○加藤清政君 私は、ただいまから、
日本社会党を代表して、
昭和四十七年度
中小企業白書について
田中総理並びに各
関係大臣に質問いたしたいと思います。(
拍手)
いまから十余年前、わが
社会党は、
中小企業に関する
基本法の制定を本院におきまして提案し、それが発端になりまして、時の池田内閣による
中小企業基本法が議決され、今日、
白書も十冊を重ねるに至ったのであります。
このような時代の流れを考えますとき、私は、わが党諸先輩の
中小企業への熱意に対しましてあらためて敬意を表するとともに、反面、長年続いている自民党
政府のもとでは、
中小零細企業者のための
政策が国の主要な柱として
実施されますことが実に困難であるとの感を禁じ得ないのであります。(
拍手)
御承知のとおり、
わが国の勤労者全体の七〇%以上が
中小企業に職場を求めております。その職場が健康にして文化的な生活を確保できるに足る労働諸条件を保障できるものでなければなりませんし、これを実現させることは、政治の使命であると存じます。(
拍手)しかるに、本年度の予算を見ますると、
中小企業関係予算はわずかに八百二億円、一般会計に占める比率は〇・六%にすぎないという事実は、大
企業に対するさまざまの
優遇措置と比較するまでもなく、あまりにも貧困であると申さなければなりません。(
拍手)
まず、
田中総理大臣にお伺いいたします。
総理は、今後もなお
中小企業施策を一%以下の比重にとどめておくおつもりか、あるいはこれまでの
中小企業政策をもう一度抜本的に見直し、
中小企業関係予算の大幅な拡大をはかるため、すみやかに必要な
措置を講ずる用意がおありかどうか、
総理の見解をお尋ねいたします。(
拍手)
今日の
中小企業政策は、一部の業種に対して集中的にてこ入れを行なったり、特定の優良
中小企業を中堅
企業へ送り出すことに目的があるのではないことは明白であります。
今日のように、あらゆる
分野において大
企業の力が強く、
政策的ささえがなければ大
企業が不当な利益を得、
中小企業が犠牲をしいられる
経済体制にあっては、
中小企業それぞれの特殊な条件に合致させたきめのこまかい
政策を不断に積み重ねることが大切であることは、いまさら申すまでもありません。かかる
実態からいたしますと、もはや、大
企業に主柱を置いている通産省から
中小企業庁を切り離し、全事業所数の九九%、従業者数の七〇%以上を占める
中小企業に一元的、有機的に
対応し、強力な活を入れるためにも、
中小企業庁を
中小企業省に昇格させるべきであることを、わが党は従来から要求しておるのであります。
過般、
総理は、
関係各大臣に対し、多年全国の
中小企業者が要望していた
中小企業省の設置を含んだ、
中小企業対策の
抜本的拡充について検討することを強く指示したということであります。
中小企業者は、専任大臣がおれば、
中小企業対策予算ももっと増大するであろうと、強い
期待を持っておるのであります。
また、
中小企業行政を担当する
中小企業庁は、現在、百六十七名の職員を有するにすぎず、出先機関を含めてもきわめて貧弱な実情にあります。このようなことでは、四百六十万の
中小企業者と、二千七百万人の
中小企業に働く従業者が
期待し、要望する
中小企業施策の
充実は、とても達成することはできないと考えます。
そこで、
総理にお尋ねいたします。
総理は、
中小企業省設置についてどのような指示をされ、また、どのような構想を持っておられるのか、この際、明快なお答えをお願いいたします。(
拍手)
さらに、これからは、
中小企業政策の予算並びに権限をできるだけ
地方自治体に移譲し、自治体が
中心となって、地域
社会の実情に応じた
中小企業政策を
推進すべき
方向へと
転換すべきときであると思いますが、
総理の見解をお伺いいたします。
次に、緊急の問題として、最近の大
企業、大
商社を
中心とした反国民的な投機に
関連し、
総理並びに
通産大臣にお伺いいたします。
すでにわが党があらゆる機会を通じて
政府に具体的
対策を迫っているように、大
商社による買占め、売惜しみが横行し、ために、諸物価は急
上昇し、このことが、国民生活はもとより、
中小企業に対しましても、原材料の大幅な値上がりなどの深刻な
影響を与え、その存続の基盤を危うくしておるのであります。
