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松本忠助君 私は、公明党を代表して、ただいま
議題となりました
国有鉄道運賃法及び
日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を
改正する
法律案及び
修正案に対し、
反対の
討論を行なうものであります。(
拍手)
去る
昭和四十四年
国鉄財政再建推進会議の
意見書に基づき策定された
財政再建計画が、多くの
国民及び全野党の強い
反対にもかかわらず、自民党の強行
採決という暴挙によって成立したことは、いまだ記憶になまなましいところであります。しかも、その
内容は、わずか二年で根本から改めざるを得ないお粗末なものであったのであります。
そしてまた、昨年新たにつくり直された新
財政再建計画も、本質的には旧計画を踏襲し、根本的に何ら改められたものではなかったために、
国民世論の強い
反対にあい、廃案に追い込まれたのは周知のとおりであります。
このような前例がある以上、今回提出された
財政再建計画は、何ら
国民生活を
犠牲にすることなく、
国鉄の
財政を立て直すことが可能なものと考えておったのであります。
しかるに、その
内容は、これまでの
審議を通じて明らかにされたように、
国鉄の
再建はおろか、十年後には二兆六千億円の
赤字を累積するというきわめてずさんなものであり、もしかりに、この計画をこのまま実行しようとすれば、二、三年を待たずしてまたまた計画変更を余儀なくされるであろうことは明らかなる事実であります。
また本法は、今回の二三%をこえる
値上げを含め、向こう十年間に四回にわたって名目二五%前後の
値上げを行なおうとしております。このような
公共料金の
値上げの計画化は、
物価高騰を永続化し、
国民生活を
長期にわたって圧迫することになるのであります。したがって、
国民のほとんどは、この
国鉄運賃値上げ法案に強く
反対し、廃案とするように要求しているのであります。
政府・自民党は、この
国民の声を完全に無視し、世論を踏みにじっても、この悪法を成立させようとしております。
私は、この悪法に
反対する
理由を申し述べる前に、
政府並びに自民党の
諸君に対し、悪性インフレに悩む
国民をこの悪法によってさらに苦しめようとする
国民不在の政治を行なおうとすることは、良識がある以上、絶対に避けるべきであると、まず冒頭に申し上げる次第でございます。(
拍手)
わが党がこの
法案に
反対する第一の
理由は、すでに御承知のとおり、
国鉄経営を取り巻く社会的要因は、その
財政を破綻させる条件をそろえ、それも今後さらに悪化するものと考えられます。たとえば、
政府が自動車と道路輸送を優遇する跛行した交通政策を続ける限り、陸上輸送における
国鉄の競争力は相対的に弱まり、
国鉄のシェアはさらに減少することになります。また、現状にそぐわない
独立採算制に執着する
政府から全く見放された
国鉄は、借金政策に基づく輸送力の増強と近代化に狂奔せざるを得ない立場に置かれております。他方では、過疎化とモータリゼーションの進行が地方路線の閑散化を促し、インフレ、高
物価は労働集約型交通産業である
国鉄の人的
経費の増大をもたらすなど、
国鉄の
企業的収支悪化に拍車をかける条件はあまりにも多いのであります。したがって、これら社会的要因の解決なくして
国鉄の健全な
財政の立て直しは絶対に不可能であるといえましょう。
すなわち、わが党が以前から指摘してきた
政府の総合交通政策の欠如が、
国鉄財政を
赤字に転落させる
原因をつくったといえるのであります。
国鉄をめぐる政策、制度的な社会要因を根本から
改正し、早急に具体的な総合交通政策の確立を行なわない限り、その脆弱な基盤の上にどのような
財政再建計画を積み重ねたとしても、ひっきょうそれは砂上の楼閣にすぎず、結局は膨大なる
投資財源の調達と
赤字穴埋めのために、
国民には
運賃値上げを、
国鉄労働者には
人員削減と労働強化を強要することになるのであります。
したがって、
政府みずからが
国鉄の
赤字財政をもたらした
原因をつくりながら、その
責任をたなに上げ、
国民と
国鉄労働者に
犠牲をしいる今回の
国鉄再建計画には、絶対に
反対をいたすものであります。(
拍手)
次に、
反対する第二の
理由は、
旅客運賃の
値上げを行なうことによって
利用者に
貨物収支の
赤字を
負担させようとすることであります。
すなわち、
旅客は
黒字、
貨物は大幅な
赤字という事実にもかかわらず、総合的な
赤字を埋めるため、
旅客運賃も
貨物運賃とほぼ同率の大幅
値上げを行なうことは、
政府並びに
国鉄当局のあらゆる弁明にもかかわらず、全く非合理的であるといわざるを得ないのであります。まして、
旅客黒字、
貨物赤字の事実を、会計技術論的口実をつけ、ひた隠しに隠し、提出された
数字も客観性に乏しいなどと釈明することは、
国民を愚弄するもはなはだしいことであります。
すなわち
貨物赤字の
原因は、
国鉄の
貨物輸送力不足と近代化の立ちおくれが、社会的な構造変化についていけず、他の輸送機関に
輸送需要を奪われたために生じたものであり、このような事態をもたらしたのは、全く過去における
政府の経済政策、交通政策の失敗によるものであって、
政府の
責任を強く糾弾するものであります。(
拍手)
また、経済学上、不確定な
総合原価主義の名のもとに政治的
運賃を策定し、向こう十年間に
政府助成の二倍をこえる八兆円もの
値上げを行ない、一般
利用者に
負担を強要することは、絶対に許すことはできないのであります。
反対する第三の
