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1973-02-01 第71回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月一日(木曜日)    午前十時五分開議  出席委員    委員長 根本龍太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小澤 太郎君    理事 小沢 辰男君 理事 田澤 吉郎君    理事 湊  徹郎君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 谷口善太郎君    理事 山田 太郎君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君       伊能繁次郎君    臼井 莊一君       大野 市郎君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       小平 久雄君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       塚原 俊郎君    灘尾 弘吉君       野田 卯一君    野原 正勝君       福田  一君    保利  茂君       細田 吉藏君    前田 正男君       松浦周太郎君    松野 頼三君       宮澤 喜一君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    大原  亨君       北山 愛郎君    小林  進君       田中 武夫君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    細谷 治嘉君       安井 吉典君    津金 佑近君       中路 雅弘君    中島 武敏君       岡本 富夫君    正木 良明君       安里積千代君    小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 櫻内 義雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         郵 政 大 臣 久野 忠治君         労 働 大 臣 加藤常太郎君         建 設 大 臣 金丸  信君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       江崎 真澄君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         経済企画庁調査         局長      宮崎  勇君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省年金局長 横田 陽吉君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林省農蚕園芸         局長      伊藤 俊三君        農林省畜産局長 大河原太一郎君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         林野庁長官   福田 省一君         通商産業省企業         局長      山下 英明君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君        自治省税務局長 佐々木喜久治君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月一日  辞任         補欠選任   森山 欽司君     宮澤 喜一君   不破 哲三君     中路 雅弘君   矢野 絢也君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   宮澤 喜一君     森山 欽司君   中路 雅弘君     不破 哲三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これより会議を開きます。  昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、これより総括質疑に入ります。北山愛郎君。
  3. 北山愛郎

    北山委員 私は、日本社会党を代表して、政府に対しまして、当面の政治外交あるいは経済の特に重要な問題について政府考えをただしたいと思います。  田中総理は、本会議における施政方針演説におきましても、この前の総選挙において国民期待不満というものを痛いほど感じた、こういうふうに言っておられますが、詳しく申しますと、要するに田中内閣姿勢に対する国民不満というものは非常にきびしいものがあるというふうな意味と思いますが、どの点について国民田中内閣不満を持っているか、総理の所見をまずもって伺いたいと思うのであります。
  4. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 戦後の困難な中からたゆみない努力によって今日の経済的繁栄をもたらしてまいったことに対しては国民各位評価をいたしておりますし、また、戦後の困難の中からまず生活を確保しなければならないというような一つの目標が達成せられた事実に対しては適切な評価をいたしております。しかし、現時点において、都市においては土地の問題、公害の問題、その他いろんな解決すべき問題が存在をいたしております。第一の問題は解決をしたにしても、第二、第三とよりよい生活を確保するための希望は存在をするわけであります。都市が過密に悩んでおるとともに、過疎の状態も御承知のとおりでございます。これらに対して、政治が適切な処方せんを示して難問の解決に当たられるように強い期待を持っておることは事実でございます。その意味において、政治責任の地位にある政府としましては、国民のこの期待にこたえるために懸命な努力をしなければならないということを心に誓っておるわけでございまして、政府に対して強い期待国民が持っておるという事実に対して、これから政府がなさなければならない責任に対して心に期したわけでございます。
  5. 北山愛郎

    北山委員 きわめて率直にいいますと、田中内閣が発足をしました当時においては相当な期待国民が持った。しかし、いままでの六カ月間、田中内閣の実績については、やはり前の佐藤内閣と同じように、外交面においてはアメリカの言いなりになる対米追従外交である、内政面においては大企業優先の、言うならば強いもの勝ち、弱いものいじめの政治である、こういう実態がはっきりしてまいりましたので、そこで国民田中内閣に対する期待というものが、むしろ急速に低下をしておるというふうに私ども考えるわけであります。  私は、今日国民の求めるものは、外交面においてもあるいは内政面においても、社会正義と大衆の中にあるところの道理に基づく政治である、このように考えるわけであります。そういう立場から、私は政府姿勢に対しまして、以下各種の質問をいたしたいと思います。  現在私どもが、国民日本政治に対する不信感というものをなくするために、まず一番大事なことは、金の支配、金に左右されるいまの政治というものを金の力から解放する、これが一番大事な問題であろうと思うのであります。金の力にたよっておる、金に左右されておる現在の日本政治を金のヘドロから脱却をさして、そして政治をきれいにする、まずこれが最大の課題であろうと思うのであります。  私は、まず最初に、三木さんにお伺いをしたいのでありますが、三木さんは、去年の総裁選挙の際に、声明を出して、その中できわめてりっぱなことを言っておられるのであります。自民党近代化ということを唱えまして、その中で、現在の自民党は、金は財界にたよっておる、政策は官僚まかせである、これでは創造性のある自民党にすることはできない、中でも一番悪いのは金であるから、まずもって政治資金規正法というものを立法化しなければならぬ、こういうことをはっきり言っておられるわけであります。三木さんが今日田中内閣の閣僚として、その信念、その考えに変わりはないと私は思うのであります。これを田中内閣の副総理として、政府政治資金規正法をこの国会提案をするというふうに、促進役の役目をしてもらうのが、これは当然だと思うのでありますが、まずもって三木国務大臣の御意見を承りたいのであります。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 確かに御指摘のような発言をいたしたことは事実であります。やはり政党は、政党自身政策立案の能力を持ち、また政党資金は、できるだけ党員の党費等によって経常費をまかなっていくということが理想である、これは私はそう考えておるわけでございます。政治資金規正法については、総理答弁も私は聞いておりまして、まあ選挙法の改正、それと同時にこの問題を考えるということが、理屈の上では一番理想的だと思いますが、政治資金規正法については、前内閣時代からのいきさつもあり、国民気持ちとしては、何が何でも資金の問題から取り上げてもらいたいという強い要望のあることもよくわかりますので、この問題については、今後総理とも十分話し合ってまいりたいという所存でございます。
  7. 北山愛郎

    北山委員 三木環境庁長官、公害問題も大事ですが、政治金害から解放するということは、より緊急の問題であろう、こういうふうに考えるわけであります。総裁選挙におけるあのりっぱな声明を、この国会でこれを実現させるということのために努力をしてもらいたいと思うのであります。  そこで、総理に伺いますが、本会議等におけるこの問題についての答弁は、まことに私は不満であります。佐藤内閣当時と同じような答弁をされておる。選挙法関係もある、政党法関係もある。どこに一体関係があるのですか。いまの選挙法というのは金のかかる選挙法である。実はそうじゃないのです。選挙法が金のかかる選挙法であるならば、私のような者が選挙に出られるわけはないのです。金がかかる選挙法ではなくて、金をかけるのです。そこに問題がある。ですから、選挙法の問題、そういうものと切り離して、まず政治献金を規制するというこの政治資金規正法、しかもこれから検討するという問題ではない、長い間選挙制度審議会でもってちゃんと答申が出ておる。不十分な答申ではあるけれども社会党としては、公明党や民社党と一緒になって、毎国会この審議会答申に従って、議員立法として提案をしておるのです。自民党が賛成さえしてくればこれは実現をするのです。  一体総理は、政党法関係があるというようなことを言いましたが、政党法政治資金規正法とどんな関係があるのですか。何も関係がないですよ。政党というのは株式会社じゃないのですから、その金というものからできるだけ解放された政治というものでなければならない、私は、そのように思っています。いまの資本主義の世の中ですから、社会から金というものを追放するわけにはいきません。しかし、少なくとも政治と教育だけは金によって汚されるということがない、これがやはりほんとう民主政治の前提でなければならぬ、一番大事な問題なんです。それを機械的に従来と同じような答弁を繰り返しておるという、そういうことでは新しい時代を開くというふうなことは何もできないし、またそこにこそ田中総理のいわゆる決断と実行というものが疑われるわけなんです。私は、ぜひともこの国会で、政府は、選挙制度審議会答申に従った立法化提案をしてもらいたい。これを強く要求しますが、総理はどのようなお考えですか。
  8. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政治資金規正法につきましては、過去何回か提案をしながらその成立を見ないということは、御承知のとおりでございます。また政治資金の問題は、議会制民主主義政党の消長にも関する問題であります。戦後新しく政治資金規正法が設けられましたときも、審議がせられた過程において、いろいろ議論をせられて今日に至っております。民主政治体制において、政治する資金については最終的な判断は、有権者が判断をすることというのが望ましいということで、あの立法がなされた経緯は御承知のとおりでございます。  政治資金という問題に対しては、選挙に対しては公職選挙法によって制限がございますから、選挙の問題と離れて政治資金というものは別に考えなければならない問題でございます。お互い政策を立案し、国民の支持と理解を得るためには、相当な政治資金が必要であることもまた事実でございます。いま三木国務大臣が述べられましたように、理想に向かってわれわれは努力を傾けなければならぬことは言うをまちません。しかし、この政治資金規正法の問題に対しては、お互いが長い将来にわたって日本議会制民主主義はどうあるべきかという理想に向かって協議をしたり研究をしたりしていくことが望ましいことだと考えておるのでございます。政治資金規正法の提出、またこれから成案を得るために、政府も従前に増して努力を続けてまいりたい、こう思うわけでございます。
  9. 北山愛郎

    北山委員 これは議会制民主主義の根幹に触れる問題であるから、そこで一番先にすみやかにやらなければならない問題なんです。議会制民主主義を確立するという大きな課題、そのためには、まずもって金の政治、いまのように金主主義といいますか、金権政治というか、国民主権者であるという政治じゃなくて、むしろ金が主人公である、金が政治を支配している、こういう実態であっては、議会制民主主義は絶対にもう救われない。私は、これはしつこく申し上げたいのであります。それを除外していろいろな政策を論じてもむしろ始まらないくらいだ。いま日本政治の置かれておる一番の汚点といいますか、欠陥、これをお互い責任として進めてまいりたい、こういう気持ちで私どもはいままでも何回となくこのことを繰り返しておるわけであります。真剣に考えていただきたい。もう一ぺん検討されまして、ぜひともこの国会提案されるように私は要望してやまないのであります。  次に、外交防衛の問題に触れるわけでありますが、率直にいって、私は、本会議における総理外務大臣演説を聞きまして、はなはだ失望したわけであります。そこには歴史というものを顧みておるそういう反省も足りない、また未来を創造するような大きな展望もないのじゃないか、特に日本の国が平和憲法という世界に冠たる憲法を持っておる、そういう誇りが欠けているのではないか、こういうことを私は感じました。  そこで、私は、いまわれわれをめぐっておる内外の情勢というものが大きく変動しておる、そういう中で、日本のこれからの外交あるいは防衛がどうあるべきかということについて、基本的な問題でお考えをただしたいと思うのであります。あるいは私ども考えを述べてみたいと思うのであります。  特に、長い間戦争が続きましたベトナムに平和が訪れてこようとしておる。四半世紀にわたる流血と破壊の戦争が終わって、アジアの平和が大きく前進をしておるということは、私はほんとうに心から喜んでおる次第であります。とともに、民族の解放のために、世界最強アメリカ軍を向こうに回して、あの言語に絶するような砲撃、爆撃にも耐えて、ついに勝利をかちとった英雄的なベトナム人民に、心から私は祝福を申し上げたいのであります。また、ベトナム人民戦いというのは、ベトナム解放だけの問題ではないと思うのであります。人類正義と尊厳、人類の名誉、これをベトナム人民人類にかわって守ってきた。その戦い勝利をした。もしも暴力でもって正義が破壊されるというならば、おそらくわれわれの前途というものは暗たんたるものだと思うのであります。正義が勝つのだということ、力は弱くても正義戦いが勝つのだということを証明してくれた。私は、このベトナム人民戦い、その勝利というものを、そういう意味で深く感謝をしておるのであります。  今日、ベトナム戦争解決の曙光が見えたというので、政府はいち早くいわゆるポストベトナムということで戦後の復興なりあるいは難民の救済なりというような方向にどんどん手を差し向けておるようでありますが、むしろその前に、このベトナム戦争というものの持っておるその本質とその意味、あるいはそこから出てくる、われわれが、日本反省をしなければならないそういうような問題を深く考えなければならないと思うのであります。私は、アメリカ政府ベトナムに対する武力介入、侵略というものが、国連憲章に違反するまことに不法非道なやり方であって、これに協力した政府の措置は不当であった、そこに大きな責任があると思うのであります。  私は、せんだっての本会議のときに、総理質問に答えまして、ベトナム戦争のいわゆる合法性といいますか、国際法上の基礎につきまして、アメリカ政府はそれが国連憲章の第五十一条による集団的な自衛権によるものであると言っております、アメリカ政府がそう言っております、これだけ答えておられましたが、一体総理はそれが正しいと考えますか。国連憲章の第五十一条、個別的なあるいは集団的な自衛権というのは、国連加盟国がよそから武力攻撃を受けたときに初めて成立する条件なんです。アメリカベトナムから武力攻撃を受けたからやったんじゃないのです。ですから、国連憲章の第五十一条を適用するということは根拠がない、私どもはそのように考えております。総理は、このアメリカが言っておる国連憲章第五十一条に基づくものであるということ、そのことについて、これが正しいと考えておるのか、私どもは間違っておると思うのですが、政府の見解を聞く必要があると思うのです。お尋ねをいたします。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 外交の問題でございますので、私からとりあえず答弁さしていただきます。  ベトナム戦争につきまして政府当事国でないということはたびたび申し上げたとおりでございます。そして政府が申し上げておりますことは、アメリカ介入国連憲章五十一条に基づく集団自衛権の行使であるとアメリカが申しておるということ、アメリカがそう言っておるということを日本政府が言っておるまでのことでございまして、私ども当事国でないものがこの戦争につきましてとやかく裁判をする立場にないと思うのであります。
  11. 北山愛郎

    北山委員 いまの大臣答弁は、これは非常に重要だと思うのであります。日本ベトナム戦争かかわりがない、ベトナム戦争にはかかわりのないことでござんすというような態度をいままでとってきましたか。戦車輸送にしてもB52の発進にしても実質上ベトナム戦争に協力してきたじゃないですか。特に数年前の国会において、椎名外務大臣が、ベトナム戦争について日本は中立の立場ではないのだというようなことをはっきり言っておる。日本アメリカベトナム戦争に協力してきた、支持してきたということは明らかじゃないですか。あるいは北爆についてこれを支持してきた。決して当事国でないのじゃないのです。関係してきたのです。なるほど参戦国として自衛隊をベトナムに派遣したり、韓国のようなことはしませんでしたけれども、無関係ではないのです。しかも、極東条項の問題につきましてもいろいろな論議があった。政府は、これは安保条約上の義務なんだ、こういう説明をしてきたじゃないですか。いまの外務大臣答弁は、関係のないことだから、アメリカ政府がそういう解釈だから、ただそれを承っておるのだ。そんなばかなことはないと思うのですよ。そんな答弁でいいですか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 お答えいたします。  日本アメリカの間には、北山委員承知のように、安保条約という約束があるわけでございまして、私ども政府立場は、この条約が存続する限りそれに伴う義務を履行する責任があるわけでございます。したがって、日米間の問題として、安保条約上の義務を履行する関係上、反射的にベトナム戦争補給基地を提供するという立場にあることを私は否定するものではないのでありますが、ベトナム戦争自体につきまして日本当事国ではないんだということを申し上げたまででございます。しかしながら、これは条約上の日本立場を申し上げたわけでございまして、日本政府としては、北山さんも御承知のように、このベトナム戦争が一日も早く収拾するように常に希望し続けてまいりましたばかりでなく、アメリカに対しましても、一日も早くこの収拾を急ぐようにという要請をたびたびいたしてきましたし、また、北爆その他アメリカの個々の軍事行動を支持した覚えはないのであります。
  13. 北山愛郎

    北山委員 この前の相模原の戦車兵員輸送車ベトナム派遣輸送の問題にしても、やはり安保条約日本がそういう義務があるんだという立場から、政府は、住民の反対を押し切って、国民反対を押し切ってあれを強行したでしょう。私は、安保条約上の義務があるから、反射的に、それがベトナムで使われようとそんなことは関係ないというような御答弁では納得がいかないのです。なぜならば、一体何のために日米安保条約の第一条があるのですか。日米両国というものは、国連憲章を守るという義務を第一条で規定しておるのじゃないですか。ですから、ベトナム戦争におけるアメリカ行動というものが国連憲章に違反しておるならば、第一条違反じゃないですか。アメリカ日本に対して、安保条約第一条で国連憲章を守るんだ、国際紛争武力解決するようなことはしないんだという国連憲章の原則を守るということを約束しているんです。日本約束している。そういう規定が安保条約第一条にあるのですよ。  したがって、ベトナム戦争におけるアメリカ介入というものが、国連憲章に違反しているのか違反していないのかということは、非常にかかわりのある問題なんだ。そうじゃないんですか。安保条約の第一条にはっきりあるでしょう。日米両国というものは国連憲章を守るという約束をやり、それが安保条約上の義務じゃないのですか。アメリカ義務を負っているんじゃないですか。それに違反しているか違反していないかということは、やはり政府判断しなければならぬじゃないですか。アメリカの問題で、これは関係ありません、国連憲章の五十一条であるとか、アメリカはそう言っておりますと、そんなばかなことであってはいけないと思うのです。そういう関係ではないんじゃないのですか。どうですか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 私のことばがちょっと足らなかったわけでございまして恐縮しましたが、国連憲章五十一条に基づく集団自衛権の行使の形をとっておるということをアメリカが言っておるということでございます。国連憲章はそもそも戦争を非合法化したものでございまして、国連憲章が認めておるのは集団自衛権の行使しかないわけでございまして、これはもう私が御説明申し上げるまでもなく、そういう姿の軍事行動をやっておるということに対しまして日本政府は理解をしておるわけでございます。
  15. 北山愛郎

    北山委員 国連憲章は、あれに加盟している国々がみんな守っている一般的な原則でしょう。それをわざわざ日米安保条約の第一条に据えたということは、結局、アメリカ国連憲章の原則を守るということを日本約束しておるんじゃないですか。したがって、ベトナム戦争がそれに違反しているかどうか、そういうことは安保条約にそのこと自体が関係してくると思うのです。政府としては、アメリカがそう言っております、これは国連憲章五十一条によると言っております、それで済ませる問題じゃないと思うのです。私は、ここで条約論だけを言おうと思いませんが、客観的に見て、世界の世論というものは、アメリカベトナム介入というものを不法であり、不正であり、しかも歴史上最悪の戦争犯罪である、こういうようにまで言っておるわけです。そういうふうな、アメリカ軍の補給の基地としてB52が発進をし、あるいは戦車日本から積み出されるという立場にあったということを、われわれは深く反省をしなければならない、そういうことを私は強く政府にも要求したいと思うのであります。  そこで次に、例の問題になっておりますいわゆる平和時における防衛力の限界の問題であります。これは衆参両院におきまして、わが党の同僚の諸君の質問に対して政府がはっきりと答弁をされておる。四次防なり、そういう防衛力整備計画をつくるその前提条件は、やはり防衛力というものの限界、目標というものの決定が必要である、そういう趣旨でもって政府としてはこの防衛力の限界なるものをはっきりと明示をするという約束をしておるわけであります。ことにこの前の臨時国会におきましても、防衛庁においてはその作業をやっておる、田中総理の命令によってこの作業を進めておる、そしてその作業の内容というのは、やはり防衛力の限界、質的な、そしてまた量的な限界もはっきり明示をするんだ、その時期は年内にやるんだ、こういうことを政府約束をされておるわけでありますが、年内には、いろいろな事情もありましたでしょうが、はっきりと示されなかった。この点について、この際政府のお答えをいただきたい。要するに、防衛力の限界というものをここで示していただきたい。これをまずお伺いしたいのであります。
  16. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 お尋ねになりました平和時における防衛力の限界ということにつきまして、総理より、防衛庁において勉強、研究をしてみよという指示をいただきました。その後の臨時国会における委員会等におきまして御質問がありまして、防衛庁において勉強をしております、大体年内を目途にお答えを申し上げるようにいたしたいというふうに申しておりましたが、年内後半における諸事情によりまして、年内に防衛庁におけるこの作業を終わることができませんでございました。その点はたいへん恐縮に存じておるわけでございまするが、ただいま御質問に応じましてお答えを申し上げるようにいたしたいと存ずるのでございます。  この防衛力の限界の御要請が出ました背景は、御承知のとおり、臨時国会におきまして四次防についての御審議、御質疑がありまして、だんだんと防衛力が二次防、三次防と増加し、四次防と増加しておる状態、このままではどこまで防衛力が増強をされるかめどがつかないではないか、限界がわからないではないか、防衛力について限界を示せということであったわけでございます。この点を主とした考え方に基づきまして、総理より平和時における防衛力の限界というものについて、防衛庁において研究をしてみろということでございます。だんだんおくれましたが、研究をいたしまして、先般中間的な報告を申し、今朝最終的な報告を総理に申したところでございます。  これについて御説明を申し上げますと、平和時の防衛力について、第一に、平和時の意味というものでございまするが、防衛庁としては、今日の国際情勢が大勢としては緊張緩和の傾向にあるものと想定をいたしておりまして、このような今日の状態を平和時と考えることといたしました。このような平和時は、わが国及び関係国の平和外交努力が続けられ、内政諸政策が推進をされ、かつ、日米安保体制が有効に維持されるという前提に立って、今後とも続くものと考えてみたわけでございます。  第二に、この平和時においても防衛力が必要な理由でございますが、防衛力は一朝一夕にしてなるものではなく、第四次防衛力整備五カ年計画の策定の際の情勢判断にも申し上げましたように、国際情勢は本来流動的であり、将来にわたって限定された武力紛争の可能性を否定することができない以上、平和時においてもわが国が適切な防衛力の整備を行なうことは、独立国として当然のことであると考えるわけでございます。  このような平和時の防衛力の果たす意義につきましては、まず、日米安保体制と相まって、国際関係の安定に寄与するとともに、わが国の独立と平和を守る決意を表明し、容易には、わが国に対する侵略の意図が発生しないよう抑制し得るものでございます。また、これを保持することによって、結果的には、日米安保体制が有効に維持されることになるものと考えております。  第三に、このような平和時の防衛力の性格といたしましては、わが国の防衛上必要とされる基本的な機能、組織を備え、配備についてすきのない有効な防衛力であり、また、装備の近代化を進め、後方支援態勢を整備するなど、与えられた条件のもとでは、最も効率的な防衛能力を発揮できるものであることが望ましいと考えております。  また、平和時において力点を置くべきものとして、教育訓練が十分に実施でき、災害派遣その他の民生協力に寄与できる態勢を整備するとともに、隊員の処遇改善に努力をいたしまして、士気の高揚をはかり、研究開発を推進して技術進歩の趨勢に適応すべきものと考えております。  第四に、平和時の防衛力については、憲法上や政策上の制約があるほか、特に、経費がGNPの一%の範囲内で適切に規制されることを予想し、人員募集や施設の取得が引き続いて困難であるような環境のもとで、無理なく整備されるものでなければならないということを前提といたしたのであります。  最後に、以上の考え方に基づく平和時の防衛力整備のめどといたしましては、基幹部隊の数については、おおむね第四次防衛力整備五カ年計画完成時までに整備されることになりますが、申し上げた制約条件のもとで、なお欠けておりまする機能の付与及び装備の近代化など、内容の充実をはかるものといたしております。  この平和時の防衛力を数量的に申し上げますると、陸上自衛隊は五個方面隊、十三個師団、十八万人。海上自衛隊は五個地方隊、四ないし五個護衛隊群、約二十五万トンないし約二十八万トン。航空自衛隊は三個航空方面隊、八個航空団、これは内訳でございますが、三個航空方面隊と一個航空混成団、約八百機というふうに、この平和時における防衛力の限界についての数量的な案をつくったわけでございます。
  17. 北山愛郎