特に、綿、絹、羊毛等の繊維原材料、木材などにおいては、
中小企業はその
経営を維持するために、やむを得ず高値の原材料を大
商社などから買わざるを得なかったのであります。しかも、投機の当然の結果として、値段が暴落したときには、大
商社はすでに膨大な利益をもって食い逃げし、取り残された
中小企業はとるべき手段を持たないというのが
実態であります。
白書においても、「これらの事業
分野は、
中小企業の出荷比率が高く、
中小企業製品の物価を押し上げている原因は、原材料の価格の
上昇にある」と指摘し、
中小企業への深刻な
影響を裏書きしておるのであります。
大
商社は、依然として今日、このような投機行為を
企業の当然の権利のようにふるまっておるのでありますが、当然、
資本主義
社会においても、利潤の追求の前提に、
社会性及び商行為の倫理性がなくてはならないのであって、価格操作の
役割りを演じて物価騰貴の元凶となっている
商社の現状を正当な
企業活動として認めるべきでないと考えますが、この際、
総理の明快な見解をお伺いいたしたいと存じます。(
拍手)
次に、
通産大臣にお伺いいたします。
「ミサイルからラーメンまで」といわれるほどに広範な事業
分野を持つに至った
商社の巨大化、大
商社の存在は、今回の例をまつまでもなく、決して流通の合理性をもたらさず、物価の安定にも貢献しないばかりでなく、逆に価格つり上げの原因になっていることは、もはや明らかであります。
商社の現状は、このままではむしろ
中小企業やさらには国民大衆にとって百害あって一利なしと断じても過言ではありません。(
拍手)
この際、少なくとも国内市場におきましては、いわゆる総合
商社の
活動をきびしく規制し、むしろ大幅な分割を行なうべきであると思います。
私は、この際、かかる内容を目的とした
商社法を制定して、
商社モラルを樹立し、販売ルートを明らかにし、一定の
企業活動のルールを設定し、その違反のなきよう
措置すべきであると考えますが、この点に関して
通産大臣の所信をお尋ねいたします。(
拍手)
さらに、これと並んで今日緊急な問題として、
金融引き締めのもとの
中小企業融資について、
総理並びに
大蔵大臣にお尋ねいたします。
商品投機による
影響とともに、
中小企業にとっては、
政府の
金融引き締め政策がどういう形で行なわれるかということが、大きな関心事でございます。
日銀は、七月二日に三度目の公定歩合の
引き上げを行ない、
預金準備率も三回にわたって
引き上げ、都市銀行の窓口規制の
強化などの一連の
措置とあわせて過熱した景気を鎮静させ、総
需要の抑制、
過剰流動性の吸収をはかろうとしていますが、問題は、この
措置が大
企業も
中小企業もひっくるめて行なわれた場合、特に
中小企業の側に
影響が強く出るということを懸念せざるを得ないのであります。
商社や不動産会社の買いあさり、買い占めを抑制するための
措置であるならば妥当でありますが、
中小企業の場合、運転資金の借り入れまで抑制されますと、とたんに
経営危機におちいることも考えられるわけでありまして、
引き締め基調にあっても、
中小企業の運転資金だけは別
ワクにして
貸し出しを確保するといった柔軟な
配慮が必要と考えられるのであります。
この点につきまして、運転資金
貸し出しを別
ワクにして、
金融引き締めによる
中小企業の深刻な
影響を
配慮して
貸し出し確保をはかる必要があると考えますが、この際、御見解をお尋ねします。
さらに、今日の
商品市場の
あり方を根本的に再検討し、投機を排除する具体的
措置を講ずべきであります。化合繊及び絹などについては、今日の
商品市場
制度はもはや不必要といっても過言ではありません。
通産大臣は、
商品市場
制度を根本的に再検討するとともに、対象
商品の洗い直しを行なうべきと考えますが、これに対しての御見解をお尋ねいたしたいと思います。
次に、
白書に述べられております
中小企業政策の
基本について
通産大臣にお伺いいたします。
白書は「
変化と多様性の時代の中で
中小企業も資源集約型の
産業構造を
知識集約型へと
転換していかなければならない」、そのためには「旺盛な意欲と冷徹な精神、創意工夫、
行動力をもって試練を克服していかなければならない」と述べております。
そうして、
知識集約型産業に
