、提出されない現在において、もうすでに土地を買いあおっておったような業者は、土地に対してはもう先が見えてまいりましたなあということもあり、このごろは金融機関の引き締めもございます。そういう意味で、大規模な土地の買い占めが不可能になっておるという事態に徴しても、それは明らかだと思うのでございます。  私は、列島改造都市改造というものは、内容を積み重ねていくためにおいては、これは国民的衆知を集むべきだと思いますが、この方向は絶対に誤っておらない、こういう考え方でございます。都市において土地がないのであります。都市においては、総面積のわずか一%という中で、三二%、三千三百万人も住んでおる。しかも、立体化をはからなければならないというのに、自然の採光、通風を確保するために立体化は反対であるという声が一部にあります。そうすれば、平面都市が無制限に拡大されることもできないわけでありますから、やはり立体化を行なう、また全面的な区画整理を行なうということを前提にしないで、一体ほんとうに大都市における地価が抑制できるかどうか。これはもう全世界において行なわれておることでございます。四半世紀前にロンドンはニュータウン法をつくって、八百五十万のロンドンから百五十万の人口を移すためにあの膨大な事業を行ないました。それでもやはり大都市に集中する趨勢を阻止することはできません。新しいブラジリアというものの建設もしかりでありますし、しかも、ハワイやニューヨークの不良街区の改良もみな、いまよりも倍以上の高さにしようということによって、空地をつくったり住宅面積をふやしたりということをやっておるわけでございますが、これらはやはり国民的合意というものの背景を求めなければならないことでありまして、これはやはり多少時間がかかるということだと思います。  これは、いまもうどうにもならないような公害の発生源になっておるという産業そのものも、だんだん土地集約的な産業構造に移していかなければならぬとは思いますが、三十七万平方キロもある国土の中で、六十年を越しても、産業で必要とする面積はわずかに一%、三千七百平方キロにすぎないのであります。そういうものが全国的に確保できないというようなものではない。水も土地も、一次産業との労働調整、環境の保全、自然の保全ということを考えれば、やはり交通網の整備による都市から全国土開発へと歩を進めなければならない。これは社会主義国でも、都市に対する流入を抑制し、一カ年にその幾ばくかずつを強制的に新しい都市に出しておるという事実に顧みるまでもない。  しかしこれは、集中のメリットという長い百年の歴史の中で積み重ねられてきたものを逆にしようというのでありますから、法制も整備しなければなりませんし、いろいろな施策を行なわなければならないし、特に、都市に来るよりも国土全体を利用することがプラスになるんだというような考え方にやはり転換をしなければならないわけでありますから、私は、やはり野党の皆さんにも、このような、それ以外に道のない問題に対しては理解と支持をいただきたい、こう考えております。
  99. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 あとで私どものほうの具体的な提案を明らかにしてお尋ねをしたいと思いますが、冒頭もう一つ伺っておきたいのです。  日本は確かに変わらなければならぬと思うのですが、しかしその前提は、もうかるかもうからぬかというこの前提ですね。これをそのままにしておいて日本を変えていこうなんということは、不可能なところにあらゆる面で突き当たってくる、こう思うのですが、総理のいままでの、少なくとも政治指導者として前面に登場されて以来の経過をずっと考えてみると、その大前提に対しては、みじんもの配慮なり、考え直しなり、反省なり、これがないと思うのです。私は、やはり大前提として金もうけがあらゆるものに優先するといういまの世の中の根本的なところを一ぺん再検討しなければ、問題の解決は一歩も進まぬというところに来ておるんじゃないかと思うのですが、この認識はいかがでしょう。
  100. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本人は勤勉な国民でありますし、民族の伝統を見ても、乏しい中から今日を築いてきた民族性というものを考えるときに、自由主義経済というものが日本人によりいいものであるという基本的な観念は私は変わっておりません。しかし、十九世紀時代の資本主義論が現在通用するとは考えておりません。高度の社会政策というもの、社会主義政策というよりも、社会政策というものがとられなければならぬことは言うをまちません。とにかく、日本が戦後のゼロから今日を築いたのも、日本人の英知と日本人の勤勉ということでございますが、勤勉もいまになると、勤勉過ぎると海外において指摘をされる面もあります。  そういう意味で、これからは日本の輸出第一主義というようなことではなく、南北問題に対しては持てる技術や経済力を積極的に活用して、開発途上国の生活のレベルアップのために資したい、こういうことを間々述べておるのでありまして、自由主義経済をどこまで国際的に発展をせしめていってというような考えでないことは、基本的に政府は明らかにいたしております。それが、年間二十億ドルの融資を行なう世銀に対して、その四分の一、五億ドル日本から毎年拠出をしておるというような実績になっておるわけでありますし、アジア開発銀行その他に対しての大口な出資者であり、同時に、ベトナム復興会議に対しても、日本の応分の負担や協力を申し上げておるのもそういう考えでありまして、かつての日本の指弾されるがごとき立場というのではなく、新しい国際環境下における日本の行き方、やらなければならないことを当然考えております。  また、国内においても、生産第一主義から生活第一主義に切りかえなければならない。重化学中心から付加価値の高い産業に切りかえなければならない。言うなれば、イギリス型のものからスイスのようなものに切りかえられることが望ましい。しかも、それによって得たものは、社会福祉その他生活環境の整備、この成長の結果は国民全体が享受されるようにしなければならないと演説にも述べておるわけでございまして、これはもう、もうける者がうんともうけるというような考え方は全然とっておらないわけでございます。今度の土地政策というものは、相当問題があるにもかかわらずかかるものに踏み切っておる。これはやはり十年前、五年前の社会党の皆さんが御研究になられた分野をも越しておるくらいの事実もあるということは、ひとつ御理解をいただきたい、こう思います。
  101. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで農林大臣に、まずあまりむずかしくない問題についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、昨今、インドの飢餓の問題、あるいはソビエトのたいへんな農産物の不作の問題、中国もなかなか問題がある、東南アジアもなかなかたいへん、さらに加えて世界の人口問題もたいへんな状況にある。したがって、いま世界的に再びこの飢餓の問題、食糧問題というものが問題になってきておるのであります。過般の政府の、農業の高能率、高生産といったようなものは、何か考えてみますると、ちょうど現状のあらゆる面で行き詰まっておるものに対して、総理列島改造などという雲をつかむみたいなもので煙に巻いたと同じようで、いま農林省が出しております高能率、高生産、新しい農業などという構想も、一般の地方における農民がどう受け取っておるかということになると、どうも雲をつかむみたいで、ちっとも現実味がない、こういう受けとめ方を実はしておるのであります。  そこで農林大臣、食糧政策、これはやはり根本的に転換すべき時期に来ておるのじゃないかと思うのです。たとえば日本で米過剰だといって大騒ぎをいたしましたが、新しい食糧年度に繰り越した古米というものは三百万トン。一億一千万余のたいへんな人口の住んでおる日本で、三百万トンぐらいを新しい食糧年度に繰り越したというような状態は、これは過剰とかなんとかという状態ではとらえることができない。そういう意味で、このままずっと減反政策というものをとり続けたならばえらいことになるのじゃないかという危機意識を農民団体、農業団体の指導者はもちろんのこと一般地域の農民もそういう感じ方、あるいは都市の中にも政府の部内にもそういう認識をして、いろいろな所論を展開されておる向きが強いのであります。したがって、減反政策はこのあたりで転換すべき時期じゃないか、こう思うのですが、農林大臣ひとつ簡潔に、時間がありませんので。
  102. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 やはり、これはちょっとお答えに前提が要ると思うのですね。私は、米が需給の関係上非常に過剰で、農村においても倉庫は一ぱいになってどうにもならない、こういうように、実際に過剰から非常な問題が起きておったと思うのです。そこで生産調整が始まったのでございまして、これは一応五年を目標としてやっておるのでありますから、その間に、ただ米をつくらないというのではなくて、御承知のように転作を大いに奨励して、もっと安定した農家経営のできるようにという方向へ進めつつあるわけでございます。  しかし、阿部委員の御指摘のように、現下の国際的ないろいろな状況の変化というものは、これは私も十分頭に置いて対処していかなけりゃならぬと思いますが、いまこの段階で直ちに、生産調整はもう必要がないんだというのにはちょっと早計ではないか、こう思います。
  103. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 転作を奨励するというのですが、私は、問題はそう簡単に進まぬと思います。転作をするにはそれなりの価格政策なり流通政策なり、あるいは生産に伴ういろんな条件整備というものをやらなければ、そう簡単に転作ができるものではない。いま政府が新たに打ち出しております次への農業の政策を見ましても、あの程度のことで、大豆などはほとんど全部が輸入、小麦などもほとんど輸入に依存する、こういう体質から、大きく脱皮をするなんということは簡単にまいらぬと思うのです。そうしております間に、いまの米に対する減反といったような政策を一方的にずっと進めてまいりますと、何といっても日本にとりましては民族食糧の根幹をなすのが米であります。この米がたいへんな状態になったら、これはえらい騒ぎになると思うのであります。そういう意味では、私はここで減反政策を転換すべき時期にもう来た、これをやらぬとえらいことになる、こういう認識でありますが、御検討願いたい。  それから第二の問題は、農林大臣、減反奨励金を四十八年度で打ち切る、こういっておるわけであります。特に、積寒地帯における基盤整備土地改良事業はまだまだたくさんの問題を残しておるのであります。通年施行でやらなければ基盤整備土地改良はできない。ここで四十八年度で打ち切りということになった場合、基盤整備土地改良事業に対して大きな打撃を与えることになると思います。ここで一とんざを来たすことになると思うのであります。これは早期にめどを出すべき問題ではないか。もう基盤整備土地改良はみんなやめちまいなさい、あとは工業をどんどん伸ばして、工業輸出をやって、そして食糧は外国から買ってくればいいんだということなら別ですけれども、国際情勢はそういう甘い情勢にはないと思うのであります。そういう意味で、この問題、明瞭に方針を出すべき時期だと思います。  それから、私ども調査では基盤整備土地改良を行ないます場合に、導水路の用地、これは全部仮換地を行ない、本換地を行なって登記をとります場合に、国有財産として提供しておるのであります。農業団体、農民団体の中には、われわれもそうでありますが、基盤整備土地改良事業は全額国費で行なえという主張を持ってまいりました。その際に大蔵省は、私有財産制社会において個人資産をすべて公費で改良、改善をするということはなじまぬという議論で反論をしてきておったわけであります。基盤整備で土地改良事業の導水路、これは全部、整備以前の段階に比較をすると、整備いたしました段階では大体用地面積は倍以上になるのであります。この用地はすべて国有財産として帰属をしているのであります。したがって、導水路の事業費については、国有財産になるのでありますから農家の負担はとらぬということが、従来大蔵省が展開をしてきておりました御意見からいたしましても筋ではないか、こう思うのでありますが、これは去年の春に前の赤城農林大臣は、全く同感だ、しかしなかなかそう一ぺんではまいりませんよ、主要なる導水路につきましては、その事業費を農家の負担はとらぬような方向での政策の検討をやりてみよう、こういう御答弁があったのであります。なかなかこれが進んでおりません。これはひとつ前向きな御検討を求めたいのでありますが、これが第二点。  それから第三番目の問題は、田中さんの列島改造論のたいへん重要な部分をなすものに道路政策があるわけであります。この道路政策によって高い生産性を持っておる農地、これがどんどん壊廃されていくのであります。現地の立場からいいますと、高い生産性を持っておる農地、これはやはり避けていくべきだという見解を持っておるのでありますが、農地をつぶしたほうが減反政策にもなるし、仕事のやり方もやりやすいということもあるのか、われわれから批判をいたしますと、無神経と思えるほど生産性の高い農地をどんどんどんどんつぶしていく。これはやはりもっと考慮を払うべき問題だと思います。再検討すべきだと思うのであります。  この三点について、農林大臣の御見解を承りたい。
  104. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 最初の土地改良事業の通年施行のことですね。これは私は、まあちょっとてまえみそになって恐縮ですが、生産調整の一つの大きな効果であったと、こう思うのです。休耕奨励金を出しておる間に通年施行をしよう。これが阿部委員のおっしゃるように、四十八年度で休耕奨励金が打ち切りになる、その後一体どうするかということにつきましては、これは私もおっしゃることがよくわかります。せっかくこの通年施行がうまくいけるような何か具体的なことを考えなければならぬ、こう思っておりますが、若干の時日がございますので、これは考えさせていただきたいと思うのであります。  それから、土地改良事業に伴う助成のことにつきまして、すべて国庫補助でやれ、国庫で見ろと、これは農民の負担を考えて、こういう有効適切なことは国が見ていいじゃないかという所見だと思うのでありまするが、たいへん失礼でございますが、たてまえからいきますと、言うまでもなくこれは受益農民の方々の申請に基づいて、そしてやる仕事でございまして、受益者が応分の負担をしていただくということが、国全体のこの種の施策を遂行していく上に、現在のやり方が適切ではないか。しかしお話のように、負担をできるだけ軽くするようにということにつきましては、これは鋭意そのつもりで従来も心がけておるのでございまするから、これはやはり仕事の量その他を考えていきますと、いまのやり方が必ずしも非常に悪いものではないと私は思うのです。  それから、道路等によって農地の壊廃の問題をお取り上げになりましたが、これは現在の農地法の運用次第であると思うのですね。都道府県知事の権限あるいは国の権限によりまして、農地の場合は幸いにしてこれは条件が整っておれば認可をする、こういうのでありますから、不適当なものについてこれを認可しなくとも一向差しつかえないのでありますから、これは農地法の運用次第である。ただ、おそらく御心配になっておるのは、目に余るような壊廃が行なわれておる、その点の御心配だと思うのです。これは林野とか山林などにつきましてそういう状況がございまするので、このほうは、何か法改正でも必要ではないかというような考え方をいましておるような次第でございます。
  105. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 農業問題だけやっておる時間がないのでありますが、ちょっと農林大臣の答弁、あまり前向きだとは思えないのであります。いまの道路整備、特に高速道、こういう整備の場合に、高生産性農地を片っ端から、きわめて無神経にどんどんつぶしていっているのであります。したがって、農林省の立場で、それはいかぬという基本的な腹がまえを持ってもらわなければいかぬと思うのです。それが、何かつぶすのが当然みたいな話じゃ、農林大臣、話にならぬのじゃないですか。  それから、もう一つ伺いたいのは、私は、かつて農業の共同化という問題に、相当集中的に一定の指導的な役割りを果たしてきたのであります。政府のほうも協業化、共同化が次への展望などといいながら、私の経験では、少なくとも政府機関は協業化、共同化にものすごい不熱心でした。協業化、共同化のどこかにけちをつけるところがないかといったような態度をずっととり続けてきたのであります。  いま、そのことをいろいろあげておる時間的余裕はありませんが、総理、農業の体質改善というのは、たとえば協業化、共同化、農民の意識もみんな変わっていくのです。うっかりすると、田中総理が考えられておる根本のところに触れていくのです。もうけ主義じゃだめだという、その根本のところに触れていくのですよ。農民の意識変化の根幹をなす問題なんです。だから、表では協業化、共同化などということをいいながら、実際上の面ではなかなか——ぼくらはたいへん大がかりに共同化、協業化運動を進めてまいりましたが、政府の各機関は全く不熱心、むしろ妨害する、この妨害に私どもたいへん苦しんできました。  そのことをいまいろいろ論争しようとは思いませんが、櫻内農林大臣、農民の立場で農業の体質を変えていかなければならぬその場合、これから何をやるかということについては、金融面その他いろいろあるのですよ。何をやろうかという前に、いままでのことを何とかしなければやれない問題を農村はたくさん背負っておるのです。その最大のものは、いまこんなぐあいに農村は行き詰まってきましたから、たくさんの負債をかかえておる。この負債を一ぺんたな上げをする。かつて昭和八年に負債整理組合法というものがありました。調べてみますと、あまり大きな効果をあげたとはいいがたいのでありますけれども昭和初期のあの時代においてさえ負債整理組合法などといった制度をつくった歴史があるのであります。いま私どもは新しいものに脱皮しようという前に、その際には必ずいままでのことをどうするかということがある。そういう意味では、負債整理対策に対して、農業の大きな脱皮を遂げようという場合に、解決しなければならないいままでの焦げついておる負債に対して、一定のたな上げ措置なり、そういう具体的なことをやらなければならぬと思うのであります。これを農林大臣、前向きに検討してもらいたいと思うのですが、前向きに検討願えますか。
  106. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 農林省の立場からいいますと、阿部委員のおっしゃることの理解は十分できますのですが、現在、御承知の自作農維持資金によって一応対応しておる。したがいまして、この自作農維持資金の条件をもっと実情に沿うように拡大をしていって、そうしてその負債の整理ができやすいようにしていったらどうか、こう思うのであります。実際上のところをいいますと、確かに負債がふえておりますが、また現在の農家の一戸当たりの預貯金の状況など、これも相当伸びておるのであります。したがって、それぞれの事情に対応していくということが、実際の実情に沿うゆえんではないか。したがって、農家のその状況に応じまして、延納その他のことについてはそれぞれの機関で十分考慮させる考えでございます。(「さっぱり前向きじゃない」と呼ぶ者あり)
  107. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 ただいまの農林大臣の御答弁、ちっとも前向きじゃないという御指摘のとおりでございます。私はいま農業問題を、二、三お尋ねをしましたけれども、結論的にいうと日本農業は案楽死をさしていこう、それが安楽死ではなくて、減反政策のようにのこぎり首をひくようなことにだんだんなっていく。それはやむを得ないという認識のようにはっきりと受けとめざるを得ません。ちっとも前向きじゃないですね。この問題はあとで分科会などでさらに詰めたい、こう思います。  そこで、きょうの私の本題であります土地対策についてお尋ねをいたしますが、この間政府が出されました土地対策によって、田中総理は実効があがるというふうに認識をされておるかどうか、簡単に。
  108. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政府がいま企図しております法制、税制その他が整備をせられれば、相当きびしいものでありますから、実効はあがるという確信を持っております。