    北山委員 いま防衛庁の作業の中間的な報告があったわけですが、これはあらためて文書でもって提出をしていただきたい。よろしゅうございますか。
  18. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 文書をもって御報告をいたします。
  19. 北山愛郎

    北山委員 内容的にはいろいろ問題がもちろんあろうと思います。ただ、私はこの際、内容的に触れるということはできませんので、この扱いについて政府に要望したいと思うのであります。  ということは、いまのいわゆる防衛力の限界、いま言われたのはほんとう意味防衛力の限界ではないのです。限界というのは、昔のことばでいえば、兵力量というものであって、いわゆる兵力のめどというものを一つの政治判断として政府決定がする、これがいわゆる防衛力の限界なのだと思うのであります。いまのものは防衛庁の、その前段の作業の数字にしかすぎないのであります。しかし、中間的な報告をいただいたので、私どもとしても内容について検討して、あらためていろいろな点をただしたいと思います。  総理に伺いますけれども、いま申し上げたように、いままで国会の中で論議をされてきました防衛力の限界というものは、単なる防衛庁の作業見積もりではないということです。政府としての意思決定であるということなんです。ちょうど四次防が中間的な目標の年次計画であると同様に、その前提としてのいわゆる平和時における日本の自衛隊の整備目標というものを政府として決定するという、昔でいえば兵力量という、非常に重大な問題なんです。ですから、その報告を総理が受けて、正規の手続を経てこれを決定するという措置に出られることは、これは当然であると思うのであります。従来国会の中で議論されてきましたいわゆる平和時における防衛力の限界なるものは、そういう性質のものであるというふうに考えますので、政府はいま申し上げたような措置をとるのが当然である、正規の手続をもって政府として決定をするのだ、こういうことは当然であると私は思いますが、そういう措置をおとりになるように私は総理大臣に要望する。見解を承りたい。
  20. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほどから述べておりますように、これは防衛力というものの増強に対して、無制限に拡大されるのではないかというような御批判もございますし、また、国民の間にも日本防衛力整備に対して理解を深めていくためには、平和時における防衛力の限界というようなものが研究をさるべきであろう。しかし、流動する国際情勢の中で対応して考えなければならない防衛力でございますし、しかも予算の制約もあります。しかも予算の内における各種の政策とのバランスもあります。そういう意味で、正しい意味での平和時における防衛力の限界なるものができるかどうか、非常にめんどうなものでございますという防衛庁の考え方を是認しながら、私は、それでも努力を続けてほしいというのが防衛庁に求めた状態でございます。  それで防衛庁からは中間報告があり、けさ長官がここで述べましたとおりの文言と数字の報告がございました。しかし、これはまだまだ十分検討しなければならない問題もございますし、これからも引き続いて勉強いたしますと、こういう問題でございます。これからの問題は絶えず検討しなければならない問題でございまして、一定の条件が確定をしない立場において一つの状態を想定して考えた結論でありますので、これを政府の正式決定にするという考え方は、いま持っておりません。しかし、絶えずこれらの問題に対しては勉強してまいりたい、こう思います。
  21. 北山愛郎

    北山委員 先ほども申し上げたように、いままで国会で議論をされてきました防衛力の限界というものは、四次防とか三次防とか、そういうふうな年次計画の基礎になる、平和時における防衛力の目標というものの一つの決断ですね、政府としての決定、それがなければどこまでいくかわからぬという、そのために議論されてきた、そのために要求されてきたものでありますから、そういう性質のものとして防衛力の限界というものが要望され、政府としても、総理としてもそういう意味防衛庁に検討を命じた。ですから、きょう出されましたようなことは、これは防衛庁の一つの作業ですよ。計算見積もりなんです。内部作業にしかすぎないのです。いままで要求されてきたもの、あるいは政府がこれに対して提出すると言ったものは、四次防とかそういうものの前提として、いまの情勢の中で政府判断をして、これを防衛力の目標にするんだ、こういう四次防の前提になる計画目標、こういうものとして議論されてきたものでありまして、防衛庁なりあるいはいろんな機関で、何万トンであるとか何人であるとか、そういうふうなことを、ただ計算の参考資料みたいなものを求めて議論されてきたんじゃないでしょう。また、政府もそういう意味で、いま申し上げたようなものを決定しなければならぬのだ。四次防というものをきめるためには、まずどれを目標にするかという政府の意思表示があって、そして国民がそれをはっきり知って、その前提の上に立って四次防なり何なり年次計画をやっていく、そういう意味での防衛力の限界として論議されてきたわけでありまして、単に防衛庁の作業を出せばそれで済むというものじゃないのです。私は、いまの防衛庁長官の報告をそっくりそのまま政府の決定にしなければならぬなんということを言っておるわけじゃないのです。しかし、少なくともいままで約束してきたものは、ただ防衛庁の計算見積もりじゃないので、政府が正規の手続で、ちょうど四次防を決定するような、いわゆる国防会議にかけるとか、そういう正規の手続でもって決定する、日本のいまの状況判断の中からこれを目標にするんだという政府の決定というものを求めておるので、そういうものとして論議をされてきている。それでなかったらナンセンスですよ。防衛庁だけの計算見積もりなどというものは何の意味もない。政治的な意味は何にもないわけです。私は、いままで論議をされてきました、また政府約束してきたものは、いま申し上げたような正規の防衛力の限界、目標である、そういうふうなものとして議論してきたのです。単なる防衛庁の作業をわれわれは要求してきたのではないのです。その点を確認していただきたい。
  22. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは前の国会からもずうっと述べておりますとおり、無制限に防衛費が拡大されるのではないかという御質問もございますし、国民のそういう不安に対しても、あらゆる努力をしなければならないという考え方に立って、しかも四次防という問題が提起され、この四次防という問題に対して国防会議の決定等が行なわれた後もいなお引き続いて政府国民に対して真に理解を求めるために努力を続けなければなりません。あらゆる努力を続けるという一つの方法として、防衛庁に、平和時における防衛力の限界というものが何とか求められないか。それは、流動する国際情勢の中で相対的に防衛力というものは考えなければならない問題でありますから、一定の方程式を求めるわけにはまいりません。だから、これが結論を得ることもたいへんめんどうな問題でありますが、せっかくの指示でありますから勉強いたします、こういうことがすなおな状態でございます。これが国会において、指示した防衛庁の作業はどうなっておるか、それで防衛庁からの報告はあったか、この問題に対して結論が出れば国会で御報告をいたしますということでございまして、政府がこれを確定し、国会に提出をいたしますという種のものではないということは、これはもうそのとおりでございます。
  23. 北山愛郎

    北山委員 この問題は従来の質疑の経過もございますので、楢崎委員のほうからの関連質問を許していただきたいと思います。
  24. 根本龍太郎

    ○根本委員長 楢崎君より関連質疑の申し出があります。北山君の持ち時間の範囲内でこれを許します。楢崎弥之助君。
  25. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま総理は、政府がこれをコミットすべきものではない、明確におっしゃいましたね。昨年、解散前の臨時国会で、衆議院においてはわが党の安井委員、参議院においてはわが党の上田委員がこの問題について詰めておるのです。総理は何と答えられましたか。いいですか、読んでみましょうか。「平時における防衛力の限界というものは、議論があっても、やっぱり一案つくるべきだと思います、政府が一」あなたは政府がつくると約束したじゃないか。これがあなたの答弁です。ところが、いまあなたは、政府がコミットする考えはない。  それでは、防衛庁の見解というものがどんなにでたらめなものであるか。それは、四十六年二月一日衆議院の予算委員会において、私の質問に対して当時の中曽根長官は、見解としてあなたは出されましたね、ここで数字を。たとえば一例だけあげましょう。海は三十二万トンとおっしゃった。きょうの見解では二十五万トンないし二十八万トン。防衛庁の見解だとくりくりくりくり変わるのです。そんな見解をここで出して、われわれにそれを基礎にして審議しろというんですか。しかも総理大臣、あなたは、この平和時の防衛力の限界をなぜ出さなければならないか、それについてこう答えておられます。「四次防をつくるときに、四次防というものに対していろいろな議論が起こっておる」だから、将来の展望を国民各層、国民皆さまに考えていただくために、平和時における防衛力の限界というものを指示したのだ、こうおっしゃっておる。しかも、四次防はもう二年度目ですよ。当予算委員会に四次防の二年目の予算がかかっておる。要するにあなたがおっしゃったことは、この限界と関連させながら四次防を審議しなければならない。それはあなたの考えです。それにいまのような答弁で、しかも政府はそれに責任を持たないというようなことでは、これは審議できませんよ、少なくとも四次防については。だから総理大臣、この本年度の予算に関する限り、四次防の問題は、政府として正式に国防会議あるいは閣議で決定した限界を出しなさい。そうしないとわれわれは四次防は審議できないです。それがあなたの答弁なのです、総理大臣。どうですか。
  26. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 参議院において上田委員にも申し上げておりますとおり、平和時の限界について指示したのは、すでに申し上げたとおりの趣旨によるものであり、むずかしい問題だが、国民にも議論してもらうためにも一案つくるべきだと申し上げたのであります。かねてから繰り返し申し述べているとおり、この作業は、私から防衛庁に対して指示したものであり、防衛庁としての一案をつくってみるようにということであって、政府としてこれを決定するのだということは、当初から考えていないものであります。答弁の際、政府ということばを出したとしても、それは政府として決定するという意味ではなく、真意は防衛庁としての研究ということであるので、御了承願いたいということを申しております。  しかも、防衛庁から出たものをそのまま政府が決定をすると仮定をしても、政府は広範な意味で勉強しなきゃならぬわけであります。私が運輸省に対して、鉄道の将来に対する展望を出しなさい、研究しなさいといって、運輸省から出てきたものを、そのままそれを政府の決定とするという問題ではありません。私は、前提として、無制限に防衛力が拡大をするという国民の不安もあるので、より理解を求めていくためにも、平和時における限界というものについて勉強してもらいたい。これは、防衛庁は、それは非常にむずかしい問題であります、相手のあることでもございますし、国際情勢は流動しておるし、非常にむずかしいことではありますが、ということに対して、それでもなお勉強しなさい、この指示に対して、国会に対して、御質問がありましたので、これはきまったら報告をするかということでありますから御答弁を申し上げました。すなおに申し上げておるのであります。
  27. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまのはあなたはすりかえているのだ。勉強しなさいというのは指示じゃないのです。いいですか、そのとおりあなたの答弁を読んでみましょうか。いいですか。「平時における防衛力の限界というものは、議論があっても、やっぱり一案つくるべきだと思います、政府が。これだけ四次防が問題になり、議論がされているときに、防衛の限界というものは、国民的に議論をしてもらうためにも、やっぱりつくるべきだと思います。」つくるべきだということを二へん重ねている、あなたは。勉強してくれじゃないのですよ。限界については一案をつくるべきである、政府が。こうなっているのです。読んでごらんなさい。これがあなたの答弁なのです。私は、人のことを言っているんじゃないのです。あなたの答弁です。これをどうしてそんなにすりかえるのです。勉強してくださいなんでいう指示じゃないですよ。
  28. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私が防衛庁に初めて申し上げたのは、勉強してくださいということであります。それが報道をせられて国会の議論に発展をしましたときに、ただいまあなたが述べられたとおり、十一月十日、参議院予算委員会において、平時における防衛力の限界というものは、議論があってもやはり一案をつくるべきだと思います。そしてそれが国民の支持と理解を得るための方策になるならば、それは当然努力をすべきでございますという基本的な政治姿勢を述べているのでありまして、後段においては、先ほど申し述べたとおりのことを答えておることを御理解いただきたい。(「食言ですよ、それは」と呼び、その他発言する者多し)
  29. 辻原弘市

    ○辻原委員 いま北山委員が指摘をした問題は、楢崎委員が当時の経過を指摘して詳細申し述べたとおりでありますが、総理のお答えになった点は、私どもは釈然とするわけにはいきません。問題は二つあります。一つは、衆議院の予算委員会において、平和時における防衛力の限界というものを示しましょう。これは政府のお答えであります。しかも総理のお答えであります。しかも、参議院の上田委員に対するお答えも、総理がお答えになって——私は、速記録に残されたことばのあやを云々するものではない。しかし、総理がみずから一案をつくるべきであり、しかも「政府が」とあなたは発言されて、言われておる限り、われわれは当然これは政府としての見解であり、方針であると理解するのが常識なんだ。しかも、いままでのこの問題に対するいろいろな経緯は、楢崎委員も言われましたように、くるくる変わっているのです。そういう一防衛庁長官が、しかも単なる防衛庁の見解としてそのつどそのつど示されるようなものには、こんなものは何らの権威がありません。ただ参考意見としてそういうものがあったと聞く程度である。われわれがここで述べていることは、政府として、田中内閣として責任を持ち、正規の手続、正規のルールをもってきめたものを示しなさい、それはお示しいたしましょう、こういう経過から、今日北山委員がそれを要求しているわけです。いま政府としては示す意思がない、あくまでも一防衛庁長官防衛庁の単なる一案として申し上げますというのでは、納得ができる道理がないじゃありませんか。しかもこれは重要な、国民が関心を持っている問題であります。そういう三百代言的な逃げ口上でわれわれば納得するわけにいきません。重要問題でありますから、あくまで政府の正式な案としてお示しを願いたい。それが示されざる限り、私どもは自後の予算委員会に協力するわけにまいりません。
  30. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 すなおに御判断をいただきたい。これは私が間々申し述べておりますように、無制限に防衛力が拡大をされるというような不安に対して、政府は全力を尽くさなければならない。特に四次防は過大であるという議論が存在をする、そういう意味で、平和時における防衛力の限界というものが示されるならば、これは国民を納得せしめるためにもよき材料を提供することができると思うから、勉強してもらいたいという依頼をしたのはそのとおりであります。そうして防衛庁は、流動する国際情勢の中で、そのような方程式のない問題に対して結論を出すということは、しごくむずかしいことでございます。しかし、せっかくの御指示でございますから勉強いたします。できるだけ努力をいたします。これが事実でございます。この事実以外にはないのでございます。そしてそれが、国会審議の過程においてそういう指示をしたか、指示をいたしました、それはできたか、まだ勉強中でございます、できたら国会に述べるか、述べます、こういうことに尽きるのでございまして、いま、防衛庁がけさ私に説明をしたものを、直ちに政府案として決定をするという趣旨のものではないことを御理解いただきたい。
  31. 根本龍太郎

    ○根本委員長 この際、十一時四十分まで休憩いたします。  直ちに理事会を開会いたします。    午前十一時二十二分休憩      ————◇—————    午後一時四十一分開議
  32. 根本龍太郎

    ○根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、内閣総理大臣から発言を求められております。これを許します。田中内閣総理大臣
  33. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 わが国の防衛力の整備については、無制限に拡大するのではないかとの一部国民の不安もありますので、平和時における防衛力の限界を示すことが、政治的にも大きな意義があるものと信じます。  かねてより平和時における防衛力整備の目標につき、防衛当局に検討を命じておきましたところ、けさ報告を受けましたが、その内容は、先ほど防衛庁長官より発表いたしましたとおりであります。  私は、今後国際情勢に大きな変化のない限り、防衛庁でまとめたこの案を守ることが、必要かつ妥当と考えております。
  34. 根本龍太郎

    ○根本委員長 北山君の質疑を続行いたします。北山君。
  35. 北山愛郎

    北山委員 ただいま防衛力の限界につきまして総理から答弁があったわけであります。午前に申し上げたわれわれの要求とはまことにほど遠いものがある。  特に、私どもがなぜこの防衛力の限界なるものを政府決定として、正式なものとして要求しておるかということは、これは、国民の多数の中には、政府が三次防、引き続いて四次防あるいは五次防というように、どこまでいくかわからないようなこの防衛力の増強、これに対して非常な不信と不満を持っておる。あるいは不安を持っておる。これに対してはっきりとした政府防衛力の限界という考え方を、正式な決定というものを求めておる、こういうことが問題になりまして、衆参両院でもって議論された経過があるわけでありまして、私どもが要求しておるのは、やはり正規の手続を経た政府の決定としての防衛力の限界であったわけであります。そういう趣旨からするならば、ただいまの総理答弁は、私ども考えておるものとは非常に違ったものである。その点について私は不満を申し上げ、決してこれに納得するものではないということをはっきりと表明をするものでございます。  なお、この防衛庁長官の発表の内容でございますが、これまたちょっと見ただけでも四次防をこえるところの大幅な防衛力の、自衛隊の増強でありまして、むしろこのことによって、私はさらに国民の不安が増すのではないかというふうに考えるわけであります。  いずれにしても、私どもはこのきょうの政府の発表なり見解なりに対して、その内容においてもあるいはその形式においても、全く納得できないということをはっきりと申し上げ、今後の審議の中でわれわれの立場を明らかにし、政府を追及してまいりたい、かように考えるものでございます。  ことに自衛隊を、国を守るから、侵略があるかもしれぬから増強をするということを言っております。しかし、どっかの国が攻めてくるから自衛隊が必要であるというような考え方は、一般に常識論としてあるようでございますが、しかし、その中のだれ一人として、これだけの自衛隊があれば間に合うんだ、守れるんだという確信をもってこれをはっきり言える人は一人もない。要するに気休めです。攻めてくるかもしれないから軍隊が必要だというのは、これは気休め、観念論だ、私ども社会党立場からすれば、そのようにいわざるを得ないのであります。  そこで私は、防衛問題についてさらに政府の見解を聞きたいと思うのであります。防衛庁長官にお伺いするのですが、かりに政府が言っておるようにもし万一どっかの国が本土に、わが国に攻めてくるということになりましたときに、おそらく、海外派兵ということはないわけでありますから、そこで国土が戦場になるということになるでありましょう。相手方が攻めてきた時点、その場所において自衛隊が展開をし、ジェット機を飛ばしたり戦車を動かしたりして活躍をするでございましょう。ところが、その場所は国土の中であり、そこに住民が住んでおるわけです。そういう場合を想定するならば。そういう際に、一体その地域の住民はどのようにしたらいいのか、そういうことについては、防衛庁の問題でもあるでしょうから、防衛庁としてもお考えになっておると思うのですが、どのようにお考えになっていますか。住民はどうなるんですか。
  36. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 防衛問題の基本に触れる問題で、いままでもいろいろ御質問があり、御議論のあった点でございます。平和時の防衛力の限界というところでも申し述べてあるのでございまするが、現在のわが国の防衛は、憲法の制限内で最小限の自衛力を持つ、その最小限の自衛力の整備を自衛隊という形でやっておりまするが、それだけでは現在の時点における国際情勢の中で、十分国を守り得る体制といいがたいので、日米安保条約によりまして、これを、ことばは補完すると申しまするか、日米安保条約とのたてまえで自衛隊の最小限の自衛力整備をやっておるわけでございます。そうしてこれによりまして、もとより四次防の基本方針にも申しておりまするように、防衛力整備は、第一番に、世界各国との友好親善を平和外交によって推進をしていくということが四次防の基本方針でもございまするように、国防の基本方針にもそういう趣旨がありまするように、そういうことをやり、そうして安保条約と自衛隊との組み合わさった形で、そうしてこの平和時の防衛力として申し上げた中にありますように、みだりに日本に対して攻撃をかけるような意思が起こらないようにしよう、侵略の意思が起こらないようにというふうにすることが基本的な考え方、重要事項でございます。  したがいまして、もし万々一侵略が起こりましたときには、住民という問題が起こることはもとよりあり得るわけでございます。その点については、日本の国土がそういう戦いの場になる、これは極力そういうことのないようにしようということが、現在の防衛力整備を取り巻きます平和外交の推進、経済外交の推進、諸施策の推進というふうなものと相合しての方針になる、こういう趣旨に御理解を賜わりたいと存ずる次第であります。
  37. 北山愛郎

    北山委員 それは、もちろんそういうことになっては困るわけです。困るわけですが、しかし、いわゆる軍備による防衛論というものはそういう場合を想定して、それだから軍隊が要る、自衛隊が要るんだということでありましょう。万一なった場合のことは、一体住民のことは考えないのですか。住民はどうすればいいのですか。要するに、日本の国というのは狭い国の中にたくさんの国民が住んでおってどこも人口が稠密なわけですから、そういう国土が戦場化するというような想定の中では、当然防衛の一環としてそういうことは考えの中に入れるべきなんです。そのような角度から質問してまいりますというと、そういうことが起こらないようにいたします、こう言う。起こらないようにできるなら自衛隊なんか要らないですよ。おかしいのですよ。  もう一つは、そのときに食糧が一体どうなるかということなんです。いま大豆が不足してとうふも値上がりをする、あるいはとうふが食べられないというような事態になっている。いわゆる平和時においてもですね。大豆の大部分、九六%ぐらいを外国に依存しておるという状態の中では、どこかの国で不作が起これば、凶作が起これば、直ちに日本人の食糧が困るでしょう。そういう場合に、そういう戦時状態になったときに、当然、いま四億トンもの物資を大量に輸入している、食糧も大量に輸入している、その食糧が全部来ないということはないにしても、半分になり、三分の一になるでしょう。そういうことが起こり得るわけです。そういうときの食糧の確保、そのことについては、一体政府はどういう用意をしているのですか。
  38. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 いまの状況を頭に置いて御質問をちょうだいいたしますと、非常に不安な面があるかと思うのです。  しかし、大局的から申し上げまするならば、北山委員承知のように、昨年十月に「農産物需給の展望と生産目標」を公表いたしております。これを遂行してまいりますれば、ここ十年の間に大体七〇%以上の食糧は自給をしてまいりたい。そうしますと、何か問題のときに、私が言うまでもなく多少の備蓄もございましょう。それから、自給率がその程度に維持されておりますならば、世界じゅう全部が日本に食糧をくれぬというような事態は考えられないのでありますから、私としては、農業関係の皆さんがつくられた昨年のああいう試算というものを目標としてつとめてまいりますならば、御指摘のような心配はまずない、こういうふうに見通しを持っておるわけでございます。
  39. 北山愛郎