転換して成功した例というものを数多く取り上げているわけでありますが、私は、こういう論理の展開の結果がどういうことになるのかという点に幾多の疑問を持たざるを得ないのであります。
そこで、
通産大臣にお尋ねいたします。かかる時代認識は、それなりに評価していいとは考えますが、
中小企業の
実態を見たとき、資金も乏しく、
人材面でも弱い
中小企業に対して、業種
転換や
工場移転を迫ってみたところで、個別
企業の意欲や
行動力だけではどうにもならないのであります。しかも、
中小企業の大部分が、そうしたジレンマをかかえながら模索を続けておるのであります。
こういう
中小企業の
現実をベールに包み込んでおいて、
知識集約型への脱皮ばかりを強調し、そこにスポットを当てていこうとするやり方は、別な言い方をすれば、現在の状況に
対応できない
企業はつぶれてもやむを得ない、
政府の示す
方向についてこれないものは切り捨てるんだということになりかねないのであります。(
拍手)
私は、この
白書の
中心ともいえる
知識集約化が、実は、一部優良
企業の選別的育成をはかり、新たな二重
構造をつくり出すことにつながると考えるのでありますが、もし、それを否定されるのであれば、
通産大臣はこの点についてどう考えておられるのか、また、
転換が困難な
企業に対してはいかなる
施策を講じようとしているのか、具体的に御答弁を願いたいと存じます。(
拍手)次に、
知識集約型産業への
転換の中身についてお尋ねいたします。
このような
方向性を打ち出す以上、当然それに沿った具体的な
政策なり財政
措置といったものが必要となるのでありますが、
白書では、成功例、失敗例の具体的なケースが列挙されるにとどまり、
対応する
施策については、ほとんど見るべきものがありません。通産省として、いかなる
政策によって
対応されようとしておるのか、また、その
方向への誘導、
助成策を伴った長期計画を明らかにすべきであろうと考えますが、
通産大臣の見解をお伺いいたします。
最後に、
中小企業の
人材育成並びに、
中小企業に働く
人たちの諸問題についてお尋ねいたします。
中小企業の勤労者の労働諸条件が大
企業に比べて依然として劣っておることは、
賃金水準一つをとってみても明らかであります。
企業は人なりということばもありますように、労働者を抜きにした
企業対策はあり得ないのであります。
とりわけ、
中小企業の場合、福利厚生の面や職場環境の面で大幅に立ちおくれており、これらの面での
改善、
政府のてこ入れといったものが必要であることは多言を要しません。わけても、
中小企業に働く中高年齢者層の問題は避けて通ることができないのであります。
技術習得のための職業訓練施設の
拡充強化とそれに伴う訓練期間中の生活保障や
中小企業退職金共済
制度の
拡充、年金の
改善など、現在と将来の生活安定のために
政府がいますぐに着手しなければならない
課題は山積みしているのであります。
企業経営の一方の面だけに分析調査が集中され過ぎているように思われます。
白書では、勤労者に関する問題についても分析は行なわれているようですが、この際、労働省だ、通産省だというなわ張り意識などは捨てて、
中小企業に働く
人たちの条件、何を最も望んでいるのかといった点をきちんと把握し、
対応策を講じるという姿勢を打ち出すべきであろうと考えるのであります。
とりわけ、中高年齢者層に対する問題を
中心とする諸問題こそ、
中小企業施策の柱であり、これらの中高年齢労働者の生活安定のための諸
施策の
充実をはかっていくべきであると考えますが、
総理並びに労働大臣の御見解をお伺いいたします。
また、少なくとも当面、
中小零細企業が集中している地域を選定して、
中小企業の勤労者を対象にした診療所を開設し、夜、仕事が終わったあとでも受診ができるような医療体制をつくり、勤労者の健康維持をはかるべきであると考えますが、
総理の見解をお伺いいたします。
さらに、労働者一万人程度を目途に、自治体と連携して労働者センターを建設し、娯楽や教養の場とし、
中小企業の福利厚生施設の不足を補い、一そうの
充実策をはかるような構想を打ち出すべきと考えます。この点について労働大臣の見解をお尋ねし、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣田中角榮君
登壇〕