  109. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 この間の土地対策要綱によりますと、土地利用計画を五十年三月までに策定をする、こういっていますね。五十年三月ということになると二年先であります。まる二年あるわけであります。その間にあらかた勝負は終わってしまいますね。  それから、法人が現在買い占めておる土地、これはたいへんな面積であります。これをあの程度の土地対策で、総理が期待するような、またわれわれが主張するような、国民に対して安い宅地あるいは公共用の施設のための用地確保、環境を保全する、こういうことがやられるというふうにお考えになっていらっしゃるとすれば、ほんとうにそう思っていらっしゃるとすると、私はよほどおめでたいんじゃないかという気がします。あるいは何かやはりやったそぶりをしなきゃいかぬという認識だとすれば、これは無責任もはなはだしいと思うのです。たとえば、大蔵大臣、この土地税制、これを今度の国会に出されるわけでありますが、適用除外をたくさん準備されました。あれをみんな除外しちゃうと、残るのはどことどこなのかさがすのにたいへん苦労しておるのであります。田中総理、あの土地対策で国民に安い住宅地、公共用地の確保、環境の保全、これがほんとうにできるとお考えなんですか。
  110. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 現時点において考えられる最善のものをやっておるという姿勢でございます。しかし、先ほども申し上げましたように、大都市の中においてどうして住宅を提供するか、土地を上げずしてどう供給するかというような問題については、都市の全面的な区画整理というようなものをやらなければならないということも承知いたしております。これはしかし、現時点においてすぐ立法化ができるかどうかという問題に対して、引き続いて検討しておるのであります。  東京都の例をとってみても、いまわれわれが使用しておる道路のほとんどは区画整理において出されたものであるという事実、しかも、東京の道路の都市面積に占める比率はわずかに一二・五%、ニューヨークの三分の一であるというようなことを考えると、道路は三倍にしなければならない、しかも住宅の坪数はふやさなければならない、用地費の家賃に対する反映部分はいまよりも下げなければ家賃は下がらないということになれば、全面的区画整理を行なって立体化を行なう以外にはないのです。これはだれでも知っておることなんです。知っておることでありますが、これには相当な抵抗がある。現在の区画整理は、居住者の三分の二以上の多数が賛成をした場合区画整理ができることになっておる。これを法律で行なおうということを私は土地対策要綱では提案をしておるのでありますが、これらに対してはまだ学問的にも、また現実問題としてもいろんな問題が存在するということで、今度は、一部市街化区域内の農地の問題とかそういうものに対して処置がとられるように、いま勉強中でございますが、これをもってすべてのものが片づくとは思っておりません。  しかし、現時点においてあれだけの問題を摘出して、これに対して長期的視野に立ったものと短期的な視野に立って処置を行なっておるということでございまして、私は熱意をもって土地問題に取り組んでおる、こういう理解をいただきたいのであります。
  111. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 三木副総理にちょっとお尋ねしたいのであります。  三木副総理の選挙公報では、土地委員会というようなものをつくって、そこで土地の、いま問題になっております安い住宅地、環境保全、公共用地確保、こういう歴史の要請に対してこたえるような確たることをやりたい、こういう意味のことを選挙公報で三木副総理は公約をされておるのでありますが、この三木副総理土地委員会というものの根本的な考え方を、ひとつお聞かせを願いたい。
  112. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私は従来から土地に対して、土地を投機の対象にしておるということは、社会公平の原則からいっても納得のできないことである、したがって、そういう意味から土地委員会のような制度をつくって、その地方においてその土地の、所有権というものは憲法の規定もありますが、その利用については、そういう認可制のような制度をとるぐらいの規制を行なうことが必要である、こういう考え方であったわけです。今度の土地対策の中にも、特定地域においては、そういうアイデアが取り入れられておるという考えで私は賛成をいたしたわけでございます。
  113. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 福田行政管理庁長官にお尋ねしたいのでありますが、過般、宅地事業団という政策構想に対して、福田長官はまかりならぬという態度をとらえた。世上角福戦争再燃などといろいろ伝えられたのであります。私どもも宅地事業団という構想は、どうも屋上屋を重ねるものじゃないか、住宅公団などで十分やれることなんじゃないか、こういう認識を持っておりました。そこで、福田さんがあの宅地事業団構想というものをつぶされた基本的な考え方をお聞きしたいのであります。われわれと一致しておるのかどうか。
  114. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、宅地の造成には非常に熱心なんです。その前提として住宅政策、これはまあ非常に大事な問題だ、こういうふうに考えております。全く御説と同じです。いまの公団でできるじゃないか、二重機構になりはしないか、こういうことでございます。
  115. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで総理大臣にお伺いしますが、いま三木副総理は、特定地域を指定をして、これは現状凍結をしてやっていくという、特定地域指定の今回の土地政策の内容の一つの問題について触れられましたけれども、特定地域というのは一体どういうところを特定されるのですか。政府の発表されました土地政策によりますると、コンビナートあるいは新幹線、あるいは工場分散による受けざらの都市建設、こういう場所を特定地域としてやっていく。私は、ずっとわれわれの地域などに起こっておるいまの開発の問題とからめて、それを冷静に受け取ってみますると、大企業に対して安い土地の供給を保証するということにしかならぬのです。私はやはり、特定地域などといわずに、いま一番問題なのは、そういう新幹線とかあるいはコンビナートとか、力を持っておる、コンビナートに入っていくようなそういうものじゃなくて、もっともっと肝心のところは、私は一般庶民の住まいの問題だと思うのです。そうすると、そこの問題をどうするかということをやらずに、特定地域は大企業に土地を低廉に供給することを保証するということだけにしかならぬようないまの土地対策は、問題にならぬという認識を実はしておるわけです。それをもっとずっと広げるべきじゃないか。大企業にだけ安い土地を提供することを保証できるならば、全国民にもちゃんとできるのじゃないか。どうですか。
  116. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私が、列島改造論土地政策要綱で指定をしましたのは、国土全体に対して、現在局限された地域に適用されておる都市計画法のごときものを適用したい、という考えを前提にいたしております。私は、そういうことを前提にしておりますから、今度の市街化区域内の農地の問題などを解決するためにも、これを税だけで解決しようとすると非常にむずかしいのであります。これを、いまの法律を全面的に適用して、ここは空地である、ここは緑地である、ここは美観地区でございます、空地であり緑地であるところは、当然農地として永久にお使いになってけっこうです、そのかわりに、緑地に指定されれば宅地として売ることはできませんよ、こういうふうに・なることが望ましいという考え方に立っておるわけです。これは将来、私はどうしてもそうなければならないと思っておるのです。  しかし、それには膨大な機構も必要であるし、まず、新全総の計画そのものができたり、長期経済計画日本の全地域に当てはめなければいかぬし、しかも、産業の将来的展望も全部考えて、北海道はどういう工業、また東北はどういう工業、しかもそれをどこに位置せしむるか、中核都市をどうするかという青写真ができない限り、それを全部適用することはいまむずかしいだろう。  まず、さしあたりやらなければならないことはどういうことかというと、中核都市をつくろうとするところ、住宅団地をつくらなければならないようなところ、しかも高速道路のインターチェンジに予定をされておって、そこらの周辺が買いあさられておるという問題、新幹線の駅とか複線化が行なわれる新しい駅の周辺とか、そういうものを特定地区と指定をして、そういうところを目標にして買いあさりが行なわれておるのだから、その地域に指定をすれば、それは知事や市町村長は、届け出の義務を課したり、しかも移動を禁止したり、同時に公共団体に対する買い取り請求権を与えたり、いろいろなことをして開発を押えたりというようなことをして地価の値上がりを押えよう。しかも、四十四年の一月一日というのでありますから、古いものではなく、その後思惑で買ったようなものは、特定地域に指定をすればこれは押え得る。しかしそうなると、その期間全然供給が減って他の地価を押し上げるというおそれがあるから、一年間の徴税の余裕期間を置いて、その間で吐き出させよう。まあ机の上で考えるほど土地が簡単なものでないことは、これは御承知だと思いますが、しかし、学問的な目張りは十分してあるということでございまして、これはだんだんこれからそうしたい、こういう考えでございます。しかも、町村や府県には公社がございますので、この公社や、農協法の改正において、農協がレンタル制度で宅地を提供できるようにしようということも考えておるので、いまの制度の中で考えられることは、大体目張りをしているような気がいたします。しかし、これは審議の過程、これから国民的な合意が得られれば、もっともっと合理的なものができると思います。  さっき三木大臣が述べた土地委員会の問題でありますが、これも、今度町村及び都道府県等には土地委員会のごときものを設けて、町村が一番売買価格の適正な状態を知っているわけですから、そういうふうにしようということにしております。  もう一つ、土地委員会というのは全然別な委員会の定義がされておるわけです。これは、全国的に土地利用計画を定めて規制をするということにしますと、やはり都市の中などにおいては、これは税金でもって土地を買うということよりも、現に土地を所有しており、現に家を持っており、現に住宅に住んでおる人が主体になって新しく改造すれば一番いいことであります。ところが、底地権がどうであるのか、一体借地権がどうであるのか、間借り人の権利がどうなのか、これをやるには裁判の判例を求めなければならないということになりまして、これはもう全く違うわけであります。一つ一つ全部違うわけであります。その意味土地委員会のごとき委員会を設けて、この公示をした、底地権は幾ら、それから借家権は幾ら、間借り人の権利は幾らということで仕事が始められるようにしてはどうか。そうしてそれによって公の機関が代執行を行なえるときにはその価格でもって行なう、しかし裁判を受ける最終的な国民の権利は害さない、こういう意味土地委員会のごときものが必要である。これは人事委員会とかそういう趣旨のものでありまして、公が介入する場合の判断の材料、いわゆる代執行が行なえるような線を引くために土地委員会というものをつくる必要がある、こういうふうに述べておるのでございます。
  117. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣、基本的な点で、これはあの土地対策要綱に従いますと、昭和五十年の三月までに土地利用基本計画というものを策定をする。その先になりますね。そういたしますと……(田中内閣総理大臣「何がですか。委員会ですか」と呼ぶ)そうです。(田中内閣総理大臣委員会はすぐできるのです」と呼ぶ)そういたしますと、特定地域のみならず、いま国民が一番苦しんでおりますのは、大企業の土地取得で困っているんじゃないのです。大企業が工場などを建てる用地の問題で国民が困っているんじゃないのです。大企業の工場立地のための土地なんというものは、全部もう県も市町村も、あるいはその他企業それ自体が、さっき言ったとおり、民間デベロッパーという名の土地占領軍を総動員して、土地はもうふんだんに持っているのです。問題は、地価がどんどんつり上げられて、三十年、四十年働き通した労働者がささやかなマイホームの願望もかなえることができない、国民はもう住宅なんというものには全然手が出ないという状態になってきておるところに問題があるわけなんです。  したがって、そのことも含めて、特定地域なんという、大企業に安い土地を提供するということに役割りを果たすようなものじゃなくて、全部の土地を当面現状凍結をやって、そして市町村が中心となっての利用計画を策定をさせて、その中に土地管理委員会のような、あるいは公聴会のような住民参加の形態でその土地の利用のしかたをはっきりさせて、安い住宅地、それから環境の保全、公共用地の的確なる確保、こういういまの時代の要請に対してこたえるためには、部分部分だけやってもどうにもならぬと思うのです。部分部分だけをやっていくという考え方は、これはやはり大企業に対して土地を安く提供する役割りを果たす。私の町なんか現にそうなんです。ある大きな企業には三・三平米で一万円くらいで造成した土地を渡す。その工場が来ますから、住宅地がうんと必要になってまいります。たくさん必要になります。そのあたりはもうみんな現実に三万円、四万円、五万円となっておるわけなんです。それも一定の方法できちっと規制しなければ、国民が強く求めておる安い土地ということにはならぬのです。  私は、今回の政府の出されております土地対策要綱というのは、どうもかっこうだけはやらなければいけないというので、中身のほうは、企業の側は守るけれども国民の求めておることはずっと先ということにどうしてもなっていく。なっておるのです、内容が。いますべての土地というものを現状でまず凍結をして、そして的確なる方針の原則は何かということになると、やはり安い土地、環境の保全、公共用地の確保という問題だと思うのです。この原則に基づいて運営のしかたを若干時間がかかってもきめていく。それまでの間は、当面のやり方は、少々荒っぽくとも原則を明らかにして、市町村なり何なりの許可か何かとらなければ土地の利用その他はできない、こういうしかたできちっと押えないと、国民の求めておることにこたえることはできない、わが党はそういう基本的な立場に立っておるわけです。
  118. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 特定地域を指定することによって特定の企業の利益を守ろう、そんなことは絶対考えておりません。これは、企業が買いあさっておるような土地の投機を押えたり、乱開発を防止したり、よりよい住宅を提供したりという理想にいずるものであることは間違いありません。そのため、農地のレンタル制度を行なったり、市町村を中心にして宅地の供給というものを行なうことが望ましい、こういうことで土地公社などをつくってやってもらおう、農協もやってもらおう。農協が中心になって、あの沢のたんぼが幾らであるかということは農協が一番知っておるわけですから、そういう人たちに主体になってもらって宅地の提供をしてもらおうということでありますから、これは画期的なものであることは言うをまたないわけでございます。  しかも、土地を全部凍結しろということでございますが、凍結をするということ自体は、これは裏返しに供給がとまるということになります。これは社会主義的なものの考え方で、私有権そのものに介入できるという考え方をとれば別でございますが、凍結というのは一年間移動が禁止されることになって、供給面が全くとまってしまうといううらはらな問題が一つ存在するということを考えていただきたいと思います。  それからもう一つは、町村に全部届けさしたらどうかという問題も検討しましたが、これは年間二百九十万件という土地の移動というものに対して、一体そういうことが可能なのかどうかという問題もありまして、いろんな角度から専門家が考え、この税制そのものに対しても税制調査会でも相当な問題があったことは、報道されて御承知のとおりでございます。しかし、現状に徴して最大の努力をしようということによって、いま立法作業が続けられておるということをひとつ御理解賜わりたい。
  119. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 総理大臣、現状凍結といって、一切売るな買うな、一年間そのままじゃ、そういうことをわが党は言っておらぬのです。売り買いを自由にやらすなということなんであります。そこには、市町村あるいは土地管理委員会、あるいは公聴会などによる住民参加、こういう一定のチェックを経て土地の運営がされていく。売り買い一切するななどということは、わが党は言っておらぬわけであります。いまそのことを急いでやらないと、政府で出されましたこのことがだんだんかっこうがついてまいりましても、それじゃ間に合わぬということなんであります。たとえば開発行為の規制強化、こういっていますが、勧告できるだけでしょう。聞かなかったらどうするんですか。聞かなかったらどうにもしようがないじゃありませんか。  それから、公有地の地価評価の体系整備をはかる。今回の予算にも計上されておるわけでございます。しかし、この地価公示制度というものは、総理大臣、これは一体何なんですか。あれは守っても守らぬでもどうでもいいというものなんですね、現状は。たとえばNHKのあと地の問題などは、まあ地価公示価格の三倍ともいいます。とにかく地価公示制度なんというものは、いかにまやかしものであるかということがあれで明らかだと思うのです。これにまた今回予算を計上してやって、どういう意味がありますか。まあ守らぬでもいいんだぞということで公示するということですね。あれが最低価格というならまた話は別だと思いますけれども、一体いまの政府土地対策要綱で、国民が求めておる適正な地価、低廉な住宅地の提供、都市の整備、こういうものが進むというふうに思われません。いま指摘しましたような問題点総理はどういうふうに考えておりますか。
  120. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 標準価格を設け、基準価格を設けよということが間々御発言がございます。それで、その基準価格を上回ったものに対しては重課すべきである、これは簡単にそう考えやすいのであります。さて基準価格というものは何に求めるかというのが、過去にいろいろ考えられて、一つの結論として公示価格制度が現に出現をしておることば事実でございます。しかし、公示価格というものを全国的にきめるとすればいつまでかかるか。これは五十一年までかかるということでありまして、五十一年までかかるものなんか、いますぐ全国的な基準価格にならないじゃないかということであります。  もう一つは、課税標準額の何倍かにする。まあ三倍とか四倍とか五倍とかにやったものを標準価格としてはどうかという問題があります。これは山林等、あるいはいま売買されておるような状態から考えると非常に高くなるのですが、どうもいまこれを考えるときには、非常に安い価格しか出ないという問題もございます。しかも、標準価格の何倍ということでやると、いまのNHKの問題がございます。あれはちょうど倍になっております。四百七、八十万円が八百何十万円で、上ものを利用することでもって……(阿部(昭)委員「千百万円だ」と呼ぶ)千百万円は土地及び建物の値段でございまして、(「建物はこわすんだ」と呼ぶ者あり)建物をちゃんとこれは使うということになっておって、ちゃんと入札価格には土地の値段としては八百五十万円ということでございますから、それを額面どおり受け取っても、まだ公示価格の倍あるということでございますので、やはり御指摘になればいろんな問題は確かにございます。  土地は、きのうも申し上げたとおり、同じ丁目、同じ番地の中でも、隣の人が買うときには倍出しても買う。自分の持っておる土地の間口がもう一メートル足らないために、もう一メートルあれば建物は四階、十メートルができる、七階、二十メートルができるということになれば、これはもう価格というのは全然違うわけでありまして、土地の、これはもうすっかり移動を禁止してしまう、国有にしてしまうということになれば別でございますが、価格ではなく、土地は利用の制限を行なう、こういうことにやはり重点を置かなければならないんじゃないか。いま、利用だけではなく、土地が思惑買いをされているというような問題がありますので、そういう面に対してすべて目張りをやろうということでございまして、そういうなかなかめんどうな問題にとにかく誠意をもって取り組んでおる。お知恵があったらどうぞひとつ御披瀝のほどを切にお願いします。
  121. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 NHKの会長、おいでを願っておるのでありますが、いまの地価公示制度、これに対して一体どういう認識をお持ちでいらっしゃるか、このことをお伺いしたいのであります。  それから郵政大臣からも、この地価公示制度というものをどういうふうに理解をなさっておるのか、お伺いしたいと思います。
  122. 前田義徳