    北山委員 とんでもない答弁ですよね。農業基本法ができて以来いままで、大豆にしてもその他の主要な家畜のえさにしても自由化をして、しかも、関税はなしにしてどんどん外国の食糧に依存してくる。小麦だってそうですね。そうしてやってきている。そうして一方においては、侵略してくるかもしれぬからというので武装力だけはふやして、食糧のほうは外国に依存する。おかしいじゃないですか。もしもそういう事態になった場合に、食糧の面で日本が非常に弱いということは、日本の戦略的な地位が弱いということであるから、そういう日本の現状では抑止力にはならないのです。外国から見た場合に、日本に攻めていっても日本が困らない、むしろ非常な被害を受けるのだ、だから攻撃はやめましょう、こういうのがいわゆる抑止力でしょう。ところが日本の国は、一たん戦場になった場合には国内では非常な混乱が起こるし、しかも食糧はたちどころに困るという条件があるならば、相手から見た場合には日本の国は戦争に弱い。自衛隊だけ置いたって抑止力にならないじゃないですか。そうじゃないのですか。そういうことも総合的に考えた抑止力じゃないのでしょうか。自衛隊を並べて海岸に置いておけば抑止力になるのですか。  だから、私はおかしいと思うのですよ。自衛隊だけは四次防だ、五次防だといって増強しておきながら、食糧のほうは考えないということは、自衛隊は国民の命を守るのじゃないのじゃないのか。防衛の基本というものは、やはり国民の生存を守るということが第一だと考えなければならない。そうした場合に、もしも万一そういう攻撃を受ける危険性があるとするならば、そういう場合における国民の食糧を確保するということがやはり大きな問題点になり、やはりそれを確保する計画がなければならない。私は常識的にそう思うのですよ。ところが、防衛力の第何次計画、第何次計画はあるけれども、食糧のほうはいままでどんどん自由化をして、重要な食糧をどんどん外国に依存している。そういう政策をとってきたでしょう。  いま櫻内農林大臣は、一つのペーパープランを去年の十月につくったからこれからはだいじょうぶだ。とんでもない話なんです。大豆なんか昭和三十六年に自由化をして、それまでは三〇%くらいの自給率があったものが、それ以後どんどん減ってきて、いま市中の大豆というものはもう大部分外国のものであります。そういう事態にならなくても、世界のどこかで食糧の事情が変わってまいりますと、すぐたちどころに困るのじゃないですか。しょうゆもみそも、とうふも納豆も食べられないのじゃないですか。えさがこなかったら、肉も卵も牛乳もだめなんじゃないですか。小麦だって高くなって手に入らないことになれば、パンだってうどんだってだめじゃないですか。  ですから防衛防衛と騒ぐなら、私は、自衛隊だけの問題じゃなくて、そういうことを総合的に考えるならばまだ話はわかるのです。自衛隊だけ増強する、侵略があればそれに備える、これはほんとう意味防衛にはなっておらない。国民の生存を守るという立場からすれば、日本の国は中国やソ連やアメリカと違うのです。特殊な事情を持っているのです。まあ石油その他のエネルギーや工業原料のことは別としましても、食糧だけを考えましても、日本の国は武力によって守れる国ではないのですよ。そういう地理的な、自然的な、経済的な条件がある日本の国なんです。それを、自衛隊だけふやせば国の守りになる、そんなことは、私は国民を忘れた議論だと思うのです。  どうですか総理、この考え方は、あたりまえの、これは普通の常識的な考え方じゃないですか。
  40. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 独立と自由を守っていく独立国家として、最小限の国民の負担で自衛力、防衛力を持つということは、地球上に小さな国一、二を除いては、すべて持っているわけでございまして、日本憲法の許容する範囲内で、国民負担を最小限に押えながらも、やはり国を守ろう、国民の生命、財産を守るということの努力を続けていくことは、これはもう当然過ぎるほど当然だと思います。  しかし、日本の置かれておる島国というところで、食糧もない、石油もない、すべてのものが海外から輸入しなければならないというような状態であるから、もしもの場合になるとたいへんだ、これはたいへんだと思います。かつてそういう経験をわれわれはしたわけでありますから、もうその事情は骨身にしみておるわけであります。そういう意味で主食は八〇%以上、米は一〇〇%というように考えておるわけでございまして、これからも食糧の自給自足というものは、できるだけはからなければならぬわけでありますが、しかし、国際的に見て、開発途上国との間に一次産品に対しては関税はゼロにしなければならない。そうしなかったならば、南北問題も解決しないし、世界の平和維持は不可能である、こういう方向で進んでおり、国際分業も進めなければならない。そうすることが平和維持の一つの手段だ、こういうこともいわれておるわけでございまして、そういうことも十分御理解をいただきたい、こう思うわけでございます。  ですから、日本が食糧もない、食糧やいろんなものも不足であるということと、自衛隊もだから要らないのだという考え方は、これは区別して考えていただかなければならぬ、こう思います。
  41. 北山愛郎

    北山委員 政府防衛に対する考え方、それからいままでのいろいろな自衛力の増強、こういうものが、私がいま言ったような、そして国民が常識的に考えているようなものと相反しているから、いままでの政策はそうだから、だから私は申し上げるのですよ。そして日本の特殊な条件というものを考えなければならぬ。もしも、よその国が持っているから、やはり日本もすぐ軍隊を持たないとていさいが悪いというなら、儀仗兵みたいなものを置いたらいいですよ。人形みたいなものを置いたらいいですよ。それを四次防でござい、今度は五次防でござい、何十万トンでございというふうな、そういう角度だけで議論をして、そして日本の置かれておるこの特殊な条件というものを忘れて、そして食糧のほうは、農業政策のほうはさっぱりそのような観点は何にもなくて、もうここ十年来どんどん外国からの輸入をふやして、工業製品をつくって売って、安い食糧を買えばいいんだという政策をとってきたでしょう、自民党政府は。だから八〇%の自給率というけれども、それは金額の上であって、だんだんその金額の上の自給率も下がってきている。カロリー計算、実質の質の計算からすれば、日本の食糧というものは半分以下です。基本的のものは何もない。  だから私は、政府防衛というものは、一体何を守るつもりなのか疑わざるを得ないのです。国民の生存を守るのではない、何か別のものを守るのではないか、こういわざるを得ないのです。それが調和して初めて納得させられるのであって、防衛力は防衛力だ、食糧のほうは外国から持ってくるのは国際平和上必要だ、そういうことでは一向つり合いがとれないというか、理屈が合わないではないですか。  先ほど安保条約という話がありましたが、もしも日米安保条約によって、アメリカがそういう場合に応援しに来てくれた、そういう場合を想像しますと、私はベトナム戦争考えるのです。とんでもないことなんです。アメリカに応援に来てもらう、援助してもらうことぐらいあぶないことはないのです。日本はおそらくベトナム以上の惨たんたる戦場化するでありましょう。ですから、安保条約アメリカが援助してくれる、こんなことはむしろ危険なことであって、そうじゃなくて、やはり平和な外交手段なりそういうことによって、徹底的にそれを追求していくというのが日本の最善の政策でなければならぬ、これが社会党立場であります。そういう立場からするならば、きょう防衛庁長官が言われていましたような、あのような数字というものはまことに危険であり、そして有害であり、日本防衛には何も役に立たない、そういう計画であるといわざるを得ないわけであります。この点、国民の納得のできるような考え方、やり方をとってもらいたい、こういうふうに私は要望するわけであります。  次に、外交問題について二、三お尋ねをしたいのであります。  それは、昨年以来、日中の国交正常化とそれから今度のベトナムの和平、こういう二つの問題、これを契機として、日本外交というものは新しい原則のもとに進むべきであるというふうに私ども考えるわけであります。田中総理は北京に行って、そして周恩来総理と話し合いをして共同声明をつくったわけであります。その共同声明の中に、いわゆる平和五原則による平和共存の原則というものを確立をいたしました。日中両国の間には社会制度の相違があるにかかわらず、両国は平和友好関係を樹立すべきであり、また樹立することができる、こういうふうにはっきりと明記したわけであります。また去年の二月の二十七日にニクソンが北京に行ったときも、この共同声明の中で同様に、中米両国の社会制度と対外政策には本質的な相違が存在している、違いがある、しかし双方は、各国が、社会制度のいかんを問わず、すべての国の主権と領土保全の尊重、他国に対する不可侵、他国の内政に対する不干渉、平等互恵、平和共存の原則に基づき国と国との関係を処理すべきであると合意した。すなわち、アメリカと中国との間においても平和共存の原則というものは打ち立てられた。  この平和共存というのは、要するに、資本主義とか社会主義とか、そういう社会体制のいかんにかかわらず、国と国との関係を平和的に友好的に処理していくんだ、こういうことでありまして、これをことばをかえていうならば、体制の違い、体制の優劣を武力戦争によって解決しないということです。これは戦後における国際関係の大きな新しい平和の原則である、このように考えますが、総理は、実際に中国に行かれて、共同声明の中でその五原則を打ち立てられた。この問題についてどのようにお考えになっていますか。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 北山さんおっしゃるとおり、体制のかきねを越えて、話し合いによって国際的な紛争、問題を調整、解決していこうという機運が世界に芽ばえつつ、また定着しつつありますことは歓迎すべきことでありますし、また、これをさらに固めてまいらなければならぬことは、あなたのおっしゃるとおりだと思うのでございます。  ただ、あなたと私ども立場の違うところは、その場合御注意いただきたいのは、日中共同声明におきましても、日中両国が既往において結んでおりますいろいろな条約約束というものを排除する必要があるとは書いてないわけでございます。すなわち、現在世界全体の緊張緩和の風潮が熟しつつある根底には、既存のいろいろの条約的なワク組みというようなものがございまして、その基盤の上にそういう緊張緩和の状況が芽ばえつつあるわけでございまして、私どもは、そういうワク組みをできるだけ尊重して手がたく守ってまいることが、そういう状況を定着さしていく上に有効ではなかろうか、こう考えておるのでございます。あなたのお説を聞いておりますと、それはないほうがいいんだというお説のように聞こえるわけでございまして、そこにどうも考え方の違いがあるように私は思うのでございますが、遺憾ながら、そういうことにつきましては、あなたに賛意を表するというわけには私はまいらぬと思います。
  43. 北山愛郎

    北山委員 私のまだ言っていないことを推量されての御意見でございます。私が、平和共存の原則というのは戦後の世界の平和の増進にとって非常に大きな意味のある外交原則であると言いますのは、御承知のように、第二次大戦後において戦争の一番大きな要因は何かといえば、資本主義体制と社会主義体制との体制間の対立というのがいわゆる冷戦構造となって、もう共産主義、社会主義は憎いんだ、あれをやっつけるために腕力を使う、武力を使う、戦争によってでも共産主義、資本主義をぶっ倒すんだ、そういうようないわゆる冷戦の体制があったわけです。それが次の世界戦争の危険をはらんでおったわけですが、だんだんに冷戦構造というのが雪解けになってきて、そして各国が体制の相違を越えて、一応相手の体制を認めて、それはその国の体制である、だからわれわれは革命を輸出はしない、また自由を押しつけてはならない、いわゆる体制に内政干渉をしてはならぬ、そういう原則のもとに、体制の相違を越えて国と国とがつき合えるんだという原則がいまどんどん発展しているということは、私は、戦後における戦争の大きな要因というものがだんだん薄れていったということであって、非常に歓迎すべきことだということを申し上げているのでありまして、その方向についてはもちろん賛成だと思うのでありますが、これは総理の御意見を伺いたいのであります。
  44. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御指摘のように、バランス・オブ・パワーというような、力の均衡によってという冷戦構造から話し合いの方向に移っていることは、人類の平和のためにも望ましいことでございます。今度のベトナム解決問題も、やはり力によるものの限界ということの一つの結論が出たことでありまして、やはり人類は新しい平和追求ということに対して努力をしてまいらなければならない一つのきっかけであろうということは、私もそう考えております。日本もその意味において、いま外務大臣述べたとおり、かきねを越えて、体制の違いを越えてあらゆる国々と仲よくしていこう、それが世界の平和維持に貢献することでもあるということで、現実的には日中の国交の正常化も行なわれたわけでありますし、日ソの間にも平和条約交渉が行なわれておる、こういうことでございますし、またその他の国々とも交渉を持っておるということでございます。しかしその根底には、やはり自分の国の理想というものや現実というものに対する対応策を十分踏まえて、お互いに内政干渉しないという理想に向かって外交を進める、それが日本の最も望ましい姿である、こう考えております。
  45. 北山愛郎

    北山委員 総理答弁は、私の聞いたことにはっきり答えないのですね。要するに、体制の相違を越えて仲よくできるという、日中共同声明の中にも出ておる平和五原則ですね。そのことはもちろん、資本主義が好きだというか、資本主義を守ろうとする人もある。あるいは共産主義、社会主義の人たちもある。それはそれでよろしいのです。ただ問題は、国の権力の発動である戦争ですね。あるいは武力とか腕力でもって問題を決着しない、そういうことがすなわち平和共存じゃないか。その方向が好ましいものとして、総理も、共同声明の中で中国との間にその五原則というものを妥結したんだ、私はこのように思いますが、そのように評価しているのかどうかということを重ねてお伺いしたいのであります。
  46. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本は過去に悲惨な体験を経ております。世界に類例のない平和憲法を維持しております。その方向は正しかったと、こうこの間述べたとおりでございます。また、憲法は守ってまいります、こうもはっきりと意思を明らかにいたしております。憲法には、国際紛争武力解決しない、できないということでありますし、そういう意味では、平和をこいねがう日本といたしましては、武力をもってする解決日本がしかけていくとか、日本がその力を誇示してどうするとか、覇権を唱えるとか、そういう問題は全くないわけでありまして、いま御指摘があったように、体制の違いを越えても日本世界の国々と仲よくし、またそういう方向を進めていくことは世界の平和を維持することでもある、日本人の悲願でもある、こういうことを考えております。
  47. 北山愛郎

    北山委員 これは非常に重要なことなんです。これは、国際間のいわゆる平和、国際間の外交の原則としても重要であると同時に、それぞれの国内においても非常に重要な原則だと思うのです。問題を端的に表現しますと、防衛だとか安全保障というものの対象は一定の体制ではないということなんです。要するに自由、民主の体制であるとか、いわゆる資本主義の体制とか、あるいは共産主義、社会主義の体制そのものを安全保障や防衛の対象にしないということなんです。これは非常に重要な原則だと思います。もちろん日本の自衛隊法にも自衛隊の任務が書かれてありますが、そこの中には、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つことが主要な任務であります。資本主義の体制を守ることが自衛隊の任務ではありません。ところが、とかくするというと、初めから反共、共産主義はけしからぬ、社会主義はけしからぬということで、それに備えて、いわゆる武力、自衛力というか、防衛の対象として体制を敵視するような、そういうことがあるのではないか。私は自民党の人と一緒にこういう問題についての討論会でも聞いたことがあるのですが、その人の名前は言いませんけれども、その自民党の人は初めから、資本主義の体制を守る、これが安全保障であり防衛なんだ、こういう意見をはっきり言われたのです。そういう考え自民党の中に一部あることは私は知っておりますが、それは正しくないんだ。いわゆる安全保障とか防衛とかいうことは体制を守るのじゃないし、また、よその国が体制が異なるからといって、それを敵視するものではないのだ、こういうふうに考えるのが正しいと思いますが、総理あるいは外務大臣はどのように考えますか。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりに理解しています。
  49. 北山愛郎

    北山委員 一つの例として申し上げますと、例のベトナム戦争にしてもそうであります。アメリカがなぜベトナム、インドシナに武力介入をしたかといえば、アメリカの安全保障の問題ではないでしょう。アメリカ武力攻撃ベトナムから受けたわけじゃないのです。ああいう遠いところにある国が、しかもベトナムアメリカの自衛のために非常に脅威であったという。わけはないのです。なぜあそこに出たかといえば、それは、あの国が共産主義なり社会主義の国になっては困るから、そういう国にしないために、かいらい政権をつくって、そして軍隊を出して、あのベトナム戦争をやったのじゃないですか。要するに、アメリカの国策あるいは外交方針というのは、国を防衛するという以外に、自由世界を守るということをしょっちゅう言っていますね。自由世界というのは、要するに資本主義世界を守るために、それが防衛のやはり一つの対象になっている。アメリカ政策はそうですね。日本政府考えは、いまおっしゃったとおり、違うわけですね。
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 この場はアメリカの国策を批判する場面でないと思いますから、それは御遠慮しますけれども、自由主義と資本主義とは同一であるというように私は理解しておりません。
  51. 北山愛郎

    北山委員 だが、アメリカが自由世界、自由世界というのは、それは資本主義のことですよ。ほんとうに自由、民主の体制を守るのなら、何で軍事独裁政権の南ベトナムなり、あるいは韓国なり台湾なりをアメリカが助けているのですか。ほんとうの自由あるいは民主主義というものを守ろうとするのならば……。そうじゃないのです。やはり資本主義なんです、共通しているものは。だから、自由世界を守るというのは、資本主義の体制を守るというのがアメリカ政策であるということを私は申し上げたのです。その点はおくとしても、日本としては、防衛なり安全保障の対象に体制という問題は入れないのだということを確認していいですね。総理、どうですか。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 自由主義の畑の中に、資本主義という花も咲けば社会主義という花も咲くわけでございまして、その点は私は、自由主義は資本主義でなければならないというような観念は、日本憲法にないと思うのでございます。アメリカとわれわれは安全保障上の約束をいろいろ持っておりますけれども、たとえば安保条約の第二条にも、自由な体制云々というようなことばはありますけれども資本主義体制なんということばは発見できません。
  53. 北山愛郎

    北山委員 これは自由主義の定義というか、議論をここで展開するつもりはありませんが、経済上の自由主義というと資本主義なんですね。思想的な、あるいは政治その他の問題としては、自由主義というのは非常に広範ですけれども、しかし経済上の自由主義というと、これは資本主義のことをさすのだというのは定説ですよ。ですから、ここではその議論をしませんが、とにかく私の考えは、先ほど申し上げたように、国際間において体制の相違を越えて友好関係を結ぶんだ。逆に言えば、それは体制間の競争があり対立がありますね。ありますけれども、それは、武力戦争で決着をつける、優劣の解決をつけるというものじゃない。そういうことはしない。そういう原則であるとするならば、国内におきましても、自衛隊は初めから共産主義や社会主義を敵とするものじゃないのだ、またそういう教育をすべきである、また国民もそのようなコンセンスでいくべきである、こう思うのですが、この点について、総理でもあるいは防衛庁長官でもいいですが、お考えを聞きたいのであります。
  54. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 自衛隊の任務は、直接及び間接の侵略に対してわが国を防衛するということが主たる任務であります。そのほかに付加された任務もございまするが。わが国は憲法を基本法として定められた形を持っておるわけでございます。これはまあ平たく言えば、いままでの用語例で言えば、自由主義の国、民主主義の国という体制であろうというふうには思いまするが、そういう憲法その他の法令によって成り立っておるわが国を守るというのが自衛隊の立場でございまして、思想的なものを特に排撃するというふうなことは、自衛隊の任務の中にはないわけでございます。
  55. 北山愛郎

    北山委員 そうすれば、これは総理にお伺いしたいのですが、いまの日本憲法のもとで許された民主的な手続によって、かりに社会党あるいは共産党の革新政権ができたとします。そのときには、当然自衛隊はその管理のもとに服するのが日本のたてまえである、そう考えていいですね。
  56. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 自衛隊が憲法や自衛隊法のもとに存在するということはもうそのとおりでございまして、日本憲法の定めるところによって出現をすることありとした場合は、いま自由民主党の政権のもとにある自衛隊、国土防衛の任務にある自衛隊の性格や任務や目的が変わるものではないことは言うまでもありません。
  57. 北山愛郎

    北山委員 私はこういうことを申し上げるのは、やはり自衛隊の中にもそういう意見の対立があると聞いています。いまの憲法下における民主的な手続でもって平和的に革新の政府ができた場合には、当然その管理のもとに服するのが自衛隊の当然のことであるという意見もあれば、そういうときにはクーデターでそういうような政権は認めないというような、なかなか危険な勇ましい意見もあるように聞いております。ですからこの点、私は特にはっきりとしてもらいたかったわけであります。  ことにこのことは、やはり国民的なコンセンサスとして認める必要があると思うのです。体制という問題は、これは大昔から日本資本主義の体制、いまの体制であったわけじゃないのです。日本の国や日本人というのはもう大昔からあります。しかし体制というのは、どの国でも、時代の発展によってどんどん変わっていっていいし、変わっていくべきなんです。その体制を腕力によってとめる、いまの資本主義の体制を守るために自衛隊の武装力を使うとか、そういうことがあったなら、これは昔の封建時代と同じです。武士階級、封建制度を守るために武士階級の武力を便った、そして一定の体制を押えつけて維持した、こういう時代と同じことになるわけであります。私は、体制の対立あるいは競争、そういうことはあっていいと思います。自民党の人たちは資本主義の体制を守ろうとするでしょう。われわれは社会主義にしたいと考えています。どんどん争って競争し、あるいは対立をしていく、これは当然です。しかしそれを、いまの体制を維持するために自衛隊とかいうものを使ってやる。社会主義なんていうのは危険なあれだから、そういう権力によってこれを押えていくという考えがあったならば、これはむしろそのこと自体が非常に危険なことである。そういうものではないのだ、自衛隊も革新政府のもとで当然その管理のもとに服するのが、日本憲法の原則であり定めである、こういうことを、みんなが、国民がコンセンサスとして持つならば、日本のこれからの発展にとって、日本の民主主義のために非常に重要な問題であるというふうに考えますので、私はその点を確認したわけであります。  なお、外交問題もございますが、何時までですか、委員長
  58. 根本龍太郎

    ○根本委員長 北山君の時間は、午後三時三十八分までございます。
  59. 北山愛郎

    北山委員 もう一点、このベトナムの問題あるいは日中の国交正常化ということを一つの契機にして、日本アジア外交というものがこれから変わっていかなければならないと思います。残念ながら、日本の国は百年ぐらい前に国を開いて以来、どうしても、西洋の帝国主義国の圧力によって開国したものでありますから、その帝国主義の、言うならばまねごとをしてきた。そしてそれらと肩を並べて、アジアの民族あるいはアジアの諸国に対しましては、これを見下す、あるいはこれを支配する、あるいはこれを搾取するというような歴史をいままでずっと一貫してとってきたんじゃないか、こういうふうに思うのです。戦後二十何年たちましたけれども、しかし、こういう古い頭というか、われわれの頭の中に、やはり西洋人に対してはコンプレックスを持ち、そしてアジア人に対しては何かしら見下すような考え方が残っているのではないか、こういうふうに思うわけであります。そういう考え方を捨てる、同時に、第二次大戦というものを契機にして、私どもが西洋の、言うならばまねごとをしたこの帝国主義の路線というものをここで清算をする。帝国主義の路線を清算して、ほんとう日本アジアの一つの国、一つの民族となって、そして他のアジアの諸民族とほんとうに平等な立場に立って、お互いに助け合っていくという新しい外交というものをこれから開いていく、創造していかなければならないと思うのであります。そういう点で、わが国をめぐる情勢というものは、先ほど申し上げたように、平和共存の外交原則というものを広げていくと同時に、アジアに対しましては、ほんとうに平等互恵の関係、そしてわれわれの持てる力というものを、向こうに協力のために惜しみなく使っていくというような気持ちで、これから、いまだかつてなかったようなアジアとの関係をつくっていく、こういう大きな課題があろうかと思うのでありますが、この点について、外務大臣どうお考えですか。
  60. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたのおっしゃるとおり考えております。
  61. 北山愛郎

