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田中内閣総理大臣 現象の一つとして
土地の買い占め等が行なわれておるということは、望ましくないことは言うまでもありません。そういう現象に対して、
政府は諸般の施策を進めておるわけでございます。融資の抑制をはかったり、また、これから新しい法律を御審議いただいて、これから、自分が安く手に入れたものが高くなるというような望みを持っておる者の不当な利得を押えるよう措置をする税制をつくったり、最も大きいのは、ここは自分で、みずからの意思によって
開発が立てられると思っておるものを特定地域に指定すれば、それは公共の用を中心にしたもの、その
計画に沿ったものでなければこれを使用できないというような制限を行なうべく、いま法律を立案中でございます。自分で将来宅地にしようとして買っても、そこが緑地帯に指定をされるということになれば、これは建物は建たなくなるわけであります。建物が建たなくなれば、予想するような不当な利得を得ることはできません。そういう国土の利用法を土台にしまして、いろいろな施策を講じようとしておるのでございます。
私は、今度の施策を行なうことによって、
土地に対する一つの限界というものは求められるのではないかという感じでございます。法律が出されない、提出されない現在において、もうすでに
土地を買いあおっておったような業者は、
土地に対してはもう先が見えてまいりましたなあということもあり、このごろは金融機関の引き締めもございます。そういう
意味で、大規模な
土地の買い占めが不可能になっておるという
事態に徴しても、それは明らかだと思うのでございます。
私は、
列島改造と
都市改造というものは、内容を積み重ねていくためにおいては、これは
国民的衆知を集むべきだと思いますが、この方向は絶対に誤っておらない、こういう
考え方でございます。
都市において
土地がないのであります。
都市においては、総面積のわずか一%という中で、三二%、三千三百万人も住んでおる。しかも、立体化をはからなければならないというのに、自然の採光、通風を確保するために立体化は
反対であるという声が一部にあります。そうすれば、平面
都市が無制限に拡大されることもできないわけでありますから、やはり立体化を行なう、また全面的な区画
整理を行なうということを前提にしないで、一体ほんとうに大
都市における地価が抑制できるかどうか。これはもう全世界において行なわれておることでございます。四半世紀前にロンドンはニュータウン法をつくって、八百五十万のロンドンから百五十万の
人口を移すためにあの膨大な事業を行ないました。それでもやはり大
都市に集中する趨勢を阻止することはできません。新しいブラジリアというものの建設もしかりでありますし、しかも、ハワイやニューヨークの不良街区の改良もみな、いまよりも倍以上の高さにしようということによって、空地をつくったり住宅面積をふやしたりということをやっておるわけでございますが、これらはやはり
国民的合意というものの背景を求めなければならないことでありまして、これはやはり多少時間がかかるということだと思います。
これは、いまもうどうにもならないような公害の発生源になっておるという産業そのものも、だんだん
土地集約的な産業構造に移していかなければならぬとは思いますが、三十七万平方キロもある国土の中で、六十年を越しても、産業で必要とする面積はわずかに一%、三千七百平方キロにすぎないのであります。そういうものが全国的に確保できないというようなものではない。水も
土地も、一次産業との労働調整、環境の保全、自然の保全ということを考えれば、やはり交通網の整備による
都市から全国土
開発へと歩を進めなければならない。これは社会主義国でも、
都市に対する流入を抑制し、一カ年にその幾ばくかずつを強制的に新しい
都市に出しておるという事実に顧みるまでもない。
しかしこれは、集中のメリットという長い百年の歴史の中で積み重ねられてきたものを逆にしようというのでありますから、法制も整備しなければなりませんし、いろいろな施策を行なわなければならないし、特に、
都市に来るよりも国土全体を利用することがプラスになるんだというような
考え方にやはり転換をしなければならないわけでありますから、私は、やはり野党の皆さんにも、このような、それ以外に道のない問題に対しては
理解と支持をいただきたい、こう考えております。