    前田参考人 お答え申し上げます。  私どもの実際的な見地からいたしますと、公示された地価というのは、取引の基本的なたてまえを明らかにしたものだと思います。  それでは一体、実際上たとえば、御指摘いただきましたが、今回の私どもの措置はどういう措置をとったかと申しますと、少なくとも日本で最も権威あると考えられる三社にこの公示価格を基礎としての鑑定をしていただきました。これによって、三社の平均が大体百五十一億でございます。これに対してさらに、これを公開入札する場合には、最低二割、少なくとも三割の上昇があり得るという鑑定でございます。私どもはそういう意味で、これには幾つかの議論があるかもしれませんが、公示価格を尊重して処理をしたということでございます。
  123. 久野忠治

    ○久野国務大臣 御指摘の地価公示制度は、これが有効に作用することができ得るように、政府においても目下検討中でございまして、早急にこの結論が出ることを期待をいたしておるような次第でございます。
  124. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほど総理からいろいろお答えがありましたのをちょっと補足させていただきたいと思いますが、まず第一点は、土地利用の基本計画、これは五十年三月ということになっておりますが、これは新全総を見直すという問題との関係でそうなっておりますが、これより先立ちまして、いま緊急を要する問題でございますから、この点についてはもちろん作業を進め、実行していくわけでございます。  それから特定地域の問題がありましたが、これは一般的に、都市の形態によりまして一応三段階ぐらいに分けて、市町村長が届け出て県知事がこれを規制するという考え方を持っております。ただ、特定地域につきましては、その面積に関係なく重要度に応じて知事がこれを規制する、こういう考え方でございます。  それから第三点は、勧告した場合に従わなかったらどうするかというお話でございましたが、これについては、公表をいたしたり、また罰則も目下検討いたしておるわけでございます。
  125. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 郵政大臣、マスコミ筋で伝えるところによりますと、公示価格の三倍、不当だ、いまの地価高騰というこの客観情勢の中で、NHKの持つ公共性、そういう意味からいっても問題があるというので、勧告をしたのか、介入したのか、いろいろいわれていますが、どういう勧告をし、どういう介入をしたのか、お聞かせを願いたい。
  126. 久野忠治

    ○久野国務大臣 結論から先に申し上げますと、勧告をしたり介入をした事実はございません。御承知のように、現行の法令上のたてまえからいきまして、そのような権限は郵政大臣にはございません。
  127. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 総理大臣、これからさらに地価公示制度というものを拡充強化をするという段階にあると思います。いまのように、守っても守らぬでもいいという公示制度なら、これはいかぬと思うのです。したがって、地価公示制度というものを一体どういうふうに守られるものというぐあいにするのかということだと思うのですが……。
  128. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 地価公示制度というのは、今度初めて出るんじゃないわけであります。国会の御審議を経て、地価公示というものは過去ずっと続けてきておるわけでございます。これは適正な価格で土地の取引が行なわれるように、異常な暴騰等に対して、当事者ばかりではなくまわりの人も、地価公示という一応の目安というものでそういう不当な動きがチェックされれば望ましいので、国民の利便に供するということでございます。ですから、地価公示というものをもっと法制化して、地価公示価格を基準価格としてこれを税の基準数字にするとか、地価公示より異常なもので取引をした場合には罰則を設けるとかという新しい法が地価公示に付加される場合には、これは別でございますが、そうではなく、正常な地価取引が行なわれるために、国民の利便に供するということが現行の地価公示の一つの目標になっているわけでございますので、だから、現在のままでこれが異常に高く売買されたりということで、地価公示そのものを直ちにやめてしまえばいいんだということには、これはつながらないわけであります。少なくとも自分の持っているこういう町のこういうところはどのくらいであるということ、いままでいろいろな問題があって統一できなかった税の大蔵省と自治省の評価が違うというような問題は、やはり将来一つにするためにもある段階における一つの問題だ、こういうふうには評価をいたしております。
  129. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 何というのか、すかっとしないですね。地価公示制度を整備をしていく、これはやはり守らせなければいかぬと思うのです。守らせるようにしなければいかぬと思うのです。そのために必要ないろいろな法制化なり何なりをはかるべきなんじゃないでしょうか。
  130. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 阿部さんの立場で言われることはわかるのです。ところが、土地は、お互いの持っている土地でも全部違うのです。同じ番地の土地でも全部違うのです。それは、道路に面して超高層の建つところと、全部違うのでございまして、同番地、同地域の中でも違うのでありますから、公示制度は、国民の取引に対する利便を供する、もう一つは、正常な取引の一つのめどにするということであって、個人にはほんとうのめどだと思うのです。めどを供するということであって、この実態把握というものと地価公示というものが技術的、学問的に非常にむずかしいというもので、これを罰したり何かに使うことはできない。これはできません。だから、これを罰するなら、これは自由を押えるのですから、それなりの科学性がなければいかぬし、これはもうとにかく、何番地の何号のどこは幾らであるというところが立証されない限りにおいてはできないのであって、これは国民の利便、それから土地の取引の正常化をはかるという一つの手段であるということで、これが全く評価するに値しないとは、私は、国会の長い審議を通じても、そうは理解しておりません。
  131. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 総理大臣、たとえば国道をつくる、県道をつくる、 いろいろな公共施設をつくる、ここで土地収用をやらなければいけないという場合の価格算定の基礎は何かということになりますと、この公示価格でしょう。これは強権でやっておるわけです。一般は、これはめどです、押えることはできないのですというのでは矛盾しませんか。やはり一定の限界で公示価格をお互いが守れるような土地政策なりいろいろなものをつくらなければいかぬということなんじゃないですか。そのことを怠って、これはただめどなんですと言うが、政府のほうは、公共の福祉のためにということで、個人の所有権にかかる土地を公示価格をもって強制収用するわけなんでしょう。この価格が基準ですよ。土地収用をやります場合は、基準はそれなんです。ちゃんと補償基準というものが明らかにされておるのです。その中に明らかにこれが入っておるのです。ほかは守らぬでもいいというのはおかしいんじゃありませんか。
  132. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 守らぬでもいいというんじゃありません。こういう制度を現につくって、国民の前にめどを示しておるのでありますから、これを中心にして取引が行なわれることが望ましいことは申すまでもありません。土地収用が行なわれる場合には、これら基準を基準価格として行なわれるとか、過去の売買実例とか、これはしかし国民が不満があった場合には、これに対して法律をもって裁判で権利を主張するという道が残されておるわけでございます。ですから、公示価格そのものは、あなたが言うように、実際守られるようなものであることが望ましいということだけはもうそのとおり考えております。  今度——今度の問題まで言及しませんから、いずれ……。
  133. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで総理は、知恵があったら出してくれということをしばしば言っておられるわけであります。したがって、この予算審議と並行して、これは委員長に扱いをお願いしたいのでありますが、私ども、この政府の出しておりますこれじゃどうにもならぬと思っておるのです。これじゃ全部しり抜けです。もっともっとちゃんとした、たとえば三木副総理のおっしゃるような土地委員会、こういうものにもつと権威を持たせていく。土地価格の公示制度、こういうものもちやんと運営されるようにしたい。いろんな願望を持っているわけです。そういう野党の意見もこれから今国会を通じて反映をさしたい。そういう場を持ってもらいたい。持たなければいけない。このことを扱いとして委員長のほうで計らっていただきたいと思うのです。
  134. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これはまだ要綱でお示ししているだけでございまして、いま法律案として提案をいたしますから、これは審議の過程において修正案も出るだろうと思いますし、もっといいことがあれば、私たちも実行可能であり効果をあげられることがあれば、これは衆知を集めてやりたいのでありまして、政府案でございますから絶対などと考えておりません。だから、そういう審議の過程でお知恵はひとつぜひ出していただきたい、こういうことでお願いいたします。
  135. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで、時間がございませんので、いまの土地税制の問題をお尋ねをいたします。  その前に、田中総理列島改造の重要な柱の一つに工場追い出し税というのがあったのであります。これはどこかおかしくなってしまいましたね。あれはどうするのですか。
  136. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 引き続いて検討いたします。これはもう私個人としては非常にやりたいんです。やりたいんですが、自治省で事務所税というようなものも考えられておったようでございます。まあそういうような問題とあわせて検討するということでありますが、これはこれから——都市における既存の工場は建築基準法及び都市計画法等によって許可をされております。おりますが、過大都市の中で公害がこれだけ問題になってきたときに、結局建蔽率六〇%までとか七〇%までとかというようなものを、過去に受けた既存の権利であるとはいいながら、やはり新しい事態に対処して、既存の法律によってすでに受けた権利であっても、何年か後には工場の建蔽率をこうしてもらいたいというようなことをやはり考えざるを得ないような状態じゃないか。これは学問的には抵抗があります。既存の法律によって得た利益を侵害するのだということでありますが、しかし、大都市の中における公害問題等を考えるときには、どうしてもそういう問題にまで手を入れざるを得ないんじゃないかという問題が一つあります。もう一つは、地下水のくみ上げ禁止をしなければならない。くみ上げを禁止すれば、もう当然操業ができなくなるわけであります。もう一つは、放出する有害物の総量規制というものをきめるときにはどうするかというような問題があるのです。  だから、そういう問題を全部考えないで、ただ追い出し税というものだけを直ちに行なってどうなのかというような問題があったわけです。ただ私は、最もきき目がありますから、追い出し税というのはぜひやりたい。追い出し税をやって、その部分だけは受け入れる地方は固定資産税や何かを免税しよう、こういう考え方は、私は捨てるようなものではなく、まだ持ち続けておるし、相当強力に主張しておるのでございます。
  137. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 総理大臣、あなたはこの前の総選挙に臨む前に、あたかもこの工場追い出し税を日本列島改造政策を裏づける有力な政策の柱の一つとしてものすごい声で演説をされたのです、選挙のずっと前に、選挙の基盤づくりのときに。それがたちまちの間におかしくなってしまうということになると、決断と実行も怪しいものだというふうになってくるわけであります。  そこで中曽根通産大臣、この工場追い出し税というものは通産省の行政ときわめて重大な関係があります。そこで、この工場追い出し税に対して中曽根通産大臣はどういう認識をされておるか。簡潔に……。
  138. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 各省との間でいま思想調整をしております。何らかの方策によって過密地帯における工場を過疎地帯に持っていくということは国の大方針でございますから、それが促進される方向でものを処していきたいと思っておりますけれども、各省間にいろいろ、既存の法律秩序やら現状に対する認識、そういうような関係においていま調整しているというところでございます。
  139. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 総理大臣、まだ持っております、まだ工場追い出し税の考え方を私は持っております、こう言われるのですが、いつこれをまとめられるお考えか。
  140. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 この問題はできるだけ早い機会にまとめたい、こう考えます。ただ、追い出す場合には受けざらをそろえなければならぬわけでございます。ですから、受けざらとの問題を調整をしながらこれを考えるということでなければ、これは追い出すだけでもって、煙攻めにするということであって、新憲法の精神には反する、こういう面もございますので、そういう問題を調整しながら、これはやっぱり有力な手段であろう、これはもちろんそう考えております。
  141. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 総理大臣、追い出されるのは公害や何かたいへんな問題を持っておって、都市地域の中にはもうおることのできぬような工場が追い出される。また、いまの田中さんの工場分散あるいは列島改造、このレールの上に乗っかるものも、結局いまの場所には公害や何かでおれぬようなものだけが、まだ地方のほうは公害や何かもやかましいこと言わぬだろうというので出されていく、こういう見方をしておる識者が非常に多いのであります。このあたりはどうですか。
  142. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 公害を出さないような知識集約的なものに変わらなければならぬことはいうまでもありません。いままで石炭をたいておったものが重油になる、それが天然ガスになるというような施設に改造するようにいま求められておるのでございますが、敷地が狭隘であるために公害施設さえできない、設備の転換もしがたいという工場もたくさんございます。もう一つは基地と同じことでありまして、もとは工場地帯のような雑地であったものが、今日周辺が過密化して、そして増設もできないというような状態でございまして、住宅地域の中における工場は、住居専用地区の中における工場は増設を許さない、電力の増強も許さない、こういういま制限をしているわけでございます。そういう意味で、いまある工場がすべて公害発生源であって——何がしかの公害は出ると思います。それは音もするでしょうから。人間が通るし、車が通るし、オートバイが通るわけですから、それは全然無公害であるというわけにはまいりません。まいりませんが、東京の都内にあるものと人口十万の都市の周辺にあるものと、新しく立地条件を基準に従って、そして周辺を整備された中で操業をするという場合に、自然の浄化力というものが全くウエートが違ってくるということも考えられますので、それはやはり追い出すということ——追い出すということばはよくありませんが、地方分散の促進のためということになるわけでございますが、そういうために、追い出し税どうなったんだというふうにお聞きになるあなたも、やはり追い出し税が有力な手段であって、可能ならばやるべしだという立場に立って御質問いただいているのだと思います。私は、そういう意味でやはり追い出し税というか、何か都市における産業施設というものは、これはできるだけ誘導政策の一助にしなければならないというふうに考えております。
  143. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 時間がございませんので、大蔵大臣、先ほど申し上げましたいまの土地税制、全部適用除外をぼんほんやってしまって、残っておるのをさがすのにぼくら非常に難儀をしておるのであります。これじゃまるきり効果があがらぬのじゃないかというふうに思いますが、基本的にいまの土地税制というもの、残ったものは一体何なんです。残らぬじゃないですか、ほとんど。
  144. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど来いろいろ御論議を拝聴いたしましたが、たとえば先ほど農地関係のことも御心配のようですが、一例をあげれば、保有税の課税対象から除外するものとして、農林漁業関係の、たとえば規模の拡大とか農地の集団化とかいうような点を中心にした施設等についても課税除外をするわけでございます。要するに、宅地をはじめ好ましい土地の造成を促進するという意味がこの二つの税の中には入っておるわけでありますから、除外というよりは目的達成の一助として、むしろこういうところに課税しないということがこの税の目的でもある。要するに、この税は現下の土地対策に対する地価の抑制ということもある、仮需要の抑制ということもある。しかし同時に、好ましい宅地造成あるいは農地の保全というようなことをまた促進する目的を持っておりますから、旧来的な税法の観念では律し得られない要素がある、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。  同時に、そのほかにもいろいろと土地の広さ等につきましての免税点というような問題もありますから、こういう点を勘定に入れて、全体の面積でこれこれということをいま正確に申し上げるだけの数字的な説明はできませんけれども、大部分のところがこの対象になるということは当然のことでございます。
  145. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 時間がございませんからまとめてお尋ねをいたしますが、外務大臣、国内で土地買い占めをずっとやった大手あるいは民間デベロッパー、これが今度、最近ではどんどん海外の土地の買い占めに乗り出しておる。海外で評判が相当悪くなってきておるという指摘がございます。いま海外に、どういう土地の買い占めに国内の大手なりデベロッパーが入っておるというふうに把握をされておるか、お聞かせ願いたい。
  146. 大平正芳