    北山委員 そういたしますと、私は、終局的に言うならば、やはり安保条約というものは再検討すべき問題だと思うのであります。いまの、あるいはいままでのアメリカアジア政策というのは、いろいろな国といわゆる安保条約みたいなものを結んで、その条約の中には、必ずといっていいほど、一つの体制を守るという条項が入っております。日米安保条約はむしろそれが非常に薄いのです。自由な制度を強化しという簡単なことばが中に入っています。しかし、米韓とか、あるいは米台とか、あるいは米比、そういう条約の中には、はっきりと体制を守るという条約になっている。同時に、このアジアの諸国に軍隊を置いて、そしてそこの中で覇権をとり、そこを支配している、あるいはそれを指導していくというような考え方、そういう政策をとってきておる。今後もおそらくこのアメリカ政策というのは急には変わらないと思うのであります。そういうアメリカと一緒に手を組んで、いわゆるパートナーとなってこれからアジア政策をやっていくということは、日本にとって非常に大きな制約を受けるのではないか、安保条約というものがじゃまになるのではないか、こういう情勢になってきていると思うのですが、そういう角度からいっても、あるいは軍事的な意味からいっても、そのような日本のこれからの自主的な外交を展開する上から見ても、日米安保条約というものは非常な障害になってじゃまになってくるのではないか、こういうふうに考えるのですが、そういう角度から安保条約を再検討するというようなお考えは、御意見としてないですか、どうですか。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 その段になると、あなたと意見が違うのです。それはなぜかと申しますと、私は先ほど申しましたように、確かに、安保条約とかNATOの条約とかワルシャワの条約とかいうような既存の条約機構というようなものは、冷戦の産物でないといえぬと思うのです。これはやっぱり冷戦が生んだ知恵であったと思うのでございます。しかし幸いに、あなたが御指摘のように、冷戦状態がだんだん平和共存、話し合い、対話の段階にきたわけでございます。あなたの議論はそこで、それだからこの上もうそういう既存の条約機構というものは任務を終えて、これはやめにしたらいいじゃないかというのがあなたの立論のようでございますが、私どもは、そうではなくて、せっかく生み落とした緊張緩和の状態というものをだんだん育て上げ定着させていくには、既存のワク組みというものをなるべくそこなわずに維持してまいることが賢明だという判断に立っておるわけなんです。そこがどうも考え方の基本が違うようでございます。で、緊張緩和の状態がより定着しつつあるヨーロッパにおきましても、NATO条約にせよ、ワルシャワ条約にせよ、これを改廃しようという動きは一つも出ておりません。これはおそらく、いま私が申しましたように、こういう緊張緩和が出てきた基盤というものはそこなわずにそのまま維持しておくほうが賢明でないかという判断があるからだと思うのでございます。  日米安保条約につきましても、いろいろ是非の議論もございますし、メリットもあるしデメリットもございます。ございますけれども、わが国が戦後四分の一半世紀にわたりまして、ともかく平和であり得たということは間違いない事実であろうと思うのでありまして、もしこの条約の仕組みを持っておることによって、かつて指摘されたように、わが国が戦火に巻き込まれるというような事態になれば、これは非常な問題でございましょうけれども、そういうことは、北山さんも御理解のように、なかったわけでございます。この仕組みを、いま全体として緊張緩和状態を生み落とした基盤の一つになってきておるわけでございますから、これをひとつ手がたく維持してまいるほうが、平和のために、緊張緩和を定着さすために有効ではないかというのがわれわれの判断でございます。もっとも、もとより、しかしそれだからといって私どもは、この体制により頼んで外交努力を怠っていいという論拠には一つもならぬわけでございまして、鋭意、総理防衛庁長官も言われていましたように、平和外交を推進してまいりまして、こういった既存の体制が緊張を生むというようなことのないように、極力努力してまいることは当然の前提に考えております。
  63. 北山愛郎

    北山委員 戦後、いままで平和を維持したのは安保条約があったからだと、私はむしろその逆に考えるわけですね。安保条約というのは、あのベトナム戦争を起こして、そしてだれから見ても、世界じゅうから、不法非道な戦争である、大義名分の全くない戦争であるということをやっておるアメリカですよ。そのアメリカベトナム侵略というものをやめさしたのは何かといえば、やはり世界の平和に対する世論であり、あるいは社会主義国の力であり、あるいは民族解放の力である。そういうことがこの平和緊張をだんだんに前進をさしたのであって、安保条約の相手方であるアメリカと一緒になっているからじゃないのですよ。そうじゃないのです。そういう点において、まあ、それはあなたと認識が違うかもしれないけれども、とにかくわれわれは全く別な考え方を持っておる。  それで、一番最初に、どうも外交演説を見て私は失望したと言いました。その中に、こういう情勢の中に、実際に外交問題は現実的に処理するということは当然のことだと思いますけれども、やはり一つの大きな目標を持たなければならない、理想を持たなければならないと思うのです。世界正義というものを守っていくというのがこれからの日本外交でなければならぬと思うのですが、その中で「応分の役割りと責任を果たす」のだというような、あまりにも超現実的な外交であっては、これはいまの日本の置かれている国際情勢の中で、ほんとうの正しいアジア外交も展開することはできないのではないか。私はその点に対して非常に不満であり、また心配しているということを申し上げまして、以上でもって外交問題を終わりたいと思うのであります。  次に、財政、経済の主要な問題点についてお尋ねをしたいと思うのであります。  まず、最初に大蔵大臣にお尋ねをしますが、一体毎年の予算案の提出というのは、いつやるのがいいと思っていますか。国会に対する予算案の政府の提出というものは、いつ提出すべきものであるか。
  64. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは申すまでもないことでありますが、日本の予算制度が四月から三月まででありますから、その四月の年度に予算の執行が間に合うように、国会の御審議がいただけるように、十分のゆとりを置いて提出をすることが望ましいことである、かように考えまして、今年も再開に間に合いますように一切の予算書等を提出をいたしておる次第であります。
  65. 北山愛郎

    北山委員 これは私、前にも予算委員会でこの問題を提起したのですが、とにかく膨大な予算ですね。一般会計、特別会計を入れまして二十六兆円とか、そのほかに財政投融資があるし、政府関係機関があるし、あるいは地方財政があるということになれば、膨大な複雑な予算案です。その説明書が実は昨日われわれの手元に届いているのです、こんな膨大なやつが。何十兆円という非常に複雑、膨大な予算案を審議するのに、きのう予算の説明書をいただいて、きょうから予算の審議をしなければならぬ。こんなことはもう物理的にいったってできないことですよ。この現状を私は変えてもらいたいということなんです。  大蔵大臣は、財政法第二十七条に、毎年の予算案というものは前年の十二月中に出すという規定を御存じですか。
  66. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 財政法の規定によりまして、一切の書類等を提出いたしたわけでございます。ただ、念のために申し上げますが、十二月に総選挙がございまして、それから内閣が成立をいたしまして、そして同時に四月に予算執行が間に合うようにということで、今回の場合には非常に時間的に切迫いたしておりましたから、ただいま御指摘のように財政法二十八条に規定されておるものを一切印刷をいたしまして提出いたしますためには、文字どおり昼夜兼行で出しましたような状況でございます。一般論としては、なるべく早く提出することが望ましいわけでございましょうが、今年の場合には、特にさような事情がございましたことは御了承願いたいと思います。
  67. 北山愛郎

    北山委員 財政法の二十七条には、予算案というものは前年の十二月中に提出することを常例とすると書いてあるんです。ところが、一ぺんも十二月中に提出されたことがないんです。異例のほうが常例になっているんです。いま大蔵大臣は、ことしは特に選挙があったからと言いますが、選挙がない年だって、いつでも再開国会の直前あたりに出してきて、そして私も前の委員会でこういうことを言いました、資料をさっぱり出してこないんです。きのうもらってきょう審議しようというんですからね。そうしないためには、やはり財政法二十七条の規定を生かすのが正しいんだと私は考えます。この規定は、戦前にも同じ趣旨があったわけです。まあいろんな事情でもって、実際の規定に違反しているのだ、ほんとうは。常例とするということは、たまには一月になってもいいが、やはり普通は十二月に出すのだというのが二十七条の規定なんですから、法律違反をやっているんですよ。法律違反は何回繰り返したって、これは慣例にはならない、合法にはならないんですよ。やはり法律違反なんです。なぜ十二月中に出すかといえば、やはり審議の時間というものが必要だということを考えてやっているのです。選挙で忙しかったかもしれませんけれども、しかし選挙以外にも一体予算編成は何ですか、毎年の予算編成というものは。一月の初めのころから約一週間、十日ばかりの間のてんやわんやの予算のぶんどり合戦、そんなことに一週間以上も使っているのです。それだから提案がおくれる。そういうことをやめて、そしてやはり十二月に出して、十分な事前の審議期間、調査期間もとるということが、いわゆる議会の審議ほんとうに正しくするゆえんじゃないかと思うのです。この改革は国会の問題にも関連しますけれども政府として、やはり十二月中に出すということを守っていただきたいと思うのですが、総理大臣、どうですか。
  68. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは手続や準備の問題でございますから私から申しますが、先ほどるる申し上げましたように、今年のような場合におきましては、私は財政法その他に違反しているものとは思いません。与えられた条件下におきまして、ベストを尽くしたつもりでございます。  なお、一般論、原則論としての御意見は、ごもっともの点もあるように思われますから、なお十分検討させていただきたいと思います。
  69. 北山愛郎

    北山委員 総理大臣は会計年度を暦年制にしろという意見を持っておられますね。そのことはやはり実際の実施に予算というものの審議なり成立なりを合わせようというお考えだと思うのですが、私がいまお話しをしたようにまことに非合理な現状ですね。それだからまた予算不在の予算委員会というようなこともいわれるわけですから、そこでひとつ一しかも昔と違って現在の予算は非常に複雑なんです。調査するためには相当な時間がかかるのです。だから、いまのような状態だったら、ほんとうに全うな審議というのは率直にいってできないのです。だから、そういうお互いの問題として悪い点を改革をするというために、やはり政府としても悪い慣例ですね、財政法二十七条違反の慣例というものを直すために、ひとつ決断と実行をここでやっていただくというお考えはございませんか。
  70. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 予算審議を完ぺきにしていただくためにも、一日も早く提案をしなければならないということは、全くそのとおりでございます。ただ、非常に複雑な状態の中で財源見積もり、経済見通しというような問題を的確に把握をするには、どうしても十二月になるというような状態でございまして、私も過去三たび国会に予算を提案をした責任者でもありましたが、年内に予算を三年間続けて、三十日、二十九日、二十八日と、こうきめたいと思いますが、しかし国会に対する提出は、やはり再開幕明けの直前になったということでございます。私はいま御指摘をいただきましたように、暦年制の主張者であることは、そのとおりでございます。これはもう四月から執行するというと、各地方は六月の府県会でようやく継続事業の措置をする。新規事業は九月県会で行なうというのが常例になっています。十月過ぎれば農繁期であり、降雪地帯が五〇%もあるわけでありますから、これは考えてみて、北半球に位置する日本は四月−三月年度よりも暦年制が正しい、私はこう思っております。おりますが、明治から長い間の歴史の重さといいますか、なかなか決断と実行だけでは解決できない面もございます。しかし、継続費制度とかいろいろな制度があるにしても、やはり雪解けまでに企画設計ができるようにということができれば、それだけでも相当の効率化がはかれるしという考えを私は現に持っておるわけでございます。  もう一つ申し上げますと、これは大蔵大臣が述べる問題でありますが、このごろ、十一月から十二月ごろにわたって臨時国会がずっと長く開かれておるということで、予算編成——八月三十一日までに概算の要求をしなければならないということで、八月三十一日で概算要求が行なわれておるにもかかわらず、臨時国会との問題でやはり予算編成は十二月の末になるというような問題もあるようでございます。しかし、そんなことば別にしまして、できるだけ早く御審議がいただけるように政府努力をしなければならないという基本的な御発言に対しては努力を続けてまいりたい、こう思います。
  71. 北山愛郎

    北山委員 次に、経済企画庁長官にお尋ねをしますが、長官は施政演説の中で、地価とか、あるいは株とか、あるいは商品の市況等を考えて、インフレ機運にあるというようなことを言われましたが、やはり現状はインフレだと考えておりますか。
  72. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げますが、インフレーションという学問的な定義はいまここで述べる必要はないと思いますが、最近サミュエルソンなどは、物価が継続的に加速的に上昇するという状態をインフレだというふうに言っているわけでございます。私は、施政演説の中で申しましたのは、少なくともインフレマインドというものが非常に問題であって、どうしてもそういうことがないようにしていかなければならない。いま一番大切なのは、みながインフレだインフレだというような気分になることを断ち切ることが最も大切なことであると思うということを申しましたわけでございます。
  73. 北山愛郎

    北山委員 大蔵大臣は今度の予算説明等の中で、福祉とそれから物価と国際収支の調整、この三つの相対立する矛盾といいますか、トリレンマというようなハイカラなことばを使っておりますが、その矛盾に悩んでおる、ハムレットみたいなお話をされておられる。そこで、私は実は福祉と物価なんというのは矛盾ではないのじゃないか、こういうふうに考えますけれども、そういう議論は別として、どこに一体一番重点を置くか。どうも今度の予算を見ますと、私どもはこれは大型のインフレ予算だ、こういうことを言っておりますが、総理施政方針の中にも、実は去年の臨時国会では大型だ大型だという批判を受けながらもあのような膨大な補正予算を組んだのは、これはやはり円切り上げ対策といいますか、国内の需要をふやしてそして輸出を押えるというための円切り上げ防止対策としてやったのだが、しかし失敗したのだ、こういうことを告白をされておるわけです。そういう点から考えますと、今度の大型予算などを見ましても、やはり物価は上がってもしょうがない、とにかく円切り上げを防止しなければならない。国内の景気は高まってきたわけだが^さらにこれに拍車をかけて、そして内需をふやして輸出を押え、円の切り上げを防止するというところに重点が置かれておるのじゃないか、私はそういうふうに推測されるのですが、大蔵大臣、どうお考えです。
  74. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 物価と福祉と国際経済との調和といいますか、具体的にいえば累積する黒字を減らしたい、この三つを並べておりますのは、そこに順位も何もつけておるわけではございません。同時に、この三つは取り上げようによっては矛盾するという見方もあるであろうけれども、三つを同時に解決をしたい。そのためには、あらゆる知恵と努力を傾けてまいりたい。これが私の考え方でございます。そして、私は予算の編成を中心にいたしまして、この三つの命題が必ず解ける、こういう確信を持っておるわけでございます。  ただいまお話がございましたが、たとえば国際均衡をとるために国内の均衡を犠牲にする、たとえば物価の安定ということはどうでもいいんだ、インフレを容認するのだというような考え方はございません。インフレは起こらないように、そして国際的な協調もうまくやっていくようにする、そしてその間に処して財政のいわゆる資金配分機能というものを重視いたしまして、福祉国家の建設に向かっていくことができる。きわめて大ざっぱに申し上げましたけれども、そういう考え方に立って、予算はもちろんでありますが、これと相照応して、その他たとえば金融政策にしても、あるいは貿易政策にしても、あるいは税制の活用にいたしましても、さらには財政金融政策以外のいろいろの政策を並行的に用いることによりまして、この三目標を達成できる、かように考えているわけであります。
  75. 北山愛郎

    北山委員 私は、この際、やはり物価の抑制、インフレを押える、これが当面の最重点でなければならぬじゃないかと思うのです。もし調整インフレというような甘い考え方を持ったって、景気を刺激したとしても、あとで時間があれば申し上げますけれども日本の輸出を押え、円対策は私は成功しないだろう、そういうことを考えるわけであります。そうなりますと、もしもそういう政策をとれば、国民はインフレで苦しめられる、しかも円の切り上げは行なわれて、往復びんたを食うというような結果になりかねない。私どもは、まずこの当面のインフレを押えるというのが政府の第一の政策の中心でなければならぬのに、非常に膨大な景気刺激インフレの予算を組んだ。すでに去年も、当初の見積もりよりも年度中途で成長率がどんどん上がってしまって、一五・四%ですか、予想外の成長を見た。それに今度は輪をかけて、ことしの予算でもって大幅な一六・四%というような、実質一〇%以上の成長をするということは、これは大蔵大臣が言うような安定成長の軌道ではなくて——予算の説明にも、何か安定成長だ、こういうことを言いましたが、一〇%以上のことをどんどんやる。しかも去年からどんどんこれが上昇しておるというような、そういうことは、安定成長じゃないじゃないですか。一〇%以上の成長を続けるのですか、どうなんですか。
  76. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまもお話がございましたが、予算の問題にいたしましても、その規模と編成の内容から考えて、調整インフレというようなことは全く念頭にございません。そして物価につきましても、先ほど申しましたように、インフレを起こさないように、物価は経済見通しに即応するような程度でとどめたい、これを一番の基本に考えているわけでございます。  それから、そういう際に安定成長といっているがどうかというお話でございますが、これはやはり、たとえば内需を中心に考えましても、この程度の成長というものはやはり確保していくべきものであると私は考えます。同時に、予算の規模等につきましてはすでにお話を申し上げる機会もございましたから、多くを申しませんけれども、たとえばこの成長率、私どもとしては適切だと思います国民経済全体の成長率を横に見まして、たとえば政府の財貨サービス購入の伸びもそれととんとんの程度に押える、こういうふうなかっこうにいたしておりますし、それからよく公債の額が問題にされますけれどもこの公債の発行の規模も四十七年度の補正予算後に比べれば一九%から一六・四%に下げてあるわけでございます。そして、建設公債、市中消化という鉄則を守りますし、かつ現在のこの金融情勢からいたしますれば、公債によって資金を吸収をして、そしてその手段によって、従来的なような景気調整のために公債を手段として用いるのではなくて、資源配分を現在の国民の要請されているような、また私ども政策として掲げております福祉の面にこれが傾斜するように、そこで配分の機能を働かせることによりまして、この程度の公債発行と、その発行によって得る資金の配分等を考えることによって目的が達成できる、かまうに考えるわけでございまして、これがいわゆる安定成長の中に実現し得る考え方であり、これが必ず実現し、成果を生むであろうという期待を持っておるわけでございます。
  77. 北山愛郎

    北山委員 とにかく当面のインフレ、物価高の現状を政府としては全力をあげてやるという姿勢を示すということが先ほど企画庁長官が言ったようなインフレムードを押えるという一番のきめ手だと思うのです。ところがいま大企業の製品にしても、あるいは最近問題になっているいろいろな商品、大豆にしても、えさにしても、どうにも有効な手が打てないじゃないですか。そういう中で政府としてやり得る手元にある手段というのは何かといえば、やはり国鉄の運賃のようなものは上げないということなんですよ。それだけはやれるのですよ、これは政府のいわゆる公共料金ですから。それを間接なものを、やれ物価対策費を組んだ、組んだと言ったって、そんなものは一向効果があがっていない、やはり政府は断固としていまの物価高を押える、そのためには、あらゆる手段を尽くしても国鉄の運賃の値上げはやめますと決意をはっきりするところで初めてインフレムードを押え得ることができる。それを去年廃案になったやつをまたぞろ出してくる。しかも、国民の負担は十年間に七兆九千億も今後四回の値上げを予定しているというような案を出してくる。これじゃむしろインフレを、物価高を高進している。口の先ではインフレを押えるとか、物価を押えるというけれども、実際にやっていることは違うのだ。どうですか、ここで私どもは絶対に今度の国会ではこの国鉄の運賃の値上げは断固としてまたつぶさなければならぬと、こうかたく決心しています。野党の責任です、これは。どうですか、政府としてはこの国鉄運賃の値上げというものを考え直す気はないですか。しかも、それは国鉄が赤字になって困っちゃってそれを償わなけりゃならぬというよりも、片っぽうのほうでは膨大な建設計画を持ってどんどん工事をやっている、やろうとしている、そういうものを含めた財政案でしょう。単にいまの赤字を処理するというものじゃない。しかもいまの赤字というのはいままで政府があの膨大な国鉄財政に対して出資をさっぱりしないで——たしかせんだってはで八十九億ぐらいの出資しかしてないです。東北開発会社と同じぐらいの出資しかしていない。戦時中に荒廃した施設を与えておいて、その復旧、それを改良するということをすべて国鉄の借金と運賃と合理化でまかなわせてきたから、そこでその借金が膨大になってその利払い等でもって赤字になっているのですよ。そういう経過等考えますときに、私は、国鉄の運賃の値上げなどは、ことしの政府のこの国の財政規模からするならば、これをやらないということぐらいは易々たることだと考えます。できないことはないんですよ。それをあえてまた去年廃案になったものを出してくるということは、私は絶対にこれは許せないと思うのです。これは一ぺん考え直される気持ちはないですか。総理大臣どうですか。
  78. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 国鉄の問題に入ります前に一言申し上げておきたいと思いますけれども、インフレということについてはもう至大なる関心を持っておりますことは先ほど申し上げたとおり。そして同時に、これは予算の面だけではございませんで、たとえば土地の対策についてはもう全面的な政策が展開されつつある、あるいは株価等に対しましてもあとう限りの措置をいたしておるわけでございます。そういう面からのインフレの克服ということが今日の私は一番の大きな問題ではないかと思います。  また国鉄につきましても、本会議等でも申し上げましたように、たとえば四十八年度だけに限って申し上げましても、一般会計から千七百億円も援助するわけであります。財投からは六千八百億円以上の援助をいたすわけでございます。そして現在一兆二千億の赤字が累積している。さらに十年計画で申しますれば、一般会計からは三兆六千億かの助成になりますし、また財投からは九兆数千億円の援助をいたすわけでございます。そして国鉄自身としても徹底してひとつ努力をしてもらう。その間受益者としてもこの程度の御負担は願いたい。そして国鉄としてのサービスの改良、その他また価格体系の一環としても、この程度の運賃の値上げならば消費者物価五・五%まででとどめたいという中に、〇・四%程度の寄与率になるわけでございますから、この辺のところはひとつよく御理解をいただきたい。この際再建をいたしませんければ、侮いを将来長きにわたって残すことになるのではないか。財政当局といたしましてもあらゆる努力をして、ただいま申しましたような一般会計や財投からも非常な援助をすることになりまして、これもまた国民全体の負担において行なわれるわけでございますから、この辺のところをとくと御理解をいただきたいというのが私の願いでございます。
  79. 北山愛郎