理由は、最近の卸売り
物価、
消費者物価の急騰に見られるように、
物価問題は最も重要な政治課題であり、
物価高騰に悩む
国民生活の実情を深刻に受けとめるならば、安易にインフレ経済を助長する
公共料金の
値上げは行なえないはずであります。
すでに、
国鉄運賃の
値上げが、他の
物価や交通料金の
値上げに波及することは明らかであり、中でも、昨年
値上げ申請を行なっている私鉄大手各社は、
国鉄運賃の
値上げを手ぐすね引いて待っている状態であります。このまま
国鉄運賃の
値上げを認めると、新宿−藤沢間をほぼ同距離で結ぶ
国鉄と小田急では、
国鉄の
値上げ後の一カ月の定期代は七千二百三十円、小田急は二千七百九十円で、その差は何と四千四百四十円にもなるのであります。もしも私鉄各社が、
国鉄運賃との格差を
理由として料金
改定を要求したならば、
政府は一体何と答えるでありましょうか。私鉄の中には、すでに、昨年申請した三〇%前後の
値上げでは
国鉄とのバランスがとれないので、この
値上げ幅を四〇%前後にすべきだとの声もあがっており、申請をし直そうとする動きさえあると聞いております。
また、
貨物運賃の
値上がりを待って、それを輸送
コストの上昇という、かっこうの
値上げ材料として、便乗
値上げを行なおうとする
企業もあるでありましょう。
政府は、これら便乗
値上げは絶対認めないといっておりますが、いままでの
国鉄運賃値上げに伴う便乗
値上げを、ただの一度として押えることができなかったのは事実であります。過去、四十一年、四十四年と、
国鉄運賃の
値上げが行なわれた年の
国民の
公共料金負担額が大幅にふえた事実からも、それは明瞭であります。
いずれにせよ、最悪な状態となっている
物価高騰のさなかに、あえてそれに拍車をかける
国鉄運賃の
値上げは、絶対に行なうべきではないのであります。(
拍手)
反対する第四の
理由は、今回の
再建計画には、
国鉄再建に取り組む
国鉄当局の姿勢が、ほとんど示されていないのであります。
わが党は、
国鉄の
再建は、当事者たる
国鉄当局の
企業努力なくしては不可能であると、再三にわたり指摘してきたことでもあり、昨年も、
国鉄の用地問題をはじめ、関連事業の拡大と適正なる運営、サービス改善問題、さらには
国鉄の財産管理の実態等を指摘し、多くの改善を要求したのであります。
しかし、今回の
審議を通しても、この一年間に私たちが要求したことは何ら改められず、用地の活用はおろか、関連事業の適正な運営さえも行なおうとしていなかったのであります。
国鉄当局が
国民に多大な
負担を課し、
国鉄労働者に
合理化を要求しながら、みずからは
国鉄の
再建に
努力しようとしないならば、
国民にどのように理解と協力を訴えたとしても、それが得られるはずがございません。
わが党は、
国鉄当局が
再建に取り組む姿勢を正そうともせず、いたずらに
運賃値上げを強行し、
国民に
負担を押しつけようとする
政府の姿勢を断じて許すことはできないのであります。
反対する第五の
理由は、私どもが
国鉄の健全な運営を行なわせるための提案を行なっているにもかかわらず、
政府は、
国鉄財政の悪化を促す政策を行ない、
国民不在の政治を貫こうとしております。
すなわち、
国鉄の
赤字財政の
原因は、
政府の総合交通政策の欠陥によるものであることはすでに指摘したとおりではありますが、もう一つの
原因は、時代に即応しない
独立採算制に固執し、
国鉄への
財政援助を怠ったためであります。そのために無謀な借金政策によって生じた多額の
債務とその利子の支払いがこの
赤字をつくった
原因にあげることができます。
したがって、わが党は、
国鉄財政の健全化をはかるためには、過去の
債務を一時たな上げにし、
国鉄が
投資する財源と利子補給に対し大幅な
財政援助を行なうとともに、総合交通政策をより具体的に確立し、
鉄道敷設法などの
国鉄赤字の
原因となる旧態依然とした関連
法律の
改正を強く要求してきたのであります。また、関連事業の拡大とサービスの改善など、時代に対応できる
国鉄とするよう各種の提案をしてきたのであります。
それにもかかわらず、
政府・自民党は、このわが党の提案に耳をかそうともせず、いたずらに
国鉄財政を危機におとしいれる
施策を推し進めようとしているのであります。
いま
国民が
国鉄に対して最も強く望んでいることは、
国鉄財政の立て直しをはかり、朝夕の通勤通学時の混雑を解消し、快適なサービスを享受できることであろうと思うのであります。しかし、今回の
国鉄再建計画は、この
期待にこたえる具体策も明確でなく、従来どおりの単なる
赤字補てんのための
運賃値上げを行なうにすぎません。
国鉄は私
企業とは異なり、
日本国有鉄道法第一条に明らかなように、公共の
福祉増進を第一として設立されております。
政府の
再建計画は、このような
国鉄の設立目的を忘れ、ただひたすら
赤字対策にのみ目を奪われ、そのしわ寄せを
国民に転嫁しようとしているのであります。すなわち、今回の
値上げは、法の精神を逸脱した暴挙であるといわざるを得ないのであります。(
拍手)
最後に、この
法案の成立によって、向こう十年間絶えずインフレ要因をかかえることにより、
国民は全く
生活の安定を得ることができなくなるのであります。このような暴挙をあえて実行せんとする
田中内閣、特に
田中総理に対する
国民の批判は、長く歴史に悪名をとどめることでありましょう。総理は、
国民の
犠牲の上に成り立つこの悪法をすみやかに撤回し、
国民生活の安定と
国鉄再建の抜本的対策の策定に
努力すべきであることを強く要求し、公明党の
反対討論を終わる次第であります。(
拍手)