    大平国務大臣 つまびらかにしておりませんが、御要求がございますならばできる限り調べてみます。
  147. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大蔵大臣、昭和四十四年に分離課税をやったわけですが、この分離課税によってどれだけの税の減額が行なわれたか、お聞きしたい。
  148. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 事務当局から数字を御説明いたします。
  149. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 四十四年以来の土地の譲渡につきましては、御存じのように、所得税の累進課税を比例税率にいたしたものでございますので、それがなかりせばどういうことになったか、これは累進税率と比例税率との関係がございますので、比例税率でなしに、累進税率に戻せばおそらく譲渡が減ったという関係にございます関係上、減税額幾らという計算は事実上できないわけでございまして、私どももそれはいたしておらないわけでございます。
  150. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 わからぬというのはおかしいんじゃありませんか。わからぬというんなら——前に当時の大蔵大臣は、分離課税でやるというのはある意味では補助金みたいなものだ、こういう答弁を、これは福田さんじゃなかったかと思うのですが、なされておるのであります。補助金のようなものである以上、やはり政策目標にちゃんと合致しておるというのでやったことだろうと思うのです。じゃ、そのことによってどれだけの減免が行なわれたのか、それはわからぬというそんなばかな話はないと思う。そうじゃありませんか。
  151. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 こうであったなりせばこうこうであったろうという推計を申し上げることが、いささか権威がないかと思って事務当局も控えていると思いますが、その点についてはまた御説明をいたす機会もあろうかと思います。  それからもう一つは、四十四年当時の税制改正によって望ましい宅地等の供給がふえると思いましたが、そのほうの効果はあまりなかったので、今回の税制改正においては、これを補足する意味で、補完する意味で、四十四年一月というところを起点にいたしましたことは御承知のとおりでございます。
  152. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 数字は出せるというんでしょう、推計のものは。出してください。
  153. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 これは直接のお答えにはなりませんが、四十三年に個人が土地を売ったということに伴いまして納めていただいた所得税の税額は、大体六百億円ぐらいではないかと思っておりますが、それが四十四年には大体倍、千二、三百億、四十五年には二千億近く、四十六年には三千億をこえております。という意味は何かと申しますと、あの制度によって税は安くなったわけでございますけれども、その結果供給がふえましたから、したがって、税は安くはなっておりますが、今度は供給促進になっております関係で、納められた税額はふえる、こういう関係になっているわけでございます。  それでは、もしこれが前のように戻ればどういうことになるかということになりますと、今度は累進税率になりますと供給が減りますから、必ずしもこの数字から直ちにどういうふうになるか、この数字から効果を測定することは無理であるということを申し上げておるわけでございます。
  154. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 ちょっとおかしいと思うのです。補助金のようなものだというんでしょう。それによって供給がふえようとふえまいと、もしこのあれがなくて総合課税をやった場合には、税収は何ぼであったかということはちゃんと出てくると思うのですよ。そう小出しじゃなくて、ちゃんと答弁したらどうですか。
  155. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 この制度がなければ、供給は当然減っておるわけでございます。当然供給が減っておるわけですが、それではこの制度があったからどれだけ供給がふえたか、この制度がなければどの程度減ったかということは全く想像がつかないわけでございますから、その推定はできないという状況にございます。
  156. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 総理大臣どうなんですか。政策効果があったわけでしょう、補助金のようなものだというのですから……。
  157. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 補助金的なものであるということは実体的な御説明をしたのだろうと思います。要するに、税制を累進税から平たい税にした、俗に申しますれば。それで相当の土地供給があるだろう、ある程度はございましたわけですが、その供給量がはたして税の関係でどのくらい出たか、これがなかりせばどんなに減ったであろうかということは、これはなかなか想像の域を脱しないわけでございますから、そこで言えなかったわけです。  それから補助金的というのは、補助金を出すようなものでなくて、減税の効果がどういうふうに経済的に及ぶかという点をとらえれば若干補助的な行政であった、政策であったと、こういうことは言えると思いますが、いま申し上げましたように、それで何百万坪がどうなったかといことは、これは推計の域を出ませんので、との点は御了解いただきたいと思います。
  158. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大蔵大臣、結論的に言うと、あそこで分離課税をやったために土地成金、これがものすごく出たわけなんです。これは御存じですね。ものすごく土地成金が出ました。そこで、そのころを一つの頂点として民間デベロッパーという名の土地占領軍といわれるものが、至るところに進出をするということになってきたんです。そのことが、いまのむちゃな土地問題というものが起こってきた大きな要因になっておるのです。これをなぜ政府が隠さなければならぬのですか。——まあいいです、答弁はいいです。時間がありませんからあとでまとめて……。
  159. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 御指摘のような…・。
  160. 根本龍太郎

    ○根本委員長 大蔵大臣、ちょっとお待ちください。
  161. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで、一つは、昭和四十四年以降のものに土地保有税というものを限定したことは、私どもは賛成できません。その以前からもずっとあるのです。土地を営利の目途にしようというので土地を買い占めていった動きはその前からずっとあったのです。田中総理、池田内閣時代の三十五年当初、このころから土地が大きな問題になるということを指摘されておったんです。土地はそのころからたいへんな問題になるという指摘が行なわれておったのです。  それから原則的に言うと、私どもは未利用地税というか、値上がりを待っている土地、こういうものに課税をするというのが一番急を要する問題だと思うのです。これはまあいろんな議論があるというので今回よけて、こういう非常にすかっとしない土地対策になったというふうに私ども思います。  それから、大蔵大臣答弁なさらぬのですが、九項目の適用除外で残ったもの、これを私どもずいぶんと調べましてもざがすのに骨を折るのです。どっかにみんなひっかかってどうもうまく抜けられるようになっておるというふうに思いますね。  それから譲渡課税、この場合二〇%というんですが、問題は、総理大臣が記者会見や何かの際に、何だかんだ合わせますると七〇%課税だ、これはまあと、こうおっしゃるんですね。いま現実に一体どういうやり方が行なわれておるのかということになりますと、大手が土地を買い占めた場合、子会社に渡し、あるいはダミーを使い、いろいろな段階でみなくくっておるわけですね。そういたしますると、私どもの認識では、厳密にいえばこの分離課税の二〇%だけやれば、あとは自由になるというのがずいぶんとたくさん出てくるように思うのです。譲渡税ですね、これはむしろ譲渡課税の問題をもっと決定的に、ほかのものを除外してもびしっとこうやるべきだという考え方なんです。そうしないと効果はあがらぬと思うのですが、総理大臣どうでしょう。
  162. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、法人が持っておるものを、法人に将来の値上がりを予測をして買わしめないようにという一つの手段として考えておるわけでございます。(阿部(昭)委員「買っちゃったよ」と呼ぶ)買ったものに対しては保有税で吐き出させる。そうして保有税で吐き出させるだけではなく、これを売った場合には法人税、地方税と合わせて七〇%程度のということでございます。これは分離課税としてはどうかという問題でありますが、分離課税にすれば、これは赤字の会社はまるまるということになりまして、これはもう七〇%課税といえばあまり妙味が……。
  163. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 七〇%になんかならぬ。
  164. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 なります。四七、八%プラス二〇%、ほぼ七〇%で……。
  165. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 子会社にしてうまくやりますからね。
  166. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 法人であればその状態においてもみな課税が行なわれるわけでございますから、会計が違えば、すべて全部税の対象になるということでありまして、これは相当高い税であるというふうに考えます。
  167. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ちょっと補足して申し上げたいと思いますが、一つは、このいわゆるいま御指摘の租税回避行為を避けなければなりませんから、たとえば組織変更または合併による資金の受け入れに伴って計上された土地の評価益とか、それから実質的には土地の譲渡益に類すると認められる株式の譲渡益、それから土地の売買の仲介手数料の中で実質的に土地の譲渡益と認められたもの、これらはすべて課税対象にすることにしてありますし、それから、この税の施行は一年間猶予期間がございますが、しかしその間においても、子会社あるいはダミー等を使ったような、有効な土地供給に結びつかないようなものは、その猶予を適用しないというくふうもしておりますので、租税回避行為は何とかこれを避けるように、防止するようにいたしたいと考えております。
  168. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 譲渡税の場合に、適正利潤率という問題が非常に重要なあれを持つと思うのです。これは一体どういうふうに考えているのですか。
  169. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは文字どおり適正な利潤率ということにしたいと思いまして、これは正常な各会社の内容等にわたりまして調べなければなりませんで、一律に何%ぐらいということは言えませんが、文字どおり適正な利潤率ということを総合判断してきめたいと思っております。
  170. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 時間がございませんので、土地税制の問題をもっと詰めなければならぬのでありますが、さらに次の機会にもっと明らかにしたいと思います。  基本的な点で、今回の政府の御答弁をお聞きいたしましても、私どもこれで十分の政策効果をあげられる、国民の期待にこたえるような結果が出るという保証は何にもない、こういうふうに言わざるを得ません。したがって、これから、先ほど土地対策の問題とあわせて私どもの政策を展開しながら、政府のほうも、総理がよく言われておりますように、われわれの提案する内容を大胆に採用して、いい法制化をはかるようにしてもらいたい、こう考えるところであります。  いま一つ。一部、二部上場会社で買い占めた土地の面積はたいへんなものであります。これは一説によると、六十兆円程度の帳簿価格、実価格よりはもうちょっと低く押えたものでも大体六十兆円ぐらいの含み資産がある。これは一部、二部上場会社だけでありますが、それ以外のものを含めますと、いま御案内のように、土地本位制の時代だ。金融機関でも何でも、土地を持っていけば、これを担保にしてどんどん金を貸す、担保にしなくても、土地を持っておる会社ですとどんどん融資をする、こういうことになっておるわけであります。したがって、含み資産が六十兆ともいわれ、あるいはもっと多い百兆くらいあるぞともいわれるこの問題をどういうふうに考えるべきか。私どもはやはり、再評価をして税を課すべきじゃないかというふうに考えますが、総理大臣、いかがでしょう。
  171. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 再評価を強制的にするということも、確かに一つの考え方であると思いますけれども、同時に、有効に有用に社会的に利用されているところと、あるいはまた、先祖伝来の土地を正常に持っておりますところと、その再評価のときに何を強制的な基準にできるか、これは実際上非常にむずかしい問題でございますので、今日提案いたしておりますものにはそれは含んでおりません。
  172. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 時間がございませんので、最後に、田中内閣発足以来の政治資金規正法に関する問題。これは、前の佐藤内閣のときも、最初の段階は相当やりそうなかまえを示して、最後はいいだけ骨抜きをして、なおかつつぶす、こういう結果になりました。今回、田中総理は、頭から全然やる気がないというふうに、私ども非常に残念に思うのです。しかし、今回の選挙で二当一落などということがいわれました。何のことかと思ったら、二億円使った候補者は当選して、一億円の候補者は落選するということらしいのですね。私などのように貧乏人は、どうにも気の遠くなるような話なんであります。  したがって、政治資金の問題、これは議会制民主主義の根本に触れる課題だと私は思うのです。これに対して田中内閣が、前の佐藤内閣よりももっとうしろ向きというこの状況は、いかぬことじゃないかと思うのです。したがって、すでにもう前に選挙制度審議会で出しておるあの線だけでもやったならば、まだまだ効果があると思うのです。選挙区制の問題とか、政党法とか、いろんなものをからめなければいかぬと言う言い方をなさっておるのですが、この政治資金規正法の問題は、総理は、いま政治に対して高まっておる不信感をなくするという基本的な立場で今国会でこれを提案しまとめる、こういう立場に立つべきだと私は思うのです。あらためてこのことをお伺いしたいです。
  173. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政治資金規正法の問題が重要であることは、私も理解をいたしております。政治資金規正法が初めて取り入れられたころ、これはメモ・ケースのものでございます。いうなら、メモ・ケースの一つの法制でございますが、私はもうすでに代議士でございましたから、それからずっと今日までの経緯を幾ばくか承知しておるつもりでございます。非常に重要な問題であり、政治資規正法の改正ということに対して、ほんとうに正面から取り組まなければならない問題であるということは、そのとおり考えております。  政府も鋭意勉強をいたしておるのでございますが、この選挙区制と定員増の問題と、同じように、やはり国会法でもすべて属人主義でありますが、実際的には政党単位で運営されているわけであります。ですから、政党政治、議院内閣制をこれから育てていくためにも、政党の活動というものが主体にならなければならないということは、そのとおりだと思うのです。ですから、そういう意味で、政党活動を主体にした選挙運動とか政治活動というものは拡大の方向をたどってきたわけでございますが、最終的には定員是正の問題と政治資金規正法の問題がなかなか結論を得ないというのは、やはり根本に触れる問題があるからだと思います。  単純に一人の候補者を争う、これは小選挙区制になるわけでありますが、小選挙区になれば、これはもういやおうなしに政党活動が主体でございます。ところが、いまの中選挙区制をとっている以上、政党というのが、実質的に申し上げて、一人の候補者を出しているもの、二人、三人、五人を出しているというものの間には、なかなか政党単位だけで政治活動はできないという実際の面も否定できないわけでございます。しかし、政治資金に対してはいろいろな批判もありますし、長い歴史をたどって今日に来ておるのでございますから、お互い何らかの結論を出せるようにしてまいりたいという気持ちは、私はもうあなたと思じように、誠意をもってこれに当たりたいというふうに考えております。
  174. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 これで私の質問を終わりますけれども、いまの総理の御答弁、どうもむなしいのですね。今国会でやるかやらぬか。やる気にさえなれば——今回、一月のあの段階で、政治団体の資金の報告が行なわれました。世論はあげて、不透明度がますます濃くなってきた、財界と癒着している、しかも、その膨大な政治資金を献金した財界の名前は、前回よりもさらに今回の報告にはあらわれてこない、このままでいったならば、といった指摘があらゆるところで高まっておるのであります。いろいろな言い方はありますけれども、このことをよけて通っておったのでは——総理の基本的な考え方は、政治は力だ、力は金だと言うのかもしれませんけれども、このままでずっといったならえらいことになると思うのです。したがって、それこそ今国会でこの問題をまとめるという決断をすべき時期だ、こう思います。  まだまだ詰め切らない問題がたくさんありますので、しかるべき機会にさらにいろいろ掘り下げることを申し添えて、私の質問を終わります。(拍手)
  175. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部一郎君。
  176. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、まず外交、防衛問題についてお伺いしたいと存じます。  先日よりの総理の御答弁の数々を承っておりまして、非常にわからない問題がますますふえてまいったような感じがするわけであります。特に、話の引き続きでありますので、防衛庁長官が御発言になりました平和時の防衛力についての御見解について、引き続きただしてまいりたいと存じます。  総理はいろいろなことをおっしゃいました。はからずも言わざるを得ない羽目におちいったとか、あの辺が私は御本心かとも思うのでありますけれども、この防衛庁の平和時の防衛力について、総理防衛庁長官に勉強するように指示なさった、それについての回答が出た、そしてそれについて、時間もないことであるがそれを検討した、そしてそれについて、これを妥当、適正なものであると認めた、しかし、それは総理大臣である自分個人が認めたのである、しかし、それについては田中内閣全体が拘束されるであろうと、大体詰めて申しますと、そういうように承ったわけでありますが、私の理解でよろしゅうございますかどうか、話の初めにまずお伺いするわけであります。
  177. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 大体そのとおりでございますが、一番最後の、田中内閣が拘束を受けるであろうということに対しては、先ほども御答弁を申し上げましたが、これは四次防に対してまだ議論が存在するにもかかわらず、四次防を上回るところもあるわけでございます。ですから、少なくとも、あの想定に基づく平和時における防衛力の上限、あの答えはやはり上限というふうに考えるべきだろう、あれを越すようなものを、私がこの職にあって、あの前提条件の状態における平和時の防衛力として御審議を願うようなことは、これはやっぱり制約を受けるだろう、こういうことをすなおに述べたわけでございます。
  178. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうしますと、そこまでお話がわかりましたので、今度は次に、では田中内閣をどの程度拘束するかの問題について私はお伺いしなければならぬわけであります。  このようなまだ問題の残りそうなもの、総理の言われる意味合いは大体そういう意味かと思いますが、総理は、そういうものを国防会議にはかりたくない、また、政府の閣議決定ともしたくない、しかし政府を拘束する、というような意味合いを言われました。そうしますと、私どもとしては、総理が国防会議にもかけないし、閣議にもかけない、しかし、田中内閣の構成員は、総理の御意見によって拘束されるという、その辺のかね合いといいますか、その辺が不明でありますので私はお伺いするわけであります。
  179. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これを政府案として決定する場合には、当然国防会議の議に付し、国防会議を経て、閣議の議を経た場合には、政府の正式見解になります。しかしこれは、私は、閣議にかけて防衛庁長官に答案を求めたのではないわけでございます。私が防衛庁長官に勉強してくれと頼んだわけであります。非常にむずかしい。方程式のない答案を書くわけでございますから、非常にむずかしい。むずかしいけれども、一つの状態を想定して勉強してみましょうといって、一日の午前九時半だと思いますが、私に答案を出したわけでございます。三十分後の十時には、ここで、みずから求めてみずから指定した防衛庁長官から出された答案に対して、何と心得るかということでございますから、適切妥当なものと考えます、こう述べているわけです。  私が、公の席上で適切妥当なもの窟述べた以上、いま申し上げましたように、私は、個人田中角榮として依頼したのではない、やはり、内閣総理大臣の職にある私が防衛庁長官に依頼をしたものに対して私の判断を申し述べた以上、私を首班とする内閣においては、少なくともこれを上限として、この前提条件が変わらない限り守らなければならないだろう、守らなければならないというのは、内閣も拘束を受けるだろう、こうすなおに述べたわけでありまして、それは個人の見解であり、国防会議の議も、また、閣議の議も経ておらないから、内閣が拘束を受けることはおかしいじゃないか、受けないのではないか、受けるとすれば、ここで適切妥当だと言った私だけが受けるんだ、こういう御判断もあるかもしれませんが、私はやはり、個人田中角榮であると同時に、内閣の首班でもございますから、私が発言をしたものに対してはそれなりの責任が存在する、こう考えておるわけでございます。
  180. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理のいまの御発言こそまことに難解でありまして、個人と総理を立て分けて言うならば総理としての発言であると言われましたが、この田中内閣の構成員がそれを守るべしというのは、個人の見解と言われるかもしれぬとおっしゃいました。  そこで、そういうことですと、総理がこの問題について扱われました際に、「平時における防衛力の限界というものは、議論があっても、やっぱり一案つくるべきだと思います、政府が。これだけ四次防が問題になり、議論がされているときに、防衛の限界というものは、国民的に議論をしてもらうためにも、やっぱりつくるべきだと思います。」と述べられております。「政府が」とわざわざ声を張り上げておっしゃったということであります。そうしますと、政府がこれをつくらなければならぬのでありますから、一防衛庁長官の私見では困るのであり、田中総理の個人的な見解でも困るわけであります。  そうすると総理は、政府としての見解を出さないと言えば食言になるでありましょうし、政府の見解を出すと言えば、御自分みずからブレーキをかけられておりますように、国防会議あるいは閣議にかけなければなりませんでしょうし、まことに進退きわまった状況におありになるのではないかと私は察しておるわけであります。しかたがありませんので、私は、総理にお手伝いする意味で、国防会議構成員の皆さんにやはり御意見を聞いてみなければいけないだろうと思うのです。こういうやり方をとるにつきましては、これは万やむを得ない。  そこで、私はなぜこんなことを言いますかというと、この閣議の中に、たとえば新聞記者会見の報道とされております二階堂官房長官の御意見ごときは、こんなようなものを策定するというのはいけないのであるという御意見を述べられておるようでもありますし、かなり御意見に差があるとしか私には見えません。したがって、私はお一人ずつお伺いしますが、御了承いただきたい。まず私は、したがってしょうがないので、副総理であられます三木さんに、この問題についての御見解をしかとひとつお伺いしたい。
  181. 三木武夫