    北山委員 いまのような土地対策とかそれから株の対策、これは国会が近くなってきてから、再開のもう迫るころにやってあるんですね。なぜ一体去年の初めごろからやらなかったのか。去年の春の国会だって、土地問題なんか盛んに議論した。そういうころからやっておくべきものをほったらかしておいて、むしろ金利を下げて金をだぶつかせて、そしてインフレを高進させ地価を暴騰さして、そして世論がうるさくなってきて国会が開かれるというときになって、どろなわ式にやるというふうな姿勢は、もう国民みんな知っていますよ。どんなうまいことを言ったって、それが実態じゃないでしょうか。しかも今度の予算で私非常に大きな問題は、インフレ、インフレというのは、インフレでみんな国民が一様に困るのじゃないのですよ。インフレを歓迎している連中があるわけですよ。たとえば土地だとか株だとかあるいは商品だとか、そういう連中がもうぼろもうけをしてきた。しかもインフレを今後高進することを歓迎しているわけですよ。困るのは働く人たち、いわゆる労働者を中心とした国民大衆ですよ。その国民大衆にとって、今度の予算は物価高でもって困るだけでなしに、予算、財政の中身が国民に対する非常ないろいろな負担をふやしているということなんです。財源が十分あるにかかわらず、国民の負担がふえている。たとえば税の面でいいますと、いわゆる自然増と称するものが膨大にあるわけです。国税でいえば、二兆五千六百五十六億の自然増が去年の当初予算に比べてあるわけです。地方税だって一兆二千億からあるでしょう。ですから、その中で四千六百億くらいの減税をしたからといって、いわゆる三兆二千億くらいのものが、税としての吸い上げがふえてくるのですよ。三兆ですよ。ですから、決して減税にはならないのです。国民の税負担というのは、ことに勤労者の税なんというものはどんどんふえていくということが一つですよ。もう一つは、いまの国鉄の運賃の値上げでしょう。もう一つは、健康保険の料金の値上げでしょう。これだって両方合わせまして三千億くらいになってしまうのです。それから、年金を上げるといっている。五万円年金を実現するというけれども、現実に今年国民の家計にとってどういう結果になるかといえば、金の吸い上げのほうがふえるわけです。国民年金にしても、厚生年金にしても、掛け金が上がってふえていく。それは厚生年金が七百六十三億負担分がふえるわけですね。国民年金のほうが二百十五億で、合わせまして約千億です。五万円年金であるといって宣伝するものが、やはりいまの生活から見れば、国民としては、掛け金がふえる、取られる分がふえるという年金制度なんですよ。年金の改革なんですよ。税は、減税と称しながら、膨大な三兆円以上のものを吸い上げるし、それから、国鉄運賃でもって二千億くらい上げるし、健康保険で千億、年金でも吸い上げる、こういういわゆる高負担ですね。そして一方では物価の値上がりでもって悩まされるという、いわゆる高物価と高負担のはさみ打ちにあって、一般の国民は、今度の予算で、政府経済財政政策によって非常に生活が苦しくなる。そのような予算なんです。われわれは、そういう意味からして、その一環として国鉄の運賃も言っているわけです。あるいは税の問題も言っているわけです。こういう点を私は指摘をしておきたいのであります。  それから、時間がありませんから……。いまの経済はインフレを刺激しているというか、インフレだけじゃなくて、いまの経済というのはインフレとギャンブルの経済ですね。土地と株ですよ。株の値上がりというのは一年間に約二十兆円以上上がっている。そして、その株の六割何分、約三分の二というのは大企業が持っているのです。株というのは大衆が持っているのじゃなくて、個人が持っているのは三一%くらいしかない。しかも、それは百万株以上の大株主が持っている。もう株から大衆は無縁のものです。そして、その株がものすごく上がって、二十兆も上がっているということになれば、かりに六割、三分の二を持っていれば、その株の値上がりだけで、大企業は十五兆円ももうかっているのですよ。それから土地の値上がりというのは、宅地だけでも、これは企画庁の経済白書で、三十九年から四十四年までの平均で約七兆円、現在だったら、宅地だけで一年に十兆円くらい上がっていますよ。ある学者は三十兆円と言っているのです。土地で三十兆円値上がりをする。株で二十兆円値上がりする。合わせますと五十兆円です。GNPの約半分でしょう。五百万の農家が一年営々として働いて、一体どれだけの農業収入があるかというと、二兆三、四千億しかないでしょう。労働者の賃金だってそうですよ。毎年毎年春闘をやって、ベースアップをやって、やっと一年に、労働賃金、雇用者所得というのは五兆円くらいしかふえないのです。まじめに働いている労働者あるいは農民、物をつくり、ほんとう社会をささえてきている、そういう世の中をささえている労働者の所得がそのように少なくて、何にもしないで、株と土地の値上がりによって、それにあぐらをかいている連中が何十兆円もぼろもうけをしている。そんな経済は、ただのインフレの経済じゃなくて、ギャンブルの経済なんです。こう言わなければならぬのですが、この点について、総理なりあるいは企画庁長官の見解を承りたいのです。
  80. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 現状の物価騰貴の要因と考えられるものは大体四つに分けられると思うのでございますが、まず第一には、需要の面からくるもので、これは一般的な景気上昇に伴う需要増加、これによる物価の値上がりということでございます。  それから第二は、異常な現象でございまして、これは過剰流動性というようなものからくる、いま御指摘になりました投機等によるこれの値上がり、これは非常に異常なものでございます。これについては、先般来からいろいろと意を用いまして、株等に対しては、また非常に値下がりの傾向すら見えるようになってまいりました。これは、御承知のように、一月十五日に積みまして、二月十四日までの一月の間に約三千億円の金を積むのでございますが、効果はむしろ今後においてあらわれてくるというふうにいわれておりますので、私ども、その様子をよく観察いたしまして、さらにその後において、貿易手形の大口のものの割引を規制いたしましたり、あるいは、銀行貸し出しの非常にふえている部分については調整をしたりなど、第二、第三の手を打っておりますが、さらに今後第四、第五の手を考えなければならぬというふうに思っておりまして、北山さんの御心配になるような、そういうアブノーマルな状態をできるだけ是正しなければならぬというように思っておるわけでございます。  それからもう一つは、これは供給の面から参りますものでございまして、まず一般的に、供給を制限しておる、四十六年のころに不況であったということから、カルテル等によって制限をしておったものがございまして、それによる値上がりがございます。これはカルテルを全部やめましたので、その点は今度はよくなってくると思います。  もう一つは、需要シフトによるインフレ。今日の日本経済の中におきます非常に生産性の低い部門もございますし、また、ことにレジャーというようなものに対しての需要が非常にある。こういうものに対しての需要から物価をシフトして上げていくという要因がございます。  それから、第三の大きな原因は、これは海外の物価高による要因だと思います。これは、実は、海外が一般的にインフレ傾向になっている。イギリスとかフランス、ドイツ等は消費者物価がかなり高いというような状況、アメリカは所得政策をやっておるわけでございますが、これが第三段階になりますと、一月十四日以降、いわゆるガイドポリシーというものもはずしますから、これはまた多少物価が上がるのではないかというふうに思われるわけでございますが、そういう一般的な要因、それが日本の物価に影響を与えているという点は否定できないと思います。  それから、もう一つは、国際的に、特に農産物の作柄不況という問題がありまして、先ほどお話しの大豆等もそれでございまして、アメリカ並びに中国の大きな生産地が不況である。ことにソ連邦は非常に不況でありまして、大量の小麦をアメリカから買い付けているというような状況もある。そういうことからいたしまして、わが国の農産物価に対しての影響、ことに大豆等のべらぼうな相場になっている。これはただ不況だけではなくて、先ほどの過剰流動性の影響もあると考えておるわけでございますが、そういう影響もあります。  それから、第四点といたしまして、今後の注意しなければならぬという点であると思いますが、これは、いわゆる賃金が生産性を越えて上がっていくという問題でございます。あるいは公害防除のためにいろいろ施設等をしなければならぬ、これがコストに関係する要因となっております。  さようないろいろな条件がからみまして、この物価高の問題というのは、われわれが取り組む対象として、きわめて困難な、また非常に重要な問題でございますが、政府といたしましては、いまのところ、とにかく過剰流動性の問題に対して非常な関心を持ちまして、この吸収につとめておりまして、若干効果があがりつつあるというような状況でございます。  それから、先ほど国鉄の問題でお話がございましたのですが、国鉄、健保とよく申しますが、国鉄のあの値上げによって、物価の点から申しますと〇・三四%、それから健保のほうは、むしろ逆にマイナス要因として〇・二%マイナスに働くわけでございます。しかし、国鉄の値上げについては、これはもう北山さんの御意見もわかりますのでございますけれども、国鉄の全体が御承知のように二万一千キロあるわけでございますが、そのうちの主要幹線というのは一万二百キロ、地方幹線が一万八百キロある。そうすると、絶対に一生のうちに一度も使わない国鉄の線のために、一般の納税者というのがどのくらい一体負担していいものかという限界がおのずからあろうかと思うのです。そういうことを考えますと、やはり三方一両損と申しますか、政府も先ほどのお話のように膨大な出資をする、また、国鉄のほうにおいても合理化につとめていただく、また、利用者も若干負担せざるを得ないということで、この急場を乗り切っていくということを考えざるを得ないのだと思うのでございます。  長くなりますからこれでやめまするけれども、要するに、私どもとしては、全力をあげてこの物価騰貴に立ち向かいたい、こう思っておるわけでございます。
  81. 北山愛郎

    北山委員 企画庁長官がそういう学者、評論家みたいなことを言っておるから、おそらく、来年の参議院選挙も思いやられると思うのです。もうそういう事態じゃないのですよ。思い切って財政でも金融でもやるべきことはたくさんある。たとえば株にしても、何で株が上がるか、しかも、大資本が株を買うか、買い占めをするかといえば、いまの日本の税制がそうなっておるでしょう。企業が持っておる株の受け取り配当は課税をしないのですよ。だから、会社がどんどん株を買って、しかも、親会社が子会社の株を買って、先ほど公正取引委員会が発表になったように、五十の大きな会社が下に五千五百もの子会社、孫会社を持っているというような、そういう形になってきている。それがまた株を値上がりをさしておるわけですね。こういう法人の受け取り配当を益金に計算しないという、課税しないというようなこと。あるいは個人でも、株の譲渡所得には課税しないというたてまえなんですよ。だから、株の売買が非常に盛んになるでしょう。有価証券取引税だって少し上げたけれども、一万分の十五なんていう非常に安い率だから、だから、株の売買というのは、いわゆる株のギャンブルを奨励しているような税制。これを改めることがすなわち対策なんですよ。あるいは、日本の税制というのは、租税特別措置法以外にも、すべてが、大企業と、そして土地を持ったり株を持ったりするような資産所得者にあらゆる優遇措置をとっている。これを整理すべきなんですよ。  たとえば、いつでも申し上げるとおりに、個人で、いわゆる勤労者であれば、四人世帯で今度は百十四万九千円ですか、そこまでは非課税になって上がったといいますね。それなら、これが株をたくさん持っていて、その配当金だけでやっているような世帯であれば幾らまで非課税になるかといえば、四十七年度で三百四十三万一千六百五十二円です。ことしは幾らかと聞いたところが、ことしは二百七十五万七千二百五十円。働かないで、株を持って、その株の受け取り配当に対しては税金を安くしてやって、働く者からはまるで重い税金を取っておるという、こういうふうなやり方を思い切って変えることが、すなわち去年の選挙の結果、政府自民党としては反省すべき問題点なんです。そして、いまの株の問題やら土地の問題に対処することなんです。どうですか、総理大臣。これは田中さんは、いまの配当控除の問題については、あなたが大蔵大臣のときにここでもやったことがありますが、いまだにこれは解決されていない。これじゃ働く人たちはばかばかしくなりますよ。働く者から税金はよけい取って、株を何千万も持っておるような株主の配当金に対しては税金を甘くしているなんというようなことは道理に反しているじゃないですか。そういうことをすぐやめなければならぬですよ。そうじゃないでしょうか。どうですか。
  82. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず、税の問題ですが、先ほど来御説がございましたが、自然増収が非常に多いので、減税が少ないではないか。ところが、所得税で例をとりますと、ほぼ三〇%近くを今回の減税で行なっておるわけでありまして、この減税の幅というものは、相当これは思い切った幅でありまして、選挙中に公約いたしました自民党の減税幅よりはずっと多いことも御承知のとおりでございます。その結果、ただいま言及されましたが、最低の課税限度が百十四万九千円になりました。これは欧米諸国に全く例のないような最低限度になりました。この最低限度の引き上げだけでも一〇・七%くらいになるわけでございます。  それから、特例措置のこと。これも前々から議論がある点でございますけれども、今度は産業関連措置などの特例措置は廃止いたしましたから、この関係で四百億円は少なくとも法人の重課になります。さらに、固定資産税の調整が御承知のように行なわれますから、これからも法人に対しては相当の重圧になることと思います。こういったようなわけで、税制改正の面でも相当のくふうをいたしておるわけでございます。  それから、株の譲渡についての税金の話がございましたが、これは御承知のとおり、何と申しますか、耳に快い議論でございますけれども、法人の配当、それから、その所得ということについては、二重課税の問題がございます。これがやはり、かえって、こういうことを常識的にやりますれば、これはたいへんな二重負担になったり、そのほかの問題もございますので、御議論としてはわれわれも常に検討いたしておりますけれども、実際の税といたしましては二重課税というようなことを避けなければならない、こういう点に難点がございます。  同時に、配当所得だけで他に全然収入がないという場合におきましても、四十五年の税制改正でこの比率は低下してまいりましたから、漸次改善されている。これも北山委員よく御承知のとおりと存じます。  また、土地の関係等につきましても、私も社会党の土地に対する御意見というものも十分承知しておるつもりでございますが、これは土地政策の問題で多くを申しませんが、今回の政府案というものもそういう点を相当に取り入れているということは、これも御承知のとおりでございます。  また、土地の増加税等については、これもよくよく御承知のとおり、課税基準をどうするかというようなこと、あるいは再評価をどういうふうにするか、強制再評価をするというようなことがどうしてできるか、こういうような点につきましては、ずいぶん私は議論のあるところと思います。税制調査会の答申の中にも、これらの点に触れて詳細な議論が報告されておりますので、よく御承知のとおりと思いますが、お考えになっておるようなことで、制度上あるいは理論上可能なことはできるだけ取り上げて考えておりますけれども、理論上にも難点のあるようなこと、あるいは税としての執行上至難であるようなこと、これらについては、かねがねの御意見で取り入れられなかったこともございます。これらの点はよく御承知のとおりと思いますから、この程度にとどめます。
  83. 北山愛郎

    北山委員 いまの大蔵大臣は、いわゆる二重課税の法人擬制説のお話でしょうが、世界的に言ったって、法人擬制説なんというのはもうはやらないですよ。どんどん変わっていくのです。日本だって、ほんとうの法人擬制説をまた完全にとってもいないのですよ。二重、三重課税というけれども、一般の庶民は二重にも三重にも税金を取られているのですよ。そっちのほうは問題にしないで、そして、法人の二重課税であるとか、株の配当所得だとか、そういうものについてだけ問題にされるのはおかしいと思う。やはり世界の情勢もありますよ。もっと前向きに進まないと、それこそ情勢におくれちゃう。  一つの例として、たとえば法人税にしても、大蔵省の発表を見ると、法人課税の実効税率を大蔵省の法人企業統計で見ますと、大体普通四五%だ、こういわれていますね。私は日本銀行の国際比較統計を見て計算してみた。そうしたら、四百七十社という大企業の実際の法人の払う税と利益とを比べてみると、昭和三十九年で三七%です。それからそれがだんだん安くなっちゃって、昭和四十五年には三三%に下がっているのですよ。法人の税が安過ぎるのですよ、実際は。ことに、新日鉄なんかというような会社はものすごく、一〇%台の法人課税しか納めていないのですよ。結局、法人に対しては至れり尽くせりの措置をとっている。こういう点を改めなければならないし、そういう安い法人税だから、安いコストでもってどんどん輸出がふえていくのですよ。むしろ、遠慮なしに法人税を上げて、そして、そういう面から輸出の増大を押えるという政策ですらもとらなければならぬと思うのです。  それから、時間がございませんが、土地の税制についていまお話がありましたが、いま問題になっておる、例の昭和四十四年度から長期保有者に対する分離課税をとって、そしておととしまでは一〇%ですか、それから去年とことしは一五%、四十九、五十は二〇%、段階的に上げる。安い分離課税の制度を適用した。そのときに、福田さんが大蔵大臣でございまして、大蔵委員会で論議したことは御承知かと思うのですが、こんな税制をやれば、土地の供給は、売りやすくなるからふえる。しかし、買うほうの法人を野放しにしている。法人を規制しないでこんな税制をやったならば、土地はだんだん会社のほうへ流れるだけだ。流れやすくなるだけだ。そして、一般に家を建てたいというような実際の需要者の手には安く土地は渡らないんだぞということで、大蔵委員会でやったことを福田さんも覚えていると思うのですよ。まさにそのとおりになったじゃないですか。ただ土地成金が出ただけですよ。土地成金の番付が大幅に狂っちゃった。そして、実際に地価を抑制するという効果は少しもあがっていないじゃないですか。そうであれば、あの臨時的な措置というものをここで改正しなければならぬじゃないですか。何の役にも立たないで、一年に何千億という減税をやって土地成金をつくっておるような税制を黙ってほうっておっていいですか。私どもは、去年の六十八国会で、この点について提案しておるのです。その分離課税の恩典を与える場合は、実際に家を建てるために土地を買うという人に売った場合とか、あるいは公共団体等の公共用地に売った場合に限るのだとか、そういうふうに限定するのだというふうに、せめてそのくらいの改正をしたらどうですかといって、去年の春の国会提案しておるじゃないですか。それを、今度の土地問題がこれほどやかましくなっても、そのような土地成金をつくり、一部の地主に利益を与えて、しかも何らの効果のないような税制をそのままほったらかしにして、せめてそのくらいの改正は何でやらないのですか。この国会はまだ日数がありますから、この国会でもせめてそのくらいのことはやってもらいたいと思うのです。どうですか。
  84. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その御議論もございますので、今回の土地税制につきましては、四十四年一月に取得、保有したものに適用するわけでございますから、これは四十四年の税制改正で必ずしもその趣旨、目的が達せられなかった点を補完をいたしまして、保有税と法人土地譲渡税と、この二本立てでこれをカバーすることを考えたわけでございます。これはもう、法案につきまして近々に御提案申し上げますから、十分御審議をお願いいたしたいと思います。
  85. 北山愛郎

    北山委員 いまの問題は、例の土地対策からいいましても、今日、国民の要望というのは、民間の業者によってどんどん地価が高くなる、買収されるということで、自分たちのほしい宅地が手に入らない、あるいはいろいろな学校その他の施設をつくろうにも、用地費が、今度の建設省の調査によっても、もう四分の一土地代に払わなければならぬ。そういうことを直すためには、やはり地方自治体の公有地をふやしていくのだ。自治体の区域内の土地についての利用、これをどのように開発し、どのように利用するかということはやはり自治体が主になってやっていかなければならぬ。そうすればやはり公有地、自治体がその土地を開発しなければならぬ。こういうことが政府の案でもいわれておるわけです。それをただ強権でもって、収用でやるというわけになかなかいかないのですから、いまあるような、いま申し上げたような税制を活用して、そして、公共団体に、公用地に売った場合には税金がうんと安いのだというような思い切った措置をとることによって、いわゆる誘導政策によって、公有地をふやしていくということにもなると思うのです。一部の者に利益だけを与えて、そして効果のないような税制をそのまま認めておきながら、これをほうっておくという手はないと思うのです。  私は、土地問題等についても、あるいは日本列島改造論についても、いろいろお尋ねをしたいことがたくさんありました。しかし、時間も迫ってきておる。まことに残念に思います。  しかし、最後に私が申し上げたいことは、今日、申し上げた外交問題、防衛問題あるいは経済問題にしても、やはり国民はここで思い切った転換というものを要求しておると思うのです。外交についても、経済について、あるいは生活社会問題についても、われわれのこれからの政治の基盤に置かなければならぬものは、一番最初に申し上げたように、やはり社会正義に基づくということであります。日本アメリカベトナム戦争を支持し、協力して、どれだけ国際的に損をしたかわからぬのですよ。これからの日本外交というものは、やはり正義外交でなければならぬと思う。それから、国内の政治については、先ほども申し上げたように、一般の大衆が納得できるような、道理に基づく政治をやってもらわなければならぬ。  いろいろな例をあげましたが、何もしないでいる連中が、財産を持っておる連中がぼろもうけをして、まじめに働いておる連中がいろいろな負担で非常に生活が苦しくなる。物価で苦しめられる。こういうような道理に合わないような実態を改めるために、やはり政治ほんとうの決断をもって改革をしていかなければならぬと思うのです。それをやらなければ、それを断行しなければ、今日の保守政治というものは崩壊する時期は決して遠くないと私は思います。また、われわれともどもに、議会制民主主義、議会政治というものを守る立場からいっても、やはり政治の信頼というものを回復するために、政治、国の政策というものがほんとうに公平で、そして道理にかなったような、そういうものさしで進められる、その信頼感を国民に与える、これが一番大事だ、こういうふうな気持ちできょうの質問をやったわけであります。十分この点をおくみ取りになるように要望いたしまして、私、きょうの質問を終わります。(拍手)
  86. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて北山君の質疑は終了いたしました。  次に、宮澤喜一君。
  87. 宮澤喜一

    宮澤委員 自由民主党を代表いたしまして、田中総理大臣の御所信をお伺いいたします。  過日の本会議におきまして総理大臣は、その施政方針演説の中で、「当面している難問を解く処方せんは、わが国の歴史に先例を求めることができません。他国にその例を見出すことも不可能であります。」ということを述べておられます。かつてわが国は、昭和の初年から十年代の初めにかけまして、世界の主要国の一つに数えられた時代がございます。しかし、やがて第二次世界大戦を契機といたしまして、わが国は敗戦の谷底に落ちるに至りました。栄光の頂から敗戦の谷間まで、昭和十六年から昭和二十年までわずかに四年間のできごとであったわけであります。そして、その谷間から再び立ち上がりまして、今日のこの高みに達しますまでには実に二十八年を要しておるわけであります。  今日、われわれ日本民族が立っておりますこの高みは、かつてわれわれの先祖がたどりついたことのない高い稜線であることは疑いがないと思います。ここを足場にしてわれわれはさらに高い峰に挑戦しようとしておるのでありますけれども、そのための処方せんは、総理のまさしく言われますように、わが国の歴史に先例を求めることができないのであります。  そこで、現在私ども国民の多くが感じております一種の不安は、非常に高い山に登って下をながめましたときに、何か足がすくむ思いがするといったような感じに私は似ておるように思います。この際、幸いにしてわれわれが勇気のある指導者を得ることができるならば、この不安というものは、挑戦に立ち向かう期待に私は変わることができると思います。また、もし万一不幸にして指導者に人を得ないならば、われわれは再び三十年前のあやまちを繰り返して谷底に転落しないとは言い切れないという不安を持っておる国民が、また私は少なからずあるように考えます。これは過去に一度そういうあやまちをおかしたわれわれ民族としては、無理からない心理ではないかと私は考えております。  もともと、不安と期待というのはたての両面でございますから、田中総理大臣が、その持っておられます指導者としてのすぐれた資質を余すところなく発揮をされて、現在国民の一部が抱いておりますこの不安が前途への期待に変わっていくことを、私は心から念願をいたしておるものでございます。  昨年、総理大臣は、就任後間もなく、日中間の国交正常化を実現なさいました。これはまことにりっぱなお仕事でございました。これによってわが国は、戦後初めて外交面でかなり広範な選択をし得る余地を得ることになったわけでございます。また最近、ベトナム戦争が停戦になりましたことによりまして、わが国をめぐる国際環境は、戦争と平和という観点から申します限り、明らかに平和に向かって進み始めておると考えております。しかし同時に、外交面で広い選択を与えられたということは、みずからの道を注意深く選んでいかなければならないということでございますから、われわれ民族としては初めての経験であって、いわばその中に方向感覚の喪失とでも申すような不安なり、混迷が生まれていることも私は否定はできないと思います。  ことに、わが国の経済力の伸長が非常に著しいために、わが国と国際社会との接触が経済面に相当片寄っておりまして、そうして、いわゆるエコノミックアニマルというような名のもとに、先進国及び発展途上国双方から警戒と疑惑の目をもって見られるような事象がこのごろかなり出ておりまして、それがまた国内にはね返って、国民の心の中に一つの挫折感のようなものを生むに至っておることも事実ではないかと思います。  そういうような見方を背景にいたしまして、外交の面で第一に総理の御所信をお伺いいたしたいと思いますのは、過日停戦にたどりつきましたベトナム戦争についてでございます。私自身は、アメリカがこの戦争かかわり合うに至った経緯について、それが米国の善意から出たものであるということは疑っておりません。またわが国が、先ほど外務大臣が言われましたように、日米安保条約上の義務を果たすために、この戦争についてとってきた態度についても肯定をいたします。しかし同時に、この戦争が米国に深い挫折感と反省を与えたことも事実であると考えるのであります。  つい先ごろ、アメリカのニクソン大統領が、第二期の就任式に際して演説をいたしましたけれども、その中で次のようなことを述べております。ニクソン氏のことばによりますと、われわれは、いかなる国もその意思やルールを強制的に他国に押しつける権利を有しないとの原則を断固支持しようではないか。またこういうことも言っております。弱国が強国と同様に安全であり、お互いが異なる体制のもとで生きる他国を尊敬し合い、他国に影響を及ぼすのは理念の力によってであって、武力によらない、そういう世界の平和の構造を建設しようではないかということを、せんだってアメリカの大統領が第二期の就任式にあたって言っておるわけでございますけれども、これはつい先日のことでございますし、その環境と時期から考えますと、ニクソン氏がベトナム戦争の教訓としてこれを述べたことは明白であろうと思われます。  そこで、田中総理にお尋ねを申し上げるのでございますけれども、われわれにとって先ごろ停戦になりましたベトナム戦争というのは、結局何であったのだろうか、世界の歴史の大きな流れの中で、この戦争はわれわれに何を教えたのか、また善意に基づいてあれだけの犠牲を払いながら、結局、米国の努力が挫折感のうちに終わらなければならなかったと思われる。このことは、はたしてなぜであったのだろうかというような、かなり大きな問題でございますけれども、大きな第二次大戦後の歴史の中でとらえて、これらの点について総理がどのような見方をなさっていらっしゃいますか、承れれば幸いだと思います。
  88. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本は、第二次大戦敗戦ということで、力をもってすることの限界を承知をいたしました。その意味で、新しい憲法世界に類例のないといわれた憲法を保持して、四半世紀に至ったわけであります。私は、この平和憲法を持ってきた日本の四半世紀の歴史は正しかったと思います、こう述べておるわけであります。しかし、日独伊というような枢軸三国に対して、相対する陣営は、われわれを敗戦に追い込んだのであります。その最終的な段階においては、社会主義国の代表ともいうべきソ連、自由主義、民主主義諸国側の中心ともいわれるアメリカ、これは一致してわれわれを敗戦に追い込んだわけであります。  それで、平和が地球上に確保されるかに見えたその瞬間から、新しい動きが起こってまいりました。それは、共同の陣を張っておった米ソが、形の変わった姿において対立をしてきたことは、歴史の示すとおりであります。それが二回にわたるベルリンの封鎖問題となり、朝鮮三十八度線の事件となり、十七度線事件となったことは、これは東西両陣営の接点における現象であることを思えば、否定しがたいことであります。また、米ソ対立の深刻さを報じられたカリブ海の問題も、いまだ思いに遠い問題ではないわけであります。ほんとうに米ソが地球上で争ったならばどういうことになるだろうということは、この地球上に生をうける人類すべてが考えたことだと思います。長い四半世紀余にわたるベトナム戦争解決をしたということだけではなく、解決するまでの長い道のりに対して、われわれは記憶からこれをぬぐい去ることはできません。中ソという大きなあと押しと、それからもう一つは南ベトナムの要請によって出兵をしたアメリカとが、激烈な戦いを四半世紀にわたって行なってきたわけであります。しかし、力による決着というもののむずかしさを感じたのは、これはあに米国のみならんやと考えております。あの近代装備をしてあれだけの長い間あれだけの激烈な戦闘が行なわれながら、北ベトナムだけでこれがささえられたとはだれも思わないのであります。そこにニクソン大統領の訪中があり、訪ソがあったのだと思ます。やはり世界の指導者は四半世紀の歴史の上に立って、新しい道を求めるために努力をしたものだと評価をいたしております。  その結果、最終的に残ったベトナム問題が、民族自決という表現によって解決を見たことは、これはたいへん喜ばしいことであると同時に、やはりいままでの動きに対して一つの終止符を打って、人類が新しい道を求めるスタート台に立ったものだ、こう考えておるわけでございます。  私は、そういう意味で、日本国際紛争武力をもって解決しない。また日本がこれだけ大きな経済力を持つに至っておりますが、経済大国はすなわち軍事大国にはならない。必然的に軍事大国につながっておったものが、軍事大国にならないということを世界に宣言しておりますが、いまだその一部においては危惧の念を持つものもあります。しかし日本は、いままでの考え方も正しかったし、その意思の全くないことは、憲法を守ってまいります、こういう基本的な考え方を世界に宣言しておるのでありますから、このベトナムの平和解決ということを契機にして、われわれも人類の平和のために可能な限り最大の努力をすべきである。しかもそれは力によるというのではなく、日本に持てるもの、それは経済力であり、技術力であり、しかも支配権を及ぼさず、覇権を唱えず、真に人類理想とする道に対して日本が取り組んでおるんだという姿勢を、あらためて世界各国に理解を求めるよきチャンスであるこう考えるわけであります。  私は、ベトナムという局地的な一つの紛争が解決したというのではなく、人類お互いの持つ力による解決というものに一つの終止符を打って、そして新しいスタートを切ったものである。まだまだ実効があがるまでには相当な期間がかかると思います。しかし、四半世紀にわたるこの東西の接点におけるものの解決は、これはベトナム解決だけではなく、南北朝鮮においても話し合いが行なわれており、しかも独ソ条約ができ、東西ドイツは国連に加盟をするという機運にあることを思えば、新しい人類のスタートだ。そういう風潮の中で、日本は国際的になすべき責任を果たしてまいる。日本ほんとうに心底からのスタートを切っていかなければならない。それは、その事実を国民に訴えて理解を求めながら、国民の理解と支持のもとに大きく前進をすべきだと考えます。
  89. 宮澤喜一

    宮澤委員 わが国はこの戦争を通じて、先ほど外務大臣が述べられましたように、安保条約上の義務を果たしてきたわけでございます。で、ときとして、少なくとも私自身に関する限り、はなはだ迷惑に感じるような事態もございましたし、ことに昨年末の爆撃強化にあたっては、従来アメリカと友好関係にあったと思われる国々が、公にこれを非難した例もございます。しかし、英国あるいは西ドイツのように、内面ではアメリカに忠告をしながらも、表面の非難を差し控えた国もございます。先ほど外務大臣が述べられましたように、わが国もまたそのような態度をとってきたと考えられます。日米両国が長く親善関係を維持するという見地から考えまして、私は、わが国が表面の批判を差し控える態度に出たことは、賢明であったというふうに考えております。  しかし、いまや戦争終結の条件に悪影響を及ぼす心配がまずなくなったと考える段階になりましたので、そこで、わが国としてこの戦争意味合いを歴史的にどういうふうに評価するかということについて、実は総理大臣の御所見をお伺いをいたしたようなわけでございます。  そこで、これは総理大臣をわずらわす問題でございませんので、恐縮ですがちょっと外務大臣に聞かしていただきますが、ただいま総理の御答弁の中で、民族自決云々ということばがあって、私はそのとおりだと思いますが、この場合、南の人々、まあサイゴンと申させていただきます、それからハノイの人々、これは一つの民族だと考えるべきものでありますか、違う民族だと考えるべきものでございますか、承れればしあわせだと思います。
  90. 大平正芳

    大平国務大臣 ベトナムの民族は一つだと思います。  ただ、民族自決の原則を政治の形態にどのように実現してまいるかの道程におきましては、いろいろな取りきめが書かれておりますし、それが今後相当長きにわたって、いろいろな曲折を経ながら進められていくものと思います。
  91. 宮澤喜一

    宮澤委員 わかりました。  そこで、先ほど総理の言われましたことは、われわれはダレスの時代からもうはるかに離れてきたという、簡単に申しますとそういうことを言われたわけでございます。確かに今日の世界では、わが国と中国とが総理の御努力によって国交の正常化が行なわれる、あるいは米中が接近をする、東西ドイツの和解があるといったように、これは先ほど北山さんも言われたことでございましたが、いわゆるイデオロギーの相違で国交の有無を考えるというような時代ではなくなりつつあると思います。また、いわゆる反共、昔ダレスが考えましたような反共、それを国是として歩んできた国々が、今日すべて民主主義的な体制をとりつつあるかと申しますと、実は必ずしもそう申せないというのが現状であると思います。現に、わが国の周辺のアジアの国々を見渡しまして、はたしてその幾つが現在民主主義的な体制をとっているかということを考えますと、このことは明らかだと思います。ことに、昨年一年を通じて見ます限り、アジアの幾つかの国では、むしろそれとは逆の方向が強化されたように思われるわけであります。  そこで、俗なことばで申せば、かってダレスが考えていたような、反共国は友人であって共産国は好ましくないというようなことは、われわれが信条としております民主主義の観点からしますと、アジアではなかなかそれだけのものさしでは割り切れないというようなことになっておろうかと思うのでございますが、総理御自身が昨年日中の国交正常化をおはかりになったことから判断しても、相手国の体制とかあるいはイデオロギーなどの理由によって、国交を閉ざしておくといったような一般的なお考えはお持ちでない、こう考えてよろしゅうございましょうか。
  92. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 過去の歴史においては、イデオロギーの違うものは敵である、こういう表現が簡単に使われておりました。それが力の対決へ発展していった歴史も、過程において明らかでございます。しかし、それはベトナムの終戦によって象徴されるように、お互いはやはり自分の主義主張は別として、世界の平和のために、人類の平和のために共存ができ得るのだという大きな飛躍をしたことは事実だと思います。  わが国も、その意味において、体制が違っても国交は正常化せなければならない、しかも、かきねを越えてどんな国とも平和なつき合いをしなければならない、友好の関係を結びたい、そういう考えで、日ソの間には友好条約交渉を続けておりますし、日中の間にも国交の正常化を行なったわけであります。また東南アジアにおいては、御指摘のような現状が多々あると思います。それはイデオロギーが違うから敵だというようなものの考えから前進をしまして、新しい芽ばえというものがたくさん存在をするのであります。しかも、社会主義国といっても、それは国際的な過去のものさしによるものではなく、民族的な、その国だけで育てようとするものもあります。ですから、公式論で割り切れるものよりも、いろいろのものが発生しつつある、混在しつつあるという事実だと思います。  この事実に対しても、わが国は世界のあらゆる国と友好関係を保ち、人類の平和に寄与し、貢献をしてまいるという考え方は、間々申し上げておるとおりであります。しかし、日本自体は民主主義、憲法の定める民主主義、自由を守っていきたいという願望のもとに国民の理解を得たい、こう考えておるわけであります。
  93. 宮澤喜一

    宮澤委員 そこで、総理は先日の施政方針演説の中で、ベトナムに「ようやくできかけた和平を定着させるため、アジア諸国をはじめ太平洋諸国を網羅した国際会議の開催の可能性を検討したいと考えております。」とお述べになっておられます。この会議のことについて少しお伺いをいたしたいのでございますけれども、御判断によりまして、外務大臣からお答え願いましてもけっこうでございます。  この会議は、構想を進めていかれます段階で、おそらく中国の参加をお求めになるのであろう、米ソもそうであろうと想像をいたしますけれども、どんなお考えでいらっしゃいますか。
  94. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう国々とともに構想していくのは当然と思います。
  95. 宮澤喜一

    宮澤委員 そういたしますと、中国をこの会議に参加を求めるということになるといたしますと、日中共同声明を具体化する段階として、日中平和友好条約の締結というようなことを総理が訪中されましたときにお取りきめになったわけでございますが、平和条約の締結というものが、この会議に中国が参加をするための前提になると考えるべきでしょうか。それを要しないと考えるべきでしょうか。
  96. 大平正芳

    大平国務大臣 ちょっと前段のお答え、もう少しふえんさせていただきたいと思います。と申しますのは、総理大臣がおっしゃったのは、そういう国際会議開催の可能性を検討してみたいという御趣旨でございます。これは、ベトナム和平後の事態の収拾につきましては、軍事的な問題もあり、政治的な問題もあり、経済的な問題もございます。しかし、事はたいへん大きな問題でございますから、国際的な協力がなければならぬのじゃないかというお考えが一つ基礎にあるわけでございます。   〔委員長退席、小澤(太)委員長代理着席〕  それから、国際的な協力を求めるということになりますと、御指摘のように中国にせよソ連にせよ、最大の当事国であるアメリカは当然でございますけれども、そういう国々の参加を求めなければ力になりませんことも、当然考えなければならぬと思うのでございます。ただ、お断わりしておきたいのは、可能性をひとつ検討してみようということでございまして、これを日本が主体になって提唱するかしないかという問題につきましては、その可能性を検討する中で、今後の状況の推移を見ながら検討さしていただきたいという趣旨のことでございますので、そのようにひとつあらかじめお含みおきをいただきたいと思います。  いまのお尋ねでございまして、中国参加問題につきまして、日中間の平和友好条約の締結が前提になるかならぬか。私は、そういう前提になるものとは別に考えておりません。
  97. 宮澤喜一

    宮澤委員 前提としては必ずしもお考えになっておられない。  そこで、ちょっとそのことの続きをお伺いいたしますが、今後中国との国交を深めていく進め方でございますけれども、いま申し上げました友好条約あるいは航空協定、通商協定といったようないろいろ実務的な協定、そういうことの時間割り、あるいはお互いに大使を交換するというようなことも間もなく行なわれるのでございましょうが、これは相手のあることではございますけれども外務大臣としてはどのような時間割りでお考えでございますか。
  98. 大平正芳

    大平国務大臣 まず、きわめて近い段階で大使の交換を終えたいと思っております。それから、さしあたって大まかな手順といたしましては、実務諸協定の締結交渉を急ぎたいと考えておりまして、すでに航空協定につきましては、当方が先方に当方の案を提示してあるわけでございまして、いま先方の回答を待っておる段階でございまして、平和友好条約の締結交渉をいつからやるかというような問題につきましては、大使の交換を終えまして、実務諸協定の交渉の段取りを見ながら両国で相談していくべきでないかと考えております。
  99. 宮澤喜一

    宮澤委員 これも外務大臣お答え願いましてけっこうでございますが、一九七二年の二月の終わりでございましたか、アメリカのニクソン大統領が訪中をしたあと、上海で米中のコミュニケが出されました。その中で、「米国政府は、台湾から全ての米国軍隊と軍事施設を撤退ないし撤去するという最終目標を確認する。当面、米国政府は、この地域の緊張が緩和するにしたがい、台湾の米国軍隊と軍事施設を漸進的に減少させるであろう」ということが述べられておったと記憶いたします。そこで、外務大臣の御判断で、このたびベトナムに停戦が訪れたということ、その前途はややまだ逆賭いたし得ませんけれども、このような事態というのは、米中コミュニケの中にいう、「この地域の緊張が緩和するにしたがい」という、その状況に向かって一歩前進したものと判断をしておられますか、どうでございますか。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 上海コミュニケの趣旨につきまして、アメリカから詳しい解明を伺ったことはございませんので、何とも申し上げようがございませんが、その後、その交渉に当たられましたキッシンジャー博士の記者会見等で拝見しますと、いま御指摘の状況の中で、ベトナムの和平という問題には特に言及していませんけれども世界全体の緊張緩和の進展というような、世界全体の状況の進展に関心を持っておるという趣旨のことに言及されておりましたから、その中にベトナムの和平というようなことも、一つの要素になり得ることと当然われわれは解釈いたしますけれどもベトナム和平ということについて特に言及しておりませんので、断定的なことは私の立場からは申し上げられないわけです。
  101. 宮澤喜一

    宮澤委員 確かに、この米中コミュニケの中における「この地域」という表現は、当時から非常にあいまいであったというふうに私も考えておりますけれども、少なくともベトナム戦争が継続中であるという事態は、米中がさらに深く接近するためには決してプラスにはなっていなかった、これが除かれるということは接近が深まることにプラスの材料になる、一般的にそう判断することは間違いない。これでよろしゅうございますか。  そこで、もう少し話を進めますが、米中会談が行なわれたということ自身は、私は、中国側は台湾に対して武力解放というようなことは試みない、それの反面として米国はベトナム緊張の緩和を進めて、そしてやがて台湾から、どういう形でかだんだんに兵力を引いていく、そういう暗黙の了解が下敷きになっておったに違いない。これは私の憶断でございますけれども、そういうことを当時から考えてきたわけでございます。総理が帰られましてから、国会で何回かいわゆる台湾条項なるものについての質疑があって、政府はそれに対して、そのような事態は現実には起こらないと信じているということを何度か答弁をしておられるわけでございますけれども、この御答弁というのは、ただいま私が憶断と申しました、そのような基本的な了解が両者にあるということを確認されたか、御推測されたか、そこはどちらでもよろしいのですが、そのような基礎の上に立ってああ・いう御答弁をなすったもの、こう考えてよろしゅうございましょうか。
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 総理の御答弁の趣旨は、私はこう理解いたしておるのであります。あの台湾条項それ自体が、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明、つまり一九六九年の時点における日米最高首脳の一つの認識を示したものである。それ以上のものではないんだ。で、それから三年たった今日、世界全体が幸いにいたしまして緊張緩和の方向に漸次向かいつつある。したがいまして、今日の認識を問われるならば、田中総理としては、あの地域にそういう緊張した事態が生じるものということは考えられないという認識を述べられたものと理解しておるわけでございまして、ベトナムの停戦というような事態を踏まえて、そういうお答えをされたものとは私は考えておりません。
  103. 宮澤喜一

    宮澤委員 これは私の伺い方が多少不徹底であったのかもしれません。そう伺ったのではなくて、田中総理がそのような認識を深められたということは、総理並びに外務大臣が訪中をされたそのことの結果でございましたでしょうかと、こう伺っておるわけでございます。
  104. 大平正芳

    大平国務大臣 日中の正常化も、それからヨーロッパの緊張緩和の進展も、いろんな事態を踏まえて、全体がそういう方向にいっておるという認識に立たれての御発言と思います。
  105. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 諸般の情報から見まして、三年前のような事態と事態が変わっておる。ということは、世界の動きが全く変わってきておる。今度はもうベトナムの終戦等がありましたから、ますますその感を深くしておるわけですが、あの発言当時私たちは訪中をしたわけであります。明言があったわけではありませんが、いろいろな話をいたしました。意見の交換をいたしました。   〔小澤(太)委員長代理退席、委員長着席〕  平和維持のための話もいたしました。そういう姿勢の中で、台湾海峡が火を吹くというような、いわゆる武力解決というようなことはあり得ないんだということを、私ははだに感じたことは事実でございます。時の流れでもあるし、あそこがまた力によって解決をするというのではなく、あの大きな中国地域という中で解決する場合には解決できるのだろう、こういうことで、三年前の認識された事態とは事態が全く変わっておる、このように私は理解しておるのであります。
  106. 宮澤喜一

    宮澤委員 そのお答えで十分でございます。  それから、この次の問題は少し大ざっぱな大きな見通しになりますので、総理から御所見をお伺いいたしたいと思いますが、せんだって総理が、可能性を検討したいとお考えになっておられますところの、アジア諸国はじめ太平洋諸国を網羅した国際会議でございますが、かりにこれが御検討の段階から具体性を帯びて、現実に幸いにして開かれることになったということになりましたときに、そのような会議がこれからのアジア全体にどのような影響を与えるであろうか、どういうわれわれにとって好ましい展望を開き得るであろうかというようなことについて、ちょっとお伺いをいたしたいわけでございます。  その前にちょっと下敷きがございますが、一九七一年の十一月にクアラルンプールで、例のASEANの各国の外相会議が開かれまして、その会議の中で宣言が発表されたわけでございます。これは、この時点はニクソン氏の訪中が発表をされて四カ月ばかりあと、まだ実現はしておらない段階でございますけれども、その宣言の中で、ASEANの各国の外相会議が、東南アジアが平和、自由、中立地帯であることについての承認と尊重を求めるということを宣言いたしまして、これだけでは非常に抽象的なので、これを具体化するための各国の高級官吏の委員会をつくる、そこで検討をさせようということになりました。この委員会は現実に、第一回は昨年、七二年の七月にクアラルンプールで開かれ、第二回は昨年の十二月にジャカルタで開かれておりまして、各国間の共通の理解が進んでいるというふうに結果が発表されております。またわが国も、かつて訪日をいたしましたマレーシアのラザク首相に対して、当時の佐藤総理がこの構想に賛意を表された経緯があるようでございます。  そこで、最近、御承知のように、欧州では欧州の安全保障機関への動きがございます。また兵力削減交渉、MBFRでございますかの準備段階が、いま始まるというところでございますから、その東西両体制を包含した安全保障構想、と申しましても、ヨーロッパにおいてもまだまだ紙の上のものでしかないということは事実でございますけれども、他方で、アジアの平和を念願するわが国として、先ほど申し上げましたASEAN会議の各国の外相が表明したような理念というのは、これはやはり常に念頭には置いておかなければならないものであろうと私は思います。現在、われわれは、二国間の条約としての安保体制を持っておりますし、これがまた不要となる時代が早急に到来するとは私は思いません。思いませんけれども、将来、あるいはたいへんに長い将来であるかもしれません、これが米中ソを含んで、アジア全体を包む多角的な安全保障機構へ発展するとすれば、それが信頼し得るものであったとすれば、それはおそらくわれわれにとってきわめて望ましい展望であろうと思います。  これは繰り返し申し上げますが、私は、そういうことが近い将来にじきに起こる、だから片っ方のものはもう要らないのだというようなことを申しておるのではございません。これは現実に欧州に起こりつつある事態から判断いたしますと、望ましいことであるが、なかなか簡単に起こる事態とは考えられない。しかし、理念の問題としてこういうことを考えておくことは決して悪いことではないし、総理施政方針演説で述べられましたこの国際会議が、幸いにして開かれ、実を結び、そうしてただいま申し上げましたような、遠い将来ではあってもそういう構想への足がかりになり得る、あるいはそうあれば非常に望ましいことであるといったようなものの考え方につきまして、大ざっぱにどのようにお考えでございましょうか。
  107. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ヨーロッパにおいて経済共同機構ができましたように、世界の情勢の進展によって、より負担の少ない合理的な安全保障体制ができないかという態度を続けておることは、これはもう当然のことだと思います。そして、ASEAN諸国の外相会議できめたことも、果てしない戦争が繰り広げられておるベトナム問題を見ながら、まだアジアというものの諸国で、独立日なお浅く貧困に悩んでおる、しかも宗教上の問題その他でいろんな困難がある、そういう現状に徴して、何とかアジアの平和を守るために一つの機構をつくらなければならないということを考えたことは、これも時の動きとしては当然だと思います。しかし、いままでそういう動きがあっても、なかなか東西の接点において事件があったり、その事件のめどが立たなかった状態においては、相当の被害をこうむっておる地域の民生安定や経済復興に対しても、おのずから流れの中で区別をされておったわけであります。  ところが、今度のベトナム問題に対しましては、中身は確かに東西の対立というものを含んではおりますが、国会でも御発言がございましたように、イデオロギーや体制の違いを問わず日本は援助をすべきであるという発言が間々行なわれておるわけでございますし、政府も、ベトナムの戦後復興に対してはかきねを越えて考えなければならないと思いますと、こう述べております。ですから、ベトナムの戦後復興というものが始まれば、いままでは例がないような、ソ連も中国も、そうしてアメリカも含めてという御指摘がございましたが、一つの全く新しい形態ができると思います。私はそういう意味で、アジア開発銀行とか世銀の中にも、大きな国で入らない国もあるわけでありますし、アジア開発銀行やその他の援助機関にも入っておらないのでございますが、今度のベトナム復興というものの会議や組織や機関がつくられるとすれば、いままでなかった、全くイデオロギーを越えて、体制を越えての一つの場が提供をされると思うわけであります。  そういう意味では、いままで日本も、経済復興に力をいたしますと、こう言うと、それは経済侵略だといわれるように、なかなか日本が主唱して、唱えていろんなことをするという立場になかったわけでございますが、今度のベトナム復興に対しては、だれが唱えても私は異議はないと思うのです。一日も早くなければならない、この現実に徴して、まあ一つの転機をもたらしたものだ。そういう情勢を踏まえて、日本も応分の協力、ほめられるような日本の協力姿勢をやはり示すべきだし、いろいろ世界の諸国が日本に抱いておるものありとせば、そういうものを一掃するにもいいチャンスである。このようなものがずっと積み重ねられていくと、国連というものの中の対立も少なくなると思いますし、世銀や第二世銀とか、そういう、ほんとうに開発途上国の援助というものに対して、自分の系列にのみ資金を流す、援助をするということではなく、世界全体がそういう機構に発展する一つの端緒になり得るかもしれない、また、そうあることが望ましい、私は真にそう信じておるのであります。
  108. 宮澤喜一