    ○三木国務大臣 防衛力の平和時における限界、これは渡部さん御承知のように、閣議、国防会議等にはかったものではありません。したがって、具体的な数字はこの予算委員会でわれわれも初めて聞いたわけであります。この問題にはいろんないきさつがあって、防衛庁長官から数字をお示しするようなことになったわけでありますが、率直にいって、本来やはり数字を示すことには無理があると私は考えておるものでございます。  それはなぜかといえば、一国の安全保障政策はは、むろん軍事面も大事ではありますけれども、あるいは国際的には平和外交の推進、国内的には政治、経済、社会の安定、こういういろいろな多面的な要素が合わせられて安全保障というものは考えらるべきものでありますから、ただ軍事力だけで、それだけを取り出してということには、率直にいえば私は無理があると思うのであります。したがって、ほかの要素のいかんによっては、日本防衛力というものはずっと永久に増強しなければならぬとは断定できない。その要素によってはまた逆の場合もある。あまり硬直的に考えないほうがいいのではないかと私は思うのであります。  やはり日本防衛力は、そういう意味において、数字的にこれはなかなか言いあらわせないと思いますが、一応のめどとしては四次防、この線を基本に考えるべきものだと私は思っております。しかし、この予算委員会における総理答弁も私は承知しておるわけでございますが、そういうことを私は見解として持っておるものでございます。
  182. 渡部一郎

    渡部(一)委員 三木副総理が言われたお話に対する私の見解を述べるのはあとにしまして、前防衛庁長官であった江崎自治大臣にやはりこれはお伺いしなければしょうがない。どういうお考えで、策定といいますか、防衛庁長官のお述べになったものをごらんになったか、率直な見解を述べていただきたい。
  183. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 お答え申し上げます。  防衛庁が、平和時のという前提はありますが、その防衛力の限界について示した努力、これはひとしく認めていただけると思うのです。私はよくやったと思う。これはいま三木副総理がおっしゃるように、なかなか数字で出しがたいものではありますが、平和時のという前提がある。それから、われわれは平和憲法を持っておるというような意味から、数字を出してでも国民理解を得たいというふうに防衛庁がこの自衛隊の実勢力について思い、また、これを具体的に数字にあらわした努力というものは、高く評価されていいと思うのです。  それをどうしても政府の見解にしろ、こういう議論がこのごろうちからずっと展開されておるように私お見受けするのでありますが、これは防衛の責任の衝にある防衛庁がそれを出したら、これはやはり政府においても、もとより防衛庁の責任ある数字ですから、これを今後継続的に検討していくことも必要ですし、また国会においても、そのよって来るところ、それから今後の歯どめ等について議論がなされてしかるべきものであって、防衛庁長官がいま出した数字を、すぐ直ちに政府の見解にしなければならぬというものではない。外務大臣は外交の面から、これが適正妥当であるかどうかということを考える。通産大臣はまた通産大臣の立場から十分これを検討する。私どもは私どもで国務大臣として検討する。みんなが十分検討する一つの検討題としてこれが出てきたことは、私はやはり望ましいことであったと思っております。  だから、それを十分の検討も加えないで、政府全体の責任においてこれを直ちに認めろ、こうおっしゃっても、これはなかなかそう簡単に言えるものじゃない。これはこれから継続的に検討するということでいかがでしょう。私はそういうふうに考えております。
  184. 渡部一郎

    渡部(一)委員 たいへんものすごい意見を明確に述べられましたので、ちょっとあとで問題にしなければならぬと思いますが、同じく国防会議のメンバーであります経企庁長官に御意見を伺いたい。
  185. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私の立場は、経済全体と防衛力との関係をどう見ていくかという立場だと思うのでございます。そういう意味で、目下ずっと一般的にいわれておる今日の防衛力というものは〇・八%程度までではないか。これは経済に別にどうということはない、こういう考え方は、私もそのように考えておるわけでございます。  今度の問題は、総理大臣は、これは国防会議にかけるつもりはない、こう言っていらっしゃるのでございまして、したがって、国防会議の議員としての私はとやかく言うべき立場でない、こう思っております。
  186. 渡部一郎

    渡部(一)委員 経企庁長官 それは御答弁がちょっと、私の質問を聞いておられなかったのだろうと思いますけれども、これは総理が見解を述べられて、田中内閣の閣僚としては、これに対してある拘束があるんだという御意見を言っていられるわけであります。したがって、国防会議の議員として言うのじゃなくて、ここでは閣僚としてあなたに意見を聞かせていただいているわけであります。ですから、明確にもう一回お述べになっていただきたい。
  187. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えを申し上げますが、閣僚といたしましては、わが国があくまで平和愛好国家として、そして民生が安定し経済が繁栄するように、こういう立場で考えるべきである、こう思っております。
  188. 渡部一郎

    渡部(一)委員 申しわけないんですが、平和時の防衛力の限界、これの問題について聞いているのです。だから、もう一回お願いします。
  189. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 防衛力の限界、しかも平和時の限界、非常にむずかしい問題でございまして、まず、平和時とは何ぞやということが問題になります。次に、その限界というのが一体どういう点を限界というのか、これも非常にむずかしい問題だと思います。しかし、平和との関連において防衛力の問題を考えるということはたいへんに重要な問題だと存じておる次第でございまして、これはやはり国民的合意が必要ではないか。そういう意味で、野党の皆さま方にも十分御検討いただくことが望ましい、こう思っております。
  190. 渡部一郎

    渡部(一)委員 国民的合意が必要だから総理が苦労なさって、防衛庁の長官に対してこれを出せと検討を命じられたといういきさつがあるわけであります。これについて、国民的合意が最終的に必要だから出せと言われたのです。そして、あなた方はそれを出されたわけです。出されたほうとしてどういう気持ちで出しているのかと私が聞いているのに、それは合意が必要であるなどという答弁は、ひっくり返しの裏返しの答弁であって、それは論理学からいってもおかしなことであり、あなたの御答弁の神経を私は疑わなければならぬ。もう一回ちゃんと御答弁いただきたい。
  191. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 防衛庁長官に対して総理大臣が検討を命じた。そこで、防衛庁長官がお手元にあるものを差し出したわけでございますね。私は、防衛庁の長官としてさようなことを考えて、防衛当局専門家を集めて考えられたものであるということに思っておるわけなんでございます。それがいいとか悪いとか言う立場に私はないんですが、これは冒頭に申し上げたように、私の立場としては、経済の全般との関連で、このことが経済に非常に大きな影響を与えるということであれば、これは問題とすべきでございますが、従来よくいっておるような今日の対GNP〇・八%というようなものであれば、経済全体に著しい影響はないものである、こういうふうに認識しておるわけでございます。
  192. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、全部お伺いするのもなにかと思いますけれども、もう二人ばかりお伺いしますが、前田科学技術庁長官、あなたは今度国防会議の議員になられたのであります。日本の科学技術が防衛政策に協力するのではないかという大きな国民の中の不満もあるわけであり、あなたの御発言は、この際きわめて重大であります。ひとつ御答弁いただきたい。
  193. 前田佳都男

    前田国務大臣 御答弁いたします。  平和時の防衛力の限界についてのただいまの渡部委員からの御質問でございますが、一月二十五日の国防会議議員懇談会におきまして、私は防衛庁長官から聞いただけでございまして、詳細な説明はその際はございませんでした。また数字の提案もございませんでした。その国防会議議員懇談会の席上には数字の提案さえもなかったのでございます。これは防衛庁限りのものであると私は理解いたしておりまして、したがいまして、いま直ちに意見を申し上げる段階にはないと私は考えるものでございます。
  194. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これはますます問題だと私は思いますが、今度は国防会議に属していないほうの方を代表していただいて、福田行管庁長官にこれはどうしても言っていただかなければしようがないと思います。ひとつお願いします。
  195. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題は、私も委員会の論議を聞いておりまして、考えれば考えるほどむずかしい、そういうふうに思っております。私もどうもまだ意見がきまらないのです。しかし、田中総理大臣の発言にはモーラルな拘束を感じます。(「モーラルとはどういうことだ」と呼ぶ者あり)道義的な影響力を感じます、こういうことでございます。
  196. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、私はいま五人の方の意見を伺ったわけでありますが、もうとてもじゃないけれども、これは政府としてはまじめなやり方でないように私、思います。  というのは、副総理が数字を示すのに無理があるとはっきり述べられましたけれども、これはほんとうに私も重要な御意見だろうと思います。また、江崎長官は、政府の見解にせよというのがおかしいのだという意見を述べられましたけれども、これは総理が出すと言われたことに対して、反対の意見を正面から述べられたわけでありますから、おそらく誤解であろうかと思いますけれども、こういう妙な意見を持っておられる方もおる。また小坂さんのように、いい、悪いを言う立場にないなどとすごいことを言っておられる。また前田さんのように、国防会議懇談会のときにまるっきりお話がなかったので、まるっきり防衛庁の試見だと思っておったという、まさに総理のお気持ちとは全く違う御意見を述べられた方もある。またモラルの拘束を感じられておられる方もある。私は、こういうように田中内閣というのはまことに独創的な御意見、見解の持ち主ばかりであり、独自の意見、見解を持っておられることに対しては了としますが、これは要するに、別のことばで言えば、だれも本気でないということであります。  防衛問題それ自体に対してこういうすごい見解を内閣が持たれて、国民にこれを表示された。総理は、国民防衛力の限界について心配しておるのだから、それに対してある程度の目安をつけるためにも出したいと、総理が言われた最初のことと全く違ったものであります。これほどみんなの意見が違えば、国民はもうあきれて議論の段階の前だろうと私は思うのですけれども総理はどうお考えですか。
  197. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、すなおにこの問題を判断していただけば、よく理解いただけると思います。  四次防問題で御審議をいただくときに、日本防衛力が無制限に拡大されるのではないかという不安が国民の一部にある。それを、その不安に対して、われわれがあらゆる角度から勉強してこの国民の不安を解いていかなければいかぬ。国民の支持と理解を得なければならないわけでありますから、そういう立場においても最善の努力を傾けるべきである。その一つに、平和時の防衛力の限界というものが勉強できたらしてみてくれ、そうしてそういうものの答案が出るならば、それは国民理解を得るための一つの方法であり手段であろう、広範にわたって勉強してくれ、こういうことを言うのは、私はどなたが内閣総理大臣の席にあっても、やはり野党の方々からもいろいろな御議論がある、国内やマスコミの間にもいろいろな議論がある、その疑念に対して解明のために精力的に勉強することは、これは当然の責務だと私は思っておるのです。そういう意味で私は防衛庁長官に依頼をしたわけであります。これは防衛庁に対する案件でありますから、防衛庁にお願いをします。また、日本のマスコミだったらマスコミというものに対して、いろいろございますが、電波というものはVHFでいいのか、Uでいいのか、Uに統一するのかというような問題、これに対しては郵政大臣に、UがいいのかVがいいのか、共存でいいのか、いろいろな問題に対して、できるだけ国民に納得できるような勉強をしてくれと、全部の各大臣に求めておることの一つでございます。  この防衛力の平和時における限界というものは、その後国会で御議論になり、私がその間の事情を述べました。述べたら、防衛庁に求めておるものができたらこれは国会でもって発表するか、こういうことでございますから、これはもう当然問題になったことでございますから、防衛庁から答案が出れば国会にもお示しをいたします。しかし、防衛庁はなかなかむずかしい、公式論がないし方程式もないので、何か平和時ということを一つ想定をしなければならないし、想定をしての結論でございます、こういうことでございますが、防衛庁がいま盛んに勉強しておってできるだけ早く出します、こういうことでございますから、答案が出たら国会でもって御報告をいたします、こういうことをずっと述べてきたわけであります。で、国会でもって御質問がございました。御質問の三十分前には答案を手にしておったわけでございますから、その答案に対して私の見解をすなおに述べたということでございまして、これが私は国会とのやりとりの間で、政府はこれは防衛庁だけの問題でなく、ほかの問題でも、こういう問題を農林大臣に示しておる、農林大臣の答案が出たら出すか、はい出します、こういうことでございます。はい出しました。出したらこれを国防会議の議に付すつもりはないか、私は国防会議の議題にするつもりはございません、閣議決定する意思はあるか、それはありません、こう答えておるのでして、これから各大臣との間にしょっちゅうこういう問題が起こるのでございますが、そういう立場でひとつお考えをいただけませんか。
  198. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いま総理の御答弁は、まあそういう御答弁をなさるしかないだろうと思うのですね、これだけ追い詰められたら。まことに残念だろうとも思います。で、総理御自身が平和時の防衛力の限界、それを出すと言われたのですから、その出し方がこういう出し方じゃほんとうに問題がある。  私は、やり方やら手続のほうからいま申しました。中身のほうも問題なんです。それに触れれば本質の問題もちょっと狂う場合もあるから、私は遠慮しておりましたけれども、たとえば、この問題の中には質の問題が一つも入っておりません。たとえば航空機の場合でいうなら、一次防のときは千三百機、二次防では千機、三次防で八百八十機、四次防で七百七十機、だんだん下がっております。この平和時というので四次防よりぐいと上がって八百機、こうなっておるわけです。この数字を見れば、もう量の問題ではなくて、質の問題を加味しない防衛力の限界を航空機について言うてもしかたがないという感じがするわけですね。たとえば、これにミサイルを加えてみるといたしましょうか。そうすると、ミサイル集団をどれぐらい持っているか、その一つの問題を考えるか考えないか、あるいはレーダーサイトがどういう規模のものか、それを考えなければ、飛行機が八百だろうと七百だろうと、それは問題の事態には関係がないわけであります。むしろ、これは騒々しいだけの数字になってしまいます。海上でもそうです。陸上でもそうであります。この数字というものは、いずれも質の問題を含まなければ何にも意味がなくなってしまいます。  また、四次防よりも数字が上がっているということに対して、先ほど閣僚の中からも御批判がありましたとおり、問題があるわけであります。また「平和時の」と頭に打ってありますために、いま戦争時だとだれかが、戦闘時であると防衛庁長官が判断すると、この防衛庁の見解は変わるわけでありまして、平和時の防衛の限界というのは一ペんでけし飛んでしまうわけであります。そして、それはだれがきめるかも不明であります。  こういうことを私が一つずつ一つずつ申し上げなければ、総理がわからないということはないと私は思います。総理の非常にスピーディーなその他の問題に対する回答を見ておりますと、これぐらいのことは当然御自分でものみ込んでおられると私は思うわけであります。ところが、このような、もう論議の最初のスタートにもならないような数字を出してこられて、そして、騒々しい国民の論議の対象にするということ自体が非常に問題が多いのではないか。私は、御自分でお出しになると述べられたのですから、そして御自分で検討を命じられたのですから、これについては中身をもう一回たたき直して、ほんとうの説得力のあるものになさらなければ話にならないのではないかと思う一わけであります。  私は、まとめて意見を申し上げておりますのは、これでごたごたしたくないものですから申し上げておるわけであります。また総理は、この数字というものをあげられまして、当初は、この防衛力の限界を述べることによって、国民のこの問題に対する不安を晴らしたいという御意向が、参議院の議事録の中には載っております。ところが総理は、きょうや土曜日あたりの議論になりますと、すでにこのような問題点の多いものを国防会議や閣議にかけるなどということはしたくないのだ、こういう御意見になっております。そうすると、初めの言っておられた意図といまの意図とは全然別であります。私は、しかもこの数字というものが、遠慮なく国際的な波及効果を呼んでくる、それはわが国内閣に決してプラスにならない、そして総理の姿勢はますます、総理のほうから見れば誤解される立場になるだろうと思います。  したがって、こういう問題を扱うときに、これは私ははなはだ遺憾に存じておるわけでありますけれども、これではあまりにもひど過ぎるのではないか。私は、総理が率直に言われたことは認めてもいいと思います。非常に単純なケースで言われたのかもしれないと思います。しかし、単純でいいかどうかは別問題であります、政治の世界では。今後はこういう問題については、慎重かつ厳重な検討をなさるべきであり、少なくとも国民の不信を増すようなことをするべきではなかろうと私は申し上げたいと思うのであります。
  199. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 当初の真意、いまでもそうでございますが、国民の不安をなくするための努力を傾けるという挙に出たことは御理解を賜わりたい、こう思うわけでございます。  しかし、この防衛庁長官の提出をした答案の中には、いまお示しになったようなこともございますし、しかも、海上の艦艇等に対してはいまよりも数が多いわけであります、四次防よりも。四次防の二十一万五千トンと二十五万トンないし二十八万トンというようなものがあるわけでございますから、これをそのまま国防会議の議に付するようなものではない。もっと慎重に検討しなければならないし、年々の防衛庁の予算を組むときには、いろんな他の財政要素とも勘案をしながら慎重に決定をしていかなければならない問題であります。  そういう意味で、私は、この防衛庁長官が出したもの、これは自分が求めたものでございまして、専門家がこれだけ苦悩してつくったものでございますから、それを尊重しなければならないし、妥当なものだと思います、こう答えました、オウム返しに。しかし私は、それをすぐ国防会議の議に付し、閣議に付して閣議決定をするというには、もっともっと慎重でなければならないし、いまの案がそういうものではないということを率直に申し述べたわけでございます。  しいて申し上げれば、一番最後の、しかしここで必要かつ妥当なものと認めたじゃないかということに対してはどうかというのは、これは少なくとも私は上限として、どんな場合でもこれは前提がございますから、前提がございましても、これを上限として、これを上回るようなものを私は考えられないしということを率直に申し述べたわけでございます。しかし、このような問題、目的が目的であったわけでございまして、それが発表された数字によってかえって不安が醸成されるんじゃないかという御意見であるとすれば、もっと深く勉強をいたしますし、この種の問題に対しては慎重にやってまいりたい、こう考えます。
  200. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、私は次の問題に移りたいと存じます。  日本の現在の外交は歴史的な転換点に立っておると存じます。その中でも、ベトナム戦争の和平協定の樹立というものは、わが国外交方針に対する大きな変革をもたらしたのではないかと存じます。私は、わが国の外交が自主外交という路線を保っているとは思えないのでありまして、なぜかといいますと、世界の様子を見て、それに合わせて腰を動かすというようなポイントがきわめて多くあったことを遺憾とするわけであります。ところが、現在のベトナム戦争の終結あるいは和平協定樹立というような段階になってまいりますと、日本の外交もいよいよ変わらねばならぬし、変わるべきだとも思うわけであります。  そこで、私がわざわざこういう聞き方をしておりますの建政府のいままでの、ベトナム政策に対する態度、あるいは東南アジア外交に対する態度、あるいは共産圏外交に対する態度、これはもう当然変わるべきだろうと思っているわけでありますが、そういうお考えなのかどうか、まず総括的に外務大臣にお伺いしたい。
  201. 大平正芳