    宮澤委員 かなり大きな構図の中でおとらえになっていらっしゃるということがわかりました。  そこで、ただいまベトナム援助のお話がございましたので、この点は総理並びに各閣僚にお願いを申し上げておきたいわけでございますが、われわれはいわゆるポストベトナムの段階で、謙虚にわれわれに与えられたつとめを果たしていかなければならないわけでございますけれども、他人の苦しみを種にして日本の商社が荒かせぎをしているという非難は、これはよほど注意をいたしましても受けやすい事態になろうと思います。この点は総理並びに各閣僚から、事あるごとにひとつ御関係の向きへ御注意を促していただきたいと考えますと同時に、わが国としておそらく多額の援助のための資金を提供するようになると思いますけれども、できる限りそれは、相対、バイラテラルでなく、多角的な、いわゆるマルチラテラルな形であるとか、あるいはできれば、国際機関であるとか、コンソーシアムであるとか、そういう形でやっていただくことが私は非常に大事なことだろうと思いますので、くれぐれも御配意をお願いいたしたいと思います。  それから、その次に日ソ関係をお尋ねいたしたいのでございますけれども、日ソ間には、一方の極にいわば北方領土の問題がございます。他方の極に経済協力の推進がございます。で、この両者がどのような相互関係でとらえられておるのか。総理施政方針演説の中にも、外務大臣の御演説の中にもあったと思いますが、必ずしも私に明白でないので、もしもう少し、多少明白に伺えましたら伺いたいと思います。
  109. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、二つの大きな課題があるわけでございまして、政府立場は、領土問題は領土問題として忍耐強く交渉を続けよう、経済協力問題は経済協力問題として、各プロジェクトのフィージビリティーをよく検討しながらやってまいろう、そしてそれが両国の長期的な利益に合致するような姿において実現することが望ましい、そういう態度でございます。政治問題と経済協力問題、決してこれは分けて考えられませんけれども、しかし言いかえれば、領土問題が片づかない間は経済協力問題が足踏みするというような運び方は賢明でないのじゃないか。経済協力問題は経済協力問題として実現の方向で鋭意検討してまいるということが正しい態度ではないかと考えております。
  110. 宮澤喜一

    宮澤委員 これも外務大臣にお答えをお願いいたしたいと思いますが、次に、たとえば具体的なお話として、チュメニならチュメニの油田を開発するというようなお話がございます。これはどの程度すぐに実現性のあるものか、よく存じませんけれども、そういうお話がかなり熱心にございます。そういう場合、人によりましては、その具体的なプロジェクトというものは中国とソ連との国境関係にかなり微妙な影響があるであろう、あるいはソ連の艦隊が極東水域に出てくることにかなりの関係があるのではないだろうかといったような指摘をする向きがございます。これは、計画がそれほど現実の問題になっておりませんので、まだまだ時間のあることであるとは思いますけれども、日ソの経済協力というものは、テンポの点はいま言われましたことで一つ問題がはっきりいたしましたが、一般的にどういう配慮のもとに考えておられるのでしょうか。
  111. 大平正芳

    大平国務大臣 各プロジェクトの進めるべきか、進めるべきでないか、それはいろいろ議論があると思います。が、私が先ほど申し上げたのは、その各プロジェクトのフィージビリティーなるものをできるだけ精細にまず検討、吟味しようじゃないかということで、いま民間レベルで、調査の段階では政府も加わっておりますけれども、検討しておる段階でございます。将来、日本の資源経済の展望を考えてみますと、たいへん大きな資源需要というものが予想されるわけでございまして、私どもは、地球のすみずみから、より好みしないでできるだけ広く資源供給源を安定的に確保しておく必要があるわけでございまして、とりわけサイベリア資源というものにつきましては、将来の資源需要の展望を考えますと、当然考慮せなければなりませんし、全体のシェアから申しましても、必ずしも過大であるというようには考えないわけでございます。したがって、十分プロジェクト自体の検討が精細に終わりまして、われわれが、政府判断する段階になりまして、いま御指摘のような問題につきましても総合的に判断し、そして決断すべき時期が来るんじゃないかと思っておりまして、いまの段階は、プロジェクト自体の吟味を鋭意やっておるという段階でございます。
  112. 宮澤喜一

    宮澤委員 もちろん、中ソの関係が一日も早く正常化し、改善をするということはわれわれの望むところでありまして、それが長引くことを決して望んでおるのではございませんけれども、具体的なプロジェクトがある程度煮詰まる段階が見えてきたときには、そのようなことももう一ぺん考えてみなければならない、こう言っておられるわけでございますね。
  113. 大平正芳

    大平国務大臣 中ソ関係とかなんとかという険しい問題でなくて、全体のいろいろ諸条件を十分吟味して考えるべき問題であると思います。
  114. 宮澤喜一

    宮澤委員 日米関係につきまして、これは総理にひとつお伺いをいたしますが、昨年九月でございましたか、アメリカの大統領とホノルルでお会いになった。その際、両国の経済関係の面では、通商上のいわゆる保護主義というものは、今後の世界の平和増進のために決して好ましいものではない。ことに、近く英国のEC加盟も実現するであろうから、そうなるとECそのものが地域主義に動きやすい、そういう傾向は、しかし両国の首脳において何とかして回避しなければならないという点で、お二人の基本的なお立場が合致した、こういうふうに私、理解をしておりますけれども、さようでございますか。
  115. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 大体そのとおりでございます。私は、日米の間の経済関係、必ずしも望ましい姿になっておらない。しかし、それによってアメリカ・モンローに返るようなことになると、世界的に保護主義の台頭に加えてそうなるということは、これは日米間だけではなく、世界の平和のためにもいいことではない、こう率直に述べたわけでございます。また、ことしの一月一日を期して拡大ECにイギリスが加盟するわけでありまして、そうなるとますます域内経済というものにウエートが置かれるおそれがある。そうなれば、東西問題から南北問題に移行しつつあるという富の再配分というか、世界の平和維持の大きな問題が阻害される。特に、アメリカはケネディラウンドの推進をはかって平和に貢献しようとしたじゃないか、日本もケネディラウンドの推進をはかり、しかも新ジャパンラウンドというような国際ラウンドを提唱しておるのだという説明を私はるるいたしました。そういうことで、日本は対米貿易の是正には全力をあげておりますが、やはり両三年かかると思いますと、その当時、両三年以内に経常収支の黒字幅を国民総生産の一%にしたいという理想に向かって努力をしておるのでございますと、そう申し述べたわけでありますが、そのときに、確かにわれわれが保護主義に移るということによって世界の平和が維持できるものではないし、お互いがそういう問題に対しては十分な配慮をしなければならない。  その意味においては、日本アメリカ日本と拡大EC、拡大ECとアメリカ、こういうやはり随時の協議を行なうか意思の疎通をはかりながら、やはり保護主義の台頭は押えるという、現代に生きる、お互いの使命に生きるようにしなければならないということで、その後イギリスの総理大臣が来日をされましたので、その間の問題は十分述べて、拡大EC加入後も域内を中心にしたまとまりというようなことでないように、お互いに意思の疎通をはかろう、また、新ラウンドの推進をいたしましょうということを強く述べてあります。
  116. 宮澤喜一

    宮澤委員 そこで、日本総理大臣アメリカの大統領は、そういう大きな共通の果たさなければならない仕事を持っているのであるから、それについて、いま両国間にこういう具体的にごたごたした問題があることは、はなはだ残念なことであって、これをできるだけ早く片づけておかなければならない。そのために両三年、こういうお話であったと思います。  その時点から半年たったわけでございますけれども、事態は好転しつつあるというふうに御判断しておられますか。また、わが国が現在の事態を改善するために、この時点でしなければならない課題はどんなものであるか、大まかでけっこうでございますが、どんなようにお考えでございましょうか。
  117. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 対米貿易の是正に対していろいろなことをやったわけであります。円対策、円平価の調整もその一つでございます。それからその後の問題としては、自由化を行なったり、関税の二〇%一律引き下げを行ないましたり、可能な限り努力をしております。また貿管令の発動等もきめておるわけでございますし、場合によれば対米貿易を制限しなければならない、別な方法も考えなければならないというぐらいにやっておるんですが、しかし、エバリー経済代表が来て箱根会談をやり、私も会い、大統領とも話をしたときの状態よりも改善をされておらない。去年三十二億ドルの出超に対して、ことしは二十九億九千万ドルというような、とにかく十億ドルずつ下げられなくとも、二十九億九千万ドル、十九億九千万ドルというふうになれば理想的であるが、そうはいかないので三年はかかりますと、こう述べたんですが、しかし、そのときに先方は、二十九億九千万ドルにしたいという日本の意思は理解するが、四十億ドルにはならないようにと、こういう強い要請があったわけですが、遺憾ながら四十億ドルをこえそうである、こういう事態でございまして、はなはだ日米間の貿易収支の改善という問題に対しては、めんどうな状態にあることは事実でございます。  しかも、自由化を行なっても、去年のように子牛五千頭を入れるということは、相当の問題があったことを踏み切ったわけですが、実際はアメリカからは四百五十頭か五百頭しか入らなかったというような事実もございます。だから、一次産品の自由化をすることが必ずしもアメリカとの貿易がよくなるということではなく、アメリカ向けのクォータをふやして、いろいろな問題をこれからも毎日のように考えていかなければならない。私は、通産省に対しては、アメリカ向け輸出承認というものを日報としてとってくれということさえも言っておるわけでございます。日報、毎日の日報としてこれを毎日毎日調査をしてくれと言うぐらい努力をいたしておるのでありますが、事志とたごうておることは遺憾でありますが、しかし、それはこういう発言だけでは済まない問題であります。やはり日米間の貿易収支の改善に対しては、最大の努力を傾けるべきだ、こう考えております。
  118. 宮澤喜一

    宮澤委員 それじゃ、これはお答えをいただかなくてもよろしいのでございますけれども、昨年の九月にそうやってホノルルで、何か幾らかでも積むものはないだろうかとたいへんに御苦労をなすっていらっしゃいましたときに、私はふと自分の頭に浮かんだのでございますけれども、例のガリオアというものがございました。これは政府が今回協定の残りの残額を一括してできるだけ早く払ってしまおう。これはたいへんけっこうなことでございますが、私の思いましたのは、多少とっぴでございますけれども、その協定の額ではなくて、実は昭和二十六年から何とかかんとか幾らかでも値切って、と言うと悪うございますが、協定の額まで持ってくるのに長い年月とたいへんな苦労がございました。私もささやかですが、少しそれに関係をいたしました。いまわが国にとって十億ドル払うということは、実は別段そんなに苦痛なことではございません、円の問題さえなければ。で、日本人というのはそういう国民であったのかと世界に思ってもらえるなら、一ぺんは値切ったけれども、これだけ力もできてということのようなことができれば——これは反米とか親米とかいうことではありませんで、借りたものは借りたものでございますから、ということができたらなあということをあのときにふと実は考えました。これは国会の御審議の要ることでございますから、とうてい簡単にできそうなことではございません。ございませんから、私のひとり言という程度にお聞き取りをいただまして、これはお答えは必要でございません。  外交の問題に対しまして、いままでいわゆる不安と期待の交錯というようなことについて申し上げたのでございますけれども、私は同じことは内政の問題についても、いま国民気持ちの中で言えるのではないかと思います。  戦後、国民努力によりまして、これだけ経済成長が行なわれて、いま国民の一人当たりの所得は二千六百ドルに達しようとしている。演説でも言われましたように、イギリスのそれに近くなってきているわけであります。またそれにも増して、わが国の歴史上で初めて失業者がなくなったということ、働く意思があってからだがじょうぶならだれも飢えないで済む、自分で職につくことができるということは、ことに高校なり中学を卒業した者は金の卵だというようなことがいわれるようになりましたけれども、このことは、われわれが十数年推し進めてまいりました成長政策に、たとえどんな批判がありましょうとも、この失業のない社会がとにかくできたということは、これは私どもが戦後の政治上の功績のやはり最大なものの一つだとみずから誇っていいことではないかと私は考えております。  そういう反面に、しかし、いまのお互い国民一般はそうやって得た所得あるいは時間というものを今度はどうやって活用すればいいのか。飢えと貧困に苦しんでいたときにはそういう問題はなかったわけでございます。そういう選択の問題はなかったわけでございますけれども、いまそういう選択にある意味で悩まなければならない。また人間の物質欲というものは際限がございませんから、もうちょっとたくさん所得があったらいいというようなことは絶えず、だれも考えますから、欲求不満のようなことにもなってまいります。多少語弊がございますけれども、働かなければ食えない時代、まあわれわれの先祖はそうでありましたし、私ども自身が戦後しばらくの間そうでございましたが、そういう、いわば貧に処する道徳というものは、総理もまた私自身もやはり教わってまいりました。  しかし、年とともに国民生活が、豊かと言ってはいろいろ語弊もございましょうけれども、戦後の貧乏時代を知っている者からいえば、確かに豊かになってまいって、そういうときの道徳は何かということは、まだはっきりつかめていないということではないかと思うのでございます。かえって、初めて獲得したそういう金であるとかあるいは余暇というものが、あやまって犯罪の原因になってみたり、あるいは国外においてひんしゅくの的になったりしているような昨今ではないかと思います。おそらくそういう時間に余裕ができ、あるいは所得に幾らかでも余裕ができれば、そのようなものはわれわれ民族でなければできない文化的な創造といったようなものに使われるのが、私は本来であろうと思いますけれども、そういうような政治上の指導理念もはっきりはございませんし、民族のコンセンサスというのもまだ生まれていないように考えるわけでございます。  そういう状況の中で地価が高騰する、あるいは株価や商品市場に見られるような投機的な傾向が目につく。これは一般庶民から申しますと手の届かない無縁なものでございますから、いかにもそういうものを見ていると焦燥感に当然かられます。そうして自由経済の本質は、ひょっとしたらこれは悪ではないだろうかというような見方が一部には私は出ておるように思います。それから生活環境が悪化したこともございまして、経済成長というのは、何か反市民的なものではないのかというようなことをいわれる方もある。また、もし財政が大型化して金融が非常に緩和をしたというようなことになると、それは即インフレであって国民の蓄積が損耗されるというような、多少論理に飛躍がありますけれども、そういう傾向のものの考え方をされる方もあるわけだと思います。  そこで、今度の予算を拝見しておりますと、国民の所得の水準がここまで来た、それから保有外貨の天井というものをかつてのように気にする必要がなくなったといういまのような段階で、財政は当然にこれは資源再配分の機能を果たすべきだと思います。そういう意味で、今回の予算が社会資本の充実あるいは社会保障の拡大を中心に組まれたことは、私は心から賛意を表しますし、適当なことであると思っております。  今度の予算案を拝見いたしますと、確かに財政の伸びは相当大きいわけでございますけれども、その多くの部分が福祉政策優先の原則に従って振替所得の増大のほうに充てられておりますから、その残った政府の財貨サービス購入というのは、大蔵大臣が言われましたようにGNPの伸びと同じくらいの伸びでしかない、したがって、財政からインフレを刺激することはないんだ、こう言われることは、私は政府の御説明が納得ができます。  そこで、これは二、三お尋ねを申し上げるのでございますが、大づかみのことはどうぞ総理からお答えいただきたいと思いますが、政府経済見通しを一見いたしまして私が感じておりますことは、二つございます。  その第一は、民間設備投資の伸びを一四%と見ておられる点であります。これは前年度対比でございますので、昭和四十七年度はどのような年であったかといえば、御承知のように設備投資意欲が非常に低うございました。製造業の設備投資はおそらく年間で一%くらいの上昇しかなかったのではないかと見られますから、それとの対比でもって、昭和四十八年度の伸びを一四%と見ることは、私は見通しとしてはかなり過小なのではないだろうかという気がいたします。今回の財政経済政策の斉合性がもし破れるとすると、ここが私は一番あぶないのではないかという感じがしております。総理施政方針演説の中で、したがってこれは御存じでございますかと思いますが、「民間の設備投資主導による経済成長を改め、」云々と言っておられますが、そのために、現在企業の手元にあるいわゆる過剰流動性というもの、これを取り上げるとともに、今後の推移いかんでは、金融面でやはりかなりの手を打っていかなければならない。  そこで、これはこれからの推移によることでありますけれども、推移いかんによって、たとえば預金準備率の再引き上げであるとか、あるいは日銀の金利操作であるとかといったようなことが、普通のときでございますと当然考えられることでございますが、一般論として総理のお考えを伺えれば幸いでございます。
  119. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 去年はほとんどゼロに近い設備投資で、一四%増しというのは過小ではないか。確かにいままでのパターンからいうと、これだけの予算が執行されておるわけでありますし、また、これからも大型予算といわれるものが、中身は国民的要請で真にやむを得ないものであっても執行されるわけであります。そうすると、それに続いて民間設備投資が拡充されるということでございました。現に私も施政方針演説で述べましたとおり、民間の一部に設備投資の動意が見られることは事実でございます。  そういう意味で、この間日銀総裁とも意見交換を行なったわけでございますが、幸い総動員法時代の日銀法が現存いたしますからというのではありません、政府は金融をどうしようというのではありませんが、私、大蔵大臣在職中に、日銀法を新しい憲法の趣旨に適合するように改めて案を作成したわけでありますが、成案を見るに至りませんでした。だから、現に数少ない総動員法時代の日銀法がありますから、金融も政府がどうしようというのではありませんが、いままでと同じような状態で設備投資が行なわれたなら、これはもうたいへんなことになると思います。私はその意味で、民間の設備投資動意というものにしさいな観察を行ないながら、現存する都市にある工場等に対しては、公害施設にウェートを置くべきであって、場合によっては限るべきであると思う。政府は、これからの過密都市の状況を考えれば、ある年次を切って、いま六〇%、七〇%という建蔽率で建っておる工場の敷地に対する建蔽率を制限しなければならない事態であると考えております。そういうときに、現行法による増設はまかりならぬということでなければなりません。  そういう意味で、公害投資というものに限るべきである。そしてまた列島改造というものをいま掲げておりますが、公害を防除しながら、しかも新しい設備に転換をする。そうして設備というものが、建設をする間は設備の拡大にはならない、新設備が動くときには旧設備は休止をするのだというようなものに転換をしなければなりませんので、これは金融機関が中心になって、内容的な貸し出しというもの、特に民間設備投資の動意に対しては考えていただきたい、こういう私の考え方を述べております。また大蔵大臣とも、金融面に対しては十分そのような相談をしておりますし、また通産大臣その他設備投資を所管する大臣にも、業界の協力を求めたいということを考えておりますので、その意味で私は、一四%の伸びということで物価に影響を及ぼしたり、物価を押し上げたりする悪い材料にはしないように、これからやはり相当こまかいものの考え方をしなければならぬと思います。  もう一つは、生産余力が相当ございます。現実問題としてあります。そういう意味で、量的拡大のために設備投資が再燃をするという過去のパターンを繰り返すということのないように協力を求めたいと思いますし、政府も強力な指導をしてまいりたい、こう考えます。
  120. 宮澤喜一

    宮澤委員 お考えの方向はわかりました。もう一度金融のことについて、後にちょっとお尋ねを申し上げるかもしれません。  経済見通しについてもう一つ気になります点は、卸売り物価の上昇を二%と見ておられる点でございます。昭和四十七年における卸売り物価の動きを見ますと、おもな原因が三つあろうかと思います。第一は、鉄とか石油化学、いわゆる不況カルテルの関連のものであります。第二には、原皮とか羊毛、木材、国際価格の上昇に伴うもの。第三はセメントとか建材、公共投資関連のものであります。このうち、一、二はもう問題がなくなろうかと思いますが、二と三は本年においてもなお原因が継続するのではないかというふうに考えられるわけでございます。  そこで、これはちょっとこまかいことで恐縮でございますけれども、もし経済企画庁長官、御用意でいらっしゃいましたら、政府の見通しの卸売り物価二%といいますのは、四十七年の後半になって相当に卸売り物価が上昇しておりますので、この四十八年度の見通しは、かなり私は大きなげたをはいているに違いないと思います。四十八年から卸売り物価の基準の取り方がたしか変わりましたので、まっすぐに比較することがちょっとむずかしいかと思いますけれども、しかし考えてみますと、四十七年の後半で相当急上昇しておりますから、げたがかなり大きくて、この二%の中で、したがって年度内に許容される卸売り物価の推移、げたを引きました残りでございます、どのぐらいに推計をされておられますか、事務当局でもけっこうでございます。
  121. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御指摘のように、この暮れに相当卸売り物価は高騰を見ましたわけでございますが、その中で非食料農林物資と申しますか、木材とか皮革とかそういうようなものが非常に大きくウエートを占めまして、寄与率が大きかったわけでございます。その他繊維、鉄鋼、それが一三・二%、八・七ぐらいございました。これが全体七三%ぐらい寄与しておりますので、いま御指摘のように、この木材の点はたいへんよくなりましたわけでございますが、あと羊毛というようなものがまだ残っているわけでございます。  そこでげたの問題でございますが、一・五はげたと見まして、あと残りが〇・五でございますので、相当な努力をしなければならぬと考えております。しかしこれは総理が御指摘になりましたように、あとの経済成長をどう見ていくか、民間の設備投資の増加でございますね、そういう点等ともよくにらみ合わせまして、ぜひその目的を達したい、こう考えているわけでございます。
  122. 宮澤喜一

    宮澤委員 そういたしますと、年度間の動きの幅の許容量は〇・五でございますね。かなり苦しい。これはひとつせっかく御努力を要望を申し上げます。  それから、これはお尋ねではございません。また、私の聞いておることが誤っておるかもしれませんけれども、昨年の後半に木材価格が急上昇して非常に世の中の注目を浴びたわけでございます。その前の年に、木材の価格がかなり低迷をしておりましたために、うわさによりますと、行政官庁を中心にして、輸入業者等が集まりまして木材の輸入の制限を申し合わせたというのではないかと思われる節がございます、はっきりはいたしませんが。もともと木材の輸入はずいぶん以前から自由化されておるはずでありますし、たまたま政府自身が木材については売り手でもあるという事情があったりいたしますので、こういう事実がございますと、善意に出たものでありましょうけれども、結果としては昨年にそういうはね返りがきておりますので、一度事実関係を御調査いただけばしあわせだと思います。これはお答えは要りません。私の申しておりますことが誤りかどうかもわかりませんので、お調べいただければけっこうです。  それから次の問題は、外為特別会計の払い超のことを伺うのでございますけれども昭和四十六年度にああいう状況でございましたから、外為特別会計の払い超が四兆円余りあったといわれております。昨年は一兆七千億円ほどあったと申しますから、合わせますと六兆ほどあったように思います。これを中核にして、それに銀行貸し出しの増加が加わります。これがいわゆる現在の過剰流動性なるものになっておると考えます。株価あるいは商品市況の高騰というのはこれが主要な原因の一つであったと思いますし、地価の場合にはそれに列島改造というような心理が加わって、一そうの刺激を受けたというのではなかろうかと思います。  そこで総理にお尋ねを申し上げるのでございますけれども、いまから振り返って考えますと、あの段階でもって政府が何かの手を打って過剰流動性を吸収するべきではなかったのか。実を申しますと、相当の不況でございましたので、これは理屈はそうであってもそう簡単にはまいらなかったかと思いますけれども、今後もこういう過剰流動性というものは、必要があれば何かの形で政府が吸収をするというような施策というものは、これは一般論でございますが、お考えになれますでしょうかどうでございましょうか。
  123. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御指摘の中にもございましたが、当時は景気浮揚をさせなければならないというときでございましたので、しかも長いことかかって相当大幅な公定歩合の引き下げも行なって、ちょうどまだその影響が出なかった当時でございますから、まあ吸い上げが行なわれなかったわけでございます。しかし六千五百億にものぼる一般会計の補正予算を御審議いただかなければならなかったという事態に徴すれば、それはやはりある意味において金融とのバランスをとるために、あれだけ外貨の積み増しが行なわれたとしたならば、やはり適時売りオペを行なうとか、場合によっては、私たちは、あの当時国会でもって成立はしませんでしたが、おととしから去年にかけて、対外経済調整法というものを国会提案もいたしました。そういう過程においては、絶えずこの金融の問題に対しても、売りオペを行なったり、また買いオペを行なったり、特にドルによる、外貨流入による円資金の過剰に対しては、短期資金を出しても吸い上げなければいかないのじゃないかという問題も研究をいたしました。またその過程においてドルの、外貨の直接貸しその他の制度も設けたわけでございます。実績は相当上がってはおりますが、しかし、外貨の問題に対しては相当な処置をしても、その裏づけになった円に対して——御指摘のように四兆六千億プラス一兆七千億という単純ではなく、計算をしてみると、総体的には二年間を通じて四兆五千億ぐらいと思います。思いますが、これが企業の手元資金を非常に潤沢にしました。しかし、その資金は設備投資につながらなかったということ、もう一つは適切な投資先がなかったということで土地と株にいったのだろうという、これは経済雑誌にも書いてありますが、そういうことは否定できない事実である。そういうことで、これからもやはり外貨の流入ということを考えると、いまちょうど船の代金が入ってきたり、年間三億ドル、四億ドルというようなものが入ってきたり、契約をすれば直ちに頭金が入ってくる、こういう状態でございます。そういう意味で、裏づけになっておる円の吸い上げというか、これはある意味において、あるときには、資金運用部で短期債を出してこれを吸い上げて、使わなくてもいい。だから、いまその利息を損をしても吸い上げるべきである。今度の公債に対しましても、四千七百億ですか、資金運用部で引き受けるといっておるのですが、資金運用部自身も運用しないと赤字になるわけでございますが、そんなことよりも、もう民間で消化できないというのではなく、民間における過剰流動性をいかにして吸い上げるかという状態という面にウエートを置いて考えなければいかぬのじゃないかということで、大蔵省当局にもいろんな問題を提示をして検討してもらっておるわけであります。いまちょうど一−三月は輸入期でありますし、相当な揚げ超期でありますので、そういう意味で、しばらく時を見なければいかぬのかなあという考えもありますが、しかし、具体的な問題として検討をいま事務当局に依頼しておるわけであります。
  124. 宮澤喜一