    大平国務大臣 外交は、そのときの国際情勢を踏まえて、わが国の国益をいかにして守るかということで進めてまいらなければならぬわけでございまして、われわれは常にその本旨を忘れないでまいったつもりでございますし、今後もそういうことに狂いのないようにいたさなければならぬと思っております。  第二点といたしまして、国際情勢が大いに変化をしたじゃないか、したがって、わが国の外交も大いに脱皮しなければならぬ転換点を迎えておるじゃないかという御指摘でございますが、渡部議員の言われようとするお気持ちはよくわかるのでございますが、いま申しましたように、そういう情勢の推移、転変というものに応じまして、私どもは国益を守りながら、用心深く外交を続けてまいらなければならぬのは当然でございまして、それを変化と見るか脱皮と見るか、それは見る人の見方によるのでございましょうけれども、常に国益を踏まえて情勢の転移に対応してまいる姿勢は、寸時といえども忘れないつもりでございます。
  202. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、いままでのベトナム問題に対するわが国の態度といいますか、これはこれからの外交で、やはり変えなければならぬものであろうと私は思うわけであります。  それは、全部のポイントを伺うわけじゃありませんけれども、幾つかの大きなニュースになった事件を一、二取り上げて申し上げるわけで恐縮でありますが、昭和四十一年の六月一日の外務委員会において、当時の椎名外相は鯨岡委員の質問に答え、わが国はベトナム民主共和国並びに解放戦線に対して、敵対的関係にあることを認められました。こうしてこの委員会で明確に、これらの勢力はわが国にとって敵性である、そしてわれわれの国は攻撃され得る立場にもあると述べられました。こういうポイントについては、現在どうお考えになられるか、この問題を通して北ベトナムあるいは解放戦線に対する現在の政府の取り組みの姿勢を伺わしていただきたいと思います。
  203. 大平正芳

    大平国務大臣 ベトナム戦争はわが国は当事者ではなかったわけでございます。ただ、一方の当事者であるアメリカ安保条約上の約束を持っておりますので、この取りきめに従いまして、アメリカ基地の使用を認める立場にあったわけでございまして、したがって、間接的にベトナム戦に関与したということを否認するわけにはいかぬと思いますけれども、わが国のほうから、北越または解放勢力に対しまして戦いをいどんだというような性質のものとは考えておりません。
  204. 渡部一郎

    渡部(一)委員 その話をちょっと飛ばしまして、今度は、防衛庁長官がおかげんが悪いようですから、一つだけ防衛庁長官にお伺いをしておきます。  ベトナムにおいて、自衛隊の制服の方がここに行かれて、視察をされたのか観戦をなさったのか、行かれまして問題になったことがあります。これに対しての御見解は今日どう変化されましたか。
  205. 増原恵吉

    増原国務大臣 御承知のように、統合幕僚会議議長がベトナムを訪問をしたこともございます。統合幕僚会議議長というのは大体次官などと同様の扱いを受けまして、海外出張につきましては、十五日以上になりますると閣議の了解をいただく、十五日未満でありますると届け出をするという形で、これはタイにおきまする近在の駐在をしておりまする駐在官を集めて会議をいたすために出かけていったわけでございます。帰途南ベトナムに寄りまして、ベトナムの二、三の向こうの官庁等も訪問をいたしたのでございますが、これは防衛問題その他についての打ち合わせというふうな意味のものは全然ございませんで、タイにおける要務の帰途、ベトナムに立ち寄ったということでございます。
  206. 渡部一郎

    渡部(一)委員 もう一つ、トンキン湾事件が起こりましたとき日本政府は、このアメリカ側の説明自体が問題であったわけでありますけれども、トンキン湾事件に対して、これを容認するアメリカ側の説明を認める形で、アメリカが北ベトナムの侵略行為というものに対抗するというアメリカ政府の立場を認めて、そしてこれに対するアメリカ政府の報復的な北爆を支持されました。これについての見解はいまどうなっておられますか、外務大臣にお願いします。
  207. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、先日本委員会におきまして不破委員からも御質疑があった点でございますが、トンキン湾におきましてアメリカの軍艦が、公海で魚雷の襲撃を受けるという事件が起こったという報道に接しました。アメリカはそのことを国連の安保理に報告した。安保理の審議が行なわれましたけれども、この安保理につきましては、結論が出なかったということも承知いたしておりますが、国連憲章によりますと、武力攻撃を受けた場合に、国連自体が武力を行使して事態を収拾するというのが第一のたてまえになっておりますけれども、いまの国連は不幸にいたしましてそういう実力を持っていない。その間は、国連憲章五十一条には、集団の自衛権の行使はその国によって行なわれることを許してあるわけでございまして、そういうワク内のアメリカの行動というようにアメリカは説明しておりますし、私どもも国連憲章五十一条に照らして、それはそのワク組みの中の行動であるという理解を示したわけでございます。  ただ、断わっておきたいのでございますけれども、トンキン湾の現場におりまして検証したわけではございませんので、どちらが正しいかというようなことについて、日本政府が権威ある判定をする立場にないということは、不破さんの御質問に対しましても私からお答えしていたところでございます。
  208. 渡部一郎

    渡部(一)委員 国連憲章五十一条の問題について申しますならば、五十一条はごらんのごとくに、あれは国連加盟国が他の国から攻撃を受けた場合でありますが、ジュネーブ協定により、あのベトナム戦争自体は内乱というべきものであると私は思います。その意味では、アメリカの解釈ははなはだ拡張解釈であったと思います。またトンキン湾事件それ自体が、ニューヨーク・タイムズの報道等によりますと、そのトンキン湾事件がアメリカ側の挑発である旨が報道されておりまして、アメリカ国内の世論自体が、ベトナム戦争自体を不正義とする意見に大幅に変わったことは、御承知のとおりだと存じます。その立場で、そのような大きなニュースと情報が外務省に入っていらっしゃらないわけはないのでありまして、それを聞いていらっしゃる今日、これに対しては前の見解というものをどう変えなければならないか、あるいは検討すべきだと感じておられるか、これから先のことを伺っているわけであります。
  209. 大平正芳

    大平国務大臣 これから先、おそらくそういう事態は予想されないでございましょうけれども、論理上の問題として、同様な事件がこの周辺に起こったという場合におきまして、わが国がどのようにアメリカ基地の使用につきまして考えるかと問われますならば、これが極東の平和と安全に寄与するかしないかということをわが国の立場で吟味いたしまして、対処すべき方針を打ち出すべきものと思います。
  210. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいま三つのポイントをお伺いしたわけでありますが、ベトナム戦争の問題について、私は法律の用語をもてあそんで、これに政府答弁を迫ろうとしているわけではありません。私が言おうとしているのは、当時、トンキン湾事件を支持する、あるいは北爆を支持する、あるいは統幕議長が訪問されるというような刺激的事件が起こる、また、これらの諸国を敵性国家であると国会において明瞭に発言なさる、こうしたことは、もう明瞭に日本ベトナム戦争を支持し、アメリカ側に立ってこれを支持したことを意味づけている形になっているわけであります。  外務大臣先ほど安保条約によって基地使用を認め、それによってベトナム戦争に、当事者ではないが間接的に関与したと認めざるを得ないとおっしゃいました。私はここで何を言おうとしているかというと、つまり、ベトナム戦が終わった後の日本外交を立てようとすれば、こういうベトナム戦争に対するわが国外交の姿勢を反省し、また、ひいては安保条約の運用に反省をいたし、また安保条約安保体制それ自体の存在に反省をいたすところから始めなければ、東洋の、あるいは東南アジアの諸国、あるいは世界のさまざまな国国における信用を回復することはできないのではないかと思うわけであります。これについての総理の御見解を承りたいと思います。
  211. 大平正芳

    大平国務大臣 まず第一に、御指摘のとおり、一番日本の外交で考えなければならぬことは、そういう事態が起こらないようにすることが第一だと思うのでございまして、われわれの周辺に火をふくところがあるというようなことになりますと、安保体制というものも緊張を呼んでくるわけでございますので、まず第一に、そういうことのないように、鋭意平和を固める外交を精力的に進めてまいることだと思うのでございます。しかし不幸にして、そういうことはこれからはおそらく考えられないと思いますけれども、万一そういうことが起こった場合には、いま渡部委員にお答え申し上げましたとおり、そのことが、いうところの極東の平和と安全に寄与するかどうかということにつきまして、十分われわれは慎重な判断を加えて、わが国の指針に誤りのないようにしてまいることであろうと思うのでございます。  第三の安保条約自体の改廃という問題につきましては、たびたび申し上げておりますとおり、現在のような対話の風潮、緊張緩和の潮流が出てまいりました背景には、安保条約を含めて、既存の条約上のワク組みが厳として存在しておったということも大きな一つの要因になっておるのではないかと思われますので、このワク組みを改廃することは、直ちにそれが平和につながるというように見ることについては、われわれはしかく楽観的ではない。われわれはむしろ、そういうことをすることは逆に新たな不安を生むのではないかということを心配いたしますがゆえに、安保体制というものにつきましては、手がたく維持していくことがこの際賢明である。その点につきましては、あなたと御意見を異にいたしますことを遺憾といたします。
  212. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理にいまの御質問は伺いたかったのでありますが、外務大臣がお答えになりましたので、別の角度から総理にお伺いしたいと思うのです。  私は、さっきも申し上げましたとおり、この安保体制があるからベトナム戦争に入らざるを得なかったという日本の事情があるということは、外務大臣の御答弁でいいと思います。しかし、その結果、極東の安全と平和に寄与したかという前に、どれほど膨大な流血が行なわれたか、しろうとっぽく考えてみたら、すさまじいものだと私は思うわけなんです。  まだ、ベトナム戦争でどれぐらいの被害があったか、われわれには詳しいデータがありませんが、マスコミあるいはその他アメリカ等の情報から集めてみましたところで、ベトナム戦争で使われた爆弾量は六百十万TNTトンであるといわれております。これは一九六五年から七一年までに、敵味方合わせまして千三百四十四万四千八百十二トンの爆弾量に匹敵するのだそうであります。これは広島の原爆に換算いたしますと六百七十二発分に当たる。また、太平洋戦争で日本本土に落とされた爆弾量が十六万トン、朝鮮戦争で朝鮮本土に落とされたのが六十万トン、第二次大戦で使用されたのが三百万トンでありますから、もうけたはずれの爆弾量であります。結局、第二次大戦で全部使われたものの四倍になるわけであります。ベトナムという狭隘な地域にこれほどの猛烈な攻撃が行なわれた。米軍の死者は、「サンデー毎日」の数字が一番最近ので四万五千九百三十三、負傷者は三十万三千五百、南ベトナム軍の死者が十八万三千五百二十八、負傷者が四十一万七千百七十、解放戦線側が死者四千三百三十、負傷者一万三百六十七。北ベトナム関係はわかりません。また市民の死傷者の数もわかりません。おそらくこの数字から見ると、死亡された方は五十万、百万のランクであり、負傷者はそれに数倍するランクであろうかと思われます。このものすごい爆弾量は、沖繩を、あるいは日本を経由したアメリカ軍の飛行機でその一部は運ばれたことは事実であろうと思います。  私が、いま訴えようとしておりますのは、日米安保体制、これは日米友好関係の美しい友情の柱であるというような象徴化された考え方、まるで宣伝ビラか何かに出てくるような考え方で外交問題を扱うと、このようなひどい惨禍を私たちは横で見ていなければならないということであります。戦争それ自体が冷酷残忍なものであり、数字をあげてこういうことを言うことがどうかという議論があることを私は知っておりますが、少なくとも日本がこれから、文化国家として、あるいは平和国家として世界の中で尊敬される国家になろうと思うのならば、私は少なくとも、ベトナム戦争のこのものすごい惨禍に対して、大きな反省と、そしてそれを横で見ていなければならなかったいままでの日本の政治的態度、政治的立場とでも申しましょうか、安保条約を結んでいた当時の日本というものに対して、これでよかったかという反省が、御発言の中にあらわれてもいいのではないかと思うわけであります。法律的な安保があったからそのときそうせざるを得なかったのだといえば、それだけであります。しかし、われわれが目をそむけている横でこれほどの膨大な死傷者が出ていて、そしてそれに胸の痛みを感じない日本人なのか。私はこれに対する回答が、日本のこれからの世界で信用される日本人になる上において一番大事ではないかと思っておるわけでありまして、あえて過去の日本外交の傷あとに触れたわけであります。この傷をどう克服されるおつもりか。私は、いますぐどうこうという前に、政府の基本的な姿勢としてかくありたいということを、総理から述べていただきたいと思って申し上げるわけであります。
  213. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ベトナム戦が早期に終息するように考えておったのは、世界じゅうの人々だと思います。日本人もたれ一人として、ベトナム戦争がエスカレートすればいいんだというようなことを考えた人はないと思うのです。一日も早くベトナム戦争が終息をして、そしてベトナムに平和が訪れることを心から期待をしておったと思います。私たちもそのとおりでございます。そしてこのベトナム戦の終息というものが、過去の一つの歴史に終止符を打って新しい平和へのスタートになってしかるべしだ、こういうことを考えておったわけであります。  まあ、これは言わずもがなかもしれませんが、ベトナム戦争は単独にして起こっておるわけではないのであります。これはもう日独伊という枢軸三国と連合軍との戦いが第二次戦争の終幕になったわけでありますが、その後、共同戦線を張っておった米ソが対立をして、いろんな問題が起こってまいりました。これは歴史的事実であります。東西の接点において起こった事件の大きなものは四つあります。起ころうとしたものを入れれば五つあるわけであります。それは二回にわたるベルリンの封鎖問題であります。もう一つは朝鮮の三十八度線事件であります。そして、米ソ戦うか、地球上の人類は滅亡するかもしらぬといっておののいていた、あのカリブ海の例のキューバ問題があります。全米は非常ベルを鳴らさなければならないという事態があったわけであります。それで最後に残ったのが、フランス軍の撤退からずっと歴史上今日まで続いてきたベトナムの問題、四半世紀にわたったどろ沼のようなものでございます。だから、アメリカといっても、アメリカ、もう一つには大国中ソというものの援助、そういうものがあったことは、触れたくなくともそれは事実であります。全世界が知っておることであります。ですから、この問題が平和裏に終息をするかしないかが、これは全世界の人たちが見守っておったことでございます。  私はそういう意味で、ベトナムに平和が訪れたということは新しい平和への幕あけとしなければならない、どんな困難な問題があっても、このベトナムに訪れた平和というものは、これはつちかっていかなければならない、そのために日本も、技術や経済や持てるものをもって、ベトナムの民生安定や経済復興のためにあらゆる角度から努力を傾けよう、それはアジアの平和を招来するためにも重要なことであるし、アジアの平和のために寄与し貢献する一つの道でもあると、こう考えておったわけでございます。  朝鮮戦争というのは、これは身近な問題であるが、ベトナムと朝鮮戦争は同じなのかと、こういう議論もいろいろ起こってくると思いますが、いずれにしても大きな力の対立というものの中から、やはり大国も力による限界というものを知ったと思います。だから、ベトナムの平和というものが人類の第三の道へのスタートになるように、そのためには、あらゆる角度から日本も貢献し寄与しなければならない、こうすなおに考えておるのであります。
  214. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、私、総理のお気持ちがどこにあるのかちょっとまだわかりませんが、総理からそういう評論家的なことばを伺おうと思っておるわけではないのです。私は、わが日本ベトナム戦争で手のよごれている政府であるということを認識していただきたかったのであります。そしてそれに対する見解を示していただきたいと思ったのです。  私、いやですけれども、もう少しえげつないことを言わしていただかなければならない。アメリカが北爆をし、解放戦線地域で猛烈な爆撃を行ないました。その対象は、日本アメリカも当事国であるいわゆるヘーグの陸戦ノ法則慣例ニ関スル規則に明確に違反しております。すなわち、その第二十五条に、防守されない、つまり守られていない都市の攻撃、第二十七条において砲撃における制限、軍事目標主義というものが明示されているわけであります。日本はサインしておる。アメリカもサインしている。日米安保があるから手も足も出ないのだというのだったら、それは日米安保が悪いのだから検討しようと国民に訴えることで話が済みます。しかし日米安保の問題でない。陸戦法規の問題です。それにサインしておるわれわれが、そんなめちゃくちゃな北爆をやることはないじゃないかという一言をどうして言えなかったかということですね。これは田中総理の前の時代の問題でない。総理になられてからであります。  御承知のとおり、スウェーデンでパルメという首相が、米軍の北ベトナム爆撃は、第二次大戦中ナチの行なった大量虐殺と並ぶ暴虐行為であると見解を表明されまして、大きな騒ぎになりました。ヨーロッパにはそれを指摘する良心があったと私は思い、うらやましく思っております。それを報道したヨーロッパのテレビ会社の良心というものも高く買われておりますけれども、それを見て立ち上がった各国政府のすみやかな行動と、それに対する良心の叫びというのは、私はみごとなものではなかったかと、そう思うのです。外務大臣はそれに対して、そのほぼ同じ時期にどう述べられたかというと、戦争の終わるためのくぐらなければならぬ道程だというようなニュアンスの発言をされました。  国際的に見てどうか。私は、外交の本質は、最後のどたんばになると、法規をもてあそぶ問題ではなく、最後になればそういう人間感情の奥底にかかわる問題であると思うのです。残念であったと言うしかない。それが正しいことばであったとしても、この膨大な大量虐殺に対して痛みを感ずる姿勢というものがなければ、日本はいつまでたっても軍国主義の非難をのがれることはできないだろうし、それは、たださえ問題の多いわが国外交というものに対して、よけいな混乱と騒乱を招くものになるのではないかと私は思うのです。私は総理の過去をあばいてやっつけようとしておるわけではない。そういう状況でいくと、いつまでたっても信用は回復しない。それを痛烈に反省していただかなければいけないのではないか、私はそれを特に申し上げたいと思うわけであります。  ユダヤ人の大量虐殺のあったヨーロッパで、そのような大量虐殺のもたらすものについて、ヨーロッパの人々がびんびん反応したものが、日本国において、あるいは残虐な行為を行ない、あるいは残虐な行為をされた第二次大戦の経験のあるわれわれが、どうしてそれに対して同じような反応ができなかったか。私は、これは総理だけの問題でなくて、日本国民全部が考え直していい、日本の文明観に対する批評だと思います。しかし、政治行動の責任者であるべき総理として、これは考えるべきことではないかと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  215. 大平正芳

    大平国務大臣 切々たる渡部議員の御発言、私どもの心情にもひたひたと響くものがございます。私どもここでいつも申し上げておりますように、ベトナムの個々の軍事行動につきまして、これを支持したことはないのでありまするし、事実厳格に申しましてわからないわけでございますから、そういうことについて支持するとかいうことの態度を、公に表明したことはございません。  それから、それでは当事国であるアメリカに対して、日本政府はとるべき措置をとったかということでございますが、友人に一つのことを御忠告申し上げる場合に、鼓を鳴らして忠告をする、あるいは公開の報道用具を使ってやるということも、それは確かに一つの方法でございましょう。けれども、私どもといたしましては、そういうことでなくて、アメリカ当局に対しましては、絶えず日本国民の真情を訴え続けてきたつもりでございます。それを新聞に発表するとかしないとかいうことを越えた、もっと真剣な問題だと思いましたので、そのように措置しておるつもりでございまするし、いま総理が御答弁申し上げましたように、政府としては終始ベトナム戦の早期の収拾と平和の幸福ということをいつも祈り続け、これを待望する趣旨のことは全世界に表明してまいったのでございます。
  216. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理に御答弁をお願いします。
  217. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほど申し述べましたように、べトナム戦争が終息をすることは、一つの新しい時代を画するものであって、新しいアジア、世界の平和への一つのスタートをするべきものだという感じで、心からこれをこいねがってまいったわけであります。しかも日米の間でも、お互いが話し合いをする機会には、ベトナム戦の早期の終結に対して強い希望を述べておったわけでございます。  ただ、個々の軍事的行動になりますと、当事者でもない日本でありますから、おのずから制約を受けるわけでございます。しかし、すべての角度からいっても、このベトナム戦の終息というものを喜び、地球上のどんなところでも再び繰り返してはならないという、ほんとうに祈るような気持ちでおることは事実でございます。  以上申し述べますと、結局一つだけ残りますのは、北爆というようなあの悲惨な軍事行動に対して、なぜ公の立場で抗議をしなかったかということでありますが、それらの問題に対しては、いま外務大臣が述べたとおりでございます。
  218. 渡部一郎

    渡部(一)委員 防衛庁長官、よろしゅうございますか。おかげんが悪いようですが……。  私は、ただいまの総理及び外務大臣の御答弁で、なぜこういうことをぎゅうぎゅう申しますかといいますと、今度北越に対して、国家間の交渉あるいは国交正常化、あるいは場合によれば承認等の問題を含めて交渉のルートを開こうとしていらっしゃる旨、新聞紙上に掲載されております。また、これらの国々に対する経済援助というようなものについても、異常な意欲を見せられている旨承りました。また、話は飛びますが、通産大臣がタイ国へ行かれて、日本の企業の野蛮な現地収奪に対してブレーキをかけ、そうして日本の商売の、貿易のあるべき姿について御苦心をなさっている旨も新聞紙上において伺っております。ところが、こうした問題が、ベトナム戦争を間接的に支援したよごれた手でそのまま取り組んでうまくいくか、これはもう原則的な話だろうと私は思うわけであります。だから、それに対する反省というか、少なくとも安保体制を維持して手のよごれていたという問題についての深い反省がなく、そのまま突っ走られますと、それ自体が日本の非常な不信用、軍国主義に対する大反撃というものに立ち返ってくるだろうと思います。こわれている国だから金を出せばいい、港をつくってあげましょうか、そういうことばが、米軍基地に対して何ら反発をしない政府によって言われたということをベトナム側がどう受け取るか、それもまた私は考えるべきであろうと思います。  その意味からいったら、私は、外務大臣が述べられたそうした問題、この方針の展開をしたいと思っていらっしゃる希望はわかるとしても、その構造というか、取り組みの姿勢が変わらないのでは、いつまでたっても問題が解決しないのではないか、こう思うわけであります。したがって、これは外務大臣、まとめて伺いますけれども、こうした過去の間接的なベトナム戦争に対する関与というものに対する深い反省というか、そうしたものを持ちながら、こうした問題に新たな決意で取り組んでいただかなければならない、最低限それは必須の条件である、こう私は申し上げたいわけであります。それについての御見解を伺いたい。
  219. 大平正芳