    宮澤委員 確かにあのときには、公社債、金融機関が投資物件がちょっとなかったというようなことに実はなっておりましたのですから、今後の問題としていまのようなことは御検討いただければいいのではないかと思います。  それから、これはあるいは総理はとっくにお気づきであるのかもしれませんけれども、日銀券の毎月のいわゆる平残の対前年同期比というものは、いままで常識的に大体一五%ぐらいだというふうに考えられてまいりました。長いことそうでありましたし、ちょっといま統計を見ますと、昭和四十一年度が一四・八%、四十二年度一六・六、四十三年度一六・三、四十四年一一・八、四十五年一一・七、四十六年一一・五でございます。まあまあその辺のものと考えられておったわけでございますけれども、これがどうも昨年の六月ごろから一一七・六、一一七・五、九月に一一九・四になり、十月に一二三・八、十一月に一二二・七、十二月に一二三・八、そうして先月、この一月の平残は、何か特殊な事情もあったようですけれども、一二六・二だそうでございます。いかにもこれは異常な事態ではないかというふうに思います。  それから、このごろでは多少変わりましたけれども、昨年ずっと、いわゆる金融機関の貸し出し競争というものは、相当激しゅうございます。企業が借り入れ金を返そうとしてもなかなかちょっと返せないというような状態もあったようでございます。金融機関というものは、やはり一つの公共的な性格を持っているものでございますから、こういうビヘービアというものもどういうものであったのだろうかという感じがいたしますが、何か御感想はおありでございますか。
  125. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 御指摘のとおり、日本銀行券の最近の増発は相当なものであります。これには最近における消費傾向が相当強くなってきたこととか、あるいはレジャー関係とか、現金の使い方がここ数カ月来かなり変わってきているということも原因ではないかと思います。それから、たとえば平残の本来のときが日曜日に当たっていたので、その前の土曜日にどっと出たとか、いろいろな特殊の事情もあるようでありますけれども、相当やはりこれは注視していかなければならないことであると思います。もちろん、申し上げるまでもなく、銀行券の数量だけでどうこうということもないという見方もありますけれども、十分注意してまいりたいと思います。  それから、金融機関のビヘービアですね。御指摘のとおりでありまして、そういう環境でございますから、ごく最近に通達をいたしましたのも、銀行に対する大蔵省の一般監督権を基礎にして発動いたしたようなわけでありまして、そういう立場からも、当局としては相当シビアな態度で金融機関全般に臨んでおりまして、特に土地関連融資というようなものについては、業種のいかんを問わず、一定の水準までに、少なくとも四月−六月期には押え込むようにする。そういたしますと、あるいは新規の融資の要請などについてはほとんどストップというようなかっこうになるような結果になるかもしれませんけれども、そのくらいのところに目安を置きまして、金融機関全体のビヘービアに対して、お話のとおり公共機関としての使命に徹した態度をとってもらいたい、同時に、それは事後における報告の聴取、それからフォローアップについても遺憾なきを期していきたい、かように考えております。  それから、先ほど言及されましたが、外為の払い超の問題、これは国庫の関係から申しますと、いろいろこまかく申しますことは省略いたしますけれども、最近は、国庫との関係においては、払い超というのではなくて、むしろ揚げ超ぎみになっておる。そういう点から申しましても、金融機関関係資金の移動ということ、動きということについては非常にウエートがかかってきて、それだけに金融政策はそこを重点にしていかなけりゃならない、こういうふうに考えております。
  126. 宮澤喜一

    宮澤委員 それから土地対策でございますが、土地利用計画の策定と土地利用の規制、土地税制の改善、宅地供給の促進、この三点を柱に過般の政府決定ができたわけでございますが、これは私はかなり思い切った措置であると思います。非常に錯雑した法律関係だとか、あるいは各省の権限のからみ合い、ここらをここまで断ち切られましたのは、これは失礼でございますけれども総理の指導力に私は非常に敬意を表します。  そこで、これは建設大臣にお答え願いましてもけっこうでございますが、この上はひとつ、土地取引の届け出勧告制度について、都道府県知事がどういう場合にどういう条件で中止勧告をなし得るのか、そういう基準をできるだけ早く明確にしていただきたい。  それからもう一つ、昭和五十年になりますと全国総合開発計画が策定される。しかし、それを待ちませんで、いわゆる特定地域でございますけれども、たとえば新幹線あるいはハイウエーのインターチェンジといったようなものは、その予定地は、何か昭和五十年三月を待たずに投機的な取引を防止するといったようなことをお考えになれないかといったような点、どなたでもけっこうでございます。
  127. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 新全総の関係でございますので、私から便宜お答えいたします。  五十年を待たずしてぜひそういうような特定地域については考えたいと思っております。  それから、県知事が指定いたしまして、そしてそれが投機の対象になるかならぬか。それの一般に及ぼす影響等も勘案いたしまして、そういう特定地域については特別の措置をとらせるようにしたいというふうに考えております。  それから、先ほどのお答えで、ちょっと大蔵大臣からのお答えに補足したいと思いますが、このごろ、通貨の発行量というものについては、ケインズ以来あまり問題にされない風潮があったわけでございますが、御承知のように、フリードマンあたりはまたマーシャルのKというようなことを非常に問題にしておるわけで、マーシャルのKを見てみますると、やはり昭和四十六年あたりから非常にふえてきておりまして、大体二五から二七くらいだったのが、このごろは三〇以上になっておるのです。これはやはり通貨の発行量が非常にふえておるということであるので、先ほど過剰流動性の問題が出ましたけれども、これはぜひひとつこの点にメスを入れて、過当な投機の根源を断ちたいというぐらいに私は気負って考えておるわけでございます。
  128. 宮澤喜一

    宮澤委員 土地問題との関連で、これは法制局の長官にちょっとお伺いをいたしておきたいのでございますけれども総理大臣施政方針演説の中で、「憲法が認める範囲内で、最大限に公益優先の原則を確立し」云々と言っておられるわけでございます。そこで、憲法第二十九条にいっております「公共のため」ということは、たとえばその土地収用法の対象になる非常に具体的な一つ一つの計画、一つ一つの具体的な用途が定められている場合に限られなければならないのか。あるいは一定地域を将来いろんな目的に包括的に利用する、その場合には、また換地までも考えておかなければならぬというような場合もあると思いますけれども、そういう多少包括的な、収用法にいうほど、いまきめてあるほど具体的な場合でなくとも、公共の用途というふうに考え、それは現行憲法の許容し得る限界だと、こう考えてよろしいのでございましょうか、どうでございましょうか。純粋に法律問題としてお答えいただければけっこうでございます。
  129. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、憲法第二十九条第三項が「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」と規定していることは御承知のとおりでございます。この規定が、道路でございますとか、公園でございますとか、その他の個別、具体的な施設の整備のために、土地であるとか、その他物件等を収用することができるということを定めていることは、これはもう申すまでもないことでございますが、そのほかの場合でも、たとえば新住宅市街地開発法という法律がございますが、その場合のように、新しい市街地を整備するというように、各般の施設を含みました総合的な町づくりというようなものをいたしますために土地、物件等を収用するという場合には、その事業の内容につきまして具体的などういう計画があるか。たとえば、どういう公共施設をどこにつくる、宅地をどこにつくる、あるいは従来の土地をどういうふうに交換分合するというような具体的な計画が合理的に定められておるというような一定の要件を備えております限りは、土地、物件等の収用を認めているというふうに解することはできると思います。  そのほかにも、昨年通常国会で成立をいたしました新都市基盤整備法も同じような手法を用いていると思います。すべては公共のために用いるということが、合理的に公共のために用いるのだということが説明できる限りは、そういう法律を制定することができるものだろうと思います。最後は具体的な内容の問題に相なると思います。
  130. 宮澤喜一

    宮澤委員 そういたしますと、これは世の中で一部に伝えられておるような法制局の云々ということよりは、かなり余裕のある限界をわれわれとしては考えてみてもいい、こういうことに承りましたが、概してそういうお答えでございますね。  これは具体的なことを申し上げませんので、これ以上お答えいただくのは無理かもしれませんが、そんなに窮屈なものではないのだ、こういうふうなお考えでございますか。
  131. 吉國一郎

    吉國政府委員 法制局が窮屈だなんということはないわけでございまして、憲法第二十九条第二項の件につきましても、第三項のただいまの問題につきましても、要は、立法の内容が合理的に整備されなければならない。第二項の問題で申しますと、「公共の福祉に適合するやうに、」という、その「適合」が、はたして適合しているかどうかという具体的な認定の問題に相なると思います。したがいまして、各省庁からいろいろ法律案を持ってこられまして、私ども調査をいたすわけでございますが、その具体的な内容をよく検討いたしまして、これが合理的な範囲内においては憲法に適合するという判定をいたすわけでございます。したがって、合理的なものは差しつかえないし、合理的でないものは取り得ないということに抽象的には尽きると思います。
  132. 宮澤喜一

    宮澤委員 それでは次に、国際収支対策についてでございますけれども、輸入面について大幅な自由化というものはいろいろな事情でなかなか遅々として進まないようでございますけれども、そういう状況のもとで対外的に考えたりいたしますと、関税の大幅引き下げというのがかなりわかりやすい措置であるし、私は、評価される措置ではないかというふうに考えるわけでございます。  たとえば石油の財政関税のような特殊なものはございますけれども、そういうものを一応別にいたしまして、この際暫定的にでも、工業製品の関税というものはゼロが原則である、有税が原則ではなくて無税を原則にして、どうしてもやむを得ないものを例外に有税にするといったような考え方はできないか。これは暫定的でありませんといけないかと思いますが、そういう考え方はできないものだろうか。  で、まあ平常の場合でございますと、たとえば先ほど総理が新しい国際ラウンドということをおっしゃいましたが、ケネディラウンドの場合なんかでも、こちらの関税を下げるということは、向こうの関税を下げるためのバーゲンになるわけでございますから、初めからこちらがバーゲニングパワーを捨ててしまうということは、多角的交渉としては明らかに不利ではございます。技術としては不利ではございますけれども、ちょっとそんなことを言っておられないような状況になってきたように私は思うのでございますが、根本の考え方としてどのようにお考えでございましょうか。
  133. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 関税収入は四千二百億程度を計上しておるわけでございますが、もう関税収入というものを財源と考えるようなときではないのじゃないかという感じは、私は前から持っておるわけでございます。特に、前に提案をしまして成案を得なかった国際経済調整法には、関税のある期間の委任をしていただきたいということが一つの大きな柱であったわけであります。つまり、ゼロを原則としてどうするというのではなく、関税は、いまも御指摘がありましたように、各国との取引の問題もありますし、いろいろな問題もあります。とにかく、関税は、いまの関税定率法をそのままにしておきまして、ある期間に限って、ゼロから現行税率までの間、適宜その委任をしていただける。授権立法というか、そういうことをしてもらえれば——私は、国会がないときには非常に困るわけです。そういう意味で、政府は国内産業に影響する問題などをもう十分配慮するわけでありまして、授権されたから何でもやっていいのだというようなことは考えられるわけはありません。そういう意味で、物価問題もありますし、国民生活の問題もありますし、国際収支の問題もありますので、この関税率の弾力的運用はある期間に限ってでいいと思うのです。それと資本の自由化、資本の自由化は、これは一〇〇%を原則にしよう。五〇%を原則としておって、あとを個別に認めるというのではなく、一〇〇%を原則にして、あとは個別に、困るものは押えよう、こういうことに変わりつつあります。  そういう意味で、関税の問題に対しては、これはいますぐどうこうしょう——いまもうちゃんとした予算案を御審議いただいておるのでございますから、そんなことを私が申し上げられるはずもございませんし、それこそ大蔵大臣はたいへんなことになりますが、しかし、やはり新しい問題としての関税という問題。これは二〇%というと相当大幅な引き下げだったと思いますが、これはもうすぐOECDで問題になる問題でありまして、なかなかほかの国が下げるというような状態にもなりませんし、もう相手国との問題ではなく、こちらが輸入の拡大のために、また、物価問題に対応するために弾力的運用が望ましいという基本的な考え方だけ申し上げておきます。ただ、では予算案を修正するのかという問題ではありませんから、これは明確にひとつ区別をしてお答えをいたします。
  134. 宮澤喜一

    宮澤委員 わかりました。この点は、また租税法定主義というような問題もあろうかと思いますが、それも先例がないわけでもございませんので、ものごとの考え方としては、ひとつなお御検討をお願いいたしたいと私は考えます。  それから輸出面についてでございますけれども、これは私見でございますが、私は、どうも輸出税というものはいいものだと思いません。むしろそれでございましたら、貿管令を広く、条件をきびしく適用していったほうがいいのではないかと考えておりますが、これは私見として申し上げておきます。  それから次は、また別の問題でございますが、ともかく、現在これだけわが国は外貨を持っている。現在持っております外貨のうちで、少なくとも数十億ドル程度のものは、長期に何かの形で運用しても支障がないのではないだろうかと私は考えておるわけでございます。世界各国、ことに発展途上国は外貨不足に悩んでおるのが現状でございますし、どうも、わが国が外貨を死蔵をしておって、世界市場にそれを還流させないではないかという、そういう国際的な批判があるように思います。  また、総理は、施政方針演説の中で、発展途上国に対しての政府援助を拡大すべきであるということも言っておられます。それからまた他方で、わが国のエネルギーの問題、これは間もなくまたアメリカの大統領のエネルギー白書が発表されますと、かなり国際的に緊迫した展開をするのではないかと私思っておりますが、したがって、これだけ保有しております外貨を適当な方法で使わなければならない。使える機会がたくさん目の前に実はあるにもかかわらず、いまの制度というものは、円を媒体にしなければその外貨が動けない、こういう制度になっております。  たとえば輸銀なり、あるいは石油開発公団を通じて貸せるにしても、輸銀なり開発公団は、外為会計から円で外貨を買わなければならない。ですから、これは予算なり財政なりの制約が当然出てくるわけでございます。そうかといって、外為会計自身が貸せるかといいますと、これは短期の運用しかできない。昔のとおりの制度が少しも変わっていないわけでございます。総理施政方針演説の中で、古い制度や慣行にとらわれてはいけないのだと、まさにおっしゃっていることが、私はここらに一つあるのではないだろうかと思う。やはり、この改善を妨げておりますのは、だれということじゃございませんが、その官僚機構全体がいままでの慣行というものにとらわれるとか、あるいは積極、消極の権限意識にとらわれるとか、そういうことが原因になっておるように思います。これは、総理が土地問題で非常な指導力を発揮された、まさにそれがもう一ぺんここでそのような指導力を行使していただきたいような問題だと私は実は思うのでございますが、どのようにお考えでございましょう。
  135. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 外貨の直接貸し制度も採用いたしましたし、また、石油公団やその他が外貨を使わなければならないというときには、資金運用部から金を貸して、というような道も開いてはおりますが、しかし、それだけではなかなかうまくいくかどうか、私もめんどうな問題だと思いまして、検討をしてもらっております。いろんな検討もしてもらっておりますし、私自身も勉強しておるわけでございます。  まあ、石油等の問題になるとすぐ、出資や投資をしなければならない、それから、株を引き取ってはどうかという問題などの問題があったわけでございますが、そういう問題もあります。それから、余剰のドルでもってアメリカの財務省証券を求めようとしても、もうないということであります。連銀債でも発行してくれるかというと、ある意味において、日米間の調整のためには相当長期のものを固定してもいいわけであります。しかし、そういう問題に対してもまだなかなか結論は出ないということになりますと、やはり外為特会の改正を行なって、外為が基幹産業の投資、株を取得できるとか、そういうやはり幅のある弾力運用というものが必要じゃないかということを長く考えてまいりました。外為特会が直接やらなければ、別な機関を設けて、外為がそこに金を出して、その機関が保有すればいいわけであります。やはり、国際化してくるとそういうことをやらないと、株を取得するといっても単位が大きくなっておりますので、予算制度の中でなかなかできないということもあります。  じゃ、直接貸しをしたら、その裏づけの円はどう吸い上げるのかという問題は、それは証券を発行してもいいし、手はあると思うのです。まあ、いままで長いこと守ってきた制度でありますから、これにメスを入れるということに対してはなかなか抵抗もあると思いますし、学問的にもいろんな議論があると思いますが、現実問題として、やはり弾力的に運用しなければ各国から非難を受けておるのです。そういう意味で、いますぐどうするという結論をまだ出しておるわけじゃありませんが、大蔵大臣、日銀総裁等、専門家の意見も十分聞きながら、何かいい案を考え出してもらいたい、こういうふうに願っておるわけであります。
  136. 宮澤喜一

    宮澤委員 いずれにしても、何か考えるといたしますと、新しい立法が必要なことはもう疑いがございませんから、たとえばこの日銀引き受けの国債を出して、それでもって新しい会計や外為会計から買いまして、ここで動かすとかなんとかいう——まあ、そうなりますと、その新しい会計というのは、外貨を円と離れた形で運用することになりますから、そういう意味では、それ自身がやはり何かの形で国会審議の対象になるのが適当ではないかというような、いろんな問題がございましょうけれども、いずれにしても、何か新しい立法は必要ではないかと思いますので、続きましてひとつ御検討をお願いいたしたい。これはしかし、同時にまたかなり急ぐ問題でもございますので、ひとつここにもう一度指導力を御発揮を願いたいというのが私の気持ちでございます。  あと、お尋ねを申し上げたいと思いましたが、時間の関係もございますので、この社会保障の問題について、やはり今度は新しい新経済計画で、振替所得が八・八%にまでなるというふうに伺っておりますが、これはやはり長期計画を社会保障計画でも立てていただくほうがいい。負担の問題もそうでございますし、いろんな制度間のバランスを直すためにも私はそうではないかと思います。これは要望を申し上げる。  それからもう一つ、教員の給与増額、あるいは大学の地方分散など、総理がかなり長いこと施政方針で言われましたことは、私は全く同感でございます。まさに私は、いまの時代を不安と期待の交錯した時代だと思っておりますので、次代に託するものが多うございます。ぜひここに言われましたような施策をお考えをいただきたい。  それから、これは私どもの党内にもいろいろ議論がございまして、私見でございますけれども、いかに文部省がいい指導要領を出しましても、結局、現場で子供に接触するのは先生方でございます。どうしてもこの事実は変えられない。ですから、しょせん先生方の自発的な協力というもの、指導というものがなければ子供というものはよくならないわけでございますから、まあ、文部省と日教組との長い間の、それこそベトナム戦争のような、ことばは悪うございますが、いきさつがございますが、再度政府のほうから和解の手を差し伸べらるべきではなかろうかと、これは私の私見でございますが、そういうことを考えております。  それからもう一つ、たいへん個別の問題になりまして恐縮でございますが、実は、私どもの党内で、これは時間の制約がございまして急いでおりますので、農林大臣に御所信をお伺いいたしておきます。  それはこの間も本会議でどなたかの御質問のございましたミカンの問題でございますが、四十七年産のミカンが、前年度を三割も上回る増産であって、価格が暴落をしておる。政府はジュース等の加工をして市場から隔離することを決定して、目下実施をしておられますが、いずれにしても、ミカン農家というものは非常な打撃を受けておりますので、政府は、このような事態に対応して、その再生産を確保するための資金についての利子補給の措置などを含めて、必要な措置を講ぜらるべきものだというふうに、私どもの党内ではそういう結論を出しておりますようでございますが、農林大臣の御所見をお伺いいたしておきます。
  137. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 本会議でもお答えをしたときに申し上げましたが、現在のミカン生産農業者の実情というものはほんとうにお気の毒にたえないものがございます。隔年結果の表年に当たって、その上に好天候に恵まれるということから、予想外の増産になり、暴落ということになった次第でございますが、ただいま宮澤委員の御指摘のように、昨年末、緊急に三十万トンほど市場から隔離するための施策といたしまして、生産者団体等に、かん詰め、ジュース等の加工をお願いをして調整管理をする、こういうことにいたしました。しかし、本年になりましてから、さらに予想を上回っての収穫ということがだんだん見通しされますので、そこで相談をいたしました結果、この上は、各県においてそれぞれ実情に即しての施策をとっていただき、それに対して国としても御協力を申し上げようということで、現在、それぞれのとられた施策の模様が報告をされておりますが、ただいま宮澤委員の言われましたように、この価格低落の影響の大きい生産農家に対して、その再生産のため必要とする資金についての利子負担軽減措置を含めて、適切な対策を講じ、万全を期してまいりたいと思います。  それから、先ほどちょっと、外材の制限をした事実があったのじゃないか、調査をするようにと、こういうことでございましたが、調査の結果、そういう事実はございませんが、御参考までに申し上げますると、当時の木材事情からいたしまして、衆参の農水委員会の決議がございました。それを受けまして、林野庁が、学識経験者、木材流通加工業界、国内材関係業界、輸入業界の代表からなる外材需給検討会を開いて、適正、円滑な輸入の行なわれるようにつとめてきた、そういう事実があるのでございます。  お答え申し上げます。
  138. 宮澤喜一

    宮澤委員 了承いたしました。  最後のことばを一言。  以上の質問を通じまして、私は、今日国民の多くが感じております外交及び内政についての不安と期待の交錯というようなことを申し上げたつもりでございます。われわれは、総理が述べられましたように、まさに、未知の分野に向かってこれから歩を進めなければなりませんので、このときこそ、総理の強い指導力によって、不安が明るい期待に変じまして、民族がさらに一段の飛躍をすることを心から祈念をいたしますともに、総理の一そうの御加餐を祈りまして、質問を終わります。(拍手)
  139. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて宮澤君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  140. 根本龍太郎

    ○根本委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  小平忠君の総括質疑の際、日本銀行総裁及び東京大学学長の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  141. 根本龍太郎

    ○根本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、昨日決定いたしました日銀総裁の本日の出席は、明日に変更いたしますので御了承願います。  次回は、明二日午前十時より委員会を開催いたします。本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十三分散会