    大平国務大臣 今後、ベトナムとの取り組み方につきまして、過去の経緯を十分頭に置いて当たらなければならぬことは当然でございます。と同時に、われわれは決して援助を押し売りしようとしておるわけではないわけでございまして、当事国はもとよりでございますけれども、関係国といろいろ協議いたしまして、日本が正当に果たすべき役割りは果たさなければならぬという態度に終始いたしておるつもりでございまして、せっかく相当の経済力と技術力をたくわえることに成功したわが国でございまして、この力をどう行使するかということにつきましては、御指摘の経緯を十分踏まえて、謙虚な気持ちで誤りなきを期してまいらなければならぬと考えております。
  220. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは私は、この問題はまだ詰めなければならぬ問題がたくさんございますが、時間に余裕を欠いてまいりましたので、一転して科学技術の問題に移りたいと存じます。  私は、きょう外交の問題をやるのに、なぜ科学の問題をやるかといいますと、政治の姿勢の取り組みがそっくりなので、ちょっと申し上げたいのであります。  一つは、PCBの問題であります。PCBの汚染に関するおそろしさにつきましては、昨四十七年四月十三日の公害対策並びに環境保全特別委員会及び科学技術振興対策特別委員会連合審査会において、参考人からるる述べられました。この議事録を読み上げる余裕がありませんから、簡単に触れますが、PCBは非常に安定した化学薬品でありまして、体内に蓄積される悪作用があります。そのために、工場から廃棄されて、あるものは蒸発して地上に落下し、海上に落下する、それが食べものにだんだん生物濃縮が起こり、人体に集積してくるわけであります。カネミオイル事件はPCBによって起こったものでありますが、その際にわかったことは、からだの皮膚が黒変する、ぶつぶつのおできが出てくる、鼻とか口とか陰部とかがただれてくる、そして最後は全身に痛みを感じて、どうしようもなくなって、狂乱しながら死んでいくというようなおそるべきものであります。これが悪いということについては、すぐに十年も前にわかっていた問題であるにもかかわらず、適切な対策がとれず、JIS規格によってこれを政府が奨励したという事実がございます。そしてカネミオイルのときは、体内に一三PPMの蓄積において人がなくなっているのでありますが、いま日本全国はそのPCBが全世界最高の濃度で散らばっておりまして、五万六千トンが使われ、そして体内に四ないし五PPM程度が濃縮しておるといわれておるわけであります。つまり、急性、慢性の差はありますけれども、これは致死量のほぼ半分というものが体内に蓄積しつつある、こういう状況であったわけであります。そこで、このとき大きな問題になりまして、二つの委員会が決議をし、国会決議を通していただきました。  ところがそのあと、これは非常に汚染が進んでおることが明瞭になってまいりました。一言にして言うならば、昨年十二月二十一日、環境庁が中心になりまして、各種PCB汚染実態調査を行なったわけでありますが、これにおいてももう明瞭にあらわれております。そして、このデータを見る限りにおいては、PCBの汚染はかなりふえつつある。しかも、食べている野菜、魚、特に魚類については十一地域にわたって、十一海面にわたって、そのかなり甘い水準である三PPMを突破しておる、そういうことが明瞭になっております。県名でいいますと、千葉、新潟、福井、徳島、熊本、埼玉、大阪、兵庫、山口、大分、こうなっておりまして、ここに述べられておりませんが、東京湾、大阪湾のごときものは、もう当然これを大幅に突破しております。部分的な報告では、魚の三PPMという基準を、琵琶湖のフナ等が六〇PPMというような膨大なこし方をしており、また瀬戸内海ほば全域にわたる魚がこれをかなり大きく上回っておる、一〇PPM、二〇PPMの段階で上回っておる、こういうことがもう明瞭になっております。  ところが、これに対してどういう措置がとられているか。まず前の厚生大臣であられた齋藤厚生大臣は、昨年の四月の公害特別委員会において暫定基準をきめ、それ以上の魚は食わせないようにすると明確に述べられました。しかしながら、暫定基準はきめられたが、この魚があぶないという表示はできなかったというか、することが困難というか、まだ行なわれておりませんで、そのまま放置されております。そしてPCBは累積しつつあります。  私は、あまり時間がないから結論をどんどん申し上げますが、もう一つはこのPCBを回収しろという号令が出ておるわけであります。回収を非常にやわらかい行政指導のやり方でやっておるのでありますが、これをつくった鐘淵化学と三菱モンサント化成という二つの会社にこれが集まりつつあるのでありますが、焼却の方法がいまだに煮詰まらないで放置されております。両方で三千トン近いPCBがそのままにある。そこへもってきてこれらの会社ではもう受け取れない。そこで、PCBを使っていた製品その他については、全部そっちで持っていてくださいと、これらの会社が説得しており、現在そのPCB製品その他が野積みになっておるわけであります。そうして、ここから毎日のようにPCBが空に舞い上がり、汚染の原因となり、山積みにされたドラムかんは、あるものは工場内に倒れて、そしてPCBはまた海の中へ流れ込んでおります。行政の怠慢ということばがありますけれども、これはちょっとひど過ぎるのではなかろうか。私は、人間の命を大事にすることが政治の一番大事な原点だと思いますけれども、あまりにもこれはちょっと怠慢の程度が過ぎたのではなかろうかと、憤激をいたしておる一人であります。  これについて総理どうされるか、もう一つ総理の御決意を伺いたいのでありますが、総理に簡単に決意を言っていただいてもしかたがないので、私は担当の方々からいまどうなっておるか述べていただきたい。またどうしようとしておられるか、非常に局がまたがっておりますので述べていただきたい、こう思っておる次第であります。
  221. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 PCBにつきましては、約八千五百トンぐらい生産されまして、二千五百トンぐらいが回収されておる。(渡部(一)委員「そんなことはないですよ、五万トンからつくられておる」と呼ぶ)私への報告では、液状の八千五百トンが出荷されましたが、そのうち約二千五百トンが回収されております。いま回収を促進しておりますが、今後、全出荷額の三分の二程度までは回収されるものと考えております。PCBを使用した感圧紙のうち、最終需要家の在庫量は、現在五千トンないし六千トン程度と推定されております。このうち、官公庁等で使用したものについては厳重に保管されており、また民間で使用したものについては感圧紙メーカーが回収を始めており、四十七年末までに約千百トン回収されております。今後とも引き続き回収につとめる方針であります。  PCBを使用した電気機器については、閉鎖型であり、かつ製品の耐用年数が長いため、直ちに回収を要する事態にはないが、今後の回収処理に万全を期するため、その無害化処理技術の研究開発等を進めている、こういうことになっております。  そこで、PCBのような化学品が不用意に将来出回ることを防止するために、このような化学品の販売前に安全性のチェックをする措置を行なう必要があると考えまして、その立法化を検討しております。特定化学品取締法(仮称)をいま作案しておりまして、今度の特別国会に提案してみたいと考えております。  いま、工場で回収品の野積み云々というお話がございましたが、お話を承りましてさっそくその二社あるいは野積みの場所等について係官を派遣いたしまして、もう一回厳重に調査させるつもりでおります。
  222. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 渡部委員にお答え申し上げますが、まさしくPCB、おそるべき物質でございまして、食品につきましてPCBの汚染ということは厳に防止しなければならぬ、こういうふうに厚生省としては考えておりまして、昨年の八月、乳製品、肉、卵、魚介類等につきまして暫定的規制値をきめまして、そしてそれに基づいて、昨年の秋以来、これらの食品につきまして厳重なる監視体制をしいておるわけでございます。  それと同時に、また一番問題になりましたのは、母乳について非常に心配される向きがございましたので、昨年の八月、全国六百幾つの例につきまして、母乳にPCBの残留があるかないかということを調査いたしました。その結果、昨年の十二月の末に中央児童福祉審議会において一応の報告をまとめたわけでございますが、誤解があるといけませんので正確に申し上げますと、六百七十例の母乳からPCBが検出されており、最高値は〇・二PPM、平均値は〇・〇三五であった。地区別に見ると漁村地区、都市住宅地区が高く、農村地区はこれらに比べて明らかに低かった。そこで、その結論といたしまして、現在の母乳汚染状況では母と子にPCBによると思われる健康障害は認められなかったので、母乳を停止する必要はないと考えられる。しかし、今後とも母子の健康状態については十分監視をしなければならない、こういう調査の報告が出ておりますので、これに基づきまして、特に魚介類でございますが、魚介類をたくさん食べておる地域等につきましては、健康診査を厳重にやるように通達をいたしておるところでございまして、今後、この問題はおそるべき問題でございますので、全力を尽くして防止方に努力をいたしたい、かように考えております。
  223. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、こう見られていてもおわかりのとおりですけれども、通産大臣は数字を大幅に間違えられた。五万三千トン製造されておるのです。八千五百トンというのはあなた、とんでもない間違いですよ。そういうことじゃ困るんだな、数字が四倍も違って平気な顔をしておられるというのは。(田中内閣総理大臣「感圧紙の間違いだ」と呼ぶ)感圧紙の間違いですか。収拾のつかないえらいことですよ、そんなのは。  それはそれとして、国内で使用されたのが五万三千トンです。電気機器の分が三万六千トンです。こっちはまだ回収がしいい。回収がしいいのですけれども、いま回収されたものは、液状で回収されたのは八千六百トン。これは通産省から私いただいてきたデータですよ。だから申し上げたのですけれども、このようなものである。ところが、感圧紙メーカーのほうから回収したものは、五千トン使ったのに対して千百トンしか回収されない、こういう状況です。これではもう話のほかなんですね。事実、いま言われましたように、変圧器その他の機器からPCBを抜く技術自体が問題になる。抜いた液状のPCBを固めて、いままで簡単に焼却したのですが、千四百度以上の高熱でないとPCBがうまく分解しない、そのまま飛び出してくる。その千四百度以上を常時保つ炉というものの研究ができておらぬ。その会社のほうにつくれと号令しただけなんです、通産省は。じゃ、どういうふうにするかというに、わが国の科学技術の総力をあげてやるというような取り組みがないから、それらの会社がもたもたやっておるわけです。焼却できないのはどうなっておるかというと、大きなPCBのタンクをつくってその中にはうり込んでいる。鐘淵化学なんか二千トンもほうり込んであります。モンサントのほうでも五百トンほうり込んである。そこへ入らないものですから、今度どうしたかというと、野積みにしてある。どういうふうに野積みになっておるかといいますと、こういうふうに野積みになっております。ドラムかんです。ドラムかんの野積みですから、ごらんいただけるとおり、中にはひっくり返っているものもありますでしょう。こういうものはすぐ口があくのです。中にはこぼれたところへ、上から水をかけて知らぬ顔をしておるというのもあるわけです。ここにカネクロールとちゃんと書いてありますね。これがPCBです。こういうものすごいものが、こんなかんなんかに入れておいたら危険なんて通り越しておる。横にいる人もあぶないわけです。私は行政措置といいますか、そういったものが甘過ぎたと思うのですね。−行政指導のやり方が甘過ぎたのではなかろうか。  そしてもう一つまずいのは、厚生大臣がいま言われましたけれども、健康診断して調べるとおっしゃっておる。魚はもう危険なものはわかっておる。厚生省が出したあの基準すら大幅に上回っておる魚がどんどんとれているのだが、その魚を食うなとも言わぬ、食えとも言わぬ、知らぬ顔をしている。食ったやつのからだを調べてやる、くたばったらそのとき決定するというようなやり方と思われる。これでは魚なんか安心して食えない。しかも、皆さん方に申し上げておきたいのですが、特においしいお魚のほうがPCB率が高い。そこにいらっしゃる大臣諸公は比較的その危険が高いと私は思う。ある日突然大臣席から発狂者が立ち上がったりしたら、たださえ混乱しておるのにもうどうしようもない。それでいいのかと言いたいのです。  それでもう一つ考えていただきたいのは、漁民のことなんです。魚が危険だといわれたら漁民はどうするか。魚がとれない。売れない。兵庫県ではPCBの一番高いものとしてハマチがあげられたことがある。小魚をハマチに食わせるという形でPCBが非常に濃縮されて高かった。それで、ハマチが実際どうなったかというと、そのハマチを食べたら危険な水準になっておる。お魚屋さんも、そのハマチの養殖を指示し推進なさっていた農林省においても、あるいはその他のお役所においても手のつけられないような事態になっておる。そこへちょうど赤潮が大発生して、ハマチがほとんど死んじゃった。それでまさに一件が片づいたみたいなかっこうになっちゃった。問題は片づいていない。生き残っておるハマチもおる。それからウナギです。ボラです。こうしたものが全部その値いが高かった。それに対していいとか悪いとか言わぬ。だから、たとえば公害でやられたお魚はしっぽが曲がって最近とれるのです。明らかに内部が異常なんだ。おさしみにしてみると身がくずれると魚屋さんたちが言っています。こういう魚がとられて売られてしまう。そのからだのまま、そのまま売ると、だれも気持ち悪がって食わないから、身を裂いて、そして裂き身にして売ってしまう。そういうのを皆さん方が上がってないという保証はない。  私は、実は一人のお年寄りから言われましたけれども、戦争中のアメリカ軍だって、日本に爆弾をたくさん落とした。しかし、アメリカ軍がひどかったとはいっても、空の空気と飲む水と食べる食いものまで危険にしたということはない。爆弾は、耐えしのんでいればやがて通り過ぎる。食いものがどんどんどんどんあぶなくなって、しかも手がつけられない、こんなばかな話あるかと、この間ある人から詰め寄られました。先ほどからの監督官庁の回収の問題は、さすがに通産大臣も言わなかったけれども、通産大臣の回収に対する号令なんて、なまぬるいのを通り越しておる。私は、どういうふうに通達されたか全部集めてみた。集めてみたら、それはもうほんとうに強制措置もなければ何にもない。ただお願いするだけの措置しかない。通り一ぺん、人ごとみたいな、よそごとみたいな通達が出ておる。それが通産省の名でどんどん出ておる。また、PCBの分解のための装置をしなければならないというのがわかっているのに、それに対してどんな措置をとっているかというと、それもPCBの焼却炉がたいへんですと、科学技術庁のほうからは一つも話が出ていない。私は、防衛力の平和時の限界を出せと研究を命じられるほどの総理ですから、こうしたことはもう総理の権限で、特別の裁断で、研究要請なさるのがほんとうじゃないかと思えてしかたがない。これは言いのがれするとかなんとかの問題じゃないと私は思うのですけれども総理、この辺で総理の御見解を承りたい。
  224. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 PCBに対しては、まだ科学的な研究が完ぺきになっておりませんので、法令に基づく措置はとっておらないということで、行政指導をやっておるわけです。これは感圧紙に対しましては回収、使用禁止というようなことをやっているわけですが、もうすでに使用して廃棄処分にしたものが下水を通じて流れたり、いろいろな問題を起こしておるわけであります。また、コンデンサーやトランスのように回収ができるというものに対しては回収するように強く言っているわけでございますが、この回収後の措置がまだ明確になっていないということで、いま御指摘になったような状態もあるわけであります。もうすでに日本コンデンサの工場など閉鎖をしておるということで、これにかわるものを検討しておるということでございますが、やはりPCBというものの、もう流れてしまったものが非常に多いのでありますから、その中で変圧器やコンデンサー等に対しては、これは回収すればできるわけです。ですから、そういうものをやはり電力会社とか電電公社とか、そういう大きな企業が大体使っているわけですから、こういうものの回収というものを急がせなければならない。これは回収したら処理できるようなやはり科学的、技術的な問題を早急に詰めなければいかぬだろう。  私も、去年から、PCBによって汚染された魚の背骨が曲がっているとか、いろいろな地域が指定されているわけであります。琵琶湖の魚に対しても言及がございましたが、そういう意味で、このPCBに対してはすみやかな措置が望ましいと思います。いま中曽根通産大臣は、今国会に法律を出すようにという発言がありましたが、私はいま聞いたわけですが、この内容はどういう問題か、引き続いて私も勉強してみたい、こう思います。  とにかく、化学薬品というものは、効力が非常にいいものほど反対におそろしい公害もあり得るものだと考えます。そういう意味で、サリドマイドの問題とかいろいろな問題が起こっているわけでございますから、やはり使用する前に完ぺきな研究というものが必要だと思います。  私は、いま食品に対する着色剤とかいろいろなものがありますが、こういうものがやはりどう考えてもいいとは思いません。自然の色以外に毒々しい色をしているものがありますが、こういうものがいいわけないのです。いいわけないのですけれども、少量ならいいというのと、マイナス面が立証されないということで使っているのだと思いますが、やはりこういう問題に対しては相当大きな機関で徹底的に、新しい製品というものに対しての害、利点というものは必ず害をもたらすものでありますから、そういう意味で研究を進めるような措置等も、十分考えてまいりたいと思います。これは、PCBの回収という問題に対しては、ひとつ関係閣僚とも十分相談をいたします。
  225. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大体総理答弁で私は了承したいと思いますが、総理、これはここで片づけるわけにいかないので、これから先やり方を見さしていただきたい。  それで総理、もう一つ私、申し上げておきたいのですが、アメリカへ電気製品を輸出する場合にULという規格がある。これはアメリカに輸出するときの規格なんですけれども、これはPCBを使わないと通らない規格なんだそうです。これはどういうことになっているかというと、アメリカ側に文句を言わなければ、日本側の商売人たちは何とかかんとかしてPCBを持ってこなければつくれない、こういうことになっているそうであります。これはどの製品にどう使われているか、私はまだ詳しく聞いておりませんから、どれどれと申し上げるわけにいきませんけれども、こういうことがある。これをひとつ了解していただきたい。  それからOECDでPCBの問題が問題になりそうであります。そのときに日本のことが諸外国に波及するのですから、最大の被害を受ける日本のやり方をどうだとみんな聞こうとしておりますから、OECDに対しても、こういうようなUL規格みたいな変な規格があったらやめろ、回収せよ、使用を禁止せよという提議をしなければならない。これを私、申し上げておきたいと思うのです。  それからもう一つは、いまPCBの製品類の中で、先ほど簡単なお話がありましたが、電気器具類、その中で開放型と密閉型と両方ありますが、密閉型の中に、電柱の上に立っている変圧器みたいなものがあります。トランスですね。トランス群が実はPCBを入れると性能がよくなるのだそうであって、普通十五年ぐらいのものが二十年ぐらいもつのだそうであります。回収が非常に行ないにくい。だから商売人にまかせておけば長く長く使おうとする。けっこうこわれたり流れたりする、密閉型といいながら。だから、これも原則としては即時回収の方向に向かって進まなければならぬということが一つあります。  それから感圧紙のようなものですけれども、いま感圧紙の中で、政府官庁が持っている書類の中で、感圧紙を使って書類をつくり上げたものがたくさんあります。特に郵便局の郵便貯金の原簿が感圧紙であって、それがためてある。これを写しかえ作業をしようとして全逓から拒否された事件が起こりました。ところが、こういうような感圧紙群は政府機関、官庁群が膨大に持っておる。これは早急に集めて、普通の焼き方では千四百度よりはるかに下になってしまうから焼けないので、とりあえず密閉倉庫のようなものをつくってほうり込んで集めてしまう。  それからもう一つ、魚に対する規制をすぐ明確にする。どれとどれは食っていけないならいけない、これが安全なら安全と明示する。食いものに関しての判定を明確にする。  それから塗料のたぐい、印刷インキのたぐいがどうやら使われてしまったように見えるのですけれども、私は、在庫がゼロだという御報告をきのういただいたのですが、私の調査では、そこらじゅうの印刷会社やら何やらに少しずつ、何かんずつか残っております。これはどの銘柄が危険だということを告示して至急回収する。  それから、先ほど申し上げました焼却炉を至急つくり上げる、こういったことを早急にひとつやっていただきたいと思いますが、これは環境庁長官からお答えいただきたい。
  226. 三木武夫

    ○三木国務大臣 PCBは、われわれとしても、非常に大きな関心を持って、最近いろいろな問題が起こっておることも承知しております。政府としても、PCBの対策推進会議というものを持っておるわけで、そこで回収の問題あるいはまた規制の問題、あるいはまた実態調査の問題、回収技術の開発の問題等広範な問題をそこでやっておるわけですが、各省に関係しますから、至急にこの推進会議を通じて、いままでもこれは重大な関心を持ってやっておるけれども、一そうこの今日いろいろな問題を起こしておる実情にかんがみて、早急な処置をとるような手配をいたす所存でございます。
  227. 前田佳都男

    前田国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま渡部委員からPCBの害毒につきまして、非常に詳しく御説明がございました。このPCBが国民生活に非常な不安を与え、害を与えておるということは御指摘のとおりでございます。また、その対策についても、非常にうんちくのある深い御指示をいただきましたことを、最初に御礼を申し上げたいと思うのであります。これは政府といたしましても、三木長官がお話しになりましたように、PCB汚染対策推進会議というものを昨年発足いたしまして、着々と手を打っております。  私たち科学技術庁といたしましては、四十六年、すでに特別調整費をもちまして、環境汚染防止研究というのをいたしておりまして、汚染の実態を把握する。それから乳肉、乳とか肉の食品などの分析方法の研究をいたしております。  それから四十七年度は、この推進会議の決定の総合対策に基づきまして、こういう研究をやっております。分析方法の統一化、高度化並びに慢性毒性の人体に及ぼす影響でございます。これは、このPCBを受けて変形するとか、からだがサリドマイドのようにおかしくなるとか、そういう研究、ガンになるんじゃないか、発ガン性の研究、そういう研究をいたしております。  また、PCBの処理技術の方法でございます。これは渡部委員指摘のとおり、確かに処理をしなければいけない、燃焼しなければいけない、焼かなくちゃいけない。これは非常な熱が要る。こういう技術を開発しなければいけないということに精力的に取り組んでおるわけでございます。  また理研におきましては、光学的脱塩素化法といいまして、紫外線を照射いたしまして、そうしてPCBを分解してしまう、そういう方法も検討いたしております。  とにもかくにも、緊急的には、環境中に放出されましたPCBを処理、処分する技術を至急に開発したい。それからまた、より簡便な測定、分析技術も開発したい。また長期的には、人体をはじめといたしまして、生体物の、生きものにどういう影響があるかということを根本的に解明したいと思うのでございます。  渡部委員からいろいろ御指摘がございましたので、今後、われわれ科学技術庁といたしましても、これらの技術の開発に全力を尽くしたいと思うのでございます。  なお、総理からも御指摘がございましたが、PCBをはじめといたしましてこれからのいろいろな化学物質ですね、新しい物質、これらについては、プラスの面とマイナスの面とがあると思うのでございまして、これらの点につきましては、そういうデメリット、マイナスの面をチェックして、メリット、よい面を伸ばしていきたいという、そういう姿勢でテクノロジー・アセスメントと申しまして、技術再評価といいましょうか、事前評価といいましょうか、そういう方法を導入いたしまして、そうして、科学技術がほんとうにわれわれの安全に、生活の安全に役に立つということにベストを尽くしたいということを申し上げて、お答えといたしたいと思います。
  228. 久野忠治

    ○久野国務大臣 たまたま渡部委員の御質疑の中に、郵政省の地方貯金局で扱っておりますPCB入りの感圧紙の問題がございます。  未使用の分につきましては、全部これは回収をいたしまして、郵政省の中にあります資材部の倉庫に、厳封をいたして保管をいたしてあります。  それから、地方郵便局などで保管をいたしておりましたPCB入りの定額貯金預入申込書がございますが、この預入申込書は全部新しくコピーをいたしまして、このPCBを使用いたしました預入申込書もこれも回収をいたしまして、現在倉庫に厳封をいたしまして保管中でございます。  そうしてその処置につきましては、現在通産省を中心といたしまして、PCB入り感圧紙処理技術研究会におきまして処分の方法を検討中でございますので、その決定を待って処分をする予定であります。  以上であります。
  229. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それじゃ、ただいまいろいろな提案もいたしましたので、それに対しての御回答をいただけますようにお願いをしたいと思います。  それから、私はきょうまだ申し上げたかった食品添加物問題、総理のほうがむしろ先におっしゃいましたが、石油たん白の問題、ライフサイエンスの問題、原子力発電所公害の問題等につきまして、いずれも膨大な科学技術が私たちの生活、生命に及ぼす非常な影響を考えますとき、この取り組みで慎重であっていただきたいと思うわけであります。並びに、このPCBの問題は、わが日本政府の政治姿勢の原点にかかわる問題でありますので、特段の処置をもって強力かつ可及的すみやかな実行対策をとられますようお願いを、最後にさせていただきます。(拍手)
  230. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて渡部君の質疑は終了いたしました。  次回は、明六日午後一時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時六分散会